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1953-09-14 第16回国会 参議院 水害地緊急対策特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十四日(月曜日)    午前十一時四十四分開会   —————————————   委員異動 九月二日委員武藤常介君辞任につき、 その補欠として石川清一君を議長にお いて指名した。 九月十日委員三浦辰雄辞任につき、 その補欠として高木正夫君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     矢嶋 三義君    理事            藤野 繁雄君            島村 軍次君            永岡 光治君            永井純一郎君            石川 清一君    委員            小野 義夫君            剱木 亨弘君            重政 庸徳君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            徳川 頼貞君            松岡 平市君            北 勝太郎君            新谷寅三郎君            高木 正夫君            林   了君            安部キミ子君            白井  勇君            山田 節男君            杉原 荒太君   事務局側    参     事    (委員部第三課    長)      川合 重男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○理事互選 ○小委員長互選委員長報告派遣議員報告   —————————————
  2. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 只今から本葬員会開会いたします。  先ず委員の入替えに伴う理事並びに小委員長互選を議題に供します。八月六日以降委員小松正雄君、植竹春彦君、河野謙三君、秋山俊一郎君、三浦辰雄君、及び武藤常介君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として東隆徳川頼貞君、北勝太郎君、堀末治君、高木正夫君及び石川清一君が補欠せられております。この委員異動により理事二名が欠け又各小委員及び通産運輸通信)に関する小委員長が欠員となつておりますので、委員長はこの際成規手続を省略して理事補欠互選を、委員長の指名により、又小委員長及び小委員の選定も同様委員長の指名よりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 御異議ないと認めます。それでは理事島村軍次君、石川清一君の両君を指名いたしまそれから通産運輸通信)に関する小委員石川清一君、北勝太郎君及び堀末治君、建設文部に関する小委員高木正夫君、民生(厚生、地方行政その他)に関する小委員徳川頼貞君、東隆君をそれぞれ指名いたします。最後に通産運輸通信)に関する小委員長石川清一君を指名いたします。   —————————————
  4. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) なお藤野繁雄君が通産運輸通信)の小委員の辞仕を申出ておられますので、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 御異議ないと認めます。それでは同君を農林水産に関する小委員に指名いたします。   —————————————
  6. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 第十六国会閉会後本委員会継続審査議決が本会議においてなされたわけでございますが、それ以後の本委員会報告委員長としていたします。  先ず第一番に八月十日の特別委員会議決に基きまして御配付申上げてあります決議政府側に手交いたしました。特に災害対策本部長である緒方副総理、福永官房長官両君には書面を渡すと共に詳細に本特別委員会の意向を伝達して善処方を強く要望しておいた次第でございます。その要望に基いて、これも御配付してあると思いますが、政府側から回答書が参つております。念のため決議文参事に朗読させます。
  7. 川合重男

    参事川合重男君) 朗読いたします。昭和二十八年八月十日参議院水害地緊急対策 矢嶋 三義特別委員長関係各大臣殿  本委員会においては、本日全会一致を以て別紙通り決議行つた。よつて政府はその実現方善処せられたい。  なお本件については次回本委員会(九月十日頃)において政府側よりその処置について報告せられたい。   決議  今次の大水害被害地域における災害救助並びに災害復旧等ため第十六回特別国会において当院は衆議院と相協力して二十四の特別立法行つた政府はこれら特別立法裏付となる予算措置を早急に講ずるため遅くとも九月下旬までに臨時国会を招集せられたい。  なおそれまでの間、罹災道府県に対しつなぎ融資その他罹災民生活の安定、公共土木復旧等応急的に必要なる措置を講ぜられたい。  右決議する。  これに対しまして、昭和二十八年九月十一日内閣官房長官より参議院水害地緊急対策特別委員長宛に書類が参つております。  昭和二十八年八月十日付を以て御申越罹災道府県に対してとられた応急的措置について、別紙通り命により報告いたします。内容はお手許に配付してございます。
  8. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 次に報告申上げます。八月十七日委員長は次の電文を受領いたしました。発信人参議院事務総長であります。  議長の命により八月十五日の京都滋賀三重災害対策委員会に八月十七日付託の手続をとつた。以上の電文を受領いたしました。これは第十六国会閉会直前に本特別委員会継続審議の要求をして、それが議決される際に、各派の代表の会合で、閉会後に起つた災害は、議長の決によつて特別委員会に付託するという申合せがなされておりましたので、それに基いてこの電文は発せられたものでございまして、八月十七日付で京都滋賀三重各県の災害は本委員会には付託されていることを御報告申上げる次第でございます。  なおこの電文には奈良というのが入つておりませんが、奈良県は御承知のごとくすでに本委員会調査対象県となつておりまするので、電文の中に記載しなかつたものでございます。  次に御報告申上げる点は、本日三個班に分れて災害地視察した結果の報告を本委員会に出して頂くわけでございますが、その報告のなされる前に、すでに本委員会に付託された東近畿災害実情というものを把握していなければ、折角開いたこの特別委員会使命達成に支障があると考えましたので、私は定めた日程の終つたのちに時間の許す限り三日間を以て、京都滋賀三重の八月中旬の災害視察し、なお関係府県にお見舞を申して東京に帰つて参りました。従つて本日三箇班の代表によつて調査報告をなされたのちに、委員長の責任において、閉会後付託された災害視察した結果に基いて本委員会に御報告申上げ、今後本委員会はこれに対して如何に対処すべきかということを本特別委員会開会中にお諮り申上げたい、こういうふうに考えている次第でございます。  以上第十六国会閉会後の当委員会関連事項につきまして委員長として御報告申上げる次第であります。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  9. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩    ——————————    午後一時二十五分開会
  10. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 只今から委員会開会いたします。  午前の申合せ通り只今から各班の調査の結果の報告を願います。
  11. 島村軍次

    島村軍次君 私は矢嶋委員長と二人で第班五名による島根鳥取山口福岡佐賀長崎の各県の視察概要を御報告申上げたいと存じます。  詳細なる点については別途報告書御覧を願うことにいたしまして本委員会として特に研究を要する事項及び特殊事情等、ついでなお本委員会が先に審議されました事情に鑑みまして、特に災害県に対して、先の諸点に関してのあらかじめの調査をお願いを申上げましたので、その諸点について御報告を申上げたいと思います。  第は、繋ぎ融資支出状況、及び各府県災害後における財政運用情勢、これが第二点であります。第三には、各府県金融、特に商工中金農林中金国民金融公庫等融資状況、今次の特別立法適用地域に関する府県情勢が第四であります。第五には水害根本対策。第六には災害地における物価の水害による上昇等影響。第七には、学生救援隊に対する府県市町村態度等を主題におきまして調査を進めて参つたのであります。  特に今回の災害におきまして、印象的でありましたものについて二、三申上げたいと思います。  第は長崎県の北松浦郡における石倉山の大地辷りでありましてこれはその実地を見ましてその惨害の甚だしいことに特に驚いたのでありまして、各委員におかれましてはおよそこの点については御存じであろうとは考えまするが、この点を特に御報告を申上げたいと存じます。  それから佐賀県におきましては、嘉瀬川及び岸川地先大破堤情勢が我々が想像以上であつたこと。それから福岡県の筑後川の大破堤が約二十カ所ありましたうちで特に惨害の、右例の大福村の大破堤情勢、門司市の恐ろしい地辷りの情勢山口県におきましては、各所に部分的の小規模なる被害が非常な惨害を来している点、島根県におきましては、特殊地帯として、あの宍道湖湖畔における停水地災害、特に古江町等における稲作惨害国庫補助対象になるかならないかという深刻なる稲作被害情勢、或いは又鳥取県におきましては、日野川右岸の春日村におけるまさに切れんとする堤防の放置されておる点等であります。  七項目に亙る調査事項についてのその後の各府県情勢について簡単に御説明を申上げたいと存じまするが、要約いたしますると、今朝陳情にもありましたように、今回の災害が非常に惨害が甚だしかつただけ繋ぎ資金融資が遅れたこと、並びにその後の情勢はまずまず一段落の情勢でありまするが、まだこの問題に関しては災害復旧工事緊急措置等、及び府県市町村財政とからんで、資金繰りに非常な困難な情勢が到る所に窺われたこと等であります。例えば福岡県におきましては、別途県として十月までに五十億円を要すること、既配分は僅か十五億円であるということであります。山口県は九億六千万円をなお欲しておる。その他者府県におきましても大よそさような情勢が窺われたのであります。この問題は、本委員会において更に検討を加えて適当なる措置を要するものと感じた次第であります。  第二には、連年災害に伴い、特に本年の災害に伴う各府県財政運用情勢でありまして、その点は従来地方自治の上に非常な影響を持つばかりでなく、災害被害住民生活の問題と相関連いたしまして誠に重要な問題であると思うのでありまして、例えば佐賀県におきましては、前年度決算の見込みにおきまして、普通の年度収支が五十億程度財政規模に対し被害が二百二十億、県の必要とする総復旧額が六十二億、うち緊急分が二十六億で、十月末には現計十四億円の不足を生ずるという実情であります。昨年度の赤字を持つておる本県といたしましては、更にこれらの操作について如何なる措置を講ずるかということに、県当局は非常な苦慮をしているということが窺われたのであります。  福岡県の財政状態は、我が国における雄県でありまして、収支がおのおの百七十億程度であるのでありますが、今回の災害は実に七百六十四億で、県自体復旧分が二百二十億、町村分二百一億、この年度内に処置すべきものが県で百一億、市町村百十二億という実に厖大なる数字を予定されておるのでありまして、この始末は雄県であると称せられる福岡県においてなお非常なる困難性を持つておることであるのであつて、この国庫支出及び起債等を合せましても、如何にして今後の財政処置を講ずるかということに苦慮しておることが同様に窺われるのであります。  山口県におきましては、これ又比較的雄県でありまするが、連年水害による惨害は約百億円でありまして、復旧費二十三億、本年度十五億を必要とするが、あとの始末に対しては知事のほうで四億程度の専断による支出県会に求め、これで処理しておられるとは申すものの、過年度災害始末のつかない今日におきまして、なかなかこれ又困難な情勢であります。特に同県は東南部における山間地帯被害が非常に多くありまして、府県災害全体については、過年度に困り、且つ今回の災害におきましては、いわゆる市町村標準税収入の二十倍或いは三十倍に達しておるという貧弱町村を数カ村我々は視察したのでありますが、この措置こそ誠に村民或いは町民の頭痛の種であることがはつきりと窺われた次第であります。  島根県におきましては、これ又連年災害に苦慮いたし、僅かに三割余の過年度災害をやつておるに過ぎないのでありますが、現に百九十二億という負債を持つていわゆる呆然たる態度の見えないでもないような、実に県財政窮迫を告げておる所でありまするので、この際の同県における災害は比較的小規模でありますが、只今申上げまするように、県財政窮迫と共に斐伊川附近宍道湖畔における災害は、これは特殊の事情として取上ぐべきものであると感じた次第であります。  なお鳥取県におきまする災害については本委員会対象となつておるのでありまするが、日野川沿岸における災害の部分は先ほど申上げましたが、鳥取東部における谿谷の災害もこれ又非常な惨害を受けておるのでありまして同県における稲作被害島根県のごときではありませんけれども、これ又広範なる被害を受けておるということが窺われたのであります。  なお小さい町村が如何に苦しんでおるかということのつの例といたしましては、久留米市のようなあの工業地帯におきましても、その被害百二十億に対して税収入は二億五千万円、目下のところ吏員の俸給さえ支払うことができないというような実情は到る所、特に佐賀県の我々の視察した町村及び山口島根等においてその実情のありましたことは只今申上げた通りでありましてその詳細については各町村別或いは又その実例について詳しく報告をいたしておりまするので御覧を願いたいと思います。  第二にこの商工中金農林中金金融公庫等金融機関措置でありまするが、商工中金農林中金等につきましては、別途営農資金或いは商工中金等からの従来の扱いを拡充したそれぞれの措置については、全般的に大した不平もなかつたのでありますが、国民金融公庫については各地でいろいろな声を承わり、金融公庫が平時の信用貸の状態と全く同じであつて災害という状態をちつとも考えていない、特に出先のほうではこの問題については誠に査定が辛くて、融資に対しても僅かに申込の何割程度しか受けないというような、不平たらたらのことを承わつて参つたのでありまして、この点についは本委員会においても更にこれらの関係当局に十分に警告を発すると共に、その措置について万全を期する必要があることを痛感いたしたような次第であります。例えば福岡県の八女郡におけるところの郡全体の申込に対して決定は僅かに半数であつて金額は三分の一程度であるというような点、或いは又福岡県の炭鉱地における零細の産業者に対する措置等であります。山口県におきましては信用保証協会による保証基金の千五百万円を特別支出して、それに対する県が一億五千万円の補償をする方法が講じられているのでありまして、炭鉱業者復興についても非常な明るい見通しが付いておつたようであります。  特例法指定については我々の参りました府県はいずれも県全体の指定を受けることを希望いたし、いろいろの実例を以て挙げられておつたようであります。いずれこれらの詳細については、審議の過程においてその実例等から意見を開陳いたしたいと存じている次第であります。  なお佐賀福岡等におきましては、農林省関係自家保有米の農家における流出米措置について遺憾な点が相当あつたようでありますので、これも附加して申上げておきたいと思います。水害根本対策等につきましては、我々の承わつた各種地方における要望は、実例を示されまして各般の事項についてのいろいろ貴重なる資料を与えられたのでありまして、これらの問題は今後の国としての水害根本対策についてよき実例であることを痛感いたし、各項に亙つては更に開陳の機会を与えて頂きたいことを申し加えておきます。  その他この査定情勢について各府県情勢を承わつてみますと、多くは府県の或いは八割乃至九割程度査定率のようでありますが、甚だしい所になりますと〇・八という査定ぐらいしかないというような所もあつたのであります。これらの情勢ついて特殊の事情のあつたことも承わつたのでありますが、将来の災害復旧に関する問題として検討を要するものと存じた次第であります。  農産物の減収についてはその後四回に亙り田植を植え変えたというような地方も相当あつたのでありますが、農民心理状態はたとえ出穂がなくても一応は必ず植えるというような姿は誠に涙ぐましいものがあり、且つそれと同時にその出穂があるかないかということは、外見はすこぶる立毛はいいのでありますが、仮に或る府県実例をとつて詳細に調べてみますと、幼穂の形成がなくして全く出穂見通しが付かないということを我々みずから体験をいたしたことから考えまして、農作物は一般に唱えられている以上の減収であることも痛感いたしたような次第であります。島根県の久利村の災害特殊事情については、先ほど申上げました通り、労働問題との関係について特殊の事情がありまして、学生福岡の或る地内に入つてつたよう問題等については書面によつて回答を申上げることにいたしたいと思います。  米の問題については先ほど御説明を申上げた通りでありまして、特に今回我々が以上のことに付加えて御報告を申上げたい点は、長崎県におきまして気象台海洋気象について非常に関心が深いということであり、これはやがて将来の我が国水害対策として重要なポイントになる一つの例であると感じた次第でありまして、同海洋気象台はこの問題について非常な研究を進められているということ、乃至はこの無線通信施設によつて島の多い地方に対する措置、及び仮に島嶼が少くても無線通信施設の問題が、災害対策と睨み合せて重要な今後の対策資料になるので、又それが我が国災害根本対策の一助になるということも、今回の災害府県視察の結果において痛感をいたしたような次第であります。  以上御報告を申上げて詳細については別途の調査報告によつて承知おきを願いたいと存じます。
  12. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 続いて第二班のかたに願います。
  13. 重政庸徳

    重政庸徳君 私と永岡光治君の二名からなる派遣団第二班といたしまして、去る八月二十日から同月二十九日までの十日間、鹿児島熊本、大分及び愛媛の四県の水害地実情をつぶさに視察調査いたしたのであります。ここにその調査概要を申述べまして御報告に代えたいと思うのであります。  八月二十一日は先ず鹿児島へ参りましたが、同日午前十時県庁を訪れまして、知事室におきまして所管の部課長等から同県の被害状況その他対策等につきまして詳細なる説明を聴取いたしたのであります。以下各県の災害の詳細なる数字につきましては、各県の今まで詳しい報告もありますのでこの際省略いたしたいと思うのであります。その説明によりますと、五月の第二号台風と六月下旬の豪雨と、更に又七月十七日から十九日にかけた豪雨によりまして、総額四十一億三千万円の被害をこうむつておるのであります。本県被害地区は主といたしまして県の中部並びに北部に偏つておりまして、七月十六日から十九日の四日間に実に雨量五百ミリを超えておるのであります。そのため本県主要河川並びにその支流は殆ど警戒水位を突破いたしまして鹿児島の甲突川、新川、薩摩郡の川内川、高城川、出水郡の高尾川、野田川、囎唹郡の菱田川、安楽川、田原川等、各河川とも到る所氾濫いたしまして、堤防の決壊、道路、橋梁の流失農地流失埋没等が非常に甚大を極めておつたのであります。特に囎唹郡のごときは他の地区に比較しまして雨量は比較的少かつたのでありますが、短時間に極めて強い雨が降つたのでありましてその被害の激甚を極めたのであります。同地方の田原川の流域におきましては、土木被害だけでも一億八千万円を超えたのでありまして、その川巾は在来の五倍に達しておる現状でありました。この地区は実に一時間に八十ミリの降雨があつたのであります。私ども一行が二十二日朝から夕方まで視察して廻つた、大隅半島の西志布志村及び大崎町一帯の被害でも、その水田の流失埋没西志布志樽野地区が三十町歩中谷橋が十町歩原田地区が百町歩大崎町の高井田橋地区が三十町歩、小能五十町歩平良地区が二十町歩綿打橋が十町歩というような惨状を極めております。野方村等全村百二十町歩のうち百町歩被害を受けておるような惨状でありまして、勿論今以て復旧には全然手をつけておらないのでありまして、農民はただ茫然自失状態であつたのであります。大崎町長説明によりますと、被害金額がその町で三億数千万円で、一戸あたりが実に九万八千円に相当すると申しておつたのであります。  かく災害を受けたにもかかわらず、全県を挙げて応急復旧に努力した結果、一応仮工事等終了いたし、民生も安定し、産業も逐次復興している状態でありましたので、同県のため慶賀に堪えないのであります。本県には繋ぎ資金の割当がなかつたのでありまして、私どもが参りました三日前、八月十八日にようやく三千万円の融資があつたのであります。県としましても、これが使途に最も重要度の高い復旧を要する個所に支出するように申しておりました。本県過年度災害の未復旧が年々増大して、これが災害の大きな要因となつておると思うのであります。なお本県は地質的に異なつておりまして、いわゆるシラス地帯と称しておりまして、一度豪雨がありますと台地及び丘陵地が実に甚だしく崩壊をいたすような状況の地質であります。それがため中小河川、或いは大河川の上流におきましては河床が著して上昇いたしておるのであります。これは将来憂うべき状態と思うたのであります。この莫大な被害を防止するため特殊土壌法ができておりますが、これは少くとも速かに予算を計上して治山治水、砂防或いは農地保金等防災事業実施を全面的に急ぐ必要があると思うのであります。且つ又かくのごとく地質的、地形的に異常であるために小災害、十五万円以下の災害が非常に多く、従つてその被害額も全体としては相当な額に上つているのであります。それがため地方民の活動並びに地方財政を少からず圧迫いたしている状態であります。単に被災者の救済上望ましいばかりでなく、国家的にも又黙過できないと思うのであります。国庫負担或いは補助対象として現行より更に小規模のものを採用する必要があるかと思うのであります。  さて各所で最も問題になり、或いは関係者の一番関心を持たれたのが今回成立を見ました水害特別立法適用範囲であろうと思うのでありますが、県におきましてはこの適用範囲を市、郡を基準として指定してほしいというような切なる願いでありました。その理由といたしまして、市町村基準とすることはその適用区分に技術的困難を伴うことが予想されるというような申出でありました。若し町村基準に適用されるならば、道路一つを距てて同じような災害を受けている隣接の地区が救済されないということになると、甚だ不合理であるから十分にこの点を考慮してほしいということでありました。  以上鹿児島を終りまして二十三日夕方熊本に参りました。当日は日曜でありましたが先ず市役所に参り、市長より写真或いは図面等によつて市街被害状況並びにその復興対策等の詳細なる説明を聴取いたしました。私ども一行熊本駅から市役所に到る自動車の中から市街地を見聞いたしましたが、家の軒まで泥が堆積した惨状はどこにあつたのかと思われるくらいに綺麗に片付いておりました。市街中心地は完全に復旧されておりまして、市民と市当局その他関係者の涙ぐましい復興献身的努力の結果であろうと実に感激いたした次第であります。各市街地に泥土が一掃されて土砂がないように思われましたところ、後刻市長の説明で知りましたのですが、今なお排土は全体の四〇%ぐらいしかできておらないというような説明でありました。当市の堆積土砂二百五十万立方メートル、排土査定量はその八割の百八十万立方メートルで、排除費査定額一立方メートルにつき千円全額十八億円に決定されたとのことでありました。排土には当初財務局からの四千万円で実施し、八月十九日現在七億円の繋ぎ資金の中から四億一千万円でやつているということでした。その半額は正式に速かに補助を頂きたいという要望でありました。  市役所において以上の説明を伺いまして、直ちに市内外の視察をいたしましたが、先ず最も被害の甚大であつた白川河口の新出河原城山村に参りました。ここは白川の泥土、濁水が一瞬にして五百町歩の水田を襲い、忽ち泥で水田を飛行場のような土地と化した場所であつたのでありまして、泥の堆積した深さは平均一メートル五十、炎天下盛んにブルトーザ一で排土作業を懸命にやつておりました。村民から一日も早く耕地の復旧を願いたいと哀切なる要望を受けたのであります。ここの被災者は排土作業或いは堤防築設作業等に働いておつたのでありますが、人夫は被災者を優先的に使うように請負業者に申しておるということでありましたが、併しながら全面的に被害民が望んでおるような状況には行つておりません。併し無収入の被災者は多少でも仕事をもらつて生活の資に向けるよりほかに方法がないのでありまして、この点は私どもも強く注意並びに要望をいたしておきました。次いで市内に入りまして例の最も悲惨を極めました子飼橋の惨状を見ましたが、ここ熊本視察中終始矢嶋委員長の案内を頂いたのでありますが、この子飼橋の状況を見て、随分片付いたような感じを委員長は持つてつたのでありますが、私どもには一向片付いたうには思われず、今なお橋脚には何百石かの材木類が累々と重なつてつたのであります。これを除去いたしますのには未だ相当の日数を要すると考えたのであります。ここでは一瞬百四十名に上る人命を奪われたのであります。橋のたもとの決壊箇所約三十メートルの間は保安隊の仮橋を以て交通をやつておりました。  熊本はこれで終りまして翌日九時に県庁に参りまして県全般の被害状況並びに復旧対策について説明を聴取いたしたのでありますが、本県被害は全額にいたしまして実に九百十一億六午六百万円に上るのであります。現在までの復興状況は、土木関係で重要幹線道路の応急工事百万円以上の箇所の進行状況はおおむね六〇%、橋梁は必要なる十四橋の仮橋もおおむね九月末完成の予定、河川関係では、仮締切工事ミリは次期洪水を予期して一応完了しておりますが、応急復旧工事は最も危険な箇所六河川について緊急施行しているような状況でありました。これが進捗状況はおおむね三〇%を完了して、九月末までにはどうしても目標を完成いたしたいというような状況でありました。砂防関係では、阿蘇の火山灰の砂防施設計画は喫緊中の急務でありまして、目下本省とも連繋して立案中とのとであります。  次に農地に関しましては流失埋没面積実に八千九百五十町歩を超えるのでありまして、比較的被害の軽微な千三百町歩余について、農民の自力によつて応急に復旧し植付をいたしておつたのであります。農業施設並びに井堰の流失、水路の埋没によつて潅漑が不可能になつた所が一万七千六百余町歩あるのであります。これにつきまして仮堰及び揚水ポンプを設置いたしまして、又は水路の応急浚渫の工事をいたしまして、この使用不可能であつた一万七千六百余町歩のうち、一万六千百十町歩を潅漑いたしておるような極めて頼もしい状況であつたのであります。  治山関係では白川ほか各流域の実測を終りまして、目下二億五千万円の設計書の作成中で、現在までに一億円の設計書の作成を終りまして、残り一億五千万円は八月二十日に終了するように申しております。  商工関係では七月末現在の災害総額は七億九千六百余万円でありまして、更に大巾な長期低利資金を望まれている状況であります。  民生関係では、応急仮設住宅第一次分三百五十戸はすでに市町村に割当てまして着工、完了し、第二次分について目下着工中であるとのことでありました  本県復興状況はおおむね以上の、ごとくでありますが、これが資金面において、二十八年度当初より資金繰りの困難を来しておつたのであります。大水害に見舞われ、早速河川の仮締切応急工事、排土、人道橋の仮架設等の施行のために、七月において四億七千七百余万円の債務を生じているのであります。災害救助国庫補助の概算交付、繋ぎ融資二億四千万円の借入等で辛うじてこれを支払つている状況であります。災害ために税等の収入は減じ、いろいろな支払は無論、給料の支払或いは災害以外の義務行政費の支払等に困難を生じまして、八月において一般経営費の支払においてさえ四億八千万円の支払資金不足を予想されているのであります。第二回分繋ぎ融資一億五千六百円の借入をしてもなお四億円の不足であると申しておりました。九月末におきましては、災害救助費の清算支払約二億一千余万円をはじめ、市街地の道路の排土は勿論、側構、路面の本復旧も進み、河川、砂防関係等も一部本工事に入り、仮橋も自動車交通可能の仮橋に架け替える等、その支払が二十一億七千百万円に達すると思われるのであります。このほか職員の給料だけでも三億円は必要であるのに、第三回分繋ぎ融資一億六千五円、平衡交付金の概算交付二億三千五百万円の受入があつても、なお諸支払は殆んど不能になると予想せられ、その結果、九月末では二十三億五千二百万円の支払不能が生ずるものと予想せられるのであります。八月現在の状況で判断すると災害復旧関係の工事は十月、十一月頃に至りまして出来高払いをせざるを得なくなり関係支出も多くなると予想せられるのであります。その上、来たるべき臨時国会において国の災害復興予算が成立するといたしましても、地方団体においてこれが資金化されるのは早くても十二月頃になると想像せられるのであります。仮に国庫支出金、起債等七十六億円が一、二月以降収受せられたといたしましても、八月以降各月相当額の緊急融資を受けなければ災害復興の遅延を招来すると思うのであります。要するに緊急融資の増額、或いは予備金支出等臨機の措置によりまして国庫補助の概算交付を受けなければならない状態であるのであります。知事繋ぎ融資だけでは間に合わんから何とか予備金等からでも緊急支出をお願いいたしたいと要望いたしておりました。要するに一般財政に対しては、財政補給金により、災害に対しては交付金か繋ぎ資金を建ててやる段階がもうやつて来ておるのではないかと痛感いたした次第であります。  なお特別立法適用地域については、おおむね各法律とも県全体に適用されたい、との希望があつたのでありますが、以上県において概略説明を聞きました後、直ちに阿蘇地方水害視察に参りました。菊池郡陣内村、阿蘇郡長陽村、白水村等をつぶさに視察いたしたのでありますが、陣内村は罹災戸数二百四十七戸、全村六百九十四戸の三分の一が罹災しておるのでありまして、耕地関係で流出七十四町歩、冠水百五十五町歩、家屋の流出、全壊六十三戸、床上、床下浸水二百四十七戸、中富部落等は百八十戸が殆んど罹災しておるような現況でありました。同村長は自力で復興したいが、なかなか不可能に近いので以下申述べますような要望をいたしております。簡易水道の設置、宅地内の排土、宅地は農地の附帯設備、農業用施設として施行をして頂きたい。白川の護岸堤防の急速なる修築、或いは白川の井堰等の完全なる復旧、平衡交付金で村の財政補助をして頂きたい等、六項目に亙つて要望いたしておりました。長陽村、白水村へ参りまして、阿蘇山下の被害状況をつぶさに見ましたが、その被害の激甚なることは実に筆舌に尽しがたいのであります。村民の懸命なる努力を目のあたり見て感激を深くいたしました。長陽村では今度の水害の経験で植林について意見を申しておりましたが、えのき、やなぎ、なら、けやきというような落葉樹でなけらねば、杉等がこのたびの水害状況を見て植林として適当でないように申しておりました。これらも今後植林の上において一考を要する問題ではないかと思うのであります。  次いで内牧の地方を阿蘇外輪山上から一望のうちに眺めましてその被害状況を観察いたしたのであります。  二十五日午前十時半大分へ参りまして、直ちに県庁に行き知事及び関係者の詳細なる詳明を聴取いたしたのでありますが、本県被害は金額に見積つて総計二百八億二百万円に及んでおるのでありホす。被害中心地反は大分川と筑後川の上流の二水系を結ぶ県の中央部でありましてこの地神の山間部の森、日田辺りは最も惨状を呈しておつた地点であります。県において各機関を督励してとにもかくにも諸般の応急対策を講じて、現在まで一応民生の安定の裏付ども言える産業復旧、生産の復興を招来しておりましたことは同県のために喜ばしい次第であります。併しながら未だ応急工事の域を出ず河岸堤防、橋梁、道路或いは耕地等の復旧に相当の日数と資金とを要すべく、且つこの財政面の点において県当局も相当苦慮しておるのであります。即ち本県昭和二十七年度に約六億円にのぼる事業の繰越、各種債務等の支払繰越し等によつて辛うじて決算を行い得た実情であります。今年度は不連続線による降雨並びに台風第二号等の応急復旧費を含めて、推計八億円の赤字が出ることを憂慮しておりました。更に今回の災害で公共施設関係復旧費だけでも総額八十億円となり、このうち本年度においてその六割を手交するとして県負担額は約九億四千万円を要し、これに応急措置費、災害補助費等の県費と災害に伴う税の減免措置や徴収猶予等を考慮いたすと、本年度の赤字推計は少くとも二十二億を超過すると申しておりました。これがために既決予算の節約を図つて約二億三千三百万円程度を捻出するが、なお起債において五億五千四百万円、特別平衡交付金において九億一千三百万円、普通交付金において五億円、合計十九億六千七百万円のものは是非必要であると申しておりました。  調査目的の各項目別の報告本県提出の資料御覧願うことといたしまして、水害関係法律の適用地域は殆ど全部全県に適用せられたいとの各県同様の希望をいたしております。  それから国家公務員共済組合の給付の特例等に関する法律の適用を受ける人は何名くらいかという質問を出しましたところ、八月二十日現在の調べで県庁関係職員で七十名くらい、学校職員で二百九十名くらいと申しておりました。なお本件は繋ぎ融資を給料の支払等に充当したことがないし、又今後はわからぬが給料の遅欠配等はないというようなことを言明いたしておりました。  以上県の説明を聴取いたしましたのち現場に出かけたのでありますが、先ず大分川の下流の大分郡の植田村、賀来村とを見ましたが、その惨状は今なお想像を絶する惨状であります。同郡町村会長から次の趣旨の陳情を受けました。即ち今回の特別立法災害法の一部改正で、政令の定める地域に限り十分の九、即ち九割を補助することに決定を見ましたので、この点いたく感謝いたしておりましたが、これが地域に指定せられなければ適用ができないのでありまして若しそういうことになりますれば、農民復旧意欲を失うことは必然であります。是非ともこの地域に指定されるように願いたいとのことでありました。本県は日程の都合で余り時間的余裕がなく、翌日玖珠郡森町まで参つたのであります。  本郡は大分県において最も被害の甚大なところでありまして、その被害総額でも二十四億七千五百万円の多額に上つております。水田の流失埋没千百十五町歩、金額にしても三億九千万円であります。畑の流失埋没二百十三町歩で、四千二百六十万円に及んでおります。森町にある地方事務所において詳細なる説明を聴取いたしたのでありますが、真にこのところこそ特別立法の無条件適用であると考えたのであります。  以上大分県を終りまして、二十六日午後の関西汽船便で最後の愛媛県に参つたのであります。本県は又台風第二号と六月下旬の豪雨によりまして相当の被害を受けております。その被害総額は六十七億円に達しておるのであります。災害直後全県挙げて復旧に努力いたしたので、ともかくも稲等は香川県から移送いたしまして極力植え替えて減収を避けるために努力いたしたとのことでありました。併しながら病虫害の被害が非常に多く、その予防に対して二億円の農薬を使つているという話でありました。台風第二号の助成金七千五百万円のうち三千六百万円が農薬代になつたというような話でありました。繋ぎ融資は全部で七千万円の配分がありましたが、これでは全く焼石に水で、何とか増額してくれというような要望であります。災害復旧費に対する全額の起債を許可せられるよう特別の配慮を願いたいと申しておりました。なお本県では、特別立法指定を受けられる地域があるかどうかという質問に対しまして喜多郡、宇和郡等六郡を是非指定願いたいというように申しておりました。とにかく本県被害も僅少ではないのですが、他の県の被害が余りに大きいので、よほど的確な査定をして、それを確認するのでなければ、なかなかむずかしいと申しておきました。県財政も一年の予算額九十億の中税収入十三億という誠に恵まれない県でありますので、十分考慮してやる必要があろうと思うのであります。最後に本県の農業委員会から特段の予算措置を願いたいとの陳情がありました。  かくて県の実情を聴取したのち、松山市を去る西方の六十キロの地点にある伊予の大洲の災害地視察に赴いたのであります。ここは、喜多郡は本県被害中心地なつたところで、六月七日より六月二十八日までの二十日間に降つた雨量はまさに九百ミリに及んで、この地の一年間の雨量の千六百八十ミリの六〇%を僅か二十日の間に降つたことになつておるのであります。ここを流れておる肱川は年々歳々水害がありまして、郡民は台風期の都度戦々兢々としておる状態であります。年々受けております農作物の被害だけでも莫大なものに上つております。今次の災害でも第二号の台風によつて二億六千八百万円、六月下旬の豪雨によつて二億四千万円の被害を受けておるのであります。そのうち七五%までが農作物の被害になつております。以上詳細な説明は大洲町の責任者から聴取いたしたわけでありますが、とにかくこの肱川の河水統制のために、ダムを一刻も早く建設してこれら従来の被害を除去いたすが適当と考うるのであります。かくて同地の菅田村その他をつぶさに視察して夕刻松山に帰つて、全視察を終了いたしたのであります。  以上各地を視察いたした順によつて概要を申述べましたが、要するに今回の特別立法には到るところ大いに感謝を受けたのでありますが、これに伴う予算がなけらねば、全く絵に画いた餅同様でありましてこの予算措置が万一できない場合には、むしろ立法しなかつたほうがどれだけ被害者のためなつたかと申してもいいくらいであると思うのであります。各地において予算の一刻も早き措置を強く要望せられましたが、委員会も特段の努力をして、政府を督励し、予算措置を速かに講ぜしめる必要があると痛感いたしました。特別立法適用地域は、各県の災害事情を詳細に総合的に検討して、これが適用を立案すべくそれがためには、思うに県或いは郡或いは町村を単位にしてそのおのおのの財政状況並びに被害を蒙つてこれを復旧するその総額の費用等を勘案して、その指定をいたすべきではないかと考うるのであります。  又各地において農地復旧費査定に当つて種々農民や現地の人々に疑義が出ているようでありましたが、この点も今後十分調査の上、政府をして的確な指導方針をとらしめるよう、いささかも被害者をして悪平等の観念を起さしめないよう万全の措置を講ずる必要があると思うのであります。  最後に、この度の災害復旧においても、今後の災害対策といたしましても、直轄河川中小河川或いは農耕地等の関係においておのおの建設省、農林省の両省における連絡を密にして、統一したる行政を行うべく強力に推進することが今後の災害防止の一つの大きな要蹄であると思うのであります。何はともあれ、一巡して見て、年々歳々蒙る宿命的な災害ではありますが、国会も行政府も挙げて一日も早く治山治水対策を講ずることこそ今後の災害防止の最大目的であると痛感いたすのであります。  以上簡単でありますが、御報告申上げます。
  14. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 続いて第三班のかたに願います。
  15. 白井勇

    ○白井勇君 私たち第三班でありますが、林委員と二十九日から三十一日まで、福井をきり出しまして、京都奈良、和歌山、兵庫と廻りました次第であります。不幸にして福井の知事にはお目にかかれなかつたわけでありますが、その他の四県におきましては、知事初め関係部課長に詳しく御報告を願い、更に又災害地におきまする関係者から非常に詳細な御説明を願いました上に、随行の川合第三課長から御努力を願いまして誠に厖大な服命書ができております。これをここで読み上げるだけでも一時間余りもかかりまするので、これはこのまま速記にお送りいたしまして、この席上におきましては最後の結論的な、思いつきました点を御報出口することにとどめたいと、こう考える次第であります。  要しまするに、私たちが担当して廻りましたこの五県の災害におきましても、やはりこの原因と申しまするものは、申上げるまでもなく九州地帯と同様に、超異常的な気象、殊に降雨量に原因をするものであるという点がまず第一点であります。  第二点としまして、そういうふうに九州同様に超異常的な気象状態に基きまする災害ではありまするが、私当時院議を以ちまして、北九州の水害地帯を見せてもらつたわけでありますが、それと関連をつけまして、今回の地帯を見て廻りますというと、まあ北九州地帯で水害というものは、大体こういうものであるという一応の了解がついたはずだと、こう思つておりましたところが、今回更に新たなる地帯を見ますというと、やはりその地方々々によりましてそれぞれ違つた特殊の災害というような様相を呈しておるということをしみじみと感じましたのであります。例えてみますというと、福井県の災害地の、いわゆる平坦地帯におきまする田畑の災害、これは他地方の家が流れますとか、或いは死人を生じますというようなはでな表現ではないわけでありますが、六月初め、或いは七月初め、再度に亙ります降雨、而も地方といたしましては勿論従来ない降雨量であるわけでありますが、そういうふうな降雨が再三繰返されて、而も中間におきましても晴上つた天候というものはないというような状態からいたしまして九州その他の地帯の災害というものを怪我によつて災害をこうむつたとこう仮定いだ上まするならば、福井のような地帯は、丁度栄養失調によつて自滅をしなければならないというような恰好になるような現れ方をいたしておるのであります。従いましてひどいところになりますというと、四、五百町歩に亙ります田圃というものが殆んど冠水状態の下に、再三これを植え替えましても到底物にならない、今以て私たちが参りましたのは二十六日でありましたが、水が全然引いていない、ひどいところでは草ぼうぼうとなり、稲としてとどめておりますものも、到底これは結実はできないものであるというような惨状を呈しておるのでありまする更に例をとつてみますというと、市街地なり、或いは田畑に泥が入つて来る、或いは砂利が入つて来る、こういうふうな惨状を見て参つてつたのでありまするが、今回私たちが近畿に参りましてあの有名な井手町の実態等を見まするというと、これは山が近いせいもありましようが、泥やら砂利のほかに草の根や竹の根、木の根、更に枝やらいろいろなものが練り合わされまして、山の粘土に誠にこれは壁を塗りかためたような状態で街の中になだれ込んでいる、或いは又田畑を埋めている。こういうような恰好でありましてこれを取除こうといたしましても、スコップもこれに入らない、こういう状態であるのであります。私たちが井手町に参りました場合におきましても、すでに二週間余りも経つているわけでありますが、死体の除去もできない、手の施しようもないような恰好の形をしておつたのであります。先ほど県の経済部長にお聞きをいたしますというと、今以てまだ除けないというような状態にあるそうであります。ああいうものを少なくももう少し強力に排除するような施策は立ち得ないものだろうかというようなことを、しみじみ痛感をいたしたのであります。そういう点も、九州を見ましたのと多少私は違つた感じを以て見て参りました。更に御承知通りに南山城、奈良、和歌山等におきましては、御承知のように各谷々が非常な災害をこうむつております。従いましてあの木材の生産地から材木が流れて来る。それが上流からいろいろな方面に流れて参ります。いわゆる水害によります災害のほかに、今回の近畿地帯の災害におきましては、御承知通りに阪神なり淡路なり、或いはその他の方面にああいう立木が流れ、更に流木になつたのみならず、水中に浮遊をいたしておりまする切株、そういつたものが無数に流れているというような関係からいたしまして、二次的にああいう地帯におきまして航行ができない、或いはこの十月末、大事な時期でありまする漁業が成り立つていけないというような、誠に悲惨な状態で違つた方面に災害を起しているというこの現象であります。そういうような点が、いろいろ地方々々によりまして違つた現れを以て出ているというような点を、特に感じたのであります。  第三点といたしましては、前国会におきまして制定をされました二十四の災害関係特別立法でありまするが、これに対しまして一部におきましては、どうも法案ばかり作つて、多少乱暴すぎるじやないかというような非難もあつたということを聞かされておつたのでありまするが、私たち実際災害地のあの見るに忍びない状態というものを、具さに実地調査して参りまするというと、乱暴どころか不備な点がまだあるように考えられるのでありまして、そういう点は十分補充をいたしまして、速かに予算的の裏付をやりまして、できるだけ早く復興を期し、更に民心の安定を期するより、我々といたしまして努力をいたしますことが、最も考えられました点であります。  第四点は、この災害特別立法の適用に基きましての、この適用地域指定の点であります。これにつきましては、福井初め私たちが廻りました各県とも非常なる要望を以て、是非一つ県全体を指定してもらいたいという強い要望がありました次第であります。殊に京都奈良のように八月災害が起りました地帯におきましては、是非一つ本法の適用のあるように立法的に措置を速かに講じてもらいたいという希望が強くされましたのであります。  第五点は、私たちが廻りました各県とも、非常に県の財政がこれは貧弱であります。殊に福井県或いは和歌山県のように、数年前に震災があり、或いは又その後引続きまする風水害があるというように、その災害復旧がまだ癒えていないというような状態地方もあるわけでありまして、幸いにいたしまして、今回の災害復興につきましての立法が、更に予算的の裏付をされましても、相当金額の地方負担を要しまする点があるわけであります。ところがその地方負担をいたしまする場合の負担能力というものは、起債を許されましても、これは現状におきましては到底十分なことはできないという状態でありまして、そういう面につきましては、更に国におきましても十分なる一つ措置をとつてもらいたいというような要望がありました次第であります。  第六点といたしましては、現在つなぎ融資が出ておりまして、非常に助かつたわけでありまするが、ところがこれがやはり金額が相当に上りまするので、利子の負担は県といたしましてはできかねるというような状態であります。僅か二億五千万円ぐらいの融資をもらいましても、来年の三月ぐらいまで利子を払いますると、一千万ぐらいの県費を要するというような実情にもありまするので、この際このつなぎ融資の利子につきましても補給をしてもらいたい、こういう要望が強くせられておりました。  次に第七点といたしましては、細かい点でありまするが、復旧に当りましては従来改良関係のことが、一部織込まれるようでありまするが、やはり復旧ということが主になりまして、それだけでは十分でないという場合におきましても、適切な措置がとり得ないというような面もありまするので、今後防災と改良というようなものを総合的に、同時に十分実施できるように措置をしてもらいたい、こういう要望であります。  第八点といたしましては、耕地の復旧に当りまして若しここに金さえありまするならば、来年の春の田植には十分間に合うという地帯が相当あるわけであります。それを全国一律に、仮に三カ年計画で、初年度は二、次年度は五、最後の三年目は三というような割合を、そのまま適用されるということになりまするというと、折角来年の春には、それは田植ができるんだというような復旧の見込がある地帯におきましても、只今申し上げましたような予算措置になりまするというと、二年、三年見ておりませんというと完遂し得ない、その間みすみす農家といたしましては、田を植えようといたしましても、それができないというような実態にもなりまするので、その辺のことはよく実情に即しまして、そういう地帯をむしろ重点的に、優先的な措置一つつてもらいたい、こういうような要望であります。  第九の点は、これはよく言われまする総合計画というようなものに関係があるのじやなかろうかと思いますが、将来のこの災害防除上、例えて見ますると、山林計画を立てて参りますような場合におきまして個人の造林に任せるというようなことをせず、一つの重要な場所におきましては、その重要な水系に沿いまして国或いは公共団体等そういうような力を持つて造林計画というものを立てまして、実施をすべきものである、というような要望であります。  第十の点といたしましては、災害復旧には御承知通りに耕地にいたしましても、従来のようにただスコツプを以て泥の排除をいたしまするとか、或いは復旧をやつて行くというような措置では、間に合いかねるのが今回の災害の実態であろうかと思います。従いまして大部分のものは機械力がなければ、復旧困難であるというような実態でありますのでこの際政府におきましても、積極的にこの機械を政府で買つて、これを地方庁に貸付をするというような措置を講じましてできるだけ機械力の充実を図つてもらいたい、こういう要望であります。  十一の点は補助金がいろいろ今まで出ており、これからも出るわけでありますが、その計算の場合口におきまして、特に単価というものが現状に即さない。例えて見ますると、トラツク一台一日二千五百円という単価を以てその二分の一を国が補助すると言われましても、現実におきましては、やはりトラツク一台一日九千円もかかる。これでは二分の一の補助金どころか、七分の一以下にも切下げになつてしまう。こういうような誠に現状に即さない点が現れているわけであります。これを例えて見ますると、住宅を建てまする場合におきましても、最近のように木材が石当り現場におきましては一千円も上つているという話でありますか、そういう単価におきましても、やはり現状に即するような単価というものを土台といたしまして補助率をはじいてもらいませんというと、末端におきましては実際の仕事がうまく行かないということであります。  最後に災害予報等に関しまする通信設備の整備の問題であります。御承知のように和歌山或いは奈良、ああいう谷間々々を持つておりますような地帯におきましては、特に今回の災害によりまして、この災害予報というものにつきましての整備の問題が取上つているわけであります。せめて無電なりで、山間地帯にありまして今少し連絡が十分に参りまするならば、如何に異常な気象でありましても、今少し災害を食いとめ得たのじやないかということを言われております。今後はこういう地帯にはできるだけそういう面につきましての国の援助を願いたい、こういうような点であります。  そのほか今回私たちが参りますにつきましていろいろ調査をやつて参りました項目等につきましては、詳細は先ほど申しましたように速記のほうで御覧を願うことにいたしまして特に取上げてここで申さなければなりませんような点は、直接私たち触れなかつたように記憶いたしております。  なお足りない点は、林委員そのほかからも詳しく御説明申上げます。
  16. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 最後に私の視察した分につきまして御報告申上げます。  私は院議に基きまして、先ほど第一班の代表である島村委員から御報告がございましたように、北九州並びに中国の一部を調査視察いたしました。その後午前中報告御了承を求めましたよ了に八月中旬の災害つて見舞われました京都滋賀三重府県視察して参つた次第でございます。現在私は総括的なところを申上げますれば、私はこういう災害方面の専門的な知識を持つているのじやないのですが、非常に目が肥えて、災害に驚かないようになつたということを非常に遺憾に思つております。次々に視察して参るというと、これが最後で一番大きいのだろうと思うと、次に又大きい災害があるというので、非常に災害に驚かないように私の目が肥えたということは、先般の第十六国会で治山治水に関する決議全会一致で上げたのでございまするが、非常に考えさせられる点が多いということを痛切に感じております。  全般的に先ず第一点として申上げたい点は、私はこのたび視察いたしまして、非常に大災害を受けた所が殆んど危険状態のままに放置されており、百ミリ、二百ミリ程度の雨が降れば、更に再災害が来るという状況にあるということを痛切に感じました。例えば佐賀の嘉瀬川の決壊、極めて大なるものがあります。百ミリも降つたら大変でございます。或いは福岡県の大福村の筑後川大決壊の跡始末福岡県の遠賀川のこの決壊も同様であります。それから熊本県の阿蘇山の山崩れ、それから東近畿一体の山崩れ、これは百ミリも雨が降つたら、あと多量の土砂が流出して来るでありましようし、これらの応急措置は何ら施されないままに今日に至つておるのであります。京都府の南山城の天井川の決壊のあとの締切りというのは、ほんの膏薬をはつた程度で、七、八十ミリ雨が降つても危険じやないか。こういう状況が放置されていることは極めて重要だと、こういうふうに先ず第一に認識しておる次第でございます。  第二点は、小規模町村の多いのに驚きました。人口千ぐらいから人口二、三千、税収入が百万から二百数十万というものが五〇%以上もあるような状況で、それではちよつとした災害にも、地方自治体というものは堪え切れないということに驚いた次第でございます。  第三点としましては、この災害に見舞われた被災地の国民の皆様が災害復旧に血の惨むような、涙の出るような努力を続けておられるということには全く涙の出る思いで、敬服いたしました。これは各代表からも御報告があつておられましたが、例えば農家のかたがたは稲が取れないということがわかつても、とにかく植え付けなければ、承知しないという、この農魂というものには全く敬服したのであります。島村代表から御報告がありましたが、四回五回と植え付けている。而もその植え付けた稲は大して米が取れない、こういう状況にあるという、この災害地の方々の精神力には全く敬服する次第でありますが、従つてそこまで努力しても何にもならない。だから何とかこれはこの災害の場合にはお国の力を借りなければという気持に、災害地の国民の各位がなつておられるということを、はつきりと私はつかんで帰つたわけですが、その一つの現われが今日の午前中の大量の陳情となつて私は現われていると、こういうふうに考えるときに、私は非常に心をしめる思いをいたしているのであります。  次に申上げたい点は島根県でありますが、先ほど報告がありましたが、余りにも私は痛切に感じましたので、一言触れさして頂きたいのでありますが、それはあの島根県の宍道湖の斐伊川の関係、この宍道湖の水位の問題と、田地の高さの問題でありますが、少し客土して高くすれば、二毛作になり、たくさんな米が取れるのにその手を打たないために、何百町歩というものが一毛作すら十分取れないという状況にあるということは、我が国の食糧問題などと併せ考えるときに、国策の宙点として一つ取上げなくちやならんという、政策上の盲点というものがあろような私は感じを持つてつた次第であります。  これから私が委員長の責任において視察し、このたびの特別委員会審議運営上皆様の資に供するために、視察し、更にお見舞を申して帰りました京都滋賀三重、三府県について御報告中土げますが、京都につきましては、只今白井第三班の代表から報告がありましたの外、余り触れません。ただ他の災害地の関連において若干触れたいと思います。この八月十四日から始まつて、十五日未明に災害を起しましたいわゆる東近畿災害について一般的に申上げたい点は、十五日の黎明に一挙に増水して破堤した。このために思わぬ災害を招いた。これは一つの私は特徴だと思います。それから次には北九州並びに中国の一部これに大災害があり、その後和歌山県に大災害があつて、建設省或いは農林省の出先機関の機械類例えぽブルトーザー、そういう種類のものが重点的にその地域に臨時的に配置転換をなされておつた関係上、この東近畿災害地に、そういう機械力を動員することはできなかつた。こういう特殊事情はこの災害地には気の毒であつたと思います。それからこれはまあ公けの席上で余り言うべきことでないと思うのでありますが、併し一つの参考として申上げてよろしいと思いますが、それは九州、和歌山の大災害というものが、久し振りに起つた、この言葉は適当でないかも知れませんが、久し振りに起つた従つて新聞社その他の団体によるところの慰問品の募集、それから慰問金の募集というようなものは、非常に全国民的た同情の下に多く行われて、相当の慰問がなされているわけですが、それが殆んどなくなつた。そうした頃にこの東近畿災害が起りましたので、心ではお気の毒だとは思いながら、他県は勿論のこと、その県内でも比較的に救援の力を十分出し得ない。これは怠けているという意味ではなくて、もうすでに損金の募集に力を出し切つた。こういう形が、やはりこの南近畿の災虫の一つの特徴と、こう思つております。  それから次に申上げたい点は、熊本景の災害で、阿蘇が大きく山崩れをして、その土砂が白川を通じて熊本市に持ち込まれて、又阿蘇郡の農地というものを随分と荒したわけでございますが、この山崩れの様相と、東近畿を襲つた山崩れの様相は酷似いたしております。従つて本県の阿蘇のあの山地災害と、東近畿の山地災害というものはよく似ております。それからもう一点は、京都の玉川、天神川、不動川等のいわゆる天井川の災害でありますが、これはもう皆さんそれぞれ御専門で御研究なさつている通りに、山地の災害と平地の災害はそれぞれ特徴があるわけでありますが、丁度この天井川の災害というのは、丁度その地形の関係上、山地災害と平地災害両方を併したような災害が天井川の決壊による一帯の災害のようであります。従つて土砂も流れて来るし、それによつて田畑も潰れるし、併せてその近くには平地があるし、家がたくさんあるから建物、人畜を傷つけておる、こういうように認識した次第でございまして、これらが東近畿災害の特徴として申上げられると思うのでございます。  なお、関西本線、奈良線、信楽線、これら国鉄三線は、私ども数日前でありますが、行つたときまでには、まだ開通いたしておりません。殊に関西本線のごときは、全通には相当期間要するものと認めました。  次に県別に申上げます。京都府については死者二百二十一、不明百十五殊にこの不明の百十五という数字が示すように、土砂の流失というものが、家屋の埋没というものが激甚だつたということを、この数字が示していると思います。現在なおこの湯船村の方面はトラツクが入りませんで、ヘリコプターで連絡をいたしておる状況で、一刻も早くこの地域の道を開かなければならない状況にあります。先ほど報告ありました井手町の災害はお聞きの通りでございます。ずつと奥地に参りまして、その間にたくさん被害を受けた村があつたわけでございますが、大河原村というような村は誠に目を覆うような損害で、この寒村において一村の力でどうにもなし得るものではないというほどの大きな災害でございました。次にこの繋ぎ融資は、京都府は三億五千万もらつているが、あと四億は緊急にどうしても必要だということを知事が力説いたしておりました。なお、京都の蜷川知事は、財政金融方面に明るく、極めて適切機敏に災害以後の金融方面をうまく取運んでいる点については、敬意を表すると共に、感謝した次第でございます。  最後に一点申上げたい点は、京都は曾ても平和池が決壊したのでございますが、このたびも天井川の、玉川の上流に大正池というのがございます。で、下流の人は余りにもひどくやつつけられたので、大正池の設計が悪くてこれが決壊したために、大災害を起したのではないか、こういうように言われ、殊にこの部落には共産党が相当入つて赤旗を相当高く頭上に掲げ、私たちが参つた日も乱闘騒ぎがあつたそうでありますが、他の天神川、不動川、天井川というのが皆決壊しているのを見ますというと、土地の一部の人が話しているように、玉川が決壊して然るのちに大正池が決壊したのだ、時間的にはそうなつている、こう地元の人が言つておりますが、そうなのかも知れません。併しながら大正池が決壊したことによつて多量の水が流れて来たので、その災害を非常に多くしたということは、動くことのできない事実だ、こういうように視察いたした次第でございます。  京都はその程度にいたしまして、次に滋賀県について御報告申上げますが、滋賀県は災害を受けたのは、甲賀地方でございます。要するに八月中旬の雨というのは、京都府、滋賀県、三軍県、奈良県、これらの県境に長時間、雨量の極めて大きい降雨があつた、起つた次第でありますので、滋賀県の南部に当る甲賀地方災害を受けた次第でございます。数字を簡単に申上げますと、死者四十五、家屋の滅失が四十八、損害は三十億六千万、こういうふうに報告されております。私が一応視察いたしましたのは、雲井村、小原村、朝宮村、信楽町、多羅尾村、これだけの町村視察いたしました。  ここで是非とも報告申上げなければならない特異な事柄は、滋賀県は災害救助法を出しておりません。皆さん御承知のように、県によりますと全県的に災害救助法を出しているわけですが、滋賀県当局は、特殊の見解を持つておりまして、災害救助法を一町村にも出しておりません。県当局説明によりますというと、災害救助法は濫発すべきものではないとか、或いは災害救助法を出さなくても、災害救助法が出た以上の助成を県はやつた。それともう一つは、災害が起つたのは非常に僻地で連絡は全然つかなかつたので、つかなかつたことが災害救助法を発動しなかつた一つの原因にもなつているのではないか。これは私の憶測であります。ともかくも災害救助法を一町村も出しておりません。従つて開会された県会で一応問題になると共に共産党の諸君から、非常に一応取り上げられて災害地で困られたということを聴取いたしました。従つて県としては災害救助法は出さなかつたが、災害救助法以上の施策は県としてはやつた。従つて災害救助法を出していないからといつて国庫助成を全然やらないというような杓子定規の取扱い方をしないで、国の助成というものは是非仰ぎたい、こういう話をされておつたことを御報告申上げておきます。この滋賀県で最もひどいのは、多羅尾村という村でございまして、この多羅尾村に行く途中に陶器の産地である信楽町というのがあります。この町、信楽町から多羅尾村に行く間谷を通るのですが、その谷全部が災害のときに川になつたのですね。だから今はどれが川でどれが道か全然わからないのです。それは県道でありますが、よくまあこの一カ月近くの間に道をこしらえたと、「私は敬服いたしました。恐らく延べ万以上の青年団、婦人会、町村民を動員したようでございます。ともかくもよくもまあこう道をこしらえたと、こういうように私は感じた次第でございます。従つてジープだけは通れます。この多羅尾村に着いてみますと、村長さんは上京して留守でありました。併しこの村長の村民の指導精神というものは、極めて適切であり、敬服したのでありますが、この直後例によつて共産党はここに入つて相当アジつたようであります。併しながら村長の活発な広報活動によつて、共産党と村民の間を切り離して、現在村内は極めて平穏でありますが、その村長の指導精神は、我々はこの多羅尾移住民と思つてほしい。この村に辿り着いたところが、偶然にも使える役場というものがあり、学校というものがある。これから田をこしらえるのだ。水の流れる川もこれから作るのだ。我々の通る道もこれから作つて行くのだ。こういう気持に村民の皆さんはなつてほしい。これが村長の指導方針で、そういう掲示を村内至るところに出して、復興に立上つておるわけです。人口僅か一千二百、税収のごときは年間僅か百七十万というような寒村でございまして、ここに行つたときには、本当に私は涙が出た次第でございまして、あの村の復興並びにあの村に通ずる県道の修理というものは、極めて多額の費用を要する、こういうふうに視察いたした次第でございます。  で、滋賀県当局としては、繋ぎ資金を現在八千万円受けているが、これではどうにもならないので、いろいろ検討した結果、八、九、十月、この三か月間であと二億は是非とも追加してほしい。そうして取りあえず道路だけでも早くつけなければならない、こういうような説明を聞いたわけでございます。  なお滋賀県の部類で最後に一言申上げたい点は、これは富山県あたりにも例が出て来るかと思うのですが、甲南町という町がございます。ここは全国的に配置売薬の盛んなところだそうです。自分の甲南町は大した被害を受けないが、全国にその配置売薬をやつておる。その地域が大災害で以て、今更災害地に行つて、この前納めたお薬代をほしいということを言えない。金額にして三千万円ほどある。これを何とかして頂けないものだろうか。これは非常に大きい問題ですが、災害地にはそういう問題も伏在しているという立場からお耳に入れておく次第でございます。  最後に三重県で、ざいますが、三重県は七月中に三重県の南のほうの南牟婁方面に災害があつたのでございますが、この災害はそう大したものではなかつたわけです。ところがこの災害復旧に専念しておる折も折、八月中旬に四日市方面とそれから上野市方面、この方面に大災害が襲つて来たわけでございます。特にこの上野市方面、この伊賀地方と言いますが、この地方災害は県全体から言えば、地域は狭いわけでございますが、併しながらこの地域に起つた災害というものは、私が視察した範囲内においては、これも言葉は適当かどうかわかりませんが、堂々たるA級の災害でございます。数字を申上げますと、死亡は僅かに十七です。それから行方不明が十五でございます。それから損害は三重県全体として九十七億三千方、こういうふうに出ているのでございますが、以下簡単に被害状況を申上げます。  先ず上野市でございますが、上野市一帯というものは三重県では非常に米の産地として重要な地位を占めている所と聞きました。ここは丁度木津川の上流に服部川というのが流れているわけですが、全くこの服部川というのは手をつけてありません。全く放置してあります。で、その下流のほうに何か川幅の狭くなる所があつて、大きな多量の雨が降るというと、上野市一体に氾濫するのですね。いろいろ聞いて見ますというと、その下流のほうを水害のないようにするために、どうも上野市附近が遊水地帯の働きをしているような恰好になつております。従つて今度多量の雨が降りましたので、上野市一帯というものは、先ほど映画で見ましたように、お城のある高い地帯を除いて全面的に浸水したわけでございまして、これは米の収穫に非常に大きく響くものと、こういうふうに視察した次第でございます。特にこの上野市の西山部落、これはもとは村であつたわけですが、上野市に合併された村の一部で現在西山部落と言つておりますが、ここの災害は極めてひどいものです。全部これは山崩れのもたらしたものでして想像もつかない大きな石がごろころして、道がどこにあつたのか、もと潅水用の小さな渓流というものがどこにあつたのかさつぱりわかりません。現在、もと美田であつた真ん中を大きな川ができて流れているというような状況で、これからの復旧ということになりますと、これから水をどこに流すか、田をどういうふうに区切るか、区画するか、それから道をどこにつけるかというところからやらなければならない。石は余りにも大きいですが、これは川の或いは道の石垣用に爆破して使えばいいというようなことを言つておりましたが、まあ驚くような大きな石が出ておりまして、農地の潰れたのが全般の九〇%という状況で、この西山部落の今後の救済というものは極めて困難な問題ですが、併し農地の九〇%も潰れておりますというと、早速野菜を作るのにも困るという状況で、よほど強力な手を打たなければならない。こういうふうに視察した次第でございます。  もう一カ村視察したのでございますが、それが丁度京都府との県界に当る島が原村です。ここは山崩れによる家屋、それから田地を潰した点では、更に大きな石が出ているような点では、私が見たところでは一番大きいと思いました。長崎県の今福町の山崩れ、これは随分大きいものですが、これは大した石が出ていないのと、田地を潰した点は島が原よりは少いように見受けました。更に今福のほうは、今後又山崩れが来るであろうというその危険性が非常に大きいのであつて家とか人は余り傷つかなかつたわけでございます。島ガ原村は南、東、中というふうに片つぱしに山崩れがあり、一挙に家を傷めつけているわけでありまして、非常に気の毒で挨拶のしようもないという状況です。死者は十五人ですが、そのうちに死体の見つかつた人は三人しかいない。たがら犠牲者の五分の一しか死体が出ない。それによつて土砂の量というものが如何に大きかつたかということがわかるかと思います。私が参つた日にも鉄道の暗渠のところに土砂が非常に堆積しておつたのですが、その中から死体が一つ発見されるような状況でございました。その村長にお宅の損害は幾らですか、どういうふうに踏んでいますかと言つたところが、損害がどのくらいになるか見当が立ちませんと言つて、まだ算盤も弾いていない状況でございます。その田地の潰れたのが約百二十町歩、こういうふうに申しておりました。島ガ原の報告はその程度にとどめます。  それ以外にひどい所と言いますれば、丸柱村というやはり京都府の県界にあるわけですが、これはトラツクもジープも行かないで、ここへ辿りつぐのに約一日かかるというようなことでしたので、書面だけで事情を承わつて参りました。なおその隣村の河合村もそれに準ずる災害という報告書を受領した次第でございます。この三重県においても災害救助法は非常に慎重を期して、僅かに二市四町村だけに出して発動しておりました。  最後に繋ぎ融資の件でございますが、三重県は現在まで繋ぎ融資六千万円を受取つておるが、早急に三億円を是非とも手配してほしい、こういう強力な要望があつたということを最後に申上げまして私の報告を終りたいと思います。  ちよつと速記をとめて下さい。    午後三時二十四分速記中止    ——————————    午後三時四十一分速記開始
  17. 矢嶋三義

    委員長矢嶋三義君) 先刻各班の代表から報告された調査事項については、今後本特別委員会として如何なる処置を講ずべきかという今後の対策という角度から一応各班の御報告の内容をまとめていずれ皆さんにお諮りいたしたいと思います。なお高野君から要求のございました各省の査定進捗状況等に関する資料並びに過年度災害に関する府県資料についても、政府へその提出方を委員長の名において要求いたします。  本日はこれを以て閉会いたします。    午後三時四十二分散会