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参考人(淺香弘夫君) 私熊
本県の経
済課長でございます。本日は知事が出向きまして直接
皆様に
災害についての御後援に対しまして御礼を申上げ、御陳情を申上げるべきでございますが、
災害の
応急対策のために日夜忙殺されておりまして、どうしてもここ二、三日
現地を離れることができません事情にありますので、私代りまして出向きましたことを御了承頂きたいと存じます。
本
委員会の
皆様がたにおかれましては、いち早く
現地調査班を結成いたされまして、
現地の
状況をつぶさに御視察頂きましたことに対しまして厚くお礼を申上げる次第でございます。
なお今日まで
委員長をはじめといたされましていろいろと
災害につきまして御配慮を頂いております点につきましても、心からお礼を申上げる次第でございます。
熊
本県の
災害は実に未曾有の
災害でございます。これは県始ま
つて以来の
災害だとい
つても過言ではないと存ずるわけでございます。北
九州の
災害につきましては、各県知事の皆さんからお話がありましたので、重複を避けまして、熊
本県の
災害の特異性につきまして触れてみたいと存じます。
今次の
豪雨は二日間に亙りまして七百九十五ミリを超える雨量でございまして、熊本測候所開設が明治二十二年でございますが、開設以来曾
つてない雨量を見たわけでございまして、これは熊
本県の平均雨量の約半年分がこの二、三日のうちに降つた計算になるのでございます。
もう一つ特異な点を申上げますれば、阿蘇火山の山肌に堆積しました火山灰土を一挙に山崩れと共に白川水系及び菊池川水系に流しまして、その減水しましたあとの堆積の泥土は、うず高く市中及び田畑に堆積いたしております。これは概算しますと約二千八百四十七万立米に達するのでございまして、この排除につきましては、実に八十億円の経費が要ると今我々推算いたしております。こういうことにつきましても、熊
本県の
水害が異常なものであるということを御認識頂きたいと存じます。
なおこの
豪雨が夕方より深夜に及びました
関係で一挙にして数百、数千戸の
家屋が流ざれたわけでございまして、死者が現在におきましては三百十八名、行方不明が二百五十六名、負傷者五百五十名、罹災者全人員実に四十万人に達する
状況でございます。そうしまして熊本市内に堆積されました泥土につきましても約二百四十万立米あると推定されておりまして、これをトラックで運びましても約二百万台のトラックを要する計算になるそうでございます。一日三千人のものがトラックに積むのに五カ月を要するという計算に相成
つておるわけでございます。
災害後現在まで県がとりました概況について申上げてみたいと存じますが、二十六日の四時
災害救助法を適用しまして、県におきまして
災害救助隊を設置したのであります。直ちに警戒体制に入りまして、部署に就かせたわけでございますが、直ちに二十時には
保安隊の出動を知事命を以て求めたわけでございますが、如何にせん、水のために
保安隊は足をとられまして出動ができませんで、翌二十七日の午前五時三十分に漸く部署に就いて応援されたわけでございます。このことにつきましても、
保安隊が出動できなかつたような、そういう情勢であつたことを御想像頂きたいと存じます。なお二十六日にも米軍の協力を要請しまして、直ちに応援をして頂いたわけでございます。
我々が最も心配いたしましたのは、政治、文化、商業の中心であります県庁所在地であります熊本市がこつぴどくやられたわけでございますから、人心の不安及び
食糧の
配給につきまして、先ずこれを円滑にすべく
全力を注ぎまして、この点につきましては、焚出しその他非常な苦慮をいたしましたが、たまたま先般の
長雨に対しましての
農林省の
現地調査班長であられますところの
食糧庁の新井買入課長が
現地調査にお見えにな
つておりましたので、幸いに
食糧の需給の面につきましては御相談を申上げまして、適宜な
処置をとれということで、
現地の
食糧事務所長とも相談しまして、万全の措置を講じまして、お蔭を以ちまして
配給には一部支障を生じましたが、大した
混乱を見せないで二、三日のうちには大体の落着きを見たわけでございます。
次は泥土の排除及び泥土の堆積によりますところの伝染病の流行ということに意を用いまして、防疫に万全の措置を講じておるわけでございます。現在におきましては、市内におきましては約数千人の人員を動員いたしまして、泥土の排除作業に日夜を費しておるわけでございます。
なお田畑の流失は七千九百四十四
町歩に及びまして、阿蘇郡の或る村におきましては、一ヵ涵村一千
町歩余が全部埋没いたしまして、今後の
営農ができないような
状況の所もあります。
なお熊
本県下を襲いました
豪雨によりまして二十六日の深夜以来通信機関が杜絶いたしまして、各所の情報が得られませんで、なお道路その他の交通網も寸断されまして阿蘇の南郷台
方面、高森、白水、長陽村等の
災害状況等は数日後にやつと判明いたすという
状況で、それらの
惨害があとになりましてわかりまして、計数的な
被害の数字の把握が非常に遅れまして、皆さまがたのほうに対する
報告も遅れたことを残念に思うわけでございますが、そういう
状況下にあつたわけでございます。
災害の概況につきましては以上申上げまして重複を避けますが、我々といたしましては
政府に対して
要望いたしたい事柄の最も主なるものは、数年聞に亙りますところの地方財政の困窮が叫ばれております。現に二十七年度におきましても支払の繰延その他によりまして、やつと凌いでなお且つ巨額の赤字を持
つております。地方財政におきまして今次のような厖大な
災害が起
つて参りました場合におきましては、これはいかんともしがたいということに相成るのでありますので、今回のような特別な厖大な
災害につきましては、
政府におかれまして特別立法をお考え頂きたい、こういうふうに存ずるわけでございます。特に熊
本県におきますところの泥土の排除の
工事費八十億を算するような厖大な
災害につきましては特にお考えを頂きたい、こう思うわけでございます。
なお又先ほど大分等からお話がありましたように従来の
国庫補助率をいま少しく引上げて頂かなければ、地方財政はもうどうともならんような事態に追込まれるものと思うのでございます。なお又西日本
地帯は
災害の常襲
地帯でありますので、
農作物に対するところの
災害費補償につきましても現在の農業
災害補償法ではもの足らないわけでございます、非常に不十分なわけでございますので、この
災害常襲
地帯におけるところの
農作物の
災害補償につきましても特別な立法をお考え頂きたい、こう存ずるわけでございます。なお先ほ
ども申上げましたように、地方財政の困窮している
現状でございますので、
応急の
災害復旧につきましては知事を陣頭にしまして着々と金がなくとも仕事をやらしておりますので、この金がない
市町村及び県に対しまするところの起債の無条件的な許可、優先的な許可、これを少しく考えて頂きたいと存ずるわけでございます。
平衡交付金の増額も勿論のことでございます。なお又罹災住民に対しまするところの税の減免の措置につきましても特に立法措置をお考え頂きたいと存ずるわけでございます。
なお熊
本県におきましては
全壊の戸数が一千五戸、流失が八百五十戸、半壊六千五百八戸、これらを合計しまして八千三百六十三戸、これは住むに家ないことに
なつたわけでございますので、住宅
対策を早急にお立て頂きたいと思うわけでございまして、これは貧弱なる県財政及び
市町村財政ではいかんともいたしがたいのであります。仮に十坪の家を坪
当り二万円で建てますといたしましても、千五百戸を建てますには三億円の金を要するわけでございますが、八千三百六十三戸の住宅
復旧につきましては、特に全額
国庫補助の措置を講じて頂きたいと、こう存ずるわけでございます。
なお又根本的な問題といたしましては、阿蘇山の治山治水をどうするかということが問題になろうかと思います。思いまするに、戦時中の強制伐採命令によりまして阿蘇の水源
地帯を濫伐いたしました結果が今次の
災害を引起しておると私は考えるわけでございます。つきましては、阿蘇水源涵養の急速なる根本的な措置及び白川水系の根本的改修、直轄
工事としての施行、これを強く
お願いいたすわけでございます。
なお又熊本市におきましては今度の
災害によりまして、八百十七の橋がありましたのが、完全なのは一つしか残らなかつたわけでございます。残りました橋は鉄橋の釣橋であります。橋脚のない橋が一つだけ残つたわけでありまして、従いまして橋の
復旧につきましてはすべて永久橋としまして、経間の長い橋にする、或いは釣橋にする、こういうことをお考え頂きたいと思うのであります。
なお先ほど一言申上げましたように、農地が埋没流失いたしまして、一ヵ村全部耕作する田畑を持たないというような状態に立ち至りましたものにつきましては、これは従来の
補助率は五割でございますが、五割の
国庫補助では農民自体が如何ともいたしがたいわけでございますので、特別な措置を考慮して頂きまして、全額
国庫補助若しくは
補助率を相当増額して頂く、こういうことに考慮頂きたいと存じます。
なお又こういう地域におきましては、今後の
営農が絶対に行われませんわけでございまして、住民の生計をどうするかという問題が直ちに起
つて参るわけでございますので、こういう流失埋没田畑の
復旧につきましては、できますならば、高額の
国庫補助における県営
工事で以て、それらの住民を労役に使役しますことによ
つてでも生活を維持させるようにいたしたいと考えるわけでございます。
なお次には、農業共済
関係の現行法におきましては、水稲の苗代の
被害につきましては、これがはつきりと減収として認められないような恰好になるわけでございます。苗代を更に再仕立をいたしましたり、或いは予備苗代を以て植換えたりいたします分につきましては、若干の
補助はございますが、これによりますところの減収につきまして農業
災害補償法による御考慮を頂きたい、こう思うわけでございます。以上大体
政府に対しまして我々が
要望いたします事項を申上げたわけでございますが、さて
本県におきますところの現在の歳計金の
状況を
最後に申上げて見たいと存じます。
只今、今日現在におきまして県の金庫には二億五千万円の金があるわけでございます。併しながら七月二十一日には給料の残部の支払、一部繰上支払をいたしましたので、後残りの支払、これが一億五千万円を要します。次に第一四半期の
工事その他の経費に一億円の支払が要るのでございまして、二億五千万円の金はこの二つでなくな
つてしまうわけでございます。只今どんどんとや
つておりますところの
災害応急費、これを払う所要額としては、本月中に支払を要するものとして算定いたしておりますものは十二億円でございます。十二億円の赤字が七月中に出るわけでございます。従いまして
繋ぎ融資を頂かなければ、この十二億円の金の支払ができないということになりますれば、次の継続して行な
つておりますところの
応急復旧事業が停頓いたすことに相成るのであります。聞くところによりますと、昨日閣議決定で十億の
繋ぎ融資の枠が追加ざれたということを聞いておりますが、十億や二十億では到底賄えないと思うのでございます。只今申上げますように、熊
本県だけでも十二億の金が本月中に要るのでございます。なお又年間に一時借入を必要とします
金額を算定して見ますと、熊
本県におきましては更に七月の十二億以外に四十九億円の時一借入を必要とするという算定をいたしておるわけでございます。本
委員会におきましても、どうぞ熊
本県の
現状がこういうことであるということを御認識頂きまして、
繋ぎ融資の枠の増額ということにつきまして特段の御配慮を頂きたいと存ずるわけでございます。
極めて簡単でございますが、以上で終ります。