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政府委員(戸田正直君) お答えいたします。只今
人権擁護局が発足して以来、機構の整備と比例して数がかなり侵犯
事件の取扱件数が殖えて来たことは、お説の
通りであります。その理由として、只今亀田先生から申された、今まで
人権を侵害されても、どこへ持出していいかわからなか
つたものが、
人権擁護局というものができ、又地方に地
方法務局それに
人権擁護課、地方
人権擁護委員制度というものがあるということを国民が知
つて来て、これを侵犯
事件の救済を申入れたというような例が殖えた理由だと存じております。それで決して従来より
人権侵犯
事件というものが、戦後急に殖えたのかどうかということなんですが、これは私、実質的にはそう殖えたとは
考えられない。今申上げたように、今まではどこへ持ち出してもいいかわからんでお
つたものが、
人権擁護局というものが、或いは
人権擁護委員というものが存在している。その場合どうも泣寝入りしてはいけないのだ、先ずみずからの
人権をみずから守らなければならん、泣寝入りすることが、いわゆる封建的な
考え方なんだということを
人権擁護局、各法務局、
人権擁護委員が協力して、かなりの啓蒙活動をいたして参りました。その数字等はお届けしました
人権擁護局の活動状況の中に書いてございますが、こうした啓蒙活動が相当効果を挙げたのではないか。従来ならばもうそのままにしておく、例えば警察の例を取上げても、どうも警察の問題を持出すことは、あとがこわいというようなことを従来
考えてお
つたものが仮にあ
つたとしても、そういうことはもういけないのだ、先ず自分から努力して、
人権を守らなければいけないのだということが大分わか
つて来たのではなかろうか。そういうことが、実質的な数が殖えたのじやありませんが、届出の件数というものがその結果殖えて来たんだというふうに
考えております。それから
委員の数が殖えた割には
事件が殖えておらないというお説なんですが、これはどうも
委員の数と
事件が並行して行くというわけにも参りませんので、
委員の数が仮に百に殖えた、従
つて事件もそれに比例して殖えるというわけには、これは参りませんので、で、現在のところで侵犯
事件としては大体或る
程度のところまで、決して泣寝入りせずに持出して来ておるんではなかろうかというふうに
考えておる次第でございます。
それから今の
人権擁護局の予算機構等が貧弱だ、これでよろしいかどうかというお説なんですが、これにつきまして御参考までに申上げたいんですが、
人権擁護局の現在の職員、これは
局長から給仕に至るまで全部入れまして僅かに十四名、当初は二十四名でありましたが、その後行政整理によりまして二十名になり、更に十四名というふうに整理の関係上減らされて参りまして、現在はそうした僅かの職員でや
つております。それで一課、二課、三課とありまして侵犯
事件を取扱
つておりまするが、これは第二課でや
つております。それから啓蒙活動等の仕事を第三課でや
つておる。一課は
人権擁護委員会制度の運営と、その他の庶務的な仕事をするというようなことにな
つておりまして、三課で十四名という極めて僅かな人数、又各地方における、地方機関である法務局或いは地
方法務局におきましても、実情を申上げますとこれは僅かの数でありまして、大体地
方法務局では二、五名ぐらいの職員かと思います。法務局において又大体多いところで十名ぐらい、中には専属でなく、登記とか、供託とか、戸籍等の仕事を兼任しておるものが各地にかなりございまして、大蔵省から認められております予算人員としては五十六名かと存じました。五十六名にな
つておりますが、実際の職に携
つておりまするのは大体百五十名か六十名ぐらいかと存じておりますが、さような僅かの人員と、それに伴
つて予算も極めて僅かでありまして、さような機構で仕事をいたしておりますが、従
つてこの
程度で万全な策とは毛頭
考えてはおらないのであります。
それから
先ほどお説のありました局を課にするという問題が、多分昨年でございましたか、事実その問題が起きまして、衆議院は課に縮小することに通過いたしました。参議院におきましてこれが修正されて現在のままに残
つたといういきさつでございます。その内容についてということになりますと、私も実は詳細なことを存じておりませんし、又そう内輪の話も
ちよつと申上げにくいのでございますが、御承知の木村
法務大臣のときに、この局を課にする問題が出たことは御承知の
通りであります。これは木村大臣のその当時のお
考えとしては、
人権擁護の仕事というものは、本来民間においてやるべきものだという
前提から、
日本弁護士連合会、いわゆる弁護士というものの本来の使命というものは
人権擁護ということが弁護士の使命でもあるし、又弁護士は長年そのために闘
つて来た経歴を持
つておる。従
つて弁護士連合会がこの
人権擁護の仕事をやるべきであ
つて、
人権擁護局としては局を課にしても何ら差支えないというようなお
考えであ
つたように承知いたしておりますが、さようなことでございましたが、
先ほど申上げたように参議院としてはやはり現状
通り局として、これを小さくするということはよろしくないという
考えで御修正にな
つて、これは現状にとどま
つた次第であります。ただ
人権擁護局長としての私の立場からは申上げにくいのでありますが、これは私の立場からすれば大きくいたしたいということは言うまでもないことでありまして、又この機構がこのままでいいとは私自身は率直に申上げて、
考えておりません。
人権擁護という困難にして非常に重大な、而も又歴史の浅い、国民に非常に重大な影響を与えるこの仕事というものは、もつとそれに即応できるような機構を備えなければならんものだということは私自身としては十分
考えております。又
政府としても従来のこの機構で万全な策だとは
考えているわけでございませんで、
人権擁護のために更に適切な方策を十分研究して、
政府の
人権擁護の機構及び施策を強化いたさなければならんものだというふうに
考えております。