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衆議院議員(井堀繁雄君)
只今議題になりました
地方公営企業労働関係法の一部を
改正する
法律案について、その提案の
理由を御
説明申上げたいと思います。
この
法案は、
只今同僚の多賀谷議員から御
説明がありました
公共企業体等労働関係法の一部
改正と、その
趣旨におきましてほぼ同じういたしますので、重複を避けまして、主たる点について若干
説明を加えたいと思うのであります。
御承知の
通り、
地方公営企業労働関係法は前十三
国会におきまして成立いたしましたものでありますが、折角成立いたしました本
法律は、その
目的である
労働関係の安定と地方住民の
公共福祉擁護という重大使命を果すためには幾多の欠陥がございます。この不足を補いまして、地方公営
企業をして真の民主的な使命を達成することができまするように改めたいというのが、本案を提出いたしました根本の
理由であります。
労働関係法に関する原則といたしましては、公営事業であろうと、又民間事業であろうと、あらゆる
産業企業に従事いたしまする
職員、
労働者が、その
産業、
企業を通じまして、国力の充実と
国民の生活安定向上に貢献し得るようにすることが、
労働関係法の大原則でなければならんと思うのであります。言い換えますと、
産業の平和を確立し、労働の生産性を高め、能率を増進するというところに、
法律の
精神が置かれなければならないのであります。然るところ、
現行法によりますると、
公共の
福祉に名を借りまして、
労働者の当然の
権利を剥奪いたしたり、極度にその
権利を制限をいたしておるのであります。このために、
産業、
企業の推進力となるべき
労働者を差別待遇をいたしましたり、又これを萎縮せしめる結果とな
つておるのであります。現在の
公共企業、公営
企業の
労働関係は、御案内のように、
団体交渉権があり、調停、仲裁及び苦情処理の途は開けておりますけれども、
争議権を奪
つておりまするから、常に
労働者は
企業管理者の一方的な屈従を強いられておるのであります。
争議権のない
団体交渉というものは、全く形式だけのものでありまして、
産業平和や労働
組合の健全な発達を阻害いたしましても、これを助けるものとは断じてならないのであります。(
拍手)真の
産業の平和というものは、経営と労働の力の均衡の上に築かれるものでなければならんのであります。獅子と兎が平和
協定をよしんば結んだといたしましても、獅子の一方的な意欲の下には全く蹂躪されてしまうことと同じ意味におきまして、労働
争議権を与えない
労使間の交渉というものは、獅子と兎の
協定を求めるものと全く同様であります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)何かこの
法案の
精神の中には、思想の中には、
争議権を与えると直ちにその
争議権を濫用して
産業の平和が直ちに破壊するかのごとき錯覚に陥
つておる思想があると思うのであります。(
拍手)たとえて申上げまするならば、警官にピストルを持たしておるのでありますが、これをむやみと発砲して人命を傷つけるというようなことは何人も考えぬはずであります。これによ
つてみずからを守り、犯罪を防止し、
治安を維持しようという
目的であることは疑いを容れぬのであります。
争議権も又これと同じでありまして、
企業管理者が不当な圧迫を加えようとするのを抑制し、みずからの生活を擁護し、
企業の
公共性を推進して、進んでは
国民の
福祉に
寄与するために、どうしても警官がピストルを持つと同様の意味において
労働者は、罷業権、
争議権を持たなければ、その実質を発揮することが不可能であります。(「その
通りだ」と呼ぶ者あり)
次に、
企業の
公共性の推進と労働組織の自主性についてでありますが、
現行法はこれを全然没却いたしております。
公共性の擁護に名は求めておりますけれども、地方公営
企業の労働
組合の現状につきまして多くを述べる必要はないと思いまするが、今日強く叫ばれておりまする
日本産業の復興の最も重要な事柄の
一つは、
企業を近代化すことでなけらねばならんのであります。
企業を近代化するためには、どうしても、その主体となるべき
労働者の生産意欲、創意工夫を如何にして発揮せしめるかということなくして、このことを求めることは、絶対に不可能であると確信するのであります。その
労働者の創意工夫、生産意欲を高揚しようとすれば、今日のあらゆる社会機構なり
経済の組織の上から判断いたしまするならば、個々の
労働者に求めることは不可能であります。どうしても
労働者の組織に頼らなければならないのであります。そこで労働
組合の健全なる成長が当然大きな問題となることは申すまでもありません。ところが、
本法の
精神を貫いておりまするもののうちに、労働
組合というものは、何か賃金闘争や
労働者の一方的な利益のみを、闘争の形によ
つてその機能を発揮するもののごとく誤認いたしておりまするが、これは甚だしい誤謬であります。労働
組合本来の機能というものは、一方におきましては、
自衛のための闘争の機能を発揮しておりまするが、他方におきましては、社会
福祉のために奉仕する
公共性の上に労働
組合というものは成立し、労働
組合は又、健全な、建設的な、又世論に対しまして絶えず正しい批判を求め得る状態というものを作りつつ、その力が増大され、その実力が認められて来るということは、過去の労働
組合の実情を理解することのできる者でありまするならば、否認できない事柄であります。(
拍手)このように、労働
組合の
公共性というものを深く理解することができまするならば、この
法律は私は誕生しなかつたものと思うのであります。このように、この
法律の誕生それ自身に大きな矛盾があり、不合理があり、認識不足の上に立つものでありまするから、当然この
法律は今日廃止さるべき運命にあると私どもは考えておるのであります。(
拍手)
殊に、先ほど多賀谷君もお触れになりましたが、この
法律の歴史を御覧頂けばすぐ理解できることであります。即ち、占領下にありまして、
日本の労働
行政に対する占領軍の
一つの方針として、いろいろな施策が与えられております。この
法律立案に当りまして、
政府当局者が
説明の主たる
理由にいたしておりまするものは、
公務員に対する
立法化、更にこれを引張
つて参りまして、
公共企業体、更に地方の公営事業に従事する
労働者にその労働
規制を行おうとする
趣旨は一貫しておるのでありますが、そのよ
つて基きますものは、マツカーサー書簡であります。マツカーサー書簡はかなり多岐に亘るものでありまするが、この
法律に
関係する部分だけを取上げて見ましても、マツカーサーの書簡に現われておりまする
趣旨は、
公共企業体の下にある
労働者或いは
職員に対しまする特殊の任務を要求しておりますることは我々も理解できるのであります。併し、その特殊の任務を一方に要求いたします代りに、その雇用者であり、その
使用者の立場に立つ
政府には、その
職員、
労働者に対しまして、
労働条件の保障、
福祉の増進のために、又その制限をいたしまするあらゆる
条件に遥かに優る強い責任を一方に要請しておりますることを、我々は是非理解しなければならんのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)このマツカーサー書簡の一部のみを
運用いたしまして、それと当然並行して
義務を負わなければならん事柄につきましては、吉田
政府は誠に冷淡であるというよりは、これを隠蔽いたしておるところに、この
法律の欠陥が現われておるのであります。(
拍手)
私どもは以上のような
理由からいたしまして、こういう
法律は速かに
改正されなければならないと思うのでありまするが、今までは占領下にありまして、いろいろな問題が整理の過程にあつたと思いまするが、独立後相当の期間を経ました今日、この
法律が、
日本の
産業構造と見合う極めて正常な
労使関係を求めるという
法律に改められなければならんのであります。そこで我々の考えといたしましては、この
法律の
改正につきましては、具体的には、先ほども述べられました
公共企業関係労働法規と全く
趣旨を同じういたしまするから、多くを述べません。
ただ、この機会に私どもの以上述べました
見解から、どうしても労働法というものを正常なものに置き換えなければならん。
労使関係を調整する
法律といたしましては、今日余りにも多くの
法律が存在いたしておるのであります。
公務員のために設けられました
法律は、すでに四つにもな
つておる。更に又いろいろな法規が企画され、今日も同時提案の形で、
炭鉱、電産に対する特別の法規を用意されるといつたようにな
つておりますが少くとも労働法規というものは、最近のいろいろな社会情勢から判断し、世界の傾向から見ましても、統一の方向をと
つておるのであります。労働法が統一されるということは、申すまでもなくその機能が正しく発揮されることになり、殊に労働
規制の
対象になる多数の
労働者の
権利を正しく守り、又その
義務を強く要求しようといたしまするならば、民主主義の原則でありまする、万人の人格が尊重され、万人の納得の上にこれが行われなければならんのでありまするから、多くの
労働者が直ちに理解しやすいように、その
権利と
義務とが直ちに呑み込めるような
法律にするためには、統一しなければならんことは申すまでもありません。これをばらばらの状態に置くということは、一方におきましては、これを行使する
使用者側、支配者側の立場に立つ者が巧妙にこれを悪用するということは当然のことであります。(「簡単に願います」と呼ぶ者あり)こういう
関係を我々が考慮いたしまする場合に、(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)この
法律は是非改めなければならない大きな
理由を持つものと思うのであります。
いろいろ述べましたように、私どもは、是非この機会に、地方の
公共企業は民間の
企業の模範となるべきものでありまして、この
労使関係が現状のように、むしろ民間の
企業における
労使関係よりは変則的なものにな
つておるということは、主客を転倒しておるものと思うのであります。私どもは、この地方
公共企業が民主的に発展し、
公共の
福祉増進が推し進められますためには、是非
労働関係を模範的なものに調整いたしたい。そのためにここに
法案の
改正を提案いたした次第であります。
殊に、一点触れておきたいと思いますことは、
専従職員の問題についてでありまするが、
専従職員その他の
規定を民間労働
組合の場合と同様にいたしておる点であります。これは先ほどもちよつと触れましたように、労働
組合の一貫した
精神でありまする、民間であるとか或いは公
企業体に
関係を持つからということで、
労働者がばらばらにされるということは最もよくないことでありまして、これを統一して、
日本の
産業、
企業の民主的発展に
労働者が組織的に総合的に協力できるようにいたしたいというので、この点を強調いたしておる次第であります。
以上多賀谷議員から
説明になりましたものと全く具体的な点につきましては同様でございまするので、以上、
法律の
改正をいたしまする動機、
運営上にいろいろな欠点のありました実例等を
説明をいたした次第であります。どうぞこの
事情を十分御認識の皆さんの御協力によりまして、慎重御
審議、御
決定が願えまするようお願いをいたし、
趣旨弁明を終りたいと思います。(
拍手)