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1953-07-10 第16回国会 参議院 厚生委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十日(金曜日)    午後一時四十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堂森 芳夫君    理事            大谷 瑩潤君            常岡 一郎君            藤原 道子君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            中山 壽彦君            横山 フク君            林   了君            廣瀬 久忠君            湯山  勇君            有馬 英二君   国務大臣    厚 生 大 臣 山縣 勝見君   政府委員    厚生省保険局長 久下 勝次君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○九州地方水害状況に関する件   —————————————
  2. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開きます。健康保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。政府委員説明を求めます。
  3. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 健康保険法の一部を改正する法律案につきましては、先般提案理由説明で極く概略のことを御説明申上げたのでございますが、やや詳しくその内容につきまして御説明を申上げたいと思います。  改正の第一点は、標準報酬改訂でございまして、現行法によりますると最低二千円、最高二万四千円までの間を十九等級に区切つているのでございます。即ち第一級が二千円で第十九級は、二万四千円ということになつておるのでございますが、今回の改正によりまして、これを最低を三千円に上げまして最高を三万六千円にいたしたいというのであります。その区切りを二十等級にいたしたいという考えでございます。この標準報酬改訂の基礎的な考え方でございまするが、元来健康保険制度というものは私から申上げるまでもなく、その本質的なものは疾病及び負傷に対する療養給付でございます。従つてこれは報酬の高にかかわらず疾病又は負傷を受けました被保険者に対して、同等の給付をするというのが本質的なものでございます。それに対しまして、各被保険者のとつております報酬に応じて一定の比率保険料を納めて頂く。その本人のとつておりまする給料というものは実質賃金に合わせるというのが従来からの建前であつたのでございます。この考え方で昨年の春、すでに船員保険法におきましては最高を三万六千円まで引上げておりますような事情もあるのであります。なお、これをやや詳しく数字的に申上げますると、お手許に多分資料が差上げてあると思うのですが昭和二十八年三月末の標準報酬等級別、被保険者数関係のところだけ、ちよつと御参考に申上げてみたいと思います。上のほうの十七級というのがちようど二万円になるわけであります。標準報酬の二万円のものが十七級になつております。この該当者が十一万六千五百八十三人、全体の二、五%になります。それから十八級に該当いたしますものは二万二千円でありますが、これが一・五%に過ぎないのでございます。かようにこの十八級ぐらいのところまでは漸次数が減少いたしまして、従つて総数に対する比率も非常に少くなつておりますが、十九級の最高の二万四千円という段階になりますと、これがそれまでの傾向とは逆になりまして、二十二万七百六十人が現在三月末の現状におきまして三万六千円該当者ということになりまして、従つてこれは全体に対する比率は五%に、被保険者総数に対する比率が五%になるわけです。このことは結局二万四千円以上給与をとつておりまするものは、法律上ここに限定がされておりますために、ここにしわ寄せになつているのが事実と思うのであります。又昭和二十四年、丁度現行標準報酬改訂をいたしました二十四年五月の賃金実情と、それから二十七年八月、昨年夏の数字がとつてございますが、その間の約三年間ほどを隔てました賃金比率をとつてみますると、大体上昇率からみても標準報酬は四万円程度に上げてもいいというような比率になつておるのでございます。その辺のことを考慮いたしまして船員保険の先例もございまするので三万六千円に最高額を上げたいというのでございます。これは一部の給付傷病手当金支給の場合には、この標準報酬に応じて給付が行われます関係で、被保険者にとりましては給与の高いものは高いなりにきめるということも一部理由があるわけでございます。かようにいたしますると、このために最低最高を上げますために保険料の増収があるわけでございますが、次の標準報酬が毎年一回定期に改訂をするように改正いたしたいと思つております。このことは現在のやり方を申上げますると、制度建前としては被保険者報酬が変わるたびに事業主から届出を出してもらいまして標準報酬改訂を行うというのが制度建前でございます。実際問題といたしましては保険料に響きまする事情もありまして、なかなか届出が実際問題として励行されないような実情でございまして、しばしば会計検査院等から実質賃金と違うのではないかというような御注意を受けておりましたような実情でございます。そこで私どものほうといたしましては、毎年八月を標準報酬適正化月間ということで行政上の措置によりまして、一斉に届出を出してもらいまして、必要な場合には事業主実調をいたしたりして標準報酬引上げを、引上げ即ち実質賃金に合わせるような措置を講じて参つて来ております。これによりますると、毎年、月々届出を待つてつております程度では、せいぜい六十円ぐらい、全体を平均して六十円ぐらいの標準報酬引上げ増嵩になつておりますが、毎年八月やつております適正化月間で実施をいたしますると、大体毎年一挙に六百円から七百円ぐらい標準報酬が上がるのでございます。そういうふうな実情もございますのと一面には事務的になかなかこれを的確に掴まえることが非常に煩瑣な仕事でございまして、一々事業所に出向きませんと正確なものが掴まえられないというようなこともございますので、この際一つ事務簡素化も併せ考えまして、今まで実際問題としてやつて参りました八月の適正化月間というのを法律制度として八月一日現在で一斉に届出をとり、必要な場合には実調をして、そうして標準報酬の格付けをいたしまして、あと一年間はそれを使つて行く、特別大きな変化のない限りはそれを使つて行くというような措置をとりたいと考えておるのであります。そういたしますと、その面におきましては、月々例えば先ほど申上げました六十円ぐらいでも標準報酬引上げがあるということは、これは財政収入としては現在の収入としてはプラスになるわけですが、それを年一回の改訂にいたしますために、その面からの収入減がございまして、私どもの今までの数字による予想では標準報酬引上げと年一回の改訂という方法をとることとによりまして、彼此相殺いたしまして、むしろ本年度状況としては九百万円くらい保険会社としては赤字になるようなことになろうかと思うのであります。従いましてこの考え方は決してこの財政をよくしようという考え方ではないのでありまして、事務的に能率を上げ、更に又一方におきましては標準報酬の際に申上げましたような、従来の基本的な考え方に合わせるというような趣旨改正をいたしたいと思つておるのであります。  第三の適用範囲拡張でございますが、これは社会保障制度審議会を初め、各方面から長年御要望のあつた点でありまして、いわゆる被傭者全部に健康保険制度を及ぼすというのが本来の趣旨であろうと考えるのであります。そこでいろいろ事業の実態、或いは給与実情など、私どもとして知り得る限りの資料を集めまして、現在適用事業所になつておりませんものにつきまして検討をいたして見ました結果、ここに掲げました事業ならば事務的にも把握が可能でございますので、これを取上げることにいたしたのであります。  細かいところは省略いたしますが、これだけの適用事業所拡張いたしますことによりまして、全体として六十一万三千人ほど被保険者が一挙に殖えることになりました。  なお御参考までに申上げますが、新たに適用せられます六十一万三千人の人たちが私ども調査によりますると報酬は従来入つております被保険者よりも平均して低いのでございまして、最近の現行制度の被保険者及び平均標準報酬は九千円を突破いたしておるのであります。来年度は一万円を超えるものと予想いたしておりますが、そういう状況でございまするが、この新たに適用されます六十一万三千人と予想される人たち平均が七千五百円程度にとどまるわけであります。これは保険財政の面から言いますと、そういう面で適用範囲拡張によつて若干財政上不利でございますけれども、これが全体の標準報酬増額等のことを考え合せまして、この程度適用でありますれば、特別に措置をせずに保険財政見通しも立ちましたので取上げましたわけであります。  なお特に申上げたいと思いますことはここに教育という事業を取上げてございます。これについては最近文部省のほうから私学振興保険につきまして、特別な社会保険立法提案をされております関係もありまして、いずれは御審議の対象になるかと思いますので、御参考に申上げておきたいと思いますが、実は私どものほうとしては昨年の秋頃から事務的にこの案を作りますに当りまして、すでに存在いたしました私学振興会、或いは私学恩給財団、一方既存の制度との調整もありますので一文部省ともいろいろ折衝し、或いは私学連合とも話合いをして参つたのでありますが、文部省私学連合におきましては教育というものは特別な事業であるので、これは別個の立法でやりたいということで、私どものほうとしては一本でやつたほうがいろいろな意味で都合がいいのじやないかということを申したのでありますが、最後までその主張でありました。結局私どもとしてもどうしても了解を得られませんでしたので、止むを得ずそうした立法に賛成せざるを得ないような事情に立入りましたわけで、別途文部省のほうから提案として最近国会に送り、衆議院の審査も始まる模様でございます。そういうこともございますので、先ほど申上げました六十一万三千人の中から三十人という数字私学標準経営私学、つまり言葉を換えますと私立学校法適用のあります私学につきましては数字が除いた数字でございます。その私学関係適用のあると見込まれる数字を除きました数になつております。併しな教育という問題を残しましたのは、一つには私立学校法適用と言いますか、今度の新らしい文部省提案私学教職員共済組合法適用を受けない教育事業が残りますので、これを具体的に申しますと、個人経営各種学校があるわけでありますが、そういうものが提案をされておりまする法案から除かれる関係もありまして、やはりこちらに入れておいたほうがいいのじやないか、むしろそれらの中にはすでに法人というのではありませんが、任意包括等へ入つているものもありますので、これは残してあるわけでありまして、それからもう一つは現在文部省のほうの提案で出されておりますが、私学教職員共済組合によりますと、私学のうち私立大学で数校がすでに現行法に基く健康保険組合設立しているところがございます。これは認可を受けて従前通り健康保険法適用を受け得るという規定が入つておりますので、その意味での教育のほうは残して置く必要があると思いまして、さような関係教育というものが残つておりますことだけ附加えて申上げておきたいと思います。  なお最後の点でございますが、医療、助産というようなことで、例えば調剤、或いは看護というような言葉が抜けております。原案には入れておつたのでございますが、法制局審議の際に医療という言葉で一応包括されるのではないかという話でありましたので、これに包括されるという解釈の下に、これは表現から除いた次第でございます。これにまだ入つておりません事業について一応ちよつと言葉を附加えさして頂きますが、例えば料理屋飲食店等サービス業或いは興行場というようなこと、農林、或いは農業、或いは林業、そういう種類の事業はまだ強制適用事業になつておりません。これらのものは或いは雇用関係が必ずしも明確でなく賃金形態等チツプ等で賄われておるものがあつたりして、はつきり掴みにくいということが一つ、それからもう一つ自営業者が多うございまして、或いは早晩自営業者になるというような事業も多いわけでございます。そういうような点も考えまして、差当り適用からは将来の検討をするということにして除いた次第でございます。  最後療養給付期間を三年に延長いたしました。これは私から申上げるまでもなく、主として結核患者でございますが、いろいろ新薬の発見、適用、或いはその他の外科等結核治療技術進歩等によりまして二年ではなかなか料率の帰趨がきまらない。むしろ治療が継続されておる実情でありますので、各方面からこれは三年にいたすべきであるというような要望が強うございますので、三年延長をすることにいたしたのでございます。これは財政的な面で申しますと、平年度詳しくは後の資料で申しますが、七、八億の財政負担になりますけれども、それも別に料率に対する影響なり変更を加えずに見通しが立ちましたものでありますから、三年延長にすることになつたのであります。ここでこういうふうになりました一つ理由はこの裏腹になります厚生年金保険制度があります。これは後に厚生年金保険制度改正の際にも申上げてもよろしうございますが、裏腹の関係からこの際申上げておきます。厚生年金保険につきましては、健康保険による給付期間が切れましたときに、その病気の状態判定をいたして、廃疾状態認定いたしまして、傷害年金支給しているのであります。従つて従来二年の給付期間になつておりますが、二年が切れましたときに病状を見ましてそうして労働能力判定をいたしまして年金又は傷害年金、又は傷害手当金支給しておつたのであります。ところがこの傷害廃疾認定というものは結核につきまして治療継続中でありますので、非常に困難で不安定な状態にございます。三年に延ばしますと大部分その辺が認定がつき易くなるというような学問上の要求もございましたので、厚生年金制度廃疾認定の問題と睨み合いをいたしまして、三年に延ばすことにいたしたのであります。これに伴う認定の時期も厚生年金保険法で三年に延ばすことにしてございます。なお関連して申上げておきたいと思いますることは、療養給付期間延長に関連して問題になりますのは傷病手当金支給をどうするかということでございます。現在の制度では健康保険の場合には療養給付期間は二年でございますが、傷病手当金の方は一般疾病については六ケ月、結核につきましては一年半だけ傷病手当金支給することになつておるわけでございます。これは三年延長伴つてそれにつれて延ばすのが至当であろうかとも考えたのでありますが、結局これは財源の問題でございます。大体これを全部一般疾病並びに結核関係一年半というのを三年に延ばしますると、所要経費年額三十一億円ほど保険財政が必要になつて参りまして、この財源の出口がございませんので、傷病手当金給付現行のままにいたさざるを得なかつたのであります。船員保険につきましては別の考え方をいたしておりますが、これは船員保険法の御説明の際に申上げます。こういうようなものが法律案改正内容でございまして、又その趣旨でございまして、私どもの今の模様では、この本国会におきまして可決をして頂きましたならば、九月一日から法律の施行をいたしたいと思つております。但し三年延長は十一月一日からにして…。この点は解散前の国会提案をいたしましたのを、三年延長をいたしますのは十一月からとなつて世間から大分期待をされておりました。この点は変更せずに十一月から施行いたすことにいたします。九月一日からその他の規定適用いたしますが、標準報酬改訂、或いは適用範囲拡張等を、新たに被保険者になつてからこれは九月一日から法律が施行いたしますけれども、二ケ月間の準備期間を予定いたしておりました。二ケ月の間に標準報酬届出を取つて改訂をし又新らしい適用事業費なり、被保険者につきましては届出を取りまして、被保険考証発行帳簿登載等をいたしまして、この準備期間として二ヶ月を予定いたしました。従つて実質的に標準報酬改訂なり、適用範囲拡張が動いて参りますのがやはり同じように十一月からと思つております。十一月から保険料を取つて給付をいたすというふうにいたす考えでございます。健康保険法改正は以上の通りであります。
  4. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御質議を願います。
  5. 榊原亨

    榊原亨君 この標準報酬改訂でどれくらいの収入が増しますでございましようか。それが組合勧奨政府勧奨で分けてどれくらいになりますか。
  6. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) お尋ねの問題につきましては実は私は資料を持つておりまして、先ほども御説明の際にその点申上げておつて、探しておりましたが、どこに入りましたか、ちよつと見当りませんので、後刻御説明申上げることでお許しを願いたいと思います。空手で申上げて間違つてもいけませんが、特に予算の総額ならわかるのでありますが、上る率による差額というのはちよつと面倒な数字でございます。
  7. 榊原亨

    榊原亨君 在来この標準報酬組合勧奨政府勧奨と非常に違いがあるというようなことがあるようでございますが、それはいろいろ原因があると思うのでありますが、どういう点が主にその原因とお考えになつておりますか。
  8. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 確かにお話のように政府勧奨健康保険では先ほど申上げましたように最近の平均標準報酬月額が九千四百円くらいになつております。組合勧奨は一万一千円を超えております。この事情はいろいろあり得ると思うのでありまするけれども、大体健康保険組合設立厚生大臣認可によつてできるのであります。認可をいたします場合には法律規定によりましても三百名以上の被保険者がなければならないということに制度建前としてなつております。併し実際の運用といたしましてはその程度でありますと、やはり財政的に安定した見通しが立ちませんので、私どもといたしましては財政上の安定の見通し考えまして、実際の認可の基準としてはその約倍以上の被保険者を必要とするというような扱いをし、更に財政上の見通し標準報酬現状等も見まして、独立して安定した給付ができますことについて、見通しの立ちました場合に認可をいたしておるような実情であります。その結果、言葉を換えて申上げますならば、結局少くとも大企業と申しますか、或いはそれに準ずるようなものだけが組合設立認可されておりますのが実情でございまして、いわゆる中小企業は全部政府勧奨に入つております。このことは標準報酬額に大きな差がある原因だと思つております。
  9. 榊原亨

    榊原亨君 今のお話は御尤もと思うのでありますが、ところが同じ政府勧奨の、同一の政府勧奨組合でございましても、それが組合勧奨になりました途端において標準報酬が上るという事実を、恐らく久下局長もお認めと思うのでありますが、その原因は那辺にあるかということをお気付きになりませんでしようか。
  10. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) そういうことは私どもはあり得ることと思います。それらの理由先ほどちよつと申上げましたように政府勧奨で、丁度税金と同じように納入告知書を出しますわけでありますので、数多い関係があつてなかなか実質賃金をそのまま標準届けをして頂けないのが相当数あるのであります。これは遺憾ながら認めざるを得ない、その意味からであろうと……。
  11. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、なかなか実質賃金が多くできないのだというようなお話でございますが、先ほどお話でございますと一年間に一回実調をやつて、というようなお話でありますが、その実調方法はどんな方法か承わりたいと思うのでありますが、そういうことによつて今私がお話申しましたような弊害を見付け出す、或いは除去するということができるでございましようか、その点を承わりたいと存じます。
  12. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) そのことも先ほど申忘れたのでありますが、そのことも今度の改訂の主たる目的でございます。先ほどちよつと適正化月間の結果につきましても申上げました通り、事実保険勧奨におきまして総力を挙げて実情調査をいたしますると、黙つておいたのでは六十円以上は上りませんものが一挙に数百円の増額を見るというような実情でございまして、今回この適正化月間というものを法律制度化して八月一日改訂ということにいたしましたのは私どもとしては八月一日現在で届けをとりまして、九月十日はもつぱら……、幸いその頃は保険勧奨は比較的仕事も他の期間に比較しては楽であります。少くともこの期間には保険勧奨総力を挙げて実情調査いたしたい。そうして実質賃金に合うものを拵えたいという考えであります。
  13. 榊原亨

    榊原亨君 特にこの点は十分実調の成績が上るようにお願いいたしたいと思うのであります。次にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、これらの健康保険法改正ということは結構でありますが、現在におきましては給付内容統一ということが余りできておらないのではないかと思うのであります。給付内容の改善とか、統一ということがなしに、ただ枠を拡げるということについては相当反省をしなければならないのではないかと思うのであります。又先ほどお話になりましたように給付期間を三年間にする、傷病金手当は金がないからそれはそのまま暫く置いておくというようなお話でありますが、そうしますと、何か保険財政に余裕ができたから取りあえず給付期間だけを三年にするというような印象を私ども受けるのでありますが、一方におきましては全国の診療を担当いたしておりますものが官公立私立を問わず単価が低いために非常に苦しんでおるということを局長もおわかりだと思うのでありますが、私が申上げる必要もないのでありますが、そういうものをそのままに一方放置しておいて、そうして法律の上におきましては実情調査して単価の値上げということもできる状態にありますのに、それをそのままにしておいて、ただその枠を拡げるということだけに御努力になるようなふうにとられるのでありますが、その点についてお話をお願いいたしたいと思うのであります。現に今年度予算を見ましても、国立病院その他の赤字を補給いたしますために補給金を出しておるのであります。そういう補助を出さなければやることができない。又厚生省保険組合におきましては、特に赤字補填のために極く僅かでございますが予算の面において補助金を出しておるというようなことが現われておるのでありますが、これらは給付内容統一する上から申しましても、又私が只今お話申しました点から申しましても、厚生省自身がそういうことをやつておられるということにつきましては甚だ遺憾と私は思うのであります。それらの点につきましておわかりになつておる点につきましてお話を願いたいと思います。
  14. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 先ず三年延長の問題と傷病手当金支給の問題、或いは単価の問題、からみ合わせてのお尋ねでございましたが、給付期間を三年に延長いたしますのは、先ほど申上げましたように、これは私どもとしては実情としてどうしてもやらなければならないという建前に立ちまして、財政検討をいたしましてもできまするので、財政の問題を第二義的な問題として検討をした結果、そのほうからも可能でありまするので、いたすことにいたしたのであります。  単価の問題につきましては、勿論現在の単価が不合理であるという各界の一致した御決定がありますれば、保険財政の問題は何とかこれに合う措置を講じなければならないのは私どもの義務であると思つておるのであります。ただその問題につきましては榊原先生の御案内のように、建前としては臨時医療保険審議会におきましてこれに関する社会保険診療報酬の仕方というものについて検討をして、その得た結論によつて措置するという従来の建前でございます。そのほうに御審議を煩わしております。この辺の結論が延び延びになつておりまして甚だ遺憾とする面はございまするけれども、このほうにつきましてまだ結論が出ておりませんので、私どもとしては単価問題のことを考え措置するということはできない実情にあるのであります。その辺は御了承を願いたいと思うのであります。  それからなお傷病手当金につきましてお話がございましたが、これは先ほど申上げましたように、現在の制度でも必ずしも給付期間満期まで給付することになつておらない。この辺は五十歩百歩の議論になろうと思いまして、とにかく出したいのは私どもの立場としては山々でございまするが、今日の財政状態からはこれを許しません。止むを得ず現行通りとどめたいというのでございます。  それから厚生省関係の共済組合のことについてのお尋ねは、私責任を持つたお答えがいたしかねますが、私の知る限りで申上げたいと思いますが、これは厚生省に限らず国家公務員共済組合の短期給付の部面はどこも非常な赤字状況であるというふうに聞き及んでおるのであります。厚生省におきましてもすでにこの赤字を解消いたすとを含めまして、私も厚生省の共済組合の一人でございまするが、被保険者として千分の四十の保険料を徴収されております。これも極く最近までは千分の三十八であつたのを更に千分の二上げられまして、最近は千分の四十、つまり健康保険の被保険者にかけます千分の十だけ余計に保険料をとられておるような実情でございます。それでもなお相当の赤字を背負つておりますような実情でありますために特別にかような処置がとられたんだと思います。従いましてこれは非常に特別な事由でございまして、直ちにこれを以て他を推すわけにも参らないのではないかと私は考えておりますが、これ以上突き進めました話につきましては担当の責任者からお話を申上げたいと思います。
  15. 榊原亨

    榊原亨君 只今単価の問題が臨時医療保険審議会で結論が出なければやることができないというお話でありますが、臨時医療保険審議会というものは法律によつてきめられたものではないのでありまして、あの当時のお話合いにつきまして一応単価の実態を調査するというふうではございましたが、現在法律の面においてすでに立派に生きておるわけでありまするから、臨時医療保険審議会を待たずに、例えば物価が高騰すると、或いはいろんな原因が起つて来たということを見れば、厚生省といたされましてはそれらの臨時医療保険審議会の結論を待たずして現在の法律制度の下において単価改訂ということができるはずではないかと私は思うのでありますが、単価改訂というものはどうしても臨時医療保険審議会の決定を待たなければ、何年かかつてもその決定が出て来なければ物価がどんなに変動いたしましても、全国の官公立病院その他が全部赤字で困つてつても、それはそのままでよろしいのだと、そしてそれじやそのほかの給付の範囲を拡めるとかいうことだけしていれば厚生省のお仕事は済むと、こんなふうにお考えでございましようか、承わらして頂きたいと思います。
  16. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 法律的な考え方から申しますならば今お話のようなことになろうかと思います。すでに診療報酬の問題につきましては法律に基いて中央社会保険医療協議会というようなものもあるわけでありまするから、この点は確かに法律的な点からのみ申しますればお話通りかと思いますが、併し行政的な立場と申しますか、道義的な立場と申しますか、そういうような点から申上げますると厚生省といたしましても、又この問題に関係がある諸団体のかたがたといたしましても、臨時医療保険審議会というものを作つて、名前は別といたしましても、ああいうような機構を作つて、そして十分検討をしようということが一昨年の暮の単価問題以来のあのときの申合せでございました。私どもといたしましてはその線に沿つてああいう審議会を持つておるわけでございます。又御関係の皆さんも又そういう趣旨で御審議を頂いておるわけでありまするので、私のほうとしましてはそのほうの結論を得ないで法律的にはできるんだからということのみで動くわけにも参らんと思うのであります。少くも勿論各方面の御要望が強くて審議会のほうは余りはかばかしい結論に行かないということでありますれば、又それは関係の皆さんと御相談をして適当な処置をとる必要があろうかと思いまするけれども、それにいたしましても、私どもの現在の立場といたしましては、これは私どもだけの立場で、考え方でなしに、関係諸団体の御意向もありますので、それらの点も、いずれもどういうような処置をとるにいたしましても、この臨時医療保険審議会の意向を無視した態度には出られないと考えておるのであります。
  17. 榊原亨

    榊原亨君 重ねてくどいようでございますが、臨時医療保険審議会はこの単価の計算の根本的な検討、或いは単価の構成要素についての根本的な検討をするということであります。ところが一方において物価の変動があるとかいろんな事情が起つて来て、現に赤字でこの官公立私立病院その他の診療所が困つておるという現状におきましては、その根本的な検討が進まなければそれができないというのではなくして、暫定処置といたしましても、これに処置すべきが当然の厚生省の義務だと私は思うのでありますが、なお且つ今お話なつたようなことがどうしてもそうだというようなお話でございましようか。
  18. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 私は臨時医療保険審議会というものはそうした根本的な問題のみを取上げるべきであると思つていないのでございまして、いろいろ事情が窮迫して参つたので、とにかく臨時的な措置をこういう線でやつたらどうかというようなお話になれば、私どもとしては又そういう措置をするのが至当であると思うのであります。いずれにしても現在単価問題の検討ということでああいう機関を持つておりまする限りにおきまして、私どもが単独でその問題を処理するということは、道義的な考え方から申しましても私は適当でないと考えておりす。
  19. 榊原亨

    榊原亨君 単独ではできないならば、例えば関係の団体とかその当事者というものがそういう要望をしたら、そういう御考慮を、御研究ができるというおつもりでございましようか。
  20. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 関係の団体からそういう御要望が出て、臨時医療保険審議会においてそれを一つ是非ともやつてくれという皆さんの御同意があれば、その御同意の線に沿つて措置しようと思つております。
  21. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 他に御質問ございませんか。
  22. 湯山勇

    ○湯山勇君 この適用範囲拡張するという各業種ですが、それぞれの、大体どれくらいに殖えるか、この六十一万三千人程度という内容でございますね、業種別の、それを。
  23. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 以下申上げまする数字は国勢調査等の資料を基礎といたしておりますが、若干古い資料も加わつておりますることを御了承願います。先ず土木建築関係が男子二十六万四千人、女子一万六千人、合計いたしまして二十八万人、その事業所数が八千カ所と、教育関係には先ほど申上げました私学関係を一応除いてございますが、これに多少数字が、或いはその後文部省の方の共済組合法との関連もありますので少し修正を要するかもしれません。これが固まりませんときの数字と御了承願つて、男女それぞれ二万一千人、合計四万二千人、事業所数千二百カ所と予定をいたしたわけであります。それから研究調査という項目が上つておりますが、これに該当いたします被保険者見込みが男子二万一千、女子六千、合計二万七千、その事業所数八百カ所と予定いたしております。それから医療、助産も含めておりますが、医療関係が男子十二万一千人、女子十三万三千人、合計いたしまして二十五万四千人、その事業所数は七千三百カ所と予定いたしております。社会福祉関係は男子四千人、女子六千人、合計一万人でございまして、その事業所数は三百カ所と予定いたしております。合計いたしますと先ほど申上げましたように総数は六十一万三千でございますが、男女別に申上げますと男子が四十三万一千人、女子が十八万二千人、その事業所数は一万七千六百カ所でございます。
  24. 湯山勇

    ○湯山勇君 今御説明なつた中で抜けておるのがございますが、通信報道とか或いは厚生保護というのはいわゆる社会福祉の中に入れて御説明なつたわけですね。
  25. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 通信報道関係につきましては実は法人というような、法人の事業所ということで、現在そのほうの規定適用になつておるのが相当数ございまして、殆んど大新聞など全部入つております。そういう関係から或いはその点任意包括加入で入つておるところもございますので、実はこの数字を上げますについては余りに小さい数字でございますので、項目としては強制適用事業所に上げましたけれども、今申上げました数字からはその意味で除外いたしたのであります。これは極く大数だけを申上げるために申上げたのであります。それから厚生保護事業は皆社会福祉の中に入れて計算いたしました。
  26. 湯山勇

    ○湯山勇君 その小さい数字というのが聞きたいのですが、概数がわからないのでしようか。
  27. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 只今ちよつと資料を持つて来ておりませんので。
  28. 湯山勇

    ○湯山勇君 男女別などというのは要らないのです。例えば千にも足らないとか、或いは五百にも足らないとか、そういう言い方で結構だと思うのです。
  29. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) これは一応細かい積算の基礎はあるのです。若しわかりましたら後刻、次の機会に申上げたいと思います。今ちよつと持つて来ておりません。
  30. 湯山勇

    ○湯山勇君 先ほどの御説明のときに農林業、興行、サービス業というものは除外した。その理由とするところは、はつきり人数が掴めない、或いは実態等も明らかでないというようなお話でしたが、これは或る程度作業をお進めになつてそのような結論が出たわけですか。作業を進める前にもすでにそういう立場に立つて検討を省かれたのか。
  31. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 今適用されておりまする事業所以外の事業所の各種別につきまして個々について、私どものほうにおいて実務上の経験を加えまして検討をいたしております。その結果、先ほど一般的に申上げましたけれども、それ以外の事業所で特に問題になりましたのは興行場でございます。歌舞伎とか、或いは大映画劇場だとかいうようなことになりますと、これは余り問題がないと思うのです。実際には旅興行をする興行というようなものが一括して入つております。そうなりますると、実際数学的にはこれは保険料の徴収なり、その他の面を考えましても、なかなか実態把握は困難である。そういうことで興行場は一応この場合そういう意味で除外いたしました。それから娯楽、遊興飲食といういうな事業もあるわけでございますが、これはいわゆるサービス業でございまして、先ほど申しましたように、この大部分が賃金チツプ等で賄われておる。個定給のあるものとないものとがあつたりしまして、保険料の基本になる報酬額を押えるということは困難でございます。言葉を換えて申しますれば、いわゆる近代的な雇用関係にないと考えられますので、それから農林、漁業等はこれはいわゆる自営業が多い。自営業者というのは、これは健康保険建前から申しますと被傭者でございます。そういう意味で除きました。或いは又床屋とか理髪、或いは風呂屋というようなものがある、こういうものは床屋さんなどには若干の使用人がおつて修養をしておるようでありますが、こういう人々はやがては独立をする人々であります。従いまして健康保険こ入れますと、すぐ又厚生年金のほうの被保険者に従来からのいきさつ等からいたしまして、しなければならない関係もありますので、かれこれ考え合せまして、まだ強制適用としては少し早過ぎるのではないかというように考えております。そういうようなことで個々につきまして検討いたしまして、できるだけ掘り下げたというのが実常であります。
  32. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の興行関係の場合は相当はつきり掴めるのもあるということおつしやつたわけですが、そういうのもあれば、勿論掴めないものもあると思うのです。
  33. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 只今の点でお答え申上げます。この問題は土木、建築の取扱いのことについて御説明申上げますと御了解が頂けるのじやないかと思います。土木、建築があれでしつかりしておりますのは、今日まで強制適用になつておらなかつた。これは従来やつぱり現場作業は臨時的な作業が多いのでございますので、把握は困難であるというので除いておつた。実際問題としては、最近は本社において責任を持つて保険料を払つてもらえるというような見通しも確実になりましたので、今回取上げたわけであります。興行場につきましては全部が全部確かに、今申上げた通り、把握が困難とは申上げられませんけれども、なかにはまだ相当数、いわゆる旅興行式なものがございますので、これらも除外するわけにも理論的には参りません。もう暫く実常を検討いたしたいというのが私の考えでございます。
  34. 湯山勇

    ○湯山勇君 なおあるのですけれども、今何かおありのようですけれども、後で。
  35. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今山縣厚生大臣から九州地方水害状況について報告いたしたいとの発言を求められております。これを聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
  37. 山縣勝見

    ○国務大臣(山縣勝見君) 今回九州地区に水害が起りましたについて、取りあえず災害救助法、或いはこれに対する緊急を要する問題もありまするので、直ちに安田社会局長、高田薬務局長を福岡に、現地対策本部を設けるについて大野大臣と同行をいたさせまして、高田薬務局長を派遣いたし、なお又その他のものを、防疫官等を派遣いたしまして、緊急対策に遺憾なきを期せしめたのでございまするが、私に二日に発ちました。中央に総合対策本部を置かれて、その派遣の一員として派遣を命ぜられましたので、行つて参りましたのであります。併し本委員会には主として厚生省所管の災害救助或いは防疫等について御報告を申上げたいと思うのであります。  この災害が起りましていつも先ず問題になりますのは、緊急の災害の救助並びに防疫対策でありまするが、緊急の災害の救助に関しましては、いわゆる災害救助法がございまして、この発動を直ちに罹災各県にいたしまして、そしてそれに基いて例えば炊き出し、或いは衣料或いはその他の救助、食糧或いは応急仮設住宅或いはその他の、災害救助法によりまする応急の給付をいたしましたが、同時に政府の持つておりまする備蓄の衣料とか或いは毛布でありますとか、こういうものも現地に送り、なお又アメリカのCAC、或いはケア物資、その他も空路或いは鉄路、或いは海路輸送をいたしたような次第であります。で、私は二日に飛行機で参りまして、その後できるだけ短時日でございましたが、主として小型の飛行機或いはヘリコプターを利用いたしまして、罹災各県に参りました。やはりこの一番ひどいのは熊本地区或いは筑後川の沿岸では久留米、又大分側では日田地区等も相当ひどいのであります。それらの政府関係のものにつきましては、他の機会に又御報告があろうと思いまするから、災害救助及び防疫対策についてとりました政策、或いは今後に残つておりまする問題について簡単に申上げたいと思うのであります。  この災害救助のなかで一番問題になりまするのは先ず炊き出しでありまするが、私は佐賀へ参りまして、例えば嘉瀬川の流域の嘉瀬村に参りましたが、これは小さな小川でロープを伝つて行つたようなところであります。例えば熊本のごときは阿蘇の火山灰、これは新聞で御承知の通りでありまするが、これを押し流して、これは想像も付かない。いわゆる泥害であります。これはもろ表通りもひどいのでありまするが、更に裏通り、路地に入りますと泥で埋まつてしまつておるというようなことであります。その量等につきましてはいろいろ言われましたが、そういうような地区におきましては、御承知の通り災害救助法によりますると、六日間炊き出しいたしますが、到底六日間ではできませんので、更に四日間延ばして十日間にいたしましたが、私が現地で見ましたところだけでも、その十日間では到底この炊き出しが終えるような見込みのないところも相当多いので、これは厚生大臣認可をそういうような局部的にしてしまつて更に延ばす必要があるんじやないかと思います。その他衣料等につきましては、大体現地調達も可能であり、又絶対量は余り不足いたしておりません。と申しますのは米は一時は相当福岡等において数百円になつて来ましたが、私の行きましたときは大体二百七十円、或いは八十円ぐらいでありました。併し衣料は殆んど上つておりません。そういうような関係で衣料等にはそう心配がないのであります。ただ災害直後は例えば医薬品にいたしましても、食糧にいたしましても衣料にいたしましても、絶対量は大体あつたが、交通の関係等において配給に多少アンバランスがありました点がありますが、これは多少交通も回復いたしまして、私が熊本へ参りまするとき、濾水機を飛行機に積んで参つたようなことでありまして、大体現在におきましてはそういうふうなものは現地調達或いはその後の措置が大体遺憾なくとれておると思うのであります。この災害救助につきましては問題になりまする点は、例えば、炊き出しの期間であるとか、仮設住宅の単価の問題であるとか、或いは学用品等の確か二百七十五円のやつを中学生等につきましては千百円に上げましたが、そういうように上げて参つた。或いはその他仮設住宅の単価、衣料の申告も十日間になつおりますけれども、できれば多少延ばすとか、何かいろいろそれは応急の措置をとつております。ただ一番問題になりまするのはやはり今後の、現在の災害救助法では都道府県といいまするか、むしろそれに対応した国庫の予担は普通税収入の百分の一を超過するものについて五割乃至八割という規定がございまするがこの百分の一というと現在の基準がこのまま参りますれば、今回の水害が相当甚大でありまするので、地方自治団体のいわゆる負担というのは相当過重であつて従つて私が帰りまするときには、今回の水害の被害は千六百幾億という算定でありましたが、今日大野大臣が帰つて来られた報告によれば二千億を超えております。そういう際において従つて災害救助の範囲も広く、又その何といいまするか、内容も只今申しましたように基準も引上げております。従つて地方自治団体の負担は相当過重でありまするから、今後災害救助法の国庫負担の限度というものを緩和するといいまするか、引上げるといいまするか、相当この点については考慮すべき点があるんじやないか、これが一点であります。その他いろいろありまするが、主として厚生省関係を申しますれば災害救助法についてはこれが一番大きい問題じやないかと思います。防疫対策でありますが、防疫対策につきましては、大野さんとも話をいたしまして、今災害対策本部が中央・現地にありまするが、現地の対策恥部も、ありていに申しますれば、災害救助法或いは防疫対策或いは稲籾の手配、或いは直轄河川、その他のいわゆる締切り工事或いは食糧の繰上配給或いはその他の問題についても、大体緊急対策の八割ぐらいは私はもう終えておりまするが、仮にさようなことがあつて、今後相当のいわゆる災害対策の重点が、中央に移つても、現地においては防疫対策に関する限りは、相当重点を置いてやらなくちやいかん。その意味で大野さんとも話合つて、若しも今後現地における防疫対策本部というものが、いつかの時代になくなつても、防疫対策本部というものはむしろ強化して現地におくべきであるとい、ことで、大体その方針は閣議に諮つて、大体そういう方針を取ることに相成つておるのであります。今回の防疫対策につきましては、いち早く地域を指定し伝染病予防法によつて、又関係府県に対して救助班或いは衛生班等の派遣を命じ、本部からも防疫官が参つております。私が帰りまする前日に九州地区の衛生部長会議を開き、なお又防疫官も参加いたしまして、この防疫対策を検討いたしました。大体この救護班の編成派遣、これは大体保安隊からも、久里浜から参りまして、大体人員的の配置は終えました次第であります。その他必要があれば派遣することに相成つております。それから薬品等につきましては大体現地調達が可能であるという報告がありましたが、中央におきましては必要なものはいつでも送る、なお又製薬会社の在庫品の調査等もいたしております。現地で初めクロール・カルキとか、そういうふうなものが一時不足いたしました。併しこれは大体今手配を終えましてこの配給に遺憾がありません。それから一番心配いたしておりまするのは赤痢でありますが、赤痢につきましては私も特に重点を置いて現地に参つて調査をいたし、又防疫対策の一番最重点に置いておりますが、昨年と比較いたしまして本年の、たとえば六月の十五日から私が発ちまする前の、一番最近の統計、七月の三日か四日までの統計を見ますと、昨年の同期の罹災県におきまする発生総数千幾らかであります。本年はむしろたしか八百か九百足らず、そういうふうにしてむしろ赤痢の発生数は減つておるということが言い得るのであります。勿論県によつては殖えておる所もあり又減つておる所もあります。これは詳細な点は数字を以て申上げてもよろしいのでありまするが、数字を以て申上げますると、たとえば福岡県は六月の十五日から七月の三日までの累計が昨年は三百十一名、本年は二百四十五名で、減つております。佐賀県は、昨年は百人、本年は百三十六名、これは少し殖えております。長崎県は昨年が二百六十四名、本年が百四名、長崎県は昨年は何か集団的に発生状態にあつたようであります。それから熊本県は昨年二百二十六名、本年は二百四十二名、大分県は昨年が八十四名、本年が百二十五名、山口県は殆んど昨年も本年も少くて、昨年が三十一名、本年は四十一名、合計昨年が千十六名、本年が八百九十三名となつております。併しかようなことを現地で申しますと、如何にも政府が防疫対策に安心をいたしておるようなふうな印象を与えるといけませんので、決してさようなことは申さないで、一番の今後の重点は防疫対策であるということを強く申し、殊に報道陣にも協力を求めて、その点の思想の徹底をいたしております。なおこれは専門家もおいでになるので、今回はたとえば予防或いは治療方法につきましても、従来は検便をいたしまして、それから隔離をして治療をするというような方法を取つておりましたが、今回は先ずそういう懸念がありますれば、先ず以て抗生物質を与えて、然るのちに検便をして、先ず以て伝染力を断つて、然るのちに治療をするというふうな方法も取り、いろいろ防疫対策につきましては万全を期しております。それから濾水機は今確か二十八台ぐらい動いております。その後神奈川からも、衛生隊からも、或いは駐留軍からも借りております。それから井戸水等に対して消毒剤を撒くとか、水道水に対しましては従来以上に消毒液を濃くするとかいろいろやつております。これは新聞紙上で或いは御覧になつているかも知れませんので申上げますると、確か朝日新聞であつたと思うのでありまするが、久留米の上流の筑後川が決壊いたしましたために、久留米が丁度三角州の底辺のような所に当つておりまして、これは非常に何といいますか、非常に水害を受けております。実に熊本もひどいのでありまするが久留米もひどい、それで丁度私が着きました晩に久留米の医大のかたがやつて来て、確か自分が六百人ぐらいを屋根の上に上げて救済をしたというような惨状なりいろいろなことを言つておりましたが、その後朝日新聞に久留米の医大の細菌学教室のいわゆる細菌を入れてある二百本ほどの管が流出をいたしまして、そうして久留米が伝染病の脅威の中に曝されておるというような大きな記事がございました。翌日、私はこれは捨て置けませんのでヘリコプターで防疫官を連れて現地に参つて、医大の責任者及び市の責任者立会の上でそれを調査いたしましたら、二百本は完全にそのまま箱の中に保管されてあるのであります。なお又細菌を培養いたしておりましたこの管の中に水が入つたとか何とか言われましたが、これも水は入つていないので、そのまま保存されております。これは一応そういうふうな相当大きなデマで、久留米市はそのために相当人心が動揺いたしましたが、そういう事実はないということで、これも新聞に発表いたしまして、事なきを得ております。そういうふうなことで大体防疫対策は人的、物的の配置、又いろいろな防疫対策に対しての措置も一応万全を期しておるような次第であります。今後ともなお民生部長会議を私の発ちまする日に午前中に開きまして、災害救助法の今後の国庫負担の限度等の、或いは法律改正等の問題もございまするが、大体厚生省といたしまして関係のあります災害救助防疫対策、一応応急対策並びに今後予想される恒久対策に対して万全を期しておりまするような次第であります。一応御報告申上げます。
  38. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後二時五十分散会