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1953-06-23 第16回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十三日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 山本 勝市君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    小林 絹治君       迫水 久常君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       船越  弘君    本間 俊一君       八木 一郎君    山崎  巖君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    櫻内 義雄君       中村三之丞君    古井 喜實君       青野 武一君    伊藤 好道君       福田 昌子君    武藤運十郎君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       河野  密君    平野 力三君       吉川 兼光君    石橋 湛山君       北 れい吉君    河野 一郎君       黒田 寿男君    福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         通商産業大臣  岡野 清豪君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第2  号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第2  号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機  第2号)     ―――――――――――――
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  まず昨日付託になりました昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第2号)、昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第2号)及び昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機第2号)の三案を一括議題として、政府より提案理由説明を求めます。大蔵大臣小笠原九郎君。
  3. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 昭和二十八年度予算案は、その編成を急ぎまして、去る十三日本筋十六回特別国会に提出の運びとなり、現在御審議をお願いしているところでありますが、時日の関係から六月中にその成立を期することは困難であると考えられますので、ここに本予算成立までの暫定措置といたしまして、七月分に必要な経費を既定の四―六月分の暫定予算に追加いたしまして、暫定予算補正第二号として提出いたした次第であります。  この七月分暫定予算は、すでに本国会に提出いたしました昭和二十八年度予算基礎として編成いたしたものでありまして、この点四―六月分の暫定予算とはやや趣を異にしている次第であります。すなわち、暫定予算の性質上、新規事業のうち後年度に相当な財政負担を及ぼすような大規模事業は七月分暫定予算にこれを計上いたすことは見合せておりますが、その他の経常的経費につきましては、本予算計上額月割一箇月分を計上いたし、また本予算において七月より実施を予定しております新規事業及び単価改訂につきましても、原則としてこれを織り込むこととしているのでありまして、暫定予算の域を脱しない限りにおいて、できるだけ本予算の趣旨を織り込み、極力国政の円滑なる運営を期した次第であります。  この結果、七月分の暫定予算一般会計において、歳入千四億五千八百余が円、歳出九百六十七億八千四百余万円となり、差引三十六億七千三百余万円の歳入超過なつております。その内容につきましては、歳入において七月末に確定する前年度剰余金のうち二十八年度予算財源なつております四百五十五億七千二百余万円を計上いたしましたこと、歳出において公共事業費食糧増産対策費住宅対策費等建設的経費に特に意を用い、事業の時間的関係を考慮いたしましてその促進をはかつておりますことが、おもなる特徴となつております。  特別会計政府関係機関につきましも、一般会計と同様二十八年度予算基礎として七月分の必要額計上し、それぞれ暫定予算補正第二号を編成いたしました。なお、米国対日援助見返資金特別会計は七月まで存置するととといたしております。以上をもちまして、昭和二十八年度暫定予算補正第二号につきましての御説明といたしますが、詳細については政府委員をして御説明いたさせます。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  4. 尾崎末吉

    尾崎委員長 次に政府委員より補足説明を聴取することといたします。主計局長河野一之君。
  5. 河野一郎

    河野(一)政府委員 七月分の暫定予算につきまして、その編成要領を補足的に御説明申し上げたいと思います。お手元に編成要領及び暫定予算の計数に関する資料が参つておると思いますので、それにつきまして御説明申し上げます。  暫定予算編成要領といたしまして、従来の四、五、六月分とかわつております点は、まず一般的な方針といたしましては、今までの暫定予算は二十七年度分というものを基礎といたしておりましたが、今度の暫定予算は二十八年度の本予算基礎といたして、歳八につきましては七月中に収入を見込まれる額、歳出については昭和二十八年度予算計上額月割一箇月分を計上することとし、また公共事業その他在来からの継続事業につきましては、事業施行の時期的関係を考慮しながら、七月中において債務負担を行うための必要額計上するという方針をとりたのでございます。さらに本予算に引上してあります新規事業のうち、時期的に急速施行を要するもの、及び積寒地帯のごとく時期的の関係あるものにつきましては、本予算審議に支障を及ぼさない範囲において、新しいもりも計上しておるのでございます。  その具体的内容につきまして、歳入の点におきましては、四、五、六月と大体かわりはないのであります。特に前年度剰余金につきましては、二十八年度予算財源として計上いたしておりまする分を、これを計上することといたしております。  歳出につきましては、まず防衛支出金につきまして百四十五億円、そのうち在日米軍交付金に相当するものは百四十一億円でございます。  保安庁経費は従来の維持費であります。  公共事業費でありますが、公共事業費は、これにも書いてあります通り、従来からの引継いだ事業につきまして、六月分暫定予算と大体同額を計上いたしております。しかし昭和二十八年度の本予算において、前年度より増加しているものにつきましては、増加額のうち、従来の継続事業促進する分については、工事の契約並びに施行時期を勘案いたしまして、北海道、東北、北陸等積寒地帯及び積雪冬季風浪地域の港湾、治山等事業につきましては、大体増加しております額の四分の一、その他につきましては、増加額の六分の一を計上いたしまして、事業促進をはかることといたしたのであります。新規事業につきましては、国が直轄施行するような大規模事業、たとえば継続してやるダムの事業、あるいは同様な補助事業というようなものは、これによつて年度事業計画を決定することになるわけでありますから、これは本予算と一体として本予算審議を妨げてはいけないというよう考え方もございまして、計上を避けておりますが、単年度で完成するような小規模補助事業については、時期的な関係を考慮しながら計上いたしたのであります。また災害復旧事業につきましても、夏及び秋の台風前において、できるだけ事業促進をはかるようにいたしておるのであります。  食糧増産対策もこれに準じて計上いたしておるのであります。これによりまして公共事業におきまして、七月までの暫定予算におきまして、昭和二十七年度予算に対比しますと、大体五三%程度事業施行することにいたしております。不成立予算に比較いたしましては、四三%程度事業分量と相なります。食糧増産につきましては、昭和二十七年度基礎といたします場合、五四%程度事業進行率に相なります。二十八年度の本予算でありますと、四四%程度事業施行ができるという建前にいたしておるのであります。  その他特別の事項について申し上げますと、(8)の生活保護費及び児童保護費につきましては、生活保護単価を従来六大都市五人家族七千二百円となつておりますものを、七月から八千円に単価引上げて実行し得るよう予算を組んでおります。  それからその次の育英事業につきましても、奨学資金の貸付の単価引上げることを、七月からできるようにいたしております。  それから失業対策事業補助につきましても、六月までは就労日数二十日間ということで計算いたしておつたのでありますが、一日を延ばすということにいたし、また資材費につきましても、補助額を増額することにいたしております。  それからその次の義務教育費国庫負担金は、先般政令が出ましたので、最高額を制限することにいたしまして、従来の施行部分等を差引きまして、そういう計算のもとに計上いたしているわけであります。  平衡交付金につきましては、千二百五十億円という今回提出しております予算の額を基礎といたしまして、この中から八%、つまり特別平衡交付金に相当する額を差引きまして、この残額につきまして七月までに二分の一が交付せられるという建前で、従来交付した分を差引いて計上いたしております。  予備費は、一般予備費は増額を予定しておりませんが、災害対策予備費につきましては、西九州災害等も考慮いたしまして、十五億円を計上いたしております。  特別会計政府関係機関については、特に申し上げることはございません。財政投資につきましても、別表を差上げておりますので、これでごらんをお願いしたいと思います。     〔委員長退席西村(久)委員長代理着席〕 ただ一点、この暫定予算におきましては、世界銀行からの火力関係外資の導入につきまして、この契約が七月中に締結ができる見込みでありますので、この外資に対して政府保証ができるよう予算総則において保証契約の御承認を願う建前にいたしております。火力発電関係におきまして、四千九十万ドルの元本、利子及び手数料で総額二千七十八万五千ドルの債務につきまして、政府保証ができるという権限をお願いいたしておるのであります。この根拠法等につき参ましては、別途今議会に法案を提出申し上げておる次第であります。  以上をもつて説明を終ります。
  6. 西村久之

    西村(久)委員長代理 以上をもちまして、暫定予算補正三案に関する政府提案理由説明を一応終ることといたします。     〔西村(久)委員長代理退席委員長着席
  7. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それではこれより昭和二十八年度一般会計予算外二案、並びに昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第2号)外二案を一括議題として質疑を行います。武藤運十郎君。
  8. 武藤運十郎

    武藤委員 昨日私は木村保安庁長官九州における談話を中心としまして、防衛計画についているく伺つたのであります。しかしなかなかほんとうのことを言つていただけないような感じが強い。新聞に現われました談話というのは、ただ単なる一地方の小さな新聞だけが書いたのではないのでありまして、中央における有力各紙が筆をそろえて書いた事実でございまして、これはわれわれとすれば信用すべきものと考えます。もし政府があの木村談話というものは事実に反するのである。木村長官が言われるように、ああいうことは言つた覚えがないのだということでありますならば、内閣の重要な一員がああいう談話をやつたということが出ておる新聞記事に対しましては、反対声明をいたしますなり、あるいは抗議を申し込むなりすべきがあたりまえだと思うのであります。もしまた木村氏がほんとうにああいうことを言つたんだとすれば、これは木村氏を罷免すべきだと思うのであります。新聞に対して反対声明もいたしませんし、木村氏を罷免もしないという立場をとつておるということは、とりもなおさずあれは事実であるということを政府が認めておるのではないかと私は思うのであります。しかし予算委員会に現われましたお言葉を伺いますと、ああいう事実はない、この一点張りである。しかしながらこのことは、あくまでも明らかにしなければなるまいと思うのであります。ことに新聞は天下の公器でありまして、この言論機関の権威を保つ上から申しましても、それからまた政治家言動の不信を回復する立場から申しましても、ぜひこれは明らかにしなければなるまいと思います。ことにこの防衛計画の骨格を知ることは、本年度予算審議するところの重要な前提でなければなるまいと私は思うのであります。そういう意味におきまして、どうしてもこれはさらにつつ込んでこの点を明らかにしなければなるまいと思う。そこで私は本日はこれ以上この問題について論議をいたしましても水かけ論というようなことになりますので、第三者の信用すべき証言によつてこの点を明らかにしたいと思います。そこでまず当委員会におきまして、次に申し上げますよう証人を喚問していただきたいと思うわけであります。それは九州へ同行いたしました新聞記者で共同の丸山君、毎日の小野君、中部日本の茂野君、読売の小川君、東京の中田君、それから内閣記者団全員あるいはその代表、それからきのう出て来ました保安局長、これをひとつ証人として調べまして明らかにしてもらいたいと思う。この問題はスキヤンダルその他の行政監察の問題ではない。日本防衛計画といわれておることを明らかにする必要があるのでありまして、どうしてもこれは行政監察委員会ではなくして、当委員会において明らかにすべきものと考えますので、特にこれは、異例ではありましようけれども、申請する次第でございます。どうか委員長におかれましては、適当なる方法によりましておとりはからいを願いたいと思います。
  9. 尾崎末吉

    尾崎委員長 武藤君にお答えいたしますが、この問題につきましては、あと理事会におはかりいたしました上で、しかるべく御返事をいたしたいと思います。
  10. 武藤運十郎

    武藤委員 よろしゆうございます。そこで私は岡崎大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。MSAの問題が大分議論なつておりまして、政府もいずれ近くこれに対する態度を決定しなければなるまいと思うのでありますが、MSA援助を受ける場合におきましては、あらためてMSAに関する協定を結ぶ必要があるのでありますか、それとも今できているところの安保条約に付属する行政協定というようなものでやるのでありますか、ひとつこの点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  11. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ受ける受けないの交渉をいたしておりませんから、受けた場合にどうなるかということについては、的確なことはもちろん申せないのでありますが、アメリカ法律によりますと、協定を結ぶことが必要であるように思われます。
  12. 武藤運十郎

    武藤委員 そこでこの協定というのは、憲法におきまして、国会承認を経べき条約ということになるのかどうか、伺います。
  13. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これもまた今のところは想像以上に出ないのでありますが、おそらくその協定というものは、条約の一種になるものと考えております。
  14. 武藤運十郎

    武藤委員 そこで総理にお伺いしたいのでありますが、こういうような場合には国会承認を求めなければなりませんけれども、事前承認を求めるというようなことが憲法上の原則でありまするし、また政治道徳から申しましても当然だと思いますが、事前承認を得るという方法をおとりになるお考えでございますかどうか、これは総理大臣からお伺いいたしたいと思います。
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 いかなる形の条約あるいは協定ができ上るかわからないことでありますから、今日においてどうということは申し上げられません。
  16. 武藤運十郎

    武藤委員 ただいまのお言葉でありますが、岡崎さんのお話によりますと、大体条約になるということでございます。ですからその限りで御答弁をいただけばいいのでありまして、あるいは抽象的なお話でもけつこうだと思うのであります。やはりこれはただどういう形のものができ上るかわからないから、今の話のようなことに答えられないということでなくして、条約になるという岡崎さんのお話があるのですから、それを引継ぎまして、最高責任者である総理大臣は、これは事前に出すとか、また出さぬ方針だとか、大体の方針を承りたいのであります。
  17. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは従来しばしば申す通り米国側の意向がわからないことでありますからして、仮定の上に今から私がお約束することはできない。
  18. 武藤運十郎

    武藤委員 私は決して仮定ではないと思う。すでにこの日本に対するMSA援助の問題は、アメリカでは国会議論がされており、実際予算審議されている。日本政府といえども、おそらくここ一、二箇月のうちには態度を決定しなければならないという情勢であろうと思うのであります。決してこれは夢のような、いわゆる仮定の問題ではないのでありまして、この際にはつきりすることがあたりまえだと思いますし、特にこの予算委員会におきましては、そういうこまかい点について、首相が責任をもつてお答えがあるのが当然だと思うのであります。もう一度ひとつ委員長から御注意いただきまして、明瞭にお答え願いたい。
  19. 尾崎末吉

    尾崎委員長 吉田総理大臣、お聞きの通りでございますが、この問題についての御答弁を……。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の意見はただいま申した通り
  21. 武藤運十郎

    武藤委員 それでは岡崎さんに伺いますが、条約国会承認を得なければならないものでありますが、もしこのMSA関係する条約というものが軍事援助である――日本軍備関係するものがあると私は思うが、そうなるとその条約によりまして、国内法である憲法で禁止されておりますところの再軍備の問題を条約によつてきめるという形になるのではないかと思うのでありますが、いかがでありましよう
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としては、憲法その他の法規に違反するような行為はいたすつもりはありません。
  23. 武藤運十郎

    武藤委員 そういうことを伺つておるのではない。私の申し上げておることは、御承知通り憲法第九十八条によりますと、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」こういうことになつておりまして、条約というものは、日本国内法規と同じように、あるいは国内法規以上にこれを守らなければならないということになつておるわけであります。そこでこの条約というものを、軍備に関する条約を結んだとする。その条約国会承認をされた、そこで条約というものは効力を生ずるわけであります。ところが国会承認というものは、御承知通り過半数でいい、日本軍備に関するよう条約が、国会過半数承認をされて、国内法的な効力を持つことになる。ところが一方におきましては、憲法を改正するのには、たとえば第九条を改正するにいたしましても、国会の三分の二の多数をもつて、各議院とも決定しなければならない、ことに国民審査を経なければならぬというような、一方におきまして厳重な憲法改正の要件というものを規定しておる。ところが今言われるように、国会承認過半数でいい条約によつてMSA軍備援助の問題がきめられますと、憲法上の成規の手続によるところの憲法改正というものをしないで、事実上は条約によりまして軍備をやる、憲法第九条を条約によつて改正するという矛盾が出て来るのではないかと思うのでありますが、この点について岡崎さん並びに法務大臣の御見解を伺いたい。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 条約は尊重しなければならないのは当然でありますけれども、同時に条約を国内的に執行する場合に、必要があればこれを法律なりその他のものをつくらなければできない場合が多いのであります。従いまして総理もたびたび言われておりますように、政府としてはただいまのところ憲法を改正するよう考えはないということを言われておりますから、実質的には憲法改正になるよう協定を結ぶことはないのであります。
  25. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。特にお尋ねでございますが、御承知ように法務府が法務省になりましたときに、憲法解釈法制解釈内閣法制局の方に移しましたので、法制局長官からお答えするのが適当だと思います。
  26. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまお言葉にありましたような点は、学者の間に議論がありまして、お話ような説をとつておる方々もございます。しかし政府といたしましては、平和、安保条約以来かねぐ御説明いたしております通り条約憲法との関係においては、依然として憲法の方が優越するという建前をとつておりますので、御承知おきを願います。
  27. 武藤運十郎

    武藤委員 そうなりますと、かりに伺いますが、MSA協定によりまして、政府日本軍備をするよう条約を結ばれましても、憲法を改正しない限りは、その限りにおいて実行がでざないという解釈をいたしてよろしいりでありますか、お伺いいたします。
  28. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま申し上げましたところからの結論は、当然さようになると考えております。
  29. 武藤運十郎

    武藤委員 それからかりに事後にその承認を求めるということになりまして、国会承認が万一得られなかつた場合には、条約の運命はどうなるか。それからまたそれに対する政治的な責任というものはどうなるか、この点を伺いたい。
  30. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これもたびたび出る御疑問でございますが、事前承認事後承認と、一般論的に申しますれば、二つある。事前承認の場合であれば、国会承認があればそのままで事後に問題が起らない。事後承認の場合でありますれば、これはその承認ということによつて政府としては国会意思を体して特段のまた努力をしなければならぬ。その意思を貫くごとく努力しなければならぬという努力をしなければならぬ、さよう考えております。     〔「それではちつともわからぬじやないか」と呼ぶ者あり〕
  31. 武藤運十郎

    武藤委員 何か私の質問がおわかりになつていないのじやないか、もう一ぺんひとつ……。
  32. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 こういうことでございます。はつきり申し上げますと、事後承認という場合は、条約がすでにもう成立してしまつたあとであります。かりに国会不承認となさいましても、外との関係その他の関係においては、条約効力には影響はないわけです。そこで政府責任を持つて結んだ条約に対して、国会不承認意思を表明されたという場合には、国会意思を体して、条約改訂を申し入れるなりあるいは廃棄の努力をするなりというよう措置をとる責任が出て来るということを、下手な品で申し上げたのであります。
  33. 武藤運十郎

    武藤委員 憲法に抵触するような、日本の再軍備関係するよう条約は結ばぬというお話でございますが、どうも私は今までの政府言動から申しまして、必ずしもその通りに受取れないのであります。自衛のための戦力は、いわゆる憲法違反ではないという説は、傾聴に値するということを言われたそうでありますが、これはどういう意味でありますか、これは木村保安庁長官に伺いたい。
  34. 木村篤太郎

    木村国務大臣 自衛のために戦力を持つていることができるかどうかという議論は、前々から行われておるのであります。しかして自衛のためなれば、戦力を持つことは可能であるという議論があるのであります。最近にもそういう論をする有力なものがあります。そこで私は一応それは傾聴に値する議論である、こう申したのであります。しかしその傾聴に値する議論を、政府が採用するとは申しておりません。
  35. 武藤運十郎

    武藤委員 余分なことは答えなくてもいいのでありまして、別に政府が採用することを聞いたわけじやない、木村さんはどういうふうにお考えになるか、これに賛成か反対か伺いたい、これは政府の意見でなくてもよろしい。
  36. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は傾聴に値するということを言つたのでありまして、私はそれに賛成するとは申しておりません。
  37. 武藤運十郎

    武藤委員 賛成か反対かということを聞いておるのであつて、傾聴ということを聞いておるのじやない。
  38. 木村篤太郎

    木村国務大臣 何度繰返しても同じであります。傾聴に値するということと、それに賛成するということとは全然別個の問題であります。私はそれは一応聞くに足るべき議論であるということは、今でもかわりありません。しかしそれを自分が採用するかどうかということは別問題である。
  39. 武藤運十郎

    武藤委員 どうも、男だ男だということをきのうから繰返しておるのに、ちつとも男らしくないのでありますが、反対か賛成か、この説に対して木村さんの御意見を伺いたい。
  40. 木村篤太郎

    木村国務大臣 反対とか賛成とかいうことは別問題であります。一つの議論をする場合に、それは反対とか賛成とかと割切つて言えるものではありません。傾聴に値するということは言つておる。そこでそれに賛成するとかしないということは別問題です。
  41. 武藤運十郎

    武藤委員 これは驚くべき議論でありまして、木村さんもいよいよ議席を持たれ、たいへんけつこうなことでありますが、そうなりますと参議院に参りまして態度を決定するときには、賛成か反対かに割切らざるを得ない立場にあると思うのであります。何でもものは賛成か反対かにはつきり言えないなんということは通用しない話である。この場合にも、ことに木村さんは私の尊敬する先輩の法律家であるのであります、ひとつはつきり賛成であるとかないとかおつしやつていただきたいと思います。
  42. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申し上げます。そう物事は割切れるものではないのであります。それについて私は反対とか賛成とかいうことはこの席上では申しません。ただ傾聴に値する議論であるということは、今もその信念はかわりはありません。
  43. 武藤運十郎

    武藤委員 どうもこれ以上は言いそうもありませんが、それでは別なことを聞きたい。こういうことを傾聴に値すべき説だというようなことを突如として今木村さんが言い出したのは、どういう意図であるのか、これを伺いたい。今急にそういうことを言い出す理由を聞きたい。
  44. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは私が先日九州へ出張の途次、私に随行の記者諸君といろいろ話があつた節に言つた言葉でありまして、あらたまつて言つたわけではありません。いろいろ雑談の末に、そういう議論がある、これは傾聴に値することだ、こう言つたにすぎないのであります。
  45. 武藤運十郎

    武藤委員 私の察するところでは、憲法改正というのは非常にうるさい、手続もめんどうだし、国民も反対が多い。そこで日本は、MSA関係その他で好むと好まざるとにかかわらず再軍備をしなければならぬ、そこでこれはひとつ憲法改正しないでも、自衛のための軍備ということで軍備はできるのだという説をだんだん大きく育てて行くために、この際その前ぶれとして言つたのではないかと思うのでありますけれども、そういうことでありますかどうか一伺いたい。
  46. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さような意図を持つて申したのではありません。今申し上げました通り、雑談の末、自分の見解として申したのであります。
  47. 武藤運十郎

    武藤委員 副総理は来ておりませんか。副総理も、あの木村氏の説には自分も同感だということを言つておる。ひとつ総理からどういう意味で同感だか聞きたいと思うのでありますけれども、お呼びを願いたい。
  48. 尾崎末吉

    尾崎委員長 承知しました。今呼びにやりましたから、他の質問にお移りを願います。
  49. 武藤運十郎

    武藤委員 最近非常に違憲問題が多いと思うのでありますけれども、最高裁判所というのは憲法の番人ということでできたと思うのであります。ところが非常に違憲問題が多いけれども、違憲問題を最高裁へ持つて行くと、おれの方の受持じやないというようなことで逃げておられる。これは非常に遺憾なことであると思うのであります。てこで憲法改正のための問題その他いろいろありますが、とにかく違憲問題に関する手続というものをもつと明確にする。最高裁判所に違憲裁判所としての性格を与えるとか、もつとはつきりしたものをつくるとか、あるいはまた最高裁判所がほんとう憲法裁判所の役割を勤めないならば、そういう番人はやめさせて、そして昔のような裁判専門の普通裁判所の最高裁判所、大審院のようなものにするというようなことに、もつと考慮しなければ、いつまでたちましても憲法最高法規としての権威が保てないのではないかと思いますけれども、こういう点についての法務大臣の御意見を伺いたい。
  50. 尾崎末吉

    尾崎委員長 犬養法務大事はたぜいま法務委員会に出席しておりますから……。     〔「法務委員会はまだやつてないよ、うそを言うな」と呼ぶ者あり〕
  51. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私からお答え申し上げます。ただいまのお話でございますけれども、最高裁判所のとつ態度そのものに対しては、政府といたしましては御批評することを差控えるべきだと思います。ただ、考え方の根本といたしましては、ただいまも御示唆の点は、憲法改正の問題としての一つり要点にはなるであろう。何となれば、ヨーロツパあたりの憲法の中には、そういうような権限を与えておる悪法裁判所というようなものを設けておるところもありますから、これは一つの考え方にはなろうと思いますけれども、三権分立の本来の建前からいいますと、このことは深く考えないと、たとえば立法権でも、行政権でも、司法権に対する関係においては相当問題を伏蔵しておるということを私は考えております。
  52. 横路節雄

    ○横路委員 関連質問。法制局長官にお尋ねしますが、先ほど岡崎外務大臣はMSAの問題について、アメリカ法律によれば協定を結ぶ必要がある、それは条約の一種であると言われた。MSAとの関連において、もし軍事援助がその中に入つてつて、再軍備を強化する方向に行つたときにどうかという武藤委員の質問に対して、あなたは憲法は優先するとお答えなつておる。そのあと重ねての質問に対して、憲法は優先するが、その再軍備を必要とするよう軍事援助に関しての条約国会において事後承認を求められた際に、国会がこれを不承認ということになつたときには、内閣としてはその関係国に対して改訂、破棄の努力をすべきである、従つてその条約は有効であるという答弁をしておる。この考え方は先ほどの憲法は優先すべきであるという観点からすれば矛盾である。軍事援助あるいは再軍備内容とした条約国会において不承認という場合においては、当然条約は無効である。それが憲法優先の建前である。あなたの答弁法制局長官としてどうかと思われる。この点重ねて私はその条約は無効だと考える。そうでなければあなたの先ほどの憲法優先であるという答弁とは著しく食い違いがある。この点明快に御答弁願いたい。
  53. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私がお答え申し上げましたのは、MSAの問題とかいう具体的な問題を離れまして、かねがね申し上げておる、政府の意のあるところを申し上げただけであります。そしてただいま不承認の例において申し上げましたのも、その不承認の理由が憲法違反の理由によるのか、政策上好ましくないという理由によるのか、いろいろ理由があり得るわけであります。およそ国会が、事後の承諾に対して不承認という意思を表明された場合に、どういう効果を生ずるかということを申し上げたのであります。その点から、しからばその場合に憲法違反内容であつたかどうかという点が出て来るわけであります。それは矛盾しておるのではないかというお尋ねでありますけれども、先ほど触れましたように、政府が、憲法第九十八条でなしに第九十九条すなわち国務大臣も国会議員も憲法を厳守する義務があるという趣旨に従つてこれを結ぶべきものでありますから、よもや憲法違反内容条約ができるはずはないと考えておるわけであります。ただ万一の場合にどうだということになると、これは学者の間に非常に議論があります。すなわち条約は国内だけの関係の面と、外国との関係の面がありますから、この関係をどういうふうにさばいて行くかという問題がございますけれども、このお忙しい時間にその点に関することはいかがかと思いますので、他の適当な機会にまたいろいろお教え願いたいと思います。
  54. 横路節雄

    ○横路委員 法制局長官は先ほどからこの席に同席しておつた。武藤委員の質問に対して、岡崎外務大臣のMSA援助に関するところの条約の一種であるという点から発展して行つた。あなたはそういうことを全然抜きにして、ただ私は条約憲法との関連において答えておるのだということを言つておるが、あなたは今までの討議の過程の中ではつきり知つておる。私が重ねてお尋ねしたい点は、国務大臣は憲法に違反するよう条約はおそらく締結しないであろうという仮定の上に立つて話されることについては、はなはだ遺憾なんです。今私たちがここで問題にしていることは、アメリカ国会で明確になつている。日本に対する軍事援助費がおそらく一億一千五百万ドル以上のものであるということは明確だ。しかも相互安全保障法の五百十一条の中で六項目にわたつてアメリカとの間のいわゆる相互援助規定というかそういうものの中で、明確に義務を履行しなければならぬ。これは今国民の重大な関心の的であり、国会の中心論議なんです。だから私たちは具体的に聞いている。憲法に抵触する再軍備、そういうものを含むところの条約を今の政府国会事後において承認を求めて、国会不承認なつた場合においては、当然憲法に抵触する。すなわち再軍備に関しては明確に規定しているのだから、憲法に抵触する。そういう条約については、政府が結んだ事後において、国会不承認ときまれば、当然この条約は無効である。こういう点について私はお尋ねしている。そういうものについては政府は結ばないであろうというよう仮定に立つて答弁はしていただきたくない。その点は明らかにしていただきたい。それから国会でこの問題について長々と説明することについては時間もかかるからというようなことは不届きだ。非常に重大な点であるから、時間がかかつてもここで答弁してもらいたい。
  55. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまのMSA関係については、私の聞いておりましたところでは、岡崎外務大臣はMSAの向うの法律の解釈からいつて、相互援助を受ける場合には一つの協定が必要であつて、その協定は多くの場合条約の形になるであろうという趣旨で、一般論として申されたものと私は聞いておつたのであります。日本がその援助を受ける、そうして日本がその当事者として条約を結ばねばなるまいというふうに仰せられたことだとは私どもの耳には響きませんでしたから、抽象論を申し上げたわけであります。
  56. 横路節雄

    ○横路委員 法制局長官に重ねて質問します。あなたは私の質問に対して答えてないじやないか。あなたは先ほどそういう条約に関しては、明らかに憲法が優先すると答えている。速記を見たら明らかになる。岡崎外務大臣もその点については、明らかにアメリカ法律によつて協定を結ぶ必要がある、しかも条約の一種だから国会承認を必要とするのだと答弁している。だから私どもが聞いているのは、この軍事援助を含んで来ることは、明らかに日本に対する再軍備をより強化する方向になるだろう。従つてこういう条約、すなわち憲法第九条に抵触するよう条約は、当然吉田内閣としては事前国会承認を求めなければならぬけれども、今までのやり方で、事前承認ということについてはおそらく不可能かもしれぬ。だから事後にこれを求めた場合において、国会不承認とした場合においては、あなたは先ほどこういう答弁をしておる。それは内閣が当然改訂破棄に努力すべきだというのだが、われわれはその条約は無勢あると考えておる。だから私はお尋ねしておる。あなたは、そういう条約については今の国務大臣は結ばないだろうと言うが、そんなことは今までの例で信用できないのです。だから法制局長官として、時間が何ぼかかつてもいいから、ひとつ答弁してもらいたい。
  57. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 まず弁明を申し上げますが、学者の学術討論でありますれば、さようなことについて私ども客観的のお答えができると思いますけれども、政府条約の当事者となつて、そうして私は政府法制局長官として、政府のやることは寸毫たりとも憲法に違反しないようにという大きな責任を持つてつておるわけであります。その場合を仮定しての御質問ということは、非常に私としてはつらいことであります。そういうことは私としては夢にも考えませんということを申し上げるほかありません。
  58. 尾崎末吉

    尾崎委員長 横路君、簡単に願います。
  59. 横路節雄

    ○横路委員 法制局長官に重ねてお尋ねしますが、あなたの今の答弁は何と言つておられるかというと、あなたは、自分は法制局長官としては今の内閣がどういうことをやつても、法的にこれをあくまでも守らなければならぬと言つておる。まるで詭弁係じやないか。私があなたに聞いているのは、あなた自身今ここで何と言つておるか、長々と説明はしたいけれども、時間が惜しいから説明はしないと言つておる。だから私はあなたにここで正しく説明してもらいたいと言つておる。あなたの最後の答弁は何と言つておるかというと、外国との条約については、憲法に抵触するような問題があつて国会事後不承認なつた場合においては、内閣はその関係外国との間にいわゆる改訂破棄という点について努力をしなければならぬと言つておるが、私どもはそれは無効でないかと聞いておる。無効でないかと聞いておることをあなたに答弁していただきたいと言つておる。あなたは、全然そういうことは頭から今の内閣にはないのだ、法制局長官としてはそういうことは毛頭考えられないと言うよりない。そういう場合にどうかということを聞いておるのだから、法制局長官としてぜひ答弁願いたい。あなたは何も吉田内閣の番犬ではないのた。
  60. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の申し上げますのは、吉田内閣の行われることに対して憲法違反のないようにと、内部にあつて努力するのが私の責任でございますから、そういうことは私の立場としては想像してお答えすることはできません。それは非常に残酷なお尋ねでございましようということを申しておるのでございます。
  61. 尾崎末吉

    尾崎委員長 武藤君に伺いますが、関連質問がありますけれども、一問だけよろしゆうございますか。
  62. 武藤運十郎

    武藤委員 それではこうさせていただきましよう。私は最後に一つ質問いたしましてそれで打切ります。なお関連質問がございましたら、そのあとでお許しをいただきたいと思います。  佐藤さんに最後に一つお尋ねいたしたいと思います。今までの議論は、政府MSAその他に関して条約を結びまして、それが不承認なつた場合について議論をされておるわけであります。そうではなくて、政府MSAに関して軍事援助的な、日本が軍隊を持たなければならないよう責任を負う協定なり条約なりができて、その条約過半数によつて国会承認を得た場合、憲法を改正しないでも憲法を改正したと同じ結果になつて、日本軍備をその条約によつて持つことになるのかどうか、こういうことをお伺いしたいのです。
  63. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういうことも、ただいまのお答えで申しましたように夢にも考えておりませんから、御容赦をお願いいたします。
  64. 武藤運十郎

    武藤委員 これはゆゆしい問題でありまして、いやしくも法律最高解釈をなすべき法制局長官が答えられないというようなことはあるまじきことだと思う。ひとつその地位における責任において御見解をを述べてただきたい。
  65. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 たびたび申し上げますように、私どもは裁判所というものとは違うのでございますから、そのことについても、仮定の、しかも間違つたことを、少くとも私個人が間違つた補佐をして、その結果についてのお答えをここでせよとおつしやることは、この席上においては、私がたびたび申しますように、残酷ではないかと思います。
  66. 武藤運十郎

    武藤委員 残酷であるようでありますから、それでは最高責任者としての吉田さんに、何か吉田さんが佐藤さんに助言されておつたようでありますから、吉田さんからひとつ御意見を承りたい。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申します。憲法に違反するごとき条約は結びません。
  68. 尾崎末吉

    尾崎委員長 北君に申しますが、あとの質問者の時間の都合がありますので、一問に限り質問を許します。北れい吉君。
  69. 北昤吉

    ○北(れい)委員 私はこの前、条約の方が日本ような弱体の国においては優先であるからという主張をしたところが、佐藤法制局長官から憲法が優先である、こういうお答えがあつた。ところが憲法が優先であるならば、ウイルソンが第一次大戦後に国際連盟をみずから主張して、みずからゼネヴアへ乗り込んで調印した。ところが上院では三分二の賛成を得られず、アメリカは遂に国際連盟に加わることができなかつた先例があります。それと同じことで、この議会で条約を否認した場合においては、私は憲法優先論かつ甘くならば、条約は無効になると確信いたします。しかし条約優先論ならば別であります。お答えを願います。
  70. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今の国会不承認という場合についての政府のとるべき態度、あるいは条約効力ということについては、先ほど触れた通りでありまして、ただいまの関係のお尋ねは、今のMSAなり憲法問題なりということに連なつての問題でございますけれでも、結局内容は先ほど申し上げた通りのことになると思うのでありまして、さらに重ねてお答えをいたすだけの能力を持ち合しておりません。
  71. 尾崎末吉

    尾崎委員長 河野密君。     〔「委員長、関連質問」と呼び、その他発言する者あり〕
  72. 尾崎末吉

    尾崎委員長 河野君に発言を許しました。河野君発言を願います。
  73. 河野密

    河野(密)委員 ただいま問題となつておりまする点は、私も聞きたいと思つておつた点がありますから、あとであわせてお聞き申し上げたいと思います。  私はまず吉田総理大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、先般の吉田首相の施政演説、岡崎外相の外交演説、小笠原蔵相の財政演説、岡野長官の演説等を通じて明らかになりました政府方針を、私が要約いたしてみますると、国際情勢は朝鮮休戦によつて緩和の方向にある。休戦による緩和によつて日本経済に重大なる転換が生ずる機運があり、経済自立の問題が焦眉の急となるよう考える。しかし当面は急激な変化が生ぜず、従つて予算は、不成立なつ予算をつくろうことによつて間に合わせる。自立経済の達成のためには、貿易政策を確立すること、その貿易政策の根源はコストの切下げ、産業の合理化にある。特需から貿易に切りかえる施策を、もつぱら国家財政の投融資によつてまかなう。しかしながら、これらの経済政策を行うにあたつては、決して国民の生活水準の切下げをしたりはしない。逆に民生安定のための施策を行うのだ。これらの国策を遂行して行く上において、あくまでも従来の自由主義経済の建前によつてこれを行うのだ、こういうように要約いたされると思うのであります。  この政府立場考えて見ますのに、私は多くの矛盾が含まれておると考えますが、その第一の点は、現在わが国の経済自立の課題は、国内における雇用量を増大し、生活水準を引上げるという要求と、貿易振興のためには、生産コストを切下げなければならない、産業の合理化をやらなければならないという、明らかに相背馳する二つの要求を達成しなければならぬという、二律背反と申しましようか、相背馳する政策を行わなければならないのでありますが、これをどうしてやるか、この重大なる課題を少しも掘り下、げておらないのであります。しかもこの難問題を自由経済施策によつて達成できるというよう考え方をしておるとするならば、これはまさに木によつて魚を求めるのたぐいの見当違いでありますが、この矛盾をどういうふうにお考えになるか。第二の点は、朝鮮休戦後の国際情勢、ひいては国際経済情勢に大きな変化があるであろうということを予想しておきながら、当面急激たる変化を生ずることはないものという安易な前提のもとに立つて、財政経済政策を立案しておるのでありますが、これは非常な矛盾であると思うのでありまして、政府はこの国際情勢の見通しについて、片鱗だもその考え方を述べておらないのであります。政府はこの国際情勢、ことに国際経済情勢についていかなる考え方を持つのであるか。第三の点は、政府はしきりに特需から貿易に切りかえるのであるということを強調いたし、このために昭和二十八年度予算において、三千九十六億の厖大なる財政支出を計上いたしておるのでありますが、政府はこの特需の性質を一体どういうふうに理解しておるのであるか。特需も外貨をかせぐものであり、貿易も外貨をかせぐものである。だから特需も貿易も同じものである。一方が少くなれば、一方に切りかえることができるのだ。かよう考え方をいたしておるとするならば、これは非常なナンセンスだと言わなければならぬと思うのであります。特需の問題を論じておりながら、しかも防衛生産については一言も触れない、MSA援助の問題について、施政演説の中で一言も触れていないのは、まさにそういう考え方の矛盾から来ておると考えるのであります。  私はかようなことを前提といたしまして、以下外交、経済、財政、防衛問題等について、逐次お尋ねをいたしたいのでありますが、今私が申し上げました政府の施策上の矛盾、この全般的な考え方の矛盾に対して、総理大臣はどうお考えになるか。根本的にどういう立場に立つて、その施政演説の中にお述べになりました日本の経済自立を達成し、日本の独立を完成し、この難局を背負うて行かれようとするか、その根本的な考え方を、まず私は承りたいと存ずるのであります。
  74. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。第一の御質問の国内雇用量の増加、コスト切下げに移るのではないかというお尋ねでありますが、これは矛盾しないと考えますのは、貿易が振興し、また従つて国の生産が多くなるということになれば、自然国内雇用量は増加するもの、私はこれは矛盾いたさないと考えます。そこで、これは自由経済、自立達成ができないじやないかというお尋ねでございますが、これは、むしろ私は個人の事業主の活動――そこに問題がありますが、自由経済でなければ一国の産業なり経済なりは伸張しない、これは私の信念であります。これはあなたのお考え立場が違うかもしれませんが、私はそう考えるのであります。ゆえに自由経済によることが貿易の進展にも、また経済の進展にも、計画経済よりもより有効であるという主張に基いて、自由経済一向さしつかえないと私は思うのであります。  その他はほかの大臣からお答え申し上げます。
  75. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 朝鮮事変が終息する、それに伴つて国際情勢はどうなるかというお尋ねでありましたが、この点について私どもは、こらんになればおわかりくださると思いますが、二十八年度予算には急激なる変化はない、ただその後の情勢の推移は、これは若干のことを織り込んでおる、こういうふうに申しておりますが、しかし国際情勢は、これを契機としてだんだん横ばい、あるいは下向きの傾向にあり、あるいは景気後退等をもたらすかもしれぬから、これに対する各般の対策を立てねばならぬということを言つておるのでございまして、予算措置等として現われるものは、むしろ二十九年度以降にこれを表わして行くほかないと思つておるのであります。けれども今後の世界経済というものは、これが動機となつて、景気後退の様相を相当現わして来るのではないかというふうに、私どもは考えますので、その点で日本経済の自立目的達成には、いろいろ国民の真剣なる努力が必要だということを申したような次第でございます。  それから今の特需についての関係でございますが、御承知のごとく、現在ごく大きく見ますれば、輸入が十六、七億ドル、それと国際的な支払いとして二億ドルぐらいございましよう。十八億ドルから二十億ドル見当のものを見て、またこちらから出ますものは大体十一、二億ドル、あるいは十二、三億ドルぐらいに見れるかもしれませんが、なお七、八億ドルがいわゆるほか  の国際収入、こう見てよろしいのではないか、こう見ております。そこでいわゆる特需という部分はそんなに大きなものではございません。特に特需を狭い意味に限りますれば、よく私が申しました通り、おそらく役務まで伴いまして、三億二、三千万ドルぐらいに考えておりますが、かりにそれを広く特需という意味に解しまして、それがない場合に、だんだんこれは減つて来ると私どもは見て、それに対する対策を立てておるわけです。貿易振興対策といたしまして、過日来申し上げましたような、各種の国際競争力をつける措置を講じておる次第でございます。
  76. 河野密

    河野(密)委員 今申し上げましたことを前提といたしまして、私は次に国際情勢についてお尋ねをいたしたいのでありますが、朝鮮休戦が、紆余曲折があるにいたしましても、成立に至るであろうことは大体間違いがないと私たちも考えるのでありますが、この点は、われわれとしてまことに御同慶にたえないと思うのであります。しかし今回の休戦となつたのは、三月三十日の北京放送でありまして、この北京放送は、周恩来中国首相がスターリン前ソ連首相の葬儀に参列をして、おそらく三月二十四日から数日間モスクワに滞在をして、諸般の打合せをモスクワにおいて完了して帰つて来るなり、放送となつて現われたものであろうと想像をいたされるのであります。従つてこれはモスクワ全体、モスクワの当然の精神を代表してなされたものと思うのでありまするが、してみると、共産主義圏全体から放送をいたされましたこの平和攻勢というものをどういうふうに判断をするか、こういうことがきわめて重大なる問題になると思うのであります。  一九二一年に、ソ連は第一回の平和攻勢を行いました。一九三四年にドイツにナチスの政権ができましたときに、その翌年に開かれた第七回の国際共産党の大会において、いわゆる人民戦線的な方式がとられて、第二回目のいわゆる平和攻勢のとられたことは御存じの通りであります。その後一九四三年、スターリングラードの重大なる段階に到達をいたしましたときに、ソ連は新しい民主主義の憲法を採択し、コミンターン、いわゆる共産主義インターナシヨナルを開催をして、平和攻勢を踏み出したのでありますが、それとそれらの前例に比べて、今回の平和攻勢は、スターリン首相の死ということをきつかけとして行われたのでございます。これらに対していかなる判断を下したらよろしいか、これは私は、これからの国際情勢を検討する上に重大なる問題であると思うのでありまするが、政府は、これらのいわゆる共産主義陣営からの平和攻勢、ピース・オフエンシヴというものに対してどういう判断を下されているか、その見通しについて承りたいと存じます。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私も演説の中で申しましたように、従来からもずつとあるのでありまして、平和攻勢という以上は、言葉から行きましても、真の平和であるか、それとも一時の攻勢で、その手段が平和ということを言つているのか、そこははなはだ疑いがあるわけでありますが、われわれの見るところでは、共産陣営の基本的の目的はそう容易にかわらないのでありまして、いわゆるピース・オフエンシヴである。ピース・オフエンシヴである限りは、真の平和を希望するのではなくて、一時的のものであるかもしれないという覚悟はいたしておかなければならない。しかし一時的のものであつても、少くとも緊張は緩和することはけつこうであるから、その意味では、賛成をいたしているのであります。しかし同時に、一時的のものである場合も考えなければならぬから、たとえば日本は別といたしましても、民主主義陣営の中の防衛の努力というものを弱むべきでもない、また民主主義陣営の結束強化ということが弛緩するような、それほど手放しに安心すべきものではないと、こう考えております。
  78. 河野密

    河野(密)委員 今申し上げましたように、三月三十日の北京放送で、俘虜交換に関する協定に調印する用意があるということが、今回のいわゆる朝鮮休戦会談が成立しそうな運びに至つたきつかけでありまするが、これはちようど、時あたかもわが国においては総選挙のまつ最中でございました。この放送がありますると、ほとんど数日を隔てて、ワシントン筋から日本に対して、かりに朝鮮が休戦になつても、朝鮮休戦が成立しても、特需二箇年間は保証をするということが放送をいたされたのであります。これは、いずれの筋から放送されたかは私は存じません。しかしわれわれは、その当時において、選挙のまつ最中でありましたから、この問題については、それほどの深い関心を寄せなかつたのでありまするが、今にして考えるならば、この三月三十日の北京放送、それからワシントンから発表された特需二箇年間を日本に対して保証するというこの放送というものは、無関係ではあり得ないばかりか、非常に大きな意味を持つたものであることを、われわれは考えざるを得ないのであります。言いかえるならば、この日本において行われた総選挙をきつかけとして、二つの世界のいわゆる冷たい戦争というものが、日本の選挙戦の中に火花を散らして闘われたのではないかという感じを、私は持つのであります。総選挙戦の最後の三日前でありまするが、日本共産党は、十九名の候補者を辞退せしめて、その候補者の投票は、特定の候補者にこれを合流せしめるという態度をとつたのであります。このワシントンからの放送が、非常に失礼な言い分かもしれないのですけれども、自由党の選挙を有利にするためのバツク・アップであつたということは、今日一言の疑う余地もないと私は思うのであります。こういうことを考えてみますると、この選挙戦を通じて、冷たい戦争が日本の選挙において争われたのである。冷たい戦いというものは、この選挙を通じて露骨に戦われたのだということを、われわれは考えざるを得ないのであります。この冷たい戦争は、私はこれでもつて終つたとは考えない。この情勢に対して、総理大臣は、そういう認識をお持ちになつておるかどうか。認識をお持ちになつておるならば、これらの問題に対していかなる政策をもつて対処されようとするのであるか、この点を承りたいと思うのであります。
  79. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は、今御指摘の、ワシトン政府日本に対する特需二箇年保証ということは、どういう経緯でもつてなされたか存じません。しかし私の想像では、お参話のような冷たい戦争とか、自由党を助けるとかいうことではなくして、日本の経済自立ということは、かねてアメリカが主張しておるところであります。日本において、朝鮮の休戦が行われたならば特需が消えるだろうとか、あるいは日本の経済が危殆に瀕するだろうとかいうような話が新聞等に出たことについては、米国政府としては、日本の安定を期するための、日本の経済自立を期するための親切心からして出たのではないか、事情はよく存じませんが、こう私は考えるのであります。総選挙の上に、冷たい戦争の結果、お話ような共産党がどうしたとかいうようなことは、私は事情は存じませんが、私の感じでは今申したような次第であります。
  80. 河野密

    河野(密)委員 これは、単なる一つの想像とか、そういうことで片づける問題でなく、こういう問題は、もう少し真剣に深刻に考える必要があると思う。私は、政府答弁をこの際無理には求めませんけれども、少数の短見者流がこういう問題を見のがしておるような、そういうものではないということだけは、この際はつきりと申し上げておきたいと思うのであります。やがて思い当るときが来ると思うのであります。こういう意味合いにおいて、私たちは、朝鮮の将来がどういうふうな解決を告げるかということは、きわめて重要な日本の運命に関する問題だと思うのであります。南北朝鮮が統一されて、自由な朝鮮民族による朝鮮が出現するということは、われわれの心からの希望でございまするが、しかしこれは、言うべくしてそう簡単にできるとは考えられません。しかし、この朝鮮の半島にいかなる政権が樹立されるか、どういう形で朝鮮の将来が決定されるかということは、日本にとつて重大なる問題であると私は存ずるのでございます。この朝鮮の問題は、いわゆる政治会議において決定されるというのでありまするが、この国際連合の政治会議に対しては、この意味において日本は当然出席すべき権利もあるし、義務があると私は思うのであります。現にアメリカ筋の外交評論家などでも、日本をこの会議に出席せしむべきであるという議論をしておるのでありますが、これに対して、政府はどういうお考えを持つているか、その考えと用意とを承りたいと思うのであります。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 朝鮮の解決策につきましては、ただいまお話ように、自由なる選挙によつて、国民の選んだ政府のできることが最も望ましいことは当然であります。但し、一国々々が朝鮮にいろいろそういう問題を持ち出すということは、いわゆる内政干渉のきらいもありますが、幸いにして国際連合も、その方針でずつと来ておりますから、日本としては、そういう意味でできるだけ国際連合に協力して、国際連合を通じて、朝鮮の新しい形態ができ上ることが最も望ましいと考えております。  なお、いわゆる政治会議の問題につきましては、実は、これがどの程度の問題を議するのかということについては、すなわち朝鮮だけの問題にするのか、それとも他の問題にまで言及されるのかということは、いまだ議論があるようでありますが、われわれも、朝鮮の将来について大いなる関心を持つていることは、もちろん当然であります。この政治会議の構成メンバーにつきましては、まだ決定はいたしておりませんが、さしあたり朝鮮で戦争に従事したおもなる国の代表者となつているように想像もされるのでありまするが、日本としては、要するに今おつしやつたように、朝鮮の将来に非常に大きな関心を持つのは当然でありまするから、いずれにしましても、この問題の今後の成行きについては、十分注意をいたしまして、日本としての立場も列国がよく理解するように、努力をするつもりでおります。
  82. 河野密

    河野(密)委員 次に私は、国際情勢の第二として、国際経済の見通しについて、政府の所見を承りたいと思うのであります。朝鮮の休戦が日程に上りましてから、早くも世界は軍縮の声におびえて、いわゆる平和不景気、ピース・スランプの声が起つて来ておるのであります。これは非常にわれわれとして悲しまなければならないことだと思うのでありますが、しかしこれが事実であります。そこで軍拡がスロー・ダウンされるようになりますと、当然世界的に大きな不景気が来るのではないか、一九二九年に世界を襲うたような、ああいう不景気が再び起るのではないかという声が聞え、それに対する恐怖ともいうべきところの声が聞えておるのでございまするが、この世界景気の前途をどういうふうに見て政府は施策を立てておられるのか、これを私は承りたいのであります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 先ほど小笠原大蔵大臣からごく簡単な御意見がございましたが、われわれ一は、もう少しこれを深刻に考えてみる必要があると思うのであります。この前の一九二九年に世界を襲うたあの不景気の原因がどこにあつたかということについて、ハウル・アインチツヒ氏がこれを要約したところによりますると、大体これくらいの原因をあげておるようであります。第一が過剰投機、オーバー・スペキュレーシヨン、第二が過剰生産、第三が購買力の減退、第四が市場の狭隘、第五が貿易の縮小、第六が金の偏在、第七が心理的な影響、こういうような要件をあげて分析をいたしております。このうちで心理的な影響と申しまするのは、きわめて重要なる要素でありまするが、こういうようなことからこの原因を見ますると、現在われわれの眼前にある世界の経済上の動きは、まだこのすべてが現われておるとは申しませんけれども、これをわが国に例をとつて考えると、この過剰投機、過剰生産、あるいは購買力の減退、あるいは心理的な影響、こういつたような要素は非常に大きくあるように思うのであります。そこでその結論としてどういうことになるかと申しますると、何らかの対策を講じなければ、世界的な不況は必至であろうという考え方であると思うのであります。その世界的な不況が必至であるかないかは別といたしまして、その対策はどういうところにあるかと申しますると、これまたパウル・アインチツヒ氏の所論でありますが、そのピース・スランプを克服する道は、軍需にかわる貿易の拡大、国内購買力の増大、米国経済による世界的な援助、原料生産国の購買力の減退をカバーする政策の確立、こういうことにあると申しておるのであります。私はただこれらの外国の経済学者の説を言つて、鬼面人をおどすのではございませんが、この述べられておること一々に非常に思い当る点があると思うのでありまして、この何らかの対策を講ずるのでなければ、世界的な不況というものは避け得られないのではないか、世界的な不況を回避するためには、少くともこういつたような政策を行わなければならないのじやないか、こういう点について、私は政府の所見を承りたいと思うのであります。
  83. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 河野さんがパウル・アインチツヒ氏のことを持ち出しましていろいろお述べになりましたことは、まことに私どもも御同感であります。さつきも簡単に申し上げました通り、私どもも、この朝鮮事変の休戦が一つの動機となつて、世界が景気後退に向つて来るのではないか、かように予測し、これがために日本としても各種の対策を必要とすると考えておるのであります。世界の情勢につきましては、あるいは後刻外務大臣からでもお話があるかと思いまするが、私は日本といたしましては、それを織り込んで諸般の政策を立つべきである、かよう考えておるのでございまして、日本といたしましては、何としても、三つの大きな政策とでも申しましようか、一つは輸出貿易の伸張、この輸出貿易の伸張について、たとえば経済外交の強化であるとか、あるいは日本の品物のコストを引下げて国際競争力を力づけるとか、あるいは貿易商社を強化するとか、要するにそういつた各種の貿易伸張に対する施策をすべきであると思うのであります。第二は、何といたしましても、日本の特需その他のものが漸次減つて行くと見なければなりませんから、従つて対外支払いを少くする意味合いをもちまして、どうしても日本としては、国内産業の振興ということに重きを置く。特に四億ドルにも上つておるような食糧を、漸次入れないで済むようなところまで増産計画を持つて参る。またあるいは日本が今綿花その他のものを多量に入れておる。特に綿花のごときは、最近では綿花に払う外貨の量の方が、その製品で獲得する量の三倍にも上つておるというような状態でもございまするので、合成繊維その他のものを強化して、こういつた支払いをないようにするといつたぐあいに、一部から申しますれば、ある意味の産業構造にも手をつけなければならぬのではないか、かよう考えておるのであります。さらに私どもが、やはり国民としてどうしても日本の現状でやつて行く上には、ある程度の耐乏生活に耐え得て、それで日本の国際収支の均衡による自立経済に進むというところに持つて参らなければならぬ。かような種々の観点から、私どもは今、国内対策につきましては、各種の措置をとりたいと考えておる次第でございます。ただ世界各国の情勢については、さつきも申しました通り、私どもも一応ものを読まぬでもございませんが、あるいは外務大臣等からお話があるのが適切かとも思いますので、今は世界景気の後退に伴つて日本はどう考えておるのかということを簡単にお答え申し上げた次第であります。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今お話ような点は、いろいろわれわれも考えておりますが、第一に、私はこういうふうに見ておるのであります。フーヴアー時代の不景気のことはありますが、その後のニユー・デイール以来のやり方について、かなりアメリカ側では、需要とか購買力とかのつけ方につき自信を持つたようであります。ことに戦争終了当時の軍需産業から平和産業に切りかえの際、失業者が非常にたくさん出るだろう、不景気が非常に大きく起るだろうといわれましたのが、実は非常にみごとにというぐらいに切りかえたのでございまして、この大きな仕事は、当時あまり言われなかつたかもしれませんが、私どもは、これは非常に大きな経験であろうと見ております。従つてアメリカ一般国民としては、こういう不景気対策については経験済みでもあり、また実行済みでもあるので、非常な自信を持つておるように見ております。心理的のこういうアメリカ側における理由というものは、今は前に比べると非常に少くなつておるのではないか、むしろ自信満々とでもいうべき状態ではないかと思うのであります。そこでただいま、一般的に非常に不景気が起るであろうと言われておりまするが、先ほども申しましたように、ピース・オフエンシヴに対しまして、手放しで防備をゆるめてしまうという気持は、私はどこの国にもない、ことにアメリカの国においては、そういう点について非常に用心をしておるように思いますので、そんなに一ぺんに非常な衝撃が起るようなことはないであろうし、またその他の国でも、私は同様じやないかと思つております。  さらにいろいろ問題になつおりまするMSAとか、あるいはポイント・フオアの援助計画とかもありまして、景気後退ということは相当程度防げるものではないかと思つております。われわれも、たとえばアジア諸国との経済協力ということを言つておりますが、これなども、実は一方においては、アジア諸国の利益のために大いに努力するのでありますが、その結果は、やはり世界の景気後退を防いで、日本に対する利益がはね返り的にはあるものと確信しておりますから、こういうことを今考えておるのでありまして、そうえらい不景気が襲うというようなことは、ちよつとないのじやないか、もちろん用心しなければなりませんか、そういうふうに私は考えております。
  85. 河野密

    河野(密)委員 政府考え方はわかりました。私は今パウル・アインチツヒ氏のことを言いましたが、ハウル・アインチツヒ氏の意見を読んで率直にわれわれが感じますことは、アメリかに対する大きな警告だと思うのです。アメリカが来るべき世界的な不況に対して、これを背負つて立つだけの用意がないと、世界的不景気が来るぞ、こういう大きな警告であると思うのであります。言いかえるならば、アメリカが世界的な援助を怠るならば、不景気が来るぞ、こういうことだと思つて私は読んだのでございまするが、そうなつて参りますと、各国のアメリカに対する依存度というものは、私は軽々に看過することができないと思うのであります。そこで、これは大蔵大臣並びに審議庁長官に承りたいのでありますか、あとMSAの問題は伺いますけれども、経済閣僚としてMSAを受けることがいいと考えておるのか、受けばくて済むと考えておるのか、これは法律上の問題でなくて、経済閣僚として、この問題をどう考えているかということを御両者から承りたいと思います。
  86. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まだ私どもは、MSA内容を明らかにしておりませんので、内容いかんによつて判断すべきであると考えております。
  87. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はいつも申し上げておりますように、特需というものは、日本では軍事的なものであつて、これに依存しておるために、今日国力以上の生活水準を維持して来ておるわけであります。そこで私どもといたしましては将来特需がなくなつても、正常貿易で自立経済ができるということを念願としておるわけでありますから、MSA援助がなくても、日本の正常貿易をやつ青くといういろいろな政策を立てておるわけであります。そういうわけでございますから、MSAがいかなるもりであるかわからない時代に、MSAを当てにするということは考えずに、経済政策を打立てておる次第であります。
  88. 河野密

    河野(密)委員 非常に頼もしげな御意見でありますけれども、私はそういうことは正面的に受取れないと思うのであります。それならば岡野さんに伺いますが、一体日本の特需というものを、どういうふうにお考えなつておりのか。日本の特需というものは、アメリカの軍の発注にかかるものもあり、東南アジア方面に対するMSA援助の下請をしておる部面もあり、サービスもあり、いろいろな問題がございいすけれども、その特需がなくなつた場合においても、正常貿易においてやつて行けるというそのこと自身に、私は非常な矛盾があると思うのでありますが、その特需というものは生産設備を伴つておるのであります。その生産設備を伴つている特需がなくなつた場合に、これを正常貿易に切りかえるというのは、生産設備から産業構造からすつかりかえて行かなければならない問題に当面する。そこに財界があげてMSA援助を要望している理由があると思うのでありますが、それでもなおかつMSA援助なしに、経済閣僚としてあなたはやつて行けるという確信をお持ちですか、その点を承りたい。
  89. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。今の特需に対する生産設備と申しますのは、在来日本にありましたところの生産設備を併用してやつております。もし日本が非常に自衛力でも増そうという場合には、おそらく相当な金をつぎ込んで生産設備を新たにしなければならぬ。こういうことでございますから、それをやつた後に軍需品の注文がなくなつた場合には、財界に非常な打撃を与えるかもしれませんが、今まである生産設備を少し直して併用して、それを受けている、こういうことでございますから、ただいまの経済の大きな生産設備から申しますれば、ごくわずかなものでございます。そこでその特需がいつまで続くかということに、おそらく御質問の点はかかつているようでありますが、私は、ここ二、三年はただいまの状態は続くものと見込みまして、そのうちに日本の貿易を正常化すべく努力している次第であります。
  90. 河野密

    河野(密)委員 経済上の情勢の判断に対する前提が食い違つておりますから、結論が違うのは無理もありませんが、私はその点については、あとでまたお尋ねをしたいと思います。  次に、MSAの問題が出ましたので、私はここで総理大臣並びに関係閣僚に防衛問題並びにMSA問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。まず防衛問題について、総理大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、吉田総理大臣は、先般の施政演説の中で、いわゆる防衛問題については、最近種々の論議があるようであるが、政府は、一貫せる所信により、どうも従来の方針を変更する必要は認めておりません。と言つております。この一貫せる所信というのは、何を指さすのでありますか、従来の方針とは何を言うのでありますか、これからまずお尋ねをしたいと思います。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 従来の方針、あるいは一貫せる方針というのは、結局日米安全保障条約によつて国の安全を守る、集団防衛の線で集団攻撃に対する、大体これをもつて一貫せる方針と名づけるのであります。
  92. 河野密

    河野(密)委員 吉田総理大臣は、日本の再軍備反対である、かような見解の所有者であることは、われわれ本会議を通しましても十分看取できるのでありますが、吉田総理大臣は、憲法第九条の解釈といたしまして、全面的な戦争放棄の提唱者であつて、現行憲法のもとにおいては、たとい自衛のための再軍備といえども、許すことのできないものであるという見解を表明しておられるのでありますが、今日でもこの見解においてかわりはないのであるかどうか。それからこの憲法の第九条が国会において審議をいたされました第九十帝国議会におきまして、吉田総理大臣は、この自衛権による交戦権、侵略による交戦権という二種があるような、そういう交戦権に二種を認めるよう議論は有害無益である、こういうことを述べておられます。世界を率いて平和愛好の平和的条約を締結せしむるその先がけとなつて、みずから戦争を放棄し、軍備を撤廃することによつて世界の、平和を樹立せしめる、その決意に基いて政府はこの案を提出したものであると、こういうことを述べておりますが、こういうかつて憲法制定の当時において国会を通じてお述べになつ考え方というものは、今日もをの一貫する所信、従来の方針というのと同様におかわりないものとわれわれは考えるのでありますが、その通りでございますか。
  93. 吉田茂

    吉田国務大臣 一応その通りであるとお答えをいたします。
  94. 河野密

    河野(密)委員 もしその通りであるといたしますると、総理大臣の見解によると、自衛のためのものであつても再軍備というものは、これは許すことができない、こういうお考えであると解釈してよろしいでしようか。
  95. 吉田茂

    吉田国務大臣 いかなる理由のもとにも再軍備はいたしたくないというのが私の主義であります。
  96. 河野密

    河野(密)委員 それでは木村保安庁長官に承りたいのでありますが、木村保安庁長官は、先般の意見をお出しになるときに、総理大臣憲法の解釈に対するところのそういうお考えを、十分頭の中に置いて、あの発言をなされたのであるかどうか、その点をはつきりお答え願いたい。
  97. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は前国会においても引続き見解を述べておるのであります。すなわち自衛のためであつても戦力は持つことはできないのである。この見解は一貫した政府方針として続いておるのであります。再軍備ということはすなわち戦力とわれわれは解釈をしておるのであります。
  98. 河野密

    河野(密)委員 私のお尋ねをいたしましたのは、そういうことでなく、木村保安庁長官は、総理大臣のそういう憲法に対する解釈、そういうものを念頭に置かれてあの発言をしたのであるか、承知されておつたのであるか、こういうことを承つておる。
  99. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。もちろん承知の上であります。私の申しました自衛のためでも戦力を持つことはできないということは政府の一貫せる考え方であります。
  100. 河野密

    河野(密)委員 私は何も木村さんのあげ足をここでとろうというのじやないのですから、その点をはつきり承つておけばいいのであります。木村さんはごの当時における国務大臣であられたわけですから、国会内におけるところのすべての論議は十分御承知であると思うのであります。そこでその当時憲法第九条が上程をいたされました当時において、どの程度までが警察権であり、どの程度を越えれば陸海空軍の戦力になるか、許さるべき範囲と許されざる範囲というものが起つて来て、これは理論的にどこかに境界線が明白に存するものとは思うわけであります。ただ実際におきまして、もしも国内治安維持のための警察力ということに言葉を借りて、陸海空軍の戦力そのものに匹敵するようなものを考えまするならば、やはりこの憲法第九条違反となります。運用の上におきましても、だれが見ても警察権の範囲と認め得る程度のものにおいて実施すべきものと考えております。     〔小峯委員長代理退席委員長着席〕  どこまで行けば戦力になるか、どこまで行けば平和力になるかという限界はなかなかきめかねるのである。多数の人間に多くの生命、身体に関する変化を惹起するという手段はこれに――これというのは戦力でありますが、戦力に入ると思うのであります。これは当時の国会において認められた解釈でちります。こういうオーソライズされた解釈が存在しておるにもかかわらず、今日の保安隊というものはこれに該当しないかどうかという点について、木村保安庁長官責任ある御答弁を願いたいと思うのであります。
  101. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。それは前国会においてもしばしば論議になつたのであります。すなわち憲法第九条第二項の戦力とは何ぞや。そこでそれに対して終始私の答えは、いわゆる戦力とは、その装備、編成の面から見て、近代戦を有効的確に遂行し得る総合実力組織であるということを申しておる。しかるにただいまの保安隊は、申すまでもなく保安庁法第四条において規定された、いわゆる国内の平和と秩序を維持し、人命、財産を保護するために特に必要ある場合の実力部隊という一つの目的をそこに掲げておると同時に、その内容におきまして、いわゆる編成、装備その他の点から見て、決して近代戦を遂行し得るだけの能力を持つていないものであるから、これはいわゆる憲法第九条第二項の戦力に該当しないものである、こうわれわれは考えておるのであります。
  102. 河野密

    河野(密)委員 吉田総理大臣にお尋ね申し上げますが、今お聞きの通りでございまするけれども、これはその当時において問題となつた点と吉田総理大臣のお考えは少しもおかわりにならぬ、こういうことでございまするが、その当時のこのオーソライズされた解釈によりますると、もしも国内治安維持のための警察力という言葉を借りて陸海空軍の戦力に匹敵するようなものを考えまするならば、いやはり憲法違反となるものた、こう当時の論議においてはつきりといたしておるのでありますが、この点について総理大臣は、今日の保安隊というものに対して、これはなおかつ憲法に違反しないものであるというお考えを持つておらるるかどうか、この点を承りたいのであります。
  103. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、現在の保安隊が軍備であるとか、あるいは憲法に違反するとは政府考えておりません。
  104. 河野密

    河野(密)委員 保安隊の装備はアメリカのものを借りておるとのことでありますが、これはその通りでありますか。
  105. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まさにその通りであります。
  106. 河野密

    河野(密)委員 これがアメリカから借りておるものであるといたしますると、これはいかなる協定によつて借りておるのであるか承りたいのであります。先般MSAの問題についてアメリカ側の放送によると、日本は独立国となつたのであるからして、国防省予算でまかなわれて来た軍事援助MSA援助に切りかえることが望ましいとアメリカ当局は言つているようでありますが、このアメリカから借りております装備は、してみると占領治下の延長と考えてよろしいのでしようか。
  107. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいま保安庁がアメリカから借りている武器の形式は、それを保管しているアメリカの武官と日本の各隊における責任者との間において事実上の使用をさせてもらつているというわけであります。すななわち保管者がアメリカ人でありまして、その保管者のもとにおいて各部隊における責任者が借りているという形式をとつているのであります。但しそれはもろくの点において不便が生ずるのでありますから、保安庁の中央部においてアメリカのいわゆる駐留軍の中央の人たちと相談の上に、一括してそれを貸与を受けることにしたらどうかということで、今せつかくその点について折衝中であります。そこでMSAの問題が出ましたが、私はただいま使つております武器についてはMSAとは関係なくこれを貸借して行きたいと考えております。おそらくそういうことになりはしないかと考えている次第であります。
  108. 河野密

    河野(密)委員 今までは占領治下の延長として軍が保管していたものをそのまま何げなしに使わせてもらつている、何らの協定もなければ何もなしで使わせてもらつているというのが実情だと思うのでありますが、これが協定を結ぶようなことになれば、その協定MSA援助協定とは別個のものである、こういうふうに木村長官はお考えになるわけですか。
  109. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの考え方ではMSAとは関係なくしてそれを使いたい、こう考えているのであります。
  110. 河野密

    河野(密)委員 先ほど来から総理大臣を初め現在の保安隊は警察であるということを申しておりますが、警察と今のいわゆる国家警察と保安隊とはどういう連絡を持つて、どういう仕事の連繋をやつているのか。演習その他についていかなる連絡をとつておりますか承りたい。
  111. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申すまでもなく、保安隊というものは通常警察力をもつてはとうていこれを始末するようなことができない大きな事態が生じた場合に、これに対処する一つの部隊であります。もちろんふだんにおきましていろいろの連絡はありますが、部隊の行動につきましては、別段ただいまのところ直接の関係は持つておりません。
  112. 河野密

    河野(密)委員 私は今まで承りましたところによつて判断をいたしますと、大体こういうことになると思うのであります。この保安隊が警察であるか軍隊であるかという論議はしばらく別としまして、総理大臣の御解釈になる憲法第九条をたてにとるならば、日本の保安隊というものは再軍備を目途としてこれを建設することもできない。客観的に見て再軍備と見られるようなものにも建設することはできない。これは総理大臣の解釈通りにすれば当然の帰結であると思うのであります。アメリカから武器その他のものの貸与を受けて保安隊を運営いたしておられますが、アメリカの方ではこれを一日も早く軍隊に仕上げて、アメリカの軍隊が一日もすみやかに日本から引揚げたい、こういう考え方に立つているのであります。言いかえるならばまつたく両者相矛盾した考え方の上に立つて保安隊というものを運営されているという結果であります。これを一体そのままの相矛盾したる形においてどこまでも続けて行くことができる、こういう考え方に立つておられるのでありますか。それともどちらかがどこかで譲る以外には道がない、こういうふうに常識としては考えられるのでありますが、総理大臣はこれをどういうふうに調整をなさろうというのでありますか。
  113. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはしばしば申すところでありますが、日本の独立安全は日本国みずからの手によつてこれをいたすべきものであるということは当然でありますが、国力が許さないから安全保障条約によつて一応の安全の道を講ずる。すなわち集団攻撃に対しては集団的にこれを防禦するというこの機構でもつて行こうと考えているのであります。しかして保安隊なるものは今の再軍備とは関係なく、安全保障条約の目的をとげる範囲において設置されておりますので、将来はとにかく今日において再軍備を目途として保安隊を編成いたしているわけではないのであります。
  114. 河野密

    河野(密)委員 重ねてお尋ね申し上げますが、再軍備を目途として行くものでない、こういうことでございますが、アメリカの方ではこれを早く防衛力に仕上げて米軍は一日も早く引揚げたい、その方がむしろアメリカの方では安く上るからというよう議論アメリカの下院において行われているようでありますが、そういたしますと総理大臣の言われることとアメリカ考えていることとは、まつたく食い違つている。しかもその上アメリカの武器を無償で貸与されて、その無償の武器を使いながら保安隊をやつている。こういう現状にあるが、これを一体総理大臣としてはどこへおちつけようとなさるのか総理大臣方針を承りたい。これが私の質問の趣・旨であります。
  115. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はただいま申した通り日本としては国力が許さないから現在の状態で進むよりしか、たがない。米国側としては御指摘の通りなるべく早く軍隊を引揚げたい、しかし引揚げてもらうということは現在日本においてはこれを許さない。事情が許さないのでありますから、矛盾はいたすかもしれませんが、日米安全保障条約の線で日本は参るよりしかたがない、ごう考えております。
  116. 河野密

    河野(密)委員 現在の状態を続けて行きたいというのが吉田総理大臣の御趣旨のようでありますが、そういたしますと、先般吉田総理大臣は一日も早く米国軍隊に撤退してもらいたいのだ、こういう趣旨のことをお述べになりましたが、これは矛盾する結果になると思うのであります。この点について総理大臣はもう一ぺんお答えを願いたいと思うのであります。
  117. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の趣旨は私においては矛盾しないと考えます。何となれば、米国としてはなるべく早く兵隊を引揚げたい。日本としては、日本の国力が許すならばみずからの力によつて独立を保護して行きたい、こう考えるのでありますが、国力これを許さないから、いたしかたない。国力が許すという時代が来、また国民も軍備を希望するということになれは、これはそのときでありますが、現在においては、国力まず第一に独立して防備を持つということは許さないのでありますから、この事態はわれわれは無視ができないのであります。
  118. 河野密

    河野(密)委員 総理大臣の論法で行きますと、米軍の撤退するときは日本憲法を改正するときである、憲法を改正しない限りにおいては、再軍備はできないのだから、米軍も駐屯するのだ、憲法改正と米軍の撤退、日本の再軍備、こういうものは一時に行われるものだ、大体こういう考え方にお立ちなのですか。
  119. 吉田茂

    吉田国務大臣 同じようなことを幾度も申しますが、国力許して、そうして国民がこれを希望する、再軍備を必要とする、その場合には、自然法律改正ということになりもいたしましようが、今日は何分国力これを許さないから、再軍備はいたさないというのであります。
  120. 河野密

    河野(密)委員 私は防衛問題から少しくわき道にそれたような感じがいたしますが、ここで経済の問題に立ち返つてお尋ねしたいと思います。  先般国際情勢を分析した折にも申し上げましたように、わが国の経済自立は、国内雇用量の増大と、国際物価水準への物価のさや寄せ、この二つの相反する課題を同時に達成しなければならないという、非常にむずかしい課題を含んでおるのであります。そこで政府でも、コストを切り下げてこれをやるのだということを総理大臣の施政演説において述べております。おそらく総理大臣の施政演説において、コストの切下げなんという文字が出て来たというのは、未曽有のことであろうと思うのですが、それほど産業の合理化あるいは経済自立ということを重要に考えておると思われるのであります。そこで政府は一体、現在のコスト高の原因というものがどういうところにあると考えておるのか。そのコスト高の原因のよつて来るところをお示し願いたいと思うのであります。
  121. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 コスト高の原因につきましては、御承知のごとく、日本の産業は、朝鮮事変が起りまして、一時的にブーム状態になつて、その結果――私は率直に認めれば、その間における産業の合理化その他を怠つておつた。このことが今日コスト高の一つのもとになつておると申し上げましたが、やはり私どもは、産業の合理化等に上りまして、また財政投融資をまかつて、これを極力早めるということによつて、コストを引下げて参りたい、実はこういうよう考えておるわけであります。  なおこれは少し話が進んでのお答えになるかもしれませんが、私ども実はできるだけ雇用量を維持あるいは増大して行くという政策には持つて参りたいと考えておるのでありまして、今の財政投融資で、各種の、たとえば船舶を初めとして、その他のものに対してやつておりますのもその一面でもございます。それからまた、合理化によつて人が減つて行くことを防ぐという意味におきましても、そういつた方面に投資する必要があるので、そういつたことを積極的にやつておることは、その意味も含まれておるのであります。なお食糧増産対策等によりまして、あるいは公共事業費の増加等によりまして、その面にもそういつた人間を吸収したいという考えを持つております。これは少し御返事が進み過ぎたかとも思いますが、このことをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  122. 河野密

    河野(密)委員 いろいろ政府考えておらるることはもつともでありますが、われわれの見るところによりますと、現在生産品がコスト高であるという原因には、いろいろな問題があげられると思います。原料高、機械能率の悪化、労働生産性の低下、あるいは金利というようなものがあげられると思うのでありますが、多くの人の看過しておる問題に、現在のわが国の操業率が非常に低率である、操業短縮をやつておる、そういう事実にコスト高の事情が私は多分に含まれておると思うのであります。そういう点から見ますると、一般に政府考えられておるような、このコストの切下げの問題について、デフレ政策をとつて産業の合理化をはかるということではなくて、むしろ国内購買力を増強して、この操業度をどうして上げるかという問題に重点がなければならぬと私は考えるのでありますが、この点について、政府考え方は一向徹底しておらないように思うのであります。従来のようなインフレとかデフレとかいう考え方では、今日の政策は律することができないのであつて、われわれは、財政投融資というものが最も効率的に行われる場合においては、これはインフレと称すべきものではない、インフレとなるものは、その投融資されたところの金がからまわりするときに初めて起る現象であるというよう考えるのでありますが、この点についての政府の見解を承りたいと思うのであります。
  123. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点につきまして今お話ありました河野さんの御意見には、私どももまつたく同感でございます。従いまして、私どもが財政投融資をどこに出しておるかと申しますと、民間の資金ではやれない仕事、しかもこれを出すことによつて、大きく国際収支なり国内産業の開発なりに役立つもの、そうして雇用量その他に影響を来さざるもの、こういうふうに考えておるのでございます。なお国内購買力の増加についてのお話につきましては、私がよく申しまする通り、この場合日本をインフレに持つて行くことの不可なることはもちろんでございますが、しかしまたデフレに持つて行くこともいけないので、その点から、私がよく申すいわゆる財政、金融を有機的に一体化することによつて、今の経済情勢を維持しつつ、だんだんと国際競争力を加えて行くように持つて参りたい、かよう考えておる次第でございます。
  124. 河野密

    河野(密)委員 政府は財政演説の中で、健全金融と為替レートの堅持ということを強調しておりますが、この政府が特に財政演説において健全金融を強調され、為替レートの堅持を強調された真意はどういうところにあるのか、これを承りたいと思います。
  125. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御承知のごとく、今は世界各国ともみな、国際収支の均衡のために非常な努力をしておりまして、各国ともみな健全財政、健全金融の方面に向つて進んでおることは、河野さんがよく御承知通りであります。わが日本におきましても、特に健全財政と申しますのは、ちようどドツジ氏が来た時分に行われた政策は、超均衡予算とも申すべきものでありまして、私どもは今日の事態にはああいつた政策をとるべきではない。すなわち過去の蓄積を少し使つても、あるいはまた民間資金を吸い上げること等によりましても、その向う方面が国のために必要であるものならよろしいというので、私がよく申す言葉でいわゆる均衡予算に若干の弾力性を持たせると言つておるのはその点でございまして、その意味をも込めまして健全財政と申したのでございます。また健全金融と申しますのは、近ごろやみ金融その他のものが横行いたしましたり、また金融の点から見まして、資金が効率的に使われていない面が非常にある。これは河野さんよく御承知ようにまだこの面に金を注がなければならぬというものがたくさんあるのに、しからざる部門に相当使われておりますので、この点を深く遺憾として私どもは健全金融ということを特に強調しておるような次第てございます。
  126. 河野密

    河野(密)委員 為替レートの問題は……。
  127. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 為替レートの問題は、国際信用をつなぐ上から申しましても、また日本の現状から見ましても、為替レートを堅持することは絶対に必要なり、かよう考えております。
  128. 河野密

    河野(密)委員 私の申し上げたのは、特に今小笠原さんが言われたように、為替レートを堅持することは必要としても、何がゆえに今回の財政演説の中に特に為替レートの堅持ということを強調されたか、その趣旨を承りたい、こういう意味なんです。
  129. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一時為替レートの問題についてはほとんど議論がなかつたのでございますが、このごろまたちらほら為替レートの問題が世間の話題に上つておりますので、さようなことは国の内外の信用維持上、はつきりとこれを申し上げる必要があると考えましたので、特にこのことを申し上げた次第でございます。
  130. 河野密

    河野(密)委員 今小笠原さんの言われたような、均衡財政を弾力的に運営するとかいうようなことは、私は先ほど冒頭に総理大臣が言われた自由主義経済というものによつてこれを運用することは不可能であると存じます。同時にこれを単なる公式的な計画経済によつてやろうとも私は考えておりません。しかしこれには何か弾力ある運営とか、もつと言いかえれば私の申し上げました国内購売力あるいは国内の生活水準を下げないで、しかも国際物価に日本の物価をさや寄せして行くのだ、生産コストを切り下げるんだということに対しては、何らかの方法がなければならない。私は小笠原さんの言うように健全財政を弾力性のあるように運営するのだというような、単なる言葉の上の魔術ではとてもやつて行ける問題じやないと思うのでありまして、単なる言葉のあやではなく、現実に一体どうされるのかということを私はお伺いしたいのであります。
  131. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私実はつづめて申しまして弾力性という言葉を用いたのでございますが、本年度予算ではいわゆる政府の散布資金が千余億に上る散布超過になつておることは御承知通りであります。しからばこれがどういうふうに使われておるかということは、財政投融資の面をごらんになるとよくわかりますように、今の日本がどうしても産業の基幹を養つてつて、国際競争力をつけて行つて、また国際収支を改善して行くのにはこうしなければならぬというので、約三千百億近くの各種の財政投融資を行つておるのはそういう点からでございます。従いまして私どもが申しておることは、単に弾力性という言葉を申しておるのじやございませんので、財政投融資の面等をごらんくださいますと、そういうふうに言つておることがよくわかると思います。なお各種の税制その他に対する施策につきましても、私どもはやはりそういつた面で考えておるのでございます。これらの点も税制改正案等が出ますればよくおわかりが願えることと思いますが、あわせて申し上げておきます。
  132. 河野密

    河野(密)委員 政府にはどうも具体的な対策がなさそうに思われるのでありますが、それならばひとつ私の方から対策を申し上げたいと思うのであります。現在のむずかしい経済課題を解決する道は、私の考えるところによると一つしかないと思います。それは国家の経済の重点を一つあるいは二つの問題に集中して、集約的にその問題の解決をはかる、いわば重点経済という対策をとる以外にはないのじやないか。たとえば貿易の障害になつておると称せらるるコストの切下げをはかろうとするといたしますならば、電力、鉄鋼という二つの問題を中心にして、これのコストをいかにして切り下げるかという問題を重点的にやるという以外にはないと私は考えるのであります。そのほかのいろいろな総花的な対策を考えることは、私は百害あつて一利がないように思うのであります。この予算の面において私が検討したところによると、そういう考慮は一つも払われていないと思うのであります。この点を私は非常に遺憾に考えるのであります。輸出振興の見地からするならば、電力と鉄鋼、この二つのものに重点的に、いわゆる重点経済の方法をとるべきではないか、こういうよう考えるのであります。私はそういう考え方を持つていたのでありますが、けさ私はイギリスの労働党が今度の大会に提出しようとするイギリス経済に対する考え方の草案を受取つたのでありますが、それによると、これははなはだ変なことを言うようでありますが、私が考えていたこととまつたく同じことをイギリス労働党は実行しようとしておることがわかつたのであります。やはりイギリス労働党の考え方は、今日において何らかの施策を講じなければ世界的な不況は不可避であるという考え方の上に立つております。その方策としては、国内、国外においてすみやかなる大きな資本の投資をやる。生産能率を上げて物価を引下げて、競争力を増大する。生産力を拡充するべき物資の選択をして、それが生産力の急速なる拡大をはかる。そのほか教育の面で科学及び技術教育を拡大する、社会保障を行うということがつけ加えてありますが、この対策をとつておるのであります。これは今年のイギリスの労働党の大会に提案される草案である経済政策の根本でありますが、私たちもまつたく同じことを考えておるのであつて政府が今やつておられるような自由主義的な、総花的な予算の使い方一は、貴重な国家資本の使い方としては私は少しも納得が行かないと思うのであります。これに対する大蔵大臣並びに経済審議庁長官の見解を承りたいと思います。
  133. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お話になりましたような鉄鋼、石炭、電力につきましては重点的に施策をやつておることは、これは河野さんよく御承知だろうと思います。予算の面には直接出ておるものは少うございますが、しかし財政投融資の面をごらんになるとわかりますので今こまかくは申し上げません。電力一つに対しましても七百十億の財政融資をいたしておるような次第でございまして、鉄鋼につきましても石炭につきましても相当巨額の政府資金でやつておるのであります。あるいは仰せになる点は、鉄鋼その他に対して補給金でも予算の面で出して、そうしてむしろ貿易の振興をはかるべきではないかというような御意見かとも思うのでありまするが、もしそれならば何ら予算には盛つておりません。また私どもはそういう補給金のごときものを出してやるということは、一時的の頓服的な効力はあるかもわからぬけれども、これは日本の貿易政策としては長くとるべき対策でない、かよう考えておるものであります。そこでこの貿易につきましては、いろいろな立伝をいたしております。河野さんも御承知ように、たとえば輸出入銀行法をかえて海外投資ができますことにす。とか、あるいは輸出取引法に基きまして、今度各種の事柄ができることにいたしますとか、そのほか幾つも――ちよつと名前を申しますれば、たとえば輸出保険制度の改善をしますとか、改備輸出為替損失補償制度の強化と十か、あるいは輸出組合の育成とか、そういうような法制的措置によるものを主といたしましてやつておる次第であります。  ただいま申し上げました通り、財政の面から予算一般会計から出しておるものにつきましても、いわゆる補給金その他はとつておりませんが、財政面から大きく取扱つておることは、電源開発その他を初めとして御指摘の点については、すべて重点的に取扱つておるのでございます。
  134. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 経済審議庁の立場からお培えいたします。河野さんも仰せの通り、重点的にということは、これはわれわれといたしましても在来考え、おります。あるいはいろいろ財政の息におきましても、重点的にせざるを得ない。また一番効果の上がるのも、河野さんの仰せの通り重点的にやることである。そういたしまして重点的に育成をして行きたい、こう考えております。この点は同感でございます。
  135. 河野密

    河野(密)委員 そこで私はもう一つれ伺いいたすのでございますが、先ほど特需について、特需はなくなつても正常貿易によつて日本の国際収支をカバーして行くように持つて行くんだ、こういう考え方を述べておられました。私はその考え方はけつこうだと思います。と思いますが、今日特需と言われますのは、もちろん広い意味の特需でありますが、これが国際収支をカバーして輸入力を増大し、日本経済の復興を早めて来たことは、これは私たち否定するものではございませんが、同時にこの特需そのものが国内の消費を刺激して物価を高くした面もありまするし、まず一番われわれが考えなければならないのは、この特需によつて先ほど岡野審議庁長官は遊休設備を動かしたのにすぎないとおつしやいますけれども、私はそうじやない。これは軍需生産力と申しますか、兵器生産力の方向に、日本の産業を特需によつて相当に傾斜せしめておると思うのであります。これが本格的な経済復興を阻害したと見受けられるのであります。そこでわれわれは冒頭に申し上げましたように、特需をただ貿易に切りかえるんだという算術計算のような形で、特需を貿易に切りかえることには満足ができないのであります。そこに私は今日財界その他がMSA援助に対して非常な期待をしているというのは、わが国の重化学工業というものが大きな部分を兵器生産に依存しつつあるからだと思うのであります。でありますから、この兵器生産に依存したものを切りかえるということは容易なことではない。これに対して政府はどういう対策を講じているのか。対策を講じないで、特需を正常貿易に切りかえるのだといつても、われわれは納得することができない。もしその施策が現に現われていないとするならば、財界方面の要望、現実に仕事をやつている経済界からの圧力によつて、私はMSA援助というものは、好むと好まざるとにかかわらず、日本が受入れざるを得ない立場になると考える。この点を岡野国務大臣からはつきりとお答えを願いたいと思うのであります。
  136. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。御説の通りにただいままで兵器の生産品につきまして特需がございました。これが特害としてわれわれの国際収支を大いに助けておつたことは事実でございます。そこで問題は二つにわかれると思います。今の特需で受けておりますところの兵器弾薬なんかの需要は、私は当分減らないと思つております。と申しますことは、たとい朝鮮の休戦協定ができるにいたしましても、今後に残される政治会議というものは、今までの休戦に関する交渉以上にむずかしいということを私は非常に感じているのでございます。そういたしますと、米ソの両陣営におきまして、この軍拡的対立というものは当分続くんじやないかと思います。そこで私自身といたしましては、ただいまの兵器弾薬をつくつておる分量というものは、非常に少いと思います。日本といたしましては、もつと引受けるところの設備もありますし、また金をかければもつとできるものもありますけれども、非常な少量を小施設によつてつておるわけであります。今後もし極東におけるところのアメリカ並びに国連軍の使用する弾薬とか兵器とかいうものが、いわゆる域外貿易といたしまして、東洋において使用するところの兵器とか弾薬とかいうものを、もしわれわれがいわゆる商業ベースによつて、入札によつてやるということになれば、もつとふえやせぬかということまで考えるのであります。私自身といたしましては、そういうような特需は当分は動かない、こう考える次第であります。
  137. 河野密

    河野(密)委員 私はただいまの岡野さんの説明を承りますと、朝鮮休戦会談はできても、事態はごたごたしばらく続く。これをいかにも日本経済のためには希望るかのごとくとくその意味ではむろんないでしようけれども、続くことを前提として、私はいろいろなことをお立てになつておることは非常に不満足であります。われわれ朝鮮休戦会談が成立して、一日もすみやかに平和になることを希望しておるのであつて、その希望する前提のもとに立つて、すべての施策を考えなければならぬ。そこで私は先ほど申し上げましたように、ピース・スランプという声があることは、われわれとしては非常に残念である。そのピース・スランプを克服するためには、どういう施策を考えなければならぬかということで、われわれもいろいろ頭をしぼつて考えておるのでありますが、今のお話によると、しばらくの間は特需は減らないと思うから、減らない前提のもとにおいてすべての施策を立てて行くんだ、こういうことはわれわれとしては非常に残念しごくな考え方だと思うのであります。そうでなく、平和があした来ても、すべての特需が減つても、なくなつても、われわれはそれに対応する対策をこの際立てにやいかぬのじやないか。こういうところの問題に重点があるわけであります。これに対する政府の施策並びに政府考え方を尋ねておるのであります。
  138. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいま私が現実の事実を申し上げておることについて、平和を希望しておるんじやなくて、戦争を希望しているんじやないかというふうに言われる。何か私はこの点は日ごろ尊敬する河野さんのお説としては承服できません。と申しますのは、われわれはむろん世界平和のため、東洋平和のために、非常に平和を希望しておることは確かでございます。しかしながら現実の情勢としては、昔から言う通りに、備えあれば憂いなしであつて、備えをすることが平和のあるいは基礎になるかもしれません。しかも事実といたしましては、現実にわれわれの見通しとしましては、事実がなかなかそういうふうに行かない。行かないならばそれの情勢に応じて、われわれは経済政策を考えて行かなければならない。それが現実に即した経済政策と思います。
  139. 河野密

    河野(密)委員 それでは岡野さんにもう一点お尋ねしますが、現在の特需が減らないという考え方は、かりに一九五四年度アメリカ予算が決定をされて、今度はMSA援助に切りかえるようなつたとしても、日本の特需というものは減らない、こういうお考えですか。
  140. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は今日は二十八年度予算委員会でありますから、二十七年度の実績と、それから二十八年度の見通しを申し上げます。二十七年度におきましては、特需、いわゆる狭義の特需、それが三億五千八百万ドル、それからいわゆる労働者に対する賃金の支払い、それが一億三千九百万ドル、また駐留軍の個人の消費するもの二億八千四百万ドル、ちようど七億八千百万ドルでありますから、それによりまして二十八年度としての見通しは、特需といたしましては三億ドル、労務者の賃金支払いとして一億四千万ドル、駐留軍の個人の消費といたしまして二億五千万ドル、合計六億九千万ドルになります。大蔵大臣がいつも言つておりますように、一億ドルくらいは減るかも知れませんが、しかし現実にこの通り行ける、こう見ております。
  141. 河野密

    河野(密)委員 私の尋ねようとしておるところと、どうも少し食い違つておるのであります。私の聞きたい趣旨というのは、この特需というものは、二十八年度においては七億幾らということは私も知つておりますが、これは日本の大体の予測であつてアメリカ側との打合せの上にできた予算とかそういうものとは違うと思います。ところが日本とすれば年度の半ばにおいて、アメリカとしては新しい年度が始まるのであつて、それが新しくMSA援助というものに、アメリカは切りかえたいと言つておるのです。その特需をそのまま計算に入れておるということは、とりもなおさず日本の経済審議庁においては、これはMSA援助としても継続されるものであるという前提のもとに、案立ておるとわれわれは承知するのだが、それでよろしいかという質問であります。
  142. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいま申し上げました数字は、MSA援助に切りかえられるということを予想しませんで、今まで通り出て来るという予想を私は申し上げたのであります。
  143. 河野密

    河野(密)委員 私の言う意味は、もう一ぺん申し上げますが、それはMSA援助に切りかえられることを予想しても、その数字はかわらないという前提のもとに立つておるとすれば、これは当然、財界においてはMSA援助を受けるという、経済閣僚としてはMSA援助は必至なりという観点に立つておると、われわれは判断せざるを得ないのです。それでよろしいか、こういつておるのです。
  144. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。財界が考えておることは、幾らでも注文があつた方がいい、こう私は考えていると思います。しかしながらMSAが今問題になつておりますのは、あれは幾たびも各閣僚から申し上げました通り、一体日本が受けるものか受けないものか、今後どうなるかわかりませんが、しかし今の駐留軍が駐留しております現状におきましては、事実として、今のMSAという問題がなくても、今申し上げましたような特需をほぼ予定する現実の情勢である、こう判断しております。
  145. 河野密

    河野(密)委員 これは岡野さんともあろう人が、私は非常な詭弁だと思うのでありますが、アメリカでは日本に対する援助をすべてMSAに切りかえているわけであつて、切りかえておりますのを、なおかつ岡野さんの方では、それを特需なりとして計上して、それをすべての経済施策の中に織込んでおられるとすれば、経済閣僚の方では、すでにMSA援助日本経済再建のためには、これは当然織込み済みのものだ、こういうふうに解釈してよろしいと、われわれは判断せざるを得ないが、それでよろしいのか、こういう質問であります。
  146. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はそう判断しておりません。
  147. 河野密

    河野(密)委員 判断するとかしないとかいうことでなく、実際問題としてそういうことになつているんだ、そういう前提のもとに立つている、そういうふうにわれわれは理解するのですが、それでよろしいか、こういうことです。
  148. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。MSAの問題は、まだはつきりときまつてないのでありますから、それに対して、これをどうするとかなんとかいうことは、われわれは頭の中に入れないで経済政策を考えている次第であります。
  149. 河野密

    河野(密)委員 くどいようですが、先ほど私が質問申し上げましたときに、岡野さんは、MSA援助というようなものを受けなくても、日本の経済というものは自立の計画を立てるんだ、特需というものがなくても、日本の経済の自立の計画を立てるんだ、こういう説明をなさつて、まことに私は、その実績は疑うけれども、その意気たるや壮なるものがあると、こう言つたのでありますが、だんだん伺つて参りますると、特需は今年は七億何千万ドルを予定している。その特需は来年も再来年も減らないものであるという前提を考えて経済政策を考えられている。こういうことでありますから、それならば、これは特需々々と言うているけれども、実際はMSAは受けないが、特需は受けるんだということは、日本ではそういうことは通用するかもしれないが、アメリカの方では、すでに一九五四年度の会計年度からは通用しなくなつておるのだが、そうなると経済閣僚としては、すでにMSA援助というものはあるものなりということを、これを経済政策の中に織り込んでいることになるではありませんか、こういう質問です。
  150. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。もし極端に申しますれば、駐留軍の狭義の特需のうち、すなわち一億五千万ドルくらいは、あるいはまだよくわかりませんが、向うでMSAに切りかえるんだというあなたのお説が確かであれば、それは半分ぐらいかわるかもしれません。しかしそのほかにいわゆる労務者の賃金とか、また駐留軍の個人の消費するものは、合せてやはり五億ドルぐらいある。その意味におきまして、もしお説の通りになれば、非常な激減が来るとも思われません。私はMSA日本に対するものは、どういうようなものであるかということは、はつきりわかりません。その点において、現状通り二十八年度考えている、こういうわけであります。
  151. 河野密

    河野(密)委員 非常に問題が具体的になつて、はつきりしたのですが、私はさつきから特需という一本で考えてはいけない、日本に駐留する軍隊が落す個人消費の問題、あるいはサービスの特需、それからいわゆる砲弾その他の軍の発注によるものといういろいろなカテゴリーをわけて考えなければならない、こういうことを申しておつたのも、その点にあるのでありまして、今岡野さんの言われたことで非常にはつきりしたのでありますが、そうしますと、特需というものは、今岡野さんは七億数千万ドルと言われたけれども、日本考えておる特需というものの中には、少くとも狭義に解して二億数千万ドルのものはMSAに切りかえられる性質のものであるから、あるいは切りかえられるかもしれない。そうしてもし日本MSA援助は受けぬということになれば、それだけのものは減る、こういうふうな前提になる。そうすれば経済審議庁で、そろばんをおはじきになつた国際収支の問題についても、経済自立の計画についても根底がかわつて来るのじやないか、こういうのが私の質問の趣旨なんであります。この点はよくおわかりになつたと思います。
  152. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいまはつきりしたと仰せになりますが、狭義の特需が昭和二十七年度で三億五千八百万ドルございますが、これがあなたの御説によればMSAに置きかえられるんじやないか、置きかえられるならば、MSAというものも予定に入れているかどうかということを私にお聞きになつた。私は初めから申し上げておりますように、これは置きかえられないのだという考えを持つております。何となれば、今はいろいろありましようけれども、MSAでやられるという点は、ほかにいろいろ意図もあるでしようから、利は想像でごさしますからわかりませんが、しかしそれは向うによく聞いてみなければわからない。そうすればむしろあのMSAの一億五千五百万ドルという新聞に伝えられておるものは、余分に来るものじやないかとも考えております。
  153. 河野密

    河野(密)委員 これは余分に来るか、来ないかは私にもわかりません。わかりませんが、だんだんとはつきりして来たことは、その狭義の特需と称するものは、朝鮮戦争との関係がある注文なのです。その朝鮮戦争との関係のあるものが減らないという前提に立つならば、岡野さんはどういうふうに強弁されても、平和はあまり希望されないという結論にならざるを得ない。しかしもし平和を希望して朝鮮における戦争というものがなくなつて、しかもアメリカがそれをカバーしようとするならば、これは軍の支出なんですから、軍の支出はやめてMSA援助に切りかえるというのがアメリカ方針なんだから、これは当然切りかえられるべきものである。その特需を前提として経済施策を立てておられるとするならば、経済閣僚においてはMSA援助というものを、当然経済施策の前提の中に織り込み済みで、二十八年度の計画をお立てになつておる。たからこの点において外務大臣がどういう御答弁になろうとも、総理大臣がどう御答弁になろうとも、日本の経済の実態から見て、これはもう明らかに既定の事実になつておるのじやないか、こういうのが私の質問の趣旨なんであります。特に私は御答弁があればこの際御答弁を求めますが、もし御答弁がなければ、われわれはそういうふうに要するのです。
  154. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 河野さんが御自分の意思によつて御断定なさることは御自由でありますが、しかしわれわれといたしましては、これは切りかえられないで、現状通りで特需は期待できると考えておる次第であります。
  155. 河野密

    河野(密)委員 時間がなくなりましたから、私は最後に総理大臣に一点だけお尋ねをして、私の質問を終りたいと思います。それはいろいろに私質問申し上げましたが、結論とするところは、世界の平和を確立して、その平和の中において、どうして日本の八千五百万の人口を養つて行くのか、その生活水準を引下げないで、しかもこの正常貿易によつて国際間の調整の中において、日本の独立を完成することができるか、こういう問題に帰着するわけであります。その根本は結局共産主義の諸国と、自由主義の諸国とは共栄することができるのか、共存することができるのか、これに対する考え方になると思うのであります。その意味において私は最後に総理大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど外務大臣はソ連の平和攻勢というものについても、いろいろ警戒する面も言われおりました。世界的な人民戦線的な傾向に対しても、われわれは大いに議しなければならないと考えておりますが、日本の将来の外交、内政、一切の考え方の根本として、総理大臣はこの自由主義諸国と共産主義諸国との共栄という問題は可能なりと考えておるのであるか。もし可能であるとするならば、いかにすればこれは可能になるか、その間における政治的な思想と申しますか、そういうものについて承りたいと思うのであります。先ほど申し上げましたイギリスの労働党の大会においても、この二つの世界の調整をいかにするかということについては、非常な関心を持つておるし、重大なる根本問題と考えておるようでありますが、この問題に対する回答が与えられなければ、これから先のいかなる政策というものも、立て得られないというふうにも考えるのでありますが、この点に対する総理大臣の信念と考え方を承りまして、私の質問を終りたいと思います。
  156. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。自由国家との間の共存共栄でありますか。
  157. 河野密

    河野(密)委員 自由主義国家群と共産主義国家群、いわゆる二つの陣営の間における調整、二つの国家群が共存共栄することができるというお考えであるかどうか、こういう問題であります。
  158. 吉田茂

    吉田国務大臣 ソビエト側では現にできると言つております。そうしてまたアメリカ側は、これに対して大いに懐疑の念を持つて迎えているようであります。その中間におるのがイギリスでありましようが、これは机上の理論だけで尽すわけには行かない。のみならず今日関係する国も多くあります。またソ連としてもあるいは自由国家群としても、今までの行きがかりもあるのでありましよう。そう簡単にできる、できないということの断定はむずかしくありますから、私はできるともできないとも申しませんが、しかし日本としては、いずれにしても世界の平和を確立するためには、両国家群が協調する態度に出ることを理想として、われわれは希望もし、そういう考えでおるのであります。要は世界の平和が確立し増進することにあるので、でき得べくんばこの両国家群は互いに協力する、あるいは協調して行けるというふうに、もし日本として尽力する余地があるならば、もう当然この協力の方に尽すべきものであると思います。しかしできるかできないか、これは簡単にできるとも言えず、できないとも言えませんが、日本としてはできるように協力すべきであると、こう考えております。
  159. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時七分休憩      ―――――・―――――     午後二時十五分開議
  160. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。石橋湛山君。
  161. 石橋湛山

    ○石橋委員 きようは少し多岐にわたつて御質問を申し上げたいと思いますが、大体私はそのすべてについて総理大臣の御答弁を願いたいのであります。ただ幾らか専門的な問題も入りますから、特に大蔵大臣及び保安庁長官の御出席を煩わしたわけであります。私は現在の日本の制度においては、旧憲法時代と違いまして、一応内閣が連帯して国会責任を負うということにはなつておりますけれども、実際においてはほんとう責任者総理大臣一人である。そのほかの国務大臣は、いわば総理大臣の使用人でありまして、任命も自由、また任意に罷免することもできるというようなわけでありますから、政治の責任は一に総理大臣に帰するものと思うの一であります。昨日も突如内田農林大臣が影を没したような、まことに無常迅速を感ずるようなありさまであります。従つて質問に対しては総理大臣責任としてお答えを願うのが当然であると思いますので、ただいま申し上げたようなわけであります。  こういうことを言い出しましたついでに、ひとつ最初にお尋ねをいたしたいのでありますが、ほのかに耳にするところによりますと、今度の国会においても、どなたか国務大臣に対して不信任案が出るとかいううわさであります。そういうことがあることを私は決して希望はいたしません。しかしながら、万一さようなことになりまして、この前の国会において池田通産大臣が不信任の決議を受けたことく、不幸にしてまたさようなことが起りました場合に、先ほどから申しましたような理由によつて、私は総理大臣に実はその責任があるのだ。一国務大臣であるから、その不信任が決議されても、総理大臣には関係がないのだということは言えないと思うのであります。この前の池田通産大臣の場合においても、われわれはさようなことをいささか心配をいたしまして、ああいう不信任が決議などにならないように御処置なさるように、当時強く勧告したつもりであります。しかるに総理はお一人でがんばつて、とうくああいう結果に至らしめたように私は承知いたしておりますが、今度の国会においてまた不幸にして同じような問題が起つた場合に、総理はどういう責任をおとりになるか、またとられないつもりであるか、その点をついでながら承りたい。
  162. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。問題によると思います。また内閣全体として負うべき責任もあれば、ただ単にある大臣のみが負うべき責任もあるでありましよう。個々の問題について政府は善処したいと思います。
  163. 石橋湛山

    ○石橋委員 今の問題はそれでとどめます。そこで本題に入つて質問をいたしたいと思うのでありますが、はなはだくどいようでありますが、昨日以来繰返された保安庁の問題――保安隊と言われますが、これは保安隊及び海上の警備隊を含めたことと思います。そこで昨日以来の総理大臣その他の方々からの御答弁を承つておりますと、第一に、憲法第九条はそのままで自衛権だけはある。つまり自衛権は決して失つておらぬということ。第二は、従つてその背景になるべき自衛力は今の憲法のままでも持つことができる。第三は、政府としてはその自衛力の漸増をはかりつつある。第四は、現在の保安隊及び警備隊は、日米安全保障条約の中にいわゆる「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的にみずから責任を負うことを期待する」という、その責任を遂行する意味のものである。第五は、日本の国防は集団安全保障によるべきものである。第六は、長く外国軍隊の駐留することは希望いたさない。第七は、しかしながら近代戦を遂行し得ざる軍隊は戦力にあらずと解釈するがゆえに、現在の保安隊等は戦力にあらず。かようなことだけを、まだほかにもあるかもしれませんが、私の聞いておりましたところによると、それだけ七箇条が宣明されたように思いますが、なお念のためでございますから、これはその通り理解してよろしゆうございますか、どうですか。お答えを願います。
  164. 木村篤太郎

    木村国務大臣 大体においてその通りであります。要するに、現在の保安隊は憲法第九条第二項によるいわゆる戦力には該当いたしていない。ただ自衛力は、これは物心両方面における総合国力の発展と見るべきものであつて、保安隊の増強もまたこの自衛力の漸増の一方面にすぎないのであります。
  165. 石橋湛山

    ○石橋委員 もう一度確かめるために伺いますが、現在の保安隊ないし警備隊は直接及び間接の侵略に対する自国の防衛になりますか、あるいは間接だけなのでありますか。直接を含みますか。直接を含めまして解釈してさしつかえありませんか。
  166. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。現在の保安隊、警備隊の性格は保安庁法第四条において明確に規定されております通りに、国内の平和と秩序維持のために設けられておるのであります。対外戦争を目的として設けられておるのではありません。従いまして直接侵略に対しましては御承知ように日米安全保障条約によつて米軍の使用が規定せられておるのであります。しかしながら外国軍がかりに万々一日本に侵入いたしました場合においては、日本の内地の平和はこれによつて乱されることは当然であります。われわれといたしましては、現在の様相を見ますと、直接侵略と間接侵略とはおそらく同時的に突発すべきものであろうと考えております。そのときに保安隊は手をこまねいておるというわけではございません。当然内地の平和、秩序を乱されるのでありますから、保安隊をその場合使用することはあり得るとわれわれは考えております。
  167. 石橋湛山

    ○石橋委員 これは相当重要な問題であると思いますが、外国軍隊が日本に上陸して来る場合にこれと戦うということでありますと、やはり直接侵略というか、それに対する防衛力であるということになりまして、これはやはり戦力になりませんか。
  168. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま申し上げました通り、保安隊、警備隊は外国軍の侵略に対する対抗目的として設置されたものではありません。要するに国内の平和と秩序を保つために設けられておる。その点は保安庁法第四条に厳として明らかであります。ただ私の申し上げたいことは、かりに万々一外国軍隊が侵入して来たというような場合は、現在の様相として当然間接侵略も行われる。その場合においては、保安隊は手をこまねいておるわけではありません。われわれ天としても、当然日本国民の大多数は立つべきであろうと私は考えております。いわんや保安隊においては手をこまねいてじつとしておるわけのものではないのであります。
  169. 石橋湛山

    ○石橋委員 どうも始まりから政府のこの問題に対する御答弁は、あいまい模糊としておりますからやむを得ないことかもしれませんが、今の御答弁では私どもはわからない。憲法にいう戦力は英語でいうとウオー・ポテンシャルとありますが、当時の考え方からすれば、武器製造も含めておるわけであります。ですから今の保安隊等が戦力でないとか、軍隊でないとかいうことは強弁と思います。しかしなおお伺いいたしますが、私は、ある防衛設備が軍備であるかどうかということは、その規模の大小とか、予算の多寡とかによるものではないと思う。昨日そういう議論が大分出ましたが、私はそうじやなく、これは性質によるものであると思う。木村長官の得意とされる剣道の方において、長い三尺の秋水は武器だけども、よろい通しは武器でないというりくつはないと思う。やはり使う道によりまして、そのときどきの武器が必要なんだ。でありますから、小さいから武器でないというりくつは立たぬ。同様に小さいから軍備でないというりくつはどうしても立たぬ。私は日本の場合について考えますと、日本に適当する軍備というものは案外に小規模なもので足りるのではないか。昔の日本の陸軍は御承知ように大陸作戦を目的としておつた。ですからあれだけの大規模な陸軍を必要とした。また同様に昔の日本の海軍はやはり大陸作戦の背景をなす、あるいは台湾を守りあるいは南洋諸島まで守る。こういう非常な広い海域に作戦を遂行しなければならなかつたからあれだけの大海軍を要した。しかしながら今日の日本は台湾を防備する、南洋を防備するという必要はない。昔の大陸作戦をする必要はない。日本の沿海と日本の沿岸、国土内を防備すればよいのでありますから、これは専門家の研究にまたなければならぬが、たとえば海軍のごときでも、今日のフリゲート艦のごときは大き過ぎる。あんなものは役に立たぬ。先般の大戦においてあれがいかに役に立たぬものであるかということは十分に証明されておる軍艦である。そうではなく、日本の今日の防衛に適当するものは4つと小さな、むしろ二、三百トン程度までの小艇で、そうしてこれに高射砲を一門置く、魚雷を一本載せる、それから潜水艦を爆撃する爆雷ですかを数個載せる。むろん基地から遠く出るわけではないから、使い切つてしまえばすぐ基地へ帰つて補給できる。そういう小艦艇を相当多数に持つているのが今日の日本としては、海軍としては適当だという考えも持てるのであります。陸軍においても同様でありまして、もし海空の守りが相当にかたければ、そうして日米安全保障条約等によつて国の守りが相当に行えるということを予想しますならば、先ほど長官が言われたように、万一どこかから侵入軍が侵入して来る――これも実はほとんど想像し得ない。海の守りがある程度あれば、それから空の守りがある程度あれば、いかに狭い海峡といえども、大陸軍が一ぺんに押し寄せるわけにはいかぬ。空艇部隊で来るものなんというのは知れているのです。後続部隊がどんどん続かなければ、これはいかなる敵といえども、むやみに敵の本土に上陸するものじやないのでありますから、この外国軍の侵入ということも、実は非常に予想しがたいことなんですけれども、万一に侵入された場合にこれに対抗し得ればいいというようなもので、相当の機動力さえあれば足りるものとも考えられる。これはむろん専門家の間にいろいろ議論のあるところでありましようから、私のここで申し述べますことが唯一の結論だと申すわけじやありませんが、たとえばこのようなもので、日本軍備としては案外小規模のもので済むという考え方も持てる。けれどもこれはやはり軍備軍備です。戦力は戦力です。たからこれが日本に適当するものであるならば、いかに小規模のものであつても、それが戦力でないという議論は立たないと同時に、昨日あたりも出ましたように、そんな戦力じや世界に笑われるなんというばかなことはないわけです。笑われるどころじやない。日本軍備というものは非常にりつぱなもんだ。わずかな予算でもつてりつばな国防ができるといつて、これは世界からほめられるのです。逆なんです。でありますから私はそういう点から今の保安隊というもの、警備隊というものが、戦力でないとか、軍備でないとか、軍隊でないとかというような強弁をされることは、ひとつやめられたらどうか。だれが見たつて実際戦力なんだ。いかがですか。
  170. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。一国の防衛をどういうぐあいにするかということになりますと、その国の与えられたる地位とそうして時期とを考えなくちやならぬのであります。ただその国だけのことを考えてはいかぬ。相手がどういうぐあいの軍備を持ち、またどういうことを研究しておるかということを相対的に考えなくちやならぬのであります。ただいま石橋君の仰せになつたことは、これはどういうことを根拠にして申されたかわかりませんが、われわれも国を守るについては、そればかりに防衛軍を持つといたしましても、これは最小限度でやらなくちやならぬとは考えておりますが、これは相手次第によるのであります。この相手によつていかようにもそれはかわつて来なければならぬ、固定的のものじやないと私は考えております。  ただいまフリゲート艦のことをお話になりました。もとよりああいうものは私は軍事力としては何ら大した役に立つものじやないと思つております。しかし私が、警備隊においてあのフリゲートを借りたいというのは一御承知通り密輸入が近ごろ盛んに行われております。あるいは漁船の保護もいたさなければなりません。あるいは浮遊水雷の解除もいたさなければなりません。そういう意味においては十分役立つのであります。なお申し上げたいのは、あなたが保安隊のことを盛んに仰せになりましたが、保安隊の装備編成から考えまして、一体現在の戦争にああいうものがほんとうに役立ち得るかどうか。これは一通りの軍事知識を持つた人であれば、これはとうてい近代戦を遂行すべき能力なしということはきわめて明白であります。これはどうそ石橋君、あなたはあらゆる研究機関をお持ちになつておるのでありますから、軍事専門家に言つて十分お調べ願いたい。われわれは保安隊、警備隊によつて現在日本の内地の平和と秩序を維持すべく、この目的に使つておるのであります。もとより先ほど申しました通り、かりに外国から集団暴徒のようなものがやつて来た場合には、これはわれわれは手をこまねいているわけのものでありません。石橋君もおそらく敢然としてお立ちになることは私は信じて疑いません。さよう意味において保安隊、警備隊も、これまたそのときにおいて立ち上ることは、きわめて当然であると考えております。
  171. 石橋湛山

    ○石橋委員 それではちようどただいま長官の言葉の中にありました相手次第、その相手はどこを考えられておりますか。
  172. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はただいま防衛組織のことについては考えていないのであります。ただ保安隊、警備隊は内地の平和と秩序を守るために訓練しているのでありまして、どの方面の敵を相手として防衛すべきかということについては、私はただいまそういうことについては申し上げる次第ではないと思います。
  173. 石橋湛山

    ○石橋委員 およそ警察にいたしましても軍隊にいたしましても、これを用いる目標と場所とがはつきりしていなければ、装備もできなければ訓練もできないわけです。また規模を定めることができない。漠然とただ治安ということならば警察で十分なんです。もし警察が足りないならば警察をふやしたらよろしい。別に保安隊とかなんとかいうものはいらない。警察の方にも海上警備隊があるじやないですか。海上においても先ほど長官が言われたような、ちよつとした密輸入とかなんとかというものは、おそらく私は警察の方でやつているのだろうと思う。そういうわけでありますから、かりに警察だということに譲歩いたしまして、これをどこでどういうふうに使うかということがはつきりしなければ、われわれはどうしても納得ができない。アメリカ軍が近ごろ妙義山や浅間山で演習したいと申しておりますが、これは何も無意味に演習するのじやない。これはアメリカ軍のことでわかりませんが、どこかでああいう山岳戦をやる必要がある。すなわちその使う場所を考えて演習しようというのでありましよう。保安隊が先般富士山麓零相当大規模の演習をした。今のアメリカやなんぞの装備に比較したら劣る。古武器を借りておるのだから劣ることはもちろんでありましようが、しかしかなりの重装備を持つた軍隊が富士山麓で演習をしたが、何のために、あれはどこを目標にして演習をやつたか。単に訓練だけなら、あんなドリル、観兵式のような演習なら、これは国費を無用に濫費するものだと言われてもいたし方ないと思うのでありますが、その点いかがでありますか。
  174. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。われわれといたしましては、とうてい警察力によつて対処いたすことのできないような反乱とか擾乱の起るような場合を予想しておるのであります。また不幸にして、外国軍とは申しませんが、集団暴徒がかりに海外から出動するような場合も考えられないことはありません。これらの点から考えてみますと、われわれは国内の平和と秋序を守るためには、できるだけの手当をしておかなければならぬのであります。御承知通り東ドイツにおきましても、突如としてああいう暴動が起つたような次第であります。あるいは仏印においては、ホー・チーミンのああいう動乱が起つたような次第であります。ふだんからそういうことを十分に準備をしておかなければ、いざという場合に間に合わないのであります。われわれは何よりもまず国内の平和と秩序を維持することが国家としての最大の任務であろう、私はこう考えておる次第であります。
  175. 石橋湛山

    ○石橋委員 どうもせつかくの木村君の御答弁ですけれども、ますくわからなくなる。どうもどこに使うのかだれを相手にするのだか、あるいは外国から来るかもしれぬというようなことで防備というものはできるものじや絶対ないのです。われわれはど覆うが入るという危険が相当に明らかであるから戸締りをするのです。来るか来ないかわからないどろぼうならだれもかぎはかけない。どろぼうなんかが世の中に存在するということが認識されておるから、われわれは戸締りをする。それで今の保安隊、警備隊なるものは、そのどろぼうが何か、これは昔の軍隊用語で言えば仮想敵国、仮想戦場というものがなければ絶対できないのです。その仮想敵国なるものは、国内の単に簡単な暴動――この間の東ドイツのお話が今出ましたが、あれには戦車を持つて行つたが、それだからといつて重戦車の必要はない。それからまたこの間も政府のある当局からの言明によれば、内灘において試射する砲弾は、保安隊の使用する砲弾だという発表がありました。それを確かめましたら、その発表は必ずしもそのままに受取られないらしくも感じますけれども、とにかくああいう砲弾を内灘でもつて、どんどん試射しなければなぬほどたくさんに、相当長距離の射程を持つておる大砲を国内のある程度の暴動に使うということは平灰が合わない。そんな暴動が起るということを長官は予想されておるのですか、その点を伺いたい。
  176. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれといたしましては、何どき集団暴動が起るかわからぬということを予想しておるのであります。現にある国におきましては、日本解放部隊とかなんとかいつて、相当の数の部隊をある場所に集めておるというようなことも聞き及んで吊ります。かたがたいろいろな点から考えましても、われわれはどうしても内地の平和と秩序だけは維持しなければならぬ。現に外国におきましても、刻々として反乱、騒擾があることは石橋君も御承知通りであります。それでわれわれは必ずしも盗賊の来ることを希望はいたしませんが、万一盗賊が来るようなことがあつたら、これをどうして防ぐかということをあらかじめ考慮に入れて対策を講ずるのは、当然であろうと私は考えております。
  177. 石橋湛山

    ○石橋委員 どうもこんにやく問答かなんかしらぬけれども、相かわらずわからぬが、それでは別の方面からお尋ねしたいと思います。保安隊があればあなたは今あなたの想像せられる何か知らぬけれども、暴動であるとか、ある一は外国からの侵入軍とかいうものに十分対抗することができるという自信を持つて今保安隊、警備隊をつくられておるのですか。
  178. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれといたしましては、万違算のないようにただいますべての面について考慮を払つております。
  179. 石橋湛山

    ○石橋委員 つまり今の保安隊及び警備隊で十分だということでありますか、もう一ぺん念のために……。
  180. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまのところでは内地の反乱、騒乱に備えての警備に対しては、まずく十分であろうとわれわれは考えております。
  181. 石橋湛山

    ○石橋委員 そうしますと、しばしば漸増ということを言われておるのも、はなはだおかしいことになりますが、もう一つお尋ねいたしたい。私は今の保安隊がはたして長官の期待するがごとき性能を持つているでしようかということに実は疑問を持つ。それは先ほども質問の中にあつたように今の保安隊の装備は日本のものではない。それは正式にアメリカから借りておるものでもない。何だがわけのわからないうちに借りておる。管理権はアメリカ側にある。しかもそれはいずれも古武器だ。これは少々悪口になりますが、ある人の悪口によれば、日本の保安隊なるものは、あれは外国の古兵器のごみ捨て場だというふうにまで言われておる。しかもその古武器は日本人の体格に合わない。日本人の指はアメリカ人より小さい。背も低い。ですから引金一つ引くにも満足な引き方ができない。めがねをのぞくにも踏台がなければのぞけない。(笑声)そんな装備を持たして、それで何の役に立てるのか、目標は一向わからないが、万々一外国軍が侵入した場合にやるという。なるほどあの重戦車のごときはそうでしよう。これはアメリカ側でも言つておる。日本政府では言わないけれども、われわれはアメリカ側から実は聞いておるのですあれは必要がないようにちよつと見えるけれども、朝鮮の状況を見てもわかるように何が来るかわからないからああいうことをやつておるのだということをちやんと言つておる。ですからさてきのMSAの新木大使等の問題のように、なぜ率直に言われないのか、ふしぎに思うのです。そこで話を横へそらしてはいけませんが、だから現在の装備は今申し上げるようなものですか、それとも長官の目から見れば、りつぱなものである、決して間然するところがないというふうにお考えになりますか。
  182. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今、保安隊、警備隊で持つております武器は、必ずしも十分とは申せません。お説の通りアメリカで使つておつた武器が相当多数でありますから、必ずしも日本人には適当しておりません。これは率直に申し上げます。できることなれば日本の人たちに、ごとにかわいい青年にほんとうに向くような武器を持たせたいのはやまやまであります。しかし、日本の財政状態からしてそれはとうてい許されない。そこでやむを得ずアメリカから借りて今使つておる。われわれは日本の若い人たちに向くような武器を持たせる日の一日も早からんことを期待しておるものであります。
  183. 石橋湛山

    ○石橋委員 今のお話ほんとうだと思います。そうすると、現在の保安隊というものは、実は何のことだかわからない。役に立たないのだ。だから将来日本人の体格に向くがごとき武器を日本国内なりどこなりでつくつて、それを供給して、本物にしなければならないというのが御意見のようですが、そうなると、われわれは国会言としての責任があるので、これは各党ともそうだと思いますが、この間からこんなことをしつこく伺つておるのは、これはお互いにおもしろくないのです。しかしながら、われわれも国会議員としての責任がある。いいかげんなことで、この相当巨額の経費を協賛するわけには行かない。ですから、もしほんとうに保安隊なるものが必要であり、有効であり、そうしてこの経費がどうしてもなくてはならないというのならば、政府はもつとはつきりとみんなの疑問を晴らすようにしなければならないと思うのですが、これは、国会国会でかつてな判断をしても、政府は一向さしつかえないとお考えになるのですか。
  184. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は保安隊がただいま持つている武器は必ずしも完全なものでないことは率直に認めます。しからば保安隊は一体役に立つのか立たないのか、私は保安隊はりつぱに役に立つということをここに断言いたします。もとより武器を使うものは人間であります。いかなるいい武器を持つても、これを使う人間によつてこれは何にも役に立たないのであります。今の保安隊、警備隊の隊員はきわめて志気旺盛、ほんとうに私はりつぱなものであると思います。これをアメリカの借りた武器を持たせましても、りつぱに職責を果し得るものと考えておるのであります。私は常に申しております。その武器の不十分なやつは隊員の訓練によつてこれをできるだけカバーしてゆきたい。しかしなおわれわれは考えなければならぬのは、やはり日本人としてはいつまでもさような武器をアメリカから借りているのはよくない。財政の許す限りにおいて、でき得る限り一日も早く日本の青年に適する武器を持たせたい、これが私の心境であります。なお保安隊、警備隊は、日本の平和と秩序を維持するためにはぜひとも必要であり、また現在の段階において実によくその任務を果しておるということをここに申し上げたいのであります。
  185. 石橋湛山

    ○石橋委員 長官としてまさか自分の部下の軍隊が志気衰えておるとは言われないでしようから、今のお言葉はそのままにあなたの立場として了解しておきます。しかしながらわれわれの知るところによれば、今の保安隊あるいは警備隊も同様、こんなにここで議論が出るように、性質が非常にはつきりしないものだ、しかもその武器は、決して自分らのからだに適当しているものではない。その適当してない武器さえもアメリカ側が管理して――今はどうしているか知らないが、一時は演習が終るとみんな一ところに集めて武器庫にかぎをかけて、あと日本人は手がつけられぬというようなこともあつたと聞いておりますが、とにかくそういうようなことでやつている。それから号令とかなんとかいうものも、相当英語がまじつておる、こういうことで、これはだれが考えても志気の振うわけがない。それは一応志願して来た人たちですから、やつてはおられましよう。私は隊員の諸君に対しては非常にこの点で同情するのでありますが、それだけに政府の処置というものはけしからぬと思う。いくら志願して来た者であつても、あれだけの若人をして、こういう問題にさらして、一体自分たちは何だというような疑問を抱かせるようなことをやつておるということは、どこまでも政府責任を追究しなければならぬ、無責任である。私はこれ以上この問題は追究しても、どうせ同じ答えでありましようから、お答えは必ずしも要求いたしませんが、とにかく今のやり方では保安隊というものは、帯に短かし、たすきに長しという言葉がありますが、それどころではなくて、ほんとうの目的に向つては役に立たない。そうしてむしろ国費を濫費しておるものだ、かように断定せざるを得ないのです。長官どうですか。
  186. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。保安隊の現在使つている武器は決してアメリカが保管しているのではありません。自由に保安隊において使用しておるのであります。これは警備隊においてもその通り、何らのさしずも受けません。また保安隊、警備隊においてアメリカの駐留軍の軍人が来てこれを指揮監督するがごときことは断じてありません。みな日本独自の方法、指揮に基いてやつている次第であります。重ねて申します。日本のただいまの保安隊、警備隊はきわめてよくその任務遂行に努力いたして、いささかも不安のないことをあらためて申し上げます。
  187. 石橋湛山

    ○石橋委員 ただいまの問題はいくら繰返しましても同じことでありますから、これで一応打切ります。  次に総理大臣直接にお伺いいたしたいのでありますが、先般総理大臣は参議院において一議員からの質問に対して朝鮮のいわゆる政治会議というものは今後休戦でも行われればできるのでありましようが、その場合にも朝鮮政治会議に参加はしないということを言われております。また本委員会におきましても昨日でありましたか、朝鮮にいろいろの事態が発生しているが、その情報は得ておらないというふうに答えられたように私聞きました。もしほんとうにそうであるならば、総理大臣はそれで一体今の日本立場において責任が果し得るものであろうか、責任を果し得るものであるとお考えになりましようか。言いかえれば日本は自分の周辺の地に起りつつある事件についてこれに発言権も持てない、参加もできない、また情報も手に入れられない、こういうことではどうも私どもは日本国としてやつて行けなしのてはないか、非常に危険なことではないかと考えますが、その点総理大臣の御見解はいかがですか。
  188. 吉田茂

    吉田国務大臣 政治会議内容については何らまだきまつたことはないと承知いたしております。それにわれわれは割込む気はなし、また招待も受けておりません。いよいよその正体がわかり、日本国の利害に直接の関係があるものとすれば、むろん参加を要求する場合もありましよう。今日では政治会議そのものの内容がきまつておらないし、また朝鮮の事態について何ら報告を得ておらないとは申しておりません。われわれは絶えず受けてはおりますが、しかしながらこれは軍の機密といいますか、米国軍、あるいは連合軍等の機密もありましようから、一々私はこれを発表する権限、といえばおかしいですが、責任を持つて発表ができない。では何ら報告を得ておらないか。七うは申しておりません。時々報告を受けてはおるけれども、発表はできない。
  189. 石橋湛山

    ○石橋委員 ただいまの総理大臣の答えは大体了承ができます。日本の国内のことではなく、隣接地域に起る問題も、その事柄によりますけれども、これは日本の死活に直接影響するのでありますから、われわれは今国際連合にも入つておりませんけれども、そんな問題ではなくて、日本国自体が死ぬかどうかという重大な問題であるから、たとい先方から招待されぬでも、割込んで行くべきものであるとも思うし、発言を要求してしかるべきものと思うし、いわんや情報を十分に要求することは当然です。日本国の権利である、かよう考えるのでありますが、ただいま総理は、場合によつてはこつちから割込んで行くこともやる。情報はむろん得ておるけれども、ただ発表ができないだけだといいますから、それは非常にけつこうであります。その点はどうかその通りであることを希望をいたします。そこで私はもう一つ総理にお尋ねいたしたいのでありますが、内政の問題においてもそういうものがあります。ことに外交は一々これを発表しろといつたつて発表ができないものがあるということは、これはたれしもよくわかつておるのであります。ところが今日の日本ような――日本といわず今日の世界のごとき、こういう不安な状況でありますと、発表がなく、国民がこれを知らないということで非常な疑心暗鬼を生ずるのであります。また日本態度というものがどうか。政府は、あるいは吉田総理はこうであるが、ほかの党はどうであるか、ほかの国民はどうであるかという疑問も外国に起るのであります。現に今度のMSAの問題でも、私どもはむろん政府にすでに連絡があつたものと思いますが、われわれどもにさえも連絡がある。これを見ても、外交に秘密のあるということはいたし方がないけれども、国民に対しては心配をさせず、海外においても信頼を受けるような何らかの処置を請ずべきものだと思う。  そこで私は、今日の日本ほどいわゆる超党派外交、ノンパーテイザン・ポリシイというものの必要な時期はないのじやないかと思う。アメリカが例のバイパーテイザン・ポリシイをとりましたのは、ちようど国際連合のできるあの話合いをしておる問であつたと承知いたしますが、アメリカでさえも内外の信を保つためには、バイパーテイザンーポリシーによつて行くことを必要とした。これがほんとうだと思う。これは困難である。楽なことではありませんけれども、政府努力すれはできることだと思う。現に日本に対する平和条約及び安保条約というものは、私の理解によれば、アメリカ側はバイパーテイザン・ポリシイでやつたのだ。トルーマン大統領が反対党の有力な領袖、今日の国務長官ダレス氏を起用してつくつた。これはバイパーティザンポリシイだと思う。であるから、アメリカにおいては対日平和条約安保条約も、何らの問題を起さずにやつておると思う。ところが、残念ながら、私はその当時はパージ中でありますから、何らの発言権はなかつたのでありますが、見ておりますと、吉田総理はどういうわけであるか知らないけれども、そういうアメリカ側の態度と全然違つて、ほとんどおし人で、こういう条約あるいはその後の行政協定を結ばれた。その結果はどうです。今日日本国内そこいら中にこれに対する不満があり、不平があり、批判がある。私はあの条約協定内容が必ずしも悪いとは思わないのです。あの当時としては、だれがやりましても、多少はよくなつたことがあるかもしれないけれども、内容において、あれ以上そんなにいいものができたとは思いません。思いませんけれども、そのやり方が、いわゆる秘密外交であつて、だれにも知らさない。これはまあ条約を結ぶまでは国民一般に新聞発表するわけにはいかぬでしよう、当然でありますが、その場合に、信頼し得べき反対党の領袖でもそれに参画しておるならば、国民よノンパーテイザン・ポリシイを信頼して、これは間違いじやなかつたであろう、こう思うのでありますが、その点について、過去をとがめてもいたし方ありませんが、現にMSA問題も起つておる。これからそういう問題はまだまだ続いて起ると思いますが、総理においては、ノンパーテイザン・ポリシイを今後おとりになる御意思はありませんか、いかがですか。
  190. 吉田茂

    吉田国務大臣 外務省には情報文化局なるものがあり、海外のニュースを集め、また国内のニュースを集めて宣伝といいますか、世界に公表することについて努力いたしております。また今後日本の事情に対して了解を得るために、この点についてはますます努力するつもりであります。しかして超党派外交、これは国柄によつて適当な場合もあれば適当でない場合もある。現にアメリカにおいても、この超党派外交のよいか悪いかということについて議論のあることは御承知通りであります。またそのまま日本にこれが適用できるかできないか、これも日本の国情により現在の事態によることで、今日本においてこれをいたす方がよいかいたさない方がよいか。一体民主主義から申せば、各党が互いに主張を公表して、そうして国民に信を問う。その間に切瑳練磨といいますか、互いに討論し合つて、そうして適当な結論を得、また国民がその結論に達した理由を了解することが民主政治である。超党派外交においても、あるいは秘密外交と言うことができるかもしれぬし、それがよいか悪いか。また独裁と申しますけれども、あるいは秘密外交といわれるけれども、民主政治において秘密外交のあるはずはないのであります。ことごとく議会の協賛を経て条約を結ぶ。秘密条約のごときは今日はできないはずであります。ゆえに秘密外交とおつしやるのは実はおかしな話で、これはただ政府を攻撃する、私を攻撃するだけのことに過ぎないのであります。秘密外交が日本においてできれば、日本においては民主政治が行われておらないという結論にも達し得ると思います。また私もそういう考えはありません。国民の輿論に問わず、国民の意向を無視して秘密の外交をするという、そういうよう考えは毛頭いたしておりません。そこで、現在において超党派外交がよいか悪いか、これはよほど研究を要するもので、ただちに私は賛成いたしかねます。
  191. 石橋湛山

    ○石橋委員 むろん今日の日本でありますから、秘密に政府だけが条約を結ぶとか協定を結ぶということはあり得べからざることであると思う。これは申すまでもありません。もしそういうことだけを秘密外交といえば、なるほど日本において吉田外交を秘密外交という名前をもつて呼んだことは言葉の誤りであります。だが、何となしにみんなに不満があるということは――民主政治は納得の政治なんで、よいことをやればいいんじやない。先ほど申しました日米安全保障条約なんかでも、条約そのものはよいのかもしれません。しれませんが、よいことをやりさえすればよいのではなくして、国民の皆納得の行くようなことをやるということが私は一番大切だと思うのであります。この点において、はなはだ外交においても遺憾な点があり、内政の点においても遺憾な点があり、これが残念ながら吉田さんと私どもがわかれた根本の理由なんであります。決してわれわれは吉田さんを攻撃するとか何とかいうそんなけちくさい考えは持つておらぬつもりであります。国のために何とか穏便に、皆が納得して歩くということでなければ今日の日本は持てないと思うのです。そこで今日本においては超党派外交を行うかどうかということは疑問だとおつしやる。それはなかなかそう簡単に、よいとも悪いとも今この場合におつしやれないでしよう。これをしいて言えとは言いません。しからばどんな点が日本においては超党派外交をするのに不適当だとお考えになるか、その御意見を伺いたい。
  192. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。超兄派外交をアメリカが採用するに至つたのは、大戦の事態に対し、非常な国家の大事態が生じたからで、それがたのに各党ともこれに協力するに至つたりであります。日本が今日において超兄派外交がよいか悪いか、先ほども申し上げました通り、民主政治というものは――各党がその議論を闘わして、また国民がその議論の討論によつて事態の変化、事態の移りかわりがわかる、あるいは事態について了解ができるということが民主政治の期待するところでありますから、民主政治の本来からいつてみて、超党派外交にして、外交は超党派の間にしかるべくきめる、その主義がいいかどうか、その主義について私は第一疑うのであります。かつまた何ら世界の大戦争とかなんとかいうような非常な事態に当面しておるのでない今日において、超党派外交をやることがいいか悪いか、民主政治の精神に反して外交を政争の外におくというようなことがいいかどうか、国民をしてすべての問題について直接な関係を持ち、十分の理解を持たしめる。それには国会において各党がお互いにその議論を闘わすということが国民の意識、国民の輿論を深めるゆえんではないか、その点から考えましてもただちに賛成することはできない。
  193. 石橋湛山

    ○石橋委員 これは議論になりますから長くはいかぬと思いますが、それは私承知しております。アメリカのバイパーチザン・ポリシーが決して外交を超党、派でかつてにやつてしまつて議論がなくなつたということはないのであります。ことにあれをやるときに、大統領候補であつたデユーイが一番心配したのはその点なのです。それでありますから行き悩んだのでありますが、ダレス氏あたりの努力でああいう方式がとられて、その結果、ダレス氏もたいへん成功であつたと言つておるようでありますが、私もあれが成功であつたと思う。そうしてこれは決して戦時中ではない、戦後なのです。戦争が終つて平和機構をつくるときに始まつたことであります。今日の日本は、なるほど戦争も何もありませんけれども、当時のアメリカが置かれた国際地位に比較して、それ以上に安泰な状況ではないのであります。現に隣りでは朝鮮事変が治まるか治まらぬかと言つている。国内においては先ほど保安長官が言われたように、いつ暴動が起るかわからぬ、そういうような非常な危険があるときであります。こういうときは昔から例があつたことく、あの党派のやかましい英国でも挙国一致内閣をやつたこともあります。アメリカでは今超党派外交をやつたことがある。ですから議論はむろんしなければならぬ。議論議論で決してそれをとめる意味ではなく、その上に一歩進んで国の信を内外に高めるためには、ある意味において国内の協力一致を示す必要がある、こう思うのです。だから今総理は、民主主義であるから議論はかつてにやれ、みんなでやれ、政府政府でやる。だからいわゆる外に対しても内に対しても協力一致の実を示されなくともいい、こういうお考えなのでありまするか、はなはだくどいようでありますがもう一度御答弁願いたい。
  194. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の意見は先ほどの発言で尽きておると考えます。
  195. 石橋湛山

    ○石橋委員 もうお尋ねはいたしません。しかしながら日本でも明治元年に御承知の五箇条の御誓文を明治天皇が出された。それは今日でいえば民主主義の考え方であります。「広ク会議ヲ起シ万機公論一決スベシ」以下五条、これは当時累卵の危うきにあつた日本を救う唯一の道として当時の天皇をかこむところの着たちが苦心惨胆して考えたのがこの一つの道だつた。でありますから、これは質問じやありませんが、どうか総理もその考えで――あえて超党派外交とも申しませんが、国内においても労働問題、その他超党派的にやるべきものはたくさんある、やらなければならぬものはたくさんあると思う。そういう点に考えをもつて進まれんことを希望してこの問題は打切ります。  次に労働問題について。これは決して労働大臣の問題でなく、総理から伺い得る程度の常識的な問題でございますが、今日の労働問題の性質は、単にあるストライキを規制するとかなんとかいうことで治まるべきものではない、非常な根本的な問題でありまして、つまり私ども昔からそういう点は考えを誤つたと申しますか、そこまで気がつかなかつたのでありますが、政治力を大衆に与えた。ことに終戦後においては参政権が男女ことごとくにわけ与えられた。しかるに産業上における経営権、従つて産業に対する責任というものは、依然として今までの企業家、資本家というものが握つておる。そこに矛盾がある。政治力を持つた労働者は容赦なく国民所得に対する分配の増加を要求する。ところが産業を経営しておる責任者であるところの企業者とか、資本家というものには、これを分配する用意もなければ力もない。ここに今日のむずかしい問題が起つているのだと――これは私が言うのではない。すべての労働問題について考えを持つている人は、古くから、ウエツブ時代からかよう考えられておるのであります。そこで総理大臣には単にスト規制とかいうようなことでなく、この労働問題に対する根本方策をおとりになる考えがあるか。言いかえれば、産業上の責任を労働階級に何らか負わせるような方式をとらなければならないだろう、これは私の私見でありますが、それらの点について政府においてもむろんこれだけの大問題であるからお考えなつておるだろうと思う。そのお考えを承りたいのであります。
  196. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府考え方としては、あとで労働大臣が詳しく申すでありましようが、必ずしも規制するとか、罰するとかいうことのみをもつて考えておるのではないのであります。でき得べくんば労使が協調して、労働階級においても、あるいは企業家においても、一致協力して経済の運用の全きを期したいと考えております。また日本の産業が起るように、日本の生産が高まるようにということを希望いたしております。そのほかのことは労働大臣からお答えいたさせることにいたします。
  197. 石橋湛山

    ○石橋委員 労働大臣がいなくてはぐあいが悪いというお話でありますから、これもとめておきますが、ただもう一つ総理大臣に伺つておきたいのですが、たとえばスト規制法というようなもの、これも場合によつてはやむを得ないものだと思います。必ずしも私は反対するというのではないのであります。しかしながらこれもさつき言つたノンパーチザン・ポリシーなんでありますが、やはり納得というものが根本にならないと何をやつてもうまく行かない。私ははたして今の日本の労働組合の諸君がそういうことに応ずるかどうか。これはむろん知りませんが、政府としては、たとえば電気のストライキを禁止する、石炭の保安に対するストライキを禁止する、それを三年間やる、こういうのでありますが、それより前に話合いをして、たとえば一年なら一年の間労働休戦をするというような御努力をなさつたことがあるのでしようか、あるいはなさる御意思があるでしようか。私は新聞で見た限りにおいては、資本家側には総理大臣もその他の大臣の諸君もしばしばお会いになつておられるのですが、いまだ労働組合の代表者等に――労働大臣はどうか知りませんが、主要なる大臣がお会いになつたという記事を寡聞にして知らない。これでは大きな根本問題はとにかくとして、さしづめの労働問題も、私はこういう態度ではとても解決はできない、こう思うのでありますが、いかがでしようか。
  198. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど申した通り、話合いができ、また了解ができるものならば、その了解のもとに行くがいいと政府考えており、また労働大臣ももちろんでありますが、私が労働代表に会つたことがあるか、ないかということは、私だけが承知いたしておるのであつて、私のところに来た人を一々ああいう人が来た、こういう人が来たということを発表をすることは考えておりませんから、一々申しませんが、会つたことはないかとおつしやられれば、会つたことはあります。
  199. 石橋湛山

    ○石橋委員 これもはなはだ不満足のお言葉で残念であります。そういうことでは、なかなかうまく行かないにではないかという心配を申すにとどめておきます。  次に、最近問題になつて、きようあたりもいるかと思いますが、赤旗を立てて夏季手当の問題で官公労の人たちが騒いでいる。これは技術上の問題でありますから、大蔵大臣にお伺いいたしますが、私の聞くところによりますと、各官庁とも、政府は公には〇・五箇月しか夏季手当を出さないが、実は一箇月出すのだ。そのあとの〇・五箇月は、各省にはそれぞれどこからか捻出する余裕金があるのだ。机を食うか、いすを食うか知りませんが、やはりそういうもので何とか捻出できるので、実は一箇月やるつもりで各省は用意している。ただ一部の省にその余裕がないので困つているといううわさを聞きます。これはうわさですから、はたして事実であるかどうかをちよつと大蔵大臣にお伺いいたします。
  200. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 各省にはさような余裕はないと存じます。なお昨年の暮れに〇・二五、約九十億円の金がかれこれ出ておりますが、あのときはいわゆる超過勤務手当を先払いをしたようなかつこうになつておるのでありまして、現在のところではまつたく財政上の余裕がございません。
  201. 石橋湛山

    ○石橋委員 全体が余裕がなく、すべての省が〇・五箇月しか出さないというなら、これは大蔵大臣の言葉を了承いたします。  そこでやはりこの問題についてもう一つお伺いいたしたいのでありますが、今日の官公吏の給与は――私も大蔵大臣をやつたことがありまして、そのときにはずいぶん官公労の諸君と闘つたのであります。しかしながらこれはむろん財政上の都合で、いわゆる低給であつても財政に余裕がなければ、涙をのんでがまんしてもらうほかないのであります。しかしそうかといつて、今の官公吏の給与が高いとは決して思えません。のみならず、安いと思う。私どもの周囲にも役人をしておる者がありますけれども、実際に生活に困つておる。何かはかから収入でもなければ、しかるべき官吏としての体面が保てないというのが彼此みなしかりと言つてもいいと思う。でありますから、これはやはり給与を上げなければならぬと思う。ところが財政に余裕がない。そこで私はこれを行政整理に結びつけたらどうかと思う。つまり官公労の諸君の援助をも借りて行政整理をする。そして人数を減らして個人の給与をふやすということなら可能なんです。これは一般にいわれるように、今の官公吏は多過ぎる。端極な人は三分の一でいい、あるいは二分の一でいいというようなことを言つている。この数がどうかということは、これは省によつても違いましようから言いませんが、とにかく多いということは事実でありましよう。相当に整理をすることは、実は吉田総理大臣は非常にこれを希望されて早くから主張し、いろいろの委員会等をつくつてつたのですが、いつでも成功しない理由は、官公労の諸君、すなわち従業員の諸君自身に協力の意思がないということに大いなる原因がある。ですから大蔵大臣は官公吏の給与を増額するという目標のもとに、この行政整理を官公労の諸君にも呼びかけてやるというような――これはまあ政治でありましよう。ある意味においてノンパーテイザン・ポリシーの一つになるかと思いますが、そういう手をお打ちになるお考えはありませんか。
  202. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもも現在の公務員の手当が決して厚いとは考えておりません。けれども民間の諸給与も、最近だんだん御承知のごとく景気が悪くなつて来ておりますし、また恩給その他手厚いこともありますので、まあ現在のところがまんをしていただくところではないか、かよう考えております。しからばたとえば二割減員をして、その二割で残つた人の給与を増してやつたらどうか、こういうお話に承るのでありますが、さようなことが今話合いがつくかどうか、石橋さんの言う納得づくでそういうことがやり得るかどうかは、少し考えさせていただきませんと、即答はできかねます。
  203. 石橋湛山

    ○石橋委員 それは即答なされないということはごもつともですから、決して即答を求めませんが、これはやはり努力を必要とする。すわつていてそういう事態は現われて来ない。先ほど言つた外交上のノンパーテイザン・ポリシーだつてアメリカの例を見ても非常な困難を経てやつたことである。ことに権力を持つている、アメリカでいえば大統領がイニシアテイヴをとらなければできないということは、ダレスも言つている。ほかの問題でも同様でありまして、権力を持つている者から働きかけなければものは動かない。これは日本だけではない、世界各国みなしかりでありますから、ひとつその努力をされたいということを希望しておきます。  それから今行政整理の問題が出たので、ちようど関連しましたことで、これはひとつ総理大臣にお尋ねしたいのでありますが、今年度のただいま議題となつております予算一般会計歳出を見ますと、九千六百八十二億八千四百万円というものでありますが、その中に総理府というものが三千一億八千六百余万円、内閣というものが、これは小さいけれども四億二千九百なにがし、つまり一般会計歳出の三分の一までじやありませんけれども、三分の一に近いものが総理府等にある。むろんこの総理府は、中を見ますと、保安庁あり、いろいろの種々雑多な役所が、それこそはきだめのようにたくさん入つていますから、三千億ももつともでないとは言いませんが、しかしながらこれはいわば総理大臣のおひざ元なんだ。私はあの中を見てどれをどうこうという二とは今は申しませんけれども、役所の中にも相当整理をしていいものがまだ依然として入つているのじやないか。またある意味においてぜいたくなものも入つているのじやないか。これは一々申し上げませんが、今行政整理ということは、実は私どもはまず自粛謙抑の範を国会から示してもらいたいということを先般来申しておるのであります。国会は国権の最高機関でありますから、ここからその範を示さずして他に要求することは間違いだということを、われわれは思つておるのでありますが、しかしながら国会と同時に、内閣というものは非常な責任がある。ほかの省に要求するよりも、まずおひざ元の総理府及び内閣において思い切つた行政整理をやる、予算を縮小するということが、この行政整理をほんとうに行うことになる。ここで範を示されたら、ほかの省も黙つてはいられぬということになるわけでありますが、総理大臣はこの総理府及び内閣において、ひとつおひざ元から思い切つた行政整理をされる御意思がありますか。
  204. 吉田茂

    吉田国務大臣 まことにごもつともであります。努めてそういたします。
  205. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと補つておきますと、平衡交付金と保安庁の費用が御承知通り二千数百億に上るのでありまして、これはそのほかの費用も節約すべきものもあると思いますが、最も大きいものがそれであるということを御了承願つておきます。
  206. 石橋湛山

    ○石橋委員 それは大蔵大臣の言われた通りでありますが、これはもう一つ申し上げたいことは、整理ということは、自動車購入費八十何万円、こんなものはちつとばかり、だからといえば、それがだんだん書くなる。でありますから、小さなものを集めなければ今の日本の財政の整理はできません。大きな金は手をつけるところはあまりないと申してもいいと思いますので、この点も、総理大臣は今努めてしてくださるそうであります。私は決してただここで議論をするために申しておるつもりじやございませんから、どうか誠意をもつてお願いいたします。時間もだんだんなくなりますから、問題を進めますが、最近国会の中におきましても、また外におきましても、非常に問題になつておりますことは、日本の物価が高い、そのために輸出が困難であり、国際収支が悪くなる、それが非常な悩みであるという二とは異口同音に言われることでありまして、私もその通りと存じます。そうして何ゆえに日本の物価が高いかという議論も、もう今までこの委員会においても大蔵大臣からお話がたくさん出ましたから、それを一々ここでは申し上げません。またお尋ねもいたしません。ただ多くの人があまり気がつかれないのは、コストの中に占める金利高だと思うのです。それで先般われわれに配付されました大蔵省銀行局の資料の中にも、日本の金利は、たとえば商業手形割引をとりましても、九分四厘九毛、アメリカは一流ものの商業手形では二分三厘一毛、イギリスはおかしなことに一流商業手形が四分五厘になつておるのですが、これは何かの間違いだろうと思う。私の手元にある資料によると、三分程度です。これは印刷の間違いではないかと思いますが、四分五厘というのは少し納得ができない。とにかく日本の約九分五厘に対してアメリカが二分三厘、英国がこの資料でも四分五厘というわけで、著しく違いがある。なおこれは資料がここにありますが、時間がありませんから略します。とにかく日本の金利が高いということは驚くへきもので、東京社員銀行の割引手形でも、この四月は最高が一割一分六厘八毛、最低が七分六厘六毛五糸といつておる。それから相互銀行や信用金庫に至つては、最高は相互銀行が一割二分七厘六毛、信用金庫が一割二分四厘六毛ですか、とにかく平均が相互銀行が一割二分四毛、信用金庫が一割二分七厘、これはオフィシャルなものですが、実に驚くべきことで、しかも日本の金利は歩積みとか、いろいろ問題になつておるようなことがありまして、これに何割か加算したものが実際の金額である。ところが、政府にはそういうお調べがあるかどうか知りませんが、経済界の人間というものは、案外こういうことにはぼんやりしている。ほんとうの金利の計算というものはどこに行つてみてもないのです。それで私はある信用のある中規模の工業会社について――これはなかなかできなかつたのですが、無理にある程度つくらせましたところが、これは相当に信用の高い会社でありますが、日歩五銭というのです。そうすると、一割八分二厘五毛でしよう。これはかなりりつばな会社だ、そうです。これ以下の中小企業になつたら、一体幾らの金利を使つているかわからぬのです。そこでこの金利というものが、日本の生産コストに非常な影響を及ぼしているのだと私は思いますが、大蔵省にはその御調査がありますか。
  207. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大蔵省では日銀の調べに基いてやつておりましたが、それによりますと、大体その企業の売上高に対しまして、総平均で二五%くらいになつております。それは一つの商品がたびたびこういう風に曲つて行きますから、最終のところに行くとどれだけになるかということは、商品によつてちよつと違うだろうと思いますが、その調べはできておりません。
  208. 石橋湛山

    ○石橋委員 それでは私からある程度申し上げます。ある製鉄会社では、これは八幡製鉄ですが、これは割合にはなつておりませんが、貸金支払い七億円の約半分の三億五千万円からの金利を払つているといつたようなことも言われております。それから船の運賃――これは日本の船がアメリカから小麦を運んで来る運賃でありますが、私の調査によりますと、日本船は十二ドル九セント、英国船は九ドル二十セント、そこでその間に二ドル八十九セントの差があつて、競争ができないということになつておる。ところが、この中のコストの金利を見ますと、日本は三ドル二十セント、英国は八十五セント、差引二ドル三十七セントの差が金利だけである。ほとんど運賃の差額に匹敵します。そのほかに日本には船舶税というものが三十五セントある。これらを入れますと、もし金利が英国並に下るなら、そしてまた船舶税のごときを幾らか手当をするならば、今のでも十分に競争ができるように見える。そこで今大蔵大臣は、日本銀行の調べをもとにして二分何とかおつしやつたけれども、あの数字はもちろんでたらめじやございませんけれども、計算が間違つている。おつしやつたように、原料からだんだん製品になつて、最後は販売するところまで行かなければ金利の積算はわからない。そこで私はあの同じ数字から、かりに労務費と経費だけをとつて、それに対して支払い金利を見ましたところが、全体の製造業において一割三分七厘という数字が出た。それから化繊、紡績におきましては一割七分七厘という数字、それから肥料においては一割五分七厘、鉄鋼においては一割七分です。ところが、これはさつき申し上げましたように、表金利でこれだけの金利を払つている。重役は専門に金融に奔走して歩いている、この経費を入れなければならぬけれども、これはなかなか勘定もできますまい。むろん今の歩積みとか何とかいうものもあり、あるいは接待費もあり、運動費もあります。こういうものが幾らかかるかということは、まつたくわかりませんが、かりにこれが金利の五割ぐらいかかると仮定してみますと、製造工業全体においては、負担金利は二割五分五厘、それから化繊のごときは二割六分五厘五毛、これは非常な推算でありますけれども、つまりその会社の事業の附加価値に対する金利の率です。だから、これはむろん正確じやございませんが、全体の率だと一応見ても、見られないことはないじやないか。すなわちちよつと勘定しても、このくらいの数字が現われる。そこでとにかく金利が非常に高くて、そのために日本の生産コストが相当高いということは、おそらくお認めになると思うのでありますが、日本のこういう金利高がどうして起つたかということが点と、またこれを下げる方法政府においてお持ちになつていますかどうか。つい昨日か、大蔵大臣は国債利子を上げるとおつしやつた。これは新聞で見て知つております。馬場土蔵相がせつかく三分半に下げた公債を、また六分五厘か何かに上げるということを新聞で見たわけであります。そういうことだと、この金利は下りつこはないのでありますが、大蔵大臣はどういうふうに御処理なさるお考えか、承りたい。
  209. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 金利の高いことは、今日日本産業の大きな負担であり、また悩みであることは御指摘の通りであると存じます。その金利の高い原因は、これは私が申し上げぬでも、石橋さんの方がよく御承知だと思うのですが、もちろん終戦後において、あの荒れ果てたあとの産業復興に多くの資金を必要としたのに、資本の蓄積が少しお行われなかつたという点が主たる原因であることは、申すまでもないことと思うのであります。しからば今後どういうふうにして金利に対する処置をとつて行くか、私どもはでき得るたけ金利を引下げて、日本あとうべくんば国際水準まで持つて参りたいということは、絶えず念願しておりますが、日本の資本の蓄積状況は、さようにはなつておりません。しかし手の届くところもありますから、たとえば輸出入銀行は、御承知のごとくこの三月、六分から五分まで下げております。これはネットの五分であるのでありまして、何ら歩積みその他の手数料を要するものではございません。されに開発銀行の金利を七分五厘にしておるのも相当あります。なおこれは産業自体によつて、もう少し下げるところへ持つて参りたいとは考えておりますが、しかし資金需要の面が相当旺盛なので、まだこの点については相当考慮を要することと考えておるのであります。それから一般市中銀行につきましては、御承知ようにでき得るだけ資本の蓄積、いわゆる預金の集中といいますか、預金を集めるよう努力をさせておるのでありまして、これに対しては規制の措置などもとりまして、今度は源泉選択に対する税率を低くするというよう方法もやつております。なおでき得るだけ金利を引下げてもらうよつにというので、それぞれ努力しておるのでありまするが、御承知の二千数百億円に上るまだオーバー・ローン等かありまして、徐々に持つて参る以外に道がないのではないか、かように実は考えておるのであります。  公債の利子を今度は上げるということを、この間言つたのではないか、そり申しましたのは、借りかえをする公債がたしか五分五厘かと存じますが、てれまで借りかえができるかどうかといいますと、これを持つておるのは金融機関であるから、その消化し得るところへ持つて行かなければ行くまいから、若干上げなければなるまい。しかし私も六分五厘というところは考えておりません。少しは上げて消化し得るようにして行かなければなるまい、こういつた点から申したのであります。いずれにしてもこういう高い金利の負担は、日本のあらゆる面における経済の発達と、国際競争力の妨げになつておることは、御指摘の通りでありますから、でき得るだけの努力をもつて金利引下げの方向に向つて進みたいと思つておるのでありまする
  210. 石橋湛山

    ○石橋委員 今の大蔵大臣のお答えは、はなはだ失礼でありますが、非常に平凡なごくありふれた世間の考えを反映しておるのでありまして、それではこの問題は解決しないと思うのです。今資本の蓄積が足りないとおつしやつたが、戦後決して資本の蓄積は足りなくないのです。それは現にこれだけの生産が興つたのは、資本が蓄積されたからです。それは機械なり設備になつておるものがあるのです。それに見合う貸借対照表でいう資産の部は、ちやんと蓄積されてあるのに、それに見合う負債の部にある金高で勘定したものだけが足りない。これは資本の陰なんです。なぜこういうことになつたか、資本を蓄積されて、ちやんと活動しておるのです。ですから資本の蓄積が足りないから金利が高いんだということは、失礼ながら間違いだと思う。けれどもこれは議論でありますから打切ります。  そこでこれは二、三年前から言つておるから知つておる人は知つておりますが、今オーバーローンをいろいろ大臣も言われましたが、日本の相当有力な三、四百ばかりの会社の調査、これは興業銀行でやつておる調査でありますが、その資本構成を見ますと、昭和十一年上半期には自己資本が六一%、他人資本すなわち借金が三%、大ざつぱに申しますと、昭和十一年上半期ごろには自己資本が六割、借金が四割、それからその借金の中のまた分析を見ますと、長期負債――社債その他の長期の負債が五一%、短期の負債、これは掛買金であるとか、銀行の手形割引でありますが、これらが四九%、そこでこれを勘定してみますと、昭和十一年上半期においては、使用総資本の中で短期負債が占むる数字は一九・一一%、すなわち大ざつぱに申して二割だけを短期負債で、二月か三月の短かい金でやつておりましたから、これはしのぎがついた。ところが今日はどうか、今日と申しましても調査が遅れておりますから、二十七年上半期しかありませんが、おそらく現在においても大した違いがないと思う。自己資本が三七%、他人資本が六三%で、ほとんど昭和十一年上半期の逆になつておる。それから借金の内容はどうかというと、その六三%の借金のうちの長期負債は二五%、短期負債が七五%、ですから使用総資本のうちに占める短期負債の割合は四七・二五、大ざつぱに申して五割といつていいでしよう。そこで今日の日本の金利の問題、あるいはいわゆる日本経済の底が浅いと称される現象が生ずるのでありますが、この数字は興業銀行のものでありますので、ややオフィシャルのものといつてもいいのでありますから、多分大蔵大臣もお認めになると思いますが、一体こういう状況をこのままに放置しておいてよろしいのか、それをお尋ねしたい。
  211. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その数字は、まだ私もよく調べておりません。従いまして、その数字に基いての対策についてならば、ちよつとここで御即答いたしかねます。
  212. 石橋湛山

    ○石橋委員 御研究がなければいたしかたがありませんが、とにかく使用総資本の五割近いものを短期負債でまかなつておる。従つてさつきも申しましたように、社長あるいは常勤の最も主要な重役が、朝から晩まで銀行をかけめぐつて、この金をつないで行かなければならぬ。そこに非常に金利が高くなる。そうして近ごろの銀行というものは、これは銀行の諸君には少し手きびしい批評だけれども、思い上つておると思う。それはなぜかというと、みんなが頭を下げて行くからです。これでは日本の産業というものは興りつこないのです。近ごろの不渡り手形などの問題もそうでありますが、それじやこういう現象が起きたのは一体だれの責任か、私はこれは決してその会社の経営者とか事業家の責任じやなくて国家の責任、つまり国家の終戦後の処置で、一つは物価が非常に高くなつた、いわゆるインフレーシヨンによつて、貨幣資本というものの割合が小さくなつたということ、それからまた国家の財政政策で、あたかも資本を食いつぶすがごとき税をかけて、これを国家の財政に使つちやつた。こういうふうなことが重なつて、そうしてかように短期の負債によらなければ、今の生産が保てないような社会状況にしてしまつた。だからこの中には事業家に多少の責任のある部分も、こまかく言えばありましようけれども、全体の状況から言えば、これはほとんど国家の責任なんです。従つてこれは国家が直してやるべきものだと思うのです。従つてこれを直せば今のオーバー・ローンもなくなる。これはオーバー・ローンとうらはらの事柄です。こういうふうに短期資本がたくさん出ておるから銀行が貸し出す。銀行は預金が足りないので、日本銀行から金を借りるわけでありますから、オーバー・ローンはこの裏です。この問題を解決すればオーバー・ローンも解決する。そうして同時に先ほど申しましたように、これで一ぺんに金利が下る。なぜかというと、この使用総資本の五割ぐらいの金をあさつて歩くから金利が高い、金がない、それでせつかく新しい蓄積をしても、それがみんなこの中に入つてしまう、それだから新資金というものはいつまでたつてもできない。これを一挙に何らかの方法によつて国家が解決をして、すなわち言いかえれば、短期負債を長期負債に切りかえてやる、これは簡単なんです。一番簡単な方法は、日本銀行の貸出しによつてやればよい。ちようど震災手形の処理のよう方法でやればいい。技術上の問題でありますから、もう少し複雑にやればやりようがあります。短期負債五割の全部とは言いませんが、三割なり何なりを長期負債に切りかえてやる、すなわち安定した資金に切りかえてやるという必要がある。ぜひともこれをやらなければ日本の金利は下らないし、金利が下らなければ生産コストは下らぬ、こういう結論に到達すると思うのであります。  それから、さつき申しました経済界の底が浅い――今日不渡り手形問題が盛んに起つて、相当大きな会社がたいへんな難局に面しております。新聞によりますと、日本銀行その他では、これをすべて事業家の責任に帰し、事業家のやり方が悪い、やみ金融を利用したからだという。やみ金融を利用しなければやれないような事態にしておいて、そうしてやみ金融を利用したからけしからぬ――実際今日たとえば津上などは外国の注文ですが、われわれの知つているところでも、外国の注文というものは非常な不安定なものだ、注文があるかと思つて準備をする、ああいう機械というものは、御承知ように相当準備をしなければできない。きようがきようと問に合うものではない。だからその準備をして注文があるだろうと思つていると、それがキャンセルになつたり延びたりする。今のように、それでなくとも五割も短期負債を使つておるものですから、たちまち行きつかえて、底が浅い、苦しいから高利貸しからも借りなければならぬ。これは私はどうしても政府責任だと思う。御研究がなければ、今ここでどうするということはできませんが、大蔵大臣にはぜひ急速に御研究くださいまして――私の説は二、三年来唱えておるのだから、大蔵省の諸君は知つてもおろうと思う、どうかひとつお願いしたい。  もう一つ、これは今の問題よりは小さくなりますが、不動産金融の問題を伺いたい。不動産金融というものは、日本には非常に必要なものです。過去においては農村の金融は、田畑の担保で勧業銀行等が相当長期の低利の資金を貸したので、農村は金融ができた。市街地におきましても、土地建物を担保で貸してくれたから、中小企業は金融ができた。ところが終戦後不幸にして不動産金融というものはなくなりました。これは実は私が大蔵省におつたときに、勧業銀行は不動産金融をやめた。当時の勧業銀行には、私は切にこれを続けるように申しましたけれども、どうしても銀行の商売上できないということでやめたのでありますが、これはこのままに放置しておきますと、中小企業及び農業には非常な支障を生ずるのであります。この点について大蔵省に何らかの御研究がありますならば伺いたい。
  213. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は今お話の中の、日本銀行がオーバー・ローンを解決すれば一挙に日本の金利は下る、さようなぐあいには考えておりません。それはそういうふうな簡単な問題ではないように私どもは考えて、あらゆる角度から研究しておるのであります。石橋さんは、公債でも出して日本銀行が引受けてしまえばよいじやないかという御議論もしておるようで、それならば私どももしごく簡単だが、さように簡単には参りかねるということを思つておるものであります。なお不動産金融の点につきましては、以前勧業銀行、農工銀行等があつた時代もありまして、これは長期信用銀行その他の機能と相まちまして、何らかのことを考える必要があると存じて研究を続けております。
  214. 石橋湛山

    ○石橋委員 最初の資本構成の問題については、私の主張しておる解決策はとられない、これはそんなことを言う人が多いのでありますが、今日は国家非常の場合であります。そのことを忘れないように願いたい。これはもう生産のコストを下げて輸出をやらなければならぬということもむろん焦眉の急です。平時ならゆつくりこれから蓄積をしてやつて行く、これも私は間違いとは思いますけれども、とにかくゆつくり蓄積して行くという余裕もあるかもしれませんが、今日の時代はそういうことを言つておられない。言つておつたらたいへんな問題です。今度の不渡り手形のような問題はこれから再々起る。そのたびに救済をしたらどうなりますか、救済をせざるを得ない。今まで日本の歴史を見ましても、いつでもそれです。大蔵省あるいはその他というものは、実に考え方が何というか知らぬが、とにかく飛躍することを知らない。それでしまいにはしつぽを出して、結局国民が損をする。救済をすれば救済の資金は固定してしまう。そうでなく早くやらなければならぬ。そのことを申しておきます。  それからいろいろまだあるのですが、もう時間がないから簡単にやりますが、昨日か今日か大蔵大臣は国際収支の均衡ということを強調をなさいました。国際収支の均衡ということは小さくも均衡ができるし、大ききも均衡ができるものであります。ただ均衡しさえすればよいというのは、私から見るときわめて危険な思想である。これは小笠原大蔵大臣は当時よく御承知でありますが、昭和四年に浜口内閣がやつたあの金解禁のときの均衡政策というのは、すなわち小さく均衡をしたために日本の経済界を非常な不況に陥れたのみならず、その後の社会不安を生じ、遂に太平洋戦争まで転落せしめた大いなる原因をなしておる。そこで私は今日の日本としては、小さく国際収支を均衡させるという考えでなく、これを大きく均衡させなければならぬ、かよう考えるのでありますが、大蔵大臣はいかがなものでありますか。
  215. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもも現在、たとえば、日本の貿易その他から見ましても、これをいわゆる拡大して均衡をはからなければ日本の産業を育成して行くことはできません。日本経済の繁栄のためにも、これは拡大して行くことが私は必要だと思います。それに基く均衡を考えて行かなければならぬので、これはこの間のアイゼンハウアーの説明でも貿易の拡大を言つておるし、イギリスの考え方も拡大に向つておるので、私ども特に日本立場では、拡大して均衡に持つて行くということについてはまつたく御同感であります。
  216. 石橋湛山

    ○石橋委員 それならどういう方法でこれを拡大して均衡に持つて行かれる御考案であるか。その御抱負を伺いたい。
  217. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは過日来申しておる通り、いわゆる輸出貿易の振興を第一とし、そうして日本貿易の飛躍的発展を期するとともに、国内においてはでき得るだけ国内産業の振興をはかつて外国からの輸入品でなく、国内の物で間に合わせるように持つて行く、こういうことがいわゆる拡大に持つて行くということであります。
  218. 石橋湛山

    ○石橋委員 どうも今のでは私のお聞きしたいところにピンと来ないのでありますが、これもここでこの上お尋ねしてもおそらく十分のお答えはできかねると思うのです。ただそういう抽象的なことでありましては、なかなか――小さく均衡することならば思い切つて輸入を減らす、今も輸入を減らすというお話がありましたが、減らすというようなことで行きますが、これは輸入を減らして均衡をとるというのは、しばらく前に英国がまずとつた政策でありまして、英国はそれで苦しみながらも、一応どうやら行つておるようでありますが、これは、同時に世界の貿易をことごとく縮小させる原因をなして、現に日本のごときは、そのために非常な迷惑をいたしたのであります。それからまた国の経済としても、英国は労力が足りないのですから、あれでもまた行きますけれども、日本のごとき労力の余つておる国、いわゆる人口過剰といわれる国があの方式をとりましたら、それこそたいへんな失業者を生じ、不景気を生じて、収拾すべからざる状態に陥るのであります。これがもう目の前に迫つておるように思われる。朝鮮の特需等の問題もありますが、かりに特需はある程度続くとしましても、これはなかなか容易ならぬ問題でありますので、先ほどから申しますように、この際は非常時でありますから、非常時には非常時に処する方策がなければならぬ。しかるに残念ながら、昨日来の御答弁、またあるいは本会議におけるいろいろの政府方面からのお話によりましても、非常時に処するという気構えが失礼ながら全然ないという判断を下さざるを得ないのであります。幾度問答しても同じようなことでありますが、どうですか大蔵大臣ほんとうに非常時ということで、非常の処置をとる御決意をもつて、この内閣でやつて行かれるつもりでありますか。それともやはり健全何とかということで、徐々に行かれるつもりですか。
  219. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもは、じみちで誤りなき道をたどりたいと存じます。     〔「そんな答弁があるか、」と呼び、その他発言する者あり〕
  220. 尾崎末吉

    尾崎委員長 静粛に願います。
  221. 石橋湛山

    ○石橋委員 御答弁はやむを得ないでしよう。御承知ように、かつて日本は万年輸入超過国といわれたこともある。明治以来、日本が輸出超過であつた年というのは、きわめてまれな事実であります。確かに年々歳々輸入超過でありました。けれども、これは何も日本の国柄が輸入超過をしなければならぬというわけではなく、なぜこういうふうに輸入超過になつたかというと、外資が入つて来た。あるいはまた償金という形で、日清戦争のころには外資が入つて来た。こういうことで、日本が急速に発展するためには、外国資本の助けを借りて、それによつて必要なる機械とか、その他のものを輸入して来て日本の発展をはかるというために、輸入超過が年々歳々続いたのであります。このことは何も日本だけじやなく、アメリカでもワシントンが大統領になつて以来、一八七三年まで八十三年の間に、輸出超過であつた年は、わずか飛びくに十五年ぐらいしかなく、あとの六十何年はことごとく輸入超過である。これもアメリカが急速に発展をするためには、欧洲から資本の輸入を必要としたから、かような現象を生じた。今日の日本もやはり同様であつて、今日の日本の輸入超過というものは、ある意味においてやはり同じととなんです。つまり戦後の日本経済の急速なる発展をはかるためには、どうしてもこういうふうに輸入超過が起らざるを得ないような経済事情にあるものと考えるのであります。そこで、今度は何か外資輸入に関する法律案も出るようでありますが、この間もどなたかから御質問があつたようでありますが、私はつきりしませんから、外資輸入の現状といいますか、見込みと申しますか、それについてはつきりしたことを承りたい。これは大蔵大臣でも、外務大臣でも、どちらでもけつこうです。
  222. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 過去において入りましたものは、すでに表で差上げておりますが、最近におきまして起つておる問題は、御承知のごとく、火力発電に対する四千万ドルがほぼ話もまとまりまして、近く世界銀行を通して入ることと存じております。さらに世界銀行の方では、その四千万ドルを含めて一億ドルという話も出ておりますので、他の水力発電等につきましても、相当話が具体的に進むことと存じております。また佐久間ダム等に対して、バンク・オブ・アメリカから七百万ドルか七百五十万ドルかの話も出ております。外資を入れますには、外資審議会に諮つてすべてやつておりますが、最近におきましてよほど具体化して参つて、漸次実行期に入つて来ていると存じております。
  223. 石橋湛山

    ○石橋委員 外資輸入の状況についてはほぼ了承しましたが、それにしても、残念ながら大した金ではありません。またかねがね吉田総理が二、三年前から言われたようなふうに――具体的にはおつしやられなかつたでしようが、国民が了解したように、大きな外資がこの際入るということは、ちよつと見込みがないと私はかねてから思つおるのです。そこで、問題はまことに困つた事態でありますが、現在手元にあります約十億ドルの外貨の使い方が、非常に重大な影響を持つて来る。これも過去の例を申しますと、第一次世界戦争のときに日本は大輸出超過があつて、珍しく巨額な外貨を得たのでありますが、これを金解禁も何もせずに非常に惜しんでいるうちに、いつの間にやらずるずる消えてなくなつてしまつた。まるでむだになつたわけでもありませんが、何をしたのかわからずに消えてなくなつたというのが、当時の状況でありましたが、今度の十億ドルというものも、これはなかなか大きいのでありまして、三百六十円にすれば三千六百億でありまして、決して小さなものではございません。この使い方というものが、この際は非常に重要な問題である。つまりこれを利用して、その間に、先ほど申しましたように、金利を下げるとかいうよう措置をとつて日本の輸出を伸ばすということがこの際必要なんです。つまりこの十億ドルというのは、一つの手品の種になるべきものでありますが、この十億ドルについて、いかなる使用方法をとられようとしておられますか、それを伺いたい。
  224. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在の十億ドルにつきましては、大体向うの定期預金にしましたり、各銀行に預託したり、あるいは操作の金に当座にしているものもございます。私どもはこの程度の金は、日本の正常な貿易をやつて行く上において、操作の上に必要なむのである、特に御承知のごとく、特需といつたようなものが少しでも減るような傾向があるとすれば、一層そういうようなことだというふうに考えておるのであります。
  225. 石橋湛山

    ○石橋委員 十億ドルの金が、日本の今の貿易に準備金として必要でありますか。今日本銀行の発券高から見ると、三千五百億円は二分の一くらいになりますか、とにかくたいへんなものです。昔から金本位のときでも、そんな準備を持つておる国というものはないのです。ですから、あの十億ドルというものがほんとう日本の手持ち外貨であるならば、あのほかに、多分何かまだどこかの払込みなんぞがあつたと思いますが、とにかくあの資金というものは、一部分は日本の通貨、または貿易の準備金に必要といたしましても、あの全部が全部必要なものでないと思いますが、いかがですか。
  226. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在の段階では、全部が全部必要でございません。しかし国として長い目で見て行きますと、あれくらいのものは、少し貿易が逆調になつたり、あるいはいろいろなことをしておりますると、相当いわゆる支払い超過になりますので、まあ、あれくらいの程度は持つてよかろうと、私どもは考えております。
  227. 石橋湛山

    ○石橋委員 それが先ほど申した私の心配するところで、そういう考えで行くと、何が何だかわからずに、ほんとうの利用をせずに、雲散霧消してしまうという危険があるのです。私は十億ドルで輸入超過をまかなう。――さつきから皆さんの御答弁の中にあるように、私も特需がすぐに急激に減るとは思いません。それからMSAというものも来るでしよう。でありますから、これは当分――現に今でも、外貨は減つたといつても、減つたのはオープン・アカウントとポンドが減つたので、ドルはどんどんふえておる。ふしぎな現象です。この状況は、テンポはおそくなるかもしらぬが、まだ続くと私は思うのです。また続くということを、各大臣は先ほどから、そういう形では言わぬけれども、言つておる。特需が続くということは、言いかえればそのことなんだ。そういたしまするならば、十億ドルのものがなければ、貿易にさしつかえるというようなものとは、どうしても考えられない。早くこれについての十分な研究をして、どういうふうにこれをもつと有効に利用するか。つまり特需のある間に日本の生産を興し、日本の輸出貿易を興すということが、今の政府の目標のように先ほど言われておるのでありますから、それにこれを使わなければいかぬと考えるのですが、いかがですか。
  228. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 十億ドルの利用方については、私どもも今後検討を重ねて行きますが、石橋さんの言うのは、外貨を日本の方に持つて来たらどうかというよう意味じやないと思いますが、もしそうならば、これは結局日本に非常なインフレを起すことになつて、赤字公債を発行するのと何ら選ぶところない事態を引起しますので、さようなお考えでないと思いますけれども、もしさようなお考えであれば、これは私ども賛成いたしかねます。
  229. 石橋湛山

    ○石橋委員 今の大蔵大臣のお答えは、ちよつと私にはよくわからなかつたのだが、外貨を売つて、たとえばその利用の道は、今日本は合理化に機械か必要だということがはつきりしておるならば、その合理化に要する機械の輸入の資金に使つたらいいのです。そんなら決してインフレになるわけはない。国内でこれを使えば、円に換価して国内でばらまけば、それはその程度において、いわゆるインフレーシヨンの傾向を見ましよう。しかしながら、必要なる機械とか、材料とかいうものを輸入して来るということにあれを使うのに、何もインフレになる理由はない。現に電源開発のため、――これは日本の中で機械もできるのでありましよう日本でなるべく機械をつくつて参りたいのでありますが、そのほかにも、製鉄にいたしましても、何にしても、そういうものがある。これに非常にけちくちくして、そうか患うと、何かへんてこなところに外貨の割当があつたり何かして――きのうの話では、こんにやくがどうこうということもあるのですが、とにかく、よほどこれはしつかりした計画を立てて、今の必要な機械の輸入をするということにあのある部分を使う。ところで日銀券の流通高は、昨年末で五千七百六十億円余りですから、これは三千六百億円というと、その半分を越える。そんなべらぼうな金など持つているぜいたくな国というものは、あり得べからざることです。いかがですか、その計画をお立てになる意思がありますかどうか、もう一ぺん伺いたい。
  230. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 日本産業の合理化その他に必要な機械、技術等の導入についての外資の使い方については、これは少しも惜しんでおりません。これは現在現にそれを入れておるのであります。なお利用方法については、現在り利用方法がいいかどうか、このことについてはさらに研究いたしてみたいと思つております。
  231. 石橋湛山

    ○石橋委員 ただいまのお話は、それではひとつ御研究を願うことにしておきます。  最後に、これは技術的な問題でありますが、本年度一般会計予算を見ると、四百五十五億七千二百万円という相当巨額の前年度剰余金の繰入れがあります。二十七年度予算にも二百六十八億七千三百万円。それから今度は、二十七年はどうかというと、これはまだ政府の正式な発表はないのでありますが、一昨日か配付されました資料によりまして計算すると、租税及び印紙収入の決算見込みが七千九十四億九千二百万円、それに対する予算が六千八百五十三億二千六百万円というのですから、差引、租税及び印紙収入において、二百四十一億六千万円余りの歳入超過がある勘定で、おそらくこれに近い剰余金がまた二十七年度にできまして、繰越されるものと思うのであります。これは一体日本では、予算を立てるときに、赤字になつちや困る、これは言うまでもありませんが、剰余金ができさえすれば、何だか健全な財政のよう考える弊風が昔からある。ところがそうじやない、かようなたくさんの剰余金、これはどうしてできるか。結局国民の苛斂誅求か何かでできて来たので、これだけ国民に非常な巨額の負担をかけ、苦痛を与えて、それで剰余金ができて、半分は公債の償還に充てられるのでありますが、半分は一般経費の中に繰入れられる。一体、半分も公債の償還に使用するというのには、現在の日本の公債は少な過ぎるのでありまして、これは昔から公債が多過ぎる多過ぎると言つたので、今でも多いと思う人がありますが、内国債だけとつても、たとえば昭和五年くらいの状況でも、日本銀行券の発行高が十四億千三百万円、それに対して内国債の現在高は四十四億六千八百万円、一般会計歳出は十五億五千七百万円です。内国債は非常に多かつたといいますが、実はこれが日本の金融の信用の基礎なつた。これは国債というものを出すと、何だか借金だというよう考えるが、そうじやない。これは日本の金融の信用の基礎を国債というものがやつておる。これも現在金融が詰まつておる一つの原因である、ところが現在はどうかというと、日本銀行券の発行高は、昨年末において五千七百六十四億、一般会計歳出は九千三百二十五億、それに対して内国債の現在高は三千八百二十六億円で、日本銀行券の発行高よりも、一般会計歳出よりもはるかに小さい。これは機械的に申したのでありますが、国債は決して多いものじやない。多いどころじやない、これは何かの形でふやさなければならぬとさえ思つておる。だけれども、ふやすかどうか、これは大蔵大臣のお考えでありますが、とにかく国債の償還をするために剰余金をつくるなんという、そんなばかなこともありますまいが、そういう必要は毛頭ない。そういたしますと、二十八年度はどうです。今度の予算もこういう剰余金が出るのか出ないのか。済んだことはしようがありませんが、剰余金が出るなら、それは減税すべきものです。だから、その点は二十八年度はいかがですか伺いたい。
  232. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 剰余金の計算は、七月末日でないとはつきりいたしませんが、二十六年度は、今仰せのごとく四百五十数億、二十七年度はおそらく三百億くらいのものじやないか、あるいはちよつと超過するくらいじやないか、こういうふうに見ております。七月末日でないと、これは決定いたしません。二十八年度については、剰余金が出7かもわかりませんが、これは剰余金の出る建前はとつておりませんので、これで予算の姿がとんとんということになつておるわけでございます。
  233. 石橋湛山

    ○石橋委員 最後に、それではもう一つ、そのことでつけ加えておきます。吉田内閣がそこまで続くかどうか知りませんが、もし二十九年度予算を組まれるときには、この前年度剰余金なるものは、ぜひとも減税に繰込む、こういうふうにただ歳入に繰入れて、そうしていたずらに公債を償還してみたり、役にも立たぬ保安隊の費用にすることはいけない。これはどうしても減税にするのが財政上の理論的にも建前です。これをおやりくださる御意思はありますか。その一点を伺つて終ります。
  234. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 従来の建前は、今申し上げた通り、二十六年度は二十八年度の、二十七年度は二十九年度予算、こんなぐあいに一年遅れになつております。二十九年度予算は、実はまだ編成方針をきめておりませんが、よく御意向の点はわかりました。
  235. 石橋湛山

    ○石橋委員 それではこれで終ります。(拍手)
  236. 尾崎末吉

    尾崎委員長 この際委員長より申し上げます。実は川崎秀二君より、昨日の同君の行政費節約に関する質疑に際して、国会経費についての発言の一部の他党に関する点は、これを取消したいとの申出がありましたので、この申出を了承することとし、なお速記録を調べ、委員長においてしかるべく処置いたしたいと思います。  本日はこの程度にし、次会は明二十四日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後四時二十二分散会