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1953-07-11 第16回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科員昭和二十八年七月九日(木曜日)委員 長の指名で次の通り選任された。    主査 本間 俊一君       相川 勝六君    有田 二郎君       尾崎 末吉君    田中  元君       古井 喜實君  早稻田柳右エ門君       片島  港君    八木 一男君       加藤 鐐造君    平野 力三君       池田正之輔君     ————————————— 会議 昭和二十八年七月十一日(土曜日)     午後二時四十三分開議  出席分科員    主査 本間 俊一君       相川 勝六君    尾崎 末吉君       田中  元君    櫻内 義雄君       古井 喜實君    福田 昌子君       八木 一男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         法務事務官         (大臣官房経理         部長)     天野 武一君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     小林 行雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君         文化財保護委員         会委員長    高橋誠一郎君  分科員外出席者         予算委員会専門         員       小林幾次郎君     ————————————— 七月十日  分科員有田二郎君、早稻田柳右エ門君、片島港  君及び平野力三辞任につき、その補欠として  鈴木正文君、栗田英男君、福田昌子君及び小林  進君が委員長指名分科員に選任された。 同月十一日  分科員鈴木正文君、田中元君、栗田英男君及び  小林進辞任につき、その補欠として中川源一  郎君、倉石忠雄君、櫻内義雄君及び平野力三君  が委員長指名分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算法務省及び文部  省所管     —————————————
  2. 本間俊一

    本間主査 これより第二分科会を開きます。  分科会の日程につきましては、先刻の理事会において次のように申合せをいたしましたので、この申合せ従つて審議を進めることにいたします。本日の午後と次会は来る十三日月曜日午前十時より開会をいたしまして、当日午後四時より開会の総会に審査の結果を報告することとなつております。右御報告をいたしまして、御了承を得ておく次第でございます。  議事に入るにあたりまして一言ごあいさつ申し上げます。私、第二分科主査を命ぜられたのでございますが、何分ふなれでございますので、各位の御協力によりましてその使命を全ういたしたいと存じます。  本分科会昭和二十八年度会計予算、同特別会計予算法務省文部省、厚生省及び労働省所管審査に当ることになつておるのでありますが、審査の都合上、本日は法務省及び文部省所管を議題として審査に入ります。  まず昭和二十八年度一般会計予算中、法務省所管について政府より説明を聴取することにいたします。
  3. 三浦寅之助

    三浦政府委員 昭和二十八年度法務省所管予定経費要求額につきまして、その大要を御説明申し上げます。  昭和三十八年度予定経費要求額は百八十六億八千九百六十九万六千円でありまして、これを前年度予算額百七十七億六千九百六十七万五千円に比較しますと、九億二千二万一千円を増加いたしましたが、この増加額は昨年十一月の給与改訂に伴う人件費がすべてであります。すなわち給与改訂に伴う人件費等増加額は十四億四千八百八十四万二千円でありまして、その他の事務費等一般経費は逆に五億二千八百八十二万一千円が減少したのであります。この一般経費減少額約五億三千万円の内訳は、既定経費の節約と昨年七月一齊に施行されました住民登録法に基き、この制度の的確な運用を期するために計上された初度的な経費の減によるものであります。  今ここに昭和二十八年度において、新たに増額した経費内容重要事項について御説明申し上げますと、第一に、平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律の規定に基く巣鴨刑務所在所者の仮出所、赦免減別等審査及び関係各国への勧告に関する事務を処理するために、在所者の環境の調査及び勧告のための各種調査資料作成等に要する経費九十三万六千円を新たに計上いたしました。  第二に別途法律改正を御審議願つておりますように、刑法、刑事訴訟法及び犯罪者予防更生法等改正して、成人である刑の執行猶予者に対する保護観察制度実施することは、短期自由刑の弊害を除去し、かつ再犯を防止するためにきわめて必要でありますので、これに要する経費八百九十八万三千円を新たに計上いたしました。  第三に本年度実施されました衆議院議員選挙及び参議院議員通常選挙の公正を期するため、厳正、適切な検察を行う必要がありますので、これに要する経費八千三百七万一千円を計上いたします。  以上、新たに計上いたしました経費の概要を申し上げましたが、さらに重要事項について概略申し上げますと、第一に法務局地方法務局等におきまして、法令に基く登記、供託、戸籍等事務を処理するために必要な経費一億八千六百六十四万九千円を前年度に引続き計上いたしました。  第二検察庁におきまして処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件の直接捜査活動に要する経費四億六千五百一万九千円を前年度に引続き計上いたしました。  第三に拘置所刑務所少年刑務所、少年院及び少年鑑別所昭和二十八年度収容予定人員十万七千人に対する衣食医療及び就労等に要する経費三十八億二千九百五十三万六千円を引続き計上いたしました。  第四に公安調査庁におきまして処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費二億四百八十二万八千円を、前年度に引続き計上いたしました。  第五に前年度外務省より当省所管に移管されました入国管理局出入国管理令に基く不法入国者等調査並びに審査事務を処理し、被退去強制者に対しては護送、収容、送還する必要がありますので、これに要る衣食医療及び送還のための用船料等に必要な経費、二億—千二百四十六万三千円を引続き計上いたしました。して、法務本省、及び法務局等の庁舎その他新営に要する経費、二億二千二百八十一万八千円が、建設省所管に計上されておりますから、御参考までに申し上げます。  以上が法務省所管予定経費要求大要であります。慎重御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  4. 本間俊一

    本間主査 一旦休憩いたしまして、四時半より開会することにいたします。     午後三時五十二分休憩      ————◇—————    午後四時五十五分開議
  5. 本間俊一

    本間主査 休憩前に引続き会議を開きます。大達文部大臣
  6. 大達茂雄

    大達国務大臣 文部省所管予算大要について御説明を申し上げます。  昭和二十八年度文部省所管予算額は、九百六十四億六百五十八万八千円でありまして、これを前年度予算額三百七十四億二千七百六十五万八千円に比較いたしますと、五百八十九億七千八百九十三万円を増加いたしております。なお文部省予算額一般会計予算額に比較いたしますと、その比率は九・九%となつておりますが、一応義務教育費国庫負担金を除いて比較いたしますと四・三%となりまして、前年度比率四%と比較いたしまして〇・三%の増加となつております。  次に昭和二十八年度予算額のうち、重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は義務教育費国庫負担に必要な経費であります。義務教育の水準の維持向上をはかるため、義務教育費国庫負担法に基いて、公立義務教育学校教職員給与費の二分の一と、教材費の一部を負担するため、必要な経費ありまして、給与費として五百二十一億円、教材費として十九億円を計上したのであります。  第二は文教施設整備に必要な経費であります国立文教施設につきましては、戦災を受けました国立学校その他の建物復旧と、新学制の実施に伴う統合整備等によつて緊急に必要な建物を整備するための経費十九億四千六百八十三万二千円を計上いたし、公立文教施設につきましては、小学校の二部授業等不正當授業を解消するための校舎整備、六・三制実施に伴う中学校不足教室補充積雪寒冷湿潤地方における中学校屋内体操場建物整備、盲学校及び聾学校義務制学年進行による不足教室補充、また義務教育学校老朽校舎及び戦時中または終戦直後の弱体、危険校舎の改築、公立高等学校大学建物戦災復旧等に必要な経費四十二億八千四百三十七万四千円を計上いたしましたが、このほか、昭和二十七年三月の十勝沖震災等により損害を受けました国立公立文教施設災害復旧に必要な経費三億三千五百八万四千円を計上したのであります。  第三は育英事業充実に必要な経費であります。日本育英会に対する奨学資金を貸し付けるとともに、その事務費補助に必要な経費として三十四億三千九百七十二万七千円を計上したのであります。なお奨学生数におきましては十八万五千人を予定し、学資金につきましては、本年七月以降単価の引上げを行うことといたしました。  第四は産業教育振興に必要な経費であります。産業教育振興法の施工に伴いまして、経済自立に貢献する有為な国民を育成するため、産業教育振興をはかる必要がありますので、中央産業教育審議会運営、その他の事務費二百六十一万四千円と、高等学校及び短期大学設備に必要な経費並びに中学校及び高等学校研究指定校経費等の一部を地方公共団体補助するに必要な経費九億四百七十七万八千円、高等学校産業教育用教科書の発行を助成するため必要な経費四百万円をそれぞれ計上したのであります。  なお本年度も前年度に引続き、高等学校設備費補助重点を置くこととしたのであります。  第五は学術振興に必要な経費であります。人文、自然両科学部門におきまして、基層的、応用的研究をつちかうため、重点的に研究者に交付または補助するに必要な経費七億円、民間学術研究機関等に対する補助に必要な経費七千四百五十万円また国立大学等の有為な教官または研究員を海外に派遣留学させるための経費五千万円をそれぞれ計上したのであります。  なお本年度科学研究費私立大学基礎設備助成補助金として二千万円を新たに計上したのであります。  第六は私立学校助成に必要な経費であるます。私立学校教育振興をはかるため、昭和二十六年度に設立されました私立学校振興会社資本金の大部分が値権出資で、その経営はきわめて困難でありますので、私立学校施設設備充実するために必要な経費として十億円を政府出資金として計上したのであります。  第七は青少年教育振興に必要な経費であります。青少年に対する社会教育振興をはかるため、戦後全国各地に成立いたしました青年学級に対しまして、その運営費の一部を地方公共団体補助するための経費七千二百九十八万六千円、また前年度見返り資金で支弁されました地方青少年指導員給与及び旅費の一部を補助するための経費九百二十五万七千円をそれぞれ計上したのであります。  第八は文化財保存事業に必要な経費であります。文化財保存事業は、ますます社会的関心をたかめつつありますが、本年度はさらに国宝その他建造物保存修理重点をおきまして、その充実をはかるための経費四億六千百七十一万二千円を計上したのであります。  第九は国立学校運営に必要な経費であります。国立大学七十二、国立高等学校八、大学付属研究施設五十五、大付属病院十九を維持運営いたしますのと、新たに東京大学外十一大学新制大学院を設置し、また広島大学に医学部を、富山大学経済学部を群馬大学、電気通信大学、静岡大学、滋賀大学、及び山口大学夜間短期大学を創設する等の措置を講じますため必要な経費二百六十六億四百七十五万一千円を計上したのであります。  このほか義務教育教科書無償配布教科書の編修、検定、刊行、定時制教育振興公立幼稚園施設整備費補助教育委員会運営指導僻地勤務教員宿舎整備補助学校給食助成その他文部行政及び学術振興上、緊急欠くべからざる諸般の施策を講ずるため必要な経費をそれぞれ計上したのであります。  以上は文部省所管に属する昭和二十八年度予算大要につきまして御説明申し上げた次第であります。  何とぞ御審議の上御賛成あらんことを希望いたします。
  7. 本間俊一

    本間主査 これより法務省所管及び文部省所管予算について質疑に入ります。櫻内義雄君。
  8. 櫻内義雄

    櫻内委員 いい機会でございますので、文部大臣にお尋ねしておきたいと思います。それは去る六月十九日に改進党より田中久雄君が本会議場におきまして文教関係質問をいたしたのでありますが、その場合に教育基本法改正の意思ありやなしやという質問をいたしております。それで吉川総理は「お話のような教育基本法その他については、十分検討を加えて、改正いたさんとおう考えを持つております。詳細は文部大臣からお答えをいたします。」こう答弁されましたが、文部大臣からは当日御答弁がなかつたわけでございます。その後文部委員会におきましていろいろこの質疑に相応するお答えがあつたようにも承るのでございますが、教育基本法によりますと、その前文に、新憲法理想現実教育の力にまつ、こうしてあるのであります。それから文部委員会における大臣の御答弁の中で、私ども関心を持つておりますのは、教育勅語内容をなしておる徳目について、わが民族として最も大切にその徳目を保存してこれを履行して行かなければならないというような趣旨のことを言われて折るのでございます。この際この改正の意思ありやなしやをお尋ねするとともに、教育基本法敗戦後の日本に、従来の日本とは切り離して、新しく教育基本を示したものとして明らかにされたことはいまさら言うまでもないのでありますが、敗戦という事実を迎えたことは日本の、長い伝統の中のただわずかな一つの事実であるということを考えて参りますときに、そこに教育基本法改正考え方というものが起きて来るのじやないかというふうに考えるのでございますが、これらの点について文部大臣の御所見をこの際承つておきたい。
  9. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育基本法の第一条には、教育目的といたしまして、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。」かように明らかに教育目標を示しておるのであります。それはただいまお話になりましたような、終戦後新たに国際社会に発足したわが国理想目標に沿うことを主眼として規定しておるのでございます。私は、今日この教育基本法のこの点における改正をする必要はない、今のところこれを改正するという考えは持つておりません。
  10. 櫻内義雄

    櫻内委員 そうなるとちよつとむずかしいのでございますが、先ほども総理速記録を読み上げたように、総理は「教育基本法その他については、十分検討を加えて、改正いたさんという考えを持つております。」、こうお答えになつておるのです。考えを持つております。「改正いたさん」、すると言つておられる。そこで当然政府としては改正される御意思があるものと思うので、私は教育基本法というものが、敗戦後の新しい事態によつてのみ考えられておるので、今の御指摘の点はわかりますが、敗戦という事実は長い間のこまだからということから考えれば、大臣が言われる教育勅語の中の徳目を生かして行こうという気持、そういうものが働いてこの総理大臣の言われておるようなことと相まつて、そこで基本法改正については、ある程度の何かのお考えを持つておるのじやないか、しかるに「詳細は文部大臣からお答えをいたします。」こう言つておるのに大臣からははつきりしたお答えが今までないので、分科会ではございますが、大事な点なのでお尋ねをしておるわけであります。
  11. 大達茂雄

    大達国務大臣 私の記憶によりますと田中議員質問は、大体学校教育法委員会法等改正を主にして御質問なつた、その意味において教育基本法の問題について総理所見伺つた、こういうふうに思つておるのですが、第一条に掲げておるところの点につきましては、先ほど申し上げますように、ただいまのところ改正をするという考え方は持つておりません。総理もこの点に検討を加えてということでありますから、検討を加えて改正すべきものがあれば改正をする、すでに結論に達しておられるような——そういうふうに読んで読めぬことはないのでありますが、検討を加えた上でと言つておられるのでありますから、結論に達しておられぬもの、こういうふうに私は思つております。検討を加えた上で改正の必要があれば改正する、こういうような意味であります。
  12. 櫻内義雄

    櫻内委員 大臣の御答弁は大体了解ができたのでありますが、しかしながら総理大臣答弁の御趣旨からいたしますれば、改正方向にある、かように思わざるを得ないのでございます。  時間をとつては恐縮でございますので、そこで私どもが大きな関心を持つておりますことは、新憲法の第九条の戦争放棄、それから自衛軍備との関係は、憲法が発布せられました当時におきましては、自衛軍備も否定するような考え方が強かつたわけでございます。しかしながら現在は総理もたびたび答えておりますように、国力あるいは経済力が伴つて来るならば、当然自分の国は自分で守るべきである、自衛軍備はすべきであるということを言つておられる、ただそれは国力が伴わない、経済力がないのだからということに終始しておるわけでございます。そうなつて来るときに考えますことは、将来日本自衛軍備を持つて行くということについては、安全保障条約の上から見ましても、漸増的にこれを増加して行くべきであつて国力が備わつて来ればその方向に当然行くのだということになると、これは私どもの時代に完全なる自衛軍備ができるのではなくて、次の世代を負う者にゆだねて行かなければならないという気がするわけでございます。その場合におきまして、現在の学校教育の方式から見ますならば、まことに心もとないものがあると思うのでございます。先般文部大臣道義高揚愛国心振起を説かれておられるわけでございますが、それだけでただいま申し上げた今後の自衛軍備に備えるところの教育方針になるのかどうか。現在の小学校中学校に対する何らかの考慮の必要があるのじやないか。ただ形ばかりのものをつくつても、そこに魂がこもつて来なければならないのは当然であつて文部大臣指摘道義高揚愛国心振起ということでよいのかどうか、それらについてこの際承りたいと思います。
  13. 大達茂雄

    大達国務大臣 わが国敗戦後のあとを受けまして、あらためて独立国家として自立して行くその根本におきまして、教育の力にまつところは非常に大きい、これは申し上げるまでもないことであるのであります。ことに御指摘道義高揚、また愛国心振起、これもまたすべての根本であるということも御指摘の通りで、また私はこの点特に重点を置いて考えて参りたいとかように存じております。しかしながらもちろん現在のわが国情にかんがみまして、産業経済その他各般にわたりまして、教育の面におきましてもわが国経済自立に必要な措置を講ずることはもちろんでありまして、それがためには産業発展基礎である科学技術振興、あるいはまた産業教育振興充実、こういう点を十分に留意して進めて参りたい、かように存じます。
  14. 櫻内義雄

    櫻内委員 ただいまの御答弁まことに抽象的ではございますが、分科会のことでもございますので、いろいろお尋ねすることを避けまして、ただいま御説明がございました文部省所管予算大要につきまして、二、三御質問申し上げて大臣または政務次官から御答弁を煩わしたいと思います。  それは、今回文部委員会の方に公立学校施設費国庫負担法案というものがかかつております。その裏づけといたしましては、この予算面でただいま御説明のような昭和二十七年三月の十勝沖震災等により災害を受けた国立公立文教施設災害復旧に必要な経費を計上した、こういうわけでございますが、私どもこの案を拝見しておるときに、非常にけつこうなことである、これによつてこの法案目的としております暴風洪水、高潮、地震大火その他の異常な現象によつて災害を受けた学校が救済されるのだ、こういうように考えておりましたが、予算面からいたしますと、わずかに十勝沖及び鳥取の火災の場合のみを今回は計上しているわけでございます。ところでこれはもう大臣も非常に御関係の深いことでございますが、島根県の北浜村というところで、小学校昭和二十年に水害を受けてつぶれました。ところが学校は海岸のほんのわきでございますので、土地がない。そのためにその後役場の二階を借りるとかいういろいろくふうをしながら教育をしているわけでございますが、いまだに校庭もないというような実情でございます。その災害を受けた現地がまだ荒れたままになつておりまして、これを地ならしをして復旧して行きますならば元のような学校にもどすこともできる。しかし財政的にも非常に貧弱な県でございますので、それも十分できないというような状況の学校があるわけでございます、これはただ単に島根県の一例であつて、まだ全国にはこれらの例が多々あるように聞いておるのであります。こういうような場合に、この法案が出ておりますので、一言で言うならば、過年度災害復旧についてもこの公立学校施設費国庫負担法が適用されるべきではないかと思うのでございますが、この点はいかがでございましようか。
  15. 近藤直人

    近藤政府委員 公立学校施設費国庫負担法の中には、災害の場合に国がその一部を負担するということが規定されております。ただいまこの法律でいつておりますのは、法律案内容にございますように、暴風とか洪水とか地震等天然災害及び大火となつております。つまり異常な災害というような趣旨でございまして、普通にあります単なる水害の場合は、この法の適用を受けないわけでございます。しかしながら今日まで異常な災害と認められまして、大蔵当局予算の話合いをつけて予算の計上されておるものについては、これは御指摘のように年度割にいたしまして、たとえば二十七年度災害を二十七年度と二十八年度に負担する、あるいは二十六年度災害を二十六年度と二十七年度に負担するというような年度制でやつております。その点につきましては、いわゆる過年度災害を見るという形になつております。しかしもともとそういう災害関係補助予算が計上されておらないものについては、この法律によつてはおそらく計上は不可能ではないか、このように考えております。
  16. 櫻内義雄

    櫻内委員 ただいま御指摘した一例は昭和二十年の台風によつて被害を受けた学校の場合をいうのでございます。せつかくこの法律ができたのでございまして、そういう古い災害でもいまだにその財力が乏しくて復旧ができない、また実に悲惨なる実情にあるものにつきましては、特にこの法の解釈の上からは、そういうものに対してはいけないのだというようなことは、この文章を読んで行きます場合には出て来ないと思うのでございます。従つてこれらの行政上の措置につきまして、私の指摘したような例が全国にございますならば、そう数多いものではないと思いますので、この法律に反しない範囲最大限に、特に大臣におかれても御留意願いたいと思うのでございますが、いかがでございましよう。
  17. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま政府委員からお答え申し上げました通り、この災害復旧補助の対策になりますものは、大体一定の災害の大きさをきめておりまして、その災害による損害を復旧するための補助をする、こういうことにしておりますので、勢い部分的には非常に気の毒な場合があり得るのであります。これらにつきましてはできるだけ法律の解釈を広げまして、さしつかえのない限りつとめてこれを補助の対象にいたしたい。仰せの通りこれは予算関係もありますので、ただちにこの十年近く前のものを取上げるということは、事務的に見てなかなかむずかしいのであります。全国的にもさようなケースは相当あろうと存じますが、いやしくも災害による損害である限り、なるべく法律の解釈を広げて、あまねく補助の道が得られるようにしたいと考えております。
  18. 櫻内義雄

    櫻内委員 たいへん力強い御答弁でございますので、現実に復旧のできておらないそういう学校についてはただいまの御答弁趣旨に沿つて、ぜひ復旧のために御支援を願いたいと思います。  次にお尋ねしたいのは育英事業充実についてであります。このたび予算を多少ふやされたわけでありますが、この育英事業ということは、戦後における教育の実態から申しますと、非常な重要性があると思うのでございます。御承知のように教育費の乏しいためにアルバイトをして働いておる者が多数でございます。中にはそのアルバイトが行き過ぎて、新聞紙上等によると映画出演等をしたとか、あるいはカフエー、バーへ勤務したとか、あるいは夜間キヤバレー等のダンサーに出たとか、そういう忌まわしい社会悪の面——社会悪といつてよいかどうか知りませんが、あまり感心しないような実情も現われておるこの際でございまして、育英事業充実ということは非常に重要性があると思うのであります。そこで、今後において日本育英会補助金の増額であるとか、育英資金の貸付であるとか、いろいろと育英事業に対する補助育成があると思うのでございますが、私の試案を申し上げますと、従来は民間における育英事業というものが非常にあつたと思うのであります。その民間育英事業を育成する何らかの方法を考えてもらいたい。特に大きな会社が相当収益でもあげておりまして、育英事業に寄付金でもするような場合には、これを税対象にはしないとか、あるいは個人が進んで育英事業をする場合、それに対しても総合所得税からそういう寄付金は省いてやるというようなことをすれば、もつと育英事業が発進するのではないかと思うのでございます。文部省自身がおやり願うこともけつこうでございますが、民間の育英事業の促進というような点について御所見を承りたいと思います。
  19. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知の通り日本育英会の仕事としてやつております育英事業、これは相当な実績をあげておりますので、その点におきましては他の諸外国に比べてもはずかしくない、むしろ誇るに足るべき実績であると承知をしております、しかも育英事業が今日わが国のように非常な窮乏をしております場合に特に大切なことである。これを単に教育の機会均等の面からだけ見ましても、今後ますます拡充を要するものである、かように考えております。そこで、民間における育英事業に対しましては、できるだけこれを助長、保護、奨励をして参りたい、御指摘の通り今日では育英事業を法人として行つておる場合には、これは免税の対象になつておるのでありますが、個人として育英事業を行い、または育英事業を行つておる団体に寄付するというような場合には、これに対する免税措置がとられておりません。これらの点につきましては、今後関係の省とよく折衝いたしまして、できるだけ免税措置が行われるようにいたしまして、民間の育英事業の発展充実に努めて参りたい、かように存じております。
  20. 櫻内義雄

    櫻内委員 ただいまの御説明の中で、高等学校産業教育用の教科書の発行補助のために四百万円を計上されておりますが、これは新聞紙上で拝見いたしましたが、十七種類ほどの国定教科書の費用であるというふうに思えるのであります。その辺のことがどうかという点と、それからもう一つ義務教育教科書の無償配付を現在行われておりますが、これを拡充されて行く意思がないか、こういう点につきまして御所見を承りたいと思います。
  21. 大達茂雄

    大達国務大臣 国定教科書でありますが、今日は御承知の通り教科書は検定制度基本としてやつております。ただ特殊の教育、たとえば高年学校における職業教育であるとか、その他特殊のもので需要部数も非常に少い、一般の出版業者としてはこれを廉価に編纂することが非常にむずかしい、そういう特殊なものにつきまして、あるいは盲聾学校における教科書、これは民間ではなかなかできないのでありますから、そのようなものにつきまして、文部省といたしまして、これを編纂をいたしまして、需要に事欠かないようにしておる、こういうのが実情であります。それから無償配付の問題は、やればこれに越したことはないのでありまして、今日では御承知の通り、小学校の一年生に入るときに、まあいわばお祝いというくらいの気持で、教科書の無償配付をしております。これは将来でき得ますれば、教科書の無償配付をさらにその後も続けてする。役務教育においてはそれを行うというとについては、一面義務教育の無償という趣旨にも合することでありますから、やりたいと思つておりますが、これ予算関係でなかなか急には参らぬかと思いますが、将来ともその方向に進めて参りたいと思つております。
  22. 櫻内義雄

    櫻内委員 実は私の質問趣旨が十分でなかつたのでありますが、それはこういうふうに一応国定教科書を発行されぬ理由はわかつたのでありますが、同時にこの無償配付ということとからんで来ると、将来国定教科書というものが拡充される、無償配付するような場合に、検定じやなくて国定になるんじやないかというように思えるのであります。また一部貧困家庭におきましては、兄さんの教科書を弟が使う方がいいんじやないかというような空気もございますので、それらの点についてもう一度お聞きしたいと思います。
  23. 大達茂雄

    大達国務大臣 教科書の問題は世間でもなかなかやかましい問題だと思います。第一には、今日のやり方では非常に価格が高いから父兄の負担が容易でない。また教科書の売込みについて非常な不正な競争が行われるようなことがある。その他教科書が年々かわるということも父兄の方が非常に迷惑する、あるいは学校の校長さん、先生方が教科書を選定する上にも、現在では非常に不十分な状態に置かれておるのであつて、十分に検査してこれを採用するという機会に惠まれておらない。そういう次第であるから、なおさらそこに不正競争がつけ込む余地がある、こういうよりなことで、教科書につきましては世上にいろいろと議論がやかましいのであります。文部省といたしましては、検定に当りましては、価格の点も含めて検定をする、さようなことでできるだけ値段の安い教科書を供給するようにしたい、かように考えており、また学校の方で教科書を選択する場合にも、できるだけいい適当な教科書を選択できるようにしたいというようにせつかく考えております。さればと申して全部または一部を、国定で教科書をつくるということも、これは教育を画一的にするという点で、これまた世上の今日における一般の感覚と非常に違う点がありまして、これらの点なかなかむずかしい点を包蔵しておりますが、ただいまのところでは、先ほど申し上げましたような意味で、国定制度を拡張して行くという考え方にはなつておりません。現在の検定制度のもとに、これに伴つてのいろいろな不便であるとかあるいは父兄側から見ての困難な事情をできるだけ緩和するように、将来はいろいろな施策を進めて参りたい、かように考えております。
  24. 櫻内義雄

    櫻内委員 この予算面に私立大学の研究基礎設備助成補助金二千万円が計上されております。これはつまり科学研究費でございますが、その内容はどういうことであるかということと、私立学校助成について、私立学校振興会に十億円をさらに助成金として計上されておりますが、現在の日本の教会の実態を見て行きますときに、国立公立、そういう施設だけでは今まで教育はできていないわけであります。私立学校に負うところが非常に大きいわけでございます。しかるに私立学校戦災によつて非常な影響を受けておるということは御承知の通りであります。そういう点からいたしますと、私立学校振興会への出資金は、もつとお考えつていいのじやないか。それからまたせつかくここに科学研究費補助金を計上されておるわけでございますか、一千万円程度ではあまりにも貧弱なものではないかと思うのでございますか、この二千万円の内容はどうでございましようか。それからまた私立学校振興助成という点についてお聞きしたい。
  25. 大達茂雄

    大達国務大臣 私立学校が従来わが国教育の面において非常な貢献をして来たということは、おおうべからざることでありまして、今後といえども私立学校、私立とは申しながら、官公立と相並んでわが国の重要な教育機関として、ますますこれを育成保護、助成して参る必要があることは申すまでもないのであります。御指摘の通り私立学校は、戦災その他によつて今日では施設が非常に不十分な状態になつております。しかも戦前と比べますと、いわゆる授業料収入と経営の経費との割合が非常に下つておるのであります。その点ごく少数の私立学校を除いては、経営の上に非常に困難を来しておる。そこでいわゆる私学振興会というものができておるのでありますが、これも昨年発足いたしましたばかりで、本年はただいま仰せられました通り、十億円を支出しておるのであります。財政上の問題もありますので、今後ますますこれを広げて参りまして、私学の振興に資したい。なお私立学校の共済組合に関する法律案も、不日この国会に提出し得ることになつております。私学の教職員が安んじて先の心配なしにその仕事に専念ができるように、少しでも国としてこれを助成して参りたい、かように考えております。私学に対する二十万円の補助内容につきましては、政府委員からお答えいたさせます。
  26. 稻田清助

    ○稻田政府委員 ただいまの点につきまして、私から御説明申し上げます。これは私学といたしまして、大学院または医学部または理学部を有するものを対象といたしまして、通常行います研究設備であつて、相当金額がかさむというようなものに対しまして、一部補助いたしたいと考えております。さらにまた外国の定期刊行物等の購入に対しましても、補助の対象といたしたいと思つております。
  27. 櫻内義雄

    櫻内委員 もう一つお聞きしたいことがあります。それは青年学級振興法が出ておりますが、この青年学級教育程度でございますね。これは中学校高等学校、そういう教育程度、あるいは通信教育、そういうものとの関連はどうなつておるのでございましようか。青年学級は勤労青年に対する特殊教育という範囲だけでございましようか。
  28. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 お答えいたします。青年学級教育程度でありますが、青年学級が対象といたしております者は、大体中学校を卒業いたしました満十五歳以上の者でありまして、上の方の年齢は別に限つておりませんから、実際といたしましては十五歳から二十歳までが多く、それ以上も相当あるのであります。そういうふうな勤労青年が、もともと自分らの方から明日の産業生活、一般青年生活に必要な教養を得たいという自発的な熱意によつて、共同学習組織という形でできたのが青年学級でありまして、そういう実際に発達して来た青年学級そのままを保存して、これを助成して行くという気持であります。従つて教育内容も青年自身が明日の生活に必要だという意味でもつて、たとえば農業関係でいろいろ肥料の問題、土壌の問題を研究するとか、一般教養の問題を研究するとかいうことで、現に勉強しておるわけでありまして、特にどの程度ということはなくして、集まつた青年自身が自分らの得たいと思う教養を受けるという形でやつておる。これを助成して行く考えであります。通信教育との関係ということがございましたが、通信教育は大体高等学校程度でやつておるのでありまして、通信教育を受けるごとによつて高等学校の単位をとることが目的でありますが、青年学級の場合はそうい、単位ということと関係なくして、明日の生活に必要な教養を得たいということで勉強しておるのであります。
  29. 櫻内義雄

    櫻内委員 この青年学級を今度は法制化したわけですが、定時制高等学校とどうも教育内容が紛淆するような気がするのですが、青年学級に対する場合と、定時制高等学校に対する場合と、文部省はそこに画然とした方針が出るのでしようか。
  30. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 定時制の高等学校は、高等学校の課程を三年間でやるかわりに、四年間に引延ばし、定時的に教育を受けることによつて高等学校の課程を勉強するという形でありますので、四年間やることによつて高等学校のクレジットを得ることが目的になつております。従つて全体の単位が八十五単位、一年間に約七百四十四時間勉強する日がありまして、その課程もはつきりきまつておるのでありますが、実際の勤労青年の生活におきましては、なかなか年間に七百五十時間というような時間を勉強のために持つということは、ほとんど無理な青年の場合が多いのでありまして、実際は農閑期を利用いたしまして、せいぜい年間二百四十時間から百五十時間程度の余暇を勉強する、しかも明日の生活に必要な勉強をするという形で行われるのが青年学級であります。でありますから、教育内容そのものもおのずから違つて来るのでありまして、そういう意味で定時制にも行けない青年のための学習施設というものを、青年学級で救おうというのが、青年学級振興法の目的とするところであります。
  31. 櫻内義雄

    櫻内委員 最後に一つたけお聞きしたいのでありますが、それは最近非常に修学旅行が盛んであります。また学校によりましてはそろそろ夏休みでございますが、林間学校といいますか、そういうようなものも盛んに行われる。この修学旅行、林間学校は、指導方針がよろしければ子女の教育上非常に有効でありますが、また場合によると、いろいろ行きすぎがあつたり、あるいはつい旅行先における若げの至りの乱暴行為が起きたり、いろいろと修学旅行や林間学校にからんでの問題もずいぶんあると思うのでございます。あるいは一面におきまして、ある程度の負担を必要といたしますがために、それに伴つて来る問題もございます。今後こういう修学旅行あるいは林間学校という方面に対して、文部省が大きな関心を持つといたしますならば、旅館施設等に対する注意も怠ることはできないし、あるいは文部省指定旅館というようなものか、あるいは文部省自体の施設というようなものも考えられて来る。またその費用の基準なども考慮されていいんじやないかというような、いろいろなことが考えられるわけでざいますが、文部大臣におかれまして、これはもう常識的な御回答でけつこうでございますが、今後こういう野外教育というものについての御所見を承りたい。
  32. 大達茂雄

    大達国務大臣 修学修行につきましては、戦後非常に交通が困難の状態でありました当時、大体旅行の日数あるいは宿泊数というものにつきまして、あまり多くならないように、これは主として交通関係から出発したのでありますが、文部省として指導した事実はあるのであります。しかし今日はよほど事情も違つて参りましたので、各府県、各教育委員会、各学校等において、それぞれ計画を立ててやつておるのであります。これが大体同じシーズンにたくさんな学校が出て参りますので、交通の上で非常に困難があり、またそれがために相当な事故を生じておることは御承知の通りであります。また子供が過労に陥る、あるいはまた父兄の方面におきましても負担が重過ぎる、今日のような一般の実情におきましては、その負担のなかなか困難であるというようないろいろな事情があります。また世間におきましても、ただいまお話になりましたような子供の行儀と申しますか、あるいは先生のやり方、そういうものにつきましても、これは世間の耳目に触れるものでありますから、いろいろ批判が起つておるような事情であるのであります。文部省といたしましては、これらの点につきまして十分指導して参りたい。ただいま申し上げましたような、児童が過労に陥るとか、あるいは父兄の負担が重きに過ぎるとか、あるいは一ぺんにどの学校もみな出るために非常な混雑を来す、そういうような点につきまして、特に府県の教育委員会、市の教育委員会に、周到に計画的にやつてもらうように、実は最近この修学旅行を主といたしまして、文部省として各地方に通牒を出しまして、その指導をしておるのであります。ただいまのところ、今お話になりましたような、特殊な寮のような施設をつくるとかいうようなところまでは参つておりません。これはできなければ非常にけつこうだと思うのでありますが、そこまでは、実は予算の都合もありますし、参つておらぬのでありますが、今後修学旅行の問題は、社会的に見ましても相当重要な関心を持つて見なければならぬと考えておりますから、ほんとうにこれが教育上の役に立つように、できるだけ指導して参りたい、かように考えております。
  33. 櫻内義雄

    櫻内委員 たいへん恐縮ですが、もう一つ聞きたいのです。それは七月一日から文部省教育番組を放送されておりますが、始められてからの反響についてお聞きしたいのです。せつかくこれをお始めになるのに、予算面におきましては、一部の放送局には、その放送料を——たしか電波料を一部には負担しており、一部には負担してないというような、何か片手落ちのようなかつこうになつておるというので、何か準備不足のような気がするのであります。教育放送に対して、その趣旨、またその番組等については、何か審議会か協議会でやつておられるようでありますが、その方針、それから、ただいま指摘した電波料の負担等につきまして、少しくお聞きしたいと思います。
  34. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 教育放送を始めました趣旨は、勤労青少年で、学校に行く機会を持たない者が約千四百万人くらいもおるのでありまして、仕事のあいまにでも放送を聞くというようなことによつて、いろいろ生活上必要な教養を受ける道を少しでも開きたいというような趣旨をもちまして、この七月一日から始めた次第でございます。勤労青少年を主たる重点に置いておりますが、一般の主婦、その他だれにでも喜んで聞いてもらえるような教養放送をやりたいというような気持であります。  電波料の負担その他について、多少御疑問もあるように伺いましたが、実はこの放送の予算は、千百二十五万円でございます。これは最初の気持では、いわば試験的でありまするから、ただ三つか四つぐらいの局でもつて放送をしてもらうという程度の予算でありますから、そういうつもりでおつたのでありますが、これを民間放送連盟その他関係者に相談いたしましたところが、各地方局とも非常に熱心に、ぜひ協力をしたい、もし予算が少ければ、スポンサーを付して、電波料の方はスポンサーに持たしてもいいから、全国各局が全部協力したいというような傾向になつてつたのであります。しかしながら、全部スポンサーでやるということは本旨でございませんので、私どもの方といたしましては、京都と神戸と四国と長崎、この四局だけは、その電波料を文部省が負担する。その他の局は同じ内容のものを、スポンサーが電波料を払つて放送をするというような形になつたわけでありまして、現在全国に民間放送局が十九局あるのでありますが、そのうちの十六局が、これに協力し放送をするという形で、大体全国放送が実施できたという形になつておるのであります。そういう意味でありまして、別に片手落ちというのではなく、むしろ全般的な非常な支援によりましてそういうことになつた次第でありまして、これは少い予算でもつて相当の効果をあげるという意味から、むしろ私どもとしては喜んでおるような次第であります。そういう意味で、予算の約三倍以上の効果を発揮して使われておるというような形になつております。  それから、その教育放送の計画のためには、教育放送協議会というものをつくりまして、これでもつて全体の企画を立てることにいたしております。放送関係者、あるいは学識経験者、その他聴取者側を代表する者、あるにはスポンサー側を代表するような者、そういうふうなものを全部協議会に入つてもらいまして、それらの人の衆知によりまして、この放送を計画するという形によつて実施いたしております。
  35. 櫻内義雄

    櫻内委員 そのスポンサーはだれでもいいんですか。それともスポンサーについては限定があるのですか。それから、普通一般の場合と比べて、これは特殊のものであるので、スポンサーの料金というものは違うのだろうと想像するのですが、そのへんはどうなつていますか。
  36. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 スポンサーにつきましては、これは実際は、電通を通して、これらの実施をやつておるのでありますが、電通側から、この教育放送に適当した、また協力しそうなところをいろいろ当りました結果、中山太陽堂と講談社と三井化学、この三つが電波料を出すということになつた次第でありまして、この電波料は、普通に払われる場合の電波料よりも、よほど割引された値段でもつて、電通の方で相当犠牲を払つた形で実施されております。
  37. 本間俊一

  38. 田中元

    田中(元)委員 昨年の七月、第十三国会におきまして、寒冷地におきまする小学校に、屋内体操場をつくるべしという決議が、満場一致で可決しておるわけでございます。これは寒冷地におきまする学童の保健衛生上の問題からいたしましても相当重要な問題でございますが、このことに対しまする文部省の今後の方針等について承りたいと思うわけでございます。  いま一点は、限局された問題でありますが、北海道における学芸大学の構想の問題について承りたいのでありますが、シニア、ジユニアの学芸大学は、各県に一校ずつ置きたいということが基本条件になつているようであります。北海道も一県並に、札幌に一校置かれておるわけでありますが、御承知のように教授会を一回開く金高を考えてみましても、十数万円の金がいるといわれております。そういう基本的な分校制度を中心としておりましては、ほんとうの教育の本則にのつとれないのではないか、少くとも北海道のような広い地域においては、教育圏を三つなり、四つにわけてやることが本則ではないかと思うわけでありますが、この二点について、文部大臣の御所見を承りたいと思う次第でございます。     〔主査退席、櫻内主査代理着席〕
  39. 大達茂雄

    大達国務大臣 積雪寒冷地における屋内体操場の整備につきましては、今のお話の通りでありまして、二十八年度予算には、その補助費として五億円を計上してあることも御承知の通りであります。もちろん、これはきわめて不十分な金額でありますが、財政の事情等もありますので、これだけの点でとどめるということになつたのであります。今後この点につきましてはできるだけ予算的な措置を講じまして、なるべくすみやかに、これらの地方における屋内体操場の整備ができますように努力をいたしたいと考えております。  それからお話のありましたように、北海道は他の府県と比べまして非常な広地域でありまするので、他の府県と一律に、同じようなことではまことに不自由なことがある。これはやまやま私同感に存ずるのであります。これにつきましては今後検討いたしまして、なるべく早く田中委員の仰せられましたように、これを一つにわけるか、三つにわけるか、あるいは四つにわけるか、それは検討してみなければわかりませんが、その方向に進めて参りまして地方の実情に沿うようにいたしたいと存じます。
  40. 櫻内義雄

    櫻内主査代理 本間俊一君。
  41. 本間俊一

    本間委員 時間がおそくなりまして恐縮でありますが、ひとつ私の日ごろ考えておりますることでお尋ねをしたいと思うのであります。  最近の教科書と申しますか、教材がどういう内容のものか私は十分承知しないのですが、たとえば昔儒教の非常に盛んな時代は、いろいろその当時の道徳と申しまするようなものに、なじむ機会が非常に濃いわけだと思うのであります。たとえばイギリスでもアメリカでも、宗教と申しましてもキリスト教が中心で、それが一つの社会的な基盤になつておりますから、そこで人として必要ないろいろの教えなり何なりを受ける機会があるわけであります。ところがわが国では、御承知のように終戦後、従来考えられておりましたいろいろな価値とか道徳の基準とかいうものも、異常なあらしで荒されているわけでございます。なるほど日本教育が一宗一派に偏さないということも大事なことだと思いますけれども、今の教育制度、たとえば義務教育で算数を習う、あるいは読み書きを習う、音楽を習うということは、それでけつこうなんですが、たとえば人に親切にするとか、博愛だとか、あるいは責任を重んずるとかいうような、一つの道徳と申しますか人の道と申しますか、そういうものを教わる機関というか、機会というものがやはり大切なのじやないか、実はこういう気がするのでございます。従来、昔の教育制度で申しますと修身というような科目がございまして、そこでいろいろそういつたような題材が取上げられておつたかと思うのであります。これはかりに修身を復活するにいたしましても、その道徳の基準をどこに置くか、あるいは題材の選択をどうするかということは、今の時代から申しますと非常にむずかしいと思いますけれども、しかし何かやはりそういう教養を得る機会が、日本の今の教育の中になくちやならぬのではなかろうか。そうでないと、宗教と申しましてもたくさんの宗教がありますし、ことに仏教が一番多いのでございますが、仏教はただ死んだときに葬式をする場所になつてつて、そういう機会は実際の問題として非常に少いわけでございます。だから日本教育制度の上で、そういう道徳教育と申しますか、言葉はどうでもいいのですが、そういう機会がどうしても今後考えられて行かなければならないのではないか、実はそういう考えをふだん持つておるのであります。それは修身というような科目が設置されて行つた方かいいのかどうか、その点まで私は突き詰めて実は考えておるわけではございませんが、一般的にそういう感じを持つておるのであります。そこで文部省として、道徳教育と申しますか、そういうものについてどういうお考えを持つておるか。もし今までにそういう教育の面を、やはりいろいろな角度から検討して行かなくちやならぬではないかということで検討されたことがおありならば、こういうつもりでこの問題を実は考えているのだ、今までこうなつているのだという程度でけつこうなのでありますが、あるいはそういう機会が今までいろいろな仕事の関係でなかつたとすれば、今後ひとつ考えていただきたいというような考えを持つておるのでありますが、大臣からでもその他の方からでもけつこうでございますから、御見解を承ることがでざますれば仕合せだと思います。
  42. 大達茂雄

    大達国務大臣 お述べになりましたことはまことにごもつともであり、きわめて適切な点であろうと思います。お話の通り宗教というものが、いずれの民族におきましても過去において、その民族の道徳生活といいますか、倫理生活というものときわめて密接であつたということ、これははつきりした事実であります。また戦前におきましては、わが国教育基礎としていわゆる教育勅語というものがありました。そしてこれを中心として道徳教育進められて来たという事実があつたのでありますが、戦後いろいろな波瀾があり、またわが国も形を改めて国際社会に再出発をする、こういうことで今までの宗教的な情操というものは、十分教育の上において尊重されなければならぬということはありますけれども、しかし実際におきましては、宗教というものと教育というものとは、従来のような関係で密接するというところがなくなつておるように思います。また教育勅語なり道徳教育基本になるようなものも、今日はその地位を失つておる。そこで憲法なりあるいは教育基本法法律の規定に、大体その教育目標とする道義の態様といいますか、各民主国家、文化国家としてはかくなければならぬ、これを構成する国民の倫理道徳というものはこういうものでなければならぬということはありますけれども、具体的にそれが教育の面に適切な形で進められておるとは思われないのであります。従つて今日、終戦教育の面におきましていろいろな行き過ぎもあり、不十分な点も多々あると思うのでありますが、教育内容を刷新改善するという見地に立つ場合、道徳教育をもう少し徹底しなければならない、こういうことは切に感ぜられる点であります。しからばこの道徳教育というものはどういうふうに進めて行つたならばよろしいか。これは教育だけについて見ましても、ごく小さいがんぜない子供から行くのでありますから、これは初めから頭から教え込んでいつてもだめじやないか、そこで低学年におきましては、実践的な面からいい習慣をつける、個々の子供の行動についていいことと悪いことと自然に覚え込ませる、こういうようないわゆる行儀のしつけをするということで行かねばならぬと思うのです。また子供の知脳の発育するそれぞれの段階に応じまして、知識としての道徳教育というものを授ける、さらに高等学校であるとか、非常な高学年にいたりますれば、これを学問として、あるいは哲学であるとか倫理学であるとかいうところまで進めて行くのがいいかと思うのでありますが、要するにどうすれば一番有効にこの道徳教育が行えるかということは、いわば公式的にやれる面、たとえば教育の方法といいますか、技術に属すると申しますか、これは今日教育課程審議会というものがありまして、そこで教育内容の刷新につきまして審議を重ねております。ことに道徳教育の面につきましては、非常に重点を置いてこれを取上げて審議しておるのであります。それも今月一ぱいぐらいには大体その意見がまとまるという段階に達しておるのであります。そこで文部省といたしましては、ぜひとも道徳教育の徹底と申しますか、振興と申しますか、これをして行きたい。それにはどういう方法でやるのが一番効率的であるかという点につきまして、この審議会の答申をまちまして、これによつて具体的な考えを進めたい、かように存じております。
  43. 本間俊一

    本間委員 大体文部省としても非常に大事なことでありますから、いろいろな角度から御研究なさつておるようでございますが、こういう時代でありますから、題材の選び方、基準をどこに置くかということは非常にむずかしいと思います。むずかしいと思いますが、しかし今のような日本においてはそういう機会がないのでありますかり、これはどうしても何らかの形でやはり考えていかなければならぬという気がするのでございます。これをどういうふうにしたならば弊害を少くして効果をあげるかというようなことはもちろん教育技術の問題でもあろうかと思いますが、私は、これに何らか打開の道がありませんと、今のままではどうもぐあいが悪いのではないかという気がするのでありますから、どうぞさらに一層の御研究をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  44. 田中元

    田中(元)委員 ただいまの本間先生の御質疑に対してちよつと関連質問をしてみたいと思います。  御存じの通り私ども終戦前に習つて参りました教育は、教育勅語を中心として、親に孝であれとか君に忠であれというようなことを基本道徳とした教育であつたのであります。今日においてはおのおのの人格を尊重するというような民主主義教育になつておりますが、そうしたいろいろな問題はそれぞれたいへん重要な意味を持つ問題だろうと思います。ただ私は終戦後におきます一つの大きな問題として、日本の家族制度の問題があると思いますが、これに対する大臣の御所見、あるいは今後のお考えを伺つておきたいと思います。たとえば私は、日本においては教育の中心にやはり家族制度というものを考えて行かなければならないのではないかと思います。それは御存じの通り、今日の日本の民法におきましては、自分のかわいがつて育てて参りました子供にお嫁さんをもらつて参りまして、そのお嫁さんの籍を入れますと、好むと好まざるとにかかわらず、その親の手元から子供の戸籍が分離されて行くわけであります。つまり手塩にかけて育てで参りました自分の子供に嫁をもらいますと、戸籍が分離されてほかのうちになつて行くというようないわば家族の制度ができております。それゆえのような和気あいあいな家庭でなく、親子の情というものか権利義務によつて支配されつつあるというのが今日の日本の状況ではなかろうか、こう私は思うのであります。一つの戸籍法の問題だけを見ても、何となしにさびしがる御老人方が非常に多い。私はこれは日本の一つの行き方としては行き過ぎている行き方ではないかと思うわけでございますが、こうした法律の問題は別といたしまして——こういう時代のさ中にあつてもやはり教育でございます。それで私は、せめて日本教育の中心に、一つの家族制度を上手にやつて行かれることか本則ではなかろうかと思うわけでございます。この点についての文部大臣の御意見を関連質問として承つてみたいと思うのでございます。
  45. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は国民の道徳と申しますか、こういうものはどうしてもその民族に伝わる伝統というものを離れては、なかなか一朝一夕にして建設できるものではない、こういうふうに考えております。今日法律がかわり、国家の政体、組織もかわつてつたのでありますが、しかしながらこの場合におきましても、今日の道徳というものは、やはりわが民族に伝統として伝わる道徳精神、これが基礎にならなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。     〔櫻内主査代理退席、主査着席〕 御指摘の通り今日はいわゆる個人の尊重、個我の尊厳ということが高調されまして、これはまことにけつこうであります。その結果といたしまして——従来わが国においては社会の一つの単位として個人を認めるとともに、家というものを単位としておつた。それが急激に個人というものが強調せられる結果、ややもすると従来の家という考え方が薄れて来る。こういうことは現状においては確かにあると思うのであります。しかしながら私の考えでは、これは過渡期の現象であろうと思う。もし今日の民法の規定その他がわが国の家というものを破壊するということでありますれば、これは国情に合うように将来再検討をせられた方がいい、こういうふうに私は、少くとも国民道義の見地からはさように考えざるを得ないのでありますが、しかし今日はいわゆる過渡期であります。私は個我の尊厳というものと、家を中心とするというか、家を社会の単位としての道義というものは、必ずしも両立しないものではないと思つておるのであります。今後わが国の民族の道義というものがますます健全に進むに従いまして、これらの点は必ずや調整せられまして、外国流の個人主義、わが国古来の家を重んずる風、これが両々相まつて、非常なりつばな社会をつくり出す元になるのではないか。またこれを期待しておるのであります。
  46. 本間俊一

    本間主査 次会は十三日月曜日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十九分散会