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1953-07-30 第16回国会 参議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十日(木曜日)    午前十時五十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            小野 義夫君            宮城タマヨ君    委員            楠見 義男君            中山 福藏君            赤松 常子君            棚橋 小虎君            一松 定吉君   政府委員    法務政務次官  三浦寅之助君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省保護局長 斎藤 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省刑事局参    事官      長島  敦君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局事務    次長)     石田 和外君   —————————————   本日の会議に付した事件請願及び陳情の取扱に関する件 ○刑法等の一部を改正する法律案(内  閣送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開きます。  本日は先ず請願陳情の審査を行います。速記をとめて。    午前十時五十七分速記中止    ——————————    午前十一時五十七分速記開始
  3. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて、午前はこの程度休憩いたします。午後は一時より再開いたします。    午前十一時五十八分休憩    ——————————    午後二時六分開会
  4. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 休憩前に引続き委員会を開きます。  刑法等の一部を改正する法律案について質疑を前にお願いをいたしまして、その後他の法律審議をしておりましたが、又刑法等改正案に対する質疑を続行することといたしたいと思います。  なお、この際衆議院法務委員会におきましては本法律案に対しまして修正案並び附帯決議を附しましてお手許にこれが配付いたしてございますので、修正案並びに必要であれば附帯決議趣旨について政府当局から説明を求めます。
  5. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 本日午前中に衆議院法務委員会におきまして刑法等の一部を改正する法律案修正されて可決せられ、同時に附帯決議がなされました。その模様を御報告申上げます。  修正になりました点は、この法案の第一条の刑法二十五条の二第一項の前段を削るという点でございます。これは今回の法律案によりますると最初執行猶予の場合には裁判所が裁量によつて保護観察を付することを得、それから後段におきまして、二度目の執猶予に対しては法律上当然保護観察を付さなければならない、こういう趣旨でございました。その前段を削りまして初度目の場合には執行猶予に対して保護観察を付さない、付することがで吏ない、こういう趣旨改正になつたのでございます。なお附則を一部修正せられておりまするが、これは二十五条の二第一項前段改正しましたに伴いまして、当然整理しなければならない事項でございます。  それと同時に附帯決議をいたしまして、   政府は、保護観察制度の完璧を期  するため、予算その他これに必要な  諸般の措置を講ずるとともに、初度  目の執行猶予者についても、保護観  察に付することができる等適切な法  案を準備し、速やかに、国会に提案  すべきである。  かような附帯決議衆議院法務委員会において可決せられたのでございます。  結局保護観察政府におきまして提案しました法律案におきましては、初度目の場合でありましても保護観察を受けることができる。これは何回起訴猶予になつても、適当な保護者がない等のために又犯罪を犯して来る。そして裁判所が調べて、事案自体はそれほど重要ではないけれども、適当の保護者又は監督者がないというために、執行猶予にしては再犯の虞れがあるというために実刑になる事案も相当ある九と存じまして、さような意味合いで刻度目の場合においても保護観察に付することによつて執行猶予になし得ろ人もあるのではないか。こういう趣旨政府提案した次第でございまするが、附帯決議にありまするように、現在の保護観察制度予算その他において不十分な点もあるのではないか。同時に又保護観察に関する政府提案の宰によりますると、現在の犯罪者予防事生法の一部を改正して、それによつて保護観察を付する。現在の犯罪者予防更生法少年及び仮出獄者に関する保護観察規定いたしておりまするので、この法律を直ちに成人を含む執行猶予者保護観察にすぐにそれを適用するということは如何なものかというような点が配慮せられて、かような修正になつたのではないか。この法案趣旨においては極めて賛成であるが、そこまで最初から拡げるということは如何なものか、こういう配慮の下に修正せられたのではないか、かように考えております。
  6. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今説明等も含めましてどうぞ御質疑のあるかたは御質疑下さい。
  7. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の斎藤さんの御説明よくぴんと来ないのですが、原案趣旨は今おつしやつているように私たちよくわかるのですが、それをわざわざ削つておいてそして附帯決議で初度目の執行猶予者についても保護観察に付することができる等適切なる法案を準備しろ、その法案が実はこれなんですね。だから削つた意味は現在の保護観察官ですか、或いは民間保護司ですか、そういうような方々の数なり或いはその他の施設が不十分で、折角こういうような初度目の執行猶予者に対する保護観察制度を設けても全く実施できない。そういう面から、そういう意味でこれを削つて予算を揃えてその裏打ちを整えてそうしてこういう法案を作れ、こう言うならよくわかるのですが、そこまで言つているのでしようか、どうなんでしようか。
  8. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 私終始委員会に出ておりましたのですが、いろいろな意見がございまして、これを一括して正確に申上げることはできませんのですが、その中には非常によい制度である。だからこの制度をもつと発展させて、どうせここまでやるなら、宣告猶予までさせたらいいのではないかというような御意見もあり、又その実施についても現在の保護観察制度の、例えば一例として、お挙げになつ事項なんかも、遵守事項として挙げております中に、保護観察を受けておる者は、住居を転じ、又は長期の旅行をする場合にはあらかじめ保護観察を行う人の許可を受けなければならない。こういうことは少年ならばよろしいが、大人の場合に相当の社会的地位にある人であるというような場合に、又商用等いろいろな職業上始終旅行しなければならないという人がある。それについていちいちそういうことまでやられるのは、少年の場合ならよろしいとしても、又或いは仮出獄者ならよろしいとしても、執行猶予の場合にそういう遵守事項というのは、これは少年用遵守事項じやないかというので、そういう点もあり、それは一例としてお挙げになつたことと存じまするが、成人に適切な保護観察に関する法律案を作つたらいいのではないか、そうしてちやんとした予算を十分取つて、そのとき実施したらいいのではないか、こういうような御趣旨であつたのではないか、これは想像でございまするが、さように考えております。
  9. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうするとその意味保護観察制度反対というのではなしに、今の一例をお挙げになつたということからすると、保護観察制度は必要だが、遵守事項成人については不必要だとか、そういうふうにもとれるし、又一部には保護観察制度それ自体反対だというふうにもとれるし、併し附帯決議としてこういうものが出ている以上は、保護観察制度それ自体は必要だ、こういうふうにも我々は了解せざるを得ないのです。その場合、それではなぜここで削つたかという理由が、さつき申上げたように現在裏打ちがない、こういうことなのか、或いは遵守事項それ自体成人には不適当だ、こういうことで行つておるのか、今おつしやつた宣告猶予制度のごときものは、これは法制審議会答申においても、将来考えるべきだけれども差当りは切離して行こう、こういうような答申もしておるくらいですから、従つて意味がどうもぴんと来ないのです。
  10. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 多数の方々のいろいろな御意見がございましたのですが、結局一致して御決議をやろうということに決定されました決議案によりますると、結局保護観察制度は新らしいいい制度なんだ。刑事政策として非常に有効適切ないい制度なんだ。併し現状のままで初度目の執行猶予者にやる、御承知のように初度目の執行猶予は現在無条件の執行猶予になつております。それについて保護観察というのはよいものであつても、一面において、運用の仕方によつては日本人の負担になる場合も考えられるのではないか。そういう点と予算その他実施方面の点において十全を期すると同時に、それには成人執行猶予にも適当な法案をもう一遍出して、そのときに初度目のやつもやつたらいいのではないか、こういうのが御決議の御趣旨ではないかと、こういうふうに考えております。
  11. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、予算とか或いは人間とかの裏打ちの問題は別として、保護観察制度について成人に関しては完全なよい法案、神切な法案を作れ、こういう御要望、それに対して現在のあなたがた原案でお考えになつておるところでは、どういう点が、これはあなたがたに聞くのは少しおかしいかもわからんが、不満当なんですか。
  12. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) こちらから推測を申上げる点で、正確なことは申しかねると思いますが、大部分はやはりそういつた保護観察の中に消極面積極面とございまして、監督的な面においての消極面、それから積極的に本人保護するという意味積極面、両方あると思いますが、その積極面において大人の場合にやはり特別の考慮を要するのではないかという点が主な点ではないかと、私いろいろ御意見を承わつておりましてそういうふうに感じております。
  13. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点については原案配慮しておられないのですか。
  14. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 犯罪者予防更生法の中におきましても、第二条におきまして必要且つ相当な限度においてこの保護観察は行うべきものだ、犯罪者予防更生法第二条を朗読いたしまするが、第二条(運用の基準)といたしまして「この法律による更生措置は、本人の改憲及び更生のために必要且つ相当な限度において行うものとし、その宰施に当つては、本人の年齢、経歴、心身の状況、家庭、交友その他の環境等を充分に考慮して、その者にもつともふさわしい方法を採らなければならない。」こういうふうに書いてございまして、ケースケースによつて適切な方法をきめて行くように、画一的な、形式的なやり方ではいけないのだということを言つておりますから、提案当時におきましては、これで不足なく行われるのじやないか、かように存じて提案をいたしておる次第でございます。
  15. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、それ以上の配慮をして、適切な特別の法案を作れというと、どういうことになるのでしようか。
  16. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 遵守事項などにつきましては、要するに旅行をする場合に届けるとか、住居を転じるというのは、やはり保護なり、積極面をやるための一つの手段としてでございまして、そういう点において少年成人とやはり若干書き分けるということは可能ではないか。又この二条なども、概念的といいますか、一般的に書いてあるので、ございましてこれを個個のケースに当てはめてやはり成人執行猶予者について、適当な方法考えれば考えられる。又そういう点においてのこの新らしい制度でございまするから、保護観察についていろいろな見方がなされております。そのために実施に当る、殊に民間協力者等において十分間違いのないように法律自体において明らかにするということも、決して意味のないことではない、かように存じております。
  17. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう一つ裏打ちについて、原案でお考えになつてつたところで、お進みになろうとしておつたのだけれども、その点はどうなんですか。新たに作る場合に……。
  18. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 現在では犯罪者予防更生法間口を、刑法規定によつて保護観察に付されたものを入れるように、三十三条を改正いたしてございます。その点を切りまして別個に、例えば仮称でございますが、思い付きのあれでございますが、執行猶予者保護観察法というようなものを作ろうということも技術的に考えられる問題である、可能な問題である、かように考えます。
  19. 楠見義男

    ○楠見義男君 そういう場合には、法の体形としてこの原案のように、原案の場合は二十五条の二の場合は、保護観察に付することを得る、得るというその対象の者と、保護観察に付す者と、二つ書いていますね。今仮称としてお述べになつ執行猶予者保護観察法というようなものを整える場合に、その付する者だけじやなしに、付することを得る者も一緒にすることになるのでしようか、体形としては……。
  20. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 仰せの通りに、付することのできる者と付す者と、両方一緒にして、まあ執行猶予者刑務所に入らない人ということで一括すべきではないか、かように考えます。
  21. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、そういう場合には、現在の二十五条の二で残された、付すという残されたこの規定改正する必要が出て来ますか。それともこれはこのままにしておきますか。
  22. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) これは十分研究いたしたことでございませんが、ここで考えている点でございますが、結局原案のように、前段の場合においては「付スルコトヲ得」で、後段の場合においては「付ス」、そしてその保護観察については、別に法律を以てこれを定むと、こういうふうにいたしまして、その法律を現在の犯罪者予防更正法間口を拡げることによつて、その別の法律を作るのでありますから、その紐帯を断ち切りまして、刑法の二十五条の体形において、この法律による保護観察は、この法律の定めるところによる、こういう法律を作ればよろしいのではないか、かように存じております。
  23. 楠見義男

    ○楠見義男君 いや、私の聞かんとしておるのは、実体規定において必らず付すという者と、付することを得る者と今二つあつて、そしてその保護観察については、別に法律を以てこれを定むという、こういうことになつているのですね。ところがこの実体規定は、保護観察に付することができるところのこの規定を外しちやつて、それだけの特別立法をお考えになる場合にですね。そういうことをやつて、その保護観察法の中には、付することを得る者も、付す者も両方対象にして入れるということになつた場合、その場合の実体規定は、その新立法によつて保護観察に付することを得という実体規定を入れるわけですね。そうすると、実体規定は一方は刑法にあり、一方は特別法にあるということに、こういうことになるので、或いはこれも削つてしまうのなら、これもその際できるだけ一緒にやつたらどうかという議論も出て来るのだけれども、その点はどうなんでしようか。
  24. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 現在考えておる限度でお答え申上げるほかございませんですが、結局刑法をもう一度直しまして、そうして第二十五条の一項に、付することを得という規定を入れて、そしてその前段後段を受けて、その保護観察については別の法律を以て定むという、現在の規定がそのまま動きますから、別の法律を作つてし養う。そして犯罪者予防更生法との関係をなくしておけばそれでいいんじやないか。そして別に重要な点もございまして、ちよつと……。
  25. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の点なら、それでいいんですよ。そうすると、その場合には、又政府原案と同じ結果になるわけですね。二十五条は、ただ実体的には、手続的には犯罪者予防更生法考えておることの執行猶予者保護観察法という別の手続法といいますか、受けて立つ法律が、借りる宿屋が違うということだけになるわけですね、実体的には……。本条は、その場合には原案のようなことになるわけですか。
  26. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) そういうことになるかと思つております。
  27. 楠見義男

    ○楠見義男君 それならよろしうございます。
  28. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつとお伺いいたしますが、少年法によつて保護処分を受けました少年保護観察、それから犯罪少年執行猶予に対する保護観察、それから大人につきましては、仮出獄者に対する保護観察というものが長い間なされておりますが、その成績は如何でございましよう。
  29. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 事柄が人の行為に関することでございまして、十分な統計というものはなかなかつかみがたいのでございますが、一番わかりやすく、的確に出て参りまする仮出獄者取消割合でございまするが、これは予想以上に取消になる割合が減少いたしております。この制度が始まりました当時と、その後施行後四年間、仮出獄になる人の数は殆んど同数でございます、四万二千人……、昨年度は四万六千人という数に相成つております。それに対しまして、その年間に、仮出獄再犯を犯して取消になつた人の数が二十四年は三千六百人、二十五年は三千二百人、二十六年は二千九百人、二十七年は千二百人という数になつておりまして、パーセンテージで言いますと、八・六一%から七・八六%、一昨年度が七・〇五%、昨年度が二・六一%ということになつておりまして、減少いたしております。特に昨年度が非常に減つております。これには私ども考えでは、これは講和恩赦がございまして、政令によつて減軽になりまして刑期が四分の一に減りましたので、その関係期間が早く済んだというために取消の率が減つたのじやないかと存じております。又社会の秩序が漸次好転して参つておるということにも大きな影響があると存じますが、とにかくこの制度をやりまして、仮出獄で出す人の数は、従来通り四万人以上出しておりまして、その間再犯を犯して取消したという人の数が減つて参つておりますので、成績を挙げておると言うてもいいのじやないかと、かように存じております。
  30. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうするとこの少年のことは別にいたしましても、成人に対しまして今までに行われておる保護観察成績が非常にいいというように承知してよろしうございますね。
  31. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 私どもといたしましては、予想以上に減つて来たように思つております。
  32. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実は成人保護観察制度というのは、犯罪対策につきましては宣告猶予に行く一つの段階で、非常に意義があるというふうに考えておるわけでございますが、そこで今まで執行猶予になりましても野放しであつて手当がしていないものも随分あつたと思いますが、そういう人たちに対しても保護善導の機関ができるというようになり、それから又もつと私は意義のあると思います点は、執行猶予になつて保護観察が付く故に実刑を科せられなければならないはずの人が許されて、刑の言渡は受けますけれども執行猶予の恩典にあずかつて、而も保護手当を受けるため社会でそのまま活動ができて、そうして再犯を犯さないようにということができるという点に、私は今度の制度は非常に高く買つていたのですけれども、若し衆議院修正しましたように最初執行猶予保護観察は付けないということになりますると、一体この折角のこの成人保護観察制度というものの意義というものは私はどういうことになるかというように考えておりますが、その点如何でしようか。
  33. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 初度目の場合にどのくらい裁判所執行猶予を付けるだろうか、保護観察制度が初度目の場合にも適用されるとなつた暁、どの程度保護観察を付けるかということは、これは全く個々の事案によつて裁判所がその事案々々によつて、おきめになることで、ちよつと想像がつきかねます。ただ、最近執行猶予取消になる事件がだんだん殖えて参りまして、統計がございまするが、昭和二十六年かと存じておりまするが、一七%というような数になつております。而もその罪種別にそれを分けて考えますると、窃盗が一番多うございまして、窃盗は二八%、窃盗執行猶予になつた人の約三割弱がその期間中に再犯を犯して取消になつておる。他の特別法犯等はずつと比較にならんほど率が少くなつておりまして、結局執行猶予をした場合に保護観察を付けるのは、罪種によつても或る程度見当がつくのではないかというようなことも想像されまして、初度目の場合にも有効たと私ども考えた次第でございます。これが修正ということになりました場合におきましても、現在はこの一万人という者がその期間中に再犯を犯して取消しになつておりますが、決して全部がそうではないと思いますが、中には適当な保護者さえあれば、一遍出してやつても見込みはあるのだというような人も相当数あるのではないか。従いましてそういう面においての現法案考えた目的の一半は達せられる。又この附帯決議にこういうように、近い将来にできるだけ早く適切な法案を持ち、又十分な予算その他の措置についてもできるだけはつきりしたものを持つて、又初度目の場合にも適用になつて行くようにやつて行くということになれば、それも一つ方法ではないかと存じております。保護観察をやつておられます全国の保護司方々のお気持では、もう自分たちはすぐに初度目の者までやるという御気持は十分あると思います。併しこういつた漸進的な方法というものも一つ方法ではないかと、かように思つております。
  34. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 子供だけではなくて、大人犯罪者に対しましてもできるだけ早いところで保護善導するということが私は効果からいつても非常にいいと思うのですが、それが今お話のように、二十六年度なんかは執行猶予取消された者が一七%もあるとおつしやつたですね。その者に若しこの保護観察を付けておつたら、そのパーセンテージはもつと減つてつたというように私は信じます。そこで付ければ、早ければ早いほどいいと思う、その手当をされるという今度の制度、この初度目の執行猶予に対する保護観察というものを又とつてしまうということは、私は非常に残念だと思います。ただ併しそこで先ほどから言われております予算手当、それから保護司の質というもの、殊に私はこの保護司、今日も問題にしてみようと思いましたことは、初度目に保護観察に附せられました者は、二度目は執行猶予が付かないというようなことになりますと、これは今までの保護司の心がまえでは、私は到底誠に責任を思われる保護司であつたら、堪えられない、私はお歎きになるくらいではないかと、良心的に考えれば考えられるくらいのものなのでございますけれども、それだから十分に予算を取つて、その保護司の質のいい、つまり今までのような本当に地方の何といいますか、篤志家で、篤志を以てされるということよりも、むしろ私は半職業的でもよろしうございますが、しつかり取組んで頂くようなかたを選んで嘱託をしまして、そうしてそれに相当な手当をしなければ私は今度やつて頂けないというふうに考えております。その意味において私は衆議院方々が非常に不安がつて、この法律修正なさり、それから又附帯決議をお付けになつたという点は、私は了とするところでございますのですけれども、折角今度刑法の一部を改正するというのに、私は骨抜きがされたような気がして、誠にこれでは残念だというように考えるのでございます。そこで私はこの間御説明の中にございました、この刑法改正によりまして新たに保護観察を付せられるという予定の人員について政府年間に二万人くらいだということを言つていらつしやつたのでございます。その二万人が予定数でございますから、殖えたり減つたりすることも勿論あると思いますけれども、或いはそれ以上になることを願いますが、例えば二万人といたしましても、この刑務所、或いは少年施設につきましてもそうでございますが、そういう収容いたしますところに入れますというと、政府の発表によると一人一カ年の経費というものは、ざつと四万円内外ということを言われておるのでありまして、その四万内外を二万人といたしますというとちよつと国家の経費を要しておりますことは、八億くらいなのです。二万人と仮定いたしましても八億円のここに国家の経費が節約される。而もその経費を節約しながら、保護観察に付されますというと、これは今までのこの仮出獄に対する大人、或いは子供も少年もくるめてだろうと思いますが、曾つて政府の答弁によりますというと、この経費は十分の一前後で以て賄えるということを私記憶いたしておるのでございます。そういたしますというと、今度の新らしい制度によりまして又政府が利益をするものは大した高に上るというように考えております。この経費を以て私は保護司手当優遇の方法も考慮され、それから又この保護司の研修の方法というものも十分に考えられるのじやないかというふうに考えておりますが、保護局長の御意見如何でございましようか。
  35. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 政府法案を準備いたしましたときに、いろいろと研究いたしまして、大体どの程度この保護観察、現在のままでの保護観察が行われた場合に、どの程度年間保護観察に付せられるであろうかということについて、推定でございますが、計算いたしました際には、これはいろいろの見方があると思います。決して私の計算いたしましたのが正確だとは申上げませんが、大体こういう見方もできるとい与程度にお聞き取り願いたいと存じます。大体執行猶予になりまして、その期間中に再犯を犯して取消しになるという数、それは当然に裁判所保護観察にお付けになるのではないか。その数が三年間の平均が八千五百人という数になつております。それから平均の刑務所に入る人の数のうち、新らしく拡張せられました執行猶予の要件を備えておる人がどのくらいあるか、そのうち裁判所が約三割、保護観察に付けられる。こういう勘定にいたしまして、一万一千人という数に相成ります。これは併しすぐにそれだけ刑務所に入つておる人が保護観察に廻るというふうには考えられないのではないかというふうに存じておりますが、相当数は刑務所から人が減るということは言えるのではないか、殊に現在刑務所に入つておる人のうち、新らしく要件を緩和された一万一千幾らという数の相当数は、刑務所に入らなくて済むというふうに考えます。そうして刑務所に入れた場合の一人当りの予算と、それから保護観察に付した場合の現在の予算というものを考えますと、二十七年度の予算で申上げますると、刑務所予算のうち営繕に関する費用を除く、それから国庫の収入に返つて参ります作業収入金がございます。これが十八億ばかりございますので、それを除きまして実人員を以て割りますと六万六千円というような数になり、又このうちには勿論看守その他の職員の俸給その他の人件費を含んでおります。単に受刑者の食糧衣服費いうか、こういうものばかりではございませんで、職員の人件費も含んでおりまするが六万六千円ということになります。保護観察の一人当りの費用が人件費を含めまして四千百円という数になりまして、その意味からは国家財政に非常に計算上有利になるということは間違いないと思います。大体アメリカあたりで数十年やつて、十分の一くらいな予算ですむ、日本ではそれが十分の一に遥かに遠いというような現状になつております。
  36. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そこで私は今伺いますというと、一人当り四万円でなくて六万六千円だという、ざつと六万円としましても、そうして執行猶予保護観察に付ける者、例えば一万人といたしまして、六億の金というものは出るわけなんでございますね、それを以て私は保護司手当ができるなら、保護観察制度は確立できるというように思いますが、如何なものでございましようか。ただ私ここで、再犯いたしましたときに、執行猶予保護観察が付きました場合には、今度は執行猶予の恩典にあずかれないということ、その点が非常に私不安ですけれども、如何でしようか。
  37. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 只今仰せられました点が一番私も心配をいたし、勿論実施について、最もその点を慎重に考慮しなければならないと存じておる点でございます。保護観察に付けられているために、その期間中の犯罪なるが故に、再度の執行猶予ができない、初度目の場合……。然るにそれが単なる形式的なものであつた保護司さんが単なる形式的な保護観察をしておつた、実質的には何もしていなかつた、そのために付けられない。もう一遍執行猶予が可能であるというのにもかかわらず、反対実刑を受けなければならないというようなことになりますと、この制度をやつたということが、却つて国家にとつて申訳ないことになるのじやないか、その点もございまして、十分これは慎重にその点は考慮しなければいかんから、そういう点特に考慮してこの制度考えなければいかんのじやないかと、かように存じております。  保護司の問題につきましては、保護司法という法律によりまして、保護司に就職する前に、その地方の最も有力といいますか、各方面の代表のかたの意見を聞くような選衡委員会を設けまして、そこに原案を提出いたしまして、そうしてその御同意を得た上で出すというふうな、慎重なる手続をとり、更にその上にも万全を期するため、任期制を作りまして、二年間という任期を作りまして、そうして不適当のかたが仮にあつた場合には、円満に速かに解決を図り得る、そうして常に適任者を以て充たすようにいたしております。そのように努力をいたしておりますが、それでもこういうような制度が行われるということになりますと、更に一層慎重なることを、多数のうちでございまするから、よほど慎重に考えなければいけないのじやないか、その点が一番私としまして、保護観察をやる者としての責任を痛感いたしておる点でございます。
  38. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今の点でございますが、この立法措置をなさいますときに、何かもう少し犯罪者の人権擁護の意味もございましようが、有利になるような立法措置というものはできなかつたのでしようか、この点が非常に心配になるのですけれども……。
  39. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) この点もいろいろと考慮いたしまして、例えば二度目の場合でありましても、必要がなくなつた場合には取消す、保護観察に付したという言渡取消すというようなことを言うというなことも一つ方法であろうと存じております。ただそこの関門を緩めまして実はその結果どういうことになるかと言いますると、取消とか或いは付けないこともできるのだというふうにいたしますと、何度でも執行猶予ができるという結果になります。現在御承知のように、執行猶予が無条件で執行猶予になりまして、執行猶予になつた人は何ら国家から保護も受けない、と同時に監督も受けない。全く自由な境涯において執行猶予になる。それでいて取消率が殖えて参つたと申しましても、一七%程度のものである。大半の人はその間取消にならないで期間を終るということの一つの原因のうちには、いろいろの要素がございましようが、今度やればやはり今度は実刑だということがあつて、そういうことが理由となつて来ておるということも見逃しがたいことである。従いましてこれを無条件に何回でも許すということになれば、何回でもやつてもいいというような印象を受けまして、刑事政策として、殊に現状においてそこまで緩めるということは却つて不利な点もあるのではないか。従いまして保護観察をやる者のほうにおいて十分責任を痛感してやつて行くということがいいのではないかというふうに現在では考えております。
  40. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 むずかしい問題でございますね。今の保護司の適任者を得るために任期制にしておりますということもこれは一つ考え方ですが、さつきも申しましたように、このほか、今ございますような二年というようなことを、不適任者があつた場合にはまあ折角頼んだ人ですから任期が来たから替つて頂きますということで、ちよつということで、ちよつと言いやすいようなことですけれども、又一方から言うと適任者がございますと何年でも続けられることにはなりますが、私は本当に適任者を厳選しまして、半職業的ということをさつきは言いましたが、半永続的な、どつちかというと、この仕事をする専門家を作るということが大事なことじやないかというように考えておりますが、これはもう執行猶予を付けて保護観察を付けておつたために、二度目には執行猶予が付かないで実刑を科されるなんということになると、これは片手間仕事で、今までも往々にございましたような、観察をしておるような顔をして実は野放しにしてあつたというようなことが万一にもありましたときに、その観察を付せられております人たちがどのくらい迷惑するかというようなことが私心配なんでございますけれども、そこで私は口ではそう申しましても、なかなかこの実行はむずかしいと思つておりますので、そこでその保護司というものを大体まあ指導して行くというような役目も兼ねておる観察官、この際観察官について非常に慎重な考え方があるはずだと思いますが、その点は如何でしようか。
  41. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 只今仰せになりましたことは一々私傾聴いたして十分注意いたしたいと思います。又この保護司の問題について先ほどお触れになりましたから申しまするが、付けることができる、又は付けなくてもいいということになつて、付けられたために二度目の執行猶予ができないというようなことは、誠にこれは保護観察の全責任でございますから、これについては特に仰せになりましたような職業的といいまするか、むしろ職業的というよりはそれに、専任に近いような人を保護司に置いても、そういう制度を何か実質上において考えて、そういう人に責任を持たせるということを考えなければならんことだろうと存じております。  それから観察官の問題についてお話がございましたが、これも同様でございまして、保護観察官保護観察制度の根幹といいますか、保護司と共に保護観察官に適任者を得るということが根本の問題でございます。従いまして今回九十三人増員になりました。増員の分につきましても一般から人を広く募集をいたしまして、筆記試験及び口述、面接試験等もいたしまして現在選考いたしております。そうしてその増員になりまして採用になりました人につきましても当初から直ちに観察所に配属して、実務につける前に、それぞれの地方委員会、これは各高等検察庁ごとにございまして、その地方地方を中間的に監督しておる官庁でございまするが、その地方委員会に、採用になりました人を全部集めまして、裁判所、検察庁、観察委員会等において実務を十分に研修し、関係ある検察、裁判その他保護についても実務を十分研修して、その上で地方に配属したい。勿論常時行なつておりまする職員の研修についても今案ますます十分やつて参りたい、かように思います。
  42. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この観察官の研修、実務の研修はわかりましたが、保護司に対しましては何か従前通りでなしに、新たな研修或いは何といいますか、研究の方法とかいうようなことが考えられておりましようか。それから若しそのこととそれに対する予算上の措置があつたちよつと伺いたいと思います。
  43. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護司の研修につきましては、余り草間的な研修というよりも、ケース・ワーカーとしての切瑳琢磨をやつて頂くということが直接に効果を挙げるというようなこともありまして、そういう意味で先ず各保護区、全国が六百七十幾つかと記憶いたしておりまするが、保護区に分かれてそこに数十名ずつの保護司が配属になつております。その地区の保護司会で一カ月に一回保護司会を開くようにして頂いて、そうして担当の観察官が場合によつては観察所長も一緒に参りまして、そして個々のケースについての報告を受け、それについて適切な指導連絡をいたし、又お互い同士で智慧を貸し合つて或いはそういつたものならばこういう所に知り合いがあつてこうだというようなことで就職できるのではないか。そういう場合もございましようし、そういつた地区の保護司会を頻繁に開いてそこにおいてケースの研究をしてもらいましたり、そのほかに各観察所ごとに予算が極めて不十分でございますので、一日講習と称しまして、一日集つてもらつて、そして新らしい観察の方針なり、又関係の問題について講演その他をやる、こういうふうなことをいたしております。そのほか各府県の保護司会において大会を開いております。又地方連盟ごとに大会も開いておりまするが、そういう大会においても単なる形式的なことでなくして、できるだけケースの研究を中心にやつて行くように、昨年からだんだんするというふうになつて参りました。その際に適当な経験者なり学識者からそのケースの研究についての批判を聞くというようなこともいたして、ケース・ワーカーとしての養成にできるだけの努力をいたしております。予算保護司の研修費として誠に僅かでございますが、二百数十万円の予算を頂戴しております。
  44. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この保護観察でございますが、今までの保護観察はいわゆるパロールのほうの保護観察でございましたが、今度はプロベーシヨンのほうになりますが、これはパロールとプロベーシヨンでは一長一短があると思います。刑務所に入つた経験のないものは扱いやすい点もあるし、又入らないために非常にむずかしい点もあると思つておりますが、そこでパロールのときに、パロールの場合とプロベーシヨンの場合とは同じ保護観察でも非常に私は取扱いが違うというように考えておりますが、そこで今度新らしくできますプロベーシヨンに対する保護司というものは今までの保護司を兼用するといいますか、流用するつもりでございますか。又新らしいかたを新らしいセンスで選んで充てようという構想でございますか、ちよつと伺います。
  45. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 今度のような施設に入らないで裁判所から直接参る人を保護観察するプロベーシヨンの制度と、それから刑務所から仮出獄等によつて出て来るパロールの制度と、実際の保護観察のやり方については、いろいろな点について注意しなければならんものがあると存じております。遺憾ながら私実際にやつたことがございません。できるだけ保護司さん方の御意見は伺つておりますが、それぞれその経験を持つている人がおりますので、その方面の御意見を十分承わつて、そうして遺憾のないようなやり方をいたして参りたいと思つております。ただ御指摘になりました従来と違つたこの新らしい分野の保護観察をいたすことでございますから、新らしい人を選ぶかどうかというお尋ねでございまするが、そういうことができまするならば、それも考えたいと存じております。ただなかなかこういつた仕事を、而も現在何ら経済的な裏付もない、損をしてまでやろうというようなかたが、そうたくさんの、一万人以上に上ると思いますが、それを処理する新らしい人を選ぶということは、私は先ず困難であろうと存じておりまするから、従来の保護司、新らしい人も勿論探すようにいたしまするが、現在欠員もございまするから、そういうことに努めはいたしまするが、従来の人の中でこういう問題に適当なかた、殊にさつきおつしやつたような半専従的な人も十分考えまして、そういう人と組合せといいまするか、十分責任のある保護観察を行うようにいたしたい。かように考えます。
  46. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今までのこの保護観察をされております中で、男女のパーセンテージがわかつておりますか。
  47. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護司の数が四万四、五千であろうと存じておりまするが、これはときどき変りますので、正確な人数はわかりませんが、女性と男性の別でございまするが、女子のかたが一割まではいらつしやいませんで、三千人からちよつと欠けた程度の女子の保護司さんがおられる。なお保護司さん全部、四万数千人の職業といいまするか、職業別に大体を申上げますと、約四割が宗教家でございます。それから二割が教育者、それからその他がまあ農工商ということになりまして、就職とか何とかいうふうな問題については、そういうかたが又非常な働きをされております。こういうことになつております。
  48. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうしてこの観察を受けるほうの大人のほうでございますよ。大体女は一割くらいのものでございましようが。受刑者なんですが、出獄者、仮出獄いたしました大人を聞いているのですが、保護司は大体一割はわかりましたが、この受けるほうはどういうふうになつておりますか。
  49. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 誠に申訳けございませんが、現在の資料に少年、成年の別だけございまして、男女の別がございません。
  50. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつともう一つ、これは私曾つて委員会でも伺つたことがあると思つておりますが、保護司の観察の報告でございますね。これは大体一カ月に一遍ぐらいすることになつておりますね。観察報告というものはそうでございましたね。ところが保護司の中には本当に観察することができても、報告をいやがる人があるのじやないでしようか。それから又実際観察は怠つてつても、報告がなかなかうまくできる人と両方あるのじやないかと思うのです。そこで私はこの報告というものが、まあ大体から言いますというと、観察もし、その後苦労しておりましてその上に又報告するなどということは、なかなかこれは骨が折れることで、この報告その他というまあいろいろ事務的なことをいたします者を、特別に一地域に一人とか二人とか置きましてするというような一つ制度でも考えましたらもつと実際の観察、まあ事業といいますか、仕事が、うまく行くのじやないかということを私は考えるのでございますが、この点如何でしようか。
  51. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 仰せの通りでありまして、毎月一回必要によつて担当の成人なり少年なりの性格を、こちらからお願い申上げて、項目的に性格はどうだ、行動はどうだというような各十項目ばかりに亙つて評価をして頂いて、御報告を頂いております。大体過半数御報告を頂戴いたしております。場所によりましては一〇〇%頂戴しておるところもございまするが、毎月々々のことでございまするから、毎月一〇〇%全体的に御報告を頂いておらないですが、できるだけパーセンテージを上げようと努力はいたしております。そうして実際において御報告なさらん人が、保護観察をしておらないかというと、決してそうではなくて、又その反対に報告の割にそれほど実際にやつておらない人もないとは言えないと私は思つております。従いましてやはり保護司会を開いて、そこで皆と一緒に御報告を願つて、それについて話合うというようなことが一つの実効を上げる方法でもあると存じております。そうしてその中には、非常に保護観察をやつていらつしやるかたの中に、官公吏としての経験もない、そういつた者が報告書を書くことは大変苦痛だ。そうして保護観察の最も問題点は、本人をよくすればいいじやないか、だから報告なんかどうでもいいじやないかとお考えになる向もございます。併し私どもとしては国の責任を負つてつておることでございますし、御報告は御無理であつてもお願いしたいと思つて、お願いしておるのでございますが、できるだけ予算その他の裏付に努力をいたしまして半専門、専従的なかたをそこに置けば、そういつた報告等の文書の事務もそのかたがまとめて担当して頂くということも可能になるかと存じております。そういうことも研究し、可能な限り実施をいたしたい、かように存じております。
  52. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから今一つは今度新らしい保護司も加わりましようし、この制度ができましても、やはり保護司の謝礼というものが、この予算に出ておりますがね、大体一人当り四百五十円くらいでございますか。その謝礼と申しますか……。
  53. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 謝金はこの前保護司のかたがたの待遇について御報告申上げました点の中で、資料がないために明確を欠いた点がございまするので、改めて申上げまするが、謝金につきましては制度発生以来五百円でございまして、本年度も当初は五百円でございましたが、先般の行政費の節約によりまして費目を天引的に滅らされまして、これが四百五十円ということになつて予算案が出ております。それから補導諸費というのは補導の実費、補導に要する実費を差上げるものでございまするが、これが二十四年は月十七円九十五銭という数でございましたが、二十五年度に一人について七十円、それから二十六年度が保護司一人について百円、二十七年度が百二十円、今年度は件数の増加等も加えまして、丁度一割増額になりまして百三十六円ということになつております。併しこれは一人についての大蔵省との折衝においてきめた単価でございまして、実際には担当せられました件数の多いかたと、少いかたと区別をして差上げるようにいたしております。
  54. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この百三十六円は、一年でございますか、一カ月でございますか。
  55. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 一カ月でございます。
  56. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これで本当に大蔵省にあなたがたのほうから請求なさるのは一体どれくらいなのですか。
  57. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 月四回対象者のところに行かれる、そうして同じ町同じ村におられるというのが大体の建前でございまするから、半日当ということで九十円になるそうでございまして、月三百六十円ということで要求しまして、それが今年度は百三十円ということになつております。
  58. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それからもう一つ、今度の法案の第二十五条の二ですけれども執行猶予保護観察が付されましたときには、どんな人にでも、どういう罪名の者にでも付くことになつていますね、一律に……。これはこの前に委員長もお聞きになつたように思いましたが、これは如何でしようか。中にはそれこそ付けられたために却つて迷惑するというような事案がございませんでしようかと心配しておりますが……。
  59. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) その点につきましては、保護観察ケースとして本人に必要且つ相当程度に行うという建前になつておりますので事実上の問題において、非常にまあ危険な人は毎日行つても面倒を見てやらなければいかん、家をいつ飛び出すかわからん者は毎日でも行つてやらなければいかん、夕方でも行かなければならないときもございますし、一カ月も二カ月もそのままにしておいても、勤め先から手紙ででも報告してもらえばよろしい、又適当な職場の工場長さんなりそういうかたにお願いして、変つたことがあつたらば知らしてもらうということで済む場合もあります。その事案事案によつてやるということが保護観察の建前でございますけれども、その点においては、不必要なことをすれば勿論これは本人の不為でございますから、事態によつて変るのではないかというふうに考えております。
  60. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それを事案によつて……その保護観察に付せられまして、これは余り必要がないからというようなことになりますことよりも、これは裁判官の裁量に任せまして、そうして保護観察の不備と初めからわかつておりますようなケースにつきましては付けないということのほうが、もつと保護司の経済じやないか。保護司を経済に使うということは結局予算を経済に使うということになると思いますが、この辺は何か問題にはなりませんでしたか、立法のときに……。
  61. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) その点についても考えて研究いたしたのでございますが、この案の大体の骨子が、二度目まで考えよう、二度目まで執行猶予考えよう。何遍でもやれるということになれば結局執行猶予ということの意味がなくなるということから、二度目は保護観察を付けて、その期間中でも間違いを起した場合にはいたし方がないじやないか。それは罰則で保護観察のずつと結果を見て又その次の手を考えようということで、その点について若干議論もございましたが、そういつた点について或いは保護観察に関する事案考えられないこともないけれども、現在全然不可能のものを可能にするのでございますから、この程度から発足しようと、こういうような漸進的といいますか、そういう考え方で実はせられた次第でございます。
  62. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まだ質問ございますけれどもちよつとこの程度で今日は私切ります。
  63. 楠見義男

    ○楠見義男君 先ほどお伺いしておつた点、衆議院修正理由、或いは附帯決議の理由が釈然とわからないままにお伺いするのはどうかと思うのですが、要するにこれは初度目の保護観察については必要は認めるが、併しいろいろの準備その他裏打ちが十分でない。従つてそういうようなものを整えて然る上に出直して来いと、こういう趣旨と了解していいのですか、どうですか。
  64. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) その通りであると思います。ただこの決議案にもございまするように、できれば早くそれを持つて来いというのがこの線と思います。
  65. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこでお伺いするのは、先ほど御説明なつ保護観察に付する予定数ですね、約二万の御推定とお伺いしたのですが、この初度目の保護観察に当る者として先ほどお述べになつたような分類の積算方法では或いははつきりしないかもわかりませんが、およそ初度目の観察に付する者というものはどのくらいなんですか。この二万人のうちで予定すれば……。
  66. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 私どもが推算しました第一点の取消になるという場合は、初度目のものは含まない、その八千五百人の中には初度目は含まない。それは専ら、二度目ということでやつております。刑務所に入つている人のうち、初犯及び前に禁錮以上の刑に処せられたことはあるが、今度の新らしく緩和された五年を経過して入つて来た、而もその刑期が三年以下であるというような人が四万人ほどございますので、その中にそういつた人があるのではないかと存じまするが、何割と見ていいのか、ちよつと……。
  67. 楠見義男

    ○楠見義男君 私この意味はですね、この附帯決議予算その他必要なる措置を整えて出直して来い、こういうことですね。そこで例えば他の産業関係立法のごとく、工事をするのに金がかかる、或いはこういうものを作るのに金がかかるのに、予算の裏付がないからこの法案は出直して来い、こういうことがよくありますけれども、そういう場合には予算というものがはつきりする。ところがここの場合は、今お述べになつたように、例えば四万人のうちの一割を対象にしていいのか、二割を対象にしていいのか。恐らく政府原案では、現在の制度でやつて行けるということでお出しになつたと思うのです。ところが政府もその衆議院修正案を了承されたとすれば、そうすれば今度出直すときにはどれだけの人間を対象にし、どれだけの予算を組むかということでしなければ、それは衆議院附帯決議の要望には副わないわけですね。それでお伺いをしているのですが……。
  68. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 衆議院で、附帯決議予算その他の措置を講じろというお気持は、現在の保護司の待遇活動費等の国庫支弁が常識に外れている。そういうことでは保護司にどういう人を選んでも、なかなかいい人を選べないのじやないか、そういう点に重点があるのじやないか、私どもそういうふうに考えたわけであります。
  69. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、問題は保護司の人数ということじやなしに、むしろ現在の人数であつても質の問題である、こういうことになるわけですね。そこで法制審議会答申案の中にもその点が触れてあるのですが、成人に対する刑の執行猶予に伴う保護観察制度要綱というものを答申して、その中に保護観察実施に当る者については、適格者を得るに足る十分な給与の支給と実費弁償の途を講ずるものとすること、これがありまして、尤もそのうちの実費弁償については、法務省は月三百六十円を大蔵省に要求されたところが百三十六円に査定ざれたというお話を承わつたのですが、ところがこの三百六十円というものが予算的に言えば、実費弁償の適当なものだと法務省は考えられておると了解していいのですか。それから上のほうの給与ですね、これは余談ですけれども、折角五百円になつたものが今度の自由党、改進党の協定によつて一割下つておる。これはほかにも随分こういう馬鹿げたことが各省にあるのですね。これは政府自体がみずから使う金を、みずからのために使う金を節約するならば、これは本当の節約なのですけれども、国民に出すべき金をこうやつて一割削ることは、一方で所得税の減免でどうだこうだと言つて大鼓を叩いておきながら、一割税金をかけておるのと同じことなのです。これは法務省ばかりでなしに、各省ともこういう馬鹿げたことをやつておるのです。この点は別の機会に我々は十分やらなければならんと思つておるのですが、それはそれとして、適格者を得るに足る十分な給与というものを法務省は幾らと見ておられるのですか。
  70. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護司保護司法におきましても社会奉仕者として給与は支払わないのでありますので、要した実費を国が支払う、こういう建川前になつております。謝金という名前でございますが、やはり考え方としては給与ではない。従いまして現在もまだ折衝中でございますが、保護司はやはり一種の非常動の公務員ということになつておりますので、国家公務員の災害補償法の適用を受けることになりますんで、その際に給与がきまつておりませんので、その給与を如何にきめるかということで今人事院と折衝いたしておるようなこともございまして、保護司には給与はない。五百円というのは、やはり謝金という名前でございますが、やはり一種の実費弁償という考えでございます。それからその法制審議会にありまする給与というのは、観察官のほうにかかる、こういうふうに考えております。保護司には幾ら上げたらいいのかという問題につきましては、これは実際に要した費用ということになりまして、これは千差万別でございまするので、私どもとしては現在のあれは非常に低過ぎる。できるだけ上げたい。こういうふうに考えております。
  71. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると結局四百五十円の謝金の問題も実費弁償だとすれば、要するに問題は月四回とか何かということは予算要求の算定基礎であつて、一回半日九十円、これが適正な実費弁償だとお考えになつていると了解していいのですか。(笑声)
  72. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護司の非常な御苦労、寝ておつても心配しておられるという御苦労から見れば、ただ歩かれた半日の日当がいいとは私は考えておりません。ただいろいろな事情、関係もございまして、それから先ず昨年の十倍を要求してもなかなかくれるものでもございませんし、漸進的に上げて行くというつもりで出した次第でございます。
  73. 楠見義男

    ○楠見義男君 それはほかにもいろいろございますからその程度にしますが、そこで今お述べになつた観察官の問題ですね。これは答申案には専従職員という言葉で言われているのですが、この職員の数というのは今何人ぐらいおるのでしようか。
  74. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 今回のこの制度に伴う増員九十三名を含めまして、観察所に五百五十九名、それから地方委員会に八十八名、こういう数になつております。このほかに事務官等はございます。
  75. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうするとここに言つておる十分な給与というのは保護観察官の給与だ。そうすると現在のところこれらの人々の給与というものが非常に低いということなんですか、どうなんですか。
  76. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) この観察という仕事が非常に法律的知識も必要でございますが、その他関係のいろいろな手続も必要であるのでございます。又すべて世間の経験も経ていなければならんという点で教養もあり、経験を積んだ人を迎えることが必要だ、そういう意味で十分の待遇をする、こういう趣旨でございます。今度の採用に当りましても、できるだけそういう素質のよい人を入れまして、現在の、将来の幹部になるような人を入れたい、こういうことでそういつた選考を主にいたしております。
  77. 楠見義男

    ○楠見義男君 いろいろのことを伺うのですが、私は根本的に折角政府が勢い込んで初度目の保護観察をやろうということを言われて、この改正案をお出しになつたのが、終りは何とかのごとく引込まれておるのは、どうも私はそんなことなら初めからこんな改正案をお出しにならなければよかつたとすら思うわけなんです。そこでくだらんことを伺つて恐縮なんですが、衆議院のこういう附帯決議に対する答えとしては、予算的に言えばさつき申上げたように単価が九十円ということであれば、それを改めるように努力してそれで果される責任は果して、今度出直して来れる。それ以外のことはその他の事項として例えば先刻の一般の遵守事項で一々旅行するときには許可を受けなければいかんとか、こういうような点について、或いはその他ほかにあるかも知れませんが、そういう点について改正さえすれば改めて出直せる、こういうふうに了解してよいのですか。
  78. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護観察について、特に初度目の保護観察、而も宮城委員の仰せられていましたような、付いた場合には付かない人よりも非常に一面において有利だが一面において非常な不利益もあるというようなこともありますから、それを担当するに足る保護観察実施ができるようにしなければならん。そのために予算上の措置も必要であるし、又制度としては僅か六百人程度の観察官だけでやるというのでなくて、やはり保護司の中に半専従的な或いは専従的な人も、これは非常勤の公務員ということになつておりますから補充して、補充といいますか、実費さえ出せば相当専従の人も可能になりまするから、そういう人も作りまして、それを地域々々の要所要所に適当に配るということもいたし、そういう実施の面も考え、又執行猶予者に適応する保護観察制度を作る。こういうことになれば附帯決議趣旨によつてこの法律実施できるものというふうに私どもは信じております。
  79. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは今度は法律の内容に入つてお伺いしたいのですが、それは二十五条で執行猶予をなし得る場合に、現在の刑法で五千円以下の罰金という項目はたしか終戦後入つたのです。私ども学校のときにはこういうものはなかつたのです。ところが五千円の罰金の言渡を受けた者が情状によつて、即ちここに書いてあるようなことに該当すれば執行猶予になれる。ところがその二項に、再度執行の場合には、これは「一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケ情状特ニ憫諒」云々とこうありまして、このときに罰金刑の言渡を受けた者は、本来ならばこれはこの一年以下の懲役とか、或いは禁錮の言渡を受けたものよりも罪が軽いわけですね。そのような軽い者に対して今度執行猶予は認められないのですね。この執行猶予が認められないという理由はどうなんでしようか。
  80. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 現在の刑法二十五条で罰金五千円以下については執行猶予が可能になつております。それが罰金等臨時措置法という法律によつて五万円ということになつております。今回の案でその一年以下の懲役又は禁錮にかかつて、罰金のことに触れておらないということは御指摘の通りでございます。ただ私どもかように考え提案をいたしたのでございますが元来執行猶予制度というものの本来の考え方がやはり短期自由刑を、刑務所に入れておくということが本人にとつて相当の、場合によつては救いがたい悪い影響を与えるということも考えてやつたのではないか。従つて明治四十年からの刑法において、昭和二十二年まで罰金については執行猶予制度がなかつた。又現在においても罰金にはあつても拘留、科料にはこの制度がなかつたということになつておるわけでございます。戦時中に統制なんかで罰金における執行猶予が必要になつて改正になつたのではないかと私は考えておりますが、ただ罰金の執行猶予につきましては現在の刑法の下におきましても、罰金の執行猶予中に又罪を犯して罰金になるという場合は可能でございます。それは今の刑法二十五条の刑の執行猶予の要件として「前ニ禁錮以上ノ刑二処セラレタルコトナキ者」こういうことになつておりますので、罰金を受けても禁錮以下でございますから、禁錮の刑ではございませんから、何遍でも罰金だけなら執行猶予ができるということになります。  それからこの案にこれを組入れた場合にどうなるかということを考えますと例えば体刑について現在これで不均衡だと思われます点は、体刑について執行猶予中に罪を犯したその場合に、一年以下の懲役或いは禁錮ならば、情状によつて執行猶予できる。ところが罰金の場合はできないという点は、前の執行猶予の刑が体刑の場合には、禁錮の刑が出たことであります。ただこの案のようにしてここに入れますと、体刑について執行猶予中に新たに罰金刑になつて執行猶予なつた。そうすると同時に保護観察を受ける。保護観察中の者については再度の執行猶予はできないということになりますと、前の体刑の執行猶予期間が切れてしまつて罰金についての執行猶予になつて保護観察中だ、その場合に又何か罪を犯して罰金になるという場合には何もなければ、触れていなければ現行法通り執行猶予は可能であるという関係になりまして、それを避けようとしまして、又それを立法的に避けようとすると込入つたことになつて、この案でもなかなかちよつと一般の人には理解しにくいような結果になつておりますから、そういう点も考え執行猶予制度趣旨といいますか、執行猶予のやり方が違うというような点も考えまして、その点不均衡な点と考えましたけれども、この案に組入れないような形をとつた次第でございます。
  81. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の御説明前段の、本来の執行猶予制度がどういうふうにしてできたかということの御説明の点は、現行の刑法二十五条に罰金刑五千円以下のこの罰金刑の場合がない場合にはこれは当つている説明だと思うのです。ところがすでにここに五千円というものが入つた以上は、少くとも懲役或いは禁錮よりも軽い刑として取扱われておる罰金刑が、本文については入つて、二項に落されているというのは、私はおかしいのじやないか。説明後段に当るわけですが、後段では今第二十五条の二の政府提出の原案で行けば、後段の二に引つかけての御説明があつたのです。併しこれはこういうこの法の関係から、逆に罰金刑は困るからといつて二十五条の第二項に罰金刑を入れておらないというのは、これは本末顛倒の議論じやないかと思う。むしろそれなら二十五条の二で、保護観察に付するが、罰金刑の場合はこの限りではないということをすれば、二十五条の本文に、昭和二十二年に罰金刑を入れた趣旨にも合致し、そうして又第二項に本来入れなければならんものが、落されておるのを補完をするのも意味通り、そうして二十五条の二の後段においては外す。こうすれば軽いほうの罪については軽い罪であるだけの措置が講ぜられ、彼此均衡が保てると思うのです。ところがまあ三度、四度このことを考えれば、或いはそういう事態があるかも知れませんが、少くともここに新らしく現われた条文から行けば、如何にも罰金刑が落ちているのは理窟が合わないように思うのですが、どうでしようか。又前と同じ御答弁なら、これは意見の相違ですからよろしうございます。
  82. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) その点もいろいろ考えまして、先ほど申上げました理由と、もう一つは、罰金の執行猶予が体刑と違つて非常に数が少く、それから執行によつて体刑ほどの影響といいますか、そういうものがないというような点を考え合せまして言つておる次第でございます。
  83. 楠見義男

    ○楠見義男君 それは私は罰金刑を認めると、それに対して執行酒予を認めておる現行二十五条の法文の趣旨から言うと、今の御説明は私は説明にならんと思うのです。これは又或いは専門家のほかのかたから更にして頂いていいと思いますが、その点は又あとにします。  もう一つその次に第二十六条ノ三の「前二条ノ規定ニ依リ」云々とあるのですが、私はこれは三条のミスプリントだと思つたのですが、どうなのでしようか。という意味は、第二十六条において当然「刑ノ執行猶予言渡取消ス可シ」と、こういうことになつておりまして、この一号乃至三号に該当する場合には、これは例えば一つの罪について執行猶予を受け、又他の罪について執行猶予を受けている。こういう場合の規定が第二十六条ノ主なのですが、併し二十六条の各号に該当する場合は、当然すべて執行猶予言渡取消さなければならんわけです。この二十六条ノ三で起る問題は、第二十六ノニによつて取消した場合に、そういうこの問題が起るのじやないかと、こういうふうに理解をしている。従つて「前二条」というのは三条のミスプリントじやないかと思つたのですが、これはどうなのでしようか。
  84. 長島敦

    説明員(長島敦君) 代つて申上げます。いろいろ例が実はあるのでありますが、一点だけ御質問の点を申します。例えて申し上げますと、今度の改正案によりますと、執行猶予が二つ併存する場合がございまして、甲罪についての執行猶予がございます。その期間中に又罪を犯しまして、乙罪につきまして執行猶予が付きまして、甲、乙二つ執行猶予が同時に併存しておる場合がございます。ところが、その段階になりまして、甲罪の前に丙罪で以て刑に処せられておつたということが発覚したわけでございます。ところが丙罪の刑の執行がすでに終了しておりまして、執行終了時から考えますと甲罪のほうは執行終了後まだ五年を経過しておらない、乙罪のほうはすでに五年を経過しておるということになつて参ります。そうしますと乙罪のほうは刑の執行終了後五年を経過した後の執行猶予でございますから、取消ができないわけでございます。ところが甲罪のほうは刑の執行終了後五年を経過していないうちに、執行酒予を言渡されておりますから、誤つた言渡しでございまして、刑法の第二十六条の第三号によつて取消し得ることになつて参ります。そうしますと、甲乙二つの執行猶予があるので、甲罪のみ取消し得て乙罪は取消し得ないという場合ができて参ります。そうしますと結局片一方の執行猶予取消しまして、実刑につきまして刑務所に入つております。その一方の刑は執行猶予ということになりまして、不均衡になりますので、かような規定を置いたわけでございます。まあこれは一例でございまして、二十六条の各号につきましてそれぞれ複雑でございますが、例が出て参りますわけでございます。
  85. 楠見義男

    ○楠見義男君 よくわからないのですが、要するに前二条はこれはミスプリントじやないということでよろしうございますか。
  86. 長島敦

    説明員(長島敦君) はあ、さようでございます。
  87. 楠見義男

    ○楠見義男君 わかりました。それからもう一つですね、第二十五条ノ二で、保護観察に付する場合に、例えば特別法違反の、選挙法違反だとか或いは罰金刑を言渡されたようなものについての罰金刑の場合はこれは二項内ですか。選挙法違反のようなものについてやはり保護観察に付す、これは犯罪者予防更生法ですか、あの三十四条の遵守事項を守らせて、保護観察に付するというか、そういう規定特別法の例えば選挙法のような場合についても必要があるのでしようか。
  88. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 一項前段のような場合において、どういう場合に保護観察を付けるかという場合を私ども考えまするのは、やはり保護を必要とする、身元保証人がないとか、保護者がないという場合に、この保護観察を付けるのであつて、必要のない場合には付けるべきじやない。こういうふうに存じておりまするから、お説のような場合に、立派な社会生活をしておるという人がたまたま何かのこと亀つた、そうして今後再びする虞れはない、何にも国家の保護を付する必要はないという場合には、私は付けるべきじやないとかように存じております。
  89. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちよつと条文でお伺いしたいのでございますが、私、七年が五年になりましたのですが、この五年というのが適当でございましようか。それはいろいろと御経験の結果だ思うのですが、もう少し短かくして上げるというようなことを考えられないのですか。
  90. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 七年を五年にした、三年がいいか、四年がいいか、二年がいいか、これには二年自体においても確たる理論があつてかくなければならんという理由はないと存じております。ただ五年というふうにして三年というふうにいたさなかつたのは、現在の裁判の進行状況というようなものを考え、又初めて最初の緩和でございまするから、この程度から始めて将来又実際の実情を見て又考え、漸進的に一つ緩和して行くほうがいいんじやないか、こういうような考え方で一応五年ということにしたので、末代五年でなければならんということは毛頭考えておりません。
  91. 赤松常子

    ○赤松常子君 それからこれの現行法と改正条文の対象表の中でお尋ねしたいのでございますが、第二十六条ノ二でございますね。その二項に「保護観察ニ付セラレタル者遵守ス可キ事項」というのがございますが、現在はどういうふうになつておるのでございましようか。私昔のことより知らないのでございますが、これは非常に手続きがやかましかつたり、却つてうるさかつたりというようなことになつているのじやないでしようか。
  92. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) この「遵守ス可キ事項」というのは、これは取消し事由になりますので、よほど慎重に考えなければならない。そういう趣旨もございまして、二十五条ノ二において「保護観察ニ付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」この遵守事項その他について、保護観察については単なる省令ということでなくして、法律できめるという趣旨で慎重にいたしまして、そうしてその法律というのは犯罪者予防更生法によることになつておりまして、その遵守すべき事項犯罪者予防更生法の三十四条の第二項でございまして、第三十四条の第二項には四つの事項遵守事項としてきめております。その一つは「一定の住居に居住し、正業に従事すること。二、善行を保持すること。三、犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。四、住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」こういうふうにいたしております。そうしてこれに反した場合には取消すべしというのではなくして、取消すことを得。而もそれは裁判所に申出をして裁判所本人並びに場合によつては弁護人も付けることができることになつておりまして、そうして十分本人の言い分も聞いて、そうして事情誠に尤もだという場合に取消す、単なる形式的な違反によつてすぐに取消すという趣旨では毛頭ございません。実情を調査の上でやる、そういうことでございます。
  93. 赤松常子

    ○赤松常子君 その次に、それでは保護司がこの観察をする大体の基準というものは、大体でよろしうございますが……。
  94. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) これも法律で書いてございまして、犯罪者予防更生法の三十五条と三十六条がその方法を書いております。三十五条のほうは、消極面で監督的な面でございます。これは保護観察に付されている者と適当に接触を保つてその行状を見守る。それから第二として、必要にして且つ適切と認められる指示を与えること。その他本人社会の順良な一員となるように必要な措置を採る。これが指導監督の方法として掲げてございます。  それから三十六条のほうでは、補導援護ということでございまして、教養訓練の手段を助ける。医療及び保養を得ることを助ける。宿所を得ることを助ける。職業を補導し、就職を助ける。それから環境を改善し、調整すること。六として、更生を遂げるため適切と思われるところへの帰住、帰ることの面倒を見る、助ける、その他本人更生を完成させるために必要な措置を採ること。  そうしてそのやり方の基準につきましては、第二条におきまして、相当な、必要且つ適当な限度において行う、そして本人々々について最も適切な方法をとりなさい、こういうことを、この法律の大方針の中にきめております。
  95. 赤松常子

    ○赤松常子君 わかりました。それからその次に、先ほど保護司の数の中で宗教者の別がございまして、私ちよつと仏教たものでございますから、これは仏教の人どキリスト教の人、いろいろあると思うのでございますが、私少し仏教者に反省を求めたりいたしたいと思うのでありますが、どのくらいございましようか。
  96. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 大体の保護司四万数千のうち四割がまあ宗教家であると見られておりますが、その内容においてどういうかたが多いということはちよつとわかりかねております。ただ各宗派に亙つておられる、それからキリスト教の方々もいらつしやるのであります。天理教のかたもいらつしやいます。又東京においては宗教補導家、宗教の保護司の会合等もございまして、いろいろと自分たちで又しつかりやろうという御気持でお互いに励まし合うという会合等もございます。
  97. 赤松常子

    ○赤松常子君 これはこの前のときも非常に心配してお尋ねしたのでございますが、約二万人の人が保護観察を受けるようにおなりになるだろうというので、それに対して手落ちのないようにタイアツプして、どういうことがなされなければならないかとお思いでしようか。それに対して九十三人の新らしい観察員を増すという程度でよろしいわけですか。
  98. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 勿論九十三人の観察官を採用して又訓練をしても到底足らないと思つておりまして、先ず保護司さんが本当にそれを引受けてやるという気持がなければならんと思います。仮出獄者社会更生を図るということは、一歩刑務所に入つたということのために、社会からいろいろの眼で見られて、本人も又ひがんでおる。いじけるという面がございまして、非常に労多くして効果がそれに伴わない。どうせ自分たちの手に廻るのならば、できることならば、刑務所に行かせる前に一つ廻してもらいたい、そういう観点から早くこういう制度を布いてもらいたいということを申して、大会その他の決議等において非常にそういうことを希望しておられます。そういうものを手だてといたしましてこの補導に要する費用等できるだけ余計見ております。そうして本人に必要なるものを与えるようにする。保護司の熱意とそれから官庁としての責任上若干の増員を図つて、そうして適正に行われるよう万全を期そう、こういう趣旨でございます。
  99. 赤松常子

    ○赤松常子君 私くどく言うようでございますけれども、本当にこの間犬養法務大臣に言つたんでございますが、何か一貫性がない法律の取扱い方があるのでございますね。私案に心配なんですが、これは衆議院のほうも附帯決議をお付けになつて、もつとこれに対してよき結果が上るようにという附帯決議を付けておられることは、私非常にいいことと思うのでありますが、もつとこれに対してでございますね。これに私大分賛成なんでございますけれども、これを本当に効果あらしめるために受入れる側にこういう予算措置をとつて、その網の目が張り得るということをもつと示してもらいたかつたのでございますが、その辺の御熱意はどうでございましようか。却つて保護司のかたが今要望されたというものの、実際は負担が過重されてお困りになるんじやないか、それが心配です。
  100. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 確かにこの保護司の負担は現実でも毎月殖えて参つております。家庭裁判所から来る人間が毎月殖えて来る傾向がございまして殖えておりますが、更にこの制度実施すれば殖えるという点、御心配下さる点、誠に御尤もと思います。私ども決しておろそかに考えていないのであります。十分これの万全を期したいと思つております。ただ保護司方々が非常に熱意を持つてつておられるし、又お互いのケースの件、最近はケースを中心にお互いに接触して研究し合うというようになつてつております。私どもとして予算の足らない代りというと誠に申訳がない、そういうつもりは毛頭ございませんが、精神的にできるだけ保護司の御労苦に報ゆるように努めております。藍綬褒章も毎年十人くらいもらつていられる。そういう気持保護司の報酬というものはそう言つちやあれですが、自分の気持、自分の良心で人を救つて、自分で心豊かな感じをお持ちになる、これが本当の報酬である、この経済情勢で実際に要する費用を御迷惑かけるのは誠に申訳ない、これは是非取らなければならない。これは報酬のためにお働きになるのじやない、これは天から与えるという、何から与えるか知りませんが、そういつた全く宗教的な気持から人類愛的なお気持からおやりになる、それは本当の奉仕である。それで予算の面につきましては逐年増加をいたして参つておりますが、まあなかなか刻下の経済情勢等もございましようし、思うに任せないのであります。今度の機会等におきましてこういつた新らしい制度によりまして予算を又来年度は十分頂戴するように、取るように努力する。又国会方面のお力によつて取りたい、かように存じております。
  101. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一つ、私保護司考え方に根本的にもう変えるべきじやないかと思うのです。そういう篤志家に頼るべき段階じやありませんで、本当に人格識見を裏付けとしたものが必要でございますけれども、もつと科学性のある技術を身におつけになる近代的な一つ社会事業の一端を担つていらつしやれるような人を作るということが、根本的にこういう観察制度に携つておる人の養成を考え直すべき時期じやないかと思うのでございますが、そういう点に対して本当に御研究もなさつていらつしやると思うし、又御希望もあると思うのでございますが、もつとそれを社会にも周知せしめるように、又そういう気運を盛上げるように我々にも教えて頂きたいと思つております。この保護観察制度の革新的な一つの体系を立直すという時期ではないかと思つております。その点どうぞお願いいたします。
  102. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと伺いたいのは、第一条の二十五条二号中に云々の次の先に「禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトアルモ其執行ヲ猶予セラレタル者一年以下ノ懲役又ハ禁固ノ言渡ヲ受ケ情状特ニ憫諒ス可キモノアルトキ」又同じ執行猶予ができる。そうすると一年以下の懲役又は禁錮に限るのだから、そうすると例えば一年六箇月とかいうことになれば、もう如何に情状酌量すべき点があつても二度執行猶予ということはできんことになる。そこでこの刑法の法文をくつて調べて見ると、つまり刑法の六十六条、六十七条によつて犯罪の情状憫諒すべきものは酌量してその刑を減軽することができる、そうして六十八条によると、懲役若しくは禁錮の刑期を減ずるというのは二分の一を減ずるんだ、そこで法定刑が三年以上の刑というのは殺人、強盗、放火、溢水、それから通貨偽造、文書偽造、強盗強姦、これだけに限る。これを情状酌量して一等を減ずる、禁錮を減ずるというと半等分になるから一年六箇月、強盗は五年以上だから二年六箇月、放火も五年以上だから二年六箇月、それから強盗強姦は七年以上たから三年六箇月ということが最低になる。通貨偽造は三年だから、これを減軽すれば一年六箇月、それから通貨偽造と殺人と溢水、刑法百十九条、これたけ三つのやつは三年以上だから、情状酌量によつて一年六箇月になるが、この三つの中で最も私が関心を持つのは、殺人のいわゆる三年を半分にすると一年六箇月になる。この殺人はどんなに情状酌量すべき点があつても一年六箇月よりほか下らないのですからして、これはもうこの法の恩典に浴しないということになる。そこで先に何か軽いちよつとしたことで禁錮以上の刑に処せられて罰金になつておる。今度はその期間内に嬰児殺しをやつた。自分の娘が正式の結婚でない男女の交際によつて妊娠した。どうしてもこれを生めば家庭に疵がつくし、この娘の将来のためということを思つて、思い余つて母親が娘に加勢してその生まれ落ちた嬰児を殺した。こういうような場合、若しくは、子供が非常に親不孝であり、その親不孝であるのをその兄弟がどうも見るに忍びずして親不孝の兄弟を殺したというようなときは、これは先に執行猶予とかいうようなものがないときにはこれは普通には執行猶予になる、第一回の犯罪は……。ところが、先にちよつとした何かのことがあつて執行猶予にはならなかつたということになつて来ると、これは執行猶予の恩典に浴することはできんということになるのだが、こういうようなやつを何とかして「一年以下ノ懲役」とあるのを「一年六箇月以下ノ懲役」ということになつて来ると、一年六箇月以下で執行猶予になるのだが、その点はどうなんですか、あなたがたのお考えを十分に一つお聞かせ願いたい。
  103. 長島敦

    説明員(長島敦君) 酌量減軽のほかに、法律上減軽のできるものとして例えば未遂或いは自首、そういつた場合に又半分まで下るというのはかぶつて来るものと私は考えております。従いまして殺人未遂のような場合におきましては、この場合で情状酌量して刑を裁判所が低くすれば、この恩典を受けることができます。それはそれといたしまして、さつき一年がいいか、一年半がいいかということにつきまして、私どもこの案を考えました者として考えましたのは、現在執行猶予が無条件であつて過半の者が無事故で終つておるというのは、いろいろな事情がございましようが、それは一つにはもう一度やると今度は実刑を科せられるというようなことが一つは影響しておるのではないかというような点も考えまして、再度の執行猶予をするということは、これまでにない画期的のことでもございますし、軽微な事犯について試験的に実施して、その成績によつて又この制度運用方法考えて行くということが適切ではないかと考えた次第であります。なお近頃の執行猶予運用がやや緩に失するのではないかと心配する向きもございます。現に執行猶予取消率から申しますと、戦前はおおむね八%程度でございましたのが、最近は一七%、一八%に上つておる。而も罪名別に見ますると窃盗が一番多く二七、八%、強盗が二三%、恐喝は三〇%にも達しておるというようなことでございますから、このような傾向を考えますときに、余りに最初からその可能性を広くするということが一面において先ず弊害の点も考えられるのではないか、かような点から一応この案としましては一年以下の言渡し刑ということにいたした次第であります。
  104. 一松定吉

    ○一松定吉君 刑法の二十五条によりますと、御承知の通り三年以下の懲役若しくは禁錮であつて、そうして情状によつて刑の執行猶予ができるね。三年以下の懲役若しくは禁錮には執行猶予ができるね。ところがこの改正案は一年以下程度でなければいかんのだ、一年以下でなければ……。執行猶予は原則としては三年以上の懲役若しくは禁錮に初めて執行猶予ができるわけだ。ところが前にちよつとした何か極く軽微なことを犯しておると、起訴猶予にはされない。起訴はされたわ、実刑は科せられるわというようなことになる。前に、「情状憫諒ス可キモノ」があるというので、先に執行猶予なつた。ところがそういうような者が一年以下の二度目の言渡し刑には執行猶予ができるのだね。先に執行猶予を受けておいて、その執行猶予を受けた者であつても、今度二度目に一年以下の懲収又は禁錮の言渡を受けるときには執行猶予ができる。それならば結局執行猶予というものは、先に執行猶予の前科があつても一年以下の前科があるときには執行猶予ができるのだが、ところが今度は今言う通り非常に情状酌量すべき余地がある。そうして今まで殺人とかいうような、そういうことではなく、極く軽微なことで執行猶予になつてつた者が今度は殺人をした。而もそれが嬰児殺し或いは非常に親不孝な者を兄弟や親戚がそれを殺したというようなときにはそれは法律的にいつて、情状酌量すると三年以上の懲役だから一年六箇月、僅かに六カ月の間の期間があるがために、この嬰児殺しとか不孝なる子を殺したというときに執行猶予できんということも、どうも執行猶予を与える精神から言つて少し私はどうかと思うのですが、これはその強盗だとか、或いは放火だとか、或いは通貨偽造だとか、或いは文書偽造だとかいうようなものならば、これも同じく三年以上で、半分の一年六箇月になつても、情状酌量というようなことは、嬰児殺しだとか不孝な子供を殺したというようなものと比べて情状酌量すべき事情というものはどうかというと、少いと思うのですが、この殺人だとか、不孝なる子供を殺したというようなやつについてはよほど情状酌量すべき……これは殺さなければならんのだ、又殺すのも止むを得んだろうというようなことがよくあるね。これが僅かこの法文の規定によると一年以下ということになると入らんのだが、これは何か入れては悪いという特別な事情があるのか、ただ一年六箇月という年数によつてきめたのか、そこはどうかね。
  105. 長島敦

    説明員(長島敦君) 最初執行猶予が三年以下ということで、殺人でも強盗でも執行猶予になる。その期間中に又殺人をしたという場合でも執行猶予にしてもかまわないというようなこともあり得るわけでございます。今の一年半ということもいろいろなことを考えまして、結局考えましたのはどこなければならんという基準は理論的にはつきり出ていない。個々の事件について気の毒な場合もありましようけれども、強盗でも必ずしも全部が悪いとは考えない。いろいろな酌量すべき事情もあるでしよう。結局考えました筋合いといたしましては、今までにない制度を布くのであるから、一応試験的にこの程度で行こうという考え方、それから重罪というものが一つのけじめになつておる。二度目の執行猶予であるから重罪、而も重罪を言渡し刑にして一年以下ということにすれば、重罪とても或程度のものは事情によつて酌量減軽に入る。或いは外国の立法例に見ましても、ドイツの刑法、或いはスイス、イタリア刑法等執行猶予は一年以下の言渡し刑に限つておるというような例等もございまして、先ず出発においてはこの程度にして、その結果によつて一つ結果なり状況なりを見て又考えるというふうにしたほうが間違いないのじやないか、こういうように考えた次第でありまして、お説のような事例もあるかと思います。
  106. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は執行猶予が二十五条によつて三年以下の懲役だから、殺人は三年以上ですから、三年なら入るね。情状酌量でも一年六箇月だから、当然殺人でも執行猶予になるね。二度目に殺人をした。而もこの前の執行猶予は極く軽いものであつたというようなときには、この「一年以下」というのを「一年六箇月」にすれば、三年の半分は一年六箇月となるから、入る。さつきあなたのおつしやつたように、未遂は法定で半分に減るのだから、三年が一年六箇月になる。そうしてその上に情状酌量すべきものがあれば又減るから殺人も入る。自首もその通りです。罪一等を減ずるから三年が一年六箇月になる。情状酌量すべきものがあれば又減る。殺人でも未遂か、自首であればこれは情状酌量すべき場合がある。そうするとこれは入るのだが、あなたのお話のように、先に執行猶予を与へ、又今度与えるというふうに、一応この程度でやつてみようじやないかということなら何も不備はないが、これは将来私は考えなければならんものじやないかと思います。ただそれだけの意見を申述ぺておきます。  それからこの前伺つた保護観察というのは、この制度は必ずしも悪いとは言わないが、この制度は昔の監視というようなことがあつて、そうして警察官がその監視される人の宅を毎月一遍訪問するわけであります。その監視される人は毎月警察に判を捺して持つて行くというようなことをしていた。前科を恥じて秘しておつたのが、やけくそになつて又やるということで廃止せられたが、今度は警察が関係せんで、いわゆる保護司というものがこれを保護観察するということになつて制度は進んでおるが、やはりこの前のように保護司が余り出入りしたりするというと、やはりそういうようなことを恥じて改俊の道に進むことができないようなことになりはせんかと思うが、もう少し何か具体的にそういうような弊害の起らないようにする方法は何か考えておりませんか。
  107. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護司は警察とは違つて、大体顔ぶれから申しましても、只今申上げまして重ねて又申上げるようになつて恐縮ですが、四割くらいが宗教家で、二割くらいが教育家ということになつておりまして、又その気持は、世間から相手にされない、爪弾きされておつて気の毒だから自分たちが力になつてやろうというようなかたがおやりになつておることでございます。やり方につきましてもできるだけそういう点に十分に注意して頂いておりまして、接触等に当つても注意をして、そういうように世間から変に見られるときにはわざと人の目につかないように会うとか、そういうふうに十分注意をしてやつておられます。なおそういう点はこの制度が却つてふためになるという結果になりますから、実施におきまして十分注意いたしたいと思います。
  108. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは如何いたしましようか。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  109. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会