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1953-09-11 第16回国会 参議院 水産委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十一日(金曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森崎  隆君    理事            秋山俊一郎君            千田  正君    委員            青山 正一君            野田 俊作君            森 八三一君            松浦 清一君            菊田 七平君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    農 林 大 臣 保利  茂君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    法務省入国管理    局次長     鶴岡 千仭君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室付)   島  重信君    外務省アジア局    長       倭島 英二君    水産庁長官   清井  正君    海上保安庁長官 山口  伝君   —————————————   本日の会議に付した事件水産政策に関する調査の件  (日韓漁業問題に関する件)  (日濠漁業問題に関する件)  (演習地被害補償に関する件)   —————————————
  2. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは只今から委員会開会いたします。  今日は昨日に引続きまして、日韓漁業協定交渉経過及び朝鮮水域出漁に関する件並びに竹島に関する件を議題といたしたいと思います。  昨日は農林外務大臣に対する質疑が保留されておりますので、両大臣出席されるまで暫時休憩いたしたいと思います。    午後一時四十分休憩    ——————————    午後二時二十五分開会
  3. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは休憩前に引続きまして、只今より再開いたします。  先ず海上保安庁山口長官から、昨日より今日に至るまでの御報告を願いたいと思います。
  4. 山口伝

    説明員山口伝君) 昨日経過を申しておきましたが、それ以後の状況につきましてここに御報告申上げます。  海上保安庁巡視船五隻並びに水産庁監視船三隻は、依然として済州島の東方の李承晩ラインの中に現在も警戒を続行中でございます。十日、即ち昨日の午前八時以後本日の午前八時までの間に判明いたしました事件は、臨検退去を命ぜられましたものが十二隻であります。拿捕はございません。韓国艦艇は、これらの臨検をいたしました十二隻の漁船より、後日拿捕する場合の証拠として、李承晩ラインを侵犯しないとの誓約書を取つている模様であります。  次に、韓国側の昨十日二十四時以後李承晩ライン内にある日本漁船を実力により拿捕するとの強硬な方針は、昨夕の新聞報道によりますれば、これは新聞報道の上のことであります、即ち、釜山UP電、或いは京城AP電等のことを指すのでありますが、日本側日本漁船李承晩ライン外退去を指示したとの理由により、拿捕命令撤回したとの報道がありますが、巡視船は、同海域内の操業漁船に対しては、拿捕等危険防止については極力注意しておりますが、直接李承晩ライン外への退去を指示したことはございません。又、韓国艦艇は依然として同海域を遊弋しておりまして、引続き臨検退去措置等を続行しているようであります。前評拿捕撤回命令につきましては、本日午前零時頃同海域におきまして韓国軍艦巡視船の「あまくさ」が現場において接触いたしましたので、その際の「あまくさ」船長からの報告によりますれば、韓国艦艇としては未ださような命令は受取つていないということであります。  次に、同海域におきます日本漁船は、韓国艦艇による退去措置により、大部分が退避中の模様でありまして、同海域における操業は事実上不可能になりつつありますが、なお昨夜の午前零時の状態では、約三十隻はなお済州南東海域農林漁区二百四十四区、二百五十四区等において操業中との報告を受けております。只今のところ海上保安庁では、本日も引続き巡視船五隻を同海域警戒行動さしておりますと共に、更に三隻は昨日申上げた通り基地臨時即応の形で待機さしておりまして、これらの事態に備えておるわけであります。  その他の措置といたしまして、巡視船に対しましては、韓国艦艇より臨検又は退去命令を受けることが今後予想されますので、その場合には、その日時、位置及びその理由等を記載し、相手側の艦長の署名をした文書を要求するよう指示しております。又操業いたしておる日本漁船に対しても、水産庁と御相談の上、できる限り同様の措置をとるようにすでに指示済みであります。  なお、只今申上げました「あまくさ」の今朝未明に遭遇いたしましたときの会談内容につきまして、御参考までに少し附加えたいと思います。今暁一時頃巡視船「あまくさ」の附近にて臨検されている一日本漁船がありましたので、これを監視しておりましたところ、二時頃になりまして、韓国軍艦は該船の連行を始めたので、早速本船、即ち「あまくさ」でありますが、巡視船「あまくさ」は相手艦に接舷し、釈放を要求したところ、韓国艦よりは向うから本船に横付けし、そこで向う指揮官と面談をいたしたわけであります。そこで相手の船は韓国船のれつきとした軍艦である、これは名前もわかつておりますが、ことが判明いたしました。連行されんといたしました日本漁船は第二北進丸であります。先方理由を質しましたところ、密輸容疑である、船名不詳であり、無燈火であり、停船命令に応ぜず、国籍証書を持つておらないということであつたのであります。いろいろ折衝しました結果、第二北進丸の引渡しを受けまして、当方において調査いたしました結果、船名不詳であるということはタツチ・アツプのために船名が不明瞭であつたタツチ・アツプと申しますのは、ペンキが剥げて、その部分ちよいちよいこう塗つてあるわけでありますが、そのために船名がよくわからなかつたということ、それから無燈火であるということ、或いは停船命令に応じなかつたというようなことは、これは相手の船との間の連絡が不良なために、誤解を受けたことであるということがわかりました。それから国籍証書につきましては、持つております。以上調べた結果、密輸容疑は全然ないということがわかりましたので、当時北進丸のことを心配して近寄つて参りました他の日本漁船と共に、これを適当に誘導しまして連行の事項を防止することを得たわけであります。なおその際向う指揮官責任者と次のような応答があつたのであります。向うから十一日、即ち本日の十二時まで海上保安庁巡視船或いは水産庁監視船は、李承晩ライン内といえども漁船退去を促進してくれるものと考え、自由行動を認めている。但し同時刻以後については、その軍艦は何らの命令を受けておらん、それはわからんということであります。で、こちら側といたしましては、十二時以降の点につきまして何らかの命令韓国の本国のほうからあれば、本船まで書類で知らせてもらいたい、それから次に、その他変つたことがあれば、こちらのほうに連絡して頂きたいということを申出たところが、向うもそれは一応了承したのであります。それから釜山発UP電報の例の拿捕を無期限に延期するという情報につきまして、この点を先方の船に尋ねましたところ、これにつきましてはそういう指令は受けておらないということを向うでは申しております。  以上が本日の午前八時頃までの状況でございます。
  5. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 外務大臣がお見えになりました。この際一言外務大臣に申上げまして注意を喚起したいと思います。昨日来特に朝鮮水域漁業操業の問題につきまして、日本漁民全体にとりまして非常に重大な事態を惹起されましたことについて、本委員会におきましては、早速この問題を取上げまして審議をすることになりました。その衝に当られる最高責任者である外務大臣外交交渉その他につきまして、特に御説明、御報告頂きたいと思つて強く要望いたしました。当委員会全会一致の要望で、成規の手続を以て外務大臣の御出席をお願いしたのでございまするが、昨日来何ら理由その他も不明のまま今日まで御出席頂けなかつたことは、何か常任委員会制度を軽視するような疑も持たれる点もございまして、この点非常に遺憾だと存じます。今後よろしくお願いしたいと存じます。  昨日来保留いたしておりました外務大臣に対する質疑を始めたいと思いますが、取りあえず外務大臣から今日までの交渉経過又将来の御方針等につきまして、一応御発言を願いたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 交渉経過と申しましても、もうすでに御説明を政務次官その他からいたしていると思いますが、この問題が起りましたので、韓国側には抗議をいたし、同時にそのときまで捕えられた船二隻に対する即時釈放とか、賠償等の要求をいたして来たのであります。で、我々としましては、いろいろ意見はあつて、これを第三国の仲介に訴えるべきであるとか、或いは国際司法裁判所とか、国際連合とか、いろいろの意見がありますが、先ずこの問題は日本に関するものでありますから、日本政府において、十分相手方に力強く且つ理由のあるところを示して努力を重ね、まあ最後まで努力をいたして、それでどうしてもできないという場合に他の方法を考えるべきである、こう思つて、誠意を以て強く交渉いたしているのであります。それからそれと同時に、ただ我々としても公海の自由という原則はこれは曲げるわけに行きませんけれども、魚族の保護ということならば、日本としても十分に関心があるのでありまして、そういう問題であるならば、双方代表で、専門家をして十分なる調査を進めて、必要なる措置を講ずることは、これはお互いの利益になるので、又ほかの国に対しても利益になることでありまして、こういうことをすることには何らやぶさかでないのであつて、こういう我々のほうの建設的な意見十分韓国側には通じているつもりでおります。併し今海上保安庁側から御報告のありまする通り、昨日から本日にかけて事態はなかなかむずかしいようでありましたから、昨日もいろいろ各方面連絡をいたし、それに対して手当なり警戒を怠らないような措置をして来たのでありますが、幸いにして多少緩和するやの報道も昨日から入りつつあり、又本朝までの事態は、憂慮されたようなことは今のところ起つておらないようにも思うのでありますが、併し京城方面の他の放送をみますと、必ずしもそう楽観できるかどうか、まだ十分なる判断はできないようでありますから、決して警戒をゆるめるというわけにはいかないと思いますが、併し幾分でも良好な空気が起りつつあるものとすれば、この良好な空気を損わないように、権利権利として主張するが、実際的な解決によつて漁業に妨げのないような方法を講ずることは、この際は一番賢明な措置であろうと思いますので、できるだけ昨夜から今まで続いているような気持をだんだん助長して、建設的な、そうして平和的な、双方満足の行くような解決に持つて行きたいと思つて、手を打ちつつあります。  なお私、これはほかの関係省水産庁等には相談しておりませんが、若しこの漁業の問題で、先方で例えば日本業者代表というような人々と話をするという気持があるならば、これもこの前やつたこともあるのですが、こういうことも考えるべきじやないかと思つております。これはまあ具体的にはなつておりませんので、我々としては考慮すべく、あらゆる手段を尽して、先ずできるだけ二国間で平和的な解決に導きたいと考えております。
  7. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 只今から御質疑のあられる方は順次御発言を願います。  なお外務大臣は約三十分くらいいたしましたら別に要務もあるようでございますから、成るべく一つ簡潔に急いでやつて頂きたいと思います。
  8. 千田正

    千田正君  昨日海上保安庁並び農林省当局からの今までの問題についての経過を聞きましたが、一切は外交折衝に待つよりほかはない、而も昨日は午後の十二時を限つて韓国側日本漁船退去を命ずる、こういうような緊迫した事情にあつたのでありますが、我々が常に叫んでおることは、漸く独立した、日本は海以外に生きる方法がない。而もこの朝鮮日本との間に横たわるところのこの水域は、長い間の日本漁業のいわゆる温床であつたと同時に、我々漁民の欠くベからざるところのいわゆる漁場であつたのであります。それが一方的な李承晩大統領宣言によつて、あたかもこれは韓国の所有であるがごとくみなされて、今日まで更に紛糾が重ねられるというような状況に立ち至つた。これに対して外務大臣只今お答えは、成るべく事態の紛争をせずに解決したい、かようなお答えのようでありますけれども、現実に働いておるところの漁民は、明日の生活の問題である。而も只今話されておられたような、ちよつと緩和したがごとく見られるというようなお話もありましたけれども、これは私は安心できないと思う。而も今日午前中のAFPあたり報道によるというと、再び韓国のほうでは日本漁船がこの李承晩ラインに侵入して来たときには直ちに逮捕する、かようなことを一方においては放送しておる。決してこれは今話されたような立場において、ややこの問題が緊急を外れたがごとく感ずるということはこれはとんでもない私は誤りだと思う。同時に我々はこの李承晩ラインなるものは何ら国際上認めるわけに行かない。而も自主権を持つた日本としては堂々と李承晩ラインでも操業すべきものだ、平和にして且つ自由に正しい立場でやることにおいては、武器のない日本はこれ以上のことを、一つのいわゆる武器を持つ国民に対抗すべき何物もないと私は思うのでありますが、それに対して外務大臣は今後この問題をどういうふうに考えるか。李承晩ライン以外に撤去するということは、李承晩ラインを認めるということになりますが、そういう点についてもう少し外務省態度と今後の所信とを一応ここに承わりたいのであります。
  9. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 千田君は私の言うことを少し誤解されているかも知らんが、私は楽観すべきことだとは決して言つておらないので、むしろ警戒すべきものだと、こう言つておる。併し実際上予期したるよりは緩和した空気のようにも見えるから、これを助長して行こう、こういうつもりでおるのです。又李承晩ラインを認めるなどということは、この際言つておらない、今も言つておりません。私は公海の自由という原則は、日本としてはどうしても譲ることはできない。譲ることはできないのであるけれども、事実上船が何杯も、幾ら向うが不当だからといつても持つて行かれてしまうということになれば、その業者は非常な損害をこうむるのであるから、これからこの空気を成るべくよくして、建設的にとにかく漁のできるようにして行くことが今肝要である、こういうつもりでおります。併しお話のような公海における操業の自由ということは、これは外務省の初めからしまいまでずつと堅持しておることであつて、そのために日韓会談も長い間かかりますけれども、まだ結末に至つておらない。これを譲れば或いは話がつくかもわからないが、譲らないから話がつかない。飽くまでもこの点は我々ははつきり主張を続けて行く考えでおります。
  10. 千田正

    千田正君 そこで私は更にお尋ねしたいのは、建設的な御意見が先ほどあつたのであります。問題はもう明日から食えない漁民立場を考慮した場合に、どうにもならないから、特に外務省に向つて我々はかような質問をしておるのであります。そこでこの問題の早急解決は、これは国民がひとしく望んでおるところでありますが、この李承晩ライン宣言撤回と、只今李承晩命令しておるところのいわゆる日本漁船の逮捕に対するところの命令撤回ということを、重ねて私は要求してもらいたいということを、これをどういうチヤンスに外務大臣がやられるかどうかわからんけれども、私は早急にやつて頂きたい。もう一つは、今非常にいいアイデイアとして、若しも日本漁業者の団体が向う民間同士とこれを話合うようなチャンスがないかということを今もあなたからお話があつたが、外務大臣みずからそういうような一つの建設的な方向を切り開くところの、いわゆる呼び水をやるというような自信があるかどうか、この点と、二つの点において承わりたいと思います。
  11. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは抗議は、そう言つちや甚だ語弊がありますが、いとやさしいことでありまして、いつでも何遍でもできるのでありますけれども、併し抗議というよりは、問題を解決する必要な措置を講ずることにあるのでありまして、仮にその良好な空気でも少しずつできつつありと仮定しますならば、これを壊すようなことは成るべくしたくない、こう思いますので、この間の見通しについてはもう少し考えてみたいと思つております。  それから業者間の会談等は、これは私のいろいろ考えておる一つの案でありますが、只今申した通りまだ農林大臣とも御相談していない、ほかの省と御相談しているわけでないのでありまして、それをほかの省の意見も聞きまして賛成を得るならばやつてみたいと思います。これは私は日本側でやるつもりならできるのではないかと思つております。
  12. 千田正

    千田正君 私はこれで外務大臣への質問を終りますが、一番我々の苦衷するのは、現在漁民の諸君が苦しんでおるために撤去を命ぜられても撤去しないだろうと思う、恐らく。そうした場合に、再び韓国側は強制的な処分に出て来た場合に、日本漁民として飽くまでここに踏みとどまつて操業を継続しておるというような場合が生じた場合は、これは又非常な紛糾事態が生ずると思う。でありますから、私は特に外務大臣に要望するのは、一日も早く、成るほど慎重に外交はやらなくちやならないということはわかるけれども、この問題は日本漁民生活権の重大な問題であるから、明日にも今日にも速かに解決する方策をとつてもらいたい、これを特に私は要望いたします。  なおこれに対して農林大臣への質問は後ほど、外務大臣質問終つてから農林省当局所信を明らかにしたいと思いますから、外務大臣への質問は私はこれで終ります。
  13. 松浦清一

    松浦清一君 外務大臣に若干の御質問を申上げたいのですが、御質問申上げる前に、海上保安庁長官からもう一度確認をいたしたいのですが、今朝の午前八時までの状況を先ほど伺いましたが、午前八時の現況において李承晩ライン内になお操業を続けている船はどれくらいあるお見込でございますか。
  14. 山口伝

    説明員山口伝君) 先ほど申上げましたように、午前零時の状況が三十隻前後おるのを認めておる、こういう報告でございます。
  15. 松浦清一

    松浦清一君 それ以後の状況はまだわかりませんですか。
  16. 山口伝

    説明員山口伝君) それから後の情報はまだ受けておりません。
  17. 松浦清一

    松浦清一君 外務大臣にお伺いをいたしますが、先ほど昨日の委員会で小瀧次官から今までの韓国に対する交渉経過等説明があつたはずだとおつしやつたのですが、小瀧次官の御説明だけで満足のできるような状態でございましたならば、非常に御多忙である大臣の御出席を願わないでも済んだわけですが、どうも御報告を承わつておりますと、十分了解のできない点もあつたので、特に本日御出席を願つたわけなんで、もう一度私伺いますが、李承晩ラインが、李承晩大統領の一方的な海洋主権宣言と称せられて公表をせられたのは昨年の一月の十八日であります。そのことについての交渉経過につきましては、昨日小瀧次官は二回の抗議書を送つて話を進めておる、こういう話だつたのです。それは単なる抗議書を送つただけで具体的な折衝がその抗議書以外に行われて来たかどうかという点についてお伺いをいたしたいのであります。で、この問題が起りました際に、特に外務省李承晩ラインとこれを呼称することを非常に迷惑がられる傾向がございまして、特にこの委員会で倭島局長は李承晩ラインと言つてもらいたくない、これは李承晩大統領国際法を無視した一方的ないわゆる海洋主権宣言であつてラインということを日本が呼称することは、即ち日本がこれを肯定をしたという結果になる虞れもあるのでというような御注意があつたりするほど、このラインというものは日本政府は認めておらなかつた。私どももその日本政府態度というものを当然のこととして支持し、又その態度で強くこのラインが撤廃されるとこういうことのための具体的折衝を今日まで期待しておつたわけですが、一年半もたつておる今日、なおその問題が具体的に解決をしませんために、今度の不祥事件が起つて来たのですが、別に責任を追及するという意味でなしに、どのように外務大臣が、二回の小瀧次官称するところの抗議書以外に、このラインが解消されるための努力を払つて来られたかということについての経過を御説明願いたいと思うのです。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は二回というのはどういう意味かちよつとわからないのですが、これは調べてみなければわかりませんが、或いは李承晩ラインに対する反対の意見だけを書いたものを出したのが二回かも知れませんが、過去において漁船が捕まつたりなんかしたことはしばしばあります。その際はしばしば抗議書なり口上書なりを出しております。それには常に李承晩ラインというものは認められないのだということを繰返して言つております。が、それは別として、韓国側とのいわゆる日韓会談というものは昨年一回と、それから昨年の終りに非公式な会談をし、又本年正式な会談をいたし、これは漁業問題だけじやありませんけれども、ほかの問題もありますが、漁業問題も非常に大きく取上げられておる一つの問題であり、ここにおいては国際法から、法理論から、実際論から、あらゆる角度から当方主張説明して先方にこれを強調いたして来ておりまして、まあ殆んどあらゆる論議は尽したと言い得ると思います。そのほかにも韓国代表者が見える場合、機会あるごとに話をいたしております。又こういう問題は結局は或いは国際的な輿論というものも考えなければならんわけでありますから、在外公館にも随時この内容を知らせて、そして各国の輿論に対しても間違いない認識を持つように努力をいたしております。
  19. 松浦清一

    松浦清一君 李承晩ライン公表があつたのは昨年の一月十八日で、大邦丸事件の起つたのが昨年の二月四日、竹島海上保安庁巡視船が射撃を受けたのが今年の七月十二日と、こう三回も連続して韓国側から非常に屈辱的な攻勢を受けているわけですが、日本が独立をして、アメリカとの間の外交折衝というものは頻りに行われておつて韓国のこの屈辱的な攻勢に対する外交というものが非常に手ぬるに緩慢に行われているという気がするのですが、これ以上一体打つ手はなかつたものなんですか。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はもうあらゆる考え得る方法は尽していると思いますが、若し何か名案がありますれば喜んで伺います。
  21. 松浦清一

    松浦清一君 アメリカに対しては、日本政府側代表がしばしばおいでになつて、今度又本当か嘘か知りませんが、吉田総理等も行くとか行かんとかいう話も伝えられておりますが、アメリカとの外交をおろそかにしてもよいという意味ではございませんが、それほどアメリカに対して積極的な外交折衝をやられるという御意思があれば、これほどの重大問題が起つているんですから、外務大臣みずから韓国大統領を訪問する、或いは吉田総理みずから韓国に乗り込んで行つて、この問題の妥結に当るということも積極的なる外交を展開する一つ方法だと私は考えますが、そういうような御意思はございませんか。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういうことで幾分役に立ちますなら私も喜んで行つて交渉いたします。併し若しそういうことがとかく東洋の諸国においては、面子というようなのも非常に重んじられる関係もありますから、この実際的の効果というものはよほど考えなければならんだろう。そういう点も何度か研究もいたして参りましたが、どんなものですか、ちよつと私は今のところどうかと思つております。
  23. 松浦清一

    松浦清一君 そこまで話を発展させるつもりがなかつたのですが、名案があればとおつしやつたから申上げたのですが、面子とおつしやることは、韓国より日本が大国であるから、小国に対して日本代表が行くというのは面子にかかると、こういうのですか。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは面子ということが、すでにちよつと言葉がまずいかも知れませんが、そうじやなくて、私が仮に非常に目立つような形で日本から交渉に行つた、そのために韓国が譲歩したというようなことが、韓国側の内部では非常にむずかしいことじやないかということです。
  25. 松浦清一

    松浦清一君 そうしますと、問題が核心に入りますが、李承晩ラインの制定が一方的に宣言をせられて、そうして日本がこれを認めない認めないと言つているうちに、現実は認めざるを得ない状態に追い込まれて来た。大邦丸が射撃をされた事件についても、まあ口上書ですか、抗議書ですか知りませんが、そういうもので交渉して来たが、これもまだどうもうまく行かない。竹島の問題もうまく行かない。乗り込んで行つて話をすることはこちら側の面子も若干おありでしようが、向う日本の総理大臣なり外務大臣韓国にわざわざやつて来て折れたのだという工合になつては、李承晩大統領の政治的な立場が工合が悪い、こういうようなことが心配されていかんのだ、こういうことになれば、結局あなたが今までおつしやられるように、抗議的な文書を発送するとか、或いは諸外国の輿論日本側に有利に展開されることを待つているというよりほかに途がない、こういうことになりますが、そういうお考えなんでしようか。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは、我我はできるだけ十分に日本の誠意を尽して、相手方の反省を求める努力只今は十分いたすべきだと思つております。これは勿論漁業者の生計にも非常に関係することですから、我々も決しておろそかにしておるわけではなくて、非常に努力をいたしておるつもりなんですが、まあこれは例に取つたら非常に悪いし、又当らないとは思いますが、例えば満洲事変以降というものは、中国側では満洲の既成事実というものは認めないといつて非常に頑張つて、ずつと最後まで認めなかつたので、日本としては、そんなことを言つたつて意味がないじやないか、満洲国の機構もすつかりできちやつたと言つても、結局最後まで認めなかつたが、形、理由はいろいろありますが、結局それが最後に通つたということもあるのですが、非常にこれは時間が長くかかつて、その中に随分問題があつたと思います。我々は決してそんな長くこの問題を未解決にするつもりはないし、又そんなわけはないと思いますが、国際間の問題というものは、それは幾らやきもきしてもすぐに右から左に解決するというわけに行かない場合もあり得るのであつて、その点はどうしても忍耐を持つて堂々たる主張を続けて行くということも一方には私は必要であろう。併しその他にも、先ほど言いましたように、いろいろ考えて建設的なものについて解決方法というものを講じたいと思つております。
  27. 松浦清一

    松浦清一君 外交が非常にむずかしいということは、それはよくわかるのですが、韓国に関する限りにおいては、李承晩ラインの問題で一年半もかかつてどうにもならん。大邦丸事件も半年もかかつてどうにもならん。竹島問題も三月もかかつてどうにもならんというような状態に置かれておるようだ。今度のような問題が起つて来たのは、一遍日本に対して強腰でやつてみて、日本態度をじつと見ておつて李承晩ラインで大したことない、大邦丸事件を起しても大したことない、竹島問題を起して見ても大したことない、こういうような、言い換えます。と、実に韓国側日本をなめ切つたような措置をたび重ねてとつて来たわけなんですが、この李承晩ラインが引かれて一年半たつておる今日までに起りました問題の経過、それに対しての韓国側態度経過等を勘案して、そう早急に日本側の要望が容れられるということにはなるまいと予想されるわけですが、苦しならなかつた場合にはどうされるおつもりですが。御答弁の前に、そのときになつて見なければわからんとおつしやるかも知れませんが、どうも見通しなしに、時の熟するを待つているというような形に見えて仕方がないのですが、もう少し具体的な方法をとり、又どうしてもいけなかつた場合の措置を何かお考えになつているのでしようか。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々は、国際紛争を平和的に処理する主張を飽くまでも貫きたいと思つております。従つて平和的に処理するということ自体が、時間のかかる場合が非常に多いのであつて、これは武力で一かばちかやつてしまうというような考え方であれば格別、然らざればどうしてもこれは時間のかかる場合もありますけれども、併し同時に韓国日本も、これはお互いに仲良くして行かなければならんということは、先方もよく了解していることであろうと考えますから、これは解決できない問題じやないと思つて、できるだけ一つつて見ようと思つております。
  29. 松浦清一

    松浦清一君 これは新聞報道ですから、間違つているならば、間違つているとおつしやつて頂いて結構ですが、釜山の十日発AP電によると、「韓国海軍は十日、同夜二十四時以降韓国”領海”を侵犯する日本漁船はすべて捕獲するとのさきの警告を撤回したと発表した。」と、こうある。その理由として、日本漁船が順次ライン外に退避している、又その退避をすることを日本政府命令をしている、こういうことを理由として撤回すると発表しているわけですが、これは先ほど保安庁の長官説明によるというと、昨夕の十二時に、三十隻まだ残つているというのですが、こういう状況下においては、恐らく残る船というものは少くなつて行くだろうと思うのですが、今外務大臣のおつしやるように、機の熟するを待つているというような態勢では、すでに現実は日本の一千数百隻に上る朝鮮海域において操業しておつた船は、ライン外に締出されて、操業不能の状況に現実はなつているわけなんです。その場合に、日本国際的な関係韓国に対する友交関係等を考慮するの余り、これらの漁船が、或る海域において操業ができなくなり、又数万に上る漁船の船員並びにその家族等が生活の糧を失うという結果になるわけですが、その点について一体どういう措置を講ずるお積りなんでしようか。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私のほうの管轄ではないと思いますが、私自身としては、いわゆる李承晩ラインなるものは認めるわけに行かないのですからして、そこから退去することを勧告するということは、少くとも私はいたしたくないと考えております。
  31. 千田正

    千田正君 只今お答えは非常に我々にとつては重大であると思いますので、事は結局李承晩ラインを認めない、認めないのだから、そのライン内において正常な立場において平和な操業をするということは差支ない。但し外交を成果あらしめるために或る場合においては停止しなければならない場合もあるかも知れない。先ほどから私は、外務大臣の話を聞いておるというと、御尤もな話でありますけれども、併しながら日本漁民生活問題ばかりじやなく、日本のいわゆる権利の喪失ということを考えた場合においては、私は現在の李ラインにおいて踏みとどまつて漁船が平和な操業をするということは差支ないと思う。差支ないと思うのであるが、現段階においてあなたの肚を伺つておかなくちやならないということは、海上保安庁にしろ、農林省にしろ、実際は外交折衝に委せている現段階においては、外務大臣の肚一つによつて今後の行動を起さなければならない。そこで今あなたのおつしやつたお答は非常に重大な問題である。我々漁民は、ラインの中において、李ラインというものは認めないのだから、あの中で、いわゆる国際上からいつても公法上からいつても堂々と平和な操業をすることは何ら差支ない、かように考えるのでありますが、外務大臣としては、私がかよう申したことに対してどうお考えでありますか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは非常に法律的な考え方と、実際問題と、二つあると思うのです。例えば道を歩いているときに自動車が歩道に上つて来た、我々は歩道は堂々と歩く所なんだから、自動車が来ようが歩いて行く、そうして自動車にぶつつかるということもあり得るわけです。そういうときには、やはり避けるという必要も自然出て来るであろうと思います。併し権利権利である。私が今申したのは、李承晩ラインなるものは認めるわけには私ども行かないと考えております。従つて私自身の……これはまだ水産庁長官とか或いは農林大臣その他の方と相談したわけじやありませんが、私自身のことを言つている、私としては、その中から退去しろというようなことを勧告することは好ましくないと思う、こういうことを申したのでありますが、併し現実の問題のときには、まあ船は船として適当な措置を講ずる必要も起るかも知れない。これは実際上の問題なんです。法律的には私の言う通りだろうと、こう考えております。
  33. 千田正

    千田正君 そこでその問題が非常に重大なことは、現段階においては、外務大臣の今の肚の如何によつて海上保安庁にしろ、農林省の指令にしろ、現場におるところの漁民操業にしろ、すべてが現段階においてきめられる問題であります。でありまするから、今譬えておつしやつたところの、向うはトラツクを勝手に歩道であろうと、道の真中であろうと、勝手に飛ばして来たと、それにこちらは堂々とやはり右側通行という、正しい法律を守つていたにもかかわらず、ぶつつかるんだからよけろと、こう今のことを考えておられるのか。それともやはり正しいものは正しいとして進んで行くべきであるのかどうか。ここがいわゆる外務大臣としての重大な問題であるから、私は今所信を聞いたわけであります。大体あなたの意図するところは、要するに今交渉の段階であると、こういう段階であるから、正しいことは法律上正しいのだけれども、やはり暴漢に向つては、むしろ喧嘩をしないで一応避けておいて、そうして次の段階において主張するから、それまで我慢しろと、こう言うのでありますかどうか。その辺は我々としては、まあ漁師の立場から言えば、率直にお話を承わつたほうが、漁民生活の今後の問題もありますので、承わつておきたいと思うのであります。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私が申し得るのは、法律上の韓国に対する政府の立場であります。実際上の措置がどうなるかということは、これは水産庁なり、海上保安庁なりのお考えによつてきまることであろうと思います。私は法律上の問題、従来のいきさつにおいて日本立場を堅持して行きたいと、こういうことを言つているのであつて、主として韓国政府に対する立場なのであります。
  35. 松浦清一

    松浦清一君 只今までの外務大臣の御答弁なり、御所信を承わつておりますと、大体一言にして申上げれば、機の熟するを今後暫らく待つていて、そうしてそのかたわら解決のために努力するのほか途はないのだと、こうまあおつしやる一言に尽きるのですが、私は再び申上げますけれども、面子だとか、或いは韓国側の、日本から強い交渉を受けたから折れたのだというようなこともあつたりして、いろいろ気に悩んでおられるようなお言葉でございますが、吉田総理なり、岡崎外務大臣なり韓国においでになつて、李承晩大総領と膝詰で交渉されるという御意思はどうしてもお持ちになりませんか。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 吉田総理のことは私は知りません。私は役に立つということなら、あえて行かないということは決して申しませんが、これは現実にすぐ漁民生活に及ぼすものですから、若し結果が却つて悪いというようなことになれば、漁民生活は今よりも苦しくなるというようなことも出て来るのですから、よく考えてみなければいけないと思います。
  37. 松浦清一

    松浦清一君 漁民のその立場から言つて、結果はこれ以上悪くなりつこないと思うのですよ。ライン外に日本の船が退避したから捕獲することをやめたというのですから、若し中に入つて来れば又捕獲したり、射撃したり、臨検したりするということは、これはもう当然なんで、これから先は単なる臨検だとか、警告だとかということはやめて、やつぱり相当武力的な追い出しの行動が起されるものであろうということは、今日までの現況から推して想像にかたくないのであります。そうするとこれ以上悪くなりつこない。これを少しでも前進させるための努力というものは、もう単なる口上書だとか、抗議書だとか、金公使を再び呼んで話をすることくらいでは解決のつかない壁にぶち当つているのが、今の韓国に対する外交上の現実だと、こう私は判断するわけです。若しお役に立てば行つてもよろしいという御発言ですが、外務大臣韓国においでになることで、この問題の解決のために役に立つとか立たんとかいうことはどこで判断をすればよろしいのですか。
  38. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一あなたはそうおつしやいますが、私はそうは必ずしも思つてない。現に或る船は又操業を続けているということもありまするので、我々は李承晩ラインにこれから入ればすぐ拿捕されるのだからとか、弾丸を射たれるのだからとか、そういうふうには考えたくないし、又そうならないような空気をだんだん作つて行くことが至当のことであろうと思います。あなたのおつしやるようなふうには私は考えておらないのであります。  それから役に立つとかどうとかは誰が判断するか。これは皆さんおのおの判断の資料等はお持ちでしようが、私は政府の今責任者としては、私の判断は、自分は自分の判断に従うより仕方ないと思います。
  39. 松浦清一

    松浦清一君 もう一点だけ。それでは依然としてその李承晩ラインを認めていないし、そして中でまだ操業している者もある。そして向うが、私の理解するところによると、ライン外に日本の船が退避をしたから、もうこれを逮捕する必要はないのだ、こういうことで、先の警告を撤回をした、こういうふうに了解をしているので、若し入つて行けば危害を加えられるものと、今の段階において理解をするわけなんですが、外務大臣のおつしやることに従えば、政府の立場から言えば、これから先ライン内に入つて操業していいと、こういうことなんですか。
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは新聞の諸君もここにおられるので、ちよつと速記をとめて下さい。
  41. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  42. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を始めて下さい。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はやはり今のこの方法はいろいろあるのです。実は逆にそんなことはないということもあるのですが、現実の事態から見まして、もう少し実際の模様を見て、見ないとわからないと思いますので、今からまだそういうことを一切諦めてしまうということはいたしたくない。できるだけいい空気を醸成して行くのがこの際とるべき方法であろう、こう考えております。
  44. 青山正一

    ○青山正一君 今の松浦委員とそれから外務大臣のいろいろな応答によりまして、それに関連して、一つ質問申上げたいと思いますが、この現在の姿は一体どうなつておるか。つまり昨日ですか、あのUP通信ですね、ああいうふうな発表もございましたし、それからラジオにも数回に亙つて発表した。ところが今朝それを業者のほうでは真に受けまして、殆んど全部が出漁しておる。恐らく李ライン内の中へ入つておる向きもあろうと思うのです。そうすれば今の松浦さんの心配しておつたこと、それから大臣お答えになつたことが、又いろいろな点において繰返されることになるのじやないか、そういう点を私どもが心配しておるわけなんです。水産庁長官、如何ですか。今朝のこのいろいろなラジオのニユースとか、そういうものを聞いて、長崎とか、博多、下関方面から相当出漁したというふうに私は聞いておるわけでありますが、その真偽のほどは長官におわかりになりませんですか。
  45. 清井正

    説明員(清井正君) お答えいたします。只今お話でございますが、私も新聞紙上で一部見まして、事の真偽を確かめておりますけれども、只今までのところは確かかどうかわかつておりません。
  46. 青山正一

    ○青山正一君 私の聞いた範囲内におきましては、相当数の船が出漁に出かけたということを聞いておるわけなんです。そうしますと、今松浦さんのいろいろお聞きなさつた問題とか、或いはそれにお答えなすつた外務大臣の事柄もいろいろ響いて来るわけなんです。そういつた際におきまして、外務大臣とか或いは保安庁長官とか、お二方のこれに善処するお気持は一体どういうところにありますか、その点をお聞きしたいと思うのです。
  47. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は先ほどから繰返して申しておるように、少し穏やかになつたとまで仮定すれば、その空気を醸成して行つて建設的な解決の緒を早くつかむということにあるのであります。そのためには操業の問題について交渉する等、適当とすればこれもやりたい。その他いろいろな方法がありましようけれども、この際はできるだけ建設的な解決の方向を、つまり要するに漁業が心配なくできるような方向に向つて進みたい、こう思つております。
  48. 松浦清一

    松浦清一君 私くどいようですが、先ほど最後に外務大臣にお伺いをした現状の下において、李承晩ライン内で日本漁船操業することは差支ないかどうかというその御見解を、もう一遍はつきり聞かしてもらいたいのですが、あとの安全の問題についてはほかの大臣にあとから伺います。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外務大臣としては、実際のこの漁業の問題がどうであるかということは、これは現地のほうに海上保安庁の船が出ておればそれの報告を聞いたり、或いは水産庁監視船が出ておればその報告を聞いて判断するより仕方がないと思います。私の申上げることは外交交渉であります。韓国政府に対する立場であります。これは私は李承晩ラインというものは、公海の自由の原則に反するから認められないということでありますが、その中で操業いたすべしとか、いたすベからずとかいうことは、私の立場から言えば権限外のことであります。それは判断はまだついておりません。
  50. 松浦清一

    松浦清一君 それは外務大臣としては、その李承晩ライン内で操業することは、今交渉中の段階において非常に危険であるからやめたほうがよかろうということはおつしやらないわけですね。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はやめたほうがよかろうとも、やめないで行けとも言えないのであつて、私は要するに韓国政府に対して李承晩ラインというのは公海の自由に反するから認めるわけに行かないという立場を政府としてとつておるのであります。
  52. 松浦清一

    松浦清一君 だから日本政府李承晩ラインというものは国際法上認めがたいものである、日本政府が認めないのだから、その中に入つて日本漁船操業するということは差支があるともないとも言わないと、こうおつしやるが、実際に現地で漁業をしておる者にとつては、一体行つていいのかどうか、よいのか悪いのか判断に迷つておるわけですね。それに対して日本政府方針なり、考え方というものをやはり明瞭にしてやる必要があると思うのですよ。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは水産庁長官等とよく連絡をいたしまして私の意見も申しますが、主として国内の漁船に対する指導等は外務大臣がいたすべきことじやないと思います。
  54. 森崎隆

    委員長森崎隆君) あと五分間で外務大臣はほかに用事があられますから、御退席を願いたいと思いまするが、御質疑はほかにございませんか。只今農林大臣が御出席になつておられまするので……。
  55. 千田正

    千田正君 農林大臣にお伺いしたいのは、今外務大臣所信のほどをすでに我々は承わつたのでありますが、李承晩ラインは認めない、認めていないのだ、同時に日本権利というものは、飽くまで外交上は主張しなければならないから、外交上に関する限りは、自分は飽くまでその面を担当するのだ、そういう外務大臣所信のようであります。つきましては現在李承晩ライン内において正常な、且つ平和な産業としての漁業操業されている今日、先般来問題になつておりましたように、韓国側の一方的な通告によつて日本漁船の、通称李承晩ラインと称せられる埒外に、退去向うが要求して来た。これに対して一体日本の国内における漁民生活を保護し、指導して来ているところの農林省の最高首脳部であるところの、保利農林大臣並びに清井水産庁長官といたしましては、今後の問題をどういうふうに持つて行かれるのか。只今外務大臣の御説明によるというと、大変な重大責任をあなた方にしろ、海上保安庁長官にしろ負わされたような感じなんであります。一方においては日本の主権を確保しなければならない。同時に又外交上非常に支障があるがごとく言われつつも、漁民生活を保護し、保障して行かなければならない段階に到達しておりますが、いわゆる漁民の最高の指導に当られるところの農林大臣及び水産庁長官は、どういうふうに今後処置されるかということを、この最も緊迫した今明日に、あなた方から資料を出してもらわなければならない。それで所信のほどを承わりたいと思います。
  56. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御尤もでございまして、私どもも今回の韓国でとられた措置に対しましては、国の正しい主張、正義の主張は必ず国際的に容れられるという上に立つているものからいたしまして、誠に遺憾に存じているわけであります。公海上におきまして、又長年の我が国漁業の重要な漁場において、平和的に正しい漁業を営んでいるものに対して、不当な退去要求をされるというようなことは、これはどの角度から見ましても誠に遺憾に存じており、従つてまあ本来でございますれば、たとえ如何なる犠牲を払つても、そこで頑張つて仕事をせよ、こう言つてしまえば済まぜないことも或いはないかも知れませんけれども、併しながらとにかく相手のほうは、伝えられるところでは、武力に訴えてもおつ払うというようなことを言われて、それも期限付でやるというようなことになつて参りますれば、同時に漁民の生命を保護するということも、何といつても政府の最大の責任でございますし、併し果して実際がどの程度の緊迫した事態にあるものか、これはいろいろあなたもお聞きになつていらつしやると思いますけれども、まちまちの情報があるわけであります。例えば臨検をした、或いは監視船と話をした、韓国側態度というものも非常に、そのこと自体においては極めて友好的な態度であるということは、これはどの船からも来ているような状態で、ただ私どもとしましては、日本が長い間漁業いたしておつた地域で漁業を営むことは、これは当然なことでございますから、これを抑えるということは、もう本当は歯を食いしばつてもできないことでございますけれども、従つて私どものほうの漁船保護の任務についております監視船に対しましては、一隻の漁船が残つて監視船は必ずその水域内にとどまれという方針を堅持して保護に当つておるわけであります。ただ危険が実際どの程度のものであるか、これは現地の様子によるわけであります。昨夕の例えば無期延期をするというようなラジオを聞いて喜び上がるというような状態に置かれておる私どもといたしましては、現地の海上の実際の空気の判断によつて指導を誤まらんようにして行くほかはなかろう。併し私どもとしては、何とかこの操業が続けられるように、今日まあとにかく零時を期してなにするということが一応実際的にはラジオの通り行われていないわけでございますから、これは極めて短かいここ数日間の情勢を慎重に見て誤まらんようにしなければなるまいかと、こういうふうに実は考えておるわけであります。
  57. 青山正一

    ○青山正一君 くどいようですが、先ほど私外務大臣にいろいろお聞きしたわけなのですが、全部今朝出漁しているわけなのです。保安庁の長官にいろいろ内容のほどをお聞きしたいと思いますけれども、今その業者の方もこちらにおりますが、その業者のお方の全部の船が出ているわけです。李ラインへ向つて出ているわけです。而も昨日のラジオの報道を真に受けて出ているわけです。先ほどから外務大臣お話によりますと、ああいうお話を聞きますと、これは行つてもなかなか大変だろうということも伺われるわけなのですけれども、差当り今までのような様子で進んで行くというようなことになるとすると、問題が相当大きく或いは現地において惹起しやせんかということを心配いたしているわけですがどうなんです。保安庁長官のほうへそういつたまだ現地から来ておりませんですか、どうなんですか、その点お聞きしたいと思います。
  58. 山口伝

    説明員山口伝君) その点は私も非常に心配をいたしておるわけでありますが、先ほどから申上げるように、午前零時前後には巡視船の、これは漁場全体に対する完全な情報だとは思われませんが、「あまくさ」等からの情報を総合して三十隻前後操業しております。その状態が午前二時頃まで、場所は農林漁区二百五十四区、二百四十四区のあたりであります。その後なお、先ほどからいろいろ御意見もありましたので早速オペレーシヨンのほうへ今連絡に行かせておりますが、午前九時五十分頃現在で、視界が少し悪いようで完全な情報ではございませんが、一つの判断材料として、九時五十分頃には韓国船の船影を認めず、それから二百五十五区、二百三十三区、二百四十三区、二百三十二区、二百四十二区、このあたりで漁船は、一応日本漁船の姿は認めておらない。認められるのはむしろ相手のほうの船のようです。ただなお出漁しているのじやないかというお話もございました。そのほうもなお情報を今照会をしておりますが、恐らく昨日のラジオの報道で出たことも想像に難くないのであります。又それが今朝までに現場に来ていない、いずれそういうことであれば現われて来るだろう。私どもの現場における警備の方針は、先ほど松浦委員からもお話がございましたが、昨日のUP電で捕獲を撤回するということは、日本漁船が引くという指示をしたからということでありますが、政府側といたしましては、何らそういう指示をしておりません。そうしたいろいろ情報を伝えて、漁船自体の判断に任しているわけです。我々のほうの巡視船は、李ラインの内に踏みとどまる日本漁船が無論あるわけでありますから、それと行動を共にして今なおずつとこれらの漁区を警戒して遊弋しているわけです。ただその近くに向うの船もいるわけです。今後現われて参りましたときにいろいろ事故でもあります場合に、今朝の「あまくさ」式に立入つて、何故に連行するなり拿捕するなりするかということで、直接交渉をやろうという考えで依然としているわけであります。
  59. 松浦清一

    松浦清一君 今までの農林大臣、外相、保守庁の長官等のお話を伺つておりますと、先ほどの外務大臣の御答弁のように、李承晩ライン内に入つてよろしいともよろしくないとも言い切れない。これはもう漁船の自主的な判断に任せるよりほかに仕方がない。保安庁の巡視船は、その自主的な判断に基いて、ライン内で操業している船にできるだけの危険が起らないように最後までとどまつている。この状態は極めて明らかになつたわけですが、そういうことですと、現在のところ李承晩ライン内における日本漁船操業については、日本の政府は何の指導力も持つていない、空白状態が現われていると、こう思うのですが、どういうことなんですか。入つていいとも悪いともよう言わんで、漁船の自主的判断に基いて、やりたいものはやれ、逃げたいものは逃げろという自由意思に放任しているのだ、こういうふうに聞き取れる状態なんですが、現実はどんな状態なんですか。
  60. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 成るほどそういうふうにおつしやればそういうふうになるか存じませんが、(笑声)とにかく不法なる行為に対して有効適切にですよ、時を移さず有効適切にそういう不法行為を排除するという措置がとり得られないという日本状態においては、これは飽くまでも私どもは、正しい国際主張は必ず容れられるというその主張の下に立つている私どもとしては、韓国政府の反省によつて、こういうことが速かに破り除かれることを求めるわけでございますけれども、さらばとて、それじやそういうからみんな引揚げてしまうというようなことは、私どもとしてはできるだけ避けたい。但し操業することが平和裡に行われるように努力をしなければならんことは申すまでもございませんけれども、ああいうふうに、例えば十日の二十四時を期して、発砲、武力を行使しても退去させるのだというような不法な処置の下になお且つそこで踏みとどまつて操業をしろということは、これは私はなすべきことじやなかろう。併しそういう空気は現実に、そういう警告が出ておりましても現実にその危険が出て来るかどうかということは、現地にとにかく三隻の監視船、四隻の警備船も出ているわけでございますから、そしてそれらができるだけ積極的にこの韓国艦艇に接触をとつて、そして不法な今度のなにに対して沈着且つ勇敢に反省を求めてくれている。そういう実情にありますけれども、併しとにかく李承晩ラインそのことが私どもとしては容認し得ない不当な一方的な措置であり、そういう措置をとる相手でございますから、それだから正しいから安全だということも言えない。そういう意味から日本政府としても韓国政府に強く反省を求めるそういうことによつて不幸な事態に立ち至らないように努力をいたしているわけでございます。従つて青山さんのお話のように、昨日のラジオで、まあ大体行かれそうだということで、まあみんな出て来た。私はそうだろうと思います。今日の漁業の実際からいつてそうだろうと思います。それで乏しいとは存じすすけれども、とにかく海上保安庁の警備船や農林省の監視船が全力を挙げて操業漁船の保護に当つて頂きたいということを強く要請しているわけでございます。果してこういう不安な状態が長く続くかどうか、私は恐らく数日の様子によつて大体わかつて来るのではないかというふうに、先ほど申上げましたようにここ二、三日の状態を注視して考えて行かなければならない、こう考えております。
  61. 松浦清一

    松浦清一君 それが農林大臣はここ数日のうちに何とか曙光が見えるだろうという観測を持つておられるのですが、これは判断の相違かもわかりませんけれども、李承晩ラインというものが引かれたのが去年の一月の十八日で、すでに一年半たつているわけです。一年半もたつて日本政府は認めないのだ認めないのだということを言つておりながら、具体的に日本の認めざることの実証の挙るような解決ができて来なかつた今日の状態において、この問題がそう早急に解決がつくようには私どうしても思えないのですが、そういうことになりますと、例えば私は青山委員の言つておられた、昨夜の警告を撤回したという発表を聞いた漁船が続々としてライン内に入つて行つている、こういう話ですが、私は別の方面から聞いた。これも話ですからはつきりしたことはわかりませんが、真偽のほどを保安庁に伺いたいが、今朝六時頃の私の耳に入つた情報では、韓国軍艦十数隻が、いわゆる李承晩ラインの周辺を遊弋して警戒している。それから日本の保安庁の船もその周辺を遊弋しておつて、両方が沈黙の睨み合いをしているような状況にあるという情報も聞いたのですが、こういうことは単なる情報なんですか。真偽のほどはわかりませんが、そういうことについて何か青山委員の楽観的な情報を聞いて行つているという話と、今私の申上げた情報とは全然逆の情報なんですが、わかりませんか、実態は……。
  62. 山口伝

    説明員山口伝君) 私のほうのキャツチしております情報では、あの水域向うは水雷艇程度のものが十隻程度は遊弋しているという情報を得ております。こちらのほうは、この間から申上げておりますように、巡視船の五隻と監視船の三隻もあの附近に、丁度済州島の東方三十浬前後の辺にずつと並んでいるというような恰好になつております。そういうふうな配置になつていることは事実でございます。
  63. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると、いろいろ意見はあつても、現実の問題というのは、李承晩ライン内に入ることを向うの艦艇は堰きとめているわけですね、判断される現況というものは。そうなると、一体、日本の保安庁の船が守つてくれるから入るのだという判断で行く、或いはそういう段階をくぐつて入るのは危険だからやめたらいいと判断するかということについて、恐らく私は漁船の諸君は迷つていると思うのだが、そういうことについて何らか的確な指示を与えるということは、これはできないものですか。若し仮に青山委員発言をしておられたように、昨夜向うの無線を傍受した船が、もう警戒は解けたのだということで向うに出かけて行つても、先ほど外務大臣は、それは余り言わんほうがいいというようなことをおつしやられたけれども、非常に危険な所に単に昨夜の間接的に傍受した、無線を受取つた船が誰からも指示されないで、もう入つてよろしいのだという判断に基いて、そうして危険な所に入つて行つている。青山委員の受けた情報が真なりとすれば、そういう悪い状態も想像されるわけなんだが……。
  64. 山口伝

    説明員山口伝君) 前に経過の御説明の際にも若干申上げているわけです。巡視船監視船それ自体が本日の十二時以降どういう取扱になるかという点も、今暁にも先方の艦艇と折衝した場合に確かめたわけでありますが、十二時までは向うとしては日本漁船李承晩ライン外に出してもらうように促進してもらう行動の自由を認める、併し十二時以後はどうなるかというと、その点はまだ何らの指示も受けておらんという状態、そういう応答をしておるわけです。ですからこの巡視船監視船が本日十二時、正午以降どうなつているか、情報が入らないわけでありますが、我々もどういう扱いを受けるのか心配をいたしている点であります。併しいずれにしましても、向う退去を実力行使によつてやるというような場合には、巡視船はその場合には止むを得ないから、その際は退去を命ずるということを明確に文書にして、艦長の証明をもらつてそのときは止むを得ず引下がる、このことは同じような方法を、日本漁船も今後やられる場合にはしようとはしております。従つてこういうような状勢のところを、御想像のようにうまくないという状態であれば、今後仮に基地から船が出て来れば、いつ如何なる不祥事件が起るかもわからんことも想像できるわけです。併しその場合にも、今のような方針では臨んでいるわけでありますが、こういうような状態でありますから、何らかここで一つそういつた不祥事件の起らない前に事態の好転を図ることなくしては、取締に当る者としても、漁船と運命を共にする意味で頑張つてはおりますけれども、何らかの措置を認めることを望んでいるわけであります。
  65. 千田正

    千田正君 どうも外務大臣外交方針は、我々から見れば飽くまで強気のように考られる。国内の現状では、農林大臣並びに只今海上保安庁長官の言は、飽くまで頑張るけれども、危険な場合は止むを得ないから退避するのだ。早く言えば、我々は権利の喪失も止むを得ない、一時的にもそうするよりほかはないのだ、こういうふうに我々は聞くよりほかはない。それで私は、まあ内閣総理大臣がおらんから総合的な態度を聞くわけに行きませんけれども、こうなるというと、いわゆる日本韓国側巡視船或いは向うが持つているところの装備に対抗するだけの装備がない。衝突を避けたいから止むを得ない、退避するのだ。更にそれを言い換えれば、彼等が勝手に言うところの李承晩ラインなるものの宣言というものを止むなく我々は認めるような結論に入つてしまう。そういう点から、私は本日の水産委員会としての我々の見解は、単なる漁民生活問題ではない。言い換えれば日本の国権をこの際喪失するかしないか、そういう重大な問題でありますので、只今海上保安庁長官のおつしやられた点は、止むを得ない場合は公式的な文書を以て対処するよりほかはないのだ、これは現状としては仕方がないのです。併しながらそういうことによつて日本の国権は一時的にも喪失するということは、我々の国民感情として許すわけに行かない。最後まで我々としてはやはり国際公法上ならば許される自由な原則立場は守らなくてはならん、かように考えますが、そういう場合におけるところの非常に今のいわゆる外務大臣の御答弁と、農林大臣の御答弁と、それから又海上保安庁長官の御答弁はおのおの自分たちのいわゆる管轄内のことだけをお考えになつているようでありますけれども、総合的に一体どうすればいいか、こういう結論を我々ははつきり聞きたいのであります。止むなく、やはりどうにもしようがないときは退避するよりほかないんだ、こういう結論でありますね。
  66. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これは総合的にどうだと言われれば、これはもう日韓両国の友好関係を早く調整樹立するというところはもう最大でなければならんと思います。国憲の喪失と言われますけれども、併しそういう危難に、若し危難が予想せられる場合に、その危難をもあえて犯して国憲の確保に当れと言いましても、これは無理だと存じます、実際問題として。
  67. 千田正

    千田正君 曾つて一昨年日本と米国とカナダにおけるところの漁業条約を設定する場合において、いわゆる当時も公海の自由の原則と、この原則権利を放棄するか放棄しないかと、こういう問題は日本政府並びにカナダ、及びアメリカとの間に相当な論争の重点であつたはずであります。これはなぜか、いわゆる自主権を獲得した日本としまして、公海の自由の原則は飽くまで主張しなければならない。併しながら魚族資源保護という、或いは国際上のいろいろな問題の立場から一応そこをお互いに抑制しようじやなかというところに話は落付いた。併しながらアメリカ及びカナダの要求は、日本の自由操業原則を放棄しろと、言い換えれば屈辱的な或いは言辞であつたかも知れない。併しながら賢明な日本政府代表者諸君は飽くまで頑張つて、これを権利の放棄じやない、権利の抑制ということによつて一応日・米・カナダの条約は最後のサインにまで至つたと私は記憶しております。ああいう平和的な論争の際においてもさような問題が起きている。現実の問題は更に深刻な問題で私はあると思う。国憲の喪失云々ということを私は仮に言うたとしても、一時的にも我々は権利の喪失というものは、自主的な今日の日本の独立国家としての忍ぶべからざるところの問題であつたと私は思うから、これは政府に対して総合的なそれに対するところの所信を私は要求しているのであります。この点を私は是非はつきりしてもらいたいと、かように思うのであります。で、農林大臣及び海上保安庁長官としましては、現在の状況においては、一時的にも止むを得ないから向う側が不法に出た場合においては退去せざるを得ないのだ、あとは外交折衝に待つよりほかないのだと、かような結論でありますか、その点をもう一度聞かして頂きたい。
  68. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これはですね、実際この平和的な操業に対して或いは発砲、或いは武力行使というような不当な手段で出て来る、こういうときに漁民の生命を保護するということはどうしても必要だ、そういうことの起らないように、この巡視船及び監視船の船長以下の乗組員等非常に心配をしてやつてくれているわけでございます。今或る委員お話のように、青山委員お話のように、まあ大丈夫だろうということで出かけているのが、現地に参りまして、或いはその監視船とか巡視船等が、非常にそれは入ればかなり危いという場合には、ちよつと様子を見ておらんかというような実際の指導をしてくれるかと思います。又そういうようにこちらからも言つております。それで一時的に国憲を喪失するとか、喪失しないとか、諦らめるとか諦らめないとかというような考えで、これは実は当つておらないのでありまして、飽くまで現地の事情で、非常に危険度が高いようであれば、これはまあ入れたくても入れないのが私は正しいだろうと思う。そういうことで一つここ数日の模様を見まして、一方外務大臣も強く外交交渉をやつてくれると思いますから、私も強く要請しております。そういうことで一つつて頂きたい。
  69. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私は先ほどから外務大臣並びに農林大臣その他政府委員の方々に対する質疑状況を伺つておりまして、弱い国民が如何に情けないものであるかということをしみじみ感じたものであります。今日この問題が如何に論議されましても、解決をする時が来なければ解決しないのじやないかという感じを非常に深つ持つものでありますが、今日の段階においては外交交渉によつて問題を解決しようとする以外に手はない、いわゆるきめ手がないということは実に残念に堪えません。併しながら今日の情勢は、ただ残念ということに過ぎないのでありまして、我々水産に関係する者といたしましては、この今日のあの水域漁業状態というものは、そういつまでも続くものではありません。今日がもう一番の盛漁期であります。この時期を一日過せば、すでに衰退期に入つて来るのであります。魚がいなくなつてからあそこで操業を許されてみても何らの効果はないのであります。今水産の操業というものは非常に行詰つております。僅かにこの盛漁期において、今までの赤字を解消しようとして、漁民は命を賭してあそこに出ているのであります。そこで漁民は我々が出て働いていいのでしようか。あの水域というものは国際法上認められないものであるならば、行つてもいいじやないか。併し韓国ではこういうことを言つているが、政府は一体どういうふうに我々を扱つてくれるかということが、本当の真意なのでありますが、如何せん、これに名答を与え得る今日の日本でないということを考えますときに、我々は如何にすべきかということはおのずから出て来るのであります。又如何に政府に質問をし、政府を鞭撻いたしましても、政府としては只今限界にぶつつかつて、それ以上には進まないことがはつきりとわかつたのであります。そういつても我々はただ投げ出すわけには参りません。私どもの希望するところは、数日を待てとおつしやいますが、まあこれを待つ待たないは止むを得ないことで、時間はおのずかち経過いたしますけれども、この非常に大切な時期であるということを十分政府当局は認識されまして、極めて強硬な態度を以て、国民がそういう非常に悲憤の感じを持つてこの問題を見ているということを認識されまして、早急に、数日と言わず、丁度昨日この論争をしておりますときに、七時間の後ということを言つておりましたが、それが七時間の後においてともかくも、公式であるか非公式であるか知りませんけれども、捕獲はしないという声明があつたということだけでも、大分我々の心持は緩和されたのであります。併しながらただ捕獲しないということであつても、操業をさせないということであるならば、何ら変らないのであります。そこで農林大臣とされましては、先ほどから関係当局に強く要請をして、漁船の保護を図り、操業のできるようにするという御努力をなすつておられるようであります。これをいま少しく強く私は警備に当る方面にも呼びかけられまして、そうして万全の措置を講じてやつて行かなければならんと思いますが、この漁期が、魚はだんだんと動いておりますので、どういう措置によつて早急に解決しようとするか、ただやはり強く要請をして外交交渉に待つというのでありますか。考えまするというと羊の群を狼が追うている、猫が守つているというのでは、これは問題は解決せんと思うのであります。今日本韓国との問題でありますが、世界各国がかような不法なことを如何に見ておるかということも、我々は非常に関心を持つものでありますが、農林省といたしましては恐らくきめ手はないと思いますけれども、成るべく早く、これを一両日のうちにでも解決しようとする何らかの方策はお持ちでありませんでしようか。農林大臣としてただ早く早くというのでは、どうも我々としても気になるわけであります。その点を一応お伺いしたい。
  70. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 私はもう全国民気持が、今あなたのおつしやる通り気持だと思います。それで暗示せられましたような手段をとることが妥当であるかどうか、そうして又事態を好転せしめて行くかどうかということは、これは相手国の国柄からいたしましても、よほど考えなければならんところじやないかというふうに思います。私どもとしては、非常に微弱ではございますけれども、とにかく海上保安庁農林省の船の乗組員の方の努力にも最大の期待をかけざるを得ないわけなんであります。それでとにかく今朝の零時から捕獲ということが一応延ばされたような形も、これはやはり私は日本国民のこの事態に対する感情もやはり韓国側も重視しているのじやないか。のみならず外交当局の努力の現われも来ているのじやないか。数日待つて下さいという意味じや私はないのでございまして、この事態が果して従来、松浦さんのお話では去年の一月の李承晩の宣言以来こういうことになつているから、ちよつとやそつとじや片付くものかということでありますが、ところが李承晩ラインというのは成るほど宣言はされておつたけれども、それじや李承晩ラインを侵犯したということで何も問題を起して今日まで来ていることはないわけであります。李承晩ラインということを盾にとつて積極的な措置をとられたのは、今回が初めてなんであります。従つてこの事態は、まあこの一両日の現地の実際の空気から見ましても相当動いている。で、この動きを数日見れば、およそ事態はわかるのじやないだろうか。一体こういう八日の零時を期して退去させるとかという最初の警告を一体どういう理由で発したものか、それにもいろいろの説があるようでございまして、或いはスパイ行動をどうとか、或いは魚族をどうとかというようにまちまちで、一体それもただ海軍の一部局においてなされているというようなことで、一体この措置が如何なる真意によつてこういう措置がとられたかということが実際わからん状態であります。これはこの事態に備えまして、できるだけとにかく操業を確保する、そうして又一面は、どうしても漁民の生命は保護をしなければならない。それでとにかくこのところ、慎重な最善の努力を払つている。これは私はきめ手といつてちよつと出て来ない。
  71. 松浦清一

    松浦清一君 外務大臣農林大臣も、積極的な打開の途を講ずるために、努力をするよりほかに途がないと、こうおつしやる。この問題に当面した大臣立場としては、そうおつしやるよりほかに途がないと思うのですが、その最善の努力を払いつつあるというその具体的な問題について、ちよつと突つ込んで伺いたいのですが、九月の九日に口上書というものを向うに送つたはずでありますが、その口上書を送りつ放しなんですか。それから後に具体的な何かの折衝を行われたかどうか、倭島局長一つお答え願いたいのですが、どの辺にその積極的な最善の努力を払われているかということを知りたい。この口上書を送りつ放しでじつとして、やがて解決するだろうと思つて見ているらしいように見えるのだがどんなことをやつているのですか。
  72. 倭島英二

    説明員(倭島英二君) 韓国との関係では、その口上書を送りましたあと特に新らしい申入をしておりません。ただ昨日から新聞報道等がありましたから、それが先ほどもあります通りいろんな報道がありますが、それについても通信社によつて多少いろいろ調子が違いますし、内容も違うということで、こちらが出した抗議文並びにその後、まあ何かの反響だと思いますが、とられた昨日の新聞に伝えられるような向うの声明というものについて今日も韓国代表部に或る交渉をいたしました。併しまだはつきりした向う意思表示はありません。その程度です。
  73. 松浦清一

    松浦清一君 或る交渉というのは一体どういうことですか。これは最善の努力を払つていると言つてだね、実際何にもやつていないように見えるのだがね。
  74. 倭島英二

    説明員(倭島英二君) それは韓国側に対してはそうであります。
  75. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると今或る交渉をしているというのは、韓国以外の国に対して斡旋をしてくれとか仲介をしてくれとか、そういう意味の話ですか。
  76. 倭島英二

    説明員(倭島英二君) それは昨日も御説明をいたしましたが、関係のあると思われる国には事情をよくわかるように連絡をいたしております。
  77. 松浦清一

    松浦清一君 まあそのことを以て最善の努力と言えば、私の見たところでは最善の努力とは申上げかねるのですが、そのほかに打つ手があればと、こう先ほど外務大臣がおつしやつたが、そんならば外務大臣吉田総理韓国に出かけて行かれて、李承晩大統領とじきじき面接をして話をつけるという途もあるではないかと、こう申上げたのですが、そのときに岡崎外務大臣は、吉田総理立場は知らないが、私でお役に立つのであれば行つても差支ない、お役に立つか立たんかというのは、誰が一体判断するのかといつて聞いたところが、それはまあわからないと、こういうことなんですが、結局積極的に話合いをつけるということならば、もう少し私はその動きを見せないことには、単に口上書を送つたり、諸外国に実情を訴えるというような手を打つているだけで、農林大臣がおつしやるようにここ数日の間にどうも解決がつきそうなような、そういうことを考えるのはちよつと考えが甘いと思うのだが、農林大臣はどうお考えになりますか。いろいろの関係もあるかも知れませんが、この際日本にとつて最も大きな漁場がまさに失われようとしている現況の下でありますから、外務大臣なり総理大臣なりが向う行つて、これはもう面子も何もないですよ。話合いが付けば、これはもう日本立場がはつきり立つて来るわけですから交渉を始めることの可否については、農林大臣はどうお考えになりますか。
  78. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これは一つの考え方だと思うのです。有力な考え方だろうと私も思います。併しそれを実効を、要するに外務大臣が言われますように、実際の効果を収め得るか否かということは、それはよく今日まで折衝をやつて来られておるわけですから、そちらで御判断を……私のほうとしてはもうとにかく出かけることも外交交渉、こちらにおられる機関に対して言うのも外交交渉、とにかくその手段方法はどうあろうとも、とにかくお話のように時期的に制約される問題でございますから、とにかく有効な措置外交上尽せるだけ尽してもらいたいということを私は申しておるので、松浦さんの御意見も、外務大臣本肯定しておりますように、一つの私は有力な案だと思うのであります。
  79. 松浦清一

    松浦清一君 それで私はもうおしまいですが、結局まあ今までの政府のおとりになつた経過というものはもう明瞭になつて来て、これ以上はまあ外交折衝によつて速かに解決を見出すよりほか途がない、こういう状態であることがはつきりわかつたわけです。今までのやり方ではどうも展開をしない、こういう状況にまで行詰つて来たわけですから、何とか違つた手を積極的に打たなければ、向うさんからも、よろしい、そのくらいでやめましようと、そういうような回答が今後手を拱いて待つていても、これは百年河清を待つがごときもので、恐らく永久にそういうことは言つて来ないと思う。だからそれを新らしい手で早く進めるには、もう抗議書口上書では駄目なんで、金公使に来てもらつて話をしたつて駄目なんですから、向うに乗込んで行くより仕方がないと思うのです。若し農林大臣が肯定されるならば、一つ第一番には朝鮮海域において操業しておつた漁業者一般の問題として、又第二には韓国に対する日本の友好度を高めつつ外交折衝を円満に解決する、こういうことのために積極的にお骨折りを一つしてもらいたいと思うのです。
  80. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 私も当然の責任がございますから、とにかくできるだけの努力をいたします。
  81. 野田俊作

    ○野田俊作君 「九月七日午前一時日本漁船第一大福丸および第二徳島丸の二隻は、大韓民国艦艇により拿捕せられ、巨文島方面から釜山に向つて連行せられておる旨、第一大福丸から連絡に接した。」、これについて何かその後わかつておりますか、どなたか……。
  82. 清井正

    説明員(清井正君) この点につきましては、前にも御説明申上げたと思いまするけれども、韓国に対する抗議文の中にはつきりとそのことを、事実を申しまして直ちに釈放するようにということを申入れてありますし、又必要に応じて損害賠償も要求するということを韓国側に申入れてあるわけでありますが、私どもといたしましては、今後この問題につきましては極力努力をいたして、早急に実現を図るようにいたしたい、こういうように考えております。
  83. 青山正一

    ○青山正一君 ここへ法務省の入国管理局のお方が来ておられましたらこれに関連して……。この李承晩ラインを固執する一つ理由として、この李承晩ラインを通つて日本から密輸とか或いは密航が行われているということを韓国側が挙げておるらしいのですが、そういう事実の有無がありますかどうですか。その点について一つお聞きしたいと思うのです。
  84. 鶴岡千仭

    説明員(鶴岡千仭君) そういう点は、実は私のほうが直接関係いたしますよりも海上保安庁のほうでお取締り頂いておるわけでございますので……。
  85. 山口伝

    説明員山口伝君) 青山委員の御質問お答えいたしますが、その前にちよつと御説明いたしますが、税関の仕事或いは出入国管理の仕事の海上における取締は私のほうで一手引受けなんでございまして、それで朝鮮日本との間にはかなり密航、密輸も現実に件数は出ております。ただ先方がこの機会に申しておるのは、それはまあ言わんがためのじやないかと思うのでありますけれども、現実に今年に入りましてからも全体の密航、密輸の海上における検挙数の大部分は、朝鮮との間であることは事実でございます。
  86. 青山正一

    ○青山正一君 朝鮮のお方が日本へ来る数が多いですか。それからこちらのほうが向うへ行く数が多いですか。その点はつきりして頂きたい。
  87. 鶴岡千仭

    説明員(鶴岡千仭君) 今日の日本人が韓国のほうへ参りまするのは、いろいろ制限がございまして、今日の両国間の交通は殆んど一方交通と申してよろしいと思うのであります。つまり韓国人が日本へ入つて参りますのが多いのでありまして、それに比べまして、こちらから向うのほうへ行かれる新聞記者の諸君などの数は極めて微々たるものでございます。
  88. 青山正一

    ○青山正一君 日本に登録されておる韓国人の数は如何ほどですか。それからそれ以外に推定としてどれだけ入つておりますか、その点について。
  89. 鶴岡千仭

    説明員(鶴岡千仭君) 今確実な数字は出しますが、大体五十四、五万程度の者が登録いたしておりますが、その中にどの程度の数字のものが登録をしないで、不法に滞在しておるか、これは実は非常にむずかしい推定の問題でございますので、何とも申上げかねるのでございます。これはいろいろ説がございまして、多い人になりますというと、十万くらいあるだろうというような説もございますけれども、これはもう全然皆あてずつぽうでございまして、こういう席で申上げるような数字では実はございません。
  90. 青山正一

    ○青山正一君 ちよつと速記をとめて頂きたいのですが。
  91. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  92. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を始めて下さい。  各委員の要望は、農林大臣におかれても十分御了承のことと思います。非常に日本中の全漁業者の重大な関心を持つておる大切な問題でございますので、是非一つ早急に漁民の安全なる操業確保並びに公海における自由な漁業ということにつきましての権利を確保するために平和的な外交交渉を通じて全力を傾注せんことを特にお願いいたします。   —————————————
  93. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 次に日濠漁業問題に関する点を議題にいたしますが、今日は取りあえず政府委員のほうからこの問題についての御報告を願いたいと思います。
  94. 島重信

    説明員(島重信君) 今、一昨日以来濠洲との漁業問題について、濠洲側におきまして新らしい措置をとりましたことが報ぜられておりますので、この機会に、日濠間の漁業問題についてのこれまでの経緯、現在の状況について簡単に御報告いたしたいと思います。で、濠洲との漁業関係の問題と申しますと、具体的にはアラフラ海及びその近傍の水域における真珠貝の採取の問題でございます。これは古くから日本人が行つております。戦争前には非常に盛んに作業を行なつてつたわけでありますが、戦争のために中絶いたしまして、昨年平和条約の発効と共にいわゆるマツカーサー・ラインの制限が解けましたので、再び出漁できる状態になつた次第でございます。但し昨年中は準備も不十分であつたために、実際に出漁する運びには至らなかつたのでありますが、本年は是非出漁することにしたい。一方、一昨年のサンフランシスコ会議の当時から、濠洲からこの真珠貝の採取事業について、日本との間に協定を結びたいという申入れがございましたので、この問題につきまして、濠洲との間に成るべく円満に事を進めて行きたいという見地から、昨年の秋以来、しばしば東京の濠洲大使館を通じまして、又日本の在濠洲大使館ができましてからは、キヤンベラにおきましていろいろ意思疏通を図りまして、我がほうの本年度出漁計画を十分説明いたしまして、そうして今年度の出漁が円満に行くようにいろいろ取計らつた次第でございます。で、濠洲のほうから申入れられました漁業協定締結のための交渉は、その後一時話が全然中絶しておりまして、実は昨年の五月に戦後最初の在日濠洲大使が参りまして、その時からこの問題を円満に遂行するために早く濠洲との間に協定を結びたいということで、こちらからかなり催促したわけであります。濠洲のほうは、自分のほうの準備がまだ整わないので、整い次第交渉開始を提案するから、それまで待つて欲しいということで、延び延びになつてつた次第であります。で、結局本年の三月に至りまして、丁度本年度の出漁すべき船隊が大体三月に日本を出まして、四月早々から操業できるようにというのが当初の計画であつたわけでありますが、丁度日本出発予定の時期に当りまする三月に至りまして、濠洲側から正式に漁業協定締結のための交渉を開きたいという提案があつたのでありまして、その際真珠貝漁業についての協定締結のための交渉をするのであるから、その交渉をする前に、或いは交渉中に日本漁船隊がその水域におるということは、交渉を円満に継続をする上において非常に害があると考える、そういう状況では、濠洲政府としては、円満な交渉が行われるとは思わないという強い要望があり、この結果水産庁とも御相談いたしまして、出発を一時延期して頂きまして、そうして取りあえず交渉の開始を促進するわけでございます。  で、交渉そのものは、四月の十三日に開始されまして、日本側といたしましては、従来のいろいろな漁業関係交渉におきますると同じように、先ず公海自由の原則に立脚いたしまして、但し、この真珠貝漁業というものは、戦前におきましても、これを業者の自由に放置しておきますと、自然枯渇の虞れがあるということは一応認められておりましたので、合理的な規制を樹立いたしまして、その規制の下に関係国の各業者が平等な立場において操業できることを主といたしまする案を日本側から提案いたしまして、その案に基いて交渉することを希望しておつたのでありますが、いろいろやつてみますと、濠洲側の基本的な考え方と日本の基本的な考え方との間には非常に相違があることがわかりまして、お互いに自分のほうの本来の立場からだけ話合つてつたのでは、到底妥結の途がないということがほぼはつきりしたわけであります。それで日本側も濠洲側も何とかこの交渉をまとめようということで、お互にできる範囲内において相手方の立場を考慮したいろいろな考え方を提案し合いまして、十分に審議しておつたのであります。で、我がほうからの最後の案が提出されましたのが七月の初め、この七月の初めに提案いたしました案の内容は、日本側といたしましては、恐らくこれ以上の譲歩をすることはできない、つまり日本側立場といたしましては、最大限の譲歩をした案であるという内容のものであつたのであります。で、その案に対しまして濠洲側は、これを慎重に検討しておつた模様でありまして、その回答がかなり延びまして、八月の下旬に至りましてもまだ返事がないという状態であつたわけであります。ところが一方本年度の出漁のほうは、先ほど申しましたように、三月出発の予定を延期いたしましたが、五月に至りまして、漸く本年度出漁するという点につきまして、濠洲側との話合いがつきまして、五月の十四日に串本を出港いたしまして、六月に現場に到達いたしまして、六月から操業を開始したわけでございます。  で、この操業する区域につきまして、濠洲側としては非常にまあ大きな関心を持つてつたわけでありますが、それで当初始めます区域は、濠洲側も一応日本側がこの地域で操業することに異存はないと言つておりました所から始めたわけであります。その後の船隊の行動につきましては、交渉の推移に応じて日本側で適当に調節するということで話合いが一応できておつたわけであります。ところが、その最初に操業いたしました漁場と申しますのは、比較的狭い漁場でありまして、即ち同じ漁場で六月、七月と二ヵ月、八月に入りましてなお操業を続けておつたのでありますが、これ以上その同じ場所で操業を続けるということは、結局その漁場の資源を枯渇させることになるということがほぼ確実と認められましたので、どうしても操業区域を移さなければならないということになつたわけであります。その結果、一方、先ほど申しました七月二日に我がほうから提案いたしましたその中に、今度移そうという操業区域が実はそこに入つておりまして、そうしてその新らしい操業予定区域は濠洲側との間にまだ話がついておりません。併し只今申上げましたような事情で、いつまでも現在の操業区域にとどまつているということは、結局資源保護の見地からいつて反対の結果を来たすということが明らかになりましたために、八月の十日の日に、日本の採取船団はこれこれの地域に移動するからということを濠洲側に通告したわけであります。そういたしましたところ、八月の二十八日に至りまして、濠洲側からの要求で協定交渉の本会議が開かれましたその席上、濠洲側はその八月の十日に日本船団が移動するという通告をしたその通告は、濠洲側から見ると、日本側交渉の継続の意見がないものと認めるということを理由にいたしまして、交渉を打切るということを宣言したわけであります。で、日本側といたしましては、勿論その船団の移動を通告いたします際には、これは今年度の出漁しておる船団の行動の問題であり、交渉経過そのものとは関係ない問題であり、つまり協定というものは今後何年かに亙つての両国の行動を規制する話でありますから、一応これは分けて考えるべきである。今年度の出漁しておる船団としては、どうしてもこの際動くことが必要であるから動くだけであるというふうに、ことわりを分けて通告したわけでありますが、濠洲側といたしましては、不幸にしてその区別を十分に了解し得なかつたようでありまして、交渉打切りの大きな理由として、その八月十日の我がほうの移動通告を挙げておるわけであります。会議をなお継続したいということを我がほうの全権が強く主張したのでありますが、濠洲側としては、これ以上会議を続けることの効果を認めないということで、その後会議は打切りの状態のままで開かれておりません。  それでこちらのほうといたしましては、会議のことでありますから、片方がどうしても出なければ成立しないわけでありますから、会議が打切りに至つたということを双方からお互いに協定の内容の発表をしたい、いわゆるコミユニケと申しておりますが、会議のコミユニケを出してその結末をつけたいという話をその後続けさしておつた次第でございます。従つて日本政府といたしましては、この交渉打切りの事実を一方的に発表するのは避けたほうがよろしい、濠洲側と話がついたときに共同の声明ということで発表する予定でおつたのであります。ところが、一昨日突然濠洲の議会に濠洲の真珠貝漁業法の改正案というものが提案されまして、その席上で濠洲側の所管大臣であります農商大臣が、この日濠漁業交渉が決裂に至つた事実を明らかにいたしまして、そうして濠洲としては、これに対処するために濠洲近海に対して濠洲の主権を及ぼすという宣言を発し、又国内法である真珠貝漁業法の規定を、国籍の如何を問わずその濠洲の主権を及ぼすと宣言した水域内において操業する場合においては、濠洲政府の許可を受けなければならないという内容の法案を提案したのであります。その際の農商大臣の演説の内容の詳細及び法案内容の詳細は、まだ一昨日のことでありますから、こちらに入手しておりません。ただ只今までに到達いたしました日本の在濠大使館からの報告によりますと、その法案の主な点といたしましては、普通国際法上大陸棚と言われております水深約二百メートルの範囲内の濠洲周辺の水域に対して濠洲の主権を及ぼす、その目的のために宣言をする、一方真珠貝漁業法の適用区域といたしまして、それと同じ水域を濠洲水域として定める、その濠洲水域において真珠貝漁業を営もうとする者は、濠洲政府の許可を得て濠洲法令の下においてやらなければならない、これに違反した者は濠洲法廷において裁判の上罰則の適用をするということになつておるようであります。なおその際の農商大臣の演説中の主な点といたしまして西大使から報告して来ておるところによりますと、大陸棚に対する主権の主張は、米国と同様に宣言によつて公表する。それから日本側の、先ほど申しました八月十日付の通告は、濠洲が日本の提案を考慮しておる最中に余儀なく行われたものである。又その通告による日本側の予定採取トン数というものは、濠洲から見ると、資源保護の見地から見て、これまではよろしいという制限を越える夥多なものである。又ダーウインを根拠とする濠洲側の業者の採取量がそれに応じて少くなる。一方その濠洲の、只今申しました主張を根拠といたしまして、国際法の最近の趨勢、特に本年に至りまして国際連合の国法法委員会の答申案によつて、この大陸棚に対する沿岸国の権利主張というものは非常に認められるようになつて来たということで、その国際法委員会報告に一応根拠を置いておるようであります。そのようにいたしまして、一昨日濠洲の真珠貝漁業法改正法律案が濠洲の下院に提案されておりますが、本日の電報によりますと、昨日下院を通過したそうでございます。それでキヤンベラの新聞報道によりますと、恐らく一週間くらいでこの法案が両院を通過いたしまして成立することになるだろうと報じておるのであります。  以上がこれまでの経過でございます。只今までのところ日本側の船団は平穏無事に行動しておりまして、又濠洲側との間に何らの摩擦も起しておらないわけでありまして、それは水産庁のほうから監視船が附添つて行つておりますし、又漁獲トン数におきましても、取りまする貝の大きさの制限におきましても、非常に厳重な制限を励行してやつておりますから、その点につきましては、濠洲側から文句を言われる筋合いは全然ないという点は確信をいたします。併し今後大体十一月一ぱいは操業を続ける予定になつておるらしいのでありますが、果してその時期まで只今と同じように円満に操業が継続できるかどうかという点につきましては、多少の危惧を抱かざるを得ないわけでありまして、一応只今のところ濠洲側のこの改正法律案もまだ議会で審議中でありますから、どういうことになりますか、ここで確定的に申上げるわけには行かないのでありますが、一応外務省といたしましては、この濠洲国内におきまする事態の推移を十分注意しておりまして、そのときどきに応じて必要な措置をとつて日本側立場というものを明らかにすると共に、日本側から国際法上当然日本に認められた権利というものを擁護するために万全の措置をとりたいと思つておる次第であります。以上御報告を申上げます。
  95. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 本件に対する御質疑は明日に譲りたいと思います。   —————————————
  96. 森崎隆

    委員長森崎隆君) この際、もう一つ追加いたしまして、演習地の被害状況に関する件を議題といたします。この問題は福岡県下の駐留軍演習地漁業補償に関する件でございまして、丁度地元から陳情者の方々が参つておりまするが、この際陳情者の代表の方から陳情を聞きたいと思いますが、如何いたしましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 異議ないと認めます。  それでは福岡県議会水産常任委員長峰弘君から陳情を頂きたいと思います。速記をとめて。    〔速記中止〕    〔委員長退席、理事秋山俊一郎委員長席に着く〕
  98. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) 速記を始めて、それでは明日午前十時からこの日程の残余の案件につきまして審議をいたしたいと存じます。異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後四時五十五分散会