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1953-05-29 第16回国会 参議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十九日(金曜日)    午後一時四十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            館  哲二君    委員            伊能 芳雄君            西郷吉之助君            小林 武治君            秋山 長造君            若木 勝藏君            松澤 兼人君            八木 幸吉君            加瀬  完君   委員外議員            矢嶋 三義君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    自治庁次長   鈴木 俊一君    自治庁財政部長 武岡 憲一君   説明員    国家地方警察本    部警備部長   山口 喜雄君    法務省刑事局公    安課長     桃沢 全司君   参考人    熊本県知事   桜井 三郎君    全国購買農業協    同組合連合会肥    料部長     森   晋君    日産化学工業東   京本社勤労部長  中山 雅彦君    日産化学工業東   京本社労働課長  熊谷 正吾君    日産化学工業鏡    工場労働組合書    記長      田辺 俊之君   —————————————   本日の会議に付した事件地方行政改革に関する調査の件  (日産化学工業鏡工場労働争議事件  に関する件)  (地方公務員及び教職員に対する夏  期手当に関する件)   —————————————
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは只今から地方行政委員会を開催いたします。  実は昨日委員長及び理事会を開催いたしまして、今日お手許にあります公報に掲載いたしておきましたように、地方行政改革に関する調査治安問題につきまして、日産化学鏡工場労働争議に対する警察介入の問題を治安上の問題といたしまして議題にする、それから若木委員から特に御要求がありまして、地方公務員及び教職員に対する夏季手当の問題、これを議題に供して開会するということを決定いたしたのでございます。以上の議題を以ちまして開会することに御異議がありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは先ず日産化学鏡工場労働争議に対する警察介入の問題を治安上の問題として議題に供したいと思います。本件につきましては政府側から国警斎藤長官桃沢法務省刑事局公安課長、その他係官が出席されております。それからこの事件関係者といたしまして、熊本県知事桜井三郎君、日産化学労組鏡支部書記長田辺俊之君、日産化学工業東京本社労働課長熊谷正吾君、全購農協連肥料部長森晋君、以上の方が本日この席に見えておりますが、この際これらの諸君便宜参考人として発言を許したいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 内村清次

    委員長内村清次君) 異議ないものと認めます。  では政府当局及び参考人諸君に……
  5. 熊谷正吾

    参考人熊谷正吾君) ちよつと発言を許して頂きたい。日産化学の……。
  6. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと待つて下さい。委員長から順次指名をして事件について説明を求めることにいたします。  参考人の各位に対しましてはお忙しいところおいで頂きましたことに対しまして、委員会を代表いたしまして委員長より謝意を表します。  各参考人の供述は一人約十五分間程度を標準として且つ発言の内容は成るべく重複を避けるように各自御注意下さいますようにお願いを申上げておきます。  ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  7. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記を始めて。  それでは参考人のお一人として、日産化学工業東京本社勤労部長中山雅彦君を加えることにいたします。  それでは先ず政府側から、国警長官からお願いいたします。
  8. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 本事件概要を先ず御説明申上げるのが適当かと存じまするから、山口警備部長から概要について御説明をさせたいと思います。
  9. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 争議経過につきましては、或いは会社のほうから或いは組合側からお話になることと存じますから、私からは簡単に……。  日産化学労組合成化学連合に加入しておりまして、組合員の総数は六千余人でございます。そのうち今回問題になりました鏡工場組合員は三百九十名、臨時工がほかに百五十人おります。争議組合側から三月十四日に要求が提出されておるのであります。その後三月二十三、二十四、二十五というように団体交渉を行なつておりましたが、決裂いたしまして、二十五日から正式に争議の通告をいたしたのでありますが、実際にストをやりましたのは四月の十三日に午前八時から四十八時間の一齊ストが実施されております。それから二十六日に倉庫係四十八人の無期限スト、五月七日に肥料係百五十人の無期限ストに入つておるのであります。本日問題になつております点は、五月の十三日に県の購販連或いは会社出荷の運送を常時やつておりました日星産業トラック肥料を運び出そうとする際に、組合側で、工場正門の所にピケを張りまして、インターを歌つて盛んに気勢を挙げて妨害が行なわれた。それに対しまして警察側排除措置をとつたのであります。問題は十三日に起つておりますが、その前、七日の日からすでにピケで常時出荷を拒否するような措置をとつてつたのであります。  遡りますが、会社では四月の二十八日に、業務妨害排除仮処分申請をいたしまして、裁判所は四月三十日に次のような仮処分命令を出しております。組合申請人会社が八代郡鏡町所在鏡工場より化学肥料を搬出する行為を妨げてはならない。これに基きまして執達吏が執行をいたしております。で、実際問題の起りました九日から申上げますが、九日の日の九時頃、日通トラツク、これは日通が実際の運搬を常時やつておるわけでありますが、四台が工場に入ろうとして、正門の前でピケ隊百二十人ぐらいにスクラムを組まれて入場を妨害されたということが起りましたが、この場合は、組合側とそれから会社側或いは荷主側との間に円満に解決をしようということで話合いをいたしましたが、結局話合いがつかなかつたという状況でございます。それから十日の日も、大体そういう話合いによる解決を図りましていろいろ折衝いたしましたが、はかばかしく行かない。十一日の日に、警察といたしましては、いろいろ問題が起りましてもと思いまして、組合幹部に対しまして、組合の事務所に参りまして、組合側に正当な争議行為範囲逸脱をしないようにという警告をいたしております。なお農民側に対しましても、乱暴をしないように十分に警告をいたして参つておるのであります。この問題に関しまして法律上の解釈を明らかにいたしますために、警察側としましては、現地警察隊から国警本部意見を聞いて参つております。と同時に、検察庁側におきましても、熊本検察庁から最高検に稟申がありまして、東京におきまして関係官庁がいろいろと相談をいたしまして、現実に鏡工場で行われておるピケ模様、それからそれに基く、肥料を運び出す行為を阻害しておるのは正当な業務行為範囲逸脱しておるという意見に一応いたしておつたのであります。十二日に更にいろいろとまあ折衝をいたしましたが、やはりどうしても解決しない。それから十三日に、これはまあ当日、問題が起りました日でありますが、九時半頃、日通トラックが着いたのでありますが、ピケ隊が当初百二十人ぐらい、工場正門の入口に五列にピケを張つて通さなかつたということであります。で、農民のほうでも、丁度植付けの関係がありますので、肥料を早く出してもらわんと困るというわけで、当日は農民が約四百人トラックに乗つて、もう自分たちの手で搬出しようということで、正門の前に十時二十分頃着いておるのであります。その間、肥料を早く出してくれ、いや今出せないということで、いろいろ折衝があつたのであります。警察といたしましては、双方に対しまして暴力沙汰の起らないようにということを十分に訓戒をいたしまして、何とかまあ話を付けたいということでやつて参つたのであります。なかなか話が付きませんので、正午に、正門前に小屋がありますが、そこに畳一畳敷きの紙に警告文警察としては出したのであります。そうしていろいろ折衝をいたしたのでありますが、農民側に対しましては、余り前のほうに出て紛争を起す、或いは刺戟するということになつてもいけませんので、人夫役の十人だけがトラックに乗ることを許しまして、あとは全部トラックの最後部、トラツク二十七台だと思いますが、到着しておるのであります。その最後尾に避けて、衝突の起らないようにしておつたのであります。組合側としましても、いろいろと折衝をいたしました。いたしましたが、結局まあ話が付かないで、農民側或いは組合側がそれぞれまあマイクを使つてお互いに声を大にして呼び掛け合うということになつたのであります。で、だんだんと農民のほうに、自分たちの力で、実力でもう持ち出すという空気が出て参りまして、このまま放置しておきましては、いろいろ又トラブルも考えられますので、何とかして事態を収めようということでいろいろまあ交渉なり勧告をいたしたのでありますが、なかなか話がつかん。そのうちだんだんピケ友誼団体、それから家族も加わつてつたと思いますが、人数も殖えて参りました。二百数十名に達したのであります。そこで警察といたしましては、止むを得ず事前に十分に警告をいたしまして、そのピケを解くように、出荷妨害をしないように勧告いたしたのでありますが、どうしても話が付かないということで、うしろ側、丁度正門において外側に向いておつたのが、背を変えまして、会社の内部のほうに向けて坐り込みをやつてつたのであります。警察側は外から行きまして、余り広くない通路でありますが、一人々々うしろから腋を抱えて連れ出したのであります。私現場の写真を、映画を昨日見たのでありますが、腋の下をくすぐつて、体が崩れるときに運び出す、三人ぐらいで抱えて連れて行くという方法をとつたのであります。ただ多少まあ嫌だというので何をいたしましたものもありまして、下がコンクリートでありますから、そのコンクリートに擦つて怪我をした人が若干出ております。この問題につきまして、私どもといたしましては、肥料を一日も早く手に入れたいという農民と、どうしても渡さないという組合側との間にいろいろなトラブルが起る、暴力事犯が起るというようなことがあつてはならないという意味で、警察官を約二百名当日現場に出したのであります。農民側が約四百五十名ばかり集まつておりまして、組合側が二百四、五十名、それに対して二百名現地行つたのであります。  大体極く大雑把ではありますが、警察側としてとりました措置概要を申上げた次第であります。
  10. 内村清次

    委員長内村清次君) 斎藤国警長官、何かありませんか。
  11. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 大体只今警備部長から御説明をいたしましたような次第でありまして、警察労働争議介入をするということは、そこに不法行為が行われる、或いは行われる虞れがある、或いは擾乱になるというような場合以外は出ないという方針を固く堅持をかねがねからされておつたのであります。このたびの鏡の工場労働争議に関しましても、この方針逸脱をしていなかつたものと私は考えます。事前農民側に対しても暴力行為に出ないように再三注意をいたしておつたようでありますが、肥料入手期切迫をしているということから、なかなか農民側そういつた勢いを鎮めることが困難であつた。一面先ほど警備部長が御説明をいたしましたように、肥料搬出行為会社の正当な行為であり、これを阻止することは正当な争議行為ではないから、それを妨害してはいけないという裁判所の仮執行の決定もあることでありまするから、警察側といたしましては正当な争議行為には介入をせず、ピケツトといえども正当なものには介入いたしませんが、これが妨害行為である、そのことによつて不法事犯が起りそうだという場合には、その妨害行為排除をするということは止むを得なかつたことだと考えております。
  12. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは次に熊本県知事桜井三郎君にお願いします。
  13. 桜井三郎

    参考人桜井三郎君) 只今問題の経過につきましては国警側のほうからお話がございましたので、直接私どもがタツチいたしました部分だけを申上げようと思うのであります。  五月の十三日に、いわゆる実力行使事態が起つたわけでありますが、この前日十二日に、特に国警隊長のほうから非常に心配された連絡がございまして、法規的にはこれは業務妨害になるという解釈になるのであるが、警察としては極力警察の力は使いたくない、こういう気持であるという連絡であつたのであります。そこで、私ども事態切迫して参りましたので、争議に直接の関係のないと申しますか、農民側が非常に切望しております肥料の中で、ストに入る前に契約された肥料部分があるそうでありますので、その部分だけ一つ早目にお出しになつてはどうか、こういうところで、労働部長現場に急派いたしまして組合側相談をさせたのであります。これはすぐに、そういうわけには行かないというようないろいろな話があつたのであります。そこで引き返して参りましたが、更に警察側では、どうも農民側実力を以て持つて帰る虞れがあるという申出がありましたので、更に又労働部長を派遣いたしまして組合側申入れをさせたのであります。併しこれも私どものほうで納得の行く説明ができなかつたわけでありますが、結局そのままになつてしまいましたのであります。そこで十三日に入りまして、農民側のほうで販購連幹部諸君一緒でありますが、とに角トラックで多数の農民諸君が門前のほうに駆けつけられたという話を聞きましたので、県としても心配をいたしまして、労働部長を同時に一緒現場にやりましたのであります。それでいわゆる実力行使に入らないように極力話合いをつけて欲しいということで努力をいたしたのでありますが、いわゆる農民側のほうで非常に肥料を強く要望せられましたので、県として中に入りましたことが効果を奏さなかつたわけであります。そこで警察側事態心配されて、警察の力を以て一応ピケを暫く解かしたという結果になつたわけであります。  それで更に二十五日になりまして、組合側では、工場硫酸がオーヴアーフローするような状態になつて来た模様でありまして、それに対してどういう措置をとるかということにつきまして、組合側が大会を開かれた模様であります。それで県といたしましては、私は知事会議がありまして上京いたしますので、その機会に是非この問題の早く解決をつけて欲しいというところから、組合側乃至工場側に出掛けて参りまして、いろいろ話を聞いて参つたのであります。組合側といたしましては、工場に非常な損害を与える結果になるところの硫酸のオーヴアーフローは、これは防がなければならないというところで、保安ストに入るということにきまつた。つまりオーヴアーフローします硫酸は、これはそのまま硫酸措置をする、そうしてその部分だけは肥料を作るようにするというお話であります。そこでオーヴアーフローすることによつて工場が非常な損害を蒙ることだけは一応免かれることになりましたわけであります  それから肥料そのものにつきましては、まだ在庫品ばらになつてあるのでありますが、そのばらになつております肥料を出すか出さんかという段階につきましては解決がついておらないようであります。然るに農村の状態を見ますと、これは熊本県の状況で申上げますというと、平坦地山間部、つまり早場のほうと遅場のほうとでは事情が違うのでありますけれども早場の阿蘇の方面などは非常に肥料要求することが切迫をいたしておつた状態と考えられておるのであります。又他の九州の諸県におきましても、肥料は非常に急ぐというところからいたしまして、福岡へ各県が集まりまして、九州各県が集まりまして協議をいたしまして農林大臣宛に、速やかに肥料の需要に対しての手当をしてほしいという電報を打ちましたわけであります。更に追つかけまして各県の関係部課長農林省九州の各県が集りまして、農林省のほうに電報を打ちましたのは二十日でありますが、二十五日に各県の関係部課長農林省に集りまして、いろいろと農林省話合いをいたしましたわけであります。それで五千トンばかりの肥料農林省のほうで九州向けに手配をするというような話でありまして、それをどういうふうに配分をするかというような問題につきましても打合せをいたしましたわけであります。ただいろいろ肥料配分について相談はいたしましたが、結局鏡工場にあります肥料を或る程度出して頂きませんならば、やはり解決が困難な状況であります。そこで各県知事もいろいろ心配をいたしておりますのであります。私は取りあえず昨晩上京いたしましたので、本社に参りましてこの問題を早く解決をして頂きたいという申入れをいたしましたわけであります。九州関係諸県も近く打合せをいたしまして、更に工場側なり本社側なり何なりにお話合いに参りたいと、こういう気持を持つておるわけであります。これは若干意見的なことを申上げてよろしうございますか。
  14. 内村清次

    委員長内村清次君) はあ。
  15. 桜井三郎

    参考人桜井三郎君) 今度の問題は単なる工場労働者側争議ではなくして、その結果が農民に及びまして真に非常に大きな影響があるという点が一つの特色であります。この点で争議の問題はともあれ、私どもは国の食糧の問題乃至農民の立場の点につきまして非常に心配をいたしましたわけであります。それから農民側が非常に肥料要求いたします結果として、このたびのように多数の農民が集りまして、実力を以て肥料を貰わなければならん、こういう事態が起りましたことは、恐らく異例なことと思うのでありますが、かような事態がしばしば起るようなことがあつては大変なことだという点についても心配をいたしております。若しも第三者に大きな影響のある争議などにつきまして、何らかいよいよ最後の段階、緊急の段階に入りました場合には、県なり或いは政府なりが何か緊急の措置をとるような手段がないものか、こういう点につきまして非常に私ども心配をいたすわけであります。警察側におきましては、非常に警察隊長としては県に対してよく連絡をして下さつたのでありますが、畢竟何か多数の人が正面衝突することによりまして、大きな怪我人でも出ては大変である、こういうことの憂慮が非常に大きかつたようであります。私自身もその点は非常に心配をいたしましたわけであります。いわゆる乱闘騒ぎが起らなかつた、直接労務者側と、それから農民側との実力による正面衝突がなかつたということにつきましては、ほかの問題はともあれ、その点につきましては私どもも大変不幸中の幸いであつたというふうに考えておるわけであります。以上であります。
  16. 内村清次

    委員長内村清次君) 次には全購農協連肥料部長森普さん。
  17. 森晋

    参考人森晋君) 全購連単位農業協同組合結集組織体でありまして、全購連自身としましては、この事業肥料取扱い中心にしまして運営をしておるわけであります。大体全購連肥料取扱い方法といたしましては、組織単位協同組合を通じまして年間の事業計画を立てるわけでありますが、いろいろ取引条件等につきまして、下の希望がまちまちでございますから、それを統一しますために昨年の秋から単協単位協同組合に県の連合会を通じて呼びかけまして、長期予約註文手続をさせまして、その手続に乗りましたものは優先的に出荷を確保してやる、こういう建前で秋のシーズン、春のシーズン、夏のシーズン施肥の時期がおおむね三回に分れておりますから、三回の期間に区切りましてそういう申込みを受付けまして、その申込みによりまして肥料配給を滞りなく今までやつて来ておるわけであります。勿論そうした基本的な取扱いをやりますと同時に、それで全部が集るわけじやありませんから、その都度必要が生じました下の申込みにつきましては、これは別途の扱いといたしまして、順次受付けをしまして配給をするというようなことになつて今日に来ておるわけであります。そういう一つ自由経済の中にできるだけ計画性を与えながら、農家に的確に配給をしたいつもりでやつて来たわけでございますが、この春以来ストライキが頻発をいたしまして、鏡工場が今問題になつておりますけれども、その以前には昭和電工川崎工場におきまして、二月から約二カ月間くらいに亘りまして長期ストライキがあつたわけであります。そのほかの肥料工場におきましても、同様の問題が起つて来ておるわけであります。で、ストライキがありますと出荷が思うようにできない。又生産ができなくて、当初会社当局協議をしまして契約をしましたものが、その契約をしました時期に引取るわけに行かないということで、我々としましては下部団体から要請されておりますその要請に応えるわけにいかなくなるわけであります。  そういう点がありますから、この争議に対しましては、実は結果としましていろいろ影響を持つわけでありますが、会の方針といたしましてできるだけこの争議行為介入するような結果になることは好ましくない。それは農民団体というような性格とそれから労働者組織という性格から言いまして、これが私たちとしまして格別そこに大きな食違いがあるわけではないわけであつて、むしろ労農提携というふうなことも下部組織のほうから意向があるわけでありますから、会の方針としましてはできるだけそういう争議関係を持つようなふうのことはやらない。この方針で実は参つて来ておるわけであります。そうしますと、只今申しましたようにそのとき突き当りばつたりの註文をとつて配給をしておるのではなくて、三カ月から半年以前に下から具体的にいついつにこれだけの品物が要りますという、その申込みを受けて、その線に副つて計画的の註文をしておるわけでありますから、当然そこに支障が来るわけであります。その支障排除することにつきましては、とかく争議介入するような結果になりがちでありますから、我々としましてはできるだけそういう事態に立ち至りました場合には、受渡し品物をもらいます受渡しの時期をできるだけ施肥期直前まで引取りを延ばしてもらう、下部のほうに延ばしてもらいたいということが一つと、それからもう一つは、一工場だけと契約しておるわけではありません。下から集まりましたその予約註文の数量は、現在のところでは全工場言つてもいいくらいに関係を持つております。従つてそれぞれの会社、それぞれの工場出荷契約があるわけであります。或る工場におきましては別にそういう行為はない、在庫品が或る程度、全購連と約束をしておる以上にあるというような所もあり得るわけでありますから、そういう場合にはその工場契約の変更をいたしまして、引取りをいたしまして急場の間に合わせる。例えて申しますと、昭和電工工場で非常に長期ストライキが続きましたけれども、我々のほうとしましては会社側或いは労働組合側両方からいろいろな働きかけがあつたわけでありますが、一切両方には事情をよく話しまして介入しない方針をとつて、それでそれによつて起りましたことは只今申しましたようなことで、お隣の日東化学工場余裕品を振向けてもらいまして、実は急場を乗り切つて来たというようなふうのことで、実は今日までそういう方針で各全購連支部或いは県連のほうを通じまして、そういう主張をして来ておるわけであります。  たまたま鏡の工場におきまして先ほどお話のありますような事態に立ち至りましたことは、そういう方針から言つて甚だまあ遺憾な点であるわけでありますが、実は今までに争議がありまして、相当期間争議が継続されましても、実は肥料施肥期と実際使う時期というものの一番多い、而も中心は実はこの五月から六月にかけてであります。本田の肥料、これを農家といたしましては一番余計に使いますし、その時期は、地帯によつて異なりますけれども、大体五月末を中心にしまして、遅い場所が五月の二十日くらい、早い場所は五月の十五日か、そこらくらいまでに運び込んで行きませんと、実際農家自身としましては丁度その時期は麦刈の時期にもぶつかりますし、それから桑園の時期にもぶつかりますから、それまでに少くとも運び込んでおきませんと農作業ができない。又この時期は雨天等もありますので、農家としましては大体そういう慣習になつておるわけであります。鏡のほうは丁度九州でありまして、施肥期がどつちかと申しますと、全国的に言いますれば一番遅いほうなんです。そういうふうな意味から実は私どものほうとしましても、この争議に対する根本的な態度はそうした態度をとつてつたわけでありますが、時期が或る程度遅いわけでありますから、今まで極力引取りにつきましては引延して、それからさつき申しますように、余裕のある工場から緊急の分につきましては振替えて輸送をするということで、実は争議解決を待つてつたわけであります。勿論この間におきましては、我々のほうとしましては、会社にはこれは当然契約をしておりますし、で、契約もその都度やつておるわけではありません。ただ十二月から三月までの引渡しを受けます分につきましては、十二月の十五日の日に各月別の工場別の引取り数量というものをきめております。それから四月、五月に引取るべきものにつきましては、三月の二十日の日に工場別に一応会社打合せてきめておるわけであります。で、そういうようなことがスケジュールにすつかり載つております。従つて五月ともなりますと、下のほうからの要請が非常に強い。ところが先ほど長官のほうからもお話がありましたように、九州施肥期が遅いと申しましても、九州の中でも又同じ熊本県の中でも、いわゆる早場所と遅場所があるわけであります。要するに高冷地、非常に高い地帯におきましては、これは東北なり或いは関東の早場所と同じように田植が早いのです。で、そういうふうなことから、国としましても、特に増産をやらなければならんために、最近折衷温床苗代というのをやつております。これは早く稲の苗代の、何と申しますか、生育をやらせます特殊な方法ですが、国としまして助成金を出しまして、特にそういう方法をそういう高冷地につきましては、やつてもらつておるわけであります。で、そういうことから今年は一段又施肥期が繰上つております。そういう最中におきまして、荷物の引渡しがなかなかして頂けないということから、これは熊本の県の連合会を通じまして、私のほうの支所が福岡にあるわけであります、福岡を通じ阪神方面から一つ是非急送をして、その出ない分について間に合わしてくれ、或いはどうしてもそれがむずかしければ、農林省に働きかけて、ストライキをしない工場に急速に増産命令を出させるような方向をとつて、そうして、施肥に間に合わなくて、そのために農家として非常に損害をこうむるというようなことがないようにしてくれという切なる要望が実はあつたわけであります。併し私どもとしましても、そういう点は先ほど申しますような不介入方針というような考え方を持つておりますから、全力を挙げまして、阪神にあります工場から運び出しをかけて努力をいたし、又関東方面からも、一部その救急をやるために対策を立てて、現にまあやつておるような次第でございます。ただそういうふうなことをやりましても、なおここで非常に心配になります点は、過燐酸の総生産に対しまして、日産化学さんの生産量というものが甚だ多いのです。約全生産に対しまして、三割乃至三割五分の生産量があります。で、そういうふうな大きな生産量をお持ちになつておる工場ストライキをおやりになつておりますために、実は全国的にそのほかの工場がここで急に生産の増強をやつてみましても、なかなかそいつをカヴアーするわけには行かない。こういうことになりまして、九州だけが非常に実は日産化学工場に大きく依存しておりますから、一番そのしわが強く出ているわけでありまして、実は全国的にそのために現在肥料が非常に払底を、特に過燐酸肥料が払底して来ております。化学肥料につきましても、九州地帯におきましては、実はこういう事態になりましたために、四、五十円ぐらい値段が暴騰をして来ております。こういうふうなことで、我々としましても、実は農民の立場から言いまして、不測の損害を受けておるわけでありますから、直接争議の対象になつております日産の本社に対しましては、社長さんなり或いは担当の係りなりにしよつちゆう早く一つ争議解決して頂いて、それで九州のそういう事態、引続いて全国の逼迫している事態を緩和をして頂きたいという要請をして参つて来ておるわけでありますが、なかなか事態は容易でないようでございます。  で、九州の地区におきまして引取りに関しまする点につきまして、現地から我々のほうにも詳細な報告は参つております。又こちらのほうからも一応福岡の支所に対しまして人を出しまして、実情を聴取しておりますが、先ほどお話がありましたようなことで、重複でありますから、避けたいと思いますが、まあいずれにしましても、現在の状況からいたしまして、実は九州で不足をいたします分を、先ほど長官のほうからお話がありましたように、農林省のほうと協力をいたしまして、極力他の地区から九州に急送をしておるわけでありますけれども、なかなか思つた通りに品物が入るかどうかにつきましては、多大の懸念があるわけであります。従つて現地におきます、いわゆる在庫になつておる品物に対しましては、これは一つ急速に解放をして頂きまして、もうすでに今日となりますと、九州のいわゆる遅場地帯といえども施肥期が目睫の間に迫つておるわけでありますから、これが円満に品物が入りませんと、米の生産に影響するのみならず、農家としましては年に一回の生産しかできないわけでありますから、その施肥期を取違えますと生産に大きな影響があるということになるので、大変その点心配をし、且つ努力をしておるような状況であります。
  18. 内村清次

  19. 中山雅彦

    参考人中山雅彦君) 日産化学は今全購連から御説明のございましたように過燐酸、硫安、農業薬剤、化学工業薬品の生産をやつております。北は函館から南は九州の鏡まで過燐酸工場工場、硫安工場工場、その他農薬工場等がございますが、特に過燐酸は只今お話のございましたように、全国生産量の三割弱程度のものを占めております。  今回労使の間に紛争が惹起いたしまして、それが非常に長引きまして、会社、お得意先、更には需要家でありまする農民の皆様に大変御迷惑をかけておりますることは、甚だ遺憾に存じておる次第であります。  ただ御承知の通り先頃硫安の出血輸出の問題をめぐりまして、企業の合理化というような問題が大きく取上げられまして、政府部内でも肥料対策審議会というようなものが設けられまして、又硫安の合理化、更には輸出産業というようなことで、いろいろ御配慮を頂いておるやに聞いておりまするが、さような関係からいたしましても、或いはこれが農産、米の生産に欠くべからざるものであるというようなことからいたしましても、できるだけ肥料が合理化の線によりまして、農村に配給されることが望ましいのではないかと、かように我々は常に考えておるわけであります。  特にこれは、当社の問題に入りますが、日産化学の賃金ベースは、同業商社に比較いたしまして、決して安いほうではないということと、もう一つ肥料の、特に硫安の場合は、輸出肥料審議会の問題、合理化の問題、或いは過燐酸は自由競争におかれまして、各社の競争が非常に激しいというようなことからいたしまして、我々は組合に対しましては、一応今回の賃上げは見送つてもらいたいというようなことを要請いたしたのでありますが、たまたま会社の意図が組合の容れるところになりませんので、かような段階なつたわけであります。たまたま九州鏡工場におきましては一番全国的に遅場所でございます関係上、特に又工場長が非常に慎重な態度を持ちまして、できるだけ会社組合と紛争を避けたいということで、ぎりぎり結着の線まで肥料出荷に対しましては、組合と問題を起さんという形で隠忍自重して参つたのであります。ところがもはやその限界も過ぎまして、地方農民の切なる要望もございまして、会社は合法的に出荷いたしまして、農民の声に応えざるを得ないという段階に至りましたために、遂に出荷を決意いたしたわけであります。その間各地におきますその他の工場におきましては、或いは組合との話ができましたり、組合とのいろいろな話合いの結果、或いは会社措置によりまして、大部分工場では何とか彼とか出荷いたしまして、関東地区或いは中京地区におきましても需要家の要請には応えて来たと思いますが、不幸にして九州地区の鏡工場だけはなかなか労使の話ができませんで、遂に今回のこのような形になりましたわけでございます。  で、本日のこの委員会の問題でございまする鏡工場の問題につきましては、本日ここに参つております労働課長熊谷君から委細申上げたいと思います。
  20. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは日産化学東京本社の労働課長熊谷正吾君。
  21. 熊谷正吾

    参考人熊谷正吾君) 当社の合成化学が呼号しておりました春季攻勢の当初の発展過程から簡単に触れさして頂きたいと思います。  当社で要求が出ましたのは三月の十六日でございます。その要求の内容は、ベース・アップの線が一つでございます。それのほかに退職手当の問題、それから住宅手当の問題、その他冠婚葬祭の寄贈金額の問題を含めまして六件の問題の要求がございました。それも而も期限付きでございまして、三月の二十日に期限付回答をせよということなんでございますが、会社のほうとしまして、重々審議の結果、組合の要請日に回答をいたしております。そのうち退職手当の問題と住宅手当の問題は、これは昨年の秋季攻勢から絡みまして年末のいわゆる越年資金闘争、これの問題の一還として論議され、それがたまたま春の攻勢に持越されて一環として、而も退職手当の問題などにつきましては、大きな要求の根幹をなしているといつても過言でない性質のものでございます。それ以後団体交渉をいたして参つたわけでありますが、その間会社といたしましては、只今部長から申上げましたように、会社事情、いわゆる会社の現況及び見通し等を申しまして、会社の経理或いは業務関係、資材関係、その他の分析を詳細にパンフレットにいたしまして、組合員会社の認識を求めて参つております。それは昨年の暮に退職手当の問題をめぐりまして、団交が引続いてずつと行われておつた、その過程に一月にパンフレットを配つている、その後一、二回パンフレットを中心に、会社の現状の線を説明しておつたわけであります。それにもかかわらず、不幸にも事態が悪化して参りまして、今日に至つたわけでありますが、先ず団体交渉いたしましたのは二十日の回答を含みまして四回でございまして、組合は初めから今度は強い態度を示しておりまして、会社のいわゆる要望を聞入れようとしないという態度が明らかに見えて来まして、四回目で団体交渉を打切つて、そうして闘争宣言を出しております。而うしまして三月の十三日、十四日二日に亘ります四十八時間ストライキの通告を、十一日の日に出して参つております。それ以来現在に至ります間に、十八回の通告を会社が受取つているわけであります。その内容を御参考までに申上げますれば、初めは時間外休日出勤労働拒否のスト通告であります。それから併せまして倉庫係スト通告であります。それに引続きまして分析係の……これは各箇所にございます製品分析、その他試験分析、原料分析、この分析業務でございますが、それのスト通告を受けております。その後に引続きまして五月七日になりましてから、肥料係の無期限のスト通告を受けております。それ以来数度の、而も当社は十一カ所ございまして、その十一カ所がそれぞれ場所的に、時間的にいわゆる部分ストであると同時に、いわゆる断続ストの傾向を示しております。ですから只今申上げました分析係のストライキも金箇所入つておりません。それから倉庫係ストライキ、これも全箇所入つておりません。肥料係ストライキも要所要所、急所々々を衝くといつたような仕組でございまして、会社の面から見ますれば、非常に痛いところを衝かれておるというようなストの態様でございます。それで二十二日以降全箇所一齊の無期限ストライキに入つておるというのが現在までの状態でございます。  それで特に鏡工場について触れさして頂こうと思いますが、全国的に肥料施肥期を迎えまして、業者それから農家に対するこの肥料の国家的な重要性と、それと社会が公共的な使命を帯びているという本来的な任務に関しまして、肥料出荷を合法的にやるという線を基本的にストの当初から会社は持つてつたのであります。併し当初からそういう線を打出すことはどうかということなので、当初組合の動向を眺めようということで、やや日を見送つておりますと、十三、十四日のストから大体四、五日を経まして、本社の指令といたしまして、合法的な線で強行出荷という線を出しておりまして、大体九州鏡工場以外の箇所は、若干ピケ隊トラブルを起しながらも、大体強行出荷を合法的な線でやつておりまして、大半の所におきまして現在までのところトラブルなしにやつて来ておるわけであります。ところが九州の鏡におきましては、施肥期がややこちらよりも遅れておるというような関係もございまして、而も工場長が非常に慎重を期しておりまして、先ず組合との間にトラブルを絶対に避けたい、組合の勿論基本的な争議権の正当な行使は、これは無論認めざるを得ないが、会社のほうの営業権の合法的な正当な行使も認めてもらいたいという考え方から協議方式、団交を求めまして、会社の要請を絶えず訴えております。でそれの一環といたしまして、四月の二十八日に業務妨害排除の、これは予備申請をやつております。その間に組合は勿論その当時はピケも張つておりませんでしたし、それから従つて業務妨害ということもなかつたわけでありますが、予備申請といたしまして四月二十八日に申請をいたして、地裁で決定されましたのは四月三十日でありますが、これが五月の二日になりまして執行吏が見えまして公示という段取になつたわけであります。出荷強行の決定を見ながら、組合話合いを進めて行くというほどの慎重ささえ示しておつたわけであります。ところがだんだん事態が悪化して参りまして、而も九州肥料需要先の緊急性もございますし、それと同時に五月七日に鏡工場肥料係の無期限ストというような通告を受けて、この中で鏡工場が先ほどもお話ございましたが、三百九十九名の従業員、組合員がございます。そのうち百五名がその肥料係の無期限ストの結果入つておりますが、それで鏡工場硫酸肥料が生産の主幹でございまして、而も硫酸肥料の製造のための硫酸であります。従いまして、この肥料鏡工場の死命を制すると言つてもいいくらいのいわゆる重要な施設でございますが、そこに無期限のストライキが五月七日に行われております。それを受けまして一般の関係機関それから農家は、そんなに鏡工場がこれから争議をやつたなら、これはいつ終熄するかわからんというような、このストに対する先行き不安だということから、五月八日に早速トラックで以て工場のほうに肥料引取にやつて来ております。勿論工場側組合出荷に協力するように頼んでおりますし、妨害しないように依頼しておりますし、それから業者のほうも今日は是非肥料をもらつて行くのだということで来ておるのですが、業者と組合とが終日話合いをしましたのですが、この話合いがつかないままに分れております。それから五月九日になりまして、午前九時頃でございます。日通トラツク五台を正門の前に乗りつけまして、日星産業が参つておりますが、そこで組合側と業者側とが問答を始めまして、当日の十一時に組合からその業者に対しまして、一時から三時までの間に組合大会を開いて善処したいから、それまで待つてほしいということで、日星産業はその要望を聞き入れまして、そのまま待つております。三時半になりまして、組合の返事は、やはり総会を開いたが、組合としては飽くまでも合法的な線で出荷を阻止するという態度を決定されたという返答だつたのであります。更に押問答を重ねまして、それからその状況をあれしましてか、五時頃に警官が約百名ほど、これは鏡署に待機しておつたようでありますが、その心配をされてれつたようであります。それが午後七時三十分になりまして、組合は更に会社側と業者側とに団体交渉申入れております。これには警察の署長もお立ち会いなさいまして、それでここで交渉を重ねておつたわけでありますが、夜の九時になりましてもその交渉が埒があきませんので、夜間に搬出もむずかしかろうということと、それからやはり工場長が事態を円満に収拾したいというような基本的な考え方もございまして、九時にそれぞれ分れまして、それからピケ隊も九時に解散しておりますが、会社側の要望は、明日の十一時までに組合から何とか誠意ある解答を求めたいということで分れておりまして、翌十日を迎えたのであります。ところが十日を迎えたわけでありますが、組合話合いはやはり出荷しないという基本線一点張りでありまして、それでここも物分れになつております。更に五月十一日になりまして日星産業と県購連の代表がトラックで乗りつけて、これも終日押問答を繰返しておるのであります。十一日の状態は大体トラックが十数台参つております。ピケ隊が百二十各から、四時半頃になりまして三百五十名になりまして、非常にピケ隊が増員されたという状態であります。それで当日は二時半に八代労政事務署長が斡旋に見えまして、それでいろいろ組合と業者と話合を、円満解決を要請したのでありますが、結局これもピケ隊に押し返されて帰つたということであります。而も業者の方々はこのときに、我々はやはり強硬に肥料をもらうんだという決意を現わしております。翌五月の十二日は雨のために、これは出荷中止ということで、ピケも前日とは違いましてそうその人数も殖えておりません。十三日になりまして本日のこの会議で取上げられておる問題になつたわけでありますが、午前十時に県購連トラックが十六台、これにほかに日通トラツクが十台参りまして、これは農民代表が約四百名というような新聞の報道でございます。それでこれが参りました。その前に、ちよつと話が前後いたしますが、その前に、県購連トラック一台が乗りつけております。そのときのピケは大体三百名から三百五十名というふうに現地からの情報で承知しております。新聞の報道も三百五十名前後こ報道しておるようでありますが、その九時半に参りました一台のトラックピケ隊とが押問答しておりました。その後十時になりまして、今申上げましたように二十六台のトラックが引続き踵を接して押し寄せるという状態であつたのであります。ここに農民の方々が肥料施肥期を迎え、而も今この機会を外したら——ということで非常に強い覚悟と要望を持つてつたということが、この当時の空気であつたようであります。  それで十時過ぎに、その押問答の間に、県の警察隊の後方車に署長が乗られて、そしてそのほかに警官が約二十名来場しております。署長はその工場に……メーデー以降組合と業者側と工場側と、いわゆる斡旋、それから勧告をなしております。これは数回繰返しております。それで十時半になりましてから、農民の一部がピケツト・ラインを突破するということで、先ほど警備部長のほうから御報告がございましたように、小競合があつたわけであります。そのときにはピケ隊工場側のほうに向けまして、いわゆる背をこちら側に向けて、いわゆる無抵抗の行為を示したということであります。それでこの状況を申上げますと、工場正門の前が約十四、五メートルの幅があろうかと思います。それで道路から工場に入ります間が約二十五メートルあろうかと記憶しております。それで道路から工場の敷地に入ります一番広いところの幅が二十二、三メートルになつておると記憶しておりますが、そのうちに正門の前に八重九重にピケ隊が張られておつたということであります。それで工場に向いまして一番先に張られておつたのが、これが従業員の、組合員の家族を含めた主婦隊であります。それから真ん中が当社の組合員であります。それから一番その前段にあつたのは、これは友誼団体、即ち第三者の団体であつたようであります。当社の従業員が百四、五十名これに参加しておつたように聞いております。従つて三百名から三百五十名くらいの者がその狭いところに十重二十重に腰を下ろしておつたというのがピケ隊状態であつたようであります。それで、その間に農民との小競合が、問答がありまして、農民は何としても突破して肥料をもらつて行くんたということで、小競合を生じておつたのですが、十一時四十五分になりまして、警察隊は告示を提示しておりますと同時に、マイクを以てピケ隊に解散を勧告しております。その間相変らず署長から業者と組合との斡旋を続行しておるというのが、内部の工場との間のことだつたのでございます。その公示でありますが、出荷妨害をやめよ。農家の渇望する肥料出荷を阻止することは明らかに適当な争議行為逸脱した業務妨害である。諸君が飽くまでも妨害する以上、警察は断乎違反敢行者を逮捕し、一般の不法行為排除するというのが公示であります。午後二時半にその最後の勧告をやるということで放送いたしましたが、それで二時八分に実力行使をやつております。その実力行使は、現地を見たわけでございませんのでわかりませんが、警官のほうは警棒を収めまして、それでこう、いわゆる腕を組んでおつたピケ隊に、前列のほうから、まあ業者と小競合をしているところから入つてつたというのが状態のようであります。従いましてまあ植木を植え替えるというような状態で、ピケ隊を何と申しますか、腕を下ろしておるピケ隊を、そのまま別のほうに排除するというようなことでの実力行使というふうに聞いております。従いまして非常にまあ実力行使といたしましては、公正な、堂々としておつたものであつて、而も組合員の態度も何らこの警察実力行使に対しては、行為を示さずに、これも非常に穏かだつたという話が、現地の情報であります。それで、一応十分間ぐらいでそのピケ隊排除し得まして、トラックが中に入つたというのが、当時の実情でございました。これが二時八分、午後五時に警官隊は解散をしております。  以上がこの五月十三日の事件概要でございますが、当日は気勢が非常に上つておりまして、外部団体の応援も、日本共産党の旗を旗頭に十五、六流旗が出ておつたというのが、写真でも現認されております。  以上で概要を終ります。
  22. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは次に日産化学労働組合鏡支部書記長田辺俊之君。
  23. 田辺俊之

    参考人田辺俊之君) 大体時間的な、それから日数的な経過というものは、会社、それから警察の方より一応説明がありましたので、私は十三日の問題を大体中心として御説明いたしたいと思います。  先ず私たちがスクラムを組んでピケツトを張つたということは飽くまでも憲法によつて保障された団体権、争議権というものの行使であるというような考えでピケツトを組んだのであります。というのは、現在やつておりますところの争議行為というものは、飽くまでも会社の正当な業務を妨害することを目的としておるということです。それをたまたま出荷の事務上の問題、出荷する輸送関係の問題について、全部現在まで組合によつて行われた問題を、非組合員と、それから業者、農民という形によりましてこれを突破するということは、飽くまでも争議行為の不当介入であるし、又このスキャップとみなさなくちやならないというような考えで、我々の組んでおるピケツトは飽くまでも正当な争議行為の一環であるということを確認いたしました。それをたまたま裏付けされますのは、さつき本社側熊谷さんのほうより御説明のありました業務妨害排除申請の件です。この問題については、同じ支部の官山支部におきましては、これが裁判において却下されている。たまたま鏡支部の問題につきましても、十五日の裁判におきまして会社側よりこれを取下げることを要請して来た。組合も一応紛争を起さないというような目標を以ちまして、この申請取下げに応じたわけでございます。二十八日に申請が出されましたものが、結局被申請人であります組合意見を全然聴取することなく、同じことを三十日にこの問題を決定したという熊本地裁の見解に対して、我々は甚だ不満足に思い、直ちにその本裁判方を要求し、逆申請も同時に行なつたわけです。  十三日当日のピケツトは、当日ストライキに入つておりました組合員数が百五十名、併しこの中で病欠者十三名、それからよそに出向しておる者十四名、結局約三十名とそれから家族、子供を背負つた主婦を含めまして六十名、それに友誼団体の六十名、計二百五十名を以てピケツトを張つていた。十重二十軍というような言葉は、これに当らないと思うのは、結局最前線の長さと言いますと約二十メーター、これに全部密集して坐りますと、どうしてもその列というものはそう大して厚くないということがはつきり知れると思います。たまたま後向に坐つておりました組合員に対しまして、警官の介入という問題につきまして、我々は先ず前向きを以つてこれに対抗した場合には、無抵抗という形をとつても、抵抗するのではないかというようなことが、結局全然抵抗しない完全なピケツトを張るというような目的を以てやつたわけであります。それに対しまして、そのときに警察隊の武装としましては完全武装、催涙弾、防毒面等の準備をしたということは、結局善良な組合員、それに鏡町民に対して侮辱を加えると共に、警察の不信の念を作つたということは十四日の町民大会ではつきりそれが暴露されております。  十三日の先ず警察隊介入のあります前に、農民の武装した暴力団、敢えてこれを言いたいと思います。農民の武装した暴力団によつて、先ず最前線にありました組合員ピケツトが、その人たちによつて引ずり廻君され、そうして踏まれているとき、私と支部長は斎藤署長と—当日の指揮官です。斎藤署長のもとに行きまして、あの暴力を一応中止させてほしいということを伝えたにも拘らず、この問題については全然動こうともしなかつた。なぜ止めないかということを再三言つたわけですけれども、これをついに止めようとはしなかつたというようなのが現状なんです。それと同時に私どもが非常に不可解に思いましたことは、そのとき農民の人たちトラツク十七台に五百名ほど乗つて来たということについて、定員外乗車券がどういう形においし出されたかということについても、非常な不満を持つておるし、不審の念を抱いておるわけです。結局、そのときの一つの運動の方法としまして、一本道に対しまして、こちらより農民、それからこちらより警察と、同時に我々のピケツト前に来たということは、当初からこの話合の線において、これを結末をつけようという考えではなかつたろうかということも推測されるわけであります。飽くまでも不当な介入を続けようという意思にほかならないというふうに解釈するわけであります。又ピケツトを押破つた後、肥料を搬出する場合はトラツクに上乗りが最高十六名乗つてつた。この場合についても我々が違法ではないかということで取締方を要求したけれども、全然問題にされなかつたということは、飽くまでも腹を合せた一つの、警察と県販連の一部幹部の人たちによつて腹を合せた問題じやないかということは、一人々々の組合員が全部そういうふうに語つておるわけでございます。  たまたま当時の農村情勢は丁度十三日の夜にNHKのニュースの中で、最も早い阿蘇地方のほうで苗が二寸—苗の二寸ぐらいの場合はまだ植付できないということはおわかりのことと存じます。而して阿蘇地区においては又施肥量が多くて、苗が枯れた箇所があるので注意を要するというようなローカル・ニュースも出されております。この点におきまして我々は一応十六日まで待つてくれ、十六日からは出荷しようということを、その当時、当日の仲介に入りました斎藤署長に言つたわけであります。その点を県販連或いは業者、それから農民の方々たちにお諮りになられましたが、結局どうしても今夜持つて行く。持つて行かなくては、明日から田植をするのだというようなことでありましたが、それによつて、破られて持つて行かれました肥料も、一応鏡町の上部にあります有佐駅倉庫に二日間寝ておつた。それに入れられなかつた肥料は隣村の千丁村の倉庫にやはり現在でもまだその肥料が残つておるこいう現状であります。必ずしも急ぐというような肥料ではなかつたというふうに判断しておるところであります。  我々がなぜ十六日という日を切つたかと申上げますと、一応我々は農民の人たちには肥料を渡すということをずつと以前より再三申上げておりますので、常にそれが窮迫した場合のみという限定を付けておりますので、我々の見解としてはまだ窮迫していなかつた。農村はそういうふうな状態ではないという断定をしました結果、一応大会の線が出荷はしないという結論が出されたのでありますけれども、輸送関係の問題ということが明かにされましたので、それならば三役の責任において十六日からは出荷しようではないかということを申入れたわけでありますが、飽くまでも当日警察業務妨害排除という形で突破された。その場合私が考えますことは、業務妨害排除と、それから憲法によつて保障された我々の団結権、争議権というものを、どちらにウエートを置いてやつて行かれるのかということは当日我々と共に話しました斎藤所長のほうにもいろいろ申上げたのでありますけれども、飽くまでも依嘱されたところの業務妨害排除ということを重点的に持つて行くというようなことでありましたので、その点については十五日の法廷においてはつきりするので、それで一応十六日まで待てということを申請しておるわけであります。それを十三日の日は大体無理に押し出されたというような恰好であります。さつき申上げましたように、完全武装、催涙弾、それから防毒面……。さつき警察のほうでくすぐる程度業務妨害排除をやつたということでございますけれども、そのくすぐる程度業務妨害排除が二百五十名もおりますピケットを八分にして破るということは到底不可能だということが断定付けられるわけであります。それに最も抵抗力の少ない女の、主婦の人が最も大きな怪我をしたという理由はどこにあるか、その点を飽くまでも我々としては追及したいということを考えております。一応二十五名の負傷者を出しておりますけれども、まあ殆んどすべて過擦傷程度、一応本社の方から言われました写真でも出ておりますように、棍棒は一応最初当初の問は腰に下げておられましたけれども、あとになつてやはりそれを振り上げて殴られた者もいる。それと同時にかげの人垣の中に入つてから踏んだり蹴つたりしたというような事実もはつきり証明できます。  それと同時に十三日以降のことに移りますけれども、我々としては一応農村の窮状というものを把握して、農民の人たちには肥料は出さなくてはならないという観点を以ちまして、十九日の日に在庫製品千五百トンを出荷しております。それと同時に会社から出されました問題が、鏡支部において八十名の首切りというものを出されて来ました。その結果、今まで、一応その以後ずつと農村のためには出そうと思つていた組合員を更に硬化させて、現在まで一応肥料は出さないということを決議するという変な形になりましたけれども、八十名の首切りによつて更に硬化したということが考えられます。私がたまたまこちらに来ましてから、支部からの電話によりますと、三十日の日からやはり情勢として農村には肥料を出さなくてはならないという状態であるので、出すことを決定したということを言つております。我々は絶対に十三日の日も肥料を出さないということは一回も言つたことはない。ただその計数的な、どこにどのくらい足らないという問題をすつきりさせてくれれば、いつでも出すのだという肚をうち割つて話していたわけなのでございます。  大体以上です。
  24. 内村清次

    委員長内村清次君) 以上で参考人のお方々の陳述が終りましたが、委員の方々……。
  25. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちよつとお尋ねをいたしたいのですが、まあいろいろなお立場の方からいろいろなお話を聞きまして、まあ大体事件の外貌というようなことはわかつてつた気がするのでありますが、併しながら細かい点に至りますというと、特に重要な十三日の当日の暴力行為状態等に関しますというと、皆さんのお話が相当開きがあるように思うのであります。まあ大多数の方は東京へおいでの方でありまして事実その場所に居合わされた方というのは田辺記長お一人ではないかと思うのでありますが、先ず田辺記長にお尋ねをしてみたい。  十三日の日に五百名ばかりの農民が二十数台のトラックに分乗して押しかけて来たということでありますが、これはまあ大体労働争議なんかの場合に余り我々の聞かないことでありますが、その押しかけて来た五百名という農民のまあ性格といいますか、まあどういう人たちが来たのであるか、或いは又それを指揮して来た人があるのかないのか。又更にその中に暴力団がまざつてつたというようなお話もありましたが、その暴力団と見られるものがどの程度つたのか。又それがいきなりピケを張つておる組合員に殴りつけて来たというようなお話もありましたが、それがどの程度にどういう形で行われたのかというような点について、先ずお尋ねをいたします。
  26. 田辺俊之

    参考人田辺俊之君) 先ず五百名の農民、この内部分析としましては、一応あとからの調査によりますと、県販連の指導に従いまして、各単位農協より一名の代表者、それから阿蘇地区、三名地区、下益城、上益城という四郡に対しまして一村二名の割当。最後尾のトラックに乗つておりました人にうちの組合員が尋ねました結果、私は肥料会社というものは全然見たことがない、それで一応日当三百円貰うのでまあ見学のつもりでやつて来たということを言つております。指揮者としましては県販連副会長園木専務。暴力団の性格としましては、たまたま私が熊本におりました時代に一緒に柔道をとつておりまして、その者が先頭の車に乗つて、いつお前は百姓をし始めたのだということを尋ねました結果、いや俺は百姓をしておるのだと言いながら、いつかそのグループのものは消えて、あとで姿を見せなかつたという状態です。その数につきましてははつきりたことはわかつておりません。暴力団、結局農民という人たち介入状態ですが、やはりスクラムを組んでおりますので、それを引抜きを先ずやつたわけです。引抜きをやつて、丁度川縁にありますので、川縁のところまで持つて行き、両足両手を両方に握つておりまして、それを一度上に放り上げて手を放すという方法、それからこの野郎といつて組むというような暴力の程度です。その組合員と直接話してみました結果、僕は川の中に投げ込まれると思つていた、そうしたら落ちたところは土の上だつたので、まあこれくらいの怪我で済んだ、これはこの中にあります岩方勝己君という人の証言です。大体概略としてはその程度であります。もう一つ忘れましたが、暴力団の性格でございまするが、熊本に菊旗同志会という形のものがありまして、その隊員というもので私たちの顔を見知つておる者が一名乗つていたということです。大体そういうことを例として申上げます。
  27. 秋山長造

    ○秋山長造君 その場合に、暴力団と称するものが暴行を働いた場合に、あなた方のほうではそれに対してどういう処置をなさつたのですか。
  28. 田辺俊之

    参考人田辺俊之君) 斎藤署長がそのときの指揮官でございます。丁度警察隊もその当時ピケ隊にくつついて見ていたという状態なので、署長は最前線におりましたので、私と藤本支部一緒に参りまして、あの暴力のさまを見てくれ、そうして早くあれをやめさしてくれ、そうして一応平和的に問題を解決しようじやないかというようなことを申入れたのです。併しそれを一応手を拱いて見ていた。投げ棄てられた組合員も又起上つて、そのピケの中に入つてつてちよつとやそつとじやこれはやれないというようなことも言つてつたくらいです。ただ対策といたしましては全然無抵抗で、警察がこれを取締つてくれることを期待しておりました。
  29. 秋山長造

    ○秋山長造君 斎藤長官にお尋ねしたいのでありますが、今のお話によりますといろと、まあ五百名の農民が県販連によつて動員をされて、そうして而もその中には暴力団か何か知らんけれどもピケを張つている組合員に対して相当ひどい暴力を振つた。而もそれに対して組合幹部から取締を要求されたにもかかわらず、警察のほうでは知らん顔をしておつたということになるのでありますが、そこらの実情につきまして警察のほうはどういうようにお考えになつておりますか。
  30. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今の具体的の問題につきましては詳細私は承知をいたしておりません。従いまして現地警察の報告を聞かなければ御答弁ができませんが、抽象論といたしましては、又只今お話では一体暴力団として入つていたのか、或いはその中に人が見れば暴力団的な色彩に見える人がいた、或いは県販連奉仕会に加盟していた人があつたとかいう程度ではなかろうかと思います。いずれにいたしましても、そういつた当時の状況は相当どちらも現場としてはお互に興奮をしていたのではないかと考えるのであります。従つて警察が何ら手を出さなかつたということでありまするが、私は恐らくそのときの署長の判断ではむしろ警察が手を出しては事柄がしげくなる、或いはその程度のことなら、まだほつとおいてもよろしい、そういう判断ではなかつたかと思います。これは現状における微妙な関係でありまするから。そのときの署長の態度がよかつたかどうか、今のお話だけではちよつと判断ができません。
  31. 秋山長造

    ○秋山長造君 どうも只今お話を聞きますと、やはり現地の指揮に当つた責任者のお話を聞かなければ、どうも水掛論になるような感じがするのでありますけれども、併し先ほどからのお話を総合して判断いたしますと、やはりどうも警察はいやしくも如何なる性質のものであろうとも、暴力行為が行われるのを眼で見ておりながら、それに手を出さないというのは、我々の警察常識としては受取りかねるのでありまして、仮にそういうことがそのまま行われておつたといたしますならば、先ほどのトラックの定員外乗車とか、或いは只今農民側暴力行為に対して手を拱いて見ておつたというようなことを、ただ判断いたしますと、先ほど斎藤長官は警察は公正な立場で、農民側に対しても、組合側に対しても、厳に暴力行為を戒めるように警告を再三に亘つて与えられたということと多少矛盾を来たして来るのではないかというような気がいたすのでありますが、そういう点につきまして、どうお考えになつておるかということをもう一度お尋ねしたい。
  32. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私は警察の態度といたしましては、飽くまでも厳正公平でなければならない、そうして法律違反があればそれを排除しなければならない、この建前はここの警察署長も堅持していたことだと存じます。具体的に只今おつしやいました小ぜり合いの場合に、どの程度の小ぜり合いであつたか、それがどの程度続いたかという、その判断によりまして、そういつた場合にすぐ警察が飛び出すのがよいか、すぐ治りそうだという場合なれば、強いて出ないほうがよいという場合も現地判断としてはあるだろうと考えます。従いまして特に不公平な態度をとつたというようには私は考えておりません。
  33. 若木勝藏

    若木勝藏君 国警長官に伺いたいのですが、今の秋山君の質問と私はやはり同様のことを考えておつたのです。田辺君の証言等をみますと、とにかく暴力団がそうした暴力を振いつつある。これに対して警察側が素知らぬ振りをしておるということは、そうして最終にはピケを破つておる、こういうふうなことを考えてみれば、これは或いはむしろ不法介入しないのだ、不当な介入をしないという建前を長官からお話がありましたけれども、実際においては騒擾や或いは不当なことが行なわれることに対する警告ではなしに、或いは争議介入するというふうな形がみえるのではないかと思う。こういうふうに私は考えるのでありますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  34. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 問題はピケ実力によつて警察排除したという点であろうと思います。これは只今組合田辺記長ピケは団結権の、法で保障された一つの手段である。会社の正当な業務を積極的に妨害することを目的としてやつているのだ、こう言われましたが、併しそのピケは先ほど申しましたように、十三日におきましてはすでに裁判所においてその妨害排除すべしという仮執行の決定が厳として存在しておるときであります。警察といたしましては、裁判所が如何に仮執行でありましても、妨害はやつてはいけないのだ、これは違法だという決定をしておる以上は、その妨害実力によつて排除しなければ、この農民対労組の対立が目の前に行なわれて治らないというときには、私は実力を以て排除することが当然であつて、これをしなければ警察の職責に反するのだと私は考えます。私は争議介入してはいけない、ということは、争議が合法的に行われている、そこに不法行為がないという場合のことでありまして、争議がきめられました法律の範囲内において行われる限りは、警察は全然介入をしない。併し法律違反があるならば、状況の如何にかかわらず、その法律違反を排除いたすということが私は当然であると考えております。
  35. 若木勝藏

    若木勝藏君 その点は更に私は疑問を起すものでございますが、これは田辺君のほうに一つお伺いしてみたいと思います。先ほどのあなたのお話では、仮処分については、これは富山支部のほうは却下になつた。ところが更に鏡支部の場合においては、十五日に会社側の方面から申請の取下げを申し込んできた。そうしてそれに対して組合も又応じた。その後においてその仮処分の申請は更にこれが行われた、会社側から又再び行われたということになつておりますが、その点は……。
  36. 田辺俊之

    参考人田辺俊之君) 仮処分の問題に関しましては、一応十三日の場合には仮処分の公示札が立つていたということは事実です。併し九日の日、やはり警察隊の出動の際に、齊藤署長並びに八代地区警察署における司法主任の、名前は忘れましたけれども、この二人と私たち三役が話しました。というのは丁度組合の弁護士が一緒に来ておりましたので、その判例なんかを出しまして、この問題について業務執行妨害でやるということはできないのではないか、というのは、富山の却下の問題は一応異議、逆申請をなしている、本調査を行なえという命令処分を組合としては出しておるというような結果から、出しましたところ、署長としては絶対に会社側が現在仮処分を決定している問題については、我々はこの排除をしに来たのではないということを明言しております。斎藤署長のそのときの言は、業務執行妨害という公示札に対して我々が処置するのではないということを私たちに申しております。ただ日通或いは日星産業、この業者の業務を妨害しておるというような考えで、これを排除するような考えで来た、で、その後、会社に対しまして、そういうような警察への要請を工場がやつたのかと言いましたところ、工場はやつていない、それは日通日星産業がやつたんだろうということを言つております。それで業務妨害排除という、その仮処分の問題について排除されたのではないということははつきり言えるのではないかと、私としてはこのように感じております。
  37. 若木勝藏

    若木勝藏君 斎藤国警長官にお伺いいたします。  今の組合側の御説明によりますと、ちよつと長官の先ほどの立場とは違うところがあるように思う。これはどういうふうにお考えですか。
  38. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) どういうところが違うのか、ちよつと私違うところがあるようには考えられないのですが。
  39. 若木勝藏

    若木勝藏君 仮処分の申請に対して、とにかく警察側が来たのではない、こういうふうなことを言つておるというような今の説明だが、その点どういうふうになつておるのですか。
  40. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 恐らく警察は当初仮処分があつた工場からそはを執行するために来てくれと言われて来たのでないことは事実でありましよう。そこで事態が起つてはいけないということで警官が出動したと考えます。併し現場におきましてトラックをもつて日通及び農協ですか、肥料を取りに来た。それを激励するといいますか、監視するといいますか、そういう意味で農民がたくさん詰めかけておる。そこには仮処分の表示がしてあるという場合には、目の前にそういう業務妨害をしてはいけないという裁判所の表示がある場合に、それを妨害しておる何が存在しておるということが、その現場における何と言いますか、切迫した状況が一番大きな原因であると、こう私は認定するのが当然であると考えます。従つてその際の措置といたしましては、それを排除をするということは事件解決上やむを得ないことである。何ら警察は殊更にどちら側に味方をしたという問題ではないと思います。これが正当な業務行為として気勢を張つておる、それを排除したというのであれば、それは警察は非難をされるべきだ、私もそのような場合であるならば、これは厳重に処置をしなければならない問題だと考えておるのであります。併しこの問題はさようではないと考えます。
  41. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して国警長官へお尋ねしたいのですが、国警長官只今お話によりますと、当時の、警察のほうでピケ排除を最初からするつもりで来たのでなしに、たまたま来たところがそこに仮執行の立札があつたので、それを見てピケ排除を思い付くということも当り前なことだというお話でありますが、そうしますというと警察のほうが必ずしも公正な態度で終始臨んでおられたように思えないのですが、先ほど私がお尋ねしましたように、最初の取掛りでは農民が押掛けて来て、そうしていきなり先頭のほうに立つてつた連中が、ピケを張つておる組合員に対して暴力をふるつておる。先ほどの書記長お話では、足と頭を持ち上げて手を放して落したというようなことさえも歴然たる、これは暴力行為だと思うのですが、それをやつておるにもかかわらず、まあそういうことへこの際手を出さんほうが却つて事態を円満に収める方法だろうと思つたかも知れないというので、そのまま放つて置く、そうして片方では最初からピケ排除するというつもりではなかつたかも知れないけれども、その場へ来て立札がしてあれば、当然そういうことをやるのも当り前だろうというようなことになりますと、どうも問題がどこにあるのか、それは見解によつて違いますけれども、いずれにいたしましても、前の問題とあとの事件とは、この日僅かの時間の間に引続いて行われたことでありますからして、まあ一般の常識から考えれば、そういうことをやつておるのにもかかわらず、警官が放つてつたということでは、よほど見ておつた組合員は憤慨しただろうと思う。而もその憤慨をなお且つ抑えて、自重して、敢えて一切無抵抗で座り込んでおつたものに対して、警官が襲いかかつたというように判断されても、これはしかたがないのではないかというように思うのですが、そういう点どうですか。前の暴力行為があつたのを見て知らん顔しておるのは当り前だというような結論は私は出ないと思う。
  42. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私はその暴力行為がどの程度であつたのか、それからいつどういうときにあつたのか、その現場のそのときの現状を十分存じませんから、それが一概にいけないとも言えないし、一概にいいとも思えないが、先ほどいろいろなかたの説明を聞いておりましても、この事件を円満に収拾するのにはどうしたらいいかということを、当日に至りましても、朝から再三工場の中において、労働組合側会社側警察署長も入つて円満に話を付けるようにという努力を長時間に亘つていたしておりますることを見ますると、最初からピケを破つてそうしてやつてやろう、一方農民側と言いますか、出荷側のほうにいたしましても、味方をしてやろうという態度であつたとは考えられませんために、さように申上げたのであります。署長はそれだけ努力をしてもどうも事態解決をしない、これ以上は妨害行為排除する以外にこの現場の収拾ができないと考えましたのは尤もではなかろうかと、かように考えたのであります。
  43. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと私も委員長として関連ですから国警長官にお尋ねしたいのですが、先ほど山口国警警備部長のお話では、十三日の当日に二十七台のトラックに約四百名ばかりの農民の方々が肥料会社に押寄せて来られた。そこで警官としては事態がこれは相当急迫をしておる、だからして治安上これを警戒しなければならないというところで、約二百名ばかりの警官が出動された、こういうようなことで、而も現地においてはこの農民側、それから労組側、同時に販購連の方々、こういうような方々を中立の立場から警官のほうは斡旋をした。そうして事態の収拾に当つた、こういうようなことを言つておられます。勿論先ほど言われたように仮処分の裁判所の判決はしておるが、果してこの十三日に、十三日を指定したところの仮処分の判決があつたのか、そういうような点は、恐らくそれはないだろう、とにかく業務妨害的な行為に対してのことは排除するというような判決であつたろうと思うのですが、一方側労組側においては十六日まで待つてくれ、そうすると、一方側では待つことができないと言つておる、その態度に対して、警官のほうは、遂に国警のほうも、これは業務妨害だとして、そうして警官が介入をしてやつたということは、これは先ほど国警長官が言われましたように、そういう判決が来ておるからというようなことも一応は考えられまするが、併しその日に是非ともピケをとらなくてはいけないということにはならないではないか。いわゆる両者側を公平に判断するならば、やはり一応は労組側の言い分も聞いてやつて両方の立場、公平な立場から勘案したならどうか。その理由としては先ほども参考人のかたから言われたように、肥料そのものというのが、有佐駅あたりには二日間も放置してあつた。或いは千丁駅の倉庫にもあつた。こういうことに対して、警官のほうでこの出荷の計画、即ち農村に対するところの配給の計画がその点まで立入つてよく検討されておつたかどうかということは、これはちよつと手落ちがあつたのではないか、警官のほうにも……。そういう点を勘案してみると、その日に二十余名の負傷者を出すような程度まで持つて来ずして、業者に話合いをつけて日を先に延ばすというようなことが警官としてとるべき態度ではなかつたろうか。こういうような点に対してはどういうふうにお考えですか。
  44. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先ほども申しますように、警察ピケ排除をいたしましたのは仮処分の決定を実行したというものとは私は思いません。私の申上げまするのは、当時仮処分がなされてすでにそれが有効にあつたということは、そういうピケは業務の妨害行為であるということを裁判所が一応認定をしている。従つてそれは正当な争議行為ではないということを、それは十二日であろうと十三日であろうと、その判決が取消されるまでは、そういう事態があれば、それは正当な争議行為ではないという裁判所側の見解でありますから、その見解を自分の法律解釈の判断として、その基準に基いて行動をするということは当然なことであろうと、私はかように申上げているのであります。で、警察側といたしましては、肥料が例えば十三日に搬出しなければもう全然間に合わない。二日遅れたらどうか。その判断は署長としてはどうであつたか存じません。恐らく警察としてはそれは十三日でなければならん、或いは二日遅れたらいけないというような、そこまで的確な判断でやつたものとは考えません。その現状の判断というものが、署長がいろいろと工場の中で、労組側、工場側と話合つてもどうしてもいけない、現場の空気はこういう空気だということであれば、この際には警察のとつたようピケ排除をするという行為排除をするということ以外に現場を円満にもはや収める手段がなくなつた、かように判定したものと私は考えます。それは又止むを得ない判断ではなかつたろうかと、かように申上げているのであります。
  45. 加瀬完

    ○加瀬完君 若干重複するところがありますが、念のためとこの点はお許し頂きます。会社に対しまして質問をいたします。  現地を目撃しておらないようでございますのに、何らの問題がないような報告をなされたのでございますが、これは甚だ責任のない態度であるというふうに私は考えるのでございます。  第二点といたしましては、労組のほうから十六日の出荷申出をいたしておるそうでございますが、これに対して会社側はどういう御態度をおとりになられたか。  次に警察に対しまして。農民等四百名が行動を起して参りますれば、当然衝突というふうな問題もあるわけでございますが、この農民の行動というものをどうしてとめなかつたかということが一点。  それから労組と業者農民ピケによる対決の解決が今度警察のとつたよう方法が最上であろうかどうかという点でございます。  で、長官は法律違反に対しましては厳正公平に処置をするということは当然のことでございますが、法律上問題の労働者争議権と業務妨害というふうな問題についての判定というものは、相当今後どういう見方をすればいいかという大きな問題を孕んでいるものじやないかと思う、こういう問題に対しまして今度のような処置が妥当最上のものであろうかどうかという点でございます。  それから法律違反をとめることは当然の警察の態度でございますが、法律違反をとめるために婦女子に対しまして大きな怪我をさせたという又一つの法律違反を犯しましたことについては、警察はどういうふうに考えるか。  それから労組の報告によりますると、農民の服装をした暴力団によつて組合員が暴行をされておつた、これを署長を通じて暴行の禁止を要求したけれども、さつぱり手続を取つてくれなかつたという報告でございますが、如何なる理由があろうとも暴行の現実を目撃しておつて警察官がこれの鎮圧をしないという根拠はどこにあるか。  次に農協に対しまして、農協は肥料配給の円滑というものに対しまして十二分な手を打つたか、又こういうふうに大人数引連れまして、出荷要求に農協みずからが働きかけることが今日のような事件を起すという予想がなかつたのか。以上の点。
  46. 熊谷正吾

    参考人熊谷正吾君) 今の御質問の一番先の、会社側のすべてが責任がないというようなお話つたのですが、どういう点を指しているのか、全くわかり兼ねております。本委員会性格その他についても私は承知しておりませんので、どういう点まで申上げたらいいかという点についても、ちよつとわかりかねているような次第でありますし、それから本問題がなぜここまで発展して、ここで取上げられたかといういきさつについても、背景についても、私のほうは承知しておりません。そういう問題について先ずその趣旨なり何なりを聞かして頂いた上で、まあ、参考人としてもお話するのが建前だと思うのでありますが、従いまして今、以上申上げた点がございましたので、まあ、いわばありきたりのままの、而も現地からの情報と新聞の報道に基いて御報告したということなんでございまして、例えば警察権が当日行使されたことが不当か不法かという問題、これについて工場側の見解と我々の見解を述べさして頂こうと思います。  警察側の取られた態度というものは終始非常に慎重な態度を取つておられたと判断いたします。なぜかならば、五月の九日に、鏡地方はいわゆる非常に小さな町でございまして、而も日産化学鏡工場があることによつて、まあ、その生活を立てていると言つても過言ではない。半工半農と申しますか、そういう地区でございまして、従いまして従業員イコール組合員でございますが、組合員は殆ど姻戚関係を持つているというようなほど非常に近い。従いまして警察のほうも又警官の方々も、まあ日常会つてわいわいと挨拶しているというような間柄だと承知しております。従いましてこの問題に対しては終始非常に慎重な態度をとつておられたというように、その間のいきさつを承知しております。五月九日には鏡工場が先ず挙げてこの問題の渦中に捲込まれておるというような状態から、警察は百名ほど署に待機しておつたというようなことも先ほど御報告しております。  それから五月十一日には、又これは工場からのあれでございまして、我々の確認しておりますのは、これは丸通と日星産業とそれから県購連からの口頭要請で以て出動をしておるやに聞いております。それで、これはただ対峙したと申しますか、それだけで、当日は終日その日星産業や県購連の代表と労組とが押し問答はしておりますが、全然これもまあピケ隊が入つても看過したというようなほど慎重な態度を期しておるようであります。  十三日に入りまして、これは警察権が発動されるということになつたのでありますが、事態はその間に、ちよつと組合のほうの言とこちらが得ました言とがちよつと食違つておりますので、御報告したいと思いますが、二十七台のトラックが参つております。そのうちの県購連トラックが十六台参つておりますが、その十六台に乗つて来たところのいわゆる代表は十名乃至十五名というような数であります。それと同時に現地の報告は相当多数が徒歩で、歩いて工場正門前まで到達しておるというようなのが実情のように我々は承知しております。それで署長が非常にその斡旋の労をとられて、この間約二時間に亘つて斡旋の労をとつておられることは、先ほど御報告申上げておりますが、その四百名の農民代表の方々と、それと三百名から成ります狭い地区に長い列を作つておりますピケ隊との問答が、やや……非常に農民側のほうが何か激昂したやに承知しております。従いましてまあ首つ玉くらいは或いはそれくらいは触れたかも知れません。そういう事態をいわゆる騒擾が起り得る虞れ、むしろ騒擾が起つているというような認定に基いて実力が行使されたものと、こちらのほうでは判断しておるわけであります。それは放置できないというような緊急避難の事態と判断することによつてあれされたものと解しておるわけであります。尤も現地事情を見ておりませんので詳細はわかりかねておりますが、そういうふうに一応あれしております。  それから十三日、十六日の御質問であります。まあ十三日にこの強行出荷をしなければならなかつた、それを組合が十六日まで待つてくれというようなことを言つたというようなことでありますが、これはこちらのほうで実は確認しておりません。組合がこう言つて会社がこういう態度をとつたというようなことはあいにく確認しておりませんので、これは御返事できません。以上。
  47. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 労働争議の場合にいわゆるピケとそれから業務妨害のこの法規解釈、これは非常にむずかしい問題でありますことは御指摘の通りであります。従いまして警察は軽々にさような場合に業務妨害として判断をいたしまして、これを排除いたすということは厳に戒めております。先ほども申上げておりますように、この場合におきましては裁判所におけるそういう仮決定がなされておつたということによつて警察は業務妨害行為、いわゆる争議に許された正当争議行為ではない、かように判断をいたしたのは、これは当然だと思います。若しこのときにさような仮決定がなされておらなかつたならば、私は非常に事情が違つてつたのではないか、かように考えております。その点は御了承頂きたいと思います。  それからピケ排除する場合に怪我をさせた、この点についての所見如何というわけでございまするが、警察といたしまして、過剰に何と言いますか、さような事態を、怪我人を作り上げたということであれば、これは職権行使の過剰行為でありますから、警察としても非難されなければなりません。これは或いは裁判においてもその責任を問われなければならん問題だと考えております。私の聞いておりまする範囲におきましては、過剰な行為だとは私は聞いておりません。ああいう場合に擦り傷というような程度のものが出ることは、これは止むを得ない犠牲であると考えております。それから農民が四百名も出て来るのをどうして阻止ができなかつたかというお尋ねでございますが、県からの報告ではかようなことのないように農民側にも再三注意を与えたという報告が参つておりまするが、具体的に参つておりません。私もこの点は何らかもつとほかに措置がなかつたのであろうかという感じを持つております。従つて只今照会中でありますので、どういう措置警察はいたしまして、そうして果して止むを得なかつたかどうか、農民がそれだけ集つて来るのがどうしても止むを得なかつたのであるかどうかということを、私が判断をいたしまするには、まだ十分の材料を持つておりませんから、只今照会中でございます。  それから暴行黙認のお尋ねでございますが、たびたび申上げておりますように、これはどの程度の暴行であつたか、これがはつきりいたしませんと、私はちよつと申上げかねるのであります。先ほど私はこの全体を通じての警察署長のやり方、警察のあり方を報告を受け、又ここでも皆さまがたから伺つておりますると、非難されるほどの暴力行為が行われておつたのを黙認しておつて、怪しからなかつたのだというほどの、それほどの状態ではなかつたのではないかということを考えて、先ほど御説明したのであります。先ほど警備部長が当時の映画を一応見たという御報告いたしましたが、警備部長のお話によりますと、農民側労働者側と小競合を起しているときに、警察がそれをとめておつたという現状の場面があつた。それ以外は大してそういう現状のものを見なかつた言つておりますが、たまたまそれだけ抜けていたのかわかりませんが、それにいたしましても、全然傍観視しておつたのではなく、やはり農民側労働者側との間の小競合を現にとめておつたという映画が写つておるそうでありますから、全く傍観しておつたものでもなかろうと私は判断をいたします。
  48. 森晋

    参考人森晋君) 事態がこうなる前に十分の手を打つたかというような点が質問の第一点であつたようでありますが、先ほど一般説明を申上げましたが、私どもとしましては、すでに日産化学争議先ほどお話のようにずつと前から行われて来まして、果してこのストライキがいつ済むのか、団体交渉がいつ開かれるか、大体まあ終りそうだという話を実は本社におきましても聞いておりますし、それから現場におきまして、福岡に支所がありますが、その支所におきましても会社側並びに労働組合側両方から聞いて参つているそうであります。ところが団交の結果は、先ほどお話のようになかなか進みませんが、会としましての基本方針は、この争議介入をしてはならないという考え方で最後まで実は終始して来たわけであります。で、そういうことにいたしましてあらゆる手を使いまして、ほかの会社から、ほかの工場から現場のほうに荷物を振替えて積ませるということを、本部のほうとしましても、或いは福岡の支所のほうに対しましても、そういうことをさせまして、このために実は福岡の肥料部の部長は、前後東京に三回ぐらい来ております。私のほうからも本部のほうからも本部のほうからも現場のほうに出掛けて、問題は大阪の地区或いは東京の地区から、どれだけ供給ができるかということによつてきまるわけであります。それにつきましてはほかの会社といろいろ折衝しなければなりません。ところが緊急の場合でもありますし、又ただ日産化学工場がこうなつているからやつてくれというような個別的な話だけではなかなか済みませんから、本部におきましては過燐酸の同業者で組織されております燐酸工業会というのがありますから、そこの理事長に対しまして再三ほかの工場から間に合せてもらうように、工業会全体として一つ、全購連のものにつきましては、これはただ商売で買つているものでなくて、農民の要請によりまして、実利になつて繋がつているものでありますから、間に合せてやつてもらいたいということ、それから農林省におきましても非常に心配をいたしまして、生産行政の責任は通産省になつておりますから、通産省の肥料部のほうにいろいろ折衝をして頂きまして、それで最後には緊急増産というような場面まで行つたわけであります。そういうふうなことで、私としましてはあらゆる方法手段を講じて来たのであります。  ただ一点、実は今になつて振返つて、こういう方法もあつたなと思います点は、争議がこういうふうに長く継続するというふうには、実は私ども自身もあまり考えなかつたのであります。争議が片付きますと、何しろ消費地の真中にあります工場でありますし、それからたまたま九州の最も大きな工場は下関の日東硫曹の工場がありますが、それから山口県の小野田の日産化学工場があるわけであります。こういう工場も全部ストに入つてしまつたわけでありますが、そういう工場ストライキが終りますと、阪神なり或いは東京からわざわざ高い運賃をかけまして九州に持つて行かなくても、現場鏡工場である物を出して頂く、或いはすぐ増産をして頂きますれば、現在問題になつているくらいの数量は、そう生産に手間とるわけではないわけであります。従つて遠方から非常に犠牲を払いまして現場のほうに持つて行きます過程に、若し争議会社側なり組合のほうで経過的におつしやられているような団交で進みますと、そうすると今度は逆に現場品物が余る、それからこちらから持つてつたものも不要になつて行くという実は心配を、一面していたわけであります。ここまでストライキが長引くと思いませんでしたから、これを若しここまで長引くという判断の下でありましたならば、三月の終りなり或いは四月の上旬におきまして、もつと徹底した現場に物を送る対策、或いはほかの工場に増産をして頂く対策、こういうのがあつたのじやないかというふうに考えますが、これはもう結果論でありまして、私どもとしましては争議が一日も早く片付くことを期待しましたし、又団交の経過におきまして、会社側のほうでも今度は片付くというような情報を頂いて来ていたのを、まあ過大に判断をしていた、いよいよ切端つまつてここに来たわけであります。従いまして品物をやりくりしまして現場に間に合せる努力としましては、これ以上のことはできなかつたのではないかと、かように考えます。  それからもう一点、そういう大勢の者が押かけるようなことをしない指導がなかつたかというふうに拝承したわけでありますが、この点につきましては、先ほど来再三申上げますように、最後は本部のほうとしましては、支所に対しまして争議介入のことになりないように、県連、組合を指導してもらいたいということを言いましたし、それから最後には電報を以ちまして、実は九州支部長にそういう指令をしております。又九州支部長からも夜間に実は私のところに電話がかかつて来たわけでありますが、同様の考え方でおるということを言つてつておるわけであります。ただその過程におきまして、現場のほうからは早く品物をよこせという督促は、これは非常にきつく受けて来ておつたわけであります。そこで我々としましてはこういう事態にならんことを非常に希望しまして、そういう電報或いは電話で指令の措置までやつたわけでありますが、現場のその後の状況を報告としまして私どもの手許に参つておる話では、九日から十二日まで会社のほうに対しまして、或いは労働組合のほうに対しまして、いろいろ折衝をやつたようであります。これは円満に引き渡して頂きたいという折衝をやつたようでございます。これは先ほど来の御説明と全く付合しておるわけであります。それでなかなか話が埒があかないので、延びるばかりであるから、実は十二日の日に品物を非常に急ぎます阿蘇地区、それから球磨郡、それから上益城、こういう地区の組合長、並びに組合のそのほうの担当の人が集りまして、それで荷物が不着で非常に困つておるという問題を論議したようでございます。どうしてもその場合におきましても、私どものほうの報告によりましては、できるだけ待つてもらいたい、待とうじやないかという議論もやつたようでございますが、併し先ほど話をいたしましたように、こういう高冷地で田植が早い、特に今年は温床折衷苗代というようなものをやつておる関係で非常に早くて、大体五月十三日頃から二十日頃までに田植が行われるという実情になつておるために、どうしてももらつて行かなければ困るという結論になつて、十三日の日に取りに行つた、こういう報告になつて来ております。従いまして現場のほうで、どの程度引延ばしの説得をやつたか、その効果が、やつたにかかわらず、どういう程度うまくなかつたかということについては、これは現場に私出ておりませんからよくわかりません。
  49. 加瀬完

    ○加瀬完君 会社側は私の質問に対して甚だ御不満のようでありますが、本委員会でこの問題が取上げられましたのは、争議行為が、その鎮圧のために警察権の行使となり、原因はそれでないにいたしましても、警察権の行使のためにいろいろ他の問題が発生するということでは、甚だ宜しくないことでありますので、警察権の過剰行使がないか、或いは労働組合側からみまして果して正しく労働争議権が護られておるか、或いは会社側からみれば会社側に対して法律が十二分な保護をしておるかといつたような問題が今日の問題であろうと思います。そういう意味で私は伺うのでありますが、私が質問いたしましたのは、労働組合の代表を除きましては現場に居合せた者は誰もおらないようでございます。そこでこうであつたろうとか、こういうような解釈をしなければならないという仮定で議論が進められておるようでありますが、少くも会社側意見を聞きますと、平生親睦関係にあつたので、警察官側は非常に慎重な態度で臨まれた、又労働組合側も非常に無抵抗な態度であつたということならば、何も今日論議されておるような問題は発生する余地というものはないわけでございます。こういう点問題が発生いたしたのでありますから、現場へ事実行きました会社側の代表というものに十二分な報告というものを聞かなければ、我々はどうも実情が符合しない、こういうふうに感じましてお伺いをしたわけでございます。  国警長官に重ねてお伺いをするのでございますが、言葉尻を掴むようで恐縮でございますが、今日の問題も過剰行為が一番問題になるところでございますので、長官の言葉の中に暴行がどの程度であつたかというふうなことで、そのお言葉の裏を返すならば、軽程度の暴行ならば何か認めるかというふうな我々は錯覚を持つのでございますが、暴行という名のつくものは、如何なる暴行も許されていいはずはないのでございまして、こういう点について長官のはつきりとした御意見を伺いたいのでございます。  それから皆さんも仮定で論を進められますので、私も一つ仮定で許して頂きたいと思いますが、これが一種の団体結社等の乗ずるところとなりまして、農民の名に隠れ、或いは業者の名に隠れて暴動の誘因を作つたというふうなことが若しあつたといたしましたならば、こういう点について、そういう事実があるかないかということの調査はどれだけ進んでおられるか、若しそういう何か特殊な団体の煽動なり行動なりというものが今度の事件の中に含まれておつたといたしましたならば、どういうふうに処置をされるか、それについて仮定で恐縮でありますが、お伺いをいたしたいのでございます。  もう一つ、いろいろ警察署長が中に入つて斡旋をしたということでございまするが、その仮決定に対する警察の処置が、今度おとりになつ方法を最高とお考えになつておるかどうか、仮決定ということは当然これは認めなければならないことでございますが、その仮決定に対しまして警察側とつた処置を一番いい方法とお認めなされるか、以上の点をお伺いいたします。
  50. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先ほど私が、警察官がそういつた事態を鎮圧する場合に、被鎮圧者の側に怪我を生じたというような場合に——そういうべきを、暴行という言葉を用いたと今申されたのでありますが、さようであれば私は用法甚だ不用意であつたと思います。暴行と言いますると、それにはもう違法性ということがくつついておるということが大体の観念でありますから、さように私が用いたとすれば、これは取消しておきます。そういつた場合に警察官の行為によつて怪我人ができたというような場合において、どの程度まで認められるか、どの程度以上は認められないかというのは事実問題として判断をしなければならないと申上げたのであります。従つて暴行といえども認める場合があるという趣旨ではございません。その点は取消しておきます。  それから特に暴動をたくらむために或る種の団体が計画をして事をここに持つて来た、そういう暴動をたくらむために、そういう事実があつたというようなことであるならば、処置をしなければならないと存じまするが、さような報告には只今のところは接しておりません。十分調査をいたしまして善処をいたしたいと思います。  それからもう一点、仮決定に対する処置でありますが、これは先ほどからも申しておりますように、仮決定に対する処置ではなくて、仮決定によつてそういう事態は違法であるということを警察が判断をした、警察の勝手な判断ではなく、裁判所がこれは違法であつて正当な争議行為ではないぞと、こう判断をしておる以上は、その判断に従つて警察は処置をするのが当然であると、かように申上げたのであります。で、警察はそれじや争議行為の中に少してでも違法の点があれば、直ちにそれを排除するかと申しますると、これは必ずしもそうではないと思います。その事柄の軽重によりまして、若干の違法があつても、併し健全な労働組合の育成、或いは争議行為が円満に遂行されるために、この程度のものはこれはむしろ放置しておつたほうがよろしいという場合もあるだろうと私は考えます。本日問題になつておりますような事態の場合に、併も目の前に違法な事態が現出しておるという場合には、それを排除するよりほか方法がなかつた、かように申上げておるのであります。仮決定の執行は、これは御承知のように執達吏がやるのであります。その際に警察が協力をするという場合がありますが、さような場合でなければ、仮決定があれば必ず警察はそれを申請者のほうから要求がなくてもやるかと言いますと、それはさようには限りません。むしろやらないのが常態でございます。
  51. 石村幸作

    ○石村幸作君 大分質疑応答が進みましたこの機会に、ちよつと当日のことに関連して桜井知事さんにお伺いしたい。丁度現地におられたので、当日友誼団体として教職員組合ですかが、労組の争議に対して応援をしたというので、農民側が非常に激昂したことか、対立して爾来紛糾をしておるというような情報もあつたのですが、これは教育行政上非常に憂慮すべきことでありまして、そういう事実がありましたか、ちよつと御報告願いたい。
  52. 桜井三郎

    参考人桜井三郎君) 私は現場に行つておりませんでしたので、そこのところははつきりわかりませんのでございますが、ただ総評は友誼団体として組合側に協力される立場であつたと自分は考えておる次第であります。併し教組側の皆さんのほうではストライキそのものに対してそんなまあ、組合側に対しては協力的な気持はあるけれども実力行使の問題なんかについて、肥料を取り出すことを妨げるとかいうような問題については、自分たち現場に居合せていなかつたというふうなお話があつたように思います。それからそのときに組合側に応援されて行つておられたお方が、元教組の委員長をしておられたお方はありますが、これは教組そのものと現在は形の上では関係のおありにならないお方であります。その点、なお委員長にこの機会でありますのでちよつと……。私のほうに対しては今お話は出ましたが、御質問はないようでございますので、私のほうはただ実は早く争議解決をいたしまして、そうして肥料が円滑に農民の手に渡ることを衷心希望いたしておりますので、そういう意味を以ちまして本委員会で御努力を頂くものならば是非お願いしたい、こういう考えで参つておりましたわけであります。  ことが警察の問題ということになりますと、私のほうには別に権限は全然ありませんので、発言申上げる機会はないかと思います。ただこの機会に繰返して申上げますが、国警の警察隊長のほうは、争議そのものに対して警察権を使うという意思は決してない、全然ないということは繰返して私には言うておられましたので、できるだけ一つ県あたりが中に入つて、そうして斡旋をしてやつて欲しい、こういうことは警察隊長としては繰返して言うておられました。それから又その後県の販購連のほうでこの夏の肥料対策についていろいろ論議をしておる、協議をしておるから県は一体どういうふうに考えておるか、今までどういう態度をとつたかというようなことについて相談をしておるから一つ協議会場に来てくれんかと、こういう特別な要請がありましたので私が参りましたが、なお又そのときに警察隊長一緒に呼ばれて来ておりました。その当時警察隊長はその席上でも繰返して申しておりましたが、自分は労組側に対しても若しくは工場側に対しても或いは販購連側に対しても決して特別な立場をとつておらない、警察としての立場をとつておるので、片方に片寄るような考え方は全然ない、こういうことを警察隊長が繰返してはつきり申しておりましたことを申上げておきたいと思います。  なおこの問題につきましては繰返して申上げることでありますが、労組側のほうに働いていらつしやる皆さんは工場の周辺においでになつております。それで肥料につきましては遅場地帯になつております。併し今書記長お話でもラジオなんかでも聞いていろいろ御注意になつておりました模様であります。ただ農民のほうは、本当は大変理詰めなことで考えていいはずでありますけれども、やはり何としましても農民心理から申しますと、田植の前日肥料が来ればいいということではなしに、少しぐらい余裕をもつてその肥料を自分の家の庭先に積んでおいて安心をしたいという気持が相当やつぱりあるのじやないか、この点が切迫しておる肥料事情に拍車をかけておるようなこともありはしなかつたかということも考えるのであります。然るにそれに対しまして統制が外れておりましたために、県は何月何日くらいまでには絶対にこの辺にはこのくらいの肥料が必要である、こういう資料を実は持ち合せておりません。先ほど販購連がおつしやいましたが、県の指導によりまして折衷法の苗代の奨励をいたしておりますために、去年よりも又今年のほうが実は肥料のほうを早目に要るようになつておるというような実情も実はあるわけでありますが、そういう点につきまして私どもといたしましても的確な資料がありませんでしたために、組合側に対して具体的な資料で十分に御説得を申上げて了解を得ることができなかつた点があつたと思います。それから販連のほうは大分長く組合側折衝しておられましたために、或いはそこに折衝の過程において、これは私の想像でありますが、多少官僚的な問題も或いはあつたかどうか、そういう点も危惧をいたすわけでありますが、十三日の当日の場合は農民と販連の幹部のお方が行かれたはずでありますが、この場合どうも権利は販連のほうにありますが、併し肥料が本当に欲しいのは農民であります。組合側としては販連との問題については、或いはこれを多少感情的な面が両方にあつたかも知れんと思いますが、農民に対して肥料は是非やらなきやならん、こういうお気持もあつたろうと思いますが、そこで今の農民と話をしたいというふうなお話がありましたけれども、何分恐らく……、まああとで聞いた話ですが、当時の状況が非常な昂奮状態に入つておりましたために、どうも理屈で説得し切れない面が両方にあつたのじやないか、そこでまあ警察側としては事態を起さないようにという心配で出動されたのじやないか、こういうふうに私ども考えますのでありますが、ともあれどうも肥料期間的な必要性というものに対して認識に食い違いがあつたのが大きな原因じやないか知らんというふうなことを考えておるわけであります。何といたしましてもかような事態がこのまま参りまするならば、更に引続いて起る惧れがある、又再び農民が大挙して工場に来るというようなことになりましては、これは大変なことであるというふうに思うのであります。警察の力でも、まあいわばどちらに対してでも、警察の力がかなわんぐらいの大騒ぎなどになりましても、これは大変なことであります。そこで何とか早くこの問題を解決したいというのが私どもの衷心からの希望なのであります。  本当は、会社側に参りましたことは、争議の発端はベース・アップの要求が因なのでありますが、それに対しまして会社側は種々ないろいろな御都合からべース・アップ等に対する回答とともに人員整理の問題を申出られたようであります。そこで問題が紛糾して来たようでありますので、私は争議そのものに対してかれこれ申上げるのじやないけれども、人員整理と切難して何とか早く解決をつけて工場のほうも全面的に動くように、肥料も早く農民に渡るように円滑にやつて頂きたい、切難して一つ相談ができんものかというようなお申出をして参りましたようなわけであります。私のほうで申上げますこともないようでございますから……。
  53. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 今の石村君の質問に対しまして国警長官の答弁を求めます。
  54. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 石村委員の御質問、県の教組が応援しておつたかどうか、詳しくは報告を受けておりませんが、県の教組の旗がピケ・ラインのところに立ててあつたというのを農民が見て非常に激昂したという報告を受けております。十九日に農民大会というものを熊本市でやりまして四千人余り集つて大会が開かれたのでありますが、その際にも県の教育委員会等に対して、そのことの抗議文をきめて抗議をしたという報告を受けておりますが、これに対して県の教育委員会はどういう見解でありましたか、どういうふうに回答したか聞いておりません。
  55. 内村清次

    委員長内村清次君) 矢嶋君から委員発言を求められています。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 内村清次

    委員長内村清次君) どうぞ。
  57. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) 本委員会の審議目的の中枢から多少外れるかと思うのでございますけれども、現在石村議員から現に質問がありましたので、私はここに権威ある委員会の名誉にかけて私は田辺記長にはつきりと答弁を求めたいと思うのです。と申しますことは、この争議熊本においては、その後は教職員組合はこの争議に応援した、或いは応援しなかつたとかいうようなことが大きく問題に採上げられて、只今斎藤長官から説明がありましたように数千の農民の大会があつた場合に、農民代表が県教職員組合並びに教育委員会に対して抗議を申入れた、問題は熊本ちよつとすり替えられておる状況でございます。そこで私がお伺いいたしたい点は、先ずこのたびの鏡労組の争議というものは、熊本の県の総評の名においてこれを闘つております。熊本教職員組合はこの傘下団体である。そういう場合に正常なる争議において友誼団体がその友誼団体の労組に指示をして、そうして熊本県の教職員組合の組員が多数勤務時間外においてその応援をした場合にそれが是であるか非であるかという問題については、それはそれぞれ立場があつて論がございましよう。併し私はここでそれを論じようとするのではない。私は今お伺いいたしたい点は、果して当日熊本の地方紙に報ぜられているように、熊本教職員組合組合員がそのピケの中に入つてつたかどうかという点ですね。入つてつたといつて随分抗議が出されているわけですが、現に組合員がそういうピケの中に入つてつたかどうか、友誼団体の書記長として御存じだと思います。その点私は承りたい。と申しますのは、私が新聞で見、或いは私が承つておる点では、熊本県の教職員組合組合員としては、何とか労組と農民の間をうまくとり持つて、一日も早くこの争議解決をして、農民各位に肥料を渡して上げたい、何とかして上げたいという気持熊本教職員組合員の先生方は、その気持で一杯だつたということを聞いておるわけです。従つて私は東京において掴んでおる情報に関する限りは、私の判断では、何が故にこの争議熊本教職員組合のその行動に対して攻撃されて来るかということは、理解に苦しむわけです。熊本教職員組合以外の、この争議を聞いて総評傘下の加盟団体として積極的に応援した団体があるのにかかわらず、それらの団体に対しては何らの抗議、申入れをすることなく、殆んどタッチすることなかつた而もこの争議の円満解決を念願し、農民各位の立場に立つて非常に心配しておつた熊本教職員組合組合員がそのピケに入つたのか何とかということについて、非常に大きな問題としてとり上げられ、而もこの東京の議事堂の中にまでそういうものが響いて来る、現に自由党の石村君からそういう質問があるということは、私は本委員会の名誉のために田辺記長から責任ある答弁を、御説明を承つておきたいと思います。
  58. 田辺俊之

    参考人田辺俊之君) 先ず最初に結論から言いますと、教職員組合組合員は、当日ピケ隊には一人も入つていなかつたということです。たださつき国警長官のほうより話がありましたという旗の問題につきましては、十一日の日に、一応県総評の方針として、日産化学の労組鏡支部闘争を支援するという決定をした以後において、全参加組合工場前に旗を立てたということは事実なんです。旗はその当日は立つておりました。それから教組関係を一応論議している問題としては、一応前代議士でありました川村さんが、ずつと私らの応援に見えておりましたので、それを称して、前委員長が入つていたので、教組が入つていたのではないかという結論を出しておるわけなんです。それと同時に、私らが若干不満足に思つておりますのは、熊本県下においてあの問題がああいうふうにクローズ・アップされたという問題につきましては、政治的陰謀があるということを、これは私たち組合の分析としてやつたのでございますが、政治的陰謀があるということをはつきり打出しております。というのは、農民大会の開催の式場において、私たちと大体志を同じくする者が発言を求めても、全然発言させなかつたということがある。それと同時に教職員問題をとり上げてやるということは、明かに一政党の今後における、この次の選挙戦に備えた策謀ではないかということを。それから県販連のほうの考えとしまして、やはり農民労働者を離反して行くというような一つの動き、といいますのは、十三日の介入の時に、我々が誠意を尽して十六日には出そうという問題を全然踏みにじつてしまつた。我々としては譲歩したのに、なせ県販連としては譲歩しなかつたのか、たまたまその県販連の会長が某政党の県会議員であるということもはつきり断じていいのではないかというような分析をやつたわけでございます。
  59. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) 結構です。参加してないことがわかれば結構です。
  60. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちよつと問題がわきに外れまして、いささか固くなつたのですけれども、実は我々がこの委員会で究明したいのは、十三日この現場において果して警察の不当介入があつたかなかつたかという事実問題を究明したいのでありまして、まだまだ我々はその究明のためにはいろいろ疑問のふしもあるし、聞きたいふしが多くあるのでありますけれども、すでに時間も相当経過しておりますし、なお又本日御出席下すつておる皆さん大多数の方が当日現場に立会つておらないお方ばかりなので、いささかお話が間接の話になりますので、これはもういくらやつてつても大した結論は出て来ないんじやないかと思います。従いまして動議を提出いたしますが、本日はこの程度で打切つて頂きまして、他日改めまして当日現地に立会つておりました警察署長その他関係者の方を呼んで頂いて、そうして当日の現地模様について、事実関係をもう少し究明いたしたい、こう思う。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  61. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 私は今の秋山君の動議の前半に賛成であります。本日をこの程度にやめることは賛成でありますが、一応その程度にして参考人の御退場を願つて、その後についての問題は、当委員会だけで協議すべきものだと思います。
  62. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと委員長から今一つお聞きしたいことがあります。参考人には大変長時間で相済みませんが、先ほど労働課長のほうで、会社のほうの労働者の団結権というものは、これは認める、併しお互い会社の営業権も認めてもらいたい、こういうような御発言があつて、そうしてまあ四月の二十八日ですか、あの日に熊本地方裁判所排除の申請をされた。これはまあストライキ中ですね、こういうことは、ストライキの対抗手段としてこういうことをやられたのかどうか、これは本社側としてはこういう事例があるかどうかという点が一点と、それから今日法務省の刑事局の公安課長ですか、来ていらつしやれば、実は地方裁判所が被申請人を呼ばずして、直ちに裁判、判決をやるというような事例は、今の判例として他にもたくさんあるかどうか、この点を一つお聞かせして頂きたい。先ず会社のほうから。
  63. 熊谷正吾

    参考人熊谷正吾君) 只今のあれに対しまして、そういう申請の形はあると存じております。それで同時にその申請は何でなしたかと申上げますれば、争議行為を、正当な争議行為を防止するという趣旨じやないのでありまして、いわゆるどちらとも合法的な線で、トラブルなしにこの争議、紛争状態を中止しようというような観点に立ちましてやつたものと解しております。
  64. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 只今の点について申上げます。仮処分の申請をいたしまして、それに対して仮処分を許す決定が出るかどうか、これは裁判所の問題に属します。裁判所におきましてはそのときの申請人側の疎明書類等によりまして、審訊という言葉を使いますが、審訊ということをやつて、当事者を呼び出して、その疎明材料だけで仮処分を許す場合も法律上許されているわけでございます。ただ本件の場合にどのような仮処分の申請がなされ、どのような仮処分の決定がなされたか存じませんので、他の、例えば富山で却下になつた例、これもただ却下になつたということは私も聞いておりますのですが、その比較考証ということはちよつとできかねるような事情であるのです。
  65. 内村清次

    委員長内村清次君) わかりました。それだけです。  それでは先ほど西郷君から動議がありましたように、この問題は参考人の方々の御陳述それから質疑はこれで打切つて、あとの問題は委員の方々で御相談するということに取計らつてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 内村清次

    委員長内村清次君) ではそのようにいたします。それでは誠にありがとうございました。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  67. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記を始めて。只今議題の件は、現地関係者を召喚をするというようなことは、その日取の点については、更に又理事会において決定をするということに御異議ございませんね。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 内村清次

    委員長内村清次君) それではそういうふうに決定いたします。   —————————————
  69. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは議題のうちで地方公務員及び教職員に対する夏季手当の問題につきまして議題に供します。
  70. 若木勝藏

    若木勝藏君 大分時間も経過していますから、極く簡単に一つ伺いたいと思います。先般渡されました六月の暫定予算の中に期末手当は含んでおる、こういうふうな説明があつたように思うのでありますが、その点は間違いないですね。
  71. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) 御指摘の通り、給与関係費二百九十八億四千五百万円の中に計算をしてございます。
  72. 若木勝藏

    若木勝藏君 そこでその期末手当はどういう工合になつてつておりますか。
  73. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) いわゆる〇・五カ月分を計上しております。
  74. 若木勝藏

    若木勝藏君 これは実際において自治庁においても地方公務員として適当だとお考えになつたのだろうと思うのでありますが、今この給与を貰つているところの人たちのいろいろ実際生活或いはいろいろ理論的な検討、こういう方面から考えて見まして、一万八千円ベースでなければ暮しが立たん、それでもなお且つ戦前の給与に比べれば非常に割が悪くなつておる、こういうふうなのが実態なのであります。ところが先般一万六千円ベースの要求に対しても、又人事院の一万三千円ベースの勧告に対しても、殆んどそれが顧られておらない。そういうふうなところから相当俸給生活者には赤字が累積しておるのがこれは現状でございます。そういう点から、自治庁としてはどういう見解に立つて〇・五というふうな歩合を定めたのか。我々から見るならば、最低限度一カ月分は支給しなければならん、こういうふうに考えるのであります。この点次長から……。
  75. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 夏季手当の問題についてお尋ねでございますが、今回の六月暫定予算に予定をしております〇・五の夏季手当の額を政府として決定をいたします際におきましては、只今御指摘のような物価の関係も又公務員の実際の生活の状況もいろいろまあ勘案をいたしたわけでございますが、何と申しましても国家公務員と地方公務員との間の給与の権衡ということを考えなければならんということでございまするし、又国の財政の面から心考えなければならないということで、国家公務員につきましては〇・五という建前がとられたものでございまするから、地方公務員につきましてもやはり同様の建前に従つて一応計上いたしたのであります。夏季手当を更に増額するということにつきましては、自治庁といたしましては大体以上のような考え方でございます。
  76. 若木勝藏

    若木勝藏君 そういたしますというと、自治庁といたしましてはいわゆる大蔵関係のほうの考え方に追従したというようなことにとられるのでありますが、それは如何でありますか。地方公務員の立場は国家公務員の立場と著しく違う、そういう点から頑張らなかつたか。この点を伺いたい。
  77. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 地方公務員の給与の建前は、給与政策それ自体としては、合地方団体の人事委員会が給与の勧告を必要に応じてする、それを自治庁が如何ように処理するかというふうに地方の自主性に任された建前になつているわけであります。ただ国といたしまして、国家公務員について給与上の一定の政策をとるという場合においては、地方がそのような給与政策をとろうとした場合に、必要な財源措置だけはやはり財政計画上考慮しなければいけないと、こういう観点に立つておるわけでございまして、各地方の給与政策それ自体が国家公務員の給与と権衡がとれるようになることは望ましいことでありますけれども、それは各地方に法的には任されておるわけでありまして、中央におきましてはやはり財政計画上国家公務員に比較して片手落にならないような財政措置はしなきやならないという考え方から、お話のようにやや追従したというようなふうにとられないでもございませんが、財政計画の問題でございまするので、さような考え方で処理いたした次第であります。
  78. 若木勝藏

    若木勝藏君 甚だどうも私は自治庁は腰が弱いと思うのでありますが、そういうことが漸次中央集権に持つて行かれるという問題になるだろうと思うのであります。そういう点をもう少し肚を据えて地方の公務員の場合を考えて頂きたい、こう思うのであります。これは生活の実態から参りますからして、恐らく今この機会をとらえて非常な私は労働攻勢が行われるであろう、そういうふうに考えられるのであります。先ほども労働争議の問題で問題になつたのでありますが、何分にも食うだけのものを与えないところにいろいろな事態が発生して来るのでありまして、こういう点は十分一つ考えてもらいたい、こう思うのであります。  時間がありませんから、その点はそのくらいにいたしまして、次に教職員の場合を伺いたいと思います。教職員の場合はやはり半額国庫負担法になつておりますけれども、これは地方の実績に対して半額を国庫で以て負担する、御承知の通りであります。そうなりますというと、問題は地方の実績に重点があるように思うのであります。この点においてもやはり自治庁としては教職員の場合も〇・五というようなことを考えられておるのかどうか、この点を先ず伺いたい。
  79. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 教職員につきましても考え方としては同じような考え方でございます。ただ、それは義務教育国庫負担金のほうで今の半額に相当する分は見ておるわけでございまして、その残りの純粋の地方負担に属しまする分につきまして地方財政計画上では考えておるわけであります。
  80. 若木勝藏

    若木勝藏君 その場合に私の懸念される問題は、従来から論議された点でありますが、教職員地方公務員よりも月額三百四十七円ですか、四十九円ですか、そういうふうに高くなつておる。そういうことのため〇・五が事実において落されておる。そういうことが今回も又行われるのでないかということが懸念されるのでありますが、その点に対する自治庁としての考え又財源的な措置、こういうことについてはどういうふうになつておるか、伺いたいと思います。
  81. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 地方公務員の実際の給与と地方財政計画上基礎にとつておりまする地方公務員の給与基準というものとの間には、御指摘のように、教育公務員につきましても、その他の一般公務員につきましても、差があるわけでございます。この差につきましはやはり将来何らかの形において調整をして参りたいというふうに私共希望いたしておるのでございますが、この暫定予算は何分にも必要最小限度のものということでございまするし、又従来基礎にとつておりまする財政計画を前提にいたしまして編成をいたしたものでございまするので、只今の懸案になつておりまする給与差の問題につきましては、この夏季手当の場合において調整する措置は遺憾ながら講じ得なかつた次第なのであります。
  82. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうするというと、それは非常に重大な問題になつて来るのでありますが、そうすると、事実上〇・五にならないわけですね。年末手当の場合も、〇・二五というふうなものが〇・二を下廻つておるような状態が多かつた。それと同じような結果が今度現われて参りますか。これは実に私は重大な問題だと思うのであります。はつきり御答弁願いたい。
  83. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 地方財政計画で国の予算に関連をして立てておりますものは、要するに財政計画上の数字でございまして、その計画上の数字といたしましては、計画の基礎になつておりまする月額の給与の半額というものを計上いたしておるわけであります。併し実際の支給額は個々の地方団体で違つておるわけでございますから、法の建前としてはこれは各地方団体の給与条例において如何ように定めておるかということになるわけでございますが、各地方団体では、やはり実際に支給いたしておりまする給与の月額の半額というものを支給する建前になつている地方団体が多いであろうと思います。併しこれはいつに各地方団体の規定の如何にかかることになるわけでございます。
  84. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうなるというと、これはおかしいことになりませんか。各地方公共団体によつては〇・五をやる所もあるし、或いは上廻つて〇・七やる所もあるし、或いは〇・三くらいしかやらん所もある、こういうふうなことが事実起りませんかね、今回も。
  85. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) これは只今地方公務員法の建前では、各地方団体が国家公務員なり民間の従事者なり或いは他の地方団体の地方の公務員の給与或いは生計費といつたようなものを見て給与を決める。こういうふうに御承知のようになつておるわけであります。ですから、実際問題とじては各地方団体がどういう条例を作るかというところによつて決まつて来るわけでございますが。夏季手当につきましては、大体いずこにおきましても〇・五という建前で条例を制定をしておる所が多いと思いますが、条例のない所は、これは従前の例によるという建前で、結局国家公務員の例によるということになつておりますからも〇・五の夏季手当を出すというような結果になるであろうと思います。
  86. 若木勝藏

    若木勝藏君 この問題は、この前の年末の場合においては、〇・二五を他の赤字の処理と別枠にしてやるということとその赤字の中に含めてやるというふうなことが非常に問題になつた。それで我々は〇・二五は別枠としてやらなければならない、こういうことを主張したのであります。実際において行われておる地方の公共団体の恰好を見ますというとそうでなしに、実際においてはこの赤字の総額にぶち込んでやつておるような所が多いように思うのでありますが、結局はそのことは何に起因するかというと、いわゆる起債であるとか或いは平衡交付金であるとかいうふうなものの交付が根源をなす。それが不十分であるときにそういう事態が起つて来るのであります。その点を自治庁としてはこれは平衡交付金で賄われることになりますか、その財源は。若しそうであるとしたならば、十分その点を考慮してもらいたい、こういうように考えます。
  87. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) この給与の財源は、申すまでもなく経営的経費の財源でございまするから、平衡交付金なり地方税という一般の財源によつて賄うのが当然の筋でございます。過般のいわゆる〇・二五の問題の際におきましては、さような平衡交付金の増額というような措置が年度末のことでございましてできませんでした関係上、地方債の増額という形で参りましたので、従つて従来地方債をもつて支弁をいたしますべき経費で一般財源で充てておりましたものを、地方に振り替えましてよつて生じた一般財源の余力で給与の改善に資すると、こういうまあ一廻りした方式で行つたものですから、非常に所によつては若干ごたごたした所もあつたと思いますが、今回の〇・五の夏期手当は、これはそもそもの暫定財政計画の中に織込んでございますので、従つてこれは当然地方税なり平衡交付金で支弁し得るというふうに考えておる次第でございます。
  88. 若木勝藏

    若木勝藏君 今日は塚田長官見えませんので、自治庁の事務的な方面の考え方を私伺いたいと思う。最近の新聞を見ましても、学校職員法を出すとか出さないとか、いろいろなことが出ておるのでありまするが、これは私はいろいろな問題はありまするけれども、教育事務というのは、次長もよく知つていられる通り、地方事務のうちで最も重要なものになると思うのであります。それを国家事務に取上げてそうして国家公務員にするということは、全く私は憲法的に見ても或いは自治法的に見ても非常に誤りがあるように思うのであります。そういう観点から、私は自治庁としては政府全体というよりも、むしろ自治庁としては、絶対にこれは国家公務員に変更してしまうという立場をとれないものだと思うのであります。これらについて自治庁側としてはどういうふうにお考えになりますか。
  89. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 教育公務員を国家公務員にするか、或いは府県の公務員にするか、市町村の公務員にするかということは、非常に御指摘のごとく重大な問題でございますが、やはり義務教育の仕事を地方団体なり国なりのどの単位で責任をもつて行わしめるのが一番適当であるかという考え方から弾き出して行くのが筋ではないだろうかというふうに考えております。併しながらこの問題は何分教育の基本の責任をどの単位におくかという重大問題でございまして、従つて自治庁といたしましては、地方制度調査会の結論をできるだけ尊重してこの問題に対処して参りたい。地方制度調査会の運営につきましては、先般も大臣から申上げておつたと思いますが、できるだけ一つ早い時期に地方制度全般についての結論を出してもらいたいというふうに考えておりまして、委員の任命替もできまするから、それができましたら早急に再開してもらいたいという考え方でおるわけでございます。
  90. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうしますというと、念を押しますが、学校職員法の問題は一応これは地方制度調査会に自治庁としては諮問するという恰好をとることになりますか。
  91. 鈴木俊一

    政府委員(鈴木俊一君) 地方行政の内容をなす重要な問題として御指摘のように教育とか警察というような行政事務があるわけでございまして、これを一体事務の配分の問題としてどの単位の地方団体に処理せしむるか、或いはそれを国の事務にするかということは、行政事務の配分上非常に重要な問題でごいざまして、自治庁としてはやはり地方制度調査会において全体的に一つ意見を出してもらいたいというふうに考えておるわけであります。
  92. 石村幸作

    ○石村幸作君 時間も何ですから、ここらで今日は散会して頂いたら……。
  93. 内村清次

    委員長内村清次君) これで閉会してよろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 内村清次

    委員長内村清次君) それではこれで閉会をいたします。    午後五時九分散会