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1953-07-06 第16回国会 参議院 厚生委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月六日(月曜日)    午後一時三十二分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     堂森 芳夫君    理事            大谷 瑩潤君    委員            中山 壽彦君            西岡 ハル君            横山 フク君            廣瀬 久忠君            竹中 勝男君            有馬 英二君   政府委員    厚生政務次官  中山 マサ君    厚生省公衆   山口 正義君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    引揚援護庁次長 田辺 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生大臣官房統    計調査部長   小沢  龍君    厚生大臣官房国    立公園部長   森本  潔君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○らい予防法案内閣提出衆議院送  付) ○社会保障制度に関する調査の件  (厚生省関係昭和二十八年度予算に  関する件) ○参考人出頭に関する件 ○理容師美容師法中一部改正に関する  請願(第八八一号)第一一一一号) ○理容師美容師法改正反対に関する請  願(第一一二号)   ―――――――――――――
  2. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開会いたします。  この際本日の議題らい予防法案を追加いたしたいと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないと認めます。  それでは本日公報でお知らせいたしておきました各議案に先立つてらい予防法案議題といたします。提案理由説明を願います。
  4. 中山マサ

    政府委員中山マサ君) 只今上程さ、れましたらい予防法案提案理由について御説明いたします。  らいは慢性の伝染性疾患であり、一度これにかかりますと根治することが極めて困難な疾病でありまして、患者は勿論、その家族がこうむります社会的不幸は測り知れないものがあるのであります。  このらい予防を図りますために、明治四十年に癩予防法が制定され、爾来、この法律によつてらい予防施策が実施されて来たのでありますが、何分にも、この法律は、約五十年前の制定にかかるものでありますため、その後数次の改正を加えてはおりますものの、今日の実情にそぐわないと認められる点もありますので、これを全面的に改、正したらい予防法を新たに制定しようとするものであります。  この法案内容は、おおむね、次の通りであります。  今日、らい予防しますためには患者の隔離以外にその方法がないのでありまして、この見地から、本法案においては、その第六条において患者国立療養所への入所措置規定しておりますが、この場合において、患者療養所への入所後における長期の療養生、活、緩慢ならい伝染力等を考慮し、先づ勧奨により本人の納得を得て療養所入所させることを原則とし、これによつて目的を達しがたい場合に入所を命じ、或は直接入所させる等の措置が特例的にとられることどなつております。  なお、療養所入所している患者は、らい予防見地から、法令により出頭を要する場合及び所長が許可した場合を除いては、当該療養所から外出してはならないこととしております。  さらに、右に申し述べましたように社会から隔離されております入所患者でありますので、その者が、当該国立療養所内秩序を乱しました場合、これについて一般施設におけると同じく退所の処分を行うことができませんので、所長秩序維持の手段として、戒告又は謹慎の処分を行いうることとしております。次に患者及びその家族福祉を図、り、併せて、これによつてらい予防対策の円滑な推進を図りますために、患者及び家族福祉措置についての規定を設けております。即ち、入所患者について、国は、患者義務教育若しくは高等普通教育又は厚生指導を受けるために必要な措置を講じ、患者家族については、療養所長がその福祉のため必要な援助をし、或は未感染児童について必要な福祉の方途を講ずる等福祉に関する規定を設けております。  その他、らい予防に関しまして必要な規定を設けております。  以上がこの法律案内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられますようお願いいたします。
  5. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 本法案審議は次回に廻したいと思いますが、御異議ございませんか。
  6. 有馬英二

    有馬英二君 御承知通りらい患者が最近国会の周囲に多数押寄せてきておるので、予防法上誠に不安極まりない状態であると思います。我々委員会としてばかりでなしに、党派のなかでもこのことについて、非常に何と申しましようか、苦情を言われることがたくさんある。なぜこれを公衆衛生の方面から取締らんかというのでありますが、その点について一つ公衆衛生局長もおられるようですから、御説明を承わりたい。
  7. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 只今の御質問に対しましては誠に御心配頂きまして、私どもも非常に責任を感じておる次第でございます。このような事態を起しました経過については、たしか前週の木曜日までの事情は、一応この厚生委員会で以て御報告をいたしておつたと思うのでありますが、その後の事情につきまして、簡単にかいつまんで申上げますれば、木曜日に約四十名ばかりのものがこの国会へ、特に衆議院に参りまして、衆議院先生方にお目に掛かりたいというようなことを希望しておりましたのです。これが三々五々こちらに出て参りましたというような事情で、少くとも全生園におきましては外出を許可したものではないのでありまするので、この者に極力帰園勧告したのであります。いろいろ議員のかたがたにお目に掛かりたい、又そういうような話が今進んでおるというようなことで、夕刻に至りましてもなかなか帰らなかつたのでありますが、五時も過ぎ、こちらで先生がたにお目にかかることももうできないような事情にも至りましたので、是非帰つてくれということを更に重ねて勧告をいたしました結果、八時頃に至りましてこの患者帰園いたすということを承諾いたしたのでありますが、その際にこちらに出て参りましたのは、許可を得ずに出て参つたので、これはそれを防止し得なかつたことは、私どもとしても非常に責任を感ずるのでありますが、出て参りました以上、これをできるだけ他に病毒の散らばりますことを防止する方策を講ずる責任がございますので、バスを用意いたしまして、これによつてこの全生園に送り帰そうというふうに努めたのでありましたけれども、遂に患者がそれをがえんじませんでして、バスに乗せることができずに、患者が又自由な行動をとりつつ帰園をしたというような事情でございます。そして……、今申上げましたのは、私ちよつと心得違いしましたが、水曜日のことでございます。それで翌日は衆議院小島厚生委員長ほか数名の委員かたがたが全生園においで下さいまして、患者先生がたにお目にかかつて、その一日は、木曜日は割合に平静な状態を示したのであります。それで当日の夜遅くなりまして、この多摩の全生園園長から私どものほうに連絡がございましたのですが、患者がしきりに、明日は自分たちを連れて行け、国会に陳情したいから連れて行つてくれということをしきりにせがんでおる。自分としては極力これを慰撫しておる状況であるということを伝えて参りました。で、翌日金曜日になりまして、多摩から又連絡があつて患者の懇望を抑えることができずに遂に、却つて三々五々出て参りますのは、結果としてらい予防上恐るべきところが却つて多いと考えられるので、むしろ園バスをこの際止むを得ずながら出しまして、これに患者を乗せて参りたいと思う。但しこれはバスからは絶対に出ない、又園長の指揮に完全に服するという条件をもつてこの国会まで連れて来ざるを得ない状況なつたという報告が参りました。で、このバスは当日の十一時十五分頃にこちらに着きまして、そしてやはりいろいろな先生がたに御面会を願いたいということで、若干のかたがたにはお目にかかつたようであります。その晩に至りまして、もう先生がたにもお目にかかつたことだし、ここでもつてそろそろと帰つたらどうかということを園長が奨め、又命じたのでございますけれども患者バスから降りて、この常任委員会の建物がございますあの前に座り込みまして、そしてどうしても帰ろうといたさないのであります。で、かなり遅くまで、たしか十時近くまで待つたと思うのでありまするけれども、とうとう説得することができませんでした、又その間に留守の園内のことも、状況も心配でございますので、園長一つこれでもつて帰る。だから諸君のうちできるだけ多く帰つてくれということを申しましたが、やはりきかない、それで身体の弱い者或いは婦人というような人だけでも帰つてくれと申しましたが、結局一人だけ園長一緒に帰りまして、他の者はその儘そこに居座つたような状況なつた。そしつてこれに続きまして又多摩からの情報が参りまして、患者が四、五十名園を脱出したようであるという報告がございました。その晩のうちに今のように若干出まして、その後も幾分ずつこの園の職員の阻止をきかずに、数名づつ外に出た模様であります。翌朝土曜日になりまして、前の晩から出ておりました者、こういうような者が逐次国会に集まつて参りまして、なお当日は今のように患者が相当脱出して来る模様でございますので、園の職員をその附近の電車の停車場に配置しまして、そして来た者は説得によつてそれを園に帰すというような措置をとりました。若干の者は帰つてくれたと思うのでありますけれども幾分ずつその間隙を縫いまして、そしてこちらに参り、前日は四十名ばかりございましたのですが、その当日のお昼頃は百五十名ばかりになり、更にその後も少しずつ殖えまして、多い時には百八十名程度なつたと思うのであります。御承知のように当日は衆議院厚生委員会でこの法案について慎重なる御審議が進んでおつたわけなんですが、その結果を見ないうちは、どうしても帰らないということを言つて、その結果がわかるまでもう少し置いてくれということを申しておつたのでありますが、それが厚生委員会審議が大体済みました頃に、更に帰園を勧誘いたしましたけれども、今度は本会議にかかるか否か、本会議にかかるならば、その結果を見届けたい、そうでなければ自分たち帰つて他患者に会わす顔がないというようなことを申して、もう少し置いてくれということを言いました。それでは四時まで待つて、四時までには本会議の決定も見るであろうから、それまで待とうということで四時まで待ちました。四時になつてこ法案衆議院の本会議で可決いたされました。このような決着を一応見た以上取りあえず帰園して、そうしてその後この次に参議院審議をいたされるに対して、いろいろ諸君意見を申し述べたいということに対しては、私どももその間にこの仲介の労をとり、何かのできるだけの方法を講ずるように取計らいますからとにかく園に帰つてくれということを申しましたが、これもすぐには承知いたしませんでした。なおこちらの参議院草葉議運委員長もおいで下さいまして、参議院においては十分諸君の意を酌み取つて、そうして諸君と十分に意思の疏通を図つて、そうして法案慎重審議をやるから、とにかく園に一応帰つてくれということをお奨め下さいましたのでありますが、なかなかすぐにはうんと申さなかつたのであります。で、暫く自分たちに考えさしてくれ、又私どももそれではもう少しみんなで相談して見るがよかろうということを申して、一応私どもつておりましたのですが、患者意見といたしまして、若干名のものをここに残してくれ、そうしてここに居残つていることを認めてもらえるならば他の大多数の者は私どもの勧誘に従つて帰つてもいいというようなことを申して参つたのでありますが、私どもといたしましては扱つております患者をこの野天に置いて、そうしてそのままでよろしいということは申すことがどうしても責任上できませんので、私どもとしては諸君にどうしても帰つてらいたいのだ、併し諸君が帰らんというのではこれは何といつても今のところやむを得んのであるから……。そうすれば大多数の人たちだけでもつれて帰る、成るべく一人でも多く余計に帰つてらいたいということを申しました。私どもとしても満足とは思わないのでありますけれども、止むを得ずさような措置をとりまして、バスを七台ばかり動かしまして、そうして午後の十時頃にここを立つて、そうして帰園いたしたような次第でございまして、帰園の途中及び帰園いたしましてから後はおおむね患者は平静にいたしておるわけであります。ただこちらへ残りました二十七名の者、そうしてその大多数の者を帰すといういろいろ準備をしております頃に駿河療養所からバスに乗りまして十九名の者が到着いたしましたので、これが、初めに患者二十七名だけ残してあとの者はみんな帰ろうということを言いましたが、この者にも取りあえず全生園に帰つてくれということを申しましたけれども、この者は到着したばかりでなかなか気が昂ぶつておるものでございますから、とうとう二十七名の者と一緒あとまで残つたというような状況でございまして、その後、昨日はそのままの状況で続きまして、それから本日はやはり同じような状況が続いておるのでありますけれども草津から参つておりました患者のうち十五名が、園長も出て参りまして説得いたしました結果、本日午前中に草津に帰りました。こういうような状況で、又園外に出ました患者がまだ帰園勧告及び命令に服しないで只今四十五、六名の者がまだ残つておるというような状況でございます。私どもとしても今のところ若干名の職員を出しまして、そうしていろいろと監視し、又見守つておるような状況でございます。今のようにこの多勢の者が外に居りまして園の職員としても十分な世話がやき切れませんので、是非園に帰つてくれと極力勧告いたしたような次第でありますが、それにもかかわらず残つた者に対しましてはなかなか園としても十分な世話をするということができませんので、ただそうかといいまして体の弱い病人たちでございますので放置して置くわけにも行かず、今日は、毎日この園の委員看護婦をこちらに派遣いたしましてその患者身体状況というものに、この放置できない者は無理をしてでも園に帰つてもらつていろいろな僚養を続けさせるというような医療措置を講ずるというようにいたしておるような次第でございます。これを今日もその勧告を続けておるような状況でありまして、殊に初めに残りました二十七名のほかに十九名の者も参つておるような次第でありますので、こういうような人たち是非少くとも多摩の全生園へ帰つてもらつて、できるならばもとの、駿河から来てあります者は駿河へ、自分の出て来ました園に至急帰つてもらうように極力勧告いたしておるような状況でございます。  なお患者がおりますところのいろいろな清掃の問題でありますとか、或いは患者の大、小便というようなものにつきましては成るべくその病毒が散乱いたしませんように便所を指定するとかいうような方法を講じて、極力その弊害の少なからんことに努めておるような次第でございます。  大体今日まで前回御報告申上げました後の状況お話申上げたような次第でございます。
  8. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  9. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記を始めて。
  10. 有馬英二

    有馬英二君 只今説明がありました我々参議院委員会においても御承知のように先だつてわざわざ委員長初め数名の者が癩療養所行つて患者の言うことを精細に聞いて来た。我々としては非常な好意を以て患者に対したように、又今回もらい予防法改正についても、どうかしてこの気の毒な患者さんのこれからあと療養に深い同情を持つていろいろの厚生施設その他今まで行届いておりませんことまでも考えてあげなければならんというように、非常な同情を持つてつておるのでありますが、かようなその療養所から所長がとめても聞かないで勝手にどこへでも出かけるというようなことをいつまでも放漫な処置をとつておるように見えるような、非常な危険な状態に放置しておるということは、これは許されないことであると私は思うのですが、これは少くとも我々厚生委員責任であるようにも私も思いますからして、もつと積極的にこのらい患者が出て来ないような方法を余りにも温情主義で以て公衆一般に非常な迷惑をかけるようなことを放置して置くように見えるような措置は私はどうも認むべきではないと考えておるのですが、そういう点において、もう少し積極的な措置をとられないかどうか、その点をちよつとお聞きしたい。
  11. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) この園に収容されました患者に対しましてはその外出を禁ずるという明文が現在の法規に載つておりません。ただ園秩序を保つという意味におきまして所長の指示、命令に従わず、著るしく秩序を害するというようなものに対しましては検束或いは監禁というような措置を講じ得るような規定がございますのですけれども、この規定自身が非常に窮屈な規定であつて、こういうような規定園長だけで決定するというようなことが今日の考え方と申しますか、そういうようなものに照して必ずしも適当でないということを患者も切に主張しておりますし、又私どもとしましてもさような形が現状としましては必ずしもいい姿ではないというふうに考えたのが今回の予防法改正案ということにもなつておりますので、成るべくはその条項を用いるというようなことは最後の万止むを得ざるときに至らなければ成るべく用いたくないというふうに考えておりますので、さような事情からこの患者の脱出を極力説得により、或いは職員の力でもつてできるだけ防ぐという方法をとつておるわけでありますけれども、どうしてもこれが広い園のことでございますので、いろいろな場所から脱出するということを到底数の少い職員で防止することが事実上困難な状況になつておるわけであります。なお外に脱出いたしました患者に対しての措置ということにつきましては、公衆衛生局長のほうから御答弁申上げます。
  12. 山口正義

    政府委員山口正義君) 只今有馬先生の御指摘の点、公衆衛生立場から私どもも非常に苦慮しておるところでございまして、先ほど医務局長から概要を御説明申上げましたように、一時は非常に多数の患者国会附近に屯するというような状況になりまして、公衆衛生立場からも非常に憂慮すべき状態であるというふうなことも考えられる状態になつて参りましたので、療養所外東京都内における公衆衛生の直接の仕事を担当しております東京都の衛生局のほうともいろいろ打合せをして参つたのでございます。先ほど医務局長からも申上げましたように、患者寝所等も十分考慮いたしまして、できるだけ説得によつて帰園してもらうという方法を現在までとつて来ているのでございます。これが更に飽くまでも同じような状態が続きまして一般公衆衛生に対する影響というものが非常に大きくなつて来るというような状態も考えられますので、この点につきましては直接東京都の公衆衛生を担当いたしております衛生局のほうともいろいろ相談をいたしておるところでございます。
  13. 有馬英二

    有馬英二君 この際患者糞尿ですね、小便、大便の実際的の処置はどういう工合にやつておられるかということを一つ消毒なんか。
  14. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 患者糞尿の処理につきましては、日中、まあ夜もそうでございますが、大体バスがそばについて一台か二台ございますので、それによりまして一定の便所を定めまして、そこで以つて用を足さしておるような状況であります。一時患者が非常に多く参つておりましたようなときには、それで以て間に合わないようなことも起りましたので、さようなときには極く危害の少いと考られます所に穴を掘つて、そうしてそこに用を足させましてそうしてあとを厳重に消毒するというような方法をとりました。
  15. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 らい入所患者についての外国立法ですね、何か参考になるものもありますか。問題の伺いたいのは、今度の問題でも強制という点が問題になつておるのですから、そういう点について、まあアメリカにはあるのじやないかと思うが、どんなふうになつていますか。強制ということはやはり相当強くやつておりますか。その点について。
  16. 山口正義

    政府委員山口正義君) 外国におきますらい予防法関係法令につきましては、お手許に「世界各国らい予防対に策ついて」というものを法令そのものでなしに極く抄録いたしまして差上げてございますが、収容につきましての強制力をどの程度発揮するかという点につきましては、これは国々状況によつて差がございます。これは先般医務局長が出席されましたWHOの総会におきましてらいに関する特別委員会報告がございますが、それによりましてもらい患者収容ということについて強制力をどの程度使うかということについては、その国々状況によつて異なるというふうになつているのでございますが、アメリカにおきましては、らい患者看護収容治療のためみずから申し出た者、或いは逮捕された者、又は州、準州、コロンビア地区保健当局から正式に委託されたものをルイジアナ州にございますら、い療養所入所させるというようになつております。又南アフリカにおきましては、相当強制力をもつてこれを収容するというようになつておりまして、まあらい患者のおりますアメリカ、これは一部でございますが、それからフイリピン、南アフリカ、インド、ブラジル等、それぞれその収容方法に或る程度の差はございます。状況によつて強制的に入所させるというような方法をとつております。
  17. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 今のお話は、大体強制収容の問題に触れてのお話ですが、内部の秩序維持或いは外出等についての細かいことはおわかりになりませんか。
  18. 山口正義

    政府委員山口正義君) 只今ここに法令の細かい資料を持つてつておりませんので次回にお答えさせて頂きたいと思います。
  19. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 今回の入所患者意見というものはもはやずつと前からあつた意見であるのでありますから、今度立法当局がなさるについてはそれらの点にいかなる考慮を払われましてこの法律に編み上げられたのか、この点を一つ伺いたい。
  20. 山口正義

    政府委員山口正義君) 患者が以前から希望しておりました強制健康診断ということを廃止してほしいという希望でございますが、これは伝染病予防対策伝染病患者又はその疑いのある者を診察させ得るということを都道府県知事に権限を与えておるということは、これは他の伝染病一般対策と同じようにどうしても設けなければならない規定だと存ずるのでございますが、ただその実施の仕方におきまして患者強制力を強く用いられることを嫌がる、或いは秘密保持の観点から昼間白衣を着た人が大勢出入りするというようなことを患者が非常に嫌がりますので、そういうことはやらせないように、例えば他の集団検診と同じようなときに一緒にそれとかけてやる、或いは夜間訪問して診察させるというようなことを、これは法の文章の中でなしに運営上そういうふうに指導して参りたい、そういうふうに考えております。それから入所の件でございますが、これは患者が以前から強制入所ということを非常に嫌がつておるわけでございますが、併しらい伝染性疾患であるということは世界の学者が認めておるところでございまして、世界各国立法らい伝染性疾患であるという根抵に立つて立法されております。私どものほうでもその根抵に立つて今回の法律を立案しているわけでございますが、公衆衛生立場かららいを他人に伝染させる虞れがあるという患者につきましては、やはりどうしてもそれが療養所入所を肯んじないようなときには無理にでも入所させて治療を受けさせ、そうして公衆衛生上の害を取除かなければならないというふうに考えておるのでございます。ただ現行法ではその第三条第一項におきまして都道府県知事は、文章は少し間違つておるかも知れませんが、癩を伝染させる虞れがある患者で嘱予防上必要があると認めるときは、獺療養所入所せしむべしというその一項だけでございます。今回の立法におきましては、先ずそういうらいを伝染させる虞れのある患者につきましては療養所に入ることを極力勧奨いたしまして、どうしても勧奨に応じないというときには都道府県知事命令を出す、それでもなお入所を肯んじないという者につきましては初めて、言葉で申しますと、強制的に入所させるというふうに三段構えにするという配慮を払つているわけでございます。それから患者が基本的人権の侵害であるといつて盛んに訴えます懲戒、検束に関します規定でございますが、現在現行法の第四条の二によりまして、所長が所内の秩序維持上必要があると認めますときは患者に対して懲戒又は検束を加えることができるということになつておりまして、その内容といたしましては省令で規定いたしまして戒告謹慎、それから監禁というふうになつておりますが、まあ先ほど事務局長からも申上げましたように、監禁と申しますのは一室に鍵をかけて入れるというようなことでございまして、まあそういうことは余り行過ぎかも知れないというので、そういう点は省きます。そうして戒告と謹慎だけにするというようなことをいたしたのでございます。それから患者がしばしば訴えます秘密の保持という点につきましては、私どももできるだけその点は患者の心情もよくわかりますので、その点を酌み取らなければならないというふうに考えておりまして、これは法文には現われておりませんけれども、医師が患者を診察して都道府県知事に届出たる場合は、ほかの伝染病でございますと、保健所を経由して届けることになつているのでございますが、今回は保健所を経由しないで直接知事に届出る、或いは病毒を感染された家屋とか、物件を消毒いたします場合に、今まで消毒に白い着物を着た人がたくさん出かけて来られて困るという話でございましたので、今回の法案におきましては第八条、第九条において、先ずこの消毒に要する必要な物件を患者家族に与えみずから消毒させるようにして、そうしてどうしてもやらないというときに、初めて都道府県知事の手で実施をするというようにいたしているのでございます。  それからやはり秘密保持の点から、患者が非常に心配いたします生活保護法関係の問題でございますが、これは患者家族の家で生活に非常に困窮している者もあるのでございますが、生活保護法によつて保護を受けようといたします場合には、社会福祉事務所或いは市町村の手などを煩わさなければなりませんので、どうしてもらい患者家族であるということが一般の人にわかつて困る、それでどうしても生活保護法の適用を受けるのを嫌がる、実際受けなければならないような状態でありながら受けるのを嫌がるという状態でございますので、そういう点は今回の第二十一条におきまして、療養所の係員を家族のところに派遣いたしまして、そうして患者家族との連絡に当らせ、又家族が生活に困つているというような場合には、その係員が都道府県の衛生部に参りまして、衛生部の職員、これは民生部と併任してもらうことに社会局に話がついておりますので、その衛生部の職員が生活保護法に関する手続を全部して、つまり検診に行つたり或いは入所勧奨をする同じ人間が全部生活の面倒までみてやるようにしたい、そういうように考えているわけでございまして、患者の家に出入りする人をできるだけ範囲を狭めて、そうしてらい患者家族であるということが他に漏れないようにいたしたいと、そういうふうに配慮を払つているわけでございます。  そのほか患者が、福祉の面におきまして、収容されております子供たちの教育の面或いは患者の福利増進、更生指導などにつきまして十二条、十三条、十四条に規定を設けましたし、又従来はつきりした規定のございませんでした患者福祉患者家族福祉というような面につきましても、第四章に只今申上げました二十一条、二十二条、或いは現行法にもございますが、一時救護に関する等の規定を設けたのでございます。  以上概略でございますが御説明申上げました。
  21. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 大体の立法の心持はよくわかりましたが、勿論当局においては各療養所にこの立法をすることについては、かくのごとき心持でこの程度までは止むを得ないのだということをよく徹底を図つておられることであろうと思うのです。その点は如何でありますか。
  22. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) この今回提案されました法案については、これを決定いたします場合に、いろいろと療養所所長会議を開きまして、いろいろ意見を徴してございます。なおそれと同時に患者のほうからも、只今公衆衛生局長からお話申上げましたように、いろいろな希望、陳情等がございますが、こういうような点も考慮しつつこの成案として提出いたじまする最後の日までいろいろと検討を重ねながら提案をいたしましたような次第でございます。勿論最後的な案を所長に示したということは、むしろこの国会に本案を提出したのちになつておるのでありますけれども、その前に大体の方針、考え方というようなものはこちらからも話し、又所長からもその希望意見というものを十分に徴してこの決定を得た次第でございます。
  23. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 大体は、そうすると各療養所において大体の構想は知つておることであると思いますが、なお一つ伺いたいのは、この立法をするについて、同時にこれが療養所関係の予算面、予算の方面においてどういうように、福祉とかその他施設についての政府の予算案はどういうことになつておりますか。
  24. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 今後本案が可決いたされますれば、これに従つていろいろな策が推進されなければならんのでございますが、只今のところ私ども二十九年度予算に、それ以前に比べまして新たに追加をして頂き、或いは増加をして頂きたいというふうに考えておりますことは、一つはこの職員の手の増加でございますですが、これはいろいろと手が足りないために患者に対する療養の手が十分に廻りかねるというようなことがございますので、その面におきまして、一気に十分というわけには行きかねるかも知れませんが、少くともここ数年の間に十分な手を揃えたいものというふうに考えております。  それから患者に対しましてのいろいろな療養の費用、及びこの長い間滞在してもらつておりますので、その間の生活の経費というような単価をこの現状に照らしまして、不自由のないように増加をして頂かなければならんと思いまして、そういうような点も考えてございます。それから今日でも、いろいろ夫婦舎でございますとか或いは男病棟、女の病棟、或いは子供の患者、児童患者収容施設でありますとか、或いは子供たちの学校施設というような類のもの、こういうものをこの幾分の病棟を逐次改築いたしたりいたします場合に、そういう点を考えておるわけでありますが、今後といたしましては、病床の総数は本年の、二十八年度の、これもまだ決定はいたしておりませんけれども、予定といたしましては千床を増加をいたしたいというふうに考えておりまして、それを加えますれば一万三千五百床ばかりになるのでございますが、この数はかなり揃つて参りましたけれども、これを特殊な患者の特殊な目的のために使いますという意味から行きますと、現在の病棟の状況だけでも如何かと考えられます。これをそれぞれの目的に叶いましたようなものに逐次改築して行くというような必要があると考えておりますので、さような面にも経費を相当に要することだと考えております。それから学校の問題にしましても、小学校、中学校は殆んど全部の施設が整つておるのでありますが、患者の側からは、何か高等学校の教育を受けられるそういうような設備も、もう少し具体化してくれというような希望も述べております。さような面についても今後考えて行かなければならんのではないかというふうに思つております。又先ほど申上げましたことの中に含まれるかも知れませんけれども、入院患者に対する慰安費でございますとか、或いは患者の無聊を慰めるというような意味から始められたと考えられます院内作業というようなものに対しましては、その作業謝金というようなものが、これが入院患者のお小遣いにもなりますこと故、できるだけ増加を図つて参りたいというようなことも予算に明年は組入れたいというふうに考えております。大体その他のこともございますけれども、明年度どのようなことを入れるかと考えておるかということにつきましては、今申し上げましたようなことを考えております。
  25. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は明年度のこともお伺いして結構ですが、今年度二十八年度には何か予算の変化があつたかということに重きをおいたのでございますが、その点は変化はありませんですか。
  26. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 二十八年度予算の中に組入れておりますものは、先ほど申上げましたうち患者療養費或いは食費等の単価増というようなことを一つ組入れてございます。それから又患者に対しまして特に患者家族でございますが、患者家族の保護をいたしますために、療養所に配置してあります社会、何といいますか、病院社会事業を担当の職員でございますが、この旅費を本年から組入れて頂くというようにいたしております。それから従前からもそうでございますが、特に今回この改正予防法を制定いたしたいという問題に取組みました場合に、いろいろ医学的に幾つかの問題が解決されておらないというようなことが特に感じられたような次第でございます。らい予防或いは治療、或いは患者のいろいろな保護という面におきまして、いろいろと根本的な基礎的な研究がなお今日薄弱であるということが考えられます。これも患者からも強い要望もありまして、らい研究所の創設ということを考えたのでございますけれども、特別に一個の、別個の建物を建てるとかいうようなことについては、その形については時期尚早というような考え方もございまして、ただ実質的にはこの研究を進めなければならんということで、一千万円の研究費を本年度には組入れて頂くということでお願いを申上げておるような次第でございます。
  27. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 お考え大体わかりましたが、なお一つ薬ですな。プロミンですな。これが世界的に使われておるだろうと思いますが、この結果というようなことについて何からい予防並びに治療の上に伺えることがあつたら伺いたい。
  28. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) プロミンその他の新らしいらい治療剤が広く使用されるようになりまして、患者治療成績は非常に上つて参りました。で、恐らく戦前の状況に比べますれば、著るしい効果を挙げつつあるということが申上げられると思います。殊に病気の進行をとどめまして、病気を抑えるという意味におきましては極めて顕著な効果がある。それで従来私ども癩療養所を訪ねまして見ましたような、非常にいろいろな分泌物の多いような患者というようなものは非常に減つて参りました。患者の顔色、外観からの顔色等によりましても非常に生気を取り戻しつつあるというようなことが感じられるわけであります。併しながら患者が十分に根治した、全治というふうに認められますか否かということについては、これはなかなか学者の間にも議論があるようでありまして、なかなか非常にいい成績を挙げつつあると言いながらも、全くこの病気が治つたというふうに断定をするということはなかなかまだむずかしい段階である。併しながら実際問題といたしまして、先ず病気が固まつて他に感染を起す虞れは先ず先ずなかろうというふうに判定されましたその程度のものは若干出ておるのでありまして、これは只今詳しい数字を持つてつておりませんので、又次回にでも数字はお答え申上げたいと思いますが、一年に、昨年中で十数名のものが殆んどこのプロミンによつて先ず実際的には全治したと認めてもいいのじやないかというようなものがその程度出ておる。更にそう全治したとまでは行かないまでも先ずもう感染の虞れはなくなつたであろうというふうに考えられました軽快退院者というようなものが昨年は三十名ばかり出ております。大体非常に成績は上つて参りましたけれども、その程度状況でございます。
  29. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 プロミンの日本における成績という今のお話だろうと思うのですが、外国における成績ですね、こういうようなもので何か大いに見るべきものがないでしようか。今でなくていいですが。
  30. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 外国におきましてはやはりこのプロミン、或いはプロミンだけではございませんで、次から次といろいろな新らしい治療剤が出て参つております。又幾つかの治療剤の併用によつて成績を挙げようというような試みがなされておりまして、即ち薬品の投用方法というようなものが幾つかの試みがなされております。昨年もレオナルド・ウッド・メモリアムというファンドがございまして、このファンドによつて世界の学者がらい治療法を相協力しつつ、更に進展させようというような試みがございまして、昨年は日本の長島の愛生園においてその会議が開かれたような状況もございまして、そのとき外国状況というようなものもこちらに紹介され、こちらの研究も向うに紹介されたのでありますが、大体各国によつて幾分、まあ、より一歩進んでおるところもあり遅れておるところもございますけれども只今日本の状況というのが各国でもおおむね同じような状況ではないかというふうに考えております。ただ今申上げましたように昨年からこの治療方法等をお互いに知らせ合いながら、又お互いに相協力いたしました計画に基いて、どこの国ではどういう療法についてその成績のよしあしの判定をする、どこの国ではどういう療法を用いてやつてみるというような研究の分担をいたしてやつておるような状況でございます。又本年はこの秋にマドリッドにおいて国際癩学会が開かれることになつておりまして、日本からも学者のかたぞれにおいでを願つて、向うの知識も吸収して頂きたいというふうに考えておる次第でございます。
  31. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 大体わかりましたが、私がお願いしたいことは先ほど予算のこともお願いしたのですが、やはりなかなか困難であろうと思いますが、予算をできるだけやはりとりまして福祉方面にも力を入れたい、職員などについても考えてやらなきやいかんのではないか、併し何と申しましても一番の根本は入所患者に希望を与えるということだと思います。希望がないということが今非常につらい、それについてはやはり治らなくちや駄目なんですが、まあ薬の問題、それからなお科学研究の問題をお話になりましたが、私はまあ宗教の方面からもいろいろの方面から入つたりいろいろやつ薫るようですが、どうしても今日では科学方面から入つて薬の方面から治るという希望を一つ与えるように療養所の関係者諸君の非常な御努力をお願いしたい。この希望が与えられたら私は非常な国家のために貢献するだろう、多少そういうようなことを、私の意見ですが……。
  32. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今の広瀬委員の御希望の点については私ども委員会で、委員会というか、私どもの党派の委員会でも強調した点なんですが、強制的に収容するという以上は、一方に希望を持たせるという措置が非常に大事になつて来ると思いますが、殊に治るという希望を与えるための今の研究所或いは研究費というようなことは法律上どこにそれがあるのでしようか。そういう希望を持たせる点ですね、病気を治すことに国家が全力を挙げるというような、そういう点に関係する条項というものは、これには……。
  33. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 特にこのらいに関する研究の助長というようなことは法文のうちには語つてございませんのですが、先ほども申上げましたように本年度予算のうちには一千万円ばかり組み入れて頂きたいということで、この予算案を作つてございますのですが、又更にこの十三条に語つてあるのでありますが、「国は、必要があると認めるときは、入所患者に対して、その社会的更生に資するために必要な知識及び技能を与えるための措置を講ずることができる。」というようなところも、これは幾分具体的ではございませんけれども、この病気が治つてそして社会復帰ができるものが今日でも若干名は出ておりますし、将来はこれがだんだんと殖えて来るであろうということをこちらも希望し、又それを患者にも希望を持たせたいというような趣旨が幾分でも現われておる条項であろうというふうに私ども考えた次第であります。
  34. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今年度一千万円ほどのらいの研究費という、昨年度はどのくらいつたのですか。
  35. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 甚だ相すみませんでございますが、昨年の数字をちよつと申上げかねますが、昨年は極く僅かなものでございました。あとで数字はお示しをいたしたいと思います。
  36. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それはよく調べられた上で、その治療ということに国家が力を入れているということをはつきり出して頂く必要があると思うのですね。それはその希望という点に非常に関係して来る、人権蹂躙と彼らが考えるのに対してのこちらの意見としては、どこまでも治して出所ができるという希望を与えるというために、国が力を入れているというのですから、一千万円くらいの研究費ということは、この大きな問題と取組むのに、私も学界におるものですけれども、人を馬鹿にしたような研究費だと思うのですがね。国が一つの伝染病を強制収容しなければならないという伝染病に取組むのに一千万円の研究費では、それはなかなか研究はできないと思うのですけれども、そういう点についてどうです。
  37. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 従来といたしましても、各療養所には研究室はございました。それから又いろいろ星科学研究費等によつて研究費が幾分は廻つてつたのであります。特にらいの研究費としましては、先ほども申上げましたように、今正確な数字は覚えておりませんけれども、結核等と合せて三、四百万円程度の極く僅かのものしか出してありませんでした。それを今後はどうしてもこれを大きくして、この根本問題をやはり学問的に探究して行かなければならんというふうに思いまして、私ども最初は癩研究所の創立という構想でいろいろと折衝をいたしたのでありますけれどもちよつとまだそれだけのあれは、この設備を別個に建てるということは、もう少し待つほうがよかろうというようなことになりまして、今申上げましたように、各施設だ不十分ながらも若干の施設が、研究室の設備はございますので、その施設はそのままとして、いろいろ特殊な研究に要するいろいろな資材、研究資材或いは動物の経費とか、或いは文献を集めますとか、こういうような経費として一千万円を組もうということになつたような次第でございます。なおこの研究費の使い方といたしましては、決して獺療養所職員というふうには限定いたしませんで、いろいろ学界及びこの研究所方面のかたがた、又このいろいろ細菌讐、生物学者或いは医学者だけではなしに、化学者、植物学者、薬学者というような人たらをも広く網羅いたしまして参りたいというふうに考えておるわけであります。これが動き出しますれば恐らく一千万円では又足りなくなつて、次年度には更に増額をお願いいたさなければならんというようなことになりはしないかと思つております。
  38. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 できるだけ来年度、再来年度には国立の癩研究所を、全般のやはり研究に当る、片手間でなく総合的なやはり研究人員を整えて取組まれるように私は是非して頂きたいと希望をしておきます。それから一体、一万三千五百床今年成るわけでありますが、どのくらいらい患者があるわけですか、甚はだ迂潤なことを聞くようでありますが。
  39. 山口正義

    政府委員山口正義君) 現在推計、入床患者も含めまして約一万五千というふうに推定いたしております。
  40. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 そうするとまだ強制的に収容すると病床が足りないということになるわけでございますか。
  41. 山口正義

    政府委員山口正義君) 残つております患者が一挙に入るといたしますとやはり不足でございますが、併し現在残つておりますものの中にはすでにはつきりわかつてつて、従来しばしば、勧奨しておりましてなかなか入らないものもございます。そういう患者につきましては今後勧奨を進めて参りたいと存じております。それと同時に医務局関係の方面におきましても病床の整備を逐次急いで頂く、そういうふうにまあ存じております。
  42. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 ただ現実と法律上のそこに矛盾する、法律のなすところはすべてらい患者強制的にとにかく隔離するということがこの法律の目的のように思うんですが、ユ、れに対して、はやはりそれだけの準備がなければ一層彼らが不安に思う。病床が足りない、職員が足りない、そういうところに収容されるのは嫌だといわれてもしかたがないことになるわけですね。そういう点についてはやはり相当考慮する必要があるのじやないかと思います。
  43. 山口正義

    政府委員山口正義君) 只今申上げました一万五千名のうちではつきり衛生当局のほうにわかつておりまして、まだ収容されておりません者が千六百名余り、そのほかにまだ衛生当局のほうにはつきりわかつておりませんが、ほぼ確実であろうと思われる者が千八百名ばかりございます。そのほかあとの千五百名ほどと申しますのは、非常に不確実の者でございますが、そういう者に対しましては将来患者の秘密を保持しながら、健康診断などを実施して、そうして入床を勧めて行きたい。その傍らこの病床の整備を図つて頂きたい、そういうように考えております。
  44. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 大体よくわかりましたわけでありますが、私どもの希望としては、やはりこの法律を施行する限りは、それに対する設備及び人員の強化と言いますか、増員、設備の拡大、そういうことが非常に先決問題だろうと思います。それから治療に対して本格的に国がカを入れる、こういうことがやはりはつきりすれば患者は納得するのじやないかと思います。決して無理なことを要求しているのじやなくて、これはどうしても伝染病である限り、強制収容ということは、これは原則として絶対に必要だと思いますので、それについてはこちらが十分こういう人道に関する問題ですから注意深くこれはやつて頂きたいと存じます。どうも有難うございました。
  45. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 本法案審議はこの程度で、残余は次回に回したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に社会保障制度に関する調査の一環として、厚生省関係昭和二十八年度予算の件を議題といたします。本日は引揚援護庁、国立公園部、統計調査部その他について順次説明を願います。最初引揚援護庁から願います。
  47. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 引揚援護庁一関係の二十八年度の予算の概要について御説明申上げます。第一は引揚人員が二万五千三百八人ございまして、これに対する事業費が七億六千二百七十  一万五千円となつております。二万五千三百八人と申しますのは中共引揚が二万五千人、その他一般個別引揚が三百八人ということになつております。中共引揚は昨年の北京放送で約三万人の予定でございまするが、そのうち五千人は二十七年度に帰還しておりますので、残りの二万五千人を計上したわけでございます。いろいろのそれに経費が入つておりますが、住宅は三千戸ございます。一時収容所、身廻品調達費、輸送費等、計上してございますが、特に本年度中共から帰還するかたがたに対して昨年帰還されたかたと同様、帰還手当を一律に支給いたすことに相成つております。  次に留守家族援護費でございまするが、これは別途国会に提案されておりまする未帰還者留守家族等援護法の施行に要する経費及び今日までの未復員者給与法及び特別未帰還者給与法の施行に要する経費でございます。御承知通り未帰還者の留守家族に対しましては現在未復員者給与法及び特別未帰還者給与法によりまして俸給と扶養手当を家族に前渡しという方法で留守家族を援護して参つたのでありますが、今日俸給支給という建前で留守家族を援護することは非常に不自然な姿となつておりますのみならず、いろいろな点で不都合を生じておりますので、今般これらの二つの法律を廃止いたしまして、留守家族そのものを援護するという見地から留守家族援護法というものを立案いたしまして、これによつて今後留守家族を援護して参りたい、かように考ております。従来は俸給が千円でそれに扶養手当が六百円乃至四百円ついておりましたが、今度は留守家族一世帯当り二千百円、年額二万五千二百円でございますが、それに扶養手当分だけを四百円ずつ加算することにいたしました。月二千百円と申しますのは、別途今般遺族援護法による年金を増額いたすことに相成つておりますが、それが年額二万五千二百円、月二千百円となつておりますのと歩調を合せたのであります。この金額は大体恩給法によりまする公務扶助料の一等兵並みでございます。これと均衡をとつた数字でございます。なお未帰還者留守家族等援護法におきましては、留守家族を援護する経費のほかに、未帰還者が帰つて萎場合に有るいろいろの処遇、それから未帰還者が死亡した場合に有るいろいろの経費計上してございます。ここにありますように帰郷旅費、遺骨引取料、埋葬料等がその経費でございます。なお留守家族援護法制定によりまして、留守家族の範囲が今回規定されるわけでございますが、従来俸給の前渡しという形によつて出しておりました範囲が今回の留守家族援護法では若干狭い面もございます。例えば未復員者給与法におきましては二親等の姻族、つまり配偶者の両親もその対象になつてつたのでございますが、かような者にまで拡げますことは他との均衡上問題がございます。その他兄弟姉妹であるとか、或いは六十歳未満の父母にも従来俸給の前渡しを行なつておりますが、これは今後遺族援護法等の関係で留守家族の範囲から一応除外されますので、かようなものをどうするかということになります。で、これは実績を保障するという点におきまして従来俸給、扶養手当を受けておりました者は従来の実績をそのまま保障するという建前にいたしております。これも留守家族援護法の経費の中に含まれておるのであります。  次は戦傷病者戦没者遺族等の援護に要する経費でございますが、このたび軍人恩給の復活に伴いまして、軍人の遺族に対する扶助料及び戦傷病者に対する傷病年金は恩給法によつて支給せられることになるのであります。従つて援護法におきましては原則として残る、いわゆる軍属、雇用人等の軍属に対して従来通り法律を適用することになるわけでございますが、今般軍人恩給の復活に伴いまして金額の増額をいたすことにいたしました。先ほどもちよつと触れましたが、一等兵並みの公務扶助料並みということで年額二万五千二百円、遺族のうちで第一順位に該当する者にこの年金を差上げるわけであります。第二順位以下に該当する者に対しましては従来通り五千円の年金を差上げることにいたします。  それから第二に障害年金のほうは、従来二万四千円乃至九万円でありましたものを二万四千円乃至十八万一千円に増額することにいたしたのであります。これも恩給法の兵に対する増加恩給と均衡をとるために増額いたしたのであります。  なお今度は援護法の対象を一部拡張いたしまして、従来援護法の対象でなかつた船舶運営会に所属する船員、つまりC船員も軍属の範囲に加えまして、このかたがたの遺族に対しまして弔慰金五万円と年金を差上げることにいたしたのであります。  援護庁関係の予算の主な内容は以上の通りでございます。
  48. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に統計調査部長
  49. 小沢龍

    説明員(小沢龍君) 統計調査部関係の御説明を申上げます。二頁でございます。昭和二十八年度の予算額は二億三千二百万円余りになつております。この内訳は統計調査部自体として使います金が大体年間一億円でございます。残りの約一億四千万円近くが地方に対して統計委託費又は補助金として交付する金額でございます。統計調査部として使います一億円の約半分に当ります五千五百万円は専ら庁費でございまして、御承知のごとくに、諸種の調査をするために、たくさんの印刷物を作る或いは印刷結果を公表いたす等のために、主としてこの五千五百万円が使われております。その次に主なるものは、機械の借料二千九百万円でございます。只今レ、ントンフンド会社から百十八台の機械を借入れてこの機械によつて統計をとつております。この借料年間二千九百万円でございます。これが統計調査部としての主なる金額でございます。  次に地方に統計を委託いたしまして、地方に差上げます金が、社会福祉統計関係で約七百六十三万七千円、それから医療に関する調査患者に関する調査、或いは厚生行政基礎調査等各種の社会保障の基礎になる各種の調査をするために一千五百万円、人口動態を調べますために四千三百万円、それから衛生統計のために六千百万円、それから社会福祉統計の事務をやつてもらうために、これは二分の一補助といたしまして、約九百万円、合計一億四千万円近い金が地方に委託費として交付することに相成つております。なおこれ以外に統計調査部におります職員に関する俸給並びに出張に伴う出張費約一億二千万円がこれは別途計上されまして、一括厚生本省費の中に組入れられております。以上を以て説明を終ります。
  50. 森本潔

    説明員(森本潔君) 国立公園部関係の予算を概略御説明申上げます。只今説明申上げました六番の前に、五、国立公園等運営費というのがございます。国立公園部におきましては、十七の国立公園の仕事と、それから三つの国定公園の仕事と、それから三つ国民・公園というのがございまして、新宿御苑、皇居外苑、京都御苑三つございます。これを国民公園と言います。それから温泉に関する仕事、大わけしてこのようなことをやつております。その中で温良に関する仕事は、これは知事が処分をいたしますので、予算的な措置は組んでございません。専ら知事の業務を指揮監督をしておるわけでございます。それから国定公園につきましては、これは知事の処分につきまして指揮監督しておるわけでございまして、国庫補助その他予算の措置は講じておりません。従いまして残りますのは国立公園に対する経費と、それから国民公園に対する経費でございます。ここに書いてございますように、国立公園につきましては一つ施設整備の補助金五千万円でございます。これは各公園の無料の公共的施設、例えば広場でありますとか園地でありますとか、歩道でありますとかいうように、すべての人が皆無料で使える公共的な施設、これの費用の二分の一を国が補助する、半額は府県が負担することになつております。これは五千万計上してございます。その備考の二にございます国立公園土地買収費、護岸工事費というのがございますが、これは、」の中で千三百万でございますが、八百万ほどは営林用の国有地、農林省が営林用として所管しておりますところの土地の中で、上高地であるとか湯本、そういうようなところを厚生省所管の公園の用地に移管替するという経費でございます。主として国有でありますけれども、営林用のことは考えられませんので、専ら公園用として所管するという意味におきまして、農林省特別会計から一般会計に繰入れられておるという整理のための数字でございますが、これは四カ所分八百五十万円であります。それから残りの約五百万は本年度上高地移管を受けますが、農林省から厚生省移管を受けます土地の護岸が破損をいたしておりますので、それを修理させます、それを合せまして千三百万でございます。国民公園につきましては、ここの三にございますように、施設費というのがございますが、これは新宿御苑でありますとか、皇居前外苑の、温室を直すとか、或いは道路を鋪装するとかいうような、小修繕と申しますか、小規模の復旧の費用でございます。五百万でございます。なおこのほかに国民公園としましては管理費が三カ所で二千六百万あります。それから国立公園の管理費として八百万ほどございます。大体、以上のような内訳でございます。
  51. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 私は京都の者でございますが、御・所でございますが、あれはどこがどういうような管理をしておるんですか、いつでもあれを尋ねられて、京都では絶えずあそこを借りようとしても絶対借りられないのです。非常にいい目的のためにお借りしようとしてもなかなか許可が出ないんです。京都知事が行つたり、労働部長が行つたり、民生部長が行つたりするんですけれども
  52. 森本潔

    説明員(森本潔君) 京都の御所は、あれは分けて見ますと、庭の部分と御所の建物の部分と分れます。それで御所の建物の部分でございますが、これは宮内省の……。
  53. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 庭の部分でございますが。
  54. 森本潔

    説明員(森本潔君) 庭の部分は先ほど申しました国民公園の一つとして厚生省が管理することになつております。それで御質問の点は、いい庭があつていろいろな行事に使いたい……。
  55. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 広場があるわけなんです、運動場にも使つておるのです。
  56. 森本潔

    説明員(森本潔君) まあその使用が思う通りにいかん場合があるので、どういうことでどうなつているかというお話かと思うのでございますが。
  57. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 そうなんでございます。
  58. 森本潔

    説明員(森本潔君) それであそこの使い方については、大体こういうような基本的な方針を厚生省できめまして、それで現場に事務所がございますが、そこで処理しております。一言に申しますと、京都御苑の中に広場と申しますのが、饗宴場跡の広場が一つございます。それから終戦後できたものでありますが、キャッチボールができるような広場があります。それが一、ニカ所あつたかと思いますが、その程度でございます。それでそのほかはまあ植込と道路になつておると思いますが、それで今申しました広場の使用につきましては、野球をする、或いは自由に遊ぶ、或いは小規模の集会をするということは、これは認めております。
  59. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それは御所の中の事務所で決定できるわけでございますか。
  60. 森本潔

    説明員(森本潔君) その程度のことは決定を委任しております。それからそれ以外の範囲の場所になりますと、例えば芝生地を使うとか或いは御所の建礼門の前の道路を使うとか、そういうものにつきましては、本省のほうへ伺いを立ててきめるようにしております。そういう扱いでございます。
  61. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つ、それは毎年の慣例みたいにごたごたします。メーデーにあそこを使えないというのです。今までは使えないのです。それでメーデーにあそこの中に無理に入るとか何とか言つて、いつでもその中に立ちまして、私苦労するのでございますけれども、これは方針としてメーデーには公園課のほうでは、公園局のほうでは貸さないということになつておるのでございましようか。
  62. 森本潔

    説明員(森本潔君) 先ほど申しました通常使つていい以外の場所を使うという場合でございますが、これは皇居前におきましても、新宿におきましても、三者同じ扱いにしております。あの庭全体と申しますか、相当な大部分について普通の用法以外の、用法と申しておりますが、我々のほうでは用法と申しますと、散歩したり遊んだりすることでございます。集会をするとか、或いは集会が多いと思いますが、そういうふうな用法は本来以外の用法と申しておりますが、そういうものにつきましては、原則としては国家的な行事にはこれは全面開放の措置を講じなければなるまい。それ以外の行事につきましては、原則としては許可するのは非常に適当じやないという扱いをしております、と申しますのは、これは実際に事務を扱つて見ますと非常にわかるのでございますが、数年前東京都の皇居前におきましても、集会を認めますと、場所がよろしうございますので、京都も同じでございますが、場所がよろしい、集まりいいというようないろいろな関係がありまして、連続して申込みが絶えんわけでございます。実はその扱いに困りまして、その際にどれがいい、どれが悪いというので裁きをしますと、これは不公平になつたり、裁くほうで実は困るわけでございます。又そうして連続して使いますと、ああいう特殊な立派な庭というものがその特殊性がなくなつしまうということが多分に考えられるのでございます。従いまして当分元の立派な姿になる間といふ気持でございますが、国家的行事以外は原則として使わないという建前をとつておるのでございます、そういう方針でおります。例えばメーデーにしましても、東京でありますと神宮外苑でありますとか、或いは京都でありますと二条城の前と、そこで相当数の人数の集合が絶対不可能でもないのでございますし、まあやや不十分であるけれども、辛抱して頂けば我慢できないこともないとも考えますので、一応原則通りな方針で参つておるわけでございます。
  63. 有馬英二

    有馬英二君 今の国立公園のところですが、今回の水害で以て国立公園が随分各所で破壊されて、或いは破損されたような所があるんじやなかろうかと思われるのですが、実情は如何ですか。
  64. 森本潔

    説明員(森本潔君) 九州のほうから報告が来ておりますが、御存じの通り国立公園は自然の山水が主なものでございますから、えらく建物が流れるとかどうということは少いのでございます。それも主に被害と申しますと、これは主に道路が多いのでございます。今まで承知いたしておりますところによりますと、一番大きいのは阿蘇の登山道でございますが、あれが数万円或いは烏帽子の附近、これは霧島、それから雲仙附近或いは大分にも若干ございましたが、公園道路についての損害が主でございます。額は約八千万円ということになつておりますが、これは現地の報告通りの数字でございます。損害の主なものは道路、概数の報告額は八千万円ということでありますが、これはなお検討しなければならんと思います。
  65. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 他に御質疑ございませんですか。  それでは予算関係の質疑を大体これで終つたものと認めてよろしうございますか。それでは厚生省関係昭和二十八年度予算の質疑を大体終了いたしました。
  66. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に前回保留になつておりました横山委員の受胎調節に関する質疑をお願いいたします。
  67. 横山フク

    ○横山フク君 山口公衆衛生局長に伺いたいのですけれども、二頁の九番のあとのほうをめくつたところに、受胎調節普及事業補助というのがございますね、二分の一。この間御説明のときにあつたかも知れないのですけれども、これは何でございましよう。
  68. 山口正義

    政府委員山口正義君) これは各優生保護相談所、受胎調節実施指導員、ケース・ワーカー別に配付いたします教育用の資材とか或いは指導書の作成費用でございます。
  69. 横山フク

    ○横山フク君 そうすると指導員の講習会の資材でございますか。
  70. 山口正義

    政府委員山口正義君) 講習会用の資材ではございませんで、講習を終えられたかたが実地指導に当つて頂きますときに差上げる指導書のようなものでございます。
  71. 横山フク

    ○横山フク君 実地指導員がその資材を頂戴するのでございますか。
  72. 山口正義

    政府委員山口正義君) さようでございます。
  73. 横山フク

    ○横山フク君 私たち助産婦が実は実地指導員になつているのでございますけれども、講習会を厚生省で受胎調節を進めるということで、助産婦が指導員ということになるための講習会を済ませたわけでございます。併し実際に講習会を終りましたけれども、それが実地に滑り出すということには行つてないと思うのでございます。公衆衛生局のほうでも広報活動としての集団教育をなさる、或いは保健所に母子受胎調節の相談室をお作りになつて、そこでなさるというお話でございますけれども、集団教育をなさるときには、実際にはおいでになるかたA、は、受胎調節の指導はお受けにならないでもいいかたたちじやないかと思うのでございます。或いは保健所の母子相談室も保健所が今人口十一、二万単位に一カ所ということになりますと、農山村では相当遠隔の地にあるわけでございます。そこへ行つて受胎調節の指導を受けるという人は、もうすでに必要度のない人たち、本当に受胎調節を指導したいと思う人たちは貧困であつて、そうして子供たちの守に、ちよつとの暇に働くことに、家事に追われておつて、なかなか集団講習にも出て来られないし、保健所にも出て来られない人ちた、いわば受胎調節の運動というのは上滑りしている状態にあるのが現在の姿だと思うのでございます。この間、加藤シヅエさんがMSAに関連して人口問題についてお話になりましたときに、山縣厚生大臣が受胎調節は着々効を奏しているというような意味のことをお話になつたのでございますけれども、実際においては、私は上滑りした状態にあつて、着々効を奏してないのじやないかと思います。本当に受胎調節をする人たちが受けられない、又助産婦も指導は受けましたけれども、その導指をするのに実際に乗り出せないといつた姿なんだと思います。講習会を受けましたけれども、実際の標識は横十五センチ、縦二十五センチくらいの小さなマークで以て、それ以上のものは使えない、それで農山村のかたぞれはおわかりにならない。又保健所のかたがたがその指導においでになつたとしても、お産なさつたことのない若いかたぞれが封建的な家庭に入つてつて、そして指導ができるとお思いになるのは、少し役人的であり過ぎるのじやないかと思います。なかなかそういう意味でなくて、もつと地についたやり方をして頂かなければならんじやないか。助産婦はお産が減るということはあえて今の時代の流れとしては止むを得ないとして、喜んで講習は受けましたけれども、講習料を払つてそして一週間以上の時間を費して受けたけれども、今これをどういうふうに滑り出すかということが宙に迷つていると思うのです。而も今度の予算においては、何らそういう点について処置を講ぜられていませんで、もう母子相談室だけお設けになつて、ただ外観の美を誇るような形で保健所にそういう機構を作る、何か事業があるとすぐそれが官吏の人たちの口実になつて、役所の機構を拡げることにだけ終つてしまうことになるのじやないかというような考えさえ持つのでございますけれども、この受胎調節をもつと地についたやり方をするために局長さんはどういうふうな持つて行き方をなさろうと思つていらつしやるのでしようかしら。
  74. 山口正義

    政府委員山口正義君) 只今横山先生の御指摘のように受胎調節の指導を、まあ仕事を実地に下して行くということは、これは従来の日本の家庭の風習などがございましてなかなかむずかしい問題でございます。今更申上げるまでもないことでございますけれども、一昨年政府でこの受胎調節を普及さして行くという方策を取上げて、その後御承知のような進み方をして参つて来ているのでございますが、私どもこの仕事を実際に地につけて参りますためには、只今御指摘のような単なる役所仕事ではこれはなかなか一般人たちに滲透して行かない。保健所の設備を如何に整備し、又保健所に人をおいてもなかなかそれだけでは券にできない。むしろ保健所は広報活動というふうなところに重点を置き、又そこに、その広報活動によつて訪れて来た人があればそれに対しているく指導して行くというふうに考えて、実際に地についてやつて頂くためには、横山先生にもいろいろ御配慮頂きました助産婦のかたがたに、助産婦のかたがたがお産ということについて多くの母性に接せられたその経験を生かしてこの受胎調節という事柄を一般人たちに普及さして頂きたい、そういうふうな考えでおるのでございまして、一昨年から昨年にかけて受胎調節の普及実施要領を作りました際にも、実際に実地指導をやつて頂くには医師は勿論のことでございますが、そのほかには助産婦のかたがたに特に力を入れてやつて頂きたい。併し、そのためには助産婦のかたがたの今までのお仕事の面と違うわけでございますから、御承知のように特別な認定講習を実施して、そうしてその講習を受けられたかたにそのほうのお仕事に携わつて頂きたいということで進んでいるわけでございますが、只今御指摘のように講習を受けられたかたがたは、すでに私どものほうに報告の参つておりますのでも二万三千人余りでございますが、併し、実際にその仕事が、助産婦のかたぞれによる指導というものがまだなかなか行われ得ないという実情でございます。そのほかの面に保健所の整備などは逐次やつておるのでございますが、その地に下すという面でまだ非常に不十分な一点があると思うのでございます。私どものほうでも皆様の御協議の結果こういう方針に基いて受胎調節を実地に普及さして行くという方針を立てましたので、それがどうしてうまく行かないか、どこに隘路があるかというようなことを府県に問い合して、それを今調べて或る程度まとまりつつあるのでございます。やはり助産婦のかたぞれが器具、薬品などを自分で実際に持つてつてやれない。或いは指導料の徴収問題、或いは指導を受ける人たちがそういう器具、薬品を十分に買えないというような点が訴えられて来ておるわけでございます。私どものほうでもそれを現在まとめつつあるのでございますが、二十八年度の予算の中にはそういう点が盛込まれてないではないかという御指摘でございますが、私どものほうでいろいろ考えて一応やつてみたのでございますが、二十八年度の予算といたしましては、先日御説明申上げました相談所の整備、或いはその事業費というようなところに重点が置かれているのでございます。併し、これだけではなかなか先ほどから御指摘のように十分地に下せないということもわかります。又各府県からいろいろそういう訴えも出て来ておりますので、私どものほうではまあこれも昨年からいろいろ問題になつておりますので、貧困、経済的な理由覆かく翼とか薬品とかの買えない人たちにどういうふうにしてそれをやつてつたらいいかというような問題それから指導料を払えないような人に対して指導して頂くのに助産婦のかたぞれに只で働いて頂くというわけにも参りません。そういう点をどういうふうにやつてつたらいいかというようなことを考えているのでございまして、二十八年度の予算には間に合いませんでございましたが、二十九年度にはそういう点を盛り込んで助産婦のかたぞれが実際に活動して頂けるように方途を講じて行かなければならない、そういうふうに考えているわけでございます。
  75. 横山フク

    ○横山フク君 今の局長のお話で大体了承したのでございますけれども、二十九年度の予算に盛込んで下ざるというお言葉で了承したのでございますけれども、実際に集団教育に来る人達はそういう必要のないかたである。保健所に来る人も必要のない人たちです。もつと本当にしたい人は家庭の中で四六時中追い廻されておる人達である。而もその日のおかずにも困つておる人達であるということをお考えになつて頂いて、そうしてそういう方面に対しての器具、薬品等に対して、或いは指導料の問題なんかに対しても適当にお考えを願いたいと思う。これは厚生省のほうで案外、お膳立てして馬鹿に宣伝は華やかなんですけれども、実際に来て下さつていないのです。地方の県庁では相当に熱を上げてなさつているかたもある。併し地方の県庁の人の言われるのに、中央で以て一つも開いていないのに、認めていないのに、地方の乏しい財源で以てそういうのを、盛り込んだ場合に、そういう余裕があるならば、補助金は、こちらのほうは削るんだという点があるので、遺憾ながらできない。これは口実だと思うのでありますけれども、そういう点も出て来ると思います。最初から完全に予算に何して頂くことはできないと思いますが、それに衣を着せてもらい、肉を附けてもらうという見通しはあると思います。来年度には是非それを盛り込んで頂きたいと思います。そうしてこの仕事が実際に逆淘汰の形にならないようになされたい。本当にやりたい、やつてあげたい人々のところに行かれるような形にして御考慮願いたいということを重ねて申上げて私の質問を終ります。
  76. 山口正義

    政府委員山口正義君) 只今の横山先生の重ねての御注意、よく承わりました。ただ先ほど申上げました二十九年度の予算を現在私どもの手許でいろいろ原案を作成中でございます。これからいろぞれ難関がたくさんございますので、それを突破いたしますために、私ども最善を尽して参りたいと存じます。
  77. 有馬英二

    有馬英二君 政府から「助産婦学校養成所調」というのを本日頂いたのですが、これはこの前私は要求しておいたのをお調べ願つて頂いたのであります。これによりますと、北海道大学初め九カ所に助産婦の学校或いは養成所がある。
  78. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  79. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) では速記を始めて。
  80. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次はインターン制度に関する調査のため参考人を呼んで意見を聴取いたしたいと存じますが、人選、手続などは委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
  82. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に請願第八百八十一号、第千百十一号、第千百十二号を一括議題といたします。  本件に関係ある理容師美容師法の一部改正案は、去る六月二十九日の本院において可決せられておりますので、右の請願はいずれも保留とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。  今日はこれくらいで散会いたします。    午後三時三十一分散会