○国務大臣(山縣勝見君) 今回九州地区に水害が起りましたについて、取りあえず災害救助法、或いはこれに対する緊急を要する問題もありまするので、直ちに安田社会
局長、高田薬務
局長を福岡に、現地対策本部を設けるについて大野大臣と同行をいたさせまして、高田薬務
局長を派遣いたし、なお又その他のものを、防疫官等を派遣いたしまして、緊急対策に遺憾なきを期せしめたのでございまするが、私に二日に発ちました。中央に総合対策本部を置かれて、その派遣の一員として派遣を命ぜられましたので、行
つて参りましたのであります。併し本
委員会には主として
厚生省所管の災害救助或いは防疫等について御報告を申上げたいと思うのであります。
この災害が起りましていつも先ず問題になりますのは、緊急の災害の救助並びに防疫対策でありまするが、緊急の災害の救助に関しましては、いわゆる災害救助法がございまして、この発動を直ちに罹災各県にいたしまして、そしてそれに基いて例えば炊き出し、或いは衣料或いはその他の救助、食糧或いは応急仮設住宅或いはその他の、災害救助法によりまする応急の
給付をいたしましたが、同時に政府の持
つておりまする備蓄の衣料とか或いは毛布でありますとか、こういうものも現地に送り、なお又アメリカのCAC、或いはケア物資、その他も空路或いは鉄路、或いは海路輸送をいたしたような次第であります。で、私は二日に飛行機で参りまして、その後できるだけ短時日でございましたが、主として小型の飛行機或いはヘリコプターを利用いたしまして、罹災各県に参りました。やはりこの一番ひどいのは熊本地区或いは筑後川の沿岸では久留米、又大分側では日田地区等も相当ひどいのであります。それらの政府
関係のものにつきましては、他の機会に又御報告があろうと思いまするから、災害救助及び防疫対策についてとりました政策、或いは今後に残
つておりまする問題について簡単に申上げたいと思うのであります。
この災害救助のなかで一番問題になりまするのは先ず炊き出しでありまするが、私は佐賀へ参りまして、例えば嘉瀬川の流域の嘉瀬村に参りましたが、これは小さな小川でロープを伝
つて行つたようなところであります。例えば熊本のごときは阿蘇の火山灰、これは新聞で御承知の
通りでありまするが、これを押し流して、これは想像も付かない。いわゆる泥害であります。これはもろ表
通りもひどいのでありまするが、更に裏
通り、路地に入りますと泥で埋ま
つてしま
つておるというようなことであります。その量等につきましてはいろいろ言われましたが、そういうような地区におきましては、御承知の
通り災害救助法によりますると、六日間炊き出しいたしますが、到底六日間ではできませんので、更に四日間延ばして十日間にいたしましたが、私が現地で見ましたところだけでも、その十日間では到底この炊き出しが終えるような見込みのないところも相当多いので、これは
厚生大臣の
認可をそういうような局部的にしてしま
つて更に延ばす必要があるんじやないかと思います。その他衣料等につきましては、大体現地調達も可能であり、又絶対量は余り不足いたしておりません。と申しますのは米は一時は相当福岡等において数百円にな
つて来ましたが、私の行きましたときは大体二百七十円、或いは八十円ぐらいでありました。併し衣料は殆んど上
つておりません。そういうような
関係で衣料等にはそう心配がないのであります。ただ災害直後は例えば医薬品にいたしましても、食糧にいたしましても衣料にいたしましても、絶対量は大体あつたが、交通の
関係等において配給に多少アンバランスがありました点がありますが、これは多少交通も回復いたしまして、私が熊本へ参りまするとき、濾水機を飛行機に積んで参つたようなことでありまして、大体現在におきましてはそういうふうなものは現地調達或いはその後の
措置が大体遺憾なくとれておると思うのであります。この災害救助につきましては問題になりまする点は、例えば、炊き出しの
期間であるとか、仮設住宅の
単価の問題であるとか、或いは学用品等の確か二百七十五円のやつを中学生等につきましては千百円に上げましたが、そういうように上げて参つた。或いはその他仮設住宅の
単価、衣料の申告も十日間に
なつおりますけれ
ども、できれば多少延ばすとか、何かいろいろそれは応急の
措置をと
つております。ただ一番問題になりまするのはやはり今後の、現在の災害救助法では都道府県といいまするか、むしろそれに対応した国庫の予担は普通税
収入の百分の一を超過するものについて五割乃至八割という
規定がございまするがこの百分の一というと現在の基準がこのまま参りますれば、今回の水害が相当甚大でありまするので、地方自治団体のいわゆる負担というのは相当過重であ
つて、
従つて私が帰りまするときには、今回の水害の被害は千六百幾億という算定でありましたが、今日大野大臣が帰
つて来られた報告によれば二千億を超えております。そういう際において
従つて災害救助の範囲も広く、又その何といいまするか、
内容も只今申しましたように基準も
引上げております。
従つて地方自治団体の負担は相当過重でありまするから、今後災害救助法の国庫負担の限度というものを緩和するといいまするか、
引上げるといいまするか、相当この点については考慮すべき点があるんじやないか、これが一点であります。その他いろいろありまするが、主として
厚生省関係を申しますれば災害救助法についてはこれが一番大きい問題じやないかと思います。防疫対策でありますが、防疫対策につきましては、大野さんとも話をいたしまして、今災害対策本部が中央・現地にありまするが、現地の対策恥部も、ありていに申しますれば、災害救助法或いは防疫対策或いは稲籾の手配、或いは直轄河川、その他のいわゆる締切り工事或いは食糧の繰上配給或いはその他の問題についても、大体緊急対策の八割ぐらいは私はもう終えておりまするが、仮にさようなことがあ
つて、今後相当のいわゆる災害対策の重点が、中央に移
つても、現地においては防疫対策に関する限りは、相当重点を置いてやらなくちやいかん。その
意味で大野さんとも話合
つて、若しも今後現地における防疫対策本部というものが、いつかの時代になくな
つても、防疫対策本部というものはむしろ強化して現地におくべきであるとい、ことで、大体その方針は閣議に諮
つて、大体そういう方針を取ることに相成
つておるのであります。今回の防疫対策につきましては、いち早く地域を指定し伝染病予防法によ
つて、又
関係府県に対して救助班或いは衛生班等の派遣を命じ、本部からも防疫官が参
つております。私が帰りまする前日に九州地区の衛生部長会議を開き、なお又防疫官も参加いたしまして、この防疫対策を
検討いたしました。大体この救護班の編成派遣、これは大体保安隊からも、久里浜から参りまして、大体人員的の配置は終えました次第であります。その他必要があれば派遣することに相成
つております。それから薬品等につきましては大体現地調達が可能であるという報告がありましたが、中央におきましては必要なものはいつでも送る、なお又製薬会社の在庫品の
調査等もいたしております。現地で初めクロール・カルキとか、そういうふうなものが一時不足いたしました。併しこれは大体今手配を終えましてこの配給に遺憾がありません。それから一番心配いたしておりまするのは赤痢でありますが、赤痢につきましては私も特に重点を置いて現地に参
つても
調査をいたし、又防疫対策の一番最重点に置いておりますが、昨年と比較いたしまして本年の、たとえば六月の十五日から私が発ちまする前の、一番最近の統計、七月の三日か四日までの統計を見ますと、昨年の同期の罹災県におきまする発生総数千幾らかであります。本年はむしろたしか八百か九百足らず、そういうふうにしてむしろ赤痢の発生数は減
つておるということが言い得るのであります。勿論県によ
つては殖えておる所もあり又減
つておる所もあります。これは詳細な点は
数字を以て申上げてもよろしいのでありまするが、
数字を以て申上げますると、たとえば福岡県は六月の十五日から七月の三日までの累計が昨年は三百十一名、本年は二百四十五名で、減
つております。佐賀県は、昨年は百人、本年は百三十六名、これは少し殖えております。長崎県は昨年が二百六十四名、本年が百四名、長崎県は昨年は何か集団的に発生
状態にあつたようであります。それから熊本県は昨年二百二十六名、本年は二百四十二名、大分県は昨年が八十四名、本年が百二十五名、山口県は殆んど昨年も本年も少くて、昨年が三十一名、本年は四十一名、合計昨年が千十六名、本年が八百九十三名とな
つております。併しかようなことを現地で申しますと、如何にも政府が防疫対策に安心をいたしておるようなふうな印象を与えるといけませんので、決してさようなことは申さないで、一番の今後の重点は防疫対策であるということを強く申し、殊に報道陣にも協力を求めて、その点の思想の徹底をいたしております。なおこれは専門家もおいでになるので、今回はたとえば予防或いは
治療の
方法につきましても、従来は検便をいたしまして、それから隔離をして
治療をするというような
方法を取
つておりましたが、今回は先ずそういう懸念がありますれば、先ず以て抗生物質を与えて、然るのちに検便をして、先ず以て伝染力を断
つて、然るのちに
治療をするというふうな
方法も取り、いろいろ防疫対策につきましては万全を期しております。それから濾水機は今確か二十八台ぐらい動いております。その後神奈川からも、衛生隊からも、或いは駐留軍からも借りております。それから井戸水等に対して消毒剤を撒くとか、水道水に対しましては従来以上に消毒液を濃くするとかいろいろや
つております。これは新聞紙上で或いは御覧にな
つているかも知れませんので申上げますると、確か朝日新聞であつたと思うのでありまするが、久留米の上流の筑後川が決壊いたしましたために、久留米が丁度三角州の底辺のような所に当
つておりまして、これは非常に何といいますか、非常に水害を受けております。実に熊本もひどいのでありまするが久留米もひどい、それで丁度私が着きました晩に久留米の医大のかたがや
つて来て、確か自分が六百人ぐらいを屋根の上に上げて救済をしたというような惨状なりいろいろなことを言
つておりましたが、その後朝日新聞に久留米の医大の細菌学教室のいわゆる細菌を入れてある二百本ほどの管が流出をいたしまして、そうして久留米が伝染病の脅威の中に曝されておるというような大きな記事がございました。翌日、私はこれは捨て置けませんのでヘリコプターで防疫官を連れて現地に参
つて、医大の責任者及び市の責任者立会の上でそれを
調査いたしましたら、二百本は完全にそのまま箱の中に保管されてあるのであります。なお又細菌を培養いたしておりましたこの管の中に水が入つたとか何とか言われましたが、これも水は入
つていないので、そのまま保存されております。これは一応そういうふうな相当大きなデマで、久留米市はそのために相当人心が動揺いたしましたが、そういう事実はないということで、これも新聞に発表いたしまして、事なきを得ております。そういうふうなことで大体防疫対策は人的、物的の配置、又いろいろな防疫対策に対しての
措置も一応万全を期しておるような次第であります。今後ともなお民生部長会議を私の発ちまする日に午前中に開きまして、災害救助法の今後の国庫負担の限度等の、或いは
法律改正等の問題もございまするが、大体
厚生省といたしまして
関係のあります災害救助防疫対策、一応応急対策並びに今後予想される恒久対策に対して万全を期しておりまするような次第であります。一応御報告申上げます。