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参考人(
丹羽周夫君) 今御質問も出ましたが、なおいろいろな前のおかたがたと重複いたしますので、要点だけに触れたいと思います。
先ず結論的に申しますというと、私今日は造船工場の観点だけから申上げたいと思います。
終戦直後、
昭和二十一年から昨年末までの
プラント輸出、即ち
船舶、
鉄道車両、
電気機械、通信
機械、
繊維機械その他というようなものを取上げてみますというと、
年度ごとに、相違はいたしておりますが、これを平均でとりますというと、
プラント輸出のうちの約七〇近くを占めておつたものが造船の
輸出であります。即ち造船は、
プラント輸出の大宗であつたということが言えると存じます。その前にちよつと申上げたいと存じますが、これはもはや言い古されたことでありますので喋々を要しませんが、
我が国のような国情におきましては、
相当思い切
つて、他のことを殆んど犠牲にしてでも
輸出振興による外貨獲得ということを以て第一義にしなければなるまいと思います。若しこれが徹底いたしませんというと、すぐ近い将来に米すら買えなくなるということであろうと存じます。勿論戦後家もない、道路も悪い、いろいろなことがありますが、現に西ドイツのごときは、昨年も私
調査して参りましたが、御承知のように、一九五一年の六月に、いわば
輸出振興奨励法というようなものを作りまして、その
法律の中に盛られておる到底十指を以て屈し切れない程度の有効適切な
輸出振興法によりまして、
只今着々と西ドイツは成功しつつあるのであります。その結果
我が国は、妙な言葉でありますが、着々として負けつつあるというのが現状であります。イギリスにおいてはなお更然りであります。而も彼らは飢餓
輸出と言
つていいくらいな覚悟を以て
輸出第一、外貨獲得第一ということをや
つておるのであります。西ドイツは御承知のように、五五%の食糧を輸入しなければならんという国でありますのでなお更切実ではありましようけれ
ども、併しながら彼らはかくのごとくや
つておりまして、その結果、と同時にわが国の物価高、これは朝鮮動乱に原因するのが主でありますが、そのためにだんだんと
輸出がこの一、二年は伸びなかつた、こういうことでありますが、昨今幸いにして
政府当局或いは議会
当局で
輸出振興をしなければならんということでや
つておいでになるのでありますが、それで
船舶は
只今申しましたように、過去における
輸出の
プラント輸出の大宗であ
つたのでありますが、遺憾ながら昨年あたりは最も量が少なか
つたのであります。然らば今造船界はどうかと申しますると、
世界各国の造船所はおおむね……尤も我々の競争相手はイギリス、スエーデン、ドイツといつたような国でありますが、英国は昨年末の
調査によりまして、四カ年半ばかりの
仕事を持
つております。スエーデンが三・七カ年、ドイツも三年半の
仕事を持
つておる。ドイツの造船量の約六割五分は
輸出品であります。イギリスもおおむねそんなものであります。なぜかくのごとく、而もついこの間のアメリカのジヤーナル・オブ・コマースの調によりますと、六月三十日付の調でありますが、昨年中にアメリカが発注いたしました
船舶は合計百七十八万四千トン、これを
海外に発注いたしております。英国、西ドイツ、
日本、オランダ、フランス、ベルギー、スエーデンその他の
国々に三百三十隻を発注いたしております。これらは何でかと申しますると、アメリカが一番発注高が多いのでありますが、欧州及び極東
市場において米国の油糟船の航行権が非常に拡大したという事実及びこれによ
つてポンドその他の外貨
収入が非常に
増加した。アメリカはこれらの外貨はそれら
各国の行政
措置のために米国本国に送金の困難な点があるというような点も加わりまして、こんな大量の発注にな
つたのでありまするが、なお又
世界の船腹を見てみますると、船腹の何と申しますか、老朽度と申しますか、それをみますると、おおむね五年未満の船というものは
世界中の船腹におきまして約三割三分しかないのであります。なお四〇%が戦時標準船であります。そうしますと、十年以上の船腹がせいぜい二、三割しかないということでありまして、特にオイル・タンカーのごときは十五年たてばもはやそれは使いものにならないということでありまして、
世界は着々とこれら老朽船のスクラツプ・アツプ及び新造代替ということをや
つておるのであります。現にそれでは
我が国はどうかと申しますると、今年四月の
調査でございますが、それ以上又殖えておりますので、いま少しくこの数字は殖えておると思いまするが、
只今その四月頃の
調査によりまするというと、
我が国における各造船所が外国から建造の
引合を受けております数量が二百五十五万五千トンに上
つております。この中には勿論ちやちな
引合もございましよう。又ダブつたものもございましようが、かくのごとく過去において外貨獲得、
プラント輸出の大宗であつた
船舶でありますので、せめてこの一割くらいはとりたい、二十五万トンか三十万トンくらいとりたいということは当然であります。又過去においてはとれてお
つたのであります。海軍なき今日、終戦後
我が国の造船会社は
輸出船によ
つて代替し、それによ
つて外貨を獲得し、それによ
つて生きて来たのであります。而ももう
一つ忘れて頂きたくないことは、この
船舶というものは成るほど
東南アジア諸国にも若干
輸出いたしましたが、おおむねアメリカ、フランス、イギリス、デンマーク、ノルウエー、スエーデンといつたような一流先進国の船主の注文品であります。現在の
引合もこれらが大部分であります。勿論先ほどのお話のように東南アジア或いはインドネシアあたりからも
相当の
引合がございます。というわけで一流先進国へ売れ得た商品でございます。ただ遺憾ながら現在オイル・タンカーにおいて一割足らず、いろいろな
事情によ
つて高いというようなことのために途絶えておるのでありますが、先ほど来のお話のように、今いろいろの手段をとられておりまして、私は
只今でもその手段の中の若干が実現するならば、すぐ様でも契約できるのが
相当ございます。現にこの数日間に契約を見るのであろうと思われるもの、或いはひよつとしたらそこまで
輸出入銀行あたりにお話が行
つていると思われるものに約十万トンのものがございます。まだ勿論契約成立はいたしておりません、というわけでありまして、仮に十五万総トンの外国船を引受け得られたと仮定いたしまするというと、若し契約
金額の八割までを
輸出入銀行が単独融資して頂ける、先ほど来のお話のように完成払い或いは一、二年延べ払いというのが多いのでありまして、これは完成払い、それまではレター・オブ・クレジツトを立てるという
条件の下に
計算いたしまするというと、たつた十五万総トンの外国船をとつたと仮定いたしましても、
輸出入銀行から拝借しなければならん金は百二十億六千百万円になるのであります。八割の融資を願うとしまして、若し二十万総トンを注文をとり得た、勿論このくらいはとりたいのでありますが、そうしまするというと、百六十億八千六百万円という金が忽ち拝借しなければならん金でありますが、若し二十五万総トンとり得たならば二百一億八百万円という金を拝借しなければならんことになるのであります。而もこのうち十万総トンくらいは直ちに今契約を見られようとしておるのでありまして、なお我々はこんなことでは利底満足できない数量であります。こういうことからいたしましても、なお又
輸出入銀行に
資金が
相当あるという裏付けがなければ我々
輸出の商売をいたしまする時に到底
商談に応じ切れないのであります。
輸出入銀行に
相当な金がある、だから
相当の金が拝借できる、OK、よろしい、一年払いよろしい、或いはほんの完成までには三割しか払わない、
あとは延べ払いでよろしいという
商談に応じられるのでありまして、万一
輸出入銀行に僅かの金しかないというときには、
商談にすら応じられないということになるのであります。こういうふうに申上げまして、過去において
実績のある造船業だけについて申上げましても現在の
輸出入銀行の
資金というものは、私はむしろ不足であると申上げたいような気がするのであります。まだほかに申上げたいことがありますが、取りあえず端的にこの点だけを先ず申上げたいと存じます。