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1953-07-17 第16回国会 参議院 経済安定委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ————————————————— 昭和二十八年七月十七日(金曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     早川 愼一君    理事            高橋  衛君            八木 幸吉君    委員            岩沢 忠恭君            西岡 ハル君            奥 むめお君            鮎川 義介君   事務局側    常任委員会専門    員       桑野  仁君    常任委員会専門    員       内田源兵衞君   公述人    経財団体連合会    常任理事    福島 正雄君    日本紡績協会理    事長      阿部孝次郎君    日本繊維卸商連    盟委員     立川  豊君    横浜医薬品小    売商業組合理事    長       堀内 万吉君    大阪実連協会会    長       中山 太一君    日本労働組合総   評議会政治部長  石黒  清君    主婦連合会調査    部長      高田 ユリ君    全国購買農業協    同組合連合会総    務課長     古志 己一君    全国中小工業協    議会中央委員    長       國井 秀作君    法政大学教授 宇佐美誠次郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○私的独占禁止及び公正取引確保  に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣送付)   —————————————
  2. 早川愼一

    委員長早川愼一君) これより私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案についての経済安定委員会を開会いたします。  本日の公聴会におきましては、すでに御承知のごとく十名の公述人かたがたから御意見を伺うことになつておりますが、先ず午前中は経済団体連合会常任理事福島正雄君、日本紡績協会理事長で東洋紡の社長であられる阿部孝次郎君、日本繊維卸商連盟委員立川豊君及び横浜医薬品小売商業組合理事長堀内万吉君、以上四名のかたかだから御意見を拝聴いたしたいと思います。公述人かたがたには本日御多用中にもかかわりませず、御出席下さいまして誠に有難うございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申上げます。本日は何分多数の公述人から御意見を拝聴いたします関係上、時間的にも窮屈になつておりますので、御公述は大体一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。  それでは議事の順序についてでありまするが、先ず公述人各位から順次御発言を願いまして、それがう応済みましたあとで、一括して委員各位の御質問をお願いいたしたいと存じます。なお本日の公聴会におきましては、経済安定委員のほかに独禁法改正について目下連合委員会で審査いたしておりますので、通産委員かたがたの御発言についてもこの際包括的にこれを許可いたしたいと存じますので、御了承をお願いいたします。  それでは最初に経済団体連合会常任理事福島正雄君から御公述をお願いいたします。
  3. 福島正雄

    公述人福島正雄君) 御紹介にあずかりました経済団体連合会福島であります。独禁法改正につきまして、原案を拝見いたしまして、かねがね我々でいろいろ研究論議いたしました概要を申上げたいと思います。  この法案は前国会提出案ができておりまして、それらにつきましてかなり私ども意見も申上げておりましたが、不幸にして成案を見るに至りませんで、今回御提出になつたのであります。前回の原案に比較いたしまして、大きな変化は見られませんのでありまして、証券保有の問題、役員選任等のいわゆるトラスト予防規定緩和の点が改善されておりまするが、共同行為制限につきましては、やはり相当な厳重な条件原案に付せられておりまして、官庁認可組合ということに相成つておるのでありまするが、この点につきまして一応見解を述べたいと思うのであります。私どもは初め届出制度を主張して参つたのでございまして、その理由といたしまするところは、この法律において許されるであろう共同行為というものは、大体不況カルテルと称せられる部類に属するものが大部分であろうと予想せられるのでありまして、さような場合には大体商売の常道といたしまして、緊急な措置を要します即応措置をいたすことがこの法律改正趣旨に当ると、こう存じておりますので、届出制度を以て足れりとする見解をとつておるのでございます。私個人といたしまして約三十数年事業の経営の経過におきまして、体験いたしましたところを以ていたしましても、特に戦前かような共同行為が手放しで許されておりました時代におきましても共同行為が守られて行きますという点が非常に面倒でいろいろな協議会或いは生産制限組合或いはその他の共同行為がありましたが、その申合事項が守られることよりも、下を潜つて自分だけいいことをしようというふうな考えの下に協定破りが行われますることが非常に多い実例であつたのであります。戦後におきまして、なお且つその勢いが各企業の濫立、取扱業者の非常に多数に上るため、これは戦前よりも日本経済勢力範囲が非常に小さくなつたことが主たる原因であります。狭い区域において製造者取扱業者も又製造設備も非常に過剰になりました関係でさようなことが起るのでありまして、この頂きました解説資料の中にも不正競争による弊害ということが極めて濃厚に書いてあるのであります。私ども経済事情現状からしまして、その当時の社会情勢によつて認容されることが凝り固まつて法律になると心得ておりますので、自由競争の逸脱から起きます不正競争弊害共同行為によつて起る弊害とのバランス、釣合を見ましたときに、私は独禁法緩和ということが現在の経済情勢から見て、又日本経済機構産業構造現状から見まして、必要なことであろうと信ずるのであります。この解説資料の十一頁と思いましたが、ここに「不公正な競争もしくは取引のもたらす弊害の規制」という欄がありますが、ここに「戦前日本経済は他国にその類例をみないほど独占集中が進んでいたといわれながらも、又その半面、常にか烈な競争が行われていたことも事実である。即ち零細過多中小企業相互間においては経済的合理性を無視した生存闘争的競争が行われ、又一方財閥企業相互の間においても、一般国民の福祉を顧みない。政治的利権をめぐる激しい競争中小企業を犠牲にした不当な競争が闘わされていた。「公正且つ自由な競争」の理想とはほど遠い」というふうに御解説がありますが、どうも共同行為というものが根本的にあるか、不公正だ、社会の福利に反するものだということが大前提のように解説が見えるのであります。私は、その点は、必ずしも時の経済情勢、或いはその国の経済構造から行きまして、必ずしもそうでない、大体改正原案に許されておりまするカルテル共同行為は、不況カルテル貿易カルテル合理化カルテルとこの三つになつております。大体こういう共同行為というものは不況時に起るのが当然でありまして、供給量が少くて買手が非常に多い場合には共同行為なんてことは絶対に起らないと私は信じております。売手が非常に多く、供給量が多く、需要がこれに伴わないときに販売競争から起るいろいろな痛手、不公正な競争というふうなことを防除するために共同行為が必要である、それが国民経済上止むを得ざる手段であると、かように信じておるのでありますので、届出制度で、それが行き過ぎた場合に、この原案にあります通りに、公正取引委員会がその権限を以てこれを取消し、或いは停止することが十分にできると信じておるのであります。従つて、この点については、公述人としましてはできるだけ認可の線に近付けて頂きたい原案ができておりまするし、又それについてのいろいろの御配慮もありまするので、今日直ちはこの原案を変えて頂きたいとは、そこまでは申しませんが、認可制をできるだけ届出制に近付くような手段をとつて頂きたい。その一つの例といたしまして、認可に関する主務官庁が、その業種監督官庁主務大臣に共に条件認定する。公正取引委員会認定というものがついておりまして、二重のチェックになつておるのであります。先ほど申上げましたように、不況時というものは、やはり即応措置をしないと、経済的の混乱、秩序破壊が進みまするので、是非これは単純な機構にして頂いて、そして先ほど申上げたように、行き過ぎた場合にはこれを取締る方法が別に備えてありまするから、是非さような工合にして頂きたい。そうしてそれを単一な許可権者といたしまするならば、各業種の責任を持つております、且つ日常各業者と密接な連絡のありまする当該主務大臣においてこれを認可するという建前にして頂きたいと思うのでございます。  第二は、国際カルテル加入禁止がございますが、現在の日本のように国際経済上におきまする弱い立場からいたしますれば、無理に国際カルテル加入せしめられるということの不利を非常に予想されまするので、一応国際カルテル加入禁止するということは別段支障のないことと存じまするが、今後の日本貿易を更に進展させる、或いは落潮にありまする日本貿易を回復するために、場合によりましては、国際協定加入することを便宜とする場合が多いことを予想できるのであります。さような場合には、あらかじめ、申請といいまするか、申請をして、主務官庁認可を受けて加入するという手段を残して頂きたいと思うのであります。それから、次にかような共同行為一種として私どもが考えておりますることは、合理化カルテル一種と思いまするが、やはり原料共同購入という問題、これは屑等につきましては法案に明文がございまするがその他の主原料等につきまして、或る程度の余裕を法律の中に残して頂きたいと存ずるのであります。特に輸入原料の場合は、なかなか国際競争上、日本の力が弱い。輸入競争を若しも日本業者、或いは日本貿易商においていたしまするならば、不当に高い原料を買込まざるを得ないという現状にございます。今日の外米の輸入等につきまして実例がはつきりありますることは御承知通りと思います。かような場合に、共同購入機関、それをただ屑とか廃物とかということだけでなく、主原料まで拡張して頂くことが私どもの希望でございます。その他に共同販売というものがございまするが、これは、不況カルテル規定の中にいろいろな不況カルテルのときにいたし得る共同行為の段階がいろいろ定められておりまするが、最後に、価格協定はいろいろな手段を尽してなお且つ所期の目的を達し得ないときに価格協定で行けるような順序になつておりまするが、観念的にはさように行くであろうと思います。生産制限、或いは製品の種類或いは販売分野協定というようなことが行われまして、なお且つ不況カルテルが予想しました事態改善ができない場合に、価格協定に入ることができると思いまするが、大体この生産制限製品分野というふうなことをきめまする場合には、おおむね価格協定がついて廻らなければ実効が挙らないのが実例でございます。従つて、この順序といいまするか、これをできるだけ広く一括して認めて頂くことが折角の不況カルテル共同行為の認容される趣旨に当てはまることと存ずるのであります。  それから次は再販売価格維持制度の問題でございまするが、これは法案にありまするように、主として法案の予定しておるところを拝見いたしますると、日用品関係が多いであろうと思うのであります。殊に商標、銘柄のはつきりした商品につきまして、再販売価格維持ということが出ておるのでありまして、特にこれは中小企業的な製造工程、或いは販売機構というふうなもので全体を維持しておる商品について特にさような必要があることと存ずるのであります。これは一つ独禁法の例外的な措置でありまして適当な措置と私は存じまするが、ただ、この維持の条項の除外例といたしまして、国家公務員法その他の法令によりまして設立されたいわゆる購買組合的のものが再販売価格維持の何から除外されておる事項について一言申上げたいのでありますが、さような法令によつてできました購買組合が、一種実質賃金改善のために、一括してさような日用品購入して、そうして販売上のいろいろな経費を節約で言という基礎におきまして、組合員に安く供給するということはあり得ることでありますし、当然認容されることであるのであります。一つ一つ買う場合と、或る単位を固めて買いまする場合と、販売業者にいたしましても安く卸すということは商習慣上当然のことであります。そのことは何ら問題でありませんが、実際の場合に購買組合購買者において、購買組合員のみが購買できる場合におきましては、その事態が他の周辺小売業者に与えまする影響は先ずないといつてよろしいのであります。ただ若しもその購買組合がなければ当然周辺小売商に行きまする需要購買組合に行きますので、絶対に影響なしとは申しませんけれども、一応さような集団の力において大量購入した場合にそれを安く需要するいうことは差支えないことと一応いたしまして、ただその場合に今申上げたような買組合の店舗に部外者が入り得るということが若しもありますれば、それによつて当然周辺小売業者弊害と申しますか、損害と申しますかを受けることは御承知通りと思います。従つて、この点について是非かような除外例が設けられまするならば、それは購買組合員に限るということを実際の実施の面において、各国家公務員法その他の法令によりましてできましたさような組織が厳重に守つて頂きたいということを強く主張したいのであります。で、それを救済する方法といたしては、その都度の組合店鋪におきまする販売価格は市価と同じにいたしまして、そうして半期、一年の購買組合の決算のときにおきまして組合員に対しまする配当の形においてこれを需要者に戻すということが大体通常のやり方であろう。イギリスの購買組合などはさようにやつておることは御承知通りであります。で、さような考慮を払われることにおいてこの除外例を認めたいと思うのであります。  その他に細かいところがございますが、私の申上げたいと思いまする意見は大体以上でございます。   —————————————
  4. 早川愼一

  5. 阿部孝次郎

    公述人阿部孝次郎君) 只今御紹介を受けました日本紡績協会阿部孝次郎でございます。  私的独占禁止法改正されまして、本当に日本経済実態に即した産業の強化を図るということは早くから要望されておりましたところでありまして、今回その改正案国会で審議されるということになりましたことは、我々といたしまして大いに歓迎いたしたいと存ずるのであります。併しながら、今回の改正案を我々具体的に検討いたしておりますと、なお重要な事項につきまして業界実態に即さない点がございますので、私は特に輸出産業といたしましての綿業という立場から事業立共同行為に関する独禁法適用除外の問題について業界事情を少し御説明いたしながら意見を申述べたいと存ずる次第であります。  第一に、戦後におきます日本綿業は比較的急速な復興を遂げまして、国内的にはすでに戦前に近い国民衣料供給が可能になつたのみならず、対外的には輸出産業といたしまして国民経済に少なからん寄与をすることができたと存じておるのでありますが、昨年の国際綿業会談におきましても確認されました通り、世界の綿製品貿易は今や停頓の状態にあるに対しまして、綿業者現有生産設備は、当面の需要に対しまして過剰であるという傾向を示して来て参つたのであります。そういうわけで綿製品貿易をめぐる国際競争というものはますます激甚の度を加えて来たということが言えると思います。このような状況の下にありまして、我が国綿製品輸出振興図つて、そうして今よりより多くの外貨を獲得するがためには、我が国業者自身が過度の競争を行いまして不当な値下りを招いたり、或いは生産設備の無制限拡張を行うことを自制して、それによつて綿製品価格国際競争に可能な水準に安定いたしまして、そうして而も製品品質確保するということがどうしても必要であります。これと同時に複雑な国際貿易関係の中に処しまして輸出維持増進して行くためには、場合によりましては、貿易に関する国際的及び国内的の協定を行うことも必要と思うのでございます。又我が国綿製品輸出価格綿製品生産設備の無制限拡張はとかく無謀な国際競争に火をつける虞れがあるものとして国際的には強く注目されるところでありまして、日本綿業国際的信用維持して誤解に基く無用な摩擦とか、或いは輸入制限関税引上げなどというようなことを回避するというためにも、業者が何らかの自制の協定をなし得る途を開いておくことが必要であろうと思うのであります。これを具体的に申しますと、我々の必要とする共同行為は、例えば輸出価格の安定と不当な安値輸出防止のための生産調節、その補完的役割を果すために、輸出綿製品買上機関運営貿易協定の円滑な履行のための綿花一括買付機構運営綿製品品質確保のための協定生産設備拡張制限に関する協定、まあこれらすべて貿易振興目的とするという意味合いにおきましてこれらの共同行為が必要なのでありますが、これらの共同行為は、従来の独禁法においては禁止されていたのであります。ところで今回の独禁法改正案においては、いわゆる不況カルテル合理化カルテルなど一定限度内における共同行為が認められることになりまして、この点喜ぶべきではありますが、紡績業実情に照らしまして、殊に貿易振興の見地に立ちますならば、まだこの次の点で十分でないと言わざるを得んと存ずるのであります。  先ず改正法案の第二十四条の三では共同行為を認めるところの条件といたしまして、第一に「当該商品価格がその平均生産費を下り、且つ当該事業者相当部分事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」第二に「企業合理化によつては、前号に掲げる事態を克服することが困難であること。」を条件としております。ところが綿業の場合、このように綿製品価格現実平均生産費を下廻つてしまつたという場合には、すでに業界は混乱しております。そうして不当な安売競争海外に向つて行われておるということが、従来の過去の例によりましても明らかであるのであります。このことはすでに申しました通り悪影響海外に及ぼすのみならず、価格の不安定そのことが又輸出振興を阻害するということになるのであります。従つて共同行為を認める条件としては、商品価格平均生産費を下る虞れがある場合にまで拡大するか、それとも主要輸出産業に対しましては、当該商品価格国際価格水準を著しく下廻る虞れがある場合にも、所要の共同行為によつてこれを防止することを認めるべきであると思います。又第二十四条の三による共同行為主務大臣認可を得て、独禁法適用除外が認められ、主務大臣認可公正取引委員会認定を必要とするということになつておりますが、このような共同行為を必要とする現実の場合を考えてみますと、多くは公正取引委員会認定主務大臣認可というような手続を待つていることのできない緊急な場合であります。従つてこれは先ず認可及び認定を要しない届出主義といたしまして、主務大臣届出を待つて、若しそれが第二十四条の三に定める諸条件を充足しないということを認めれたとき、或いはその共同行為が不当な行過ぎであると認める場合には、その共同行為禁止乃至は変更を命ずをことができるというように改めたいのであります。なお第二十四条の四では、企業合理化を目標とする場合、副産物、くず、廃物購入のための共同行為が認められておりますが、貿易協定によつて一定量の輸入を義務付けられるという場合が最近は多いのでありますが、その協定量輸入確保すると同時に、相手国における当該原料相場の高騰を防止するがためには、共同して一括買付を行うのを有効とする場合があるのであります。このことは企業合理化のためにも貿易振興のためにも必要でありますから是非このような協同行為を認めるというようにして頂きたいと思います。  要しまするに独禁法改正案は、貿易振興に対する考慮がもう一つ十分に払われてないということができると思うのでありまして綿業のごとくすでにその製品価格が一応国際競争力を保持しておりまして、却つて不当な安売のための悪影響を招く虞れが非常に多いのでありまして、又現に輸出リンク制による原綿輸入資金の割当が行われておりまして、政府の強力な輸出振興政策の対象となつております。産業としては特にその感が深いのであります。輸出振興第一主義が今や強調される時期でありますから、貿易振興を阻害する原因を排除するためには、独禁法改正を、この点思い切つて行なつて頂きたい、こう考えるのであります。  なお独禁法改正と関連いたします問題といたしまして、輸出取引法などの改正に触れる必要があると思うのであります。と申しますのは、これらの法律改正案は、相互関連性を深く考えておられると申しますか、そこに関連性に欠けるところがあるように見受けられるのであります。即ち輸出取引法改正案について申しますと、独禁法六条の改正と関連いたしまして、貿易に関する国内事業者間の共同行為輸出入取引法によつて規制せられるわけであります。ところでこの取引法は、輸出入業者に対して相当広範囲な共同行為一定条件の下に許すということになつております。このこと自体は輸出入貿易振興上当然必要なことであると思うのであります。ただこの場合問題となりますものは、輸出取引法改正が、輸出業者輸入業者に大幅の共同行為を拡げながら、これに参加できる場合は、輸出入業者だけではどうにもならんという場合にのみ生産者がこれに参加できるということに限られておるのでありまして、こういうことでは著しく時機を失するということになると思います。そして而も一方生産者共同行為は、独禁法の枠内で厳重に制限されているのであります。本来輸出貿易におきましては、輸出貨物生産者とその取扱商社輸入貿易におきましては、輸入貨物の主たる需要者、その取扱商社とが一致協力いたしまして、初めて輸出入貿易振興を実現できるのであります。  特に綿業に関する場合につきまして申上げますと、綿製品のごとく国際競争の激しい商品輸出に当りましては、生産者たる貿易業者の持つ品質価格生産能率上の競争力輸出業者商業機能というものが相結合いたしまして初めて国際競争に打勝つことがきるのであります。従つて単に輸出商社のみの共同行為によつては十分な効果を期待することができないと考えるのであります。生産者でも又輸出振興のための共同行為に直接参加することが必要であると思います。又綿花輸入の面から見ますと、その必要が特に大でありまして、即ち綿花輸入外貨資金は全部現在紡績業者に割当てられておりまして、綿花商はその委託を受けて綿花買付に当る建前になつておるのみならず、綿花輸入に関する綿花商の金融は殆んど紡績業者の保証を受けてやつておるというような状態になつております。このような業界実態から申しますれば、輸入商のみの共同行為実質的効果を挙げることができませんで、生産者たる紡績業者共同行為是非必要とするのであります。  以上の問題は輸出商輸入商の定義を広く解釈いたしまして、生産者でも輸出入の能力と意思とを有するものはこれを包含するというようなことになれば、或る程度解決できますが、独禁法改正に際しましても是非以上申しました業界実情輸出取引法改正との関連性考慮する必要があると思います。  以上いろいろ申述べましたが、要するに独禁法改正に当りましては貿易振興ということを最大の眼目に置かれまして、同時に輸出取引法中小企業安定法との関連性を十分お考え下さいまして業界実態に即するような着意を必要とすると考える次第であります。これで終ります。   —————————————
  6. 早川愼一

  7. 立川豊

    公述人立川豊君) 私は主として国内の繊維の卸を商売といたします商業者立場から本法の改正について若干の意見を申述べてみたいと存じます。  本法第十五条第二項には、国内の会社が合併をしようとする場合は資本金の額又は使用人の員数等に関係なく如何なる小法人といえども公正取引委員会届出る義務を負わしておるのであります。この手続は実際上は相当に面倒なものでありまして、企業合理化を促進する小法人の合併を妨げておると考えておるのでございます。従いまして一定の基準、例えば資本金何百万円以下というような基準を設けまして、その基準以下の会社は公正取引委員会に対する届出の義務を免除して頂くよう改正されることを要望いたしております。例えば合併当事者の双方が資本金一百万円以下の会社であるような場合、誰が見ても一定の取引分野における競争制限することもなく、又不公正な競争方法によることも考えないのでありまするから、この点改正に当りまして御考慮を願いたいと思います。  次に改正案第二十四条の三の二項によりまして、生産部門に属する事業者不況に際しまして主務大臣認可を受けて生産数量、販売数量、又は設備制限共同行為を行い得ることになつております。綿紡績の操短は昭和二十七年三月から二十八年の五月まで政府の行政措置によつて実施されたのでございます。当時関連産業であります綿糸布卸売商業者は厖大な在庫を抱え、価格の大幅な暴落に会いまして倒産破産の続出する現状でありまして、日銀の特別措置によつて漸くそれを切抜けたような状態でありましたので、生産者生産制限には必ずしも賛成ではありませんが、自分の防衛上止むを得ずこれに賛成いたしたのであります。不況に際しましては生産者の生産の制限を行わなければならないような場合には、必ず当該製品の配給部門に多量の在庫があつて相当期間生産業者から製品購入を必要としない場合が多いのであります。而も生産制限の実効が市況に反映して一旦下落した相場が回復して参りますのは少くとも二、三カ月の期間を経過したあととなりますので、配給部門の卸商業者はこの期間を通じ相当の苦境に追込まれまして、現在の法律の範囲内においては何らの保護救済を受け得ないで放任されておるのでございます。よつて関係当局はこの共同行為認可に際しまして消費者及び関連事業者意見を十分聴取されまして、これらの業界の利益を不当に害することのないように慎重に処理されんことを要望いたしておきます。なお同条の三の第三項によりまして、生産業者が対価の決定にかかる共同行為を行い得る改正については、技術的理由により当該事業にかかわる商品の生産数量を制限することが著しく困難である場合を除き、これに反対を表明いたします。その理由といたしましては、第一に生産業者は資本力、工場規模、使用人数、経営者の才能、対外的信用及び立地条件等を異にして生産品のコストはまちまちであります。ましてや原料購入の時期が必ずしも同時でありません。皆違つておるのでございます。然るに価格協定を行います場合においては最も能率が低く生産原価の最も高いところを標準として決定される危険がありますことは従来の実情に徴しまして明らかでございます。従つてこの価格協定の実施中は能率の高い優秀工場は不当なる利潤を得、消費者及び関連産業の利益を害する結果となります。又当該生産業者はこの間価格維持に依存して企業合理化を阻害する結果を招来する慮れがあるのでございます。  次に原料の大部分輸入に仰ぐ産業にありましては海外経済情勢によりまして原料相場の変動は昨年のパキスタン綿の実例に徴しまして明瞭であるように非常に大幅な騰落を繰返すのであります。従つて一旦決定した公正な協定価格と申しましても忽ちその妥当性を失つて常時公正妥当な価格の決定を行うということは言うべくして煩瑣であつて行い得ない、かように考えるのであります。なお一度協定価格の決定が行われますと生産制限その他の市況回復対策が効を奏しまして当該製品価格平均生産費を上廻つた場合においても恐らく生産業者不況時の損害補補填のためみずから積極的にこの協定価格の廃止を行うものとはにわかに信じ得られないのであります。又行政官庁の命令又公正取引委員長の処分請求も重要産業業種によつては若干の政治的圧力により主務大臣を牽制する慮れが多分にあると考えるのであります。不況カルテル及び合理化カルテル認可につきましては改正原案通り公正取引委員長認定を得て主務大臣認可するということが以上述べました理由によりまして妥当であると考えるのであります。  次に改正案第二十四条の四によりましては生産業者等には企業合理化のための共同行為認可されることになりますが、これを配給部門に属する卸商業者にも適用されるよう本条の改正を要望いたします。卸商業者におきましても粗製品の取扱を行わない協定商品の保管及び運搬の共同施設又は能率の増進その他企業合理化を遂行するために特に必要とする場合において行う共同行為に関する規定生産者と同様に本条に挿入されんことを要望いたします。これを要しますのに、政府の行政は常に生産部面に重く、配給部面に軽く、本法の改正によつて企業の行う不況カルテルの場合のしわ寄せは、中小企業の卸商業者に課せられますところの虞れが多分にあるのでございます。物資の配給行為はその生産行為と共に、あたかも車の両輪のごとく、極めて重要な経済行為でありまして、本法改正に当つては配給部門に対する考慮を全く欠いておることは遺憾に堪えないところであります。私は本来公正自由な競争こそ経済発展の助長を促進するものと考えまして、本法制定の趣旨を多分に失うごとき今回の大改正にはにわかに賛成いたしかねるのでありますが、日本経済実情に即しましてその一部の改正に同意をいたすものであります。従つて若し我々の主張する諸点が本法改正に盛込まれない場合におきましては、昭和の初年において制定実施された商業組合法のごとき単独立法を制定して、商業者維持振興に特別の措置を購ぜられんことを要望いたします。これを以て終りといたします。   —————————————
  8. 早川愼一

  9. 堀内万吉

    公述人堀内万吉君) 私は堀内であります。御紹介頂きました通り売商業組合理事長でありますが、実際は一介の小売商人でありまして、常に一般消費者と面接いたしまして、小売の実態に携わつているものでございます。本日は公述に参りまして私が申上げんと思いますことは、提案の理由或いはこの要旨を拝見いたしまして先ず第五点の不当廉売、おとり販売、この問題について中小企業者、殊に小商業者立場から是非この法案が成立いたしまして、一日も早く実施をみることを要望してやまないのであります。私ども常に業者を集めまして中小企業振興策につき協議しております。中小企業不況は、常に言われますところは金融の問題、或いは税の問題、又は画一的な労働基準法によるコスト高、こうした問題を取上げておりましてそれぞれに向つて陳情しておりますが、私はその半面に小売業者自体が反省する必要があるのではなかろうかということを常に下に向つて叫んでいるのであります。そのためにお互いに営業しておりまして、租税を納め、一家の生計を糊するということは、正しい利潤を公正に頂いて、而もそれに基く税は正しく納入してこそ、初めて小売商人としての生命がある。それであるにもかかわらず、御承知通り商人が累増いたしますると、勢い競争になりまして、殊に新規開業などの店では宣伝の方法として割引販売をする、或いは特殊のメーカー製品一つのおとりといたしまして、原価以下に販売いたしまして他の業者を非常に迷惑がらせているのであります。そのことがたまたま破産した問屋の不渡手形などの処置によりましていわゆる不道徳な流れ方によりまして入手いたしましたものならば、或いは一般商人が原価として仕入れる値段よりも往々安く仕入れ得るものもあるかも知れない。併しそれた永続すべきものではない。そうした薄い利益を以て一つの営業宣伝なりとすることは、結局中央に向い或いは地方に向いまして中小企業者の助長、伸展を要望する半面、自己においては自分たちがお互いに、共に真綿で首を締めつつあるというような実情であるのであります。そのことを常に申しまして正価の維持、正しい取引販売を主張しているのでありますが、遺憾ながらそのことがなかなか守り得ない。数百の商人のうち、一、二のもののために非常に迷惑をこうむつておるのであります。私も理事長といたしましてこの点を常に申上げているのでありますが、如何とも現在力においては、勿論法律によることでありますが、それを制約することはでき得ないのであります。従いまして現下の問題といたしましては、小売商人は殊に日用品などにつきましては、正しい値段で販売することが日本の数ある小商業者が本当に伸びて行く道であると思うのであります。今日一、二の例を申上げますと、青森県では青森市が中心でありますが、私の聞くところでは、全部二割引をいたしまして販売するの止むを得ざる状態だそうであります。税務署の査定いたします医薬品の販売利益を二割三分とみております。従いまして三分の利益を得ることによつて営業を継続して行かなければならないという実情は、これ自体萎縮して行く業態の現われということは争えない事実であると思うのであります。現に青森市ではこの問題について非常に積極的に運動をされているようであります。それから先ほど第一番に公述されましたかたがちよつとお触れになりましたが、九州北部の工場地帯の購買組合の発達、今回の改正案によりましても除外的になつているようでありますが、そのことなどにつきましては私ども業界といたしまして非常に福岡、博多方面からいろいろな意見が出ておりますが、どうか先ほど第一番の公述されました通りに定価で正しく売りまして、そうしてその決算におきまして利益配当的の処置を講じ、而もなお組合員以外の者には売らない方針を飽くまで購買組合の本質に則つて進んで頂きたいと思うのであります。かような状態でありまして、私どもは多年要望しておりましたこの第五条の問題が曙光を見出すということは、非常に全国中小企業者の光を得たような感じでいるのであります。ただここで申上げなければなりませんことはそういうことによれば勢い迷惑が消費者にかかるのではなかろうか。いわゆる製造者小売業者が契約を締結いたしまして、再販売価格をきめるということは、勢い本来の法律に反しまして物価高を来たすような御心配があるということは当然のことと思つております。併し私は皆様方の前で申上げるのも釈迦に説法でありますが、値段というものは品質によつての値段でありまして、その形態によるものの値段ではないのであります。同じ値段であるならば、その製造過程における合理化研究によりまして、優良なものを造ることによつて品質が向上されて来るのであります。そのことは再販売価格によつて一般消費者に迷惑を及ぼすことでなく、言い換えますれば、小売商店の末端において品質を離れた値段の競争というものが勢い漸次製造業者製品の向上という競争に移り行くものであります。そうすることになりますれば、勢い同じ値段でありましても、品質のよいものを客が選択し、又業者もそれの斡旋をするということは当然のことでありまして、数字における値段の差よりも、内容における上質のものを買うということは私は当然のことと思うのであります。これについて卑近な例を申上げますれば、戦争最中におきまして必需品でありまする石鹸とマッチの配給をいたしたのであります。私ども汗を流して配給いたしましたが、その当時配給制度になりまして、十銭の石鹸を店頭におきまして購入券によつて売りましても、消費者は有名なメーカーのマークのついた製品の配給を希望いたしまして、余り記憶にないメーカーの製品はこれを拒否する状態であります。石鹸、マッチにおいて極めて極端な実例が出ておるのであります。それで最初のうちはそれぞれメーカー品、その他二流、三流品を、止むを得ず配給いたしましたが、お客様がどうしても承知しないで、或る店で以て二、三流品ばかりを店頭に並べて配給切符を募集いたしますると、やはり有名品の店のほうにどんどん登録替えをしている実情であります。更に又それが済みますと、結局問屋と小売屋とのメーカー品の奪い合いになりますので、結局その中に何割かずつ一、二、三流品をまぜたのでありますが、それも先を争つて一級品をとるという状態であります。御承知通り最後には全部一定の規格にいたしまして、同じマークをつけまして、そうしてメーカーがわからんようにして、辛うじて配給を続けたという実情があるのであります。かようでありますので、私はこの再販売価格維持決定といいますことは、一応物価の引上げになるような感がいたさないでもありませんけれども、その実質におきましては、正しい値段で、正しい品物を供給することができるということを私は確信しているものであります。殊に私ども医薬品に関係がありますので、その責任は最も大きいものと思つております。いろいろな労働団体或いはその他におきましては、その人権を擁護すべき法律は多々あるのでありますが、ひとり小売業者に関しては、その設備において、殊に薬局等におきましては、その設備において種々の制約を受け、その開業するときにおきまして、又特別の施設を要する準備をしながら、而も何ら援護的な措置がないということは、結局今日の小売業が、おのおの承知しながら濫売、廉売をやりまして、みずからが苦しんでおる実情になつているのであります。今日の例で申上げますると、医薬品におきましても往々にいたしまして県の衛生部から不良薬品の通知が参つております。それは結局安く何とかして売ろうという方法によりまして、品質を下げ、薬局方の規格にはすれたものを市販するという結果がありますので、常に監視いたしまして、そういうものを抑えておるような実情なのであります。そうしたことによりまして、私どもはどうかその良質のものを正しく売りまして、そうして中小企業者といたしましても国会の皆様方の御協力を得て、本当に安心した営業を継続いたしたいと思いまするが故に、本改正案が一日も早く成立することを切にお願いいたしまして、公述を終ります。   —————————————
  10. 早川愼一

    委員長早川愼一君) 以上を似ちまして午前中の公述人を全部終了いたしました。ついては只今までの公述人に対する御質疑がありましたら順次御発言を願います。
  11. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 福島さんにちよつとお伺いいたします。  第一点は、認可よりも届出のほうが経済界の変動に即して便宜じやないか、こういうふうな御意見のように承わつたのですが、観念的にはよくわかるのでありますが、若し認可の場合には非常に手続が遅れる。従つて経済上の変動に即応する対策が立てられないというふうなことの予想される何か実例があれば承わつて見たいと思います。  それから第二点は、認可認定との関係の問題でありますが、御承知通り現在では公正取引委員会認定をして主務大臣認可する、こういう法体系になつておるわけでありますが、これでいいとお考えになるかどうか、又もう一つは民間ではこういつたような二重の手続を要せずして、公正可引委員会認可権を持つ、但し主として法律家を以て成構されておる公正取引委員会であつては、経済上の実情にそぐわない場合が多々あると思うから、実業人を中心とした、又関係官庁の人も入れて諮問委員会のようなものを作つて、その諮問に応じて公正取引委員会委員長認可するほうが筋が通つておるのじやないか、こういうふうな意見もあるように承わつておるのですが、その両方の意見に対してどちらをお取りになるか、その二つの点を伺つてみたいと思います。
  12. 福島正雄

    公述人福島正雄君) 届出認可の問題は結局弊害が最小限度にあることを希望するので、それから出発した議論なのであります。もう一つは今の独禁法がかように緩められるという根本の観念といいますか、社会情勢といいますか、そのことは不況カルテルと一応言われまするところに実は集約しておると思います。いろいろな公述人がおつしやつたように、現在は供給過多、それから扱う業者が非常に多過ぎるということは如何ともしがたい事実であります。そういう場合にどうしても不正競争といいますか、そういうことの弊害のほうが共同行為よりも多いと私は信じております。その弊害をできるだけ早く除去したいと、こう思います。それで二十四条の規定をずつと拝見しますと、不況カルテルなら不況カルテルの場合にかような順序でかような事実が起つた場合に、こういう共同行為がよろしいということになつておる。主務官庁、例えて申しますれば、通産省において或る業種共同行為の出願があつた場合に、それについていろいろお調べになることは当然だと思うが、やはりこういうふうに法律の成文がありますれば、どうしてもそのことになずむのは人情であります。それでやはり業者の痛みとそれを認可される主務官庁側の痛みとは違うのでありまして、これも人情でいたし方がないのであります。その上に更に状況がかようようの状況に合うかどうかということを公正取引委員会認定するならば相当に時間がかかる、それで又これは人の判定でありますから甲が東と判定しても乙が西と判定する場合なしとしない。同じ主務官庁の間でも、同じ結論に行きますのに相当時間がかかることは当然予想されることだと思います。それでさような、折角ここまで法律事態を認識して改正されるのでありますから、思い切つて届出で行かれたらどうか。ということは、私の冒頭に申上げたように、かような共同行為が独占利益を目的とするようなことに行くことは非常に少い。なぜ少いかというと、今言つたように、供給過多、取扱業者過多という場合のみ現在の原案は許されるのでありますから、不況カルテル、そういう若しも供給が非常に少くて、取扱業者が少いというふうな場合には、業者自身共同行為なんかする必要がないし、そういう話には殆んど業者が向いて来ない。是非共同行為をやろうじやないか、カルテルに行こうじやないかというときには、非常に出血で叩き合つて、そうしてどうにもこれじや結局共倒れだというときに初めてこういう問題が起るのでありますから、さような心配は私はないと思つております。まあ仮にそれが起つたといたしましても、この原案におきましては、公正取引委員会が取消、或いは停止とかいうふうな権限を厳然として持つておるわけであります。まあその間に起つた損害・弊害をどうするかという問題が残らないとはいいませんけれども、十分にこれは制禦できることと思いますので、私は、自分らの主強の本来といたしましては、届出を主強するのであります。原案がここまで来て、公述人の中にも一日も早くこの法案が施されることを切望しておられるという気持は私どもも同様であります。又この独禁法の問題は、私が申上げた以外に多々問題があるのです。実はそれを一々全部ここでぶちまけて、改正を迫るということは、徒らに法案の審議を遅らせるということを心配いたしますが故に、第一歩としてはこの辺でやつて頂きたい。更に第二次第三次で私たちはこの改正についての意見を申上げたいと思うが、今日の段階においては、先ず原案でやつて頂きたいが、届出を以て足れりとすることは、今の二重制禦、二重認可制認定というような二重機構でなく、一重にして頂きたい。そして一重にするならば、主務官庁がいいのか、公正取引委員会がいいのか、これについては多少の意見の相違もありましようが、大体業者と始終連絡のあります、又いろんな原材料の入手とか、そういうことについて始終密接な接触のある主務官庁への届出を然りとする私ども見解としては、主務官庁を以て一本化したほうがよかろう、こういうふうに考えておるのであります。
  13. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 諮問委員会のほうはお考えでございませんか。
  14. 福島正雄

    公述人福島正雄君) 諮問委員会の制度は、私も二、三の諮問委員会委員をいたしておりまするが、諮問案を作るまでに相当時間がかかる。そうして諮問案が審議会にかけられて、どうしても諮問委員会というものは生ぬるい結論になるので、これは排除して頂きたい。
  15. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一点伺いたいのですが、共同行為届出にするという立論からすれば問題は別になりますが、共同行為を二つに分けて、届出制度でよいものと、事前認可事項とするほうがよかろう、こういう二つに分けるという議論があるのですが、仮に、その議論をとるとすれば、事前認可事項に該当するというふうにお考えになるものがあればこの際承わつておきたい。
  16. 福島正雄

    公述人福島正雄君) 大変細かい御配慮ですが、大体この共同行為は、私の経験からいえば、今の安売競争のときがまあ殆んど全部だと思います。合理化カルテルの場合は、ここに書いてありますけれども、これらは輸入原料なんかが大きな主体になつておる。それを届出はこの範囲でよろしいと、それより進んでここに厳重な共同行為をやる場合には、あらかじめ認可を必要とするというふうなことは非常に結構だと思いますが、その限度が、分け方が非常に面倒だと、もつとざつくばらんにいえば、一部でも届出になれば非常にいいじやないかというような感じもいたしますが、さつき申上げたように、生産制限とか設備制限とか販売分野協定とかいうことをいろいろやつて見て、いけなければ最後に価格協定というふうに原案ができておりますが、私はいつもやはり価格協定が伴わなければ実効が挙らんと大体思いますので、さような細かい御配慮は非常にいいと思いますが、実質の問題として如何かと思うのです。今率直の考えとしては、せめてこの価格協定だけを認可にして、そしてその他の前提は届出も或いはいいかも知れませんが、これ率直な即席の考えで恐れ入ります。
  17. 奥むめお

    ○奥むめお君 再販売価格制について、福島さんと堀内さんにちよつとお伺いしたい。堀内さん、あなたは薬屋さんでいらつしやるそうですが、どこへ店をお持ちですか。
  18. 堀内万吉

    公述人堀内万吉君) 横浜の保土ケ谷というところでありますが……。
  19. 奥むめお

    ○奥むめお君 大通りですか。
  20. 堀内万吉

    公述人堀内万吉君) 商店街であります。戦災で接収地になりまして、壊れた上陸用舟艇が三年ばかりありまして、非常に進展が遅れたのでありまするが、復興が遅れたのでありまするが、やや今日商店街の形成がなつた区域で営業いたしております。戦前横浜で二番目の賑やかなところであつたのであります。
  21. 奥むめお

    ○奥むめお君 私ども消費者の立場で立つている者ですが、薬屋さんの同業会の名前で、再販売価格維持のいろんな陳情を頂載いたしております。だけれども、小さな裏通りで、少しばかり商売をして、ひと品も加えなさるようなところでは、この頃のように大資本が非常に店をきれいに飾りまして、もう宣伝費或いは設備費と随分金をかけておる、こういう場合に、大きなところから定価で買うのと、粗末なところで半分お義理ぐらいで買うのとでは値段が違うのが人情ですわね。そういう点で、小さい店では却つて困るから阻止して欲しいということも私ども聞いておる。ここでは、組合の名を以てあなた方はなさるけれども、我々消費者のほうからいうと、もつと小さい人たちはそういう衷情を訴えて来ております。こういう問題についてお考えになつたかどうか。それからくすり九層倍といいますけれども、町を歩いていまして、広告を見るのは、大体薬と化粧品、これは非常に大きな金額だと思う、お醤油なんか殆んど広告をしないくらいですけれども、それでも年間一億円余り、一億何千万円使つている、薬化粧品の広告料というものは、随分大したものだと思いますが、これは幾らぐらいまで使つておるか、あなたおわかりだと思うが、それを伺いたいし、こういうふうに再販売価格維持するようになりますと、金のある者が最も広告するようになると思うのですよ。そのほうに消費者は値段を不当に吊上げられると思う。今だつて実質的の代金というものは一割ぐらいなものだろうと我々は見ております。これ以上広告料が出て参りまして、それに加算されましたらね、これは物価高を私は激発する、そう考えます。そういう問題について。
  22. 堀内万吉

    公述人堀内万吉君) お答え申上げます。前段にお述べになりました脆弱な小売商店の問題、小売店の問題、私はそういう脆弱な小売店のためにこの再販売価格維持は却つて必要ではないかと思つておるのであります。遠慮なく申しますると、大資本の店で、例えばデパートで一つのポマードを平気で百円で売つておる。その隣の小資本の店は八十五円から八十円、極端なときには七十五円で売つておる。これではどうしても小売商人が生活に困るというのは当然なのであります。それで、私どもは協同組合、正直なことを申しますと、終戦後の協同組合は各地とも全部不況であります。私ども辛うじて横浜だけは協同組合を経営しておりますが、そのことは大きな店では直接東京から多量に仕入れて営業することはできるのでありますが、中小の店ではそういうことができない。従つて初めて協同組合から品物を共同購入による配給を受けて、一般の大商人が東京から仕入れる値段程度の配給をしているのであります。それですから商業協同組合の存在というものは、同じ横浜に六百軒薬局があるといたしましても、その利用度は中小薬局、薬種商が利用されている実情でありますので、私は大きい店と競争するために安く売る、言い換えれば又古い店に対抗して新らしい店を作つたために安く売るということは一時の宣伝の手段としては或いは止むを得ないかも知れませんが、永久に営業の採算はとつて行かれる方法でない。得て新規の店が永続しないで二、三年で廃業するという実例になつてしまうように思われておるのであります。それからくすり九層倍と、こういうことをおつしやいましたが、私ども常に言われることですが、これは少し直さなければならんと思うのであります。くすり九層倍、はたご八割、昔戸別に、宿を取つてつておる薬屋の時代には、確かに九倍くらいになつたそうですがはたご賃が八割かかるので結局利益は一割だと言われております。これはまあ大変余計なことを申上げたようでありますが、現在ではその利益は税務署ではすべて薬局におきまするものを平均二割三分に見ておる実情であります。それから例の広告費でありますが、この広告はお説の通りに楽と化粧品が一番多いようであります。数年前ですか、各新聞社の広告料を私が調べましても薬が一番、又その楽屋の中でも大阪の何々商店が一番という広告費を出しておりますがそれは正直のところを申しますと、小売屋には関係のないことで本当は製造者のコストの中に入れられるものであります。それですからこの再販売価格を無理に高く吊上げて、たくさんの宣伝をすることによつて拡充の途を講ずるか或いはまじめな小売商店と本当にコストまで打明けた採算をいたしまして契約をするか、こういう二つの手も考えられるのでありますが、私ども組合の役員といたしまして進むべき途は、契約というような問題が実際に行われるようになりますれば、やはりその生産費の内容まで検討いたしまして、余り広告費を使わん、実質のものを売るようにしなければならんという責任を考えておるのであります。
  23. 奥むめお

    ○奥むめお君 協同組合の問題で、福島さんのさつきの御発言の中で、私は、これからの資本家の人も民生安定という点には相当関心を払つていろいろ対策を……。
  24. 福島正雄

    公述人福島正雄君) ちよつともう一度おつしやつて下さい。
  25. 奥むめお

    ○奥むめお君 これからは単に大衆が生活安定をというのではなしに、資本家のやり方もやはり生活安定ということに非常なる重点を置いて政策を考えて行かなければいけないと思うのですよ。そのうちで今度の再販売価格表の中で協同組合、この前の法案には載つていなかつたけれども、購買会とかいろいろなものに除外例を認めると書いておるけれども、実質は先ほどおつしやつたように、骨抜きにするという構想ですわね、行うほうは……。今の協同組合で配当が、利用者配者、利用額に対する配当ができておる組合というものは、実に少いですね。微々たるものである。少いからこそ政府も助成の途を図るし、地方の公共団体もいろいろこれを育成するために骨を折つている。それは実質賃金の充実のために、どうしても今のままでは困るというので、私はああいう協同組合法案なんか一生懸命やつておると思うのです。今度ここで実質的にはもう自主協定といいますか、例えば卑近の例でいえば、化粧品の一部や醤油やそのほかのものは、もう値段が協定されておる。これを法律的な裏付けですべての協定をするというのであつたならば、全部これに法律的に裏付けをしてやらせようとするわけなんですね。そうしたら協同組合は配当で割戻したらいいじやないかということは、事実上これはできないことだ、配当しておる組合なんて何ほどもない。現実ここへ出したけれども骨抜きになつたということなんでございましてね。こういう問題を修正案について御検討なすつたときに、私意識的に協同組合を骨抜きにするために出しておいて……骨抜きにするために、わざわざカモフラージユしてお出しになつたような気がするのです。
  26. 福島正雄

    公述人福島正雄君) その点お答えいたします。奥先生は配当がどこから出るかということについて御研究があると思いますけれども、その根本は何も手品でもないので、結局購買組合がいわゆる卸商の立場において製造者から物を買う。で供給するほうは営業費がかからないから安く供給する。但し一車買うとか、或いは百ダース買うとか、まとまつた数量で買うから、そこで一般の小売屋が仕入れるよりも安く仕入れる。その値差が即ち組合に対する配当となる。それからもう一つは、一般の小売商まで来る中間経費と、購買組合の組織から来る経費とどつちが安いか、それを購買組合は合理的にやつて、いろいろな宣伝もしないで済むし、配達もしないで済むから営業費が安くなる。その仕入原価の安いということと、営業費がかからないということ、この二つが寄り集まつて初めて配当金になる。これは手品の種は何にもない、ほかに不思議なことはない。そしてそれをすぐに消費者に、組合員に、そのまま安い値段でお売りになるから、組合員に配当できない。安ければ配当できないのが当り前だ。それを市価と同じに売つて、そしてそれを溜めておいて期末にお戻しになるということが配当なんです。どつちもいいのです。その場で安くお売りになつて、その代り配当はない。今市価で売つて、それを溜めておいて期末に配当する。これはどつちでもいいのです。ただそのときにいわゆる購買員でない人がそこへ来て買う、その配当を普通の人がもらうから小売商人が困るということです。それでだんだん配当のことを申上げましたが、これは実際の組合運営から行くと、実は手数がかかる、それで配当を一々帳面をつけて、そして誰は幾らと、そうでなければもう組合員が千五百名いれば上つた利益を千五百名に平均して払えば、何とかそこに相談がないとできませんが、理窟から言うと市価で売つて、そうして残つたものを期末に配当するということのほうが他に対する影響が少いということを申上げたのであります。
  27. 奥むめお

    ○奥むめお君 よく協同組合のことは御存じの福島さんのことですから何ですけれども、そんなに簡単に、費用もかからないただたくさんの品物の中で薬だけ取上げれば、費用もかからずに一割出るじやないか、二割出るじやないかということになりますけれども、ほかの店なら夜遅くして家族総動員で商売していますけれども組合は皆雇われた人が、時間も労働基準法に縛られた中で仕事をしておりますから、決してそう安くなつておりませんということははつきり認めておいて頂きたい。でこの配当ということが、今現実の問題として、組合の配当のできるほどの成績を挙げているところはないということを……、私は現実の面に立つてこういう法律改正を考えて行かなければ、理窟ではそれでよろしいのです。英国のように行つたらよろしいじやないかと言われるのですが、英国のように行くのが私の目の黒いうちに行けるかどうか疑問でございまして、そこで現実に副わない、こういう骨抜の案に修正するということは私どもからいえば、資本家のほうでもどういう考えがおありかということを聞きたい。
  28. 福島正雄

    公述人福島正雄君) 骨抜の案ではないとは思いますから結構だと思います。
  29. 早川愼一

    委員長早川愼一君) ほかに御質疑がなければ、ここで休憩をいたしたいと思います。    午後零時十一分休憩    —————・—————    午後一時四十五分開会
  30. 早川愼一

    委員長早川愼一君) それでは経済安定委員会公聴会を再開いたします。  午前中は四名の公述人を以て御意見を伺いましたが、午後は大阪の実連協会会長中山太一君、全国中小工業協議会中央委員長國井秀作君、それから法政大学教授宇佐美誠次郎君、主婦連合会調査部長高田ユリ君、日本労働組合総評議会政治部長石黒清君、全国購買農業協組合連合会総務課長古志己一君、以上の六名のかたから御意見を拝聴いたしたいと存じます。  公述かたがたには本日御多用中のところ当委員会のため御出席下さいまして誠に有難うございました。委員会を代表いたしまして御礼を申上げます。本日は多数のかたがたから御意見を拝聴いたします関係上、御公述は大体一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。  午後の議事の順序でございますが、先ず三名の公述人のかたかたから順次御公述を願いまして、次にその公述に対する質疑を行い、それが済みましたとろで次の五名の御公述に移るということで議事を取運びたいと存じます。  それでは先ず大阪実連協会会長中山太一君を御紹介いたします。
  31. 中山太一

    公述人(中山太一君) 本委員会で御審議頂いております独占禁止法の改正に関することですが、私は主として再販売価格の問題につきまして陳述いたしたいと思います。  我が国の人口を職業別に分類しますと、中小企業に属する中小商工業者とその従業員及びその家族の占める割合は極めて多くありまして、従つて国民生活の安定を期するためには、中小企業維持育成を図ることか緊要な問題であります。なかんずく現在の我が国では、小売業によつて本人及び家族数百万の人々の生活が維持されております。而もこれらの小売業者は日夜肉体的な労働に従事しておりますのみでなく、商品の仕入、管理、記帳、事務、販売及び宣伝等の精神的労働、知識的労働にも全力を挙げて従事して、そしてその事業維持発展に没頭しておるのであります。その上本人及び家族だけでなく、従業員も相当使用しておる者もあります。その割合は国民人口が八千五百万といたしましても、各種の小売業は、人口四十余名について一店ずつという割合で、各種の小売店が交互にあるのであります。そうしますと小売店数は少くとも二百万となるのであります。その家族、従業員を加えまして平均五人ずつとしますれば、これに従事しております者は一千万人となるのであります。国民人口八千五百万のうち一千万の大きな人の生活に関係することであります。再販売価格維持が若しできずして、不当な廉売によつて不正競争が不遠慮に行われて参りますならば、これらの人は共倒れの危険があるのであります。これが極度に行われますれば、その結果小売業は倒産又は整理となり小売業者自身の失業のみでなく、多数家族なり従業員の失業を招くことは明らかであります。これらが失業状態になりましたならば、それでなくても失業者が多くなる虞れがある。この領土の狭い我が国の人口は非常に多いのであります。そこに失業者数を増加しますと、国内に労働不安を来たし、労働賃金の不自然的な低落によりまして、社会的に重大問題を招来する虞れがあります。現下の中小商工業者の状況は、これをこのまま自然の推移に任しておきましたならば、甚だ憂慮すべき事態に立至ると存じます。資本主義経済社会における自由競争の長所は勿論認めるが、近来漸くその短所が弱小企業にしわ寄せされて、或いは不正競争或いは信用の破壊、或いは不当廉売等によつて倒産若しくは共倒れを招来するような実例が過去現在とも起り、又起りつつあるのであります。不正競争の取締及び濫売又は不当廉売防止による企業維持と、納税を行い得る程度価格是非必要と存じます。我が国の各種産業においても同様でありますが、私ども立場から一番よく調べておるものは、後ほど各業種を申上げてもいいと思いますが、例えば化粧品工業を初め、薬品、電球、書籍、電気器具、菓子、罐詰、製瓶、陶器、その他帽子、雑貨類等、良品を廉価に生産し、信用と責任を重んじて、その商標が全財産に等しいほど重大視して、どこまでも責任のある品物を高くないように作り、そして一定の価格を定めておるのが、これら多数の製造業者でございまして、いずれも一製造業者がその業界の生産額の一割を超えるような生産をしておるものは稀であります。従つて独占禁止、これが市場の価格を左右するようなことは絶対にないのであります。たくさん競争者があるために、相当激しい競争生産者相互に行われております。従つてその製造業者が希望いたしますところの小売価格は、一律であり、運賃までも全部負担をしておるのでありますが十分にその値段を定むるときには、同業競争者の商品品質価格等と対照して、それよりも高くないように、どこまでもひけをとらんようにするというのが、製造業者建前であります。自由競争が極度にここに織込まれておりまして、そして適当な卸業、小売店の最低のマージンを加えて売るようにしてあるのであります。そして漸く生産業者企業維持し、納税を行い得る程度価格しかつけておらんのであります。これは実際の事業が値上りで儲けるとか、或いは生産業者が共同して値段を吊上げるというような、こういうような意味は少しも行われておらない。反対に値を下げ、品物をよくする状態になつておるのであります。今仮に同一製造業者の同一製品につきまして、販売業者価格協定を行うことを広く認めましても、製造業者の希望した……製造業者がこれ以上売つてはいかん、それを上廻る価格は絶対に市場にないのであります。又どんなことがあつて品が不足しても、その不足につけ込んで値段を上げるということは、断じてできないのであります。それで正当な利潤以外には売ることができんようなのが、今の契約値段なり指定価格なり定価となつておる。信用ある商品につけた価格は、そこまで消費者も安心して信頼して、小売業を決して品の多い少いによつて暴利を得ることができんような状態になつております。従つて消費者の利益を阻害するということは、少しもないのであります。小売業者が先ほど申しましたように、知識的、精神的、肉体的の労働者と何ら異なるところがない、而も普通工業労働者なりその他の労働者に対しては、労働立法によつて保護が与えられておりますのに、僅かに自己の小資本が入つておりますが、精神的、肉体的又は知識的の労働に従事しておつて、これらの人と何ら異なるところがない中小商工業者、即ち商業労働者に対して、同じような保護がないことは、経済政策の上からも、国民生活の安定の上からも、極めて片手落ちのことと思われるのであります。よつて独占禁止法を改正されて、又特別法でも制定されて、同一商品の製造業者の同一製品については価格協定を認め、又は再販売価格による契約を認めて、小売業者の最低の生活の維持に必要な最低のマージンを確保し得るようにお取計らいを煩わしたいと存じます。これが防止の方法を講ぜられて、特に業者がまじめに協力して事業維持するようにして頂かないならば、非常な禍根を残すことと存ずるのであります。中には独占禁止法が、協同組合であれば普通のなにではきめてはいかんということでありますが、これは運営が十分できないわけです。協同組合ならば法律が値段協定をきめてもいいということを定められて、運営上に不便があるが、而も一方では同一のものに対して、又消費組合では濫売してもいいということになると、これは法の不備でありはせんかと思うので、この点は特に御賢慮を仰ぎたいと存ずるのあります。この倒産又は共倒れを防止して、現在の行詰りを打開しまするには、商品を公正妥当な価格で生産して販売し、そして濫売、売崩しを防止することが必要であると存じます。この公正な価格による販売は、良質廉価な商品の生産を促進して、一般消費者に利益をもたらすばかりでなく、小売業者の経営を堅実にして、その正当な生活を保障するのであります。更に進んでは、その家族の失業を防止し、生活の安定、担税能力の培養、事業の健全経営に要する費用の負担等もできるのであります。我が国の製造業者は、殊に中小企業者は多数でありますから、製造業者競争は極めて熾烈に行われておりますから、先ほど申したように、一製造業者の生産が全生産の価格を支配するような立場にないのであります。従つて現在のところ過度の集中ということは絶対に行われない、又考えられないのであります。殊に私ども関係しております化粧品、薬品等の小売販売価格は、生産者が希望する全国一律の価格であり、この小売価格を我々は正価と、正しい値段と呼んでおります。その理由は製造業者間において競争を加味せる最低価格であるということと、利潤は非常に少いものである、これも重ねて申すことを略しますが、非常に真剣な立場であります。そうすれば製造業者競争して宣伝費を余計使つておるから、品物にかけておるのじやないか、これは誤解を生じますが、宣伝費を使つておるものは、商品を廉価に作るこれは一つのこつであります。若し少量に作つたならば、これは宣伝をしておる商品は、品質が悪くて値段が遥かに高いのであります。それはなぜそうなるかと言いますと、大量に作らなければ、いいものを作る設備もない、いい技師を置くこともできない原料も大量に備えることもできない、それで大量の需要に対して生産するから原価も安くつく。それから広告費、宣伝費を負担してもなお且つ、少量に作るよりも安くいいものができるこれが消費者の利益であり、又産業発展のこれがこつであるのであります。中小企業の健全化、又は小売事業の健全経営のためには、不正競争又は濫売をどこまでも一つ取締らなかつたならば、このままではいかないということは、御了承を頂いておることと存じます。釈迦に説法で恐縮でありますが、この自由競争の本場である、独占禁止法を主張しておつたアメリカでさえ、小売業の競争が遂に社会的に、産業的に由々しき大問題を起すということを知つて、昨年百貨店の濫売競争、不当廉売の結果、到頭これに対する取締法が下院において通過した、あの百九十幾名の賛成、反対者は僅か十名ばかりであります。それから上院においても昨年の七月これが大多数を以て通過したのであります。そのときにやはり労働者、工業労働者、その他の労働者は、一つの最低の生活を維持するために保護され、又いろいろの公的な保護機関がある。それから農業労働については、主食に対してやはり農業労働に報いられる価格が決定してある。而もその生活を維持することを加味してあるにもかかわらず、商業労働がなぜ最低のマージンを得ることが許されないか、これは甚だ社会的に不公正であるということを叫んでおります。のみならずこれは或る一面に、働いても働いても遂に倒産して行くということは、思想の悪化を免かれない。これを正しく取締ることは、むしろ悪思想を防止するところの鍵だとまで、向うでは叫んでおることは、皆さんの御承知遊ばしておるところであります。それで日本で小売業がまじめにやつても潰れる、問屋も潰れるのであります。生産者がやはり潰れて行きます。又は生産が阻害される。そうすると外国品が日本に入つて来る。日本の生産業者が極めて弱体化して来たときには、外国品の輸入を食いとめることができんのであります。将来、大量生産を以て製品を廉価に生産しておる力を以て海外輸出するから、製品を廉価に海外供給することができる。その根本の基盤をも破壊されることになつて、これは日本の小売業保護が社会政策上のみならず、産業政策上からも特に慎重に御考慮を仰ぎたいと存ずる次第であります。もう時間が来ましたからこれで……。   —————————————
  32. 早川愼一

    委員長早川愼一君) それでは次に、日本労働組合総評議会政治部長石黒清君。
  33. 石黒清

    公述人(石黒清君) 只今御紹介を頂きました石黒であります。昨日から政治部長になりましたから、組織部長は昨日終りました。  本委員会におきまして、独占禁止緩和に関する公述をいたすのでありますけれども、私たちといたしましては、戦後の財閥の解体、或いは軍閥の解体ということに敗戦ということについては悲しみを覚えましたけれども、一日本人としては大きな喜びを感じました。従つて平和憲法の上に立つ日本が、もう軍閥も大体復活しておりますし、財閥が、この法律改正しなくても、相当カルテル化をやつておるようでありますし、我々としては実際きまつたことについて何かなつかしみを覚えるというか、思い出を語るような委員会になるような気がして、淋しく思つております。併し国会の中でこれから論議する場合において、不況カルテルとか、貿易カルテルとか、合理化カルテル、或いは販売、再販売価格協定とか、いろいろな問題があるようでありますけれども、こういう問題について、独占禁止法をこのうちの今申上げました部分改正して、果して日本の独占資本が生きて行けるかどうか、日本経済が保たれるかどうか、こういうことになりますと、これは残念ながら駄目だと思います。アメリカのような超独占資本、ドル帝国のような国ですら、カルテルはもうピークに来ておると思いますし、まして日本のようなアメリカの隷属的、隷属というよりももつともつと下の形なされておる場合に、三井、三菱という独占資本が、この独占禁止法を緩和することによつて生き永らえられることができるかどうか、こういうことになれば、それは残念ながら駄目でしようと我々は言わざるを得ない。なぜかと言いますと、この中にある不況カルテルの場合でも、果してこのようなことで生産制限とか或いは価格制限とか、品種制限とか、いろいろな形で出おりますけれども、こういうもので果して不況が乗切れるのかどうか、こういうことであります。鉄鋼三社といたしましても品種制限がなされるわけでありますけれども、これはどうしても平和産業といいますか我々の国民生活に必要なものが作られない、従つて亜鉛板だとか、薄鉄板といいますか、そういうものは生産を止められる、レールとか大砲とかそういう軍需産業に必要なものだけが作られる、従つて鉄鋼三社ですらもこういうことではいけないので、何とか日中貿易をやつてもらわなければいかんじやないか、こういうことになつているわけで、これ一つ見ても、もうすでに独占資本を中心に何とか生産制限をしたり、或いは品種制限をして切抜けようなどということはまあ夢ではないか、そうしてこういうようなことをやつておりますと、どうしても中小企業が参つて参ります。生産制限のうち、或いは品種制限のうち、そこの中でそういう生半可なことをやつておりますと、どうしても中小企業が参ります。前のかたが一千万小売人がおる、こう言つておりましたが、こういう形で制限して行きますと、当然労働者に対する賃下げ、首切りという形に出ますし、購買力は下るのであります。購買力が下つた場合に、戦争中と同じように一千万おる小売人の人は残念ながら失業しなければならない。実際上小売商人のかたがたもこのようなカルテルが布かれるならば残念ながら失業しなければならないでしよう。中小企業もまさか小さな町工場で大砲を造るわけには行きませんし、バズーカ砲を造るわけには行きません。ということになりますと、中小企業が潰れることは当然であります。だからこういうカルテルを以て何とか不況を乗切ろうという考え方がもう一世紀くらい古いんじやないか。私は社会党員ですから独占禁止法の問題を論ずる資格はないのであります。なぜかと言いますと、頭から反対だからであります。私たちは社会主義社会を作ろうとする関係もあつて、こういう法律には反対なんです。併し考え方や立場が違つてもやはり我々としても同じ国民でありますし、折角独占資本が自由党やいろいろな政党を動かして、この独占禁止法の緩和をして生き永らえようとするのに又若干でも忠告をする必要があるこういう立場で本日は参つたわけでありますけれども、そういう意味で考えた場合に、雨が降つたら水害になる、天気になれば停電になる、そうして建設省やいろいろなところでは吉田内閣五カ年に至る悪政はどんどん不正事件が出ておる。こういう馬鹿げたことをやつておるから、雨が降つたら水害になる、天気になれば停電になる、こういうことをこの立派な国会の中で我々は余り論議をしてもらいたくない。どうすれば不況を乗切ることができるかと言うと、総評は平和経済国民会議を持ちまして、そういうアメリカの軍用道路を作つたり、軍事基地を作つたり、山の頂上まで柵をはつて山林やいろいろのところ荒らすような馬鹿げたことをしないで、年間三千億、四千億とある金を全部電源開発を中心とするダム工事に使つたらいいではないか、その電源を中心にして、今石炭が余つておる、こういうことを盛んに言つておりますが、石炭やソーダや石灰、そういうものを中心に化学繊維産業をどんどん起して行つたらいいではないか。日本経済自立はもうてんでできないという頭でおる人々は、私ら若い者としては、もうやめてもらつて引退してもらいたいくらいですが、日本経済は自立は果してできないものかどうか。一回も努力をしないで経済自立はできない。MSAは受けなければならん。こういうことを盛んに国会の中でも論議しておるようであります。従つてそういう現在の政府の態度なり、或いはそういう態度から出て来る独占禁止法に対しては全く反対をせざるを得ません。我々が考えて見るのに、どうしてもう少し日本という祖国を大事にしないのか。もう一度世界戦争があるのではないか、或いはもう一回やつてもいいのではないかというような考えの人は隠居してもらいたい。我々は戦争は反対であります。なぜ独占禁止法のこの公聴会においてそういうことを言うかといいますと、この独占禁止法はMSAのバツク・ボーンであります。MSAを入れるためにはどうしても独占資本の強化をしなければならない、そうして軍需産業を中心に、祖国は基地とバンバンの祖国になる、独占資本を強化するためには労働組合は邪魔である。だから隣の労働委員会でスト禁止法が出ておる、破防法も出る、こういうことをやつておるのであります。従つて分科会として別々に持つておりますけれども、すべてはアメリカの安全保障のために独占禁止法を緩和して、ますます隷属的な資本主義社会に持つて行く。資本主義社会じやないでしようが、もつともつと程度の低い植民地に持つて行く。そのためには、労働組合がどうも邪魔だから破防法も作つた、緊急調整も作つた、炭労の二割賃下げを出して無理やりにストライキに追込んで、そうしてそれにつけ込んで、六十三日ストライキをやつたのは不届きである、だからストライキ規制法を出す、こういう形で一貫して、日本を基地とバンバンと軍拡経済に持つて行こうとするのが吉田政府であります。そのバツクボーンが独占禁止法の緩和であります。従つてそういう意味において、我々はMSAとはつきりと関係のある、私は炭鉱労働者でありますけれども、私たち炭鉱労働者に対して出しておる規制法とがつちり関係のある独占禁止法の緩和については反対せざるを得ません。特に中小企業、小売人、国民一般市民、我々勤労大衆を中心にした者が考える場合に、独占資本が強化される。再販売価格協定の問題にしても、これは何も小売商人が集まつて物を売る値段をきめるのではない、独占資本の直系のメーカーがぴしぴし値段をきめて、小売人に押しつける、こういうものであります。だから本当に商人一千万のかたがわかつたら、独占禁止法反対、吉田内閣反対、もたもたしておる国会議員反対、こういうことになるでありましよう。併しまだそこまで我が四百万の総評は力もありませんし私の党である社会党左派ももたもたしておりますし、まだ半年や一年は余裕があるようであります。併し本年の第四回総評大会でも明らかにされたようにもう日本の労働階級や国民大衆、一般中小企業はだまされてはいない。三たび四たび世界大戦が起るような妄想を起しておる人々に対する怒り、日本がいつの間にか基地になり、軍拡経済になりバンバン、アメリカ兵の横行する祖国になつたこの怒り、こういうものは内灘、浅間、妙義のいろいろな闘争を見てもはつきりしておるのであります。  最後に、総評は容共であり左へ行つたという御感想が、吉田政府や日経連や我が党の一部にもあるようでありますけれども、果して総評は容共であるかどうかという問題について、この機会に若干説明したいと思います。  私たちは第二回総評大会において、平和四原則をきめた、平和四原則の柱は全面講和であります。再軍備反対、軍事基地化反対、中立堅持、ところが皆さん日本は軍事基地はまだ七百七十三ある。再軍備の兵隊は、ダレスじやありませんけれども、究極は三十五万という。今もたもたしておるものは二十万、三十万になつておるでしようが、こういう状態になつておる、そうすると、その当時は、我々が決定した四原則は先ずスローガン程度であります。政府のほうの弾圧政策や或いは経営者、資本家の弾圧政策もまあまあというところでありました。ところが昨年から今年にかけての政府の弾圧、資本家の弾圧というものは激しさを加えておる。だから二年前にきめた平和四原則をがつちり我々が守る立場を貫く限りにおいて接触は激しくなるわけであります。火花が散るわけであります。火花の散るのを知らんというのでは我々は止むを得ない。火花も散らないような労働階級は解散して産報になるだけであります。従つて我々も何も知らずに言つたのではない、二年前に決定した方針がいよいよ本当の方針になつた、戦う方針になつた、こういうことであります。まさに火花が散るのであります。スローガンだけならば健全で民主的な組合で、行動すると、左だ、容共だということであれば止むを得ません。組合からお金をもらつて、私も月に二方から三万お金をもらつておるわけでありますけれども組合からお金をもらつて、東京へ来て、一生懸命組合員のためにやるという組合の幹部が、スローガンを旗のように持つて止いておるわけにいきません。吉田内閣に抱く悪政は大きな塊まりになつて、我々の咽喉をしめておるのでございます。従つて平和四原則は年一九五三年はまさに行動の方針である。従つて立場が違います。激しい鍔迫合、戦いは起るのであります。併し、我々は考えているのは飽くまでも祖国を軍事的に中立化する。今こそそのために全国民が結集をして、基地と再軍備を撤回する。これ以外に日本を救う途はない。くどいようですが、もう一度世界大戦があるような気分を起している人、もう一回はあつてもいいのではないかという人は、政治界から引退してもらいたい。我々の子孫、私の妻子、兄弟親戚、身内、いろんなかたがたの迷惑になりますし、皆さんもそうであろうし、私もそう考えております。従つて戦争経済、祖国をますます滅亡に追込む独占禁止法の緩和に対しては反対であります。そして、小売人や中心企業を守るためには、労働組合と同じように小売人の労働組合を作らせればいい。協同組合の強化、これに対して資金をどんどん出す。中小企業にしてもその通りである。協同組合制度をもつもつと強化して、そうして資金を出す、こういう形でカルテルを強化する必要は大いにある。あるのは先ず労働者のカルテルをうんと強化する。中小企業カルテルもうんと強化する。農民のカルテルも強化する。一部の資本家は何も強化しなくつても吉田内閣を中心に大道を闊歩しているのでありますから、これは放つて置けばよろしい。このように我々は考えているところであります。従つて日本の独立のために我々も皆さんお互いが、全国民大衆の幸福のために独占禁止法というものがどういう繋りで今この委員会で論議されているか。MSAの関係、あらゆる問題を中心に広汎な視野で一つ考えてもらいたい。若しも馬鹿げたことを国会がやるならば、私たちは一度の総選挙、二度の総選挙、どんどん伸びているのでありますけれども、まだまだ駄目ですが、そういう意味では、あんまり労働者や農民や中小企業一般国民大衆を侮辱した態度を国会がとるならば、日本のために不幸な事態が起るかも知れない。我が総評は第二の朝鮮を祖国に持込まないために一生懸命で平和革命の路線をひたすら走つております。たまに落ちる人もありますけれども、一生懸命に走つておるのであります。第二の朝鮮にしないためにもつともつと子孫の繁栄と国家自体の存立の問題を十分考えて独占禁止法も考えてもらいたい、かように思つておる次第であります。どうか不況カルテル合理化カルテルやそういうもので不況合理化ができるのではないということをはつきり知る必要があるのではないか。あとで宇佐美先生から羅蓄のある意見が出ると思いますので、私は労働組合立場を若干申上げまして、言ひ過ぎた点しお詫びを申上げたいと思います。どうも……。 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  34. 早川愼一

    委員長早川愼一君) 次に主婦連合会調査部長高田ユリ君。
  35. 高田ユリ

    公述人(高田ユリ君) 只今御紹介を頂きました高田でございます。  私は家庭の主婦の立場から独禁法改正に反対するものでございます。  先ず最初に申上げたいことは、独禁法改正はすでに闇の形で事実上行われているということでございます。既成事実を作つておいて、あとから法律で追駈ける、これは今の政府の常套手段のように思われるのですが、独禁法の場合もその例外でないことは明らかでございます。丁度昨年の春頃だと思いますけれども、味噌、醤油の製造会社が籤付販売方法で以て、籤の当籤者に景品を出したり、一泊旅行をさせるという手で一種販売合戦をやり出したことがございます。このときに公取委ではこのような競争の結果消費者は景品や旅行の費用の分だけ高い味噌、醤油を買わされると申して、その実態を調べ、到頭不公正競争方法に指定して禁止いたしました。併し、その後このような事実は一向に減らないどころか、昨今では日常茶飯事になつていることは皆さん御承知のことだと思います。消費者はすでに定価販売商品を押付けられているのでございます。チエーンストアーとか、何々祭だとか、こういうものの流行はいたしましても、前に述べたことと似たようなケースだと思います。第一、朝鮮の休戦気がまえで特需が減り、不況が一層深刻化すると言われておりますのに、物価水準は今日になつても一向に下らず、物によつては却つて強調を見せております事実、これはいつの間にかカルテルカルテルに似た行為によつて価格維持だとか、吊上げが人為的にこつそり行われていることを証明するものではないでございましようか。このように独禁法は事実上破られつつあるのでございまして、独禁法の番人を以て任ずる公取委の諸先生も、今では既成事実の前にお手上げの形だと申上げたら失礼に当るでございましようか。形式的なものまで禁止している現行法の下でさえこの調子なのでございますから、事業者共同行為だとか競争会社の株式保有などについて実質的な弊害の有無によつて取締るという今度の改正案では違反の監視などできようはずがないと思うのでございます。近頃の逆コース現象がみんなそうでありますように、一歩を譲ることは百歩あとずさりすることになりかねないと私は思つております。現にお砂糖の会社が協定を結んで値段を吊上げたり、通産省の行政指導で綿紡績の操短を行なつたということは皆さんの記憶に新らしいことと思います。そしてそれはその犠牲者はいつも消費者なのでございます。又硫安の会社が製品輸出するために国内の農家向け値段を高くした例なども農民ばかりではなく、結局は消費者にも大きな迷惑をかけていると思います。肥料が上れば生産者米価が上る、生産者米価が上れば消費者米価に被さる、そのことはすでに事実として起ろうとしているではありませんか。不況カルテルといい、合理化カルテルといい煎じ詰めれば経済の根本的建直しを皆さんが怠つていらつしやつて、安易な方法で大資本を助けることでございまして、それは表面上は中小企業や商店の経営も合理化するように見せかけてはいますけれども、やがては資本の集中や独占価格に途を開くものであることは過去の歴史が物語つてくれていると思つております。又再販売価格維持契約の問題にいたしましても、これは事実上行われておりまして、公取委が黙認していることをただ合法化するに過ぎないと思うのでございますが、それによつて受ける消費者の痛手は計り知れません。現行法なら、たとえお役所が黙認している場合でもこれは消費者が不当だと言つて立上つて公取委に申入れたり輿論に問うこともできますが、法律で公然と許されてしまうと、私どもは処置がなくなつてしまうのでございます。又私たち生活に関係の深い生活協同組合で扱つておる商品の大半はメーカーものでございますけれども、再販売価格維持契約が認められれば独占価格の圧迫と戦つている組合の本来の姿が骨抜きにされる虞れさえあると思います。又不当廉売やおとり販売はその損失をほかの商品に被せて消費者に迷惑をかけるから再販売価格維持契約が必要だということでございますけれども、併し消費者は自分の判断で商品を買うのでございまして、暮しに喘ぐ私たち主婦の目は案外肥えて来ておりますから、業者が御心配なさつているようなことはないと信じております。それにこれは毛糸の例でございますけれども、成る製造業者がポンド千八百円で売るように小売業者に指示したというのでございます。ところが、小売業者はこの値段では買手がないというので、お客が見えるごとにほかには黙つていて欲しいと五十円ずつ値引きして捌いたという事実があるのでございます。値段は結局消費者の購買力がきめるのだと思います。又一旦値段をきめると、たとえ経営が合理化されて原価が安くなつても値段を下げないのが日本の商道の常のようでありまして、このことは逆に申しますと業者が定価という値段の上にあぐらをかいて、品質の向上とか本当の意味での合理化を怠る結果にもなると私は思うのでございます。アメリカの話でございますけれども、州の大部分が再販売制を実施したところ、それらの州だけ物価水準が上つても下ることはないということを聞いております。スウェーデンなどヨーロッパの諸国では、国が立派な商品試験所を設けて商品品質を調べ、優秀品を推奨しているそうでございますけれども我が国では業者の利害で一種の独占価格を許す制度を認めるなど、私たち主婦としては政治の愛情を疑ぐらないわけには参らないのでございます。  再び繰返しますが、この再販売価格制度が法律で公然と許されてしまいますと、私どもは公取委に訴えたり、輿論に訴えることもできないということをもう一度申上げたいのでございます。これを要するに今度の独占禁止改正案は、無秩序競争そのものに対する根本的な反省を怠つてカルテルによつて一時をごまかそうという一時凌ぎの対策でございまして、自由経済の美名の下に私企業価格の統制を行わせ、そのしわは全部消費者にかけるのでございまして、主婦の立場からは勿論、日本経済の前途を憂うる国民の一人としても反対するものでございます。  近頃旧財閥のマークや名称が復活して来ております。又幾つかの既成事実の上に頻りに法律改正が企てられております。独禁法改正もその一つの輪のような気がいたします。行過ぎの是正に名をかりて、とうとうとして逆コースを歩き始めている今の日本の姿を思うとき、くどいようでございますが、私は家庭の主婦の立場から、独禁法改正に反対であるということを強く主張いたしたいと思います。   —————————————
  36. 早川愼一

    委員長早川愼一君) 以上お三人のかたの公述を終りましたが、この際公述人に対する質疑をいたしたいと思いますが、順次御発言を願います。  それではこれで前段のお三人のかたには退出して頂いて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 早川愼一

    委員長早川愼一君) それではあとお三人の公述を引続いてお願いいたします。全国購買農業協組合連合会総務課長古志己一君。
  38. 古志己一

    公述人(古志己一君) 本日お招きを頂きまして私は農業団体或いは農民という見地から意見を申述べたいと存じます。  独禁法の今度の改正はその適用の緩和にあるわけでございますが、現在農業におきましては、すでに物価の高騰のために農業生産そのものが非常な支障を来たしておるのでございます。然るに更にこれに独禁法改正されますと、恐らく重要物資につきましては、カルテルが促進せられ、農業の資材、肥料その他の資材の高騰を見ることは必至であり、ただでさえ整理に悩んでおります農業経営、或いは食糧の生産は一大難関に行き当るのではないかということを憂慮するのでございます。従つて農民その他農民団体といたしましては、独禁法改正案には反対をしているのでございます。  従来独禁法制限法律でございまして、極言いたしますれば、むしろ禁止することを建前としておるのでございますが、最近先ほどもしばしば主張されましたように、現実カルテル化のような行為或いは現実カルテルに似た参行柔しばしば見られるのでございます。例えば経済審議庁の調査によりますると、最近一カ年間の物価指数を見ますると、総合指数で昨年はずつと下つておるにかかわらず、今年になつてつて反撥しております。例えば昨年の三月におきまして総合指数は一五八であつたものが、十二月には一五〇に下つております。然るに今年になりますと一月、二月、三月というふうに上り出して、三月では一五三という数字を示しております。世界物価は非常に低落しておりますにかかわらず、我が国だけでこういうふうに反撥をしておるということにつきましては多大の奇異の念を抱くのでございますが、これにつきまして審議庁の言うところでも、これは恐らく第一の原因カルテルによる価格吊上げ、或いは操短、或いは資金調整というようなものが最大の原因ではないかというふうに断じておるのでございます。更に我々に最も関係のありまする肥料の問題について見ますると、硫安の場合、或いは石灰窒素或いは過燐酸石灰というような重要肥料につきましてはすべてカルテルがあるということは恐らく万人の認めるところでございましよう。現に硫安の場合におきましては、硫安協会は指値を発表いたしまして、それが公取の注意を受けた事実がございます。又過燐酸におきましてもすでに昨年以来三割乃至四割の繰短を行なつておる事実があるのでございます。これは硫安の輸出問題等につきまして、春以来社会問題、或いは国会の問題といたしまして論ぜられたのでございますが、この硫安におきましてインドヘの輸出が一叺六百二十円という非常に安い値段で、国内価格で見ますれば三割以上の値下げで輸出したのであります。これもカルテルとの関係があるのでございますが、更に若し六百二十円という値段が出血輸出であるかどうかという問題につきまして、出血輸出でないならば当然国内価格は暴利でありますので、そこまで下げられるであろう、又出血であるならば独禁法と申しますか、不公正な取引でありますので抵触するのではないかというふうに考えるのであります。更に過燐酸につきましても、先般台湾の輸出が三百七十円という安い値段で輸出しております。これも国内価格から見ますると百円以上安くなつております。従つてこのようないわゆるカルテル化のような行動が市場ではしばしば見られおるのでございます。従つて現在すでに独禁法がありましても、なおかようなカルテル或いはカルテル類似行為があるのでありますが更に若し改正案通りますれば、このような行為は更に殖えるであろうということを我々は恐れるのであります。  例えば今度の改正案によりますると、不況カルテルの場合の認容の条件平均生産費という言葉があります。平均生産費という言葉は非常にむずかしい言葉でございます。例えば肥料の場合、硫安の場合におきましても、今年肥料対策委員会におきまして、硫安の平均生産費の算定を目的といたしまして合理化部会におきまして金融或いは経営或い会計学等のエキスパートを以てコストの調査を始めたのであります。併しその結果は明確なる結論が出なかつたのであります。この例を見ましても、如何にコストの計算、平均生産費の計算がむずかしいかということを示すのであります。なお藤山社長が硫安の平均生産費は一叺九百三十四円六十二銭だということを発表しました。然るにかかわらず、その後間もなく硫安の安定帯価格を八百二十五円乃至八百九十五円というふうに先ほどの平均生産費を下廻る価格で決定を見たのであります。これは実際この安定帯価格は少くともこの程度の利益を含むのだということは常識になつておるのであります。この例から見ましても、いわゆるメーカーの称する平均生産費というものが妥当でないということを示すと同時に、逆に申しますれば、平均生産費の計算が如何にむずかしいかということを示唆するものかと思うのであります。なおこの不況カルテルの場合におきまして、不況云々の条件がございますが、少くともこの独禁法改正そのものの意図が、昨年来の我が国不況の切抜け策として立案されたという事情から勘案いたしましても、不況の名の下に重要産業の各分野に亘りまして、このようなカルテル化が進むであろうということを恐れるのであります。例えば昨年一カ年におきまする物価の騰貴高率を見ましても、食糧農産物におきましては昨年度二・二%の騰貴を見ておりまするし、又燃料において一五%の騰貴でありますが、繊維におきましては二割、金属類では八%、化学製品では一八%の低落を見ております。即ち少いもので八%多いものでは二割の低落ということは、如何にもこの業界不況であつたかということを示すものでもありましよう。けれどもこの騰落を以ていたしましても、なお昭和九—十一年の基準年次から見ますると、相当の高値にあるのであります。例えば食糧農産物におきましては、昭和九—十一年の指数を百といたしまして、倍数を求めますと二万八千、いわゆる昭和九—十一年を単位といたしますると、二百八十の指数になります。然るに繊維におきましては今なお三百七十二という指数になつておるのであります。最も低い化学製品におきましても二百九十という指数でございます。なお又硫安の値段と米の一石の値段の比価を見ましても、例えば太平洋戦争の始まりました昭和十六年におきましては、穀類一石に対する硫安の比率が七%ということになつております。それが昭和二十年には一%余というように下つております。このように硫安が下つてつたのでありまするが、尤もこの年には補給金が出ている関係もございます。併し翌年の二十一年には補給金が出ないという関係もありまして七%というふうに上つております。それが今日では一二%五というように上つております。この例から見ましても、遥かに硫安肥料、米というものの釣合いがとれてないか、いわゆる農工生産物の差が多いかということを示すものではないかと思うのであります。若しこのようにしてカルテル化が進んだ場合に、先ず肥料においてそのカルテルが組織結成されるであろうことは想像に難くないのであります。と申しますのは、我が国では肥料工業が最もカルテルが早く始まつたものの一つになるのであります。即ち肥料におきましては、昭和三年に石灰窒素の共同販売が設置されまして、それから二、三年後には殆んど重要肥料の全部にカルテルが結成されたのであります。その結果整理が非常に激しくなりまして、遂に昭和十一年に重要肥料業統制法という法律によつて、国の法律を以て価格規定することになつたのであります。今日多くの農業協同組合におきましては、赤字或いは資本の不足を訴えておるのでありますけれども、このような現象は農民の結局経営の不振ということに原因があるのでありまして、この例で見ましても、むしろ農業資材の価格は今より一層引下げるべきが適当ではないかとさえ考えるのであります。このような理由でございますので、むしろ今日の現状でさえも我々は価格引下げをさえこの際提案したいのであります。  このような意味におきまして我々は独禁法改正されますことを恐れるのであります。而も今回の改正案ではいわゆるすでにカルテルの受入体制と申ましすか、そういうものがすでにできておるように疑うのであります。例えば前国会に提案されました廃案におきましては、合理化カルテルの場合、或いは不況カルテルの場合におきまして公取が認定することを条件といたしまして、消費者への利益を著しく害するという言葉が使つてあります。併し今回の改正案におきましては、不当に害する場合を除くというふうに、そういう言葉が使つてあります。このことは輸出カルテルの場合にも、同様の言葉が使つてあるのでありますが、この例から申しましても、いわゆる消費者の利益というものを先ず考えるべきこの法律におきまして、こういうものがネグレクトされているということを我々は非常に恐れるのでございます。でこのような意味から申しまして、農業団体といたしましては、この法律改正に反対をして参つておるのであります。すでに今年の春以来しばしば農民大会、全国農民大会或いは農協大会の実行委員会等を開きまして、この改正案の反対を唱えて参つて来ておるのであります。以上で終ります。   —————————————
  39. 早川愼一

  40. 國井秀作

    公述人(國井秀作君) 只今御紹介にあずかりました全国中小工業協議会中央委員長をいたしております國井でございます。  今回独禁法緩和が骨子とされたところの改正案が今国会提出せられているのでありまするが、我々といたしましては中小企業者の立場からこの改正案に絶対反対でありますことを申上げたいと思うのであります。先ほどの解散国会の際に衆議院における安定委員会独禁法改正案が取上げられた公聴会の席上におきましても、独禁法改正に賛成せられるのは大企業公述人ばかりでありました。他の中小企業関係或いは農業水産団体の関係その他中小商工業者関係者は挙つて独禁法改正に反対をしたという事実は、すでに議員諸公におかれましても御承知通りだと考えるのであります。従つて改正案が実に国民大衆の要望と遊離しておる議案であるということがはつきり言えるのでございます。今回提案せられた改正案は、大体において解散国会の際に生活協同組合の団体のかたから強く要望されましたいわゆる再販売価格維持契約に対する一部の問題に対して強く要望があつた点を加えられまして、いわゆる除外例を今後の改正案の中に盛上げまして出されたと思うのであります。他はすべて殆んど前回出ました改正案と同じであると言つていいと思うのでございます。で今回この法律が以上のようないわゆる僅か一部分改正だけであつて、他は前回通り改正案提出されるということに対しましては、これは先ほどから各公述人が申されております通り国民の大多数はこれがいよいよ以て大企業の一部或いは大資本家の一部の圧力によつて政府提案となつたものであるということを国民の大多数は色眼鏡を以て見ておるということが事実であると考えるのであります。私ども国会は国民の代表の府でありまして国会で決定きれますことは国民多数の要望に応える決定でなければならんと思うのであります。然るに今申上げた通りこの独禁法改正が国民大多数のかたの要望でなくして、一部の資本家、一部の大企業家の要望によつて政府提案とされておるという事実からいたしまして、若しこの独禁法改正国会で決定せられるというような事態が起きたといたしましたら、これは国民大多数の要望に背く結果になると私は信ずるのでございます。私は前回衆議院の公述人としてやはり申上げたことでありまするが、独禁法は決して大企業を圧迫する法律ではないのであります。私は現在のような日本産業構造の中で、経済力の自立性の全くないところの中小企業者或いは農業水産関係者、一般消費者というものが、不自然的に大きな数となつて日本国を形成しておる現状の中にありまして、この多くの人々が経済的に安定の途を辿り、国民生活を細々でも維持するためには、どうしても独禁法のようなものによつて保護されるということでなければならないと思うのであります。これは日本の置かれておる宿命的な現実であると私は思うのであります。即ち独禁法は今申上げたような経済力の弱い国民大衆の経済活動に幾分でも役立たせたいために、企業の独占と経済力の集中を排除するために設けられた法律でありまして、大企業に多少の不自由な点があるといたしましても、それは以上の理由から止むを得ないものであると考える。本法によつて禁止しておる禁止条項のようなことも、すべて国民経済維持向上を狙つておるものであります。これを言い換えますれば、この独禁法の強化、励行されることは大企業にとつて日本経済安定のために払うところの安い保険料に過ぎないと私は考えるのであります。又独禁法日本現状をフアツシヨにもしない、或いは社会主義にもしない、資本主義の最もいいところの面を保護しておる法律だと考えるのでございます。即ち米国におけるところの反トラスト法、英国におけるところの独占及び競争制限法、或いはカナダの企業結合調整法、西ドイツの競争制限防止法等が存置いたしておることを見ましても、如何にこの独禁法日本産業発展のために必要な法律であるかということは言を待たないと信ずるのでございます。かような次第でありまするので、大企業も余り近視眼的な考えを持たないで大概のところでほどほどに思いとどまりませんと却つてその反動現象が大きな悪循環となり、更に矛盾が拡大して行くことによつて大きな自己矛盾と自繩自縛にに陥ることになるのではないかと実は杞憂するのでございます。現行の独禁法が厳然と存立せられておるところの現在においても、大企業中小企業者とのアンバランスは最近更に大きな開きが出ておるのであります。若しこの独禁法改正案通りまするようなことがあつたならば、これは日本における大企業中小企業とのアンバランスを決定的にきめる法律になると私は考える次第でございます。大企業は現在は現在の法律下においても、先ほどから各公述人が言われておる通り公然とではありませんが、現に各種のカルテルは行われておるのであります。即ち不況対策、合理化対策或いは価格保持対策等は着々と大企業は進められておるのであります。時折公正取引委員会からの勧告や色眼鏡で見られることの煩わしさから逃れるために、公然とこれを許容活動としたいというのが本改正案の狙いであろうと考えるのであります。私どもをして率直に言わしむるならば、本改正案は蓄妾公認法を持つことを公認する法律であると私は申上げたいのであります。今までは暮夜ひそかに妾宅を訪れて喋々喃々としておつたものが、この法律改正によつて蓄妾を公認化し昼中でも公々然と自動車を横たえ、日夜を分たず蓄妾の合理性を確保せんとするものであると私は思うのであります。若しこのような蓄妾公認法というものが国会を通過するようなことがあつたといたしましたら、これが世道人心に及ぼす悪影響ということは、今更説明を要しないと私は思うのであります。即ち今次の独禁法改正が只今申上げた蓄妾公認法に相通ずるものであつて、その影響するところは結局国民消費大衆にしわ寄せが来、悪影響が来るということが必然であると思うのであります。  独禁法は昭和二十二年に制定を見まして、その中で今日まで大企業独禁法に触れまして審決を受けたもの、いわゆる公正取引委員会で取上げたものは百二十数件に及んでおります。そのうち大企業が触れたものは僅かに十数件でありまして、他の百十数件はすべて中小企業者或いは零細企業者公取委の審決に付されているのであります。これをもう少し詳しく申しまするならば、これは去る解散国会のときに調べました資料でありまするので、若干これよりは殖えておると思いまするけれども独禁法違反となつて審決を受けた数が百二十三件であります。そのうち第二条の不公正な競争によつて審決せられたものが五件、第三条の不当な取引制限によつて審議を受けたものが二十七件、第四条の対価の引上、生産数量、販売数量の制限或いは販路、顧客の制限、或いは新生産方式の制限、こういつたようなもので取上げられたものが二十八件ございます。更に第五条の事業者団体法の禁止行為に触れたものが四十一件、これが最大であります。更に第六条の国際的協定、国際的契約に触れたものが十七件第十条の株式、社債の取得に関して審決を受けたものが三件、第十一条の金融機関の株式所有によつて審決を受けたものが一件、更に競争関係にある会社の役員兼任によつて審決を受けたものが四件更に十四条の会社以外のものの株式保有制限或いは競争関係会社の株式の保有等によつて審決を受けたものが六件、第十七条の脱法行為の禁止によつて審決を受けたものが五件、第十九条の不公正な競争禁止に触れたものが十八件であります。以上この百二十三件のうちで、大企業の触れたものは第六条の国際的協定、国際的協約に触れた十七件並びに株式社債の取得の三件或いは金融機関の株式所有の一件、競争関係にある会社の役員兼任の四件その他数件に過ぎないのでありまして、すべてのこの百二十三件のうちの百十数件は中小企業者又は零細企業者独禁法に触れておるのであります。従つて決して独禁法は大企業を圧迫する法律でなく、むしろ私どもからいわせまするならば中小企業を圧迫する法律であると言えるのであります。この中小企業を圧迫する法律改正することになぜ中小企業が反対するかという一つの考え方が出るのであります。これは現行法においてすら大企業カルテルを行い、我々中小企業者並びに関連産業に携わる者、延いては消費者にしわ寄せの来ておる現在、若し公然とカルテルを許し、或いはトラストを許し、大企業の独占性を認めることになつたならば、今でさえ苦しい中小企業者、或いは関連産業関係者或いは消費大衆の皆さんの迷惑が一層大きくなることを恐れるから反対するのであります。私どもは現在の社会情勢を見ますときに、先ほど繊維卸商連盟のかたからも申されたようでございますけれども、或いは又農民関係のかたからもお話がありましたように、現在の農民は高い肥料と安い米価の板挾みになつて非常に苦んでおるということは先ほどもお話がありました。又中小企業は石炭が高い、鉄鋼が高い、諸物価が高いということにおいて生産に苦んでおるのであります。又大企業の関連産業であります人々もすべて今までの繋りに支配されて出血生産を余儀なくされておるのであります。而も下請代金の決済が非常に遅延することと相俟つて中小企業者はまさに自殺街道を進みつつあると言つても過言ではないと私は思うのであります。国民大衆の生活も極度に苦しくなつておるという事実を見逃して頂いては困ると思うのであります。万一この改正案が衆議院を通過するようなことが仮にあつたといたしましても、参議院の賢明なる諸公の御努力によつて改正案が絶対に国会の決定案とならんように御努力を願いたいと私どもは国民の名においてお願いをする次第であります。一応総論的なことはその程度にいたしまして、以下条文改正の内容について少しく申上げてみたいと思う次第でございます。  今回の独禁法改正案が衆議院において官房長官から趣旨弁明の中にありましたように、本案の改正はもとより国民経済の民主的で健全な発達を促進するため私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正且つ自由な競争を促進しようとする独占禁止法の根本精神は飽くまでも尊重すべきものであります、と言つておるのでありますが、この改正案は大よそこの趣旨弁明の趣旨と全く相反しておると言えるのでございます。この改正案の中に大きく取上げられております問題に事業者団体法が廃止せられまして、この独禁法の中にこれを吸収せられておるということであります。これは私どもといたしましても従来の事業者団体法を廃止いたしまして、本独占禁止法の中に吸収せられることについては何ら反対をいたすものではありません。併しながら今度の改正案の中に盛られておる事業者団体法に代るべき条項は極めて事業者団体法の時代の許容活動と禁止活動の条目を非常に簡易化しまして、そうして少くなつている。私はやはりこれが独禁法で吸収せられましても事業者団体法できめてある通り禁止活動こ許容活動の範囲を明確にやはりしてあいて頂きたいと思うのであります。第二点に現行法の第二条の五項にあります不当な事業能力の較差の条項を削除することになつておるのでありますが、これも強い反対ではありませんが、やはり私は企業の独占を排除する独禁法の精神からいたしまして、やはり存置することがよろしいと考えるのでございます。第三点の現行法の第五条の、私的統制団体の禁止条項を削除することに今度はなつております。若しこの法律を削除いたしましたら、勝手に大企業は一手買取機関、一手販売機関、あらゆるいわゆる活動が許容せられることになりまして、第五条の私的統制団体の禁止条項というものはこれは厳然と存置して頂きたいと思うのでございます。従つて今回の改正案を、これを削除することになつておりますが、これは厳に私どもは反対をするものでございます。  第四点といたしまして、今回の改正案の主軸をなすところのいわゆる第二十四条の三並びに四の不況カルテル合理化カルテルの容認条項に対しましては、先ほど申上げておる通り、絶対反対であります。この絶対反対でありますことを少しく内容に触れて申上げてみたいと思うのでありますが、それは不況カルテル合理化カルテルと申しまするが、一体不況というものをどこに置くか或いは又合理化カルテルをどこに置くかというような問題については極めて抽象的でありまして、これはその取締る人の主観によることであり、又大企業の強い政治的な力がこれに及んで来ることは当然でありまして、かような許容条項を加えるということは極めて独禁法の精神を破壊することになると思うのであります。それから認可権を主務大臣に帰属させることになつておりまするが、現在においてすら、公正取引委員会というものが力が弱くなつておる、先ほど実例を申上げた通り、大企業公正取引委員会の審決に付されるものが僅か十数件にしか及んでいない。この事実からいたしましても、現在においても大資本の圧力というものが、政治力というものが、如何に公正取引委員会の権力というものを制限し、弱めておるかという事実がはつきり出るのであります。然るに、今度は認可権を主務大臣が持つというようなことになりましたら、公正取引委員会の権力というものは更に弱くなることは説明を要しないと思うのであります。それに主務大臣認可に当りまして公正取引委員会認定によつてという言葉がございます。公正取引委員会認定によつてという言葉、この言葉自体が極めてあいまいであると思うのであります。私は、これは公正取引委員会が現行法においてすら弱い立場になつておるのでありますからして、これを認定というようなことで逃げて、主務大臣認可権を認めようということは、私をして言わせれば、従来はただ公正取引委員会に通過決裁をするだけの通り路だけのことをきめるという法律になつて、その認可権はすべて大企業の出店である通産大臣の自由裁量の権力によつてきめられるということになると思うのであります。かような点から考えましても、今回の改正は絶対反対であります。更に、これを若し通産大臣が一度これを認可いたしましたとき、やはり改正法律案の中にあります通り、この認可が著しく経済活動の自由を阻害し、その影響が関連産業又は消費者大衆に及ぼすときに、これを取消すことができるということが規定されております。併し一応認可したものを取消すという点は極めて容易ならん事情に私は陥ると思う。殆んど不可能に近いものと思うのであります。カルテルを許して、而もその共同行為がいろいろの形において契約となつて、関連産業或いは卸業或いは小売商等に一つの契約となつてこれが行使せられておるときに取消すということは、その契約が果して日本法律においてこの認可を取消したことによつて関連契約というものがすべて無効になるかということになりますと、これは又権利義務の問題でむずかしい問題に逢着するのではないかと思うのであります。従つて、一度認可したものはなかなかこれを取消すということは、法律できめておりましても、又独禁法できめておりましても、他の法律によつて取消が不能になるという虞れがあるのであります。  それから、私どもの観点からいたしますれば、この合理化カルテル等も、合理化カルテルという名前こそ誠にいい名前ではございますけれども、私はカルテルによつて決して合理化は図られない、これは大企業のいわゆる独占化が強くなるだけであつて、決して私は合理化にはならないと信ずるのでございます。かような次第でありまして、私どもは、今回の改正案に出ておるところの第二十四条の第三、四、この不況カルテル合理化カルテル認可に対する条文は、絶対に全面的に反対をいたすものでございます。先ほども申上げました通り、現行法下であつても、公正取引委員会の権限が非常に弱められておるのであります。すでに皆さん委員かたがたにも公正取引委員会の事務局で作りましたいわゆるカルテル類似の行為に関する資料がお手許に届いておると思うのでありまするが、あれを見ましても、いわゆる大企業カルテルを行なつても、それを公正取引委員会で取上げようといたしましても、或いは貿易に関することであるならば、貿易管理法にそれが保障されておる、或いは又公取が、これはカルテル禁止行為であると言つて取上げようといたしましても、これは通産大臣の勧告によつて操短をしておるというようなこと、すべてそういうことによつて現在の独禁法が強力に執行できない形にあるというのが現状であります。従つて、何も独禁法改正いたさなくても、先ほどからしばしば申上げておりまする通り、大企業は、公然とではありませんけれども、暮夜ひそかに愛妾のもとに通う程度ではありまするけれどもカルテルは完全に行われておるのであります。従つて、何も妾を置くことを公認する法律にしなくても、完全にできておるのでありまするから、独禁法改正是非思いとどまつて頂きたいと思うのであります。  更にもう一つには、先ほどお話の中に、再販売価格維持契約の問題について全面的に反対という御意見があつたようでございまするが、これは、主婦連合の立場から、消費者の立場から、一応御意見は御尤もであると考えるのであります。併し日本のいわゆる産業構造の上から、消費者に安いものが手に入らんければいけない、小売商人も健全な経営の中から自分の生活できるところのマージンを得なければならん。大企業も、そうした商品を流す土におきまして、卸商を通じ、或いは小売商を通じ、これが消費者に流れる過程において、いわゆる適正な価格というものが保持せられることでなければ、日本国民経済、大きく見た国民経済は決して平等に発達しないと思うのであります。従つて、主婦連合で言われる再販売価格維持契約の問題に全面的に反対せられるのでありまするけれども、これは一歩おきまして、小売商人その他生産者立場をも考慮して頂きまして、是非この問題については今回の改正案をお認め願いたいと思うのであります。  なお、私は今回の改正が、先ほど申上げました通り、前解散国会の際に、生活協同組合のかたのこの再販売価格維持に関する反対の意見に対しまして、今回政府はいわゆる除外例を生活協同組合その他の消費組合或いは大企業等でこしらえおるところの購買利用組合というようなものを除外することになつておるのでありまするけれども、私はむしろこの改正は、もとのように、いわゆるその再販売価格維持というものの体系というものが生活協同組合にも、或いは普通の協同組合にも、購買組合にも、利用組合にも適用せられることであつていいのではないかと思う。そのことが主婦連合のかたからのお話では、アメリカにおいては、この緩和によつて物価は上つて、少しも消費者に得にならなかつたということを仰せられたようでありまするが、これは別の角度から検討できる問題でないかと私は思うのであります。私は大きな観点から、生産者である大企業、これを消費者までに流す過程においての卸商、或いは商人というだけの、商品の流れて行く間に健全なマージンがそこに認められて、そうして成るべく安く消費者にこれが流されて行く、この経済構造の原則というものをやはり固く樹立することでなければ日本産業は発達しないと思うのであります。以上いろいろ申上げてとりとめのない点がありましたが、最後に繰返して申すならば、冒頭に申上げました通りこの独禁法改正案が決して国民大衆の要望でなくして、一部の大企業、一部の大資本家の要望によつて政府が提案せられたという事実は確かであります。従つて国民の代表の府であられるところの国会が国民大衆の要望しないような法律改正に賛意を表することは国民の要望に応えるものでないと私は固く信ずるが故に、本改正案に対しましては、万々一にも衆議院を通過するようなことがあるといたしましても参議院においては賢明なる議員諸公の御努力によつて本案を握りつぶし或いは不成立に終らせるよう御努力をお願いいたしたいと思うのであります。これは私が大きなことを言うようでありまするけれども、国民大多数の名においてお願いをいたす次第でございます。  最後に附加えて少しく申上げてみたいと思いますことは、私は公正取引委員かたがたの身分というものが、現在のように、検事や判事のように身分保障がないのであります。従つて公正取引委員会の活動というものが大きな資本の圧力、大きな政治の圧力によつて左右せられておるというこの事実、これをむしろ排除すべきではないかと思う。即ち公正取引委員会構成法の中に公正取引委員の身分を保障し、更に国民経済と直結いたしておりまするところの中小企業の代表並びに消費大衆の代表を公正取引委員として加えるような改正案こそ本当にこの独禁法を生かしそして日本産業経済のあり方を正しくする大きな力になると考えるのでございます。これは少しく今回の改正案と離れた別の問題でありまして、公正取引委員会の構成に関する問題でありまするが、少くとも公正取引委員会が不偏不党何らの大資本にも大企業にも政治力にも支配されないで、独自の立場で大企業といえども容赦なく審決できるような権力を与えて頂きたい。更に公正取引委員の中には中小企業者の代表並びに消費大衆の代表を加えるというような法律改正が私は望ましいと思うのであります。  以上いろいろ申上げましたが、畢竟するに本改正案を絶対に通さないように参議院の諸公にお願いをすることで一ぱいでございます。なお、一言申し忘れたことがございまするが、認可権の問題のところで主務大臣が非常な権力を持つて公正取引委員会が無力化する、殊に公正取引委員会認定を得て認可するというその認定の問題が、強い認定でなくていわゆる公正取引委員会通過決裁という規定、ただ通り道になるというだけの問題に過ぎないという結果を申上げた通り、若し仮にこの改正案を一部修正で通さなければならんというような事態なつたといたしますならば、通産大臣の認可権だけは厳にこれは取りやめて頂きたい。飽くまでもこの独禁法を守るために、又独禁法が公正に行使される上からいたしましても認可権は当然公正取引委員会が持つべきであると確信するのでございます。非常に駄弁を弄しまして申訳ございません。   —————————————
  41. 早川愼一

  42. 宇佐美誠次郎

    公述人宇佐美誠次郎君) 私宇佐美でございます。今度の改正法律案につきまして私の意見を申上げます。皆様も御承知通り戦争の直後にいわゆる財閥解体ということが行われました。この財閥の解体ということはつまり今度の戦争というものに対して財閥というものが非常に大きな役割を演じた、その財閥というものがなくならない限り日本は再び侵略と征服の暴挙を演ぜざるを得ないということから財閥というものの解体が行われたわけでございます。その財閥と申しますのは勿論三井とか三菱とか、そういういわゆる日本で従来行われておりました財閥ということではなしに、実質的に独占的企業ということであつたのでありまして、単に三菱が姿を消した、三井が姿を消したということで財閥が解体されたことには実はならいなのでございますが、実際行われました財閥の解体ということではあの三井家、岩崎家というものの解体が行われただけでありまして、実際その基盤になつております経済的な基礎と申ますか、独占的の企業体というものはこれは殆んど手が着けられなかつた。実際に解体されましたのはアメリカと直接競争関係にありました三井物産、三菱商業という少数企業だけでありまして、実際の解体というものは見過してしまつたのでございますが、その関係からその後あのドツジ・ラインの強行状態、それから朝鮮における動乱以後の日本経済の変化の中で再び独占的企業の力が非常に強くなつて来たことはあらゆる方面で指摘されておるところであります。こういう情勢の下に、こういう情勢を更に実質的に促進するような意味を持つたものが今度の改正案だということが今度の改正案の一番重要な点であると私は考えるのでございます。最初のあの財閥解体工作というものが本当に正しいものであり、国民の支持するものであるとすれば、今度の法案についていえばもつと独占に対する制限強化ということこそが本来ならば正しいことと思うのでありまして、逆に独占体というものに対する制限を緩くする、そして独占の活をもつと自由にさせる内容を持つた今度の改正案というものは非常におかしなものになつておると言わざるを得ないのでございます。そう申しますと今度の改正案というものはどういう点で、どういうふうに独占体というものを自由にし活動を促進する結果になるかということを多少の例を挙げて今度の法文で御説明申上げたいと思うのであります。  今度の改正案で重要な点はしばしばカルテルが自由にされたということが言われてございます。これはその通りでございますが、今度の法案で大事なのはむしろカルテルよりももつと大きな私的独占に対する制限緩和であると私は考えます。つまりいわゆるトラストといわれております独占企業、この独占企業に対する制限緩和されたという点に今度の一番大きな重点であるというふうに考えるのでございます。今度の改正法案を見ますと依然として第三条では私的独占禁止というふうに謳つてございます。併しながらその内容を読んで見ますと、こういう規定は形だけのものであつて、実体的には独占体の活動が遙かに緩くなり自由になつておるということを否定することができないのでございます。第一に第九条で持株会社ということが出ております。持株会社は依然として禁止されてございます。ここでは「支配することを主たる事業とする会社をいう。」というふうに持株会社を定義してございますけれども、実際の持株会社の活動というものは、持株を主たる目的とするのでなくても、実際には支配することができるのでございまして、例えば財産の保全会社という名目であつても、そういう目的の持株であつても、実質的には他企業を支配することができるわけでございまして、それを主たる事業とするということでは果して本当に持株会社の実体を抑えることができるかどうかは非常に疑問と言わなければならないのでございますが、それ以上にもつと大事なのはこれは昔のような三井系、三菱系或いは三井本社、三菱本社というようないわゆる持株会社ではなしに、戦後の今日の一番大きな問題は大きな産業会社がほかの産業会社の株を持つてこれを支配するという形でございまして、純然たる持株会社というものは、これは少くとも表面からは姿を消しております。で、そういう会社、もう一つは銀行の産業に対する支配、こういう実質的には昔の財閥支配と同じ形のものが戦後は形を変えて出て来ているわけでございますが、こういうものに対する制限は、独占禁止法ではともかく一応はできないことになつておりましたけれど、今度の場合には公然とこれができるような応勢ができるという点が大事であると思うのであります。例えば第十条を見ますと、ここでは直接間接の支配というものが直接の支配だけに限定されました。又社債というものがこの規定から除外されてしまつております。そして競争関係にあるほかの会社でもその株を持つことは実際にできるような形になつてしまつたのであります。で、その制限はただ実質的に競争制限する場合だけに限られたのでございますが、実質的に競争制限するかどうかということはこれは非常に立証がむずかしい。これは而も非常に主観的な意図の入る余地が多いのでございまして、客観的にこれを判断することはむずかしいわけであります。ということは、これは見過されてしまう危険が非常に多いということにもなるわけであります。更に銀行になりますと、十一条でありますがここでははつきりと会社の株の保有がもつと自由になります。今までは百分の五、五%きり会社の株を持つことができなかつたのが、今度は一〇%、つまり一割の株を持つことができることが公に認められたのであります。而もこの一〇%以上の持株ということもできるような規定が入つております。このことは銀行というものがただ株を持つて支配するだけでなしに、金を貸すいわゆる貸付融資という関係で会社を支配できるのでありますが、それに並んでこういう株を持つことによる支配というものをもつと強く行うことかできる態勢がこれでできるということにほかならないと思うのであります。更に十三条では役員の兼任禁止緩和されております。で競争会社であつても実質的に競争関係にない会社、これは判定が非常にむずかしいわけでありますが、そういう場合にはほかで会社の役員を兼任することができるようになります。この点も又先ほど言いました立証の困難ということで、実質的な支配の拡大強化ということを認めるということにならざるを得ないと考えるのであります。  以上のように非常に今度の法案でありますと、立証の困難な条文が多い。立証が困難だということは、実質的にはそういう大きな企業、あの戦争と関係の深いと強く指摘されたそういう独占的な企業というものの活動がもつと公にできるようなそういう態勢がこれでできてしまうということであります。そういう意味でこの私的独占禁法の改正というものは、独占禁止をされたものの根本的な思想の改正ということにならざるを得ない。こういう意味で今度の改正は非常に重要だと考えざるを得ないのであります。こういう私的独占つまりトラスト的な形の独占というものが若し公に認められてしまうならば、この次のトラスト的な活動、トラスト類似の活動というもののほうを如何に強く取締つても、実質的にはこれは効果がなくなつてしまう。これは今までの戦後のカルテル的な結合のいろいろの事例を考え併せて頂けばよくおわかりになりますように、実質的にはカルテル的な活動をやつてしまうのであります。小さな中小企業でありますと、如何に集まつても決してカルテル的な結合ができるはずのものではない。カルテルができるには巨大な独占体というものがなければできない。独占体のほうを制限することを緩めてしまつてカルテルのほうだけを如何に強くやつてもこれでは実効が挙らないと言わなければならないのであります。  そこでそのカルテルでありますが、カルテルのほうも今回の改正案では相当大きな緩和が行われております。先ほどからお話がすでにたびたびあつたと思いますが、今度はカルテルというものを不況カルテル合理化カルテルという形で公認いたしました。このことは前の私的独占体、つまりトラスト的な独占体というものの活動を更に自由に更に大きくする役目を演ずるわけであります。で、不況カルテルという場合の基準は、これは平均生産費というふうに条文には書かれております。併しその平均生産費というものは一体どうして計算されるのか、その場合に一体利潤はどういうふうに見積られるのかという点でこれは非常にあいまいな、而も重大な規定であります。而もその平均生産費というものの立証の問題が大きいわけでありますが、その如何によつてはその不況カルテルというものが自由に行える基盤ができてしまうのではないかという危惧を感ずるわけであります。更にその不況カルテルを作るという場合に条文によりますと、企業合理化ができない場合にこの不況カルテルをやるというふうに書かれております。そのことはつまり合理化が先、つまりもつとはつきり言つてしまえば首切りをやつてできない場合には、こういうカルテルをやるのだという形で、犠牲が実質的には首切りという形で出て来る危険が非常に大きいものであることも、併せて考えておく必要があると思うのであります。  それからもう一つの点は、合理化カルテルでありますが、この合理化カルテルということにはその言葉自体非常におかしいのでありますが、つまりはつきり言つてしまえば企業の利潤の採算によつてカルテルができるということであります。つまりはつきり利潤というものを認めて、それを守るためのカルテルであります。これは戦争中の独占体の役割というものを考えても、あの財閥を解体しなければならないのはなぜかと言えば、私的な利潤の追求ということにによつて国民経済が破壊されてしまう、そういう危険を守らなければならんというのがあの独占禁止、財閥解体精神でありますが、その利潤というものを表面に出して、これによつてカルテルを許すことになりますと、これではもう日本国民経済というものの一番大きな権利が失われてしまうということを考えなければならんわけであります。こういうふうになつて来ますと、それではどうすればいいかと申しますと、これはどこの国でも独占の制限ということはむずかしいのでありまして、アメリカでもどこでも独占禁止というものはうまく行つておりません。確かに非常にむずかしいのでありますが、むずかしいということはやらなくてもいいということではない。その場合に大事なことは、どうしても形式的な禁止規定が必要だということであります。つまり形式的に禁止してしまわないと、主観の入る余地があつたり、立証の余地があつたりする場合には、どうしても実質的には制限できないということであります。従つてたとえ多少の不便はあつても、形式的な禁止規定がない限りは実質的な制限はできない。ですから前の独占禁止法でありますと、まだその点がはつきりしていたのでありますが、今度の場合にはそういう形式的な制限をなくしてしまつて、そうしていろいろな立証によつてきめる制限基準が出て参りました。このことは単に条文の些細な変化ではなく、根本思想の変化だというふうに私は考えざるを得ないのであります。  以上が非常に簡単でございますが、今度の改正案の条文につきましてそれが独占体を事実上促進する危険が大きいものだという意味で申上げたわけでございますが、実はこの法案に対しまする意見として大きな点は、その法案以前の問題であるというふうに私は考えるのであります。法案以前の問題というのはどういうことかと申しますと、つまりこの法案が出て来た基盤、戦後の経済の変化、その点において実は大きな問題がありますので、ただこの法案自体、それ自体をどうするということだけの問題で問題が片付くのでないということであります。それは今までの実績を見て参りますと、公正取引委員会の実際の活動状況、それから独占禁止法のいろいろな法律の実施状況というものを見て行きますと、その根本精神と実際は違つたことが事実上行われて来たということであります。この点を直さなければ独占禁止法の精神というものは生かされない、そういう点を私は考えなければならないという点であります。  もう一つ非常に大きな点は、今度の独占禁止法というものが恐慌と言われる非常に経済的な不況の中で出て来たのでありますが、そうして或る意味ではそれを切抜けるための止むを得ざる日本経済手段というふうにすら或る人たちから言われておりますが、その不況が一体どうして出て来たのか、今日の日本経済不況というものは、これは非常に大ざつぱに、一言で言つてしまえば、つまりアメリカというものが日本経済を実質的に支配してしまつた、その従属化させている、その関係によつて日本経済というものは今日の不況に入つてしまつているわけです。これは法律的に日米通商航海条約、その他の法律規定でもそうでありますし、実質的にアメリカの日本経済の掴み方、これによつて日本経済の一番大きな問題が実は出て来ているのであります。そういう点を全然度外視して考えて、これを止むを得ないこととしておいて、経済不況を乗切るために、而もそれは大きな企業不況を乗切るためにカルテルを作つたり、トラストを許したりするということになると、これは本末転倒でありまして、実はもつと大きな問題で、つまりアメリカのほうからアメリカの不況日本に侵入して来る、移入されて来る、そのことによつて日本経済不況に入つて行く、その関係を直さなければ、単に国内の法律を多少いじくつたくらいで、日本経済の根本問題は解決されないのでありまして、そういう独禁法改正というような問題と、基礎にある日本経済現状というものをよく掴んで、それをもつとよくする方法はどこかということに、そこに目標をきめなければ、今度の改正それ自体を問題にしても余り意味がないということを忘れてはならないと思うのです。併しそのことは、決して今度の独占禁止法の改正ということが止むを得ない、やつてもいいということには決してならない。アメリカの経済的な威力に対して、日本経済を守るためには独占禁止法の改正も止むを得なということにはならない。やはり先ほど言いましたように、そのことは日本の独占体、戦争というものを考えただけでもおわかりのように、そういう独占体を日本に跋扈させること自体が実は問題でありますから、どうしても独占禁止というものは今後むしろもつと強化して、日本国民経済の今後の見通し、そうして国民生活の今後の見通しという立場から本質というものを考えなければならないというふうに信ずる次第でございます。大変とりとめもないことを申しましたが、時間の制限もありますので、これで一応終ることにいたします。 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  43. 早川愼一

    委員長早川愼一君) 以上で午後の六名のかたがた公述を終りましたが、この際あとから公述されました三名のかたに対して御質疑がありましたら御発言を願います。……ちよつと私から質問させて頂きます。  先ほど國井さんでございましたか、独占法全体に対して反対ということを言われましたけれども、何か再販売価格協定については賛成のような御意見でしたが、その点は如何でしようが。
  44. 國井秀作

    公述人(國井秀作君) 私の考え方を申上げます。再販売価格維持契約の問題は先ほども申上げました通り、私は今度の改正に反対をするのでございまして、むしろ前国会に提案せられたときのように、これは生活協同組合或いは大会社でやつておるところの購買組合、利用組合その他のところでもいわゆる公正なる価格というものを維持して販売されるということが私は日本産業構造の上に正しいあり方だと、こういう観点で今度のいわゆる生活協同組合その他の消費組合等を除外いたしたことにはむしろ反対だ、こういう意味でございます。
  45. 鮎川義介

    ○鮎川義介君 私は先ほど宇佐美先生のお話の、財閥がつまり戦争というものを起した原動力の一つであるかのごときお話でありました。私は少くともそうではないと思います。あのときに財閥であろうが、或いは普通の民間であろうが、あの際の戦争というものは国民が同じ考えでいたものと思う。財閥であるために戦争に協力したという事実は殆んどないと思うのです。それは私は巣鴨におりまして、すべてそういうことは財閥に向つて巣鴨で証言をとられたのでありますが、そういうことは絶対になかつたということを申上げておきたいのです。それは非常な認識違いであるということを申上げておきたいと思います。これはお調べになつたらよくわかることであります。
  46. 宇佐美誠次郎

    公述人宇佐美誠次郎君) 只今御意見を拝聴いたしたのでございますが、私の申しておりますのは、財閥の幹部の人たちが戦争をやるために直接主観的に考えており、それをどういうふうに動かしたかということではなくて、財閥という構造そのものが戦争にどういうふうに役立つかということを申しておるのでございまして、主観的な意図、主観的な考え方ということについて責任を問題にしておるのではないということでございます。これは戦後の財閥解体のときのいろいろの文書、或いは賠償委員長で来ましたポーレーの言葉にもはつきり言つておりまするように、財閥の責任というものは個人の主観的な意図ではなく、財閥という構造、つまりそういう形で利潤を挙げておるという、そういう構造が戦争というものと関係が深いのだということを申しておるのであります。個々の財閥の多少のかたがたが戦争に反対しておるというようなことは、それ自体は私どもとしては別の問題と考えるわけでございます。私の意見でございます。
  47. 鮎川義介

    ○鮎川義介君 私が財閥の一員として巣鴨に拘置されたものでありますが、大体私自体は財閥ではないのであります。少し三井とか岩崎さんというものとは話が違つておりますから、それは只今申上げても冗長でございまするので、やめますが、私自体は財閥でないということの証明はたつたのであります。併しながら外国では戦争、つまり利益のために、プロフィットのために戦争をやらせるということがあるそうであります。従来そういう例があつた。つまり非常に不況なつたときには戦争というものを考える。そうして儲けごとに戦争を使うというようなことがあるそうでありますが、我々が今度の世界大戦に臨んだときの考えは、戦争によつて儲けようという考えをした財閥は殆んどないと思います。それは私はそのかたがたに対してここで代弁をしておきたいと思います。そういうふうに考えるのは不純だと思います。決して財閥は戦争を餌にして、そうして儲けんがためにやろうというようなことは絶対になかつた。あつたらばもう少し違つた問題が起つておると思います。同じことであります。
  48. 早川愼一

    委員長早川愼一君) ほかに御発言ございませんか、なければこれを以て公聴会を閉じたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会