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国務大臣(
大達茂雄君) 御
承知の
通り終戦後我が国の
教育制度は根本的な改革をみたのでありますが、私はその
教育改革の基本につきましては勿論これを堅持して参りたい、ただその
内容等につきましては
実情に適合いたしまするようにこれに所要の修正を加えつつこの新らしい
教育制度の充実を図
つて参りたいと存ずるのであります。そこで当面の国情並びに
教育の
実態に鑑みまして、差当り次に申上げまする次の四つの点に重点を置いてこれを目標として参りたい、こういうふうに
考えておるのであります。
第一は
教育内容の刷新改善であります。
小学校、中
学校、
高等学校の
教育につきましてはこれまでの実施の結果に鑑みましてこれを成るべく今日の国情、
実情に副うようにして参りたい。そこでこの
教育内容の改善について先ず第一に
考えられますることは、いわゆる国民道義の高揚の面から
考えまして、
学校における道徳
教育を充実、浸透する
考え方で進みたい、かように
考えるのであります。敗戦日本の再建にいたしましても、又いわゆる経済自立の達成にいたしましても、その根本におきましては国民の道義が高揚され、国民の愛国心が振起せられるということが、これが私は根本をなすものであろうと思うのであります。その意味におきまして、今日の
学校教育におきまして、道徳
教育の面におきまして、所要の改訂を加えて参りたいと思います。特に歴史
教育、地理
教育につきましては、我が国の少年児童が我が民族、我が国家の過去現在の
状態を知悉いたしまするということは結局祖国愛、民族愛の基礎になるものと
考えております。又世界の歴史地理に関する
知識を習得いたしますることが、我が民族の世界における地位、今日の何と申しますか、敗戦によ
つて喪失せられた我が国の国際的な地位の
向上に
考え方を向けて行く根本だ、かように
考えまするので、これらの
教育につきましてその観点から今日の
学校教育の
内容を改善をして参りたい。又
社会教育の面におきましても同様な意味で道義の高揚に一段の力を注いで参りたい、かように
考えておるのであります。
教育内容の刷新の第二点は、いわゆる
職業教育、技術
教育に関する問題であります。今日我が国の
社会的要請の面から
考えまして、国民は我が国の経済の再建確立のために皆それぞれ働かなければならん、これが今日の
社会的要請であると思うのであります。この意味におきまして中
学校、
高等学校における
職業教育、これを充実いたしますると共に、
大学における技術
教育につきましても、その改善充実が行われるようにいたしたいと存ずるのであります。
それから当面の
教育方針の第二点は、
義務教育の充実であります。これにつきましては、先ほど申上げましたように、六・三制の義務制というものは、これは堅持してその
内容の充実改善を図
つて参りたい、勿論
只今申上げました
教育内容の刷新もその一つであります。同時に又、今日
義務教育に従事する
職員の素質の
向上を図
つて行きたい、教員の構成におきましても、これを充実して参りたい、これがためには、現職
教育というような方法を以ちまして成るべく急速に
職員の素質の
向上改善に努めて参
つておるのであります。なおこの上とも教員の素質の
向上を図
つて参りたい、同時に又
学校の施設におきまして、今日極めて不十分であるということは、皆様のよく御存じの
通りであります。何分にも我が六・三制
教育、
義務教育の年限延長というものは、戦後の窮乏、戦後の
社会的混乱のうちに出発をいたしましたので、今日に至りましてもなおその実費が
制度の本旨にまだ追いついておらん、かように
考えるのであります。
従つて、その中核をなすところの教員の素質の
向上を図りますると共に、且つ
教育施設の充実改善、これについて一日も早く整備をいたしまするように努力をして参りたいと思うのであります。なお戦争中からの老朽危険校舎の改築、かような問題も、これも当面の重要課題であろうと存じますので、これらの点につきまして十分今後
財政的な
措置を講じまして、早急に施設の充実することを願
つておる次第であります。
教育方針の第三といたしましては、
学術の
振興であります。今日科学技術の
振興が我が国経済の再建の上の一つの礎石であるということは、あまねく世間で言われておることであります。この意味におきまして、
学術の
振興、これを図ることは、今日国家の要請に応ずるゆえんであろうと存ずるのであります。
学術研究の基礎であるところの
大学教育の充実、各研究所の充実を図る、
内容はさようなことに大体尽きるのであります。
大学におきましては、講座組織を充実する、又講座研究費を増額する、更に進んで講座を増設する、或いは新制
大学におきまして本年から
設置せられました
大学院の充実を図る、かような方法を講じて参りたいと思うのであります。同時に又、
大学につきましても、今日その施設の大部分が或いは戦災を受け或いは老朽である、或いはまだ整備されておらん、かような
状態でありまするので、この施設の点につきましても今後充実を図
つて、
大学における
学術の研究が能率的に
運営せられるようにいたしたいと思うのであります。それから各研究
機関の充実強化を図る、これも
只今申上げた
通りであります。なお、近来諸外国との
学術交流の途が開かれておりますることは御存じの
通りであります。今後ますますその育成に務めまして、特に在外研究員
制度の充実をいたしますると共に、
学術文献の国際交換の面にも力を注ぐことにいたしたいと思うのであります。
それから最後に第四の点といたしまして、
教育の
機会均等を期する上からいたしまして
考えられますることは、先ず育英
事業の強化であります。御
承知の
通り我が国の育英
事業は誠に顕著な成績を挙げておるのであります。これは我が国の
教育の実際におきまして一つの誇るに足るべき従来の実績であると存ずるのでありますが、この点は今後ますますこれを拡充いたしまして、大日本育英会の
事業費の増額等を図りましてこれを徹底して参りたい、かように存じております。
なお、
只今青年学級振興法案につきまして御
説明を申上げました
通り、我が国のいわゆる
勤労青少年というものは、今日まだ非常な勉強をしたいという意欲に燃えながらその志を果していない、又これに対して十分な施策が講ぜられないで放置せられておるというのが
現状であります。
従つて、これら我が国青少年の殆んど八割を占めておるところの
勤労青少年に対しまして、
定時制課程の充実、或いは
只今御
説明申上げました
青年学級の
振興と、かような方法を極力講じまして、これらの
勤労青少年の向学の意欲に応えますると共に、我が国の将来を担う中堅層の
教育の徹底に力を注いで参りたい、かように
考えております。