○
高橋公述人 今年の財政金融問題、ことに
予算関係を中心にして見まして、まず最も問題になる点だと思いますことは、世界
経済の基調が
相当かわ
つており、自然
日本の
経済自身にも
相当な変化が予想されるにもかかわらず、その予想に順応した
予算でない、こういう点ではないかと思うのであります。なるほど特需の問題はMSAを受入れるかいなかという問題にな
つておりますが、受入れるとすれば何とか解決できるにしても、休戦に伴う世界の軍拡のスローダウンから起る世界
経済の後退というものは、避くべからさる情勢にありますし、しかもかりに軍拡のスローダウンがないにしても、世界の景気それ自身は後退する段階にあ
つたのでありますが、特に最近その兆候の大きなものとしては、農産品の過剰という問題が大きく浮び
上つて、農産品の
価格の下落が世界的に起りつつあります。第一次大戦後の反動におきましても、一番その反動をリードした
経済――財政金融政策からではなしに
経済的にリードしたものは、やはり農産品の過剰であ
つたのであります。戦中戦後、農産品が非常に不足し、暴騰したために世界の他の地域で生産の一大拡張が行われ、そのうちに荒廃地方の生産が回復して、ここで農産物の過剰が起る。これは財政金融政策とは切り離した反動の原因でありますが、それが起りつつあるということであります。当然世界の物価は
相当下落傾向に転ずると見ざるを得ないのでありまして、
輸出貿易の
競争は、単に
輸出の
競争ばかりではなしに、今まで
国内でつく
つておりますものに対しても、
輸入の
競争が激化する、
国際収支は悪化する、こういう情勢であると思うのであります。
〔
委員長退席、
西村(直)
委員長代理着席〕
しかも
国内的に見ますれば、今まで二十五年から六年にかけての好況期に、
相当の利潤を得て、これをあらわにか秘密にかためておりました。それが大体底をついております。それを吐き出して底をついておるということは、たとえばあとで問題になりますが、法人の所得というふうなものは
相当実際の景気の悪化以上に、表面に出る利潤減というものは強くなると見るべきだと思うのであります。これは雇用
関係その他にも当然
相当な影響が来るものと見ねばならないわけであります。その上に休戦成立で、
政府も言
つておりますように、特需にたよらないで
自立経済の
計画を立てようとしておるのでありますから、この面から申しましても、
相当の
対策を
産業界としては立てざるを得ないということになりますが、しかもそれを立てましても、なかなか前途の見通しはつかないのだという情勢でありまして、現にきようの朝日に出ておりますものによると、五個年後においても依然として三億ドルの特需を予想しておる、そうしなければ
国際収支が立
つて行かないというのが、
経済審議庁の作業のようであります。しかもこれは非常に水増しをしておる。私
どもがこれまでいろいろ伺
つてお
つた数字から言うと、
相当水増しが出ておる。政治的な考慮だと思うのでありますが、先は非常に暗いにもかかわらず――その先の暗いということを国民にはつきり知らせて、それに対応する
措置をとるべきであるのに、暗いところはできるだけひた隠しにしておる、こういう政策がとられて来ておる。一体占領政策以降、
日本がよく
なつたよく
なつたという言葉ばかりが盛んに叫ばれておる。これは占領軍の後半の政策――前半のものではなしに後半の政策として、
日本の
経済な早く自立させたいというのが
アメリカの政策でありましたから、よく
なつたよく
なつたということを特に強調した資料がつくられ、その面だけが取上げられてワシントンに報告されておる。これはだれしもがやることなんであります。GHQも同じようなことをや
つておる。そのしり馬に乗
つてよく
なつた
なつたとい
つただけで、ほんとうに
日本の
経済がこれでや
つて行けるかという
日本自身の
立場から見た冷静な判断、その上に立
つて国民を指導して行くという面が、これまで欠けてお
つたのであります。本来からいえば去年の独立のときに、それをはつきりさすべきであ
つたと思うのであります。これもうやむやであ
つた。第二の機会は今度の朝鮮の休戦成立であります。しかも休戦の成立を機会にして、
経済審議庁の方で作業した五箇年
計画でも、これで見ると発表されたものよりも非常に低い。実際はこれでも
相当水が割られておる。こういうふうに前途は
相当きびしいと思うのであります。
しかるに
予算を見ますと、まず歳入において
相当甘く見られておるように思います。たとえば
法人税の見通しは昨年度の九一・四%、こう見ております。しかしながら民間
会社の三月決算について、約二百五、六十社でありましたかの収益を計算したところによりますと、前年同期に比べて二割減である。八〇%であるはずです。しかるに法人の収入予想は九一%四。八〇%であるのが九一%四だというわけでありまして、
相当の過大見積りをしていると言わざるを得ないのであります。そのほか所得税におきましても、個人営業の所得の標準を前年の一一〇%と見ている。その他の事業を一一一%一と見ている。農業だけが九八%一というので、前年より少く見ておりますが、実際におきましては法人の所得がこれだけ減りましたら、個人営業の方へのしわ寄せが多いのが実際でありますから、一層減ると見るべきだと思うのであります。またたとえば、これは金額は小さいのでありますけれ
ども、かなり過大評価だと
考えられます
一つのはつきりした例を申し上げますれば、取引所の今度の取引税であります。これは一月から五月を平均して計算したと書いてありますが、御
承知のように今年の一月、二月というのは株式
市場では、おそらく五十年に一度もないというような、ばか景気を出したときの取引高で非常に大きいのであります。その後今日においては非常に減
つておりますが、平常
状態、今のが平常かあるいはまた行き過ぎだといたしましても、一月――五月の平均をと
つたというのでは非常におかしい、そんなことは
考えられないくらい見積りが
相当過大評価ではないかと思います。
従つて今年度の
予算の見積りは、私は
相当過大にな
つていると思うのであります。しかも国民所得の方を見ますと、法人の所得が主計局で見ました率よりも大きいのです。法人所得は、国民所得の推定では一一一%一にな
つている。主税局は九一%四。それから実際に現われた大きな
会社の三月決算の利益金の率は、前年度に比べて八〇%というふうにな
つている。国民所得の見積りも、これだけ見ましてもかなり甘いのじやないかというふうに思うのであります。おそらくこの傾向は来年度も続くと見るべきだと思います。何しろ三十五年、二十六年にあんな大急膨脹をや
つたということは朝鮮事変がありましたことと、それ以前の
日本の
経済が敗戦のために麻痺
状態に陥
つたという、どちらの原因もめ
つたにないところから非常に急激な膨脹をしており、収入がそれにつれてふえたのであります。その波の上潮が引潮に
なつたことを
考えますれば、
相当減ると見ざるを得ない。大正九年の反動後にも、
相当期間収入は減
つております。そんなことを
考えると、ことしばかりではなしに、一体この
予算でどうして来年度の
予算を組むのかということが問題になるかと思うのであります。しかも今年の財政投資等に使
つた財政
蓄積は、今年度すでに約千百億近く使いました。来年度使うとすれば、
政府の手持外貨を
日本銀行に売るというくらいの
資金しかありません。再来年度は一体どうするのだという問題を打つのであります。しかも
日本が生きるために必要な
資金はどうしてもいるのだ。
経済審議庁長官の
国会における演説によりましても、五箇年
計画で一兆円使う、一年に財政支出二十億いる、それは
日本が生きるためにぜひ使わねばならない金だというわけであります。使う方はぜひ使わねばならないし、歳入は減る。しかも今年の
予算も
相当過大評価だ。その上に賠償問題もいよいよ払わねばならないということを
考えますと、
予算の歳入見積りというものが、かなりその日暮しじやないか、先を見ていないのじやないかという感じを受けるのであります。当然にこれに備えるためには歳入の面ばかりでなしに、これに照応する歳出の面も
相当切下げねばならないはずだと思うのです。こういう歳入
状態であ
つて、歳出をそれに照応さす
対策をとるべきだと思うのであります。しかもぜひいる金は使わねばならないとすれば、その他の経費を徹底的に整理する、削減するという
対策が、当然今年度の
予算から出るべきだと思うのであります。とともに歳出を極力重点化して行くほかないだろうと思う。そういう手配がことしの
予算に出ているかというと、出ていないのみでなしに、逆に歳出がふえる。しかも重点的な面以外の歳出がふえつつある。こういうのが今の
予算に現われた傾向ではないかと思うのであります。しかもそういう事態におきまして、われわれが非常に遺憾に思いますことは、議員諸公の手当を十円ふやそうということ。その他必要な宿舎や通路をつくる。必ずしも議員諸公の収入が今の通りで十分だと私
どもも
考えません。できるだけ議員諸公の収入所得、
立場をよくして働いてもらいたいと思うのでありますが、全体の歳出をこの際削らねばならないという非常な態勢の場合に、百分たちのものをお手盛りしておいて、ほかのものをどうして削り得るのです。その点だけが問題なんです。その点だけについて、私
どもはこの際問題を
考え直していただく必要があるのじやないかと思います。これは米価についてもそうであります。農民が今のままではや
つて行けないという問題については、私
どもも同感であります。しかし米の
値段を上げて、それでこれを救済しよう。こんな政策であれは、議員諸公を要しない。だれでもできる。行き詰まれは、
価格を上げてやるんだ。これは政策じやないですよ。政策としてならば、今の米価で農民がや
つて行けるくふうをなぜ
考えないのかということです。議員諸公の方もそうです。今の歳費でや
つて行けないのだ
つたら、今よりや
つて行けるような社会
状態をなぜつくらないのか、ということは、まず税金をもう少し下げるくふうをなぜ
考えないか。税金をもう少し下げたらいい。手当でとるというのは何かといいますと、歳費でや
つたら税金に持
つて行かれる、だから歳費の増加はいやだ。そこで手当という形で増額するのだというのでありますが、それ自身がおかしいと思うのであります。そういう高い税をそのまま諸君が認めて、その
税制に屈服して、これを脱税する方法として手当をとろうという。これですから、あとでも述べますように、国全体が非常にくずれている。非常な綱紀の紊乱が起
つています。官吏ばかりでなしに、
会社その他全体に大きな紊乱が起
つている。企業
体系がばらばらにな
つている。こういうわけでありますから、税金を下げるというくふうをすべきである。それから農村については、税金を下げるということも、くふうの大きな
一つでありましようが、今の
価格でや
つて行けるように、農村で買うものを安くする
対策を根本的に
考える、あるいは農村の
産業の
コストを下げて行く他の
対策をとるべきです。そういうことをや
つてもら
つてこそ、こういう多くの歳費を
国会にさいて、議員諸公を送
つているわけだと思います。それを単に
価格を上げる、引合わないから給料を上げる。これだけで行けるかというのです。それで行けれはいいのですよ。行ければいいのでありますが、行けるかというと、ここで起る問題は――すでに起
つております問題は、為替不安です。最近も新聞等でごらんになる通り、また大蔵大臣までが為替引下げはやらぬ、こういうことを声明せざるを得ないほど、国民は為替に対して非常な不安を持
つておる。これは大蔵大臣が言うように、財政や金融を締めたから
つて、それで為替不安がなくなるのじやないのです。またやらないとい
つて声明したからとい
つて、それで為替不安がなくなるのではないのであります。というのは、今為替不安が起
つておりますのは、
政府が政策として為替を切り下げるであろうという不安ではないのです。こんなことをや
つておれは、為替引下げは必至だというのです。これでは為替を引下げざるを得ない
状態が来るというのが財界、
経済界、また多くの評論家が見ておる見方なんです。というのは、
政府の認みておりますように、今日の
日本の
経済は物価が割高で、
外国と
競争ができないと言
つているのです。しかも
外国ではまだ物価は下るという世界の大きな態勢であります。だとすれば、ますます
日本の物価の割高はひどくなる。物価の割高を下げるくふうをすべきです。しかるに実際や
つていることは
コストが上り、結局物価が上るような政策はかりだ。や
つて行けないといえば、賃金を上げよう、給料を上げよう、手当を上げよう、農民が困れば農産品の米、麦も上げてやる、これでは結局において
日本の物価の割高はますますひどくなります。先ほど大原君のお話もありましたが、今ですら困
つている。これじやいよいよだめだ。そうなれば
政府がやるやらないにかかわらず、引下げ必至た。これが大分強い人気にな
つておるのでありまして、こういう情勢ではいま少しここで手持ち外貨が減り、
国際収支が悪化しますれば、この通貨不安は非常な勢いで強くなると思うのです。通貨不安がひどく
なつたらどうなるんだというと、金で持
つているわけに行かないから、みな物にかえてしまうという破綻に襲われると思う。これは私がここで誇張して言
つていることでは決してないのであります。きようも私は
日本経済新聞に、引下げたらたいへんだ、この際為替を切り下げたら、国民は三百何十分の一に通貨価値を下げられた苦い
経験を持
つており、通貨に対して神経過敏だから、すぐ物を買いつける、物は上る、銀行は取付にあう、たいへんなことになる。
従つてそんなばかな政策をとるはずがないというのでありますが、しかしそこに今までのようなやり方をやられれば、結局切下げが、政策としてではなく、破綻として起るおそれが絶無であるとしうことは言えないのです。これでは困るということを言わざるを得ない。その不安を押えるために、私は書いたんですけれ
ども、しかしそういう不安が現在すでに非常に大きいのであります。これ以上
予算の歳出面その他において、
日本の物価を上げる要因が起るような政策をとるということになりますと、破綻はその方から来るおそれが大きいと私は思うのであります。現在においてある階層が非常に困
つている、今の収入ではや
つて行けない、これはもう至るところにあるのであります。しかしそれを解決するのに、全部上げて行くか。それは一番楽な方法でありますけれ
ども、それでは破綻が来る。その破綻も必ずしも遠い将来でない。とすれば物価や賃金を上けず、しかも国民の生活が楽になるくふうをする、その段階に来ておるのではないかと思うのであります。
そこで問題になりますことは、そういう情勢であれは、むろん財政はうんと切り詰める必要があるわけでありますけれ
ども、しかし
日本の
経済が自立するには、デフレ政策で自立ができるというような
状態でない。一体デフレ政策で物価割高が解決できるということは、病気でいえば、頓服一服のめば、あとはなおるという軽い病気の場合に限るのであります。
日本の
経済が財政金融のデフレ政策くらいで、今の物価割高が解決でき、
国際収支の赤字が解決できる。それであれば、私は万万歳だと思うのです。そんな軽い病気じやない。根本に非常な病根を持
つておる。
相当苦しい、ある場合には命に若干の危険が起るくらいの大手術をやらなければ解決ができない。そういう根幹的な疾患を持
つておるということが、この物価割高の理由だと思うのであります。
従つてこの割高の問題は単なるデフレでは解決ができない。これは
政府の今度の
予算その他大臣諸公の演説を見ても出ておるのであります。
経済五箇年
計画で財政支出が約一兆億いる、年々平均二千億の財政投資をやろう、こういうわけであります。そのためには
相当インフレ要因のある財政になると思うのです。むろんこれだけのことをやるには、ほかの経費を極力切り詰めるということが前提でありますが、それでも
相当インフレ要因のある財政になると思うのであります。それでそういうインフレ要因を含む積極的な財政に対して、反対論も
相当多いのでありますが、これはインフレ要因があるということと、インフレになるということとをごつちやにした議論が非常に多いと思う。インフレ要因があるからインフレになるときま
つたものではない。しかし
昭和十四、五年ごろから二十三、四年ごろまでの
日本経済では、インフレ要因があれば、そういう財政政策をとれば必ずインフレに
なつた、これは事実であります。これは当時においてはそうならざるを得ない基本事情があ
つたからなのでありまして、現在においてはそういう基本事情がかわ
つております。というのは、あの当時はなぜインフレ要因があるとすぐインフレに
なつたかといえば、第一金があ
つても
外国から物を売
つてくれなか
つた。また向うは売
つてくれても金がなか
つた。ところが現在は世界では物が余
つております。幾らでも買えます。しかも買う金を持
つております。外貨約千億ドルを持
つております。
従つて積極財政をと
つて物価が上りそうであれは
輸入したらよい。
外国から安いものを入れたら決して物価は上らない。他方
輸入代金を払うために、通貨は
輸入代金だけ収縮します。通貨の膨脹も押えられる。こういうわけで、世界
貿易が自由であ
つて外貨を十分持
つておるこの段階において、インフレ要因がある財政政策をと
つたからとい
つて、インフレになるものではないし、また戦前においても、そういう政策をと
つてもインフレにな
つていないのであります。そういうわけで一方においては徹底的な緊縮をやる必要があると思うのでありますが、必要な面においては重点的に使うべきだと思うのです。そういう面で、使い方としては足りない面がまだあると思う。たとえば九州は非常な水害でありますが、
予算に現われた水害予防費というものは、災害復旧費ととんとんないし足りない、災害復旧費の方が多い。一体災害復旧費と災害を予防する金とがほぼとんとんだ、これで年々ふえて行くというのではしようがないのでありまして、水害その他の災害をなくする方面には、もう少し重点的に金を使
つてよいのじやないか。しかし、そうでない念を要しない道路やその他は、もう少し減らしたらよいのじやないか。都市
計画費その他の公共事業費等はいずれも必要でありましようが、重点的に
考えると、これらは比較的に急を要しない。こういう
費用がたくさんあるということが、われわれ批判家の間では、どうも党利党略の方面に使
つておると言わざるを得ない。何も金を使うことが悪いのではなしに、使い方が悪いという点に、問題があるのだと思うのであります。
〔
西村(直)
委員長代理退席、
委員長着席〕
一体これだけの財政方やろうというのには、手持ち外貨を
相当なくする覚悟をすべきだ、これだけの手持ち外貨がある点まで出て行
つてもよいという覚悟をしなくてはならない。ところが手持ち外貨がなくなると非常に心細がる、それはたいへんたというのが金融
業者あるいは財政当局の
考え方であります。これはたとえていえば、昔の人が家をつくるのに大きな柱を使い、大きな柱であればあるだけ家が丈夫だと
考えたようなものです。しかし材木の大きなものを使えば、実はかえ
つてその大きな材木の重圧が大きくて家は危険である。今の科学的建築からいえば、安全に必要な最小限の資材であればよい、これが現在の建築であります。金準備あるいは外貨もそうでありまして、最小限のものは打たなければいかぬですが、それ以上打
つていることが安全だというようなことはどうかしていると思う、これは銀行家的な
考え方なのでありまして、国としては、金で持
つているよりはできるだけ生産
設備にする、災害が起らないようにする、その方に使うべきです。しかるにそれを使うと困るというような
考え方をしておるのは、現在の建築を見て、これはあぶ
なつかしいと
考えておる、昔の太い大黒住を使
つた考え方と同じではないかと思うのであります。そういう意味で、使うべきところは使うが、そうでないものはもう少し緊縮すべきだと思うのであります。ことにこの点は、今の見通しからいうと、今後不景気が深刻化して来ます。その場合に備えるために公共事業費や何かはできるだけリザーヴしておく、失業
対策その他、非常な不況にな
つて、それを救うために
相当公共事業費をやらねばならない時期は品の前に迫
つておる。そんなときに金がないというのではだめなんです。できるだけ今はリザーヴしておいて、次に不況が来て国民の生活が非常に困るというときに初めて、不況
対策としての公共事業をや
つて行く、今はまだ早過ぎるということです。これで立ち得るだけの
産業の抵抗力を養うべきなのであ
つて、今の段階において失業
対策費を出すべきではない、そういう先に備えるという意味においても、不急不要の比較的延ばし得られる公共事業費は、できるだけそのときのためにリサーヴしておく、今急を要する
日本経済の自立のために必要な用途に集中的に使う。早ければ早いほどよい、遅れれば遅れるだけ損だ、この
考え方でやるべきではないかと思うのであります。同時に問題になると思いますことは、今の問題を解決するためには、
相当資本の
蓄積が必要である。あるいは浪費を極力押える、ないしは
資本を最も
効果的に使う必要がある、こう言われておるのでありますが、口ではそう言われておりますが、これを裏づける政策が行われておるかというと、裏づけという大事な点が非常に抜けているのじやないか、なるほど
法人税もある点まで、ある局部については減らしました。銀行方面の要望を入れて、源泉課税は五〇%を四〇%に減らしたというふうな
措置がとられておりますが、これはどちらかというと枝葉の点でありまして、根本の点にもう少しメスを入れるべきではないであろうかと思うのであります。それは現在の
産業の、おそらく半分は、厳格に計算すれば損金であるにもかかわらず、表面上には擬装利益を出しておる。この擬装利益をあてにして、
政府は税をと
つている。それから賃金、給料が払われ、配当が払われ、そこから利子が払われ、ボーナスがとられている。これでは表面上はもうか
つた、
蓄積がふえたようでありますけれ
ども、実質的には
日本の
蓄積は減るほかありません。大正九年の後にも、今と同じようなことを事業家がや
つたのである。それが
昭和二年の金融恐慌にな
つて結局ま破綻し、暴露しました。しかし当時と今と違うことは、現在では合法的にやれるのです。それはインフレーシヨンで、実際の
資本は何百に
上つているにもかかわらず、帳薄上では非常に安い資産しか計上していない。
従つて減価償却というものが、必要な減価償却の何分の一しかできてしない あるいは何十分の一しかできていない。これは必要な減価償却をやれば、当然に損になるところが、減価償却をしていないために、非常な利益が出ておるという点であります。これを直すのには、第一は今度の固定資産再評価を、あれは事業のためにやるのじやなしに、国民
経済全体のために第三次再評価をやるのでありますから、そうなればあれは強制すべきだ。強制するのには、最低と最高を加えて、最低限を少くとも強制するというふうにすべきであります。あれを強制して行けば、
日本の事業の実態がわか
つて来るのです。はたして利益があ
つて利益を上げているのか。実際は損をしているにもかかわらず、利益を欺満的に計上しているのか、これがはつきりして来るのです。あれは当然強制すべきです。とすれば、当然固定資産再評価税は無税にすべきだ、そういうことをやるべきだと私は思うのです。これが何とい
つても
資本蓄積の根本である。今はその裏に隠れて、合法的にぐんぐん食い込んでいる。実際からいうと経営は非常に左前である。その重役がうんともうか
つたように、二割も三割も配当している。高級自動車に乗
つて、ボーナスをと
つている。
従つて当然賃金、給料も実際以上に払
つている、能力以上に払
つておる、こういうことが許されてお
つて、そうしてほかの方面でどんなにや
つたところが、これはさつき言
つたように枝葉の問題であります。根本の問題を解決しようというのであればそこに行くべきだと思う。これは
資本家側からすると、
相当に反対が来るけれ
ども、これに屈すべきではないと思う。今度の固定資産再評価は、今の最高額を強制するということは無理かもしれませんが、ひ
とつ最低額を加えて強制して、再評価をみんなさす、そうして
日本の
経済の実態をはつきりさせて行くべきだと思うのです。そういう意味において、固定資産再評価は、あれを強制していただきたい。そのかわりに固定資産再評価税はなくしていただきたいと思うのであります。
それから
法人税につきましては、現在では高過ぎる、こういうので部分的な減税は行われましたけれ
ども、しかし依然として今の
法人税では、
日本の現在の借入金過多の
産業の
資本構成の是正は、非常に困難じやないか。戦前においては、自分の資産が六〇%、借入金は三〇%、現在は逆である。借入金が六〇%で、自己
資本が三〇%、これで少し不況に面すれば、どんなに
産業が混乱に陥るかということは、過去の不況期において明らかである。信金の多い
会社が、不況期にどんなに困るかということは明らかであります。しかるに現在においては借入金の一割は経費として見る、しかし配当は利益から払うものとして、
法人税をと
つた残りからというのでありますから、一割の配当をやろうというのには、二割の利益がなければ一割の配当ができない、だから
会社からいえば一割の配当を払うには、一割の配当ばかりでなしに、税金としてそれに匹敵するものを、いろいろ払わなければならぬ、それだけというと少し多いのでありますけれ
ども、そういうことになる、
法人税に細工〇%を払わなければならぬという形になるのであります。そこでできるだけ借金をやろう、こういうので、自己
資本の増大をはばんでおります。その上に非常に濫費が行われている、どうせ税金で大部分持
つて行かれるのだというので、非常な浪費が行われておる、一億円ほかのところへ使
つても、結局は一億円の利益を上げれば、約半分は税金に持
つて行かれるのたから、半分だけが
会社の負担になる、そのうちに幾らかはもど
つて来るのだと、こう見ればどんどん使います。広告費や何かうんと使うのもそのゆえであります。べらぼうな広告費を使
つておる、利益で上げるよりは、先へ延ばして行
つた方がいいというので、非常な浪費が行われておるのであります。そういう意味からい
つて、
法人税はもう少し
法人税それ自身に手を触れるべきだ、これに対しては、税源の
関係上できないという議論がありますが、今は
法人税は配当還付として、二割九分をもとしております。つまり
法人税ならは四割二分の中で、二割五分だけは株主にかわ
つて会社が払
つておるというのが建前であります。だから本来いうと、
政府に入る純収入は、四割二分から二割五分を引いた一割七分、これが本来の建前であると思うのです。もつともそれは配当だけでありますから、全体ではそうは行かないのですけれ
ども、配当に属しておる限りは、うであります。そうしますとこれは株主の
立場からいいますと、二割五分を差引いてもらうということは、たいへん有利でありますが、これは非常にへんぱだ、それよりも銀行、証券
業者その他株式を
相当持
つておるところは、ずいぶん利益がありましても税金を納める必要がなくて二割五分の還付があるから、ほとんど税金を納めていない、これは非常に不公平です。でありますからむしろこの二割五分の還付をなくしてしま
つて、
法人税を一割ないし一割五分下げる、こういう政策をとるということが、国のためにも実際のためにもいいと思います。株主や証券業界の方からは反対があるかもしれませんが、国のためからいえば、事業のためからいえば、あの三割五分の還付というのではなくして、それだけを
法人税の減税に持
つて行くべきだと思います。そうすればこれは税源には何ら
関係なしにできる問題であると思うのであります。
それからもう
一つ、今の
日本の
立場からい
つて大きな問題は、給与所得に対する率が非常に高い。財産所得に対しては一応今の率を認めるといたしましても、給与所得については
相当これを軽減する必要があるのではないか。というのは給与所得が今のように大幅な税金をとられるということを中心にして、非常な綱紀紊乱が起
つて来るのであります。事業
会社の重役の大部分は、
会社からはわずかの給与しかもらわない。そうしていて自分の私用のための経費、たとえば電話料から家賃から、子供や何か連れて遊びに行く自動車代から、ゴルフに行く自動車代その他品分の交際費、これは
会社のためになるのか、自分のためになるのかわからないというようなものがずいふん多い。議員諸公の中にも自分の交際費の中に、議員として必要なのか、プライヴエートなのかわからないものはあります。そういうものが、従来はみなポグツト――自分の収入から払われてお
つたところを、みな
会社から支払わせており、非常な公私混淆が行われております。上がそうでありますから、下もみな公私混淆である。
会社のものも、自分のものも区別なしに使うという情勢であります。これを防ぐにはいろいろな問題があると思いますが、
税制の面からいいますと、給与所得税をうんと減らす。そうして重役にはそういうプライヴエートのものは
会社から払わせない。重役が全部ポケツトから払えるようにしてやる。そうすると
会社としては、今まで
会社の
費用として払
つたものを重役の給与に引直して行く、こういう形になれば給与所得税をうんと減らしても税収は減りません。しかも綱紀の紊乱は非常に防ぎ得られると思うのであります。われわれは実は議員諸公にも
一つ一つ自動車が持てるような歳費を与えるくらいになりたいと思うのです。ところがそれがないと議員諸公も
国会の自動車をお使いになる。そうすると公私混淆に自動車を使う場合が絶無とは言えないのではないかと思う。そこで今度は官吏諸君の公私混淆をどうして監督し得るかという問題にも人づて来る。そういうことが重役の場合には一層ひどいのであります。この一大弊害、このように紊乱してお
つては、どんな
対策を立てたところが何にもならぬ。たとえば
産業をや
つて行くのに、いろいろな
対策を立てたところが、底に穴の明いたかめに水をくむようなもので大部分は流れてしまう。こういう大弊害を
考えれば、ここに給与所得課税に対しては上を非常に少くする。現にそういうことは認められている。たとえば預貯金に対する源泉所得課税では、従来五割を今度四割に切り下げた。この原則、精神からいえば、この給与所得の税の最高を四割まで切り下げる。そうして今のような公私混淆を防ぐような政策をとる。そうすれば税収は減らずに、自分のポケツト・マネーであるから乱暴な使い方はやらないという形でできると思うのであります。そういう意味において財産所得は別でありますが、給与所得の最高率は減らしてもらいたい。それから私
どもも減らしてくれとは言いません。原稿料や何かの税率を減らせとは言いません。私
どものはそういうからくりのしようがないのです。そういうからくりをしようとすれば脱税をするよりほかないのです。けれ
ども給与所得だけにはそういうからくりが行われる。その弊害が大きいからそこを減らして、何とか
対策を立てるように議員諸公の力をも
つて改正してもらいたいと思うのであります。
最後に金利の問題について申し上げたいと思います。
日本が今生きて行こうというのには、ほかの点もいろいろありますが、今の高い金利ではとうてい世界と
競争はや
つて行けない。ところが金利の問題になると、何か
資本家だけの問題のように見るのでありますが、金利が高いということは実は給料をうんと安くしている。労働階級の
立場からいいましても、金利が高いということは重大な問題なんです。ところが
コストに占める金利の比重というものをこの間も大蔵大臣の説明によりますと――これは新聞で見たのでありますから、もし
間違つていたら何ですが、
コストに占める比率は二、三%だという答弁をしている。また事実
日本銀行の調査によるものも、そういうように出ております。しかしこれは金利が
コストに占める比率をうまくごまかしたといいますか、あるいは無知であるとい
つたらいいのでありますか、私
どもからいうと、このくらい無知な計算はない。あれは製造
工業が金利として支払
つてお
つたものだけを調べたのであります。しかし金利が
日本の
産業コストに、どういう影響を与えているかということは、最終の
工場で金利を幾ら支払
つたかということが問題ではないのだ。たとえば今
建設する電力料については、電力
会社に言わせますと、電力料の四分の三までは金利負担た、これは全部借金するんだ。そうすると
会社が電力料として支払
つている電力料の中の四分の三は金利なんだ。
会社が労働者に賃金として払
つている中にも、労働者の生活の中に電熱料、電燈料があれば、また電車賃があれば、その中の少からざるものが金利である。これは電気だけではない。
石炭だ
つてうんと金利を負担している。鉄だ
つて負担している。昨日聞いたばかりでありますが、鉄のごときは八幡で払うだけでも、鋼塊一トン当りに占める割合が約八%である。これらが累積して来るわけであります。この累積した部分が
コストに占むる金利なのでありまして、そうすれば二、三%どころか三、四%になるのではないか。そういうことを私は
政府に調査してもらいたいと思う。議員諸公から要求されて、その正確なものを累積して、電力料として支払
つているものの中に、どのくらいの金利が含まれるのた、
石炭代として支払われているものの中に、どのくらいの金利が入
つている。
原単位で計算して、たとえば船の中にはどのくらい金利が含まれているかということが出る。機械の中にどのくらい金利が含まれているかということが出るのですが、それをやるべきであります。しかしそれはなかなか手間がい
つて個人ではできませんが、簡単にできることはこういうふうに見ればわかるのであります。それは最近日経連の調べによりますと、現在では最も進んだ生産
設備の
工場を起そうとすれば、従業員一人当り五百万円いる。ところが金利を
アメリカが四分とし、
日本が一割とすると、六分の差がある。これを五百万円にかけると、一年三十万円の金利の差がある。労働者が一年三百日働くとして、従業員一人当り日給千円に
相当する部分が、
アメリカより
日本が金利が高いということで、労働賃金を安くしているか、あるいは
コストをそれだけ高くしているか、あるいはほかのものを圧迫している、こういう形になるのであります。それだけ金利の負担は非常に大きいのであります。これに対して
政府はどういう政策をと
つているかというと、開発銀行その他の金利を下げようとしている。これを下げてほかの金利が下るものであれば、われわれそれに賛成であります。しかし今の
状態では、開発銀行その他の金利は下げても、ほかの金利は下らない。あれは特恵的な引下げで、一極の保護政策になるのでありまして、全体の金利を引下げることにはならないのであります。しかも今の金利のやり方を見ますと、大体銀行の
資金、
コスト――
費用がかか
つて、それにある適正の利潤を加えたものが金利だという見方を大蔵省はしております。これは統制時代のやり方で、一体統制時代の
コストに適正利潤を加えて物価をきめた時代でも、
コストを下げた
産業というのは
一つもない。私はその当時やりましたが、
コストが上れば金利も上る、
コストが下らなければ物価を下げないのですから、
コストを下げる
努力をするはずがない。だとすれば、今の
状態において金利は下らない。銀行
業者がどうして
コストを下げますか。現に小さい地方銀行を見ると、一億何十万円という大きな支店を建てている。非常に金を使
つていろいろな宣伝をしている。これは引合うから宣伝をしている。そうすれば
コストが高くなる。そういうわけで、それでは問題は、
コストをどうして下げるかというと、下げる道はあると思う。これは
資金の
需要供給の
関係といいますが、
資金の
供給の方からいうと、今まで
政府は約三千何百億円の財政
蓄積をしている。国としてはそれだけの滞積がある。これを民間から吸い上げて遊ばしておる。そうすれば、国民としては税金その他の形で
蓄積しておりますけれ
ども、財政
蓄積でそれだけ吸い上げておれは、民間の
資金の
供給が少いのは当然であります。もし国全体としての
資金の
需給関係というのであれば、
政府が
蓄積したのを民間にもどして来る、金融
市場にもどして来る、こうやれば今年これだけ使いましても、今なお
政府は外貨
資金を二千五、六百億円持
つておりますから、これが民間に返
つてごらんなさい。金利は暴落です。それだけで下げ得られます。しかし、それをどうしてもどすかといえば、単に流すのは弊害があるのでありまして、インフレが起らないように流そうとすれば、過去の事業
会社の借入金、これは短期で借りている。それを
政府が戸がわりにしてやる。たとえば外貨
資金を一千万円ほど
日本銀行に売
つて、その金を預託なり出資する。それが事業
会社の今まで借金として滞
つているやつを肩がわりする。そうすれば民間にもど
つて来るのであります。一体金利がこんなに高いのはどういうわけかというと、銀行
業者は
需要があるからだと言いますけれ
ども、
資金の需用というのは、本来からいうと、その金を使
つて引合う事業があ
つての
需要であれば、金利はどんなに高くても問題はない。その金を使
つて事業をや
つて引合うのであれば、金利は高くてもかまわないと思う。今の事業は何のために金を使うかというと、過去の借金の切りかえのために金を借りている。これは高利貸し金利です。金を払わなければ破産するから、高利貸しの言う通りの金利を払わねばならない。そういう性格の金利なんです。だからこの過去の借金を整理してしまえば、そういう高利貸し的な金利に対する
資金の
需要はなくな
つてしまう。そうすると金利は暴落する。これは大正時代の金融恐慌において、金利が暴落した事実をよく調査査すればはつきりする。なぜ大正時代の金融恐慌で金利が暴落したか。一方の理由は、約四億円の特融をしたということがあるのですけれ
ども、根本は、過去の腐れ借金を整理したということである、そういうわけでありますから、金利についても、何も金を使う必要はなく、帳簿の振りかえでできるのであります。どうぞそういう面の
対策を推進していただきたい。
たいへん失礼なことを申したかとも思いますが、時間が参りましたので、これで終りたいと思います。
なお最後に
ちよつと事務局の方に注文いたしたいのは、資料をもう少し豊富に送
つていただきたいと思うのです。これなど見ますと、たとえば今の金利の問題な
ども、金の支出を調べようとしても、ないのです。ほかの問題もあります。たとえば電話料の引上げ問題について見ようとすると、そういう資料がないというわけで、
公聴会をおやりになるという気持があるのでしたら、もう少し十分の資料を送
つていただくように
お願いします。(拍手)