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1953-06-30 第16回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月三十日(火曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    植木庚子郎君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       田中  元君    灘尾 弘吉君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       長谷川 峻君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    小山倉之助君       河野 金昇君    櫻内 義雄君       中村三之丞君    古井 喜實君       青野 武一君    福田 昌子君       武藤運十郎君    八木 一男君       横路 節雄君    和田 博雄君       加藤 鐐造君    小平  忠君       河野  密君    平野 力三君       三宅 正一君    石橋 湛山君       北 れい吉君    世耕 弘一君       三木 武吉君    辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         国 務 大 臣 安藤 正純君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  出席公述人         倉敷レイヨン株         式会社社長   大原総一郎君         高橋経済研究所         長       高橋 龜吉君         労働組合総同盟         総主事     古賀  專君         東方貿易株式会         社専務取締役  土岐 正直君         日本化薬株式会         社社長     原 安三郎君         東洋棉花株式会         社社長     鈴木 重光君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 六月三十日  委員石橋湛山君辞任につき、その補欠として世  耕弘一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた事件  昭和二十八年度総予算について     ―――――――――――――
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより昭和二十八年度総予算につきまして、昨日に引続き公聴会を開きます。開会にあたりまして、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、貴重なる時間をおさきになり御出席いただきまして、委員長として厚くお礼申し上げます。本日公述人として各位の御出席をいただきましたのは、目下本委員会において審議中の昭和三十八年度総十算につきまして、広く各界の学識経験者である各位の御意見をお開きして、本案の審査を一層権威あらしめ、また各位の豊富なる御意見を承ることによりまして、本委員会の今後の審査に多大の参考となることを期待いたすからであります。各位におかれましては、その立場心々より忌憚のない御意見の御開陳お願いいたします。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は大体二十分程度お願いいたしまして、御一名ずつ順次御念見の御開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと思います。なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際には委員長の許可を得ることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承を願います。  それでは倉敷レーヨン株式会社社長大原総一郎君より、御意見をお聞きすることといたします。大原総一郎君。
  3. 大原総一郎

    大原公述人 私は一化学繊維会社のものでございますので、予見の全般にわたる知識を持つているわけでもございませんし、また予算編成に関しまして技術的な専門家としての経験も何ら持つていないものでございますが、繊維工業あるいは輸出産業などに関連いたしておりますものの立場から、私ども産業あり方と、それに関連する財政関係の問題につきまして、少しばかり意見を申し上げてみたいと思います。  まず私どもが前提として考えておりますことは、輸出の増大ということと、それを一環といたしました自立経済の造成のために、どういう役割を演しなければならないかということであることは申すまでもないことでございますが、現在の輸出の状況を見て参りまして、業者の一人といたしましてもはなはだ寒心にたえない点が多々ございます。現在の為替レートのもとにおきまして輸出を増大いたしますことは、今日の各国競争力に比べまして、いろいろな点で非常な難色があると考えられます。最近の実例を申し上げたいと思いますが、このたび日本にとつて最も貴重な人造繊維市場でありましたインドに対しまして、欧州各国が提示いたしました輸出価格は、わが国にとりましては脅威的な輸出価格でございます。ポンド当り百六十円台という値段であります。これはイタリアイギリスやフランスの国内価格六比べてはずつと安いものでありますか、この価格をもつてインド市場に進出して参りましたので、ホンベイ市場からは、日本輸出製品人絹に限りて絶望の状態になりました。この実例を分析してみますと、まずイタリアめるいイギリスのごとき国におきましては、輸出に対して強力な二元約な組織を持つておりまして、輸出価格につきましては、一切国内業者はその統制下に服しております。現在日本輸出に対しまして、非常に弱体な曲柱を仲介といたしまして、しかも濫立状態アリー競争をいたしておるのに対しまして、まずそのあり方が根本的に違つております。その上に西欧諸国におきましては、輸出に対する法人税その他の税金に対する減免措置が講ぜられておりますことは、もうすでに各方面で論ぜられておりますので申し上げるまでもないことであろうと思います。  そこまでのことにつきましては、これは政府あるいは国会皆様方の深甚の御配慮をいただきたいと思うことでありますが、さらにそれではそういう措置さえできれば、日本の原価ははたして安いのであろうかどうかということに関しまして考えてみますのに、現在のわが国の生産はほとんどフル運転に近い状態になつております。従いまして工場条件といたしましては、原平位は非常に切り詰められておりまして、原単位に関する限りは諸外国と何り遜色はないと確信しておりますが、原料及び燃料の単価の高いことが、いかにしても輸出業者としては手の施しようのない現実の桎梏であります。たとえばレーヨンパルプのごとき、また苛性ソーダのごとき、また石灰のごとき、こういうものが諸外国に比べまして相当の割高になつておりまして、イタリアの場合にはわれわれが想像いたしまして、ポンド百六十円の価格であれば、もうかつてはいないかもしれませんが、損はしていないと想像をされなす。しかし日本ではそれよりもどうしても一割以上のコスト高になつておりますので、ただコストだけで競争いたしましても、現在この為替レートをもちまして競争いたすことにつきましては、非常な困難を感じておるわけであります。そこで日本輸出の非常に重大な伸び悩みの原因は、税制その他政府施策いかんにもかかることでありますが、同時に国内物価体系原料高製品安という非常に発展を阻害する形を持つておるということが、私どもにとりましては非常な困難な問題でございます。そこで鉄鋼石炭価格の引下げということが、朝野を通じて問題になつておるわけでありますが、ここにまずこの人絹輸出の一例をもつて皆様実情を御認識いただきたいと考えて申し上げたわけでございます。しかも人絹の場合におきましては、レーヨンパルプには輸入税がかかつております。こういう状態で、輸出振興ということにただ業者努力だけでいくら拍車をかけましても、なかなか困難な問題が多々あるわけであります。  次に原料高製品品安という問題が、単に輸出貿易だけに限つたことであるかどうかということにつきましては、これはいかなる国も工業国として発展するためには、安い鉄と安い石炭基礎の上に立つておるものでなければ、とうてい長足の発展は期待しがたいということは、すでに各国の歴史が示す通りであります。高い石炭、高い鉄の上に繁栄する工業国というものはとうてい考えられません。従つてこれは単に輸出貿易だけの問題でなく、国内の全産業原料高基礎物資価格が高いということから困難を受けておると思います。日本が狭い四つの島に八千五百万の人口を養うというためには、どうしても立体的な産業構造を持たなければならないということは、これは申すまでもないことでありますが、そのときの条件といたしましては、高層建造物になりましても、たとえば十階建のものをつくりましても、六階、七階目まで基礎物資価格で占められてしまうならば、残りの人たちはやはり二階建、三階建の狭い所に住むよりほかしかたがないわけであります。つまり日本は一見産業構造電化学工業に多くの分野をさくようになりましても、その価格が高ければ、加工によつて生きている中小企業、一方には為替レートを通じて国際価格国内有効需要に絶対的に縛られております加工業というものは、非常に狭いマージンの中にひしめき合うことになるわけでありますから、この原料高という物価体系そのものを訂正するという観点から、鉄鋼石炭の問題はお考えをいただきたいと思うのであります。かつて戦争前に日本重化学工業が発達いたしまして、特に化繊関係化学工業につきましては、硫酸あるいは硫化炭素あるいは苛性ソーダなどが自給をされ始めました。そのころは戦前は一般的に国産のものは、品質は多少落ちるけれども価格は必ず安かつた、ほとんど例外なく価格は安かつたと思います。しかしながら今日におきましては、国産のものは品質が悪くて価格が高いという実情であります。従つてつて国内産業が興るということは国の経済力を増すことでありましたが、今日におきましては、国内基礎産業が多くあると申しましても、この価格が高い限りは、国内にそれらの産業があるということが、必ずしも輸出産業あるいは民生産業に対しまして有利であるとばかりは申せないのであります。しかしながらこれをやめて、全部輸入に依存するということは、これは実際外貨の関係から申しても不可能なことでありますから、どうしても基礎産業コストを下げるということに全力をあげて行かなければ、日本工業の将来はこれをもつて行き悩みになつてしまうという危惧を非常に感じております、加工工業中小企業への対策がいろいろ立てられておると思いますが、またそれ自身必要な対策も多々あると思いますが、原料高燃料高である限り、狭いマージンの中ではいかんともしがたい実情にあるということが、鉄鋼石炭に対する対策の根本的な要請であるということを特に申し上げて、御高配お願いいたしたいと思うのであります。  そこでそれでは鉄鋼石炭に対してどうしたらよいかということでありますが、まずコストの切下げのために財政的な援助が望ましいということは、もうすでに多く述べられておることでありますから、重ねて申し上げることを避けたいと思いますが、ただこういう一点を特に申し上げておきたいと思いますのは、自由経済におきましては、コストが下るということが、必然的に値段が下るということではございません。値段が下り得る条件ではありますが、コストが安くなつたからといつて、ただちにそのコストに幾はくかのマージンを加えただけのものに値段が下るとは申せません。自由経済の場合には価格の構成はどうしても需給関係によるのでありまして、供給が少く、需要が多くて売手市場になつておる場合には、コストが下つても必ずしも下りません。従いましてコストを下げるための政府資金による援助がありました場合に、実際コストが下つた後に値段を下げるにはどうすべきかということをあわせてお考えをいただきたいと思うのでございます。国有になつたといたしますならば、これはコストが下ればそれだけ下るということができるかもしれません。しかし自由経済の場合には必ずしもそういうふうに参りません。供給が多くなつて買手市場にならない限り値段は下らないと思います。これは独禁法の緩和の問題などにも関連いたしまして、私ども輸出関係の者におきましては、輸出に対しましてはどうしても外国統制力に拮抗するだけのものが必要だと思いますが、国内基礎物資合理化やあるいはコストの低減というふうな努力のかわりに、カルテル化して高価格が維持されるというようなことにもしなるといたしますと、これは将来工業国としての日本の前途をはばむことになると思いますので、これらの点につきましても十分御検討をお願い申し上げたいと思うのであります。  次に鉄鋼石炭値段が下りさえすれば、それで日本経済にとりましては、もはや問題はないかと申しますと、決してそうでありません。たとえば輸出の場合には、鉄鋼石炭の値下りが輸出産業に大きく利点を与えてくれることとは思いますけれども、一方海外の事情を見ますと、新しく独立した国々は、それぞれ自立経済計画を進めておるように見受けられるのであります。従いまして日本で現在輸出しております商品が、将来いつまでも彼らの要求するものであるかどうかにつきましては疑問の余地が相当あると思います。現にインドにおける戦争中の綿紡績の発送は、日本綿糸布インド輸出されることをほとんど不可能にいたしました。パキスタンにおける綿紡増設計画も、早晩パキスタン日本から綿糸布輸入しなくてもよくなる可能性を持つております。新しく独立いたしました各国がまず工業化するために、自分たち農業原料供給国である地位から独立したという思想的、心理的なことからも、工業化はある程度必至だと思いますので、これに対しまして、安くさえあれば日本の品は必ず売れるという事柄にも、一定の限界はあると考えざるを得ないのであります。そこで基礎物資価格低廉という根本的な問題のほかに、日本貿易構造なり産業構造なりはどうしても変化して行かなければいけない、これは単に自立経済のため封鎖的な経済をやるという意味ではなくて、輸出のためにこれは必要なことでありまして、現在輸出産業と思われているものが、必ずしも将来永遠の輪中産業であるかどうかということは、わからないという点に私ども心配を感ずるわけであります。近い将来におきまして、たとえば五箇年光におきまして、特需あるいはこれに類するものがもちろんゼロになるとは考えておりませんが、相当の減少を来すことが当然予想されます。その場合に国際収支が危機に瀕するということは、民間の私どももそう考えておりますし、また経済審議などの見通しもやはりそのようであると思われます。従いましてここで産業構造変革、同時に貿易構造変革ということになるのでありますが、それにつきましては多額政府投資が必要であるというだけでなくて、技術基礎が確立していなければ、決して単なる金だけででき上るものではないと思うのであります。私どもから申すまでもなく御承知であると思いますが、たとえばイギリスの現在の経済一つの突破口が、ジエツト・エンジンに結集されたイギリスの他国を凌駕する技術優秀性にあるということ、これによつてイギリス経済も多くの希望をこれに託しておるというようなことを考えてみまして、似たような状態にあります日本にとつて、はたしてそれに対抗し得るどれだけの技術日本にあるだろうかということを考えますと、はなはださびしいのであります。これを外国実例、私どもの最も関係の深い競争相手実例から申しますと、たとえばアメリカのデユポンがナイロンやオーロンなどという合成繊維を発表いたしまして、そのおのおのが発表されるまでにどれだけの研究費を使つたかというようなことが報ぜられておりますが、それぞれ八十億円あるいは九十億円の研究費が、一つ繊維市場に送り出すまでに研究実験費として使われております。これに対してわが国ではどうであるかと申しますと、そういう金額は普通の会社、たとえば私ども会社資本金と借入金とを全部使つたような額でありまして、とうてい太刀打ちでざるものでないのであります。今日日本における合成繊維は、かつて昭和十二、三年ごろの日本繊維工業全盛時代蓄積された技術の成果として今日現われておるにとどまるのでありまして、決して戦後のわれわれの実力ででき上つたものでも何でもないのであります。こういうことを考えますと、将来日本で、新しく日本人だけの技術の力で国際的な競争に耐え得るものが、はたしてできるであろうかどうかということにつきましては、非常に不安を感ずるのであります。こういうことはたとい貨幣的な資本蓄積をいたしましても、またそういうふうないろいろな財政的な措置が請ぜられることになりましても、なおかつ――小さな改造とか部分的な能率増進にはこれは効果があると思いますけれども、基本的な技術、つまり産業構造変革するということに役に立つというような技術蓄積には、非常に役に立つ限度に遠いように感ぜられるのであります。これを放置しておきますれば、当然技術導入という形での外資の導入ということになつて参ると思います。現在では幾ばくかの金を払つて外国技術導入する方が手取り早くて簡便で、しかも有利である場合もございます。また実際に輸入いたしましても何ら効果を発揮していないので、ただその上に重荷がかかつたというにすぎない場合もなしとはいたしません。そういう場合もあると思いますが、しかしいずれにいたしましても、技術的な飛躍といえばアメリカ技術を買うのだというような常識になつてしまうということは、私ども産業人といたしましては非常に遺憾なのでありますし、また申訳ないことでもあるように感ぜられるのであります。そこで、かつて政府研究費のほかに、これも大きくいえば政府であつたと思いますが、たとえだ陸海軍研究費であるとか、国策会社あるいは満鉄でありますとか、そういう会社研究費とか、あるいは財閥会社研究費であるとかいうふうなものは相当多額上つてつたと思いますが、今日それらにかわる勢力というものは、莫大な研究費を負担する力はとうていありません。従いまして将来日本経済構造産業構造を一級の工業国並に仕立て上げるためには、どうしても技術研究ということの基礎といたしまして、科学研究というふうな事柄に非常な重点を注いでいただきたいということをお願いを申し上げたいのであります。二十八年度の予算の中に計上されておりますいろいろな研究費、これらのものは五十億に満たないものであろうと思いますが、もし間違つておりましたらお許し願いたいと思うのですが、その程度のものであれば、私はアメリカ会社の一年の研究費でもそのくらいな費用を使つておるところは相当あろうかと思われます。しかもそれ以外に一般研究費というものが非常に枯渇しておる状態であり、特に小さな事柄研究だけでは間に合わないような点を、私はとくとお願いを申し上げたいと考えるのであります。  それからこれは私どもの直接に関係しておる問題ではございませんが、社会保障的な経費がだんだん増加して参つております。社会保障あるいはそれに類するような保護の対象になつています人口は五千万人にも及ぶものと思いますが、この問題につきましては、これは当然非常な発言力の強いところ、あるいは特に脚光を浴びたとこが、だんだん補助の対象になつてつておると考えられます。私はこういう問題につきましては、いつか――もうその時期になつておると思うのでありますが、社会保障一般といたしまして、これらの問題をひとつできるだけ総合的な観点からお考えいただいて、一つ体系にまとめていただくようにお願いいたしたいと思うのであります。  私の申し上げるところ、いろいろ御配慮お願いいたしたいと思いました点を詰めて申しますと、第一に輸出振興のための税制措置あるいはその他団体法規上の措置などにつきまして、今後一段の御高配お願い申し上げたいということと、次に原料高製品安という物価体系を改めるために、これも特段の御配慮お願い申し上げたいということと、さらに長期の産業構造あるいは貿易構造変革のために必要とする技術のために、予算の中に現在よりも思い切つた科学技術研究費の計上をお願いいたしたいということ、それから社会保障関係費用をまとめて体系化したものにつくり上げていただきたいというようなことを申し上げた次第でございます。  与えられました時間も参りましたので、私最初に申し上げますことはこのくらいにいたしまして、御質疑がございますれば、私のお答えできる限りにおきまして、御返答申し上げたいと思います。(拍手)
  4. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質疑はありませんか。
  5. 小山倉之助

    小山委員 ちよつとお伺いいたしたいのですが、合成繊維が、もちろん過去の経験によるのが多いのでしようが、戦後にどういうふうに影響したか、ひとつ実例をお示しできたら二、三お知らせ願いたいと思います。私は外国から入つて進歩したものと見ているのですが、そこは外国日本と、どういう相違があるか、ちよつと実例を示して……。
  6. 大原総一郎

    大原公述人 これは私も直接関連しておりますことに属しますので、少し申しにくいのでありますが、日本で今大量に生産されております合成繊維ビニロンナイロンでございます。ビニロン昭和十二年ごろに日本最初研究の発表がなされました。日本におけるナイロン――日本ではアミランという名前研究が開始されましたが、それも同じころであります。そのこるナイロンアメリカ市場に出て参りました。アメリカでは市場化されておりますものが、日本では研究室から量産の構えに対する研究を開始したということでございました。その後戦争に突入いたしましたので、繊維としての研究は伸び悩んでおりました。特に平和産業名前のもとにほとんど遮断されておつたといつても過言でないくらい伸び悩んでおりました。そこで戦後アメリカナイロン驚異的発展などに刺激されまして、再び合成繊維脚光を浴びまして試験設備をつくりました。戦争中につくつたものを合せますとビニロンに関する限り、三回目の試験設備をつくりました。それによりまして一応工業化基礎データができ上りましたので、工場建設に着手いたしまして、最初は市中の金融で最初建設にかかつたのでありますが、後に見返り資金が二億五十万出まして、その後開銀から追加がなされまして、今日ビニロンは全体で十七、八トンくらいの設備ができ上つておると考えられ幸す。またアミラン、つまりナイロンの方はこれも戦後に伸びて参りまして、これはデュポンの特許を買うというような事柄によりましてまた飛躍いたしまして、今日はビニロンアミランとが日本で量産化されておる合成繊細であります。ビニロンの方は外国に同一の製品がございませんので、一に日本技術だけによつてやらざるを得ない立場に今立つておるわけであります。
  7. 八百板正

    八百板委員 ちよつとお伺いいたしたいのですが、御承知のよりに、政府は食糧と綿花などの繊維のために払われる日本海外支出が、貿易の半分にも及んでいるので、これを何とかしなければならぬということを、今度の国会でも強く政府から強調せられているわけであります。そうなりますと、当然に国内における化学繊維の問題が非常に重要な問題として取上げられるわけでありますが、今お伺いしますと、化学繊維の将来に対しては、技術の点、いろいろの点において非常にほど遠いもののような話にうかがえるのでありますが、そういうような点について、もし当面化学繊維を伸ばすために隘路となつている点を、集中的に国の力によつて打開して行きますならば、それによつてとういうような将来への展望が可能であるか、どれだけ伸ばせるものであるかというふうな点について、若干の見通しなり御意見なりを、聞かしていただきたいと思うわけであります。
  8. 大原総一郎

    大原公述人 その点につきましては、政府でも合成繊維育成五箇年計画というものが樹立されておりまして、一億五千万ポンド合成繊維の生産によりまして、五箇年先には綿と羊毛の輸入を削減しようという計画のようであります。そこで技術の問題につきまして、現在やや足りないというようなふうにお聞きいただいたようでありますが、私は現在のビニロンという製品は、私の考えでは七十点ぐらいの点数であろうと思つております。大体九十点以上であれば及第点であろうかと思つておりますが、ここ一、二年のうちには八十五点ぐらいにはなり、五年計画の最終の年次ぐらいには九十点になり得るものと私は信じております。このビニロンという繊維は、ずいぶん長い間日本で築き上げて来た繊維でありますから、こういう程度にまずまず発進することができたのでありますが、それでは新しいそれ以外の合成繊維はどうであるかということを考えてみますと、日本ではどうしても基礎的な研究において非常な立遅れがあります。たとえばアメリカでは、ナイロンのほかにオーロンとかデクロンとかサラン、あるいはアミランあるいはビニヨンというような、いろいろな合成繊維が出ております。合成繊維の数というものは百花繚乱にひとしいような状態であります。その中で、日本では特に原料関係から申しまして、石油工業日本には発達いたしておりませんし、またやや困難な点もありますので、日本の資源だけでやつて行ける合成繊維としては、ビニロンが早くから着目されたのでありますが、そのほかの合成繊維といえども、将来日本研究しておかなくてもいいというものでは決してありません。従つてそういう全般的な意味で、私は基礎的な研究を広汎に進めておかなければならないということを申し上げたのでありまして、現在ビニロンナイロン、サランに対する五個年計画が立てられているわけでありますが、これによりまして外貨が約一億五千万ドルばかり節約されるということになつております。また現在の合成繊維品質価格をもちましても、強度を必要とするような用途につきましては、決して消費者に迷惑をかけておるとは思いませんし、またかつてレーヨン、スフでもつて綿や毛の代用をやつたときのような消費者の負担というものは、この次の合成繊維による代替の場合は、なくて済むものであると考えております。大体そういう考えでおります。
  9. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質疑がなければ次に移ります。大原君ありがとうございました。  次に高橋経済研究所高橋亀吉君より御意見をお聞きすることといたします。高橋亀吉君
  10. 高橋龜吉

    高橋公述人 今年の財政金融問題、ことに予算関係を中心にして見まして、まず最も問題になる点だと思いますことは、世界経済の基調が相当かわつており、自然日本経済自身にも相当な変化が予想されるにもかかわらず、その予想に順応した予算でない、こういう点ではないかと思うのであります。なるほど特需の問題はMSAを受入れるかいなかという問題になつておりますが、受入れるとすれば何とか解決できるにしても、休戦に伴う世界の軍拡のスローダウンから起る世界経済の後退というものは、避くべからさる情勢にありますし、しかもかりに軍拡のスローダウンがないにしても、世界の景気それ自身は後退する段階にあつたのでありますが、特に最近その兆候の大きなものとしては、農産品の過剰という問題が大きく浮び上つて、農産品の価格の下落が世界的に起りつつあります。第一次大戦後の反動におきましても、一番その反動をリードした経済――財政金融政策からではなしに経済的にリードしたものは、やはり農産品の過剰であつたのであります。戦中戦後、農産品が非常に不足し、暴騰したために世界の他の地域で生産の一大拡張が行われ、そのうちに荒廃地方の生産が回復して、ここで農産物の過剰が起る。これは財政金融政策とは切り離した反動の原因でありますが、それが起りつつあるということであります。当然世界の物価は相当下落傾向に転ずると見ざるを得ないのでありまして、輸出貿易競争は、単に輸出競争ばかりではなしに、今まで国内でつくつておりますものに対しても、輸入競争が激化する、国際収支は悪化する、こういう情勢であると思うのであります。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕 しかも国内的に見ますれば、今まで二十五年から六年にかけての好況期に、相当の利潤を得て、これをあらわにか秘密にかためておりました。それが大体底をついております。それを吐き出して底をついておるということは、たとえばあとで問題になりますが、法人の所得というふうなものは相当実際の景気の悪化以上に、表面に出る利潤減というものは強くなると見るべきだと思うのであります。これは雇用関係その他にも当然相当な影響が来るものと見ねばならないわけであります。その上に休戦成立で、政府も言つておりますように、特需にたよらないで自立経済計画を立てようとしておるのでありますから、この面から申しましても、相当対策産業界としては立てざるを得ないということになりますが、しかもそれを立てましても、なかなか前途の見通しはつかないのだという情勢でありまして、現にきようの朝日に出ておりますものによると、五個年後においても依然として三億ドルの特需を予想しておる、そうしなければ国際収支が立つて行かないというのが、経済審議庁の作業のようであります。しかもこれは非常に水増しをしておる。私どもがこれまでいろいろ伺つてつた数字から言うと、相当水増しが出ておる。政治的な考慮だと思うのでありますが、先は非常に暗いにもかかわらず――その先の暗いということを国民にはつきり知らせて、それに対応する措置をとるべきであるのに、暗いところはできるだけひた隠しにしておる、こういう政策がとられて来ておる。一体占領政策以降、日本がよくなつたよくなつたという言葉ばかりが盛んに叫ばれておる。これは占領軍の後半の政策――前半のものではなしに後半の政策として、日本経済な早く自立させたいというのがアメリカの政策でありましたから、よくなつたよくなつたということを特に強調した資料がつくられ、その面だけが取上げられてワシントンに報告されておる。これはだれしもがやることなんであります。GHQも同じようなことをやつておる。そのしり馬に乗つてよくなつなつたといつただけで、ほんとうに日本経済がこれでやつて行けるかという日本自身の立場から見た冷静な判断、その上に立つて国民を指導して行くという面が、これまで欠けておつたのであります。本来からいえば去年の独立のときに、それをはつきりさすべきであつたと思うのであります。これもうやむやであつた。第二の機会は今度の朝鮮の休戦成立であります。しかも休戦の成立を機会にして、経済審議庁の方で作業した五箇年計画でも、これで見ると発表されたものよりも非常に低い。実際はこれでも相当水が割られておる。こういうふうに前途は相当きびしいと思うのであります。  しかるに予算を見ますと、まず歳入において相当甘く見られておるように思います。たとえば法人税の見通しは昨年度の九一・四%、こう見ております。しかしながら民間会社の三月決算について、約二百五、六十社でありましたかの収益を計算したところによりますと、前年同期に比べて二割減である。八〇%であるはずです。しかるに法人の収入予想は九一%四。八〇%であるのが九一%四だというわけでありまして、相当の過大見積りをしていると言わざるを得ないのであります。そのほか所得税におきましても、個人営業の所得の標準を前年の一一〇%と見ている。その他の事業を一一一%一と見ている。農業だけが九八%一というので、前年より少く見ておりますが、実際におきましては法人の所得がこれだけ減りましたら、個人営業の方へのしわ寄せが多いのが実際でありますから、一層減ると見るべきだと思うのであります。またたとえば、これは金額は小さいのでありますけれども、かなり過大評価だと考えられます一つのはつきりした例を申し上げますれば、取引所の今度の取引税であります。これは一月から五月を平均して計算したと書いてありますが、御承知のように今年の一月、二月というのは株式市場では、おそらく五十年に一度もないというような、ばか景気を出したときの取引高で非常に大きいのであります。その後今日においては非常に減つておりますが、平常状態、今のが平常かあるいはまた行き過ぎだといたしましても、一月――五月の平均をとつたというのでは非常におかしい、そんなことは考えられないくらい見積りが相当過大評価ではないかと思います。従つて今年度の予算の見積りは、私は相当過大になつていると思うのであります。しかも国民所得の方を見ますと、法人の所得が主計局で見ました率よりも大きいのです。法人所得は、国民所得の推定では一一一%一になつている。主税局は九一%四。それから実際に現われた大きな会社の三月決算の利益金の率は、前年度に比べて八〇%というふうになつている。国民所得の見積りも、これだけ見ましてもかなり甘いのじやないかというふうに思うのであります。おそらくこの傾向は来年度も続くと見るべきだと思います。何しろ三十五年、二十六年にあんな大急膨脹をやつたということは朝鮮事変がありましたことと、それ以前の日本経済が敗戦のために麻痺状態に陥つたという、どちらの原因もめつたにないところから非常に急激な膨脹をしており、収入がそれにつれてふえたのであります。その波の上潮が引潮になつたことを考えますれば、相当減ると見ざるを得ない。大正九年の反動後にも、相当期間収入は減つております。そんなことを考えると、ことしばかりではなしに、一体この予算でどうして来年度の予算を組むのかということが問題になるかと思うのであります。しかも今年の財政投資等に使つた財政蓄積は、今年度すでに約千百億近く使いました。来年度使うとすれば、政府の手持外貨を日本銀行に売るというくらいの資金しかありません。再来年度は一体どうするのだという問題を打つのであります。しかも日本が生きるために必要な資金はどうしてもいるのだ。経済審議庁長官の国会における演説によりましても、五箇年計画で一兆円使う、一年に財政支出二十億いる、それは日本が生きるためにぜひ使わねばならない金だというわけであります。使う方はぜひ使わねばならないし、歳入は減る。しかも今年の予算相当過大評価だ。その上に賠償問題もいよいよ払わねばならないということを考えますと、予算の歳入見積りというものが、かなりその日暮しじやないか、先を見ていないのじやないかという感じを受けるのであります。当然にこれに備えるためには歳入の面ばかりでなしに、これに照応する歳出の面も相当切下げねばならないはずだと思うのです。こういう歳入状態であつて、歳出をそれに照応さす対策をとるべきだと思うのであります。しかもぜひいる金は使わねばならないとすれば、その他の経費を徹底的に整理する、削減するという対策が、当然今年度の予算から出るべきだと思うのであります。とともに歳出を極力重点化して行くほかないだろうと思う。そういう手配がことしの予算に出ているかというと、出ていないのみでなしに、逆に歳出がふえる。しかも重点的な面以外の歳出がふえつつある。こういうのが今の予算に現われた傾向ではないかと思うのであります。しかもそういう事態におきまして、われわれが非常に遺憾に思いますことは、議員諸公の手当を十円ふやそうということ。その他必要な宿舎や通路をつくる。必ずしも議員諸公の収入が今の通りで十分だと私ども考えません。できるだけ議員諸公の収入所得、立場をよくして働いてもらいたいと思うのでありますが、全体の歳出をこの際削らねばならないという非常な態勢の場合に、百分たちのものをお手盛りしておいて、ほかのものをどうして削り得るのです。その点だけが問題なんです。その点だけについて、私どもはこの際問題を考え直していただく必要があるのじやないかと思います。これは米価についてもそうであります。農民が今のままではやつて行けないという問題については、私どもも同感であります。しかし米の値段を上げて、それでこれを救済しよう。こんな政策であれは、議員諸公を要しない。だれでもできる。行き詰まれは、価格を上げてやるんだ。これは政策じやないですよ。政策としてならば、今の米価で農民がやつて行けるくふうをなぜ考えないのかということです。議員諸公の方もそうです。今の歳費でやつて行けないのだつたら、今よりやつて行けるような社会状態をなぜつくらないのか、ということは、まず税金をもう少し下げるくふうをなぜ考えないか。税金をもう少し下げたらいい。手当でとるというのは何かといいますと、歳費でやつたら税金に持つて行かれる、だから歳費の増加はいやだ。そこで手当という形で増額するのだというのでありますが、それ自身がおかしいと思うのであります。そういう高い税をそのまま諸君が認めて、その税制に屈服して、これを脱税する方法として手当をとろうという。これですから、あとでも述べますように、国全体が非常にくずれている。非常な綱紀の紊乱が起つています。官吏ばかりでなしに、会社その他全体に大きな紊乱が起つている。企業体系がばらばらになつている。こういうわけでありますから、税金を下げるというくふうをすべきである。それから農村については、税金を下げるということも、くふうの大きな一つでありましようが、今の価格でやつて行けるように、農村で買うものを安くする対策を根本的に考える、あるいは農村の産業コストを下げて行く他の対策をとるべきです。そういうことをやつてもらつてこそ、こういう多くの歳費を国会にさいて、議員諸公を送つているわけだと思います。それを単に価格を上げる、引合わないから給料を上げる。これだけで行けるかというのです。それで行けれはいいのですよ。行ければいいのでありますが、行けるかというと、ここで起る問題は――すでに起つております問題は、為替不安です。最近も新聞等でごらんになる通り、また大蔵大臣までが為替引下げはやらぬ、こういうことを声明せざるを得ないほど、国民は為替に対して非常な不安を持つておる。これは大蔵大臣が言うように、財政や金融を締めたからつて、それで為替不安がなくなるのじやないのです。またやらないといつて声明したからといつて、それで為替不安がなくなるのではないのであります。というのは、今為替不安が起つておりますのは、政府が政策として為替を切り下げるであろうという不安ではないのです。こんなことをやつておれは、為替引下げは必至だというのです。これでは為替を引下げざるを得ない状態が来るというのが財界、経済界、また多くの評論家が見ておる見方なんです。というのは、政府の認みておりますように、今日の日本経済は物価が割高で、外国競争ができないと言つているのです。しかも外国ではまだ物価は下るという世界の大きな態勢であります。だとすれば、ますます日本の物価の割高はひどくなる。物価の割高を下げるくふうをすべきです。しかるに実際やつていることはコストが上り、結局物価が上るような政策はかりだ。やつて行けないといえば、賃金を上げよう、給料を上げよう、手当を上げよう、農民が困れば農産品の米、麦も上げてやる、これでは結局において日本の物価の割高はますますひどくなります。先ほど大原君のお話もありましたが、今ですら困つている。これじやいよいよだめだ。そうなれば政府がやるやらないにかかわらず、引下げ必至た。これが大分強い人気になつておるのでありまして、こういう情勢ではいま少しここで手持ち外貨が減り、国際収支が悪化しますれば、この通貨不安は非常な勢いで強くなると思うのです。通貨不安がひどくなつたらどうなるんだというと、金で持つているわけに行かないから、みな物にかえてしまうという破綻に襲われると思う。これは私がここで誇張して言つていることでは決してないのであります。きようも私は日本経済新聞に、引下げたらたいへんだ、この際為替を切り下げたら、国民は三百何十分の一に通貨価値を下げられた苦い経験を持つており、通貨に対して神経過敏だから、すぐ物を買いつける、物は上る、銀行は取付にあう、たいへんなことになる。従つてそんなばかな政策をとるはずがないというのでありますが、しかしそこに今までのようなやり方をやられれば、結局切下げが、政策としてではなく、破綻として起るおそれが絶無であるとしうことは言えないのです。これでは困るということを言わざるを得ない。その不安を押えるために、私は書いたんですけれども、しかしそういう不安が現在すでに非常に大きいのであります。これ以上予算の歳出面その他において、日本の物価を上げる要因が起るような政策をとるということになりますと、破綻はその方から来るおそれが大きいと私は思うのであります。現在においてある階層が非常に困つている、今の収入ではやつて行けない、これはもう至るところにあるのであります。しかしそれを解決するのに、全部上げて行くか。それは一番楽な方法でありますけれども、それでは破綻が来る。その破綻も必ずしも遠い将来でない。とすれば物価や賃金を上けず、しかも国民の生活が楽になるくふうをする、その段階に来ておるのではないかと思うのであります。  そこで問題になりますことは、そういう情勢であれは、むろん財政はうんと切り詰める必要があるわけでありますけれども、しかし日本経済が自立するには、デフレ政策で自立ができるというような状態でない。一体デフレ政策で物価割高が解決できるということは、病気でいえば、頓服一服のめば、あとはなおるという軽い病気の場合に限るのであります。日本経済が財政金融のデフレ政策くらいで、今の物価割高が解決でき、国際収支の赤字が解決できる。それであれば、私は万万歳だと思うのです。そんな軽い病気じやない。根本に非常な病根を持つておる。相当苦しい、ある場合には命に若干の危険が起るくらいの大手術をやらなければ解決ができない。そういう根幹的な疾患を持つておるということが、この物価割高の理由だと思うのであります。従つてこの割高の問題は単なるデフレでは解決ができない。これは政府の今度の予算その他大臣諸公の演説を見ても出ておるのであります。経済五箇年計画で財政支出が約一兆億いる、年々平均二千億の財政投資をやろう、こういうわけであります。そのためには相当インフレ要因のある財政になると思うのです。むろんこれだけのことをやるには、ほかの経費を極力切り詰めるということが前提でありますが、それでも相当インフレ要因のある財政になると思うのであります。それでそういうインフレ要因を含む積極的な財政に対して、反対論も相当多いのでありますが、これはインフレ要因があるということと、インフレになるということとをごつちやにした議論が非常に多いと思う。インフレ要因があるからインフレになるときまつたものではない。しかし昭和十四、五年ごろから二十三、四年ごろまでの日本経済では、インフレ要因があれば、そういう財政政策をとれば必ずインフレになつた、これは事実であります。これは当時においてはそうならざるを得ない基本事情があつたからなのでありまして、現在においてはそういう基本事情がかわつております。というのは、あの当時はなぜインフレ要因があるとすぐインフレになつたかといえば、第一金があつて外国から物を売つてくれなかつた。また向うは売つてくれても金がなかつた。ところが現在は世界では物が余つております。幾らでも買えます。しかも買う金を持つております。外貨約千億ドルを持つております。従つて積極財政をとつて物価が上りそうであれは輸入したらよい。外国から安いものを入れたら決して物価は上らない。他方輸入代金を払うために、通貨は輸入代金だけ収縮します。通貨の膨脹も押えられる。こういうわけで、世界貿易が自由であつて外貨を十分持つておるこの段階において、インフレ要因がある財政政策をとつたからといつて、インフレになるものではないし、また戦前においても、そういう政策をとつてもインフレになつていないのであります。そういうわけで一方においては徹底的な緊縮をやる必要があると思うのでありますが、必要な面においては重点的に使うべきだと思うのです。そういう面で、使い方としては足りない面がまだあると思う。たとえば九州は非常な水害でありますが、予算に現われた水害予防費というものは、災害復旧費ととんとんないし足りない、災害復旧費の方が多い。一体災害復旧費と災害を予防する金とがほぼとんとんだ、これで年々ふえて行くというのではしようがないのでありまして、水害その他の災害をなくする方面には、もう少し重点的に金を使つてよいのじやないか。しかし、そうでない念を要しない道路やその他は、もう少し減らしたらよいのじやないか。都市計画費その他の公共事業費等はいずれも必要でありましようが、重点的に考えると、これらは比較的に急を要しない。こういう費用がたくさんあるということが、われわれ批判家の間では、どうも党利党略の方面に使つておると言わざるを得ない。何も金を使うことが悪いのではなしに、使い方が悪いという点に、問題があるのだと思うのであります。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕 一体これだけの財政方やろうというのには、手持ち外貨を相当なくする覚悟をすべきだ、これだけの手持ち外貨がある点まで出て行つてもよいという覚悟をしなくてはならない。ところが手持ち外貨がなくなると非常に心細がる、それはたいへんたというのが金融業者あるいは財政当局の考え方であります。これはたとえていえば、昔の人が家をつくるのに大きな柱を使い、大きな柱であればあるだけ家が丈夫だと考えたようなものです。しかし材木の大きなものを使えば、実はかえつてその大きな材木の重圧が大きくて家は危険である。今の科学的建築からいえば、安全に必要な最小限の資材であればよい、これが現在の建築であります。金準備あるいは外貨もそうでありまして、最小限のものは打たなければいかぬですが、それ以上打つていることが安全だというようなことはどうかしていると思う、これは銀行家的な考え方なのでありまして、国としては、金で持つているよりはできるだけ生産設備にする、災害が起らないようにする、その方に使うべきです。しかるにそれを使うと困るというような考え方をしておるのは、現在の建築を見て、これはあぶなつかしいと考えておる、昔の太い大黒住を使つた考え方と同じではないかと思うのであります。そういう意味で、使うべきところは使うが、そうでないものはもう少し緊縮すべきだと思うのであります。ことにこの点は、今の見通しからいうと、今後不景気が深刻化して来ます。その場合に備えるために公共事業費や何かはできるだけリザーヴしておく、失業対策その他、非常な不況になつて、それを救うために相当公共事業費をやらねばならない時期は品の前に迫つておる。そんなときに金がないというのではだめなんです。できるだけ今はリザーヴしておいて、次に不況が来て国民の生活が非常に困るというときに初めて、不況対策としての公共事業をやつて行く、今はまだ早過ぎるということです。これで立ち得るだけの産業の抵抗力を養うべきなのであつて、今の段階において失業対策費を出すべきではない、そういう先に備えるという意味においても、不急不要の比較的延ばし得られる公共事業費は、できるだけそのときのためにリサーヴしておく、今急を要する日本経済の自立のために必要な用途に集中的に使う。早ければ早いほどよい、遅れれば遅れるだけ損だ、この考え方でやるべきではないかと思うのであります。同時に問題になると思いますことは、今の問題を解決するためには、相当資本蓄積が必要である。あるいは浪費を極力押える、ないしは資本を最も効果的に使う必要がある、こう言われておるのでありますが、口ではそう言われておりますが、これを裏づける政策が行われておるかというと、裏づけという大事な点が非常に抜けているのじやないか、なるほど法人税もある点まで、ある局部については減らしました。銀行方面の要望を入れて、源泉課税は五〇%を四〇%に減らしたというふうな措置がとられておりますが、これはどちらかというと枝葉の点でありまして、根本の点にもう少しメスを入れるべきではないであろうかと思うのであります。それは現在の産業の、おそらく半分は、厳格に計算すれば損金であるにもかかわらず、表面上には擬装利益を出しておる。この擬装利益をあてにして、政府は税をとつている。それから賃金、給料が払われ、配当が払われ、そこから利子が払われ、ボーナスがとられている。これでは表面上はもうかつた蓄積がふえたようでありますけれども、実質的には日本蓄積は減るほかありません。大正九年の後にも、今と同じようなことを事業家がやつたのである。それが昭和二年の金融恐慌になつて結局ま破綻し、暴露しました。しかし当時と今と違うことは、現在では合法的にやれるのです。それはインフレーシヨンで、実際の資本は何百に上つているにもかかわらず、帳薄上では非常に安い資産しか計上していない。従つて減価償却というものが、必要な減価償却の何分の一しかできてしない あるいは何十分の一しかできていない。これは必要な減価償却をやれば、当然に損になるところが、減価償却をしていないために、非常な利益が出ておるという点であります。これを直すのには、第一は今度の固定資産再評価を、あれは事業のためにやるのじやなしに、国民経済全体のために第三次再評価をやるのでありますから、そうなればあれは強制すべきだ。強制するのには、最低と最高を加えて、最低限を少くとも強制するというふうにすべきであります。あれを強制して行けば、日本の事業の実態がわかつて来るのです。はたして利益があつて利益を上げているのか。実際は損をしているにもかかわらず、利益を欺満的に計上しているのか、これがはつきりして来るのです。あれは当然強制すべきです。とすれば、当然固定資産再評価税は無税にすべきだ、そういうことをやるべきだと私は思うのです。これが何といつて資本蓄積の根本である。今はその裏に隠れて、合法的にぐんぐん食い込んでいる。実際からいうと経営は非常に左前である。その重役がうんともうかつたように、二割も三割も配当している。高級自動車に乗つて、ボーナスをとつている。従つて当然賃金、給料も実際以上に払つている、能力以上に払つておる、こういうことが許されておつて、そうしてほかの方面でどんなにやつたところが、これはさつき言つたように枝葉の問題であります。根本の問題を解決しようというのであればそこに行くべきだと思う。これは資本家側からすると、相当に反対が来るけれども、これに屈すべきではないと思う。今度の固定資産再評価は、今の最高額を強制するということは無理かもしれませんが、ひとつ最低額を加えて強制して、再評価をみんなさす、そうして日本経済の実態をはつきりさせて行くべきだと思うのです。そういう意味において、固定資産再評価は、あれを強制していただきたい。そのかわりに固定資産再評価税はなくしていただきたいと思うのであります。  それから法人税につきましては、現在では高過ぎる、こういうので部分的な減税は行われましたけれども、しかし依然として今の法人税では、日本の現在の借入金過多の産業資本構成の是正は、非常に困難じやないか。戦前においては、自分の資産が六〇%、借入金は三〇%、現在は逆である。借入金が六〇%で、自己資本が三〇%、これで少し不況に面すれば、どんなに産業が混乱に陥るかということは、過去の不況期において明らかである。信金の多い会社が、不況期にどんなに困るかということは明らかであります。しかるに現在においては借入金の一割は経費として見る、しかし配当は利益から払うものとして、法人税をとつた残りからというのでありますから、一割の配当をやろうというのには、二割の利益がなければ一割の配当ができない、だから会社からいえば一割の配当を払うには、一割の配当ばかりでなしに、税金としてそれに匹敵するものを、いろいろ払わなければならぬ、それだけというと少し多いのでありますけれども、そういうことになる、法人税に細工〇%を払わなければならぬという形になるのであります。そこでできるだけ借金をやろう、こういうので、自己資本の増大をはばんでおります。その上に非常に濫費が行われている、どうせ税金で大部分持つて行かれるのだというので、非常な浪費が行われておる、一億円ほかのところへ使つても、結局は一億円の利益を上げれば、約半分は税金に持つて行かれるのたから、半分だけが会社の負担になる、そのうちに幾らかはもどつて来るのだと、こう見ればどんどん使います。広告費や何かうんと使うのもそのゆえであります。べらぼうな広告費を使つておる、利益で上げるよりは、先へ延ばして行つた方がいいというので、非常な浪費が行われておるのであります。そういう意味からいつて法人税はもう少し法人税それ自身に手を触れるべきだ、これに対しては、税源の関係上できないという議論がありますが、今は法人税は配当還付として、二割九分をもとしております。つまり法人税ならは四割二分の中で、二割五分だけは株主にかわつて会社が払つておるというのが建前であります。だから本来いうと、政府に入る純収入は、四割二分から二割五分を引いた一割七分、これが本来の建前であると思うのです。もつともそれは配当だけでありますから、全体ではそうは行かないのですけれども、配当に属しておる限りは、うであります。そうしますとこれは株主の立場からいいますと、二割五分を差引いてもらうということは、たいへん有利でありますが、これは非常にへんぱだ、それよりも銀行、証券業者その他株式を相当つておるところは、ずいぶん利益がありましても税金を納める必要がなくて二割五分の還付があるから、ほとんど税金を納めていない、これは非常に不公平です。でありますからむしろこの二割五分の還付をなくしてしまつて法人税を一割ないし一割五分下げる、こういう政策をとるということが、国のためにも実際のためにもいいと思います。株主や証券業界の方からは反対があるかもしれませんが、国のためからいえば、事業のためからいえば、あの三割五分の還付というのではなくして、それだけを法人税の減税に持つて行くべきだと思います。そうすればこれは税源には何ら関係なしにできる問題であると思うのであります。  それからもう一つ、今の日本立場からいつて大きな問題は、給与所得に対する率が非常に高い。財産所得に対しては一応今の率を認めるといたしましても、給与所得については相当これを軽減する必要があるのではないか。というのは給与所得が今のように大幅な税金をとられるということを中心にして、非常な綱紀紊乱が起つて来るのであります。事業会社の重役の大部分は、会社からはわずかの給与しかもらわない。そうしていて自分の私用のための経費、たとえば電話料から家賃から、子供や何か連れて遊びに行く自動車代から、ゴルフに行く自動車代その他品分の交際費、これは会社のためになるのか、自分のためになるのかわからないというようなものがずいふん多い。議員諸公の中にも自分の交際費の中に、議員として必要なのか、プライヴエートなのかわからないものはあります。そういうものが、従来はみなポグツト――自分の収入から払われておつたところを、みな会社から支払わせており、非常な公私混淆が行われております。上がそうでありますから、下もみな公私混淆である。会社のものも、自分のものも区別なしに使うという情勢であります。これを防ぐにはいろいろな問題があると思いますが、税制の面からいいますと、給与所得税をうんと減らす。そうして重役にはそういうプライヴエートのものは会社から払わせない。重役が全部ポケツトから払えるようにしてやる。そうすると会社としては、今まで会社費用として払つたものを重役の給与に引直して行く、こういう形になれば給与所得税をうんと減らしても税収は減りません。しかも綱紀の紊乱は非常に防ぎ得られると思うのであります。われわれは実は議員諸公にも一つ一つ自動車が持てるような歳費を与えるくらいになりたいと思うのです。ところがそれがないと議員諸公も国会の自動車をお使いになる。そうすると公私混淆に自動車を使う場合が絶無とは言えないのではないかと思う。そこで今度は官吏諸君の公私混淆をどうして監督し得るかという問題にも人づて来る。そういうことが重役の場合には一層ひどいのであります。この一大弊害、このように紊乱しておつては、どんな対策を立てたところが何にもならぬ。たとえば産業をやつて行くのに、いろいろな対策を立てたところが、底に穴の明いたかめに水をくむようなもので大部分は流れてしまう。こういう大弊害を考えれば、ここに給与所得課税に対しては上を非常に少くする。現にそういうことは認められている。たとえば預貯金に対する源泉所得課税では、従来五割を今度四割に切り下げた。この原則、精神からいえば、この給与所得の税の最高を四割まで切り下げる。そうして今のような公私混淆を防ぐような政策をとる。そうすれば税収は減らずに、自分のポケツト・マネーであるから乱暴な使い方はやらないという形でできると思うのであります。そういう意味において財産所得は別でありますが、給与所得の最高率は減らしてもらいたい。それから私どもも減らしてくれとは言いません。原稿料や何かの税率を減らせとは言いません。私どものはそういうからくりのしようがないのです。そういうからくりをしようとすれば脱税をするよりほかないのです。けれども給与所得だけにはそういうからくりが行われる。その弊害が大きいからそこを減らして、何とか対策を立てるように議員諸公の力をもつて改正してもらいたいと思うのであります。  最後に金利の問題について申し上げたいと思います。日本が今生きて行こうというのには、ほかの点もいろいろありますが、今の高い金利ではとうてい世界と競争はやつて行けない。ところが金利の問題になると、何か資本家だけの問題のように見るのでありますが、金利が高いということは実は給料をうんと安くしている。労働階級の立場からいいましても、金利が高いということは重大な問題なんです。ところがコストに占める金利の比重というものをこの間も大蔵大臣の説明によりますと――これは新聞で見たのでありますから、もし間違つていたら何ですが、コストに占める比率は二、三%だという答弁をしている。また事実日本銀行の調査によるものも、そういうように出ております。しかしこれは金利がコストに占める比率をうまくごまかしたといいますか、あるいは無知であるといつたらいいのでありますか、私どもからいうと、このくらい無知な計算はない。あれは製造工業が金利として支払つてつたものだけを調べたのであります。しかし金利が日本産業コストに、どういう影響を与えているかということは、最終の工場で金利を幾ら支払つたかということが問題ではないのだ。たとえば今建設する電力料については、電力会社に言わせますと、電力料の四分の三までは金利負担た、これは全部借金するんだ。そうすると会社が電力料として支払つている電力料の中の四分の三は金利なんだ。会社が労働者に賃金として払つている中にも、労働者の生活の中に電熱料、電燈料があれば、また電車賃があれば、その中の少からざるものが金利である。これは電気だけではない。石炭つてうんと金利を負担している。鉄だつて負担している。昨日聞いたばかりでありますが、鉄のごときは八幡で払うだけでも、鋼塊一トン当りに占める割合が約八%である。これらが累積して来るわけであります。この累積した部分がコストに占むる金利なのでありまして、そうすれば二、三%どころか三、四%になるのではないか。そういうことを私は政府に調査してもらいたいと思う。議員諸公から要求されて、その正確なものを累積して、電力料として支払つているものの中に、どのくらいの金利が含まれるのた、石炭代として支払われているものの中に、どのくらいの金利が入つている。原単位で計算して、たとえば船の中にはどのくらい金利が含まれているかということが出る。機械の中にどのくらい金利が含まれているかということが出るのですが、それをやるべきであります。しかしそれはなかなか手間がいつて個人ではできませんが、簡単にできることはこういうふうに見ればわかるのであります。それは最近日経連の調べによりますと、現在では最も進んだ生産設備工場を起そうとすれば、従業員一人当り五百万円いる。ところが金利をアメリカが四分とし、日本が一割とすると、六分の差がある。これを五百万円にかけると、一年三十万円の金利の差がある。労働者が一年三百日働くとして、従業員一人当り日給千円に相当する部分が、アメリカより日本が金利が高いということで、労働賃金を安くしているか、あるいはコストをそれだけ高くしているか、あるいはほかのものを圧迫している、こういう形になるのであります。それだけ金利の負担は非常に大きいのであります。これに対して政府はどういう政策をとつているかというと、開発銀行その他の金利を下げようとしている。これを下げてほかの金利が下るものであれば、われわれそれに賛成であります。しかし今の状態では、開発銀行その他の金利は下げても、ほかの金利は下らない。あれは特恵的な引下げで、一極の保護政策になるのでありまして、全体の金利を引下げることにはならないのであります。しかも今の金利のやり方を見ますと、大体銀行の資金コスト――費用がかかつて、それにある適正の利潤を加えたものが金利だという見方を大蔵省はしております。これは統制時代のやり方で、一体統制時代のコストに適正利潤を加えて物価をきめた時代でも、コストを下げた産業というのは一つもない。私はその当時やりましたが、コストが上れば金利も上る、コストが下らなければ物価を下げないのですから、コストを下げる努力をするはずがない。だとすれば、今の状態において金利は下らない。銀行業者がどうしてコストを下げますか。現に小さい地方銀行を見ると、一億何十万円という大きな支店を建てている。非常に金を使つていろいろな宣伝をしている。これは引合うから宣伝をしている。そうすればコストが高くなる。そういうわけで、それでは問題は、コストをどうして下げるかというと、下げる道はあると思う。これは資金需要供給関係といいますが、資金供給の方からいうと、今まで政府は約三千何百億円の財政蓄積をしている。国としてはそれだけの滞積がある。これを民間から吸い上げて遊ばしておる。そうすれば、国民としては税金その他の形で蓄積しておりますけれども、財政蓄積でそれだけ吸い上げておれは、民間の資金供給が少いのは当然であります。もし国全体としての資金需給関係というのであれば、政府蓄積したのを民間にもどして来る、金融市場にもどして来る、こうやれば今年これだけ使いましても、今なお政府は外貨資金を二千五、六百億円持つておりますから、これが民間に返つてごらんなさい。金利は暴落です。それだけで下げ得られます。しかし、それをどうしてもどすかといえば、単に流すのは弊害があるのでありまして、インフレが起らないように流そうとすれば、過去の事業会社の借入金、これは短期で借りている。それを政府が戸がわりにしてやる。たとえば外貨資金を一千万円ほど日本銀行に売つて、その金を預託なり出資する。それが事業会社の今まで借金として滞つているやつを肩がわりする。そうすれば民間にもどつて来るのであります。一体金利がこんなに高いのはどういうわけかというと、銀行業者需要があるからだと言いますけれども資金の需用というのは、本来からいうと、その金を使つて引合う事業があつて需要であれば、金利はどんなに高くても問題はない。その金を使つて事業をやつて引合うのであれば、金利は高くてもかまわないと思う。今の事業は何のために金を使うかというと、過去の借金の切りかえのために金を借りている。これは高利貸し金利です。金を払わなければ破産するから、高利貸しの言う通りの金利を払わねばならない。そういう性格の金利なんです。だからこの過去の借金を整理してしまえば、そういう高利貸し的な金利に対する資金需要はなくなつてしまう。そうすると金利は暴落する。これは大正時代の金融恐慌において、金利が暴落した事実をよく調査査すればはつきりする。なぜ大正時代の金融恐慌で金利が暴落したか。一方の理由は、約四億円の特融をしたということがあるのですけれども、根本は、過去の腐れ借金を整理したということである、そういうわけでありますから、金利についても、何も金を使う必要はなく、帳簿の振りかえでできるのであります。どうぞそういう面の対策を推進していただきたい。  たいへん失礼なことを申したかとも思いますが、時間が参りましたので、これで終りたいと思います。  なお最後にちよつと事務局の方に注文いたしたいのは、資料をもう少し豊富に送つていただきたいと思うのです。これなど見ますと、たとえば今の金利の問題なども、金の支出を調べようとしても、ないのです。ほかの問題もあります。たとえば電話料の引上げ問題について見ようとすると、そういう資料がないというわけで、公聴会をおやりになるという気持があるのでしたら、もう少し十分の資料を送つていただくようにお願いします。(拍手)
  11. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質疑はありませんか。――それでは高橋君ありがとうございました。  では午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十一分開議
  12. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き公聴会を開きます。  一言ごあいさつ申し上げます。公述人各位には御多忙中にもかかわらず、貴重なる時間をおさきくださいまして御出席いただきましたことに対し、厚くお礼申し上げます。公述人各位の忌憚のない御意見開陳は、本予算案の審査に多大な参考となるとともに、その審査一般の権威を加えるものと信じます。何とぞその立場々々より腹蔵のない御意見をお述べいただきたいと思います。  なお議事の順序を申しますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は大体一十分程度お願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと思います。なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。次に発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承願います。  それではまず古賀専君より御意見をお聞きすることといたします。古賀専君。
  13. 古賀專

    ○古賀公述人 私日本労働組合総同盟の古賀専でございます。昭和二十八年度の予算案につきまして、私ども労働組合立場から一言意見を述べさせていただきたいと思います。  今回提出されました二十八年度の予算案は、さきの不成立予算案と比較いたしまして七十八億円の増加を見られるだけで、その他根本的には変化がないものたと私どもは見ておるわけであります。このことはさきに政府予算編成の説明にあたつて、朝鮮の休戦会談の進行にもかかわらず、予算編成の前提となる経済事情にも当面急激なる変化はないものと考え、ただ必所要な調整を加えるだけにとどめたと言つておられるところからも明らかであります。しかし私どもは、このような情勢の分析に立ちました予算案の性格に対しまして、いささか不満を感じておる次第でございます。このことは不成立予算案が編成されました当時の事情と、今度の本予算の編成当時との間におきましては、かなり背景的な事情の変化が赴きておると考えます。これらの政治的な、経済的な事情の変化につきましては、他の公述人からも詳細に述ベられておることだと考えますので省略をいたしますけれども、ただ要点を申し上げますならば、御承知のことく世界経済は、米英を中心とするところの再軍備計画がだめになりましたことと、さらにアメリカの対外援助費が削減をせられておりますこと、それから朝鮮動乱の勃発当時の軍拡景気から現在は非常に沈滞の状態にありますこと、さらに今後におきましては平和恐慌というような破局的な段階に立ち至ることはないかもしれないけれども、不況は深化するものと考えなければならないと思うからであります。ことにわが国経済は、これまたしばしば各方面において指摘せられております通りに、特需によつてささえられておりまして、正常な均衡状態にないこと明らかであります。世界的な不況が深化いたしますならば、わが日本経済輸出競争力の弱い点からいたしましても、非常な窮地に陥るのではないかということが憂慮されるのであります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 従つて今日なお多少とも外貨を所有いたしておりますときに、あるいは特需のあるうちに、日本経済自立の基盤を確立することがきわめて重要な問題でなければならぬと考えます。本予算の編成にあたりましても当然かかる観点から取上けられて、世界的不況のあおり食つた場合において日本経済をなお混乱状態に陥れず、日本の旧民生活を破壊しないような施策がとられなければならぬと考えておるものであります。ことに今後の世界的な経済の動向の推移等からわれわれが想像いたします場合に、わが国におきましても御承知のことく企業の合致化ということが強く叫ばれておりますし、おそらく今後相当な労働者の中からの失業者あるいは中小企業者の倒産者が出るであろうということも、大方の観測の一致するところであります。こういうような状態を予見いたします場合に、政府は一体これら国民大衆の生活の困窮に対し、どのような態度で対処しようとしているかという点に、私どもははなはだ疑惑を感じておるような次第であります。もしも今後の労働者あるいは中小企業者その他勤労大衆の困窮から来ますところの政治に対する反発、こういうものをスト規制法のようなものによつて高圧的に押えようといたしますならば、これは大きな誤りではないかと考えておる次第でございます。もちろん昨年の秋のいわゆる炭労、電産ストに際しましての総評のスト指導ということについて、若干の行き過ぎがあつたことは私どもも認めております。しかし健全なる労働組合運動の発展ということが一朝一夕にしてなりがたいこと、これまた言うまでもないのでありまして、これらの事態を常に法律で抑圧するという形をとりますならば、おそらく健全なる、日本の真の民主主義の支持となろうと考えております労働組合をも、敵にまわすことになるのではないかということを私ども考えておる次第でございます。かような事態になることはできる限りわれわれも避けたいと考えますので、できますならば今後の経済の推移等から、本予算案の千点をもつと失業対策、あるいは企業の合理化から来るところのいろいろな影響の面の救済ということに置かれてしかるべきではないかと考えておる次第でございます。そのためにはたとえば防衛分担金、これは西欧諸国においてはこのようなものは負担をいたしておらないようでありますから、わが日本の場合におきましてもアメリカ側と折衝いたしまして、そうして六百三十億の防衛分担金というようなものをもしも免除できますならば、これを民生の安定の面に向けることが可能ではないかと考えます。さらにまた保安庁費の圧縮なども現在の世界政治の動向、いわゆる戦争の脅威が去り、平和への動きが強まつておる状態におきましては、これらの点についても十分考慮を加え得る余地があるのではないかと考える次第でございます。こういう面の費用の節減によりまして、完全雇用あるいは国民生活の低下を食いとめるというような施策が、根本的に予算案の中に盛られることを切望してやまない次第でございます。  なお歳入歳出の面を見ます場合におきまして、私どもは勤労所得税及び源泉所得税の中の給与所得税、あるいは一般勤労者が負担をいたしますところのものが、やはり過大であるということを痛感せざるを得ないのでございます。今年度におきましては一千二十三億の減税ということが言われておりますけれども、国民所得の見積りが過大ではないのか。結果において減税は税法上の減税にとどまり、真に勤労者の生活負担を軽くするということにはならないのではないかと考えておる次第でございます。しかも一方、このように給与所得税の方におきましては千九百十八億円で二十七年度より百五十九億ふえておりますけれども、申告の方では逆に六億減少をいたしておるというようなことについても、私どもは政治の権衡と申しますか、公平と申しますか、こういう点について若干不満を抱かざるを得ないのでございます。しかも、このように源泉所得税というような戦時中のいわば遺制と申しますか、本来ならば当然早くなくなつて、国民の自覚に基くところの納税の手続がとられなければならない制度が、なお継続されるということにつきましても、でき得る限りこれらの税制自体が早く廃止せられることを希望いたしておる次第であります。勤労者に対する税負担が過大である反面、資本家に対する税負担は非常に軽減をせられておると考えます。これは御承知のことく企業合理化促進法あるいは租税特別措置法等、こういう面で資本蓄積という名目のものにいろいろ便宜がはかられて、その負担が軽減せられておるように私ども考えておりますので、こういう点について公平なる国民の負担ということをぜひともお取上げ願いたいというふうに考えておる次第でございます。  なお二、三の点について意見を申し上げたいと思うのでございますが、第一番は先ほど私簡単に申し上げましたごとく、今後の日本経済の推移等から考えます場合に、企業の合理化などが促進せられ、失業者相当増大するということが予測せられるのでありますけれども、この失業対策ということがあまり重視されていないのではないかと考えます。もちろん今度の本予算におきましては、前年度予算に比較してたとえば失業対策費は十七億円ふえております。これは確かにふえておるのであります。そしてこの予算の中で、一面税制の面で、今後民間産業の雇用骨が増大する、賃金水準は向上するだろう、そういうことで一二%の増収が見込まれておるのでありますけれども、どこから見ましてもこの雇用量が増大するというようなことは考え得られません。御参考までに現在失業保険の給付を受けておる者の数を申し上げてみますと、二十六年度の平均が二十三万人、二十七年度の平均は三十五万人となつております。しかも本年に入りまして一月三十五万五千、二月が三十六万六千というふうに失業者の数は増大をいたしつつあります。政府の歳入見込みの中で雇用量が増大すると言われておることと、これはまつたく逆の現象が生じておるのではないかと考えておる次第でございます。さらに失業保険を受けないところの潜在失業者は五十三万人という数字が労働省から発表をせられておりますが、いわゆる潜在失業者が今日五百万ないし七百万、あるいはもつと多く透しておるだろうということも、私どもは十分に推察のできるところでございます。こういうことを考えます場合、今度の予算案において十七億の増額になつておりますけれども、事態の推移に即応するような十分なる対策が立てられておると考えることができないのでございます。この点完全雇用の実現のために、いろいろ困難はございましようけれども、もつと十分なる予算措置を講じていただきたいということを考えておる次第であります。  次に財政投資の問題でございますが、今後の日本経済発展させる上において、基幹産業の培養ということの重要性は、大蔵大臣の財政演説の中にも強調せられておりますので、その点に関する限り私どもも同感でございますけれども、いわゆる財政投融資の扱い方と申しますか、その配分については、非常に総花的で計画性がないということをやはり痛感せざるを得ないのでございます。できますならば電力や造船のような問題に重点を置いていただきたいと考えております。特に電力については、一般に電源開発の重要性は十分に認識せられておりますけれども、海運、造船に関しましては若干その点欠けるところがあるのではないかと考えておる次第でございます。御承知の通り、現在二十八年度の後期分として三十万トンの計画がされておりますし、開銀から二百二十億これに融資されることになつておりますけれども、ただこれだけでは二十八年度後期分の三十万ドンの実現は非常に困難でございます。このためには利子補給法案ある、は損失補償法案、このような法案が早急に成立しなければ、現実には造船所で船をつくることにはなりませんし、労働者は依然としてアイドルの中でいたずらに時を過さなければならないし、設備はまたいたずらに休眠状態にあるということになる。これらの点につきましても十分に政府の保証によりまして、市中銀行から安心して融資のできるような態勢の確立を希望してやみません。なお将来の海運、造船の問題にいたしましても、そのときどきの施策ということでなくて、もつと根本的な基本的なについて考慮が払わるべきでないか考えておる次第でございます。御承知のことく、日本の地勢学的な条件から見ても、物資の需給関係からいつても、船舶の問題は論ずるまでもありません。また戦前に比較しても現状が非常に貧弱であることも申し上げるまでもありません。大体私がずつと見て参りますと、政府の施策の中で一貫しないものがあるのじやないかということを若干感じさせられておる次第でございます。たとえば一ころ買船政策ということが強調せられました。船がないために応急措置としてボロ船をたくさん買い込んだのでありますけれども日本の国土の影も見ないうちに北太平洋で沈んでしまうというようなこともあつたのでありまして、まことにこれは国費の浪費の最も大なるものであろうと考えておる次第でございます。でありますから、船舶の建造につきましてはあくまで国内で新船を建造することを確立され、輸出船の振興のためには、今日鋼材価格の面で非常に不利な状態にございますので、こういう点について、たとえば特に造船川の鋼材についてのみ鉄鋼補助金を出していただくとか、こういうことの御考慮を願いたいと考えておる次第でありす。  最後に、一般民生問題とでも申しますか、住宅問題、社会保険、福祉施設の拡充についてでございますが、これらの点についても、たとえば住宅金融公庫、公務員の住宅、石炭労働者に対するいわゆる炭住資金というようなものが出されて参つております。しかし一般産業の労働者については、はなはだこれらの恩恵を受けることが少いと考えられるのであります。前国会におきましても、一般産業労務者用の住宅資金融通法案というものが提出せられておつたようでありますが、その額がわずかに二十億でございました。この二院億をもしも倍額にしていただきますならば、今日住宅難のために十分に生産意欲を発揮することができないでいる労働者に、いかほど寄与するところが多いかということも痛感した次第でございます。  こういう面から見て参りますときに、これら社会保障制度関係とでも申しますか、これらの費用があまりに貧弱であるということを痛感いたしております。総予算に比較して、大体それらのものを拾つて見ますと八%程度しかないようでございます。スウエーデンの四四二%、イギリスの三五%ないし三八%に及ばないとしても、本予算の中で若干はこれら社会保障制度的な施策のために措置が請じられることは可能じやないか、またそのようなことを切望しておる次第でございます。  総体的に見て、大体今回の予算につきましては、以上申し述べましたように依然として負担が勤労者に加重されておる、しかも歳出の面につきましては、資本家の擁護をする傾向が顕著に現われてもおりますし、また世界の政治的な動向と若干ずれを生じておるとでも申しましようか、防衛費とかあるいは保安庁関係などに相当な金額が出される傾向にあるということで、私どもといたしましては、はなはだ不満を感じておるということを申し上げまして、私の意見の公述を終りたいと思います。(拍手)
  14. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 古賀君の御意見に関して御質疑がございますか。世耕弘一君。
  15. 世耕弘一

    世耕委員 簡単に二点ばかりお尋ねいたしておきたいと思います。労働者の福利施設並びに労働意欲の向上ということが、日本産業発展に大いなる根源をなすものだということは異論のないことでありますが、憲法の二十七条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、業務を負ふ。」ということが書いてあります。近来の労働者は、はたして勤労の責任、義務を完全に果しておるかどうか。一例を申しますれば、もうやめたかしらぬけれども、この道路のわきにテントを張つてすわり込んでおる、この間のごときは文部大臣の室を占領して、一晩か二晩すわり込んでおつたということも聞いております。それらは労働組合の精神のどういう点に当るのか、あるいは妥当な権利の行使であるかどうかということに私は疑問を持つておる。質問を簡単にする意味でもう少し説明を加えておきますが、おおむね何百人とか何十人とかいうもので、集団的に交渉しなくても、それぞれ機関には代表者なり責任者があるのたから、それで解決しそうなものだと思う。ところが大衆が旗を振りまわす、あるいはいろいろな形式を整え、示威運動に類するようなことをやつておる。それだけ時間の空費院で、それが産業の萎縮をなすのではないか、もう少し紳士的に行かないものであるか。もちろんこれには資本家の方にも責任があることをわれわれは見のがしてはいけない。けれどもまずあなたのような指導的立場に立たれる方が、労働組合あるいは労働者のあり方について、それぞれ指導的な見識をもつて日本労働組合の発達並びに組合の向上をはかつておられるでありましようか。この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  16. 古賀專

    ○古賀公述人 勤労の義務が現在の労働者には欠けておるのではないかという御意見でございましたが、今日の労働組合は大体社会主義的立場に立つております。働かざる者は食うべからずというのは社会主義の鉄則でございますから、そのような意味においても勤労の意欲というものは当然あると思います。また私ども立場におきましては、高能事、高賃金ということを考えておりますから、世耕先生のおつしやるような意味で、仕事をしないで金をもらうというような考え方は、いつの社会にもこれは相いれられないものだと考えております。  それから日教組が文部大臣室を占領したことについて、どうかということでございますが、このような事態が起きましたことについては、私はもちろん日教組の諸君たちの側がどういう態度に出たかは、現場におりませんので十分承知はいたしません。しかしかなり世間を騒がせたということは、一つは先生であるという立場からだと考えます。この点はやはり同じ労働者といいましても、それぞれの立場におきまして、若干、これらの行動の面において、表現の方法は異なつてしかるべきではないかということも考えております。しかし同時にやはり何かといえば労働組合を罪悪視するというような考え方がかなり世間にある。特に大臣とか、そのほか偉い方々の中にはあるのではないかという感じもいたしますので、こういう点はひとつ十分に労働組合意見も聞くという寛容さをもつと持つていただきますならば、私どもはごくさまつな事柄のそういう派生的な問題は、十分未然に防止することができるのではないかと考えております。
  17. 世耕弘一

    世耕委員 国民の信頼と尊敬を得るために、労働組合が真剣に努力しなければならぬということには、あなたも同感のように考えられるが、現在の労働組合あり方が、はたしてあなたのような考えの通りに進行しておるかどうか、行き過ぎているのじやないかというのが私の指摘したい点であります。もし行き過ぎであるとするならば、これを是正することが、国民の信頼と尊敬を受けることではないか。私は多分に行き過ぎがあると思う。行き過ぎがあるばかりでなく、たとえば前回の電産ストでございますが、東京都の統計を見ますと、東京都だけであのストのために二百五十億の損害があつたということが発表されておる状態である。全国計算いたしますと、おそらく数千億円になるの百ではないかと思つております。もしかりにこの統計が当つておるとすれば、その数千億の争いのために、第三者的立場にある国民がとれくらい損害をこうむつたかわからない。それが産業を萎縮せしめ、日本の品を喪失しておるのではないか。これを労使双方が理解したならば、私は必ずやここに光明があるのではないかと思う。その指導方針はむしろ幹部が責任をとらなければならないのではないか。今あなたのおつしやつたように、一対一で話ができそうなものた。赤い旗を振りまわして周囲を取巻かなくちや解決つかぬということはもう末の末ではないか。私はそれはきらいだ。そこを何とか打開の道がないか。同時にまた労働組合自身の思想的向上あるいは生産意欲の向上と同時に、労働者たるの社会的地位、責任ということがもう少し徹底したならば、世間の物笑いになるようなことが起らないのではないか。これはあえて労働組合を責めるわけではありません。資本家も大いに目ざめなければならぬ。労働者も目ざめていれば、そこに国民の支援が強くなるのではないか。私は現在の行き方が少し行き過ぎだと思いますから、この点を指摘して、経験の深いあなたに御意見を伺つておきたい、かように思います。
  18. 古賀專

    ○古賀公述人 世耕先生からたいへん厳粛な御意見をいただいたのですが、これは私は決してじようだんに申し上げるのではございませんけれども労働組合側に行き過ぎがあるのではないか、労働組合側に非常に成長の足りないものかあるのではないかという言葉も聞き取れたのでございますけれども、この点マツカーサーが日本国民の精神年齢を十二歳と言つたことは、ただ単に労働者だけをさしているものではない、こういうように理解しております。だから資本家側にも当然行き過ぎがありますし、政府自体にも私は行き過ぎがあると思います。労働組合連動自体の行き過ぎというものは、当然労働組合の中から是正されて行かなければならない。こういうように考えておりますので、こういう問題につきましては、政府、特に与党の方々がこういう点をもつと十分掘り下げて御検討くださることをお願いいたしたいという気持でおります。
  19. 世耕弘一

    世耕委員 なお二点ばかりお尋ねしておきます。こういうような労使の衝突が起るのは、現在の日本の国情としていたし方ないと思うのでありますが、もう一歩進んで、何かそういうようなしこりかできたときに、すみやかに話合いで解決するような手は打つておりませんか。従来の行き方からして衝突するところまで行かないで、すわり込みをしたり、ハンガーストライキをしたりするところまで行かないで解決する方法で、あなた方はこれまでに努力しておる経験がございますか。
  20. 古賀專

    ○古賀公述人 私どもは労使間の紛争はできるだけ団体交渉で解決いたしたいと考えております。そのためには、団体交渉自体がやはりもつと権威あるものにならなければならないと考えるわけであります。法律的にこれを権威づけるということもむろん私は必要だと考えますが、先ほども申し上げましたように、資本家側の方々、あるいは政府の方々に、そういう団体交渉そのものを毛ぎらいすると申しますか、嫌悪するというような感情をもう少し捨てていただきまして、そうしてやはりそれがお互いの話合いで解決する一つの民主的な手段である、方法である、こういうことの御認識を得ますれば、いたずらにストやサボに訴える必要はなくなると考えておる次第でございます。
  21. 世耕弘一

    世耕委員 そうしますと、現在の機構に対して不満だというふうにも聞えるのですが、現在の機構をこうすると労働組合は快く活動ができるのだというような何か御腹案がございますか。現在労働委員会とかなんとかいう指導的な会議がありますが、私はかえつてああいうぬえ的な存在が双方の衝突の機会をふやすものだ、もつと掘り下げて懇談し、話合がつく機会をつくるべきじやないか、かように考えるのです。なぜこういうことを言うかというと、結局ストライキが起つた結果は、労使双方にも損害があるかもわからないけれども、こうむる国民の損害が非常に莫大であるということを考えるからで、特にこの際指導的立場にあるあなたの御意見を承つて、われわれの予算審議その他の力の資料にいたしたいと思います。
  22. 古賀專

    ○古賀公述人 現在の労働委員会制度その他機構的な面について、何らかの意見を持つておるかということでございますが、労働委員会などにつきましても、いろいろ機構上の問題についての意見は今日まで論議もせられております。これについては、たとえば三者構成自体が非常に適当でないという考え方が一部に、特にこれは資本家団体あるいは政府の中にも過去においてあつたのではないかというふうに考えております。やはり三者構成自体についていろいろこれを議論いたしますれば、幾らでも問題はあると思います。抽象的な輿論だけでこういう問題を考えるといたしますれば、私どもの側、いわゆる、労働者側からも多くの不満も出て参るのでありますけれども、現実の問題を処理するということを考えます場合には、やはり三者構成という建前、しかも公益委員という一つ立場を肯定するということは、必ずしもそれが最善であるかどうかは別といたしまして、現状ではやはり認めて行き、その運営の中で改善をはかつて行くべきではないかと考えます。それからもう一つ、いろいろ現在の労使関係が非常に険悪になつておることについて、解決策はないかということでお尋ねになつておられるわけでございますけれども、この点、私どももいたずらに事を好んでおるわけではございません。このことは明確にいたしておきたいと考えます。しかしいずれにいたしましても、現在の社会機構の中におきましては、労働者というものは一応弱い立場に置かれておるのでありますから、この点は強い立場にある資本家団体、あるいはむしろ国民の上にあるところの――これは上にあるという議論は、またいろいろりくつを言えば出て来ましようけれども、一応政府というような立場から、労働者側が現在においてはやはり弱い立場にあるということについて、十分に理解されることが一番かんじんな点ではないかというふうに考えておる次第でございます。世耕先生から非常にたびたびの御質問でございますから私申し上げますけれども、今申し上げきたように、われわれ自体決して事をいたずらに好んではおりません。もちろん私どもの運動の中におきましては、そういうことをいたずらに激発して行くという行き方が、正しいとする考え方があることも間違いはございません。しかしこれを押えるためには、やはり労働者自身の自覚に基くところの其の民主的な組合運動にまつしかないわけでございます。しかもそういう場合に、若干の行き過ぎがあつたということで、ただちに法律でこれを高圧的に押えるという傾向がありますならば、先ほども申し上げましたように、逆の結果を招くということが、事実の上においてはしばしば見受けられるわけでございますので、こういう点はひとつ諸先生方にも十分御配慮をいただきたいと考えておる次第でございます。
  23. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。――御質疑がなければこれで終ります。古賀專君、どうもありがとうございました。  次に、土岐正直君より御意見をお聞きすることにいたします。
  24. 土岐正直

    ○土岐公述人 私より中共貿易について少しくお話をいたしたいと思います。  朝鮮の休戦問題が進展いたしますとともに、中共貿易の重要性が各方面で論議されて参つたのでありますが、中共貿易の重要性を見出すためには、戦前の中共との貿易の統計、数字というものはあまり重要でなくなつたのであります。と申しますのは、中共の治下に移りましてからの中国は、経済、教育、軍事その他非常な変貌をいたしましたので、その中共の実態をできるだけ把握し、その実態に即して中共貿易の重要性というものを見出さなければならないと思うからであります。お断りしておきますが、私は最近に中共へ行つたわけではありません。戦前十八年間中国におりまして貿易に従事し、戦後引続き種々なる困難な条件のもとに中共の貿易に従事しておりますので、主として、中共と行き来いたします中国人等の情報を基礎にいたしまして、中共の経済の実態をだんだんにお話したいと思います。  御承知のように、中共が経済五箇年計画を立てましてから今年で四年になります。中共は政権を把握してまず何をしたかと申しますと、たくさんな物資、たとえば桐油でありますとか、豚毛でありますとか、大豆でありますとか、種々なる産物を外国へ売りまして、それで外貨を得て建設資材を求めようということに努力したのであります。これはまあ普通の形でありますが、しかるに一九五〇年の十二月に、この蓄積されたる外貨資金が米国によつて凍結されたのであります。その額も数億に上るという話でありますが、中共は、ここに出発当初におきまして、物を外貨にかえて、それによつて建設資材を得るという努力が失敗に終つたのであります。そこで中共は、物と物との交換によつて必要なる資材を手に入れようという方針にかわつたのであります。もう一つは、経済五箇年計画のうちのいわゆる農地解放というようなものによりまして、農民はだんだんに生活が安定して参りまして、私どもも中国におります時分は、まことに奥地は悲惨な状態でありました。今日聞くところによりますと、農民は非常に生活が安定して参つた、それが非常に大きな変化であります。今日の中共は、各省間の国内交易というものをやつておるのであります。これはわが国のように狭い国ではとうてい考えられないのでありますが、御承知の通り中国は非常に広大な国でありまして、山東省一省でもわが国に匹敵するようなところでございます。その各省間の交易を始めております。これが非常に成功いたしまして、今日の中共は外国との貿易をぜひとも必要としない。要するに国内交易をもつて立国の方針としておるように考えられます。これは私はよく未知しませんが、アメリカでも貿易というものは、日本イギリスのように非常に重大な国策となつておらないのであります。ああいう大きな国は、国内交易によつて各民衆は生活をゆたかにして行けるわけであります。  今中共では城郷交流大会というものを各県、各省に時々開きまして、これはつまり各産物の交易をやる会でありますが、これが非常に盛んで、そこでただちに取引も行われるという状態だそうであります。アメリカにも同じくそういうような農産物、その他の交易品評会のようなものが時々年中行事に行われるように承知しております。映画などにもお祭りのように、なかなかにぎやかにそういう行事が行われておることも見たりいたしました。ちようど中共もこれに似た城郷交易大会というものが各地に行われておるそうであります。農地解放をいたしまして、農民は相当の広さの土地を持ち、また資金は合作社という機関によりまして政府から与えられ、農具の改良、種の改善等々種々なる指導を受けて、今日の中共の農民は昔日のあの貧農ではなくなつたということは、非常な大きな変化で、中共にとつてはきわめて力強い状態だと思うのであります。たいへん卑近な話ではありますが、最近に北京等から帰られた方の話では、私ども北京に行つておりますときには、前門街には町の女がたくさんおつたが、今日そういう夜の女というものは一人も見られない、これは非常に驚くべきものだというので、知合いに聞いたところが、もうそういうものはそういうところへ出なくてもよくなつた、百姓の女がみな生活が安定しているんだという話をしたそうでありますが、全部が全部でないかもしれませんが、一面を語つているのだろうと思います。わが国におきましても、いろいろ町の夜の女の問題が風紀問題その他で出ますが、やはりこれは農民の生活の安定というものが何よりも基本になるのじやないかと思います。かくのごとく中共の九割近くを占める農民の生活状態がゆたかになるということが、今後われわれ貿易業者の大きに着眼しなければならない問題であります。すなわち潜在購買力というものが非常な大きさを持つておるということを考えねばならぬと思います。今申し上げました通りに、中共は国内交易というものが盛んになりましたので、実際は他国へ出すほど物資があり余つておるわけではない。     〔小峯委員長代理退席、西村(直)委員長代理着席〕 塩、石炭、大豆等々におきましても、これは圏内において十分に消費され、需要されておるものであります。しかしながら中共の立国の方針は、国家建設を第一義といたしおりますので、その建設資材を得るためには生活資材をさいても、これをもつて貴重な資材を求めたいというところに、今後の貿易対象があるのであります。私ども中国におります時分とはその点非常な相違でありまして、これは中共貿易の重要性という点を論ずるにあたりまして、十分に考えなければならぬ点だと思うのであります。従いまして石炭にいたしましても、大豆にいたしましても、この輸出物資にはそれぞれ等級がございまして、石炭輸入すれば、これは一級品といたしまして、それに見返つて入るものは鉄資材だとかいつたような、見合いの一つのとりきめがあるそうであります。従いまして日本からこんぶを輸出して開らん炭を輸入するというようなことはできないのであります。共産圏の貿易は、貨幣貿易ではございません。いわゆる物々貿易というようなことになるのであります。必要なものをまず求める。そのためには自分のところのものをさいてこれを輸出する。輸入第一主義であります。これが中共治下になりました中国の貿易の根本的の変化ということになるのであります。  かくのごとく中共の経済実態が大変貌しておりますので、わが国が中共貿易の重要性を論議する場合に、戦前の種々なる統計をもつて判断することは、必ずしも正鵠を得ておらないということを、われわれは留意しなければならぬと思うのであります。つまり中共貿易の重要性に対する認識は、日本西欧諸国、特にイギリスあたりの考えとはいささか逢つておるのではないか。最近通産省の発表による対中共貿易の推移というのを見ますと、戦前中国との貿易は、日本輸出貿易の一八三%でありました。しかるに昭和二十五年には二・三%となり、昭和二十七年には〇・〇八%になる、数においては重要な位置ではない。しかしまあ地理的に、また民族的に重視すべきものだということが書いてありますが、これなども今私が申し上げました中共貿易の重要性を見出す一つの基準が、あまりに役に立たない過去の数字というものにこだわつておるからではないかと思うのであります。西欧諸国、特にイギリスあたりの考え方は、ただいま私が申し上げました中共の現在の実態というものに基礎を置いておるようであります。数日前の日本経済新聞に出ておりました「英、中共貿易拡大に本腰」という見出しで出ている記事は、なかなか興味があると思つて私、見たのでありますが、それは英国の国際貿易促進協会が発表したものであります。それは中共の五箇年計画の目標と人口の増加を考えれば、今の禁止措置さえなかつたならば、中共に対する輸出可能性は無限だ、ただこれを制限するものは、中共がどれだけ支払い能力があるかということであるが、それを裏返しにしてみれば、イギリスがどれだけ中共から物を買えるかということによつて、年額一億ポンド貿易も、必ずしも夢ではないということを言うておるのであります。すなわち中共の現状というものを非常に重視した立論であります。英国国際貿易促進協会は、その副会長を団長として、十八人の各界の権威者が、去る十九日に北京に到着しておるということが外電で報ぜられております。いかに英国が中共貿易に本腰を入れておるかということがわかるのでありますが、わが国におきましても、官民ともに中共貿易の重要性を、過去の数字等にとらわれることなく、できるだけ中共の現在を把握して、これによつて中共の貿易対策を樹立する必要があると考えるものであります。  中共の現状はそういうわけでありますが、今度は中共貿易の現状をちよつとお話申し上げます。中共と日本との貿易は、最初は無為替、無条件で進められておつたのでありますが、その後中共の力のいろいろ都合で、これが例のエスクロー・LCという制度にかわつたのです。エスクロー・LCというのは、中共がまず日本に物を輸出して、日本から払うべき代金を日本に保留しておく、その資金をもつて中共の求める物を買つて送る、これははなはだ中共としては日本を信用し、謙虚な考えから出たので、われわれ業者といたしましては、非常にやりよい、ありがたい方法であつた。しかも検査条件等もことごとく日本の検査によるということになつてつたのであります。不幸にして例の朝鮮事変が起き、一九五〇年十二月に、中共の資金が凍結された。従いまして日本に送られましたエスクロー・フアンドは、これは私ども多額のものを持つたのでありますが、それによつて中共とお約束した品物を送ることができない。その品物をいろいろ無理をして中共と交渉の上、例の禁止条項に入らないものを選んでぼつぼつとこれを送つて、大体においてお預かりしたエスクロー・フアンドは完了したのであります。その後の中共は自己利益擁護のためか、当然にこの方法をとりやめまして、今度はお前の方から持つて来いという、いわゆる輸出先行、向うからいいますれば輸入先行ということにかわつたのでありまして、ここに中共貿易は非常な難関にぶつかつた、そこで日本からまず物を送り、そうして向うから物を送つて来る、検査もおれの方でやる、こういうことになつたのでありますが、これをいわゆるバツク・ツー・バツクということを申しますが、中共がLCを出す、日本もまたLCを出す、物と物とが交換されて、そのLCが相殺されるという行方であります。ところがこのLCの取引が、日本の銀行と中国の銀行と直接やることは不安でもあり、また例の日米間の思惑等もありまして、直接銀行が中共の銀行と取引することを好まぬ、そういう困難にぶつかりまして、ここにさらに編み出されたのが香港におきます香港上海銀行を中継としてやる、玉突きでいえばワンクツシヨンを使うというわけであります。英国は中共を承認しております。日本は英国とは友好関係にある、従いまして香港上海銀行に口銭を出しまして、この仲立ちを依頼するという方法を現在もとつておるのであります。中共は、香港は英領治下にあるのですから、やはりドキュメントというか、書類は、決済は天津でやつてほしい、日本では銀行はまた同じことを申しまして、やはり日本で、東京でやつてくれ、東京と天津あるいは東京と北京、その間の空間をどうして埋めるかというむずかしい問題になるのでありまして、そこが香港上海銀行の非常なサービスでこのリスクを背負つてもらつておるのであります。香港上海銀行の香港支店は、中国銀行の天津支店から確かに書類は受取つた政府から受取つたということを電信をして来ると、香港上海は金を払つてくれる、また日本から確かに積み出したという電信をやりますと、これもまた中共に払う、こういつた中間を埋めるリスクをとつてもらつておるので、わずかにこの貿易が続けられておるのでありますが、今度東京銀行が香港へ店を出すそうでございます。その認可も香港政庁からあつたと聞いておりますが、これは貿易業者にとつて非常に喜ばしい問題でありまして、一日も早く開店のできることを希望しております。これによりますと、まず日本で決済をしようといつたことが、香港で決済をするという、一歩前進であります。ただ中共が要望しておる天津で決済しようという分、その片方だけは相かわらず香港上海銀行にお願いしなければならぬのじやないかと私は考えるのです。しかしながら、一歩前進であることには間違いありません。日本の中共貿易は、御承知のように非常な制限下にありまして、一番困ることは、先ほど申し上げたように、中国は国家建設という大方針のもとに、建設資材を要望しておるにかかわらず、日本からは建設資材の一箇も輸出することができないという情ない状態にあるのであります。出し得るものは、こんぶ、レーヨン糸、あるいは紡績用具、機械等々にすぎないのでありまして、一昨年は自転車なども出しましたが、今日この自転車でさえ制限を受けておるような状態であります。まずそのきびしさは、私どもは一昨年三万台近くの自転車を出しましたが、これのチエーンでありますとか、ボールベアリングというようなスペア・パーツすら出せない。これは鉄砲のたまになるとかなんとか言われておりますが、一度多数の自転車を出したならば、そのスペア・パーツを送つてやることは、ぜひともやつてやらなければならない間直であり、またこれが大きな商売の極であるのです。しかしそれすらもできずに、今日においては自転車も出ておりません。従つて非常な微々たるものになつたのであります。聞くところによりますと、同じく西欧側といいますか、国連側における諸国におきましては、中共貿易というものは、わが国よりもはるかに大幅なゆとりを打つておるようであります。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕 何とかこの点をそれぞれの機関に交渉して、緩和することをぜひやらなければならぬと思うのでありますが、幸いに衆議院におかれましては、中共貿易というものをお取上げになり、いろいろと御研究になつておることは、われわれ業者としては非常に多とするところでございます。  ただいま中共貿易を阻害しておりますものは何かといいますれば、これを一般的に申しますと、中共に対する戦略物資禁輸措置というものが、一番大きな問題であります。次には何とか渡航のできるようにすること、渡航の許可をしていただきたいことであります。と申しますのは、何も見ておりませんので、先ほど来申し上げましたことも、私みずから見たことであれば、もつと自信をもつて申し上げられるのです。ぜひ何とか渡航したい。中共側の意見は、少しも拒まない。極端に言うと、向うはこういうことを一言つておる。竹のカーテンはおれの力ではない、お前の力だ、おれの力はいつ来てくれてもさしつかえない、お前が来たければいつでも来い、どんなにでも受入れる。こんなことを言うのであります。しかし日本から中共へ出て行くということは容易ならぬ問題であり、またせつかく何らかの方法で向うへ渡つても、日本に帰つて来るのに非常な支障が起きる。これらの点について何らかの便法を考えてほしい。また国外における障害としては、先ほど申しました金融機関の問題であります。これは東京銀行が率先香港にまで進出しようと努力されておることは大いに多とするのでありますが、銀行側も、最近に日本条件も幾らかかわりまして、ただいま申し上げましたバーター制度でなしに、フリー・ポンドと申しまして、ポンド・スターリングによつて物を買うという道も開き、現に塩が相当トン数ができ、石炭もでき、いろいろなものができて参ります。しかるにこの信用状の開設については、なかなか日本の銀行も慎重でありまして、容易に承知してもらえない。というのは、やはりはたして物が来るかな、こういう心配があるので、むろんごもつともでありますが、今日まで中共との実際の取引をいたしました経験から申しますと、一旦契約ができましたならば、実に正確に実行されるのであります。その点はむしろ日本側にはなはだ申訳ない点が多いのであります。品質不良なもの、あるいは積出しが遅れる、数量が足りない等々の問題は、むしろ日本側に申訳ない点があつて、中共に対しては一旦契約ができたものにはほとんど心配ございません。私は戦前、桐油あるいは豚毛というようなものを扱いまして、大失敗をした経験があるので、私は三井物産におつたものですが、この品物は絶対に扱うなという禁令が出たことがあります。それは桐油といいますと、純分のパーセンテージを保証しなければならぬのに、それに非常にまざりものがある。あるいは豚毛のようなものは長さ別の非常にやかましいものでありますが、小に短かいものがたくさん入つておる。こういう不良なものが多くてこれを防禦する方法がなかつた。今日入つて来るものは、むしろ条件以上に正確なものが入つて参ります。これはまことに良心的にやつておる。ただ何分にも貿易になれておらぬというのか、あるいは向うの立てた一つの方針なり何なりを非常に固守するという点がありまして、その点はちよつとやりにくいのでありますが、一ぺんでき上りますと、実に実行は正確であります。そういう点で金融機関等もその実情をともども研究認識していただいて、業者とともに、中共貿易の今後のために協力してもらいたいということをいつも申しておるような次第であります。今日の貿易は、何と申しましても国家の援助指導によつて動くものであり、政府の動き方は申すまでもなく、国会の動きによつてきまるものと存じますので、どうぞ皆さんにおきましてもよく政府を鞭撻していただいて、われわれの事業の上に十分に協力をお願いするようにごあつせん願いたいと思います。  もう一つの障害は船でありますが、これも最近にできました石炭並びに塩の積取船か日本船になつた。従来はイギリス籍のあまりよくない船をまわしておつて、高率の運賃をむさぼられておつたのですが、最近は日本船がまわるようになりました。これは日本の船主の勇気、決断と、もう一つは保険会社の協力ということによつたものと思いますが、これを数字で申しますと、最近の塩はトン二ドル五十セントというような安い値段で来ております。これは従来のイギリス糸の船であつてはとうてい対抗できない。ある中国の商社がやはりイギリス系の船をチヤーターして今は困つておる。使うに使えぬというような状態にさえあるのでありまして、まことにこれは日本側に上つては非常に有利な次第でございます。日本の船会社も今日の非常な不況の苦肉の策として、多少の犠牲を払つてこの大英断に出たと思うのでありますが、これが将来のいい布石となることを確信しておる次第でございます。  どうも順序立つたお話ができませんで御参考になつたかどうかわかりませんが、繰返して中共の貿易の重要性は過去の数字には重要性がないのだ、中共の経済実態が国民政府治下におけるとは全然かわつておる。ここにわれわれの目安を置いて対中共貿易対策を立てねばならないと思う次第であります。(拍手)
  25. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質疑はありませんか。
  26. 小山倉之助

    小山委員 中共貿易に関して今まで私ともの理解しておつたこととは大分違つたことを伺いました。まことにありがとうごさいました。それでイギリスとドイツの力は非常にふえているということを聞いておりますが、しかもイギリスはいろいろな利権を彼らに没収されているのに続けておるということについて、何かそこに理由がある。ただ貿易がふえるというだけでありますか。あるいは国交をさらに続けようという考えであるかどうか。それからもう一つは、イギリスの籍を持つておる船で非常に多量の物資が入つてアメリカあたりはしよつちゆう抗議をしておるのですが、その実情はどんなものでありますか。イギリスがつまり隠れて貿易を増進しておるのか、実際チヤーターされた船だけが動いておるのか、その点の実相を、少しわからない点がありますから、お教えを願いたい。
  27. 土岐正直

    ○土岐公述人 私もはつきりお答えできるかどうかわかりませんが、イギリスはたとえば開らん炭鉱、あるいはスタンダード・オイル、紡績会社、その他たくさんの権益を持つておりましたが、ほとんどそれが没収されております。しかるに依然として中国を承認し、それを耐え忍んで引続き貿易をやつておる。これはまことに私ども感心しておるのであります。開らん炭その他のことを考えてみますれば確かにこれは没収ではありますが、イギリスとしては、率直に申してもうとうに元をとつておると考えます。少くとも開らん炭につきましては、私ども関係しておりましたので承知しておりますが、もう何倍という元をとつた残りかすなんです。これも一商社のものでなしに、べルギー、イギリス両王室の権利が大分あるのたそうですが、がまんができたのではないかと思います。ただいまイギリスは大いにふえているのではないかというお話でしたが、最近の例を引きますと、昨年の十九倍になつておる。日本はまことに残念な立場にありまして、先ほど申し漏らしましたが、対香港との貿易にいたしましても、日本だけが香港政庁から輸入許可を要求される。これはおそらく諸国がみな一様にそういう規定があると思いますが、日本から行くものが中共に流れる憂いがあるとかなんとかいうことで、いわゆるエセンシヤル・サーテイフケートというものを要求されて、あれはいけない、これはいけないという。また日本輸出証明がいるのですが、日本はまことに正直一遂に刻明に励行しておりました。結局向うから要求される物とこちらの希望する物とは合致しませんので、せつかく香港というまことにいい中継場があるにかかわらず、これが日本に限つて伸びない。しかるに今日香港はフリー・ボートとして、イギリスはもとよりアメリカその他各国が盛んにやつております。しかもその荷物はいろいろなルートを通して中共に渡つておる事実は厳然としておりますが、これはとうも今の日本においてかれこれ申されないのかどうか、はなはだ遺憾でありますが、そういつた状態にあります。日本の中共に対する貿易は、アメリカのいろいろな制限もありますが、やはり最も強敵と見なされておるイギリスがあまりこれを喜ばない。その事実はフリーポンドのLCを開設してこのごろようやく輸入を許可されている。本来ならばイギリスに直接やれるのでありますが、これをイングランド・バンクがあまり喜ばないで、たいてい許可しない。せつかくそういう道が開けておるのでありますが、やはり香港上海バンクをミデイアムに使つて、もう一ぺんLCのトランザクシヨンをやるという妙なまわりくどいことをやつている。やはり正常な貿易の連行がどこから妨げられている。こんなふうにわれわれは考えるのでありまして、今後われわれとしては非常な勇気と熱情を持つてかからなければ、やがて中共貿易も失うような時代が来はしないか。今盛んに中共から物を買うということをしなければ、将来はその買うことすらできなくなる、ここが非常に大事な点じやないかと思うのであります。どうか皆さんの御援助によりましてよろしくお願いいたしたいと思います。
  28. 小山倉之助

    小山委員 外国船のフレートは幾らですか。
  29. 土岐正直

    ○土岐公述人 それは、今塩の問題を申しますと、倍ぐらいになりましようか。トン五ドルないし六ドル程度じやないかと思います。塩の向うの価格が三ドル五十セントぐらいですから、約九ドル、十ドル近いものになります。しかし今日は日本の船を使いますので非常に安く、八ドルぐらいになつております。
  30. 小山倉之助

    小山委員 日本の船で二ドル五十七ントというのは……。
  31. 土岐正直

    ○土岐公述人 日本の船で今度きまつたのは二ドル五十セント、これは私の方できめたのではありませんが、そういう話も聞いております。
  32. 小林絹治

    小林(絹)委員 非常に有益なお話を伺いましたが、お話の中に、中共の国民生活が非常によくなつて経済状態も非常によくなつたということがございましたが、これはやがてはわが旧の経済界にもいい影響を与えることであろうと思いますので、そのよくなつた原因についてもう少しお話願いたいと思います。
  33. 土岐正直

    ○土岐公述人 私は、その国民生活がよくなつたということは、先ほど申し上げました農地解放の成功だと思います。いわゆる九割を占める農民の生活が安定して来たということが一番大きな原因だと思います。そこでわれわれもここに大きなねらいを置かなければならないと考えております。
  34. 小林絹治

    小林(絹)委員 政治の上ではどうですか。
  35. 土岐正直

    ○土岐公述人 これはやはり今の農民の指導でございますね。国民政府の時代は都会中心で、日本軍が入つたときもやはりそうで、それ以外には及ばなかつた。ところが今日の中共のやり方は、農民という奥の奥地から浸透をして、今日においては支那全土にほとんど浸透しておるそうであります。農民も非常に喜んでおるそうであります。それでわれわれは、この中共の実態というものをみずからもつとつぶさに見たい、これは経済問題だけでなく、あらゆる面で大いに驚嘆するものがあるのじやないかと私は考えております。
  36. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは土岐君、どうもありがとうございました。  次に原安三郎君より御意見を伺うことといたします。原安三郎君。
  37. 原安三郎

    ○原公述人 私は歳入と歳出全体をざつと拝見いたしましたのですが、申し上げればたくさんございまするけれども、気つきましたところだけを、大体二十分程度意見を述べさしていただきたいと考えます。  まず歳入と申しますと、租税の問題があります。それは主として所得税並びに法人税について意見を申し上げてみたい。それからもう一つ、最近に問題になつて、巷間かまびすしい電信、電話料金の問題にも触れてみたいと思います。歳出の方の問題は、財政の投融資の問題について、一部意見を申し述べさしていただきたい、こういうつもりで、おります。  まず歳入の点について、税制の問題で、こちらに出ておりまする税制改正の要綱について意見を申し上げてみたいと思います。  所得税を一番先に取上げてみたいと思います。この所得税というところの一の両のところに、「税率を次のとおり改めること。」というのがございますが、ちよつとこまかくなりますが、その中で、従来八万円以上に対して百分の二十五であつたのが、七万円以上が百分の二十五になつて、この点税率が少し強くなつておりまするが、しかしほかの面において、いろいろな緩和が行われておりますから、従来の現行法による八万円の人たちが、今度七万円に一万円低められたために、負担が、全体の絶対数値がふえるとも思われませんが、ちよつと響きが強いような――緩和したという考え方が、ここに一万円だけ食い違いができておるような感じがいたします。しかし税収に対する推算の数字を見ますと、千二十三億減るという数字が出ております。また個人所得税の場合に、ほかの控除が今度はふえまするから、その点、前年度から考えて、他の人はおそらく不利はないと思いますが、七万円の人が少し不利じやないかと考えます。これは小さな問題でありまするが、おそらくこの七万円限度のところに相当の税収が予想されておるために、かくのごときことが出るものと思われます。ただ比率がおもしろくないと思います。  それから青色申告書を提出した納税義務者、これの親族控除の問題であります。専従者控除という問題の中に、相かわらず配偶者を除いてあるのです。この問題は私、中小企業関係のある団体の世話をやいておりますが、実は配偶者を除かれることは、控除の恩典に浴しないことおびただしいのです。多くの場合、店舗を持つておる者は、家内を持つておる。その陰の形に添うごとき状態にあるべき配偶者の控除がない。これは一応徴税関係の説明によりますと、奥様というものは、おそらく家庭の用が多くて、衣食関係並びに育児にとらわれて、店舗の手伝いまたは家庭工業の手伝いはしていないだろうという解釈なのです。けれども、それはやはり税をかけられる者からいたしましたら、妻が一番店の役に立つ。すなわち夫の仕事を手伝つておるのは、その若い子供、あるいはその姻戚関係の者よりも、妻が一番多いのであります。妻もあわせて加えるということの方がよろしいのじやないか。これは一応この方の面からたびたび申入れはしておりまするけれども、いまだ実行されていなかつたことなんです。  そのほかに生命保険料の控除、あるいは医療費控除、すべて税を負担する者から言えば、やはり不満足であり、理由がございまするけれども、徐々な段階に進まなければ、国家も全体の滞納を減す手段を講じられなければ、むやみに減税ばかりいたしておつたんでは、ことに本年度の減税は千二十三億であるから、一応限度まで来ているものと考えます。  法人税の問題を申し上げます。今度の法人税の問題については、かねてわれわれ企業家、ことに会社の経営者、法人の経営者として特に要望しておりまする、法人税の四二%が軽減されておりません。これ業界にもいろいろ意見があつて、元の三五%にもどせという説もあるのですが、この数字の問題は、ちよつと理論つけることがございませんから申しませんが、私は税の方針をかえてほしいという考えを持つております。それは、まず前提として再評価問題から入つて参りまするが、今度の第三次再評価を無税にしたり、そのうちの一部を強制的に資本に繰入れる、これによつて資本を増大させておくわけです。その資本を増大したという前提、あるいはこれとにらみ合せて、税率は、その総資本、つまり払込み資本並びにその他の資本も含めた総資本ですが、この資本に対して、三割までの利益については、二五%の法人元税をかけてほしい、あと三割を超過するものは、超過所得税をかけてほしい。この超過所得税の問題は、大分むずかしい問題でありますが、一応私はそういう考えを持つております。超過所得税の税率は、三割を越えて四割に達する。この間に利益一割ごとに、五分ずつ刻んで超過所得税をかける、こういう形をとつてほしい。これは最近となえられておりまする自己資本の過小問題、これを救済、あるいは当然かくあるべき状態に持つて行くには大切なことであろう。  もう一つここで申し上げたい問題があります。かくのごとき大幅な税制改革というものは、いろいろな連関する面がございますから、今ただちに行われないとすれば、ここに留意すべき問題は、最近の情勢は、自己資本獲得の第一要諦である増資をする場合、すなわち既設会社が企業の新しい拡大を考える場合、増資によるということが自己資本獲得の第一手段でありますが、もう一つの場合は、新しい企業がまつたく株式組織によつて新設される場合、この二つの場合において、増資の場合における増資後の全収益に対して、旧来の資本の収益から生ずる利益の四二%は、もうフル稼働が行われておるものでありますから、しんぼうはできますけれども、その増資によつて新しくふえたものから出る利益、この利益に相かわらず四二%の税金をとられるということが、増資をはばむ原因になつておると考える。これは実際を申し上げますると、増資をする場合に、増資前の会社が三割の配当をかりにしております場合に、その後増資した新株に対しても、まず三割に近い配当があるものだ、こういう考え方で増資に応じ、新株式を引受けるというのが常態であります。ところが、増資を企画しましたときに、その増資の裏づけには新しい施設、または拡張というものか行われておりまして、その施設拡張から生ずる利益か、旧来の利益に加算されておりますわけなのです。そういうことから生ずる利益のあり方を見ますると、まず鉱山でございましたら、新しい坑口をあけたら、いかに計画を完全にやりましても、その鉱石にもよりますが、やはり二年ないし三年かからなければ、効率の発揮ができません。従来と同様の事業成績はあがりません。私たちの仕事の化学工業ども、多種多様にわかれておりますけれども、これもやはり二年ないし三年、新しい施設がほんとうに旧来の施設と同様に動くまでには時間を要します。技術人をそろえ、またなるべく早く効率を発揮することが大切な問題でありまして、全力を尽しておりますが、どうも結果はそういうようなことであります。それをすぐに、旧来のことくもうすでに利潤が持たれた、予算通り収益されておるものと同様に四二%とるということは無理でなかろうかと考えておる。もう一つ、その配当を、やはり旧株同様の配当をやれるだろうという予想のもとに株式増資に応じた場合、二割とか二割五分、あるいは前と同じような配当をするということを経営者は努めます。ところがこれを努めますと、配当にかりに千万円払つたといたします。この配当をするために利益を公表しました分に対しては、税金として約その二倍半ないし三倍の法人税を納めなければならぬ。そうしますと、株主に与えた三割の配当は、この金額の二、三倍でありますから、六割とか七割という金を使つておるのと同様の結果になりますから、会社は、株主中心の経営をしておりますから、株主に対しての増資は進めませんで、借金の方が会社から出る金が少くて、蓄積する資本の量がふえるわけでありますから、自己資本が少くて信金がふえる、また借入れ資本がふえるということになる。これは皆さんもすでに御承知の通り、戦争前では、日本は大体三十二、三パーセントが借入れ資本で、六十七、八パーセントが自己資本であつたが、このごろではちようど逆になつておる。アメリカでは、日本の戦前の場合と同じですが、日本ではそれが反対で、自己資本が全体の資本の三分の一という状態です。これを何とかしたい。あるいは株が暴騰すれば、株が不足しているのであるから、増資をすればよいであろう、これは金融業者、あるいは金融行政をつかさどつておる日本銀行あたりからの意見であります。ところが今のような税制のやり方が、この増資をはばんでおる原因であります。  もう一つ、今度は新会社の場合、たとえば私が新しい会社、あるいは思い切つて新しい事業を考えつくとする。事業が新らしいとこにそうですが、もぐり会社をつくる場合に、従来は、運転資金及びその品物の製造コスト及び売上げ等について、簡単にもくろみ書ができて、それによつて投資がなされていたのでありますが、最近では、四二%の税金というものをもくろみ書に入れなければなりません。四二%の税金だけではありません、事業税及び区民税等を入れますると、六〇%に近いものを控除して、それの残りが初めて株主にまわる。こういう計算書を示さなければ妥当でありません。ですから事業を始める前に、自然に臆病になる、また投資者も、旧来の会社に投資をする方が何となく安心であり、新会社はもうすでにそういう面における収入が少い、プラスが少いということが認められますから、新会社への投資が少いというのが現状であります。この点から行けば、新会社の方に対して、三年ないし三年ばかり特別な法人税減免措置をとる。ただいま申し上げました、増資の場合における増資分から生ずる利益に対しての税の減免をするということと、同じわけです。それですから、新会社の場合はもつとこれを強く要望したい、こう思います。もちろん、これは課税の上において、税務行政上少しむずかしい問題でありますけれども、現在かくのごときことが行われております。金山その他重要難業では、この三年間の所得に対する法人税の免除がとられておる。このわくを広げれはよいじやないかということに相なりますが、広げるなら思い切つて、広げることにしなければならない。もつとも手放しで、芸者屋さんでも宿屋さんでもというようなやり力はおもしろくないと思います。その間に線を引くことが必要であります。少くとも必ず有用だという線を引くと思いますが、私の申し上げるのは、必ず有用であつて、投資者として、また国としてあるべき仕事の場合に、それが新企業でありますれば、一応動いておりませんから、特別扱い、特定難業ということには統計上は相なりませんが、そういう点で仕事の新設、仕事の創設、つまり仕事のできない前に相談をするということが非常にむずかしい。しかし皆さんには御認識がないから、法律をかえるという論議がここで起らない。今日の問題としてはまだ判定はつかないが、明日あるいは来年、さ来年には興らなければならぬ事業であり、国家的な仕事であるというものが、遂に興らないでしまうということも考えられるわけです。今申し上げましたような点から、一定期間内、その仕事を育成する国の法人税減免措置を講じていただくことが、非常に大切な問題であり、それが新しい事業を興し、そしてたやすく自己資本の獲得できるという第一要諦ではなかろうかと考えます。それでなければ、相かわらず一般の企業家は株主本位でありますから、高い税金を払つてまで増資による配当をするよりは、むしろ借金によつて行こう、こういうことになります。そのために新事業が興らない。この二点についての御考慮をお願いしたいと考えます。  たまたまそれに連関しおりますから申し上げたいのですのが、第三次再評価に私は無税、強制ということを主張しておつたわけなんです。百分の六の税金をとるということは、政府も決定しておるのでありますが、一体われわれが経理上何ら経済行為か行われないのに、これに対して税金をとるということはおかしい。すなわち貨幣価値が下つたから、その貨幣価値に合うように再評価するということで、何らそれに対して一厘一毛の増加にもならないにもかかわらず、これに対して税金をとるということはよくないと思います。同時にまた実際を見ましても、あの百分の六という税金があることだけではありませんけれども、十六万の会社に対して再評価を実行したいと政府考えて、二回にわたつて実行したが、これで三万社くらい行われまして、結局二割くらいのものが実行された。それで資本組入れの問題のごときも、自由にまかしておきますと、責任がございませんから、ただ単に積立金で置いてあるという状態になつておる。ここが非常にむずかしい問題で、いざ実行となると、相当考慮は要しますけれども、一部分は、やはり強制的に資本に組入れさせ、また組入れしないものは、積立金の中へ、法定強制償却をやらせるということもあわせて行いながら、再評価の強制、無税評価をやつてもらいたい、こう思うのです。これは最近調印が終りました日米通商航海条約のうちで、海外投資から生れた日本に預金になつておる外国人の金を、これはアメリカ人の場合ですが、アメリカ人の金が日本内で投資される場合は、その投資対象物の元本の持出しを三年間送金することを禁止する。その三年間に何をするのかといえば、その折衝のいきさつを見ますと、日本はまだ符評価が十分でない、貨幣価値の問題から考えて、今は安く評価してある。だからそのままで外国人が投資をしたようにすることはおもしろくないことであるから、財産の再評価を行うという前提のもとに条約ができております、しかしながら、今度相かわらず、この原案を拝見いたしますと、百分の六の税で、ただ延納五箇年ということだけが現われましたが、私はこの再評価委員会委員をしておりますが、この春この問題の提案のときに、全面的に反対をしております。のみならず、私の関係しておりまする商工会議所並びに経団連全部が同じような意見を持つております。この点で大蔵省の強い反対は、すでに行われている第一次、第二次の人たちに対して、第三次だけが税金をとらないのは非常に不公平だと言われるが、すでに前に行われているものが非常に妥当でないものであり、また希望しておつた目標だけの再評価が各企業ごとに行われなかつたとすれば、それを普遍的にするためには、特別の方法がなされなければならない。のみならず法律のごときは、いい法律であればそれでよろしいが、悪い法律は廃した方がいい。すでに実行されたものであるということならば、水災あるいは天災の場合のごとき、不公平は世の中に多くある。人為他の不公平でも、善事はすぐに行い、悪事はすぐに改めなくちやならぬと思うのであります。私は端的に俗流者的の解釈をすると、これは大蔵省の、何でもかでも税収の減るものは反対たということから来ている議論ではないか、こう考えます。そこで、従来のものはこれはいたし力がないが、第三次の再評価問題は、今申し上げたような方法で、日本全体の会社が公平に、みなそろつて再評価されるということが必要じやないかと思います。たとえば、私の関係します化学工業の染料会社の財産をピツク・アツプしてみますと、ある会社は再評価をし、ある会社は再評価していない。そういうことが行われると、評価のたびにわれわれ非常に困る。日本の株主が株を買う場合に、いつも証券業者意見、あるいは経済雑誌を読んで判断しておりますが、そういう状態では、会社の内容を見るときに非常に判断に苦しみます。そういう面からおそらく反対が起るべきでありますが、それが起らない。私はこの点、親切に再評価することが、同種産業の比較のときにたいへん必要だと思うが、各社かつてな、任意的なやり方をしておりますから、その点でわれわれ各社の内容の評価をするときに、ほんとうに不便を生ずるのでありますが、世の中には、そういう点からこの欠点を唱える人が少いように思われます。  所得税、法人税の問題は、大体気づいたところを申し上げるとそれくらいですが、最近問題になつていることを申し上げますと、これは歳入全体から見れは大きな数字ではありませんが、ただ日夜われわれが親しく接している関係から、たいへん大きな影響を受けるような感じを持つております電信、電話料金の問題に触れたいと思うのであります。これは昨年からの問題でありまして、この内容については、当事者からもよく聞きますが、今度私は二割でとどまると思つたが、二割五分ということになつたようであります。そこで問題になりますのは、やはりこういう企業でありますから、私たちは料金の上らぬことを希望しますけれども、これが不完全であれば、われわれの仕事の能率も非常に悪くなる。電話がかからない、それでは自転車を走らせるということじや因るから、電話というものは、ほんとうにその機能を発揮してもらわなければならぬ。日本の文化の程度、あるいは実際の状態を列国に比べて、一番遅れているものは、私は電信は知りませんが、電話であります。電話については、ドイツが一番戦災を受けておりますから、比較ができると思いますが、ドイツのごときも、イタリアあたりに電話をかけるのに、ほとんど二、三分ですぐ国際電話が出る。そういう点から考えますと、日本では、市内電話は近ごろ大分よくなりましたが、またまた列国に比べて遅れておるというようなことから考えまして、もつとサービスをしてもらわなければならぬ。そこで料金は出せないということもできませんから、この問題を検討いたしましたところが、今度の二割五分値上げは、国鉄運賃の中の小荷物運賃程度に達したわけでありまして、国鉄は客運賃が百六十でありますが、電電公社の方の東京の今度の電話料は二百五十三で、その点では少し行き過ぎるのではないかと思われますが、汽車賃は一六〇、一般貨物は一八八、小荷物が二五九。電話は東京が二五三、大阪方面が一四四、均一は二一一、こういうことになつておりますから、小荷物の運賃に達したわけでありまして、もうこれ以上げられたら困るということなんですが、ただ希望したいのは、まだどうも電話の通じていないところが多い。現在百四十万の申込みがあるのに対して、開議しているのが百五十五万です。ただここで問題になりますことは、一般の問題とは違いまして、百五十五万に達するこの人たちに、さらにサービスをよくしてもらうということならはいいわけなんです。料金を上げておいて、不便で、相かわらず旧態依然たる態度でははなはだ困るというふうに考えられるわけなんです。またこの適用の問題も、大切なことは、私の宅に二本電話を持つておりますけれども、こちらからかける電話が一日平均十四、五回になつておりますが、一、喜一回の人は別として、十回、二十回、三十回となりますと、この料金がかさむことによつて非常な負担になる。ことにこれをたびたび使うという仕事をしておる人たちにとつては、コストの比率のうちにこの通信費が重大な数字になつておる。ここに問題になりますのは、国内電話でありますけれども、ここに国際電信賞話株式会社というのがございます。貿易または海外の仕事に従事される方は、この方の料金におそらく国内電話料金の値上げが影響するということがはつきり予想ができるわけであります。そういう点から考えまして、もし値上げするならば、サービスをよくするということ。それからもう一つは、たびたび使う人と少く使う人の間に、料金に累進的な、逓増的な料率を設定することにして、この差異によつて、よけい使う人のコストを下げる。そうして、この人たちがほんとうに電話を利用してよく働くことができますように、その逓減卒料金をきめていただきたい。全体の数字については、予算でございますから、これを削ることはできない。もし削れば、電電公社で予想しておりまするサービス改善、新しい電話架設などということはできません。現和行五十五万で、申込みが百四十万ですから、まだ二倍にふやさなければならぬということになつておりますから、いつまでもそのままの状態でなしに、また従来のものをよくして、電話がかからないから使えないということが絶対にないようにしていただきたい。日常われわれの一番しやくにさわる問題は電話であります。電信というものはそう数ありません。でありますから、これをよくするということは、料金が少し上つたくらいのことで――数字のごとき問題は、あまり重要でございませんけれども、関心を持つていることは声かつ大であります。電話料金のことは、この程度でまずやむを得ないが、できるだけサービスをよくして、そうして不足電話を補充して――電話か札幌では三十万、東京では二十五万と言われるが、こういうことのないように、現在架設費が二十五万円かかるそうですけれども、権利としての売買がかくのごとき状態になつておるということはいけない。この点は、たくさんできれば安くなるということは当然のことでありますから、そうしてサービスを改善していただきたいと思います。  次に、歳出の問題に移りますが、これは私はほかの問題は言いません。特に財政投融資のうちで、当面われわれの一般企業に対しての投融資が非常に少い、こういうことを申し上げたいのです。  それからもう一つ、もうこの際投資の仕方は、これを検討してもらいたい、こう思つております。これは日本の終戦後、企業の四つの柱が基礎産業であるから、これを育成しなければならぬというので、鉄鋼石炭、造船、電力、この四つの柱を育成した。また一時は、化学肥料を大いに育成されましたが、この際私は、大分今度は減つておりますが、石炭のごときは、もう少し注意をしながら、投融資の問題について御研究をやつていただきたい。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕  石炭の不足から、最近は油の輸人ということになりました。年間五百万トンの石炭にかわるベきものを、外重油で補つていることになります。これは悲しむべきか、喜ぶべきかはわかりませんが、企業コスト引下げにはやむを得ない措置であります。  もう一つの問題は、電力の問題であります。電力は終戦後実に不足々々で、電力というものはわれわれに非常に大きな関心事であり、やむを得ざるものと思われましたが、三十二年に五百二十万キロというものの完成を約束され、また幸いに腰を入れて皆さんがこれに御賛成になつて、本年のごときも、一応二百三十三億の資金政府から電源開発会社にまわされた。また日本開発銀行の手から電力に対して出ますものが四百億。それで六百三十三億予定されておりますが、特にここで問題になるのは、電力はかくのごとく順序よく進みましても、三十二年では、電力を使う方の産業が不足して来るのではないか。この重点産業というものは非常にけつこうですけれども、あわせて、これとともにある一定の基間から、他の電力消費産業というものを育成して行かなければならぬと思う。私は全般的に考えまして、終戦直後すぐ考えた。日本海外貿易を盛んにするには何が大切であるか。そのときの考えでは、やはり労力だと思いました。労力のコストが安い。すなわち呼び名は高くなつておりますけれども、能率が下つている。これは事業にとつて残念でありますけれども、大体において安い。それから電力が安い。労力と電力とをくつつけたものを輸出する、これが理想だ。ところがそのときは電力が不足である。今度は新しく五百二十万キロつくるが、これを何に使うか。これはアメリカから外資導入のときいつも問題になります。昨年世界銀行のガーナー氏が来たときに、電力をつくつて何に使うのか。アメリカが電力をつくる場合に、アルミニウムに幾ら使う、肥料に幾ら使う、こういう問題がきまつてから電力をつくるということで、仕事をするために金をとるのだ。それを計画もなしに借金といつても、金を貸しません。それと同じように、電力をらくるのに、何年先にできるか、それまでにどういう仕事をするか。それを考えないで、ただ電力ばかりつくつてどうなるか、こうなるわけです。しかしながら、電力の余る時代を日本に来らしてみようじやないかという俗論が刈る。しかしこれは私は相済まぬことであると思う。これに並行して産業つて来なければ相ならぬと思うのです。電力を消費する産業といつても、むやみに電力を消費する産業をつくつても困る。合理化した消費状態に持つて行かなければなりません。ことに最近電力コストが高く相なつておりますから、この償却を見ながら、電力の、ストの高いものを吸収し得られるところの産業でなければならぬと思つて、苦心しております。しかしこれに対しては、政府が投融資の場合において、ぜひ余裕のある政府資金を出してもらうことが必要だ。ここが大切なところです。われわれ既設産業は、政府をたよりながら、自己資本を出すことができますが、新しい企業については、思い切つてコストが安く、しかも大量につくられる品物、それが海外市場で消費されるということがわかつてつても、第一回の仕事の手始めの金の集め方はなかなかむずかしい。そういう点は、開発銀行の仕事でありますけれども、開発銀行にかくのごとき方面の資金を多くまわしてもらうような形をとつていただく、すなわち財政投融資を何らかの形でそういう電力を使う産業の方へ向けていただくということを考える必要はなかろうか、こういうふうに思つております。  実は昨年、私は開発銀行にちよつと関係をしておるものですが、開発銀行の方に聞いてみますと、四大基幹産業以外の他の産業に九十億を予定して、大蔵省なんかとお打合せを進めておつたところ、百五十億つけられた。これは総裁の非常に成功だと思う。六十億ふえたことによつて日本の根幹産業以外のものがどれだけ育成されたか。しかしこの六十億は知れたもんなんです。今度三千億出るもののうちで六十億、わずかばかりのものです。もつとも自己資金などを使いまして、全体では一兆三千億の金を運転資金として使うわけですが、そう考えますと、今だれも気のつかない新しい仕事、遠く数年先に結果が生れて来るというような産業に対しては、かくのごとき方法が非常に大切でなかろうかと思います。本年のこの方面における開発銀行の予算などは、今度は少し余裕ができましたようでございますが、それにしても化学工業は三十億しか上つていない。余裕をとつて、予備も置いてありますが、予備の方も政府は削つたそうです。しかし何といつても財政投融資というものは、ほんとうに新しい産業を起す助けになる。いくらか投機的な含みを持つているという投資については、一般銀行ではとうてい金融はないわけです。一応それが成り立ちますと、喜んで貸してくれますが、そうでない場合には貸してくれない。そこで財政投融資にはそういう面について欠けたところがないかと私は考えておりますが、この点について、どうか皆さんの御検討をお願いしたいと思います。私の話は一応これで終ります。
  38. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ただいまの御意見に対して御質問はありませんか。
  39. 横路節雄

    ○横路委員 二十八年度予算の中で、政府の出して参りました財政計画について、税制改革とか財政投資その他についてもいろいろお話があつたのですが、あなたが関係なすつているいわゆる兵器生産という立場から、今国会で非常に問題になつていますMSA援助にからんで――なお先ほどのお話で経団連の方にも関係なさつているそうでございますが、たとえば中央公論の四月号等を見ましても、経団連のMSA援助にかかわるところの六箇年間の防御計画というような点も出ております。なおきのうでございますか、日本経済にも原さんま「MSA援助への要望」というので相当書かれております。今国会でも非常にこの点が問題になつているわけです。昭和二十八年度の国の予算を立てる場合に、今までいろいろ公述人の方からお話がありました中にも、どうも朝鮮の休戦会談に伴ういわゆる国際的な経済情勢、それに及ぼす日本経済の動向という点からいつて、あまりにもあまい見通しでないかというようないろいろなお話があつたわけなのです。そこで実はきようその点についてお話がおありなのかと思つて、私は待つてつたわけなんです。御遠慮なすつたのかもしれませんが、その点ひとつお話をしていただきたいと思つているようなわけです。  なお税制改革その他のものにつきましては、いろいろお話の中で、たとえば八万円を越える分が百分の二十五、これを七万…にした点について、多分そういうところに大きなふくらみがあるのじやないかという点につきましては御指摘の通りでありますが、国会で一番問題になつておりますMSA援助にからんで、今後の動向についてひとつお話を、していただきたいと思います。
  40. 原安三郎

    ○原公述人 MSAの問題に関しては、政府はまつたく無策で、われわれから見れば非常に歯がゆい、がまんをし切れないというふうに考えます。それは前々から三百六十五日そう考えておつたのでありますが、MSAのあの問題は、イタリアのごとき一昨年から始まつている。イタリア及び西ドイツ、フランス、英国みなそうであります。日本はそれに対して何ら――講和条約発効前でも一応の線は出せたのです。この点非常に遺憾に思つておりましたが、今度強制的に向うさんからのお話で、これが問題になつて来た。私はこの春、二、三月ごろ、ダレスがアイクの命令で列国をまわつて、欧州協同防衛態勢を示唆して帰つた。あのあと日本からだれか――吉田さんならなおけつこうです。吉田さんにかわるベき代表者が行つて、MSA問題を相談すべきものであつたと思う。それが今度半強制的な話を受けている、こういう感じが強いのです。でありますから、日本は非常にこの実行に手遅れになつた。昨年の三、四月から私たちは、われわれの関係の軍需工業を早く起して、この受注態勢を確立したかつたのですが、これに対してやはり政府が優柔不断だ。主としてこの問題を決定する任に当つてつたのは高橋さん、その次に池田さんが入つて、それからまた小笠原さんにかわつたのですが、何もされていない。その点総理はしたいという考えを持つておりますが、下の方がなかなか実際に動かないという。それからもう一つは、この問題についての考え方がよくわからないのですね。アメリカの腹がよくわからぬのじやない。わが国政府当局者の頭に絶えずあつた問題は、日本の軍備がきまらなければ引受けてはならないと思つておることです。これは大きな間違いだ。日本の軍備の問題ではないのです。MSAというのは、ヨーロツパの諸国がきめておりますのは、これは三種類あります。それはアメリカのものだけをつくつてアメリカに送るというもの、それから軍備、――日本なら保安隊でもけつこうですが、その力に使つて、余つたものを第三国あるいはアメリカの注文によつて渡すもの、もう一つは自分の国でちつとも使わない、そして自分の国以外の外国軍隊に六渡す、そういう三つの方法があります。昨年からある軍備の問題ではないのです。軍備をつくつたらその軍備に必要な制度は当然考えなければならぬという考え方は、日本人として当然あると思いますが、私どもきのう日経に書きましたのも、日本の軍備の問題ではない。MSAという問題は、とにかく国連で世界的にまだ軍備をゆるめない、その仕事を経済的に手伝う、こういうことなんです。おととしダレス氏が来て吉田さんに交渉して、日本経済協力はできるが、軍備は持てないといつた、あの線の経済協力を実行すればいい。法律は、一昨年の五月一日のリツジウエイの声明で、日本経済を確立し得られるように旧来の法律は改正しろということになつて、政令審議会などで、私ども相当の法律を審議してどんどんゆるめた。残つているのは独禁法です。これは残つておりますけれども、その他は大体ゆるんでおる。ところが実際はそういうふうに動かなかつたのです。  そういう問題を申し上げると、歴史的になりますから、長くなりますが、今までは政府はその点で少しも表に立つていない。今度は、こういう空気がどこから起つたか知りませんが、問題になつております。いよいよ立ち上りますと、今申しましたように、日本の兵器をつくるというよりももつと広い意味の兵器をつくる、あるいは日本で使わないNATOで使うものをつくる必要があるかもしれません。その点は日本技術いかんによります。問題は結局技術上の受入れ態勢があるかということです。もう一つあります。もう一つ資材の受入れ態勢があるかということです。われわれの日常生活を規制してまで引受けられない。電力をどんどんあそこに使われる、ガスを使われる、あるいはその他の資材を、使われる。われわれのせつかくここまで復興して来た生活を規制して、それがために不便を感ずる、あるいは物がなくなるということになるならば、やらない方がいいのです。というのは、あの仕事はなかなかもうからないのです。私は戦争中から日本の軍需生産に従事しておりましたが、ああいう式の仕事はもうかる仕事ではない。これは世間に誤解があります。もうかると思つて某銀行が金を貸したらある会社がつぶれかけたということで、特需関係の生産をやつておるものには金融ができないというような空気が起つておりますが、これは大きな見そこないであります。もうからないのです。でありますからこの点は――ことに今度はアメリカが世界全体に対して注文を発しておりますから、これは自然そのコンマーシヤル・ベース――コンペテイテイヴ・プライスというか、インターナシヨナルプライスというか、これは国際的のものでなければ利益のさやがないと思います。これは朝鮮特需とは違います。朝鮮特需は、とにかく戦争に勝たなければなりません。そうして手近な日本から、悪いものでも高いものでも大急ぎで引取つてくれる。十一億一千万ぐらい出るでしよう。最近はそういうことはありませんが、五一年の三、四月ごろの暴騰は、そういうことから来ておるわけです。あれは平常ではございません。ところがどうしても今度の特需はそういうふうで特別に高いのだけれども日本経済援助をするために買つてやるということは、絶対に起つて来ないと思いますから、われわれはちやんとコマーシヤル・ベースで供給ができるような腹をきめなければならぬ、こういうふうに考えております。  でございますから、ここに一つこれも希望として申し上げたいのは、アメリカは非常に軍需品が安いのです。その安い軍需品の価格日本へ向けて持つて来て、そうして目標価格をつけておる。その目標価格にプラス一割までは高くてもいいんだということを、マーカツト氏が在官中は言つておりました。ところがそれはマーカツト氏が言つただけで――アメリカはこういうことはたくさんあるのですが、マーカツト氏が言つたことで、実行に入りましたところが、御承知の通り、JPAというものは昔の日本の調弁官と同じで、何でもいい、安く買おうというのですから、三度も四度もテンダーをとつてぐんぐん下げる。そうして向う様の予定価格がありますから、その予定価格より二割も三割も安いものはたくさんある。高いものは一つもありません。ひどいのは三分の一である。それでも日本人は仕事がないから引受けておる。また赤字を出しておるところもあるのです。まだ納めておるところはないと思います。大体この七月から納めるのです。現在四十五億くらい注文を引受けております。向う様の目標は三百三億円ですから、ちようど半分くらい引受けております。こんなことでありますから、今後MSAが実行に入りましても――おそらく協定すると思うのですが、その協定の実行の範囲は、私の考えではおそらくわくはつくりますけれども、あとはたとえば飛行機をつくる会社――かりに日本楽器がつくるとしたら、日本楽器と向うの航空省のエージエンシーとがやる、こういうことになるのじやないかと思います。そうでなくても日本におるエージエンシーがアメリカ政府を代表して実行する。そうして大わくをつくつて行く。ここに一番問題になりますことは、日本が一体幾ら注文をとれるか。きよう朝日新聞ですかに出ておる八億ドルというのは、ああいうのは一体何年間か私はわからないのですが、しかし一年間ではとても八億ドルの軍需品の処理はできません。イタリアなんかは二年続いておりますから、その情勢を見ますと、やるべきものが戦争用の艦艇並びに小艇全部入れて、それが全体の受注の二割二、三分、それからレーダー、戦車、小さな機関銃並びに中くらいの大砲、それから飛行機、この飛行機はアメリカの命令によつてアメリカ型のF八六Dというミグに対抗する優秀な飛行機を全部やつておる。それはNATOによつてイタリアが使うのであります。そういうふうな種類のものですから、相当こまかい協定をしなければならぬ。それでは一体日本の需給状態はどうかというと、さつきお話しましたように、副原材料――電力とか、そういう種類のものも、日本の生活を押えてはいかぬというように考えなければならぬ。と同時にまた原料費の問題でも、日本一般の民生上の消費を圧迫してはいかぬということも考えなければならぬのですが、そういう問題を勘案しながら考えて行きますと、どうしても本年度の軍需生産がわれわれの民生を下げない程度に注文をとつてやるのは、本年というのは三月までですから、これまでのものでおそらく一億ドル行けば大成功だと思います。現在注文を受けておりますのは、昨年の四月から百四十三億円であります。これは百八十億円でちようど五千万ドルですから、その二倍もできれは大成功なんです。ただ私たちが今度新しい会社をつくつて、火薬工場を運営しますが、これは六箇月たたなければほんとうに動き出せない。火薬工場は存在しておりますけれども、電気設備またはそういう種類のものの補修にそれだけの期間を要します。また同時にアメリカ考え方と合つていない。能率を増進するのに六箇月間かかるから、本年度といつても、今一億万ドルと申し上げたのは、アメリカの会計年度の七月一日から来年の六月という考え方で一億ドル。その次の年が一億五千万ドルくらいになるのです。それは砲弾及び砲弾に関係のある軽銃器です。ところが艦艇、飛行機ということになりますと別です。しかしながらそういうものを推算してみますと、日本が三億万ドル一箇年に処理したら、ちようど日本経済を乱さないで行ける。われわれがわれわれの民生を下げてまでもうかるからとつてやる。そうして日本が非常にいい状態になるなんということは絶対考えられない問題ですから、その考え方で行かなくちやならない。だから八億という数字は何年かにわたるものではなかろうかと思います。同時に現在の予算では、アメリカは御承知の通り一億一千五百万ドルを日本に向けてくれる。そのほかに幾らか、余裕のあるMSA予算をとつているわけでづから、あるいは日本の出方によつては幾らか増してくれると思う。日本の受注態勢がまだきまつておりません。  その点を大至急やらなければならぬと思います。それからもう一つ申し上げたいのは、前の行政協定はつくつたあとで皆さんからいろいろ批判を受けたりしたことがございましたから、今度のMSAの問題は、一つのテイピカルの問題であつて、大体わくに入りますけれども、今度はわれわれが仕事しいいようなMSAの協定をしてほしい。あらかじめそれを相談してやる方法をとつてくれることがいいんじやないか、こう考えております。一ぺんしろうとがつくつてしまつて、あとできゆうくつで困ることがないように願いたい。実際生産上の問題では困ります。
  41. 横路節雄

    ○横路委員 原さんに今の問題でもう一度重ねてお尋ねしたいことがあります。それは今お話で、朝鮮の特需は戦争のさ中でありましたから、アメリカとしてもこちらで品物が少しぐらい高くても買つて使つたという点もあるたろうが、MSAの援助ということになると、やはりそうでなしに一定のわくの中で生産ということになる。今原さんのお話では、決して防衛生産というようなものはもうかるものではないんだ、こういうふうにお伺いしたのですが、そうすると、朝鮮の特需も、相当実際には企業整備というような形で、ある場合には労働者に対して賃金を切り下げる。賃金を切り下げなくとも、時間の延長をしてもらわなければならぬ。そういう点をずいぶん入られたように私たちは聞いておるわけなんですが、今度のMSA援助によるところの防衛生産という点から行くと、実際の企業整備といいますか、先ほどから電源開発のお話もございましたが、実際MSAの援助が来れば、電力がいずれは余るだろうというのが、余らないのかもしれませんし、そういう点ではそれを満たすようにはならないのかもしれませんが、その点朝鮮特需によるところの実際の今までの兵器の生産というものと、MSA援助によるところの防衛生産といいますか、そういう点の企業の合理化といいますか、そういう点が実際の国民生活の上に、あるいは実際の工場、企業の経営とか、あるいは働いておる労働者の生活とか、そういう点にどういうように影響されて来るか、その点一つお伺いしたい。  もう一つ、きつと原さんなら覚えていらつしやるだろうと思いますが、今年の六月二日のロンドンのエコノミスト誌に、経団連の防衛計画六箇年案とあわせて、経済審議庁の防衛計画六箇年案というのが出ておるわけなんですが、この点については、MSA援助に関して政府が今どきになつてつたという顔をして発表するのは政府の誤りであつて、前々からそういう話があつたはずである。従つて経国連としても、うそいう計画を立てることは当然だし、経済審議庁としてもそういう計画を立てることは当然だと思うので、そういう党について何か今までお話合いでもなさつたことがあるかどかう。そういう点でもありましたら、ひとつお教えいただきたいと思います。
  42. 原安三郎

    ○原公述人 話合いなどは絶対にしておりませんから、これは初めに申し上げます。それから防衛計画というものは、経団連の方は日本の生産能力を考えて、拡張のできるものは既設のものをインプルーヴすることを考える。同時に日本が、よくいわれております三箇月間外敵に侵されないで国土全体を通じて保持できるには、幾らの海軍並びに空軍がいるか、これは常識ではないかと思います。私はここで申し上げたいことは――みな賢明な何十万人の信任を得ておいでになつている方々であるので、私からこんなことを説明するまでもないのですが、一例をあげて申しますと、岡崎外相が、中国、ことに中共方面の貿易は期待できない、こういうものを期待することはいけない、しかしできるだけやらなければいかぬといつて、国民全体には消極的の感じを与えております。しかしながら私はあれは自然に起つて来ると思います。来ると思うということは非常な勢いで向うさんの御要求があります。また日本の国民もあらゆる手段方法で――向うからもらう物資はわずかしかない、塩とか石炭あるいは豚毛、桐油、それから礬土等で、わずかしかないのですけれども、これをぜひ向うからとつてこちらの品物を売りたい。それをだれにも言われないでもやつております。その点は私は存外盛んになるのではないかと思つております。この点は政府の声明を皆さんがそのままお受取りになつていないと思いますが、私も受取つておりません。どうも日本政府の声明とか、総理大臣、大蔵大臣の御意見は、国際的な問題はいつも及び腰の発表です。いつでも消極的な発表です。眼光紙背に徹するといいますが、私は皆さんが声明の、血に徹するということで、それぞれ御判断をおつけになつているのではないかと思います。でありますから吉田総理の保安隊問題、軍隊の性格はない、経済力の拡大に従つて云々と、こういつたことも、私は皆さんの頭で分析しておられるものと思う。私の分析はここで申し上げません、
  43. 横路節雄

    ○横路委員 朝鮮の特需の場合とMSA援助の場合とにおいて、防衛生産はもうけがないのだということになると、実際これから企業の合理化という点で私ども心配しているのは、労働者に相当重い負担がかかつて来るのではないか、労働時間の延長とか、あるいは人員の整理とか、あるいはは賃金の引下げとか、そういう点はどうか、その点をお聞きしたい。
  44. 原安三郎

    ○原公述人 お答え申し上げます。私はそこまで問題は起らないと思います。私考えてみますのに、一億五千万ドルというと五百億円。それからもう一つ、皆さんのお手元にもあろうと思いますが、日本の法人の全体の生産利潤が、昨年度、昭和二十七年度四千億円、非常に小さい。全体が五兆八千億あるいは五兆三十億、こういう数字から申しますと非常に少いのです。しかしながら労働者の面においてすぐ影響あることでありますが、合理化という問題については、私は日本人が今考えておる程度合理化は、これから興る産業は新しくやりますからこれは別ですが、従来のものについては、合理化日本の力の及ぶ限りやつておる。ただ近代化ができていない。これは申せます。近代化については、防衛生産は近代化をやります。だから労働者をできるだけ少く使う。少く使うというのはその機械設備が少く使うことが目的になつていないのたけれどもコストを安くするために人間力を省くという機械を、これらの防衛生産には使うと思います。しかしながらこれだけ日本に新しい仕事ができるのだから、機械はひとりでは動きませんから、全体的の労働者の需要というものは大切なものであつて、ふえると思います。その点で、合理化をするために、あるいは人員の整理というような問題はおそらく起つて来る、こういうふうに考えますが、しかし仕事はふえると思います。これだけ防衛生産を、赤字は出しませんで、引受けなければなりませんが、大してもうからぬということは、動乱中のようにもうからぬということを申し上げます。一定の利潤をとらないでやるということは、われわれ自身供給者の一人として絶対にありませんから、その点は申し上げておきます。
  45. 小山倉之助

    小山委員 原さんにお伺いいたしたいのですが、実は兵器生産もコマーシヤルベースで行くということは、大阪の防衛協議会でアイゼンハウアーに尋ねたその返事でもわかるのです。ところがあなたのおつしやる三分の一の出血あるいは二分の一の出血をしているとかいうことは、私どもは、もうからぬのだけれども会社が苦しいので防衛生産をやるということで、会社の株を上げるとか、あるいは金を借りるために都合のいいように利用したとかいうように見ているのですが、あなたのお考えでは、コストを国防的のレベルに下げて日本の防衛生産ができるとお考えになりますか、どうですか。  それからもう一つは、ただいま合理化はできたが近代化はできないと申されたが、この防衛生産をやることによつて日本工業の近代化に役立つかどうか、私は非常に役立つのではないかと思うのですが、役立つかどうかということと、コマーシヤル・ベースで国際的の競争が、この軍需生産でなし得れば、ほかの中小工業あるいはほかの正常貿易の方にも影響するかどうか、やはりそれは近代化になればすべてのものが近代化するのですから、その点はどうか、御意見を伺います。
  46. 原安三郎

    ○原参考人 実はちよつとさかのぼりますか、近代化の問題は、一昨年池田大蔵大臣時代に、最新の機械を輸入するのならドルを使つてよろしいのだという問題が起りまして、これが一時世上に間違つて伝わつたが、そんなことはありません。やはり一般金融機関を経てそれがドルを使つて、一定の期間にペイバツクするわけです。あれが原因で、あれから後の日本企業家というものは臆病になつて貿易などでまだコスト高なんです。日本貿易の最近振わないのはコスト高なんです。すなわち朝鮮動乱によつて値段が上つたものが、列国はみな吸収されて、すなわちもとの一九五〇年五月の相場にもどつているがたくさんある。日本ではもどつているのは繊維だけ、あとのものはそのまま高価になつている。ところがそれを、合理化はやつておりますが、近代化は、新しい設備で、そうして五社でやつているものを一箇所でやるようなことをやれば、アメリカに機械はあるのです。しかしこの機械を、ドルがあるのたから買おうじやないかといつても買わない。それは非常に臆病になつているのです。それで今までやらなかつたということを申し上げます。今度のMSAの問題では、これはさつき御返事中したことでおわかりになつていると思うのですが、これはこういうことです。今度の防御生産の中で、兵器に関することは日本はだめなんです。綿化薬のごときはぶちこわしてしまつた。どうしても新しくやれない。今度新しくアメリカからもらうのですから――もらうといつても、幾らかの代金は払わなければならぬのですけれども、二品か二台もらつて、その機械を日本でつくるか、あるいはくれるかする。健は防御計画五十八億二十八百万ドルというのが、六月一日に決定したアメリカのMSAの予算ですが、その一割、五億五千万ドルというものが経済援助です。経済援助の内容を見ると、そういう新しい設備を列国にやらしめるためのもので、それが一割ですから、ちよつと少いと思う。聞いてみますと、それは機械を一台渡し、それを手本にしてたくさんその工作機械を生産さして、そのまま使わす、こういうことがある。間に合わなかつたら向うが機械を送つてやるという形をとつておりますから、これでその軍需生産以外のものも、アメリカ式に合理化される、近代化されることは事実です。それからこんなものは防衛生産で、あまり広くやつておりませんけれども、その範囲内では、少くともいい手本を示して、それが刺激になるということことは、もう確かに間違いありません。だからそういう面における役目はしています。消極的といいますか、とにかく役立つと思います。その点はあります。今まではしかし、昨年からのドルを使つてもいいと言つたが、存外少かつた。率先して、その前に非常にもうかつたから工業家が多く利用したものも、現在に至つては償却できないで因つておりますが、なかなかむずかしい点がありますけれども、なますを吹き吹きやる思うのです。そういうことが考えられる。
  47. 小山倉之助

    小山委員 コストを下げることはどうですか、イタリー程度まで行きませんか。
  48. 原安三郎

    ○原公述人 それではお答え申し上げます。さつきあなたのお話になりましたことで、どうしても防衛生産、すなわちMSAの援助で向うの注文が来ないだろう、日本が高いから、コマーシヤル・プライスだからということなんですが、この問題はむずかしい問題でございまして、アメリカでこしらえて送る場合には少くとも一割高くなる。この付近でやります場合には向うから送るより一割安くなる、そこに一割のマージンがある、こういうことで、今のところアメリカは長い間日本状態を見ておりますから見通しておるのですが、どうしてもかなわぬ物もあります。無煙火薬のごときは、向うは二分の一です。これなどどういうふうにしますか、向うさんのような製造設備日本でやるということになれば、そこまで打つて行けるのではないかとわれわれも思つております。そういう点で非常に差異のあるものは、なおさら大量生産なりコストを下げることをやらなければいかぬと思います。従来注文のあつたものについては一応こなしておるけれども、今後は別問題です。飛行機とか、艦船の問題は別問題です。
  49. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ほかに質疑がないようですから、次に移りたいと思います。原安一郎君、どうもありがとうございました。  それでは次の公述人お願いいたします。東洋綿花株式会社社長鈴木電光君。
  50. 鈴木重光

    鈴木公述人 私ただいま指名にあずかりました鈴木でございます。貿易業をやつております関係上、貿易業者立場からこのたびの予算案を見ろというお話で、本席へお招きにあずかつたわけでございます。  私、四十年来貿易をやつておりましてしみじみ感ずるのでございますが、近来政府当局を初め世間一般貿易立国、日本貿易で立たなければならぬという声を盛んにお出しになるようでございます。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕  いまさららしく貿易立国というと、日本のような国がそれじや今まで何立国であつたかということになるわけでございまして、こういう声を聞くのがいささか小遅れのように思うのでありますが、遅れたりといえども善処ができればけつこう、また善処しなければならぬとわれ人ともに痛感する次第でございます。  最近と申しますか、戦後日本貿易がだんだん御承知のようなことになりまして、いわゆる特需とか新特需、あるいは特殊の貿易外収入などによりまして、どうやら十一億余りのドルがたまつたという状態でございまするが、この特需なるものも、ただいま原さんのお話にいろいろありましたように、もう二箇年ぐらいで打切るぞというようなこと、つまり三箇年は続けてやるということであります。その間に完全に貿易的に独立しなければならぬということを押しつけられているわけでありまして、押しつけらればならぬということを目の前に見せつけられておるわけでございます。こういう状態で今お互いにあせつておりまするが、はたしてこの目的を達し得るやいなや、なかなか問題ではなかろうかと私は思うのでございます。大臣の方々の御演説等を承りましても、正常貿易と申しますか、どうも普通の状態基礎にして、ものをごらんになつているのじやないかと感ずるのでございます。各国とも貿易じりを合すと申しますか、トレード・バランスを保持して、その国の通貨の価値を保持したいということに専念しておる状況で、すなわちイギリスを初め、輸入を制限することによりまして自国のトレード・バランスを辛うじて保持しておる。そうしてポンドなどがようやく回復して来たということで、この間にありまして日本が特需の貿易上の収入がなくなるという前提からこれを見ます場合、はなはだ心細い状態にあるのじやなかろうか。資源はなし、労銀は上る、しかも特殊な力をバツクにしないという状態において昔の状態へ持ち返さなければならぬことは、なかなか困難なことではないかと思うのであります。朝鮮動乱以来うなぎ上りに上つた物価はなかなか下らない。特殊のもの、繊維等を除きましては非常に高いところにあつて、下り得ない状態にある。金利が高い、あるいは原料がままならぬ、いろいろな点から、鋼材を初め原料になつているものが高い。海外から輸入する原料は、世界の相場で買えるからおのずからそれについて来ているが、日本でこれに相場以上の加工を加えなければならぬもの、あるいは日本自体でつくるものは側寺町であるという状態であつて、これがなかなか貿易の平仄を合せてくれない現状にあるのであります。こういう状況下にあつてこのたびの予算拝見しまして、まず歳出面のどういう点で貿易を促進し、助長し、あるいは貿易業者を育成するということなお考えになつておるか、いささか検討してみた、と思うのであります。  具体的に申しまして、まず、第一に昨年度は輸出入銀行に対しまして一般会計から四十億、見遮り資金から三十億、合計七十億の財政投資が行われたのでありますが、本年度はゼロとなつております。というのは、この輸出入銀行をお前たちは一向使わないではないか、使わないからあの程度でいいというお考えであろうかと思いますが、これはそれに違いないのでありますが、われわれはなかなか使いにくいのであります。非常な制約があります。まず金利が五分ないし七分というようなことで、一般にああいう長期の輸出のみに融資をしていただく輸出入銀行の金利として、割安とは決して申しかねるような金利の制約、それぞれその都度、ケース・バイ・ケースでいろいろな制約を受けることがあることはもとよりでありまして、こういう点でなかなか楽に使えない。この意味におきまして、輸出入銀行は、こういうぐあいに政府資金相当出ておる銀行でありますので、その性格にかんがみられまして、民間業者がこれをもつと楽に使い得るように御配慮を願いたい、そういうふうに考えるわけであります。  次に輸出信用保険でございます、これも通産省、大蔵省等におかれまして非常な御配慮をいただきまして、だんだん保険のカバーする範囲を拡張され、利用価値がだんだんふえて来る状態にはありますけれども、これまたカバーされる範囲がまだまだ不十分であり、かつ根本理念において独立採算と申しますか、保険料、プレミアで全体をカバーしたいという思想がまだ底に流れている。国家からこれに対して相当の財政投資と申しますか、十億円昨年は出たのでありますが、本年はゼロのようであります。そういうふうなものが出まして、相当補助はされますが、今は保険料率が千分の六でありまして、いろいろな制約のある日本貿易業者にとりまして、この輸出の、しかも一部分しかカバーされぬ保険に、これだけの料率を払うということはなかなか困難である。ことに大商社は概していい特需先を持つておりますので、弱小商社――弱小商社ならばいいのでありますが、悪質商社と申しますか、そういうものを大きなやつが援助するということになります。そういうものでもやはり援助して貿易を伸張しなければならぬというのが命題でありますが、これはすべからく国家において力をこれに貸すべきであるというりくつになるわけでありまして、いま少しこの点に財政的な顧慮を払つていただきたいと思うわけであります。  それから貿易面から見まして、在外公館費が今年は昨年より削減されておる、不成立予算より削減されておりますが、これははなはだ残念でありまして、われわれ先般ずつと海外をまわつて来たのでありますが、在外公館の方々は、結局どうもツーリスト・ビユーローの役目がガイドぐらいのことしかしておられません。昔のようなコクテルの、何といいますか、シャンパンの外交はある程度必要のない時代でありますが、そういうことでなく、もつと腰をおちつけて、たとえばわれわれが参りましても経済的な話、あるいは商売の話もありますが、そういう質問をしても、十分とは言えなくても、ある程度の御返事が得られることはほとんどないのであります。そういうことを御研究になるほどの余裕がないと思うのであります。おちついてお調でになつておらぬ。手も足りぬでしようし、ひまもないでしよう。終戦後外務省からたくさんの人が通産省に行つておられました。つまり商業方面と申しますか、貿易方面等に相当通暁された外務省の役人が、幸いにおられるようでありますから、そういう人を海外に出して、腰をおちつけて海外の情報をとるとか、ことに昨今では、三角貿易とかバーターというようなことが、絶対に必要な時代でありますから、そういうものの十引きにもなるような存在になつていただくように、予算面からやつていただきたい。これが逆に削減されておるということは、はなはだ心さびしい次第であります。  それから貿易振興補助費というものであります。これは説明書を拝見したときに、予算面によう見つけなかつたのでありますが、承るところによりますと、一億円ぐらいの予算があるように聞いたのであります。もしそういうことでございますならば、総予算の一万分の二、これははなはだ心細いわけであります。こういう貿易振興補助費というものは、たとえば日本技術家を東南アジア開発に出す、そういうことの補助費とか、いろいろな補助に使われるやに承るのでありますが、こういうことは、英、米、独等はすでに非常に手を打つております。その証拠に、彼らの方面からの技術家の進出は、なかなか目ざましいものがあります。こういうものが誘導し教育して、その旧の機械を入れるということになると、日本が一旦立ち遅れたならば、日本があとからのこのこ出て行つても、その部分品あるいは改修等について、太刀打ちできません。一旦ドイツの機械が入つたならば、ドイツが永久に地盤をすえるわけでありますから、一応何だかわからぬ金のように思われるかもしれませんが、そういう方面にも相当予算をおさきになる必要があろうかと思います。今アメリカのシンシナテイでできる工作機械、これは日本が大いに輸入しなければならないような機械であります。これに対して日本の工作機械を東南アジアに持つてつては、とても太刀打ちができません。けれども、せめて相当の技師を出して、一緒になつて研究して行きたい。血はおのずから通つておる東南アジアの民族でありますから、人間を出すことは相当歓迎される場所もあるだろうと思います。従つてそういう面は相当の補助をされるようにお願いしたい。  次に、くどくど申し上げるまでもありませんが、歳入の面におきまして、貿易業者対象として、相かわらず収入主義と申しますか、徴税主義と申しますか、あまり考慮が払われていません。これは貿易業者育成の意味において、相当手かげんをしていただきたいということが叫ばれておりますが、なかなかそういう考慮が払われていません。これからりつぱに徴税をされる予算のようになつておりますが、おそらくこれは失望されるのではないかと思います。貿易業者は非常に疲弊しておる。資本金に十倍、二十倍、数十倍する負債を持つております。それにまた、まことに残念ですが、最近貿易業者はみな多角経営で、内地でもやつております。ことに私は大阪の人間でありますが、大阪は九州、四国、中国を内地では地盤にしておるのでありますけれども、九州にああいう大きな水害が起りまして、おそらくこれから来る手形の不渡りあるいは破産等々による大阪の被守は、甚大なものがあろうかと思います。もつとも、この予算をお組みになつたときには水害はなかつたのでありますから、これを責めるのは無理でありますが、そういう実情に置かれておる貿易業者対象にして、これから大きな税金をとろうという歳入予算は、現在においては無理ではなかろうかと思うのであります。もとより日銀その他からの御出馬で、それをお返しになる御計画もこれから進められると思いますけれども、それによつて貿易業者が今よりベターの状態になるとは、決して思いませんので、歳入の方も十分御検討願いたいと思う次第であります。  なお歳入の方におきまして、輸入染料の税金であるとか、あるいはパルプの税金というものについて、これが輸出に使われた場合だけでも、数字的に検討ができるわけでありますから、それをある程度是正してやる。輸出入絹に捺染したり、染めたりする染料、あるいは人絹なりスフになつて出て来るパルプ、これらはせめて是正してやるくらいの措置があつてしかるべきではないかと私は思うのでございます。それをも取込んで返さないということは、貿易立国ということをおつしやられる建前上、どうかと思います。  なおこの際、中共貿易についてただいまお話が大分出ておりましたが、大阪におります関係上、われわれの考えておるところをちよつと申し上げたいと思います。お前たちは中共貿易中共貿易と言つて非常に騒ぐが、あれはお前自身は騒ぐ方か、騒がない方か、こうおつしやるかもしれませんが、おそらく東京におられまして把握ができないのじやなかろうかと思います。大阪の人間はどんなふうに考えておるか、むろん東京にも貿易商社はございますが、特に大阪の者はどういうふうに考えておるか、御判断がむずかしいのじやないか。これにつきましては、あれは一つの悲鳴でありまして、さつき申し上げたように、世界各国貿易を押えておる。これによつて戦前の何分の一しか商売ができない。しかも戦前より二割もふえた人口をまかなつて行かなければならぬ日本、その先頭に立つ貿易商としまして、いかにして食つて行くか。やむを得ず。今申し上げたように、内地でもやらなければならぬ。九州へ物を売つてひつかかる。これは本来本業ではない。しかしそれをやらなければ食つて行けない状態に追い込まれておる貿易業者一つの悲鳴であります。現在の中共は御承知の通り、なかなかこちらで思うような商売をしてくれません。たとえば大豆を買いますと、日本へは大豆一トン五十二、三ポンドの指値であります。イギリスヘは一トン四十二、三ボンド、ざつと二割ぐらい違います。日本には中共の指値が高い。これはなぜか。運賃の差であります。日本は近いから運賃が安い。それだけ自分の方でもうける。向うさんもなかなか商売人で、そろばんがうまい。ああいう国家貿易だけれども、如才ないことをやる。運賃の差は向うでとろう。何も日本との貿易を阻止する意思はないけれども日本はたとえば向うの最もほしがつておる亜鉛引鉄板等のものを売つてやらぬ。これは売れないのでありますが、イギリスは売るのであります。向うが日本を見る目は、根本的にイギリスに対する場合と違うわけであります。イギリスに対しては、運賃が高いし、亜鉛引鉄板を売つてくれるから、そこまで下げてやろう、日本はおれのほしいものを売つてくれない、綿布とか人絹とか、そんなものはいらない。国民には耐乏生活をさすのだ。産業復興、軍備拡充一辺倒だ。そういう向うさんの今の考え方から見れは、ほしいものを売つてくれないのだから、もつともなことでしよう。そういうふうな制約を受けておりますので、今の中共貿易というものは、私は大きな期待をしていないのであります。こちらは御承知の通り、バトル法の線に近い線で筋が引かれておる。向うは甲、乙、丙、あるいはA、B、Cですか、ああいうふうなランクを設けて、丙は丙同士でしか交換できないということを堅持しておる。そういう状況下において何をか言わんや。それではそういうものが相当緩和され、こちらも大いに緩和することになつたらどうか――これは私にはわかりませんが、かりにそういう質問があるとすれば、その場合、今の中共が、大阪でできる蓄音機であるとか、自転車であるとか、あるいは綿布とか、つまり日用品、そういうものをこちらが期待するほど、つまり昔の満韓支時代ほど買つてくれるか、そういうことはおそらく実現しないでありましよう。ソビエト・ロシヤは知りませんが、ああいう国柄ではまずそういうものはあとまわしでしよう。私はそう思うのであります。そういう中共を相手にしてわれわれは非常な大きな期待はかけ得ないのであります。しかしそれでも中共貿易の声が絶えないのは、それは悲鳴であります。その悲鳴を立法府におられる皆さんとしては、どういうふうにお聞きになりますか。だから中共貿易をやらしたらということよりも、一般考え方は、中共というものとかりに貿易ができても、それは日本貿易のほんの一斑を解決し得るにすぎないのであつて、前面的な解決はもつてのほかであります。だから一般の方にもつと力を入れて、われわれが悲鳴を上げなくてもいいようにしていただくということがわれわれのお願いである次第でございます。  なおいろいろの措置というものはいわゆるタイミングでありまして、一昨昨年の秋でありましたか。AAの措置が非常に遅れましたためにぐんと上つてしまつたところで話がきまつて、さあ手当をしようと、貿易業者は何をしているかと叱咤激励されまして高値をつかんだ。その後一昨年の春になつてアメリカが軍需品の買取りを手控えた。そして世界的大暴落になつた。そこで貿易業者は非常な苦境に立つた。AAというものは御承知の通りメーカーに割当てられるのでありますから、メーカーに売つてつたがみな小便されてしまつて売りが売りにならぬ。それがみな輸入業者の肩にかかつた。私どももその苦しみをいまだになめておる一人でありますが、人さんのしわが寄つておる。もう一つさかのぼれば政府が事を処置するタイミングを誤つた。これはほんとうはGHQが悪いのですが、われわれから言えば政府が悪い。GHQを責めるわけに行かない。今後もタイミングということをよろしくお失いにならないように特にお願いする次第でございます。どうもかつてなことを申し上げましたが、大阪の業者の悲鳴とお聞き願いたい。
  51. 世耕弘一

    世耕委員 中共貿易に関する御所見はある程度どもも同感であります。最近東南アジアカ面の貿易ということが多く論じられておるのでありますが、貿易の深い御研究をなされておるあなた方の力で何かそういう方面についてお見通しでもおありになれば承りたいと思います。  なお中共貿易関係でございますが、もし中共貿易が現在の状態を打開されて自由な貿易がかりにできると仮定した場合に、日本の受ける利益、先方との取引がどの程度まで金額が上るか、最近われわれの聞いた範囲によると、大体の生活必需品はソビエトに仰いでおる、その額は七〇%ぐらいだろう、だからかりに中共貿易が開放されても期待することは不可能だろうというふうに専門家は説明しておる向きもある。この点についてお見通し等を伺いたいと思います。
  52. 鈴木重光

    鈴木公述人 お答えいたします。第一に東南アジアについて何か考えておるかということでございまするが、東南アジア方面で大きな市場と申しますと、インドネシアが第一でございましよう。それからタイとか、あの辺でありますが、インドネシアは御承知の通りああいうオープンアカウントの協定によりまして、スイングと申しましてバランスをある程度きめまして、その程度までは商売してもよろしいということでわれわれはその範囲でやろうということで進んでおりまするが、昨年もそのバランスを、日本が取立てに行つて相当きびしく取立てたわけでありまするが、ああいうことにつきまして、もう少し政府が大きな腹を持つて、あのバランスなどは向うへの投資と申しますか、日本の投資は日本の侵略主義が伴いはしないかというので、向うではあまり歓迎しないのでありますけれども、投資の方法はおのずから話し合いである程度あると思うのであります。あまり鼻先勘定でその年の勘定はその年中に決済しなければならぬというような小さな考え政府が持たなかつたならば、もつとこれは期待できると私は思うのであります。これはインドネシアその他の国々につきましてはセーブされておりますので、この席では申し上げませんが、ほとんど大半を占めるインドネシアについて申し上げたこと、その思想を政府が他の地域についても持つていただけば、もつと期待し得ると私は思うのございます。  なお中共貿易の前途につきましては、さつき申し上げました通りでございますが、四億何十万の大衆がおる、これは向うさんの政府考え方次第であると私は思います。政府すなわち民衆でございましよう。日本もそのはずでございます。この政府考え次第であそこは大きな購買力も起るし、そうでない形にも行く、これは残念ながら今の中共をこちらから新聞ぐらいを通して見ているところではその後者に当ります。つまり大きなことは期待できないのではないかということを考えている次第であります。
  53. 世耕弘一

    世耕委員 もう一点伺いたいと思います。日本海外貿易発展しない一つのがんとして多く指摘されるのは、貿易業者自身が現地において無理な競争をする、たとえば米の買出しについてもあるいは売込みにおいても協同性がない、それがかえつてたたかれる機会があり、高いものを売りつけられる、そういう点について業者として反省することがないかどうか、もう一つはこれはあなたのお考えを承りたいのですが、日本政府貿易に対して理解が非常に薄い、理解がない、むしろ貿易を促進する推進力よりも引きとめるような逆な手を打つておる、最近においては私は妙な関係から香港経由の綿実油の日本輸入を頼まれて世話して上けたのです。これなんかも政府に折衝しておる間に約二、三箇月かかつて、かえつてそのために変動が来て、価格の変動と中共政府の方針が変更したために、半分に減つてしまつた。こういうふうなことがある。こういうわずかの手続によつて機会を失しておる。先ほど説明された方の話に、いわゆる玉突きの方法を活用して、いろいろなこまかい説明をしておりましたが、香港貿易を通じてやる、あるいは他の方法を通じてやる手はいくらもあるのではないか。そういう点について業者も熱意がなければ、政府も熱意がないのではないかと私は考えておる。そういう点についてのがんがあれば除去する必要があると思います。その点もう一度伺いたいと思います。
  54. 鈴木重光

    鈴木公述人 海外業者同士が不必要、不当な競争をするということをどう考えるかという御質問でありまするが、お説の通りこれはどうも今のところ百年河清を待つがごとしでありまして、われわれも長年苦労して参りましたが、なかなかこの競争はやまないのであります。むしろ皆様方承知かもしれませんが、今日本で綿花会社が百幾つありますが、二十年以上前に二十ぐらいあつたと思います。そのうちの三つの大きな会社、今でも大きいのですが、その三つの綿花会社が、売値を協定したのであります。その協定の会場の場所からの帰りにその中の一つが裏切つた。商売人というものはそういうものなんです。そこでわれわれが考えるには、独禁法を根本的に改正し、もしくは廃止していただいて、組合活動が十分できるように組合でやるよりしようがないのです。今でも独禁法の例外としまして、先方が何らかの形で一手で買い取る機関を設けてやつて来る場合には、こちらも同じことをやつてよろしいという条項がございますが、先方がそうでなくともこつちがやれるようにしなければならない。組合でやるとすれば過去の実績が問題になります。われわれのような比較的大きな会社ではそういう場合には非常にぐあいが悪い。主張すれば憎まれる。商売人ですから主張はしたい。そういう点悩みもありますけれども、これは適当に通産省その他であんばいしていただいて国として損をしないように個々の犠牲は忍ぶ。われわれのように比較的大きいものは過去の率よりひつ込んでもがまんすべきた。同として損をしないようにする。それには独禁法の根本的御改正をお願いしたいと思います。それから中共貿易は香港経由で云々の話がありました。これは例の決済が問題になる、LC関係がうまく行つていない。これは御承知の通りでありますが、いろいろな悩みがございますので、なかなか思うように行かないということだけ申し上げておきます。
  55. 小山倉之助

    小山委員 オープン・アカウントでインドネシアから大分取立てたということですが、私の受けた報告では、六千万ポンドばかりオープンアカウントでとつておるということを聞いておりますが、どこにあるかということはおわかりでありますか。インドネシアには残つていないのですか。
  56. 鈴木重光

    鈴木公述人 昨年外務省の黄田局長が担当で行かれまして、話がまとまつたのでありますが、詳しいことは私も忘れましたが、取立てる約束はできた。ところが向うは金がないのです、金は払えない。ないから払わないのですが、あれはまだインドネシアの手にも金そのものはないのです。支払う義務が向うはあるわけで、それを何か数回の年賦みたいなことでとることになつたわけであります。そういう話を私は自の色をかえてするよりも、それを投資にまわすとか、向うの国がつぶれてしまうわけでもありませんから――この話はこの席で申し上げませんが、もつとほかに考えてしかるべきだという意見もあるわけでありますので、もつと度量を大きくして解決して行つたらいいのじやないかと考えるわけであります。
  57. 小山倉之助

    小山委員 もう一点、さつきのお話の在外公館は非常に困つておるという、どうも資料なども集めないというお話がありました。私はある新聞で見たのですが、日本海外貿易のレザーヴの金を使う、実業家がむやみに向うに行つて、飛行機の世話から飯の世話まで全部させられるので、そんな国家の必要な調査なんかやる必要がない、こういう非難もあるのですが、どんなぐあいですか。私は金持ちの連中が向うに行つて、向うの世話になるのですから、在外公知が動きいいような方針を、あなた方の方でも立てるべきじやないかという感じを持つたのですが、その点はどうですか。
  58. 鈴木重光

    鈴木公述人 在外の公館がツーリスト・ビユーロー化しているということを申し上げたことを、小山さんも同じことをおつしやるようでありますが、まつたくある面ではそういうことになつておる。お客さんが多過ぎる。つまり優先外貨を浪費するということでございましようが、浪費する人も相当あるでしようと思います。優先外貨そのものの議論をするのはやめますが、在外公館の手が足りない、今日本人というものは、銀行も商社も昔のように三井物産や正金銀行が、皆さんを御案内することができないので、結局在外公知がある程度お世話しなければならない、これは浪費と見るか、向うの扱いと見るかは別ですが、人間にもある程度余裕がなければなりません。それに忙殺される人数じや困る、個々の待遇は悪いとは思いません。商社や船会社の方よりも――外務省の方がおられると怒られるかもしれませんが、決して個々の収入が悪いとは思いませんが、頭数が少い、もつと通産省で仕込んだ方がありますから、外務省でああいう方を通産省から引上げてどんどん海外に出して、本来の面目を発揮させるということをお願いしたい、こう考えております。
  59. 小山倉之助

    小山委員 今あなた方の方で支店を出しておりますか。
  60. 鈴木重光

    鈴木公述人 支店と称するものは、まだそうありません。法律がいろいろありまして、同時に滞在期間が少いものですから、どこもここもまだ完全なとりきめはできておりません。長いところで六箇月、それを延ばしてもらうのになかなか骨が折れる。パキスタンその他ぼつぼつやつておりますが、あるいは別会社にしたりいろいろやつておりますが、税法上のいろいろな悩み――支店を出したら本店の利益まで税金がかかるといういろいろな悩みがありますから、どしどしつくるところまで行つておりません、商社は人間は相当出しております。
  61. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 お伺いたいと思う第一点は、輸出入銀行の金利が国内で非常に高い、これじや使い切れないというお話でございました。国内に外資を導入して十年年賦のものが四分、二年ないし三年のものは五分ないし五分五厘、技術再入によるいわゆる無体財産導入外費が六分、大体大蔵省もそのように査定しております。そんなところから見ますと、貿易資金の短基間のもの、つまり五分ないし六分という間の金利は、そう高くないようにわれわれも感じますが、一体妥当な線はどの辺にあなた方は置いておられるか、これは国家が先般の朝鮮特需の初期における原料輸入に、非常に貿易業者に奨励をした、そのために非常にみな弱つているという、先ほどのお話はその通りであります。それらをカーバーする意味からいつても、保護せよという意味からいつても、金利を下げよとおつしやるのか、そういう意味においては保護貿易の意味でおつしやるのか、あるいは世界水準からいつて妥当じやないとおつしやるのか、その辺のところを、ちよつとお答え願いたい。
  62. 鈴木重光

    鈴木公述人 一昨々年のああいうふうな事情でかなりつかまされて、それによつて生じた損害を云々、それに結びつけて申し上げているわけじや決してありません。今の輸出入銀行の融資は、おもにプラント輸出の場合に適用されるのでありまして、三年、五年というふうに長いのであります。大きな発電工事をプラント輸出で引受ける、こういうことでありますので短期じやないのであります。そこに根本的の問題があるのじやないかと思います。非常に長いのでありまして、短期は今七分以上の金利で高いのであります。輸出の手形は輸出入銀行のやつはやや安いのでありますが、非常に長期でありますので、輸出業者としてはそこにしC開設等のリスクが、非常に長いものを見なければならぬ。なかなか一ぺんに全部のLCを開設できない。向うが一ぺんに五箇年分のLCを開設して来るわけじやない。ぼつぼつ開いて来る。ところが片方にリスクを追いながらやつておる。こういう場合国家保険制度が確立されていないからいろいろ危険がある。そういう金利はよほど安くしなければならぬ。二分五厘から三分の金利にしてもらいたい、こういう意味であります。
  63. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 民間外資でさえも十年以上になるやつが四分、それから二年ないし一年のやつは五分から五分五厘、これが基準になつておるようですが、それよりも高いということをお聞きしたのですが、あなたの御主張は二分から三分か妥当である、但しそれは二、三年を長期とおつしやるのですか、五年があるのですか、これを二分から三分というと、世界水準の半分ぐらいに保護せよということになるようですが、そんなことですか。  それから先ほどの御説明の中に、たとえば染料のごとき、輸入してただちに摘出になるようなものは、無税として保護せよというお話があつたのであります。これはあなたのところとしては最も関係の多い貿易の面ですから、そういうふうに感ぜられると思うのです。反面サンフオライズなんか、染料の点では国内で非常な進歩を見ておるように、これは国家企業としても保護しなくちやならぬような時期に達しておることは御存じの通りであります。こういうように国内産業を、さらに保護する意味からいうと、逆に私ども輸出業者にそれに協力していただいたらどうか、こういうふうに思うのでありますが、いかがですか。それらの点はあるいは見解の相違かもしれませんが……。
  64. 鈴木重光

    鈴木公述人 この席上は議論する席ではないと思いますから議論はいたしませんが、染料業者も、もういい加減に政府の保護関税から脱却してもいい時期じやなかろうかというのが、われわれ貿易業者の見解であります。これは間違つているかもしれませんが、そういう見解であります。  それから今の金利の問題も、いろいろな悩みのあります貿易業者としてのやはりこれは悲鳴であります。できることなら全面的に日本の金利をもつと下げていただきたい。先日も一万田さんは、金利を下げるということはインフレ政策だとおつしやいましたが、われわれはさにあらず、全面的にめちやくちやに下げろというのではなくて、重点的に下げろということで、これは生産コストを下げることなのだ。そういうことはインフレになるという理論も、経済学的には成り立つと思いますが、一面生産コストを下げなければいいものが安くできない。これは議論になりますが、われわれとしてはそういうことをお願いしたいというわけであります。
  65. 尾崎末吉

    尾崎委員長 鈴木君、ありがとうございました。  この際申し上げます。公述人宇佐美誠次郎君は、本日も御都合によつて出席いたしかねるとのことでありますので、同君の御意見をお聞きすることはとりやめることといたします。御了承を願います。  これにて公述人の御意見は全部聞き終りました。昨日来御出席くださいました公述人各位に一言御礼を申し上げたいと思います。何かと御多忙中のところ御出席をいただき、貴重なる御意見をお述べくださいまして、本委員会の今後の堺市の上に、多大の参考になりましたことに対し、ここに厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。  明一日午前十時より委員会を開会いたしまして質疑を継続することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十二分散会