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1953-07-06 第16回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月六日(月曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 池田正之輔君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    小林 絹治君       佐藤洋之助君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       田中  元君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       櫻内 義雄君    中村三之丞君       古井 喜實君    島上善五郎君       三鍋 義三君    武藤運十郎君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       中村 高一君    平野 力三君       三宅 正一君    石橋 湛山君       河野 一郎君    三木 武吉君       黒田 寿男君    辻  政信君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         郵 政 大 臣 塚田十一郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  前田 正男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         厚生政務次官  中山 マサ君         建設政務次官  南  好雄君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 七月六日  委員山崎巖君、伊藤好道君、福田昌子君、中居  英太郎君及び北れい吉君辞任につき、その補欠  として佐藤洋之助君、三鍋義三君、島上善五郎  君、中村高一君及び河野一郎君が議長の指名で  委員に選任された。 同日  今澄勇君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事澄委員委員を辞任され、さらに委員に選任されましたが、理事補欠選任を行わなければなりません。このことは先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御異議なしと認めます。よつて今澄勇君を理事に指定いたします。     —————————————
  4. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題といたして質疑を継続いたします。横路節雄君。
  5. 横路節雄

    横路委員 一番最初経済審議庁長官お尋ねをいたしますが、吉田総理は六月二十二日武藤委員質問に答えてこういうように言われておるのであります。わが国自衛力は、アメリカ軍駐留を必要としないようになるまで漸増すると言つておりますし、千四百五十億の防衛分担金保安庁費で、再軍備費用であるなどとは物笑いであると答弁をされているのでありますが、経済審議庁といたしましては、一体わが国の再軍備費用が、国民所得のどれだけであれば、国民経済を破壊しないでさらに民生安定がはかられるか。またその場合における国民所得の大きさ並びにその場合に要するところの再軍備費用の大きさというものは、一体わが国経済並びに国民生活安定という点から、どういうように経済審議庁ではお考えになつておられますか、その点についてお尋ねをいたします。
  6. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。わが国経済がどのくらいになつたら自画力漸増ができるかという御質問と存じますが、私はただいまのところでは、国民生活の安定と生活水準の同上と申しますか、それをやるということにあるといたしまして、それがどのくらいになるかということを、私の試案といたしまして五年先にどうなるかということを研究いたしておる次第でございます。その研究の過程におきまして考えますことは、ただいまのところではなかなか軍備とかいうようなことはできないだろう、こういうような結論を持つて臨んでおる次第でございます。
  7. 横路節雄

    横路委員 ただいまの経済審議庁長官お話では、私の質問に答えて、ただいま経済審議庁としては五箇年間を考えた、いわゆる五年間として国民所得がどういうようにふえて行くか、その国民所得内容におけるところの再軍備費用がどの程度であるならば、いわゆる防衛費恥がどの程度であるならば、国の経済を破壊しないで国民生活安定がなされるかという点については、ただいま大体五年間というものを目途として立案中であると言われておりますが、その点についてはどういう案であるか御答弁を願いたいのであります。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お答え申し上げます。私の言葉が足りませんで遺憾でございますが、ただいま私の考えておりますのは、特需によりまして日本国力以上の生活水準になつているとは、私はおぼろげながら考える次第でございます。それを特需は漸減して行くだろう、こういうことを目標に置きまして、特需がなくなつても、国民生活のただいまの水準が切下げられずにやつて行ける、こういうような経済上の観点から五年くらいの先の見通しを考えておりまして、五年以内に軍備をするとか、防衛をどうするとかいうことにはまた触れておりません次第であります。
  9. 横路節雄

    横路委員 経済審議庁長官に重ねてお尋ねしますが、防衛費国民所得の大体何パーセントであるならば、国民生活が破壊されないとお考えになつておるのか、この点については経済審議庁としては当然何かの具体的な案を立てていらつしやるだろうと思う。その点についてひとつ明らかにしていただきたい。いわゆる防衛費用ですな。保安庁費防衛分担金等ひつくるめたこれらの費用は、国民所得一体何パーセントであるならば、国の経済が破壊されない、あるいは国民生活が安定するというのか、その点経済審議庁としてはどういうようにお考えになつておるか、具体的な数字をあげて説明していただきたいと思います。
  10. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。われわれといたしましては国内意治安を維持するために、やはり警備力警備のために必要な額はあると思いますけれども防衛力という意味におきまして、どのくらい国民所得パーセンテージを占めるかどうかということは私はまだ考えておりません。
  11. 横路節雄

    横路委員 経済審議庁長官お尋ねしますが、あなたは防衛力については一体国経済状態からして何ぼであるか、全然考えていないなんてそういう答弁があり得るはずがない。防衛分担金、さらに保安庁費その他をひつくるめて国民の総所得の何パーセントあるならば、国の経済が破壊されないかという二とを開いている。防衛分担金も入れて言つている。吉田総理大臣はそれもひつくるめて千四百五十億程度では物笑いになると言つているから、経済審議庁長官には一体何パーセントであればいいかと言つている。保安庁費並び防衛分担金を入れての話をはつきり答えてもらいたい。そういうことがわからぬという話はない。わからなかつた大臣をやめたらいいんだ。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。われわれとしまして今治安を維持するためにも、もつと警備と申しますか、充実しなければならぬと思いますけれども、国の経済がまだそこまで行つておらぬのでございますから、どのくらいパーセンテージが行くかということは、社会の変化の情勢、ただいまであればどうにもできないような情勢でございますから、これをできるだけ国民生活水準を上げ、民生の安定をするに没頭する次第であります。
  13. 横路節雄

    横路委員 経済審議庁長官に重ねてお尋ねしますが、あなたは経済審議庁として一体国民所得の何パーセントというものを考えてやつているのか、何ぼだかわからぬ、何ぼでいいか適当にやつているというそういう話はありません。現在千四百五十億を考えている点においても、今年のいわゆる国民所得から割出しているそういう分について、あなたがいわゆる昭和三十二年についてもそういう計画のもとにやつている。そういうものを経済審議庁として何ぼだかわからぬなんというばかな話はない、ぜひ具体的に話をしていただきたい。もしもあなたがわからなかつたら、そういう案を立てているのかどうか、全然そういうものについてわからぬならばわからぬでもいいのですが、重ねてお尋ねします。
  14. 岡野清豪

    岡野国務大臣 まつたくそういうことを考慮に入れられない情勢でございます。とにかくわれわれといたしましては、国民経済をもつと充実して行かなければならぬ、そういう意味におきまして、経済上の問題だけで、防衛力考えておりません。
  15. 横路節雄

    横路委員 そうするとただいまの経済審議庁長官答弁は、いわゆる現在の国民生活からいつて防衛力というようなものについては全然考慮していない、こう言つている、その通りでよろしゆうございますか。防衛力ですよ。
  16. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は治安力という意味において、すなわち先ほど申しました国内治安の必要なる警備というものにつきましては考えております。むろんそれは今予算に出ている通りでございます。しかしながらそれ以上に進んで行くということには、これは国力が許しませんから、それを三十二年までにどれくらいにわれわれが、ただいまの特需減つても今日の生活水準を下げずに行けるかということを研究しているわけであります。
  17. 横路節雄

    横路委員 経済審議庁長官お尋ねしますが、あなたは国内治安確保については警備力でいいと言つている。あなたの言う警備力とはいわゆる保安隊だけを言うのですが、現在国の財政の中では明確に防衛分担金を組んでいるではありませんか。われわれはこの防衛分担金保安庁費と両方ひつくるめてものを言つている。防衛分担金については全然国の経済関係ないから、これらについては考慮しないというばかな話はない、そうすれば防衛分担金は全面的に削除してもかまわないというのですか、その点について私はお尋ねしているのです。その点について私たちは防衛分担金とそれから保安庁費と両方ひつくるめて、いわゆる国の防衛自衛さらにあなたの言う警備力というような点についてひつくるめて考えても、それらは一体国民所得の何パーセントであるならば国の経済が維持でき、国民生活が安定できるかと私は聞いている。その点もう一度はつきり答弁してもらいたい。
  18. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はただいまの程度でいいと思つております。
  19. 横路節雄

    横路委員 私はあとでまた審議庁長官お尋ねしますが、ただいまの程度でと私は聞いているのではない、国民所得の何パーセントかと聞いているので、そういう具体的な数字についてお答えができないというのははなはだ遺憾ですが、また重ねて聞きます。  次に私は犬養法務大臣お尋ねをいたしますが、現在の国内においてこの一月から六月三十日まで、この二十八年度の半年間においてわが国内において国の治安を乱すところの集団的、暴力的、暴動的ないわゆる暴動騒擾一体起きたかどうかということが質問いたしたい第一点。さらにそういうようなことについて現に保安隊が持つている高射砲大砲戦車というようなものの出動を要するような、それが出動しなければ集団的な、暴動的な、武力的な暴動について鎮圧を予想できないような、そういう集団的な暴動計画がこの一月から六月三十日まであつたかどうかという点について、この二点をまず最初お尋ねいたします。
  20. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。御承知のように昨年の七月以前、すなわち五月、六月、七月、メーデーあるいは名古屋の大須事件というようなものが次々に起りまして、七月十五日に御承知のの徳田論文がありました。それ以来表面に現われた集団的な騒擾事件あるいは暴力主義的破壊運動というものは現われておりません。ただいまお尋ねのような期間においても表面こういうものは出ておりません。  それでは今後どういうことになるかという問題でございますが、表面いかにも穏やかな現象を見せておりますけれども、地下に流れている底流といたしましては、依然として軍事訓練が行われておりますし、現に私が再度にわたつて最近関西に視察に参りましたときも、あたかもその前後において、二箇所にそれぞれ軍事訓練の行われた跡が、ピストルその他を撃つた跡などがありまして、依然として警戒を要すべき状態にはあると存じます。
  21. 横路節雄

    横路委員 法務大臣に重ねてお尋ねいたしますが、そうしますと、第一点の集団的暴力的な、さらに武力を伴うような暴動騒擾については、この一月から六月末まではない。しかしそれに類するような軍事訓練と称するものはあつた。その軍事訓練内容ですが、いわゆる保安隊が、現にこの間大規模な演習をいたしました。これについては戦車も出ましたし、大砲も出ましたが、今法務大臣がおつしやつたところの、集団的な武力的ないわゆる騒擾計画というような軍事訓練と称するものは、そういう戦車とか大砲とかいうようなものをひつぱり出した計画であつたのか、それともピストル竹やり程度であつたのかさらにそういうものには相当大がかりなトラックとかいうものが出たのか、そういう内容についていま少し具体的にお話をしていただきたい。
  22. 犬養健

    犬養国務大臣 お尋ねでございますから、少しく詳しく私の見解を申し上げたいと思います。昨年の七月十五日に徳田論文が出まして以来、表面に出ての暴力主義的破壊行動というものは、今のところ跡を絶つておるわけでございます。しかし率直に申しますならば、今後それではわれわれは手ぶらで安心してよいかというと、私どもはそう考えておらずに、準備をしておるわけであります。と申しますのは、これらの暴力主義的破壊運動というものは、国際的な連関性を持つているのではないかというところを、私どもが注目いたしておるわけでございます。従つて昨年の七月以来、表面暴力主義的破壊運動が現われないのは、個々の土地においてそういう暴力行動はよくないといつて自覚してやめたのではなくて、ある関連性を持つて、しばらくそういう運動はやめておいた方がいいということでもつてやまつているという観念を持つているのであります。ことにそれは国際的な関連性を持つていると考えておりまして、一朝国際情勢において、暴力主義的破壊行動がよしと見られる時期が来たならば、起らないとも限らない、絶対に起り得ないという態度を当局が持つのは、当局任務を十分に尽していることにならない、こういうふうに考えているのでございます。なぜ国際的関連性を持つているかということは、一々ここで申し上げるのも何かと思いますが、一番著しい、私ども研究の対象となつている一つとしましては、昨年のメーデー騒擾事件でありまして、あのメーデーが五月一日に行われまして、同じ月にフランスにおいて、アメリカのリツジウエイ司令官帰れという運動パリにおいて行われましたが、このときに日本メーデー騒擾事件行つた人人階級別といいますか、それとパリで行われた騒擾事件の人々の種類わけとが、偶然かもしれませんが非常に一致している点がある。すなわちこちらでは学生朝鮮人、それから常勤的な共産党員パリにおいては、学生アルジエリア人、それから常勤的な共産党員、両方ともプラカードをはずすとすぐ騒擾の武器に直せるというのが非常に類似性を持つておりますので、私ども責任ある当局としましては、これらの類似性を真剣に今探究いたしておるわけでございます。従つて今静かであるからもう安心していいという考え方を、私どもは持つておりません。また戦車を繰出したり何かする必要があるかないかということになりますと、どうも私はちよつとそれについて専門的なお答えをしかねるのでありますが、大体原則として、同時多発的な騒擾事件が起りましたときは、これをとりしずめる方が、一段と有力な構えをしていなければ、なかなかむずかしいものである。突発のときは当局は受身でありますから、それをとりしずめるには、一段と有力な構えが必要であるという原則は、ここで申し上げ得ると存じます。
  23. 横路節雄

    横路委員 ただいまの法務大臣の御答弁で、この一月から六月までにおいては、具体的にそういう大がかりな暴動はなかつた。さらに計画についても、まあピストルを撃つた形跡はある。こういう程度のものであるという点については、ただいまのお話でわかりました。なお、あとで関連してお尋ねしたい点もございますが、総理大臣お尋ねいたしたいと思います。  六月二十二日の武藤委員質問に対しまして、吉田総理はこういうようにお答えになつておるのであります。自衛力漸増というのは、アメリカ軍駐留を必要としないように至るまで、自衛力漸増する、こういう御答弁があつたわけでございます。そこでお尋ねいたしたい点は、それならば自衛力漸増して、アメリカ軍駐留を必要としないという時期は、一体吉田内閣としてはいつごろであるとお考えになられているのか、その点についてまずお尋ねいたします。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。これは常に申す通りでありますが、米国軍としてはなるべく早く日本から引揚げたい。また日本国も、いつまでも外国の力によつて防衛をいたさなければならぬということは、好ましくないのでありますから、双方なるべく早い機会に、日本からアメリカ軍引揚げたいのですが、それは一方においては国力が伴う問題であります。日本としては、敗戦の結果国土の半ばを失い、また戦中戦後を通じて国土相当荒廃いたしております。この荒廃を防ぐためにも相当費用がいり、また荒廃した国土を十分に再建するためには、設備等にも相当金がいるのであります。戦後の日本としては、そのように国土荒廃に対する設備をしたりいろいろな必要な費用がいるので、かりに防衛費が必要であつても、ただちにその防衛費を必要なだけまかなう国力が今日ないから、その国力のない間、安全保障条約によつて日本防衛をはかる。しからばいつ日本国力充実して、そしてみずから守るだけの力を持つに至るかというと、これは国力の発展に伴うことがありますから、今日計算して何年後というようなことは、これは計算することがむしろよろしくないのであつて、まず国力充実あるいは国土荒廃を防ぐためのいろいろな費用をまかなつた後に、なお余力があつたとき防衛力を強化いたすほかないという考えで、安全保障条約を締結するに至つたわけであります。いつになるかということは、これは今後日本国力充実——日本国力充実ということは、結局国際情勢伴つて日本国力が発展するので、あるいは日本の輸出を増加するというような、いろいろな原因が伴つて、そうして国力充実するのでありますから、これは予定のできない条件を持つているのであります。ゆえに国力充実をはかるためには、むろん計画は立てますけれども、今日何年たつたならばというような、数字的の説明はむずかしいと私は思つております またしない方がいいと考えております。
  25. 横路節雄

    横路委員 吉田総理に重ねてお尋ねいたしますが、やはり国力充実ということになれば、政府としては、当然その点については通産省あるいは経済審議庁、さらにただいま総理お話しているアメリカ駐留軍を必要としないというためには、やはり防衛力漸増という形で、保安庁をしてそれぞれ防衛計画というような長期計画について、立案をさせなければならないと私は考えるのであります。全然そういういわゆる長期計画について案を立てないで、出たとき勝負でもつて、いつになるかわからないということは、私はこれは吉田内閣としては当然とらないと思うのでございまして、そういう点については、一体総理大臣としては、所管のどの大臣をして国力充実についての長期計画考えさしているか、お考えをひとつお述べをいただきたいと思うのであります。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 経済増進については通産省経済審議庁等において計画を立てております。また立てることを慫慂いたしております。また保安隊漸増計画についても、当局としては研究はいたしております。しかしながら、しからばこれをただちに発表して、そして世間に問うということは、これはいまだその時期に達しておらないと考えておりますから、発表はいたしません。
  27. 横路節雄

    横路委員 私は経済審議庁長官に重ねてお尋ねしたい。今総理大臣お話のように、わが国のいわゆる自衛力漸増というものは、国力充実と関連している。従つて経済審議庁としては、当然国民の総所得一体毎年どれだけ累加しているか、どれだけ国の総所得の中において国の財政が許すか、それが一体自衛力漸増にどの程度であるならば、国の経済を破壊しないかということを考えることは、当然経済審議庁長官としての任務ではございませんか。今総理大臣がおつしやつた保安庁には長期計画を立てさせているけれども、これはまだ案の段階だと言つておるが、あなたの方には立てさせておると言つている。それを先ほどあなたは、私としては何ら考えていないと言つているが、それは一体怠慢ではございませんか。その点もう一ぺんあなたにお伺いしたい。
  28. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は経済自立というものを目標といたしましていかにしたら日本国力増進して行くかということに主点を置いてやつておるのであります。むろんわれわれといたしましては、御承知通り五兆三千八百億でございますか、これが二十七年度の国民所得、それからまた三十二年度あたりになりますと六兆七千億くらいになりはせぬかというような推計をいたしております。これは研究中であります。これは事実といたしまして、われわれはいかに国力増進して行くか、それに対してはどういう手を打つてつたら、増進ができるのかということを研究しつつあるのであります。一に経済自立によつて国力がいかに伸びて行くかということだけを研究しておるわけであります。
  29. 横路節雄

    横路委員 私は審議庁長官としては、はなはだどうもふに落ちない答弁だと思う。今吉田内閣として最大の問題は自衛力をどうやつて漸増するかということなのです。それに対しまして、防衛分担金は国の財政からどういう割合を占めるか、さらにその問題について保安庁経費を入れて……。     〔発言する者あり〕
  30. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。
  31. 横路節雄

    横路委員 いわゆる自衛力というものは一体どうなるか、その点について、ただあなたは経済力増進という点だけを考えて、防衛分担金保安庁経費を入れた自衛力というものについては、経済審議庁長官としては何ら考慮していないということは、吉田内閣の閣僚の一員として、はなはだ不穏当だと思う。その点考えてないのですか。案はあるのですけれども出せないというのですか、どちらですか。重ねてお尋ねします。
  32. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。日本自衛力漸増ということは、結局国力増進ということが基礎にならなければならぬと思いますから、国力増進ということに対してわれわれは考えておりますが、防衛力漸増ということは全然ただいま私は考えておりません。
  33. 尾崎末吉

    尾崎委員長 関連質問を許します。和田博雄君。
  34. 和田博雄

    ○和田委員 ただいまの経済審議庁長官の御答弁は、はなはだ私は遺憾だと思うのであります。経済審議庁として国力充実考えておる、それはけつこうであります。しかし国力充実考える場合には、どうしたら一体国力が充実するかということを同時にお考えになつておると思うのであります。これの方法としては、やはり経済審議庁で持つておられるそういう計画の中には、財政投資という面もございます。国が多くの力をそれに注がなければならぬのであります。そのときに、どれだけの防衛費がいるかということは、国力充実をはかつて行く上にはどうしても考慮しなければならぬ一つの大きな要素だと思うのであります。これは経済的には非常に消極的な意味しか持たないけれども国力充実をはかつて行く上には考えなければならぬ。これを無視しては国力充実をはかつて行くということは、経済的には私は言えないと思います。ですから国力充実をはかつて行く上においても、国が年々の国力充実をはかつて行く手段をとるときに、国の予算の中からどれだけの防衛費一体支出されるかということは、少くとも計画をお立てになる以上は考えざるを得ないものだと思います。もう一度その点についてはつきりとした御答弁をお願いいたしたいと思います。
  35. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私といたしましては、先ほどもるる申し上げました通りに、国力充実して、そうして経済力に余裕ができなければ、いわゆる自衛力は、国際情勢に処して必要であるというものが出て来ない。ただいまの段階におきましては、われわれといたしましてはどうしても出て来ない。ただいまの段階におきましていろいろの経費の問題を見ますと、国民所得の三%くらいになつておるはずです。二十八年度は二七%、これはうろ覚えでございますからはつきりいたしませんが、少くとも三%前後の経費を使つておるわけであります。私は現状で行かなければ、日本国民生活は非常に水準が下つてつてしまうと考えております。
  36. 横路節雄

    横路委員 今三%という数字が出ましたから、経済審議庁長官に重ねてお尋ねいたします。自衛力国民所得の大体三%というのは、大体イギリス、ベルギー、オランダ程度なのです。そこで私があなたにお尋ねしたい点は、わが国が完全にアメリカ駐留を必要としないような自衛力は、一体国民所得のどの程度であるならばいいとあなたはお考えになるか、それは当然長期計画の中で考えなければならぬと思うが、その点についてお答えを願いたい。
  37. 岡野清豪

    岡野国務大臣 自衛力は何パーセントであるかということは、ちよつとわからないのです。そのときどきの情勢によりまして、——いつも保安庁長官が言つておりますように、今、日本でほんとうに自分自身で自衛をして行こうといつたら、アメリカ以上の軍備をしなければ太刀打ちできないのじやないかと考えます。そういうことは別問題といたしまして、ただいま何パーセントくらいが妥当であるかということは、国際情勢並びに国内経済情勢から判断しまして、遺憾でございますけれども私は今わかりません。
  38. 横路節雄

    横路委員 おわかりにならぬようですから総理大臣お尋ねします。今まで吉田総理大臣並びに岡崎外務大臣、木村保安庁長官は、本委員会の席上で各委員質問に答えて、こういうようにお話しているのです。いわゆる直接侵略に対してはアメリカ軍が当る、同時に起る間接侵略に対しては保安像が当る、こういうようにお話をなすつているのであります。そこで私は総理大臣お尋ねいたしたい点は、直接侵略に対抗できるアメリカ軍の兵力、武器等は戦力であると私は考えるのでございますが、この点に対する吉田総理大臣のお考えについてお尋ねをいたします。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 アメリカの今日持つておる任務は、すなわち直接侵略といいますか、外敵に対する防衛を引受けておるわけであります。ゆえに戦力を持つておることは当然であります。
  40. 横路節雄

    横路委員 私は今の吉田総理大臣お答えでその点は了解します。  そこで私がお尋ねしたい点は、今日アメリカの持つている直接侵略に対抗できる兵力、武器は明らかに戦力である。そうすると総理大臣がたびたび御答弁されている、いわゆるわが国自衛力漸増というのは、アメリカ軍駐留を必要としないまで漸増するのだ、こういうお話でございますが、そうするといわゆるアメリカ軍駐留を必要としなくなつたそのときの保安隊——名前は何となるかわかりませんが、そのときの保安隊は明らかに戦力を保持しているというように解されるのでございます。当然それは直接侵略に対抗できる保安隊でございますから、保安隊はそのときは戦力を保持しているものというように解されるのでございますが、それでよろしゆうございましようか。総理大臣お尋ねいたします。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 私からお答えをいたします。一体今日の防衛費なるものは、国民所得の何パーセントということを計算に置いていたしたわけではないのであります。日本として予算の上から考えてみてれこれ以上は出せないという最小限度を計算いたしておるのであります。またお話保安隊漸増して、米国の軍力を必要としないという場合には、保安隊の性質はかわつて参ると思います。すなわち日本が戦力を持つに至るべきときでありまして、そのときは保安隊はむろん保安隊ではないのであります。軍隊ということになろうと思います。しかしこれは将来のことであつて、いわゆる国力充実したときにおいてのみ考えられることと思つております。
  42. 横路節雄

    横路委員 総理大臣の今の答弁で明白です。  そこで私は岡崎外務大臣お尋ねをしたいのですが、MSAの援助を受ける。そのことは明らかに自衛力漸増することなのです。そしてそれはやがてアメリカ軍駐留を必要としないように至るまでいわゆるMSAの武器援助等によつて増して行かなければならぬ。そうすると、ただいま総理大臣からお話がございましたように、その極限においては、アメリカ駐留軍が撤退するわけですから、そのときは保安隊は戦力を持つている。そうすれば今MSA援助によつて受けられて来るところの武器援助は、明らかに戦力増強のための一つの手段であると、私は当然ただいまの総理大臣答弁から考えられるわけでございますが、この点について、MSA援助とからんで岡崎外務大臣答弁を求めます。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は自衛力というものは非常に幅の広いものでありまして、その中には戦力に至らざる自衛力もあり、戦力である自衛力もあると思います。われわれが今やつておますす、また今後やろうとしておることは、戦力に至らざる範囲内において自衛力漸増をやろうといたしております。もしそれがその範囲を越える場合には、当然憲法の改正とか、国民の投票とかによつて何らかの措置がとられなければならないわけであります。それまではわれわれは戦力に至る目的で漸増しているわけじやないのであります。
  44. 横路節雄

    横路委員 そうすると岡崎外務大臣お尋ねしますが、あなたはアメリカ駐留軍については、永久に駐屯していただきたいというのですか。あなたの今の答弁によれば、これは戦力に至るものと戦力に至らざるものと二つある、今のMSAの援助は戦力に至らざるものだと言う。ところが総理大臣はそうではない。いわゆる国力充実をはかつてアメリカ駐留軍を必要としないまでやらなければならぬ、こう言つておる。あなたがこれは明らかに戦力に至らざるものであるということになれば、アメリカは永久に駐屯するということになる。矛盾が生ずるではございませんか。この点についてお答えを願いたいのです。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま政府考えておりますMSAの援助は、戦力に至らざる範囲の援助を受ける、しかし将来日本の理想として自分の国を自分で守るというところまで行きたいというのは、これは当然でありますが、その場合にはさらに国内の法制をかえたり国民投票をしたり、そういう措置を経てからの後でありまして、ただいまのところはそういう意思はないということであります。
  46. 横路節雄

    横路委員 岡崎外務大臣に重ねてお尋ねします。初めは戦力増強に至らざるものと考えたけれども、しかしそれは憲法を改正すれば戦力になるのだ、こういうようにあなたの答弁考えられるのですが、それでよろしゆうございますか。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えは、いやしくも戦力にわたるようなものであれば、その前に憲法の改正なりその他必要な措置をとらなければできないということを申し上げています。
  48. 横路節雄

    横路委員 保安庁長官にお尋ねいたしますが、先ほど、犬養法務大臣お話によりますと、今年一月から六月までに国力においてはいわゆる集団的、暴動的、武力的な行動はなかつた、またそういうような騒擾計画もないと、そういうことになるわけであります。そうすると今日の保安隊の性格は、保安庁長官が御説明なさつているように直接侵略、すなわちいずれかの国がわが国に侵略をして、明らかに戦争状態なつたときに同時に起り得る間接侵略に対して保定隊は出動する、だからそれは平生の国内治安警備ではなしに、いわゆる戦争状態におけるところの間接侵略に対して保安隊は出動するのだ、こういうように解釈してよろしゆうございますか。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安隊の胆動ずる場合は、とにかく国警、自警等で処置し得ないような非常事態を生じた場合にあります。もちろん国内暴動のときもこれが出動いたしましよう。またわれわれの考えでは多くの外国の事例のあるごとく、国内暴動が起つたときには、同時に外国の集団暴徒も侵入するおそれがあるのであります。いずれの場合にも対処し得るように、ふだんから準備しなければならない、こう考えてわれわれは研究している次第であります。
  50. 横路節雄

    横路委員 保安庁長官に重ねてお尋ねいたしますが、これも六月二十二日の武藤委員質問に対して御答弁なさつているのですが、いわゆる直接侵略が行われた場合には同時に間接侵略も行われる、その場合には保安隊は間接侵略に対抗するばかりでなしに、直接侵略にももちろん、武器を持つているのだから、戦うのは国民として当然だ、こういう御答弁があつたわけでございますが、そういうことになれば、当然これは元ほど総理からお話がございました今日のアメリカ駐留軍は戦力を十分持つているわけです、そうすると保安隊としてはこのアメリカの戦力の補助の一部分である、こういうように解してもよろしゆうございましようか。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。われわれは保安隊アメリカの軍隊の補助とは考えておりません。毛頭もそんな考えはありません。保安隊は独自の見解に基いて、独自の立場において処置をするのであります。
  52. 横路節雄

    横路委員 そうすると、ただいま長官のお言葉ではつきりしましたことは、独自の立場でやるということになると、直接侵略に対しても当然独自の立場でこれに対抗する、戦う、こういう意味でよろしゆうございますか。
  53. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。直接侵略がありました場合には、われわれは同時的に必ず国内暴動が起るものと予想しております。そういうときには、要するに日本の平和、秩序が乱されるのであります。これは保安庁法において規定されているごとく、保安隊国内の平和と秩序を維持するために設けられたものであります。さような場合においては、われわれは保安隊も必ず出動さるべきものと考えております。
  54. 横路節雄

    横路委員 保安庁長官にお尋ねいたしますが、先ほど吉田総理大臣から、いわゆる国力充実をはかる等においては、通産大臣経済審議庁長官にそれぞれ長期の計画を立てさせている。国の防衛力を増して行くという立場においてま、定まり保安庁と二の長期計画というものについては十分考えてもらつている、こういう御答弁がございましたが、一体いつ保安庁といたしましては、吉田総理大臣からそういういわゆる防衛計画について、長期計画について、こういうものについて考えてもらいたいというようなお話がございましたか、ひとつお答えをいただきたい。
  55. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。総理から別段正式なさような要請はありませんが、われわれといたしましては、いずれの場合にも対処し得るような研究だけはしておきたいと思つております。
  56. 横路節雄

    横路委員 保安庁長官にお尋ねしますが、このMSAの五百十一条の(a)項の第五項に「自国の防衛能力を増大させるために必要な一切の合理的な措置をとること。」こういうようになつているわけであります。従つてこの点につきましては、政府としてはMSAについてはこれを受諾する、こういうような基本的な方針を定められたのでございますから、これに伴つて保安庁としても、このためのいわゆる防衛計画というようなものを、受諾と同時に当然立案されると思いますが、この点はどうでございます。
  57. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。受諾いたしましても、今後の折衝にまたなければなりません。今後アメリカといかなる折衝でわれわれはやつて行くか、それに基いて計画を立てるべきものであれば計画を立てたいと考えております。
  58. 横路節雄

    横路委員 緒が副総理に最後に一つお尋ねしますが、実は六月二十二日でございましたか、川崎委員質問に答えまして吉田総理はこういうように御答弁なすつてるのです。いわゆる新川聞に出ておりますところの木村さんの防衛五箇年計画案というものについては、これはここの委員会に保安局長が出て参りまして、そうして保安庁長官から命ぜられて保安局で立案をして、総理大臣の手元に出した、ところが総理大臣からは六月の六日、緒方さんにその保安庁長官から出された案文についてはお返しになつている、総理からあなたにお返しになつているという答弁をなすつているわけですが、それで誤りございませんでしようか。
  59. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は取次をしまして保安庁長官にお返しをしました。
  60. 横路節雄

    横路委員 そうすると今の点ですか、保安庁長官から総理に出されてれ総理はあなたに副総理にお返しになられて、副総理保安庁長官に返された、こういうのでございますね。
  61. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 その通りであります。
  62. 横路節雄

    横路委員 私はこれで終ります。
  63. 尾崎末吉

  64. 今澄勇

    ○今澄委員 私は今回の西日本の風水書について視察をして昨日帰つたのでありますが、この風水害は想像しておりましたよりも、まことに甚大な打撃を与えておりまして、政府からいろいろ緊急対策を新聞紙上には発表いたしておりますが、二十億の応急対策の府県別の割当も、現地で発表した数字が東京で再検討せられるというような状態でいまだにきまつておりません。まことに生活困難をきわめて、その惨状の中に思想的ないろいろの問題も芽ばえて、私は総額一千億に及ぶという西日本水害の対策に、重大な問題であると思います。総理大臣はこの西日本の水害対策について御報告を受けられたと思いますが、どのようなお考えでおられるか。特に災害救助法などは、十日間の期限で期限が切れる。こういうような今までのあらゆる法律をもつてしては律することのできない今次風水害について、今国会にこの今次の風水害に対する特別立法をつくりまして、これらの災害救助のための緊急措置を講ずるというような御意見でもありますならば、この際ひとつ総理大臣からお伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  65. 吉田茂

    吉田国務大臣 このたびの西日本の災害は、最近にない稀有な災害であるために、政府としてはこれに対する緊急措置として、一応大野国務大臣を本部長とする西日本水害対策本部を現地に設けまして、また中央においては、緒方国務大臣を本部長とする総合対策中央本部を設けて、諸般の対策を検討いたしております。詳細なことは緒方大臣からお答えいたします。
  66. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。前に予算委員会で御報告申し上げた点と重複するところもあるかと思いますが、御質問でありまするから、少し長くなりますがそれを申し上げましようか。
  67. 今澄勇

    ○今澄委員 私が聞いておりますのは、今まで政府がいろいろ発表しておるけれども、それらの発表通りに動いておらない。一例をあげれば緊急対策として二十億の割当を福岡県七億五千万、山口県が五千万というように政府は発表しておるが、これがまた本部においていろいろ議論が出て、いまだその対策も割当もきまつておらないという現状をどうされるか。あるいは災害救助法は十日間を限り、現地の地方自治団体がこれに食糧の提供その他をしても、十日間を過ぎると打切らなければならないが、こういう法律との関係一体どうするか。私は非常に混乱をきわめておる現地に対しては、そういう政府のおざなりな、何度も何度も聞きましたような方法でなしに、それらの問題に対する特別な処置として今国会に特別立法でもして、この大風水害に対する対策をおやりになるというような、緊急の事態に対する政府の方針をひとつお伺いしたいと思うのであります。
  68. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。つなぎ融資の問題につきましては、前に十億支出いたしまして、その割当は現地における大野本部長の判断によつて多少の更改ができる余地を残しまして割当をいたしました。この数字は前に申し上げたと思いますので、ここでは省略いたします。さらにその後現地からつなぎ融資の申出がありましたので、今朝十億の融資を決定して、現地本部長に通知をいたしました。その両方合せた数字を御報告申し上げますが、資金運用部から十五億、簡保の積立金から五億、総計二十億になるわけであります。山口県が五千万、福岡県が七億五千万、佐賀県が三億五千万、熊本県が五億、大分県が三億、長崎県が五千万、総計二十億というような数字になつております。それから災害対策について特別の立法ということにつきましては、本日厚生大臣、運輸大臣も帰つて来る予定になつておりますし、さらに現地から詳細の報告を得まして、その上で考えたいと思つております。
  69. 今澄勇

    ○今澄委員 ついでに大蔵大臣にお伺いいたしますが、この災害は大蔵省が非常に理解ある態度でもつて臨まないと、うまく行かないのではないか。現地で大野本部長が速戦即決でやつておるけれども、一々大蔵省にひつかかつてつてどうにもぐあいが悪いというのが、われわれの見た現地の情勢であります。そこで私は二十億のつなぎ融資のような問題では、とにかく一千億に近いこの惨状に対しては全然問題にならぬので、できれば追加予算を至急に組んで、大蔵省はこの災害についての本格的な態勢を整えなければなるまい、かように考えておりますが、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  70. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この災害に対する当面必要な措置は適宜とつております。また御承知のごとくに、金というものは一ぺんに使えるものではございませんので、十億使つた後にさらに今朝十億決定して、これでさしむきの点は遺漏なきことと思います。しかしお話のごとくに実情に即しまして、必要とすれば追加予算を組むことを考えていいと思います。ただいまのところまだその報告に接しておりませんから、十分な報告を見た上で、但し機宜を失しないように、金融措置等はとる考えであります。
  71. 今澄勇

    ○今澄委員 大蔵大臣にもう一つ伺います。金融的な措置をとつて融資をして、立ち直つてからそれがまた還付してもどつて来るというような考え方は甘いのではないか。現地の本部では中央本部に連絡したと言つておりますが、こういう災害であるから国家が補助金としてこれらのものを出し切りに救うてやるという態度が肝要なので、そういう国家の補助態勢確立のためには、少くとも現地における皆さんの意向も追加予算編成絶対不可避という情勢でありますので、重ねてそういう情勢であるから追加予算を組まれるかどうか、大蔵大臣に今の融資と補助と合せて追加予算に対する大体の規模の見通しでも、もしおわかりになりますればお話を願いたいと思います。
  72. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいまのところ、全体に対する金額についての正確な資料をまだ得ておりません。しかしながら必要の場合は必要の措置をとります。
  73. 今澄勇

    ○今澄委員 ただ私は、政府が新聞に声明は出しておるけれども、現地の罹災者は非常に不安にかられておると思うのです。私はこの際政府がこれらの現地罹災者を安心せしめる意味においても、大体の方途、見通しはもうついておると思いますから、詳細な金額はそれでは一応了承するとして、追加予算その他の緊急なる措置をとるというくらいの答弁は、大蔵大臣としてはぜひされなければ、政府としては現地罹災者に対して申訳ないことであると思います。もう一度大蔵大臣答弁を願います。
  74. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 追加予算を必要とすれば追加予算を提出いたします。
  75. 今澄勇

    ○今澄委員 さらに通産大臣経済審難航庁長官の岡野さんに、先般も質問したけれども、あなたの方で調査してなかつたようであるから、私は黙つておりましたが、今後問題になるのは木材の値上りその他医薬品、炭鉱の救済等等通産関係並びに審議庁系統のいろいろないわば物動計画的なこれらの災害に対する対策というものはもう重大な段階に入つております。大体木材に対してどういう対策をとり、今の医薬品その他一般の衛生、建築資材に対してどういうふうな見通しであり、いかにして羅災民の要望にこたえるかという点について、岡野さんから、御答弁を願いたいと思います。
  76. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の聞いております点におきましては、木材とかなんとかいうものに対する手当は相当できつつありまして、万々支障ないとは言いませんが、非常に順調に行つておるように伺つております。  それから復旧につきましては、大企業は大体金融の手当もつきましようが、中小企業、特に炭鉱を含めましたものは、相当めんどうを見てあげなければならぬと思います。ただいまのところはわれわれといたしまして中小企業金融公庫法なんかも、できるならばなるべく早く上げていただきまして、すぐその適用をしたいと思います。また信用保険制度の対策などにつきましても、ただいま大蔵省並びに関係当局と折衝中でございまして、至急に失効が上るような方法を講じつつあります。
  77. 今澄勇

    ○今澄委員 そこで総理にもう一度伺いますが、今総理大臣がお聞きになりましたような各省大臣答弁では、この大きな災害に対して急速な実効を上げ、回復をさせることは困難ではないか。いろいろ新聞に現地本部長なりその他発表はしておるけれども、今度の災害はここ百年来の関東大震災にも比すべきものでありますから、これらの災害が緊急に救われるように、ぜひ御配意を願いたい。私はこれは超党派的に総理にお願いしておきたいと思います。  そこで最後に、総理大臣はこれまでの治山治水その他の災害対策の基本的な政策と、年々のこれらの災害に対してつぎ込まれた応急回復費用との予算の割合をごらんになれば、私が説明するまでもなくおわかりであろうと思いますが、この大災害を機会に、今後十箇年計画、年間一千億のこれらの公共事業、治山治水等の大事業を展開して、これらの災害から国民を守るような基本的な構想をお持ちになつたらどうか、こういう災害に対する政府のここ七、八年間にとられた方策は、全部弥縫的なその場その場のものばかりでありまして私はこの機会に総理から、これらの災害に対する将来にわたつての基本的なお考えがおのりになるならば、伺つておきたいと思います。
  78. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。年々風水害の災害で御承知通り非常な損害を見ております。これは一つは国土荒廃した結果であるとも考えられるのであります。それで今回の水害についても、政府としては当該地方の惨状については、時々の報告その他によつてよく了解いたしておりますので、できるだけ適当な処置を、しかも拙速主義でもつてやるようにということを特に指令いたしておるわけであります。また先ほど主管大臣からお答えいたした通り、被害の状況は、関係大臣も帰つて来て一つの結果も得られるでありましようから、これに対しては当然適当な措置をとる覚悟でおります。  治山、治水の永久策について政府はどう考えておるかということについては、主管大臣からお答えを申し上げることといたします。
  79. 南好雄

    ○南政府委員 ただいま今澄さんから治山治水の恒久策について御質問がありましたが、毎年風水害による被害は、はなはだ激甚なものでありますが、これに対処いたしますために、根本的な予防対策の確立が必要でありますことは、御趣旨の通りでありまして、その対策といたしましては水源山地を酒養いたしますとともに、河川の上流部における砂防事業、多目的ダムの建設、下流部におきまする河川改修事業を計画的にかつ強力に遂行することであると存じます。これに関連いたしまして、河川を水源から河口に至るまで一元的に強力に完備する必要があると存じております。
  80. 今澄勇

    ○今澄委員 とにかく私は吉田総理に、一例をあげて申しますれば、年間一千億十箇年計画で約一兆というようなそういう恒久的土木関係治山治水の災害対策を緊急に立てなければ、日本の年々増大しておるこういう災害を防ぐことはできない。この機会にぜひ総理大臣がそういう基本的な立案当局にお命じになるように私は希望いたしておきます。今の答弁はそういう基本的な問題とは何ら関係のないことであります。どうかひとつぜひ御努力願いたいと思います。  そこで私は、この前質問をして総理大臣お答えを願う問題が二問残つておるのでありますが、これをお願いして私の質問を終ります。  第一番は、現在の世界経済の大勢は、国際物価の低落とそれからアメリカの軍事予算の縮小、さらには各国の輸入制限等がありまして、関税その他世界的規模としては、輸出競争が非常に激化して、日本の輸出は停滞をしておるという現状であります。これに対抗して日本としては合理化を行い、近代産業設備のあらゆるコストの引下げをはかりまして、この世界的な輸出競争の激化の中に、日本自立的な貿易収支のバランスを合さなければならぬ、こういう状態になつておりますが、要するに政府のこれらの世界情勢に対する見通しは甘いものであり、対策はなつておらない。ただ輸出振興の対策についても、補給金の問題があるとかいろいろ当面の応急策があるが、これについても通産、大蔵両大臣の見解が違つてつて通産省は補給金を出すと言うが、大蔵大臣は反対というようなことで、かかる世界経済のデフレ傾向と、国内経済のインフレ傾向をいかに調節して、日本経済自立をなすかということが当面の天問題であると私は思います。これに対して吉田内閣総理大臣は、内閣組閣ここに幾たびかありますが、まず最初は、外資の導入によつてこういう基本的な日本経済の矛盾を克服される方針でありましたことは、あなたの施政方針演説で明らかであります。しかるにその外資は今日まで七年を経過してわずかに六千六百万ドル入つておるにすぎないのでありまして、これは民間外資であります。いわゆる政府導入の政府的な外資はいまだ一つも入つておりません、そこで私はこういう日本経済の矛盾を解決しようとしております吉田総理の外資導入政策は、この六千六百万ドルという数字から見る限り、失敗であつたと申さなければならぬと私は思うのでありますが、これらの外資導入に関する吉田さんのこれまでの交渉とその成果は失敗であつたとお認めになるかどうか。  第二点は、さらば外資導入がそういうようなことで進展しなければ、やむなくアメリカからの援助によらなければならぬ。そこで朝鮮の特需あるいはその他いろいろの貿易外収入が六億もあつたのでありますが、これらの収入がだんだんとなくなるというこの見通しの上に立てば、日本経済の現状を何とか持つて行くためには、MSAの域外発注であるとか、その他アメリカのあらゆるそういう日本経済に対する援助で行くか、それともこれらの援助を期待しないで補給金を出すなり、あるいは重点的な輸出産業への財政投資をやるなりというような基本的な考えが二つありますが、日本の産業構造から参りますと、私は今の内閣でお考えになつておるやり方は、こういう経済の矛盾を軍需工業で、漸次防衛生産工業の拡充によつて乗り切ろうとしておるのではないか。日本はMSAを引受けて、これらの発注によつて朝鮮特需あとを引続いて行くのではないか。そのために一番大事な自立経済の中心であつた補給金の問題、あるいはその他貿易振興の問題等が、何ら具体的に政府が取上げ得ない大きな理由ではないか、かように私は考えるのでありますが、総理大臣のかかる世界の経済に対する見通しと、日本自立経済をやつて行く上に進むべき方途について、ぜひこの機会に私は御見解を承つておきたいものと思うのであります。
  81. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。私の外資導入に関する政策は失敗に終つたのではないかというお尋ねでありますが、これは私みずからは失敗に終つたとは認めません。漸次参りますからどうぞしばらくお待ちを願いたいと思います。この外資導入の政策は世界銀行その他と現在交渉を進めておりますけれども、米国側としても、あるいは資本家側としても、日本の支払い能力がどうであるか、あるいは日本の貿易の状態がどうであるというようなことを計算に入れて、日本の収支が、外国側から見て外資の導入は安全な投資であるという確信を得るのには、相当資料を徴集して調査をいたしたりするでありましようから、多少の時間がかかることはごかんべんを願いたいと思います。また日本の貿易の将来について二つの考え方があると思います。国内における物価を引下げる、あるいは生産費を引下げるということについては、あくまでも努力いたさなければならぬと思います。そのためにどうしたらよいか、これは内政上の問題でありますと同時に、外国貿易の進展の上から言えば、日本経済外交の進展なりあるいはまた計画なりは大いに進めるべきであろうと思います。そうして現在日本の今日の地位から考えてみれば、国連等においても日本経済自立が、すなわち自由主義国家防衛の一形態であると考えておるので、日本経済自立を助けるためには、いろいろな方策を今後もいたしてくれると思います。またわれわれも希望を述べ、また交渉をいたすべきであると思います。同時に今日世界的に問題になつておることは、貿易が世界的に縮小されつつあるということであります。ゆえにことに世界の経済を動かしておる米国等が関税を引上げるというようなことによつて、世界の貿易を縮小せしむることは困る、なるべく関税障壁は低くしてもらいたい、その他ヨーロツパ等において、支払協定その他によつて、なるべく貿易の進展をはからなければ、世界全体の貿易の縮小によつてある国は亡びるとか、ある国は非常な難局に陥るとかいうような場合が、現に差迫つておるのでありますから、これは世界的に考えても、各国が協力して貿易の進展に協力するということは、現にされつつあり、また必要から生ずる当然なことであると思います。
  82. 尾崎末吉

    尾崎委員長 加藤鐐造君の関連質問を許します。なるべく簡潔にお願いいたします。
  83. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 私は総理大臣質問いたしたいと思いますが、関連質問でございますのできわめて制限されておりますから、いろいろまとめて御質問をいたしたいと思います。そこでできるだけ私の質問に対しては答弁を落さないように親切に御答弁を願いたいと思います。  MSAの問題がこの国会の俎上に上されてから、各委員からあるいは本会議の議場においてもいろいろな角度から質問が行われておりますが、それに対する政府当局の御答弁は一つも納得の行くものがございません。私は特にMSA援助と今後のいわゆる吉田内閣の申しまする自衛力漸増計画に…(「そんな関連質問があるか」と呼び、その他発言する者あり)今澄君の関連と限つておらないのです。
  84. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質問はなるベく前の御質問者の御質問事項に限つてお願いいたします。     〔「関連質問をやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  85. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。
  86. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 そういう問題について納得が行きませんけれども、私はきようはそういう問題についての質問に後日に譲りまして、今澄君が今質問いたしました日本自立経済の達成の問題に深い関連を持つております問題について、御質問をいたしたいと考えるのでございます。米国の相互安全保障法が今日最終的に到達しております対外援助の構想は、地域的集団的防衛という方式であります。同法の二条の(b)は欧州における北大西洋条約機構欧州石炭及び鉄鋼共同体、欧州防衛共同体の機関に対して援助すべきことを規定しております。これは当然アジアに対しても、近き将来この構想がアメリカによつて実施されるものであると私は考えるのでございます。それは本年のアメリカ議会におきまするMSA法に関する外交委員会の説明書によつてもほぼ明らかでございます。政府はこれに対してどういう見解を持つておられるかということを承りたい。たとえば最近しばしば論議せられております、いわゆるアジアの共同防衛形態としての太平洋軍事同盟というようなものに発展する可能性が十分あります。それはアイゼンハウアー大統領のアジアはアジア人に守らせるという声明を順次具体化して行くものであるという見解をわれわれはとつておりますが、総理大臣はいかなる見解を持たれるか。このことは、もしそういう東南アジアにおきます共同防衛形態がとられますならば、当然国民が非常に心配をしておりまする外地に対する出兵というような問題が明らかに実現するものである、そういう条件がつけられるものであるということをわれわれは考える。そこで……。     〔「委員長注意を与えろ」と呼ぶ者あり〕
  87. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。     〔「関連していないじやないか」と呼ぶ者あり〕
  88. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 関連しているかいないか、しまいまで聞きなさい。
  89. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。
  90. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 共産主義からアジアを守るには、太平洋軍事同盟というようないわゆる軍事的な同盟ではなくて、まず経済的な提携をするということが必要である。これは私はやはり日本自立経済達成の上においても大きな関連があると考えますから質問をいたすのでございますが、東南アジアの後進国の経済開発を相互の経済的発展を促進することが、そうしてそれによつてこれらの後進国の生活水準を引上げることが、まず先決要件ではないかという問題でございます。そこで私は吉田総理大臣に明確なる御答弁を願いたいことは、そうした危険を予想されるところの軍事援助をこの際明らかに拒否して、まず経済援助を要求するという考えはないかどうか。私はこれについて考えますることは、インドネシアにおきまして、インドネシア政府アメリカとの間に軍事援助が一旦締結されたにもかかわらず、国会の反対にあいましてこれを拒否して、技術援助に切りかえたという先例もございます。インドネシアにおいてすらあえてそれをやつておる。その結果スバルジヨ外相は責めを負うて辞任しておる。私ども岡崎外相がその轍を踏まないことを特に要望したいものでございますが、アメリカは現在貿易政策におきましては極端なアメリカ中心の保護貿易政策をとつて日本品の輸入を防遏しております。そうして一方においては軍事援助をしようというのでは、これは首尾一貫しておらない、本末転倒ではないかと考えるのでございます。これがわが国のいわゆる国民的な反感をつのらせるところの大きな原因でございます。だからしてわれわれは日本自立経済を達成することが、日本の安全の第一要件であるといたしますならば、政府はこの際援助よりも貿易の自由という建前に立つて、このMSA援助の交渉にあたつても、そうした強硬な態度をもつてアメリカに臨まれる意思がないかどうか。時間もございませんので、まず以上の点について総理大臣から明確なる御答弁をお願いいたします。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申します。東南アジアとの関係は、互恵といいますか、経済的にまた貿易等の点において最も親善な関係に入りたいとは考えておりませんが、今日、お話のような相互援助条約というようなことは考えておりません。MSAについては主管大臣からお答えを申し上げます。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インドネシア等がMSA援助を受けないのはその通りでございますが、これはやはりその国の国情、国民の独立意識の非常に旺盛なためであろうかと思います。しかし他方ヨーロッパ諸国はいずれもこれを受けておりまして、別段問題にしておる点はないように私ども考えております。これはおのおのその国情によるものだろうと思います。なお援助よりは貿易が必要であるというお話はその通りでありまして、われわれとしては援助を受けましても、貿易を決して捨てる意味ではないのであしまして、貿易第一主義で行くことを考えております。
  93. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 時間がございませんから簡単に質問いたしますが、ヨーロツパにおいても援助を受けているが何ら支障ないというお話でございました。われわれ日本国民が一番心配をしておりますのは、将来日本アメリカの方針である東南アジアの共同防衛計画の中に引きずり込まれて、やがて外地にも出兵をしなければならない事態が、一朝国際紛争が起つた場合にはありはしないかということでございます。日本だけでなく、アジアの各国が必配をしている問題もそこにあろうと思うのでございますが、そういう点から、今日日本の置かれている立場はヨーロツパ各国の立場と違うのであります。その点について吉田総理大臣は、ヨーロツパも受けているから日本は当然受けてもいい、そういう事態になつたならば、当然日本もアジア防衛計画の中に入つて、責任を負うて出兵することはやむを得ないというふうに考えられるか、もう一度吉田総理大臣の明確な御答弁を承りたい。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはただいまも総理からお答えをしたのでありますが、要するに日本としては今おつしやるような、名前は何となるかわかりませんが、アジアの防衛共同体のようなものに今入るような考えは別に持つていないという考えであります。そういうものがあつて引きずり込まれるか、どうか、これはまだできておりませんから、できてからの話でありますけれども、それにしましても、日本としてはこれは自発的にきめることでありまして、別に引きずり込まれるという問題ではないと考えております。ただいまのところ、日本国内の憲法その他の制度からいいましてもそういうことはできないはずだと思いますので、入るつもりはないわけであります。
  95. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 質問はこれでしません。意見ですが、日本が自発的にやることだからこれからも問題ないとおつしやいますが、アメリカの今日の方針は、議会の議論となりました点を考えてみましても、当然共同防衛計画に、アジアにおいてもヨーロッパにおいてもいわゆる地域的な集団保障という建前で進んでいるから、アジアだけがその列外になることは、今日われわれは予想されない。その点について質問しているにもかかわらず、将来の問題だから交渉はこれからだといつてアメリカの基本的な方針に目をおおうて、そうしてMSA援助をまず受けるという態度をきめて、しかも事務折衝において大体の構想をきめようというような政府の軽率な態度に対しましては、われわれは断じて承服できません。なおこの問題については後ほど岡崎外相に質問いたすことにいたします。
  96. 尾崎末吉

  97. 河野一郎

    河野(一)委員 与えられました時間も少いですから、ぜひ御答弁は率直簡明に願いたいと思います。と同時に、私は吉田総理に一言お願いをいたしておきたいことがあります。と申しますのは、総理は元来閣僚をかえることが非常に好きのようでありますから、せつかく私がこの席で御答弁を得ましても、答弁していただきました閣僚があしたは閣僚でないというように相なつたのでは、せつかくの御答弁が全然期待できないということでありますから、なるべく閣僚の答弁は私はお断りする。ぜひ総理大臣からお答えを願いたい。どうかこの点を総理は特に御留意いただきたいと思うのであります。  最初お尋ねいたしますことは、現内閣の食糧政策についてお尋ねいたしたいのであります。これは食糧増産ということをしきりに仰せられますが、この自給自足の度合いを引上げるにつきましてそれと農村振興ということをどういうふうに考えて、この政策を遂行せられようとするか、これについて総理の御所見を承りたいと思います。
  98. 吉田茂

    吉田国務大臣 国民生活から申しても、また国の現在の貿易、外貨の収支から考えましても、食糧は増産いたさなければならない。そのために食糧増産の計画は当該官庁において考えております。また農林大臣等をかえる考えはありませんから、所管大臣から申し上げます。
  99. 河野一郎

    河野(一)委員 農林大臣をかえる気持はないということでございますけれども、前の西田農林大臣のように、麦の値段のきめ方がよいとか悪いとかですぐかわつてしまうということでは、われわれは少しも安心ができない。そこでお尋ねするのですが、今のお話は私のお尋ねしたことではないのであります。自給自足の度合いを上げるのは今総理お答え通りでありましようが、そういうことと農家経済とはどういうふうに考えておいでになるか、自給自足の度合いを上げるためには食糧の増産をするのだ。食糧の増産をするためには、農家経済はそれによつてよくなるのか、悪くなるのか、よくしようとしておるのか、悪くしようとしておるのかということをお答えいただきたいのであります。
  100. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答え申します。食糧増産を要請せられておるのは、自立経済を達成して参ります上からいいましても、今日貿易上の大きな負担になつております食糧の面に費やされておる点を節約して行きます上からいいましても、きわめて大事な問題でございますから、大きい国民的要請となつて食糧増産が叫ばれておるわけであります。従いまして食糧増産のためには、むろん土地改良とか、あるいは営農技術の進歩とか、ばらばらでやるべきではないので、総合的に強力に食糧増産をやつて、しかも増産せられた農産物の価格をある程度安定保障するという施策が同時に伴つて、それが農家経済の安定向上をはかつて行くという施策を行つて行かなければならないと考えております。
  101. 河野一郎

    河野(一)委員 今総理から農林大臣答弁には責任を持つということでございますから、その意味において了承いたしますが、農林大臣の今のお答えで私の納得できませんことは、ただ食糧増産の度合いを、国家的要請に基いて高めるということでございますが、これは高めれば高めるほど生産費が高くなつて参ります。不自然に生産費が向上いたします。その不自然というのは普通の生産で参りますと、なかなか現在以上に増産が困難だ。もつとこまかく申しますれば、良田がだんだん宅地になり、工場敷地になつて、新たに開墾されると二ろは収穫度の低いところを開墾されるのであります。従つて収穫度の低いところで収穫度を上げようとすると、そこに生産費が上つて来るのであります。でございますからそれを農家の耕作に引当てますと、農村振興と食糧増産ということを並立して参りますのには、国家的な負担が非常に大きくなるということは覚悟の前であるかどうか。現在のような麦の値段の決定等について私は非常に不満がありますが、これは全国農民全体の不満であります。でありますからこの質問をあえてしますが、まず第一にこの点について覚悟の前であるかどうかということを承りたいと思います。
  102. 保利茂

    ○保利国務大臣 その点はまつたくごもつともでありまして、農家の負担においてのみ食糧増産を要請するということはできませんので、従つて農家個々の経済に影響を少からしめるように、そこに国の財政投融資が必要となるのでありまして、今日までも千三百億程度財政投融資をいたして参つているわけであります。
  103. 河野一郎

    河野(一)委員 農家経済のしわ寄せを少からしめるという考え方ですか、農村振興という考えか、その点を明確に願いたい。農家にしわ寄せを少くするということを考えているのか、それを積極的に農村を振興するという考えか、このわかれ目を聞きたい。
  104. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたしますが、国家的要請に基く食糧増産でありますから、従つてこの増産計画を農家にしわ寄せせしむべきものではないと考えております。
  105. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうことになりますと、これはまた別の角度から総理お尋ねいたしたい。世界的な農産物の価格、特に食糧農産物の価格の見通しを、総理はどう考えておられるか承りたい。
  106. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、私の承知いたすところでは、従来最も麦その他の生産の輸出の盛んであつたところは、御承知通りソビエトでありますが、そのソビエトが今日輸出し得る能力は非常に少くなつている現在であります。またその地厚州とかアメリカ等においてはときに豊凶はございますが、大体増産の方向に行つておりますから、減つたところとふえたところと平均してどうなるか、これは私現在のところはお答えができないか、平均して増加しているかどうか、これは調べた上でお答えいたします。
  107. 河野一郎

    河野(一)委員 私は決して総理の今のお答えを非難しようとは思いません。しかしこれは総理に注文しておきますが、非常に重大な問題でございますから、多少総理もこの方面にひとつ意を用いていただきたい、ということは、今の総理答弁では全然国際情勢とマッチしておりません。それは総理がイぎリス大使当時のお考えでありまして、現在の世界の情勢はそんなものではない。これは国際情勢から参りますと、最近現内閣が小麦の価格を決定するにあたりましても、世界の小麦の価格が下つて来たから、そこで日本の小麦の価格だけをあまり上げぬでよろしいということで、現にあなたの内閣は小麦の価格の引上げを躊躇せられた。これが内田さんが農林大臣をやめた原因だと世間では伝えている。農林当局案をあなたの与党の自由党の方がチェックして、小麦の値段だけを上げることを渋つた、世間でこう言つている。これはそうではないのだ。精粉業者に頼まれて小麦だけを上げるのを押えたのだ、こういう悪口さえ言つている。そんなことはどつちでもよろしいが、これは非常に重大なことなんです。世界の価格が下つて来たらばそのときに日本の米麦の価格はどうするか。これと逆行して、食糧増産政策が非常に大事である、農村振興は絶対にやらなければいかぬ、農村にしわ寄せはいたさぬ、こう農林大臣があなたにかわつて言明するのだから、これが世界の大勢に逆行して、そうして内地の米麦価格がどんどん上つてつても、現内閣はこれを承知かどうか。この逆行を、あえて日本の食糧政策は甘んじてその方向で認めるかどうか。現に麦その他の雑穀の価格は暴落している。これは私はますます下つて行くと思う。アメリカの政策等を見ましても、明瞭にその点に非常な大きなウエートをかけている。でございますから、その点はどういうふうに対処して行かれるかということを承りたい。
  108. 保利茂

    ○保利国務大臣 小麦の価格につきましても、当初農林省で考えておりました価格よりも、米価審議会の答申もございましたことでございますから、二%ほど高く上げております。それは別といたしまして、たとえば外米の産地、あるいは外米の需給状況等から今後の傾向を見ますに、やはり外米の供給地の生産力も回復する、あるいは外米の供給力も回復する。従つて外米の供給力というものは今後かなり強まつて来る。従つて外米の今後内地米に対する影響というものはどうしても強まつて来る傾向には私はあると思う。これは否定するものではございませんので、しかしその場合に将来どうするか、これは相当大きい問題だと思います。私は慎重に研究いたしますが、同時に今日は外地食糧と内地米麦との価格は、これは現在いたしておりますように、遮断政策を続けて、内地の食糧の面については今日までとつて来ております政策を続けて参るつもりでおります。
  109. 河野一郎

    河野(一)委員 簡単に御答弁願いたいのですが、私が今承つたように、現在では麦その他雑穀で非常に違いがある。米につきましては、産地がまだ平和が回復しておりませんから、多少供給が阻止されているということは、今農林大臣お答え通りでありますが、これは平和が回復すればすぐにもどる。また、なるほど見通しとしては、今の農林大臣の御答弁通り。そうしますと私が申し上げましたように、国際的な価格が下落の傾向にあつてわが国の食糧価格は上昇の傾向にある、今はその分岐点だ。この分岐点の現在、農村に対して政府は何を将来約束するかということを、はつきりここで吉田総理からお話になりませんと、現内閣は農村の振興をしようとしているのか、食糧増産を意図しているのかということが明確に出て来ない。であるから将来ともに食糧は増産すべきものだ、そのしわ寄せは農村には絶対いたさぬということを、はつきりおつしやるならおつしやるようにして、それができぬならできぬとおつしやるがよろしい。この点をはつきり吉田総理から言つていただきたいと思う。
  110. 尾崎末吉

    尾崎委員長 保利農林大臣。     〔「質問者はこつちに言つている、総理大臣だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  111. 保利茂

    ○保利国務大臣 冒頭にもお答え申し上げましたように、大体私は河野さんと同じ見解を持つております。従いまして増産せられるところの食糧あるいは重要農産物に対する価格安定ということの方策は、強く打ち出されなければならぬ段階にあると思つております。
  112. 河野一郎

    河野(一)委員 私はこの質問をなぜするかと申しますと、先ほどもちよつと申し上げましたように、小麦の価格の決定にあたつて今回のようなトラブルが起つたということで、全国の農村に相当に悪影響を及ぼしている。現に農村は現内閣を信頼していないのです。将来どうするんだ。一体つくつてもそれを高く買つてくれるのかどうなんだ。国際価格が下ればまた下げられてしまうのじやないか、こういう点がありますから、食糧増産か国家的要請なりと吉田総理が思われるならば、この際あなたから全国農民が安んじて増産にいそしめるように、明確に進んで答弁することがいいんじやないか。ぜひ御答弁願います。
  113. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府委員として、あるいは主管大臣が、私にかわつて答弁せられたことを、私が責任を持つということは始終申しております。ゆえに私のかわりの主管大臣の説明は私の説明と考えていただきたい。
  114. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうばかなことがありますか。それならなぜおりますか。それならあなた必要がないじやないか。なぜあなたに予算総会に出て来いと頼むか。そんなばかなことがありますか。まじめに答弁しなさい。こういう重大なことに、全国の農民が要望ずるから、吉日純理大臣からおつしやるのが……。だから言つている。これは全国の農民の声として、吉田総理から聞きたい。ああいうワンマンのわがまま者だから、あなたが言わなければあてにならないからいけない、と言つている。なぜ答えない。まじめに答弁しなさい。
  115. 尾崎末吉

    尾崎委員長 保利農林大臣。     〔「答弁々々「総理大臣答弁」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  116. 尾崎末吉

    尾崎委員長 河野君に申し上げます。総理大臣が主管大臣の発言に対して責任を持つと言われるのでありますから。
  117. 吉田茂

    吉田国務大臣 保利農林大臣の説明の通りであります。
  118. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうふまじめなことで一体食糧増産ができますか。今日の農民が、総理考えですぐに農林大臣の首を切つて、そうして小麦の値段を上げるものを押えてしまつたり、製粉業者の要請によつてそうして小麦の値段を農民が高く売ろうとするのを押えるというような、わがままな総理大臣の、農林大臣答弁通りでいいんだというようなことで、一体農民ががまんしますか。それで地方ヘ行つて農林大臣が農村に演説ができますか。もう少しまじめに答弁しなさい。     〔「質問もまじめにやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  119. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。
  120. 河野一郎

    河野(一)委員 次に硫安の問題についてお尋ねいたします。私はただいまの食糧政策について——ちよつと通産大臣と労働大臣お尋ねがあるぞ。それでは先に労働大序にお尋ねいたします。今のようにして、国内の食糧政策は、国際食糧価格が下つても、食糧増産のために国際価格と遮断して上げて行くんだと言う。そうすると日本の労働者は高い米を買わなければならない。高いパンを食わなければならない。外国の労働者に対して高い食生活を将来させなければならない、ということを前提にした政策の上に立つて日本の労働者の待遇は、国際労働者の賃金に対してどういう立場に置かれるか。それではたしてあなたは日本の労働政策を責任を持つことができますか、お答え願います。
  121. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。内地の購買力がどうなるかということは、国民の非常に大きな部分を占める農村において、その購買力がどうであるかということによつて非常に大きな影響を受けると思う。今お話のような、農産物価が非常に高くなつているということは、農村の購買力が多くなるということであると思う。そこで内地の労働者が負担に均衡を得なくなる、こういうことでございますけれども、その内地の労働者の受けるところの賃金、俸給というものは、内地の購買力がふえ、生産が増強されますれば、やはりそれに比例して増加するものと考えます。
  122. 河野一郎

    河野(一)委員 いや、違う。今の労働大臣答弁をお聞きになつて、通産大臣は貿易振興を非常に重要にお考えになつて自立経済達成のためには貿易の振興が非常に重要だ、こういうことを現内閣は主張しておられる。ところが今の労働大臣お答えでありますと、購買力が国内に起つて来るからそこでいいんだということでございます。一体国内の購買力を対象にして産業をこれからやつておいでになるのかどうか、この点を承りたい。
  123. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます、国内の購買力ばかりではなくてほかのいろいろの施策が同時に行われるように、われわれとしては研究しております。
  124. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうことではないのですよ。日本の食糧が上るから、そうすると労働賃金は上げなければならぬだろう。労働賃金が高くなれば、製品が高くなるだろう。高くなつた製品は一体どこへ売るのだ、売れないじやないか。そうすれば労働問題は困るじやないかということを言つておる。食糧がいくら上つても労働賃金を上げないから、それでよろしいのだという御答弁なら、それでもよろしい。それはどつちか承りたい。
  125. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。われわれといたしましては、労働力を収容し得るように、いろいろ自給経済をやつて行きたいと考えます。そういたしますと、労働力はあちらこちらで収容されますから、その意味におきましても労働賃金を下げなくてもいい。それから今御承知のように、国際物価というものは労働力だけではございませんので、その点は私はもう少しほかの企業の合理化なりに寄せまして、国際的の競争力をつけて行きたい、こう考えております。
  126. 河野一郎

    河野(一)委員 そういう月並な、顧みて他を言うようなふまじめな答弁では、産業界は安定しませんよ。労働者として食うことは一歩大事なんですよ。その一番大事な食うものが高くなる。国際的な労働者の消費するパンの値段と、日本の労働者の食うパンの値段と比べて、日本の労働者には高いものを食わすのか、さもなければ二重価格によつて安いものを食わすというのか、ここヘかかつて来るのですよ。それを聞いている。高く上げるということは明瞭なんだ。これは今総理大臣が農林大臣のおつしやる通りと言つたのだから、日本の食糧価格は高くなる。高くするのだ。これはきまつた、きまつたならば労働者は一体安いものを食うのか、高いものを食うのか、ここなんだ。一体高いものを食わすというのか、安いものを食わすというのか、どつちを食わすのか。高いものを食わすというならば、労働賃金を上げなければ労働問題はやかましくなるだろう、こう言つている。
  127. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は食物というものにつきましていろいろ考えておりますけれども、米とか麦とかいうものは、賃金を上げなければならないという大きなフアクターじやないと思います。それは多少影響しますけれども……。その意味におきまして、私は今後の施策をやつて行きたいと思います。
  128. 河野一郎

    河野(一)委員 これも総理大臣から一応だめ押ししておきたいのですが、また今と同じことを答えるということに了承いたしますから、これは他の機会で質問いたしますが、今の通産大臣答弁程度では納得できません。また労働大臣もこの問題については、ひとつ省内で十分に意見をまとめて、どつちになさるのかということをはつきりしてもらいたい。この問題は時間がありませんからこの程度にして、一番大事な問題がありますので、次に移ります。  次は肥料政策について、これは総理からひとつ御答弁を願いたい。一体肥料政策、ことに硫安政策は、国内の消費を第一主義にしておるのか、輸出を目途としておるのか、価格の構成をどこにおちつけようとしておるのか、先般来承つておるとわからない。この点について明確にひとつ御指示を願いたい。
  129. 保利茂

    ○保利国務大臣 かわりまして私から申し上げます。かねて長い間肥料対策委員会に、政府の諮問機関として諮問をいたしております。この肥料対策委員会の結論を得まして、適切なる措置を、国会の協力を願い、解決をして参りたいと思います。その対策委員会の答申が一昨四日にまとまり、その線に沿いまして至急成案を得て、御審議を煩わしたいと考えております。
  130. 河野一郎

    河野(一)委員 一体新聞に出ております肥料対策委員会の答申、あんなわけのわからぬもので現内閣は肥料政策に満足していらつしやるのか。みんながけんかをしたり、顔の立て合いをやつたり、一万田君が出て来てこわしたとかまとめたとか、一体どこに主義があり主張があるか。何を主張しているのかわけがわからない。輸出するために会社をつくるというが、輸出するというなら、一体現在肥料の年度がわりに幾らの持越しがありますか、お調べになつておりますか。
  131. 保利茂

    ○保利国務大臣 その資料は今持つておりませんが、大体この答申の骨子は、およそ硫安が百五、六十万トン……。
  132. 河野一郎

    河野(一)委員 質問が違う。それを聞いているのではない 今政府考えているのは、輸出会社でもつくろうかというようなことを考えておられるが、この間も平野委員が御指摘になりましたように、外国へ売るときには安いのだ、日本の百姓に売るときは高いのだ、それじやいかぬじやないか、それを何とかしなくてはならぬということが考えられているときに、現在外国に輸出する硫安をつくつておられるが、一体国内に硫安が幾らあるか聞いている。今硫安はないじやありませんか、九州で水害があつたが、それに手当しようというても、硫安がないじやないか。そういう実情を全然不勉強で——農林大臣はこの間おなりになつたばかりだからしかたがないか、不勉強で何も知らないで、そして肥料屋の集まつている、もしくは日銀の総裁あたりが出て来てやるような委員会に、この重大な問題をまかせておいて、その答申が出て来たからその通りやるとは、一体何というふまじめさですか。総理大臣がふまじめだから、内閣までがふまじめじやありませんか。全然物がない。物がないときに外国へ輸出をする会社を建てるとは、一体何というばかなことだ そんな実情じやない。あなたは下僚に聞いてごらんなさい。現在の実情はそういうものじやない。こういうときに、外国に売る硫安の会社をつくるとかつくらぬとか、そんなものを議会へ持つて来ても通りはしない。現在の農村、現在の肥料の事情はそんなことじやない。その点をお考えにならなければいかぬと思う。だから一体どこヘ硫安問題の終局の目途を置いてやつているのか、どういうことをやらすためにあの委員会で案をつくらせたのか、その点を総理から答えなさいと私は言うのです。総理、この点この際何かお考えになつておりますか。
  133. 保利茂

    ○保利国務大臣 今度の水害でも、肥料の手当ができないでいるじやないかというお話でございますが、水害に伴つて肥料の需要の最も旺盛になりそうな石灰につきましても、カリ肥料につきましても、緊急の手配をいたしております。むろん十分には行かないかもしれませんけれども政府としてはできるだけの処置を講じまして手配をいたしております。私は肥料問題のやかましいゆえんのものは、内地の農家が使われる肥料の価格と、外地に輸出せられるところの価格の相違が、素朴な農民感情からいえば割切れない。それに対してどうするかということでございますから、従つて、この答申案はでたらめだとおつしやいますけれども、私はこの答申案の趣意は、大体各工場における生産費の調査をして、そしてそれによる適切な価格がつくられ、そしてそれで内地農民の需要に応ずる。従つて輸出せられるという面は、肥料工業が今日のごとく盛大になつて、内地の農家の需要に応ずる以上のそこに生産があれば、貿易市場の確保の上から行きましても、その余力を輸出に持つて行く。しかし輸出に持つてつたため、もし出血、欠損を生ずるような場合に、内地農民に転嫁せられざるような処置を講ずるということは必要である。そういう趣旨は答申案に盛られておるわけでありますから、そういう方法で行きたいと思います。
  134. 河野一郎

    河野(一)委員 今のあなたの御答弁は——あの答申案は、肥料の製造業者擁護以外の何ものでもない、あれによつて現在の農村は何ら満足するものじやないということだけは、私は積極的に申し上げることができると思う。そうじやなくて、肥料政策の根幹は、積極的に肥料の増産をし、それを外国にも積極的に輸出をし、そういうことによつて生産費を下げて、内地の農家の消費価格を下げて行くというところまで行かなければだめだ。ところがそういう積極性が全然ない。ただ当面を糊塗する、業者が困つておるというのをカバーする程度であつて、われわれは絶対ああいうものは不満足であるということを申し上げて、私は最後の質問に移ります。  この質問をする前に、私は特にここに私としての立場を明瞭にいたしておきます。  元来、今日の国内情勢を見まするのに、とかく政府の怠慢から、国民の日米間の感情は、しいて申せば、わが国民のアメリカに対する感情は、決して私は正しいものではない、よくないということを率直に言えると思うのであります。これはかかつて政府が当然主張すべきことを主張せず、また当然負うべき義務も履行せず、権利義務上完全に主張し、履行せざるところに原因が発しておると思う。しかもそれは一朝一夕にして起つたことではない。吉田内閣数年にわたる怠慢が、国民をしてこの不平、不満を醸成したということは争うべからざる事実であると私は思う。(「その通り」)  そこで私はこの際率直に総理に申し上げて、今私がここに質問せんとする問題は、政府の怠慢からわが国国民が二百億に及ぶところのアメリカに対する受取勘定を無履行で置くということを、どう吉田総理はお考えになつておるか。こういうことがだんだん巷間伝わつて、今度七つかくMSAによつてアメリカがいろいろなめんどうな条件をつけて援助をするというけれども日本政府の怠慢でわれわれ国民は二百億——五千万ドルの金をとるべきものをとることができないでまごまごしているじやないか。これは一体どういうわけだということが、国民の不満の一つになつておるということを政府は知らなければならぬと私は思うのであります。私がこれだけ申し上げただけでも、吉田総理は、おそらくああ、あの問題かというお考えが出るのじやないかと思う。しかし念のために、私は一応ここで申し上げる。  昭和二十七年四月十六日付政府アメリカに対する最終書簡によりますれば、四千七百五万六千ドルの受取勘定がわが政府にあるはずでありますが、これはお認めになりますか、どうでありますか、総理大臣からお答え願います。
  135. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。占領時代は、総司令部と韓国との間にいろいろ輸出入があつたわけでございます。そこでその輸出入の差額といたしまして、ただいま仰せのごとく、はつきりと四千七百万ドルとは覚えておりませんが、四千数百万ドルと覚えております、それがこちらの受取りになるはずでございます。それがまだ片づきませんが、しかし総司令部がこれをはつきりと確認いたしておりましてただいま交渉をしつつある次第であります。
  136. 河野一郎

    河野(一)委員 岡野さん、私は交渉文書を全部持つておるのですよ。あなた、いいかげんなことを言つてもだめですよ。全部内容を持つておるのだから、国民の前にこれをはつきりするのだから。二百億の金を、いいかげんに、あなたは今交渉を続けておりますとか、でたらめなことを言つてもだめですよ。だから私はこれを聞いておるのです。総理に承りたい。最終の交渉は一体いつですか。これだけの大金を、いつ最終交渉をアメリカになすつたのですか、はつきり御答弁を願いたい。外務大臣時代の総理大臣、御答弁なさい。
  137. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えいたします。これは今後、日本の間にいろいろ債務の錯綜がございますから、それとあわせて交渉することにいたします。
  138. 河野一郎

    河野(一)委員 一体現在この書類は通産省にないでしよう。あなたそうおつしやるが、通産省の所管からわきの省に移つているでしよう。あなたの答弁すべき領分でない、今日は。あなたが答弁に出て来る番ではない。わきに移つているじやないか。あなたのところは書類を持つておらないでしよう。何も御存じないはずですよ。総理が御答弁なさい。その後交渉するとかなんとか……。いつ交渉なさいましたか。
  139. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それは私といたしましてはあるいは聞き違いかしれません。しかしながら総司令部が確認して、そうして今後日米の間に錯綜している債務と相殺するかどうなりますか、そういうことの方向に進んで行くということを私は聞いております。
  140. 河野一郎

    河野(一)委員 総司令部とおつしやいますが、総司令部は一体どこにあるんですか。(笑声)
  141. 岡野清豪

    岡野国務大臣 言葉が足りませんで、相済みませんが、総司令部が確認している日本の債権でございますから、今後日米間において債務、債権の整理をしなければならぬことがありますので、そのときにあわせてやつて行くということでございます。
  142. 河野一郎

    河野(一)委員 一体総司令部が確認したのはいつですか。それなら総司令部が確認したのは何月何日か。その後一体何をなさつたか。
  143. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それは私は存じません。     〔「総理」「総理」と呼び、その他発言する者多し〕
  144. 河野一郎

    河野(一)委員 総理大臣答弁しなさい。総理、あなたの外務大臣の時代のことを答弁しない。
  145. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の問題は、私の方でも十分取調べてさらにお答え申し上げます。
  146. 河野一郎

    河野(一)委員 一体五千万ドルに及ぶアメリカに対する日本の貸しを、これをアメリカが、今通産大臣が言うように、確認して来たのは昭和二十七年四月十八日付の最終書簡で先方から確認して来ているんだ。それから後に、一体政府は何をされたかというのです。昭和二十七年から何もしてないじやありませんか。五千万ドルですよ。二百億の金をアメリカが、お前の方がおれの方から受取る勘定があるということを向うは確認している。確認して来たことに対して、なぜ黙つておるか。なぜ黙つておるか。なぜ交渉しないか。こういうことで一体これほど怠慢な内閣がありますか。一体こういうふまじめな内閣がありますか。これほどふまじめな、これほど怠慢な内閣がありますか。何を聞いたつて、だれも知らないじやないか。こういうばかなことを国民の代表として黙つておられますか。答弁しなさい。答弁したまえ。答弁できなければ、全部読みましようか、これを。     〔発言する者多し〕
  147. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  148. 河野一郎

    河野(一)委員 あなたは知らない。あなたの役所には書類はないんだ。     〔「知るはずがない」と呼び、その他発言する者多し〕
  149. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。委員外の発言は御遠慮ください。
  150. 岡野清豪

    岡野国務大臣 書類はございませんけれども、そういうことを知つておりますので。
  151. 河野一郎

    河野(一)委員 君は知らないんだ。その後あなたは通産大臣をやつている。
  152. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それは日米の債務債権の交渉をいたしますときに。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  153. 河野一郎

    河野(一)委員 違いますよ。そういうふまじめなことを言つてはだめだ。それは小笠原君、君の役所にあるんだよ。大蔵省にあるんだよ、その書類は。
  154. 川崎秀二

    ○川崎委員 議事進行。
  155. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今発言中ですから。
  156. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま河野一郎氏と総理大臣並びに通産大臣に関する質問応答を聞いておりますと、総理大臣はもちろんお答えがない。かわつて出て来たところの通産大臣、外務大臣河野氏の提起した重大な問題に対し、何ら確答がないのであります。ことにその内容の重大なることは、日米間の債務の問題であつて、それは朝鮮事変——一昨々年六月以来の日米間の契約に対して不履行な点があつたから、五千万ドルに及ぶところの債務をアメリカ軍が負つておる。しこうしてそれは今通産大臣の言葉によるならば、総司令部はこれを確認しておるということであります。われわれはこのことを聞いたのはこの席上において初めてであつて、二百億円に及ぶところの債務をアメリカ軍が負つており、しかもそれが総司令部において確認されたというならば、われわれはそれは昨年の四月の二十八日以前のことであるということに了承しなければならないと思う。すると、これはきわめて重大な問題であつて、その書類さえ手元にないという。外務大臣はこれを調査して答えるという。調査をして答えるまで、この問題はきわめて重大でありますから、私は確答のあるまで予算委員会は休憩をして、これについて明確なる答弁政府に求めるべきであると思うのであります。議事進行に関して発言を求めましたが、情勢の推移によつてはこれを動議に切りかえます。
  157. 尾崎末吉

    尾崎委員長 このままでちよつと理事会を開きたいと思います。それでは午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後三時四十二分開議
  158. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  なお御了解を願いたいと思いますが、総理の出席の時間の都合上、あと三十分の後に開会いたしたいと思いますので御了承願います。  しばらく休憩いたします。     午後三時四十三分休憩      ————◇—————     午後五時四十五分開議
  159. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。去る三日の資料要求の件についての回答を本六日に行うこととなつておりましたが、本件は明日の本委員会において回答いたしたいということでありますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。  なおこの際申し上げます。先刻の河野一郎君の質疑に関しまして、この問題に関する答弁は、政府におきましても答弁の用意をいたしておるとのことでございますが、総理は健康上の理由によりまして、本日午後は出席いたしかねる事情でありますので、明日の委員会において政府より答弁をいたすことといたしたいと思いますが、その点御異議ございませんか。     〔「総理出席のもとにだ」と呼ぶ者あり〕
  161. 尾崎末吉

    尾崎委員長 もとより総理出席のもとにいたします。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決しました。  明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十七分散会