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1953-07-04 第16回国会 参議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月四日(土曜日)    午前十時二十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十六号   昭和二十八年七月四日    午前十時開議  第一 私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明)(前会の続)  第二 日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第三 社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第四 保険業法等の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第五 人権擁護委員法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第六 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第七 以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業許可等についての一漁業一法臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りをいたします。曾祢益君から、海外旅行のため、会期中請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      ——————————
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して、フランス共和国戦犯特赦に対する感謝決議案佐藤尚武君外二十五名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、佐藤尚武君外二十五名より委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。佐藤尚武君。    〔佐藤尚武登壇拍手
  8. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 本感謝決議案提案理由の御説明を申上げます。  我が国は、関係各国に対し、かねてより、平和条約第十一条の規定により、日本人戦犯赦免仮釈放措置をとられるよう要請し続けて参りました。この要請に応えて、特にフランス政府は、他国に率先し、昨年七月十四日のフランス革命記念日に当り、巣鴨にあるフランス関係戦犯に対し、大統領特別減刑令により、二名を除き、ことごとく十五年以下に減刑されたことは、すでに御承知り通りであります。その後も、これらの人々につき、日本政府から赦免減刑仮釈放等措置を勧告して来ましたが、去る六月一日、在京ドジヤン・フランス大使より岡崎外務大臣に対し、五月二十六日、オリオール大統領フランス関係BC級戦犯三十八名についての特赦措置を定めた大統領令に署名した旨、通報がありました。これは、昨年までの三十九名中、一名は死亡し、残り三十八名のうち三名はすでに仮出所しており、又、無期刑者二名を十二年に減刑したほか、有期につき最高十一年六カ月から最低一年の減刑が認められたものでありまするが、先にフランス政府の同意した未決通算善行特典規定が、これに加えて適用されますので、一応の調査では、計三十一名が刑期を満了して釈放せられ、四名が仮出所恩典を受けることになるのであります。このことは、戦犯に問われた人々並びにその家族は勿論、日本国民の非常な喜びとするところであると同時に、この仏国側の大いなる好意に対して、我々は心から報いなければならないと考える次第であります。なお、かくのごとくフランス国民が進んで好意の手を差延べてくれましたことは、これまでもすでに親善関係にあつた日仏関係を一層敦厚ならしめる上に、大きな促進力となるに相違ないと信じます。  以下右の決議案を御紹介いたします。    フランス共和国戦犯特赦に対する感謝決議   フランス政府は、かねてより日本戦争裁判受刑者の処遇に関し、特に好意的考慮を払われていたが、わが国の減刑、仮出所釈放等に対する要請に対し、他国に率先して昨年七月十四日特赦を行い、更に去る五月二十六日同国関係BC級戦犯三十八名に対し、特赦恩典を与えられたことは、本人及びその家族はもとより日本国民の非常な喜びとするところである。   参議院は、フランス政府の右の措置が、一に日仏友好関係の増進という見地にたつたものと信じ、オリオール大統領閣下フランス政府並びにフランス国民に対し深甚なる感謝の意を表する。   右決議する。    〔拍手起る〕  本決議案は以上の通りでありますが、議員各位におかれましては、本案提案理由を篤と御考慮の上、本決議案に対して御賛成あらんことを切望いたします。右御説明いたします。(拍手
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本決議案採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて決議案全会一致を以て可決せられました。(拍手)      ——————————
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して、フィリピン共和国戦犯特赦に対する感謝決議案徳川頼貞君外二十五名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、徳川頼貞君外二十五名より委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。徳川頼貞君。    〔徳川頼貞登壇拍手
  14. 徳川頼貞

    徳川頼貞君 只今上程になりましたフィリピン共和国戦犯特赦に対する感謝決議案提案理由を申上げます。  去月二十七日、キリ大統領は、本月四日のフイリピン独立記念日を期して、モンテンルパ刑務所に拘禁中の日本人戦犯者百八名に対し特赦を行い、死刑囚五十九名のうち二名は釈放せられ、他の五十七名は終身刑減刑した上、内地に送還せしめ、現在の終身及び有期刑者釈放する旨、大統領府より公表されました。この時、八年の長きに亘り、異国の獄舎において日夜死と直面した肉身に想いを馳せた戦犯者留守家族方々は勿論、我々日本国民のすべてが深い感謝の念を以てこの報に接したのであります。戦後、日本復旧生活水準の向上によつて、ともすると戦争を忘れがちの今日にあつて、なお人々の胸に忘れがたいものは、ソ連や中共に残留する同胞の方々モンテンルパとマヌス島の獄舎にある戦犯たち身の上であり、国民の一人々々がその帰還と特赦のあらんことを心から嘆願し続けて参つたのであります。国会も、又政府も、機会あるごとに努力を重ねて参りました。その事実は、今やフイリピン人々の深い同情となつて、戦禍を越えた人類愛がこの寛大な特赦を与えてくれることになつたのであります。併し、翻つて戦争フイリピン国民に与えた打撃を思えば、物心両面の上に消しがたいものがあると察します。それにもかかわらず、キリ大統領及びフイリピン国民は、今その怒りを人道的寛容の中に消し去ろうとしております。これによつて日本フイリピン両国間の親善友好関係が大いに増進されることは疑いないと信じます。重ねて、戦犯に問われた人々は勿論のこと、日本国民は、この大きな好意に対して心から報いたいと考えていることをフイリピン国民にお伝えいたしたい。と同時に、今度の措置キリスト教の人類愛の立場から助命努力された人々戦犯者の心の支えとなつ教誨師助命懇願慰問に東西奔走された方々努力にも、深く感謝いたしたいと思うのであります。  なお、この機会に、日比両国間における賠償問題、沈船引揚の問題その他の懸案点に対して、今後とも妥結に向つて努力するようにいたし、日比両国の正常な国交が回復し、平和と友情で結ばれる日を心より待望いたしつつ、私たちは、ここに成規の手続を経て、本院の決議案を提出いたします。  これはすべての日本国民の純粋なる感情を反映するもので、フイリピン国特赦に次いで、今なお海外戦犯として残されている人々身の上に同じような好意と寛大の光が輝くことを祈念しあることを附言いたします。  以下右の決議案を御紹介いたします。    フイリピン共和国戦犯特赦に対する感謝決議   フイリピン共和国は七月四日の独立記念日機会に、フィリピンにおいて服役中の日本人戦争犯罪者に対し特赦恩典を与え、釈放減刑内地送還措置を行う旨を公表された。これは本院においても院議をもつて要請したところであり、恩典に浴した本人及び家族はもとより、日本国民にとつて喜びにたえないところである。   このことはキリ大統領を首班とするフイリピン政府好意によるものであると共に、フィリピン国民の寛容にして公正なる精神の発露にほかならない。   本院はここに深甚なる感謝の意を表する。   右決議する。    〔拍手起る〕  決議案は以上の通りでございます。議員諸君におかれましては、本案提案理由を御考慮の上、本決議案に対しまして御賛成あらんことを切望いたします。(拍手
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本決議案採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて決議案全会一致を以て可決せられました。(拍手)  只今の両感謝決議に対し、内閣から発言を求められました。岡崎外務大臣。    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  17. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今本院において、フランス共和国及びフイリピン共和国日本人戦犯特赦に対し、感謝決議をいたされましたが、これは誠に時宜に適するものとして、政府としても全く同感の意を表するのであります。戦犯問題の解決国民一般もかねがね切望していたところでありまして、政府としましても、この国民の気持はあらゆる方法で先方に伝えることに努めて参つたのであります。今般フランス共和国及びフイリピン共和国のとられました処置が発表されまするや、関係家族は申すに及ばず、国民ひとしく喜びの声をあげたのでありまして、誠に当然のことと考えるのであります。政府は今回の両国のとられました処置に対し深く感謝の意を表するものであります。なおフイリピン共和国におきましては、先ほども申されましたように、本問題につき種々国民感情考慮を要するものがあつたと考えられるのでありまして、キリ大統領の英断は特に多とするところであります。更に、今回の措置の蔭には、フランスなりフイリピンなりの多数の有力者の絶えざる努力のあつたことも、この際、銘記すべきであると考えております。  政府といたしましては、今回の御決議趣旨に副いまして、今後とも、日仏日比関係の改善には一層の力を尽すつもりでおりまするが、同時に、他の戦犯問題の解決につきましても、世論の要望にこたえ、今後とも更に努力を続けるつもりでおります。右申上げます。(拍手
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 犬養法務大臣。    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  19. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 只今本院においてなされました御決議は、戦犯問題処理関係当局といだしましても深き感激を以て拝聴いたした次第でございます。このたびフランス共和国並びにフイリピン共和国のとられました戦犯特赦処置は、戦犯者及びその家族はもちろん、全日本人が満腔の感謝を以てその好意と寛容の美徳とを迎えたことと存じます。而して、このたびのこの両国処置を契機としまして、我が国両国との親善関係は更に一段と促推せられ、東亜の天地が一切の忌わしき過去を忘れて新らしき善意と理想に満ち、ひいては世界平和に寄与すること多大であろうことを確信いたします次第でございます。  ここに繰返しフランス共和国並びにフイリピン共和国政府国民に対し、深甚の感謝の意を表明すると共に、両国の将来に亘る繁栄を心から祈るものでございます。(拍手)      ——————————
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、先に、本院の議決に基き、九州地方水害状況調査のため派遣いたしました議員団報告を求めたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。松岡平市君の発言を請います。    〔松岡平市君登壇拍手
  22. 松岡平市

    松岡平市君 去る六月下旬、九州地方に発生いたしました大水害に対し、本院の議決によりまして、自由党の谷口弥三郎君、剱木亨弘君、高野一夫君、緑風会溝口二郎君、三浦辰雄君、社会党第四控室内村清次君、白井勇君、社会党第二控室三木治朗君、改進党の松浦定義君、無所属クラブ加瀬完君、純無所属クラブ野本品吉君及び私松岡平市の十二名は、現地慰問及び被害状況並びに災害後の事情調査のため、去る六月二十九日より昨七月三日までの間現地に派遣せられましたので、一行を代表して取りあえず概要を御報告申上げます。ただ一行は今暁漸く帰省いたしたばかりでありますので、報告の粗漏についてはあしかじめお許しを願います。  慰問調査団一行は、六月二十九日飛行機で現地に到着し、直ちに福岡県庁にて各方面より九州全般被害状況について実情聴取の上、調査の便宜上、第一班福岡大分、第二班熊本、第三班佐賀、長崎の三個班に編成して、交通通信殆んど杜絶の悪条件と闘い、今暁帰京するまでの間、日程の許す限り広汎且つ詳細に調査慰問をして参つたのであります。現地におきましては本院を代表して見舞金を呈し、慰問言葉を申述べて参りましたが、各県とも衷心より感謝の意を表し、旺盛なる復興再建の決意を示されましたことは、深く感銘いたした次第であります。  以下各班の調査従つて、その概要その他について御報告申上げます。  先ず福岡県について申上げます。六月三十日現在の県下被害総額は約二百十一億、罹災民約百万といわれ、農林関係百七十八億、商工関係百八億、民生関係七十八億で、特に土木関係は百十六億の多額に及んでおります。災害の最もひどかつた地域は、筑後川流域一帯、久留米市を中心として、朝倉浮羽三井、三潴の筑後平野の各郡、矢部川流域の瀬高町、三橋町、大和町及び柳川市、遠賀川流域の植木町、剣町、中間町、古月村等で、いずれも各河川堤防決壊し、非常なる惨害をこうむつております。六月二十八日には、再び北九州襲つた豪雨により、門司、小倉両市を新たに惨害の街と化したのであります。殊に門司市は、突如ものすごい山津波に襲われ、全半壊住家千数百戸、死亡、行方不明百六十名に達しているのであります。又昭和十七年開通以来初めて国鉄関門トンネルは丈余に及ぶ浸水で不通となり、本土、九州を結ぶ交通の大動脈を切断されるに至つたのであります。更に、筑豊炭田地帯完全水没二十数坑、一部浸水三十四坑に及び、これが産業経済に与える影響は、けだし計り知れないものがあるのであります。筑後川中流部被害激甚地である朝倉浮羽の両郡は、河川及び道路決壊それぞれ百七十カ所、橋梁昭和橋を除いてすベて流失し、死亡者二十名、罹災民二万に及んでいるのでありますが、殊に原鶴町は、六百メートルの堤防決壊により、一瞬の間に五十九戸の家を流失、妻子を目のあたり濁流の中に失う幾多の哀話には、慰める言葉もなかつたのであります。又その上流の杷木町は、これ又、一挙に五、六百メートルに及ぶ絶壁の道路人家もろとも決壊流失し、対岸の古川町の壊滅に近い惨状等、誠に目を蔽わしめるものがあつたのであります。更に下流の三井郡十七カ町村は、私どもがその日漸く味坂村まで参りました三十日現在、通信可能の所は七カ町村だけで、衣食飲用水補給は困難を極め、見渡す限りの濁水電燈もつかず、漆黒の闇に、或いは安否を気ずかい、或いは救援に赴く人々の胸を一層憂いにかき立てている光景に接して参つたのであります。県当局におきましては、二十七日朝これら朝倉三井久留米等四十五市町村に対し、続いて残余の県下市町村災害救助法を発動して、応急救援措置を講ずると共に、海上保安部米軍等救援要請し、その献身積極的な活動を得ておりますことは感激に堪えないところであります。連絡が杜絶し孤立した幾つかの地域は、今全力をあげて、道路復旧、或いは舟艇による衣食の輸送に、県民一体となつて努力が払われております。罹災民も又惨禍の中に早くも立ち上り、更生への一歩を踏み出しておりますが、未だ食糧の補給も十分でなく、米或いは衣料の配給を強く要望いたしております。又、農家関係につきましては、水田冠水面積県内水田の約六%に及んで、水稲植付不能面積が約五千町歩に達している実情でありまして、何をさておいても稲苗確保に最も心を痛めている現状であります。又、今なお浸水地帯におきましては勿論のこと、晴れやらね梅雨期に、或いは台風期を控えて、決壊個所を早急に修復して欲しいとの切なる要望があつたのであります。その他、地方債の枠の拡大、応急金融措置悪疫防止住宅復旧特別措置など強力な措置要望されております。  大分県の被害総額は百二十七億と言われ、農林関係五十億、土木関係二十五億、民生関係四十億、商工並びに教育その他の関係十二億に及んでおります。被害中心地域大分川と筑後川上流の二水系を結ぶ県の中央部でありまして、この地域山間部、森、庄内の降雨量ば実に九百ミリを突破すると記録され、九州屈指木材産地である日田市は殆んど流失、倒壊に近い惨状を呈しているのであります。即ち、道路決壊、山崩れ、橋梁流失堤防決壊等はおびただしい数に上り、加えて水稲植付期に当り満水の状態にあつた耕地流失埋没浸水等による被害は甚大であります。殊に本県は、さきにルース台風により、その過年度の復旧も漸く半ばに達したのに過ぎない現状でありまして、今次豪雨災害影響は極めて深刻であると思われるのであります。死者、行方不明百三十名、重軽傷者五百三十余名、罹災民十六万七千有余に及んでおります。日田市は全く交通通信を絶たれ、私どもが参りました前日、漸く徒歩で連絡がとれたほどでありまして、現地に参ることができませんでしたが、大分流域被害地を視察して参りました。植田村は、大分右岸上流決壊により、田地の埋没二百二十町歩、家屋三十戸を流失し、全く耕作不可能に陥つた現地状況は、誠に惨たるものがありました。この村はルース台風の際にも右岸堤防決壊し、漸く千百万円を以て復旧したところを再び決壊するの悲惨事を見ているのであります。大分県は、六月二十六日午後三時、全県災害救助法適用、二十九日には緊急県議会を招集して、四億七千九百万円の緊急支出を決定いたしております。又救援活動につきましては、中津の保安隊が二百五十名、日田、玖珠の被害地に出動いたしております。主食については二千石を救援米として放出し、毛布については県が四千枚直ちに放出しておりますが、米軍からも二千枚の毛布、更に二十九日には莫大な携帯食を供与されております。地元の要望といたしましては、苗の補給営農資金開拓者並みの取扱とし、五カ年間を据置とされたいこと、離作農対策資金を拡大すること、砂防事業を強力に進めること、特に繋ぎ資金の融資について強い要望がありました。  次に熊本県について申上げます。六月二十六日朝来の豪雨は、熊本市以北に激しく、先ず県北部を貫流する菊池川水系の鹿本、菊池両郡に始まり、五名郡これに準じ、続いて県中央部を貫流する白川水系阿蘇方面に移り、転じて熊本市を中心とする地域に猛威を振つたのであります。その雨量はおおむね六百ミリ前後で、熊本測候所創設の明治二十二年以来最大の記録と称せられております。これがため、白川水系及び菊池川水系を初め、河川は忽ち怒濤の奔流するところとなり、熊本市を初め、小国町、内牧町、山鹿町より隈府町に至る沿岸町村並びに江田町より五名町に至る沿岸町村は、一瞬にして悲惨を極め、被害の甚大を現出したのであります。熊本市のごときは、京町方面の高台を除く殆んど全部が浸水し、市内白川橋梁十七カ所のうち、完全に残るものはただ一カ所に過ぎない状態で、路面水深が五尺より一丈に達した所もあると言われております。かくして県政史上未曾有災害と称せられる今回の大水害は、現在判明しておる部分だけでも、罹災者概数三十八万、人命を失う者五百を下らず、流失埋没冠水耕地面積は一万六千七百町歩と言われ、物的損害は七百億を突破し、更に今後の判明によつて増大の公算が大きいのであります。一応六月二十九日現在におきまする水害被害額は、土木関係六十五億、農林関係二百六十六億、商工関係五十一億、民生関係二百九十八億、教育その他の関係十九億、合計六百九十九億と推算されておりますが、これは阿蘇地区の大部分が不明でありますのと、熊本市の厖大な堆土排除費を含まないものであります。本県における水害の特質といたしましては、熊本市を中心とする通信交通は杜絶し、わずかに無電を以て被害の数字だけを中央連絡するという状態でありますから、県の中枢機能は全く麻痺状態に陥つたことと、阿蘇山塊火山灰土を主とする泥濘と濁水の奔流であつたこと、並びに熊本市の浸水によりまして中小商工業者のこうむつ被害の甚大であつたことであります。阿蘇山塊の山肌は豪雨に洗い落されまして、ために耕地流失して岩盤を露出した所もありますが、濁流に運び込まれた火山灰土の堆土は、熊本市だけでも約六百万トンに達すると推計されております。熊本市内の堆土を排除するだけでも非常な困難を極めるのでありますが、更にこれが粒子の微細な火山灰土でありますので、晴天の市街は微風を伴つて灰かぐらのように舞い上る状態でありますから、これを清掃するだけでもなお相当の月日を要するのであります。我々が現地視察をいたしましたところでも、坪井川流域の新土河一帯耕地は、河水の氾濫によりまして堆土に埋没され、水の引いた跡はすでに飛行場のように固くなつておりましたが、耕地失つた農民は、失業救済の意味においても是非自分たちの手で開拓させてくれるようにとの熱意を示しておりました。県当局は、新規開拓を中止しても、必ずこれに思い切つた予算を投入すると言明した次第であります。又、白川坪井川河口に挟まれた小島町を視察した場合のごときは、中間堤防決壊したために、この両河は河口において合流し、それに海水が逆流いたしまして、満々たる水をたたえ、小島一帯耕地は完全に海底に沈んだ形となつているのでありますから、これが復旧は真に困難な状態となつたのであります。各地の現地視察にも見られますごとく、水の引いたあとの水田は、流出堆土のために一帯に床が高くなつて、灌漑が不可能となり、冠水のため苗代は全滅の現状と相成つております。阿蘇地区を初め、交通不便なる山間僻地における連絡は未だ不十分で、不明の地区もありますが、これらは訴えるに人がなく、その惨状は想像に余りあるものがあります。住む家を失い、働く土地を失つた人々の上に、更に思いをいたすべきであろうと考えます。かような有様で、災害救助法適用は勿論、保安隊の出動を要請し、更に駐留米軍にも協力を依頼する等の手段に訴え、現在いずれも多方面に活溌な活動を見つつある状態であります。  現在の状態におきましては、専ら応急援助の面に全力を傾倒するだけでありますが、在庫政府米三カ月分を確認いたしました県当局は、主食の臨時配給、炊き出し、給水を初め、生活必需物資の配給に鋭意努力し、人心の不安を一掃すべく努めておりますが、交通の便は意のごとくならない状態であります。衛生対策といたしましては、汲取便所の氾濫と便壺の泥土による埋没、井戸水の汚染等により、伝染病の発生が憂慮されております。本県は二十七年度の赤痢指定県でありますが、すでに赤痢の発生が見られ、下痢患者の多いことが発見されております。目下衛生試験所、医科大学が被害を受けておりますので、赤痢菌の検出に困難を極めております。応急金融措置としては、鳥取大火災の例による手形決済の延期、罹災者への融資斡旋、枠の拡大が要望されております。応急復旧問題としては、災害救助補助金の早急なる交付、被害農作物に対する特別助成、生産者に対する米麦の還元配給、予防、防疫薬品の救援対策等が痛感され、災害復旧問題としては、河川の改修工事、阿蘇地方の砂防事業が早急に実施せらるべきものとの感を深くしました。なお保安隊及び警察官、消防団員等の活動につきましては、その努力によつて見るべき成果が挙げられており、今後も引続きこれらの努力に待たなければならない問題が残されております。特に大災害に際しては、保安隊の訓練と物資の確保は強く要請せらるべきものと思います。  第三班の佐賀、長崎班は、鉄道不通のため、第二班の人々と共にトラックに便乗し、災害直後の悪路を南下、先ず鳥栖町に着き、町長から町内の被害状況を聴取しました。駅長の好意により、不通となつた鉄道線路をモーター・カーで下り、同町及び佐賀県旭村の浸水地帯をお見舞しました。遥か久留米市を望む筑後川西岸一帯耕地は、堤防決壊のため一面の泥海となり、旭、基里等の村々の農家や部落が点々と水中に孤立し、舟で連絡しておる状態でありましたので、村の代表者とも会つて実情を聴取した次第であります。次いで水浸しの道路を県のバスで神崎郡に入り、神崎町、千歳村の災害状況を視察、地方事務所長等から郡下町村の被害状況を聞きました。ここでも城原川の氾濫と堤防決壊により、橋梁、家屋の流失おびただしく、耕地は見渡す限り水没し、食糧、家財、農具等も浸水し、苗代、蔬菜畑等も水中に没している状況でありました。  次いで佐賀市に入り、直ちに県庁を訪問、今次災害に対する御見舞をいたしますと共に、県下全般の被害状況を聴取いたしました。佐賀県では農林関係被害最も激甚で、県下五万町歩耕地はその四万町歩まで浸水し、県の調査によつて見ますると、土木関係二十五億、農林関係八十一億、民生関係四十億、その他二十億で、合計百六十六億の被害であります。県庁を辞して佐賀郡南部の穀倉地帯たる東川副村、中川副村の浸水状況を視察し、更に北上して県下最大の堤防決壊と言われる嘉瀬川の決壊口を見て参りました。このため反収十俵平均と言われる鍋島村一帯の美田は砂礫の海と化し、この浸水は七月三日もなお減水しない状況でありました。第二日は北上して東松浦郡に入り、唐津市周辺の被害状況を視察しました。小城、東松浦の両郡は炭鉱が多く、松浦川に沿つて、相知町、久里村、鬼塚村の各町村の被害状況を見ましたが、鉱山被害も甚だ大きく、中小炭鉱の中には廃坑の運命にあるものも多数ある現状であります。その半面、これらの炭鉱のボタ山が流出して耕地を埋めているのが相当広範囲に及んでおります。県北の被害の特質は山崩れや地すべりを伴つている点で、唐津市の上水道の決壊を初めとし、死者、行方不明者も多く、家屋の倒壊、鉄道、道路堤防、溜池等の惨憺たる被害が連続して見られました。唐津市では、崖崩れと水害のため、学校の被害、校庭の埋没、漁港の埋没等もあり、浸水も、農耕地のみならず、商店、一般住宅に及んでいる状態にありました。次いで伊万里に入り、西松浦郡下の被害状況を聴取すると共に、郡下各町村長から復旧に対する誠に哀切なる要請や陳情を聞いたのであります。  次いで調査班は長崎県に入つたのでありますが、県の被害は北部が特に著しいので、佐世保市に参り、ここで長崎県の災害に対する御見舞を申上げると共に、県下被害状況を聞いたのであります。長崎県では地すべりによる被害最も大きく、土木関係二十五億、農林関係二十五億、民生関係九億、その他六億、計六十七億に上つております。一行は船で北松浦郡今福町に参り、同郡及び同町の被害状況を聞きました。この地方も、地すべりによる死者、行方不明、家屋倒壊、埋没耕地流失が多く、水害の惨禍を一層大きくしているのであります。従つて一行は石倉山の地すべりの惨状を視察しましたが、この山一帯は大雨ごとに地すべりが起り、鉄道や道路を破壊しているのであります。今次の水害により地すべりは最も大きく、六月二十七日より始まり、山頂から三百町歩に亘る土地が海岸まで、押し出しているのでありまして、家屋は倒壊埋没し、耕地は堰かれて池となり、下流は何メートルもの厚い土砂に埋没しています。このような地すべりは至る所に起り、鉄道、道路、炭鉱に再び起つ能わざる致命的被害を与えているのであります。更に海路を利用して、北松浦地方の各町村の被害報告と、町村長の要望事項を承わつた次第であります。この地方も炭鉱の被害が大きく、志佐川の氾濫による炭鉱住宅の流失浸水等も見られたのであります。以上が長崎県下現地調査概要であります。  次に応急対策に対する所感を申述べますと、地すべり地帯については科学を動員し、予防対策について根本的な調査研究を行う必要があると思われます。又これらの緊急避難のための特別助成措置を講ずる必要があります。差当つて家屋の流失倒壊等により住宅を失つた者に対する住宅対策も又必要であります。後来、住宅金融が一般市民を対象としている傾きがあるが、これを農家住宅にまで拡大して考慮する必要があると思われるのであまりす。これらに必要な資金、生活、営農資金については、枠を拡げ、額を増し、長期資金とすべきは言うまでもないことであります。更に災害者のための失業対策事業を起し、生活安定の途を開くことも必要であるし、罹災地の物価漸騰に対処するため、生活必需物資を現物で現地に送ることも緊急に必要であると思われます。そのためにも、交通通信連絡の杜絶している地帯、離島等との交通通信機関の復旧全力が注がれねばならないし、又校舎の災害と同時に校地についても補助の途を考慮すべく、教科書、学用品の補給の方法も講ぜらるべきものと思われます。政府が対策本部を現地に設けたことは極めて適切な措置として、地方のことに対する期待は特に大きく、すでに発表された応急対策要綱は大体において罹災地の要望に応えているものと思われますが、更に以上の点を附加えておきたいと思います。  最後に、今次大災害の原因と今後の復旧対策について一言申述べたいと思います。  このたびの九州北部を襲つた豪雨が九百ミリにも達するという未曾有のものであつたことは申すまでもありません。併しながら現地実情を仔細に視察いたしますと、なお、いわば人工的災害によると見られる点が少くないのであります。その一つは、河川の管理について一元的な責任のある措置がとられていないという点であります。例えば筑後川について見まするに、河口より中流部までは建設省直轄河川に、中流部より上流は中小河川として、それぞれ福岡大分両県の管理に委ねられているのであります。両県の県境から僅か二、三百メートル上流大分県内に工事中の夜明ダムは、工事の途上にあつてこの大降雨に会いましたが、或いは洪水に対する適切なる措置が十分講ぜられていなかつたとも考えられるのでありますが、川は増大する水量と流下する幾万石に及ぶ流木その他によつて十七メートルの高さにまで堰き止められ、遂に両岸の幅七十メートルに亘つて決壊し、一挙に八尺の増水となつて、下流古川町、杷木町、原鶴町等を一瞬に呑む惨状を呈しているのであります。この筑後川の全河川について果して何ぴとが管理の責任を持つておるのでありましようか。言葉を換えて言えば、全き管理が行われておつたかどうか、甚だ疑問とせざるを得ないのであります。  第二は堤防の修築についてでありますが、例えば筑後川について、直轄工事の部分は対岸の県工事堤防より一メートル高く、或いは大分川の下流左岸の直轄工事は右岸よりも三メートルも高く改修されているため、いずれも低い堤防決壊し、惨害を与えているのであります。又多くの堤防決壊は、地元民の言によれば、堤外よりもむしろ堤内からの漏水によつてその最高増水時よりも以前に決壊を見ているというのであります。これらのことは堤防修築について再検討を要すると考えるものであります。  第三点といたしまして、災害復旧の査定と技術者の欠如についてであります。その査定は机上査定によるものが大部分を占めているのでありますが、その原因は、現在の災害復旧費の予算上の制度の欠陥と、更には技術者の欠如によるものでありまして、その結果は、完全なる設計施工が行われていないということであります。この大災害を契機といたしまして、恒久対策につきましては、根本的に治山治水の考え方を改める必要があることを痛感するものであります。  以上、今回の九州地方における大水害実情について申上げましたが、これが復旧につきましては、累年の災害による財政窮乏の上に、更に今次の未曾有とも言うべき大水害実情に鑑みまして、誠に容易ならざるものがあると痛感いたされます。殊に、零細農民、中小商工業者等の住宅、生業資金等の回復、並びに校舎の建築等は、法令的にも救済の途が殆んどないようであります。幸いに罹災者諸君の復興意欲は旺盛でありますので、国会、政府、地元当局一体となつて、能う限りの努力をいたしまするならば、復興は必ずしも至難ではないと考えられまするが、当面の生活及び台風期を控えての関係当局の措置に若し欠くるところありとするならば、民生の不安を招来し、容易ならざる事態を惹起することも図り知れざるものがありまするので、本院といたしましては、是非この際、特別委員会の設置等を我々調査団は要望したい考えでおりましたが、幸いにしてすでに早く特別委員会も設置せられておりまするので、本院は政府を鞭撻して、これら関係方面よりの要望に対し、適切且つ緊急なる施策に最善の考慮を払いまして、一日も早く災害を復興いたさねばならんと信ずる次第であります。  以上を以ちまして御報告といたします。(拍手)      ——————————
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 戸塚建設大臣から、北九州における豪雨被害状況について発言を求められました。この際、発言を許します。戸塚建設大臣。    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  24. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) このたびの西日本一帯災害は誠に遺憾な出来事でございましたが、私はその状況を視察するために、六月二十七日午後の日航機で東京を出発いたしまして、七月一日夜帰京いたしましたので、一応の御報告を申上げたいと存じます。  この間に、最も被害の甚大である福岡県のほか、佐賀、熊本両県の生々しい被害状況を視察いたしまして、親しく罹災者に接して慰問と激励の言葉を贈り、なお現地当局を督励して、それぞれ必要な緊急の措置を講じたのであります。今回の災害は、主として福岡熊本、佐賀、大分、長崎、山口の六県に亘りまして甚大な損害をもたらしておりまするが、その原因は、従来の記録を遥かに突破した異常な降雨量によるものが最も大きなものと考えます。その降雨は、二十五日朝以来二十九日に至る五日間、梅雨前線が筑後川筋に停滞をいたしまして、連続の降雨となつたのであります。山間の水源地域における総量は、ほぼ一千ミリに達したと言われております。平地におきましても、福岡あたりで六百ミリに達し、いずれも未だ曾てない新記録であります。このために各河川は増水、溢水し、堤防は破壊されました。特に、九州第一の川である筑後川は、全面的に堤防を溢流いたしまして、堤防の破壊個所四十一カ所、文字通り濁水は滔々として筑後平野に浸入して、五万町歩に及ぶ沿川一帯が一望の泥海に化した状態であります。又、遠賀川は、直方の下流に植木町というのがありまして、これより一キロばかり下で左岸が破堤いたしまして、植木町を孤島化し、なお鹿児島本線、国道三号線等の重要幹線道路を破壊いたしました。そのほか、福岡県の矢部川、熊本県の菊池川、白川、緑川、大分県の大分川、大野川、又佐賀県の嘉瀬川等の河川及びその支川もほぼ同様な惨状を呈しました。このために、道路、鉄道の交通機関は杜絶し、家屋は流れ、或いは屋根まで浸水し、又耕地は土砂で埋没し、耕作物は流亡し、炭鉱は浸水によつて作業停止のやむなきに至つた所も生じたのであります。これらの総被害は、目下調査中でありまするが、その総額は一千数百億に及ぶものと考えられます。又人的被害も莫大なものでありまして、三十日現在、死亡、行方不明、負傷を合して二千名を超えております。なお、家屋の損害は三十一万戸と称され、又罹災者は百五十万人を超えると称されております。耕地の損害も十五万町歩乃至二十万町歩になんなんといたしておるのであります。特に筑後川下流部平野の広汎な区域に亘りまして筑後川本川水位が低下しないために、今なお湛水して、その減水は極めて遅々たる状態であります。又、特に惨状の甚だしいのは、熊本市内子飼橋左岸地帯で、二十六日夕方、一瞬にして百数十世帯を流失し、数十名の死者を出したことでありました。炭鉱の被害も、福岡県において百八坑、佐賀県において二十坑、計百二十入坑に及ぶと報告されておりまして、その被害額は二十六億と言われております。鉄道の被害につきましては、河川の氾濫と同時に、鹿児島本線、長崎本線、日豊線を初めとして、殆んど全線が不通となりました。現在なお十数本、私の帰りまする現在十数本の不通線がありました。特に関門隧道は浸水のために本土と九州連絡が断たれて、わずかに海上連絡を図つておる実情であります。目下のところ、あちらで聞いて参りましたところでは、九州地域内の鉄道は、おおむね本月五日頃全通の見込みであります。なお、関門隧道の開通は二十日頃となるものと予想されておりますが、交通通信諸施設の復旧は今次災害施策中喫緊事と考えておる次第であります。  この災害に対しまして、各県とも災害対策本部を設置し、只今までのところ……只今と申しますのは、私の帰る当時でありまするが、人命の救助及び罹災者に対する食糧、衣料の配給、防疫等に全力を注いでおつたのでありますが、それに必要な運搬用の舟艇が最も要望されておりまして、これがために米軍の援助を求めたり或いは保安隊の出動を要請して、救助救済活動が続けられておりました。又重要交通路を確保するために、流失した橋梁に対して仮橋の架設或いは迂回路を設くる等、緊急の措置を講じているのでありまするが、一例として、久留米よりの病院の患者を輸送するのに米軍が舟艇を以て協力してくれたこと、又、佐賀県の神埼町の国道にかかつております城原という川の橋が落ちたのを、仮橋架設について保安隊が幸いに持ち合せた資材を以て短時間にこれを完成したなどは、特筆する活躍の一つでありました。  政府におきましては、今回の災害の甚大なのに鑑み、災害発生と同時に、つまり私並びに篠田農林政務次官以下関係官が現地に赴きまして、各関係機関を督励して、罹災者の救助、水害防除及び応急復旧に当ると共に、現地並びに内閣に西日本災害対策本部を設けまして、災害の対策に万全を期しておる次第であります。洪水もその後漸く減水しつつありまして、いよいよ本格的復旧工事も可能となつてつたので、政府におきましては、取りあえず筑後川外直轄河川の応急復旧費として、昭和二十八年度災害予備費より六億円の支出を決定いたしますと共に、地方公共団体の公共施設応急復旧資金に充当するために、取りあえず資金運用部資金より、福岡、佐賀、長崎、熊本大分、山口の各県に対して合計十億円を融通することにいたしたのであります。又、今回の水害によつて流失倒壊した戸数は四千五百戸に達しておりまするが、これらに対しましては取りあえず災害救助法を発動して、応急バラツクを建設して罹災者を収容いたしますると共に、今後は、公営住宅の建設、住宅金融公庫の特別融資等により遺憾なきを期したいと存じております。なお、以上のほか被災地の国税の減免、稲苗補給等の応急措置を講じておるわけでありまするが、更に根本的に、将来再びかかる災害の発生するがごときことのないように、従来の治山治水の計画に再検討を加えて、治水の万全を期したいと考えておる次第であります。  このほか、先ほどもお話がありましたが、門司の山津波が門司における最も大きな特異な状態であります。小倉は、やはり二十八日の水害も大きかつたようであります。なお長崎は、先ほどもお話がありましたような地すべりを特異の形で現わしております。山口県は、小野田、宇部を中心にした被害が大きかつたように承知いたしております。私は、まだ交通も困難でありまして、僅かに佐賀県に一日、又、熊本へは軍の飛行機で往復をしてもらいまして、辛うじて行つて参つたような次第であります。又、遠賀川筋も遠賀川の鉄橋まで辛うじて辿り着くことができたような状態であります。これが帰る日の七月一日の午後のことでありました。  ただ、この中でなお申上げておきたいことは、治安状況につきましては、最も災害の混雑がひどかつたと思われる熊木県におきましても、熊木県知事の話では割合平静であるということを聞いて参りました。又、伝染病のことにつきましては、各県の関係官に特に注意をいたしたのでありまするが、すでに災害前に福岡県では二千名の赤痢患者があつたようなことであります。そういうわけで、今後伝染病の対策には特に心配をいたさなければならんと思いまするが、幸い薬品その他の手当は非常に早く各県ともいたしておつたようであります。このほか、まだ交通、通信が不能な場所が極めて多いのでありまして、只今も申上げましたように容易に連絡もできないような状態でありましたので、その後の災害のまだ順次判明するものもたくさんあると思うのでありまするが、これはいずれ順次報告を待ちまして又他の機会に御報告をいたしたいと思います。(拍手)      ——————————
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、議事の都合により、日程第一を次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。人事委員長村尾重雄君。    〔村尾重雄君登壇拍手
  28. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 只今議題となりました日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律の一部を改正する法律案につきまして、人事委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  連合国軍労務者で、平和条約発効後引続き駐留軍労務者として勤務している者に対しましては、その身分切替えの際、連合国軍労務者としての在職期間に対する退職手当を精算すべきでありましたが、当時は一般会計にも資金の余裕なく、又特別調達資金もアメリカ側のドル償還停滞によつて現金支払の操作ができないとの理由で、退職手当精算証明書の交付という便宜措置に代えられたのであります。その後、物価の値上り等により、貨幣価値は下落の一途を辿り、速やかに現金化の必要を認めざるを得ず、同時に、ドル償還も円滑になり、退職手当等支払の資金の見通しも付きましたので、速やかに現金化の措置を講ずべく、又それが全国十九万駐留軍労務者の切実なる要望でもあるので、本法律案を提出するに至つたのであります。  本案は、衆議院の各派共同提出によるもので、人事委員会におきましては、去る七月一日提案理由説明を求め、千葉委員より、本件に関しては前国会においても審議を重ねて、事理明白であり、且つ支払資金の見通しも立つておるところであるから、別に質疑もなければ直ちに討論採決に入られたいとの発言があり、質疑もなく、討論採決の結果、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第三、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律の一部を改正する法律案  日程第四、保険業法等の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長大矢半次郎君。    〔大矢半次郎君登壇拍手
  33. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 只今議題となりました二法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  先ず、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。  神社、寺院及び教会に対し、国有財産法によつて無償で貸し付けてあつた国有財産、又は国有林野法によつて保管させてあつた国有財産のうち、宗教活動を行うに必要なものは、昭和二十二年以来、それぞれ主務大臣がこれを譲与し、又は時価の半額で随意契約によつて売り払つてつたのでありますが、この譲与、売払をいたします場合、又はその処分に対する訴願の裁定をいたします場合は、社寺境内地処分審査会又は社寺保管林処分審査会に諮問することになつておるのであります。而して、これら審査会に諮問すべき事件は、おおむねその答申も済みまして、現在は大蔵省関係の極めて軽微な訴願が二件を残すのみでありますのと、大蔵省設置法及び農林省設置法では、これらの審査会はすでに廃止せられて、現存しないこととなつておりますので、この際、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律中、社寺境内地処分審査会等に関する規定を削除しようというのであります。  本案審議に当りまして、富士六合目以上の譲与土地の訴願に関し、その経緯について質疑がありましたのに対し、政府より、富士山が文化、観光、学術研究等の関係から非常に特殊性を持つているので、これらの関係国民感情等も考慮して慎重に決定したいとの答弁があり、又、大蔵省関係訴願二件の取扱方法について質疑がありましたのに対し、審査会がすでに消滅した以上、大蔵大臣が審査会に諮問することはあり得ないが、慎重に公正に決定したいとの答弁がありました。その詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に、保険業法等の一部を改正する法律案について申上げます。  本案の要点を申上げますと、第一点は、航空保険事業は国際性が強く、且つ引受物件の価額が巨額に上ることが多いので、料金協定、再保険プール協定等の共同行為が必要とされますので、今回、私的独占禁止法等の適用を除外いたそうとするものであります。第二点は、保険会社はその決算の完了に特に日数を要する事情にありますので、定時総会の場合に限り、その株主名簿を閉鎖することができる期間を商法の規定にもかかわらず九十日間としようとするものであります。第三点は、保険会社の責任準備金の計算に関し必要な事項を命令で定めることとすると共に、外国損害保険事業者の未経過保険料準備金を責任準備金に改めることとするほか、若干の規定を整備しようとするものであります。  本案審議における質疑の主なるものを申上げますれば、航空保険事業の現状についての質疑に対しましては、昭和二十五年十月、民間航空の再開により航空保険事業が復活したのであるが、現在十三社が航空保険事業を営んでいる。その内容は、航空機の保険、航空運送保険、航空責任保険の三種類であるが、昭和二十七年度末における新契約は、元受百三十六億円、再保険九十三億円、収入保険料元受六千九百万円、再保険三千八百万円であり、支払保険料は、元受六百万円、再保険十万円となつているとの答弁がありました。又航空保険事業に対する独占禁止法適用除外の理由についての質疑に対しては、航空保険は一件当りの引受物件の価額が巨額に上るので、航空保険会社が共同引受を行い、保険料率の協定、再保険プール協定等の共同行為を行い得るよ与する必要がある。而して、保険料率はロンドン・マーケットのレートが基準となつて定められる。即ちレートの国際性によつておのずから定まるのであつて、高い保険料を押付けて被保険者をそこなうことにはならないとの答弁がありました。その他の詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  34. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第五、人権擁護委員法の一部を改正する法律案、  日程第六、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。法務委員長郡祐一君。    〔郡祐一君登壇拍手
  38. 郡祐一

    ○郡祐一君 只今上程されました二法律案につき、委員会における審議の経過及び結果を御報告いたします。  先ず人権擁護委員法の一部を改正する法律案につき申上げます。人権擁護委員法は、国民の基本的人権を擁護するために、全国の市町村に人権擁護委員を置き、人権侵犯の監視とその救済及び人権思想の普及高揚に当らしめるための法律であります。而して法律施行以来の実績に照らしまして、法律の運用を一層円滑にするために若干の改正を行おうとするのでありまして、改正の第一点は、人権擁護委員の推薦手続が、現行法では、市長村長がその市町村に割当てられた定員の倍数の候補者を推薦し、その中から法務大臣が委嘱するという建前になつておるのでありますが、推薦された者の半数が常に落されるということは運用上支障が多いので、市町村長は単に定員数だけの候補者を推薦すればよいということに改めたのであります。第二点は、現行法では、法務大臣が人権擁護委員を委嘱しましたときには、その氏名と職務を関係住民に周知せしめるよう適当な措置をとらなければならないことにかつておりますが、このような措置につきましては市町村長の協力を必要とする場合が多いので、市町村長にこの協力の義務を負わせることにいたしたのであります。第三点は、人権擁護委員の任期でありますが、現行法の二年を三年に改めることにいたしたのであります。これは折角仕事に習熟した頃には任期が到来して、十分な活動を期待できない実情にありますので、これを是正するための措置であります。第四点は、全国人権擁護委員連合会の規定を新たに設けたことであります。現行法では区域単位の協議会及び都道府県単位の連合会が認められているだけでありますが、人権擁護活動の普及に伴いまして、人権擁護委員の自主的な全国的の統一活動が必要となりますので、その母体ともなるべき団体を認めることといたしたわけであります。  委員会の審議に当りましては、亀田委員から人権擁護委員の推薦方法の改正について、赤松委員より任期の延長について、中山、青木両委員から人権擁護に関連して戦犯釈放についての政府措置について、それぞれ適切なる質疑が行われましたが、その詳細については速記録によつて御了承を願うことといたします。  討論に入りまして、亀田委員から、この改正によつて新らしい制度により人権擁護委員を委嘱するに当つては、政府は優秀な人物を委嘱すべく努力するよう希望して、本案賛成する旨の意見が述べられ、又赤松委員より、本法によつて組織される全国人権擁護委員連合会が政府の統制団体化せぬよう特に留意することを政府に対し希望して賛成する旨の意見が述べられたのであります。採決の結果は、全会一致を以て本改正法案を可決すべきものと決定した次第であります。  次に判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案につき申上げます。  この法律は、判事補の職権の特例と裁判官の任命資格の特例とを定めたものでありますが、今回の改正案の主な点は次の通りであります。第一に、旧裁判所構成法による判事又は検事たる資格を有する者が、旧陸海軍の法務官や公正取引委員会事務局の審判官等の職にあつたときは、その在職年数を裁判所法に定める裁判官の任命資格に関する職歴年数に通算すること、第二に、介護士試補として一年六カ月以上の実務修習を終え、考試を経た者について、その考試を経たときに、旧裁判所法による判事又は検事たる資格を得たものとみなして、その時以後の満洲国の審判官等の在職年数を通算すること、第三に、弁護士たる資格を有する者が満洲国の律師の職にあつたときは、朝鮮、台湾等の外地弁護士と同様、その在職年数を通算することがそれぞれできるように改正せんとするものであります。  委員会におきましては、慎重に審議いたしまして、一松、中山、赤松の各委員より、裁判官の養成、研修制度のあり方、思想問題、給与、本法の適用を受ける者の範囲等に関し適切な質疑がなされましたが、その詳細については速記録によつて御了承願うことといたします。討論においては、別に発言がありませんでしたので、直ちに採決に入りましたところ、全会一致可決すべきものと決定いたしました。  右御報告申上げます。
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  40. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  41. 河井彌八

    議長河井彌八君) 法務大臣から過日の木村禧八郎君の質疑に対する答弁のため発言を求められました。この際、発言を許します。犬養法務大臣。    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  42. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 去る六月三十日に本院の本会議におきまして、木村禧八郎議員より各省の機密保持の申合せについて御質疑がございました。あいにく私はほかの委員会に出ておりまして、答弁の機会を失い、誠に失礼をいたしました。この際、議長発言の許可を求めた次第でございます。  木村議員の御質問の御趣旨は、MSA援助を受ける結果、機密保持に関する問題が起つて、すでに政府は機密保持に関する内規を省令で出している。従つてこれが実現すれば、軍機保護法のようなものができて、更に進んでは、ニユース統制、言論統制というようなことをやるのではないかという御心配でございました。お尋ねのように、先般、各省の定例次官会議、これは毎週行なつている会議でありまして、特に開いたわけではありませんが、その会議におきまして、各省の機密保持に関して打合せをいたしたことは事実のようでございます。併し、これはお尋ねのようにMSAとは全く関係がないのでございまして、MSAの問題が起ります以前に起つた問題でございまして、例えば私自身も、昨秋就任いたしましてから間もなく、どうも以前に私が役人になりましたときよりも、機密書類に関する扱い方が、法務省なんかで考えましても少し鷹揚になつているように思いまして、早速、関係下僚に注意を促したことがあるような次第でございます。それはどういうことをそれでは取りきめたかということを率直に申上げる次第でございますが、今のような事情でございますので、機密書類の取扱等について各省で内規的に基準を厳格にきめようではないかということでございまして、例えば、平たく申上げますならば、書類の機密性の段階に応じまして、例えば箱の中にしまう、そのしまい方の方法等、その他そういう関係の取扱方法を指示することにきめたわけでございます。この申合せに従いまして、すでに内規的に訓令を出した役所もありますし、又出してない役所もありまして、法務省ではまだ出していないような次第でございます。併し近いうちに出したいと考えております。  かような次第でございますから、これが一契機となりまして、軍機保護法のような過去のああいう法律ができるということや、ニユース統制或いは言論統制を行うというようなことは全然考えてもおりませんし、それば甚だ当を得てないことだと私は確信いたしております。どうぞ御了承を願いたいと思います。(拍手)      ─────・─────
  43. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第七、以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業許可等についての漁業法の臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。水産委員長森崎隆君。    〔森崎隆君登壇拍手
  44. 森崎隆

    ○森崎隆君 只今議題となりました以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業許可等についての漁業法の臨時特例に関する法律案について、水産委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。  先ず提案理由について御説明申上げます。講和後拡大されました漁場に即応して、以西機船底網漁業並びに遠洋かつおまぐろ漁業につきましては、資源の保護と国際的な関連とを十分に考慮いたしまして、資源の開発に努めると共に、沿岸漁業と漁場関係を調整し、遠洋漁船としての装備の改善、近代化、適正船型への大型化を図り、以て漁業の合理化、経営の安定を促進することが、これらの漁業の健全な発展を期するためには肝要であると存じます。このため、先ずマツカーサー・ラインの設定に伴い行われました昭和二十五年の減船整理の際、東経百三十度以西、同じく百二十七度三十分以東の漁区のみに操業を制限されだ総トン数五十トン未満の中型底曳網漁船、並びにマツカーサー・ラインによる漁場制限のため多数集中して操業しておりますところの総トン数七十トン以上百トン未満の中型かつお・まぐろ漁船の中で、希望する者に対しまして、拡大された漁場に適合した船型への移行を認め、その装備の改善と近代化を図ることが妥当な措置であると認めまして、この際、底曳網漁船が五十トン以上となり、又かつお・まぐろ漁船が百トン以上となりますためには、指定遠洋漁業としての以西底曳網漁業、又は遠洋かつおまぐろ漁業の新規の許可を必要といたしまするので、漁業法第五十八条に規定する抽籤の制度によらなければならないわけでありまするが、これらの漁船については、いずれも優先して新規許可をすることが妥当と考えられますので、臨時に二年間を限り、抽籤の制度によらずして許可ができるように法的措置を講じたいというのであります。  次に、法律案の内容について申上げますと、第一は、以西機船底網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業についての漁業法第五十二条第一項の指定遠洋漁業の許可及び同法第五十四条の起業の認可には、漁業法第五十八条の新規許可の規定はこれを適用しないことにいたしたのであります。  第二に、前記の許可又は起業の認可は、漁業法第五十五条第一項、又は同法第五十九条の規定により許可又は起業の認可をしなければならない場合を除くのほか、左に掲げる場合に限つてなし得るようにいたしたのであります。(一)、中型機船底曳網漁業取締規則第一条の二、又は第三条第一項の規定により、東経百二十八度三十分以西、北緯二十五度以北の海面を操業の区域の全部又は一部とする漁業の許可又は起業の認可を昭和二十七年十二月一日において受けていた者の中で、その許可又は起業の認可を受けた船舶によるその漁業を廃止し、その船舶に代る船舶について以西機船底網漁業を営もうとする者から、当該漁業の許可又は起業の認可申請があつたとき、(二)、中型かつお・まぐろ漁業取締規則第二条又は第四条第一項の規定により、総トン数七十トソ以上の船舶についての漁業の許可又は起業の認可を昭和二十七年十二月一日において受けていた者で、その許可又は起業の認可を受けた船舶による漁業を廃止し、その船舶に代る船舶について、遠洋かつおまぐろ漁業を営もうとする者から、当該漁業の許可又は起業の認可申請があつたときという、この二つの場合に、この特例で許されるのであります。第三は、以上に関連いたしました手続その他を規定いたしておるのであります。第四は、この法律は公布の日から起算して二年を経過したときに効力を失うことといたしております。以上が本法案の内容の主な点でございます。  次に審議の経過について申上げます。詳細は速記録によつて御覧を願うことにいたしまして、質疑のうち主なもの二、三点について申上げたいと思います。第一は秋山委員より、「この特例法により指定遠洋漁業として許可する政府の方針、即ち以西底曳網漁業として許可するものは、従来中間漁区において操業していた中型機船底曳網漁船の増トンした分に限るか、或いはそれ以上無制限に許可するか。又、かつお、まぐろ漁船も、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋への原則に基いて無制限に許可するのであるか」という質問がありました。これに対して政府当局より、「以西底曳網漁業については、従前中間漁区で操業していたものの増トンしたものを以西へ戻す意味での許可はする方針であるが、更にこれ以上のものに対しては、すでに資源が満限に達している状態であるとの観点に立ちまして許可は考えていない。又、かつお、まぐろ漁船については、遠洋全体としての健全な発達を見ているから更に拡大強化することを考えている。具体的には何隻まで増加するかという案は持つていないけれども、国内と海外の需要を勘案いたしまして、将来の発展を考える」という答弁がございました。第二に、秋山委員から、「この法律に関連して、小型の底曳網漁業については整理案があり、目下実施中であるが、中型底曳網漁船は二千七百余隻もありまして、沿岸漁業と摩擦を起しているが、これが整理方針はどうか」との質問がありました。これに対しまして政府当局は、「中型底曳網漁船については政府は整理の必要を認め、他種漁業への転換と減船整理とを併せ行うこととし、二十八年度において五十三隻他種漁業へ転換するための予算を計上してあります。なお二十九年度においても整理に要する予算を要求するつもりであるが、残存適正数を何隻にするかはまだ決定していないが、各方面から研究して総合的に整理転換策を樹立したい考えである」との答弁がありました。  これに対し、更に秋山委員から政府に対し、速やかに中型機船底曳網漁船の残存適正数と整理方針を樹立すべきであるとの強い申入れがありました。次に松浦委員からは、「この法律措置によつて漁船が大型化することにより、漁船乗組職員の数の増加と資質の向上を必要とするが、従来からの甚だしいこの種職員の不足をどうするか、又技術の向上についてどう考えているか」という質問がありました。これに対しまして政府から、「従来も民間団体に委託いたしまして漁船職員の養成に努めて来たが、更に昨年度から予算を増額いたしまして、国、地方庁及び民間団体委託等で、漁船職員の技術の改善と数の増加に努めている」という答弁がありました。  かくて質疑を打切りまして討論に入りましたところ、秋山、松浦両委員から、次のような附帯決議案が提出されまして、この提案に対し賛成がありました。即ち附帯決議案は次の通りであります。    以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業許可等についての漁業法の臨時特例に関する法律案に対する附帯決議  一、政府は本法施行に伴う以西機船底びき網漁業ならびに遠洋かつおまぐろ漁業に対する代船建造、増トン及び改造に要する資金の金融政策についての万全の措置を講ずべきである。  二、なおこれら漁船に乗組む職員の教育養成が不充分なる実情に鑑み、政府は早急に漁船船員の教育養成機関の整備拡充のために充分なる予算措置を講じ、最善の対策を樹立すべきである。  以上でございます。  而して討論を打切り採決をいたしましたところ、この法律案は原案通り可決すべきものと全会一致で決定をいたしました。次に附帯決議案について採決いたしましたところ、これ又全会一致で可決をいたした次第であります。  以上御報告を申上げます。(拍手
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  46. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。  次会の議事日程は決定次第、公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時八分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、フランス共和国戦犯特赦に対する感謝決議案  一、フイリピン共和国戦犯特赦に対する感謝決議案  一、九州地方水害状況調査のための派遣議員団報告  一、北九州における豪雨被害状況に関する戸塚建設大臣の報告  一、日程第二 日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する法律案  一、日程第三 社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第四 保険業法等の一部を改正する法律案  一、日程第五 人権擁護委員法の一部を改正する法律案  一、日程第六 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第七 以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業許可等についての漁業法の臨時特例に関する法律案