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1953-10-13 第16回国会 参議院 建設委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月十三日(火曜日)    午後二時三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石川 清一君    理事            石井  桂君            石川 榮一君    委員            鹿島守之助君            赤木 正雄君            江田 三郎君           小笠原二三男君            近藤 信一君            田中  一君   國務大臣    建 設 大 臣 戸塚九一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       菊池 璋三君    常任委員会専門    員       武井  篤君   説明員    建設省河川局次    長       伊藤 大三君    建設省計画局長 渋江 操一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○建設行政に関する調査の件  (治山治水対策に関する件)   —————————————
  2. 石川清一

    委員長石川清一君) 只今から建設委員会を開きます。先ほど御懇談申上げましたように、昨日、本日両日、治水治山根本対策につきまして副総理並びに、関係大臣出席を求めて御審議することになつておりましたが、補正予算並びに水害関係諸政令等審議両院水害対策特別委員会において連日審議されておりまして、副総理その他の出席困難でございますために、後刻お諮りいたしまして、二十日以降において副総理並びに関係大臣出席を求めて治山治水根本対策について御審議をいたすことにいたします。それぞれ大臣出席方は慣例によつて政府に要求いたしますか、本日建設大臣が見えておりますので、先日来の御審議、御質問を続いてお願いすることにいたします。
  3. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 建設関係治山治水に関する事項をお伺いする前にお尋ねしたいのですが、政府部内に治山治水対策協議会といつたものが作られた経緯と申しますかについて先ずお伺いしたい。
  4. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 六月、七月の大災害が相次いでありましたので、従来の治山治水対策にまだ欠けているところもあり、その後殊に予期せざる大きな災害があつたような関係から、今後の治山治水対策をどういうふうに持つて行くべきかというようなことにつきまして、政府として根本的な恒久対策を立てる必要があるというふうに考えたのであります。それにつきましては、自然農林省建設省との関係が従来相当錯綜しているような点もありますので、この間を十分調整して恒久対策を立てる必要があるというようなことから、初めは政府部内で建設大臣だけで協議をいたして、その対策を練ることが如何かと思つたわけでありますが、その上に両省関係専門的な経験知識を持つておられる数人の方を依嘱してこの協議会作つたと、こういういきさつであります。
  5. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで関係省としてはどことどこがこれに関係しておられますか。
  6. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 只今申上げました両省のほか、大蔵省、それから自治庁経済審議庁
  7. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そこから出て来る幹事と申しますか、…方々によつて構成せられたその協議会で一通りの原案というものがきまれば、それは手続としてはどうなればそれが実施に移つて行くということになるのですか。
  8. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) その協議会できまつたものが直ちに国策となるというものでは私はないと思います。勿論政府としてもその方針を更に閣議等にかけて考えなければなりませんし、又当然議会のほうにも相談をするということになるものと考えます。
  9. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 閣議決定になつて議会相談するということは、計画自体関係委員会に諮るというような形でございますか、それとも予算面にそれが出て来るから当然議会に御相談という意味合いでございますか。
  10. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) これは特に建設委員会は始終あるのでありますから、そういう点に非公式といいましようか、いろいろ御意見を伺う機会を持ちたいと思つてつたのでありますが、それが当然に必要であるかどうか、その点は今まで十分まだ研究いたしておりません。
  11. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 現行法国土総合開発法があり、国土開発審議会総理大臣の任命による委員によつてできて、根本的な総合開発に関する対策或いは答申等総理大臣にしておるのですが、この総合開発法の第一条で見ますと、丁度政府部内で考えられておるようなことをはつきり目的として謳つている。国土保全によつて経済、社会、文化等の総合的な発展を図るように目的はつきりきまつておる。そして而も第二条では「水害、風害その他の災害防除に関する事項」としてこういう根本的な対策を樹立するような仕事まで国土総合開発法によつて、何と申しますか、当然委員会の問題としてこれが対策決定する。そして総理大臣にも答申をし、又その施策実現も図つて行く、こういうことになつている。ところが未だ曾つてこの国土総合開発法に基く風水害等災害防除国土保全に関して総理大臣から改まつ審議会に対する諮問もない。この審議会政府部内に作つてある治山治水対策協議会とはどういうふうな関係があるのか。又そういうものは何ら考慮することなしに、こういう法律は無視されて、政府政府施策実現するための部内のそういう協議機関を持つてどしどし事を進めるのだ、こういうのか。それらの関係についてお伺いしたいと思います。
  12. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 国土総合開発審議会を無視するという気持では全然ないのでありますが、成るほど字句の上で災害防除等のことを謳つてありまするが、国土総合開発は各処区について総合的な研究調査をするという建前であると思つております。で、今回の治山治水恒久対策というものはそういう国土総合というよりも治山治水、つまり災害を防ぐという意味でやや性格が違つておるものであるというふうに私ども考えております。殊に先ほども申上げたように本当政府部内の関係閣僚だけで協議をして今後の対策についての意見をまとめたらどうか、こういうふうに考えておつたという程度のものでありまして、只今お話総合開発ということとはやや趣きが違つておるというふうな解釈をもつて、おつたのであります。
  13. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それはとんでもない考え方だと私は思うのです。この国土総合開発法による特定地域として指定せられているものの大部分は、政府が、災害で困り、又今後根本的な治水対策を立てなければならんという直轄河川中心にして、治水ということが中心になつて、それへ利水なりその他いろいろな附帯事業が総合的に考えられて実施に移つて行くというような向き地域が殆んどです。そうして総合開発審議会は、水の調査でもその他でも、これは国土調査法のほうに基いてでもいろいろな角度から検討を加えておるそのことのためにわざわざ総理大臣由学識経験者等専門的な経験と教養を持つておられる方々の智能を集めてこれが実現に資するということで、各種検討を加えさせておるものですそれと後になつて政府部内で別に治山である、治水であるというので計画が立てられるということになつたら、将来総合開発における統一河川計画ということも、或いは理論的には食い違いを生ずる場合も起つて来るわけです。ただ河川なら河川だけを、直轄河川七十何本かを抜き出して、そうしてそれについて災害防除という消極的な意味だけで施策を行うということと、もつと基本的に、根本的な総合的な対策を立てて、いわゆる国土保全なり災害防除が積極的に行われて、そのことから地域の住民の生活水準が向上するとか或いは国土開発せられるとか、そういう効果を狙うそのことのほうが大事だ。てんで見解違つて、こういう対策協議会対策協議会として独立して事をきめ、そうしてそれはそれで政府施策として行う。一方は国土総合開発法に基く審議会が同一河川を含む地域について総合的な施策決定し、答申し、それが閣議決定となつて実施に移される。こういうことになつたら屋上屋を重ね、重複し、或いは計画それ自身実施に齟齬を来たすというようなことは当然起つて来るのではないかと思う。それで現にこの国土総合開発法によつてあらゆる国土開発のための保全或いは災害防除等を一切ひつくるんで根本的な対策を立てて行こうとするこの審議会を無視するということでは、本当の私は治山治水というようなものの対策自身も立たないのではないか、さように思うのです。こういう点は緒方副総理にお尋ねしたいところなのですが、今の御答弁政府見解であるということでお伺いして置いてよろしうございますか。
  14. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 私は先ほど申上げたように、総合開発は各河川、重要な河川の指定された地区において総合的な開発計画を進めるものである。今回治山治水協議会でやろうとしたことは、その一つ一つ河川について総合的なという意味上りは、今後日本の川を治めて行く、山を治めて行くのにどういうところに重点を置いて一般的でありますけれども考えて行くべきかというようなことを一つ考えて見たい、こういうところが狙いであつたと思うのであります。権限とか何とかというような意味にはむずかしく考えておらなかつたのでありますが、大体日本の川を治め山を治めて行くには、どういうふうにこれからやつたらよかろうかということについて専門知識をまとめてみたい、こういうふうに考えたのでありまして、決して只今お話のようにその総合開発審議会権限を侵すとか、或いはそれと重複乃至は矛盾したものを作り出そうというような考え方でやつたわけではないと私は承知いたしております。
  15. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その川を治めるとか山を治めるとか、それ自身についての基本的な対策を立てるということも、それはただ単に政府部内で適宜便宜的な機関を作つてやるということではなくて、この国土総合開発法に基いてやるべきことではないのですかということなんです。
  16. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 私ども考えましたのは、総合開発は、一つ河川についてももつとその河川の特徴を見た、いわゆる総合的な考え方調査をするものだ。その治山治水協議会でやるところは、極めて一般的に国土を今後護る上に、例えばどこに重点を置くかというようなことを研究いたしたい。こういうふうに思つたのでありまして、従つてこの協議会は特別の機関、国の機関というものでもありません。内部研究という程度に一応考えておりました。
  17. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 建設大臣自身の所見としてそうであるということでありますれば、これ以上私としてかれこれ申上げる筋ではない。やつぱり政府全体の考えとして今後の扱いもあることですから、この点は根本的な問題としてお尋ねしなければならん。それでその点は留保しておきたいと思うのですが、只今建設大臣のお考えそのもの建設省行政そのものにも率直に言えば今反映しているところがあると私は思う。その点についても不満なのだ。例えば只今まで総合開発法に基く特定地域として指定されたうち、国の予算の上に計上せられて実施の段階に入つているのは北上特定地域一つであります。これが予算にどういうふうに現われているかといえば、何ら新らしく頭を出して特定地域として予算が殖えているのではなくて、各省の河川改修なら河川改修という中に北上改修総合開発考え方に上る改修そのもの費用も入つているというふうに、個々の項目の中に金が入つている。然るに建設省自身考えている何と申しますか、何という河川でございますか、わかりませんが、重点的に考えられているものには、予算面では河川総合開発費というものがついている。そしてそれに四河川か幾らか入つてはつきりとその河川改修費というものが載つておる。その他総合開発によつて重点視せられなければならない予算というふうなものは十把一からげに入つてつて、附記されている部分に、ただ単に国土総合開発法に基づく北上改修費も含むというようなことで、どういうふうに含まれているかも予算には現われていない。建設省建設省限りでそういう考えを持つている。農林省農林省限りでそういう考え方を持つている。そのために国土総合開発法による開発なり或いは予算なりというものがぼやかされてしまつて、強力な推進ができないという憾みがある。そういう点から申しますと、この国土総合開発法というものは政府において何ら尊重されていないと言つても差支えないように思う。もう少し何のためにこの国土総合開発法が当時できて、こういう経緯で今日鋭特定地域事業を推進して行こうとしておるのかということについては、閣僚の一人として建設大臣にもともとと御検討を加えて頂きたい。そうでなかつたら、その都度都度さまざまな屋上屋を重ねた機関が勝手にできて、法に基いて民主的に審議せられる機関というふうなものが無視せられるというか、軽視せられて、ちよつとも活きて行かない。法律でちやんときまつておることが実際効果を発揮して行かない。こういう点は、我々まあ法律を作つて行くほうの側から言えば非常に遺憾なんです。もう少し建設大臣もそういう点にもお考えを持つて頂いて、少くとも建設省関係予算の立て方などについても、河川総合開発費というのは誠におかしいものなんです。それは内容としては何を言つておるのかというと、今後着工せんとするダム建設費用なんです。ダムを建設するほうの費用河川総合開発費というもので一つ一つ河川が列べられてはつきり明記されておる。とろが一般の河川改修のほうはただ河川改修費ということで一束にされておる。そうして総合開発のものもそれに入つておるというようなことで、ちつとも総合開発という重要な、まあ国策としてでも考えなければならんものが予算面に浮彫にされておらない、尊重されておらない。この点は繰返して申しますが、誠に遺憾なことなんです。もつと大臣としても現行のあらゆる法律等にも照してみて、重点的な予算の……、これはただ単に表現の仕方で正すが、そういう点についても考慮して頂きたいという、そういうことだけ希望を申上げます。
  18. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 只今お話は誠に御尤もであります。総合開発決定北上だけで、まだほかの順位が来なかつたという関係もあつたのではないかと思いますが、お話のように方針のきまりましたものについては、特にその決定従つて予算の面でも考えて行かなければならん。これは誠にお話通り当然であります。只今ちよつとその総合開発費という、河川の有無ははつきり記憶しておりませんので、詳しく申上げ兼ねますけれども、今後勿論法律によつてきめられたものについては、方針のきまつたものについてははつきり予算面にも謳つて行くようにしたいと思います。
  19. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 くどいようですが、私は偏窟なものですから言うのですが、法律根拠もない筋合いのものを河川総合開発費なんていうような、ただ建設省部内都合のためにつけた名前なんです。ところが一方国土総合開発法に基く各種予算というものは根拠があるものです。このほうは頭も出さないで、ただ含まれるぐらいのことでぶつ込みにしておいて、そうして建設省内部予算を取る都合があるかどうかわらんけれども、便宜的な方面での区分けでは、河川総合開発費なんて独自の表現を用いてダム建設費を計上しておる。どうも我々のような者から見ると、予算の立て方においてすつきりしないと思う。そういう点を、私としては常識的に言うことなんですから、今後専門的に検討を加えられて、はつきりした予算を立てて頂くように希望します。
  20. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) よくわかりました。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 今の質問に関連するわけですが、今度の治山治水の根本的な対策というものと、総合開発というものとは関係がないようなお答えつたと思う。それは今建設大臣答弁だけでなしに、先般来今度の治山治水根本対策について建設省説明を聞いておつてもそうだと思うのです。私ども当時河川局長ですか、政務次官でしたか、どなたかに質問して答えてもらつたのですが、例えばこの計画の中で治水ダムを作る。併し実際に今治水ダムというような行き方もあるけれども、併し多くの場合大規模のダムになつて来ると多目的ダムになつて来るのではないか。そこに、ただ建設省治水という面から考えダムということでなしに、同じやるのならそれが総合開発建前から多目的ダムとして計画されなければならないのではないかという質問に対して、この治山治水計画として一応ダム考えて、ほかの条件あと考えるというような答えつたのですが、併し迫つて考えるということで問題が片付くかどうか。やはり問題は考え方の基本ということが一番大事になつて来る。そのときに建設省建設省として、治水の面からだけダム考えて行けばいいのですか。ほかの問題があつたあと考えるというのでは、それなら計画を立ててみたところで、予算を作つてみたところで、それは全部御破算になると思います。それは一つダムの問題だけでなしに、例えば上流のほうの治水関係というものを考えてみたところで、農林省建設省意見調整をやつておられたというのですけれども意見調整というものは、私が聞いた範囲では、水系について若干の食い違いがある。取上げる水系についての調整をやるのだということでしたが、私はそういう問題じやないと思う。例えば一つ治水の問題をやつても、一体山というものを現状において考えて行くのか、或いはその山というものは将来どう変化して行くのか、そういうことになつて来ると、森林蓄積の問題でも、ただ林野庁だけでそれを考えたところで私はなかなか答えが出ないと思う。そこに将来日本の木材が足らんということになれば輸入材はどうなる、或いは建築用材については、セメント等についてはどうなるか、或いは薪炭林についてはその他のものでどう代用できるのか、そういうことがないと、折角この山は保安林にするのだ、この山は何かにするのだと言つたところで、一つの燃料が要り或いはパルプが要り、建築用材が要るという必然性から崩されて来ると思う。そうすると折角治水計画を立ててみたところで、治水計画というものは三年や五年のことじやないのですから、これはもとより災害復旧とは違うのですから、百年の大計を立てるなら百年の大計を立てるようないろいろなデータというものを十分に取上げて検討しなければならんと思う。山と農業との問題についても同じようなことが言えると思う。一体農林省建設省との間に山というものについて打合したことがあるのかどうか。将来一体日本農業というものが、今の既存の耕地だけを突ついておるのかどうか。私はやはり将来日本農業というものは山へ上らざるを得んと思う。そうなるとすぐそれが治水関係に響かざるを得ないわけです。そういうことを一体考えないで若し治山治水根本対策ができるとしたら、これは非常に滑稽な話だと思う。若しあなた方の言つておられるところの治山治水根本対策というものは、たまたま災害対策の声が大きいから、これに便乗して建設省予算を何ぼでも稼いでみようという一つ陽動作戦ならこれは別問題です。或いは治水というものを飽くまでそういうようなことを言つてごまかすというなら、これも別問題です。併しそうでなしに、本当治山治水というものを根本的に考えておるなら、やはり総合開発という見地から十分な調査がされ、計画が立てられないというと、これは計画を立ててみたところで、その計画は崩さなければならない、又やり変えなければならんものになりはしないか。勿論総合開発法に書いてあるようなことで全部をやらなければならんというのではないのですけれども、併し治山治水計画というものと総合開発という考え方とは、これは平行してやらんというと本当治山治水にはならんのじやないかという考え方なんです。その点小笠原君の質問にあなたお答えでしたが、重ねてお尋ねしたいと思います。
  22. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 総合開発計画が立つたところについては勿論これを優先的に考えて、それに矛盾をするようなやり方をしようとは毛頭考えません。なお、只今お話がありました水の調整のためのダムということを御説明申上げたのに対してのお尋ねがあつたようでございます。多目的ダムとして、この水が電力にも役立つということになることは誠に結構なことではありますけれどもダムを作るのが直ちに電力というものを考えない場合でも、洪水調整だけにでもダムを必要とする場所がある。そういうのをやはりやらなければいけないのじやないかという考えでおるのであります。或いは後になつて考えると申上げたのは、どういう意味で言いましたか、ちよつと私にもはつきりいたしませんが、いろいろ水の始末といいますか、治水目的が十分達せられて、なお更にそのダムが発電に利用できるというような場合には、そういつたほうに又利用して行くという意味で後になつて考えると言つたのじやないかと思いますが、絶対に電力等には考えないという意味ではないのでありまして、差し向き洪水調整目的としたものを作るということが必要じやないか、こういう意味であると考えておるのであります。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 どうも質問しておつてもぴんと来ぬのですが、私が言うのは、治山治水計画を立てる根本的な一つ考え方の問題なんですがね、特別の問題はどうでもいいのですよ。ただあなたの今のお答えを聞いておつても、私が言うたことに対する弁解のようなことになつておるけれども、それの弁解つて私は弁解になつていないのじやないかと思う。勿論洪水防止だけのダムもあるでしよう。併し今現実にこの日本としてダムを作る場合に、そういうふうな目的だけのダムを作る場合と多目的ダムを作る場合と、どちらがいいか。どちらが資金を調整しやすいか、現実にどうなつておるかということ。更にどうであろうと、やはりただ一つダムの問題だけでなしに、全体を、ただ建設省だけの治水を優先的に考えるのだと言つたつて、その治水という考え方総合開発というような考え方で行かなければ何もならんのじやないかということなんです。治水々々と言つたつて、狭い枠の中で計画を立てられても、その計画というものが必ず破綻を来たす計画になりはしないかということなんです。これは大害復旧じやないのですからね。災害復旧なら現状復旧になるのか、多少それにどうかしたことをやるのか知りませんけれども、そうでなしに治山治水根本対策と言えば、これは百年の大計である。その効果にしたところで、囲えば治山をすると言つたところで、小が生えるのには年数がかかるわけです。二十年か二十五年、それまでにはその他の経済的条件も変つて来るわけです。いろいろ工業関係も変つて来れば、農業関係も変つて来るし、或いは食糧という問題にしても変つて来るし、何もかにも変つて来るので、そういうことが総合的な建前からいろんな調査がされ、データを集めてやるのでなければ妙な治山治水計画になりはしないかということなんです。それをどうも聞いておりますというと、何かこの今回のは治山治水出発点にし、そうしてそれを優先的にやるように行くんだというような、あなたのお答えでも、それから建設省とほかのほうの答弁でも、そういうような印象を受けるのだけれども、そんなことが、あなた方の計画のような一兆何千億ですか、というような金が今の日本の国の財政のうちから出せるのかどうか。又そういうような、私はそんなことならば非常に無駄使いが多いと思うのです。やつたけれども、それに一々あとから手を加えなければならんようなことが多いのじやないか。そういうところからずつと考えて行くと、本当治山治水というものをこの百年の大計として打ち出そうとしているのじやなしに、何かのゼスチュアに過ぎぬのじやないかというような印象を受けるのですが、一体今までのこの協議会の経過からいうと、本当にこの十カ年なり十五カ年に一兆何千億円を使うというような気持があるのですか。
  24. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 大体の根本的に考えましたことは、従来砂防が割合遅れておつたといいますか、堤防の改修のほうに重きを置かれておつて、山の元地に対するやり方が足りないのじやないかという点が考えられますので、砂防に重点を置くということを考えた。そういうことも全国的に本当調査ができておるとまで私は申上げかねますけれども、大体今までにおいて当局で調査が済んでいる、或いは府県で考えておるところ、そういうものを併せて砂防の区域をどれだけというふうに見積りましてなお河川の堤防改修、或いは従来これも余りやつておられなかつた、河底がだんだん上つて行くところの浚渫であるとか、そういうものを併せての改修工事、一応の調査したところが一兆何がしということになつた。そのうち急を要するものから順次実施して行きたい、こういう考えでいたしているのであります。なお植林の計画は勿論、農林省関係でありますので、農林省のほうの調査に基いたものです。砂防は農林関係河川関係と両方錯綜している点がありますので、それらについての調整をいたしたいというのであります。一兆何千億を使いたいかというお話でありましたが、決してただ使いたいのではなくて、今まで調査したところでこれだけは是非やりたいというところを計上いたしたのが一兆何がしになつておるわけであります。勿論ただ予算を取りさえすればいいというふうに、決して考えているつもりではありません。もつと本当に必要なところから順次やつて行きたい。それには必要なところが相当多いのでありまするから、自然金額が殖えて来る。仮に一兆何がしと現われたとしても、これを十年乃至十五年でやるとしてもこのぐらいになるという計算を出しておるのであります。  それから総合的にというお話がありましたが、勿論これは総合的に考えることが必要ではありましようが、総合的な調査ができたものはそれに従つて行くというふうに考えて参つたらよいのじやないかと思います。又山の植樹等についても情勢が変るに従つて、或いはこれが耕地になるとか、いろいろな変化があるかも知れません。又山も同じに木を植えてありますれば、これを利用するということが当然でありますが、その山の植伐は一定の計画に基いて年々何ほどかずつの木を植え換えて行くというふうに、秩序を立ててやることが必要だと思います。又耕地になるというようなことは、これは場所によつては耕地にしてはいけないというふうなところは、それこそ総合計画はつきりと立てて行かなければならない、こういうふうに考えます。
  25. 江田三郎

    江田三郎君 今のお話で行くと、大体砂防とか、それから河底の浚渫というようなところに重点を置いて行かれることになつているようでありますが、ところが、例えば昨日次官のお話つたと思うのですが、海からの防潮、これを考えなければならない。今の治山治水対策にそういうような高潮とかその他の、今度の十三号被害に対しましてですが、そういう対策が抜けている。それも入れなければならんとかというような話があつたのですが、そういうことを聞いていると、非常にこれは大掛りなもののような印象を受けるし、今のあなたのお話を聞いているというと、何だ大したことじやないという印象を受けるので、どちらがどうかよくわからんようなことになつて来るのですが……。
  26. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 大したことはないとおつしやられても、私も困りますが、そういう気持で申上げたわけじやありません。只今申上げたように、今までこちらで調査したものでも、建設省関係でも一兆何がしかの必要なものが要る。又農林省関係においても随分の経費を必要とするのでありますから、これをやつて行くのには容易ならんことであります。そう簡単にできるものだとは思いません。それから又今回の高潮について海岸堤防のことを考えなければならない。これは誠に申訳ないのでありますが、海岸堤防についても従来多少のことはいたしておつたのでありますが、今回の模様を見るというと、これは足りなかつたということが率直に申上げ得られるのじやないかと思います。で高潮の防潮堤については、当初は大阪、東京を中心にした防潮堤のことを計画に入れるようにしておつたのでありますが、今回のことを見て、まるで泥棒を見て繩をなうようでありますが、海岸のことをもつと根本的に考えなければならないというふうに今研究をいたしているわけであります。
  27. 江田三郎

    江田三郎君 まあ大したことはないと言うたのは、ちよつと言葉が過ぎますが、私が言うのは、結局大したことはないようなことに、あなたのほうは結論を持つて行かれはせんかと思つて言うのでありまして、掛け声は非常に大きいけれども、やつている間に何もかにもいい加減になつちまつて、今の現在の公共事業その他の予算に毛の生えたようなものに終つてしまうのじやないか。そろそろそういう伏線を出しておられるのじやないかと…、ちよつとひがんでいるかも知れんのですが、そういうあなたのお答えから印象を受けるわけなんです。それはともかくとして、一体十ヵ年間にこの只今のあなたのお出しになつている計画で一兆何千億、そういうようなものを若し出して行かなければならんということになると、現在の河川改修費その他とは相当額が違つて参りますが、これは一体財源的に見込があることなんですか。そして片方においては道路関係は例のガソリン税によつてやる。これも今の道路関係よりは殖えて行く。そのほかそれだけじやなしに、またいろいろな道路関係についても要求が出て、災害復旧は、今度のやつはどういうふうに措置されるのか知らんが、出して行かなければならん。そこへ以て来てこの治山治水の根本計画というものを打ち出して来られる。一体そうなつて来ると、あなたの見積りでは、この建設省関係予算というものはどのくらいあつたらできるということになり、又その考えられる予算というものは編成し得る可能性があるのですか。
  28. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) そうおつしやられると非常にむずかしくなりますが、まあ私のほうで先ほど申上げたような計算から出て来たものがああいうふうに出て来たのだということを申上げたのでありまして、これを努めて実施することが、本当に我が国の今後のためになるのだという気持は確かに持つております。又、お話のように、今年の災害の復旧というようなことも非常な金額に上つてつておりますので、これを処理することもなかなか容易なことではございません。それは財源的にどうかというお話でありますが、今まですでに、これは私に言わせれば河川なら河川等に使つておる金がまだ不十分であつたということも、今回の災害を呼び起した一つの原因にはなつておるのじやないかというような気もいたしますので、財政が許す限りはこういう点に注ぎ込んで行かなければならない。又災害の復旧ということも、各地を廻つてみましても、地方の困るところは容易ならんことでありますので、これもやらなければならん。それもこれもすべてやらなければならんということになれば、金が多過ぎてどうにもならんじやないかという御心配であるような感じがいたしますが、ここはなかなか困難でありまして、こちらで思うように十分できるとは私も思いません。併しこれはほかのことを差しおいてもこういう方面に相当に力をつけて行かなければならんということは考えております。又道路その他のこともいろいろありまして、すべて金の要ることばかりでありまするから、そんなになかなか財源はないという考えは当然出て来るのでありまして、そこで結局政府としても最もむずかしい立場になりましようが、私は、ほかのものを差しおくと言つては語弊がありましようけれども、何とか切り詰めてでも、この重要な面に相当に注ぎ込むようになつて参るようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  29. 江田三郎

    江田三郎君 だからもつと具体的に、もうすでに来年度予算の要求をなさつておると思うのですが、建設省関係では予算を大ざつぱに言うてどういう要求をなさつておりますか。
  30. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 一応河川関係では只今申上げましたような計算に基いて来年度の要求をいたしております。それから道路局の関係も、御承知のようにあの法律従つて、五ヵ年の全部とまでは行きませんけれども、主なる所を仕上げるという計画を今立てつつあるのであります。その一環を要求いたしておる次第でございます。他の関係もありまして、要求総額がちよつと私はつきりいたしませんけれども、相当多額になつておるのじやないか、ちよつと今…後ほど申上げます。これは従来のやり方が悪いと、或いは予算要求がむやみに多くばかりされておるというお考えを抱かれるかも知れませんが、一応計画としてはこれだけ欲しいということは要求をいたしておるのでありまして、恐らく本年度の倍額くらいの要求をいたしております。
  31. 江田三郎

    江田三郎君 私はこの予算の要求を何も多いのをけしからんと言うのではなくして、せいぜい一つ有効な計画をお出しになつて頂きたいと思います。ただ、我々は我々の意見がありますよ。例えば防衛計画の経費をどうするとか、そういうものをどつちに廻すとか、そういう問題がありますが、なかなか今のような政府考え方では、折角あなたのほうで有効な計画を出されてもどうにもならんのじやないか。ただ一時何かそのようなゼスチュアで世間を喜ばせているだけに終るのじやないか。そこでそういう考えからいつて治水ダムの、一つだけ、治水ダムの問題について言つても、もう少し政府資金だけでなしに、民間資金或いは地方自治体の資金、そういうものを動員するということを考えるほうがもつと仕事量が殖えるのではないか。勿論それにはこの治水ダムという一本のものでは不可能であつて、これはやはり多目的ダムということになると思う。初めからそういうような気持でこの資金計画を立てる場合と、事業計画を立てる場合と、そうでない場合と非常に違つて来るのじやないか。現に今やつておることを見ても、ダムというものを、治水一本のダムというようなことはそう多くおやりになつていない。大部分多目的ダムになつておる。そういう現状から行くと、あなた方の考えておられることは、ただこの計画のための計画を立てて、何か陽動作戦のためにやつておられるような印象が強くて、本当にやる気でやつているのではないのじやないかというような気がするのですが、その点はどんなものですか。
  32. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 決してそういうつもりではありません。むしろこの多目的ダムということを今まで余り強く言つてつたために、ダムはすべて多目的ダムだというふうに考えておつたことは、洪水の調節に不十分な場合もあるというので、今度むしろ新しく洪水調節だけのダムを作らなければ調節ができないのではないかという点を考えておるわけでありまして、決して洪水調節だけのダムをやつて行こうというふうに考えておりません。多目的ダムでありましても従来、或いはこれは私の杞憂かも知れませんが、多目的ダム計画にしてもやはりこの水の調節ということを一番先に考えなければならない。或いは電力のほうに損が行つても水の調節を先に考えなければならないという、こういう意味の延長が調節ダムということになつておるわけであります。
  33. 江田三郎

    江田三郎君 それは私から言わすと、本当多目的ダムになつていないのですよ。あなた方はつきりした考え方を持つていないから、電力会社にやつつけられているダムばかりですよ。だからもつと本当多目的ダムになればそういう弊害が少くて済むのを、建設省というものが、或いはこの農林省にしても同じことでございますけれども電力会社のむしろ意のままにやられてしまつて農林省の、農地局長が来ておりませんけれども、あのダムの冷害の問題ですね、ああいうような問題だつて殆んど解決はつきはしない。多目的ダムになつていない。私からみますと、電力会社に余りにも支配され過ぎておる。それを修正して行くのはいいのですけれども、併しこの元来の、河川局長や建設次官や、あなたの答弁を聞いておると、これは少し行き過ぎです。何といいますか、建設省オンリーというようなそんな色彩が非常に強くなつておるのではないか。計画を立てても、その計画というものはもう途中で変更をしなければならない。ただ計画のための人喜ばせか、人ごまかしかの計画になりはしないかということを憂えるわけです。
  34. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) そういうつもりではありません。
  35. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だから私たちの言う真意が大臣によくわかつて頂いておるかどうかということが心配なんです。そういうつもりじやないというのなら、その治山治水協議会というものと国土総合開発審議会というものは密接な関係を持たなくてはならないんじやないか。それはそれ、これはこれということはおかしい。で誤解のないようにお願いしたいのですが、私は治山治水のためにこうした大幅な金を出して、根本的な考え方で水を治めて行こう、こういうことには大賛成だ。それで反対しているのではございません。過去大災害があるたびに、何か聞きますというと、その後何年間かは水を治めることのために相当な仕事ができる。忘れられて来ると金が注ぎ込めなくなつて、又災害が起つて来たというようなことですから、こういう機会に根本的な対策を立てておやりになるということには大賛成だ。ただおやりになるやり方として、治水々々だというので、治水のための工事だというものが抜き出されて、それだけが行えるのだ、それだけを行うのだという考え方には私たちは疑義がある。治水という限りはもうその裏打ちとして利水ということも相対的にと申しますか、表裏一体として考えて行かなくちやならん問題ではないか。いわゆるさつきからダム一つの問題で言つても、電力開発とか或いは潅漑用水を取るのだとか、それら一切のものが考えられて、本当の水を治めるための設計もできて来るのじやないか。又どの程度にこの河川なら河川の水を治めていいというようなことも、利水という面を考えた場合に本当の計算が立つて来るのじやないか。それをただ水を治めるのだ、そのために治水だけの堤防を作ることを、ここの所を余計やるのだとか、或いは堤防を、ダムを作ることをやるのだ、或いは堤防だ、砂防だ、そういうふうに抜き出して事業をやつて行こうとする考え方に我々としては必ずしも賛成できない。どうしたつて多くの資金も要することですし、又利水の、ダム、そのために大きければ大きいほど、常識的には私は洪水調節にはなる。そういうことから考えれば、やはりそれも資金面からいつても多目的ダムとして考えて行くという余地も当然起つて来るのじやないか。そういう電力開発なり潅漑なり、或いは工業用水をどう取るかなり、いろいろ特殊な個々の河川についての事情というものがあるのですから、それらを総合的に考えた上で本当計画が立つのではないか。そういうことであるならば、少くともそういうことを鋭意考えておる機関もあるのだから、密接な連携を取つて根本的な対策を立てるべきじやないか。これを治山だ、治水だということで、それだけが先走つてつて、一応の金額ができ、或いは計算ができたところで、いざそれを実行しようということになつた場合に、それがスムーズに、円滑に実現できて行くか、恐らくそういうことはできないだろう、こういう考え方大臣の御所見とは見解を異にしている。それでこういう点についても今後何回かの協議会が持たれるという場合に、そういう広い立場で物を考えて行くというようなことが取入れられないものかどうか、こういう点なんです、問題は…。
  36. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お話の点は決して取入れられんものじやないので、私は平行してこれは立派にやつて行けるものだと考えます。ただ先ほど、今後の治水対策について治山治水協議会で一応の案を練ると申上げましたのは、むしろ総合開発計画ができたところでは、その計画に対応してやつて行く順序といいますか、当然やつて行くということになるというふうに考えるのでありますけれども、私が先ほどから申上げました洪水の調節ダムとかいろいろなことを言いましたのは、結局勿論多目的に総合的に利用開発して行くということは大切であるけれども、中でも治水ということを優先的にどうしても考えなければ災害の危険がありはしないかということを申上げたに過ぎません。できる限りは多目的総合開発の線に沿うて行きたいと考えております。
  37. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それは多目的ダムとして電気のほうもついているダムであれば、どうも根本的な洪水調節ができない向きもあるというような考え方は、私は建設省自身の水の管理方式が悪いからだ。そういう点も原因があるのだからということを考えて、もう少し管理方式が厳正に行われるように初めからの契約も又しつかりしたものができておれば、相当又その考え方も変つて来ると思うのです。従つてまあいろいろ、こういうことを議論しておつてもあれでございますが、私たちとしては、その国土総合開発特定地域として十九指定せられておりますものの大部分は、水をどう治めるか、どう利用するかということが中心のテーマとなつて計画されておるものでありますし、他の地域における直轄河川というものは、これは部分であります、ほんの僅かである。この直轄河川というものは大部分特定地域の中に含まれておる。それならば国土総合開発という方面を強くもつと押出してそうして建設省自身もその治水という面から根本的に総合開発という考え方に協力して事業を遂行して行くというほうが、本当に根本的な治山治水対策ではないか、こういうことがまあ私たちの意見なんです。それで何度お話しても、建設大臣としては、いや、それは政府部内で考えたものにそれぞれいいものがあつた取入れてぼつぼつくつつけてやつて行くんだというふうに常識的に聞えるような話で、話はひつくり返つている。私たちはそれは総合開発審議会のほうに移せ、そうして根本的な対策を各省の繩張りなどで、或いは予算分取りというような立場でなくて、そういう民主的な行政機関に移して、行政委員会に移して、十分な検討を加えて、無論それは実質的に各省が参加しておるものですから、そこで検討を加えられて、それが政府施策になるというふうにすべきではないか。何も今更治山治水協議会というものを置いて、屋上屋を架して、そうして河川改修だ、それ何だということで、それだけで計算した厖大な金額をここに設定して、そうしてとやこうのことを言う必要はないのであります。さつき江田君も言うように余りこういうことを言つておるというと結局禄な予算も取れないということになれば、単に宣伝的な政府のやり方だつたんだという批判も受けないでもない。若しも又一方これでやるんならやるんだ、そして他のあらゆる総合的なものは逐次附加えてやつて行くのだということを飽くまでも固執するというなら、その場合にはじやあ予算面計画通り出せるのか、ただ治水ということのために、ただ河川改修ということのために一兆億もの金が十ヵ年であろうが本当に出せるのび、こういうことをお伺いしたい。総合開発という形でやるならば、同じかかる金でも他の経済効果というものが考えられるから、資金も効率的に使用できる。そういうふうな考え方で私はお話しているのですが、いや、そういうことはまあとにかくとして、緊急にこの災害のそれを政府の責任でやるのだということであるならば、この計画通りの一兆一千億という金が十ヵ年間に出るのかということをお尋ねしたい。
  38. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 先ほどからも申上げました通りに、一兆億が出ると直ちにここでお約束申すまでには参つておりません。が先ほども申上げましたように、一般的にどういう対策が必要かということを研究したいというのが治山治水協議会であつてお話総合開発計画にはこれは平行して或いはその中に含めて今後進んで参ることになるべきものだと、かように考えます。と申しますのは、総合開発計画は一河川河川、一地区、一地区で研究調査をいたしておりますので、自然その時間も長引くようなこともありますし、これと平行して一般的にどういうふうに山なり川を扱つて行くかというようなことをきめたいというのが協議会考えたいところであるのでありまして、決して矛盾させるとか、或いは一方を律するというような気持で出ているものでは全然ございません。その点はよく御了解願いたいと思います。
  39. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうしますとあとで緒方さんにお尋ねしますが、今後総合開発審議会等で要請がある場合に、建設省としては進んで出られて、この治山治水計画というものについて披露もなさり、又審議会意見というものもここに十分取入れて、密接な関係の上にこの根本対策を立て、又実施して行くというふうにやつて頂けますか。
  40. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お話の点は勿論それで結構でございます。ただ私が申しましたのは、総合開発計画は、一つ地域々々についても相当長い時間をかけてやつているものであるから、それより早く、一応一般的な治山治水方針というか、方策というものを考えて行きたいというのが狙いであるというふうに御了承頂きたいと思います。
  41. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 無論それで結構です。時間的なずれもございますから、従つて前以て一般的な問題も聞き、審議会としての意見も申上げ、検討を加える材料にも資して頂くし、又具体的な特定地域について事業を確定しようという場合におきましてはなおのこと、一応は建設当局としては一般的な立場で対策計画や、その他審議会総合開発計画上、一部治水という問題についても計画を変更しなくちやならんという結論が起る場合がある。そういうふうな場合には、それをも又建設省としては十分斟酌せられて受入れられるお考えがあるかどうか。
  42. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 勿論結構でございます。
  43. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 今度の計画には一兆一千億という非常に厖大な金でございまして、いい加減貧乏をしている日本としては容易ならざる金であり、予算措置もかなり困難だろうと思いますが、それで何とかしてこの節約の方法はないか。日頃我々が考えておりますのに、今は、三月三十一日で終つて四月一日から始る会計年度でありますが、これを暦年度にいたしますというと非常に能率が上るのじやないか。通例こういう河川あたりの仕事ができますのは三月、四月、五月。六月にはそろそろ洪水がある。もう三月はいつも金がない。予算を使い果して四月、五月の最も仕事のできますときは予算が通つたばかりで、事務折衝で時間を空費いたしまして、まあ日本の風土、気候、そういう点から考えて、最も能率的に仕事ができる時期が空費されていて、冬になつてから急激に突貫工事をやる。こういうことで、この損失は恐らく私はならして一割には達すると思つている。つまり簡単に暦年度に改訂するだけで、一兆一千億の予算を一兆億以下でやれるのじやないか。どうして今の会計年度ができているかということを聞いてみましたが、それは明治時代に農民が米を取つてそれを売つて納める。そうした農業経済時代の、そういう税金を納める見地から来ているのでありますが、最近の国土総合開発や、こうした治水根本対策というものには、これは思い切つて一つ暦年度にする。これによつて、支障をこうむることは非常に少くて、非常に能率が上るのだ。我々実際仕事をしている上に、本当に天気がよくて水の少い、働らけるときに予算措置ができないでぽかんとしている点がある。無論これは予算を暦年度に変えるということは建設大臣の御権限ではございませんけれども建設大臣からでもイニシアチーヴをとつて頂いて、そういうふうに持つて行くということは非常に国家経済に役立つ、誰も害することはない。こうした土木工事、建築工事の季節というような考え方についてフーヴアー・コミッションで詳細な研究報告が来ておりますように、諸外国では非常に発達しておりますので、これに関しまする一つ建設大臣意見が聞かれれば幸いであります。
  44. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) その御意見は過日もどなたかから伺つたことがありまして何とかここにもう少しいい工夫をしたいものだというので、よりより研究いたしているのであります。ただ今暦年度に変えるというようなことがどうかわかりませんが、せめて少し長い事業を継続費にしてそしてあらかじめどんどん進めて行けるようなふうに持つて行くことが大切じやないか。継続費ということが戦後ずつと減つておりますので、これを一つ今年あたりは十分活かして頂くようにして頂いたらどうかと考えております。殊にお話の年度当初が、肝心な気候のいいときがむだになるというふうに承知いたしております。この点についてもなお今後よく研究なり打合せをいたしてみたいと思つております。
  45. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、今継続費制度の設定増加ですね。これは私も非常に痛切に感じて、その治水事業をやろうというものは、水源から川の品に至るまでの一貫計画がなくてはならないので、この単年度事業計画では不経済であり、非常な不都合も起きるのでありますから、是非継続費制度の設定を多くしてもらいたいということを希望しておきます。それから我々の考えでは、今度の大水害の原因は水源山地の荒廃もございましよう。いろいろありますが、それよりも今度の雨量なり雨質が異常のものでございましてそれが予防方法としては計画洪水量の再検討、これが私絶対必要じやないかと思います。殊に日本がだんだん工業化するにつれまして、河川計画洪水量を漸次高めて行くということが絶対必要だと思いますが、これは何か建設省のほうでこういう点御案でもありましたら承わりたいと思います。
  46. 伊藤大三

    説明員(伊藤大三君) 最近水害が起りましたところ、特に筑後川あたり、その他の河川につきまして従来の洪水量に比較いたしまして予想外な数字が出ておるというような実例もあります。従つてこの計画洪水量を如何に決定するかという問題につきましては、我々といたしましてすでに検討をいたしておるわけでございます。そこで計画洪水量の決定につきましてどういうものをとるかということにつきましても、従来におきましては過失の最高の洪水量というようなものを押えておつたのでありまするが、それでは余りに場当り的ではないかというような議論もあるわけで、従つて私も技官ではございませんが、これも百年とか八十年とかいうような一つの何か期間的に見てその何か確率で洪水量をきめようというようなそういうような試みも進めておるわけでございます。何せこういう問題につきましては、勿論従来から十分なデータを集めて調査せられ、又調査資料もございまするけれども、今後のためにもこの調査ということにつきましては更に徹底的に進めたいという考え方から、この計画と併せまして更に調査も進めて行きたいという観点から、予算の要求その他の問題につきまして検討を加えております。
  47. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 それから今度の計画では治水ダムをたくさん建設されることになつておりますが、できるだけ堰堤の高さを一つ高くしてもらうことが必要じやないかと思います。これは水量がたくさんできれば洪水調整にもなるし、又電力も起るわけでございまするから、今より相当堰堤の高さを高くするような一つ工夫をお考え願いたい。なおこれは、日本の技術者、建設省の技術者の方も、日本はこういう地勢たから、アメリカあたりで流行のロックヒル・ダムやアーチ・ダムは不適当だと言いますが、これは我々の知つておるアメリカのOCIの技術者或いはモリソン・クヌードゼンの技術者の話を聞いてみますると、日本のような貧乏な国が高価なセメントをたくさん使うような、そういう従来のグラヴィティ・ダムでなしに、このアーチ・ダム、ロックヒル・ダム、こういう費用のかからないものを是非研究すべきだと、こういう意見が非常に多いので、アメリカのごときもだんだん上勢グラヴィティ・ダムのできるようなところが減りまして、下流になりますと河幅が広くなりますので、土や石や砂でやります、そういう研究が非常に殖えております。これは少しまじめに、少々金をかけても一つ建設省のほうで御研究願いたいと思います。この点大いに御研究はされつつあることとは思いますが、この点一つ研究願えば非常に建設費が安くなるのではないかと思います。
  48. 伊藤大三

    説明員(伊藤大三君) 現在までのダムにはコンクリートの重力ダム、これかまあ大多数を占めておつたのでございます。ただ一つやりましたのが、胆択のロックヒル・ダム、これは勿論戦時、戦後の資材の関係もございましてロックヒル・ダムを選んだわけでございまするが、地盤の比較的どうかと思う場所につきましては、コンクリートの重力ダムよりロックヒル・ダムで間に合うというようなこともございまするので、ロックヒル・ダムを使うということも我々は研究の対象にいたしております。なお只今お話のございました、いわゆる土堰堤による洪水の調節ということにつきましても、アメリカあたりでも相当やつておるようであります。この点につきましては技術者も派遣頂きまして、そういうような面につきましてもいろいろその実地を見せて頂いて来ております。そういう問題につきましても、今後地盤の点からいたしまして、なかなか重力ダムの困難な、而も洪水量の調節にダムを使わなければならんというような場所もあるかと存じまするので、研究を進めたいと、こう存じてはおるのでありまするが、現在において具体的に十分な研究までは進んでいないのを遺憾といたします。
  49. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 それから調査機構の強化整備のことがこの計画にも、対策要綱の中にもありますが、これは外国と比べましてそういう方面に使う費用がかなり少いのじやないか。そうして今日この調査研究の不十分のための損失だということは、多くの場合は外部へ出しませんからわかりませんけれども、一般に世間で思われておるよりもつと大きな損失があるのじやないかと思います。例えば私ども関係しておりますダムにつきまして、十分の調査がしてないためにすでに数億を費したのでありますが、ダムの位置を根本的に変えなければならない。それからアーチ・ダム計画して中途からグラヴイチイに変えるとか、或いはこの辺にはたくさんな骨材があると思つていたところがなかつたり、そういうロスは、調査にかけておればそういうことは防止できたので、これは外国の技術者がいるので、日本における調査が非常に不十分である、完全な調査というものが殆どない。これは急激に大きな費用をかけて、ダムの建設なり総合開発をやつた結果等もありますが、この治水根本対策要綱を実現する上において先ず第一に取上げなければならないのは、この調査機構を整備、拡充いたしまして、思い切つてこの費用を使つてやるべきだと思います。それに使つた費用と、それから建設費と比べますと問題にならない少い金でございますから、これは一つ是非ともやつて頂きたい。この点を一つ何か計画がございましたら承わりたいと思います。
  50. 伊藤大三

    説明員(伊藤大三君) 今鹿島委員から御指摘になりました点につきましては、全く我々も同感でございます。調査の金を惜しむがためにあとで大きなあと戻りを来すということについては、誠に国家の立場からいたしましても不経済な問題でございます。これは我々も実は痛感いたしております。恐らく鹿島委員も工事を担当せられておられます関係上、そういう点については十分にその場所についても御承知のことと存じます。従つて我々もこの点については、今後の予算の要求におきましても十分それを検討いたしまして、そうしてこの調査に更に力を入れて行きたいという観点から、予算の方面におきましてもいろいろ大蔵省のほうとも折衝いたす所存でございます。
  51. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 この計画は近代式改革法によるとされておりますが、まあ日本の機械が最近非常に進みましたが、例えばアメリカの機械を、農業の機械でも土木機械でも、すぐそのまま使えるのは北海道だとか或る特殊な地方でございまして、何せ日本は山が峻険で地勢が狭いものでございますから、この土木機械を使うということにつきまして、外国から買うのも結構でございますが、同時に創意工夫がかなり要ると、又外国から買つたものにはそう多くの故障はございませんが、内地のものは試作品の程度でありまして、故障が非常に多い。尤も一つの機械を大量生産式に移すまでには二年、三年の研究を必要とするのですが、こういうふうに急速に治山根本対策を立てられまして、土木機械を多く使うことになりまするというと、機械に対しましても日本に適する標準型の機械を一つ研究して頂いてこの機械に対しまして建設省から一層の御指導、援助がされることを希望するのですが、何か機械に対しましてお考えがあれば伺いたい。
  52. 伊藤大三

    説明員(伊藤大三君) 最近の土木工事につきましては、だんだんと機械を入れまして能率を上げる。そうして成るべく工費を節約して、工事を伸ばして行きたいという点から、そういう方面に戦後指導いたして参つているわけであります。ただ従来から機械の購入につきましては、製作品にまま悪いものもございまして、いろいろと問題もあつたのでございます。併し最近この方面につきましても業者において研究がだんだんと進んで参りまして外国の機械のいいところを取入れ、そうして規模において日本に向くというようなものをだんだんと製作が進みつつあります。今もう試作の時代を出てもう十分にやつて行けるかという問題になりますと、まだそこに若干の疑問がございます。従つて今後の問題につきましては、その方面の改良をお願いすると共に、現場におきましても現場に即応するような標準並びに規格のものを業者と密接に提携いたしまして、能率の上るものを選ぶというふうに考えて参りたい、こう存じております。なお外国の輸入とか、いろいろな問題につきまして、これはいろいろの、ドルの問題もございましようし、又国内の産業の育成の問題もございましようし、そういう面から必ずしもいいから外国のものを入れるというわけにも参らん面もあるかと存じます。こういう面につきましては、我々といたしましては素人でございますので、そういう問題につきましてはなお各関係各省とも連絡いたしまして、そういう点に遺憾のないようにして行きたいと、こう考えているわけであります。
  53. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 この治水根本対策実施されるには、用地につきましてかなりの問題が起ると思うんです。先般土地収用法の一部改正によつて斡旋制度を設けたのでありますが、私はそれは結構なことであるけれども、強力な手を打たなければならんということを申入れておいたのですが、これを研究され、用地の取得ということについてもつと法律を改正或いは修正するなりして、強力な手を打たなければ、中途でごたごたが起こつてできないのじやないか。世界の実情を見ても、総合開発あたりを強力に進めている国で日本の現在のようなだらしないこの用地の買収法というものはないんじやないか。私はそういうふうに考えるのですが、何か用地の取得につきましてもつと強力な手を打つ考えはございませんですか。
  54. 渋江操一

    説明員(渋江操一君) 用地問題、これが大きな治水事業なり公共事業の上で相当な重要なウエートを占めて、それの成否を決定する重要な条件でございますから、お話のように、それに対しては完璧な態勢をとりたいというのは、事業官庁としても非常に従来から考えておつたところでございます。先般御審議願いました斡旋調停の制度を作りましたのも一つの現われであります。更にこれを一歩進めて、どういう方法をとるかということも研究はいたしております。併し現在の段階においても、新らしい土地収用法の土で考えられた換地問題、それから斡旋制度の上でも、御審議の際に御希望が出ましたような、いわゆる現物補償としての換地補償といつたようなことをかなり広く政府としては取上げられる形をとつたんでありますから、これの実行を先ず見て行くというのが差当りの段階ではないか。更に考られますことは、さような換地になるべき土地の取得方法、こういつたようなことをもう一歩進めて取上げるかどうかという問題でございまして、これは研究はいたしておりますし、すでに一つの制度として確立しております。現行の運用の上でこれを見守つて、なお且つ足らざる点を補うという形で解決をして行くべき問題だというふうに思つております。さような意味で、現在は一応研究中の段階であるというふうになつておる次第でございます。
  55. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 最後にお尋ねしたいし且つ又お願いしたいのですが、ここに河川の愛護運動という言葉が使つてありますが、これはどういうふうにしてなさるか。
  56. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 何ですか。
  57. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 この計画のうちに、河川を愛護する運動を強力に展開するということがありますね。八番の河川管理の強化及び河川愛護運動。
  58. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 只今用地の問題もありましたが、今後はなかなかこの治水対策にしろ災害の復旧にいたしましても非常に金額が多く要するようになつて来て、容易でないということは、もう我れ人共にわかることでありますので、もう少しこうした公共の仕事に私は地方の国民がもつと強く協力をしてくれることの体制が整うことが大変いいのじやないかというふうに考えております。又事前に、災害の前にも少しでも水防に努力してもらうというような考え方がもつと強く進んで来ることを希望いたしておるのでありますが、今度の治山治水恒久対策或いは復旧の仕事をして行く上においても、やつぱり地方の人が川を愛する或いは郷土を愛するという気持で強く協力をしてもらうというような体制が欲しいという意味で、河川の愛護ということ、或いはこれは河川愛護のみじやない、従来も道路の愛護とかいろいろ、ありますけれども、郷土を守るというか、愛するという観念をもつと強く推進して参りたい。又そういうふうな気持になつてもらうのでないというと、なかなかこの難関を突破して行くことができないというような意味から河川愛護という言葉を使つた次第であります。
  59. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 大変結構でございまして、政府が幾ら金を使つても、国民が起ち上つて河川を愛護し、又自分の郷土をうるわしくしようという熱意がなければ何もならない。私はもう古い話でございますが、ドイツに行きまして、その当時東プロシャの今のソ連の占領地域におきまして、まあ総合開発のような主として内地移民、インネン・コロニザチオンの政策をとつておりましたが、非常に政府研究という態度、これはとても我々が考えられないくらいでございまして、例えばあの地方にはポーランド人が住んでおる。ミュンヘン大学にポーランドの問題の大家がおる。そうするとそういう管掌をしておる部局は文部省を動かしてそのミユンヘン大学の教授をベルリン大学に移しまして、その総合開発関係させる。こういう細かい注意を払つておる。その後イタリーへ参りましたが、当時南部の開発をやつておりました。シシリー島並びにローマ以南のああいう土地をやりますときに、総理大臣みずからが百姓を集めて鍬を授けて、肩を叩いて、お前たち自然の戦において勝て、そしてうるわしい土地を作れ、こういう熱がある。日本総合開発におきましても、或いはこうした一兆何千億を使うにおきましても大きな精神運動がなくちやならない。アメリカのTVAの何も、日本ではいろいろな計画だけどうこうした、金をこうした、金を幾らダムに使つた電力に幾らという数字のあれはありますけれども、その当時のルーズヴェルトのニュー・デイール政策と切離して考えることはできない。新規播直し政策と引離してあのTVAというものは考えられない。ソ連におきましても、レーニンが政策切換えのときにネツプ、新経済政策をとりまして電化政策、そのほかツンドラの征服、ドン、ヴオルガの総合開発をやりますときに、国民は一種の情熱的な気分に動かされてやつておる。先ず総合開発、次いで重工業、化学工業、それから今日の軍備を作つたのでありますが、今日日本におきましては、何をするにもこの総合開発、これが基礎になりまして、その上にいろいろな工業が建設され、そして日本の国民が食べて行かれるような状態でございまして、この治水根本対策にいたしましても、総合開発におきましても、これに一つの情熱を国民に湧き立たせにやならん。これは建設省だけの問題じやない。政府だけの問題じやない。更に自由党もこれに協力せられて今お話を聞いておれば、社会党の方々も恐らくこれには賛成なんですから、これに対しまして河川の愛護運動だけじやなしに、もつと大きな一つの国民運動を起す必要があるのじやないか。これは建設大臣にお願いするだけの問題じやないのですが、建設大臣は重要なパートを占めておられますので申上げるのですが、私はそうした情熱がなければ、幾ら金を注いでいても効果は挙がらない。余りに今日ものが物質的に考えられまして、精神運動が足らないことを非常に嘆いておるのです。いずれの国も、精神運動がこうした治水根本対策なり総合開発に伴つておりますのですから、この精神的効果を起す上に、建設大臣一つ音頭を取つて頂くようにお願いしたいと思います。
  60. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 先ほど鹿島委員の御質問の中に、調査が不十分のために国のほうでも数億損した。こうおつしやつたのに対して、河川局次長が、誠に御尤もだ、遺憾の意を表する、こう言われました。それで私は河川局次長にお伺いしたいのですが、これは建設省調査なすつたダムか何か知りませんが、それをどこかの土建のほうに仕事をさせまして、事実数億の損をした、こういうことが実際起つているのか、起つていればその具体的な話を…。
  61. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 私の言うのは建設省ではございません。これはちよつと今言うのをはばかりますが、そういう調査不十分のために大きな損失をしているということだけで御了承願いたい。
  62. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 じやわかりました。
  63. 石井桂

    ○石井桂君 私は水防活動のことを少しお聞きしたいと思うのですが、水防活動は建設省の所管になつておりましようか。先ず第一それからお聞きしたい。
  64. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) さようでございます。
  65. 石井桂

    ○石井桂君 それでは、今回の水害で和歌山県下を視察した際の話でありますが、堤などが切れようとしたときに、地元の方々が非常によく働いて、そうして堤防のいろいろ決壊を防いだというような美談は随所にございます。非常に土木的な堤防の補強とか或いは橋梁のマットの補強なんというのに非常によく働いておられて、我々も大いに感心して帰つて来たのですが、ただああいう多量の降雨のときですから仕方がないとは思いますが、判断を誤つたといいますか、どのくらいの水がどのくらいな時間に来るのだということをどなたも予想をしないために、指導者がおつたかどうか、わかりませんために一挙にして何百人の人が見ている前で簡単に死んでしまつたというような事例がある。それは金屋橋という橋のあるところですが、あれは何という川でしたか、有田川ですか、あの金屋橋というところです、橋のちよつと上流のところで堤防が切れて、そうして川と平行に水が裏側のほうに廻つている。ところが丁度金屋橋のところのかたまつた百数十名の人々は家におつて避難しなかつた。そして増水を見物しておつた。たつた一人土木出張所の若い二十幾つかの技手の人が、一人で向うに電話かけたりこつちに電話をかけたりして、そうして警察あたりにまで連絡して、未明のことですから巡査の寝込んでいるのを起したりして警戒に当つた。併しその電話を受けた巡査なんか、そんな金屋橋が落ちるようなことはなかろうというので、そういう返答をやつている間にどんどん増水して、後は水がどんどん流れて行く。今度は別の唯一つの鉄骨の橋梁である橋が落ちてしまつた途端に孤立してしまつたわけですね。誰も今度は助けることができないので、見ている間に百数十名の人命を奪つてしまつた。こういうようなことは、人命の奪われるというようなことは、私はどんなことをしても救わなければならんと思うのですが、こういう場合に、そういうことを指揮する責任者とか、或いは監督というものはどこがなさるのでございましようか。それがわからんものですから、土嚢を積んだりするのは建設省が多分主管だろうと思うのですが、あれだけの雨が降つて来て上流の橋が落ちたという報を受けて、警戒しなければいかんというので、若い人が一人で駆け廻つているのだけれども一なかなかみんなが協力しない。今度は避難すべき人々も、いざ避難となると、家財に執着しているのですか何ですか、避難もしなかつた。恐らくあの場合に強制避難をさせたならば、百数十名の人命が一人も残さずに助かつただろうと思う。それを私と小笠原委員と二人で聞いていて、どうも誠に不甲斐のない水防活動だ。而もその前の日に水防演習をやつたのだと、こういうのですから、その活動は実際余り活きていなかつたのだろうと思うのです。そういうような指導は建設省じやないと思うのですが、若しそういうことが建設省であるなら、私としてはああいう災害時には水がどれくらい出るという判断は、一番土木関係の人がこれは専門だろうと思いますから、その判断をして頂いて、警察なり何なりがその判断を受けてすぐ命令一下活動しなければいけないのじやないかと思います。私の見た事例はそれ一つですから多くを言いませんけれども、ほうぼうに固まつて人が死んだことについては、そういうことがほうぼうに起つているのじやないかと、今度は逆に想像するのですが、ああいう非常時の水防活動の一環ともいうべき糸急避難、ああいうものはどこが責任をお持ちになるか。或いはそれに対する対策、日頃の心がまえ、訓練等に対するお考えがあればそれをお聞きしたい。
  66. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 只今お話の例は誠に不幸な例であつて、残念なことであります。それに刺激されたかどうかは知りませんけれども、今度の十三号台風では各地で随分水防活動をよくやつて又避難命令なども行き届いておつたように聞いて参りました。ただ和歌山のときには、雨の降つた所が極めて小範囲であつたのでございまして、それがために事前によくわからなかつたという点が大分あつたように私も聞いておりました。又京都の関係のときにも、連絡はしたけれども、たまたまその村で役場に人がおらなかつたので、そこだけが大きな被害を受けたということを聞いております。これは普段から随分注意をいたしてやらなければいかんのですが、只今の例は、その前日に水防活動までやつたというのにしては余りに何といいますか…。
  67. 石井桂

    ○石井桂君 疲れて寝ていたのだそうです、皆。
  68. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 殊に今度の…、私つい最近に淀川方面に参りましたが、淀川などでは水防活動といいますか、今お話の和歌山県の紀ノ川でも非常に危いところを救つた例があります。淀川でも各地に、事前にといいますか、最中に随分水防をやつて、何といいますか、枚方の少し向うに支流がありまして、その支流の決壊を保安隊に出て来てもらつて食いとめたのでありまして、今後は一層そういう点について不幸のないようにいたしたいと思いますが、各県各地にそれぞれもう少し水防の団体といいますか、そういうものを強化して参るのも、先ほどの鹿島委員お話の地方の協力ということと照し合せてもう少し強く推進して参りたいと思います。
  69. 石井桂

    ○石井桂君 只今お話で了承いたしますが、実際のそういうときの人命救助や何かのことも建設大臣のお仕事なのでございますか。それがよくわからなかつたものですからついでにお聞きするわけですけれどもね。
  70. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 水防の活動もやれというようなことで、普段からこちらから推進をいたしておりますけれども、そうした人命の救助とかいうようなことは別の関係になりましようから…。
  71. 伊藤大三

    説明員(伊藤大三君) 水防は、実は地元の市町村並びに水防管理団体、これは市町村即水防管理団体という場合もありますし、淀川の左右両岸のように、市町村とは別箇に水防管理団体があるところもございます。これが水防の実務をやる、そうしていろいろの警報の連絡だとか緊急避難の通達とかいうようなことをやることになつております。ところがなかなか実際になりますると、その警戒の水位というものから洪水に、大きな出水になるまでというのが、大きな川でありますると相当時間がございますけれども、小さな川、特に局所的に一時に雨が降つたというようなときだとなかなか連絡が十分に行かない、又連絡するにも、風でも強いときには通信網が切れるというようなこともございまして、或いは警鐘を乱打するとか、いろいろな方法は、地方におきまして水防の活動の組織をきめ、その方法をやつておるわけでございまして、今回の有田川の氾濫におきましては、局所的に非常に大豪雨がありましたので、その水の出て来るのが非常に早かつた。そうして丁度明け方のことでございましたので、そういうような点につきまして水防管理団体の活動においても若干思うように動けなかつた。こういうような点がたくさんありまして、そういう惨事を起したわけでございます。それで今後におきましては、こういうような水が出たことに顧みまして、十分地元におきましても、今は大丈夫というような観念は捨ててたとい避難することによつて或いは少々の損害を受けるとか、要らん骨折りをしたというような観念は捨てて、思い切つてそのために動くということを指導いたして参りたいと思うのであります。
  72. 石井桂

    ○石井桂君 私のお伺いしたいのは、ああいう混乱時に建諮系統の方の活動は非常によかつたと思うのです。ただああいう場合に、どこかで本当は危くなつたときに緊急避難の命令を出せば人命が大勢救われただろう。そのときに命令を誰が出すのか、そういうことをお聞きしたので、どうもつぼにはまつていないようなお話なもんだからね。例えばその県の県知事が出すのか、金屋町の町長が出すのか、或いは金屋町の自治警察署長が出すのか、或いは誰も出さないで、地元の人が自分の判断で自分の責任で逃げ出すのかということもあるので、そうでなしに、一般の人は、誰か言つて来るのだろうと思つてつている人があるだろうと思う。それをお聞きしたいわけなんですよ。
  73. 伊藤大三

    説明員(伊藤大三君) 現在におきましては水防管理団体というものがございます。その中で一応の役目を受持つておる人がそれを担当するわけでございまして、それが危いというようなときは警鐘を乱打いたしまして、いろいろ連絡の方法はきめてあるわけでございます。それが或る程度わかりましてもまだ動かないというようなことは、行政的にそれをどうこうするということまではできませんのですが、その連絡係というものはきめてあるわけでございます。
  74. 石井桂

    ○石井桂君 只今お話によりますと、そういう団体がおありになつて、係をきめて人命救助や何かに当るそうなんでございますが、そうすると、やはり考えてみると、建設省が一番間近にお仕事に関係があるようでありますから、私は建設大臣にはそういう人命救助の仕事のほうは関係ないと思つて過しておつたのですが、若しおありであると、大臣自身もお考えでありますならば、いまちつと一つ緊急なときには間違いのないように一つ御指導願いたいと思います。大体私の話はこれで終りました。
  75. 石川榮一

    石川榮一君 幸い大臣もいらつしやいますので、伺いたいのでございますが、治山治水恒久対策の問題は、すでに建設省においては数年来研究せられまして、大体の方針は立つておると私どもも承知しております。要はこれを如何に実施面に移すかというのが問題であろうと思います。恐らく内閣に設置されました治山治水協議会の根本方針も、財政と睨み合せて、建設省が持つているその方針を貫くには如何にしたらいいかということに或いは協議が進められて行かねばならんと思う。現在の国家財政の状況から考えまして、一兆三千億、農林省を入れると一兆八千億、二兆にもなるという厖大なる治山治水の総合計画を遂行する金が必要だということがはつきりしておるわけでございます。こういう大きな計画ではありまするが、これが国家の自立経済の根本でありますのと、本年のような災害が各地に起りまして、本年に限らず、明年も明後年も現在の状況を繰返すのではないかと私は心配いたします。こういう観点から、災害復旧工事の実施は当面の緊急問題でありますから止むを得ませんが、恒久的な対策は、財政的な見通しを相当長期に立てられまして、現在の財政の規模に執着することなく、五年、十年の将来の日本の経済の伸展率等を考えられまして、そうして大所高所からその計画実現を期して頂きたいと思います。今の財政の配分につきまして、特に建設行政に対する配分は、公共事業費として相当出ているとは言つておりますが、我々が見ておるところでは非常に少い。決して治山治水費に国家が相当の予算を出しておると私どもは認め得ないのです。それは御承知のように直轄河川並びに全国の中小河川等を抱容し、砂防費を入れましても三百億弱だ。まあ一兆億から見ますれば三%に過ぎない。こういうようなことで、これに執着を持つて、それが数年来の計画であるからといつてそれに執着を持つような財政配分を御研究になるならば、これは到底この大きな治山治水恒久対策を進めることは不可能だと思います。これを一つ十分に御検討を願いまして、少くとも総予算の一割程度、一〇%程度治山治水、利水を中心とする総合開発に充てて頂かねばならん。若しそれでは国家財政がどうしても堪えられないとするならば、この際思い切つて、先ほど来鹿島委員からも強調され、実は自由党もいろいろ論議しておりますが、河川の愛護運動或いは国土開発の愛郷運動というような、超党派的な運動を展開しようというような機運もあるのですが、それを推進すると同時に、具体的に現れる面としては、この際思い切つて治山治水公債を発行されましてそうして農民層の貯蓄、或いは財界有力者に十分な協力をして頂きまして、できるならば特別会計でも作りまして、その治山治水公債の償却方針等をきめられまして、そうして年次計画を立てられまして遂行して頂かなければならないと思うのです。現在の一兆億の予算を上廻ることは困るというだけで行きますならば、治山治水恒久対策なるものは実施面において私は不可能に近いのではないか。ややもしますと公債発行はインフレを起すと言いますが、毎年災害を繰り返しまして、全国至るところに荒廃地が多くなりますと、生産が激減して参りますので、如何に財政的に緊縮いたしましても、物資の取れないところにはやはり悪性インフレが出て来る。欠乏経済から起るインフレは最も恐るべきものがある。こういう観点もある。もう一つは、政府施策が十分示されませんと、愛護運動を唱えましても民心は追従しない。政府が思い切つた態度をとるならば、これに追随するでしようが、現在の配分で糊塗して行くようならば、決して民衆は踊つて来ない。諦めてしまうのではないかと憂えるのであります。愛護運動をやると同時に、政府施策を大きく振り廻しましてそうしてでき得るならば、治山治水公債を発行してまでやるというような決心を持つて、これに協力しろということになりますならば、今農村には、関東地方におきましては、どの農村にも協同組合に貯金している者が二千万乃至三千万はある。最近私の地方の諸君に集つてもらいまして、この問題を話しましたところが、村長においては一千万円ぐらいは直ぐにもお引受けいたしますと言つている。そういうところは随所にある。農村は現在土地の解放以来自由に土地を取得することができないような状況でありますので、貯蓄いたしましても、その金はややもすると浪費をする。要するに貯蓄した目標をどこに使うかということにつきまして迷つている状況であるのであります。東北におかれましてはそういうことはないかも知れませんが、関東或いは関西、九州の方面には相当農民に余力がある。これらの者はややもすると闇金利を取つたり或いは浪費をいたしましたりしまして折角の農村の振興意欲が無意味になつてしまうというような点もあるので、農村が貯蓄したものを有効適切に再生産させるために治山治水公債、利水公債というものに転換させる。そうして農村の貯蓄したものをそういう方面で活用させるように指導することも、私は将来のために精神的にいいのではないかと思うのです。この治山治水公債等につきまして、若し何かお考えがあるならば御所見を伺つてみたいと思うのですが、私はこの際思い切つてそういうような手を打ちませんと、この恒久対策なるものも、結局財政的な裏付が現在の予算に膠着している以上は、堂々たる実施方針は立て得られないのではないかと思います。協議会において御意見もあろうと思いますが、問題は財政的な措置であろうと思います。これに対する大臣のお考えをこの際伺つておきたい。
  76. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 只今お話の、国民に協力乃至は愛護運動を推進するには、勿論お話のように当局としても、政府としてもそれだけの努力をするということを明らかにしなければならないことはお話通りだと思います。ただ財源の問題についてだんだん御意見もございましたが、どうも私はこの辺の知識が十分でありませんので、どういうふうに賄い得られるか…。併し、今日も実は閣議で私は、どうしてもこの災害対策乃至は治水の今後の行き方というものは、政府が全努力をするという態勢でなければいけないと思うということを実は発言いたしたのでございます。閣僚の方承その点については皆御同感のようでありました。ただ財源をどういうように出すかという技術乃至は影響というようなことにつきましては、なかなかむつかしい問題でありましよう。勿論只今お話がありました公債というようなものも考えられないことはないのでありますが、これも一定の限度が恐らくあるのじ覆いか。なかなかその点はむつかしい、非常にむつかしい問題だと私は思うのです。ただ今申上げる根本の考え方としては、ほかのものを切詰めても、どうしてもこの災害対策と今後の治水対策は立てて、国民に安心を願うと同時に、国民のほうからも協力を得るというふうにやつて参りたいというふうに考えます。
  77. 石川榮一

    石川榮一君 もう一つお願いしたいのは、現在十三号台風によつて三重県並びに滋賀県、各県とも非常な海岸堤防がやられているようでありまして、酸鼻を極めておるようで、方法がないということの陳情を聞いております。私もまだ現地を見ておりませんが、大臣は最近わざわざ御出張なさつてつぎに御覧になつたと思いますが、この海岸堤防の問題につきましても、昨日の委員会におきまして建設省農林省とはその所管の立場からおのおの別途の考えを以てそれに対する案を立てるのではないか。それはつまり海岸堤防に対する立法的な措置がない、要するにこれが行政的な措置でやつておられるというような現在でありますので、所管省がはつきりしておらない。昨日も建設省から或る程度の案を局長から述べられまして、農林省は干拓に関する限り…その海岸堤防の仕事をするところが干拓である限りこれは農林省でやるように考えられるというようなはつきりした意見の開陳がありました。そういうことで、結局建設省がやるか、農林省がやるか、その限界もきまつておらないというような状況に終始しておりますとやたらに工事が延びるのではないか、又熱意が入らないのじやないか、こう思うのですが、恐らく地元では困ると思います。先般海岸堤防法の視察等もしようといたしまして、いろいろ両省の間を斡旋したのですが、なかなかまとまりません。これは、建設大臣と農林大臣が同じ自由党の方でありますからお話合い願いまして、大所高所からこの海岸堤防を政府提案によつて堂々と出してもらいまして、そうしてこういうような三重県とが或いは滋賀県、その他これから逐次起るでありましようこういうものに対して、主管省がきまつて、てきぱきとやれるようにやつて頂く必要があるのじやないか。もう差し迫つて現在の三重県の問題等、或いはこれに運輸省も関係しましようというようなことで非常にお困りと思いますが、この海岸堤防法につきましては各省が協議いたしまして、勿論建設省中心になつて頂きまして、各省大臣の間に話をきめて、事務当局にその案を作らせるというように御心配願うことが必要じやないかと思いますが、先般海岸堤防法を私ども編み出そうとして非常に苦労をいたしました経験がありますので、この際海岸堤防が非常にやられておる現実でありますから、これをこの際はつきりと法文化してもらいたい。そうして所管をはつきりして頂くようにお願いしまして、敏活にこれらの工事が進み得るように措置する必要があると思います。これに対する所見を伺います。
  78. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 所管争いのようになつてもいけませんが、お話のように海岸の堤防が農林省建設省或いは運輸省の関係で錯雑しておるということは、今まで事実でございます。今度もだんだんほうぼう廻りましても、地方でもやはり一つにまとめてやつてくれ、地方では、私が行つたから建設省でと、こう申しますが、とにかく一つにまとめてくれなければ困るという空気は相当強いと思います。今日も閣議の席で私はそのことを申しておきました。だんだんそういうふうに話が進んで参らなければならんと考えております。従来の扱いで申しますと、例えば今度の私が行つたところでは、愛知県のごときは海岸の管理は県でやつておるというふうになつております。まだそれらによつて町村でそれぞれやつておるところがだんだん今まであつた。それに補助をするというような形であつたのであります。今回のことを見て、どうしてもこれは一貫した形で行かなければならん。むしろ海岸のほうはやはり国で直接に仕事をやるということが一番よいのではないかと考えておりますが、今研究をいたしておるのでありますが、国でやる、それにいたしましても、関係の各省それぞれというような行き方では面白くない。決して建設省と申す意味ではありませんが、一本にまとめて海岸のほうもやるようにしてもらいたい、かように考えます。成るべく早い機会にお話の御期待に副うようにいたしたいと考えます。
  79. 田中一

    ○田中一君 この治山治水対策をお立てになつ政府としては、建設大臣は、実際にこれを実行しようという熱意が窺われて大変結構でございます。殊に二十幾つかできましたところの、六、七月の台風に対する予算措置も未だしないでおるのですが、閣議ではどういう形で以て国会できめられたところの法律予算化を考えておられるか、この点伺いたい。
  80. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) これは特別立法の特に地域指定の問題でいろいろ対策委員会でも意見があるようであります。今日大蔵大臣その他が合同委員会出席して、話が多分まとまるのじやないか。その結果によつて予算化を早くしたいというふうに考えております。
  81. 田中一

    ○田中一君 その厖大な仕事を遂行するのに、従来通りの形で施行して行くのか、相当国の予算が投入されますが、従来のような形で以て施行して行くか、この施行形式はどうなりますか。やはり従来のように補助金を地方公共団体に渡して、そこで仕事をやらすのか、国が本当に本腰を入れて金さえやればできるのだというようなのでなく、本腰を入れて直接自分でやるという決心でおるのか。従来のようなやり方でやるならば、災害の上に災害を生むというようなことで、補助金が脇に流用されるという危険がないでもない。そういう無駄を排除するために、施行形式はどういうふうにいたしますか、何か腹案がありますか。
  82. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 災害復旧乃至は改良の工事は全部国でやるということは到底行かんと思います。やはりその形は府県にやらせる、或いは町村にやらせるのもありましよう。併し今までのように徹底したといいますか、最後まで見届ける行き方が不十分であつたようなきらいがありますので、仮に町村のような場合にいたしましても、今度は県に責任を持つてやらせる、或いは監督させるというようにはつきりして、今までのような結果においてまずいことが現われて来るというようなことを努めて避けなければならないと、かように考えておりますが、なかなか国で全部やるというわけには参りません。で只今申上げるように海岸堤防のような重要なものは、或いは今までと形を変えて国で直接やるというように持つて来るものもありましようが、まあ検査といいますか、査定といいますか、或いは実施の監督という点については、従来よりはもつとしつかり力を入れてやらなければ、本当の実効は挙がらないのではないかと考えておりますので、その点は十分注意をいたしたいと考えております。
  83. 田中一

    ○田中一君 そうすると無論直轄河川の指定は国が直接にやる。又海岸堤防のような、三重県、愛知県のような大きな決壊に対しては国がやつてもよろしいというようなお考えと思いますけれども、従来まで指定されたところの直轄河川ですね、国が直轄してやつておる事業と、今度このたくさんな費用を投入する事業と、これはどの辺で分けますか。何か構想がおありのように考えるのですが、ただこれを従来のように補助金をやるからそつちが仕事を完成するのだという考えだけでは、これは私はできんと思う。やはりこれは本当に国が本腰を入れて、この完成に乗出すという決心がなくちや駄目だと思うのですが、建設大臣建設大臣としての心がまえがあると思いますが、どういう分け分をしてどうするつもりですか、お伺いしたい。
  84. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 私の考えでは、今までは一つの川についていろいろの工事の施行があつたわけでありますが、成るべくは一つの川については一本の考え、一本の管理の考え方で行けるような方法にするのがいいんじやないか。そうかと言つてそれを直ちに皆一つの川については国でやるというようにも参らんかも知れませんけれども、川そのものを管理するという行き万は国が持つてやるのだ、或いは府県か責任を持つてこの川筋を管理するというような考えに行くようになるのが本当じやないかと思つております。併し何分にも非常な多い事業でありますかり、これを全部国でやるというふうには私は参らんと思います。で、どこでやるにいたしましても、負担の関係というようなことは又別の考え方でもいいんじやないか。いずれにしても、さつきも申上げましたように、町村あたりのものでも府県が十分責任を持つて監督するというようにいたしませんといけないのではないかという点は考えております。又、只今河川法のこともいろいろ研究いたしておりますが、まだ結論に到達しておりません。そういう点も考え合せて、川の管理というものは、上流から下流までを通して考えて見てこの川の始末をして行くということが一つ考え、それから又工事は仮に国がやろうと或いは府県がやろうと、その責任を持つたやり方にはつきりして行くということが必要じやないかというふうに考えております。
  85. 田中一

    ○田中一君 今吉田内閣では、行政機構の改革に着手して、今度は必ずこれは実現さすというような考えを持つておりますが、あなた閣議に出ていらつしやるのだからおわかりであろうと思いますが、従来野田君がやつたように天引整理を以てやろうとするのか。この建設省関係予算が厖大になれば、今度は行政機構改革をやつて…。建設省にたくさんな技術家なり、たくさんな公務員を擁してその施行に万全を期す、或いは監督、査定に万全を期すということにならなければならないのです。大臣としては、これだけの事業を遂行しようという心がまえの下に、閣議ではどういうような機構改革に対する発言をなすつていらつしやるのですか。私が心配するのは、御承知のようにまだ七千人近い準々公務員的な労務者がたくさんおります。こういう者の身分を上げて、定員法を改正して、建設省に大ぴらに持つて来ようとするのか。そういう点は一つ事業を遂行するための人的配置の心がまえがあると思いますが、その点はどうお考えです。
  86. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 機構改革についてまだ閣議でいろいろ発言するような機会には参つておりません。ただ建設省関係の事業員の取扱い、これは従来もしばしば問題になりまして、変則なものであることは承知いたしておりますが、これをどういうふうに処置するかということは、只今研究はいたしておりますが、結論まで参つておりません。
  87. 田中一

    ○田中一君 事業量に応じて定員の増加を要求するような心がまえは無論おありでしようね。
  88. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) どうでしようか、その定員法をはつきりきめてしまうことができますかどうか、まだそこまでは腹案を持つておらないのでありますが、ただ、今変則的な事業員が多くおるということは決していいことだとは思いません。が、この扱いはなかなかむずかしい沿革もあつてつておるのであつてここでただ私の理想だけですぐ定員法で変えてしまえばいいのではないかというふうには行かないという気がいたします。これはもう少し研究をして参りたい。
  89. 田中一

    ○田中一君 閣内の一部では治山治水に関する、国土に関するものをまとめた省にするというような案も出ているように聞いておりますけれども、そういう点に対するあなたのお考えはどうです。
  90. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) まだ国土省案というものも私はつきり承知いたしておりません。が、私のほうでは機構改革について多年研究はいたしておりましたけれども、こちらからそういう案を打ち出すということはどういうものかというふうにも考えて、こちらとしては、本当の実際的な河川の扱いということだけでもはつきり行けるようになることを強くしたほうがいいのではないかというふうに思つておりますので、機構改革の問題が出ますれば、又それについて我々の考えておる意見も勿論言うつもりでありますけれども、こちらからは機構の改革についての試案を出しておりません。
  91. 田中一

    ○田中一君 この来るべき臨時国会に無論災害に対する特別立法の予算化を政府から提案されると思いますが、これに附随するところの、又これのもととなるところの関係法律の改正は無論企図されて同時に提出される御意向があるのでしようね。
  92. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 関係法律と申しますと、どういうことを御指摘頂くのかわかりませんが、例えば海岸の堤防の問題などについては今後研究した上で、法律の必要があれば、これは特別な法律を設けなければならんというふうに考えております。今ちよつと私がここで急にどういう法律が直ぐ必要であるかということはわきまえが足りないかも知れません。
  93. 田中一

    ○田中一君 十三号台風に対する補助金の問題ですね、これは無論六・七月の分と差異があつたのじやないか、これは政治的にも了承できんと思うのです。これは先ず改正しなければならんと思うのですが、どうですか。これは議員立法だからおれは知らん。俺のほうは十三号台風に対し従来通りの補助率で行くのだというお考えなら別です。
  94. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 私はその直接の問題にまだ触れておりませんからわかりませんが、議員立法であるから、議会のほうでこれを今度の十二号台風のことも含めるようにするという改正をするか、或いは政府のほうから提案をするか、まだどちらになつたというふうに聞いておりませんが、意志は両方同じじやないかと思います。
  95. 田中一

    ○田中一君 河川法の改正はこの臨時国会には間に合いませんが、このままで旧来の河川法だけで行つたのでは、この大きな事業をするのに又支障を来たすような虞れが多分にあるのです。海岸堤防法並びに河川法をお出しになる御意思があるかどうか。
  96. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 実は成るべくならば改正の案の内容をだんだん私も検討いたしまして、まだまだ少し突きつめたところが足りないような気もいたしますので、改めて今研究をし直しておるところであります。従つて農林省その他とのと調整といいますか、話合いまでまだ参つておりません。前の案のままで直ぐ行けるなら早く関係省といろいろ協議をしようと思つたのですが、どうもまだ利にも不十分なような気がいたしまして、今再検討いたしておる。従つて臨時国会には或いは間に合わないかも知れませんと思いますか、努めて早い機会にこの改正をしなければ、今後の川の管理、処置ということが面白くないと思いますので、成るべく摩擦なく改正ができることを私は希望しておるのであります。
  97. 田中一

    ○田中一君 多少の摩擦があつてもめなたは信念を持つておやりになるならやつたほうがいいのです。あつちにもこつちにも顔を出したんじや解決がつくものじやない。あなたは職を賭して、この前も、おれは職を賭してとおつしやつたけれども、職を賭してこの事業完遂に挺身するには、各省の意向ではないですよ、これが最善なりと一応信じたものはぶつかつて行くような決意を希望しておきます。
  98. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) よく職を賭してというお話が出ますけれども、私ごとき者が職を賭しただけで済む話じやない、そんなことは私申上げるまでもない。
  99. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 一つ次回の予定が立つたならば、本日はこの程度でこの委員会を散会したら如何ですか。
  100. 石川清一

    委員長石川清一君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  101. 石川清一

    委員長石川清一君) 速記をつけて下さい。それでは次回の委員会を二十日午後一時から開会いたしまして、同時に開かれるであろう農林、水産、地方行政、水害対策特別委員会等と連携をとりつつ、最低三日間以内開会いたしたいと存じます。なお、今回の十三号台風につきましては、特に海岸地帯の災害の激甚な箇所の調査も必要かと存じますので、派遣議員その他については委員長に御一任願いまして、状況によつては出張しないことのあることを御了承願いたいと存じます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 石川清一

    委員長石川清一君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会