○
亀田得治君 私は今回の
刑事訴訟法の一部
改正に、
結論として
反対をいたします。でその
理由といたしましては、大きく申上げて
二つのことを申上げたいと考えておるのです。
でその
一つは
手続上の問題になろうかと思いますが、今回の
改正案が出されるに当りまして、成るほど
政府は
法制審議会をはじめ、いろんな
関係方面の
意見を徴されたこういうふうに私
ども承わ
つておりましたが、併しそれらの
意見が十分に調整されておらない。そういう状態でこれが出されて来たことは、もう
審議の
経過を見ても極めて明白だと考えております。でそういうことの結果が、私は今までの
法律案で殆んど
前例を見ないような大
修正を
国会で行わなければならないような結果に
なつたものと実は考えております。でこういう
刑事訴訟法というものは、これは誰が考えましてもそう簡単に手を加えていいような
法律ではございません。非常に基本的な
法律でございます。
国家の
裁判権とか、
捜査権とか、或いは
国民の基本的な
人権、こういつたようなものがここに集約されて来ておるような極めて大事な
法律なんですね。そういう
法律の
改正に対しまして、非常に
意見が統一されないままに、そうして又いろんな
考え方が余り消化されないままに
提案をされて来た。私はまあこのことだけから見ても随分遺憾であると実は考えておるのです。而も
審議の
経過においてこれだけの大
修正があつたということになりますと、
政府が当初意図しておりましたところの
目的、考え、これは何かあつたと思うのです。それが殆んどずたずたに切られたような恰好に実はな
つておるのです。で私はこういう
刑事訴訟法の
改正というようなものは、決して一日を争うような問題ではございません。どこかに水害があ
つて、すぐ
補助金を持
つて行かなければ大変なことになる、そんな問題では決してございません。私はそういう
意味から言いましても、こういう
審議の
経過を辿
つて来た場合には、
賛成、
反対、
内容に対する
賛成、
反対といつたようなことは少し第二段といたしまして、
政府が
法律の取扱いについて慎重に考え直す、これが私当然ではないかと考えておるのです。こういう
刑事訴訟法というような
法律は、やはり各
方面の御
意見が消化されて、よく
一つにな
つておらなければ、これはもう成立したのちにおきましても、非常な無理が出て参ります。私はそういう
意味からも、どうもこの急いで無理やりにこれを通してしまうというふうな、実は感じがしてならないわけです。そういうふうな
立場から、
内容の問題を一応離れましても、もう少しこれは慎重におやりにな
つて、いろいろな
方面の
意見を調整されてからで十分結構ではないか。こういうふうな考え、これが第一の
反対の
理由でございます。
それから第二の問題は、この
法案の
内容でございますが、随分必要以上に
国民の
人権を拘束するような
規定がたくさん生れて参
つております。これは当面のいろいろな必要というふうなことが、絶えずそういう場合に
政府側から
説明をされて来ておりますけれ
ども、
国家というものはもう少し大きな
立場でいろいろ問題に臨んで行く必要があろうかと実は考えておるのです。そういたしませんと、当面の現象にとらわれまして、結局は何といいますか、それ以外の
一般の
国民大衆にも迷惑を及ぼすような事態が、少し時世が
違つた場合には出て参ることを、私
どもはより一層実は
心配をいたしております。そんな、現象的に、こういう問題があつたからこうだとか、そんなことで、
めつたにこういう大事な基本的な
法律に手をつけてはならない、こういうふうに実は考えておる次第でございます。でそういう
立場から見ますと、例えばこの本院においては
修正案が出ておるのでございますが、二百八条の二の
規定ですね。これはまあ
原案と、
衆議院の
修正案と、それに対して更に
参議院で出されておる再
修正案、これらを比較いたしますると、その間にいろいろ
長所欠点はございます。併しながら
衆議院が
通り、更に
参議院をも通ろうとしておる案を見ましても、明らかにこれは特定の
被疑者に対しまして
差別待遇をや
つておる。私はこれは大変重要な問題だと考えております。そういう
差別待遇という点だけを取上げて考えてみますると、むしろ
政府原案のほうがよほど
立法者としての筋が
通つているのじやないかというくらいに実は考えるのでございます。まあこれは
一つの例でございます。
ほかの各条についてこれは時間の都合もございますから一々触れるようなことはいたしません。勿論この
内容的に見ましても、まあ中には私
どもとして非常にいい
改正だ、こういうふうに実は考えておるものもあるのでございます。それの最たるものは、百九十九条の第二項これが
衆議院で適当な
修正案が出されまして、そうして本院に廻
つて来て、更にそれに対してよりよい
意見が附加されようとしておりますが、これなんかは、従来の
逮捕状の濫用の問題に対しまして随分
憲法の精神にふさわしいところのいい
考え方をここに打出して来た。私はこの点の
改正は、これは随分画期的な
改正だと実は考えている、このためには最高裁なり
関係者が今までとは
違つた一つ考え方を持
つて、そうしてこの新らしく生れて参りました
逮捕状の
必要性に対する
裁判官の判断、この問題に対して
一つ大いに取つ組んでもらいたい。そのためには来年度の
裁判所関係の
予算案を作られる際には、
予算面からもその裏付けをしてやるように、それぐらいの
一つ積極的な
態度を以
つて臨んでもらいたいと考えておるのでございます。
まあそのほかにもいろいろございますが、悪いところを代表的に申上げた
関係上、これはいいところも
一つだけ申上げる
程度にいたしておきたいと思うのです。ただ全体を比較してみますると、
現行法に比較いたしましてやはり
政府の
原案が一番悪かつた。それに対して
国会で加えたところの
修正、これは
政府の
原案に比較いたしますならば随分よく
なつたと私
どもは確信をいたしますが、併し
現行法に比較いたしますると、相当悪くな
つておると実ぱ感じておるのでございます。併し
内容の点の評価につき本じては、これはいろいろものの見方もあろうかと存じますけれ
ども、
最初に申上げましたように、その
内容の問題と同時に、余り、にも
意見が調整されないままにある現状におきまして、そうしてこれを通し行こうという、そういう
手続的な、非常な、何といいますか
聞違つた点、そういう点も併せ考えますると、この
現行法の
改正につきましては、我々
左派社会党といたしましては
反対せざるを得ないと、こういうふうな
結論に相成るわけでございます。(「進行」と呼ぶ者あり)