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1953-07-27 第16回国会 参議院 地方行政委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十七日(月曜日)    午後二時七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員石黒忠篤君辞任につき、その 補欠として小林武治君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            堀  末治君            館  哲二君    委員            長谷山行毅君            小林 武治君            秋山 長造君            若木 勝藏君            加瀬  完君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部警備部長   山口 喜雄君    自治政務次官  青木  正君   説明員    自治庁行政課長 長野 士郎君   —————————————   本日の会議に付した事件地方自治法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○地方行政の改革に関する調査の件  (日産化学工業株式会社鏡工場労働  争議事件に関する件)   —————————————
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今から地方行政委員会を開会いたします。  地方自治法の一部を改正する法律案を議題に供します。政府委員から御説明をお願いいたします。
  3. 長野士郎

    説明員長野士郎君) それでは地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、逐条につきまして御説明を申上げます。お手許に差上げてあると思いますが、地方自治法の一部を改正する法律案新旧対照表というのがございます。これでお話を申上げるほうが便利だと思いますのでそのようにさして頂きます。
  4. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記をとめて。    午後二時十五分速記中止    ——————————    午後三時三分速記開始
  5. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記を始めて……。  次に日産化学鏡工場事件警察が介入した事件については、すでに五月二十九日の当委員会及び六月二十五日の地方行政労働連合委員会において参考人の公述を聴取し、政府委員等との間に質疑応答を重ねまして、一応事態経過を明らかにすることができましたが、なお重要な若干の点について明確にする必要がありますので、本日齋藤国警長官の御出席を求めました。本件について質疑のあるかたは順次御発言願います。
  6. 秋山長造

    秋山長造君 国警長官にお伺いいたしますが、大体当委員会で二回に亘りまして参考人のかたにも来て頂いて、いろいろ問題を糾明したわけでありますが、この前の労働委員会との連合委員会におきまして、大体はつきりいたしたところによりますと、先ず現地熊本警察隊長におかれましても、又国警本部長官におかれましても、やはりこの問題について、あの場合二百人という警官隊を動員した動機は、決して最初から一方的にピケを破るとか何とかいうようなことではなくして、やはり労農衝突というような不祥事件が万一起ることのないようにという厳正公平な立場から出動したという趣旨であつたにもかかわらず、現地警察署長の公述されたところによりますと、やはり最初からこのピケラインを破る、そうしてその出動動機もこれは警察独自の立場においてということではなくして、あの五月十四日に鏡の町に配られた伝単を見ましても、はつきり販購連のほうの要求によつて警官隊出動したのだというようなことが明らかにされたわけでありますし、又そのとき各委員からの追及に対しまして、小林警察隊長なり又齋藤署長もあの伝単等における最初からの業務妨害という断定的な判断の下に行動した点、それから又警察のばら撒いた二千五百枚の伝単等についても、警察のほうで非常に不用意であつたというような点、それから又国警本部、それから熊本警察隊、それから現地警察署というようなところにやや意思の疏通と言いますか、方針一貫性を欠いておつたというような点、そうして又更にあの防毒面だとか、ガス弾だとかいうようなことがあつたとか、なかつたとかいうような問題、更に又現地において暴力行為があつたとかなかつたとかいうような問題、更に又ピク・ライン合法性の問題、この問題については、その後労働委員会でも専門の学者を呼んでいろいろ糾明をされたようでありますけれども、やはり賛否相半ばしてなかなかあの場合のピケライン業務妨害であつたか、なかつたかという問題は、警察のほうで簡単に業務妨害だと断定しているほど簡単には断定でき兼ねる問題のようであります。そういうようなあれこれの事態が大体明らかになつたようでありますが、その後、警察のほうでも伝単行き過ぎ等については訂正措置を取つて、こちらの委員会を通じて報告をよこすであろうというようなお約束もあつたのですが、未だそういう措置が取られたということを我々は聞いておらないのでありますが、併し当時齋藤長官国警責任者としてあの委員会にも傍聴に見えて御出席になつておられたわけでありまして、私が今くどくど申上げるまでもなく、当日明らかになつたいろいろな点については十分御承知だと思いますが、まあ国警最高責任者としての国警長官において、この問題についてその後どういうような処置をおとりになつたろうかということを一つ先ずお尋ねして見たい。
  7. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 鏡工場の問題につきましては、先般当委員会労働委員会合同の下に証人等もお呼びになりましてお調べになりましたのを、私も或る程度傍聴させて頂いて聞きました。これらの証言等を通じ、又熊本国警隊長及び鏡署長等説明を私更にのちにも直接に聞きまして、私が恐らくこういうような意図でああいうことになつたのであろうと、当委員会において御説明をいたしたのを訂正をしなければならないとは、私は感じてはいないのであります。あの伝単と申しまするか、この用語につきましては私は必ずしも適当ではないものがあると考えております。それは先般委員会指摘をせられたのでありまして、恐らく当時事件の最中に、自分らの警察活動というものがこういう工合になされたのだということを、町民に知らせることが適当であると考えて発したものと思うのでありますが、私は用語に不十分な点があつたと思うのでありまして、十分意思を表わすのには不十分であつて誤解を受ける点があつたと私は見て感じまして、委員会において御指摘せられましたところによりまして、七月二十四日に更にこれを補正をして二千三百枚ほど町内に配つているようでございます。それがまだ正式にこの委員会に御報告してないといたしますならば、少し遅いと思いますが、私のほうには電話連絡でございまするので、或いは正式文書がもう届く頃ではないかと考えております。必要によりましてこれをあとで朗読をさせて御参考に供したいと思つております。又当時出動いたしましたのは、一方的に搬出者、或いは農民の味方、援助をするという趣旨で出たことでは私はないと思つております。その点は十分隊長の言は私は信頼できると思つておるのであります。ただ署長の頭の中には万一協定ができなくて、そうして騒擾事態になるという虞がある場合には、このピケラインというものは不法ピケラインであるから、従つてこのピケラインを排除するということによつて解決するしか途はないだろうという頭を私は持つてつたと思います。それは又当然なことだと思うのであります。できるだけさようなことなしに、穏便のうちに解決をしたいという意図であつたことは、これは私は十分うなずけると思つておるのであります。どうしても話がつかない。そうして出荷者側組合側との間にこのまま放置しておつては、何かことが起つてはいけない、かように考えて私はやつたと、そう信じているのでございます。従いまして私は警察措置は妥当であつたと思つておるのであります。あのピケラインは許された争議行為の一部であるかどうかという点は、これはいろいろ異論もあろうと考えます。考えますが、今までもさような場合にこれは違法であつたという判決もありまするし、この前に御説明いたしましたように、これは会社側出荷をするのを阻止することは不法であるから、そういう阻害をいないようにという、これは別個の仮処分でありましたが、同じような事案について、或る工場においてそういう仮処分もあつたのであります。これを一応違法なりと、かような判断をいたしますことは私は止むを得なかつたと思うのであります。これもただ単に現場の警察がさように勝手に認定したわけではなく、あのときも御説明いたしましたように、事前に検察側とも打合せをした上で、さような解釈に達しておつたのであります。我々といたしましてはこの解釈は妥当な解釈であつたと現在は考えておるのであります。なお警察官が必要以上に暴力をふるつた、そうして怪我をさせたという点につきましては、これは私といたしましては、現地警察調べによりまして、さような事実がないということに一応なつておるのであります。で、この問題は告訴せられておるわけでありますから、従つてその告訴事件糾明検察庁において公正に行われることを期待をいたしまして、私どもはこれを見守つておるのであります。一応我々の調査をしたところでは、警察側の言つておる事柄には嘘がないように私としては考えておるのでございます。一応御報告をいたします。
  8. 秋山長造

    秋山長造君 それでは結局国警長官のお考えでは、この問題については警察側行動は何ら遺憾の点はないという結論になるわけですか。ただ今おつしやつたこの伝単なんかの内容は、警察自体行動については何ら遺憾はないので、伝単はただほんの紙切れに書いて配つたもので、その用語が多少不十分だつたという程度で、大して取るにも足らんことだというような御解釈のようでありますけれども、併しそれはちよつと私は国警責任者としては余り軽くお考えになり過ぎているのではないかと思うので、やはりこの伝単なんかの問題を一つつて見ましても、十三日の警察隊行動と、或いは行動をするに当つて警察指揮者のものの考え方というものと、それから翌日鏡町に巻かれたこの伝単に書かれた文言というようなものは、決して無縁なものでもなければ、別のものでもないので、この前も委員会委員のかたから質問が出ておりましたように、不用意に成るほどこの伝単は書かれたのかも知らんけれども、やはりおのずからこの文言に書かれておるような考え方で、やはり警察のほうも十三日に行動されたという点が大いにあるんではないか。やはりこの今長官のおつしやるところによりましても、この前小林隊長の言うところによりましても、ちよつと厳正公正な立場で何者に頼まれたんでもないほど、それほどはつきりした方針動機警察が出ておられながら、現地指揮に当つた人責任において出した伝単であり、又これもはつきり警察搬出者要請に基いて出動するんだということを、いともはつきりここに書いてあるところを見ますというと、或いは中央におきましては又県の本部におきましては、そういう方針つたかも知れんけれども、それが現地へは極めて不徹底であつて現地のほうは最初から国警長官なり警察隊長なりの大所高所に立つた考えとは相当片寄つた違つた考え方なり動きをしたんではないかということを考えざるを得ないんですけれども、なお且つ国警長官におかれましては、まあそれは紙切れのほんの不用意な書き誤りだぐらいで、これをお済ましになるのかどうかですね。
  9. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先ほど申しますように、私はこの伝単用語に欠くる点があつたと思つておるのであります。このときの第一線警察のこういう伝単を書くときの、筆をとつた者考えは私は必らずしも十分ではないと思います。と申しますのは、組合側から警察のやつたことを盛んに非難をせられて、その非難余りに強かつたものですから、私はこの伝単内容には、組合側警察に対する非難に応えるような、そういう考えが若干私は自然に入つたんじやないだろうか。これは私は警察立場としては十分ではない、かような意味で十分署長も戒しめたのであります。殊にこの妨害を受けている搬出者要請に基いて出動した云々ということに至つては、私は了解しがたいと言つたのでありますが、これは我々としては、何といいますか、不用意であつたが、実は組合側からも当日何が起るかもわからんから出て行つてくれと言つて要請といいますか頼まれておつた、実は両方から頼まれておつたのですと、こういうことでありました。それでまあ両方から頼まれておつたにしても、さような事柄警察が出る、出ないを決したわけじやないのだから、こういうことは蛇足でなかつたか、むしろ却つて公正を疑われる虞れがあつたのじやないかということを私は注意をいたしておつたのであります。今度の訂正伝単は、ちよつと読上げてみましようか。
  10. 内村清次

    委員長内村清次君) どうかそこで読上げて下さい。
  11. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) では読上げます。     鏡町の皆さまへ  去る五月十三日の警察官日産鏡工場えの出働について翌十四日ビラを配布しましたが、文中に意を尽さない処があつて一部に誤解された面もあると思われますので、その点車に敷衍して皆様の御理解を得、今後の御協力をお願い申上げます。  一、警察は如何なる場合においても正常な労働争議にありましては何等これに干与する権限はありませんが、いやしくも不法越権行為と思料するときはこれが取締りの責務がありますので、十三日の場合もこの見解の下に職務執行に当つたのであります。特に当日のピケラインは第三者の正当業務妨害する容疑が充分認められたので最後の手段としてこれを排除したのであります。  二、警察荷主側組合側双方円満解決を念願し極力斡旋の労を執つたのでありますが残念ながら解決をみることができなかつたのであります。  三、警察は常に中正公平な観点から警察本来の使命である治安確保に当るため現実の情勢判断に基いて出働行動したものであります。  四、なお、五月十三日には荷主側組合側両者から警察官出動要請してきた事実もあります。    昭和二十八年七月二十四日      八代地区警察署長  こういうことになつております。これは電送でございまするから、恐らく間違いがないと思いますが、正式にこちらに御報告をいたすと思つております。さようなわけでありまして、私はこの前の伝単自身につきましては、若干遺憾の点があつたということを認めまして、この点署長には直接私から十分注意をいたし、今後の参考にするように十分注意を加えておいた次第でございます。
  12. 若木勝藏

    若木勝藏君 今のに関連して私お尋ねしたいと思いますが、今の長官の御答弁でまあ伝単については幾分用語的にも不適当なところがあるし、又用語ばかりでなしに、今事項を挙げまして、この何といいますか、農民側ですか、販売連側要請に基いて出動したというふうなところなどは、不十分でございますと、不適正であるというふうなことでもあつたのでありますが、私は両委員会を通じて証人の言葉を十分聞取つたのでありますが、その点は非常にただ単なる用語の問題ではなしに、非常にこの出動意図があの問題を惹起した、大きな問題にしました、その意図があの伝単を見れば非常に警察側手落にあつたのじやないか、措置誤りにあつたのじやないかということを深く考えるのであります。今の長官答弁では、ただ単に伝単についての不用意な点を戒めたというような点にとどまつているのでありますけれども、私は今申上げた通り、その伝単が殆んど警察側出動意図をよく現したものである、こういうふうに考える点から考えまして、長官としては伝単用語にとどまらず、その措置に対しても幾分の注意を与えたか、或いは今後もそれに対して与えるところの御意思があるか、この点について伺いたい。
  13. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私も申しまするように、署長出動をいたします際の心構えといたしましては、最後の場合にどういう方法解決するか、最悪の場合にということを考えて、出なければならんと思つております。例えばあそこでいよいよ騒乱のように殴り合いの起るまで手をつけない、そういうような情勢がもう必至になつて来る、どうしても両者の間で妥結ができないというときには、そういつた擾乱が発生する前に、もうこれ以上は妥結の見込みがないというときには、やはり不法と思うほうの不法行為を排除する、そうして未然にそのことを防ぐということが私は必要なことではないか、署長もその考えで出たのであります。従いましてその最後考えだけを抜き出しますと、この伝単のような、あれは不法行為だ、これを排除しなければならんということだけのことになつてしまうと私は思うので、これは併し署長としては、その前後の事柄警察処理の態度というものをもつと前提条件はつきり出しておけば、私はそういう誤解はなかつたと思いますが、その点が欠けておつたために、さような誤解があつたと思う。私は署長にももう当初から、これは会社側、或いは農民側を一方的に応援をするとか、或いは援護するとかいう目的で出たということであるならば、これは誠に不適当なことであつたと思います。かように思いましたので、さようなことがあつたかなかつたかを十分調べたのであります。農民側に対して余り出て来ないようにという指示をどの程度つたか、止むなく、農民側警察が努力したにもかかわらず、ああいう情勢になつて出て来ざるを得なくなつて来たという情勢でありましたので、私は農民側なり、出荷者側の一方的な要請だけで出て来て、そうして彼らの言うことだけを聞いてやつたというようには判断が私はでき得ないのであります。併しそれにしましても、この事件関係者に対しまして、私の意のあるところを十分よく、君たちは私の言つておると同じ考えでやつたんだろうと思うけれども、今後も万々間違いのないように、こういつた場合にはどちらにも介入しない、警察警察としての立場からただ治安、或いは治安確保、或いは不法行為なり犯罪の未然防止、或いはこれの鎮圧、検挙ということを純粋の立場からのみ考えなければいけないということを十分その機会にも話をいたしておきました。ここで私が御答弁を申上げております趣旨は十分徹底しておると考えております。
  14. 若木勝藏

    若木勝藏君 それで大体長官の御意図はわかりましたけれども、私はあの当時の証人の言を通じましてあの場合におけるところの向うの国警隊長も、又警察署長も、争議行為というようなものは、争議というようなものについての余り確固とした知識を持つておらないのではないかという気持がするのであります。それから事態処理につきましても、非常にそういうところに手ぬかりがあるようにも思うのでございます。あれだけ一体大きな問題になつて、そうして警官の暴行によつて怪我人が起きたということが問題視されておる場合に、それがどういうふうな経過によつてどういう方法によつて行われたかというのに対する調査すら何も警官についてやつておらない。それを私は質問して速記録には載つておりますが、やつておらない。それから負傷者についてどういうふうに取計つたか、それもさつぱりやつておらない、調査も疎漏になつておるのであります。そういう点、或いは伝単関係、これは御本人も又小林警察隊長もその責任を認めておるのでございますが、そういう点についても非常に不適正なやり方をしておる。これは御本人も認めておるのですから、はつきりしておることであると思います。又警官も今の御答弁でそのことは認めておられるようでございますが、非常にそういう点において私は警官としての業務上的確な一つ考えと、それから或いは措置をとれなかつたところに、あの問題が起つておるのではないかというふうに考えておりますが、その点はいろいろ御注意を与えたということになつておりますけれども、重ねて長官の御所見を承わりたいと思います。
  15. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 争議行為に対処する場合の警察心構えという点は、私ども普段からよく説明と言いますか、訓示と言いますか、徹底を図つておるのでありますが、只今指摘になりましたように、田舎のほうでは普段余りないものですから、或いは場合によつては、第一線警察署あたりで、ふいに大きな事件が起りますと、十分細かいところまで気を遣うことが行きかねる点が全然ないとは私言い切れないと思います。その点は、さようでありますから、我々そういうことを大きな事件が起りそうなときには、よく中央から注意を与えるのでありますが、本当に細かい点まで心を配つて全く非難のうちどころのないようにするということは相当むずかしいのであります。或る場合には組合側のほうからお叱りを受ける、或る場合には使用者側から手ぬるいといつてお叱りを受ける。どちらからもお叱りを受けないで切り抜くということは非常に私はむずかしいことと思つておるのであります。今の御意見も、さぞそういう見方からは、何と言いますか、はがゆい点もあつた。かように御覧になるのも私は尤もだろうと思つておるのであります。私どもといたしましては、こういつた事柄がありますたびに、これを更に強固にいたしまして、先ほど申しましたように、大筋におきましては私は妥当であつた警察は非常な見当違いな取締をやつたとは思えませんが、その大筋の妥当な線においてやつた中にも、更にもつと心を配つて細かい点において今後はこういうふうに気を付けなければならんということは、そのたびに反省を加えさせております。御意見に副うようにやつて参りたいと思つておるのであります。  なお怪我人の点につきましては、これは警察側で一応いろいろ調べるようでありますけれども、むしろ反証のほうが警察側に多くありまして、告訴状には警察官に殴られたということでありましても、警察の見てた者から言うと、あの人は自分でトラックの前にすべり込んで怪我をしたのだというような反証を持つておるのでありますが、先ず何よりもやはり怪我をされたという原告側のかたからいろいろ証拠を出して頂くということが、事件を明らかにする一番いい方法だと思つておるのであります。警察側検察のほうと連絡いたしまして、十分そういう調査をしてもらうように頼んでおるのであります。当時聞きましたところでは、原告側のほうから出て来て積極的にいろいろ証拠を挙げて説明をして下さるという段階になつていないようでありまして、私どもといたしましては原告側のほうからもつと進んでいろいろ証拠を、或いは証言をお出してして頂いて、そしてこういうような怪我をした、それを立証するのは、かくかくだという証拠をお出し頂くことを、むしろ期待をいたしておるのであります。決して私のほうは責任逃れでさように申しておるのではございません。その点は御了承を頂きたいと思います。
  16. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の負傷されたとか、警官の暴行問題は御説明があつたように告訴されて検察官側のほうに移つておりますから、いずれその結果が出るだろうと思います。まあ今の長官お話では、大筋ではこれはその措置誤りはなかつたけれども、実際のいわゆる取扱上の種々な点においては確かにまあ至らない点があつたことは考えられるとこういうようなお話でありましたが、この大筋についての措置は妥当かどうかということについては、これは争議行為のいわゆるピケラインの問題で、まあいろいろな考え方があると思うのでありまするが、まあ私としてはちよつと行過ぎがあるのじやないかと、こういうふうに考えております。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 今若木委員から出ました問題で私も大筋において法解釈誤りがあるのじやないかという見解をとるものであります。で、前後二回の委員会を通じまして国警本部説明を承わりますと、肥料を運び出す行為を阻害しておるのは正当な業務行為の範囲を逸脱しておるという意見に一応なつた肥料搬出行為会社の正当な行為であり、これを阻止することは正当な争議行為ではないから、それを妨害してはいけないという裁判所の仮執行の決定もあることでありますし、とこういうふうに言つております。又現地警察の公示によりますと、出荷妨害をやめよ、農家の渇望する肥料出荷を阻止することは、明らかに適当な争議行為を逸脱した業務妨害である、こうも言つております。又国警長官は当時仮処分がなされ、すでにそれが有効になつたということは、そういうピケ業務妨害行為であるということを裁判所が一応認定をしている、従つてそれは正当な争議行為ではない。この基準に基いて行動することは当然なことであろう、こうも御見解をもらしておるのであります。更に言葉を継ぎまして、警察業務妨害行為いわゆる争議に許された正当争議行為ではない、かように判断いたしたのは、これは当然だと思います。若しこのときにさような仮決定がなされておらなかつたならば、私は非常に事情が違つてつたのではないかと、かように考えておりますとも長官説明を付け加えられておるのでございますが、本日の御説明の中にも仮処分のことが二、三度出て参つたのでございますが、この前も私はこれで伺つたのでありますが、この仮処分は組合は申請人会社が八代郡鏡町所在鏡工場より化学肥料を搬出する行為を妨げてはならないというのであります。従いましてこれは搬出当事者は会社以外のものではないはずでありますし、売渡行為をさしてはおらないというふうに解釈すべきじやないかと思うのであります。なお熊本国警隊長ピケラインによつて第三者の業務妨害が成立するのじやないかと解釈をいたしまして、仮処分という問題よりも第三者の業務妨害が成立するという解釈をしたんだという御説明であつたのでありますが、業務妨害だということになりますと、これは会社業務妨害したというふうになるのかと伺いましたのに対して、そうではない、搬出者業務妨害だ、当然搬出者業務行為が成立するんだという、その当時は御説明でありました。で、私はいろいろ調べて見ましたところが、農民の直接取引という慣例はございません。よろしゆうございますか、農民の直接取引という慣例はございません。それから鏡工場熊本販購連の直接契約はありません。全購連と日産化学との間に契約が取交されているのでございまして、熊本販購連と鏡工場との間に契約はないのであります。更に全購連は再三指令を出しまして、工場合に庫からの直接取引を禁じているのであります。これは重要なことだと思うのでありますが、全購連はたびたび指令を出しまして工場合に庫から販購連が直接取引をすることは固く禁じているのであります。そういたしますと、残つている問題はこの熊本販購連と鏡工場の間には、或いはこの取りに参りました農民鏡工場との間には、なんらの商行為の契約がないわけでございますので、そういう者が取りに来たと言つて、これを、一体この搬出者を、一般に広く参りました搬出者というものに対しまして業務行為というふうに認めることは甚だおかしい。そういたしますと、残つている問題は会社がこの者達に引取の委託をしたかどうかという問題であります。で、これは農民参考人は引取を委託したと言つていますし、工場長は引取の委託をした覚えはないと言つているのであります。仮りに引取を委託したといたしましても、普通の形態を持たないで参りました引取行為というものを、これを商行為におけるところの事実行為と認めることができるかという問題があると思います。こういう点を十二分に警察側は一体調査いたしまして、この事実行為業務行為であり、この業務行為に対するピケ業務行為妨害であるという判定を下したのであろうかという私は疑点を持ちました。今のような内容から、私にはどうしても業務行為が成立するとは考えられないのでありますが、警察側の御見解を承わりたいと思います。
  18. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今業務妨害になるかならないか、細い法律論でございますので、一応山口政府委員から申させます。
  19. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 熊本の購連と日産の熊本工場との間にはそういう取引の契約は直接にはいたしておりませんが、系統団体としての全購連がありまして、それが日産と契約して、そうして全購連が一々各単位の購連に対しまして指示をして、そうしてその指示があれば工場側で引渡す、こういう慣行が前から御承知のようにずつとあるわけであります。而も熊本の購連は鏡工場から自分のところの車を持つて或いは第三者の車をして肥料を運び出させるということは慣行として従前からあつたわけなのであります。そういうわけで私はこの全購連の熊本の支部が運び出します行為につきましても業務行為ができ、そこにそれを若し妨害をすれば犯罪関係ができる。かように考えております。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 そこで問題は、この場合、全購連の本社からはどうしても鏡工場肥料を至急搬出せよという指令は出ておらないはずであります。又般的にこういうふうに全購連なり或いは単位農協なりが工場と直接取引をするような傾向がありますので、それを禁じておるところの全購連の指示が各都道府県の販購連には何回か行つておるはずであります。直接工場から取引をしてはならないという指示が行つておるはずであります。そうすると、全購連と日産化学の間における業務行為というものは、日産化学が全購連の指定する所に物を運んで行くことが正常行為であつて、今度のように全購連が禁じておる態勢で持つて来ることを全購連の業務行為と見ることはできないという解釈が当然成り立つと思うのでありますが、この点……。
  21. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) その点につきましては、九州地方の全購連関係出荷その他について指示をいたします。のに、下関の営業所があるわけであります。その下関の営業所から指示が出ておりますのみならず、争議当時、その権限を持ちました課長が現地に行きまして、そういう指示を熊本の購連に出しておると、こういうように私は伺つております。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 この全購連の出先からその指示を出しておるのではなくて、日産化学の下関出張所でございますが、そこからその課長がトラツクにまで肥料を積んでお帰しするのが建前でありますけれども、それだけの手が不足しておる。然らばどうすればよいかというような相談もありまして、引取りを要請したと言つておるのでございますが、それに対して宮崎工場長は、私は十三日の出荷のことについては相談を受けておらないと、こう言つておるのであります。従いまして、全購連の系統から命令が出ておらないので、熊本の販購連が独自な立場で動いたとしか解釈できない。而もそれが全購連として禁じておる動き方をしておるということに対しまして、私は全購連の業務行為というふうに認めることはできない。
  23. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 下関の問題は、私は感違いしました。あれは日産の営業所であります。そのほかにこれを運び出そうとしましたのは、前から売買と言いますか、引取るということになつておりましたものを取りに行つたのであります。従つて、そのときに急に熊本の購連が何も指示もないのに突然に取りに行つたということでなしに、前々からずつと本部の指示に基いて引取ることになつておるのである、そうして前から残つておる分について引取りに行つたと、こういうのが実情であろうと思います。
  24. 加瀬完

    加瀬完君 それはおかしいです。なぜならば、鏡工場の分なのでありまして、熊本販購連が契約をしておるという契約にはなつておらない。全購連が日産化学に対して本年度の上半期の施肥期までに肥料幾らくという契約であるはずでありまするので、鏡工場にある分が幾ら幾ら熊本販購連のもので、或いは幾ら幾ら福岡販購連のものであるということにはなつておらないはずであります。従いまして、一番初めの全購連の森さんが参りましたときの説明の中にも、この工場がこういうふうにストライキが長くなるならば、ほかのほうから肥料を廻すということも全購連としては当然考えなければならなかつたというふうに、今では手抜りであつたというふうに反省をしておるというふうにお話もあつたわけでありまして、そうなつて参りますると熊本販購連と鏡工場というものとの間に特殊な契約というものが存在しておるというふうな前提の下にこの問題を解釈して行くことは間違つておるのではないかと私は思うのであります。
  25. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) その間に契約があるなしにかかわらず、事実上それを引取る業務が慣行としてあつて、そうしてその業務が実際上何か若し違法な方法によつて阻害されるという場合には、契約がその現地においてあるなしにかかわらず、業務上の妨害と、こういう問題が出て来るのではないかと考えております。
  26. 加瀬完

    加瀬完君 そこをよく警察側でも御調査を頂きたいと思うのは、全購連では直接会社工場の倉庫からの引渡しということをするなというふうに禁じておるのです。ところがこの場合、熊本販購連は工場の倉庫に取りに行つた工場の倉庫に直接取りに行くということを全購連は禁止しておるのです。そうすれば、全購連の輩下にあるところの熊本販購連の業務行為というものは、契約当事者の全購連が禁じておるような行為をしておるのでありますから、これを商法上の業務行為と認めることはできないという見解が当然成り立つと思う。その点お調べになつておらないでしようか。
  27. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 全購連が禁止しておるかどうか、これはもう一度調べたいと思います。全購連が明らかに禁じておるかどうか……。ただそういう場合に、従来から日産の工場から熊本の購連が肥料自分の車で運び出すということは、もう慣行として従前から行われておるのであつて、而も組合側から、この日通その他の業者が引取りに来るだけでなしに、農民みずから来れば出そうというようなことがあつて、まあ出て行つたといういきさつもあるのであります。私どもとしましては、従来からそういう慣行があり、業務状態があるところに妨害が行われれば、業務上の妨害の容疑が出て来ると、かように考えておるのであります。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 商行為における場合には、慣行というものが最も重要視されるわけでありまするので、そこで仮に一歩譲りまして、あなたのおつしやるようにこれが平生行われておつた慣行だとして、業務行為が一応成り立つと仮に考えたといたしましてもですよ、その引取りの形式というものが、毎年行なつておるところの慣行と甚だしく変つた形を以て行われる場合にも、絶対正常なる業務行為と認められるかという新らしい問題が残ると思う。と申しまするのは、大体一つのトラックには二人なり多くとも三人なりの上乗りという人数しか乗つて来ていないと思う。この場合二十数台もの自動車に四百人もの多勢の人たちが乗りまして、その人たちは普段こういう荷物の取扱いをしておる人たちではない、特殊な人たちなんです。そういう者たちが自動車に乗つて参りましたことを商行為におけるところの一体これが業務行為だというふうに認めることにどれだけ正当性があるのだろうかということを私どもは先ず考えるのです。その点警察側見解を伺いたい。
  29. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今非常に詳細に亘つて法律論を御展開に相成りましたが、この点は我々のほうといたしましても、更に事実をよく調べてみたいと存じます。ただ当時の状況といたしまして、県購連のほうから取りに来る、それを出させないというので数日間揉んでおつたわけであります。そこでその際に会社側のほうから、あれは私のほうの肥料を渡す相手方じやありませんということであれば、私は問題はないと思う。又組合側からも県購連は農民の人を上乗りに乗せて来ておるけれども、あれはこの小を渡す相手方じやないということであれば、私は問題は今おつしやる通り簡単であつたろうと思うのであります。ところが会社側も当然渡すべきものだと信じておる、又組合側も渡すべきものだと、さればこそ、もう一日待つてくれ或いはもう三日待つてくれと言うので、だんだん納期が遅れて来たわけでありまして、組合側でも会社側でも引取りに来たものには当然渡すべきもの、引取りに来るものも当然引取れる法律上の状態にあるものという前提であつたわけでありますから、その事実に基いて、その搬出をどこまでもピケを張つて阻止をするというのは、これは正当な業務妨害であるところ判断をいたしましたことは、私は当時の状況としては当然であつたのじやないかと、かように申上げるのであります。従つてこの妨害行為それ自身を、更にこの妨害を企てたものを立件をするかどうかということになりますると、もつと今おつしやるような事柄も、もう少し研究をする余地もあろうかと、私は今お話を承わつてそういう感じをいたしたのであります。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 長官のお言葉は少し私には腑に落ちないのであります。なぜなら組合側と言つてもこれは法律には素人なんです。会社側と言つても、警察側から見ますれば、法律には素人なんです。そこで合法的な行為というものの指導というものが、警察側の任務として当然行われなければならない。それを業務行為という形で肥料を取りに来るのに、何百人の者がトラツクに乗つてねじり鉢巻をしてやつて来るというものを、業務行為の実態として正しいかという点については、これは業務行為として正当に見ることはできないので、おのずと慣行上許される業務行為の形体をとつて来るようにという指示なり指導なりというのは、警察側で当然行われなければならなかつたはずだと思う。会社側が取りに来いと言つて肥料を渡そうとしている、又熊本販購連は肥料を取ろうというので大勢やつて来た、渡そうとするし、取りに来た者があるんだから、その形がどういう形であろうとも、これは商行為が当然成立しておるんだという考え方というのは、少し私は腑に落ちない。商行為という一つの法律行為が行われるには、行われる正常なる条件というものは当然あるべきはずなんです。正常なる条件じやない、何百人の者がもう異様な形をしてやつて来ておるものを、これを普通の慣習上の商行為と見ることはできない。そういう姿というものを一応平穏に帰して話合いで、或いは法律的な手続というものによつて業務行為というものは当然行われるべき、警察側の指導が当然あつていいと思う。こういう点私は手抜かりであつたと思うのですが、如何でしようか。
  31. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) お言葉を返して甚だ失礼だと存じますが、この争議の起りました途中から渡す渡させないという問題があつたわけでございます。で、若し手を組んだりして……、一方会社は当然に渡していたと実は思うのです。その渡した行為は、これは会社は渡すべからざるものを渡すべからざるものに渡したということにはならないのじやないか、当時そういう私は状況であつたと思うのであります。で、正当な債権者であつたかなかつたかということよりも、そのときの社会通念から見て、肥料を渡してくれというものと渡そうというものとの間に何も争いがないならば、私は当然これは渡してくれというものは引取れる状態に置かれておる。又会社も渡すという意思を持つてつたわけでありますから、それは全購連の内部規則にどういうことがあつたか私はそれは存じませんが、そこまで警察調べてからでなければ、措置ができないということであれば、こうした現場の措置としては余り私は難きを強いることになりはしないか。例えば一般の商店において労働争議が起る、そこでお客さんを全部阻止するためにピケを張る、お客さんが一人も入れないようにする、これはお客さんが商店に物を買いに行くという商談は、成立しておるわけでも何でもありませんが、普通の状態ならば、お客さんはそこへ買いに行くというときに、それを買いに来させないというのを、威力を以てやつたということになれば、これは会社業務妨害になるわけであります。さような見地から広く考えまして、私は警察検察も、業務妨害が成立すると、かように判断したことは、誤りではないと考えます。
  32. 加瀬完

    加瀬完君 それならば銀行が取付けに合いますね、取付けに合いますと、大勢の預金者が押寄せて参りますね、そのとき、銀行員が現在物件というものを守る行為業務妨害になりますか。いろいろ銀行の中にあります物件を銀行員が護ることが業務妨害になりますか。
  33. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 取付けというその状態如何でありますが、場合によると、銀行ぶち壊しをやられるかも知れないというようなときに、銀行員の人たちが、防禦の処置をとられるということは、これは私は正当なことだと思います。さような取付けのような場合には、ぶち壊しが起りそうな場合には、やはり今度は取付けに来た大衆、民衆と言いますか、その人がそういう乱暴を起さないように、警察も又措置をしなければならないと思います。そうでなくて銀行の行員がストをやる、そうして正常な銀行の預金者なり或いは金を借りようという人の来るのを、ピケを張つてどうしても入れないということになれば、これは正当業務妨害が成立すると思います。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 この場合、労働組合としては、自分たちの賃金要求をしているわけでありますから、賃金要求の裏付けになるところの会社の財産というものを、会社の自由な搬出に任せないで、労働組合が確保して自分たちの物件を守るということは、労働組合においては当然なことと思う。倉庫の中にありまするところの肥料というものを、会社が自由に搬出させることを防禦することも、労働組合としては当然なことと思うのであります。労働組合にはそういうふうに一つの権利的な裏付がある、ところがとりに来ましたところの販購連には、私の調査によりますれば、何ら法的な裏付がない、法的な裏付のないもののとりに来たことを、警察が庇護をして、法的な裏付のあるところの労働組合の行為というものを、一方的に除去するということのように私には考えられで、法の解釈がどうも妥当性を欠くというようにしか思えない。
  35. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 非常によくわかりました。先ほど銀行の取付の場合に、物件を守るというのは、この物件を特つていかれると自分らの賃金を払われる元がなくなつてしまうから、それを防禦するのだという意味においては、私はちよつと、これはどうかと思います。むしろそうではなくて、会社の行員として、会社の財産が不当に毀損されるということを妨たげる、不当に毀損されないように守るということは、これは私は当然のことだと思うわけでありますが、労働争議やなんかの場合に、その会社の使用者が、自分会社のものをよそへ売られる、売られてしまうと、あと賃金が払われなくなるかも知れない、それだから売られるという行為をどこまでも阻止するのだというのは、場合によつては、私は正当な妨害に当然なると思う。さような意味から私はお答えしたのであります。
  36. 秋山長造

    秋山長造君 ちよつと今のに関連して、今の長官お話は、今の場合業務妨害になるという御判断ですか、ならないというのですか、例えばさような場合、百貨店なんかの労働争議があつて、ヒケを張つている場合、さつきおつしやつた、お客さんが来るのをとめたら業務妨害が成立するという、今の会社に何か物を買いに来るのをそのままにしておいたら、自分の賃金の元が減つてしまうから、だからそれでは困るというので、ピケを張る。その場合はピケ合法性が認められるということにならねば、ちよつと筋がおかしいのではないか。
  37. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私はその場合にはピケの合法制は認められないと、かように考えております。
  38. 秋山長造

    秋山長造君 ではやはり業務妨害になるのですか。
  39. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 妨害になる。
  40. 秋山長造

    秋山長造君 そうですが。
  41. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) それは先ほど加瀬さんがおつしやいましたが、ストライキを守るために、会社の製品が搬出されることを防ぐ権利が組合側にある、こういうようにおつしやいましたが、それは如何なる行為を以てしてもそういう搬出を妨げ得るというのではなくして、やはり一定の限度内における私は問題だろうと思う。従つて製品の搬出を妨げるために、例えばピケを張るというような具体的な行為が出て来る。その場合に、そういう或る状態のピケを以て搬出を妨げることが業務上の妨害になるかどうかという、判断を具体的な場合においてすべきものだと、こういうように思います。従つて先ほどおつしやいましたように、業務妨害のために用いる手段の態様なり、具体的な事情なりによつてきまるのであります。私どもといたしましては、それは飽くまでも平和的であり、平和的と申しますか、相手を説得するというところ以上に出ては工合が悪い、まあこういうように考えております。
  42. 秋山長造

    秋山長造君 今の警備部長の御説明なら私はいいと思う。そうだと思うので、ちよつとさつき長官のおつしやつたのは、少しはつきりこれは業務妨害だという断定を強くし過ぎておられるのじやないかと思いますので、これはまあいろいろなピケ合法性についての判例を十分私もこの間から、この問題が出てから読んだのですよ。ところがさつき齋藤長官のおつしやるように、これはそうはつきりした、商店なんかで店員がピケを張つて、何かお客がやつて来て物を持ち出すのを防ぐためにピケを張るのは、これははつきりと業務妨害だと断定はできないのですね、判決を読むと。やはりその場合の具体的ないろいろな条件なり、又限度によつてやはり違法だとか、合法だとかいうやはり判決を下しているようですね。
  43. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私も只今おつしやるのと全く変りはないのであります、山口部長の言つたのと。ただピケを張るという、私の申しますのは威力を以て無理にどうしてもさせないという種類のものを言つておりますので、その点はちつとも食い違つておりません。又お尋ねの御意見と同じでございます。
  44. 加瀬完

    加瀬完君 それからさつき長官は、会社側も品物を渡そうとしているのだ、それで販購連側も取りに来ておるのだから、当然これは渡そう、私も取りに来たのだもらおうということで、そこの商取引の行為は正当ではないかという意味のお話があつたのですが、そのときの状況というものを考えてみますと、この工場長の陳述の前後を考えまして、工場長は何とかして組合とそれから農民側工場側と、三者の円滑妥協というものができ得ないかというふうに大分苦慮していることがわかるのであります。そういたしましてみると、組合の意思というものをむげにしりぞけて、品物を一方に、農民側に渡してやろうという意思はなかつたように思われる。それがせつぱ詰つてどうしても品物を渡さなければならなかつた、という状況は、大勢農民たちが押し寄せて、有形無形の圧力というものを加えて来た。その結論として、工場側でも事態ここまで来てはもう組合の言い分ばかりもかまつておれないから、肥料を出さざるを得ないというふうに変化して来たのではないか。そうすると、それは正常なる商行為とか或いは契約関係ではなくて 一つの有形無形の圧迫を加えて、心にもなく肥料を早速に出さざるを得なかつたというふうにも極論すれば言えると思う。そういう状態における商行為というものを、これを正常なる業務行為と見ることはどうも妥当でないというふうに私にはどうしても思われる。一歩仮に議論を進めさせて頂くならば、それならば今後の労働組合の争議というものを、四百人で足りなかつたら千人、千人で足りなかつたら二千人というふうにして、まあこういうふうに大部隊を送るならば、それは全部業務妨害として、ピケでも、或いはほかの労働争議というものが全部違法だというふうになるという一つの傾向すらも暗示しているのです、この問題は。そういう点についてどうお考えになるか、如何でしよう。
  45. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 会社側仮処分の申請もしておりますし、相手がたが取りに来れば渡すという意思はもう明らかにしておるわけであります。ただそれがうまく渡せない。争議経過から見て、事を荒立ててはいけないというので、まあ三者話合いをして、渡したいという考えは持つてつたと思いますが、その場合の行為は普通の場合の取引において渡すというのと根本において違わない。その場合だけ何か特殊のようにお考えになつておられるようですが、その点はどうも多少私はどうであろうかと思うのであります。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 併しまあ何百人というものが、工場の倉庫の入口に群つて、わあわあがあがあ騒いで肥料を出せ、打ち殺してしまうというふうに怒号しておる形において、出すか出さないかと、交渉が進められておるのを、これを普通の正常なる商行為関係だと認めるのは、どうも認めるほうが無理じやないですか。それからもう一つの点は、いつでもこういうことを業務行為とみなすというならば、絶対にもうピケを張つて労働組合が自分の線を守るというふうなことは存在しないということになつてしまう。それについてのお考えを。
  47. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 労働組合の方方が、例えば罷業をしておられる際に、組合員が罷業破りを禁ずるというようなためにピケを張る。或いはその会社に物を買いに来る、売りに行く、これを妨げるという意味でピケを張るというような場合に、先ほど申しましたように、自分のほうはこういうわけで今罷業をやつているのだ、それだから一つ皆さんそれに同調して御遠慮してもらいたいという程度は、これは差支えないのですが、併しそれを程度を越えて威力を用いたり、或いは暴行、脅迫というようなことで、これを阻止するということになると、これは合法性を失うということになると我々は解釈せざるを得ないと思うのであります。先ほども、四百人、五百人押掛けて来て、そうして渡せ渡せと言つておるのは正常な商行為かとおつしやいますが、これはそういつたピケがなければスムースに渡せるものを、ピケのためにどうしても取引ができない。そこで待兼ねた農民も一緒になつて大勢押掛けて来て、渡せ渡せ、こうなつたのであつて、初めから大勢押掛けて渡せと言つて来た、最初からそういうようなことであるならば、これはむしろ威力を用いて渡せと迫つて来たのであつて、渡すべきものでもないのに、威力を用いて大勢でとりに来たということ、これはとりに来たほうが違法行為になります。鏡工場の場合には私はそういう事項ではないと思います。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 そこがおかしいと思うのです。ピケを張つてピケというのは、ピケそのもので、合法、非合法というものはまだない。一応合法であるべきなんだ。労働争議というものがあつて争議権を行使するためにピケを張つた労働争議がありまするから、品物の授受がスムースに行きませんから、大勢の人が品物を渡してくれと言つて押寄せて来た、併しながら労働争議中だから、品物の授受がスムースに行かないのは当然のことなんです。従いましてそこで業務行為というものを考えるならば、その労働争議というものの権利というものを蹂躪しない業務行為でなければ業務行為の成立はあり得ない。ところがそこでその行なわれておる商行為は、長官の言葉を借りて言えば、大勢のものが押寄せて来て暴行したりして、商行為を敢行しておる。その場合一体とめなければならないのは、暴行や脅迫を用いて事実行為による商行為の敢行を迫つておるとの押寄せて参りましたこの連中なのか。ピケを張つて労働争議を敢行しておるところの労働組合なのか。私はただ労働組合のピケが非合法で、こちらが合法だという今までの説明では、とても肯けないのです。債権者でないことははつきりしておるのですが。
  49. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先ほどから申しておりますように、会社側は渡すべき相手だと、こう認めております。組合側も又渡すべき相手だ、こう認めております。ただ時期をもう少し待つてくれ、もう少し待つてくれと言つて長引いておりますから、従つてもう待てないということになつて来る。それで勿論罷業自身のために、品物の授受が不円滑になるということは、これはもう止むを得ないことで、それは非合法でも何でもないと思いますが、罷業ではなくして、積極的に或る行為を阻止しようということになつて参りますと、これが度が過ぎて或いはスクラムを組んで、どうしても有形的な力によつて正当な受渡しをさせないようにするということになり、私は非合法性がどうしても出て来る、こう判断せざるを得ないと思います。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 それでは警察のほうに逆に聞きますが、この人たちが、もう少し説明を加えますと、会社も品物を渡すと言い、労働組合も渡すと言つておりますが、労働組合が、全購連がこういう指令を出しておるし、又この契約関係が全購連と日産化学の間で取交されたもので、熊本販購連と鏡工場との間の契約関係というものはない、こういう法律関係はわからないと思うのです。ただ行掛りでお前たちボスが来ては渡さないぞ、本当に肥料が要るならば、現場の百姓を連れて来いと言つたので、そういう言葉をとらえて、百姓を連れて来れば渡すと労働組合も言つておるのじやないかというお言葉であつたと思いますので、これはまあ交渉の過程の売言葉に買言葉であつて、それが法律的にどうこうという内容の事実にはならないと思う。そこで問題になりますのは、今申上げました通り、私ども調査では、熊本販購連は何らここに荷物を取りに来るところの権利はないわけなんです。これが業務行為として成立するということは会社側から委託があつた場合。そこで警察側に伺いますが、とりに参りました自動車、とりに来ました人たちが確かに会社から荷物搬出の依頼書を受けておるという何か証拠があるのですか。
  51. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私はそこまで調べておりませんが、現実にその肥料会社が全部あとで渡しておるわけであります。この渡したことは、会社側は債権者でないけれども、渡してしまつたというようなことの問題も起つていない、そこから見ますと、会社は当然あとで渡すべきものを渡したというふうに、さように考えております。警察側もさように考えております。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 それは、会社側は全購連から契約で金をとつて請負契約の形になつておるわけですから、誰に渡そうと会社の損にはならないわけです。そこで工場そのものが脅迫や暴行を受けるような態勢で、たくさんの農民に押寄せられたのだから渡してしまえというので、会社は恐らく渡したと思うのでありますけれども、さつき言つたように、そうであつたとするならば、殆んど暴行、脅迫構えの態度で品物の取りに来ておる、これは事実でしよう。これを普通の商行為と見ることはおかしいと私は考えるのです。
  53. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) これは見解の相違になるかわかりませんが、県購連が農民側を連れて、そうして暴行、脅迫で肥料を持ち帰つたのだということであればこれは穏当でない、のみならず、これは犯罪が成立すると私は思います。併し会社側からそういう訴えもなし、金は恐らく県購連を通じて払うわけでありましよう。これは当然です。取引の一つ内容を実現した、こう会社考えておることだと思う。我我警察側もさように考えております。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、こういうふうな異常行為というものを全部正常な業務行為国警は今後見て行くという見解でございますか。
  55. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) これはその場合場合によつて、場合々々と申しますか、ただ異常行為でもとおつしやいますと、さようでございますというわけにも参りません。当初から全然引取りの権限のないものが、スト破りをやつてやろうということで威力を用いて、そこに押掛けて来たというような場合には、これは押掛けて来るほうを警察は排除しなければならないと思います。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 この場合です。この場合のごとき方法を全部正当行為なりとお認めなさるのでしようか。
  57. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) この通りの場合であるならば、私は結論は同じだと思つております。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 もう一度申上げますが、会社から正式な依頼も受けておらない、所有権もあいまいだ、ただ、農民だから肥料がほしい、施肥期に肥料のストライキをやつておるとは何ごとだというので、或いは酒気を帯びて或いは異様な恰好をして一台の定員外の形でたくさん乗り込んで押寄せて参りましたものを、全部正しい業務行為だというふうな御見解で、今後徹して国警は行くのですね。
  59. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今お述べになりました設例は私はこの場合とは違うわけです。
  60. 加瀬完

    加瀬完君 この場合ですよ。
  61. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 初めから引取りの契約も慣行も何もないという者が、ストをやつてつて、罷業行為をやつて怪しからんというので、肥料を寄こせと言つて押しかけて来た。これはいけません、これはそのほうを警察は阻止をしなければならんと思う、かように思つております。
  62. 加瀬完

    加瀬完君 さつき伺いましたように、所有権がないということははつきりしているのです。会社から依頼を受けた証拠書類でも何でも持つていたかということ、それを警察は確かめていない。酒気を帯びていたこともはつきりしている、一台の自動車の上乗りの二、三人を遥かに超えて二十数台に四百人が乗つて来たということもはつきりしている、これだけはつきりしておつて、一体これを正常行為とどうして認められるのですか、私どもは思うのですけれども、それを警察側では正常行為としてお認めになつた、そういう形で今後やられることは全部正常行為とお認めになるのか。
  63. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 要点は先ほど申しております通り、現実に全購連からそういう指揮があつて来たかどうかはわかりませんが、会社側としても当然渡すべき相手方なりと、かように判断し、組合側もそうだと、そう思つてつたという場合には、これは商法上、法律上言いますと、どういう行為になるか存じませんが、通常のまあ社会的に見て取引きをするお互いの関係者と、こう認めておつたわけでありますから、さような慣行その他によつて、通常取引きする相手方であるということであるならば、私は止むを得ないのじやないかとかように存じます。
  64. 加瀬完

    加瀬完君 あの目星産業のトラックが普通一般の二、三人の上乗りを連れていつものように取りに来たというならば、これはそうお認めなさるのも御尤もだと思うのであります。併し二十六台か七台の自動車に四百人もの人間が乗つて来たということははつきりしておる。おかしいと思うのは警察がそれが正式な一体引取る権利のある者かどうかということを一つも検討しておらないで、ただ引取人は正当だ、ピケを張つているのは非合法だから、お前らどけ、そうして荷物を運び出させるのに援助している、ここは少し早計じやないかと思うのです。
  65. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今の法律論から御覧になれば、確かにさようであつたろうと思うのであります。私は併したびたび申上げておりますように、正当な引取人であるかないかという疑問が、当時そこでどこにもなかつたわけなんですね。
  66. 加瀬完

    加瀬完君 そんなことはないですよ。
  67. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私はさように聞いておるのであります。これは引渡すべき相手方でないということを会社側も言わず、そういつたことが論議に私はなつていなかつたと、かように存じます。
  68. 内村清次

    委員長内村清次君) 国警長官、その点に対しては委員長としとちよつと今関連がありますから申上げますが、これは御承知のごとく、日産化学の本社、それから同時に又その労働組合との争議行為、それがその支部関係にやはり全国的な規模においてこの争議が展開されておつたわけですね、そうしますると、支部の労働組合というものは、やはり本部の組合の指令によつて動いておつた、そうして何日から何々のストライキをやれ、何日から何々の工場のストライキをやれと、こういうふうに動いておつたわけですね、同時に又肥料搬出行為もこれはやはり堅持して行かなくちやいかない、争議手段の行為として行かなくちやいかんというのが、これがやはり対抗手段として指令されて来ておつたわけですね。ところが現地においては、三役の、当時のこれはどちらかと言いますと、これは組合の統制を破ることにはなる、破ることにはなるけれども、強い要請によつて十五日まで待つてもらいたい。これは統制を破ることですが、そこまで待つてもらいたいということで、話が進められておつた。だからこれは今加瀬君が言われますように、その点は一つも問題になつておらなかつたと、国警長官が言われたことでなくして、その現地の支部長なり、書記長、副委員長、副支部長というものの三役によつて、組合員の意思は全体の意思ではないけれども、又本部意思ではないけれども、十五日には必ず出しますというような確約までした悲壮な問題があるわけですね。それを実際は先ほども言われたように、販購連の本部でさえも、勝手に県の販購連が搬出をする行為というものは、これはしてはならんぞ、と同時にやつてつたものを、販購連の県の人たちが、幹部の人たちが、いわゆるこの争議に介入して来た、こういうような事件の問題でしたから、やはりこれはただ現地だけの一局部の問題でなくて、全体的な問題であるということを、これを考えて頂きたいと私は思つております。
  69. 堀末治

    ○堀末治君 ここで問題は、第一回はよく聞きません、第二回もお終いまで聞きませんでしたが、今日は初めから全部聞いたのですが、加瀬君が頻りとお尋ねしたのも御尤もだと思います。併しこれはよく考えてみると、荷物を取りに行くときは、俺は引取人だと言う、物を持つて行くのは、本当かも知れないけれども、慣行から行けば、なかなかそう行かないのですね、そういうようなところを、今これを微細に法律的に、加瀬君のように緻密にとられれば、国警長官答弁に窮しましようし、恐らく現地の巡査の人も商法上のそういう細かいところまではなかなかわかりません。問題は農民がいきり立つておるし、万一そこで下手なことをされて、ちやんばらでも始まれば、非常に重大なことになるということで、或る程度これは穏やかに片付けたいというところから、組合の人から見れば、甚だ怪しからん行き過ぎだと見られるような行為に出たのだと私は思うのです。この委員会としては、ここまで事件糾明すれば、恐らく糾明なさつた皆様がたにしても大抵目的を達するのじやないか、殊に私思うのに、この間も言うたのですが、今の警察が民主化されたとは言うものの、なかなかいわゆる警察国家から急に手の掌を返したように民主的にはなり得ない、まだまだ昔の惰性がたくさん残つております。又一面労働組合にしても、今のピケラインというものがどの程度まで合法で、どの程度までが非合法かということも、本当のはつきりした定義がない、いわゆる組合の、労働運動というものも今発達の途上にあるというようなところにできた問題ですから、私思うのに、これをどう秋山君、若木君乃至は加瀬君のようにああいうふうな緻密に国警長官お話をされば、国警長官としてもここではお立場上うんと言うわけにも行きませんが、十分にこれで御趣旨は徹底したことだと思う。なお又こういう問題で、組合の諸君も要するにピケラインというものに対しましても十分考えもありましようし、将来ピケラインというものに対しては明確な法解釈も下されて、これ以上は違法だ、ここまでは合法だということもはつきりして来るだろう。いずれもその過程にあることですから、大体この委員会としては、この程度で一応打切つて頂きましては如何がでございましようか。
  70. 加瀬完

    加瀬完君 お説の通りでありまして、私ども何もこれをどうこうという問題じやないのですけれども、ただ私の申上げたいのは、警察に正しく法律解釈をして頂きませんと、その場その場の状況に応じて、ただ、その場の治安を保持するというために法の解釈が曲げられて正しい意味の法の庇護を受けられないということであつてはまずいと思いますので、もう一つ伺いたいのですが、これが引取人でないということははつきりしておるのです。というのは、宮崎工場長がこういうことを言つているのです農民隊も四百名ばかり参りましたしと言つているのです。農民隊が四百名ばかり参りましたということは、引取人が何人来たというふうに考えておらないで、ただ農民が大勢群衆的に押寄せて参りましたので、この労働組合との対立関係をどう始末をつけようかというのが、この前後を見ますと、宮崎さんの頭の中を一ぱいにしておつた状況らしいのです。そういたしますと、この四百名の農民隊という名前で工場長が呼んでおるものを正しい引取人と解釈したのは警察だけだということになる。労働組合は勿論これを正しい引取人とは解釈しておらない。そういう点、もう少し正しい法律行為の姿に移すように警察が指導して頂けなかつただろうかと思うのですよ。
  71. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) これだけは私はつきり申上げられると思います。只今委員長お話がございましたが、こういう場合には、例えば会社側のほうで、これは正当な引取人でないということがはつきり明示をされ、或いは組合側のほうからこれは正当な引取人じやない、あんなことを言うて来ておるが、あれは乱を好むために来ておるので、正当な引取人でないということがはつきりするならば、これは私はこういうことが起らなかつただろうと思いますし、又今後もそういうような場合にまでこれを業務妨害をしておつたというようなことには絶対に解釈はいたしません。それだけははつきり申上げておきます。
  72. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは長官ちよつとお尋ねしますが、実は私もこの日産化学の、而も鏡工場争議の一部門になりまして、そうして時期は五月の十五日或いは十三日、勿論当地は私の郷里でもありますが、田植の時期には勿論まだ少しは間隔はあるのですけれども、併しまあ肥料の問題と関連しております争議ですからして、非常にまあ心配をいたしておつたわけです。円満に一つ争議解決がなされて行くことを希望いたしておつたのであります。たまたま現地のほうから写真を以て、これは私個人ではないのですけれども報告があつた、そこでこれはまあ重大な問題である、勿論新聞には相当長期に亘つて大きな関心を以てこの争議の状況というものが逐次報道されておつて、恐らく当時のこれは熊本日日新聞あたりも、これは地方紙でございますが、中心的な報道紙です。同時に又これには朝日、毎日とか西日本というような地方及び中央との繋りのある地方版においでも相当報道されておつたからして、まあ県としては相当県民の関心が高い争議の形態であつたと私は思う。而もこの鏡工場はこれは警察側からも申されましたように、或いは又は何と申しますか、販購連の側からも言われたように、鏡の地域は熊本の城南地区にあつて、そうして田舎で、勿論八代とは接近しておりますが、工場自体の組合も非常に穏健な組合である、当時県の総評にもかたつておらなかつた、そうしてこの直後に、争議ちよつと前ご県の総評にかたつたというような穏健だと言われた工場の、而も長期化したところの争議形態であつたということだけは、私たちはまあ情報で知つてつたわけです。それがこうやつて写真が来たんだが、実はこれは大変だということで、国警長官のところに五月の二十二日ですか、参りまして、そのときに国警長官のこの事件に対する関与方と申しまするのが、私たちはこれは皆一様にその後どうも報告余り的確にされていない、又国警長官もまあ大体解決したのだというような簡単な気持でおられはしないかというように、これは見に行つたものは感じたわけです。ただ長官が当時の写真を見られて、これは写真は大変だが、一つ自分の手許にも一組くれんか、こういうような発言があつたようでした。そこで私たちが考えましたのは、あの田舎と申されまするところの地域において、武装警官が二百何本名も出たというようなことは、これはもう実際初めてです。それは熊本市で五月一日だとかいうようなときに警官の方々が出られる、或いは日共関係のとき或いは又いろいろの選挙関係のときに出られたことはありますけれども、ああいう地域にこれだけの警官が出られたことは前代未聞です。そうして事件そのものというものが非常に何と申しまするか、町民の受くる感じというものは、これは決して私は警察に有利には展開しておらないように私たちは風聞を……、それでこれは私は第三者的な公平な見地から聞きましてそういう空気です。だからして心配して理事の方々にも、国警長官余り関心を持つておられないようだ、だからして理事の方々にも相談して、こういうようなことが再三現地において行われるということになつたならば、これはただ単に、警察は勿論秩序を維持する警察であるし、中立の警察であるけれども、残念にして又或る第三者的な動きに捲込まれるような状況であるというふうなことになつたならば、これは地方住民の信頼性をますます失墜することになりはせんだろうか、こういう点の心配がありまして、そうして理事や委員の方々の御承認を得てこの問題が提起されたという事情です。  そこで私がお伺いしますことは、決して私は法律論を以て質問をしたいということは、これはもうすでに各委員の方々がやつておられますし、ただ現在の段階としまして、どうもまだ私は国警長官その他政府側の方々も、やはりまだ卒直な御披露がどうもないような感じが私はしているわけです。それはやはりやつたことは正当性があるんだ、業務妨害を排除したんだ、こういうような一片のお考えのようでありまして、この点は一つ警察のほうにおきましても、今後よく一つこの点は考えて頂きたいと私は思うわけです。  それから第二の点は、当時の警察官の方々が負傷者に対するところの、その後警察側の態度というものが、どうもまだ私は脇に落ちません。警察法の第一条、第二条にも明確でありますように、どうしても基本人権というものを、即ち人権、特に又怪我をしたり死んだりした人の原因や、或いは又その状態に対する人身保護の面については、警察官はこれはやはり大いに関心を持つて行かなくちやならんのじやないか、勿論この問題には告訴がなされておりますから、その告訴が前提になつて、この委員会でいろいろと発言されることはどうも差控えておられるような感じもします。同時に又私はすべて警察官のほうを、やはりこれは長官としては庇護されるような立場にあるのですから、庇護されるような感じも私たちは受けておりますが、この証人の齋藤君あたりの証言を聞いてみても、一つ負傷者に対しての思いやりと申しますか、というようなことが、これは読み上げてもよろしうございますが、一つもないのです。そうしてただ当時の第三者の新聞社だとか、その他の人、これはまあ誰だかわからない、その他の人たちが、あんな負傷があるべきものじやないとか何とかといつたことだけを、ここに陳情されておつて、少しも問題の点に対しての御感想がないばかりでなくして、その後の負傷者に対するところの警察側としての措置が徹底しておらない。恐らくこれは当時におきましても診断書が出ております。診断書は、これは医師法によつて誤まつた策謀的な診断をしたならば、医師はこれは犯罪行為が成立すると、法律上認めておるのです。そういつた医師は医師の立場から診断書をはつきり出しておる。その現実の事実を考えたならば、何とかその事前においてこういう負傷が起るのは当然じやないかというような態度でなくして、何とかこの事態警察警察立場からやはりお調べになるというようなことが必要ではなかつたろうかというようなことを考えます。  それから第三の点は、これは極く最近ですが、而も又日にちを申してもよろしうございますが、二十二日に町村長会議がなされました。その後その町村長の方々がやはり或る政党の代議士の万々とお会いになつて、そのときの発言にいたしましても、とにかく齋藤署長はどこかに栄転するだろう、こういうようなことを言つておる。又これはもう私は第三者的な間接的な話ですから、言うた人はこれはもうはつきりした人が言つておりますが、どうもあれまで決意してやつたということは、そういうことは事前約束のためにやつたのである、こういう点が現実に噂されているというんです。私はこういうような人事の問題に対しましては、当委員会といたしましては関与したくはない、関与したくはないのですけれどもが、そういうような噂があるのです。やはり出て行つているところの根拠に対しましては、これは相当長官としても慎重な考え方をして頂かないといけないではないかという点が第三点。  それから第四点は、私がこの問題を委員の方々の了承を得まして委員会の議題になる過程におきまして、委員長に対しまして強い圧力がかかつて来ました。圧力がいろいろな点からかかつて来た。同時に又私には相当な投書が来ております。そうしてこの間小林国警隊長あたりがいわゆる参考人として上京されて来る、その小林隊長の動静に対しましてもいろいろと私たちには投書が来ておる。併し私は投書を見て信じたくはない、これは投書は一つの投書でございます。併しながら又私に対しましても、これはいろいろな方面からも圧力がかかつて来ました。どうも私はそういうような圧力に負けようとも思いはしません。やはりこれは公正な委員の方々の判断によつて、そうして治安の状態が確立をして行く、同時に又これが一第三者的な考え方によつて、大事な労働者の権利や、大事な農村の生活権というものが、これが歪められて行くというようなことに相成つてはならない。この例示を申しますならば、やはり権力の強いほう、それから又群衆心理の強いほうに警察が磨いて行くというようなことがあつてはならない、やはりこれは無抵抗であろうとも、力が弱くとも、権力がなくても、法の上において平等でありますから、法を守る観点において警察は公正なこの人権を擁護をして、そうして秩序を守つて頂きたい、こういう観点の上から、この点を明らかにするために、まあ今日まで来たわけですけれども、こういうような事態が相当、この間の事情にもあつたことを私は卒直に長官に申上げまして、この四点に対しまする所感を一応お聞きしまして私は質問を打切りたいと思います。
  73. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 委員長からお述べになられました点は一々私は御尤もに思います。  第一点のこの事件について御申入がありました際に、私は余り深く関心を持つていないようだからという御感想でありましたが、その通りであります。私は事件のあつたことは報告を受けて聞いております。併しながらピケの様子も聞いて、それは違法であろうという見解にも私は賛成をいたしておりましたが、併し事件の詳細なるいろいろな機微な点をお伺いいたしまして初めて私は知つたわけであります。余り現地に任せ過ぎておつたというお叱りがあれば甘んじて受けてもいいわけですが、私といたしましてはかような場合に、労働争議等に対処する警察官としての心構えというものはあらゆる場合に今までよくお話をいたしておりました。これは本部の部課長のみならず、管区の本部長その他の隊長従つて大体その方針は十分了得してくれておるものと私は今も考えておるのでありますが、併しながら先ほども申しまするように、微細な点になりますると、あとで、事件が起りまして私がよく事情等を聞いて見ますと、ただこういつた問題だけでなしに、なお、まだ考えが足りないという点で私は痛切にいたすのでございます。この事件だけではございません、あらゆる点につきまして今の警察のあり方、警察官職務執行のやり方というものに対しましては、私はこれで十分だとは考えておりませんので、話を聞くたびに、なお、それを更に先駆にもう少し又反省をし、一歩の前進をしてくれというのを、そういつた実例に接するたびに言つておるのであります。この事件の場合におきましても、その例外には漏れません。さような意味でありますから、今後私がここで指摘いたしましたような職務の執行の仕方、考え方というものを更に徹底させまして、委員長の御心配になるような事柄を少しでも少くして参りたいというように努力をいたしたいと思つております。  それから怪我人に対する扱いでありますが、私これも怪我人に限りませんが、我々が報告を受けます際に、私ども一番関心を持ちまするのは、この報告が本当に本当の報告なんだろうかどうだろうかという点なんであります。これはかようなことを申上げるのはどうかと思いますが、これは何も警察には限りませんが、自分たちの部下なり、自分たちのやつた報告というものはできるだけ自分たちによいように報告をするというのが、これは通例でありますから、従つてそうであるかないかということを非常に注意をいたすのであります。これも始終言うておることでありますが、報告は本当のことを報告してくれ、いいことはいい、悪いことは悪い、そこを隠すことなしに報告をしてもらいたい。若し間違つた報告があつたならば、あとで却つてひどい処罰をするぞというように私は指導をいたして来ておるのであります。この怪我の場合におきましても、警察側が全然責任がなかつたというように一応只今報告になつておりますが、そうであるかどうか若干私は疑問を持つております。本当を申上げますると、もつと調べなければわからないと思つておるのであります。ただこの前隊長が出て参りましたときによく聞きましたところが、告訴をされた関係の方々が検事のほうから呼び出しがあつても、まだ出て来られない、一人も出て来られない。そうして真相はかくかくだ、証人もかくかくだということを検事にも話がない。我々としてはその話をよく聞いて、そして更に署長以下が報告をして来たものを真実であるかどうかということを確めたい、隊長もさような気持でおる、私もそれはいい方法だ、それしかないであろう、告訴をしつ放しで検察側からこれについて聞きたいといつても、出て来られなかつたというのは、まだ私が聞きました当時の状況であります。従つてそれが判明をいたして参りますなら、これがもつと真相を糾明できるだろうと私も隊長もそのつもりでおります。その後熊本が大水害になりましたので、どの程度進捗いたしておりまするか、我々熊本につきましては、水害に殆んど目を掩われておるような状況でありましたので、その点はまだ確めておりませんが、水害もだんだん片付いて参りましたから、この告訴事件も更にはつきりして参るだろうと思つておる次第でございます。それから当該の署長が栄転するという噂があつたというお話でございますが、私はさようなことは全然聞いておりませんが、ただこの事件に関連をして、若し栄転をさせるということであるならば、それは適当でないだろうと私は思います。この事件処理したからどうだ、あの事件処理したからどうだというのでなしに、全般の日頃の署長としてのやり方というものを見てやるべきものだと考えております。私は最初委員長お話に見えました際に、一番関心を持ちましたのは、この事件警察官出動せしめたのが、いわゆる全購連なり農民の方々からのみの要請で、この人たちの言分を通すためにやつたのじやないかということを私は一番強く追及をいたしたのであります。従いまして農民が出て来るについて、そんなにたくさん出て来ちやいけないとか、農民側の秩序保持という点にどの程度配慮したかという点を鋭く私は追及をいたしたのであります。従いましてその点について、私は私自身であれば、もう少しやつた、という意味は、もう少しこういつた誤解を起さないような方法をとり得たのではないだろうか。少しその点は足りなかつたのではないかということを私は率直に考えております。  さようなわけでありまするから、又いろいろな圧力があると申しましたが、これもその通りであろうと思いますが、この点も委員長のお言葉にもございましたように我々といたしましてはどんなにいろいろな方面の圧力がありましようとも正しいことは正しく、むしろ権力から庇護されていない人たちの保護という点は警察の最も留意して尽さなければならん点でありまするから、それらの点は及ばずながら私今後とも努力をして参りたいかように考えておる次第でございますからよろしくお願いいたします。
  74. 内村清次

    委員長内村清次君) ほかに御質疑ありませんか。  それでは今日の委員会はこれで散会いたします。    午後五時五分散会