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政府委員(粟沢
一男君)
航空機抵当法案の概要について御
説明申上げます。
第一にこの
法律の
制定の
目的でございますが、第一条に
規定しております
通り、
航空機抵当制度を創設して、資金調達を容易にし、も
つて航空の発達を図るということであります。
第二に、
航空機抵当権の意義及び性質についてでございます。
航空機抵当権は、物権即ち一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利でございますが、
民法に定める物権ではなくして
民法第百七十五条によりますところの他の
法律、即ち
航空機抵当法によ
つて創設せられる物権でございます。抵当権は、
民法第三百六十九条第一項に
規定いたしておりますように、債務者又は第三者が、占有を移さずして債務の
担保に供した
目的物に対しまして、抵当権者が他の債権者に優先して、自己の債権の弁済を受ける権利でございますから、本
法案第四案におきましても、
航空機抵当権につきまして
民法と同様な
内容を
規定したのでございます。
第三に、
航空機構当権の設定についてでございます。第二条及び第三条は、
航空機抵当権の
目的となり得る
航空機は登録を受けた飛行機及び回転翼
航空機に限ることを
規定したものでございますが、登録を受けた
航空機にいたしましたのは、抵当権の公示方法といたしまして、航空法に
規定する
航空機登録を利用します
関係上、同法による登録を受けていない
航空機は公示の方法がないからであります。
なお、第二十三条で質権の設定を禁止いたしましたのは、
法律関係の錯綜を防止いたしますとともに、質権の設定によりまして
航空機の使用を休止し又はその効率的な使用を阻害することは社会的、経済的見地から望ましくないという観点からでございます。船舶抵当、自動車抵当におきましても同様の
趣旨で質権の設定を禁止しております。
第四は、抵当権の
効力についてでありますが、
航空機抵当権は、その本質におきましては
民法の抵当権と何等異るものではございませんので、第四条の「抵当権の
内容」、第六条の「抵当権の
効力の及ぶ範囲」、第七条の「不可分性」、第八条の「物上代位」、第九条の「物上保証人の求償権」、第十条の「抵当権の順位」、第十二条の「
担保される利息算」、第十五条の「代価弁済」、第十六条の「第三取得者の費用償還
請求権」、第十八条の「一般財産からの弁済」等につきましては、
民法の抵当権に関する
規定と同様に定めたのでございます。
ただ抵当権の実行に関する第十九条及び第二十条の
規定についてでありますが、航空法第八条第一項第三号の場合のまつ消登録の原因は、抵当
航空機の登録
要件の欠如でございまして、例えば所有者が
外国人と
なつたというふうな場合でありまして、この場合には、物上代位権の行使が困難となる虞れがございますので、抵当権者の
保護のために特に
規定したものであります。
第五は、抵当権の処分でございます。
担保物権の附従性から申しまして、抵当権は被
担保債権と共に移転すべきものでありますが、被
担保債権の弁済期が比較的長期なものでありますときは、抵当権者にとりましては、弁済期前に抵当権を処分しようという必要が生じて参ります。第十三条及び第十四条はこの抵当権の処分について
規定したものでありまして、
民法第三百七十五条及び第三百七十六条と同様な
規定でございます。
第六は、第十七条の共同抵当に関する
規定であります。債権者が同一の債権の
担保として、数個の
航空機の上に抵当権を有します場合には、この共同抵当権者と次順位の抵当権者との間に、複雑な利害
関係を生じますので、これを調和せしめまして、
航空機の
担保価値を最高度に発揮せしめる必要がございます。第十七条は、右の共同抵当の場合の代価の配当に関する
規定でありまして、
民法第三百九十二条及び第三百九十三条と同様な
規定でございます。
第七は、抵当権の消滅でございます。抵当権は、被
担保債権の消滅、競売の完結、代価弁済(第十五条)、混同(
民法第百七十九条)、
目的物の収用等によ
つて消滅するものでありますが、第二十一条及び第二十二条は抵当権の消滅に関します特殊の
事項を
規定いたしましたものでありまして、これも
民法第三百九十六条及び第三百九十七条と同様な
規定でございます。
最後に、
附則につきまして御
説明申上げます。
先ず本法の
施行期日を公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日といたしました。これは、一般に周知徹底させますと共に、
航空機登録の切替整備等本制度の実施のために相当の準備
期間を要するからでございます。
第三項は、国税徴収法によりまして
航空機を差押えた場合には、収税官吏は差押の登録を運輸省に嘱託することを
規定したものでありまして、
航空機登録についての公示原則の確保を期したのでございます。
第四項は、
航空機抵当法によります
航空機抵当を社債の物上
担保とする途を開き、航空事業者等のために多額の資金確保を図りますために、
担保附社債信託法の
改正を行
なつたのであります。
第六項は、航空法の
改正に関する
規定でありますが、本法によりまして
航空機抵当制度を確立いたしますためには、其の基礎条件たる公示制度の確立と
航空機の同一性把握の確保とを期する必要があるのであります。よ
つて航空法の一部を
改正いたしまして、飛行機及び回転翼
航空機の所有権の得喪及び変更は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができないことを定め、又
航空機抵当制度の基礎条件であります
航空機の同一性の認識を容易ならしめるために、運輸大臣は新規登録を受けた飛行機又は回転翼
航空機に職権を以て登録記号を打刻することを
規定したものであります。
以上によりまして、
航空機抵当法案の概要についての御
説明を終ります。