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杉原荒太君 私は成るべく短い時間で以て意見を述でてみたいと思います。先ずこの
条約の内容ですが、
政府側では我がほうの要望を十分に取入れたというふうにここで言われたんですが、私の見るところではそうは行
つていない。又、私は必ずしもそうは行
つていないからとい
つて、そういう理由で別に、
条約だからそんなに十分に取入れられるはずはないので、それだからいかんということを理由にするのではない。併し私は今まで
質疑応答の過程で、もう随分長い時間かか
つて、いろいろな点、具体的には明らかに
なつた点があるのでありますから、一々これを申上げませんけれども、その規定の内容において相当不満足な点や不適当な点、或いは不備の点等が随分ある。それは事実です。而もその間にあ
つて、これはいろいろ日米の双方の
政策上といいますか、非常に
政策上からして利害が衝突して、
向うがどうしても譲らぬという点、これは止むを得ない点もいろいろありましよう。併しそうではなくして、こつちが理を尽しておるのに、そういう入れていいはずのものがそうな
つていないものがある。そういう点など、これはもう少しそれこそ十分な努力をしてもらいたか
つたという意見を私は持
つておるわけです。それで、こういう点については、これの運用面、それから、これは運用といいましてもいろいろ
国内法などに譲
つておる面もあるし、そういうもののきめ方という点は、これは
条約の実態と
関係を持
つて来るのでありますが、そういう点だとか、それから、この
条約自体の中にこの
条約の実施に関する
協議条項などが入れてありますが、ああいうものを十分活用して、今言
つたような不備な点とか何とかを補うように
一つや
つてもらいたいと思う。
それから第二には、まあそうは言いますけれども、この
条約の
締結に
関係された諸君の相当の努力の
あとというものは、これは私は認めるに吝かではない。又こういう
条約を仮りに否決するとか、これが成立に至らぬとか、効力を発するに至らぬ場合の結果の
影響ということを
考えて、そういう点からいたしまして、これがひとりただ単に
通商航海条約の
関係だけでなくもつといろいろな点に
影響するところが大きいので、そういう点などを
考慮して、私は大局の見地からこれに賛成しようと思う。
ただ私ここへ最後に
一つ強い要望を付しておきたいのですが、それはこの
条約に限らないのだが、特にこの種の
通商航海条約というものは、これは事柄の性質上からい
つても、これはそう国民の間に秘密にすべきものではない。むしろ国民の声を聞いて、業界その他国民の意見を聞いて、ずつと作り上げ、積み重ねて行かなければならん性質の
条約なんです。それだからして、こういうものなどは特に国民の輿論、代表の意見を聞かなければならんものだから、この
条約を作る過程においても、国会などでも説明をし、又聞くべきものは聞いて、そういうふうにして僕はや
つてもらいたか
つたと思うのです。今後もこの種のものは随分あることだと思うから、特にその点を要望しておきたいと思います。
それからもう
一つ、これは言うつもりではなか
つたけれども、
条約の
締結に関する憲法の規定に関して外務
大臣が昨日触れられたから、二言、言
つておきますが、
政府の今と
つておられるあの
条約の解釈には私は賛成できないのです。あれは私の見るところでは、もつと
考えてみられる必要があるのだと思うのです。その内容は、今その場所じやありませんから申しませんが、ただそれだけを申上げておきます。
それからもう
一つ、その要望として今後の
日本の対外
経済関係、これは非常にむずかしく且つ重要なことですが、それらに関して私の率直なことを申上げますと、今まで
政府でいろいろと苦心してや
つておられる点はわかるけれども、何だか率直に申上げるというと、前に非常に
資本導入という大きな大はいを掲げて、この頃は東南アジアということをしきりに言
つておる。私は、こういうものは、
資本の導入にしましても、二十五年の六月からこの年の六月まで、まる三年かか
つても僅か七千六百万
ドルぐらいしか入
つていない。これは当然だろうと思う。そんなに私は入るはずはないと思う。然るに何か外資導入をするのが非常になんだというような、非常に実際の事実とあまりにもかけ離れ過ぎた、輪をかけ過ぎたことを標榜されたようなことがあ
つたように思う。今度は東南アジアの
関係でも、客観的に冷静に我々が見るならば、非常にむずかしい
条件がそこにあるのです。だから何だかこれによ
つて国民にあまりにも淡い幻想を抱かせるようなことがあ
つてはいかんと思う。何か皮肉に解すれば、如何にもホーム・コンジャンクシヨンというような、率直に言
つてそういう感想を持つのです。そうして現に昨日、一昨日も外務
大臣にお尋ねしたのですが、今度行かれるかたなども御苦労な話ですが、併しその任務の内容等についても極めて漠然たるものである。ああいうことで、実際又それほどでないかも知れませんけれども、私はこういうことはもう少し……対外
経済には重要であるし、それだけに、もつと地道でいいから、少しずつでも、本当に実効を収めて行くような点について努力されたい。こういう要望を付してこの
条約に賛成いたします。