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1953-07-07 第16回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月七日(火曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            佐多 忠隆君            加藤シヅエ君    委員            草葉 隆圓君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    外務省参事官    (外務大臣官房    審議室付)   島  重信君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君    食糧庁長官   前谷 重夫君   説明員    運輸省航空局国    際課長     奈良橋一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○連合委員会開会の件 ○航空業務に関する日本国とオランダ  王国との間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○航空業務に関する日本国とスウエー  デンとの間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○航空業務に関する日本国とノールウ  エーとの間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○航空業務に関する日本国とデンマー  クとの間の協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○航空業務に関する日本国とタイとの  間の協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○国際小麦協定を修正更新する協定の  受諾について承認を求めるの件(内  閣送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (MSAに関する件)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では只今より外務委員会を開きます。  最初に理事辞任及び補欠互選議題といたします。曾祢益君より理事辞任の申出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。  次に理事補欠互選の件でありますが、互選の手続としては、前例により、委員長において指名することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないようでありまするので、私より加藤シヅエ君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に連合委員会に関する件であります。国際小麦協定を修正更新する協定受諾について承認を求めるの件に関し、農林委員会では、七月三日の会合において、当外務委員会連合委員会を開くことを決定いたしました。これを開くことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは連合委員会を開くことに決定いたしました。この連合委員会は明日開催いたしたいと存じております。この件につきましては、又後刻詳しく御説明申上げたいと思います。
  7. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に航空協定五件を一括して議題といたしまするが、実はこの航空協定は、すでに御承知通りに、七月十四日に関係国航空機に対する日本乗入れの許可の期限が到来するのでありまして、従つて十四日前にこれに対して承認を与えなければならんという、そういう日切れの問題であります。  それから国際小麦協定は、これ又七月の十五日までに、協定受諾の場合はでありますが、七月十五日までに協定受諾の通告を必要とするわけであります。つきましては、明日、小麦協定に関しまする連合委員会を開きまして、それから小麦協定のほうは九日に衆議院が通過する予定なつておりまするので、十日に外務委員会を開いて、そうして十三日の本会議にかけるという段取りにしたいのであります。そうすると十五日の日切れまでに間に合うことになります。片方、航空協定のほうは、明後日の外務委員会、九日であります。九日の外務委員会において、つまり本日と九日の委員会において採決をするということにいたしまして、十日は金曜日でありますが、十日の本会議にこれをかけたいと思います。そうでないと、その次の本会議の日は月曜日の十三日になりますので、すでに遅くなつてしまいます。十日の本会議にかけなければならんという、そういう日取りでございます。これは昨日午後理事会を開きまして、そうして話合いをしました結果、只今申上げましたようなスケジュールを組むことに理事会では同意が成立つたわけでありますので、委員会におきましても御異存がなければこの日取りによつて進んで行きたいと存じております。  では航空協定五件を一括して議題といたします。御質疑のあるかたは順次御発言をお願いいたします。
  8. 高良とみ

    高良とみ君 国際航空協定を実施するということになりますると、日本空港設備、或いは本屋等がこのような状態では、とても国際的に各国から来る飛行機を受入れするのには不十分ではないかと考えられますが、そういうことに関する国際協定から生ずる要請と、それに対する日本側運輸省か建設省が対応する予算等はどういうふうになつておりますか。
  9. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 只今日本国際空港として持つておりますのは、御承知通り羽田だけでございます。羽田施設は、国際標準から見ますると、多少低い標準に当つておりまするので、これを是非一番上のクラスまで持つて行きたいということを考えて計画いたしております。これは但し航空協定から直接要請されるものではございませんで、平和条約規定いたしております国際民関航空に関する条約規定日本が遵守する、その条約規定を遵守するということから要請されることと思います。この羽田空港整備拡充に要する費用といたしましては、毎年予算に計上いたしまして、国会の御審議を願つておるわけでありますが、何分まだ十分な財源がございませんので、只今までのところ思うように取運んでおりません。併し計画といたしましてはAクラスまで持つて行きたい、こういうふうに思つております。
  10. 高良とみ

    高良とみ君 それは国内問題ですから、いずれ伺うことにしまして、今のお話のあつた民間航空機関であることは了承するのでありますが、それの誘導権等在日米軍に所属するのでありますか。即ち軍がその飛行場を、空港を支配し、そうしてその中を民間航空機関が使わせてもらうということになるのでありますか。如何でありましようか。同時に、日本在日米軍との関係というのでありますが、「在日米軍に委任する。」と最いてありますが、これはどういうことですか。
  11. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 只今手許にお廻しいたしました「東京国際空港共同使用に関する日本国在日米軍どの間の取極」、これにあるのでありますが、これでは、要するに、日本側に一旦返還になりました東京国際空港を、駐留軍にも使用させるという意味で、この協定ができたわけであります。
  12. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、それは使用せしめるというのでありますと、民間航空機間がこれの或る一部分を使うというのでありますか。それとも、これに出ているところでは、燈火管制用の塔とか、或いは地上誘導進入方式等は全部米軍に委任すると書いてありますから、これは軍の空港であるのか、或るいは民間機関使用する民間空港であるか、どちらでありましようか。こういう点で、このほかはただ乗るところの入口がある、或いは小さな売店があるという程度のものと了承していいのか。これは給油する組織があり、入ることができるということでありましても、地上誘導進入方式というものも現にありますならば、これは燈火をつけて外国民間機を誘導する場合にも、或いは交通管制等も全部軍に入ると、殆んどこれは在日米軍が実権を持つている空港と了承してよろしいのでございますか。
  13. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 羽田空港日本側に返還されたのでありますが、非に残念なことには、ここに書いてございます航空交通管制その他の具体的な事項につきましては、日本が終戦後数年間、航空に関しましてはブランクの時代を経ましたので、技術的に非常に立ち遅れまして、これを直ちに我がほうで実施するというわけには行かない状態でございまして、従つて只今あらゆる方法を以ちまして、できるだけ早い機会に、こういう技術的なものも日本人自身の手でやるように目下訓練をいたしております。この訓練が完了いたしまして、日本側でも技術的に十分これらの事項をなし得るというときになりましたならば、日本側にそれを引渡すということに約束ができております。従つて、これはただ便宜的に暫くアメリカ側にやつてもらつておるということでございまして、空港そのもの管理権及びその運営ということは、全部日本側の手にあると申していいと思います。
  14. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、この日本国在日米軍との間の取極の範囲のほかは、軍用のたのに使用を軍が留保している場所及びその他の運営に関しては、一時委託しておるとここに書いておりますような委託、委任しておるというように今了解していいかどうかと思うのでございますが、そういたしますと、今、日航があそこに乗り入れておるようでありますが、将来は、日航その他日本民間航空がもつと拡充をし、又技術が発達して参りました場合には、あそこは日本運輸省航空局が全部あそこに出張して支配するというように了承してよろしいのでございますか。それとも、それは、民間航空会社使用することになるのですか。そのどちらですか。
  15. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 東京国際空港は、国が設置した空港ということになつておりまして、これは運輸省管理いたすことになつております。会社はその中の建物なり土地を借りまして、使用いたしまして、運航を行なつており、経営を行なつておる。こういうことになるわけでございます。
  16. 高良とみ

    高良とみ君 そういたしますと、将来あそこに第一級の空港ビルデイング等を建てて、これが国際空港になりまするならば、やはり国がその費用を出し、その管理をするという方針と了承するんでありますが、この前に、日本国内航空事業を援助するために、十億円の予算をとつて、これを支出するという法がございましたんですね。あれとはどういう関係になるか。あれはあれで、民間航空であるから、運輸省航空局は又別途の予算をとつて空港を装備するという予定でいらつしやいますか。
  17. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 航空事業運営をやります場合に、会社自身が非常に負担となるものといたしまして、地上のいろいろな運航施設ということがございます。これは御承知通り各国とも、地上施設というものは全部国家が設置し運営いたしておりまして、会社はそれを借りてそれを利用して運営するというがの、只今のところ世界現状でございます。日本につきましても、地上施設は全部政府責任を持つてやる。これは殊に人命の安全ということに特にかかわりますので、政府がやる。あと飛行機を購入するとか、或いは待合室を作るとか、そういうものは会社側がやる。只今お話の十億円というのは、そういう会社自体がやるべき飛行機を購入するとか、その他、会社運営のために必要な費用という工合に考えております。
  18. 高良とみ

    高良とみ君 あとの点は又伺うことにしまして、空港の秘密及び安全保持ということは、非常に重きをおかれるであろうと思いますが、米軍に委任してない範囲一般治安について、しばしばあそこに国警或い保安隊の一部と思われるような、相当大規模な警側を施されることがあるわけなんですが、それは、警視庁考え、或いは神奈川県庁のお考えでやるのか、或いは運輸省航空局考えでやられるのか、どちらの場合に行われているのでありましようか。
  19. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 羽田飛行場の中に、保安隊とか、その他の警察が入つております。入るということについては、私は存じておりませんが、運輸省といたしましては、あそこに守衛を置きまして、専ら飛行場内の、例えば自由に出入りできないところに人が入らないようにするとか、その程度警備をいたしております。そのほか警察官が入るということにつきましては、運輸省のほうは別段関係いたしておりません。
  20. 高良とみ

    高良とみ君 それならば、今までの例で、私の、これは極めて個人的な印象でありますが、運輸省航空局があそこに顔を出しているというような形が非常に弱いです。ですから、あそこの空港の……今のところ羽田でありますが、羽田の、だんだんこれから岩国にも博多にも仙台にも北海道にもできるでしようが、そういうところの実際のやり方について、私どもこれは国際空港なつて行くのに対して、実際に申しまして、随分程度が低いのです。まるで話になりないくらいに、今の航空時代にはないくらいに低いと思う。今お答えになりました、警察隊が入つていることを御存じないということはないと思うのでありますが、ときに特定な場合には、数百名、警察隊放列を布いて並んでいることがある。それからまあ入口特定人たちは入れない。こういうことは何か治安上の問題もあるでありましようが、そういう運営についてどこが責任を持つておられるのですか。外務省などは御承知なんでありましようか。それとも運輸省航空局が全部御承知なんでありましようか。現に私どもも幾たびか警官隊放列を布いている、極めて劣等国並みな光景をしばしば拝見いたしているのでありますが、それから又そうでない方面から言つても、まあエチケツトの上でも誠に望ましくないような空港状態をしばしば拝見するのですが、まあいわば混沌たる状態でありますが、あれは今後国際空港になりました際には、もつとすつきりした形であるべきだと思うのですが、どこが責任を持つておられるのですか。ちよつと承わつておきます。
  21. 下田武三

    政府委員下田武三君) 私の所管事項ではございませんが、私ども了解しますところでは、航空施設といえども一般泊安の見地から航空場自体警備任ずる運輸省の手に負えない場合があると思います。これは或る特定のかたが着陸されるような場合に、或いはデモが来るとかいうようなことも現実にあるわけでありまするから、これは国警なり或いは地方警察責任において、航空施設といえども、やはり国警範囲外ではないのでありますから、これはあたかも、労働省デモが参りますれば、労働省の中の秩序の維持は、第一次には労働省守衛責任でありますが、第一次の手に負えない場合には、国家警察なり地方警察なりの援助の手を求める。それと全く同じ関係航空施設についてもあり得るであろうと了解しております。
  22. 高良とみ

    高良とみ君 下田局長の御了解の点は、そうであるかと思うのでありますが、併し実際におきまして、例えば我々が実際の例としまして、中国にかの同胞引揚のために参りまして帰つて参りましたときは、何もあやしきものが入つて来るわけじやないですけれども、それは出迎え陣が多かつたということもあるかも知れませんけれども、まさに放列を布きまして、警官警官の間を分け歩くスペースがあるようにして、そのほかのところにはどこにも動けないというふうな状態なつておつたことも一つの事実であります。そういうときに私が心配いたしますのは、何もその警官隊の出動ということではなく、あそこはいろいろなものが頭を出して、これからも行くと思うのです。税関あり、警察あり、或いは一種の検疫に近いものもある。運輸省もあり、それから外国の軍隊の着陸もありますし、そういう場合に、何か統一したことをちやんと、国の玄関らしくして行く権威というものがどこにあるのか。今伺うところによりますと、運輸省航空局では殆んどその実態を御承知でないような話でありますが、そうして見ると一体どこが責任であるのか。その守衛が思いついて、今日はこんな人がたくさん入つて来ているから、電話をかけて国警に出てもらうとか、何だか少しデモ隊がやかましいようだから今度は保安隊に出てもらうとか何とかいうような、そういうふうなことではないと私は了承するのであります。或いはたまたま東京都内でなく、警視庁でなく、神奈川県であるという立場からいたしますと、日本玄関として、よほどやはり今から考えて頂かないと、今のような運営では、誠に望ましくない方面でもずい分おかしげなことをしばしば拝見いたすのでありますが、どうなんでしようか。これはやはり航空局責任なんでしようか。
  23. 下田武三

    政府委員下田武三君) 高良さんも御承知のように、外国空港におきましても、一般治安維持はやはりその土地警察が当つているということは、私どもも見ておりますが、日本ではやはり外国と同じように、空港治安維持のために特別の治安維持組織を作るというようなことは到底考えられないのでありまして、やはり一般警察責任範囲に属せしめるという各国なみ方針をとるよりいたし方がないのではないかと考えます。
  24. 高良とみ

    高良とみ君 併し諸外国空港は殆んどいろいろな会社自身が経営して、又いくつかの会社が、SASとかBOACとかいろいろなものが共同していわゆる空港をやつておりまして、殆んどその中で警官デモ隊が動いたり或いはデモ隊警官とがかちあつてみたり、何とか非常に野蛮国みたいな姿を拝見したことがないので、殊にアメリカ、カナダの空港ではそういう人の姿は殆んど守衛としても見ることがないくらいであります。英国におきましてはBOACが国営であるという立場から少しは制服を着た人がいますけれども、いきなり警察官が棒を振り上げて待つているというような姿は、非常に降りる人にとつてはシヨッキングなわけでありますが、こういうことについて、外務省は、ああいう姿で今後も空港を、しばしばいろいろな人が来ると思うのです。ただ中国から帰つて来る我々同胞引揚のその公のパスポートを持つている人間のみではなく、いろいろな機会があると思うのですが、もう少しそれはそれで、奥のほうにでも適当なところを御設備になりまして、なんとかもう少し体裁のいい玄関口にするということの必要を外務省としては御考慮をされないのですか。
  25. 下田武三

    政府委員下田武三君) 外務省といたしましても御同感なんでございますが、併しよその国ですと、旅で疲れて、或いは人に接することを予期しない姿で下りられるお客を、そのプライヴアシイを尊重して、空港までデモをやるというようなことが余りないのでありますが、遺憾ながらそれは日本の非常に特殊な現象だと思いますので、その点は誠に遺憾だと思います。併しながら対外的にはそういう事実が頻発することは誠に好ましくないという点は全く同感に存じます。
  26. 高良とみ

    高良とみ君 一つそういうことにつきまして、この国際協定を結ぶということは、やはり正式にこの日本空港世界に開くわけで、いわば日本開港一種開港に似たような状態です。それに対しまして、いろいろ礼儀上もやはり適当な設備と適当なコントロールと節度とを御指示になりまして、そうして航空条約だけはできたけれども、実情はまるで混沌たる四等国なみで、どこも無秩序であるというようなことのないように、一つ御監督願わないと、これは条約だけ先に行つて実態は非常に遅れているということになりますので、希望といたししましては、外務省なり、運輸省なりが、或いは大蔵省もであると思いますが、そういう点で十分御考慮に相成つて頂きたいと思います。殊に税関の面でも、或るときは非常に親切ですが、或るときは又荷物を入れる戸棚がないからまあ前以ては検査できないとか、殆んど設備なくしてあれだけの玄関口をマネージしようということに非常に困難があると思います。そんな点でまだまだもう少しなんとか整え方があると思います。十分御思慮願いまして、私の只今質問は打切ります。
  27. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは航空局のかたでいいと思うのですが、この頂きました一覧表ですね。この一覧表で実際に使つていない雑草が繁茂するに委せているようなのを、私、今知つているのですが、これは一つこの内容について使用中のものとそうでないものと一つ説明を願いたいと思います。
  28. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) この飛行場一覧表は、現在日本にありまする飛行場のほぼ主なものを全部網羅いたしたもので、或いは草の生えているようなものもあるかと思いますが、例えばこれには飛行場として毎日使つておりませんで、不時着陸場として置いてあるというような飛行場もございますので、そういうものは別段コンクリートの何を作るとか、そういうような施設はいたしませんで、草のままでも不時着陸場として使えるというので、そのままにいたしているのもございます。
  29. 中田吉雄

    中田吉雄君 例えばこの一覧表終いから三枚目の鳥取県気高郡湖山村の湖山飛行場というのなんかはどうなつているのですか。殆んどないように思うのですが、もう少し具体的にずつと一覧表従つて説明を承わりたいと思います。先に御指摘になりましたものは、これはもうすでにここに家が建つたりしているのですが……。
  30. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 只今お話湖山につきまして、私、現状がどうなつておりますか、実は私の直接の所管でございませんので存じませんが、後ほどよく調べまして御報告申上げたいと思います。
  31. 中田吉雄

    中田吉雄君 この現在の管理者という欄で、駐留軍というのがあるのですが、これはもう現在全部使つているのですか。それから財務局の持つているやつですね、これも実際現在の使用状況がどうなつてるのですか。一つ駐留軍のと分けて、もう少し具体的に御説明願えませんか。
  32. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) この表全体について、当局のほうで一々調べて頂きまして、次回にその説明を与えて下さるようにお願いします。
  33. 中田吉雄

    中田吉雄君 では、その際には一つ接収基地ですね、それも一つお伺いしたいと思うのですが……このあと高良委員の御質問に対して、伊関局長からの御答弁もありますし……。私の手許に持つている数枚の別表ごとに、駐留軍基地の総面積と、軍事基地の数というものが非常に変つて、どれを私たちは……まあ刻々変るわけでしようが、その信憑性に非常に苦しむわけです。昭和二十七年の四月二十八日には六百三カ所で、それから一年経ちませんこの一月現在では七百三十三カ所、最近になりますと、もつとその件数が殖えたようなことに発表されたりしていますので、一つその昨年の講和条約発効したとき、その後変化したときごと一覧表も、併せて一つお願いしたいと思います。御面倒ですが、それをお願いしておきます。
  34. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 基地の問題は、航空関係の取急いだ案件を処理しましたのちに、別個に取上げたいと思います。
  35. 中田吉雄

    中田吉雄君 別個でも結構ですから。
  36. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) その際は中田委員、並びに高良委員が、先般東北並び北海道基地を視察された御報告もまだ拝聴していないのでありまするからして、それを併せて、そうして事務当局に対する質疑等もいたしたいと思つております。その際の資料として、では今中田委員から御要求になりました資料を、政府当局のほうで整えて頂くようにお願い申上げます。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと外務省にお聞きしますが、今飛行場一覧表を頂いたのに、先ほどもちよつと問題になつたのですが、駐留軍管理者なつてる個所が相当たくさんあるのですが、これは講和条約発効までに占領して、管理したものと、それから発効後それはどういう扱いになつたのか。現在においてもなお管理をしているというのは、どういう根拠によつて管理をしているのか、その辺の事情をちよつと御説明願いたいと思います。
  38. 下田武三

    政府委員下田武三君) 占領中は占領軍の欲するところを使用しておつたわけでありまするが、講和発効後は、御承知行政協定に基きまして、日本側と協議の上、意見一致した施設だけを先方に貸すということになつております。御指摘飛行場も、合同委員会日米双方の合意ができた上で継続使用を認めているものでございます。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 占領中のものと、それから合同委員会で話合つて継続使用しているものと、それからもうすでに継続する必要なしに置かれたもの、それから或いは新たに設定されたもの、それらの関係はどうなつておりますか。
  40. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 占領が終了いたしましたとさに、四十六ありました飛行場が、本年の四月二十八日現在で丁度一年経つて四十四ということになつておりますことは、表で今までに差上げたかと思います。二つばかり数としては、はつきり減つているわけであります。それから飛行場は、占領が終つて以後新らしくとつたものはないはずであります。但し滑走路なども拡張いたしましたらそこで具体的施設をするということなどで、混乱を起しているものもでございますけれども、数としては新らしいものをとつたわけではなしに、重要なところの施設を許可したというものが概括的な状況であります。
  41. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、これは全部合意に基くものですか。交換公文ですか何かには、話が調わない場合には継続して使用する光栄に浴するというような、大変な有難い取極がなされてあるのですが、そういうものはないのですか。これは全部合意によるものですか。
  42. 下田武三

    政府委員下田武三君) 行政協定に基きまして駐留軍使用を許します施設につきましては、すべて合同委員会の我がほう代表伊関局長と、先方の参謀次長が代表になつておりますが、その代表の間に取極を結びまして、その取極の附属のリストに全部掲げまして、それ以外のものは使用しないということになつております。
  43. 中田吉雄

    中田吉雄君 それでは、全部合意で、あの交換文書ですか、あの規定によらないものはとにかくないことになるのですか。それはどうなんですか。
  44. 下田武三

    政府委員下田武三君) 全部合意に基くものでありまするが、その合意の形式は、合同委員会における日米双方の代表者の署名によつて行われております。
  45. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その合同委員会における取極は、何ですか。ここに頂いた東京国際空港共同使用に関する日本国在日米軍との間の取極というのが一つありますが、これに類したような特別な飛行場に関する取極なるものがあるのか。そうでなくて基地一般の問題があつて、そうしてそのうちの一部として飛行場の問題が取極められているのか。その点はどうなつているのか。
  46. 下田武三

    政府委員下田武三君) 合同委員会の双方代表の取極は、これは如何なるものの使用を認めるかという、その対象だけを掲げたものでありまして、御指摘の東京空港使用に関する別個の取極は、これは先ほど説明がありましたように、あれは建前はすでに日本に返還されているものであります。併しながらレーダーその他誘導方式等につきまして、日本の戦争中のギャップのために、技術的に日本がみずから行うことが不可能でありますために、先方に委託して、その部分だけを先方にやらしているという特殊な事態がありますために、ああいう特別な合意をいたしたのであります。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この使用するものに対して全般的な取極があるだけで飛行場自身についての取極というようなものは別に特別なものはないというように承知してよろしいですか。
  48. 下田武三

    政府委員下田武三君) 使用の対象となつております全般的なものというのは、これは時々刻々と申しますと誇張になりまするが、ときどきリストの変更の取極をやつております。これが全般的にカバーするわけでありますが、只今のは、特殊な事態に基いて、その一般的な取極とは無関係に、或る特別な対象だけについての合意を行なつたものであります。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 従つて飛行場の問題はそういう特殊なものにはなつていなくて、一般的な取極の前文があつてあとはリストでただ規定されているのかどうか……。
  50. 下田武三

    政府委員下田武三君) その通りでございます。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その取極及びそのリストはすでに資料としてお出しになつておりましようか。若し出していなかつたら、出して頂けるかどうか。
  52. 下田武三

    政府委員下田武三君) ときどきに変りましたものを全部差上げますと非常に厖大なものになりますので、現在におきまして過去の変更を含めました一般的なりリストをすでに差上げてあると思つております。
  53. 高良とみ

    高良とみ君 いろいろな国との航空協定がみんな違うのでありますが、スエーデン、ノルウエー、オランダ、タイ、それからそのほか小さいのがありますが、あとはロンドン、ワシントン等でありますが、これらの各国との協定においてどういう国々が特別に違うところがあるのですか。そういう点を一応、国々によつてこういう点をこの国は主張しているというようなことを御説明して頂ければ大変わかるのでありますが。
  54. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは各国との取極相互間の差異というものは殆んどないのでございます。これはどうしてそうなりましたかと申しますと、平和条約十三条で、日本は連合国側から航空協定締結を申込んで来たらそれに応じなければならないという規定がありますので、外務省では早きに及んで各国とのばらばらな協定を結ばないために、モデルのアグリーメントを、案を作つてつたのであります。そこで、モデルのアグリーメントは、大体世界航空協定の類型を見ますと、アメリカ式とイギリス式とございます。そこで、アメリカ式とイギリス式の間にも大した差はないのでありますが、アメリカとは大体アメリカ式のモデルのアグリーメントを作つて、我がほうから提案して、大体そのまま採用されておる。それからイギリスその他の国とは、イギリス式の先例を斟酌しまして、我がほうの案を作りまして、それを各国に一様に提案いたしまして、各国ともそれぞれ殆んど異議なく呑んでおるのであります。でございますから、御審議の御都合も考慮しまして、ばらばらでないように実は外務省で努めて交渉して参りましたので、そこで只今審議を願つております五つの協定について申しますと、タイだけが多少違つております。どういうところが違うのかと申しますると、タイは御承知のように戦前に日タイ間の航空協定というのがございます。これは昔の協定は非常に違いまして、官吏を輸送するのに便宜を供与しろとか非常に特殊な協定つたのでありますが、この協定を、今度の協定発効しますと、それにとつて代るという規定を置いたのであります。その規定が、ほかの航空協定にはございません。それが第一の差でございます。それからタイとの協定には、ほかの四国との協定のそれぞれ十二条になつておりますが、航空に関する統計資料を相互に交換するという規定がございます。これがタイとの間には入つておりません。それだけの二点が只今問題となつております五つの協定の間の差異でございます。
  55. 高良とみ

    高良とみ君 なお伺いたいのは、この交換公文がついているほうですが、これは主に沖繩に関するものが主であつて、これはどの協定にも皆つけてあるわけですか。
  56. 下田武三

    政府委員下田武三君) さようでございます。
  57. 高良とみ

    高良とみ君 それから、タイとの航空協定の中の第二条に、「この協定の適用上、文脈により別に解釈される場合を除く外」と書いてありますが、「文脈により別に解釈される場合」というのはどういうことですか。
  58. 下田武三

    政府委員下田武三君) 文字、語句の文理解釈から別に解釈される場合を除くということです。
  59. 高良とみ

    高良とみ君 例をおつしやつて頂きたい。
  60. 下田武三

    政府委員下田武三君) 別に例はないのでございますが、常識的に読んで、これは違うというような場合は勿論除きますというだけの意味でございます。
  61. 高良とみ

    高良とみ君 それから、ついでに伺いますが、一八九一年四月十日のマドリッド協定というものがどういうわけでここで出て来たわけなんでしようか。一九一一年六月二日にワシントン及びへーグで、ロンドンで修正された貨物の原産地虚偽表示の防止に関する……これはどういうものですか。貨物に関するものですか。
  62. 下田武三

    政府委員下田武三君) そのマドリッド協定は、実は前国会において御審議を願つておりますときに衆議院の解散で審議未了に終りましたものでございますが、再び今国会にも御承認を求めておりますので、早晩本委員会にも提出されることになると存じております。
  63. 高良とみ

    高良とみ君 この航空協定の中で、人の輸送に関する面と、それから貨物の輸送に関する面とがあることを私は考えておつたのですが、丁度そこに問題が出て来たのでありまして、やはり一定の制限があるばかりでなく、いろいろ禁輸品とか或いは何か貨物輸送或いはこれに対する原産地虚偽表示なんてことも、やはりこれに引つかかつて来るのじやないのですか。
  64. 下田武三

    政府委員下田武三君) 只今の直接の問題ではございませんが、貨物の原産地虚偽表示の防止法では御指摘のように関係は持つて参ります。つまり原産地を虚偽に表示した貨物が輸送せられますときは、税関はその輸出を差しとめなければならないというような規定が、マドリード協定に含まれておりますので、たとえ飛行機で運ばれて参りましても、オランダ製でもないのに風車のしるしを付けてオランダ・チーズと名乗つたようなものが出て参りますと、これはマドリード協定のほうの関係で差しとめなければならない。そういう点で航空輸送とも関係は持つて参ります。
  65. 高良とみ

    高良とみ君 私、前から少し疑問に思つておりましたのは、同じ農産物で以て日本へ持込んではいけない果物等があるわけですね、まあ殊に日本の土はいろいろな虫がいるとかいうようなことで、日本の土が植物に付いて来ることを非常に嫌う国柄があるわけですね。そういうことに対する手配が、航空業務が非常に進んで来た場合に、農林省でやるのか、或いはこれは全然税関でやるのか。まあ二、三の例をいえば、日本ではマンゴーを入れたくない。そして或いはアメリカから持つて来るネーブル、オレンジは全部禁制をするとかいうようなことは、こういうことについては全部税関に一任しておられるんでありますか、どうですか。
  66. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは農林省関係の行政でございまするが、便宜税関に委任されておると存じております。
  67. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの御説明のあつた英国式とアメリカ式の航空協定の特色を、私、前に御説明があつたかと思いますけれども、おりませんでしたかと思いますが、若し御説明がなかつたのでしたら、ちよつと概要を御説明願いたいと思います。
  68. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはアメリカの特殊事情によつて多少の違いがあるだけで、大した差はないのでございますが、アメリカは自由主義と申しますか、政府の権限が比較的弱いのであります。例えば運賃につきましても、航空業者にこの運賃でやれという命令で強制するわけには行かないのです。ところがアメリカ以外の国では大体運賃或いは航空輸送の条件等につきまして、或いは認可或いは指示によつて相当行政当局の権限が強いわけであります。そこで、航空協定を結ぶにつきましても、アメリカにそういうように努力するという建前をどうしてもとりたがるわけです。というのは、政府が命令する権限がありませんから、外国と約束しましても、その通りに業者が聞くかどうかという保証が得られないわけであります。そこで、どうしてもそういうように努力するということしか約束できないという面がありますために、その点から来る差異があるだけでございます。
  69. 高良とみ

    高良とみ君 ここに日本乗入外国航空会社の競争状況というのがありますが、随分過去七、八年の間に、各外国航空会社が、まあ日本に今後乗入れて来るのですが、消長があつただろうと思われるんですが、その点について、例えばカナダ太平洋航空会社などは一頃は随分入つていたのであります、ここの中には資本のことは不明と書いてありますね。まあこういう点で、エール・フランスなんかも今度は随分伸びて来たのだろうと思うのですけれども、そういう点で、それはその国々の飛行機会社の状況によるのでありますが、最近の日本側の主要日本空港に乗入れて行く気構えといいますか、そういう点で、この消長の点でどういう会社日本にたくさん交渉をより多く最近の傾向は出しております。か、ちよつとそれを一つ
  70. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 日本に乗入れて来ております外国航空会社の営業成績につきましては、例えば手許に詳細なる資料がありませんので、極めて大雑把に行われておりますことだけを申上げますと、ハン・アメリカン、ノース・ウェスト航空会社は、両社とも毎年逐次営業成績を挙げております。殊にノース・ウエストのほうは、御承知のように極東地域を非常に大きなこの会社の営業地域という工合に考えておりますので、特に力瘤を入れているようでございます。それからパン・アメリカンのほうは、ハワイと東京の間がパン・アメリカンだけに許されている、アメリカのほうの航空局から特に独占権を認められておりますので、非常にこのルートにつきまして特にいい営業成績を挙げております。それからBOACのほうは、最近イギリスで作り始めましたジェット機を以て特殊性を発揮しておりますので、これも或る程度の成績を挙げているように思います。カナダのCPALは、これは競争相手が只今のところノース・ウエストだけでございますので、ノースウエストには劣つているように感じられますが、今度はこれにも書いておきましたが、バンクーバーからメキシコシティに出まして、南に下つて南米に伸びるという線を計画いたしまして、大体十月から運航開始という工合に計画いたしているようであります。非常に一つの特殊なラインになると思います。それから濠洲のQEAは、これも濠洲へ参りますには殆んどこの会社が主としてやつておりますので、これも或る程度の成績を挙げているように存じます。それからこのQEAは、特に朝鮮戦線に運んだりします軍との契約による運航も相当やつているように承知いたしております。あと特に成績のいいと思うというように見られますのは、御承知のSASとエール・フランスと、この二社はいい営業成績を挙げておるように聞いております。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどの飛行場の問題ですが、飛行場に関連した合同取極、そのリストというものは、どうも調べてみますと頂いていないようなんですが、もつとも合同委員会の業績という簡単な報告書はもらつておりますけれども、取極自体及びその附属のリスト、それは頂いていないようですから、若しあれでしたら資料としてお出し願いたいと思います。  それから先ほどの御説明では、新設のものはなかつたというふうに御説明でありましたが、この合同委員会の業績の報告書によると、合同委員会のほうでは新設の美幌の第二飛行場と計根別の第四飛行場、これを新設したということになつておりますが、これは先ほどの御答弁とはどういうことになりますか。
  72. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 更に取調べて御報告いたします。
  73. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうあれは、正確に一つ御報告を、うろ覚えでなしに、新設があつたかなかつたかということは非常に重大な問題ですから、もつと厳密に御答弁を願います。  それからもう一つお聞きしたいのですが、北海道の美幌ですか、そこに飛行場があるのですが、これの管理者駐留軍でなくて北海道財務局となつているのですが、この飛行場と今新設された第二飛行場というのは違うのかどうか。その点一つはつきり御答弁を願いたいと思います。  それからもう一つ、拡張をしたのが八戸、新潟、入間川、立川、小牧、築城というような飛行場が拡張をしたことになつておりますが、この表では、その拡張の結果、こういう表になつているのか、拡張はこれ以外に追加されているのか。例えば滑走路あたりの問題、或いは舗装の種類、厚さの問題、そういうことは拡張後の表になつているのかどうか、それも一つ。これは運輸省航空局のほうですが、どうなんですか。
  74. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 調べまして後ほど正確に申上げます。
  75. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では合同委員会協定事項並びに附則の飛行場の名前を列記したその調書かまだお出しになつていないならば、政府側で作成して御提出を願いたいのであります。  それから又、只今佐多委員からいろいろの点について御質問がありましたが、これは政府側でお取調べになまして、正確な御報告をこの次の会合の際に伺いたいと思います。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 民間航空委員会の取極として今ここに頂いているのが東京国際空港共同使用に関する取極、これを頂いておるのですが、それ以外の航空交通管制に関する取極、ラジオビーコンの運営責任に関する取極、これができておるという報告になつておりますから、その取極も御提出を願います。  これは資料の提出についてでありますが、外務委員会は、私、初めてでございますので、資料の扱いはどうなつているかよく存じませんが、私が今まで関係をした予算委員会その他では、資料の提供を何遍も催促するのだけれども、遂に国会が閉じられるまで、うやむやのうちに出ないものが可なりございますので、予算委員会その他では今後そういうことのないように厳重にお願いをしてありますが、当委員会においても、私たちが要求をした資料は、一つ委員会の事務局のほうでもちやんとリストに整理をして頂いて、それがいつ出ているか、まだ出ていないものはどれだけ残つているか、それが始終よくわかるように一つ正確に御処理を願いたい。
  77. 高良とみ

    高良とみ君 これは逐条審議はいつなさいます御予定でしようか。航空業務に関する各国との協定の逐条審議はなさいますおつもりですかどうですか。
  78. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今、私はそうは考えておりませんけれども、必要とお認めになれば、そういうふうにいたさなければならないと思います。
  79. 高良とみ

    高良とみ君 ではこの次にでも一応模範的なものを一つ二つお挙げ願つたら如何かと思います。
  80. 下田武三

    政府委員下田武三君) 実はすでに国会の承認を得ておりますアメリカ、イギリスとの協定と、ただ国名を変えたくらいのものでしかございませんので、若し他に案件で御時間がないようでございましたら或いは逐条審議は省略さして頂きましてもいいのではないかと思いますが……。
  81. 高良とみ

    高良とみ君 ではこの前のアメリカその他との航空に関する協定があつたのでありますが、念のために伺つておきますが、各国空港維持費、及びそこにおいて事故が起つたような場合の処理というようなものは、その国の空港を所有しておるところの国の全責任になるわけでございますかどうでしようか。
  82. 下田武三

    政府委員下田武三君) 航空事故によつて起ります損害と言いますと、いろいろございます。その飛行機に乗つている人の、旅客の怪我或いは死亡に対する損害、飛行機に積んでおりました貨物の損害、それから飛行機と全然関係なしに、下におつた人、或いは民家、会社、工場等に対する損害、大体その三つに分けられると思いますが、その旅客に乗つておりました人及び貨物に関する損害賠償の問題は、丁度只今上程になつておりますワルソー条約というものがありますが、その条約の問題でございます。それから、地上の場合、第三者に与えた損害の問題は、外国航空機によつて地上の第三者に与えられた損害に関する条約という条約がございますが、これはまだ日本は入つておりません。将来或いは加入することになるかと思います。それじや日本がその条約に入つていないためにどうなるかということになると、結局その損害の発生した国の国内法によつて処理するほかないということになる次第でございます。
  83. 高良とみ

    高良とみ君 なお追加して伺いますが、飛行場の装備及び宿泊設備等、荒天等のために飛行機が何台もかち合つて両方とも発着できないというような場合に、飛翔できないというような場合に、相当数の宿泊所その他の設備も要るのでありまして、それらは勿論その会社が大体負担するものと思うのでありますが、併しそれらによつて起る飛行場の混雑、或いは着陸の際における装備、設備の破壊等もあると思うのです。そういうものは全部その国の負担になるのでありますか。
  84. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘の問題は、これは航空会社が取扱つている問題だと思います。航空会社はその自己の会社飛行場の発着に対しまして空港使用料というものを払つておりまして、従いまして自然的損耗に対しては費用を出しておるわけであります。それから旅客の宿泊等の設備は、これは大体航空会社のサービスといたしまして、航空機の原因等の場合には、ただでお客さんを適当な旅館にとめるとか或いはそうでない場合には宿泊料をとつてとめるとかして、これは空港のある国の政府又は航空施設運営しておる会社責任よりも、むしろ航空会社のサービスの問題だろうと存じます。
  85. 高良とみ

    高良とみ君 大体それでわかりましたが、講和条約による各国との航空協定に関するものは、もうこれで全部になりますか。例えば会社がみんな一つなつているところはSASなんか一つでありますが、なお、そのほかの国でも可能性があると思うのですが、そういう点は如何ですか。南米諸国等の要望はまだ出てこないのですか。範囲をお伺いしたい。
  86. 下田武三

    政府委員下田武三君) 航空協定を結び出したら実はきりがないのでありますが、日本と利害関係のある国を選んで今後も締結する方針であります。只今考えられておりますのはインド、パキスタン、南米のブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー等の国でございます。
  87. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では航空協定関係質疑は本日はこの程度に打切りまして、そうして次回に討論採決まで参りたいと考えております。
  88. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に国際小麦協定を修正更新する協定受諾について承認を求めるの件でありますが、これを議題としたいと思います。食糧庁長官が出席されておりまするので、先般各委員から要望の次第もありました関係から、今日の世界における食糧需給の状況、日本の食糧輸入の実情等について御説明願うことにいたしたいと思います。
  89. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 食糧の輸入状況並びにそれに関する世界の貿易状況につきまして御説明申上げたいと思いますが、今年度の食糧の輸入は、米におきまして九十万トン、大麦が六十二万トン、小麦が百五十三万トンというふうに輸入の予定をいたしております。これに対しまして昨年度におきまする実績を申上げますると、米は九十一万トン、大麦が百十八万トン、小麦は百五十六万トンということになつておるわけでございます。  そこで米につきましての状況を申上げますると、御承知のように米の世界の産額は大体戦前に回復いたしておるわけでございまして、ただ主要輸出国でございまする東南アジア方面におきまする生産が順調でないという関係で、貿易額におきましては世界の貿易額が、戦前にまだ回復いたしておりません。大体六割程度なつておるかと思います。先般のシンガポールにおきまする米穀会議等の状況を考えてみますると、大体本年度におきましては、輸出国の輸出数量とがほぼ均衡を得たような状況になるのではなかろうかというふうに想像されておるわけでございまして、だんだんにこれにつきましても世界的に需給の均衡を得つつある。併しながら、まだ他の品物と違いまして、アメリカにおきましても輸出割当制を講じておりまするし、又タイ、ビルマ、イタリア等におきましても、それぞれ輸出につきましては国家統制を実施されておりまするので、戦前のように自由な貿易ということにもなつておりませんし、又自由にいつでも必要なときに必要な数量を入手し得るということにはなつておらないのでございます。本年度におきまする九十万トンにつきましては、大体タイが三十五万トン程度、ビルマが十五万トン程度アメリカが二十万トン程度というふうに予定いたしまして、そのほかに台湾でございまするとか、イタリアでございますとか、中南米等にその余を予定いたしておるわけでございます。  大麦につきましては、世界的な生産の状況も戦前におきましては四千万トン程度の生産でございました。現在におきましては、これを相当上廻つております。従いまして貿易額も戦前の二百七十万トン程度が現在におきましては四百万トン程度に増加いたしております。併し御承知のように大麦は小麦と異なりまして、市場が相当狭い関係上、小麦よりも価格が高くなつておりますが、現在におきましてはアメリカ、カナダ、オーストラリアというような国々から輸入計画をいたしておるわけでございまして、大体アメリカから十四万トン、カナダから十七万トン、オーストラリアから二十万トン、そのほかアルゼンチンその他各国から約十万トン程度輸入する予定でございます。  小麦につきましては、世界の生産高も相当戦前よりも殖えております。特にアメリカ、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンの主要輸出国の輸出数量が戦前より倍以上増加しておりますので、その関係上、我が国といたしましても、相当入手が他のものに比べて容易になつているわけでございます。小麦の輸入の計画が、現在におきましては御承知のように、只今承認をお願いいたしておりますIWA百万トンでございますが、今年度におきましては、ズレ等の関係もございますので、大体IWAといたしましては九十万トン程度考えておるわけでございます。そのほかアルゼンチンから協定といたしまして三十万トン程度予定いたしておりまするが、これも輸送等の関係で、現実の輸入といたしましては二十万トン余になろうかと存ぜられます。そのほかアメリカ、カナダ等におきましてIWA以外の自由小麦買付を計画いたしております。その合計が五十七万三千トンになるわけでございます。  価格につきましては、米は大体日本米に準じた扱いをいたしておりまする加州米でございますとか、台湾米でございますとか、或いはスペイン、イタリア米という、いわゆる内地米と大体同品質のものと、いわゆる普通の外米で、タイ、ビルマ等の外米がございまするが、現在といたしまして、本年度におきましては、二百十三ドル程度をCIF価格として予定いたしておるわけでございます。昨年度の輸入もほぼ同様でございましたが、本年度は……、昨年度におきましては九十万トンのうち、いわゆる普通外米と申しますか、タイ、ビルマからの数量が割合大きかつたのでございますが、本年度におきましては、できるだけ良質の米をとりたいという関係で、できるだけ内地米に準じたものを輸入いたしたいと考えておりまするから、金額的に、単価といたしましては二百十三ドルとほぼ昨年度と同様でございまするが、質的にはだんだん良いものを入れ得るという情勢になつておるかと存じます。  大麦につきましては、本年度におきまする輸入価格は九十三ドルということに予定いたしております。昨年度におきましては九十七ドル程度でございましたが、だんだん輸入状況も好転いたし、市価も低落いたして参りましたので、昨年度よりは安く輸入でき得ると考えております。  小麦につきましてはIWAの数量増加等の関係もございまして、今年度におきましては、大体九十ドル程度に平均といたしまして輸入単価を考えておるわけでございます。この中には、通商協定によりまするアルゼンチン等のものが入つておりまするので、そういうものと、IWA等のものとを平均したものでございまして、これに対しまして、昨年度におきましては九十四ドル程度の輸入の価格になつておるかと思います。現在アメリカのシカゴ相場等は二ドル三十五セント程度なつておりまして、現在の状況におきましては、IWAの輸入価格よりも上廻つております。  以上概略輸入状況につきまして御説明申上げました。
  90. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつと資料をお願いしたいのですが、昨年一年で結構ですが、或いは昨年度米穀年度で結構ですが、輸入食糧の米、小麦、大麦別各輸出国別の数量とその単価、これを一つお願いしたい。
  91. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 只今説明申上げましようか。それとも資料として差上げましようか。
  92. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 資料としてお願いいたします。
  93. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 承知いたしました。
  94. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の数字ですが、この二十七年度の輸入実績、今、長官の御説明のやつと、予算説明のやつと、若干数字が食い違つているのですが、今、長官の言われたのが最近の確定実績と見て、予算のほうは直しておいていいですか。
  95. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) あれは輸入計画ですが……。
  96. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 輸入の二十七年度実績……。
  97. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 二十七年度の実績につきましては、大体予算の場合におきましては、これは三日までの実績を推定いたしましたものでございまして、只今私から申上げましたものは、大体現在までに判明いたしておる数字でございまして、それは殆んどくるいはないかと思いますが、端数につきましては多少くるいがあると思います。
  98. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 例えば米が今おつしやつたのは九十一万トンと言つているのを、この予算のほうでは百万トン以上になつております。それから大麦の輸入は百十八万トンと言われましたが、それが八十八万トンと、端数だけの違いじやなくて……。
  99. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 只今佐多委員からお話がございましたのは、昨年度におきまする予算のときの昨年度予算に計上いたしました数字がそれかと思います。
  100. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ああそうですか。
  101. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) それで私が申上げましたのは、予算の計画に対しまして実績を申上げたのでありまして、予算との比較でございます。
  102. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうですか、わかりました。
  103. 中田吉雄

    中田吉雄君 長官にお尋ねしますが、アメリカの小麦の生産高は十一億ブツシエルですか、過剰小麦を滞貨持越のを合せますと十七億ブッシェルぐらいで、未曽有の在庫量になつて、我々の得ているいろいろな資料では、例えばその一部を読んでみますると、米国の過剰小麦は置き場がなくて戸外に雨ざらしになつている、それぐらい過剰滞貨があるわけであります。従つて、本日只今説明を受けましたシカゴ相場におきましても、すでに二ドル二セントくらいに非常に下落を辿つておるわけですが、だんだんこの小麦協定の妙味というものは日本にとつて少くなると思いますが、この協定を結ぶことがこのよのな国際の需給状態からみて、やはり依然として不利にはならない、価格は更には下落しないというふうにお考えですか。その点、協定が、このような過剰滞貨からして、却つて不利になつてしまいはしないかという点です。その点を一つ説明願いたい。
  104. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 只今のシカゴ相場でございますが、シカゴ相場は、これは実際問題といたしまして、二ドル二セント程度なつておりまするが、これにはフオビング・チャージということは別になつておりますし、港までの運賃の関係が、大西洋岸と太平洋岸との運賃の違い等もございまして、大体このシカゴ相場に日本が買います場合には二十セント程度のものが加わるのが普通の状態かと思いますので、大体我々が買つております場合は、現実の形として、ポートランド相場で日本が買う場合の相場になるかと思います。ポートランド相場と申しますと、現在二ドル三十五セント程度で、国際小麦協定の最高価格よりも相当高値を示しておるわけでございます。ただ国際小麦協定といたしましては、御承知のように最高価格は輸出国の権利として認められておるものでございますが、輸入価格、輸入国といたしまして最低価格で買う場合は或いはどうかという問題になるわけでございますが、現在の状況におきましては、国際小麦協定において、最低価格の一ドル五十五セントに下るということは我々考えられませんので、現在におきましては、国際市価の状況等も考えますると、この小麦協定は我が国に不利をもたらすということはないと考えております。
  105. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつと御説明を補足願いたいのですが、この種小麦協定以外に、格別に、食糧の輸入について、米麦、小麦を通じてですが、特別の取極なり協定を現在されておるかどうか。
  106. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 国際小麦協定以外に、御承知のように、小麦につきましては、アルゼンチンと貿易協定によりまして、三十万トンの貿易協定締結されておるわけでございます。これは勿論金額でございますので、数量的に三十万トンとはつきりいたしておりませんが、大体の金額から換算いたしますると三十万トン程度になろうかと思います。そのほかに、昨年の九月に、カナダの小麦局と日本政府との間に、カナダから六十万トンを日本政府に売渡すということになつておりまするが、これは一年間でございますので、本年で一応期間が来ることになつております。そのほかには日タイ貿易におきまして日本に米を少くとも二十万トン、そのほかに十万トンの追加の米が入手できるというふうなことになつております。又、日印貿易協定におきまして、大体二万トン程度の輸入が可能であるようになつております。なおそのほかにオーストラリアと大麦の売買の取極めがございまして、これは濠洲の大麦局と食糧庁との間の取極めでございまするが、大体最高二十万トン、最低十万トンといたしまして輸入の取極めが行われております。
  107. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そういう個別的な取極めがあるのですけれども、単価等についての取極めがそのうちあるものがありましようか。
  108. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 単価等につきましては原則としまして時価でやるということになつております。ただカナダの小麦の場合におきましてはカナダの小麦局の売渡価格というふうなことになりますけれども、大体、全体を通じましてその統制を、相手国におきまして政府が輸出価格をきめておりまする場合はそのままの価格、それ以外の場合は時価という形になつております。
  109. 羽生三七

    ○羽生三七君 この国際小麦協定を最初に締結するときの私ども考えでは、その年次ごとに漸次輸入価格が低減されて行くということが一番主要な条件であつたように考えておりますが、今度の更新によるというと、却つて低減じやなしに、最高価格、最低価格それぞれむしろ引上げになつておるのですが、そうなるというと、この協定を一番最初締結するときの精神と大分違つて来ておるんじやないかと思います。勿論その場合に、現在の時価と比較するならば、協定価格による輸入のほうが若干有利であることは、それはわかつておりますが、併し最初の協定を結ぶときの精神と非常に喰い違つて来ておるような気がするのですがどうですか。
  110. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 今度の新協定は、御承知のように、前の協定の修正更新という形になつております。前の協定におきましても最高価格は一定でございまして、最低価格が年次別にだんだん上つて来ておる、こういう形になつております。その前協定の修正更新という形をとつておりますので、ただ問題になりましたのは、御指摘の最高価格を従来通りに据え置くか、どの程度に上げるかということになつて問題が討議されたわけでございまして、お手許に提出いたしました、最高価格二ドル五セントということになつておりますので、従来ともに最高価格が低減するという形にはなつておらないのであります。
  111. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつとお伺いしますが、私のこれは研究不足かも知れませんが、その国際小麦協定締結する場合は年次ごとに漸次その輸入価格が低減されて行く。その代り一定数量の輸入についてはその責任を負わなければならないところに、この精神があると思う。そうするというとそれが漸次年次ごとに低減されて行かないということはどういうことになるのですか。昨年のこの協定締結のときの出発点と大分違うような気がするのですが。
  112. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 只今申上げましたように最高価格は従来ともに一ドル八十セントという形にあつたわけです。輸入国の義務といたしましては最低価格で輸出国で売渡しを申込んだときは買わなければいけない、輸入国の義務といたしましては最低価格の問題がある。最低価格は御承知のように前協定におきましては一ドル二十セント、それから上りまして、一ドル五十セント、それから下つてつておる、こういう形になつております。
  113. 羽生三七

    ○羽生三七君 昨年の実績でみまして、これは資料ということになるかも知れませんが、大体協定価格の場合と市場価格の場合と、日本の全輸入数量について一体どの程度実際上に利益があつたか、そういう問題を今おわかりになつておればお知らせを願いたい。おわかりにならなければ資料でお願いいたします。
  114. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 大ざつぱに申上げますと昨年度におきましては五十万トンに対しまして輸入CIF価格が七十六ドル程度なつております。それから本年度の小麦協定によりますると八十六ドル程度なつております。で、最高価格といたしましては約十ドル程度上りましたが、数量が倍になりましたので、大体値上率から申上げますと七十五万トン程度で、昨年度と同様になるかと思いますが、あとの二十五万トン程度というものとの市価の差が日本のほうにおきさしては有利なものになると思います。
  115. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 説明の補足をお願いするわけですが、南方の米について相当戦前のように中共地帯に出ておるかどうかということが一つ。それから大麦でありますが、日本の需要に対応して大麦の生産地における特別の増産とか、そういう日本を対象としての生産計画、そういうものが行われておるかどうか、それを一つ……。
  116. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 南方米の中共地域に対する輸出ということはまだ我々も十分なる情報を持つておりませんが、本年の一月で上したか、シンガポール等の会議における情勢をみますると、セイロン等は中共からの買入れというふうなこともあるように聞いておりまするので、むしろ輸入よりも輸出のほうに変更しておるんではなかろうかというふうに推定いたしますが、まだこの点については十分なる正確な情報は持つておりません。  それから日本を相手といたしました大麦の協定につきましては、そういう話が濠洲との間に多少あるようでございまするけれども、まだはつきりした取極めという形まで進んでおりません。
  117. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今の中共の関係でありますけれども、恐らく的確な資料は入手困難だろうと思いますけれども、いろいろの情報によりますると、異地区におきましては米の増産が相当のスピードで相当量遂行されつつあるように言われておるのでありますが、それらに対して何か情報なり、その状況を判断し得るような資料がありましようか。
  118. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 部分的に、中共におきまする生産の増強等の話も部分的には我々いろいろの面で聞いております。併し総合的に中共におきまする生産の状況及びそれの輸出状況というような点については、まだ正確な情報を得ておりません。
  119. 羽生三七

    ○羽生三七君 その協定にイギリスが参加しなくなつた理由が若しわかりましたら、ちよつとお伺いしたい。わかりませんか。
  120. 下田武三

    政府委員下田武三君) 会議におきましてイギリスは最高価格を二ドル、二ドル止まりとすることを強く主強しておりましたが、結局多数決で二ドル五セントときめられてしまいましたために、最高価格に不満でありましたために署名いたさなかつたのでありまするが、なぜイギリスがそういう手に出られたかと申しますと、イギリスは濠洲から伝統的に多量の小麦を輸入して、濠洲としてもイギリスに売らざるを得ないという立場にあります。そこで、そんなに最高価格が高いなら、わしは脱退して濠洲から話合いで好きな価格で買うぞということが言える強味があるために、そういうことができたわけでありまするが、イギリス以外のヨーロッパ諸国、日本は、そういうふうに昔から日本がお得意であつたというような輸出国を持つておりませんために、そういう態度には出られなかつたわけであります。
  121. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の上得意を持つていないんですが、併し今度農林省からお出しになつた報告によると、どうも今後相当小麦は過剰生産の気味があり、価格も無論下落の方向、相当長期的に見ても下落の方向になるのじやないかというような御報告のようですが、そうだとすれば、何にも協定に縛られてどこかで買わなくても、自由市場で今の日本程度は買えるというようなことは言えないですか、どうですか。
  122. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 御承知のように最高価格で買いまする場合は、輸入国の権利でございます。市場価格がそれを上廻つておる場合におきましては、市場価格よりも安く買えると思います。市場価格が若し仮に最高価格を幾分下廻るという場合には、これは輸入国といたしましても市場価格で買うことは何ら差支えがないわけであります。ただ問題は、最低価格より市場価格が下廻るかどうか、こういう問題かと存ぜられるのであります。その点につきましては、現在も小麦の増産等もございまするが、そういう事態には立至らないのじやなかろうかというふうに考えております。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一つシカゴ相場でなくて、ポートランド相場が基準になるというのは、どういう事情なんですか。
  124. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 現実の問題といたしまして、シカゴ相場は或る程度ノミナルな相場でございまして、そこでの現物取引は殆んどないわけであります。それから東海岸に出るという関係で、キャリング・チャージそれから運賃等を考えますと、先ほど申上げましたように、仮にシカゴ相場で買いまする場合におきましても、現実の向うのFOBは二十セント以上は高くなる、而もその場合におきましては相当運賃の距離もできまして、現実に我々が買い得るところはポートランド相場で買つておると、こういう事情で、現実にはポートランド相場が具体的な現物の取引の中心になつております。
  125. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつと御質問しいのですが、小麦協定一つの狙いは、最高、最低と言いますか、基準の線があつて一般の市価がその基準を上廻つてもその基準内においては売ることもできる。その代りに市価が下廻つても買手は高い価格で買うというのが建前であろうと思うのですが、市況のことでありますから、これは上廻ることもあり、下廻ることもあり得るわけなんです。今後三年間に亘つて今の市価を下廻わらないということは私は言い得ないだろうと思いますが、どういう推算でそれをそういう見通しを立てられているか、これをお聞きしたいと思います。下廻る場合があり得るということを考えることが、むしろあの協定の趣旨からいつて当然じやないかという感じがするのであります。そうでなければ、三年間の協定が輸出国の立場から見れば、その意味合が非常に少いように思われる。三年間の間に下廻ることがあり得るというふうな見方が、先般開かれました会議でなかつたのかどうか。その点を一つお伺いしたい。同時に三年間に亘つてあの下の線を下廻わらない見込みだと言われる一つの根拠をお示しを願いたい。こう思うのであります。
  126. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) お答え申上げますが、これは勿論将来の問題でございまするが、我々といたしましては、例えば昨年度に前協定におきまする最高価格の下におきまして、濠洲の小麦は相当羊毛との関係で減産いたしました。その減産の点につきまして、塚洲本土におきましては相当の強い反対論があつて、最高価格を上げるという関係があつたのでございます。濠洲方面といたしましても、一つの生産維持の建前からして、或る程度の価格でないと減産に向うという事実がございまするし、又アメリカにおきましては御承知のようにCCCの制度がございまするし、又カナダにおきましても小麦ボンドを似ちまして、一定の売渡し価格をきめまして、そこで操作をいたしておる。やはりそれぞれの国におきまして、国内生産の維持という建前からいたしまして、或る程度の小麦の価格の維持ということは、その国の政策として考えられておりまするので、その政策の状況から判断いたしまして、そういう価格になる場合におきましては、相当小麦の作付或いは生産等に影響があるのじやなかろうか。そういう影響のない程度の価格ということになりますというと、現在の最低価格を下廻るというふうなことはないのではなかろうかというふうに考えている次第であります。
  127. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それでは、輸出国の立場からいつても、やはり同様の考えを似てその条約に参加しておるのですか。アメリカにしても、カナダにしても、出すほうの立場から言えば、市況が上廻つているときに、あの線の範囲内で出して、それだけの、まあ条約上の責任を持つているわけでありますが、そういう努力は今後三年間あの最低価格を下廻ることはないという観測を以てあの条約に参加しているかどうか、こういうことなんですが、日本政府と同じ見通しを持つているのかどうかということなんです。
  128. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 輸出国のアメリカ、カナダ、濠洲と、日本と、同じ考え方で以てこの協定に参加しているかどうかというお問いかと存じますが、これはまあ向うの政府といたしましてもそれぞれの考え方はあろうと思いまするが、その建前といたしまして、小麦のような世界的商品を、最高、最低の間において安定をして行きたい。同時にそれが国内の生産の維持にもなる。こういう考え方で以て小麦協定が結ばれたわけでございまするから、やはり最高、最低の一つの幅において小麦価格の安定を図るという趣旨を以て、加盟国は協定を結んでいるというふうに考えている次第でございます。
  129. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 その点についての論議は先ほど承りました範囲においてはなかつたのでありますか。
  130. 下田武三

    政府委員下田武三君) 価格の点の論議は実は会議の中心の課題だと伺つております。
  131. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 只今条約局長から申上げたように、価格の点は中心課題でありましたが、我々聞いておりますのは、主として最高価格を幾ら引上げるかということが中心課題のようにも聞いております。
  132. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では小麦協定に関しまする食糧庁長官に対する質疑はこの程度にとどめておきたいと存じます。
  133. 羽生三七

    ○羽生三七君 本日はこの程度ということで……。
  134. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 本日はこの程度にとどめておきます。実は本日午後も委員会を開きまして、外務大臣及び保安庁長官に質疑を行うことになつておりました。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  135. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて。本日午後一時半から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十四分休憩    —————・—————    午後零時四十四分休憩    午後二時二十二分開会
  136. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では只今より外務委員会を再開いたします。先ずMSAについて外務省欧米局長から御説明を頂きます。
  137. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) アメリカのいわゆるMSAと申しております相互安全保障法は御承知通り一九五一年に制定せられまして、翌年の一九五二年中に改正をいたしましてその改正を含めましたものが、現在我々が呼んでおります相互安全保障法ということになります。アメリカでは予算の提出上毎年この法律につきまして予算を作りまして、そのときどきに応じまして字句の修正その他を修正の形で出しますので、例えば只今議題に出ています一九五三年から五十四年度にかけての予算の編成につきましては、一九五三年度相互安全保障法の改正という形で出ているわけであります。  私どもがこの安全保障法を一応調べまして、大体の仕組と申しましようかお手許にございます資料から申上げますと、五十一年から五十二年に改正せられました現行の安全保障法におきましては、先ず大体の条文の数から申しますと、御承知通りアメリカの条文は最近各篇ごとの条項を新たに起しますから、五篇一項と申しますと第五篇の第一条ということになります。四百三条というのを引きました場合には四篇の三号ということになるわけでありますが、これを全体にいたしまして甚だこれは条文から申しましても少い条文であるわけでありまして、大体四十二条から成つているわけであります。  そこで簡単に安全保障法の法律の構成を申上げますと、第一条は前文のような形になつておりますが、第二条と普通言われますのがこのMSAの法律の目的を規定しているわけであります。この目的に従いましてMSAの法律というものは実施されているわけでありますが、主として「友好国に対する軍事、経済、及び技術の援助を承認し、これによつて友好国の安全保障、独立、並びに米国の国家的利益のために友好国の資源を開発し」云々とここに規定しておりますのが安全保障法の大眼目であります。第一篇として百一条というものを起しておりますが、ここから始まりますのが、地域的に分けますのは第一篇は欧州であります。欧州予算承認が第百十一条、その中にナトーの北大西洋条約加盟諸国に対する軍事援助の問題を規定するのが一で、その他の諸国がそのあとにそれに附随いたしまして避難者等に対する額の最高額をきめたのが、お手許に差上げてございます五十一年の相互安全保障法の第四ページ辺りにそれを規定しているわけであります。第六頁のBに至りましては、これから予算の流用方法を規定しておりますし、あと採用した場合にその規定の義務を課しているわけでありますが、第二篇が近東及びアフリカ、これも同様の規定でございますから省きまして、第三篇がアジア及び太平洋地域、これは三百一条に規定しておりますのが支那の一般地域、軍事並びに経済、その他の援助の承認をいたしております。今問題になります日本に対する援助はこの第三篇の支那地域という所に入るわけであります。三百二条が経済及び技術援助の予算承認あとのほうに十四ページになりますが、米国における支那及び韓国の学制のことまで規定しているわけでありまして、その次にはやはり十四ページにしまいの段になりますが、国連朝鮮再建局に対する予算承認規定してございます。十七ページにやはりその(d)に韓国に対する見返資金の均等を規定しておりますし、(e)では極東経済援助の運営方法について規定しておるわけであります。  第四篇がアメリカ諸共和国及び西半球の自治領に対するもの、第五篇に参りまして、初めてMSAの本題といたしましての、何と申しましようが組織だとか、いろいろ総則をきめておりますが、第五百一条は安全保障本部の長官の規定であります。その責任は二十ページから、(1)、(2)と挙げております。これが本部長官の責任になります。俸給その他をきめた点を二十一ページの(c)という所に書いてございますし、又その下に直属いたします機関として、安全保障局が二十二ページの(e)に規定しているのが安全保障局の規定であります。二十二ページに入りまして、従来ありました経済協力局の廃止の問題、それから相互保障局の細かい規定というのが出ております。二十四ページの第五百三条相互安全保障長官の追加の義務ということが、いろいろ一九五二年六月三日以後における長官の任務について規定しているわけであります。  二十四ページ並びに二十五ページに、一つあとで問題になるところがあるかと思いますが、本部長官代理といたしまして、欧洲に駐在する特別代表の規定が五百四条に規定してあります。これは主として北大西洋条約加盟諸国に対するいわゆるナトー協定のために派遣されている、実質上の任務を持ちますいわゆる安全保障長官の代理として欧洲に駐在しているという特別機関であります。あとは職員の規定でありまして、二十九ページにおきましては五百五条に国務長官、つまり今まで申しましたのが主として国防長官とそれから安全保障長官との任務にかかるものでありますが、五百五条は国務長官についての規定でございます。  その次に五百六条、ここには安全保障法の運用にあたりましてその軍事援助の実体について、実施の任にあたります国防省の中における機関の長官といたしまして、国防長官のことについていろいろ規定が掲げてありますが、この中に(一)の軍用の完成品の必要量の決定だとか、或いは(二)の役務供与計画と統合することができるような方法による軍用装備の調達だとか、(三)の被援助国による完成品の使用の監督、(四)の外国軍隊員の訓練の監督、又(五)の完成品の移動並びに引渡しというようなのがございますが、ここから国防長官といたしまして軍事援助に対する責任を持ちまして、この責任を持つ法的根拠から援助を受ける国に対して軍事顧問団を派遣して、これが国防長官の指揮を仰ぎながら現地におきまして被援助国との間の軍事援助に対する細目の実施にあたることになりまして、これから軍事顧問団に対する法的な根源が出て来るわけであります。  次に三十一ページに参りまして、海外における協同調整として五百七条に規定してあります。この規定も又軍事顧問団、経済顧問団、技術顧問団に関係があるものでありまするが、米国の政府の外交使節団の下に、つまり大公使の下に、各国におきます米国政府代表相互間の相互調整を確保するという規定がございますが、ここから現地にあります軍事顧問団なり経済顧問団なり技術顧問団というものは、現地におきましてアメリカの大公使の指揮の下に仕事をするという任務が出て来ます。従つてその前の条項の五百六条と五百七条とが現地に派遣せられるいわゆるカントリー・チームの職能を規定している規定であります。次は四を省きまして、三十三ページの身許の審査、これは大して問題はございません。  三十五ページの五百十一条、援助を受ける国の資格がここに謳つてありますが、ここにいろいろな点にいつてMSAの解釈については考慮を要する点になります。つまりアメリカはMSAを適用して援助するという国の資格をここに六つまで大事なものを並べてありますが、五百十一条の第一号を御覧頂きますと、大統領が援助を与えること自体がアメリカの安全保障を強化するものであると認めることが援助を与える第一段階になります。第二の段階といたしまして、援助を受ける国が次に掲げたような六つの条件につきましてその条件があるということ、又それを引受けるという義務があるとすれば、引受けるということを同意して初めて援助を与えられることになります。つまり大統領の認定とそれから援助を受ける国との義務に対する承認とがあつて、初めて援助を受けるということができることになりますし、又この援助を受ける国がここに掲げられた六つの条件に対して受諾するということを必要とありますから、つまりその条文で申しますと被援助国は次のことに同意している場合とありますから、この同意を何らかの形で出すことが援助を受ける必要な形式になります。この形式は交換公文の場合もございます。又条約の形式を持ちました協定を結ぶこともあるわけであります。この細なく中はこれをここで申上げるまでもかいすでにいろいろ流布されている点で、ここに一々申上げる必要もないかと存じます。  それから一つ御注意を頂きたいのは三十六ページのCというところで、米国政府は米国の援助を受ける諸国が、自由世界の目的達成のために最善を尽してみずからを助け、且つそれらの国々に相互間に、及び米国との間に協力するため最善の御協力をする、その程度においてのみ相互安全保障は実現され得るものである。これは皆様今お読みいたしましてどつかで聞いたような文句だということにお気付きになると思います。日本政府は六月の二十四日に、この只今申上げました五百十一条の六つの資格について、日本政府の所見と又自分の認定している点をアメリカに正式に見解を求めたのであります。これに対しましてアメリカから六月二十六日に回答を寄せておりまして、その回答の最後の節に記されておりますのがこの只今申上げましたCの条項であります。つまり安全保障法の五百十一条のC項というのが、アメリカにすれば、軍事援助若しくはその他と呼ばれますところの安全保障法によるところの援助あたりについて、アメリカがどういう意図であるか、どういう意思を持つているかということを謳つたのがこのC項だということを御承知頂いてよろしいかと思います。  次は三十八ページの五百十三条、これは資金の特別使用、各編の中で約一割に相当するもの、一割を限度といたしまして、安全保障法が流用し得るという規定が述べてあります。  その他は四十ページにございます五百十五条の差押えに対する保障、これはいろいろ細かい点を規定した点で、当然援助を受けるとならばそういうことになります。  四十三ページの特許及び技術知識に関する問題、これも発明の点だとか、知識或いは情報というものについて規定しているわけであります。四十六ページの五百十八条は大統領の報告に関する点。次の五百十九条は被援助国の通貨、これは近東アフリカ、アジア、及び太平洋地域におきまして援助を受ける国の通貨を、或る場合においてはとつておきまして、それを使用するという場合がございます。普通見返資金という形で呼ばれるものがその主たるものでありますが、そこについての規定が五百十九条の規定であります。次の五百二十条、保証金に関する問題。次は事務費に関しまして集団防衛費だとか、土地の借入れ、買上げ、又は税金に関する問題、又事務、アメリカ機関の事務運営費の問題等が規定してございます。  五十ページの五百二十三条は、見返資金について従来ありましたものに対してかなり細かい規定を挙げておりますが、これは前の条文がこれに挙げてございませんで、経済協力法の中に規定しておるものをここで修正して大成したということになりますので、これはあとで又いつか申上げる機会があると思います。  次の五百二十四条は装備の返還に関するものでありまして、解体したり或いは屑化したり、その他の目的のために返還ということを規定した条項であります。十二ページに余剰の装備に関する問題、議会の委員会の経費の問題、最後に国際連合の技術援助に関する問題等が規定されておりまして、別に問題になることはございませんと思います。次の第五百二十九条、これは大統領が次のような場合においては援助の停止をするという規定が設けてあります。又国家的な目的に反するとか或いは安全保障法律の性格及び目的と両立しない、或いは国際連合の安全保障理事会の決定に反すると認めたときとか、平和に対する脅威若しくは平和の破壊、若しくは侵略行為というふうに規定してございまして、一応の規定としてここに掲げてあるわけであります。次に五百三十条は計画の終了を規定しております。これはわざわざ説明するほどのこともないと思います。  あと細かい規定がございますが、MSAの法律解釈に当りまして主となりました条項は、大体これで尽きていると思うのでございますが、一言附加えさして頂きたいのは、五十一年の安全保障法の前には、要するにアメリカが戦争中並びに戦後におきまして外国に与えた援助はいろんな形になるわけでありまして、戦争中におきましては武器貸与法というものがありまして、戦後におきましては経済開発法だとかいわゆるポイント・フォアと言われるものだとか、いろんなものがあつたのでありますが、この五十一年の安全保障法によりまして従来の、そういつた外国に対する援助の法律全部の精神をくみとりまして集大成したものがこの安全保障法でありますが、同時にこの法律に先行いたしますところの経済開発法だとか、或いは相互防衛援助法だとかいうものは全部一応この法律ができましてもなお且つ生きているということになります。従つて安全保障法の実際の適用になりましては、単にこの安全保障法だけでなく、この法律の前にありました、今申上げましたようなもろもろの法律も、やはりその内容になつて現在生きているというふうに御承知を頂きたいと思います。
  138. 中田吉雄

    中田吉雄君 大臣おいでになるのですか。
  139. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 大臣は今の段階ではまだいつ頃かわかりません。
  140. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 五百三十条の計画の終了の問題ですね。これと今度の国会で修正になつた、いつまで継続するとかいうことが問題になつておりましたね。あれとは何か関係ありますか。その後の修正の問題なんですけれども、どうですか。
  141. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 新聞紙に報じられましたところで、私ども実は細かい、アメリカの今度終了する、二年間で引揚げるというのは、私の考えではこの五百三十条の規定によるものではないように考えております。
  142. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 御説明をお願いしたいのですが、アメリカの会計年度の七月一日から新しく発足する現在の案は、すでにアメリカの国会としては審議を了して決定したのか、まだ審議が議会として継続してるんですか。
  143. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 新会計年度はおつしやる通り七月一日から始まるのでありますが、アメリカの議会における審議も遅れたようであります。今上つております予算は下院を通過いたしまして上院に参りまして委員会の討議の途中にあると思います。
  144. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 アメリカの議会としてはそういうことは往々あるわけですか。
  145. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 数の方はどちらが多いんですかちよつと手許にございませんが、従来は大体六月三十日までには予算が通るというものが多いと思います。但し七月になつて七月も大分過ぎてから決定したという例もございます。現在は七月になつてから決定されるという段階でございます。
  146. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 これも占領時代に各種の援助施設日本にあつたわけですね。勿論あの時は軍事占領下ではありましたけれどもあのうちで修正総合されてMSAの制度に吸収されるものがあるでありましようか。
  147. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 御存じの通り占領下におきまして日本が受けましたアメリカの援助というものは、このMSAなり或いは経済開発法なり或いは相互援助法なりというものの適用を受けません。あれは占領下にあるものに対しては当てはまらない規定でございます。従つて日本占領中にアメリカから受けました援助なり協力というものは、すべてアメリカ占領軍と申しますと結局アメリカの軍事費から支出せられたものであります。従つて今までの日本に対する援助が今後継続されたとして、どういう形になるかこれはまだ決つておりませんから分りませんというのが実際でありますが、私どもの解釈から考えますと例えば日本保安隊に対する武器の貸与とかいうもので、軍事費から賄われたものも、日本が独立いたしましたので本来から申しますと、昨年の七月からこれは軍事費の継続がありましたから、向うの会計年度とこちらの会計年度と違う関係もありますので、本年度まではそのまま続いておりましたが、新会計年度から日本がMSAを受けるとすれば、MSAの形で受けるということが恐らくアメリカとして考えていることじやないかというふうに考えます。併しながらMSAの援助を受ければ今までの保安隊に対する援助なり何なりは全部引上げられる、こういうふうに考えます。今までの分は別途考えられる分もありますが、まあ仮にMSA援助があつたからと言つて、現地軍が日本にあります関係上、その軍の予算にも幾らかの余裕はあるはずであります、そういう形で援助されようというふうに考えております。
  148. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 保安隊関係じやなくて、占領時代に軍関係でなしに、向うが経済協力関係でしておつたようなものもあつたと思いますが、若しなければそれで結構でありますから、それからこれも御説明で結構でありますが、あの当時の援助についてその最終的の処理について何らか取りきめと言いますか協定と言いますか、そういうことが行われたのかどうか、若しそれが行われておらないとすればあの援助も将来についてどういうふうに我々として考えて行つて然るべきものであるかという点であります。御承知のようにまだ日本があれは返済する義務ありという見解もあり、いやそうじやない、貰いつ放しだという見解もある。それがはつきりしておらないんです。片一方MSAについては相当法律的な基礎もはつきりし、これに基く両国間協定が作りあげられる、そのいろいろのものがどういうふうに将来なつて行くかという点なのでありますが。
  149. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 今までMSAの先にありました法律の、防衛援助なり或いは開発法なりによつて日本が受けた援助というものはございません。日本の援助は主として占領軍の軍事費から賄われたものであります。それでは然らばそういう問題についての債権債務の関係について話したいことがあるか、又どうするつもりであるかという御質問に対しましては、これは何かで債務といつて日本が一応何と申しますか確認をしたような形のものもございます。例えば余剰物質の払下げを受けておりますが、そのときはちやんと帳面に付けまして、こちらは日本が買入れたというような形で書類が残つておるものもあります。ガリオアの援助だとかイロアの援助だとかそういうふうな何らの規定もしないで日本が実質上その計画に従つて援助を受けたものもございます。併し、これは債務があるというふうにも考える見地もありましようし、当時の人たち考え方も伺いましたところでもはつきりしないものも多くあるのであります。そこで昨年来アメリカから、占領も済んだことであるから、本件について一応はつきりした両方側で計算をしたほうがいいじやないかという意向もございましたので、私ども関係各省特に大蔵省、通産省にも話合をしてみたのでありますが、日本側もまだ資料が整いません。アメリカが何を債権とし、何を日本側の債務としたかという点については実に当時におきましては情報もございませんでした。そんな関係でこれは全部総括いたしまして、日本アメリカとの債権債務の関係ということで話合おうということを向うも言いましたので、時期が来ればそういう話合もいたしましようという返事を今年の春出しておりますが、そのままになつております。併し、昨年ドイツが占領下におけるそういう債権債務の関係を清算いたしました。そういう関係から見まして、この金の中で金額を払わなきやならんものもありましようし、多少その点についてもらつたというような形のものもございましようし、或いは話合の結果額などについて多少とも加減し得るものもあると考えますが、ゆくゆく交渉でも始まりますと両方から計算書を持出して話合うということになると思います。
  150. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の問題はもう一度はつきりしておきたいと思いますが、そうすると対日援助費は借金だということをまだ確認してないわけですね、正式には。
  151. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これは必ず債権であるといつて確認したものとしないものと両方持つておるようでございます。
  152. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ガリオアとかイロアとかいうようなものはまだ債務としては確認していないわけなんですね。
  153. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) お説の通りまだ確認しておるわけではありません。
  154. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その問題はそれじや他の機会でいいから大蔵省の関係を一遍お呼び願つてその点を一つ質したいと思いますから他の機会に申上げます。  安全保障関係についてお聞きしたいのですが、その前に各国と相互防衛協定を結んでおりますね、その協定締結の実情をどういう国と結んでおるか。それから大体協定の内容なり形式はどういうようになつておるのか、その点御説明願いたいと思います。
  155. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 実はいつぞやの委員会で大体今御質問の趣旨のような資料の提出要求がございましたので、私どもも一応の一覧表を作つておりますし、それから又各国との協定の形その他につきましても、できるだけ資料をお手許に差上げたいと思います。近日中に差上げられると思いますので、資料の提出の御説明の必要があれば御説明申上げたいと思います。
  156. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやそれは他の機会にお願いすることにして、一九五四年の相互安全保障内容のプログラム、その内容を少し詳しく御説明を願います。それから予算審議においても大体六月一ぱいくらいまででどこいらまで決定したのか、
  157. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) この点につきましては、アメリカの下院におきましてヒアリングもありましてそのうち発表できると思われる記録も発表になりまして、先日あたり御要求がございましたが、千三百ページに上る報告書と申しましようか、記録が出ております。その中から大体拾つて手許に参考になる資料を差上げることができますように目下努力中であります。  五十三から五十四の会計年度におけるアメリカ予算の大体の案を申上げますと、項目をわけまして五つにわかれております。第一が相互防衛資材装備訓練と申しますので、普通一般的に軍事援助と呼ばれるのがこれでございます。それの軍事援助につきましては、大体の額から申しまして四十億二千四百五十二万三千ドルというのを計上してありますが、これは四つの地域にわかれまして、第一が北大西洋条約諸国に向けたもの、第二が中東向けのもののギリシャ、トルコ、イランの地域であります。第三が中国一般地域に向けたもの、第四が米州向けのもの、この四つにわかれておりまして、北大西洋条約諸国向けのものが二十五億三千四百三十二万三千ドル、中東向けギリシャ、トルコ、イラン向けのものが四億六千九百二十万ドル、中国一般地域に充ててありますのは十億百万ドル、米州向けのものが二千万ドルというような内訳でございまして、合計いたしまして四十億二千四百五十二万三千ドルという内訳になつております。  第二の計画として挙げられておりますのは、相互防衛財政と申しますので経済的な援助が主になります。防衛支持援助という言葉で普通呼ばれておりますが、それは額にいたしまして九億九千五百万ドル、内訳といたしましては、やはり地域的に四つにわかれまして第一が欧洲向けのもの、これは三億、第二がイギリス及び北大西洋条約署名国の航空機の生産問題、これが約一億、フランスにおける軍需品の生産、これが約一億、第四が国府及びインド支那向けのものでこれが九千五百万ドル、第五がインドシナにおける軍隊の装備及び資材調達の問題、これが約四億となつております。  只今申上げましたのが第一の軍事援助若しくは相互防衛資材並びに訓練に関する種目、第二は防衛支持援助若しくは相互防衛財政に関する問題で、第三の費目といたしましては、相互特別武器計画というのがございまして、ここに二億五千万ドルが計上されております。その内容は発表されておりませんのでわかりませんのですが、私どもの想像では航空機、特にジエト飛行機の生産に関しまして英国並びにフランス等とアメリカとの間に協定があり、この協定従つて欧洲における特別武器の計画として費目を計上したものが一億五千万ドルの相互特別武器計画だと思います。  第四の項目が技術経済援助、これは後進地域の開発計画に対するものでありますので、額といたしましては四億五千三百六十三万四千ドル、地域的に更にこれがわけられまして五つありますが、第一が近東及びアジアの問題、四千三百七十九万二千ドル、第二は南方アジアに関する問題、四千九百十万ドル、第三がフィリピン及び泰国に関する地域二千二百万ドル、極東各属領に関する問題、百万ドル、第五がラテンアメリカ諸国に関する問題、二千四百三十四万二千ドル。又この中に基礎物資の計画というものがございまして、これが約二千五百万ドル支出されております。更に中東向けアフリカ諸国の特別経済援助として一億九千四百万ドルが計上されております。インドシナ、パキスタンにおける特別経済援助として九千四百四十万ドルが支出されております。これが第四の項目自立経済援助であります。  第五が集団機構による多辺的な援助、主として国連によるものでありますが、その計上されておりますのが一億五百五十七万五千ドルという種目でありまして、種類だけを上げますと、先ず国連におけるところの技術援助、第二が国際児童の救恤基金、国際連合の朝鮮再建、米州諸国の機構、いわゆるIIAAと呼ばれておりますが、それの技術援助、西欧の難民の移民計画、救済民の輸送というものがここに計上されておりますが、大体これにつきましてアメリカの議会では多少数字に修正を加えたようでありますが、大体骨予に盛られました予算案を承認いたしまして、目下上院を通されたというのが現状のように見ております。
  158. 中田吉雄

    中田吉雄君 これまで政府はこのMSA援助の折衝はしていないということですが、一億一千五百万ドルとか或いは一億五千万ドルとかいう予算がこのアメリカの下院をすでに通過しているということになつているわけですが、一体アメリカはよその国の国家の政策にも関するようなことを、ヨーロツパその他数十カ国に対して事前に全然相談なしに、ああいうふうに組む仕組でありますか。大体その編成はどこでやるのですか。全然相談なしに相手国の国の政策にまで烙印をおすほど重要な影響を及ぼす援助額というものを、而も義務を伴うようなものを組むという大体仕組なんですか。ヨーロツパ諸国もそうなんですか。それはどの条項で一体やるんですか。その関係一つ説明願いたい。
  159. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 相互安全保障法成立後、新しく援助を受けるということを新しく受諾する国というのは日本が初めての例になります。従つて今までは例えば相互防衛保障法によつてアメリカとの間に協定があり、その協定の裏付けとしてアメリカから援助を受ける、或いは武器貸与についてのアメリカの法律がありますが、これに従つてアメリカから武器の援助を受ける国との間に協定があり、この協定の裏付けとして予算ができるとこういうふうになつたのが従来の例であります。ところがこのMSAができましてから、新しい問題として、起る日本の場合を考えてみますると、アメリカといたしましては、仮に日本が援助を欲しいということになり、アメリカもこれに出すということになりましても、予算の裏付けというものを先にしておきませんと軍事予算から出すわけに参りませんから、その予算の裏付けがなくなるわけであります。そういう関係からアメリカ予算は現在におきましては七月の一日以降において政府が支出し得る予算の大まかなものにつきまして、承認を与えるという形で予算が提出されるわけであります。従つて日本が受けるか受けないか、又、どういう形で受けるかということもきまつていない現状でございますが、アメリカとしては或る金額を予定しておかなければならないわけであります。そういう関係から日本の意思を聞くことなしに、アメリカとしては、若し日本が希望した場合において援助を与え得るという費目を作つておく必要があるわけであります。そこで予算承認として大統領から国会に出されたものにおきましては、入るかわからない日本も含めてそれに対する予算金額というものを一応承認しているという形になつております。従つて日本政府と交渉がない場合にもアメリカとしてはこの措置をとつておかなければならないというわけに見受けられまするので、本年の三月、すでに国防省の係官がアメリカの議会に参りまして、日本に対する援助を今後はMSAでしなければならないだろうということも申しておりますし、それに対する予算的措置も必要だという趣旨の答弁をしておるようであります。
  160. 中田吉雄

    中田吉雄君 我々は、アメリカ国会の聴聞会等の速記録ではかなり進んでやつたということがありますので、只今局長の御説明を額面通りに受取ることができない。まあその問題は別にしましよう。そうしますと、各国のはすでにある協定に基いておる話合がついて予算が計上されて、日本のだけそういうふうになつてるんですか。その点をもう一遍。
  161. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これは各国の実例を、私もちよつと今その点についてどちらが先に言つたかという点をはつきり申上げるあれはないのですが、恐らく、私の考えでは、戦争中の武器貸与は勿論でありますが、戦後におきましても、戦後における各国の疲弊を救うという必要をアメリカが認め、これによつて協定を作り、経済開発法なり何なりというものを国内的に措置を作る。そのときにはすでに援助を受けるだろう相手国との間には一応の話ができて、それから予算が盛られたという場合が多いと思います。それからその後、年度を重ねておりますので、従つて二年目の計画には当然予算というものが先に出ましてあとで援助の形が来たという実情ではないかと思います。
  162. 中田吉雄

    中田吉雄君 昨年度の援助額はどれくらいで、最初の割当がどういうふうに変更し、そしてそれが残つている残というものがどういうふうになつているか、そういうことはわかりませんか。予算の流用ができるようにこの法案にもなつてるんです。昨年の総額が私の手持の資料では六十四億八千九百万ドルというふうになつていろいろ各国に対して割当があつたわけですが、それがいろんな事情で、防衛力その他によつても変更されるでしようし、そういうものがどういうふうに最初の割当額からずれて、そしてそれが、この割当額の残があるかどうか、あればどれくらいあるというようなことがわかりましたら一つお願いしたいと思います。
  163. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 五十三年の六月三十日になります、つまり五十三年度分の会計につきましては、今お話がございましたように六十四億というふうな額と私も承知しております。ただこれがどの程度つているか、どういうふうになつているかということは、恐らく御承知のようにもう数日たちませんと計算が出て来ないわけです。出て来次第お手許に差上げることは勿論でありまして、今の段階でわかる範囲は至急調べて提出したいと思います。
  164. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の資料に関連してですが、五十一年度の安全保証法ができてからこのかた、各年度のプログラム、特に今局長が五十四年度についてご説明なつたような分類に従つて、その年度各区分の予算の額がどういうふうに割当てられていたか、それが或いは各国別にどういうふうに変化を示して来たかということがはつきりわかるような資料一つ御提出願いたい。それからその場合に特にこのイギリス、それからフランス、イタリー、その各国別を中心にして見てどういうふうに変化して来たかということ、それからアジア諸国、特にインドであるとかパキスタン、インドネシヤ、ビルマ、そういう国々の援助はどういうふうに変化して来たかということのわかるような資料一つお願いしたいと思います。  それからもう一つ。今おつしやつたこの予算はその通りだが、実際の支出状況はかなり違つているようでありますし、それから未使用残が非常にたくさんあるということが断片的に伝えられておるのですが、その予算とは別に実際の使用がどういうことになつたのか、殊に未使用残が幾らあるのか、この五十三年度末までのやつはまだなかなかわからないかと思いますが、この間ちよつと新聞か何かで見たところでは去年の十二月末くらいまでの未使用残が、はつきり数字として出ているように、何か報告してあつたのをちよつと見たことがあります。その期間くらいまでのものは正確に数字を出して頂きたい。
  165. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これはMSAのほうで毎年一度報告を出しておりまして、毎年勿論会計年度が終りましてから数カ月たつてから出されるのが例のようでありますが、今のような例から五十二年度の会計年度までの分はお手許に差上げる材料をまとめますとございますけれども、それ以外のものにつきましてはお話のございました月々に又報告し得る材料を報告した一般的なこういうものも出ておりますので、この中から拾いますと非常に御趣旨に副うような資料が大体集まるのじやないかと思いますから至急提出することにいたします。
  166. 中田吉雄

    中田吉雄君 それから五十一年度のこの保障法ができてこのかた、イギリスがずつとどういう援助を受けて来たかということを概略お話願いたいのですが、特に去年の連邦会議、或いは今年の会議あたりでこの援助に対してどういう態度をとるかということが非常に論議されたと思うのですが、それらの事情。それから殊にこの援助は今年は何か去年の半分ぐらいになつて、来年度は全部援助をもらわなくてもやつて行けるような、そういうふうにするんだというような話も聞いておりますが、それらの事情はどうなつているのか、先ずイギリスについて御説明を願いたいと思います。
  167. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) イギリスが受けて来ました援助の内容は発表せられたところは極く少いのでありますが、額は先ほど申上げましたように報告を編集いたしますと大体出て来ると思うのですが、内容の点につきましては折角の御質問にお答えできるような内容か果して御報告できるかどうか、私も少々これは心許なく思つているわけであります。ただ金額につきましては大体のところを、報告に出ているようなものを集めまして後日提出できると思います。連邦会議で援助に対する議論があつたというようなこと、これも私多少承知したわけでありますが、御存じの通り英国は戦争中から戦後にかけまして武器貸与によるもの、その他から、ずつとアメリカの援助を受けて来ているのであります。やや経済的にも落ち着きを持つて来ましたりしますので、英国といたしましてもいつまでも援助という形で受けるよりは、却つて独立の形で自分は自分で独立して行くという態勢をとつたほうが国家将来の経済政策から見てよかろう、健全だろうという意見があることが私の承知しておるところであります。これは実はアメリカ自身もその考えを持つておるようでありまして、いつまでも援助を繰返して行くのではなくしてやはり将来は各国が独立することが大事であつて、それがためにはアメリカの援助というものは若し成立することによつて経済的な自立というものに対する士気なり或いは計画なりというものがアメリカ依存になつてはいけない。そういう場合にはやはり減すなり停止をしなければならないというのは、アメリカがヴアンデンバーグ決議で一九四九年以来とつて来たアメリカの政策であります。特に昨年以来言われております援助に代る貿易というアメリカの標語は、こういう援助なり経済援助なり技術援助にもやはり現われて来ているようでありまして、アメリカとしても直接の援助を与えるということでなしに貿易を促進することによつてその国の経済を育成して行くというほうがより健全な長い計画で実行ができるという考えで、毎年MSAの援助というものは少くともだんだん減らして行きたいというのがアメリカ考えだろうということは明かな事実であります。ただ連邦会議でどの程度これを取上げましたか、ちよつと手許資料がございませんが、これをよく研究をしてみます。
  168. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点今お話程度のことは私たちもわかつておるのですが、問題は過去二回の連邦会議で特にこの問題が中心になり、而も援助を受けたためにイギリスの輸出が非常に少くなつてそのために経済危機が深刻化して来た、経済危機が非常にひどくなつて来た。そこでそれを転換をしなければならんという意味で相当問題になつたということを聞いております。その辺の内容の実情をもう少し詳しく御説明を願いたい。殊に去年の暮でしたか、今年の初めでしたかチャーチルが渡米したときのいろいろな話合の中心題目はそれだつたんじやないかと思うのであります。従つてそういう点を今若し御用意がなければ一つ詳しく正確にお調べ願つて御報告を願いたいと思います。と申しますのは日本との協定を作つたり或いは協定の実施細目に入ろうとされる時期ですから、そういう他国の実例は詳しく御調査になつて持つておられると思いますが、これは二三日遅れても結構ですが、もう少し詳しく御説明を額いたい。  それからもう一つ次はフランスの実例ですが、フランスでは一昨年でしか、去年でしたか例の金額問題で相当争いがあつてそれからその金額が約束通りに援助が来ない、そこで催促したら、その催促に関連をしてその金額の使用の方法を明細に指示するのみならず、それに関連してイギリス、フランの財政政策を相当批判した、そのために内政干渉等々の問題が出て外交交渉の非常に重要な問題になつたということを殊に伝え聞いておるのですが、その辺の事情を詳しく一つ説明願いたいと思います。
  169. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) フランスの問題は私どもも実は当時MSA問題を直接身近に感じなかつた関係もありますので、多少問題があつたように記憶いたしておりますが、今そこですぐ御返事申上げる材料を持つておりません。従つてお話のようなことがありましたかどうか、よく取調べました上で次回にでも御報告申上げることにさして頂きたいと思います。
  170. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 事実があつたことは確かなんです。若しそれがはつきりしていませんでしたら他の機会でよろしいのでございますから、もう少しそういう点を詳しくお調べの上で御報告を願いたいと思います。  それから次はインドネシアでこの援助に対してどういう態度をとつて来たか、どういういきさつになつているかその点を一つ
  171. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) インドネシアでは実際上はアメリカとの間に援助を受けるという援助を一応両者で話合いまして、案ができましてこれをインドネシアの国会にかけたのでありますが、当時いろいろ内政上の都合もあつたのでございましよう。国会でこの点については論議しているうちに結局お流れになりまして、現在なおインドネシアが受けておる事実はないわけであります。ただこの点につきまして私ども調べてみたのでありますが、やはり国内的ないろいろな政党或いは政党の争いの一つの話題となつたということであつて、今後アメリカに対するMSAの援助なり何なりについて気にくわないからこの援助を受けないという意味で受けないのではなくて、国内の政治的な事情から現在まで援助を受けていないというのがインドネシアの実情のように見受けられます。
  172. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点は非常に違うのですよ。我々の記憶では外務大臣が調印したと思うのです。それを国会にかける際にひもがついておつて独立後なお日が浅いインドネシアの中立政策に違反する、アメリカの従属国になるというのですね。きびしい批判からそういうふうになつたんで、その点は私かなり資料を持つております。あの時の外務大臣が内閣のつぶれる原因だつたと思いますが、それは只今局長の説明なさつたのと違つて、それはひもがついてインドネシアの立国以来とつておる中立政策に違反する、そして安全保障にならない。こういう認識の上に立つてやはりインドネシアがやりビルマも大体それと同じような傾向をとつておる、こういうふうに理解をしておるわけでありますが、その点もう少しはつきりして頂きたいと思います。
  173. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 私が先ほど申上げましたのは、国内にそういう議論についての考え方の違いがあつて、時の政府アメリカとの間に協定を結んで援助を受けてはいない。又反対党につきましても中立政策に違反する、結局これは現在まで実現しなかつたということを申上げるわけで、根本的な趣旨からは今お話なつたことと私が申上げることと違いはないと思います。  ビルマにつきましては、軍事援助についていろいろ議論が展開されて、結局結論がなくて技術援助のほうに代るということに変つて来たというふうないきさつを知つておりますので、これは今申上げましたように、私はそこの国がはつきりきめたということよりはそういう議論があつたが故に実現しなかつた言つてもいいんじやないかと思います。現在においてもビルマにおいて受けてもいいという意見をする人もあります。
  174. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 インドネシアの問題はそういう単なる反対等との議論の問題でなくて、今中田君の言われたようにスバルジヨ・コクラン協定なるものが外務大臣の一存でやられたにかかわらず、同じ内閣のスワカ国防相その他の反対があつて国防相がこれに反対をした。従つてそういう関係でスキマン内閣が総辞職してウイロポ内閣が成立をした。そしてでき上つた時には軍事援助なるものを一切断わつて、経済援助或いは技術援助ならばいいだろうということで即刻に切替えられたというようなことが、我々が断片的に調べた調査でもその程度のことはわかるんです。外務省としては、これは局長の御所管でない地域だからちよつとそつちのことまで手が廻らないのかも知れませんが、事少くともMSAの援助に関する非常に重大なる問題の外国事例なんですから、これはほかの局の所管であるならばその局と連絡をとられても、その辺の実情をもう少し詳しく御調査の上に提示するなり或いは説明をするなりして頂きたいと思う。その点はビルマについても同じことです。そういうふうにお願いしたい。  それからもう一つユーゴスラビアとの協定関係その他はどういう状況になつているか、それをお聞きしたい。
  175. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  176. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。
  177. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) アメリカとユーゴスラビアの協定は二つございまするが、一九五〇年のほうはユーゴの食糧事情その他経済的の不況を助けるという点に主眼があつたように聞いております。この一九五一年の協定は五十一年のMSA法ができてからあと締結された協定の事例として、日本の場合にも内容の点について参考になるのでありまするが、これはいわゆるアメリカで言う軍事援助の一つの極端な例だと存じます。
  178. 中田吉雄

    中田吉雄君 最近チトー政権はソ連はソヴイエトに対する非常な反対的な立場に立つ共産主義のような政権のように聞いて、そういうことがアメリカのこの援助になつておつたのですが、最近外交政策を非常に転換しでソヴイエトとの関係を調整するように動きつつあるようですが、そういうことはこの援助にどういうような関係をもたらすかということは予測できませんか。
  179. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) このMSAの援助によります目的が自由諸国家の防衛態勢を固め安全保障をするという点にあるのであります。その上にアメリカの政策と合うということも勿論アメリカとして考えておるわけであります。従つて、今のチトー政権の今後の外交政策についての転換の問題は、仮にありとし、又それが非常にアメリカの外交政策と相反するようなものだとすれば、当然にアメリカとしては停止をしなければならない条件の発生だろうと思います。ただ現在まだ続けております関係上、そういう関係にはアメリカも達していないのじやないか。又チトー政権の外交政策がそうなるかどうか、これは私どもとしてちよつと予測の困難な事情があるということであります。
  180. 中田吉雄

    中田吉雄君 防衛協力を怠つて停止なり減額をされたような国はありますか。
  181. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 私ども手許にあります材料によりますと、まだそういう例はございません。
  182. 中田吉雄

    中田吉雄君 それからアメリカが数十カ国に対しまして援助をしているわけですが、各国に対して顧問団を派遣していると思うのですが、各国のその大体の数はわかりませんか、被援助国に対する。それをお伺いしたい。
  183. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 顧問団につきましてはまだ発表せられました数字がございませんので、何名どういう国に派遣されているかということが、ちよつと今手許に材料がございません。私どもも今後この協定について交渉をいたしますにつきまして参考となりますので、交渉が始まりましたらアメリカ側にこういつた資料の提出を請求したいと考えております。
  184. 中田吉雄

    中田吉雄君 その派遣されました顧問団の地位というものは大体どうなるのですか。国際法上といいますか、そういう関係一つ
  185. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これは国際法上ということよりは実際上の最近の例として、アメリカの報告が出ておりますものを見ますと、先ほど申上げました五百七条の大公使の指揮を受けるという点から、大使館員に準ずる資格を与えるということを援助国との間に協定をしているようであります。この協定に従いまして身分がきまるわけでありますが、実際の例から申しますと、大体他国の外交官が享受していると同じような特権を享受しているようであります。ただ一、二例えば自動車の番号、外交団の番号を付けないで普通の番号を付けているというように自分のほうから外交官の権利の一部を普通にきりかえたというようなこともありますが、大体外交官に準ずるものというふうなのがその地位のようであります。
  186. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の被援助国に派遣されるアメリカの顧問団、或いは軍事援助顧問団であるとか、或いは安全保障使節団であるとか、いろいろなごたごたしたものが相当あるようですが、もう少しその機構なりやる仕事なりそういうものを少し詳しくもう一度御説明願いたい。
  187. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これはまあ経済顧問団なり技術顧問団なりというものを勿論一々説明すればそれでもいいわけでありますが、私どもが一番やはり顧問団として大がかりであり、且つ権限につきましても非常にはつきりしておりますと考えられますのは、軍事顧問団であります。従つて軍事顧問団がどういう権能を持ち、どういう働きをするかということを御説明申上げますと、あと経済なり技術なりの点についてはおわかり易いのじやないかと思いますので、先ず五百六条並びに五百七条による規定、この二つの条文からアメリカの国務省におきまして発しております、何といいましようか顧問団に対する規定などから、実際上どういうふうに行われているかという点を主にして御説明を申上げたいと思います。  国防省の軍事援助局の責任といたしまして、この五百六条に掲げてありますが、その趣旨は軍用完成品に対する計画の決定及び供与、組立、三軍の監督及び調整をなし、軍事訓練計画の実施をなすという点からいたしまして、実際各国に派遣されております軍事顧問団、普通カウントリー・チームと申しますが、正しくはミリタリー・アシスタント・アドヴアイサリ・グループという言葉で表わしているようであります。この各頭文字を取りましてMAAGというのが普通いわゆる軍事顧問団ということになるわけであります。この軍事顧問団は、軍用完成兵器の計画の決定及び実施に任ずるのがその主たる役目でありまして、職務の一部といたしまして、アメリカの域外買付と普通申しております、アメリカ軍が外国において調達なり買付をいたします、その買付官との間の連絡をし、又援助を受けている国で、仮に軍事訓練が必要だ、そうして、その軍事訓練をこのアメリカの軍事顧問団に頼むというときに、この顧問団が軍事訓練の計画についての実施に当つているようであります。従つて、顧問団の任務をかいつまんで申しますれば、軍用完成品に対する計画及びその調達並びに軍事訓練計画のためにという、この三つの職務に限定されているようでありまして、又、各国に派遣されました軍事顧問団は大体この任務を遂行しているように見受けられます。アメリカの国防省に対しまする報告書から見ましても、この任務の範囲を出でないものと了解いたしました。経済顧問団、技術顧問団につきましては、今の趣旨から大体経済なり、或いは技術などの援助について同様の任務を持つていると了解いたしております。
  188. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その軍事顧問団とここでいう相互安全保障使節団といいますか、経済援助に関連する使節団でしようが、それとは全然出る所も違うし、人も違つて二重に派遣しておるわけですか、若し両方の援助があれば。
  189. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 御存じの通り、安全保障本部の機構は軍事援助につきましては国防省、経済援助につきましては経済協力局として国務省安全保障局、それから技術援助につきましては、ポイント・フオアの関係がありまして国務省が取扱つて来た関係になります。従つて仮にこの三つの援助を受けたというような場合、こういう稀有な場合を想像いたしますと、国防省から派遣される軍事顧問団が今申上げましたような任務を遂行いたしましよう。経済援助を受けるとすれば、経済面で安全保障局の経済顧問団が場合に応じて派遣されて来ておりましよう。若し技術顧問の点について国務省から顧問団が来ておるようでありますれば、これも又技術顧問の点につきまして同じような任務を遂行するということになりますから、おつしやつたように三つの違つた局から、三つの違つた顧問団が派遣されるということも実際上は可能でありましよう。併しながら各国の例を見てみますと、軍事なり経済なりを合せて一つの顧問団を形成している場合も多いようでありますから、その間の連絡はアメリカの便宜に応ずる、これだけを考えております。
  190. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今保安隊に来ておるあれはやはり軍事顧問団と言いますか、軍事顧問ですか、何かそういうものが付いていると思うが。それともう一つ今度この援助を日本が受けるとなつた場合に生まれて来る顧問団は、それとは相当違つたものになるようなお考えなのか、その辺はどう変化がありましようか。
  191. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 実際上の問題といたしましては、現在在日米軍の一部で日本保安隊に対する顧問なり、或いはその訓練の協力なりをいたしておりますいわゆる軍事顧問団というものは、在日米軍としての資格においてあるわけでございます。従つて日本が今後MSAの援助を受ける、それも軍事援助を受けるということになりまして、日本に顧問団が派遣される、そして日本保安隊に対する訓練を希望するということになりますれば、アメリカから派遣されるMSAの軍事顧問団が、日本保安隊に対して軍事訓練を監督するということになるわけであります。それで向うが軍事訓練という名前を使うかどうかわかりませんが、訓練という言葉からいろいろな問題があるのだろうと思いますので、今のところまだ交渉してみないとわかりませんが、場合によつて在日米軍がまだ安保条約によりいるわけでありますから、今までの在日米軍の顧問団がそのまま保安隊に対するアドバイスをするという形で残ることも可能であります。又MSAの援助によりまして、日本に対する軍事訓練は新らしいアメリカから来るMSAの軍事顧問団が引受けるということが可能であります。どちらも可能であります。併し両方できるかということになりますと、保安隊に対する訓練は両方とも必要となりませんから、どちらか一つあれば二つから訓練を受ける必要はないと思います。
  192. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 台湾に来ている顧問団というのはどういう性格のものでありますか。
  193. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 台湾に対する資格はちよつと調べてみませんと御報告しかねますから、そのうち御報告をいたします。
  194. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一つお調べの上で…。先の五四年の援助プログラムの中で、軍事援助の中で、支那及び一般地域十億というのが御説明にありましたが、日本が援助を受ける場合には、その中から割いて受けるのか、或いはそれ以外の項目の中に考えられているのか、そのへんはどういうふうに……。
  195. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 米国の議会における審議などで報道せられておりますものから大体算定いたしますと、日本に対する援助は、この三の項目にありまする中国一般地域の十億百万ドルのうちから支出されるものと了解いたします。但しさつき申上げましたように、この一、二、三と書いてありまするのを普通タイトルと呼んでおります。つまりタイトル、項目の中で、一割だけは安全保障長官の裁量によつて右から左、一つの地域から他の地域に移すことができますから、その辺に対する斟酌はございましようかと思います。
  196. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 若し、そうすると、日本が今度受けるであろう援助は軍事援助だと、いわゆる友好国及び連合国の防衛努力に対する武器供給及び直接援助と称せられる軍事援助、従つて先局長の御説明の相互防衛資材及び訓練費として援助を受けるのだということになると思いますが、そう了解しておいていいですか。
  197. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 予算面から見まして、そう解釈することが一応妥当だと思います。ただ申上げましたように、そのうち一割を右左に移すということは勿論例外になります。それから又交渉をしてみないとわかりませんが、日本が仮に軍事援助だけでなくて、防衛支持援助と呼ばれる経済援助についても希望だということを仮に表明したとして、アメリカがこのタイトルのうちからどこから支出するかということは、これは又交渉してみませんとわかりませんが、全然不可能だとは言えません。
  198. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大体において大部分は軍事援助だろうという点はわかるのですが、経済援助、防衛支持援助から受ける可能性もあるのじやないか、なきにしもあらずとおつしやつておりますが、経済援助、特に防衛支持援助と言われるやつは、欧洲及びアジアの国家財政が防衛増加により破局に入ることを防止する目的で防衛支持援助というものを出すという説明なつていると思いますが、そういうふうに厳密に考えれば、防衛支持援助を受けるという状態なり資格が日本にあるとお考えになるのかどうか。  それから先ほど御説明なつたフランスにおける軍需品の生産であるとか、イギリスにおけるジエツト機の生産であるとか、インドシナ向けとか或いは欧洲或いは国府向けとか、はつきりそういう区別ができていて、それに割当てている場合に……、だからこの字ずらだけから見れば、日本がこの中に入る余地は殆んどないと思うのですが、にもかかわらず、何らかの裁量でこれを動かして日本に割くということを考えられるのかどうか。
  199. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 経済援助につきましては五百十一条の(b)で規定していますように、(a)の規定とは大分軽い意味になります。つまり国家間の理解及び親善を深めるとか、世界平和の維持に協同すること、国際間の緊迫の原因を除去するために相互に合意されることのある行動をとること。この二つが援助を受ける資格になつております。従つて実際上現在アメリカが行なつております経済援助が、今言つた防衛生産について破局を作るということを仮に表現せられたとしましても、私自身から見ますると、これはやはり五百十一条の(b)に規定するような資格があれば受入れるということは、抽象的には言えるわけであります。ただ実際の予算面は、今お話がございましたように、軍事援助と称せられますところの相互防衛資材及び訓練という三つの項目を中国一般地域から受けるというのが、日本として考えられる趣旨でありますし、アメリカも一応その考えで今の予算を進められておられるようであります。私は、かと言つて(2)に対する防衛支持援助は必ずしも日本で望んでいないと申したくないと思いますのは、例えば国府やインドシナ向けに対するものにしましても、或いは欧州向けのものにしましても、直接の日本の援助が、この金から出すということが困難でありましても、ここに援助するもののうち例えば機械だとか或いは資材だとかいうものに対して日本に対する買付もできるわけであります。勿論これは域外買付という形で来ますので、直接の援助ではございません。併しながら日本がMSAの援助を受けるということから関連して希望し得る、又交渉し得る余地があるというふうに考えているわけであります。
  200. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 域外買付として、それらの面から結果として廻つて来るであろうという問題は、後ほどもつと内容的にお聞きしようと思つていた点ですが、それでなくてカテゴリー主義にいつて、一体経済援助と称せられる項目から日本がもらう見込があるのかどうかという点なんです。局長は今五百十一条の(b)ですか、その一般的な抽象的な規定から日本も受ける資格なきにしもあらずという解釈をしておられるのだが、併し先ほど御説明もあつたように、五四年度のプログラムの中にはその点をもう少し厳密に規定をして、私がさつき申したような欧洲及びアジアの国家財政が防衛増加によつて破局へ入ることを防止するという目的で出すのだということを、非常に具体的にはつきり規定をしておるし、而もその額、項目についてちやんときめてある。従つてまあ今おつしやつたようにインドシナ向けの四億から若干日本に来やせんかとか、或いは欧洲及び国府向けに、特に国府向けに先のお話だと九千五百万ドルとか言つておられたようですが、このあたりから若干流用するのじやないかというようなことを非常におぼろげに言つておられたようですけれども、それはあの予算審議のときにインドシナ向けを非常に厳密に討議したときの前後の事情から考えれば、これからカテゴリー主義にいつて日本のほうに割くということは殆んど考えられないのじやないか。或いは国府向けのものについてもそうなんで、従つてその点はそういうふうな何とかなるのじやないかというようなごまかしでなくて、これは絶対にできないのだと、少くともこの予算面じやできないのだが、もつとこの予算をふやすとか、或いは今までの未使用残から経済援助をば受けるように折衝をするのだとかいうようなお話であればわからないこともないのだが、今のような漠然としたことで一体交渉に入られるおつもりなのかどうか。この点は昨日あたりの朝日新聞の夕刑でしたかに来ておる電報を見ても、もつと日本政府はその点を厳格にまじめに考えて対処したらどうかという警告的な電報も入つていたと思うのですが、その点をごまかすことなく、もつと厳密に、正確にお考えを願つて、その上で議論したいと思うのですがどうですか。
  201. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 予算面から日本に対する援助が軍事援助の項目から出るじやないかという御質問については、私は先ほど申上げましたように予算面ではそう見えますということを申上げたようなわけであります。それから防衛支持援助に項目がないからそこから出るということはなかろうということについてのお話は、私もこの予算面からはそう見えますということを申上げました。ただ私はそれではもつと確たる考えで、軍事援助のうち中国一般地域から出ないじやないか、それを前提で話を進めるとおつしやいますが、交渉をこれからするについては、私どもはそこが交渉をする価値があるところだろうと思うのであります。向うがきめておるからそのまま受けなければいけないということはないと思います。こちらが交渉をして初めてそこに日本の希望なり、日本の難点というものを向けて、交渉の余地というものはあり得ることだと思います。だから私は交渉の最後まで許可をしないということはぼかして申上げたということではなくして、私どもはそれだけの希望を持ちながらこの交渉に入つて行きたい、それが実現できない場合におきましても、軍事援助の形が完成兵器なら兵器という形だけで来るとして、日本の産業に幾分か寄与するという経済面を盛つたものにしてほしいということで交渉をするつもりであります。従つて私は予算面からそういう額面は日本に対する項目が盛つていないじやないかという議論に対してはその通りであります。その通りでありますが、その通りだからというてそれだけをうのみにすることはない。交渉の余地はそこにありやしないかという望みを持つておるわけで、決して皆さんのほうに対して、私どもはここで言辞を弄して経済援助であるということを印象付けるために私が議論しておるというふうにおとり頂くことは私の本旨ではございません。私は今言つたような点から申しますと、勿論中国一般地域から出るということがまつすぐな筋になります。併しながらその内容も経済的な面を盛りたいと考えております。併しながら一方若し余裕があるならば、防衛支持援助、先御指摘ございました予算の余裕なり、或いは外国の流用ということがきくならば、これも調べてみなければわかりませんが、それも日本に出るということを一つ交渉してみたい、かように考えておるわけであります。
  202. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると外務省から出されたあの質問の中には、経済力の強化、それが日本の安全保障の前提条件、先決条件だというふうに言つておられますが、あの点は大体カテゴリー主義でいつて経済援助その他をば考えてくれ、考えられるのだ、それが必要なんだというつもりで質問をされたのか。そうでなくてあそこの答えでは、域外買付があるからこつちで考えられるだろうというような返事でそらしておると思うのですが、どういうことを希望してあの質問を出されたのか、その辺のお気持はどうなんですか。
  203. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 私どもがこの質問書を出しましたときの考えを端的に申上げますと、私ども日本アメリカから軍事援助なり、或いはそのほかの援助なりMSAの形で援助を受けました節に、援助はいいのでありますが、それによつて日本自身が又持出しの予算というものをどこかに作らなければならないということになりますと、日本の経済事情に対しましてMSAの援助を受けるということから非常な影響ができて来るわけであります。そういう意味から日本の経済安定に対して影響を及ぼすことは、全部プラスであればいいのでありますがマイナスの点も決して不可能ではないわけでありますから、そういう点から我々は今の日本の経済を中心といたしまして、今後経済安定ということを主力に日本というものは考えて行かなければならないので、援助を受ける際にもその日本の経済的安定ということを日本としては先ず第一に考える条件だというふうに考えておるのであります。従つてその援助を受けても、経済的安定に寄与しないというなら日本は勿論受けるわけに行かない。又そういう形のものを受けたくないという気持をここに出して質問したつもりであります。アメリカの答えが勿論まつすぐに日本の経済安定が前提的な問題で、ほかのことは考える必要がないというわけではございませんから、その点に多少字句の違いがあるように見受けられますが、併しながらアメリカの経済的考慮ということが必要な要件だといつているわけでありまするから、従つて実際上の適用によりましては私は同じことだと思います。又アメリカのお答えの中に、域外買付のことをここにつけましたのは、先ほどからもお話がございました軍事援助であると、余り経済的なプラスにならないということを日本のほうで考えようということから、域外買付ということで、経済面においてもお役に立つはずだということを念のため差加えたものというふうに了解いたしました。
  204. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あの質問が今局長のおつしやるようなことを要求しているので、而も五百十一条の(4)項に書いてあるように、経済安定と両立をしてやる範囲内だとか、或いは一般的な経済状態が許す限りにやるのだとかいうような返事をとられるつもりならば、大体アメリカからの返事はそれを繰返しているに過ぎないと思いますが、そういう返事をとられるのであつたならば、改めてあそこでああいう質問をされる必要は毛頭ないのじやないかと思うのです。そうでなくて、やつぱりあそこの考え方なり何なりは経済援助、ここで言つているカテゴリー主義の意味での経済援助のほうが前提条件なんだというようなつもりでやられたのじやないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  205. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 私どもが当時の考え、それから今でもその考えは大体同じでございますが、やはり若しアメリカにそういう点を聞くとすれば、これははつきり聞かないとアメリカも援助をしないだろうと思いますから、項目をとつたことにもなりません。従つて若し聞くとすれば、あなたのほうの軍事援助は困るけれども、経済援助が欲しいが、その点について適応性、可能性があるかどうかということを聞くべきであつたと思います。若しそれが我々の質問の本旨だつたとすれば、私どもは飽くまでそういうことは二の次にいたしまして、五百十一条の(a)項にはこういつた趣旨は謳つてありますので一目瞭然で、そういうことは聞く必要がないというような考え方をされるかたがありますが、一応この点については私は特に日本が経済安定ということを前提条件にしているということを、交渉を仮にするとすれば、日本はその前に確認させておくことも必要だというふうに認めました。従いましてこれは聞かずもがなのの質問でございますが、アメリカからこの点についていわば確認をしておいて欲しいということから考えたわけでありまして、今申上げました、御質問の、こういう経済的援助があるんじやないかという腹を含めてここの点を質問したということは日本側の実情としてなかつたと思います。
  206. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとあの返事は、(a)号の(4)項を繰返したに過ぎないと思うのですが、繰返しに過ぎないとすれば、これはそれを害しない限りにおいて或いは両立することを前提としてという併存条件を答えたに過ぎないと思うのです。ところが日本質問はそうじやなくて、そつちのほうが先決条件なんだという質問つたと思うのですが、そこは両方の気持なりが或いは全く合致しているというふうにお考になるのか。今私が疑問にしているように、若干或いはかなり食い違つているというふうにとつておられるのか、その辺はどうなんですか。
  207. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) アメリカといたしますと日本の経済が安定すること、これはまあここに書いてありまする通り勿論のことでありまするが、日本が聞いておりまするのは、自由世界の安全を維持し且つ促進することにあると承知して、日本に当てはめられた場合に日本がこれに対して経済的安定ということを考えないでいいか、又その発展するということが先決問題であろうがという質問に対してアメリカは、発展までを援助しろといつてもそれは無理なんだ、我々は経済的安定が日本の必須の条件であるということについては同意いたしますということがアメリカの返事じやないかと思います。従つて質問が発展まで言つておりますので、アメリカとすれば言葉を換えて必須の要件だという返事をしたのじやなくて、アメリカの今ぎりぎりの約束し得る点だろうと考えたのじやないかと考えますから、質問と実は答とが字句において違いがありますが、私は根本的に違つているというふうには考えておりませんです。
  208. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつと関連があるのですが、私後刻外務大臣にお伺いしたいと思うのですが、あの往復文書に示された両国の見解は、率直にあれを見れば明らかに食い違いがある。食い違いがあることは私は明瞭だと思うのです。アメリカの自由諸国に対する個々なり或いは集団的の防衛を増強さして行きたいという一つの積極的態度、又そのMSAを通じて一貫しておる一つの主張、あの積極的な態度も、現在の日本政府のどちらかと言えば消極的な態度と比べてみれば、むしろあの文書に示された見解にへだたりがあるのがむしろこれは自然じやないか、不思議はないんじやないか、こういう感じを私は持つのであります。ただ開きがあつたから現政府が非常に困るとかいうことは直ちに来ないと思うのです。それは外務省当局の言われるプリンシプル、これは確保されているのだ、それだから開きがあつてもいいじやないかというふうに私は見ているのですが、どうしてもやはりそう差はないというふうに強いて見る必要があるでしようか。その点をちよつと一点。言い換えますと、開きがあることはむしろ自然である、あつてもそれはいいじやないかという、我がほうとしては基本的のプリンシプルといいますか、あの質問書に示された内容が確保されておればそれでいいので、そのギヤツプは、要するにギャップを如何に両方の政府が今後の折衝なりによつて埋めて行くかということに問題があるというふうに考えて然るべきじやなかろうか。これは極めて率直に私は考えたのですけれども、そういう感じが当初からしております。一つ説明をお願いしたいと思います。
  209. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) お話の結論には私も全面的に賛成でありまして、こういう交渉につきましては両方にやはり利益になり而もその両方の考えているところが根本的な食い違いばかりあつたのではいけませんので、そうでないならばかまわないということになりましよう。それが相互安全保障の相互という意味じやないかというふうに我我は考えているわけであります。  そこで今の食い違いがあつてもかまわないということについて、ただ私ども条件的に考えますのは、日本の根本的な考え方に対してアメリカの回答がやや字句その他の意味から結局において食い違いがあるということがありましても、それが日本考えている根本に触れた食い違いでなければいいというふうに考えているわけであります。そこで私が先ほど根本においては大体両方の考えが違つていないと思いますということを申上げましたのは、日本の実情を考えまして、日本の堅持したいというその線にアメリカの返事は根本的に背馳しているというふうには考えない、だから話を進めてもいいんじやないかというふうに考えたというのが、まあ表現はなんでございましようけれども申上げた趣旨でございまして、只今お話のように私どもアメリカ日本との間に考え方の食い違いがあつても、結果において日本が自分の原則を崩さずして援助を受けられれば交渉を続けて行つてもいいんじやないかというふうにも考えております。
  210. 羽生三七

    ○羽生三七君 このMSAの主要な内容が結局軍事援助にあるということは大体明瞭だと思うのですが、その場合、援助を受ける、つまり被援助国がやはり援助を受ける場合には若干の自己負担をしなきやならんけれども、そのことが却つて経済的の発展の障碍になる場合ということの問題が出たわけですが、ダレスがアメリカの外交委員会で話をした中にこういうことがあります。我々は、このナトーの設立以来ヨーロッパ連合国に対して経済、軍事の両援助を併せて百億ドル以上を引渡した、併しヨーロツパの連合国は現実にその予算から防衛目的のために約三百億ドル以上を支出したということを語つております。だから実際の援助を百億ドルやつたら被援助国はつまり自己負担を入れて三百億ドル出したことなるわけです。そういうことから結局イギリスやフランスにおけるいろいろなMSAに対する最近の論議が出て来たと思うのですが、仮に日本がそれじや軍事援助が中心で行われた場合に、完成兵器というようなことで来る場合には日本の自己負担分というのは全然ないとお考えになるのか。つまり軍事援助の場合でも日本の自己負担というものは相当あるとお考えになるのか。外国の例から判断されてどういうふうにお考えになりましようか。
  211. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これは交渉いたしました上で援助がどういう形で来るか、どういう物が来るかによつて非常な違いが出て来ると思います。今のお話のように全部完成兵器で来た。普通世間でいわれます一億何千万ドル全部完成兵器で来たというときに、日本の自己負担は何もかからないかというと、これは日本に自己負担ができます。その理由は仮に機関銃が来ましたということになりましても、この機関銃に油をささなければ使えなくなります、又練習をするには弾も要ります。そこで、なければ何もしないで済むのですが、もらつたばつかりに油もささなければならん、鉄砲の弾も作らなければならないということになります。従つて完成兵器で来ましても自己負担というものは一応考えなければならないことになつて来ます。ただ今例にございました欧洲方面に百億出したら向うが二百億出しておるということは、ダレスさんはアメリカの国民に百億出したのは価値があるということをはつきり言わなければならん立場にあられるからかと思うのであります。従つて私のほうでも出したけれども受けた国も出したのですと言われると思うのです。これはアメリカといたしましては、先ほどのヴアンデンバーグの決議にもございますように、自分から助けるところの能力も意思もない国には出さないというのがアメリカの政策でありますから、アメリカは出すけれども被援助国は何もしないで只ならもらいます、金が要るならいやだという国には出したくないという考え方と思います。これは受ける国のほうから逆に考える必要があると思います。それから欧州で百億の金を受けて二百億の金を出しておるということは、もつと前提に遡つて百億のこちらから援助を受けなければ二百億出さずに済んだかという問題なのですが、私はこれは恐らく百億の援助を受けなければ二百億どころじやなく、もつと欧洲各国としては負担をしなければならなかつたろうところの自己負担はあるだろうと思います。百億受けたから先ず二百億でとまつたのでありますが、それ以上ということになりますと、もつと自分の持ち分が多くなるということになりますから、そういう意味から私は日本にどういう形で来るかによつて大分違いますが、多少そういつた経費もみなければならないということも出て参りますから、交渉に当りましてはどういうアイテムが来、それによつて日本の経済にどういう影響を及ぼすかということを十分検討した上で交渉を進めて行くことが必要であろうというふうに考えております。
  212. 羽生三七

    ○羽生三七君 外務大臣も来られたようですから、それぞれ御質問もあると思いますが、一点だけ今の事務的な点で伺いたいと思います。今の点は、今ヨーロッパにおけるこの問題については論議からいうと若干見解の違いがあるわけで、私どもは違つた解釈をしておりますがそれは別として、仮に自己負担が起る場合には今の保安庁の経費の増額という形をとるわけですか、どうですか。
  213. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これは費目にもよります。場合によつて保安隊が現在すでに持つておる予算の中から支出し得る費目もあると思います。又その費目から支出できないということになりますと、改めて追加予算なり何なりを御承認頂きまして、その方面から出さなければならなくなるだろうと考えます。
  214. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつと違うのですが、その予算の額をいうのじやないのです。項目としてその場合には保安庁経費の中から、又別途それは明年度ならば保安庁経費を増加することによつて賄うというのか、或いは何か別途の新らしい項目というものが生まれて来るのか、その辺はどうなのですか。
  215. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 援助されました費目が保安隊使用するものであるといたしますれば、保安隊の持つております費目の中に頭を出して当然その費目から出すべきだと思つております。
  216. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今外務大臣が来られましたので、それでは大臣に対する一般質問を願います。
  217. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 外務大臣にMSAに関しまして二、三お尋ねをしたいのであります。  第一は、現内閣のこの問題に対する基本的態度と言いますか、基本的方針と言いますか、ということについてであります。従来国会において種々この問題についての論議が今日まで繰返されておつたのであります。併しどうも私はいま一つ政府の態度が明確でない感じがしきりにするのであります。現在の我が国がともかく自由主義国家群の一員であるということは現実の姿でありますが、同時に外務大臣もこの前言われましたように自由世界としてそのおのおのが協力して行くことは、お互いに期待し、期待されておることだと思う。又MSAのいろいろ論議なり批判は各国の現実に徴してあることは当然なことであると思いまするけれども、これも現実的に見ますると、自由諸国家一種の鎖で繋ぐような役割を果しておることも疑うことができない。更にこれは吉田総理も又外務大臣も、安全保障条約の前文に示されておる防衛力の増強に対する期待、それに対して日本がその期待に副うように努力すること、これは条約上の一つの義務だということも答弁されておるところなんであります。そうだとすれば、現政府がプリンシプルと言いますか、基本的の方針とされておる先般の往復文書に示された条項が確保されて、国の独立と自主がMSA加入と両立するということであれば、これは現政府としては積極的に参加するのが当然だ、積極的に参加することがむしろ平和条約、安全保障条約等の経緯から見ても当然の責務であるということが現政府の態度であるべきじやなかろうか、こう私は思うのでありますが、これまでの論議ではそうじやむしろなくて、極めてあれに参加することは日本の自主性を害すると言いますか、そういう懸念が多分にある。まあ入れば幾らか日本の財政の負担も軽くなるかもわからんし、経済上の潤いもあるだろう、従つて往復文書に示されたこちらの言い分が確保されれば、そう進まないけれどもつてもいいじやないかというふうな態度のように一般に印象付けられておるように私は思うのであります。そういうところから国民の中でも何となしに一つの危惧の念が醸成されておるような感じがするのであります。私はその政府方針がここでいい悪いを言うわけじやありませんけれども、現政府の態度としてはいま少しく明確に線を打出すことが然るべきじやなかろうか、こういう感じが痛切にするわけであります。その点は如何でありますか。
  218. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) お話の点は誠に御尤もな意味が多分にあります。ただ我々の考えておることを率直に申しますと、MSAの計画は勿論アメリカの政策でありまして、このMSAの援助を受けない国もあるのであります。自由諸国の中にはありまするが、併し受けない国でも自由主義諸国の提携を強化して世界の平和に貢献しようという気持は変らんのであります。現にインドネシヤであるとか、その他受けてない国もありますが、この大きな自由主義諸国の提携強化という方針には私は変りはないと信じております。従つてMSAを受けなければそういう方向に向えないというほどには考えていないのであります。従つて言換えればむしろこれは自由主義諸国に対する日本の義務、というのは少し強過るかも知れませんが、なすべきことである、こうまで強くは実は考えていないのありますが、自由主義議国の提携強化の一つの方法としては、今考えておりますところでは誠に結構なことである。同時にこれは日本の経済に潤いを来すことも又明らかであろうと思いますから、私どもとしてはMSAの援助を受けることが望ましい、日本としては甚だ望ましいことである、こう考えて申しておるのでありますが、お話のように自由諸国の一員であるから直ちにこれを受けるのが義務であるというところまでは、ちよつと言い切れないかと考えております。併し御趣旨の点はよくわかるのでありまして、大体においてその方向に向うべきであろうと私ども考えております。
  219. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 第二の点はこれもしばしば繰返された問題でありますが、MSAに関するアメリカ政府との交渉と言いますか折衝の問題であります。アメリカの新しい会計年度の始まる前日に交渉の開始をした。二十四日から二十六日までの三日間に亘つて基本的事項についての文書が交換され、それ以前以おいては日本政府としては何らの折衝をしなかつたということは、総理大臣においても大蔵大臣においてもしばしば繰返された通りであります。私はそう言われればさようであろうと信ずるのであります。私が疑問にするのは、何故ああいう日本にとつてともかく重要な問題があの時まで延ばされたかということに不審を感ずるのであります。率直に言いまして、これは外務大臣として国内に対する何らか特別の考慮とか、或いはアメリカに対する外交上の特別の考慮とか、そういうことによつて外交上のタイミングと言いますか、そういう時期を強いて選んだのかどうか、その点なんです。私はむしろこれは吉田総理も言われておるように、アメリカ日本の独立なり自主性に対して無理は言わんだろう、恐らく外務大臣が往復文書で質問された場合は、あれに対する向うの答弁書は大体予期されただろうと私は想像するのであります。そうだとすれば、なぜもつと早きに及んでその折衝と申しますか、交渉と言いますか、それは言葉は別としてやられなかつたか、大体向うの予算が本ぎまりになつて、軍事援助に大体局限されたような形はおいて折衝が始まるということ自体に、私はむしろ不審を感ずるのであります。もつと前からどうせ自衛力強化のために援助を受けるべきであれば、もつと早きに及んで折衝して、日本の自立経済と言いますか、日本自体の自衛力の増強なり、一般の経済なりに本当に役立ち得るような企画を向うをして作らしめるというような措置をなぜおとりにならなかつたかということが、私の不審なんです。向うで大体もう予算がきまつて予算の内容を見てみると、これは軍事援助である、ほかの援助じやなかなか及びがたい、何とかそこに一縷の望みを持つておる経済援助への方面にも折衝をしてみたいということでは、向うの与えられたものをいやいやながらまあ受けるというような結果になつて、そういうために即つて一般からは外交の自主性と言いますか、そういうものにとにかくの批判が起つて来るのではないかというような感じがするのでありますが、なぜもつと早くおやりにならなかつたというのが私の質問でございます。
  220. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これも御尤もな御質問で、我々もできるだけ早くやるべきであると思つたんであります。そこで大体のことは勿論我々としても研究をしておりましたから、外交演説の中でも、自衛力強化に役立つて、経済の面でも寄与するならばこれを受けることは望ましいと、大体の方向は申しておつたのでありますが、併し国内のいろいろな議論もありましようし、又現にを受けることを好まない国もあるのでありまして、日本としましては現在の国の実勢力から言いましても、又国民の独立を望むという強い声から言いましても、援助してくれるから先ず受ける意思表示をして、そうしてだんだん交渉をして、できるだけ多くの援助を得ようというお考えもありますが、我々は先ずいろいろの問題を研究してかからないと、なかなか重要な問題だからそう早くきめるわけにも行かないと考えまして、実は随分前からいろいろ材料を収集してこちらだけの研究をいたしておつたのであります。でただ政府の態度をきめるところまでは行つておりませんからして、こういう問題についてはよほど慎重に取扱わなければいけませんので、出先に対しても十分注意をして、いやしくもこの政府の態度をコミットするようなやり方をしないようにということで来ておるのであります。それがつまり交渉をしないということであります。できるだけ材料を集めて内容をはつきりする努力はいたすべきであるが、政府が態度をきめる前に受けるとか受けないとかということが向うに印象付けられるような行き方は、慎しむようにいたさなければならんと思つて、まあ私どもは慎重にしたわけでありまして、それが御質問のようになぜぐずぐずしていたんだという御疑念も起るわけであります。大体それは見当は付きましたが、こういうことは念には念を入れなければならん、あの質問書も前から考えておりまして早く出そうというつもりでおりましたけれども、とにかく相当厖大な法律でもありますので、これをずつと研究して、一番基本的な問題で日本政府として問い質さなければならんというものは何であるかということは、実は私が自分で判断するにも、なかなか安全保障法等を研究して、ほかの例も見てということになりますと、これはつい時間がかかるのでありまして、要するに慎重に過ぎたという御非難はあるかも知れません。我々としては成るべく間違いのないようにということでやつておりましたのでつい遅れてしまつた、こういうことになるのであります。
  221. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私の申上げたことが私自身の意見としてそうあるべしというわけでは毛頭ありません。慎重にされることは極めて結構であり当然のことと思うのでありますけれども、そのために日本が逆に不利を招くということがあれば、それは面白くないのじやないかという意見であります。  次にお尋ねしたいのは往復文書についてでありますが、こちらの基本的な見解とこの点に対する向うの見解とを比べてみますると、私は、その間に食い違いと言いますか開きがあることは、毫も疑いを入れないことと思うのであります。ただアメリカの回答に示された点は、私としましては、日本の実情に対する相当の理解があるので、むしろ多とするのであります。併しながら多とはするけれども両国の見解に相当はつきりした開きがあることを、これは私否定することができないのであります。これはアメリカのこれまでの態度なり、又MSAを通じての一つの主張から言つてアメリカが個々の国なり集団的防衛に対する積極性と言いますかこれと、現在の現政府のどちらかと言えば消極的態度ですね、これと対比して見れば、むしろ開きがあることが自然であり何ら不思議がない、かように思うのであります。要はその開きを、今回の折衝及び、どうせこれは数年継続すると考えれば、今後どう両国が埋めて行くかということに問題があるのじやないか、今回だけの問題じや勿論ないわけであります。私は数年間に亘る、言い換えれば来会計年度或いはその時期等を見通しての大臣の見通しですね、これを一つお伺いしたいのであります。
  222. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはおつしやる通りアメリカ側としてはもつと積極的に日本で自衛の措置を講じてほしいという気持を現わしておるのは明らかであります。ただ現内閣としましては、おつしやるように相当消極的に考えております。でこれについては平和条約の当時からいろいろ非公式な意見の交換もありましたけれども、吉田総理の考え方は終始一貫して同じであつた変つておらない。それに対してアメリカ側としても、総理の考え方に全く同意したかどうか別として十分了解しておることは事実だと思います。今後とも現内閣が続きますれば、当分の間はこの態度で私は行くのであり、それ以外にとる方法がないだろうと考えますので、まあ早く言えば、現内閣の考え方をアメリカ側で更に一層よく理解してくれるという方面に努力をすると、こういうことになろうかと思いますが、これについては基本的に私は同意見であるということになろうかと思いまするが、アメリカ側としては常に日米安全保障条約は暫定的なものであるし、成るべく早く自分の兵隊を引きたいのだ、殊に最近のように国内で基地の反対とか何とかいろいろなことがありますものですから、ますますそういう気持が強くなつて来ておるようでありますから、これはよほど考慮を要すると思います。思いますが、只今のところはこの政府の基本的な考えには十分理解するであろうと思いまするが、我々としてはそれに向つて努力をする以外に方法はない、こう差当り考えております。
  223. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 その点に一つの問題が今後に残されると思うのであります。MSAに参加をして援助を受けるということは、アメリカ側から見ればそれによつて日本の経済力なり或いは自衛力なりにプラスが必ずあるということを考えるに相違ない。又日本政府としても援助は受けておるが何らプラスはないのだ、従来のこれまでの財政上の負担が軽くなつたということでは意味合いがないのである。ダレス国務長官の議会における証言を見ましても、MSAのプログラムは決して慈善事業ではないと言つておる。その通りだと私は思うのであります。従つて援助を受ける結果、日本の経済力なり或いは財政力に一つのプラスが出たとすれば、プラスが出るということを否認し得ないとすれば、少くともそのプラスの限度においては防衛力の増強にそのプラスを振り向けるということをこれ又拒否することができないであろう。従つて今大臣の言われました吉田総理の一つの態度というものがどこまで続くか、その点に非常に疑念が、このMSA参加ということによつてつて来やしないかというような感じがするのであります。これはこの程度で結構であります。  その次は援助の内容に関する問題であります。現在の向うの計画によれば大体軍事援助に重点がおかれております。MSAの各種のプログラムを通じて軍事的色彩が一貫しておるということは否定し得ない。併しそれぞれのプログラムによつては極めて軍事的の色彩の稀薄なものもあるわけであります。日本の経済の実態から言えばどうしても経済援助、技術援助と言いますか、防衛支持のにおける援助と言いますか、そういう面に重点をおくことが私は当然のことじやなかろうかと思うのであります。日本の基幹産業は極めて脆弱であつて、その脆弱性はおおうべくもない。こういう実態のときに既製の武器を支給されてそれをかつぎ廻る。それから朝鮮特需の或る意味での転換のような域外買付による一つの軍需生産が起つて、それによつて日本の経済の表面的な景気をカモフラージュするという姿は、私、非常に悲惨な姿だと思うのであります。どうしても経済力の基礎をつちかつて行くと言いますか、本当の意味の自衛力を強くして行くというか、そういう方向にこの援助がマッチするようにプログラムを要請するということが当然でなかろうかと思うのであります。今開始されんとする折衝においてもそういう折衝をする余地があるであろうと私は思います。殊にこの次の年度における計画等については当然そういう方向に強く折衝をすべきじやなかろうか。これは慈善事業でなければ、何らかの形において日本側がこれに対する一つ責任を持つと言いますか、責務を持つこと、これが私は当然だと思うのです。そうだとすれば、こちらの本当に希望するところは強くこれを実現するということが極めて大事じやないか、こう思うのであります。その点についてのお考えをお伺いしたい。
  224. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 第一に、財政なり経済なりに余力ができたならば防衛力の漸増に振り向けるべきであるという意見は、私もその通りだと思います。安全保障条約には期待とありますが、これはアメリカ側から言えば期待であり、日本側から言えば、義務とまでは行きませんが、前文に書いてあるアメリカ側の期待を裏切らないように努力すべきは当然であろうと思います。ただ実際の勘定、計算になりますと、これはいろいろな点がありまして極極身近な例を申上げますれば、日本で人口が百二十万なり百三十万なり年々殖える、現在のままで行きましてはいろいろな面で経済上困難を来たすわけであります。例えば食糧にしましても百二十万人分殖やさなければならん、或いは学校の教室もそうです、住宅もそうです、着物類もそうだということになりますから、普通の生活水準を維持するにも経済の特別な発展が必要になつて来る。そこでこういう援助を受けて余裕ができてその余裕が一体本当の余裕になるか、又そういう自然的な増加を補つて漸く一ぱいぐらいになる、これは実際上の計算になりますから、プリンシプルとしてはおつしやつた通りだと思いますが、事実これがどうなるかは実際やつてみなければわからないと思います。併しそういうつもりで行くべきであることは私も同感であります。  そこで次に御質問の援助の内容でありますが、いわゆる防衛支持援助と言いますかこれが望ましいことは私も同感であります。ただこの事情が違いますことは、ヨーロツパにおきましては北大西洋条約諸国等は例えば武器にしても規格が統一されておる。ですから仮にフランスで作つてもベルギーでもどこでも自然に行くわけであります。であるからおのおの専門的にどこで何を作るということを手分けをしてできるわけであります。又その作る場合におきましても、例えば鋼鉄の精密度というようなものは、日本では一般の鉄の産業が進まないと、なかなか必要な精密度の鋼鉄等を得ることは困難である。従いましてただ技術の援助があり資金の援助があつても、そういう極極一つの例でありますが、スチールのちやんとしたものがなければ物を作つても役に立たないということになります。併しそのレベルが非常に簡単なものである機関銃でありますとか何とかそういうレベルのものであればこれはたくさんできると思いますが、又日本には設備がたくさんありまして、これを活用すればできるという実情であります。ただ高度の精密なものを作るとか、或いは非常に防禦力の強いものを作るということになりますと、金があつて技術があつても、物がないということになる結果もありますから、これはなかなか言うべくしてむずかしい点があると思います。こういう点も実は前にいろいろ研究した結果が、アメリカとの話合が遅くなつ一つの理由でもありまするが、そこで今年は仮にむずかしいとしましても、これからいろいろの点を整備いたしまして来年度には是非その方向に向いたい、こういうのが私の希望であります。
  225. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 実は外務大臣は予算委員会に出られることになつたそうでありまして、予算委員会で河野問題に引続いて外務大臣が出られなければならんことになつておるそうであります。つきましては本日は大臣に対する質疑はこの程度でとどめまして、若し梶原委員に御質疑がありましたらこの次の機会にでも引続いてお願いいたします。
  226. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうすると大体予定はわかりませんか。あらかじめお尋ねしておきたいと思いますから。
  227. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 要するにそういうものとかち合さえしなければいつでも来ます。
  228. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) できるだけ都合して来て下さい。  では外務大臣は退席されましたが、事務当局に対する質問はまだ継続しますか。
  229. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 さつきの援助の内容の問題ですが大部分軍事援助ということになつた。その軍事援助の更に内容ですが、いま外務省で見当をつけておられる金額は幾らになるかということで、その金額についてアメリカの公聴会はどういう論議がなされたか、それから推測してどれくらいとお考えなつておるか。その金額の中で完成兵器による援助と、そうでなくてドルによる援助とがどれくらいの割合になるとお考えになるのでありますか、その辺の御説明を先ずお願いいたします。
  230. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 金額の点につきましては新聞にいろいろの報道がございますが、私ども遺憾ながら幾らという見当をつけるだけの十分な資料を持つておりません。従つて新聞でいう一億五千万とか或いは一億二千万とかいう数字を一応の常識としては考えまして、中国、アジア地域と申しましてもフィリピンが入り、台湾が入り、韓国が入つておりますので、こういう国に従来アメリカが援助していた額と想定せられますものを大体控除して、その上は幾らかの余裕をとつて来るということから逆算いたしますと、一億五千万とか一億二千万という数字が出て来るわけでありますから、新聞は恐らくそういう点を主に報道をしておるのではないかというふうに考えます。従つて繰返すようでありますが、日本に対しての援助額が幾らかということは今のところそういつた推定の程度を出ません。  又金額の中で完成兵器とドル収入、若しくはその他との比重でありますが、これを各国に対する援助の今までの実際上報告せらました材料などを調べてみましてもその点は明確を甚だ欠くわけであります。従つて今の段階でこのうち割合はどうなるだろうかということを申上げる材料を遺憾ながら持つておりません。これは交渉の段階になりますと、私どもも十分に先方のはらを聞いてみたいと考えております。
  231. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が聞いておるのは、金額についてあのプログラムの中にはないのですが、プログラムの説明書の中には少しも出ていないのかどうか、それからあの説明書を中心にしてダレスだとか、スタッセンだとか、ハンフリーだとか等々がいろいろ公述しておるように聞いておるのですが、その公述の中にそれらがわかるような陳述はないのかどうか、或いは公聴会の質疑応答の中でそれが出ていないのかどうか、それらの点をお聞きしたい。
  232. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) アメリカ政府当局の発言の中に日本に対する援助を幾らの額と大体考えておるというような数字は、私の承知している限りございません。勿論公聴会の席上質問者若しくは必ずしもそれを担当しておると思われない人から日本について一億二千万とか一億二千五百万という数字を挙げられた人が一、二あるように記憶いたしております。この点は更に詳細に調べまして若し私の只今申上げました回答に補足するところがございましたら後の機会に補足させて頂きます。
  233. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから完成兵器とドルとの割合がわからないというようなお話ですがこれはちつとも見当がついていないか、大体半分くらいとか三分の二くらいは完成兵器らしいというようなその辺の見当もついておらないのか。
  234. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) この点につきましては、私ども係官といたしましては今のうちでもいいですから話をして大体向うのはらを聞いてみようと考えていたことがしばしばございますが、先ほど大臣のお話にございましたように、当方から余りそういうことを聞くなというお考えのように私ども大臣のはらを読みましたので、現在まで一番聞きたいと思つているこういう点については先方のはらを聞いておりません。
  235. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは諸外国の例ですが、五四年度のプログラムの中で、或いは五三年度までの実績によつてそれらの問題が各国別にどういうふうになつておるか、そこを一つ見当をつけて御報告頂きたい。
  236. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 先ほどの材料の中にそういう点がわかりますものを成るだけはつきりとできるだけ御参考になるようにいたしたいと考えております。
  237. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 調査はできておるのじやないですか。
  238. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 残念でございますが、御質問に十分御満足を与えるような資料は今のところまだ整のつておりません。
  239. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどの大臣の御説明によると、非常に前から慎重に御研究になつておるようにお話を承わつたのですが、それはいいとして、早い機会一つそれを調べてお出し願いたいのです。これらのものをお出し願いたいということはずつと前に、この委員会が始まつたとき、私が最初にこの委員の中に入つたときからお願いをしておるのですから、そのときにすぐ御調査になつても大体もう今くらいは調査されて出ておるはずだと思うが、どうもその辺について非常に不満な点がありますから、重ねて早く出して頂くように催促しておきます。  それから更にそれを見当付ける一つ資料として、一体現在保安隊に完成兵器としてどれくらいのものが貸与されておる、その点はどういうふうに見当付けておられますか。
  240. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これはたしか先日の予算委員会でどなたからか保安庁長官にお尋ねをせられたのでありますが、その節保安庁長官のお話では、現地の部隊でアメリカの係官との間で貸借関係をいたしております関係上、それを一応正確に集めてみないとわからないので、材料を集め次第提出をされるというふうに聞いております。従つて恐らくそういうものが保安庁のほうで整うと思いますので、これも御参考までに保安庁に連絡をいたしまして提出できるように努力をいたします。
  241. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この資料も非常に早くから要求をしておるのに未だに出て参りませんので、こちらの委員長からも改めて更に催促を願いたいと思います。
  242. 中田吉雄

    中田吉雄君 交渉は実際新聞ではいろいろ伝えられておるのですが一体いつから始まるのですか。そうして交渉にる当スタッフもいろいろここに御臨席の御両氏の名前やその他伝わつているのですが、もう万全の準備ができたと思うのですが、その辺はどうなつていますか。
  243. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 交渉の開始につきましては、七月の一日にアメリカ大使館から両者の同意をみた上で、なるべく早い時日に交渉を開始しようという返事がございましたので、早速日本側といたしましては、いつが都合がいいかということをアメリカ大使館に問合せました。アメリカ大使館ではやはり人員或いは交渉の方針等について本省の意向を確める必要があつたろうと思われるのでありますが、今日までのところアメリカ大使館としては、本省から訓令もないことだし、日本側といつ始めるということをまだ確答できないということで待つているのが現在の情勢であります。  又スタッフにつきましてもいろいろ報道もあるわけでございますが、私どもまだアメリカ側の交渉のスタッフもわかりませんので、日本側ではスタッフを合せることは比較的容易にできるかと思いますが、向うは本省側との連絡もございますので、一応向うのスタッフができました上で、至急こちらもそれに合せたスタッフをそろえる必要があろうと考えます。外務省当局としては一、二案としてこういう場合にはこうと人員等も事務当局としては考えております。それが現在の段階でございます。
  244. 中田吉雄

    中田吉雄君 それから国会におかけになる時期の予想なんですが、もう今国会も七月の上旬もすでは大分進みますし、今の段階ではとても七月中にかけられないのではないか、或いは八月、若干会期が延びるやも知れませんが、間に合わんのではないかと思うのでありますが、そういたしますと、その条約を国会の承認を求めるために、特別の国会でも御招集されるのですか。そういたしますと、殆んどこの日米相互防衛協定というものは年内には実施されんのじやないかというようなことも予想されるのですが、その辺の技術的な見通しはどうなんですか。
  245. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 私どもも交渉を始めます以上、特に今議会の開会中でもありますので、できれば本議会に提出をいたしまして御承認を得るという努力をしたいと考えております。御指摘のように時間も大分迫つておりますので、今議会に提出するということは、相当な速度で相当早目にしなければならないのでありますが、技術的に見ましてかなり内容的にも両者の間で検討する点もございましようし、実際上には日本に対する経済上の影響等につきましても、日本側として十分考えてみる必要もございますので、今国会に提出したいという意図を以て交渉するつもりでありますが、必ず今国会に提出し得るという確信は今のところございません。  そこでこの問題につきまして臨時国会を招集するような運びに或いは意図を持つておるかという問題でございますが、これも協定の内容によることでありますので、その協定の内容上一日も早く国会の承認を得て実施したいということであれば、臨時国会の招集ということも或いはお願いをしなければならんということも理論的には考えられます。併し実際上MSA援助はアメリカ側といたしましては、七月一日以降実施し得るという費目をアメリカとしてイアマークしまして、これを日本から願い出るのを待つているという形になりますので、アメリカの会計年度は来年六月までございますので、年内に仮に国会で御承認を得るという運びに至らないということになりましても、来春早々国会におきまして御承認を得れば、六月前である限り技術的にはMSAの実施ということはできるわけです。従つて希望といたしましては、なるだけ早くできれば今国会にと考えておりますが、見通しといたしましては先ず今国会に出したいという努力はしても、ちよつと間に合わないのではないかという印象を個人的には持つております。
  246. 中田吉雄

    中田吉雄君 大体これは岡崎大臣にお尋ねなり希望をしたいと思つたのですが、日米相互防衛協定というのですか、その主文と細目の実施協定と両方できると思うのですが、その際国会にお諮りになる形式としては、協定の主文だけお諮りになつて、細目協定を諮られないというのではないかというのが我々の憂慮するところなんですが、安全保障条約行政協定の前例に鑑みまして、細目協定も国会に出して、我々としては主文の中に織込んでしまうことを希望するのですが、実際できないことが技術的にもあると思うのですが、そういう際には同時に主文とその実施細目とを国会に少くともお出しになつて、主文の承認を求める。こういうような形式をとられるでしようか、協定の全文だけ出して、細目はお諮りにならん、こういうことになりますか、その辺はどうですか。
  247. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これも交渉いたしました結果防衛協定が御承認頂ければ、あとは国会の承認を経なければならないので、当然に行えるような具体的な内容を持つ細目が附属いたしますということになれば、時間その他の関係から見まして、必ずしも細目までも添えないでも御承認を頂けるかと思います。併しながら今おつしやつたように、細目に譲る部面も多分にあると思いますので、そういう点から御満足に御審議を頂くという見地から、協定と細目をなるだけ一緒にして同時に国会の御承認を頂きたいというのが事務当局の意向でございます。
  248. 中田吉雄

    中田吉雄君 私今日は大臣にゆつくり腰をすえて質問しようと思つていろいろ資料も持つて来たのですか、大臣が御都合が悪いので、局長にお尋ねしますが、今佐多氏、梶原氏その他の質題に対する回答を聞いています際に、アメリカ世界政策というものについていささかの危惧がない、全面的な信頼を寄せておるという点私は非常に問題ではないかと思うわけであります。これはまあ如何に高い地位におられるとしても、事務当局で無理な質問と思うのですが、これによりますと、米国の安全を維持し、外交政策を促進し、こういうふうにアメリカ世界政策に役立つ限度においてこのMSAの援助をする、こういうことなんです。ですから我々が技術的ないろいろな問題を検討しまするまでに、先ずアメリカの一九四七年からトルーマンの封じ込め政策以来とられておるこの政策というものが正しいかどうか、世界史の批判に堪えるかどうかというこの問題を先ず検討することが非常に根本的に私は重要ではないかと思うのであります。結論から申上げますと、アメリカ世界政策はもう重大な、破局にといつてもいいほど危機に直面しておるわけなんです。併しそういうことについていささかの危惧もない、ただどうして日本の負担を軽くして外交的な取りきめを有利にするかということだけのように受取られまして非常に私は心配するんですが、このアメリカ世界政策、外交政策を推進するのにMSAが動かされている、アメリカの全体の世界政策、そういうものについて両局長は、これこそ実際自由世界アメリカの意図しているような役に立つものであるという確信を持つておられるか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  249. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) このMSAを契機といたしまして、MSAの各国に対する援助がアメリカ世界政策を推進し、又アメリカの安全保障を目標としていること、これは私どもよく承知しておりますし、又それがアメリカの外交政策の推進に大いに役立つということも事実と思います。ただ私どもがMSAの援助を受けますということを前提としていろいろの点を考慮してみますと、実際にはアメリカの外交政策に或いは世界政策に窮極的に寄与するということがあつても、その目的が日本の利益を害し、若しくは日本の安全を危殆に陥らしめることがなければ、私は日本としては援助を受けることによつて日本の経済或いは日本の国民生活に寄与するということを考慮していいのではないかというふうに考えます。つまり日本に寄与する、同時にアメリカアメリカの政策に寄与する、これがやつぱり相互安全保障だろうと思うのであります。ただアメリカの外交政策が危機に瀕しているかどうか、又アメリカ世界政策が非常に危険極まるもので、我々は非常に危惧しなければならないかどうかという点については、必ずしも今中田委員のおつしやつたような考え方は私どもは持つておりません。日本アメリカとの間にはすでに安保条約があり、桑港の平和条約があり、十分に相互いに信頼して然るべきときではないかというふうに考えております。又外交政策が危殆に瀕しているというお考えに対しては、私どもは違つた考えを持つているわけであります。
  250. 中田吉雄

    中田吉雄君 下田局長はどうですか。
  251. 下田武三

    政府委員下田武三君) 私はそういう政治問題を主管しておりませんが、個人的意見を申上げますれば土屋局長と全く同感であります。
  252. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今の御質問に関連するのでありますが、私も外務大臣に尋ねてみたい一つの問題がございます。アメリカ世界政策に或る過誤があれば又世界に禍いを及ぼすことは免がれ得ないと思うのであります。これまでの第一次、第二次及び現在の戦乱を通じて、アメリカの政策に誤りなしとは必ずしも言えないかと思います。私お伺いしたい点は現在の日本立場であります。申すまでもなく、独立ではありまするけれども、これはなんと言いますか半身不随の独立国である。世界が二分しておる、片方の共産陣営に対しては目をおおわれている、口はこれ又閉されておるのであります。それに対する何らの発言ができないという状態において、アメリカがリーダーシツプを持つところの自由主義陣営に入つておる。而もMSAに参加するというところに、現実の問題は別として、一つの危険性を我々と言いますか、日本国民がこれを感ずるということです。これこそ私は当然だと思う。相手国に対しては発言も何らできないという状況にある独立国なんです。そこに一つの私は不安がある。従つて共産主義陣営に対しての日本立場と言いますか、国交回復と言いますか、そういう点についても真剣に考慮が払われるべき私は段階じやないかと思う。それなくしてアメリカ世界政策に懸念なしということは、日本立場からすれば私は非常に危いのじやないかという感じを強くするのであります。局長の御所見を一つ伺いたい。
  253. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 勿論共産陣営に対しましての今後の点につきましては、これは一般的な国際情勢と睨み合せまして、日本も十分に根本的な政策を考えなければならないということは、私どもも今後必要になつて来るだろうというふうに見ております。又現在の段階におきまして、アメリカと志を同じうする自由諸国は大体において、仮にMSAの援助を受けておる国だけから見ましても五十何ヵ国ございまして、この中には現に共産圏の国と団交を持つておる国もあるわけであります。従つて日本はそれらの国を通じて或いはそれらの国の考えを見て、共産圏に対して考えるということも、必ずしも、全面的に目と耳とをおおわれておる、口は勿論きけない間柄にありますが、目と耳とを閉されておるというふうに私どもは狭く考えなくてもいいのではないかというふうに考えておりますし、又アメリカといたしましても、皆さんが御研究になつておられますように、共産圏に対してあくまで全然附合いをしないという考えではないわけであります。現にアメリカはソ連と団交を持つているのでありますが、そういう点につきましては、やはりこの全般的な国際的な動きを見まして、或る時期が来れば場合によつて今までの政策とは違つた考え方ということも起つて来ると思う。ただ日本お話のように或る意味で独立といえども内容全からずという点もございますので、そういう点から自由諸国家の一応の外交体制というものに対しまして協力して行くということが、日本の外交政策の根本になつております関係上、それらの国と離れて日本だけが独自の考えから共産圏に対する呼びかけをするということは、外交政策上はとらないところだと思います。
  254. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつとそれに附加えておきますが、今お話の点、わからないわけでは毛頭ないのであります。ただ現在の自由主義陣営の中の国で共産陣営と国交を持つておる所を通じて間接的にタッチして行くと言いますか、そういう立場お話なつたのであります。そこのところに一つの問題がありはしないか。それはヨーロッパにおける英国にしてもフランスにしてもそういう国の立場或いはアメリカ自体、それとアジアにおける日本立場というものが相当大きな相違があるのじやないか。他の国の場合とアジアにおける日本と私は非常に違うのじやないかと思う。従つて本当にアメリカ世界政策に対する発言を、日本が独立国の観点で以てそこに危険なからしめるようにということを考えれば、何としても東洋における日本として共産陣営との国交を回復することが非常に肝要である、こういうふうに私は考えるのであります。それだけ附加えておきます。
  255. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつとその問題について。これは両局長に申上げるのは筋が違うと思うのですが、心からそういう考えを持つておられるとするなら私は非常に問題だと思うのです。事務系統の人は、自由党内閣であろうが、社会党内閣であろうが、その内閣の決定した政策を自分の意思に反しておつても、あたかも自分が立案するというのがこれがもう吏僚組織の本質なんです。そういう点で十分苦衷を察しますが、併し心から実際そうだと思つておられたらこれは大変な大間違いだ。アメリカの二十世紀以来の極東政策を見たらこれはもう完全に失敗だ、講和条約、安保条約を結んでいると言つておられますが、日本を滅したものはアメリカなんです。そういうことはよくお考えにならんといかん。これは今度大臣とこの問題で腰を落着けて私はやりたいと思いますが、心からそういうふうに、アメリカ世界政策に誤謬がないという、全面的にそれにアダプトして行くようなことを考えられていたら、これはもう日本の運命を又誤らしめるものだ。もう今の外務省の行き方というものは、丁度ヒットラー外交に追随して遂に日本を今日の破局に持つてつたと殆んど軌を一にしている。その点は十分一つ動きつつある国際情勢についてお考え願いたいと思うわけです。あとでも岡崎大臣と話をしたいと思いますが、中国を共産化したのもアメリカなんです。日本を今日のように四つの島に閉じ込めてしまつた者も、吉田内閣が随喜の涙を流しておる当のアメリカなんです。よほどその辺は考えて頂かんと、外務省の高級の幕僚各位としては非常に問題だと思う。併し、そういうことを言つてもしようがありませんので、一つその点はもう少し考えて頂きたいと思うわけです。  それからもう一つお伺いしたいと思いますが、これは技術的な問題ですが、最近アメリカでは綿花と小麦が非常に余りまして過剰滞貨に悩んでいます結果、恐慌を外国に輸出するというようなまあ表現を使うことができるかと思うのですが、アメリカの議会で、支持価格の下に過剰農産物を二十億ドル買つて、それを相互安全保障本部MSAのに切換えてこのMSA援助として行く、そして日本がこれまで綿花の借款をやりましたが、そういうものも全部MSAに換えて行くと、いうことことが今アメリカの国会に諮られているということですか。そういうことについて何か御事情はわかつているでしようか。
  256. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 只今お話のような点につきましては、私ども何にも材料を持つておりません。ただ常識的に考えましてMSAの日本に対する援助は、どうも中国一般地域という項目で軍事援助に限られているらしいという現在の段階に、綿花や米が完成兵器の姿で日本に来るとも思われませんから、恐らくそういう議論があつたにしてもアメリカの議会でも問題にならんと思いますし、アメリカの政策にはならなかろうと思います。
  257. 中田吉雄

    中田吉雄君 それではこの本年の四月ですか、四千万ドルの綿花の借款をやつたのですが、そして又それと同じような形でやる借款をやはりMSA援助に切換えるというようなことが数種の新聞に出ているのですが、そういうことは通産省なんかとまだ御連絡はないのですか。
  258. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 私ども承知しています限り、そういう交渉は今までのところなかつたと記憶しております。
  259. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと簡単にお伺いしておきますが、この間の交換公文の日本側から出されたうちで「「軍事的義務」履行の要件は、日本の場合には、日米安全保障条約によつて日本がすでに引き受けている義務」というのは具体的、内容にはどういうことを意味しておられるのか。
  260. 下田武三

    政府委員下田武三君) 具体的には、米軍の駐留を許すという第一条と、基村その他を米側に断わりなしに第三国に貸さないという第二条の意味です。
  261. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今度はアメリカの返事の中に出ている自衛のために日本治安維持の部隊を使用するということは、義務として持つているというふうにお考えなつているかどうか。
  262. 下田武三

    政府委員下田武三君) この回答はまだ協定ではありませんでアメリカ側の見解の表示でありまして、アメリカがこう答えたからといつてそれは法的の義務となるわけではございません。
  263. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この文面では、相互安全保障計画の中から見れば、或いは合衆国と日本との間に存在する条約上の義務から見れば、自衛のために日本治安維持の部隊を使用することは義務としてすでに日体が負つているんだということを少くともアメリカ考えていると、こういうふうに読みとらなければならんと思いますが、どういうふうに解釈しますか。
  264. 下田武三

    政府委員下田武三君) たびたび問題になります相互安全保障法の五百十一条の(a)に、援助を受ける国は自国の防衛力を強化するという規定がございます。従いまして、協定締結いたしますれば、その協定を通じてMSA法の只今申上げました条項を実施する義務が生ずるわけであります。
  265. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、併し、ここの文面では、相互安全保障計画によれば、或いはもう一つ合衆国と日本との間に存在する条約上の義務によれば、自衛のために日本治安維持部隊を使うことは義務として引受けているはずだというふうに、少くともここじや読みとれると思うのですが、日本の解釈ではなくて、このアメリカ側の解釈は間違つているんだというふうにお考えなんですか。
  266. 下田武三

    政府委員下田武三君) 回答は全体を総合的に見なくてはなりませんが、総合的に見ます場合に、日本の義務は安保条約ですでに引受けてある義務を以て足りるということがあるわけであります。そこにやはり明確に法律的の限界が示されておると思います。
  267. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこで問題になるのです。日本からの尋ねたのは、そういうすでに安保条約で引受けた義務の履行を以て足りると考えている。それではその内容は何かと私がお尋ねしたら、例の二つの条項をお出しになつた。日本側はそういうふうにお考えなつて、仮に自衛のためであろうと日本治安維持の部隊を、保安隊を使うことは、義務として引受けていないのだというふうに、そして又そういうものを保安隊が引受けることは第九条違反なんだということを、政府はお考えなつているのだろうと思うのです。ところがアメリカ側の返事では、そういうふうになつていない。「同国が日米安全保障条約の下にすでに引受けている義務の履行をもつて足りる」と、言葉ではこれで受けているのです。併し、内容ではそのあとのすぐ下に、合衆国と日本との間に存在する条約上の義務は、自衛のために保安隊を使うことだけは引受けているのだというふうに解釈されるような返事をしている。そこで特に私が問題にしている。その点をどうお考えになるか。
  268. 下田武三

    政府委員下田武三君) この自衛のため以外に日本治安維持部隊を使用しないということは、手つとり早くいつてしまえば、海外出兵なんかを心配している向きが日本の国内にはあるが、そういうことは要求しないのだということを言いたいのだろうと、そういうことを私は想像しております。
  269. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 海外出兵は要求しないということは、これでわかるのだが、保安隊は国内の平和並びに治安維持以外に、直接侵略を受けたときに、自衛である限り、国土防衛である限り、それに国家一つ組織として立ち向うということは義務として負つているというふうに、少くともこれではそうとしか考えられない、この文面は。
  270. 下田武三

    政府委員下田武三君) 自衛のための如何なる行為に出られるかということは、これは各国の法制によつてきまるわけであります。日本日本の憲法の制度の下に対外的の軍事行為を自衛の名において行うことはできないとありますから、又その点はアメリカもよく承知しておりますから、そういう問題は発生しないと存じます。
  271. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そう、安保条約のときまではそういう問題は発生しないのです。それは義務でないというふうに私たちも教えられて来たのですが、少くともここに至つてはこれはそうとしか読めないのじやないですか。自衛のためならば日本治安維持部隊を使用することも義務なんだというふうに考えているのじやないか。
  272. 下田武三

    政府委員下田武三君) 自衛のためというこの自衛行為を起すのは日本自身でありますから、これは日本が自主的に決定する。又日本が憲法その他の制約で許されておる範囲内においてしか行使し得ない。これは日本のことでありましてアメリカ側から言うべきところではないわけであります。アメリカ側から言うとすればこういう一般的な書き方しかないと思います。
  273. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本考えはよくわかるのですがね。併しアメリカが少くとも自衛のために使うことは条約上の義務であると考えているのじやないかと、この文面は。私は日本のことを聞いているのじやないのですよ。アメリカはどう考えているとこの文面からはお察しになるのか。若しアメリカがそういうふうに考えているのならば、それは安保条約の解釈が違つているのだ。あのときの相談と違つているじやないかという抗議もしなければならんと思うのです。若しあなたのおつしやるように日本アメリカと両方合致した見解であるならば、そうして又安保条約審議するときには、私たちはその点においては両者意見は一致しているというふうに聞いたと思うのです。にもかかわらず今突如としてこういうふうな返事をもらつている。
  274. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本側の従来の建前は、アメリカ側がこういうことを言つて来ることによつて何らの変更を受けるものではありません。その点は法律問題としては明確だと思います。
  275. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本がそれで何ら変更を受けるものでないことは勿論でありましようが同時にこれからは少くともアメリカはそう考えているとしか思えないのだが、これはあのときの話合なり何なりからして向うの誤解じやないか。向うの間違いじやないかということのそれでは抗議をされることは考えておられるかどうか。抗議するかどうかは別問題として、その前にこの文面を正直にこのまま読めばそうとしかとれないと思うのですが、この文面の読み方はどうなんですかと聞いているのです。日本の態度は別として。
  276. 下田武三

    政府委員下田武三君) 繰返して申しますが、日本の態度としてはもう先ほど以来申上げておる通り明確であります。アメリカ日本の内部の事項に立入つて表現する必要もないのでありまして、自衛のために国内の平和及び治安維持を目的としてしか使わないと書けばそれは日本が注文する通りの言葉でしようが、そうまで向うから言う必要はないわけでありまして、向うはただ先ほど申しましたように、世間に言われておる海外出兵の危惧を打消さんとするのに急な余りこういう概括的、一般的な表現を用いたのでありまして、それは書くのがアメリカ人でございますからどうもいたし方がないと思います。これによつて日本側立場は毫も影響されるものではございません。
  277. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今問題にしているのは、安保条約或いはこの保障法でよく問題になる三つのこと、一つは国内の治安維持の問題、第二には国土防衛の問題、第三はそのために外に協力するかどうかという問題その三つだと思うのです。で、問題になつているのは、国外へ集団的に共同防衛のため対外的に行動するということは問題にならないのだということはこれでわかるんだが、同時に、併し逆に自衛のためならば治安維持の部隊を使うんだ、直接侵略の場合に使うんだというだけの軍事的な義務は負つていると向うは考えているとしかこの文面からは受取れないのです。それで向うがどんなに考えていようと日本の解釈が変るものじやないと言われるけれども条約である限りは両方の考えが一致していなければならない。若し一致していないならばその点については厳重な抗議をされなければならないと思うのですが、その点はどういうふうにお思いになるかということであります。
  278. 下田武三

    政府委員下田武三君) この文書の往復は条約ではないのでありまして、直接これからは義務が発生して来ないのであります。そこで協定締結する際に、今御指摘の問題を明確化する必要があるかどうかという問題になつて参りまするが、これは協定締結する際におのおのの憲法なり法制的の建前というものは自明の理としておりまして、協定としては恐らく触れるところはないと思います。従いまして、日本は従来の明確な態度をそのまま堅持して協定に入ればいいと、そういうように思つております。
  279. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは日本は自明の理であるようにお考えなつておるか知れんけれども、向うからはとにかくこういう返事が来ているのですからね。向うはそう考えておるとしか思えない、この文面からは。それならばこの点を新しく協定を結ばれるときに明確にされる必要があると同時に、こつちから出された(3)の(a項の返事としては、その内容から考えると若干食違つた点がある。そこをやはりもう少し明確に質しておいて頂かなければ困るんじやないかという感じを持つているのです。
  280. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点で私アメリカの上院の外交委員会なんかで、日本の憲法の論戦がなされている記事を若干集めている。その中でアメリカが一番残念がつていることは平和憲法を作つたことなんです。平和憲法を作つて結局日本人はこれをたてにしてアメリカの軍事的な要請を聞かない。一体この平和憲法を日本に作らした責任如何ということが、アメリカで誠にくやしいような言葉の片鱗が随所に現われるような表現を以てなされておる。そこでアメリカとしては、再軍備反対の世論も強く憲法改正はできない、そうしてどうしてこの憲法をごまかして日本を再軍備させて、地域的な集団安全保障の名で自衛の名でいろいろやるかという論戦をやつているのです。私は今日はその点を申上げませんが、その点は今佐多委員質問された点と、アメリカは非常にその点を現行憲法の範囲内でどういうふうにして再軍備し、そしてどういうふうにしたら海外にも出せるかということを遠慮なしに、どこかのやとい兵のようにアメリカ議会で論戦をやつているのです。ですからこの点はやはり私は次のときに私の持つている資料を御紹介しながら一つ質問をいたしたい。アメリカ議会における日本の憲法に関する問題もいろいろアメリカの解釈も変つて来ている。それはアメリカの再軍備要請と第九条の規定のこの相互の矛盾をどう調整するかと、それに合うような解釈をやつておる。而も日本の法制局も殆んどアメリカから教えられたと同じような解釈を私どもの持つておる資料ではやつておるところに非常に問題があると思いますので、一つこれはあとでもお尋ねしますがお調べを願いたいと思います。
  281. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一つその点で聞いておきますが、ダレスが五月五日の上下両院の外交委員会合同会議でやつた有名な証言ですね。あの証言の中に、いつも聞かれる言葉ですが、この安全保障計画には日本の国内治安維持と国土防衛のための武器を賄う資金が含まれておる、その場合に国内治安維持はまあ警察予備隊、保安隊の任務でありますからこれは問題ないと思いますが、国土防衛のための武器を与えるのであるということが書いてあります。この国土防衛ということに保安隊が使われるということは第九条に違反するとお考えになるかどうか。
  282. 下田武三

    政府委員下田武三君) 防衛、ディフェンスということはこの前も申上げましたように、本土に外から攻めて来る侵略に対する防衛は、安保条約の下でこれは米軍の引受けるところになつておりますし、又中に紛争の種をまいてその種を元として国内擾乱を起すという間接侵略に対する防衛は日本側が受持つことになつております。それで安保条約の下においての分担で、日本側が受持つている部分の防衛の行使に関する限りは憲法第九条と矛盾をしない、つまり完全に両立することと観念しております。
  283. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その日本側が分担するというものは、ここで言つておる国内治安維持なんでしよう。
  284. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国内治安維持というのは、外部から連絡なしに自然発生的に純粋に国内的に起る擾乱と考えます。
  285. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやそれは外国からどんなあれがあろうとも、間接侵略の結果起るにしろ、或いは国内的に単独に起るにしろ擾乱、騒擾等々の治安の紊乱を維持するというのがここで言つておる日本の平和、国内の平和、治安維持ということだろうと思います。これがその警察予備隊、保安隊がやる任務になつていると思うのです。それと厳密に区別をして国内防衛、国土防衛ということをやつた場合には、或いはここで言う自衛ということを言つた場合には、外からの直接の侵略があつて、それに対応する守りとしての問題を考えておるのだろうと思います。この点。
  286. 下田武三

    政府委員下田武三君) 保安庁法に言う国内の平和及び治安維持という範囲は、ダレスの証言にあります国内の治安、秩序維持と、それから国土防衛の半分を含んだものと、そういうように解釈しております。
  287. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 国土防衛の半分というのはどういうことですか。
  288. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国内で起る間接侵略に対する防衛です。
  289. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは、ちやんとあのときに区別したのは、騒擾等々は国内の治安維持の問題だからこれは警察予備隊がやるのだ、併し外国から侵略があつた場合にそれに対応するのは自衛であろうと、自分の国土の内部であろうと警察はこれにはやらないで、安保条約によつて駐留軍にお願いをするのだという区別の仕方が、あのときの区別の仕方であつたのではないでしようか。それをここじや踏襲しておるだけだ、それでそれを目的にして援助をやろうとしておる。だからここの返事も従つて自衛のためならばこれを使うことをちやんと予定しておると思うのです、少くとも向うは。それが安保条約の下にすでに含まれておる義務の履行をもつて足りる、この言葉自体は日本の表現する言葉と同じですよ。併しここに何を理解しておるか、具体的に何ですかと私が改めて聞くのはこういう問題を含んでおるから改めて聞いておる、そこに大きな喰い違いがあるのじないか。
  290. 下田武三

    政府委員下田武三君) 理論的に申上げますとなかなかわからないのですが、仮に実際の場面を想定してみますと、外から侵略が来るという場合に、日本はこれを迎撃して打つということは交戦権の行使になりますのでできません。それは保安隊の任務ではないと思います。若しそのように自衛というものの意味を解しますと、これは侵略することが明らかなる戦力なら、これを迎え撃つて撃沈しなければならん、或いは臨検拿捕しなければいけません。そういうような交戦権を行使する意味においての自衛行動は日本にとつては憲法の下において許されないのであります。ところが迎撃されないまでも、入つて来てなおこれはアメリカさんのやることだと言つて保安隊が手を拱いて見ておるかと申しますと、これは国際法で如何なる国家といえどもおよそ独立国であれば自衛権を有する。そういう場合には保安隊のみならず警察でも消防でも、又一私人でもやむにやまれん自衛の本能、而も国際法上許された本能に出ずる行為であろうと思うのです。だからその段階にはこれは交戦権ではありません。交戦権ではなくして国際法が直接認めるところの国家の基本的権利の行使として活動することになると思うのです。でございまするから、あながち国内から紛争の種をまいて起る間接侵略のみならず、直接侵略の場合でもそれが国内に入つて来てしまえば、やはりこれは国際法の認める自衛権の行使ということで対処し得るのではないかと存じております。
  291. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、憲法の解釈のときはそうじやなかつたのじやないですか。固有の自衛の権利は持つている。従つて例えば外敵が来た場合に、それに対応して竹やりを持つたり等々のことをしてそれに立ち向う、或いは歯でくらいつくというようなことは、自衛のための固有の権利を行使したことになる。併し少くとも憲法で戦力を保持せず、交戦権を放棄したものならば、国家の統一的な意思によつて保安隊みたようなものが国家機関として、而もああいう武器を持つて立ち向うということはできないのだというのが憲法のあの規定であり、あれから一貫して憲法が、自衛権であつても武器をとつて国家権関がそれに立ち向うことはできないと、おごそかに宣言した理由だつたのじやないかと思います。
  292. 下田武三

    政府委員下田武三君) 憲法制定当時そういう解釈論をなさる方があつたことは私ども承知しております。併しながら現在の国際情勢の下において、マッカーサー自身も当初考えておつたように、日本を太平洋のスイスたらしめるというような空想はもはや成立しない。又アメリカの相互援助の精神から見ましても、何も日本が積極的に権利義務を履行する、プラスになつてもらおうとは決して思つていないのであつて、むしろ日本が穴であつてくれては困る。日本国家の固有の自衛権を持つておりながらその自衛権すら竹やりでやるというのじや困る、日本がやすやすととられてしまうような穴であつたら、今日一国の安全は直ちに各国の安全に影響することがある。この日本の穴をふさごうというのが正直のところの目的じやないかと思うのであります。積極的な軍事義務として日本が積極的に外まで出てプラスになつてもらいたいというのではなくて、日本のこの危険な穴、その穴は日本だけの問題ではなくて各国の安全に影響するところの穴を援助して埋めよう、それがアメリカの根本的な考え方じやないかと思います。
  293. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、そういう政治論なり軍事論、世界情勢の判断になれば問題は別です。併し今そういう立法論なり政治論をやつているのではなくして、あの憲法の下においてならば、そういう解釈は成り立ち得ないのじやないか。仮にそれでは解釈を違えたのだとおつしやるのならば、その解釈は少くともあの安保条約を結ぶときにはその解釈を変えようとして総理が妙な答弁をされたが、これはやつぱり間違つていたのだということでもう一遍はつきり訂正をされて、自衛のためであろうと保安隊は動けないのだということで解釈は一定したと思うのです。それでは今度はMSAの援助協定を結ぶに際して解釈を変えなければやつて行けないという意味で解釈を変えようとしておられるのかどうか。私たちは解釈だけでは解決のつかん問題だと思いますが、それは次の問題として、解釈を変えようとしておられるのかどうか。
  294. 下田武三

    政府委員下田武三君) 今度の問題に関連して憲法解釈を変更する必要もないことと存じます。つまり吉田総理は自衛の名において戦争するということはいかん、これは昔から自衛という名で侵略が事実行われたというような点からいつて、自衛の名においてなら憲法第九条の交戦権禁止の規定の例外を認めていいんだという解釈はとらないという建前だつたと思います。又木村保安庁長官の言われた、木村個人一人といえども立ち向うと言われた意味の自衛権、実は直接侵略の場合に、これは国内の治安にも影響がありますし、又国際法上の自衛権の行使を禁じられてもおりません、そういう場合に保安隊が行動するのは、木村長官個人が立ち向われると同じ事実行為であります。これは国家機関国家機関本来の任務の下に行動するのではなくて、まさに私人が事実上の行為に出ると同じ意味で、本来火事を消すのに消防隊が立ち向うと同じ意味の事実行為でございます。この事実行為は、普通の状態でありましたならば国際法の認めないところでありまするが、自衛の場合においては国際法がそれを許容しておるのであります。
  295. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやいやそういう解釈は成り立たんので、あそこで特に自衛のための云々と言つたのは、侵略と自衛と区別して言われただけでなくて、仮に自衛であつても、国内でそういう武器をとつて国家機関がそれに立ち向うということは、およそできないというのが憲法の考え方なんだ、という意味で訂正されたいと思います。そこで木村長官が個人として竹やりを持つてきて奥さんをつれて来て、木村長官は竹やりで突つき、奥さんが歯で食いつくというのは、これは自衛権固有の利として何ら妨げないだろうけれども、木村長官が保安隊の長官として保安隊を部隊として、而も保安隊が援助その他で持ておるところの武器を出動させてやるということは憲法上はできないんだ。それは今までの少くとも憲法の解釈だつたんじやないか。憲法を厳密に解釈した場合にはそういうことになつて来るんじやないか。だから木村長官は私個人としてはそういう態度をとりますと言つたので、個人ならば固有の権利として、正当防衛としてやられるんだろうから、それは問題ない。或いは保安隊の諸君が個人としてあそこから抜け出て来て、かねて習い覚えた銃剣術か何かでやるというのならば、これは固有の権利でしよう。併しそうでなくて保安隊の上官の指揮命の下に、保安隊が部隊としてあの武器弾薬その他をば操縦しながらそういうものに立ち向うということは、現在の憲法の解釈としてはあり得ないんじやないか、解釈を変えられれば別として。それから又そういうことをやれないことすら憲法は不都合なんだという議論ならば、これは又別途議論にはなりますが。
  296. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 如何でしよう。これは随分先ほどから意見が出ておるわけでありますが……。
  297. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今条約局長が説明された問題でありますが、直接侵略でなく、大規模の戦乱の状況が現実的に国内に起つた、それに対して法律上どういう解釈があるか、それは別として、保安隊なりその他のものがそれに立ち向つた、その姿は国際法的に見れば、それはどういうふうに、国際法でですよ、国際法で戦争と見るのか、或いは一つの戦争じやなく擾乱というふうに見るのか、国際法上はどういうふうに見るのか、現在の通説ですが。
  298. 下田武三

    政府委員下田武三君) 後日本委員会で御審議願いますジュネーブ条約にあたかもその問題の規定があるのでございますが、そういう場合には民兵隊と申しますか、義勇隊と申しまするか、本来軍隊でない者がやむを得ずして自衛権に基いて行動を起す場合、これは義勇隊、民兵隊というカテゴリーに入ると思います。
  299. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 その全体の姿がそれはやはり一種の戦争状態と、こういうふうに見るんですか。
  300. 下田武三

    政府委員下田武三君) 戦争ではございません。
  301. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 如何でございましようか、本日はこの程度で散会したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  302. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 然らば散会することにいたしまして、明日は小麦問題の合同委員会でありますが、午後一時から開会することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会