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1953-07-03 第16回国会 参議院 文部委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三日(金曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————   委員の異動 六月二十九日委員高田なほ子君辞任に つき、その補欠として湯山勇君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     川村 松助君    理事            高木 正夫君            荒木正三郎君    委員            大谷 贇雄君            吉田 萬次君            杉山 昌作君            高橋 道男君            安部キミ子君            湯山  勇君            長谷部ひろ君   国務大臣    文 部 大 臣 大達 茂雄君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    田中 義男君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君    文部省社会教育    局長      寺中 作雄君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君    常任委員会専門    員       工楽 英司君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○学校教育法等の一部を改正する法律  案(内閣送付) ○本委員会運営に関する件 ○市町村立学校職員給与負担法の一部  を改正する法律案内閣送付) ○義務教育費国庫負担法臨時特例に  関する法律案内閣送付) ○青年学級振興法案内閣送付) ○教育・文化及び学術に関する調査の  件(文部行政に関する件)   —————————————
  2. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。学校教育法等の一部を改正する法律案を議題にいたします。文部大臣提案理由の御説明を願います。
  3. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今回提出学校教育法等の一部を改正する法律案について御説明申上げます。この法律案教科用図書検定文部大臣において行うこととするため、学校教育法を初め、教育委員会法私立学校法及び文部省設置などの関係法律の一部について改正を加えるほか、若干の規定を整備することを内容とするものであります。申すまでもなく教科用図書学校教育における主たる教材として重要な使命を持つているものであります。そこで今後一層この教科用図書内容を充実し、初等中等教育水準を維持し、更にこれを向上させるためには、教科用図書検定は、これを文部大臣において行う必要があると信ずるのであります。然るに従来教科用図書検定については先ほど申上げました四法律にそれぞれ規定があります。  即ち教育委員会法及び私立学校法によりますと、都道府県教育委員会又は都道府県知事教科用図書検定を行うこととしながら用紙割当制が廃止されるまでは文部大臣が行うものとしているのであります。他方学校教育法においては、教科用図書監督庁検定若しくは認可を経た教科用図書又は監督庁において著作権を有するものとし、その監督庁はこれを当分の間文部大臣と定めているのであります。又文部省設置法においても、文部省初等中等教育局において当分の間教科用図書検定を行うこととしているのであります。従つて先に申上げました趣旨にのつとり今般これら関係法律改正して教科用図書検定権文部大臣に属せしめ、その所属を明らかにしたのであります。以上この法案提案理由について御明明申し上げた次第であります。何とぞ慎重審議上速かに御賛同給わらんことをお願いいたします。
  4. 川村松助

    委員長川村松助君) なお田中局長から補足説明を申上げます。
  5. 田中義男

    政府委員田中義男君) 学校教育法等の一部を改正する法律案の詳細につきまして補足説明をいたします。本法律案教科用図書内容の充実と教育水準維持向上を図るため、教科用図書検定文部大臣において行うこととし、これに伴つて関係法律の一部に改正を加えるほか、若干の規定を整備しようとするものであります。次に各条につきまして内容を御説明申上げます。法案の第一条は、学校教育法の一部改正でありますが、先ず現行法について申上げますと、学校教育法第二十一条第一項におきましては「小学校においては、監督庁検定若しくは認可を経た教科用図書又は監督庁において著作権を有する教科用図書を使用しなければならない」とされており、この規定は第四十条によつて、中学校の場合に準用されております。従いまして本法律案第一条は、先に申述べました趣旨にのつとり同法第二十一条第一項中の「監督庁検定若しくは認可」を「文部大臣検定」に、「監督庁において」とあるを「文部大臣において」に改めようとするものであります。認可規定を削除いたしましたのは、検定教科書が普及しました現在においては、もはやこの制度を存続せしめる必要がなくなつたからであります。次に同条第二十三条及び第二十六条中の「市町村立小学校管理機関」を「市町村教育委員会」に改め、現行第百七条を削除いたしましたのは、教科用図書検定と直接関連するものではありません。御承知通り昭和二十七年十一月一日全市町村教育委員会設置されましたので、昭和二十七年十一月一日以降は、すべて各市町村におかれた教育委員会市町村立小学校管理機関となりましたので、これを明確にいたしますために改正を加えたものであります。次に第四十九条及び第五十一条の規定改正でありますが、これは高等学校教科用図書に関するものであります。現行法によれば、高等学校並びに盲学校ろう学校及び養護学校教科用図書につきましては、第四十九条及び第七十三条の規定により監督庁がこれを定めるものとし、その監督庁は第百六条第一項の規定により当分の間文部大臣とするとなつているのであります。この規定に基き、文部省令たる学校教育法施行規則第五十八条におきましては「高等学校教科用図書は、文部大臣検定を経たもの又は文部大臣において著作権を有するものを使用しなければならない。前項に規定する教科用図書のない場合に使用すべき教科用図書は、校長がこれを定める」とし、この規定盲学校及びろう学校にも準用されているのであります。このように高等学校盲学校ろう学校及び養護学校教科用図書につきましては、学校教育法において直接規定していないのであります。しかし、教科用図書重要性に鑑み、小・中学校同様これを法律において規定することを適当と認め、小・中学校に関する規定を準用することといたしまして、第四十九条、第五十一条及び第七十六条に改正を加えたわけであります。  なお同等学校職業に関する教科等教科用図書並びに盲学校ろう学校及び養護学校の特殊の教科用図書は、現在学校教育法施行規則第五十八条において認めているような特例措置を必要といたしますので、第百七条を新設してこの特例を認めるようにしたわけであります。  第二条は教育委員会法の一部改正であります。  教育委員会法第五十条第二号におきましては、都道府県教育委員会が行う権限の一つとして文部大臣が定める基準に従い、都道府県内のすべての学校教科用図書検定を行うことをかかげております。  更に同法第八十六条におきましては、教科用図書検定は第五十条第二号の規定にかかわらず用紙割当制の廃止されるまで文部大臣が行うものと規定しているのであります。  今後文部大臣検定を行うことといたしますので、これらの規定を削除し、並びに第四十五条及び第四十七条中検定に関する字句を削除したのであります。  第三条は、私立学校法の一部改正であります。  私立学校法第七条におきましては、都道府県知事権限として、教科用図書検定規定しています。更に同法附則第十三項におきまして、この権限用紙割当制が廃止されるまで文部大臣が行うものとされておりますので、第二条の教育委員会法改正の場合と同様の趣旨により、これらの規定を削除することとしたわけであります。  第四条は、文部省設置法の一部改正であります。  文部省設置法附則第十項におきまして、初等中等教育局事務といたしまして、当分の間教科用図書検定を行うことが規定されておりますが、第一条の学校教育法改正に伴い、この事務は一般的に文部大臣権限となりましたので、第五条の文部省権限及び第八条の初等中等教育局事務として、新たに規定を加えたわけであります。  以上補足説明を終ります。
  6. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はこの際委員長文部委員会運営について文部委員長意見を伺つておきたいと思う。この前の理事打合せ会におきまして今後の文部委員会運営につきましては、文部省から提案する法案説明を聞いて、そうして大体の見通しをつけて今後審議して行こう、こういうふうに協議いたしたと考えております。それから又当文部委員会としても私の意見としては当初に文部大臣文教政策について一応の説明を聞いて、それで質疑を行なつて然る後法案審議等に入つて行きたい、こういう希望も申述べたはずであります。併しこういうことについては何らお諮りにならないで、今日は早速この法案提案理由説明なつておる、こういう文部委員会運営について委員長の私は考えがよくわかりませんので……。
  7. 川村松助

    委員長川村松助君) 文部大臣のお考えを承わるということにつきましては、今日の法案提案理由説明を聞きましてから入る予定にいたしております。それから運営上の今後の委員会のことにつきましては文部当局側法案提出様子を見て、今の程度では余りに少いのであります。かたがた予備審査でもありますし、文部当局提案される法案様子を見て然る後じやないと御相談できないのじやないかという考えでございます。今日のこの委員会が済んでからそのことを文部当局と一緒になつて打合せしよう、こういう考えでおります。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは文部委員会議事日程等については理事会で一応相談をして、そうしてやつて行こうと、こういうまあ委員長のお考えに変りがないかどうか。
  9. 川村松助

    委員長川村松助君) 変りありません。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではそういうふうにやはり諮つて頂かないと、何らの相談がなしにこういう法案をすぐ提案されるということは今後の運営上私面白くないと思う。若干議事進行に関して意見だけを申述べます。   —————————————
  11. 川村松助

    委員長川村松助君) 次に市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案について文部大臣提案理由を承わります。
  12. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今回政府から提出いたしました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案について御説明申上げます。  現在市町村立義務教育学校教職員給与は御承知通り市町村立学校職員給与負担法に基き、都道府県が負担し支給することになつており、都道府県が負担する給与種類は同法第一条に列挙されております。一方教育公務員特例法第二十五条の五によりまして……。
  13. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私途中で、私のさつき言つた趣旨委員長は了承されたということですが、了承されていない。次々に法案説明があるわけです。
  14. 川村松助

    委員長川村松助君) いや、これは公報で御報告しておりますように、原則的にこの提案理由説明を聞いておきまして、今日はそれで終るわけです。これに対しては、あとは文部大臣所見を質し、更に理事会で今後の運営につきまして法案審議等について協議しよう、こういうお答えをしておるわけです。
  15. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 理事会法案審議について打合せるということは、やはり提案についても、提案の問題も含まれておると思います。私としてはやはり今日は文部大臣文教政策について一応の説明を聞きたい、かように考えておつたわけであります。従つてやはりこの問題を先にやつてもらいたいと思う。
  16. 川村松助

    委員長川村松助君) あなたの申入れにつきましては、昨日文部大臣にお話いたしまして、今日所見を聞くことになつております。かたがた只今申上げましたように、この公報で報告いたしましたものを先に取上げるほうが順序だろう、こういう考えでやつておるのであります。
  17. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 いや、それは公報というのはそういうふうにやはり協議をしてやつてきめた問題じやないと思うのです。だから委員長がそういうふうにお考えなつておやりになるというのなら結構ですが、委員長はやはり理事相談をしてやつて行きたい、こういう方針であればやはり私はそういう方針でやつて……。
  18. 川村松助

    委員長川村松助君) それでは荒木さんのお考えは何ですか、提案法律案説明を一時保留して文部大臣所見を質すほうを先にしたい、こういうのですか。
  19. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうです。
  20. 川村松助

    委員長川村松助君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  21. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記をつけて下さい。
  22. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) では引続いて御説明を申上げます。  教育公務員特例法第二十五条の五によりまして公立学校教育公務員給与種類及びその額につきましては、当分の間、国立学校教育公務員給与種類及びその額を基準として定めることになつております。こういう関係から、国立学校教育公務員については、昨年十二月に一般職職員給与に関する法律改正されまして、年末手当期末手当に改められ、同時に勤務手当が加えられたのに伴いまして、市町村立学校職員給与負担法第一条にこれに相応した所要の改正を加える必要が生じたのであります。即ち、同法第一条中に規定する年末手当期末手当に改め、同時に勤勉手当を加えようとするものであります。  以上この法案提案理由とその趣旨を御説明いたしました。何とぞ慎重に御審議上速かに御替同賜わらんことを御願い申上げます。   —————————————
  23. 川村松助

    委員長川村松助君) 次に義務教育費国庫負担法臨時特例に関する法律案文部大臣の御説明を願います。
  24. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今回、政府から提出いたしました義務教育費国庫負担法臨時特例に関する法律案について、提案理由及びその概要を御説明申上げます。  現行義務教育費国庫負担法は、昨年八月制定され、本年四月一日から施行されたのでありますが、御承知通り、この法律は、都道府県が負担する公立義務教育学校教職員給与費につきまして、原則として都道府県の実支出額の二分の一を国庫で負担すると規定しております。併しながら、現在、この法律をそのまま実施した場合においては、従来国から平衡交付金交付を受けなかつた都道府県が多額の国庫負担金交付を受けることになり、地方団体財政の不均衡を著しくいたすのであります。それは、この国庫負担制度を実施することから生ずる財政上の事情であるとはいうものの、現下の国及び地方を通ずる財政状況に鑑みる場合に、政府としてはこの事態に対する何らかの措置をとることが必要と考えるのであります。  そこで政府におきましては、差し当り、国及び地方を通ずる財政上の必要な措置が採られるまでの間、義務教育費国庫負担金について臨時特例措置を講ぜんとするものであります。  即ち、地方財政平衡交付金法規定による基準財政収入額基準財政需要額を超える都道府県に対しましては、義務教育費国庫負担法第二条の規定に基き算定された国庫負担金の額から、基準財政収入額基準財政需要額を超える額を控除して交付しようとするものであります。尤も本年度におきましては、すでに現在義務教育費国庫負担法従つて、右のような都道府県に対しても、義務教育費国庫負担金交付いたしておりますので本年度については、このような都道府県に対する控除は、この法律施行後のことといたし、その額は原則として基準財政収入額基準財政需要額を超える額の十二分の八といたしたのであります。  以上がこの法律案提案いたしました理由とその趣旨の大要であります。何とぞ慎重御審議上速かに御賛同賜らんことをお願い申上げます。
  25. 川村松助

    委員長川村松助君) 田中局長から補足説明を求めます。
  26. 田中義男

    政府委員田中義男君) 義務教育費国庫負担法臨時特例に関する法律案提案理由について補足説明をいたします。  この法律案は二カ条からなるものでございます。第一条において、この法律制定趣旨を謳い、第二条において、この法律の実体的な規定を設けております。  第一条は、この法律趣旨として、この法律義務教育費国庫負担金に関して臨時に特別の措置を定めるものであることを規定しております。即ち、国及び地方を通ずる財政現状からいたしまして、義務教育費国庫負担法を完全に実施するには適当でない状態にあることを認めた上で、その状態を是正するに必要な財政調整措置が講ぜられるまでの期間、義務教育費国庫負担金について特別の措置を講ずるものであることを規定しております。  第二条は、地方財政平衡交付金法規定する基準財政収入額基準財政需要額を超える都道府県に対しては義務教育費国庫負担法第二条及びこれに基く政令の定めるところにより算定された義務教育費国庫負担金の額から、当該都道府県について算定された基準財政収入額基準財政需要額を超過する額を控除する旨を規定いたしております。但し、この場合においては、控除する額は義務教育費国庫負担金の額を限度とするものでありまして、基準財政収入額が、基準財政需要額を超える額が義務教育費国庫負担金の額を超えるような場合においては、その義務教育費国庫負担金に相当する額だけを控除しようとするものであります。  附則においては、この法律は公布の日から施行し、昭和三十八年度から適用することとしておりますが、特に今年度につきましては、控除分についてその十二分の八を計算することといたしております。と申しますのは、今年度においては、現に義務教育費国庫負担法に基いて、これらの地方団体に対しても国庫負担金交付いたしておりますので、控除するのは、この法律施行後のこととなる関係から十二分の八といたしました。換言いたしますれば、この法律施行前の交付済額控除しないという考えであります。  附則第三項の但書は、この法律施行後におきまして給与改訂等特別の財政需要その他財政上の変動が生じた場合においては、十二分の八という率が必ずしも合理的とは申されない事情なつて参りますので、特に設けたものであります。  以上逐条的に文部大臣提案理由説明に対して補足いたした次第でございます。   —————————————
  27. 川村松助

    委員長川村松助君) 次に、青年学級振興法案について、文部大臣の御説明を願います。
  28. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 今回政府から提出いたしました青年学級振興法案について、御説明申上げます。  終戦学校教育制度が根本的に改革され、勤労青年に対する教育施設として、高等学校定時制課程設置大学夜間学部設置並びに高等学校及び大学における通信教育制度の確立という一連の措置がとられました。併し勤労青年に等しく教育機会を与えるためには、これらの措置だけではまだ十分ではありません。昭和二十二、三年頃から、各地青年学級が次々と開設されるようになり、昭和二十四年には全国的な規模でこれが普及するようになつたのであります。  勤労青年教育が重要であるということについては、何人も異論のないところでありますが、高等学校定時制課程通信教育その他の勤労青年のための制度があるのにもかかわらず、現在なお多数の青年教育を受ける機会に恵まれずに放置されている現状であります。  青年学級は、勤労青年に対し、実際生活に必要な職業又は家事に関する知識技能を修得させると共に、一般教養向上を正図ることを目的とし、勤労青年自主性地方実情に応じて開設される社会教育事業でありまして現在その開設学級数は、約一万一千学級受講生数、約百万人であります。併しながら今日これら青年学級の共通の悩みとするところは、指導者及び経費不足でありまして、青年学級の助成及び振興のための措置を講ずることは、まさに刻下の急務であると考えられます。  右のような理由により、ここに青年学級振興法案提出する次第であります。  次に、この法律案骨子について申上げます。  第一に、この法律案は、社会教育法の精神に基きまして、青年学級開設及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図ることによりわが国の産業の振興と国家及び社会の有為な形成者の育成に寄与することを目的としております。青年学級とは、勤労に従事し、又は従事しようとする青年に対し、実際生活に必要な職業又は家事に関する知識及び技能を修得させるとともに一般的教養向上を図ることを目的とする事業であります。  第二に、青年学級は、市町村開設するものであることを明らかにし、原則として市町村設置する公民館又は学校事業として実施するものであることを規定しております。  第三に、青年学級は、その本町に鑑みまして、勤労青年自主性を尊重し、且つ、勤労青年生活実態及び地方実情に即応して、開設し、及び運営しなければならないことを明らかにし、この趣旨に基いて市町村の区域内に住所を有する十五人以上の勤労青年は、当該市町村教育委員会に対し、青年学級開設の申請をすることができるように定めております。  第四に青年学級を実施する機関に、青年学級主事及び講師を置くものとし、講師補佐を置くことができることを明らかにするとともに、青年学級主事講師及び講師補佐の職務を規定いたしております。  第五は、青年学級に対する国庫補助であります。現在、青年学級は、いずれも経費不足から来る運営上の困難に当面いたしております。以上この法律案提案理由とその内容骨子について御説明いたしましたが、この青年学級振興法案が成立しまして、青年学級法的根拠が与えられ国庫補助の道が開かれますならば、我が国の勤労青年教育振興に資するところは、はなはだ大きいものと存じます。  なにとぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成下さるよう御願いします。
  29. 川村松助

  30. 寺中作雄

    政府委員寺中作雄君) 青年学校振興法案提案理由につきまして、只今文部大臣から説明がありましたが、私から多少これを補足いたしまして、御説明申し上げたいと思います。  終戦勤労青年層が、市町村当局と協力して自主的に共同学習組織を作り、昭和二十二、三年頃から自然発生的に全国各地において開設されるようになつたのが、現在一万一千学級を数える青年学級であります。これらの青年学級は、主として経費不足等から非常に困難な運営に陥つてきている現状にかんがみまして、政府といたしましてこれに対し何等か援助の手を差しのべたいと考えたのが、青年学級振興法案提出いたしました主なる理由でございます。そこで私からこの青年学級振興法案を立案するための裏付けとなつ考え方の、主要点について、以下少しく申上げてみたいと思います。  第一に青年学級存在理由、つまり、現状に照して、青年学級がどうしても必要であり、またこれを育成発達させることが是非とも必要であるという論拠は、何処にあるかという点であります。  現在、義務教育終了後二十五歳までの青年総数は、約一、六二〇万人でありますが、そのうち高等学校及び大学に在学している学生生徒の数は、高等学校定時制課程のものを含めて、約二八〇万人でありまして、僅かにその一七%に過ぎません。またこのうち、特に勤労青年のための教育施設である高等学校定時制課程及び通信教育についてみますと、前者の生徒数は約五三万人、後者の受講生数は約三三、〇〇〇人に過ぎないのであります。従つて青年総数の八三%即ち約一、三四〇万人のうち多くの者は殆んど教育を受ける機会に恵まれていないというのが、今日の実情であります。  一部には定時制高等学校こそはかかる勤労青年教育のための教育施設であるから、その他に青年学級の如きものは必要ないのではないかというような考えもありうるかと思うのでありますが、勤労青年実態は、その生活的条件、あるいは経済的条件よりみて、定時制高等学校にも通学する余裕のない者が相当多数あると思うのでありまして、大部分の農村青年にとつて農閑期を活用して教養あるいは勉学の為にさき得る余暇は、せいぜい年間一二〇時間乃至一五〇時間、多く見ても、二百時間程度であり、この程度の余暇時間しかもたない勤労青年にいかなる形で教養の機会を与えるかというのが、青年学級の問題であります。定時制高等学校においては、少くとも年間七百五十時間位の教育時間を必要といたしておりますので、到底すべての青年定時制高等学校への就学を期待することはできないと思います。  勿論定時制高等学校に就学し得る生活的条件経済的条件を有する者には定時制高等学校への就学の機会を広く与える必要があるのでありまして定時制高等学校青年学級は相併行して、その整備、充実を図り、勤労青年生活実態に即した、教養の機会を与えることが必要であると考えるのであります。よつて現に、法制的基礎をもたない青年学級に対しては、この際法制的基礎を与え、これに対して国庫補助の途を開くための根拠法規としたいと考えるのであります。  第二に青年学級を法制化するについては、つとめて、現在、現実に各地において開設されている青年学級実態を崩さないよう、すなわち自然発生的に青年自主性によつて開設運営されつつある現状のまれで国庫補助の恩恵が受けられるようにしたいと考えているのであります。従つて、この法案が成立することによつて、現在の青年学級が非常に窮屈なわくにはまり、政府の統制を受けるというようなことは全然ないのでありまして、むしろ青年学級の使命とする自主的運営を保障するために法制化が必要であると考えているのであります。本法案の第三条に青年学級の基本方針として「青年学級勤労青年自主性を尊重し、かつ勤労青年生活実態及び地方の実状に応じて開設し、及び運営しなければならない」と規定し、また青年学級開設に当つては、青年の側から積極的にこれを開設して貰いたい旨の申請を提出する道を開いている点等は、一に青年学級運営青年自主性によつて発展すべきことを保障せんがためであります。何故に青年自主性を尊重する必要があるかと申しますと、青年層は、小、中学校生徒と違い、相当の年令に達し、ある程度の判断力を持つているのでありますから、真に自分等の方からこういう計画で、こういう内容の教養を修めたいという願望に応じて、その願望に適つたものを提供するという組織機構になつているのでなければ進んでそれに参加する気持を持たないのでありまして、一面、自ら積極的に希望を提出し、その希望によつて開設運営もなされるということであれば、これに対して責任を持つて対処するという気持を起すことになると思うのであります。従つて、自分等で計画し、また開設申請した以上は進んで受講を継続することとなり、出席不良のために折角の学級が廃絶同様になるというようなことは無いと思うのであります。この青年学級におけるカリキュラム等も青年自身の参加した青年学級運営委員会等で決定することになるのでありまして、一定のカリキュラムの基準のごときものは別に要求せず、真に青年が明日の生活に必要であると考え知識青年の望むまれに与えることを使命としているのであります。青年学級課程を修了することによつて、別にクレジットのごときものは与えられないのでありますが、ただ青年生活に必要な教養を自から求めて与えられるということに、青年学級を受講する魅力が含まれているようなものにしたいと考えるのであります。  第三に、青年学級振興法案の建前は、青年学級の自由な開設、自由な発展を予想しているのでありまして、市町村開設する青年学級以外に会社、工場あるいは私人の開設するものも青年学級類似事業として認めております。又、青年学級は必らず一定の資格をもつた講師でなければ、これを担当し得ないというような建前をとるものではなく、その開設運営は、極めて自由なものを考えているのであります。ただ国庫より補助を受けようとする青年学級は、市町村開設するもので、通常の観念からして、当然必要と認められる程度の健全な運営を行つているものについて、国旗補助の道を開いていきたいと考えているのであります。  第四に右に述べたように青年学級運営は極めて自由でありますが、ただ教育の中立性というような観点よりして、営利に走つたり、特定の政治活動に傾いたり、或は一宗一派の宗教的色彩をもつたりすることは厳に禁止さるべきものと考えているのでありまして、その意味で青年学級が非常に片寄つた運営に陥る場合にはこれを禁止すべきことを規定して、その中正健全なる運営を保障しているのであります。  第五に現在青年学級運営に必要な経費は、市町村の公費によつて賄われておるのでありますが、これを法制化するについては国費助成の途を開いて市町村の負担を軽減することに主たる狙いをおくものでありまして、これを法制化することによつて市町村財政に対し過重の負担をかけないよう留意したのであります。  すなわち青年学級実施のために青年学級主事青年学級講師青年学級講師補佐職員を置くことになりますが、本法案は別に新らしい今をそれらの職員に任命してそのために職員の増を必要とするようなことがないように、これらの青年学級主事は現在市町村教育委員会事務局又は市町村教育委員会の所管に属する教育機関職員のうちから命ずることとし、又講師講師補佐についても法律施行に際し専任講師としての常勤職員を置かせるようなことは考えておらないのであります。  従つてこの法案の成立によつて市町村財政が緩和されることがあつても、加重されることはないものと考えているのであります。以上申述べましたような点が、この法案を立案するにつきまして特に考慮した点でございます。  次に法案内容骨子につきましては、文部大臣より御説明申し上げましたので、私からは簡単に各章別にその主なる点を申上げます。  第一章は総則といたしまして、青年学級目的定義運営の基本方針等を述べておりまして、青年学級運営には青年自主性を尊重しなければならないと云うような点は、前述いたしました通りであります。  第二章は青年学級開設および運営の手続き或いは青年学級のために装置する職員等について規定いたしておりますが、開設手続において勤労青年の側から開設申請をする道を開いていること、青年学級が特定の政党の利害に関する事業を行なつたような場合にはこれを禁止し、この禁止に応じないものを処罰すること、青年学級学級生がいちぢるしい減少を来したような場合には、教育委員会がこれを廃止することができること等が、主なる規定であります。  第三章は国の補助に関する規定でありまして補助を受けるに適する青年学級の要件としては学級生三十人以上であること、開設期間が一年以上であること、学習時間数が年間百時間以上で、且つ、その学習が継続して行われること、担当する青年学級主事大学卒業生、教員免許状所有者、社会教育主事、その他各種の委員を勤めたこと等の資格をもつたものであること、おおむね同様の資格をもつた青年学級講師が三人以上担当していること等が規定されております。なお青年学級講師補佐に関することが規定されておりますが、国庫補助の要件を備えた青年学級で、三百時間以上学習したもの、つまり青年学級の卒業生に青年学級講師補佐という一種の資格類似のものを認め、その講師補佐を五年以上勤めた場合には、青年学級講師或いは青年学校主事になる資格を与えられることにいたしておりまして、これにより多少とも青年学級において勉学するものに対する魅力を与えんとするものであります。  第四章雑則では私人その他のものが青年学級類似事業開設できる旨を規定し、且つ、文部大臣及び教育委員会は、その求めに応じて指導又は助言を与えることができるようにしたのであります。  附則においてこの法律は、公布の日から施行するものであることを明らかにし、この法律施行の際、現に市町村において、青年学級に類する事業開設している場合は昭和二八年度中はそのまま特にこの法律規定する開設手続き等をとらないでもただちにこの法律により開設された青年学級とみなし、第十八条の要件に適つたものについて国庫補助がなされるように措置いたしております。この場合において一定の事項の公示並びに都道府県教育委員会に対する報告を必要とするのであります。  以上を以て大臣説明補足説明といたします。   —————————————
  31. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ではこの際大達文相の教育に対する抱負を当委員会としてお聞きしたいと思いますので、希望いたします。
  32. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 御承知通り終戦後我が国の教育制度は根本的な改革をみたのでありますが、私はその教育改革の基本につきましては勿論これを堅持して参りたい、ただその内容等につきましては実情に適合いたしまするようにこれに所要の修正を加えつつこの新らしい教育制度の充実を図つて参りたいと存ずるのであります。そこで当面の国情並びに教育実態に鑑みまして、差当り次に申上げまする次の四つの点に重点を置いてこれを目標として参りたい、こういうふうに考えておるのであります。  第一は教育内容の刷新改善であります。小学校、中学校高等学校教育につきましてはこれまでの実施の結果に鑑みましてこれを成るべく今日の国情、実情に副うようにして参りたい。そこでこの教育内容の改善について先ず第一に考えられますることは、いわゆる国民道義の高揚の面から考えまして、学校における道徳教育を充実、浸透する考え方で進みたい、かように考えるのであります。敗戦日本の再建にいたしましても、又いわゆる経済自立の達成にいたしましても、その根本におきましては国民の道義が高揚され、国民の愛国心が振起せられるということが、これが私は根本をなすものであろうと思うのであります。その意味におきまして、今日の学校教育におきまして、道徳教育の面におきまして、所要の改訂を加えて参りたいと思います。特に歴史教育、地理教育につきましては、我が国の少年児童が我が民族、我が国家の過去現在の状態を知悉いたしまするということは結局祖国愛、民族愛の基礎になるものと考えております。又世界の歴史地理に関する知識を習得いたしますることが、我が民族の世界における地位、今日の何と申しますか、敗戦によつて喪失せられた我が国の国際的な地位の向上考え方を向けて行く根本だ、かように考えまするので、これらの教育につきましてその観点から今日の学校教育内容を改善をして参りたい。又社会教育の面におきましても同様な意味で道義の高揚に一段の力を注いで参りたい、かように考えておるのであります。教育内容の刷新の第二点は、いわゆる職業教育、技術教育に関する問題であります。今日我が国の社会的要請の面から考えまして、国民は我が国の経済の再建確立のために皆それぞれ働かなければならん、これが今日の社会的要請であると思うのであります。この意味におきまして中学校高等学校における職業教育、これを充実いたしますると共に、大学における技術教育につきましても、その改善充実が行われるようにいたしたいと存ずるのであります。  それから当面の教育方針の第二点は、義務教育の充実であります。これにつきましては、先ほど申上げましたように、六・三制の義務制というものは、これは堅持してその内容の充実改善を図つて参りたい、勿論只今申上げました教育内容の刷新もその一つであります。同時に又、今日義務教育に従事する職員の素質の向上を図つて行きたい、教員の構成におきましても、これを充実して参りたい、これがためには、現職教育というような方法を以ちまして成るべく急速に職員の素質の向上改善に努めて参つておるのであります。なおこの上とも教員の素質の向上を図つて参りたい、同時に又学校の施設におきまして、今日極めて不十分であるということは、皆様のよく御存じの通りであります。何分にも我が六・三制教育義務教育の年限延長というものは、戦後の窮乏、戦後の社会的混乱のうちに出発をいたしましたので、今日に至りましてもなおその実費が制度の本旨にまだ追いついておらん、かように考えるのであります。従つて、その中核をなすところの教員の素質の向上を図りますると共に、且つ教育施設の充実改善、これについて一日も早く整備をいたしまするように努力をして参りたいと思うのであります。なお戦争中からの老朽危険校舎の改築、かような問題も、これも当面の重要課題であろうと存じますので、これらの点につきまして十分今後財政的な措置を講じまして、早急に施設の充実することを願つておる次第であります。  教育方針の第三といたしましては、学術振興であります。今日科学技術の振興が我が国経済の再建の上の一つの礎石であるということは、あまねく世間で言われておることであります。この意味におきまして、学術振興、これを図ることは、今日国家の要請に応ずるゆえんであろうと存ずるのであります。学術研究の基礎であるところの大学教育の充実、各研究所の充実を図る、内容はさようなことに大体尽きるのであります。大学におきましては、講座組織を充実する、又講座研究費を増額する、更に進んで講座を増設する、或いは新制大学におきまして本年から設置せられました大学院の充実を図る、かような方法を講じて参りたいと思うのであります。同時に又、大学につきましても、今日その施設の大部分が或いは戦災を受け或いは老朽である、或いはまだ整備されておらん、かような状態でありまするので、この施設の点につきましても今後充実を図つて大学における学術の研究が能率的に運営せられるようにいたしたいと思うのであります。それから各研究機関の充実強化を図る、これも只今申上げた通りであります。なお、近来諸外国との学術交流の途が開かれておりますることは御存じの通りであります。今後ますますその育成に務めまして、特に在外研究員制度の充実をいたしますると共に、学術文献の国際交換の面にも力を注ぐことにいたしたいと思うのであります。  それから最後に第四の点といたしまして、教育機会均等を期する上からいたしまして考えられますることは、先ず育英事業の強化であります。御承知通り我が国の育英事業は誠に顕著な成績を挙げておるのであります。これは我が国の教育の実際におきまして一つの誇るに足るべき従来の実績であると存ずるのでありますが、この点は今後ますますこれを拡充いたしまして、大日本育英会の事業費の増額等を図りましてこれを徹底して参りたい、かように存じております。  なお、只今青年学級振興法案につきまして御説明を申上げました通り、我が国のいわゆる勤労青少年というものは、今日まだ非常な勉強をしたいという意欲に燃えながらその志を果していない、又これに対して十分な施策が講ぜられないで放置せられておるというのが現状であります。従つて、これら我が国青少年の殆んど八割を占めておるところの勤労青少年に対しまして、定時制課程の充実、或いは只今説明申上げました青年学級振興と、かような方法を極力講じまして、これらの勤労青少年の向学の意欲に応えますると共に、我が国の将来を担う中堅層の教育の徹底に力を注いで参りたい、かように考えております。
  33. 川村松助

    委員長川村松助君) 荒木君あと御質問ありませんか。
  34. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も若干お尋ねしたい点もあるのですが、ほかの委員もあると思いますので、今日は説明を一応お聞きして、次の文部委員会のときに御質問を申上げると、こういうふうにしたらどうかと思います。
  35. 川村松助

    委員長川村松助君) ほかに御質問のかたありませんか。
  36. 湯山勇

    湯山勇君 質問があるのですが、只今荒木君のおつしやつたように、次の機会に、只今のお話の内容もいろいろ検討いたしまして質問をするようにいたしたいと思います。
  37. 川村松助

    委員長川村松助君) あと御質問がなければ、本日はこれで散会したいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 川村松助

    委員長川村松助君) 御異議がないようですから、散会いたします。    午前十一時三十九分散会