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1953-07-03 第16回国会 参議院 農林委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三日(金曜日)    午後二時五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     片柳 眞吉君    理事            宮本 邦彦君    委員            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            重政 庸徳君            横川 信夫君            上林 忠次君            北 勝太郎君            河野 謙三君            河合 義一君            戸叶  武君            鈴木 強平君   政府委員    調達庁不動産部    長       山中 一郎君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    農林省畜産局長 大坪 藤市君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   説明員    外務省経済局次    長       小田部謙一君    農林省農林経済    局肥料課長   林田悠紀夫君    農林省農業改良    局普及部長   黒川  計君    農林省農業改良   局植物防疫課長  堀  正侃君   参考人    農林中央金庫理    事       鶴田 亀男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農業政策に関する調査の件  (と畜場法案に関する件)  (日本国に駐留するアメリカ合衆国  軍隊の行為による特別損失の補償に  関する法律案に関する件)  (化成肥料の件)  (植物防疫の件) ○連合委員会開会の件 ○開拓融資保証法案内閣提出)   —————————————
  2. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それではこれより委員会開会いたします。  先ずと畜場法案に関する件を議題に供します。本法律案は去る六月二十五日衆議から送付され、厚生委員会に付託されたのでありますが、この法案厚生的見地からこれを見ることは当らんと思うのでありまして、畜産物流通改善或いは畜産物の取引に至大の関係があると思うのであります。その意味厚生省当局から本日は御説明を願いたいと思うのであります。今提案理由の書いたものを取寄せ中でありますからちよつとお待ち下さい。それでは厚生省公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君。
  3. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 只今提案理由説明はお手許に廻してございますが、極く簡単に要点だけを申上げたいと存じます。  現行屠場法は明治三十九年の制定でありまして、その後時代の進歩と共に現在では現状に適しがたい点も多々出て参つております。殊に最近農山漁村等におきまして養豚等の盛んになるにつれまして一層改正の必要も生れて参つたわけでございますが、そこで私どもといたしまして改正案考えました点は、従来この屠場公営の大屠場主義を以て臨んで参りましたが、併しながら改正案におきましては特に簡易屠場制度を設けまして、而も一方では公営中心主義考えを捨てまして、公私共に差別のない考え方をいたしまして、それによつて屠場普及を図つて行きたい方針でございます。  次にこの屠場以外の場所におきまして、食用目的獣畜屠殺いたします場合を法律で明定いたしますと共に、その場合都道府県知事が必要な指示をなし得られるようにしたわけであります。又現在はこの検査を受けていない食肉販売目的で譲り受けましても別に支障はなかつたわけでありますが、今後は検査の済んでいない肉を販売目的で譲り受けてはならない規定を設けたわけでございます。なおこれに伴いまして、例えば屠場内における衛生上の施設の基準或いは屠場内における獣畜の取扱いの基準というようなものを定めまして、それぞれ屠畜業者に義務付けをいたしたわけであります。なお一般屠場並びに簡易屠場規格というようなものは省令に譲つてございます。  以上簡単でございますが、概略を申上げた次第であります。
  4. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 畜産局長がおいでですが、本法律案畜産業にも重大な関係がありますので、御質疑があれば御発言を願いたいと思いますが、先ほどの理事会では一応概括的な御質疑を頂いて、なお詳細は厚生委員会に当委員会のかたに御出席願つて、更に細部について御質疑を願いたいというふうに決定しておりまするが、差当り一般的な事項について御質疑を願いたいと思います。
  5. 北勝太郎

    北勝太郎君 大家畜と小家畜のおのおのの国内における一年間の屠殺統計がありましたならば資料として頂戴しておきたい。即ちどれだけ本邦の屠殺場屠殺されておるか、或いは密殺されておるものの数を知りたいためこ。
  6. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 後ほど資料でお答えいたしますが、最近の屠殺頭数は各種の獣畜を含めまして年間約二百万頭に達しております。そのうち百五十万程度は豚でございます。なお密殺はこれは表面に現われて参りませんので、なかなか数がつかみにくうございますが、一応密殺として検挙されたものの対象は、頭数で約六百二十五頭、肉にいたしまして約一千貫となつております。
  7. 北勝太郎

    北勝太郎君 我々の考えでは到底そんな数字ではないと考えますので、さつき資料を頂戴したいと思うのです。
  8. 河野謙三

    河野謙三君 検査手数料とか、或いは何と言いますか、税金と申しますか、屠殺料と申しますか、こういうものについて何か新らしく変つた点が出て参りますか。
  9. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この屠殺手数料は、これは府県の屠畜業者のきめるところでありますが、この場合一応認可制度をとりまして、知事におきまして適当な料金で押えられるようなことも考えております。又検査手数料につきましては、府県の独自の立場できめ得ることになつておりますが、これは地方自治法手数料規定によりまして、府県でそれぞれ決定をいたすことに相成つております。ただこの場合、私どもといたしましては最高五百円程度を限度として地方に任してございます。
  10. 河野謙三

    河野謙三君 最高五百円という計算基礎、それから今最高を伺いましたが、最低もあるのですか、その幅が余りあり過ぎるということは非常に弊害があると思います。それからもう一つ検査手数料なり、屠殺手数料というのは誰が払うのですか、農民負担ですか、屠殺業者負担ですか、一つそれを伺いたい。
  11. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この検査手数料検査を申請したものがこれを払うことになつております。使用料のほうは、これはやはりその場所使用を依頼したものが払うことになつております。
  12. 河野謙三

    河野謙三君 具体的に言うと、使用料農民負担、それから屠殺料業者負担、こういうことになるのですか。
  13. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) いや、これは場合によつて違いますが、例えば農民が何か必要があつて屠場に参りまして屠殺を依頼いたしましたときには、検査手数料並びに使用料共にその依頼者負担であります。併しこれらは極めて珍らしい例でありまして、多くは食肉業者がこれを支払つておるわけであります。
  14. 河野謙三

    河野謙三君 それからさつきお尋ねした五百円という最高計算基礎は何かよりどころがあるのですか。
  15. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この点につきましては、勿論私どもとしては、できる、たけ安いほうがよろしいわけでありますが、これは地方自治法に基きまして総理府令決定を見るわけであります。業者協議の結果この辺に落着いたわけでありますが、この検査手数料におきまして、現在検査に従事する職員その他の人件費等も、地方財政の困難な現状ではどうしても考えたがるものでありますから、財務当局立場といたしますと、どうしても高いところに持つて行きたがる。私どもといたしましては、できるだけ安いところへ押えようと、こういうようなところで大体最高五百円ということが折衝の結果きまつたわけであります。併し私どもといたしましては、その後自治庁ともよく相談をいたしまして、最高は五百円であるが、できるだけ最高なんかとらんようにという趣旨地方を指導いたしております。従いまして現在は検査料に関する限りは、大動物三百円程度だと思つております。
  16. 河野謙三

    河野謙三君 実はお耳に入つておりましようけれども、五百円というものは余り高いところに最高を置いたために各府県によつて非常に大きなでごぼこができているわけです。現在まだ決定はしておりませんが、それがためにいろいろな陳情等が重なつて、もうすでに相当、何と言いますか、迷惑をしておるような人もあるわけであります。これは私は意見でして、実際において三百円が最高くらいのところへ押えるのなら、初めから三百円のほうに直されたほうがいいんじやないかと思います。これは恐らく全国一致というわけには行かんです。屠殺頭数の多いとか、少いとかによつて、経費の関係ですから一本というわけには行かない。成るべく一本に近いものにするように行政指導をされるほうが私はいいんじやないかと思います。この点は特に御再考をお願いしたいと、こういうふうに思つております。
  17. 北勝太郎

    北勝太郎君 「食肉販売業その他食肉を取り扱う営業で厚生省令で定めるものを営む者以外の者が、あらかじめ、厚生省令の定めるところにより、」というところでありますが、都道府県知事届出で、主として自家用及び同居者食用に供する。これは小さい一年以下のものは届出だけで屠殺いたしてよろしいという条項がある。これは大変窮屈な解釈じやないかと思うのですが、使用者並び同居者食用に供す、これが余り範囲が狭くなつておるために往々にして少し大きな肉は近所の人がみんなで分け合つて食うというような場合があるんです。その場合に大抵はいろいろな、警察に引張られて複雑な問題を起しておるんですが、これは本人と同居者だけでなくて、本当に食用に供する目的であるならば附近のものが共同で食べ合うというようなときに、これは広い解釈をしてもらうようにできておらんものであるかどうかということを一つ承わつておきます。
  18. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 只今指摘の点は、この自家用屠殺としての屠場外屠殺の場合でございます。従いまして、私どもといたしましては屠場外屠殺というものはいろいろ危険も伴いますので、できるだけこれは抑えて参りたい気持でおります。従つてやはり自分家族程度にとどめるべきものだという考え方であります。それならば一体団体或いは学校或いはお祭り等の場合に農民がお互いに肉を分け合う場合にどうするか、こういう問題が出て参りますが、かような場合には是非この屠場使用して頂きたいわけであります。屠場において実施いたしますれば、これは安全であります。如何に大幅に自家用解釈いたして頂きましても毛頭差支えないわけでございます。そこで一方この屠場普及というものが大事でありますので、今後特に簡易屠場というようなものを作つて屠場普及を図り、それによりまして屠殺不便のないようにいたして参りたいという所存でございます。
  19. 北勝太郎

    北勝太郎君 その御主張はよくわかるのですが、併しながら屠場がなかなか遠うございますし、面倒なことは百姓は嫌いでして、従つてそんなことをやるよりは、まあごつそりやつてしまえというようなことで共同屠殺するというような場合が多い。或いは又先にみんなで生畜を買取つておいてそこで共同でやる、屠殺するというような場合がよくあるんですね。けれども到底、一年以下のものでも相当の肉がありますから、これを自分の家だけでこなすということは実際にはできない。従つて事実上そういうことが行われやすいのですね。こういう点が、先に買取つてあるならば、いわゆる自家用として買取つた人たち自分らが食うためにやるというのならば、これで差支えないのでありますから……。
  20. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは自家用屠殺と、まあ屠場外自家用屠殺ですね。
  21. 北勝太郎

    北勝太郎君 ええ、そうです。
  22. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この場合は私どもはやはりそう近所隣り大勢にその肉を配布すべきものではないという考え方に出発いたしております。かような場合には少し厄介でも是非屠場においてやつて頂きたい。と申しますのは、現在、先ほど二百万トン余り年間殺されておるということを申上げましたが、これらのうち約三%は全部或いは内臓の一部等の廃棄も含めまして、約三〇%は何らか検査の結果、廃棄処分が行われておるわけです。かような点から見ますると、この無検査食肉は極めて危険なものであるということになるわけでありまして、併し只今指摘のように屠場が事実遠い僻陬の地で、屠場近所にないというような場合には、これはやむを得ない措置として屠場外屠殺を認め、その場合にはやはり正式の検査を受けて行くと、こういうことに相成りますが、これは併し屠場が極めて遠い僻陬の地を意味しておるのでございまして、やはり簡易屠場でも普及いたしまして、屠場内屠殺を奨励して参りたい考えであります。
  23. 北勝太郎

    北勝太郎君 この条項は文字の上で解釈すると、自己及び同居者食用に供するとあるのですから、従つて生畜を皆で共同飼つて、そうして自己及びその人たち同居者が食うということは差支えないように、こう読めるのですが、そうじやないのですか。
  24. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 屠場外自家用屠殺につきましては、これはとにかく大勢のものにその肉が配布されることを虞れるわけでありまして、やはり極めて小範囲にいたしておきたい家族程度にとどめておきたい。これならばたとえ危険が伴いましても、もともと自分でやつた仕事ですから……。こういつた意味一つ考えておるわけでありますが。
  25. 河野謙三

    河野謙三君 これは今畜産局長が見えたから、農林省立場一つ伺いたいのだが、とかく食肉衛生については従来農林省厚生省意見食違いがあつたり、又全く厚生省が独断的に農民意見を無視してやつたり、非常に問題が多いのですが、今の北先生お話の場合は、畜産局としては今の厚生省の御解釈でいいのですか、そういう窮屈な御解釈で……。
  26. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 農林省といたしましては、昨年の十二月頃から、本問題につきましていろいろ御相談申上げておりましたが、できるだけ簡易屠場普及させる。簡易屠場でできるだけ農民不便のないようにいたしたいと思う。簡易屠場のできないところにつきましては、できるだけ自家用屠殺についての範囲を広く解釈してもらう。こういうように厚生省お話を進めておる次第であります。
  27. 河野謙三

    河野謙三君 できるだけ広解釈するということは、今厚生省のほうから御答弁があつた家族又は同居者に限るということではなくて、例えば最近具体的の問題として、農協の青年部というようなものがありまして、この青年諸君が豚、牛等共同飼育している例が非常にある。これはその村の畜産指導研究というようなことを理想にして、そういう事業をやつているのが多いのです。これらの青年諸君が年に二回とか、三回、一つ青年総会で豚を殺してみんなで食べようじやないかということは私はあることであるし、これは非常にいいことだと思います。そういう場合にこそ、共同飼育なんですから、従つて共同所有物なんだから、そういう場合にはそれは家族であり、同居者であるということで解釈して、村の婦人会なり、青年団がトンカツにして食べようじやないかということついては、これは解釈はそこまで突つ込んで広義解釈していいと思うのですが、それはどうです。
  28. 楠本正康

    政府委楠本正康君) たびたび同じことをお答え申上げることになりますが、私どもといたしましては自家用屠殺は結構であります。大いにこれは結構なことと思いますが、ただ自家用屠殺の場合でも、できるだけ屠場使つて自家用屠殺を行うべきものである。屠場外屠殺はこれは近所屠場のない僻陬の地のような場合に特例として考えて行きたいと、こういうような趣旨でごいます。従つてたとえ共同飼育したものであつても、それが大勢の人にその無検査の肉が及びますことは、それだけ危険の増大性が多くなりますからして、やはりこれらの場合には簡易屠場を利用して屠殺すべきものだと、こういうふうに考えておるわけであります。併しくどいようでありますが、僻陬地等におきましては、これはやむを得ず屠場外屠殺をいたしまはり係官検査を受けて使用して行くというふうにいたしたいと思います。
  29. 河野謙三

    河野謙三君 係官検査を受けるというのは、これはきまりきつたことなんです。ただ今厚生省のほうの御意見ですと、非常に畜産局長とは全く反対な、もう狭義解釈の極であつて、そういうことであるなら、実際問題として屠場屠殺を認めらいということはつきりしたほうがいいですよ。家族並びに同居者だけで豚一匹殺して食えますか、できないじやないですか、そんなことは……。そういうふうな実情を知らない法律を作るなら、初めからその法律を、自家用屠殺というのをやめたらいい。そういう一条を特に簡易屠殺ということを奨励して、それがため自家用屠殺というものを認める以上は、私はやつぱり畜産局長お話のように広義解釈して、広義解釈がどの辺まで広義か知らんけれども、例えば私が具体的に言つたように、青年団共同飼育しておると、これはまあ法律のほうは私は素人でありますけれども所有権共同飼育である以上青年団のものですよ。従つて青年団長がやかましく言えば、総会を開いて、役員会を開いて豚を殺そうじやないかと言つて豚を殺して皆で分けることは法律上も差支えないと思うのだが、どうです、そこのところは…。
  30. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは何と申しますか、屠場に遠いところでございますね。さつきから申しますように、近いところは是非屠場を使つて頂きたい。遠いところはこれはやむを得ませんから、おつしやる通りだと思います。
  31. 河野謙三

    河野謙三君 これは法律上は、非常にあなたの法律説明としてはまずいと思うのだが、遠いところは今畜産局長が言うような、又僕の言うような広義解釈で認め、近いところは今あなたのおつしやるような狭義解釈で行く、こういうことですか。
  32. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) そういうことでございます。遠いところはやむを得ませんから…。それから簡易屠場普及も、そう全国くまなくできませんので、これは当然だと考えております。
  33. 河野謙三

    河野謙三君 これは私余計な取越し苦労かも知れませんけれども、そういう御解釈なら御解釈で、法律以外の政令その他によつて、あなたの行政指導によつて屠場から何キロ以上のところはあなたのような狭義解釈屠場から何キロ以上のところはこういう解釈、こういうことにしておかないと、これは実際問題として非常に問題が起りますよ。その点は私は若しあなたのおつしやることだつたら、そういうふうにしなければならないし、私はこういうように遠いとか、近いとか、そういうことでなしに、これは届出をして屠殺をする以上は、これは広義解釈で私は行つたほうが法律の精神を生かすものじやないかと、こう思うのです。それから、ついでに伺いますが、今この屠場屠殺の問題でも、すぐ厚生省農林省目のあたり食肉衛生について意見食違いが出るのだが、従来私はこの牛乳の処理の問題で、当時は占領治下であつてアメリカから押付けられたということでやむを得ない事情もありましたけれども、農家の実情に副わない摂氏十八度以下の牛乳は無糖乳にするということで、実施にまさに入らんとするときに我々は幸い耳にして、厚生省実施の延期を求めて、そして農林省とよく相談してやり直してくれというので、現在に至つているのだが、この食肉衛生行政二元化の問題について、これをすぐ一元化するということ鐘想であつてなかなか困難です。併しそこに何か歩みよりなり、何か妥協なりによつて、これは現在二元化行政によつて何の支障もありませんか、それを御両所から私は特に伺いたいと思うのだが、これは非常に円滑に行つていると思うのですが、今屠殺の問題について聞いても、すぐに広義狭義解釈で食違うということは、私は食肉衛生の将来というものは、今の行政機構としては恐るべきものだと思うのだが、どうですか。
  34. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今自家屠殺の問題でありますが、法律適用といたしまして、遠いとか近いとかによつて法律解釈をすべきのでないと思います。ただそれは市場主義とか、或いはそういう気持でという点ではよいと思いますが、適用といたしましては遠い近いの問題ではないと思います。従つて我々といたしましては、共同飼育場の場合にはすべてが自己でありますから、その場合当然よろしい、こういうふうに解釈しております。
  35. 河野謙三

    河野謙三君 それからその場所が、御両所お揃いじやちよつと御発表がしにくいと思いますが、強いてとは言いませんが、若し差支えなかつたら忌憚なき御意見を御発表願つたらいいのだと思う。同時に食肉行政について農林省厚生省二元化になつておりますが、あなたたち実際業務の運用上、役所のほうから見て支障があるかないか。農民のほうから見て極めて支障があるのですが、これは別個にして、役所のほうから見て一つお尋ねしたいと思います。
  36. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) まあ何と申しましようか、若し屠場外屠殺というものでよろしいということになりますれば、極端なことを言えば簡易屠場ということは要らんということになるのであります。私のほうでは僅か十坪程度のものでも屠殺する場所を定めて、できるだけそこで検査を受け、安全な肉を自家用屠殺をしてもらいたい、こういう気持なのであります。従つて遠い近いもない。すぐそこに屠場があるが、屠場行つてもとにかくうまくない、これをこう言つてつてしまうというようなことでは簡易屠場が要らんことになる。勿論もう一つこういう点を考えなければならんと思います。御承知のように屠畜営業というものは極めて複雑な業態であります。従つて場合によりますと、屠畜業者が意地を曲げて、それはあと廻しにするというようなことで、どうもうまく気持よく屠殺が依頼できない場合もあるだろうと存じます。そういうようなことがないように我々は法律で禁止をいたしまして、誰が行つても喜んで引受けてやるような指導方針で参ります。又さようなことを今回の改正法規定したわけであります。従つて屠殺場が近くあつた是非屠殺場を使つて頂くということが安全であるばかりでなく、文物の済経から考えましてそのほうがいいのではなかろうか、規格その他の点から考えましても屠場使つて専門家屠殺することが望ましいと、こういうふうに考えております。併し只全遠い近いではどうもはつきりせんというお話もありますけれども、余り遠いところで、雲でも降つたときに一日もかかるというところへ行くということは常識でも考えられません。従つて勿論遠い近いも天気のいい日と悪い日とで違つて参りますし、その辺は私は現状に即して指導すべきだと思つております。
  37. 河野謙三

    河野謙三君 私は今の問題だけでも両省の間でもう少し案を練つて解釈によつて左右されるような、そういう不備な法律案ではなくて、もう少し整備したものを改めて出してもらうことを希望します。同時に我々委員としても、この問題については十分検討の時期を与えて頂くことを委員長に希望いたします。
  38. 北勝太郎

    北勝太郎君 もう一つ承わつておきたいと思います。実は私は牛を飼つておる人間なんですが、今年の春あつた事実なんですが、牛が産んでしまつてから、暫らくあとなんですけれども、いわゆる子宮脱をやつてしまつた。いろいろとやつておりますうちにうまく子宮が中に入つた。なかなか入りにくいものなので、大抵は起さなきやなりませんが、寝たままで入つた。喜んだところが産褥麻痺と両方が一緒に来ている。従つて怒責する力がなかつたからうまく入つたのですね。暫らくすると産褥麻痺で倒れかかつたから切迫屠殺をやつた高等登録八十四というちよつと珍らしい大きな牛です。それから切迫屠殺をやつて屠場のほうに電話をかけておいて持つて行つたところが、死んだものは屠場に入れることができないという法律だというのです。そこで遂にそういうような斃死畜処理所まで持つて行つた屠場まで持つて行くのに二里余りかかり、而も二百貫余りの大きなものですから、近所の人全部に手伝つてもらつて、漸くにして持つて行つたところが屠場に入れてくれない。今度は逆の方向に、四里ばかり持つて行つてただ捨ててしまつた。我々の常識から考えますと、そういう事情で切迫しているならば切迫屠殺をしても必らず屠場に入れるはずである。だが併し斃死したものはこれを屠場に入れていかん、解体もできないという結果、そういうことになつてしまつた。これはいわゆる食糧政策の上から見ても無駄なことである。やはり牛を飼つている者としては、少くとも十分以上くらいの肉で売れるものを只で、而もあつちへ持つて行つたり、こつちへ持つて行つたりして、只で捨ててしまつた例がありますが、こういうものは何か救済する途はないでしようかどうでしようか。
  39. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 只今指摘のような点は、明らかに屠場が不親切か、或いは何かの間違いであつたと存じます。さような場合には屠場で解体をいたしまして、正式に検査を受けまして、それによつて適当に処分する。これが当然であります。別に現在さようなものを解体してならんという法律はあろうはずもありません。
  40. 北勝太郎

    北勝太郎君 それはちよつと聞き捨てならんことになつたのですが、現在の法律じやそれを認めないんじやないですか。今度改正されれば別問題ですけれども……。
  41. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在の場合も産褥麻痺切迫屠殺を認めておりまして、従つてこれは屠場に持つて行つて解体して適当に処分ができることに現在もなつております。
  42. 北勝太郎

    北勝太郎君 現在もなつておる。そうすると、検査員が悪かつたというので大きな被害を受けたということになるのですが、間違いないですか。
  43. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 間違いございません。
  44. 河合義一

    ○河合義一君 今度の法律によりまして簡易屠場相当数できると思いますが、その屠場の位置等につきましては何か規定はありませんか。
  45. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 位置につきましては、法律にも概要書いてございますように、著しく環境衛生支障あるような場所は位置として許可されない場合もあるだろうと存じます。例えば非常に人家の密集したところであるとか、或いは何か特別な施設のすぐ脇であるとかいつたような点から支障のある場合も出て参るだろうと存じます。併し一般には余り厳重にこの位置の点を規制しない方針で進みたいと考えております。
  46. 河合義一

    ○河合義一君 私はそれは規制するほうが実際問題としては適当だと思うのであります。これも事実あつた問題でありますが、屠場を移転いたしましたときに、成る神社の極く近くに持つて行つてそれが許可されたのです。ところが神社を中心といたしまして氏子連中が非常に反対をいたして、それを変えさしたことがあるのですが、容易にそれができなかつたときに、私はそれをお手伝いしまして、氏子たちの意思通りに位置を変えさしたことがあるのであります。それが衛生上という問題もありますが、それ以外にも相当屠場の位置ということを考えなくちやならんと思います。学校の近くであるとか、或いは今申しました通り、お宮の近くも殊にそうでありますが、これははつきりと何か規定を置いておくほうがよくはないかと思いますが、現在その法律ではどういうことがきめてあるのですか、まだよく読んでおりませんか。
  47. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在の法律におきましては、人家が密集しておる場所とか、或いは公衆のための飲料水が汚染される虞れがある場所とか、或いはその他都道府県知事が適当でないと認めた場所というふうに漠然と法律では規定してございます。これらは併し只今指摘にありましたように、当然地方実情を考慮して最も便利なところに作るほうがいいのではなかろうか、かように考えます。従つて地方実情を十分尊重して作るという意味で、余りこの辺は面倒な規制はしない方針だということを申上げたわけであります。只今指摘のような神社の横ということは、地方実情から申しまして当然不適当な場所であると考えるわけであります。
  48. 河合義一

    ○河合義一君 神社の近くに設置いされるというような場合には、これはやはり知事が許可せないという権限があるわけでありますか。
  49. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) さようでございます。これは知事の許可によつて作ることになりますからして、若し知事が不許可にすれば、これは神社の横手には作れなくなるわけであります。
  50. 北勝太郎

    北勝太郎君 さつき産褥麻痺の場合、私はちよつと言葉が足りなかつたと思いますが、実はそれを持つて行きましたところが、地方獣医の診断書を付けて……。ところが地方獣医はどう勘違いしたか、実際そこへ行つて仕事をしたというのでありますが、心臓麻痺と書いてある。そうした心臓麻痺と書いたというのがいかんということになつたらしいが、ここで疑問の起ることは、一般のことは地方獣医が一つも屠畜場については信用しておらん。併しそういう場合に限つてこれを信用して、実際私どもは、そばにおつたからわかつておるのですけれども、実際肉を検査をしない、又死因等についても、見ればすぐわかる問題であるのに、検査をしないで地方獣医の書いたことをそのままに信用したために、さつきのように損害を我々に与えられたということになつておるのですが、そういう点はどういうのですか。このまま損害賠償を受けるのでは僕も困るが、そういうことを聞いておかなければ…。
  51. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 心臓麻痺は切迫屠殺をして、屠場で解体をして処分することができないことになつております。従つてその場合に切迫、この心臓麻痺であつたならばこれはやむを得なかつたと存じますが、ただその場かということはおのずから別な問題になるのじやなかろうかと考えております。
  52. 北勝太郎

    北勝太郎君 だから実際のものを見れば、本職の人が見れば心臓麻痺で死んだかどうかということは、地方獣医が間違えるというか、むしろ産褥麻痺と書くと工合が悪いと思つて或いは変えたかも知れない、診断を……。実際は私がそばにおつてつた仕事ですから、間違いなしに産褥麻痺で、どうしても駄目だというときに切迫した。従つて心臓麻痺でないという確かな私は確信を持つておるのです。地方獣医のように、さつき言つたように診断書はこういうときに限つて引用した。見ればわかるものを見ないで、診断書にそう書いてあつたからと言われたんじや、本当に屠畜検査員の任務は完全に行われておらんのじやないか、こういう点なんです。
  53. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 恐らくその場合、屠場の側におきまして、係官等が恐らく親切を欠いておつたのじやなかろうかと存じますが、今後屠場使用を私どもが大いに奨励いたしまする以上は、一層これらの従業員或いは検査員等の訓練に意を用いまして、できるだけ親切に、サービスをよく事に当るように一つ指導いたしたいと考えております。
  54. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつとお諮りいたしますが、なお御質問があると思いまするが、日程の余裕がございませんので、厚生委員会のほうへどなたか代表で出て頂きまして、次の問題の御質疑を願つたらどうかと思いますが、如何でしようか。どなたか御希望のかたがあればお申出を頂きたいと思いますが……。これは後ほどでも結構でございまするが、なければ委員長にお任せを願いたいと思います。
  55. 河野謙三

    河野謙三君 それも厚生委員会でいろいろ意見を述べ、審議すべきでありますが、その前に両省の間でもつと意見統一をしてもらいたいと思います。
  56. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この問題に関しましては、当初、昨年以来両省がいろいろ相談をいたしまして、完全に意見の一致を見て提案されたものでありまするが、ここに畜産局長もいらつしやいますが、これは完全に意見の一致を見ております。
  57. 河野謙三

    河野謙三君 完全に意見の一致を見られたでしようが、現に意見の一致を見ない点が重大な箇所で出ておりますので、これは併し今日とは言いません。今日とは言いませんから、更に、例えば今だけの問題でももう一回一つよく御検討願わんといかんのです。これは決して小さな問題ではありません。非常に法律の運用に当つてこのケースが出て来る問題であります。でありますから、特にこのことは御検討頂きたいと思う。併しそれが両省が、今厚生省意見によつて一致したという場合には、改めて我々は議員として厚生委員会なり、この委員会で我々の意見を述べ、又改正すべきところは法律改正をしなきやいかんと、こう思うのですが、一応両省で以て意見のデイスカツシヨンをして頂きたい。
  58. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) この法律の根本方針につきましては、勿論完全に意見は一致いたしております。ただ小さい解釈の問題につきましては、多少今後法律ができる過程におきまして、又できましてからも、そういうような小さな問題につきましても解釈の問題は多少あるんじやないかと、こう思つております。
  59. 河野謙三

    河野謙三君 これは厚生省なり、農林省は小さいとおつしやるけれども、我々の見解では小さくないのです。極めて大きいのですよ。現によく闇屠殺というのが盛んに行われておるでしよう。そのケースが今度法律によつて、これの運営によつて完全にカバーされるわけですよ。これは非常に大きな問題なんですよ。これを小さな問題と御解釈なさることは余りに地方実情に暗過ぎると私は思うのです。でありますから、この大きな問題を取上げて、一つ十分お打合せを願いたいと思います。私は強いて農林省意見でなければいかんとか、厚生省意見でなければいかんということは申上げませんが、一つよくお打合せを願いたいと思います。
  60. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 質疑はなおたくさんあると思いますが、そういつたようなことで、便宜厚生委員会出席願つて御質問して如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないようでありまするから、さようにいたしたいと思います。理事者側にはあとで御相談いたしまするが、委員長に御一任願いたいと思います。ではさように取計らいます。   ━━━━━━━━━━━━━
  62. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律案、この法案を議題に供します。本法律案は去る三月十七日予備審査のため内閣から送付され、水産委員会に付託されたものであります。なお本法律案は第十五特別国会に提案せられ、農林委員会は水産委員会と連合審査を行いまして審議を尽し、衆議院を通過し、参議院水産委員会においても可決せられ、まさに本会議に上提されようとするとき、衆議院の解散のため不成立となつたものであります。かような経緯のものではありまするが、改めて政府から説明を求めたいと思います。
  63. 山中一郎

    政府委員(山中一郎君) 只今委員長からお話がありました日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為に関する特別損失の補償に関する法律案の提案の理由及びその概略を御説明申上げます。  本法律案は、前の特別国会にこれを提案いたし、衆議院において可決された後、参議院において審議中のところ、衆議院の解散に伴つて審議未了となつたものでありますが、今回も日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて日本国内及びその附近に配備されたアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍によつて、東京湾口及び佐世保湾口の防潜網、水中聴音器その他の水中工作物の設置又は維持、或は芦屋の防風林のような防風施設又は防砂施設の除去又は損壊等が行われたことによりまして、従来適法に農業、林業、漁業その他の事業を営んでいた者が、その事業の経営上損失をこうむつたときは、国がその損失を適正に補償する必要が現在もなおあるのでありまして、これが再度本法律案を提案する理由であります。  この法律案の内容は前に提案いたしましたものと全く同一でありまして、第一条には前述の趣旨規定しているのでありますが、補償すべき損失の原因となるアメリカ合衆国の陸軍、海軍、空軍の行為としては、一、防潜網、の他の水中工作物の設置又は維持、二、防風施設又は防砂施設の除去又は損壊、そのほかに、三、その他政令で定める行為を掲げ、行為の種類を政令で定めることといたしております。なお損失の補償を受けるべき事業としては、農業、林業、漁業を規定しているのでありますが、それ以外の事業については政令で定めることとしております。この損失の補償は、漁船の漁業制限法、民事特別法等の他の法律により国が損害賠償又は損失補償の責に任ずべき損失については適用しないこととし、又補償する損失は通常生ずべき損失としております。  次に、この損失の補償の手続については第二条に規定し、この損失の補償を受けようとする者は、総理府令の定めるところによつて自己の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して損失補償申請書を内閣総理大臣に提出しなければならないことといたし、都道府県知事は、該申請書を受理したときは、当該事案に関する意見書を添えて、これを内閣総理大臣に送付し、内閣総理大臣は、補償すべき損失の有無と損失を補償すべき場合には補償の額を決定し、遅滞なくこれを都道府県知事を経由して当該申請者に通知しなければならないこととなつております。この内閣総理大臣の補償すべき損失の有無及び補償額の決定に不服のある者は、前述の通知を受けた日から三十日以内に内閣総理大臣に対して異議の申立をすることができることといたし、内閣総理大臣はこの申立のあつた日から三十日以内にこれについて決定の上、申立人に通知しなければならないこととしております。  次に、補償金の交付については、第四条に規定し、前述の異議の申立がないときは、異議申立期間満了の日から三十日以内に補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付し、異議の申立があつたときは、異議の申立に基く決定を通知した日から三十日以内に補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付することとしております。  次に、第五条においては、増額請求の訴えについて規定いたしております。この法律により決定された補償金の額に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から九十日以内に国を被告とする訴えを以つてその増額を請求することができることといたしております。  次に、附則第二項におきまして、この補償事務の担当庁を調達庁とするため、調達庁設置法の一部を改正して、同庁不動産部の所掌事務を規定している同法第八条に第六号として、この法律の施行に関することを挿入することとし、更に調達庁の附属機関たる中央調達不動産審議会が調達庁長官の諮問に応じ、この法律による損失の補償についても、その基準その他の一般的事項を調査審議することができるようにすると共に、調達局の附属機関たる地方調達不動産審議会において、この法律による損失の補償についても、調達局長の諮問に応じ調査審議ができるよう、同庁設置法に所要の改正を加えることとしているのであります。  以上が本法律案の概要でございますが、よろしく御審議をお願いいたします。
  64. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  65. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは速記を始めて下さい。  只今日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律案につきましては、次回において前回の経過を御報告いたします。なお御希望のかたは水産委員会において適宜御質問をして、その上で態度を決定したいと思います。   ━━━━━━━━━━━━━
  66. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、国際小麦協定を修正更新する協定の受諾について承認を求めるの件を議題に供します。  本件は去る六月二十三日予備審査のため内閣から送付せられ、外務委員会に付託されたものであります。本件は農業上或いは食糧上で重要な関係を持つていると思われますので、政府から先ず説明を求めたいと思います。
  67. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 国際小麦協定は一九四九年の三月二十三日に、現行の国際小麦協定がございまして、これに日本が加入いたしましたときには、本国会におきまして御審議を得まして、四カ年間有効のその条約に加入いたしました。このために日本は外貨にいたしますと、一年間に約五百万ドルから八百万ドルくらいの外貨を節約することができたのでございますが、この条約は、この協定は今年の七月三十一日を以て終了いたしました。そして新たに、前の条約の終了の前年度において、理事会において修正若しくは更改をきめまして、これを各加盟国に諮りまして、その結果をもう一回やると、こういうことになつております。そしてこの件に関しましては、その条項に基きまして、昨年度からいろいろ審議をしておりましたけれども、輸出国と輸入国との間で意見の相違がございまして、なかなかまとまらず、やつと本年一月から最後にワシントンで会議が開かれまして、約十週間に亘つて審議を行なつた結果作成されたのが本協定でございます。これは新らしい協定ではございませんので、前のを幾分修正した形でございます。  それでこの協定と現行協定との主要な差異を御説明いたしますと、現行協定は一九四九年から四カ年ということになつております。尤も日本が入りましたのは五一年でございますから、日本は四年間入つていたわけではございませんけれども、この協定の有効期間は三カ年となつております。この三カ年の理由は、実はアメリカのほうで四年間にしますと、現大統領の下でなく、次の大統領の下になるというために三カ年がマキシマムということだつたのでございまして、輸入国の大体の趨勢は四カ年間ということでございました。それから価格の点におきまして、現行協定よりも今度改訂された協定は輸入国にとつては不利であり、従つて輸出国にとつては有利であるという協定になつております。この点に関しましては、輸出国のほうは前の協定によりますと、最低値段が一ドル五十セントであり、最高価格が一ドル八十セントと、少くとも輸入国は一ドル八十セント出せば買えるという協定でございましたが、今度はそれが一ドル五十五セントが最低価格で、ニドル五セントというのが最高価格ということになりました。そこでこの点に関しまして、最低価格に関しては英国側も何ら異議はなかつたのでございますが、最高価格に関しまして英国側が異議があるという理由で、英国側は未だにこの協定には署名いたしません。そして保証数量は前のときは政府の方針をしましてはできるだけ多くもらいたい。即ち百五、六十万トン日本は小麦を輸入しておりますが、このうちの少くとも七、八十万トン或いは百万トンは協定内で買いたいということを主張いたしましたが、あとから加入いたしましたために、それだけの保証数量が得られず、五十万トンでございましたが、今度は我がほうの主張が通りまして、一応百万トンというものを年間保障されるということになりました。そして現在は小麦の相場が非常に下つているということがございますが、現在でもなお協定の小麦のほうが安いということでございまして、これで毎年百万トンの小麦を買入れるときは、これを全然協定外で買うのに比しまして外貨にして少くとも四、五百万ドル程度のものは節約になるだろうと、こういう想像をしております。これによりまして、日本が義務を負うところは、この条約によつて日本が義務を負うのは、最低価格、即ち一ドル五十五セントの基準価格においては百万トン買わなければならないということ。それから年額の分担金が千五百ポンド程度のものを支払わなければならないということでございます。なお協定の内容について二、三申上げますれば、若し日本が国際収支の擁護その他の理由のために買えないというような場合には一定の措置がございまして、必らずしもその際は百万トン買わなくてもよい。そういうふうな規定その他が入つております。この協定は御承認を得ますれば七月十五日から効力を大部分について発生し、その他の部分については八月一日から効力を発生することになつております、若しその以前においてまだ十分審議のために遅れるという場合においては理事会に申出ることによりまして、この期間はいつまでも延ばすことができるということになつております。  大体概要はそのくらいでございます。
  68. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 本法律案の今後の取扱い方について如何いたしましようか。実は先ほどの理事会では非常に重大な問題でありますので、外務委員会と連合審査をいたしたらどうかという御意見であつたわけでございます。如何いたしましようか。
  69. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 委員長の言われる通り、誠に日本にとりまして非常に重要な問題でありますから、一応先の条約と今回提決された条約の内容を十分に検討する必要があると思います。従いまして政府から十分なる資料を得て、そして十分に研究した上で外務委員との連合の審議に当つたほうが極めて妥当ではないかと考えます。
  70. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 佐藤委員に申上げますが、その資料の具体的な御注文がありますれば、ここでおつしやつて頂ければよろしいと思いますが
  71. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 先ず第一に私の知りたいのは、先の条約と今回の条約との相違の点、それから一般の現在の外国の麦価と今回締結された値段との関係或いは内地の今回きめられた麦価との関係、それから爾来昭和二十七年度或いはそれ以前において輸入された小麦の数量等も十分に知りたいと思うのです。
  72. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 連合審査を要求することにいたして異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは期限も切迫しておりまするから、至急連合審査をいたすように取計らいます。
  74. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 只今申上げました資料につきましては、是非お配り願いたいと思います。
  75. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 承知しました。   ━━━━━━━━━━━━━
  76. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、開拓融資保証法案を議題に供します  前回の委員会に続きまして質疑を行います。なお前回の御要求がございまして、農林中央金庫から御出席願つております。農林中金の理事鶴田亀男君、同審査部長沼部園春君、審査部農林課長石井喜郎君、総務部次長渡辺春香君、四名に御出席願つております。
  77. 河野謙三

    河野謙三君 前回中金のかたの御出席を要求しました関係上、私から中金のかたに御説明を頂きたいと思います。それはこの開拓融資の金利が二銭六厘となつておりますが、これはそれぞれよりどころがあると思いますけれども、私はこれは別の角度から見ますと、一般農家の営農資金というものは、開拓地の農家のほう、開拓農民のほうへ、社会政策的に考えましても、すべての恩恵をより以上とどけなければならんと、こういう出発点から考えまして、例えば営農資金の一番大きな肥料の資金にしましても、一般農家は農協によつてこれを賄う。その場合に金利は二銭五厘ですか、二銭四厘ですか。それからその他一般単位農協から一般農民が肥料を買う場合は、大体現金と称して三十日、四十日は無利息で肥料の融通を受けております。これは実情であります。これは極端な単協の経営の悪いところでは例外があるでしようけれども、大体それが常識であります。そういうふうな一般農家の営農資金の利息等と考えまして、今回のこの措置はいいのでありますけれども、どうしても二銭六厘という金利というものは、私は余りに法の精神というものから言つて実情に副わないと思うのですが、二銭六厘のよりどころ、甚だ素人くさい質問でありますけれども、どうしても二銭六厘とらなければならんというよりどころを私は説明して頂きたいと思います。
  78. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) 只今委員長から御指名頂きました農林中金の鶴田でございますが、只今開拓融資の金利の問題について御質問がございましたので、お答えを申上げたいと思うのでありますが、私のほうの金利体系は多少複雑になつておりますので、一応その仕組から申上げませんとおわかりにくいかと思いまするので、一応御説明をさして頂きまして、併せてお答えを申上げたいと思うのでありますが、今私のほうの金利で特殊の扱いをやつておりますのは、大体日銀の適格担保として優遇措置を講ぜられております農業手形、それから購繭スタンプ手形、こういうふうな日銀に手形を持込みますとすぐ担保としての扱いをやつてもらえる資金に限つて実は特殊の金利を開いておるのであります。それで農業手形制度は、これは御承知の通り農林省のほうの御通牒に基きまして、農業手形の制度をきめられまして、日本銀行はその要件に備わつたものは適格担保として優遇をするというようなことで、金利の点はこれは日本銀行のほうでお示しになつて、特別の金利をきめて頂きまして、そしてその要件に備わつた場合には優先的に担保にとつてやると、こういうような仕組になつておるのであります。購繭スタンプ手形についても同じようなことでありまして、結局これは資金源が私のほうの自己資金によらなくても、日本銀行の借入金に依存することができるというふうなものに限つて現在のところは特殊の安い金利を適用しております。それで、それによりません一般の普通金利と申しますのは、これは結局全国の農協その他から私のほうが預つておりまする預金、それから農林債券の発行を認められておりますので、農林債券を発行しまして得ました資金、こういうような、いわば農林中金の自給資金によつておる金利というものは私のほうが勿論自主的にきめておるわけでありますが、そういうふうな大体の仕組になつております。それで只今申上げました一般の金庫の自給資金による一般資金の金利と申しますのは、大体二段的に考えておりまして、一番優遇をしておりますのは、各県にあります信用農業協同組合連合会、これは手形貸付の利率で言いますと二銭四厘ということで適用をしておるのでありますが、それ以外のものは、即ち単位農業協同組合或いは県の経済農業協同組合連合会或いは開拓連、こういうようなものは二銭六厘というふうな大体の利率で、そういうふうに大まかに言いますと、二通りに分けてやつております。それで各府県の信用農業協同組合連合会をどうして優遇しておるかと申しますと、これは御承知の通り信連と申しておりますが、これは融資事業を専門にやつておりまして、府県内における農協系統の中央機関ということに言えると思う。従つて御承知の通り町村内の金融の過不足は単位農協で付ける、それから府県内の金融の過不足は信連で付ける、全国的な金融の過不足は農林中金で付けると、こういうふうに大体通俗的に言われております三段制をとつておりますので、これを混乱に陥れるような金利体系は私のほうはとれませんというのが理由の一つと、それからもう一つは、私のほうの預金が集まつておりまするが、これは殆んど全国の各県の信連から集まつている。その資金源が信連から集中的に集まつている。そういう意味で多少優遇の必要があるというふうなことで、実は手形貸付の場合は二銭四厘、それからそれ以外の連合会なり組合は二銭六厘と、こういうふうな大体の仕組でやつております。  それで只今お尋ねの開拓農民は、これは非常に気の毒な立場にありまするのはお話通りでありまして、私のほうとしましては、できるだけの金利を考えて行きたいと思いますけれども、これは資金源がもともと中央金庫の資金源でありまするから、各連合会のそれぞれの利害を考えまして、預金者側のほうの利害もこれは考慮しなくちやいけませんし、そういうふうな関係がありまして、なかなか特殊の金庫の資金源に特殊の利率を適用するというふうなことは非常な困難な事情があるのであります。それで私のほうとしまして、かねがね政府その他の方面にお願いしておりますることは、そういうふうないろいろな相手方の困難な理由や、その他を理由にして何か特殊の金利を適用する必要があるということであれば、これは何か適当な行政措置で以て金利補給なり、何かをして頂くようにお願いしたい。それで一般の全国的な金利の体系を私のほうが組みまするときは、やはり先ほど申上げました組合系統の均衡を壊さないような仕組にやつて行く必要があるんじやないか、こういうふうな大体の仕組でやつておるわけであります。それは私のほうの一般的な金利のきめ方なんですが、お話のこの開拓の金融の関係につきましては、当時今回の法律の前の、今の基金制度をとつておりまする場合は、考え方としましては、各県の開拓連は私のほうから資金を融通しまして、それを貸付けておりますから、そういうような意味合では金融機関とも言えるかと思うのでございますが、一面において事業機関としての性格がありまするので、これはやはりほかの農協の経済連なんかと同じような形でやはり二銭六厘を適用したいと、こういうふうにしまして、実は現在の金利を二銭六厘ということで決定しておるのです。併し今度は従前の開拓信用基金制度によりまするというと、第一号基金、第二号基金、第三号基金ということがありまして、これは農林中金に結局これが預けられておるというふうなことで、これを若干の見返りとして融資しておつたのでございますが、正式の担保としてはこれは実は頂戴しておらない。たまたま今度の保証法案が提案されまして、従来各基金を扱つておりましたのが、各県の地方保証協会、中央では中央の保証協会というふうな立派な法的な団体ができまして、そしてこれが私のほうの債権に対して保証をして頂くというふうなことになりますると、債権の内容も強くなるというふうなことは言えるかと思うのであります。そういうふうな関係もありますので、実は開拓連に対する融資の金利というものは若干引下げる必要があるんじやないか、実はよりよりそういうことを考えておつたところであります。今月まだ具体的にそれではどの程度に引下をやるかということを申上げる段階には至つておりませんけれども、これはいずれ法が成立いたしましたら、農林省のほうとも打合せ申上げまして、何か若干引下の考慮をしたいと、かように考えております。
  79. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 この問題、一応話は承わつたのでありますが、この一号、二号、三号の資金全体で四億円、これを中金に預金してあるのでありますが、勿論担保としてではないというような御説明でありましたが、殆んど金融をいたす条件附みたようなもので最初はあつたのではないかと私は想像いたすのであります。当初は極めて償還等も危惧があつたというような状況であつたのですが、極めて償還の状況も円滑に行つておるような状況であるのです。この四億円の預金だけで考えて見ましても、勿論四億円のうち一億五千万円の農地債券がありますけれども、大体貸付の利率から行くと殆んど六百万円以上、この預金だけでも中金のほうではこれを七億円のうちに恐らく廻しておられるのだろうと想像するのですが、そうすると、概算いたしましても、殆んど六百万円くらいこれで浮くというような私は状況になつておるんじやないかと思います。そうすると、当初から私は二銭六厘ということの利率は非常に高いものじやないかというように考えるのであります。四億円預金して七億円の貸出をいたしておるのであります。それを担保でないと申しましても、そういう条件附で恐らくこの貸付ができておる。そういうことから考えますと、二銭六厘というものは当初私は償還が不安であつたと想像しておる、これは大きな強い担保であろうと思います。そういう意味から行くと、二銭六厘は当初からすでに非常な高い利率であつたということを断言せざるを得ないのであります。なおこの貸付は極めて短期な六カ月貸付になつております。そういうようなことから考えて見ると、この目的である勿論肥料資金が短期でも決済できますけれども、或いは家畜とか、農村工業とかいうような資金には恐らく廻つておらんのじやないかと思います。これはやはりその方法が当を得ないから、この開拓金融というものがその目的の一部を阻害せられておるというように私は考えるのであります。将来少くとも四億円の見返りに対してはそういう限度においては私は差支えないと思いますが、長期の金融農村工業とか、家畜とかいう長期の金融に対して途を開くお考えがあるかどうか承わりたいと思います。
  80. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) 只今お話がございました金利の問題、最初に申上げますが、この開拓信用機関制度ができましたのが二十五年の二月の農林次官通牒によつておると記憶しておるのですが、これができましたときは、開拓農協の様子も十分には私のほうはまだわかつておりませんでした。制度の創設早々でもありましたし、十分事情に通じない点もありましたのと、多少既存農家等から比較いたしますと、信用力に劣る点があるというふうな点もありましたので、二銭六厘というふうな金利をきめたわけであります。その後の経過を見ておりますと、お話通り現在のところは大体償還成績はよろしうございます。そういうふうな関係もありますし、なお今度は保証協会というふうなものができるというふうな点も考慮しまして、先ほど申上げましたように、若干金利をこの際改訂したらどうだろうというふうなことを考慮しておるわけであります。それから家畜の導入その他の資金については、たしか小家畜の資金はこの制度の金融で若干行われておるはずであります。そのほかの家畜の導入資金、これは組合の信用程度その他を考慮しまして、必要の資金については現在でも融資しております。貸出して行きたいと思つております。ただ例の今農林省のほうでやつておられます有畜農家創設要綱には、原則として総合農協を貸出の対象にするというふうなことになつておりまするので、多少融資の額は伸びていない点があるかと思います。
  81. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは償還の不安があるから利子を高くとつたということは当初から間違いではないかと私は考える。この四億円という大きなそこに担保がある。担保が入れてある。而もこの金は国及び県、零細な開拓者が醵金した金である。だから私は少々償還が悪くとも七億円の貸付をする上においては、当初からすでにその危惧を以て、その利子を高く決定したということは当を得ないのじやないか、かように思うのであります。それからなお最初にも申上げましたが、これは家畜についても多少出ておりますけれども、これはほんの名前きりで開拓農家の意思に副うゆえんではない、数量から申上げましても、ただこれはかれこれ言わずに四億円という強い担保があるのですから、だからこの限度においても、やむを得なければこの限度においても私はいいと思うのですが、開拓農民が希望するように長期の貸付を開始せられても銀行の勘定においては別に損失はないと思うのですが、どうですか。
  82. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) お答えいたしますが、回収の懸念のないものについては私のほうの自己資金はできるだけの融通を図るつもりでおります。
  83. 河野謙三

    河野謙三君 今金利二銭六厘については十分再考するということでありますから、我々は非常にこれを期待するのですが、念のため一言附加えておきますが、これはあなたのほうが、仮に二銭六厘を二銭四厘とか、二銭とか、一銭五厘とかにしても、その出先において、系統機関が又手数料その他で又余計とるということになつては何にもならないのであつて、あなたのほうで御再考願うと同時に、最終の金利は幾らであるということは同時に一つおきめ願つておかんと私はいけないと思う。同時にもう一つ伺いたいのは、先日農林省から伺いますと、只今我々のところへ示されました案は二銭六厘であつて、而も二銭六厘は中金のみがとつて、系統機関の事務手数料というものは一切それは認めない。こういうことが中金のお考えのように伺いましたが、これも同時に併せて、あなたのほうの金利を御再考願うと同時に、これはやはり当然系統機関にはそれぞれ事務費程度のものは私は認めてやらなければいかん。そういうものを含めて絶対額で十分引下を考慮してやると、こういうことを強くお願いしておきたいのですが、先ほど申上げましたように、開拓者というものは非常にすべての条件が悪いところで営農しておるのですから、私が申すまでもなく、あらゆる条件が一般農家よりも好条件の下でスタートしても、それでなお且つ営農困難なんですから、これは十分一つ考慮して頂きたい。特に今までの実績から言つて楠本さんからお話がありましたが、非常に回収成績はいいと思う。なおあなたのほうで金利体系を乱すようなことはあつちやいかんというようなことであります。開拓農民にこれだけの金を融資するわけです。これは金利体系を乱すというような、そういう大げさな問題じやないと思うのですが、むしろ金利体系を乱すようなことをやめて、初めて私は筋が通る、こう思うのです。特に余計なことだが、最後に私は性質上悪口言いますけれども、今回の中金の決算を見ましても、私が承知するところでは二億幾らかの黒字が出ている。一般の常識から見れば……、そのほかに三億とか、四億含みがあるでしよう。そういうような隆々たる業務の成績を上げておられるときに、あなたのほうの政府と共々に、やはり中金の性格から言つて農民に対して社会政策の一役を担うというようなことを、私はこういう時代にこそやつてもらいたい、そう思うので、それらを含めて十分金利の大幅な引下をしてもらいたいと私は思うのです。
  84. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 関連して……。只今中金の鶴田さんの説明によりますと、中金の資本の中にはいろいろの系統があるようであります。その系統の種類によつて利子がそれぞれ異なつておる、こういうような御答弁でありますから、特に私はこの際中金のそれらの各系統の集まつた資本額、それからそれについての利子、或いはこれがどういうふうに流れておるかという大綱についての額並びに利子、そういうものを一つ私は承知したいと思います。なお御参考までに申上げますが、栃木県において過日、本年の春、県会においてどういうことが議決されたかというと、中金から煙草耕作連合会が金を借りる、それについて日歩三銭三厘の利子がかかる、その中金から借りる金はどういうところへ使うかというと、「たばこ」の乾燥場を作るために借りる、それで一般のところから借りてもそのくらいの金利で借りられるのじやないかと言うて、特に農林中央金庫であるから、政府から非常な協力を得ておる農林中央金庫であるから、何とか利子をもつと安くしてやれないかと言うて話したところが、とても駄目なんだ。そこでやむなく県議会は二百万の利子補給を農林中央金庫にやり、利子を返したわけであります。こういうふうな実情から眺めて見ますると、その自己資本の運用の場合においては、こういうふうな利子を使うのだ、これはもうかなりの高金利であります。私は農林中央金庫の設立されました本然の姿は、いわゆる本当に農家の経営が他の商工業とは非常な差異を来たしておるものである、従つてできる限り安い利子で以て農家の経営に、再生産に役立たせようというのが私は農林中央金庫の設立の本旨であると考える。然るにかかわらず、ややもすれば農林中央金庫が他の一般金融会社と何ら異らないところの金利或いはそのサービスの点、或いは事務的取扱いにおきましても、極めて冷酷な取扱いがされておりますことを私は随分実例を持つております。そのようなことは甚だ私は遺憾に存ずるのでありまするから、是非私はその内容の、いわゆる資本の種類によつて利子を左右する金利、その他を十分内容を説明してもらいたいと思います。
  85. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは大分関連々々で質問があるのですが、一応お答え頂いた上で又質問を。
  86. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) お答えいたしますが、先ほど最初にお話がございましたこの金庫の剰余金の問題につきまして、誤解があるといけませんので御参考に御説明を申上げておいたほうがよろしいかと思いまするが、昭和二十七年度の決算をこの本年の三月三十一日にいたしまして、そして差引剰余金として計上いたしましたのが四億七千一百万円余であります。それでそれをどういうふうに処分いたしましたかと申しますと、納税引当金として六千万円、それから優先出資の償却準備金としまして四千七百万円、出資の配当としまして一億九千二百万円、それから特別積立金が一千万円、それから特別配当金としまして一億五千七百万円、これは中金の所属団体の利用者に対する配当でありますが、例えば貸付をいたしますと、その貸付金利について若干の戻しをやるわけであります。預金の取引のあるところには、預金のレートに若干の又附加えをする、それが一億五千七百万円、それから翌年の繰越金として四百万円、こうなつております。それで問題になりますのは、これは計算の技術上の問題なんでありますが、かような処分をなしましたうちで、実は出資の配当金の一億九千二百方円のうち、一億四千四百万円と言いますのは、これは例の政府のほうから対日援助見返資金で優先出資をやつて頂いております。これは政府との契約に基いて年七分五厘の利息をお払いしなくちやならん、こういうことになつておりまして、まあ出資に対する配当という形にはなつておりますけれども、実質はこれは借入金の金利みたいなものなんであります。それから優先出資の償却準備金の四千七百万円、これも政府のほうの優先出資を頂載いたしましたとき……。
  87. 河野謙三

    河野謙三君 発言中でございますが、私はそういうことを伺う機会は又別に求めたいと思います。今ほかにまだ御質問もたくさんあるのですから…。ただ私がさつき申上げたのは、余裕のある決算をしているじやないか、少くともいろいろ御説明頂いても、非常に窮屈でやり繰りしているんじやないということははつきりしている。余裕のある決算をしているんだからという意味のことを申上げたので、その点に関しての御説明はほかにまだいろいろ御説明もあると思いますが、その程度で簡略にして頂いて結構であります。
  88. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) 只今お話は、実は余裕がある、こういうふうなことでありましたので、くどくどと御説明を申上げたのでございますが、実はこの内容を申上げますと、余裕は決してないということになりますので、御了承願いたいと思います。それから次にお話がございましたこの各系統間の金利の問題でありますが、これは私の説明が不十分でありましたために多少誤解があるかと思いますが、私のほうは各業種別に、例えば農業団体、それから森林団体、漁業団体こういうふうに業種別に金利の差等は付けておりません。それで先ほど申上げましたように、信連でございますね、信用事業をやつておりまするものは、これは県においての中央金融機関として、専門の金融だけをやつている事業機関でありますから、そのほうだけを多少優遇をしておる、それ以外の団体はそれよりも金利を高くしておる、こういう意味でございますから御了承を願いたいと思います。それから先ほど河野さんからお話がございました中間機関の問題でございますが、実は私のほうとしましては、先ほど申上げましたように、私のほうから開拓連に対する金利というものは考慮したいと思つておりますが、ただこの中間機関の金利を私のほうがきめまして、それで強制することが果してできるかどうかという問題もございますし、なおこれは数字のことになりますので、もう少し研究いたしませんと、末端金利がどうなるかというふうなことについてはちよつとこの際お答えいたしかねるのでございますが、できるだけ御希望の趣旨は尊重することになります。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 この問題を中心として、たまたま中金に対していろいろな質問が出て来ておるのは、今の農村金融の中枢機関たるべきところの農林中金のあり方というものは、実にきびしく、単位農協なり、或いは県連段階なりで批判されておると思います。これは日本銀行を初めとして、金融機間の独裁的横暴というものが、これが日本においては官僚機構と結んで非常に甚だしいものがあるので、末端の金を借りるほうにおいては弱者の立場であつて、その注文なり何なりというものが反映されていないから、いよいよ独占的傾向が強いんです。こういう機会に根本的にこの農林中金に対するところの解剖が我々は加えられなければいかんと思います。あらゆる資料を提出をしてもらつて、このようなやり方で以て果して日本におけるところの農村金融のあり方として正しいかどうかということを検討する機会が私は来ておると思います。今の問題にいたしましても、前からとにかくこれは少し高いと思つていた、危険負担ということを予測していたというようなことを言いながら、事実上においてはそういう危険はなかつた、何とかしなければならん、漠然とした形で、とにかくそれに対するところの対策というものを講じていない、それでも済むようなあり方になつておるというところに金融機関としての極めて不健全性があると思います。今のままのようならば、県の信連段階においても連合体を作つて、この中金に対抗すべきものを作り上げようかというような動きもありますし、単位農協においても、非常に絶望的に、他の面から融資を受けるような動きがなされておりますし、それは農協そのもののいろいろな欠陥や不健全性もあるでしようけれども、この金融機関の中枢たる中金というものが農村の育成のほうへ働かないで、いよいよ農協というものを窮地に追込めるような作用をしておる傾きがありますので、農協の再建と関連をいたしまして、中金のあり方というものに対して各委員からいろいろな私は意見があると思いますから、改めていろいろな資料を出してもらつて、とにかく検討する機会を持つて頂かれんことを委員長にお願いいたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  90. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 開拓金融の直接な質問です。利子が先払になつておるんですが、金融機関はおおむね最近は貸付するときに利子を天引するというようなことにはなつているんだか、この金融は多くを申上げんでもわかつておる、極めて農民のうちでも貧弱な層であるのであります。償還も極めて順調に行つておるという実績を示した状況でもある。なおこの金融に対して四億円という、私から言えば担保も入つているしするので、これは先払でなしに、一つ特例を設けて、償還のときに元利償還、こういうように取扱い願いたいのでありますが、これについて中金はどういう意見を持つておられるか。それからなお先般の御質問に対してお答えがあつたのでありますが、いわゆる家畜或いは農村工業等、長期を必要とする、又長期金融でなければ意味をなさんのでありますが、長期を必要とする部門に対しては長期の取扱をするというふうに承知いたしてもよろしいですかどうですかという、この二点をお伺いいたします。
  91. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) 只今お話のございました開拓者は、資金的に非常に困つているんだから、利息を先取りするのはどうかという御説は御尤もの点と思うのでございますが、実はこれは金融のやり方としまして、金庫ができましたときから、実は短期の資金について、農村相手の資金貸出の方法として手形がいいか、むしろ証書にすべきじやないか、これは随分議論があつたように私伺つております。随分議論を尽しまして、やはり短期の資金の取扱については手形の取引のほうがこれはいいんだ、或いは農村の実態がそこまで行つておらないならば、成るたけ一つそういうふうな実態に近付くように、多少無理があつてもこのほうでやつたほうがいいじやないかというふうなことで、実は手形による取引ということで長年の間やつて来ております。御事情の点もわかりますけれども、短期資金についてはやはり手形でやつて行きたい。かように現在のところは考えておるわけであります。それから後段の問題の長期に必要とする資金については、長期の貸出をやるかどうかというふうなお話でありますが、これは御承知の通り私のほうは農業債券の発行の権限を認めておりますが、今のところ期間三カ年の債券を発行しております。こういうふうに債券の発行の限度を与えられておる、そういうふうな特権を与えられておるというふうなことは、結局私のほうに対して中長期の資金をやるべしというふうな使命を与えられておるということになると思いますので、勿論長期に必要とする資金については適当な機関で現に融通しておりますし、さようにして行きたいと考えております。
  92. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 この利子の先払いと後払いとで実際金庫はどのくらいな差ができるものですか。これは開拓者となつて見ると、全く身を切られるような資金であるんじやないのですか、或いはその差額の損失が大きいからできんとか何とかいうことですか、或いは貸出の体系がそうなつておるから、これだけはそうできんということになるのですか、一つお伺い申上げます。
  93. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) 只今の利子を先取りした場合と後取りした場合の利差はどうかということは、実は私詳細な資料を持ち合せておりませんので、どのくらいになるかちよつと只今申上げかねますけれども、ただ金利のきめ方といたしまして、やはり日歩二銭六厘とか、何厘だとか、そういうきめ方は、金利は先にとるんだという前提の下に金利をきめておりますので、証書貸に仮に直しまして、そして金利を後取りにするというふうに仮に変更するといたしますと、若干の金利をむしろ上げるというふうな結果、そういうふうにするのが理窟としてはそういうようになるかと思います。そういう点も考慮しまして、今の金利というものは実はきめておるのであります。
  94. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、これは考えて頂きたいのですが、勿論二銭六厘より上げてもらつてはこれは方法はないので、私どもは、農業手形を農民のほうで二銭五厘でとるときに、中金は二銭で貸して、それが手数料をとつて二銭五厘ということになつておるのですが、開拓金融とすれば、それできめて見ると、前にも河野さんから説明があつたように、少くともそれ以下、三厘ぐらいの利子でなければ、これは合理的でもないというように考えておるのでありますが、その範囲で行くんだつたらば、勿論利子は後払いに考慮して頂くほうが開拓者としても利益ではないかと、こう思うのですが、一つ成るべく開拓者を救済する一という意味においてすべてのものをお考えになつて頂きたいことを希望いたします。
  95. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 先ほどの答弁によりますと、業種別によつて利子をいろいろ差別をしておらないと、こういうような御回答でありますから、なお私は煙草耕作連合会に対して日歩三銭三厘で貸しておつたという実情を調査の上、今一応質問を保留しておきますが、若しその際実際に三銭三厘で貸していないのだと、実際はこういうわけだということで、いわゆる出張所で間違つているんだということであるならば払戻してくれるかどうか、一つ質問いたします。
  96. 鶴田亀男

    参考人(鶴田亀男君) 只今お話にお答えいたしますが、実は先ほど来、例えば森林に対しては日歩二銭四厘、単協その他に対しては二銭六厘、ういうふうに申しましたのは、これは一年以内の短期の資金のことを申上げて、それ以上の中、長期の資金の利率を御説明申上げなかつたので、「たばこ」乾燥室の資金になりますと、償還期限は三年乃至は五年は要するのじやないかと思います。そういうような五年以内一年以上の資金については年一割一分というふうにきめております。これは短期の資金は安くする、実際長期の資金は多少高くなるということはやむを得ないと思います。そういうようなきめ方をやつておりますので、今のお話の三銭五厘と申しますのは年に直しまして一割一分ということになりまして、間違いじやない、かように考えております。
  97. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 農林中金の問題は、先ほど戸叶委員の御要求もありまして、全般的、根本的な問題につきましては別途理事会でお諮りいたしまして、日程に附加えてもらいたいと思います。  本日はこれでよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) この法案はなお御質疑があると思いますが、次回の委員会に廻しまして、次回の委員会では残余の質問を終りまして、直ちに討論採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めます。
  100. 河野謙三

    河野謙三君 これは今中金からの御答弁で、大体中金の誠意というものは認めるのですが、この際本委員会は特に金利の問題については附帯決議をしておく必要があると思うのですが、如何でしようか。それを一つお諮り願います。
  101. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 私からお諮りいたしますが、先ほど私のお諮りいたした次回の委員会で残余の質疑を終りまして直ちに討論採決に入る。その場合に金利の点について本委員会で附帯決議をして頂きたい、こういう河野委員の御発言でございますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは御異議ないと認めまして、さように取計らいます。   ━━━━━━━━━━━━━
  103. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) その次に前回河野委員から御要求になつておりまする化成肥料の件を議題といたします。農林省の農業改良局黒川普及部長、農林経済局林田課長が見えております。
  104. 河野謙三

    河野謙三君 私は最近両院を通じて肥料問題が非常に大きく取上げられておるのですが、これは特に肥料の価格の問題について、従来の政府、特に通産省と肥料資本の馴合いによるところのメーカーの横暴、これによるところの肥料価格の高騰、これが中心議題になつておりますが、この問題を改めて本委員会で取上げて頂きたいと思いますけれども、それと同時に私は肥料問題として忘れていけないことは、農林省の改良局なり、経済局は施肥の指導若しくは肥料の質の問題、これについてどういうふうな根本的な指導をされておるか、現在の末端の実情は非常にいかがわしい肥料を余計、而も高く買わされておる、こういう実情であります。特に最近農村が化成肥料というものを非常に余計使つております。これにつきまして化成肥料というものに対して農林省がどういう見解を持つておられるか。どうも私少し物を曲つて見る癖があるかも知れませんけれども、最近の農林省は餌にしても肥料にしても、化成であるとか、配合であるとかいうものを奨励するような傾向があると思います。奨励するなら奨励する理由がなくちやならん。そこで純然たる技術的な立場におられる普及部長さんに肥料の場合に単肥なり、化成なり配合についての技術的な見解を先ず伺いたいと思います。
  105. 黒川計

    説明員(黒川計君) 化成肥料の肥効の問題でありますが、実は化成肥料のうちには粒状のものと粉状のものと大体二種類があるわけでありますが、粉状のものについては今までの試験の結果というようなところから見て、大体配合肥料と同様であるというふうに考えておるわけです。それから粒状のものにつきましては、これは特に稲作の場合に粒状になつておるために全層施肥的な効果が認められるようでありまして、普通の粉状の場合よりもいいということは言えるかと思いますが、目下詳細な分については試験を続けておるわけであります。それから稲作の場合につきましては、粒状であつても果していいか悪いか問題があるかと思いますが、特に燐酸の問題につきましては、土壌の種類によつては、或いは又粒状の大きさによつては幾分肥効が粉状の場合よりも出るということがあろうかと思います。これは化成肥料と配合肥料と両方同じ立場から見て、現在農家がややもすると窒素肥料を過剰にやつておるという状態にありますので、そういう点から言いますと、幾分でもそういうレベルの非常に低い農家にはいいこともあるだろう。併しこれを追肥に又無批判に使う場合におきましては、追肥の場合は大体窒素肥料でありますので、燐酸と加里というようなことはややもすると無駄があるというようなこともあり得るかと思います。我々といたしましては、この化成肥料、配合肥料という市販で売つておるものを現在積極的に奨励しておるという立場にはないのでありまして、今全国に亘りまして施肥の合理化に関して調査及び試験をやつておりまして、その上でこういう問題を本格的に考えて行きたい、こういうふうに考えております。
  106. 河野謙三

    河野謙三君 そうしますと、結局農家が手許で単肥を配合してやつたものも、配合なり若しくは化成肥料と称するものも、そこに肥効の上においては大した差はない、まあ稲作の場合に粒状の云々というような多少の問題でありますけれども、いずれにしても結論として今化成肥料と称するものは単肥の配合よりも三割、四割という割高に農家がとられておることは間違いない。こういう現状を見ておられて肥料の生産行政をやつておられる通産省に対して、農林省のほうでは何か通産省のほうへ横の連絡をとつておられますか、どうですか、それを一つ伺いたい。
  107. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) その点につきましては昨年の十二月でございましたか、通産省のほうへ申入をしておるわけでございます。その内容は、大体化成肥料の総生産数量というものが燐酸の需要自用の三割を超えてもらつては困るというふうな連絡をいたしまして、そういう数量を限度にして生産を押えたい、そのようなことで生産行政を直接握つております通産省のほうへ連絡をしておるわけでございます。
  108. 河野謙三

    河野謙三君 化成肥料を年産の総生産の三割を超えてはならん、これはどうして出されたか、これには非常に問題があると思いますが、それは別として、通産省にそういう連絡をされた結果、通産省はそれを厳格に守つておるのですか。私は現状におきましては、その三割というものをすでに相当突破した量になつておると思いますが、その辺の農林省の御認識はどうなんですか。
  109. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 私たちのほうで調べております生産数量から見ますと、現在のところ三割以内でございまして、大体まあ月によつて違いまするが、一割乃至二割というところで押えられておるのでございます。
  110. 河野謙三

    河野謙三君 これは通産省に改めて伺いますけれども農林省のほうではこういう事実を御存じですか、通産省は燐鉱石の割当の権限を通産省に置いて、最初から過燐酸を作る意思のない、最初から化成肥料を作るのだという工場に、新らしくできる工場に大事な燐鉱石をどんどん新規の割当をしておる、こういう事実は農林省は御存じですか。
  111. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) その点につきましては、割当基準を作りまして、それによつてつておりまするので、化成だけを主に作るというところへそう割当てておるとは考えていない次第であります。
  112. 河野謙三

    河野謙三君 それは一つ私のほうが確か正確だと思うから、農林省でお調べ願いたい。例えば具体的に言うならば、日本水素という硫安工場があります。これは過燐酸を作つておるのではありません。その工場へ燐鉱石の割当をして、この工場は化成肥料を作つておるわけです。最近日本水素と同じように硫安工場が化成肥料を作るべくどんどん設備をしております。これらは設備ができれば、今のままに放つておけばどんどん化肥料専門に作ります。一そういうことになつて来れば、これは通産省に言うことでありますけれども、一応参考に私の意見を聞いてもらいたい。そういうことになつて来ると、どういうことになるかというと、結局既設の過燐酸工場の稼働率が下る、現在でも百五十万トン程度あればいい過燐酸に対して、三百万トンの能力があると言つております。倍の能力を持つております。そこへ持つて来て百五十万トン作るだけの燐鉱石を割当てれば、工場は五〇%しか稼働しないわけです。それをそのほかに、更に硫安工場のような過燐酸を作るのではなくて、化成肥料を、農家から見れば、三割も四割も高い化成肥料専門の工場に大事な燐鉱石の割当をされるということは、燐酸工場の率が下るということは、今問題になつております過燐酸の価格が非常に上る、だから通産省或いは農林省としてもその責任の一半は負わなければならないが、通産省が肥料価格の合理化どころではなくて、肥料価格の引上策をやつておるのが事実なんです。これは御承知なければお調べ願つて、私は確信を持つて申します。通産省へも申しますけれども農林省のほうからも、単に三割以内にとどめてくれというようなことではなくて、三割の是非というものをもう一遍御検討願うと同時に、私はそういうふうな過燐酸の価格が、原価が高くなるような行政を立ちどころにやめてもらわなければ、一方において肥料対策審議会なんといつて小田原評定をやつて、まるで朝鮮の休戦会談みたいに何年たつたら片付くかわからないようなことを言つてつて、それでいて毎日毎日百姓は三割も四割も高い肥料を買わされておるのです。それで仮に硫安なり、過燐酸が三十円なり四十円下つたところで、そんなものよりも化成肥料がどんどん今の勢いで殖えて行つて、商人の宣伝でどんどん殖えて行つて、四割も高い化成肥料を買えば、これは一方において硫安や過燐酸の原価を仮に下げて見たところで、農家のほうから言えば何にもならないんですよ。これは一つ農林省のほうでも十分燐鉱石の配分は通産省に権限がある。生産行政は通産省がやつておるのだ、だから俺のほうは知らん、こういうことでなしに、むしろもつと積極的に私は生産行政農林省が指導して頂かんと、私は今折角改良局のほうで施肥の研究とか、指導をいろいろやられたところで、そんなことは何にも農民には通用しないのであつて、むしろ研究の結果を効果あらしめるように、経済局のほうで通産省によく御忠告になるように願います、こう思うのです。それから重ねて申しますが、燐鉱石の配分、これについて私非常に議論があると思うのですが、今後そういうふうなことを、私の申上げたごとを若し現実にやつておる、調べて見た結果やつておるとしたら、農林省は一体どうされますか。
  113. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 農林省としましては、通産省に対しましてはいつも化成肥料を抑制的に取扱うように注意を喚起しておるわけであります。それで今後におきましてもそういう趣旨に則りまして、燐鉱石の割当につきましても十分注意を喚起するようにいたしたいと思つております。なおできるだけ化成肥料と配合肥料がそんなに品質も違わないというふうな、肥効も違わないという点もございますので、配分設備を各協同組合に作らせまして、配合肥料でやつて行けるようにいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  114. 河野謙三

    河野謙三君 これは一つ通産省に農林省が勧告をする、同時に今の制度では、勧告をしてもそれを通産省が無視して従来通りのことをやるという場合には、農林省はそれに対して何か手があるんですか。
  115. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 現在無視してやる場合にどうするかという点は権限の上ではないわけでございます。それから又肥料の取締りの上におきましても、登録制になつておりまして、成分がありましたならば、それは登録して行くことになつておりまするので、それを禁止するということはできないようなふうになつております。併し実質的な面におきまして、通産省に十分厳重に申入れて、両方協調してやつて行けるようにしたいと存じております。
  116. 河野謙三

    河野謙三君 もう一点普及部長さんにお尋ねしたいのですが、今のような、あなたのほうの技術的な面から見て、化成、配合、単肥というものの肥効がはつきり出ますね。その場合に、化成が農家が手許で配合したものと同じような価格で売れる場合にはこれは悪いとは言えない。それなら逆に普及指導の面から、農家に向つて化成肥料はこれこれこういうものである、従つて単肥の配合よりも何割以上高くては少し理屈が合わないものである、買つてはいけないとは言えないでしよう。化成肥料というものは、買う以上はこれこれの価格が大体標準だというようなことぐらい、私は農林省で、普及部のほうでやるべきだと思うのですが、そういうことはやりませんか。
  117. 黒川計

    説明員(黒川計君) これは普及部としましては、要するに今度の改良普及措置というものが、農民に対してそういう知識を与えるということになつておりますので、今後十分調査をしまして、そういう問題の間違いがないようにやはり農民を指導して行くようにしたいと思つております。
  118. 河野謙三

    河野謙三君 何か具体的にそういうふうな、あなたも御覧になつて、非常に技術者の立場として百姓が三割も四割も高い化成肥料や配合肥料を買わされて、百姓というものは困つたものだという感じを持つておられると思う。それを今度現実にあなたのほうの行政の面で、その肥料知識の乏しい百姓を啓蒙する具体的の何か策を、例えばドイツでやつているように、ドイツの農林省が全農家に六百万枚も印刷物を作つて、六百万戸の農家に、肥料はこれこれこういうふうにやるべきだ、餌はこれこれこういうふうにやるべきだというのは、ドイツでは農林省が直接やつております。色刷りの絵を描いたわかりいいものでやつております。そういうようなことでもやるということを、私は一つ特に御研究を願うことを希望して、なお委員長に、この問題は非常に私から見れば農民には重大な問題でありますから、肥料の生産行政をやつている通産省を適当の機会に呼んで頂きたいと思います。
  119. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 承知しました。
  120. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 私は肥料政策が農林省の手から離れているということを甚だ遺憾に思います。農民は食糧や何かの増産については結局農林省の指導監督下に置かれておる。そうして自分が使うところの肥料は今度は通産省がそれを支配しておる、こういうことに非常な矛盾があることを常々農民は非常に不満を持つておる、こういうことは今度局長さんや課長さんにお尋ねしてもいたし方がありませんから、次の機会に私は質問したいと思いますが、先ず第一にお聞きしたいのは、肥料の化成の問題ですね。いわゆる混合の手数料というものが莫大もなく高く農民に負荷されておる。そこで勿論自由販売であるが、大体において相場がきめられていることは事実であります。そこで例えば燐酸肥料にしても、過燐酸石灰の燐酸の含有成分の一%の単価、又は硫酸アンモニアの含有成分の一%の価格或いは燐酸加里の加里分の含有成分の一%の価値、それらを混合いたしました化成肥料の含有成分の価格というものを算定いたしますると、どういうことになるか、私は農林省の技術者の立場から一つこの次御説明を願いたいと思います。これはすぐ我々でも計算できることでありますから、専門の皆さんが十分御研究になつているごとと思いまするが、これが即ち如何に化成肥料が一%の含有量が高いか、混合させるだけの機械の手数料だけで農家がどんなに高い肥しを買わせられているかという現実の問題だと私は思います。是非この次の委員会に御説明願いたいと思います。
  121. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) この問題は本日はこの程度でよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それではさよういたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  123. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 甚だ時間が過ぎておりますが、もう一件お願いいたします。河合委員の御要求でありまする植物防疫の件を議題に供します。農林省の堀植物防疫課長が出席しております。
  124. 河合義一

    ○河合義一君 もう時期がホリドールを使用する時期に近付いております。農林省におきましても本年度におきましては、前年度の十四倍を使用さすという方針であるということは我々も聞いておるわけでありますが、ところが昨日のホリドールの使用におきまして相当犠牲者が出ておるのであります。兵庫県では二人ホリドールのために命を失つております。全国では相当の数に達するであろうと思うのであります。それは若しわかりますようでありますれば一つこの席上で御発表を願いたいと思います。全国でどれだけの死人が出ておるか。昨年でもすでにあれだけの死人が出たのでありますから、このまま放つておきましたら相当なことになるだろうと思います。食増産のためにホリドールを使用しなければならん。浮塵子、二化螟虫を駆除するためにはあれをますます使わなければならんという方針が立てられておるといたしまするならば、この使用上にどういう注意を与えられるお考えでありますか、又現在そのために亡くなつた者に対してはどういう処置をとられたか、その注意が足らなんだために死んだのであるならば、そういうことは農林省としては知らないという態度でやられるお考えでありますか、その辺の事情を承わつておきたいと思います。
  125. 堀正侃

    説明員(堀正侃君) 一般にホリドールによる中毒事件として伝えられておりまするものの中には、いわゆるホリドールの主要成分でありまするパラチオン以外の燐製剤と言いますか、テツプ剤というふうなものの中毒も一緒に勘定に入れられておると思います。このホリドールというと語弊がありますが、そういつたふうな薬を全部合せまして我々は大体まあパラチオン剤というふうに呼んでおるのでありますが、申すまでもなくこの薬は非常な害虫に対する効果がありますと共に、人畜に対しましても非常に毒性の強いことはこれはよくわかつておるのでありますが、いろいろ日本でも昭和二十六年以来試験をやりましたし、又外国におきましても終戦後各地でいろいろの試験をやつておるのでありますが、その毒に対する被害と申しますか、人畜の被害というものは防止し得ないものではないのでありまして、まあ農家が常識的に非常に注意を守りさえすれば防止し得るものであるというふうなことになつておりますので、私今昨年どのくらいな事故があつたかという数字的な資料は持ち合せていないのでありますが、昨年伝えられました多くの事故は、むしろ今御指摘のパラチオン剤による事故よりもテツプ剤による事故のほうが多かつたのでありますし、事故の大部分は自殺とか、或いは薬の性質を知らないために、人間がおできの治療に使うとか、或いは毛虱の治療に使つたとかというふうな全くの誤用による事故が非常に多いので、つまり注意深い撒布をしながら、なお且つそういつたような被害を生じたという実例は知つていないのであります。で、まあ大体ああいう病害虫の薬というものは毒物でありますから、ちよつと不注意の撒布をいたしますと、頭痛を起すとか、或いは目まいをするというくらいのことはままあるのでありますが、今御指摘の兵庫県で二名死んだというお話でありますが、一名の例は、県からの報告等によつて聞いております。この場合も私直接調査したわけではありませんが、いろいろ実情を聞い見ますと、果して撒布上の不注意で亡くなつたのか、或いはパラチオン剤以外の、何か特別な体質的な理由で、或いは従来の病気等の関係で死んだのか、そこのところがはつきりしないというふうな報告を受けております。それから又いろいろと専門家が私に話して下すつたり、或いはいろいろなものに発表したのを見ましても、ちよつとあの事故は撒布中に生じたいわゆるパラチオン剤の直接の中毒の事故であるというふうには考えられんと、こういうふうなことになつておるのであります。で、このパラチオン剤の事故防止につきましては、勿論全国的に私どもは講習会を開催し、或い又その講習を受けたものが市町村に入つて、でき得る限り使用者に対して知識を普及をするように努めておるのでありますが、なお一方におきまして、本年厚生省のほうで毒劇物取締法の第十六条の指定をいたしまして、その製造とか、或いは使用に当つては特別な制限を加えております。従つて使用につきましても、都道府県知事が特別の指導者の指導の下に使用するというふうなことになつておりまして、こういつたふうな考え方を基幹にいたしまして、厚生省農林省は、この使用に昨年に増して更に徹底した被害防止の啓蒙運動と申しますか、普及に努めて来たのであります。要しますのに、我々直接需要者の側の立場からいろいろと実験をした結果から申しましても、又医学者の説から、数名の専門家のお説も拝承しておるのでありますが、この薬は撒布液として、或いは撒布剤として調製したものは農家が直接多量にそれをかぶつたり、或いは口から吸つたりするようなことのないように注意さえすれば、特別に人体に危害を及ぼすようなことがないのであつて、要するに常識的な注意で以てやり得るんだ。併しまま中にのん気な考えから、非常に非常識的な、或いは粗雑に扱うようなところから危害を生ずる虞れがある。これはよく農家を教育しなければならん、普及しなければならんという考えを持つております。現に今年も果実地帯における、特に「りんご」地帯における第一回の撒布は終つておるのでありますし、或いは又水田地帯にも或る地方ではすでに二化螟虫に対する第一化期の撒布がすでに始まりつつあるのでありますが、現在までのところ、撒布による事故というものは聞いていない、まあこういう実情でございます。
  126. 河合義一

    ○河合義一君 只今係官の話を聞きましたら誠に結構なことでありまして、まあ安心ができるわけなのでありますけれども、私はこの速記録をよく見ました上で、なおもう一度質問をいたしたいと思います。決してそんな軽々しいことじやないのです。施用のやり方が悪かつたので……、元来あのホリドールが非常に人畜に害があるということはもうはつきりしておるのですから、そのために講習会などを開いて被害を予防された、そういうことをやられておる。昨年よりも本年は十四倍も多量に使うということになれば、農林省としてはそういう被害のないように留意されなければいけない。もうそれは使い方が悪かつたのである、又できものに付けたりして、そのために死んだのであるというのでは余りに無責任なんです。元来猫いらずを薬屋に買いに行つても判を持つて行かなければ売らない。これが現在の実情なんです。それにも劣らないような害毒を持つておるホリドールを……農民というものは元来無知なもんですから、もう一層注意して、一人でもそんな被害者が出るということは、これは大変なんであります。余り私は今の答弁は無責任じやないかと思いますから、なお私は専門家にもよくお伺いいたします。又速記録も十分読んだ上で再質問をいたしたいと思います。それを保留いたしまして私の今日の質問を終ります。
  127. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 他の議題は後日に廻しまして、本日はこれで散会いたします。    午後四時四十一分散会