運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-08-04 第16回国会 参議院 厚生委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月四日(火曜日)    午後二時三十八分開会   —————————————   委員の異動 八月三日委員江田三郎君辞任につき、 その補欠として竹中勝男君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堂森 芳夫君    理事            大谷 瑩潤君            藤原 道子君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            中山 壽彦君            西岡 ハル君            横山 フク君            林   了君            湯山  勇君            山下 義信君            有馬 英二君   政府委員    厚生省保険局長 久下 勝次君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日雇労働者健康保険法案内閣提  出、衆議院送付) ○理事補欠選任の件   —————————————
  2. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) それでは只今から厚生委員会を開会いたします。日雇労働者健康保険法案を議題といたします。先ず政府委員説明を求めます。
  3. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 法案の一々の条文につきましての御説明は省略いたしまして、主要な点につきまして若干数字の問題などを加えました御説明を申上げたいと思います。  先ずその内容に入りまする前に日雇労働者健康保険法というものを私ども提案をいたすようになりました趣旨につきまして申上げたいと思うのでございますが、これは法案理由書にも書いてございますし、又提案理由説明でも申上げました通り日雇労働者に対して特別な健康保険制度考えるということにつきましては、各方面からの長い間の要望であつたのでございまして、私どもといたしましてはその要望に応えまして、何らかこれに対する制度考えたいというので、昨年初め頃から検討を始めたわけでございます。この法案を作りますまでにいろいろの考え方が出たわけでございますが、先ず第一には現行健康保険法との関係でございます。御承知のように現行健康保険法からは適用を除外されておる対象でございまして、この適用除外を外すということも一つ方法として考えられるわけでございますが、何分にも日雇労働者就労実情が不安定でございまするし、又その報酬も一般的に低額でございます。特に就労日数が少ないような関係からますますその程度が甚だしくなるわけでございます。さような関係上現在の健庸保険法適用除外を外して、そのまま健康保険法適用するということは、結局現行健康保険の被保険者保険料負担を増額するというような措置をらなければできないことになるわけでございます。さような関係もありまするので、一応これは別の制度としてその意味において考えたほうがよろしい一いうことになつたわけでございます。一方又地域保険としての国民健康保険との関係があるわけでございます。一ころが申すまでもなく、国民健康保険はまだ全国半数の市町村に実施されておるに過ぎないという実情であります。而も大都市におきましては、殆んど国民健康保険は行われておらないと申してよろしいような実情でありますが、日雇労働者が多くおりまするところが国民健康保険のない都市であるというような関係もありまするので、国民健康保険との関係につきましては、これはどうしても国民健康保険では日雇労働者関係調整することができないということになつたわけでございます。だだ実際問題といたしましては、国民健康保険施行しておりまする地域に住んでおる日雇労働者がどうなるかということでございます。これは法案内容におきまして調整を加えることにいたしまして、本法案の第七条によつて特別の事由として国民健康保険の被保険者でありますものは、その本人選択によつて保険者承認を得てこの法律適用を免れ得るようにいたして調整いたしたのであります。さような関係から結局これは別の制度として出発をするのが最も妥当であろという考え方になりましたのであります。そこで第一点は適用範囲の問題でございますが、表題にも書いてありますように日雇労働者という言葉で括つてありまするが、実はいわゆる日雇労働者より適用範囲は広くしてございます。これは本法案の第三条に明らかになつておるのでありまするが、狭い意味日雇労働者と申しますると場合には、日々の契約によつて雇入れられる者を一般に言つておるものと解釈されるのであります。併しながらこの法案日雇労働者といつておりまするのはそれよりも遥かに範囲が広いのでありまして、いわゆる臨時的な労務者健康保険法適用を除外されておりまする「二箇月以内の期間を定めて使用される者」でありまするとか或いは季節的業務に使用される者でありまするとか、或いは臨時的事業事業所に使用される者、こういう三種類のものは狭い意味のいわゆる日雇労働者以外のものではありまするけれども健康保険との関係もありまするので、これらを一括して本法適用をするように考えた次第でございます。いわゆる日雇労働者につきましては、この数がこの制度根本になるわけでありますが、内閣統計局調査によりますると、昭和二十六年事業所統計調査結果報告というのが総理府統計局調であろわけでありますが、これによりますると、いわゆる日雇労働者臨時又は日雇の職員及び労務者健康保険法に規定する事業所に働く者が九十九万人という数字が出ておるのでございますが、このうちあとで申上げまする適用事業制限されております関係で、私ども考え方では三割は引いて計算をする必要があると考えました。そういたしますと、大体約七十万ぐらいが形式的には本法対象になるということが、この統計調査数字からは出て来るわけであります。併し一方におきまして失業保険法適用実情から申しますると、失業保険法適用しておりまする日雇労働者数は四十五万人ということになつております。これより若干範囲が広い関係もありますので、私どもはこれに一割を加えた五十万人程度が先ず初年度数字としては適当であろうというふうにいたしたわけであります。これは一つには最初申上げましたように、就労実情が不同でありまするので、実際問題としては把握が困難でございます。そこで被保険者数を過大に見積つておきますると、保険財政の上からも心配な点が出て参ります。それよりも見込みが低くなりますると、いろいろ財政上の問題も起つて参りますので、私どもとしては財政当局とも相談をいたしまして失業保険適用対象者、現在四十五万人の一割増、五十万人というのを本法対象として先ず初年度としては考えたのでございます。かような被保険者に対しましてどういうふうに保険を運用して行くかということでありますが、先ず第一にこの日雇労働者がどういうようなところに働いたときにやるか、少くとも日雇労働者が働いて、この働いたところの全部を抑えるというのが本来の建前であろうかと思つたのでありますが、実際問題といたしましては、個人の家庭に入つて働くというような場合も考えられますので、保険事務の運用の上から申しますると、さようなところまで個々に抑えて行くことは保険料の徴集その他非常に困難がございますので、失業保険日雇労働者に対する失業保険の実施のやり方からも考え合せをいたしまして、健康保険適用事業所に働いた、先きに申上げた日雇労働者を被保険者とする、こういうような制限を加えたわけであります。健康保険適用事業所は、健康保険法で規定しておりますので、五人以上の健康保険法に定められた各種の事業所に働くものであります。そういう場合にのみ被保険者として保険料を納めなければならないというような扱いにいたしたわけであります。こういたしました趣旨は、一つにはすでに現在これらの事業所におきましては、健康保険適用を受け、保険料納付もしておりますし、又保険給付も受けておりますので、社会保険に対する理解も相当あるものと考えられますので、そういう意味合におきまして実際の把握にも困難がないのじやないか、かように考えまして、その点が一つと、それからもう一つは、この健康保険適用事業所に働いた場合に適用するということにいたしますと、結局特定事業所健康保険適用を受けておるところで常雇のものは健康保険臨時雇のものは日雇健康保険ということになりまして、結局名前は違いまするが、二つの健康保険適用をいずれかの形で受けられるということにもなろうかと思います。そういう方法も考慮いたしまして、よさうなことにいたした次第であります。なお特定の場合でございまするが、緊急失業対策法に定める失業対策事業或いは又は公共事業を行います場合、これは健康保険法適用の有無にかかわらず、当然に本法適用を受けるようにいたし、その事業に働きました場合には保険料を納め被保険者給付を受ける資格を取得することがで送るというような取扱いにいたしたものでございます。先ほどもちよつと国民保険関係で申上げましたが、一応そういうようなことでやつたのでありまするが、なお大事な点は、保険給付を受けます受給要件であります。これも就労が不動であるという点から、従つて裏を返して申しますれば、保険料をどの程度納めるかということが保険をやつて行く上に根本の問題になるわけであります。この点につきまして日雇労働者に対する失業保険先例がありまして、失業保険の場合には、失業をいたしました日の属する月の前二月間に二十八日分の保険料を納めているということが、失業保険保険金を受取る受給要件でございます。健康保険におきましても、この法案におきましてもその先例にならないまして、病気になりました日の属する月、例えば今日病気いたしますとすれば、七月と六月の二月を通じて二十八日間以上保険料が納められておれば、今病気になりました場合に給付を受けられるというような要件にいたしたわけでございます。保険料の納め方等はあとで申上げまするが、そういうような仕組でこの仕事をやりたいと思うのであります。そこで一応そういうような適用範囲で行いまするけれども日雇労働者によりましては、実は本来の仕事農業等をやつてつて、時折日雇労働者として働くというようなものがありまして、これは一例でございますが、こういう種類の人の中には二月間に二十八日ということははじめからもう受給要件は満たすことができない。言葉を換えて申しますると、保険料をただ納めるだけというような人が想像されるわけでございますので、そういうふうに最初から今申上げた受給要件月間に二十八日ということが満たされないのが明らからでありまする場合には、保険者承認を得まして被保険者とならないことができるというふうに本人選択を認めておるのでございます。  それから健康保険による任意継続保険者と申しまして、すでに健康保険適用事業所に働かなくなつた場合でも、自分から保険料を納めことにより健康保険の被保険者としての資格を継続することができる制度がございます。そういう場合にも勿論本人選択でこの適用を受けられるというように考えております。その他は先ほど申上げた国民健康保険の被保険者である場合、或いは尼ケ市等に例がございますが、すでにもう小地域日雇健康保険というものを事実上やつておるところがございます。そういうものにつきましても、選択によつて承認を得て被保険者とならないことができるというようにいたしております。これは以上申上げたのは大体四つの場合でありますが、日雇健康保険制度強制適用社会保険制度でありますが、実態から考えまして、さような除外例を認める考えでございます。  そこで日雇労働者資格のありまするもの、これは最初に申上げた範囲のものでございますが、こういうものに対しましてはあらかじめ本人申請によつて保険考証手帳を渡しておきます。で、その人は本法適用のある事業所に働きました場合には、その雇用主に持つておる手帳を提出をいたしまして、雇用主はあらかじめ郵便局から印紙を購入しておきまして、その印紙を貼つてそうして消印を押すことによつて事業主保険料を納める、こういうような仕組考えておりました。後に申上げるような事業主負担分は、当然事業主負担をいたしますが、被保険者負担分は被保険者である日雇労働者賃金を払いまする場合にそれを差引いて賃金を支払うことができるというような考え方をいたしておるのであります。これは健康保険の場合、失業保険の場合がいずれも同様でございまして、保険料納付義務は一応被保険者及び事業主となつておりますれども、直接政府に対して納付義務を負いまするのは事業主というふうな仕組考えておりました。それもその日その日のことでございまするので、印紙によつて保険料納付する、その印紙が二十八日分貼つてありますれば、病気なつた場合に医療が受けられる、こういうふうに考えられた仕組でございます。そこでいろいろ財政上の計算をいたしてみたのでございまするが、問題は最初に申上げましたように日雇労働者の給与が低いということ、就労日数が平均二十一日程度であるということなどから、月割の収入額多額でございません。そこで保険料としてもそう多額を要求するわけには参りません。私ども考え方としてはせいぜい健康保険保険料率以上のものの負担は無理であろう、言葉を換えて申しますると、本人負担分健康保険の場合は千分の三十でございますが、千分の三十以上の負担は困難だろうと思いまして、大体その線に保険料負担を抑えまして、最高本人負担八十円、事業主はそれと同額の八十円の負担をしてもらうということが原則であります。日雇労働者の中には日給百六十円未満という低い収入のものもありまするので、百六十円未満のものは特に二級制度を設けまして、保険料本人負担分を五円に減額をいたしてございます。事業主負担分は八円であります。併せて申しますると、一級の日雇労働者につきましては十六円、二級の日雇労働者は十三円日額の保険料を納めるということになるのでございます。この程度で一本の給付考えなければならないわけでごいますが、何分にもさような関係保険収入としては多くのものを望めませんので、従いましてこの案の内容によりまする給付は、健康保険に比較いたしますと著しく制限をされておるものにならざるを得なかつたのでございまして、大事な点だけ申上げますると、先ず療養の給付期間を三カ月にしております。それから健康保険の場合に、或いはその他の場合に支給されております傷病手当金病気で休みました場合の傷病手当金は、この案では全然給付をいたさないことにしてございます。それから歯科の場合には補綴の給付をいたさないことにしております。なお埋葬料分娩料等々の健康保険給付をされておりまするようなものも制限をせざるを得ないような結果に相成つておるのであります。結局これは保険料収入が少いために、問題はこの内容をよくするためにはどこかに財源を求めなければならないわけでありまして、本来ならば国庫負担或いは補助を以ちまして給付内容を上げるということも考えてみたのでありますが、政府といろいろな折衝をいたしましたけれども、そこまで実現をみることができませんでした。政府案といたしましては、今申上げましたような給付内容制限をいたしておるわけでございます。  ここで最後に予算内容を申上げておきたいと思いますが、予算の立て方は現行厚生保険特別会計というものがございますが、この中に織り込みまして日雇健康勘定というものを新らしく別途厚生保険特別会計法の改正によりまうて新設する予定でございます。これも本国会で御審議を頂いておるのでございます。一方事務費その他の保険給付保健福祉施設等につきましては、現行厚生保険特別会計法の中の業務勘定の中に日雇の必要な費用を組込んでおるわけでございます。個々勘定に分けた数字を申上げますと混乱をいたしますから、両方を一本にしたものを御参考に申上げておきます。事務費給付費と合せたものでございますが、そういたしますと歳入総額が五億五千八百五十二万九千円でございます。歳出総額もそれに合せてございます。この五億五千八百五十二万九千円のうち、本年保険料として入つて参ります額は三億七千五百万円でございます。一方歳出のほうは同じく五億五千八百五十二万円となつてございます。保険給付費は一億四千二百万円、事務費が一億二千六百万円、保険福祉施設費が三千六百万円、予備費が二億五千三百万円、こういうふうに予備費が非常に多額になつておるのでございますが、これは法律施行関係からかようになるのでございます。現在私ども考えております法の施行は、一応全面的に若し通過をいたしますれば、本年の十一月にこの法律全部を施行する予定でございます。施行いたしますけれども、先ず第一にやりますることは、五十万人を予定しております被保険者に対して、一人々々に申請に基いて手帳を交付する事務がございます。これが相当手間のかかる仕事でありまするので、おおむねこれに二月半を予定いたしまして、明年の一月十五日までに手帳の交付、帳簿整理等、具体的に法律が動いて参りますような諸準備を完了したい考えでおります。そうして一月十五日から保険料を徴収する、こういう段取で進める予定でございます。そうなりますると、二月間に二十八日という、先ほど申上げた受給要件が生きて参りますのが三月の初めからであります。二月が二十八日、一月が十五日でございますので、従いまして中には、その二カ月間で二十八日の受給要件を充たす人が出て来ると思いますので、三月早々から実際の給付が始まるということになつて来ることを予想いたしておるのであります。その関係保険料は二月半、給付受給要件関係上一月ということになりますので、従いまして今申上げましたように、予備費が相当余ることになるわけでございますが、これは必然的に後へ送られて行くものであります。本年度としては予備費になつておりますが、順次これは先々の給付のためにとつておくべき金であると考えておるわけでございます。  若干くだくだしたことを申上げたようでありますが、日雇労働者健康保険法内容につきましてひと亘りの御説明を終りましたわけでございます。
  4. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御質疑を願います。
  5. 高野一夫

    高野一夫君 ちよつと保険局長に伺いますが、この表を見ますと、事務費の全額が三億となつておりますが、給付費は結局総額幾らかかるということになりますか、大体見当は……。大よそでいいですから、七十八億とか八十億とかその辺ですか。
  6. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 実は本年度給付費というものは先ほど申上げたように、一カ月だけでございますので、予算上は一応……。
  7. 高野一夫

    高野一夫君 一カ年ですね。
  8. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 年間で申しますと、この制度をこのまま年間に延ばして五十万人の被保険者対象として考えますると、年間給付費経額は十七億四百万円になる予定でございます。これは尤も事務費等は入つてございません。保険給付費だけでございます。
  9. 高野一夫

    高野一夫君 局長ちよつと伺つておきたいのは、現在は金がないからしようがないですが、将来、仮に来年度再来年度でなくても、できるだけ近き将来において事情が許すならばこの年間給付費の何%かを国庫負担にする、したいというような御希望でも厚生省はお持ちでしようか、それは好ましくないとお考えなんですか。
  10. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 厚生省といたしましては、この給付をこの法案考えておりますような給付制限をやつていつまでもおくつもりはございません。できるだけ給付制限を撤廃をして行くような方向で進みたいと考えておりますが、問題は結局本人負担にかけるわけに参らん事情がございますので、結局それは国庫補助ということにしわ寄せられると思います。その辺の関係は今後の交渉に待たなければならないと思いますが、私どもとしてはそういう交渉をいたしまして、できるだけ給付制限は緩和して行くように今後努力をいたす所存であります。
  11. 榊原亨

    榊原亨君 先ほどちよつと人数の統計をお話下さつたのでありますが、これは参考資料の七十四頁あたりのところから出ておるのでございますか。
  12. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 参考資料の六十三頁のところで申上げたのであります。ここにありますことを申上げたのであります。
  13. 榊原亨

    榊原亨君 その場合の家族罹病率と申しますか、家族の医師にかかる比率はどのくらい、どこから統計が出ておりますか。
  14. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 受診率と申しましたほうが正確かも知れませんが、受診率日雇労働者そのものにつきましては何も資料はございません。私ども政府管掌健康保険資料をとりまして、ただ政府管掌健康保険をそのまま使うわけに参らない事情があります。それは給付制限関係があります。そこでこの給付制限による受診率の減をどうみるかという問題が一つでございますが、日雇労働者失業保険の例によりますと、一般労働者に比較いたしまして受給制限関係から二割くらい受給が減つておるようでございます。そこで一般健康保険の場合の数字本人家族共にそのままとりましてそれを二割減いたしまして、更に安全率を一割みております。そういうふうな計算の仕方をいたしております。
  15. 榊原亨

    榊原亨君 兵庫県の日雇労働者の小さい組合におきますところの家族受診率についてお調べなつたことがありますか。
  16. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 或る程度調査はいたしておるのでございますが、具体的に何か……。
  17. 榊原亨

    榊原亨君 兵庫県の日雇労務者健康保険はうまく行つておりますのは家族受診率が非常に低いことであります。と申しますのは、家族診療費を半額負担にいたしますために、日雇労働者がその現金を払うことができませんから、従つて家族受診率が非常に低くなつて来ておるのであります。そういうふうな統計に基く御調査がこの法案基礎参考となつておりますか、或いは単に普通の健康保険の二割減とかいうことで御計算になつておりますれば、この法案基礎が甚だ実情にそぐわないものじやないかと私は思うのでありますが、その点についてお調べなつたことがあるかということをお聞きしたわけであります。  それからその次には学生アルバイトについて、何かこういう方面についてお考えになつておることがあるのでございましようか。又学生アルバイトは、若しもこの法律ができますというと、学生アルバイトをそれによつてやろうというお考えでございますか。それをお聞きいたしたいと思います。
  18. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 先ず、前段のお話でございまするが、尼崎事例につきまして、私ども係官を派遣いたしていろいろ調査をいたしたのであります。実は、その結果によりますると、尼崎実情は、被保険者に或る程度制限が加えられておるようでごごいます。従いまして、これを直ちに取つて以てこの例とすることはできないということは多々ごごいます。それのみならず極めて小地域の特別な事情でありますので、全体を推す資料として……。  この尼崎事例というものは、一つの例ではごごいましようけれども、こういう制度を始めます上には、少し資料としては不十分ではないかという考え方の下に、それよりもむしろ健康保険の永年の実績を考えまして、只今御引例の家族の問題につきましても、その点は健康保険でも同様でございます。その点を考え合せまして、健康保険事例をとり、それに若干の調整を加えて基礎資料にいたしたのでございます。  第二段の学生の問題でございますが、これは前々から国立大学等関係者から話がありまして何か制度を作る必要があるということで、私どものうほへも相談に来られまするし、又文部省のほうとも話合をいたしておるようでございますが、まだいずれとも結論が出ておりません。学生アルバイトでありましても、この法律が全然適用ないということはないと思いますが、学生アルバイトをそのまま捉えて特別な措置を講ずるという点につきましては、それは、むしろ学生全体の現状から考えまして、別個の問題として考えたほうがよろしいのではないかと思います。
  19. 榊原亨

    榊原亨君 この現実の面におきましては、学生アルバイトがだんだん殖えて参りまして、怪我をいたしますとか、或いは病気になるとかいうことがあるのでありまするが、一方におきまして、事業主は、常雇をいたしておりまして、ストライキその他によつて非常な打撃を受けますよりも、むしろ学生アルバイトを日々雇として雇つたほうが得だということで、学生アルバイトを盛んに使つておるという傾向が殖えで来ておるのであります。そういたしまするというと殊に学生は勉強をするために、そういうふうなアルバイトをしなければならん状態でありますのに、それらの傷害或いは疾病につきまして、何ら政府がお考えにならないということについては、私どもとしては大いに関心があるわけでありますが、そのアルバイト学生日雇として働きましたところの傷害は、当然これに入ると私は思うのでありますが、その点は如何でございましようか。又今後におきまして、今お話になりましたような、特別に学生アルバイトについては考えるというお話でございますならば、成るべく早い機会におきまして、こういう学生アルバイトの擁護をして頂くことによりまして、日本の教育という上においても大きな問題があると思うのでありますが、その点のお話を承わりたい。
  20. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 先ず前段のお話は、お話の通りだと思います。結局この法律に定めております受給要件を満たしさえすれば、学生であると否とにかかわらず、給付を受けることができると思つております。ただ、実際問題としては、学生は、お話のように、学業が本分でございますから、果して月に十四日という受給要件が平均的に満たされますかどうか、その辺は相当問題だと思つております。そういう意味合におきまして、その方面関係のかたは何か特別な制度を作りたいということで、現在熱心にいろいろ駈け廻つたり検討いたしたりしておるようでございます。ただ、具体的な問題として、さてそれをどうするかということにつきましては、なかなか問題がむずかしうございまして、言葉を換えて申しますと、学生自身の保険療養費負担能力というものは、大して多くのものを期待できないという事情がございますので、何かこれは特別な措置を講じませんと、普通の社会保険の観念では少し無理がありはしないかというふうに考えております。
  21. 榊原亨

    榊原亨君 是非、この学生健康保険というような広汎な意味でなくても、一応前段階としてはいいのであると私は思うのでありますが、学生アルバイトに出ました際の疾病については、是非とも何かの手をお考え下さいますことを厚生省に強く私は要望するものであります。  次に、この日雇労務者保険の実施の面でありますが現在の健康保険におきましても、診療担当者が、窓口において、本当に被保険者家族であるかということの判定に苦しむことがありますし、実際上のこれらの点についての被保険者の違反というものもあるわけでありますが、そういう点についてお考えになつておられるでございましようか。承らさして頂きたいと存じます。
  22. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 前段の御要望につきましては、文部省も関連をいたしておりますので、よく相談をいたしまして、御要望に副うように検討いたしたいと思います。  それから、あとのお話につきましては、本法によりますると、個々の場合に、受診ができるかどうか、受給要件を満たしておるかどうかという認定が必要でございまするので、診療を受けまする場合には、その都度受診券を発行することにいたしております。従いましてその点が具体的にはそう御心配はないと思うのであります。
  23. 榊原亨

    榊原亨君 同じくこれは診療担当者の面の心配しておることでございまするが、被保険者が一部負担をいたします額が、若し金を持つていないとか何とかということで、事実上未収になるものが多いと私は思うのでありますが、その点について、診療担当者の迷惑にならない工夫を考えておいて下さいますでありましようか。又もう一つは、現在におきましても、救急病院等に担ぎ込まれます患者は、殆んど着物を持つておらないのであります。従いまして、救急の場合、止むを得ませんから、病院の看護婦の着物を着せますとか、病院の当直員の蒲団を着せるとかいうことでやつておりまして、この被害が相当あるのでありまして、場合によりますというと、或る消防のところから電話がかかつて只今急患であなたの所へ入れろと言うて、連れて来た患者が重症の結核患者であつて、それが着物も何も持つておらないので、先生方の着物を着せた、一度入るとなかなか退院しない。それで生活保護法その他の措置を講じようと思つても、なかなか取次いでくれないということが実際の面でありますが、ところが実際この労務者のかたがたには、可なり収入のあるかたもおられますが、中には着のみ着のままというようなかたがあるのでありますが、そういうことについて、この法律施行されて、診療担当者が現実の面において困ります面について、具体的にどういう御処置が講ぜられておるか、承らさして頂きたいと思うのであります。
  24. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 先ず最初家族の一部負担と申しますか、むしろ一部負担と申しますよりも、これは家族が診療を受けました場合に、保険者のほうから療養に要する費用の半額を支給する、こういうことになつておりまするので、この点は健康保険の場合と同様であります。その半額分の保障につきまして、この制度としてはどうも如何ともいたしがたいと思います。健康保険の場合と同様な考で診療担当者に御診療を願うより以外には方法がないと思つておるのであります。  それから、第二のほうの問題でありますが、実はそこまでこの制度それ自身としては考えておらないのでありますが、ただお話の点は、病院に入院をいたしました場合に、寝具、医療等を病院そのものが支給をいたしました場合というような味で、実は中央社会保険医療協議会におきましても、すでに話題に上つておりまする問題であります。一般的に入院患者に全部そういうようなことをやる場合が主たる問題としてそういう話が出ておるのではございまするけれども個々の場合には、お話のようなものも、特定の場合にのみ支給するというようなことも考える必要があるかも知れません。ただ、それにつきましては、まだ話題に上つておるという程度でございまして、それの具体的な処置につきましては、医療協議会におきましてもまだ結論が出ておりません。従いまして、この問題と関連をいたしまして、御趣旨の点につきましては、何らか善処するように考えたいと思つております。
  25. 榊原亨

    榊原亨君 只今のお話でありますと、法律だけは作る、そしてそれに協力いたします診療担当医に対するところの未収、或いはそのほかの迷惑ということは何も研究しておらない、そのままでよろしいのだ、一応法律を作つたからこのままだということにつきましては、私は少くとも賛意を表するわけにいかんのであります。これは、若しもその未収ができますような場合におきましては、保険医が何かその帳面に記入することによつて、次の日の収入印紙を貼ります場合、それを差引いて事業主が金を渡してやるとか、或いは何とかという方法を講じられなければ、収入の少いこれらのかたがたの医療をやるということ、それが診療担当者の犠牲において行われるということは、何といたしましても承服することは私はできないと思うのであります。殊に第二段目の、医療の面についても、それはまだ研究中だというようなことでございますというと、本当に迷惑するのは診療担当者だけでございますので、この点のはつきりした点を御研究下さいまして、次回にでもお話を願いたいと思うのであります。殊に医師の、診療担当医の苦情を処理するという機関、或いは法律条項というものがこの中にはないと私は思うのでありますが、被保険者のこの苦情処理の機関はこの法律の中に謳われておりますが、診療担当医が、不当なる処置に対しまして、苦情を処理し得る機関がこの中に認められておらん。これは、在来の健康保険においてもさようでございますが、殊にこういうふうな特殊なる立場に置かれたかたがたを治療いたします場合の、それらの苦情処理の機関というものを一体誰によつてその苦情が、診療担当者の苦情が解決されるということが何ら書いてない。これらの点につきましては、次回でよろしうございますから、私が満足し得る御研究をお願いいたしたいと思います。
  26. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 最初のお話は、次回を待ちましても、実は私ども考え方としては、先ほど申上げた以上のことは申上げられないのでございますが、考え方といたしましては、この保険制度ができまして、できるとできないとにかかわらず、日雇労務者家族病気にかかつた場合には医者の門を叩くだろうと思います。ただ、これができますると、その頻度が多くなることは考えられましようけれども程度の問題といたしまして、いずれにしてもそういうことはあり得ると思います。この保険制度ができますると、考え方としては、健康保険の場合と同様に、家族の療養に費用がかかつた場合には、本人に対してその半額をこの保険から見てやるというような考え方でありますので、当然あとの残つた半額につきましては、お医者さん、診療担当者と、その被保険者家族、或いは被保険者との関係になるわけでございます、それまでを保険制度で引受けるというふうなことには参らないかと思うのでございます。  それから苦情処理の問題につきましては、御尤もでございまして、この点私どもも遷延いたしておりますことは大変申訳ない。お話のように、健康保険法そのものにつきましてもさような御意見がかねてからあるわけでございます。これは、単にそれだけの問題のみでなくて、いろいろ保険医の身分その他に関連をいたしました問題として、総括的に善処する考えの下に、実は検討はいたしておるわけでございます。一連の関係でもございまするので、この制度にのみ特別な措置を講ずることをいたさなかつたのであります。結論も出ておりませんので、すでに検計いたしておりますが、結論が出ましたならば、各種の社会保険制度を通じて善処いたしたいと思つておる次第であります。
  27. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 他に御質疑ございませんですか。  ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  28. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) じや速記を始めて下さい。質疑ございませんですか。
  29. 湯山勇

    ○湯山勇君 日雇でございます。
  30. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) そうです。
  31. 湯山勇

    ○湯山勇君 日雇労務者の実態生計費ですね、その実態生計費の中で、医療費が大体どれくらいな割合を占めておるか、そういう点について、この資料の中にはそういう点が出ていないものですから御説明を頂きたいと思います。と申しますのは、一般に人事院その他で賃金をきめます場合に、食糧費、それと関連してエンゲル係数によ  つてそれを修正いたしまして、大体理論生計費をきめるわけですが、その場合に食費の占める割合が、日雇労務者ではかなり大きいと思うわけです。その大きい食費の占める割合をとつて除けました残りの中の、一般公務員等の給与算定の場合は、何%が医療費になろ、従つてそういうことから健康保険の掛金はどれくらいまでが限度であるというような算定がなされると思うのですが、で、そういう日雇労務者の実態生計費、理論生計費、そういうものが明らかになりましだ場合に、初めてこの日雇労務者健康保険の掛金八円というものが、果して妥当なものかどうかというようなことの判断もできると思いますので、その点、若し只今ないようでしたら、次の機会でも結構ですが、成るべく早く御調査頂けたらと思います。
  32. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) お尋ねの問題につきましては、お尋ねのような理論的な数字でないと思いまするが、確かお手許に資料としてお配りいたしました現行社会保障における日雇労働者の現状という資料をお配りしてあるのじやないかと思いますが、それのうち日雇労働者生活実態調査結果表というのが終いのほうにございます。それの更に又あとのほうに、頁数で言いますと七十七頁になります。一番最後のところでございますが、それに傷病の状況及び治療の状況というのがございまして、日雇労働者一人当りの費用が出ております。この数字によりますと日雇労働者一人当りは医師の治療を受けだ者、その他の治療をした者含めまして五十九円九十銭でございます。同じく日雇労働者一人当りの被扶養者分は百一円になつております。そのうちそれぞれ医師の治療を受けて医師に支払いをいたしましたものは、本人の分が四十円、家族の分が七十八円になつております。この治療費の支出の状況はその次の頁にございまして、百分比で申しますと、自費でやつておりまするものは、本人分は四七・八%、被扶養者の分三六・四%でございまして、生活保護法による医療扶助の本人の分が三九・三%、被扶養者分が五五二%、社会保険が一二・五%、これは本人分であります。被扶養者分が六・三%というような、その他も若干ございまするが、こういう程度数字つきり、実はないのでございます。
  33. 湯山勇

    ○湯山勇君 私も今局長の御説明にあつたような資料から何とかそういう結論を出そうと思つてみたのですけれども、これは治療を受けた人だけのことしか出ていないのです。保険料というのは治療を受ける人を、まあ言い方は悪いかも知れないのですけれども、救済するために、受けない人も負担するわけであります。受ける人、受けない人、そういうものを総合して、一体実態生計費、それにおいて受ける人、受けない人を合せての平均がどういうふうになつておるか、それが生活費のどれくらいな割合になつておるか、その割合は一般の公務員、或いはその他の労働者の賃金と比べてどうなつておるか、こういう比較をしてみたいと思いまして、いろいろこの資料を拝見いたしましたのですけれども、それが見当らないものですからお尋ねをしたわけですが。
  34. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 御趣旨御尤でございまして、そういうような数字がなければ本当の意味の正確な計画は立たないのでありますことは私ども承知をいたしております。ただ問題は、一つ日雇労働者全部につきまして、おつしやるような意味における資料が何もございません。そういうことが一つと、それからもう一つは、こういう保険制度ができますると、現在保険制度のない場合の医者にかかる率というものが大きく変つて参ります。そこでいずれにいたしましても、現在におきましては保険を実施したものとしての数字というものは、日雇労働者それ自身については推定以上のものはないと思うのです。そこで私どもとしては、結局とりました数字は、先も申上げだのでありまするが、健康保険の被保険者本人及び家族の状況、現状を抑えてみたのであります。これも、健康保険は私から申上げるまでもなく、ここ七八年の間に受診率は急激に増高いたしております。そういうような実情でもありまするので、これもいつの時期を抑えるかということになると、なかなかこの新らしい制度との絡み合いで私は非常にむずかしいと思うのでありますけれども、この計算等の、制度を立てます上の計算基礎といたしましたのは、二十五年の歴史を持つておりまする健康保険制度の現状における本人及び家族受診率を見まして、ただ先ほど他のかたの御質問にお答え申上げたのでありますが、これには受給要件がございます。これは一つ制限になります。これを失業保険の例に倣つて二割減と見まして、つまり健康保険本人及び被扶養者それぞれの二割減になるものと見ますと、更に最後にこれを安全率を見るために一割の安全率、こういうような計算基礎をとりまして推計をいたしに過ぎないのであります。これをおつしやるような理論的な数字で分析をするのが最も正しいと思つておるのでありますけれども、先ほど来申上げたような事情もありますので、結局はこれは三年も五年も実施をして参りまして漸次その実情に応じて計画を考えて行くというようなことにならざるを得ないと私も考えております。
  35. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のお話で大分よくわかつたわけですが、ただ私が心配してお尋ねしたいことは、健康保険の相似形的な縮小、そういうことだとやはり問題が残ると思うのです。と申しますのは、例えば一万円で生活しておる人が二分の一の五千円で生活せよということになつても、これはできるかも知れない。併し五千円で生活しておる人を同じ率で縮小いたしまして、二千五百円で生活せよということになるとこれは生きておられないかも知れないのです。つまり保険料率等が、健康保険保険料率が大体収入に対してこういう割合だ、従つて日雇も大体同じような率ならばいいだろうというような、そういう、健康保険におけるいろいろな計算基礎よりも、日雇における基礎が縮小された形で、大体の割合は同じだというようなことで料率を出されたとすれば、これは非常に大きな負担が、規模が小さいだけに日雇労務者にかか  つて来るわけなので、そこでこの八円というものが、一体私ども共済組合その他から見ますと、かなり高いのじやないか、率から言えば似たような率なんですけれども、率が同じであるということは、生活規模の小さいものにとつて負担が多いということも考えられまして、そういう心配の点のあるかないかを私は明らかにしたい。こういうつもりでの質問でございますから、必ずしも一つ一つの、日雇労務者について実態生計費を集計してその平均を出すという必要はないわけでございます。若しその辺につきまして、資料がなくても、これはこうだというような御説明が頂けるようでしたら、それでも結構だと思いますから……。
  36. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 先ず申上げたいと思いまするのは、お話の問題は二つに合けて考えられると思うのでありますが、先ず最初に申上げたいと思いますことは、これは疾病の保険が主体でございまするので、従いまして生計費の問題と直接は関係がないので、ただ日雇労働者という特殊な勤労状態にありまするかたがた、及びその家族病気にかかる率がどういう率であろうかというような問題を判定をしなければならないことだと思います。その点は結局どのくらい医者にかかつておるであろうかというのが現在の状況及び保険を作つたならばどの程度保険を利用して医療を受けるであろうかというようなことの推定と、この二つがあるわけでございます。前者につきましては、先ほど申上げた数字以上のものはないのでございますが、後者につきましては、私は現在の、私が先ほど御説明申上げた推定の仕方は決してこれは安全率の点から申しますれば心配はないと思つております。と申しまするのは、こういう種類の医療保険制度というものは、私どもの判断では制度のできたてはそう利用者がない。だんだんこの制度の実態がわかつて来て利用者が殖えて来るというようなことになろうと思いますので、少くとも当初の間の計画といたしましては、健康保険の現在の受診状況を抑えて行くという考え方は、私どもとしてはそう財政の上でも実施の上でもその他の点でも心配はないと考えておるものでございます。もう一つは、先ほども触れたのでございますが、健康保険は二十五年の歴史を持ち、而も最近十年近い間というものは急激に利用率が殖えているのでございまして、随分急激に殖えて漸次最近の状況は殖える率が停滞をしつつございます。殖えてはおりまするけれども、ここ二、三年前ほどな殖え方をいたしておらない。そういうことで或る程度、どこまで行くかわかりませんがだんだん受診率というものもおのずから限度に来るのではないかというふうに考えられまして、相当に制度が普及して理解が行届いて参りました健康保険制度がさような状況でありまするので、その現状をとりましたことは私どもとしてはそう無理はないんではないかというふうに考えた次第でございます。それから最後に保険料の問題でございますが、保険料につきましては、確かに同じ比率でありましても少額所得者のほうが苦しいということは私どもわかります。ただ理屈を言えば、同じ率で払うわけですから、苦しさは違うといつてもそう大費なことはないんであろうということが一つと、もう一つは、実は健康保険適用を現在受けておりまする被保険者の中にも、いわゆる常雇の人たちの中にも、私から申上げろまでもなく現行では二千円、今度の改正で三千円に最低が上りましたが、少くとも三千円程度の月額収入の者がまだ相当、何十万といるわけでございます。そういう人たちはやはり同じ率で千分の三十の本人負担分負担しておるわけでございますが、そういう意味合いにおきましては、日雇労務者のかたがたといたしましてもやはり平均賃金から申しますれば月に税込五千円、恐らく税がかからんと思いますが、五千円くらいの収入になるわけでございますので、私ども考えではそう無理な要求ではないであろう、八円ということがそう無理ではない、何とか凌いで頂けるであろうというような考え方をいたしたわけでございます。
  37. 湯山勇

    ○湯山勇君 私がお尋ねいたしておりますのは、結局これが妥当かどうかということについての理論的な根拠をお示し頂きたいということだけなんですが、これはなお一つ御検討頂きまして、もう少し明確にお示し頂きたいと思います。  続いて、局長から安全率というお話がございましたのですが、これはこの資料制度実施に要する経費概要の所を見ますと、歳入の所で郵政事業特別会計から受入れる、これが大体保険金負担する、納めるほうの保険金になるわけでございますね。それに対して歳出の所では保険給付費とそれから最後に予備費というのが相当たくさんございます。二億五千万幾ら。この予備費とそして保険給付費と併せましても実際はこの郵政事業特別会計からの受入れに達しないわけです。つまりこれだと実際に政府がやると言いながら、むしろお互いに相互に助け合うということにしたほうがもつとこれは安くて、本人にとつても有利なのである、こういう考え方もできるので、安全率というのはむしろこういうところにからくりがあつて、これでは出しただけのものが本当に日雇労務者に返つて来ない、こういう規模になつておると思う。勿論事務費は国のほうでお持ちになるということはこれは結構ですけれども、それにしてもとに角使用者並びに日雇労務者が出しただけのものが本人に返らない、他の保険ではむしろ出した以上のものが返つて来る、こういう形になつておるのですが、これは一体甚だ私は不合理じやないかと思うのですが、如何でしようか。
  38. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) これは昭和二十八年度だけの数字を出しましたものですから、かようになつております。実は法の施行関係からかようになるのであります。なぜかと申上げますと、先ほども申上げたのでありますが、この法案が御審議の上通過いたしますれば十一月から法案施行することになつております。そういたしますと十一月に施行いたしますが、すぐに保険料の徴収はできない、先ず私ども考えでは五十万人の対象に対して一一申請を取り、手帳を交付するという仕事が全国的に行われます。又事業主におきましてはそれぞれ帳簿に記載したり諸準備万端整えないと、一斉に保険料徴収ということができません。その期間は、法が十一月一日に施行するといたしまして大体二カ月半かかると思います。二カ月として年末までには終りたいと思いますが、正月に保険料を取り始めるということもできませんから、そこで正月の十五日間を避けまして、十五日から保険料を具体的に徴収する、こういうふうに考えておるのであります。手帳を一斉に持つておりまする人々が、この対象になる人々が所定の事業所に就業しますその都度保険料を納めることになります。その一斉に納め始めまする時期を一月十五日に予定しております。そういたしますと、先ほども申上げましたが、受給要件が二ヵ月二十八日というのがあります。そうすると給付の実際に始まるのがどの被保険者につきましても三月一日以降になります。そこで結局は一月半というものは先ず保険料を納めて受給要件を満たして、病気なつた場合に医者にかかるこういうことになりますので、従いまして二十八年度だけを区切つて申上げますと、保険料は二月半納めて給付は一月きりしかない、こういう結果になりますので、そこで只今おつしやる通り郵政事業特別会計からの受入れ三億七千五百万円というものは二月半の保険料でございます。それから給付のほうは一月だけでございます。丁度二倍半をいたしますと、大体それにむしろ足りなくなるくらいな計算でございます。これは結局保険の実態の費用というものは大体これで一ぱい一ぱいぐらいになるはずでございます。  なおここで細かい二とを申上げて恐縮でございますが、印紙売捌手数料というものは、ここに一月十五日からの二月半分、千九百七十七万円が歳入に計上してございます。これは理論的に申上げますると、保険給付費、つまり保険料から支弁すべきものなのでございますが、この保険につきましては、特に政府国庫補助で以て賄うことにしてございます。そういうような関係もありますことを御了承願いたいと思います。
  39. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の御説明はよくわかりました。それは保険給付費が少いということはそれで了解できるわけです。ところがそれではやはりお金がたくさん余つて来るわけなので、余つたのが恐らく予備費に廻ると思うのですが、その予備費保険給付費と合せればこれはやはり収入よりも多くないと工合悪いのじやないかと思うのです。今の御説明によりましても、支出するものは少く受けるむのは多い、従つて支出と受入れたものとの差はこれはいい、併し余つたものは予備費に廻しますから、少くとも納めたものが全部労務者のために全部廻るとすれば予備費とそれとを合せたものが収入、郵政事業特別会計から受入れた額よりも多くなれば初めて納めた以上の恩恵を受ける、こういうことになるわけですね。ところが実際は予備費とそれとの合計がそれよりも少いということは私ちよつと納得行きかねるわけです。
  40. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) おつしやる点が少し私には理解いたしかねますが、保険給付予備費を合せますと三億九千五百万円ほどになるのであります。保険料は三億七千五百万円でございますから、そういう意味合いにおきましてはおつしやる通りになつておるのでございますが。
  41. 湯山勇

    ○湯山勇君 予備費は幾らですか。
  42. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 二億五千三百万円。
  43. 湯山勇

    ○湯山勇君 失礼しました。私のほうは一億幾らになつておるものですから。
  44. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  45. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記をつけて。じや暫時休憩いたします。    午後四時二分休憩    —————・—————    午後四時三十九分開会
  46. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 休憩前に引続きまして再開いたします。日雇労働者健康保険法案に対する審議はこの程度にいたしまして、残りは次回に廻したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  48. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に理事補欠互選を行います。
  49. 湯山勇

    ○湯山勇君 理事の互選は成規の手続を省略し、委員長の指名とせられんことの動議を提出いたします。(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  50. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今の湯山君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは藤原道子君にお願いいたします。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会