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1953-07-16 第16回国会 参議院 文部委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十六日(木曜日)    午前十時四十分開会   —————————————   委員の異動 七月十五日委員高木正夫君辞任につ き、その補欠として飯島連次郎君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     川村 松助君    理事            木村 守江君            荒木正三郎君            八木 秀次君    委員            大谷 贇雄君            剱木 亨弘君            吉田 萬次君            杉山 昌作君            高橋 道男君            相馬 助治君            深川タマヱ君            長谷部ひろ君            須藤 五郎君   政府委員    文部政務次官  福井  勇君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君    文化財保護委員    会委員長    高橋誠二郎君    文化財保護委員    会次長     岡田 孝平君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文化財保護委員   会美術工芸課長  本間 順治君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育、文化及び学術に関する一般調  査  (文化財保護行政に関する件)   —————————————
  2. 川村松助

    委員長川村松助君) それでは只今から開会いたします。  先ず第一に文化財保護行政に関する件を議題にいたします。
  3. 相馬助治

    相馬助治君 先の本委員会において、私は特に委員長を通じて高橋文化財保護委員会委員長にお出かけを願つて二、三の点について質疑したいと考えましたことは、委員長も御承知通り第十五国会におきましてはアメリカにおける日本美術展に出品することについての問題、或いは奈良薬師寺月光菩薩修理に関しまして起きた問題等について、参議院文部委員会は慎重にこれらの問題を議しまして、その後の経過を眺めていたところでございます。そこで私はこの際特に今申しましたアメリカにおける日本美術展、或いは薬師寺月光菩薩修理経過、それらの点につきまして質問をいたしたいと存じて委員長出席を求めたのであります。然るところ文化財保護委員会におきましてはこれらに対しまして委員会に資料をお配りになりまして、その労を多とするものでございます。これらを中心としてこの際先ず私は質問に入る前に特に高橋委員長において本委員会報告を必要とすることがございましたならば一応それを承わり、私が質問せんとする点についてそれらが鮮明にされれば私はその報告を以て満足するものでございまするが故に、若し私の質疑に入るに先んじて委員長において御報告する案件がございましたならば御発言をお願いしたいと、かように思います。
  4. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 只今相馬さんからの御質問にお答えいたします。文化財保護行政の概況につきましてはお手許に差上げてございまする文化財要覧に大体記されておりまするので、これによりまして御覧を願いたいと存じます。私からは只今問題になつておりまする点を数カ所御説明申上げておきたいと存じます。  只今お話のございましたアメリカ美術展覧会は滞りなく運んでおりまして、すでにワシントン、ニューヨークを終りまして只今シャトルにおきまして開催中でございます。なお二カ所を残しております。最も私どもの心配いたしました点は湿度の問題でございます。あちらに参つております人たちがいろいろ研究いたし、苦慮いたしました結果といたしまして、大体において何らの支障なく進んでおるように報告されております。懸念すべきものが多々あつたのでございまするが、先ず特に申上げるほどのこともなく無事に進んでおります。又多数の観衆を集めまして非常な成功裡に行われておると報告せられております。  それから薬師寺月光菩薩でございまするが、これに関しましてはすでに御承知のことかと存じまするが、この修理の段階に入りまして、国庫補助金といたしまして昭和二十七年度に二百二十二万八千円を予備費から支出せられました。又昭和二十八年度には三百五十七万三千円の予定のうち、暫定予算といたしまして八十五万六千円の補助を交付しておりまするので、一日も早く元通りの姿に戻したいと存じておる次第でございまするが、併し何分にも貴重な国宝でありまするので、施工も非常な慎重を要しまするので、ため薬師寺におきましては芸術大学学長上野直照氏を委員長といたしまして、国宝月光菩薩修理委員会を設立いたしました。香取秀真氏以下斯界権威を集めまして熔接接着に関しまする近代化学陣から京都大学西村教授、大阪大学の大西教授などを臨時委員に嘱託いたしまして、昨年の暮以来数次の会議を催しまして研究いたして参つたのであります。一方におきまして我々の文化財保護委員会といたしましても、美術工芸課におきまして研究を重ねまして、両者において到達いたしました案を再度に亙り文化財専門審議会に諮問いたしました。その結果といたしまして離れましたお首は西村大西教授の指導、指揮の下に内枠固定法を主といたしまして、内枠で固める方法を主といたしまして、最新の金属接着剤でありまするアラルダイトを併用をいたしまして接合することになつたのであります。これは熔接と接合とがいずれが可であるかという問題が熱心に討議されたのでありまするが、委員の多数の意向によりますというと、熔接によりましてこの色が変わる虞れがありやしないか、これはむしろお首が離れておるということ以上にこの尊い美術品につきまして憂うべきことでありまするので、むしろ内を固めまして、ただ接着するということのほうがいいのではないかという意見が多数あつたのでありまして、結局かような結果となつたのであります。それから大事な破損欠損部でございますが、これにつきましてもいろいろ意見がございました。欠損しております部分はそのままにしておこうと、むしろそのほうがいいのではないか。全然新たにしてしまいまして、破損した部分は別にこれを保存するがいいのではないかというような意見も出たのでありまするが、やはり修理は成るべく現在残つているものを元にして行うべきものではないかという意見に基きまして、芸術大学丸山教授が直接担任いたしまして、軸木によつて補修することを決定いたしたのであります。この修理の第一階段といたしまして薬師寺修理委員会文化財当局との協力によりまして、像内の土の取除き作業を行いました。その後只今までに修理に関しまする材料の調達を殆んど終りまして、又今月中に現地修理工場を建設する予定に相成つております。修理はその後本格的に施工せられまして、二十八年度内に竣工の見込であります。工事が遅れているという印象をお受けになりまするかも知れませんが、本格的な施工の以前に個々の事柄につきまして論議を尽し、財政上の方法によりまして修理の完璧を期している次第でございまするので、どうぞこの点御了承願いたいと存じます。  それから次に申上げたいと存じますることは毎日新聞の地方版京都版に出ておりまするいわゆる子島曼陀羅と称しまするものの一部分が切れましたことでございます。これは長い間博物館がお預りしておつたものであります。奈良県の子島寺曼陀羅でございます。胎臓界、金剛界双幅から成るものでありまするが、その中の一幅が上のほうの標木のところで約四寸五分切れておつたということが発見されたのであります。これはまだ帝室博物館時代、即ち昭和十六年と存じまするが、に只今東京国立博物館が預かつたのでございます。まあこれは或いは命令出陳になつており、又その後になりまして寄託出陳とか、勧告陳とかいろいろに変つておりまするが、とにかく非常に長い間お預りしておつたのであります。その以前におきましては、これは年数をちよつと正確に申上げることは只今できませんが、奈良博物館がやはりお預りしておりました。で、昭和十一年でございますかに修理が行われました。これは以前は平木と申しまするか、平たい木に巻いたのであります。非常に大きなものでありまして、縦、横双幅両方幾分の相違はございまするが、まあ大体におきまして縦、横とも二丈以上のものであります。目方が又非常に嵩んでおります。十貫目以上もあるかといわれておりまするが、この大きなものを平たい木に巻いておきましたがために、横に、何と申しまするか、折目が深く入つてつたのであります。これを修理いたしまする際に太い丸い木に改めまして、これに巻くことにいたしたのであります。ところがこの軸木が重過ぎたということが或いはあつたのではないだろうか、そのためにこの重量が一層かかりまして、上のほうが切れたという遺憾な結果を見たものではないか、こんなような意見が行われておるのでありまするが、どうして切れたのであるかということはまだはつきりわかりません。それで、博物館としましては非常にその預つておりますものはすべて鄭重な取扱いをしておるはずでございまするが、特にこの曼陀羅につきましては鄭重な取扱いをいたしまして、戦争中、疎開の際などには非常な苦心を払つたと聞いておるのであります。ところがこれが只今申しましたように四寸五分ほど切れたということは、無論博物館のほうでもわかつておりまして、やがて修理を行うべきものである、無論この修理に関しましても非常に慎重な注意を要することでありまするので、軽軽に手を触れることができないと考えておつたのであります。ところが今年この所蔵者でありまする子島寺法養を営む、それがために是非この曼荼羅が必要であるから返してもらいたい、こういう要求がございました。法養の期日も迫つておりまするので急いで僕らなければならん、こう考えまして、博物館のほうでは修理を施しませんでそのままお返しいたしたのであります。それがため子島寺住職は甚だ平らかならざるものがあつたと聞いております。これはその以前に博物館総務部長子島寺へ参りまして事情お話し、了解を求めるはずであつたのでありまするが、総務部長の出張がやや遅れましたので、まあともかく総務部長奈良へ参りまして住職に会いまして、いろいろ事情をいたしたのであります。これによりまして先方も了承をされたと聞いております。ただどうもやはり月光菩薩の問題などでもそうでありまするが、信仰の対象となつておりまするものと、古美術としてこれを取扱いまする場合との間に幾分矛盾などが生じまするので、この前返してもらいましたときには、これはまあ余ほど昔のことと存じまするが、前以て通知があつたので、住職初め三十何人の僧侶が停車場に迎えてこれを寺まで運ぶというようなことをして、仏教流布の上においても又効果を上げることができたのであるが、今回のようにただ荷物として送り届けられたということだけでは、さような手続を尽すこともできず、甚だ遺憾であつたということなどを申しておられたと聞いております。この点は薬師寺の問題などもあり、我々常に考えておりまして、係りの人たちにもよく申しておつたのでありまするが、まあ重ねてかようなことになりましたことは誠に遺憾に堪えないところであります。で、修理は先ほども申上げましたように、十分慎重を期してこれを行いたいと存じております。  それからその次に申上げたいことは、御承知と存じまするが、この鉱業法の一部改正についてでございます。この度の国会におきまして鉱業法の一部改正が行われました、その際に鉱業法第三十五条及び五十三条にこういつた文句が挿入されることになりました。即ち「文化財、公園若しくは温泉資源保護支障を生じ、」云々という文字が入ることになつたのであります。で、これは鉱業権の設定に当りまして文化財保護必要性を認めまして文化財保護に抵触する鉱業権規定を制限したものでありまして、これによりまして三十五条につきましては通商産業局長は、鉱業出願地における鉱物の掘採、掘り採り文化財保護支障を生ずると認めるときは、その出願を許可してはならないことになり、又鉱物の掘採が許可され、行われておりまする途上におきまして、その鉱物の掘採が、掘り採り文化財保護支障を生ずるようになつたと認めまするときには、鉱区のその部分につきましては減少処分をなし、又は鉱業権を取消さなければならないことになりまするので、文化財保護に一進歩を見たものと考えるのであります。併し同法の改正には更にもう一つ改正がございます。それは新たに設けられました第五十三条の二におきまして、十三条によりまする鉱区減少処分、又は鉱業権取消し処分をいたしましたときには、これによりまして生じた損失当該鉱業権者に対しまして補償すべきこと、又その鉱区減少処分、又は鉱業権取消しによりまして著しく利益を受けるものがありまするときには、その利益を受ける限度におきましてそのものに補償金の額の全部又は一部を負担させることができる旨を規定いたしたのであります。で、この新らしい補償に関しまする規定によりまして文化財保護の実施上補償の問題が生じて来る可能性があるわけであります。で、これらの改正に当りまして参議院通商産業委員会は別項のような附帯決議をいたしたのであります。即ちそれは文化財保護鉱業開発調整に遺憾のないよう運営上留意するばかりでなく、文化財保護委員会及びその下部機関の運営が他の利益との調整を成し得るようにその構成につきまして考慮すること。それから文化財指定によりまして他の利益損失を与えまするときは所要の補償をいたすこと。文化財指定その他の保護処分が独占的にならないようにこれに対しまして不服申立の途を開くことなど、制度上の改善に考慮を払うべきであるというのであります。で、文化財保護法は施行以来三年を経過いたしまして、その間の経験に鑑みまして改正すべき点が考えられておるのであります。鉱業権その他の利益との調整も又この一つでありますので、これらの場合を含みまして考慮すべきものであると考えるのであります。只今申しましたこの中小産業委員会附帯決議の趣旨につきましては一応了解できるのであります。ただ文化財保護の仕事を進めます上におきましていろいろ考えるべき事柄があり、法律改正等につきましても研究しておるところでありまするので、この際にこの鉱業権との調整も加えて研究いたしたいと委員会では考えております。史蹟名勝天然記念物などの保護に当りましては、事務的に鉱業権との調整を図りまするように通商産業省などと十分打合せいたしまするようにしたほうがいいのではないかと考えておりまするが、更に進んで調整方法を組織化することも必要ではないかと考えるものでありますので、十分に研究いたしたいと存じております。単に鉱業権に関してのみならず、他の産業、又は公益との調整という問題もありまするので、一般的問題として研究いたしたいと考えております。なおこの問題に関しましては福岡県の平尾台の問題が委員会において出て参りましたので、これを例にとりまして只今文化財保護委員会ではどういう態度をとつているか、というような説明参議院通産委員会でいたして参りましたのであります。  それからその次に、この度の西日本の水書でございますが、相当大きな被害を受けておるのであります。文化財関係におきまして相当大きな損害を受けておるのでありまするが、併しながら京都奈良辺りとは違いまして、文化財の存在がさほど密集しておりませんのでありますが、先ず最も大きな損害を受けたと考えられまするものは熊本城の城壁その他でございます。  それから王塚と申しまするところにこれなどまるで泥水に埋つてしまつたというようなことがございまして、復旧には相当な困難を要するのではないかと存じます。復旧予算の大体のものにつきましては御質問ございますれば次長から詳しく申上げることにいたしたいと存じます。  それからなお税法改正でございまするが、今日の文化財保護法は、文化財所有者に対しまして義務を課することが如何にも大であり、何らの特権も与えられておらん。殊に租税の関係におきまして減免などが行なわれておらんということは誠に遺憾である。そのために或いは隠匿というようなことが起り、所有者がこれを国宝若しくは重要文化財指定することを嫌いまして、隠匿するとか或いは悪い場合でありますると海外に流出するというようなことに相成りまするので、諸税法に関しましてこういう点を考慮して頂きたい。減免規定を設けてもらいたいものであると、こう考えまして、文化財保護委員会におきましても研究を重ねておるのでのであります。承わるところによりますると、最初この草案ができました際には税の減免に関しまする規定が若干入つておりましたそうでありまするが、これが削られまして、今日では殆んどなくなつておるのでありまするので、こういう点を十分研究いたして参りたいと思います。現に又研究を進めておるのでございます。  これで大体只今問題となつておりまする点を申上げたと存じまするが、更に又御質問ざいまするならばお答えを申上げたいと存じます。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 実は文化財保護委員会の問題は極めて具体的な問題でございますからして、余り唐突に質問をしては委員長にも迷惑でもあろうし、又こちらも満足をした答弁が頂けないことを慮りまして、私は事務局に次のような点について大体伺うつもりだと言うて申上げましたことが、今のアメリカにおける日本美術展の問題、月光菩薩首切り事件修理の問題、子島寺の両界曼荼羅の問題、鉱業法一部改正伴つて参議院通産委員会がなされた決議が、今後文化財保護委員会の実際の運営上にどのような影響を持つか、これに絡んで文化財保護委員会としては積極的に同法の改正等を勘案しているかという問題、それから税法の問題、今回の西日本の水害についての問題、これらを申送りましたところ、積極的に只今委員長から全項目亘つてかなり詳細な報告がなされたので、私はその労苦を多といたします。そこで大体これで私の現在の文化財保護委員会に関連する問題は尽きていると思うので、特に私は一項目ずつ質問いたしまして、ただこれを続いてやつては他の委員のかたに御迷惑であろうと思うので、その項目に関して他の委員から御質問があつた場合にはどうぞ委員長において関連質問をお許し下さるという運びにおいて、一つ事を進めて頂きたいと、かように思います。  それでは委員長質問をいたします。先ず第一点の薬師寺月光菩薩修理につきまして、大体文化財保護委員会としては一月二十日に現在報告になりましたような修理の大体の結論を終えているように私は調査の結果承知いたしております。そこで私がお尋ねいたしたい第一点は、当時問題となりましたときに、東京大学の上野学長文化財保護委員会に対して極めて辛辣な批判的態度を持しておりました。そしてその批判的態度の中に、今後起きる修理方法について仏像の中心も又重要な文化財であるから、これが修理については日本のこの種の技術の最高なるものを使つてこれは修復すべきが筋であるという意味合いのことを言われたように本員は記憶いたします。そこで出て参りました結果は薬品接着と、一こういうことになつております。権威者の諸君が慎重審議の結果これをきめられたので、私どものような技術的に全く無知な者のとやかく申すべき筋ではないのでありますが、念のために伺つておきたいのであります。事柄事務局をして御答弁させることも結構であります。薬品接着によつて熔接と同じ程度修理破損の点において可能なのであるかどうか。  それから第二は薬品接着であるが故に内部の補強工作をやるというのだが、その補強工作は従前のような土固めだけをやるのか或いは副次的な中心を入れてやるというような積極的な補強工作が考えられているのかどうか、これが第二点。  それから第三点は一部欠損しておりまする連合工事、この工事については全然新しく作り直すのか、或いは又欠損部分だけを修理するのか、そうしてこれら一連の工事現地薬師寺において可能なのかどうか、若し不可能でこれら重要な美術品の一部が東京都に移されるというようなことも予想されるのかどうか。かような技術的なことについて私がお尋ねいたします理由は、本問題に関しては今は議席を失いましたが、木内キヤウ君、それから木村守江君、不肖私と、現地よりここにおりまする高橋委員と、これらがまる一日かかつて、この問題は現地調査をし、而も公聴会を開いて各界の権威者意見を尋ねた問題でありますだけに、当然当委員会の責任においてこれらが如何よう結着をしたかを我我は質し、文化財保護委員会のその後の動きを我々はお尋ねする義務感を持つておりますので、事は極めて技術的なことでありまするが、私はこの月光菩薩の問題は一つの例外の事項といたしまして、それらの具体的な報告を求めるものでございます。先ほど申しましたように事務局をして答弁させることも結構であります。
  6. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 第一のアラルダイトを使いまして接合することが熔接と同じ程度の効力があるかどうかというような点でございますが、これはなかなか技術的にむずかしい問題であろうと思うのでありますが、結局接着の強度という点から申しますならば、これは熔接のほうが強いと思うのでありますが、併しながら先ほど委員長の話にありました通り、色が変わるというような重大な欠陥がございます。そういうようないろいろ長所短所等研究いたしました結果、アラルダイトにいたしましたのでございまして、その点は次の補強工作に関連いたしております。補強工作といたしまして内枠固定法というのがございますが、これを使うことになつた。内枠固定法といいますのは、ここにちよつと図面がございますが、こういうふうに、これが普通頭でございます。これが胴であります。鉄をこういうふうに二本入れます。頭の部分とそれから胸の部分に。そうしまして更に縦に結んでそしてこれを締めるわけでございます。こういう内枠固定法という方法を用いまして、この接着を非常に強力にする、こういう両方方法によりまして、今回の修理をやることが非常に適切でないだろうかと、こういう技術的な結論に達したのであります。なお詳細は場合によりましては美術工芸課長がおりますから御答弁申上げます。それからその際に、従つて前にありましたこの鉄棒、これは全然今度は入れない。それから元来この鉄棒は鋳造の過程の際にとるべきものがとりきれなかつた、こういうものでございまして、現に調査の結果、前の鉄棒心棒になつておりました鉄棒は頭の部分は入つていない、それから更に膝から下は全然ない、こういうものでございまして、これは今後は心棒としては用いない。従つてこの内枠固定法によつて修理を行なう、こういうことにいたしたのでございます。  それから連合、台座のことでございますが、この工事は全部を作り直しませんで、一部を作り直す、つまり欠損を補うことを中心にいたして修理をする。そしてその工事現場のままで以て工事を全部を行なう、さようなことになつております。そして先ほど専門修理委員会ですか、この修理委員会には斯界権威者を集めてございますので、そのかたたちが随時集まりまして、修理過程におきましても随時協議をして、そして大体現場で以てこの修理が全部行なわれる、かような大体の只今の状況になつております。
  7. 相馬助治

    相馬助治君 その内枠法という方法は今御説明を聞いて私初めて聞いた言葉であり、初めてその内容を承知をしたのですが、今次長説明の中に中心は当時熔接した過程において必要としたものであつて、本来ならば直ちに取除くべきものが取除けなかつたと、こういうお話ですが、そういう議論も成り立つけれども、併しあの中心があつたことによつてお首が安泰であつたという事実もこれは蔽うべくもないことであるというのが本院における公聴会においての技術者の総括的な意見の中に現われたものだと、こう存じております。で、それらの点が今度は取除かれるということで、そのことは一応わかりましたのですが、そういたしますと、この鋳造の場合に必要としました中の粘土は全部取外されて、それはそのまま空洞の御仏体と、こういうふうになるということでございますか。それとも又中には粘土に代わるべき何ものかを充填するというのですか、課長に答えさして下さい。
  8. 本間順治

    説明員(本間順治君) 私からお答えいたします。今次長から申上げましたが、このアラルダイトと申しますのは戦争中にスイスで発明された接着材なんですが、非常に強力なものでありまして、その製造元のいろいろな試験をいたしました資料によりますと、このアラルダイトだけでも十二分だということになるのでありますけれども、併し如何せん、戦争中から今まで十年も経過していない。で、この薬はこれを用いまして一年経過いたしますと、かなり接着力が下つて来る。それから二年目には緩慢になる、三年目には更に緩慢になりまして、まあ三年日頃からは殆んど安定した恰好になる、こういう薬だそうなんです。そういうことになりますと、こういう大事なものですから、このアラルダイトだけに頼るということはどうかと、そういうことで、この内枠固定法というものを考えましたわけなんで、こちらといたしましては、内枠固定法を主といたしまして、このアラルダイトはこれに加えるという意味合いで用いることになつたのであります。で、この内枠固定法はさつき次長から申しましたように、お首のほうと胸のところにこれは鉄板ですが、鉄板を入れます。そして縦の棒を入れまして、これを締めつけるわけなんですが、これだけでなく、この縦の棒に羽根を何枚か付けまして更に安定を図つておるのであります。これで専門の大西教授とか西村教授或いはこちらの運輸省の木原博士あたりの一致した意見として大丈夫だと、そういうことなんです。それから今の中心を作りますときの鉄の芯をどうするのかということなんですが、これは専門学者の話によりまして、これを例えば用いるといたしましても、そのまま用いるということはできない、若し中心の前にありました棒を用いなければならんという、そういうことであるならば、あの棒にもう一本強力な棒を合わして加えなければならんと、こういう意見になつたのであります。それで実際のこの修理の上からいいますと、その中の棒を古い棒を用いるよりはそれを全部除きまして、それから土も勿論除きまして、そして今申しますようなその固定法をしたほうがより以上に強固だと、そういう意見が出ましたので、このような結果になつたのであります。それで例えばそれが修理の上に必要ないといいましても、やはりこの鉄の棒は千年以上のものでありますから、これは修理をいたしましたあとは国宝の附けたりといたしましてこれは保存する、それから土もこれは何かと参考になります。この土がどこの土かというようなことを究明いたしました結果或いはこの仏像がどこで作られたかというような問題もわかるかも知らんと思いますので、土も大事に保存するということになつております。私から申上げることはこの程度で。
  9. 相馬助治

    相馬助治君 私は二点だけ聞いてこの項に対する質問を打切ります。今の課長の説明を聞いてよくわかりました。ただ非常に愚問かも知れませんけれども伺いたいのは、内枠固定法で締めるといいますが、どこから手を入れて締めるのですか。
  10. 本間順治

    説明員(本間順治君) それを申し落しましたが、実はこのお像の一番頭の天辺のところに最初この像を作りましたときに硫黄を流しました二寸八分角ぐらいの孔がございます。これはすでに相馬委員も御存じだと思いますが、日光さんのほうはいつとれましたか、頭がとれてしまいまして、裏から見えるようになつておりますが、この晃さんのほうはこの孔が埋つてつたんです。これは当然しつかり硫黄をつけましてから上に蓋をしたものでありますから、下から押せばとれると、こういうものでありましたので、先だつてこの中の土をとりますときに下から押してみましたところが、果してとれました。その上から、この孔から手を入れまして作業をすると、そういうことになつております。
  11. 相馬助治

    相馬助治君 私は無理にこういう仏像のお首に孔でもあけるのは事が又大変だと思つてお尋ねしたのですが、それはわかりました。  そこで最後の一点はこの問題があの当時あのような騒ぎになつたのは、この薬師書の住職を初めとする関係者の必ずしも純粋でない動きというものが我々には看取されたわけです。従つて先ほど委員長の話にもありましたように、一方では古い仏像として古美術としての観点に立つ、一方では飽くまでも信仰の対象だというので、取扱うところから種々の問題を起して来たわけですが、これらの修理過程において現在並びに将来に亙つて寺側としては完全な了解が立つているかどうか、この一点だけ伺つて今日の委員長に対する質問を閉じます。
  12. 本間順治

    説明員(本間順治君) 私から申上げます。この問題につきましては、はつきり申上げますと、出発いたしました当初におきましてはいろいろと感情の対立的なものがないとはいえなかつたのでありますけれども、この結果におきましては芸大の校長の上野先生を委員長とする委員会ができ、それから丸山教授に仕事をしてもらうと、そういうこと、それから又初めは当局といたしまして、私ども美術工芸課といたしましてはこの連合修理に関しまして芸大側のほうと多少意見の相違があつたのでありますけれども、これは幸いにいろいろ双方で検討いたしまして歩み寄りができましたので、その結果といたしまして、只今では寺側でも十分私どものほうと一致した考えでおると私は存じております。
  13. 高橋道男

    高橋道男君 只今寺側との関連のことについて御質問があつたようでありますが、この修理委員会の名簿を見ますと、お寺の関係者は一人も入つていないのでありますが、この点につきましては特に何らかの考慮があつた上でなされたのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  14. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) お手許に配付してありまする修理委員会の名簿でございますが、これはちよつと抜けましたのです。臨時委員と書いてあります次に幹事とございまして、そこにお寺の代表者が入つております。それから奈良、県の教育委員会文化財保護課長、それから文化財保護委員会の本間美術工芸課長等が入つております。
  15. 高橋道男

    高橋道男君 只今仰せられたのでは幹事という立場のようでありますが、それとこの委員との立場が当然違うように感ぜられるのですが、その点に問題はないのでございますか。
  16. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) これは薬師寺の諮問機関ということでこの修理委員会を作りましたのでございまして、従つて薬師寺は諮問するほうの側、片方は諮問を受けるほうの側、こういうような観点から委員に入れませんで幹事に入れた、こういうことになつています。
  17. 高橋道男

    高橋道男君 私は宗教上の立場を重視するのでありますけれども、そういう委員会の構成メンバーなり構成方法によつて寺側との了解なり進め方ということは円満だというようにお考えになつておるわけですね。その点念を押してお尋ねしておきたいと思います。
  18. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) お寺側とは只今別に特に感情上問題を起しておるということは聞いておりません。大体この会合の場所は大体の場合がお寺でございまして、その場合には官庁初め寺側のほうも必ず出られまして、いろいろ意見も言われると思いますし、委員に入つておりませんことは形式上どうかというお話は、これは御尤もでございますけれども、大体においてその点は御心配ないのじやないかと存じております。
  19. 相馬助治

    相馬助治君 次にこの子島寺の両界曼陀羅の問題ですが、これは委員長報告を聞いて或る点において私が疑問とし、誤解していた点が一切晴れたので、お聞きしたいと思う大半がそれに尽されております。ただ念のために伺いたいのは、ここの疵そのものがどうしてできたかということは、報告だけでよろしいし、私どもにはわかりません。問題は早速修理する予定であつたといいながら修理していないのは、技術上困難が予想されて研究中であつたためにやらなかつたのか、或いはこの委員会が持つている財政上の制約によつてできなかつたのか、そして今後一体この曼陀羅はお寺様のほうではどうする考えなのか、もうとても国立博物館にはあぶなくて頼めないと、こういう強硬な態度を持つておるのかどうか、そしてお寺側がどういう意見であるにかかわらず修理されなければならないと思うが、この修理に対して文化財保護委員会は何か積極的な手段をとる考えかどうか、これらについてお尋ねします。
  20. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) この破損でございますが、これは別に予算が不足のためにできなかつたというものではないと存じおります。いろいろ修理上の問題につきまして研究中でありましたためにこれがやや遅れたと存じております。  それからこの修理でございますが、これは実はこの品物はお春に持つて帰りましても非常に大きいものでございまして、お寺にはこれを保存いたしまする適当な施設がないのであります。従つてこれは奈良博物館にこれを寄贈するということに話が付いております。もう今日、明日にはこれを奈良博物館に持つて来るという話合いが付いております。そこで奈良博物館におきまして、これをできるだけ静かに国費を以て修理すると、こういうことで只今具体的に話を進めておる次第であります。
  21. 相馬助治

    相馬助治君 どうもこの問題はやはりこういうものが一方は古美術の問題として取扱つて、鄭重にはやつたか知らないが、箱詰めにして、一つの荷物として送ると、寺側ではさようなることは心外である、そういうつもりで開いてみたところが疵があつたと、これは勘弁罷りならんというので感情的になつたということが大体説明で我々に推測できるのですが、この種のものは従来送る場合にはどういうふうになされていたのか、ものによつては技官等を付けて持参せしめるというような例があつたのかどうか。それから委員長次長等も一応の責任ありと言えば当然あるのだが、差当りこの問題の、送つた場合に疎漏があつたとか何とかいうことが一つの責任問題になる場合には、文化財保護委員会事務局のどこかの課長の責任なのであるか、それとも博物館の館長の責任なのであるか、これを念のために承わつておきたいと思います。
  22. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 従来の例を申上げます。従来は持ち運べるような程度のものでございますならば実際に係官が持参いたしまして、そうして返還するというのが例でございますけれども、この例のように非常に大きな、約十貫以上もするものでございますので、これは輸送いたした次第でございます。ただその際に輸送と同時に係官がお寺のほうへ参りまして、そうして鄭重に挨拶するのが礼儀であろうと存じまするが、博物館総務部長が参りましたのが都合で少し遅れまして、先に品物がお寺に着いたというような関係で、ややそこに遺憾の点がございましたのでありまするが、荷物が着きます先に係官が行つて、多少でも事故の起つたような場合は了解を求めるというのがいいと存じておる次第でございますが、この点は遺憾であつたことを感じております。  それからその場合にどこの責任であるかということでございまするが、これはやはり国宝重要文化財等を出品いたし、或いは預かる、或いは返還する、或いは預つたものを預り品として修理するというようなことは、これは博物館の一応の責任になつております。併しながら事が重大であるというようなことになりますならば、やはりこれは文化財保護委員会の全体の責任になるのではないかと存じております。
  23. 相馬助治

    相馬助治君 私はこれを実地に調査してあります。深見庶務部長が行つたことが時期的に遅れたのでまずかつたということですが、事実は博物館のほうでは問題になつたので、遅れ馳せながらあやまりにやつたというのが私の、承知しておることです。それでなぜこういうことになつたのかということで、博物館自身のこれは責任じやないかということを、私というより私側と申しますか、調査したものが聞いた場合に、それは博物館の責任ではあるかも知れないが、費用その他の関係を以て思うに任せないので、最終的な責任は文化財保護委員会であるというような意味、そういうような意味を申しておるのです。私はこれはどちらに責任があるかなんということをここで実は問題にしておるのではなくして、信仰の対象として、又一方では古美術として考えることによつてこういう問題が起るのですから、この問題を一つの契機としてこの種取扱いの問題というものの一つの内規めいたものを作つて、以後かような間違いのないことを希望いたします余り、どこに責任があるかということをお尋ねしたのでございまして、どうかそれらの点について一つ十分委員長におかれましても、今後御配慮給わり、同時にこの日本が誇るべき大きな両界曼陀羅というようなものが一日も早く修復されることを希望して、私はこの項に対する質問を終ります。
  24. 川村松助

    委員長川村松助君) 文化財保護委員会のかたがたにあと御質疑なさるかたはございませんか。
  25. 高橋道男

    高橋道男君 只今のその子島曼陀羅に関連するのでありますが、静物館或いは文化財保護委員会の斡旋によつて長期にほかのところへ持出されておるというようなものはほかにはございませんか。
  26. 本間順治

    説明員(本間順治君) これは博物館に限つてのお尋ねでございましようか。
  27. 高橋道男

    高橋道男君 いや、私の申すのは博物館なり文化財保護委員会の斡旋によつていろいろなところへ長い間持ち出されておるものがあるかないかということです。
  28. 本間順治

    説明員(本間順治君) これは子島寺の場合は法律によります勧告出陳という名前で東京博物館に出ておるものもあるわけなんです。これは今の法律では勧告出陳という言葉になつておりますが、前の古社寺保存法時代には命令出陳という名前になつております。これは多分その前の古社寺保存法の時代にもあるはずでございます。そういうわけで命令出陳、今の勧告出陳というようなことで文部省、只今のところでは文化財委員会が出陳をさせておりますところの場所は、東京博物館京都博物館奈良博物館、それから大阪の美術館、それから鎌倉の国宝館、これだけなんでございます。まあ、この五つの場所は建物の上からいいましても取扱いの上からいいましても大丈夫だろうということで、ここに勧告出陳をいたさせているのであり、まして、これは大抵のものは相当長期に亙つて出ておるのであります。子島寺のように、これは先ほどの委員長お話がありましたように東京博物館には昭和十六年から、その前奈良博物館には明治四十年から実は出ておるのでありまして、三十年以上も出ていると、こういうような例は少いのでございますけれども、まあ十年以上というようなものは相当多数あると存じております。
  29. 高橋道男

    高橋道男君 そういうものにつきまして再びこの子島寺曼荼羅のようなことが起らないようにお手配を願つておきたいと思います。   次に甚だ唐突にお尋ねしますが、新聞紙の伝えるところによりますと、今回フランスの政府から松方コレクシヨンを日本に返還すると、但しこれは私的に保存されるのではなしに国家的に保存してもらいたいというような註文がついているそうでありますが、これに関連しまして、文化財保護委員会において何らかお考えになつたことがあるかどうか、尤もこれはこのものを文化財保護委員会で扱わねばならんというような仮定の下に私はお尋ねしておるのでもないのでありますが、保護委員会において何らかお考えになつたことがあるかどうかをお尋ねいたします。
  30. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) この問題は文化財保護委員会におきましては何もまだ取上げておりませんのであります。将来におきましてもそこまで文化財保護委員会が立入るべきものであるかどうか、まだ研究いたしておりません。ただ私は昨年でありましたか、フランスから帰つて参りました吉川君と申しまする芸術大学教授から比較的早くこのことを聞きまして、この松方コレクシヨンが返還されることを聞きまして、それにいろいろ条件の付いていることなども承知いたしまして、関係の方面に二、三話をいたしたことがございまするが、差当りこれを文化財保護委員会として取上ぐべきものであるかどうかは疑問であると考えまして、少しもまだ公式には手を着けておりません。
  31. 相馬助治

    相馬助治君 次に鉱業法の問題、税法問題等は基本的な文化財保護委員会の運営に絡む問題ですから、もうあとは全部一括して私はお尋ねしておきたいと思います。  先ず第一点に、六月の二日に文化財保護委員会の発表として、国庫の補助の第二次暫定予算分五千二百七十一万円を補助することに決定したとございまするが、これは暫定予算分の補助のようでございますが、二十八年度当初予算が通過いたした場合には補助区分がすでに明らかであるのでございますか、それともトータルだけを要求せられて、これらの配付に当つての区分は追つて決定するという予定なのでございますか、具体的に申しますれば日光の東照宮の二村一寺分として四百万円、それから防災施設として東照宮で百六十三万円、輪王寺で百五十三万円というのを頂いておるようでありますが、こういうものも暫定予算分としてこれだけやるから、あとの何ほどかを見合つて計画を立ててこれを使えという指示がなされておるのでございますか、これらの点について概括的な報告をこの際承わつておきたいと思います。
  32. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 本年度の予算は御承知通りに四月、五月分が第一次暫定予算になつております。それから六月が第二次暫定予算、それから七月分が第三次暫定予算というふうに三段階になつておりますので、従つて補助金を出します際にもおのおのその三つに分けまして、暫定予算の中から各社寺に割振りまして、そうして年間の補助金を予想しながらその中で第一次、第二次、第三次というふうに只今までに三回補助金を出しております。これは本予算がいずれ通過いたしますればその中の一部分になるわけでございまして、例年ならば本予算が最初に通りまして、それから今度は年間を四つに分けまして、第一・四半期、第二・四半期、第三・四半期、第四・四半期というふうに四・四半期に分けまして補助金を交付しておりますが、本年は極めて変則的な例でございまして、只今まで三回小出しに出したということになつております。それで年間の補助の総額はこれは一括して補助指令はいたしませんで、おのおのに分けて、分けたものをその都度補助の指令として出す、併しながら年にどのくらいの補助金をもらうかということは、それはその社寺には内示いたしております。従つて社寺のほうでは大体その枠内で只今までにどのくらいもらうのかということがわかりますので、それで計画を立てて修理工事をいたしておる、かような関係でございます。
  33. 相馬助治

    相馬助治君 本年度は誠に変則的な予算の形で、これは立法府にある我々としても責任の一端を負わなければならない問題だと思つておりますが、問題は年間の予算が内示されておるというそのことによつて見越して予算を執行しておるところもあるでありましようし、配分されたものをそのまま握つて年間予算が明確になつてからこれを使うというような場合もあると思いますが、特にこの修理というような問題は時間的な問題が大きなものだと思うので、これらに対しては一つ如才なく御指導になつておると思いまするが、念を押して一つよく指導されるように特段希望したいと思います。  次に鉱業法の一部を改正する法律案の参議院における附帯決議が概括的に文化財保護委員会の今後の執行を窮屈ならしめておるか、さまでも関係のないものであるというふうにお考えですか、質問は極めて雑駁ですが、一つ掻摘んで委員長の所見を先ず質しておきたい。
  34. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 今日におきましては他の公益その他の事項と関係のありまする点において、文化財保護委員会におきまして文化財として指定いたしましたものと矛盾を来しまするような場合につきましていろいろ調整を行いますることを組織化する、制度化するということは行われておらんのでありまするが、併しながら今日におきましてもこの点は十分考慮いたしておりまする点を、平尾台の問題などを例にとりまして参議院通産委員会におきましてお答え申しておいたのでありますが、只今補償規定などが設けられることになりまするというと、随分場合によりまするというと指定を困難ならしめるような事情が生ずるというふうには考えております。そしてこの重要な貴重な文化財所有者に対しまして普通の所有権の観念を適用するということは、考えてみなければならんことではないかと無論考えておるのでありまするが、併しながら文化財保護法の第四条には私有財産権は尊重する、飽くまで尊重するということが記されておりまするし、又当然尊重しなければならんことと考えておりまするので、こういう点は幾分窮屈ならしめることがあり、又甚だしい支障を生ずるようなことがありましても、やはり考えてみなければならんのではないか。殊にもうすでに鉱業権そのほかの権利が設定せられておりまするところのものを文化財として指定しまする場合などにおきしましては、特に現状を変更、そのほかの点におきまして現行法の範囲内におきましてもいろいろ考慮しなければならんことと考えております。そうして又、権利を侵害せられたと考えまするものが訴えまする場所、これがどこであるか、どういう機関に対して訴えるということが一番いいのであるかというようなことも、無論考えなければならんことと思うのでございまするが、こういう点に関しましては、まだ我々寄り寄り話しておりまするだけで結論を得ておりませんのであります。基地の問題もございまするし、電源開発の問題などもございまするので、この鉱業法と共に全般的に考えてみたいと考えておるのでございます。
  35. 相馬助治

    相馬助治君 委員長は私の質問に対して必ずしもその狙いに向つて答弁をしていないと思いますが、これはいろいろ政治的な立場であるので、私はそれ以上追及いたしません。私は次長にお尋ねします。卒直に、こういう決議がなされたことは、実際問題として文化財保護委員会としては将来困るようなことが、いわばこの附帯決議が非常に支障を来たすようなことが予想されるか、さようなことは全然予想されないか、どちらだとお考えですか。
  36. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) これはなかなか一言にして簡単にちよつと申上げられないことかと思います。と言いますのは、我々文化財保護の立場にあるものは、文化財保護が使命でございまするが、同時に他の重要な産業に極めて密接に関連を持つております場合には、その産業のことも十分に考えまして、できるならば両立した解決策を見出して行きたいということで、文化財の本質はどこまでもこれはその価値は保存するという方針でありまするが、併し、その本質に差支えない範囲におきましては、又同時に産業等の面も十分に考えて、場合によりましては、現状変更も考えるということで、差支えない範囲において産業の開発等も考慮するというような立場をとつて只今までにはいろいろ問題もございましたけれども、大体におきましてうまく解決しておるのでございます。ただ一、二なお係争の問題もございます。で、参議院通産委員会のほうの決議でありますが、これに三つございまして、その第一の「文化財保護委員会及びその下部機関の運営が他の利益との調整をなし得るようその構成につき考慮する」というのがございますが、これは今申しましたような趣旨で、文化財保護委員会といたしましても、他の公益若しくは産業等につきましても十分考慮いたしておりますので、例えば専門審議会に通産省の代表のかたに委員になつて頂くとかいうことは只今つておりません。とつておりませんが、そんなことも必要ではなかろうかというようなことで、いろいろ研究いたしております。或いは又特に密接なる関連がある場合には関係官僚にあらかじめ相談をするということも、又必要ではなかろうかと思うのでありますが、この点は別に特にさしてどうということはないと思います。第二点、第三点でありますが、第二点は「文化財指定により他の利益損失を与えるときは所要の補償をなす」、或いは第三点は文化財指定その他の保護処分に不服のある者はその申立、不服の申立の途を開く、これ実は今いろいろ研究中でございまして、殊に第三点の不服申立をなす場合に、他の産業相互の関係とは違いまして、極めて価値の高い文化財ということになりますと、それを判定する機関がどういう機関であるかというようなこと、或いはその機関の構成の問題等も考えなければなりませんので、甚だ簡単には行きませんので、こういう途も開くことができる、必要であるというこはありますが、果して然らばどういう機関にそれをやらせたらいいかということにつきましては、簡単に結論を得がたい。いろいろと調査研究をいたしておる次第であります。  それから損失補償の問題も、これも現在の文化財保護法ではないわけではないのでありまして、指定文化財の環境整備のためにいろいろ制限をする、所有権その他を制限する場合には補償をなすという規定が現にございます。これを指定の場合までも補償するということにするかどうかということにつきましては、なお慎重にこれは考慮しなければならぬと思います。この二点、三点につきましては、十分一つ研究したい。それから理論上そういうことがいいとなりましても、実際どういう影響を及ぼすか、実際上の影響としましても相当研究しなければなりませんので、法律改正のときに、この問題を十分に研究いたしたい、かように考えております。
  37. 相馬助治

    相馬助治君 今の次長の答弁で、この第二、第三は重複している、こういうことですが、そうすると参議院の通商産業委員会でこういう決議をしたことを、つまらんことを重複してきめたのだという意味で、政治的な発言とすれば極めて重大だと思います。併し私はその揚げ足をとりません、というのは私もそう思うからです。そこで私がお聞きしたいのは、第一の「他の利益との調整をなし得るようその構成につき考慮すること」の中で、次長は専門審議会に通産省の官吏が入つていないために起きる支障があるからこれは研究中だと言つておりますが、事実はあなたたちが通商産業委員会に引張り出されて、そうして通産省の役人が入つていないことを通産省の役人が不服に思つて、それで委員から質問させて、こんなことじや駄目じやないかと言われて、あなたたちが一本とられて、首を下げたというようなことを嘘か本当か私は聞いておるのです。そこで率直に申しまして、この鉱業法の一部を改正する法律案が七月六日の本会議に上程されて、委員長報告のうちにこの附帯決議が読み上げられたときに、ここにいる文部委員会委員は皆んな驚いたと思う。文化財保護委員会の運営をひよつとすると著しくこれは阻害するのではないかと思うような決議が、全会一致を以て我々文部委員会には何らの了解なく一方的にきめられ、そうしてこの法律が成立した、こういうことで、非常に私は驚きましたし、他の文部委員会委員諸君が同感であつたと思うので、従つて委員会は明らかに文化財保護委員会のお目付けの委員会じやなくて、諸君と一緒に使命を共にして何とかして文化財を守るために、従来も協力して来たつもりです。そこでこれは委員長にお尋ねするというのが筋ですけれども、私は次長にお尋ねしたい。大体局長はこういう重要なことがあつたのに、何ら私の調では本委員会に連絡することとなく、他の用件を以て欧洲へたたれたようでありますが、いないかたについてとやかくいうのはやめますが、あなたはこの問題が起きて高橋委員長が通商産業委員会出席を求められたときに、こういうことを予見いたしましたか、仮に予見したとするならば、これを本委員会に連絡等をいたしましたか、又文部省にこれらの点について絶えず連絡をとりましたか、事務当局が扱つたことについてそのまま一つ報告願います。
  38. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) かような決議がなされましたことは私ども全然存じませんで、決議されましてその後に参議院の事務当局のほうから実は聞いたわけでございます。従つて決議をなしたということ私ども事前に予見いたしませんでした。どうもいたし方なかつたと思います。ただ質疑応答のありましたようなことは、それぞれ必要の向にはできる限り連絡をいたしております。
  39. 相馬助治

    相馬助治君 予見しなかつたとするならば止むを得ません。これは院内の問題であつて藪蛇になつてしまつて、これは我々議員間のどうも手落のようでございますが、併しこの程度のことは事務当局は予見されて、そうして文部当局ともやはり慎重に打合せられるだけの考慮が私は必要だと思うのです。私は委員長にこういうことは要求するのではなく、この際事務当局にそういうことを私は一つの見解として述べておきたいと思います。
  40. 木村守江

    木村守江君 関連して。私中途から聞いたのですが、その決議案は全然知らなかつたといいますが、決議案に盛られたような内容については承認を与えたか、それとも、そういうようなことが質疑応答によつて両方で了解できたような経過はなかつたのですか。
  41. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) この決議の内容につきましては承認を与えたということは全然ございませんし、又承認をするとか或いは決議を行うとかということにつきまして何ら了解もございません。
  42. 木村守江

    木村守江君 私は決議というものに拘泥するのではなくて、決議の内容について文化財保護委員会に対していろいろな意見が聞かれたと思うのです。そうした場合にその質疑応答の間にこの決議の内容を是認するような応答がなかつたのかどうかということです。
  43. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 先ほど申しましたように、それらの点はいずれも確かに問題点でありますことは申すまでもないと思いますので、問題点であるということは了承いたしております。けれどもこれに対して何らこの通りにするとか、そういうような答弁はいたしておりません。只今研究中であるとい憂昇まろくいたしたのであります。
  44. 相馬助治

    相馬助治君 そこでこういうふうな一方的な決議をされるということは面目上の問題から申しますと当委員会としても甚だ遺憾ですが、それは暫くおきます。そこで、併しともかくこういう決議がなされるようなやはり答弁をなしたということは一応想像されますと、この際文化財保護委員会の抜本的な、或いは一部の改正案を委員会としては予定して作業中でございますかどうか、委員長にお尋ねしたいと思うのです。即ち現行の文化財保護法でよろしいというふうにお考えであるか、或いはこの際何らかの改正を必要とする、ういう段階に来ておるというふうにお考えであるかどうか、委員長に御答弁を願いたいと思います。
  45. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 私は先ほども申上げましたように、文化財保護法ができまして三年を経過しておりまするその間に、いろいろな問題点のありますることを発見いたしたのであります。全体におきまして如何なる点を改正すべきであるかということを考えておりまするので、その中の一部分といたしまして、只今鉱業法との関係ども考えておるのでございます。それで実はこれが衆議院の通産委員会の問題になりましたという際には、私出席いたすべきであつたのでございまするが、全く私はこのことを存じませんでございます。私が役所に参りまするというと、丁度局長が衆議院から帰つて参りまして、今日はこういう質問を受けた、あなたがおられるならばあなたに行つて頂くべきであつたが、お見えにならんと思いまして自分が行つて来た、こういうようなことでございまして、全く文化財保護委員会といたしましては寝耳に水と申していいか、事の余りに意外と申しますか、に驚いた次第でございます。それからそのうち或る機会におきまして衆議院の通産委員長にこの点を伺つたのでありまするが、委員長はそういうことがあつたか自分もはつきり覚えていない、或いは委員会ではなかつたのではないかというような御返事でございまして、これは何かそうしますると、思い違いのようなことでもあつたのではないかと思いましたが、無論我々として深くこれを問題にすべきではないと存じまして、そのままにいたしておきましたので、その後文この参議院から出席しろというお話のありましたときには、私が二度目に出席いたしまして、自分の考えを述べておきました次第でございます。
  46. 相馬助治

    相馬助治君 従つて現在の文化財保護法では無形文化財保護等についてはいささか遺憾の点があるというようなことは、もう常識的になつておると思うのです。その他いろいろの内容を含めて、この際文化財保護法の一部を改正しなければならないという動きが十五国会において当委員会にあつたわけです。不幸にしてこれに非常に積極的な熱心さを持つていた山本勇造さんが議席を持たれなくなつたので、一応議員立法の形ではこれが今積極的に進んではおりませんが、当然保護委員会においてはこれらの問題について研究作業をし、法改正の意図があらわれるものという予想に立つて私は質問したのでありますが、そうでもないようで、ちよつと困つた問題だと思うのですが、実際のところ、ざつくばらんに保護委員会で法改正の意図をお持ちですか、それとも持つておりませんか、どちらですか。
  47. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 文化財保護委員会におきまして法改正の意図を持つております。
  48. 相馬助治

    相馬助治君 わかりました。そこでそれに対して各委員からも意見はあると思うが、連関して税法の問題、文化財保護委員会国宝だとか、やれ重要美術だとかやかましいことを言つて指定をして、とやかくのことは言うけれども、そのものは登録税は取られる、所得税は取られる、もう何ら税金の面において減免されていない、誠に困つたことだということは、特に最近財政的不如意になつたお寺様や神社等を中心にして強い声になつております。どうしてもこれは本委員会として文化財に関する諸税減免に関する立法措置等をしなければならない段階に私は来ておる、近い将来に委員会の諸君の同調を得て、これは一つ発議しなくちやならない、かように存じておりますが、私自身は力が乏しい、そこで何とかこれは、これも積極的に委員会が考えておるならば非常に仕合せなことだと思うのです。この間北岡課長に内々伺つてみましたところ、文化財保護委員会としても重要な関心を持つておりますので、十分関心を持つて検討中でございますと、こういうことを聞いて、一応納得はいつたのですが、この際改めて委員長にお尋ねしたいと思いますことは、諸税減免に関して何らか積極的に立法措置をしたいという意図をお持ちであるかどうか、これはお持ちであるとするならば、先の文化財保護法の一部改正場と違つて相手があることだから、当然大蔵省、文部省、地方自治庁、これらと十分連関を持たなければならない。ところが今の大蔵官僚というものはこういうものに対しては全く度しがたい頑冥さを持つておると伝えられておりますから、(笑声)これは容易なことではないと思うのです。それでこれらについて事務局をし七何かすでに交渉等をさせておりますかどうか、又させていないとするならば、させる御予定であるか、法改正と対政府内の交渉についてこの際委員長の所見を承わつておきたいと思います。
  49. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 文化財保護委員会におきましては、税法改正の点に関しましては、すでに、実は成案を得ておりまするのであります。併し、これは、只今お話のありましたように、大蔵省そのほかと交渉をしなければならん点が非常に多いのでございまして、実は打明けて申しますならば、一週あたり関係方面と折衝をいたしたいと存じまして、事務局を通じまして、その手配をいたさせたのでございますが、どうも今週中にはその運びに至らない、これは先週以来でございましたが、ということでございまして、今暫らく時期を待つということに相成つておるのであります。文化財保護委員会におきましては、もうすでに成案を、この文化財保護委員会の案というものができ上つておりますことを御報告申上げます。
  50. 剱木亨弘

    ○剱木亨弘君 ちよつと関連して、今の税金の問題でございますが、私の記憶が間違いであれば取消します。例えば議員立法で参議院で立法されます場合に、諸税の関係は原案に入つてつたやに承わつております。そうしてそれが当時司令部に行つてESSで削られたというようなことを聞いておりますが、それはどうでございましたでしようか、若しわかれば教えて頂きたい。なおそれに関連しまして、議員立法で原案を出して、司令部に打つて行く段階におきましては、恐らく参議院で立法されたかたと大蔵省との間にはその原案については了解は得ておつたのではないか、若し了解を得ておれば、単にその条項を削られたのは向うの関係だけであつて、国内的にはすでに了解を得ておるということであれば、今日大蔵省と国内的に交渉をするのに、極めて有利だと解釈できると思うのです。その点の事情を若しおわかりでございましたら、次長でもどなたでも結構ですから。
  51. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 先ほど委員長からちよつとその点御説明になつたのでありますが、参議院で立法の際に、原案には税の減免関係は入つてつたということは承知いたしております。それが当時司令部に行つてESSでこれがチエツクされたというふうに聞いております。その前に大蔵省とどのような折衝があつたかということは、ちよつと只今聞いておりませんが、参議院事務局のほうで詳細御存じだと思います。
  52. 相馬助治

    相馬助治君 これは先ほど文部次官であつた剱木先生の記憶はどうかということは、剱木先生のお示しの通りども承知しておるのです。具体的な問題として所得税、登録税の問題等ほ、或る程度政府と了解がつくのではないかというようなことは或る方面から聞いておりますが、問題は文化財関係の税金といいますか、入場税なんかは、地方税なんですね、それで、従来音楽その他日本に伝わつた古い劇、こういうものを文化財として遇することが非常に軽かつたと思うのですが、一挙にこれらの入場税等も免除するという考え方のほうが正しいと思うので、この広汎な国税及び地方税をひつくるめますと、なかなか問題は、やはり大蔵省を相手にした場合は簡単に片付かないと思うので、特段委員長においても、今剱木先生が確められたことをなお一層確められて、その線に沿つて努力されたいと、私は希望しておきます。
  53. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今相馬君が言つた無形文化財に対する補助金といいますか、非常に額が少額であるということが、無形文化財を軽視しておるということになるのではないかと思うのですが、私たちはやはり相馬君なんかと同じ意見で、無形文化財に対してもつと重要視する必要があるのじやないか、そういう意見を持つております。今年の予算の中に文化財公開費交付金という問題で四十七万円の予算が細まれておりますが、これはどういうふうに使うのか、ちよつと伺つて見たいと思います。
  54. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 無形文化財予算でございますが、これはお話通り他の建造物等の修理に必要な経費に比べますと、確かに少うございます。併しながら私どもは是非無形文化財保護は重視いたしたいということで、二十八年度は前年度に比べまして相当実はこれでも殖えておるのでございますが、なおこれは将来十分努力いたしたいと思います。  只今の公開交付金といいますものは、これは無形文化財を公開いたします場合に、それに対して補助金を出すということが趣旨でございまして、或いは郷土芸能の公開とか、或いはその他文楽であるとか能であるとか、そういうふうな場合に無形文化財を公開いたします際に、それに対して必要な経費を補助するという予算でございます。
  55. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私もその郷土芸能を大いに奨励するということは絶対必要なことだということを常に考えておるわけなんですが、今東北或いは九州方面に、全国的に見ても言えるのですが、いろいろなすばらしい民謡、俚謡、民族芸術というものはたくさんあるのですが、それがだんだんと失われて行くような傾向にありますので、この際本当にこの文化財保護委員会が本腰を入れて、これを保存することを考えなければいけないのではないかと思うのです。それにいたしましては余りにこの費用が少いと思うのです。毎年青年会館か何かで民族舞踊などの会をやつているように思いますが、まだく私は非常に物足りないのではないかと思うのです。遠い所から来るに対しましては旅費の問題、宿泊の問題、いろいろな問題があつて、なかなか出て来たくても出て来られないような面がありますし、あらゆる面で費用が相当かかる問題でありますから、もつとこれを費用をとつてこれを助成するように方針を立てて頂きたい。それがやはり今日の情勢では特に必要じやないかということを私は強く感じますので、その点を要望しておきたいと思います。  それから問題は少し別の問題になるかと思いますが、そうして又これまでの、私は今度文部委員に初めてなりましたので、これまでどういう問題が審議されておつたということを存じませんので、或いはダブることになるかも存じませんが、今度の戦争によりまして、この重要文化財の戦災を受けた数というようなことはそちらのほうでわかつておりましようか、どうでしようか。
  56. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 只今無形文化財の点は御趣旨を体しまして十分努力をいたします。  それから戦災の数はちよつと只今手許にはございませんが、必要がございますれば、のちほど資料を提出いたします。
  57. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あとで資料がありますれば、のちほど頂きたいと思います。  それから戦後重要文化財などがほうぼうで盗難に会つているということを聞くわけです。泥棒に盗まれているということです。上野の東照宮の燈籠がとられたというようなことも随分聞きましたし、そういうことを開くのでありますが、その盗難の量も併せて伺いたいと思います。  それからこういうことが巷間言われるのでありますが、真偽のほどはわかりませんが、日本重要文化財が盗まれて行つて、それが或る国に持ち帰られておるというようなことまでいろいろ取沙汰されるのでありますが、そういうことに関しまして、あなたのほうに何らかの資料があるかどうか、伺つておきたい。
  58. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 只今の御質問の点は、のちに資料を整えましてお目にかけたいと存じております。  盗まれて海外へ出た品物というものがどれくらいございまするか、改めて調査いたしまするが、私ども聞いておりますところでは、国宝若しくは重要文化財で海外に流出いたしましたものは割合に少いのでございます。殆んどないと言つてもいいくらいでございます。ただ刀剣類、これだけが最初取扱いを誤つたと申しますのでありまするか、進駐軍に引渡されましたものが四十点ほどあるということを開いております。  それからもう一言言わせて頂きたいのでありまするが、先ほど相馬さんからの御質問のありました点、誠にこの減免規定を入れますことにつきましては、いろいろ困難があることと存じております。大蔵省、そのほかにいろいろ難色があることを存じておりまするが、剱木さんからお話のありました、最初この法律のできまする当時のことは私もよく存じないのでありまするが、草案中の諸税減免に関しまする三カ条が削除されたということを聞きまして、無論文化財保護委員会成立前のことでありまするが、こちらの専門員のかたにお目にかかり、又これに対して非常に熱心であられました山本氏に誇会いいたしまして、いろいろ伺つたのでありまするが、私の記憶いたしておるところが誤りでなければ、内部においては大した反対も見なかつた。それから関係々々におきましては、GS、或いはCIEなどでも了解がついておつたのでありますが、先ほどお詰がありましたようにESSの承認を得られないで削除せられるようになつたと、こういうようなことでございますので、割合了解を得まする部分が多いのではないかと思います。これがために著しい減税になるというようなことも、税収入が減るというようなことも考えられるのでありますが、まあ只ものが多いのでありますので、大よそ所有者の六分の一くらいが個人ではないかと報告を受けておりまするので、税収入減は割合少いのではないかというふうに考えておりますので、比較的話がなだらかに進みやしないかとひそかに考え、又祈つております。  それから入場税のお話もありましたが、これはやはり地方税法の改革を願いたいと思つておりますが、これなどもさほど大した問題ではないのじやないかとひそかに考えておるのでありますが、先ず最善の力をいたしまして、減免を行なつてもらいたいと考えております。
  59. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国宝の海外への流出は絶対ないと言つて頂きたかつたのですが、絶対ないというお答えがなかつた。数点或いは少しということを伺つて非常に私は残念に思うのですが、若し流出した先がわかればそれを日本に取戻すということは可能であるのかどうか。その点を伺つておきたいと思います。
  60. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) 私は絶対という言葉を使いましたらこれは私の言い過ぎでございまして訂正させて頂きまするが、先ほど申しましたように、刀剣関係などは向うへ出ておりますもののわかつておりますものにつきましては、文化財保護委員会事務局におきまして勿論交渉を進めておりまして、まだどこまで成績を挙げることができるか疑問でございますが、相当取返えせるものがあるのじやないかと考えております。
  61. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それから私は知識がないのですが、国宝及び重要美術品なんか外国に流出することを防ぐ方法というものが何か考えられておるのでありましようか。そういう手段かなんかをとつて参るのかどうかちよつとお聞きいたします。
  62. 高橋誠二郎

    政府委員高橋誠二郎君) これは保護法の規定によりまして流出を防ぐことに努めておるわけでございますが、どうもこれは対外関係になつて参りまして非常に困難な問題を引き起す場合がありますので、実は悩まされておるのでありまするが、まあ最近具体的な例を申しまするならば、ガスビーと申しますか、英国人の所有に属しておりまする重要美術品でありまして、色鍋島のとつくりでありますが、これが海外に出る虞れがあるということで、我我いろいろ苦慮いたしておるのでありますが、どうも国際的な問題になりますというと、いろいろ厄介なことが起りますので、心配いたしておるのであります。今までのところでは、このほかには問題こなつておりますものはございませんと申していいかと存じます。
  63. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは、日本アメリカ人、外国人がたくさんおつて、その人達は金を随分持つているわけでありますが、その人達が買うことを何か制限するというようなことまでは、これは考えられないのでしようか。若しもそういう人達が買つてしまえば、その人の所有物だから、自分で引越しのときに持つて帰るというようなことは、なかなか禁止することはできないのでしようし、そこらのことはどういうふうに何か処置を考えていらつしやるか、どうですか。
  64. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 国宝若しくは重要文化財を他人に譲渡しようというような場合には、先ず以て文化財保護委員会に申し出でなければならないのでございます。文化財保護委員会でその申し出でを受けまして、これは極めて価値があるというような場合には、これをみずから政府が買上げるという制度でございまして、非常に価値のある重要なものは、それを買上げて行くという予算がございますので、それで政府が買上げるということをいたしております。それから政府で買上げない場合には、文化財保護委員会がその譲渡を承認するわけでありまして、さような制度上、そこで一つ抑えつつあるわけであります。それから、すべて重要文化財、重要美術品等はこれは海外に輸出を禁止してありまして、許可なくして輸出した場合には、罰則の適用があります。併しながら、なかなかそれだけでは、先ほどの委員長の答弁のありましたように、事実上海外に出るということを防ぐことは万全ではないのでありまして、事実上は税関その他に十分連絡をいたしまして、連絡を十分とりまして、そういう価値のあるものが海外に出ます場合には、実際にそこで押えるというようなことはいろいろいたしております。
  65. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は先ほどのあなたの今おつしやつた税関の問題が心配なのですが、アメリカ人が日本から出るときに、自分のものを持つて帰るときに、果して全部税関で検査を受けるのかどうか。受けないと思うのです。マツカーサー元帥が帰るとき、何百トンかの荷物を持つてつたが、それは少しも検査されていない。その中にどういうものが入つておるかということは、これは調べていない。そういう危険があるから、私は非常に心配しておるわけなんです。ですから、どうしても外国人が自由に買うことができないというふうにして、それから盗まれたものがたまたま外国人の手に渡つて、それが知らない間に税関を無視して通つて外国に流出してしまうというようなことを、そういうことを如何にして防ぐかということを、一つあなたのほうでよく考えてもらいたいと、こういうことなんです。そういう危険があるのじやないかと私は心配しておるわけです。それからもう一つ、これはちよつと関係がないかと思いますが、私はこの間、桂離宮を拝観に行つたわけなんです。行きまして、大変私は感激して帰つて来たのでありますが、私はこの拝観の許可を京都の宮内庁の出先機関に申込みに参りますと、私は国会議員だからもう問題なしに許可が得られたのですが、ところが、私の友人が見たいということで申し出がありまして、私はその友人のために話をしに行つたのですが、大会社の社員ならば課長から上でないと見せない。それから会社の資本金の額によつて許可をするかしないか。大会社でないと許さんと、小さい会社だつたら課長でも駄目だと、官庁ならば係長以上は見せると、こういう会社の資本金によつて桂離宮を見ることができないというような、そういう馬鹿げた、不合理なことを宵内庁の係官がいつておるわけなんです。これは私は非常に不合理だと思うわけなんです。むしろ今日桂離宮なんかを本当に見たいというような人は、課長や部長というよりも、若いインテリゲンチア、青年達が本当に見たがつているわけなんです。ところが、その人達は課長でも何でもないために見ることができないというような拘束を受けておる。又労働組合の人達が見ようと思つても、それは見せないわけなんですな。こんな馬鹿げたことが今日私はあるかと思つて、実は驚いて帰つたわけなんですが、文化財保護委員会において、そういうことを、何か一般の国民が全部見ることができるような方法を宮内庁に言つてもらいたいと思う。私は宮内庁に行くのは余り好みませんから行きませんが、(笑声)あなたのほうから、もう少し広く見せるというような道を開くことを考えてもらいたいと思うのですが、どうでしようか。
  66. 岡田孝平

    政府委員岡田孝平君) 今の桂離宮の点は、何分にも宮内庁の所管でございますので、直接に私のほうではどうということも言えませんが、問題がいろいろございますようでございましたら、その点を話合いはいたしたいと思います。
  67. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでもう一つ参考に言つて置きます。ところが行つてみると、実際に行つてみると、どこかのお茶の先生かお花の先生かわからん、道具屋さんみたいな風体の人間が、どこの人間かわからない人間を多勢連れて来ておる。裏口をもぐればできる。ですけれども、私は裏口をもぐることはいやですから、労働組合の人たちが桂離宮、重要文化財を見たいというのですから、それを自由に見せるようにして初めてこの文化財というものが生きて来るわけでありますので、今日あのような馬鹿げたことを言つておる、宮内庁に私が行けば喧嘩しちやうから、行きたくはないのですが、あなたのほうから何かそういう道を開くように努力してもらいたいということを希望するわけです。
  68. 木村守江

    木村守江君 大体時岡も相当経過いたしましたので、この辺で質疑を打切つて、本日は散会せられんことの動議を提出いたします。
  69. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今木村君から質疑打切りの動議が出ましたが、文化財保護行政に関する御質問はこれで打切つて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 川村松助

    委員長川村松助君) なお木村君の動議に対しまして御異議ありませんか。
  71. 高橋道男

    高橋道男君 何か木村委員から散会というようなお話がありましたが、午後続行して、法案の審議をやるわけに行きませんか。
  72. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記をとめて。     〔速記中止〕
  73. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記を始めて。それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後零時五十分散会