運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-18 第16回国会 参議院 通商産業委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十八日(土曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   委員の異動 七月十七日委員三輪貞治君辞任につ き、その補欠として江田三郎君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            加藤 正人君            小松 正雄君    委員            石原幹市郎君            黒川 武雄君            小林 英三君            西川彌平治者            酒井 利雄君            松平 勇雄君            岸  良一君            豊田 雅孝君            西田 隆男君            海野 三朗君            江田 三郎君            藤田  進君            白川 一雄君   国務大臣    通商産業大臣  岡野 清豪君    労 働 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省公益    事業局長    中島 征帆君    通商産業省石炭    局長      佐久  洋君    通商産業省鉱山    保安局長    吉岡千代三君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    労働事務次官  齋藤 邦吉君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○通商及び産業一般に関する調査の件  (電気事業及び石炭鉱業における争  議行為方法規制に関する法律案  に関する件)   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは只今より通商産業委員会を開きます。  本日は前回の委員会で決定をいたしました電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案議題といたします。  先ず労働大臣より本法律案提案理由並びに経過及び旧公益事業令鉱山保安等関連等につきまして御説明友お願いいたします。
  3. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労働大臣小坂でございます。只今委員長の御指示がございましたので、これは労働委員会のほうにもかかつておりまする電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案提案理由並びに旧公益事業令並びに鉱山保安法等関連につきまして若干申上げたいと存じます。  昨冬行われました電気事業及び石炭鉱業の両ストライキは、幸いにいたしまして、最後の段階において収拾されたのでありまするが、この二つのストライキ国民経済国民生活に与えた脅威と損害は案に甚大なものがあつたと考えるのであります。労使関係の事項につきましては、法を以てこれを抑制規律するよりは、労使良識と健全な慣行成熟に待つことが望ましいことは言うまでもないことでありまするが、政府といたしましても、基本原則のみを固執いたしまして、徒らに手を拭いて、当面の緊急の問題に対して対策を怠ることは許されないと考えておるのであります。こうした見地からいたしまして、電気事業及び石炭鉱業特殊性及び重要性並びに労使関係の現状に鑑みまして、争議権公益との調和を図り以て公共福祉を擁護するために両産業における争議行為方法について適当な規制をなす必要があるのであります。公益的な性格を有する産業ひとり電気事業及び石炭鉱業に見るものでないいとは言うまでもないところでありまするけれども、この法案はいわゆる基礎産業中の基礎産業とも言うべき基幹的な重要産業でもあり、又昨年問題となつ電気事業及び石炭鉱業につきまして規定してある次第でございます。こうした見地からこの只今議題にして頂いておりまする法律案提案いたしまして、先般衆議院においては通過を見たのでございますが、これより先この以前の国会におきまして、三カ年の臨時立法とする旨の修正案が出まして衆議院通過し、本院において御審議中解散になつた経緯もございまするので、この修正案につきましては、これを原案としてこの国会においては提出をいたしておる次第でございます。  この法案内容を簡単に申上げますると、これは三カ條より成るものでございます。  第一條におきましては電気事業石炭鉱業特殊性及び重要性に鑑みまして、公共福祉を擁護するため争議行為方法について必要の措置を定めるという本案趣旨を謳つてあるのであります。  次に第二條につきましては、電気事業につきましては、いわゆる停電スト電源スト、その他電気の正常な供給の停止乃至直接障害を生ぜしめる争議行為方法は禁ぜられるものであるということを明らかにいたしております。スイッチ・オフ等行為は、従来から政府として正当ならざものと考えたのでありまするが、これと同様な結果を生ずる行為であつて、昨年の経験に鑑みまして、社会通念上非とせられるものにつきましても、この際これを明確にし、正当ならざる争議行為範囲を明らかにいたしたのでございます。けだしこの停電スト電源スト等は、これに携わる人員は、全電気産業労働者中少数に過ぎないと同時に、労働者の失う賃金及び使用者のこうむる損害というものも、これによつて電気需用者が不可避的にこうむるところの物質的、精神的損失に比較いたしますると、極めて僅かなものであるのであります。でこの点他の争議行為方法とその類を異にいたしておりまして、電気事業公益性公共性に矛属するところ甚だしき争議行為方法と言わなければならないのであります。よつてこの第二條は、こうした争議行為は行い得ないものであるということを明らかにいたしたのであります。  第三條でございまするが、石炭鉱業につきまして、鉱山保安法規定しておりまする保安業務の正常な運営を停廃する行為でありまして溢水、落盤、自然発火有毒ガス充満等を来たしまして、人命に裁害を及ぼしたり、石炭資源の滅失を来たし、乃至炭鉱の損壊を招いたり破壊を招いたり、第三者に妨害を与えるごとき保安放棄行為争議行為としてでも正当性を逸脱するものであるということを規定いたしたのであります。このことは昨年の炭労ストに対しまする政府声明におきましても明らかにいたしたところでありまして、極めて明白の事柄でありまするが、この際特にこの旨を明文を以て明らかにいたしたのであります。最後附則がついておりまするが、これは三カ年の時限立法である旨の附則でございます。即ち、この法律が施行後三年の期間満了の際に、引続いて存続させるかどうかについて国会議決を求めることといたしております。そうして存続させない旨の議決がありましたとき、又は会期中に存続させる旨の議決がなかつたときは失効することにいたしておるのでございます。先の国会におきまする衆議院議決を尊重いたしまして、先ほども申上げましたように、こういう趣旨を明らかにいたしておるのでございます。そういうような次第でございまして、この法律内容については以上を以て御説明をさして頂きたいと思います。  なお、この旧公益事業令並びに鉱山保安法との関係でございまするが、この法律はいわば解釈法規とでも言うべきものかと考えております。本来不当である、或いは昨年の非常に苦い経験に鑑みまして、社会通念上とせられるに至つたものを不当であるということを確認する旨の規定がこの法律でございます。従いまして本法律案には罰則は記してございません。争議の場合に適用せらるべき、例えば旧公益事業令の八十五條におきまして、電気の正常な供給を停廃する行為という場合に、この正常ならざる行為であるか正常なる行為であるかということの判断の基盤をこの法律に求めた、この法律規定してあるような行為であれば、これは正常ならざる行為であるから旧公益事業令八十五條によつて罰則を受ける。或いは鉱山保安法におきます規定、正常なる業務の停廃を来たす、その正常なというところに規定してある保安要員引揚げということの不当であるということをこの法律によつて明定してございますので、これが適用される、こういうことでございます。御承知のように労組法一條二項におきまして、争議行為としては違法性が阻却せられることが謳つてございますが、これを非常に広く拡張解釈いたしまして、争議行為としてならばあらゆる行為は正当であるということを考える節がございまするので、正当不当の限界をごこに明瞭にいたしておる次第でございます。そうして公益福祉を守り、争議権公益との調和を図りたいというのが本法律案趣旨でございます。  以上のような内容を持ちました法律案であるということを御説明申上げる次第であります。
  4. 中川以良

    委員長中川以良君) それではこれより質疑をお願いします。
  5. 白川一雄

    白川一雄君 本法案につきまして正しく判断いたしたいために、私は三つの点についてお尋ねいたしたいと思います。本法案が目的としているこの秩序が、理論的でなく現実効果を発揮し得ると思われている確信のほどにつきましてお尋ねいたしたいのが一つでございます。私は非常に世間をお騒がせした大きな争議経営者としての体験を持つておりますので、それと照し合せまして政府のこれに対する確信のほどを承わりたいと思うのであります。  次は本法案の実施の場合と緊急調整を発動した場合とのその相違点がどの程度であるかということを御説明願いたいと思います。  第三点は、昨年の争議が、或いは主義とか或いは論議とかにかかわらず、とにかく結果は国民生活と、立ち上ろうとする経済再建に大きな支障を与えたということは、恐らく争議に参加した人も現在反省しているものと我々は考えるのであります。若し反省しているとしますればこの法案は追打ちの恰好の法案になりまして、国民相互信頼感というものは非常に傷つけられるんじやないかという点から、政府当局がこの争議に参加したかたがた反省程度をどういうふうにお考えになつておられるか、この三点について御説明頂きたいと思うのであります。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申上げます。この法律をおきめ願いまして、これを実施した場合、どの程度争議というものに対しての効果を期待するかというお尋ねが第一点だと思います。私どもはこんなふうに実は考えておるのでございます。ストライキ権というものは、これは憲法上当然の権利でございまして、これを抑圧するという意思は毛頭ないのであります。ただ昨年のようなああした非常に激しい公益を害するような争議というものが行われるということになりますと、これは何らかの措置を講じなければならん、やはりこの不当なものは不当だとことを明らかにしておくほうがよろしいのじやないか、こういうことを考えたのがこの法律案提案の動機になつておるのでございます。或いは論をなす者は、争議行為というものを無制限に行わしめて、そうしてその争議行為の行過ぎというものは、或いは検察庁等の力の発動を見るのむ止むを得なかろう、そうしてそこで法廷に立つことによつて判例作つて、そうしてその判例を積上げて行つて労働法解釈の基準を作れというかたもあります。併し私ども考えでいたしますると、そうした法律が非常に範囲が不明確であるということによつてまじめな勤労者法廷に立たせる、こういうことは誠に忍びないことである。そこで法律というものはここに明らかにその範囲を定めてあるということを明瞭にすることによりまして、まじめな勤労者諸君にそうしたものに巻き込まれないようにして頂きたい、こういうことが私どものこの法律によつて期待するところの効果でございます。  それから第二の緊急調整というものがありながら何故にこういう法律を出すか、この間の調整をどう考えておるかという御趣旨であつたかと存じまするが、この法律案は本来不当である、或いは社会通念上昨年の経験に鑑みて、社会通念成熟してそれは不当である、こう考えられたものを法律によつて確認するという規定でございます。緊急調整は御承知のごとく、当然許されたる争議行為というものが長く続くことによりまして非常に社会生活或いは経済生活を危殆に陥れる、国民日常生活を署しく脅かす虞れが現案に存するときに限つてこれを出すということになつております。そこでそうしたような緊急調整とこの法律とは趣旨が全く異なるのでございまして、この法律は本来こういう争議行為は御遠慮願いたいということを明定するのが趣旨でございまして、緊急調整というものは別の観点から現案に許される争議行為が非常に長期且つ大規模になりまして、大衆の生活を脅すに至つたときに五十日間の間隔をおいて出るのが緊急調整でありまして、これは別のものと考えております。  第三に争議をしたかたがたにおかれまして、非常に国民に迷惑をかけることに対して反省があろうと思うというところに追討ち的な行為というものがこれはむごいではないか、それは一体政治的な感覚として余りいいものではない、こういうような御趣旨であつたと存じます。私どももそういうことは考えるのでございまするけれども、どうも反省ということは一部においてなされておることは、そういうお話も承わつてはおるのでございますが、やはり争議というものは冷静なときからだんだんその争議行為を通じて熱して行く、熱して行つて勢いの趣くところそういうことになる。例えば保安要員引揚げというものはこれは争議行為としては当然常識上考えられないことであると思います。そういうものをあえてするというような熱した状態になつて行くというときに、ここにはつきりと法律があつて、この法だけは越えてはいけないのだという範囲を明確にしておくほうが、これのほうが却つて親切ではないか。何もこれは争議行為を奪うとか或いは懲罰的な規定では、そういうものではございませんで、この法律で明らかにすることによりましてまじめな勤労者諸君にそうした法を踏み越えさせないような、むしろ好意的な規定ではないか、かように考えておるのでございます。なおその反省という問題も公式的にやはりこういうことはすべきでないというようなそうした問題も未だ取上げられておらないように存じます。その程度お答えといたします。
  7. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。
  8. 藤田進

    藤田進君 労働大臣にお尋ねいたしますが、非常に質疑の点が多いので、簡単でよろしうございますから明確にお答え願いたいと思います。今度の法案は十五国会提案をされ、政府原案修正がなされて、三カ年という時限法になつて来たわけですが、その提案理由を聞きますと、今ほど言われたように曾つてかような争議行為はこれは違法なんだ、それを今度のいわゆるスト規制法でその解釈を明確にするのだ、解釈法である、こういうことが言われていると思います。ところが十五国会における政府原案説明は確かにそれで一応通るやにも考えられます、政府の立場からは……。ところが当時の状況は改進党の修正案が出てそれを、本案通過関係もあつたんでしようが、呑んだために、即ち三カ年という期限を呑んだために、すでに解釈法という性格は失つてしまつて、新らしく創設的にここに争議行為についての規制をするのだ、一つ権利についての制限を加えるのだ、こういうことに変つていると考えられるわけですね。ところが依然として今国会における先ほど提案理由を聞きますと、当初の政府原案と同じ説明、これは筋を通さなければならんから真情はよくわかるわけですが、併しすでに性格が変つて来ておるやに考えられるわけです。そこで三カ年という期限をつけているが、三カ年間はこれは違法だという解釈をして、三カ年後の、この附則を読んでみますと、その状況に応じて今度改めてどうするかをきめるのだ、こういうふうになつていると思います。三年過ぎてしまえばその解釈違法性合法性になるかどうかということをきめるわけですから、法の解釈として本法が何らの変更も加えられないのに、三カ年後をどうするかというこの期限付き、これは提案理由である法解釈のいわゆる法律である、労組法解釈法規であるという提案理由と大きなここに矛盾があるように思われるわけですが、この点についてどういうようにお考えになつておるか。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。この法案先ほど申上げましたように従来不当であり或いは社会通念上非と考えられるというものの解釈法規であるということであります。この炭鉱保安要員引揚げ或いは電産争議の場合のスイツチ・オフ、こういうものは明足しております。ウオークアウトのほうは、これはそうまで言い切れないものがあつたかと存じます。併し昨年の争議給電指令所ウオークアウト指令されるに及びまして、この結果というものは、これはスイツチ・オフと同様というか、それ以上の非常に大きな損害国民経済乃至国民生活に与えるものであるという社会通念成熟があつたと、こういうふうに解釈しております。然らば何故従来そういうふうに明瞭でなかつたかという御疑念があると思いますが、御承知のように司令部のおりました占領中はことごとく司令部指示その他があつたわけでございまして、何かそうしたことを深く掘り下げて考えるというよりも、まあ司令部ストが激しくなれば仲介して収めてしまうというような解釈があつたためにそうなつて来たものである、こういうふうに思つております。この法律を三カ年の時限法と限ることによつてそうした政府解釈というものは非常に無意味ではないかという御質疑でございますが、私どもはそういう昨年の争議のようなものは将来ないかというと、現実にその虞れなしと断じ得ない状態で、現にその危険が存在しておると、こう思います。この漁業を提案いたしまして、そういうものはすべきでない、御遠慮願いたい、こういうことを明定して頂ごうと思つて国会にお諮りしておる次第でございます。然らば三カ年後にはどうなるかと言いますると、その解釈が全然変るということはないと思うのです。こういう法案が出ておるということがむしろこれは、炭鉱保安要員引揚げというものはこれは全くすべきでないということを、どの組合の皆さん自身がそうおつしやいます。併しそれをおつしやりながらも興奮といいますか、非常に熱して行つた場合に、そういうことになる危険があるとすれば、これは暫らく間法を以て三カ年それをお控え願う。そうするとその間に良識慣行というものが成熟いたしまして、これはすべきでないのだということがきまれば、それは法を特に掲げておく必要もなくなるのではないか。一方そういう規制法があるということが非常に労働者諸君のほこりを傷つけるというようなことがあるという点もありますので、そこで三カ牛後にはこういう法律を特に掲げんでも労働者諸君良識もあり、又経営者諸君良識もある、そこにはよき慣行成熟が期待される、こういうふうに考えておるわけであります。
  10. 藤田進

    藤田進君 そのお答え関連してですが、そういたしますと三年後においては労働者良識に訴えて、特に解釈としての本法を置く必要はないと考えるが、そのときの状況によつて国会がこれをきめる、こういう説明だと思うのです。そういたしますと明らかにこの三カ年というものは懲罰的なここに法規の性質がはつきり出て来ると思うのです。先ほど提案理由説明では、労働者に対して親切な意味でかようにするのだ、こういう点と大きな矛盾があると思うし、先ほどお答えスイツチ・オフ給電指令所争議行為、その手段は従来違法だと言われておると、こういうお話でしたが、給電指令所について違法だということ、これについてはいつどのように、その行政解釈政府としてなされているのか、これを明確にして頂きたいということと、給電指令所争議行為が如何なる影響を持つか、給電指令所というのはこれはいろいろ種類があるのですね。今日ここに提起されている電気事業も必ずしも明白でありませんが、およそ九つの現在電力会社を取上げて見ても、給電指令所というのは必ずしも九つではない。こういう点からどういう範囲がこれの対象になるかということも問題です。かなり一番規模の大きい給電指令所というものを取上げて見ても、現実給電指令所において問題になるという点ですね。争議行為ウオークアウトした場合にこれはどういう場合なのか、私ども聞いております範囲では、決して給電指令所そのものがさように御心配になつているほどのものではない。これは提案者としてもいろいろ調べになつてのことだと思いますので、給電指令所というものが、新らしくウオークアウトというものが違法だと言われているもつと詳細な現実お答えを願いたいと思うのです。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この法律が懲罰的なものじやなくて、むしろまじめなかたがたに対しての親切な意味を持つのだということにつきましては、先ほども申上げたのでございまするが、三カ年にするということは、十分そうした末端のというと語弊があるかも知れませんが、一般労働者諸君に対してああした昨年の、例えば保安要員引揚げ準備指令が出る。幹部がそうしているのだからというので、法律は御存じないのが多いのでありまして、そうすると、これはやはりやつてもいいのではないかというふうな気持が現われると、知らずしてこうした違法の行為をされることになるというので、三カ年を掲げておけばその趣旨が周知徹底せられるであろうということでありまして、決して懲罰的な意味はない。その間に公益というものと争議権調和ということは十分に御認識が願えることと期待いたしておる次第でございます。それから私は給電指令所スイツチ・オフについて申したわけでありまして、給電指令所ウオークアウトというものが各指令せられるに及びまして、その結果が非常にスイツチ・オフ以上の非常な一般に対する障害があろう、こういう政府解釈でありますし、又一般社会通念といたしましても、さように考えておると思うのであります。申すまでもなく、釈迦に説法で恐れ入りますが、電気というものはエネルギーの根源であります。電気というものは貯蔵がきかない生産即消費であります。そこで給電指令というものが、その電気の正常なる運行というものをその指令所において全然放任せられるに及びましては、これを阻害するということは、私はもう明瞭であろうかと思うのでございます。  なお詳細に亘り御説明したほうがよければ、通産省のかたもおいでのようでございますからそちらのかたからお答え頂くと思います。
  12. 藤田進

    藤田進君 それは通産大臣もあとでお呼びしておりますので、お伺いしたいと思います。併し今の三年の問題ですがね、提案理由説明では従来違法だと、これは先ほど言われているし、従来しばしば言われていると聞いておりますが、然らば今の法案というものは、先ほどお答えにもあつたように一応労働者にこれは違法なんだということを知らしめるための法律だ。つまり争議行為をする側に対してこれは違法なんだということを親切な意味で知らしめるのだということが理由になるようでございます。そういたしますと、問題になるのは、このスト規制法は過去のものについて規制するというようも、今後の争議行為について、無論不遡の原則もあることですしいろいろ解釈をされているのです、明確な立法としてここに明定される以上、今後において労組法一條第二項違法性の阻却の問題などに関連して来る、こういう先ほどの御解釈のようですが、然らば今後電産の昨年の末に亘つてあつたような争議が今後もあり得るという仮説の上に立つてこの法案提案されているのかどうか。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この法案は決して労働者だけを対象としたものではなく、使用者並びに公益第三者をも対象としておるのであります。なお今後の問題についてこの法規というものが明定されている場合に規制されるということは当然であります。今後そういう仮説の上に立つてというお話でございましたが、私どもはそうした現実に虞れがある、そこでこういう法律が必要であるというふうに考えておる次第であります。
  14. 藤田進

    藤田進君 それは現実の虞れがある……。
  15. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうであります。
  16. 藤田進

    藤田進君 それは次にはいつ頃どのようなことが現実に予想されておりますか。
  17. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この虞れという点ではつきり文書で通信を受けております。これは六月の八日に私のところに来た労調法の規定によりまして電産関東地本から出ております。それから電産の中央執行委員長の神山君から六月十七日に私のところに持つて来られた労調法による予告の文書の中に問題の争議解決のために事務スト停電スト、その他の労働力の提供拒否の争議行為に入る予定があるという通告が来ております。
  18. 藤田進

    藤田進君 それは昨年と同じようなケースでしようか。それともどういうわけでそういうことが起きるのでしようか。その届出なんか知りませんが、明らかにして頂きたい。
  19. 中西實

    政府委員(中西實君) 今の電産関東地本、それから電産中央本部の予告は協約の問題、それを対象にしているのであります。
  20. 藤田進

    藤田進君 それのみでしようか。
  21. 中西實

    政府委員(中西實君) 私のほうで受けまして持つて来られたかたがたから一応聞きましたが、それを目的にしておる、こういうことであります。
  22. 藤田進

    藤田進君 その点についてはなお明らかにして頂きたいと思います。
  23. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  24. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を初めて。
  25. 藤田進

    藤田進君 昨年の被害状況が甚大であつたということから電源職場の職場放棄というか、労務提供拒否は違法なりと新らしい解釈に立つたのだということだと思います。そこで昨年の十二月十三日に労政局をして被害状況なるもの、争議によるところの影響が発表されております。炭労については緊急調整関連で、中労委に対しても公式にその状況が報告されております。併し今日その被害状況についてこれが唯一の根拠になつておる以上どういう状態であるか、曾つて十二月十三日或いは炭労について発表せられたと同様な科学的なものがあるはずでありますが、これについてお答え願いたいし、更にその資料がありましたならば御提出願いたいと思うのです。その点と、それから電源ストということについて新らしく違法なりということを言われたわけですが、その電源ストというのは極めて広汎、抽象的なもので、この内容はどういうものなのか、これを質問した上で次の質問に移りたいと思います。
  26. 中西實

    政府委員(中西實君) 被害状況の資料を十二月十三日に労働省で出したというようなお話でありましたが、案は労働省では被害状況を十分調査する能力もございませんしいたしますので、公式に発表いたしたことはございません。そこでこの状況につきましては、結局所管の通産省で従来からおやり頂いておりますので、後ほど通産省のほうからお聞取り頂きたいと思います。それから電源ストという問題でございますが、これは結局発電所、変電所あたりの所を主に言つておるようであります。俗語でございまして結局この法律でいいますれば、正常な電気供給を停止する、或いは直接に障害を生ぜしめるという系統に属するところの職場において、争議行為としてそういつた効果を生ぜしめる行為をしてはいけないということでございまして、従つて従来スイツチ・オフというものは明らかに配電所のところでやるのがスイツチ・オフ、それ以前の所、つまり発電或いは変電、こういうところを大体俗語として電源ストといつておつたかと思います。
  27. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、発電所及び変電所、これには大小あつて町村営の発電所などは、その部落だけちよつと電燈を一キロ余りというようなものから、数万キロの発電所或いは更に火力、種々雑多で、これに伴う変電所もこれ又一次、二次あり、その変電所自身もなかなか技術的には問題があろうかと思いますが、そこで電源ストなるものは今のように言われておるが、電気供給、つまり生産に影響のない場合には、これは問題はないとも考えられるわけです、電源ストによつてですね。問題は公共福祉、そう言われておるのでありますから、公共福祉、全然電気の生産これに影響のないもの、これを電源ストライキとしてやはり違法と解釈されておるかどうか。
  28. 中西實

    政府委員(中西實君) 今度のこの法案によりますれば、そういつた部門におきましても、結局正常な供給に直接に障害を生ずるというような結果の起るものでございますれば違法になる。争議行為違法性を阻却されないという解釈です。
  29. 藤田進

    藤田進君 第二條を見ますると、「争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為をしてはならない。」先ほど言われた中にもあつたように、正常な供給ということ、これは電気に関する限り極めて問題があろうと思います。今日の電気関係の諸般の法規は御承知の通りであつて、この規定するところの運営、これが正常なる運営、正常なる供給、このようにいわれるとするならば、今日すでにそういう概念からすれば、正常なる供給は全然行われていない。ところが新らしいスト規制法にいう正常というこの内容がどういうものであるかによつて、この法律性格は極めて広汎な変貌を来たすと思うのです。例えば正常な供給問題は、供給が正常であるかないかというように解されるわけですが、例えば発電所におきましておおむね三交替乃至二交替、スリ・シフトでやつていて、先ず第一の勤務者が所定の時間が来ても次の人が来ないために、やはり業務は続けて行くという場合もある。従来それはしばしばやつております。交替時差勤務をずつと長年やつておるわけです。或いはもう全然……今日では若干の従業員の欠勤が山奥の発電所でありましても、病気その他で極めて少人数で運営しておるわけです。そういうところが事故によつて休業した場合は、これは所長一人で以て結構数目運転をやつておるわけです。これも日常取り行なつておるごとなんで、これはいわゆる社会通念から見ても過表の事案累積から見ても正常であると解さなければならないと思われるわけです。そういうのはやはり正常な扱いをするのかどうかお尋ねしたいと思います。
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 電気供給に関しましては、御承知のごとく通産省で公益事業令においてこれを監督しておるわけであります。この監督の下におきましての供給というのは正常というふうに解釈され、そうしたものに違反したものは正常でないということになるわけでございます。
  31. 藤田進

    藤田進君 どういうことを意味いたしますか、具体的に私は問題を提起したわけですが、それに対する御見解ですね。
  32. 中西實

    政府委員(中西實君) このほうの専門家の藤田さんでございますので。正常な供給が大体どういうものかということは却つて我々のほうがお教えを受けなければならないわけでございますが、結局正常なというのは、サイクル、電圧等に異常を来たさないように、又特に渇水期その他のこともございますけれども、結局は一応公益事業令、それによつて電気運営がなされておるわけです。従つて一応その指揮、命令によつて行われておるのが正常だというふうに考えられるのでありますが、これは事業主におきましても、例えば従業員をロツク・アウトして、そうして別の者を雇い入れてやるというようなことも正常なものとは我々として解釈していないのであります。お示しの例えば二交替制、この交替をやめて連続してやるというような事態、いろいろとその他具体的な事例はございましようけれども、我々としまして、ここに起りました事態について、やはりそれが正常な運営かどうか、又正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為かどうか、これを判定したいと思いますので、いろいろ具体的な例は一つ或いはずつとお聞かせ頂きまして、又ここですぐに申しましてあとで変つて参りましても失礼かと思いますので、ずつとお示し頂ければ、それにつきまして十分関係のほうとも打合せをしたいと思います。ただ余り仮定のことになりますといささか今早急に結論は出せないと思いますので、一応予想し得ることにつきましては、御返答ができるようになると、かように考えます。
  33. 江田三郎

    江田三郎君 今の大臣のお答えと、局長お答えと、聞いておつてよくはつきりしない点があるのですが、結局これは個々の具体的な問題について、正常なのかどうかということは、公益事業令関係で、通産省のほうでなければはつきりわからんということなんですが。通産省と関係なしに、労働省のほうで具体的な問題について、きちきちつと答えが出せるということなんですか。
  34. 中西實

    政府委員(中西實君) 一応争議行為といたしまして違法性を阻却するかしないかという判断でございますので、所管はやはり労働省というふうに考えております。
  35. 江田三郎

    江田三郎君 その問題でなしに、正常かどうかということは、あなたのさつきの御答弁を聞いておりますと、大臣の答弁もそうですが、公益事業令関係で通産省のほうの所管になつているから、自分たちとしては教えを頂かなければならんというような立場だ、こういう局長の答弁もあつたわけですが、正常であるかどうかということを最終的に判断するのは、通産省のほうの関係になるのかというのです。
  36. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公益事業令がございまして、それで公益事業局におきまして、その適用を事業活動の範囲においてしておるわけでありますが、その範囲において正当なりと認めるものは正当であります。ただ争議行為はどうなるかということが只今議題でありますので、そういう意味で労政局長お答えしたと思います。
  37. 江田三郎

    江田三郎君 正非かどうかということなんですよ。正常かどうかということについては、やつぱり通産省の公益事業局のほうで判断するということなんですね。
  38. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように火力も焚いておりますしいたしますから、その場合の水力の全体の状況とか、或いは石炭の消費状況とか、供給状況とか、そういうものと睨み合せて監督官庁において、事業者監督の範囲において正常であるかどうかということを認めるわけです。そこで争議行為の場合にどうなるかということになりますと、これは法案規定しておるところで、これは労働省の管轄、こういうふうになると考えます。
  39. 江田三郎

    江田三郎君 争議行為の場合にどうするかということは、これは労働省の関係になると思うのですが、ここに害いてあるところの「正常な供給」ということになるかどうかということは、飽くまで通産省の問題なんですね。
  40. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 私からお答え申上げますが、御承知のように私から申上げるまでもなく、旧公益事業令によりまして、電気事業者がそれぞれ監督を受けておるわけでございます。従いまして公益事業令の下に行動する電気事業者の適法なる指揮系統に服して電気供給をいたすときに、そういう「電気の正常な供給」と、こう存ずる次第であります。
  41. 藤田進

    藤田進君 そうしますとここに問題が新らしく出て来たのですが、電気ガス臨時措置法、従来の電気工作物規程とか、そんなまあ枠があるのですが、今の御答弁で言うと、通産省或いは公益事業局、そして地方局がずつとありまして、これがすべて電気事業電気会社の運営はかなり細かく……今問題になつているのがこの第二條の「正常」の問題ですから、ストライキのいわゆる争議行為、これは現実の論点は、現場における状況を想像しながら議論しておるわけでありまして、そこで今の御答弁によると、そういつた政府当局の機構が監督しておるその範囲であれば、これは正常なものである、監督或いは命令のごとくやつて行けば……。これは極めて抽象なのであつて、そうであるならば、発電所、変電所の当該定員、この発電所は特殊な事情があるから何名の定員を置くべし、これは定員を変えたときにはどういう補充をすべし、こういうことがなされていなければならんはずだと思います。これは現地における争議行為が問題になるわけですから、この点はやはり現実には私企業として会社が独自の立場で運営していて、問題は電力の供給が正常であるかどうかという末端の配電部門だけのことをむしろ重点にしておると私どもは従来解していたのであります。それが今言われたように、すべて監督官庁の指揮下にあるかのごとくになれば、それは現状とおよそかけ離れたものと思うのであります。当該発電所に対して三百名の従業員にするか、二百名にするか、極端なところは、従来二十名のものを今度は一つ半分の十人でやつて行こうか、或いは三交替を二交替にしようか、これは従来すべて資本家、使用者というか、このほうから言えば、労働組合に対する相手方が独自の立場でやつて来たと思うのであります。この点について今の御答弁、食い違いがあると思うのであります。
  42. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 私が申上げたのは、何もかも通産省が定員もその他も監督するというつもりではございませんで、即ち旧公益事業令の監督を受けておる電気事業者のなす適法なる指揮監督に従つて電気供給をする、これが正常なる電気供給であるということを申上げておるわけでございます。即ち電気事業者は公益事業令によつてそれぞれの監督を受けられておると思います。その監督に従つて電気事業者が適法なる指揮監督をする、その適法なる指揮監督に従つて電気供給をする、これがいわゆる電気の正常なる供給である、こういうことを申上げておるわけでございます。
  43. 藤田進

    藤田進君 然らば今ほど申上げた発電所、変電所或いは給電指令所等々、職場における人員の配置、その人員の量、質、こういつたことはすべて電力会社が決定し、案施する、何ら政府なり或いは当該相手方として、従来あります労働組合とか、建前としてはそういうものでなくて、資本家の側にその決定権があるのだ、こういうふうに見てよろしうございますか。
  44. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 私は争議行為の場合におきましては、労使対立的なものではなくして、電気事業者はいわゆる公益事業令に従つて電気の正常な供給を行わなければならない責任に立つ立場においての適法なる指揮系統ということを申上げておるのでございまして、資本家側、事業主側といつたような争議労使対立的な考え方において申上げておるわけでございません。即ち旧公益事業令に従つて電気の正常な供給を任務とする電気事業者、こういう立場であろうかと、かように存ずるものでございます。
  45. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、電気の正常な供給さえなされておれば、あとは人員配置ですね、勤務時間だとか、そういつたようなことは、これは供給責任者、管理責任者である事業主がやればよろしい、これは何ら政府は関知するものではない、こういうことになりますね。
  46. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 第二條規定は読んで字の通りでございまして、「争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為」そのものを争議行為としてはならんということを申上げておるに過ぎないのでございまして、電気事業その他の経営、その他の問題は、これとは別個に通産省におきまして必要がありますればお答え願えると思います。
  47. 藤田進

    藤田進君 そうではないのです。第二條にいう「正常な供給」、「正常な」という字が二つ出ておるわけですね、この「正常な」ということは、これはやはりノーマルな状態をいうのだと思うのですね。そのノーマルな状態のときのことを先ず規定して、そうして正常であるのか、アブノーマルであるのかということを判断しなければならんと思うのであります。従つてノーマルな状態においては、電気供給が停廃されない限り、これは業務運営として事業主の責任である。例えば一般的に申上げないと御答弁しにくいと思いますから、発電所の勤務時間とか、或いは人員を三十名を二十名にするとか、或いは殖やして六十名にするとか、これはすべて正常な電気供給という、このことさえ遂行されれば、あとは事業主の責任である、こう解されるのですが、その点はどう思われるか。
  48. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 先ほど来申上げてありまするように、定員が二十名だ、三十名だという問題も或いは関連するかも知れませんけれども、この法案といたしましては、いわゆるその事業経営の段階、事業経営の段階と申しますのは、公益事業令によつてそれぞれの監督があるわけでありまして、その監督の下にあるそれぞれの電気供給の段階において、電気事業者の適法なる指揮に従つて供給すれば事は足りる、こういう意味でございます。
  49. 藤田進

    藤田進君 だから私が解釈している通りなのですか、そうでないのですか。
  50. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 定員云々の問題とは私は直接的に関係はないものと存じております。
  51. 海野三朗

    ○海野三朗君 関連質問、この「正常な供給」ということがありまするが、今まで電気会社が送電をしましたその燭光にいたしましても、規定の燭光を皆ドロツプしておる。そうして一定の料金をとつておる。それは明らかに詐欺行為なのであります。それを当局者が当り前のごとくにお考えになつておるのでありまするが、この「正常な」ということについては、私専門の立場からお伺いしたいのでありますが、これはどこにおいても殆んど皆燭光が落ちております。そうして而も相当の料金をとつておる。これは誰の責任でありましようか、それをお伺いしたい。
  52. 中島征帆

    政府委員(中島征帆君) 「電気の正常な供給」ということにつきましていろいろ御意見がありますが、この法案の中に出ております「正常な供給」ということと、それから一般に私どもが常識的に考えております「正常な供給」とは内容がいささか違うと考えるべきじやないか、一般的には「正常な供給」というのは、例えば只今御指摘のありましたように、いろんな関係で電圧が落ちる、或いはサイクルが低下するというような場合、場合によつては停電もするというような非常に正常な供給でない場合が頻繁に起つているわけでありますが、これは経済的、技術的にほぼ正常な電気供給だと考えております。ただここに申しておるのは法律的な考え方でありまして、法律的に電気事業者として、或いは電気事業の従業員として正常なる供給をしているかどうかという点になりますと、結果はそれが仮に常識的な正常供給がなされておりましても、或いはその行為の中途において適法でないことがありまするならば、これは正常なる供給とはいえないというように考えられる。又逆に申しますと事業者並びに従業員は正常なる供給事務に従事しておりましても、天候その他の関係で、結果においては正常なる電気供給がなされなかつたということも起り得るのありまして、その点につきましては、この法律における「正常な供給」という場合と、常識的な「正常な供給」というものは違つて考えるべきじやないか。それの例といたしましては、第二條に「争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為」となつておりますが、この辺でこの二つの区別ができるのではないかと思うのであります。
  53. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今の質問の要点はぴんと来ておりません。私はそれが経営者の責任であるか、従業員の責任であるか、その責任の所在を問うたのであります。それは問題がずれております。
  54. 中島征帆

    政府委員(中島征帆君) 失礼いたしました。只今の点は私申し落しましたが、今のいわゆる経済的な正常供給を怠つた場合の責任というものは、これは公益事業令の系統で論じられる問題でありますが、現在におきましては必ずしも明確でありませんけれども、当然これは電気事業者として公益事業令並びにそれによつて認可されております供給規程の範囲内において責任を負うことになつております。
  55. 藤田進

    藤田進君 争議行為規制に関するいわゆる法案の中での正常というのは、一般事業者が運営する場合のいわゆる正常というものとはおのずから意味が違うのだ。それはなぜならば争議行為の場合において、「争議行為として、電気の正常な供給を」というのだからと、こういうふうに今公益事業局長は言われたと思います。これは私聞いていて、この法律は、提案理由にもあるように違法なりとするものをも明確にするのだ、こういうことが前提になつているのでありますから、そうである以上は「正常な」というこの定義、ノーマルとアブノーマルの一関係というものは明確になされなければならん。その正常というものは争議行為としてのときだけというふうにはこれは考えられないと思うのです。争議行為のときだけ……正常な供給であるということは、それは多少の出入りがあつて、発電所、変電所或いは給電指令所において目々病気その他の事故があつて、人が二人休んでいるか、五人休んでいるか、六人休んでいるか、或いは全員が出ているときもあり、おおむね誰かの欠員があるのは、これはむしろ常態ですね、こういう何かのそこに目安があつて、初めて争議行為に際しては、正常なものでない、このような具体的な直接的な、或いは電気供給の停廃があつた、障害があつた、こういうことで以てものはきまるわけですから、正常なということについては、これはいわゆる争議状態にあるときであろうとも、ないときであろうとも、これは一貫したものでなければならんと解されるのですが、これは違うのだというところの違い目を説明して頂きたいと思います。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちよつと問題をずらしてお考えになるように思うのですが、この第二條の「電気の正常な供給」というのは、例えば具体的にいえば、七月十八日現在、只今の電圧、只今のサイクルというものがあるわけです。それが争議行為によつてその状態が仮に変るということになりますれば、これは争議行為によつて正常な供給を阻害する直接障害はない、こういうことになるわけであります。その條件は、そのときによつて一定であるわけです。電気を送り得るところの水力の状態なり、或いは火力の状態なり、或いは発電所の碍子がデイスチヤージしているからとかそういうようないろいろ細かいことがありましようけれども、そのときにおいてなし得る條件というものは一定である、それを争議行為によつて狂わせるということになれば、これは問題は明らかであると思います。
  57. 藤田進

    藤田進君 やや明確になりつつあると思うのでありますが、このことは末端現象をいうのであつて、サイクルなり或いは電圧の降下なり、或いは供給区域の制限、こういつたようなこと、これの障害若しくは停廃、もつと簡単に言えば、この電気ストライキがないならばとまらないにかかわらず、ストライキのためにとまつた、とまらないけれども電圧が降下したとか、サイクルが落ちたとか、こういうようなことを正常であるかないかというふうに労働大臣は御答弁されているように思うのです。それでよろしうございますか。
  58. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう争議行為によつて、事業主の場合でもそうです、それから電気事業に従事するものでもそうです。要するに争議行為として正常な供給というものは或る一定のものがあるわけです。それに直接障害を与えるような行為をしてはならん、こういうことです。
  59. 藤田進

    藤田進君 だから中小企業のモーターなり、家庭の電気なり、或いは大工場でも、モーターがストライキがないときと同じような状態がキープされるならば……これは日に日に違うわけです。電圧だつて海野委員から言われたように違つているし、サイクルだつてつているし、それは平常毎日繰返されていることなんですから、これは総称して正常だと言われていると思います。ところがその末端におけるモーターがとまつてみたり、電気が消えたり、こういうことのみが……公共福祉なんですから、電気さえ送つていれば、電気会社が五十人の人を雇おうが、十人で経営していようが、そんなことは問題じやないと思われるのです。その点はつきりして頂きたい。
  60. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 例えば成る発電所に三十人の勤務人員がいる、それを十五人にするかしないかということになりますると、十五人にしてもその状態が変更がない、而もそれが永続的に変更がないかどうかということが問題になつて来ます。そういうことがあるかないかということをきめるのは、やはり経営権の問題であると思います。組合側において、それを十五人にしなければいかんといつて組合側だけの主張を押付けて来るということになると、これは多少生産管理的なものになる、こう思います。
  61. 藤田進

    藤田進君 そこで「正常な」ということは結局法の精神、提案理由として政府考えているものは、これは法解釈を明確にする、こういう点をなぜそのように明確にしなければならないかと言えば、この根拠は憲法十二條並びに憲法二十八條の調和の問題として、ここに昨年起つたごとき電産並びに炭労の争議行為なるものはもはや公益権衡の面から見ても許されないものである。こういう点から来ているように思うのです。若干私の思い過しかもわかりませんが、そういう骨組については間違いありませんか。
  62. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 二十八條が十二條、十三條によつて制限をされた、そういう点から来ているわけであります。
  63. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと結局は公共福祉なるものの法律論はともかくといたしまして、現実電気がとまらない、停廃されないということであるならば、公共福祉に何ら影響がないわけですから、その実体が仮に臨時雇で仕事がなされていようと、或いはそうでなしに本来の従業員が働いていようと、この点は余り大きく問題とならないと思うのです。例えば昨年の場合などの事例は、あとで資料も政府から頂きたいと思いますけれども、おおむね事業者、つまり管理責任者、この管理責任者の手によつて運営がなされ、むしろその運営をすることが正しいんだ、こういう形であの十二月の十八日まで移つて来たように見受けるわけですが、そういう点からいたしますと、先ほどの「正常な」ということ、これは要するに法の精神からいつて公共福祉の問題であるから電気の停廃ということ、これが結局は問題である、こういうふうになるわけですが、それでよろしうございますか。
  64. 中西實

    政府委員(中西實君) 「正常な」ということの最後は、正常に供給されたかどうかということでこの判断は裁判所になるかと思います。ただ先はどからのお話の二交替にするか、三交替にするか、それらあたりはやはり必要があつてそういう態勢を一応とつておるように客観的に考えられますので、従つて一応業者が責任を以てその態勢でやつておる、これを崩すことは一応客観的には正常な供給障害を生ぜしめる行為になるというふうに考えております。
  65. 藤田進

    藤田進君 そうすると、先ほどのと循環してしまつているのですが、私自身が循環して聞いて見ないとどこで食い違つたかわからないのですが、私自身もとへ大体質問も帰つて来たつもりなんですが、もとへ帰つて来ますと又変つて来るのですね。どれが本当なのか答弁の一貫性がない。つまり労働大臣の答弁では、末端現象であつて電気がとまつたりサイクルが落ちたりする、これが無論公共福祉の問題である。発電所で誰の誰兵衛が今日の電圧を見ようが、そんなことは公共福祉関係ないのです。Aの技術者からBの技術者に変つて政府の許可、認可事項でもない。管理責任者がやつておる問題です。一応政府提案されておるのは、末端の現象なんですね。こう言われたのです。
  66. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうじやない。
  67. 藤田進

    藤田進君 そうじやないということになりますと、電気がとまる、とまらないの問題でないということですね。
  68. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 問題が不明確のようですが、私の理解するところを申上げて見たいと思います。  私は藤田議員の御質問の趣旨をこういうふうにとつたのでありますが、誤りでありましたら御訂正願いたい。要するに、事業者がまあ或る程度譲歩してというか、非常にでもいいですが、譲歩して、組合側が三十人いるところを十五人仕事に従事しないでも電気の正常な供給に阻害行為がないならばそれでいいのじやないかという御趣旨かと思つたのです。それはいけないと私は思います。これは事業管理者がきめるべきことであつて、経営権の範疇に属するわけで、組合側が勝手に十五人なり十人にするということをきめて、それによつて発電所を運行するということになれば、生産管理、生産管理は不法である、こういうような見解であります。
  69. 藤田進

    藤田進君 生産管理というのは、仕事をしないといつてしないで全然職場より離れて、自分の家で休んでおるとか、或いはその他のことをやつておることです。業務から離れておる、これが生産管理と解されておるのです。ウォーキングアウトのことを言つておるのです。
  70. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の言うことを曲解されておるのです。私の言う趣旨は、要するに三十人の定員でなければ動かないということを業務管理者が認めた場合に、これは十五人で動くから十五人でやるといつて運営について労組側が責任を持つて十五人で運営される、こういうことになるというと、これは事業者の責任を持てないことになります。ですからそういうことになれば生産管理の問題に触れると思います。
  71. 藤田進

    藤田進君 実は生産管理というのは、労働組合或いは労働者が所有権者の意思を退けて、ほしいままに運営をして行くということのように考えるのですが、そういう場合でないのです。電源ストというものはそういうものではない、そのように解釈されておるのかどうかあとで御答弁を願いたいのですが、電源ストと言われておるのは、先ほど質問をして提案者のほうから明確にされたのは、発電所、変電所、給電指令所においてウオーキング・アウトということがいけないので、もはやその場においては、そのような運営の問題ではない、仕事をしないということなんですから、生産管理は問題ではないと思うのです。
  72. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今藤田さんが御提起になりました問題は、生産管理の場合の問題を御提起になりましたので、私の解釈を申上げたわけでございますが、発電所におけるウオークアウトというものは、これは電気の正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為である、だからいけない、こういうことだと思います。
  73. 藤田進

    藤田進君 電気の事情をよく御存じだと思いますが、発電所におきましてウオーキング・アウトをいたしましても、何ら電力の供給に支障のない、これは時間の問題、これが或る程度伴う場合もあります。発電所において仮に一時間の休憩時間に行つて御覧なさい、外へ出ていろいろ相談したり、発電所の中は朝から晩までやかましいからやつておるわけですね、最近の発電所では全然人がいない、ワンマン・コントロール、ワンマンと一言つても中に殆んどいない、機械化されておるところはそうなんです。このように例えば一時間或いは二時間程度人が、極端に言えば半数、殆んど一人くらい残しておいても何ら供給には支障はない、こういう作業なんです。このことと、そうして問題は末端の公共福祉の問題ですから、末端の現象において正常であるかないかということが問題になるわけでありますが、そもそもの人員の減、或いは正常なる運営ということの責任は、正常時においてはこれはその事業主にあると思うのです。それは今言われたように、それをほしいままにすれば生産管理と言われるわけですから、事業主にある。争議行為に対しては末端に、何ら公共福祉に影響のない、電気がとまらないようなことであつても、必ずその発電所に、平生ならば外に出て或いは昼飯の時間野球もするかも知れないが、殊に争議中に関する限りうつかりそういうことになるというと、これはもうウオーキング・アウトをしておる、こういうふうに解される疑いもあるわけです。私の言わんするところは、争議行為の期間中であろうと、争議行為のない正常なときであろうとこれはすべて例外なしに事業責任者、この事業責任者がやはり供給責任を持つていると思うのです。争議行為のときだけ労働組合にその供給責任が移るということになるならば、これは生産管理を否定して、而も供給責任があるということになりますとこれは問題がある、これをどう説明されるか、そうして会社組合間に従来、昨年もそうですね、運転のまま引継ぐから一つ引継いだままで出て来れ、発電所にこういうことだつたのです。全部そうなんですね。それで引継ぎしようといつて会社に引継いでそして出て行く、出て行つただけで賃金を引かれるでしよう、電気が廻つている、これがむしろ昨年の実態ですから電源ストの制限というけれども、これは私どもあとで通産省にも伺いますけれども、これは重大なる問題が他にもあると思います。電気がとまつたという現象について科学的に私は証明して頂かなければ了解しませんけれども、こういう昨年の実態から徴しましても、やはり会社が一旦引受けておれがやるのだから出て行け、ここに資料もありますけれども、九州の戸畑火力などに至りましては職場にもう帰るのだ、復帰するのだと言つても帰らなくてもいいというような調子で、会社が運転しようとしたわけです。実際に運転できなかつたわけですが、これは火力の場合ですが、水力の場合などについては、殆んど会社が運転するからそのままで一つ出て行つてくれ、こういう恰好でやつているのですね。そうすると会社が運転を引継いで、すでにもう本来管理責任者が供給責任を持つているわけですから無論問題ないですが、その上会社が更に確認的に自分たちで運転するからそのまま出てくれ、こう言つている以上を更にいやお前たちの運転したのでは駄目だ、我々が運転するということは、それ公共福祉に何らの影響もないから、そういう場合にあつては末端の現象で、何ら影響のないような状態においてはこれは法として正常な業務、これの停廃ではないと、こういうふうに解釈してよろしうございますか。先ほどの御答弁の集約として……。
  74. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えをいたします。現在の発電所は非常に合理化されておりまして、そこに働く人も非常に集約されておることは言うまでないことでございますが、そういうことをきめるのは経営管理者である、併し進歩的な経営管理者は大体組合側と相談して大体話合いによつてつて行くと思うのです。そこでそういう人たちがウオークアウトした場合にどうするかということです。ウオークアウトすることによつて電気の正常な供給を阻害する意思があるかどうかということが先ず問題である、だからそういうことによつて電気の正常な供給が直接障害を生ぜしめられるかどうかということが客観的に認められるかどうかということ、そうした主観的な意図もなく、又そうした客観的な事実もないような場合にはこれはよろしい。戸畑の場合は細かい問題でありますから法務当局から……。
  75. 中川以良

    委員長中川以良君) 藤田君、どうですか。
  76. 藤田進

    藤田進君 これは法務大臣に対しては本会議で質問して、答弁は保留されておりますので、法務大臣から聞きたいと思います。  今の正常な供給を阻害するという意思があつたかないかということが判定の基準になりますが、今二つのことを言われた、現実の問題とその意思ですね、二つを基準に今されたわけですが……。
  77. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 御承知の通り、法律的に申しますと、意思と行為とこういう二つになるので、意思と申上げたのでございますが、もつとあつさり端的に申上げますれば、その者が、その労働者電気の正常な供給関係を持つた職務についておる者である場合に、その者が争議行為として仮に言える場合には、そのことによつて電気の正常な供給に直接障害を生ぜしめたような審観的な具体的な推定ができるかどうかによつて私は判定せらるべきものだと存じております。即ちその者が職場を放棄をいたしまして、仮に電気の正常な供給が阻害されなくても、まあ阻害されるということが具体的、客観的に想定せられます場合には、その者の職場放棄も第二條違反になる、かように解釈いたします。
  78. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、これは曾つてのような破防法のときに議論になつた扇動の字句がどうだとかいうようなことと同じことで、これは全然予想外のことがここに出て来たわけですが、電気の正常な供給を停止する行為、それから正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為、この行為について論じておるように思つたわけですが、そうではなしに、そういう意思表示そのものがすでに問題になつたと言われたと思うのです。
  79. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 意思と申しますのは、争議行為としてそういうことをなさしめるという意思と、こういうことでございます。即ち停止する行為、生ぜしめる行為というのは、結果的に停止する行為、或いは障害を生ぜしめる行為という結果が生じた場合、並びに結果が生じなくても、結果の発生する客観的な具体的な可能性があつても、結果の発生する客観的な具体的な可能性がある場合、この二つを含むものであるということを申上げたわけであります。
  80. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) なお誤解があるようですから私から申上げておきますが、私は全般的に職場に人がいなくなるということを言つておるわけであります。意思というのは、争議に、いわゆるあなたが私の答弁で特に意思という点を問題にされておるが、そうではないのです、私の言う意思というのは、争議中の場合ということです。要するに、このウオークアウトによつて争議行為に何か資せしめるという意思がある場合、ただ正常な争議に何もない場合、職場を離脱してもその間において別の結果が生ぜざるという場合には、特に問題にならん、こういうことを申上げたのであります。
  81. 江田三郎

    江田三郎君 さつきの事務次官の答弁を労働大臣は確認されるのかどうか、その点をはつきりして下さい。
  82. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 確認いたします。
  83. 江田三郎

    江田三郎君 そうなるとこれは大変なことなんだ。そうするともう一遍繰返しておきますが、そういう意思の問題と、そうして結果においては阻害されることがあるし、阻害されないこともある。阻害されなくても、そういう意思があれば、これはここに第二條に言うというところの適用を受けるわけですね。
  84. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 先ほど来意思というものは、刑法理論としての犯罪の意思と行為ということで大臣が仰せられたが、そういうことを別としてあつさり申上げますならばということで申上げたのは、停止するという行為障害の生ぜしめるという結果が仮に生じなくても、その結果の発生することが客観的、具体的に可能であるならば、その場合をもこの第二條は含むということを申上げておるわけでございまして、意思の表示とかいう問題とは別個の問題でございます。
  85. 藤田進

    藤田進君 現実にそういう行為が遂行される虞れあるときも、このスト規正法が簡単に言えばこれに含むのだと、まあこういうことですね。
  86. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 虞れという、それだけの言葉ではないので、それは障害を生ぜしめる、障害という、こういう結果が発生する客観的具体的な可能性ということによつて判断さるべきものであるということを申したわけでございます。即ちポシビリイーの問題からプロバビリティーの問題だということを申上げたわけであります。
  87. 江田三郎

    江田三郎君 可能性と言つても結果が出ない場合があるから、誰が一体可能性ということを判断する。
  88. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 誰がそれを判定するかというお尋ねでございますが、そのときそのときの行為につきまして客観的に判定せらるべきものということであります。
  89. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、次の問題と関連いたしますが、本スト規制法については罰則はないと、こういうことでした。罰則はないけれども鉱山保安法或いは今日では電気、ガス臨時措置法等によつて労組法一條二項の正当性違法性の阻却、刑法三十五條の適用ですね、これが適用されなくなる、こういうふうな説明をされたと思います。その通りでよろしうございますか。
  90. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その通りです。
  91. 藤田進

    藤田進君 その通りですね。そういたしますと、今事務次官の御答弁を大臣によつて確信されておりますので、大臣の答弁と同一だと思いますが、その行為に至らない、その虞れあるとき、この場合には具体的に言えば、この法律が施行実施された暁に、どこかの組合で以てそういう指令を出した、やるんだという指令を出すか或いはその一歩前の労働大臣並びに中央労働委員会に対して、争議行為の予告をしたというような場合には、一体どうこのスト規制法は機能を発揮するのか、御説明願いたいと思います。
  92. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) そのような組合が指令を出したということだけでは、停止する行為或いは直接障害を生ぜしめる行為というのは、現案ありませんので、第二條の問題にはならんかと思います。
  93. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、その行為があつて初めて論じられる、正常であつたかないか、こうなりますか。
  94. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) スイッチを切るといつたふうな行為或いは職場を放棄するという争議行為があるときに判定せられるわけでございます。
  95. 藤田進

    藤田進君 あつた後において正常であるかないかが論じられる、こうなりますね。それでよろしうございますか。
  96. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) あつた後に発動するわけではございませんで、事前にスイッチを切つてはいけないのでございますから、切つたときすでに第二條の違反になる、こういうわけでございます。
  97. 藤田進

    藤田進君 先ほどですね、この行為のあつた場合については罰則がないが、もろもろの以上申上げたものが刑罰がある、それはその通りだという御答弁を得たわけですね、先ほどは。そういたしますと、問題はスイッチを切つたとか、或いはここの解釈にあるような正常な業務を停廃したという事実行為があつたときに、初めてその罰則は適用されるんであつて、その意思炉あるとかないとかいうことは全然問題にならないということに又そろそろなりかけるわけですが、どつちが本当ですか、はつきりしてもらいたい。
  98. 中西實

    政府委員(中西實君) 先ほどから意思がえらく問題になつておりますが、問題は争議行為として行われるということがあればいいのでございまして、そうして結果において、客観的に、具体的にそういつた障害を生じせしむる行為であればこれでいい、こういう意味でございます。
  99. 藤田進

    藤田進君 そんなことを言つておるのではない。先ほど大臣の確認しますと言つたのは、その行為現実にやる虞れがあるとき、それから現実にその行為行つたとき、この二つが問題であつて、必ずしも行為がなくても、その行為現実にある、そういう虞れがあつたときには、当然この問題の範疇に入るのだ、こうおつしやつておる、それを確認すると言つた。
  100. 中西實

    政府委員(中西實君) ちよつとそこに誤解がございますが、虞れがあるというのじやございません。行為がなければならん、その行為が果して障害を生ぜしむる行為なつたか、或いはそれは現実に起らなかつたけれども、客観的に、具体的にその結果を起したであろうという行為であれば、これはこの二條に引つかかる、こういう趣旨でございます。
  101. 藤田進

    藤田進君 大臣の確認とその後の答弁が実にまちまちで、大臣自身も公式に発言されていないが、見受けるところ、又労政局長もうんそうだそうだというようなことで、これでは一体いずれが政府答弁なのか、非常に問題なので、速記録を調べてはつきりしてもらいたい。
  102. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) はつきり申上げておるつもりで、速記録を御覧になつてもよろしいですが、要するに、私は争議行為としてでない場合も含めて御答弁しております。要するに、人がいなくなるということは、争議行為というのでなく、そうなつた場合はどうかという、争議行為があつた場合は、その意思というのは、そういう意味です。争議の意思があつて、そうしてウオークアウトがなされる、それは困ります、こういうことであります。
  103. 藤田進

    藤田進君 今の事務次官の御答弁は速記によつて調べて頂きたいと思います。そのようなものではなかつた。行為とそうして意思とこの二つが適用の要件になるかと言つたところが、その通り、ただ行為ではなくて、その意思があつて、その行為の虞れがあつたときには適用になるのだ、こう言つて、大臣はどうかという江田委員の確認に対して、確認いたします、こう言つておりますので、そんなことは速記を調べなければこれは水掛論になりますけれども、私は今の大臣のは訂正と解されるとも思いますが。
  104. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 訂正じやありません。その通りです。
  105. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 先ほど大臣が申上げております争議行為としての意思、それはいわゆる犯罪構成要件の刑法としての意思であるということを申上げたのです。それから停止する行為障害を生ぜしむる行為、それから争議行為としてスイツチを切るという行為或いは職場を放棄するという行為ということを申上げております。而も障害を生ぜしめるという行為というのは、必ずしも結果を発生しなくともということを申上げておるわけでありますが、結果を発生いたしませんでも、結果の発生する客観的、具体的な可能性がある場合においては、そういうウオークアウトという、職場放棄の行為、その行為は第二條違反であるということを申上げておるわけでございます。
  106. 藤田進

    藤田進君 それは客観的に見て、そういう行われる可能性がある場合においては、行為が行われたならばということを言われておるのですね。
  107. 江田三郎

    江田三郎君 関連して、議事進行で。さつきの速記をもう一遍読んでもらいたい、大分違つて来ておりますよ。
  108. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  109. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。
  110. 齋藤邦吉

    説明員(齋藤邦吉君) 第二條解釈の問題でございますが、争議行為としてスイツチを切るという行為或いは職場放棄という行為がなければ、第二條の問題にはならないわけでございます。但しその場合に、直接に障害を生ぜしむるという行為でございますが、その場合に、結果的に、電気の正常な供給障害を来たすという結果が必ずしも発生いたしませんでも、そうした結果の発生が予想される客観的、具体的な可能性のある場合においては、その職場放棄という争議行為、これが第二條の違反になる、かような解釈をいたすものでございます。
  111. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、先ほどの答弁と、又大きい項目の答弁とは食い違いを生じて来ているわけです。提案のそもそもの理由は、公共福祉、憲法の十二條、十一二條、既いは労働権の二十八條、財産権の二十九條だとか、こういうことを言われて、その通りかというふうに私が申上げて、その通りだと言われていたわけですね。要するに、公共福祉公共福祉、それは昨年の電源ストが余りにも影響が大であつて、従つてもはやああいうものは公共福祉の面から許されないようになつたのだ、こういうことであつて、従来はスイツチ・オフ政府行政解釈としては違法なりとされて来たけれども、その後電源職場のウオークアウト、こういうこともやはり合法とは見られない、こういうふうになつて来た。要するに、電気の停廃ですね、とまる、而もこのことは、どつかの村落がとまつた、こういうものではない。問題は、すでに憲法十二條については精神規定であるとか、いろいろ東大の憲法研究会では結論が出ているそうですが、これはともかくといたしまして、この公共福祉ということは、争議行為のその手段というよりも、その結果の現象、影響、これを論ずるものだと私は思うのです。従つて争議の手段が電源職場放棄でもよろしい、或いは停電ストにいたしましても、スイツチ・オフですね、これはおのずからその規模が、国民公共福祉、この全体に与える影響ということが問題にならなければならん。要するにその規模ですね。規模、これが問題だと思うのです。例えば、私鉄に言葉を換えて言うならば、どつかの、草軽鉄道、これが一々とまつたそうだという場合と、或いは全私鉄が、この交通が麻痺する、電気においても同じようなたとえで、ほんの一つの部落……、今日の労働組合というものは、まだまだ成長過程にあるのであつて労働大臣も御承知だと思うのですが、電産の組織自身もいろいろ今何というか、成長過程における動揺というか、変転を極めている状態です。従つて、今後発電所において、現実にそういう事態が起ります発電所において、三百名のうちで二十名だけで労働組合を作る。現行労働法では五名であろうと、或いは五名であろうが、労働組合の資格を持つていると思う。持つていなければあとで御答弁願いたいと思う。こういう状態にあつて、当該発電所において、是非こういう問題があるのでこうしてもらいたいという交渉が持たれた。併しうまく交渉が妥結しないで、その一村落に影響するというか、電気の停廃があつた、こういう問題について、公共福祉を阻害するからという問題ではない、大きな規模において行われる場合において、公共福祉ということは論じられるのであつて電気ストライキをすることによつて、運輸、交通機関を麻痺して停止してしまう。こういうような状態、これは現行労調法第三十六條に特に生命の安全保持として規定してあるが、例えば、こういうような事態とか、こういうことであつてですよ、単に電力の供給のこれに何らの影響がないけれども、影響するかも知れないという予想で、今後この法の運営をする検察庁や政府当局が一方的に考えて、この第二條により、更に派生的にガス、電気の臨時措置法或いは鉱山保安法等こういうものが引用される、こういうものではないと思う。公共福祉ということからこの法案提案されているわけですから、この説明をどのようにおつけになろうとするのか。今の答弁から言うと、正常なる停廃、こういうことは、結論的には、電気或いは電力がとまるということではないのだ。とまる、とまらないの問題ではないのだ。こう言い切られている以上、この議論が起きて来ます。公共福祉関係
  112. 中西實

    政府委員(中西實君) 公共福祉というのは、これは一言では非常に表現のしにくい問題でございます。普通には、今おつしやいましたように、それを更に正確に表現いたしますれば、部分に対する社会一般の利益というようなことになるかと思います。
  113. 江田三郎

    江田三郎君 途中ですが、議事進行で……議運で採決しなければならんのですがね。帰つて来てから……。
  114. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  115. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。
  116. 海野三朗

    ○海野三朗君 先ほど私が電気の「正常な供給」ということについて話しましたときに、政府委員は、それは事業主の責任であると、こう言われました。事業主の責任であるというて、これを放つて置かれるのでありますか。事業主は詐欺取財をやつているのであります。これは事実なのであります。それだけの燭光がない。三十燭光といい、六十燭というが、それだけの燭光が出ていない。これは全国至る所の燭光が皆それであります。そうして、今日まで私は機会あるごとにこれを力説しておるのでありまするが、計つてみるとドロツプしておる。ドロツプしておつても料金だけは当り前に取る。そうして今日まで重ねて来たこの罪業に対して、何らその事業主に対する制裁というようなものが加えられていない。そうして今日このスト規制法を提出されるということは片手落ではないかということを私はお伺いしたいのであります。又これを通産の立場から申しましても、私ども始終電気にお世話になつておるのでありまするが、これは一々各個人の家にメーターがないから、黙つて知らないでおるところもありまするけれども、そういうことに対して、政府当局はどういうふうなお考えを持つておられるのであるか。これを通産大臣並びに労働大臣にお伺いしたい。
  117. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この法律は、前に提案趣旨でも御説明申上げましたように、労働者諸君争議権を奪う気持はないのであります。他にストライキ方法も勿論ありまするし、とも角ああいう争議行為にまで訴えなくても、問題を解決し得るような労使間の良識と理解を深めてもらいたい、こう思うのです。争議行為をされることによりまして、一昨年は苦い経験を持つたのでありますが、非常に国民大衆は有形無形の損害を受くるわけです。ですから、ああいう争議行為まで訴えないで、一つ問題を解決するようなよい良識を期待するという政府の態度でございまして、片一方に対して非常に懲罰的なものを加えるという趣旨は毛頭ないのであります。ここに余談になるかも知れませんが、例のI・L・Oの大会がこのほどございまして、そこで政府代表の中山氏が演説しておりまするのをちよつと引用いたしまするが、最近、電気及び石炭のような重要産業における労働争議の場合、関係当事者は労働委員会の斡旋又は調停という方法を用いないで、実力に訴えて解決する傾向がある。労働問題が経済事情の反映であるからには、この傾向も又日本経済の困難なる事情を反映するものかも知れない。同時に、現在の日本経済は、重要産業のこうむる損失を負担し得ないであろうというのであります。併し、この状況が改善せられないならば、或る措置を講じ、これによつて第三者、即ち一般公衆の正当な利益をその争議の両当事者によつて尊重されることが必要となるかも知れないということを言つておられる。私はこうしたような重要産業争議というものについては、どうか一つ労使間に良識を持つて頂いて、そうして一方調停機関というものにおきましてもできるだけその調査機能を拡充いたしまして、そうして斡旋調停できるなら仲裁に持ち込まないで問題を合意のうちに解決するというよき慣行を期待しておるのでありまして、この法律案意味するところは決して労働者諸君争議権を奪うという考えはないのであります。そこまで訴えないで是非問題を解決するような方向に持つてつてもらいたいとこう思つておるのであります。なおその他の問題については通産大臣からお答えいたします。
  118. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。供給規程がございますので、只今のところでは供給規程の約束の通りにやつておる次第でございますが、この供給規程には恐らく昨年のような大きな停電ストというようなことは予想に入れていなかつたのじやないかとこう思います。ああいうようなことは今後あり得ないとは思いますけれども、併し、その供給規程が若し不備でありますとか、又社会通念としても公平でないということでございますれば今後これを是正しなければならんと私は考えます。
  119. 海野三朗

    ○海野三朗君 何燭光何燭光というつまり規定で以て料金を取つておるのであります。ところがこれがそれだけの燭光を発していないということを私は誠に……いなくても料金だけは皆取つておる。それも当り前、通念として更に怪しまないからいいという筋合のもの舌はなくして、これはやはり通産の立場からいたしましてこれは厳格に取締らなければならない。この責任は誰にあるかということを私が申しましたら、やはりそれは事業主にあるのだと先ほど政府委員が答弁いたしましたが、事業主にあるのだと、それを放つて置いて、このたびの働く人たちに対するここのスト規制法だけを出して、そうしてそいつをしちやいけない、これをしてはいけないということは片手落ちではないかということを私は申すのであります。  それからもう一つは、すでに争議が起りました場合に、これを調停する方法もあり、これを調停できないということは政府の弱体である。私はこれを調整して行くのが政府の責任であると、こういうふうに考えておるものでありまするが、この政府の弱体なるところをばこの法案を以て縛らんとする、率直に申しますれば……これは私は間違つておると思うのであります。又各学者の説明を聞いてみますると、これも悪法であるという結論に到達しておるのであります。今困るよかというても人間の人権の尊重というところの根本精神を間違つてはならないと私は思うのでありまするが、この点につきまして両大臣の明確なる御答弁を願いたいと存ずるのであります。
  120. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府争議に介入するということはこれはできるだけ避けねばならんと思うのでありまして、やはり争議というものは経済事情によつて起るものでありまするから、経済的な要求を基礎として起るものでありまするから、労使双方においてできるだけ話合に、納得し合つて解決すべきものと考えます。政府がこれに介入して、例えば賃金をきめる、強制的にきめるというようなことになりますれば、これは又次の問題を必ず生じて来る。例えばそういうものになれば電気料金はこれじやいかん、或いは政府の責任から上げろというふうに、労働者諸君は無理やりにきめられた賃金だから本当に納得しない、又次に争議をして又これを解決するということになりまして、これは決していい争議行為の解決方法とは言えないと私は思つておるのであります。  なお人権を尊重せよというお話でありますが、これはもう当然のことであります。併し、やはり人権というものはその基礎にあるところの公共福祉……人権というものは無制限にあるのではなくて、やはり憲法十二條、十三條に言うように公共福祉のために基本的人権を用いなければならないし、公共福祉を阻害することがあつてはならないと、こう思つております。やはりそうした人権の背後にある社会の繁栄、人権を暢達せしめるためには社会の繁栄というものが基礎になつて、その個人が栄える、こういうことになると思いまするので、やはりそれは無制限にあるものではない。そこでここに申します争議行為というものは、そうした争議行為公共福祉との調和の上に立つて行われねばならんと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  121. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 主として料金問題だろうと思いますが、五十燭光の約束をして、供給規程によつて幾ら幾ら料金を払わなければならんと言つておるにもかかわらず実は五十燭光でなしに、十燭光、八燭光というようなことですが、即ち供給規程で約束しておるところのことと、それから実情とが離れて、そうして過当に料金を払わされておるということがないとも限らない、こういう御主張であります、その点について所管省がこれをよく監督しなければならん、こういうお話でございました。これはもう至極御尤もでございまして通産大臣供給規程を認可する権限を持つております以上はその内容がやはり妥当でなければならないということは、これは紙に書いた上で以て研究しなければならんと同時に、実情までそこに立入らなければならんということは、これは認可権の責任上必要だと思います。今後はそういうことのないように一つよく検討させまして、そういう実情に合うような供給規程にやつて行かすと同時に、現にそういう不公平なことがあるとしますれば、その供給規程の認可に相当な考えを及ぼして改正するとか、何とかしなければならんと、こう私は考えます。
  122. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は片手落ちにやつておる。この法案だけを出して、只今労働大臣お話には、公衆の利益のために、利益のためにということを言われるけれども、そのために片手落ちではないか。この法案だけを出して事業主、いわゆる資本家側に立つところの人たちに対する法案が更に出されていないじやないか。この点を私はお伺いするのであります。  それからもう一つの、ストライキに介入しない。政府は介入しないと言われるならば、何を以てこの法案を出されるのであるかということを私は伺いたい。片手落ちじやないか。
  123. 中西實

    政府委員(中西實君) 先ほども大臣から申されましたように、この法案は結局第一條にもございますように、公共福祉擁護でございます。片手落ちのお話でございましたけれども、その従業員の職責々々によりまして、ときに公益との調和その他におきまして、争議権の制約を受けることは、これは社会生活上止むを得ない場合であります。現に現行法におきましても、労調法の三十六條は、保安施設、安全施設の正常なる運行を停止する行為をしちやいけない。従つて、いわゆる鉱山のその方面に従事しておる者とを、或いはその他工場におきまして安全施設に従事しております者、これは争議ができないのでございます。やはりその受持つております立場々々によりまして、そういつた関係を生ずるのも止むを得ないのじやないかと、かように存じまして、それだからといつて労使関係が非常に不平等になるとかいうようなことは又恥じやないかというふうに考えております。
  124. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は先ほどから申しましたところは、首尾一貫しておるのであります。事業主に対しての何らの掣肘する法案を作らないで、働く者だけにこれを作るということが先ず重大なる誤りであると考えるのであります。それから公衆の利益のためにと、こう言われますから、先ほどから私が申します通り、公衆は知らず知らずの間に詐欺で莫大なる料金を取られておるのである。この点に対しても今日までの通産省としての私は怠慢を唱えざるを得ない。それを放つて置いて、今ストが起ると電燈を消されるから困るとか何とかいう枝葉なる問題をつかまえて、そうして憲法に規定されたる人権の尊重というところの態度に抵触するものであると私は考える。この点に対して御答弁を願いたい。
  125. 中西實

    政府委員(中西實君) 先ほどから繰返しますが、やはり公益の擁護というところからいろいろと制約が出るのでありまして、この電気事業が非常な公益性の高いものでありますが故に、旧公益事業令、その前には電気事業法というものがありまして、そうして経営者に非常な義務を課しておるわけであります。経営者としましては、あれは旧公益事業令の五十三條或いは三十六條あたりで業務の停廃をできないように義務付けてもございますし、その他いろいろと義務負担を課しておるわけでございます。それに対しましてやはり従業員の労働におきましても、その公益性の高い事業に従事しておる建前から、やはりそれ相応の制約を受けることが、これはやはり当然かと思つておるのでございまして、そこで却つてバランスがとれるというふうに我々としては考えておる次第でございます。
  126. 海野三朗

    ○海野三朗君 この公衆の利益のためにということでこれは掣肘されておりまするが、私が申上げんとするところは、根本の態度を申上げておるのであつて、今困るからこの法案を作る、政府ストライキに介入してはいかんというこの法案を作る、これは筋が通らざるものと考えるのであります。この点を私はお伺いしたい。筋通らざるものである。一方の事業者のほうを掣肘するところの法案なしにストライキをやるということは並大抵のことじやないのである、止むに止まれざるところのものがあるのでありますから、それをよく追究して、そうしてこの調和を図つて行くべきものであると思うのでありまするが、そういう細目に入ることをやめて、とにかくストライキはやつてはいけないのだというようなことをここに法案を出されるということは政府当局の弱体であるということを暴露しておるものであると私は考えられるのでありますが、御所見を承わりたいのである。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はそうは考えておりません。政府が弱体であるなしにかかわらず、争議行為というものは、これはあるのが当然であろうと思います。経済要求を基礎として、労働者が団結して、団体交渉権の一つとしてストライキ権を持つておるのでありまして、これがなくなるということは望ましいには違いありませんが、あつても仕方がないことと思います。ただその場合の争議行為方法として、世の中をまつくらにするような争議行為というものは、これは本来あるべきものでないというふうに思つておるのであります。これは各国におきまして、こうした争議行為というものは、或いは法律によつて禁止し、或いはそういうことは社会通念上やるべきごとじやないというのでやらないのであります。併し昨年の苦い経験がございますし、今先ほどからも申上げたように、現実にその虞れはあるわけでありますから、それでこういう争議方法というものは御達慮願いたい、こういうことなんであります。他に争議行為の手段というものはあると考えますし、調停方法というのもあるのでございます。決して新たに争議行為の大幅な剥奪をする、争議権の剥奪をするというふうには私どもとして考えておりません。
  128. 小林英三

    ○小林英三君 議事進行について。まだほかにも相当質問が残つておりますので、午前中の委員会はこれを以て一つ休憩しまして、午後二時頃から又始められたらどうですか。
  129. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  130. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。  それでは只今お諮り頂きました点を考慮いたしまして、本日はこれにて散会をいたします。    午後零時四十九分散会    —————・—————