運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-06-17 第16回国会 参議院 農林委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月十七日(水曜日)    午後二時十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員清澤俊英君辞任につき、その 補欠として、江田三郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     片柳 眞吉君    理事            宮本 邦彦君            森田 豊壽君            白井  勇君    委員            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            重政 庸徳君            横川 信夫君            北 勝太郎君            河野 謙三君            河合 義一君            江田 三郎君            戸叶  武君            武藤 常介君            鈴木  一君   委員外議員            島村 軍次君   国務大臣    農 林 大 臣 内田 信也君   政府委員    農林政務次官  篠田 弘作君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    農林大臣会計課    長       増田  盛君    農林省農林経済    局長      小倉 武一君    農林省農地局長 平川  守君    農林省農業改良    局長      塩見友之助君    農林省畜産局長 大坪 藤市君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   説明員    食糧庁総務部長 新沢  寧君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農林政策に関する調査の件  (雨水害対策に関する件)  (農林行政基本施策に関する件) ○政府に対する申入の件 ○議員派遣要求の件   —————————————
  2. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 只今から農林委員会開会いたします。  開会前の理事会におきまして、今後の議事予定について別紙再開国会参議院農林委員会議事予定通り協議決定いたしましたので、今後の議事は原則としてこの予定に基いて進めることにいたしますから、御了承を頂きたいと思います。  農林大臣はまだ本会議の都合で御出席が遅れるそうでありまするから、最初に只今陳情もありました西日本雨水害対策につきまして御協議を頂きたいと、こういうふうに考えております。先ず政府のほうから今回の雨水害被害状況並びに政府における救済及び復旧対策について説明を頂き、続きまして今後の措置について御協議を願いたいと思います。先ず政府のほうから御説明を頂きたいと思います。
  3. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 今回の第一次、第二次の台風の被害は、主として九州、四国、西日本と申しますか、中国が被害地でありまして、その被害集計数字は来ておるのでありまするけれども、実ははつきり申しますと、府県集計が、十五日の集計と、又今日知事会議あたりでやつておるのとの間に、もうすでに五十億ぐらいの被害数字の違いが同じ府県数字で出ておるわけであります。というのは、結局調査をするにつれてだんだん被害が大きくなるというのが実際であろうと思うのであります。それでその数字は、今日の知事会議集計される数字を以て第一回の締切りと申しますか、にいたしまして発表いたしたいと、こういうふうに思いますので、農林省の十三日の集計府県の十五日の集計はありますけれども、もつとはつきりしたものが出てからにしたほうがいいのではないかと、こういうふうに考えております。農林省関係対策といたしましては、菜種、麦、馬鈴薯、その他農作物被害農家の再生産の確保に必要な金融措置、主として利子補給或いは損失補償も含むのでありますが、そういうことを考えております。今日の知事会議におきまして、恐らくまとまつた要望が出されるものと思つております。漁船、漁具或いは養殖施設その他の災害につきましても、前に申上げたものに準じてやる考えであります。麦につきましては、農業共済における共済基金概算払をできるだけ早急に行う。或いは稲につきましては、何と申しますか、苗代のいたんだところを再び作らなければなりませんので、そういうようなもの、肥料代或いは種子代その他のものにつきまして、購入資金或いは運搬等に要する資金助成する。蔬菜につきましては、病虫害防除、代作の種子代助成を行う。果樹につきましては、肥料代種子代病虫害防除費助成を行う。こういうふうに今農林省としても災害対策のあれをきめておりますが、問題はそういうような作物に及ぼした影響ばかりでなく、農地そのものに及ぼした影響というものも相当大きく考えられておりますので、先ほど申上げました被害統計と申しますか、それが一切明らかにされませんというと、いろいろの面においてはつきりしたものが出て来ない。今申しましたような農作物被害につきましては、そういうことを考えております。又麦の被害につきましては今回五等麦を設置いたしまして、或いは又飯米と申しますか、食う麦の全然なくなつた所には飯米を貸し与える、そういうようなことも考えられております。施設災害につきましては、災害対策予備費からこれを出す、或いは繋ぎ資金として資金の融通或いは活用を図る、こういうことを目下考えております。  以上が今回の風水害対策として農林省において大体まとめられた案でありますが、今申しました通りどのくらいの範囲に及んでおるかということにつきましては、たつた二日ぐらいで五十億も同じ府県作つた統計が違つて来るような状態なんで、今一日、二日待つてみないと本当の数字が出ないんじやないか、こういうように考えております。
  4. 江田三郎

    江田三郎君 被害数字はつきりしないからということですから、従つて説明があつた金融措置なんかについても大体の大ざつぱな数字というものもまだわからないんですか。
  5. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 金額はまだわからないんです。
  6. 江田三郎

    江田三郎君 今おつしやつたのは大体お配り願つた風水害対策要綱というものの御説明つたと思うのですが、その中で若干お尋ねしたいことがあるんです。五等麦の問題ですが、五等麦はまあ検査規則によつて前からあるわけでして、ただ五等麦の規格というものがどういうように考えられておるのか。大体この五等麦とうことで主たる被害地被害を受けた麦というものがこれに殆んど入り得る、こういう程度規格考えておられるのか。或いはこの五等麦にも入らないようなものがたくさん出て来るのか、その点はどういうようにお考えですか。
  7. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 五等麦は前からあつたわけですが、成るべく農林省としては五等麦は買わない方針で今まで来ておりましたが、今回これを災害によりまして非常に麦の品質が落ちておるんでありますから、五等麦を買上げるということになつておることが一つ。それからこの五等麦に入らないようないわゆる等外品でありますが、これはやはり前と同様、等外品買上は行わないという考え方であります。これにつきましては、等外品買上げろという陳情もありますけれども、一方から又等外品買上はやらないでくれというような農民からの陳情も最近非常に来ております。そういうような陳情のほうも二色来ておりますが、五等麦まで買上をして等外品買上をしないというふうに考えております。それから五等麦にも入らないようなものが勿論できるんじやないかというお話でありますが、これは勿論当然今度の災害によりましてできると思います。併しそれを買上によつて救済するか、或いはここに先ほど申上げましたような方法救済するかということが考えの分れるところであろうと思いますので、農林省といたしましては等外品買上げないで、それによつて生じた被害については、こういう考え方救済したい、こういうように考えております。
  8. 江田三郎

    江田三郎君 そこでこれは非常に大事な政策の分れ路になつて来ると思うので、私お尋ねしたのは、五等麦で、今度被害を受けたところの麦が殆んどこれに入り得るのか、或いはそれにかからないものが一体どの程度になつて出ておるような見込を立てておられるか、それはまだ調べが付きませんか。
  9. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 麦の被害は、一般被害と申しますか、桑や茶の被害なんかからずつと遅れまして、漸く最近麦の被害が出て来ているわけなんです。中には刈入れをしないとわからないというふうな被害もあるわけでして、そのパーセンテージというものはまだわかつておりません。
  10. 江田三郎

    江田三郎君 等外麦は買つてくれないほうがいいという陳情があつたというお話ですがどのあたりからそういう陳情が行きましたか。
  11. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) この間私は六月の八日に実は群馬県へ麦の視察に行きました。そうしましたところが、何村であつたか忘れましたけれども、まあ各村でいろいろ陳情を受けました。その中に等外品の、その人の使つた言葉では横行と言いましたが、非常に困つている、是非これを取締つてくれという陳情を受けました。
  12. 江田三郎

    江田三郎君 どうも大変意外なんでして、今西日本の各県の被害対策委員会からも、被害麦については特に検査規格緩和して政府買上を拡大するというような陳情が来ているので、今おつしやつたようなことは、私多数の意見ではないと思うのであります。政務次官のおつしやつたのは、たまたまそういうような陳情があつたから、農林省としても等外麦買上げることはどうかと思つている、こういうふうに先ほどおつしやつたので、これは多数の意見がやはり検査規格緩和して、政府買上を拡大するということは、これは申すまでもなく五等麦の規格緩和するということ、或いは等外麦買上げてもらうと、こういうようなことだと思うのでありまして、たまたま只今申しましたように、西日本知事会議で、或いは対策協議会でこういうような線が出ておれば、この点政府としても思い切つてこの要望に答えるようにおやりになつては如何ですか、そういうお気持はございませんか。
  13. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 只今お話でありますが、恐らくあなたのおつしやる通り部分はそういう希望を持つているのじやないかと思います。ただ私に陳情されたという意味は、勿論大多数の意思であるとか、全体の意思であるとかいうふうには考えておらない、たまたまそういう陳情もあつたということを御参考に申上げたのですが、等外品買上げるかどうかという問題については、今のところ農林省として買上げないという方針になつておりますので、これを買上げるということになれば、改めて研究しないと、すぐ即答はできないと思います。
  14. 江田三郎

    江田三郎君 そこでどうもその見込はつきり立ちませんので困るのですけれども、この五等麦というもので殆んど被害地の麦というものが入り得ると、こういうことならそれだけでいいのですけれども、それに入らんものができる、等外のほうが非常にたくさん出たということになると、この処置というものについて現地では、農民としては非常に困つて来るわけなんです。そういうことで今私申しましたように五等麦が殆んど入るというならこれだけで結構ですが、五等麦が入らないで等外になるものが非常に多いのだということならば、これもやはり買上の対象として考慮すべきであつて、普通の状態じやないのですから、ともかくもこんな大きな被害を受けているときには思い切つておやりになるべきだと思うのですが、重ねてその点お伺いいたします。
  15. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 等外品は買わないという方針であるということはさつき申した通りです。それがそれじや大部分五等麦の中に入り得る見込があるかどうかと、こういうことでありますが、それは今申しました通り麦被害というものがまだはつきり現われて来ないので、そのパーセンテージについてははつきり申上げることはできませんが、五等麦に入らないもの等につきましては、先ほど申しましたような共済方法であるとか、或いは金融方法でできるだけ救済して行くというのがこつちの考え方であります。
  16. 江田三郎

    江田三郎君 この点はちよつと問題を保留して、もつと被害はつきりしてから改めてお願いしたいと思うのですが、この五等の標準を作る場合のことなんですが、これは要望としても検査規格緩和ということがありますし、この際大部分のものがそういうように入るように、この標準品を作る場合には知事会議要望にもありますように、やはり農業協同組合の販連やその他生産者代表を加えて、大体この五等級で行けるようなことにやつて頂きたいと思うのですが、特にこの等外品は買わんということになるなら、そういう点でもはつきりつて頂かんと始末が付かんと思う。
  17. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 検査規格緩和して生産者の注文に応ずるということも、これはもう一理あるのでありますけれども、一方に又消費者のことも考えなければならんので、余り悪質なものをうんと緩和して、消費者にそれを買わせるということは勿論いかんと思うので、標準をきめるときには勿論生産者側意見を十分参酌してきめることにはなつております。併し今申したように、非常に悪い品物を、生産者のことばかりを考え消費者のことを考えないで消費者に押付けるというわけにはちよつと行かないので、それで標準五等までということを考えて、その値段で買上げるということになります。
  18. 江田三郎

    江田三郎君 そういうことになると、この食管関係法規から行きますと、五等の標準品というものは被害粒が二〇%、異種穀類が一%で異物が〇・六%と、こういうような標準をきめられておるわけで、今年の西日本の麦なんというものは殆んどこれに入るものはないと思う、全部が被害粒なんです。そうすると、五等級買上げるとか、何とか言つたところで、これは作文にそういうように並べているだけであつて、実際には殆んど政府は今年の麦は買上げないということになつてしまうのですが、それで一体問題が処理できると思つておられるのですか。
  19. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) それはもう先ほど申上げました通り、五等麦に入らんものは金融或いは共済措置救済するというふうに今考えておるわけであります。だからそれが非常に数量が多くて、殆んど今西日本あたり水害によるものが五等麦の中に入らなければ、入るものは殆んどないという結果になれば、そこでこの程度金融共済救済できないということになれば、別な方法を考慮しなければならないと、こういうふうに考えております。
  20. 江田三郎

    江田三郎君 これはもうはつきりしているじやないですか。十三日の農林省調査にどのくらいの数字が集まつているか知らんけれども、大体の十三日の数字からお考えになつても、大麦であるとか、或いは裸麦だけでなしに、小麦でも殆んど被害を受けているということははつきりしているわけです。厳密に言うと殆んど被害粒ですよ。
  21. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 十三日までの数字は大体百七十万石という数字が出ております。農林省調査は……。
  22. 江田三郎

    江田三郎君 百七十万石でも何ぼでも被害粒は殆んど被害粒です。我々現地行つて遅い小麦なんかを見ても、非常に稔実が悪くて被害粒になつておる。これを検査緩和も何もしない。この通りに一本で行くのだということになれば、被害の二〇%以上は皆等外になつてしまう。三〇%は等外になる。こういうふうになると、五等麦を買上げると言つても、実際には何にもならない。そういう点でもう少し政治的に目を開いてもらわなければどうにもならん。農民にそういう検査にかからん麦は一体どうせいというのですか。その一点から見ても、こんなものを配られても、営農資金をどうする、何をどうやれと言つても、十円出しても営農資金ですから、我々何だかわからんということになる。
  23. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 今のところは買わないという方針になつておりますが、どうしてもあなたのおつしやつた買わなければならんという事情が起きて来れば、勿論そこで研究しなければならんというふうにお答えするより以外に今のところ仕方がない。今のところは買わないという方針です。
  24. 河野謙三

    河野謙三君 五等麦を今度買うというのですが、それによつて起る食管損失というものはどのくらいに見ておりますか。若し被害調査というものがまだ完全にまとまつていない。従つて五等麦がどのくらい集まるか、数字が集まらん、数字がわからんというならば、一俵当り食管特別会計はどのくらい犠牲を負担するかという、それを一つ
  25. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) それは今五等麦の数字がわからないものですから、従つて食管会計にどのくらい赤字が出るということはわからんのです。
  26. 江田三郎

    江田三郎君 買わないのだから損は一つもありはしない。
  27. 河野謙三

    河野謙三君 だから数字がわからんから、損失の総額の予算が出なければ一俵当り損失はどのくらい見込んでおるか。損失見込んでなくては、この五等麦は買えないはずです。どのくらいの……。
  28. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) ちよつと今わからんそうですから、調べてお答えします。
  29. 河野謙三

    河野謙三君 それは非常に政府はこの災害対策要綱の、その五等麦を買うというのは準備が足らないので、今まで買つていないところの五等麦を買う、その意味救済意味で買うのですから、そこに当然食管損失が出るわけです。その損失が出なければ、こういう要綱を書くのは私は怪しからんと思います。同時に私はそう思うのですが、こういうものを買つて見たところで、一般の一等、二等の麦と同じような莫大な中間経費をかけて、食管会計においてぐるぐる廻しをするよりも、そういう予定損失というものをそのまま金に換えて、農家のほうに私は見舞として、そうしてこれらのもので食管の厳格な農産物規格を崩してはいかん。こういう場合に一々食管特別会計で、厳然たる農産物検査規格を崩すということは非常に危いと思います。さればと言つて、私は救済してはいかんというのではない。救済しなければならん。その場合当然予想する金額は別途の方法救済しなければならんと思います。その農産物検査方法について私は伺いたいと思います。
  30. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) だから河野委員の言われた通り五等麦まで買上げる、それ以外は買上げないということは、あなたの御意見通り農産物検査規格を崩さないという一つ農林省考え方から来ておるわけです。それで御了承を願いたいと思います。
  31. 河野謙三

    河野謙三君 いや、それならば、農産物検査規則というものは厳として、これは運用においてそのときどきによつて左右しないという方針が立つたならば、今度の被害対策としての五等麦若しくは等外品が非常に余計出る、これらの検査に対して、それらの罹災者に対するどういう措置をとるか、こういうことを私は伺いたいのです。
  32. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 今のところは共済金融措置で行く以外にはないと思つております。食管赤字救済して行くということはちよつと考えられないと思います。
  33. 河野謙三

    河野謙三君 災害対策要綱に、又先ほど政務次官からの説明で、特に災害地については、五等麦を買うということが書いてありますね。これを附加えたことは、即ちこれは見舞意味でしよう。災害対策一つ要綱として見舞意味でしよう。そうなればそういう他の地区にやらないところの、他の地区で買わないところの五等麦を特に災害地に限つて買うということは、これは見舞ですね。
  34. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) まあ救済ですな。
  35. 河野謙三

    河野謙三君 救済でしよう。その救済をすることによつて農産物検査法というものについて当然厳格性が失われますよ。その厳格性を失われることは危険だと思う。それならば、こういうふうな農産物検査法に触れるようなことをしないで、当然それによつて起る負担というものを直接政府が金によつて私は見舞をしたほうがはつきりするじやないかと、こう思うのです。この点どうかというのです。
  36. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 別に農産物検査規格を崩すわけではないので、五等麦は五等麦として買上げるので、五等麦を四等麦に上げるということはないのですから、検査規格は崩されていない。併し災害地においては、そういう意味で五等麦を買上げるという意味です。
  37. 河野謙三

    河野謙三君 それは単なる理窟であつて、ここにわざわざ書かれて説明された趣旨というものは、政務次官は率直に言われたい。これはお情けで買つてやるということでしよう。そうであるならば、そのお情けということはなぜかというと、食管特別会計赤字になつて現われて来る、その出て来る赤字を私は金に換えて見舞をしたらいいじやないかと、こういうふうに意見として申上げるのですが、どうですかというのです。
  38. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) おつしやる通り赤字になつて出るかもわかりません。併し今のところは赤字には出ないだろうという考えで……。
  39. 河野謙三

    河野謙三君 どうも出ないだろうといつても、出たときどうするといつて政務次官の首をもらつてもしようがないので、これは赤字が出るのは当り前で、この機会に私ははつきりと答弁を求めようとしませんから、十分この要綱においては、今の一条だけを取上げても、政府は再考して頂いて、実情に副つたことをやつて頂きたいということに要望しておきます。
  40. 江田三郎

    江田三郎君 今おつしやつた意見と、私の意見と違うのですけれども、全体として只今要望がありましたように、この対策要綱というものを今後の被害状況に応じて考え直すということなんですか、その点どうなんですか。
  41. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) どういう標準でこれを作つたかとおつしやるのですか。
  42. 江田三郎

    江田三郎君 いやそうでなしに、五等麦の買上げというのは、今政務次官の伝えられたように、これは救済意味である。ところが救済意味ということになると、食管赤字が出るのだから、それだけの現なまを別に出したほうがいいじやないかという御意見もありましたが、そういう点で只今の御意見は再考慮を求めるということですが、私は私であり、別の角度からもう一遍考え直すべきである。ただ被害状態はつきりしていないから、今はつきりそういうことが言えないというなら、今後の被害状況に応じて、もう一遍今出されたことを考え直すということであるのかどうかというのです。
  43. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 只今の御質問でありますけれども、あなたの御意見河野委員の御意見では、もうこの場で同じ五等麦に対しても、或いは等外に対しても、対蹠的な意見なものですから……。そこで救済方法には、只今河野君の言われたような、買上げるだけの食管赤字をむしろ見舞金に出してしまつたらどうかという御意見もあると思います。それからあなたのように、等外品まで買上げたらいいじやないかという意見もあるのです。併し今後災害は今年は相当多いだろうということが予想されておりますが、起る年もあり、起らない年も実はあるわけです。そういう災害という一つの偶発的な問題が起つたたびに、何と言いますか、基本的な一つの問題が動かされるということはあまりいいことじやない。災害というものは偶発的なものですから、そのときに対応するような措置一つ考えることがいいと思うのです。同じ救済にしても、今おつしやるようなそのまま金をくれてやれというのと、もつと拡大して買上げろという意見がありまして、どつちの意見が正しいかということは、相当そこに議論の余地があると思うのです。或いは両方とも正しいかも知れない。でありますから、農林省としては、そういういろいろな意見によつて、いろいろな方法を使うということはできないのでありますから、基本的な方針は成るべく崩さないで、そのときに起つた問題に対処して行く。それには今申しましたような共済とか、金融方法を以てやる、これが一番合理的であると考えております。
  44. 江田三郎

    江田三郎君 河野委員と私と意見が違います。違うといつても同じようなものです。河野委員のほうでも五等麦で買上げるという面倒くさいことをしないで、直接金を出したほうがいいというのです。私としたつてそれでいい。ただ金を直接出すといつても、あなたのほうでもやりにくかろうと思う。やつぱりこういう方法を講じる以外にないではないか。食管赤字を心配されるけれども、ビルマのほうから腐つた米を買つて赤字ちよちよい出すのですから、ビルマの農民考えるよりも、日本の農民考えるほうがいいと思う。そういうことでなしに、技術的にできることでなければならん。五等麦というものを、検査規格を崩さんのだということを言われるならば、恐らく西日本で五等麦に入る麦はないと思う。それともあなたのほうの見込みで、西日本災害地の麦は殆んどは五等麦で入り得るのだということならそれでいいのです。
  45. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 九州の台風による被害の結果、全部が五等麦に入らないだろうという御意見もあるようでありますが、今食糧庁から説明員が来ましたから、その点についてちよつと説明員から説明させてよろしうございますか。
  46. 河野謙三

    河野謙三君 その前に一言。私がさつき申上げましたことに附加えてちよつと申上げますが、仮に政府が五等麦を買えば、その結果はどうなるかというと、農民自体が一般の流通市場で直接処分すれば、仮に千八百円のものが、政府が一遍買上げて、莫大な中間経費をかけて、そして政府が払下処分する場合には、それが千五百円なり、千四百円なりでも売れないということは当然なんです。当然そういうことになる。流通市場で千八百円也で農家が直接商人なり、農協なり相手に処分すれば、当然千八百円で売れるものが、政府の払下によつて五等麦という銘を打つてやれば、これは餌屋に叩かれたり、その他穀屋に叩かれたりで、当然一般市場で流通する価格よりも安くなるということは実例です。そういう農民に届かないところの一般の、農林省と結び付いたところの商人によつて儲けられる、或いは又運送屋その他倉庫業者に徒らに中間経費をかけて、そういうところに起るロスをかけるよりは、そのロスは即ち食管赤字です。その赤字をまとめてそれを農民のほうに出してやつたらどうかということであります。その点を、私の言うことに間違いないことを私は自信を持つて申上げます。
  47. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 河野委員の言われたのは、市場で売れば高く売れるものを、五等麦として買上げるために安くなる、そういうお話ですか。
  48. 河野謙三

    河野謙三君 政府が払下げる、政府が一遍買上げて、それに運送賃、倉庫料、金利等を負担して、その結果政府が今度は購入して払下をするという場合には必ず叩かれるというのが実例であります。例外ないのであります。であるから、そういうふうな実例を今まで重ねているのであるから、そういうふうなものを私は直接農民にこの際廻したらいいじやないか、こういうことなんであります。
  49. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 一般の市場で売れば千八百円で売れるものを、政府買上げて叩かれれば千五百円きりにならない、それじや農民が損するじやないか、こういうお話でありますが、一般の市場で千八百円で売れるものなら、これは売つたつて構わない、一般の市場で売れないというような虞れがあるから政府買上げようとしているので、高く売れるものを安く買上げたのでは救済意味はなさんと私は考えます。それから直接金をやれやれとおつしやるけれども、直接金をやるというようなことは、今のところ法規の上ではできないじやないかと私は考えます。
  50. 河野謙三

    河野謙三君 これはこれ以上話してもいけませんから、一般の市場で売れる価格なら、政府買上げ一般の市場の価格で売れる、これは事実であります。政務次官よくお調べになればよくわかるけれども、例えば今まで、麦の食管手持ちのいわゆるサアテ品と申しますか、そういうような規格外のもの、そういうようなものは常に食管は払下げております。そういう場合の払下げというものはどういうふうに行われているかというと、実際そういう商品価値以下にそれを評価されて叩かれているのが実例であります。でありますから、今度もそういうふうなことになるのは当然である。従つて農家が個々にそれを処分したほうが、もつと私は高く売れるということは実例であります。私は現実の実際論を話しているのであります。であるから、この点は非常に一方において困窮している罹災農民に対して、折角国家がそれほどまでに赤字見込むなら、その赤字を丸ごと農民に出すように考えたらいいじやないか、金の出し方についてはいろいろ方法はあります。それは食管のほうで赤字が出るから、それだけのものはくれてやるというような、方法はいろいろありましよう。方法論については改めて具体的に政府のほうで検討されて、我々の前に示して頂ければ、それでいいのじやないかと思うのであります。方法論が絶対にないとは考えない。
  51. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 被害品ですから、河野委員の言われたように、買上げてから売渡すまでの間に日数もある、だから非常に品も傷むだろうということも勿論あると思いますが、普通の場合においてはそんなに傷みはしないというふうに考えておるのであります。それから、食管会計から直接買上に要する費用を農民に渡すということは、河野君も専門家でありますから、よく御存じでありましようが、少くとも我々の知る範囲においては、そういうことはできないと思つております。そういう必要があれば改めて法律を改正してやらなければならないと思つております。
  52. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 江田委員の質問の答弁をして頂きたいと思います。
  53. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 五等麦の関係につきまして、或いはすでにお話が出ておるかも知れませんが、一応お話申上げたいと思います。従来政府買上げておりましたのは四等まででありますが、本年のような西にも東にも災害の多い場合でありますと、相当その被害によりまして、麦の品質低下ということが相当予想されますので、今までの非常に大ざつぱな見積りでございまするが、従来でありますと、少くとも四等以上に大部分のもの、九〇%以上のものが納まつていたのでありますが、本年の被害地等における予想では五等以下に下るものが、場所によつて違いますが、多いところでは相当数量、三、四〇%にも或いはなるのじやないかというところもございますので、救済と申しますか、被害対策という意味も含めまして、五等麦まで買入をするということにいたしたわけであります。等外まで買うかどうかという問題につきましては、食糧管理特別会計といたしましては、やはり食糧になるものを対象に考えるということから、五等麦までということにいたしたわけであります。五等麦は四等と比べますと相当に品質も落ちております。食糧ということを対象にする限り、恐らく五等麦以下のものを対象にすることはむずかしいのではないかと、こういうふうに考えております。それで但し五等麦の買入れにつきましては、こうした災害地の実情もありますので、食管のほうに定められております通り無制限に買入れをする、五等という格が付けられました限り、それは無制限に買入をする、そして又格差につきましても、本来ならば理論的に歩留り等から格差が定まつて来るわけでありますが、やはり今回の災害対策という意味も多少含めまして、これらの下級麦の格差については、若干の考慮をいたすという考えで、今この点について検討を進めておる次第であります。五等麦から更に格外まで落ちるものが、それでは五等麦を買入れただけで被害を受けた農家が完全に救われるかどうかということの予想につきましては、現在確固たる数字がございませんので、実はわかりませんが、又地方によつて動きがあろうと思いますが、相当仕訳等分類して頂けば、五等麦ということで相当数が救われて来るだろう、等外品で、これでは政府に売りようがなくて残つてしまうものは、そうひどく甚しく多い数量ではないのではないだろうかということを考えております。以上申上げました通り、食糧庁といたしまして、買入の対象としては食糧に向けられるものという観点から考えますことと、もう一つは、そうした全体の数の上からのことを考え併せまして、只今のところは五等麦については無制限に買入をする、そうしてそれについては理論的に出て来る格差よりも多少考えて買うということになつております。
  54. 江田三郎

    江田三郎君 今の説明の中でちよつとわからん点があつたのですが、五等以下のものが三、四〇%になるじやないか、こう言われましたが、これは五等を含めて三、四〇%という意味なんですか、五等にかからない等外のものが三、四〇%という意味なんですか。
  55. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 只今申上げましたのは五等以下を含めてと申しましたわけでありますが、これも被害地全体に平均してそう言うのではありませんので、比較的被害の多い地方でそれくらいの見当になるのではないか、今のところ非常に大ざつぱな見込でございますので、非常に大きなところにおける見込み、こう申上げておきます。
  56. 江田三郎

    江田三郎君 それで若しその説明で行きますというと、被害の大きいところでも五等を含めての三、四〇%だと、こうなりますと、大部分は五等へ入つて行くということになると思うのですが、そう解釈してよろしいのかどうか。それから若しそういうような場合に標準品をどうせお作りになると思うのですが、この検査規格だけから見ると、被害粒という定義がはつきりしないので、これはこの定義をそのまま読めば、成熟後に、又は収獲後に損傷を受けた粒ということになつて、この通りに行けば、雨水害を受けたものは皆被害粒ということになるし、この括孤の中の発芽粒、病害粒、腐れ粒、虫害粒、こう書いてあるので、その通りだとすれば、この雨水害を受けたものはいいということになるので、その辺非常にデリケートな問題が出て来ると思うのですが、今の食糧庁の考え方は大分親心を出されておられるように私拝聴したのですが、これが現地においてはなかなか今のようなお気持がその通り行かないので、ややもすると杓子定規になつてしまつて、又摩擦を起すのですが、そういう標準品を作る場合に販連なり、その他生産者代表というものを加えて、この標準粒を作る。その説明が納得できるようにしてあると非常に円滑に行くと思うのですが、そういうようなことはどうお考えになりますか。
  57. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 只今お話がありました通り、これから標準品を作ります査定会が開かれるわけでありますが、本年は生産者代表言つていいかどうかわかりませんが、お話のような農協組合等からの人も参加を求めまして、標準品の選定をいたしたいと、こういうふうに思います。
  58. 江田三郎

    江田三郎君 今の御説明生産者代表等を加えて、標準品を作つてもらつて、大部分のものが五等級以上に、五等級以上というのは五等級を含めたのですが、そういうものになるのだと了承して私の質問を終ります。
  59. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 島村さんから委員外発言を求めておりますが、よろしうございますか……。島村さん。
  60. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) 只今の問題に関連して二、三伺つて見たいと思います。この検査規格は大体きまつておるわけでありますが、そこでこれを広い解釈で、救済意味になれば規格がおのずから変つて来るということにはなりませんか。
  61. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) やはり検査規格は法令で定まつておりますので、法令に定まつていますことを緩めて、検査規格を緩やかにするということは、それはできないことだろうと思うのです。ただ現品の判定についていろいろ専門的知識が必要でありますので、先ほど申上げましたように、従来官庁側だけでやつていたものを生産者側のほうも入つてもらつて公平な目で鑑定して頂く、そういうことにしておるわけであります。
  62. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) そこで河野委員意見と多少異つているのですが、被害程度によりましては五等麦にどうしてもかからないというようなものについても、併し色合とか、成熟の程度は非常にいい、これは飯用としては確かに価値のあるものだ、こういう場合に普通の規格としてはかからないものでも、只今説明に上れば、そういうものは加えるのだと、こういう解釈をしてよろしうございますか。
  63. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 先ほどお答え申上げましたのは、はつきり等外、五等に入らなかつたものはこれは対象といたさない、こういうふうに考えております。御質問のように条件が全部揃えば四等なり、五等に格付されるべきものが、そのうちの要件の一つ或いは二つを欠いたため、いわゆる規格外として四等なり、五等なりに入らないという麦がございます。それは十分お話のように食用に供せられるというようなものがあろうかと思いますが、それはそういうような食用に十分なりますものは規格外として買うような措置も併せ講じたいと考えております。
  64. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) そこで農家の立場から申しますると、今年のように災害の非常な激甚なときには、希望としては政府買上に成るべく応じたい。併し一般にいわゆる規格品ではなかなか困難である。従つて別途の規格と言いますか、規在の検査法の上に示されておる、第六条かに、規格は一カ月前に決めるというのを、それをその期間を特別法か或いは何らかの形で法律の改正をして、そして災害の麦については別途に措置をとる、こういうような方法を講じてもらいたいという希望も相当出ているのですが、これに関して政務次官の御意見一つ
  65. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 規格外の買上の問題は一カ月前に法律の改正を必要とするということになつておりますが、今こうこうしなければいかん。今もう麦は取入の時期になつておりますから、恐らくそういう余裕はないのじやないか。それで我々の考え方買上ばかりが救済じやない。先ほど申したようにいろいろな救済があると思うのです。場合によつてはそういうものは農家は自分の食い物にして、そして他の金融とか、何とかの面で、営農資金であるとか、或いはその他の面においてやつてもらつたほうが農家のために工合がいいという場合も農家によつてはあるのじやないか。ですからそういう建前を崩してまでやらないで、どうせこの問題はこれは全国的な大きな問題ですから、救済をするという一つの大きな考え方或いはその実行ができるならば、今おつしやるように買上ばかりに救済方法を限定しないほうが、却つて農家のためにいいのじやないかというふうに考えております。
  66. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) そうすると、法律改正等は農林省では別に只今考えていない、こう解釈してよろしうございますか。
  67. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 間に合わないと思うのです。
  68. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) そこで或いは議員立法とか、或いは特別法を、議員立法でなくとも特別法を作ることは不能な問題ではないと思います。
  69. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) そういう余裕と言いますか、期間を設けないでもいいという法律が議員立法でも何でもできれば、これは農林省は従うと思います。
  70. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) 議員立法は別として、農林省自身がその期間の問題を直ちに特別法を作つて災害のあつた場合にはその期間を短縮してきめることができる、別途の規格を定めることができるというような規定は可能な問題と思うのですが、その問題については如何ですか。
  71. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 今のところそういうようなことは考えておりません。
  72. 江田三郎

    江田三郎君 議員立法でやれば従う……。
  73. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 法律ができれば勿論官庁として従います。
  74. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) だから政府としてそういう積極的に法案を出す御意思がないことはわかりましたが、一つ積極的にその問題についても更に検討を加えて頂きたいと希望を申上げておきます。
  75. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 御趣旨はよく了承いたしました。
  76. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) なおその問題に関連をいたして、本件のような災害は、これは五十年来の災害です。従つて農家自身も経験が非常に乏しい。規格なんかのことは、場合によればもう災害に入らないというようなものも考えられると思うのです。そういう実物もあると思うのです。そういう場合に、これはまあ食管の建前は食糧ということになつておりますが、規格を緩めて買つて、そしてそれが食糧として配給するか、これはまあやはり認定の問題が相当あると思うのでありますが、食糧になり得るというような場合には、現在の規格には多少の無理があつても、或いは成熟はよくしているのだが、色が悪いとか、その他検査規則の上で認める範囲においては食糧になるというものは相当広い意味に買つてもらいたいという希望も相当出ておるわけであります。その問題に関して、そういう措置食管関係で成るべくとつて頂きたいということを私は希望を申上げておきます。それから同時にもう一つお伺いいたしたいのは、幸い飼料の需給安定法が出ております。この建前については、いろいろ議論がありますが、全然芽が出て、それを乾かして、これは飼料には向くというような問題に関して、飼料需給安定法の範囲において政府買上げる、これは河野さんの説に従えば、自由売買のほうが農家のほうで有利の場合もありましよう。併し場合によれば叩かれて、むしろ政府買上げてもらいたいという希望の者も出て来ると思うのです。そういう場合に対する飼料需給安定法の法律の範囲内において買上げる積極的な措置のお考えを持つておられますかどうか。
  77. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 食糧になるものを、これは格外品であるけれども、或いは等外品であつても食糧になるものは買上げ意思はないか、こういうお話でありますが、食糧になると言いましても、一般的に見て政府食管法の規定によつて全国民に対して食糧として配給し得る、売出せるというものであれば勿論それは買つていいと思うのです。だけども、風水害があつて、ただ農民が困つておる、だから実際は規格外のもので買上の対象にならないのだが、これは買上げて、一般消費者にそれを売渡すというようなことは、これは先ほど来申しました通り考えることはできないと思います。それを農民が、これは食えるのだ、だからおれたちはこれを食うということは勿論自由であり、又一般消費者でも、これはいいじやないか、結構食物になるじやないか、おれに売つてくれ、おれが買つて食う、こういうようなものは勿論いいと思いますが、政府が責任を持つて食管法の規定によつてそれを買上げて、そして又それを一般消費者に売渡すという対象には先ほど来申上げた通りならないということは、今のところ農林省方針通りであります。只今大臣が見えましたから、一つ又先ほど来いろいろ御質問になりました点については、大臣もおいでになつておりますから……。
  78. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 如何でしようか、この問題、質疑があると思いますが、大臣がお見えになりましたので、なお御都合があるそうでありますから、この質疑はあとに廻しまして、大臣から農林政策の基本事項について説明を承わることにいたします。よろしうございますか。    〔「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり〕
  79. 内田信也

    ○国務大臣(内田信也君) 大変我がままを申上げて申訳ございません。衆議院の本会議において何せ私に対する質問がまだ建つておりますので御無理申上げて相済みません。今後におきまする農林水産行政の基本施策について、その方針の概略を御説明いたしたいと存じます。  我が国がその独立と安定の基礎を培うためには先ず経済の自立を達成することが喫緊の要務であることは、ここに改めて申上げるまでもございません。然るに最近の国際情勢は物価の低落と輸出競争の激化の方向を示しておりまして、独立後日なお浅く、臨時的な外貨収入の依存から完全に脱却しておりません。我が国経済の前途は誠に厳しいものがあると感ぜられるのであります。かかる事態に対処しまして、我々は農林水産行政の諸力を集めまして、生産力の高度化を図り、総合的な食糧自給度の強化並びに農林漁業経営の安定と向上のために、従前にも増して一層強力な施策を推進しなければならないと考えるのでございます。  次に、具体的施策の大要について申上げますると、第一は総合的な食糧の国内自給の促進であります。主要食糧の輸入のため、現在においても年々巨額に達する外貨を必要としていることは御承知の通りでありますが、この食糧の不足は、人口増加による消費の増大と農地の潰廃、農業水利施設の老朽化等に伴う生産の減少によりまして、将来ますます増大の一途を辿ることとなり、今にしてこれが対策を確立しなければ、我が国の経済基盤は根本的に崩壊せざるを得ないのであります。これがため農林省においては、食糧増産の計画を策定いたし、今後十年後においておおむね自給を達成するという目標を堅持しつつ、食糧増産の計画とその実施について一層の効率化、総合化に特に意を用いまして、自給促進対策の強力且つ着実な推進を図る所存であります。  先ず、増産の基盤である土地条件の整備を図らなければなりませんが、そのための農地の拡張及び改良事業につきましては、河川、電源開発等との総合性を特に留意いたしますことは勿論、事業を効率的に実施し、その効果を明らかにする確実な手段を講じたいと思うのであります。  次に、耕種の改善に関しましては、特に農業技術の試験研究を拡充し、而してその成果を農家に普及滲透させるため、これを営農技術として確立することが増産に多大の寄与をなすゆえんであるのに鑑みまして、特に意を払いたいと考える次第であります。  なお、湿田地帯、寒冷地帯等の後進地域については、その地域の特性に対応し、右の施策を推進すると共に、併せて共同利用施設等による営農改善施策をも強化実施いたしまして、以て当該地方の農村振興に万遺憾なきを期したいと存じます。  更に畜産の振興につきましては、ただに地方の培養、経営の改善を通じて主要食糧の増産に貢献するのみならず、又脂肪及び動物性蛋白の補給源といたしまして、食生活改善の見地から見ましても、総合食糧の自給達成上重要な意味を有するのでありまして、従つて乳牛に重点を置いての有畜農家創設につきましては、集約酪農地区の設定、自給飼料増産等の施策を講じ、主要食糧の増産と共に、その強化を図つて参らねばなりません。  第二に、農業経営の安定向上について申上げます。生産の基盤たる土地制度につきましては、すでに恒久法として確定されました農地法の諸原則を堅持して参りますことは、改めて申すまでもないことであります。農産物生産が殆んどすべて戦前の生産水準に達しました今日、農業経営の安定向上のため、とるべき問題といたしまして、重要農産物の流通面に関する価格安定の問題がございます。これにつきましては、農業協同組合の系統組織によります共販体制を一段と整備強化いたしますと共に、政府買上についても努力いたしたいと存ずるのであります。これと関連いたしますのは農業生産上の重要資材に関する施策でありますが、肥料対策につきましては、その国内価格の安定、内外需給の調整及び輸出の振興について根本的な対策を確立する必要があり、先般来肥料対策委員会において検討中であり、近くその成案を得るに至るものと思われますので、これに基いて具体的施策を明確にいたしたいと思います。なお、畜産の振興に伴う購入飼料の需給安定につきましては、先に成立しました制度の適切なる運用に万全を期したいと存ずるのであります。  次に、農林漁業金融の拡充及び円滑化に関しましては、すでに発足いたしました農林漁業金融公庫の十全の活用に努め、その融資の拡大を図ると共に、自作農の創設維持、開拓者の営農に対する資金の融通についても、それぞれに適切な措置を講じて行きたいと存じます。而してかかる金融上の諸施策は、又他面総合食糧の自給度強化に十分の役割を果し得るものと信ずるものであります。更に、農業災害補償制度に関しましては、農作物共済農家負担の軽減、家畜共済制度の改善等、農業生産の確保並びに農業経営の安定のための本制度の重要性に鑑みまして、その機能の改善に努力いたす考えであります。  次に、蚕糸業振興につきましては、特に蚕糸業振興計画達成のために、桑園生産力の向上、技術指導の強化等の措置を講じて参りますと共に、生糸輸出の増進についても格別の施策を確立いたしたいと存ずる次第であります。  最後に、以上と関連しまして、農家の経済的及び社会的地位の向上のために重要なのは農業団体に関する施策でありますが、本施策については、御承知のごとき次の三つの原則、即ち第一は、農業技術の生産指導について、現行の農業改良普及制度を整備強化いたしますと共に、市町村農業委員会に技術員を設置して改良普及員の普及事業と農業協同組合生産指導事業に協力させるものとすることでございます。第二は、農業及び農民の利益代表機関として都道府県農業委員会を改組すると共に、その全国的な組織として全国農業委員会議所を設けるものとすること、第三は、農業協同組合の事業の刷新強化を図るため、全国及び都道府県農業協同組合の総合指導組織として農業協同組合中央会を設けることがあるのでありまして、この方針に基きまして、予算並びに立法措置を講ずることといたしました。なお、農林漁業組合連合会の整備については、現行の再建整備法に基く措置のほか、更にその促進を図るため立法化及び予算化を講ずることといたしたのであります。  次に、治山治水対策でありますが、林業の振興と農業生産の基盤の整備に資するため、治山治水対策を計画的に実施し、森林資源の維持培養を図らねばならないことは言を待たないところでありまして、このため官公民有林を通じまして、造林事業を推進いたしますと共に、荒廃地を復旧し、山地の荒廃を防止し、水源林、災害防止林等の造成を図り、又奥地林道の開発を総合的且つ計画的に施行して、治山治水に万全を期したいと考える次第であります。  最後に、水産行政の施策といたしましては、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと、外洋への発展の基本方針の下に、漁業経営の安定合理化と生産力の増強を図り、水産資源の維持開発と漁場秩序の確立に今後とも努めて参りたいと思います。海洋漁業につきましては、昨年来多大の発展を見たのでありますが、国際的漁場において操業いたします関係上、今後ともその指導、監督及び調査に万全の措置を講じて参りますことは勿論、関係各国との協定、紛争の解決には今後とも一段の努力を重ね、海洋漁業の健全な発展に資したい所存であります。他方、漁業者の大部分を占めております中小漁業者の漁業経営の安定合理化のために、農林漁業資金の確保について格段の努力をいたしますほか、中小漁業信用基金制度の機能の発揚に努力いたしまして、水産金融に遺憾なきを期しますと共に、漁船損害補償制度の拡充によりまして、漁船の適期における更新を容易にいたしたいと存ずる次第であります。なおこのほか、近海の資源の調査開発といたしまして、対馬暖流流域の資源の総合開発の調査を本格的に実施すべく努力中であります。  以上、農林水産行政施策の大要を御説明申上げた次第であります。
  80. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御質問おありのかたはどうぞ。
  81. 河野謙三

    河野謙三君 この機会に大臣に御説明と申しますか、御報告をお願いしたいのでございますが、それは麦価の問題であります。御承知のように、米麦価につきましては、政府が原案を米価審議会に示して、この米価審議会の諮問を求めて、それで決定する、こういう順序になつておりますけれども、これは私が考えますのに、財政上、財政法の第三条の建前から言つて、国民経済に重大なる影響を及ぼすものはすべて国会の審議を待つべしと、こういうことになつております。従いまして、その建前に応じて、従来鉄道運賃であるとか、官公庁の職員の給与であるとか、こういうものはすべて国会において決定されておるのであります。併し米麦価の問題はそれ以上に国民経済に重大な影響がありますけれども、たまたま米麦価決定の時期、即ち国会の開会時期と一致しない関係がありますので、特にこの点から考えまして、政府はこの米麦価につきましては、当然国会の審議を待つべき精神のものでありますけれども、米価審議会に議会人を送り、学識経験者を送つて、これの意見を徴して決定する、こういう順序になつているのが現在であります。併しどこまでも今申上げましたように、財政法第三条の精神によれば、国会に報告すべきことは報告する、意見を聴取すべきことは徴するのが当然である。伺いますと、昨日米価審議会がありまして、この委員会からもそれぞれ意見政府に答申されたようであります。この答申に答えて速急に政府は閣議なり、その他省内のいろいろ意見も取りまとめて、すでに麦価に対する方針が決定しておる、かように私は思います。若し決定しておらなければ今後如何なる方向によつて決定するか、特に米価審議会の意見を尊重するかどうか、こういうことについて一つこの際御報告を頂きたいと思います。この御報告は結論だけで結構でありますが、なお詳細の米価審議会の速記なり、政府原案等は印刷物によつて我々委員の手許に当然私は報告されて然るべきである、かように思いますので、この点も併せて要求して置きます。
  82. 内田信也

    ○国務大臣(内田信也君) 米価審議会が昨日開かれまして、それに答申が出ておることは事実でございます。その答申の内容につきましては、政府委員が答申書を持つておりますから、後刻政府委員から次第によつては申上げても差支ございませんが、私はこの答申案を受取りまして、是非これはこの答申案は成るべく、成るべくです、尊重いたして、生産者及び消費者に全然、相成るべくは両方とも結構だという案はできないにしても、まあこれならいいだろうという案を作り出したいと努力しておる次第でありまして、大蔵省その他の関係もございますので、実は今日閣議に出したい、今日九時からの閣議に出したいと思つて昨夜の答申案を今朝まで練つたのでございますけれども、まだ各省との折衝の時間がございませんので、本日の閣議に上程することができませんでした。併し私はできるだけ米価審議会の答申を尊重して行きたいと思つておりますが、もとより見るかたによつて、これではまだ不満足だというかたもございましようし、この点は満足だけれども、この点はいかんという点もございましようし、各項に分れておりますから、御批判はいろいろありますかも知れませんけれども、私としては米価審議会の御意見を尊重しながら、今各省との折衝並びに政府原案を作成中でございます。
  83. 河野謙三

    河野謙三君 閣議の決定には至らない。併し農林大臣は所管の大臣として米価審議会の答申はそのまま尊重して、できるだけこの審議会の答申の貫徹に努力する、こういうふうな御答弁のように私は聴取いたしますので、是非とも一つ今後その方向で御尽力頂きたい。同時に委員長に私はお願いいたしますが、至急にこの答申案を手許にとつて頂きたい、なお米価審議会の速記録を至急にとつて頂きたい、これによつて委員会としても参議院の農林委員会意思として、私は政府に向つて麦価決定についての意見を当然私は政府に出すべきである、かように思います。たまたま先ほど申上げましたように議会開会中でありますから、決してこれは議会の越権行為でも何でもない、当然議会できめるベきことを便宜米価審議会に我々が委託しておる、こういうふうに私は考えておりますので、この機会に委員会として、この麦価決定について当委員会としての意思決定をして、私は政府に具申したいと思います。こういうふうに思います。この点委員長にお願いいたします。
  84. 内田信也

    ○国務大臣(内田信也君) 今河野君の言葉の中に、私が米価審議会の答申はそのまま尊重してという言葉がありましたが、そのままは丸呑みにすることはできませんですから、何項目にも分れておりますから、この項目は、これならいい、この項目は不満足だという点がございましようから、当然が一つじやなくて各項に分れておりますから、どうぞ御了承願います。
  85. 河野謙三

    河野謙三君 甚だ大臣は本会議を控えてお忙がしいようでございますが、若し事情が許すならば、答申案といつてもそんなに長くないはずでございますから、そのうちのどの条項は大臣は、大臣個人としては、農林大臣としては呑める、どの条項は意見がある、こういうことをお漏らし願えれば、大変我々は今後ここで麦価決定についての審議をする場合に参考になりますので、この点をお漏らし願えれば結構でございます。
  86. 内田信也

    ○国務大臣(内田信也君) それはまだ閣議を経ておりませんから、この点は満足だ、この点は不満足だということをこの際具体的に申上げることは一つ差控えるように御了承願います。
  87. 河野謙三

    河野謙三君 例えば小さな問題でありますけれども、これは農民自体が非常に関心のあるものである麦の検査手数料の問題、これは従来二十円でありますけれども、これはたしか米価審議会でも手数料は五円くらいにしてもらいたい、こういうあれが出ております。これは農民とすれば当然であり、例えば一つの例を申すならば、農業協同組合が麦を集荷し、これを販売しておる。この農業協同組合の段階において扱うところの運賃その他まで加えましても一俵二十円くらいであります。事務費から運賃から加えて二十円くらいである。然るに農産物検査員が麦の俵にちよつと「さし」をさしただけで手数料が二十円になつた、こういうことになつておる。当然これは下げてもらいたいという要求も当り前でありますし、特にこの要求に答えるのは当然である、この要求に答えないで二十円ということで行けば決して納まりません。賢明な大臣は当然検査料は下げるべきで、その下げるについて十円とか、五円にしたいという、これは一つの具体的な例でありますけれども、大臣は御意見があろうと思う。これを一つこの機会に、これは手数料だけの問題ではないけれども、ちよつぴり漏らして頂きたい。
  88. 内田信也

    ○国務大臣(内田信也君) 今御指摘の点についても目下鋭意交渉中でございます。(拍手)その辺で御了承を願います。鋭意交渉中でございます。
  89. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 今後できるだけ努力して頂きたい、こういう問題はたくさんございますから、できるだけお願いいたします。
  90. 河野謙三

    河野謙三君 さつきの米価審議会の問題を諮つて下さい。
  91. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 河野委員にお答えいたしますが、私も河野委員意見と私は同じでございましたので、米価審議会に配りました資料、それから答申案、これは政府に要求しております。なお必要がありますれば政府当局から今までの経過なりを説明させてもいいと思います。資料は要求いたしております。
  92. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 只今の米価審議会の答申案はここにありますから、一応朗読いたします。    答 申   昭和二十八年産麦の政府買入価格及び標準売渡価格に関する政府諮問について次の通り答申します。   一、政府買入価格   (1) 政府買入価格については、少くとも現行生産者米価における特別加算額相当の加算措置を講ずること。   (2) 今後凍、霜害、水害等による三麦の減収度が判明次第、速かに米価審議会を開き、価格改訂等適切な措置を講ずること。   二、買入方法   (1) 麦の最盛出廻期において、政府は内憂確保のため積極策を講ずること。   (2) 災害地においては、規格外麦を買入れること。   三、政府標準売渡価格    政府標準売渡価格は昭和二十七年度府売渡価格以下とし、市場操作(特に粒食について)に強力な措置を講ずること。四、検査   (1) 麦の検査規格及び基準麦並に格差の決定に当つては、生産者代表を参画せしめて、その適正化をはかること。  (2) 検査手数料を一俵五円に引下げること。  (3) 本年産麦における災害の実情に鑑み、標準等級品以下の等級格差を引上げること。  これが答申案の内容であります。
  93. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 五等麦の問題或いは価格規格外の麦の買上等、いろいろ意見が交換されておりましたが、要は農民がこの今回の雨水害並びに凍霜害のために異常なる減収を見ている現状から見て、これが救済策についての根本問題から私は拝聴しておつたわけでありますが、政府は先の凍霜害の対策の場合におきまして、蚕繭桑についてもこれが救済策を講じておるのでありますが、麦の問題については十分なる対策が講ぜられておりません。この意味におきまして、特に凍霜害による栃木、群馬、埼玉或いは長野、茨城と、この関東周辺のいわば麦の発育の幼穂形成中における霜害が異常な結果を来たし、現在いわゆる二番麦の麦がみのるかのごとくなつておるような事情でありますが、御存じのように、麦の黄熟期はいわゆる気温におきましても地方的においても相当の恵まれた条件の下においてでなければ十分なる結実が行われておらない。従つて今二番麦のみのるかのごとき状況下にある麦のやつは、結局日に増し気温の上昇、いわゆる現在までに侵されております病虫害のために、またたく間に完熟まで待たずして病害に襲われることは火を見るよりも明らかであります。従いまして今雨水害において西日本の莫大なる麦の損害が百五十六億というような大体において報告になつておりますが、より以上に大きく取上げられるであろうと考えられますが、関東地区におけるこの凍霜害の麦の問題も、いわゆる二番麦のものが逐次病害に侵されて完熟する寸前において、これは到底五等麦どころではない、いわゆる規格外にもならんというような実情になるのではないかと心配しておるわけであります。従いまして、この雨水害と及び雹害に関連いたしまして、先の凍霜害対策の麦の問題と極めて関連が深いのでありまするから、政府といたしまして、この麦の救済についての如何なる方式がありますか、聞かして頂きたいと思います。
  94. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 桑のほうばかり先にやつて麦のほうが手薄であるというお話でありますが、これは先ほど来ここで論じられたように、麦の被害の現われ方が非常に時期的に桑のようにすぐ出なかつたということが大きな原因でありまして、麦につきましても、前の災害に準じまして、あとから出て来たものについてはやるという方針になつておるのであります。それは先ほど申しましたような共済或いは金融の面においてやることになつております。若し詳しいことでありましたら、農林省災害対策本部長の官房長が参つておりますから、これから説明いたさせます。
  95. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと……。その問題も勿論大きな問題と思いまするが、先ほどの雨水害の問題もこれも非常に急ぐ問題でありますので、これを続けてやつて頂きまして、時間がありましたらば凍霜害の問題を更に……。
  96. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 この雨水害と凍霜害とは麦の被害において別個であるから、別個のような考え方をしておるのでありますか。それともいわゆる麦の被害については同じような農林省の私は措置をして然るべきだと考えるのでありますが、その意味において私は只今質問したわけであります。
  97. 篠田弘作

    政府委員篠田弘作君) 農林省としては同じに考えております。
  98. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 そうだとすれば、これと関連しているのでありますから、官房長に実情、対策を私は聞かしてもらいたいと思います。
  99. 渡部伍良

    政府委員(渡部伍良君) 麦の被害の問題でありますが、これは凍霜害の場合には幼穂形成期に却て今まで出ておつたやつが枯れて行く、そうして後に穂が出て行く。これは私十日ばかり前に群馬に行つたときには三段になつている。最初のやつが枯れまして、それが六割くらい茎が枯れて、その次一割五分乃至二割見当が、これかみのつているわけであります。その残りの分が中間の穂で、これはもうとても実にならないだろう、こういうふうな状況になつております。これは最初に凍霜害にかかつた場合に、桑の場合でありますると直ぐ葉が萎んでしまう、芽が出ない、こういうのでわかつたのでありますが、穂が出て来るまで被害状況がわかりにくかつたのであります。とにかくかかつたやつには病虫害の予防とか、いろいろな手を講じましたけれども、結局いててしまつてそういうふうに穂が出ない、こういうのであります。西の風水害の場合は、雨が長引いたために立つたままで芽が出るとか、或いは田は荒れて、水に浸つて芽が出る、或いは又刈取つたやつが雨が続くために取入れることができないので腐る、或いは芽が出る、或いは大急ぎで納屋に取入れても醗酵というか、「かび」が出るとか、或いは又腐つて行くこういうふうな状態であります。が多少被害状況は違うのでありますが、とにかく被害程度は、先ほど来お話がありましたように非常にひどいのであります。これに対しましては、凍霜害の場合には先ほど申しましたような病虫害の防除等を講じましたが、西のほうの場合には、そういうことももう時期も過ぎているので病虫害の防除というのが間に合つたところは殆んどないのじやないかと思います。これの救済措置は、先ず第一に農業共済金の仮渡し、或いは概算払措置を講じているのであります。今までの状況で私のほうで、農業保険課のほうで集計しました大体西のほうの風水害の関係は、共済組合が農家に支払う金は五十億程度共済金になるのじやないか、これのために共済組合が連合会から金を借りる、その連合会の金が不足するので、基金から出すとか、或いは中金から出すという問題、それから再保険金の概算払の問題等を処置しております。  第二の問題は、そういつたふうに被害を受けましたので、麦を売ることができない、麦を売つて次の営農資金を手当するということができませんので、次の営農資金の手当のために、麦の被害の石数に対しまして、大体一石当り金額の三割程度は現金支出になつておるというのが農家経済調査に基きまして、それを対象にしまして営農資金を出したのであります。これは凍霜害の場合は先ほど申上げましたように、徐々に被害が出て来ましたので、最近になつて刈取つて見ると、非常に当初の予想よりも被害が大きいというので、この点につきましては当然営農資金を追加しなければいかん、こういう問題がありますので、今当初予想した被害額にどれだけ殖えたかということを今資料を整備しております。これができましたら追加して出すことにいたしたいと思います。それから西のほうのやつは、これは凍霜害の場合よりもちよつと被害のつかみ方がむずかしいようであります。それは今の腐れかかつておるものが天気がよくなればずつと歩留まりがよくなる、これが天気が悪くなればずつと殖えるのではないか、見込み方が非常につかみにくいのであります。農林省統計調査部から昨日の新聞でしたか、今朝の新聞に出ておりますように、大体百七十万石程度の減収というものが出ておりますが、保険料の報告をそのままに集計しますと三百万石以上というような数字が出ております。これは石数が出てないで金額が出ておりますので、百五十億とか、百六十億という金額で出ておりますが、これを先ず一石当りの価格で換算すると、三百万石以上の減収となり、そのどちらによつて営農資金をはじくべきか、今検討中でありまして、昨日から関西中部以西の地方長官が来まして、いろいろ打合しておりますので、早急にその金額をきめ、大蔵省に交渉したい、こういうふうに考えます。それは凍霜害の場合と同じように、営農資金に対しまして、中金の資金或いは又府県知事が指定する銀行から金を借りて、それに対して府県と国が半々持ちで、五分の利子補給をする。そうして農家には六分五厘以内で借入ができるような措置を講ずる。且つ又融資額の三割の範囲内におきまして、国と府県、市町村、地方公共団体とが半々持ちで補償をする。そういうふうな制度でやつて行きたいと思つております。そのほか種子の現物の確保、斡旋等につきましても、目下府県から実情を聞いておりますので、これらの対策につきましても遺憾ない手を打つて行きたいと思います。なお西のほうの特殊の問題は、菜種の被害が私のほうに来ておる報告によりますと五万町歩余りの被害になつております。これにつきましては、福岡県では約その三分の一がいわゆる任意共済に入つておりますが、そのほかの地方では共済に入つておりませんので、これに対して何らかの助成措置を講ずべし、こういうふうな強い意見がありますが、桑等の場合には樹勢回復等の対策ができたのでありますが、菜種の場合で芽が出たり、腐つてしまつたものの損失の補償についてどうすべきかということにつきましては、まだ結論が出ておりません。そのほか蔬菜、果樹等の病虫害の防除の補助でありますとか、苗代が水につかつたものに対する病虫害の防除の補助であるとか、或いは代作用の種子に対する補助等につきましては、凍霜害の例に倣つて今計算を弾いております。至急大蔵省と、一応大蔵省のほうには出しておりますが、又数字が変動するというので、突きつめた話になつておりませんが、大体数日中に数字を一応確定しまして、大蔵省と最後の折衝をしたいと思います。
  100. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 佐藤君に申上げますが、凍霜害の問題は、勿論私どもも今までの対策で問題が終つたとは勿論考えておりません。次回に大体現地調査のかたの御報告を願いまして、その上で更に当委員会でも凍霜害対策の更に完璧を期して行きたいと思います。
  101. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 わかりましたが、麦の凍霜害の対策についての政府考え方につきましては、おおむね了承いたしましたが、どうぞいわゆる西日本雨水害の麦の対策と凍霜害に対する対策と別個に考えないで、やはり一つ温情あるところの処置をとつて頂きたいと思います。ただ栃木県等といたしましては、広島、長野もそうでありますが、この改良局の報告によりますと、麻が一億一千六百四十六万円の今回の雨水害において損害を受けた。こういう報告になつておりますが、栃木県は日本全国的に見まして一番多くの麻の耕作地帯であります。特産地でありまして、大体二千五、六百町歩の耕作反別を持つているわけであります。従いまして麦と同じように、麻に対しましても同様な措置をとつて頂きたいということを要望いたしまして、私は発言を後日に譲ります。
  102. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 先の雨水害の問題に戻つて如何でしようか。
  103. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 今日問題となりました今次の雨水害は被災農家には誠にお気の毒であり、又復興途上にある我が国経済上甚はだ遺憾とするところでありまして、救済並びに復旧対策を確立、これが実施に遺憾なからしめることが焦眉の急務と考えられますので、この際これが速かなる実現を期するために、政府に対して、別紙お配りしてありますところの申入をすることの動議を提出いたします。  なお念のために別紙の申入案を朗読いたします。    雨水害対策に関する申入(案)   五月下旬長期に亙る連続降雨、更に六月上旬の豪雨のため、各地方において農産物、農地及び農林業施設等の被害が激甚であつて、被災者の困窮その極に達するものがあると伝えられ、真に痛恨事と云うべきである。   速かに政府被害状況を精査し、実情に即し、要望に応えて適切なる救済並びに復旧対策を確立し、これが実施に遺憾なきを期せられたい。   なお、右対策の樹立実行に関する経過及び結果を随時当委員会に報告せられたい。   右当委員会の総意を以て申入する。   昭和二十八年六月十七日         参議院農林委員会    内閣総理大臣吉田茂殿    農林大臣内田信也殿    大蔵大臣小笠原三九郎殿  以上であります。
  104. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 只今の北委員の動議に御異議ありませんか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  105. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは只今の北委員の動議は成立いたしましたので、この申入案の通り至急関係方面に申入をいたします。
  106. 江田三郎

    江田三郎君 今の申入は結局満場一致決定されたわけですが、今後の情勢如何で、やはり申入という程度では駄目なようなことが起るのではないかと思うので、適当なときに又決議案として本会議へ上程してやつて行くというようなことも、委員長なり理事のほうで適当にお考え願いたいと思います。
  107. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 承知いたしました。  なお、この申入に際しましても、私或いは理事の皆さんと直接関係大臣にも会いまして、強く申入をすることにいたしたいと考えております。  続いてこの問題に関連してお諮りをいたしたいのでありますが、現地から相当現地視察の要望もありまするし、又過般凍霜害の現地調査もいたしました関係もありますので、今回の雨水害につきましても現地調査をしたらどうかと思われますが、如何ですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記をちよつとやめて下さい。     〔速記中止〕
  109. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を始めて……。それでは御相談いたしました計画に従いまして、正式に議員の派遣を要求いたしますから、御希望の向きは專門員のほうへお申出を頂きます。なお予算その他の問題がありまするが、大分時間も過ぎておりますので、これは次回に譲りまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四分散会