運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-06-25 第16回国会 参議院 地方行政・労働連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十五日(木曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  委員指名   地方行政委員    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            堀  末治君            舘  哲二君            伊能 良夫君            西郷吉之助君            高橋進太郎君            長谷山行毅君            小林 武治君            島村 軍次君            秋山 長造君            若木 勝藏君            松澤 兼人君            苫米地義三君            加瀬  完君   労働委員    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君            大屋 晋三君            重宗 雄三君            宮澤 喜一君            吉野 信次君            河井 彌八君            阿具根 登君            吉田 法晴君            上條 愛一君            寺本 廣作君            堀  眞琴君            市川 房枝君   —————————————  出席者は左の通り。   地方行政委員    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            堀  末治君            館  哲二君    委員            伊能 芳雄君            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            島村 軍次君            秋山 長造君            若木 勝藏君            松澤 兼人君            加瀬  完君   労働委員    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            宮澤 喜一君            吉野 信次君            阿具根 登君            吉田 法晴君            寺本 広作君            堀  眞琴君            市川 房枝君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       磯部  厳君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   参考人    熊本国家地方    警察隊長    小林 利吉君    国家地方警察熊    本八代地区警察    署長      斎藤 次夫君    日産化学工業株    式会社鏡工場長 宮崎 敏郎君    熊本販売購買    農業協同組合連    合会会長   井村作太郎君    熊本販売購買    農業協同組合連    合会参事    飯田 次人君            坂田 重蔵君    日産化学工業株    式会社労働組合    鏡支部長    藤本 信義君    熊本労働組合    総評議会事務局    長       原田 英男君            土田 玉枝君    熊本労働部労    政課組合係長  井本 則隆君    日産化学工業株    式会社下関営業    所肥料課長   小杉 良和君   —————————————   本日の会議に付した事件地方行政の改革に関する調査の件  (日産化学工業株式会社鏡工場にお  ける労働争議に際しての警察介入の  事件に関する件)   —————————————    〔内村清次委員長席に着く〕
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今より地方行政労働連合委員会を開会いたします。  本日は、去る五月十三日日産化学工業鏡工場労働争議事件に際しまして起つた事件につきまして、地方行政委員会は、五月二十九日取りあえず在京の人を中心といたしまして事情調査いたしましたのでありますが、現地と離れておりまして実情を究めることがむずかしかつたのでございます。このたびは、現地方々参考人としておいでをお願いいたしました次第でございます。  なお本問題につきましては、労働委員会からも連合審査の申込がございましたので、連合委員会におきまして調査することといたしたような次第でございます。  参考人としておいで願いました方々は、熊本県の国警隊長小林利吉君、国警熊本県八代地区警察署長斎藤次夫君、日産化学鏡工場長宮崎敏郎君、熊本販購農協連会長井村作太郎君、同じく参事飯田次人君、それから熊本県阿蘇郡永水村赤木坂田重蔵君、日産化学労組鏡支部長藤本信義君、熊本労組評議会事務局長原田英男君、日産化学労組鏡支部組合員家族土田玉枝君、熊本労働部労政課組合係長井本則隆君、以上の諸君でございます。  参考人各位ちよつと御あいさつ申上げますが、参考人各位におかれましては遠路おいで下さいましたことにつきまして、連合委員会代表いたしまして委員長として謝意を申述べる次第でございます。先ず参考人方々から順次当時の実情をお聞きしたい。それから委員方々より質疑をして頂きます。その前にちよつと参考人方々に申上げますが、発言の時間は大体十五分間の程度にして、且つ発言の内容は成るべく重複を避けるように各自御注意して頂ければ誠に結構であると存じます。
  3. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  4. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記を始めて下さい。それでは時間も過ぎましたことでありますからして、先ず参考人方々から公述を聞くことにいたします。熊本県の国警隊長小林利吉君。
  5. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 熊本県の国警隊長小林でございます。去る五月十三日に鏡町の日産工場に発生いたしました労働争議に関連いたしまして、中央国会皆さま方に格別の御配慮を煩わすに至りましたことにつきましては、地元治安担当者といたしましても、誠に恐縮に存じておる次第であります。私は、この五月十三日前後に、警察隊長としてとりましたる事件に対する措置並びに当日におきました警備指揮に当りました斎藤署長に対しまするところの私の具体的なる指示命令というものを申上げまして、御参考にしたいと思うのであります。  御承知のごとく、労働争議警察官関与をしてはならないということは、たびたび国警本部からも厳重なる指示通牒も頂いております。私ども現地警察官といたしましては、全然合法的なる労働争議に対しましては警察官は絶対関与してはならないという原則は、徹底をいたして教養訓練をいたしておるのであります。併しながら、如何に労働争議と申しましても、法律の精神を蹂躙し、或いは又著しく社会公共の秩序を乱すがごとき不法越規行為に対しましては、断固として取締るべきが又警察責任であると考えておるのであります。かような原則に立脚いたしまして、鏡町日産工場に発生いたしましたる労働争議に対しましても、争議の具体的に発生いたしました四月十三日から五月の七日に至る間は何ら警察といたしまして、これに関与はいたしておらないのであります。七日以後におきまして警察がこれに関与いたしましたのは、御承知通り争議の一手段として日産化学工場でとられておりましたピケツト・ラインというものが、正常なる第三者の肥料搬出に対するところの業務妨害にあたる行為があると認められたのでありますが、私といたしましては、日産鏡工場労働者皆様は大部分が地元の出身の方々でもありますし、平素からのお仕事振りその他の点に徴しましても、非常に穩健著実労働者方々が多いと聞いておりましたので、如何に若干の不法行為がありましても、なるべく労働者皆様方荷主方々と円満なる交渉によりまして、この事態解決して頂くことが一番妥当なる方策ではなかろうか。徒らに真正面から警察がこれに関与するということは厳に慎まなければならないという方針最初から堅持をいたしておつたのであります。  併しながら、御承知のごとく、非常に熊本県の農村事情といたしまして、早場米を植付ける、或いは寒冷地帯というような所は、植付時期の切迫に伴いまして、非常に肥料搬出という問題が重大化して参りました。これに関連しておられますところの農業団体並びに全購連、或いは肥料搬出責任を持つておられるところの日通有佐支店というような方面方々は、それぞれの立場責任を痛感せられまして、何とかしてこの肥料搬出をスムースにいたしたいというような念願がありまして、五月の八日、九日、十日、それぞれ関係首脳部方々が直接労働組合幹部方々折衝に当られたのであります。  併しながらなかなかうまくその間の話合いがつかず、特に五月九日におきましては日通自動車が四台、県販連自動車が二台、合計六台、相当強固な意見を以ちまして、ピケラインを突破してでもいいから自分たち肥料搬出したいというような強硬な御意見の下に掛合いに行かれましたのでありますが、併し、私どもといたしましては、この日におきましても警備のために若干の警察官は動員をいたしておりましたが、絶対警察官話合いがつくまではタツチしてはならないということは厳に戒めておいたのであります。このときにおきまして私は初めて所轄警察署長に対しまして、何とか警察が出なくして君の努力により斡旋できるだけは一つ斡旋して、警察権介入なくしてスムースに肥料搬出ができるような対策をとれということを命じたのでありますが、署長は当日におきましても懸命なる努力を払いまして、そうして労組側といたしましては、五月の十日の午前十時に誠意ある回答をするというような一応の話合いがつきまして、それで一応九日の事態は解散をいたしたのであります。  十日になりましても労組側から規定の時間に回答がなかつたということによりまして、又農業団体その他関係方面荷主側方々が相当強硬な意見を持たれまして、これが直接行動によつてでも肥料搬出しなければならないというような固い御相談があつたように承わりましたので、これは私はこのままの事態において、荷主側の方方と労働組合方々とお互いに直接実力行使によつて肥料搬出をさせるということは、事態が如何に混乱して来るかもわからない。又その間に発生する不法事態の続発も考えられましたので、私は五月の十一日になつておりましたが、特に県知事に対しまして、鏡工場事態はこういうふうに悪化しておるので、警察が直接関与するよりか県のほうでも一つ主要食糧の増産という立場から、基本的な肥料搬出に何とか斡旋仲介をせられてはどうでしようかということを知事意見を具申を申上げましたところが、桜井知事も尤もな意見であると、それでは早速県の労働部長現地に派遣して一つ斡旋に当らせてみようということに相成りました。で、宮本労働部長が十一日から十二日にかけまして斡旋に当られたのでありまするが、これも話合いがうまく参りませんした。  一方におきましては県販連その他の農業団体関係方々におきましては、もう時日をこれまで遷延させるにおいては我々としては承知はできない。殊に十日に誠意ある回答をするということがなされておらないということによつては、もう実力を以て取る以外にはない。私の聞き得た情報範囲でありますから、真偽のほどはわかりませんが、それでは農民側のほうがなぜ動員されたかという問題につきましては、この九日から十一日までの折衝の間におきまして、労働組合方々のほうから農民側幹部方々に対して、君らのような代表者農村ボスである、だから、本局に肥料が要るならば手の黒い百姓を連れて来い、そうすれば肥料を渡す、或いは又肥料搬出するならば実力を以て取つて行けというような言動があつたように聞いておる。これがためにさようならば実力を以て搬出する以外にはない、而も手の黒い百姓を連れて行くならば恐らく肥料は出してくれるだろうというような話合い空気の下に、十二日の午後におきまして相当数農民方々が動員されまして、直接鏡工場肥料を取りに行かれるというような情報が私の方に入りましたものですから、それではいけない、数百名の農民方々が直接工場実力を以て侵入されるということは如何なる事態が発生するかもわからんというので、私どもといたしましては、地元署長報告に基きまして、十三日の午前七時を期しましてこれの警戒警備に当らせる警察官を二百名ほど動員いたしまして、これが出動を命じたのであります。  私どもといたしましては、この際に私は飽くまでも、警察官は十三日に出動を命じましたが、当日十三日午前九時頃に、本日やはり参考人として、御出席になつておりますところの県総評原田事務局長並びに坂本前代議士、或いに西島というような総評幹部方々隊長室にお見えになりまして、それで今日は警察官出動さしたそうだ、労組側空気としても十五日になれば出すような空気も若干見えて来ておるから、今から僕らが県総評として斡旋に行くから警察実力行動というような行使は少し差控えてもらいたい、だから我々は今から直ちに現場行つて一つ労組又はその他農業団体折衝してみるからというお話合いが私のところまでありましたのであります。  で、私はそのときに原田事務局長その他の幹部のかたに、もとよりそうして頂けば一番いいことでありまして、最初方針からいたしまして警察実力行使は極力回避したい、円満なる双方の話合によつてスムーズに搬出されることを念願としておるのでありますから、一つ急いで現場行つて話合をつけて頂きたい。現地には宮本労働部長も行つておられますし、又現場指揮官もおられますから、一つ私に早速これに指揮をいたしますから行つて頂きたいということの約束をいたしました。  そうして十三日に原田事務局長現場へ到達するのを私も待つていたのであります。ところがいろいろな都合がありまして事務局長一人でお見えになつたようでありまするが、当日現地にお着きになつたのは十二時を若干廻つていたようでありまして、で、その間の話合いが全然つかない。一方日限の経過に伴いまして農民側としては、遠くからも動員されておる人があるので、この際早く解決して帰らなければならないというので、現地署長からはどうしてもこの解決を図るためには最小限度実力行使によつてでも事態を収拾しなければならないというような電話報告を受けましたので、私は現場指揮官判断によつて、併しながら成るべく事態を円満に収拾させなけばれならない。この際私が具体的に現場署長に出しました命令の第一点といたしましては、農民側実力行使は絶対に阻止しなければならないということ。第二点は、できるだけ労組荷主間の円満なる解決に最後まで努力してくれ。第三番目に、現場情報が緊迫して警察実力行使のほか事態の収拾の止むなき、他に手段のない場合は、現場指揮官判断に基きまして実力行使をしても差支えがない。但し実力行使をする場合には冷静、沈着にして穩当なる手段を用い、ピケ隊員に対しても粗暴な行為なきよう留意してこれが行使に当れということを、具体的に私自身が超短波電話を利用いたしまして指示をいたしたのであります。又当日県本部のほか百五十名ほどの警察官を動員いたしまして応援に出すように、その部隊長以下に対しまして私が訓示をいたしましたのは、武器は絶対に使用するな、拳銃に装填している弾丸は全部抜け、警棒は必ず腰に縛りつけておけ、これが第一点の命令として出し、第二点といたしまして、労組その他弥次馬等より如何なる罵詈暴言を受けるとも、警察官は穩忍自重して現場指揮官命令により一糸乱れざる行動をとつてくれ。又警察官実力行使命令が下つた場合においても成るべく人権尊重その他の点を考慮して必要以外には絶対に暴力暴言等警察側からしてはならないというのが第三点です。特に隊員一同に訓辞して出動をせしめたのであります。  かような情勢でありましたが、止むを得ず交渉が決裂いたしました十三日の午後二時八分に、現場指揮官たる斎藤署長は、実力行使によつてピケラインの一部を解除いたしまして、農民側の要求される肥料搬出に努めたのでありまして、私どもといたしましては、かような情勢最初から簡単に違法の部門ということに考えておりましたならば、最初から警察では実力行使という点も考えられたのでありますが、冒頭に申上げましたように、成るべく地元労働者諸君の生活もよくわかつておりますし、又月余に亘るところの労働争議として、本当によく鏡の工場労働組合員方々が頑張つて来られたのであります。その方々に対しまして本当警察実力行使するより成るべく円満な交渉に運びたいということを念願といたしておつたのでありまするが、併しながら十三日の当日の正午から午後二時までの間にかけまして、若しこれを農民側実力行使に委ねましたならば如何なる事態になつていたか、むしろ流血の惨事が私は当然発生したことだろうと思うのであります。かような場合に警察官必要最小限度法律範囲内で認められましたる実力行使をするのも又止むを得なかつたのである。又私も止むを得ない、行使せよという命令をいたしておるのであります。その間に若干のトラブルはあつただろうと思うのでありますが、併し爾後の終結後の経過におきましては、余り大した問題もないようなことを聞いて安心をいたしておつたのでありまするが、併しこの問題につきまして、私は当初からはつきりとそういう点につきましては指示命令をいたしておるのでありますから、この点の私の気持というものは県知事なり、県の労働部長なり、本日御出席になつております原田事務局長なり、その他県の総評幹部というものは十分に私の意図というものは御了察願つておることだろうと思うのであります。  が、ただここで一言申添えさして頂きたいことは、あたかも結果的に警察農民の味方をしたように一部の新聞、ニュースの扱い方の結論的に判断されたような面があつたのでありますが、私は決して今日の警察というものは単に農民だけの警察でもなければ、労働者警察でもない。熊本県におきましては百八十万県民の皆様警察であるのであるから、いずれ側にも不法行為があれば当然取締るべきものである。従いまして農民側方々につきましても、十三日の朝、鏡町附近の村落に集結されました際に、私は特に所轄署長を派遣いたしまして、決して暴力をやつてもらつては困る、或いは又むしろ旗、鉢巻等によつて気勢を上げるような行為は絶対に慎んで頂いて、責任者指揮の下に交渉に当つて頂きたいということまでも農民側方々注意警告を与えておるのであります。何ら私ども措置といたしましては一方に偏する措置というようなことは一切とつておらないという確信を持つておるのでありまして、かような情勢でありましたが、止むなく、県の斡旋も或いは県総評幹部方々斡旋もその努力空しくいたしまして、事態実力行使に入つたわけでありますが、この実力行使法律的解釈につきましても、明確に私どもの第一線といたしまして、現地農民判断に頼ることなく、それぞれ関係機関意見を徴し、過去の実例も調査をいたしまして、止むを得ずこのピケラインの一部を排除することは警察の合法的な処置なりという判断の下に、実力行使をいたしたような次第であります。その点につきましては一つ委員方々も私のとつた態度、気持並びにその後の情勢というものにつきましては、それぞれ又関係証人のほうから申述べられると思いますので、一つよろしく御判断をお願いいたしたいと思うのであります。
  6. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは次に国警熊本県八代地区署長斎藤次夫君。
  7. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 私は現地のその日の指揮者といたしまして、警察官指揮し、この実力行使にも当りましたし、又事前にもできるだけの斡旋、申入、警告その他を尽したわけでありまして、大体只今隊長から一応のお話がありまして、重複いたしますので、十三日の実力行使に至る間の諸問題につきまして極く簡単に申上げたいと思います。  十三日に農民は四百名くらいが現地に乗り着けて来て肥料を出荷するというような情報を得ましたので、私のほうでは隊長のほうに報告しまして、どういう不法事態が起らんとも限らない。而もその前々から何回も警察要請というようなことがあつたりしておりましたし、相当感情的にも高ぶつておるというようなことも考えまして、不祥事件が起つては困るので、警備のために一応警察官を出してくれというようなことで応援を求めたわけであります。結局二百名くらいの警察官を鏡町警察署に待機させまして状況を見ておつたわけであります。ところが十時頃から農民を乗せた自動車も集まつて参りまして、いよいよ出荷しようと思うけれどもピケを張つて頑強に押される。で、一つ警察側はこれを適当に処置して頂きたいというような要請が、これは書類で出ておりますが、私に手交されたわけであります。併し私は一応一個分隊だけ出しまして、自動車がたくさん来る、或いは弥次馬的な人もたくさん集まつて来る、こういうことで、又ここで事故が起つては困る、或いはそういう状況も知りたいというようなことで、一個分隊だけ出して状況を見ておつたわけであります。  ところが十一時二十五分頃でしたか、農民が五百名ばかり押しかけて来て、我々がピケを張つているのを強行突破してでも肥料を取りに入ろうとする、で暴行も起つて来るようだ、一つ警察組合員を保護して頂きたいというような電話組合からあつたわけであります。で私のほうでもこれはいよいよ不測事態が起りはせんかと考えまして、十一時四十分か四十五分頃だつたと思いますが、現場出動したわけであります。で、出動いたしまして状況を見ましたときに、組合のほうはピケを張つておる、それから農民側はその後に来て、どいてくれ、或いは肥料を出してくれというような押問答があつてつたわけであります。そうこうするうちに、激高した農民がいよいよ暴行に移ろうとするというような現況に立至りましたので、私は農民を後の方に退けと言つて、ずつとトラック隊がおりますので、これを後退させまして、乗車人員も制限いたしまして、そうしてあと農民は全部トラック隊の最後部に移れということで、不測事態を防ぐためにそういう措置をとりまして、ピケ隊のほうには飽くまでもこういう妨害はやめなければならんということで警告或いは文書、マイクというようなもので繰返し繰返しやつたわけであります。  そういたしますうちに、隊長からも瀕々とさつき話がありましたように、成るべくならば円満な解決を図れ、止むを得ない場合にしか実力行使のことはするなというようなことがありましたし、私も及ばずながら私の裁量の限りは何とかこれは方針通りにやらねばなるまいというようなことでそういう措置に出まして、警察官を間に割込ませましてから、一つもう一回やつてみて、警告もしようし、それから工場側にも或いは農民側にも、何とか話がつきはせんかという考え方からいたしまして、先ず組合の三役の方に会つたわけであります。  その場合の問答を私ちよつと手控えしておりますが、組合警察が会いました場合に、私は組合のかたにあなた方は飽くまでこの妨害をやるのかということを言つたわけです。ところがその前に組合かたは農民代表の人と一応の話があつたそうでありますが、話がまとまとまらずに、先刻もちよつと話がありましたが、我々がさつき会つた農民は、あれは本当農民ではない、あれはボスだ、本当の、いわゆる真の農民を出してくれ、我々がときどきトロッコを押すようなこういう者よりまだ手の白い細い者が来ておつた本当に自分で百姓をする手の黒い大きな真の農民とあなた方会つてくれというようなことを申入れたわけであります。そのときにいろいろ話しました末に、我々も十五日になつたならば、いわゆるその日から言いますと明後日は我々の三役の責任者を何とか出したいというようなことまで歩み寄つていたわけであります。それで農民一つはかつてみろというようなことで、さつき申しましたように真の農民をということがありましたので、私はそれをやつて代表に会つてくれ、農民代表に会つて本当百姓しておる人と交渉するから出してくれというようなことで三人の代表の人に来て頂いたわけであります。  それでその農民代表者を呼びに、交渉に行つております間に工場長さんとも会いまして、工場側はこの出荷の問題についてはどういうふうな処置を今とつておられるかということを聞いて善処方を申入れたわけであります。そのとき工場長さんのほうではまあ一応ストをやめてゆつくり話合おうと言うたけれども、十五日の団交の結果の解答を得たいというようなことで、そのときは一応行われたというようなお話があつたけれども、そうしておりますうちに、いわゆる農民の真の代表者の人が来たわけであります。  この人たちとの私の折衝は、組合は十五日からは三役の責任において出したいというようなことの申出があつた、それであなた方は待てないかというようなことを言つたわけです。ところが十五日までは待てない、今日までの例からして何遍も引延し引延しで我我は欺されておる。で又それはいわゆる遷延策の一つだ、で今日だけはもう十五日までとそういうことに欺されないというような強硬な意見があつたけれども、而も十五日からはもう田植が始まる所がある。そういう所は今日持つて帰らなければ間に合わない。でどうしても持つて帰るというようなことで、又私が改めてどうしても待てないかと申しますと、待てない。どうしても持つて行くということであります。それでそんなに待てないならば待てないで、一応本当にその待てない所はどういう所で、そうしてどのくらいの肥料を差当り持つてつたならば待てない所の量は足りるのか、それを先ず聞いてくれんか、もう一遍農民のほうに諮つてくれというようなことを言つたわけです。それで農民の人たちはそれでは一応もう一回そう言われるならば諮つてみましようということで引上げたのであります。それで更に打合の結果、又帰つて来ましたので話を続けました。ところが農民のほうでは、皆に相談してみたけれども、十五日から田植をする所があるのでどうしても延ばせない、それで余計にとは言わん、今日差当り荷造りしてある分をくれんか、そうすると、組合のほうで十五日以降は出そうといつたような確約をしてくれるならばあとの分は待つてもいいというような線に出て来たわけであります。  それでそのときに私は又農民の人に、あなた方は遠方からトラックでわざわざ朝早くからここに取りに来て、そうしてまあただでは帰れん、一俵でも二俵でも持つて帰らなければ村に対して申訳がないというような意地張りで、そういう面子問題を言うのではないかと言つたら、絶対にそういうことはない、我々は困つているからこそ、要るからこそこういうようにして押しかけて来たというようなことで相当憤つて言われたわけであります。併しそういうようなことになりまして、今日は絶対持つて行くというようなことでありますのでもう取れなければ絶対に引上げないというので、又組合のかたに来て頂きまして、農民のかたは今言いましたようにどうしても今日は持つて行く、併しまあ全部とは言わん、荷造りをした分を幾らかくれ、そうすればあとは三役のほうで確約してもらえれば待とうということになつているが、それでも出せんかといつたようなことを言いましたところが、組合のほうは十五日ぎりぎりである、今日は出せないというような意思表示があつたわけであります。で私は組合のほうも長い間争議をやつて来まして、ここで簡単に出すというようなことも辛かろうというので、まあ組合のほうにも辛い点もあろうけれども、もう一歩譲るようなことはできんかと言いましたけれども、今日はもう絶対に出せん、そういうことになりましたので、もう事態がここまで来たならば止むを得ないというようなことにしておりましたときに、農民側ではまだ組合のほうの話はまとまらんか、どういうふうになつたかと言つて二回ほど現場に催促に来たわけであります。もう五分待て、何とか話をするから待てということで押返しましたけれども、今申上げましたようなことで出さないということにきまりましたので、私たちは一応外に出た。  ところがもう待ちかまえておつた農民代表の人が来て、もう我々は止むを得ん、それで警察は手を引いてくれ、こういう事態になつて警察で処置してくれなければ我々が我々の実力で取つて来る。我々はもう懲役に行つてもかまわん、それほど切迫しているのだから、取つて行くから取らしてくれ、警察は引込んでくれ、こういうことになりましたので、それは困る、我我は何のために来ているか、そういう事態を起しては我々の責任を果せん、そういうことを君たち暴力的にやつてくれては困るということで制止いたしたわけであります。で、組合農民のいる所に帰りまして、向うのほうとしては、組合とそれから農民側といたしましては、双方からそれぞれの交渉の結果をマイクで伝えておつたわけであります。いよいよ組合のほうが今日は出せないというような放送をマイクで伝えたのを聞きまして、農民が激高したわけであります。で、やれ、やれ、我々でやるというようなことでやりますので、もうこれは万止むを得ない。ここでそういう事態が起つて警察官出動が無になると考えまして、私は最後の断を以て、勿論そのとき又通告をいたしました。もう止むを得んからここで実力行使をやるということで実力行使に移つたわけであります。  で、私は出動に当りましては、あそこに柔道場がありますが、その前に全員を集めまして、隊長からも懇々と言われましたし、私からも全警察官に強く訓示、要望したわけであります。でこの鏡の工場は特に性格がこういう性格である、何も我々は敵でも味方でもない、そういうふうな考え方を持つものではない、ただ不法行為の取締りをするのが警察であると言つて、飽くまで冷静沈着にやつてくれ、而も今日は各署から来ておつても私がここの全責任者であり、全指揮官である、私の命通りに動いてくれ、感情的なことは一切まかりならん、拳銃の弾はみんな抜いておけ、これは使用するようなこともこの情勢判断からしてないと思う、又弾をこめておけば、揉み合つたりなんかするようなこともありますので、そういう場合に暴発をする虞れもあるということで一切弾を抜かせまして、それに又暴行或いはいわゆる暴力的なことは、それこそ警察官は朝夕言われておりますことで、そういうことこそあつてはならんというようなことを厳重に示達いたしまして出動をさせたわけであります。それで出動いたしましてからは、全員よくこれはもう私の命令を守つてくれまして、私の訓示通りに動いてくれたわけでありますが、午後二時十分に大体私が最後の命令を下しまして、それから先ほどもお話がありましたが、警棒は皆腰に下げまして、そうして抱え出したわけであります。皆腕を組んでバンドを握つておりますので、なかなか離れないところもあつたようであります。それをまあ貴重品でも運ぶように、これは人間ですから大事にしなければなりませんから、特にこれは慎重に柔かにやつたわけであります。大体私たちは上司のかたから警察官が又非難されるような暴行というような不法行為はやつてはいけない、これはもう言われなくても当然のことであります。で、これはもう固く守つて行動いたしましたし、又何千という観衆の中であります。この観衆のいわゆる監視の中で白昼これはやつておりまして、少しも他から非難されるという行動には出ようとしても出られない環境にあつたわけであります。で、私が見ておりました場合におきましても、誠に正々堂々、而も冷静に私が命じました通り行動いたしてくれたわけであります。  大体私申上げることが前後いたしましたと思いますが、あそこの現場は私が総指揮官で行つておるのでありますし、私が一番よく知つておりますので、あとで御質問に応じまして詳細は申上げたいと思います。
  8. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは次に日産化学鏡工場長宮崎敏郎君。
  9. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) 私は宮崎であります。十三日の事件が発生いたしましたまでのストライキの経過をお話したいと思います。  私は組合に対しまして団交に次ぐ団交を連続やりまして、どうか話合で出荷したいと、こういう態度を最初より堅持して行つたのであります。私が組合より受けました通告は倉庫係のストライキでありまして、これは四月の十三日から六月八日にストライキが解決するまで一貫してとられたストライキであります。その間に全体がストライキに入つたりいろいろ部分的なことはありましたが、倉庫のストだけは五十七日間全部一貫してなされたのであります。倉庫ストライキは団体協約上から行きますと、スキヤツプの制限がありまして、鏡工場から肥料を出荷する方法には鉄道の側線を利用してする出荷方法があるのであります。これは電気機関車の運転手が組合員であるために、これは協約によつてスキヤツプの問題に触れますので出荷できないのであります。それからもう一つトロツコによつて県道まで肥料を出しまして、それから県道のわきに船を着けまして出荷する方法があるのでありますが、このトロツコの機関車の運転手も組合員でありますので、これもスキヤツプの制限に触れて出荷できない。残る方法は日通のトラック或いは業者がみずから持つて来る搬送機関によりまして出す方法でありますが、これは組合員がタツチしておりませんのでこれならば出荷できるとこういう確信を持つて団交に当つたわけであります。ところが組合では、それはおかしい、我々は出荷拒否のストライキをやつているのであるから、そういうこともピケラインで阻止するのだ、こういうことを言つておりますが、私が受けたのは倉庫係のストライキであつて、倉庫係のストライキは従業員の問題であるから、日通のトラックならば問題はないのじやないか、こういうことを再三言つたのでありますが、組合は飽くまでそれも合法的に出荷を拒否するのだ、こういうことでずつと団交が無駄に続けられたわけであります。  工場長の任務というものは肥料を生産することと、それから業務部門で、これは下関に日産化学の営業所があるのでありますが、そこで契約した肥料を、下関営業所の命令指図によつて出荷するのが私の責任なんであります。でありますから、一方では組合員とストライキをしながら、他方ではストライキに制限されない営業契約による肥料の出荷の責任も持たされているのであります。こういう二重の責任を持ちまして対したのでありますが、四月のうちはまだ系統機関のかたも商人系のかたも、それほど肥料が切迫していないから、私のもう少し肥料の出荷を待つてくれということをこころよく承知しまして待つてくれたわけでありますが、四月の二十三日と思いますが、無期限ストの通告を受けたのであります。  これから五月の出荷時期を控えまして、全購連、県購連並びに商社系のかたが非常に焦つて来たわけであります。こういたしております間にも、常に組合とは団体交渉を続けまして何とか一つ出してもらいたい、組合でも、ここに支部長がおりますが、倉庫ストと出荷拒否の問題ではいつも双方疑問を残しまして、私としてはこれは絶対出す自信があると言うが、組合は本部の命令だから駄目だ、こういうことでいつまでもらちがあきませんので、私としては外部のかたが合法的に出すという自信を持つて頂くために仮処分の申請をしたのであります。その申請が三十日に取れまして、要するに肥料を取りに来る者を、被申請人である藤本支部長はこれを妨害してはならない、こういう許可が四月の十三日に下りたのでありますが、メーデーの翌日の五月二日にこれを工場行使しまして、肥料出荷の合法性を肥料業者のかたに自信を持つて頂くために行使したのでありますが、これもなお十分でありませんで、飽くまで組合としてピケラインで合法的にこれを阻止できるんだ、ここで繰返されたことは、出荷も合法ならピケラインも合法だ、こういうことで約十日間揉み合つたのであります。これは只今隊長並びに署長のお話通りでありまして、その間にもたびたび団交が続けられて来たのでありますが、組合といたしましても実に統制のとれた行動をいたしまして、少くとも私の見る範囲では協約の違反行為がなかつた。それから警官隊も非常に慎重でありまして、九日も十一日も別に何らそれに対して実力的なものはなかつた。  こういうことからいよいよ先ほど二人のかたが述べられました十三日になつたのでありますが、その日もいよいよ組合が幾名かわかりませんが、三百名近く大体ピケラインのところに待機したと思いますが、一方農民隊も四百名ばかり参りましたし、それから警官隊といたしましても相当数のかたが門の前に待機しまして、而も鏡の町の見物、見物といつてはおかしいですが、対岸に非常な応援隊が参りまして、実に何とも言われない悽愴な気分がここに漲つて来たのであります。私としては業者のかたに無論肥料を持つてつて頂きたいし、一方組合としてもピケは絶対に解かない、こういうことからそのときの非常な興奮状態とマイクの応酬その他で、これはとても無事では済むまいという空気が漲つて来たのであります。私としてはすでに出る幕は過ぎておりましたので、門のすぐ通路の工場長室にずつとおりまして、いろいろな連絡事項に待機していたのでありますが、午後二時十分にいよいよ警察官行動が開始されたのであります。私はそのときまで恐らくそこでピケ隊は自発的に解くのだろうと思つていたのでありますが、併しあのときの空気というものは、実に三者とも絶対に引けないような非常に悽愴な空気が漲つておりまして、私としては自分の力の不足からこれを平静に戻すことができないので、実に手に汗を握りながら窓から見ていたのであります。  その後の経過は先ほど述べられた通りでありますが、一応ピケ隊が解かれまして約二十七台のトラックで搬出が始まつたのでありますが、その後途中で藤本支部長から電話がかかりまして、この混乱状態ではとてもたまらないから、工場長の力で一つこの辺で出荷を何とかとめてもらいたい、こういう依頼が電話であつたのであります。これは直接来るべきでありましたが、すでに警官隊によつて今度は逆にピケが張られておりましたので、支部長は私の所へ直接来られませんので電話をかけて来たのでありますが、それで直ぐここにおられます飯田参事とお話をしまして、とにかくこういう状況であるから平静に戻すためにどうかこの辺で一つ肥料の出荷を打切つてもらいたい、こういうことを依頼したのでありますが、飯田さんも快くこれを承知されまして、その日は全購連側が約二百トン、業者側が百トン、三百トンの出荷で一応待つてくれたのであります。それで平静に戻つたのでありまして、その点はあそこで飽くまで全部取出すというようなことをやりましたらどういうことになるかということを非常に心配しておりましたが、快く承知してくれましたので、その興奮状態が一応納まりまして、その後の出荷については非常に好影響を与えたと思つております。  大体これで終ります。
  10. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に熊本県の販協連副会長井村作太郎君。
  11. 井村作太郎

    参考人井村作太郎君) 販協連の副会長の井村であります。五月十三日に行われました、いわめる日産化学鏡工場肥料の強行出荷の経過や当時の状況につきましては、すでに関係方面から事情をお聞取りになつたと思いますので、私からはあえて重複の煩を避けるために、十三日の強行出荷のやむなきに至つたいきさつを簡単に申述べまして、本日の中心議題と思われますところの十三日の状況については、現地に参りました飯田参事より説明いたさせたいと存ずる次第であります。  日産化学工場、特に鏡工場のストライキは、大体三月下旬より部分的に行われまして、折あしく田植用の春肥の出荷の最盛期を前にしたストでありますので、県販協連といたしましてはその成行に大変心配しておつたのであります。その頃から全購連の福岡支所にも肥料を出荷に支障を起さないよう事前に善処方の申入をいたしました。従いまして全購連では福岡支所から肥料課長を派して全面ストなんかにならんように工場側の善処を要望する一方、肥料の出荷に差支えが起らないよう申入れておつたのであります。然るにその後数旬経過しても争議は妥結の見通しがないばかりでなく、事態は却つて悪化いたしまして、四月の十三日から出荷ストを行うように至つたのであります。需要最盛期に当面してのストでありますから、いずれは労使の間で解決するものと考えておりました私どもの常識は、全く反対の結果となつて現われたのであります。通常南九州地方の田植は六月下旬以降でありますので、平坦部地帯におきましては苗代用肥料の需要期でありますと共に、阿蘇郡、上益城郡の東部、球磨郡各山間高冷地では、近年政府当局の増産施策の一環として、保温折衷苗代による早期植付が行われており、これによりますると五月九日頃より植付が開始されておるのであります。而もその成果は大変いいので年々面積が拡大されまして、本年度は約二千百町歩を上廻るものと見られておるのであります。いま一つには、鏡工場は九州におきます唯一の燐酸肥料工場でありますこと、殊に熊本県といたしましては地理的条件から年間燐肥需要の六割以上を鏡工場に依存して参つておりますなど、この鏡工場とは切つても切れない相互依存の関係にありますところに、そこに先ほど申述べますように予期に反して出荷ストが行われるに至りましたことは、熊本県といたしましては極めて重大な打撃をもたらす結果と相成つたのであります。四月下旬以来全面ストに発展する憂えがあるとの新聞報道によりまして、県下農民、なかんずく本会と契約をいたしておりますところの農民たちは事の成行きを大変心配いたしておつたのであろます。五月一日以降八日まで各郡別に行いました肥料会議の席上でも真剣にこの問題が取上げられておつたような次第であります。私ども立場といたしましては、全購連を通じて契約された肥料を引取ることでありまして、争議前の契約であり、争議前の製造荷造品である肥料を引取ることは、何人といえども合法的にこれを阻止することはできないと信じておつたのであります。販協を通じてこの点を納得せしめることができる限り、円満出荷によつて農家の要望に応え得るという肚をきめて参つてつたのであります。  ところが五月の六日、七日と、荷主の日星産業のトラックを引着けて積出交渉をいたしましたが、労組の強い反対を受けたばかりでなく、労組ピケラインを張り、人垣によつて工場の入口を塞いでおるということを聞きまして、事態の悪化に驚きまして五月の八日には関係農協連や中金などと善後措置について協議をいたしたのでありますが、単に輸送機関に任せておいては解決はむずかしいと思われますので、県販購連といたしましては交渉のため幹部を派遣してやろうということになりまして、五月の九日には全購連の福岡支部今村課長ほか二名、本県連といたしましては私のほかにここに参つております飯田参事、森本輸送課長らがトラックを以て直接工場に参つたような次第であります。  先ずこの工場長の話を聞きますると、工場としては契約を全面的に履行するための万般の用意をしており、出荷妨害排除の裁判所の決定もあることだし、ピケラインさえなければいつでも出荷できるという回答でありましたが、組合側の幹部のほうとも引続いて面会を求めましたところ、十分間を限つて会おうということでお目にかかりましたような次第であります。ところが中央指令のストだから出荷要請に応ずるわけには行かないという答を得ただけでさつさと席を立去られたような次第であります。いろいろ御事情もありましようが、辞を低ういたしましての懇請に応ずる態度としては甚だ遺憾に堪えないものがありました。私どもは私どもとしての当然のことを行うほかありませんので、トラックを正門から乗入れようとすると、笛の合図と共に労組員全部が正門前に集合しスクラムを組んで体を左右に振りながら労働歌らしいものを唱つて立上られたので、遂に出荷は不能に終つたような次第であります。  その日午後四時警官も出動されまして、最後には警察斡旋組合幹部に再度面会いたしました。それによると、肥料を出すことはやぶさかでないがその時期、数量については今夜相談するから、明日の午前十一時までに誠意ある回答をするというお話でありましたから、私どもはこれを確信いたしまして大きな期待を持つて引取つたような次第であります。  ところが翌十日の十一時に与えられたところの回答は、期待に副えないということでありました。併し私どもはいずれはわかつてもらえると考えまして農村実情を訴えることにこれ努めたわけであります。即ち十一日にも早朝来関係の者を工場にやつて交渉いたさせましたが、県並びに八代労政当局の斡旋にもかかわらず組合は頑として出荷を飽くまで阻止するという基本線を一歩も譲ろうといたしませんので、現地からの要請で平川会長、園木専務理事が駈けつけまして改めて争議解決工場側の誠意ある措置を要望いたし、一方今日までの経過を聞きましたが、今更労組と会つても何らの進展は期待されないという結論に達した次第であります。而もその日あたりから労組側のマイクでは漸次契約当事者である県販購連を忌避する傾向が強くなり、農民代表でない営利機関である県販購連は相手にしたくないという言い分が出て参りましたので、甚だ踏み外した行き方ではあるが、契約当事者が忌避されて農民代表が出ても、要は肥料がもらえれば目的は達しられるので、具体的にどうするかという相談を五月十二日にいたしましたような次第であります。出席した農協長の全部の意見といたしましては、単協からそれぞれトラックを持つて出かけて真の農民の声を聞いてもらうほかあるまい、その上これに応じなければ行つた者全部で肥料をかつぎ出して工場外でトラックに積込もうということになりまして、五月の十三日に約四百名ぐらいの農民や農協幹部がトラックや汽車によつて鏡工場に参つたのであります。工場のこの到着に先立ちまして途中で下車し、本会の幹部から当日の行動につきまして深く注意を喚起いたしました。即ち園木専務、飯田参事より事の経過を述べて本日の労苦を謝し、農民代表の面目にかけてどこまでも紳士的であり一切の指揮に従うよう要請しております。  さてこの十三日の状況の詳細は飯田参事より申述べますが、当日の行動がためにせんとする者のために甚だしく真相が誤つて伝えられ、あたかも暴力団に引入れられた農民でもあるかのような印象を与えておりますことは私どもの甚だ心外とするところであります。私どもは正当な業務を行うために不法妨害するピケ隊実力によつて取りのけて車を入れようといたしましたが、それも警察によつて差しとめられて交渉をするというふうに幾たびか同じことを繰返しました。最後にはどうしても実力行使以外に途がないから所要の人員を下してピケ排除に取りかかりますると、警察実力排除となりまして、やつと当日この百九十六トンの積出しができたわけであります。かくして翌十四日には渇望する農民の手許に搬出した肥料の全部を発送することができました次第であります。  最後に私は十三日の強制出荷はやむにやまれずに行つたものであるということと、争議に関し干渉したり、労組に御迷惑をかける等の下心は毛頭持つていなかつたということを改めて強調いたしますと共に、正常なる労組活動には農民立場からむしろ理解と協力を惜むものではないということを御了承お願いいたしたいのであります。日産系他工場におきまするように、緊急需要量だけでも出すという出先における臨機の措置が講ぜられておれば、警察実力行使であるとか、労農の対立なんかといういわゆる異例に属するところの事態に立至ることは十分避け得たと考え、事ここに至りましたことを遺憾とするものであります。本会といたしましてはどこまでも円満出荷を念願し、五月九日以降本問題のため担当幹部は連日工場に釘付けとなつて交渉に当りました。十二日は長文の電報を以て労使双方に出荷につき期限付回答を求め最後的要請もいたしました次第でありまして、人為の最善を尽しての交渉がすべて徒労に帰したものであることを申添えて私の陳述を終りたいと思います。  なお不十分の点を補足するためにここに県連の輸送課長の森本義人及び県下飯野村の掘川勝美の両君が参つております。この二名は十三日のピケ隊員の抱え直しや出荷交渉に直接当つた者で実情を最もよく承知しておりますので、是非この二人から申述べさせて頂きますよう御詮議頂きたいのであります。
  12. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは次に同じく参事飯田次人君から説明を伺います。
  13. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 私は熊本県販購連の参事飯田でございます。現在購買部担当の参事をしておるのでありまして、今回の十三日の強制出荷に当りまして私のとりましたことにつきまして御説明申上げたいと思うのでございますが、その前に私が過去十三カ年におきまして肥料の取扱いをやつたのでありますが、今年こそ私がこの十三年以来一番苦労した年でございます。戦時中農民が適期配給ということを非常に切望しておつたのでありまして、そのときの農民気持といたしましては、肥料が着かねば眠られないというのがそのときの農民気持でございます。その気持を私は十二分に知つておるのであります。従つてその当時私ども肥料工場に乗り入れまして、職員みずから肥料を担いだことがしばしばあるのでございます。そういう苦労も知つておるのでございますけれども、それは努力によつてそういう出荷ができるわけでございます。併し今回の出荷はこのストによつて拒否されまして、どうしてもできなかつた。非常に私どもは残念に思つておるわけでございまして、丁度先ほど井村副会長が申述べましたように、私どもは十三日に強制出荷をやりましたのですが、併しながらそれまで参らねばならなかつたという事情についても一つ御説明を申上げねばならんと思うわけでございます。  私どもはストの問題につきましてはあらかじめ聞いておつたのでございますが、併しながらこれは労組双方から何とか需要期になつたならば円満妥結をするものである、こういうふうに考えておつたのでございますが、あにはからんやその解決はなかなかできなくなつた、需要期は近まるというようなことで、非常に組合から抗議が出ておつたのでございます。電話なり文書なりで殆んど係といたしましてはその応答にいとまないというような状態でございました。私は肥料係の前に席を並ておるのでございますが、晩の八時、九時まで肥料係のみが残つて非常に苦心惨憺しておるのであります。これを私は眺めて非常に同情し、何とかしなければならんという気持を起しましたのです。そこでストはいよいよ強くなるし、肥料の出荷はなかなかできない、これではどうするかということで最後の係と共に打合せをやつたわけであります。全購連、販連でもその場合にどうなるか、早く労使双方に解決をするように進言をいたしましたが、なかなか解決の見込はありません。  そこで井村副会長がお話いたしましたように、五月一日から五月の八日まで各郡の郡別会議を開きまして、ストの状況、出荷ができない、従つて過燐酸が出ないならばこれに代るべきほかの燐酸質肥料、即ちフーバーホース、それから溶成燐肥、これに切替えたらどうかというようなこともしたのでございますが、農家といたしましては今まで使つている肥料をすぐそうであるからというので切替えるということはなかなか困難でございます。これはもう農家の慣習というものは非常に強い慣習があるのでございまして、一朝一夕で切替えがなかなか容易でないのでございます。そこで私どももそれはできるだけ肥料を出荷しなければならない、努力するとこう申しますと、組合では努力は誰でもするじやないか、どうしてくれるかとむしろけんか腰に出られて、非常に非難攻撃を受けたのでございますが、私どもは事我々の手ではいけない、従つて明日から直接交渉に行こう、こういうつもりで八日までの会議を終つたわけであります。そして八日の日には午後二時まで郡別会議を終えまして、午後二時から各連合会長、参事、それから中金、それから県の方方をお寄り頂きまして、そして肥料状況をお話しましたけれども、中金方面には特に先ほど申しましたように、ほかの肥料に切替えるというようなことをせねばならん場合もあるかも知れん、そういう場合には一つ中金の資金も出してもらわなければならん、こういう相談もしておつたのであります。  そこで九日から直接交渉に入つたのでございますが、ここにおられる井村副会長交渉に参りまして、工場のほうと相談いたしました。工場でも是非一つつてつて下さい、こういうようなことでございまして、それでは一つ労組のほうとお話しよう、こういうことを労組のかたとお話しましたところが、十分間に限つて会おう、こういうようなお話でございましたから、そでは十分間でもよかろうということで井村副会長が初めに会いまして、肥料の非常に緊迫した事情を話し、私が又次に話しまして、どうぞ一つ出してくれ、あなたがたたちは働く農民、働く労働者とこういつも言つておるじやないか、こういうことになるとこの労農が離反するということを知らないか、どうか一つ出してくれと言つて委員長等に懇願したわけでありますが、十分間ぐらいたちまして倉皇として立つて行くのを見まして、私はつくづくこういうことをわかつてくれないのかと考えたわけであります。そのときに労組のかたは中央の指令が来ねば出せない、こういう一点張りでありました。と申しますのは、ほかの工場では肥料はストに入つていながらこつそり出しておるというのが今までのストの状況でございましたが、熊本日産化学工場に限つて十三日以来一俵も出さない。一カ月間この需要期に当りまして一俵も出さずに問題が起らないということは私は不思議であつた、かように考えるのであります。  これはまああることかないことか知りませんが、農民のかたが一カ月間米の供出を拒んだならば問題が起らんで済むかということと私は同じであろうと、かように考えるのであります。  併しながら交渉はいよいよ決裂いたしまして、何とか一つ話合を進めたいというので、丁度八代の警家署長もおいでになつたので、警官百二、三十名かと思いますが、とにかく多勢連れて来ました。我々は若し警官の方がこのピケを破つて出して頂けるものならと実は心ひそかに喜んだわけであります。併しながら八代の斎藤署長がおいでになりまして、我々と目星産業、これは業者でありますが、これと労組の方との斡旋に乗入れられたわけであります。なかなか交渉は捗らず晩の九時になつたわけであります。併し労組のほうでも出すのにやぶさかでないというようなことを言われましたので、もう晩も九時になりましたからお互いに一つ引取ろうじやないか、そして一つ三役の方々に出荷に対する御努力をお願いしようじやないかということを私発言いたしまして、宮崎工場長から労組幹部に伝えたわけであります。そして九時頃私たちは引上げて帰つたのでございます。それからその九日の返答は十日の午前十一時頃までにするというようなお話でございましたから係の者をやりましたが、その時にもただ本部の指令がなければできないというあつけない返答でありまして、我々も非常に遺憾に思つたわけでございます。  それでも辛抱強く十一日に又お願いに参つたわけでございますが、この時もなかなか出すというような空気はなかつたわけであります。そこで私は二度参りまして懇願いたしましたが出し得ない、それで子供の使いではない、こういうようなことを感じましたので、私の手では絶対いけない、そこで会長か専務いずれか来てこの状態を見てくれ、こういうふうに申しまして、会長、専務それから田尻推進課長が来てくれまして宮崎工場長と話しましたが、九日以来の状況を見てこれではいけない、ただそこに農民代表というようなことを我々言つておりますが、農民代表として認めて頂き得ないのであります。それで百姓が来るなら出してやろう、こういう話もあつたように考えましたので、それでは十三日に一つ百姓を連れて行こう、こういうようなことで十一日は引返しました。十二日にもうありだけのことをつくして出荷できない場合はやむを得ない。それでは一つ大きい農民を連れて行こうというので、十二日農協大会実行委員というのが前から作つてあるのでございます。その方々を呼びまして今までの経過を話しましたところが、そういうふうでは時期をどうするか、もう阿蘇は早いところは五月の九日から植付けを始めているのじやないか、農民が荷役というようなことならば農民を連れて行こうじやないか、こういうことに話がきまりました。そこで私どもといたしましては、翌日のことではありますし、時間的にもないのでございますからして、我々のほうの支部出張所、或いは又指導連の支部出張所、信連の支部出張所ここに電話で連絡いたしまして、各傘下の農協に対しまして明日農民にはやるということであるからして、農民自身を連れて行こうじやないか、こういうことで、電話で連絡いたしましたようなわけでありまして、その時には何人来るかわからん、少数ではこれはなかなか出荷は不能であるがということを私は心ひそかに心配しておつたわけでありまして、十三日の計画をやりまして、私と園木専務がこの指揮に当つたわけであります。そして下益城郡の豊川村を集結地と定めまして、あそこで集結いたしましたわけであります。その時に園木専務は絶対に暴行はしてはならない、慎重にかからねばならない、こういうことを申されました。私も附加えて絶対に暴言はしてはならない。それは暴言ということにつきましては九日、十日の日に労組のほうから非常に私のほうに対してこつぴどい事実無根の暴言があるのでございます。私はそういうようなことを慎みまして、こちらから絶対に暴言をしてはならない、こういうことをくれぐれも組合に申しまして、更に皆さんから暴言をさるるとするならば、肥料を渡せ、肥料をよこしてくれ、これだけ言つて下さい、これだけの注意をしましてそうして鏡工場に乗込んだわけであります。  そういたしまして、一応この組合幹部方々と相談いたしましたわけでありますが、なかなかおいそれと渡して頂くような気配がないのでございます。それで二、三回交渉いたしましたが、なかなか渡して頂くような情勢にはならないのでございまして、農家といたしましてはもうしようがないということで実力行使に出ましたわけであります。そして園木専務はそのときの指揮者といたしまして、先ず全部おろすということはこれはいかないから、第一車の初めの車を下車しまして更にそれでもやることができなかつたわけであります。第二車を下車しました。第三車を下車しまして追つてピケ隊を破ろうとしましたところが、警察がおいでになりましてそれを中止されまして、皆乗車をしろということでございました。皆乗車をしたわけであります。そして中に警察が入つていろいろ話をしましたけれども、なかなか話合がつかないのでございます。警察も今日来ておられる八代の署長も非常に心配されておつたように考えておりますが、私どもとしましても警察が九日以来一方的に我々を阻止して来た、これに対して憤慨せざるを得ないわけであります。又今日も我々を阻止するか、こういう気持が私といたしましていたしました。それで労組は先ほど申しましたように九日以来いろいろ遷延策をとつて出荷する様子はございません。農家のかたが折角来て肥料を持つて行かれんかという非常に真剣な気持であつたわけであります。私も農家の気持は十分知つておるのであります。何とかして一つ出してもらいたいという気持はあつたのでございますが、なかなか受入れて頂けん。皆さんも御承知のことと思うのでありますが、あの水騒動のときの農民の心理状態は如何でございましようか。それと一つ農民の心理状態は変らん、かように私は考えるのでございます。それで出荷がいよいよ不能となつて警察頼むに足らん、こういうようなことで百姓百姓と申しますと語弊がありますが、農民のかたが怒りまして、直接行動に出ようということで、そういう気持になりましたところが、警察といたしましては、これは大事になるというような気持を持たれたと思うのでありますが、警察から警告文を出して破つて頂いたわけであります。その間において警察ピケ隊をかかえ出そうとされたのは、五分間か六分、七分、短時間の間でございました。如何に容易にできたか、と申しますのは如何にピケ隊のかたがたも或る程度の面目問題で今まで阻止されて来たのではなかろうかという気持がいたしまして、非常に円満にピケ隊を排除することができたわけであります。  そこで我々としましては、直ちに解除がとけましたから第一車から逐次第十七車のトラックを乗入れましたところが、そこに林立して立つている赤旗、いろいろ応援の旗が立つてつたのでございますが、それを倒して行つた。或いは又これは労組のかたではないと思いますが、応援方々が車の前に飛込んでこられたのでございます。これも警察のかたが三人かかつて、そうしてたやすく解除ができましたので、私ども肥料の出荷を急いだ。それで最後におきまして百九十六トンでございましたが、現在鏡工場では四百五十トン程度の包装をしたものがあるのでございますが、それを全部持出したい、さようなつもりでおりましたところが、宮崎工場長から、先ほど話があつたように非常に労組のほうが苦労しておるから、皆さんもうこのくらいでやめてくれんか、こういうお話でございました。それで私もそれはそうだろう、労組気持はわかる。それでは五時までで打切ろうということで、五時で打切つて引揚げて帰つたわけであります。  そうしてここに一つ皆さん方に申上げておかねばならん真相の間違いがあると思うのであります。私どもはその日は農家といたしましても徹夜してでも引出したいという気持があつたのでございますが、宮崎工場長の切なる気持をいれましてやめたのでございますが、その百九十六トンの肥料を多いもので十一台、少いもので二台或いは三台、そうして交互に引出したわけであります。そのときに幸いに二台の貨車が来ておつたので二台に積み、それから一台のトラツクは折角来たからというので百叺も積んでおります。それからあとの部分は明日皆さんに全部貨車積みにして送るからそれまで待つてくれ、こういうことで翌日は有佐の駅に聞いてみましたところが、これは六台の貨車が来ている。十一台要るのでございます。六台では足らないので、私どもといたしましては直ちに管理部に参りまして増車の申請をしました。幸いにして午後四車入りましたので十車になりました。あと四百ばかりの数量が残るわけであります。これにつきましてはトラツクでもつて全部運ぶ、従つて十四日は前日百九十六トン引出したのを全部送ることができました。  ところが労組のほうの言い草では、この引出した肥料が二日間眠つてつた、こういうようなことを言つておるであります。私どもといたしましては人為の限りを尽しまして、そうして百九十六トンを十四日に積んでしまつたのであります。ただそこで我々と行動を共にしました日星産業の人が千丁駅に積残しがあつたということを私どもあとで聞いたわけです。私どもは百九十六トンの肥料をその日一日に積出したのでありまして、熊本県といたしましては最盛期に対して少くとも七、八万トンを要するのであります。この七、八万トンの肥料が一朝一夕に輸送することができるか、絶対できやしないのであります。少くとも一カ月か一カ月半、計画的にやつてこそ初めてできるわけでございます。そういうようなことを我々はこの席上で強調いたしたい、かように考えるのでございます。そういうようなことで、私どもは前日積出した肥料を翌日に運ぶことができたわけでありますが、その後におきましても私どもとしましては工場に対して労組方々気持はどうだろうか、一つ出荷はできんだろうか、こういうふうに電話でやりましたが、まあまあということでやめたわけであります。  そこで私どもとしましてはどうしても、このまま一時はこれで納めたのでございますが、阿蘇或いは上益城方面の早場地帯の方面に幾分か分配してやることができたのでございますが、その後の未出荷では、これは組合からやかましく言われるのでございますが、どうしてもどうもこうもしようがないからして、今度は十九日に農民大会に諮つたわけであります。十七日の日から計画いたしまして十九日に農民大会を開いたわけでございますが、私どもとしましては農民のかたがどれだけ来るかということを非常に心配しておりましたが、まあ四千という人もあるし、七千という人もあるし、一万という人もあるのでございます。ともかく花畑公園を場所にしたわけでありますがここに入れきれなかつた。今までそこでいろいろそういうふうな会合をやつたわけでありますが、一番多かつたということであります。如何に農民肥料を渇望しているかということがはつきりするのではなかろうか、かように考えるのであります。そこで工場のほうも十九日から出荷ができたわけでありまして、農民大会をやつた丁度十九日に出荷ができた。そこで我々としましては、もう一日早かつたならば農民大会をする必要がなかつたという、こういう気がいたすのでありますが、十八日に我々といたしましては、何とかして一つ地労委のかたにお願いしようということで地労委にお願いしました。それからたまたま労組のかたも地労委においでになりまして……。
  14. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと発言中ですが、大分時間が経過しておりますから簡単に一つお願いいたします。
  15. 飯田次人

    参考人飯田次人君) ということでございまして、そこで話が一致いたしまして十九日出荷することができたわけであります。そこで我々といたしましては十九日に農民大会を開かねばならんが、十八日に地労委のかたから話を聞いたのが、私が九時頃帰つて十時頃連絡が来ましたので取りあえず私は夜分に参りまして、地労委のかたに会つたわけでありまして、それがもう十一時、それで翌日の農民大会をとりやめることができなかつたのでありまして、一応それで農民大会をやりました。そういうような事情で、非常に一万人も集つたということは、これは如何に農民肥料を渇望しておられるかということがはつきりわかりはしないか、かように考えるのであります。更にこの問題につきましては、農民肥料を確保するということにつきましては、御召喚によりまして農民代表のかたが来ておられるのでありますから、坂田さんに一つお願いしたい、かように考えるのであります。それからいろいろまだお話申上げたいこともあるのでございますが、時間の関係上これで中止いたします。なお御質問によりましてお答えしたいと思います。
  16. 内村清次

    委員長内村清次君) 委員のかたに御相談申上げますが、あと五名の公述がありますけれども、時間が相当経過しておりますから、これで休憩した方がよろしうございますか。
  17. 田畑金光

    田畑金光君 一応休憩してから……。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  18. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは休憩のお声が多いようでございますから休憩をいたしまして、あと一時半開会をする、かように取扱いたいと思います。  それでは休憩いたします。    午後零時二十六分休憩    —————・—————    午後一時四十七分開会
  19. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは休憩前に引続きまして地方行政労働連合委員会を開会いたします。  先ほどの参考人の公述の件を引続いて参考人から公述を聞くことにいたします。熊本県阿蘇郡永水村赤木坂田重蔵君。
  20. 坂田重蔵

    参考人坂田重蔵君) 私は去る五月の十三日に日産化学の鏡工場における肥料出荷に参りました一農民として、当時の模様並びにその前後の私ども肥料の需要状況などを申述べてみたいと思うのであります。  私どもの地方は熊本県の中におきましても阿蘇地方でありまして、非常に高冷地帯であります。それで田植を相当早目にやりますのでありまするが、昨年来、県の奨励はこの増産のために保温折衷苗代を奨励いたしまして、幸い非常な増収を得ましたので、更に今年はこれを反別を広めましておのおの苗代をやつておるのであります。その播種期は大体三月二十五日から四月上旬、一日、五日とまあ五日ぐらいが一番遅いだろうと思うのでありますが、そうして、苗代期間は四十日乃至四十五日でありまして、丁度五月の上旬、中旬にかけましてこの苗を植えるわけであります。従つて丁度五月の中旬になりますると、この早い所は上旬からやるわけでありますが、肥料を必要とするのでありますが、その上に火山灰地でありまして、これは燐酸分が非常に欠乏しております。例えば同じ熊本県でも、熊本市附近の平坦地と比べますと燐酸分が約半分くらいしかないというような状態でありますので、たくさんの過燐酸肥料を要するのであります。なお増収の一つの方法として紫雲英の栽培をいたしておる者もありまするが、私どものほうでは先ほど申上げましたように燐酸分が非常に少いわけで、その紫雲英に四月上旬に過燐酸肥料を施すのであります。そうしましてこれを田植前に敷き込んで植えるという慣習になつておりますので、この分の過燐酸石灰肥料の需要の時期というものは四月上旬であります。更に、阿蘇郡におきましても山嶽地帯の畑作の地帯では気候が更に寒くなりますので、畑作たつた一作であります。それにはとうもろこしを植えるのでありますがこれが約四千町歩でありまして、二毛作をいたしません関係で非常に早目に植えておるのであります。これは五月十日からどんなに遅くても五月いつぱいには植えなければならない、こういう畑地が四千町歩ばかりあるのであります。こういうような同じ熊本県内におきましても、平坦地特に八代方面の田植というものはまだ始まつておらないと思うのであります。非常に時期が前後しておるのでありまして、そういう事情が八代のかたにはよく御了解ができ得なかつたのではなかろうかと、かように考えておつたのであります。なお、そういうふうに肥料は火山灰土であるがために過燐酸がたくさん要る。それから高冷地であるが故に早く田植をするので、相当早目に過燐酸を必要とするのであります。こういう関係で、而も過燐酸というものは、御承知通り、私どものほうでは絶対元肥主義でどうしても田植前にこれはやらなければならないという状態に差迫つてつたのでありまするが、その肥料を註文いたしますためには需要量の約九割は農協を利用いたしまして農協を通じて註文するのであります。  その肥料状況というものは、四月の上旬、中旬までくらいは非常に順調に今年は過燐酸石灰が送られて来ておりましたので、それまでは今年は非常に早く来るぞと喜んでおつたのでありまするが、四月下旬からそれがばつたりとまつたのであります。ところが一方田植はいよいよ迫つて来る、こういうふうな状態で私どもは非常に心配をいたしておつたのでありまするが、丁度そういう関係で、県の販購連に対してどういうわけで肥料を早く田植が迫るのに送らないか、こういうことをそれぞれ督促をいたしましたにかかわりませずなかなか肥料は送つて来ない。そのうちに五月の四日に私どもの地方の郡別肥料対策会議というものを販購連の主催で行われました際に、このことを追求いたしますると、それは早く送つて上げたいのだけれども、実は肥料工場にストライキが起る気配があり、更にすでに起つておる所もある、こういうようなことも原因して遅れておるというような話もある。併しそれでは困るではないか、そのストライキは解決の見込があるかどうか、というようなことを尋ねますると、それは我我の方ではわからないが、なるたけ早くそれは解決してもらいたいということは皆希望しておる。結局非常に困つた問題だがなるたけ迷惑をかけないように早くお届けしますと、こういうような返答でありましたが、併し連合会が出すというても向うのストライキが解決しなければ送りができないというようなことになると、どうもあなたが出すというても非常に困るじやないか、こういうわけで、連合会に対しても非常に強く要請をいたしましたのであります。私どもの方ではそういうことを申入れまして、早くストライキが解決すればよろしいということを念じておりましたが、そのうちに新聞ラジオなどでこういうものを注意して聞いたり見たりしておりまするとなかなか解決しそうにない。  そうこうするうちに五月の九日付だろうと思いますが、新聞紙上に鏡工場ピケラインの記事を見たのであります。我々農民はこの鏡工場におけるピケラインの状態を新聞で見まして、非常に不安焦躁と申しまするか、果して我々の田植に間に合うだろうか、こういうことが心配でたまりませんでした。なお私たちはその記事を見まして考えましたことは、僅か百人くらいの人たちのピケラインのために、我々の大事な肥料が思うときに手に入らないというようなことは、これは情ないことじやないか、一体肥料は何のために、誰のために作つておるだろうか、そういうふうに多少疑いまして、そうして、一日も早くこのストの解決方を希望いたしておつたのでありまするが、どうも解決の見込みがないような情報が伝わるのであります。これは困つたことであると私どもは心配をいたしておりましたが、その新聞のときにも、ピケラインのところに警察官がおいでになつて、そうしてそのままお帰りになつたというような簡単な記事を見たときに、一体これは食糧増産をするために大事な元ごえ肥料を我々は要求しておるのに、会社と労働者のかたが争つておられるそのために我々の肥料の需要の時期をはずすというようなことがあつては大変なことである。こういうようなことに対して、一体警察は何しておるだろうか。こういうふうにも我々考えたり、話し合つたりいたしまして、それにしましても、私たちはそのうちにはもう解決するだろう。  こういうふうに考えておりました矢先に、丁度六月十二日の午後に、販購連の支部から単協を通じて連絡があつた。と申しまするのは、どうも肥料の出荷要請をしてみたけれども、現在の状況では、このままではとてもむつかしいような状態である、どうしたらよかろうか。ついては明十三日の午前十時三分熊本駅発の列車で鏡工場へ過石出荷をお願いに行くから参加をしてくれ、こういうような連絡があつたというので、私どもは明午前六時発の列車に乗りまして、そうして鏡工場へ参つたのでありまするが、丁度駅ごとにそれぞれの村から三人四人とお願いに上る人が乗合せまして、それから熊本駅で乗換えますと、丁度これは飽託あたりの人であつたろうと思うのでありまするが、汽車の中で話をしてみますると、皆非常に心配をしておる。新聞に鏡工場のストライキ事件が報道されてから、どうも商人のほうがおれのところには肥料があるからというような話で、買いに行くと十円ぐらいもう高くなつておる、こういうことでは困りますな、併しこれがますます長引けば更に困るが、我々が今日行つてお願いすれば片付こうではないか、心配と一縷の望みもかけて、鏡工場へ参りましたのであります。ところが、鏡工場へ私たちが駅から降りて参りますると、すでに私どもよりも早く来ておられる農民がたくさん自動車をつらねて来ておりまして、そうして肥料を渡してくれ、そうしてもう非常に空気が私どのつきました十一時過ぎでありました頃には険悪になつておりまして、農民のほうのうちからも、お前たちは百姓に米を作らせぬなら肥料の団子でも食えというようなことをうしろの方で言つたりしておる者もある。これはいかんと思つて工場の正門を見ますると、ピケ隊の人がたくさん坐り込んでおる。私はピケ隊というものはどういうものであるか知りませんでしたが、初めて見まして丁度正門の所にぎつしり坐り込んでおられる。それから路傍には赤旗がたくさん立つておる。そしてピケ隊の人たちは盛んに労働歌を唱つて気勢を上げられておるこの状態を見まして、これは困つたことができたな、我々は肥料を頂きに来たのだが、来てみると、この我々の仲間であるべきはずの労働者の人たちと我々の仲間の農民とが、形の上ではもうすつかり対立をしておる、こういうようなことでは、これは本当に困つたものである。それでそのうちに私たちはこの状態をまのあたりに見まして、これはこういう状態は早く避けなければならないと、こういうふうに考えましたが、両方ともその後ますます気勢をそういうふうに張り合つておりまして、そうしてやがて販購連のマイクからは、道をあけて下さい、肥料は我々農民の生命であるから、生産に是非必要なものであるから、そこを一つあけて下さい、こういうふうにマイクでお願いをしておる。更に、我々にはあなたがたの生活権擁護のためのストライキはよくわかりますけれども、私ども百姓にはスト権はなくて供出の義務だけが負わされておる。でどうぞお互いが友達じやないか、今日のところは一つそこをあけて肥料を渡して下さいというようなことを販購連のマイクは叫んでおります。そうするとピケ隊のほうは、いやそれはよくわかるけれども、我々は大事なストライキに入つてつて、これを今あなた方に肥料を渡せば我々のストライキはこれで挫折する、更に段々マイクの応酬が両方からありましたが、最後には私どもはこういうピケ隊のマイクによつてこういうことを聞いたのである。労組の皆さんは最後まで頑張りましよう。そうして最後の一人までここを死守しようじやないか、更に今日は農民の皆さん絶対出荷はできないから、皆さん帰つたらどうか、更に、そんなに必要な肥料であるならばほかの会社にもあるから、ほかから買つたらどうですか、今日あなた方にお渡しすると我々のストというものは挫折するから……。こういうようなことも聞えましたが、私たちはこれはますます困つたことになつた、我々は労働者の人たちとけんかしに来たのじやなかつたが、こういうことになつてこれは困つたが、何とか解決の途はないだろうか、それを一縷の望みにいたしておりまするうちに、農民側のトラツクの第一番目に乗つてつた人たちがおりまして、そうしてそれなら一つ、話してわからないならそこを退いてもらつて我々が肥料を運び出そうと、こういうようなことになつて、併し絶対暴力を用いてはならない、冷静にやろうではないか、それからピケ隊のほうへ冷静にやりなさい。暴力を振つてはいけませんと、こういうふうな注意の下にそのピケ隊破りを第一車をおりた人たちがやりまして、一番最後の列をうしろに退けると、それが又すぐ前に行かれると、こういうふうな状態で農民側ではこれはとても我々の手で破ることはできないのだ、何とか方法を考えようじやないか。  こういうようなことでおりまするうちに、十一時四十分くらいだつたと思うのでありますが、警察隊がおいでになつて、そうしてこの農民ピケ隊の間に割込まれて、両方が衝突をしないようにというような意味だろうと思うのですが、その中に割込まれて、農民は向うへ退け、トラツクも後へ行け、農民はトラツクの後に皆下れ、こういうようなことで我々もずつと皆後に下つたのであります。そのうちに勧告文が貼られてそれをマイクは読上げたのでありますが、勧告文が読上げられましたときに、我々これでいよいよ解決が付いたぞ、肥料がもらえるぞと非常に喜んだのでありますけれども、一向そういうピケを解かれるという様子もないので、又私たちは困つたと思つておりますうちに、だんだんそのまま一、二時間過ぎました。どうも一向警察が来ても解決は付かないで、農民のほうから販購連は一体何をしている、会社は肥料を渡すと言つておるではないか、それだから俺たちが担いで来るから警察はそこを退いてもらうように。こういうような空気になりましたので、丁度そのときに、併しこれは我々の実情ピケ隊の人たちに、直接皆さんにお願いしたなら出るかも知れないというので、私の郡から参りました大和というような者が次のようなことをマイクで懇請したのであります。  私は他の小組合代表と共に、阿蘇から三時に起きて肥料の出荷懇請に参りました。御承知通り高冷地阿蘇では、保温折衷苗代の導入奨励により田植は著しく早められ、すでに田の八割が耕起され、肥料の着荷を待つておる状態です。阿蘇は火山灰土で全面的に農家は金肥に依存し、それ以外には農耕はできません。昨日も一昨日も農民はこの雨の中をリヤカーや荷車を曳いて肥料取りに来ますが、農協には一叺の肥料もなく、濡れて帰る老人子供の姿は見ておれません。私たちは皆さんのストを妨害しようとか、これに介入しようということは毛頭考えておりません。皆さんのストと農民肥料を渡すことは別にしてこの農民実情を察して下さい。過燐酸石灰は私たちにとつては重要な元肥です。今この肥料が貰えなかつたら今年一年は捨作せねばなりません。田植は一年一度で来年でなければ取返しがつきません。私たちも自分の飯米のみを作つているのではなく、皆さんも私たちの作つた米を食つていられるはずです。私たちには今年も秋には厳しい義務供出の割当があり、曾ては自家飯米まで供出した苦しい経験がありますので、皆さんがたの肥料も頂いて、今年も増産に励みたいと思いますので、何とか肥料だけを渡して下さい。働く農民は働く皆さんの味方であり、働く皆さんは又農民とは同志ではないですか。こういうふうにマイクで懇請をいたして、直接ピケ隊の人に呼びかけたのでありまするが、これもお願いが聞き届けられず、私たちはこうして直接ピケ隊の人たちと農民とが肥料の問題をめぐつて相対決することは一番悲しいことであると思うのであります。  そうしてそれから二時間ばかりたちますと、マイクはその両方ともその間というものは鳴りを静めておりました。その間は先ほどほかの参考人からも申された通りに、労組側農民側との交渉、それに警察も加つて交渉して下さつた時間でありまするが、私どもの方ではそれを非常に待ち遠しく期待をしておつたのです。やがてマイクはその交渉経過報告いたしました。その経過報告には交渉は遂に決裂というようなことでありますので、我々は非常な衝撃を受けました。で、そういうことなら本当に我々は今日は肥料を頂いて行こう、まさに一触即発の情勢と申しまするか、非常に危い情勢になりました。そのときに警察は最後の勧告をマイクを通じて行われたのであります。いよいよ実力行使警察は移られましたが、それは非常に短い時間に実力行使が済みまして、そうして我々の自動車は第一車から第二車、第三車と工場内に入りまして、この肥料を頂きに入つたのであります。そのときに我我の方はこれで肥料が頂けるのだと非常に歓声を挙げて喜んだのでありまするが、それから夕方までトラツクで先ほど申しました通り肥料を駅まで運んで我々の土地に十四日に送つて頂いたようなわけであります。  こういうようなことを考えて、私たちは帰りには我々は非常に今日は残念なことであつた。事肥料のことでストライキが起つて、そうして我々に食糧増産の大事な肥料を要るときに渡して下さらない。肥料を渡して下さらないというようなことは一体許さるべきことだろうか。それから私どもの方では今日田植をするから今日肥料が要るといつて取りに行つても実際は田植はできないのであります。これは今までもちやんと肥料を揃えまして、そうして田植に仕かかるのであります。誠にできましたことは、農民にとつて労働者にとつてもお互いが仲好くして行かなければならないのに、形の上で実際に対立したというようなことは誠に残念でありました。更にこういうことは絶対これから先は起らないようにお願いしたいと思うのと、万一私どもの食糧増産に是非必要な肥料が要るときに間に合わないようなことが、労働者と資本家の争いのために若し起るようなことがあつたとするならば、これは農民としても非常に問題でありますので、そういうところは一つ何とかなりはせんだろうかというふうな話合いをしまして、こういうことは一つ県にも政府のお方にもお願いしようじやないかというようなことを話しながら帰つたようなわけであります。私たちは好きこのんでこの忙がしいときに参つたのではありませず、何とかしてストを解決して我々の手に肥料を要るときに渡してもらいたい。併しながら長い期間にストライキが続行されまして、そうして我々の大事なときに肥料が若し万一全然間に合わないようなことが起るとするならば、これは暴力以上の何ものでもないというふうにさえ私たちは極端に肥料のことは心配いたすのであります。百姓で一番心配いたしますのは、御承知通り水と肥料の問題でございます。この水と肥料については百姓はいつでも命がけで争うのであります。この点はどうぞこれから先も、私たちはスト解決以後今日に至るまで幸いにして何らの事故も起すことなく鏡工場からも喜んで出して頂いているような状況でございます。この機会に私たちは更に労農相提携してさように持つて行きたい、かように念ずる次第であります。
  21. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に日産化学労働組合鏡支部長藤本信義君。
  22. 藤本信義

    参考人藤本信義君) 私は、十三日の問題については縷々ほかの方から御説明がありましたので、この問題の核心であるところの仮処分の問題と、それから警察介入の問題、それから農民と我々労働者と相対立したような形に感ぜられるのですが、その点について説明いたしたいと思います。  只今農民の方からお話がありました通り、我々としましても農民と我々が対立するとか、反対するというふうな立場は全然考えておらないことであるし、組合活動の一つの日常活動の一環としても労農提携はなさなければならん。そのように平時思つておるわけです。その点からしまして十五日に肥料を出す、なぜ十三日に出さなかつたかという点についてやはり販購連なり、それから農民の人たちの理解が足りなかつたのではないか、かように思うのでございます。それは十五日に賃金値上げの回答がなされるというような一応の前提がありましたし、それから仮処分の決定に対するところの組合からの異議の申請をやつておりまして、この問題が十五日に第一回の公判がなされることになつております。この二つの問題と特にその当時の争議手段として出荷入荷の阻止というものが、我我の一つの致命的な勝敗の鍵にもなるというのは、十五日に賃金値上げの回答がなされるということになれば、十三日に肥料を出すということは会社側に非常に有利に展開して行く、その一つの観点と仮処分の問題がございまして、でき得れば十五日までこの点を待つてもらえれば我々の生活権を賭けたところのこの闘争の問題も一応組合員も納得するし、我々の争議の効果というものもその点において有効じやないかというようなうことを考えまして、あの問題は形としては変な誤解を招きやすいようなことになつてしまつたわけです。その点については我々としても非常に現在後悔しておるわけです。  又販購連の幹部の人たちに対しましては、いろいろ声明書あたりを出しておりますが、この問題について我々が一つ申上げたいのは、何も日産化学の鏡工場肥料だけを取らなければこの肥料の問題が解決されないというような問題ではなくして、その当時の十三日、阿蘇地帯の問題にしましても僅かの肥料のトン数ではないか、かように私思うのでございます。そうすればそれくらいの肥料がうちの鏡工場から是非とも取らなければ解決がなされないというような理由にもならないし、当然それだけの努力を販購連の幹部としてはなさるべきが妥当じやないかと私特に考えるわけなんです。特に十三日以降肥料の出荷の問題についての団体交渉をやる際にも、あとの肥料をどうするかというような団体交渉の席上で下関の肥料課長が、あなたたちがこれ以後肥料を出さないというようなことになれば、県購連としてはもう日産化学の肥料は要らないの、関西メーカーのほうから至急間に合せる、かかる言を弄しております。この問題については十三日のあの当時のなまなましさを我々が感じた場合、ではなぜ関西メーカーからそれだけの肥料を持つて来られるならば、十三日当日にあの争議の中から肥料をひつぱり出して持つて行かなければならなかつたのかという点について、組合員全員憤慨しておるわけであります。大体ほかの小さい問題については質問段階に入りましてから御説明いたしたいと思います。  次に仮処分の決定の問題ですが、これは二十八日に組合員には全然秘密裡に会社が熊本地裁のほうに仮処分の申請をいたしました。それがたつた一日おいて三十日に決定を見ております。この問題については私たちは当然異議がございますし、組合に対しましては一遍の審訊もなく、一方的に熊本地裁が仮処分の決定をなしてしまつた。この事実は一般的な仮処分の決定であれば一応問題もないと思うのですが、たまたま争議中の、特に労働組合の問題については対立点が非常に大きいのである、その仮処分の決定一つの問題が闘争の勝敗の鍵に影響をする。こういう点から考えた場合、当然これは熊本地裁では十分なる審訊を行うことをしなければならない。かように思いまして直ちに三十日の決定によりまして、二日の執達吏が工場に参りまして公示を五カ所に亘つてなしたわけであります。その公示自体に対しても執行吏の越権的な行為が多く、何人といえども搬出を妨げてはならないというような字句とか、もう一つ何かあつたと思いますが、二カ所についても非常に問題があつたわけなんです。そういう観点から我々といたしましては直ちに異議の申立をする準備をすると同時に、熊本地裁と執行吏に対して抗議に行つたわけなんです。そして執行吏は抗議に行きましてから直ぐ日曜日でありましたけれども、その二つの越権的な字句に対して直接取消に参りました。熊本地裁には抗議文を突付けると同時に、その問題について抗議を申入れたのですが、これに対しても地裁のほうでは一応審議もしなかつたことに対しては悪かつたというようなことを言つております。大体異議の申立については、我々がその主要な点としましては、日産化学は、組合組織は単一の組織体でございまして、その場合社長が申請人になりまして、鏡支部長の私を被申請人にしておるわけなんです。するとその組織体の系統からいいまして、これは当然中央の執行委員長と社長との問題になるべき性格のものを私と社長との問題になしておるわけなんです。そういう点からこれは当事者能力がないという点と、第二点としましては、その仮処分の申請を工場がなした当時において、我々が出荷入荷に対してピケを張つた事実行為もないし、張ろうとした事実行為もないし、張ろうとした事実行為もございません。で、正門の前には組合の役員五、六名がおりまして説得行為をやつていた程度にしか過ぎないわけです。そういう事実からしまして、これはそういう行為をやつた事実がないのに対してあつたかのような申請をしておるわけなんです。  それから憲法第二十八条と組合法第一条、労調法第七条において規定されておりますところの正当な我々の争議行為として、そのピケを張ろことも我々としては一応正当な行為だというような観点から、この仮処分自体が何も有名無実な、実効の伴わないところの仮処分の申請であるし、又は仮に仮処分の決定がなされておつても、我々の出荷入荷の阻止は当然な正当な争議行為であるというような、そういう点から異議の申立をやつてつたわけでございます。  次にそれでは業務妨害の問題について、先ほど警察のほうからも言われたのですが、それでは販売契約と我々の基本的な人権の蹂躙という問題については、十三日の問題ですが、そういう問題とはどちらを重視しなければならないかという問題もございますし、又正当な争議行為は正常な業務を阻害するのが正当な争議行為だというような規定もなされております。そういう観点からしますと、この我々の正当な争議行為に対して、又そのピケを張つた事実が果して暴力的な行為が事実あつたかどうか、あればこれは当然警察介入というようなことも考えられますが、当然これは販売業者、県購連という人たちと私たちの組合のこれは民事的な問題で解決さるべき性格のものであるし、又これは仮に仮処分の決定がなされておつたと仮定しても、会社の搬出行為を妨げるべきではないというような決定がなされておる。すると第三者は、販売業者あたりの搬出行為は我々としましては阻止することは当然である、正当な争議行為から当然であるというような見解も出るわけなんです。  又販売契約という問題について疑問を持たれる方があるかに思うのですが、販売契約の内容を考えてみますと、先ず第一番の闘争宣言を発して、その闘争宣言を発した中においてこの販売契約が結ばれたという第一点と、それからその契約数量というものが、事実契約された日にちにおいて果してそれだけの量があつたかどうか、これは遥かに下廻る量しか工場内にはなかつたわけなんです。それが第二点と、販売契約というものがどれだけの効力を持つかという点につきましては、これは例えば製品が山のように積んであるわけなんですが、これからこれまでは県購連の品物だ、これからこれまでは日星産業の品物だというように繩でも張つて限定されたところの公示がなされておれば別個だと思うのですが、果してそういうものがその当時なされていたかいないかという点については全然なされていなかつた。  それから十三日のその公示の問題については、工場側は十二日の夕刻あたふたと立札を十何枚作りまして、そうしてそれを肥料の製品の上に突きさした。それで工場関係はないというようなことを言われるかと思うのですが、その事実行為によつて十三日に強制出荷されるという事実を工場は事前に知つていた、そういうことが言えるわけなんです。  次に警察の問題について少し述べさして頂きます。それは先ず十三日の当日、私たちが平和的なピケラインを張つてつたわけなんですが、これに対してこちらは約二百名近くの人間がいたわけなんです。組合員が百五十名ぐらいとそれから家族の人たちが五十名ぐらいと友誼団体が三十人ぐらい。それに対して農民と称する人たち七百名ぐらいと警官二百五、六十名の人が来たわけなんです。警官は完全武装をしております。私が事実見たのでございますが、催涙ガスそれから防毒面を持つて来ておりました。そういう人員の比率においても我々が守つておるピケライン自体の人数に比べて、約四倍以上の数を以てここに対峙したという点は、果して組合ピケラインが威圧的な暴力的な事実行為であつたかどうか、それに対して多数の人間を以て私たちに対峙して来た事実に対しては、どういうふうにお考えになるか、その点を私考えているわけなんです。  それからはじめピケラインは対峙している方向に向いて立つていたのでございますが、立つておれば結局破られる際に足が動かされるという自由性があるので、殴られたりすれば足で蹴るということも考えられますので、完全なる無抵抗をすべきだという一つの線を打ち出しまして、全部後向きに坐らしてピケを張つたわけなんです。そういう点からピケ強行突破の際にも、後の誰から蹴られてどういうふうにされたということは、外部の人か早くピケを破られた人でもないとわからないように、みんな無抵抗に坐つていたわけなんです。  それからピケのときに私一人真中に立つていたのですが、前列の方に男子組合員、それから後列の方に女子の人たち、家族の人たち、その境目に私が立つてつたのですが、警官が介入し始めてから約六分か五分くらいで男子のほうは明いてしまつたわけです。それで私は女の人に警察官が手をかけ始めたので、女はやはりかあいそうだからというところで、私は女子とその家族の人たちに対して、ここを明けよということで私は明けさせました。その明けさしている私を、現在鏡の警察官であるところの平巡査という人は、あれが委員長だと指さしまして、そのピケを開いている私を追つかけて来るし、検束しようとしたわけなんです。この事実行為に対しては、警察が検束者を出さないように、又暴力を振わないようにというような言い方が如何になされていても、その事実行為は絶対に否定できないものであると、かように私思うのでございます。  又ピケを破られる際に農民の人たちが、最前列のピケラインの人たちを四人か五人で引きずつてつている。その暴力行為に対して、私が八代地区の警察署長の斎藤さんに、今農民が、黙つてつている無抵抗の組合員暴力を以て引きずつているから、私と一緒に来てその現場を見てくれ、そうしてこの暴力行為を阻止してもらいたいということを八代地区警家署長斎藤さんに言つたのですが、耳をかさず、来る必要はない、ほかに用事があるのだという、かかる言動を吐いております。  又先ほどお話がありましたように、平和的な交渉をやはりやるべきだという観点から、我々もその破られる寸前において十五日まで待つてもらえば必ず三役の責任において大会の決定は無視するかもわからないけれども、出しましようということを警察署長に言つておりますが、そのとき警察署長は、じやその点において販購連の人たちと話してみようということで、その交渉をされたわけなんですが、これに対して絶対待てないという御回答であつたわけなんです。それで私たちはそういうことになれば仕方ない。併しそこで問題があるのは、やはり警察官は民衆の味方でなければならないはずである。又治安を保つためにもそういうことに努力しなければならないはずである。そのときの私の考える範囲においては、農民の人たちに一応その日は帰つてもらうということが果してできなかつたであろうかどうか。又それをやるのが警官としての本当のあり方ではないかという点を私強く主張したいと思うのです。  又負傷者二十五名と、検束者一名出たのでございますが、検束者はうちの労働組合のうちで一番おとなしくて、一言の発言もできない人を検束して行つております。そうして検束された人を警察に行つてもらつて来てそうして大会の席上であいさつせよと言つたら、とにかく平生一言もしやべれない人間で泣いておつた次第でございます。そういう一番おとなしい人を引張つてつておる。こういう事実があるわけなんです。  そういう点から十三日のピケが破られて、十四日の早朝警察官の人たちは八代署長伝単というこの参考書類にありますような文章のやつを、各戸別に配つております。なんのためにかかる伝単を配らなければならなかつたか。正当な当り前の行為警察がやつておれば、かかる紙を使つて、費用を使つて出す必要がどこにあるか。又その文章の中にも違法行為の摘発というふうに書いてありますが、どこが違法行為であるかという点も追求したいし、又国警の十三日の当日の布告文の中にも正当な争議行為を逸脱したというように書いてあるし、又警察は断固違反敢行者を逮捕し一般の不法行為を排除する、かかるように、頭から我々の組合運動を否定したような、違法行為であるようなことで頭から押えつけて来ておるという、かかる事実に対しても我我組合員を初め家族の人たちが非常に憤慨しております。  大体私大ざつぱな点を申上げたのでございますが、あとの質問段階に入りましてから縷々御説明いたしたいと、かように思います。
  23. 内村清次

  24. 原田英男

    参考人原田英男君) 原田でございます。経過等につきましては今までいろいろな方々から述べられておりますので、私は五月十三日の事件につきまして直接私ども関係した分、或いは県総評関係しましたそれらのことについて述べてみたいと思います。  熊本県総評は四月十二日鏡支部からの連絡によりまして、この争議に対する積極的な支援を決定し、そうして友誼団体として爾後傘下の各単産を挙げて協力したわけでありますが、私が最初に申上げておきたいことは、今度の日産の斗争の性格であります。今次の争議は御承知通り化学労連の共同斗争として発展しまして、特に過燐酸石灰の製造部門の各労組がその決定に従つて一齊に立上つたわけであります。これに対して日経連は過石灰の中における日産化学の地位は極めて大きい、従つて日産労組を制圧することができれば、他の単産の他の県労組を制圧することは容易であるというような見解を出しまして、そういうような指導を打立てておつたと聞いております。このような作戦は、昨年度の電産或いは炭労の争議においても見られました通り争議の長期化と横の連絡を分断することによつて組合を切崩すという戦法であつたわけであります。会社も組合最初はそういう長期に亘るということを予想してなかつたのでありますが、そういう指導方針によつて、鏡日産の争議が非常に長期に亘つたということであります。このような今次ストの性格というものを十分に理解されなければ、五月十三日の事件の真相を正しく把握することは困難じやないか、こういうふうに考えるわけであります。  私どもが今次ストに当つて最初から考えて参りましたことは、やはり労農の提携を害するような形であつてはならないということであつたわけであります。真に農民が必要とする肥料であれば、これは当然出荷してやらなければならないということを考えておつたわけであります。勿論鏡支部の幹部方々も終始そういつた考え方であつたと私存じております。私どもはそのような考え方であつたにもかかわらず結果としては、五月十三日の事件となり、あたかも労農の完全なる対立であつたというような宣伝がされたことを甚だ遺憾に存じておるわけであります。その最も大きな原因は、日経連の指導によつて、私どもの考えとは逆に争議が長期化され、しやにむに農民肥料を必要とする時期まで、その争議が引延ばされて行つたということにあると、そのように考えております。この間、会社は先ほども説明がありました通り、四月二十八日熊本地裁に対して、日産化学労組鏡支部長を被申請人として、会社が肥料搬出する行為を妨げてはならないという内容の仮処分の申請を行なつております。これに対しまして地裁は、会社側の非常に不備な資料のみを以て一方的な決定を下しております。私どもはこの点、地裁の決定に対して、それが非常に不当である、そう考えまして、この資料の中にありますような考え方を述べまして、この決定によつて今後起り得る一切の責任は、当然地裁が負うべきであるということを申入れまして抗議をやつたわけでありますが、すでに過ぐる五月二十九日、当参議院の地方行政委員会における国警本部長官の発言の中にも、この地裁の決定を足場として警察権の発動を正当ずけようとする発言があつたように見受けております。これは換言しますと、警察権行使責任を地裁に転嫁するというような印象を私受けております。この地裁の決定を見て、執行吏による公示が行われておりますが、この際、被申請人藤本信義は勿論、何人といえども云々というような公示がなされております。これは裁判所の決定の主文にはこういう文言は入つておりません。これは執達吏が自分の判断でこういうことを書いておりますので、これに対して抗議を申入れ先ほど藤本支部長から話がありました通り、訂正をやつておるわけであります。  このようにして多分に疑義を持つた一方的な地裁の仮処分の決定が行われたあと、五月八日、九日、五月十一日と日星産業或いは県販連のトラツクが肥料の出荷を要請いたして来ております。五月九日の警察の動員されるに当りましても、斎藤八代署長は仮処分の決定に従つて出動せしめるというような態度が、最初の態度であつたのでありますが、組合側或いは組合側が委嘱しておりました野尻弁護士等の説明によりまして、最後には業者の要請によつて出動するというようなことを言われております。これは五月十三日の八代署長のどうによつてもはつきりいたしておるわけであります。  このような間にも団交による妥結ということを終始考えられまして、努力されて来たのでありますが、中央の情勢が一向進展しない。そうして事態がいよいよ緊迫を感じて参りましたので、県総評としましては、たまたま五月十一日帰省されました前代議士坂本泰良先生とも打合せをいたしまして、この情勢を何とか平和的に打開したいというふうに考えまして、県当局の善処方を桜井知事要請したわけであります。知事事態を憂えて善処方を約しまして、即日事情調査するということで庶務係長を派遣せられております。この庶務係長を派遣せられましたので、私ども農民の必要とする組合肥料は必ず出荷してやるという考えが基本になつておりますので、組合が十分納得できるような資料を県当局において早急に作成されて、そうして組合折衝されて、出荷が一日も早く可能になるような情勢を作つてもらいたいということを要請しておつたのでありますが、県当局では、最後までその資料ができなかつたわけであります。私ども組合の出荷拒否は中央指令によつてやられる戦術でありますが、そのような情勢の中では、絶対的なものではないことがあり得る。即ち真に農民が緊急肥に料を必要とすることを証するに足る資料を提示されたいということを訴えたわけであります。越えて十二日に至りまして、県は宮本労働部長現地に派遣しまして、いろいろ努力せられたのでありますが、ただそういう資料も何もなしにいろいろ折衝されたので、なかなか結論が得られなかつたわけであります。十二日の夕刻、宮本労働部長は帰熊せられまして、そのあとに私も現地におつたのでありますが、二、三日熊本に帰つておりませんので、その日最終の列車で熊本に帰つたわけであります。宮本部長は熊本に帰られて、その日、県販連農民を動員して、十三日に鏡に肥料の出荷を要請に行くというような情報を得られて、直ちにそのまま引つ返されて又鏡に行かれたわけであります。併しその場合も、私たちのような一応友誼団体といつたようなものでもおりますと、もつと話の進め方が宮本部長としてもあつたかと思いますが、直接労組幹部と話をされたので、宮本部長の表現も十分意を尽されなかつた点があつたかと思いますが、とに角そういうことで、結論を得られないままに帰られたわけであります。宮本部長は、五月の十三日午前十時、広川の農協に農民の人たちが結集される、集合されるということを聞かれて、午前十時に広川の農協に行かれたわけですが、その当時すでに農民を積んだトラツクは出発したあとでありまして、部長は直ちにそのトラツクを追跡して、鏡の町の中央で県販連代表に追つついて、暫くここで待機してもらいたい、自分たち一つできるだけの努力をしてみたいから、暫くここで待機してくれんかというようなことを要請されたわけでありますが、そのときは、すでに問答無用たというような態度で、ピケ隊の前まで車を進められたわけであります。  私は十三日の朝、熊本でこの情報を聞きましたのですが、事がすでにここまで来ましては、現地に行つただけでは、これ解決できないというようなことを感じまして、直ちに国警の本部に小林隊長をお訪ねしたわけであります。そうして、さつき小林隊長からもお話がありました通り、丁度県庁におられました坂本前代議士、或いは熊本市の社会党の支部長佐々木さん、そういつた方々においでを願いまして、同席をして頂いて、隊長にいろいろ懇請をしたわけであります。先ず隊長にお聞きした点は、五月十三日に国警が動員されておる。その動員の目的はどういうことであつたかということをお尋ねしたわけでありますが、これはさつき小林隊長も述べられた通り、国警としては組合争議に対して介入或いは弾圧を加える意思は毛頭ない、今日出動したのは農民の多数の人が動員せられて、而もこれが広川の農協で酒を飲ませられておるというような情報が入つておる。従つて、そういうような農民の人たちが多数ピケ隊の前で対峙されるような形になれば、必然的に暴力行為にまで及ぶ可能性があるので、警察としては、自主的にそういう暴力行為が起ることを、未然に防止したいということで動員をしたという御返事であつたわけであります。従つて、私どもとしましても、隊長のそのお気持はよくわかりましたし、自分たちででき得る限りの努力をしまして、早急なる解決を図りたいと考えますので、協力をお願いしたいということを申入れたわけであります。これに対して小林隊長は、よくわかる、従つて警察の入手した情報によると、十五日までに話が片附いて出荷ができるということになれば、阿蘇地方の早場に対する肥料の手当も十分間に合う、大体二十五日頃までに肥料現地に到着すればいいという情報であるので、輸送期間を十日と見ても十五日までに出荷ができればいいんじやないか、そういうふうに考える、従つて、そういうことで努力をしてもらいたいというようなお話であつたわけであります。そこで、私どもも十分にその点で努力したいということを考えまして、警察と、農民と、それから労組ピケ隊とが目睫の間に対峙したような形の中では、お互いに冷静な交渉を続けることは困難である、従つて警察隊も農民方々も一応ピケ隊から目に触れない地点まで、五十メーメルでも百メートルでもいいから下つて頂きたい、そうして、お互いに代表者を出して交渉しようじやないか、こういう一つ情勢を作つて頂きたいということを要請したわけであります。これに対して隊長はよくわかる、是非そういうことをしてもらいたいというので、直ちに今から現地隊長に自分は電話をする、そうして連絡をとるから、君は現地に急行してもらいたいというお話であつたわけであります。で、隊長は時計を見られて、電話で連絡をとるのが何分かかる、君が自動車で飛ばすのが何分かかるから、どれくらいには現地に着くと、そういうことまで言つておられたわけであります。  そうして自動車現地に参つたのでありますが、現地に参りまして斎藤隊長にお会いしまして、小林隊長との話の内容をお伝えしまして、何とか考慮をして頂きたい、最後の努力をしたいということを申入れたわけでございますが、斎藤隊長はそのような指示は受けていないというようなことで話にならなかつたわけであります。併し、私どもは最後まで望みを捨てないで努力したわけでありますが、斎藤隊長のそういうような返事を聞きまして、早速熊本の坂本先生宛に、現地情勢小林隊長の言われたことと全く違つておる、再度折衝せられたいというような電報を打ちまして、そうして斎藤隊長といろいろ折衝したわけであります。これは西島、志賀両副議長と共にもう一遍十五分でも二十分でもいいから最後の話合いの機会を設けて頂きたい。小林隊長のお話でも十五日までに出荷ができるということになれば十分間に合うというようなお話もあつたし、我々もできるだけの努力をしたいから、もう一度考慮して頂きたいということをいろいろ要請したわけでありますが、これに対してはおれの肚はもうきまつておるのだというようなお話で、実力行使を語われたわけであります。さつき藤本支部長からもお話がありました通り宮本労働部長が十二日会社側と会見せられた当時、すでに倉庫の中にあります肥料については、これはどこどこの農協である、これはどこどこの農協であるというような立札がされておつたわけでありますが、商業新聞等を通じて如何にも農民肥料を緊急に必要としておる、堪えかねておる、そうして期せずして参集したというような宣伝がれさておるわけでありますが、それらの点は資料にもありますので、御覧をお願いしたいと思います。農民の手紙等にも見られる通り県販連の割当による狩り出しであつた。更に農民を広川農協に集合せしめておるわけでありますが、これはトラツクに乗つて隊を組んでの行動であります。而もこの農民を輸送せられるトラツクは、当然トラツクの定員外の乗車許可が必要であつたわけでありますが、定員外の乗車許可が必要であるということを認めるためには、緊急な事態にあるということがなければならないと思います。そのような場合であつても、私どもが理解している範囲では、トラツクの定員外の乗車は大体十五名、運転手を含めて十五名までであるというふうに理解しておるのでありますが、この場合三十名或いは四十名にも余るような人たちをトラツクに乗せて、広川の農協から鏡の現地まで輸送されております。又小林隊長の言われた通り、酒気を帯びた大勢の農民の集団がピケ隊と対峙するという結果がどのようなことになるかということは、初めから予想されておつたわけでありますが、こういうことを未然に防止するというのが、その日の警察出動の一番大きな目的であつたにもかかわらず、こういうような違反をした輸送まで黙認されておつたということは、私たちにはどうしても理解できないわけであります。更に加えまして五月十三日の八代署長のビラにも明かな通り、それらのことが業者の要請によつて警察行動としてやられたという点、更に奇怪に考えましたのは、警察ピケ隊が対峙している間、農民と称する一部の人たちが入り込んで参りまして、みずからの力によつてピケ隊を排除しようとして実力行使をやつたわけであります。この場合、その暴力を振つておるのを見ながら警官隊は知らない顔をしておつた。従つてこれに対しては藤本支部長あたりも隊長要請して、何とかああいう暴力は排除してもらいたいということを要請したわけでありますが、斎藤隊長はこれに対して一顧だにも与えなかつた。或いは事件直後八代署長が鏡の町に配られたビラにいろいろなことを書かれて配られておるわけでありますが、なぜにそのようなビラが配られなければならなかつたか、こういうようないろいろの事実等を考え合せますとき、小林隊長の言われた、或いは斎藤地区署長の言明にもかかわらず、今次事件に対して国警がとられた意図が那辺にあるかということを私たちは疑うわけであります。  即ち国警が正義の味方であり、相手によつてその執行を二、三にするものではないということを町民各位に訴えて、そうして冷静な理解を願うということを書かれておるのでありますが、今小林隊長との面接について述べましたので、小林隊長の当日語られましたことが真実であつた現地における斎藤署長の言、或いは県販連幹部のかたがたの態度が如何に偽りであつたか、そうして作意に満ちたものであつたかということについて一、二述べさして頂きたいと思います。  詳しいことは資料にありますので、資料を御覧になつて頂きたいと思いますが、県販連組合に電報を寄せまして、農民の死活を決する段階にまで到達した、そういうようなことを極言しておる。農民事情に疎いことを利用して誇大な宣伝を行なつたと、私どもはそう理解しております。その後、私は六月の八、九の両日阿蘇地方に参りまして、単位農協或いは農民のかた、肥料業者の方々とお会いして、いろいろお聞きして来たわけでありますが、その結果も資料の中にあるので御覧頂きたいと思います。或いは浅香県農政課長が、新聞で報ぜられております通りに、五月十四日であります、その新聞に出ておりますが、たくまずして語られた県販連の今度の態度というものについては、十分御検討をお願いしたいと思つております。そうして五月の十九日熊本市の花畑公園において農民大会が開かれたのでありますが、この農民大会においては、肥料を獲得せねばならないということがただ一つの目的であつたと、私どもはそう理解しておつたわけでありますが、事実はその言葉の蔭に隠れて各代表発言されたことは、現幹部のお蔭であり、将来ともこのような幹部を必らず盛立てて行かなければならないというような発言であつたわけであります。或いは先ほどお話がありましたが、七千或いは一万にも余つたというようなお話であつたわけでありますが、この中には熊本実情を御存じの議員のかたもおられると思います。花畑公園は私どもが常に労働者の大会その他を催しますが、大体二千人程度あの公園の中に入りまと、相当な混雑をする程度の広さであるわけであります。その中に七千人或いは一方人の人間が入れるかどうかということは申すまでもないわけであります。
  25. 内村清次

    委員長内村清次君) 原田君に申上げますが、大分時間が過ぎておりますから簡単に……。
  26. 原田英男

    参考人原田英男君) 時間の関係で簡単にしたいと思います。ついでに申上げておきたいことは、県教組に対する抗議乃至圧迫であります。農民大会の実行委員会は、この決議によつて抗議のために、県総評、国鉄の労組或いは県教組に抗議をするということが決定されておつたわけでありますが、これは新聞も報じております。又その日市警の公安課からも熊本県総評に対して、今日こういうことが農民大会実行委員の中で考えられているので、紛争を起しては困る、従つて事務所を空けておいてもらいたいというような注意があつたわけでありますが、このようにして県総評に対して十九日の日に、当然抗議があると思つてつたにもかかわらず、県総評乃至は国鉄に対しては全然抗議はなかつたわけであります。併し事実は日産の鏡支部に支援を決定したのは県総評でありますし、現実に支援を与えたのは国鉄の労組或いは電産の労組であつたわけであります。県教組も県総評の傘下として応援は当然やつております。やつておりますが、五月四日であつたか六日であつたかと思います。その日一名の代表者を送つて、そうして激励を与えたのみで、その後一切参つておりません。ピケの当日も全然参つておりません。その県教組に対してのみ抗議文を送つていろいろ質問をやつておりますが、これはいろいろ巷間伝えられますところによりますと、前回の衆議院の選挙における前代議士川村継義先生の選挙に絡まるいろいろな問題がここまで尾を引いておるというようなことが言われておるわけであります。川村先生は当然隣の村でありますので支援においでになつてつたわけでありますが、現在川村先生は県教組とは何らの関係もないという事実が無視されておるのであります。その他一、二述べたいことがありますが、質問のとき述べさして頂きたいと思います。
  27. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に日産化学労働組合鏡支部組合員家族土田玉枝君。
  28. 土田玉枝

    参考人土田玉枝君) 委員長に申上げます。慣れないために私は座つたままでやらして頂きたいと思いますが、如何でございましようか。
  29. 内村清次

    委員長内村清次君) 結構でございます。どうかそのままで。
  30. 土田玉枝

    参考人土田玉枝君) 私は土田でございます。家族の一員といたしまして考えましたことの一端を申述べさして頂きたいと思います。  私は五月九日や十三日に行われたあの警察出動、又販購連の幹部のかたが、「軋き殺してもかまわんからトラツクを通せ」などとの暴言を吐かれなかつたならば、肥料出荷問題はこんなにまでならずとも、きつと話合い解決されていたものと思います。如何に言論が自由であると言われる今日でも、それがいやしくも指導的立場にある人の口にすべき言葉ではないと私は思います。軋き殺してもなどということは、一面由々しき社会問題であると思うのでございます。この問題に関しましては藤本支部長や原田総評事務局長から縷々申述べられましたのでございますが、私は今後の正しい労働運動発展のためにも、この問題は十分に検討してもらわなければならないのだと切実に思うのでございます。日頃信頼もし、又協力もして参りました民主警察が、一方的に私たちの張りましたピケ暴力を以て突破されましたことは、返す返すも残念に思うのでございます。と申しますのは、現在の鏡町のあり方から申上げなければなりませんけれども、ただ単に青少年の分野を取上げましただけでも、鏡町には未成年者で保護観察を受けております者が約三十名ほどおります。これは八代郡北部十一カ町村の四分の三を占めておるのでございます。従いまして保護観察を受けないまでも、これに近い青少年の数は相当なものなのでございます。あの物々しい完全武装した警察官の一方的弾圧が、この感じ易い年頃の青少年に与えました影響を思い、そうしてこの青少年の今後の思想的問題などを考えますときに、私は子を持つ母としての立場から、ただ残念だつたと申上げるよりほかに言葉はないのでございます。本当の民主警察であつたならば、皆から親まれ、愛されなければならないはずなのに、町民に恐れを抱かせたり信頼感を失わせたりしては、警察としての存在価値がないと言つても過言ではないのではございませんでしようか。私といたしましては今度のストライキには反対意見を持つておりましたのでございますが、何を申しましても民主主義の現在といたしまして、原則として多数決がものを言いますので、私も家族としての立場から協力いたしましたのでございます。武装警官の出動や販購連の飯田さんが引き殺してもなどと言われたので、ピケ隊の人たちは勿論と思いますが、私たち家族といたしましては、あの日以来一握りの肥料も出すなと断然立上つたのでございます。  十三日の問題でございますが、私は朝から只今この席にいられます宮崎工場長に用件がございましたので、会社へ参りましたのでございますが、そのときすでに日通のトラツクが十台ばかり来て並んでいまして、それに家族の人たちもぞくぞくつめかけて来られますし、さうこうしていますうちに、筵旗を押立てた販購連のトラツクが十七台ばかり農民の人を満載して会社の前に着きました。それで工場長に用件どころではないので、すぐ私もピケ隊に参加いたしました。あの朝は支部長命令として、踏まれても蹴られても絶対に手出しをしてはならないと、やかましく注意され、ピケ隊の人は後向きに坐らされておつたのでございます。又私ちは家族には万一の場合は退避するようにと注意されまして、友誼団体の人たちも含めた二百名余りがピケを張つたのでございます。午前十時頃、八代の斎藤署長指揮される催涙弾や防毒面まで用意した完全武装警官が約二百名ほど出動して来られました。十一時頃だつたと思いますが、販講連のトラツクで来た一部暴力団とも思われる人たちに一生懸命に、十五日になつたら中央の指令がどうであろうかとも、単位三役の責任において出荷はするから今日は帰つてくれと説得していられる組合幹部の人を押しのけて、ピケ隊のうしろから農民の人たちは襲いかかり、打つたり蹴つたり引廻したりして大分ひどいことをしましたのです。そのときの農民の人たちはお酒を飲んでおられました。あんな暴力を振つているのに、誰も手出しはできないなんて随分ひどいと、家族の人たちはくやしがつておられました。お昼頃から警官が農民ピケ隊の間に入り、ピケ隊のほうを向いて並ばれました。私はこれはどうも様子が変だと思つておりましたところ、案の上、会談決裂後、斎藤署長命令により、警察官争議介入が開始されましたのでございます。警官のなかには暴力を振つて、足で蹴つたり首を締めたり、警棒でこずいたり引ずつたりして、相当むごいことをされた人も多数おりました。私は一番最後の列におりましたので、初めから殆んどそれをよく見ておりましたのでございます。一人の手足を四人で持つて、まだ足りないで蹴りつけて馬鹿野郎などと言う人や、引ずつてほうり投げたりしている警官のかたもいられたのです。それからずつと引ずつてつたり、又こんなふうにこずいてほうり出して、そうして大分むごいことをされた警官も中におりました。それでも若い人はまだしもですが、中でも本当に気の毒だと思いましたのは、藤本支部長のお母さんで、たしかあのときには、たき出のお手伝いをしてお握りを作つておりましたときでしたが、とんで出て来て、警官にすがりついて泣きながら、やめて下さいと頼んでおられましたのを、無情にもあのお年寄を三人もかかつて警棒でこずき廻して向うへ押して行きましたが、もうその頃はピケを張つてつた人も殆んど引きずられておらなかつたときですから、トラツクを通すために又警備のほうへ一押し返して来ました。そのときはこの席に来ておられる川口さんも押されて痛い目にあつておられました。藤本さんのお母さんはその結果、未だに医者にかかり、現在では肋膜の虞れさえあるのでございます。あのときはほかにも多数怪我人が出たことは事実でございます。ピケラインが突破されましたときは、組合員も家族も誰一人泣かないものはおりませんでした。私も生れて初めて腸のちぎれるような腹立ちを覚え、どうすることもできませんでした。  不当な警察暴力行為、又一方的な判断でなされたスト破りのために、私たちの人権がこんなにもみじめに蹂躙されてよいものでしようか。組合員や友誼団体、家族を含めて二百五十名ほどの人間がたつた八分ほどでかたづけられたのです。尤も見ていられないから無理もないとは思いますが、二十九日の行政委員会の席上で熊谷さんが植木鉢を直すようになどと言つていられるのを新聞で読みましたとき、私を初め家族の人々は全く情けなく思いました。そしてあの記事を見て、家族は誰でも腹を立てないものはおりませんでした。あのときの警察の実態を見られた町民の人たちは、殆んどが警察のやり方はあんまりひどい、こんなやり方をする警察なら、今後は決して協力はする必要がないとさえ言つていられました。私を初め、組合員は勿論家族の人々はあのとき痛切に感じましたことは、警察が時の政力によつて動かされるような気がして、全くやり切れない思いがいたしました。最初にも申上げましたが、この問題に警察介入されなかつたならば、労使の争議問題がこんな方面にまで発展せずに済んだであろうと思います。又あの十三日までに肥料の絶対必要量は僅か二十五トンであつたとあとで聞きましたときには、あきれてあいた口がふさがらず、人を馬鹿にするにもほどがあると思つて腹が立つてたまりませんでした。あの日あの出来事に遭遇されました家族の人たちは、みんな口を揃えて国会へ行つたら、この家族のくやしかつた気持警察の不当な介入をようくわかるように申上げて来てくれと頼まれましたのでございます。幸い国会で正式にこの問題を取上げて下さいました以上は、一方的でなく、皆様の公平な御判断によりまして、よろしく御批判下さいますよう、家族の一員といたしまして心からお願い申上げます次第でございます。又詳しいことは御質問の折に申上げることにいたします。
  31. 内村清次

  32. 井本則隆

    参考人(井本則隆君) 井本と申します。丁度宮本労働部長が県会開会中のため出席不可能でございまして、この事件につきまして現地に同行しておりました関係上、自分が代理として参つたわけでございます。  先ず日産鏡工場争議に対します県がとりました経過措置を簡単に申上げまして、それから十二日、十三日の実状を陳述いたしたいと思います。県といたしましては、本件争議か三月二十八日組合の無期限時間外拒否実施以来、中央の団体交渉の早期解決を願いつつ、労政行政の立場から労政課、それから八代にあります労政事務所で情報収集に当つていたわけでございます。丁度肥料の需要期を控えまして、労働組合と業者側と、特に労農の対立というふうな事態を惹起するに至りまして、なかんずく五月二日には工場側からの申請によりまして、営業妨害の仮処分の執行、大体四月二十八日に申請されまして四月三十日に決定しておりますが、これが五月二日に執行になりまして、そういうふうな事情で、更に中央団交の状況はどうしても遅延いたしまして、五月九日以来、工場の正門前では、労働組合方々ピケと、それから業者側との間に直接対峙するというような混乱が予想されたわけでございまして、法律問題或いは政治問題まで発展する虞れを生じたわけでございます。このため五月の十一日、八代の労政事務所長をして労働組合それから業者側のかたの間の調整に当らせましたのを初めとして、知事事態の悪化を憂慮いたしまして、国警並びに県購連に対しまして平和的な解決要請いたしますと共に、十二日、十三日には宮本労働部長現地に出向きまして、労使並びに業者側、農民方々の間の調整に努力したわけでございますが、遂には十三日午後二時十分、警官隊の出動を伴う強制出荷というふうな状態に至つたわけでございます。で、その後も県といたしましては、熊本県議会労働常任委員会並びに地方労働委員会と共に調整に当つたわけでございます。で、時期のたつと共に好転いたしまして、五月二十九日一応一段落を見るに至つたわけでございます。なおこの間知事は東京の本社に対しまして早期解決を要望、要請いたしますと同時に鏡工場におきますところの硫酸の過剰に伴う硫酸処置の問題につきまして、特に八代の地区の七大工場工場長会議、略しまして七工会と申しますが、この七工会等の申入れもありまして、二十五日に現地に出向いて調整の労をとつてつたというふうな状態でございます。  特に五月十二、十三日の宮本労働部長のとりました経過について陳述いたします。五月の十二日午後現地に参りまして、労使それぞれの御意向を聴取したわけでございます。で、組合の役員のかたに対しまして、肥料の需要期のために農民の要望が高まつておる、労農の対立で不測事態が発生するということは組合にとりましても不利であるということを訴えまして、双方の善処方を強く要望いたしたわけでございます。ところが組合側といたしましては、十五日には中央の団体交渉回答があるはずである、この日まで待つてもらいたい、それから組合側の調べた情報資料によれば、今明日というふうに肥料の需要が切迫しているとは思われない、若し必要とあれば、その実情を調べた資料を提示してもらいたいというふうなことで、一応肥料需要状況の資料を取揃えるために引揚げたわけでございます。丁度県労に帰りましたのが十二日の、その日の午後八時頃でございます。ところが引揚げてみますと、事態が非常に急迫しており、不測事態の発生が予想されるというふうな状態になつておることの情報をキヤツチいたしまして、これではいかんというので、再度現地に急行いたしまして、午後の九時半から組合幹部のかたと話合をしたわけでございます。部長から農民方々が非常に要望をしておられる、不測事態が発生することが予想されるから、何とか平和的に解決してくれませんですかということで要請いたしたわけでございますが、組合側といたしましては、そう言われることは結論的に言つて出荷せよというのと同様ではないだろうか。で、組合員の意思は、これは組合の大会できめたことで、我々役員を以て一存で動かすことはできない、今まで待つてもらつたから、どうか険悪な状態にならないように五月十五日の回答まで待つてもらいたい。で、若し農民のかたが本当に直接に来られて、真に肥料要望の理由がわかれば、出荷いたしますというふうなことで、結局もの別れとなつたわけでございます。五月の十三日、この農民団体のかたが豊川農協に集合されるということで、農民団体の方々の出発の前に何とかお話申上げたいということで、部長はこの豊川農協に朝早くから急行したわけでございますが、すでに団体の方々は出発をしておられまして、丁度鏡町の中央の、工場から約一キロばかりの所で追い着きまして、幹部のかたに降りて頂いて、部長から労働組合と直接対峙すると、非常に刺戟になるから、どうかその前に代表のかたを選ばれて労働組合交渉して頂けんだろうかということであつたわけですが、代表のかたからは、どうしてもこれだけ農民代表のかたがたくさん来ておられる以上、どうしてもそういうことはできない、直接工場に行つて交渉をしたいということで、この話はできなかつたわけでございます。そこで午前十時十五分頃、工場の正門前に十七台のトラツクをとめられまして、労働組合農民方々とが対峙するというような状態に至つたわけでございまして、部長は再度何とか解決したいということで、労農の話合を持ちたいということで農民代表のかた十六名、それから組合代表のかた八名で交渉斡旋に入つたわけでございますが、農民の団体の代表のかたから、阿蘇、上益城それから球磨地方から非常に農協にどうか出してもらいたいというのに対しまして、組合としてはすでに一カ月も闘争に入つておる、我々の窮状をも十分考慮して欲しいというようなことで結論を得ず、交渉は決裂しております。組合それから農民団体両方からマイクその他で応酬がありまして、険悪な状態が生じたために、十一時四十五分警察隊のかたの出動によりまして、ピケ隊の前に整列をされたわけでございます。その後組合側のほうから真の農民代表者である青年のかたと交渉したいからというふうな申出がありまして、その斡旋に入つたわけでございますが、事態が紛糾してどうしてもそれができなかつたわけでございます。その後も再三労働部長斎藤署長さんと共に数回代表方々話合を持たれたわけでございますが、結局一時三十分、三役のかたと、農民代表のかた、それから八代署長さん、労働部長が会談されたが、組合としては十五日まで待つてくれ、若し中央の交渉がどうなろうと、十五日には必ず出すということに対しまして、農民の団体の方々はどうしても今日出荷したいということで、ここにはつきり対立点が出まして、遂に交渉は決裂ということになりまして、おのおの組合のかたは組合のマイクを通じて、それから農民団体のかたからは、そのマイクを通じて、それから警察隊のかたからは、そのマイクを通じまして今までの経過報告がございまして、午後の二時十分、遂に警官隊の実力行使に基くピケ隊の排除というような状態に立ち至つたわけでございます。  以上まあ労農の衝突というふうなことを惹起いたしまして、誠に残念ではありますが、県当局といたしましては、終始平和的解決を念じつつ斡旋努力したことを申上げまして陳述を終りたいと思います。
  33. 内村清次

    委員長内村清次君) 以上で参考人からの陳述は終りました。参考人に対しまするところの質疑に入りたいと存じますが、ちよつとこの際申上げておきますが、実は国警隊長小林利吉君が、これは明日、明後日の県会に出席をしなくちやならない、こういうような公務上の事情もございます。そこで国警隊長に対しまする質問は大体今日で終りたいと存じます。委員各位方々も、これは地方行政及び労働委員方々も、その点で少し時間が遅れましても、一つ国警隊長の質疑に対しましては、今日で終了させるように御了承のほどを一つお願いしておきます。
  34. 秋山長造

    秋山長造君 私は只今参考人方々からいろいろお話を承わつたのでありまするが、先ず問題が複雑多岐に亘つておりまするので、できるだけこの委員会で取上げた本筋を外さないような方向で、関係者のかたにもう少し掘下げてお尋ねをしてみたいと思います。  先ず小林隊長にお尋ねをいたしますが、隊長もおつしやり、又はかのかたのいろいろおつしやつたところによりましても、警察のほうでこの問題はできるだけ穏便に、又労農の衝突というようなことを起さないように取計らいたいという、非常な誠意を以ておやりになつたというように承わつたのでありますが、そうでありますならば、更にもう一歩遡りまして、あれだけの長い期間に亘つた、相当こじれた争議現場に、多数の農民が新たに押しかけるというようなことは、大体もうすでに何らか不測事態を予想させておるということははつきりしておつたわけなんで、むしろいよいよ明日十三日に農民が大挙して押しかけるということは前日にわかつてつたわけなんですから、何かそういうことを事前に防止するために、警察として何か前日あたり手をお打ちにならなかつたか、そういう点を一つお尋ねしたい。  それから十三日の朝、原田総評事務局長との話合いの際に、組合側としてはもう二日待つてもらつて、十五日まで待てば、何とか穩便に資料を渡すことができるのだからという話合いがあつたときに、隊長も膝を叩いて賛成されて、そうしてそれについての協力の意思表示までなさつたやに承わるのでありますが、その話ののち、隊長は、現地斎藤署長なり或いは警察の部下に対して、何かそういう点について斡旋努力をしろとかなんとかいう連絡をなさらなかつたどうかということ。  それからそれと関連いたしまして、現地におきまして、先ほど原田局長のお話では、斎藤署長に対して十五日まで待つてもらうべく交渉斡旋をしてもらいたいということをお願いした場合に、署長はそんなことはわしの存じたことではないということで、それをはねつけたというように聞いたのでありますが、先ほど斎藤署長のお話では、やはり労組のほうからそういう斡旋の労をとつてもらいたいというお願いがあつたので、農民側に対しても、或いは販購連のほうに対しても、いろいろ折衝してみたけれども、どうにもならないままで、実力行使の段階に入つたのだというような、斎藤署長さんの説明がありましたが、この問題について原田さんなり又斎藤署長のほうから、その十五日まで待つてもらいたいという交渉の過程をもう少し具体的に詳しく述べて頂きたい。  それから当日の警察の装備の問題が先ほど問題になつておりましたが、当日の装備は、先ほど組合側の人がおつしやつたように完全武装で、催涙弾なり或いは防毒面まで携行されたとか、それが事実かどうかということ。それから又それが事実とすれば、こういう場合にそういうものまで持つて行かれた目的といいますか、理由といいますか、そういうものについて御説明を願いたい。  それから更に実力行使に当りまして相当な負傷者が出ておる、警察側の御説明では実に粛々として冷静そのもののごとく、隊長なり署長命令通り行われて、何ら不穩当はないというような極めてあつさりとした御説明だつたのですが、組合のほうのお話を承わりますと、やはり相当殴る、蹴るもあつたし、又負傷者も出ているし、又警棒は全部腰へ付けさせたと言われたけれども、警棒を以て押しまくられたということもあつたようですけれども、そういうことについて一体具体的にもう少し詳細な、事実のままの御説明を承わりたい。
  35. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 第一点に御質問になりました十二日の日に農民が相当多数動員されるが、これに対してこれを阻止する手を打つたかという点であります。この点につきましては、特に知事と緊密な連絡をとりまして、一応農民団体の動員態勢ができている以上は、警察がこれを権力的に阻止する理由も何もないが、併し私どもはできればそうしたい。労働部が入つておりましたが、すぐにもう一度派遣して頂きたい。警察警備態勢として出ますが、実力行使の段階には入らないようにもう一遍最後の斡旋をして頂きたいということで、この点は県知事並びに労働部長に直接に私が面接をいたしまして、交渉をいたしておるのであります。それならば、もう一遍行こうということで、御出発になつておるのであります。まあ本来ならば私が行けばいいけれども、最高警察責任者が、こういう場合に出るよりか、穩当な県当局が行つて頂いたほうが、両方さわりもよかろうということで、私は依頼したのであります。それがために労働部長は出掛けて行かれたのであります。  それから先ほど原田さんがお述べになりました中に、私ども十三日の午前九時の折衝の際の話は、成ほど原田さんの申された通りでありますが、農民が酒気を帯びておるということは、私は一度も酒の点については、原田さんとの話合には出ておりません。これは全然ない。それから期間が二十五日まで間に合えば、阿蘇郡地方の点は、間に合うというような点も私のそのときの話合いには出ておりません。この点何か情報の間違いじやないかと思いますが、この点は、原田さんなりとの話合いが出ましたときの十三日の午前九時の話合いの要点は、第一は、鏡の組合側も十五日になれば出す気配があるから、ここで県総評として、一つ斡旋してみたら、これの解決が付く途が通ずるかもわからんから、我々がこれから出掛けて行くが、これに対するやり方は現地指揮官と連絡してくれないか、これは最も私の望むところであります。私はこの点を眺めまして、今あなたがすぐ帰つて頂いたら十一時までには着くだろう、それまでには警察隊の行動については私が責任を持ちまして、実力行使に入らんようにいたします、だから急いで行つて下さい。それからこの農民のかたが動員されましたその経過につきましては、先ほど来も述べられました通り農民団体の方々は、九日の日に相当一部尖鋭化いたしておりまして、警察実力援助の要請も出ておりましたが、これに対しましては、私は今日の事態においては、もう一度慎重を期する上に、直ちに警察官行動させてはならないというので、斎藤署長に対しましても、今日は警察官警備態勢以外には使つてはいけないというので、警戒態勢まで解いたのであります。このとき農民団体の御意見は、大部分がもう警察頼むに足らず、現に業務妨害が行われておるんじやないか、これに対して警察が何らの取締りも加えないというのは、警察は物の役には立たないんじやないか、それならば、我々は実力で取る外にないじやないかという非常に固い決意が、その間に醸成されたのであります。それと一方、先ほど午前中に申しましたように、農民団体の役職員の交渉の際に、労組のかたが、実力を以て取りに来い、或いは手の黒い百姓も取りに来い、そうしたら肥料を渡すというような交渉をされております。それならば、百姓をつれて行つたならば、肥料を出して呉れるだろうという、この空気を我々が何ら阻止することはできない。私は他方面でその県庁の方々との折衝によりまして、円満妥決をいたしたいというので手を打つておるのであります。この点が多少先ほど原田さんが言われました酒の点と、二十五日の点と若干両方で食い違つておる。私はそうして十三日の際におきまして、農民団体の気持というものは相当尖鋭化しておつた、これは到底今日では警戒態勢のためには警察出動しなければならない、だからこの点を申上げておりますが、酒を飲んで気勢が上つておる、酒の点は全然何もない、この点は取消を願つておきたい、そういう点は、しておらない。  それから防毒面若しくは催涙ガスという問題でありますが、実は私は応援いたします折には、防毒面は持たしておらないと考えております。それから催涙ガスも現場に持つて行くようなことは、恐らく工場内の出動隊には携帯させておらないと、私はそういうふうに考えておりますが、実は各署から応援が出ておりますので、各部隊を具さに自分自身で指揮をいたしておりませんので、この点は現場におりました者並びにその他の者から申上げなければならんので、私はこのときにはそういう催涙ガスとか防毒面とかを携帯せよという命令は出しておりません。又むしろ軽微な弾丸の装填を用意しなければならん意味のある弾まで抜かしておるのでありますから、そういう事態に防毒面まで持つてつたというのはちよつと考えられないんでありますが、併しこれは平素そういう隊員がその各署各署に配置しておりますので、私は全部見ておりませんから、これは一応調査をして見なければ、又はあとで現場におつた者に聞かなければ確答はできませんが、恐らく防毒面までは持つておらないんじやないだろうかというふうに考えております。  それから負傷者の点でありますが、実は私十三日の事件が終結した際に、非常にスムースに、殊に労働組合方々も非常に素直なピケラインの解き方であつた。負傷者の点については、十三日には何ら聞いておらなかつたのでありますが、翌日の或る一部の新聞紙で、越えて十四日の新聞紙の一部に負傷者が十五名ほど出た、軽傷者十五名ほど出たという記事を見まして、早速所轄の斎藤署長に、負傷者の点が新聞に出ておるが、この点は報告がなかつたがどうだということを確めましたところが、署長は、私のほうも聞いておりませんが、私は現認しておりませんが、一応よく調査をいたしますと言つて署長は打切りまして、あとで労組工場関係者のほうと打合せましたところが、診療所のほうで、二十五名ほど診断を受けておられるということを聞きまして、これはどういう事態で負傷が出たんだろうというふうに私は疑問に思つてつたのでありますが、私はそういう負傷者が出たということは、十四日の午後三時になりまして、実は初めてそういうことが労働組合のほうで準備されておるということを拝聴したのでありまして、この負傷者の出たということの原因につきましては、私が現場におらないのですから、恐らく現地署長から説明さしたほうがよくわかるだろう、この点現地署長から説明させます。  それから藤本さんとの連絡を現地指揮官に連絡したかという点であります。この点はまあ御承知の今超短波を利用しておりますので、大体この発信の当日のやつを控えておるのでございますが、原田事務局長が十二時二十分頃ハイヤーで出発した、それは社会党の県連事務局から通報がありましたので、このことを直ちに署長に注意いたしております。署長もこの点は、総評原田事務局長と坂本前代議士が行かれるが、肥料が出されるということが十五日までに話合がつけば、その線で話合をするように、斡旋努力するようにということは、現実に署長もこの私の伝達は受け継いでおるのでございます。私は即時その伝達はやつておるのであります。この点はただ若干原田さんの御到着の余りに遅きになつてしまつたために、十分な折衝ができなかつたのじやないかというふうに私はあとで考えてみたのであります。連絡は十分にやつてあります。やつておりますが、この点は誤解のないように。
  36. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 平和的に解決するためにどういう斡旋をやつたかというようなことを、さつき私は一応申上げましたが、改めて申上げたいと思います。  警察は大体十三日は零時半頃から一時五十分近くまでだつたと思いますが、その間におきまして組合とそれから農民代表と交互に会いまして、この斡旋に努めたわけであります。最初組合側に会いまして、先にも申上げましたが、組合側は飽くまでもこの肥料は出さないのか、飽くまでこれを阻止するかということを聞いたわけであります。ところが組合では先にもお話がありましたように、十五日という日がそこに出たわけでありまして、十五日まで待つてもらえば出そうというようなことだつたわけで、それで又そのときに、実は先刻も農民と会つたが、あれは真の農民ではなかつた自分たちよりも手の華著というか、白いような手の者であり、本当農民でなかつたというようなことでありましたので、直ちに私のほうの係を通じてそういうものを出してもらいたいというような交渉をやらせたわけであります。この間に工場側ともちよつと会いまして、成行きを聞いたのであります。そうこうするうちに、農民も私のほうの求めに応じまして、真の農民と称する人が来たわけであります。それは又名前も聞きましたが、自分で百姓をやつておられる人であつたそうでありますが、この人が来ましたので、私はその組合の意思を伝えまして、そういうふうに組合のほうでも三役の責任で、十五日まで待つてつてもらえれば出すというようなことだから、これは待てないのかということを言うたわけであります。ところが農民側では我々は十五日からは田植が始まるから要るのだ、待てない、十五日までは待てない。併し三役のほうから説明があつて、十五日からあとに出すという確約ができれば、今日はまあ荷造りした分だけでももらつて行こう。ところがもう組合のほうではやれんから十五日以後にあとの分はやるということになつたわけであります。それから私が又農民の人に、まあそう言うけれども、もう一回打合せてくれんか、そんなに切迫しておるならば、その切迫しておるのはどのくらいの、どういう所がどんな工合に切迫しておるのか、そういうことも打合せて、とに角そういう人も納得させるように折衝してくれ、あと二日のことじやないかというようなことを言いまして、一応帰つたわけであります。ところがその折衝の結果、又農民の人はもう待てん、我々は待てんからこそ取りに来たのである。で、とに角何回も繰返すようだが、今日荷造りした分だけでもくれたら、あとは待つということの繰返しであります。それで私は又あなたがたは遠方からわざわざトラツクを連ねてやつて来て、そのまま空車で村に帰つて行くというようなことでは、ほかの農民に対しても面子がないというようなことで、そういう面子問題を考えているようなことはないか。そういうことはない、そういうことで我々は来ておるのじやない、せつぱ詰つたからこそ、こうやつて取りに来たんである、そういう状態にあるから二日なんか待てない、絶対今日はもらわなければ困るというようなことになつたわけであります。で、もうこれは頑強に否定されましたので、又組合の三役のかたに会いまして、農民のほうはかくかくこういう事情でもう待てないという、で、あなたがたのほうでもまあ総合計画もあつてつらいだろうが、もう一遍僅かでも出すようなことはできないかということを言いましたけれども組合のほうは十五日以降に出しますと言いましたので、三役の責任においても出すけれども、今日は駄目だ、十五日がぎりぎりだということで、とにかく拒絶することになつたわけであります。その場合、農民代表の人は私たちの話合いの会場に来られて、入口の所から未だ組合から回答はないかというようなことで、催促に二回ほど来られたわけであります。もうそういうふうに決裂いたしましたので、出る所で待つておられましたから、実はこういうわけで今日は出せん、十五日まで待つてもらわなければならんというようなことだつたと言いますと、よしどうしても止むを得ん、この際署長は、警察は引込んでくれ、我々が、もうこうなつたら止むを得んから我々自身でもらつて行く、あなたがたに頼まない、警察が処置してくれん以上は我我で取つて、我々は犠牲者を出しても、懲役に行つても構わん、俺たちでやるというようなことで走り出したわけであります。それで私が、待て、君たちはこういうことで暴動に出てくれては、警察官がこれだけ出て来て、そういう事態を惹起しては警察は何にもならんということで、私は待たせまして、もう最後の勧告をし、この事態になつたならば、警察は本来の取締りに当らなければならんというようなことで出かけるときに、丁度原田さんに入口で会つたわけであります。ところがそのときには御存じの通り、先ほど申上げましたが、非常に両方からマイクで今までの交渉経過を言いまして、組合のほうでは、こういうことで出せないと回答したという話がありましたし、農民のほうでは、今まで折衝してもらつたけれども、今日は出さんそうだというようなことで、いわゆる一触即発というような状態になりましたので、止むを得ず原田さんとの交渉もまとまらずして、結局こういう段階に入つたわけであります。  それでこれは隊長から今も出ましたところの防毒面それから催涙ガスの問題でありますが、私が部隊の編成配置ということをやります場合に、警部補の、これは小隊長でありますが、私は大体ガスの係りである、ガスのほうはどうするか、実はその前九日にも、これは事態がどういう事態か知りませんから、一部では鏡の派出所まで持つて来たのは事実であります。これは鏡の派出所の拳銃を入れますところの金庫の中に収めさせまして、九日の日は持つて行かなかつた。ところが十三日にもその話が出ましたから、私がガスなどは、さつきも言いましたように、この組合の性格というようなものが、そう暴動的な組合ではないのでありましたので、そういうものは要らん、若しそういうものを使わなければならんときには、私が直接命令して指揮するので、それまでガスは要らんということを言いましたので、私の命令通りに実はやつたと思つておりますので、現場には持つていないはずであります。防毒面というようなお話もありますが、いろいろ鞄などは、これは出動の準備といたしましては、いつも持つておりますところの弁当の一食分或いは救急品というものを入れております。そういう鞄を御覧になつて防毒面を持つておるのじやないかというように御解釈になつたのじやないかというふうに私は考えます。  それから実力行使の場合の負傷者の問題でありますが、これも先に隊長が言われましたように、私はそのとき実力行使をやつた直後おりましたところが、組合のほうでもマイクを通じて、大きな声でやつておりました。負傷者があつたならば、どんな小さいものでも医務室のほうにお集まりなさいというようなことでした。私たちは、こんなにおとなしくやつておるから負傷者は出ないだろうというような確信を持つてつたわけであります。ところが翌日の新聞を見ましたところ、負傷者が十五名ですか、書いてあつたわけであります。それでこれは負傷者があつたということで、一応工場のほうに係に連絡させまして、そうして診断書の写しみたいなものを、名前と負傷の程度というようなものを書いたものを一応もらつて来た。それで私たちがやりましたことはあつさり書いてありましたが、これは非常に静粛にするというと語弊があると思いますけれども、穩かにこれはやりまして、丁度その翌々日に八代の地区労連の代表者のかたが、私のところにいろいろ質問に来られたわけであります。その場合、新聞記者の人が、取材の意味でうしろのほうで聞いておられましたが、この人たちが引揚げられたあとに、ああいう抗議はおかしいな、或る一つのこれは大きい新聞でありましたけれども、その新聞社の人が、私はどうも新聞社の人たちは公正なる報道を使命とする人たちでありますので、私はこの人たちの言は信用していいと思いますが、私も又その確信を持つてつたのでありますが、昨日のでは、ああいう抗議を受けるような行動でもなかつた、自分は実は新聞のニユース・バリユウの点から写真をとろうと思つて、何か警察官が警棒を振り上げたり或いは足で蹴つたり手で毆つたりするというところを一つキヤツチしようと思つて、余ほど注意しておつたけれども、到頭なかつた、それで止むを得ずに組合員が抱えられて、警察官に抱えられて足を上げておるところをとつた。それから一人の人が、そうだ、そうだ、私も新聞の記事として成るべく読者の目を惹くように書きたかつたけれども、何もそういうような事態がなかつたから、結局手をとり足をとつて抱えたというような、ありのままの記事を書いたということを言つておられたわけであります。それで私も勿論そういう負傷者を出すようなことは、そういう暴力的な行為には出なかつたということを、私ははつきり見ておるわけであります。警棒その他の問題で、ついたとか毆つたとかおつしやいましたけれども、警棒は、向うのほうの外部からの闖入者を防ぐために立つてつた連中は、勿論警棒を握つております。これは最後まで一歩も動いておりません。これは、ピケ隊のほうには背を向けまして、外部からの闖入者があつて、事故を起すと困りますので、あすこに二列くらい配置しまして、あと全員警棒をおさえまして、最後までやつておりません。而も、帽子なんかを落したような人は帽子をかぶせてやつてつたというようなことでやつてつたわけであります。これはもう皆さんもおつしやつておりましだが、たくさんの人が見ております。たくさんの人が見ておるし、私は、晩じやないので、白昼やつて、何千の人が見ておるのでありますから、私たちは確信を持つて言えると思ます。
  37. 原田英男

    参考人原田英男君) 小林国警隊長の話でありますが、これは私は小林隊長から一応警察の得た情報としてあるということで聞いております。従つて、これはここで、言つた、言わんといつてみてもどうにもならんと思いますが、今日はあの前代議士の坂本泰良先生もお見えかと思つておりますが、同席願つたので、お聞き願つたらはつきりするかと思います。  それから、具体的に斎藤署長折衝した経過を知らしてくれというお話です。先ず、国警の正門からすぐハイヤーで現地へ飛ばしております。そうして、現地に着きまして、早速斎藤署長に面接を求めたわけでありますが、今斎藤署長のお話では、組合と業者がマイクで交渉経過の発表やなんかやつてつた、そのときだというようなお話がありましたが、事実はそれ以前であります。現に、ここに見えております藤本支部長もまだ会社の中で交渉を続けておつたときであります。従つて、私は藤本支部長にも、交渉の場に行きまして、今小林隊長とこういうことを話して来た、組合としても十分その点考慮して、何とか話がまとまるように努力してもらいたい、こういうことをいつております。その場でも斎藤署長にお会いしたのですが、私たちの申入れたことが受入れられなかつたわけです。それで、その後に再三お会いしております。最後にお会いしたのは、鏡工場の正門の守衛のおります場所の正面であります。ここで西島、志賀両副議長と三人で面接をしております。そのとき斎藤署長は、じや君らが全責任を負うかというような反問があつたわけです。併し、私たちは争議の当事者ではありません、飽くまで友誼団体として支援をしておりますので、責任を負えると思つても、そこまで公式にそれじや自分達が責任を負いますということは言明できない立場にあつたわけであります。で、そういう反問の仕方では困ると、何とか最後の努力をさしてもらいたいということをいつたわけでありますが、斎藤署長は、おれの肚はきまつたというようなことをいつて命令を出されたわけであります。  それから、これは聞かれた以外のことになるかと思いますが、負傷者の件であります。これは合化労連の本部におります奥山執行委員が頭に瘤をでかしております。これは、手で毆つたりして瘤ができるとは思つておりません。それから、ここに見えております川口さんも、手の甲を腫れ上るほど叩かれております。こういうのも、警棒を腰に下げておつたのじやそういう傷はできないと思います。この点ものちほどお聞きになつて頂けばよくわかると思います。  それから、参考書類の中に、現地におつた組合員、或いは家族の証明書も多数つけられておると思いますので、その点御覧頂ければと思います。  それから、小林隊長が自分らと約束された指示を与えられたというようなお話でありますが、現地で私が折衝いたしました限り、斎藤隊長はそういう話は聞いていないということを言つておられます。私にそう言われただけでなしに、午後七時過ぎに鏡の警察斎藤署長に面会を求めて、県総評から自分と西島、志賀の五名が参つたわけでありますが、会議中で会えないということでありましたので、止むなく引返して帰つてつたわけであります。丁度そのとき、熊本市の社会党の支部長の佐々木さんがお見えになつて、お年寄のかたですが、わざわざ鏡までお見えになつた。心配して来られたわけです。そして、このかたも小林隊長と会つたので、是非斎藤署長に会いたいということを申入れたのですが、会えないというような御返事であつたのです。それで佐々木さんは、今晩一晩でも待ちたいが、それでも会えないかどうかということをおつしやつたのですが、それはわからないというやうな返事であつたので、最後に佐々木さんは、それじや小林隊長からの指令、指示は受取らなかつたかどうかということを念を押されたわけです。そのときのお返事は、聞いていないということを言われております。  それからガスマスクの件でありますが、これは、現地に行つてつた人たちは大体見ておると思います。全部の人ではありませんが、かたげておりました。これは熊本労組の古閑静夫という人ですが、その人が警官のわきに来まして、そのガスマスクは何のために持つて来たかというような質問もしております。現実に鞄を掴まえて、これは何で持つて来たかというようなことまで質問をしております。以上を以て終ります。
  38. 秋山長造

    秋山長造君 なお重ねてお尋ねいたしますが、隊長は、十二日に、先ず警察が出かけるよりも、知事なり、労働部長なりにお願いしてということで、知事なり労働部長にお話をなさつたようでありますが、その結果、知事なり労働部長が話をされまして、その結果どういう話になつたかということは、その日のうちに御確認になつたのですか。
  39. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 聞いております。
  40. 秋山長造

    秋山長造君 それからその御確認になつた内容をちよつとお願いしたい。それからもう一つは、十三日に、朝大体購販連で動員をかけられた農民の方方が豊川ですか、豊川という町に集結された、そこからトラック二十何台に分乗されて、現地へ向つたようですが、そのときに、現地警察のほうから、その農民の集結状況なり、或いはそれがトラックに満載して出て行くときに、いずれ許可の申請か何かあるだろうと思いますが、そういうことについて、これを許可していいものかどうかというような問合せなり報告が、現地警察から警察隊長の下に来たかどうかということをお聞きしたい。  それから、今ちよつと原田事務局長からも話が出ておりましたが、先ほど私の質問いたしましたに対しまして、小林隊長は、十五日まで待つて何とか円満に話を収めるように現地斡旋の労をとれということを、現地斎藤署長に直ぐお話をした、こういうお話だつたのですが、先ほど署長からのお話では、そういうことはどうも署長はなかつたような御返答なんです。それから又原田事務局長から署長へその件について話した際にも、そんなことは私は聞いておらんというようなお話だつたように承わるのでありますが、そこらの点はどちらが事実なのか、もう一度斎藤署長にお願いします。  それから催涙ガス或いは防毒面を持つてつたとか持つておらなかつたとかということにつきまして、片一方原田事務局長なり、又そこに見えておる土田さんですか、女のかたのおつしやるところによりますと、はつきり防毒面なり催涙ガスを持つていたということを現に眼で見ている、それについて何するのだという質問までしている、だからやはり我々としては持つていたんじやないかという感じを持たざるを得ない。それに対して、持つておらないという御意見なんですけれども隊長のほうも、一々隊員の装備を検査したわけでないから、まあ持つておらなかつただろうということになるわけなんですね。それから、斎藤署長のほうも、自分の眼では見ておらんから持つておらかつたはずだというような、大分あいまいな話になるのですが、そこでお尋ねいたしたいのは、警察警備出動なんかの場合に、催涙ガスなり防毒面なりは、特に命令があつてつて出るのでしようか、それとも特に持つてはならんという命令がない場合には、常識として持つて行くことになつておるのでしようか、そういう点をちよつとお尋ねして見たい。  それから負傷者の問題ですが、負傷者につきましても、負傷者の問題は、ここではこの場合相当これは中心になる問題だと思うのですけれども、その点は、どうも全く警察側とそれから組合側とのお言葉が真反対になり、警察側のほうでは至極物静かに、穩かにやつたとおつしやるのですけれども、現に、二十何名の負傷者というのは、これははつきり診断書がついて出ておるわけですから、これは間違いないだろう、医者か嘘を言わない限り。ということになりますと、やはりこれはどうも警察のほうで全然それを否定されるということもちよつとおかしいのではないかと思うのですがね。そういう点についてもう一歩立ち入つて、事実をありのままにお話し願いたい。  それからもう一つは、ちよつと又元に帰るのでありますが、この前の本委員会の証人喚問のときに、本日も見えておりますが、斎藤国警長官のお話では、やはり仮処分の執行と、そのため警察実力行使に出たんじやないかというようなお話が相当出ておつた。ところが、本日ここに配付された資料を見ますと、国警の布告文なり或いは八代署長の伝単なりを見ましても、仮処分云々ということは何も書いてない。この場合に、裁判所が立札を立てた仮処分、あの仮処分の問題と、それからこの十三日の警察実力行使、これはどういう関係になつておるのでしようか、或いはどういうふうに考えられておるのでしようか、そういう点、以上お答えを願いたいと思います。
  41. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 今の防毒面の問題、それから催涙ガスの問題は、原則としてこれは責任指揮者命令がなければ携帯して出ないというのが原則であります。そういうものを持つて出る場合は、必ず現地指揮官若しくは最高責任者の特別命令がなければ普通は携帯して出ないのが原則になつております。当日の十三日にはこういう命令は出しておりませんのでありまして、通常の制服の武装、武装というのはおかしいのですが、通常の制服のままで動員をかけておりますが、恐らくそういう特殊のものは出しておらないのじやないか。私はそういう命令を出しておらない、又現地斎藤署長も出していない。だから、特別の命令がなければこういうものは持つて行かない、そういうことになつておりますが、その点は一応よく調査してみなければ、斎藤署長も千二百名の隊員を全部見るわけに行きませんので、或いは持つてつたものが、そのまま持つて出たかも知れませんが、その点は調査いたしておりませんから、その点は、はつきり私どものほうで調査いたしまして、一応後刻回答をいたすことにいたします。当日の隊員なり現地の分隊長、小隊長から調べればよくわかるだろうと思います。恐らく、当日といたしましては、斎藤署長も全部点検をやつておるいとまもございませんし、又全般的の隊員を見ておるというようなことにも行きますまいと思いますから、その点はよく調査をいたしまして、果して何名くらい持つてつた事実がある、なければないということに、恐らく労組のほうで確かめておられるのですから、これは或る程度持つてつたのじやないかという疑念も私は持つのでありますけれども、確答を以て私が申上げるわけに行きません。これは調査をいたしまして後ほど御報告申上げます。  それからもう一点、今の問題でございますが、仮処分があつたから出た云云という長官の申された法律的解釈でありますが、現地の私ども法律解釈といたしましては、当日におけるピケ行動は、やはり業務妨害罪に該当するピケラインだという解釈をいたしております。仮処分の内容如何にかかわらず、そういうふうに私ども現地といたしましては解釈しております。併し、十三日の日の警察の真の動員目的は、あれだけ急迫いたしましたる空気の中におきまして、そうして、労働者方々にも或いは又農民方々にも流血の惨を見ることなく、最小限度事態を収拾せしめたい、収拾する策はどうすればいいかということは、当日の我々最高責任者といたしましては、心血を注いで一番苦心をした点であります。併し、これはその現場指揮官としましても、その当時の情勢判断というものは、神仏でない限りは、やはりその若手の時期、方法、手段というものにつきましては、最善を尽したと言いましても、第三者から見れば、或いはまだ十分でなかつたというような非難はあとでは受けられると思うのでありますが、私どもといたしましては、午後の二時八分までぎりぎりの線まで農民団体の方々から、警察はのけい、頼むに足らずというような空気の中にありながら、よく堅忍自重いたしまして、そうして我々は、最小限度の、私どもが違法なりと認められておるところのピケラインの一部だけを排除して、この事態の収拾をはかつたということは、やはりこれは警察といたしましては、それ以上の、当時の情勢としては、他に手段がなかつたと、私自身もそう考えておりますし、又現場指揮官としては、尚更深刻な責任感を以てこれに対処したことだろうと考えておるのであります。今おつしやいました仮処分云々の問題は法律的問題になりますので、恐らく私どもは仮処分があつてもなかつても、鏡工場ピケラインの、いわゆる五月八日以後から通常の業務で運搬をしに行かれるトラツクに対してピケラインを張りまして、赤旗を立て、インターを歌つて気勢を挙げられましたピケラインというものは、やはりこれは労働争議の範疇を逸脱したやはり業務妨害になる、こういう見解の下に私は対処いたしたのであります。
  42. 秋山長造

    秋山長造君 それからもう一つ、初めに今の知事なり、部長なりからの問題。
  43. 小林利吉

    参考人小林利吉君) その晩に直ぐに十二日の日に、又労働部長に行つて頂きまして、そうして、十三日の午前二時頃だつたと思います。ちよつと帰つて来られまして、どうしてもやはり斡旋の効は奏せない、もうこうなればやむを得ない、警察が真に双方を妥協さして頂くか、又警察の考えておられるところのやはり実力行使をやられてもやむを得ないでつしやろ、我々県当局としての斡旋ではやむを得ないということを労働部長は、私は隊長室に頑張つておりまして、そこへ帰つて来て報告を聞いたのであります。それはもう十三日の午前二時頃になつております。
  44. 秋山長造

    秋山長造君 それからもう一つ、豊川に集結した……。
  45. 小林利吉

    参考人小林利吉君) トラツクの問題でございますか。トラツクの問題は、豊川に集結いたしました場合の現地の……私はこういう動員の下に貨物自動車を乗用車に利用するということについては許可を与えないということになつておるのでありますが、あの自動車道路交通取締法によりますると、御承知のごとく荷捌きに必要なる人夫というものは許可の対象になつておらないのであります。それで、まあ通常交通上の危害があるという場合には、警察官が終始注意警告というものを与えるわけでありますが、当日豊川村から鏡工場までどういう経路であの事態に持つて行かれたかということは、私は原因を知つておらないのでありますが、併し、その場合に私は所轄署長に、松橋という豊川村の所轄署長に私が直接電話をかけて伝えましたことは、ともかく農民が莚旗を立ててみたり、白手拭で鉢巻して気勢を上げるような行為、又は余り自動車にたくさんの人を乗せて、そうして事故を起すようなことのないように、これは一つ秩序ある行動によつてやはり終始してもらいたいということを一応警告をしてもらいたいということは、所轄署長を通じまして警告をいたしておるのであります。当時許可の問題は起つておらなかつたのであります。私のところへはそういう伺いは現地署長からは何も来ておりません。
  46. 藤本信義

    参考人藤本信義君) ガスの問題については、私がこの目で自動車から二人の警官が下しておるのを実際見ております。箱を下しておるのを見たのです。それから、マスクについては組合員の殆んどの人たちが見ておりますし、これは必要性があれば全部そういう人たちの証拠を取つてもよろしいと思うのです。  それから、警棒で打つたかどうかという問題については、これは合成化学の奥山執行委員が頭部を警棒で打たれた。そいつに対しては医者が、私、医者に質したのですが、これは警棒で打つた形跡があるということを医者がはつきり申上げております。  それから、自動車農民の人たちが多数乗つておられたという事実に対しては、写真等で御覧の通りです。又強行突破されてトラツクが出て行く際には、本当農民の人たちであるならば、家族の人や組合員の人たちが泣いて見ている、そういう人たちに唾をかけ、又馬鹿野郎、万歳というようなことを言つて、先頭の自動車には日の丸の旗を立てて出ておる。何のために日の丸の旗を立てて出たか。又その中に元菊旗同志会の党員であつた人が事実おつたという、こういう問題等も一応はつきり申上げておきたいと思います。
  47. 秋山長造

    秋山長造君 委員長、まだ斎藤署長に尋ねている問題があるのです。
  48. 内村清次

    委員長内村清次君) 答弁していませんか。
  49. 秋山長造

    秋山長造君 まだ済んでいない。
  50. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 原田事務局長から何回も私と面談したいという申込みがあつたそうですが、私はそういうことを受けた記憶はないのであります。最後にいよいよ事態が一触即発の状態で、これはいけないというときになりまして来られたわけです。その前に隊長から私に連絡はあつております。原田事務局長と坂本泰良氏とおいでになると、それで、私のほうではいつまでも事態を急迫のままおかれませんから、又無電で、もう立たれたのか、いつ来られるかということを聞き合せたわけです。ところが、原田事務局長は立たれた、坂本泰良氏はわからないということであつたのであります。佐々木信道さんですか、あのかたのことは私は連絡受けておりません。で、まあ面会に来られましたけれども、私たちは直接執行のあと始末、又あとの警備態勢、本部への報告というようなことで、幹部だけ集まりまして打合せておつたわけであります。で、今会えんということをお答えしましたところ、まだあとどのくらいかかるだろうかということで、ちよつと今のところわからないということを言つたところが、帰つて行かれたそうであります。  それから負傷者の問題でありますが、私たちは一切負傷者の出るようなことはやつた覚えはなし、又見てもおりませんが、なぜそれでは負傷者がそう出たかというような御疑問があると思いますが、これは私たちが、まあこれは考えが当るかどうか知りませんけれども、やるのを見ておりまして、警察官が排除のために抱えますと足をばたばたやりまして、からみ合うわけであります。それを抱えて行きますと途中で振りほどいて落ちるような人もおつたようであります。下してここへおれと言いますとそのままほつとしたような恰好ですぐ傍に行くわけであります。これは我々が全員を逮捕して自動車へ積んで警察に留置するというようなふうに危惧しておられたのだなあというふうに考えたわけであります。たつた五メートルか十メートルほかへ直すならば、あんなにばたばたとやられなかつたのじやないかというふうに考えるわけであります。又あの診断書を見ましたが、あのとき富家という人が来ておられましたが、このかたはピケ隊に入つておられなかつたのであります。川のほうにおつて盛んに声援を送つておられましたが、ピケが排除されまして、トラツクが入りかけましたが、その三輌車が入るときに側面から飛び出して来られまして、自分でトラツクの前に仰むけに転がり込んで来られました。これはもう新聞記事にも出ておりますが、それでそのとき警察官が抱え込んで横のほうにやつたけれども一週間の治療日数を要する負傷をしておる。あの場合に、あの人は自分で怪我をしたのだろうというふうに感じたわけであります。又女の人が二人ほど今度は荷を積んで出るとき滑り込んで来られたかたがあります。その人も警察官が三人来られて連れ出しております。その場合に怪我をした人もおられるが、警察官は絶対に負傷させるようなことはしないというふうに私は断言して憚からんのであります。又この問題につきましては、ここにおられまするところの藤本委員長、それから総評の議長代理でございます西島さんのほうから、私を熊本地検のほうに傷害罪、或いはその他職権濫用、凌辱というようなことで告訴になつておられます。で、これはもう当然私ははつきりそういうことはないと断言して憚らないのでありますけれども、これは公正な司直の手で私たちが傷害を与えたかどうかということははつきりすると思います。私たちは絶対にそういうことをやつていないということだけを、ここでお答えを申上げて置きます。
  51. 内村清次

    委員長内村清次君) 国警隊長、催涙弾の問題が先ほどから出ておりますが、ここに写真がありますね、防毒マスク、これを一つ鑑定をやつて下さい。
  52. 土田玉枝

    参考人土田玉枝君) 只今斎藤さんがおつしやいましたが、斎藤さんは御自分の眼で見られなかつたかも知れませんけれども警察官の中には相当に暴力を振われまして、警棒で叩かれて、現にここに来ておられます川口さんは手の甲を叩かれて紫色に膨れ上つているのです。荷を積んで出られるときとおつしやつたのは、それはピケ隊を排除したときのことなんでありまして、藤本さんのお母さんもこうして三人で抑えて酷いめに会うておられたということを私は実際に見ております。それから馬鹿野郎と言つて蹴りつけて、足と手を四人で抱え込んで、馬鹿野郎と言つて、左足でしたか、革靴で蹴りつけておられる警官もおりました。それから中には組合員の白いシヤツの上に泥靴の跡の着いているのもありました。斎藤さんは実際に見られないかも知れないが、御覧にならなくても、部下にはそうした人が実際にあるのでございます。
  53. 加瀬完

    加瀬完君 経過の全体を伺いまして、警察が公平に、又円満解決努力しようとした誠意を認めるにやぶさかではありません。又農家の方々肥料を欲する気持、又その意見も正しいと思います。併し警察がこの気持をそのまま受けて、国民の多数が要望することは当然合理性があると認める思想は理解できません。これは曾つての国家総動員法にも通ずる恐るべき思想であるというふうに私は解釈するのであります。国民は個人であろうとも、法の前には平等に保護されなければならないと思いますので、特に最後の五月十三日のピケの除去についての行動は、法解釈の警察側の不用意或いは不鮮明の点、労働争議介入の点、警察権発動の点、これにつきまして、将来の警察行政上、このことが前例となることは非常に恐ろしいことでありますので、明確を期したいと思いますので伺います。  この前の委員会の国警側の説明、本日の国警側の説明の前後を総合いたしますと、仮処分の決定がありましたので、業務妨害が当然成立するので、この除去に実力行使をしたというふうに受取れるのであります。そこで法解釈の問題でありますが、第一に仮処分の性格について、仮処分は民事紛争に対しての行われる手段でありますので、法律上の仮の地位の設定だと私たちは考えます。今度の場合でも、熊本地裁では一方的に決定をいたしておりまするが、これが緊急の場合というふうに認められるかという問題があると思います。又事件の内容を審議しないで、形式的可能の故を以て合法だと考えておりますけれども、これには多くの問題があるのじやないかと思いますが、こういう場合に判例検討がどういうふうになされたかということを考えますと、富山の地裁におきましても、東京の地裁におきましても、有名な三越の争議の場合におきましても、ピケは判例では業務妨害とはなつておらない。又こういう仮処分というものに対しては地裁が決定を下しておらないという程度が判例の示しておるところじやないかと思う。こういうのにこういう仮処分の性格というものを警察側はどういうふうに解釈をして、これを楯にとつて法的行動の裏付行為としての実力行使に移つたかということが問題になると思うのであります。  又この仮処分の内容を、二番目に見ますると、組合や申請人会社が、八代郡鏡町所在鏡工場より化学肥料搬出する行為を妨げてはならないと主文にあります。そういたしますと、売渡行為を指してはおりません。商品は会社の所有と認めております。搬出する当事者は日産化学株式会社でありまして、販購連でもその他の業者でもありません。そういたしますと、この仮処分の搬出は会社側が受取りに来た場合にのみ仮処分に対する問題が生ずるのでありまして、所有権のない販購連が取りに来たと言つても、この業務妨害が成立するかどうかという新らしい問題が生れるのではないかと思うのであります。  そこで第三番目に業務妨害の問題でありますが、業務妨害の前提になりますのは、当然業務行為だと思いますが、工場長の御説明にもありましたように、この会社は肥料の製造及び販売であろうと思いますが、この販売は小売販売ではなくて、卸売或いは大量出荷の形で販売が行われておつたわけであります。そこでこの慣行を無視して、農民が大多数引取りに参りました。この行為を業務行為とどうして認められるかという問題があります。又仮に所有権が販購連なり農民側にあつたといたしましても、なぜそれならば警察はその販購連なり債権者なりに法律的な正当な手続を踏んで請求するようにしなかつたかという問題があります。又この場合に警察が群集的に集まりました者に、如何なる観点から正しい会社の代理者であるとか、或いはこの肥料の債権者であるとか、所有者であるという認定をしたかという点であります。こう考えますると、言葉をそのまま許して頂くならば、暴力的強要までして肥料受取をさせる法的根拠というものを私は解釈するのに苦しむ。この点如何なる法的解釈によつて業務妨害、或いは仮処分が有効であるという決定をしたかという点を明らかに言つてもらいたいと思います。  その次に、以上の疑点は当然警察実力行使についての質問となるのでありまするが、警察隊長の布告文、八代署長の伝単の内容を見まするときに、出荷妨害業務妨害であるという見方、不法行為を防ぐには、搬出人側の整理をしなければならないのに、これに一向触れておらないという点、逮捕などという強権を簡単に振廻しているけれども、如何なる打合せと如何なる指示を受けて、こういう布告文を出したかという点、又警察署長が法律上の請求行為を少しでも販購連なり農民側などに勧めませんで、群集を以て押寄せて来たものをこれを当然の債権者のごとく扱い、これを当然の業務行為のように認めているというのは通常の観念では理解に苦しむ。如何なる法的根拠でこの押寄せて参りました全部の者を、所有権があるし、債権者であるし、或いは業務行為の当然の執行者だ、当事者だと認定したかという点。又債権者でないとするならば、この債権者でない、所有権を持たない者の群集行動というものに対して、なぜこれを許容したか、その点。  更に今度の警察行動というものは、経済的権利の保護に終始したようでありますが、法律の解釈上、基本的人権の擁護と経済的権利の保護とのどういう差異を考えなければならないか。労働争議権は労働者の生きる基本的人権の問題でありますので、生命の保障は財産の保障以上、道義的にも法律的にも高い次元にあると私どもは常識的に解釈をいたすのであります。その高い次元のものが低い次元のものにとつて代られることを建前とする警察行政であるということであつては寒心に堪えませんので、その点を明確に伺いたいと思います。
  54. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 仮処分の内容の関係につきましては、私どもとしては仮処分的な問題につきましては余り法律的知識を持つておりません。この点については私は最初から申上げております通り警察といたしましては、仮処分によりまして違法行為が、業務上の妨害を成立した云々と現地では解釈いたしておりません。その点御了承願いたいと思うのであります。  それならばなぜ君らは……、単に全販連、それから全購連というものが債権者ではないではないか、又契約で所有権のないものが取りに来たものを業務妨害ということになぜ認定をしたかという問題だろうと思うのです。この点につきましては御承知通りに有佐支店というものは、その自家渡しの契約に基きました直接の肥料を、毎月三千トン内外を以て工場へ取りに行つて輸送をしておつたように、私ども調査の上では聞いておるのであります。これが全然ストの対象外の、いわゆるスト権確立以前の契約でありまして、それが有佐支店においては毎日二台なり、三台なり、四台なりの輸送運搬行為の業務行為を受けて鏡工場へ取りに来ておつた、これが労働争議の結果のピケラインによりましてこの業務までが停止された、ピケラインによつて阻止されたということが私は第三者の業務妨害が成立するのじやないかという点を、私どもはそういうふうに解釈いたしまして、これは法律の見解であつて、いろいろ皆さんの有利な御意見もあるだろうかと思いますが、現地の私どもといたしましては、こういう点からいたしましても、業務妨害が成立しておるというふうに解釈をいたしたのであります。  それからまあ不法行為、いわゆる第三点の御質問の中心点であります全購連なり、全販連なんというものはないじやないか、まだ自分の所有権に移つておらないじやないか、それなのに警察がこれに対して業務行為ということを認定した法の根拠はどこにあるかというような御要点だと思うのであります。これについて私の見解といたしましては、常に全販連、全購連のかたがたもスト発生前に相当の契約をしておられまして、スト開始前までは、始まるまではスムースに毎日自家用自動車を以て現実にこれを引取つてつた。この過去の自家用自動車を以て肥料搬出しておられた事実行為というものは、やはり一つの既契約行為ではないか。これに契約に基いて取りに行こう、而も私は話の折衝中でよく内容はわからなかつたのでありますが、代金の決済の分が付いておらない分は、直接会社に支払つて労働者側の不安になつて、会社の利益のみを増すことになるので、この代金の支払いしてない肥料については、確実な銀行に供託をして、そうしてその後におきまして、争議解決した後において初めて会社に金を払うようにすれば、労働者方々もこのスト期間中によつて搬出されるというふうにして、会社のみが利益を取るというふうな懸念もなくなるのである。従来我々が自家用車で運搬しておつた通常行為について、而も既契約の肥料についてはやはり搬出を認めてもらいたいというような交渉でありますので、私はやはりこれははつきりと一つの業務行為ではないかというふうに解釈いたしておるのであります。その点はまあどういうことになりますか、最終的な法律解釈は私どもは持つておりませんのでわかりませんが、そういうふうな意味であつて、当日その点の中心になりましたのが、警察の今回の実力行使は経済行為のみを意識しておつて、人権の擁護とかそのほかの問題については、何も考慮を払われておらなかつたようであるということについての御質問だつたと思うのであります。私どもはただ当日の状況といたしましては、単に経済行為を保護するという問題ではなく、労働者方々農民方々も、双方に死傷者を出さないように、これに十分の留意をいたしまして、そうして成るべく対立勢力になりましたる双方の実力行使によりまして、流血の惨事を予防するために、必要なる手段として実力行使をいたしたのであります。これは正に警察官職務執行法の第五条にもありますように、大きな犯罪が発生する虞れがあります場合には、これは事前に私、警察官としては当然阻止する責務を持つておる、そういう意味におきましても、私どもは単に経済行為の権利の保護ということは、毛頭念頭にはおいてなかつたのであります。如何に農民側方々にも、労働者方々にも負傷者を出さずして、円満に解決をしたらどうかということにほかならなかつたのであります。で、それならばピケラインというものがいわゆる合法性であるか、非合法性であるかの点が又ここに蒸返されて来るのでありますが、その点は、専門家の皆さんがよく研究になつておるので、私どもがとやかく申しましても、地方での私どもの解釈といたしましては、又巾の狭い面があるかもわかりませんので、余りくどくど申上げるのはどうかと思いますが、ただそのピケラインの判例といたしましては、その方法が平和的で穩和な、説得において条理を尽したものであれば適法であるが、この判例を越え、他の者が集つてピケラインを侵す場合、通常威嚇的な行為を伴うものは違法なものであると解すというような判例も出ております。私ども鏡工場ピケラインはこの判例にもぴつたりするような状況ではなかつた判断をいたしまして、そうして実力行為介入いたしたのでありまして、ただ私どもが経済的な権利保護のみに終始して労働者方々の尊い人権擁護並びに生計の保護を等閑に付して、そういう措置をとつたという意思は、毫末も地元の治安の責任者としては考えておりません。そういう意味合いにおいて私ども実力行使をいたしましたので、どうかその辺はよろしくお願いいたします。
  55. 栗山良夫

    栗山良夫君 議事進行について……。私只今加瀬君の質問と小林隊長の答弁を聞いておりまして、非常に変に感じますることは、小林隊長が非常に熱弁を振われておりますけれども、その答弁たるや法律論じやなく常識論を出でてないと思うのです。加瀬君は完全な法律論を展開しておられるわけです。ピケラインの合法性というようなことは、これは人数の多い、少ないではありません。純法律論としてこれは厳密に検討しなければならん非常に大切な問題なわけなんです。従つて我我が問題にしていることは、そういう重要な法律論の下に決定をしなければならないのに、例えば八代地区警察署長の出された伝単でも、これは全部断定記事になつている。ここに問題があるのです。あなたがたここに責任をお持ちになるならばよろしいけれども、断定記事になつている。従つてそういう断定記事を出しておいて、これを常識論で合法化されようということで、幾ら熱弁を振われても我々は同感できない。従つて加瀬君の質問に対して、勿論法律的な研究の下に答弁されるなら意味があるが、常識論で答弁されるならば、これは意味がない。私はそういうふうに申上げる。従つて今の論争が繰返されるならば、これは加瀬君にお願いしたいと思うのですが、法律論で問題点全部挙げて頂いて、そうして検察局なり或いは法務省を呼んで法律的な研究というものをしてやつてもらはなければいけない、こういう工合に考えております。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 労働委員長のおつしやる通り、解釈をそういう私的に自由に警察官ができるということであつては非常に恐ろしいことでありますので、十二分に質問の箇条を整理いたしまして、あとで又質問いたします。質問を保留いたします。
  57. 寺本廣作

    寺本広作君 只今加瀬さんからも御質問があり、栗山労働委員長から整理した議論がありました。その点で実は事実問題がたくさん、食違つた意見がほうぼうから出ておりますけれども、問題はやはり法律解釈の食違いから起つた事件だと思うのです。将来こういう事件が起らないようにするためには、法律問題をきちんとしておく必要がある。その点でさつき日産化学の藤本さんがお話しになりました中で、一つつておきたいと思います。丁度加瀬さんの御質問の裏になると思いますから一緒にお考え頂ければ結構だと思います。  藤本さんに伺います。さつき仮処分の決定は、会社の譲渡行為妨害してはならんという趣旨の仮処分の決定があつた。第三者の業務行為は仮処分では禁止されていない。従つて第三者の業務行為は引渡しは妨害してもいいのだという意味のお話があつたと思います。それでこれは私はまあ仮処分の趣旨は引渡す人があつて引取る人がある、引渡し行為の表を言つておるので、裏を言つておるんじやない、引渡す人間があつて引取る人間がある。引渡しの場所が工場の構内であるから、そこまでは引取りに行く人間は第三者の業務行為だと思います。さつき労調法の第七条を引用されたが、労調法の第七条にも業務の正常なる運営を阻害するのが争議行為だという陳述があり、これは労使関係の当事者の業務の正常な運営を阻害するのがこれが争議行為だと思います。第三者の正常なる業務を阻害するのは争議行為ではないはずだと思います。若しこの仮処分の決定を、これは会社だけが禁止されておる、会社の引渡しだけが禁止されておる、第三者の引取りを禁止されていない、この議論を押し進めれば、ピケツト・ラインは明らかに第三者の正常なる業務の運営を妨害した、こういうことになりはしないか、労調法の定義の狙いから少し逸脱しているのではなかろうか、こう考えますが、その点、委員長はどういうふうにお考えになりますか、御所見を伺いたい。
  58. 藤本信義

    参考人藤本信義君) 私たちは争議行為一つの一環としてピケを張つたのでございまして、労調法の中にも、その他の争議行為というふうに謳つてあると思うのでありますが、その項目に該当するのじやないかと思います。それからピケを張つた当時、私どもは何もピケを張つて出荷をしないということのみをやつていたようにお話があるのですが、私たちは十三日以前からずつと十三日まであらゆる説得行為を以て、これに対しては平和的に話合いを進めて来ておりますし、又そういう精神で十三日の当時も無抵抗主義を以て臨んでおります。そういう点から私たちは今度のこのピケという問題については、何ら不当なものでもないし、飽くまでも説得行為を目的としてやつて来たわけなんでございます。
  59. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行について。  ちよつとお尋ねしますが、実は連合委員会ですが、労働委員はあとからというまあ御意向があり、私はこれは余り妥当なやり方でないと思うのですけれども、これはまあ皆さん御異議はなかつたし、我々も連合委員会を申出るときにその点は了承しておりましたから、その点御遠慮を申上げて参りましたが、その点は今寺本さんの関連質問が出ておりますから、事実上は破られたわけですが、その点はもう差支えございませんか。
  60. 内村清次

    委員長内村清次君) 大体これは前に御了解をお願いいたしましたように、地方行政委員会といたしましては、争議の実態、又これを深く追及して行くという点よりも、むしろ当時起りました警官の介入によるところの争議形態、これが治安とどういうふうな関連性があるかという点を地方行政委員会では取上げて問題にいたしております。やはりその争議の実態と治安の問題、これは不可分一体の問題ではございまするが、そういうような関係で、連合委員会では先ずこの関連をしておりまする治安の点、警察介入の点を先ずやつて行こう、その後に争議の実態に入つて頂いて、労働委員会の観点から、この争議の問題を又解明して行こう、こういうようなことで委員長は了解を得たような次第でございます。そこで、その角度が大体異つておりまするけれどもが、不可分の問題でございます。そこでまあ先ほどの了解点からいたしまして、地方行政委員方々発言がありませんなれば、一つ労働委員方々お願いする、併し又不可分一体の問題でございまするから、関連と、こういつた委員発言の点がありますれば、その関連の事項につきましては、これは委員長が適当に発言を許すというような方法でやつておりまするからして、どうか一つその質問の焦点によりまして議事を進行して行きたいと、かように存じております。
  61. 吉田法晴

    吉田法晴君 事実の点については先ほど私どもも聞いておりまして、確認をそこでしたいと思いましたけれども、御遠慮申上げました。で、今警察権の正当なる発動なりや否やというところで、警察権とそれからスト権というものが、ピケツト・ライン行為という争議権の発動と接触地点に参りまして、この点は警察権の発動が正当なりや否やという点は、地方行政委員会の問題だと思います。私どものほうから言いますならば、労働権の正当なる行使なりや否やという点から言いますならば、私どもの問題になります。そこで今の段階では、私は関連して質疑をお許し願いたいと思います。その点はよろしうございますか。
  62. 内村清次

    委員長内村清次君) よろしうございます。
  63. 吉田法晴

    吉田法晴君 それから一点事実問題について確めて置きたいと思います。先ほどマスクを携行しておつた、或いは警棒を振われたかと、こういう事実の問題について質疑が交されておりまして、隊長は最後には断定的な答はできないので調査して云々ということでございました。マスクの問題については先ほど労働委員長から写真を提示して意見を求めておる。私どもの拝見しております写真の中にも、警棒でありますか、ほかの棒でありますか知りませんが、手ではない、棒が行使されておる写真を拝見するのであります。これは御覧頂きたいと思うのでありますが、それでもなお警棒は絶対に使わなかつた、これは隊長は使わせない指示をしたと言う、現地指揮をせられました斎藤署長は、自分はそういう指示をしたはずだけれども、一、二の中には或いは警棒を使つたようなこともあるかも知れないと言われるのか、それとも先ほど何千という多くの人たちが見ておつたから使つたはずはないと断言せられましたが、私どもが拝見いたします写真では、手ではない、とにかく警棒であるか何であるか使われておる事例も写真の上に出ておる。なお使われたかも知らんと言われますのか、それとも先ほどのように、絶対に使われたはずはない、こういうふうに断言せられますか。その点を一つ……。
  64. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 警棒は一切収めさせまして、さつきも申しましたように、外部から入つて来て事故が起るというようなことを防ぐために、いわゆるこういうものは警察官ピケツト・ラインになりますが、この者だけにしか警棒は使用させておりません。その点はつきり申上げます。
  65. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどの写真を一つ提示して……。
  66. 栗山良夫

    栗山良夫君 先ほどこの写真を隊長に見てもらつた。ところが私は非常に奇異に感じましたことは、袋をちやんと背中に背負つておるのが三人写真に写つておるわけでありますが、成るほどその点は確認をせられました。併しこれが雑嚢であるのか、或いは今問題になつておるものであるのかよくわからんから調べて見るという話でありまするが、少くとも国警の隊長であり、地区署の署長であつて、常にこういう装備について重要な関心を持つているあなた方が写真を見てわからんというようなことは私は何としても了承できない。だから私は伺いますが、警察がこういうような袋を警官に背負わせるのは何種類ありますか。
  67. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 防毒面は普通の型の小さい布製のものに収めておいて、横からかけるというようなものがあります。それからもう一つは普通の携帯の雑嚢というのがございます。これも普通の御承知通り弁当を入れて行つたり、或いは緊急の携帯薬を入れます雑嚢と、この二種類、そこで今警察官がそういう警備出動する場合に持つて行く場合に二種類しか用いておりません。そこで今私が拝見しました写真では、全面的にうまく出ておらんようなものがありまして、雑嚢の一種か、防毒面であつたかということはちよつと私確信ございませんものですから、はつきり断定的なことはよう申上げませなんだのでしたが、これは二種類ございます。雑嚢と防毒面用の布製のズツク式のものと二種類ございます。
  68. 栗山良夫

    栗山良夫君 併し大体の大きさというものはこれで出ておるわけですが、その二種類の大きさは大体同じ大きさなのですか。
  69. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 大体同じくらいの大きさです。
  70. 若木勝藏

    若木勝藏君 小林隊長に二つばかり質問しますが、先ほど私は加瀬君の提示された問題は非常に重要な問題だと思うのでありまして、当日の警察側のとつたいわゆる争議不法介入したかしないかということに重大な関係を持つて来るのでありますが、先ほどの動議によつて一旦きまりましたので、私は当日の実際のことについて二つばかり伺いたいと思うのであります。その一つは、今もお話がありましたが、防毒面を持つてつたかどうかというようなこともはつきりしない。それからほかのほうの陳述人からは、手の甲で叩かれたとか、或いは頭に瘤をもらうだけ叩かれたというような話が出ている。ところがこれらに関しましては、その後新聞などにも出ている関係からも、警察側としては実際にそういう事態があつたかどうかということを警察官について調査したことがあるのかどうか、この点が一つであります。  それからその次に私が非常に疑問に思う問題は、警察出動は、とにかく農民が白鉢巻でもつて二十何台かのあれに乗つて出かける、これは非常事態が起るかも知れん、こういうふうな工合で出て行かれたところのあなた方のこの問題の解決は、それでは組合としてはピケは張つておるけれども、極めて平和的な法律論に則つた解決の仕方でもつて進もうとしている。片方はいきり立つて日の丸の旗を立てて、そうして先ほどどなたかの話で聞いてみますと、轢き殺してもかまわんというような意気込みで行つている。これはあなたの鎮圧というような事態に対して起つて来る措置はむしろ法的に堂々とやつている方面に向うよりも、ふつかけて行つた方面に対して向わなければならないのに、そこまで重点を置いて取締れば、そういうふうなピケをやつたというふうないわゆる労働争議問題に介入したとかしないとかいう問題に進まないでこれは収まつたのではないかと考えます。而も労働者側としては十五日まで待つてくれ、団体交渉の結果はそのときに出る。併しその結果はどうであろうと、三役の責任においてこれは出荷するからと、こういうふうなごとまでもあなた方に伝えておるにもかかわらず、こちらの方面に対して向つてつたということに対しては、私はどうしても解せないところがある。どうして一体そういうところに重点を置いて措置されたか、この点なんであります。  それからもう一つ小林隊長に伺いたい点は、斎藤署長のとられたところの措置は、先ほどの陳述人の話から、殊に原田事務局長の話から推してみまして、あなたのそれに対する応待の形から見ましても、あなたの意思に副つたところの行動署長がとられておるかどうか、この点はあなたはどう思つておられるか、私はこの陳述とか署長のとられた措置とか、そういうふうな方面から考えて、あなたの意思に副つておらないのじやないか、そうして非常に激昂した形において、これをピケ破りの方面に進んでおるのじやないかと思うのだが、あなたは現在どういうふうに思つておられるか、この点を伺いたい。
  71. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 今の防毒面の問題については、実ははつきり申上げまして、私はその後調査しておりません。
  72. 若木勝藏

    若木勝藏君 負傷者の点は……。
  73. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 負傷者の点は、私は十四日の朝新聞を見て十五名ほどの負傷者を出したということで、初めて所轄署長に、どうなんだ、昨日の十三日の新聞はどうなんだ、そういう通知は受けておらない、その事実があつたのかどうかと確かめたところが、それで所轄署長調査をいたしまして、工場へ行かれましたときに、果してこれは警察官が傷害を与えたかどうかということは疑問であるが、事実二十五名の負傷者の診断書を出されておるということは、十四日の午後三時に私は所轄署長から報告を受けまして、正確にこれを知りました。
  74. 若木勝藏

    若木勝藏君 警察官を調べたのかという問題は……。
  75. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 警察官は私は調べておりません。
  76. 若木勝藏

    若木勝藏君 第二番目は、農民のほうの鎮圧に向うのが本当じやないかという点です。
  77. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 農民の点につきましては、例の原田事務局長と私が十三日の午前九時隊長室でお会いいたしました際に、直ちに現地警備本部に対しては私の指示いたしました命令の原案というものは、原田事務局長、坂本前代議士の両名が現場に行き出荷させるようにするとの申出でがあるから、警察実力行使は成るべく差し控えること、その次に、原田事務局長に対しましては、県の組合係長が行つておられますし、又現地指揮官が行つていますから、できるならば一つよく折衝して頂きたいというので行つてもらつたのが事実でございます。又この命令も直接署長が受けておりませんので、ああいうごたごたした所の警備本部でございますので、私のほうで発信はいたしまして、受けておることは事実でございまして、それで署長が私の意図通り受けたかどうかということにつきましては、大体受けておつた署長もそういう意図は知つておりましたが、併しすでに事務局長のおいでが二時前になつてしまつた交渉が決裂してから相当時間を経過したときにおいでになつたために、その意図については完全に話合いをすることができなかつたということになつておるわけであります。私は自分の命令した通り、今から考えて見ても、署長としては非常に沈着冷静に行動をしてくれた、私はそう思つております。ただ問題は、原田事務局長と坂本前代議士がお見えになるという折衝の点については、現在としてはもう少し意を尽し合つて話する余地がなかつたかどうかという点だけは、私といたしましても若干良心的に見てどうだつたろうかと思いますが、併しこれは現場指揮官といたしましては、あの零囲気の中に捲き込まれておつては、十全を期し得なかつたということは、人間として止むを得ないんじやないか、これは私自身として考えておる問題であります。それからむしろ農民側の働きかかつた者に対して警察が阻止しなかつたじやないか、むしろそれはおかしいじやないかという御質問であります。この点はむしろ私は……。
  78. 若木勝藏

    若木勝藏君 処置を誤まつているんじやないかというのが僕の質問ですが……
  79. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) これは私は署長としては、当時の現状としては大体私の意を尽してやつておりまして、措置は誤まつておらない、自分ではそう思つております。
  80. 若木勝藏

    若木勝藏君 署長のほうにちよつと伺いたい。それは組合の三役がとにかく自分の責任においても十五日には出荷する、こういうふうなことに対して先ほどの陳述を私聞いておりますというと、農民は、いやそれはもう言訳であつて、引延し以外の何ものでもないとこういうふうに考えておつたのではないかというふうに私聞いたように覚えておるのでありますが、署長自身もそういうふうにお考えになつておられたのではないかと思うのでありますが、その点はあなたどういうふうにお考えになつておりますか。
  81. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 私はそういうふうに考えておりませんから、さつきも申しましたように、はるばる自動車で取りに来て、ただでは帰れんというような面子問題とかそういうような問題はないかというようなことまで念を押したわけであります。ところが、ここにおいでになつておりますからお聞きになればもうわかると思いますが、どうでもでけん、田植が始まるじやないかということで決裂になつたわけであります。これは県の労働部長さんもその折衝の間私の横のほうに、反対側のほうに腰かけて終始聞いておられましたので御承知かと思います。
  82. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうするとあなたは、もう十分なる手を尽したけれども止むを得なかつたと言われるのですか。
  83. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 私の能力におきましてはこれが最大で、私としましては十分尽したつもりでございます。  それからさつきの隊長の御質問に関連いたしますが、農民のほうは抑えずにピケのほうだけ抑えたというようなお尋ねでございましたが、農民のほうは、暴行に出るような恰好になりましたときに、私が指揮者に車を引けと命令いたしまして、そして乗車人員を制限して、而も農民は全部後のほうにいてくれということを全部私の警告通りに守つてくれたわけであります。併しピケのほうは、なんぼ警告いたしましてもこれを聞いてくれません。結局そういうふうな事態に立至つたのでありまして、結果的にはそういうふうな見方になると思いますけれども、私といたしましてはそういう立場からやつたわけであります。
  84. 内村清次

    委員長内村清次君) この際、販購連の参事飯田次人君から一身上の弁明をちよつとしたいというような通告が参つておりますから発言を許します。
  85. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 私は先ほどからいろいろの質疑応答を伺つているのでございますが、併しその中に私の一身上のことについての問題が幾たびも出ております。それは先ほど女の人から、ひき殺しても通れ……これは私を指して申したのであります。と申しますのは、九日の日に私は交渉に参りまして九時までおつたのであります。そのときに、飯田さんの人格に訴えて、一つ早く帰つて下さい、あなたの喉からそれを言いたいというような気持でおられる、それを実行に移して下さい、こういう放送が拡声機でもつてつたのです。翌日になりますと、飯田さんは、ひき殺してでも通つて来い、こういうようなことを又拡声機で十一日の日に放送があつたということですが、そこで私がそれを言つたか言わぬかということについては、はつきり言わないとここで断言ができます。そのときの情勢から見まして、私のほうは初め四、五人しか行つていないのです。又私のほうの車はその時は二台であつたと思います。運転手と助手で四人、従つて十人足らずの人間がその時にそういう暴言を吐き得るかという点でございます。従つて私はそういうことは絶対に吐いていない、どこを押せばこういう嘘が出るかということを私は憤慨せざるを得ないのであります。決して言うた覚えはないのでございまして、お取消しを願いたいのであります。
  86. 原田英男

    参考人原田英男君) これは、飯田さんがひき殺して通れと言われたことは事実であります。これは放送局から録音をとりに来ておりましたテープ・コーダーに入つております。併しこれが放送局の録音放送の中ではカットされております。それで十三日のピケが破られました当日、支部で大会を開いておりますが、その中で支部の書記の福田という女の子がおります。その人と放送局の記者のかたが筆蹟で取交された文書がここにまだ残つております。飯田さんがそう言つたことをなぜカットしたかというような質問をされたのです。それについて放送局の記者のかたは、あれは組合言つてくれるなというようなことを言つた筆蹟で取交された文書が残つております。
  87. 栗山良夫

    栗山良夫君 私、小林隊長が今日お帰りになるという話でありますから、事実の点について二、三お聞きを申上げたいと思います。お断りを申上げておきたいと思いますが、この治安維持に関係する問題は地方行政がお取上げを願つておるわけでありますから、地方行政委員会でも一つ最後まで究明をお願いしたいと思います。労働委員会のほうとしましては、労働問題としてこれの糾明に当られたいとかように考えておるわけであります。ただ、事実の認定でありますが、この八代地区の署長の名前でお配りになりました伝単でございますが、これは隊長は前以て御相談にあずかつておらますか。文書並びにこれを配るということについて御相談にあずかつておられまするか、署長の独断でおやりになつたかをお尋ねしたいと思います。
  88. 小林利吉

    参考人小林利吉君) これは私は後で報告を受けましたので、事前には私自身は相談を受けておりません。
  89. 栗山良夫

    栗山良夫君 これは後で報告を受けたのですね。この伝単の内容についてあなたは署長と同時に責任をおとりになりますか。この伝単につきまして配つたかどうか並びにこの伝単にある内容について署長と同じように上司として責任をおとりになるかどうかということです。
  90. 小林利吉

    参考人小林利吉君) これは当然署長に一任いたしまして当日の警備態勢をとつたので、併し事後において署長が一般の啓蒙運動としてやつた行為には、当然隊長責任をとるべきものであると考えております。
  91. 栗山良夫

    栗山良夫君 この伝単はいつ頃お配りになつたのですか、五月十三日の何時頃町に配られましたか。
  92. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 実力行使をやりました翌日の、いわゆる五月十四日の朝の八時から大体昼頃までかかつております。
  93. 栗山良夫

    栗山良夫君 枚数はどのくらいですか。
  94. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 二千五百枚刷つたのであります。二、三百は残つてつたはずであります。
  95. 栗山良夫

    栗山良夫君 熊本の国警の行政のやり方についてちよつとお伺いいたしますが、こういうような重要な労働問題について隊長は中天と打合せをせられて、そうしてその指示を仰いでおやりになつたか、或いは隊長の独断によつておやりになつたか、この点を伺います。
  96. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 鏡事件のこの労働争議の取締りに関しましては、単に御承知のごとく鏡工場だけの問題ではないのであります。鏡工場以外にも相当日産系は他にも工場を持つておられる。単に熊本県だけの独自の解釈でこういう問題は解決すべきものではない。私といたしましては鏡工場ピケが合法性のものであるか非合法性のものであるかというようなことは、具体的な事情を説明して国警長官の指揮を仰いでおります。又たまたま法律解釈につきましては、地方検察庁と十分な連絡をとりまして、そうしてこの問題については、法律的な問題についてはそれぞれ上司の指示を仰いでおるのであります。単に私の個人の解釈、或いは私独自の解釈でこの問題を取扱つておるのではありません。
  97. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしますと、上部機関に相談をせられました場合にどこへ相談をせられたか。
  98. 小林利吉

    参考人小林利吉君) これは国警本部警備第一課長に伺つておるのであります。
  99. 栗山良夫

    栗山良夫君 検察庁のほうは……。
  100. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 検察庁は熊本地方検察庁の野田検事が係官でございます。
  101. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから私は大体今度のこういう不幸な事件が起きたのは、その精神は八代の町へ撒かれた伝単のこの文章の趣旨ですね。これがもう明瞭に物語つておると思う。警察がこういう考え方を持つておられたからこそ、こういう不祥な出来事が起きたと私は断ぜざるを得ない。ものの考え方の問題です。そこで私は伺いたいのですが、少くともスト行為範囲を逸脱した刑法に定むる他人の業務に対する妨害行為なりと断ずるものでありますと、こういう工合にいわゆる裁判所みたいなことを言つておられる。ここまで自信があるならば、なぜあなたは労働組合責任者を検束起訴しないか、これを伺いたい。
  102. 小林利吉

    参考人小林利吉君) これは私の現在の考え方といたしましては、業務妨害というものはピケラインを張つておられるのでありますから、それで直ちに百二十人のピケ隊全員を検挙するということは妥当性があるかどうか、むしろこれは三名の組合の三役の方もおられるので、業務妨害となるならば、この人を一応容疑者として立てなければならないというので、私どもはその人にいつ来て頂いてこの事件をかためようかというので、時期的に慎重なる考慮を払つていたのであります。しかし争議中に業務妨害のこの事案で組合の執行部の三名の人を検挙するということは、労働争議全体に及ぼす影響というものを考慮いたしまして、争議解決後でもこれは検挙できるのではないかというので、私どもの見解といたしましては傍証がためだけをいたしまして、組合の三役の人には争議行為が終結いたしました後において来て頂いてこの事案を検挙する。こういう方針を堅持いたしました。ただその間に私どもに対して、私ではありませんが、八代地区署長に対して告訴の提起がありましたので、告訴された者がこの事件を報復的に検挙して組合の三役を喚ぶということが妥当かどうかということを考えましたので、これにつきましてはこの事件の性格なり、証拠書類というものにつきまして、当該告訴を直接受理しております当該検察庁に事案を報告いだしまして、その指揮を待ちまして処置することにいたしました。
  103. 栗山良夫

    栗山良夫君 今あなたの御答弁では、争議が静まつてから何したい、こういうことをおつしやつた。併しその行動を起すのには地検のほうの手でやつてもらうようにしたいという意味のことをおつしやつたので、そこでそれを裏からいえば国警としては、告訴するというようなことはしないつもりだ。こういうことですか。
  104. 小林利吉

    参考人小林利吉君) そうじやない、これは八代地区署長が、当該の責任者が、現場指揮者が告訴を受けておるわけです。総評側の代理のかたがたから告訴されておるわけです。その告訴されたる者が今業務妨害の罪で組合の三役なりその他ピケラインの主なかたがたを業務妨害の罪として検挙捜査に当るということは妥当であるかどうかという問題については、一応告訴を受理しておられる検察庁の御意見を伺つてからでも、それはいい。告訴を受けておつても、この事件とこの事件は違うのだから所轄署長がやつてよろしいということになれば、私のほうでやるわけです。併しお前らのほうでやるのは、工合が悪いから検察庁自身でやるとおつしやるならそのようにしたいと思いまして、このように地検のほうに報告をいたして、そちらのほうの指示を待つておるわけであります。
  105. 栗山良夫

    栗山良夫君 それでこれは市民の警察である隊長なり或いは責任者であられる署長の今後の警察行政に、非常に大きな問題をこの伝単は与えておりますから、重ねて伺つておきます。又将来の方針もお聞きしておきたいと思います。少くとも検察庁の如何なる文書でも、裁判の確定前までは妨害行為の疑ありというふうに必ず問題は逃げております。然るに八代地区署の全責任を持つておいでになる警察署長がその配下にある市民に向つて妨害なりと断定するものであります」こういうものの表現の仕方、市民に対する態度というものは、これを以て今後持続されるお考えか。若し私はこの点がそうでありますれば、これは由々しいことだと思う。断じて許すことができないと思うが、この点はつきりお願いいたします。
  106. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 犯罪容疑に対しまして第一線の捜査事務をやつております私どもといたしましては、はつきりと判決が下るまで断ずるというようなことはやはり捜査当局としてはこれは持つてはいけないということは十分考えられます。併しこの文章はそういうふうになつておりまして、お叱りを受けるのも当然だと思います。併し真意は私どもはそういう考えは持つておりません。
  107. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体隊長のお考えはわかりました。従つてこれは私はただ笑つて済まされる問題ではないと思う。若し法律論でこの意見を闘わせたいというなら私は幾らでもやりますが、ここは一つすなおにこの点は明瞭に誤りだということが今確認されたのですから、前に八代市民に二千五百枚印刷したのですから、二千五百枚もう一遍印刷して八代市民にもう一遍訂正を願いたいが、よろしうございますか。
  108. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 只今労働委員長からお話がありましたが、隊長の答弁にもありましたように断ずるものであるということはいささか私もそのときには言葉のあやといいますか、そういうことでこういうふうになりましたが、只今の御意見通りに処理したいと思います。
  109. 栗山良夫

    栗山良夫君 それではそういう工合にお願いいたしますと共に御希望申上げておきます。少くとも国民の警察、市民の警察でありますからもう少し物事は含みのある裕りのあるように親切に取扱つて頂きたい、こういう工合に隅つこに追い詰めて行つて、何ともならんような恰好で独断的な考え方を警察が持つておるということは、私は由々しいことであると思いますから、この点は一つ十分に反省を願いたい、こういう工合に要請を申上げます。  それから次にこの文書に、供出者の要請に基き出動しと書いてありますが、具体的に誰に要請を受けられたか、それを承わりたい。
  110. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 最初につまり第一回目でありますが、五月九日の十一時二十五分頃、日通有佐営業所長が直接警備本部いわゆる鏡町警備派出所にお出でになつて要請をされたわけであります。それから次は五月の十日の十六時頃、午後四時頃でありますが、目星産業と日通、それから県購連この代表者がおいでになつて出動要請されております。これも派出所において……。
  111. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつとその名前を、どういう申請者になつておるか、その名前……。
  112. 栗山良夫

    栗山良夫君 目星産業の誰がそういうことを言われておるのか。
  113. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 名前もわかつておりますが、名前はちよつとあとで見なければわかりませんが、わかつて  いるものを申上げます。十三日の十一時五分であります。これは県購連の配給課長の今村という人と、それから日星産業の業務部長の松本という人と、それから日通の有佐営業所長の潮崎という人、三人連名で揃えて来ております。それから五月の十一日でありますが、午前十時頃県販購連の飯田参事の名前で書類でこれも要請をして来ております。
  114. 栗山良夫

    栗山良夫君 只今の名前、わからない点もございますから、お帰りになつてからで結構でございますから要請者の氏名、日時、その他内容等一つ地方行政委員会へ御提出を願いたいと思います。  それから先ほど私とお約束いたしまして、八代市民に対して訂正伝単をお配りになるやつにつきましては、これはやはりお配りになつてからで結構でございますから一部こちらへお送り願いたい。  それから次に熊本県の販購連の副会長の井村さんに一つお尋ねを申上げます。先ほど来の参考人の皆さんがたの御陳述を聞いておりますと、当日農民の動員はあなたがたの御指導によつて各村で割当をして農民出動されたような証言がございましたが、そういう事実がありますか。
  115. 井村作太郎

    参考人井村作太郎君) お答えします。各郡に支部、出張所があるわけであります。そこに電話いたしまして、肥料の非常に困つている人が出てもらうように連絡いたしたような次第であります。
  116. 栗山良夫

    栗山良夫君 それが単位農協まで達して行つたのだろうと思いますが、実際各村からおいでになつた人に対して割当をせられたという事実はありませんですか。
  117. 井村作太郎

    参考人井村作太郎君) 割当をいたしましたような事実はありません。
  118. 栗山良夫

    栗山良夫君 井村さんにお願いしておきますが、当日出動をされた農民諸君の村別の人数を一つ資料としてこちらへ御提出を願いたいと思います。誰が出動せられたか、農民のかたがたとそれから勿論単位農協の役員のかたもおいでになるでしようが、それを一つ御提出を願いたい。よろしうございますか。
  119. 井村作太郎

    参考人井村作太郎君) 大体今申上げました通り、非常に時日も緊迫しておりますし、さつき申上げました通り、各支部、出張所に電話を以ていたしましたような次第でございまして、それで私のほうで直接いたしましたのではなく、支部、出張所を通じて各単協に電話を以て連絡したような次第でございまして、実際どれだけなんですか、約四百名くらい、こう思つておりますが、或いはトラックで来た人もありますし、汽車で来た人もあります。或いは自転車で来ておる人もあるわけですから、確実なる数はちよつとお答えすることはできません。
  120. 栗山良夫

    栗山良夫君 各村からおいでになつた数は大体何名くらいか、大体想像がつくのじやありませんか、各単位農協でいずれお世話になつているはずですから。
  121. 井村作太郎

    参考人井村作太郎君) さつき申上げましたように約四百名くらいだろうと推定しております。ともかくあのように相当集つております。
  122. 栗山良夫

    栗山良夫君 私が知りたいのは、その四百名おいでになつたかたがたがどの村から何名、どの村から何名くらいおいでになつているかということを知りたいわけです。
  123. 井村作太郎

    参考人井村作太郎君) できるだけ調査いたしますが、ここで出動いたしました各人数は調査もなかなか困難だろうと思います。来ただけでありますから、調べてはおりません。各支部から単協に通じただけであります。
  124. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから先ほどの負傷者の問題でありますが、これは労働組合のほうに一つお尋ねいたしますがへこれだけの負傷者があつたということは、警察のほうに届けておられますかどうか。
  125. 藤本信義

    参考人藤本信義君) 警察のほうには届けてありません。届けようと思つていたときに検察庁のほうからお見えになりましたので、そのときに来られたかたの名前は私知らないのですが、会社側のほうに行きまして、そうして工場内にあるところの診療所に来ておるという話を聞きましたので、私が直接行つて、どういう目的で調べに来られたかという点をお尋ねしておりますし、そのときに特にそういう負傷者の氏名についてはその診療所の係員を通じて詳しく説明してあるはずです。
  126. 栗山良夫

    栗山良夫君 これは、診断書は全部あるように大体註に書いてありますから、恐らく用意されておるだろうと思います。それで先ほど警察官のほうの説明では、例えば富家は自分で怪我したのだろうというような御所見もございましたが、少くともこれは相手の被害者が国会議員であろうと、警察官であろうと、誰であろうと、人に傷つけた場合はやはり届ける所は警察以外にないだろうと思います。従つて警察に届出をせられなければいけないだろうと思います。それと同時に、警察のほうも少くとも自分の地区署の管内で怪我をした者があるのに、これは自分で怪我したのだろう、どうだろうということだけで、これは放置しておく筋合いのものではないだろうと思います。これはやはり一遍調べられる筋合いのものであろうと思います。この点は一つ要請しておきますが、こういう傷害に関する問題は、一つ厳格にはつきりしておいて頂きたい。そうしませんと、将来この問題は、あなた方のお話によりますと、相互に告発なさる空気にあるようでありますが、このときにお互いの立場を証明するには障害が起ると思いますから、こういう点は明らかにしておいて頂きたいと思います。
  127. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は先ほどから陳述を聞いておりますと、まあ陳述の内容が何か労農衝突というようなことに集約されて行くような感じをするわけです。ところが実際陳述を聞いておればそうでなくて、一部のかたがたが、その折衝されたかたがたが、最も興奮されているのではないかというような感じを受けるわけです。なぜかなれば、田植を最も急いでおられる阿蘇郡の坂田さんの陳述をお聞きいたしましても、非常に困つたという考え方を持つておられた。それで来いということだから行つてみたところが、たくさんのかたがたが来ておられて、而も今度は前に行つたところが、ああいうことで労農衝突というようになつてしまつた。非常に残念だということを言つておられる。出て来られるときにはそういう感じは持つておられなかつたように感ずるわけです。そうすると、事務局長原田君が隊長に言つたことをもう一回隊長にお聞きしたいと思います。そういう観点からちよつと隊長の言われたことが私にはピンと来ないのであります。例えば何百人の人が集つて来てから一話すというものは、なかなかどちらも殺気立つてできないわけです。だから、原田君は姿の見えない所で五十メートルでもいい、百メートルでもいいから下つてもらいたい。そうしてその間に双方の代表を出して話合をやるということを言つておるわけである。もう一つつて言えば坂田さんのお話でも、その当時おいでを願い、十分に組合の話も聞いて、こういう立場にあるからもう二日間待てんだろうか、待たれんだろうかということまで農民のかたに御相談があつてのごとかということを販連のかたにお尋ねをいたしたい。  そうして隊長にお尋ねしたいのは、そういうときにあなたは電話で何分かかるかわからない、あなたはすぐ現場に行つて下さいと言うて事務局長原田さんを帰したようですね。そうしたならばあなたのその命令ははつきり斎藤署長に伝わつておるはずです。伝わつておるかどうか。それが伝わつておるならば、斎藤署長は一応話をするから、まあこういう大きな部隊がここで対峠しておつては話がしにくいから、もう暫らく離れて下さいということを農民のかたにおつしやつたかどうか。その結果はどうであつたか。これを一つ明快に御答弁をお願いをするわけです。
  128. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 私は原田さんが行かれんということを現地電話でお聞きしまして、そして十一時頃でしたかまだ原田さんが来ないがどうしておるか、発つたか発たないか調べてくれという向うからの電話がありましたので、十二時十七分にこちらを発たれたという連絡をいたしました。それで恐らく……。
  129. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは聞いておるのだ。
  130. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 十分に斎藤署長は呑込んでおるものと私は解しておつたのでございます。
  131. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは先ほどの答弁で  わかつておる。行くまでに相当の時間がかかるということは、あなたが一番よく御存じのはずです。それだけの多くの人たちが感情的に対立しておる。先ほどから言つておるように、農民の方もそういう対立するような感じは当初は持つておられなかつただろうし、組合も決してそういう考えは持つておられなかつたということは、双方の方が言つておられる。それがそういう大きな人数になつて双方対立したから、そういう感情になることは無理からぬことだと思う。そういうときに相当な時間がかかる、車で行つても相当な時間がかかるから、あなたが電話でその対峙しておるような姿を一応姿の見えぬところまで下げてもらいたい。そうしてこちらからは原田事務局長も行くし、坂本前代議士も行くからという電話をされたと思つている。それでそのしておる姿を、話をするから暫く双方一つ姿の見えぬ所で待機してもらいたいというような連絡をとられたということは一つも聞かない。それが根本問題だと思う。今から考えると、その情景もよくわかりませんけれども、そのときに本当に双方離れて、そうして双方の代表の方が話合いになつたならば、そういうところまで行かなかつたかも知れない。こういう感じがするから、あなたがその約束はどういうふうに果されたかお聞きしているわけです。
  132. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 私のそのとき指示しましたのは、坂本前代議士、総評原田事務局長が、農民の必要とする肥料は出させるしから、それまでは警察実力行使は控えさせておけ、宮本労働部長も右二名に交渉に行つておられるから、待たしておいてくれという指示をいたしました。現状の集合状況というのは、私もよくわかりませんでした。双方に待機させようというような当日の指示は、私はいたしておりません。
  133. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは、原田君があなたに、自分たちが今から行つて、そうして話をしてくれれば、渡すようにするから、その部隊を離らかしてくれというようなことは、あなたは言つておらんのですね。原田君の陳述では、感情的にピケの前に何百人の人がおられたから、今までの陳述でわかるように、お互いに感情も立つから、話もできないから、姿の見えない所に一応これを下げて下さい、私たちは直ちに行きますからと、これが重点だろうと思います。これを下げなかつたから今のような問題になつたのではないかと、こういうふうな臆測までできますから、あなたはそのときに下げるように原田君とお約束があつたようですが、下げるように斎藤署長に連絡されたかどうかということを私はお聞きしておるのです。
  134. 小林利吉

    参考人小林利吉君) そのときの約束は下げてくれというような具体的交渉は、ありません。警察実力行使を差控えてくれ。この約束だけです。
  135. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじや原田局長のほうに……。
  136. 原田英男

    参考人原田英男君) 先ほどから申上げますように、十五日までに何とか努力をして出荷をさせたい、そういうことで、自分も努力したいからお願いしたいのは、ああいう対噂した形では感情的になつて、どうしてもうまく話がまとまらんと考える。従つて警察のかたも農民のかたも、一応組合ピケ隊から目に見えないところまで下つて頂くような方法をとつて頂きたい。こういうことを私ははつきり要請しております。
  137. 阿具根登

    ○阿具根登君 どうも殆んどこちらからお聞きすることは、組合が言うのと警察が言うのと食い違うようで、非常に困るのですよ。それで而も陳述をされたときには、それに関連した質問のあつたときには、何もそれはおつしやられずに、私たちがそういう本当に聞きたいことを言つた場合には、いや言わなかつた、聞いた、聞かなかつた、言うたでは非常に困るのですが、そういうことは何も記録もないでしようけれども、私が質問するためにそういうことをおつしやつたわけじやなくて、こういうお話をして、而もそれでは私が今から電話をかける、電話には何分間かかる、あなたがたは自動車ですぐ行つて下さいということを言われたということで、私はそのときのことを考えて、若しもあなたがそのとき言うたか言わんかどつちかわかりませんけれども、その多人数の人が対峙した姿でなかつたならば解決しておつたかもわからない。二人の人は解決するために努力するということを言つて自動車で飛んだと思うのですよ。そういう場合に今度は斎藤署長はどういうようにお考えになつたんですか。こちらから二人を送る場合に、例えば二人が来る、来てももうしようがないとお考えになつたか。あなたの責任において今言うような感じがお浮びになつたかどうか、こういう何百人というのが両方に向い合つて、マイクで叩き合つていたんでは、誰が来てもしようがないじやないか。とにかくこの姿を一時でも遠ざけたほうがいいんではないか、こういうようにお考えになつたか。或いはこの文面にあるように組合のほうが、お前たちが悪いのだというお考えであつたかどうかお尋ねいたします。
  138. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 私のほうでは坂本前代議士と原田事務局長がお出でになるという電話があつたわけであります。ところがその間、時間を経過しましたが、お見えになりませんので、私のほうからいつ何時で発たれただろうかということを聞いたわけであります。そうしたところが坂本前代議士はわからん。原田事務局長は何時でしたか、十二時十分に発たれたというようなことであつたのであります。私は相当これは別な考え方でありましたけれども、暴動化したら困るというような意味で十二時十五分に農民のほうを退かせたわけであります。トラックの前にみんなが押しかけて、行つて下さい、と言つてつたもんですから、これを農民を制限しまして十人くらい乗れ、あとはみんなトラックの後部に行け、その頃までは農民の人たちも感情の高ぶり方がそうでもなかつたと思います。よく聞いてくれました。で、その間、十二時ですから大体このときは、こういう緊急な場合には一時間から一時間十分で、自動車でお出でになれば近い。一時過ぎにでも来て頂いてあればそういうことが或いはまとまつたかとも今から考えますけれども、もう原田事務局長さんがお出でになつたときは、さつき申しましたように農民が走り出したということで、一触即発の恰好で結局さつき言いましたように考えた次第であります。
  139. 阿具根登

    ○阿具根登君 販講連のかたにお尋ねいたしますが、農民のかたをお集めになる場合に、電話でお集めになつたとお聞きしておりますが、この前に農民のかたに対して組合実情を、まあ恐らく皆さんがたも随分交渉もされたから、お腹だちにもなつてつたと思うのですね。随分交渉もされて、或いはいろいろお腹だちのところもあつたと思うのですが、農民のかたに組合はこういう事情で十五日まで待つてもらいたい。十五日には出すということを言つておるが、というようなことを話される機会があつたかどうか、集られるときにはそれを知つてつておられたかどうか、それをお尋ねいたします。
  140. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 農民が知つてつたか、知つていなかつたかということは、十二日の日に私どもが十三日の計画をいたしました。それには電話で以て通知した。十三日の日には先ほどもお話にあつたような交渉の結果が徹底したかしないかということでありますが、農民自体が交渉に行つておるのでありますからして、これは十分徹底しておると私は考えております。
  141. 秋山長造

    秋山長造君 皆さんの御質問によりまして警察の狙いというようなものは大分はつきりしたのですが、小林国警隊長にお伺いしますが、当日の警察官の二百名の出動の目的は、警察は飽くまで厳正公平な立場で労農衝突というような不祥事態が起ることを未然に防止したいという目的で出動したということを最初縷々おつしやつたのですが、ところがだんだんと論議をかわしておりますうちに、先ほどの斎藤署長の所見によりましても、五月九日以来数回に亘つて購販連その他から警察出動要請があつた。又五月十四日に八代町民え撒かれた伝単の中にも、搬出者の要請によつて出動したということをはつきり書いてある。だから警察がこの日に出動した目的は実は労農衝突というようなことを未然に防止したいということではなくして、最初からはつきりピケラインを突破するという目的で出動なさつたと断定せざるを得ないのですが、それでいいのかどうか。それでいいということになつているのですが、その点を確めておきます。  それから次に購販連のかたにお伺いしたいのですが、十三日の朝前日の連絡によりまして、四百名内外の農民のかたが豊川村へお集りになつて、二十七台ですか、トラックに分乗されて現地に押しかけられたということになるのですが、その豊川に集結されて、トラックに四百名内外の人が分乗して出発されるときに、やはり従来警察えしばしば御連絡なさつている行きがかり上からみまして、皆さんのほうから警察のほうえ御連絡があつたかどうか。又その四百何名かの人が二十七台ものトラックに乗られるについて、警察に対して制限外乗車の許可の申請をなさつたかどうか。又それに対して当地の警察のほうからどういう返答があつたかというようなことをお伺いしたい。  更に又ここまで緊迫した、こじれた争議現場へ四百名という余り現地の詳しい事情を御存じないで、言わば白紙の立場農民のかたを動員されて、そうしてそれで果してこの事態解決する一番いい方法であると当時お考えになつたかどうか、その点も一つお伺いしておきたいと思う。  それから次にお伺いしたいのは、会社側に対してでありますが、いろいろお話を聞いておりますと、どうもいささか会社の立場がぼやけてしまつているのですが、会社は五月二日の仮処分の決定の公示があつて以来、裁判所の仮処分の内容はちよつとさつき工場長がおつしやつたことは、多少ピントがはずれておるようにも思うのでありますが、いずれにいたしましても仮処分の威力というものに非常に頼り過ぎられて、もうあの一札さえ取つておけば、労働組合が幾らじたばたしても、手も足も出ないのだというような気持で団体交渉をおろそかにされて、その熱意を欠かれた嫌いがあるのではないか。又十三日の翌々日の十五日ににわかに仮処分の申請を取下げられておりますが、それはどういう事情で取下げられたのでありましようか、それらの点を順次御意見を聞きたい思うのです。隊長から……。
  142. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 併しこれは冒頭に申上げましたように結論はいろいろ出ておりますが、私どもの本意はできるだけ当日におきましても、最後の最後まで妥結の道があつたら円満解決をしたいということが私の本旨であつたのであります。それがために十三日に原田さんがお見えになつたことも伝えまして、農民のほうにも労働者側も実力行使はなるべく回避して、そうしてできるだけ円満な交渉に最善の努力をしてくれということを言つておるのであります。併しながら情勢緊迫した場合に止むを得ず他に途のないときは、ピケラインを排除しても止むを得ないという命令署長に出しております。併し私の本旨としては労働者農民と直接対決さしてよく討議をさせるということは、大きな事件の起ることを、警察では未然に防止するという意味合におきましても止むを得ずやつた措置である、現地指揮官が私の真意を無視してやつておるとは考えませんが、私としては最後の最後まで努力をしたいということを指示しておりましたことは、今朝来述べさして頂いた通りで変りはないのであります。止むを得ずしてあの段階に入つたということで、私は現地指揮官としての情勢判断は止むを得なかつただろうかと考えております。
  143. 秋山長造

    秋山長造君 そうしますと隊長のほうはそういう御意思で終始指揮に当られたわけなんですね、ところが伝単を見ると最初から県購連その他の要請によつて出動されたということははつきり書いておられるのですが、県の本部と現地署長との間に意思の疎通を欠いていたと申しましようか、出動なさつた動機等について大部隔りがあつたように思いますが、この通りなんでしようか。ここにはつきり書いてあるのですが……。
  144. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 実はこの町民え撒きました伝単は、組合員に対して警告した内容をそのまま一般啓蒙宣伝に使つたというような手落があつたわけであります。これはやはり警察署長のこう最初から考えてやつたという意思ではないと考えております。それと同時に伝単ということと現地警備隊との意思の疎通につきましては、私自身も斎藤署長と直接電話取引をしておりますから、そういう意思の疎通はないことはなかつたと考えております。現地情勢灘というもの集かく困難でございまして、そこにおいて若干の第三者から視察を頂いた場合には食い違いが出て来る問題があつたかと思いますが、私どもといたしましても現地の者と直接取引をするというようなことが多いものでありますから、意思の疎通はしておると考えておるわけであります。
  145. 秋山長造

    秋山長造君 現地情勢判断とおつしやいますけれども、まあ情勢判断ではないので、警察出動の目的なんですから、これははつきりと最初から知つているはずなんですけれども隊長のほうはそういうお気持つたかも知れないけれども、ここでは文書にはつきりと書いて、而も二千何百枚配つておられるということになれば、やはり一般町民なり、又それを今日にする我々といたしましても、当日二百何名の武装警官が出動したということは、初め から県購連やその他の要請によつて、一方的な要請によつてピケラインを排除するために出動したのだという判断をせざるを得ないのでありますけれども、その問題はその問題といたしまして、今隊長がおつしやるような意思ならば、やはり特にこの伝単の中には、先ほども栗山さんからいろいろ不十分な点の糾明がございましたが、警察はあくまで正義の保護者で、而も厳正公平な立場だということを印象づけられるために配られる伝単でありますならばなおさら、特定の人の要請によつて、二百同名の武装警官が出動というような文言を書かれるというようなことは、ちよつとおかしいと思うのです。そういう点についても一つ隊長のおつしやる通りでありまするならば、案外署長の書かれていることが本当かも知れませんけれども隊長のおつしやることが本当ならば、やはりこういう点は今後これは大いに気をつけて頂かなければいかんと思います。
  146. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) 私のほうでは再三要請を受けました場合にも「要請者に対しまして十分警告しております。あなたがたが要請したから警察が出るとは限らない、要請しなくても出るときは出る、これはすべて我々の治安担当者としての情勢判断をして出るのだ、で警察に言いさえすればいいというようなことでおつては困る、あくまで円満解決を図つてくれというようなことは、私は何回も繰返して申しおります。要請があつたからどうだというようなことではない。
  147. 秋山長造

    秋山長造君 ここにそう書いてある。
  148. 斎藤次夫

    参考人斎藤次夫君) これは、それでさつき隊長からも申上げましたが、ピヶ・ラインを解くというような、そこにも資料として出ていると思いますが、紙を貼つたわけであります。この場合にも私のほうで今になつて考えまする場合に、不測の面も起るかも知れませんからというようなことを書けばよかつたのですけれども、私のほうはピケラインを解いてもらいたいというようなことで、こういう文面になつたわけであります。
  149. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 御質問にお答えします。十三日の朝豊川農協で集合して、それに四百人ばかり乗つてつたか、こういう御質問でございます。十三日の朝豊川に集合いたしましたトラックは十六台でございます。一台は反対の佐敷町から直接鏡町に来ております。それでその十六台のトラックに、一車に十人乃至十五人が乗つてつたわけでございます。それは勿論各地区の警察に、定員外の申請をして許可を受けているわけであります。それであと四百名、五百名という数字になりますが、これは先ほどからお話のありますように、自転車、バス或いは汽車で来た人が相当多かつたわけであります。まあこちらの数より多かつた、このかたが、顔見知りのかたもありますが一緒にトラックに乗つた、いわゆる高いところから見物した。こういうことでトラックに乗られたというようなことになつているのでございます。それから四百名集めて平和的に解決する、こういうふうな気持があつたかということでありますが、これは勿論平和的に一つ出荷の要請をしたい、これはあくまでもそういう気持でございました。それは先ほども申上げましたように、九日の日は晩の九時までねばつて要請し、更に十一日は三時頃までお願いしましたが、結局お聞き入れがなかつたために、私はそれではいけないというので、隊長、専務の来所を求めた。なお十三日におきましては、十時頃から二時頃までお願いしたわけでありますけれどもが、出なかつた、こういうわけであります。
  150. 秋山長造

    秋山長造君 ちよつと今の飯田さんにもう一度お尋ねしたいのですが、初めの豊川村に集結したというのは、トラック十六台なら十六台で結構ですがね。十六台でどのくらい乗られて、恐らく一台へ随分乗られたのだろうと思う。相当数の人が乗つて行かれたわけですから、その場合に当然、普通トラックで大勢人が乗る場合には、制限外乗車の許可を得なければならない。そういうことについて警察へ御連絡になつたかどうか。又そのときに警察のほうがどういう返答をしたかということをお尋ねしたい。  それからもう一つ、あとのほうの問題は、平和的なということは勿論農民のほうが初めから、あれは血の雨を降らそうと思つて行かれたわけじやないだろうと思います。だけれども、ただ指揮に当られたあなたがたが、こういうように事態が非常にこじれてむずかしくなつておる争議現場で、そういうような余り詳しい事情をお知りにならん多数の農民の人をトラックへ積んだり、まあいろいろな方法によつて押しかけたということが、この場合に事態を打開する最善の途であつたとお考えになつたかどうかということをお尋ねします。
  151. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 第一問は、警察定員外乗車の問題で、警察に連絡したかしなかつたかという問題でありますが、これは電話で以てこの支部のほうにそういう場合はその地区の警察に定員外乗車の申請をして、その許可を得る、こういうようなことになつております。
  152. 秋山長造

    秋山長造君 じや許可を得たかどうかということは御存じでないわけですね。
  153. 飯田次人

    参考人飯田次人君) それは皆許可を受けております。
  154. 秋山長造

    秋山長造君 許可を受けているのですか。
  155. 飯田次人

    参考人飯田次人君) おります。これは何ならば各地区の警察のほうに御照会頂いても差支えないと思います。  それから我々が指揮をとつたということで、多数の農民が行つて、どういうような緊迫状態であつたかというようなお尋ねのように考えましたが、その前の九日はそういうことがなかつたのでありますが、十一日には農民に渡す、こういうお話でありましたから、農民を連れて行つたに過ぎんわけであります。そういたしまして、実際集る数量は、これはもう一方的に支部に連絡しただけでございます。どれだけ集るかはつきりわからなかつたのでございます。併しながら、集つて来た者は、これはトラックに乗つた者が、一台に十人乃至十五人、それからそれ以外に汽車或いはバス、或いは自転車で来た者も合せますと、四、五百人に達する、こういうようなわけでございます。
  156. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) 只今御質問の仮処分の問題でありますが、この主文をもう一回申しますと、被申請人組合は申請人会社が八代郡鏡町所在申請人会社鏡工場より化学肥料搬出する行為を妨げてはならないこういう主文であります。四月一ぱいは実に出荷について組合側と団体交渉いたしまして、その前にも業者のかたが交つたりいろいろ方法をとつたのでありますが、結局これはどうしても肥料を出すときに、ストライキ中であつて肥料を出すということが合法的であるという何か法的な証明がないととても出せないだろう、こういう感じを受けまして申請したわけなんであります。ところが実際に五月二日にその公示をしたところが、余り効果がなかつたのであります。これで事実出ておらないのです。そのことから十三日の事件が起きたのでありますが、結局仮処分の効果は余りないということから、こういうことでストライキ中に争うことも何だと思つて、十五日に実は申請を取下したのであります。それからもう一つ仮処分の許可が下りて、団交をサボつたのではないか、こういう御質問でございますが、実は仮処分の公示がありましてから、すぐ大阪に会議がありまして、これに工場長も同道ということでしたので、実は五月の七日まで私は不在しておりました。その間にいよいよ緊迫して参りまして、その後も依然として出荷に関しては組合とよく話合つておるつもりなんであります。
  157. 秋山長造

    秋山長造君 そのことは会社のほうではまあ一刻を争うということで、あえて仮処分の申請をなさつて、そしてまあそうなると非常にむづかしい労働争議を一層労組の感情を刺激し、又一層むづかしくしただけで、すぐ仮処分をそうまでしてしたところで、何も実効は伴わないとこういうことが分つて取下げられたこういうことになりますか。
  158. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) 一口に言うと、そういうことになります。これは実は工場内部では殆んど組合と団交することは済みまして、残つた問題は四月下旬以来出荷問題だけになつてしまつたのであります。それを何とか出荷を組合と協力の下に出したい、こういうことからいろいろやつたのでありますが、これがまあことごとくだめになりまして、それで仮処分によつて一応合法性を認めてやつたんでありますが、今お話の通り、五月二日に出しまして、その間に私が不在ではありましたけれども、いろいろな都合でトラックがなかつたりして、その間二、三日来なかつたのであります。それで大阪から急いで帰りまして、次に如何にして肥料を出すかということについていろいろ組合とも相談しましたけれども、依然として組合の態度は仮処分というものはそう厳重なものではないのだというような見解もありまして、結局仮処分だけでは出ないということがはつきりしたのであります。それで本社と非常に離れておりまして、工場幹部も少ないので、仮処分の問題にかかわつていては、到底出荷ができない。こういうことから一応十五日にそれを申請を取り下げたというような状態になつたんであります。
  159. 藤本信義

    参考人藤本信義君) 只今工場長のほうからお話があつたんですが、仮処分の問題について実効がないということを事前にわかつておきながら、そういう実効の伴わないところの仮処分の決定に対して、それでは何故十三日のようなああいう問題が惹起しておるのに対して傍観して見ていたか、取り下げるような考えである仮処分であつたならば、なぜわざわざ十五日まで延ばして、十五日の公判で取り下げたかという点が第一点と、第二点は十五日の公判におきましてこちら側の、組合側の弁護士の質問に対して、会社側の弁護士がこれに対するところの釈明回答というものが、甚だ当を得ないところのものであるし、理論的の根拠も何もなされていない。又勤労の担当係者もその時出席しておつたのですが午前中そういう問題でやりまして、午後証言の段階に入ろうとする直前において、色真青になつて倒れるというような事態になつて、こちらのほうにも取下げの要請をして来たような事情なんです。そういう点についてもやはり十三日と十五日のそういういきさつ、又十三日以前のそういう取下げる実効の伴わない仮処分に対して取下げる意思があつたのに取下げなかつたために、十三日のようなああいう不祥事態もより以上に大きな問題に移つてつたということも言えるのじやないか、かように思うわけなんです。
  160. 秋山長造

    秋山長造君 実は私も今藤本委員長がおつしやつたような感じを持つのでありますが、いささかやはり会社のほうがうろたえて仮処分を急がれて、結果的には却つてそのために十三日のような不祥事を惹き起した一つの原因になつておるというような感じを持つのでありますが、同時に又裁判所にいたしましても、大体労働争議なんかの場合の仮処分というのは、よほど慎重にやられるのがこれが常識でありまして、又この場合は会社側の一方的申請だけで組合側の疏明も聞いておらねば、口頭弁論の機会も持たないで、軽軽に仮処分の決定をやつたという熊本の裁判所のやり方もいささか軽率であつたと思うのですけれども、そういう点についてどうお考えですか。
  161. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) 実は私の法律的な知識のないことを暴露するようで甚だ恥かしいのでありますが、仮処分というものについてそんなはつきりした認識のなかつたことをここで告白いたします。それで法律的にはつきり出荷の合法性が認められるならば、組合はこれについてその出荷の方法は協約に謳われておる範囲内でありますが、出してくれるだろう、こういう考えの下にやつたのであります。それが私がまあ不在、五日間不在したのも悪かつたのでありますが、そうしたことからぐずぐずしておりまして十三日の事件になり、而も仮処分の問題について十五日に公判がある、こういうことから実は勤労係長の武田を出したのでありますが、この件について弁護士と相談してその件については一応電話で連絡をとつて君に任すからと、こういうことで出したのであります。それで私としては実際効果のないものならば、こういうことを言つていいかどうかわかりませんが、効果のないものならば取下げても止むを得ない、こういう考えでいたわけであります。  それからもう一つお願いがあるのですが、営業に関する件につきまして、これは委員長に申上げますが、ここに下関の営業所の肥料課長がおりますので、一つ発言をさして頂きたいと思います。
  162. 内村清次

    委員長内村清次君) 今の問題ですか。
  163. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) そうです。それに関連した問題でありますので……。
  164. 内村清次

    委員長内村清次君) それではこの際特に小杉良和君を参考人として意見を聞きたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 内村清次

    委員長内村清次君) では小杉良和君の発言を許します。
  166. 小杉良和

    参考人(小杉良和君) それでは只今から営業の点につきまして申上げますと、御承知通り肥料のことを主として十三日の問題について肥料交渉についてでありますが、系統機関との契約というものは、中央において全購連と私どもの本社において契約が結ばれたものであります。従いましてこの限月別について契約しましたものの決定がありますと、これが直ちに全購連の福岡の支所並びに会社の営業所でありますところの私どものほうにこの通知が来るわけであります。これによりまして更に現地における実務の取扱として営業所から福岡支所に対しまして契約の写しを交付する、なお一切の指図、或いは出荷の受渡方法その他につきましては、現地の機関でありますところの福岡の全購連の支所とそれから営業所が一切これを任されてやつておるわけであります。従いまして十三日の出荷の当然の権利、所有権というものにつきましても、当然商行為による契約書を取交しまして、それによつて先方の指図により、先方の希望する場所においてこれを渡すということが従来の慣行になつておりますので、従いまして全購連に対する指図というものは、全購連が各単位農協らこれを取りまとめてやるわけでありまして、単位農協は更にその組合員であるところの農家のかたがたの希望数量を取りまとめてこれを指図して会社に持つて来るという段階になつておりますので、実質的に肥料の受渡しというものが農協の車、或いは県協連の車で取りに来るわけであります。而も工場における出荷の実際というものは、そうした指図に基きましてはつきりとこの肥料は全購連の分、これは商社の、どこそこの商店の分ということを明示をいたしておかない場合でも、当然その指図を以て取りに来、或いは貨車積のあつたときは当然これに引渡す義務があるわけであります。そういつたことで工場の引取りの場合におきましても基準の契約といたしましては、貨車積の着レール渡し幾らということでやりますけれども荷主の都合によりまして、受渡しの条件の変更というものが適宜随時に全購連の支所と営業所の話合いによつてこれは行われるわけであります。なおこの受渡しに関連いたしまして、実は私も肥料公団の業務のほうをやつておりまして、それから実際に戻つたわけでありますが、肥料の統制中といえども、或いは統制が撤廃になりました今日におきましても肥料の配給ということが如何に農家にとつて大事であるかということは、恐らく皆様がた十分おわかりのことと思うのであります。而もこの適期適量の肥料が間に合わないということになれば、これは折角国の食糧増産というような大きな方針を実行するに当りましても、支障が起きて来るということは当然過ぎることでありまして、なおまだ肥料の時期に至つていない、切迫してからその時期において肥料を渡せばいいという問題もあるようでありますが、御承知通り工場の生産能力というものはこれは一定しております。而もこの時期において工場の生産力を二倍も三倍も急激に上げるということは、これは不可能なことであります。それから又輸送の能力におきましてもその日におきまして、急激にその肥料だけを二、三日で出してしまうということは、これは常識で考えても考えられないことであります。従つてそこにおいては前以て計画をいたしまして生産をし、なおこれに基く出荷をするということが、時期的に全部の農家のかたがたに肥料が間に合うという方法になるわけでありまして、この肥料の出荷問題、或いは時期というものは、なるほど田植に適する時期というものはこれは一定しておりますけれども、それには事前にそれだけの準備が要るわけであります。こういつた点もいろいろお考え頂きましたならば、当時の十三日における強行出荷というものも止むに止まれず取りに来られた。又会社の営業面を担当いたすものといたしましても、当然荷主がいわゆる平生であれば工場に取りに来られた場合でも、トラックにまで肥料を積んでお帰しするのが建前でありますけれども、それだけの手が不足をしておる、然らばどうすればいいかというような相談もありましたので、上乗りを連れて工場肥料を取りに来て頂きたいということで、十三日の、農家のかたがたもむしろ……。
  167. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと……。簡単に願います、要点を。
  168. 小杉良和

    参考人(小杉良和君) ……むしろそうした上乗りとして自分たち肥料を取り出すということで見えたわけでございます。
  169. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと、今、工場側から上乗りを要請した云々ということでございましたから、工場長にお尋ねをしたいと思つておりました一点を伺いたいのでありますが、そうすると、十三日、或いは日通なり、或いは日星産業、それから県販連等おいでになつたのでありますが、今の営業所のかたのお話では、上乗りを要請したというお話もありますし、十三日の強制出荷が、工場側要請によつた、或いは打合せによつたということが大体明らかになつたように思うのでありますが、工場長、その点はお認めになりますかどうか。
  170. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) 私は、十三日の出荷のあれについては、相談を受けておりません。実は、今度の争議において、工場は、非常に人間が、幹部側として少かつたものでありますから、いよいよ切迫したとき、小杉課長に応援を願いまして、営業部門に関する面を一切担当してもらつたのであります。
  171. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、工場長さんの御存じない間に、営業部門は、先ほどの下関営業所のかたのお話では、営業関係として上乗りを要請した、こういうことで、強制出荷に日通、日星産業、県販連等おいでになつたことは、会社側の要請もあつたという点を先ほどの証言で得ましたことを感謝いたしまして、あと警察のほうにちよつと伺いたいのですが、その十四日の朝、鏡町に撒かれたビラの点から入りますが、今のような御説明もあり、それから、御解釈によつて、自分が買つた、或いは自分の所有になつた肥料を出すのに何の遠慮することがあるだろうか、それを防止しようとするのは、それはスト権の範囲外である、こういうことで、業務妨害罪だと、こういう構想が警察官実力行使の基礎だと思われるのですが、そのビラの中にあります、自己の所有となつた肥料を云々というように書いてありますが、警察ちよつとお尋ねをするのでありますが、売買契約は、これによつて出て来るものは、債権だということは、これはもう私どもがここでとやかく言わなくても御存じのはずだと思う。引渡の債権債務ができた、所有権の移転は、引渡なり、占有の引渡云々だろうと思う。そのくらいの御常識は恐らく隊長さんも署長さんもお持ちだろうと思う。その債権契約を履行を求める際の行為が業務行為というように判断せられました理由を伺いたいと思います。例えば、私どもが店から買いまして、或いは金を払つてつたにしろ、この場合には、供託処分ということで金はまだ引渡は済んでおらなかつたようでありますが、売買契約だけはできておつたということははつきりしております。店先で買い付けましたものも、その店の戸を破つて入れば、或いは器物毀棄罪も生ずるかも知れませんし、或いは家宅侵入罪も生ずるかも知れんと思うのですが、これはまあ警察としてそういう事件が起りましたら、恐らくお感じになるだろうと思う。実力を以て引取るということについては、警察としてはその実力行使についてそれに疑問を持たれることはあつても、私、それを合法なりとして搬出者の要請に基いてやることが、業務妨害罪……、何と言いますか、それを阻止する者を業務妨害罪として強制出荷のために警察権を発動されるという点がどうしてもわからんのであります。その点を伺いたい。  それから、先ほどから聞いておりますと、このビラに書いてあることと、或いは隊長警察署長が考えられておつたこととは、大分実際において違いがあるように思うのです。それは、血の雨を降らせてはいかんと、そういう事態を起しちやいかんということを繰返し言われた。むしろその点に、隊長なり何なりの意図の主眼があつたように思うのでありますが、そういたしますならば、仮に強制出荷なり、或いはそれを阻止しようとしたピケといつた問題について、合法、非合法ということを厳密に解釈しませんならば、それを一応おきますならば、これは血の雨を降らさんためには、双方を抑えると申しますか、或いは双方の実力的な対峙を排除するというのが、私は警察行為の当然のあるべき態度ではなかつたかと思うのであります。そういう意味のことを、先ほどあの人は引離すということで私は言つたんだろうと思うのでありますが、どうしてそういうことをおやりにならなかつたのか、その点を一つ隊長さんなり或いは署長さんなりに伺いたいと思います。
  172. 小林利吉

    参考人小林利吉君) もとより私どもは、先ほどおつしやいましたように、十三日の状態といたしましては、成るべくは実力行使を排除するというこれは目的を持つてつたのでありますが、併しながらこの手段といたしまして、最後の段階に入りました場合におきましては、どうしてもやはり警察といたしましては、実力行使といたしましては、業務妨害というものの非合法性を認識した上の警察行動でなければならないと考えていたのであります。その今まで日産鏡工場へ取りに行つておられます有佐の日通の支店並びに日星の会社のほうの搬出状況というものから考えまして、当然通常業務を行なつておられた会社直接の職場のものではなくて、契約に基いて搬出しておつた状況等も詳しく具申をいたしまして、そうして果してこれが非合法性のものか、これを妨害することが業務妨害になるか、又これをピケで阻止することが妨害になるかどうかという点までその実情を具して上局のほうに指示を仰いだのであります。で、その場合における鏡工場のそのピケラインの実体は、やはり業務妨害になるという積極的な指示を得ておるので、私どもはそういうような観点で業務妨害という点を言つたのであります。
  173. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は一番問題になるところであると思うのであります。どれが業務か、どれが業務妨害かどうか、これはここでもつてあなたと争おうと私は思つていない。そこでその点は別に御質問申上げる、御論議を申上げることがあると思いますが、まあ隊長としては、具体的な状況を具してお指図を仰いだところが、国警本部も或いは検察庁もその引取ること自身も業務であるし、それを阻止するのが業務妨害罪になるだろう、こういうお話であつたから渡した。こういうようなお話でありますが、そこのところを、先ほど私は、実は店の物を買つてそうして家の中に入ろうとするときに、実力行使実力を以て入る場合に、そういう場合には警察としてどう考えるか、これは常識的な、法律についての常識、これ警察ですから、いろいろのこういう問題についての判定はなかなか困難だと思いますが、一応常識はお持ちだろうと思いますので、私は所見を異にいたしておりますが、その点を争うのではなくて、会社側がそういう行為をされるというときに、引取り云々という場合に、それが工場の前でピケを張つております者について、それが業務妨害罪になるとは私は思わないのです。併しそこを争おうとは思つておりません。常識的に考えられて、そこの中に介入される際に疑問が若干残り、そうして若し隊長なり或いは警察の主眼というものが流血の惨を避けたいということであるならば、片方だけの言い分のために実力行使をするというのではなくて、双方を排除するのが私は流血の惨を除く一番合理的な、合目的的な私は手段方法ではないかと思う。それを出荷を要請するというか、その搬出者の意向だけを酌んで実力行使をされるという点は、これはあなたたちの意図にも反するのじやないか、或いは反したのじやないかと、こういうことを実はお尋ねしているわけであります。
  174. 内村清次

    委員長内村清次君) 何か答弁ありますか。……それでは寺本君。
  175. 寺本廣作

    寺本広作君 私は先ほどから伺つておりますと、事実関係は相当程度はつきりして来たと思います。なお多少の食い違いはありますが、大体事実関係はつかめたと思います。この事件の本はやはり労働組合、国警並びに販購連、この関係者の間において法律解釈の食い違いから起つておるという問題であると思います。将来ともこういう点がはつきりしなければこういう問題の絶滅は期しがたいと思います。先ほど組合側の御所見を仮処分の決定と労調法七条の関係で関連して伺つたところが、この点についてはただピケラインを張ることは労調法七条でいう罷業、怠業その他の行為それに当るものと思うという答弁があつただけで、組合側の御所見もまだ承わつておらない。それで改めて一つ伺いたいと思いますが、組合側ではこの鏡工場から肥料を引取つておる。従来引取つてつて、それからこの事件でも引取りに行つた白通であるとか、日星であるとか、それから販購連であるというものを争議関係では第三者と考えられておられるか、争議の労働関係の当事者と考えておられるか、この点を一つ伺いたい。
  176. 藤本信義

    参考人藤本信義君) お尋ねの点は、日星産業、販講連のことを指しておられるのですか。
  177. 寺本廣作

    寺本広作君 そうです。肥料を引取りに来られたかたを第三者と考えられておるか、争議当事者と考えておられるか。
  178. 藤本信義

    参考人藤本信義君) これは争議の当事者ではない。
  179. 寺本廣作

    寺本広作君 そうすると、労調法第七条でいう「業務の正常な運営を阻害する」ことが争議行為として定義されておる。これは労働関係の当事者が行う業務、こう一般に解釈されておりますが、この場合は第三者の正当な業務を阻害する権利が労働組合にあると、こう解釈されておるかどうか。労調法第七条で保護されたその定義の中に入る行為であると考えておられるかどうか。
  180. 藤本信義

    参考人藤本信義君) その点について先ほども触れました通り争議の一環としてやつている問題であるし、当然この問題からしまして我々としては賃金を五十数日の間放棄して、そうしてストライキに入つている以上、組合としてはこのストの実効を確保するためにも、肥料搬出されそうになつたら、それを妨げるのは当然である。一般的に言つて、使用者を商品市場から切離すためのピケツテイングは、我々の長い闘いの中から合法性をあらゆる判例から認められておる。従つて会社の取引先、その倉庫から肥料搬出しようとするような事態が起れば、組合員がそれを妨害してピケを張るのは法律に触れる問題ではない、かように思つております。
  181. 寺本廣作

    寺本広作君 今のお話を承わつておりますと、肥料の引取り、引渡しというのは、第三者が行う行為であつてもやはり会社の譲渡行為の一部であると、こう解釈しておられるわけですね。先ほどの仮処分の決定との関係でそれを承わつておるのですが、その仮処分の決定では、会社の譲渡行為妨害してはならん、こう書いてあるが、第三者の引取り行為妨害してもいいと、こういうふうに解釈しておられるのですか。今のお話ですとそこのところはやはり会社の譲渡行為の一部であると考えておられるようですが。
  182. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと議事進行について。御議論に亘ります点は一つ……。
  183. 寺本廣作

    寺本広作君 この法律問題について組合の見解を伺つておるのです。
  184. 藤本信義

    参考人藤本信義君) それでこの問題は、倉庫からそういう肥料搬出する場合は全然組合員を要しなくして肥料が出せるかどうかという問題がやはり提起されて来るのではないかと思います。すると。日常の場合、肥料を出荷する場合は当然これに対しての組合員の立会い又は伝票の整理、そういうものが組合員によつてなされておりますし、且つ又そういう組合員の立会い、伝票の整理等がなされなければ肥料搬出できない。すると正当な争議行為をやつておることにおいて肥料が果して出せるか出せないかというような問題もありますし、又その後肥料搬出されました十三日以降搬出することを我々が認めた際におきましても、肥料搬出に当つて組合員を出しております。又十三日当日においては非組合員の課長並びに下関営業所の小杉肥料課長がこの肥料の出荷の問題について現場で立会いをやつております。これは労働委員のかたたちも、おられると思うので、この点はやはり疑問点があるのではないか。結局組合員の職場領域を侵したことになるし、一つの不当労働行為にも及んで来る問題ではないかというふうに私としては考えております。そういう点から只今質問のありました第三者との関係というものがやはり基本的な争議行為の問題とからんで来ておるという点をお話ししたいと思います。
  185. 寺本廣作

    寺本広作君 非常に大事なところだと思うのです。今の日通、日星の引取りが、労働組合の当事者が労務の提供を拒否したあとにおいては正当にはなし得ない。それがスト破りに類する行為であると、会社のほうに伺いたいのですが、こういうように解釈しておられるようですが、その点労働組合がその伝票を切るとか、そういう労務の提供を拒否した場合には、通常の肥料の引渡しはできないものであるかどうか。
  186. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) 無論ふだんの通りの方法ではこれはいろいろな人間が入つてできませんが、これを課長に代行させますれば、不完全ではありますができます。これは多少数の違いがありましても、私が責任を持てばいいことでありますから、ふだんのように完璧にはできないでしようが、課長一人でどうやらその書類は或いは肥料の処分ができると思います。
  187. 寺本廣作

    寺本広作君 それでは肥料の引渡し任務は非組合員でやれるのであつて、外から引取りに来た日通、その他の引取人を組合員が従来やつてつた仕事に従事させる。そういうものではないのですか。
  188. 宮崎敏郎

    参考人宮崎敏郎君) そういうものではない。
  189. 寺本廣作

    寺本広作君 それではなお続いて伺いたいと考えます。十三日の事態を先ほどから伺つておりますと、どうもピケラインが説得の範囲を超えて行われていたのではなかろうかという印象を私は受けます。それでその点組合気持を伺つておきたいと思いますが、五月に入つてピケラインを張つて、何度も引取人が引取りに来た。併し説得をして帰つてもらつた。こういう事態であつた。十三日には説得をしても引取人が聞き入れそうにもない事態であつた。先ほどからの皆さんの証言を聞いておると、それで十三日に組合ピケラインを張つてつて肥料を引取らずに帰つてくれという説得をして、その説得に引取人が応じない場合は、ピケラインを通過させる意思であつたか、それともその説得を聞かなくても通過させない意思であつたか、そこのところの組合員気持を伺いたいと思います。
  190. 藤本信義

    参考人藤本信義君) 只今の質問によりますと、そういう説得行為の域を脱したような印象を与えたというようなことを言われておりますが、印象だけの問題でこれを解決してもらつては困るし、そういう事実があつたかどうかという点をはつきりしてもらいたい。それからその点については写真にもちやんと出ておりますように、十三日までには全部取消して、八日までには全部説得行為を以て、ピケラインを張つたこともないし、平和的な交渉をやつて来ております。
  191. 寺本廣作

    寺本広作君 それでは問題を変えて伺いましよう。十三日の事態は写真で拝見し、皆様の証言を聞いたりいたしますと、門のところに組合のかたが数列に亘つて後向きに坐られた、その行為は恐らく説得行為ではないじやないかと思いますが、如何ですか。
  192. 藤本信義

    参考人藤本信義君) 初め十三日の日には前の日には立つてピケツトを張つてつたのですが、これによつてどうしても話合いが進まないそれで前向きになつておれば農民と、農民並びに警察とすれ合う程度の近付きをしておりましたので、一応この問題については後向きにさして、そしてその間先ほどいろいろ出されおりますように、工場内において警察それから業者、販購連、組合、会社、あらゆる代表が集つて、何とか平和的に話を進めようじやないかということで交渉もしておるし、それから先ほど申しました通り何とか十五日までに待つてもらえれば出すというようなことも言つているし、それから販購連の幹部の人たちが来られましたときにも、こういうふうな団体交渉の席上において、席上から窓の外に見えていたトラックの上に乗つている農民の人たちを指さして、あのトラツクに乗つている十名の人たちを連れて来てくれ、話合つた上で、どうしても必要だという話があれば、私は今すぐ出してもいいというようなことをはつきり言つております。それに対して誰を連れて来ても同じだ。話合いの必要性はない。問答無用式な態度で席を蹴るし、こちらの言い分を全然聞かないというような態度に出て来ましたので、こちらとしても万止むを得ずああいう形になつたわけなんです。
  193. 内村清次

    委員長内村清次君) 寺本君、何かございませんか。それでよろしうございますか。
  194. 原田英男

    参考人原田英男君) 寺本さんの御質問を聞いておりますと、一つの仮定の上に立つて御質問をされておるように考えられます。この際ピケをただ機械的に抜き出して合法であつたかどうかという質問でなしに、農民暴力を以てこれを排除しようとした。そういう形の中でのピケが、どこまで我々として権利を守る闘いとして、どういう形にならなければならなかつたかということから判断して頂きたい、こういうふうに考えるわけです。
  195. 寺本廣作

    寺本広作君 支部長さんに伺いたい。失礼ですが、このピケの合法の限界に関するいろいろの判例があることは御承知でしようね……。
  196. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどお尋ねをいたしまして、隊長、所長から御答弁頂けなかつたのですが、ビラの中の自己の所有となつた云々という点は、これは間違いだという点はどうですか。お認め頂けますか。
  197. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 自己の所有になつた……。
  198. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは間違いじやないかということをお尋ねいたします。
  199. 小林利吉

    参考人小林利吉君) このビラの書いたやつですか。正直に申しまして私はこの原文を作りましたときの気持がよく呑込んでおらないのでありますが、実は正直に申しまして、この伝単の内容については事後報告を受けましたのですけれども、先ほども栗山さんからお叱り受けましたように、実はそのビラの書き方というものは、警察の考え方としてやはり反省考慮を要する余地がある。これについては研究いたしまして善処せよと栗山さんも言つておられますから、そういうふうにいたしますから、この伝単の問題は一つ御勘弁をお願いしたい、かように考えております。
  200. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじやもう一つお尋ねをいたしたいのですが、隊長さんでも所長さんでもかまいませんが、これはこの伝単の文字を問題にしているのではなく、所有権が移つていますからそれを引取るのは業務行為だ、こういう考え方に立つているから、そこで所有権の問題が問題になるわけです。そうすると引取行為が正当の業務であり、そしてそれを防衛するのは業務妨害だ。こういう点はやはり今でも思つておられるのですか、それとも先ほど所有権云々ということを申しましたが、所有権が移つておらなければ或いはその引取行為については疑問が残る。或いは業務妨害云々に対しても疑問が残る、こういう工合にお考えになるかどうか。こういうことを聞いておるのです。
  201. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 私どもといたしましては大体契約が出来ておつて、通常の状態で、いわゆるその日通とか全販連というものは、第三者的な業務であるという考え方をしておりますので、それで業務妨害が成立をするという考え方の下に考えておつたのであります。又そういう考え方を持つております。これは法律的な専門的な問題でありますから、むしろ皆様方で御承知願わなければならん点があると思いますが、私どもはそういう解釈をとつております。
  202. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一点、この業務であるかないかということがまあ問題になりますが、その引取りについて警察権を以てそれを援護と申しますか、代行すると申しますか、実力行使をなされたわけであります。その実力行使警察として今から考えましても正当であるとやはり考えておられるのかどうか、或いは前の段階がいろいろ疑問が起つて来るならば、その警察行動についても行き過ぎがあつたのではなかろうかという工合に考えられますかどうか。その点を重ねて伺いたい。
  203. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 私どもといたしましては当時の情勢からいたしまして、このピケライン実力行使によつて排除をいたしましたことは、必要最小限度の止むを得ない措置であつたと確信をいたしております。
  204. 加瀬完

    加瀬完君 私はさつき質問を保留しておつたのでありますが、問題が又私の質問に帰つて参りましたので、重ねて確認をいたしたいと思うのでありますが、只今熊本国警隊長のお説によりまするとあの場合の事情としては止むを得ない、合法であつたというふうなお話でありますが、法の適用上間違いがなかつたかどうかというような御反省の、失礼な言葉でありますが、様子はさつぱり見えない。そこで私がさつき申しましたように、これが業務行為として正しいかどうかというふうな見解をもう一度繰返さなければならないような立場になつたのでありますが、吉田さんが先ほど質問されましたことについて隊長からお答えもありましたし、そのお答えの中に、これは国警本部とも打合せの後にとつた行動であるという言葉がありましたが、この前の委員会の折に、肥料搬出行為は会社の正当な行為であり、これを阻止することは正当な争議行為ではないから、それを妨害してはいけないという裁判所の仮処分の決定もあることでありますから、このピケツトは妨害行為であります。と、こういうふうに国警本部は見解を表明いたしておるわけでございます。そういたしますとこれでは仮処分の決定というものが、業務行為を裏付けているような解釈が持たれますし、その業務行為というものが只今いろいろ参考人のほうから述べられたような状況の下に行われておりますことを、国警の本部では正しい業務行為判断をなさつておられるのかという問題が生ずるわけでございます。それらについて若しも言葉尻を押えて重ねて失礼でありますが、熊本隊長意見をそのまま進めるならば、吉田さんからも出ましたけれども、一商店の場合金銭支払が済んでいるならば品物をよこさない場合、債権者が押寄せた場合は、警察はこれを保護するという一つの方法が成り立つわけであります。こういうことをどこでも行なつていいかということが成り立つわけでありますが、こういうものの考え方が、よく常識と隊長おつしやいますが、常識的に考えられるか。こういつたような疑問もあるわけであります。そこで私は委員長にお願いするわけでありますが、ここで隊長と水掛論をしておつても仕方がありませんから、私どもの考えるような法の解釈が正しいのか、隊長さんが考えているような業務行為が正しいのかということを第三者の権威者に判断をしてもらいたい。そういう措置をとつてもらいたい。
  205. 内村清次

    委員長内村清次君) この点は先ほど加瀬君の質問の中にも相当法律的な問題がございました。現地の公述者のほうでは法律的な論拠に対しましてはなお委員長といたしましては薄弱なような点も伺つております。でこの問題は委員長として取り上げまして、又中央の国警隊長意見も又総合して行かなければならんし、或いは又理事のかたがたとも相談し、委員のかたがたとも相談をいたしまして、第三者のその法的な権威者の意見を聞くかどうかということにつきましてもあとで又御相談を申上げることにいたします。
  206. 吉田法晴

    吉田法晴君 ただ一点今の場合国警本部言つておりますのと、それから警察現地側の態度との問に食い違いがあります。それは会社側の搬出行為を業務だと国警本部言つておるのに対して、現地のほうではそうじやなくて日通それから目星産業或いは県販連等が引取りに行くことをこれを業務として認定している。それの妨害を云云、こういうことになつているのですが、その点食い違いがある。このことを明確にしておきたいと思います。  それから県に実はお尋ねしたいのですが、労働部長は県会があるから御出席願えないということですからその点は了承しなければならんと思うのでありますが、これだけの問題について責任者がお出にならんという点は、私は県として誠意が足らんと申しますか、責任を尽すゆえんではないと思うのですが、それを今やかましく申上げても仕方がございませんから、お出になつておる係長さんにお尋ねする以外にはございませんが、第一に争議それ自身の解決についてどれだけ県が或いは県の地労委が努力をされたか、それを第一に伺いたい。それから十二、十三日に労働部長現地に行つて努力されたというのでありますが、平和的解決のために努力したと言われますが、部長は十二日の晩帰つて来て十三日の早朝になつてつたかも知れませんが、隊長実力行使止むなしということを言われたということです。そうするとその平和的解決ということは、出荷をさせるということが平和的解決として努力をされたのか、その点を第二に伺いたい。  それから最後の十三日、農民諸君がもう間に合わないからということで大勢押しかけられたわけでありますが、そこまで持つて来る前に、これは当然県として或いは農地部長も関連するかも知れません、或いは労働組合も関連するかも知れませんが、それには大きな努力の余地が私はあつたと思う。農民諸君がトラックで肥料をもらいたいといろいろ工場に来られる姿に追い込むまでの責任について、県としてどういう工合に考えているのか。或いはそれまでにどういうそれを未然に防止をし、問題のこういう紛議を発生しないために努力をされたか、その点、三点に亘つて一つ伺いたいと思います。
  207. 井本則隆

    参考人(井本則隆君) 第一点で県並びに地労委がどういうふうに努力したかということでございますが、先ほども申上げましたように事件発生以来労政事務所ではいわゆる労政行政という立場から、情報蒐集に先ず当つてつたわけでございます。この解決は中央での解決を待たなければ我々のほうで、地方でどうしても解決できない問題であるということで、そういうような行動をとつてつたわけでございます。でその間先ほども申上げましたように、五月十一日八代の政労事務所長をして労働組合と業者のかたがたとの間に入らせまして、何とか解決の途を選ぼうと努力されたわけでございますが、これもできなかつたわけでございます。それから同じ日に知事国警隊長並びに県販購連のかたがたに対しまして平和的な解決をされるようにということで要望されているわけでございます。で十二日、十三日には労働部長が先ほども申しましたように、特に十二日の晩には再度参りまして、何とか解決の途がないだろうかということでまあ努力したわけでございます。それから最後の十二日のときにまあ非常に不測事態発生の虞れがあるので、何とか平和的に解決できないか、ということは出荷させることであるかどうかということでございますが、県の労働部長立場で出荷せよというようなことは、いわゆる労働組合を育成助長させるという労政行政の立場からは言えないわけでございます。何とかそこに途を選ぼうということで部長はそういつた発言をしているわけでございます。それから農民方々が豊川農協に集合される前に、県当局で努力の余地がもつとあつたではないかという御質問でございますが、県といたしましては、先ほども申しますように、特に十二日の日から十二日午後、それから同じく夜九時半から十二時近くまで二度参りましてその間の努力は全力を挙げてやつたつもりである点を御了承お願いいたしたいと思うわけでございます。
  208. 吉田法晴

    吉田法晴君 争議の本問題それ自身が中央において労使において折衝をせられておつた。或いは労働委員会にかかるとするならば、それは中労委であろう云々という点は、これはわかる。ところが仮処分が五月の初めになされておる。これは出荷をしようとする工場の態度はそこに現われておる。それからその頃肥料をもらいたいという農民の要望も出ておつた。それを見過し、或いは十二日になつてから労働部長が動き出してから先はわかります。わかりますが、それももうそうなつて労働部長が動いても、努力はしてみたけれどもつまらんじやつた、こういうことに結果なつております。ですから、その前に仮処分なり出荷問題について双方の事情がだんだん切迫して来るんだから、先ほどどなたかにお話がございましたが、いよいよあとから数字を計算してみると二十五トンという僅かな数量だというような話がありました。農民諸君がそこまで来る前に、或いはこの労働問題に関連して仮処分或いは出荷、そしてそれをめぐつて対立するところまで追込まない前に、これは或いは農民代表として農政部等もあるかと思いますが、或いは問題のこういう紛議を現地において起さないために、県としてなすべきことがあつたと私は思う。その点を私どもはお尋ねをしておるわけで、最後の十二日になつてから動きはわかります。併しそれまでには実際何もやられておらんじやないか。そうしてしまいには十二日に努力したけれども駄目だというので、十三日の早朝か十二日の深夜か、実力行使止むなしということを言われた。そうするとそれは出荷をさせる以外にないと、こういう意図であつたと思うのです。それは出荷をさせるために、それじや平和的な解決努力をしたと、こういうことにしかなりません。それでは労働部長なり或いは県の責任が尽されたとは思いませんが、それについてどういう工合にお考えになつておりますか。
  209. 井本則隆

    参考人(井本則隆君) 大体只今申上げましたような状態であつたわけでございますが、十二日以前の県当局の努力は不足しているというような御意見でございますが、これは事件発生以来ずつと、大体労政行政では各労政事務所が県下に五カ所あるわけでございまして、一応事件が発生しますれば、各担当地区の労政事務所でその状況をキヤツチして成るべく争議を早急に解決するように努力するということになつているわけでございまして、八代の労政事務所のほうでいろいろ労使の情勢を聞いておつたわけでございます。遂に五月二日営業妨害の仮処分の執行ということが行われまして、五月九日には工場の正門前で農民ピケとの対立、こういつた情報が入つたために、県のほうでも労政課の我々が直接十一日に当地に、少し遅れたわけでございますが参りまして、その後の状況が先ほど申上げましたような経過を辿つて県としては行動したわけでございます。以上でございます。
  210. 小林利吉

    参考人小林利吉君) 今の御質問の中で、宮本労働部長が私が十二日の晩にお会いした際に実力行使止むなしというような言葉でございましたが、私の用語が不用意であつたかもわかりませんが、これは警察実力行使を意味するものじやなくして説得に努めましたが、農民側の団体が非常に強い意志を持つておるので、農民側実力行使で取りに行くというような気持も止むを得ない情勢にあるというお話を承つたのでありまして、労働部長警察官実力行使も止むなしという、私が最初用語に不用意であつたかもわかりませんが、そういう点は警察官実力行使を意味するわけじやないのでありまして、その点一つあらかじめ御訂正をお願いいたしたいと思います。
  211. 吉田法晴

    吉田法晴君 そのときの言葉は或いはそうであつたかも知れませんが、それは農民実力行使も認められたかも知れない、それら結果かから言いまして警察実力行使もこれは容認されたと言うてもこれは仕方がないと思うのです。投げてしまつて、あとから行かれたと言うけれども、その対立してから現場に行つても、それはどうもなるものじやないと思う。極端に申上げると、二十五トンなら二十五トン県が県下から或いは地元から集めてそうして農民側なら農民側に渡したら、起らなかつたかも知れない。これは極端な議論です。それだけに結局県としては或いは労働部長としては何もやられておらないじやないか。こういうことを私は申上げておるわけで、情報を取つたり、それが労政活動の中心だというお話でありますが、十二日になつてぎりぎりになつて現地に行つた。やつたけれどもどうも駄目で、あとは実力行使止むなし、こういう意味のことを言われた経緯はわかつておる。経緯はわかつておりますが、これはまあ係長にここで責任を追及してみても仕方がないと思いますけれども、私は県の努力が足りなかつた、或いは労働部長のやり方が足りなかつたという点は、これは事実として残ると思う。もうこれから先は意見になりますから申上げませんけれども、そういう点についてもう少し努力をされる余地はなかつたかということを実は係長に尋ねておつたわけです。
  212. 坂田重蔵

    参考人坂田重蔵君) 今委員の先生がたからのお話の中で、私どもの考えておることと少し……私の説明が足りなかつたのだろうと思いますが、私の申上げます心持ちと多少食い違つておる点がありますので、訂正をして頂きたいと思うのであります。只今の先生の御質問の中にも、阿蘇郡におけるその当時の肥料の足らない分が二十五トンであつたというようなことがありましたが、これは簡単なことのようでありますけれども、丁度総評原田さんからでしたか、自分がそういう調査に行つたら二十五トン足らないという話もあつたようでありますが、実はそうでなくして、どういう方法で御調査つたのか。私のほうでは阿蘇郡だけで千四百八十五トンの注文を充たしておりまして、千八十トン来ておつて、その当時まあ四百五トンの未着というような状態でありましたということと、それから鏡の工場に参りました際のことを申上げました中で、農民側の態勢と、それからピケライン労組側のほうの有様を申述べました中で、そういうふうに労働者の人と農民が直接相対決するというようなことは、誠に残念なことであるが……、丁度私が参りました当時にもピケ隊のほうでは赤旗をたくさんお立てになつて労働歌を合唱されて、非常に気勢を挙げておられる。それが丁度農民と真正面に相対しておる、狭い場所でありますから……。こういうような状態を、争議の中で直接我々と対立するというような方法をとられることを非常に残念だとこういうふうに申上げましたことと、それから私がそこへ参りまして感じましたことはそういうことであつて肥料をさほど必要でないように先生から先ほどお話があつたのでありますが、そうでなくして、五月四日の郡別の肥料の対策会議のときには、阿蘇郡では非常に田植が迫つておるから、販購連のほうで早く世話してくれなければ困る。ところが実際にはストライキが起つて思うようにはなかなかお届けできないから十分努力する。努力すると言つても来なければ困るのじやないか、どうしても解決ができなければ俺たちのほうでもそういうことなら取りに行つてもよろしいから、そういうときには遠慮なく相談をしろというような申入れをこもごもいたしました。そうして五月九日になりますと、ピケの写真を見たり、記事を見たりして、これはどうにもならん、これは困つたことができたと思うと同時に、私たちのほうでは、一番肥料の必要なときにこういうことをされては非常に農民は困る、何とか話合いを早くつけて出してもらいたい。こういう気持で参りましたものの、先ほど申上げましたように両方から相対立している、而も両方とも非常に興奮している。これじやいけない、両方から代表を出して交渉をしようじやないかというようなことで、その興奮の中からお互いにそれを話合つて我々の代表も出る、労組側からも出られて話合いをいたしましたけれども、両方ともなかなか解決を見出だされず、遂に十三日には、出さない、いや取ろ、こういうような状態になつたという現状であります。
  213. 内村清次

    委員長内村清次君) その点はよく先ほどからこちらはわかつております。それでは栗山労働委員長から発言を求められておりますから……。
  214. 栗山良夫

    栗山良夫君 大変時間も遅くなりまして、熱心に案件の調査に当つて頂いたことを感謝に堪えません。連合委員会を申込みました労働委員会代表いたしまして、私一言挨拶ではございませんが、最後の言葉を申上げたいと思います。実は本日会議が一日で終らない場合には明日、折角熊本からお出でを願つたのでございますから、もう一日労働委員会地方行政委員会との連合委員会を開きまして、あとにいろいろな点を残さないようにしたいという心組でおりましたが、大体本日の調査の結果を以ちまして、現地とのいろいろな意見の交換は大よそ見当がついたように私は思いまするが、従つて労働委員会として連合委員会を申込みました点は本日限りで結構だ、こういう工合に申上げたいと思うのであります。その点は熊本からお出でになつたかたに私からも厚くお礼を申上げる次第であります。  ただ、この際やはり法律問題としては、労働組合の運用における争議のときのピケツチングの問題としては、これは大きな問題が残つていると思います。而も日産化学の鏡工場だけではなくて、ほかにも例があるわけでありまして、これは労働委員会責任におきまして行政部、司法部ともよく相談をいたしまして、今後正常な組合運動が展開されて行くように立法府として努力をいたして参りたい、こういう工合に考えるわけであります。  ただ、この際私は現地皆様がたにお願いしておきたいのは、やはり雨降つて地固まるでありますが、こういう問題を起しましたあとでいろいろ感情を残されて、そうして提携をすべき農民、勤労者の間にいつまでも蟠りが残るというようなことのないように、又取締りの衝に当られました県当局、特に国警等におきましても、一つ率直な気持で今後熊本県のいろいろな問題、特に農民と勤労者の問題に当つて頂きたいということを加えてお願いを申上げるわけであります。  ただ、今度の問題を通じては結論的なことで批判を若干いたしますると、やはり直接ああいう好ましくない紛争が起きました原因というものはどこにあるかということを、今日一日聞いておりまして私率直に申上げます。率直に申上げますが、それは五月の十五日まで出荷を待つてもらいたいという労働組合組合運動の中から割出されたところの要求、特に大会の決定を或る程度斥けても、三役の責任において出そう、こういう工合に言われたことに対しまして、農民諸君の中には、どうも信用ができない、こういうことで私は話合いがつかなかつたのじやないかと思うのであります。そこでその場合に、然らばお互いに信用をし合うような、そういう意味の打ち割つた話合いがちつとも両者の間に行われていない、又衝に当られた県当局においても、国警当局においてもですね、そこまで突つ込んでちつともお世話をしていないという点は、甚だ遺憾であると思います。例えば五月十五日に渡すということでありまするならば、具体的に渡し方を一つ相談しようじやないか。朝何台どこからトラツクを持つて来て、工場の中でどこで誰と誰と話合つてどういうふうに渡すのだ、そこまではつきり話合いをされるならば、お互いにやはり五月十五日引渡すということについて信用をし合つて、そうしてすれば、こういう紛争の問題が起らなくて済んだんじやないか。非常に努力をしたとおつしやいますけれども、そういうような点について私はもう一歩の努力が望ましかつた、こういうことを申上げたいと思うのであります。  それからどうも原因といたしましては、会社当局の態度については、私は反省をして頂かなければいかんと思うのであります。これだけの大きな紛争を起してあとに暫くして争議解決した。このパンフレットを見ましても、わかりまするように、過燐酸を製造する他の会社でも、日産化学より遥かに業績の悪い小さい所でも、一千円、三千円という賃上の解決がすでについている。然るに日産化学におきましては、こういう賃上が政治的な賃上要求の性格を持つているから応じられない、或いは合成化学労連から脱退しなければ賃上げを認めることができない。こういうようなことを日産化学の本部方面言つておられたということが文字になつてつておるのを私は拝見しまして、そういう態度で日産化学が組合に当られるということは、甚だ遺憾であるということを私は申上げざるを得ないのであります。やはり今日の紛争を招きました最大の責任者は、何といつても私は日産化学の当事者、いわゆる経営者の諸君が、もう少しこの組合運動を農民の皆さんに、或いは行政府の皆さんにお世話をかけないで、労使の間で早く解決をする。こういう熱意があつたならば、こういうことはなかつたと私は思うのであります。特に肥料が需要期に入るということは、これは毎年の例でありまして、日産化学の経営者の諸君が一番よく御承知のはずと思うのであります。そういう意味におきましては、私は甚だ残念であつたと思うのであります。  どうか一つ過去のいろいろな批判はこれを徹底的におやりを頂きまして、そうして再びこういう誠に好ましくない事態が起きないように、それぞれ御努力を頂きまするように御要望を申上げまして、私はお礼を兼ねて御挨拶を申上げた次第であります。
  215. 内村清次

    委員長内村清次君) 委員のかたがたに……。
  216. 寺本廣作

    寺本広作君 議事進行について……。只今栗山委員長の御所見は、委員会としての結論でなく、栗山委員個人としての御所見であろうということを確認しておきたい。
  217. 栗山良夫

    栗山良夫君 その通りです。
  218. 内村清次

    委員長内村清次君) 委員のかたがたにお諮り申上げます。只今労働委員会委員長からは、この連合審査をこの程度で打切りたいという、こういうような発言も含まれておりますが、(「異議なし」と呼ぶ者あり)委員のかたがたまだ参考人に対しての質疑がありますか、これを打切つてよろしうございますか。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)  それでは打切ることにいたし……。
  219. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 一身上の問題についてもう一言続けたいと思います。
  220. 内村清次

    委員長内村清次君) 何か重大なあたの一身上の……。
  221. 飯田次人

    参考人飯田次人君) そうでございます。先ほどの問題に関連した問題でございます。
  222. 内村清次

    委員長内村清次君) それではよろしうございますね。全購連の参事飯田君。
  223. 飯田次人

    参考人飯田次人君) 実は明日までこの連合委員会を延長されるというようなことで、明日私の、先ほどの轢殺すという問題につきまして弁明いたしたい、かように考えておつたのでありますが、あすは取止めになつたということでございます。それで私又再びこの問題につきまして弁明と申しますか、申上げたいと思います。  先ほど原田事務局長がテープレコードの中にこの問題が入つている。そうしてそこをカツトされてある、こういうよううなことでございましたが、私自身の気持としてそういうことは絶対言つていない。私のこの品から出ないならば誰の口から出ているのだと私は考えるのでございます。あの少人数のときに、あの多数のところの前にそういうようなことが実際問題として言われるかどうかということを私は申上げておきたいと思うのであります。  なお、更にここで申上げたいのは、酒気を帯びたとか、或いは又菊旗同志会とか、或いは又農民暴力団というようなことが一部の間にあつたわけでございます。そういうことは絶対ないのでございます。ここに改めて申上げておく次第でございます。
  224. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは参考人のかたがたに、代表いたしてお礼を申上げます。長時間の間皆様方の熱心なる、又事実に基いた公述を頂きまして誠に有難うございました。お礼を申上げます。  それではこれで本日の連合審査を閉じることにいたします。    午後七時三十五分散会