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1953-07-20 第16回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十日(月曜日)    午後三時七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君            加藤シヅエ君    委員            草葉 隆圓君            中田 吉雄君            羽生 三七君            杉原 荒太君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務省参事官    (外務大臣官房    審議室付)   大野 勝巳君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省経済局長 黄田多喜夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○連合委員会開会の件 ○国際情勢等に関する調査の件  (MSAに関する件) ○日本国フイリピン共和国との間の  沈没船舶引揚に関する中間賠償協定  の締結について承認を求めるの件  (内閣送付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では只今より外務委員会を開きます。  本日の議題公報掲載通りであります。先ず日米友好通商航海条約に関し、経済安定委員会では七月七日の委員会で当委員会連合委員会を開くことを決定いたしました。この経済安定委員会の要求に対していかが取計らいましようかお諮りいたします。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないと認めまして、それでは経済安定委員会連合委員会を開くことに決定いたしました。   —————————————
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に国際情勢に関する件を議題といたします。質疑のある方は順次御発言をお願いします。
  5. 杉原荒太

    杉原荒太君 MSAの問題は極めて重要な問題であります。まだこの委員会において或いは又国会において、今の段階においても明らかにすべき問題がたくさんある、従つて他同僚議員も終始不満に堪えないに違いない。本日はすでにもう一時間以上を経過したのでありますが、この点考慮しまして私は細部の問題はあとに残しまして、今日は大筋のところについてお尋ねいたしたいと思います。言うまでもなくこの問題は単に一内閣だけの問題ではない、国家的見地から取上げなければならないことは言うまでもない。従つて私はそういう立場からこの問題を取上げてみたいと思う。従つて政府側においても本当に虚心坦懐にお答えを願いたいと思う。公平なる第三者、国民が聞いておつても余り聞き苦しくない問答になることを希望いたしまして今日の質問をいたします。  さて、第一に私のお尋ねしたいと思いますことは、MSA援助に関する協定を結ぶことによつて日本の受ける援助はいかなる種類援助であるか、つまり援助種類いかんという点を先ずお尋ねいたします。大勢の国民の中にはその点の正体をつかまずしてとんでもない誤解の前提に立つてMSA問題を考えておるものがあるように思う。例えばMSA援助を受けさえすればアメリカからうんとお金が来て自分たちの生活が楽になるのだ、自分たちの暮し向きは楽になるという素朴な幻想を抱いておる者すらある。それほどではなくてもMSA協定による援助の中には、いわゆる防衛生産軍需生産に対する援助或いは経済援助が相当織込まれるであろうという期待の上に立つて議論しておる者がある。そこで我我はこのMSA問題に対し賛否いずれの立場をとるにいたしましても、先ず日本がこのMSA協定によつて受けることになる援助種類正体を明らかにしておくことが必要であると思う。申すまでもなくアメリカ政府日本に対しどういう種類援助を与えるかということは、アメリカにおいても政府限りで政府の一存できめられることではない。議会の議決を経た法律によつてちやんときまつておる。それによる一つの権限、それに従つてアメリカ政府といえども行動しなければならん。そうして又その種類内訳にいたしましても、アメリカ議会における審議の際、政府当局がなしました証言等でおのずから制約を受けるに違いない。最近アメリカ議会を通過いたしました一九五三年相互安全保障法は言うまでもなく日本の受ける援助の場合にも直ちに適用されるに違いない。従つてこの法律にきめておるところと、その法律制定に至る議会審議経緯に照して、日本がいかなる種類援助を受けるかの問題をこのさい国民の前に明らかにする必要があると思う。私の今まで調べたところによりますれば、第一、一九五三年相互安全保障法に基いてそうしてMSA協定によつて供与されるであろう対日援助種類は、この法律にいうところの軍事援助だけであつて経済援助技術援助は一含まれていない、私はそう見ておる。この点政府はどう見ておるか、その点を明確に先ず明らかにしてもらいたい。  第二にはそのいわゆる軍事援助内訳は、日本で言ういわゆる防衛生産軍需産業増強するために必要な原料、資材や機械設備、それに伴う特殊の技術などの援助アメリカ法律に言ういわゆる防衛支持援助デフエンス・サポート援助、私はこの防衛支持という言葉が適訳ではないと思つておりますが、よく一般に使われておりますので便宜にこういう言葉を使いますが、そのデフエンス・サポート援助、そういうものは今度のMSA協定による対日援助の中には予想されていないと思うが政府はその点をどう見ておるか、これが第二点。  第三には、一九五三年相互安全保障法によるアメリカ相互安全保障計画で、日本に供与される計画軍事援助そのもの内容は、装備(イクイプメント)と訓練主体とするものと思うが政府はどう見ておるか。更にその装備援助なるものは、この完成兵器の供与を主体とするものと思うがどうか。又アメリカ議会におけるMSA援助の際の国防当局説明によりますれば、いわゆる訓練種類を大別して二つにわける。一つは軍隊がいかにして行動するかという戦術的な訓練その他の技術的訓練、即ちレーダーその他の特殊な兵器等取扱方訓練に分かれておる。そうして、この戦術的訓練ということは極く限られた小国にだけ大体適用するようになつておると思うが、日本の場合はいずれの種類訓練を受けることを考えておるか、先ず以上の点をお尋ねいたします。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカMSA援助はいろいろな形にあるわけでありまして、今言われたような武器軍事援助と言いますか、それからその一部と見られておる防衛支持援助のほかにも、例えば相互特別武器計画とか技術経済援助或いは集団機構による援助、いろいろなものがあるわけでありますが、その中で日本が今度の交渉で受けるであろうと想像されるものは、まだこれは交渉をやる途中でありますから想像に過ぎませんが、恐らくいわゆる軍事援助だろうと思います。その中でも完成兵器日本側に引渡すことと、日本国内で必要なものを注文してアメリカ側でそれを支払つて日本側に引渡すもの、この二つがあるだろうと思います。  それから防衛支持援助というものは予想されないというお話でありますが、私も今ちよつと困難じやないかと思つております。併し我々の考えではMSA援助も今年限りということでなくして又来年もあるであろうと思つております。従つて条件が整えば防衛支持援助も受け得るものでありまするし、私はMSA援助を受けるならば防衛支持援助も受けるほうが日本のためには非常に利益だと思いますので、できるだけ若し只今受けえないとしても、これから国内条件を整えて来年度には受けるように努力をいたしたいと思つております。  それからこのほかに援助と申しますると、これは直接援助にはなりますまいが、アメリカ側の回答にもありますからちよつと言及しますと、日本外貨収入については非常に大きいいわゆる域外買付というものも出て来ると思いますが、これは直接日本に対する援助ではありません。  それからいわゆるポイントホアー経済技術援助関係において、アメリカ側でも日本中共貿易その他が困難な現状においてはということで、この問題に言及しておる人もあるのでありまして、場合によつては今後このポイントホアー日本との結び付というものも考ええないことはないであろうと思つております。  それから援助内容は今申した通り、今の予想では主として完成兵器をということになり、或いは国内で注文する兵器を引渡すということが主でありましようから、直接の援助内容としてはやはり装備訓練でありましようが、これは訓練という場合にもやはり相当の部分を占めることは有り得ると思つております。たしかイギリスなどでもMSA援助協定付属文書の中で、イギリスの者がアメリカに行つて訓練する場合のドルの支払問題等について協定をいたしておるようでありまして、この頃の毎日新らしくなるようないろいろの武器については、イギリス等も必要の訓練があるであろうと思いますが、日本の場合に今の憲法制約下においてそれほど新らしい新鋭武器を必要とするかどうか、又そういうものが来るかどうか、これは別問題でありますが、併し訓練という点も相当重きをおくべきものであろうと考えております。
  7. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の外務大臣の御答弁は大体私が予想しておるところと同様であるのであります。  次に私のお尋ねしたいと思いますことは、元来このアメリカ相互安全保障のための軍事援助具体的計画が実際にどういうようにして作成されて行くかということは、私の理解しておるところでは、先ず毎年アメリカ軍事援助を与えんとする国の援助の対象とする兵力(フオース或いはフオーセス)の測定が基礎になる。そうして初めにアメリカ軍事顧問団援助を受ける国の者と相談をしてその兵力に必要な装備を調べる、そうしてその装備の全必要量からその援助を受ける国の供与し得る量を差引いて不足分を算定する、それがその後現地或いはワシントン、中央において更に検討された上で案ができ上つておる。そうしてこの計画作成作業は毎年遅くとも前年の九月から始められ、私は昨年個人の資格で欧米を視察した際、ワシントンに参りましたときにもアメリカ側日本のいわゆる再軍備問題に対する態度の点に特別の注意を持つておつたのでありますが、アメリカではその当時すでに日本に対するその作業始つておつたことと私は了解しておる。私は先ほど日本に与える援助種類の中には現在の一九五三年の法律に基くその計画の中にはいわゆるデフエンス・サポートの項目は含まれないと大体解しておるのでありますが、外務大臣も大体そうではなかろうかというふうに言つておるのであります。私の理解するところではそういうことはすでにアメリカではきまつてしまつておる。これから交渉して今度の際に間に合う問題ではないと思う。その後計画の中できまつておるわくのもの以外のものは受けようとしても現行のアメリカ計画の下では、もうそれは時期遅れである。もちろんそうして恐らく日本側としては外務大臣も言われたように、実際の必要からいたしますならばそのいわゆるデフエンス・サポート援助が客観的に非常に要請されておることと思う。然るにこれは本年度に受けるこの中には恐らく私は入つていないと思う。そうしてこれは今度の交渉によつて解決さるべき問題ではないと私は思う。政府はこのいわゆるデフエンス・サポートのいわゆる防衛支持援助防衛生産に直接つながる、その防衛支持援助を直接受けることにどういう努力をされたか。したけれども認められなかつたとすれば、それはいかなる事情によるものか、その点をお尋ねしたい。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 前々から何遍もお断りしておりますように、実はこの閣議の決定を終るまでは、日本としてはMSA援助を受けるかどうかという態度については出先でも厳重にコミツトしないようにしております。つまり予備交渉はしないというのはその意味であります。従つて予備的というか言わないか別といたしまして、本当の日本に関する交渉としてやりましたのは、先月の二十四日の質問書が第一回であります。それから現在に来ております。従つて今までのところまだ具体的内容に入つておりませんから、防衛支持援助を受け得るかどうかということについては的確にはもちろん言えないのであります。ただいろいろの資料等を見ると、どうも今年の分には入つていないであろうという想像をしておるだけであります。今まではまだ努力いたしておりません。これからやつてみるわけであります。
  9. 杉原荒太

    杉原荒太君 その辺のところには私もう少しお伺いしたい点もありますけれども次の問題に移りましよう。  MSA援助協定を結んだ場合において、日本の負担するところの義務、ことにその中で防衛力増強義務と、防衛能力増強のために必要な一切の合理的措置をとるというこの義務、この二つ義務政府予算作成権国会予算審議権との関係についてお尋ねしたい。MSA援助を受けようとする国は、みずからも防衛努力軍事的努力をすることが前提条件になつておることは言うまでもない。MSA援助法にもその趣旨が明記してある。又その性格の構成からして必然にそうなる。防衛力自体増強するためにはもちろんこれを支えるために必要なる軍需生産力、いわゆる防衛生産というようなことを含むところの防衛能力増強ということが必要になるわけでありますが、その防衛力及び防衛能力増強のためには一つでも金のかからないものはないから必然に早晩財政的裏付が必要になつて来るに違いない。而してMSA協定を結ぶならばそれは厳密な意味における条約であることは言うまでもない。従つて条約政府国会もこれを遵守することを必要とすることは又これも言うまでもない。これは憲法の明文を待たずして明らかなことであり、条約によつて防衛能力増強義務を負担する以上、防衛力及び防衛能力増強に関する予算的措置について、政府及び議会は、政府予算案を作成し、国会はその予算案審議する、政府及び議会条約上の拘束を受けることになると思うが、政府の所見はどうか。その点で当然予算そのものについての全体の責任外務大臣ではないと思いますけれども、条約を作成する、それから直ぐこういつた重要な問題と関係を持つて来る、この条約締結について責任を持つておられる外務大臣は、当然その辺のところはあらかじめよく検討したに違いない。この点についての外務大臣の御見解をお伺いしたい。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはたしか第四項、五項でございましたか、片方には政治的、経済的の安定とか或いは人口資源設備その他の条件考えてという字が入つて、おる。その次は今お話の合理的という字が入つておりまして、いずれも相当これはゆとりのある言葉でありますが、この防衛力増強については特にこの間の第一回の正式の会合におきまして、米国大使はこの防衛力増強速度態様は合衆国によつてするのではなくして、日本政府によつて決定せられなければならないということを我々は認識しております。こういうことを申しております。この日本政府というと行政府だけの場合と三権を含めた日本全体の政府という意味とありますが、通例こういうときに使つておるのは日本側という意味であります。つまり防衛力増強ということの約束を仮にするにしましても、これは協定をいよいよ結んでみないと、どういうかつこうに出て来るかは今直ちに申上げられない。日本の場合はいろいろ特殊な事情がありますから、併し仮に防衛力増強ということを言いましてもこれをいかにするかということは、日本行政府なり国会なりの決定による、こういうことであると私は確信しております。
  11. 杉原荒太

    杉原荒太君 その点は私あとでお尋ねしようと思つておることにも関連を持つて来るのでありますが、これは私はアメリカ側速度態様日本側決定するということは百も承知しております。併しそれは速度態様の問題であつて条約防衛力増強すべしという義務と又防衛能力増強するために必要な合理的の措置をとるべしという義務を負担する以上、もちろん外務大臣の先ほど言われた、それにはその国の政治的安定、経済的安定を考えなければいけない、それは当然である、むしろそれは常識だと思う。そこで私の聞きたいと思う点は、そういうその義務履行過程おいてとらるべきいろいろの附帯条件の問題がある。それから逆に裏のほうから質問しますれば、今度のこういつた協定を結ぶことによつて、一体予算措置について日本側は何らの拘束を受けないかどうか、その点一つお答え願いたい。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は受けないと思います。
  13. 杉原荒太

    杉原荒太君 今明確に受けないというふうに言われました、私はその点には言うところを異にしております。これが併し具体的にはその協定そのもの書き方の問題にもなつて来ますから、これ以上意見を述べることは避けておきます。併し私の感想としては、外務大臣条約上そういう義務を負つても、予算審議権は何ら拘束されないのだというのは余りにも私は実際の真相から外れておるような感想を持つておることを率直に申上げたい。  その次にお尋ねしたいと思いますことは、協定を結ぶことによつて日本防衛力増強の新たなる条約上の義務を負うことになる、それは明瞭である。もちろんこの義務内容を実現して行く過程においては段階的のものがありましよう。差当りは現在の保安隊ないし警備隊の或る程度の強化というような段階、而もそれにも人員の増加までには至らんというような段階もあり得るでありましよう。又その保安隊の任務にいたしましても、いわゆる間接侵略の排除ということに主点が向けられる段階もありましよう。併しそれらの段階という言葉は、いずれも防衛力増強義務内容を実現して行く過程における個々履行方法の問題であつて、その義務内容それ自体ということと混同してはいけない。たとえをとつて言えば、ということは大変恐縮でありますが、私の言わんとする趣旨はつきり頭の中にえがいて頂くために申すのでありますが、例えば金銭債務を負う場合に、その総額幾ら債務を負うかという問題と、その債務履行して行く過程において必要な個々給付行為の時期方法をどうするかという問題を混同してはならん。総額百万円の債務を負担することになるのに、最初十万円だけ支払えばいいということになつたから、あとの九十万円は将来のことだからと言つて、その将来の九十万円だけは債務内容を構成しないなどと言つてがん張る者があれば、横着者か低脳扱いにされるに違いない。今ここで政府がどうしても明確にしてもらわなければならないことは、この例をもつて言いますならば総額幾ら債務を負わんとしておるかという点に相当するのであります。その債務履行行為速度態様の問題ではない、そのところをはつきり区分をして答弁を願いたい。これは極めて大事なポイントであります。どういう内容義務を負うかということであつて、更にそれいかんによつて外の国と全然違う日本の場合はどしどし重大な問題が起つて来る。およそ防衛力増強義務を負担するその範囲について特別の除外規定を設けない以上、間接侵略に対する防衛力のみならず直接侵略に対する防衛力も含むことは理の当然である。これは我が憲法によつて陸海軍その他の戦力を含むことは到底規定していない。そういう点を明らかにしないでただMSA条件憲法に反するか反しないかと言つてもそれは一つも問題に答えたことにならない。この点は余り言いたくないのでありますが、最近恐らく上司の命かと思いますが外務省から出しておりますMSAに対するパンフレットの中に或いは参考になる点もいろいろありますが、MSA憲法論のごときは全く独断論である、法律論としては体をなしていない、これは率直に申上げる。そこで政府質問をいたしてはつきり答えてもらいたいことは、第一、MSA協定によつて日本防衛力増強義務内容の中には、直接侵略に対する防衛力増強する意思は含まれているか、含まれていないか、その点であります。  第二にはその防衛力の中には憲法に言う陸海空軍その他の戦力は除外されるかどうかという点であります。先ずこの点についてお伺いいたします。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 協定は実はこれから作るのでありますから、どういうふうになるかということはこちら側だけでは申上げられないし、又いろいろ話合経緯もありますから、こちら側でこうするのだということをここではつきり申上げることは差控えたいと思いますが、恐らく協定文面は、外の国の例を見ますと、直接侵略にも対抗するとかしないとか、そういう的確な文句協定の上では出て来ない、出て来ないのが普通だと思います。併しそれを日本政府でどう考えるかということは、これはいよいよ協定を作り上げる際にははつきり国会等にはする必要があると思います。もちろんするつもりでおります。  ただ今お話の一番重要な点は憲法第九条の規定との関連であります。これは今の例をとつて言われると百円借りるかどうかという点でありますが、この百円が日本の場合にはどこになるか、つまり憲法にいわゆる戦力を持つというところになるのか、憲法にいわゆる戦力を持たない限度においての最高額であるかという点はもちろん十分考慮しなければなりませんが、政府只今考えでは憲法にいわゆる禁止しております戦力を持つ約束はいたさないつもりであります。従つて戦力に至らない範囲内、つまり憲法規定範囲内での防衛力漸増ということを考えております。又そういうことをするつもりでおります。
  15. 杉原荒太

    杉原荒太君 この点は更に具体的の条約の成文を見た上で問題になると思いますが、併しすでにほかの問題と違つてこの問題を考え前提的な事例は非常にはつきりしておるものが多いのであります。アメリカ法律に書いておることはもちろんでありますけれども、アリソン大使言つておるMSA援助を受ける以上、日本はこういう義務を負わなければならないのだということを明確に言つておる。その中に特別の除外規定を設けない以上、私の今言つたようなことは当然含まれる。特に除外すれば、これは外務省でもよく研究しておられると思いますが、アメリカユーゴと結んでおる協定のような書き方をする。あのままでは私がさつき提起したような問題が当然起つて来る、そうしてこれは日本側ではこう思うのだということでは済まされない、向う側との完全な意思合致がなければならない。日本側はこう思うのだというだけで意思合致がなければ協定にならん、条約にならん、そういうことである。その点を日本側はこう思うという事柄は、もちろんそのことをちやんと明確にしなければならないことだと思う。政府は一方において憲法解釈論といたしまして、いわゆるその目的が自衛のためであつても、陸海空軍その他の戦力保持憲法上禁止されておるという見解をとつて来ておられる。そうして他方においてMSA協定によつて防衛力増強一般的義務を、条約約上の義務を負担する、こういうことになつた場合、その憲法に言う陸海空軍その他の戦力を除外するという特別の除外規定はつきりそこに出ない以上、明らかに戦力保持となり憲法に違反する結果となるわけであります。この憲法上の重大問題について、先ほどの説明でも当然触れておりますけれども、この点について更に重ねて外務大臣から明確にして頂きたい。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 協定はこれからまだ交渉することは今申上げた通りでありまして、どういう形になるかはまだ言明ができませんが、憲法に違反しない範囲防衛力漸増をやろうと思つております。その点についてはアメリカ側交渉過程において十分意思合致を見るように取計らうつもりであります。
  17. 杉原荒太

    杉原荒太君 大体私の今日質問したいと思いますことはこういう点でありますが、これは政府側でも十分御苦心のことだと思います。この条約文面に今のユーゴとの協定のようなああいう文句の使い方をする、その場合には、これは法理上の問題だから仮定の問題に当然なるが、ああいう書き方をした場合それ自体憲法違反になると思うか、ならないと思うか、その点一つ
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは一般ユーゴの場合もそうでありましよう、イギリスの場合その他もありますが、これらの国と日本とは憲法が違いますからそのままでは憲法違反になると思います。
  19. 杉原荒太

    杉原荒太君 一応私の質問は終ります。
  20. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の問題に関連して。今防衛力増強義務防衛能力増強義務というこういう義務が問題になりましたが、この場合に政府は今両方の義務防衛能力義務というものと防衛力義務という二つが違つたものだというふうにお考えになりますか、それとも同じことを言つておるに違いないというようにお考えになるか、その点先ず伺いたい。
  21. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは言葉の上だけを申しますと、防衛力というと一般的な表現になりますが、防衛能力といいますると、例えば安全保障条約にありますように、日本は防衛とは言つておりませんで自衛と言つておりますが、自衛の固有の権利、併しそれを有効に使う手段を持たない、この手段のほうが防衛能力になるであろうと思います。防衛能力言つては間違うかも知れませんが、現実に日本が持つておる力は防衛能力であります。日本が現実に包括的に持つておるのが防衛能力、しいて言えば権能、強いて言えばそういう区別があろうと思います。
  22. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつとお尋ねしますが、先日のアリソン大使のあいさつの中にこの防衛の問題を、もつぱら日本の本土の防衛と国内治安に寄与するということでこつちでは国内治安のための自衛力というふうに解釈しておりますが、向うでは明確に日本の本土の防衛と国内治安と二つに分けて考えているのですが、これはどういうふうに分けて御解釈になりますか。
  23. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の御質問の点はちよつとよくわかりませんが、大使館の返事のほうを言つておられるのですか。
  24. 羽生三七

    ○羽生三七君 その中に日本の本土の防衛と国内治安に寄与するためという二本建にして、日本でいう自衛とか防衛とかいう問題は一本で国内治安の問題と限定していつておりますが、それが二本建で言われているのはどういうわけですか。
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この間のあいさつですか。
  26. 羽生三七

    ○羽生三七君 あいさつです。
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはよくアメリカ側で使う言葉でありますが、何と申しますか、いわゆるホーム・デイフエンスとインターナル・セキユリテイといいますか、そういう文句であつて非常に強い法律的な区別はないように思います。
  28. 羽生三七

    ○羽生三七君 それで日本では勿論今の現行憲法範囲内において、しかも戦力に及ばざるものとして保安隊をもつて国内治安の維持をするということで来ているわけですが、向うではやはり国内治安の問題とは別箇に、日本の本土の防衛について直接侵略に対抗するものとしての防衛力をここにうたつておるような感じがするのですが、これは違いますか。
  29. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはいつも前に申しましたように他の意味からいうとおつしやるように両方の意味が入つていると思います。併しこの保安隊或いは警察予備隊ができてからよくホーム・デイフエンスというのを、国内の大規模なじよう乱や或いは外国の示唆による騒じようというような文句を使つておりますが、そういうものに対しての意味でホーム・デイフエンスというのを使つているときもあります。恐らくこの間ダレス長官が言いましたのはこのほうですが、それは私は確めておりませんが漠然と言つたのじやないかと思つております。
  30. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは保安庁長官にお尋ねすることになるかも知れませんが、先日の論議にもあり又いろいろ我我今日の場合を考えてみて、とにかく戦力に及ばざる範囲防衛力ということを、漸次日本自身の態様について作り上げて行くという立場を、政府が統一された見解をお持ちになつておるのですか。これは先日中田委員もおつしやつておつたのですけれども、一体これは戦力だという解釈は誰がそれをするのかよくわかりませんが、政府みずからがそういう解釈を決定されるまでは、幾らでもそういう政府の解釈は事実上は戦力であつても、併し言葉の上では戦力に至らざるものと言つて無限に拡張解釈できる権能と神通力を政府がお持ちになつておると思いますが、これはいかがですか。
  31. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはどうも私が答弁する資格はないのですが、ただ私の言えることは恐らく戦力というものについては、これは常識というか、或いは一般国民の認識といいますか、非常に漠然としたものであろうけれども、或る認識というか或る基準は普通考えられるものだと思います。ただ日本の場合に八千五百万の人口を擁し、そして非常に広い海岸線を持つてつて、その地域が非常に入り組んでおる現状におきまして、例えば十一万の保安隊があるとか、或いはこれが少しふえたとしましてもそれは戦力にはまだほど遠いもので、私からいえばそんなところまでは到底行つておらんということは申上げられると思います。かかるが故に日米安全保障条約というようなものを作つておるくらいであります。
  32. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと申上げますが、外務大臣は四時十五分までここにおられるということになつておりますから。
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 ごく簡単ですから。そこで日本の例えば今の政府、それから自由党以外の例えば改進党とかその他いろいろな政党がそんなことをいつまでも言つておるべきではない、速かに戦力なら戦力といつたらどうかと言つて、これをそれじや憲法改正しなくても何か解釈上戦力と同等のような解釈を下した場合にはそれは戦力になるのですか。つまり実体は今政府のいつておるようなことであつても、解釈を変えなければ実質上殆んど戦力にも至らないと、こういうような取扱が生まれるのですが、これは如何ですか。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも非常にあいまいなものといえばあいまいなものであつてお答えできにくいのでありますが、併し国民全体の良識というものは私は常にあるものと存じております。たとえ少数の者がそういう解釈をしたからといつてそれで中味が変つて来るというものじやない、これはおのずから帰すうはきまるものだと思います。
  35. 杉原荒太

    杉原荒太君 かねてからのいわゆる戦力の定義論も多少問題になつておるようでありますが、我々が真剣に考えてみなければならない一般の問題、単に言葉の先だけでどうという問題じやない。今度のアメリカがいわゆる軍事援助日本に送ることは何のためにしようとしておるのか、いろいろ抽象的な極めて言葉の上の争いのようなことを考えているのじやないことは明らかです。軍事援助の実施の責任当局たる国防次官が国会において権威ある証言として言つておることにおいても、日本があの長い列島を防衛するに必要な陸軍を作り上げることを自分たちは欲しているのだと言つている。これなどはただそういつているのだというような簡単にそれは考えるものじやない。そういう点をにらみ合せて、私は今ここでどうこうするというと、非常にあいまい模ことした言葉の上の極めて妙なことになつてしまう、こういう点一つ政府で真剣に御検討になつていることと思う。これを率直に国会お話になるほうがいいのだ、又そうすべきだ、このことを申上げて置きます。
  36. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 防衛力増強義務という場合に自国の防衛力増強義務と、自由世界の防衛力増強義務の問題と両方あるという、それを二つに分けて考えなければならんということをこの間外務大臣は言われたのですが、その自由世界の防衛力増強という問題は、将来集団安全保障態勢を想定して同盟国が武力攻撃を受けた場合には、これを援助できる防衛力を持たなければならんという意味と解釈すべきだと思いますけれども、外務大臣はその点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは通例各国との協定の第一条にある文句だと思いますが、それは例えばアメリカ日本に対して完成兵器その他のものを援助して、日本防衛力を増大するように努める、日本兵器その他を、若し余裕があつた場合ですが、ほかの国に援助してほかの国の防衛力増強に努める、こういうことだと思います。ですから兵隊を出すとか出さんとかいうのじやなくて、今のMSAのようなかつこうの援助のことを言つている、こう了解しております。
  38. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 併し自由世界の防衛力増強ということは、いつも言つているように、そしてこの間のアリソン大使がダレスの言葉を引用して言つているように自由世界の集団的保障のためにやるのだという考え方だろうと思う。そうだとすればやはり日本が自国のための防衛だけでなくして、自由世界の集団的な自衛権といいますかそういうもののためにも増強をするのだ、その義務を負うのだという意味になるのだと思うのですが、その点はどうですか。
  39. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまだ国連の理想とする集団安全保障措置というものは実は完成しておるものじやないのですが、その理想の方向にどの義務も向うのを適当と思い日本もそう考えております。但しその場合の考え方としては憲法規定もありますからそれに応援する限度はおのずからある。それとMSA援助に書いてあるほかの国の援助をするということは入つていない、MSA援助アメリカから受けた場合でもアメリカの軍隊を日本に置いてそれで日本防衛力を強くするということは実際出て来ない、又そういうことは実際行われない。又それと同時に日本もほかの国に援助を与える場合でも軍隊を出す、保安隊を出すとかいう、そういう問題じやなくして、武器だとか弾薬だとかはできれば援助する、こういうことであります。
  40. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点はどうもよくわかりかねますが、私はもつと違つた意味だと思うのですが、その点は他の機会に譲ります。
  41. 羽生三七

    ○羽生三七君 今話合を進めておる最中のようですが、その問題は別として今国会開会中にMSA中間報告をなさるお気持はございませんか。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今国会開会中はこういうふうに委員会等もありますから中間とか何とかいうことでなく時々刻々説明もし、お知らせもしようと思います。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると外務大臣関係部局のかたが時々刻々おやりになつておることが外務大臣のここに列席されておる答弁の中にしよつちう反映されていると了解されるのですが、どうも承わつていると事実はいろいろ進行しているが実際は国会開会中は極めて抽象的に答弁して進める、こういうふうに私どもは曲解じやないのですが、了解するのですが、そういう解釈をしているのですが、どうですか。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 事実まだ話合は始めていないのです。一両日中に第二回の会合を開こうと思つております。
  45. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは若し具体的に何らか今国会中に話合ができた場合には国会なり、或いはどこなりに進行した事態は或る程度明らかにされるということはあり得るのですね。
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 衆議院の外務委員会では何ら報告すべきことがあれば先ず一番に衆議院の外務委員会に報告しろということであります。私はそれを承知いたしました。従つて若し参議院の外務委員会で同様の御要求があれば喜んで御報告申上げます。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 若しそういう事態が進行した場合には当委員会でも中間的な報告を求められるよう一つ大臣お聞きおきを願いたいと思います。
  48. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 自国の防衛力増強義務を新たに負うということになつて、それは安保条約では義務を感じていなかつたのに今度の協定を結び援助を受けることによつて新らしく義務を負うことになるのだというお話だつたと思いますが、それはそういうふうに解しておいていいのですか。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その点について私は何遍か申しておりますがこれは仮定の議論であります。アリソン大使の言明についての意見、こういつて申上げたという記憶を持つております。又あなたもアリソン大使のこの間の十五日のステートメレトについての御質問だと思います。現実の協定がどういう形になるか、これは今後いろいろ話をしてみた上でのことでありますが、協定はこうなるということはまだ申上げられないと思います。ただ実際上こういうことになるであろうという予想の下にお話しているわけです。協定についての議論はまだ早いのであります。どういう形になるかまだわかつておりませんから。
  50. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 協定がどういう形になるかわからんとおつしやいますが、併し協定を結ぶ第一歩としてのこの間のアリソンのあいさつでは援助を与えるとすれば当然義務を負わなければならん、こういうことを明言しておる。それから援助を受けないとすれば問題はないのですが、受けられるとすればそれは当然義務として受けられることになるのではないか、その点はどうなんですか。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だからそれを実際に協定文を作らなければ、私は日本の場合はいろいろの点において、つまり憲法規定がよその国と違いますから、従つて協定も必ずしもよその国と同様ということには行かないだろうと思います。併しながらただ現によその国の協定がどれもこれも一様じやない、その国の特殊事情によつて異なつております。従つて日本の場合も違うことは当然あり得ると思います。だからと言つて協定の中でどういうふうに現わされるかということは、協定を作つた上でないと御審議願えないと思います。
  52. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとこの間のアリソンのあいさつというのはただ単にMSAの解釈、講義をしただけであつて日本に具体的に適用される場合にどうなるということを説明されたものじやなくて、日本協定を結ぶ場合には別なこともおのずから考えられるのだというふうにお考えになつておりますか。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやそうじやありません。アリソン大使の言つたことは援助を受けるときにはこういうような義務を受けることになるだろうということを言つております。併し交