○石橋委員 御研究がなければいたしかたがありませんが、とにかく使用総資本の五割近いものを短期負債でまか
なつておる。従
つてさつきも申しました
ように、社長あるいは常勤の最も主要な重役が、朝から晩まで銀行をかけめぐ
つて、この金をつないで行かなければならぬ。そこに非常に金利が高くなる。そうして近ごろの銀行というものは、これは銀行の諸君には少し手きびしい批評だけれども、思い上
つておると思う。それはなぜかというと、みんなが頭を下げて行くからです。これでは
日本の産業というものは興りつこないのです。近ごろの不渡り手形などの問題もそうでありますが、それじやこういう現象が起きたのは一体だれの
責任か、私はこれは決してその会社の経営者とか
事業家の
責任じやなくて国家の
責任、つまり国家の終戦後の処置で、一つは物価が非常に高く
なつた、いわゆるインフレーシヨンによ
つて、貨幣資本というものの割合が小さく
なつたということ、それからまた国家の財政政策で、あたかも資本を食いつぶすがごとき税をかけて、これを国家の財政に使つちやつた。こういうふうなことが重
なつて、そうしてか
ように短期の負債によらなければ、今の生産が保てない
ような社会状況にしてしまつた。だからこの中には
事業家に多少の
責任のある部分も、こまかく言えばありまし
ようけれども、全体の状況から言えば、これはほとんど国家の
責任なんです。従
つてこれは国家が直してやるべきものだと思うのです。従
つてこれを直せば今のオーバー・ローンもなくなる。これはオーバー・ローンとうらはらの事柄です。こういうふうに短期資本がたくさん出ておるから銀行が貸し出す。銀行は預金が足りないので、
日本銀行から金を借りるわけでありますから、オーバー・ローンはこの裏です。この問題を解決すればオーバー・ローンも解決する。そうして同時に先ほど申しました
ように、これで一ぺんに金利が下る。なぜかというと、この使用総資本の五割ぐらいの金をあさ
つて歩くから金利が高い、金がない、それでせつかく新しい蓄積をしても、それがみんなこの中に入
つてしまう、それだから新資金というものはいつまでた
つてもできない。これを一挙に何らかの
方法によ
つて国家が解決をして、すなわち言いかえれば、短期負債を長期負債に切りかえてやる、これは簡単なんです。一番簡単な
方法は、
日本銀行の貸出しによ
つてやればよい。ち
ようど震災手形の処理の
ような
方法でやればいい。技術上の問題でありますから、もう少し複雑にやればやり
ようがあります。短期負債五割の全部とは言いませんが、三割なり何なりを長期負債に切りかえてやる、すなわち安定した資金に切りかえてやるという必要がある。ぜひともこれをやらなければ
日本の金利は下らないし、金利が下らなければ生産コストは下らぬ、こういう結論に到達すると思うのであります。
それから、さつき申しました経済界の底が浅い――今日不渡り手形問題が盛んに起
つて、相当大きな会社がたいへんな難局に面しております。
新聞によりますと、
日本銀行その他では、これをすべて
事業家の
責任に帰し、
事業家のやり方が悪い、やみ金融を利用したからだという。やみ金融を利用しなければやれない
ような事態にしておいて、そうしてやみ金融を利用したからけしからぬ――実際今日たとえば津上などは外国の注文ですが、われわれの知
つているところでも、外国の注文というものは非常な不安定なものだ、注文があるかと思
つて準備をする、ああいう機械というものは、御
承知の
ように相当準備をしなければできない。き
ようがき
ようと問に合うものではない。だからその準備をして注文があるだろうと思
つていると、それがキャンセルに
なつたり延びたりする。今の
ように、それでなくとも五割も短期負債を使
つておるものですから、たちまち行きつかえて、底が浅い、苦しいから高利貸しからも借りなければならぬ。これは私はどうしても
政府の
責任だと思う。御研究がなければ、今ここでどうするということはできませんが、大蔵大臣にはぜひ急速に御研究くださいまして――私の説は二、三年来唱えておるのだから、大蔵省の諸君は知
つてもおろうと思う、どうかひ
とつお願いしたい。
もう一つ、これは今の問題よりは小さくなりますが、不動産金融の問題を伺いたい。不動産金融というものは、
日本には非常に必要なものです。過去においては農村の金融は、田畑の担保で勧業銀行等が相当長期の低利の資金を貸したので、農村は金融ができた。市街地におきましても、土地建物を担保で貸してくれたから、中小企業は金融ができた。ところが終戦後不幸にして不動産金融というものはなくなりました。これは実は私が大蔵省におつたときに、勧業銀行は不動産金融をやめた。当時の勧業銀行には、私は切にこれを続ける
ように申しましたけれども、どうしても銀行の商売上できないということでやめたのでありますが、これはこのままに放置しておきますと、中小企業及び農業には非常な支障を生ずるのであります。この点について大蔵省に何らかの御研究がありますならば伺いたい。