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衆議院議員(鈴木善幸君)
只今議題とな
つております
漁業法の一部を
改正する
法律案につきまして
提案者を代表いたしまして
提案理由の御
説明を申上げます。
御承知の
通り我が国民主化の一環といたしまして、
昭和二十四年十二月十五日、新らしく
制定されました
漁業法により
漁業制度の改革が行われました。昨年三月の新旧
漁業権の最終的な切替によりまして、制度的には一応第一段階を画するに至
つたのであります。今後はこの
漁業法の精神を生かしまして、
漁業制度の民主的改革、
漁業生産力の発展に努力いたすべきものと
考える次第であります。併しながら現行
漁業法に対しましては、業界を初め幾多の批判の声が全国津々浦々において聞かされております。特に免許料、許可料の徴集制度については、業界におきましては、この制度の撤廃について熾烈なる運動が展開されており、去る七月十日には全国
漁民大会が開催され、又全国八十三万余の
漁民の署名陳情がなされております。即ちこの免許料、許可料の徴集制度の根本的且つ抜本的な改革が要請されておるのであります。
漁業法の
規定による免許料、許可料の制度は、旧
漁業権等の
補償金約百八十一億円に、五ヵ年の利子約五十億円を加算した約二百三十一億円余を
昭和二十七年度以降二十五年間に免許料、許可料として毎年
漁民から徴集せんとするものでありまして、現在すでに
昭和二十七年度分六億円余の徴集が行われておるのであります。この免許料、許可料の徴集制度は、その制度上における幾多の矛盾と欠陥を内蔵いたしておりますと共に、又他面現下の
漁業経済の逼迫せる諸情勢に鑑みまして、この各派共同提案になりました
法律案のごとく、抜本的にこれを撤廃すべきものと
考えた次第であります。
先ずこの免許料、許可料の制度が制度として如何なる点において矛盾と欠陥を露呈しておるかと申しますならば、その第一点は、他
事業の許可と同様な本質を持
つておりながら、
漁業の許可だけが何故許可料を負担せねばならないのか、まさしく憲法第十四條の法の下の平等の思想に背馳するのではないかという疑問も持たれております。又
漁業許可料の前提をなすところの許可は、いわゆる警察許可の一種でありまして、特典を付与するものではないという意見が強いのであります。更にその徴集の
基準を旧
漁業権に対する
補償金に見合せることについては、何らの合理性がないということが指摘されているのであります。又特に
補償金は、すでに消滅した旧
漁業権者に交付されたものでありまして、許可
漁業者は何らその
対象となるべきものでないという
議論が強いのであります。又
漁業制度改革は、一連の
日本民主化
立法の一環をなすものでありますから、
漁業権の
補償の見返り財源として
漁業者のみに負担せしめるべきものではないのであ
つて、国全体として負担すべきものであるという意見も非常に強いのであります。これらの制度上の欠陥と矛盾は、私
どもも現行
漁業法の
制定当時におきまして、いろいろ各
委員から強く論議がなされたところでありますが、皆さんも御承知のような経緯で
漁業法の中にこれが盛込まれるに至
つたのでございます。
更にもう一点は、現下の
漁業経済は皆さんすでに御承知の
通り、魚価は非常に安く、資材その他
漁業経営費は逐年累増いたしておるようなことでありまして、
漁民の困窮、
漁業経済の逼迫は、ここに指摘するまでもないのであります。
以上のような制度上の欠陥並びに
漁業経済の実態からいたしまして、この免許料、許可料の制度はこの際これを撤廃することが妥当と認めまして、この
法律案を提案いたした次第であります。
次に
法律案についてその概要を御
説明申上げます。先ずその第一点は、
漁業法第五章の「免許料及び許可料」の
規定を削除することであります。即ち法第七十五條から第八十
一條までを削除して、本制度を撤廃せんとするものであります。
第二点は、第一点と同様、法第百二十九條の
規定を削除して、内
水面漁業の免許料及び許可料を撤廃いたしたわけであります。その他は第五章を削除するための
関係條文の整理でありまして、目次を改め、或いは法第十四條において、削除される第七十五條の引用
條文を
規定し、文法第三十九條「公益上の必要による
漁業権の
変更、取消又は行使の停止」には、免許料、許可料の徴集
規定を準用いたしておりますため、このなくなる
部分について、新たに
規定いたす等、関連
條文を整理いたした次第であります。なお
附則において、この
法律は公布の日から施行し、
昭和二十八年度分の
漁業の免許料及び許可料から適用すること、
昭和二十七年分までの
漁業の免許料及び許可料については、なお従前の例によることといたしました。
以上極めて簡単でありますが、
提案理由の
説明を終る次第であります。何とぞ慎重御
審議の上、速かに御議決あらんことをお願いいたします。