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1953-07-13 第16回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十三日(月曜日)    午後二時開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君            加藤シヅエ君    委員            古池 信三君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君            杉原 荒太君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務大臣官房長 大江  晃君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君    特許庁長官   長村 貞一君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国際情勢等に関する調査の件  (MSAに関する件)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今から外務委員会を開会いたします。ちよつと速記をとめて下さい。    午後二時一分速記中止    ——————————    午後三時二十八分速記開始
  3. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。
  4. 杉原荒太

    杉原荒太君 個別自衛権集団自衛権平和条約に使つてあるこれらの言葉は、私が特に言うまでもなく従来の一般国際法に基くのとは少し違つた面がある。これは国連憲章によつて初めて明確に規定せられる面がある。殊に集団自衛権のごときはそうである。併し個別自衛権にしても、集団自衛権にしても、いずれも明らかなことはそうして又国連憲章自体はつきりとその発動条件等もきめてあるのでありまするが、これは外部からの武力攻撃があつた場合に発動することを予想しておるものである。個別自衛権の場合は言うまでもなく外部からの武力攻撃に対して、これをその国自身が排除する権利である。集団自衛権というのは言うまでもなくその武力攻撃の直接の対象には、日本の場合についてはなかつたけれども日本と密接な利害関係にある国が武力攻撃対象なつた、そういう場合にこれを援助する、そうしてその武力攻撃を排除するということが集団自衛権中心観念をなしておることは明瞭であります。いずれもが先ず第一には外敵に対する備え、外敵を排除するという権利であることは一点の疑いもない。つまり国内においてのことでなくて国際関係においてのことを規律するものである、これは異論のないところであろうと思う。国際関係において一国が他国に対する一つ権利で、国家国民に対する関係における権利のことじやないのです。それだからしていずれも外敵に対するつまり個別自衛権集団自衛権行使を一層有効ならしむるということは、言うまでもなく外敵に対する防衛力を強化することを意味するに違いない。従つて若し日本の場合飽くまでも保安隊ということで而もそれは軍隊でないというふうな建前をとるにいたしましても、こういうつまり目的を持つた援助を受けるということは、必然に保安隊性格というものがそこから影響されて来ると思う。国内治安維持と共に外敵に対する防衛ということがやはり一つの重要なこととして取上げられて来ると思う。そうして又そういうためにアメリカが今度援助しよう、こういうふうになつておるのだと私は思う。その点について外務大臣はどういうふうな見解を持つておられるか、お尋ねしたい。
  5. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もアメリカとしては早く日本援助をして日本がそういう状態になることを希望しておると思います。その証拠には安全保障条約にも只今申した通り自衛力の漸増ということを期待するというふうにあるわけでありまして、アメリカ側としては日本が早くそういうようになることを期待しでおると思います。但し現状におきましては先ほど申した通り日本は今おつしやつたような個有自衛権はあるけれども、この自衛権を有効に行使する手段を持たない。こういうことが安全保障条約の根底になつておるのでありまして、アメリカ側現状においてはそういうものを持たないということを認めてこれを承認しておるわけであります。  更に先ほどちよつと申しましたダレス長官証言だと言つて伝えられる中にも、日本には再軍備を禁止する憲法があるということも言及しておるようでありまして、こういう条件知つての上の援助であると私は信じております。従つてアメリカ希望はだんだん将来日本自衛力を漸増して安全保障などの必要がなくなつてアメリカ軍が早く撤退できるようにという希望は勿論持つておるに違いありませんけれども只今のところは保安庁法による現在の保安隊性格なり、警備隊の現在の性格なりをよく知つておりまして、これに対してとにかく援助をしよう、こういうことであろうと思います。そうして自衛権につきましては集団的若しくは個別的という言葉でおつしやるような意味に勿論とれまするが、併しこれには自発的ということがありますから、日本側で自発的にこれを行使しなければそれまでの話であります。自発的に行使するのは国内憲法上の制限とか、或いは勿論国民の感情とかいろいろのものを考慮する必要があります。そういう点が何も心配がなくなり何も問題がなくなれば別問題でありまして、将来の政策論としてはいろいろ議論もありましようけれども、現在のところは政府としては憲法の規定の下に、そうして現在の保安庁法という法律の下に援助を受けよう、こういうつもりでこれから話をいたす考えであります。
  6. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 先ほど申上げました通り外務大臣は衆議院の予算分科会に出られるときまでということで皆さん方質疑をお願いしたのでありますが、予算分科会のほうから外務大臣出席を要求して参りましてあちらで待つておるということであります。従いまして外務大臣はそちらの方においでにならなければならんと思います。つきましては、外務大臣に対する今の杉原委員質疑もまだ続けておやりになることと思いまするし、ほかの皆さんがたもたくさん質疑をお持ちになつておることと思います。この次の機会までお延し願いたいと思います。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 その場合にでき得る限り保安庁長官も同席されるようにお取計らい願いたいと思います。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 予算分科会が早く済めば又こちらに伺います。
  9. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは皆さんにお諮りいたしますが我々の方は如何いたしましようか。
  10. 杉原荒太

    杉原荒太君 希望を申上げますが、これからは余り細切れになりますと一つも趣旨が徹底しませんから、もう少しこつちのほうはこつちのほうとしてたつぷり時間をとつて頂きたいと思います。
  11. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御尤もであります。そのために事務局のほうでは尽しておるわけでありまするけれども、如何せん予算が今分科会にひつかかつておりますので、そちらの方に行かれることは非常に遺憾であると思います。併し勿論今のこういう意味で以て細切れにならないようにできるだけのことをするつもりでおります。本日は如何いたしましようか。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 資料のことですが、お願いしてある資料のリストを整理して頂いて、できておるものとできていないものとはつきりわかるように御配付願いたいと思います。
  13. 中田吉雄

    中田吉雄君 その資料一つ加えて頂きたいのは、アメリカ世界各国に封じ込め政策なり巻き返し政策の見地から持つておる各国別の基地の数、私もいろいろ手に入れておるのですが、どうもはつきりしないものですから、一つそれも是非お願いいたします。  それからちよつとお尋ねしますが、外電の伝うるところではもうすでに協定は実際殆んどできておるという情報が流れている。或いは吉田内閣常套手段としては、そうではないというかもしれぬが、予算通過を待つてあの質問書回答書のような迅速さを以て又いろいろ措置されるのではないかということを付度するのですが、そういうことはないでしようか。その点お伺いします。
  14. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私が外電並びに国内新聞内容を見ましたところでは、交渉が最近に始まるだろうという予測はたくさん見かけましたが、協定がすぐできるだろうというようなことは一度出ましたが否定されたのが多いのじやないかと思います。まあとにかく報道は別といたしまして、私どもの方ではアメリカ側から期日についての受諾があり次第会談を進めたいと思つておりますが、まだ会談の日付も言つて参りませんし、いわんや会談の先にこれからできるであろうところの協定ができておるはずもないわけであります。ただアメリカ側としても大分時間もたちますので、勿論交渉を始めてから出すであろう協定の案についてはアメリカで今練つておるであろうと考えておりますが、私どもは会いましてから会談を始めそれによつて当方の準備を進めたい。新聞のそういう報道を若し御覧になつたとすればそれは事実無根であります。
  15. 高良とみ

    高良とみ君 新聞の一部報ずるところによると、アメリカにおける三十何カ国かの軍隊指導者アメリカの企画に従つて訓錬を受けておるということでありますが、それらの国々がわかりましたら一つ資料としてお出し願いたいと思います。
  16. 杉原荒太

    杉原荒太君 政府委員にお尋ねしますが、最近日本週報臨時増刊外務省情報文化局監修として「MSAの解説と全文」というのが出ておりますが、これは一体外務省知つてつて外務省が責任をもつて出しておるものですか。    〔委員長退席理事佐多忠隆君着席〕
  17. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) たしかそれは監修となつていたような気がいたします。その週報からMSA材料がほしいというので、私の方の者が特に私の方で用意しました資料に一応目を通しまして、週報がどういう形で載せましたか内容はつきり見ておりませんが、大体我々の与えた資料によつたものだと思います。従つて情報局監修となつておりまして、情報局で文章とか配列について相談に与つておると思いますが、その程度であります。
  18. 杉原荒太

    杉原荒太君 これは私非常に大事だと思うのです。外務省情報局監修となつておりますが、参考になる部分は確かにありますが、意見に関するものは恐しく独断で、真実を誤る部分が非常に多いのです。こういう点は外務省では少し何とかしてもらわないと、普通の素人にとつて外務省意見部分は随分ひどい独断であります。これが妥当なんだというふうになれば非常に誤解を与えますが、本当資料に属する部分は非常にいいのですが、個個の意見に属するのは随分ひどいですよ。
  19. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) よくそれらにつきましては私ども研究してみましよう。ただ今杉原委員から言われました意見その他についてどの程度まで書いておるか、又どの程度我々の方で何と申しますかこちらの意見を述べておるのでありますか、私も急にはちよつとお答えしかねますので、よく見まして考えてみたいと思います。
  20. 高良とみ

    高良とみ君 このMSAの問題と共に、日本にも設置されるであろう顧問団規模というようなものについて何かお考えがおありでありますか。それから又その年限というのは、来年度にもMSA援助が来るとは私はアメリカ国会における証言はちよつと思われないのですが、併しそれは又形を変えてずつと何年かやられる可能性があるか、その点についてのお見通しを伺いたい。
  21. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 規模は被援助国援助を受ける程度によりまして各国とも違うのでありますが、現にまだ顧問団を持つていない所もあるわけであります。常識的に考えまして非常に数多くの人々が来て軍事顧問団を形成される必要はなかろうと思います。ただ日本援助を受けるということを決定しました際に、軍事顧問団の数がどのくらいになるか、これは日本訓練を仮に希望したとして、その訓錬が大規模に行われるか行われないかによつて数がきまつて来るだろうと思います。直接の援助若しくは調達については極く限られた人員で済むであろうと思います。それから相互防衛協定を結びまして仮に年限がありますとその年限によりますが、実際上年限が書いてない場合もございますので、援助を受けて実際の協定なり何なりについて規定したところで、もはやこれ以上援助がないということになれば顧問団は自然解消するというように考えます。その前に必要があれば会議の上顧問団を解消することができるだろうと思います。
  22. 高良とみ

    高良とみ君 その顧問団が仮に協定の中にあつたとすれば、それは日本における活動に関して日本ではそれについて又特別な法的措置を作るのですか。それともこれはアメリカ駐留軍の人として日本保安隊の訓錬に当るのでありますか、その法的な活動根拠はどういうことになりますか。
  23. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 日本MSA援助を受けまして顧問団が派遣せられるということになりますれば、相互安全保障協定相互防衛協定を結びまして、その協定の中に顧問団法的根拠を求めて来るわけであります。つまりMSAの中には顧問団を派遣する権限として五百六条が謳つてございます。その五百六条に従いまして軍事援助の場合ですと軍事顧問団というものが派遣されることになります。この協定の中のあの五百六条なり或いはその精神を受けるということから、日本顧問団を受けるという法的根拠ができて来ます。勿論軍事顧問団権限身分等につきましては各国で具体的にその内容協定しておる場合の方が多いようでございますので、日本が受けるということになれば当然そういつた了解事項なり或いは取極めなりが必要であろうと存じます。
  24. 中田吉雄

    中田吉雄君 この間アメリカ国会を通過しましたMSAの中に諜報費用があると思いましたが、これは幾らあらいでしよう。
  25. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私どもの手許に持つております中に、諜報という項目はないような気がいたしますのですが。
  26. 中田吉雄

    中田吉雄君 類似の何かダレス氏の兄弟ですか、何かがやつております心理何とかいうのがありますね。ああいうMSA援助を受諾してアメリカ安全保障でああいう巻き返し政策に協力することが必要だといういろいろな受益国、これを受ける国に対するそういう心理作戦費用があるように聞いておるのですが、一億か二億ドルかということを聞いておるのですが、それは御存じありませんか。
  27. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私ども存じておりませんが、ただちよつと伺いましたので気が付きますのは、恐らくそういう費目を仮に計上するとすれば、例えばダレス兄弟がやつておりますいわゆるGIAというのは大統領直属機関でありますので、そこに然るべき経費を持つて行くことが当然で、MSAに持つて来るというのはちよつと筋が通らないというような気がするのであります。少くとも私どもが調べました関係では本年アメリカの議会に出ております予算の中にそういう費目は見当らなかつたと思いますが、いずれもう少しよく調べまして、若しございましたら後で補足的に御報告さして頂きます。
  28. 中田吉雄

    中田吉雄君 そのMSA援助を受けますと、そういう心理作戦各国に対する一種の内政干渉、いろいろ共産主義脅威を誇大に宣伝してやる、そうして再軍側を促進するというような政策がとられて、これは新聞或いはラジオその他の報道部面にも非常に深い関係があるし、MSA援助とからんで各国にもその活動について国民の非常な批判があるということを聞いたわけですが、そういうことについては何の懸念もないわけですか。
  29. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) MSA自体からそういう懸念を私どもは持つておりません。ただ、MSAを受けることによつて諸般アメリカとの関係も緊密になりましようと考えますから、そういう点で、仮に日本側がそういう機関活動日本において許す、又それについて非常にアメリカが積極的に動いて行くということになれば、理論上はそういうことも可能なことだと思います。ただMSAを今私どもが見ております関係では、そういうものの活動MSAで受けて行くことにはなりませんし、これから手軽にはそういう関係は出て来ないと思います。
  30. 杉原荒太

    杉原荒太君 今度のMSA対外援助費の総額が大体両院で五十一億ドルぐらいにたしかきまつたようだが、あれの支出権限ですね、本当のアプロプリエーシヨンの方は又別に歳出委員会できめる、そういう性質のものですね。
  31. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私どももあれはオーソリゼーシヨン、つまり承認を与えるというだけであつて、今後あれについて実際上の運用は委員会で論議されることもございましようし、或いは一部は安全保障長官に許されておることもあるようであります。従つて一応の全体の額、或いは中に分けております項目予算支出権限を与えたというふうに考えております。
  32. 高良とみ

    高良とみ君 軍事顧問団軍事及び作戦等の権力を持つておる人だと思うのですが、そういう軍事顧問団を持つということは、日本国民でなくても、これは憲法との関係はどういうふうに考えておられるのですか。
  33. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) これは私の考えを申上げますが、こういうふうな条文の方は下田局長もお出でになりますので、何か私の御説明で足りないところがございましたら下田局長からも補足的に御説明を頂きたいと思つておりますが、私どもは、このMSAによりまして来ます軍事顧問団権限というものは、直接日本に対しての部面よりは、MSA援助を円滑ならしめるために現地に派遣されたアメリカ機関であることは勿論であります。従つて、この軍事顧問団に対しまして日本が認めます権限並びに身分というものは、両者の協定においてはつきり明白に謳われたところによるわけであります。ほかの国の例を見ますると、要するに、たとえば軍事援助につきましての計画を援助を受ける国の政府人たちと打合せをする。又日本におきましての場合を考えてみますと、日本における米軍調達関係について参与する。又若し日本がこのMSAによつて援助を受けるということになりますと、日本訓練の実施に当つてアメリカに協力を依頼する、こういう関係になります。その関係から申します、と実際上やはり日本側協定によりまして承諾した範囲の権限内においての仕事で、限られた仕事でございます。という関係から私はこれが直接日本にとりまして憲法の違反になるとかということではなくして、日本が依頼した訓練に対して向うも協力するということを条約上引受けたことになりますし、又その協定を結ぶことが国内法律その他と違反しないならば、この協定によつて日本がこれに訓練を願い、軍事顧問団日本に対して訓練を与えるということには憲法上の問題は生じないかと存じます。
  34. 高良とみ

    高良とみ君 条約局長にも伺いたいのですが、このMSAに関して私ども深い疑いを持つておりますることは、名前日本保安隊と言い、警備際と言い、この名前自身日本法律保安庁法によつてあるものでありまして、これに対してはアメリカ側としては何も痛痒を感じない、わけであります。併しそれが武器を持ち又ホーム・デイフエンスであろうと、事実上に戦闘的な行動をし得るものをアメリカ側から見たときに、これは軍事援助であり、又軍事訓練であり、軍事指導であるという場合に、これが憲法上の問題になりはしないか。両方で違うことを言つていながらやるということに対して、アメリカ側で言う軍事援助、又軍事援助法によるところの実際の財政的及び人的な援助というものに対して、こちらは保安隊であるというふうなことを言つておるところに非常に国民をして迷わしめるところがあると思うのですが、今後もその形でアメリカの言うところと日本の言うところが違うことを言つておりながら、事実はそのまま進んで行かれるつもりですか、条約局長はどういうふうに考えておられるか伺いたい。
  35. 下田武三

    政府委員下田武三君) アメリカの意図は、日本に積極的な軍事義務を負わしてこれを有力な同盟国として提携しようというような進んだところには到底行つていないのでありまして、今日自由諸国の間に一国でも穴があつては困る、何となれば、或る一国がずらずらと外国の侵略に取られてしまうような国であつたならば、それはその国のみならず全自由主義諸国脅威を来たす。従つて、その穴を何とかして早く埋めたいというのがアメリカの狙いだろうと思うのであります。そこで、差当り保安隊なり警備隊なりが国内の平和と秩序を維持するのに適当な装備なり武器なりを持ちたいというところが、我が国としての当面の目標であろうと思うのであります。従いまして、日本憲法によつて規定されておりますような交戦権行使であるとか、或いは近代戦遂行の能力のある軍隊というようなものを直ちに建設しようという問題ではないわけであります。従いまして、現在のところは日本側のその建前アメリカ側にもよくわかつておりますので、向うで或ることを考え日本では実は別のことを考えておるというような食い違いはないと思います。将来の問題といたしましては、アメリカ保安条約の前文に明白に書いてありますように、日本が自分で直接防衛をも含んだ自衛力を持ち、これが漸増することを期待しておるわけでありまして、将来の問題は別でございますが現実の問題としては御指摘のような食い違いはないと思います。
  36. 高良とみ

    高良とみ君 念のために伺つておきますが、その場合に、仮想敵国というようなものを想定の中に入れて、このホーム・デイフエンスということを常に考え訓練をして行くという方針でありますかどうですか。これは条約局長に伺うのは無理かも知れませんが、土屋局長MSAを受ける場合にどういうふうに考えられるか。どの程度までに考えておられるか。
  37. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) そこらの点につきましては、実は私よりは大臣なり或いは保安庁長官なりにお聞きを頂くのがいいじやないかと思いますが、私どもが問題を少しレベルを下げましてMSAに関連して軍事援助を受けるというような場合に、どこか仮装敵国を仮定しておるかという質問を受けたと考えましてお答えを申上げますと、日本は現在国内治安その他につきましても外部からの侵略その他によるという点がかなり心配されておるわけであります。従つて、そういう点からは以ずしも全然どこにもそういう心配がないのに、仮定して、国内治安が乱れるだろうという想定の下に訓練をするということは先ずございません。従つてその関係から申しますと、日本国内治安を乱す外部からの手が延びるということはどこの国からもなかろうと思いますし、そういう観点から申しますと、別段特定の仮想敵国がなく外部からの示唆があつて国内治安が乱れた場合にどうするかという問題を考えております。従つて差当りどこの国をという仮定を設けて訓練をするような考えはございません。
  38. 高良とみ

    高良とみ君 域外買付等について、それらの国々がどれだけ日本MSA援助による武器等を買うだろうということについての大体の調査見通しというようなものを持つておられて、そういうものも材料に入つて交渉でありましようか。
  39. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) ほかの被援助国に対しまして日本買付けるという意味域外買付ということになりますと、実はこのMSA協定なり交渉なりをアメリカとする場合において直接の問題でないことは御承知の通りであります。又私どももこの協定を結びそれからアメリカからの援助を受けるという場合を考えてみますと、その際日本経済に対して全面的に寄与するという点から考えますと、単にMSA日本に対する援助ということだけ考えたのではどうも経済の全貌をつかむことはできなくなりますし、その影響も考えられない。従つてアメリカMSA援助というものを単に日本だけでなくて自由諸国家の一環として考えるということは当然でありますから、その枠内において然らば日本においては、域外買付として他の被援助国に対して援助するもので、日本から買上げるものはどのくらいあるかという点を聞いて、初めて日本経済に対するプラスなり何なりという点が算定ができるだろうと思います。従つて交渉の中では直接の関係はないということになりますが、間接に重大な関係がありますので、他国に対する援助日本買付をするいわゆる域外買付につきましても、当方では先方の意向を十分に確かめてみたいと思つております。  そこでどのくらいの予測になるかということになりますと、これはまあ朝鮮事変というものもございましたし、特殊な事態に置かれましたし、又日本のこういう意味での産業というものもまだ完全なる発達或いは回復をして来なかつた今までの過去の例をとりまして、将来ともにこれが伸びる或いはこれが短かくなるというふうに考えることはむずかしく見当はつきませんが、例えばフイリピンが弾薬を、MSA援助をフイリピンが受けたもので昨年度日本から買付けた例もございますし、朝鮮その他にも多少そういう例も出て来ると思いますので、今後この問題につきましては交渉に当りまして十分、一年か二年先を交渉いたしまして、日本経済に対する影響の点を十分に考えて行きたいと思つておりますが、数字的には後刻若しわかりましたらお知らせいたしますが、昨年度どうかという点はちよつと今持つておりません。
  40. 中田吉雄

    中田吉雄君 どうも我々の受けます印象では、予備的な折衝、そういう作業はかなり進んでおるという印象を受けるのですが、それはもう全然ないのですか、その点を。
  41. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) このMSAの問題につきましては、大分国会その他でその点をよく御質問になりましたのですが、少くとも私が事務当局として良心的に申上げられますことは、大臣が言つておられますように交渉と言われるような話合はアメリカ側と現在の段階において一回もしたことはございません。ただ我々がMSAというのは実は今まで他国のものと思つていたものから、今度日本の問題として五月以来、来ておりますので、その間いろいろ字句や或いは条文の解釈についてわからないことがあつたわけであります。そういう点につきましては、事務的レベルにおいて一体この見返資金とはどういう意味か、或いは軍事顧問団という性格はこれだけでははつきりしないが、何か材料はないかということを事務当局としてアメリカに聞いたことはあります。これに対して材料をくれた場合もありますし、そういうものは交渉が始まつてからでなければわからないだろうという返事を言われたこともあります。そういう段階にございますので、全然交渉をいたしておりませんけれども従つておつしやるように内々向うのはらも知つているというような実際のいきさつはございません。ただ私どもがこれから先交渉して行くのでありますから、向うの都合もありましようしこちらの都合もございますので、漫然と待つておるわけに参りませんので、その意味では日本側としてもそろそろ準備を進めなければいけないだろうと考えております。又先ほどお話がございましたように、アメリカ側交渉を始めようとするならば向うの腹案なり向う考え方を当然考えて行かなければならんと思います。そういう点で交渉が始まつて来ますと向う考え方もわかつて来ましようし、こちらの考え方も出さなければならないと考えております。
  42. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと正式な二国間の交渉は別にして、例えばアメリカから協定の案文のようなものを示しましてそういうものの検討に入つて、そういうものを通じていろいろの御不審な点を質されておるというようなことはまだないわけですか。
  43. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) まだございません。これは御承知の通りアメリカの各被援助国との協定はかなりたくさん出ておるわけなんです。それから我々もアメリカがどういうことを意図しておるかということを一応勉強しておるというだけで、アメリカ側日本に対する期待と日本に対する考え方というものは今日まで何ら通告を受けておりません。
  44. 中田吉雄

    中田吉雄君 アメリカの上院で対外援助のこの予算の討論において、日本のことについてダークセンが討論しております。それをお読みになつたでしようか。若しお読みになつたとすれば、外務大臣の下の最高幕僚として協定を結ぼうとする土屋下田御両氏はどういうようなお心がまえを持つて臨まれるか伺いたいのです。
  45. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私も新聞紙で見ております。ただこれはやはり御記憶頂きたいと思いますのは、アメリカの議会では現在このMSA予算は通すということに主眼をおいて討議を進めておるということは御想像にかたくないと思います。そういう関係上、仮に日本の問題になりましても一応日本側も受けるだろうという想定の下にあの議論が展開され、又それに関連してアメリカ側日本に対して考えを持つておる人があればその機会に述べられるということは考えられるわけであります。そういう意味から私どもも、直接日本に当てられたアメリカの為政者の意見ではございませんし、議会における承認等もその時のアメリカの都合もあつたろうというふうに了解しますので、あすこにおける言動というものをそのまま私どもは間違いないというふうにも考えていないわけであります。ここらは今後交渉に当りましてアメリカ側がどういうことを言い出すか、どういう条件を付けるかという点については我々も心配するのでありますが、併し交渉をいたしまして仮に日本側で受入れられないような、或いは受入れるべからざるような考え方なり或いはアメリカの要求がありとすれば、MSAにつきましてはそれを受けないということから本質的に考えなければならないことになることは勿論であります。そういう意味で私どもは仮にああいう言動がありましても、これは交渉の段階で明らかにし得ることで、それまではああいうのを取上げて一々こう言つたからといつてこれによつてMSAをどうする、交渉をどうするということは今の段階では考えておりません。
  46. 中田吉雄

    中田吉雄君 私はダークセンの討論を見まして、是非とも協定の取極めに直接当られる最高の事務組織の立場におられる人に希望を申上げたいと思うのです。あの中においてダークセンは、対日講和条約日本は履行することができん、それほど過酷なものであるということを言つておる。共和党のダークセンがはつきり言つておる。又その点が非常に私は重要だと思う。そのことは吉田総理にもよく言つて聞かせたということも言つておる。もう一つは、土地が少くて人口が非常に多い日本ではもう一尺の土地も大切なんだから、こんなにたくさんの空軍基地を日本に持つことは問題だというようなことをまああの中に言つておるわけであります。この和解と信頼の非常に寛大な講和と言われた、いずれ御両氏も重要な立場であの両条約なり行政協定をアシストされたと思うのですが、外国人の、当のアメリカ人の国会を代表して来たダークセン自身が、この過酷な条約日本が守ることはできんと思うということを言つて、これが日本の数紙の新聞にも報告されておるわけであります。まあ大臣でない御両氏にこういうことを申上げては大変恐縮ですが、一つその点は十分お考えつて、私は大臣にとくとこの点では意見を伺いたいと思うわけでありますが、例えば私の持つています報道では、オーストラリアのルツソーというような人は、対日講和条約は平和のための条約でなしに、戦争準備のための条約であると言つております。更にオーストラリアの国立大学のフイツケノルドというプロフエツサーは、この条約によつて、そうして又数年間の対日占領政策を見て、日本は誠にアメリカの言うことをよく聞く模範的な囚人である、恐らく日本は来たるべき対ソ共産主義の戦争に重要な基地を提供するであろうというようなことを言い、そうして又イギリスのベヴアンなんかは、今イギリス外交は殆んどベヴアニズムで塗りつぶされておるというほど、大きな力を持つておるベヴアンも、この条約は来たるべき原子作戦に備えるためのそういう準備のために、イギリスやその他の与国の意向を無視して結んだ条約である、こういうようなことを言つておるわけであります。政治家でない御両氏にこういうことを申上げては大変恐縮ですが、一つこういうこともお考え願いながら、一つ薄氷をふむような思いで是非私は条約の取極めに当つて頂きたいと思うわけであります。そんなにいい条約なら、岡崎外務大臣が落選しそうで選挙違反を起したりして、そうして最高の選挙の責任者は逃亡しておる、而もマーフイーがこの捜査は手心を加えてくれということを最高検に申出たというようなことはあり得るはずがないのです。一つこの点は再三くどいようですが、日本の運命に関することですし、一つ後世歴史家の批判を受けないように、一つ十分この点をお考え願いたいと思うわけであります。これは大変両局長さんには申訳ない言葉ですが、実際いい条約でなしに、いい行政協定でなかつたことから、吉田内閣は今日の窮地に入つておる。もう内閣の更迭も早晩でしようし、そういうこともよくお考えつて一つ余り、リツペントロツプ外相なんかにだまされてナチス外交に追随したような轍はふまないようにくれぐれも希望いたしておきます。これは大臣がおいでになつたときに特にお願いしますが、大変失礼ですが一つその点を希望しておきます。
  47. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 次、ございませんか。
  48. 杉原荒太

    杉原荒太君 土屋局長に聞いておきたいのでありますが、アメリカ国会ではこの問題を非常に具体的に審議しておつて日本に与えられる装備の種類までもよく検討した上で報告などを作つておりますね、そこまで具体的に検討しております。私は今ここであなた方に無理なことをお尋ねするわけじやないが、今国会に今の段階でそういうことをここで仮に知つておられてもここで是非説明せよということを要求しないけれども、今その交渉の局に当ろうとする人でも、そういう点について具体的な、日本に対してどういう種類の装備を今計画しておるかということが、何らまだわかつていないのですか。私は内容を言えというわけじやないのです。
  49. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私の関する関係では全然知つておりません。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど中田委員からお話があつたし、いずれ外務大臣が出て来られれば、そのとき私たちも若干自分の意見を、質問ということでなく意見を述べたいこともあるのですが、大体ちよつと理窟になるのですけれども、いろいろ自衛論なんか、或いは戦力論が論議される場合に、私たちの考えておる基本的な立場を了解しておつて頂かんと、その前提条件が非常に食い違つておるような気がする。それは私たちは外国から侵略があつてもいいのだ、自分の国はどうなつてもいいのだ、そういうことを言つておるのじやない。そういうことは恐らく日本人は誰も考えておる人はないと思いますが、ただそういう場合に戦力にしろ、自衛の問題にしろ恐らく時間的な制約というものがあると思います。私たちは、現在の世界の客観的な諸条件の下において、今日本における論議されておるような軍備というものが決して日本の安全に役立つとは考えない、今の時間的制約の下において。それはいろいろ対外関係が必ず起つて来ます。そこで若干の軍隊を持つことによつてつて日本が敵を求めるようなことでなく、而も相手と友好関係を保ちながら、国内における而も万全な国民の生活の安定を期してこの期間を乗切つてつたことの方が、若干の武力を持つよりも比較した場合において、ウエイトにおいてむしろ安全の度合が強い、そういう前提条件になつておる。一面、何んでもノー・ズロースでどうなつてもいいのだという前提条件で、自衛のことも自国の安全のことも何も考えないのだ、そういう立場で我々がMSAを批判するとか或いは戦力論議をするということでなく、飽くまでも比較とウエイトの問題です。私たちは飽くまでも自分たちの考えて来たことが、むしろ当面暫らくの時間的制約においては、よりよく日本の安全に役立つという、こういう前提条件で議論しておるのですが、ややもすると、あなたがたを言うわけじやないが、政府の言うところは、自分の国はどうなつてもいいというなら別ですが、と言いますが、それは全く前提条件が違う。このことは今後我々が質疑を展開する過程に、そういう前提条件の上に立つて議論しておるということをお含み願いたいと思います。これは希望でありますから……。
  51. 中田吉雄

    中田吉雄君 今度一つ必ず岡崎さんに、さつきのように保安庁長官がおらんとそちらは逃げてしまいますから、一つ大臣出席の上で本格的にこの問題ができるように一つ御手配を願います。
  52. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 今の御希望には副えるように一つ手配して頂くように、委員長にも申継ぎしておきます。別にございませんか……。今日はこの程度で散会いたします。    午後四時二十一分散会