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1953-07-23 第16回国会 参議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十三日(木曜日)    午前十時五十七分開会   —————————————   委員の異動 七月二十二日委員有馬英二君及び泉山 三六君辞任につき、その補欠として深 川タマエ君及び谷口弥三郎君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     川村 松助君    理事            木村 守江君    委員            大谷 贇雄君           大野木秀次郎君            剱木 亨弘君            谷口弥三郎君            吉田 萬次君            高橋 道男君            安部キミ子君            相馬 助治君            長谷部ひろ君            須藤 五郎君   国務大臣    文 部 大 臣 大達 茂雄君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    田中 義男君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君   事務局側    常任委員会専門    員       工樂 英司君   —————————————   本日の会議に付した事件教育文化及び学術に関する一般調  査の件  (文部行政基本方針に関する件)   —————————————
  2. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は法案審議に先立ちまして、一応の大達文相文教に対する、政策に対する一般質問を少し試みて、今後の法案審議参考にいたしたいと思います。  第一、去る三日当委員会におきまして荒木委員質問に対しまして文相が話された中に、教育内容改善という問題があると思うのです。1教育内容改善をしたい、その理由は今日の実情に即してという言葉が述べられているのでありますが、この今日の実情という、その点をもう一度詳しく説明して頂きたい。
  4. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今日の実情に即するということはどの場合でも通ずる言葉でありますが、先日申上げましたのは主として職業教育技術教育、これについて充実改善が行われるように教科内容改善したい、それが現在の社会的な要請に応えるゆえんである、こういうふうに申上げたと記憶しております。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると職業教育技術教育改善したい、要するに教育の性格、そういうものに対しては文部大臣言つているのじやないですね。
  6. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 無論教育内容改善刷新、これは今日の社会的事情、これに即応して考える、これを通じて今日の社会的事情考え教育内容改善をいたしたい。当時申上げましたのは、こういうふうに申上げたと記憶しておるのであります。終戦後の教育改革基本はこれを堅持する考えであるが、その内容等において実情に適応しないものは、今後慎重にこれを研究して必要なる修正を加えて充実を図りたい、こういうふうに申上げたかと記憶しております。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 その適応せざる内容という問題を私は伺いたい、どういう点が今日の事情に適応せざる内容であるのか、それをどういうふうに適応さすように変更しようというのか、そこの点をお伺いしたい。
  8. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) これは過日申上げましたように、今日の我が国の現情から見まして、我が国再建の基礎になるべきことは国民道義高揚であり、又国民愛国心が振起せられるということが根本である、かような実情に鑑みて、一層道徳教育、或いは歴史、地理に関する教育徹底を図りたい、これが今日教育内容として、この点においてまだ十分でないと考えるから、それを改善して行きたい、又職業教育についても今日の時代要請に鑑みて、我が国経済再建という要求から見て、この際職業教育或いは技術教育というものを充実すべく教科内容改善したい、こういうふうに申上げたつもりであります。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 その通り私も拝見したわけでありますが、この道義高揚の問題に関しまして、吉田総理施政演説道義高揚をやはり言つておると思うのです。勿論道義高揚は必要だと思います。ところがその道義高揚を問題にしておる当政府におきまして、岡崎外相初め福永幹事長が大きな選挙違反の疑惑を持たれて問題になつておる、特に福永君の選挙区におきましては浦和でありましたか、市会議員が多数検挙されて市会すらも開けない状態にあり、又その一人は自殺をしたという結果が出ておる、こういうような状態の下に道義高揚を叫ぶこと自体が私には片腹痛いような気がするのですが、こういう問題に対して大連文相はどういうふうな感想を持つておいでですか。
  10. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) これは今の内閣の閣員の中に何といいますか、選挙のときに運動者の中に選挙違反容疑者が出た、そういうことと、文教当局として国民道義高揚を強調するということは、これは別問題であろうと思います。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 冗談言つちやいけない、そんな道義高揚のし方はない、その別である意見を伺いましよう。
  12. 安部キミ子

    安部キミ子君 関連質問です。先日内灘現地のほうへ視察に参りましたときに、御承知のように内灘基地の問題は婦人が中心になつて非常に抵抗して参つております。参議院のほうへも婦人の代表が来られまして、岡崎外相、緒方副総理に最初約束した四カ月というあの約束は嘘であつたか、政府内灘の村人を欺したと、こういう抗議に参りました。私どもはそばで聞いておりましたが、先日現地での話では、現地子供嘘つきということの表現を政府だと、お母さんが何か誤つて嘘でも言いますと政府政府だと言うそうです。子供たちの間でも嘘をつく子があると、こいつは政府だ、嘘つきだという言葉の代りに、政府だと、こう言うのです。私はこの言葉を聞きまして、本当に歎かわしく思うのでございますが、こういうふうな問題と、今あなたがおつしやいます道義高揚とはどういうふうな方法で解決したらよろしいのでございますか、御説明して頂きたいと思います。
  13. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今具体的な内灘の問題については政府が地元の人人に対して嘘を言つたとか言わんとか、これは私は実際よく存じませんが、それがそういうことがあつて、これはいろいろ政府に対してはその施策に対して御批評があるということは、これは当然であります。殊に主義主張を異にせられる在野政党から見ればあきたらん点がたくさんあると思います。併し政府に対する批評、批判ということと、文教当局として国民道義高揚しなければならんということを言うということは、これは別問題でありまして、内灘で何かトラブルが起つた、そのたびに今まで道義高揚言つてつたのを止めなければならんとか、そういう種類のものでないと私は思う。
  14. 安部キミ子

    安部キミ子君 只今大臣のおつしやいますことを聞きますと、政治はどのようにあるべきか、いわゆる私ども基本的な人権を守るため、即ち教育そのものは真理を追求するということにあると思うのです。そういう基本に立つて道義も確立されなければならないと思う。先ず人権を認めるとか、悪いことをするな、とかいうことも、そういうことから始まると私はこう思います。そういう点について政治がそういうふうに、私が社会党だからとか、或いは立場が違うとかおつしやいますけれども、現場の人たち社会党であろうが改進党であろうが自由党であろうが、現に自由党の一部でさえもが本当に日本国民を愛しておる、アメリカさんがああいうふうな立場日本人を追込まれるということは非常に困ると、これは私はどの政党立場といえども本当に日本国民であれば当然の感情だと思う、国民感情だと思うのです。それが今政党立場だとかおつしやいますけれども、そういうことを言いますと、今の教育が二つにも三つにも分けられなければならなくなると思う、それでは私はいけない。(「その通り」と呼ぶものあり)やはり基本的なものは一本でなければならないし、そこの立場に立つてやはり私は政治をなさるかたたちのお考えが、私は実践を通じての教育に結び付かなくちやならないのじやないかというふうに考えますが、如何でしようか。
  15. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私の申上げていることは、言葉が不十分であつたかと思いますが、私が申上げた意味は、今まで例えば国民道義高揚することが大切である、従つて学校における道徳教育というものを充実徹底させることが大切なことである、これはその事柄について、これはいいことか、悪いことか、賛成ができるかできんかという立場で御批評頂くべきものであつて、ただ今の内閣ではほかにいろいろ非難を受ける点があるから、さようなものはこういうことを言う資格がないというところまで話が進めば、これはまあ御批評でありまして、私ども答弁範囲ではないと思う。私は道義高揚道徳教育徹底ということは、そのこと自身について、その当否についてお考えを頂くべきものであると、かように思う。
  16. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はあなたにこの質問をしたのは資格がないということを言つたのは、そういう点を言つておるのじやないのです。私のこの質問に対してあなたはこの事実をどう思うかということに対して率直に大変遺憾だと思います。という答えをすべきだと思います。あなたがそれをそらして、これとこれとは別個という答弁をするところに僕はこの道義を叫ぶ資格がないと言いたい、若し遺憾だと思うならば道義を主張する内閣がこういうことは遺憾だということを率直に僕は申すべきだと思う。それを言わないで、これとこれとは別個だというような答弁をするところに僕は問題があると思うのです、どうですか。
  17. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) これは文部大臣としての答弁範囲であるかどうか知りませんが、若し本当に率直に言えというお話であれば、私は成るほどそういう疑いを受けたということは、これは極く普通に言つて不徳のいたすところであるということになるかも知れません。併しながらまだその人に罪があるとかないとか、これを決定されないうちにそういう関係者が起訴されたとか、そういうことだけで、これは悪い、こういうことをきめてしまうほうが私はどうかと思うのです。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 同僚の須藤委員質問はですね、大達文相の抱懐する、いわゆる大達文政について基本的な見解を伺つておるものだと思うのです。ところが談がたまたま選挙違反のことになつて、これと吉田内閣の言うところの道義高揚との連関について須藤委員からの質問がありましたところ、文相は故意かどうか知らないけれども、あなた自身のお考えに基いて御答弁なさつたので、それに対して関連して阿部さんからも質問があり、須藤さんからやや感情めいたことになつて来たことは、これはこの委員会として遺憾だと思うのです。私はこの際文相に申上げたいことは、今の政治は明らかに政党政治であり、議員内閣制です。従つて道義高揚を言うておるのは吉田内閣であるということを須藤君は明確に第一段に規定している。吉田内閣の中の閣僚に不祥なかたが仮によしあつたとしても、だから文部省道義高揚なんか言うべきでないというようなことは須藤氏はいささかも考えていないと思うのです。それは閣僚にどういう人があろうとも、当局者でありまする文部省自身は、国民道義高揚のために施策をどんどん遂行すべきだと思うので、この際は一つ吉田内閣閣僚としての大連文相の隔意ないこれに対する見解須藤氏が私は尋ねたのだと、かように了解するのです。(須藤五郎君「その通り」と述ぶ)で、須藤さんの言葉も又売言葉に買言葉で、やや今の言葉感情めいて来ていると思うのですね。どうかこれは話を戻して、やはり大達さんも正面から受けて、一つ大達文相の構想を話されて、主義主張の上から納得を相手がするかしないかは、これは又別でありますから、本格的議論に引戻されることを本員は甚だ老婆心ながら希望いたします。同時に大達さんの答弁に対する私は私の見解を申述べて御参考に付するわけであります。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は少くとも被疑事件だからそれは事実かどうかということはこれは別問題です。併しその閣僚の職にあるものが、自分選挙委員長なりがこういうことをして、そうして行方をくらましておるというようなことに対して、あの人たち責任を感じておるかどうかということに大きな疑いを持つ。特に福永さんのような場合には、市会を開くことができないような状態になつておる。而もその人の一人が死んでおるというような状態に対して、福永さんが本当に道義的なものを感じておるかどうか。道義的なものを本当に痛切に感じておるならば、それが行動に現われると思うが、それを本当に感じていない。岡崎さんなんか平気な顔をしておる。そういうように道義的に我々と違つた感情を持つたものが閣僚にある。それを許しておる吉田さんが道義高揚を開口一番述べる資格があるかどうかということを言つておる。それに対して、あなたが、こういう状態に対して遺憾な気持を持つておるのか、それを不問に付して知らん顔をして頬冠りして、そうして文教の面だけで道義高揚せいということを言つておるのか、それは筋が通らんじやないかということを言つておるのです。ですから私はあなたのこの事実に対して率直な意見を伺えればそれで満足するのです。もう一遍はつきり聞かして下さい。
  20. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) そういう閣僚をやめさせもしないでおる吉田内閣が、そういう道義高揚というようなことを口にする資格がないじやないか、こういうお言葉です。これは私どもからは、それは御批評でありまして御返事をすべき限りでないと私は思うのであります。  次にこれも只今申上げた通りでありますが、私個人としての福永君なり岡崎君の場合をどう思うかと言われれば、これは私としてお答えをする限りではないと思うのでありますが、併し私は先ほど申上げましたように民主国であり、法治国である以上、それぞれ罪を断罪する組織というものはあるのでありますから、その断罪の結論を待たないで、すぐあの人は悪いとか、これはどうだとかいうことにレッテルを貼つてしまうほうが私はむしろ非民主的だ、こう思つています。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は岡崎さんを結論的に違法者だと言つてレッテルを貼れということを言つておるのではない。そういう起つておることに対して、あなたたちは遺憾の気持も何も持たない。道義的に不徳のいたすところというふうにも考えないのか。平気な面で押し通そうとするのか。そこで私はあなたの道義に対する基本的な態度がはつきり出て来ると思うのです。そういうことで私はあなたにこれを質問しておるのです。それから続いて質問いたしますが、道義高揚云々、そのことはいいとして、一体日本道義というものはどういう点が敗頽しておるのか、その点をお伺いしたい。
  22. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今日社会道義頽廃しておるという人もありましようし、又人によつては新らしい道徳というものが芽生えつつある、こう見る人もありましよう。これはそれぞれ見る人の見解によるものであつて、これを一概に今の道義は地に墜ちている、こう断定することは無論できないと思うのであります。私が申上げたのは、我が国がかような多難な時局を切抜けて、相共に国家再建をし、今後理想とするところの文化国家民主国家として立派なるそういう国を建設した行くためには、道義高揚するということがその根本である、こういう意味を申上げておるのであります。道義高揚をやるのだということが直ちに今日道義頽廃しておる、かように断定しておるわけではないのであります。これは前回からの私の申上げたことをお考え下さればよくおわかりになることと思います。
  23. 須藤五郎

    須藤五郎君 誠に不可解なことになるのでありますが、少くも今日総理初め文相道義高揚を特にとり上げて口にするということは、今日道義敗頽しておるということを考えておるからそういうことが品に出るのだと私は思うのですが、今の質問に対しまして、別に道義敗頽しておるというわけではないが、高揚させることはより以上必要だからそれを言つておるのだ、こういう御返事なんだが、臭いものには蓋をしておきたいような答弁のように私は受取れるのですが、実際今日日本道義というものは本当に敗頽していないとお考えなんですか、どうですか。もう一辺伺いたい。
  24. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 御承知通り、今日は日本の少くも近代において、歴史に見る限り最も窮乏している時代であり、又最も社会的混乱のうちにあるのであります。これは未曾有の惨澹たる敗戦のあとでありますから、これは止むを得ない。従つて社会的の窮乏混乱に関連して、少くとも社会秩序の上におきましても、或いは国民の日常の行動等におきましても、いろいろ摩擦があり混乱がある、これは定のできないことであると思うのであります。私は何も臭いものに蓋をするというのではありませんが、先ほど申上げましたように今日の道徳道義というものが一般的に頽廃しておるかどうか、これは全面的に頽廃しておるかどうかということは私は言えないと思うのであります。又それはそれぞれ人の見るところであると思うのであります。繰返して申上げるようであるが、こういう窮乏混乱のうちにあつて立派な人間をつくり上げるためには、国民道義がいやが上にも高揚されるということが根本であつて従つて教育の面においても道義高揚ということを図りたい、こういうことを言つておるのであります。いつの時代におきましても国民道徳道義というものがこれで遺憾なし、間然するところなしということはあり得ないのであります。ますます道義高揚することによつてこの国難を切抜けて立派な国を建設することにしたい、こういうことを申上げておるのであります。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたの言葉の上に現われた意見のみであつたら私も賛成です。如何なる場合といえども道義高揚はできるだけしたほうがいいということはこれは明らかなんですが、併し今日道義敗頽がないということに対しましては私は意見があるわけです。又以前よりは道義高揚した面も多々あります。或いは日本の民主化されたというような点に対して、文相は逆に又私たちとは違つた考え社会的秩序が乱れたとか何とかということで、道義高揚が必要だというようなことを考えていられるかも知れん。併し我々が今日道義頽廃しておると思うことは、性道徳が少くとも紊れておる。この性道徳頽廃文相はどういうふうに考えていらつしやるか。
  26. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私はどうもそういうことは自分でよくわからんのでありますが、成るほど性道徳の紊れておる点もありましよう。これはどういうことから来た問題かわかりませんが、併しこれは責任をもつて今日は以前の時代と比べて性道徳が非常に紊乱しておる、こう断定する資料もないんじやないかと思うのです。
  27. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじやもう一つ聞きますが、どうもあなたは何も知らない。困つた文相だ。基地教育に対してどういうふうに考えておられますか。非常な問題があると思うのですが、基地教育、いわゆる軍事基地周辺の問題に対してどういうふうに考えられますか。
  28. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 基地が設定せられる関係上、教育の面に及ぼす影響としては、大体教育環境と申しますか、そういう点に悪い影響がある。それから大体この演習場で大砲を撃つとかいうような、何とかするというようなことで、非常に騒々しくて教室で教える上に相当に障害がある、そういうようなことが教育面から来るところの主な点であろうと思います。これは或る程度それが基地になる以上避けがたいことであります。これを全然その影響をなくするということは、これは事実上不可能に近いものであると私は思います。できるだけ教育環境子供に与える影響を少くし、又騒音についても甚しいところは防音装置をするとか、できるだけのことをしてその影響を少くしたい、かように折角努力をしておるのであります。勿論日本側だけでできない点もありまして、これは御承知のように現地におきまして日米相互の間に常に連絡をいたしまして、その点を相談をして、影響を少しでも少くする、こういうふうにして参るほかないと思つて折角努力をしておるのであります。
  29. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたが軍事基地周辺教育状態がどうであるかということについて知識を持つていないのですから、僕はそれに対して質問する熱意を欠いてしまうわけでありますが、併しそれは文相として非常に職務怠慢だと思う。今日本教育上の問題になつているのは軍事基地周辺教育の問題です。これを理解せずして教育を語ることはできないと思うのです。あなたは即刻軍事基地周辺視察行つてよく実情を掴んで来るべきであると思います。それをやらないで僕らの質問に対してぬらりくらりしているのはけしからんと思う。今たくたん資料もあります。基地教育という本も出ております。若しあなたがこれを読んでいないなら、ここに抜萃がありますからこれを私は差上げてもいいと思うのです。これを読むと、我々日本人として将来の日本国民にどんな恐しい結果を来たしておるかということがわかります。一日としてじつとしておられない気持がする。それが結局軍事基地教育のことから発展して来るんです。あなたは戦時中シンガポール軍政長官をしておられて、立派な、いわゆる我々と違う立場におられる。国を愛する一人として政治をやつて来た人であると僕は思う。そういう人が今日日本のこういういわゆる植民地的状況を是認するのでは僕はおかしいと思う。そういうことに対してどういうお気持を持つておられるか所感を尋ねたいと思います。
  30. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私が前に申上げたのは、性道徳頽廃について、これが前の時と比べて頽廃しておるかどうかをはつきりさせる資料というものはない、こういう意味で申上げたのであつて須藤君はそれが、国民性道徳頽廃ということはあとからの御質問を承わると基地の問題、こういう前提であつたように思うのでありますが、基地の問題について特にそういう点が紊れておる、この事実は認めざるを得ないのであります。それを認めまして、つまり軍事基地周辺教育環境が悪くなる、だからこれをできるだけ米国側とも話合いをして影響のないようにしたい、こういう意味で申上げたのであります。基地において教育環境が面白くない、影響を受ける、こういうことを私はちつとも否定しておらんのであります。ただ基地の問題については、只今申上げるようにこれは基地を提供するということが、国の、少くともアメリカとの約束上の義務でありますからこれは止むを得ない。又国の安全を護るためにそういう取りきめができておるとすれば、それに基いて義務として基地が提供される。これは教育上の面から言えば無論面白くないことかも知らんが、国全体としては或る程度止むを得ないのであつて、そうしてその影響も成るべく少くするように努力する、こういう意味で申上げておるのです。
  31. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカ軍日本基地を七、八百カ所占領することによつて学校国民道徳又将来の日本の中堅になるべき少年たち精神上非常な被害を受けておるという、いわゆる国民精神が失われて行く、こういう大きな問題があるにかかわらず、日本の安全とか何とかということをアメリカ約束というようなことを重点に考えて、日本国民性の破壊というものは止むを得ないという意見ですか、私らはそういう結果が来るならば、教育上、アメリカ軍事基地は即刻取払え、皆アメリカに帰つてもらう、これが出て来るべきだと思う。それでなかつたら、アメリカ軍事基地ができて日本国民性は破壊されてしまい、日本文化が破壊されてしまつて文化が破壊され、教育が破壊され、国民精神が破壊されて何の民族独立というものがあるのですか、そういうものは民族独立の上から言つても何の役に立たんものではないかと思うのですが。
  32. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私は基地があるということがその地域々々における学校の児童の教育の上に影響のあるということは、これは否定いたしません。併しながらそれが更に発展をして、基地があつたために日本国民道徳が壊れてしまつたとか、愛国心も何もなくなつてしまう。それほど日本民族というものは脆弱なものとは思つておりません。基地ができたからといつて日本の古来の民族の伝統というものは皆壊れてしまつて日本人が全く道徳水準が非常に低い民族になり下るのだ、そういうことは、これは意見の相違であります。私はそういう日本民族が脆弱な民族だとは思つておりません。無論教育の上に影響はあります。併し国土の安全、国家の安全を図るということは、これもどうしても欠くべからざる根本的な大切な問題でありますから、教育の面だけの影響があるからといつて全部これを放棄して、安全保障条約はやめてしまえ、アメリカは全部帰つてしまえ、そういう飛躍した議論には御同意できません。
  33. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は基地があるから日本愛国心が欠けて行くのだとは私も考えません。その証拠に、内灘では基地に反対するために立派な闘争が行われておる。これは日本人愛国心の発露であるのです。日本基地反対の闘争が、これが日本人愛国心の発露です。基地があるために愛国心がなくなつてしまうとは思つておりません。むしろ増大するものだと思う。併し今日の児童たちがこの基地周辺教育基地教育のために如何に損われつつあるかということ、これが私は大きな問題だと思う。昔の言葉で言えば国破れて山河ありということになるかも知れませんが、要するに将来そういう大きなマイナスのあることをあなたがよく承知して、基地教育に大きな問題があるということを承知しておつて、そうしてそれに対して何ら積極的な対策を講じようとしない、そこが問題だと思う。あなたはそれに対してどういうふうに対策を立てておるのか、大達文相基地教育根本的な対策をこの際伺つておきたい。
  34. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 先ほど申上げましたように、或る程度これは止むを得ない事態であると思います。従つてそれに対しては極力これを緩和するように努力する、こう申上げるのであります。
  35. 須藤五郎

    須藤五郎君 非常に不満な答えです。或る程度止むを得ないというのは、そういう答えでは、僕はもうどうも文相として尊敬することができないのです。もつと積極的な意見を僕はあなたに伺いたのですが、それを伺うことができなければその問題に対しては一応やめておきますが、それでは次にお尋ねしますが、平和教育について、日本基本教育法に平和教育が明記されておりますが、この平和教育に対して文相はどういうふうに考えられておりますか。
  36. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 平和教育というお尋ねの意味はどういう意味でありますか、私は平和を愛好する、一口に言うと喧嘩をしない、国民が仲好く幸福な社会を作上げる、そういう方向に教育の上からも国民気持を持つて行く、これが平和教育だと思います。
  37. 須藤五郎

    須藤五郎君 大遠さんは教育基本法をお読みになつたことはありますか。
  38. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 読みました。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 それにはやはり教育は平和でなければならない、平和を守る教育でなければならないということが書いてあると思います。それですから、その点ははつきり御確認になつていらつしやるだろうと思います。  それでは次にお尋ねしますが、現在山口県で、日記帳の問題が取上げられて、直記帳問題が起つておる、これはもう御存じのことだと思うのですが、この日記帳を禁止する理由として、どういうためにこの日記帳を禁止なさつたのか、これは日教組で推薦され、又山口県の教育委員会でも推薦された日記帳のように考えられておりますが、山口県の教育委員をやつていらつしやつた安部さんもお見えになつておりますが、そういう日記帳を何がために禁止されたか、その理由を伺いたい。
  40. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 山口県の小学生の日記、中学生の日記というものが教材として取上げられた、それに対して山口県の教育委員会のほうから、これは教材として適当のものと思うかどうかという紹介がありました。それに対して、文部省としましては、山口県の教育委員会の指摘した通り、それは適当のものでないと思う、こういう返事をしておるのであります。  次にこれにすぐ関連したというわけではありませんが、文部省におきましては最近教育の中立性を保持するために特に注意してもらいたいという意味の通牒を各府県に出したのであります。その際にその一例として、山口県の日記を事例として引例しております。私はこの小学生日記において、山口県の教育委員会から問題として指摘した点は、数カ所、相当箇所あるのでありますが、その内容が果していいことか悪いことか、これを文部省としていいとか悪いとか言つたわけではないのであります。ただその内容が特定の政党の現在政治的主張として取上げられておることを児童に教え込むということが、教育基本法にいうところの教育の中立性を侵す虞れがある、かように考えてその通牒を出したのであります。
  41. 須藤五郎

    須藤五郎君 どこが特定の政党を支持しておるのか、政治活動になつておるのか、私はその日記を拝見しましたが、その個所が見当らないわけです。ここに日記帳の見本がありますが、私も検討したわけです。
  42. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 一例を申上げますと、小学生日記の五十九頁に、再軍備と戸締ということが書いてある。これをここで一々読え上げる必要もありませんが、その書いてある意味は、日本人の家は、泥棒が家に入るのを防ぐには戸締をしなければならない、こういうことで、戸締は即ち再軍備と同じである。こういうことを言う人があるが、然るに表の錠前をしてばかりしておつて、裏の戸は開け放しにしておるからして、立派な紳士が泥靴で上つて家の大事な品物を八百六個もとつてしまいました。それでも日本人は気がつきません。とられた品物は何か、よく見るとそれが日本軍事基地つたのです。こういう意味のことが書いてあります。これが私どもの判断におきましては、特定の政党を支持し又はこれに反対するための政治教育、その他の政治的活動をしてはならないということが学校教育基本の一つとして謳われてあるのでありますが、これに抵触をする、こういう判断をしておるのであります。
  43. 須藤五郎

    須藤五郎君 その判断は非常に独断に過ぎないと思います。これはどこの政党を支持するのでしようか。再軍備に反対するとか軍事基地に反対するということは日本人考えです。政党考えじやない。政党考え方というところに持つて行くところに、私は証拠を示しましよう。岩国の基地で、学校の生徒に質問をして、岩国にアメリカの飛行場があつていいかどうか、という質問を出しております。それに対しまして、軍事基地があることは悪いという答弁をしておるのが七七%学校の生徒にあつたわけです。いいといつて返事をしたのは一%、わからないというのは二二%、それからいいという一%は、日本を守つてくれて町が栄えるという、丁度皆さん方と同じようなことを言つておるのです。わからないのが二二%、悪いというの七七%、こうなつておる。戦争に捲き込まれて爆撃されて爆音がやかましくて勉強ができないパンパンは殖える、土地はとられる、日本の土地なのに入ると射たれる、日本独立したのだから米軍基地日本に要らないということを言つております。これは悪いという答弁をしているのが七七%の生徒です。政党答弁じやない。これは一学校の生徒すらもこういうことを言つている。軍事基地は要らない、あつちや困るということを言つておる。それと同じことじやないですか。これがなぜ日本の或る特定政党意見だということが言えますか。
  44. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 共産党の主張する政策といいますか、掲げておりますものが、一、二、三、四とあるのでありますが、その中には日本の再軍備反対、すべての軍事基地を取払え、アメリカ軍日本からすぐ帰れ、こういうことを書いてある。これは特定政党政治的主張であります。
  45. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうじやない、日本人の主張ですよ。
  46. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 無論これがいいとか悪いとかいうのではないですよ。この主張がよくない主張であるからいけない、こう言つておるのではないのであつて、特定政党政治的主張をそのまま児童に教えるということがよくない。これが教育基本法第八条の教育の中立性を侵害するものである、少くともその虞れがある、こういうふうに言つておるのであります。
  47. 須藤五郎

    須藤五郎君 共産党は日本国民の主張を自分の政策にしておる政党であります。日本の共産党が国民の主張と相反した主張を立てるはずはありません。ですから軍事基地反対、アメリカ兵は帰つてくれ、これがすべての日本人の共通の気持なんです。だからこそ、日本共産党がそれを政策にしておるのです。自由党の諸君のうちにだつて、やつぱりそういう気持を持つている人がたくさんあるでしよう。あなただつて本当はそうでしよう。決して日本軍事基地があつたり、アメリカ兵がいることを心から喜んでいる一員じやないと思う。みんなそうです。その国民気持を我々は政策に取上げているに過ぎない。又この政策を取上げているのは共産党のみではない、社会党もそうです。何も特定の政党だけではない。特定の政党ではない。これは国民気持をここに書いてある。それを取上げて、これは一政党の主張に同調しておると言う。それでは共産党がもつといい主張を取上げて、あなたたち立場から言つたら、もつと好ましい政策を立てたら、それを取上げたら、それはやつぱり特定の政党の主張と言えますか。この中にまだほかにも共産党の主張と合致した点がたくさんありますよ。併しそれは問題ではない。併しあなたたちとして最も好ましくない主張と、共産党の主張が一致する、合致するからいけない、禁止する、それはどうも禁止の理由にはならない、おかしいですよ。
  48. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私が先ほど読上げたのは、これは一つの例でして、そのほかに何もないと言つておるのじやない。無論この主張に日本人の中には賛成している人もありましようし、又これに賛成する政党もありましよう。併しこれに反対しておる人もあるし、反対している政党もあるのであります。私はどちらの主張が正しいかというふうに言つておるのではない。とにかく政治的に論争が行われておる。そして各党各派がこれをめぐつて政治的主張を異にしておる場合に、いずれかどちらかの主張を教育の上に、児童生徒に移すことがいけないと言つておるのです。
  49. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは若しも、大運さんたちがこれからいろいろな主張なさるでしよう。要するに「君が代」を歌うような主張をなさるかも知れない。又国定教科書を作ろうというような主張をなさるかも知れない。いろいろな主張がある。それを若しもこれがこの中にその主張があつたら、それは又いかんのですか、これを禁止するようになるのですか。
  50. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 勿論いろいろな政治的な主張が今後とも各党共に1行われることは当然であります。そうしてそれがそのときの政治問題として、それぞれの政党がそれをめぐつて意見を異にしておる場合に、そのいずれかの主張を子供に教え込む、これがいけないということはこの場合と全く同一であります。例えば国定教科雷にしなければならん、いやそれはいけない、これが現実の政治問題として取上げられておる場合に、教科書は国定にしなければならんということを国民学校教育で教えれば、それは明らかに教育の中立性を侵犯するものであると思うのであります。
  51. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう例をとると混迷いたしますから、私は話を元に戻しますが、飽くまでもこの再軍備反対の声というものは、これは一政党の主張じやありませんよ。この点はつきりあなたは確認しておかないと、とんだ間違いを起すと思いますが、これは国民の一般の声だと言うのです。それは私が先ほど例をとりまして、小学校の生徒すらこれは悪いと回答しておる。岩国一カ所だけではない、軍事基地周辺すべてです。だから戸締論が一政党の主張を書いたものではないということを言つておる。それをはつきりあなたは確認しなければならない。そうすれば一政党の主張をここにや一つている、政治活動だから禁止するという理由は成り立たないと思う。それをあなたは一政党の主張だと言う。これはまあここにたくさん委員がいらつしやいますが、恐らくこれが一政党の再軍備反対論が、これが共産党ひとりの売物だ、表看板だというふうには誰も考えていない。若しも本当に共産党だけの表看板なら、共産党はこの上ない光栄だと思いますが、これは国民の声です。この国民の声をこの日記が取上げたということで難癖をつけて、この日記を禁止する理由にはならないと思う。これは五月から出ている。それからこの中の戸締論というのは、この本に初めて現われたものですか、私は知らないのですが。
  52. 安部キミ子

    安部キミ子君 はあ。
  53. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうしますと今頃これが問題になるのはおかしいので、問題になる動機というものがあるはずだ。これを突如として問題にした動機が、それは私のところへも現地からいろいろ報告されて来ております。いわゆる岩国の先生たちが平和運動をやつたり、軍事基地反対運動をやつた報復手段として、この日記に対する禁止が来た。それから理由としてもう一つあなたが落していらつしやるのじやないかと思いますが、政治的に一方に偏するという理由と、それから子供を大人の世界に引入れる危険があるということ、この二つがこの禁止の理由になつているというふうに伺つたのですが、どうですか。
  54. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 子供を大人の世界に引入れるということはどういう意味かわかりませんが、そういうことを言つておるのではありません。ここに通牒に出したものがありますからこれを申上げて、その辺ははつきりと御理解を願いたい。教育制度の基本として、教育の中立性は最も厳重に保持せられなければならない、最近山口県における小学生日記、中学生日記の例に見るごとく、ややもすれば特定政党政治的主張を移して、児童生徒の脳裡に印しようとするごとき事例なしとしないのは甚だ遺憾とするものであつて云々、こういうのであります。子供を大人の世界に引入れるとかいうことは、どういう意味かわかりませんが、そういう意味ではないので、ここに書いてあります通り意味であります。それから成るほどこういうことは或いは共産党だけじやないのかも知れない。社会党でもそういう主張があるかも知れません。併しながら私が申上げるのは共産党だけ、ほかの政党は皆別の意見、或いは社会党だけがそういうことを言う、ほかの政党は全部そうではない、こういう意味で特定政党云云と言つておるのではないのであります。政党政派おのおのその主張を異にして論争が行われておる場合に、そのいずれか一方、これが社会党と共産党は同じ主張をしておるかも知れない、そういう場合でも、これは偏つた政治的主張を児童に印しようとするものではない、こういうふうに考えておるのであります。これを国民の声であるからというようなことを言われるけれども、これはちよつとどういう意味か、私には受取りかねるのでありますが、成るほど国民の声には違いない。国民のうちにやはりこういうことを考えればこそ、これは外国の政党じやない、日本政党がこれを取上げているのでありますから、これが国民の声であることは間違いありません。併しそれは国民全部の声であると即断されて、どういう根拠からおつしやるか知らないが、幾らかの子供にそういうことを言うて、子供ですらもなんていうことを言われるのは、これは実におかしな話だと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)それがあるから国民全部の声である、こういうことを言われても、そういうことは私はどうしても同意ができない、例えば国民の生活は安定しなければいかん、国民生活の安定に努力しなければいかん、こういうことを一つの政党が主張する、その場合にいずれの政党もこれに反対するものはない、どの政党も同じことを言う、その場合に学校国民生活の安定を図らなければならん、これを教えても私は差支えないと思うのであります。ただ政治上の問題がそれをめぐつて各党各派意見を異にしておる場合に、どつちかの肩を持つたことを言つちやいかん、こういうのです。
  55. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたは国民大多数の声ではないという御意見らしいが、私たち軍事基地反対は国民大多数の声であるということを確信をもつている、若し私たちの確信に間違いがあるというのならば、即刻国民投票をやつて調べてみて下さい。日本人ならば軍事基地があるということはお前たち賛成か反対かということを一遍国民投票をやつてみればわかると思う、日本人の七九%までこれは反対だということは明らかになると思います。だから私たちは確信を持つて国民の声だということを言つているのです。  それから続いて質問しますが、文相教育の中立性ということを非常にやかまして言つておられますが、ここに不思議な事件が起つているのですが、山口大学の柴田という教授が、経済学部の教授らしいのですが、これは山口大学の各教授助教授に対してこういう手紙を出している、大臣これを聞いておられますか、読んでみましよう。   「籔から棒にのような御手紙を差上げてお騒がせして済みません。実は本学部教官のうちに学究にあるまじき政治活動をしている人があるという警告を受け、聊か憂慮しているのです。私はそのような警告を与えられる向に対して、それが誤解にもとずくものなる所以を、できることならそれぞれのケースについて一々確固たる根拠によつて弁明し、事態の悪化を防止し、以つて学問の自由と学部の自治とを擁護したいのです。それで若し学兄がだれかと面会されたこと、又はどこかの集会に参加されたこと、ないしはその集会で発言その他の行動をされたことが学究にあるまじき政治活動をしたものと解されたかも知れぬ、というようなお心当りでもありましたら、どこで誰にあつたこと、又はいつどの集会に参加したこと、ないしはどの集会でどのように言つた(又はした)ことがあるか、これは実は斯うであつたのだ、ということを小生宛至急お知らせ下さいませんでしようか、(私は少くとも十二日頃までは東京にいるつもりです、)もつともこの手紙は嫌疑を受けておられないお方にもこの様に差し上げたのでは、それこそ大変な御迷惑をそのお方におかけすることになる恐れがあるからです。その点は何卒御了解頂きたく御多用中御手数かけて恐縮ですが、何分宜敷くお願申上げます」 と、こういう手紙を各教授助教授に出しているのですね、これこそ政党の支持なり思想の自由を脅すところのものである、そうしてこの柴田書簡そのものは政党の中立性とか何とかいうことを放棄して、或る政党なら或る政党関係した者を、これこそ弾圧しようとする政党の中立性から行つたら逆のことになるのじやないですか、どうですか。この書簡に対する御感想をお伺いします。
  56. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) その書簡のことは私は存じませんが、これは学長としてそういう照会をされて、これが穏当であるかないか、直ちに私事実を知りませんから、どういう一体誰の質問を受けてそういう手紙を出したのか、どういう意図でそういう手紙を出したのかわかりませんが、併しそれが直ちに教育の中立性を害するということには私はならんのじやないかと思いますが、大学局長はそういう事実を知つておるかも知れませんので、大学局長から説明いたします。
  57. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 只今お読みになりましたと同様な手紙の内容があることを私も聞いております。ただその手紙の内容それ自身に明らかでありますように、照会されました学部長は照会する相手に対して必ず答えろということを強要されておるわけではないのです。若しあなたが自分に話したいと思うならば私に話してくれという、まあ態度で言つておる、而もその動機につきましては、これはその手紙の内容で照会された学部長の心理を忖度した以外にないのでありますならば、まあそこに書かれてあるように多少特定の政治立場に偏しておると見られておるかたがたがあるから、まあ自分はそれを弁明するような立場にあるから、若し自分にそのことで言いたいことがあれば言つてくれという照会をされたようです。その後そうした照会したことを学部長は教授会に報告された、教授会では別段の疑義もなくて、それを聞かれて、まあ事実として学部長に対して回答して来たようでありますが、事実はそれで過ぎてしまつて、そういうふうな学部長の意図で以て照会された。若し私に言いたい人は言つてくれという……。ですから御指摘のように別に、これは何と申しますか、手紙それ自身政治活動であり、或いは政治の中立性を害するものだとは考えられないと思います。
  58. 須藤五郎

    須藤五郎君 これのことに関しては衆議院のほうで一応問題になつてよく調査しておこうという御答弁がなされたのだということを私は伺つておる、今、衆議院のところで……今探せないが、読む暇がありませんから……、大達さんが俺は知らないのだというお答えは不適当かと私は考えます。  それからなおこの手紙に対し山口大学の教職員組合から決議文を出しております。それをちよつと読んでみましよう。如何に大学教授たちがこれによつて脅威を感じたか、又不満を持つておるかという点を私は読んでみたいと思います。   「六月三日、貴下が経済学部全教官宛に発せられた書簡問題は、貴下が就任以来とつて来られた平野義太郎氏演説会場使用拒否の問題「経済変動論」の学期中途に於ける必須科目への変更の問題等一連の行動と共に、逆コース的風潮に便乗した非民主的行為であり、世論がこれを「思想調査」として指弾するも故なきに非ずと認められる。   本組合は学園民主化の見地より、かかる行為に対して、断乎抗議を申入れると共に、貴下の責任を明確に  せられんことを要求するものである。」 と柴田学長に決議として六月二十七日に出しておる。而も西日本新聞を初め、毎日新聞もこの問題を取上げて、思想弾圧だという立場からこの問題を取上げておるわけです。思想弾圧だという立場からこの問題を取上げておるわけです。若しもこういうことが実際にあつたとするならば、実際にあつたわけでありますが、文部当局としてはこれに対してどういう措置をするのでありますか。
  59. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御承知のように、今日の法律体制におきましては、大学のいろいろな問題につきましては、大学自身に任せております。当該問題につきましてもそのことの後において当該大学の学部教授会において、問題の報告を受けて教授会で了承しておる。まあ我々といたしましては、大学のその措置に任せるほかないと考えております。
  60. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一遍お尋ねしますが、こういうことをする柴田教授というかたは、こういうことをするのが好ましい教授なんですか文部省立場で。
  61. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 今の事情から言えばそういう点につきましても、それは文部省立場において法的に批判すべき性質のものじやないと考えますけれども、ただ柴田教授の心理は、只今柴田教授自身の手紙の文言での判断よりし方がないのじやないか、この文言から判断すれば別にそういうことを人に強要したのでもなければ、又動機は最後に書かれた動機で推定すれば、それは別段いろいろ批判はありましようけれども政府といたしましては別段これは批判すべき問題じやないと思います。
  62. 須藤五郎

    須藤五郎君 柴田教授の問題に対して個人的な問題でいろいろ尋ねたいことがありますが、この席上でそういうことを尋ねる時間的余裕もありませんから、私はこの際置きますが、こういうことをやる教授は、今日の本当の教育基本法からいえば我々非常に好ましくない教授だと思うのです。その証拠に、大学教授会が一致して決議文を突きつけている点でもわかりますし、又社会の輿論として、こういうことに対する反撃が起つているという点からでもそれがはつきりと言えるわけなんです。文部省がそれに対して何ら意見がないというならば、これもどうも随分おかしいと思うのですが、文部省のそういう態度に対して、私は甚だ遺憾な気持を持つものでありますが、この点は今日はこれで置きまして、又後日問題にいたしたいと思います。  なおその文部省出版の民主主義という本があります。これは昭和二十三年十月三十日の目付で出版されている本だと思うのですが、丁度これを昭和と明治と書替えますと教育勅語の目と合致して、何か意図を以て作られたというふうなことも考えられるような符調の合つた本でありますが、この文部省出版の民主主義の本には、何といいますか、全体主義と民主主義というふうなことにやられていますが、いわゆるアメリカ的な民主主義、今日アメリカ的な、民主主義というのは資本主義的民主主義と社会主義的な民主主義と、民主主義には二色あるわけなんですが、アメリカ民主主義的な、ブルジヨア民主主義に関して非常に重点的にこの民主主義という本は説いていると、そういうふうに私には考えられる。これこそむしろ中立論を逆に行つているものだと考えるのですが、どうですか。
  63. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 便宜上、私当時関係しておりましたので……、その民主主義読本は文部省で編纂いたしまして、これは中学校教育参考書という目的で出した本です。その内容について只今御批判ございましたけれども、これは飽くまでも我が国憲法の精神に則つて編纂いたしております。従いまして、同じ民主主義でありましても、非常に全体主義的な、或いは独裁的な民主主義というものは、我が国立場においてとるべからざるものという観点を以て書いております。
  64. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう観点はあなたたちの観点です。私たちの観点は違うわけです。だから政府の役人がそういう自分たちの観点のみを強調すると、どこが教育の中立かという、大きな間違いです。あなたたちはどちらの観点にも立たないのが当然なんです。だから私は問題にする。民主主義というのは二色あります。だから同じ比重でそれを論ずるならともかく、アメリカ的な民主主義を押付けるような状態でこの民主主義という本が書かれているというところに私は問題があると思う。
  65. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) アメリカ的ではないので、日本国憲法の精神において、憲法の精神及び憲法の機構に立て書いておるわけであります。
  66. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカ的ということがいけなければ、資本主義的ということもいいと思います。資本主義的な民主主義、ブルジヨア民主主義を民主主義としてあなたたちは書いている。ところが社会主義的な民主主義ということもあるわけです。私たちはそれを言つている。ところ社会主義民主主義に対して独裁的な立場があるし、資本主義民主主義だけが而も如何にも本当の民主主義であるということに扱われているという点で、私は中立的な民主主義的な立場が失われている、そういうふうに感じるわけです。だからあなたたち言つている民主主義はアメリカの利益、いわゆる資本主義の利益を守る民主主義だと、こういうふうに私たちは断ぜざるを得ないのです。  そこでもう一点私は文相にお尋ねしておきたいと思いますのは、この頃君が代と教育勅語の問題が盛んに論議されておりますが、この君が代と教育勅語と憲法の主権在民の関係は、文相はどういうふうに考えておりますか。
  67. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 君が代の主権在民の関係という漠然たるお尋ねでありますが、君が代という字は主権在民という今日のとられている政体からいえば、文字にとらわれていえば、君が代ということは時代遅れであると思います。
  68. 高橋道男

    ○高橋道男君 一人の質問時間を長くても一時間以内にして次に移ろうじやないかということの申合せを以前にしたことがございますが、まだ須藤委員の御質問あるかも知れませんが、只今お昼の時間でもありますので、この辺で休憩して頂きたいと思います。
  69. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今高橋君の御意見がありましたが、須藤君の時間はまだ実は一時間になつておりません。少しまだ余裕があります。併し、只今の高橋君の御意見に皆さん御異議がなければ、休憩ですか、散会ですか。
  70. 高橋道男

    ○高橋道男君 私が申したのは休憩です。あと法案審議もございますから。
  71. 川村松助

    委員長川村松助君) わかりました。
  72. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと委員長にお尋ね申上げますが、この前の理事会の申合せで、今週は法案について三つの法案、あの法案について審議することを申合せたのですが、突如として須藤君の問題に対する質問を取上げられたのはどういう経過になつておるのでしようか。
  73. 川村松助

    委員長川村松助君) これは前から申込んであつたので、今日突然じやないのです。
  74. 木村守江

    ○木村守江君 前から……、理事会の申合せにはありませんでしたがね。
  75. 川村松助

    委員長川村松助君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  76. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記を始めて下さい。
  77. 須藤五郎

    須藤五郎君 君が代と教育勅語と憲法の主権在民との関係について大臣の所見を伺いたい。
  78. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今日は主権在民ということに政体が、国の体制が変つておるのでありますから、教育勅語はその意味において今日我が国学校教育における道徳教育の中心であるその地位は排除されておるのであります。君が代ということは、これは国歌として歌つて来たのでありますが、これも君が代という字に囚われますと、先ほど申上げましたように、今日の主権在民ということとはちよつと合わない点がある、こう思つております。
  79. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、何か君が代というものをそのまま使つたことは主権在民とは合わないという点ですか、今ちよつとそこが聞き取れらなかつたのですが。
  80. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私は君が代というものと主権在民との関係はどうだとおつしやるから、君が代という文字は主権在民という点からいうと合わないのじやないか。但し、歌うことのいい悪いはこれは別だろうと思います。
  81. 須藤五郎

    須藤五郎君 主権在民と君が代という言葉が合わんということは確認されたようでありますが、歌う場合はということは、憲法の精神と相反するような歌を歌うことは好ましくないと私は考える。ところが、この間衆議院において世耕委員のいわゆる勅語は朕ということを抜いてしまえばいいのじやないかというような……朕を抜いて何が残るかと私は思うのでありますが、そういう面白い漫才のような質問があつた中で、私個人の考えといたしましては、それぞれの学校において教員なり子供の自発的な気持から君が代の斉唱をされることは最も望ましいことであると存じておりますと、こう書いておる。そこが問題である。そもそも一国の大臣である、文教責任者であるかたが望ましいことだという発言をすることは、下級官吏にとつてはこれは一つの威圧を感ずるわけですね。ですから、大臣かそうならばといつて、大臣に媚びるような教員が若しも出るならば、積極的にこれを歌わそうという運動が起つて来るところが大臣は憲法の精神に相反するものだとはつきり言つておる。憲法に違反するものを歌わすことが望ましいことであるという大臣の考えがおかしいと思うのですが、若しもそういう大臣の気持を忖度して各学校で君が代を先生たちが歌わせるように推進したらそれは憲法に違反した精神を歌うことになるから、最も好ましくない状態が生ずるものだと思うのですが、どうですか。
  82. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 過日の衆議院の文部委員会における答弁といたしまして、私は君が代を学校で無理に歌わせるということはどうかと思うけれども、併し、子供が歌うものをとめる必要もないだろう、若し自発的に君が代が斉唱せられることは私としては望ましいと、こう言うたのです。その意味は、君が代という……あなたは憲法の精神に違反すると言われましたが、私が先ほど申上げましたのは、君が代という、この君という文字ですな、君が代という言葉の形からいえばこれは主権在民の国の姿にはそぐわん点がある。これは認めたのであります。憲法の精神に違反しているとは思わんのであります。私は君が代という、君という字が……君が代という歌に流れておる考え方は、これは日本愛国心国民民族愛を歌つたものである、かように考えておるのであります。
  83. 須藤五郎

    須藤五郎君 それこそ……。
  84. 川村松助

    委員長川村松助君) ちよつと待つて下さい。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  85. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記をつけて下さい。本日はこれを以て散会いたします。    午後零時十八分散会