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1953-07-13 第16回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十三日(月曜日)     午前十時四十五分開議  出席分科員    主査 葉梨新五郎君       小林 絹治君    原 健三郎君       船越  弘君    八木 一郎君       小山倉之助君    河野 金昇君       八百板 正君    和田 博雄君       今澄  勇君    小平  忠君       河野 一郎君    兼務 倉石 忠雄君    武藤運十郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁次         長)      平井富三郎君         総理府事務官         (経済審議庁総         務部長)    西原 直廉君         総理府事務官         (経済審議庁計         画部長)    佐々木義武君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     高野 藤吉君         外務参事官         (大臣官房審議         室付)     島  重信君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関祐二郎君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (大臣官房会計         課長)     増田  盛君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         農林事務官         (蚕糸局長)  寺内 祥一君         食糧庁長官   前谷 重夫君         水産庁長官   清井  正君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  中野 哲夫君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦澤 大義君         通商産業事務官         (繊維局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君  分科員外出席者         農林事務官         (農業改良局総         務課長)    野田哲五郎君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      幸田 午六君     ――――――――――――― 七月十三日  第二分科員倉石忠雄君が本分科兼務なつた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算経済審議庁、外  務省農林省及び通商産業省所管  昭和二十八年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管  昭和二十八年度政府関係機関予算農林省及び  通商産業省所管     ―――――――――――――
  2. 葉梨新五郎

    葉梨主査 これより第三分科会を開催いたします。  本日は、まず農林省所管について審査を進め、続いて外務省所管審査の後、一昨日質疑の留保されました通商産業省所管質疑を行いたいと存じます。  なお念のために申し上げて起きますが、分科会は一昨日の予算委員会理事会申合せによりまして、本日午後四時までに終了いたし、主査報告を行うことに相なつておりますから、よろしく皆様の御協力によりまして議事を円滑に進めたいと存じます。  それではこれより昭和二十八年度一般会計、同じく特別会計、同じく政府関係機関予算中、農林省所管についてまず政府より説明を求めます。保利農林大臣
  3. 保利茂

    保利国務大臣 昭和二十八年度農林関係予算について、その大要を御説明申し上げます。  今回御審議をお願いいたします農林関係予算は、さきに第十五国会に提出いたしました予算案とその内容において大差はありませんが、新らしい立法措置等に伴う新規事項につきまして所要経費を新たに計上いたしますとともに、庁費及び旅費について節減を行う等、若干の修正を行つたのであります。  さて、今回の農林省所管予算を前年度予算と比較して申し上げますと、総額において前年度千三百五十九億七千九百万円に対し、本年度は千百九十七億八千百万円でありますから、差引百六十一億九千八百万円の減となるのでありますが、このほか農林関係予算といたしましては、従前通り北海道における公共事業費六十二億三千四百万円が北海道開発庁に、農林漁業金融公庫への政府出資百八十億九千三百万円が大蔵省に計上されておりますので、これらの経費を加えますと、農林関係予算といたしましては、本年度は千四百四十二億七千五百万円となり、前年度の千四百七億八千七百万円に比し三十四億八千八百万円の増となるのであります。  さて、今回の農林関係予算につきまして、主要なる事項中心心とし順次御説いたします。  まず一般会計から御説明申し上げます。最初に食糧増産関係経費でございます。この経費中には、第一に農地拡張及び改良、第二に耕種改善、第三に畜産振興経費がございます。まず農地拡張及び改良経費でございますが、総額において四百二十三億四千三百万円でありまして、前年度の三百四十一億九千二百万円に比し八十一億五千百万円の増加となつております。このうち土地改良事業といたしましては百六十六億五千八百万円を計上いたしております。この中には海岸砂地地帯農業振興対策費として八千万円が計上されております。  また開拓及び干拓事業としては百十四億六千七百万円を計上いたしており、これに伴う新規入植は八千戸を予定いたしております。以上申し述べた農地拡張改良経費のほかに、農業災害復旧事業経費といたしまして百三十六億八千六百万円を計上いたしました。  次に食糧増産関係経費の第二として耕種改善経費でございますが、その内容につき順に説明申し上げます。  まず主要農作物種子対策費としては原採種圃設置及び寒冷地帯保温折衷苗代設置を助長するため八億三千六百万円を、耕土培養費対策及び特殊土壤対策費としては酸性土壤秋落水田及びアカホヤ地帯不良土壤改良のために二億七千三百万円を、また北海道農業振興費については心土耕混層耕用機械整備のために一億八百万円を要求いたしております。  次に新規事項として西南暖地等水田生産力増強費につきましては、関東以西暖地帯において常習的風水害地帯の三千町歩の水田に特殊早植裁培を実施するとともに、これに関する試験を行う経費として二千四百万円を計上いたしております。  次に植物防疫関係経費につきましては、農作物の病虫害を防除するため十二億八千五百万円を計上しておりますが、特に本年度は二化螟虫の防除の徹底を期したいと考えております。  次に食糧増産関係第三の経費として畜産振興経費でございますが、まず家畜改良増殖費につきましては、海外からの高能力の種畜の輸入国内産種牡畜の購買、家畜人工授精施設促進するため一億四千二百万円を、また有畜営農の確立のための経費については、家畜導入資金利子補給金として一億七千二百万円を要求しております。  次に草資源造成改良、牧野、河川敷の改良による自給飼料増産をはかりますための経費につきましては特に力を注ぐこととし、一億一千八百万円を要求いたしております。  次に新規事項として集約酪農地区の設定に必要な経費につきましては、濠州、ニユージランド及び米国からジヤジ―種の乳牛を六百頭導入し、粗飼料資源豊富な地方に新酪農地帯を設定するため八千七百万円を要求いたしております。  第二に農業団体の再編成のための経費につき御説明申し上げます。農業団体の再編成につきましては、いわゆる三原則に基きまして経費を要求しておりますが、まず農業委員会経費といたしましては二十九億九千三百万円、農業協同組合経費といたしましては、農業協同事業活動促進対策費八千万円を含めまして一億六千八百万円、また再建整備に必要な経費として、増資奨励金及び固定化資金利子補給金に充てるため六億七千八百万円を要求いたしております。  第三に農業改良普及のための経費につき御説明申し上げます。農業改良普及事業の根幹をなす農業技術生産指導事業については、国及び都道府県を主体とする現行農業改良普及制度整備強化をはかることとし、農業改良普及員経費といたしまして十一億五千七百万円を、生活改良普及員経費といたしまして一億二千七百万円を、都道府県農業試験場拡充強化のための経費といたしまして新規に十八百万円を計上いたしますとともに、蚕糸技術改良普及のための経費として一億六百万円を要求いたしております。  第四に農産物価格調整について御説明いたします。農産物価格の安定につきましては、本年度におきましても引続きてん菜糖三万六千十トン及びかんしよ、ばれいしよ澱粉千百万貫の買上げを行うことといたしました。  なおこれと関連して、飼料価格安定につき附言いたしますが、さき飼料需給安定法の成立を見ましたので、本年度におきましては輸入のふすま、マニトバ五号、とうもろこし等を買い入れ、適期に放出することとして飼料価格の安定をはかる所存であります。以上申し述べました措置は、食糧管理特別会計において行うことといたしております。  第五として農業災害補償のための経費につき御説明いたします。農業災害補償し、農業の再生産を確保するため、政府農業共済保険特別会計を設け、農家共済保険につき、再保険を実施しておりますが、本年度はこれに要する経費として百八億八千五百万円を計上いたしております。このうら特別会計への繰入れは水稲、麦、蚕繭及び家畜保険料国庫負担分として八十三億千六百万円を、都道府県及び農業共済組合事務費補助金として二十四億八千六百万円を計上いたしております。  第六に養蚕振興対策のための経費につき御説明申し上げます。農家経済の安定をはかるとともに、輸出の促進を期するためには、繭の増産生産費低減をはかることが肝要でありますが、これがため優良桑苗を確保し、老朽化桑園を改植する等の経費として一億五千万円を要求いたしております。第七に農林漁業金融関係経費につき御説明いたします。本年度は従来の農林漁業資金融通特別会計が廃止され、新たに農林漁業金融公庫が設立されましたが、新規貸出財源としては、一般会計から百八十億九千三百万円の出資資金運用部からの借入れ五十億に、償還金十億円を加えて二百四十億九千三百万円を用意いたしておる次第であります。  開拓者資金融通特別会計につきましては、本年度入植予定者を八千戸としたほか、役畜の導入に力を入れその目標を八十頭といたし、また中小漁業融資保証保険特別会計につきましては、前年度に引続き中小漁業融資円滑化を推進する所存であります。  なお政府買取方式による農地金融については、二十八年度においても引続き自作農創設特別措置特別会計余裕金八億五千万円を活用して、土地の購入その他の資金融通に充てたい所存であります。  第八に林業振興のための経費につき御説明いたします。まず第一に山林事業費であります。荒廃山林復旧奥地林開発による局地的過伐の防止伐採跡地造林のため、前年度に引続き治山事業林道事業及び造林事業等にそれぞれ五十一億九千三百万円、二十二億六千八百万円、三十三億九千六百万円を計上しておりますが、この中には海岸砂地地帯飛砂による被害防止するため一億六千三百万円が計上されており、このほかに災害復旧費として八億一千万円を計上しております。  第二に民有林森林計画の樹立に必要な経費であります。これに必要な経費として四億七千三百万円を計上いたしましたが、特に経営指導員活動費を増額しますとともに、新規計画実行費一億七百万円を計上して森林組合等の活用を計画しております。  以上のほか林業振興のために、森林病害虫駆除林業改良普及優良種苗普及等経費を計上いたしまして、国土緑化及び森林荒廃防止を期しております、  第九に水産振興対策のための経費につき御説明いたします。本年度は特に新情勢に即応し水産資源維持培養をはかるとともに、遠洋漁業振興と新漁場開発に力を注ぎたいと考えております。  まづ減船整理関係経費二億五千三百万円につきましては、小型機船底びき網の減船整理経費のほかに新たに中型機船底びき網の減船整理経費を計上いたし、次に水産資源増殖につきましても引続き内水面における種苗生産及び放流施設、浅海における増殖事業北海道における鮭鱒艀化事業のための経費を計上いたしております。  次に、新漁場開発及び海洋の漁撈取締り関係経費につきましては、北洋漁業関係取締りのため千トンの官船一隻を建造するこことしたほか、各漁業地域における保護取締りに遺憾なきを期するため、この経費七億八千五百万円を計上いたしました。  次に、新規事項として水産技術改良普及につきましては、新たに府県に養殖技術電機機具取扱い技術指導等のための職員設置するとともに、漁民の技術指導を強化することとし、この経費として二千五百万円を計上いたしております。  以上のほか対馬暖流海域開発のための調査に必要な経費水産業協同組合指導監督及び再建整備のための経費魚田開発のための経費を計上いたしております。  次に、漁港施設拡充のための経費につき御説明いたします。前年度に引続き漁港整備に努力いたすこととして、二十八年度漁港整備に二十三億六千二百万円、災害復旧費として十三億五千二百万円を計上し、漁港整備計画の推進を期しております。  最後に特殊地帯対策経費の中おもなものについて申上げます。積雪寒冷単作地帯を初め急傾斜地帯特殊土壌地帯湿田小作地域海岸砂地地帯農業振興のためには農地拡張改良及び山林事業についてそれぞれ所要経費が計上されておるのでありますが、このほか特に積雪寒冷単作地帯につきましては、農業振興計画に取上げられた総合的な事業を推進させるため二百箇町村につき助成を行うこととし一億二百万円を計上いたしております。  以上をもつて一般会計説明を終ります。  次に、特別会計の中主要なものについて御説明いたします。まず食糧管理特別会計につき申し上げます。  本年度においては、(一)米については前年度に引続き統制を継続する、麦については前年度同様配給統制は行わないが、生産者要望により買付を行う。国前年度に引続き澱粉てん菜糖の買入れを行うほか、新たにふすま、とうもろこし等飼料の買人れ、売渡しを行う。(四)食糧の買入れ数量国内産米二千八百二十五万石、麦三百八十四万石、外国食糧は三百九万三千トンとする。(五)消費者価格は米については現行通り十キロ当り六百八十円とする。(六)早場米奨励金は八十一億千九百万円とする。(七)輸入食糧価格補給金は三百億円とする。  以上の方針のもとに歳入歳出とも六千七十五億六千百万円を計上いたしました。  第二に、農業共済保険特別会計について申し上げます。  先づ農業勘定でありますが、本年度においては、(一)生産物価格の上昇に伴い水稲陸稲、麦及び蚕繭共済金額を増額したこと。(二)過去の保険事故実績にかんがみ水稲陸稲及び麦の保険料率を高めたこと。国水稲陸稲、麦及び蚕繭最低通常被害部分につき三分の一の国庫負担を行い、共済掛金農家負担の軽減をはかつたこと。(四)蚕繭につき春蚕及び夏秋蚕奈川別共済を行うこと等の改正を行いましたが、これらの結果、一般会計から保険料国庫負担分が七十六億四千万円となり、前年度に比し九億二千四百万円の増を招来しております。なお前年度災害が少く農業勘定剰余金を生じましたので、一般会計に四億八千万円繰入れることといたしております。  家畜勘定は二十六億八千百万円でありまして、前年度十九億八百万円に比し七億七千三百万円の増でありますが、これは家畜最低共済金額引上げたこと及び加入頭数の増によるものでありまして、保険料国庫負担分として六億一千九百万出品を一般会計から繰入れております。  なお両勘定におきまして、再保険金支払い予備財源としてそれぞれ農業勘定に二十六億五百万円、家畜勘定に三億一千万一を基金勘定から繰入れ得るよう措置しております。  第三に、漁船保険特別会計につき申し上げます。まず普通保険勘定歳入歳出八億三千二百万円で、二十七年度四億九千九百万円に比し著しく増加いたしておりますが、これは本年度から満期保険をこの勘定において行い、漁船建造の円滑をはかることとしたためであります。  特殊保険勘定歳入歳出とも三億九千百万円を計上いたしておりますが、二十八年度においては過去の危険率にかんがみまして多少保険料率引上げますとともに、前年度赤字補填として七千八百万円を一般会計から繰入れることといたしております。  右のほか自作農創設特別措置国有林野事業森林火災保険開拓者資金融通国営競馬、糸価安定及び中小漁業融資保証保険の各特別会計につきましては、それぞれ前年度に引続き所要経費を計上した次第であります。  以上をもつて大体の説明を終ります、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 葉梨新五郎

    葉梨主査 以上をもちまして政府説明は終了いたしました。  これにより質疑に入ります。質疑通告順によりまして順次これを許可いたします。船越弘君。
  5. 船越弘

    船越委員 先日の一般質問の際に農林大臣にお伺いいたしておいたのでありますが、つまり食糧供出代金の七十五百円の米価については、憲法二十九条に保障しておるところの何ものも含まつておらないように私は思うのです。それでこの米価価格を上げるとかなんとかいうことでなくして、少くとも農民に対して財産権を制限する以上は、何かこれに対して補償の裏づけをなすべきであろうと私は思うのであります。ところが、いろいろな財政的な見地からいたしまして困難があろうかと思いますので、私は米代金前払い金制度をやるのがいいのじやないか、こういう話をしたのでありますが、農林大臣は、研究いたしておこう、こういうことでありました。それで私のこのたび聞きたいのは、前払い制度をやるについては、どういう不便な点があるか、どういうところに不合理性があるか、あるいは財政計画の上から非常に困難であるとおつしやるのか、その点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  6. 渡部伍良

    渡部政府委員 供出代金前払いにつきましては、かねそれそういう要望はあるのでありますが、これは御承知のように、政府会計では非常に厳密にやつて一般商取引のように、相手を信用して、円転滑脱といいますか、そういうふうな取引ができていないのです。お役所仕事として非難されるところでありますが、一面から言いますと、やはり国民の金を預かるので、相当厳重にやらなければならぬ、こういうことであります。現在のところは食糧庁会計にそういう規定が全然ないのであります。今回の風水害等につきまして、貸付とかあるいは代金延納をするということにつきましても非常にやかましい問題がありまして、敏活なる活動ができなくて、むしろ九州の現地の万で、ある程度会計法上の今までのしきたりを打破つてやつた。そういうふうな非常時のときには、ある程度そういうことができるのですが、百平常的な場合にそういうことをやることについては、従来から研究課題なつておりますが、まだからを破るところまで行つていないのです。これは一に政府会計の金の扱い方が非常に厳重になつておるというところにありますので、さらに研究を重ねて行かなければならぬ、こういうふうに思つております。
  7. 船越弘

    船越委員 供出する米の数量というものは、大体各農家についてその年度ごとにわかつておるのです。その米代金の全額を前払いをしろというのではなくして、本年度予算を見ますと大体二千二、三百億ぐらいになつておるように思いますが、それの一割でも二割でもよいと思う。そういうものを前に渡してやるべきだと私は思う。食糧庁会計法規の建前上そういうふうにになつておらぬとおつしやるなれば、その点を直しさえすればできるのでございましようか。
  8. 渡部伍良

    渡部政府委員 私は前払いを厳密に解釈しておるのでありますが、今おつしやつた程度のものでありますと、協同組合を通じて買うものについては、協同組合にそれぞれ政府前渡しをいたしまして、協同組合の集荷に従つて相当びろに金が渡るように処置しております。しかしこれとてただ供出代金の見返りで金を融通するというのではなしに、農業手形制度とか、そういつた保証があるものにやらないと、安心した貸出しができません。従いまして、会計法上厳密に法律規則を解釈して前渡しをするということは、なかなかむずかしい問題になつて来るので、ただいま申し上げましたような、協同組合を通じて供出するものが大部分なつておりますから、そちらの金融をさらに円滑にすることによつて御趣旨の点は相当カバ一できる、こういうふうに私どもは了承しております。
  9. 船越弘

    船越委員 農協を通じて営農資金を借りていることは私も知つております。しかしながら、それには非常に金利の高いものがつくわけです。どうせ秋に米を出すことははつきりしているのであるから、金利のつかない米代金前渡しするのがいいのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、結局米代金前払い制度をやるのにどういうところに不合理があるかということを、前谷長官が御出席のときに、前谷長官から聞かしていただきたいと思います。  それから第二の問題は、食糧自給促進法案が前国会において閣議で決定したという話は聞いておるのでありますが、今国会にお出しにならないのですか。どういうわけでお出しにならないのか、あるいはまた将来こういうものをお出しになるのか、この点お尋ねしておきたいと思います。
  10. 保利茂

    保利国務大臣 自給促進法案につきましては、今船越さんからお話通りの経過になつておりますが、さらに食糧増産を的確に推進して参ります上に、あの法案要綱について相当検討を要する部分があるように私は存じますので、いずれにいたしましても、食糧増産のために、財政の確保をいたす上から行きまして、この法案の用意をいたしつつあるわけでありまして、目的は食糧増産それ自体にあるわけでありますから、それを有効ならしめる法案が内部的にとりまとまりますれば、御審議を煩わしたいと存じておりましたけれども、ただいまその段階に至つておりませんので、この国会には提出困難であろうかと考えております。
  11. 船越弘

    船越委員 次に国有林野事業の問題でございますが、さき郵政職員に対しまして中央調停委員会から調停案が出され、私は郵政委員もやつておりますが、その調停案につきまして、大体自由党の私といたしましても個人的には賛成をいたしておるのでありますが、同じような理由で、公共企業体等労働関係法の適用を受けろ林野業務に携わつておられる人に対して、六月二十六日に調停案が出ておりますが、この調停案に対しまして農林大臣はどういうふうにお考えになつておられるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  12. 保利茂

    保利国務大臣 お話林野事業特別会計の中にあります林野関係調停委員会の結論が、六百二十六日に出ております。つぶさに検討いたしますれば、第一に給与の基準ベースにかなり無理がある。それの調整を要する部分と、全般の調停委員会による給与の改善という二つの性質を持つた調停か出ております。給与ベース全般の問題につきましてはまだ検討を続けておりますが、不合理の是正の点につきましては、私どもといたしましても、現在の給与実態からいたしまして、ぜひ調停案が実施できるように努力をいたすべきであるという考えのもとに、ただいま努力をいたしておるわけであります。内部的には苦心と努力を払つておるわけであります。
  13. 船越弘

    船越委員 これは政府委員からの答弁でけつこうでございますが、そうすると調停案の中にはベース・アツプを含むものと、そして林野事業に携わるところの特殊の労務者なるがゆえに上げるという部分と二つあるところが特殊の部分については農林大臣は一応考慮してもよい、しかし一般のべース・アツプの問題については考慮する段階に入つておらない。こういう御答弁のように承つたのでありますが、そうしますとこの特殊の部分についてはこれは考慮した場合に、公共企業体等労働関係法の適用を受ける他の部分にやはり波及するのでございましようか。
  14. 保利茂

    保利国務大臣 ただちに直接的に波及するかしないかということは私即断をいたしかねますけれども、同種の全体の問題と関連を生じて参りますことは、同じ公労法適用のものでありますだけに、けだしやむを得ないことだと存じております。
  15. 船越弘

    船越委員 この林野事業特別会計一般会計から一億八百万円余の受入れがなされておりますが、これ以外には一般会計からの受入れはないような模様であります。しかも本年度予算を見ますと、一般余計に対しまして二十二億繰入れられるようになつておりますが、結局林野事業特別会計は利益は全部一般会計へ繰入れる、こういうふうになつておるのでございます。そしてしかも一億八百万円というものが一般会計から入つておりますのは、これは何でございましようか。
  16. 増田盛

    ○増田政府委員 ただいまのお話一般会計から特別会計に対する繰入れの分は、これはごく一部の人件費でございまして、と申しますのは、本年度におきまして一般会計に属しておりました公共事業関係の職員が、事実国有林関係の同種事業に対しても職務に従事いたしておりますので、その部分に関しまして国有林の特別会計の方に人件費をそのまま持つて行きましたので、それに伴う経費の移しかえでございます。
  17. 船越弘

    船越委員 そういたしますと、郵政職員調停案を、もしのむということになりますと、一般会計から約七億の繰入れを特別会計にしなければならない。ところがこのたびの林野事業調停案をのむといたします場合には、一般会計からの繰入れに要しないのでございましようか。その点をお尋ねしておきたいと思います。
  18. 幸田午六

    ○幸田説明員 今の一般会計から繰入れましたのは、従来公共事業でやりました民有林の直轄地山、これは営林局でやつておりまして、現場におきましては国有林本来のものと民有林の直轄地山がほとんど同一の個所におきましてやられておる関係上、国有林特別会計に入れたわけで刈りますが、もしこのアン・バランスの是正あるいはべース・アツプというようなことになりますれば、一般会計から繰入れたものについて、その繰入額の増額ということが一面においては考えられるわけでありますが、これは特別会計から一般会計に当面二十二億繰入れというようなこともありまして、経理内容におきまして国有林特別会計で補充できる場合におきましては、特別会計で持つて行くという考え方でいたしたいと存じております。
  19. 船越弘

    船越委員 先ほど農林大臣の御答弁によりましてベース・アツプの部分を除外した部分については考慮をする、こういうお話でございます。そのべ―ス・アツプを除いた部分の金額が大体どのくらいになつておるのか。また今林政部長のお話によりますと、特別の会計の内部の操作によつて財源は見出される、こういうお話でありますが、その財源はどこから見出されようとしておられるのか、その二点についてお伺いいたしたい。
  20. 保利茂

    保利国務大臣 ただいま御指摘の分に要しまする経費は約四億六千万円であります。その財源につきましては特別会計内におきまする事業計画の一部変更等によつてまかなえる見通しをつけておるわけであります。
  21. 船越弘

    船越委員 そういたしますと、結局一般会計からの繰入れをする必要がないということになりますと、特別会計の企業の内部の労務者の従業努力によつて生み出すとおつしやるのか、あるいはまた別の方法で出そうとおつしやるのか、その辺がわかりませんが、どういうふうな方法ですか。
  22. 保利茂

    保利国務大臣 予算編成当時に見通しを立つておりました価格の変動から生ずる面から四億以上出て来る、それから今お話の、たとえば山元渡しを土場渡しにするというような、企業努力面によつて生み出す、両面から考えて大体の程度の財源を捻出することは会計内においてできる、こういう見通しでございます。
  23. 船越弘

    船越委員 それではこの特別会計の内部で十分まかない得るということでございますが、できるだけ好意的な御措置要望いたしておきたいと思います。  最後にこのたびの風水害によりまして御承知のように九州は未曽有の災害をこうむつております。しかしその場合に台風第二号によつて中国、四国に相当程度の農作物災害がございますが、この古風第二号の災害に対する農林省の今までおとりになつた対策が一つと、もう一つは九州におけるところの農作物災害と一緒にしてこれを御処置なさろうとしておられるのか、あるいは別個にお考えになつておられるのか、それだけをお伺いしておきたいのでやあります
  24. 保利茂

    保利国務大臣 二号台風と今回の九州の大水害の対策をごちやちやにして対策を講ずるという考えはございません、二号台風に対する対策はどこまでも二号古風に対する対策としておるわけであります。詳しいいきさつは官房長から御説明申し上げます。
  25. 渡部伍良

    渡部政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げました通り、私ともの力としては先週の終りから農林省の最後の案をつくりまして、それには第二台風の問題だけで、今度の北九州の水害調査は先週の金曜日だと思いますが、十日に――今改良局長が現地に行つて各県の人及び統計事務所の人を集めまして、十日に一応の被害の状況をまとめた程度であります。まだ本省の方までは被害状況が届いておりません。これを一緒にしたのでは前の台風の措置が遅れますので、あくまでもこれだけでやる、こういうふうに考えております。ただ北九州とダブつて被害を受けた分につきましては、これは場合によりましてその現地の報告によりまして、実際の交付をあとの分と一緒にして交付しなければならぬという場合も出て来る心配もありますけれども、しかしいずれにしましてもまだわかりませんから、とにかく第二台風とは切り離して行くということで、実は土曜日に大蔵省から一応内示といいますか、あるというような話を聞いておりましたが、まだありません。これはむしろ農林省の方から内定すると非常に少いような査定案になつておりますので、そういうものではだめたというので、また向うの方で――ことに衆参両院の水害特別委員会に農林小委員会かできまして、そこで二号台風の対策の案を六党の線に沿つて強硬に押し返しておりますので、大蔵省の力もまだ決しかねているそうであります。
  26. 葉梨新五郎

  27. 小山倉之助

    ○小山委員 今、大臣がおりませんから、政府委員の皆さんにお伺いしてもよろしいのでありますが、御承知の通り山林の荒廃は非常に激しいのであります。この二十八年度予算にも山林の増殖について御考慮を払われておるようでありますが、東北地帯を見ましても、北海道を見ましても、特に山林の荒廃はひどいのであります。そこで北海心には北海道開発計画というものがありますが、東北にはない。領土を失つた今日においては、北海道と東北というものは、私は同様に見ていただいてよろしいと思う。ですから、これは大臣にお尋ねするところでありますからあとに残しますが、北海道のような開拓計画のない東北に対しては、特に事務的に北海道と同様にお取扱いになるという心がけが必要だと思いますが、これを山林の面から見て、どういうふうにお考えになるか、今日は米の問題とか、農産物の問題にはずいぶん擁護者もあり、これを支援する議論もありますが、とかく山林とか僻地の開拓ということは割合閑却されておる。そういうことから、ただいまも御質問がありましたように、山林に関係の人は、とかく差別待遇を役所においても受けているという形跡を認めるのであります。役所の諸君は山林の視察なんかはあまりなさらないで、農地あるいは漁業というような面には、ずいぶん精細に目が届いているけれども、役所の諸君は山林のことをあまりお知りにならない、ことに海岸地帯、不便な場所にはおいでにならないようなことから、とかく閑却されている憂いがあるのであります。山林当局の方にお伺いいたしたいのですが、山林方面のお役人なり、あるいは公務員並に取扱われている人でも給料の上で虐待されている、ある程度の差別待遇を受けているのじやないかというような印象を受けるのみならず、実際にそういうことが考えられるのですが、この点について御所見を伺いたい。
  28. 幸田午六

    ○幸田説明員 東北の開発についての、林政を担当いたします部面についての増殖の進め方でありますが、御承知のように東北は国有林が大部分を占めておりますので、開発の主体はやはり国有林の土地開発というような問題が、総合開発と関連して考えられるべきものであると考えるのであります。従つて国有林の利用の面におきましては、民有林の開発計画とできるだけ関連をとりまして、積極的に開発を進めて参るように、これは特別会計の方で考えて進めております。  なお最後のお話職員の処遇の問題でございますが、これは先ほど船越委員からもお話がありまして、大臣からも答弁になりましたように、他の一般に比較いたしますと、国有林につきましては、企業官庁職員級別俸給表というのがありまして、これが適用の時期が遅れた関係と、頭打ちの解消の関係から大体三号程度のものが低いというような関係もございまして、われわれといたしましては今度の調停案が出ました機会に、内部の事業のやりくりその他によりまして積極的に増収をはかりまして、少くともそれ以上のアンバランスはおおむね解消してか行きたいというふうに考えておるのであります。
  29. 小山倉之助

    ○小山委員 農林当局は山林問題を十分御研究願いたいと思います。近ごろ東北の米産地はどういうもので非常に苦労をしているかというと燃料であります。燃料費用は非常に多く、一村でもつて二千万とか、三千万、あるいは五千万くらい買つているような場所もありまして、燃料で非常に苦労している。これは年々高くなることと、これを受けんことが不便なためにこの方に使う金が非常に多いのでありまして、これはよほど米産並びに生産費のコストにも影響する重大な問題であります。どうしても農村、ことに山林のない燃料のない地方を擁護して行くということが非常に大きな問題であつて、これは一日延ばせば一日損でありまして、一日早くやれば――土地は昼夜をおかず働くのですが、土地を昼夜をおかず働かせて、そうして一方において燃料を十分に農村並びに漁村に提供するということをお考えになることは、国策についても非常に厖大な問題であると考えまするから、相当御努力を願いたい。  そこで私は北上川改修、北上川総合開発の問題をここで詳しく申し述べる意思はないのでありますが、北上川の総合計画に、山林植林の問題にどれだけの経費を見積られておるか、全体の計画のどれたけのウエートを持つているか、あなた御承知ならひとつお聞かせを願いたいと思います。
  30. 幸田午六

    ○幸田説明員 北上川の総合開発の特定地域としての計画が、たしか私の記憶では、少し前に実施されたのではないかと思いますが、その山林部門で持ちまする、この計画に沿つての詳細の面の検討と、それの予算化ということについては、まだ全体的にそれの詳細を予算に計上する段階にまで至つていないように承知しておりますが、これは逐次その計画が具体化いたしまして、予算に計上できる機会に、すみやかに計上してもらうよりに、その対策を進めたいと存じて、おります。
  31. 小山倉之助

    ○小山委員 ことに北上川の改修は、ただ河川を改修するというだけではないのであつて、その周囲をいかに開拓するかということが大きな問題でありますから、この計画には農林当局も入りまして、相当の造林の面においてウエートをお持ちになるのみならず、増産の点、牧畜あるいは家畜の点についても御留意あらんことを私は希望いたします。それはなぜかと申しますと、御承知の通り、今日の河川というものは、田畑のレベルよりは河川の方が高いのです。ですからこの砂をある程度岸に寄せて、そこに牧場を開いて、そこに牧草を植えてやれば、牧畜の上にとれたけの裨益をするかわからぬ。もしこれを掘れば、さらに河川の航行ができる、ナビゲーシヨンができるということになりますから、この河川の利用ということができる。九州の水害はまた東北を襲わないとは限りません。これはみんな河川改修というものがその場限りに、ただ土木業者をもうけさせるたけであつて、ほんとうの河川改修はできていない。私は日本の治水の問題は、河川を、河底を掘るにあるということを考えておるのでありまして、これを、やれば新たに土地改良をしなくとも、りつぱな畑もできれば、田もできるで刈ろうと考えます。それと相伴つて山林計画を立てることは、実は国土開拓、国土開発の基本的観念であると考えておりますから、農林当局はこの開拓事業にはどんどん頭をお出しなつて、その経綸を実現されたいということを希望いたします。  それから漁業の点についてちよつとお伺いいたしたいと思いますが、実はこの漁業の点において、東北地方は北海道のためにどれだけ圧迫されておるかかわらないということを、私はしばしば聞くのであります。北海道の水産議員がほとんど日本の漁業を独占するような形で、東北地方の代表者はこれに対抗できない。これは人間の数で争える問題じやない。合理的に解決しなければならぬ。重大な問題と私は思います。しかるにこのたびさんまは北海道と東北地方では四十五日の間隔を置いて漁をさせる。一体金華山の沖と北海道の沖とどれだけ違いますか。北海道にはすでに百億を越える国土計画というものがある。東北にはそういうものはありません。ですから、これは行政の見地から言えば、そういう計画のないところで、しかも領土が狭くなつて、残された未開発地は東北と北海道ということになれば、どうしても東北の開発ということも、皆様方はお考えにならなければなりません。私はただこれに一言加えますが、日本の富はある程度戦争によつて得た。しかるに東北地方はいつでもマン・パワーを出すのみであつて、その実益は得ておりません。軍事費が落ちるのはみんな関東関西、大阪、九州です。しかるに東北はいつでも取残されて、ただ人命を国家のために捧げておるのみである。経済的には何らの潤いはないといつていいのである。しかるに今領土が狭くなれば、未開発地を相当残しておる地域は北海道と東北であるとすれば、私は東北にも、北海道同様の開発計同がなければならぬ。私はこれからその先鋒となつて大いに努力するつもりであります。今までは閑却されておつた。そういう面から見れば、このさんまの漁期というものは、北海道と東北を区別する理由は何らないと思うのです。やはり金華山の沖合なんです。それで北海道はかように未開発地が多いというので、いろいろ政治力を発揮して、北海道開拓事業は進んでおりますが、東北にはほとんどないのであります。ですからやはりこういうさんまの漁期の問題などは、北海道と東北と同様に取扱うことを、農林当局は考えてくださるべきだと私は思うのでありますが、北海道と東北とどういう、区別があるか、その点をちよつとお伺いいたしたい。
  32. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま小山委員からの御質問でございますが、さんまの問題を一例にとつてお話でございましたので、私からこれについてお答え申し上げます。さんまの問題につきましては、御承知の通り北海道の沿岸漁民と東北関東の沿岸漁民との間の問題でございます。かつて戦前においては、さんまの漁期は全国一本でございました。九月二十日ないし九月中旬を目標といたしまして一本だつたのでございます。その後戦後になりまして、情勢が非常にかわつて参りまして、特に問題になりましたのは、御承知の通りさんまというものは、八月の初旬から北海道の沿岸を通つてずつと南下をいたして参りまして、太平洋岸を漸次南下いたしまして、ずつと四国、九州辺まで南下する、こういう経路をなしておるわけであります。従いまして八月の初旬から北海道沿岸にはさんまの群が現われておる、こういうことになるわけであります。そのほか北海道の沿岸漁民は、かつてはいわしその他によつて相当の漁獲も得ておつたのでありますが、最近に至りまして、その他魚種の漁獲が相当減りまして、沿岸漁民はさんまでもとらなければやつて行けないというような状況になつて来ておるのであります。またさんま漁業に従うところの漁船の大きさを考えてみますと、北海道のさんま漁業に従う船は二十トン以下が大部分であります。約四百隻であります。そのほか二十トン以上の船がごくわずかであります。内地のさんま漁業に従う船は主として底びき網のかつお、まぐろの漁業をしておつた者が、その漁業の裏作的な関係で引続いて行うところの漁業でございまして、百トン以上の船が約二千隻以上でございまして、二百トン以上の船が約五十隻、そういうふうに、内地と北海道では、ひとしくさんま漁業と申しましても、いろいろ状況が違うわけであります。北海道の沿岸の漁民の問題、さんまの魚群の回遊の問題、それからさんま漁業に従う漁船の大きさの問題、あるいは数の問題等、相当事情が違つておるわけであります。かかる前提のもとに、実はさんま漁業につきましては、昨年漁業者同士が会談を行つたのであります。役所がタツチするよりも、関係の業者によつて話合いをつけた方が、一番円満であるという観点から、北海道の沿岸漁業者と内地のさんま関係の沿岸漁業者と会談をいたしまして、両者の円満解決の結果、北海道は八月七日にする、内地は九月二十日に漁業をする、そういうことになつておるのであります。ところが、昨年になりましたところが、御本知の通りさんまは六千万貫あるいは七千万貫とれたという大豊漁でございました。北海道はその一割足らずの四百万貫であります。そういうような状況でありまして、相当魚価が下つて来たのであります。そこで実は問題が起りまして、内地側といたしましても、北海道が早目に出漁してさんまをとつたから、魚価がこんなに下つたんた、だから昨年約束したことは御破算だということと、北海道と内地と漁期を一本にしろということを主張したのであります。北海道といたしましては、せつかく昨年業者同士で話をきめたのではないか、なぜ話をかえる必要があるか、去年の話通りやつたらいいじやないかという主張でありました。端的に申し上げますと、そういうことでありました。そこで私どもは昨年せつかく漁業者の方々が会談をされたのであるから、ことしも漁業者同士の話合いでやつて行つたらよかろうということに基きまして、去る五月の初旬から漁業者にお集まり願いまして、三回、四回、数日にわたつて、ほとんど徹夜で議論をいたしまして、漁業者の会談が行われたのでありますが、ただいま申し上げたような、内地は漁期を一本にしろ、北海道は去年とかえる必要はないというようなことで、基本的に対立いたしまして、とうとう漁業の会談も、ものわかれになつたのであります。  そこで私どもといたしましては、漁期も切迫しておる関係上、これをそのまま放置しておくわけに行かない。そこで何とか水産庁で対案をつくらなければならぬということを考えまして、実は私どもといたしましてはいろいろ考えました結果、そのときの漁業者の方々の御意見を十分考えまして、そこで考えました線は、ただいまは八月七日と九月二十日で、四十四日開いておりますけれども、その差を一月にするということにしてか行つたのであります。それから八月七日に北海道が漁業を始めますけれども、これは少し早いから、少し落そうじやないかということで、八月七日の漁期を五日下げまして、八月の十三日ということにいたしまして、北海道はことしは八月十二日から漁業を始める、内地はそれから一月遅れて九月十二日に始めるということにいたしたいと思つております。従いまして、北海道は昨年よりも五日おそくなりましたし、内地は昨年よりも八日早いということになりまして、四十四日の差が三十日になつたのであります。一月にいたしました理由は、さんま漁業は、月が照つておりますとできないのであります。やみ夜でないとできないのであります。やみ夜からやみ夜へ、約一月という計算をいたしまして、大体一月なら公平であろうということで一月という計算をしたのであります。実はこの計算はぽこつと水産庁で出したわけじやありませんで、漁業者の会談の間に、ちらちらと、こういう案はどうであろうかというように実は出しまして、今私が申し上げたような案としても、やはり方向としては、そんなところにおちつこうという御意向があつたのであります。それを私どもはつかみまして、両方に公平に、四十四日の差を三十日にし、北海道は五日下げるということにいたした方が、北海道側にとつても内地側にとつても、やはり妥協の線としては妥当なところであろう、こういうように考えた次第であります。北海道の方に言わしめれば、すべて損になる。漁期は五日下るし、内地と四十四日の差が三十日になることは非常な損になるが、内地側から言わせれば、一本化という線がくずれましたので、また損になるということで、長い間の紛争の結果、また皆さんの御意向を、大体こんなところで納めたら、納まるのではないかということでやつたのがこの線であります。  私どもといたしましては、この改正はさんま漁業取締規則という規則の改正になるのであります。この改正は、中央漁業調整審議会がございまして、これは漁業法に基くところの重要規則、法律等を諮問する機関であります。その中央漁業調整審議会に、土曜日にただいまの件を提案して、さんま漁業取締規則の改正案を付議いたしました。同審議会は、数時間にわたりまして慎重御審議になりました結果、結局政府から出しましたところの諮問案が妥当である。但しきわめて重要な問題であるから、すみやかにさんま漁業の問題について協議して、しつかりした案をつくれ、本年は漁期が迫つておるから、これでよかろう、こういう実は結論になりましたので、この結論に基いて今後改正に進みたいと思つております。
  33. 小山倉之助

    ○小山委員 御説明でよくわかりました。しかしこれは自然の問題を人為でもつて解決したような気がする。北海道で回遊しておる時期と、東北の沖合いで回遊しておる時期とあまり違うわけがないのです。海は続いておるのです。金華山の沖の方に少し寄つておるというのですから、自然の問題を何か政治勢力かそのほかの勢力で、人為的に解決されたという印象を与えますから、このことは私はこれでとどめます。そこで納まればよろしい。将来はもつと合理的に自然に、今のトン数の船は制限を加えれば、もつと合理的に行くじやないかと思いますから、その点はこれで打切ります。  ただここで、これは別の問題になりますが、御承知の通り近ごろの海岸というものは、たとえばかきの養殖にせよ、あるいはのりの養殖にせよ、ちようど田を耕すようなぐあいで、海底にいろいろな工作をして、いかたを置いたりあるいは竹を立てたりして、まるで前代をつくるようにして、海岸で増殖をはかつております。これは農林省の皆さん方の長い間の御指導で、驚くべきほど発達しておることは御承知の通りであります。そこでそれがためには、どうしても漁港というよりはそういう養殖をする場所には、多少の防波堤をつくることが必要ではないか。ところが私は漁業家のいろいろな意見を聞いておりますと、大体は大漁業家をどう保護するか、たとえば二十トンなり三十トンなりの船を、どう保護するかという議論が多い。近代的に海岸に養殖するというような程度に発達した場合には、やはり養殖のできるような防波堤をつくつてやるということは非常に必要ではないか。それは非常な小さな船を擁護することになるのです。ところがどうしてもそういうふうな議論か少くて、大きな船をつくるために国家の補助金を出すとか、大きな船をつくるために国家がある擁護を与えるとかいうような議論が多う過ぎるのです。東北は御承知のように貧乏な海岸でありまして、陸地の方でなければ商売ができないという状態で、海岸地方からむしろ陸へ出て行商をしておるようなわけであります。魚を行商しておるのではなく、かえつて陸地のものを行商しておるような非常に悲惨な状況にありますが、これらのことか顧みられないのであります。これをもつと田を耕すがごとく、畑を耕すがごとく、近代的にこの養殖事業が発達して参りますと、海岸の人は一方においては山林を大事にし、漁のないときは山で働き、漁のあるときは海で働く、こういうことにすれば生活のレベルがほかの地方と大体匹敵するようになるのであります。ぜひこの海岸養殖の地帯に、もう少し御留意をくださいまして、その発達をはかるように御考慮願いたい。最近中共で押えられて、わかめを増殖したという専門家が、私のところにたずねて参りました。このわかめのために毛沢東に押えられて、ほとんど十年間も支那人に沃土を供給するために働いて来た。これがちようどかきの養殖のごとく、あるいはのりの養殖のごとくりつぱにやれる。これをやれば中共においてりつぱな商売ができるということを言つて参りました。私はそれに非常に感銘いたしました。だんだん中共との貿易もやらなければならぬという機運が見えて来ましたし、また中国の情勢もかわつて来て、日本との貿易が促進されるようになれば、とのわかめの需要は前途に非常な希望があると思うのでありまして、そういうこともやはりお考え願つて、これを養殖することにして、その商品を多量に支那に向けるということも御高配願いますよう申し上げたいと思うわけです。私は大体この程度で打切ります。もし時間がありましたら、農林大臣にちよつとお伺いいたします。
  34. 葉梨新五郎

    葉梨主査 小平忠君。
  35. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣が遅れて参るそうでありますから、それまで政府委員にお伺いいたしたいと思います。  最初に、食糧関係についてちよつとお伺いいたします。きわめて事務的のことでありますが、食管特別会計の予備費を本年度は百億計上いたしておりますが、昨年度より大体倍額近い金額を増額しました理由は、どういうものでありましようか。
  36. 渡部伍良

    渡部政府委員 食管会計につきましては、二十七年産米から買入れ方法をかえたのであります。と申しますのは、供出割当完遂後の供出につきまして、特別価格を設けたのであります。そういう点から、従来の予備費では相当あぶない、こういう見通しを持たれたのであります。現に昨年の端境期は、ことしの端境期に比べまして、相当きゆうくつでありましたので、早場米供出について、早場米奨励金の交付の額と時期を広げました。それから供出完遂後の価格を一万五百円というふうにやつたわけです。これはちよつとお考え願つてもすぐ出ると思うのでありますが、当初二千五百五十万石の割当に対して、全部の供出予定を二千八百二十五万石、すなわち一百七十万石の供出割当後の超過供出という数字をつくつておつたのであります。ところが昨年の哀れに供出割当をいたしました際には約二千三百万石内外、結論としましては、二千二百九十万石の割当になつた。そうしますと、一方では、早場米はそういうふうに幅を広げたが、案外に早場米の数字がよけい出た、それから供出の割当につきましては、当初予定しておつたよりも強制割当の分か予定通り伸びなかつた、そういうふうな関係がありますと、計算上の齟齬が相当大きく出て来るのであります。そういう関係をにらみ合せまして、今回は予備費を市価にしたのであります。
  37. 小平忠

    ○小平(忠)委員 かりに特別会計といえども、政府予算編成される場合には、私はあなたの手元に、具体的な資料と、あらゆる角度から検討されたものを総合いたしまして、そこに予算編成されると思うのであります。ただいまの御説明を聞きますと、きわめて抽象的で、具体的に計算の基礎が明白でない点がある。基本線はわかるのでありますが、具体的でない点があります。と申しますのは、本年度は買入れ方法において特別価格制度をつくつた。これに対して、現在のいろいろな諸情勢をにらみ合せまして、一体どういう計画が――そのような計画がその通り進むかどうかということは、大きな疑問かあるのじやなかろうかと思うのでありますが、最近におきまするやみ米の状態を見まして、それで私はただいまの予備費百億を計上いたしましたその理由については、もつと具体的にその計算の基礎を知りたいことが第一点、その次は、本年度の超過供出奨励金、これをどのように計算いたしまして、どのような金額を計上されたか、この二点をお伺いいたします。
  38. 渡部伍良

    渡部政府委員 二十八年度予算案につきましては、本委員委でも大臣から御説明申し上げましたが、予算上の計上は、やはり二千二百五十万石の割当で、超過供出とも二千八百二十五万石といつた数字を立てておるのであります。しかるところ、御承知のように、二十八年産米の状況というものは、これは極端な言葉で言いますと、皆目見当がつかないのであります。これを検討して、ある程度コンクリートなものにして予算に計上せよとおつしやられましても、それはなかなかむずかしいのでありまして、われわれとしては期待数字を前提とする以外に方法がないのであります。そういうわけで、ことしの数字と同じ数字を計上したのであります。現在の米の価格を二十八年産米についてどうするかという御説でありますが、これはただいま私どもも新聞で知る程度でありまして、具体的には、あからさまに申し上げまして、こうした場合にどういうふうな計算になるか、たとえば現在の基本米価は七千五百円でありますが、これを改進党が言われる八千五百円にした場合には、どういうふうな収支バランスの変更になり、ないしは食糧証券の発行高をどういうふうにしなければいかぬ、そういうふうな基礎数字の照会を受けておりますが、これをどういうふうな方針でまとめるということについては、全然私どもはわからないので、むしろ食管会計の将来をどういうふうにやるかと言うて心配しておるような状態なのであります。  それから、予備費の内訳をどういうふうにして想定するかということは、今まで御説明申し上げましたように、非常にむずかしいのでありますが、私どもでほんとうにラフに計算しますと、半分つまり五十億は売買数量の変動による通常の予備費で、残りの半分が本年産米の作柄等の、あるいは早期供出の奨励、あるいはまたかりに前年度予算通りの供出後の特別供出価格を認める場合には、数字のふれによつて食管会計に赤字――あるいは昨年等も代金の支払いが遅れたというので問題か起つたのでありますが、数字がふれますと、食管の支払いにも支障を生ずる、そういうようなことかあつては困るので、相当広い幅の予算費がほしい、こういう意味で残りの分は、そういつたことしの作柄の変動、あるいは供出状況のふれというふうなことを予想しまして、予備費を一億にしたのであります。
  39. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうも理解できない御説明です。予備費を百億計上いたしておりますが、そういつた考え方のもとに、今後食管会計を操作されるならば、私はその予算編成にきわめてずさんなものがあろうと思う。その問題はとりあえずその程度にいたしまして、が先ほど伺いました、本年度超過供出奨励金は、どういう計算で、こういう方法で出されるお考えか、それをお伺いしたい。
  40. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。本年度におきましては、特別会計の前提といたしまして、二千八百二十五万石、これは一十八年度を通じて内地で買い入れるものであります。そのうち、昨年度と同様に、二千五百五十万石を普通の供出として想定いたしまして、二百七十五万石は超過供出、かようにいたしまして、それを総平均いたしまして、予算の買入れ費用単価といたしておる次第であります。
  41. 小平忠

    ○小平(忠)委員 昨年とずいぶん金額がかわつておりますが、その理由はどういうわけですか。
  42. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。大体昨年度とほぼ同様の形でいたしております。
  43. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そこに大きな問題があろうと思います。政府は本年は供出後におきまする特別価格制をもつてやるということでありますが、その供出後における特別価格制をもつて買い上げる関係と、超過供出の関係はどうなりますか。
  44. 前谷重夫

    前谷政府委員 昨年度と同様に、基本価格の七千五百円に三千円をたしました一万五百円を一応超過供出の価格として、予算の積算の基礎に使つておるわけであります。
  45. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは昨年と別段かわらないことになりますね、そういたしますと、どういう理由で予算金を五十億もふやさなければならぬかという理由が、きわめて薄弱になつて来たのですか、食糧庁長官の御意見はいかがですか。
  46. 前谷重夫

    前谷政府委員 御承知のように、従来とも五十億余の予備金があつたわけでございまして、本年度におきましては、昨年度完遂奨励金といたしまして計上いたしておりました分は、本年度におきましては、作柄その他の関係が決定いたしませんが、一応計上いたしております。その完遂奨励金の関係でございますとか、あるいはまた、御承知のように、麦の関係におきましても、価格の変化がございます。そういう点とか、あるいはまた、早場米奨励金等におきましても、予算では八十一億に計上いたしておりまするか、昨年度におきまする実績を見ますると、そこに予算面の狂い等もございますので、そういう事情を考慮いたしまして、予備費を増額いたしたわけでございます。
  47. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大臣がお見えになりましたので、大臣を中心にしてお伺いしたいと思います。もし大臣御自身で明瞭でない、あるいは御承知でない点は、政府委員、説明員の方からかわつて的確な御答弁をいただきたい。そういうことで大臣にお伺いしたいと思います。  先般私が、七月三日の予算委員会で大臣にお願いしておきました資料の中で、いまだに提出願つてない資料があるのであります。供出価格消費者価格のいわゆる価格差、値開きについて、その内容は食管特別会計のこの予算書によつて一応出ておりますが、これはきわめて大綱であります。政府は国民に、こういう一存によつて供出価格消費者価格の値開きがあるのだということを理解せしめるようにしないと、供出価格が七千五百円で、配給価格が一万円近い価格である、どうしてそういう開きかあるのだろうという疑問か、いまだにとれておりません。従つて私はその資料を要求いたしたのでありますが、どのようになつておりますが、その点が第一点。  第二点は、同じ七月三日の委員会におきまして、これまた非常に、重要な問題として、特に大臣は了承されておるはずでありますが、北海心の十勝、根室におきまする食糧検査員のさし米事件が取り上げられておりますが、この事件を犬養法務大臣は非常に心配をされまして、連日私のところへ照会せられて、そうして実情をさらに聞きたい、そしてこれは現地の検察当局において十分に実態を調べて、善処したいということから、最高検察庁なり、あるいは検事総長とか次長検事に説明をしてもらいたいというので、真剣にこの処理の善処方を心配されております。ところが農林大臣は、所管大臣の立場から、自分の部下がそういう事件で現在取調べを受けておるということに関しまして、これは急速に処置をしなければならぬ問題だろうと思うわけです。特にこの問題は、単に十勝、根室だけの問題はなくて、その及ぼす影響は、同じ関係のことが、同じ方法によつて北海道全道、いな私は日本全国において、この検査員のさし豆とかさし米の処置については、同じような取扱いが非常にあると思う。これに対してその後どのような処置をされましたか、とりあえずこの二点をお伺いしたいと思います。
  48. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。第一点のコストにつきましては、もう資料が参ることと思います。今取寄せておりますから、ただちにお手元にお配りできると思います。  それから第二点の北海道の事件につきましては、二十六年、二十七年の事件かと承知いたしております。そういう事件があるということは、十分承知いたしております。その後現地につきましても、いろいろ実情を調査いたしましたし、また当時に必要な場合には、実情をそれぞれの関係方面に説明をいたしてもおるわけでございまして、問題が一応検察当局の手に渡つておる事件でございますので、われわれとしましては、現地の事務所及び本庁からも人を派遣いたしまして、実情を調査し、またそういうことによりまして、検査自体の執行が困難になるというふうなことのないように努力いたしたいということで、人も派遣し、調査もいたしております。
  49. 小平忠

    ○小平(忠)委員 食糧庁長官の今のお話ですが、昭和二十五年、六年ではありません。
  50. 前谷重夫

    前谷政府委員 いや二十六年、七年です。
  51. 小平忠

    ○小平(忠)委員 六年、七年の事件ではありません。つい最近、先々月の問題です。これはなぜ私が重要視いたしておるかといいますと、実際問題としてこのさし米、さし豆は何千俵、何万俵という、検査で、さしてとつたものは大きな数量になるわけです。これは農業協同組合なり、地元の市町村の役場と話会いで、食糧検査所が実質これだけはこうしようという、一つの公の団体が加わつて話をしてやつておることであります。しかし問題は食糧検査所に時間外勤務手当あるいは石炭手出等のそういう手当がなされていないから、一旦そのさし米を政府に納入して、政府がまたそれを出す形式をとれば、これは問題でない。そういう形式をとらずに、これは非常に全国的にやつておる問題でありますから、私は重要視いたしておるわけであります。これは問題は単にそういつた一箇村の問題ではなくて、これを摘発いたして参りますと、全国の農産物検査所が、ほとんど出まわり期になつて来たのに、検査ができないという現状になつているのです。これはもう時間外勤務をやらなければできないのです。そういう実態でありますから、私は急速にこの問題を解決してもらわぬと、及ぼす影響は大だと思う。これはお願い申し上げておきます。これは当然役所としまして、いわゆる農林大臣として、主管省として、当然急速に処置しなければならぬ問題だと思います。  次に本年度予算編成の大きな課題として、私は二重米価の問題あわせて農産物価格安定法によりまする澱粉、それからかんしよ切りぼし、菜種等の買上げによつて農産物価格安定をはかろうとする問題でありますが、これは御承知のように予算のいわゆる最終段階に参つておりまする今日において、農林大臣は二重米価、さらに農産物価格安定法をまず制定いたしまして、これによつてこの重要農産物価格の維持をはかろうとするこの二点に関しましては、とのようなお考えでございますか。
  52. 保利茂

    保利国務大臣 米価問題につきましては、この出来秋の米価決定の時期におきまして、諸般の事情を検討して決定をいたしたいという、従来の考え方を依然として変更いたしておりません。  重要農産物価格安定の処置につきましては、承りますれば、ただいま各党間におきましても御協議いただいているようでございますし、それとにらみ合して私の方も考えて参りたいと考えております。
  53. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣の所信をまず私は聞きたかつたのでありますが、各党の動き、気配を見て善処するということについては、私はたよりない感じがするのであります。しかしそれはそれといたしまして、しからば私は農林大臣に、農林大臣として日本のこの重要な農林行政、食糧行政を今後どうするかという点についての、基本的な問題についてまず聞きたいのでありますが、先般の農林大臣就任後におきまする、あるいは本省においていろいろ記者団に談話発表したこと、また国会においてもいろいろ議論なり、農林大臣が答弁された意見を総合いたしますと、まず日本の現状において、食糧についてはまだ自給自足はできない。どうしても食糧は足りない。足りないためにやはり年間約二千万石近い食糧輸入しなければならぬ、こう説明されておるでありますが、それはその通りでありますか。
  54. 保利茂

    保利国務大臣 これはもう議論でなしに、現実だと思つております。
  55. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そうしますと、食糧が年間約二十万石も足りないということは、これは自由主義経済じや行けないことだと私は思うのであります。しかるにそういう実情でありながら、いかなる理由によつて供出後は自由販売にしたいのか。あなたも自由党員であります農林大臣だろうと思います。自由党はそういうことをおつしやつております。その論拠について農林大臣の所見を伺いたいと思います。
  56. 保利茂

    保利国務大臣 自由主義だから食糧自給が成り立たぬというわけではないと私は思います。これは要するに需要と供給のアンバランスで、二千万石前後の外地食糧に依存しなければならない。従つてこれは予算委員会総会におましてしばしば御意見見もあり、御論議もございましたが、であれはこそこの食糧、月給度を高めて行く増産計画を、強く推進して行かなければならないではないかというのが、皆様の御意見でもあり、私どもの意見でもあるわけであります。従つてそのためには、むろんいろいろ御意見があるわけでございますが、供出後の自由販売というような考え方も、要しまするのに、農民の生産意欲を刺激する。そして増産の目的が達せられて来るというような考え方の上に立つている主張であると思うわけでございます。いずれにいたしましても、小平さん御承知のような食糧需給の現実かつまた趨勢から言いましても、そう簡単に自給自足の段階に入り得るとは思えませんので、あらゆる力を総合して、国としても、また農村におかれても増産に集中していただくように努力をいたして行かなければならぬかと考えておるわけてございます。
  57. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はこの問題について常日ごろ矛盾を感じておるのですが、一体わが国はいかなる努力をし、いかなる施設を講じましても、現在食糧は自給自足できないのかという、この問題であります今日十、五日配給をしておられまして、それで政府の買上げ数量は、二十八年度は御承知のように二千八百万石、ところが主食の米は統制をしておきまして、実際にやみに流れておる米が一体どのくらい刈るのか、これは非常に問題だと思います。大臣は一体今日料理屋、旅館あるいは一般の市中に流れておりまするやみ米、あるいは一般の消費者にかつぎ屋が持つて来るや八米、大体年間どのくらいだと推定されておりますか。
  58. 保利茂

    保利国務大臣 これはやみのことですから、的確にはむろん捕捉いたしがたいと存じまするが、東京あたりのやみ消費の実情を調べておりますところでは、昨年よりもやみによる消費が一世帯当り五割くらいはふえて来ているような実情にあるようでございます。
  59. 小平忠

    ○小平(忠)委員 やみによりまするその一世帯当り五割の増ということは、これは私は非常に農林大臣は重要な発言をされたと思う。実際それはそうであるかもしれぬ。それ以上であるかもしれぬ。しかしそういう数字というものはどこからか出て来なければ、これはできない。その根拠。さらに一体主管省であります農林省は一応統制はいたしておりながら、旅館や料理屋や、一般の家庭にかつぎ込むそのやみ米、特に一昨日の新聞に、これは朝日新聞でありましたが、永田町点描で、国会に朝議員が登院する前に、まずどういう人が登院するかというと、やみ米を背負つたおばさんのタクシーが登院する。どこに行くかということはおのずからわかるのでありますが、そういうように、そういつたものを取締る自体であります国会とか、農林省――私はそういつた問題が国民の中に公然となつておる現状を考えるときに、これはすべからく何とかしなければならぬ。農林大臣は、主食の統制をしておりながら、このやみに流れる米について、一体どのような処置をされておるのか、されていないのか、今後どうするのか、まずこれをお伺いしたい。
  60. 保利茂

    保利国務大臣 一方において食生活の改善が強く叫ばれておるわけですが、食生活が改善せられて、栄養カロリ―の理想的な食生活が営まれるようになれば、八十五百万人の人口であつても、米は五十七、八百が石で足りるという――これは小平さんもよく御承知の黒澤先生あたりが強くそれを主張出せられておる。従つて総合食糧として今後酪農等に力を入れて参りまして、一面において食生活の合理化が国民的に行われて参りますれば、私はこの困難な経済事情のもとにこれだけの人口をかかえておりましても、そう不安はないと思う。しかしこれはやはり国民の一人々々にその食料事情をよく御認識していただいて、その上に立つて各自がやはり改善といいますか合理的な食生活に入る、その入り得る環境を政府がつくつて行くということと相まつて行かなければならぬ、こう思つております。やみのふえていることは、これは作況にもよりましようし、今日の米の管理の方式が、非常に困難な状態にあることは御承知の通りであります。一面におきましては、やみ価格が非常に騰貴をした。それはやみ屋の取締り、かつぎ屋の取締りがはげしいからという御非難もある。いずれにいたしましても、米に対する執着といいますか、また経済的の理由から、米に対する消費欲望というものが、非常に旺盛であるということがこれでよくわかるわけであります。さらばとて、それじや米を統制しておるから一粒もやみで動かせぬというようなことは、むろんこれは法治国ですから、法律違反を見のがしておくということも、大いに議論があろうかと思いますけれども、それをまたあまりきゆうくつに、一粒も動かしちやいかぬというような取締りをするということは、農家の方からいいましても、消費者側からいいましてもどうか。ある程度はこれをやむを得ざる事態として行くことが実際に即したやり方じやないかと思う。名案があればむろん躊躇せずやりますけれども――名案かありましたら、ひとつ小平君からもお教え願いたいと思います。
  61. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣はいわゆるやみ商人を奨励しているようなふうに私にはとれるのです。そんな意味じやないでしようけれども。これは笑いごとじやない。しかし日本の食糧問題は一体どうしたら解決されるか。これは統制している限りにおいては、やはりその統制している線に沿つてやらないと、それは大臣がおつしやるように、もう絶対に一粒の米といえどもやみに流れないということは不可能でありましよう。しかし今日の実態を見ると、かつぎ屋であろうが、もうやみで、一般の旅館にしろその他料理店にしろ、食堂にしろ、外食券というようなものは、もう一つの形式的なものになつている。それでほんとうに政府この食糧問題を真剣に解決しようと腹をきめて乗り出すならば、当面のこの問題を解決する方法がないということはないと思う。私は時間がありませんからここで具体的なことは申しませんけれども、まず構想といたしまして、今日やみに流れておる米を、まず法律の示すところに従つてこれを徹底的に取締る。取締る反面にやはりこの米を配給量をふやす方向に持つて行く施策を考える。さらに今日の輸入食糧につきましても、需操作のよろしきを得るならば――このやみ取締りとか、あるいは食糧増産の施策がもつとよろしきを得るならば、輸入食糧を半減いたしましても操作ができると思います。必ずしも小麦や大麦に比較して高い外米を多量に輸入する考え方は必要ないと思う。私はもつと根本的に、今年度計画されております。九十万トンの外米をまず半分にして、四十五万トンの外米をある程度小麦に振りかえ、さらに政府が本腰を入れて食改善の方向に乗り出し、学校給食の方向にも力を入れるというような抜本的な方法をとりますならば、輸入食糧においても約五、六百億円の金が浮いて来るでありましよう。三百億円の補給金のうち百億円以上が浮いて来るでありましよう。これを振向ける方向というものは、今日の生産者価格七千五百円を、農村における多年の要望であります石一万円の線まで持つて行く。もしかりに生産者価格を一万円に引上げるならば、やみに流れません。こういう点でもつとも農林大臣が――最初の点に帰りますが、二重米価にしろ、農産物価格安定法にしろ、各党いろいろ話合いをしておるから、その意見を聞いた上で善処したい、これでは農林大臣としての信念のほどが疑われる。もつと確たる信念のほどを私は聞きたかつたのである。そこでこの問題について最後に結論としてお伺いしたいのは、私はこのように考えるのであります。わが国経済自立の根幹となる大きな問題として取上げなければならぬのは、やはり食糧問題の解決だと思う。その食糧問題の解決の道はどこにあるか、やはり価格であります。かりに今日のわが国経済の実態をし細に調べてみますと、物価の消長というものは、主食によつて左右される面が非常に多いのであります。今日の食糧に対します価格は、単に農産物価格でなく、畜産物において、いわゆる乳製品の価格、それから水産物の価格であります。このような農産物、畜産物、水産物の食糧に対します価格について、もつと政府が基本的な総合的な方針を立ててやらないから、今日増産にもきわめて影響がある。今日国家公務員なりあるいは地方公務員等の生活の安定のために、国みずからがいわゆる人事院という審議機関を持つている。私はわが国が食糧の自給自足の態勢へ打つて行かれて、食糧に関してある程度不安がなくなるまでは、こういう食糧価格について審議庁的なものをまず設置して、農林省においても各局ごとにばらばらで、きわめて総合性の欠ける価格体系を、総合的な決定をする審議庁的な機関を急速に設置しなければならぬ、このように私は考えるのであります。一体農林大臣はそのようなことをお考えになられたことがありましようか。あるいは考えたけれども、そういうことはとうてい不可能であるとお考えになつたのか。私は農産物、あるいは畜産物、水産物の価格問題について、わが国の今日の実態においてどのようにお考えがあるか。それは農林大臣は英国における食糧事情なり、あるいは北欧における食糧事情なり、あるいはもつと飛躍してアメリカにおきます食糧事情等については、十分検討されておると思うのであります。そういう先進地におきます食糧事情の実態をよく勘案されまして、私のただいまの質問に対しまして御答弁をいただきたいと思うのであります。
  62. 葉梨新五郎

    葉梨主査 簡潔に願います。
  63. 保利茂

    保利国務大臣 お話のように食糧政策は今日の国策の重要課題であると存じますから、ひとり価格の面にかかわらず、全体的に、ただいまの話のような機関を特つということは、私は非常に重要なことだと存じますから、十分研究さしていただきたいと思つております。
  64. 葉梨新五郎

    葉梨主査 小平君、なるべく簡潔にお願いします。
  65. 小平忠

    ○小平(忠)委員 食糧問題で、ただいま委員長のお説のように、私は要点を簡潔に質問しまして、結論を早くつかもうと思つたのでありますが、大臣を初めといたしまして、政府委員の方々は、どうも私が理解できるような答弁がないので、時間がかかつたのでありますが、その点は委員長ひとつ御了承いただきたいと思います。  あときわめて重要なる食糧増産の問題に関連しまして、お伺いいたしたいと思いますが、二重米価の問題については、農林大臣のいわゆる予算書の基本方針を踏襲するということでわかりました。ただ農産物価格安定法について各党で話合いをされているからということでありますけれども、それはそれとして、これはわれわれ議員の、各党間における話合いであります。しかし私は行政府農林大臣という立場から問題になつておるこの農産物価格安定法を、農林大臣はこれをどう処理されるのか。政府がみずからこれを提案しようとお考えでありますか。もし提案されようとお考えであるならば、とりあえず当面はどういう品目を対象にお考えになつておるのか、これをもう一度承りたいと思います。
  66. 保利茂

    保利国務大臣 予算総会におきまして、この問題に対しまして、私の考えは申し上げてあります。私は食糧増産を推進する一方において、主要農産物価格安定をはかつて参り、そうして食糧増産を推進しつつ、農家経済の安定向上をこれによつてはかつて行くようにしなければならない段階にある、かように申し述べて来ておるわけでございますが、しからば安定法の安定措置をとる品目については、ただいまどういうふうに考えておるか、むろん私ともの考えによつてただいま関係当局と折衝いたしておりますが、澱粉とかあるいは菜種でありますとか、そういうものを主として取上げて参る、今後の日本の農産物の推移に従つて、将来考えて行くべきであろうというふうに考えております。
  67. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうも了解できないのでありますが、やむを得ません。  次にこれは食糧問題の解決として、土地改良開拓の問題でありますが、保利農相は、かねて自由党が食糧増産五箇年計画をふりまわして、非常に真剣になつて農林当局の皆さん方も非常に本腰を入れられておる点であります。この食糧増産五箇年計画というものは、今日どのように取扱われておるのか。さらに私は食糧問題の解決は、やはり輸入食糧に仰ぐという考え方をやめて、まず食糧増産、それには土地改良開拓、これを思い切つて推進する。これは農林大臣もそのことを力説されておるわけであります。そういう観点から食糧増産五箇年計画はどのように現在取扱われておるか。さらに農林省の構想から参りまして、今日の食糧増産をせねばならぬという観点から、農林省が大蔵省に要求いたしておりまする食糧増産土地改良開拓予算は、今日予算書に出ておりまするこれで十分なのか、あるいは農林省の原案はもつと多く出しておるのか。農地局長もお見えになつておりますので、この食糧増産という見地に立つて、五箇年計画と土地改良開拓に対しまする農林省の左本的な考え方を、ひとつこの際承りたいと思います。
  68. 平川守

    ○平川政府委員 御承知のように、二十八年度予算編成いたしますのに、いわゆる食糧増産五箇年計画を立てまして、これに基いて予算に関する要求も出したわけでありますが、全体の財政の関係からいたしまして、われわれの当初の要求から見ますると、ほぼ半分程度に削減を受けることになつたのであります。従つてこの程度をもつていたしましては、いわゆる自給程度に近づくというようなことは非常に困難であると存じます。現在提案をいたしておりまする予算の程度をもつていたしますると、大体百三十万石程度の増産を期待することができるのでありまするけれども、これでは年々の農地の潰廃その他に基く減耗を補う程度に近いのでありまして、それ以上人口の増加等をカバーすることはとうてい望み得ないのであります。従つて年度以降につきましては、さらに当初考えましたようなほぼ減耗をカバーし、また人口増加をもカバ―して、さらに積極的に輸入量を減少する程度の増産の計画に進みたい、かように考えておるわけであります。この点につきましては、非常に大きな問題でございますので、なお検討をいたしておるわけであります。
  69. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間が大分たつておりますから、私は重要な問題について一括して御質問を申し上げますから、それぞれ、もし大臣が御答弁をあれでしたら、関係の政府委員の方や説明員の方から御答弁いただいてもけつこうでございます。農業団体の再編成に関しまして、農林省は農協法の一部改正と農業委員会法の一部改正を目下農林委員会に提出されております。これに関しまする予算措置予算書に明瞭に出て参つております。私はそこでお伺いしたいのは、この農業協同組合法の一部を改正して、農業協同組合の指導奨励のために、あるいは今日農村再建、農村近代化の基盤として、農業協同組合の拡大強化、いわゆる不振組合の再建をはかろうという考え方につきましては、基本的な線から参りますと、農業協同組合という、この自主的な農民の組織が、政府の助長施策によつて政府から励奨金をもらつて、いわゆる組合の刷新強化をはかろうというこの考え方については、協同組合運動本来の趣旨にかんがみますときに、私は非常に同意しかねる面もあるのでありますが、しかしわが国の脆弱な農業の実態なり、農業協同組合の今日の現状を考えてみまするときに、まだ奨励助長の施策をとるべき段階である、過渡期としてやむを得ないのではないかと私は考えるのでありまして、この考え方については、やはり私は基本的にはそういう意見はありますが、まあやむを得ないと思うのであります。一方農業委員会法の一部改正を行つて、この農協法の一部改正と農業委員会法の改正によつて、多々矛盾を来す線があるのではなかろうかという点があるのであります。もう一つは、全国の農民において強く要請されております農民組合、農民組織法いわゆる農民の自主的な組織をつくつて、これによりまして、何らの拘束を受けない農民自身の意思を盛り上げようとする農民組合法の制定、この問題と、農業委員会法の改正によつて農業委員会が、農民意識からあらゆる農政活動なり、あるいは政府に献策、建議するという、こういつた考え方とがここに大きな食い違いとか、摩擦とか、あるいは重複とか、そういう問題が若干起きて来るのでありますが、これら農協法の一部改正、農業委員会法の一部改正、農民組合法の制定というような三つの観点に立つて農林大臣はいかにこれを処理されようとお考えであるか、これがまず第一点であります。  次は協同組合に対します法人税の問題であります。これはかつて協同組合に対しましては特別法人税という制度が戦時中とられまして、これは戦時中に限つて特に、という臨時立法であつたわけです。戦後において、この特別法人税という法律によりまして、協同組合に対しましては、所得税軽減の処置をとつておるが、これが今日においてはほとんど営利を目的とする法人と、協同組合のごとき営利を目的としない法人と何ら差別がないという矛盾きわまるこの問題について、農林大臣はいかようにお考えであるか。  次に畜産振興の問題について、本年度集約酪農地区の設定を二箇所されております。これは畜産奨励の見地から、非常に機宜を得た施策であると私は考えておるのであります。しかしこの程度の畜産奨励の施策をおやりになつたのでは、栄養審議会において出しておりますところの乳製品の増産によつて、国民のいわゆるカロリー、栄養を高めようとする面から見ますと、足りないと思うのです。それで本年度はこの三箇所にいたしておりますけれども、明年度以後は、やはり同じ計画で二箇所しかこれをふやさないのか、もつとふやす考えであるのかどうかという点を伺いたい。  次は農業災害に対します恒久立法の問題であります。今回の西日本あるいは北九州の風水害あるいは水害によりまして、御承知のように臨時の処置をされております。ところが、わが国は御承知のように定期台風が毎年襲来をして、農業災害というものは受けることを覚悟しなければならぬという見地から、臨時立法によつてその都度その処置をされる行き方では行けないにではないかと思うのでありまして、どうしても総合的な恒久立法をこの際立てるべきではなかろうかと思うのでありますが、これに対しまする所見を承りたいのであります。  次に農村の生活改善の点でありますが、農村生活改善につきましては、現在農村生活改善の普及員というものが施設されておるのであります。これは非常に大事なことでありまして、もつと普及員を増員いたしまして、基本的な農村の生活改善をやることが、わが国経済自立、日本農村の近代化の支柱でなかろうか、こういうふうに私は考えるのでありますが、これに対しましていかなるお考えを持つておりますか。  もう二点残つておりますが、とりあえず今までの点について、大臣からでなくてもけつこうですから、御答弁願いたいと思います。
  70. 小倉武一

    ○小倉政府委員 第一点の農業団体あるいは農民の意思の代表機関の問題でございますが、自主性という点から見ますると、農業委員会協同組合、農民組合それぞれ質的あるいは段階的な相違がございます。その辺の関係をどう処理するかということでございますが、現在各組合が果しておりまする役割にかんがみまして、今国会に提案しているような一部改正を提案している次第であります。  農民組合についての法制化ということにつきましては、自主性を一層徹底的に持たすことが好ましくはないかということで、法制化の意図はただいまのところ持つておりません。  次は協同組合の法人税の問題でございますが、これは御本知のような事情にありますので、御趣旨に沿うたように研究をし、減ずるような申入れを大蔵当局にいたしております。  それから農業災害の問題でございますが、作物ないし家畜につきましては、恒久的な制度として存在していることは御承知の通りでございますが、その他の災害につきまして恒久制度ができるかどうかということにつきましては、これはなかなかむずかしい問題があろうかと存じます。作物についても、よほど長期あるいは広汎に危険分散をしないと、災害対策にはなかなかむずかしいのでありますが、それ以外の施設あるいは農地という問題になりますと、いわば災害補償あるいは保険といつたような意味の恒久制度は、なかなか成りがたいのでございまして、場合によりましては、融資、利子補給、あるいは損害補償といつたようなことについて、恒久立法ということはあるいは考えられるかと思いますが、その辺についてはなお研究の必要があろう、かように存じます。
  71. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 ただいまの集約酪農地区の問題について私より御答弁いたします。今年度集約酪農地区設置につきましては、まつたくの新規事業でありまして、しかも今までにない、わが国の畜産の歴史始まつて以来の大事業といたしまして、六百頭という数の乳牛を輸入いたしますので――当初はもう少しよけいに編入いたしたいと思つておりましたが、そういうような大がかりな事業でありますので、六百頭にとどめまして、二地区を設定するということにいたしております。しかしながら来年度につきましては、本年度その経験を積みますので、いろいろ地方の要望もありますので、できるだけ多くこれが輸入頭数をふやしたい、かように考えておる次第であります。
  72. 渡部伍良

    渡部政府委員 農村の生活改善の施策を、もう少し強力に進めたらいいじやないかというお話でありますが、私どももまつたく同感でありまして、これは国民体位の向上の人ならず、農業生産それ自体を上げる上から非常に必要なのであります。現在生活改善普及員が千二十二人でありまして、これは二十七年度から少しふやしたのでありますが、二十八年度の要求に際しましても、相当ふやすという要求をしたのでありますか、一般改良普及員との関係等から実現しなかつたのであります。二十九年度には、私どもは一般農業改良普及員の三割程度を目的にして、第一段階としてぜひふやしたい、こういうふうに考えております。
  73. 小平忠

    ○小平(忠)委員 最後に一点お伺いして私の質問を終りたいと思います。  農林行政全体の面で、今日解決を要すべき問題は非常に多いのでありますが、そのことごとくに予算が伴い財源を必要とするということは、いまさら私が申し上げるまでもないのであります。ところが今までの農林省予算編成にあたつて、それが大蔵省に打つて行かれて、どういう経過をたどつているかというと――全国から要請のあるものをまとめると厖大なものです。ここに農地局長がおられますが、農地局長関係では特に公共事業費食糧増産費などは厖大なものであります。ところがそれを大蔵省へ持つてつて、大蔵省の一次査定、二次査定、最後の査定じやずたずたにぶち切られて、まつたく当初予算の片鱗だもないということになる。国民生活の安定ということを政府が口にするならば、総理大臣、大蔵大臣が農林行政に対してもつと理解を持ち、急速に解決をすることについて考えてもらわなければならぬと思うのであります。従来の農林大臣の人たちを見ますると、いずれも総理の側近あるいは大物がなつておるといわれるおるのであります。しかし、それは単なるはつたりや総理の側近であるというようなことたけで解決される問題じやないと思う。ほんとうに農林省がかくあらねばならぬという的確なる資料と輿論を喚起するならば、大蔵大臣がいかに横暴であつても、大蔵省の官僚がいかに横暴であつても、私はたたきつぶすことができると思う。農林省政府委員の方や各部課長の方々は、一生懸命つておられますけれども、最後に大蔵省に参りますと、ずたずたに切られてしまう、これを私は残念に思うのであります。二十八年度予算が今衆議院を通過されようとしております。ただちに二十九年度予算編成に入るのでありますが、もうその準備をされておると思うのであります。そういうきわめて重要な段階にあつて、今日の農林行政のうち食糧問題一つ取上げても、急速に解決しなければならぬ実態を考えるときに――保利農林大臣はいわゆる吉田総理の側近であるといわれておる、それは必ずしも悪いことじやないと思う。そのいいところを十分に生かして、今度こそは大蔵大臣や大蔵省の関係者を納得せしめて、多年の念願である農林予算が思い切つて獲得されるような方向に御努力願いたいと思うのであります。われわれもまことに微力でありますけれども、驥尾に付してその協力をしたいと思います。これに対しまして農林大臣の所信のほどを承りまして、私の質問を終りたいと思います。
  74. 保利茂

    保利国務大臣 御趣意につきましては、十分私も努力をいたして参りたいと思います。
  75. 葉梨新五郎

    葉梨主査 午前の会議はこの程度にいたし、午後は一時半から再開をいたしたいと思います。  この際念のため申し上げますが、午後の質疑河野一郎君、和田博雄君の順序でいたしますから、どうぞそのお含みで御出席を願います。  なおこの際農林当局に一言いたしておきますが、本日の会議は午前十時よりということでありまして、その通り委員の諸君の御着席がありました。しかるに農林当局が三十分以上も遅刻をいたしましたがために、本日の審議は非常に遅延を見ておるような次第であります。どうか午後は一時半かつきりに大臣以下御出席あるよう御希望申し上げます。  暫時休憩いたします。     午後一時五分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  76. 葉梨新五郎

    葉梨主査 休憩前に引続き会議を開きます。河野一郎君。
  77. 河野一郎

    河野(一)委員 私はこの機会に簡単に農業団体の問題について一点お尋ねいたしたいと思います。  簡単に申し上げたいと思いますが、わが国の農業団体は戦争中におきまして、政府の非常に強力なる要請のもとに団体統合をいたしましたことは御承知の通りであります。従いまして当時各農業団体を全部一丸にいたしまして、これを官民一体の形式において農村の指導をし、かつまた農業政策の各種の滲透に寄与せしめられたことは御承知の通りであります。ところがこれらの農業団体はいずれも非常に深い、長い歴史を持つておつたのでありますが、わが国空前の戦時体制確立ということにおいて一体となつたのでございます。ところが遺憾なことには敗戦後これらの統合いたしましたる農業団体が、すべてこれを解消いたしまして、新たに終戦後の、ことに占領下の農業施策振興に合致するような、また一、二、たとえば畜産団体のごとくに占領軍の非常な干渉のもとに畜産の民間の振興団体の設立について、非常な圧迫があつたというようなことのために、今日畜産団体の関係で申しますると、たとえば各県ごとに任意畜産団体が三十数個できております。これは各県ともいずれもそういう事情になつておるのであります。これは現実の必要がこれらの団体をつくらせたのでありまして、そのためにせつかく農林当局におかれまして、食糧政策遂行の一環として畜産政策を非常に重要にお取上げになつておりますけれども、     〔葉梨主査退席、原(健)主査代理着席〕 これが思うように滲透しない、この政策が十分に効果を上げ得ないということは、戦前にありました畜産団体が、いずれも非常にこまかく分派いたしまして、そうして個々の、たとえば鶏であるとか、豚であるとか、牛であるというようなものにわかれる。これらがまた生産と、生産品の販売というようなことにわかれる。その他またそれらの必需資材の面においてわかれるというようなことで、今申し上げたように私の関係しておりまする神奈川県では、三十七団体があるわけであります。従つて中央におきましても、これらの連合会がつくられておりまする関係から、非常にこれが乱雑になつております。しかしこれは基礎になるべき法律がありませんので、いずれも社団法人でありますとか、任意団体であるとかいうような形式になつておる。一応政府の施策から申しますと、これは協同組合法によつてやるべきものだとというふうに、現在の法律の建前はなつておりますけれども、これは本質的に考え方が違うと私は思う。ただ単に協同組合によつて経済行為をなすというような観念に、今日わが国の農村はなつておりますけれども、経済行為をなすだけが組合の必要性はないのでございまして、たとえば生産を奨励する場合においても組合が必要だ、一人の技術者を協同組合で雇つておこうというような場合にも必要であるというような関係から、たとえば無畜農家の解消という面から、農林省が幾ら畜産の奨励をしようといたしましても、資金の貸付をいたそうといたしましても、今日の実情をお調べになればおわかりの通りに、各県はそれぞれの郡市の出張所に割当をされる。出張所は協同組合に割当をする。そうすると、有力な乙協同組合に割当れば、そこには畜産の必要性がない。地方の要望がないというようなことで、せつかくこつちが貸し付けようと思うところは、協同組合が非常に不健全で、そこではどうも心配で金を貸せられない、地元でも借りようとしないというようなことで、畜産の指導、奨励と、畜産の地方の要求と政府の施策とが全然マツチしておらぬ、これはひとり畜産だけではないのでございまして、養蚕においてもそういうことが言われると思うのであります。これはただいま申し上げますように、戦争中に団体統合をやつた、その統合した団体をただこわしてしまつて、それを協同組合だけで行けるんだという戦争中の施策が、わが国の農村事情とマツチしてないところに深い原因があると私は考えるのであります。ところが今回の農業団体の再編成におきましては、こういう点が全然考えられておりませんで、ただ単に現存いたしております協同組合と、それから二方農業委員会、この一つのものについて考えているというだけでございまして、これではこれからの農村振興上、農村施策遂行上必ずしも完全に目的が達成できないと思うのであります。われわれ民間におきましても、何とかして畜産紹介法なり、養蚕組合法なりを早くつくらなければいかぬということで、よりより協議いたしているわけでありますが、何分政府の力がこういう点について十分に意を用いておられぬようであります。そうしてそういうものが出て行ごうとすれば、現存しております協同組合法との関係で、非常にめんどうになつて来るということで、この点を政府で明確に割切つてもらいませんと、うまく行かない。従つて私ども全国の畜産団体、養蚕団体は、今回の協同組合並びに農業委員会を左盤にした農業団体の再編成には反対なのであります。その畜産関係や養蚕関係や、農業団体統合の際に特殊農業団体として現存しておつたものを政府はどう考えるか、これについてどう施策するつもりであるということを明確にこの際農林大臣から御言明がありますれば、われわれの方は協同組合が健全なものに改組されることについても異存がありませんし、農業委員会がどういうことになろうとしても、それは別の議論だということになりますが、この二つをお考えになるだけで、これで農業団体が再編成されるんだというようなことであるならば、われわれ畜産、養蚕関係その他の特殊農業団体に関係いたしております者にとりましては、これは非常にたいへんなことだということで、全国あげて反対をしているわけでございます。でございますから、この機会に農林大臣からただいま私が申し上げた問題について、明瞭に農林当局の意のあるところか御言明願いたいと思うわけでございますが、御所見いかがでございますか。
  78. 保利茂

    保利国務大臣 農業団体、特に畜産組合の戦時中の活動に、占領軍方面から強い誤解を持たれて、そのためにお話通りいろいろ畜産団体に対する政府の処置か、きわめて割切れざる形で今日まで来ておりますが、政府の目ざしておりますところは、できるだけ早く国民総合食糧の自給体制を確保して参りたい。そのために食糧増産の主要な一つの部分として畜産振興の施策を推進して参るという方針をとつておりますことは御承知の通りであるわけであります。従いまして実際の実情が、お話のようにおそらくなつていると思います。今後無畜農家の解消、あるいは農業生産力を高めて参ります上に、畜産の振興を徹底して参りますためには、お話の畜産団体による施策の浸透、あるいま自主的な力の盛り上りということが、やはり必要であるように考えます。御趣意に沿うて、民間側等におきましても、すでにお話のように相当の研究も進んでおるようでございますから、政府といたしましても、民間側の御意見もよく伺いまして、その趣意に沿うて、できるだけ早く解決をいたすように努力をいたしたい、かように考えます。
  79. 河野一郎

    河野(一)委員 たいへんけつこうな御所見でございまして、すでに前議会におきまして、われわれとも民間側におきましては、一つの畜産団体法を創案したしまして、でき上つておるわけであります。これらにつきまして、農林当局におかれましても十分な御研究をなさいまして、そして大臣から特にそれぞれの関係係りに御指示願いまして、積極的に推進されるようにお願いいたしたいと思うのであります。  次に々はお願いいたしたいのは、昨年の夏、時の農林大臣廣川君は、われわれ民間人に委嘱いたしまして競馬審議会なるものを設置いたしました。そして暑中にもかかわらず、連日会議をもちまして、民間側の一丸をとりまとめて、政府はすでに当時、すみやかに競馬を民営にしたいということのために、審議会を持つたのであります。そして民間側の意見はすでに十分聞いたのであります。ところがその後選挙であるとか、政変であるとかということのために、審議会も結論を得ず、そのままになつております。政府は大体の政府の方針をその審議会に指示されれば、審議会の方はすでに完全に意見は一致しておりまして、結論は出る一歩前と申しますか、半歩前になつておるのでありまして、これは官民一致して、すみやかに競馬法を改正して、民営に移すべきだということに、昨年の八月すでに決定しておるのであります。しかもこれは昨年の八月の当時の議会におきましては、今の与党である自由党の諸君が競馬法を議会に提案するということになりましたので、政府みずからもこれに策応して、今の処置に出られたのであります。ところがその後全然この問題がどこかへ隠してしまつて、その後政府はまつたく忘れた形になつております。ところが民間側におきましては、一体競馬を民営にいつやるのだ、やるのかやらないのかということで、非常に不安定な状態になりまして、従つて全然将来の員あてを失つております。当然施策さるべきものも施策をされなければ、これが民営になるかならないかということの方針が決定して政府はどうされるのかということがわかりませんので、非常に混迷いたしておりますから、大臣はこの際ひとつすみやかに一切の準備を、官民ともに意見の一致を見て、そうしてこの議会には当然提出さるべきものと確信いたしておるのであります。ところがその後だんだん会期も半ば過ぎましたが、全然そういうような様子をお見受けもいたしませんので、この機会にぜひこの法案出して、そうして出したところがなかなか急にはできるものではございませんから、おそらくこの予算を組む当時には、競馬に関する予算も半年分くらいにしておこうという心組みさえあつたように私は聞いております。すでに今年度から実施する予定で、去年の八月、その審議会は設けられたのであります。というようなことでございますから、聞けば今度の予算にも一年ぶりの予算をとつてあるそうでありますが、しかしこれは早いほどいいのであつて政府が競馬を自分でやつているというようなばかなことは、鉄道や電信、電話まで民営に移した今日、何の必要があつて、競馬を政府がやつているか。これはまつたくどの点から申しましても、戦後の混乱した当時、政府がやむを得ずやつたことであつて、こういうように政府がみずから企画をし、もしくはセクションを持つておるということは、非常な間違いであると思うのでありますから、この際大臣勇断を持つて、どこにも何らの支障もありません。官民一致した意見、結論が出ておるのでありますから、ただ法案をお出しになれば、それでおそらく私は大体まとまる、こう考えておるのでありまして、ただ政府がおやりになる決心をされない、その手続を運ばれないということだけが残されておる問題であると考えますから、保利農林大臣、新任早々のことでありますが、ひとつすみやかに下僚を督励されまして、この議会にぜひこの法案と、毎日実は気がかりになつておるのですけれども、まだ実際のところ今日までの経過を十分聞き得ていないわけございます。国が競馬を持つということはどうであるかということについは、大体私は御所論と同じ考えを持つております。至急事務当局を督励いたしまして、私も勉強いたしまして、結論をつけたいと考えます。
  80. 河野一郎

    河野(一)委員 今申し上げまして通り、結論は原局の方では出ておる。これは当時の審議会の委員との間にはある程度の了解済みで、そして民間各方面の委員は全部大体政府の考えておるところでよかろうという結論になつておりますから、おそらく原局の方をお調べになれば、原局の方では原案があるはずでありますから、その案をそのまま推し進めになつて、一同どこにも民間側には異論はないのでございますから、どうかお忙しい際とは考えますが、大臣もひとつ至急勉強されまして、ぜひこの議会に御提案あらんことを切望してやみません。私の質問はこれだけであります。
  81. 原健三郎

    ○原(健)主査代理 次は和田博雄君。
  82. 和田博雄

    ○和田委員 私は簡単に一問ただお聞きしたいと思います。小平君が触れましたので、実は私、その問題は繰返したくないと思つておつたのでありますが、どうも大臣の答弁がはつきりしませんので、一応私も聞いておきたいと思いますが、二重米価の問題です。一体二重米価については、農林大臣はほんとうにどう考えておるのか、この点をやはり大臣としてはつきり御答弁をしていただきたいと思うのであります。御承知のように、今自由党と改進党との間で二重米価の問題をどうするかを相談中であります。これは政党間の相談。しかし農林行政の最高の責任者であられる農林大臣としては、この問題については、自分の所管はどうであるかということは、やはりはつきり持つてつていただいて、そうしてその所信に従つて農林大臣として十分、この予算を認めるか認めないかについては、意見をはつきり述べるべきじやないかと私は思うのでありますが、けさの御意見では、どうもあいまい模糊としてはつきりしない。農林大臣としての所信は、やはりはつきりしていただきたいと思います。
  83. 保利茂

    保利国務大臣 政府としましては、この出来秋の状況にも、まだ全然見通しの立たない今日でございますから、一応前年度とりました方式をそのまま大体とつて参りたい。特にそう申しますゆえんは、必要所要量をどうしても確保しなければならない。政府で配給その他必要な量を確保して参りまするためには、早場供出でありますとか、あるいは超過供出とか、この一連の操作を持たなければ非常に困難ではないか、一つの制度的に打ち立てられたものを、またひつくり返すということになりますと、そこに混乱も生じて参るかと思いますし、私としましては、生産者米価は大体昨年決定しました方式によつて決定をし、そうして供出を確保して参りますもろもろの方策については、予算上示しておりますような方向へ持つて参るという考えで、今日依然として同じ考えを持つておるわけであります。
  84. 和田博雄

    ○和田委員 二重米価の制度をとるかどうかということは、今年の食糧政策をやつていくだけの問題であると同時に、やはり吉田内閣としては、食糧政策としての根本的な態度といいますか、政策の根本に触れている問題だと思うのであります。農林大臣の今の御答弁によりますと、今年は今まできまつた通りでやつて行きたい、こういうように理解していいのですか。それとも、そうではなくして、ここで今自由党がやつて来た、吉田内閣がとつて来た米の自由販売、食糧についてはとにかく自由競争を主にした政策をとつて行くのであつて、今のような供出制度をとるということ、統制をとつて行くことはこれはやりたくないのだ、いつかはやめたいのだという思想で貫かれてご答弁になつたのか、そこのところをはつきりもう一ペンお聞きしたいのと、それからこの問題はおそらく自由党としては、二重米価制度の考え方をあいまいにして置くわけに行かないと思う。われわれの言つているような二重米価の制度をとるということは、少くとも食糧については、その根本の考え方を自由市場をもとにした、自由競争には置くことはできないのだということに、結論的にはなると思うのでありまして、いわば自由党が、吉田内閣が従来とつて来た大きな政策の転換にならざるを得ない。いわば自由主義経済をもとにして今までやつて来た自由党の政策はここでかわつてしまう。少くともその大きな柱の一本は取去つてしまわなければならないように私どもは思うのでありますが、農林大臣はもとより自由党の党員であるし、ことに一番重要なポジションにあられる人でありますから、その点については、くどいようですが、暫定の措置として、ただ改進党と間の予算の話合いという関係でそのことを考えておられるのか。そうではなくて、もつと根本に掘り下げた考え方の上に立つて、今まで通りの政策を貫いて行く、こういうふうにお考えになつておるのか、そこを一度明確に御答弁願いたいと思います。
  85. 保利茂

    保利国務大臣 基本的な政府の考え方は、やはり食糧増産を効率的に上げて参ります上からいたしましても、先ほどもずいぶん問題になりましたやみ問題等が、今日非常に大きな問題になりますように、この流通の面から見ましたいろいろな矛盾撞着の面をなくして参ります上から行きまして、やはりでき得べくんば、なるべく早く統制撤廃の方向に持つて行くということが、問題の根本解決に役立つのだ、そういう考え方の基本的な立場と施策をとつておるわけでございます。もとより内閣は自由党の上に立つておるわけでございますから、自由党の政策が転換をするということであれば、これは別でございますけれども、私どもは今日までこの方向が正しい方向である、従つてここでいわゆる二重米価を採用するという考えは私どもは持ちません。たたそういう方向をとりながらも、現実の食糧情勢から行きますと、もう少し何らかの手段をもつて政府に操作米等の用意が確保できるならば、すみやかに統制を撤廃するというのも、一つの道であると私は思うのでありますけれども、今日の内外食糧の実際の事情からいたしますれば、統制撤廃を今日断行し得るとは考えません。従つて今日の管理方式を続ける、しかも所要の必要量を確保して参ります上から行けば、秋の新米価決定にあたつて、さようなもろもろのことを検討して、そうして新米価の決定をしなければならない。私どもは基本的にはやはり今申しましたような考えのもとに立つておるわけであります。
  86. 和田博雄

    ○和田委員 端的に言えば、二重米価制度は反対である、こういうことですね。だから、二重米価の制度はとらない。……
  87. 保利茂

    保利国務大臣 これは今日問題があるわけでございますから、私の方としては、二重米価制度は採用しない方がよろしいと考えております。
  88. 和田博雄

    ○和田委員 そうしますと、農林大臣がそういうお考えであるならば、今改進党との間で相談している二重米価の制度については、これはやはりはつきり反対の意思を表明されておるのですか、ただ党との話合いにまかしておる、こういうことでありますか。
  89. 保利茂

    保利国務大臣 今改進党とどういう話がせられておりますか、私まだあずかつておりませんから、何も意見を開陳する機会はありません。
  90. 和田博雄

    ○和田委員 しかしそれは農林大臣とされてはどうかと私は思うのでありまして、二重米価の制度を政府がとるかとらぬかということは、やはり将来の農民にとりましても、また国民の一般消費者にとつても、非常に大きなことだと私は思うのであります。今農村でも、まあ農民の半分までとは言わぬけれども、三分の一くらいのものは、おそらく消費者だろうと思うのです。米を買わなければやはりやつて行けない。ことに現在では米を買わなければ一年中やつて行けない農民は、もつとたくさんふえていると思うのです。なるほど農民という名がつく以上は、米を生産しておりますけれども、その生産者がほんとうに市場に出す量、いわゆる今で言えば供出量はごくわずかな人が大部分を占めておつて、少数の人が、おそらく供出量もかなりな数量出しておるというのが現在だろうと思うのです。それで農民はやはり生産者と消費者の二重の性格を持つた農民が多いと思うのですが、おそらく農林当局はそのお調べがあると思います。私は古い数字しか知りませんから数字は述べませんが、そうして見ると、どうも日本の食糧は今いろいろ増産をやつても約二千万石は足りない。米以外のいろいろなものを食べて、そうして米を外国から輸入して、全体の食糧の需給がとれているわけであります。そうすると、生産者の利益だけを守ろうとして、あなたのおつしやるような自由経済にかりにしたとします。ある人は価格が上るから増産になると言いますけれども、私は必ずしもそうはならぬと思う。かりに価格が非常に上れば上るで、今度は農民自身が困つて来るし、また一般の消費者は困るのであります。そうして来ると、どうしても食糧政策としては、何かそこに国が手を加えて、生産者と同時に消費者との間の利益を調整して行く、こういうことが必要になつて来るのであつて、やはり米価について二重米価制度というものを、その一つの政策としてとつて行く、こういうことがどうしても必要になつて来るのだろうと思うのです。日本の食糧事情が急激にかわらない限りは、これは当分私は根本的に続けて行かなければならぬ態度だろうと思うし、かりにこういう経済の底の非常に浅くなつた日本の経済で――昔のような地主制度はなくなりましたが、なくなつたといつても、多少ありますけれども、ほとんど自作が多くなりました。けれども米を自由販売ということにすれば、おそらく生産者はかつて生産者のように非常に因る。値段の安いときに売つて、高いときに買わなければならない者が多くなつて、農民自体が因つて来ると思うのであります。ちようど今の食糧管理制度に来るまでの歴史を、もう一ぺん政府は初めからおだまきを繰返さなければならなくなつて来るように、私ともには思えるのであります。そうなつて来ますと、やつぱり日本の食糧事情は常に不安にさらされる。だからあなたは、一方においては、米以外のものについては、農産物価格安定法というものをつくつて、農民の生活を安定させようとしている。米の場合は、私はやはり二重価格制度がその役割を果すのであろうと思うのであります。自由党は今まで米の自由販売をやるやると言つて、声明はする、農林大臣は首をちよん切られる、農民は混乱に陥れられるという調子で来たわけでありますが、こういうことになつて、今までの政策をずつと続けて行かれるという以上は、私はやはり農林大臣とせられては、今両党の間に話合いになつておる二重価格制度に対しては、やはり従来通り自由販売にして行くのがいいのだということを発言をされて、どつちに向くのかわからぬような状態に置かないように、断固とした意思表示をされるのが、当然農林大臣としての職責だと思うのであります。もしも二重米価制度を党がのまれた場合には、農林大臣は、自由販売がいいのだ、これが自分のとるべき策だと考えられている以上は、何らかそこに、やはりはつきりとしたあなたとしての御処置をとられるわけですか。どうなんでしよう。
  91. 保利茂

    保利国務大臣 今、国会の方で、予算全体の問題について、いろいろ協議が行われておるということは聞いておりますけれども、しかし私の今日まで承知しておりますところでは、自由党が二重米価論に賛成をしておるということは、私は聞いておらないわけでございます。しかしながら、もとよりこれは和田さんに申し上げるまでもないことですけれども、実際の多数国民の意思を集めております国会の意思がきまりますれば、これはもうその国会の意思というものには従わざるを得ないわけでごさいましようけれども、私どもの方から進んで、従来のこの主張を変更する考えは毛頭ないわけであります。その場合はどうするかということでございますけれども、その場合はその場合でひとつ考えるよりしようがなかろうと思います。
  92. 和田博雄

    ○和田委員 二重米価制度は、いろいろ話をしても、根本の思想の違いがありますから、これ以上農林大臣を追究しても始まりませんので私はやめますが、この資料についてちよつてお尋ねしたいのです。  輸入している外米の輸入価格の表が出ておりますが、その品質です。これは食糧庁長官が御存じならお答えいただきたいと思うのですが、たとえば準内地米とか、あるいは普通外米で、今アメリカ、ビルマ、中南米その他の国から来ておりますが、今どの程度のものが来ておるか、それをちよつと教えていただきたい。
  93. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。米につきましては、準内地米はここに掲けてありまするように円粒種でありまして、いわゆる長い米が普通外米かようになつております。従いまして台湾米でございますとか、アメリカの加州米でございますとかいうものは、内地米と同様の取扱いをいたしております。普通の外米の場合におきましては、御承知のように、南方米といたしまして、長粒種が非常に多いわけでありまして、この中にはある部分御承知のように、ブロークンの入つたものが入つて来ております。
  94. 和田博雄

    ○和田委員 内地米にすると、大体等級でいうと三等米程度のものが、準内地米で来ているわけですか。
  95. 前谷重夫

    前谷政府委員 所によつて多少の違いがありますが、三、四等というのを標準にいたしております。
  96. 和田博雄

    ○和田委員 私はこういう数字を出されるときは、やはり等級を明示された方が、誤解がなくていいと思います。たとえば外国からこういう米が入つて来ておる、一石二百三十五トンに相当すると言つても、等級がどうであるかということが入らぬと、比較の対象にならぬ。たとえばタイから百九十五ドルで入つている。これは非常に安いようですけれども、あまりいい米でなければ安いわけではないのでありますから、いろいろ審議するときに、外米を非常に高く買つておるということで、国内の米との比較がされるわけですが、これらの中にはつきり示しておいた方が、物事が明瞭になるだろうと思つてお聞きしたわけであります。  それから、もう一つ農林大臣にお聞きしたいのは、例の農産物価格安定法の問題ですが、農産物価格安定法をおつくりになつて、そうして米以外の農産物価格安定をやろうというのですが、大体その根本の考え方というものは、日本の農業をいろいろ発展させて行く上において、農林大臣としてお考えになつておる、農業のいわば全体の構図というものですか、日本の農業といいましても非常に幅が広くて、いろいろな作物が各地帯にできるわけですが、農林大臣として、農産物価格安定法をつくられる以上は、その下に何か日本の農業の行く先といいますか、どういうように持つて行こうとするかというごと農民経済の点からも、あるいは国際的な農産物の相互の需給関係から見ても、何かお考えになつている点かあるかもしれぬと思うのでありまして、われわれも日本の農業を見る場合に、いろいろな観点から見られるのであつて、ただ農業と一律に言つてみても、かえつて抽象的なものであつて、その実態をなかなか捕捉できないわけでありまして、農産物価格安定法というものは、ただ外国の、たとえばアメリカのやつているような価格維持政策のまねをしてつくられたものでは、おそらくないと思うので歩つて、こういう法律をつくられる以上は、日本の農業はこういう形で初めて、農民も増産を営むし、農家もそれによつて十分に成り立つて来るし、あるいは国全体の上から見て、非常に役立つのであるという深いお考えもあつたかとも思うのでありまして、そういう点について農林大臣は、まだ農林大臣になられて間もなくでありますが、長いこと農業の仕事をやつておられた方でありますから、日本の農業を大きく導いて行くその方向といつたようなもの、そういうものについて、やはり農林大臣として一つの高い理想を持たれていると思うのでありましてそういう点をはつききりしていただいたらけつこうだと思うのであります。予算総会で聞きたかつたのでありますが、時間を非常に制約されたので、この際農林大臣は天下の農民に対して、そういうことをはつきりされたらいいと思います。
  97. 保利茂

    保利国務大臣 私は予算総会でも申し上げたつもりでおりますが、今国として、国民として農民に対し最も要請しておるところは、米麦を中心としての食糧増産であります。ところがだんだん戦争のあと、各国の経済も回復して農業生産力も上昇して来る、そういう場合に内地のそういう増産せられた主要農産物が、圧迫を受けて来るような傾向にあるじやないかという、生産農村の将来に対する不安は、私はいなむべからざるところだと思う。従つて私どもとしては、今日の国家的な課題は米麦増産に主力を置いて、米麦増産による農家経済の向上と安定ということをねらつて行く、そこが中心でなければならぬことは申すまでもないわけであります。しかしお話のように農業の面は広く、従つて適地適作という上から行きまして必ずしもその米麦によらず、北海道では何であるとか、あるいは北海道以外のところでは菜種等というような主要な作物が、農家経済のある部分を占めておるわけでありますから、従つて非常に広汎な面におい出て農家経済部分を占めている主要農産物については、できるだけ価格の変動を避けて、そこに安定性を持つて行くということが必要である。私はしろうとでございますから、日本の農業を根本から解剖してどうというような、大それた考えは私にはありませんけれども、増産せられて、その増産によつて、安定向上を求めておるその農家の意欲と相応じた施策をとつて行くことが必要である。そういうことも考えておるわけでございます。
  98. 和田博雄

    ○和田委員 私は農業の立場というものは、今では非常にむずかしい立場だろうと思うのであります。ただ食糧だけを増産して行つて農民がよくなつて来るわけでもありませんし、国全体としてそれでよくなつて行くわけでもないのであります。もとより食糧は第一でありますが、やはり農産物は国際的な農産物もあれば、日本で独占的な地位を持つている農産物もあるし、あるいは外国の大きな影響を受けて、内地の農業生産というものはごくわずかな重さしか持たないようなものもあるわけでありますし、いろいろなものを日本の農民がつくつているわけでありますから、個々の農民としては実際その知識の上からいつて、また世界経済の見通しというようなことについても、なかなか判断を下すことが困難と思います。政府がなまじつか大きな見通しを持たずに増産をやれば、増産したとたんに値段がうんと下つてしまう。そして困るのは農民だけであるということになるのであります。そういう安定法もなしに増産をやつてつて、物がたくさんできて値段が下つて農民は困つて来る。それのあとを追つて農産物価格安定法をつくる。かりに価格安定法をつくつてもやはり相互の、需要面において供給面においても、世界的な影響を受けるのについては非常な変動を予想しなければならぬのであります。それと同時に国内における農業政策の相互の間に矛盾があれば、たとえば菜種に一例をとつてみれば、増産し過ぎちやつて急にこれを買わなければならぬ。ところが日本の食糧事情はそんなにたくさんの菜種はいらない。こんな情勢になつて来るのでありまして、その意味で農産物価格安定法をおつくりになる場合には、価格安定法の対象になる農産物については十分事情の分析といいますか、需要なり供給なりの方面の見通しといいますか、そういつたようなものを、持たれることと、そうして農林政策相互の間に、いやしくも矛盾のないようなことに農業政策のやり方を持つて行かないと、法律ができたらかえつて桎梏になつてしまう結果になることを私は憂えるのであります。そういう点について、農林大臣としては十分な御考慮をもちろんされている思いとますので、その点についてのお考えをお聞きしたいと思うのであります。
  99. 保利茂

    保利国務大臣 これはまつたく私は同感でございまして、従つて一面において今日は、一部の作物についてはあるいはお話のようなことがあろうかと思いますけれども、まだ今日の状況においては全体的に不安はないわけです。しかしさらばとてそれをなおざりにし、たとえば安定法作物をつくるにあたりまして、やはり内外の需要の面あるいは国際価格等の際、国際需要の面等を十分検討いたして見通しをつけ、できるだけ、ただいまお話のようにたとえば菜種が去年はよかつたからといつて、ざあつと菜種に流れて行かないように、生産の指導と申しますか、作付の指導と申しますか、これはどうしても必要であろう、その点はまつたくそういうふうに、御意見のように考えております。
  100. 和田博雄

    ○和田委員 私は作付統制をしようとは言わないのです。農産物の作付統制なんということは困難であつて、戦争中はやむを得ないからやつたようなことなのであつて、それは農民が自由な生産をすることがもとでありますか、ことに日本のような小さな農家がたくさんあるところでは、それはもうすぐオーバープロダクションになるのであります。いい例は私なんかの郷里でいえば藺草なんかがそうです。戦後は戦争前に比べて十分の一に減つちやつたものがどんどんふえている。初めはいいのですけれども、すぐこれは限界が来てしまつて、今度はみんなかこれは結局損だということになるのでありまして、農産物価格安定法の中に上げられております個々の品物については、そういうような点が私はあつたように思うのであります。結局私は日本の農業の経営の指導なり、政府が何を考えているかというような事柄について、十分な農民の間への普及徹底、あるいはそういつたようなことはいわゆる改良普及事業の面に入るかもしれません、その事柄が欠けるというと、これは結果が常に農民が困つた状態に追い込まれて来るのです。政府があとからあとから、どろぼうが人づてから戸締りをするようなことを、毎年繰返して行くようなになることを憂えて、その点をお聞きしてみたのであります。まだこまかい点について安定法について聞きたいことがありますが略しまして、農地局長に聞きたいのですが、今度の食料増産でいろいろな耕地の拡張、品種改良その他の方法か考えられておりますが、大体この各方法によつてどのくらいの反当の増収になるのか、少しこまかい話だけれども、わかつていたら教えてもらしたい。たとえば土地改良によつて幾ら、客土によつて幾ら、品種改良によつて幾らというような、大体の予定量がわかりましたら……。
  101. 平川守

    ○平川政府委員 これはもとより具体的な場所によりまして状況が違うわけでありまして、ことに土地改良等の場合には、まことに千差万別でございますが、およそ平均的に見ますと、灌漑排水の改良事業におきましては、用水の補給の場合に二斗五升程度の増収になると見ております。排水が三斗ぐらい、それから暗渠排水等も反当三斗ぐらい、その他の客土等の土地改良等も大体そういう見当でございます。それから開墾の方が大体反当一石というものを計算上平均的に見ております。もとよりこれは開墾当初から数年かかつてだんだんよくなつて参りまして、完全に適地化いたしました場合には、もう少し行くと思いますけれども、平均その辺に押えております。干拓等でありますと、これは大体三石五斗くらい、大体西の方が多いわけでございますから、そのくらい見ております。二十八年度の全体の増産量は、大体予算において百万石ちよつと切れる程度……。
  102. 和田博雄

    ○和田委員 その点はようございます。その点はかわりました。それからこの点をぼくは農林大臣において十分考えてもらいたいと思うのは、こういう増産のための経費あるいは公共事業費の中に入つておる経費に、どういいますか、その目的に使われずに漏れて出る部分、漏洩の問題が非常にやかましく言われておるわけです。ことに農業方面については、こういう公共土木の仕事というものが、十分その使用目的のために使われずに、二割なり三割というものがほかの目的に使われて、どこへ行つたかわからぬように漏れてしまう、こういうことをやかましく最近いわれるわけです。これは公共事業費全体に通ずる問題でありますけれども、食糧増産のような、国民の生活に非常に重要な問題について、そういうことが言われることは、われわれとしては非常に残念なように思うのであります。それで非常にそういう部分が多いから、当分こういう食糧増産についての経費なんというものは削つたらいいだろうということを、公聴会なんかでも、土屋君なんかはそれを盛んに言われた。しかしながら私はこの考え方には反対であつて、漏洩の点については十分に監査をすべきではあるが、こういつた食糧増産のための経費というものは、この計画自身が満足に行われるたけの経費を組むべきだという主張を私は持つているわけでありますが、その点について、農林省側として、やはり公共事業費のその経済的な効果の問題については十分調査をされて、役所としてそれに対してそういう非難の起らないような手だけは、私はやはり打たれる必要があると思うのです。その点が農林省の従来の行政の上からいえば、やはりとかくのいろいろ批評が出たように、こういつた農林関係の公共事業費の経済的な効果という点については、非常にみんなが疑問に思つていると思うのであります。たとえば今までたくさんの金を費したけれども、わずかな食糧増産しかなかつたじやないかということをよく言われるのでありますが、ぼくはそういう点は、農林行政を担当している人としては、十分それに反発し得るだけの資料を持たれてやつておかれることが、今後農林行政をやつて行く上についての非常に力強い手段にもなると思うのでありまして、何かそういう点について、農林省の方で十分な調査をし、かつできるだけこの公共事業費の漏洩を少くして行くような手段でもとつておられるかどうか、それをひとつお開きしたいと思います。これは農林大臣でなくてけつこうです。
  103. 平川守

    ○平川政府委員 お話の点、各方面で言われる問題でありまして、私どもも特に最近非常に注意をいたしまして、抽出的に少しいろいろ検査のようなことをやつております。それから特に会計検査等で非常にまずいものが出て参りましたのを見ますると、災害に対する補助の関係が非常に多いようでございます。これは非常に突発的に出て参りまして、しかも非常に大きな仕事が一ぺんに起つて参りまして、これに対して人員がそう一ぺんに整わないという関係で、一つ一つの現場を十分に査定をしたり、あるいは検査をしたりするひまがありませんで、大体県の申しまするところを抽出的に調べて査定をするといつたようなことを行つております関係ではないかと思うのでありまして、この点についても特にただいまの問題の非常に大きな部分を占めておると思いまするので、特に厳重に各県にも申渡しをいたし、また抽出的な検査等を厳重にやつて参りたいと、かように考えております。  なお増産の効果の問題につきまして、非常にあいまいであるということが、一つの非難の眼目のように思いますので、計画の際には、少くとも、新しい事業をとりますときには、この事業はどのくらいの金がかかつて、どのくらいの増産量があるかということを十分に計画に乗せまして、審査いたしますけれども、これがはたしてそれたけの効果をあげておるかということの調べを得ませんと――この点につきましては特に力を入れまして、本年度予算におきましては、その調査をするための費用を特に計上いたしておりまして、これはなかなかめんどうでありますけれども、努力して、やはり仕事の結果どれだけの増産なつたかということを、資料的に全部調べておく必要があるということを考えて、その点にも着手しております。
  104. 和田博雄

    ○和田委員 それは私はぜひお調べになつておかれた方がいいし、調べていただきたいと思うのであります。経済効果を的確に把握することは、方法の上からいつてもなかなか難点があることは私もよくわかりますが、これはぜひひとつ官庁の方において、やはり公平な立場からやつていただかないと、どうしても農林行政というものは農業政策、ことに農業政策の中で主要な部分を占める直接生産の面については、これはどうしても国が何らかそこに保護的な施設をやらなければ、これは今の個々の農民の資本の蓄積力ではできないのでありまして、個々の農民の資本の蓄積力でできる時代が来ることを私も望みますが、現実はなかなかほど遠いものでありますので、そういう点については、ほんとうに金が中途半端に削られるのでなくて、計画自身が正確であつて、それを十分に効果をあげるだけの資金が行くというように、案自体が将来なつて行くためにも、これはぜひ役所の方で力を注いでやつていただきたい問題であります。  それから今度は、貿易の点でちよつと聞きたいのですが、中国との貿易がやかましくいわれて、漁船であるとか農機具なんかの点についても、いろいろの話合いがあるわけでありますが、そういう点について何か農林省の方で、たとえば農機具なら農機具といつたようなものについて、どういつた程度のものが貿易の面に乗つて来るか、またその見通しはどうであるか、いろいろそういう点について何かお調べになつたことがありますかどうか。これからの農林省の仕事としては、そういう生産面における機械なんかの貿易等についてもよほど調査をされて、具体的に打開して行くだけの手段を、いろいろな機関を通じてやつていただきたいと思うのであります。たとえば東南アジアにおける日本の資源開発についても、またいろいろな農林関係のものがあると思うのであります。水産の貿易面についても、もちろんあると思うのでありますが、そういう点について、こういうものは今後相当貿易の見通しかあるのではないだろうか、たとえば中国なりソ連なりについて、私の手元にもいろいろなものが来ておりますけれども、農林省の方で何か総括的に調査をされたものでもあれば、それを話していただけばいいと思います。
  105. 渡部伍良

    渡部政府委員 貿易関係につきましては、今まで主としてアメリカ対象でありましたが、今後はどうしても東南アジアを主にしてやらなければならぬと思います。今お話がありました農機具等につきましては、これは相当進んで研究しております。すなわち今の丸型の米でなしに長型の米が来ておりますので、これに合して脱穀機あるいは精米機等を――熱心な業者は向うから長型のもみを持つて来てやる。あるいは一番熱心な者は、高知の人ですが、これを栽培をしまして、長年やつておりますので、その成果が相当出て来ております。そのほかの農機具について申しますと、すき、くわというようなのは相当遅れております。これは農半技術者が来るにつれておいおいこちらの方の営農方式を何とかしてやりたいと思つております。たとえば進んでいる国はパキスタン、セイロン、インドネシア等は相当進んでおります。中共関係のは今まであまり連絡しておりませんので、まだはつきりいたしておりません。香港等は近ごろずいぶん来ております。非常に狭い範囲ではありますが、熱心でありますので、あるいはそういう面から中共関係の方にも相当出て行くと思いますが、まだ全然そちらの方のものは詳しい情報はありません。それからそのほかの農産物につきましても、水産物、主として乾物の関係、そういうものが非常に要望されております。これはおいおい出て行くことになると思います。
  106. 和田博雄

    ○和田委員 中国やソ連との貿易ですが、私はこれは外務大臣にもお聞きしたわけであるし、また今後、も少しつつ込んでお聞きしたいと思うのですが、たとえば木造漁船、こういつたものは現は中国では非常にいるわけです。ソ連は今鋼鉄のものはいりますが、木造はいりません。中国の方では非常にいるわけですが、そういつたようなものについては、これは個々の商品の取引という面から、やはり私どもは中国なりソ連なりとの間の貿易関係を打開して行く、ステツプ・バイ・ステツプでやつて行くのが一番いいと思つておるのであります。そういつたような事柄が今現実に相当木造については問題になつておるのでありまして、これは農林大臣もぜひ農林省としてそういう道が開けるように今後御努力願いたいと思うのですが、その点いかがでごさいましようか。
  107. 保利茂

    保利国務大臣 それは貿易全体の問題に関するわけでございまして、いわゆる戦略物資でない面につきましては、これはもう御趣意の通り、できるだけ拡大をして行く方向で努力して行くべきであろう。ただいまお話のようなことにつきましても、そうであつてしかるべきであろうと存じますので、努力いたしたいと思います。
  108. 和田博雄

    ○和田委員 そういう農産物についても取引の品目について、これは農林省としては外務省へ今まで要求なんかをいろいろしているのでございましようか。外務省まかせでやつているのか、それともしよつちゆう農林省の側から外務省の方に、こういう品目は戦略物資ではないからいいのだ、現に日本の業界もこれを欲しているのだ。農民もこれを欲しているのだというので、外務省の方といろいろ御連絡をおとりになつて、そういう促進方をやつていらつしやるのでしようか、いかがでしようか。
  109. 渡部伍良

    渡部政府委員 もちりん農林省としてはそういう輸出の拡大については努力しております。ただ中共関係のものになると、これは要するに向うの情報がよくわかりませんから、業界からの要望を取次ぐという程度でありまして、積極的にあそこでどういうものがいるそうだから、こうやれというふうには働きかけておりません。むしろ業界の方が先に情報をとつて来ますから、こういうのをやつたらいいのではないかということでやつております。
  110. 和田博雄

    ○和田委員 これは外務大臣がおいでになると非常にいいのですが、私はやつぱり貿易を打開して行くのには、外務省だけにまかせてはだめだと思うのです。やはり経済関係の省が、しよつちゆう現実的な要求の面から刺激をして行くのでなければ、外務省の役人というのは結局外交の交渉をただやるだけであつて、それほど切実な業者や農民の声が私は反映しないと思う、そういう意味でどうか農林省の方で今後は一層そういう点について、今までもやつておられたでしようが、御尽力を願いたいと思います。  これで私の質問は終ります。
  111. 原健三郎

    ○原(健)主査代理 小平君に申し上げますが、あとに外務省、通産省の所管に対する質問が九人から十人ありますので、ごく簡単に。
  112. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣から、先ほど河野一郎氏の畜産組合法制定云々の問題に関しまして、きわめて重大な発言がなされましたので、一言お伺いいたしたいと思うのであります。  先ほどの河野一郎氏の御意見は、畜産組合法または畜産農業協同組合法の制定の必要ありと思うが、農林大臣の所見いかんという質問であつたと思うのであります。これに対して農林大臣は、考慮しておくという御答弁であつたのであれば幸いでありますが、その御期待に沿うようただちに進めたい、こういうように御答弁されたかのごとく河野一郎氏はとられて、きわめて満足のようでありましたが、これはきわめて重大なる問題であります。なぜならば、農村に、今日の農業協同組合のほかに、さらにまた畜産組合なり畜産農業協同組合をつくつて、農民の負担を過重ならしむるなんというこの考え方は、二、三年前にもこれは起きておるのでありますが、断じて反対であります。なぜならば、日本農業の実態は、これは牛なら牛、馬なら馬、あるいは小家畜なら小家畜だけを飼育して成り立つ日本農業の実態ではありません。これは有畜混同農業でありまして、農業経営の上においては畜産というものは欠くべからざるものです。そういう意味から、今日農業協同組合において一元的に総合的にやらなければならぬという考え方をとつており、現にそういう意味で中央には畜業専門の全国畜産協同組合連合会というものがあるのでございます。もし農林大臣か畜業組合法または畜産農業協同組合法をつくりたいとお考えになるのであれば、これは今までの吉田内閣、現政府農業協同組合に対する基本的な考え方の変更であると、私は見なければならぬと思うのであります。今河野一郎氏が誘導質問的にうまい演説をされたから、すぐそれに、いや同感でありますと仰せられたのならば、これは重大な問題であります。従いまして、保利農相が真に畜産組合法、畜産農業協同組合法の制定は必要なりということをお考えであるとすれば、これは吉田内閣の農業協同組合に対する考え方に根本的な変革をもたらす。そうであるかないか、これは重大なる問題でありますから、農林大臣並びに、もし必要がありますれば、畜産局長経済局長がおりますから、その点を明確に御答弁をいただきたいと思うのであります。
  113. 保利茂

    保利国務大臣 畜産振興をはかつて参ります上に、結局家審を持つものは、無畜農家の解消という題目が示しておりますように農家であります。従つて農家経済の団体的行為をして行く上からいつて農業協同組合を中心として推進して行かなければならぬことは、私はまつたく同感であります。ただしかしながら、畜産振興という大きな面からいたしまして、今日までの経緯にかんがみて、さらに施策の浸透をはかつて参ります上に、別途組合を持つということがよければ、これはあえて持つことに躊躇しません。協同組合等の方でやるから、そつちの方は無用たというなわ張り的な考えで、この問題を私は考えたくありません。実際の必要から、畜産振興をはかつて行く上からいつて、そうした方がよろしいということであれば、それはあえて躊躇することはなかろう、これはこつちにやらせるからというような、なわ張り的な考えで問題を考えるべきものではなかろう、要は畜産の事業を発展させて行こうという観点から考えて参りたい、こういうふうに考えております。
  114. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 二、三の問題についてお尋ねいたしたいと思います。私のは大体事務的のことか多いので、大臣の御答弁でなくとも、所管の政府委員からお答え願つたらよろしいと思います。昭和二十八年度農林関係予算に、大臣の先刻御説明のありました中で、防疫関係の経費が十二億八千五百万円を計上されておるわけでありますが、これはちよつと考えてみて、非常に少いのじやないかと思うのです。ともかくもこの内容について、簡単に政府委員から御説明を願いたいと思います。
  115. 増田盛

    ○増田政府委員 植物防疫の経典の点でございますが、実は前年度より増補せられておりますことは、大臣の御説明の場合にも申し上げたのでございます。そこで項目に申し上げますが、指定病虫の駆除、予防費、これは二化螟虫の関係におきまして、前年度より大きくふえております。但し全体としてはふえておるのでありますが、病害虫の異常発生対策、この経費が前年度一億ありましたものが、実はこれは一般災害対策予備費より出し得るという条件のもとに、五千万円に減らしております。そういう点がありましたので、全体として大幅にはふえておりませんけれども、差引して依然として、ホリドール等の関係で相当ふえたことになつております。
  116. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 一つ一つお尋ねをして一つ一つお答えを願うと、はつきりしてよろしいけれども、お急ぎのようでありますから、まず農薬のことについてお尋ねいたします。  それはホリドールとか――これはアメリカから昨年もずいぶん入つたわけですが、私の聞いておるところでは、一反歩について、七百五十円から八百円かかる。しかしこの薬のために、一割くらいの減収を防ぐことができるということを聞いておるので、これは非常に重大な、大切なことだと思うのであります。そこで、実は小笠原君が農林大臣に就任したときに、私はさつそく行つて、その他の問題も話したのでありますが、この農薬のことを話した。それは、米価の問題とか、肥料の問題とか、農林大臣の力だけでできないものが多いが、しかし農薬については、国立農薬研究所をつくる、これは農林大臣が考えて予算を出せば、予算の頭を出すことはさほど困難なことではない、これはどうしても大がかりに将来やらなくちやならぬと考えるということを申した。しかもホリドールその他については、ドイツなりアメリカは特許権を主張しておりますが、国際法上、この種のものに対しては特許権を広める必要はない。材料も一木にあるそうであります。そこで国立の研究所をつくつて、どんどん農薬を日本でつくつて、場合によつては、一割の減収を防ぐのですから、農民にただで配給してもいいじやないかというような考え方を私はしておるのでありますが、農林省では、農薬の国立研究所をつくるというようなお考えは今ありませんか。もつともその後また害虫のことについて、農林省へ参りまして、会計課長に会つたのであります。ところが会計課長の話では、小笠原農相が就任面後、われわれに農薬研究所のごとき研究してみろということを言われましたということでした。それから大臣が次次とかわりましたから、いろいろな問題で話に行こうと思つていると、話に行くよりはやめる方が早いものですから、そのままになつておる。そのうちにまた保利さんにもお会いして、いろいろ注文を申し上げたいと思つておりますが、この農薬の件について、となたか所管の局長からでも簡単に……。
  117. 増田盛

    ○増田政府委員 農薬研究所の点に関しましては、所管の農業改良局長にもお話申し上げたのでありますが、実はこういう研究に関しましては、非常に莫大な経費がいるという見通しでございまして、現在結論が出ておらないのでありますが、二十九年度予算編成の時期も近いのでありまして、私からこの点に関しまして結論を得ますように、お話申し上げたいと思つております。
  118. 原健三郎

    ○原(健)主査代理 外務政府委員が来られましたので、質疑は簡単明瞭にお願いいたします。
  119. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 絶えず保利農林大臣から、増産については、農家の負担にならないように、農家にしわ寄せをしないように、政府で種々の施策を講ずるという、明がありました。まことにけつこうなことで、農民は安心をして増産に励むと思うのであります。そこで、これは申すまでもないことでありますけれども、農家増産をすればするほど、農家経済がよいという状油井持つて行くことが、一番大切だ。どの省の仕事が一番重大で、一方のは軽いということは比較できませんけれども、私どもの考えているところでは、農林行政というものは、日本の圏の根本の行政である。でありますから増炭をさせるについては、増産をすればするほど農家経済がよくなるという各種の施策を講じていただきたいと思うのであります。独立国などと申しましても、食糧が足らなければ、ほんとうの独立国じやない。支那は四億何ぼ人がいて、アメリカは一億何ぼいる。その一億何ぼの方が、四億何ぼの人よりも三倍も能力を持つている。国民生活の向上というものは、いろいろありますけれども、一番根本の問題は、食糧が潤沢であること、食糧が潤沢でありますと、子供もすくすく大きくなるし、年寄りも長生きをしてくれるし、国民の健康状態がよろしい、病人も少い、これを目標にするのですから、どうしても増産ということに最善を尽してわれわれやらなければ、ほんとうの独立国でなくなると私は思う。そこで、これにつきましては、いろいろな施策がありますが、さしあたりの問題としては、戦争中長く放つておいた老廃池が全国にたくさんある。昨年は鳥取池、平和池等の決壊で、人も死んだり、たいへんな損を与えた。そのほか全国に五十何箇所の老廃池の漏水決壊があつた。ところで、農林省がこの災復旧予算を大蔵省に要求いたしまして、大蔵省と農林省との見解に盲点がある。つまり老廃池なら老廃池の修築について、大蔵省は資金の点から言いますとこれは剰余水をさばく設備が悪いからそれで漏水をするのだ。この残り水を流す工事については大蔵省はそれを持つが、漏水自体については大蔵省は持たぬ。そこで私がそういうことを聞きましたから、大蔵省の主計局長にも会つたのです。それはずいぶん不都合だ。災害復旧ということはこれは大事だ。ことに老廃池についてはこれは相当な金を出して、大蔵省が農林省予算を認めてやらなくちやだめじやないかということを申したのでありますが、本年度予算で、この災害復旧の老廃池に関する農林省予算要求と、大蔵省の査定とはどのくらい違いますか、ごく一言だけ……。
  120. 平川守

    ○平川政府委員 老朽ため池の施設に対しましては、われわれとしましては実は手がついておらぬ、できるだけ至急に実施いたしたいと考えております。いろいろ話合いの結果、それでもまつたく新しい費目でありますので、とりあえず本年は七十数百万円を見積りましてそこでまず着手したい、かように考えております。
  121. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 われわれもそういう見地から大蔵省に対して十分これを広めるように陳情もいたしたいと思いますが、災害復旧課の方におかれてもひとつ一層努力をして、この予算を十分とつて、老廃池を改修するように御努力を願いたいと存じます。  次に内水の漁業のことであります。従来は規模も違いますけれども、農林省においては海洋漁業に重点を置いて、内水の漁業はあまり顧みないように国民から見られておつたのであります。それは農林省の局長とか次官とか水産局長をした人が、やめてしばらくすると大きな水産会社の重役になつたりいろいろしますから、そこで農林省は水産局長の人選というものは、私らの知つておる限りでは非常に昔心しておられたが、とにかく内水面の漁業については、あまり力を入れていないというふりに国民は見て、私どももそう思う。内水漁業について水産局長は将来これをどういうふうに奨励し、魚族を繁殖せしめ、国民食糧を増加せしめるということについてのお考えがあるか、簡単にお聞きしたい。
  122. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま内水面漁業の振興につきまして、小林委員から適切な御発言があつたのでありますが、決して水産行政といたしまして、従前より単に海洋漁業についてのみ重点を置いていたのではないのであります。海洋漁業につきましてむろん振興をはかりますとともに、沿岸漁業、内水漁業を通じまして、全水産業を通じましてその振興に努力を払つて来たつもりでございます。残念ながら予算等の措置につきまして、なかなか思うような措置が尽せませんでしたので、あるいはそういうお考えがあつたのだろうかと思いますけれども、私ども水産行政に携わつておる者といたしましては全力を尽して、河川、内湾、浅海、遠洋等、差別なくその振興につきまして努力して参りておるのであります。ただ最近におきまして御承知の通り、ごく近海におきまする魚族の繁殖が非常に阻害されている例もございますし、従つて漁船が漸次大型化して、遠洋へ出なければなかなか思うような漁獲をあげられないような状況にあるのであります。それは唯一の理由といたしましては、すなわちごく近海、浅海におきまして、魚族の繁殖は非常に減つておるという事実が指摘されるのでありまして、私どもといたしましてはその事実に着目いたしまして、今後内水面の漁業並びに浅海の漁業等、ごく手近の漁業につきまして、さらに繁殖その他の施設を拡充して参らなければならぬ、こういうふうに考えております。二十八年度予算におきましては浅海、内水を通じまして約一億八千万円、予算を組んでありまして、私どもといたしましては、今後ただいま申し上げましたような趣旨にのつとりまして、ごく手近の沿岸漁民のとり得る魚族の繁殖保護ということを目的といたしまして、今後こういう措置をとつて参りたい、こういうふうに考えます。
  123. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 内水の漁業につきましては、河川の漁業でございますが、これは御承知を願いたいと思います。それから今のお話でよくわかりましたが、水産局長にお願いしておきたいと思うのは、これは水産局長に限つたことではありませんけれども、まず河川の漁業等につきますと、府県庁の行政面に主眼点が置かれておるわけであります。そこで今までのような役人の心構えで、府県庁から書類を出して来たり、調査を依頼して来たり、申請をして来たものでなければやらないのでなく、水産庁自体、農林省自体が陣頭に立つて、府県へ行つて、お前の方でこれをやれ、これをやれば必ず増殖するのだ、それについては農林省はこうしようというような態度で、ひとつ積極的にやつてもらいたいと思うのです。府県庁から出て来た書類によつて、書類が出て来ないから本省は知らぬ。本省からさしずすることはできないというような気持でおやりになつてはおるまいと思いますけれども、もしそういうことがあれば、今後はそういうことがないようにしていただきたいと思います。これは希望をしておきます。  その次にもう一つだけ、これは渡部官房長でもよろしいのですが、人事の交流ということは、これはむずかしいのかどうかということ。それはたとえば府県庁でもつてため池の改修であるとか、そのほかのことお調査をして書類を出して来る。ところがそれがややもすれば非常にずさんな調査で、あまり感心しない計画である。そこで本省の優秀な技術官が出て行つて、もう一ぺん調べ直してみなければならぬというようなことが大分あるのです。でありますから、できることならば地方庁と本省との人事の交流ということが行われれば、優秀な人が順繰りにぐるぐるまわつてつていただく。またその人たちは本省の事情もよくわかつておるし、本省へ打合せに来ても、本省へ十年も五年も来たことのない人よりは、早く物事が片づくという利益が非常にあると思うのですが、この人事の交流というものはむずかしいのかどうか。やろうと思えばやれるのか、その点をちよつとお伺いしたい。
  124. 渡部伍良

    渡部政府委員 お説まつたくごもつともでございまして、私どもの方ではできる限りの人事の交流をやりたいと思つております。これがちよつと行き詰まつておつた点は、民選知事になりまして、一時ほとんど人事の交流がなかつたのでございます。ところが民選知事の時代が相当長く続きまして、今度は知事さんの方からぜひ交流してもらいたい、こういう話がありまして、今農林部長とか経済部長、それから担当課長君長までは相当地方からの希望が出て来ております。これを推し進めますと、今の担当官のところまで行くんじやないかと思います。まだそこのところまでは来ておりません。しかしどうしてもお話のように、相当人事の交流をしなければ府県の行政が停滞するということは、民選知事さんの方も認識して来ましたから、今後はお説のようになる、こういうふうに考えます。
  125. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 大体わかりました。農林省の諸君は非常に努力をされて、食糧増産の問題にしましても、いろいろやつておられることについて、国民の一員として深く感謝をいたしたいと思います。     〔原(健)主査代理退席、主査着席〕  近時、汚職官吏というものが、これは真否は知りませんけれども、ずいぶん出ておることが新聞等にも報道されております。幸いにして農林省にはそういうことが一つもない。私は安心しておる。どうぞこの重要な時期に農林省の諸君が、ただいまお願いいたしましたように積極的な態度を持つて、陣頭に立つて府県庁の役人その他のやり方について、指導をしてやつていただくように、重ねてお願いをいたしておきたいと思います。私の質問はこれで終ります。
  126. 葉梨新五郎

    葉梨主査 小山倉之助君。大臣に留保せられた分についてお願いいたします。
  127. 小山倉之助

    ○小山委員 先ほど大臣は、私が質問しようという刹那に退席されましたから、大臣にごく簡単に御質問申し上げ上ます。  北海道には百億円以上の国家の金を投じて開拓をやつております。日本が領土を失つたあとにおきましては、東北の重要性も北海道に劣らないと考えております。特に農産物食糧の確保をする必要から、東北も北海道同様な計画を立てる必要があると考えておるのであります。つまり東北は、未開発地が北海道に次いで多い地域であります。最近農家の困難している問題は、燃料が足りないということであります。安くて多量の燃料を供給するということは、農家の生活をゆたかにするゆえんでありますから、たとえば北上川の総合計画であるとか、これに類似した計画が起る場合においては、山林の育成と植林を増加するために、農林省はその計画に参加してもらいたいということが一点であります。  その次には、御承知のごとく、漁業の問題については、多く大資本家を擁護する政策が立てられておるけれども、沿岸の貧弱なる漁村を助けるという案は、とかく政治家から閑却されております。ところが最近は御承知のごとく、東北の沿岸地域は、あたかも土地を耕やすがごとく、それとほとんど同様に、いろいろいかだを組むとか、あるいは管立てをするとかいうふうなぐあいに、農業と同様な経営が行われております。すなわち養殖の事業であります。最近農林省の御配慮によりまして、かきの養殖なりあるいはのりの養殖なり――あるいは毛沢東から懇請されて、十年間営口、大連附近でわかめの養殖をしていた人が帰つて参りましたが、こういうものを役立てるということは、結局中共との貿易が回復した場合に役立つものである。そこでたいていは、大きな船をつくるとか、あるいは大きな港を築造するというようなことに熱心でありまするが、海岸の荒波のところに防波堤をつくるということは閑却されておる。この防波堤をつくることによつて海岸の養殖が発達するのでありますから、やはりそういう小さな漁港をも援助して、そういうものの修築の予算もとつて、そうして小さな船の船だまりをつくるということもお考え願わなければなりません。私は農林水産の問題について多くの人と意見を交換いたしましたが、みな大きな問題ばかり考えておる。小さな漁村、まさに滅びんとする漁村、こういう問題についての施策が足りないように思いますから、その点を十分農林省の政策の上に織り込んでいただきたい、この二点を大臣に御質問申し上げまして、私の関連質問を終ります。
  128. 保利茂

    保利国務大臣 東北の開発、また食糧増産の面からいたしましても、増産の余地の非常に高いところでございますから、積雪寒冷地帯のあの施策によりましても、あるいは一般土地改良等におきましても、東北には特に力を入れて、予算面におきましても施策をとつているところでございまして、これは今後も続けて、強く強化して参りたい。現実に土地改良等によつて二毛作の成果をあげている実績からいたしましても、これはぜひ推し進めて行かなければならぬ、こう考えております。農家の燃料等にかんがみましても、あるいはまた山林経営の上から行きましても、総合開発計画に並行して、ちぐはぐにならないような計画を立てて行かなければならぬという御趣意はごもつともでありまして、御趣意に沿うようにひとつ努力して行きたいと思います。  なお沿岸零細漁民の問題でございますが、零細漁民といつてははなはだ言葉が悪いかも存じませんけれども、一方において資本漁業の進出があり、しかも漁場が限られて来るというような然い間の変態的な状態から解放されて、日本の漁場も国際的に進出し得まする段階におきましては、特に沿岸漁業の保護育成にカをいたさなければならぬと存じます。ただいま御指摘のような東北沿岸のいわゆる養殖漁業に関する防波堤の構築等、御趣意はまことにけつこうだと存じまするし、ぜひ力を入れてやつて行きたい、こう考えております。
  129. 葉梨新五郎

    葉梨主査 以上をもちまして農林省所管に対する質疑は一応終了いたしました。     ―――――――――――――
  130. 葉梨新五郎

    葉梨主査 次に昭和二十八年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算外務省所管についての質疑に入ることにいたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。小山倉之助君。
  131. 小山倉之助

    ○小山委員 外務大臣は、きようはおそらく最終の予算委員会でございましようから、くつろいで御答弁を願いたいと思います。  私はMSAの問題についてお尋ねしたいのでありますが、MSAのよつて来るところは、やはり集団保障に日本が参加するということが根本じやないかと思うのであります。ですから、今外交上における最も重大な問題は集団保障であると思うのです。大臣の御見解はどうでございましようか。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 MSAの直接の目的は、私は集団安全保障ということが第一とは言いにくいと思います。日本の場合には、やはりあのアメリカの回答にもありますように、個別的もしくは集団的な安全保障に入るような固有の自衛権の行使を一層有効にする、こういうことが目的とされておりますから、アメリカ側の考えとしてはその通りだろうと思います。
  133. 小山倉之助

    ○小山委員 そこで、どうも安全保障条約にからんで、実は私もずいぶんしんぼうして質問応答を伺つておつたのであります。これは要するにロシヤの侵略から起つた問題でありますから、ロシヤの侵略が起らなかつたならば、アメリカも世界に平和をもたらすように、その方面に努力を向けられたと思うのであります。しかるにロシヤが侵略を始めますから、集団保障というものが出て来た。それに日本は参加した、ですから集団保障というものは、どつちかというと私は人類、最大の理想を実現しようという大きな課題であると考えるのです。その大きな課題に日本が参加するということは、日本国つまり戦争をするのが目的じやない、平和を持ち来さんがためである。それがためにはまず侵略を防がなければならぬ。それに参加したということですから、堂々とこの集団安全保障条約を締結して、その大きな仕事を日本人が分担するのだというふうな積極的な指導を政府がしたならば、私はよほど日本の人心がかわつて来るのではないかと思いますが、いかがでしよう。
  134. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話の点はわれわれもかなり同感ができるのでありますが、われわれとしてはいまでもこんな状態でいるべきでないので、自分の国は自分で守るという態勢をつくるのが当然である、またこれはやらなければならぬことであると考えておりますが、総理がたびたび申しますように、経済上その他の理由もあります。またこれは、多少不完全でもできる範囲でやればいいじやないかという議論もありましようが、できる範囲でやろうとしましても、今度は憲法上の制約があります。集団安全保障とおつしやるのは、いろいろな形がありまして、日米間の安全保障条約も、あれは変態ではあるが、一種の集団安全保障だと思いますが、普通の場合には、相手方に助けられると同時に、自分が相手方を助けるという相互安全保障の形でなければいかぬと思います。けれども憲法上の制約があつて、日本としては軍隊は持てない、軍隊が持てないから、相手方を助ける方法がないわけでありますので、そういう自分の国を自分で守れるような、アメリカにお世話にならずにできるような状況になりますれば、これは別でありますが、現在では憲法上の制約もありますから、入ろうとしても、そういう一般的な互いに助け合うという条約では、日本としては入れないのではないか、こう考えておるのであります。
  135. 小山倉之助

    ○小山委員 互いに助け合うということは要するに軍事的の関係だけでしようが、軍事的の関係で制約されておる。つまり憲法がこれを許さない。だから私をして言わしめれば、今憲法がこれを許さないから、安全保障条約のもとにMSAの援助を受けるのだ、その時期が来ればいつでもこれをかえるのだ、やがては保安隊はアメリカの軍隊にかわつて、日本を外からも内からも守るのだということをはつきり言えませんか。その方がむしろ国民がはつきりするのではないか。今受けるか受けないか、受ける瞬間まで受けないようなことを――ことに木村保安庁長官なんかは、しよつちゆう受けるか受けないかわからぬと言つている。私どもは受けなければならぬ。受けないで済まされないどたん場に来ているのだと理解している。交渉を始めるまで受けるか受けないかわからぬようなことを言つてつては、国民はますます迷つて来るのでありますが、その点はいかがです。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはやはり慎重にものを申せば、協定ができるまでは受けるときまつたというわけには参りますまいが、私は少くとも受ける意思を持つて交渉をするわけであります。
  137. 小山倉之助

    ○小山委員 外務大臣、そうおつしやつればすこぶる明白です。受けるか受けないかわからぬ、内容はどうかわからぬと言つても、内容はこつちでかえればよろしいのですから、内容がよければ受けるのだ。外務大臣の御答弁は割合はつきりしておりますが、木村長官の答弁はまつたく支離滅裂です。こういうことであれば、どうしても国民に疑惑を持たせ、保安隊というものはまつたく日陰者になつて、鳥か獣類かわからぬ、こうもりのような状態になつてしまう。それだから基地の問題も解決しにくいのではないか。われわれは力かつけば結局自分で守るのだ、それまでの臨時の措置だから、われわれはどうしてもアメリカとも協力しなければならぬということをはつきりすれば、基地問題も割合簡単に解決するのじやないか。このもやもやした不潔なあいまい模糊の間に、この重大問題を片づけようとするから、いろいろな派生問題が起つて来るのじやないかと考えるのですが、どうですか。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはお考えのような点も多分にあると思いますが、これは政府説明なり国民に対する説得なんかも、十分でないうらみはもちろんあります、われわれとしては、たとえば日米安全保障条約によつてアメリカ軍がここにおるわけでありますが、この安全保障条約は暫定的のものであつて、汗して恒久的なものじやない、こういうことをはつきり申し上げられますし、また必要があれば、いつでも国民にもそういうふうに説明しようと考えております。
  139. 小山倉之助

    ○小山委員 ところがそういうことが徹底しておりません。つまり長期にわたつて内閣を組織しておる吉田内閣の態度がこれなんだ。一方においては社会党の椿君は、軍備はしないのだ、軍備なくとも国防はやれるのだ、軍備をすればかえつてあべこべに日本は飛行機で爆撃されてしまう、こういうことで厭戦思想に便乗して平和攻勢をやつておる。これはつまりロシヤの平和攻勢に災いされている。この現象がますます強くなつて参りますから、私どもはその点を非常に心配するのです。そこで私は考える。MSAというものは、今度大体受けるということに御決定になつたのでしようし、これは受けなければならぬと思うのですが、一体MSAは軍事的の援助をするということが主であつて、そこから出発したのじやないでしようか。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。
  141. 小山倉之助

    ○小山委員 これはウエアリングもこの間大阪で話されたことから見ますと、軍事的援助を受けるにかかわらず、軍隊はつくるのじやない、またいつつくるかわからぬというようなことを言つているが、軍事的援助として受けるMSAに対応するこちらの態度があいまいでは、どうも国民は納得しないだろうということを私は心配しておるのであります。すなわちいかにも軍隊をつくらないようなかつこうをして軍事的援助を受けるというこの矛盾は、私はなかなか解けないと思いますが、いかがでしようか。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私が軍事的援助が主たる目的であると申しましたのは、MSAというのは世界の五十数箇国に通用するものでありまして、もつと多くなるかもしれません。ところが世界で、絶無ではありませんが、日本のように軍隊を持つていない国というのは、もうほとんど数えるほどしかありませんし、しかも有力な国には一つもないわけであります。従つてMSAを適用する法律をつくる場合には、もう世界のほとんどどこの国も持つているところの軍隊というものを対象にして、これに対して軍事的援助の計画をする、これが当然のことであります。これを日本に通用する場合には、日本の現状に基いて1将来は別であります。また政策論としては別でありますが、今現状においては、日本においては軍隊を打たせないという憲法がありますから、この憲法のもとにおいてつくられましたただいまの保安隊なり警備隊なり、これを対象として、いささか一般的な軍事援助の性格をかえてMSAを通用すべきものであり、またそれ以外に方法はないと思います。現にダレス長官もアメリカの国会での証言として――これは正確にまだ公文では来ておりませんが、伝えられておるところでは、再軍備ということについては、日本には憲法で再軍備を禁止している規定があることも考えなければならぬ、こういうことを言つておるようでありまして、先方ももちろん日本の憲法は知つておるのでありますから、この憲法に反するようなことは先方としても望みますまいし、また要求もいたしますまい。従つて日本の立場は、一種の多少例外的な取扱いになる、こう少くともただいまは考えております。
  143. 小山倉之助

    ○小山委員 私は予算総会で御質問申し上げましたときも御同様の御答弁を得たのでありまして、私すこぶる満足であります。それだけのことを発表すれば、日本のアメリカに対する反感もよほど緩和されやしないか。保安隊をどうして国民が育てて行つたらよかろうか、さらに保安隊に対する尊敬の念もわいて来るであろうと思います。私はもしほかの人から問われた場合には、外務大臣のただいまの御答弁のようなぐあいに、私も解釈したいのでありますから、かように理解しようと考えております。私は少しぺダンテイツクなようなことを申し上げますが、例のエリオツトモリソンのパシフイツク・ビクトリー、あの太平洋における戦争の歴史十四巻の第八巻目ができたというので、その批評からこれは出た議論でありますが、日本がフイリピン沖合いにおいて惨敗したことを非常に私は縫いておるのであります。つまり日本があれだけの不備をしても、アメリカの軍隊にまるで板子を沈めるように沈められてしまつた、ここで勝敗を決した。同時にまたこのたびの朝鮮の問題を見ても、私はこの前も申し上げた通り、もし朝鮮人がもう少しアメリカと協力することができたならば、アメリカがもつと朝鮮人を信じて武器を与えることができたならば、今度のようなああいう満足な休戦協定はできないだろう、やはり日本人もそういうことを考えてみなければならぬのですから、ある程度日本は構えをする、しかし前のような、軍備を置く必要はないのですから、そこで集団安全保障というものができる、日本の足りないもの、日本が経済的に許さないものは、アメリカのようなほかの国が協力してくれるのですから、そういう意味合いに打つて行つたらどうだろうかと私は考えるのであります。そこでこのMSAをどうしても早く受けて――これはおそらく大臣はそうお考えでありましようが、軍備をするのは戦争するための軍備じやないでしよう、侵略をやろうという軍備じやないでしよう、ほかからの侵略を防ごうという軍備でしよう。世界に平和をもたらして、そうして人類の安定をはかるということが最終の目的でしよう。だから、そういう目的であるということが国民に明白であれは、今の外務大臣のとつておる政策で国民は納得するであろう。ここに非常に平和攻勢が強いのですから、ことに社会党の左派のごときは、平和攻勢にそのまま乗じて、日本の軍備を全然なくしよう、日本の防衛軍を破滅させようというような考えを持つておるときですから、私はどうしてもこの際はつきりしておく必要があると思う。  そこでMSAの問題に関連しますが、まだ締結しないのだから御返事ができないでしようが、私はMSAによつて日本の工業が非常に発達しやしないか、同町に日本が正常貿易に帰つたときに、このMSAを利用することによつて、日本が世界の大きなマーケツトに太刀打ちをするような資格ができやしないかというふうに考えるのですが、外務大臣はどうお考えでしようか。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまず第一の点でありますが、日本の工業をできるだけ盛んにするように、援助の方式もそれに合うようにいたしたいと思つておりますが、これは今の状況ではいわゆる域外買付の増進ということに重きが置かれまして、日本の国内で保安隊等が使用するものをアメリカが日本で買いつけて、これを保安隊なり警備隊なりに引渡す、こういう種類の援助の額は比較的少いのじやないかと、ただいまのところは予想しております。従つて直接の援助じやありませんけれども、域外買付等をできるだけ多くするように話をいたしたい、こう思つております。  それから海の上のことでありますが、いわゆるコンヴオイといいますか、あるいはコンヴオイでなくても、たとえば漁船を保護するとかなんとかいうことの必要は認めておるのであります。また現に一部はやつて、おりますがこれは自分の担当でありませんから、ここで正確に申し上げることはできません。保安庁側のことでありますが、限界についてなかなかむずかしい議論があるようでありまして、どこまでなら自分を守ることになり、それから先に行くとどうなるということやら、まだ日本と国交を結んでおらない中共なりソ連なりがあります、それらの船がやつて来たときに、これは抵抗すべきものであるか、抵抗すべからざるものであるかということについては、むずかしい議論があるようでありまして、ただいまのところ一概にこれはこうだというようには行きがたい点があるようでありますが、保安庁なり警備隊あたりでは、こういう問題はまじめに研究しておると聞いております。
  145. 小山倉之助

    ○小山委員 私はこの前の予算委員会でもちよつと意見の一端を述べたのですが、日本が外貨を獲得したなんということは、私の知つておる限りでは第一次戦争と今度だけなんです。それはみな世界の正常な競争に勝つてもうけたのじやない、ほとんどがらくた物を売つてもうけたのです。朝鮮の特需なんかもそういうぐあいでありまして、これから正常貿易に帰ろうというには、やはり外国の粋を集めた軍需産業というものはある程度まではとり入れなければならぬ。日本で特需として向うへ送つたものは、ほとんどプリミテイヴな工業製品のように思われるのであります。イタリアでは軍艦の注文があつたということを聞いておりますが、それは事実でありますか、その点をちよつと伺いたい。もし軍艦のようなものまで日本がつくるということになつたならば、日本は船体はつくれるけれども、船体の装備はなかなかつくれぬ、その装備を日本がつくるということになれば、日本のあらゆる産業がこれを利用することができる、これを平和産業に利用すれば、材質の点から言つても、レーダーの発達の点から言つても、レア・メタルを利用するというから言つても、日本に非常に利益があると思います。だから受ける場合にはやはりそういうことも十分考えて行かなければならぬ。それからパテントなんかも一相当使えるというごとにすれば、この際日本の貿易品は世界の大市場で争つてこれに打ちかつことができると思う。この前のように軍備をやつて外国に侵略するという意味でもなし、経済力も許さない以上にこれを発展させようというのじやない、ちようど日本にとつては都合のいい状況にあるのですから、そういうことも考えられませんか。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれの方としては、実はそういうことを一番おもに考えておるのでありまして、できるだけそういう方向に行きたいと思つて、実際上研究もいたしております。ただ二つ険路のようなものがあります。一つは日本のステイールとかその他の品物が、質が十分でないものでありますから、いろいろなものをつくりましても、減り方がはげしいとか、あるいはたまを防ぐだけの強度がないとか、これは一般に鉄の産業の需要が多くて、そういうものが楽々できるようにならないと、そればかりのために無理してつくつたのでは、コストが非常に高くなる。こういう点に一つの隘路があるようであります。もう一つは、アメリカでは、ほかの国もそうでありましようが、機密保持のための法律がありまして、たしかアメリカでは五つのクラスにわけておりまして、これに対して機密保持の法律ができております。従つてたとえば役人が機密を漏らすと、懲戒免官になるというようなことでなく、法定の罪を受けるということになつております。ところが日本ではそういう法律がありませんので、非常に重要な機密度の高いものを日本の産業にないしよで知らせつくらせようとする。それをよそへ売れば非常に大きな報酬を得られるような種類のものでありますと、懲戒免官になろうが、会社をやめさせられようが、そんなことはかまわぬということになるわけであります。起訴されて懲役にでも行くということになれば別でありますが、その備えがないものでありますから、アメリカ側としても、非常に高度な機密事項を日本の産業界に出していいものやらどうやら、非常に危惧を持つているようであります。この二つが、私の見るところでは、ただいまの険路であろうと思います。
  147. 小山倉之助

    ○小山委員 最後にお願いいたしますが、日本人はあまりに海外のことを知らなさ過ぎる。あまりに知らなさ過ぎる国民を教えて行くのですから、外務省のお仕事もなかなか並たいていではないということは御同情申し上げております。とにかく六百万近いものが海外から引揚げたのですから、この引揚げた人をまた元に帰すような外交政策を立てていたただきたい。それからもう一つは、民間で引揚げた人を、なるべく早く支那の内地なり南洋なり、ビルマなり――私はそういう地方を相当歩いて、日本人が海外において発展する実況を見て参りましたが、おそらく帰つた人は、日本のこういうせちがらいところにいるよりは、むしろ海外に行つた方がいいと考えておるだろうと思います。ですから私は、外務省のポイント・フォアを中心とした大々的な計画を立てて、海外で働いた、海外の言葉をよく了知しておりまするたくさんの人を、一日も早く海外へ出すという大構想を抱いてそれを実施するように、ひとつ将来御努力願いたいと思います。これがすなわち日本の海外貿易を発展させるゆえんである。また同時に日本人が海外において信用を受けるゆえんでもあつて、国交上から見ても、日本の将来を明るくするゆえんであると考えますから、その点十分御留意願いまして、その点の予算であれは、私ども及ばずながら陰になつて御援助を申し上げたいと存じます。外務大臣の御所見いかがでございますか。
  148. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御注意ありがとうございました。われわれもできるだけ御趣旨に沿うように、従来もいたしておるつもりでありますが、思つたほどに効果は上らないのでありますが、今後はなお一層努力いたしたいと考えます。
  149. 葉梨新五郎

    葉梨主査 今澄勇君。
  150. 今澄勇

    今澄委員 予算委員会ではいろいろ聞きたかつたのでありますが、きようは分科会でありますから、ひとつなごやかにいろいろの疑問の点をお伺いしておきたいと思います。  第一は韓国との問題でありますが、日韓会談はずつと継続されておりますが、そのさ中に今度の休戦で、ロバートソン特使と李承晩大統領との声明があつて、先ほど来外務大臣が御会見をされたそうでありますが、この朝鮮休戦と新しく朝鮮とアメリカが結ぼうとしておる相互防衛条約の見通し、並びにこれらに関連して、日本に求めらるべきアメリカの要望等について、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。
  151. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 休戦はおそらく協定が今週中にできるのではないかと思います。これも大して根拠があるお話ではありませんが、私の勘では、どうも今週中にできるのではないかと思います。アメリカと韓国との間の防衛条約のようなものは、これもまたこれから話をするのでありますから、的確にはもちろん申し上げられませんが、アメリカと濠州が結んでおりまする条約と大体趣旨は似たものになるのではないかと思います。朝鮮に対する日本のいろいろの援助と申しますか、アメリカの要請しておることというのは、今具体的には別段ございませんが、予想されることは、とうせこれは復興の仕事が大きいのでありますし、国連側も相当巨額な復興資金を出すことにしておるようでありますから、今後は主として朝鮮の復興に必要な資材なり技術なりあるいは機械なり、こういうものが主になるのではないかと予想されます。
  152. 今澄勇

    今澄委員 この韓国との防衛協定、相互防衛条約から、日本がいろいろとそういう建設資材その他の引受けをするということになつて、いろいろ韓国の問題に立ち入らざるを得ない状況になつて来ると思いますか、朝鮮における米国と韓国との会談について、日本の意見を求められたというようなことはありませんか。
  153. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側は、韓国の問題につきましても、また広くは極東の情勢につきまして、安全保障条約締結以来というものは、日本側に対してできるだけ情報なり意見なりを提出するように、出先の大使等に言いつけておるようでありまして、アメリカの大使は政府に対して、必要の都度報告とか情報を提供しております。それから一般的に休戦会談についての見通しとか、中共側の態度とか、またこの背後にソ連があるかないかとか、それに対する力はどういうぐあいであろうかというようなこにについては、先方の効は、ときどき日本の方が知識があるのだから、こういう問題について意見を知らしてくたというようなことはしばしばあります。その都度これは政府の想見というのではなく、個人的な意見でありますが、われわれも自分の思うところを述べております。
  154. 今澄勇

    今澄委員 そこで、私はそういうふうな朝鮮のいろいろの問題をひとつ何とか利用をして、この機会に――日韓会談は長らく停頓をしておりますが、日韓会談を有利に展開をするというようなわけに行かないものかどうか。日韓会談のその後の経過を――大分大詰めに来ておるようでありますが、さしつかえなければ外務省としてのお見通しなりを、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  155. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日韓会談については、大体五つの問題が今ありまして、第一は平和回復に関する基本条約と六いますか、要するに平和条約にかわるような、ごく簡単なものでありますが、両国間の国交を回復する条約が一つ。それからよく言われまする請求権の問題というのが一つ。それから漁業といいますか、李承晩ラインといいますか、そういう種類の問題が一つ。それから船の問題がありまして、これはつまり置籍船といいまして、籍が韓国にあつた船が日本に来てしまつたとか、日本の国籍の船が韓国に行つている間に、そのまま抑留されて使われてしまつているとかいう船の問題、それから最後には国籍――国籍というのは、今までの朝鮮人は日本人になつておる。これは韓国人になるわけでありますが、その希望者を日本人にするとか、しないとか、あるいは当分の間は日本人と同様に外国人では持てないような権利を認めてやるかどうか、こういうような国籍処遇の問題というのがあります。大体これがおもなる点でありますが、この中で一番むずかしいのは、請求権の問題と漁業権といいますか、李承晩ラインといいますか、この二つの問題でありまして、われわれとしては今回の会談におきましては、これはりくつを言い合つても切りがありませんから、実際的な解決をしようと思つていろいろ提案をいたし、先方とも話をしております。ごく最近に金公使が韓国にもどりまして、いろいろ相談をして帰つて参つたのでありますが、おそらく先方も今度は最後のもつと相談した結果の案を提示するんじやないかと期待しております。これでだんだん問題が狭められて行つて最後には、ある一つの問題を解決すれば全部が話がつくというようなところまで行くようにしたいと思つております。
  156. 今澄勇

    今澄委員 日韓会談の停頓で、いろいろあちこち問題が起つておるのであります。私どもは国の大きな利益のために、目前のいろいろ問題を云云するわけではないが、日韓会談の最終結論はそうも今までの情勢では、抽象的な李承晩ラインの解決のたまの両者の委員会であるとか、あるいは在留財産請求権の調査のための両国の委員会であるとか、そういう委員会その他のものをつくつて、この会談を打切るというようなことになるのか、それとも政府においてこれを今度の会談では、最終的な何がしかの解決策が出るという見通しがあるのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  157. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは見通しと申しますと、金公使が帰つて来たからもうすぐわかるわけですが、しかしちよつとはつきりありとも、ないともほんとうは言えないのですが、われわれとしてはもちろん見通しがあるから、やつているわけであります。何とか条約も、協定もつくつて、この五つの問題を解決してしまいたい、こう思つてつておるのでありまして、これはできない場合もありましようけれども、まずできそうだという考えで進めております。
  158. 今澄勇

    今澄委員 この問題のために、最近閣議において日本側の根本的な態度をおきめになつたことがありますか、これはいろいろ内容に立ち至つて聞きたいのですけれども、外交のことですから、いろいろお立場がありましようが、この日本側の態度がいろいろな役所においてわかれているのだが、それを調整して閣議で大体こうするのだとか、あるいはこの程度で行くのだというような思想統上はなされましたか、どうです。
  159. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日韓会談は今申した通り五つの大きな問題がありまして、その中にまだ解決の見込みがちよつとむずかしいのが二つありますが、これは双方の意見をもう少し具体的につき合せてみて、たとえば日本側でここさえ譲歩すれば話がつくのだというところまで煎じ詰めて来ましてから、閣議の意見を開いて譲歩するかしないかというところをきめたいと思いまして、まだそこまで行つておりませんので、閣議には提出いたしてはおりませんし、閣僚間でまだそれについて意見を交換する時期には来ておりません。まだやつておりません。
  160. 今澄勇

    今澄委員 私はやはり日韓会談は打切るなら打切る、てきるならできるというような見通しを金公使も帰つたならば、なるべく早くこれはやらないと、通商貿易の部面から見ると、たとえば日本から向うへ出るもの、向うから日本に来るもの等、いろいろな問題が山積しているのに、どうも通産省あたりがこの日韓会談の終結を待たなければ、全然手も足も出ないということで、非常に業者に迷惑をかけているわけであります。そこで会談の見通しとしては、今月の中旬、下旬、来月とわけてみて、八月に入らなければ、これらの問題は大体終結しないか、それとも今月くらいには一応の終結ができるか、決裂となるかという見通しがありますかどうですか。外務省のそういう見通しがきまらないことには、朝鮮からの魚の輸入であるとか、あるいはいろいろののりの輸出であるとか、綱の輸出であるとかいう問題に、大きな矛盾を感じさせて、まことに困つているような状況にありますが、これらの見通しをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  161. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはずいぶん長くかかつているわけで恐縮ですが、やはり韓国との問題などは忍耐を持つて、いい加減にきめちやえという短気を起さぬでやらなければならぬ。ことに国交の根本をなすものでありますから、多少時間がかかつても、忍耐を持つてやりたいと思つておりますので、見込みについてはここで申し上げることはちよつと私にはできないのでありますが、ただその韓国との根本的な話合いができるまでは、ほかの一切の普通の商業取引等ができないということでは、関係者にも迷惑がかかりますし、また日本の産業を盛んにする意味からいつても考えものだと思いますので、交渉とは別に普通の商業取引その他の他の問題ができるだけ支障のないように、ひとつ考え直そうじやないと思つておりまして、その意味で各省にも連絡をしまして、これはむずかしいというものもありましようが、船を売るという話もありますし、のりを買うという話もありますし、いろいろな話がありますから、さしつかえない程度にはできるだけこれに便宜を与える、こういうことで各省の意見をとりまとめたいと思つております。
  162. 今澄勇

    今澄委員 朝鮮との話はその程度にして、次は今問題になつている日本漁業が、この日韓会談では李承晩ライン問題、それから実力行使としては東支那海の中共の拿捕の問題等で、日本の漁船並びに海上漁撈が今なかなか困難な情勢にあることは、外務大臣も御承知の通りであつて、この際私は旧南洋群島に昔日本が漁場を持つていたのであるが、これらのかつて南洋拓殖、あるいは南洋興発その他旧南洋の日本の漁業権を持つておりましたいろいろの民間会社が、これらの権利を復活して、漁業危機打開のために南洋漁場を利用したいという意気が、最近盛んに上つているように開きますが、これらの南洋旧諸島に関する漁業権の問題について、外務大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  163. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれとしては公海での漁業はさしつかえないという主張をとつておりますが、旧南洋委任統治方面は御承知のようにまぐろとか、かつおとかの非常にいい漁場であります。ただしかし公海でとつて一々それを日本に持つて帰るのでは経費もかかりますし、なかなかむずかしいのであります。つまり漁場の基地をどこかに設けたいということが、一つの大きな希望であります。そこでもう最近というお話でありますが、われわれは一昨年からいろいろ資料を集めて、この方面に対する旧南洋興発等の活動が、また形はかわつてもできるようにと思いまして、アメリカ側に話しておりますが、これが原爆の実験場であつたり、またほかのいろいろな軍事上の必要があるようでありまして、なかなか解決が遅れております。最近も一、二度アメリカ側にも話しておきました。われわれとしては一部でもいいから仕事ができるようにさしたい。漁業ができなければそのほかのいろいろな――南洋興発なんかほかのいろいろなことをやつておりましたから、どれでもまずできるものからやつて行きたいと思つて、ずつと話を続けておりますので、まだ効果は上つておりませんが、今後もずつとそれを推し進める考えでおります。
  164. 今澄勇

    今澄委員 やはり外務省としては、現在東支那海、朝鮮海域等の事情から見ると、日本の今日の漁業者がそういう国策上の大きな犠牲を払つておるときであるから、せめて南洋旧諸島における、どこか足がかりをつくつてやるようなアメリカとの交渉を進めて、早急にこれを解決して行くという立場でないと、どうも終始一貫しないうらみがあつて、外交上の問題で非常に漁業者が因るのだというそしりを免れないと思うので、この問題については深く追究はいたしませんが、できるだけひとつ御善処を要望しておきたいのであります。  もう一つ私は、日米通商航海条約が外務委員会に今かかつておりますが、この条約の内容をいろいろ検討してみるに、あながちこれが非常にまずかつた条約であるとは思いません。なかなか苦心の跡も見えるのでありますが、これに伴う租税協定が今行われておるわけであります。われわれはこの租税協定の完了を待つて、ひとつ本格的にこの問題を論議してみたい、かように思つておりますが、今引続いての租税協定は調印に至つたかどうか、租税協定打合せの経緯について、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  165. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 租税協定はまだ妥結に至つておりません。あれは何か非常に技術的な問題がたくさん含まれておりまして、実は外務省も交渉を応援いたしてやつておりますが、主体は大蔵省でやつておるのであります。これは税の問題で、専門家でないとわからない点がたくさんあるようであります。私も詳しい内容は知りませんけれども、妥結までにはなかなか時間がかかるのじやないかと思います。一生懸命やつておることはやつておるようであります。
  166. 今澄勇

    今澄委員 この日米通商航海条約は、古い昔型の条約から、新しい近代的なセンスを織り込めていろいろ苦労をされておるけれども、一貫して流れるものは、そういう古い型と新しい型とが非常に混淆されておつて、その中には株式の取得の問題であるとか、あるいは内国民待遇の問題であるとか、あるいはアメリカ銀行が日本における業務において、占領下持つておつた既得権をずつと延長するとかいうような、いろいろの問題がこれには含まれておりますが、これらの問題が、今度東南アジア諸国後進国と日本が条約を結ぶ際にひな型になると、非常に不利な点が生じはしないか、かように心配をしておりますが、これらの点に対するあなたの御見解をひとつ……。
  167. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これははつきり交渉しておりませんからあまり正確に申し上げられないのですが、むしろ日本よりも東南アジアの諸国の方が心配する部分が大きいように思つております。というのは、今いろいろおつしやつたような懸念は、アメリカの経済力の方が日本より大きいから、条約面では心配ないが、実際上困るのじやないかということが多いと思います。東南アジアと日本との間では日本の経済力の方か強いから、今度は東南アジアの方でアメリカと同じような条約をつくつては、われわれの方の経済が圧迫されるというような心配の方がむしろ多いように私は思つておりまして、日本の力で非常に不利になるということはこの点では少いのじやないか、こう考えております。
  168. 今澄勇

    今澄委員 この日米通商航海条約の政治的な問題を論ずれば、いろいろ私は論ずるところかありますが、これは時間の関係もあつて不問に付するとして、この条約の中のいろいろな不利の面、有利な面を加えてみて、私は日本にこれは非常に進歩的で有利だと見られるガツト加入や、他国とのいろいろな関連等を眺めて、一部希望を持つておつたのであるが、そのかんじんのガツトの加入が、あのアメリカの国内法規その他の関連で非常にむずかしい見通しになつて来たが、ガツト加入の今後の見通しと、さらに通商航海条約との関係について御説明を願いたいと思います。
  169. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話のようにガツトの加入につきましては、アメリカが互恵通商協定を一年延期しました際に、大きな関税交渉はやらないという条件を付せられてきめたわけであります。そこで日本との関税交渉が、これはガツト加入の前提問題になるわけでありますが、これがいわゆるメージャー・ネゴシエーシヨンであるかどうかという解釈の問題があるのであります。これは日本との関税交渉をメージャー・ネゴシエーションでないと言い切ることは実際上はむずかしい話ではないかと見られておりますが、ただ日米通商航海条約が批准されますれば、アメリカとの関係におきましてはガツト加盟国と同様の税率が日本に対しても適用される。こうなりますから、アメリカとの関係においては、ガツト加盟と似たような効果が出て来ると思いますが、しかしガツトの問題は世界中に関連があるのでありますから、それだけでは十分ではないことはもちろんであります。
  170. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は日米通商航海条約がアメリカにおいて批准をそう急いでおらないという状況にあるやに承つたのであるが、アメリカの国内における日米通商航海条約批准についてのいろいろな手続遅延の理由と、日本の今国会にかかつておるが、政府はこの国会でこの日本通商航海条約批准を終ろうと考えておるのかどうか。えらく早や結んだけれども、その後の状態に遅々としておるようでありますが、これらについて政府の見解を聞いておきたいと思います。
  171. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 実はアメリカの方は日本とばかりでなくて、ほかの五、六の国でありますか、通商航海条約を結んでおりまして、それを今度の国会にアメリカ側としては出すということになつておりましたので、われわれも急いで国会出して、双方がほとんど似たようなときに批准ができるようにしたい、こう考えて努力しておるのであります。日本の方もまだ前途わかりませんが、アメリカの方も国会のことでありますから、必ずしも政府側の希望のように行くかどうか、これは私としてもはつきり申し上げられませんが、木国政府としてはこの七月一ぱいで終る国会でぜひ承認を得たい、こういうつもりでいろいろな努力をいたしておるようであります。
  172. 今澄勇

    今澄委員 時間が大体来たようでありますが、私はこの日米通商航海条約か、アメリカの今度の国会に、あるいは調査疎漏であつたかもしれぬけれども、政府は承認を求めておらないというふうにわれわれは見ておるので、アメリカと日本の政府との間には大きな時間的なギヤツプが出て来やしないか、こういうことになると、日本政府が、選挙の最中にあわてて結んだということが、はたしてどうかということが問題になりはしないか、かように思うのでありますが、政府はもしこの日米通商航海条約が、この国会でいろいろ論争した結果あまりどうもこれはよくないという結論にかりになつた際は、アメリカとの交渉を御破算にしてさしつかえないとされるつもりか、それともそのたにいろいろの問題をお取上げになるかどうか。こういう通商航海条約は締結してあとから国会出しても、ひとつもかわらぬじやないかと言われるけれども、一旦できたものを国会が文句をつけて、これを否認するというのと、できる前に、これこれこういう状況はまずいから、引延ばしてやろうというのは、大分対外的な影響力が違うと私は思う。外務省としてはこういう条約を結ぶ前にそういう影響力等も考えられて、政治的にはもう少し善処の方途があつたのではないか、かように思いますが、外務大臣の御見解を承つておきます。
  173. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側ではもうすでに議会に提出しておりまして、議会の承認を得べくいろいろ努力をいたしておるのは事実であります。  それからこの通商航海条約の今いろいろおあげになつたような問題は、これは政府だけできめ得る問題じやありませんので、隠してはおらなかつたのであります。たとえば経団連であるとか、その他関係の実業家であるとかはもちろんでありますが、国会方面にも、当時まだ熟してはおらない点もありましたけれども、外務委員会その他で質問があれば、ほとんど隠すところなく全部さらけ出して御意見を伺つておつたのでありまして、その点今度の通商航海条約については、これは国民が直接に通商航海をやるための条件を規律するのでありますから、一般の条約よりあまり隠す問題はなかつたと私は考えております。ただ国会に十分お話をしなかつたと言われるかもしれませんが、わけわけとしは、かなり中身についても申し上げておつたつもりなのであります。もちろんほかの条約でも同様でありまして、できるだけ国会を通じて国民の理解を得る――これは調印の前にとか調印のあとにとかいう法律論は別にしまして、実際上国民の理解を得るために、国会を通じてできるだけ説明する、これはまつたく御同感で、そのつもりでおります。
  174. 今澄勇

    今澄委員 そこで最後に一つ、私は先般アメリカにおいていろいろ在外公館その他にお世話になつたのでありますが、日本の在外公館の活動、その中でも特に商品の陳列であるとか、わが国の貿易振興のために展示会を開くとかいうような、在外公館が日本の貿易振興のために外地において積極的な活動をする予算に、いささか欠けておるのではないかという印象を得て、私は帰つて来たのでありますが、そういう日本の通商貿易の発展のために、在外公館をして積極的な活動をするという面についての経費については、私どもは積極的な支援を惜しむものでありません。これら日本の在外公館の貿易伸張のための活動についての費用は、非常に不足であると私は思うか、外務大臣の御見解を伺つて、質問を終ることにいたします。
  175. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もまことにお恥ずかしいのでありまして、これは十分でないのであります。ただ大蔵省とのいろいろな折衝もありまして、本年はこの程度にということで押えられて来たのでありますが、その方面の要望は実際上各地で非常に強いのでありますから、来年度においてはひとつ奮発して、相当多額に計上したいと考えておりますので、ひとつよろしく御支援をお願いしたいと思います。
  176. 葉梨新五郎

    葉梨主査 河野金昇君、一問に限り発言を許可いたします。
  177. 河野金昇

    河野(金)委員 MSAに関係した問題でありますが、おそらく岡崎さんは悪意ではないと思いますけれども、今まで外交上のとりきめなんかで、大体国会にかけるべきものも国会のないときにたいていきめられて、そうしてあとで国会の承認を得るというようなケースをたどつたのが多いのであります。日米通商航海条約なんかにいたしましてもそうでありますが、一旦国と国とが約束をしてしまつたものを、あとで国会が承認を求められた場合に、すぐそれを拒否するとかなんとかいうことは、これはなかなかむずかしい問題であるわけであります。不満な点はあつても、これをすぐ拒否するとか、すぐ書するということはなかなかむずかしい問題であるのであります。しかしわれわれ日本国民としては、われわれの時代だけでなくして、やはり子孫のことも考えると、そのとりきめということには慎重を期さなければならぬと思います。MSAの援助を受ける問題にいたしましても、大体受けるという心組みで交渉を開始したいと言つておられ、またその準備を進められておるようであります。しかしおそらくこれがはつきりするのはとてもこの国会中には不可能なことであつて、結局これまた国会が終つた後に、休会中にこれのとりきめが行われることになるであろうと思います。ですから、きよう私はいろいろなことを聞こうとは思いませんが、日本国民として一番心配しておるのは、もしアメリカの援助を受けるような場合に、現在は保安隊ではあるけれども、向うの援助を相当受けて、今日の地上装備なんかがりつぱなものになつて来ると、たとえば朝鮮に事変が起きたとか、あるいは南方に何か起きたというような場合に、軍隊ではなくても、警察軍のかつこうにおいてでも出兵を強いられるようなことが――これは保安隊でありますから出兵とは言えないにしても、やはり何らかの形において海外に出て行つて協力することを強いられるようなことになりはしないかということを、国民として非常に心配をしておるわけであります。そこで今後の折衝の過程においてどうなるかはわかりませんけれども、今外務大臣としてどういうとりきめをなさろうとも、少くともこの海外出兵はしないという一項品をお入れになるつもりかあるかどうか。これは将来の交渉の過程であるといつて、お逃げになればそれまででありますが、この日本の自衛の問題、再軍備の問題等等に関連して、これは国民全体が非常に心配しておる問題でありますから、ただ国会の答弁を何とか逃げるというだけでなしに、外務大臣として、あるいは一岡崎勝男としてでも、日本国民の一人として、この問題に対してはどうかひとつ国民が安心するように親切に答えていただきたい。交渉の過程において、こういう一項目を入れていただきたいと私は思いますが、外務大臣はどうお考えになりましようか。
  178. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もまた現内閣も、そういう意味の海外に保安隊を出す等については全然考えておりませんし、またそういう要求がありましても、拒絶するつもりでおります。また交渉の温和においてこういう点も先方に念を押すことは、当然いたそうと考えております。従つてこの点については国民にはつきり保証ができると思います。ただいろいろ研究しましたが、保安隊を外へ出すか出さぬかということは、これは政府が決定するものでありまして、外国側が要求なり要請なりをする場合が、かりにありと仮定しましても、それに応ずるかどうかは、政府の最終的の決定、つまり国の決定になるわけでありまして、国が決定すべきものを協定の中に入れまして、アメリカ側の保障みたいなかつこうにするのは、私は何か協定自体としては非常に悪いようなことに思いますので、この点は十分念を押して、はつきりさせますけれども、協定の中に入れることはどうかと考えております。
  179. 河野金昇

    河野(金)委員 形のことはいろいろ外交上の形式等もありましようけれども、実質的に海外に出兵しないということは、お約束願えたものと解釈してよろしゆうございますか。
  180. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。ただ私の申し上げましたのは、これは政府が自主的にきめるものでありますから、これを協定の中に入れることは自主性を疑われるような気がいたすだけであります。
  181. 葉梨新五郎

    葉梨主査 以上をもつて外務省所管に関する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  182. 葉梨新五郎

    葉梨主査 次に、昭和二十へ年度一般会計予算経済審議庁通商産業省所管昭和二十八年度特別会計予算政府関係機関予算中、通商産業省所管について、質疑保留となつておる分につきまして質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。倉石忠雄君。
  183. 倉石忠雄

    倉石委員 電源開発は焦眉の急であることは申すまでもないことでありますが、この際政府当局の只見川の発電の計画がどの程度になつておるかということをまずもつて承りたい。
  184. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 只見川の開発の問題に関しまして経過を御説明申し上げますと、昨年の秋に電源開発審議会でいろいろの川がありましたが、その中の一つといたしまして、只見川の開発調査地点を指定いたしました。只見川の開発方式あるいは開発の規模等に関しまして調査を指定しておつたわけでございまして、爾後開発会社といたしましては去年から引続き調査研究を進めておつた次第でございます。ところが先々月の末かと思いましたが、大体案がまとまりまして、爾後会社といたしましては、東北電力並びに東京電力等に関しまして、将来かりに開発会社が開発するといたしますと、水利権の問題、あるいは技術の問題等で協力を求める関係上、三者間で話を進めておつた次第でございます。それが先月の初旬に至りまして大体話合いがつきましたので、正式に政府の方へ御報告申し上げたような次第であります。一方政府側といたしましても並行的に研究を進めておつたのであります。予算の関係、あるいは東北、関東地区の電力の需給関係等から推しまして、なるべく今年中に着手できるように早く決定したいという考えを持つておりましたので、開発会社の案が出て来たのを一つの契機といたしまして、同時にまた分流案をとつております新潟県側といたしましても、従来からいろいろ案をつくつておつたのでありますが、今度の審議会といたしまして、正式に新潟県の、最後案と申しますか、分流案をお出し願いましたので、それこれ合せまして、先月の中旬に只見川に関する第一回の審議会を開催いたしまして、従来OCIのに調査を命じておりまして、去年の五月に答申を得たわけですが、それが通産省側に引継がれましてそのままになつておりますので、OCIの報告を正式に委員の方に聴取願うということと、福島県、新潟県、あるいは開発会社というそれぞれの案を詳細に御報告願いまして、第二回の審議会は先月の二十六日かと思いましたが聞きまして、その際にその両案に対する質疑応答を重ねまして、その結果委員各位の御意向といたしましては、非常に細部にわたる技術的な問題が多うございますから、関係各省でつくつております審議会の幹事会というものがございますが、その幹事会でさらにいろいろ技術的な検討を深めてもらいたいという付託がございましたので、その審議会が済んだ登る日から、関係各省の幹事が集まりまして、開発会社夫の中には、大体OCIの案、あるいは福島の県側の案がほぼ包含されておりまするので、これを一方の代表的な案とし、もう一つは新潟県側の一部分流案という最後案を一つとりまして、開発会社と新潟県当局の関係者の方に米ていただきまして、三回にわたつて実に詳細に調査研究をいたしたのであります。ただいまの段階といたしましては、幹事会といたしまして必要な資材あるいは研究と申しますか、ほぼ出そろつたようなかつこうになつておりまして、計数の整理あるいは各般の比較対照ができるような段階になりましたので、ここ数日の間にその比較対照、あるいはそこまでできるかどうか見通しがつきませんが、対策案といつたようなものを作成いたしまして、審議会に、技術的に検討した結果、こういうことになりましたという御報告を申し上げる段階に至つております。大体ここ四、五日の間にある程度の案がまとまるのじやなかろうかというふうに考えております。
  185. 倉石忠雄

    倉石委員 この電源開発の問題は、われわれ非常に重要視しておりますが、只見川は、私が申し上げるまでもなく、とかく政治問題化しそうになつて、私どもそれを一番憂えるのであります。そういう政治問題化したために、われわれが一日も早くやつてもらいたいと思つておる電源開発が遅れる。私どもの想定するところによれば、少くとも今月中にはきめて着干してもらわなければならない。そこでそういうことを心配いたすわけでありますが、ただいまお話のありました三者会談と通産省とは一体どういう関係に立つておりますか。
  186. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 私審議丘の計画部長でございますので、詳しいことは存じませんが、少くとも三者会談の過程におきましては、通産省と格別の関係を持つたのじやなくて、会社同士の話合いで審議を進めているというふうに了承いたしております。
  187. 倉石忠雄

    倉石委員 そうしますと、こういうふうに了解していいのですか。三者会談でまとまつた意見は、ただいまお話になりました審議会の意見と結論は同じになるのですか。
  188. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 先ほど申し上げましたように、審議会で開発会社に只見川に関する調査研究を去年の秋に指定いたしまして、その結果に基きまして、開発会社としては予算を組み、主務官庁の許可を得まして、爾後調査研究を進めておつたのでありますが、その結論が出て参りまして、その結論を政府に出す前に三者の間でいろいろお話をして、三者の間で結論がついたものを政府に出す。ですから、審議会でその案の通りこれを決定せねばならぬという義務は毛頭ありませんので、一つの案として出ている次第であります。
  189. 倉石忠雄

    倉石委員 政府はこの只見川の開発に対して独自の調査をされ、一つの見解を持つて、それを電力会社に指示しておつたようなことはないのですか。
  190. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 私が承知しておる限りでは、そういうことはございません。
  191. 倉石忠雄

    倉石委員 それではお伺いいたしますが、只見川は、今あなたの御説明のように、本流案と分流案が今まで意見が対立いたしておりますが、本流案については政府は調査費を出して十分に今まで検討されておるようでありますが、分流案に対してはそういうことを今までおやりになつたことがあるかどうか。
  192. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 今までの只見川に対する調査の問題でございますが、今まで政府で関与いたしました調査の過程を申し上げますと、安定本部当時、河川総合開発協議会というのがございまして、そこでいろいろこの問題に対して調査をいたしました。引続いて当時の公益事業委員会の方から委託を受けてOCIの方で調査した資料がございます。それ以外にもその都度調査はいたしたのでございますが、問題としてはその二点でございます。私の関与しております安定本部の後身であります経済審議庁といたしましては、さきに申しました河川総合開発協議会、これから出したのが主でございます。分水案と申しましても、結局貯水池をたくさんつくりまして、その貯水池の中から分流して行くわけでありますから、貯水池を調査するときには分流も本流も別に相違はございません、分流の方で一番調査を要する問題は、分流する際にトンネルを四十キロばかり掘るのでありますが、そのトンネルを掘つて行く際の地形並びに地質の問題であります。もう一点は、総合開発の点でありまして、信濃川の流域の農業開発に関しまして、どのような調査が必要かという問題でありますが、その両方の調査が調査の主たる対象になると思います。そこで前者の地質地形の問題に関しましては、私の知つておる限りでは、河川総合開発協議会の時代でも、もちろんOCIのときでも、立案に支障のない範囲の一応の調査はできておるというふうに承知いたしております。それから農業関係の問題でありますが、これに関しましても、河川総合開発協議会の方から、農林省並びに金沢の農地事務局の方へ調査を委託しまして、そうして調査の結果を徴してございます。これはまだ農林省で検討中でございまして、農林省からは正式に報告を受けていないのでありますが、非公式な調査としてはもらつておるのでございます。そういう関係でございまして、調査と申しましても、本流と申しますか、只見そのものの貯水池の調査は一緒でございます。それ以外の調査といたしましては、今申しましたのが調査の主眼点でございますが、もちろん実施という段階になりますと、これは調査にも非常に濃淡がありますから、いろいろ問題があろうかと思いますが、少くとも立案には大体さしつかえない程度の資料があるのじやなかろうか、かように考えております。
  193. 倉石忠雄

    倉石委員 ただいまお話にありました三者会談の結果、政府に報告が来ておるということでありますが、それをひとつ御説明願いませんか。
  194. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 三者会談の主要なる点だけ申し上げたいと思いますが、三者会談の結論としましては、本流沿いに開発をいたすということになつております。それで第一の着手点は奥只見と田子倉と、それから黒又、この三つの地点を第一に着手いたします。それからもう一つの点は、OCIと違います点は、田子倉のダムの高さをさらに十メートル高めるべきだという意見を出しております。それからOCIには全然出て来なかつたのでありますが、先ほど申しましたように、黒又川のみを選びまして、そして新潟県で必要だと思われる農業用水は黒又川で大体まかないまして、そして一応ここで七万七十キロぐらいの発電を計画しておりますが、なお黒又第一、第二の貯水池で農業用水が非常に下足する場合には、田子倉の一部でこれを補給したいというので、田子倉から黒又川の上流地点に、約三キロばかりのトンネルを掘りまして、必要な際にはその水を流して行くというような計画はどうだろうということに結論はなつております。
  195. 倉石忠雄

    倉石委員 この川のキロワツト時の発電する経費これは本流案と合流案と二つにわけて御研究なつておるのであろうと思いますが、それをあまり詳細でなくてもいいですからお聞きしたい。
  196. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、この只見川の本流案、分流案両方の比較をいたします際に、両方ともそれぞれ違つているデーターと申しますか、考え方自体が違つておるのでございまして、たとえば単価の出しよう、あるいは水の取入れの量あるいは仕方等に相違がございまして、そのままで両者の比較はできません。それて今までいろいろ申し上げましたように、両者に来ていただきまして研究いたしましたのは、何とかして両方とも納得の行く基準で両者を比較したい、そういうわけで基準を整えましてそうして比較中でございます。と申しますのは新潟県の案でありますと新潟県が一番いいようにできておりますし、開発会社の方で出した案でありますと開発会社が一番いいようになつおります。そこでいろいろ突き詰めて行きますと、基準のとり方でずいぶん食い違いがある。そこでどつちを正確な案としてとるべきかということは問題でございまするから、そういう基準の点に関しまして、それぞれデータを整えまして、両方ともそういう基準でよろしいというところで目下作業に入つております。従いまして今のところどちらがどうということは申し上げかねます。
  197. 倉石忠雄

    倉石委員 私は今のお話は実におかしなお話だと思う。私どもが事業計画をやる場合に、同じ一本の川で出力がどのくらいかを大体見当をつけて、そしてどちらの方法でやることが有利であるかということの見当がつかないで発電工事の着手なんかできるものではない。今のあなたのお話は、ちよつと私の聞き違えかもしれませんが、福島県と新潟県と別なデータで調査されたというお話ですが、今まで政府は一億円以上も調査費を使つておる、OCIについてはそういうことを言われておるのでありますが、只見川の出力を調査する場合に、初めから本流というものを前提に置いて、それだけ調査されたので、あとはほかの方の、新潟県なり、県の経費にまかして、県庁がやつた経費のことを、あなたは言つておられるのじやないですか。
  198. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 そういうわけではございません。たとえば工期にいたしましても新潟県の方は四年でできる、それから会社の方では五年かかる。あるいは単価のとりようにいたしましても、片方はこういう単価のとり方をしたい、片方はこういう単価で行きたい、あるいは水の取入にいたしましても、片方は――電気は御承知のようにキロワツト・アワーばかりの問題ではなしに、渇水時その他冬場あるいは夏の渇水当時には非常に高い電力料でありますので、そのままの比較でなしに、ある係数をかけてやつた力が事態に即するのではなかろうかといつたような、いろいろの見解の相違がございますので、両者納得の上でそういう計数を合せまして計算をいたしたい。ですから従来の調査云々の問題ではなしに、調査はありますけれども、その両者間の食い違いを計数的に基準を整える、こういうことであります。
  199. 倉石忠雄

    倉石委員 後日ただいまの調査の結果の資料はいただけますか。
  200. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 先ほども申しましたように、もうしばらくで大体計数が整うようでございますので、できますればもちろん提出すべきものであります。
  201. 倉石忠雄

    倉石委員 釈迦に説法なんですが、電力というやつは大きな貯水池で豊富低廉な電力を供給する、しかも工事してもらうにはわれわれ一番早い方を希望しておる。今二百万キロの水を毎日むだに流していることを考えれば、なるべく早くしてもらいたい。これは政府も御同感だと思いますが、どうなんですか。
  202. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 早期あるいは安く多量にということは、電気の原則でございますが、只見川の問題は、御承知のように日本で残されました最後の大貯水池と言つても過言でないほどあの地点以外に石炭にかわるような水は、少くとも関東、東北にはもうございません。そこで将来の需用供給を考えまして、たいがいできるものは、自流式あるいは、火力とかいうことになりますと、需用が増せば増すほど冬場の石炭にかわる電気というものが必要になつて来るわけでございますので、そういう需用に見合うような電気を超すべきである、あるいはただいま御質問にありましたように、それは当分先の話だろうから、とりあえずは早く水をとつて電気を早く起した方がよかろうというようないろいろな論があろうかと思います。そういう点をいろいろかみ合せまして、目下総合的に研究中でありますので、もう少し御猶予願いたいと思つております。
  203. 倉石忠雄

    倉石委員 私は、実はきようはゆつくりいろいろ技術的な検討をしてみたいと思つて出て参つたのでありますが、もう時間も大分迫つておりますから後日に譲ります。われわれは非常に関心を持つておる。私は福島、新潟両県に関係のないところの選出代議士でありまして、両県には何らの因縁がありませんが、多少事業関係を持つておるものから見て、只見川の電源開発のおくれていることを非常に憂慮している一人であります。ことに私ども政党人として、特に岡野大臣に御希望申し上げたいと思いますのは、先ほど大臣がお見えになります前に申し上げました通りに、われわれは地方的ないろいろな利害関係で国の大事な仕事を左右されては非常に困る。これはさくまで正正堂々とやつてもらいたいということが一つと、もう一つは、早くしかも公平に、だれが見ても技術的にこれはもつともだと納得されるような方法を講じられないと、やはり政治問題化するおそれがありますので、政府はこの点に特に留意せられて、只見川の発電については分慎重に、なるべく早くやつていただきたい、こういうことを希望いたしまして、なお他日に質問をいたしたいと思います。
  204. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 御趣旨しごくごもつともでございますので、われわれといたしましてはよく慎重に、また御趣旨の通りに努力いたしたいと思います。     〔葉梨主査退席、原(健)主査代理着席〕
  205. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 ただいまの倉石君の質問に関連いたしましてお伺いをいたしておきたいと思います。水力発電に対します一億二千万ドルの外債の折衝が、世界銀行に移されて目下行われている最中だと聞いておりますが、それが火力の場合と違つて多少難点があり、渋滞しているというふうに伝えられておるのであります。この点どんなことになつておりましようか。
  206. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 渋滞はいたしておりませんけれども、もと輸出入銀行で出すことになつてほぼ話がきまつておつたのでございますが、世界銀行でやりたいということになりまして、世界銀行の方へ話を移しまして、四千一百万ドルだと思つておりますが、それが世界銀行の方で融通ができる、こういうふうになりまして、その方は大体見当がついております。  それからあとの方はまだ具体的な要求は出してございません。その四十二百万ドルが正式にきまりました上で、あとの方面に移りたいと思つております。
  207. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 私の伺つているのは四千二百万ドルの火力の方の問題ではない。火力の方は問題がないのだと聞いておるのです。問題になるのは一億二千万ドルの水力発電の問題で、それが非常に難航しておるのだ。これは高碕総裁が渡米していろいろ交渉したりなんかしておつたが、どうも結果が思わしからずして帰つて来られておるのだというように聞いておるのですが、さようでありますかを同つておるのであります。
  208. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。大体世界銀行で、その当時といたしまして約一億ドルくらいな信用を供与してもよいというような結論になつておつた次第であります。その間に火力の四千二百万ドルが世界銀行に引取られるということになりましたが、その後の交渉の結果はよく存じません。政府委員からひとつ……。
  209. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えいたします。ただいまお話がございました一億二千万ドルの水力発電の世界銀行に対する借款の問題でありますが、お話のように、問題点といたしましてわれわれが承知いたしておりますのは、インパクト・ローンと一つておりますが、あの借款は火力の場合と異なりまして資金がほしい、入用だ、火力の場合は御承知のように火力発電設備の輸入代金に充てるわけでありますけれども、水力の場合はほとんど大部分資金的なものとして考えられている点に一つ問題があるようであります。それからなお水力の計画につきましては、火力と違いまして今後の日本の全体の水火力の開発規模、需給推算、そうした問題の説明が済んでおりませんので、今後進める上におきましては、その辺の問題もあわせて十分折衝する必要があると考えております。
  210. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 需給状況に対する計画が完全でないというところに難点があるようだというお話と了承しますが、この間予算総会の方におきます答弁を聞いておりましても、火力発電に対します実際計画と財政投資これこれときめてあるが、水力発電の方の確たる計画はまだ完成していない、結論が出ていないようにうかがえるのであります。さらにただいまのような需給計画について、たとえばそれだけ電源を開発してもそれをどんなふうに将来消化するかという計画が立つていない。それが世界銀行の同意を得る非常なじやまになつていると申しますか、そこに難点があるのだ、原因があるのだ、隘路があるのだというように伝えられておるのであります。そこで第一に伺いたいことは、その計画と、財政投資というのは、先般の予算総会ではしどろもどろであつたように実は伺つておつた。そう申し上げてはたいへん失礼でありますが、伺うところでは、財政投資の計画に発電計画というものが、案が確定して、この財政投資をきめたのじやないというようにとらないわけに行かぬようなお答えのように伺つたのでありますが、あの点をこの際はつきりしておいてもらいたい。  それから第二点はただいま申し上げましたように、将来の需給計面に対しまして、これがどうもうなずけるような計画が立つてない。そういうことが世界銀行の外資の導入に隘路となつておる、このようなことがあれば、その間の事情、この二点につきましてそれぞれの担当当局からでけつこうでございますから……。
  211. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいま私の申し上げようが非常に悪かつたかと思いますが、インパクト・ローンのほかに第二の問題点についての御説明をいたしました。今後の日本の電力の電給想定と申しまするか、あるいはさらにそれを地域別に、あるいは業種別にということもございましようし、それから価格がどういうことになるか、といつた、それらの日本の今後の電力の開発に関連する諸問題を明確に先方に説明する必要があるということを申し上げたわけです。御承知のように、現在この世界銀行との交渉は火力発電が、その後と申しまするか、急に出て参りまして、それを交渉をしておりましたので、水力の方は十分な説明を今後するということになる状況でございます。今申しましたような点は一応向うに書面は出してございまするが、詳細にわたる説明は今後の問題でございまして、その際にこれらの点を明確に向うに納得させる必要があるだろう、こういう趣旨で申し上げたつもりでございます。  それから第二のお尋ねの点は、この前の予算総会で当局から御説明がございましたのは、三十八年度の基本計画は形式的に最終的にはまだ決定してない、こういうことで申し上げたわけであります。これは二十八年度の基本計画をきめまして、電源開発調整審議会の議を経て正式に決定になるわけであります。その手続は現在まだ済んでいないということで申し上げたので、関係省の間で二十八年度において開発すべき計画というものは実質的には進んでおります。ただ御承知のように、只見川の開発の問題もございますし、それから財政の投融資が電力各部門には非常に多額にあるわけでございますから、これが予算として今御審議の過程にございますので、それらの点ともにらみ合わせまして、最終的に形式上決定するのは少し先になる、と申しましても、今から申しますれば近い将来でございますが、決定に相なると思います。それからなおこの前も問題になりました基本計画が決定しておらぬのに、すでに財政融資の一部が出ておつて、その資金も一部出ておるのじやないかというお話もございましたが、これは基本計画は法律の定めるところによりますと、毎年度決定することになつております。従つて形式的には二十八年度開発の基本計画というものは、あらためて審議会の議を経まして決定することになるわけでございますが、すでに二十七年度におきまして基本計画に取入れられまして、二十七年度中にすでに開発に着手しておりますものは、当然二十八年度その継続事業をやることになるわけでございます。その分が二十八年度に落ちるというようなことは考えられませんので、たまたま今回暫定予算というような形になりましたので、現在財政的な資金が出ておりますのは、二十八年度の基本計画としても問題になるおそれのまつたくない継続事業に対して、資金の投融資をやつておるという状況にあるわけであります。
  212. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 私の伺つておるのはそうじやないのでありまして、まだ計画にきまらない問題がある、しかるに二十八年度の電源に対する財政資金の投資は総額が決定しておるじやないかこういうことであります。そこに矛盾があるじやありませんか。この間の予算総会における質問もその点に私は疑義があつたんだろうと思う。財政投資の総額がきめられて、計画はまだ立つていないのだ、一部にしろまだきまつておりませんというようなことではならぬのじやないですか。それから今後あるいは何だか追加予算か何かの形でお求めになるということであればこれは別問題です。その点をはつきりなすつたらいかがですか、ということを申し上げておるのです。
  213. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまの御質問でございますが、二十八年度の電源開発地点並びに電源開発に要する所要資金、その中で政府資金がどれほど必要かといつたような内案はございますが、これは予算の問題でございますので、正式に予算がきまりませんと正式決定というまでには審議会では参りませんので、審議会の決定という段階にまで至つておりませんが、ただいまつけておりますのは継続費分の中で事業をやめるわけに参りませんので、普通の公共事業費等と同じようなことで、継続している事業に関しましては、暫定予算の中に組み込んで出しておる、こういう次第でございます。
  214. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 そうじやないのです。暫定予算の、今までの継続費で前から来ておるのは、当然財政融資でそれは組まれておることだろうと思いますが、さらに今年度着手しなければならない、これから決定する分がある、それはまだ決定しておりませんという。しかし予算の上では財政投資として総額がきまつておるじやありませんか、というのです。財政投資の総額が決定して、その決定を見なければ審議会の議決はできません。それではこの予算がとれたらばこの仕事をしますということになるのですか。
  215. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまのは新規地点の問題だと思いますが、新規地点に関しましては、御説の通り予算がきまりませんと、正式な着手はできないということになると思います。予算がきまりまして、そうして来年度資金のわくなり、あるいは地点別の正式決定を見まして、そうして新規の地点というものはきまるのでありまして、予算がきまらないのに、地点をきめるというわけに参りませんから、今のところは内定というたけできめておるわけであります。
  216. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 そうではないのであります。予算を組むに当つては、どれとどれをやるということが決定しているからこそ、予算が組めるのでしようということを申し上げておるのです。それがきまらずに、予算があつたら初めてやるのですというような、そんなことでは、この予算内容というものはまことにずさんなことになる、それを私は何を間違いじやありませんかと申し上げておるのです。
  217. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 御説のように、積み重なつた作業でございますから、新規地点はどれどれというふうに予定いたしまして、そうして予算に組んでおるわけでございます。
  218. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 それではその計画というものは、省としてはきまつておるのですか。
  219. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 非常な入り組んだ規定になつておりまして、基本計画を定めまして、その基本計画を審議会の議を経て決定するというかつこうになつておりますが、この基本計画そのものの中には、資金のわくも一つの条件になつておるのであります。ですから一資金のわくがきまりますと、新規地点もはつきりきまるわけでありますが、まだ資金のわくがはつきりきまりませんので、予定はしておりますが、はつきりした最終決定にはなつておらない、こういうことであります。
  220. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 まことに私はふに落ちないのでありますが、国会は国政の最高の決定機関であります。国会の決定をさらに上越す決定機関があるのでございますか。
  221. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 もちろんそういう意味でなくて、予算国会で正式にきまりますれば、予定した新規の地点も決定して参る、こういう意味であります。ですから、国会が国政の最高機関であることには間違いありません。
  222. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 審議会というもの、審議の機関というものは、そうすれば国会の決定に基いてやるものである以上は、審議会の決定というものは、おのずから国会の決定を制限するわけに行かないことになる。
  223. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 審議会は法的には一種の諮問機関でございまして、予算が議会で正式にきまりますれば、その予算に従いまして、新規地点その他をきめるということになつております。
  224. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 それならば計画がすでにできておるということにならなければおかしいじやありませんか。
  225. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 予定した地点はもちろんできておるわけでございます。
  226. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 この点は、私はあえて与党だからといつて云々というのじやありませんが、先般来の予算総会の質疑応答を伺つておりますと、まことに矛盾して私の頭にはひびいて来る、その辺があなた方とどうも見解の相違かもしれませんが、その辺のことはよほど予算を組んで出しておられます以上は、計画がきまつたからこの予算出した、しからばその計画がなくてはならぬ。それが計画はまだきまりません、審議会へかけてからですというのでは、審議するのにまことに困る。かりに今日私ども分科会でこれの決をとるとしましたらどういうことになると、あなたはお思いになりますか。
  227. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えいたします。今お話の普通言います計画というものはきまつております。ただわれわれが最終的に、形式上きまつておりませんと申しますのは、電源開発の法律によりますと、最終的に決定する手続としては、審議会にかけて、経審長官が官報に告示することになつておりますが、その手続はまだしていないというのでありまして、この予算を組みます前提の、普通に言う計画というものは会社別、地域別にきまつております。こういうことで御了承願います。
  228. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 国会で可決して初めて審議会にかけられるのです。審議会というものにかけてもかけなくても、国会で可決している以上は、国会がやれと執行部に命じていることになるのでありますが、よろしゆうございますか。その辺何か審議会の規則と行き違いがあるとしますれば、これはその重大な誤謬を是正しておかなければならぬわけであります。国政運用上これは国会として当然やらなくてはならぬことになるのでありますが、いかがでございますか。
  229. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 審議会は、法律的に申しますと、諮問機関でございます。そのほかの法律にもいろいろ諮問機関がついているのでありまして、行政官庁が処分をいたします場合に、諮問機関の議を経ろということは、他法律にもいろいろ例がございます。それと今回の場合も同じでございまして、政府予算を組みます場合も、計画に基いて積み重ねて、本年度は幾ら金がいるのだということでやつているのであります。政府が行政的に決定をいたします場合に、法律の規定によりまして、そこの議を経ろということになつておりますので、その手続を経まして正式に官報に告示するということで、これは他の法律にもいろいろ諮問機関がございまして、同じような手続を経ているものはほかにもあると思います。
  230. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 それだから私は申し上げているのであつて、それなら計画ができておりますと言わなくてはならぬはずです。せんだつて来の予算総会でも、計画はまだ一部できておりません。こういうことでどこまでも通しておられたから、私は今ちよつと質問したのでありますが、そういうことでは疑問が残りますということを申し上げるのであります。私はこれで終ります。
  231. 原健三郎

    ○原(健)主査代理 河野一郎君。     〔原(健)主査代理退席、葉梨主査着席〕
  232. 河野一郎

    河野(一)委員 御答弁は政府のどなたか適当な方からでけつこうであります。なお申し上げておきますが、今私がお尋ねすることは、きようここで御答弁ができなければ、予算総会で明日か明後日総括質問があるはずですが、それまでにお答え願えばけつこうであります。  第一は、先般来政府の御答弁にありますガリオア、イロアの約三十一億三千万ドルの援助資金内容について御説明願いたい。これはひとつ詳細に願いたいのであります。これは米国政府から日本の政府がこの内容についてどういうふうに通告を受けているのか、承りたい。なおこの機会に申し上げておきますが、私たちの持つておりまする資料といたしましては、一九四九年の一月米国の陸軍省がアメリカ議会で発表したガリオア資金予算請求の際に説明した資料だけであります。しかしアメリカの政府から、もしくは占領軍当局から講和成立のときに、おそらくこの内容について日本政府の方に内訳が来ていると思います。これについて御説明願いたい。もしくは後刻でもけつこうでありますが、数字的に資料を御提出願いたい。  第二点としましては、これら参りました物資を公団その他を通じて民間に売却されたはすでありますが、その売却代金は貿易特別会計に繰入れたという話であります。政府はこれら援助物資の私が次に申し上げる内容について詳細に御説明願いたい。第一は、第八軍のクオーター・マスターから払い下げた物資の内容を承りたい。第二は、自動車、舟艇類について承りたい。第三は、タバコであるとか、くつであるとか、衣料であるとかいうような報奨物資について詳細を承りたい。それからその次は、終戦時に旧日本陸海軍が持つてつて米軍に接収され、それを八軍を通じて日本政府に払い下げられたものがあるはずですが、その内容がどうなつているか、承りたい。これらのことは、今申し上げましたように、そのものをどういうふうに払下げをして、どう処分されたかということを詳細に御説明願いたいのであります。  これらは今申し上げましたように、今この場でその用意がなければこの場で承る必要はありません。明日でも明後日でも、予算総会で総理大臣に対する最終質問までに、われわれ委員に届くようにしていただけばけつこうであります。これは先般私が予算総会で質問いたしましたときに、終戦後占領中のことであるからということで、やじ等も出ましたが、そういうものじやないと思う。これは非常に重大なことでありまして、一方には二十一億ドルに及ぶ対米債務は、とにかくどういうかつこうかによつてこれから日米交渉で片づけなければならぬ。しかもこれは日本国民全体が負担しなければならぬ債務であります。この債務が一体どこにどう消えてしまつたのか、どういうふうに処分されたのかということをわれわれは知らなければならぬのであります。もちろん占領直後のことでありますから、詳細にと申し上げましても、わからぬものはわからぬでやむを得ないかもしれません。しかし少くとも国民の常識としてわからなければならぬ程度のものはわからせていただきたいと思うのであります。国民の側から申しますれば、政府からアメリカの好悪によつてこれを払い下げるのだということで、相当の代金を払つております。政府の方に金を払つております。払つておるから、その払つた金が、先般私が申し上げるように、石炭その他を政府が買つて、そしてその石炭その他がどこかへ行つたといつて、その金をとらないということになるのでありますから、国民はアメリカから来た品物に対しては金を払つたが、自分が出したものは金をもらえない、自分たちがもらつたものは金を払つてもらつたのだということでは、国民感情としては納得できない。通産大臣もおいでになりますから、あえてこの機会に私は申し上げておくのだが、私は先般予算総会で申し上げたように、この品物は朝鮮へ行つているんだから、アメリカに交渉したら、アメリカが朝鮮からもらえと言つている、すでにそういう話も始まつておるようであります。これはこの議会はそういうことで過ぎても、当然次の議会では、だれかが責任を負わなければ、国民は許しません。李承晩政府はおそらく金は払わぬでしよう、おそらく政府はとれぬでしよう。そういうことになりますと、これは国際問題としても、こういう問題の詳細を国民が知り尽しまして、そうしてこれに対する責任の帰趨を明瞭にいたしまして国民感情を割切りませんと、将来の外交交渉の上におきましても、国民間の感情の上におきましても、よろしくないと思いますから、この際通産当局は御苦労でもひとつ御勉強くださいまして、なければ、ないでよろしい、ないものを今ねだつてもしようがないのでありますから、なければ、ないでよろしい、あるなら、あるものは詳細を出していただきたいということをお願いします。なおこの機会に通産大臣から所見があれば承りたいと思います。
  233. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 詳しく調べさせまして、次会までに御報告させましよう。
  234. 河野一郎

    河野(一)委員 この問題はそれだけで、十分材料をちようだいしてからあとにいたしますが、私はこの機会に通産大臣の他の問題で一点承りたいと思います。  それは今も同僚から電源開発のことについて御発言があつたようでありますが、私は先般の予算総会で肥料問題について少しくお尋ねをいたしましたが、電気とか肥料とか鉄とかいうものについては、基本的な指導方針を持つておやりにならないといかぬと思うのであります。たとえば電源開発をするにいたしましても、開発した電気が一体どこへ、どういうふうに使うのだということが、もちろん計画はおありだろうと思うのでありますが、夜間の電力のごときは相当に肥料にまわすべきものだと思います。そうすると、ここで肥料問題に関連して肥料政策の将来はどこに置くんだ――ただ農村に高いとか安いとか、圧力が非常に強いからというて、その方にばかり重きを置いてものを考えて行くということは非常な間違いであります。肥料政策は、日本の硫安工業に関する限り当然貿易振興、外貨獲得の上から論じなければならぬという、最も熱心な論者の一人一であります。  私が今ここでお尋ねしようと思いますのは、鉄の問題についてであります。川崎製鉄が千葉に工場をつくつた、これについても既存の各製鉄会社が相当に圧力、圧迫を加えたということは、天下公知の事実であります。一体こういう産業が起ろうとするときに、国内の既存産業が、そういうものが出て来ると、自分たちの既存の勢力が押えられるかる、そういうものはあんまりやらぬ方がいいんだ、改良だとか生産費の切下げとかになるようなことは、やれあれは二重投資である、今の日本のように資材のないときに何だというような議論をしてみたり――社会党の諸君が主張されますように、完全に統制経済で国営で行くんだというなら別でありますが、そうでない以上は、既存の勢力が新しく努力しようとするものをむやみに押えるというようなことは、厳に戒めなければいかぬと思う。そういう際に現在のように政府が強く統制をいたしておるというようなことでありますと、せつかく起りかけようとする新しい努力、新しい研究というものは遅れますために、産業の発達を阻害する点が私は非常に多いと思う。通産大臣は経審長官もやつておられるのですから、そういう意味から申しても、これらについてどういう所見を持つておられるか、この機会に率直に承り、同時に通産省の各それぞれの局部長諸君、この通産大臣の意見をお聞きになつて、こういう点について調子を合わしてもらいたいと思う。御所見を承りたい。
  235. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。川崎製鉄の千葉の工場をつくりますにつきまして、ほかの業者が圧迫したというようなことが、あるいはあつたのかもしれませんが、私案は寡聞にして存じておりません。しかし日本の全体の需要並びに将来の貿易政策の点から行きまして、鉄はどのくらいつくつたらいいだろうか、またコストをとれくらいにしたらいいだろうかということは一応全体の経済を総合して計画しまして、その計画にほぼ従つた財政投資をして行きたい、こう考えております。御承知の通りに、今は非常に鉄の値段の高いときでございます。まつたくの自由経済から申しますれば、生産者がたくさんできて生産力の増大によりまして価格を下げるというのも、一つの方法でありましようが、しかしそれにはまた財政資金の面からもいろいろ考えなければならぬこともありますし、またほかの産業との関連性もありまして、一概にこれをどうということはできませんけれども、結局われわれとしましては経審で総合的に、すべての産業をバランスがとれたような発達をさせて行きたいために、そのバランスをおよその見込みをつけて財政投資を割振つて行きたい、これは限りある財政資金でございますから、ふだんに自由自在に、自由競争のために必要な資金財政投資するわけには参りませんから、その点において総合的の計画のもとに、財政資金の割振りをして行く、こう私は考えております。
  236. 河野一郎

    河野(一)委員 これはどうも岡野さんから変なお話を承つたのです。前段の川崎製鉄が圧迫を受けたとか受けぬということを寡聞にして聞かぬと言われるが、聞かぬあなたがよほどおかしいのです。これほど天下公知の事実はないのですから、あなたはそういうことをおつしやらぬ力がよいと思う。別にそれを言えと言つているのではないから、それはどつちでもいいが、あなたの今の速記録をもう一ぺんお読みになると、これはあなたの所属しておる自由党の政調はそれじや承知しないと思う。あなたの今の答弁がそのままあなたの政党の政策に当てはまるか、当てはまらぬか、よく考えてもらいたい、あなたが超然内閣の大臣ならそれでよろしい、あなたの所属しておる政党はそういうことは言つておらぬはずです。計画的に資金を割当てて――それは開発銀行でやる場合にはそれでよいでしよう。しかし今のように政府が強力な指導権を持つておるときに、そういうふうなことをあなたがおつしやいますと、計画経済をやつておるのだということになりはしませんか。もつとコストの安くなるような努力をしておるという話を聞いたら、それをどんどん助長することはあたりまえではありませんか。それを熔鉱炉が幾らあるのだから、これ以上熔鉱炉をつくる必要はないと言われる、あたかも既得権を持つておるものに対してはその既得権を保持するために、すでにあるものに対してやつてやるのだ、新たにここに計画をし努力をしようというものには、それは二重投資になる、いたずらに生産設備がオーバーして来るということで、それはそうは行かないのだというふうに、あなたがもし考えて通産大臣をやつておられるならば、私はあらためて岡野君と論議をしなければならぬし、あなたのやつておる政治に対して私は非難しなければならぬということになる、それは少し違いはしませんか、そういうことで日本の産業界に今臨んでおられるとしたら、これは非常な間違いたと思う。はつきり計画経済なら計画経済でおやりなさい、それならそれでよろしい。そうじやない、中途半端がいけない。たとえば硫安にしてもそうなんです。硫安にしてもその政府の態度は一番悪い、ろくな援助もしなければろくな補助もしないくせに、戦争中の流れをくみ、戦争下の政府がすべてを押えておつたことを忘れないで、わずかに電力の分配くらいのことを握つてつて、それだけで一切を押えようとする、その気持が日本の産業を非常に阻害する、硫安なんかでもその通りなんだ。だから少しも硫安製造のコストが下りて行かないということになつていると思う。そうじやないのた。もつと信用のある人がやるとか、努力しようとする人がやる場合には、どんどんその努力なり信用なりを買うべきだ。今までやつておつたもの、つまらぬ、なまけておるもの、そんなものはほつておいてよろしい。そうしなければいかぬと私は思う。それを、たた既存のものが政府に向つてうまいことを言つたり、既存の地位な維持するために、とんでもない見当違いのところでむだな金を使つて、それに眩惑されて、まごまごしているから、さつぱり日本の産業というものは改革もされなければ、更新もして行かない。これはとんでもない。今言う通り、川崎製鉄の千葉の工場に対して八幡とか、富士とか、日本鋼管というようなものが一緒になつて、川崎がこんなところに出て来て、新たに銑鉄の溶鉱炉をつくるということは、今まですでに銑鉄の溶鉱炉はたくさんある、余るほどあるのにつくることはじやまだじやまだと妨害した。その妨害を突破してつくつたのが、川崎の工場だ。そしてでき上ると、政府は行つて、さもさも、よくやつた、われわれの希望するところだという顔をする。できるまでにとれたけ圧迫したかわからぬ、できるまでに、どれだけの障害を既存のものが与えたかわからぬ。これは天下周知の事実だ。そういうことでは困るから、そういうことでなしに、通産大臣は、努力しようとするものはどんどん援助して行くのだ、そういうふうなことで困つている人があれば、どんどん協力いたしますという態度を、あなたがここで明確にされることが、全通産省の中に流れておる空気、もしくは日本の産業界の既存の勢力に対して、非常に大きな啓蒙になるから、私はあえてこの質問をした。そうでありませんか。私は大体開発銀行についても言い分がある。開発銀行その他占領中につまらぬブロツクをつくつて、既存の勢力をつくつて、これらの一連のものが財界に勢力を持つて、新しく努力しようという勢力に対して、圧迫を加えるという苦々しい事実がたくさんあるのです。そういうものについては、講和をして、これからは自由に日本がやれる。今まではアメリカの勢力あたりを利用して、よからぬ計画や陰謀をもつて、この背景の上に立つて日本の産業界とか、日本のあらゆるものを曲げておつた。この勢力を今こそぶち破つて、日本は今こそ行くべきときだ。そのときに、そういう時代につくられた勢力を、いつまでもあなたが支持するようなかつこうはよろしくない。あなたの今の答弁は、そういうことじやないとおつしやるかもしれないが、答弁をそのまま聞くと、そういうことになる。むだなものをやつてはいけません、入り用な程度のものを、あまりむだのないように計画的にやつて行く、それを助長して行くということになれば、既存のものを助けて行くということになる。それではだめだ。少々むだができても、古いものはもう捨てて行くことはあたりまえです。旧勢力が流されて、新しい勢力がここに生れて来ることはあたりまえです。それをあなたが認めないということは、私は非常な間違いだと思う。そこに自由経済のよさかあるのではありませんか、それを自由経済の上に立つて、そうしてつまらぬ計画経済を権力のもとに立つてやるということは、とんでもない誤謬であつて、民間はそれによつて非常に迷惑する。あらためて所見をただしたいと思う。
  237. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の言葉があるいは足りなかつたかもしれませんが、自由主義的に既存の勢力ばかりを尊重せずに、できる人が新しい方面にどんどん出て行く、これは創意工夫を尊重している自由主義経済の基本原則でございますから、いいことでございます。ただ私は常に――先ほどの言葉は、国家の資金というものを今出しております。それが大きな金になります、ところがその金と申しますのは、何で出て来たかと申しますれば、結局国民の納税でできて来ておる。そしてしかもその納税でできておる資金の源泉でございますが、それには限度がある。そういたしますと、国家がもしその金を使います場合には、やはり最も効率的に、最も納税者の意思に沿うように使うのが、ほんとうであると思います。そういたしますと、今の河野さんのお説は、事業家としてのお立場でお考えになつたことと思います。事業家としては、いいとおぼしめしたことはどんどんおやりになるだろうと思いますが、しかし国家資金を投資して行くということになりますれば、やはり総合的に、国家のためになつて、基礎になつておるところのものに、重点的に、効率的に金を使わして行くことがいいことだということで、いわゆる国の資金を使いますときには、そういうふうにして行かなけれはならぬのだろう。これは現段階においては金も少うございますし、また市中銀行におけるところの金も非常に少い時代でございますから、金を使つて事業を起すとか、または旧事業拡張するとかいうことにつきましては、これは相当総合的に見て投資しなければならぬ、こういうことを私は申し上げた次第でございます。
  238. 河野一郎

    河野(一)委員 今度の答弁は、やや私も了承いたしますが、そういう際に、既存のものにとらわれちやいかぬということを、強く通産大臣としては考えてもらいたい。いいか悪いかということか大事なんである。どつちか生産費が下るか下らぬかということが大事なんであつて、どつちが日本の産業の将来のために貢献するかしないかということが大事なんである。既存のものにとらわれることはやめなければいかぬということをよくお考えになりませんと、今申すように、既存のものにとらわれ過ぎると、そういうことになる。ことに国家資金を運用するのでありますから、今の開発銀行のやるように、まるで右利貸しが金を貸すような態度ではいかぬということも、現に通産大臣の立場から強く主張してもらいたいと思う。こういう点についても、私は非常に通産大臣に奮発を願わなければならぬ点が多いと思う。ことに私が先ほども申し上げました硫安製造の資金のごときでも、終戦のときにわずかばかり出したが、その後ほとんど出ておらぬ。私は最近調べてみて驚いた。これだけ重要な産業に対して、わずか三十億か四十億しか金が出ておらぬ、その後ほとんど出していないというような状態だから、国際の水準から遅れてしまつて生産費が高い。今ごろようやく調査会か審議会をつくつて、二百億くらいの金を出すとか出さぬとかいうようなことを言つておるということでは、今までの産業に対する政府の指導と申しますか認識というものは、相当に怠慢だつたと思う。これは通産省が責任をとるのか、農林省が責任をとるのか、通産省の言われる国際貿易の外貨獲得としての産業なのか、農林振興食糧増産としての産業なのかということが、はつきりけじめがついていないから、こういうことになつているのであつて、国内で使うだけはできておる、あとは値段を下げさえすればいいということしか考えないから停滞してしまつておる、今ごろになつてようやく、外国の会社をつくろうとかつくらないというような、とんでもない相談をしてお茶を濁しておるところであつて、そんなことはもちろん岡野君の理想じやないと思う。理想というものは、外国の会社をつくるつくらぬというような、そんな枝葉末節なことでは問題にならぬのであつて、そうじやない、もつと基本的に国際貿易にたえ、外貨鶴得をするにたえるたけの生産費の引下げをするところの助長政策をとつて行くことが理想なんだ、そこに行くためにこそ硫安政策はあるのだ、そうして国内の消費はこの安いものをもつて、いるだけ出してやるという意味において、農林大臣と違つた意味において、通産大臣は理想を持たれなければいかぬと思う。私は硫安を論ずる場合に、決して農民の側に立つてのみ硫安の問題を論じようとは断じて考えていない。農村で使う硫安のことは、外貨獲得のためにできる硫安を使うのだ、ここに需要の面の基礎を持つておる、硫安工業の発達の基礎としての内地の硫安の問題なんだ、農村問題なんだという角度に、内閣の認識をからつとかえることは、岡野さん、あなたの努力によつてかわるんです。こんな硫安なんというものは、農林大臣からとやかく発言さす問題じやないです。そこまで行つてこそ、電力の開発もはつきり国策の軌道に乗つて来るというところまで行かなければならぬと思う。ところが今申し上げるように、硫安のようなもうからない、ぼやぼやしておるものには、さつぱり開発銀行の金は融資されておらない。通産省の方のものだか、農林省の方のものだかわからぬようなものだから、身が入らぬということになつていると思う。ほかに一体何がありますか。国際貿易で外貨獲得をして行くというような気のきいたものは、一体何がありますか。ただ国内で食糧増産をやつて、なるべく払うものを下げようというような、そういう消極的な議論でなしに、積極的に開発銀行の金をどんどん使つて、外貨を持つて来いといつたら、これを使わなければ使うものがないと私は思う。そういう点においても、たとえば硫安工業界を見ておりましても、ただ既存の勢力であるとか、既存の組織であるとかいうものにだけとらわれておつてはいかぬ。どこの会社に有力な技術者がおるとか、どこの会社の計画かいいとか、どこの立地条件がいいとかいうようなものはしつかりにらんで、そういうものにこそ私は審議会も調査会もいりようだ、それに向つてどんどん国家資金をぶち込んで行くことが正しいのだと私は思う。御所見いかがでありますか。
  239. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。既存のものにとらわれるな――これはお説の通りでございます。それから国家資金を使う方法でございますが、これはせつかくの河野さんのお話でございますけれども、私はこう考えます。今とにかく血税とか苛斂誅求とかいわれてとつておる税金を基礎にした国家資金でございますから、これは最も効率的に使わなければならぬ。効率曲に使われるならば、私はお説のようにどこへ出してもいいと思います。それから硫安の事業でございますが、これは最近に投資も出ましたから、それに対して私は大体お説と同感でございますので、そういう方向に結論をつけて行きたいと存じております。
  240. 河野一郎

    河野(一)委員 これでやめますが、岡野さんは銀行でずつと暮されたものだから、金を貸すときにはよほどしつかり考えて出さなければいかぬということが頭にあるのだろうと思う。私らはそう考えない。国家資金なんですから、国家は必要な産業のためにはどんどん貸していいんです。そして全部が全部返ることが品的じやない。返ることが目的じやなくて、それによつていかに国家の基本産業が発達するかということが目的なんです。だから少々冒険があつてもよい。今のように銀行屋さんのセンスでもつて、まず担保がなければいかぬとか、どういう承認がなければいかぬとか、いつ返せるかということか先になつて、国家資金を運するから国家は出さない。そんなことはとんでもない間違いた。そんな感覚であなたは資金需要の口をきいてやれるようなことを考えておられるから、せつかく国家が要請する産業に金がまわつて行かないと思う。それでは今の小林中君あたりが、岡野君はいい相談相手だと喜んでいるだけであつて、さつぱりいいところへ金がまわつて行かない。そんなことじやないと思う。そうじやないのであつて、ほんとうに国家的にこの産業は助けて行かねばいけない初めのうちは金は返らぬかもしれぬけれども、これは必要だというものにはどんどん貸すように、あなたが仕向けなければいけない。過去の例から見ても、大体国家が金を出したもので返つたものは少い。それがほんとうの政治なんだ。現に船屋に貸している金はどうですか。とれるかとれないかわからない。そんなものでも絶対必要だといえば、どんどん貸すじやありませんか。開発銀行あたりがほかの一般産業に金を貸しておるのを見てごらんなさい。議会で問題になるようなものに対してはやむを得ず貸すけれども、その他のものに対して貸すときは、まるで高利貸しが貸すようなかつこうをしている。通産省がほんとうに奨励しなければならぬ、やらなければいかぬというものに金が出ているかどうか。そういう点、あなたは二つのポストの責任者でおられるし、国家資金の運用については長年の経験者であるから、大いに開発銀行あたりを指導、督励して、ほんとうに国家の重要な産業に金がまわるようにしてもらわなければいかぬと思う。この点について今の御答弁はもう一ぺん是正してもらいたい。
  241. 葉梨新五郎

    葉梨主査 できるだけ簡潔に願います、
  242. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私が金融業者であるから、金融業者に対して非常に高利貸し的な考えで金を貸しておる。経験上国家資金を使うことにもそういうことになるのじやないかというおしかりでございますが、しかしむろん国会の御意思でありまするならば、これはわれわれ執行機関といたしまして、どんなことでもいたしますけれども、しかし国会を最高機関とし、われわれ執行機関として働かせていただいております以上は、税金をとつて、それがもしも逆に放漫であつたり、また何も役に立たぬところへ金をかけまして、そうしてそれかつぶれてしまつたといえば、これは国会から明らかに非常なおしかりをこうむることになります。そこで国家合金と普通の資金の差は認めます。むろん国家資金というものは、市中金融機関が持ちますような観念で出すべきものではないと思います。いわゆる国家全体の利益になれば、たといそれがなくなつても、全体の経済か生きて来るという点におきまして役立つと認めますならば、これは当然奉仕すべきものと認めております。その意味におきましてその辺のかね合いで、これは通産省が是と信じ、もしくはこれが国家全体に役立つから、これだけの投資か全部ゼロになつてもよいという行政的の判断かあれば、むろんそういうふうにいたしたいと思います。その点私は元銀行家でございましたけれども、国家資金を使う場合におきましては、そういうふうに考えております。ただよく御了承願いたいことは、国家資金であるから放漫にどこにでもよいと思つたら、貸したらよいじやないかというおぼしめしにつきましては、一応われわれ責任者としては、納税者にとつても国家全体のお役に立つ――いわゆる人柱ではありません、全柱になるというわけで、そういう意味において貸出し並びに財政投資をして行かなければいかぬ。こういうふうに考えておるわけであります。
  243. 原健三郎

    ○原(健)委員 この際動議を提出いたします。本分科会所管の予算三案に対する討論採決は、予算委員会に譲られんことを望みます。
  244. 葉梨新五郎

    葉梨主査 ただいまの原君の動議に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  245. 葉梨新五郎

    葉梨主査 起立総員。よつてただいまの動議のごとく決しました。  これをもつて第三分科会は散会いたします。     午後五時五十七分散会