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政府委員(土屋隼君)
アメリカのいわゆるMSAと申しております相互安全保障法は御
承知の
通り一九五一年に制定せられまして、翌年の一九五二年中に改正をいたしましてその改正を含めましたものが、現在我々が呼んでおります相互安全保障法ということになります。
アメリカでは
予算の提出上毎年この法律につきまして
予算を作りまして、そのときどきに応じまして字句の修正その他を修正の形で出しますので、例えば
只今議題に出ています一九五三年から五十四年度にかけての
予算の編成につきましては、一九五三年度相互安全保障法の改正という形で出ているわけであります。
私
どもがこの安全保障法を一応調べまして、大体の仕組と申しましようかお
手許にございます
資料から申上げますと、五十一年から五十二年に改正せられました現行の安全保障法におきましては、先ず大体の条文の数から申しますと、御
承知の
通りアメリカの条文は最近各篇
ごとの条項を新たに起しますから、五篇一項と申しますと第五篇の第一条ということになります。四百三条というのを引きました場合には四篇の三号ということになるわけでありますが、これを全体にいたしまして甚だこれは条文から申しましても少い条文であるわけでありまして、大体四十二条から成
つているわけであります。
そこで簡単に安全保障法の法律の構成を申上げますと、第一条は前文のような形に
なつておりますが、第二条と普通言われますのがこのMSAの法律の目的を
規定しているわけであります。この目的に従いましてMSAの法律というものは実施されているわけでありますが、主として「友好国に対する軍事、経済、及び技術の援助を
承認し、これによ
つて友好国の安全保障、独立、並びに米国の
国家的利益のために友好国の資源を開発し」云々とここに
規定しておりますのが安全保障法の大眼目であります。第一篇として百一条というものを起しておりますが、ここから始まりますのが、地域的に分けますのは第一篇は欧州であります。欧州
予算の
承認が第百十一条、その中にナトーの北大西洋
条約加盟諸国に対する軍事援助の問題を
規定するのが一で、その他の諸国がその
あとにそれに附随いたしまして避難者等に対する額の最高額をきめたのが、お
手許に差上げてございます五十一年の相互安全保障法の第四ページ辺りにそれを
規定しているわけであります。第六頁のBに至りましては、これから
予算の流用方法を
規定しておりますし、
あと採用した場合にその
規定の義務を課しているわけでありますが、第二篇が近東及びアフリカ、これも同様の
規定でございますから省きまして、第三篇がアジア及び太平洋地域、これは三百一条に
規定しておりますのが支那の
一般地域、軍事並びに経済、その他の援助の
承認をいたしております。今問題になります
日本に対する援助はこの第三篇の支那地域という所に入るわけであります。三百二条が経済及び技術援助の
予算の
承認、
あとのほうに十四ページになりますが、米国における支那及び韓国の学制のことまで
規定しているわけでありまして、その次にはやはり十四ページにしまいの段になりますが、国連朝鮮再建局に対する
予算の
承認が
規定してございます。十七ページにやはりその(d)に韓国に対する見返資金の均等を
規定しておりますし、(e)では極東経済援助の
運営方法について
規定しておるわけであります。
第四篇が
アメリカ諸共和国及び西半球の自治領に対するもの、第五篇に参りまして、初めてMSAの本題といたしましての、何と申しましようが
組織だとか、いろいろ総則をきめておりますが、第五百一条は安全保障本部の長官の
規定であります。その
責任は二十ページから、(1)、(2)と挙げております。これが本部長官の
責任になります。俸給その他をきめた点を二十一ページの(c)という所に書いてございますし、又その下に直属いたします
機関として、安全保障局が二十二ページの(e)に
規定しているのが安全保障局の
規定であります。二十二ページに入りまして、従来ありました経済協力局の廃止の問題、それから相互保障局の細かい
規定というのが出ております。二十四ページの第五百三条相互安全保障長官の追加の義務ということが、いろいろ一九五二年六月三日以後における長官の任務について
規定しているわけであります。
二十四ページ並びに二十五ページに、
一つあとで問題になるところがあるかと思いますが、本部長官代理といたしまして、欧洲に駐在する特別代表の
規定が五百四条に
規定してあります。これは主として北大西洋
条約加盟諸国に対するいわゆるナトー
協定のために派遣されている、実質上の任務を持ちますいわゆる安全保障長官の代理として欧洲に駐在しているという特別
機関であります。
あとは職員の
規定でありまして、二十九ページにおきましては五百五条に国務長官、つまり今まで申しましたのが主として国防長官とそれから安全保障長官との任務にかかるものでありますが、五百五条は国務長官についての
規定でございます。
その次に五百六条、ここには安全保障法の運用にあたりましてその軍事援助の実体について、実施の任にあたります国防省の中における
機関の長官といたしまして、国防長官のことについていろいろ
規定が掲げてありますが、この中に(一)の軍用の完成品の必要量の決定だとか、或いは(二)の役務供与計画と統合することができるような方法による軍用装備の調達だとか、(三)の被援助国による完成品の
使用の監督、(四)の
外国軍隊員の
訓練の監督、又(五)の完成品の移動並びに引渡しというようなのがございますが、ここから国防長官といたしまして軍事援助に対する
責任を持ちまして、この
責任を持つ法的根拠から援助を受ける国に対して軍事顧問団を派遣して、これが国防長官の指揮を仰ぎながら現地におきまして被援助国との間の軍事援助に対する細目の実施にあたることになりまして、これから軍事顧問団に対する法的な根源が出て来るわけであります。
次に三十一ページに参りまして、海外における協同調整として五百七条に
規定してあります。この
規定も又軍事顧問団、経済顧問団、技術顧問団に
関係があるものでありまするが、米国の
政府の外交使節団の下に、つまり大公使の下に、
各国におきます米国
政府代表相互間の相互調整を確保するという
規定がございますが、ここから現地にあります軍事顧問団なり経済顧問団なり技術顧問団というものは、現地におきまして
アメリカの大公使の指揮の下に仕事をするという任務が出て来ます。
従つてその前の条項の五百六条と五百七条とが現地に派遣せられるいわゆるカントリー・チームの職能を
規定している
規定であります。次は四を省きまして、三十三ページの身許の審査、これは大して問題はございません。
三十五ページの五百十一条、援助を受ける国の資格がここに謳
つてありますが、ここにいろいろな点にい
つてMSAの解釈については
考慮を要する点になります。つまり
アメリカはMSAを適用して援助するという国の資格をここに六つまで大事なものを並べてありますが、五百十一条の第一号を御覧頂きますと、大統領が援助を与えること自体が
アメリカの安全保障を強化するものであると認めることが援助を与える第一段階になります。第二の段階といたしまして、援助を受ける国が次に掲げたような六つの条件につきましてその条件があるということ、又それを引受けるという義務があるとすれば、引受けるということを同意して初めて援助を与えられることになります。つまり大統領の認定とそれから援助を受ける国との義務に対する
承認とがあ
つて、初めて援助を受けるということができることになりますし、又この援助を受ける国がここに掲げられた六つの条件に対して
受諾するということを必要とありますから、つまりその条文で申しますと被援助国は次のことに同意している場合とありますから、この同意を何らかの形で出すことが援助を受ける必要な形式になります。この形式は交換公文の場合もございます。又
条約の形式を持ちました
協定を結ぶこともあるわけであります。この細なく中はこれをここで申上げるまでもかいすでにいろいろ流布されている点で、ここに一々申上げる必要もないかと存じます。
それから
一つ御注意を頂きたいのは三十六ページのCというところで、米国
政府は米国の援助を受ける諸国が、自由
世界の目的達成のために最善を尽してみずからを助け、且つそれらの国々に相互間に、及び米国との間に協力するため最善の御協力をする、その
程度においてのみ相互安全保障は実現され得るものである。これは皆様今お読みいたしましてどつかで聞いたような文句だということにお気付きになると思います。
日本政府は六月の二十四日に、この
只今申上げました五百十一条の六つの資格について、
日本政府の所見と又自分の認定している点を
アメリカに正式に見解を求めたのであります。これに対しまして
アメリカから六月二十六日に回答を寄せておりまして、その回答の最後の節に記されておりますのがこの
只今申上げましたCの条項であります。つまり安全保障法の五百十一条のC項というのが、
アメリカにすれば、軍事援助若しくはその他と呼ばれますところの安全保障法によるところの援助あたりについて、
アメリカがどういう意図であるか、どういう意思を持
つているかということを謳
つたのがこのC項だということを御
承知頂いてよろしいかと思います。
次は三十八ページの五百十三条、これは資金の特別
使用、各編の中で約一割に相当するもの、一割を限度といたしまして、安全保障法が流用し得るという
規定が述べてあります。
その他は四十ページにございます五百十五条の差押えに対する保障、これはいろいろ細かい点を
規定した点で、当然援助を受けるとならばそういうことになります。
四十三ページの特許及び技術知識に関する問題、これも発明の点だとか、知識或いは情報というものについて
規定しているわけであります。四十六ページの五百十八条は大統領の報告に関する点。次の五百十九条は被援助国の通貨、これは近東アフリカ、アジア、及び太平洋地域におきまして援助を受ける国の通貨を、或る場合においてはと
つておきまして、それを
使用するという場合がございます。普通見返資金という形で呼ばれるものがその主たるものでありますが、そこについての
規定が五百十九条の
規定であります。次の五百二十条、保証金に関する問題。次は事務費に関しまして集団防衛費だとか、
土地の借入れ、買上げ、又は税金に関する問題、又事務、
アメリカの
機関の事務
運営費の問題等が
規定してございます。
五十ページの五百二十三条は、見返資金について従来ありましたものに対してかなり細かい
規定を挙げておりますが、これは前の条文がこれに挙げてございませんで、経済協力法の中に
規定しておるものをここで修正して大成したということになりますので、これは
あとで又いつか申上げる
機会があると思います。
次の五百二十四条は装備の返還に関するものでありまして、解体したり或いは屑化したり、その他の目的のために返還ということを
規定した条項であります。十二ページに余剰の装備に関する問題、議会の
委員会の経費の問題、最後に国際連合の技術援助に関する問題等が
規定されておりまして、別に問題になることはございませんと思います。次の第五百二十九条、これは大統領が次のような場合においては援助の停止をするという
規定が設けてあります。又
国家的な目的に反するとか或いは安全保障法律の性格及び目的と両立しない、或いは国際連合の安全保障
理事会の決定に反すると認めたときとか、平和に対する脅威若しくは平和の破壊、若しくは侵略行為というふうに
規定してございまして、一応の
規定としてここに掲げてあるわけであります。次に五百三十条は計画の終了を
規定しております。これはわざわざ
説明するほどのこともないと思います。
あと細かい
規定がございますが、MSAの法律解釈に当りまして主となりました条項は、大体これで尽きていると思うのでございますが、一言附加えさして頂きたいのは、五十一年の安全保障法の前には、要するに
アメリカが戦争中並びに戦後におきまして
外国に与えた援助はいろんな形になるわけでありまして、戦争中におきましては武器貸与法というものがありまして、戦後におきましては経済開発法だとかいわゆるポイント・フォアと言われるものだとか、いろんなものがあ
つたのでありますが、この五十一年の安全保障法によりまして従来の、そうい
つた外国に対する援助の法律全部の精神をくみとりまして集大成したものがこの安全保障法でありますが、同時にこの法律に先行いたしますところの経済開発法だとか、或いは相互防衛援助法だとかいうものは全部一応この法律ができましてもなお且つ生きているということになります。
従つて安全保障法の実際の適用になりましては、単にこの安全保障法だけでなく、この法律の前にありました、今申上げましたようなもろもろの法律も、やはりその内容に
なつて現在生きているというふうに御
承知を頂きたいと思います。