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1953-06-29 第16回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十九日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 久之君    理事 川崎 秀二君 理事 八百板 正君    理事 今澄  勇君 理事 河野 一郎君       相川 勝六君    植木庚子郎君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       田中  元君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    長谷川 峻君       船越  弘君    本間 俊一君       八木 一郎君    山崎  巖君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    櫻内 義雄君       中村三之丞君    古井 喜實君       松浦周太郎君    青野 武一君       福田 昌子君    武藤運十郎君       横路 節雄君    和田 博雄君       加藤 鐐造君    小平  忠君       河野  密君    平野 力三君       三宅 正一君    石橋 湛山君       北 れい吉君    三木 武吉君       辻  政信君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         法務政務次官  三浦寅之助君         大蔵政務次官  愛知 揆一君  出席公述人         朝日新聞論説委         員       土屋  清君         東京銀行常務取         締役      堀江 薫雄君         商工組合中央金         庫理事     安田 元七君         全国農民連盟書         記長      中村吉次郎君         旧軍人関係恩給         復活全国連絡会         会長      永持 源次君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 六月二十九日  委員高瀬傳君辞任につき、その補欠として中村  三之丞君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた事件  昭和二十八年度総予算について     ―――――――――――――
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより昭和二十八年度総予算につきまして公聴会を開きます。  開会にあたりまして本日御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。申すまでもなく、目下本予算委員会において審議中の昭和二十八年度総予算は、今国会中における重要な案件であります。よつて委員会におきましては、広く各界の常識経験者各位の御意見を聞きまして、本案の審査を一層権威あらしめようとするものであります。各位の豊富なる御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと期待いたす次第であります。本日は御多忙申のところ貴重なる時間をおさきになり御出席をいただきまして、委員長として厚くお礼を申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は大体二十分見当にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見の開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと思います。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承を願います。  それではまず朝日新聞論説委員土屋清君より御意見をお聞きすることといたします。土屋清君。
  3. 土屋清

    土屋公述人 昭和二十八年度の予算案につきまして、私の考えるところを申し上げたいと思います。実はこの前の国会不成立予算案につきましてやはり公述いたしましたので、今回の予算案は骨格はそれほどかわつておりませんから、格別その点については新しくつけ加えるところがないのでありますが、しかし予算不成立の後におきまして国際情勢に重大な変化が生じ、朝鮮休戦というような事態が現われまして、これが財政考慮を要するいろいろの問題をはらんでいると思いますので、その点について主として申し上げたいと思います。  朝鮮休戦が成立いたしますと、わが国国際収支バランスに重大な変化が生ずるだろうということは、すでに常識となつて参りました。目先の一年、二年は大したことはないかもしれませんが、四、五年先にはかなりの変化を予想しなければならないと思うのであります。今日わが国の外貨の支払いが年間二十億ドル、これに対して受取りが二十億ドルでほぼ均衡を得ておるのでありますが、その受取りの内訓を見ますと、輸出によるものはほぼ十二億ドルにすぎず、残りの八億ドルはいわゆる特需的収入と言われるものであります。この中には朝鮮特需国防分担金米国軍人個人消費等を含むのでありますが、その八億ドルによつてかろうじて同際収支バランスを維持しているような現状であります。朝鮮休戦が現実化いたしますと、まずこの特需的収入の部面において大きく変化が現われることは避けがたいと見られます。二十八年度においてはむしろ駐留用個人消費の増大というようなことも予想されますし、また復興特需もある程度始まりますので、それほど変化はないでありましようが、しかし一年、二年と経過するにつれまして、この特需的収入部分は激減することを考えなければならない。そのあかつきには、そのままでは一際収支の上に大きな穴が明くと思われるのであります。今日MSA受入れの問題がやかましくなつておりますが、かりにMSAを受入れるといたしましても、それはやはり永続すべき性質のものではないのでありまして、おそらく数年程度のものでしかないと思われる。そういたしますとMSAを受入れたとしても、それをもつてこの特需的収入減少という基本的事実を変更するものではないと考えられます。また一方、十二億ドルの正常の輸出部分でありますが、この輸出部分も、休戦後の国際情勢によつて減少する危険をはらんでいると思われます。すなわち各国が再軍備をスロー・ダウンすれば生産力余裕が生ずる。その生産力をあげて輸出競争に投ずれば、今年は別としてもおそらく一、二年後には相当激烈な輸出競争が演ぜられるに違いない。その場合、今日のわが国産業のごとく二割、三割というコスト高現状をもつていたしましては、とうていこの激烈なる輸出競争に耐えないことは明白であります。そうなりますと、この十二億ドルの輸出水準前途において維持することは必ずしも楽観できないと思うのであります。すなわち正常なる輸出の伸張が期待できない。むしろ減少のおそれがあるということは、これは日本経済にとつて重大な問題だと思うのであります。その場合すぐに起つて来る議論は、中共貿易を展開して輸出減少を補うべし、あるいはこれによつて特需的収入減少までも補うべしという議論だと思うのでありますが、中共貿易を発展させることについてはもちろん賛成でありますけれども、それが金額的に大きな役割を果すという見通しはなかなか立てがたい。今年かりに年間一千万ドルぐらいになりましても、これを一億ドル程度にまで持つて行くのには相当の時間と努力を要すると思われるのでありまして、従つて中共貿易によつてこの輸出減少をカバーする、あるいは特需的収入減少をカバーするということは、一つの希望としては考えられますが、それほど大きな効果が上るものとは思われません。そういたしますと、休戦が具体化いたしまして数年を経過した先を考えますれば、日本国際収支の危機ということは歴然と言うほかはないのでありまして、MSAの援助に依存することも妥当でなく、中共貿易に過大の期待をかけることも妥当ではない。つまり、日本国際収支バランスは、両者をいずれも利用するとしても、なおかつ基本的には独自の自立の方策を立てなければならないときに来ておると思うのであります。そうして、その観点から財政上、いろいろの措置を今日から講じて行くのでなければ、その国際収支に正大な事態が生じた場合に対応することが困難ではないかと思うのであります。  そこで予算について個々的に申し上げます。まず歳出でありますが、歳出につきましては、一般的にその膨脹抑制して、財政支出を効率化するということについて、もつと積極的に努力を払う必要があると考えられます。今日、世界各国いずれも財政膨脹抑制し、財政支出削減することに必死の努力を傾注いたしておりますが、わが国財政は、前途において、ますます膨脹一途をたどるような傾向がうかがわれるのでありまして、これは世界の大勢にそむくばかりではなく、わが国におきましても、各種の困難を惹起するものではないかと考えられる。  そこで私は、第一に、予算経費節減ということについて、もつと関心を持つ必要があるのではないかと考えます。今回の予算におきましては、その努力が多少現われているところもございます。たとえば旅費並びに事務費の一割五分天引きというようなことを行いまして、四十億円内外の節約をいたしました。私はこの前の国会でも経費節減を強調いたしましたが、わずか四十億円でも、その意図が現われたことは、たいへんけつこうだと思うのであります。しかし、現在の財政情勢からいたしますと、この考え方をさらに一歩進めまして、全体の予算九千六百八十何億円に対しまして、これを五%ぐらい天引き圧縮するということは、私は不可能ではないと思うのであります。今度の旅費事務費節減についても、相当各省の抵抗があつたのではないかと思いますが、しかし、強い国会の権威を発揮することができるならば、全体の予算の五%削減人件費物件費を通ずる削減ということをなし得るのじやないか、それによつて五百価円内外余裕を生み出すということは不可能ではないというふうに私は信じております。これは個々の例外を認めますと、いろいろそのために困難が生じて、実行困難でありますが、頭から一律に天引きするというようなやり方を強く推し進めることが里ましいと思うのであります。  第二に申し上げたいのは、消費的支出抑制という意味におきまして、今度の予算計上されました軍人恩給費金額について考慮を必要とするのではないかと思います。もちろん軍人恩給費を全然削除することは、私はその性質上妥当であるとは思いません。しかし今回の予算計上されました四百五十億円という金額は、社会保障費の七百十億円に比較いたしまして、著しく過大であると考えられる。しかも今年度の四百五十億円は、来年度になればさらにこれが増額すると予想されるのでありまして、まつたく消費的支出である軍人恩給費を、これほどの巨額出すことはバランスを失していると思う。これは少くとも百億円内外削減すべきではないかと思います。  次に防衛費でありますが、防衛費は今度の予算におきましては昨年度の八百二十億円から見ますと、相当削減が行われました。しかし昨年度の防御費使い残りの繰越しが今年度においては相当巨額に達していると思われます。その金額については、よくわかりませんが、おそらく現在においても六百億円以上の繰越しがあることは明らかではないかと思うのであります。この厖大な繰越しがございますのに、さらに千三百億円以上の防衛費計上するということは、予算消化という点から考えましても、相当問題があると思われるのでありまして、厳密に今年度内において消化し得る限界内に計上を切り詰めるべきであると私は考える。来年度に当然また繰越されると考えられるものが相当あるはずでございますから、これは二百億円か三百億円かわかりませんが、その金額というものは、当然今年度の予算計上から除くべきだというふうに考えます。すでに不成立予算において計上されておりました百三十一億円の艦艇建造費の大部分予算外契約という形でもつて計上されておりますが、それは事実上今年度内において消化できないものを処置した一つの形式であります。その考え方を推し進めまして、繰越し使用分を含めた厖大予算支出が、はたしてどれだけ今年度内において現実に支出可能であるかということを検討して、防御費を厳格に今年度内に支出し得るものに限ることを私は要求したいと思います。  第四に、予算支出の効率を確保するという意味におきまして、今日最も不生産的な効果しかあげていない公共事業費食糧増産費について、その支出方法をさらに厳重に吟味し、むだな部分はこれを除くことが私は必要だと思います。公共事業費は千二十億円、食糧増産費は、四百九十四億円計上されておりますが、このうち、俗に三割は中間でむだに消費されているといわれている。その実態がどの程度であるかは、別途に検討いたさなければなりませんけれども、少くとも、これだけの支出が全部生産的に効果を発揮していると認められないことは明らかであります。特に支出総花主義でありまして、全国の多くの地点にばらまいて、そのばらまく結果また一箇所あたりの支出が少く、何年間にわたる十年、二十年という継続事業になつて、それを実施しているうちに、また災害が起り、あるいは情勢がかわつて、結局投下したものがむだになつてしまう。そういう例が非常に少くない。特に食糧増産に至りましては、これは大いに必要な支出であると思いますけれども、今日までのような食糧増産費支出やり方では、何らの増産効果をあげ得ないのではないかということを憂えるのであります。終戦以来今日までに食糧増産関係支出されました費用は二千億円内外にわたると私は計算いたしておりますが、この結果一体何石の増産ができたのか、統計面からこれを明らかにすることは不可能でありまして、毎年天候がよければ六千六、七百万石、天候が悪ければ六千万石くらいの収獲を繰返しておりまして、別に二千億円の巨額支出増産のために役立つたと考えられる根拠はないのであります。その意味におきまして、公共事業費食糧増産費はそのむだな支出を削除するとともに、その使用についてはもつと厳密な経済効果を考えた投下方法を考えることが急務だと思うのであります。  第五に、平衡交付金の問題でありますが、平衡交付金は年々増額一途をたどつておりまして、本年度においては、これは義務教育費半額国庫負担も含めまして、千七百九十億円となりました。さらに地方債預金部引受けを加えますと、総額で二千六百七十五億円という巨額に達するのであります。地方財政の窮乏が一方において強く叫ばれ、毎度知事会議その他からは平衡交付金増額が要求されているのでありますが、このままで地方財政膨脹を続けて、見通しもなく平衡交付金増額が行われるということになりますと、中央財政についても重大な困難が生ずることは明らかであります。その意味におきまして、地方財政膨脹を押えて、地方財政節減を実行することについて抜本的な措置をすみやかに講ずる必要があると思われる。今日地方制度調査会が開かれておりますが、それらの機能を相まちまして、地方財政膨脹を極力抑制して、そして中央財政に及ぼす悪影響を食いとめなければならない。平衡交付金増額等については、思い切つて抑制措置をとらなければならない。このままに放置するときは、いつになつて地方財政の不健全な状態が打開されることにならないと思うのであります。このようにいたしまして、予算全体の支出削減し、支出についてはその生産的意義を発掘することに努めなければならないと思います。  次に歳入でありますが、予算削減によつて生じた余裕をどうするか、これを全部減税にまわすべきか、それとも新たなる財政支出に振り向けるべきかという問題がここに生じて参ります。これまで終戦以来わが国は、税金重課を減ずるために減税ということが一般的に主張されて参りました。今回の予算におきましても、一千二十三億円の税法上の減税をすることになつております。もちろん税金が重いことは歴然たる事実でありますから、できるだけ余裕があれば減税にまわすことは当然でありますが、他方において、今後予想される必要なる支出を考えまするときには、ただ減税だけをもつて足れりとすることはできない。特に現下の経済界の苦境を考えますときには、財政経済に及ぼす刺激的な効果をもつて発掘する必要も感ぜられるのであります。そこに減税にもおのずから限界があるように思うのであります。しかも最近のごとく、国民消費性向が著しく増大しつつある傾向のもとにおいては、減税必ずしも貯蓄の増強にならず、消費水準をそのまま高める作用のみをもたらす危険があると思います。従つて減税はおそらく国民の多数が希望するところでありますけれども、主としてそれは税体系調整ということに主眼が置かるべきであり、全体の税収総額においては、それほど削減する余地は、私はないのじやないかというように考えます。  しからば税体系のどの点において調整を加うべきかという問題になりますが、第一に必要なことは、勤労所得税と申しますか、所得税源泉控除部分減税であります。ことに数年前までは、所得税源泉控除部分申告部分とが半々でございました。大体五〇%くらいずつとわれわれは心得ておりました。ところがけさこの予算説明書を読んでびつくりしたのでありますが、いつの間にかこの半々の比率が破れまして、今日では源泉所得税の三に対して申告所得税が一くらいの割合までになつております。今年度の減税後の所得税の見積りにおきましても、源泉分はふえておりまして、申告分はうんと減つております。そういう矛盾が現われて来ておる。明らかに所得税源泉控除分が過大であるということは明白であります。どうしても勤労所得税減税ということをやらないと国民負担バランスがとれないと思うのであります。その意味におきまして、まず勤労控除の限度を引上げるということはすみやかになさなければなりませんし、税率につきましても、相当下部分について調整が必要だと思われます。その財源といたしましては、予算支出削減による余裕分もございます。さらに今度の予算におきましても、七十八億円の自然増収が見込まれておる。この自然増収は当然源泉控除分でございますから、こういう自然増収部分についてそれを減税に振り向けるということも必要であります。  さらにもう一つ基本的に大切なことは、間接税の比重をもつと増しまして、そうして直接税の負担を軽減するという配慮ではないかと思います。わが国の税の体系が直接税に重点が置かれておることは申すまでもございませんが、これをもう少し間接税の色彩を強くして行くということは大いに必要ではないかと思います。たとえば消費税であるとか、あるいはかつて取引高税のごときものを設定いたしまして、それによつて国民にそれほどの苦痛がなく数百億円の税収を上げることは容易でありまして、この部分勤労所得税減税に振り向けるということができるのではないかと私は思います。以前は間接税大衆課税だから反対だという財政学上の議論がございましたが、今日のように所得の差が比較的接近して参りまして、国民所得の階層的な分布がそれほどはなはだしく広がつていない段階におきましては、間接税徴収ということは必ずしも大衆課税だからいけない、悪税だということにはならないと思うのであります。今申しました歳出削減による余裕分とか、自然増収による減税に加えまして、間接税の増徴による直接税、特に勤労所得税減税ということが必要ではないかと思います。  第二に考えますことは、法人関係の税の問題であります。今日法人税は四二%の税率を課せられております。これに地方事業税並びに法人割を加えますと、六〇%以上の税金法人払つておることになるのであります。これに法人税としては必ずしもそれほど過重なものだと考えません。外国でも相当過重な法人税徴収しておるところがございますから、それほど過重だとは思いませんが、しかし今日企業内部における資本蓄積の必要が痛感されますときに、やはり法人税についてもつと考慮払つて、その税率を軽減することが望ましいと思います。しかも単純に税率を軽減するというやり方よりは、今回の予算案にも現われておりますが、企業特別償却制度を認め、その範囲を広げるとか、あるいは企業新規事業を起し、新しい研究技術を追求するという場合に、その費用経費として利益から控除することを認めるというような資本蓄積にからんだ税法上の優遇措置を考えて行く。これは企業近代化の法案その他で一部実行されておりますが、その考え方をさらに徹底させまして、もつと企業における資本蓄積を促進するというやり方をしなければならないと思います。もちろんそれに伴いまして問題になりますのが、わが国における法人濫費の問題であります。先般の調査によりますと、わが国法人配当七百億円に対しまして接待費八百億円を支出しておるといわれておる。また別の調査によりますと、配当千二百億に対しまして接待費千六百億円を支出するといわれておるくらい、濫費が行われておる。法人資本蓄積を奨励するために税制上の優遇を行うと同時に、その反面かかる法人濫費につきましては徹底的な取締り、監督措置を加えることが必要だと思うのであります。また法人資本蓄積に関連いたしましては、第三に再評価が問題になつて参りますが、これまでの再評価やり方は、再評価させて、再評価積立金をそのまま置いておくことを認めまして、必ずしもこれを資本に繰り入れることを強制しなかつたのであります。従つて企業は再評価積立金を擁したままほうつておかれている現状であります。再評価の趣旨からいたしますれば、これら再評価行つた後、適当の期間にこの積立金資本に強制繰入れを行うべきではないかと私は考える。これによつて資本構成を是正いたしまして、日米通商航海条約発効あかつきに備えるという配慮が必要であるばかりではなく、資本が適正化されれば日本企業がいかに適正な利潤をあげていないか、いわば正当な資本に対して正当な利益をあげないのに、寄つてたかつて企業を食いものにしているという現状が明らかになると考えられます。その意味において再評価積立金はある期間内に強制繰入れを行う、同時に六%の再評価税徴収は中止するということが必要ではないかと私は考えます。  なお、減税国債は、当初三百億円の予定でありましたものが二百億円として計上されております。私は今日の情勢のもとにおいては、あらゆる手段を尽して資本蓄積をはかることには賛成でありますが、しかしこの減税国状については非常に疑問を感ずるのであります。今日法人の収益が非常に減少いたしまして、そのときにはたしてどれだけこれによつて消化が可能であるか疑うのであります。結局二百億円の減税国債のうち、百二十五億円が金融機関消化するところになるというように予定されておるのでありますが、今日全国の銀行は日本銀行から三千億円の貸出しを受けておる。いわば金利の安い金を日銀から借りておる。そうして百二十五億円の減税国債買つて、それによつて減税特典を受けるということは、非常にばかばかしい話だと思う。金融機関が大部分消化するような減税国債はむしろ発行しない方が妥当であると思うのであります。自己の蓄積資本で買うならば別であります。三千億円という日銀貸出しが行われているときに、その金融機関にこういう形で減税特典を与えることは何ら意味がないことだと思うのであります。  以上歳入歳出にわたつて申し上げましたが、歳入歳出の検討をした後におきまして、新情勢に即していかなるところに予算の重点を置くかということについて申し上げたいと思います。それは日本経済日立が数年後に非常な危機に置かれるということを考えますと、そのための財政投資ということを積極的にすることは、私は非常に要望されて来ると思うのであります。すなわち輸出の振興をはかるためには、まず産業の近代化を行つてコストの切下げをやらなければならない。その観点から、鉄鋼、石炭等の基礎産業に対する財政投資はもつと一段と積極化することが必要であります。今回の予算によりますと、開銀を通じて鉄鋼、石炭に百億円の合理化投資を行うようでありますが、この金額では、とうてい数年後に必要なコストの切下げということに間に合わない。この金額をふやすことが必要であります。さらに一方、日本輸出の振興だけでは経済自立のバランスを維持することが困難であるときは、輸入の削減に努めなければなりません。その輸入を削減するためには、ぜいたく品の輸入の削減では足らない。結局食糧と綿花、羊毛の大きな部分において輸入を減らすほかはないのであります。これは結局資源開発という問題に連なるのでありますが、その資源開発の重点は電力と合成繊維の増産であると私は信じます。電力を開発して、その基礎の上に合成繊維、特にビニロン工業を興すならば、これによつて五年後に二、三億ドルの外貨の節約をはかることは困難でない。しかも国民にそれほどの苦痛を与えることはないと思います。その意味におきまして、資源開発の観点から、電力に対する投資、合成繊維工業の拡充に要する投資は、今回開銀融資に考えておる規模をはるかに大きくすることが必要ではないか。食糧増産は外貨節約の見地から望ましいのでありますが、先ほど申しましたように、食糧増産経済効果が今明らかでない。経済効果を確保する見通しが立つまでは、むしろ食糧輸入に要する外貨の節約は、小麦の輸入増大によつて米の輸入をとりやめるという措置によるべきだと考えるのであります。これを要するに財政投資の重点は、鉄鋼、石炭等の産業の近代化、それから電力、合成繊維による資源の開発、この二点によると考える。これが第一の重点であります。  第二に考えなければならないことは社会保障費の拡充であります。今後日本がコストを切下げて輸出競争に耐え得る体制を確立しなければならないとすれば、当然それはある程度の過剰労働力の輩出を招くことは避けがたいと見られる。その場合に起る抵抗をできるだけ少くするためには、社会保障的施設をもつと拡充する必要が感ぜられます。今回の予算では七百十億円の社会保障費計上しておりますが、これは予算総額のわずか七%であります。今日多くの国が社会保障費に少くとも二〇%、普通三〇%くらいの費用計上しておりますときに、わずか七%程度社会保障費では、とうてい最低の生活を確保し、民生の安定、経済循環の円滑化をはかることは困難である。すべからく社会保障費につきましては、最低一千億程度まで増額することが必要である。それに伴う社会保険の統合の問題、それから失業対策事業費の効率的な使用ということもあわせ考える必要があると思うのであります。  最後に、この予算を実行した場合に起り得る問題として一番懸念にたえませんのは、インフレーシヨン発生の危険性であります。私はこの前の国会で、財政蓄積資金の投下必ずしもインフレにはならないということを申し上げました。ところがその後の経済情勢変化によりまして、そういう楽観は許し得なくなつたように思います。と申しますのは、政府の資料によりますと、財政蓄積資金の放出は総額において一千九十八億円といわれております。しかもこのほかに政府の計算の中に入つておりませんのは、防衛費の繰越分六百億円の使用であります。これもやはり今年度において繰越されて使用すればそれだけインフレ効果を与えることは明白でありまして、合計約一千七百億円の政府資金の散布超過ということが起る危険が多いのであります。これに対しまして私は前回の国会では、金融が引締め政策をとつて財政金融の一本化が行われればインフレになるおそれ必ずしもないというふうに申し上げました。しかし今日金融の現状はどうでありましようか。先ほども申しましたように、日銀の貸出しは、三千億円になんなんといたしおる。しかも不渡手形の続出によつて、救済融資的な色彩の強い金融が、今後ますます行われる可能性があると思われます。これはもちろん予算の空白によつて金融がゆるむという条件も一方にはございますが、私の見るところでは、今日日本経済の表面的な繁栄は、滞貨金融的な措置によつて維持されておるのでありまして、この現状というものは一朝には改めがたい。しかも企業の破綻が今後増加する危険があるとすれば、ますます金融は救済的な色彩を帯びて膨脹する一途をたどるのじやないかと思われる。そうしますと財政面において撒布超過が過大に行われ、しかも金融面においてこれを引締めることが困難だというジレンマに追い込まれる。私は金融の引締めができると思いまして、インフレの危険なしと前回は申し上げましたけれども、最近の金融情勢はずるずるとふえる危険こそあれ、これを引締めるということはよほどの覚悟をもつてしなければ困難であります。そうなりますと、この予算を施行した場合に、金融面の施策が伴わないで、このままインフレーシヨンを激成するという危険がないとは言えないと思う。その意味において予算を極力圧縮するとともに、他方金融面について今までのような事なかれの、財界を救済するという考え方からばかりの滞貨金融的な金融について、根本的な検討を要する時期に入つたのではないかというように考えるのであります。  これもをつて私の公述を終ります。(拍手)
  4. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質疑はありませんか。
  5. 和田博雄

    ○和田委員 二、三点についてちよつとお伺いしたいのです。  新情勢に即する対策についていろいろお述べになつて、投資か減税かということでありまして、減税についてはあまり多くは期待できない、それは今減税しても大衆の購買力は全部消費財に向うであろう、貯蓄の効率というものはあまり高くない、こういう前提に立たれての御議論だろうと思うのですが、私はそこのところでちよつと日本の場合には考えてみなければならぬ問題が相当あるのじやないかと思います。大衆の貯蓄率というものはやはり日本の場合には案外大きいのではないか、従つて当面の不景気を突破して行く、言いかえると新情勢に即して行く一つの突破口としてはやはり減税というものが相当大きな比重を持つのではないか。ことにあなたの今言われたように、片方では直接の所得税を減じながら、片方では間接の消費税大衆課税と今まで言われておつたものをふやして行くという形では、ちつとも減税にならないわけであつて、むしろ場合によつては増税にさえなると思うのでありますが、今までの政府の減税やり方税法上の減税であつただけに、私はほんとうの減税ということが持つ意味は、資本蓄積の面からいつてもやはり大きなものを持つのではないか。ことに日本には厖大なる農民層があるわけでありまして、農民は非常に現金には困る時期があります。日本の貨幣に対する農民層の信頼性というものは相当大きなものでありますし、できれば生活が苦しくてもある程度貯蓄がつく、こういう傾向は私は日本の場合には相当大きなものがあるのではないか。その点を、もう一ぺんどういうお考えか聞いておきたい。  それからもう一つ、いろいろ合成繊維と電力の開発言われたのであります。それからことに国際物価に対する日本の物価の割高の是正、石炭の問題を取上げられたのでありますが、私は国家がそういう面で値段を下げるためにはいろいろの投資をする。しかし今までの機構をそのままにしておいて財政投資をどんなにやつても、この問題については効果があがらないと思うのであります。あなたは食糧の点について経済的な効果があがらないから、食糧増産はしばらくこのままで、米の輸入を、小走の輸入に切りかえることによつて輸入食糧に対する外貨支払いを削減する、こういう御議論でありますが、むしろ今の一般国際物価に対して割高である根本は、これは動力であります。石炭と電力であると思います。ことに石炭の問題だと思います。それを今までのような私的な資本にまかしておいて、どんなに国が金をつぎ込んでも、最も経済的な効果のあがらなかつたのは石炭だと思います。従つて現在の機構をかえる、社会主義的にナシヨナルインタレストをおもに表面に出して、機構そのものをかえて行くということが伴わない限りは、どんなに国家投資をやつても直接の効果はないと思うのですが、その点をどうお考えであるかお聞きしたいと思うのであります。  それからもうつは、食糧増産の問題でありますが、この経済的な効果があがらない点はいろいろ関係がありまして、あなたが御指摘になつたように、漏れて行くこと、すなわちリーケージのほかにいろいろ問題があります。それと同時に一方日本では年々百万石に相当する耕地が壊廃されているのでありまして、経済的な効果は差引あまり多く出て来ない。それから米自体の制度、たとえば供出の制度などいろいろ制度的なことから来ている原因もある。従つてこれもあなたの御意見のように、リーケージの問題に対しては相当厳正な監視をして行く、それからやり方もかえて行く。増産の重点の置きどころもやはり今までのように平面的なものでなくて、たとえば低位農家の生産力の増加でありますとか、そういうものを引上げて、もつと立体的な政策をやることによつて、私は、日本の米の増産は国家投資を本格的にやつて行けば非常に大きな効果があると思うのであります。今まで日本の農業政策で一番欠けておつたのは、国家的な投資を計画的に本格的にやらなかつたという点であります。私はむしろその点をこそ強調して行くのが今の問題を打開して行く大きな方策だと思うのでありますが、その点について承りたいと思います。
  6. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。第一点の減税の問題でありますが、私は税収総額を現在以下に引下げるということは、それが多くの、今後新たなる、財政支出を必要とする、たとえば財政投資とか、社会保障いう点から見てむずかしいこと、それが必ずしも貯蓄にまわらないというこの三点において困難であるということを申し上げました。しかしお話のように大衆の購買力を現存よりある程度回復するために減税をするということについては反対でございません。そのために税収総額がそれほどかわらない範囲内において功労所得税の基礎控除を引上げて、所得税源泉控除分総額ということを申し上げたのであります。これはほかの税負担とのバランスの御点から申しましてもぜひやらなければいけないことだと思つております。農民の話がございましたが、今日農民の税負担は、ほかの層に比べて軽くなつておるのではないかという気がするのであります。この前調べて驚きましたが、おそらく十人に人しか所得税を納めている農民がないのじやないかと思うのでありまして、この点は給料収入に依存している労働者の場合の減税と多少考えをかえてかかる必要があるのではないかというように思つております。  それから第二の財政投資の問題でありますが、今のままの機構で財政投資をやつても、資金効果がそれほど上らない、うやむやにやるのじやないかというお話でございます。これは確かに私もそういう危険がないとは思いません。従つて、これは財政投資を行うことがそれだからいけないという問題ではなくて、財政投資を行う場合に、その恩恵を受ける企業に対して、いかに国家が監督あるいは取締りを加えるかという問題だと思います。この点が今まで非常におろそかにされていたのじやないかと思う。たとえば石炭等のお話がございましたが、私は石炭の財政投資が、量を上げるという点ではむだだつたとは思わない。あの当時の情勢のもとで、あれだけ傾斜生産をやつて四千万トン、五千万トンの線まで行つたことは、一応効果は上つていると思うのですが、その効果を上げるために払われた犠牲しますか、ロスと申しますか、それについてあまりに世間が寛大過ぎた。国家としても寛大な場合が多かつたと思う。そうじやないので財政投資が国民の膏血によつてまかなわれているという場合には、当然その恩恵を受ける企業に対しては、もつと立ち至つた監督督措置を構ずることが必要だと思う。特に今後の財政投資は、どうしてもあまり金利負担を伴わないようなやり方でないと財政投資を受けましても、コストの切下げにあまり役立たないと思うのです。非常に金利を安くするか、あるいは金利をゼロにするかというところまで行かなければ、なかなかコスト切下げの目的に沿わない。そうしますと、企業の受ける恩恵は大きいわけですから、国家として一層そういう特別な利益を受ける企業に対する監督を行う必要があるのではないかと思つております。  また今後新しく合成繊維を始めるというような場合には、電源開発会社の場合口と同じように、できるだけこれを特殊法人のような大規模の公的な企業としてつくる。それによつて国家の監督も行うという形にして行かなければいけないのじやないかと思つております。  それから食糧増産でございますが、私は少し極端に申し上げまして、ほとんど役に立たなかつたということを申しましたけれども、もちろんこれは壊廃された耕地の産額を埋める効果もあつたろうと思うのであります。そうして国家投資を計画化すれば、食糧増産に役立つのではないかというお話も私はその通りだと思います。私は日本経済の自立のために、食糧増産は非常に大きな項目だと思つております。ただ、今までのようなやり方をそのまま便宜的に受入れて、その上に計画を続けて行くような体制のもとでは効果が上らない。従つて今までの食糧増産やり方に反省を促す意味において、その建直しができるまでは、食糧増産に対する財政長瀞を抑制することの方が必要だと思う。このままでもつてずるずる続けて行たのでは、今までのやり方に対するほんとうに厳密な反省が起らない。大いにやり万を改めなければいけない。お話の通り、計画的に国家投資を行うということは必要です。同時に国家投資を行うばかりではないので、大体今までのやり方は、国家が半分出し、地方が半分出すというようなやり方であつた。しかも末端に行くに従つてうやむやになつてしまう。たとえば河川でも大きな幹線にはをつけたけれども、こまかいころには手が及ばないという状態だつたと思う。そういう全般的な食糧増産政策について反省を行うことが必要なんで、その反省ができた上であるならば、食糧増産財政世俗を行うことは、私は大いに賛成であります。
  7. 和田博雄

    ○和田委員 もう二点だけ伺います。私は今の土屋さんの意見に必ずしも賛成でないのですが、意見になる点は避けます。  ただ日本経済自立をやつて行く場合に、やはり何といつても、今のような外貨不足のときにはできるだけ外貨の支払いを少くして行くということをやらなければならぬ。そうなつて行くと、一番大きな問題は綿花と食糧だと思う。綿花の点については、あなたのおつしやたように、合成繊維をふやして行く。しかしこれに対して国家が財政投資をやるにしても、五年なり何年なりかかると思う。その間逐次やつて行くという考え方だろうと思うが、それはけつこうでしよう。そのやり方も今言つたような、かなり公的な性質を入れて行く。そうしてその恩恵を大衆一般が享受するというやり方をやることは当然だと思う。しかしこの食糧の問題も、今までのやり方が直らなければ投資をしないという形では非常に手遅れだと思う。ことに緊急差迫つた問題として、何といつて日本で食糧を輸入せずにその大部分がまかなえるという状態に達することこそが、社会的な不安とかそういうものを除去する第一の大きな手段でありまして、今年はおそらく、こういう大きな台風があり、水害があつて、不幸にして米作がかりに悪いということにでもなつて来るならば、社会的に大きな不安になつて来ると思う。従つて私どもの考えとしては、やはり食糧増産についての投資というものが、今あなたのおつしやつたように漏れて行く、そういう点を十分に警戒しながら、計画的にやつて行くということがやはり必要だと思いますが、そういう点はいかがですか。重ねてお伺いします。
  8. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。食糧の増産を恒久的な観点から考えなければいけないということは、私もまつたく意見で、私は前は食糧の自給論者であつた。ただ調べてみたところが、あまりに効果が上つていない。先ほど申しましたように、二千億投じて、統計上には一石も出ていないような状態であります。このままでずるずると投下を続けて行つた場合、気休めになるだけであつて、実際の食糧自給には役立たないと思います。特に最近農林省のつくつたといわれる五箇年計画、五年間に雑穀を含めて千六百万石か七百万石をつくるというような計画を拝見しても、あれをほんとうになし遂げるという気魄がどこにもない。それではあれがほんとうに五年後にできなかつたら、だれが責任をとるかといわれれば、それは天候のせいだといつて逃げるに違いない。そういう計画では、私は残念ながら文字通り泥田に金を捨てるようなことになるのじやないかと思う。食糧増産大いに必要なんで、大いに考えなければなりませんけれども、それならば五年間で千六百万石上げるなどという過大な計画を立てないで、十年間で五百万石でよろしいから、確実にこれだけは達成し得るという計画に改めてほしい。そのために千億円投じ二千億円投ずるとしても、それにはわれわれは反対しない。問題はその出し方、効果の上げ方だと思つております。
  9. 和田博雄

    ○和田委員 最後にちよつと申し上げますが、その点やり方が悪いということであるならば、私も納得します。しかしやり方が悪い間はこれをとめておくというのは、ちよつと政治論としては成り立たない理論だと思う。そのやり方をかえてやつて行くということであるならば、私もけつこうだと思います。
  10. 小平忠

    ○小平(忠)委員 二、三点お伺いいたします。第一点は、冒頭にMSA援助の問題に触れられ、MSA援助は永続して受くべきでないという御意見があつた。そうしますと、それではそのMSA援助を憂くべきであるというお考えでしようか。その点をお伺いいたします。  第二点は、ただいま和田さんからも伺われた問題でありますが、公共事業費食糧増産費の点で、あなたの指摘された点は、現在政府のやつておりまする考え方は非常に総花式であつて、重点的でない、非常にむだが多い、従つて経済効率も上つていないということを指摘されました。その点については私はある程度同感な点もあるわけでありますが、しかし公共事業費にしろ、あるいは食糧増産の問題にしろ、ただちに経済効率を上げなければ云々という議論は、少し考え方が実態を把握していないのじやなかろうか。食糧の増産は広範囲にわたつて、土地改良、開拓等いろいろございます。特にいわゆる水田の新規開田等の場合においては、どうしても相当大規模なダムをつくるとかいうことになつて参りますと、そう簡単に三年、四年でただちに経済効率が上る問題ではありません。そういうことから私はやはり総花式で、重点的でないからという点については同感でありますけれども、しからば経済効率が上らないから、これをそういつた計画が確立されるまでとめておくという考え方については、いかがかと思うわけであります。従つてお伺いしたいことは、そういう見地からあなたの御意見は、今日の公共事業費なり、食糧増産費というものの金額が、国の全体の歳出面において多いというのか、現状のままで行こうというのか、あるいはこれを減らそうというのか、その点を第二点としてお伺いしたいと思います。  第三点は、農民課税の問題でありますが、今日農民が一番税金負担率が軽いのではなかろうか、特に所得税については、農家は十人に一人しか支払つていないという御意見をおつしやられたのでありますが、これはどういう資料なり、どういうことを根拠にされたかお伺いしたいのであります。私は断じてそんなことはないと思います。こういう点について、きわめてこれは重要なる発言でありますから、その根拠、基礎をちよつと伺つておきたい。  もう一点でありますが、法人税の問題で、税率を軽減する、特に企業特別償却といつたような面を考えなければならぬということをおつしやられました。そこでお伺いいたしたい点は、現在の法人税の実態は、毎回国会においても議論されておりますが、かつて戦前におきましては、営利会社である株式会社と、営利を目的としないところのいわゆる協同組合、すなわち今日各種の協同組合がございますが、こういつた営利を目的としないところの協同組合等々との関係におけるものと同じ考え方で、その税率が考えられておる、こういつた点についてはどのようにお考えになられるか。私はお伺いしたい点を意見を申し上げないで、きわめて簡単に要点だけ申し上げたわけでありますが、以上の点についてお伺いいたしたいと思つております。
  11. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。第一点はMSAを受けるべきかいなかというお話でございましたが、きようはMSAについては、私は全般的に意見を申し上げる立場にないのであります。かりにMSAを受けるとしても、それは永続するものと考えられないから、これにまつたくたより切ることはできない、こういう意味のことを申し上げました。しからばMSAを受けないでもいいのかと申しますと、日本国際収支の観点から見れば、この数箇年間MSAを受けない場合には、国際収支バランスに大きな穴が明く危険があることは明白であると思います。それだけ申し上げておきます。  第二の公共事業費は一体減らすつもりなのか、現状維持なのかというお話でありますが、今のような支出方法をとるならば、そのままでやるというやり方ならば減らすべきであると思います。相当むだになつている部分もあるし、経済効率が上らない今のような支出やり方をするならば、少くとも二判ないし三割削減すべきだと思つております。  それから農家の税金が非常に軽いというのは意外だというお話でございましたが、私は今手元に資料を用意しておりませんので、それを具体的に数子について申し上げることはできませんが、国税ばかりでなく、農家は事業税もかからないのでありまして、私の感じといたしましては、労働者に比べれば非常に軽くなつている。今数字をここに持つていないのは残念でありますが、労働者に比べれば、非常に農家の税金負担というものは、全体として軽くなつている。軽くなつているからこそ先ほど申しましたように、全体の源泉所得がふえる一方である。そして申告所得が減る一方だ、こういう奇妙な現象が起つている。その源泉所得申告所得との割合については資料がございますけれども、これはお手元にあると思います。そういう妙な現象が起つておる。起つておるというのはもちろん中小企業等の減ることもございますが、主たる理由は私は農家の負担になるところが減つておる、こういうことではないかと思つております。  第四点はちよつと聞きとりがたかつたので、もう一度恐れ入りますが。……
  12. 小平忠

    ○小平(忠)委員 法人税の中で営利を目的としない協同組合と営利会社と同じ扱いをすることについて、どうお考えでありますか。
  13. 土屋清

    土屋公述人 私は当然区別を設けるべきだと思います。現在のような建前は改めた方がよいと思います。
  14. 川崎秀二

    ○川崎委員 土屋さんにばかり質問を集中されておるので、まことに恐縮でありますが、あなたは一番公正なる立場に立つて公述人でありますから、質問が出るのも当然と思いますので、ごかんべんを願い、質問をしたいと思うのであります。私は専門的な問題でひとつお伺いをいたしておきます。  社会保障の経費についていろいろ御論議がありまして、私どもの意見と大体同一なのでありますが、特にこの際お伺いしたいことは、先ほど社会保障の経費は本年八百十億である、予算の規模からしてそのパーセンテージは七%であると御指摘であります。社会保障の経費はここ数年来七%から八%、昨年少しく出ましたが、また本年縮まつたような形になつておるのははなはだ遺憾のように、われわれも感じておるのでありますが、これはもう終戦後八年たつた日本の今日の国民経済と民生安定の見地からすれば、断然制度化へ進むときではないか、つまり御指摘のあつた社会保険の統合を一挙に断行して、いわゆる国民保険法、今までの健康保険と国民健康保険等一切の社会保険を統合して、イギリスのやつたようなナシヨナル・インシユアランスの制度をしくべき段階にあるのではないかと、われわれは考えておるのであります。そこでただに経費が足りないというだけではなしに、実際に経費の使い方がばらばらである、料率もばらばらであるし、中小企業者、農民というものは何らの対象になつておらない。ここにわが国の保障制度の重要な盲点があると思うのであります。こういう点についてお伺いいたしたいのが第一点であります。  第二点は、これは現下きわめて重大な問題でありますので、ぜひジヤーナリズムの代表的立場にあるところの士屋さんから、的確な御意見を願いたいと思うのは、軍人恩給と社会保障の関係であります。これは今度の予算において社会保障費は七百十億であり、軍人恩給は、旧軍人等恩給費が四百五十億、遺家族援護費が二十八億、留守家族援護費が二十二億、これを入れますと五百億という莫大な数字になつて現われでおるのであります。われわれは占領治下におきましても、今回の大東亜戦争というものは確かに侵略戦争であるが、その責任は出征したる着すべてにあるのではなくして、当然この侵略戦争にかり立てた戦争責任者にあつて、このことのために犠牲になつたところの軍人の生活については、保障すべきであるということを強力に実は占領時代にも主張をして参りました。私も当時野党派の一人として、マツカーサー司令官のもとにあつたホイツトニー代将とは、この問題ではげしく論争したこともあるのであります。しかしながら遂にこのことは占領治下においては実現されず、ここに時を経て遺家族補償の形となつて去年現われ、本年遂に軍人恩給となつて現われたことは、まことに慶賀すべきではありますが、しかしながら、軍人恩給復活要望者の声の中には、この時勢に便乗して、まことに穏やかならざる言論をなす者があります。本年は五百億であるが、これを次第に拡張して、しかも階級差を厳に守つて、次第にその要求を貫徹せんとする動きがあります。私は軍人恩給は復活すべきだとは思つておりましたが、最近この階級差圧縮論に対するところの軍人関係者の意見を聞きますると、その根底には軍国主義の復活に資するような非常な危険な思想が胚胎しておりまするし、またその思想だけではない。実際にわれわれは、やはりこれはソシアル・セキユリテイの一環として将来は行つて行くべきではないかと思います。現にアメリカにおきましても、一昨年でありますか、六十一億ドルの経費を軍人恩給並びに戦傷者の補償のために、突如として国防省が計上いたしましたときに、社会保障関係等で激烈な論争がありまして、今日アメリカでも非常に大きな問題となつていて、戦勝国でさえ軍人恩給に対してきびしい批判があるのに、わが国においては、これは当然国家が補償すべきものだとして、今日いわゆる反動的な思想のとりことなつているような関係があるのであります。私はやはり軍人恩給は復活すべきであると思うが、今日の段階においては、財政の許す限りでなければならぬのはもとよりであり、将来はやはり社会保障の一環として考えて行くことが、平和国家としての進み方である、こういうふうに考えておるのであります。その点で数字なども相当つておりますけれども、今回のいわゆる階級差圧縮論――改進党などは、できればこの階級差を非常に圧縮して、そうしてなるべく低い水準の人にもこれを与えよう、つまり下士官、兵にも均霑するように、しかしてそのわくをさらに広げて、召集将兵にも適用するようにしたいと考えておるのでありますが、軍人恩給復活の要望者の中には、少佐から大佐まで行くのには本数年も血みどろの生活をしているのである、それにもかかわらず階級差を圧縮せよというのは暴論だと言つて、いろいろの陳情があります。なかなかの陳情であります。しかし私は、世論がこれを公正にさばいて、今日軍人恩給が復活するだけでもけつこうではないか、その階級差をあまりに圧縮しないで、そうして上に厚く下に薄いというような政策はとるべきではないというのが、今日の世論の傾向ではないかというようにも考えるのでありますが、これらに関して御意見を承りたいと思うのであります。
  15. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。第一の社会保障の問題でありますが、私は、今の日本の七百十億円の金額が少いということは先ほど申し上げましたが、しかしながら、少いけれども、これをもつと統一的に運用したならば、その効果は非常にふえるのじやないかということをかねがね感じております。今日、国民健康保険、あるいは健康保険、労災保険、船員保険というように、いろいろな形で社会保険が雑多に行われておりまして、それがめいめい役所がうしろに控えておつて、なわ張りを守つておる。そのために非常に不均衡になつておると申しますか、恩恵が平等に行き渡らないという弊害が出ておりますし、かつそのための間接費の増大というものも、驚くべきものだと思うのであります。これはどうしても、こういう現在の制度だけでもせめて統一いたしまして、一つの官庁、少数の人数で、そうして間接費を減らして、平等とは行かないにしても、そう著しき不公平のないような保険を行い得るようにすべきだと考えます。しかもその範囲を少し広げるということは、これは特に健康保険について痛感されるところであります。たとえば、私事を申しては恐縮でありますが、私が病気をいたしますと、会社で全額を負担してくれる。ところが、私の家の女中が病気をしますと、何ら健康保険の恩恵に浴しない、雇い主の負担になる。雇い主が払うというような場合にいいですけれども、必ずしもそういう保証もないということになりますと、一番恵まれない人々が、国家の保険の恩恵に浴しないという矛盾ができて来る。ですから、今の御質問にありましたように、農民、中小企業者を含めた広い範囲にまで、少くとも国民健康保険は及ぼす必要がどうしてもある。そのため国家負担の増大はやむを得ないものだと私は思う。これは今までの制度の改善と並んで、ぜひ考えて行かなければならない。日本予算においては、社会保障の金額を少くとも一千億円くらいにまでしないということは恥だと思つております。ほかの国の例を     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 見ましても、こんなに少い国はございません。これでは民主安定、経済生活の循環の確保という問題を、効果的にやつて行くことはとうていできない。その意味において、社会保障制度の拡充強化ということが、大いに必要だと思つております。  それから第二の軍人恩給の問題でありますが、この点は、私どもかねてより恩給は支払うべしという建前をとつて参りました。それはなぜかと申しますと、恩給というのは、その性質上国家の使用人と申しますか、言葉は何といつていいかわかりませんが、国家の雇つた人に対する一種の契約でありまして、その中には多分に俸給的な意味が含まれておることは、これは学者の認めるところであります。そうしますと、文官に恩給を払つておるのに、武官にだけ恩給を払わないという理由はなかなか成立しにくい。武官は戦争責任者だから払わぬでいいということになりますと、それでは文官の中に戦争責任者はなかつたか、たとえば警察官、教員等に、こういう人々の中にはやはり相当戦争責任者というものはあるわけです。しかも、軍人の中でも戦争遂行に直接そう大きな指導性を持たなかつた気の毒な人も、かなりいるわけなんです。そういうことになりますと、文官恩給を払いながら軍人恩給を払わぬというりくつは成立しにくい。そこで、基本的には軍人恩給は支払うべきものだというふうに考えております。しかしそれを支払うにつきましては、これは財政上の負担とにらみ合せて考えなければいけないのありまして、払うべきものも財政上の理由によつて払わなかつたものが多々ございます。たとえば終戦直後の戦時補償の打切りであるとか、あるいは保険金の打切りであるとかいうものは、そのいい例でございまして、財政上の考慮というものが、当然金額については入つて来る。そこで、先ほど金額について申し上げたのでありますが、今日の四百五十億円という軍人恩給は、これは社会保障の七百十億円に比べて過大であると私は思つております。それでは幾らならいいかと言われれば困りますけれども、常識的に考えて、国民全体を対象とする社会保障が七百十億円、社会保障とは考え方が違いますけれども、やはり生活保護的な意味を含む軍人恩給が四百五十億円というのは、これはバランスを失しているのじやないか、これは削減しなければいけないと私は思つておりますが、削減にあたつてどこで削減するかと申しますと、これは、この前の案によりまして戦時加算の撤廃を行いましたので――戦時加算を加えますと、非常にまた広がつて三倍、四倍になるのでありますが、それを撤廃いたしましたので、今後これを削減しようと思えば、階級差の圧縮ということ以外に私はないと思います。階級差を圧縮するということは、これは旧軍人の方には非常にお困りになる問題かもしれませんが、私はやはり、もう今は大将も中将もないときだから、昔のような大将、中将といつたような階級御念で厳密にこの国家から受けるものを差別するということは妥当でないと思う。やはりもつと階級差を単純化する。圧縮だけではなくて単純化する。極端なことを言えば、将官、佐官、尉官、下士、兵というこの五階級ぐらいにわけてやつてもいいのじやないかと思つております。問題は、軍人恩給を払わぬというのじやないので、払うという。ただ、払うけれども国家に金がないということでありますから、その建前については、私は多くの国民もおそらく同感してくれるのじやないか、こう思つております。
  16. 北昤吉

    ○北委員 私は土産さんに、さつきの和田君の質問の点に関連いたしまして、ちよつとお尋ねいたします。  御承知のごとく、日本は元南朝鮮、台湾から米が来ておつた時代と違つて、食糧が非常に不足であります。こういうように食糧が不足なのに、MSAの援助を受けて国防費を強化しても、一朝事が起つたときに何の役にも立たぬと思う。御承知のごとく大東亜戦争のときに、アメリカの六十隻の潜水艦で、百五十万トンの船を沈められております。英国はソ連と絶対戦争する意思がないというのは、御承知のごとくドイツの潜水艦にあれくらい悩まされた、今ソ連は数倍の潜水艦を持つておるので、食い物の輸入ができないから、絶対にソ連と妥協すると思う。私はその観点からのみならず、日本では四割以上の農民がおつて所得は一割八分だ、これは改進党の北村徳太郎君の統計で明らかであります。ところが農村では御承知のごとく、二男、三男を中心として、全失業者、半失業者七百万、これに職を与えるためにでも、耕地改良、植林、それから山地が八割三分もあるから、これを利用して、とうもろこしでも豆でも雑穀でもつくらせて、人を全部使う。御承知のごとくルースヴエルトは、千三百万人の失業者をダムの開発に全部使つた。昭和八年五月には、ヒトラーが道路の開発にみな使つた。私は自由党に長くおりましたが、自由党の政策で感心しないのは、総合的の開発計画がない。特需がなくなると、岡野通産大臣が、すぐに食糧と衣料の自力自給をやらなければならぬという。輸入の半分はこれらの原料になるのです。ところが計画は何もない。ことに土屋さんの言うように、この食糧増産のために、終戦後二千億使うた。二千億なんてちつぽけなものです。しかるに平均すれば三百億くらい、現在は外国へ米、麦の金を千四百二十億払つておる。それから米は、生活程度の低い国がつくつても、日本に来れば高くなつて、三百二十億の補給金を出しておる。千四百川十億を食い物のために払つておる。この現状はいかなる犠牲を払つてでも打破しなければならぬ、というのは、世界はややもすればブロツク経済になる傾きがあります。土屋さんは、おそらく朝日新聞に出ておつたから御存じだと思いますが、「オブザーヴアー」の有名な議論が紹介された。これによれば、英国でも財政転換をやらなければならぬ。今までのごとく輸出を大きくしても、そのもうけの差額で食糧は買えない、食糧を統制しても赤字が出る、そうして食物は人口のふえる割にふえない、食物は割高である。ことに原料を輸入して製造物を売つても、製造物は一九三一年から五〇年までの十九箇年間に二倍半に伸びておる。これに対して原料は二倍半になつておる。原料の一番多い国は、何というてもアメリカ合衆国とソ連である。ところがソ連との貿易が禁止されておる状態においては、英国が鉄や木材を輸入して船をつくつてつても、ちつとももうからぬ。ジエツト機のような加工賃のうんととれるものは、原料を入れてももうけがいい。英国では千万エーカーの役に立たぬ利用されておらない土地がある。日本で行えば四百万町歩です。英国ではこの土地は悪いけれども、農業を転換して食物をある程度まで自給自足しなければならぬという議論が出て、朝野の人から注目を引いて、英国の大経済転換論として、非常な議論を起しておることは御存じであろうと思う。私はせんだつても石黒忠篤さんにも相談したら、石黒忠篤さんは、それは英国のことを育つておるのではない、日本のことを言つておるのだ。阿部賢一君とも話合つた、青木一男君とも話合つた。青木一男君のごときも今後は少くとも一割以上の食糧を輸入しないように、日本でいかなる金を投じてでも、労力を使うて日給日足しなければならぬ、こう主張しておるが、土屋さんの御議論では、どうも重商主義に傾いて、そうして重農主義が足らぬようにも思う。日本は、今はやはり大いに労力を利用して働かして、電力の開発が一番大切、薪炭林なんか切つてもよろしい、十五、六年もたつてようやく一人前の木になつても、切つて燃やしてしまえばすぐ燃えてしまう。ああいうところへは雑穀でもいいから植えて、米を輸入しない方が大賛成である。それには粉食を徹底的にさせるために、全国千二百万の学生、児童にパン食を徹底的に励行すれば、八十五億でやれる。人造バターでも、これは鯨の脂で英国ではマーガリン・バターをつくつている。日本でもマーガリン・バターを用いて、千二百万人の学生、児童からまず食い物の改良を教えてる。そうしないで、ただ米を入れていては高い。――御承知のごとく米は一トン二百五十何ドルで、麦は一トン九十何ドルですから、二倍半もしておる。南方のまず米をとるのはまずいのでありますが、それには総合的の計画として、給食を徹底的にやる。そうして麦を食わせる習慣をつける。ただぼつぼつした議論でやつてはつじつまが合わぬ。やはり吉田内閣のその都度外交のごとき、その都度財政でなく、私はそれをもつと総合的の計画で、食糧の増産を大いにやつてもらいたいと思うがいかがですか。農村の二男、三男なんか、余つたのが七、八百万人もおるのです。
  17. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 北さんにお諮りいたしますが、討論ではないのですから、質疑の点を簡単にお願いいたします。
  18. 北昤吉

    ○北委員 だから聞くのです。
  19. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。私が食糧増産に反対であるかのような印象を受けました。重商主義者にされてしまいましたが、私は食糧増産賛成なのです、昨年の私の著書をごらんくださいますと、食糧一千万石増産だけは国内で確保しなければならぬということを大いに強調しております。決して反対じやない、ただ今までのやり方に反対なのです。今までのやり方終戦以来のやり方を調べてみますと――日本食糧増産の必要が叫ばれましたのは大正の初期でした。このときはちようど産業が発展して、人口が増加して食糧の需要がふえたときなのです。国をあげて真剣に食糧問題を討議しました。その結果内地の増産は鮮米、台湾米の増産となりまして、これで日本の食糧問題がある程度解決がついた。そのときは朝野をあげて真剣に討議するという意気込みであつたから、ある程度成果をあげた、ところが今日食糧増産が叫ばれ、ただいまの御質疑はたいへん熱心な御意見でけつこうだと思いますが、その叫ばれる割に真剣味というものが足らぬと思う、ただ金を投ずれば食糧が増産できるような考え方がかなり多い、全部だとは言いませんが、そういうような気がいたします。増産に当つておる農林当局あたりに聞いてみましても、一体食糧増産にどれだけの自信を持つておるかというと、私の見たところではあまり自信はないですね。先般も五年間に千六、七百万石の増産計画を立てましたが、だれが一体その責任を保証するか、だれが一体できると考えるのですか、私どもには残念ながら何らの確信が持てない、そういう状態です。これはまた政府ばかりではない、民間でも食糧増産の声が非常に叫ばれますが、具体的にこうすればこうなるという計画が少くともできていない、そういうときに金を投ずるということは、それこそ泥田に金を捨てるようなもので、食糧はふえるのだという一時の気休めにはなるでしようけれども、実際の効果があがるかどうか疑問だと思うのです。財政支出が限られておるときに、もつと効果のあがる金を投じて、食糧増産はもちろん大事なのですが、その間に十分計画を練つて効果を確保するように方策を立てていただきたい、そのあかつきならば、私は食糧増産に何千億を投じても、決して反対はしないつもりであります。
  20. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 ただいま伺つておりますと、現在及び数年後の不景気、及び財政上の困難に備えるために、現在から経費の節約をしなければならぬという御議論、まことにごもつともであります。全面的に私は賛成でありますが、その節約の程度について、たいへん御遠慮なさつて、全経費を通じて大体五%というような御意見でございます。それは土屋君の御意見として一応伺つておくのでございまするが、こんなことではとうてい土屋君の心配せられておる点は満たされるものではない、かように私は考えております。だがそれにはそれといたしまして、土屋君の言われるそういう経費の節約をするには、並たいていの努力では、容易にはできない。時と場合によれば、内閣の一つや二つはこれがために崩壊することがあつても、断じてこれは行わなければならぬ、かように私は考えております。と同時に、そういうことを国民の理解、また公務員その他の了解のもとに円満に遂行するには、責任の中心にある者がよく理解をもつてしなければならぬ、かように強く考えております。大蔵大臣も御出席のようでございますが、大蔵大臣は盛んに国民に対して耐乏の生活の要求をせられておるが、こういうように国民に耐乏の要求をするとか、あるいは官公吏に対して自粛自戒を促すというような場合には、まず政府並びに国権の最高機関であるこの国会が、範を示すということでなければ、行おうとしてもとうてい行われるものではない、かように私は考えておる。この意味からいたしまして、今回の予算案に、全国会議員に対して滞在中の滞在費の一千円増額を認めております。また休会中の委員の手当にも、これに準じた増額をもくろんでおるようであります。それから地下道、及び新規自動車の購入というようなことも計上せられておる。また宿舎の新築ももくろまれておるように見受けられる。こういうものが私は必ずしも不必要なものであるとも思わぬけれども、国民に耐乏の要求をし、官公吏に対してほとんど出血に近い整理をするという場合には、まずもつてそれほどの必要を感じないこれらの自粛を、われわれ国会議員はしなければならぬ。また今日まで行われておりまするところの自動車も廃止をしよう。現在あります宿舎や会館も、そのいずれか一方でも廃止をするというふうなことも、われわれ国会議員がまずもつて範を天下に示す意味において実行しなければならぬ、かように考えておるのであります。これに対する各方面の輿論は、今やまさにほうはいとして起りつつあるし、各言論機関もまた、盛んにこの意見の正しいことを認められておるようであります。むしろわれわれよりも一歩前進した議論をせられておりますが、土屋君は、幸いに言論機関に携わつておる方でありますから、むろんこれに対して御共鳴があるものだろうと思うけれども、今予算削減をしようという際に、かくのごときものを削減するのがいいとか悪いとかいう御批判がなかつたようだから、ここで率直に御批判を聞きたい。
  21. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。滞在費の一千円はどうかというお話でございましたが、私はこれはやはり国会が自粛していただく方が一番いいと思つております。今官公吏の給与問題というものが、日本のこれからの財政の大きな悩みになろうとしておるのでありまして、郵政関係の裁定もございましたし、夏季手当の問題もありますし、全体のベース・アツプの問題も、おそらく人事院の勧告その他によつて出て来ると思います。これが財政の非常に大きな負担になろうとしておる。そういう情勢のときであります。そういう場合に、国会議員が滞在費を千円上げるということになれば、これはやはりその勢いに油を注ぐことになりかねないと思います。非常におもしろくないことだと思います。官公吏の給料が今のままでいいとは思いませんけれども、やはり財政現状とにらみ合せて考える点があります。その場合に、滞在費一千円については、なるべく自粛した方がいいのじやないか、これは賢明に政治的に皆さんが御判断になるべきだと思います。  それからもう一つ、この前の国会にも出て、また今度の国会にも出ておりますが、調査費一人一万円ずつ出すという案があるようでありますが、あれは反対であります。それは召し上げて政調会の費用に充てるというのですが、政調会の費用は当然党が負担すべきものであつて、国家が政党に対してそういうものを与えるということは、今の場合はよろしいが、条件の違つたもとでは政党を腐敗せしめ、政党に対して問題を起すもとになりかねない。日本の政党は国家から何らの補助を受けていないのが建前であります。その意味から申しまして、政調会を拡充するのは大いにけつこうで、やつてもらいたいけれども、そんな皆さんの負担でやつてもらいたい。国家の費用によつて政調会を充実させることは、将来に禍根を残すおそれがあるということを申し上げておきます。
  22. 西村久之

    ○西村(久)委員 長代理 土屋君、ありがとうございました。  次に東京銀行常務取締役堀江薫雄君より御意見をお聞きすることにいたします。堀江薫雄君。
  23. 堀江薫雄

    ○堀江公述人 昭和二十八年度の予算案につきまして、大分時間も過ぎましたので、できるだけ簡単に意見を申し上げたいと思います。  本年度の予算案につきましては、その内容もさることながら、むしろその背景ないしは基礎的前提条件に検討を要する問題があるように思われます。すなわち予算の編成がきわめて急がれたという時間的な制約、その他やむを得ない事情のあつたことは認められるのでありますが、はたして大蔵大臣が財政演説で演説されましたように、この予算編成の前提となる経済事情には、当面急激な変化を生ずることはないと言われましたようなふうに見ていいかどうか、この問題であります。まずこの問題から簡単な所見を述べたいと思うのでありますが、世界経済の動向と日本といつたようなこと、また日本国際収支の予想、あるいは日本国民所得の予想、さらに日本の割高な物価事情、こういつた基本的な事情を、ごく結論的に検討いたしまして、あと簡単に予算案の内容に入りたいと思うのであります。  第一に世界経済の動向と日本といつた問題でありますが、わが国経済のごとく対外依存度の高いものにありましては、国際収支を通じて波及して来る世界経済からの影響ないし衝撃が、きわめて大であることは、あらためて申すまでもありません。この意味で、日本経済現状及び将来の見通しを、大きく規定するものとしての世界経済の動向をまず検討することは、十分意義があると思うのであります。  ところで世界の景気動向は、これまたアメリカの景気によつて決定的な影響を受けることは、しばしば指摘されておるところであります。一九三八年の経験によりますると、アメリカの国内生産高の実質価値が四%下落いたしましたところ、同国の輸入総額は三六%の大幅の減少を示しております。この数字はアメリカの景気の微小な下向きが、十倍に増幅されて海外に波及するということを物語つておるのであります。この関係は戦前よりか戦後の方が、なお一層強くなつておるというふうに考えられます。そこでアメリカの景気の動向が問題になる。これについて詳しく申し上げるいとまがございまんが、一般にアメリカにただちに不況が襲来するとは考えられておらない。すなわち現在のごとき高度の雇用及び所得水準が当分続くものと見られております。けれどもアメリカの景気が必ずしも下向きに転じたとは言えないまでも、すでに頭打ちの状況に達しておることは、これまた否定できないところであります。すなわち国防支出もやがてピークに達するでありましようし、特に国防の発注面はすでに下向きに転じております。民間の有効需要もすでに下向きになつておると言われますし、また特に農産物価の下落が顕者であります。また金融引締めの政策及びその結果としての金融市場の逼迫から、金利が御承知の通りかなり高騰しております。ごく最近に連邦準備銀行が、国債買いオペレーシヨンと今回の支払い準備率の引下げを行いましたが、これはむしろ金融引締めの行き過ぎを是正するための措置のように考えられるものでありまして、景気の基調まで動かすものではないと見るべきものだと思います。これに加えまして共和党の公約でありまするところの健全財政、健全ドルといつた政策の持つデフレ的な意味も、この際考えあわせなければならないのではないか、こんなふうに考える次第であります。このような一般的動向が朝鮮休戦の機運によりまして、さらに拍車をかけられることは申すまでもない。要するにアメリカの景気が不況に転ずることはないといたしましても、好況を海外にまで波及させる力は明らかに減退しつつある。今後も減退して行くことが確かであり、従つて世界経済は一層デフレの色彩を濃化して行くというふうに見るのが、至当であるように考えられるのあります。しかして右のような世界的なデブレ傾向は、必然的に世界市場の縮小化、狭隘化といつた問題、また輸入制限、輸出競争とい各国の通商戦の激化を招来いたしまして、ひいてはわが国経済に対しましても今後一層の影響、すなわち貿易の縮小並びにいわゆる特需の先細りとなつて波及して来ると見なければならないと思うのであります。  第二に、昭和二十八年度の国際収支の予想についてであります。右のように考えますときに、本年度予算案編成の基礎となつたと言われておりますところの昭和二十八年度国際収支予想は、やや甘いと評せざるを得ないように考えられるのであります。すなわち右の予想によりますれば、受取り、支払いともに二十一億ドルで、収支が均衡するということになつておりますが、特に受取り面におきましては、正常輸出が前年度十一億六千八百万ドルに対しまして、本年度はこれより上の十一億八千万ドルというものを見込んでいる。また広義特需は、前年度八億二百万ドルに対しまして本年度七億ドルを見込んでいる。その他貿易外といたしまして前年度二億四千百万ドルを二億四千万ドルと見ているという数字は、やや過大ではないかと考えられるのであります。まず正常輸出でありますが、年初来の輸出実績を見ましても、一月から五月までのこの五箇月間の実績は四億五千八百万ドルでありまして、前年同期の六億二千二百万ドルに対しまして七三%強にすぎません。さらに今後の見通しといたしましては、前に申しましたように世界的なデフレ傾向の中にあるというようなこと、またわが国の物価が突出的に世界物価に対して割高であるということ、また英連邦諸国の輸入制限緩和の見通しが楽観できないというようなこと、また輸出、なかんずくアメリカ向け輸出も、従来のような好調が期待し得ないといつたようなこと、これらを考えあわせますときに、輸出総額におきまして前年度を上まわるという予想には、無理があるのではないでありましようか。  次に広義の特需につきましては、前年度に比し一億ドル減が見込まれております。これにつきましては、一方において朝鮮休戦に伴う減少が予想されますが、他方いわゆる復興特需も考えられる。さらにMSA援助が実現するといたしましても、この発動の時期及びその援助の方式等は予測困難である。かくのごとく特需につきましては、にわかに予想をくだし得ない不確定要因が多いと思われますから、批判は差控えたいと思います。海外収支の受取り面の事情が右のごとくであるといたしまして、他方支払い面、特に輸入につきましては、わが国の輸入要素の非弾力的なことが指摘されなければならない。御承知の通り食糧輸入が大部分であり、また重要原料輸入が大部分であるといつたような非弾力的な輸入品というようなことの理由から削減の余地が乏しい。政府も食糧自給の向上、化学繊維の増産といつたような見地から、わが国産業の輸入依存度の軽減をはかる施策をとつているようでありまして、今次の予算面にもそれが多少反映しておりますけれども、こういつた問題は何分にも、その長期的な性格上、ただちにその効果が現われることは期待できないように思うのであります。従いまして国際収支は逆調べの転化ないしはその規模の縮小が不可避なのではなかろうか。言いかえますと、前述の国際収支予想は、わが国の正常的なないしは拡大的なないしは希望的な経済循環を営むのに要請される目標といたしましては、十分承認できるといたしましても、その実現の可能性という点につきましては、幾分疑問があるのではなかろうか。さきに国際収支面における見通しが甘いと私が評しましたのは、この意味にほかならないのであります。しかしてかかる国際収支面の要因は、単に外国為替会計の収支の問題にとどまらないで、広く予算の基礎をなすわが国経済諸活動全般にデフレ的な影響を持つものであることは申すまでもないところであります。  次に第三として、昭和二十八年度の国民所得予想につきまして、簡単に申し上げます。以上は主として国際的要因から見た日本経済見通しを検討いたしまして、かなりに前途が困難であることを指摘したのでありまするが、このような観点に立つときに、経済事情には当面急激な変化はないという前提をとることには、やや問題があるのではなかろうかと思います。しこうしてこの点が最も端的にうかがわれるのは、予算編成の基礎となつております昭和二十八年度の国民所得予想であると考えられます。政府作成の資料によりますと、国民所得昭和二十七年度が五兆三十六百八十億、それに対して昭和二十八年度は五兆八千二百億といつた数字になつておりまして、本年度において八・四%の増加が見込まれております。この数字の妥当性をまつこうから論ずるだけの資料は持ち合わせないのでありますが、さきに述べました国際収支見通しから考えただけでも、幾分過大な増加が見込まれておるのではないかと思われます。しかりとせば、ここから予算の規模、歳入面の弾力性、財政建設融資計画の内容等、予算案についての種々なる問題が派生して来るのではないかと考えられます。  第四に、日本の割高物価水準について申し上げます。最後に日本経済現状におきまして最も注意すべき点は、言うまでもなく物価水準が著しく割高なことであります。動乱前を一〇〇とする最近の卸売物価指数は一五〇以上であるのに対しまして、各国の指数ははるかに低位にあります。すなわち国際通貨基金の統計によりますと、一九五〇年一月から六月間の平均を一〇〇とする本年一月における各日卸売物価指数は、次の通りになつております。アメリカが一一一、フランスが一三六、ドイツが一二三、イタリアが一一二イギリスが一三一、こうなつております。このことはしばしば指摘される通り、日本経済の内包する矛盾ないしは脆弱面の集中的な表現と見るべきものでありまして、予算の編成にあたつて、さらには経済政策一般について、当然考慮さるべき重要な示唆を与えるものと考えるのであります。  この点をやや敷衍いたしますると、次の通り言えるかと思います。その第一としては、物価政策の面において低物価政策の必要が痛感される。このことは裏を返せば、通貨価値の安定という財政金融政策の基調を意味するものにほかならない。その際わが国のごとき経済にありましては、特に鉄、石炭といつたような基礎物資の価格及び公共事業の価格ないし料金は、特に低位に置くという政策に配慮が置かれなければならないのではならないかと思うのであります。私、戦前昭和九年から四年半ばかり英国におりまして、また戦後ちよつと行つて参りました。英国では労働党時代も保守党時代も、公共事業、ガス、水道、電気、交通といつたようなものは、戦前と戦後に大差がないのが実情でありまして、このことが労銀引上げの理由にならないといつたような弾力性のある政策、そういうことも配慮されているので参考になるかと思います。  その次に第二には、財政面からするいわゆる景気振興策の限界ということが一つ指摘されなければならない。高物価の結果そういうことが指摘されるのであります。前にも述べましたように、世界経済の側からするデフレ要因に対しまして、旧内的対策として、財政面からするいわゆる景気支持策ないしは景気循環策があります。言いかえますと、人為的な有効需要をつくるという問題であります。もちろんその意義及び効果は認められるけれども、物価高におけるデフレというわが国経済の特殊な条件のものでは、物価高に伴います経済の悪循環ないしはインフレーシヨンに転化することなくて、景気振興策をとり得る幅ないし限界はかなり狭いものだということを承知しなければならないと思うのであります。イギリスは御承知のごとく、今度のバトラー予算におきましては、明らかに財政面からする景気振興策を意図いたしまして、昨年まで健全財政でありましたのを、今度から積極財政に転じた感があります。しかしわが国の場合、イギリスの例をそのまま当てはめ得られない事情があるのでありまして、この点は財政ないし国家予算のあり方について、一つの示唆を与えるものということができると思うのであります。  第三に、右のごとく国内対策の面で景気振興策をとる余地が狭いといたしますと、勢い経済政策の重点は、正常輸出の振興を中軸とする貿易の拡大、均衡に指向されなければならない。これに前述のような特需の先細り、輸出競争の激化といつたことが伴います国際収支面の困難性を考え合せますときに、その必要はさらに痛感されるのでありまして、国家予算のあり方につきましても、おのずからその政策目的によつて大きく規定されて来るべきではなかろうかと思うのであります。  以上予算編成の基礎をなす、あるいは予算編成の背景をなしております諸条件について、私の抱きました印象の一端を表明したのでありますが、次にこれをもとといたしまして、予算案の内容につきまして検討を進めたいと思います。  さて本年度予算案の内容でありますが、これにつきましては個々の点に立ち入ることを避けまして、一般会計予算案及び財政建設融資計画を含めまして、予算案全般を通ずる事柄につき、所信並びに要望といつたものを申し上げたいと思います。  その第一は自立経済達成のための支出要求と、財源の面からする限界との間の大きなギヤツプを調整し、もつて予算規模の膨脹、不健全財政への転化を抑えるために、防衛費削減を初め予算案編成のために政府当局が並々ならぬ苦労をなされたことは十分に察し得られるのであります。また今次の予算案の基本的な特色であります均衡予算から弾力性のある予算への移行という性格でありますが、原則的には時宜に適したものと見てさしつかえないであろうと私は思います。けだし一方において国際経済の面からするデフレ的な要因があり、他方圏内経済面には、いわゆるドツジ財政のしこりが残つておる、こういつた現在、これが対策として、財政面にある程度の弾力性を付与することは十分理由のあることと考えられるからであります。特に積極的かつ有効な財政投資を行うために、総額三千億に上る財政建設資計画が立られておりますることは、こうした意図の表現として、原則的に賛意を表明するにやぶさかではないのであります。しかしながら、さきに基礎的な考察の点で述べました問題に関連するのでありまするが、その際申し述べました懸念ないし疑問点も若干あるのでありまして、そのおもなものについて指摘してみたいと思います。  まず正常貿易の振興を中軸とする経済政策の基調が、十分予算面に反映しておるとは思えない。なかんずく財政建設資資計画を見ますると、貿易振興を目的とする重点的な投資が計画されているとは称しがたいうらみがあるのであります。この点は、銀行の側ないしは貿易に特に関心の深い為替銀行の立場としても、ややもの足りないといつたことを感ずる次第であります。  第二に、歳入面の弾力性が乏しいといつた問題であります。景気の下向き傾向から、税の自然増収が期待できないのみならず、七千百六十億という税収の予測自体に、前述の国民所得予想から見て、やはり過大なものがあるのではなかろうかと思います。これが歳入面の弾力性の乏しいということの第一点であります。第二点は、いわゆる過去の蓄積資金の放出であります。保有国債の日本銀行への売却、これが三百七十八億円組まれております。余裕金の使用が百五十四億円、計五百三十二億円がこれでありまして、この結果財源の底をはたいたといつた感が深く、それだけ財政の持つ含みが失われているということができると思うのであります。以上二点は、もし年度内に補正予算の編成が必要となれば年度内に、そうでなくても、明年度の予算編成にあたりまして、財源の点で困難な問題をもたらすのであり、ここから赤字財政への懸念も生ずるのであります。  次に、国庫の対民間収支巨額の散布超過となり、かつ支出の時期が下半期に集中するという点が問題であります。政府の計算によりますれば、本年度予算に基く国庫の対民間収支は、千九十八億円の政府散布超過が見込まれております。これはもとより数字の意の予想でありまして、実際の収支意味するものではない。たとえばその中にも指定預金とか、あるいは政府資金の支出の時期的なずれとか、国際収支の逆調、こういつた散超を減少する要因も考えられる反面に前年度末使用の防衛関係費の支出、食管会計の糧券発行増、補正予算等散超をさらに大きくする要因、その可能性もあるのであります。もちろん国庫収支の散超がそのまま財政インフレを意味するものではない。それは国民経済がどれだけを吸収する力があるかいなかによつてきまる問題であります。しかしながら、前述した日本経済現状並びに国庫収支の散超が下期に集中することを思い合せまするときに、やはり相当の懸念が持たれるのは事実であります。この点財政金融政策面における適切な施策を特に要望したいのであります。  次に特別減税国債二百億円及び電電、国鉄両公社百六十億円の発行がありまするが、これは金額も過大ではなく、かつ全額民間消化を予定し、かつほぼ消化可能の条件で発行されるということでありまするから、それ自体懸念すべきは点ないように私は思います。ただこの機会に、このことがきつかけになつて安易な公債政策に移行する第一歩となることなきよう、特に政府の善処を要望しておきたいと思うのであります。  最後に、地方財政の不健全性について一言申し上げたい。地方財政の規模は、皆様御承知の通り年々膨脹一途をたどつておる。本年度の地方財政歳出計画は、国家予算の八八%、八千四百八十三億円に達しておるそうであります。それとともに地方財政の国家財政への依存度は逐年高まつております。数字的に見ますると、平衡交付金は、二十七年度は千四百五十億であつて、二十八年度は千二百五十億になりましたが、国庫補助負担金、これが前年度千五百七十三億が二十八年度は二千三百六十三億円になる。これに地方債引受けを加えますると、地方債は七百七十億であつたものが、今度は八百八十五億になりまして、この三つを合計いたしまして、二十七年度は三千七百九十二億であつたものが、二十八年度は四千四百九十八億円となる計算になつております。この数字から地方財政が国家財政にとつてますます重荷となりつつあることが懸念されまするとともに、その背後にありまする地方財政の不健全化という傾向が憂慮されるのであります。  以上若干の懸念を表明し、あわせて政府への要望を述べたのでありまするが、これら諸点は、今後日本経済の諸条件の推移いかんによりましては、あるいは財政の不健全化をもたらし、さらには財政インフレーシヨンを招来する危険がなしとしません。この点われわれの懸念が単なる杞憂に終るように、予算の実施面あるいはさらに政府の今後の施策全般におきまして、十分の考慮を払われることをここに要望いたしまして、もつて私の簡単な発言を終ることといたしたいと思います。
  24. 西村久之

    ○西村(久)委員 長代理 御質疑はございませんか――御質疑がなければ堀江君に対する質疑はしないことにいたします。堀江君御多忙中ありがとうございました。  それでは午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十九分開議
  25. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き公聴会を開きます。  一言ごあいさつ申し上げます。公述人各位には御多忙中にもかかわらず、貴重なる時間をおさきくださいまして御出席いただきましたことに対し、厚く御礼申し上げます。公述人各位の忌憚のない御意見の開陳は、本予算案審査に多大の参考となるともに、その審査に一段の権威を加えるものと信じます。何とぞその立場々々より腹蔵のない御意見をお述べいただきたいと思います。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は、大体二十分程度にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見の開陳及びその質疑を済ませて行くことにいたしたいと思います。  なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言の内容意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承を願います。  それではまず商工組合中央金庫理事安田元七君より御意見をお聞きいたします。安田元七君。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  26. 安田元七

    ○安田公述人 商工組合中央金庫理事の安田でございます。中小企業問題に関しまして二、三申し述べたいと思う次第でございます。  中小企業が目下直面いたしておりまする問題は、差迫つたものだけでもきわめて多く、かつ広範囲にわたつておるのでありますが、それらのうちで特に中小企業者がどういうことを当面希望しておるかという点につきまして、二、三申し述べて御参考に供したいと思う次第でございます。  中小企業に今最も問題となりますのは、現下の不況に対しまして、どのように対処して行くかという問題ではなかろうかと思うのでございます。これは申すまでもなく、単に中小企業の当面しておるだけでなくして、日本経済全体の問題でありまして、日本経済をどうやつて発展させ、また自立させて行くかというすべての問題の出発点であり、また帰結であるところの重要問題の一環であるのでございますが、ここにあらためてこのような問題を提起いたしまするゆんは、同じ不況と申しましても、中対企業におきましては、他に比較いたしましてより一層深刻なものがあると思うのでございます。中小企業日本経済の上に占めところの地位がきわめて大きいにもかかわりませず、経済全般が苦況にあるときにはその苦況のすべてがここにしわを寄せられるという場所でありまして、困難が大きければ大きいほどそのしわが大きいのであります。一方これに対しまする対策は、得てして手の下しようがなく放置されるというような実情であるのでございます。そこでこの苦況打開の対策といたしまして、中小企業の金融の問題、中小企業自体を強化し合理化するための組織化の問題、並びに中小企業製品市場開拓のための貿易促進という三つの問題を取上げて申し述べてみたいと思う次第でございます。  これらの問題につきまして、国の予算が重点的に配分せられることを期待いたしたいと思うのであります。第一に金融の問題でございますが、まず中小企業の問題は、金融の面におきまして、苦況の端的な現われがあると思うのであります。最近の国際情勢変化は金融面において不渡り手形の形で苦況を表現しております。最近の不渡り手形は中小企業関係にきわめて多くなつておるのでございますが、一方特殊な事情といたしまして、最近大企業の不渡り手形という注目すべき現象が現われて来ておるのであります。このことは、不況がまず弱小の企業に現われ、また急激な財政変化は有名大企業にも直接的な影響を与えたということを示しておるのでございます。しかしここで特に強調いたさなければならないことは、このような有名大企業が不渡りを出した際は、その裹にきわめて広汎な範囲にわたる多くの中小企業がそのしわ寄せを受けておるという事実でございます。この大企業の下請関係にある数多くの中小企業、またその大企業が日銀再割適格というごとき外的信用状況に信頼して、それと取引いたしておりました多くの中小企業、こういうものがあるのでございますが、これがたよりにしておりましたところの大企業の突然の不渡りということによりまして、不測の損害をこうむつておるという事例が非常に多いのでございます。しかもそのたよりといたしますところの大企業は、会社更生法の適用を申請するということになりますならば、たといそれが更生法の結果更生が決定するといたしましてもそれまでの間半年あるいは一年、下請関係にあります業種は、親会社を変更いたさなければならぬ。またその有名会社と取引いたしておりました中小業者は、取引会社を変更いたさなければならぬ。かような親会社、取引先をかえることがはたして簡単にでき得るであろうかどうかということにつきましては、大きな疑問があると思いのでございます。しかしながらこの場合にその中小企業を考えてみますと、中小企業の製品は技術も優秀であり、前途は必ずしも悲観すべきものでないというものが多いのでございます。そこで当然かようなものは救わるべきものであるにもかかわりませず、大企業の救済に急であつて、そのような中小企業は中小企業に向けられる資金の不足、こういうことによりまして顧みられないという可能性が多いと思われるのでございます。このような大企業の不渡りによるところの関連中小企業に生じました大きな穴に対しましては、従来たとえば私どもの方でも、短期に融資いたしておりましたものを相当長期に見てやる、そうして長期になしくずしで返して行かすという必要があると思うのでございます。一般的に申しますならば、この特殊の事例以外にも、今後ますます相当長期にわたるであろうと思われます不況を前提といたしますならば、中小企業に対しまして長期の運転資金を融通して応援する必要があると思われるのでございます。従つてこのような転換期には、右のような正当な救済は中小企業に対しましても十分に配慮せらるべきものと考えられるのでございます。かかる配慮は戦前の例に徹しましても、財政資金によつて長期低利な判別融資としてなされて来たようでございまして、すなわち戦前におきまして預金部資金が各種金融機関を通じて流されまして、大正九年の第一次大戦後の不況対策、昭和三年金融恐慌後の対策、その後昭和五、六、七年等々種々の対策が次々と打たれて来たのでございます。  なお中小企業の金融において財政資金の導入の必要は、右申し上げましたこと以外に、中小企業の金利負担の引下げ、中小企業自体の改善のための合理化資金等にも緊要なことは申し上げるまでもないのでございます。最近わが国物価の割高是正の問題の一環としまして、金利の引下げが問題に上せられているのでございますが、基礎資材製造業の金利負担の是正も確かに問題でございますが。一般中小企業はそれ以上に高い金利負担に悩んでいることに目をつぶつてはならないと思うのでございます。中小企業は大企業より一般に高金利となることは、ある程度経済の常道ではありましても、それも程度の問題で、両者の差はもつと接近されてしかるべきものではないかと思いますが、その場合これを是正するためには、中小企業関係金融機関に対しまする財政資金の導入が必要であろうと思います。また中小企業金融の問題の中核は、中小企業自体を改善して行く、これを合理化することにあるのは申すまでもないのであります。そのためにも種々な方策、合理化が必要でありますが、この合理化推進のためにも財政資金の導入が最も必要な原動力となるのではないかと思います。私たち自身商工中金の現状から申しましても、まず資金の量的な確保、次に低金利の融資を確保するためには財政資金の一層の導入が不可欠の現状であるのでございます。  右のように中小企業金融においては種々の面で財政資金に依存せねばならないのでありますが、本年度予算を見まして、政府は中小企業金融公庫を設立して、主として設備の合理化のための長期の設備資金を供給しようとしておられるのでありますが、まことにけつこうでございます。これは前述の不況対策の長期運転資金とその目的並びに運用を異にいたしておりますので、公庫のほかにこれに対処する財政資金の中小企業専門金融機関に流されるよう希望いたしたいのでございます。  次に第二の組織化の問題でございますが、中小企業対策の一つとして常に取上げられている組織化につきましては、今後ともますます推進すべきであると思うのであります。そのためには現行の中小企業等協同組合法自身をある程度改正して行く必要があると思われるのでございます。全国の組合数は二十八年三月に二万九千余に達しまして、数的には過去一箇年に三千余の増加を示して、かなり組織化が進みつつあるやに見受けられるのでございます。これら組合をしさいに検討してみますと、その約半数というものはいわゆる睡眠組合といたしましてほとんど活動らしい活動をしていないといわれているのであります。また商工中金に出資いたしております組合は七千有余であり、融資組合は六千にとどまつているような実情からしまして、単に数的な増大というよりも、その質的な充実へと施策が向けられねばならない段階にあるのではないかと思うのでございます。そのためには従来のように組合の設立にあたりまして、単に地方庁が定款を認証しさえすればいいといつたような任意設立によらないで、これを行政官庁の認可制ということに改めまして、設立後も組合の指導、育成を十分にして行くことが必要ではないかと思うのでございまして、本来中小企業等協同組合法は、占領治下に米国の思想を取入れて、大体この組合というものは、下から盛り上つて来るべきものであつて、官庁が指導等をすべきものではないというふうな考え方から、出て来たように思われるのでございます。もとよりこの考え方ももつともなところがあると思われるのでありますが、従来のわが国の思想、今の段階における状況には合致しないところがあると思われるのでありまして、やはりわが国では官庁等の指導育成によつて、初めて強固なる組合ができるのではなかろうかと思うのでございます。  さらに独禁法改正が予想されまして、不況カルテル、あるいは合理化カルテルといつたような一定の条件のもとに、大企業のカルテル行為が認められるということになりますれば、従来の組合法あるいは中小企業安定法等によりまして、独禁法の適用を排除されておつた中小企業は、大企業との関係において著しく不利益な立場に置かれていることも予想せられるのであります。このような状況に対処するためにも現在の組合の強化、発展を推進するような方策、たとえば組合の共同設備に対する国庫補助金の増額企業診断の実施とその診断を実効あらしめるための診断後の指導助成というようなことがより一層推進せられる必要があると思われるのでございます。このような組合組織の強化は中小企業者の団結による信用力の増大とともに、個々の業者にとつては実行が困難な企業の合理化を容易にする素地を生み出すことが期待されまして、ひいてはわが国産業の下部機構である中小企業の発展にもなり、産業界全般としての発展を可能ならしめ、朝鮮休戦成立に伴うわが国経済前途に多くの困難が予想せられる今日、きわめて重要なことと考えられるので、このために予算面、行政面において一層の推進を切望する次第であります。  最後に輸出のことでありますが、輸出産業に占めますところの中小企業の比率は、特にこの軽工業部門において非常に大きなことは、申す必要もなかろうと思うのでございます。しかして最近の国際的な貿易規模の縮小の傾向の中において、わが国もまたその例外たり得ず、貿易規模の縮小は否定すべくもない次第でございます。しかもその縮小した規模において辛うじて国際収支の均衡を保持しておりますのは、特需等の貿易外収入によりまして、正常貿易の赤字を補つている状態とも言えるのであります。しかも朝鮮休戦の成立が近く予想せられる今日、特需等にいつまでも依存することはできない事情にある以上、正常貿易の増進が緊要となつて参るのでありまして、国際的競争力の培養のためコスト切下げによる国際的価格割高傾向の是正、品質改善等の必要が一般的に必要であると思うのでございます。一方このような面での努力とともに、海外市場の拡大に対する努力が必要とせられまして、この点では現在主として政治的な要因で多くの制約を受けておりますところの中共貿易の拡大に対する要望が高まつて来るのでございます。この問題には多くの政治的な問題が含まれているのでありましようが、少くとも西欧諸国がバトル法によつて受けております制限措置まで緩和せられることが、必要ではなかろうかと思われるのでございます。これらの制限緩和が、少くとも中共地区からの石炭とか大豆、鉄鉱石等の原料輸入に好影響を与えるであろうと期待せられるのでございまして、一例を大豆にとつて考えてみましても、今やむを得ず品質粗悪で、しかも割高な米国の大豆にたよつておりますことは、わが国としてはまことに不自然な状態ではなかろうかと思うのでありまして、やはり従来通り満州大豆も大量に輸入せられることが、これが大消費者でありますところの、みそ、しようゆ業界にもまことに喜ばしいことではないかと思うのでございます。  中共貿易につきましては、むしろ中日間の国交がいまだ回復していないことによります渡航制限あるいは金融措置の不円滑による障害の排除ということが、解決を要する問題であろうと思われます。広く東南アジアあるいは近東、アフリカ等の市場を考えますならば、やはり中小企業の設備の合理化、近代化を日も早く行つて、よりよき品をより安く生産する態勢を確立することが、必要ではなかろうかと思うのでありまして、これを援助する金融機関の金利を吹くするということが、特に痛感せられるのでありまして、これは第一の金融問題で論じた通りであります。  最近の大企業の不渡り問題に関連いたしまして、いわゆるやみ金融の問題が前面に押し出されて来たのでございますが、かかるやみ金融の取締り問題は多年叫ばれて来たところでありまして、これはやはり正常な中小企業専門金融機関の資金を豊富にするという方法をもつて、これを解決するのが一番いいのじやないかと思うのでございます。  これを要するに貿易問題につきましても、その結論は金融問題で参ありまして、しかも中小企業専門金融機関に対する資金の問題であるということを強調いたしたい次第であります。以上をもつて終ります。(拍手)
  27. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 安田君の御意見に関して御質疑はありませんか。
  28. 今澄勇

    今澄委員 ただいま中小企業金融について非常に有益なお話を伺いましたが、一、二点御質問を申し上げたいと思います。  第一点は、現在のやみ金融を中小企業者が利用して、高利子のためにますます中小企業者が困窮に陥りつつある現状を打開するには、どういうふうな方策をもつてやればいいか、公述人の御意見を承りたい。  なおもう一つは、全般的な中小企業金融の金利の引下げがやはり重要であるが、これにはどのような政府の施策が必要であるかという点について、公述人の御見解をこの際お聞きをしておきたいと思いなす。
  29. 安田元七

    ○安田公述人 ただいまのやみ金融の問題につきましては、いろいろの方策があると思うのでございまして、もちろんそれの取締り方面は大蔵省方面でも考えておられることと思うのでございますが、先ほどちよつと触れました通り、それには正常な金融機関に資金を豊富に与える。そして中小企業者は、正常な金融機関から楽に借りられるのだというような態勢にするのが根本的な解決方法ではないか、かように考える次第でございます。  金利の問題につきましても、やはり中小企業の問題はどうしても手数がかかりますので、金融機関としても、えてしてやりたがらないというふうな関係から、特殊な金融機関にやらされておる次第でございますが、それにはやはり国から低利な長期の財政資金を流していただくということが、一番手取り早いやり方ではないか、かようなふうに思う次第でございます。
  30. 今澄勇

    今澄委員 なおもう一つ。現在の中小企業金融機関をながめてみると、今度新しくできる中小企業金融公庫の構想あり、それから国家的機関としての国民金融公庫、半官半民の商工中金、コマーシヤル・ベースの相互銀行、信用金庫等、一般銀行等の中小企業への貸出まで含めて、中小企業に対する貸出しの総金額というものは、私は厖大な額になると思うのです。が、これらの金融機関がある現在の姿が、公述人の目から見て妥当であるかどうか、これからの中小企業金融機関のかかる散在的ならばらばらな姿を、何か一貫した姿に置きかえるというような方式をとつたならばどうか、たとえば農林関係における農林中金を中心とした金融状態から見ると、中小企業関係の金融状態は非常に統一がないように思われますが、付かこれらについて御意見を伺えれば仕合せと思います。
  31. 安田元七

    ○安田公述人 中小企業金融機関が非常にばらばらで何か統一したものがあつた方がいいのではないかという御意見でございますが、それぞれやはり必要々々に応じて設立されましたことでございますので、これをにわかに一つのものにするということも非常にむずかしい問題ではないかと思う次第でございます。しかしながら、先ほど組織化のときに申しました通り、中小企業者はあくまで組織力というものをもつて事に当らなければいけないということが、国の従来とつて来られたところ国策ではないかと思う次第でございますので、やはり組織化を中心にしたような、そういう金融機関を中核にして、その足らないところにつきましては個人的の金融でやるということにいたしましてはどうか、信用組合、あるいは信用金庫等につきましても、その組織化の大元締めである中金との関連性を十分に考えて、その組織のもとに一つになつて行つた方がいいのではないかというふうに私自身としては考えておる次第でございます。
  32. 今澄勇

    今澄委員 恐縮ですがもう一問お伺いしておきたいのは、中小企業等協同組合法の改正ということを今おつしやいましたが、中小企業等協同組合法の中で、第五国会で出ました保険協同組合については、当時これが重大課題であつたけれども、否決になつて遂に今日に至つておりますが、今回これからの保険協同組合を中小企業等協同組合法の中に入れるようというので、改進党を初め各党からこの修正案を本国会に出されておりますが、特にその中で注目すべきところは、これからの中小企業家が行う保険の損害の負担について、再保険を商工中金に委託をして、商工中金がこれらの協同組合の再保険をなすべく中小企業等協同組合法で今度きめようというので、保険協同組合からのそういつた機能を求められておるのでありますが、これに対して、商工中金におられる公述人のお考えや御意見がありましたら、この際ついでに承わりまして質問を終ります。
  33. 安田元七

    ○安田公述人 保険協同組合に関することでございますが、商工中金のやつております金融という問題は、見方によりましては保険協同組合の再保険ということは実際上は関連が少い。金融という面に商工中金は専念すべきであるという議論もあるいは成り立つのではないかと思うのでございますが、ただいまお話の保険協同組合の被保険者は、主として中小企業者でありまして、しかも火災保険の担保となります不動産は、私どもが設備資金その他を長期の融資をいたします際に、それを担保にとるというふうな関係からいたしまして、私どもの融資の管理上からいいましても非常に関連の深いものであり、また先ほど私から申しました資金の面という点から申しましても、大いに期待でき得るものではないかと思うのでございまして、私どもの方は、進んで再保険をやりたいという態度はいたしておりませんけれども、国として、お前の方で再保険をしろという御意見がございまするならば、それは喜んでやる用意をいたしておる次第でございます。
  34. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 公述人に一、二点お伺いいたします。今年度予算が通過いたしますと、八月以降のいわゆる下期におきまして、相当急激に資金が散布せられるわけでございます。それが一つのインフレの要因になるということも当然考えられます。そこでそうしたインフレの傾向を押えるために金融操作が行われる、これは多くの人々が言つておる点でございます。そうしますと、結局そのインフレ要因を抑えるための金融操作は中小企業にしわ寄せされることは、これも当然といわなければなりません。そういう場合に、私は中小企業界に相当大きな混乱が起つて来ると思いますが、そういう場合に、それを助け、そうして中小企業の苦境を救つて行くのに一番中心となるのは商工中金だと思いますが、しかし今このインフレを押える金融操作の一つの行き方はやはり商工中金もそのわくの中に押し込まれなければならない、こういうことになると思いますが、そういう点についてあなたはどういうふうにお考えになりますか。その場合中小企業に対する助け舟は積極的に出さなければならないというようにお考えですか、どうですか。  それからもう一つの問題は、今あなたは中小企業のいわゆる組織の強化ということをおつしやいましたが、それによつて中小企業に対する金融の道も開かれて来るというお考えだと思います。その協同組合の強化の方法といたしまして、いわゆる中小企業協同組合の診断、あるいは眠つておる組合を活動させるためのいろいろな積極的な指導というようなこともお考えになつておるようです。要するにあなた方が協同組合に金融をされる場合に、その組合の役員の信用を対象とするか、あるいはまた長期資金の場合に担保物件が当然考えられるわけですが、組合の役員の信用目当ての金融は、現在協同組合が弱体であればあるだけ、役員はそれをきらうわけでございます。そこで結局担保物件というものが必要になつて来ると思いますが、現在の協同組合はその組合員が生産する商品を担保とし得ない状態にあるわけですが、そういう点で協同組合の強化によつて、組合員が生産する商品を担保とし得る方法はどういう方法か。以上二点についてお伺いいたしたいと思います。
  35. 安田元七

    ○安田公述人 基本の対策についてのお尋ねでありましたが、先ほども申しました通り、現在の不渡り手形によるしわ寄せによりましても、現在短期に貸しておりますものを長期化いたさなければならないので、私どもといたしまして資金の不足を生ずるのではないかと思う次第であります。これは先ほど申しました通り、政府の財政資金を豊富に流していただくという道が講ぜられますならば、先ほどのお話のようなしわ寄せにつきましての中小企業の救済につきましては、私どもは十二分に考えて行きたい。かようなふうに思つておる次第であります。  第二は、商品担保の融資のことのようでございましたが、これはすでにその例はあるのでございまして、たとえば不需要期に生産いたしましたところの繊維類を需要期まで持ちこたえる、そうしてそれを倉庫証券によつて持ちこたえる間の資金をみるというような事柄は、たとえば尾西の毛織物とかあるいは遠州のベツチン等におきましてやつておるのでありまして、さような商品担保の金融は、見得るものにつきましては、できるだけそういう形において見ておるという現状でございます。
  36. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 第一点の私の質問に対する御答弁は少し明確でなかつたわけですが、私の申しましたのは、端的に申しますると、この予算が通過いたしますると、きわめて短期間に政府資金なり、要するに資金が非常に散布されて、それが一つのインフレの要因になつて来るという見解のもとに、金融操作の面においてこのインフレを押えて行くという考え方が今あるわけです。そういう場合に、それが中小企業にしわ寄せされる、それに対して商工中金はどういう態度に出られるか。積極的にそういう金融操作によつてインフレを押えるという一つの行き方に対して同調されるのか。中小企業救済の上に立つて商工中金は積極的に貸出しをされるのか。今あなたのおつしやつた政府資金のわくがふえれば、あなた方の方は、そのわくの範囲においてあくまで積極的に貸出しをされるか、この問題です。
  37. 安田元七

    ○安田公述人 ただいまのお話は、散布せられる資金が多いから、インフレにならないように金融操作をするという問題につきましては、おそらく日本銀行等において、そういう操作をせられるのではないかと思う次第でございますけれども、それのしわ寄せを中小企業者が受けるというふうな場合において、極的に援助するかどうかという意見のように拝聴したのでございますが、それにつきましては、先ほど申しました通り、もちろん中小企業者の業態をよく見るわけでございますが、資金の許す範囲において私どもは十分に応援したい、かようなつもりでおる次第でございます。
  38. 八百板正

    ○八百板委員 ちよつと簡単にお尋ねいたしますが、お伺いいたしますと、商工組合中央金庫の立場からの御意見でございますから、金融中心になるのはもちろんだと思うのでありますが、金融に対する対策と申しましようか、金利の問題、あるいはもつとよけいに金を出せという財政資金の導入の問題、そういう問題が出ております。それからさらにまた中小企業等協同組合法の改正とか、組織化の問題もおつしやつておられますが、現状においては、組織化にしても、付か金融対策の対象としての組織化というような範囲を出ないような状況に、私どもは見られるのでありますが、そういう金融以外に中小企業に対してこれを伸ばす何らかのお考えが、予算の上に盛られてしかるべきだというふうな御意見がございましたらお述べをいただきたいと思います。
  39. 安田元七

    ○安田公述人 第二の組織化の問題につきましては、私、金融の面に限定して申した次第ではないのでございまして、広く中小企業者につきましては組織化が必要である。しかもそれは組合数の増加というよりも、今できている組合をよりよくするということが中小企業全体の救済のために必要であるというふうに思つておるのでございまして、そのために監督官庁のいろいろの指導方面の経費を――今見ておられます診断方面にいたしましても、もつともつと大規標にいたすべきではないか、かように考えておるのであります。
  40. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 それでは次の公述をお願いいたします。全国農民連盟書記長中村古次郎君から御意見を伺いたいと存じます。
  41. 中村吉次郎

    中村公述人 私は農業、農民の立場から申し述べたいと思います。いろいろ申し上げたいことがございますけれども、午前中に問題になつております食糧の問題、これを中心にして申し上げたいと思います。それは農業の側から日本経済目立に最も大きく貢献するものは、やはり食糧増産である、かように考えるからであります。申すまでもなく、経済審議庁長官の経済演説にも、四億ドルの食糧輸入の問題が考えられて、これに対する対策が講ぜられております。私どもはこの面の、少くとも国内の食糧自給を高めるということによつて日本の農業を前進させて、日本経済を発展させて行くということを考えているものであります。一部には、外国食糧依存を考える方もありますし、また、国内食糧増産には限度が来たのではないかというような説をなされる方もありますが、私どもは、まだまだ国内食糧増産の可能性を信じておるものであります。その方法はいろいろございますが、さつき述べた長官の演説の中にも、土地改良、開拓、耕種改善等に国家の財政投融資を徹底的に行うということがございます。これはもちろん必要でございますが、それのやり方、そこにも問題があるのでありまして、それらにつきましても、若干申し述べたいと思います。ただその前に、今年は御承知の通り凍霜害やあるいは西日本二十六府県の風水害、さらに最近の九州地方に未曽有の水害がございまして、これは本年の食糧事情に大きな影響を及ぼすと思いますが、それらの対策につきましては、現在農林委員会で問題になつております災害補償制度をさらに徹底していただく。ことに今日の制度は、農民の掛金が非常に重くて、負担に苦しんでいるのでありまして、これを軽減することが最も大切なことではないかと思います。なお風水害などについては、なかなか対策が決定されていないようでございまして、一概に営農資金を資するということがその対策の骨格をなしているようでございますけれども、これではやはり救済にはならない。ことに営農資金を融資して、その利子を政府あるいは地方庁に補給させるというだけでは、災害の対策にはならない。さらに積極的な対策が望ましいということを、前もつてお願いしておく次第であります。  食糧増産に最も大切なものは、耕地の拡張ということだと思います。いろいろ食糧増産効果がないという説もございますけれども、少くとも耕地を拡張すれば、拡張しただけの増産は必ずあるのであります。ただ終戦以来、これは数字が明らかにしておりますが、少くとも二十三年までは道路、飛行場、その他のために耕地が潰廃されておりまして、農民が開墾して耕地を拡張するよりも、このマイナスの方が多くて、耕地面積が減少しておつたのであります。やつと二十四年になつて開拓面積が多くなつたということは、数字を見ても明らかであります。今後私どもの望みとしては、演習地や飛行場に、少くとも農地は原則としてこれを使用しないという方法をとつていただきたいと思います。またもしどうしても使用しなければならないという場合には、農民に対しまして十分な補償をしていただきたいと思います。耕地の拡張といたしましては、いろいろ方法がございまして、農村の過剰労力を利用して小規模の開墾をするということも一つ方法だし、あるいはダムをつくりまして、灌漑をするということも方法でございます。こういうような農村の過剰労力を利用する、あるいはダムをつくるというようなことは、今日農村あるいは日本にとつて一番悩みの種になつておる過剰人口、それから雨というものを最も有効に、現在までマイナスのものをプラスに使用するということになりまして、今後国策として非常に大切なことではないかと思いますので、つけ加えておきます。ただ耕地の拡張で、私どもが現在最も手取り早くて、急速に、しかも全面的にやつていただきたいということ、そしてこれは効果的であると思います点は、北海道、東北における開拓、ことに北海道の石狩を中心とする広大な泥炭地の開発、それから関西、九州地方の干拓だろうと思います。この方面に対しまして、同家の大きな財政力が投資されることをわれわれは望んでおるわけであります。土地改良につきましては、私どもは全額国庫負担を要望しておりますが現在の農林漁業公庫の金利につきましても、これは高いので、もつと引下げていただきたい。また手続を簡素にしていただきたい、こういうことを考えておるのであります。公庫は、大体預金部資金を融資するのが建前じやなかつたかと思いますが、最近財政資金が八十億こちらの方へ流流れているようでございますので、この面だけでは、少くとも金利を下げるわけになりはしないかと思うのであります。また農林省の食糧増産五箇年計画につきましては、いろいろと批判する点もございますが、これは省きます。ただ一言、あの計画は非常に穀類偏重でございまして、私どもは少くとも日本の食糧問題を解決するためには、畜産、油脂食糧、そういうものを含んだ総合食糧計画でなければならない、かように思つております。またこれは非常に消極的な増産政策ではありますが、農林省では病虫害の被害が年々一割程度あると申しております。従いまして、これを完全に防げば一割の増産になるわけでございます。本年は西日本に水害がありまして、多分に病虫害の発生のおそれがありますので、この防除の方に万全を尽していただきたい。それには、まず現在植物防疫法によりまして、主要作物用の農薬が約三億円程度備蓄されておりますが、これなどは、少くとも全購連が今取扱つている農薬の一割にも遠しません。そこで私どもは、本年はこの備蓄農薬を一倍以上にしていただきたい。そうして、できれば三百町歩に一台ぐらいの自動噴霧機を設置していただければ、非常に施策としてはけつこうでないかと思つております。  まだまだこの増産の技術的なことにつきましてはいろいろ問題がございます。苗しろ等の問題がございますが、こういう問題は省くといたしまして、ただ食糧増産の問題で最も大きな根本をなすものは、何といいましても食糧は農民がつくつているということでございます。農民は食糧をつくつて、これを商品として売つて、その金で生活をしているものであります。これは申すまでもございませんが、そこで私どもは、農民が食糧をつくつて利益にならなければ、どんなりつぱな計画でも、それは机上のプランに終つてしまう、こう思うのでありまして、常に私どもはこの観点から、増産の問題は結局価格の問題に帰心するということを強調して参つたものであります。そういう観点から農家の生活を見ますと、昭和二十七年の全国平均農家一戸当りの収入を農林省経済調査によつて見ますと、昨年は二万八十七百十三円の黒字になつております。これは申すまでもなく、昨年は非常に豊作であつたということと、超過供出あるいは超過供出奨励金と自由販売によつて、曲りなりにも一万円米価が実現したということがあります。またそれをさらに見ますと、兼営によりますところの農業外収入が相当あるわけでありまして、これが二方八千八百三円になつております。さらに俸給とか、あるいは賃金による事業外収入が、一戸当り七万五千百六十八円になつております。これを見ますと、農家の黒字は、つまり農業外収入によつてささえられておるということでございまして、厳密に申しますならば、その農家の黒字は、農業の黒字にはなつておらないということが言えると思うのであります。こういう点で、私どもは農産物の価格の問題を考えておるのでありますが、最近は御承知の通り、主食以外は農産物が非常な下落を続けております。一方、生計用品はあまり上つておりませんけれども、農業生産用品は、肥料初め比較的に高騰しております。そうしてシエーレの拡大が現われておりまして、農業恐慌の様相さえ見られるようになつて来ております。今度配付されました資料の昭和二十八年度国民所得推計によりますと、勤労者の所得、あるいは個人業種所得のすべて、つまり自民各階層がみな二十七年度よりも本年度は上昇するという推計がなされておりますが、農業者の所得だけが九千百八十億から九千七十億に減少が見られておる。これは農業者ただひとりであります。普通に国民四割五分を占めておるといわれる農業者の所得が、国民所得のわずか二割にも及ばない。こういう状態では、やはり農家の生活は楽でないということがはつきりわかると思うのであります。一口に申せば、終戦以来一時よかつた農家の経済昭和二十三年を境にしまして、ずつと低下して参つておりまして、この状態では、農家が自分の力で経営を合理化するというようなこともできないし、食糧増産の意欲というものも盛り上つて来ないのではないかというふうに思われるわけであります。  私どもは、これらの問題を解決するためには、いつも主張しております農産物の生産費を引下げるということと、また生産費を償う農産物の価格を実現する必要があると思つておるわけであります。こうした意味で、今回国会に出されようとしております農産物価格安定法という法案は、ぜひとも実現していただきたい。これにはいろいろ注文もございますが、この際は差控えて、何とかこれを実現さしていただきたいと思うわけであります。生産費の低下につきましては、何よりも一昨年肥料の統制が撤廃されましてから、非常にこれが高くなつております。この肥料を安くしていただきたい。ことに日最近は、御承知の通り硫安の出血輸出の問題も物議をかもしているのでありますが、これの解決もぜひとも政治的にやつていただきたいと思います。ただこの解決の方策につきましては、輸出硫安と国内硫安とを切り離して解決しようとするような意向も一部にありますが、そういう考え方は、やはり輸出の出血部分を国内の消費者、農民に転嫁させることになりはしないかという危険がございますので、私どもは、これは一体として解決していただきたい。ことに輸出硫安に対してもし政府が補給金を出すようなことがございますならば、私どもは、その補給金は消費者である農民に直接補給していただきたい、こう思うのであります。そうすることによつて米の生産費を引下げ、米価決定に際しましても、一挙両得であると思います。私どもが生産費米価を主張して参ります根拠は、抽象的には食糧増産という看板もありますけれども、この根本の考え方は、食管法第三条に明記されておりますところの権利、すなわち政府が買い上げる米の値段は、再生産を保障する価格でなければならないという条項に認められている権利に基いて主張しているものであります。この権利は、占領中司令部の命令によつて蹂躙されて来たものでありますが、日本は独立したのでありますから、日本政府も日本の法律を忠実に守つて、米の生産費を保障していただきたいと思うのであります。申すまでもありませんが、内地米よりも外米が高いのであります。戦前は、少くとも昭和四、五年頃、あるいはその前から、ラングーン米やシヤム米は、内地米の四割程度の値段であつたのであります。大正の米騒動のときや、あるいは昭和十四年の朝鮮の大旱魃で食糧が不足を来し、大量に輸入したときでも、内地米の半分くらいの値段であつたと思います。今とは事情は違つておりますけれども、こういうことも、日本の内地米の米価決定には御参考になるかと思うわけであります。それにつきましても、日本経済全般の政策から言いますと、やはり低物価政策をとらなければならないような事情でございますし、米価は国民生活に影響するところが大きくなりますし、産業全体にも関係を持ちますので、消費者米価を上げるということは非常にむずかしい問題でございまして、私どもは、過去数年來二重米価を主張して参つたのでございますが、最近ようやくこれが政治的問題として日程に上つているようなわけであります。一日に申せば、米の生産費の価格は、経済的に引合う米価でなければなりませんが、消費者の支払う米価は、何としましても社会政策的な意味をもつて決定される必要が、現状からあるのではないか、かように思うのであります。また農民は米をつくつておりますけれども、同時に米の大きな消費者でございまして、大体四判程度の農民が米を買つて食べております。そういう建前から、この二重米価政策はどうしても必要な政策でありまして、御承知の通り、権威ある米価審議会におきましては、過去五年間一貫してこの方針を答申されて来ておるのであります。二重米価政策と申しますと、事新しいようにとられる向きもありますが、これは決してそうではなくて、すでに戦前におきましても、千三百万石の朝鮮米、台湾米を輸入しておるときでも、政府は内地米生産費を参酌して買上げ、これを売却するときは安い値段で消費者に売つておる、こういう制度を確立しておつたのであります。これは大正の時代から行われた古い日本の米価政策でございまして、現在におきましては、輸入米につきまして、政府は価格調整のための補給金を支出しておりまして、これがすなわち二重米価政策というふうに私どもは考えております。私どもの考えております二重米価政策は、こういう現在外米にとつております政策を、内地米にも拡張していただきたい、そういうふうに解釈しておるものでございます。なおこの二重米価になりますと、政府の支出がありますので、その財源をどうするかということが問題になるかと思いますが、私どもはその方の門家ではございませんが、少くとも日本の農民は、現在問題になつております社会保障制度の七百億の恩惠にも何ら浴しておりません。また戦後独立して、初めて今日旧軍人の恩給が復活しようとしておりまして、これに四百五十億円財源が捻出されておる。そういうときでありますならば、少くとも私どもは、日本の農民の、あるいは食糧増産の根本の問題を解決するために、何とかその財源は捻出され得るということを考えるわけであります。ことに防衛費の問題もございましようし、あるいは吉田総理が主張されております行政の簡素化等もあるだろうと思いますが、その面につきましては、専門でございませんから差控えておきます。また一部には、米の問題につきましては、これの統制をはずして自由にしたらいいという考え方もございますが、今日のように食糧の絶対量が不足しておりまして、またこの状態が容易に解決され、あるいはこの状態から脱却することができないという見通しの今日では、やはり統制をして行かなければならないのではないか。もしこの統制を一度はずしたならば、今度はどんな時代が来ましても、再び統制をするということはなかなかむずかしいここでございまして、この問題はよほど慎重に考えなければならない。現にやみ米が二万円代に高騰しております事実からみましても、統制の継続は、やはり今後も続けて行かなければならないのではないかというふうに考えております。さらに私どもは、食糧の配給を確保するためには、少くとも粒食用の麦、すなわち押麦用の大麦、裸麦、これも米と同じく、政府が買上げて配給するという統制の線に乗せなければ、日本の食糧配給の問題は解決しないではないかというふう思うのであります。現在は、麦は間接統制になつておりますので、このことは実際に行われ得ないのでありますが、少くとも政府は、この粒食用の麦をどうして確保するかということをやはり講じなければ、今日以後の食糧問題の円滑な解決はできないのじやないかと思います。麦の統制撤廃後におきましては、その中間におきます手数料が、工場と小売業者に非常に多くなりまして、卸売業者よりも、この上下の手数料が多くなつております。それからまた大麦、裸麦が、主として業者の方にこれが流れております。こういう点、あるいは押麦が東京よりも、東北単作地帯が高くなつておるというようなことを見ましても、混食用の麦が非常に重要になつて来ておるということを物語つておると私はうのであります。これは余談でありますけれども、単作地帯に押麦が適量にもつと入りますならば、米の供出は当然それだけ多くなつて来るんじやないかということも考えるわけであります。特にこの食糧の統制を継続し、あるいは増産をはかるという建前を今後政府がとりますならば、先ほど申しました二重価格制はどうしてもこの際実施していただきたい、こう繰返してお願いする次第であります。  また食糧に関連しまして、検査制度でございますが、私どもは、検査の手数料は撤廃していただきたいということを望んでおりますが、今回手数料が大幅に引下げられまして、半分の十円になるそうであります。このことも非常にけつこうだと思うますし、また今年の麦の検査等につきましては、災害のことを考慮されまして、適宜の処置がとられるようになつたことは、非常に喜ばしいと思つております。ただ私は、この検査制度でふしぎでならないのは、食糧とタバコでございますが、これを買い取る側の方で検査をするということであります。現在は食糧庁で検査をしておりますが、いくら政府でありましても、買手である以上は、売手の農民とは利害が一致せずして、やはり対立するのであります。そうい意味で、私はこの検査制度、検査の主管を少くとも農林省が握るならば、農林省の食糧庁でない、他の技術改良を担当する所管にするとか、あるいは地方庁に移すとか、そういうことが私は考えられるのではないかと思うのであります。  食糧の問題につきましては、いろいろまだございますけれども、少くとも終戦以来今日まで、食糧問題に関する限りは、日本の政府は、強権的な収奪政策をとつて来たということが言えると思います。今後私どもは、独立以後のこの事態に処しまして、少くとも主食生産に対しては、政府は保護政策をとつていただきたい、この方に切りかえていただきたいということを強調したいと思うのであります。  なお申し上げたいことは二、三点でございますが、この保護政策にきつましても問題があるのでありまして、政府が出します補助金が、中間で消えてなくなる場合があるのでありますが、少くとも私どもは、末端の部落の団体まで補助金が通るようにしていただきたい。今日農村では、部落は非常な負担を受けておりまして、部落長になる人がないというような状態でございます。戦時中も、部落団体に補助金制度があつたのでありますが、こういう末端の部落まで補助金が流れるような仕組みをとつていただきたいということをお願いする次第であります。  なお農民の問題については、たくさんの問題が山積しておりますが、今日まで日本の農民に対しては、利益代表機関が法的にないのであります。現在もございません。農業委員会全国協議会が今度法律が改正されまして、農民の利益代表機関になるといわれておりますが、あれは農地問題とか、あるいは供出割当を決定する行政機構の一部になつております。そういうものが積み上つて政府の補助金をもらい、政府の行政機構の一部であるそういう団体が、農民の利益代表機関であるとは認められないのでありまして、私どもは農民の意見を正しく政治的に反映し得る農民の組織を強化するために、農民組合法の制定を要望して来たのであります。この法律制定には、予算措置は伴わないのでございますから、どうか御研究の上、実現するようにお願いをしておきたいと思うのであります。  なお補助金につきましては、現在農業協同組合に補助金――この農協に対する補助金の問題もございますが、私どもは業種別の農協はともかく、供出の割当あるいは技術の指導とか、そういう公共的な仕事を担当している四種兼営の農業協同組合、これに対しては、やはり政府の補助金があつてしかるべきではないかと思うのであります。たとえば米の配給をするにしましても、末端の農協では少くて四枚の伝票を書いております。多いときには、一俵の米に六枚の伝票を切らされております。そういう煩雑な事務に従つておりますので、そういう農協に政府の補助金が行くことは当然であろうかと思うのでございます。  なお農村の問題として、先ほど人口の問題を申し上げましたが、農村の二、三男の問題が今非常に問題になつておりまして、これについてはまだ解決の方法がないのであります。私どもは、やはり国内の開墾事業を推進しまして、農村の二、三男をその方に向けるということ、あるいは農村に定時制の高校を普及いたしまして、農村の子弟に職業教育の機会を与えていただきまして、他の産業に転出する便宜をはかつていただくということも一つの方決ではないかと思つております。今農村の青年は、そういう勉学の希望に燃えておるものが、だんだん多くなつておることを申し上げたいと思います。  以上をもちまして陳述といたします。
  42. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ただいまの御意見につきまして御質疑がございますか。
  43. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 簡単に公述人にお伺いいたしますが、現在米の供出後の集荷を米穀商人にやらしているわけですが、その点についてどういうようにお考えになつておりますか。どういう方法で集荷することが、現在のやみ米が非常に騰貴しておるような現状から見て、食糧政策の上からいつて妥当であるか。  それからもう一つ、飼料問題についてはお話がございませんでしたが、総合食糧対策の上から考えて、有畜農業ということは、非常に重大だい思います。現在政府の施策としては、無家畜農家解消要綱に基いて、きわめてわずかな保講育成の政策がとられておりますが、これをもつて足れりとせられるかどうかということ。それからもう一つは本年度特にはなはだしい凍霜害並びに風水害のために、麦を初めとして雑穀のいわゆる餌料の不可が特に顕著なものがあると思います。これは畜産奨励の上からいつて重大な問題でございまするが、公述人はこの点についてどういうふうにお考えになりますか。簡単に……。
  44. 中村吉次郎

    中村公述人 簡単にお答えいたします。現在商人に米の特別集荷を持たせるようになつておりますが、私どもは、これはやはり統制機構を完全に実行し切れない、いけない制度だと簡単に申し上げておきたいと思います。  なお有畜農業につきましては、飼料の問題がすぐに問題になつて参ります。現在のような、ただ単に有畜農業の普及だけでは、飼料の裏づけがないのでございまして、やはりこれを維持するのに非常に困難である。従いまして、この飼料の問題について、何とか位を下げるような政策がとられなければならないと考えております。少くとも今までの無家畜農家解消運動は、農民に利益を与える前に、まず中間商人に大きな利益を与えたということは、事実だろうと思います。  それから凍霜害あるいは今回の風水害でございますが、これはやはり政府、資金の救済的な支出がなければ、ただ営農資金の融資だけでは、問題は解決しない。ことに今日の九州のああいう風水害の場合には、少くとも農民にただちに食糧を予えるということと、現金を与えるということ、つまり、昭和初年にとられました救農土木事業のような事業を起しまして、農民に現金をつかませるような政策がとられれなけば、急場のに合わない、かように存ずるわけであります。
  45. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 よろしゆうございますか。――それでは次の公述人に移りたいと存じます。旧軍人関係恩給復活全国連総会会長永持源次君に御意見を伺いたいと存じます。永持源次君。
  46. 永持源次

    永持公述人 本日ここに公述人といたしまして、昭和二十八年度予算案のうちで、旧軍人等の恩給に関係のある事項について、所外を述べさせていただく機会を与えていただきまして、まことにありがとうございました。  さて新聞紙の報道するところによりますと、日本政府は韓国政府に対しまして、韓国にありますところの日本人の私有財産の返還を要求しておられます。その理由として、へーグの陸戦法規で、個人の私財産には手がつけられないということとあげておられるようでございます。国内問題と国外の問題では、法律的に申しますと、大分趣が違うということは伺つておりますが、法の精神から申しますと、政府が旧軍人等に与えておりましたところの恩給権、これも一つの私有財産だと思うのでございます。これを連合国か七年の長きにわたつて停止をさせておつたということは、私どもとしてはまことに心外のことに思うのでございますがその問題はともかくといたしまして、平和条約が公布になりまして、効力が発効いたしましてから一年以上になりますのに、いまなおこの問題が未解決になつておるということは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。その辺をお考えになりまして、政府といたされましても、前国会にこの問題に関係する予算案並びに法律案を御拠出になりまして、衆議院におかれましてはその予算案は御承認になりました。予算案、法律案ともに不満なところはございますが、このお心持に対しましては、一同を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。が御承知のような情勢で、未解決のまま今日まで持ち越されておるのでございます。私どもの受けました精神的の打撃というものは、相当大きなものがございまして、また大多数の者が物質的の打撃を受けております。また恩給の顔を拝めませんで、政府並びに議会に対して、感謝の意を表するひまもなく、むしろうらみをのんで、あの世に旅立つて行く人が少くないのでございます。私の承知しておりますごく狭い範囲でも、この一月から他界しておる者が百名ぐらいになつております。  一方一般公務員の恩給について見ますと、御承知のように昭和二十三年以前に退職された方々の恩給が、その後に退職された方々の恩給と均衡がとれないというので、昨年議員立法でその是正の法律を制定されまして、その予算を暫定予算の中にお組み入れになりまして、すでにこの一月から支給をされております。のみならず今回の予算の中には、この十月から昨年一般公務員の給与改善、これに伴うところの恩給増額に応ずる予算増額計上されております。旧軍人関係の恩給とのつり合いのとれていないということは、別問題といたしますれば、まことに政府としても議会としても公正な取扱いだと私は思つております。願わくは旧軍人関係の恩給につきましても、この公正なお考えをもつてお取扱いを願いたいのでございます。具体的の問題につきましてはすでに口頭もしくは書きもので申し上げておりまして、特に新しいことはないのでございますが、せつかく時間をいただいたのでございますから、その主要な点について、しばらく御清聴を煩わしたいと思います。  第一は旧軍人関係の恩給と、社会保障との関係でございますが、これを社会保障にしたらよかろう、あるいは社会保障を加味したらよかろうというお説があるようでございます。一般公務員の恩給でも、あるいは民間会社の退職年金あるいは退職一時金にいたしましても、みな退職時の所得と勤続年数とを基礎として算定をされておられます。それに、薄給に甘んじ、命を投げ出してお国に御奉公した忠良の護国の戦士たちを差別待遇してよろしいという理由は、私どもはちよつと了解いたしかねる次第でございます。一般公務員の恩給もやめてしまえ、会社の退職年金、退職一時金もやめてしまえ、退職したらすべて社会保障にしろ、こういうことでございますれば、そのよしあしは別問題といたしまして、首尾一貫した議論だと思うのでありますが、そういう徹底をしたお話は伺つておりません。またこれは言うべくしてなかなか実現がむずかしい問題ではないかと思つておるのでございます。なお先般中国から帰つて参りました者が、ソ連の恩給制度を調べて来たのでございますが、それによりますと、ソ連でも軍人の恩給及び遺族の扶助料というものは、社会保障よりも優越してあります。そしてその金額は、やはり退職時の収入と勤続年数とを考慮して算定しております。従軍加算、航空加算、潜水艦の加算というようなものも認めております。ソ連の性質上、勤続年数の短い者には恩給をやらないことになつておりますが、恩給を支給する者に対しては、わが国の現在考えられておりますものに比べて、はるかに上まわつております。わが国では、御承知のように退職時の所得の五割以上にはどういう場合にも恩給をふやさないということになつておりますが、ソ連では八割までも支給することになつております。何も私はソ連のまねをするということを主張するわけでも何でもございませんが、ソ連のような国ですら、こういう制度があるということは、本問題の御審議上、大いに御参考にしていただきたいと思うのでございます。  次は国家財政との関係でございますが、私どもも、国の目下の情勢では、国家財政を無視してよろしいということは決して主張いたしません。ある程度の犠牲は忍ばねばならぬということは、十分覚悟しておりまするが、その犠牲の程度について、御承知と思いますが一応お話申し上げますと、恩給法特例審議会の提出されました答申ですら、昔の通りの恩給を復活した場合の金額を、現在の給与ベースにべース・アツプして勘定いたしました金額の半分以下になつております。それが政府の原案ではさらに一割余減額してあります。ベース・アツプと申しましたが、これは恩給法特例審議会の答申をなされたときのベースでございます。この十月からの一般公務員の恩給のベース、また一般公務員にいたしますれば、昨年の末にきめられました給与ベース、これについて換算をいたしますと、今度の予算額は所要額の三分の一になつております。それだけの犠牲が払われているわけでございます。一般公務員は今度の予算では前年度に比べて二割余も増額になつておる。また先ほど申しました給与ベースの上つたことのための増額、これは本年度は六%になつておりますが、これを一年に計算いたしますと、一割余になると思います。犠牲を払うのはもちろん喜んで払いますが、できるだけ公平な犠牲を払わせていただきたいということを念願している次第でございます。これは今すぐという問題ではございませんが、どうぞ将来に対して大いに御考慮を願いたいと思うのでございます。  次は恩給法特例審議会の答申が新聞に発表になりましたときに、所要金額の大部分というものは、戦死者の遺族の扶助料と傷病者に充てられているものでございますのに、有力な新聞ですらそこを誤解をして、とかくの記事を書かれ、それが国民感情に悪い影響を与えたということは、私どもまことに遺憾に思つているところでございます。また大将とか兵とかいう階級の名前が出ましたために、これまた国民感情に影響を与えていると思うのでありますが、私どもといたしましてはこの階級の名称の出ておりますのは、先ほど申しました退職時の所得を現わすところの代名詞に使われているのだと思います。現に今度の法律案もそうだと思いますが、前国会に出されました法案を見ますと、階級でなく金額で書いてあるところは非常にわかりにくいのでございまして、私どもと一緒に研究して絶えず恩給のことをやつております者ですら、とんだ間違いを来した例もございます。それに戦後出ましたいろいろの法令で、階級の名称があがつておるのもあるのであります。なお階級に関連しまして、上の者に厚く下の者に薄いという御議論があるのであります。前の恩給の額と、今回予算案にあげられております基礎になつておりますものとを比較してみますと、上の者では昔の金額の五、六十倍、下の者は百倍あるいは百倍を少し上まわつております。一般公務員ではこれが少くも百二十倍から百五十倍になつております。もう一つ別の言葉で申しますれば、旧軍人におきましては、一番上と一番下との比較は、上の者は下の者の九倍になつておりませんのに、一般公務員では十三倍以上になつております。また保安隊の一番上のいわゆる保安監の基礎恩給額は三十三万六円になつております。元大将の基礎恩給額は十六万四千八百円で、半額にもなつておりません。下の方でももちろん一般公務員より少うございますが、これは三割程度減額になつておる状況でございます。また戦死者の遺族の扶助料にいたしましても、一般公務員の方は、従來は上から下まで普通扶助料の何倍といつて、一定の倍数額だつたのでございます。旧軍人の方は、上の方と下の方の倍率が連つておりまして、下の方の倍率は上の方の倍率の二倍になつております。これはおはずかしい話でございますが、五・一五とか二・二六事件を軍で起しました。これは社会改造を理念としたものでございまして、この思想が言わず語らずの間に軍の間に入つておりまして、恩給の制定にもその観点が含まれまして、遺族の扶助料のごときは、ただいま申しましたような状況になつていたのかと思います。要しますのに、今度の政府の考えておられますところの旧軍人関係の恩給の規定は、過去現在における恩給の規定のうちで一番上に薄く、下に厚くできておる規定でございます。  以上で全般のことを終りますが、なお各項目について考えておりますことを申し上げますと、先ほども申しましたように、元々通りの恩給を復活していただいたのに比べて、三分の一になつておるでございますから、その中には私どもとして幾多の不満、不服があるのは、御想像にかたくないと思うのでございます。しかしながら、それを一々取立てて言つても切りはございません。また国家財政も考えなければなりません。それに先ほど申しましたように、早く恩給をいただきたいという念願を持つておる者が非常に多いのでございますから、いろいろな文句を言つて、そのためにごたついて、法の制定が遅れるということになるのは、一番の苦しいところでございます。やむを得なければ、政府原案のままでもよろしゆうございますから、できるだけ早くこれを通していただきたいということが、第一の希望でございます。しかしなから、以下そのいろいろの要望事項のございますうちで、相当重要で、しかも下級の者に影響が大きく、また実現もこの程度ならできはしないかと思われることについて、お話を申し上げたいと存じます。  第一は、戦死者の遺族の扶助料でございますが、いわゆる公務扶助料となつておるものでございますが、公務扶助料を受領する者に対しましては、一人も失格者が出ておりません。これは当然のこととは申しながら、まことにけつこうなことと存じます。しかしながら、先ほども申しましたように、所要金額の大部分というものは戦死者の遺族に充てられているのでございますから、どうしてもこの扶助料に手をつけなければ、所要金額を減らすわけには行かないのでございます。それである程度手を加えておられます。一般公務員の従来の公務扶助料は、先ほど申しましたように普通扶助料の四倍、主人が生きておられたときの恩給の二倍になつておりますが、これが今度は一般公務員も旧軍人も同じように改正になりましたが、この法律が施行になりましてから、六箇月間はまだ元のままでございます。前の戦争で戦死をいたしました一般公務員の遺族というものは、主人が生きていたときの恩給の二倍を上の方でも下の方でももらわれているのでございます。ところが旧軍人につきましては、上の方では主人の生きていたときの恩給を少し下まわつている。公務扶助料が主人が生きておりましたときの恩給より少し少いのでございます。また下の方は、主人が生きていたときの恩給の三割増しくらいになつているにすぎません。一般公務員との振合いはとれておりません。しかしこの問題は、かれこれ言つてもしようがございませんが、そういう状況であるということを特に御承知おきを願いたいのでございます。そして下の方の者の年金は、割合いに少いのでございますから、せめて月額三十円程度に上るように御配慮願いたいと思うのですが、さてこれを胸算用してみますと、年額が百億、本年度にいたしますれば七、八十億ということになると思うのでございます。先ほど申しました一般公務員の増額から見ますれば、このくらいのことは当然とも言えないように思うのでございますが、あるいはむずかしいかと思います。むずかしければ、十億でも十五億でもこの公務扶助料を御増額になりまして、下級者の公務扶助料を幾らかでもお増しいただきましたならば、遺族の方々も非常に感謝の念をささげられることと思いますし、また私どもも非常に感謝を申し上げる次第でございます。  次は、傷病者の問題でございますが、傷病者はやはり圧縮を受けておりますが、その増加恩給でことに犠牲を払つておりますのは、上級者と軽症者でざいます。いわゆる第七項症、第一ないし第四款症の者の年金を一時金にかえておられます。これは一般公務員も同じように改正になつておりますが、やはり過去の戦役につきましてはかわりませんで、こういう方々は年金をいただけるようになつております。希望によつて、一時金でもいいように法律案はできております。これは予算の関係もございましようが、お国のために働いた者に対して、まことに無情な処置ではないかと思います。できることならば、第七項症並びに第一ないし第四款症の者の年金を復活させていただきたいのでございます。ことに第七項症の者は増加恩給がなくなりますと、普通恩給の権利までなくなることになりますので、少くとも第七項症者の復活は御考慮を願いたいと思うのでございます。第七項症だけにして私が胸算用をいたしますと、一時賜金であるところの傷病賜金が減つて参りますから、それを考慮に入れますと、まず四億くらいあればいいのではないかと思うのでございます。  次は加算の問題でございます。加算は今回は一般公務員も旧軍人も全部廃止になりましたが、先ほど申しましたと同じように、過去に対しましては、一般公務員の方はやはり加算が残つておるのでございます。加算廃止の理由といたしましては、内地が戦場化しているから従軍加算はいらぬ、国家財政が苦しいから加算をやめる、調査が困難であるからして加算はやれないというようなことがあげられているように思います。そのうちで、内地の戦場化したという問題は一応ごもつともでございます。でございますが、お国のために命を投げ出しておるところの軍の特異性を考えますと、昔通りの従軍加算は別といたしましても、ある程度の加算は認められるのが至当ではないか、ましてこれを過去の日清、日露の戦役までさかのぼるということは、理論から申しますればまことにりくつに合わない、こう申せると思うのでございます。  次は国家財政との関係で、これもやむを得なければ犠牲を払わなければならぬと思つておるのでございます。しかしこの従軍加算がなくなるために――従軍加算があれば年金をいただく権利を持つておるのに、加算がなくなるためにこの権利をなくなす、いわゆるこの権利者が百四十五万人くらいあるのでございます。国が戦争に負けた、これらの人々は若い人であるとは申しながら、国が一応約束したことを破つてしまうということは、考えていただきたいと思うのでございます。これも無理やりにたくさん考えていただきたいというわけではなくて、すでに裁定を受けております者に対して、加算がなくなると年金の権利がなくなるというときに、これに年金を与えることについて特別の算定法を規定されておるのでございますが、それと同じような算定法を適用していただきたいと思うのでございます。  また調査の困難の問題でございますが、これも一応ごもつともなことでございますが、今申したように若い者が多く、そうして実際の恩給を支給開始いたしますまでには相当の年数があるのでございます。その間に十分調査はできると思うのでございます。ことにこの問題は戦死者には関係のない問題でございます。生きておる者、その中で病死した者もございましよう生きておる者だけでございますから、割合に調査はむずかしくないと思います。さてこの加算を今のようにして認めた場合、予算にどう響くかということを考えてみますと、大部分の者が若年停止の制限を受けておりますから、今すぐ恩給を支給する必要はございません。一方こういう者に予定しておりますところの一時恩給、これはあとでまた申し上げますが、この一時恩給がなくなりますので、むしろ予算といたしましてはここに余裕ができて来ると思います。数年後になつて初めて恩給を支給することになりますが、初めは半額、全額を支給する時分になりますと、先ほど申し上げましたように、どんどん年寄りが死んで行きます。結局国としては予算はほとんどふえないで済むというように私は想像をいたしております。こういう見地でこの最小限の加算ということについて御配慮を煩わしたいと思うのでございます。この加算がなくなりましたために、年金の権利がなくなるという者を救う手段といたしまして、一時恩給ということがあげられております。連続七年以上勤務した者はある方法で勘定をした一時恩給を支給して、それを兵にまで及ぼすということになつておりますが、実際兵で七年もとどまつておるということはまず少いのじやないかと思つております。それにこの一時恩給の制度は一般公務員にもございまして、三年以上の者には支給することになつておるのでございます。やむを得ずこの方法をとられる場合におきましても、七年を三年なり五年なりまで下げていただきたいと思うのでございます。しかしこれは予算にも影響いたしますから今すぐというわけにも行きません。むしろ予算の見地から申しますれば、先ほど申しましたように、加算を御採用になつた方がいいんじやないかと思うのでございます。  それからなお今回政府のお考えになつておるところでは、連続七年以下勤務した君は、その勤務はすべて恩給金額の算定以上はただ奉公ということになつております。一般公務員ではこれが一年、一年未満のものは勘定に入れないが、一年以上のものは途中が途切れましても、みんな勘定に入れることになつております。七年というのはあまりにも残酷なような気がするのでございます。たとえて申しますと、連続七年勤務して、間を置いて連続五年勤務した。総計で十二年勤務した下士官は、普通の考えでは年金がいただけますのに、七年として勘定をして一時恩給だけいただくということになつておるのでございます。この連続七年ということは、せめて連続三年、やむを得ないでも連続五年くらいまでお下げになつていただきたいと思うのでございます。これはそうたくさんはないので予算には大した影響はないのではないかと思つております。  最後にお願いいたしたいのは戦犯者の問題でございます。拘禁中の戦犯者には依然恩給を停止することになつております。戦犯者は大体におきまして部下の行為の責任罰を受けておるのでございます。そして七年間も拘禁をされ、その家族の者は非常に困つております。従来は未帰還者には恩給をやらないのだから、それとのつり合い上拘禁者にはやらないとのお話がありまして、一応ごもつとものように思つたのでありますが、今度は未帰還者の家族にも恩給を支給するようになつております。そうして未帰還者のうちにはあちらで依然拘禁されておる者もあるはずでございます。それとのつり合いを考えますと、ぜひこれは御考慮を願いたいと思うのでございます。外交上の関係もあると思いますが、今度の法律案はまだ拝見しておりませんが、前法律案で二十四条というものをきれいにすらつと削つてしまつたらいいんじやないかと思つております。これは削りましてもほかに影響はない、そうすればあまり目立たない。対外的にも大した問題はなくて済むんじやなかろうかと思つております。それからなお刑死者、獄死者、これらも公的の行為で、敵の手のために殺されたものでございますから、これを公務死亡としてお取扱いを願いたいと思うのでございます。これもぜひ御考慮を願いたいと思います。   以上いろいろ申し上げました。まだ申し上げたいこともたくさんあるのでございますが、大分時間も超過いたしましたからこの辺でやめておきますけれども、要しまするに、いろいろの関係もございますから、政府の原案そのままでもやむを得ませんから、なるべく早く通していただきたい。しかしながらただいま申し上げましたいろいろな点、公務扶助料、下級者の増額、七項症、第一ないし第四次症の年金、その他加算の失格者に対してだけ加算を考慮するという問題、連続七年の問題、戦犯者の問題、これらについて切に御配慮をお願いする次第でございます。長い間御清聴を煩わしましてまことに恐縮に存じます。  私どもの努力が足りませんので多くの者に生活上の脅威与え、また恩給をの顔を拝まないでなくなつて行かれる方々がたくさんあるので、まことに申訳なく思つておるということを申し添え、最後に漏れ承るところによりますと、この恩給停止の命令が連合軍から出ましたときに、当時の政府の方は何とか思いとどまつてくれということをお願いに行かれたそうでありますが、そのときにGHQの方のお話では、従来はソビエトの提案というものはみんなけ飛ばしていた。これが初めてのソビエトの提案を採用したものであつて、もう一度出た命令であるから、いまさら取消すわけに行かないというような回答があつたということでございます。こういうようないきさつもある旧軍人関係の恩給でございます。どうぞその辺をお考えいただきまして、一日も早くできるだけ有利な予算並びに法律案を成立させていただくよう切に切にお願いして私の公述を終ろうと存ずるのであります。長い間どうもありがとうございました。(拍手)
  47. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ただいまの御意見に関しまして御質疑がございますか。
  48. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいま公述人の方の御説明によつて大体御趣意のあるところは了承されたのでございますが、お尋ねを申し上げる前に、私一個の意見の一端を申し上げてから、露骨なことをお伺い申し上げたいと思います。  私個人は、恩給問題に関しては平素文武平等なる待遇をすべきものである、決して文武間に差別待遇があつてはならない、かような信念を持つておるものであります。昭和二十一年の二月の一日に、マツカーサー覚書によつてわが国軍人軍属諸君の恩給がストツプになつた。その後ここに約七年半の星霜をけみしたのであります。終戦後私の非常に心配になつ一つは、第一次欧州大戦の直後において、当時の多くの敗戦国における軍人軍属、特に傷痍軍人等がプラカードを立てて大デモンストレーシヨンをやつて、待遇を与えよ、あるいは年金、あるいは恩給を復活せよというような叫びを街頭において、あるいはホールにおいて行われておる光景等を写真帖その他で見て、わが国において敗戦後数百万の軍人軍属諸君の恩給がストツプになつた。敗戦の責任はひとり軍人諸君のみが負うべきものでないことは申すまでもありませんが、終戦後における国民感情は軍人諸君の責任にのみこれを帰そうとする傾向が濃厚であつた。その時代、もし第一次大戦直後のように、諸外国にあつたような、これが社会問題化してはたいへんである。願わくばわが国内においてはプラカードを立てるようなことがないように、そのことを心ひそかに私は念願して参りました。幸いに今日まで旧軍人恩給関係者のいわゆる全国大会的なものもなく、謹慎といいましては語弊がありまするが、小さくなられて、権利を主張される上においても、大げさな態度をとられなかつたというようなことは、これはあなた初め御指導、御誘掖のたまものであると私はその点欣快に考えております。同時に昨年の四月、閣議決定の上、いち早く吉田総理が、旧軍人軍属の恩給は、すみやかにこれを復活する処置をとる旨、最初は参議院において述べられ、また本院においても述べららました。その英断に対して私は当時敬意を表しておつたものであります。そこで恩給局の当時のずさんな調査によると、軍人恩給を復活すると一千六百億程度予算が必要であるかのような口吻を発表された。それが大げさに新聞に発表されました。ところが恩給法特例審議会においては六百五十億ですか、そういうことがやはり当時発表されました。今回政府より国会に要求されている予算は、御承知の通り四百五十億であるというような径路を経て参つたのであるが、ただいまこの公聴会においても問題になつておる点は、先ほど予算委員の同僚のお一人から、大将とか大佐とか、あるいは尉官とか何とかいうような階級的な恩給の復活ではなく、これを五段階か六段階にわけて、たとえば将官級といいましようか、あるいは佐官とか、そういうふうに五、六の段階にわけて、結論においては、上に薄く下に厚く、多分に社会政策的な意味を含めて、さようなわけ方において恩給を復活させることがどうかというような御意見の御開陳もあつたようであります。それにある公述人のお一人は、大体において御賛同の御答弁があつたようでありますが、恩給復活連絡会における御調査の結果は、元通りの旧軍人恩給関係のやり方でやるのと、ただいま申し上げたような五、六の段階にわけて支給するのと、いずれが公正であるか、――私はこの際公平という言葉を用いませんで公正という言葉を使います。形の上から公平論じやなく、内容の上から、たとえば将校であるならば、陸海軍の少尉に任命されると、将来の恩給の一部の負担としての納付金が確かにあつたはずであります。兵の場合は納めないというようなことがあつたのであります。内容的に、本質的に五、六の段階にわけて支給することと、それから従来のやり方でやることと、いずれがほんとうに納得が行くか。この点どういうふうにお考えであるか、これが第一問であります。
  49. 永持源次

    永持公述人 御返事申し上げます。これは先ほどももうすでに申し上げたつもりだつたのでございますが、恩給の本質といたしまして、退職時の所得というものを基礎にして金額を計算するというのが建前になつておりまして、一般公務員としてもまた民間の会社においても、退職年金でも、退職一時金でもそういうふうに勘定されております。従いまして、旧軍人関係の恩給につきましても、同じシステムをとるのが公正な方法だろうと思つております。
  50. 庄司一郎

    ○庄司委員 その点は了承いたしました。第二点は、軍人恩給がストツプになつて以来七箇年半に相なりますので、この間にはこの軍人恩給が復活した場合、最高額の恩給としてちようだいし得るであろうところの、たとえば陸海軍の大将、中将あるいは少将とかいう、昔のいわゆる閣下以上の御諸君が相当御年輩であるから死亡者が相当あられたと思います。先年大井成元大将なんか、元の従卒といいましようか、そういう方の木小屋で栄養失調のためか、あるいは老衰のためかわかりませんが、さようなところにおいて悲惨な終りを遂げたというような悲しい新聞の報道を見たのであります。陸海軍の少将以上の御諸君は、年輩においてもあるいは七十歳以上というような方々多いのではないか。過去七箇年半の間の統計といいましようか、そういう御調査があるかないか。あるいは本年になつてからお気づきの高齢者の元軍人軍属の死亡者等の頭数がどれくらいあられるだろうか。何か参考のために、もし御調査があれば承つておきたいと思います。
  51. 永持源次

    永持公述人 これも先ほど申し上げましたが、私の知つております狭い範囲において、本年の一月から高齢者で恩給の顔を拝まないであの世に旅立ちました者が百名くらいおります。  それからただいま高齢者の軍人だけお話がございましたが、高齢者の未亡人がまた非常に困つておられます。私がごやつかいになりました先輩の未亡人で、今まで扶助料があつたのがとめられて、非常にお困りになつておる方がたくさんあります。またそれでなくなつて行かれた方がたくさんあります。そのために家庭の平和を害しているというようなのもございまして、こうういうのは何とか早くしてあげなければならないという念願に私ども燃えこいる次第であるということをついでにつけ加えておきます。
  52. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいま後段においてお述べくださつた扶助料の、もつぱら末亡人の方々であるが、ぼくは東北の者で仙台のずうずう弁ですが、いわゆるおばちやん、あるいは陸海軍の元の将官とかあるいは大佐、中佐等の未亡人にして、夫が存命中は、ある一定額の恩給の支給を受け得る方で、恩給が復活すれば半額ちようだいできる方が、半額どころか、全然ちようだいできないがために、極端な生活困難に陥つているというような未亡人も相当ある。それらに対しては、何らか生活保護法というような法律の発動によつて、救済の実をあげ得るというような例がないものでございましようか。これを伺います。
  53. 永持源次

    永持公述人 これはあるということは聞いておりまり。何のだれがそういうことになつているという具体的の例は、私は今持ち合せておりませんが、現にそういう人はございます。
  54. 庄司一郎

    ○庄司委員 公述人におかれましては、恩給法の根本原則が、まず第一は戦死者等の遺族、次は傷痍軍人、第三には生存されておる皆さんの関係であるというような原理原則を大体御承認の上において、ただいまの公述をなされたのでございましようか。
  55. 永持源次

    永持公述人 そういうつもりでおります。ただ申し上げておきますのは、恩給法特例審議会のときには、初めはそういうような意味でありましたが、答申案は、戦死者の遺族、傷病者、老齢軍人というものを大体同じように文句の上では書いていたように記憶しております。それだけちよつとつけ加えておきます。
  56. 庄司一郎

    ○庄司委員 最後に永持さんにお願い申し上げておきますが、この予算委員会はまだ来月まで延びておりますので、もしその間にあなた方の方で御調査ができるならば、大体最高齢の七十歳以上、特に最高の恩給を受くるであろうところの陸海軍の将官級の生存者、その階級別といつては妙ですが、何か陸海軍の大将などは、現在三十何名しか生存されておらないようなうわさも聞いておりますが、そういう調査統計がありましたならば、ガリ版等に印刷されて、審議上の参考資料に御提出を願つておきたいと思います。これで終ります。
  57. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ほかに御質疑ございますか。――ないようでございますから、永持源次君の公述は終ることにいたします。  なほ公述人の宇佐美誠次郎君は、本日御都合によりまして御出席いたしかねるとのことでございますので、同君の公述は明日の公聴会においてお伺いするようにいたしたいと存じます。御了承をお願いいたします。  本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時から公聴会を開くことにいたします。  本日はこれで散会いたします。     午後四時七分散会