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1953-07-16 第16回国会 参議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十六日(木曜日)    午前十一時八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            上原 正吉君            竹下 豐次君    委員            白波瀬米吉君            井野 碩哉君            松本治一郎君            松永 義雄君            松原 一彦君            野本 品吉君   政府委員    内閣官房長官  福永 健司君    総理府恩給局長 三橋 則雄君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○恩給法の一部を改正する法律案(内  閣送付)   —————————————
  2. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) これより内閣委員会を開会いたします。  恩給法の一部を改正する法律案議題といたします。  先ず政府提案理由説明を求めます。
  3. 福永健司

    政府委員福永健司君) 只今議題となりました恩給法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概略を御説明申上げます。  昭和二十年十一月二十四日連合国最高司令官から、恩給及び恵与と題する覚書が発せられ、これを実施するため恩給法特例に関する件が制定され、昭和二十一年二月一日勅令第六十八号をもつて公布、即日施行せられたのでありますが、この勅令によつて、その第一条に規定された旧軍人軍属及びその遺族傷病恩給以外の恩給廃止せられ、その傷病恩給は、一定条件の下に制限支給されることになつて今日に至つたのであります。ところで、これら旧軍人軍属及びその遺族に対しましては、今次大戦の終りに至るまでは、一般公務員及びその遺族と同じく、恩給が給されていたことは御承知通りでありまして、これらの人々のみが恩給を給されなくなつたのは、全く右覚書によるものであります。平和条約が発効し、我が国の独立を見るに至りました今日、なお、このような状態に放任し、旧軍人軍属及びその遺族恩給廃止及び制限を続けますことは、好ましくないことと考えられるのでありますが、先に、総理府に設けられました恩給法特例審議会においては、これら旧軍人軍属恩給に関する重要事項に関し調査審議の結果、国家財政現状及び国民感情動向等を勘案し、旧軍人軍属及びその遺族に対して、相当の恩給を給すべきものと認め、特に、遺族重傷病者及び老齢者に重点を置いて給すべき恩給内容等を決定し、これを昨年十一月二十二日政府に対し建議いたしたのであります。政府は、この建議の趣旨を尊重し、これら旧軍人軍属及びその遺族に対し、曾つてこれらの人々と同じく恩給を給されていた公務員と、恩給取扱の点において、差別しないことを目途としつつ、国家財政現状を考慮し、本年度予算の許す範囲内において、恩給を給することといたそうとするのが、本法律案の主要な事項の一であります。  次に、現行恩給制度は、終戦以来今日まで、たびたび改正されたのでありますが、これらの改正は、いずれも、旧軍人軍属及びその遺族人々恩給廃止又は制限されている現実の下に行われたのでありまして、若しも、仮に、旧軍人軍属及びその遺族恩給が今日のごとく廃止又は制限されていなかつたとしますならば、国家財政等から考えましても、当然、現行恩給制度の実体は、相当改変されたであろうと察せられます。従つて、このたび、旧軍人軍属及びその遺族に対して恩給を給しようとするのに伴い、国家財政の現況、国民感情その他の諸種事情を考慮に入れて、現行恩給制度に対し、若干の改正を加えることといたそうとするのが、この法律案の主要な事項の二であります。  なお、右のほかに、制度改正等に伴い、恩給法に若干の改正を加えようとするのであります。  以上が、この法律案を提出した理由及びその内容の大要であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御賛成あらんことをお願いいたします。
  4. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 続いて本法律案内容についての補足説明を求めます。
  5. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 恩給法の一部を改正する法律案につきまして、その改正の主要な事項、その他予算点等につきまして説明を申上げたいと存じます。  第一に現行恩給制度改正を加えようとする主要な事項について申上げます。  在職年に対する加算制度は実際在職しなかつたにもかかわらず在職したものとして取扱い、いわば想像上の在職年を実際の在職年に加えて在職年を計算し、恩給を給しようとする趣旨によるものでありまして、勢い短期、若年退職者恩給を給し、且つ恩給金額の増大を来たす結果となるものであります。今日のごときぜい弱な国家財政の下においては、かかる制度を存しつつ旧軍人軍属及びその遺族恩給を給することは困難と思われます。そこで、これらの事情その他諸般事情を考慮し、旧軍人軍属及びその遺族恩給を給するに当りましては加算はすべてつけないこととし、その在職年は実在職年のみをもつて計算することといたそうとするものであります。かかる事情からいたしまして、現存加算制度も条理上存置すべき理由のないもののように思われますばかりでなく、現に加算がつけられている業務又は在勤に対しましては、従来、一般的に俸給のほかに手当が給せられ、その手当恩給金額計算基礎俸給に算入されていなかつたのでありますが、最近の公務員給与におきましては、これらの業務に従事する人々や、これらの在勤者に対しましては一般公務員に対し適用される俸給号俸よりも割よい俸給号俸が適用され、これらの人々に対する給与が改善されました結果、一般公務員に比して割よい俸給がこれらの人々恩給金額計算基礎俸給になつているのが通例であることを考えますと、加算を存置する理由はいよいよ少くなつて来ているように思われます等の諸種事情を考慮して、今後在職年に対する加算廃止し、恩給基礎在職年は実在職年のみをもつて計算することとし、ただ、すでに恩給を給されている者及びこの法律施行の際現に在職している者のこの法律施行後六カ月までの在職年につきましては、従来通り取扱をいたそうとするのがその第一であります。この法律案中、恩給法第三十八条から第四十条までの改正規定恩給法別表第一号表削除並びに附則第三条及び第四条の規定がこれに関するものであります。  次に現行恩給法におきましては、公務員外国勤務の実勤続在職年が十七年をこえる場合並びに警察監獄職員及び教育職員勤続在職年普通恩給所要最短在職年限をこえる場合においては、普通恩給年額を計算する場合に、そのこえる年数に応じ、通例の場合に比し、若干の恩給加給取扱をすることになつているのでありますが、外国勤務の実勤続在職年に対する加給につきましては、その実例も乏しく且つ外国勤務事情変化等により、その存置の理由も少く、又警察監獄職員及び教育職員につきましては、この制度の設けられました頃から考えますと、一般公務員に比較してその給与が相当改善され、これを存置する理由の消滅しましたこと等によりまして、この際この取扱廃止し、ただ既に退職してこの加給を受けている者及びこの法律施行の際現に在職している者のこの法律施行後六カ月までの在職年につきましては、従来通り加給することといたそうとするのがその第二であります。この法律案中、恩給法第六十条第三項、第六十三条第三項及び第五項の改正規定並びに附則第三条、第七条、第三十四条及び第三十五条の規定がこれに関するものであります。  次に、現行恩給法におきましては、普通恩給はこれを受ける者が四十歳未満の場合はその全額、四十歳以上四十五歳未満の場合はその半額、四十五歳以上五十五歳未満の場合はその三割の額を停止されることになつているのでありますが、最近の公務員退職時の年令の上昇及び国家財政現状等を勘案し、右年令を五才づつ引き上げることとし、この停止に関する取扱は旧軍人軍属についても適用することとし、ただ現に普通恩給を受けている者及びこの法律施行後六カ月以内に退職する者につきましては、従来通り停止をいたそうとするのがその第三であります。この法律案中、恩給法第五十八条ノ三の改正規定並びに附則第六条及び第二十五条の規定がこれに関するものであります。  次に、現行恩給法におきましては、恩給年額が六万五千円以上で、恩給外所得年額が、三十三万円をこえる場合には、恩給年額恩給外所得年額との合算額に応じて普通恩給年額の一部を停止することになつているのでありますが、昨秋、公務員給与水準が引き上げられたこと及び経済事情変動等に伴い、右金額を若干引き上げることとし、恩給年額八万円以上で、恩給外所得年額が四十六万円をこえる者について、従来の方法に準じて恩給年額の一部を停止することとし、この停止に関する取扱は、旧軍人軍属にも適用することといたそうとするのがその第四であります。この法律案中、恩給法第五十八条ノ四の改正規定並びに附則第六条及び第二十五条の規定がこれに関するものであります。  次に、現行恩給法におきましては、いわゆる公務傷病恩給又は公務扶助料につきましては、特殊公務に因る場合と普通公務に因る場合とに区別しているのでありますが、特殊公務と申しますのは、軍人恩給廃止制限当時の恩給法規定された戦斗又は戦斗に準ずる公務に相当するものでありまして、もともと戦斗に由来するものであり、軍務に服し、傷病にかかり、又は死亡した者について、それが、戦斗に起因するものであるか、又は普通公務に起因するものであるかは、容易に区別しがたい場合が少くなく、今次戦争におきましては、その特殊実情に鑑みまして、一層その感を深くするのであります。従つて、旧軍人軍属及びその遺族恩給を給するにあたりましては、その区別廃止して恩給を給することが、公平な恩給給与の見地から考えまして妥当であると思われますのみならず、一般公務員の場合におきましても、これと同様に、この区別の困難な場合も少くなく、又いやしくも公務に起因して傷病にかかり、又は死亡した場合、その公務の種類によつて一般公務員恩給取扱についてのみ、こまごましい差別をつけることは適当でないと思われますので、この区別廃止いたそうとするのがその第五であります。この法律案中、恩給法第四十九条の改正規定及び別表第一号表ノ三の削除並びに附則第二十五条の規定がこれに関するものであります。  次に、現行恩給法におきましては、増加恩給年額は、退職当時の俸給年額傷病程度により定めた一律の割合を乗じて計算することになつているのでありますが、これを改めて、軍人恩給廃止制限当時の恩給法の例にならい、退職当時の俸給年額により、数個区分を設け、その区分ごと傷病程度により定めた定額の増加恩給を給することとし、その年額は、傷病程度の高い者に割よく、また同程度傷病者については、俸給年額少い者ほど、従つて、旧軍人にあつて階級の低い者ほど、割よくなるようにいたそうとするのがその第六であります。この法律案中、恩給法第六十五条第一項及び表別第二号表改正規定並びに附則第三条、第八条、第十九条、第二十四条、第二十五条及び附則別表第三の規定がこれに関するものであります。  次に、現行恩給法におきましては、公務扶助料年額は、普通扶助料年額に一律の割合を乗じて計算することになつているのでありますが、これを改めて、軍人恩給廃止制限当時の恩給法の例にならい、公務員死亡当時の俸給年額により数個区分を設け、その区分ごとに定めた割合を、普通扶助料年額に乗じて計算することとし、その割合は、俸給年額の少い公務員遺族ほど、従つて軍人遺族にあつて階級の低い者の遺族ほど、割よくなるようにいたそうとするのが、その第七であります。この法律案中、恩給法第七十五条第一項、別表第四号表及び第五号表改正規定並びに附則第三条、第八条、第二十四条、第二十五条及び附則別表第三の規定がこれに関するものであります。  次に、現行恩給法におきましては、公務傷病者に対しては、特別項症及び第一項症から第七項症までの増加恩給、並びに第一款症から第四款症までの傷病年金が、年金たる恩給として給されているのでありますが、増加恩給第七項症及び傷病年金程度傷病者に対しては、昭和八年九月以前の恩給法においては、一時金が給されていたのでありますから、現在の国家財政等を考慮して、この程度傷病者に対しましては、一時金たる傷病賜金を給することといたそうとするのが、その第八であります。この法律案中、恩給法第四十六条ノニ、第四十九条ノニ、第四十九条ノ三、第六十五条ノニ、第六十五条ノ三、別表第一号表ノニ、第一号表ノ三、及び第三号表改正規定並びに附則第三条、第五条、第二十四条及び附則別表第三の規定がこれに関するものであります。  第二に、旧軍人軍属及びその遺族恩給につきまして申上げます。旧軍人軍属及びその遺族恩給に関する事項につきましては、この法律案附則規定されているのでありますが、この附則規定のない事項につきましては、この法律案附則第二十五条に規定されているごとく、恩給法規定を適用して恩給を給しようとするものでありまして、この法律案附則規定された主要な事項について申上げますと次のごとくであります。即ち、旧軍人軍属又はその遺族に、今後給する普通恩給及び扶助料につきましては、改正後の恩給法趣旨により、実在職年によつて計算した基礎在職年退職当時の俸給年額をいわゆるベースアツプした仮定俸給年額とによつて恩給金額を計算することとし、ただすでに軍人恩給廃止制限前に恩給を給せられ、恩給をもつてその生活の資に供していた人々に対しましては、この事実に照し、実在職年のみをもつて計算し、恩給年限に達しない場合においても、恩給を給することとし、その金額は、最短在職年限の場合に給される恩給金額から、その年限に不足する年数に応じ、一定割合をもつて減額したものとすることとし、又軍人恩給廃止制限当時恩給を給されていなかつた者に対しましては、国家財政現状を考慮し、恩給給与の公平な取扱を期する等のため、その恩給基礎在職年に算入される旧軍人軍属としての在職年は、原則として旧軍人軍属としての引き続く七年以上の実在職年に限ることといたそうとするのがその第一であります。この法律案附則第九条、第十二条、第十三条、第十六条、第十七条、第二十一条、第二十二条及び第二十三条並びに附則別表第一の規定がこれに関するものであります。  次に、旧軍人軍属又はその遺族の一時恩給又は一時扶助料につきましては、国家財政現状を考慮し、恩給給与の公平な取扱を期する等のため、引き続く実在職年が七年以上普通恩給所要最短在職年限未満の者又はその遺族に、これを給することとし、又、兵たる旧軍人又はその遺族に対しては、従来一時恩給又は一時扶助料は、給されていなかつたのでありますが、在職年に対する加算年を除いて実在職年のみによつて在職年を計算することといたしますため、若しも在職年に対し加算がつけられたとすれば、年金恩給を給せられた者も少くないことを考慮いたしまして、これらの者に対しましても、一時恩給又は一時扶助料を給することとし、これらの恩給は、国家財政現状に鑑み、昭和二十九年、三十年、三十一年の各一月の三回に分割支給することとし、年六分程度利子を附することといたそうとするのがその第二であります。この法律案中、附則第九条第一項第三号及び第四号、同条第二項、第十条、第十一条、第十二条、第十四条、第十六条、第十八条、第二十一条並びに第三十条の規定がこれに関するものであります。  次に、公務傷病者たる旧軍人軍属は、昭和二十一年勅令第六十八号恩給法特例に関する件によつて、現在、増加恩給第六項症以上の症状の者は増加恩給のみを、又、それ以下の症状の者は傷病賜金を給されているのでありますが、今後は、他の公務員と同じように、これらの者に対し、改正後の恩給法規定によつて増加恩給又は傷病賜金を給し、増加恩給を給する場合には、普通恩給を併給することとし、又、下士官以下の軽度傷病の旧軍人傷病賜金一目症及び第二日症に該当する者には、その傷病程度に応ずる傷病賜金を給することといたそうとするのがその第三であります。この法律案中、附則第十五条、第十九条、第二十四条並びに附則別表第二及び第三の規定がこれに関するものであります。次に、すでに退職し、又は死亡した一般公務員又はその遺族のうちには、昭和二十一年勅令第六十八号恩給法特例に関する件により、旧軍人軍属としての在職年を除算されて、少い額恩給を受け、又は恩給を受ける権利失つた者も少くないと思われますが、このたび旧軍人軍属及びその遺族恩給を給しようとするのに伴い、これをも旧に復するのが適当であると考えられますので、これらの者については、旧軍人軍属としての在職年を通算して、新たに恩給を給し、又は現に受ける恩給を改定いたそうとするのがその第四であります。この法律案中、附則第二十条、第二十一条、第二十二条及び第二十三条の規定がこれに関するものであります。  以上のほか連合国最高司令官により抑留又は逮捕せられ有罪の刑に処せられた考及びその遺族は、昭和二十一年勅令第六十八号恩給法特例に関する件により、現在、恩給を受ける権利又は資格を失つているのでありますが、旧軍人軍属及びその遺族に対し恩給を給しようとするに当り、これらの者の恩給を、そのままに放任しておくことは適当でないと考えられますので、旧軍人軍属その他一般公務員及びこれらの者の遺族の例により恩給を受ける権利又は資格を与えることとし、ただ、現に拘禁中の者につきましては、諸般の情勢から、この際その支給を停止することとし、又、この法律案は、本年八月一日から施行されることになつていますが、旧軍人軍属及びその遺族等に給される年金恩給につきましては、実質的に本年四月分から給されたと同じことになるような取扱をすることとし、又、ソ連その他の外地に抑留されたまま、未だ帰還していない人々に対しましては、その留守家族実情に顧み、この際、一定条件のもとに恩給を給し、当該留守家族請求に応じて支給するようにいたし、又、旧軍人軍属及びその遺族に対し、恩給を給しようとするに伴い、現在実施されている戦傷病者戦没者遺族等援護法による給付との引き継ぎ等経過的措置を講じ、なお恩給受給者恩給担保金融の道を開くため、並びに諸制度改正及び法令の改廃に伴い、所要改正を加えようとするものでありまして、この法律案中、恩給法第十一条第一項の改正規定並びに附則第二十六条、第二十七条、第二十八条、第二十九条、第三十一条、第三十二条、第三十三条及び第三十六条の規定等がこれに関するものであります。  以上がこのたび恩給法改正を加えようとする主要な事項であります。  次に、予算について説明申上げます。  本年度予算に旧軍人等恩給費として計上されました金額は四百五十億円であります。その内訳は、普通恩給、二十九億二千六百五十万円、増加恩給、二十二億六千五百万円、公務扶助料、即ち、戦没者遺族等に給される扶助料、三百六十九億一千五百万円、普通扶助料、即ち、普通恩給受給資格者在職中死んだ場合その遺族に給される扶助料、十一億九千九百二十五万円でありまして、以上が年金恩給金額であり、年金恩給総額は、四百三十三億五百七十五万円であります。今申し上げました増加恩給公務扶助料につきましては、これらの恩給を給される者に扶養家族あるいは扶養遺族があります場合には、その恩給金額に若干加給される金がありまして、只今申上げました年金額は、すべてこれらの加給金額を含んだ金額であります。次に、一時金として計上されました一時金たる予算金額について申上げます。  一時金たる恩給といたしましては、傷病賜金、一時恩給、及び一時扶助料とがありますが、その一時金たる傷病賜金(これは傷病者に給付される一時金であります。)が、一億四千八百万円、一時恩給、一時扶助料の両方の金額が十五億五千三百二十五万円でありまして、以上総計いたしまして四百五十億円となつておるのであります。これらの金額は本年度内に剰余を生ずる場合があるかとも思いまするが、その場合におきましては、次年度に繰越使用するように措置いたしております。次に、右に申上げました年金恩給受給者推定人員について申上げますと、普通恩給受給者推定人員二十万二千人、増加恩給受給者推定人員四万五千人、公務扶助料受給者推定人員百五十万四千人、普通扶助料受給者推定人員十七万三千人であり、総計百九十二万四千人であります。普通恩給受給権者のうちで、若年者たるが故にその恩給全額停止される者は、右に申上げました普通恩給受給者推定人員のうちには含まれていません。次に各種年金恩給につきまして、年金恩給総額に対する割合について申上げますと、普通恩給金額年金恩給総額の七%増加恩給金額年金恩給総額の五%、公務扶助料金額年金恩給総額の八五%、普通扶助料金額年金恩給総額の三%であります。次に、各種年金恩給受給者人員年金恩給受給者人員に対する割合について申上げますと、普通恩給受給者人員年金恩給受給者人員の二%、増加恩給受給者年金恩給受給者の二%、公務扶助料受給者年金恩給受給者の七八%、普通扶助料受給者年金恩給受給者の九%になつておるので、ございまして、今度の措置によつて給される恩給の大部分のものは、戦没者遺族割合傷病程度の重い傷病者、即ち、増加恩給受給者に給される恩給となつておるのであります。金額の点から申しますと、年金恩給総額の実に九〇%は戦没者遺族と、割合傷病程度の重い傷病者に給されるのでありまして、老齢軍人などの遺族に給される恩給総額の三%であり、生存しておられる老齢軍人等に給される恩給金額総額は七%位の金額であります。傷病賜金支払所要経費として、予算に計上されている金額は、一億四千万円であり、これは従来の裁定実績を考慮して計上した金額であります。次に、一時恩給と一時扶助料につきましては、受給者推定人員十七万八千人、推定金額百一億七千九百万円でありますが、その支払につきましては、年六分の利子をつけ三年間に分割支払することとし、本年度支払所要経費として十五億円余りが計上されているのであります。次に、本年度予算に計上されました年金恩給四百三十三億五百七十五万円は、四月分から十二月分までの九ケ月間の恩給経費であります。従つて一年間、即ち、平年度経費に引き直しました場合におきましては、この金額は、更に増大します。即ち、普通恩給は三十九億二百万円、増加恩給は三十億二千万円、公務扶助料は四百九十二億二千万円、普通扶助料は十五億九千九百万円となり、年金恩給の合計は五百七十七億四千百万円の多額になるものと推定されます。次に、旧軍人及びその遺族に給される恩給受給者人員は、今後年々減少するものと想像され、年金恩給総額は、今後漸減するものと推察されます。その年々の漸減の割合は、十億円から二十億円程度の見込であります。  次に、旧軍人及びその遺族恩給受給者人員について申上げます。軍人恩給廃止制限せられました昭和二十一年二月一日年金恩給を給されておつた軍人及びその遺族人員は百三十六万八千人であります。軍人恩給廃止制限の際、すでに退職していながら、いまだ恩給請求していなかつた人、又は請求中であつた人、或いは当時在職しておつた人恩給を受ける資格を持つてつた人々の総数の推計は、その当時陸海軍軍籍にあつた人々人事記録によつて調査しなければなりません。ところが、御承知通り終戦前後の我が国の内外における混乱のため、軍人恩給廃止制限の際の陸海軍軍籍にあつた人々人事に関する記録は、必ずしも確実に保存されているとは申されません。又終戦後、平和条約の発効までの数年間は、御承知のごとく占領下にありましたため、記録のあるものについても、その整理整備は十分ではなく、記録のないものについては、そのままに放任されておつたものも少くないように思われます。従いまして、今申上げましたような人々の総数を推計いたしますることは、実際問題としては、なかなか困難ことあります。曾つて、関係当局の調査と、当局の資料とで推計いたしましたときは、従来の恩給法規定通り給するとしますと、七百万人、これは終戦後今日までの失権を除いていませんが七百万人前後の人員に達すると推計されたこともあります。かかる人員でありますと、年金恩給総額は、恐らく二千億円前後になるものと想像されます。ところで、その後、関係当局から新たに報告されたものと、従来から当局にあります資料とにより推計しますと、年金恩給受給者の人数は、従来の恩給法により給するとした場合三百六十万人と推計され、その年額は千五百億円前後の金額になるものと思われます。かかる多額の年金恩給を給することは、現下のぜい弱な国家財政の下においては困難なことでありますので、国家財政の許す範囲内において、できる限りの措置をして恩給を給することとして、今回の法案は立案されているものであります。
  6. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 続いて本法律案について当委員会における従来の審議の経過等について杉田専門員から経過説明を受けます。
  7. 杉田正三郎

    ○専門員(杉田正三郎君) 軍人恩給に関係のありまする法令の、特に終戦後の今日までの経過、又この委員会においてこれらの法令をどのように取扱つて来たかということをよく御理解下さることがこの法律案を御審議して頂く上に御参考になろうかと思いまするので、これらの点を一応御説明しておこうと存じます。  現在の恩給法は大正十二年法律第四十八号でできておるのでございまして、勿論その後たびたびの改変を経ております。この法律のできまする以前におきましては官吏恩給法軍人恩給法という二つの恩給法が並立しておつたのでございまするが、この大正十二年の法律第四十八号によりまして、一般の文官、軍人恩給がここに合わさつたことになつたのでございます。ところが、昭和二十年終戦になりまして、我が国が占領下に置かれましたので、あたかも同年の十一月二十四日に連合国最高司令官から日本政府に対して、恩給及び恵与と題する覚書が発せられたのでございまするが、この覚書に基きまして政府昭和二十一年の二月一日に、いわゆる勅令六十八号恩給法特例に関する件という勅令、これはポツダム勅令でございまするが、この勅令が公布せられることになつたのでございます。  この恩給法特例に関する件というポツダム勅令によつてどういうことをきめておるかと申しまするに、これは原則として軍人軍属及びその遺族に対する恩給はこれを廃止し又は制限することになつたのでございます。これは先ほどの提案理由その他の御説明で明らかになつておる点でございまするが、軍人軍属及びその遺族に対する恩給廃止又は制限するということになつたのでございます。  然らばその廃止というのはどういう点であるかと申しますれば、この勅令の第一条に明記してございまするが、従来、軍人軍属及びその遺族に対して給せられておりました普通恩給であるとか、或いは第七項症にかかる増加恩給であるとか、或いは傷病年金であるとか、或いは一時恩給であるとか、第三日症又は第四日症にかかる傷病賜金であるとか、扶助料であるとか、一時扶助料であるとか、そういうものは一切廃止せられることになつたわけでございます。  次にその制限というのはどういう点であるかと申しますると、このポツダム勅令によりましては、一般の軍人に対する恩給廃止したが、例外として公務傷病の旧軍人軍属に対しては一定制限せられた条件の下に増加恩給その他を給するということにしておるのでございます。そこでどういう程度制限かと申しますると、これを恩給法では傷病程度特別項症から第七項症まで、又第一款症から第四款症まで、更にその低い階級の人に対しての軽症な者には第一目、第二日症というものを規定して傷病程度をいろいろ定めておりまするが、このうちで傷病程度の高い者、即ち特別項症から第六項症以上の者には増加恩給を給する、併しながらその増加恩給の額というものは非常に低いものでございまして、その基準は、厚生年金保険法に定めておりまする厚生年金に準ずるという建前をとつておるのでございます。而もこの増加恩給には普通恩給は併給せられないという制限が付け加わつておるのでございます。  なおその次の第七項症、第一款症乃至第四款症、それから第一目症、第二日症というものには一切傷病賜金、即ち一時賜金である傷病賜金だけを給するというような制限が加わつておるのでございます。  ところが、この恩給法特例に関する件というポツダム勅令昭和二十一年以来引続いて施行せられておつたのでございまするが、昨年平和条約が発効いたしまして、我が国が独立の状態になつたのでございます。そこで昨年の四月十一日に、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律というのが昨年の法律第八十一号で公布せられまして、それはどういうことをきめておるかと申しまするに、先ずこの先の恩給法特例に関する件という勅令、そういうようなポツダム勅令なりポツダム政令は、別に件律で廃止とか又は存続に関する措置がなされていない場合においては、この法律施行の日から起算して百六十日間に限り、即ち半年間だけは法律としての効力があるが、それ以後は法律としての効力を有しないという規定ができたのでございます。そこで若し何ら性別の措置を講じなければ、先の恩給法特例に関する件というこのポツダム勅令は失効することになるのであります。ところがこれが直ちに失効した場合においてはいろいろな支障が生じまするので、昨年の六月二十日に法律第二百五号恩給法特例に関する件の措置に関する法律が公布せられたのでございまして、この法律によりまして恩給法特例に関する件という勅令昭和二十八年の三月三十一日まで法律としての効力を有するものとするという規定を設けることにしたのであります。そこで一応今年の三月三十一日まではなお従来通り法律としての効力を持つということになりまして、それまでの間に政府におきましては軍人恩給に関する法令を整え、又これに必要な予算措置を講ずるということになつたのであります。そこで、一方この法律におきましては軍人恩給に関する問題を調査審議する機関として恩給法特例審議会というものを設けることにいたしまして、これが総理府の附属機関として設けられて、軍人恩給に関する問題を審議調査し来つたのでありまして、昨年の十一月二十二日に政府に対して建議がなされたのであります。政府はこの建議に基きまして、恩給法軍人恩給に関する法令を整え、又予算措置を考究して参つたのでありまするが、そして十五国会におきましてこの軍人恩給に関係する法律案を整えて、その法律案恩給法の一部改正法律案として国会に提出せられたのであります。当委員会におきましても委員会を三回開いて説明を聞いたのでございまするが、たまたま今年の三月十四日に衆議院が解散になりましたので、これらの法律案はそのまま流れてしまつたというような状況であります。  そこでそのままの状態で放置しておいたならば、三月三十一日までという期限が経過いたしまするので、参議院の緊急集会におきましては期限等の定めのある法律について当該期限等を変更するための法律というものを制定いたしまして、これが法律として昭和二十八年法律二十四号として公布せられたのでございます。この法律におきまして恩給法特例に関する件の措置に関する法律の一部を改正いたしまして、先に申し述べました昭和二十八年三月三十一日まで恩給法特例に関する件は法律としての効力を有するというのを今年の五月三十一日までニカ月間延ばすということに定めたのであります。ところがこの五月三十一日という期限も、それまでにこの軍人恩給に関する法令、法律、又は予算措置が十分まだ整いませんので、そのままにしておいたのでは不都合であるというので、先般当委員会に付託せられました法律案、即ち恩給法特例に関する件の措置に関する法律の一部を改正する法律案が両院の議を経ましてこれが法律として公布せられたのであります。それによりまして、この恩給法特例に関する件というポツダム勅令昭和二十八年七月三十一日、即ち今月末日までなお法律としての効力を有するということになつておる次第でありまして、現在提案になつておりまする法律案が若し今月中に成立したとするならば、この恩給法特例に関する件というポツダム勅令は失効することになるのでございます。  以上御参考のために一応の経過を御説明申上げました。
  8. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは本法律案に対する質疑は次回に譲ることにいたして、本日はこれにて散会をいたします。    午前十一時五十五分散会    —————・—————