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1953-07-23 第16回国会 参議院 厚生委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十三日(木曜日)    午後一時三十四分開会   ————————————— 七月二十二日委員深川タマヱ君及び谷 口弥三郎辞任につき、その補欠とし て、有馬英二君及び西岡ハル君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堂森 芳夫君    理事            大谷 瑩潤君            藤原 道子君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            中山 壽彦君            西岡 ハル君            横山 フク君            林   了君            廣瀬 久忠君            湯山  勇君            山下 義信君            有馬 英二君   国務大臣    厚 生 大 臣 山縣 勝見君   政府委員    厚生省医務局次    長       高田 浩運君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省保険局長 久下 勝次君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員補欠選任の件 ○らい予防法案内閣提出、衆議院送  付) ○健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○社会保険審査官及び社会保険審査会  法案内閣提出衆議院送付) ○医師等の免許及び試験の特例に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開会いたします。らいに関しまする小委員として深川タマヱ君の小委員辞任に伴い有馬英二君を指名いたします。御報告いたします。
  3. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次にらい予防法案を議題といたします。本法案らいに関する小委員におきまして審議中でございますが、小委員長からの申出もあり、厚生大臣に対する質疑は特に本委員会において質疑を行うことといたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  4. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。それでは先ず廣瀬委員から御質疑を願います。
  5. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 月曜日、火曜日に大臣の御出席を頂けなかつたのは甚だ残念に思います。実は私小委員長としてらい予防法審議を急がなければならん責任がありまして、非常に大臣が二回とも公務のため止むを得ざる事情と思うわけでありますが、出席をして貰えなかつたことを甚だ審議上遺憾に存じておるものであります。  先ず第一に御質問申上げたいのは、七月上旬におきましてらい患者が陳情のために多数、数日に亘りまして国会の裏に座り込みをしたことがございますが、これは病人のことでありまするし、又伝染の虞れの問題もありまするし、人道の上から見ましても法律の上から見ましても、誠に重大な問題と信じております。殊にこれが約一週間継続いたしましたという事実は、認に私は重大なことであると思うのでありますが、これに対する政府並びに都当局対策というものを特に東京都よりその関係の者に来て貰いまして、厚生当局と共に列席をして貰いまして、本委員会において質問をいたしました。ところが誠に要領を得なかつたのであります。いずれにいたしましても、この座り込みが、長い間行われたことと、これに対する対策というものについて大臣のお考え伺つておきたい。将来もこういう事態が出現することを皆憂慮しておりますので、この事件並びにこれに対する対策、将来に対するお考えというものをこの際お伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  6. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 先ず以て第一に月曜日並びに火曜でございましたか、私は当委員会出席のできませんでしたことに対しまして、火曜日につきましては土曜日に小委員長にお目にかかりました際にもちよつと申上げたはずでもありますが、閣僚懇談会がございましたのと、予算委員会において質問の通告がございました等のために、丁度この委員会出席ができかねたのであります。なお、翌日はこれ又委員部等を通じて御了解並びに小委員長にも申上げておきましたのでありますが、丁度前日に宮内庁からお話がございまして、和歌山地方水害等中心にして葉山に奏上に参るようにというお話でございました。実は私は宇佐美次長でございましたか、宮内庁を通じて一日延期を願い出でましたのでございますが、御都合によつて田島長官が二時にという御内意を承つて来ておつて政府において重大な支障がない限りは二時に葉山に来るようにというお話であるという、たつてお話でありましたので、その旨必要な筋を通じまして小委員長その他にも申上げました。その際に是非火曜日中には委員会出席をするようにとのお話でございましたので、それで私は二時に参つて、最近数次奏上いたしておりまする経験から、一時間以上にいつも亘つておりまするから、葉山では自動車で走りましても二時間はかかりまするから、大体急ぎまして五時頃には、或いは帰れるかも知れませんと申上げましたら、休憩をして待つておるからということでございましたから、私は急ぎ帰りまして参議院に参上いたしましたら、委員会は解散をいたしたという後でございました。さような事情でございまして、私も出席のつもりでかれこれ苦慮いたした次第でありますが、この点は悪しからず御了承を願いたいと思つております次第であります。  なお只今お話のございました先般らい患者国会等に参りまして、いろいろ座り込み等のことがありましたことに対しましては、只今お話通り誠に政府といたしましても遺憾の次第であります。で、その間殊に厚生委員会の諸先生がたにはいろいろ御苦労をかけ、いろいろ又お手数をかけましたような次第であります。あいにく私はその折、九州地方水害で行つておりました期間にその座り込み等のことが当つておりまして、留守をいたして甚だ相すまんことでございまして、先ず以てこれは諸先生方並びに委員会皆さん等に対してお詫びを申上げなくてはいかんと考えております。深く謝意を表する次第であります。この点につきましては帰りましてもいろいろ事情も聞き、なお私が帰りまして後もなおさような状態が一日か二日、大体事態は緩和いたしておつたようでありますが、続いておりました。私も憂慮いたしまして当局において最善注意努力払つて、そうして誠意を以て解決するようにと申しておりましたのでございますが、当時、法三条の活動等に対して或いは東京都の当局との間に解釈等齟齬もあつて、思わざる事態をかもしましたことに対しましては誠に遺憾でありまして、この点に対しましては遺憾の意を表しまする次第であります。なお今後の点につきましてはこれは東京都ともよく打合せをいたして、先ず以て当局といたしましては監督いたして、できるだけかような事態が起らないようにいたすことは勿論でありますが、かような事態が起りました後においてはその後事務的にもよく打合せをいたして、法律解釈において東京都との間に齟齬のありました点等もよく参考にいたし、その他の点についてもよく今後事態の起つた際において齟齬を来たさんように打合せいたして参つております。なお又万般の措置につきまして今後とも遺漏なきを期したいと考えておる次第であります。大体今後さような事態に対しましては、再びさようなことのないようにいたし得るように各方面とも今連絡をとつて善処いたしたいと思つております次第であります。
  7. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は只今座り込みの問題について都の当局解釈上の相違があつたというようなことは甚だ驚くべきことであつて、殊にこれが一週間にも亘つて解決できないでおつたというような形になりましたことは誠に遺憾に存じます。大臣は御承知と思いますが、あのときに山下委員より政府委員に対して、国会の裏のあの座り込み政府は引取らせることはできないかという質問に対して、今までいろいろ政府としても努力したけれどもどうもできないということでありました。そこでそれならば自分たちがやろうというのが山下委員の意見でありまして、そこで堂森委員長山下委員、それから各会派の理事がみな揃いまして現場に参つたのであります。私は理事でありませんので席に待つておりました。非常に心配して待つておりました。一時間余の後に委員長初め皆さん帰つて来られまして、患者の諸君は委員会を信頼して無条件で帰る。ただ慎重審議をしてくれということであつた。この行動に対して、つまり委員長ほかの行動に対して、大臣がこれを御覧になりましてどういう工合にお考えになるか。私は東京都庁が権力を以て患者を動かそうというように考えるならばこれは非常に困難である。併しながら山下委員堂森委員長等かたがたが情を尽し理を尽して説きましたならばこれが動かし得たという事実、これに対して私は厚生行政立場におらるる大臣の所見を先ず伺つてみたいと思います。
  8. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) これは申すまでもなく先ほど申上げました通り丁度私の不在中でございましたが、国会の諸先生がたに非常な御迷惑をかけたと思うのでありまするが、ああいうふうな事態に即して諸先生がたの御尽力によつて、あの事態がああいうふうに終局いたしましたことに対しましては私は心からお礼を申上げる次第であります。
  9. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 らい患者座り込み問題等について大臣は遺憾の意を表せられ、なお委員長ほかのかたがた努力に対して感謝せられたものと思います。どうか、かような事態の再び発しないように是非最善の御注意を願つておきたいのであります。  次に私は予防法審議の上で暫く質問をいたしたいと思います。先ず伺いたいのは、私が考えておるらいの問題についての基本的の問題を一つ伺いしたい。らいは人生の悲劇であるし我が民族悲劇でもあります。併し私が今まで聞いておつたところ並びに知る限りにおいては、らいは根絶し得る病である。民族のうちから根絶し得る病である。このくらい恐ろしい病はないが、併し民族が本当に協力してやれば根絶し得る病である。精神病は根絶することは不可能でありましよう。結核も恐らく不可能でありましようが、らい民族のうちよりこれを根絶した例もあるやに聞いております。欧州の諸国においてはその例もある。でありますかららいは根絶し得る最も恐ろしい病であります。而してこれを根絶するについては如何なる手段方法によるか、それは今日では私が医学の方面から伺うところではプロミンによつて早く治療すれば癒る。併しながら何といつて隔離をして置くということが最も大切なことである。つまり人の自由を拘束して、罪を犯したわけでもない、みずから好んでかかつたわけでもない、私自身もいつらいにかかるかわからないのでありますが、かかつた以上伝染の虞れがあればやはり療養所隔離をさせて行かなければならないということを自分自身考えた場合において、この恐ろしい病気、併しながら民族から根絶し得る病気、そうして隔離手段によることが最も重大であり、最も必要なことである。それであるから、政府民族の中からこの病を根絶するために隔離方法をとり、それと同時に治療方法に専念するという方針をとつて来たように伺つておりますが、無論今日もその通りであろうと思います。その点について念のため根本問題でありますからお伺いいたします。
  10. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) この点は屡次政府委員等からもお話をいたしておると思いまするが、らいはいわゆる遺伝にあらずして、伝染病でありまして、これの治療プロミン等もあると思いますが、やはり隔離をして、そうしてこの伝染をできるだけ防ぐということに治療の重点があるということは、これはかねて申上げておる通りでありまして、私もさように考えております。
  11. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は大臣の今のお話、もう少し詳しく承りたいのでありますが、隔離をする、そうして根絶し得る、民族のうちから除き得る病であるという確信を持つておられるかどうか。
  12. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) これは今後らい治療に関しましてはまだ万全でないところもありまするし、なお又隔離等におきましてもまだ社会的ないろいろな関係等において万全でないところもありまするから、なかなか一朝一夕には根絶はできがたいとは思いまするけれども、併しながらさような方向に今後努力をいたすべきであり、若しもさようなことが完全にできまするならば、これは根絶し得るものであろう、さように努力をいたしたいと考えております。
  13. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私はらいはそう十年や二十年で民族のうちから排除することはできないと思いますが、これは国家が本当に責任を以てそうしてこの疾病に対して行くならば根絶し得るものであるという確信の下に進んでおられるものと信ずるのであります。なお次にお伺いしたいのは、らい政策については、これは今までの法律では、甚だその責任者国家政府或いは地方公共団体都府県知事というような、要するに国家地方との間で分担をさせておる点が従来の法規に非常に多い。殊にらいに関するところの従来の法規警察法規から出発したために非常に権力的である、そういうように私は思われます。今までの法規はそうである。今回の法規は余ほどその点を改めておるようであります。余ほど柔らかになつておると思います。併しそこで一つ伺いしたいのは、私はらいに関するところの政策はやはりこれは国家が全責任を負うのだ、そうして国家の機関として或いは国家の出先として地方庁に仕事をやつてもらうのだというくらい国家が進んでやるべきものである、現在でも大いにそういう方向に向いつつあるのだというように私は思うのでありますが、らいに対する政府地方との関係について大臣のお考えをよく伺つておきたいと思います。
  14. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) らい治療等らい政策につきましては、これは勿論国がよく考えていろいろ施策をいたしますることは当然であつて、例えば療養所等につきましても、これは国立を以て大体趣旨といたしております。併し何分にもらい患者というものは局地的にあるにあらずして全国に亘つておるのであります。やはり地方事情等をよく承知いたしておりまする者が、或いは又いろいろな施策をとるにいたしましても、どう言いまするか、地方実情に応じてよく行届いた措置がとれまする者が国とよく連絡をとり、或る場合においては国の代りとしていろいろな施策ずるということが必要でありまするから、これは一概にこれは国がやるのだ、これは一概に都道府県だけがやるのだというわけにも参りません。その間は実情に応じておのおのその機能を発揮をいたしてやるべきだと、こう考えております。
  15. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私の質問の仕方が悪かつたと思うのでありますが、らい政策根幹政府で担当するのだ、こういうように私は考えるのでありますが、その点は如何でありますか。
  16. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 根幹という言葉が法律的にどう解釈されるか存じませんけれども、らい政策に関しましては国が相当重点的に考えておるのであります。併しながらのちほど恐らく問題になると思いますが、例えば生活保護等の問題につきましては、現在生活保護法都道府県と国がおのおのその分に応じてやつておるのでありますから、これはやはりその実情に即して国或いは都道府県らい患者に対してとる施策はおのおのの種類、事情に応じて分野があるのでありますから、国が相当このらい対策に対しては重点的に考え施策をとるということは申上げられるのでありますけれども、これは物によつていろいろ違うのであります。検診等の問題、或いは生活保護の問題につきましては一概に同一の対策をとつておるということは言えませんが、らい政策として国がその施策について重点的にその施策の問題を見ておるということは言い得ると思います。
  17. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私の質問に対する答弁として余りに警戒し過ぎておるような感じがするのでありますが、私はそういう意味でなしに、らいに対する政策というものは国家中心であつて、そうして府県等仕事は補助的である、こう私は考える。そうなければならんのであると思うのであります。決してただ生活保護法の問題その他について私がこれを前提として大臣に伺うというような意味でなく、私は大きい見地から、これは先ほど申上げたように、らい患者というものは実に気の毒なものである。そうしてこれは民族一つ悲劇である。実に悲劇です。こんな私は情けないことはないと思う。そういう恐ろしい、而も国家的に考えなければならん問題であるが故に、どこまでも国が中心であつて地方が補助的であるとして進んでほしいと思います。  それから次にお伺いしたいのは、らい患者、これは隔離しなければならん。而も長い間隔離しなければならん。誠にその事情は如何にも気の毒である。それであの療養生活をしておつて何が一番希望であるか。患者に対して明るさを与え、希望を与える、これが一番私は大切なことであると思う。何が希望であり、何が明るさであるか、それは言うまでもなく治療によつて癒るということであろうと思うのであります。そこで私は今日までらい治療について、精神病については治療研究所があるはずでありますが、らいについては一つ研究所もない。承るところによれば、らい治療研究所を建てようというお考えは非常にあるように伺つておりますが、これに対して今までどういうような考えで進んでおられるのか、それから従来どういうようなことに経過が行つておるのか、これらの見通しはどういうような見通しで進んでおられるのか、この点を一つ伺い申上げたい。
  18. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) らい病は非常に古い病気であつて、而もこれに対しまする治療はいまだにその特効薬等につきましてもプロミン等ができましたけれども、まだ治療薬或いは治療方法、これらに関しましてはやはり万全でありません。万全でないというよりは、むしろ非常に遅れておるのではないかと思つております。従つて第一条を中心といたしまする問題に対しましては、我々といたしましてもかねて何とからい治療に対して更に研究をいたし得るように、そうして一日も早くらい治療に対して的確な薬でありますとか、治療方法が確立いたし得ますることを、これは非常に熱意を持つてつて参つたのであります。従来悲しいかないろいろな点においてそれが実現いたしかねております。予算上におきましても、らい治療に関する予算の計上を努力いたして参つたのでありますが、なお又このらいのいろいろな基礎的研究にいたしましてもまだ万全でありません。この病源の問題にいたしましても、或いは動物検査問題等につきましてもなかなかできないので、従つてらい治療に対する的確な薬とか治療方法が成り立たず、未だ研究等においても途中でありますから、研究に対しては今後とも政府としては最善努力を払いたいと思つておるのであります。予算上は、これは何と申しましても予算関係のあることでありますので、年々この問題に対しては努力いたして参つて昭和二十八年度の予算編成の際にも何とかしてこの研究所を置いて、只今仰せの非常に気の毒なるらい患者に対して、又国といたしてもらいの撲滅に対して治療の面から一歩前進をしたい。研究所設立等に対しても、予算編成の途上においても大蔵省とも折衝をいたしたのでありまするが、いろいろ財政等都合もありまして実現しなかつたのであります。ただ初めて特別研究費として一千万円を昭和二十八年度の予算に計上いたしておりますが、勿論不十分でありまするので、この点につきましては今後とも最善努力払つてこの治療の完璧を期したいと考えております。
  19. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 この研究所につきまして大臣が前々よりその考えを持つて大蔵省と折衝しており、なお本年度は多少の研究費もこれを獲得して、将来においては最善努力払つてこれが実現を期したい、誠にそうあるべきであると存じます。らいの問題が今日のような実情にありますことは、私は厚生省仕事の中で思想的にも社会的にも、人道的にも、一番むずかしい問題だと思いますが、この面は非常に金の額は少くて、而もその効果は非常に大きいのです。現在らい患者の数はそう非常にたくさんの数ではない。而もこれは適当な方法をとれば、三十年、五十年後にはこれを根絶し得るというような希望も持ち得る。どうか政府はこれらについては非常な決心を以て治療面希望を与える。明るくしてやる。そうして不平を余り言えないようにしてやるというように一つつてつて頂きたいと思います。研究所についてはそれだけにいたします。  その次には、私はこのらい患者自分病気が癒るということと同じように、自分家族はどうなつているか、自分が或る場合にはこつそり自分の郷里を捨てて療養所に来て診察をしてもらつてそのまま帰らないでおる。而も自分は一家を支えるべき立場にある、働き手であるというような場合が少くないように聞いております。こういうような人が、自分家族生活はどうなつているか、これが自分病気のこと、若しくはそれ以上にやはり重大なる関心事であるということは、これはもう大臣もよく御承知通りであります。然るにこの生活保護という問題について今どんな実情にあるかということをこの間厚生省当局について調べて見ますと、誠に驚くべき数字が出ました。併しこの数字はいろいろな条件がありますから、その数字通りとは決して私は思いませんが、併しながらとにかく患者にして、自分家族生活保護を受けておるということを承知しておるものは五百人に足らない、四百八十二とかいう数字です。これはまあ患者家庭との連絡が十分でないということがあるので、それが五百ということは少い、もつと多いと思います。それから厚生省が推定をして出しました数字は、これは少しどうも大き過ぎると思いますが、約一万五百の入所患者、そのうちで家庭を持ち、世話をしなければならんような立場にある人が約五千人、そのうち本当に生活扶助等を受けなければならん生活困窮者というものは三千余人と見ておる。まあこの三千余人というのは推定ですから、或いはそれほどはないかも知れませんが、とにかく私は今日の生活援護というものがらい患者について決して円滑に行つておるとは思いません。この点について大臣はどういう工合にお考えになり、これから又どういう工合になさろうとするのか、その点を一つ伺いをして見たいと思います。
  20. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) このらい患者家庭を離れて療養所に入所いたして療養に専念をいたしておる、その留守家族生活に困難をいたしておる際に対しましては、私はこれはできるだけ考えてあげなくちやいかんということにつきましては全く同感であります。ただ生活困難者に対して現実にその生活保護ができておるか、できておらんかという現実の問題につきましては、これは過日来恐らく政府委員等から数字等基礎にしてお答えを申上げたと考えまするが、只今仰せ通り五百或いはそれに近い数字として一応公式には出ておりますけれども、これはらい患者或いはその家族の秘密の保持という見地から、その数の程度ではなかろうということは、廣瀬先生御指摘の通りであります。ただその実際の運用の点において、或いは適当でない或いは又万全でない点も、これはあろうと私は考えまするので、今後はこれらの留守家族の、殊にこの生活の困難をしておられる家庭に対して、できるだけいわゆる社会的のいろいろなひがみを感じないで、而も実際にその生活保護のあの原則に従つて運用面等において万全の生活ができまするように、これは最善努力を払いたいと考えておる次第であります。
  21. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 このらい患者家族生活保護する問題につきまして、今大臣生活保護法によることというお考えのようでありますが、この点について私は特にお考えを願いたい。古い法律癩予防法、この規定を見ますと、この規定においてはらい患者生活問題については特に第六条において「生活費ヲ補給スベシ」という文字があつたのでありまして、道府県が先ず予算を組んで、生活費を補給する、この当時においても救護法というものがありました。今日の生活保護法に当るものでありますが、救護法があつたが、救護法によらずして、らい患者については特別に第六条を以て生活保護をする、そうしてこれは国家がその尻を見てやるという態勢になつておりました。即ちらい患者生活困難なるものについては、一般の生活保護法によらずして、つまり当時の救護法によらずして、そうして癩予防法によつたということに私は記憶をいたしておるのでありますが、この問題は一つの主義上の問題であつて、これは厚生省仕事において大いにいつもそういう問題が起るのであります。生活保護法というものは、これは一般的な生活保護法、併しながらこれに対して、生活保護法だけでなしに、特別の立法を以て保護すべしという問題が起ります。例えば今国会にもかかつておりましよう、遺家族の援護の問題、或いは未亡人の福祉のために貸付金をする問題、或いは又そのほかにもいろいろなやはりそういう種類の特殊の問題があると思う。私はらい患者について一般の生活保護法でいいのだという観念が、やはりどうしても私はよく考えて見ると甚だ不満足であります。らい患者は無論贅沢をする必要はありません。けれども今日の生活保護法というものは、実際運用せられておる面のことを聞きますと、なかなか峻厳であつてむずかしい。それは又そうでしよう。徒らに惰民を作つてはならんというのは当然であります。そうなければならんと思いますが、併しらい患者は実に気の毒であります。つまりあの悲劇を、自分は身を引いて世の中に拡げないようにする、そのために精神的には少しも異常のない立派な人間でも随分入つておられます。要するに民族全体の純潔を期するための尊い犠牲というものがあの収容所に立籠つているということを私は見るのであります。私はこの犠牲に対して、その家族が困るならば、ぎりぎりの生活保護法、一般的の生活保護法、それでいいのだという考え方にどうしても賛成いたしかねる。らい患者については秘密の問題がありましよう。ありましようが、私はやはり厚生大臣が、即ち国家が、私から言えば国家が、厚生大臣がやはりらい患者の問題については特別に考えて、そうしてそれは地方庁において現実に取扱いをいたすのもよろしいけれども、一般生活保護法以外に、適当な方法をやはり考えられて、秘密もでき得る限り保持できるように組織、制度を考えて、そうしてらい患者に関する特別援護の途を開くということは、これは非常に私はらい行政を行う上においては非常に大切なことであると思う。徒らに秘密秘密と言つても、それだけで秘密のためにやるべきことをやらないで置くということには私はどうしても賛成できない、らい患者のために、もう現に過去の法律においてはらい患者のために「生活費ヲ補給スベシ」、そうしてその補給した生活国家があとで尻を拭つてやるということが前の制度には書いてある。今度も生活保護法だけによるというのでなしに、もつと生活保護法から離れてらい患者については特別に見てやる、贅沢をさせるという意味ではありません。けれどもやはりらい患者の特殊性というものをやはり見て、それはその点が秘密にぶつかるでしよう、ぶつかるでしようけれども、私は秘密を守るためにやるべきことをやらないのだ、ということの考え方は誤りであると思うのであります。この新らしい法律においてもらいに関する正当な知識を普及せしめるということがこの条文に書いてあります。らいに関する正しい知識の普及を図る、その正しい知識とは何ぞや、秘密にし、秘密にして行くことでは私はないと思う。らいというものは遺伝でもない、血統によるものではないのだ、伝染なのだ。だからそんなにむちやくちやに秘密にする必要はないのだというところに行かなければ、本当のらいの政治行政というものはできないと思う。でありますから、私はらいの援護というものは国民全体に対する尊い犠牲の現われであるということと、らい行政の、らいに関する行政のために家族の援護に徹底するということのために、私は特別の援護の制度及び方法を設けてもらいたい、こういう非常な切な希望を持つておるのであります。この点について大臣はどういう工合にお考えでしようか、その点をお伺いしたい。
  22. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 先ほど来縷々申上げております通りらい患者を出しております家族家庭に対してできるだけのことを、この困窮家庭に対して国が考えますることに対しまする基本的の考え方は継々申上げております通りで、決してその点について先生の考えとは違つておらんのであります。ただ只今質問がございましたが、私は答弁が間違いますると如何かと考えまするので、お許しを得て私よりちよつと申上げたいところがありまするのは、先生の仰せられるのは、生活保護法、要するに困窮家庭に対してらい患者の特殊性を見て、その困窮家庭に対する保護に万全を期するために、いわゆる困窮家庭に対する生活保護のほかに特別のらい対策として、らい患者を含めたその上に何がしかのいわゆる援護をすべしというお話でありますか、或いは現在の生活保護法に代つてそれの運用等の完全を期するために内容は、内容といいまするとその絶対値はおなじであるが、それを別の法律でやつたほうがいいというお話でありますか。その上に更になにがしかの、生活困窮者でない者については、らい対策について何がしかをやらなければならんというお話でありますか、一応承わつた上でお答えをいたしたい。
  23. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私の申上げ方も足らなかつたと思いますが、私はらい患者だからといつて決して贅沢をさせる必要はない。ただ今日の生活保護法はいけない。生活保護法では困る、生活保護法に準じて私はよろしいと思います。但しやはりらい患者には特殊性がありますから、生活保護法によつた制度であつても、制度としては別にしてもらいたい。生活保護法でなしに別にやつてらいたい。そうしてその程度についてはらい患者の特殊性というものを考慮して、無論そう手厚くしろということではございません。併しながら生活保護法通りでいいのだということも私は申しませんが、そこは厚生大臣が常識的に、そうしてらい患者実情に応じ適当な規定を設けられるというような考え方で、基本としては生活保護法と大体同じものである。そうしてそれについて、ただらいの特殊性というものがいろいろあろうと思うから、それに対してはやはり特別に見てやるということがあるのではないか、そういうものは特に見てもいいじやないか。だから大体は生活保護法によるものと同じものである。併しながら制度としては変えて、金額的内容等につきましてはできる限りゆとりを見てやる、こういう態勢が私はほしいのであります。
  24. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 委員長にお願いをいたしますが、この問題は答弁の如何によりましてはなかなか重大な内容を持つておりまするので、質問者に対して私が答弁を誤りませんために、質問者に対していろいろお尋ねすることをお許し願います。  私が更に御答弁を申上げますまでに私の答弁の的確を期しまするために更にお尋ねをいたしたいのでありますが、只今仰せの御質問の趣旨はいろいろ言葉のあやはございまするが、生活保護、これのいわゆる一応完全を期せられた生活保護のほかに何がしかの別途のらい対策を上置きにおくのじやないか、要するに生活保護の完全を期するための方法として言つておるんだというお話でございますが、さように了承いたします。その際に現在の生活保護法にあらずして特別の立法と言いまするか、別途の法律をいたしまするについて、現在の生活保護法に代つてさようにいたしまする際の理由及び利点を一応承わりたいと思います。
  25. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は先ほど申上げたように実際にらい患者ばかりではない、ほかのいろいろなものにもやつぱり生活援護の遂については生活保護法だけでなしに、ほかの制度をとるべきものもあろうと私は思うのです。らい患者についてもやはりらい患者の特殊性を認めまして、一般の生活保護以外に生活保護を内容とする制度を設けてもらいたい、それは先ほども申上げましたように救護法というものがあつたときにこの癩予防法においてやはり生活保護をやつております。それと同じような意味において、生活保護法はあるが、そのほかにらいについてはらい予防法の上に基本をおきまして生活の援護をやるという建前をとつてらいたい。そしてその問題については厚生大臣が、政府がやはり全責任をとつて全部国費を以てこれを処理して行く。その処理の仕方については無論地方庁を使つてもよろしい。金額内容等については大体において生活保護法の基準によつてよろしい、特に上置きをする必要もないが、併しながら、らい患者の特殊性があつたら、それを見てやつてくれ、こういう温かみ、ゆとりをそこにもつてらいたい、こういう意味であります。
  26. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 只今承わるところによりますると、生活保護法の上置きをするわけじやない。従つて生活保護法の目的といたしまするところに従つてその万全を期し得ますれば大体事足れりというふうに解釈いたしましたが、つきましては今後先ほど申しました通りらい患者に対しましては、現在或いは福祉事務所等について生活保護法運用いたしておりまするが、らい患者のいろいろ困難な家庭との関係等を勘案いたしまして、政府は今後らい患者家族に対する生活保護法の適用に関しまする限りは、その運用上いわゆる一般の生活保護法によらざる方法によつて、更に運用の面を全面的に善処いたし、できるだけの努力をいたして、只今仰せ通りの目的を達成することに対して最善努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  27. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 大臣甚だ失礼いたしましたが、私今のお話もう一遍伺いたい。
  28. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 只今承わるところによりますると、例えば生活保護法に関しては都道府県が二割を負担いたしますについて、地方財政等見地から或いは出し渋つたりすることもあるであろう。或いは又秘密の保持等についてはいろいろあろうが、それは今更余り秘密のことは言わないという仰せでありましたが、我々といたしましてはどのような御意見がありましても、やはりらい患者につきましては秘密の保持に対しては最善努力を払いたいと思つて、今後とも努力をいたすつもりであります。政府といたしましては、要するにらい患者をいわゆる生活保護の、ミーンズ・テスト等の関係、或いはそれに対して生活保護をいたしまする際の手続き、或いは又生活保護に対しているくな点から、それがいたすべき家庭にも及ばんというふうなことのないように、なお又その衝に当りまするものが、ややもすれば福祉事務所の管理等が普通の場合と同じようなふうにらい患者の特殊性或いはらい患者を出しておりまする家族のいろいろな社会的の関係等も考慮されずして、いろいろな点においていわゆるらい患者に対し或いはらい家庭に対する本当の思いやりということを頭におかずしてやりまするというようなことについて、従来いろいろ遺憾な点がございましたから、さような点につきましては最善方法考えて或いはミーンズ・テストの衝に当りまする者、或いは又その家庭に接触いたし、或いはその生活保護の衝に当りまする者等については、一般の例にならわずして最善の考慮を払つてつて行きたい。そういたしますれば結局只今質問の趣旨を貫徹したいという目的、又その目標は先生と全く同一でありまするから、今後はその運用の問題に相成ると思いまするので、その運用に関しましては最善努力を払いたい、かように申上げた次第でございます。
  29. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私はもう一つ伺いしますが、そういたしますと、大臣の御意見は生活保護法にどこまでもよつて行くのだ、こういうことでありましようか。
  30. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 一応ものの考え方というものは、ときによつて変転もいたしまするし又社会情勢等も勘案いたしまして、いろいろ変つて参りましようが、只今といたしましては、やはり未亡人の家庭にいたしましても或いは留守家族家庭にいたしましても、いわゆる原因を問わずして無差別平等に生活困窮者に対して生活保護法によつて国が対処する方法をとつておるのでございます。いろいろ具体的に又個別に考えするといろいろ困難な事情があつて、気持の上においては何とかしたい、あれもしたいということばかりでありまするけれども、やはりこれは只今の建前といたしましては、生活保護法を以てさような困難ならい患者、及びらい患者家庭に対して対処して、ただその運用においては、従来遺憾のありましたことに対しましては、最善努力払つて改善をいたしたい、かような気持であります。
  31. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 お気持はよくわかります。又最善努力を払われることは至極結構でありますが、私は援護の体系としてやはり生活保護法によらないのだ。らい患者については特別の援護制度をとるのだということが、やはりらい国家が主として責任を持つてやるのだという点に力を入れるがために、私は生活保鑑賞法のように国が八割、地方が二割というようなことでなしに、国が責任を持つてやるのだという態勢でやつてらいたい。そうしてそのためにはやはりらいは特殊なものであります。全く特別だと思います。でありますから特別な援護の制度を考えてもらいたい。併しながらこの問題は非常に重大な問題でありますし、一朝一夕に今すぐに援助してくれというのは無理かと思います。ただ非常に心持としてとにかく今までの生活保護法運用について足らないところについては、これを補つて最善努力をされることは誠に結構でありますが、私の希望生活保護法によらざる制度につき御研究をなさる考えはないか、この点を伺つて見たいと思います。
  32. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) この点は実は我々はらい患者及びその家族の社会的な環境から申しましても、又又いろいろな精神的物質的の上から申しましても、我々といたしましては今後とも最善努力をいたしますることは申すまでもないことであります。ただこれらの面について、そこで私は先ほど重ねて御質問申上げたのはその点でありまするが、要するに困窮者に対する対策といたしましては、これは他にものの見方、考え方によつて同様の、或いはそれ以上の困窮者もあるのでありまするから、やはり現在生活保護法というものが国会の立法によつてできておりまして、その法体系の下に、その考え方の下にいわゆる社会の困窮者に対して政府が行政をいたしておりまする立場といたしましては、今後特別立法をいたすについては、気分的に私はさようにも考えますけれども、只今それに対してどうするということは、他のいろいろな関係もございまして、明らかにここで、この席で明言いたしますることはできないと考えまするが、今後ともこれは単にらい患者での問題だけではありませんので、いろいろの問題がありますから、それらのいわゆる厚生行政に関しましては、同様他の面とも睨み合わせまして善処いたし、又研究すべきものは研究いたしたいと考えております。
  33. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 お心持はよくわかりましたが、ただ私は附加えて申上げておきますが、らい患者は全く違うのだ。即ち先ほど来申上げておるように、らいという病は最も恐ろしい病であるが、併しながら隔離方法によつて民族から根絶し得るものである。現に日本のらい患者の数がだんだんに数は減りつつあるという実情もあるのであります。こういう状況にあるらい患者のことでありますから、これを特殊に見ても、私はほかのものと非常に違う。だからどうしても私は特殊に見て、特別に見て、そうして、本当に国家が世話をやくという親切で、是非つて頂きたいと思うのであります。まあこの問題はこれで打切りまして、次にお伺い申上げたいのは、療養所に参りまして、所長初め、職員、お医者さん、看護婦さん、そのほか雑務に当つておるかたがた、まあ昔から実にその犠牲的な精神でやつておられる。その犠牲的精神でやつてつたことが、却つて害になつたというようなことをみずから言つておられた。この間全生園の職員の人も、却つてそういうことではいけないのである、言うべきことはやらなければいけなかつたというような話もありましたけれども、実に気の毒に思うのであります。それは結核療養所における患者に対する医師の数、癩療養所における患者と医師の数、それから癩療養所における患者に対する看護婦の数と結核療養所の数とを見ると、実に気の毒に負担が重いのであります。誠にその数の少ないこと、そしてまあ待遇もよくない。而も誠に困難な病気をして来ておる。この状況は大臣も勿論よく御承知のことと思う。これらについてまあ毎年大蔵省等には折衝をしておられるのでありましようが、実際私はらい患者の世話をする人がだんだんなくなつちまいやしないかというようなことを内心憂える。職員の増員の問題、それから待遇の問題、これらにつきまして、厚生省はどういう具合に考えておられるか、その点を一つ伺いしたい。
  34. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 実はその問題は、先ほど他の問題の節に、閣僚の諸公ともいろいろ話をしているときに、私はその雑談の中に出したくらいでありまして、癩療養所における職員の諸君が、たださえその接触等を嫌うらい患者に対して、昼夜を分たず療養に従事いたしておるのであります。これらの職員に対しては、精神的にも物質的にも報いなくちやいかんということを雑談の中に話したくらいであります。今後ともこれに対しては、そういう職員の諸君が、これは実際精神的にもそういうふうな気持でないとなかなかできない職務でありますから、我々も感謝に堪えない次第であります。ただ只今のところは、一般の職員に対して二号乃至六号の調整額を加えておるのであります。これで以て一応他の一般の職員とは……、この職務に報いておるわけでありますけれども、今後ともこれに対しましては、できる範囲のことは考えてみたいと思つております。職員の諸君が、いろいろ今回のこういうふうの問題に対しても、いろいろ心労いたしておるのであります。できる範囲で報いたいと考えております。
  35. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 なおこの職員の問題と関連して、患者の作業の問題は、これは又実に困難な問題で、厚生省当局も非常に困つておられると思うのですが、この作業をどの程度に認めたらいいか、又これに対する材料はどうしたらいいか、いろいろな問題があろうと思いますが、これらの問題につきましても、是非患者が納得し、心持よく働けるようなことについて、格段の一つ注意をお願いいたしたいと思います。なおそのほかに、設備の改善その他の問題も非常にあるわけでありますが、これらの問題についても、随分立派になつた点もありますけれども、又非常に釣合の取れないほど、古いぼろ家もあるという実情であります。これらについても、一つ是非これららい患者の自由の拘束、隔離という、これらに対する政府の温かい気持が現われるように、患者の納得を得られるように、最善努力をお願いいたしまして、私は大臣に対する質問を終ります。
  36. 山下義信

    山下義信君 今廣瀬委員らいろいろ御質疑があつたのでありますが、御質疑中のはつきりいたしませんところを、更に重ねて明白にお願いしたいと思うのでありますが、その他私も一、二の点を伺いたいと思うのです。先ず本日のこの委員会で、政府即ち厚生大臣と、らい対策についての根本的な諸問題を質疑する機会を得ましたのは、非常に仕合せであつたと思う。若し今日の機会がなくして、政府当局の根本的態度を明確にすることができなかつたらば、私どもはこの法案審議そのものよりは、その他の事態に対して非常に憂慮いたしておるものでありますが、たまたま本日のこの委員会の機会がありまして、非常に結構に思うのでありまする折角の機会、折角の大臣出席の下に直接に話合うのでありますから、率直明快に私は事態を明らかにし、御方針をはつきりさせておいて頂きたいと思うのであります。見解の相違は私は止むを得んと思う。政府当局の持つておる見解と、若し私どもの持つておる見解の相違するところがあるとするならば、これは止むを得んのでありまして、必ずしも不得要領のうちに同調したかのごとき、そういつたような私は御答弁も、又私の質問も、そういうぼやけたようなことで行きますことは、却つていけないと思うのでありまして、その意味で私は明快な御答弁を願つておきたいと思う。  それで長い前置きをして甚だ恐縮するのでありますが、私はこのらい予防法案の御提出は非常にこれは重大であると考えるのであります。政府はこの法案を重大に考え、又このらい対策を非常に重大に考えているかどうかということなんです。で、それに私は一抹の疑問を持つのです。率直に申上げたらば、厚生委員会に提案せられました今次の法案の中でいろいろ改正案等がある。例えば国民保険の貸付関係の一部改正があつて、これは前からおきまりのことなんですが、我々が議論するということになれば、今次の予算の四十一億の補助金等に関連すれば、厖大な実は国の予算関係のある法律案なんです。そのことが、国保の補助法案ではないけれども関連がある。それすらも当委員会は簡単に審議を終了した。予算の点から言いますると、らい予防対策に使つておる予算は、それは保険関係に使つている予算から見れば極めて少額なんです。その金額から言えば少額なこの法案に対して、委員会が非常にこれを重大視しておりますることは、その理由は言うまでもないのです。私はここにそのじよ説は用いません。然るに私どもが見るところは、この法案らい対策、引つ括めまして、これらの問題に対する政府当局の態度は、さほど重大に考えていないというような印象を受けるのであります。それで私はその点非常に遺憾とするのであります。言葉が過ぎるかわからんけれども、どうかすると軽く取扱つているというような印象を受けるのであります。先年貞明皇后崩御に際して、この救らい事業が記念事業とされて、全国からこの事業に対する寄附金を集められ、表面は篤志家の寄附のようであるけれども、実態は厚生省中心をなして、全国から寄附金を集めて、この問題に対する国民的関心を集められたのである。私は広島県という田舎でありまするが、私の広島県の佐伯郡二十日市という町の高等学校の十四、五才の学生が十数名集まりまして、この政府の呼びかけたる救らい事業に対する寄附金のために、その篤志運動をするというので、広島県民に呼びかけ、十数名のいたいけな少年、学生が東京にまで出向きまして、この運動に参加いたしたる事例もあるのであります。然るに今回の、政府が本法案を提出せられるに当つてとられましたる態度、らい対策に対する根本的なお考え、先般来から患者のいろいろなる陳情運動に対しまする政府当局のとられた態度、その後の御様子、いろいろ承わつて見ておりまするというと、さほど重大にお考えになつていないのではないかというような気持がするのでありますが、こういうことを改めて伺うのは、私自身にとりましても甚だ心外でございますが、政府はごの法案を通じまして、らい対策につきまして如何に重大にお考えになつておられるか、という御所存のほどを先ず承わりたいと思うのであります。
  37. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 政府はこの問題に対しましては、慎重にいろいろなことを考えて……、重大と申しまするのはどういう意味でございまするか、この少しでも実情に即して、そして改正案もできるだけ一歩……、なかなか急には参りませんでしようけれども、漸次この可能な範囲において法律を改正をいたして、そしてらい患者の要望いたして参つた点についてもできるだけの範囲でその要望に応えたいと思つて、今回修正案においても御承知通りの修正をいたして来ているのであります。その間、当初問題になつておりました問題例えば在所義務の問題であるとか、その他の、当初主として問題になつておりました点については、大体衆議院においても、その点の論議の末、一応衆議院のほうで通りましたような次第でありまして、只今これは政府委員の報告でありますから、報告が或いは詳細を尽していないために私が誤解いたしておりますならば取消しますが、そういう問題については、大体いろいろな点について衆参両院において問題にはなるけれども、一応の問題は、例えば生活保護の問題であるとか、或いは研究所問題等について、相当問題があるということの報告を聞いております。その他の点については、従来法律に対してできる範囲に、これはらい患者の人権の擁護、或いはらい治療という点もございますけれども、やはり対公衆との、いわゆるこの問題もありまするから、その限度において、できるだけらい患者の自由を束縛しないような、最低といいますか、最高といいますか、そこまでは改正をいたして、併しそれで以て従来の法律に比しては相当の……、これは又見解の相違になるかも知れませんが、修正もいたして来ておるのでありまして、只今問題になつておりまする二、三の問題ついては、いろいろ我々も考えましたが、この点はいろいろなその他とも関連をいたして、先ほど申しましたように、これは御質問の要旨から少し離れた問題でありますが、関連しておりまするからお許しを得て申上げるのでありまするが、そういう点で以てらい患者のほうにも応えて、そうしてなお今後ともらい対策については、政府は善処をいたして参りたいという態度でありまして、この軽視するとか何とかというふうなことでなくして、やはり真面目に我々といたしましても、慎重に真面目に考え参つている次第でありまして、その点御了承を願いたいと思つております。
  38. 山下義信

    山下義信君 私は平易且つ素朴に伺いますが、らい患者はですね、一体誰に縋ればいいんでしようか。らいに感染されたときですね。らい患者は一体誰を力にして、誰に縋ればいいんでしようか。これだけ一つ御説明を願いたい。
  39. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) それはまあどうお答えいたしていいかわかりませんが、国といたしましては、それらのらい患者が収容された際において、その人に対してできるだけ治療の万全を期しますると共に、その家族に対して、只今法の許す範囲等において、或いは現在万全でない法の運用の面において、できるだけの改善をいたして、そしてそれらの人たちに対して、法の許す範囲、又運用の許す範囲において、その人たちの生活保護等を考えて行くということに相成ると思うのであります。
  40. 山下義信

    山下義信君 私はですね、私は意見を申し述べません。さつき大分御討論に亘つたようでありますが、併し、それも有益なことと拝聴いたしましたが、意見は申述べませんが、私は、らい患者は、らいにかかりましたものは、具体的に申しますれば、厚生省を縋るよりほかには日本で縋るところはないと思うのです。もう親も友人も近所の人もありません。厚生省を縋るよりほかにない。自分たちを見てくれるのはもう厚生省よりほかにないと私は思うのです。厚生省からつき離されたならば、もう助かる途はない。私はそう思う。言い換えると、極く素朴な言い方をするというと、不幸な患者たちの槌るところは、もう目当ては厚生大臣です。彼たちがもう命の綱として縋るのは、政府厚生大臣よりほかにはないと、私はそう思うのです。先般私どもの一部の議員が、即ち小委員会委員一行が多摩全生園を訪れて、患者諸君と会いましたときに、廣瀬委員長を紹介いたしまして、元厚生大臣廣瀬委員ということを堂森委員長が紹介すると、万雷のごとき信頼の、而して感謝の拍手であります。これは廣瀬委員というお人柄或いは御人格に対してでもありますが、元厚生大臣に対しまする患者の信頼の現われであると私は思つたのであります。そのことは同様に現厚生大臣、私は厚生大臣に対しましても、患者一同非常に私は信頼してお縋りしておると思うのです。でありますから、若し現厚生大臣のあなたが仮においでになりまするような場合がありましても、恐らく熱狂的に、縋り付かんばかりの拍手でお迎えするでしよう、それほど私は縋つておると思うのであります。  そこで私は伺いたいと思うのでありますが、らい対策根幹は国か地方かというような、先ほど廣瀬委員の御質問に、重点がどうとかあるとかでなしに、この法律に流るる生命は国が面倒をみてやろうという精神が私はこの法律案に一貫しておるのだと思う。又そう  いうあり方になりたい。従いまして私どもはそういうことを前提にして、この法案をいじくるについて、そういうことを生活保護法の上などであなたがたと対立しよう、それに同調させようという前提や伏線で私は言うておるのじやない。それは別にしましよう。そういうことは別にいたしまして、関係なしとして、国が責任を持つてらい患者を癒してやるのだ、又この病気の根絶を国が力瘤を入れてやつてやるのだという、そのらい対策根幹に対する政府の所信というものを重ねて本員からも承わつておきたいと思う。
  41. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) らい対策に関しましては、先ほど来申上げておりまする通り、国として、今後できるだけ国が中心考えて行きたいと考えております。
  42. 山下義信

    山下義信君 次に伺いたいと思いますことは、この法案の御提出に際しましては、できるだけ関係者の意向を酌み入れて、関係者の意見も十分に事前に聞いて練つてみたいという御意向のように承わつておるのであります。例一えば衆議院の予算委員会におきまして、武藤運十郎氏の質問に対しまして、大臣は、患者たちの意見も十分に聞いて善処したいという御答弁があつたように記憶いたしております。果してさようであるといたしまするならば、政府は本案を提出せられるに当りまして、どれだけ患者の意見をとり入れられ、先ほど申上げましたように、親のごとく頼んでおりまする厚生大臣が、どれだけ患者の意見に耳を傾けられましたかという点につきまして伺いたいと思うのでございます。
  43. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 今回の修正の箇所等につきましては、恐らく政府委員から法文等の関連を以て詳細に御説明をいたしたいと思いますから、その煩を避けたいと思いまするが、私が武藤委員に申上げましたのは、らい患者等の希望等につきましては、陳情書もたびたび参つておりまするし、なお又国会の諸先生がたを通じてもたびたび聞いておりまするので、その際にこの国会に或いは来るであろう患者の諸君から初めて承知をいたすということでもないので、それらの点につきましては従来慎重に考慮をいたして、改正すべき点は改正いたす。併し政府として最後にどうしてもこれは公衆衛生上、或いはらい治療の上から、これはできないという点はこれは最低限譲れませんのでありますが、併しそれらの問題となつております点等につきましては、いろいろな機会、いろいろな法令等によつて承知をいたしておりまするということを申上げたのであります。
  44. 山下義信

    山下義信君 私が伺いましたのは、患者の意見を大臣がどれだけお容れになりましたか、又患者の意見をお聞きになつたことがありますか、或いは又今後とも意見を聞いてみてやろうというお考えがありますか。つまり患者の意見を、親として厚生大臣がどれだけ耳をお傾けになつたかというそのあなたの御熱意と言いますか、そのお心持を承わりたいと思うのであります。
  45. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) その点につきましては、例えばどの点を聞いたかということにつきましては、先ほど申した通り、詳細に政府委員から申上げておりますから、重ねて申上げないと思つたのでありまして、例えば監禁が、従来所長の職権の行使の中に監禁という制度がございました。三十日或いは場合によつては二カ月まで延ばし得る権限を所長は持つておりましたが、かようなことはいわゆる、そのらい患者のためにもこれは修正すべきものであろう、なお又先ほど来秘密の保持の問題がありましたが、何と言つても、これはやはり又患者にとりましては秘密の保持ということは重大なことでございまするので、例えば検診をいたすにいたしましても、入所の勧告をいたすにいたしましても、或いは最後の入所せしめる際の手続等につきましても、できるだけこれは従来の方法によらずして、そうしてやりたい。その他、これは多少やつておりましたが、なお不十分でありましたので、厚生面につきましても、例えば、細かい話はよしまするが、厚生面に関する条文を加えまして、例えば小学校に行く児童に対する措置とか、或いはその他の問題についてもできる範囲においてやりたい。それから、例えば強制入所の問題につきましても、従来は当初から強制権を発動いたしましたが、これは先ず勧奨し、更に又期限をつけて入所するようにと言つて、最後にいわゆる強制権を発動するというような、緩和をいたすとか、在所の義務につきましても或いはその他の所長のいわゆる職権行使の点につきましても、そういう関係について従来問題になつておりましたので、なお又国会等におきましてもいろいろ御意見もありまするから、そういう点もよく聞きまして、なお各党の意見等も政調会等において研究いたしました点を参考にいたし、或いは又その他によつて国会の意思を一応尊重いたして参りましたような次第であります。  なおまだ不十分な点がございますれば、今後又改正すべき点は改正いたしたいと考えている次第であります。
  46. 山下義信

    山下義信君 率直まじめな御答弁を頂きまして多とするのでありますが、私は患者がいろいろ大臣にお目にかかつて衷心いろいろな問題につきまして陳情いたしたいというような願いをいたしますとしますならば、大臣はお会い下すつて患者の言い分を御聴取下さるでありましようか、如何でございましようか。
  47. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) この点につきましては、実は前回の際にこの私が参りませんので、たびたび、と申すと語弊がありますが、局長或いはその他を療養所に派遣いたしまして、問題はらい患者の要望いたしておる点を私が承知をいたして、それを頭に置いていろいろ改正等も考えるということでございまするから、らい患者の要望いたしておる点につきましては、先ほど申上げました通りいろいろな機会、いろいろな方法或いは私に代つて省の幹部が参りまして、或いはいろいろな法律上の問題とか事実上の問題につきましては、やはり私よりも政府委員のほうがよく従来の慣例、従来のいきさつ或いは又医学的或いはその他の法律的の知識も、実際の知識もあることでありますので、それらをして或いは面会せしめ、或いはそれらをして訪問せしめて、そしてそれらを総合いたしまして、そしてらい患者希望等を誤りなく知悉して処置をとるのが適当であるということで私は参つておりますので、今後私のほうはさような意味らい患者の要望等も大体は只今知悉いたしておるつもりでありますから、又諸先生がたを通じてもたびたび聞いておることでございますので、従来そのような態度で参りましたので、今後共その点どうなりますか、今後の情勢のことによつてでございますので、只今までの心組を申上げましてお答え申上げます。
  48. 山下義信

    山下義信君 私は簡単に、場合によつては、都合によつては会つてやるというお言葉がはつきりと聞かれなかつたことを遺憾に思うのでありますが、これ以上は無理なことは申上げますまい、あなたのそれがぎりぎりのお心持でありますので、これ以上無理なことは申上げませんが、先般患者が陳情のために国会或いは厚生省に来たという事態、その事態につきましては先ほど廣瀬委員から質疑応答がありまして一応けりがついた形になつておるのでありますが、承わるところによりますと、厚生省におきましてはピケ・ラインを張つて、その扱い方というものは非常に冷酷な様子であつた。いわゆる警戒厳重おさおさ怠りなしといつたような有様であつて、先ほど私が申上げましたような、らい患者の縋りどころであるというような親心のような有様が見えなかつたということなんでありますが、そういうことはまあ批評的になりますからよしますが、国会質問書に対して政府が又文書によつて答えた答弁書の中には、この予防法案については十分患者の意見を聞いて善処するということがあるのであります。ここへ私は資料を持つて来ておる。資料なしでは申上げません。その関係者の療養所関係或いは患者その他とある。その他の意向等も十分聞いて、その提出の事前に各方面の意見を聞くことにやぶさかでない、努力するという御趣旨である。然るに実際はそのことが行われておらんので、それで甚だ遺憾の意を表して質疑をいたして来たのでありますが、療養所長の意見を聞いたということだけは事実らしい、大臣は故意かどうか知らないのであります。知らないのでありまするが、療養所長の意見を聞いたということは事実らしい。少くても三カ所の療養所長と政府関係者とが箱根の温泉でこの法案を相談したということは、そういうことがあつたと思う。若しなかつたと言うならば、ここで否定をしてもらいたい。療養所長と相携えて温泉場でこの法案研究するだけの熱意を、なぜ患者の声に耳を傾けるというその十分の一でも熱意を持たないかと私ども言わざるを得ない。患者の声を聞くにつきましてはこれを避けて、そうしてこの法案を議するにその一部の療養所長とさような場所において事を議するということは、自体甚だ私は不謹慎であると思う。これは実に人道上非常に重大なる問題で、私どもは社会党の立場ですらもかくのごとき敬意を表する。保守政党の諸君なら貞明皇后と言うならば恐懼措く能わざるその皇室とただならぬ関係にあるこの事業に対して、政府はもつと熱意を傾けるべきである。而も最も同情すべきは患者だ、患者を主体にして患者のために十分慎重に熟慮しなければなりませんと考えるにもかかわらず、その態度につきましてその経緯につきまして本員などが腑に落ちません印象を受けるので、私は最前から政府の親心のことを聞いたのです。政府の熱意を聞いたのであります。  最後に私は先般のデモ、このことは繰返して申しまして恐縮でありますが、廣瀬委員質疑があつたのでありますから、私は重ねてこれを申上げませんが、一体国会の裏での座り込みは、あれは政府が公認をした座り込みじやないですか。政府が公認をして許しておいて、あそこでああいう座り込みをすることを許しておいて、そうしてその収拾については責任を負わない、できないということは、私は甚だ許しがたいと思う。政府が公認をしたのじやないですか。例えば患者が数十名あの地点に赴くについては、国の官吏である療養所長が許可をして同行をしておる。そうして政府当局者がその陳情団の一行に人員の制限を申入れをして二十人若しくは三十人の人数でやつてくれということを話しておいて、話合いをつけてあの座り込みデモをやつておる。そうして当局はあの地点に行つて患者と種々に折衝というか、話合いというか、やつておるのである。若しこの事態政府としては許さん、かような事態は好ましくないというならば、なぜ禁止し、なぜこれを初めからやらさんようにしなかつたか。私どもがこの経過を見ておるというと、あれは政府が許しておる。政府が認めておる。そうしてあの退去を私どもが言うと、できませんと言う。できませんことをなぜ初めからやらしたかと言わざるを得ません。私どもはそういう事態を見ておりますことから考えますと、今後同様な事態があつたきとには政府は如何なる態度をとるのか、一切許しませんか、かくのごとき態度を繰返ささんように保証されますか、そういう事態が起きましたら責任をおとりになりまするか、ということを私は伺つておきたい。
  49. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 先般の事態につきましては、先ほど廣瀬委員からのお話に対して私は遺憾の意を表しましたのであります。当時の事情を詳細に後ほど報告を受けたのでありまするから、事実が間違つておりまするといけませんから、これは先ほど遺憾の意を表しましたことでもつて御了承願いたいと思います。今後の問題につきましては、先ほどこれ又廣瀬委員に答えました通り、法の適用或いは運用等について当時東京都との間に、私は法の解釈と申しましたが、解釈というのは当りませんで、法の運用につきまして字義等の解釈について異見がありましたために、その間ああいうふうな事態が起つて、本当を申しますれば私は政府が公認したとかなんとかいうことに結果は或いは相成りまするけれども、私が報告を受けたところでは、何とかしてまあ穏やかに、あれが分散いたすということになれば公衆衛生上いろいろ困難もあるのであろうから、一応あの地域に集めてそうしていろいろ公衆にも迷惑をかけないようにその間説得をいたして、できるだけ勧奨をして帰そう、その間に或いは字義等の問題について法の運用に対して東京都との間に話がつきますのが遅れましたりいろいろなことでああいうふうな事態になりましたと私は解釈をいたしております。当時おりませんから、或いは間違つてつてはいけませんが、さように解釈いたしております。ただいずれにいたしましても、今回のことは遺憾でありますから、今後あの事態が起りました原因又あの実情に鑑みまして、あの際に例えば法の運用或いは字義の解釈等に対して困難がありましたことは、その後打合わしたようでありまするから、今後さようなことのないように最善を尽したい、さように考えておる次第であります。
  50. 山下義信

    山下義信君 先ほど廣瀬委員との質疑されました生活保護関係の点でありますが、私はここで聞き間違えたのか知りませんが、極めて大切な点でありますから、もう一度私からも確かめておきたいのでありますが、質疑の要点は、らい患者という特殊な対象に対して国家が或る程度の強制力をもつて自由を束縛をし或いは職業或いはその他の制約を加えて行くこの事態に対して、この特殊な対象に対して生活保障というものをどう考えておるかという御質問であつたと思う。然るに厚生大臣の御答弁は、らい患者という対象に対する生活保障の問題でなくして、一般的生活困窮者に対する対策としてお答えになつたようでありまするが、大臣の御答弁と質問者の質問と多少の食い違いがあるような感を受けたのでありますが、私から改めて私の聞き間違いであるかもわかりませんから伺いますのは、らい患者という特殊の対象に対する生活保障も同じように一般の生活困窮者に対する対策をただこれを適用するというにとどまるのかどうかという点を伺つておきたいと思う。
  51. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 実はさような只今お尋ねのような疑点も私が持ちましたので、重ねて委員長のお許しを得て質問をいたしましたところが、大体いろいろ言葉のあやもございましたが、らい患者の困窮の家族に対して適用する、而もその困窮の家族に対してそう贅沢はすべきでないから、生活保護法と大体同じ内容のものを適用する、併しそれは今の生活保護法のあの方法ではいかないから便法でやつてはどうかという御質問に私は要約いたしたので、さように了承いたしたので、まあさように質問いたして私は答えを得ましたので、それは只今の法の体系からいたしますると、生活保護法は無差別常等であつて、困窮者に対しましてはその前の原因如何を問わずやつておりまするので、只今の法体系、而もその法は国会の命ずるところによつて政府は行政せざるを得ませんから、その家族に対しましては生活保護法を適用いたします。併しその運用につきましては従来いろいろ或いは万全でない遺憾の点もございましたでしようから、その点に対しましてはこれは特に法の運用ということの面もありまするから、法の運用の面においてらい患者の特殊性を考えて、これは手心ということを申しては非常に法律運用にはいけない言葉でありまするけれども、併しやはりこのミーンズ・テストにいたしましてもいろいろなことにいたしましても、やはりらい患者の特殊性ということを頭において……、いろいろな生計の調査等、我いは生活保護をいたすときには、やはり一つの精神的には或いは大きな要因にもなると思いまするから、運用の面においてはらい患者の特殊性を考えてやつて行きたい、かように申し上げた次第であります。だから、結論は法律論といたしましては今お尋ねの通り生活保護法で以てやらざるを得ないと、かようなことであります。
  52. 山下義信

    山下義信君 生活保護法運用の面に手心を加えるということは、私は厚生大臣は手心を加えると言うと或いけ語弊があるかもわからんとおつしやつたが、私はそうではないと思う。その答弁はその点に関する限りは正しいと思う。私どもは生活保護法は絶対もう不動な幅のない法律とは考えていないのです。殊に同法の第三条でありますか、この法の運用については相当弾力性を……、この法は実際に順応しまするように法の運用については原則を掲げてある、幅が持たせてある。それで私どもは手心をいたしたからと言つて、決して生活保護法運用の原則を破るものでもなければ、むしろ手心があつて事態に即応するような運用こそ望ましいのです。先ほどの御答弁の中で厚生大臣は戦争未亡人に関する事例をお出しになりましたが、戦争未亡人とらい患者とは違いますることは、これは本質的に申すまでもありませんが、戦争未亡人に対しまする生活保護法の適用についきましても十分幅を持つて実情に即応するような弾力的運用をするという当局の答弁は今日もなお残つておるのです。で、運用について手心を加えられる、或いはその取扱の事務に当るものについての含みのある御答弁でありましたが、これは当然であります。私どもがお尋ねしたいのは生活保護法の即ち実情に即応するような、らい患者という特殊の対象に即応するようなこの法の適用に当つて、まあ同じような言葉でありましようけれども、運用でなくして適用に当つて、この生活保護法を適用をするという困窮の程度、その困窮と認定する程度、これが生活保護法の一般の程度と同じようにするというならば、何も変つたことはない。ただ取扱う係員を甲から乙へというだけのものなんです。それでそれも全然無意味とは言いませんけれども、適用の生活困窮の基準の程度又加える保護の程度、これが生活保護法は画一に行つていない。ラジオを持つている者に与える場合もあるでしよう。風呂釜を持つておる者に与える場合もあるでしよう。場合によつてはラジオがなくても適用しない場合もある。それでその困窮という程度、或いはこれに与える保護の程度というものに弾力ある幅を持つのか持たんのかという点を私としても伺つておきたいと思うのであります。
  53. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) この点は多少技術的になりまするし、私はその法の適用の精神、考え方は先ほど申述べました通りであります。それを如何に具体的に適用するかという点につきましては、政府委員から御答弁いたします。
  54. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 生活保護法運用の面から申しますと、やはり一人一人の場合によつて違うと思いますが、併し現在の生活保護法によるところの保護の基準というものを変えるというわけにはいかんのじやないか。    〔委員長退席、理事大谷瑩潤君着席〕 併し、先ほどもお述べになりましたように、収入の認定というような問題につきましては、らい患者のあとに残りました家族については、いろいろとその特殊性を考慮することが正しいことではないか、そういうふうに考えております。
  55. 山下義信

    山下義信君 私は社会局長の答弁では、これはらい患者でなくて一般の原則をお述べになつた。我々が聞いておることは、このらい患者の対象の特殊性なんです。これは普通の困窮の状態の、その状態のところを押えて一般的に言つておるのではない、このらい患者の特殊性、国家法律の命令を以て、先ほどからもしばしば繰返されておるその絶対命令で以て隔離して行くというその事態に対して、そういう特殊性に対して、その生活保障をして行こうという上について、一般に対するところの適用と同じような適用をやるのか、そうしてただその事務の運び方だけで若干のほかの方法を講ずる。ただその適用ということについては他の対象者に対すると同様な扱いをするのかどうかということを聞いておる。なぜ同様な扱いをしなければならんか。らい患者という特殊性に対しても、それなら国が法律の力によつてそういう状態に陥つたものには何ら生活の援護も、遺族の援護も何もする必要はない。国の命令によつて、強権によつて処置したその対象者に対する状態に対してはいろいろなあらゆる施策が行われておる。それで生活保護法につきましても、私はこのらい患者という対象者に対してしたがいいか、せんがいいか、という議論をするわけじやありません。討論をしようとは思いませんが、当局のほうでは生活保護法でその問題をカバーして行くだけのその適用の妙味というものが一体あるのかないのか、全然ないのか、あるのかということを伺いたいと、こう思う。
  56. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 御質問の趣旨が、このらい患者家族であるからして、一般の要保護者の家庭よりも高い水準の援護を与えるべきだというような御質問でございましたならば、例えば現在東京都におきましても五人世帯御承知のように八千円というベースを持つておりますが、それを変えるのは生活保護法の建前上工合が悪いのではないかと思います。    〔理事大谷瑩潤君退席、委員長着席〕 併し適用につきまして、運用につきましては先ほどから大臣がいろいろ答えられておりまするように、らい患者家族の特殊性ということを大いに斟酌すべきだと考えております。
  57. 山下義信

    山下義信君 大事なことですから、くどいようでありますが、そのらい患者の特殊性ということを認めて斟酌すべきだという、この斟酌というのはどういうところを斟酌するのか、例えば扶助額はこれはもう決定してあるから八千円、これは動かすことはできんけれども、収入の認定ということで考えるということもあるでしよう。又適用する困窮の状態、もう全く何にもなくなつた、一般に要求するがごときあの困窮の程度を期待しておるのか、その困窮という程度も又あるでしよう。ですから、保護の基準の上におきましては表高の八千円、七千五百円を変えるということはできなくても、今さつき大臣がミーンズ・テストと言つたが、即ちそれなんです。であますから、収入の点等についてこの幅があるのか、或いは又困窮の認定の程度について幅があるのかということを伺つておるのです。それが全然幅がないのかどうかということなんです。
  58. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 生活保護法の適用でございますから、総括的にらい患者家族ならどう、そうでない者ならどうというふうに一般的な話ができないのを遺憾とするのでありますが、やはり個々の世帯を調べましてその際らい患者家族であるためにいろいろと不利を受けているだろう、そういうようなことで先ほどから申した通り収入の認定その他について私は斟酌したらどうかという考えを持つておるわけです。そのほからい患者家族のそういつたミーンズ・テストをいたします手続きにおきましても、先ほどから問題になつておりますところの秘密の保持その他につきましても、もつと適切な方法考え得るのではないかということを申しました。
  59. 山下義信

    山下義信君 これは速記が残つておりますから後で見ますが、何度繰返しても結局要領を得ん。結局政府のほうではもうわかつておることを聞く方が野暮なんです。それでいわゆる生活保護法の一線を、これを崩さんという考え方で、要するところ、ただ事務の取扱について若干の改正というか、それをやつて見ようというだけでありまして、このらい患者を強制収容することによつてその生存権を奪うて行く、その自由を束縛をして行く、そういう事態に対する特殊のこの対象に対して生活の保障について十分親心を出してやろう、それで生活保護法で若しやれるならばやり得る範囲内で保護の程度について困窮の認定の程度についても弾力のある運用をして行こうという確言をなさらん。これが遺家族の援護であるとか戦争未亡人のような場合に我々が論議するというと十分幅をもつてやります、実情に即応するようにやります、こうおつしやつた、何回も答弁せられた。国会の記録に明白なんです。私どもはそれよりも以上に悲惨な状態であると思われる、私がそういうかたがたに甲乙をつけようとは思いませんが、遺族のかたがたでも或いは戦争未亡人の方でも、そのお気の毒な状態は甲乙はございませんけれども、社会から強制的に隔離するということは戦争遺族にも戦争未亡人にもないのです。こちらのらい患者に対しては或いは場合によつては永久に社会から隔離するのです。それを国が法律で要請しておる。その対象者に対して戦争未亡人を実例に出されたり或いは一般の原則をもつていつまでも不得要領な御答弁をなさるということは、この種の特殊の対象に対して国が強権で以て社会から隔離をしておきながら、その生活に対する保障に対しての厚い政府当局の親心というものはないものであるという印象を私は受けたのです。それで私は質疑を終ります。若しそうでないとおつしやるならば、どうか一つこの機会に政府の態度を明確にしておいて頂きたいと思います。私は最後にこの際警告いたしておきたいと思います。私はあらかじめ政府の御注意を喚起したいと思う。この点は或は他の委員から御発言があるかもわかりませんから私は差控えますが、時と場合によりますというと私は不祥事件が起きるのではないかということを非常に憂慮しておる。私はこれを決して威嚇的に申しません、私はこの事態の推移いかんによりましては非常に憂慮すべき事態が起きるのではないかということを恐れております。さような事態が起きましたときには政府責任であるということをここで明確にいたしておきまして、私の質問を終つておきます。
  60. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  61. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記を始めて下さい。
  62. 湯山勇

    ○湯山勇君 今、広瀬委員からもらい患者の特殊性、それから山下委員からも特殊性ということについて生活保護法の適用についての御質問があつたわけですが、これは私は同じことを別な方面からお尋ねしたいと思うのです。強制収容ということがどのような方法をとるにもせよ、行われる以上は、それによつてその患者を出した家庭には経済的な損害があると思うのです。それについての補償ということについては大臣はどうお考えになりますか。
  63. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 先程来るる御答弁申上げておる通りでございます。
  64. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは強制収容したことによつて経済的な損害、これは生活困窮とか何とかいうことでなくて、本人が従来一カ月五千円なら五千円稼いでいたものが、ともかくもその家庭ではなくなるわけです。そういうことについては、これはもう仕方がないというように御放置になるのか、或いはそういう点については別に考えようという御意図があるのか、その点を……。
  65. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 先ほど来るる申し上げておる通りでありまして、生活の困窮者に対して政府法律又は法律の適用に際して十分考えて行きたい、かように申上げたのであります。
  66. 湯山勇

    ○湯山勇君 つまり別に悪いことをしたわけでもありませんし、法に従つて収容されたために、その家庭は損害をこうむるということなので、現在生活保護法を適用することになれば、問題があると思うのです、全部に対して。併しながらそういう受けた損害に対しての補償ということであれば別に考えてもいいのではないかということを考えるのですが、この点は如何でしようか。
  67. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) これ又先程来たびぞれ申上げておるようなことでございまして、只今そういう困窮しておる困難ならい家庭に対しましては、気持の上におきましては何とかしたいと思つておりますけれども、只今のところでは只今仰せのような措置を直ちにとることはできない事情であります。
  68. 湯山勇

    ○湯山勇君 只今直ちにとることはできないとおしやつたのでございますが、そういう点についても考慮しなければならないということはお考えになられるのでございますか。
  69. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) これ又先程来申上げておりまする通り厚生省立場といたしましてはいろいろな同様或いはそれと似たような事案もあります。から、それらの点につきましては総合的にいろいろと考えて行きたいと考えておると申上げておる通りでございます。
  70. 湯山勇

    ○湯山勇君 それではこの次にします。
  71. 藤原道子

    ○藤原道子君 この問題だけ……、私も同じことを伺うことになるのですけれども、先程から聞いていると私は納得ができないのです。らいというものは極く限られた人数なんです。ですから一家の働きの中心をなしている人が療養所へ入所するというような場合には、家族全体の生活が非常に困難に陥ることは明らかなんです。それが一年とか二年で必ず帰えれるというのではなくて相当長期に互つて療養を止むを得ず家族隔離の上において行わなければならない。即ち家庭生活というものは破壊されてしまうんです。であると同時に又一方政府がこんな大騒ぎをしながら、このらい予防法審議をいたしておりますのは、一時も早く患者療養の機会を与えたい、と同時に社会の公共の福祉ということを考えるときにそれを念願されて、こうした法案審議されておると思う。それならばこの重大な問題に対して若し仮りに家族生活を補償したといたしましても、その金額は僅かだと思う。無理に強制収容しなくても、患者は本当に療養所が真に自分病気を癒すことができるんだ。安んじて療養することができるんだという安心感、と同時に社会の偏見、これを政府のこの第二条にありまするように正当な知識の普及に努めるということが励行されることと併せまして家族生活の不安がなくなる。この三つが揃いましたならば、何にも私は苦労しなくても患者は喜んで療養所へ入ると思うんです。それにもかかわらずこの一つもなされていない。一体今まで啓蒙教育普及ということをして来たかどうかということになると、殆んどやつておりません。それから厚生大臣は今までにらい療養所へおいでになつて直接患者療養のあり方を御覧になつたことがあるでしようか。先程来同僚山下議員からいろいろお話のございましたように、誠に不幸な人なんです。本人が好んでなつたわけではない、不幸にしてこういう病気にかかつたためにああした不幸な状態に陥つておる人なんです。ところがこれは療養所というのは名ばかりです。第一法律の精神だつて療養所の精神であるか、収容所の精神であるかということは非常に疑問なんです。ここが問題なんです。そこで山下さんが言われたように、温かい愛情さえあれば万事解決するということはそこにある、従いまして私は先ほどこの委員会におきまして、参考人を呼んでいろいろお伺いいたしましたけれども、生活保護法の適用になつてから非常に思うようにいかない、二割の地方負担があるということが禍いをして、生活保護法一つの大きな枠があるということが禍いをして、患者家庭に適用することが困難だ、又長野県のごときは、園長さんからも、いろいろ生活保護法を適用してやりたいと思つて、いろいろ幾ら聞き合わしても返事もよこさない、療養所にはこんなに書類が山になつておる、こういう事態を実際に見たときに、療養所に行きたいと思つても行けんじやありませんか、あなたも私も肉親に対する気持は変りないと思う、こういう点をお考えになるならば、固いことばかりおつしやらないで、もつと人間的な愛情を持つて、法は運営にあると同時に、生活保護法はそういうふうにどうしてもいけないとおつしやるならば、私は手許に頂戴しました合衆国の国立らい療養所設置法、この中にもございますけれども、療養しなければならん患者に対しては、家族の費用を、何といいますか、毎月家族扶助料を受ける資格が与えられる、こうして家族には、妻には幾ら、両親に幾らというふうにちやんと規定したことが行われておるのです。私はこの精神がなければ、らいの行政は万全を期することは、どんな法律を作つたつて私はできないと思うのであります。でございますから、この点に対して大臣はどういうふうにお考えになるか、一歩進んだ……、あなたは何とかこの問題をそらそうそうとお考えにならないで、これだけ世間を騒がしておる問題をどうしたら早く収拾することができるか、将来どうしたらこの問題の目的を達成できるかという観点に立つて一つお答え願いたい。
  72. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 先ほど縷々申上げております通りらい患者らい家庭に対します心情は先生と同様であります。只今法案審議でありますから、法案審議に関します範囲に着きましては、先ほど来申上げておる滴りであります。
  73. 藤原道子

    ○藤原道子君 何だか吉田総理に質問しておるような気がして、いつもの山縣さんとは違うのです。もつと山縣まんらしい答弁をしてもらいたい、私は先ほど申上げておる通りで、納得がいかないから質問をしておるのです。ですから生活保護法がどうしてもそれで適用ができないとおつしやるならば、別途の特別措置をおとりになるお考えはないか、そうすることがらいの問題を解決する大きな鍵だということを私は申上げるのです。それに対しての大臣のお答えを聞きたい。
  74. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 同様な御質問がたびたびございましたので、それに対する答えをるる申上げておりますので、山下先生も廣瀬先生も同様の、或いはそれに類する御質問がございましたが、それに対しまして生活保護法に関して御答弁を申上げております。言葉がいろいろ変りまして、又誤解を招きましてはいけませんから、先ほど来御答弁を申上げた通りであります。
  75. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは生活保護法に対して、そういうふうなお考えですが、生活保護法が駄目だということなら、特別措置によつて解決なさるお考えがありますか、前にはあつたのです。旧法には。
  76. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 特別措置とはどういうことでありますか。
  77. 藤原道子

    ○藤原道子君 生活保護法によらずして癩予防法の中において、患者生活を保障するとか何とかということで……。
  78. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) 同様の御質問廣瀬先生その他からございました。それに対してお答え申上げております。言葉が二、三重複すると又如何なものと思いますから、その答弁は速記録等によつて承知願いたい。
  79. 藤原道子

    ○藤原道子君 話にならんから今日は質問やめます。その代り大臣に、この次にほかの面での質問がございますから是非出席して頂きたい。
  80. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは大臣からでなくてもいいのです。ほかのかたでも結構ですからお答え願いたいと思います。大臣はお聞きになるだけ聞いて頂きたい。学校へ子供をやつている場合、高等学校、大学へ子供をやつている、そこの主人が患者として強制収用を受けたために、その子供たちが学校をやめなくちやならない、そういうことになつた場合は一体どうお考えになりますか。どういう方法が、その場合に救済の方法としてとられますか。
  81. 安田巌

    政府委員(安田巌君) そういう場合まだ考えて見たことがございませんけれども、先ほどから申しますように、生活保護法の適用をいたします以上は、いわゆる生活の保障と言いますか、入所いたしましたことに対する保障というような考え方では、生活保護法の建前から申しますと、運用ができません。併し運用いたされる範囲内で、法律に規定された範囲内におきましては、大臣もたびたび申されましたように、できるだけ収入その他につきまして、私ども便宜考えたいと思つております。今のようなお話は普通の場合では適用にならないのでありますけれども、何かこの辺を別な支出にするとかというようなことを工夫して、当てはまるようなことも研究してみたいと思います。
  82. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういうのが救われないということだけ、大臣御認識願いたいと思います。
  83. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではこの次に大臣はいつ来てもらえますでしようか。
  84. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) この問題に関してですか。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  85. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記を始めて。  厚生大臣に対する質疑はこのくらいで今日は終りたいと存じます。それでは本案の質疑はこの程度にいたします。
  86. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に健康保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案を議題といたしたいと存じますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) それでは質疑に移りたいと存じます。
  88. 湯山勇

    ○湯山勇君 質疑ではないのですけれども、質疑というか、法案についての質疑ではないのですが、最初お尋ねいたしたいと思います。本法案は衆議院におきましては附帯決議がついて議決になつたということを聞いております。そのことは本委員会に対しては御報告があつたのですか。或いはこれは全然別個ですから、そういうことの御報告は必要ないのでございましようか。その点先ずお伺いしたいと思います。
  89. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 私のほうから御報告をいたすことではないと思いまして申し上げなかつたのでありますが、附帯決議が付きましたことは事実でございます。それは給付期間の三年延長等によつて健康保険財政が困難になる向もありまするので、そういうことを考えて健康保険に対しても療養給付費に対する国庫の補助を実現するようにすべきである、こういうような内容であると思います。
  90. 湯山勇

    ○湯山勇君 私はこの附帯決議は文章としては存じておるのでございます。ただこの中に諸懸案というようなのがありますから、そういう点についても御報告があれば非常に本委員会審議に好都合だと思うわけです。そういう点からこの附帯決議の内容につきましてお尋ねしたいと思うのですが、そういうことはこの委員会ではできるのかできないのか、一つ委員長如何でございましようか。
  91. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 諸懸案の解決というような文字がありましたことも承知をいたしておりますが、実はその内容が具体的にどういうものを予想しておりまするかは、すでに討論の際においての衆議院厚生委員会の発言でございましたので、私どもとしては具体的にこの点を明白にいたすことはできないのでございますが、ただ審議の途中におきまして特に問題になりました主要な点を申上げますると、本委員会でも問題になつておりますると同様に、傷病手当金の給付期間が現状のまま今度の改正案では据え置かれておるようなことがございます。で、或いはその他万般に亘りというような意味に私は受けておるものでございます。
  92. 湯山勇

    ○湯山勇君 では内容について一つお願いします。他の問題については前回質問いたしましたので、残つた問題についてお尋ねいたしたいと思います。  傷病手当の支給につきまして三日間の待機期間を置くということは一部の不正なものを除去するためにするんだというように承わつておりますが、それに間違いございませんでしようか。
  93. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 原則的にはさようなものでございます。ただ附け加えて申上げますると、ちよつと一日病気で休んだというようことに対して一々その都度傷病手当金を支払うということになりますると、のちのち、病気のことでもありまするし、のちのちから実証も困難でありまするし、必ずしも不正であるという断定のいたし難いような場合、いろいろ議論の起る場合が多うございます。三日くらいの待機期間を置くということによつて事実病気であつたという事実、これは入院いたすいたさないとにかかわらず、明白にするというようなことも考えられますので、さような点も考慮して待機期間を置いてあるのであります。
  94. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは甚だ今日の医学の進歩した中におきましては不合理ではないかと思うのです。現に今予算委員会審議されております今回修正になつ予算の中には、利子補給を二十五年度に遡つて出すというような例もあるのですが、この事実の認定に日が要するというのであれば遡つて事柄の発生した日から支給するというようなことにしたほうが合理的であるというふうには考えられないのでしようか。
  95. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 先ほど申上げましたように、待機期間でありまするとか或いはその他の資格期間でありまするとかいうことは、保険制度におきましていわゆる逆選択の当否というのが原則的な考えでございます。ただ私が附け加えて申したのが今申上げたような事情もあるのでございまして、この点は必要がないという議論も成り立ち得ると思いまするけれども、只今の制度のもとにおきまして、私どもとしてはこれをも配慮するということは問題はやはり給付費の増嵩にもなることであります。それらの点も考慮いたさなければなりませんので、同時に又逆選択という問題につきましては、これはやはり真剣に多数の被保険者の利益ということも考えまして検討を要する問題だというふうに考えておるのであります。
  96. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは今のお話は、一つは財政的な事情と、それから逆選択という場合は一体患者に信頼がおけないというようなことなんですか。それを診断した医師に信頼がおけない、まあ非常に割り切り方が客観的過ぎるかと思いますけれども、どちらに比較的大きい要素があるとお思いになるわけでございますか。
  97. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) どうもそういうふうになりますると、ちよつと私も自信をもつてお答えいたしかねますが、重点がどちらにあるかということになりますと、私は両方だというふうに思います。
  98. 湯山勇

    ○湯山勇君 次に傷病手当が国家公務員或いは公務員の共済組合では十分の八になつておるのですが、健康保険では十分の六になつておるわけですが、これは十分の八に揃えたいのだけれども財政的にできないのか、本質的にそうすべき理由があるのか、この点を御説明頂きたいと思います。
  99. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 傷病手当金の支給率につきましては只今のところの考え方としては、私どもは十分の六で妥当であると考えておるものであります。
  100. 湯山勇

    ○湯山勇君 それは妥当であるとかないとかじやなくて、どういう理論に立つてそういつた差をお付けになつたかということをお聞きしておるわけです。
  101. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 十分の六でなければならない、十分の七でも十分の五でもいけないというような理論はあり得ないと思います。問題は結局どの程度出すのが、支給するのが適当であるかという、いわゆる私が申上げた妥当論になるのであります。
  102. 湯山勇

    ○湯山勇君 それではお尋ねのしかたを変えまして、共済組合と差を付けるということはどういう理由でございますか。
  103. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) これはまあ保険の建前、それぞれの保険のものの考え方の問題でありまするので、私の今考えておりますのは、共済組合制度と同一にする必要を認めてないということであります。
  104. 湯山勇

    ○湯山勇君 その点につきましては、私は御説明では納得しかねる点があるのですけれども、なお御研究頂きましてはつきりした根拠をお示し頂きたいと思うのです。  なお続いてお尋ねいたしますが、保険がこういうふうにばらばらになつて来ますと、こういう差ができることによつて、その差に対する不信感から、つまり何と申しますか、不満なところから保険全体の発達を阻害するというような傾向も或いは出て来るのではないかということを心配いたしております。例えば健康保険では国庫負担は現在のところなされていない、それに対して国保のほうは負担されているとか或いは公務員の場合は三年間の傷病給付がなされるのに健保はなされない、そういう差別扱いがその保険制度の発達を阻害するというようなことが多々あるんじやないかと思うのです。これらの点について今後どういうふうにやつて行こうとお考えになつていらつしやいますか、御説明頂きたいと思います。
  105. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 前々から社会保障制度審議会の勧告等その他いろいろな方面からの御意見がございまして、社会保障制度の実現、つまり各種社会保険制度の擁護というようなことは私どもとしても将来の行き方としては考えて行かなければならないものと思つております。ただ併しながらこれを現在あるがままの各種保険制度を見ますとき、確かにお話のように、それぞれ差違がございます。併しながらそれぞれの差違は、又それぞれの制度に特殊の事情に基き、それぞれの制度の本質上そうならざるを得ないような状態におかれておる部分が多いと思うのであります。勿論御引例のような傷病手当金の支給の期間等については、これは越えがたい問題ではないと思いまするし、私どもとしてもこの調整をいたすべく最も早く努力をいたさなければならないものと思つております。ただ問題は、そういうような各種保険の違いを、高いところに合わせるか、低いところに合わせるかというような問題が、具体的な問題としては大きな問題でございます。高いところに合わせるということは、各種保険の実情から申しまして、まあ低いほうを高く上げるためには無理がございます。そういうふうな点で、私ども理想とし、或いは方針としては考えなければならないと思いながらも、簡単に手がつけられないというのが現状でございます。
  106. 湯山勇

    ○湯山勇君 局長のおつしやることはよくわかります。こういう発足段階におきましては、どれからでも、少しずつでも伸ばしていつて、結局あとで揃えていくという考え方は確かに成り立つと思うのです。但しその場合には、どれを先にして、どれを後にするかということについては、組合員に納得のいく説明ができない限り、むしろ逆効果があると思うのです。こういう点については、今後十分御注意を願いたいという言い方は失礼であると思いますけれども、御留意願いたいと思います。  次に厚生年金についてお尋ねいたしたいのですが、これにつきましては、実際的に御改正になるという御意図があるということを承わつておりますが、その内容はどのようなものでしようか、すでに御説明になられたのでしたら、私あとで個人的にお聞きしてもよろしうございます。
  107. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 厚生年金保険法の根本改正につきましては、すでに昨年来私どもとしては手をつけておりまして、簡単に経過を申上げますと、昨年の秋、一応の厚生省試案とも申すべきものを作りまして、社会保険審議会に懇談の形式で御相談を申上げたのでありますが、この内容につきましては、先日の山下委員の御要求もございまして、それと同じものを社会保障制度審議会に御相談を申上げたことがありますので、御説明をした機会がありましたので、そのものをお手許にお配りしたはずでございます。これは昨年の十月頃に、私たちとして、一応厚生省内部で得ました成案でございまするが、成案と申しますより試案でございますが、社会保険審議会に懇談の形式で御相談をしましたところ、労使、中立、各方面の意見が、非常に基本的な問題に触れた意見が出て参りまして、帰一するところがなかつたのでございます。そこで止むを得ず、予算の時期にもなりましたので、一応懇談の形式の会合を閉じまして、その後それらの各方面の意見を参考にいたしまして、この春以来私どものほうの手許で当初の試案を若干修正をいたすような気持で、成案を急いでおる次第であります。まだお見せするところまで固まつておりませんので申上げられませんけれども、当初の私どもの案に比較いたしますると、相当な部分におきまして変更をいたさなければなるまいという考えでやつておるものであります。
  108. 湯山勇

    ○湯山勇君 すでに十一月の一日からは、炭労に対しては年金が支給されることになるわけですが、現在年額三千六百円も納めておるものが、この適用を受けた場合には一千二百円ぐらいしかもらえない、これは非常に矛盾しておりますので、御改正の意図をお持ちになつているということは今承わりました。少くともこれが支給されるまでには御改正を頂かないと、もらつたものがこれじやどうにもならないということになれば、この制度全体へ大きい影響があると思いますので、十一月一日支給されるまでに、何とか改正の措置がとられるのかどうか、その点について、お答え頂きたいと思います。
  109. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 只今おつしやいましたのは、私どもは十二月からだと思つております。十二月から坑内夫が養老年金の受給資格を獲得いたします。これに間に合いますように成案を得るつもりでやつておるのでございます。具体的に申上げますると、若しもこの秋に臨時国会があるといたしますれば、その際にはいずれにしましても国会で御審議を頂くような段取に取計らわなければならないと思つている次第でございます。
  110. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の点、大変よくわかりました。是非そういうふうにして頂きたいと思います。最後にお尋ねいたしたいのは、厚生年金のことですが、これは現在は積立者の意思を質すことなく、単に資金運用部資金として用いられております。これは曾ての郵便保険年金が同じような扱いを受けていたのに対し、全国的に非常に大きな運動が起りましたために現在あのように、半額は地方のほうへ使うというようなことになつておるわけです。これは成るほど労使の福利施設というような形で、労働者の住宅というようなふうにも振向けられてはおりますけれども、その実質は、労働者の住宅というのは、本来使用者が作るべきものなので、作つたあとのものは、やはり使用者側に残るべきものです。むしろこの積立金を、積立てた労働者のためにということであれば、将来も労働者の役に立つような、従つて或いは厚生年金の性質から言えば、将来は自分のものになるというような楽しみのあるような例えば労働者住宅でなければならないと思うのですけれども、現在そのような運営が全然なされていない。で、これは早急にやはり厚生省当局が、簡単に大蔵省へ交渉だけしたのでは駄目なのであつて、先例もあることですから、あの郵政省あたりがやつたような、ああいう大きな運動を起して、成るべく早い機会に、これは本当に積立者の意思によるような、人に使わせるような方法を講ずる御意思があるかどうか、或いはそれについて具体的な方途をお考えになつていらつしやるかどうか、その点について御説明頂きたいと思います。
  111. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 厚生年金保険の積立金を、全部国家資金の運用の枠からはずしまして、別途の運用をするということにつきましては、私どもとしてはまだそこまでの結論を得ておらないのであります。その点は折角検討をいたしております。只今郵便年金の例を挙げてのお話がございましたが、若干これは事情の違う点がございまして、連合軍司令部の指令によつて国家資金に繰入られるものは、郵便年金のほうは別途の運用をしておつた。厚生年金は、最初から国家資金の中に組入れられておるわけで、その辺の事情が若干違いますので、このような要求には簡単に参るまいと思つておりまするが、なおこれは資金運用を確実にしていくというような問題も絡んで、相当根本的に検討をいたさなければならないと思つております。ただ具体的に只今お話のありました還元融資の問題につきましては、すでに昭和二十七年度におきまして住宅施設に十億、それから病院施設に六億の還元融資をいたしまして、これは直接各地方公共団体を通じて、直接厚生年金保険の被保険者のおる事業所に主として貸付をいたします。本年度におきましては、総額二十五億に増額されまして、すでに資金運用部の運用計画も決定をいたしたわけであります。私どもの考えとしては、そのうち二十億程度を住宅に廻して行く、五億程度を医療施設に廻したらというようなことで今関係省と打合せをいたしておるような次第でございます。
  112. 湯山勇

    ○湯山勇君 勿論病院施設になることは大変結構だと思います。ただ今の住宅の問題につきましては、これは全くこの積立者の全部の意思によらないで、運用がなされておるのが実情なんです。こういう全体の問題について、この積立金の使途、或いはその中から還元されたもの等の使途については、やはり積立てた者の意思がもつと反映するような方法を講じない限り、この円滑な運営というものは困難さを増すばかりだと思うのです。或いはもつと言えば、疑惑を増すことさえも考えられないことはないのであつて、その点については十分御検討を頂きたいと思います。以上であります。
  113. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は健康保険のこの給付期間の延長ですね、これに関連しまして、給付費というのは、国庫負担ということを附帯決議で出したいという、私は個人的には、そういう気持を持つております。ところがどれくらい金がかかるかというと、百億くらい金がかかるということですから、予算の見込がつくか、つかないかということを調べてみる必要があると思います。見込のないものを幾ら決議しても仕様がないと思いますから、少しそれを調べて、明日でも意見を述べたいと思いますから、或いは質疑をするかも知れませんから、健康保険の問題は、今日はこのくらいで打切つて、明日にでも延ばして頂きたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  114. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 本日は両法案質疑はこれくらいにいたしたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)   —————————————
  115. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) じや、社会保険審査官及び社会保険審査会法案を議題といたします。政府委員の説明を求めます。
  116. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 先ず現在の制度から御説明を申上げて、改正をいたします趣旨の御了解を頂きたいと思います。御案内でもあろうかと思いまするが、厚生省所管の社会保険の保険給付に対して不服のありまする者は、先ず各都道府県に置いてありまする社会保険、独任制の社会保険審査官があります。それに申立をいたします。その採決がありました場合に、なお不服のあります者は、厚生省に置かれております社会保険審査会に不服の申立が  できることになつておるのであります。社会保険審査会の審査になお不服がありまする場合には、一般の法律に基きまして、通常裁判所に出訴できるというふうな措置が取られておるのでありまして、問題となりまするのは、今の二つの社会保険審査官、及び社会保険審査官のうち社会保険審査会関係するものが最も多いのでございまして、改正の主眼もこの点に置いた次第でございます。現在の社会保険審査会と申しまするのは、健康保険、厚生年金保険、船員保険、この三つの法律につきまして、それぞれ労使、中立に各二名ずつの委員を委嘱いたしまして、全体として十八名の臨時職員でありますところの、非常勤職員でありますところの委員を委嘱して審査をお願いをいたしておる次第でございます。  なおこれを新たに今御審議を頂いておりまする日雇労働者健康保険制度が発足いたしまするといたしますれば、これはその関係者を更に加えて行かなければならないと考えておるわけであります。ところが審査の件数は、すでにお手許にお配りをしてあると存じますが、逐年増加の傾向にございまして、簡単に各年別の受理件数だけ申上げますると、中央の社会保険審査会の受理した件数は、昭和二十五年度は三十九件でありました。ところが又二十六年度には八十六件になり、二十七年度には百八十三件というふうに逐年激増をいたしておるような次第でございます。一方社会保険審査会のほうは、以上申上げたような機構でもありまする関係上、各委員それぞれ本務を持つておられまするので、お願いをいたしましても、なかなかお集まりを頂く回数が少くならざるを得ないのでありまして、而も一つ一つの問題は、裁判と同じように、相当面倒な内容を持つたものでありまするので、半日みつちり審査をやらしても、四件か、五件、処理できる程度に過ぎないのであります。さような関係上、私ども関係者としては、随分各委員のお集まりを頻繁にして頂くように、努力はして参つて来たのでありますが、以上のような事情でございまして、今日請求がございまして、なお審査会が採決ができないで未処理のまま残つておりまする件数は百五十件程度になつておるのでありまして、昨年の今頃の不服の申立を漸く逐次採決をして行つておるというような、被保険者にとりましては甚だ申訳ない現状にある次第でございます。  そこでさような現状を考えまして、これを改正をいたしたいというのが、今回の改正の主眼点でありまして、先ず第一に以上のような事情でもありまするので、採決をいたします審査会委員というものを、特別職の常勤の委員にしたいというのが第一の考えであります。併しながら従来とも、この制度は申すまでもなく、いわゆる三者構成の制度でありまして、被保険者並びに事業主の不服の申立に対して、それぞれの利益を代表するものが、弁護的な機能を果して行くということも、又存置すべきものと考えまして、三人の常勤の審査委員のほかに、審理に参加し、審理上必要な処置の請求のできる権限を与えられた利益代表者というものを労使双方から選びまして、そうしてこの人々に労使双方の被保険者並びに事業主の利益を代表する弁護的な機能を果して頂くようにして、結果において三者構成の実質的な機能を、新らしい制度の下におきましても果して参りたいというのがこの考えでございます。  なお申し遅れましたが、審査の件数は現状のような状態で百五十件も未処理のまま残つておりますが、今回の改正によりまして、従来保険給付費に対する不服のみでありましたのを、今度の改正で標準報酬に対する不服もその都度訴えができるように、いわゆる訴訟事件というと語弊がございまするが、事件として取上げることにいたしました。  なお近い将来におきまして、被保険者の資格につきましても、これは厚生年金保険法の根本改正の際になると思いますが、そういう機会に被保険者資格につきましても不服の申立ができるようにいたしたいと思つておりまするし、更に又日雇労働者健康保険制度ができますると、これに関する不服の申立も又殖えて来るわけでございます。いずれにいたしましても、今後この種の問題のため、私どもとしては漸次不服申立の範囲を拡張いたしたいと思いますので、さような関係から、どうしても現状の機関を、機構を以ていたしましては、これらの不服申立を完全に処理することが困難ではないか、かような考え方に出発をいたしたものでございます。  なお新らしいこの法案によりますると、地方の独任制の審査官並びに中央の審査委員会の審理につきまして、裁判所におけると同様な審理の公正を期するための諸種の手続きを新らたに細かく規定をいたしておるのであります。これは一に審理の公正を期したいと、そして被保険者なり或いは事業主の、不服申立てをいたした人々の権利を正当に擁護することを確保いたしたいという考えに出たものであります。法案の一々の条文につきましては長くなりますので省略をいたしますけれども、大体以上のような考え方に基きまして、繰返して申しますると、社会保険に関する不服申立ての範囲を拡張し、これを審理をいたしますために地方の独任制の審査官は各府県一名ずつという現状をこのまま置いておきたい、それから中央の審査官につきましては非常勤の三者構成委員制度を改めて、常勤の委員を三名置きまして、これに各府県ごとに二名程度の労使双方の利益代表者を加えて審理に参画をして頂くというようなこと、それに伴う審理の手続き等を規定いたしておりますのがこの法案の内容でございます。甚だ簡単でございますが、以上を以て御説明を終る次第であります。   —————————————
  117. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に医師等の免許及び試験の特例に関する法律案を議題といたします。政府委員の説明を求めます。
  118. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 私から医師等の免許及び試験の特例に関する法律案の趣旨及び概要について御説明申上げます。御承知通りに、従来からいわゆる引揚げの医師のかたがたにつきましては、内地におきまする今日の医師の資格制度等は、その学歴乃至まあ力と申しますか、そういつたものについてその人によりましてはかなりの相違があるにかかわりませず、向う、朝鮮、満洲その他におきましてそれぞれ医療の仕事に従事せられながら、苦労を重ねて帰つて来られましたああいう医師の事態に鑑みまして、いわゆる特例の試験を課して、それによつて医師の或いは歯科医師の免許を与えて、その従来の生業の継続することを考え参つたのでございます。同様の措置をやはり今回一連のいわゆる中共引揚げの者等につきましても行うことを適当といたしまして提案をいたした次第でございます。  そして内容につきましては、従来医師歯科医師につきましては、従来の引揚げの医師、歯科医師についてとつておりました法制上の建前、取扱いを、いわばそのまま踏襲をいたしたのでございますけれども、従来の取扱いにつきましては期限がありまして、この期限との関係について延長する必要がありましたので、こういう法律を提出いたしたのでございます。  そこで第一条でございますが、非常に細かに書いてございますが、要するに今度中国本土等から引揚げた者でありまして、従来の引揚げの医師として特例の試験を課しておりましたそういう試験について、昭和三十年十二月三十一日まで従来の例によつて受けることができるということにしたわけであります。従来のこういつた人たちのいわゆる特例の試験につきましては、昭和二十八年の十月二十六日まで受けることができる、そういうふうになつておりましたが、これは間近に迫つております関係上、その後なお引続いて昭和三十年十二月三十一日まで受けられるということにしたいというのがこれが第一条でございます。それから第二条につきましては、同じく医師国家試験の予備試験を受ける資格を認めておつたのでございますが、これもやはり期限の関係を考慮いたしまして、昭和三十一年十二月三十一日まで受けることができるということにしたものでございます。更に打割つて申上げますれば、いわばこの第二条で行く分につきましては、医師の国家試験の予備試験を受けまして、それからインターンをやつて更に本当の国家試験を受ける、そういうような恰好になるわけでございますから、実際問題といたしましては第一条に基きまするいわゆる特例の試験で合格できなかつた者が、更に第二の道に行くことができる、そういうようなことになるのでございまして、従いまして第一条は三十年となつておりますが、第二条は三十一年といたしたのでございます。  第三条、第四条、これは歯科医師についての措置でございまして、いろいろ表現の方法、条文の引き方は変つておりますけれども、趣旨としては今申上げました医師についてと同じような考え方でございますから便宜説明を省略さして頂きます。  それから第五条は診療エックス線技師に関するものでございますが、御承知のように、診療エックス線技師法が昭和二十六年八月九日に施行になつておるのでございます。これに基きますと、引揚げ前にこの仕事をやつてつた者或いは曾つて三年以上この仕事をやつてつた者が、届出をすることによりまして五年間は続けてやつてよろしい。その間に試験を受けて本当のエツクス線技師として働いてもらう。そういうような法律の建前になつておるわけでございます。従いまして例えば今回帰つて参りますというと、診療エツクス線技師法に基きます診療エツクス線の仕事に従事をしておつたという届出の期間が一法律で定められた期間がすでにとうに過ぎておりますので、届出の道がない、道がないというと、その仕事に携わることができないという結果になりますので、同じようにこの法律の施行の三カ月以内乃至引揚げた日から三カ月以内に診療エツクス線技師法に基きます所要の届出をするごとによつて従来診療エツクス線技師法に認められたと同じようなやり方を認めたいということでございます。従いましてやはり終局においては、これに基きます試験を受けて、正式の診療エツクス線技師法に基きますということは、これは勿論でございますが、それまでの取扱いとしては、従来この法律によつて取扱つて参りましたと同じような取扱いをいたしたい、かように考えております。  それから第六条でございますが、中国本土その他におきまして、看護婦並びに準看護婦の仕事をいたしておつた者につきましては、厚生大臣が一定の基準を定めまして、それに基いて都道府県知事が認定をしまして、昭和三十一年十二月三十一日まで準看護婦の試験を受けることができるようにいたしたいというのがこの第六条でございます。先方におきまする看護の実際の仕事のやり方、或いはいわゆる看護婦と申しますか、先方で言うそういつたものの取扱いの仕方は非常に区々まちまちでございまして、これを今日日本におきまする高度のいわゆる保健婦助産婦看護婦法に基きます正規のそういつたものと比べますというと、かなりけい庭があるようにも存ぜられますが、併し同時に向うでそういつた仕事をしておつた関係も考慮いたしまして、この準看護婦の試験を受けるということができるようにするということがいわゆる実情にかなつたことではないかと考えておる次第でございます。  以上簡単でございますが、御質問にお答え申上げます。
  119. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 両法案質疑は次回に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会