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1953-06-25 第16回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十五日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 尾崎末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 山本 勝市君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    倉石 忠雄君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       船越  弘君    本間 俊一君       山崎  巖君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       櫻内 義雄君    中村三之丞君       古井 喜實君    青野 武一君       伊藤 好道君    福田 昌子君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       平野 力三君    石橋 湛山君       北 れい吉君    河野 一郎君       黒田 寿男君    辻  政信君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         国 務 大 臣 塚田十一郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         人事院総裁   淺井  清君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 六月二十五日  委員稻葉修君及び福田赳夫君辞任につき、その  補欠として松浦周太郎君及び辻政信君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第2  号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第2  号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機  第2号)     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外案並び昭和二十八年度一般会計暫定予算補正第2号外二案、以上六件を一括議題として質疑を継続いたします。   この際八百板君より発言を求められております。これを許します。
  3. 八百板正

    八百板委員 この予算委員会はもともと審議に入るにあたりまして、本月二十二日委員長発言によつて、本委員会政府委員ともに用語に注意をし、簡潔を旨として相互に時間を守り、かつ国務大臣答弁は親切を旨とせられたいことを述べて、このことを了承して審議に入つたものであります。これは前第十五国会までのいきさつにかんがみまして、とりわけ第十五国会の解散が、吉田総理大臣の乱暴なる放言に端を発して、そのために国会軽視日ごろの傾向に思いをいたし、それらの事柄にかんがみて、われわれは適切なるものとして、これを了承した次第であります。しかるに数日来の審議を見て参りますと、とりわけ国務大臣答弁において、最も大切なるところの親切を旨とすべき点が、まつたく守られておらないということを、われわれは見のがすわけには行かないのであります。(拍手)親切なる答弁を求めるというのは、われわれの満足のためではないのであります。政府の独善と独断により、日本の運命を取返しのつかないような状態に運んで行くことを、われわれがおそれておるからであります。国務大臣国会答弁は、憲法六十三条によつて定められたるところのものであり、同時に国会法に規定されたる国務大臣の責務であります。  これは私事ではないのであります。質問者個人や、あるいは質問者の党に対する日ごろの感情、そういう好悪を表現することをもつて満足とするところの場では断じてないのであります。一々の答弁国民に対する答弁である。しかるに今日までの政府答弁を見ておりますと、当然答弁すべきこと、答弁のできることについて、ことさらにこれを答えないで、誠意を欠く、不親切、不遜なる態度であることを、われわれは見のがすことができないのであります。ことにそれが相手によつて特にはなはだしい。さきに川崎君に対する総理大臣答弁態度、並びにわが党の武藤君に対する詭弁的答弁態度、さらには昨日の黒田君に対する、不誠意きわまるつつ放すような答弁態度、小会派だからといつて、その答弁ぶりをかえるというような態度は、国会民主化のために、われわれの容認することのできないところであります。さらにもつと悪いことには、岡崎木村大臣のごときは、これまた総理大臣の悪い癖だけをまねて、答弁を不親切につつ放すことをやることによつて、首相に忠実なるものと心得ておるかのごとくであります。かくのごとき審判の状態を続けるにおいては、能率ある委員会審議を続けることはできないのであります。さらにまた国会の職責を完全に果すことができないと私ども考える。従つて委員長はこの際、最初に発言せられ、希望せられましたる通り、とりわけ政府答弁に対して、もつと親切なる、誠意のある態度をもつて答弁に臨み、そして明らかにすべき点を、国民の前に明らかにすべきことを、委員長より要求せられんことを求めるものであります。これは吉田自由党を除く全党一致意見であるということも申し添えておきます。(拍手
  4. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ただいまの八百板君の発言に対しまして、委員長より申し上げます。  政府の方におかれましては、八百板発言の趣意をよく考慮願いまして、できるだけ簡潔にしかも親切な御答弁希望いたします。なお委員の方におかれましても、理事会申合せの時間等を厳守していただきますよう、両方にあわせて希望を申し上げておきます。  なお岡崎外務大臣よりMSA援助の問題に関して発言を求められております。これを許します。岡崎外務大臣
  5. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先日川崎君の質問に関連しまして、櫻内君からの動議がありました。要するに政府はまだ交渉を開始していないというのに、アメリカ国会における証言においては交渉を開始しておるように伝えられておる。その間の事情をはつきり説明してほしいということでありました。さつそく米国政府の方に連絡をいたしました結果、昨日国務省から訂正言明があつたわけでありまして、昨日報道が入つておりました。昨日は委員会の議事の都合で、委員長の方で発言を認められませんでしたので、本日はあらためて申し上げます。実はそうなりますと、きのうの夕刊にもうすでに出ておりますから、少しむだなようなことになつているのでありますが、要するに先方で言いましたことは、発表の文章と同時に係官から口頭説明があつたようであります。その口頭説明については、新聞によりまして伝えておるのもあり、伝えてないのもありますから、その点は正確にはまだわれわれの方には入つておりません。発表の要旨は、国防省のオルムステツド少将言明したことに関連しまして、テクニカリーという言葉を使つてありますが、正確な意味においてはまだ交渉はないというのです。オルムステッド少将テクニカリー意味交渉という字を使つたのではない。なお日本MSAの対象に入つておらないから、MSA内容及び従来アメリカ各国交渉した結果できた協定等については、日本政府にインフォームしている、報知はしているが、交渉はまだいたしておらない、こういう言明でありますので、これを申し上げておきます。
  6. 尾崎末吉

    尾崎委員長 岡崎外務大臣弁明に対する川崎秀二君の発言を許します。なるべく簡潔に願います。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁によりましてアメリカ政府当局においては、先般去る三月十一日から六月六日にわたる間に、下院外交委員会で行われたMSAに関する証言の記録について、その用いた言葉についての訂正が昨日あつたようであります。その点は了承いたします。こちら側の工作であるかどうかは知りませんが、向う訂正してくれるというならば、吉田内閣にとつてはたいへんおめでたいことであると敬意を表しておきます。しかしながら問題はあなたが今まで言つてつたいわゆる事務研究段階である、あるいはこう言つておりますね、正式にしろ、予備にしろ、一切折衝したことはないということは、私としてはまだ了解が行かないのです。というのは、アメリカ側正式交渉ではないということは、今仰せの通りはつきりいたしましたが、すでに二、三回非公式な意見交換をしているということは、MSA問題に触れて意見交換をしたというのでありますから、私は常識としてはこれは予備折衝ということが至当ではないかと思うのであります。従つて今まで言われました事務的な研究段階であるとか、資料をもらつたとかいうのではなくしてこちらも意見を言い、向う意見言つたというようなこと、これは子供の絵本をとりかわしたのではないのですから、これは当然予備的折衝と申すべきであると思いますが、いかがでありますか。私は一問だけお聞きしておきます。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは何べんも申します通り、もし交渉をしておるとすれば、それを隠す利益は何もないのでありまして、交渉しておればしておると言つて、ちつともさしつかえないとわれわれは考えおる。従つて今まで申しておることは、MSAを受けるかどうかということについての交渉は、正式にも予備的にも何もいたしておりません。それが正確であります。もしたとえばMSAのアクトについてわからない点があるから質問して、これはどういう意味だということを交渉とおつしやるなら、これは別問題でありますけれども、そういう意味でなくして受けるかどうかという点についてなら、予備交渉といえども、いまだいたしておりません。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 受けるかどうかということについて予備交渉はしておらなくても、こちらはそういうことに対する一つの用意があつて意見言つたのであつて意見があるから向うはこれに対して当然今日までのMSAに関する世界中の計画内容というものを、あなたの方に知らせて来た。そこでこちらもまた意見言つている。こういう二、三回の往復がある以上は、私は予備折衝と見なければならぬと思います。これは水掛論にもなりましよう。従つてこの際要望しておきたいことは、今までどういう書類の交換をなしたか、あるいは注文をしたかということについては、あなたの言を信用して、受入れるかどうかということについての交渉はなかつたにしても、とにかくMSA各国に適用されておるところの安全保障法というものを研究したことは事実であり、それに対して意見言つたということが事実であるならば、それに対する経過を適当な機会に御発表を願わなければ、今後の予算審議にも影響するところ甚大でありますので、この点希望だけを申し上げておきます。
  10. 尾崎末吉

  11. 黒田寿男

    黒田委員 総理大臣に御質問を申し上げます。軍事的義務履行受諾した協定または条約存在、この協定または条約履行に同意すること、これはMSA軍事的援助受入れ資格一つとして、相互安全保障法に掲げられておるのでありますが、このような協定または条約米国相手といたしましてわが国は締結しておるかどうか、昨日この質問につきまして、そのような協定または条約がないとすればどうなるかという見地から、私は政府の所見をただしてみたのでありますが、MSAで規定されております意味軍事的義務履行受諾した協定または条約米国と結んでおるかどうかということを、いま一度元に帰つて総理大臣に御質問申し上げてみたいと思うのです。もつと具体的に申しますれば、日米安全保障条約一種軍事的条約でありますが、この条約またはこれから派生した日米行政協定は、MSA軍事的義務履行協定または条約に該当するものであるとお考えになるかどうか、これを総理大臣から承つておきたいと思います。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 専門の問題になりますから、主管大臣から申し上げます。
  13. 黒田寿男

    黒田委員 これは専門の問題でも何でもありません。ちよつと岡崎さん待つてください。これは別に条約上のこまかい条文の解釈を聞くのでも何でもない。ことに吉田総理は、安全保障条約を単独で調印なさつて来た御本人であります。この条約については最もよく内容を御承知であろうと考えますし、それからMSA軍事義務受諾条項にいたしましても、これは何ら特に専門的知識を必要とするほどのものではないのであります。だから私は吉田総理から御答弁を承つてみたい。なおそれで技術的に足りない点があれば、岡崎外務大臣から伺つてみたいと思います。
  14. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちよつと黒田君にお伺いいたしますが、吉田総理大臣から、外務大臣をして答弁をせしめるということでありますので、外務大臣が御答弁なつたことを、吉田総理大臣責任をお持ちになれば、それでよいのではないでしようか。それで御了解を願います。
  15. 黒田寿男

    黒田委員 総理大臣には、こう申しては失礼でありますけれども答弁上悪いくせがある。私どもから考えれば、自分で答えられるような問題を他の閣僚をして答えさせる。他の閣僚の一言を総理責任を持つ、これは当然のことであります。他の閣僚質問をして、他の閣僚答えるのでなくして、総理質問して、総理にかわつて他の閣僚答えるというのでありますから、他の閣僚答え総理答えである、こう解釈するのは当然でありますが、しかし私どもは、やはり総理みずからの口から聞くのと、そこはどうしても答弁のニユアンスが違う。非常に重要な問題であり、これは最も根本的な問題であります。だから私ども総理自身の口からお聞かせ願いたい。総理の御答弁を願いたい。
  16. 尾崎末吉

    尾崎委員長 総理大臣いかがでございますか。
  17. 吉田茂

    吉田国務大臣 主管大臣からお答えいたさせます。
  18. 尾崎末吉

    尾崎委員長 主管大臣から答弁をさせるということでありますから、お聞き願います。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米安全保障条約につきましては、それは……。
  20. 黒田寿男

    黒田委員 委員長——委員長。     〔発言する者多し〕
  21. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ただいま発言を許しました。しばらくお待ちください。     〔「原則を聞いておるだけじやないか」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  22. 尾崎末吉

    尾崎委員長 しばらくお待ちください。発言を許しました。発言願います。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米安全保障条約が、どういうふうな軍事的な義務に当るかということは、先方がどう考えるかわかりませんから、MSAに関連しては申し上げられませんが、しかしながら、一般的の議論といたしますれば、日米安全保障条約の第二条、第三条には、消極的ではあるかもしらぬが、一種義務があります。たとえば、米駐留軍を国内に置くこと、あるいは第三国に対して軍事的の基地を供与しないことという義務を負つております。従いまして、これは広義意味においての軍事的義務であろうと考えております。
  24. 黒田寿男

    黒田委員 総理大臣に御質問を申し上げます。  ただいま岡崎外務大臣をして総理責任において御答弁になりましたような、きわめて消極的な義務履行で、このMSA受入れ資格としての軍事的義務履行に同意するという問題は満たされると、政府解釈しておいでになるのでありましようか。そうすると、言いかえれば、MSA五百十一条のa項に当る軍事義務履行条件わが国は満たし得る資格を持つておるのだ、こういうことになるのですか。これは私は非常に重要な問題であると考えます。総理大臣から念のためにその点を承りたい。
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 重要な問題でありますから、主管大臣からお答えいたさせます。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先刻も申しました通り、実際に交渉してみなければまだわかりません。
  27. 黒田寿男

    黒田委員 重要な問題であるから総理大臣からお答え願わなければならぬ。専門的技術的な問題じやない。重要な問題であるから、総理みずからお答え願いたい。これは非常に重大な問題です。これはMSAに関する中心的な問題であると思います。私ども国民の一人として、わが国がこういう条件を満たすかどうかということにつきましては、非常に深い関心を持つておるのでありますから、この点をはつきりしたいと思つておるのであります。これは総理の御自身の口から御答弁願いたいと思います。重要な問題であるから、なおさら総理から御答弁を願いたい。
  28. 尾崎末吉

    尾崎委員長 総理大臣に申し上げますが、ただいまお聞きの通りであります。御答弁を願います。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の答弁は同じであります。正確なお答えをするのには、正確に今日まで研究しておつた当局大臣答弁をするのが、一番正確にあなたにお答えができると思いますから、主管大臣からお答えいたさせます。
  30. 黒田寿男

    黒田委員 それでは、総理大臣自身から、わが国MSAによる軍事援助受入れ資格としての軍事義務履行を約束した条約存在、その履行に同意する必要があるということ、この条項に該当する条約わが国は締結しておる、こういうように言明なつたと解釈してよろしいと私は思います。この点はそう考えてよろしいと思いますが、念のためにもう一度総理に御答弁いただきます。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま申しました安全保障条約には、広義意味で、しかも消極的ではありまするが軍事的の義務日本は負つております。但し、これがMSA受諾条件となるかどうかという点につきましては、まだMSA交渉をいたしておりませんから、判明いたしません。
  32. 黒田寿男

    黒田委員 わかりかけた問題がまた混迷状態にあともどりしたようです。私がお尋ねしましたのは、一体わが国には、MSA軍事援助を受ける資格条件のうちの軍事義務条項を満たすだけの条約があるかないか、これはあるかないかということで問題が片づくのです。何だか先ほどあるようにおつしやいましたが、また何だかその点がぼんやりしたようであります。あるかないか。昨日はなければどうするかという質問をしたのですが、きようはあるかないかということを質問しておるのですから、もう一度はつきりあるかないかお答え願いたい。今岡崎外務大臣お話によりますと、まだ何だかあるようであつて、またないようでもある、どちらかわかりません。はつきり説明願いたい。あるならある、ないならないで、またそれで考えて行けばよろしいと思います。もう一度はつきりお聞かせ願いたい。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは二国間の話合いに基くのでありますから、こちらであると思つても、向うでそれは足りないという場合もあるかもしれぬし、また逆の場合もあるでありましよう。私は、少くとも日米安全保障条約一種軍事的義務を負つておる。それ以外にはおそらく探してみても、日米間には条約上かかる意味義務を負つているものはないからして、もし軍事的な義務がありとすれば、安全保障条約による義務が、それに該当するものだとは思いますけれども相手のあることでありますし、まだ交渉いたしておりませんから、明確にそれを言うわけには参りませんけれども、こちら側としては一応そう考え得る、こういうことを申しておるのであります。
  34. 黒田寿男

    黒田委員 よくわかりました。政府としては、この条項に該当する条約を、わが国アメリカ相手として締結しておると解釈しておる、わが国政府はそう解釈しておる、こういうお話でございます。それならそれでけつこうです。それではそういうような御解釈があるとして——これはけつこうだと申しましたのは、政府の御答弁として、もうそれ以上はこの点に関しては質問いたしませんという意味でございます。  ところが、私どもはまだそれで疑念が解消したということはできません。一体MSA軍事援助を受けるのに、そのような消極的義務履行だけでよろしいかどうかということは、私は根本問題であろうと思います。決して私はアメリカ考えが、そういう消極的な義務履行というようなとろにあるとは常識考えることができません。そこで私はちよつと中間的に御質問申し上げておきたいと思います。私ともこのMSA解釈において、岡崎外務大臣の申されますような消極的義務でもよろしいというような解釈ができるかどうかということは別といたしまして、本来の法律の精神は、積極的に軍事義務履行する、軍備を持つて、その軍備軍事援助義務履行する、そいういうことを要求しておる条項解釈しなければなりません。MSAそれ自身がそういうものであります。これを適用して他国に対して援助をする場合には、その国の軍事的努力を促進するということが、大目的になつておりますから、私はこの法律解釈といたしましては、本来的には積極的な軍事的義務履行に同意するということが条件になつていると思います。そういう見地から、岡崎国務大臣のような態度が許されるかどうかということは問題である。しかしそれは別として、中間的に質問いたしておきますが、米国との間に本来の意味での軍事的な義務履行受諾するような双務協定を結ぶということは、現在では憲法違反になると私は思います。これはわかり切つたことのように思いますけれども、これも総理大臣からひとつ御答弁を願つておきたい。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところ、お話のような軍事的な義務を負うような条約を結ぶ考えはありません。
  36. 黒田寿男

    黒田委員 私は今総理お答えなつたようなそういう御答弁満足することはできませんし、また私の質問はきわめて単純率直なもので、何らかのむずかしい考慮をめぐらした後に答えなければならぬというような性質のものではないのであります。わが国が積極的に軍事援助義務を負担するというような双務契約を結ぶということ憲法との関係はいかんということだけのことでありますから、これはすぐ答えられることであると思います。将来わが国がどうしよう、こうしようというような問題ではなくて、簡単に答えられる問題であると思いますから、もう一度お答え願いたいと思います。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 重ねて申し上げますが、軍事的な義務を負うような条約を結ぶ考えはありません。
  38. 黒田寿男

    黒田委員 それではちよつとそれに関連してお尋ねいたします。軍事的義務を負担するような条約を結ぶ意思がないというのは、いかなる理由によるのであるか。たとえば今そういう条約を結ぶことは憲法違反になるから結べないから結ぼうと思わないというのであるか何かその他に理由があるのであるか、一定の見解を表示されたのでありますから、それに対する理由を承りたいと思います。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、いずれにしても日本は、軍備を持つこと、兵力を持つことは憲法がこれを許さないのでありますから、その点から考えてみても、軍事的な義務を負うがごとき条約は結ばない。
  40. 黒田寿男

    黒田委員 多少言い方が婉曲であつたとは思いますけれども、要するにわが国としては憲法軍備を持つことができないのであるから、従つてそういう条約は結ばない。言いかえれば、私が質問いたしましたように、軍事的義務を負担するような双務条約を結ぶということは憲法違反になる、大体こういうように御解釈になつていると私は理解いたします。私の解釈は決して無理をしいた解釈ではないと思います。そこでそういうふうに解釈いたしまして、さらにMSA受諾について、私どもが疑念といたしております点について御質問申し上げたいと思う。私は、大体政府MSA軍事援助を受けられるという希望を持つておいでになると思いますし、またアメリカは、日本にもこの援助を適用するということを、少くとも両院のうちの一院ではすでに可決しておりますから、アメリカがそのような方針をかえるとは考えられません。また、従来の吉田内閣の対米外交政策のやり方から見まして、アメリカがすでに日本に対してこのような外交上の大方針を決定いたしましたときに、必ずこれを受けるものと国民考えている。これに対する賛成あるいは反対は別といたしまして、そう考えているのであります。そこで私どもから言えば、そうなつてはたいへんだと考えおりますので、いろいろと御質問申し上げているのですが、そこで私どもが非常に重大な事柄であると思いますのは、日本MSA軍事援助受入れるといたしますれば、さらに、次のような条件を満たさなければならぬことになつて来ることであります。それは、日本の防衛力及び自由世界の防衛力の増進及び維持のために、日本の政治的及び経済的安定をそこなわない範囲において、日本の人的資源あるいは物的資源、施設及び一般的経済状態が許す限り十分な貢献をする、こういう条件を満たさなければならぬということになるのであります。そこで私ども日本人として問題にせねばならぬと思いますことは、軍備を持つことが憲法違反になるという、この日本の現在の状態のもとにおいて、ここに言われておる自国の防衛力とは何であるかという問題であります。これは私どもは相当に積極的な内容を持つておる国の力であると考えまするが、これにつきまして総理大臣はどのようにお考えになりますか、承つておきたいと思います。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと御質問の趣意がわかりませんが、いかなる防衛力を持てば防衛になるかという御質問でありますか。
  42. 黒田寿男

    黒田委員 MSA軍事援助受入れますためには、日本日本の防衛力を持つというだけでなくて、それを増進する、そういう義務を今度は負担することになるのであります。そこが相互条約の意義であろうと思いますが、日本MSA軍事援助受入れるとすれば、その代りに日本の側でそれを増進しなければならぬ義務を課せられる、その防衛力というのはどういうものであるか、こういうことをお尋ね申し上げておるのであります。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 いずれにしても現在の防衛力以上に漸増は考えておりますが、自由世界の防衛力に及ぼす考えは、今のところございません。
  44. 黒田寿男

    黒田委員 はなはだ不完全な御答弁だと思いますが、しかたがありませんから、私自身考えておりますことを申し上げて、その上で政府の御所見を承つてみたいと思います。  ここでわが国受諾しなければならぬ義務としてのわが国の防衛力の増進という、その防衛力というのは、この法律に自国の防衛力及び自由世界の防衛力と並べて書いてありますことから見ましても、日本の防衛力の増進、自由世界の防衛力の増進という、その防衛力というものは、大体同じ意味の防衛力であると、私ども解釈しなければならないと思います。私どもは真正面から、とにかく正確に物事を理解して行かなければならない。その上で対策を講ずればよろしい。自分の主観的意図によつてつた法律解釈をしてはならぬと思いますから、今いろいろと御質問申し上げておるのでありますが、ただいま申し上げましたように、私はこの場合に自国の防衛力というておりますものは、国際通念上の防衛力であり、これは言うまでもなく軍事的な防衛力のことだ、MSAに書いてあります自国の防衛力、あるいは自由世界の防衛力というものは、そういうものと解釈するのが、私はこの法律解釈であると考えます。日本が今持つておるものが何であるかということは別問題であります。このMSAが期待しております自国の防衛力というのは自由世界の防衛力と同じ意味の防衛力、すなわち軍事的防衛力のことである、いうことように私ども考えなければならぬ。そこでわが国MSA軍事援助を受けるということになつて参りますと、そういう意味でのわが国の防衛力を増進及び維持するために十分な、全面的な努力をいたさなければならぬという義務を負担しなければならぬと同時に、日本だけでなくして、他の国の防衛力の増進及び維持のためにも、日本の人的資源、物的資源、施設及び一切の経済状態の許す限りの、全面的にしてかつ十分な貢献をしなければならぬという義務を負うことになつて来るのであります。これは私は非常に重大な問題であると思います。MSAを正しく理解する上において、日本に課せられる防衛力の増進という、その防衛力というものは、今申しますように軍事的観念としての防衛力と解釈すべきではないか。日本にそういう防衛力があるかないかは別問題であります。それを私は今論じているのではない。この法律アメリカが課しようとしておる防衛力というものは、軍事的観念のものではないか、私はこう理解したい。しからば憲法に抵触する事項を義務として受入れなければならぬということになる、そのようなMSA援助を、現在の憲法のもとで受入れるということは不可能である、私どもはこう考えます。念のために防衛力に関して総理の御見解を承りたいと思います。日本が今どういう防衛力を持つておるかという質問をしておるのではありません。アメリカから課せられようとしておるMSAにおける「自国の防衛力」というものは、どういうものであるか、もつと具体的に言えば、それは軍事的観念の防衛力ではないか、こう御質問申し上げておるのであります。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 御質問は、米国政府当局にお聞きを願いたい。私としてはアメリカ政府はこういうことを考えているとか何とかいうことは、的確に存じません。
  46. 黒田寿男

    黒田委員 総理大臣のそういう御答弁が、先程八百板君から総理に対して注意された答弁の仕方だと思います。よほど頭の悪い人は別ですけれどもMSAにおける自国の防衛力とか、自由世界の防衛力というものが、どういう性格のものであるかということは、いまさらアメリカに聞かなければわからないというようなものではありません。日本MSAが適用される場合に、具体的には金額がどのようになるかというような問題は、アメリカとの間にまだ今後の交渉にまかされておる問題だと思うのでありますけれども、そういう個々の問題がどうあろうと、昨日も申しましたように、MSA軍事援助を受けるとすれば、一定の資格条件としての義務は、日本が負担しなければなりませず、その義務の大綱は両国当事者間で任意に変更することができない一定の大標準がきめられているのである。その大標準について私は質問しているのでありますから、これはアメリカ政府がどうこうと解釈すべき性質のものではありません。どこの国でも同じように解釈しなければならぬ。日本政府はどう解釈しているかということをお尋ねしているのであります。総理大臣お答えは、私の質問に対するお答えにはならぬと思います。もう一度自国の防衛力というものはどういうものであると政府はお考えになつておりますか、質問いたします。日本アメリカとがどうなりとも解釈できるというような問題ではありません。本来的な考え方は確定しており、その上で交渉に当つて例外的に解釈できるかいなかを考えて行く、こういうことにはなることもあると思いますが、これは本来的解釈の問題でありますからお尋ねしておきます。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 私のお答えは前言の通りであります。米国政府がどう考えているか、あるいはどういう要求を日本にするかということは存じません。あなたのお尋ねは、日本の防衛力は日本MSA援助を受けることを前提としてのお考えでありましようけれども、受けるか受けないかでさえも、アメリカ政府の要求なり何なりを考えてみなければ、お答えができないのであります。従つて米国政府がどういうことを要求するかは私は存じません。
  48. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまの総理の御答弁国民常識に反します。先ほど野党側からいろいろと政府答弁に対する特別な警告的希望条件が出ましたのも、このような重大な問題に対する吉田内閣の秘密外交のやり方の国会に与えた不満の爆発であると考えるのであります。私はMSA問題について、総理大臣はそのようなことを仰せられながら、実際はMSA援助を受けようとしてとにもかくにも準備は進めておいでになる、これはあたりまえです。こんなことを吉田内閣考えていないと思つているようなぼんやりした国民はいない。吉田総理がただいまのように御答弁になりましからと申しまして、そうだと考えるほど、国会議員はばかではありません。私どもはそういう御答弁には満足することはできません。  そこで私は御質問申し上げたいと思いますが、このMSA軍事援助を受けるにつきまして、アメリカといたしましては、相互援助条約ないし協定を前提として締結しなければならぬ、このように申しております。これはこの問題に関する議会における議事録の中で、アメリカ政府の重要な当局者が申しておるのでありますが、このことについて総理大臣からは、まだそういうようになるかどうかということについてのお答えになり、御意見を承つておりません。きようは総理大臣から、そういう条約を結ぶ必要があり、それが受入れの前提になると思うかどうかということにつきまして承つておきたいと思います。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 いずれにしてもアメリカ政府から何らの交渉を受けておらぬ。アメリカ政府の要請が何であるか、MSA援助を受けるためは、どういうことが必要であるかということは何ら承知したしておりませんから、お答えはできません。
  50. 黒田寿男

    黒田委員 私はそういうことを質問しておるのではないのです。私が昨日質問の初めにも申しましたように、政府もすでに今まで持つておられると常識上私ども解釈できる資料の範囲において、そうい資料の範囲に限定して、私の質問をする、こう申し上げておいたのであります。私はアメリカとの相互援助協定内容を、ここでこまかくお尋ねしようというのではありません。私はそういうやぼなことは申しません。そうでなくて、MSA軍事援助受入れの前提条件として、まず協定ないし条約を締結する必要があるか、その条約ないし協定日米安全保障条約のごとき庁務的条約ではなくて、双務的条約ではないか、そうであれば、わが国アメリカとの軍事援助の締結の仕方に、一つの新しい段階を画するものができると思う。なおこのことにつきましてはあとで御衛間申し上げますが、今までも軍事援助条約は結んでおります。アメリカの軍隊が日本に来て、日本に軍隊を送つて日本をある意味において防衛しておる。このことを協定した条約軍事的条約であります。けれども今度は日米安全保障条約のような庁務的の条約ではなくて、日本軍事的義務を負う相互援助協定が結ばれる。私はただ条約の骨格をお尋ねしておるのでありまして、内容をこまかくお尋ねしておるのではありません。協定が結ばれるとすれば、その性格は相互援助条約ではないか。これは岡崎外務大臣あるいは外務省の局長などはお認めになつておるようですが、私はそのことを総理大臣からも承りまして、さらにもう一つこの問題につきまして重要な点を承つておきたいと思うのであります。その前提としてただいま条約の性格をお尋ねした。日米安全保障条約のときにおけるのと異なつて、今度は双務契約相互義務を負う条約になるのだ、これが日米安全条約と違うのだ、そういう一つの新しい形の条約ができるのだ、これは日本にとりまして非常に重要な利害関係を持つ条約になるのであります。今度条約を結ぶとすれば、あるいは協定を結ぶとすれば、そういう性格を持つものであると、私は解釈するのであります。それをお尋ねしておるのでありまして、そうむずかしい内容の問題をお尋ねしておるのではありません。お答え願います。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 いずれにしても現在のところは安全保障条約をもつて防衛の根幹にいたしております。それ以上の条約についてはまだ何ら考案を持つておりません。
  52. 黒田寿男

    黒田委員 そこが問題である。今までは安全保障条約日本の安全が保障せられる、こういうことになつてつた。しかるに今回また新たに軍事的援助を受けるということを中心とした別個の協定ないし条約ができるというのである。こういうように日本アメリカとの関係が、外交関係並びに軍事関係が、一段と大きな変化をもたらせそうとしておるのであります。それがMSA軍事援助に関する協定の中心問題であります。総理大臣の仰せられますように、日米安全保障条約で事足りるならば、新しい協定を結ぶ必要はないのであります。しかるにここに新たに別の条約を結ぶうという問題が起つてきたところに、大きな問題があると考えます。そこで私は質問しておるのであります。どうも総理大臣お答えでは、何ら私の質問に対する御答弁にはならぬと思います。  そこで、総理日米安全保障条約でよいとおつしやいますから、それでは日米安全保障条約MSA軍事援助受入れるについての前提条件となるべき新しい協定との違いについて、一応私から見解を述べて、それについて政府の御所見を承つてみたいと思います。日米安全保障条約と新たな協定との間におきましてはいろいろと比較ができると思いますけれども、きようは時間がございませんから、私は一点だけ挙げたいと思います。日米安全保障条約は、MSA受入れに関して新たに締結しなければならないような相互援助条約ではないと私は私えます。わが国軍備を持つことを米国から期待はされておりますけれども、まだこの条約段階では、義務づけられてはいないのであります。この条約において米国日本軍備について次のように期待しております。第一は日本国は攻撃的な脅威となるような軍備は将来持つことを常に避けること、それから平和と安全を増進すること以外に用いられ得べき軍備を持つことを常に避けること、その上で漸増的に軍備を整えることを期待する、これが日米安全保障条約におけるアメリカの期待であります。こういうようになつております。ここで軍備と私が申しましたのは、現在これにこたえた軍備日本にできているかどうかということにつきましては議論がありますので、私はそれには触れませんが、しかしこの期待の中で言われております直接的侵略に対する自国の防衛力、これはすなわち軍備であります。わが国が現在これを持つておるかどうかということは別といたしやして、条約それ自身からいえば、言葉のこういう表現のしかたにおきまして、正式な軍備を持つことを日本に期待しておるのであります。このように日米安全保障条約段階では、わが国の再軍備は期待せられてはおりますけれども義務づけられてはいない。従つてわが国は、米国に対しましては、先ほど岡崎外務大臣が申されましたように、米国軍隊の駐留権あるいは第三国への基地の不供与、あるいは第三国軍隊の通過不許、こういうような義務を負つている以外には、他に軍事的義務を負担しておるとは思いません。しかるに今度新たに予想されますMSA軍事援助受入れのために締結せらるべき新協定は、第一は双務協定である、その次に最も重要なのは軍事的双務協定である、こう考えなければならぬ。これがMSA軍事援助を他国に与える場合に、アメリカがどの国とも過去において締結している条約の性格であります。日本MSAによつて軍事援助を受けるとすれば、締結しなければならない条約の性格において、安保条約に比してこのような大きな変化が生じて来る。日米安全保障条約の場合における軍事的問題は、期待の範囲にとどまつてつたのが、義務段階に押し進められて来る、こういう大きな重大な変化が起ると思います。これは非常に重大な問題であると私は思います。そこで私はこのように執拗に質問をしておるのであります。政府がこのような条約を結ぼうとする段階に来ていると考えられますとき、このMSA軍事援助を受けながら、日本アメリカに対する軍事的義務が、日米安全保障条約の限度を出ないというような考へ方にとどまることはできないと思います。これが私の質問の趣旨になるのでありますが、総理は、日米安全保障条約以外のものを考へないでよろしいというように、お考えになつておりますかどうですか。これは非常に重要な問題であると私は思いますので、もう一度お伺いしてみたいと思います。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 繰返して申すようでありますが、いかにあなたがアメリカ政府がそう期待するとかなんとか言われても、日本としては現実に期待されてみなければわからない。いかなることを期待しておるか、あなたの御意見をもつて、ただちにアメリカ政府の御意見とみなすこともできないと思います。いずれにしても現在のところは受けるか受けないかそれさえもきまつておらない。従つてまたいかなる条約を結ぶかというような構想は、何ら持つておらないのであります。いずれ米国政府から交渉があつたときに、具体的にお答えします。
  54. 尾崎末吉

    尾崎委員長 黒田さんにちよつと申し上げますが、理事会申合せの時間のあなたの受持ちが、相当超過しておりますので、先ほど問題になつたばかりでございますから、たくさん質問がおありと思いますが、他の機会にお譲りを願いたいと思います。
  55. 黒田寿男

    黒田委員 それは非常に残念でございます。ただいま総理にお伺いしました点は、今私ども国民が、賛成する反対するは別として、MSA軍事援助に関連して国民の最も聞かんと欲するところである。再軍備論者はこれによつて日本軍備を進展させるための基礎にしようと考えるでありましよう。また再軍備反対論者は、そのような新協定を結ぶことはわが国の前途に対して、非常に憂慮すべき事態を発生させることになると、こう考えているのでありまして、この問題は国民注視の焦点だと思う。そこで私はお尋ねしたのでありますが、総理は相かわらず秘密外交主義の原則に従う御答弁で、何も質疑に対する明確な答弁をなさつておりません。私は日本国会がこのような低級な国会であることを非常に残念に思う。おそらく外国の総理大臣は、どのような反対党であろうと野党議員に対しまして、外交問題について、このような秘密主義の、不親切な、要領を得ない、あいまいな、極端に申しますれば、ばかにした答弁はしていないと思います。私は日本国会をもつと品位のある、内容のある、高いものにしたいと思う。そういう気持に立つて、いろいろと総理大臣に御質問申し上げたのでありますが、私は総理大臣の御答弁は、第何等国の総理か知りませんが、はなはだ低級な国の総理大臣答弁であると思う。非常に私は残念でありますけれども委員長の御注意がありますので、まだいろいろとMSA問題につきまして質問申し上げたい点が残つておりますけれども、申合せを尊重いたしまして、残念ながらこれで本日は質問を終了いたします。
  56. 尾崎末吉

  57. 河野金昇

    河野(金)委員 まず外交の問題で、総理大臣にお伺いしたいと思いますが、日本が独立して一年有余になりますが、アメリカとのいろいろな関係は深まりつつありますが、アジアとの外交が賠償問題を中心として、その他国交回復の問題にいたしましても、少しも解決されておらないのでありますが、一体これは何に原因するのでありましようか。吉田さんは血統を尊ぶ人でありますが、吉田さんや岡崎さんの血液は、アメリカやイギリスには融け合えるけれども、アジアは不潔で貧乏だから、吉田さんの血潮というものは、アジアには融け合わないところにあるのでなかろうかと思います。いろいろアメリカとの間に結ばれた条約なんかを見てみますというと、ほとんど、アメリカの言うことを聞いているわけであります。元来アメリカは一体日本をほんとうに今日まで育てるつもりであつたかどうかということであります。アメリカはやはりソ連と一緒になつて日本の骨抜きを考えたのであります。共産党と支持したり、あるいは警察法を改正させたり、教育制度を改革したり、すべてこれは日本の骨抜き政策であつたのであります。朝鮮事変が起きて、アメリカがソビエトと対立する段階になつて、初めて日本を利用することが、みずからの陣営に入れることが、アメリカのためであるという立場に立つて、それからいろいろなことをやつて来ているのであります。私はこの観点に立つならば、アメリカに対していろいろ外交交渉なんかをなさる場合には、毅然たるものがあつていいと思うのであります。向うの言うがままにならないで、相当の抵抗することがあつてしかるべきであると思うのであります。それを米英に対して少くも抵抗しないというところが、アジアの諸国が日本に対して疑惑を持つて来ている原因ではなかろうかと私は思うのであります。こういう点に対しまして吉田総理は、一体どういうふうに考えておられるか。アジアの外交の問題を、どういうふうに解決して行こうとしておられるか、まず承りたいのであります。
  58. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申し上げます。アジアの問題については、私は善隣外交ということを始終申しているのであります。たとえばフイリピンその他インド、マレーの諸国との間には条約の締結もしくはでき得るだけの親善の関係を結びたいと思つて、各地に在外公館を出すなりして、相当な努力をいたしております。これをお認めになるならないは、ごかつてであります。
  59. 河野金昇

    河野(金)委員 総理からは、満足答弁は先ほど来の質問に照しても得ることはできないであろうと思うのでありますが、私はやつぱり総理がアジアというものに対して、英米には違つた一種の軽蔑の観念を持つておられるところに、アジア諸国との問題が、友好的に解決して行かない最大の原因があると思うのであります。私はアメリカに対しては相当強く折衝していい。しかしアジアに対しては、心の中には強きものを持ちながらも、やはり戦場として荒らしたアジアの諸国に対しては、いま少し私は親切な親しみある態度がなければならぬと思うのであります。アジアの諸国に対して、私はあまり頭を下げることばかりを能とするものではないと思うのであります。今度の戦争はいろいろな罪悪を生んだが、私はアメリカ、イギリス、フランス、オランダ等に押えられておつた植民地が、日本が大東亜戦争をやつたことによつて、いろいろな罪悪はあつたけれども、そういう植民地が独立したということは、間接ではあつたけれども私は誇つていいことであろうと思う。われわれ日本人が心の中にアジア諸民族を解放したという誇りを持ちながら、アジアの諸国に対しては、英米とは違つたところの親切な謙虚な態度で臨むべきであろうと思うのでありますが、こういう点に対して総理のお考えはいかがでありましようか。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろん従来も謙虚な態度でもつて善隣外交ができるように、尽力いたして来ております。詳細は外務大臣から……。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 おつしやるようにできるだけ謙虚な気持で、アジア諸国に対するつもりでありまして、特に私も演説の中に「謙虚な」という字を入れておつたわけであります。今なかなかうまく行きませんことは私も認めております。しかしこれはたとえば各国の中における選挙があるとか、あるいは政情が不安であるとかいうような点もあるのでありましてその間にあつてわれわれはできるだけ善意をもつて解釈して行こうと思つておりますが、昨日は仏印から代表が参りまして、賠償問題の交渉を開始することにいたしております。またつい先日はセイロンから新しく公使が見えまして、セイロンとの間の話合いも円満に行き得ると考えております。その他インド、ビルマあるいはインドネシア等とも、できるだけ円満なる話合いをし、賠償問題はもちろんでありますが、その他の点につきましてもいたしておりまして、まだ具体的な効果は現われておりませんけれども国民的な感情としては、私は相当の効果が上つているのだと考えております。
  62. 河野金昇

    河野(金)委員 次に吉田総理が施政方針の演説にもおつしやつておりますが、官紀の粛正という問題であります。吉田内閣の中にも選挙違反にしよつちゆう連座されるような方が、またいつも内閣につながつておられるということは、官紀の粛正を唱えられる吉田さんの、口におつしやることとおやりになることが、別なような感じがするのであります。今回の衆議院、参議院の選挙等に関して、政府が監督すべき立場にある官吏の中で、たとえば国税局関係あるいは農林省関係あるいは国鉄関係、こういうようなところの人が、ほとんど一年、一年半、官費を利用して選挙運動をやつてつて、そういう人が出て来ておる。これがほとんど自由党に属しておるわけなのでありますが、一体役人が官費で選挙運動をやる、ひどいのになると選挙中に、上役の局長なり何かが選挙に立候補したがために、その下の課の者は全部出張名義で地方へ出て行つて、選挙運動をやつておる事実がたくさんあるのであります。名前をここで一々出さなくても、総理みずから知つておられることであろうと思いますが、こういう問題に対して何らか総理はお考えなつたことがありますか。口に官紀の粛正を言つてみても、その足もとからこういう官紀を乱すような大臣が出たり、役人が出たりするようなことでは、口で言つてみたつて何にもならぬと思いますが、何らかの処置をお考えでありますか。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。単に選挙違反になつたという嫌疑だけでもつて処分するということは、これはできぬことであろうと思います。またもし官紀に触れるようなことがあり、また法律に触れるような場合があれば、いかなる地位におる人も断然処分する方針でおります。またお話のような点について、われわれもまたその弊を認めておりますから、将来適当な法律立法をいたしたいと思つております。
  64. 河野金昇

    河野(金)委員 法律的立法を考えたいとおつしやつておられるのでありますが、たとえば選挙法の改正なんかがしよつちゆうやられておりまするが、一ぺんも根本的な問題に触れることができません。それは選挙法改正の委員になつて来る連中が、特に自由党に多いのでありまするが、ほとんど選挙違反にひつかかつた人が…(「ノーノー」と呼び、その他発言する者多し)ノーじやない。去年事実があるのであります。名前を言えとおつしやれば、名前を言つてもいいのでありますけれども、たとえば選挙事務長が逃亡しておるとか、あるいは奥さんが逃亡しておる。そういうような人が少くともこの間までの選挙法改正委員会にはたくさん出て来ておりまして、そのために連座制の問題が解決せずにおるのであります。(拍手)従いまして私たち改進党におきましても、今度の選挙法改正の特別委員の中には選挙違反に触れている者は一人も出しておりません。この点自由党の方においても、自由党の総裁である吉田さんは、やはり自由党の人にも命じてほんとうにこの選挙をよくしないと、すべての悪がここから出て来るのであります。選挙によけい金を使う、財界から金をもらう、こういうことが政治の腐敗になり、官紀、綱紀を乱す原因になると思うのでありますから、これは答弁の必要はありませんけれども総理大臣であり、自由党総裁である吉田さんは自由党に向つて御忠告をしておいていただきたいと思います。(「例証あげたらどうだ」と呼び、その他発言する者多し)野次をとめてください。
  65. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  66. 河野金昇

    河野(金)委員 例証を言えとおつしやれば、幾らでも出しまするが、ここではかえつてお気の毒であろうと思いますから、選挙法の改正委員会で話すが、(葉梨委員「例証を上げろ」と呼ぶ)葉梨君、君はこの前の国会には出て来ておらないから知らないんだ。話になりませんよ。(笑声)  それからもう一つ、これも吉田総理にお伺いしておきたいと思うのであります。これは地方制度のあり方というものが悪いからでもありまするが、最近の政治は陳情政治であります、運動政治であるのであります。また中には議員の諸君でも地方へ行つて、運動次第だ、陳情次第だと言つて、運動、陳情をむしろ強要されるような向きが多分にあるのであります。(「その通り」とぶ者あり)これも私は名誉のためにここで名前や地方は出しませんけれども、たとえば公共事業費とか災害復旧費というようなものがある県に行くとすると、まずそれがある地方に事業をやるために行く。その中の千分の五とか六というものは、その公共事業なり何なりをやつてもらつたところが、逆に返しているのであります。それはだれがとるかというと、結局災害復旧促進協議会とか何とか名目をつくつた連中が、せつかく国から出たものをそういう運動費として、結局運動次第だから、金次第だから、こういうものをとつておかなければといつて、やつている事実がたくさんあります。これも必要があれば、何かの委員会において私は徹底的に究明したいと思うのであります。従つて公共事業費や食糧対策費や災害復旧費というものを政府が相当出しているにもかかわらず、結果においてはほとんど見るべきものがないということは、運動費と陳情費に使われている事実が多いからです。いずれこういう具体的な問題は当該委員会において例を出すつもりでおりまするが、こういうやり方というものは決していいやり方であるときは私は思つておりません。たとえば北海道なんかは運動費、陳情費に六億からの金を組んでいるということであるのであります。こういう運動をしなければならぬ、陳情しなければならぬというこの政治というのは、私はけしからない政治であると思うのでありますが、一体吉田総理はこういう事実をお認めになり、またこれをどういうふうに直すかということについて何らかお考えがあれば、承りたいと存じます。     〔「よく総理聞いておけ」と呼び、その他発言する者多し〕
  67. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。
  68. 吉田茂

    吉田国務大臣 陳情のことについては政府自身も困つております。そのために当局大臣は時間をとられて、仕事ができない。また事務が妨げられるのみならず、それがいろいろな風をなして、必要もないような陳情も出るので、陳情はやめたいと考えます。どうしてやめるかということが今問題になつておりますが、そのために綱紀を乱したとか、法に触れるような者があれば、御遠慮なく摘発していただきたいと思います。
  69. 河野金昇

    河野(金)委員 問題については所管大臣である塚田さんが、財政の面なり何かにおいて地方から中央へ陳情しなくともいいようなことをお考えになつているのではないかと思いますが、あれば承つておきたいのであります。
  70. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 私もただいま河野委員の御指摘になりましたような困つた問題があると思つております。しかしこういうようなことが出て参りますのは、やはり行政制度自体、それから今の財政資金などの配分のやり方自体に原因があると思いますので、これは考えなくちやならない。これは近く予定している中央地方を通じての行財政制度の機構改革の場合に考慮いたしたいと考えております。  なおまた公共事業費や補助金、食糧対策費、そういうものの使い方に御指摘のような非常に適当でないものがあるのじやないかということは、現実にあるかないかということは私も的確に承知をいたしておらないのでありますが、そういうことがありはしないかといううわさをときどき聞いておるわけであります。従つて政府が行政監察を非常に熱心に考えておりますので、当面行政監察の主たる目標を公共事業費や、こういう補助金、そういう面にむだがないかということに重点を置いて監察をいたしたい、こういうふうに考えております。
  71. 河野金昇

    河野(金)委員 今塚田氏の答弁を得ましたが、それに関連しまして、もう一つお聞きしておきたい。これは文部大臣の所管かもしれませんが、義務教育費の半額国庫負担の法律に基いて半額を地方へ出すわけでありますが、東京を初めとした富裕県には八月以降出さないということで、これの陳情が非常にあることは、政府自体も知つておられることであろうと思うのでありますが、富裕県なるがゆえに出さないという、こういう考え方というものは、私は間違つておりはしないかと思うのであります。たとえば議員の歳費を、吉田総理は金持ちであるから、吉田総理にはやらなくてもいい、あるいは緒方副総理にもやらなくてもいいというようなばかなことはあり得ないことであるのであります。東京なりあるいは大阪なりが富裕県になるには、やはりそれだけの努力をしてきておるわけであります。平衡交付金を減らすなり、何かということならば、これは話がわかるのでありますが、義務教育費半額負担という名目を打ちながら、特殊の県に出さないということはけしからぬことであろうと思うのでありますが、これに対して文部大臣でありますか、塚田氏でありますか、お考えがあつたら承りたいと存じます。     〔発言する者あり〕
  72. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。
  73. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 現在の税制のもとにおきまして、二分の一国庫負担ということをそのまま行いますと、各地方団体における財源の偏在をますます激成することになります。二十八年度予算に国庫負担額として計上してありますのは五百二十一億でありますが、この金額は八月以降、いわゆる富裕府県に対しては交付しない、もしくは減額して交付するということを実は前提にして組んであるのでありまして、これに照応いたしまして、不日特別な法律案が提出せられるはずであります。その提出する理由は、ただいま申し上げましたように、しばらくの間減額交付もしくは交付しないということをする。それは地方、中央を通じての行財政の整理また税制の改革によりまして、府県各団体間の財政関係が調整されるまでの間、暫定的に不交付または減額をする、こういうことで、実は不日法律案として提出されるはずであります。それにつきましては十分御審議をいただきたいと思つておる次第でありますが、事情はさようでございます。
  74. 河野金昇

    河野(金)委員 実はその問題は予算の修正ともからむのでありますから、政府の意図を聞いておけばいいわけであります。  次に、金利の問題に対しまして、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。最近市中銀行はもちろんのこと、資金の大部分を預金部資金に仰いでおるような銀行までが、大財閥に対しては必要以上の融資をするけれども、財閥の系統を離れた事業あるいは中小企業者等に対しては、ほとんど融資しないがために、あたかも金融恐慌の前夜のような症状を呈しておるのでありますが、もちろんこれは政府も御承知になつておることだと思います。たとえば私の手元には四月末の資料でありますが、不渡り手形一つをとつてみましても、四月中に二万一千二百枚という不渡り手形が出ていて、その金額は二十四億二千万円であります。平均してみますと、わずか十一万五千円というような、いわばこれは中小企業に属すべきものであるのでありますが、こういう金融のあり方というものは、私は不健全なあり方であると思うのでありますが、これに対して大蔵大臣はこの現実をお認めになり、何らかこれに対する処置を考えておられますか、お伺いしたいと存じます。
  75. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。河野さんも御承知のように最近不渡り手形の問題がやかましくなつておりますが、数字でごらんになつてもわかり、枚数でごらんになつてもわかりますが、そう著しくふえているわけではございませんけれども、やはり新聞等にも出ております通り、私ども調べたところでも、たとえば経営が非常に放漫であるか、あるいは帳簿等外のたくさんの借入れをして、その借入金が日歩二十銭いとうような高い金を借りている。そういうこと等がいろいろ原因をなしていると思うのであります。従いましてこの個々の場合について見ますと、そう大きな多方面への影響力を持つているようには思いませんけれども、御承知のように経済界というものは、一つ波が立つとそれがよそにも及ぶことも考えられますので、私どもの方でも慎重にこれが対策を考えている次第でございます。ただいまのところは、余波を及ぼすような事態は何も起つておりませんことは御承知の通りであると存じます。  中小商工業に対する対策としましては、この国会にも提出しておりますように、中小企業金融公庫で比較的長期の資金を出し得るようなことをやりますとか、あるいは今度の国民金融公庫等に財政資金を相当大幅に増額いたしますとか、あるいは預託金等を各種の中小企業者の金融機関に向けてやりますとか、さような処置をとつている次第でございまして、私どもも現在の状態に決して満足はいたしませんが、こういうことによりましてでき得るだけ金融の緩和に努めて行きたい、かように考えている次第でございます。
  76. 河野金昇

    河野(金)委員 政府考えはおおむね善意のある考えをしておられますが、あなたも銀行においでになつたからおわかりのように、中小企業あるいは農林関係なんかに出す国の資金なんかにいたしましても、たいてい国家が市中銀行を通じて今までは出しておつたのでありますから、実際政府の方では中小商工業者に出したつもりでおりながら、実はそれが大きい方へ行つてしまつて、実際に必要とする中小企業の方面に行つておらなかつたという事実がほとんどであるわけであります。従つて中小企業の方は金融と税金のために非常に苦んでいる、こういう事実はお認めになることであろうと思います。必要なところに実は金が行つておらないのであります。米国の評論家のジエサップという人がおもしろい批評を国連の雑誌に載しているのであります。日本は工場設備を改善する資金でビルディングを建て、輸出すべき金で芸者に着物を着せておるというのでありますが、これは今の日本の金融状態を現わしておるものだと思うのであります。政府も銀行家も、これは反省をしなければならぬことであろうと思うのであります。  それから最近相当大きな会社等がつぶれつつあるのであります。あるいは日本建鉄とか、あるいは津上製作所、あるいは帝国化学というような、相当日本経済再建と申しますか、復興のために役割を演じたようなものが、結局やみ金融にたよつてつたがためにつぶれておる。こういうことももちろん御承知の通りであろうと思うのであります。聞くところによると、法の旨点の上にできておるところのやみ金融会社が、本店のようなものだけで千三百ともいわれ、あるいは千五百ともいわれ、その支店等の数を入れれば三万とも四万ともいわれておるのであります。相当世間的に名の通つておるような会社、工場等がやみ金融にたよつておる実情であるわけであります。だからこのやみ金融に対して政府は一体どう考えておられるか。何か大蔵省が一部のやみ金融会社をお調べになつておるようであります。法の盲点をつき、あるいは法を犯しているようなものを御処罰なさることもけつこうでありますが、そういう日歩二十銭、三十銭、中には五十銭というようなものも借りなければならないような金融状態に置かれておるということは、やはり一方からいえば、これは政府の金融政策の失敗でもあるのでなかろうかと思うのであります。こういう現実に対して、現実的にどういう御処置をなさる考え方であるかお伺いしたいと思います。
  77. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。中小の金が市中銀行に行くために、大きいところに行くと申されましたが、預託先等でごらんくださつてわかりますように、大体は相互銀行とか、金庫、その他商工中金、そういうものを通しておるのでありまして、私もはど、あるいは一部に誤りないとは申されないかもしれませんが、大部分は適切な先へ行つておる、こういうふうに信じております。  なお中小の金融につきましては、市中銀行も、これはおそらく特に市中銀行の金のうち二割。あるいは地方銀行では三割くらいのものはやはり中小金融に行つておるのでありまして、決してそれらが、さつきちよつと財閥ということを仰せになりましたが、今財閥というようなものはなくなつておりますので、さようなことはないと私ども考えております。  末段に仰せになりましたいわゆるやみ金融の点は、これはまことに私どもも遺憾に思うのでありますが、この貸金業者というものは届出制でありまして、大体今届けられておるものが一万から二万くらいあるかと思います。これにつきましては監督をいたしておりますが、この貸金業者のうちにあるいは預かり金、つまり預金——いろいろ名目はつけておりましようが、預かり金というようなものをやつておるものもあるように聞いておりますので、これらにつきましては、これは明らかに法規に違反する点がございますから、私の方で今人をやつて調べまして、すでに調べましたもののうちでも、そういう明らかに法令に違反しておるような事実を発見したものもありますから、これにに対しては十分な戒飭等を加えておる次第であります。さらにそれではそういうものをむしろある程度認めたらどうか——あるいはそういうのではなかつたかもしれませんが、そういうような意見もときどき出ますが、預かり金というようなものにつきましては、これは、ほんとうの金融機関に行くべきものでありまして、さようなものをただいまのところ法制化するというようなことは、私どものほうでは考えておらぬ次第でございます。
  78. 河野金昇

    河野(金)委員 金融問題をお伺いしましたから、金利の問題でもう一つ大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、結局輸出の振興とか何かにいたしましても、結局コストを下げなければならぬ。そのコストの相当の部分に金利というものがあると思いますが、一体この金利は、現状において引下げることができるとお思いになるかどうかという問題であります。戦前十年間の資金の利回りは、大体日歩七厘くらいについておつたと思います。今日ではこれが九厘ぐらいについております。それから銀行の資金を集めたり何かするために要する経費と申しますか、こういうものが戦前は大体二厘くらいであつたが、戦後は一銭三厘くらいになつておるということであるのであります。従つて大蔵大臣が金利を引下げたいといわれても、いうこといわゆる銀行のコストからいうと、なかなか引下げることがむずかしいのでなかろうかと思うわけであります。無理に政府が引下げさせるというと、結局裏日歩だとか何とかいつて、実際はべらぼうに高い金利になつてしまつて、やみ金融とちつともかわらないというような現実になるわけであります。いろいろ政府や銀行が民間の事業会社等に向つて合理化等を説いているのでありますが、合理化の一番遅れているものは、私は銀行じやないかと思うのであります。試みに大蔵大臣が銀座を夜歩いてごらんになると、銀座の表通りは暗くてほとんど人通りがありません。これは戦後銀行がみな重要な四つかどに支店を出してしまつたからであります。  日比谷のかどにできた日活国際会館とか何とかいうあの建物の中だけでも四つあるのであります。だから東京の町というものは、まるで銀行で埋まつているといつてもよいのであります。自分では大きなビルデングを建て、やみのような日歩で金をかけて、自分だけが太りつつある。だから大蔵大臣なり通産大臣がどんなに貿易振興とか何とか言われましても、そういう面から押えられている事実があるのであります。この銀行の合理化こそ、私は今日まつ先に取上げなければならない一つの問題であると思うのありますが、岡野さんにしても、あなたにしても銀行出身でありますが、あまり銀行ばかりをおかまいにならないで、こういうものに対してメスを入れる。こういうものに対する合理化と申しますか、そういうことに対して何かお考えがあるならば承りたいと存じます。
  79. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 戦前の預金が安くて、また銀行の経営費等が安くなつていることはお話通りであります。戦後におきまして、特に資本蓄積が不足している結果、お互いに、預金の競争という言葉は少し過ぎるかもしれませんが、預金吸収に努めた結果、そういつた費用がふえていることも、これも事実であります。さらに今仰せになつたような、銀行合理化というものも、これはなお一歩前進してもらわなければならぬと考えております。特に銀行が公共的性質を持つておりますだけに、一層そういう感を強くするのであります。従いまして具体的な問題といたしましては、最近は支店等を新設することについては、あまりこれは許さない、支店の設置などの事情がなければ許さないような措置を具体的にはとつております。あるいは店舗改築等に非常な華美な壮大なものをつくることにつきましても、これは自粛的にとりやめてもらうようにいたしておるような次第であります。いずれにいたしましても、金利の引下げは、日本としてはきわめて必要でありまして、その引下げのところへ持つて行きます努力は、絶えず怠るべきでないと考えております。従いまして、私どもも、一方では資本の蓄積ができますように、貯蓄の奨励、あるいは源泉課税等に対する問題につきましても、課税措置をゆるやかにいたします等、いろいろの方法を講じておりますが、この上とも銀行業務の改善、合理化と、それから金利の低下等に持つて行きますように、努力いたしたいと考えておる次第であります。
  80. 河野金昇

    河野(金)委員 経済の自立ということが強く言われたのは、ちようど朝鮮事変の直前と今度であろうと思うのでおります。結局自立経済計画を立てなければならなかつたものが、朝鮮事変でもうかつたがために、忘れられておつた。そうして朝鮮の休戦という喜ぶべき現実に直面して、あわつてまた自立経済ということを言わざるを得ないような状態になつて来たと思うのでありますが、一体これは通産大臣にといいますか、経審長官の岡野さんに聞くべき問題であろうと思うのでありますが、自立経済の目標をどこに置くのかということであります。戦前の日本経済は主として軽工業に重点が置かれておつたのでおりますが、これからの日本の経済の目標を、依然として軽工業に置かれるのか、重化学工業に置かれるのか、あるいは精密機械工業というようなものに置かれるのか、こういう朝鮮休戦という現実に直面した現在の考え方と、二、三年先の考え方、あるいは五年なり十年なり先の考え方、これは具体的なものはなくてもよろしいが、何を重点に置くか。繊維に関しては、岡野さんはよく化学繊維ということを言つておられるのでありますが、綿や羊毛を入れることをやめて、化学繊維に頼ろうとしておられることはわかるのでありますが、それでは化学繊維中心の日本の経済構造といいますか、産業構造を考えておられるのか、目先の現実の問題と、三年なり五年なり、十年なり将来の日本の産業構造をどつちへ持つて行きたいのか、これを私は、具体的のものはなかろうと思いますけれども、大体の考え方を承りたいと存じます。
  81. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。日本のただいま置かれまするところの経済自立目標は、私は国際競争力を強化するということに没頭しておるのでございます。その意味におきましていろいろな考え方をしてあります。  それからもう一つ、将来の日本の産業構造はどうなつて行くか、こういうお尋ねでございますが、私といたしましては、何さま軽工業品は今のところあまり多きを望むわけには行かない。だんだん維持が困難になつて来るのじやないかというような将来の見通しを持つております。同時にまた東南アジアのいろいろな工業が進んでおりまして、それはやはり日本の重化学工業品を欲しておるような需要がございますので、われわれといたしましてはその方面に力を入れて、重化学工業品を増産して、輸出貿易を促進したいと考えております。それで目先といたしましては、むろん御承知の通り、軽工業品、特に繊維品などというものは、日本の輸出の大宗でございますから、これも旧来の市場を確保し、同時にできるだけ努力しまして、輸出に向けて行かなければならぬので、これを軽視するわけにも参りません。また国民生活においても繊維品は非常に重要性を持つておりますから、これを軽視するわけには行きません。しかしこれから目標とする貿易というものは、やはり重化学工業の方に移つて行くのじやないか、こういうような見通しを持つております。その意味におきまして、私どもは重化学工業に力を入れて行きたい、こう考えております。  それから合成繊維の問題でございますが、これは二つの点がございます。合成繊維といたしましては、日本の内地の原料によつてものができるという特徴がございます。同時にこれだけ多くの輸入、その輸入の主としたものは綿花、羊毛とございますから、この貿易のバランスを合せる意味におきまして、羊毛とか綿花の輸入を防遇して、国際収支のバランスを合せる意味においても、合成繊維なんかはやつて行かなければならぬ、こう考えております。  要するに軽工業品は将来維持ができるかできぬかは別といたしまして、私はだんだんと困難になるのじやないかと思いますが、非常に大きな、輸出貿易の大宗であるから、これを軽視するわけには行かない。しかし将来望みを託するのは重化学工業であるから、その方に力を入れて行きたい。こういうふうに目先と、少し先のことを考えて、いろいろと画策しておるわけあります。
  82. 河野金昇

    河野(金)委員 掘り下げた質問をしたいのでありますが、時間に制約されておりますから、次に移ります。  保利新農林大臣にお伺いするのでありますが、きのう平野力三氏との間に、米価の二重価格制の問題、肥料の問題等について、つつ込んだ応答があつたのであります。私はこまかいことは聞こうとは思いませんが、われわれ改進党は今度の国会において一番重要に取上げておる問題は、米価の二重価格制の問題であるのであります。しかしこの二重価格制の問題と、この間うち吉田総理を初め政府当局が答弁しておられる、やはり米の統制は将来はずす方向に行きたいのだと言われる考え方というものは、これは平行線でなかろうかと思うのであります。すなわち二重価格制は、やはり米というものは今統制を解く段階でない、統制の前提に立たなければ、この問題は解決しないのであります。政府の方では統制をはずす立場に立つておられるわけであります。だからこの二重価格制を一体政府はおとりになるかどうか、これを私ははつきりと承りたいのであります。
  83. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。ここ数代の歴代政府が、主食の統制撤廃を目標として努力ををいたして参つておることは、御承知の通りでございます、この方向をとることは、主食管理のあり方として私どもは正しいと考えております。しかしながら今日の食糧事情からいたしまして、今ただちに統制を撤廃することは困難である。従つて日米の統制を撤廃する考えは持つておりません。ただ二重価格制の問題につきましては、河野さん方はきわめて熱心に二重価格制を主張せられておるということは、よく承知をいたしております。いずれにいたしても、秋の新米価格を決定するするにあたりまして、この価格をどう決定するか。生産者価格をかりに引上げた場合に、それに応ずる今日の建前による売渡し価格で、家計に及ぼす影響や、あるいは家計負担の能力がどうであるか、かりにそれを考慮してみる価格をとるとするならば、その場合に財政がこれに耐え得るかぎかといういろいろ諸般の事情を検討して、そのときに解決をいたしたい、慎重に考えておる次第でございます。
  84. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今澄君より関連質問の申出があります。二問に限りこれを許します。今澄委員
  85. 今澄勇

    今澄委員 私は先ほどの大蔵大臣答弁で、現下の一番重大な問題となつている不渡り手形について、かような簡単な答弁予算委員会でして、それで黙つて聞いておるわけに参らないのであります。そこでこういう不渡り手形の出ておる基本的な原因については、いろいろ問題がありましようが、少くとも大蔵省当局は、手形そのものをどう考えておるのか。大体手形というものは、戦前は信用を重んじた商人の社会を流通した信用決済制度であるが、戦後の今日においては、手形そのものにも大きく問題がありはしないか。手形法第十四条の白地手形等は、非常に大きく不渡り手形の原因になるが、これらに対して、大蔵省は何か法的措置を考えておるかどうか。  さらにもう一点は、銀行協会で、手形の形式を一定して、日本の銀行が少くとえ信用を見て手形を振り出して、これらの手形の流通性に確実性を加えるというような措置を考えておるようであるが、大蔵省としては、これらの現下重大な手形の問題についてのこういつた方途について、どのようなお考えがあるのか、この際答弁を願いたいと思います。
  86. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今お話になりました点は、これは戦前と申しますか、以前におきましての手形の信用証券としての流通と、今日におきまする流通については、今日の状況を見て、私もまことに遺憾の点を深く感じます。しかしながらこの問題は、手形の形式とか、あるいは手形について処罰するような法規をつくるとか、そういう問題ではない。むしろ経済道義の問題が中心をなしておるのじやないかと私は考えております。従いまして私どもはただいまの手形法をかえるとか、あるいは手形形式を今銀行集会所がつくつておるをのについて、これを改めるとかいうことについては、今のところ考えておりません。
  87. 今澄勇

    今澄委員 そこで大蔵大臣は、基本的に不渡り手形をなくするような財政金融政策がとられておらない、手形法てのものについても検討を加えない、こういうことになりますならば、現在の不渡り手形の実情は、やみ金融とともにこれを放置されるということで、これはまことに政府は無為無策をいわなければならぬと思います。やみ金融の中で、ただいま大蔵大臣は、いわゆる預金業務について芳ばしくないというようなお言葉でありましたが、預金者保護の立場から申しますと、政府は株主相互金融法のごとき、大蔵省が今検討しつつあると伝えられるような、こういう預金業務を認める法律を出さないというのか、それとも、これらの預金業務を取締る積極的な法案でも出して、大蔵省はやみ金融に関する態度を明らかにするのかどうかという点について、ひとつお答えを願いたいと思います。
  88. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今のやみ金融の問題でありますが、これにつきましては、貸金業者に対しましては、幾多の厳重なる法規があるのであります。しかしながら、いわゆる貸金業者のうち、相互金融というようなことで、あるいは他人から借り入れたということで預り金をしておるものについての問題が主になりますが、この預り金というものをとることは、法で禁じておるところでありまするから、これは法に基いて処断をいたしたいと考えております。しかしながら、しからばそういうものを法制的に認めるかどうかということについては、ただいまのところさような考えは持つておりません。  なお、不渡り手形の問題につきましては、これはさつきちよつと申しました通り、現在の不渡り、手形の原因には幾つも事情があると思います。その一つとしては、経営者が放漫であるということであります。その次には、やみ金融その他に依頼して、しかも帳簿外、新聞でごらんのごとくに、非常に簿外の債務の方が多いといつたようなこととか、あるいはまた予算が遅れまして、そういつた方面に資金が行かぬという点も一つの原因だろうと思います。これは幾つかの原因が相集まつてああいうことになつておると思いまするけれども一つ一つについて見ますると、そう強い関連性は持つておりません。また金額及び枚数から申しましても、そう著しくふえておるわけではございません。けれども、さつき申した通り、経済界というものは有機的に一つのつながりを持つておりまするから、そこに現われた一つの現象を見まして、私どももやはりいろいろな対策を考えなければいかぬと思つておりますが、ただいまのところ、これについてこうするというほどの処置をとるほど切迫しておるとは考えておりません。
  89. 河野金昇

    河野(金)委員 小坂労働大臣一つお伺いしたいのであります。吉田総理が行政機構の改革、行政整理ということ言われても、なかなかこれが実現しないのは、整理をしても、それの持つて行き場所がないということにも一つ原因があると思うのであります。現在働く意思のある人間は、大体日本では三百六十万人くらいであろうと思いますが、これに半失業者を入れると、約一千万人くらいが失業の状態にあると思うのであります。アメリカは、第一次世界戦争の直後に、やはりおびただしい失業者をかかえて、そこで私えたことが例のTVA方式であつたと思うのであります。昨年の電産、炭労のストに懲りた政府が、スト規制法を今日議会に出しておられますが、労働委員長や何かが逃げたり——逃げたというと失礼でありますが、いろいろな関係からこの審議が進まないような状態に置かれて、労働大臣は御苦心をなさつておるのでありまするが、ただストを規制するというだけでは、いかにも能のないことであろうと思うのであります。やはり労働政策というものは、完全雇用を目途としなければならないと思いますが、それに対して何らか考え方がありますか。西独等においては、労働者の権利を認めて、労働組合の代表なんかを経営に参加させておるのであります。ただストライキを禁止するという法律をつくつて、そうして警察を増強して、それで押えようというだけでは、いかにも能のない考え方であるのであります。これに対して政府は、何らか労働者の権利を認めつつ、法律で規制しなくても、ストライキはみずからの良識においてやらなくてもいいような方向に持つて行かせるような方途があるかどうか、これを承りたいと存じます。
  90. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。最初にスト規制についてでございまするが、これは河野さん御承知のように、新たに労働者のストライキ権を制限するという考えではございませんで、従来鉱山保安法なり、旧公益事業令なり、あるいは労調法第三十六条なりによりまして、本来不当であり、あるいは社会通念上非と認められておるものの範囲を明確にする、こういう考えでおるわけでございます。そこでこうした考え方でもつて、一部の人のある基準を逸脱した行為のために、大多数の国民が非常な迷惑をこうむるというようなことから守ろうという考えを持つておりまするけれどもお話のように、そういうことをもつて能事終れりと考えておるわけではもちろんないのでございます。労働政策というものは、申すまでもなく、労働政策単独にこれを樹立して解決すべきものではございません。他の経済政策と関連させ、お話のように、公益事業というものを非常に活発にして、そこに就労の機会をつくつて行くということが望ましいのでありまして、その意味政府といたしましては、公共事業の活発化なり、あるいはそれに入つて来ない者の応急失業対策なり、あるいは一般私企業への職安活動を活発化して就労の機会をあつせんするとかいうことで努力をしておるのでございますが、私といたしましてこの際考えておることで今までと違つた一点を申し上げますと、賃金なり、雇用の国民経済の中におきまするあり方というものを、ひとつみんなで、国民全体で研究してみようじやないかということなのであります。そのためには非常に正確な統計が必要であると考えるのでありますが、現在経済審議庁なり内閣統計局なりの統計を集積いたしてみますと、たとえば国民全体の所得の中における賃金の占める割合というものは、戦前では三九%であることは御承知の通りでありますが、現在は四五%になつておるのであります。これはどのくらいの勤労者によつてこの賃金の所得を占めておるかと申しますと、全体を一〇〇として三六であります。それによつて四五%を占めておるわけであります。これを外国の例と比べてみますと、アメリカにおきましては八一・二%のものを六四、イギリスにおいては九一%のものを六五で占めておるのであります。賃金の国民所得の中において占める割合をこうした統計だけからはじいてみますと、日本の勤労者の取り分というものは必ずしも少くないということが数字的に出て来るの、であります。しかも勤労者の生活がゆたかでないということはよく了解できますが、これは結局日本経済全体の拡大にまたなければならない、こういうことを特に感ずるのでございます。そういう意味から日本経済を拡大し、豊富にするということのために、他の関係大臣とも十分お話合いをして参りたい、こう思つております。
  91. 河野金昇

    河野(金)委員 もう少し何か気のきいた御答弁がいただけるかと思つたが、結局ありふれた答弁で消極的なものにすぎないのであります。すなわち賃金の国民経済の中における割合とかなんとか、そういう問題ではないと思います。やはり労働者の権利を認めるか認めないかということであると思います。賃金とか給料というものはどれだけもらつても、多いとはだれも感じない、常に足りない足りないと感ずるのであります。だから基本的人権を認めるかどうか、労働者の権利を認めるかどうかということであるのであります。西独等においてストライキがないということは、労働組合の代表を経営に参加させておるからであります。すなわち私の調べたところでは、ドイツ等においては、たとえば監査役というものは一番の権利を持つておるが、その三人の監査役の一人に必ず労働組合の代表を入れる。それから監査役が取締役を推薦する場合も、やはり三分の一の取締役というものが労働組合側から推薦される。だから、たとい賃金が少かろうと、労働組合の代表が経営にともに参加しておるというその感激が、私はストライキをなくしておるものであろうと思うのであります。ただ賃金が多いか少いかというだけの解釈をしておるならば、資本主義と社会主義の対立と同じことで、いつまでたつても解決しない問題であろうと思います。だから、どうしたならばストライキというものがなしに済むかという問題は、賃金の多い少いかではなしに、どういうふうにして労働組合、労働者の権利、主張というものをその経営の中に取入れて行くかということにあろうと思いますが、こういうことに対して具体的なものがあるか。具体的なものがないにしても、小坂新労働大臣は新しい感覚を持つておられるのだから、これくらいのことは私は小坂氏個人としてはお考えになつておるのではなかろうかと思うのであります。どうしたらストライキをなくする世の中ができるか、ストライキが一日起れば、それだけ日本の復興と申しますか、日本経済のために大きな害悪を流すことはわかり切つておることである。だからそれをなくすることには政府もいま一段のくふうを凝らさなければならぬ。法律をつくり、法律の防弾チヨッキで、そしてそれを擁護するのに警察予備隊と木村さんの好きな保安隊だけでこれを押えようとしてみても、これは無理であろうと思うのでありますが、労働者の権利を認めることについて何らか具体的なことをお考えになつておるかどうか、承りたいと思うのであります。
  92. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。労働者の権利をでき得る限り認めまして、労使おのおのその本分、与えられた職能を自覚して、その間に良識をもつて産業の平和を確立するというよき慣行を確立したいと思つて努力していることは、私申し上げておるところであります。ただ今のお話のように経営権に参加せしめるかどうかという問題でございまするが、これはただいまのところは、結局その人たちの良識がその限度に達したかどうかという問題だろうと思います。労働者、経営者そのいずれも今申し上げたような職能があるわけでありまして、その職能を越えての発言と、職能以内における発言との区別の認識が十分にできるようになつたかどうかということによつて判定いたしませんと、不測の障害を招くことにもなると思いますので、この点は私はただいまのところ考えておりません。  今前段に申し上げたことで、あるいは誤解があるかもしれぬと思つて、つけ加えさせていただきまするが、国民所得、日本経済の構成というものは、結局全部が一つの組立てによつてできるのでありまして、賃金所得の組立てが非常にふえるということは、はたまた事業所得が減ることでもあり、あるいは個人所得あるいは賃貸料というものが減ることでもあるということで、そのしわはどこかへ寄るのであります。でありますから、全体の国民経済を認識して、そしてその中の問題を取上げるという総合的な判断が——これは私は相手に言うだけでなく、政府としてもそういう判断によつてやろう、こういう意味であります。
  93. 尾崎末吉

    尾崎委員長 河野君に申し上げますが、相当申合せの時間が超過いたしましたので……。
  94. 河野金昇

    河野(金)委員 やはり信義を守らなければなりませんから、これでやめます。結局小坂氏の今の答弁を聞いておると、資本家の立場に立つて労働問題を考えおられる以外に何も新しいものは見出すわけに行きません。大臣が資本家の立場に立つて労働問題を考えれば、やはり労働者も労働者の立場に立つて問題を解決しようとするのであります。だからそこではあくまでも対立があるだけであつて、私は解決はしないと思うのであります。もう一段高い立場に立つて、資本家を押え、あるいは労働者の行き過ぎたところも押えるというようなもう一つ別な立場に立つて、労働、資本というものを五分の立場に見て行かなければ、労働問題は解決せられない。小坂労働大臣が続く限り、労働運動というものは、この議会を取巻く労働攻勢というものはますますはげしくなるということを警告をいたしまして、形の質問を終ります。
  95. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 たいへん誤解があるようでありますから申し上げますが、私は河野さんにお答えするのですから、できるだけ理論的に申し上げようと思つて言つたのでありますが、もちろん今のお話のような誤解がありますればあらためて申し上げますが、政府は資本家の立場に立つものでも、あるいは労働者側の立場に立つものでもない。これは中正な立場に立つて、労使双方の協調協和を求めて参りたい、こういう立場であります。
  96. 今澄勇

    今澄委員 議事進行。先般理事会において第一、第二、第三陣が質問については、二十五日まで総理大臣が出席して、これが質疑に答えるということを、理事会でも申し合せたし、委員長も約束した。しかるに委員長はこの予算委員会開会にあたつて、かかる理事会の申合せは各党ともにいずれも、また政府においても守ることを宣言しておきながら、きのうも総理は途中で帰り、そのために黒田委員質問はきように延びた。しかも午前中また総理は帰つたのであるが、どういう理由によつて総理は帰つたのであるか。委員長から総理が帰つた理由を鮮明せられたい。
  97. 尾崎末吉

    尾崎委員長 先ほど理事の連絡によつて了解がついたと私は承知しております。理事会においてその話はいたしました。
  98. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの河野君の二重米価制度の質問に対し、新たに農林大臣になられた保利農林大臣は先般の予算委員会における質問を十分お聞きになつておらなかつた。認証式の前であつたとかいうことでありましたけれども、認証式の前であなたはここにおられなかつたからいきさつは知らなかつたかもしれないけれども、二重米価制度については、小笠原大蔵大臣より、今回予算価格に繰入れなかつたことについてのいろいろな説明がありまして、明快に反対論もあつた。但し政治的情勢においては非常に考慮する、こういうとめ句になつているのであります。ところが今日出て来られて、この秋の新米のことについては言つているが、現在提出されている予算価格に関連しての二重米価制度の問題についての御答弁がさつぱりないので、河野自身も非常に不満であろうと思いまするから、この際もう一度お伺いをいたしておきたいと思います。
  99. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。政府といたしましては二重価格制を採用しない方が正しいのではないかという建前のもとに、予算も編成をいたしておりますから、従いましてただいまは、今日の統制方式を続けて行く建前で予算を提出いたしておるということを御了承願います。
  100. 川崎秀二

    川崎委員 そこで一つぜひこの際お伺いしておきたいことは、小坂労働大臣が労働賃金の問題に触れ、日本国民の総所得の関係と労働所得の問題に触れられた機会でありますから、あなたにもお伺いいたしておきたいと思うのでありますが、この二重米価制度の一つの理論になつている根拠は、すなわち最近における農家所得というものが年々減つて来て、昭和二十二、三年から二十六、七年、昨年までにおけるいわゆる自由党の低米価政策によつて農家の所得が激減をしているということに原因があるのであります。あなたはこの農家所得の最近の傾向について、たとえば昭和二十一年においては、農家所得は全国民所得の二二%というトップを切つてつたことがある。それがだんだん激減をして、昨年は一六・七%という数字に私の資料ではなつております。農林省においてはどういう資料を持つておられるか知りませんけれども、もし今度の予算価格を変更する必要がないということならば、それは当然本年の農家所得は、昨年のいわゆる廣川農林大臣の決定したところの七千五百円の今日の予算価格において相当農家所得が上るということを見込まれておらなければ、その理論は成り立たないと思うのであります。ことに一昨年までの政策は日本農村を陥没地帯に置いたということは明白であります。そこでわが改進党としては二重米価制度、つまり統制経済撤廃をすることができない今日としては、当然二重米価制度をとつて日本農民の福祉をはからなければならぬ。ひとり日本農民の福祉だけではない、消費者価格というものをすえ置いた、これは社会福祉政策の一環としてもやらなければならないということを、主張いたしておるのでありますが、これに対しては当然それに対するところの農家の所得というものは増すであろうということの予想と根拠がなければ、反対論というものは私は成り立たぬと思うのであります。従つて今の労働所得がせつかく発表になり、確信のあることを言われたのでありますから、しからば日本農民の所得はいうものは、一体労働者その他の階層に対して、非常に有利な態勢に立つておるかどうかということを、明白にこの際承りたいと思うのであります。
  101. 保利茂

    ○保利国務大臣 川崎さんの御質問お答えいたしますが、私は農家経済の安定向上という上から行きましても、また国民的な要請から行きましても、食糧増産に集中をしてそうして農家の経済安定をはかつて行くということが、最も大切であろうと存じております。農家所得の趨勢につきましては、戦後混乱の状態は御承知の通りでありますから、いろいろの推移をたどつて来ておりますけれども、最近の事情は私つまびらかにいたしませんが、戦後都市、農村を通じて経済の大混乱が起き、生活も非常な窮迫を告げて、それが漸次立ち直つて来ました。その足どりの過程におきまして、農村の生活水準は都市方面よりも、かなりいい指数を示しておつたことは御承知の通りであります、最近の状態についてはつまびらかにいたしておりませんが、いずれにいたしましても、私はこの九月に決定せらるべき新しい米価、その新しい米価は今日予算の措置はもとより、食管別会計の予備費の操作においてできるであろうと思つておりますから、適当な新米価を慎重に決定をいたして行きたいと考えております。
  102. 川崎秀二

    川崎委員 それでは答弁になりません。私は、本年並びに昨年における農家の所得、ことに農業所得、林業所得それから漁民の所得、こういうものにわけて、そうしてさらには農家の予想さるるところの労働賃金、こういうものに対しての的確な資料を出して、それに基いてどうしても二重米価制度をとるということが今日不適当である、統制経済撤廃というものは、近々にできるのだという所説があるならば、あなたに屈伏してもよろしいけれども、そうでない限りは、二重米価制度をとらざるを得ない今日の日本経済の状態ということを、われわれは特に強調したい。これはあなた方は、理論においても実際においても、今日日本の農民をこのような低位の水準に置いて、政策を進めて行くということは困難であります。先ほどいろいろ輿事政治、陳情政治の弊が嘆かれておるけれどもわが国の農民が日本の政治の事情に非常に憤激はいたしておるけれども、しかしながら彼らは声なき大衆であつて、今二重米価制度というものが非常に論ぜられて、心からこれを要望しておるにもかかわらず、しかし今日本の農村はちようど田植え期であつて、これに対するところの陳情なり運動というものをするひまがない。われわれはそういう声なき大衆のために、こういう制度を設けることが今日必要であるということを論じておるのであります。どうかそういう点を十分御考慮をいただいて、もし今資料がないというならば、ぜひとも近い将来において出してもらいたい、これだけ要望しておきます。
  103. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ただいまの要望、よろしゆうございますか——それでは午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。  今澄君の申入れにつきましては、理事会において相談しますから、しばらくお残りを願います。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた