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政府委員(久下勝次君) 先ず現在の制度から御説明を申上げて、改正をいたします趣旨の御了解を頂きたいと思います。御案内でもあろうかと思いまするが、
厚生省所管の社会保険の保険給付に対して不服のありまする者は、先ず各
都道府県に置いてありまする社会保険、独任制の
社会保険審査官があります。それに申立をいたします。その採決がありました場合に、なお不服のあります者は、
厚生省に置かれております
社会保険審査会に不服の申立が
できることにな
つておるのであります。
社会保険審査会の審査になお不服がありまする場合には、一般の
法律に基きまして、通常裁判所に出訴できるというふうな
措置が取られておるのでありまして、問題となりまするのは、今の二つの
社会保険審査官、及び
社会保険審査官のうち
社会保険審査会に
関係するものが最も多いのでございまして、改正の主眼もこの点に置いた次第でございます。現在の
社会保険審査会と申しまするのは、健康保険、厚生年金保険、船員保険、この三つの
法律につきまして、それぞれ労使、中立に各二名ずつの
委員を委嘱いたしまして、全体として十八名の臨時職員でありますところの、非常勤職員でありますところの
委員を委嘱して審査をお願いをいたしておる次第でございます。
なおこれを新たに今御
審議を頂いておりまする日雇労働者健康保険制度が発足いたしまするといたしますれば、これはその
関係者を更に加えて行かなければならないと
考えておるわけであります。ところが審査の件数は、すでにお手許にお配りをしてあると存じますが、逐年増加の傾向にございまして、簡単に各年別の受理件数だけ申上げますると、中央の
社会保険審査会の受理した件数は、
昭和二十五年度は三十九件でありました。ところが又二十六年度には八十六件になり、二十七年度には百八十三件というふうに逐年激増をいたしておるような次第でございます。一方
社会保険審査会のほうは、以上申上げたような機構でもありまする
関係上、各
委員それぞれ本務を持
つておられまするので、お願いをいたしましても、なかなかお集まりを頂く回数が少くならざるを得ないのでありまして、而も
一つ一つの問題は、裁判と同じように、相当面倒な内容を持
つたものでありまするので、半日みつちり審査をやらしても、四件か、五件、処理できる程度に過ぎないのであります。さような
関係上、私ども
関係者としては、随分各
委員のお集まりを頻繁にして頂くように、
努力はして
参つて来たのでありますが、以上のような
事情でございまして、今日請求がございまして、なお審査会が採決ができないで未処理のまま残
つておりまする件数は百五十件程度にな
つておるのでありまして、昨年の今頃の不服の申立を漸く逐次採決をして行
つておるというような、被保険者にとりましては甚だ申訳ない現状にある次第でございます。
そこでさような現状を
考えまして、これを改正をいたしたいというのが、今回の改正の主眼点でありまして、先ず第一に以上のような
事情でもありまするので、採決をいたします審査会
委員というものを、特別職の常勤の
委員にしたいというのが第一の
考えであります。併しながら従来とも、この制度は申すまでもなく、いわゆる三者構成の制度でありまして、被保険者並びに事業主の不服の申立に対して、それぞれの利益を代表するものが、弁護的な機能を果して行くということも、又存置すべきものと
考えまして、三人の常勤の審査
委員のほかに、審理に参加し、審理上必要な処置の請求のできる権限を与えられた利益代表者というものを労使双方から選びまして、そうしてこの人々に労使双方の被保険者並びに事業主の利益を代表する弁護的な機能を果して頂くようにして、結果において三者構成の実質的な機能を、新らしい制度の下におきましても果して参りたいというのがこの
考えでございます。
なお申し遅れましたが、審査の件数は現状のような状態で百五十件も未処理のまま残
つておりますが、今回の改正によりまして、従来保険給付費に対する不服のみでありましたのを、今度の改正で標準報酬に対する不服もその都度訴えができるように、いわゆる訴訟
事件というと語弊がございまするが、
事件として取上げることにいたしました。
なお近い将来におきまして、被保険者の資格につきましても、これは
厚生年金保険法の根本改正の際になると思いますが、そういう機会に被保険者資格につきましても不服の申立ができるようにいたしたいと思
つておりまするし、更に又日雇労働者健康保険制度ができますると、これに関する不服の申立も又殖えて来るわけでございます。いずれにいたしましても、今後この種の問題のため、私どもとしては漸次不服申立の範囲を拡張いたしたいと思いますので、さような
関係から、どうしても現状の機関を、機構を以ていたしましては、これらの不服申立を完全に処理することが困難ではないか、かような
考え方に出発をいたしたものでございます。
なお新らしいこの
法案によりますると、
地方の独任制の審査官並びに中央の審査
委員会の審理につきまして、裁判所におけると同様な審理の公正を期するための諸種の手続きを新らたに細かく規定をいたしておるのであります。これは一に審理の公正を期したいと、そして被保険者なり或いは事業主の、不服申立てをいたした人々の権利を正当に擁護することを確保いたしたいという
考えに出たものであります。
法案の一々の条文につきましては長くなりますので省略をいたしますけれども、大体以上のような
考え方に基きまして、繰返して申しますると、社会保険に関する不服申立ての範囲を拡張し、これを審理をいたしますために
地方の独任制の審査官は各府県一名ずつという現状をこのまま置いておきたい、それから中央の審査官につきましては非常勤の三者構成
委員制度を改めて、常勤の
委員を三名置きまして、これに各府県ごとに二名程度の労使双方の利益代表者を加えて審理に参画をして頂くというようなこと、それに伴う審理の手続き等を規定いたしておりますのがこの
法案の内容でございます。甚だ簡単でございますが、以上を以て御説明を終る次第であります。
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