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1953-06-22 第16回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十二日(月曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 山本 勝市君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    倉石 忠雄君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    稻葉  修君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    櫻内 義雄君       中村三之丞君    古井 喜實君       青野 武一君    伊藤 好道君       福田 昌子君    武藤運十郎君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       平野 力三君    三宅 正一君       吉川 兼光君    石橋 湛山君       北 れい吉君    河野 一郎君       黒田 寿男君    福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 内田 信也君         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁経理局長 窪谷 直光君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君  委員外出席者         保安庁保安局長 山田  誠君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 六月二十二日  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第2  号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第2  号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機  第2号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  この際、委員長より一言希望を申し上げておきます。今後本委員会の運営をできるだけ円滑に、かつ効果的にするためにも、申し上ぐるまでもないことでございますが、理事会申合せを尊重せられ、また本委員会の権威を保持し、品位を高めるためにも、質疑応答ともに、その用語にできるだけの御注意をお願い申し上げたいことであります。  なおまた審議の目的を達するためにも、開会、休憩ともに、やむを得ない事情のほかは、努めて時間を尊重せられ、かつ各委員相互間の質疑は、できるだけ重複を避けられ、政府答弁は、簡明に、親切を旨とせられるよう、お願いできますれば幸いに存じます。  それでは昭和二十八年度一般会計予算外二案を、一括議題として質疑に入ります。本間俊一君。
  3. 本間俊一

    本間委員 私は、現内閣に対しまして、総括的な質問をいたしたいと思うのであります。  李承晩大統領の捕虜釈放問題は、朝鮮休戦一つの暗影を投じておりますが、いろいろな紆余曲折はあろうとは存じますが、結局は休戦が成立するものと私は思います。平和を念願するわが国民も、ほつとした明るい気持になつているのが事実だと思うのでありますが、かかる情勢を反映いたしまして、手放しの楽観論を唱えておる向きもありますが、またこれはソ連の一時の擬装であり、冷戦の一こまにすぎないという見方もあります。朝鮮休戦の問題を中心にいたしまして、東亜の形勢及び世界情勢がどういうふうに動いて行くか、吉田総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。朝鮮休戦については、私は新聞の報道以外にあまり正確な材料を持つておりません。というのは、時々刻々かわるようで、休戦問題にしても、いまだ調印に至らないというような始末で、休戦の成立することは、私もあくまで切望いたします。これは日本国国内事情から申しても、日本の近所で戦争があるということは、まことに好ましからざるところでもあり、また東亜の安定ということからも、休戦の成立いたすことを切望いたします。が、休戦が成立するまでには、多少まだ紆余曲折がありはしないか。かりに休戦が成立いたしても、安定がただちにできるか、できないか。安定することを希望いたしまするが、それには日本国としても、その休戦が成立するように、あくまでも協力いたすべきことは申すまでもありません。また休戦後において、朝鮮復興にもあくまで協力したいと考えますが、これを契機としていかなる事態が新たに展開するか、またソビエト、あるいは中共がどういう態度をとるか。そもそも休戦が成立するに至つたいきさつについても、幾多内輪の事情があろうかと考えますが、これらの事情についても、実は私ははつきりしたことを承知しておりません。いずれにしても、休戦が成立するということは、日本の隣国における安定の第一歩でもあろうと思いますから、成立することを希望もし、また協力もいたしたいと考えますが、さてこれを契機としてどういうふうに転換いたすか。さらに朝鮮休戦後の事態が平静に進むようになりますことは、日本復興の上からいつても大切なことでありますから、ぜひとも休戦は成立して、その後の朝鮮復興が順調に進むように希望いたしますが、さて世界の動きはどう動くかということについては、皆さんに自信をもつて、こういうふうになるだろうという見通しをここに述べるだけの材料をまだ持つておりません。いずれにしても休戦が第一であり、朝鮮復興が第二である。そしてこれを契機として東亜の安定が持ち来されるならば、まことにけつこうでありますので、これに協力すべきものと私ども考えております。
  5. 本間俊一

    本間委員 実際上朝鮮休戦に到達するまで、まだ相当の紆余曲折はあるだろう。米ソの対立が急に異常な転換をするということも、おそらく予想せられないと私は思うのであります。  次に、防衛の問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、憲法第九条の戦争放棄規定は、わが国自衛権をも否定するものであるかどうか。この点についての政府見解を明らかにしていただきたいのであります。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。憲法九条には、戦争放棄規定しておりますが、独立国である以上は、自衛の権利はこれによつて放棄せられたということは考えられないのみならず、独立国である以上は、固有自衛権はおのずから存在いたしておるものであつて、これがために自衛権放棄、もしくは否定ということは断じてないと考えます。
  7. 本間俊一

    本間委員 固有自衛権はもちろんあるのだ。しかし従来政府見解によりますと、自衛権はもちろんあるのでありますが、自衛のための軍備憲法は禁止しておるのだ。従いまして、自衛のための軍備をいたしまする場合にも、現行憲法の改正が必要であるという見解をとつてつたように思うのでありますが、政府はこの見解を、今後もずつと堅持されるお考えであるかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 自衛権は、当然独立国として持つておることは、申すまでもないところでありますが、このために、憲法九条に禁ぜられておる戦力をもこれを保有するかということですが、これはただいまのところは、保有できないと解釈いたすべきものと考えます。しからば直接侵略といいますか、敵が日本独立を脅かす場合にどうするか。これはそのために日米安全保障条約ができておる。攻撃に対しては、集団的の防禦をなすという意味のもとに、日米安全保障条約で、一応国の自衛独立、安全を守るという建前で進んでおります。しからば、いつまでも安全保障条約で国を守れるかというお尋ねが出て来ましようが、これは現在めところ、敗戦後の日本として、また領土の半ば以上を失つた日本として、戦前と同じような軍備を進めるということは、とうてい国情が許さず——今日においては、国力を養うということがわれわれとして第一の問題であつて独立したけれども戦力を持つことは、憲法も禁じておりますから、実際においてもできない限りは、無理に軍備を持つということは、国情がこれを許さないと考えます。ゆえに憲法九条が戦力を持つことを禁じておるのみならず、実際においては、持つことのできない事態にあるから、持たない方がいいと私は確信いたします。
  9. 本間俊一

    本間委員 自衛のための軍備も、憲法はこれを禁止しておるという解釈を堅持されるということでありますが、そうしますと、憲法解釈から申しますならば、治安維持のための警察、あるいは保安隊ならば一向さしつかえない、こういう解釈だろうと思うのでありますが、国内治安を維持する警察といいましても、軍隊がある場合と、軍隊がない場合とでは、その仕組み、やり方、装備というものが非常に相違して参るのが当然でございます。警察にいたしましても、警察隊保安隊、あるいは俗には警察軍というような言葉もあるぐらいでありまして、実際には、警察軍隊との区別をつけるということは、なかなかむずかしい問題だと思うのでございますが、警察隊軍隊との区別憲法上どういう基準でつけるか、その点の御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知の通り軍隊と申しますと、われわれの解釈するところによりますと、これは対外戦争目的といたす、これが第一であります。その装備編制の能力からいたしまして、近代戦争を的確に遂行し得る総合戦力、これが憲法第九条第二項の戦力である。そこで現在の保安隊は、申すまでもなく、保安庁法第四条において明らかに規定されております通りわが国の平和と秩序を維持し、人命、財産を保護するために特別の必要ある場合に出動することとなつております。建前は、どこまでも国内の平和と秩序を維持することを目的といたしておるのであります。その装備編制の点から申しましても、国内治安、平和を維持することを目的としてされておるのであります。この内容から申しましても、軍隊、いわゆる戦力とはほど遠いものであります。この点において、およそ戦力とは異なつておると解釈しております。
  11. 本間俊一

    本間委員 対外戦争を直接目的にするかどうかという直接の目標と申しますか、目的相違によつて区別するよりほかに道はないと思うという御見解のようでございますが、私も憲法上の基準は、直接の目的相違という以外にないと思うのでございます。ところが戦争目的といたします軍隊でも、間接には国内治安維持というものに有効な作用を及ぼすものでございますし、また治安維持のためにも、軍隊は使われることもある。一方国内治安を直接の目的といたしております警察隊でも、外敵が侵入いたしました場合には、当然戦闘に使われる。そこで戦闘に使い得るかどうかというような点を考えてみますと、石ころでも何でも、そういう場合には戦闘に使い得るわけでありますから、すべてが戦力だということになるわけであります。従つて保安隊が大砲を持つておるとか、あるいは飛行機を持つておる、従つてそれが軍隊だというような議論もあるのでございますが、さような論議は、あまり益のない議論だと私は思うのであります。そこで憲法上の区別は、直接の目的相違ということでよいといたしまして、一体わが国軍備というからには、常識上から申しましても、大体の概念をきめて議論をすることが必要だと私は考えております。いやしくも軍備というからには、戦争がありました場合、外敵の侵入がありました場合に、その国を守り得るものでなければなりませんから、近代戦争に耐え得るものでなくてはなりません。近代戦争に耐え得ると申しましても、その国の地理的条件によつて非常に違つて来る。たとえばスイスのような峻険な山岳地帯にあります国と、わが国のように四面海の国との間では、非常に違つて参ります。従つて兵器の数でありますとか、量でありますとか、あるいは兵員の数でありますとかいうようなものでは、近代軍備基準はきまつて来ないのであります。そこで、今日近代軍備といたしております実際の国々について判断するよりほかに道はないと私は思うのでありますが、四面環海という点で、日本と非常によく似ております英国は、大体近代軍備を持つておりまするのに、どれくらい一年に軍事費を使つておるかと申しますと、一兆五千億円でございます。フランスでも、一年の軍事費が一兆三千億円。近代的な軍備を持つております国の軍事予算について調べてみますると、みな一兆億円以上であります。今かりに、昔のワシントン軍縮時代の十対六の比率をとつて計算してみましても、イギリスの六割の軍備ということで、一年に九千億円の軍事予算がいることになるわけであります。従いまして、この程度軍事予算を組めるようにならなければ、日本の再軍備というものは問題になつて来ない、こういうふうに私は解釈をいたしておるのでありますが、政府は、この問題についてどういう御見解をとつておられますか、明らかにしていただきたいと思います。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御説ごもつともであります。戦力そのものについては、いわゆる一国の置かれたる地位時代、すなわち空間的と時間的と総合して判断するよりほかになかろうかと思います。スイスにおける軍備日本における軍備、あるいはその他の国といろいろ比較いたしまして、これは画一的にきめられるものじやないのでございます。今申し上げました通り、一国の置かれたる地位と、それからその時代というものをよく総合して判断すべきことだろうと考えておる次第であります。従いまして、ただまい日本が完全に防衛態勢をとるとすると、今仰せ通り、莫大なる金がかかるものとわれわれは考えておる次第であります。
  13. 本間俊一

    本間委員 政府答弁によりますると、莫大な金がかかる、こういう御答弁でございますが、私は少くとも先ほど申し上げましたように、九千億円くらいの予算が組めるようにならなければ、問題にならぬと思います。過日同僚の有田議員が、三十万の陸軍、三十万トンの船、四千機くらいの飛行機を持つためにも、一年に七千二百億円くらいの費用はいるであろうということを指摘されたのでありますが、私はどうしてもそれよりももつとかかる、やはり九千億円くらいの予算軍事予算に組めるような財政的な余裕ができないうちは問題にならない、こう思うのでありますが、政府はその点を大体どの辺くらいに置いておられますか、もし御言明ができますならば、もう一ぺんお答えを願います。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点でありますが、われわれは、まだ的確にその計算というものをやつておりません。わかりませんが、概算で申しますると、おそらく初年度において二兆くらいの金はかかるのではないかと考えております。
  15. 本間俊一

    本間委員 今日の経済力では、再軍備はできないという見解は、私の考えと一致しておるのでありますが、しかし国の安全と独立は、どのようなことがありましても守つてもらわなければなりませんから、そこで安全保障条約によつて、先ほども総理も申されたように、日本への直接の侵略に対してはこれで守るということでございますが、それ以外、実際上有効な手段はないと私も思うのであります。外国軍隊にのみわが国の安全と独立をまかせておくわけには参りませんから、自衛力漸増ということが、当然問題になつて参ると思います。それには、愛国心の高揚でありますとか、あるいは国民一致態勢を整備するとか、いろいろなことがありましようが、わが国では経済力充実、向上、これが自衛力漸増の中核でなければならぬと私は考えるのでありますが、政府はこの点どうお考えになつておりますか。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。自衛力漸増と申しますると、結局は物心両方面において、総力の増進ということになるのではないかと考えております。今仰せになりまする通り精神力高揚、これも自衛力漸増の一部面であります。また各種の技術発展、その他経済力増進、これも自衛力漸増一端であります。また保安隊警備力増進するということも、これまた自衛力漸増一端であります。そこでわれわれといたしましては、少くとも国力を十分に増進させまして、そうしてわれわれの警備力なんかも、できるだけすみやかに増進させて行きたい、こう考えておる次第であります。
  17. 本間俊一

    本間委員 まず日本国力経済力充実発展に重点を置いて考えて行きたいということでありますが、私は、現吉田内閣は、再軍備をしない、急がないという政策が特徴だと思うのでありますが、アメリカ側から考えてみますれば、日本独立をいたしたのでありますから、自分独立軍隊を持つて自分の力でその安全と独立を守つてもらいたいというふうに考えますのは、当然のことだと思うのでございます。そこで、今までのいろいろな経緯を顧みますと、平和条約安全保障条約を締結いたしまする場合に、日本の再軍備の問題がどういうふうに取扱われるかということが、日本にとりましては非常に大事な点であつたと私は思うのであります。吉田首相が、再軍備をしない、急がないという政策を今日まで堅持せられて、安全保障条約から再軍備しなければならぬという義務を免れておるわけであります。日本が再軍備するかしないかということは、将来の日本国民が自由に決定することだという線を確保して参りましたことは、私は非常な功績であつたと思うのであります。従いまして、こういう政策を堅持いたしておりますればこそ、防衛関係予算を見ましても、千三百三十八億程度で済んでおるのだと思います。安全保障条約にも反対をする、日本自衛のための軍備も否認するというのでは、観念論や理想論としては一応考えられないこともありませんが、実際の政策としては、私は一文の値打もないものだと思う。防衛問題は、実際の政策といたしましては、再軍備を急ぐのか急がないのか、この相違だと私は考えるのであります。そこでやかましい問題になつておりまするMSA援助問題に関連をいたしてお尋ねをいたしたいのであります。MSA援助の問題も、軍事援助技術援助経済援助等いろいろあるようでありますが、どういう条件になりまするのか、まだ政府の方にもよくわかつておらないようでありますから、慎重に取扱つていただきたいと思うのでございますが、ただここで一つども懸念をいたしますことは、わが国の再軍備条件ということになりますれば、これは受けるべきでないと私は信じて疑わないのであります。平和、安全保障条約交渉の際が、再軍備の問題に対しまする第一の危機であつたといたしまするならば、今回のMSAの際が、私は第二の大事な危機であると考えるのであります。再軍備条件ということになりますれば、国民はその負担に耐えかねて参つてしまうのでありますから、この線は、平和条約並びに安全保障条約交渉に際してとられましたと同じような政策なり態度吉田総理大臣はとられるものと、私は固く信じて疑わないのでございますが、MSAの問題に関連をいたしまして、総理がどういうお気持でおられるか、御見解をもし表明していただけるならば、非常に仕合せだと思うのであります。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。安全保障条約にも明記いたしてあります通り、いわゆる日本防衛漸増——漸増意味合いはいろいろありますが、いずれにしても、国力これを許さないから、独立した軍備は持つわけに行かないという意味合いは、日本国力が回復して、そうして軍備を持つに至るような状態になれば別でありますが、それまでは安全保障条約で行く。これも米国側としては、日本に長く米国軍隊を駐留せしめるということは、向うの希望いたさないことで、日本国力充実とともに引揚げたい。また日本としても、自国の独立外国の力によつて守つてもらうということは、国民の感情から申しても、これは許さないことであります。ゆえに国力これを許せばでありますが、許さない間は、また憲法規定が現在のような規定である以上は、軍備は持たない、また持つべからざるものであると確信いたしておるのでありますが、さて今のMSAの問題が出て来て、これとどういうふうな関連を持つかというお尋ねであります。これも米国側気持は、まだ私は十分承知いたしておりません。また米国側からも公然な話は——法律は成立したが、日本に対してこういう条件でとか、ああいうことにしてもらいたいとかいう希望さえも申出がありませんから、米国政府の、あるいは米国側気持については、私はここに申し述べる材料がないのであります。ないのでありますが、従来米国政府のとつた立場から申して、日本軍備をしいるとか、あるいは日本憲法が禁じておることを無理に押しつけるというようなことは、これは断じてないはずであります。従つてMSAの問題とどういうふうな交渉を持つべきか、これはしばらく米国政府側申出を待つてお答えをいたしたいと思います。現在は、まだ申出がないものでありますから、お答えをいたす資料がない、いずれそのうち米国政府からの申出もありましようから、その申出を待つてお答えをいたすことにいたしたいと思います。
  19. 本間俊一

    本間委員 MSAの問題は、ぜひ慎重にお取扱いを願いまして、私がただいま申し上げました国民懸念のないように、十分ひとつ御奮闘をお願いしたいと思うのであります。  本会議質疑応答木村保安庁長官は、問題になりました防衛五箇年計画というものは、発表した覚えがないということを言つておられるのでありますから、その発表の問題は追究をいたしませんが、保安庁でいろいろな研究の末に一つの試案ができ上つて、それを総理の手元まで提出したと言つておられるのであります。どういう内容のものでありますか、お答えを願いたいと思います。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。防衛五箇年計画なるものを私が発表した事実のないことは、本会議で申し上げた通りであります。ただ私といたしましては、国内情勢の変化に伴つて警備力を増加する必要がある場合に、どれくらいの程度まで増加すべきであるかという点について、自分見当をつけたい——もちろんこの計画にいたしましても、各方面連絡がなければいかぬのであります。すなわち大蔵省、経済審議庁、あるいは通産省、運輸省と連絡をとらなければさような確定案はできないはずであります。しかし私は、その程度に至るまでにおいて、あらかじめ自分見当をつけたい、こういう考えをもつて、ある部局の一部に対して試案の作成を命じたのであります。それは未完成であるが、ほぼでき上つて、私がこれを総理——ちようど今月の六日と記憶しております。九州出張の前々日でありますが、私は、これは心覚えの一つの試案である。見てもらいたいと言つたところが、総理は、まだ未完成であるなれば、完成してから自分の手元に出してもらいたいということで、一応私は出したのでありますが、さようなことで、私はそれを持ち帰つて自分の手元に置いた次第であります。もとより、これは保安庁の庁議にかけたものでもなんでもありません。私の一つの試みとして、見当をつけさせる意味においてつくつたのでありますから、これは申し上げることは差し控えたい、こう考えます。
  21. 本間俊一

    本間委員 吉田総理が、再軍備を急がないという政策を、非常に大事な政策として身をもつて守つておられることは、保安庁長官も十分御承知のことと思うのでございます。こういうやさきに、いろいろなものが出まして、国民に不安の気持、あるいは誤解を与えるということは、私はよろしくないと思うのであります。従いまして、保安庁といたしましては、あらゆる場合に処して研究をする、あるいはその研究の結果が一つの意見としてまとまる、これは当然の任務でありますから、当然いたさなければならぬと思いますが、これの取扱いにつきましては、いやしくも世間に発表される場合には、ひとつ十分今後慎重に取扱つていただきたいと思うのでありますが、どうお考えでございますか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もとよりさような計画案ができますれば、慎重にすべきことは当然であります。繰返しますが、私はさような防衛計画案なるものを作成した覚えはないのであります。今申し上げます通り、ただ日本警備力を将来増加する場合において、どの程度にすべきであるか、またでき得るものであるかという一応の見当をつけたのであります。これも、私はみずから進んで発表したわけでもなんでもありません。たまたま私と随行の記者諸君と、常に懇意にしておるものでありますから、その談話の節において、どうだという話が出ましたから、さようなことであるということを私は申し述べたのであります。
  23. 本間俊一

    本間委員 十分に、ひとつ、今後のお取扱いは慎重にお願いいたしたいと思うのであります。  予算の問題でございますが、終戦後毎年歳入の自然増をもつて補正予算を組んで来たのでありますが、ことしはそうは参らぬかと思うのであります。時期が遅れて成立いたしまするだけに、補正の余地が非常に少くなつている。ところが、官公吏のベース・アツプの問題でありますとか、米価の問題でありますとかいうようなことで、すでに補正の要因も漸次出て来ているのでありますが、この調整を一体どういうふうにされるおつもりか。問題になつておりまする期末手当の増額の処置をあわせて答弁を賜わりたいと思います。
  24. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政府といたしましては、ただいまのところ、補正予算を編成するといつたよう考えは持つておりません。なお、現在の予算の範囲で処理して行くほかないと考えております。  それから期末手当の問題でございますが、これはまつたく財政上困難でございまして、今日これを実行し得る状況にはございません。
  25. 本間俊一

    本間委員 今度の予算案を見ますると、特別減税国債を二百億発行されるということになつておりますが、これが消化のお見通しはどうか。また借りかえ国債の利子の引上げを一体どうお扱いになるおつもりか。国債政策に対しまする政府考えを明らかにしていただきたいと思います。
  26. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 減税国債につきましては、いわゆる不成立予算の当時は三百億を見たのでございますが、その後の情勢等で消化の限度を考えまして、二百億に減少いたした次第でございます。金融機関等で、大体これくらいの程度は消化し得るものと確信をいたしております。なお公債借りかえの場合の利息につきましては、どう考えているかというお尋ねでございますが、公債借りかえの場合についても、やはりこれは主として金融業者が持つておりますので、その金融業者の消化し得る程度ということを考えなければならぬだろうと思つておりますが、ただいまのところ、利率その他については決定いたしておりません。但し国といたしましては、少しでも利率の安いことを希望いたしている次第でございます。
  27. 本間俊一

    本間委員 ちよつと大蔵大臣の答弁がふに落ちないのでございますが、九月に当然借りかえの国債が参るわけでございますから、これの利子は引上げられるのでございましよう。引下げるのでなくして、引上げられるのだろうと思いますが、その引上げの率がきまらないということであれば、わかるのでございますが、その点をもう一度……。
  28. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。それは仰せのごとく、現在の金融情勢は引下げの余地はございません、引上げるという問題でございますが、但し国としては、なるべく引上げて負担を多くいたしたくない。但し、金融業者をもつても消化できなくても困りますので、この点について考慮いたしている次第でございます。
  29. 本間俊一

    本間委員 そうすると、この利子は引上げるが、その利率はできるだけ小さくしたい、こういうおつもりに了解いたしたいと思います。  それから円以下を廃止する法案が出ておりますが、政府は円一本の通貨制度で行かれるのか。新円切りかえをいたしましたそれ以来、いろいろ不安な気持もあるのであります。銭以下が廃止されるということになりますと、デノミネーンヨンが行われまして、あるいは両とか元とかいうような新呼称の通貨が出るのじやないかというようなうわさも高いのでありますが、政府見解を明瞭にしていただきたいと思います。
  30. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御承知のごとく、円以下は今日実際的にも使用されておりませんので、これを除くことにいたした次第でございますが、しかし今仰せなつたデノミネーシヨンとか、日本の円を呼称その他をかえるというような考え方は、全然持つておりません。このことを明白に申し上げておきます。
  31. 本間俊一

    本間委員 公共企業体につきまして、いつも感ずるのでありますが、収支が合わなくなりますと、コスト切下げ合理化を行わずに、すぐ値上げをするという傾向が強いのであります。今回の電話電報料金の値上げも、はなはだ遺憾でございますが、電電公社の経営改善、合理化の方針が立つているのでありますかどうか、この点をお尋ねいたしたい。
  32. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 実は電電公社に対しましても、この合理化がきわめて必要でありまして、この点については、強く要望いたしているのであります。ただ御承知のごとく、電話等の架設が非常に要望されておりますので、今度料金値上げになります分は、あげてその架設増加に使われる、こういうことで、私ども大蔵省としてはこれを認めている次第でございます。
  33. 本間俊一

    本間委員 本予算の成立が遅れましたので、その実施が勢い下半期に集中するわけであります。従つて思わざるインフレを招来するのではないかと懸念する向きもあります。二十八年度の予算は、多少インフレ的な要因もあることを認めなければならぬと思いますが、これは金融を引締めまして、そのような事態を避けるという構想の上にでき上つていると思うのでありますが、大蔵大臣は、本予算の施行にあたりまして、今後の金融政策をどう持つて行かれるか、どういうふうに進めて行かれるお考えでありますか、その構想を承りたいと思います。
  34. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 仰せのごとくに、この本予算通りますと、大体一千余億円の政府資金の散布超過になるかと考えるのであります。従つてこれをそのままに置きますと、インフレになる傾向なしといたしませんので、私どもは、他方には資本の蓄積に対する努力を重ねますとともに、一方御承知のごとく、二千数百億円にも上つております今日の日銀のいわゆるオーバー・ローンがありますが、いわば日銀を通ずる信用政策の調整をすることによりまして、これらの散布超過によるインフレを防ごう、こういう方策をとる所存でございまして、言いかえますと、財政と金融とを常に有機的に一体化いたしまして、そういうようなインフレ的傾向のないように持つて参る、こういう所存でございます。
  35. 本間俊一

    本間委員 金融政策の問題は、もう少しあとになりましてまたお尋ねいたしたいと思います。  朝鮮休戦が成立するだろうということで、経済界は、実際気迷い状態にあると思うのでありますが、朝鮮休戦で今後の特需の関係がどうかわつて行くか。二箇年は特需を保証するという声明なども、アメリカから発せられたようでありますが、その関係はどう展開するか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  36. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま特需の問題についてのお尋ねがございましたが、特需につきましては、大体昭和二十八年度は、昭和二十七年度よりも実際において増加いたすのであります。但し、二箇年間向うが保証しておりまするという金額については、金額の保証がございませんので、どうなるかわかりませんが、常識的に考えますると、先へ行けば多少とも減るものだというふうに見る方がほんとうではないか。但し特需と申しましても、兵器その他の特需はそういうふうに減りますが、他方におきまして、復興等に要する特需の部分は減ることがないと考えられまするので、国際収支の面から見ますときのいわゆる特需という面で申しますならば、あまり多く減ずることはあるまい。たとえば二十七年度では八億ドル以上に上つておりますが、今後いかなる場合でも、七億ドルを下るようなことはあるまい、こういうふうに私どもは予定いたしておるのであります。
  37. 本間俊一

    本間委員 政府が五箇年計画というような問題を取上げて、いろいろ作業をやつておるようでありますが、経審の計画を見ますると、輸出が十三億ドル、輸入が十五億ドルくらいの計画を立てておられるように聞いておるのでありますが、そういうことになりますと、日本の今後の経済は縮小再生産に入るばかりでありまして、こういう計画では行くまいと私は思うのであります。経審長官からでもよろしゆうございますが、五箇年計画を、どういう点に目標を置いてお立てになるおつもりか、その点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  38. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。十三億というのは、まだわれわれの計画も見通しの過程でありまして、ただいまのところ数字ははつきり固まつておりませんけれども、大体私は、輸出が五箇年後に十五億程度になつて行くように構想を練つておるわけであります。しかしこれはまだ固まりませんから、はつきり申し上げられません。ただいまの情勢から参りますと、世界的に貿易というものは、相当激化するのではないかと思いますが、われわれといたしましては、昨年以来輸出が減つておりますのを、これを五箇年後に十五億までに持つて行くということは、相当日本としては至難な仕事であります。しかしあえてこれを全うして行きたい、こういう方向で、輸出貿易第一主義で、国内産業並びに海外貿易の門戸を開いて行こうという方向に進んで参りたいと存じております。
  39. 本間俊一

    本間委員 政府の御答弁によりますと、特需の関係は急には減るまい、少くとも七億ドルくらいの線は確保できるんじやないかというお話でございますが、特需の見通しも、大蔵大臣が申しましたように、どうしても先細りの見通しだと私は思うのであります。ただいま経審長官から御答弁がありましたが、五箇年計画を立てられるにあたりまして、日本の経済が縮小再生産に入るような計画では、私はいけないと思いまするので、どうぞそういう点を十分考慮せられて、慎重な御計画を立てていただきたいと思うのであります。そうしますと、昨年は御承知のように、国際収支の関係では一億ばかり受取りが多かつたわけでありますが、ことしはゼロになつております。しかも朝鮮休戦その他で、どうしても先は細らざるを得ない、こういう見通しだと思うのでありますが、そこで政府の方も、正常な貿易の振興をどうしてもはからなければならぬ、そこに経済政策の重点を置かれるんだという御演説をなさつておるのでありますが、今後貿易をどういうふうにして促進して行くか、また昨年以来不振になつておりまする貿易の原因が一体どこにあるのかという点を、この際明らかにしていただきたいと思います。
  40. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説の通りに、特需が先細りになるということは、これは事実でございます。しかしながら私どもといたしましては、ここ二、三年は、とにかく大した特需の減少はない、こう見ております。そこで先細りになるということ——あるいはなくなつてしまうかもしれませんが、この特需によつてささえるところの日本経済を、自力によつて、すなわち特需のある間に自立してやつて行きたいというのが、私の念願であります。そこで五箇年先のことを考えて、いろいろ計画を練つておるのでありまして、これは一言にして申し上げますれば、日本は御承知の通り国情でございますから、輸出によつてこれをカバーして行くよりほかに方法がない。そこで輸出をいたしますについて、一昨年以来輸出が停頓と申しますか、下向きになつておりますが、これは要するに外国の購買力が減つたということ、同時にまた、ポンド地域が主でございますが、輸入制限を強行しておるというようなことが原因になつて、今日のような状態を見ておるのでございます。これは私どもといたしまして、輸出第一主義で行きますならば、やはり相手の方に買う意欲をつくらせるということと同時に、向うの方で買つてやろうというような立場に持つて行くには、やはり外交交渉が相当主になつて行かなければならね、こう思います。それからもう一つども考えなければならぬことは、日本は、朝鮮ブームのおかげで、国内物価は高くなつておりますから、この物価を下げるということが、第二といたしまして、非常に重要な問題になつております。これにつきましては、ただいまいろいろ協議しておりますが、基幹産業あたりのコストをいかにして下げるかということにつきまして、諸方策がございますが、ただいま十分検討中でございまして、これをいたしまして、すなわち国内のコストを下げ、外交交渉によつて外国の門戸を開いて、また貿易協定ができておりますならば、その範囲を拡大して行く、こういう方向に努力して行きたいと考えております。
  41. 本間俊一

    本間委員 貿易不振の理由を、外国の購買力の減退、あるいは輸入制限というようなところに第一の重点を置かれて、国内の物価が割高になつているという点を第二の重点のようにお考えでありますが、私はその逆だと思うのであります。御承知のように、一昨年は、イギリスも大分輸入制限をいたしたのでありますが、その後のヨーロツパの経済の動きを見ておりますと、むしろ緩和するような、イギリスといたしましても、ポンドの自由化というような方面に努力を集中して来ておりますから、むしろ今後の見通しからいえば、環境は私は漸次よくなるのではないか、ブロツク化というような傾向が修正されて来るものだというふうに私は見ておるのであります。従いまして、日本の輸出が伸びない、不振であるという理由は、やはり国内の物価の割高にあるということを率直に私は認めて、そして対策を立てなければならぬと思うのでありますが、この点についてどうでございましようか。
  42. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます、私の言葉が足りませんで、少し誤解が起きたようでありますが、第一、第二と申しましたことは、これは一点、二点と言つた方がよかつたかもしれません。国内の物価が高いということが、非常に障害を与えているということは現実の事実でございます。同時に、外国の購買力というものも、非常に狭くなつているということも、これは並行した問題でございますから、対外的に申しますれば、外国と大いに外交交渉によつて、新市場、旧市場にも広げるということは必要でございますが、同時に国内的に申しますれば、物価を引下げて、コスト高を是正しなければならぬということが主でございます。これは両方とも、同じレベルに立つての原因でございます。第一の主なる原因が外国にあり、その次の原因が国内の物価高にあるということは、私の言葉の足りませんせいでございますから、御了承願います。
  43. 本間俊一

    本間委員 政府も、輸出の不振の原因は、国内特物の割高にあるという御見解のようでありますが、私もそうだと思います。そこで今の日本の産業活動を見ておりますと、御承知のように、厳重な為替管理がありまして、製品の輸入はまつたく禁じられておるわけであります。一方西ヨーロツパ及びカナダなどの動きを見てもそうでありますが、為替管理をむしろゆるめるというような方向に来ておるのじやないかと思います。そこで日本の貿易の振興は、国内物価の割高をどうしても解決しなければならぬのが本筋だということでありますならば、今とつております為替政策を、やはりもう一ぺん考え直してみなければならぬのじやないかという気がするのであります。またそれが必要だと私は思うのでありますが、政府はその点どうお考えになつておりましようか。
  44. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。為替の問題でございますが、これにつきましては、私はこういうふうに考えております。まずこれも、第一点は国際収支の問題から考えなければならぬと思います。もう一つの点は、国内産業の保護助成ということをまた考えなければならぬ。そこでもしこれを経済上のごく常識から申しますならば、日本のような国柄でございますと、輸入をうんとやらなければ、輸出がうんとできないのはあたりまえの話です。ところがその輸入というものについてわれわれが考えますことは、輸出に寄与するところの輸入をうんと促進して行つて国内消費、すなわちわれわれがぜいたくな生活をするとか、ぜいたくになつて行くような商品を輸入するということは、極力押えなければならぬと考えております。それで私は為替管理につきましては、ただいまのところ十分そういうことを取入れてやつておると思いますけれども、しかし何を申しましても、朝鮮休戦、またその朝鮮休戦後に来る世界的の不況とか、また貿易の激化という場合になりますと、少くともわれわれは、心新たにしてすべての政策に対して十分なる検討をして行かなければならぬと考えております。それにつきましては、やはり為替管理の今までのやり方をもう一ぺん十分再検討をし、同時に先ほど申し上げましたように、われわれとしては、輸出貿易第一主義に徹底するような輸入の促進をやつて行きたいと考えております。
  45. 本間俊一

    本間委員 為替政策を、新たな視野からもう一ぺん再検討してみたいということでありましたが、ぜひそういうふうに、一ぺん見直していただきたいと私は思うのであります。政府の御答弁のように、日本が国際経済に復帰いたしまして、そうして経済活動をいたして参りますためには、当然元本資金がいるわけであります。終戦によりまして、在外資産の全部と、外貨の全部を失つてしまつた日本といたしましては、当然為替管理によりまして、この回転資本を蓄積するということが不可欠の要件であると私は思うのであります。従いまして、国内の財政政策といたしましては、インヴエントリーを中心として、財政金融を引締めるという政策で進んで来たと思うのでありますが、この政策は高く評価されていいと思います。しかしすでに十億六千万ドルという回転資本ができたわけでありますから、今度はこの回転資本をべースにいたしまして、そうして日本の貿易をどういうふうに進展させて行くかという観点に立つて、ぜひとも為替管理の問題を再検討しなければならぬ。そうでないと、国内物価の割高の問題が解決の核心に触れて来ない。こういうふうに私は考えるのでありますが、ぜひひとつ、そういうふうに再検討をしていただきたいと思うのであります。  そこで大蔵大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、従来の金融政策を見ておりますと、朝鮮ブームで上りました物価を維持するというようなねらいで、ずつと日本の金融政策が今日までとられて来ておつたように私は思うのであります。大蔵大臣も、信用政策の調整をしなければならぬということを率直に認めておるわけでございますが、それだけでは、どうも今後の日本の経済が貿易促進第一主義であるという点から考えてみましても、まだなまぬるいのじやなかろうか。従いまして、国内の割高の物価をどうしても解決しなければ、輸出は増進しません。これは、西ヨーロツパの今までの経験を検討いたしてみましても、御承知のように、西ドイツにいたしましても、あるいはオランダにしても、ベルギーにしても、輸出が伸びて国際収支が非常によくなつておりまする国々は、その財政政策も、金融政策も、非常に正常な道を歩んでおると私は思うのであります。ところが、フランスはどうも国内の物価が下らない。そこでいろいろな輸出奨励の方法を講じております。輸出保険の強化でありますとか、あるいは税を負けるとか、いろいろな奨励策を講じておるにもかかわらず、輸出が伸びない。やはりその根本の原因は、国内物価の割高ということにあると思うのであります。そこで従来とつて参りました財政政策及び金融政策というものを是正する必要が、どうしても起りはせぬか。ところが日本の財政需要を見ますると、たとえば軍人恩給の問題にいたしましても、増加する方の要素が非常に多いのであります。こういう財政需要の異常に多い際に、日本の割高の物価を解決する財政金融政策をとるということになりますと、少なくとも今までとつておりました政策をうう一ぺん見直して、これを是正し修正するという方向にどうしても行かざるを得ないのじやないか、またそういうことが正しいのじやないか。私はこういうふうに思うのでございます。従いまして、時間の関係でまとめて申し上げますが、いろいろな物価の割高から、補給金を出せ、あるいは二重価格にしろ、あるいはせつかく蓄積いたしました外貨資本を食え、こういうふうな意見も出ておりますが、これはむしろ私は逆だと思う。そこで大蔵大臣は、今後の日本の財政金融政策をどういうふうに持つて行かれるのか、もう少し構想を明確にしていただきたいと思います。さらに補給金、二重価格の問題、それから蓄積いたしました外貨の問題、これをあわせて御答弁を賜わりたいと思います。
  46. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今仰せの点は、私もきわめて大切であると存じます。私どもは、いわゆる国際収支の均衡ということを目標といたしまして、それに沿うようにいろいろな政策を立てておるのでございます。従いまして、日本国内の物価が高くて、それが輸出の阻害になるようなもの、いわゆる国際収支の均衡を破るようなことになるものにつきましては、できるだけこれが引下げの方法をやつておりまして、各種の財政投融資等がそれに向けられておることは御承知の通りであります。従いまして、現在の価格を維持して、いわゆる補給金制度等によつて貿易を伸ばそうというような考え方は、日本の経済を健全にするゆえんでございませんので、私ども断じてさような政策はとるべきものではない。さような、いわばよくいわれておる安易な考え方はすべきものでないと考えております。  なお財政につきましても、今後の財政は、御承知のごとくに非常な多難なことでございまして、私どもは、少くともこれは、言葉は少し悪いかもわかりませんが、現在のわく以上に日本の財政収支を持つて行くべきものでない。言いかえますれば、縮小こそすれ、これを大きく持つて行くということになりますと、日本の前途を非常に誤るものになるであろう、かように考えておる。従いまして、価格二重制度等につきましても、それらの運営について研究をする必要があろう。すべては日本の国際収支の均衡を目ざして、これに基いた諸政策を進めるべきである、かように考えておる次第でございます。  なお、仰せになりましたように、今日本は十億ドル余持つておりますが、これは正常貿易を運営して行きます上に、どうしても欠くべからざる資金でございまして、これをたとえば売却してどうこうというようなことは、一種の赤字をやることで、いわば日本銀行で赤字公債を出したと同じことになるのでございまして、さようなことは全然避けなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  47. 本間俊一

    本間委員 大蔵大臣の御答弁によりますと、個々の企業のコストを下げて、輸出を増進する可能性を増大したい。これも私はもちろん正しいと思うのでございます。なるほど大蔵大臣の言われるように、特需の関係がございますから、国際収支は今のところは心配ありません。赤信号は出ておりませんが、やはり先ほど大蔵大臣も申されました通り、見通しとしてはあくまでも先細りでございますから、これはよほど今からそのつもりで準備をいたしませんと、えらいことになりはせぬかということを私ははなはだおそれるのでございます。従いまして、国際収支の関係から見れば、特需にささえられておりますから心配はありませんが、やはり日本の貿易を促進する、正常な国際収支の改善をはかるという建前から申しますならば、個々のコストの引下げ、それももちろん大事でありますが、それよりも大事なのは、やはり割高の物価水準そのものを下げる、そうしてこの円の実勢を強くするという方向にどうしても私は行かなければならぬと考えるのでございます。従いまして、この予算が終りますれば、二十九年度の予算編成にも着手せられることと思いますが、日本の割高の物価水準を下げる、そうして日本の円の実勢を向上させるという方向で、金融政策をもう一ぺん見直して、是正すべきものは大いに是正して、その方向でひとつ進んでいただきたいと思うのでございます。信用政策の調整をするという構想を明らかにせられたのでありますが、どうもその辺が少しあいまいでございまするので、今後の財政金融政策に対するお考えとあわせて、もう一度御答弁をお願いいたします。
  48. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先刻言葉が足りませんでございましたが、仰せのごとくに、私ども日本の物価水準を国際水準に近づけることにし、またできるならば、それよりも下まわるところまでぜひ持つて参りたい。かような考えておる次第でございます。従つて今後の財政金融の諸施策につきましても、もちろん日本の通貨の信用を高めつつ、これらの財政金融政策についてあやまちなきを期したい。言葉をかえて申しますると、少くともインフレその他に持つて行くようなことは、いかなる場合にでもこれを避けたい。従つて財政規模はやや縮小する方向へ持つて参りたい。金融につきましては、信用の濫に陥らざるよう、特にこの点の調整をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  49. 本間俊一

    本間委員 まだ十分満足も行かないのでありますが、時間だということでありますから、これで打切りたいと思いますが、今後の金融政策を担当される大蔵大臣の責任は非常に重大でございますから、日本の割高の物価を引下げ、そうして円を強化して行くという方面から、どうぞもう一ぺん今までの政策を見直ししていただきたいということを、私は強く要望申し上げまして、私の質問を一応打切ることにいたします。
  50. 尾崎末吉

  51. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 私は最初に過般わが西日本を襲いました風水害に対しまして、その対策を急いでおる次第でありますが、政府のこれに対しまする対策はどこまで整つて来ておるか。御承知の通りわが党を初め五党連合対策委員会をつくりまして、重要事項につきましては、各党の意見が大体一致いたしまして、たとえば営農資金の問題、あるいは麦の無制限買上げの問題、農業共済金の即時概算払いの方法、あるいは農業共済の対象外となつておる作物についての特別措置の方法、あるいは農家の飯麦及び種子の確保に関する措置、また災害対策予算費の支出や、つなぎ資金の特別措置、被害地の平衡交付金の増額の問題、その他水産、石炭等に関しましての処置等についても、各党共同調査と同様に調査を進めまして、すでに政府に対しまして、これがすみやかなる対策の実施を要望しておる次第であります。御承知の通り、災害に対しまする処置は、もちろん慎重を期さなければならぬ面も、過去の経験に顧みまして、多々あるのでありますが、しかしながら民心の安定を期する上からも、すみやかにこれらに対しまする政府の処置を要望しておる次第であります。すでに相当の日時を経過しております今日、予算の審議にあたりまして、これらに対しまする政府の対策が明示されていないということは、私どもとしてははなはだ遺憾に存じておるのであります。どうかこの機会にただいままでのところだけでもけつこうでありますから、処置の概略につきまして、政府の所信及び大体内定した点等もありましたら、すみやかに御説明を願つて、民生の安定に一日も一刻も早く資したい、かように存ずるのであります。いかようになつておりますか、これをまず伺つておきたい。
  52. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 西日本の災害に対しましては、まつたく御同情にたえません。私どもも目下いろいろ調査を進めておりまして、資料もいろいろ集まつておるのでございますので、これらについて目下検討をいたしておりますが、しかし政府の支払いで支払うべきものにつきましては、急いでこれを支払うよう、それぞれ示達してございまするし、なおこれらの数字をとりまとめ、検討が終りまして、資金の支払いを妨げるようではと存じまして、本日本院へ提出いたしまする二十八年七月分の暫定予算のうちに、特にこの災害対策費十五億円を増額いたして、誤りなきを期しておる次第でございます。
  53. 内田信也

    ○内田国務大臣 葉梨委員のお尋ねでございましたが、西日本の風水害につきましては、極力その実相をつかむことに努力いたしまして、県庁の報告また農林省調査部の報告と多少食い違つておるところがありますので、本省から四班にわかれて調査隊を現地に派遣しまして、鋭意その実情をつかむことに努力しておりますので、五党のお申合せの条項に準拠いたしまして、また先般の凍霜害の実績もありますので、凍霜害対策にも準拠して計数の整理中でございます。一日も早くその実現を期したいと努力しております。  なおお尋ねの飯麦、すなわち食糧用の麦は貸与することにしております。
  54. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 災害の対策処置につきましては申し上げるまでもなく、いろいろの慎重調査を要する事項もあることは、過去の実績にかんがみまして明瞭であります。とんだ思い違いの、予算をたくさんとりたいがために、災害にかこつけて災害があつたごとく見せかけるがごとき過去においての不祥なこともあつたのでありますから、当局は慎重を期しておられる、こういうことは当然想像つきますし、責任上しかるべきことであろうと思うのであります。しかしくれぐれも先ほど申し上げましたように、かような処置は急速を要することでありますし、必要でありますので、暫定予算の提出にあたつて十五億をさしあたり組まれた、なお詳細の事態が判明しますれば、これに対しましては、やはり一応組んだ予算外にもさらにまた考慮されてその適切を期せられるということであろうと思うのでありますが、それもできる限りすみやかに御処置を願いたいと思うのであります。  風水害に対しましての質疑はその程度といたしまして、私は次に人口問題につきまして、簡単にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。土曜日の経済審議庁の説明資料によりますると、二十七年度におきまするわが国の人口の増加は百二十万、二十八年度の増加見通しは百十万という、これは見通しでありましようが説明でありまして、約十万の減少というような見通しを発表しておられるのであります。もちろんこれは見通しでありますから、どこまでも見通しとして考うべきことであろうかとは思うのでありますが、しかしこれは年に十万減つたとしましても、大体百万前後の人口の増加は、年々わが国においてはあるものと思う。いかに産児制限の徹底がありましても、これがために人口の増加が少しもないようなことになるということについては、われわれは今考え得ないと思うのであります。国内における人口に対する処置と端的に申し上げますと、農村などではこれを二、三男対策と申しておりますが、人口の増加に対しましての対策は、非常にこれはなおざりにすることのできない問題であります。もちろん産児制限法を施行したり、あるいは国内においてこの人口を養い得るように、先ほど来通産大臣の言われる輸出第一主義をもつて、輸出に必要な材料の輸入を第一として行くというようなことで、国内における工賃かせぎという形において人口を養う方策等もとられるでありましようし、さらにまた先般本会議において農林大臣から説明がありました、いわゆる食糧増産対策を徹底せしめて行くことによつて、人口の増加に対しても対応して行くというような方法もありましよう。いずれも必要なことではありますが、しかしながら私はこの際わが国の人口のはけ口を、海外に積極的に求める方法はないだろうかということに対して、さらに検討することが必要じやないのか、かように考えるのであります。ソ連の東亜における終局の目的は、日本の人的資源をねらつているのだというようなことも、よく世間で言われているのでありますが、わが国の人的資源というものは、これはじやまに扱うべきではなくして、これをむしろ貴重なものとしてわれわれは扱つて行きたい。そうしてわれわれの民族が消極的な人口対策をもつて進むのではなく、積極的な対策を講じて行くようにしたい。たとえば産児制限のごときはもちろんさしあたつての対策としてやむを得ざる対策であろうし、また社会政策から見てこれのある程度の施行ということは、考え得るのでありますけれども、しかしながらフランス等の例を見ましても詳しく申し上げるまでもなく、その民族の衰微ということに対しまして、この消極的な人口対策ということは非常に考えなくちやならないのじやないか、むしろ積極的な人口対策を講じて行くべきじやないか、こういうふうに私は考えるのであります。もちろん現在の事態に対処しましての対策としましては、それは現在やつておりますようなやり方も、一応もつともでありますけれども、さらに進んで私は海外に向つてわが人口のはけ口を求めるというような点について、政府は努力をすべきではなかろうか、しばしば自由国家群の外電の伝えるところによりますると、未開発地域に対しまする開発の助成ということをいわれております。これは技術的に資金的に助成するということが主であるようであります。しかしながらわが国の近く、ことに太平洋の中にはニユーギニアを初めとして人口稀薄な、いわゆる開発せんがためには人的資源を第一に必要とする広汎な地域がある、これは申し上げるまでもないことでありまして、かつて戦前におきましては、人種的にこれを封鎖しておつたというようなことまでいわれた地域が、非常に広汎にわたつてあることは事実であります。わが国は今日いわゆる帝国主義を捨て、侵略主義を捨てて、そうした自由国家群の仲間に入つた。そうして世界の平和と幸福に寄与して行こう、人類の平和と幸福に寄与して行こうという建前をとつておるのでありますから、この建前のもとに、こういう心がけの国民をそれらの地域に送つて、先進諸国の資本に加うるに、わが国の過剰人口、人的資源をもつてこれに協力をするという対策をとつて行くべきではないかとわれわれは思うのであります。これらに対しまして、政府は、もちろん国際的の諸環境に対しまする情勢にもよりましようけれども、しかしその状況よろしきをはかつて、積極的に人口のはけ口をこれらの地方に求めるために、自由国家群の了解を求めるということに努力する、またむしろ端的に言えば、日本民族のはけ口を、未開発地域のニユーギニアその他の人口まれなる地域に向つて求める、そして人的協力をするということを明らかにして、各国家群の了解を得るように努めるという意思がないかどうか、私はこういう施策は必要なのではないか、時至らばまことにけつこうなことであると思うのだが、政府はそれに対しましてどういうお考えを持つているか、御答弁願いたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話の点は、私もその通りだと考えております。ただ日本は領土が狭いのに人口が多い、何かはけ口を求めてやらなければならぬということは、各国ともに一応言うのでありますが、さてそれでは自分のところに引受けようという国は非常に少いのであります。今度国会にも法案を出しておりまするが、今まで移民関係の事項を処理するところがなかつたのでありますけれども、今度法案が承認されれば外務省内に海外移住局というのを設けまして、これで専門的に研究したい、またそれに付随しまして、民間有識者を集めた何かの形の委員会のようなものをつくりまして、そこで知識を集めてやりたい、元来移民というとブラジルとか、アルゼンチンとか一概に言つておりますが、それだけでなくて、広くいかなる場所でも行けるところは行きたいと考えております。ただ、おつしやいましたように東亜におきましてはいろいろまだ誤解もある点がありまするから、そういう面は十分考慮しなければならぬと思いまするが、積極的にこの事業は進めて行きたい、こう私えております。
  56. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 詳細は他の機会に譲りまして、次の問題に入りたいと思います。  終戦後いずれの内閣でも唱えて参つたことでありますが、特にわが党内閣におきましては、外資の導入を標榜しまして、外資導入に対しましては特段の努力を払つて来たように考えられるのであります。ところでその外資の導入の状況はどうかということを見ておりますと、この外資の導入の状況については、私は必ずしも満足すべき状況になつていないというように考えるのであります。現在民間資本の導入は相当に緒につきつつあるようでありますけれども、これもまだ盛んに行われたわけでもなし、さらにまた政府関係の政府機関による借款というものは、まだ成立を見てない。火力発電への資金あるいは水源地の電源開発に対しまする資金というようなものが、あるいは輸出入銀行を通じて導入されるのじやないかということがしきりに伝えられておつたところが、最近になつて来まして、これが世界銀行を通じて来るのじやないかというような変化が伝えられている。これはアメリカそのものの日本に対しまする資金援助の方針に、あるいは変更を来したのではないかというような感じもする。すなわち輸出入銀行でなく世界銀行を通じて行おうとするところに、私はアメリカが政府機関による投資を行うよりも、むしろ民間投資に重点を置こうとする傾向があるのではないかというようにも思われるのでありまして、かりにさようなことになつて参りますと、私は在来の外資の導入の方針に対しまして、このままでいいのかしら、基本方針をこのままにしておいてよろしいのかどうかという点に、非常に危惧の念を持つてつておるのであります。これに対しまするはつきりとした政府の基本方針を明示していただければ、私はたいへんけつこうだと思います。  なおまた最近世間に非常にやかましくなつて参りました企業の経営支配権の問題であります。これに対しましても、政府はどういう基本対策をとつておるか、たとえばこれらの認可の判定をする場合に、民族主義を建前にして行くのか、あるいはまた国際主義で行くのか、こういう問題は私は外資の導入の方針としての、今後のわが国の経済の建て方について非常な大きなわかれ道になるのではないか、かように思う。インドやパキスタン等におきましては、最近非常に外資の導入に対しまして民族主義的な建前をとるような傾向が見えているということ、また逆にカナダ等におきましては非常にオープンな考えで、今までの繁栄はアメリカの資本を使つたために非常に発達したのだというようなことで、これらは非常にオープンに歓迎されているということを言われておるのでありますが、ちよつと見には、国際的にオープンにこれを取扱うということが、たいへんいいように見えると同時に、反面また人種的偏見というような観念を考えてみますると、人種的偏見はもちろん持ちたくはないのでありますけれども、どうしてもそういう点が国民感情として、民族感情として支配をして来るようになりはしないか、これらの点を明らかにしてないと、非常に問題が複雑になるのではないか、日米通商航海条約の制限規定等によつてみましても、これらはなかなか重大な問題なつて行くのではないか、民間資本といいますか、たとえば滞留円の投資から見ましても、これの資本投資が三年間は制限があるが、その三年後においては規定がないというようなことで、かりにこれらがこのまま行われるということになりますと、企業経営権の支配は、公共事業はもちろん除外になりますが、一般民間事業におきましては、ほとんど逃げられない運命にならないとも限らないというような憂いも非常にあるのであります。しかしそれらも民族主義をとるか、国際主義をとるかという、この大きな建前をはつきりと判別するということになると、問題はすらつと解決すると思う。私は必ずしも民族主義をとれということを強調するのではないのでありまして、外資の導入に対しまして民族主義を強調するということになりますと、これは非常に阻害になる。進歩が遅れるというような点は当然考えられるのでありまして、でき得るならば国際主義をとりたいと思うのでありまするけれども、しかしこれはここに非常にデリケートな問題が存在して来る。たとえば中共におきましても、今日では非常に高調な民族主義によりまして処理されておることは申し上げるまでもないのでありまするけれども、今から三十年ばかり前に私どもが支那に研究に派遣された時分のことを考えますと、その時分には識者はむしろ国際主義を唱道しておつた。そうしていわくわれわれの民族がやがて立ち直つて、政治力が強くなれば心配はないのだということを、しばしば大陸の先覚者は言つておりましたけれども、今日ではその通りではないかというように考えられる。しかし日本ははたしてその行き方を踏襲してよろしいかどうかということについては、私ども判断に非常に迷うのであります。政府はこれらに対しまして、どういう見解をとつて対処せられようとしておるのであるか、この際にできるならば総理大臣から大方針を御明示願つたならば、まことにありがたいと思います。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 外資導入は、今次大戦後の日本経済自立の上から非常に大事だと考え、二、三年来米国と交渉をいたしております。その交渉の詳細その他につきましては、外務大臣からお答えいたした方が正確だと思いますから、外務大臣からお答えいたします。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろの点がありましたが、まず輸出入銀行の問題でございますが、これはお話のような傾向が多分に見られるのでありまして、つまり漸次その仕事は縮小して行くべき性質のものであるというようなことが、アメリカの政府部内にも非常に多いのであります。今度のような種類の海外投資は、むしろ世界銀行でやるべきものだというような議論でありまして、それがだんだん強くなつて来まして、いわば切りかえられたようなわけであります。私聞いておりますところでは、アメリカ国会等の中でも、将来だんだんこの輸出入銀行はむしろ縮小の傾向に向うような結論に達しておるようであります。しかし輸出入銀行には、それ自体の仕事があるようでありまするから、その方面を通じてのものは、たとえば綿花借款のようなものは、あるいは今後ずつとあり得るかもしれません。いずれにしましても外資導入という点につきましては、今総理のお話のように、できるだけ努力をしなければならぬわけであります。それにつきましては、お話のように国際主義とか民族主義とかいうように、二つにはつきり割切れない部分がずいぶんあるだろうと思います。どつちか極端の面部をとれば、そういうことになりますが、しかし私はたとえば国際連合の精神であるとか、あるいは集団安全保障の理念であるとかいうことをだんだん押し進めて見れば、どちらかと言えば国際主義的な考え方を持つてつてさしつかえないものだろうと考えております。また今の中国のお話のように、初めは外国資本がずいぶん独占的にやつておりましても、国内がだんだん強くなれば、その力が衰えて来て、だんだん中国の方に仕事が移つて参りますことは、戦前にはつきり事実が示しておるのであります。そうしてまたカナダというような、アメリカとほとんど同文同種とでもいうべき国と、東亜日本であるとかその他の国とは、これまたどうしてもけじめがあります。それがつまり外資導入のためにはできるだけ制限のないことが望ましい、しかしどうしてもある種の制限は置かなければならぬというので、日米通商航海条約の中の制限事項になりましたり、あるいは国内の蓄積円の使用について、三年間制限をするとかいうような制限事項が出たわけであります。蓄積円につきましても三年間に資本の再評価等ができるし、またこれを促進させるにも役立つというので、こういう制限を置いたわけでありまするが、われわれとしましては、できるだけ手を広げて外資を導入しても、おそらく日本の産業が外国資本で壟断されるというようなことはないし、またこれは十分防ぎ得るものと考えておりまして、一定の制限のもとには、これを歓迎しようという立場をとつております。その点は東亜の諸国とある点で違う点がありまするが、民族意識と申しますか、独立意識が今非常に強いのと、今まで一つの国に植民地化されて、それに対する反駁が非常に強いのでありますから、日本とまた事情を異にしますので、東亜の地域よりも、もつと進んだ国際主義的な考えを、われわれは持つべきである。けれどもそうかといつてカナダのように全然何もしないでもさしつかえないというところまでは、まだ行つておらないという、間のような立場をとつておるような次第であります。
  59. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 けじめをつけることは、なかなかむずかしい問題と思います。これは政府においても今後特に力点を置き、重点的に考えて早く方向をおきめ願うように希望いたしたいと思います。なお外資の導入状況を見てみますると、外貨による導入と技術による導入、この二つにわかれておる状態で、むしろ技術援助の方が非常に多いように私どもは見ておりますが、七割以上、これは私どもの換算率でありますが、現在技術に対する支払対価が私は大体年六分と換算してみたのでありまするけれども、実際の金で入つて来たものと合して約三億ドル、私どもの計算ではそうなるので、政府の計算と多少食い違うかもしれませんが、そのうち二億三千万ドル近くのものは、技術援助の無体財産の外資の導入になつておるわけでありまして、この技術の導入によつて、かなりの民間産業が今日支配を受けるような傾向に至りつつある。これはもちろん戦時中の空白を補うという意見からしまして、また急いで輸出対策を立てるという意味からしましても、これは無理からぬことではあるかもしれません。しかしこれにつきましてやすきにつくという憂いが非常にあるのじやないか。民間産業はいかにも外国の進んだといわれる技術をそのまま早く導入して、抜けがけをしようというような気分が多分に現われているようにも考える。国内における科学の進歩が空白であつたというのに対しては、これはもちろんそこにやむを得ざる理由が存在するのでありましようけれども、しかしながらこれがわが国の産業企業家をして安易な気持に走らせるのじやないか。また国家としましても、国策としてこれらの点について大いに考えるべきじやないか。私は、外資審議会の判定について、この際小言を申し上げようというような意思なのではありません。この判定の方法については、いつどういう方法をとつてもおのずから苦情は出るものであります。ただ、できる限りこの審議会の判定というものを正確なるものに持つて行くことに努力することは、これは常に心がけなければならぬことであるが、さらに基本的な問題としましては、技術を導入するとともに、他面国内における科学技術に対して反省をしてみる必要があるのじやないか。この点につきまして、ちようど私が政府にお伺いをして今後の国策の決定をしていただきたいと思つているときに、たまたま昨日の朝日新聞を見ますると、その学芸欄に、日本学術会議の会員であります藤岡由夫という人の論文が掲載されております。これには、明らかに、わが国の戦後におきまするところの科学技術陣に対しまして欠陥を指摘しております。これは、その一部でありまする理化学研究所の問題を取上げて、ここに出ておりますが、日本の理化学の研究の中心体をなしておりました理化学研究所が、戦後においてその重要な設備を占領軍から一部取去られた。その後やはり占領中と同じように、ほとんど放擲された状態になつておる。今日においてはこれは株式組織等に変更しまして、民間の応援を得て、わずかにその研究を続けておるという非常に貧弱な状態である。これに反して、日本の理化学研究所と匹敵するような役割をしておつたドイツの研究所は、戦後におきましては、西独政府がこれに半額の援助を与えて、非常な勢いをもつてこの活動を促した。これによつて西独の復興ということは非常に見るべきものがあり、科学的に、技術の上からいつて、非常な進歩をしておるということを藤岡氏は記載しております。私どもが戦後の日本再建の方策として考えましたことは、終戦後において、われわれは戦前及び戦時中における政治家としての反省をしなければならぬ。どういう点を反省をすべきかといえば、日本の再建をして行く上においてのこの反省の第一に目をつけるべきところは、科学者の研究は、これは科学者も悪い点があつたかもしれませんが、また研究室にとどまつてつた政治家はこれらの研究に対しましてあまりに無関心過ぎた。政治家の役目は、この科学的研究に対しまして社会性を持たせることに努力しなければならない。すなわち、これを実際に応用するようにして遅れているところを取返し、また進んで獲得すべき天地を獲得しなければならぬということは、一に科学に対しまするわれわれの真剣な気持を、科学者とともに——科学者は研究の完成したものをどんどん発表する。この研究の成果に対しまして、政治家は、これに社会性を持たせることに努める。すなわち、政府がこれを取上げて、各種の施策に行つて行くということに努力をしなければならない。これが非常に緊要なことだということを私ども考えまして、終戦後からこれらのことを提唱して参りました。しかもこの日本のかんじんなる理化学研究所ですらかような状態になつている。そうして一面外資導入に名をかりまして技術の導入をして、安易なる考えにふけつているような憂いがある。かようなことはまことに遺憾なことである。今からでもおそくはない、これをただちに改めたい、かように私は考えるのでありますが、これらに対しまして政府はいかなる御処置をお考えになつておられるか、お伺いしたいと思います。
  60. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 外資導入につきましては、第一に国際収支の改善に役立つこと、第二に日本産業の合理化に役立つこと、第三に日本技術の進歩に役立つこと、こういう大体の目安を置きまして、外資審議会で個々の場合についてこれを検討しておるのでございます。今お示しになつた数字については、私ちよつと今材料を持つておりませんから、お示しのごとくであるかどうか、その点は申し上げかねますが、仰せなつた御趣意はまつたく同感に存ずるのでございます。  それから今お話にありましたところの、科学者の研究を今後社会化し、実際化するということについては、まつたく御同感でございまするけれども、二十八年度の予算はもうすでに出しておりまするから、二十九年度等の予算におきましては、これらの点についても十分考慮いたしたいと考えておる次第でございます。
  61. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 二十九年度の予算に、科学技術の振興に対する予算を組むつもりだという大蔵大臣の御言明は、これはまことに当を得たものと思いまして、ぜひ真剣にこれをお考えを願いたい。同時に私は政府にお伺いしておきたいのでありますが、国内におきましてのこの研究について、第一次大戦の前後におきまするわが国の企業家はもちろんでありまするし、政府もそうであつたと記憶しておりまするが、それぞれの産業について、世界の先進国に対してわが国は若い技術者を送つて、それらの技術者によつて、よりよき進歩発展をはからんがためのヒントを世界に求めたということは明瞭な事実であります。しかし今回の終戦によりましてのこの空白は、国民全部がお互いにみなほとんど自失状態にあつた時代が長いのでありますから、無理からぬことであると思うのでございますけれども、私は、わが国の科学技術の推進と進歩のためのヒントを世界に得べく、進んでこれらの若い科学者を世界に派遣することが肝要だと思う。在来見ておりますと、私はよく統計をつかんでおるわけではありませんから、断定は下せないわけでありますけれども、ただ新聞紙等を通じて見ておりますると、いかにも、それぞれの企業の代表者や財界の代表者とか、あるいは政界の代表者とか、おもなる人々が海外視察に出かけられるようでありますけれども、その人たちは、総括的に見て来られるという点においては、非常に効果があると思うけれども、さらに掘り下げて、いかにせばより科学的にわが国の水準を上げ得るかということについて、ほんとうにつかんで歩く人々を派遣するということが、非常に必要なことじやないかと私は思う。これは工業技術に対してのみ申すのではなくて、日本のすべての産業、ことに農業等におきましても、これらの点に考慮を払うことが非常に肝要なことじやないか。今さら私が説くまでもなく、皆さん御承知のことと思うのでありますが、かつてドイツがじやがいもをあれだけの世界の食糧にまで仕上げたということの陰には、ドイツ政府の異常な努力が払われたという事実がある。コロンブスが持つてつたじやがいもは、単にこれは花を観賞するにすぎなかつた。それが澱粉の含有ということを考えてから、これの原種を原産地のチリーの各地に百人以上もの技術者を派遣してあさつて、これを持ち帰つて改良をしたことによつて、今日じやがいもが、世界の食糧に寄与しておるということは、これは明らかな事実であります。日本で今何が必要か。工業技術ばかりでなく、この植物の面等におきましても、いわゆる植物のハンターと申しますか、世界に向つてこれらの品種を日本に持ち帰るための技術員を派遣するということは、これは非常に必要な基礎的の国家事業じやないか、私はかように考えるのでありますが、単に工業技術者の派遣問題ばかりでなく、植物の品種に対しましても、政府はこれを派遣する意思があるのかということに対しまして、植物の面については農林大臣がおいでになるんだし、また広く工業技術者の派遣の面につきましては、通産大臣がおりませんけれども、文部大臣あるいは外務大臣等から、これらに対しまして御答弁を願いたいと存じます。
  62. 内田信也

    ○内田国務大臣 お答えいたします。改良につきましては、いろいろくふうしておりまして、西ケ原研究所外八箇所の国営試験場がございます。また各県に試験場を置きまして、これに補助金を与えて、原々種圃、原種圃等の設備をいたして、原種の改良に努めております。また稲作につきましては、国際連合の事業の一部として、FAOに加入いたしまして、稲の改良に努力しております。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 技術者の派遣につきましては、われわれも非常に関心を持つておりまして、今までも——今統計はここにありませんが、ずいぶん大勢出しておるつもりでおります。それから国際会議のようなものにも、ほとんど欠かさず人を出しております。今後ともそのつもりでおりますが、その数は相当多いわけであります。さよう御承知を願います。
  64. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 文部省の関係におきましては、やはり科学振興対策の一つとして、今までも外国に留学すると申しますか、研究員を科学者のうちから派遣しておりますが、相当な費用は計上してあります。しかしむろんまだ非常に不十分であります。また外国における学術上の研究の実際、その資料、そういうものにつきましても、こちらで情報を集めまして、国内の研究所その他に流すというような仕事もいたしておる次第であります。
  65. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 農林大臣に私が伺いましたのは、国内における品種の改良について、農林省がいろいろの施策をやつておられることは、予算にも明示してございますから明らかなことでありますが、ただ私はこれを工業技術と同様に、品種の改良に対しまして海外に原種を求めるべきではないか。この努力が非常に足りないんだ。これはオランダ政府がさとうきびの改良に、先ほど申しましたドイツ政府がじやがいもの改良に、非常な努力を払つてつておられる。わが国の経済植物と申しますか、経済作物の大半は、その原種の原々産地、原産地というものはわが国じやないということを言われている。わが国の原産によるものはおそらくごぼうぐらいじやないか。そのごぼうもわが国のほんとうの原産であるかどうかということは疑問だと言われているくらいである。みなこの原種は海外から来ている。これらの原種の原産地に向つて原々種を取入れて、さらに国内の経済植物の生産を上げることに努力すべきじやないか。この点が非常に劣つている。ほとんど予算において見るところがないじやないか。これは重大な問題だ。私どもはこれをなおざりにするわけには行かないんだということを申し上げたのでありまして、それに対しまして政府はすみやかに施策をお講じになる意思がないかということをお尋ねしたのであります。先ほどお聞き間違いのようであります。国内のことを伺つたのではなく、海外に対してまで改良の手を伸ばさなければ徹底しないんだということを申し上げたのでありますが、これに対しまして農林大臣の御意見を伺いたいと思います。
  66. 内田信也

    ○内田国務大臣 お言葉の通り実行いたしますが、なお気候その他の関係上、日本の内地においてはやれぬ、南洋でなければ改善ができない仕事がありますので、国際連合のFAO等に加入して改良に当つております。お言葉の通り実行いたします。
  67. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 専門家でない農林大臣に、さようなことをつつ込むことはまことに無理でありますから、私はあまりつつ込まないようにしたいのですが、ただ一言申し上げたいことは、もちろん南洋でなければならぬものもある、それはもう申し上げるまでもないことであります。しかしたとえて申し上げますれば、ふなから改良して、きんぎよができる、こいから改良してひごいができる、これは改良の結果であります。非常な努力をして改良すればさようになる。しかしながらいかに改良してもきんぎよなりひごいなりは淡水魚は淡水魚なんです。そこに重要な根本的問題があるのです。それを私は申し上げておるのであります。どうかこれはあなたに答弁を願いたいということが無理なのでありますが、そういう意味で原種を世界に求める努力をして、品種の改良をすべきものだということを頭に置いて善処していただきたい、かように存じます。  委員長、時間はもうありませんか。
  68. 尾崎末吉

    尾崎委員長 この程度でひとつ……。
  69. 葉梨新五郎

    ○葉梨委員 それでは私は時間の都合上、残余の質疑はこれを後の機会に譲りまして、本日はこの程度で私の質問を打切ります。
  70. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時主十八分休憩      —————・—————     午後一時五十三分開議
  71. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。川崎秀二君。
  72. 川崎秀二

    ○川崎委員 岡崎外務大臣に出席をお願いしたい。総理大臣から全部御答弁いただけるならよろしゆうございますがね。
  73. 尾崎末吉

    尾崎委員長 承知しました。督励いたします。
  74. 川崎秀二

    ○川崎委員 来る見込みはありますか。
  75. 尾崎末吉

    尾崎委員長 あります。参議院の方に一時半までといつて貸してありますので、もう見えるはずです。
  76. 川崎秀二

    ○川崎委員 私は予算委員会野党質問の先陣を承らしていただきまして、ここに総理大臣を中心とし関係閣僚に対し、本会議の施政方針演説に対する各派代表の大臣との質疑応答において、なお明白にならなかつた重要問題の論議を一歩前進させまして、特に時局の焦点と合せつつ、その所信をたださんとするものであります。  まずお伺いしたいのは、吉田内閣総理大臣の施政方針演説では、わが国独立後一年を迎えて数箇月を経、独立いよいよその基礎を固めなければならぬ段階にあたつて日本世界政策吉田首相世界平和への具体的意見の吐露が見られなかつたのであります。この点に対してははなはだ遺憾でありまするが、これから総理大臣の所見を伺いたいと思うのであります。  ここ二、三年世界を憂鬱ならしめたものは、申すまでもなく朝鮮動乱とインドシナにおける戦争であります。この暗い二つの事件がいずれもアジアの大陸で行れておつたということについて、われわれアジアにつながりを持つ日本人としては、深い悲しみを持たなければなりません。第二次大戦後における最も深い断面といわなければならぬのであります。しかしながら幸いにして、今日なお前途多難なりとはいえ、朝鮮問題は一応の解決の端緒につきまして、この二つのしこりのうちの一つを取除いたことになつたわけであります。われわれは朝鮮休戦が成立して、三年にわたる悲惨な戦乱が一応停止するに至つたことだけでも、世界平和のためにまことに欣喜にたえないものであります。もとよりソ連と中共の出方は警戒を要するものがあるといたしましても、また特にマレンコフ平和攻勢の意図するものは深い分析を要するものがあるにせよ、ソ連指導者の間に、自由世界指導者との間にあらゆる話合いを進めようとしているのは、これは喜ぶべき現象であつて、もしそれ自由世界の各国の指導者が、自国の社会形態がより共産主義社会よりもすぐれているということの確信と有利性を信ずるならば、これらの交渉の衝には進んで応ずべきものであつて、アイゼンハウアー大統領がこれらに対して決断を下したことは、私は世界平和のために喜ぶべき現象と考えておるのであります。わが国はもとより一昨年のサンフランシスコの会議において自由世界の一員としての針路を決定し、吉田首相も本会議答弁においてしばしば申されましたように、自由国家との協調なくして日本の安全と平和と発展はあり得ない。私もまつたく同感であります。しかしながらここにお伺いしたい第一の点は、朝鮮休戦の新たなる国際情勢に立つて政府はその世界政策並びにアジア政策に対していかなる具体的見解をなすのか。施政方針演説にはこれがうたわれているにもかかわらず、具体的な御明示がない。そこで世界の自由主義国家群と講和条約を結んだが、いまだに共産主義国家群との間の国交の再開が行われておりません。しかるに今日、この朝鮮板門店会談の成功は両陣営の忍従と互譲の交渉の結果であります。板門店は、話し合えば人類の間に解決されない問題はないということをわれわれに教えてくれたもので、私は、わが国はよろしく自由主義国家群との協調に立ちつつ、新たに世界の未締結国との国交を再開し、通商を再開すべきものと思うのであります。これに対して吉田総理大臣はいかなる見解を持たれるか。まず世界平和に対する理念と、施政方針演説のうちにちよつとあつた、アジアの平和建設に努力するという意味の具体化ということは、どういうことであるか、これを含めて御答弁を賜りたいと思うのであります。
  77. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の世界平和に対する根本理念あるいは今後の外交政策と申しましても、これはいまさら朝鮮休戦なつたから、ならないからといつて、私の根本理念に何ら異なるところはない。本会議において申している通りであります。すにわち御指摘があつたように、講和条約の条項にも明記してある通り、自由国家と共同して世界平和に貢献する、これが日本の根本理念であり、また外交政策の基調といたすべきものであると確信をいたしておるのであります。共産主義国に対しての働きかけがないということでありますが、これも私は申しております。イデオロギーの相違いかんにかかわらず、もし経済あるいに外交等の展開ができるものならば、喜んで展開する。しかしながらそのために日本治安を脅かすような場合においては、これは考えざるを得ないのでありますが、単に国交の回復、あるいは善隣関係、これはいかなる場合においても、政府として隣国とは善隣関係に入り、世界平和の達成についてはあくまでも貢献したい。これが根本理念であり、外交の基調といたしておるのであります。
  78. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま吉田総理大臣答弁は、本会議で伺つたことを少しく強めて申されただけで、根本趣旨においては一歩も出ておらないと思うのであります。朝鮮休戦会談が成立をしても、根本方針に変化はないと言われる。根本方針に変化はないということは、自由主義諸国との国交をいよいよあたためて行くという根本方針に変化はないのであつて、従来二つの世界の冷たい対立といわれて、どうも話合いができなかつたというような各国に対して、今日の朝鮮休戦会談は、話合いのできる一つの基礎を世界に投げかけておると私は思うのであります。この点についての総理大臣の御答弁を私は求めておるのでありますが、さらに論旨を進めまして、私の申し上げたいのは、日本独立後すでに満一年を経過しておるということであります。小国といえども、戦前の長い伝統を持つておる国家が独立して、確固とした世界政策、外交政策を持たなければならぬのは当然であります。確かに外交は相手があることだから、こちらの方針通りには行かない。こうおつしやるお気持は、私はよくわかる。これは子供でもわかることですが、しかし当然こちらの方針というものがなければならぬ。われわれが吉田総理大臣の外交方針を見ておると、どうも日本の意思というものがなくて、どこかの国から制約されて、たとえば共産主義国家との国交再開についても、切り出すことができないような状態に置かれておるのではないかということを、私は憂慮するのであります。外交上には一定のプランがなければならぬ。自主外交というものがなければならぬ。ましてや今日独立後一年を経過して、自主外交は何よりも必要であろうと私は思う。私どもは相手があればこそ、一年半前にこの話合いに乗らない国に対しては、一応除外しなければならぬというので、多数講和に賛成したものである。しかしこれらの国家と交流して東西文明を融合し、世界の恒久平和に貢献しようというのは日本人全体の願望であります。まぎれもない願望だと思う。すべての国家に対して日本はその窓をあけなければならぬと思う。イギリスの指導者チヤーチルは、平和の機会はいかなるささいなものでもつかまなければならぬ、とらえなければならぬといつて、今度の朝鮮休戦会談の裏での原動力になつたのは、私はイギリスであるとさえ思う。そういう外交政策が必要であります。従つて一時にもせよソ連が合理的立場に立つたことは歓迎すべきでありますから、この際日本は何らかの外交折衝に乗り出すべきではないかということをお尋ねいたしているのでございます。
  79. 吉田茂

    吉田国務大臣 非常に雄大な外交政策を承つてまことに参考になるのでありますが、しかしながら私の考える外交政策の基調はただいま申した通り。しかして何か手を打つべしといつたところで、お話の通り相手があることでありますから、相手の出ようを考えなければならぬ。ただいまのところ相手から何とも申して参つておりません。申し加えますが、アメリカのおさしずは何もまだございませんからさよう御承知を願いたい。
  80. 川崎秀二

    ○川崎委員 総理大臣、今日は少し腹を割つてお話を願いたいと思う。私は施政方針演説などでは総理大臣の持味が出て来ないと思う。演説が下手なのは天下周知の事実です。しかしなかなか座談はうまいし、答弁は味のある御答弁をなさるのでございますから、どうかひとつ最初から怒らずに御答弁を願いたいと思います。  次に朝鮮休戦がたとい大筋を歩いているにせよ、最近の報道における韓国の事態はまことに憂慮すべきものがあります。李承晩大統領朝鮮の統一が達成されないならば、二千万の韓国民はむしろ死を選ぶと絶叫している。まことにその心事悲壮、同情にたえないものがあります。しかしながら北鮮軍捕虜の反共分子を釈放したということはきわめて重大な問題であつて、われわれ隣国としてもこの問題について関心を抱かざるを得ないのであります。われわれは世界平和のためには朝鮮休戦し、また終局的には南北が統一されて国連の管理のもとに自由な選挙が行われて、真に民主的な統一政府ができるということを隣国のために祈つており、また期待しているものでありますが、今日の事態においては、休戦そのものは成立するということをわれわれは一応喜ばなければならない。この捕虜脱出ということはきわめて重大な問題であつて、われわれはこの韓国の事態を対岸の火災視するわけには行きません。吉田首相は、先般須磨彌吉郎氏の韓国の問題について質問があつた際に、きわめて簡単な御答弁でありましたが、今日の韓国の状態について吉田総理大臣はいかにお考えでございましよか。
  81. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、韓国の状態は時々刻々変化するのでありまして、私としては情報といいますか、そういうものにも接しておりますが、とにかく現在朝鮮としては非常な重大時期に際会しておりますし、かつまた米国あるいは国連との間もはなはだ微妙なものがあると思いますので、私の意見を差控えたいと思います。
  82. 川崎秀二

    ○川崎委員 もし朝鮮休戦会談が今日の俘虜釈放問題を契機として多少の紛乱があるにしても、大筋を歩んでいよいよ休戦が決定的なものとなり、朝鮮動乱が終結するといたしますと、アイゼンハウアー大統領は、すでにしてその後においては韓国との間に安全保障条約を結ぶ、こういうことをアメリカの議会においても声明されているようであります。すると韓国と日本との一衣帯水の関係から、韓国とアメリカが安全保障条約を結ぶということは、これはまた重大な関心をわれわれは持たなければならない。その際において、わが国としては、この米韓安全保障条約などというものが結ばれることに、どういうお考えを持つておられるか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  83. 吉田茂

    吉田国務大臣 どういうような安全保障条約が、米韓の間に結ばれるか存じませんが、それによつて朝鮮事態が安定し、また朝鮮復興を助けるものであれば、まことにけつこうなことと思います。
  84. 川崎秀二

    ○川崎委員 韓国の今日の事態もそうでありますが、私のこの際特にお伺いいたしたいことは、東ベルリンに起つた反乱事件であります。これはその規模と性質が、韓国の状態とは異なるものであつたにせよ、民族の独立心と、感情の問題では、われわれに深い警戒と示唆を投げるものがある。私はこれらの事件に共通なものは、占領者ないしは支配者が圧制政治をしたことに対する公然たる爆発であると考えているのであります。それは民族の自尊心と権利とを蹂躪されたがために起つたやむにやまれぬ現象であり、特にこの共産主義の軍隊と鉄の検察機構を持つ東ドイツの状態のうちで起つたベルリンの叛乱は、われわれに驚異の感を抱かせ、ドイツ民族の気慨なお衰えずの感慨を与えるものでありますとともに、われわれはこの事件をぼんやりと考えてはならぬということであります。何かというとそれは、日本の場合においても言えることであつて政府が完全独立の達成について熱情を傾けて国政の運営に当らぬ限り、日本国民の間に次第に鬱然と醸成されつつある不満が、形をかえて爆発する危険なしと私はしないのであります。安全保障条約の改訂も問題でありますが、それよりも早くまずわれわれの最も屈辱的な形においてこうむつているものは行政協定であります。この改訂をなぜすみやかに促進しないのか。岡崎外務大臣がおられないのははなはだ遺憾でありますが、総理大臣はかわつて答弁を願いたい。昨年政府は国会の承認を求むることなく行政協定をアメリカとの間に締結をして、当時ほうはいたる国民の意思を無視して、前史に見ない裁判権譲渡というがごとき、屈辱的協定を締結いたしたのであります。この行政協定第十七条に満足をしている国民はだれ一人として私はないと思う。あるならば吉田さんあなたお一人であります。これがため幾多の悲劇が起つている、埼玉県におけるところの女教員の凌辱事件、あるいは呉におけるところのイギリス兵の暴行事件等、昨年枚挙にいとまないほどの事件が起つているのであつて、現にアメリカ側でもこれは改訂することを約束している。しかるにすでに四月二十八日の改訂期が到来しているのに、昨年以来首相も外相も四月が来れば改訂されると言つてつたのにかかわらず、何ゆえその改訂というものを具体的に迫り、その内容を公表しないのか。私は政府の言うように、アメリカ上院のNATOの批准をいたずらに拱手傍観するにとどまらず、進んでこれが改訂を迫るととともに、秘密外交に堕せず、今後は日本側の訂正要望なるものを公表して、それとともに日本側の外交を進めて行かなければならないと考えるのでありますが、総理大臣はいかにお考えでありますか。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は行政協定をもつて屈辱条約なりとは考えておらないのであります。条約である以上は互いに譲り合つて条約が締結せられるのであつて、その譲つたものだけを見てこれは屈辱なりと言うならば、すべての条約は屈辱といわざるを得ないのであります。また裁判権の問題については、絶えず外務大臣から報告せられた通り、現に米国に対し交渉を続けております。
  86. 川崎秀二

    ○川崎委員 今の御答弁には私は満足できない。なぜならばあの日米行政協定は屈辱行政協定でないという、それならばなぜ改訂する必要がありますか。
  87. 吉田茂

    吉田国務大臣 さらにいい条件において協定を結ばれる機会があるから、さらに一層いい条件でもつて改訂しようとしているのであります。
  88. 川崎秀二

    ○川崎委員 悪い条件のときにはこれは屈辱的でなかつたのですか。
  89. 吉田茂

    吉田国務大臣 話は非常に込み合いますが、先ほど申した通り条約は互譲によつてできるのであつて、互譲したところだけを見て屈辱的と言われるならば、すべての条約は屈辱である。またいい条件でもつて改訂ができるなら、いい条件で改訂するのが当然であると思う。
  90. 川崎秀二

    ○川崎委員 昨年における行政協定の内容について総理大臣自身も不満であつた。譲るべからざりしものを譲つた。互譲精神でなければ協定はできない、条約はできないと言われている。しかしこれはもう過去のことでありますから、とにかく改訂を要望されたゆえんにおいては、従来の日米行政協定ははなはだ吉田総理大臣としても御不満であつた。国会ではいろいろ言われているけれども、すでにしてそのことを認められたものと私は認めまして、行政協定の改訂をすみやかにはかつていただきたいと思うのであります。このようなことをわれわれが申し上げているのは、われわれはいたずらに日米行政協定をとらえまして、あるいは東ドイツに起つた事件が民族的反感である、こういうことをとらえて、反米的な言辞を弄したりあるいは民族感情に訴えるというものではない。今日アメリカに故郷に帰れというような運動を起しているものがあるけれども、われわれはそういうものに組するものではないのであります。国際協調の精神、これを尊重することに人後に落ちるものではない。むしろわれわれは国際連合を強化して、将来自由と平和と民族平等の立場に立つ世界連邦の建設にさえ進まなければならない、そういう理想主義的な立場をとることにおいてわれわれは国際主義を重んずるものであります。しかしながらそのことは、いかに世界の指導国家であるにせよ、アメリカに対して一辺倒的な外交をせよというのではない。秘密外交を守ることに汲々としてその下において国民に満足しろと言うことではないのであります。私は特に、岡崎外務大臣が見えましたが、一体内灘問題にしてもあるいはその他の基地問題にしても、あなたが今まで取扱われたこと、ことに内灘問題におけるあの紛糾状態は一体どこに原因があるのか。私はまずその原因はどこにあるかということを聞きたいと思うのであります。
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろの理由があるように思います。一番の大きな原因は、やはり村民として祖先伝来の土地を使つて、乏しくてもそれで農業なりまた漁業を営んで暮しをして行こう、こういう気持が強いからだろうと思います。
  92. 川崎秀二

    ○川崎委員 そんなものだけではない。日本国民は、安全保障条約を締結してどこかに基地が設けられるだろうということは、どこの村民でもどこの県民でも知つている。自分の土地はだれでも可愛い。従つて反対運動をするのは一応は当然であります。しかし問題はそうじやない。吉田総理大臣の元閣僚であつた林屋何がしというものが、あの石川県に行つて、一時借用だから納得して使用することを賛成してくれと言つてある。村民は初めは一時借用でも反対ではあるけれども、しかし一時借用というならいずれは解除されるだろう、長いことはないだろうということで反対運動ののろしは上げられなかつた。しかるに何ぞや。永久借用じやないか。永久借用と一時借用とは大違いである。そういうでたらめな交渉をし話合いをした林屋先生は、参議院選挙でみごとに落つこつたから、今責任者はどこへ行つたかわからぬけれども、しかしそういうことをさせた外務大臣あるいは総理大臣としての責任はとらなければならぬと思う。林屋前国務大臣と吉田総理大臣は公私ともに非常に親しい仲だそうであります。今や公の方は消えたけれども、しかし前の内閣の責任というものは、第五次吉田内閣としては痛感しなければならない。こういうことを言つているから当然内灘村におけるところの村民の感情というものは爆発する。これは感情問題だけでない。私は当然こういう不合理なやり方をし、詐欺ペテンにかけたところの責任というものは勢いあなたに負つてもらわなければならぬと思うけれども、あなたのこの問題に対する御答弁を承りたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その点につきましては、いろいろこちらの説明も足りなくて、地元に誤解を与えた点も多いと思います。しかしわれわれとしましては初め内灘をきめましたときには、ずつと使用したいという考えでありましたけれども、その当時非常に反対が多いので、これはやむを得ないから四箇月間の一時的な使用にいたして、もしかりに村の人たちの言うような風紀の問題等が大して何もなく、またアメリカの将兵との摩擦等も起らないで、また政府考えております土地や漁業権に対する補償と、これをさらに補うためのいろいろな厚生施設等が満足されるようになれば、あらためて交渉をして、これをさらに続けて行こう、こういうつもりでおつたのであります。
  94. 川崎秀二

    ○川崎委員 重大な問題がまだ幾多ありますので、質問を続けたいと思います。  日米行政協定と関連して、国際連合軍との行政協定は、昨年の六月以来、重要なプログラムとなつてわれわれの前に展開されておつた。しかしながらこれは、こちらの主張も大分ありまして、ことに岡崎外務大臣は、日米行政協定においては、あつさり一夜において裁判権を譲つたけれども、今度はどういうものか、国民のしり押しもあつて、非常な強腰で交渉をしたために、一年間もたもたして、とうとうきまらなかつた。これは一体どうするつもりなのか。また朝鮮動乱が解決すれば、国連軍との行政協定というものは固執する必要はなくなりはしないか。駐留の基礎になつた例の吉田、アチソン交換公文の基礎というものは、消滅するわけでありますから、その際はどういうことになるか伺いたいと思います。
  95. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 行政協定のときも、裁判管轄権につきましては、一番の難問でありまして、とても一夜にきまつたわけではなくて、ほとんど交渉の全部の日がこれに費されておつたよう事情であります。そして御承知のように、あの中に留保条件がありますように、われわれも一年たつたら改訂を協議するということにいたしておつたわけであります。国際連合軍との話合いは、こちらとしては、もつと新しい形にいたしたいと思つておりますが、先方は、同じく朝鮮で働いておる人間であるから、アメリカの国連軍関係の将兵と同等の取扱いをしてくれということを強く言つて譲らないわけでありまして、そのため交渉がまとまらず、今日に来たわけであります。ところがいわゆるNATOの協定に対しては、上院の外交委員会は全員一致でこれを可決して、本会議に上程する準備をいたしておりまして、われわれは今度のアメリカの本会議で通過することを大いに期待しておるわけであります。これが成立しますれば、国際連合軍に対する裁判管轄権も、アメリカ駐留軍と同じものにできるわけでありますから、問題は解決いたします。そこで今度は朝鮮の国連軍というものが、将来引揚げることになりますれば、当然国内における国連軍の駐屯はいらなくなるわけでありますから、そのときは国連軍との協定というものは必要がなくなるわけであります。
  96. 川崎秀二

    ○川崎委員 日米行政協定の裁判管轄権の問題について、一夜にして譲つたということをわれわれが指摘をいたしましたに対して、この問題については相当長い間やつたのだということですが、しかし譲るときは一夜で譲つたのだ。私もちやんと記憶があります。  そこでこれは別の問題でありますが、太平洋条約の問題につきましては、先般須磨彌吉郎氏が国会で論ぜられましたが、この問題について御答弁がなかつたのであります。アジアの自由諸国民の共同防衛をはかるためにも、太平洋条約を締結することがよい、こういう意見がアメリカの下院においても相当強く要望されておるし、またニユージーランド、オーストラリア等においても、これらの問題が深刻に論議の的に上つております。一体これらの問題について、政府はいまだ何らのタツチもないものか。また総理大臣はこの太平洋条約というものをどうお考えでありますか。お伺いいたしたいと思います。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この問題につきましては、正式と申しますか、非公式にしろ、この問題自体についての話合いはまだどこからもありません。しかしいろいろの今おつしやつたような情報はあるわけでありますから、研究はいたしております。そこでこれはまだ実際の形がきまつておりませんが、かりにお互いに兵隊を出し合つて、お互いの防衛を助け合うのだという趣旨でありますと、日本のただいまの組織というものは、そういう協定に応ずるわけに行かないようになつておりますので、この点は別でありますが、たとえばもつとヨーロツパのシユーマン・プランのような、あるいは何かそれに似たような経済的の提携というのなら、これはまた別でありまして、具体的にはわれわれはいろいろ研究しておりますが、話合いがまだ何もありませんから、単に研究の範囲を出でないのであります。
  98. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま私は総理大臣に伺つたのでありますが、外務大臣の方ヘバトンを渡されたようでありますが、総理大臣からも御答弁を願いたいのは、この太平洋条約という問題については、今の派兵の問題等もあつて、いろいろ今日の状態からしては考えられないというようなことも言われておりますが、私は太平洋における諸国は共通の利害と環境があると思うのであります。日本人がアジア大陸に非常な郷愁を感ずるとともに、太平洋においては新しい使命観を感じておる。アジアと太平洋のかけ橋、これが日本の将来の使命であります。いつまでもアメリカの顔色ばかり見ないで、自主外交を発揮してもらいたい。アメリカのさしずはないと言われる。さしずはないけれども、アメリカの顔色を見て、どうもこれはやめた方がよかろうじやないかというようなのが、吉田外交だと私は思うのであります。太平洋条約の問題はさておいても、今日太平洋の諸問題がある。これらに関連して——独立後一周年である。吉田内閣がいつまで続くか知らぬけれども、長期の安定を目ざしてやるならば、当然外交方針においても長期の外交計画というものがなければならぬ。太平洋諸国の総理大臣の会談など行つて、貿易、産業あるいは防衛等に関して、自由に意見を交換するチヤンスをつかんだらどうかと思う。私はこれはぜひ進言したいと思う。吉田内閣総理大臣は、先ほどの答弁の中でも、アメリカのさしずを受けておらぬのだと言う。しかしヨーロツパへ行つてごらんなさい。たいがいあなたのことは、アメリカのぞうり取りだということを言つておる新聞などが多いのであります。もつともイタリアなどへ行くと、吉田総理大臣とイタリアの総理大臣ガスペリは、非常にアメリカのふところへ入つて、うまいことをして、金をよけいとつておることにおいては、なかなか達者なものだという批評もあるほどでありますが、ふところへ入つて大いにやるのもよろしいから、ひとつ太平洋会議とかあるいは太平洋総理大臣会議なるものを主唱して、そうしていろいろな難問題を解決して行くチヤンスをつかまれたらどうかと思うのでありますが、総理大臣はどういう御見解でありますか。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はあまり人の評判、新聞の評判等は気にいたしません。またふところに入らないのが独立であるかもしれず、私はふところにも入らなければ、また自主的にやれという御趣意については、十分賛成いたして自主的にいたします。
  100. 川崎秀二

    ○川崎委員 問題をかえまして、国民の関心の的である防衛問題とMSAの関係についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。吉田総理大臣並びに岡崎外務大臣は、MSA問題については、いまだアメリカと交渉した事実はない、外務大臣は特に、単に事務的研究をしておる段階にすぎない、こういう御答弁であつたと思うのであります。このことに間違いはないでありましようか、総理大臣並びに外務大臣ともに伺いたいと思うのであります。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 間違いがありません。
  102. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 間違いはありませんが、事務的というのはどういう意味ですか、とにかく先方と話をいたしておるということはありません。
  103. 川崎秀二

    ○川崎委員 少し話が違つて来ました。先方と話をしておるということは、つまり折衝をしておる、あるいは交渉しておるということですか。
  104. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ということはありません。
  105. 川崎秀二

    ○川崎委員 よろしゆうございます。交渉はない、それから話合いしても、ただ会つておるだけだ、こういうことですね。そうすると本会議の御答弁と同じでありますが、これほど世間が注目しているにもかかわらず、しかもMSA問題が相当進捗しておるにもかかわらず、これは明らかにごまかされておると思う。施政方針演説の中でも、防衛問題に関する吉田首相の演説は、プリントわずか一下り半、総理大臣、女房の離縁状でも三下り半です。一下り半で防衛問題を片づけて、そうしてその後質問が出ても全然あずかり知らぬ、知らぬ存ぜぬということで済まされるならば、私はそれでよいと思う。しかし今日は違う。世界中のいろいろな報道がある。ニーユスということについては、吉田内閣というものは、新聞に出た記事は知らない、ニユースには責任を持たない、こういうことを言つておられますが、私はこの際この問題については、ぜひともお聞きしておかなければならぬことがあります。  まず岡崎外務大臣に伺いますが、本年一月に外務省の伊関国際協力局長はワシントンに行つて、国防省の者と会つて、その際米国国務省から、この七月から三億ドルから四億ドルの額をMSA援助として受取ることができると言われ、その話合いに乗つておるということの事実がありますが、これは事実でありますかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 一昨日ですが、外務委員会におきまして、伊関局長がその問題について私の横で答弁をいたしております。伊関局長の答弁は、私が前から聞いていたのと同じでありますが、要するにアメリカに行きました当時は、MSAの話は出ましたけれども、まだ具体的の段階でない、今年の初めでありますので、一般的な話を聞いただけであつて、具体的には話は聞いておらぬという答弁であります。
  107. 川崎秀二

    ○川崎委員 具体的な話はなかつた、こう了承してよろしゆうございますね。  それからその次の事項は、去る三月十日、ちようど解散の日だろうと思うのでありますが、国務省の東北アジア局長ヤング氏という人が来られて、外務省の当局に対し、同様の趣旨が繰返されたということでありますが、これは事実でありますかどうか、この点をお伺いしたいと思います
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは私は聞いておりませんから、おそらく事務的な話合いはしたかもしれませんが、私に報告するような性質のものではなかつたと思います。
  109. 川崎秀二

    ○川崎委員 だんだん問題をぼかされておるようでありますが、さらに私はこれだけはどうしても納得ができないのでお尋ねをいたしますが、あなたはいろいろ否定されておりますが。海外からの報道というものはまつたく違う報道も、単なるニユースあるいは解説、論説というものならいざ知らず、ここにこうした歴然たる一つの公的事実というものができて来たのであります。私の手元にもアメリカの下院外交委員会における聴聞会の議事録の抜萃の日本語版がありますが、アメリカ下院外交委員会における議事録の公表によると、アメリカの国防当局並びに相互安全保障本部当局は、五月二十日の下院外交委員会における証言において、相互援助協定の検討がすでに新木駐米大使並びにクラーク極東軍司令官との間に行われ、予備交渉が行われたと公表されておるのである。そうすると岡崎外務大臣が先般からずつと言つている事務的研究、あるいは会つたけれども、ただ話合いだけである。その話をしたというけれども、それには具体的な問題はないのだという、いわゆる事務的研究の段階であるというものと、全然これは矛盾して来ると私は思うのであります。MSA援助の資格となる相互援助協定の検討さえ行つたと外交委員会の議事録にあるに対して、MSA問題に対して一切の折衝がないと言われておるのは、まるでこれは違うじやないか、重大な矛盾じやないか、われわれはどつちを信用していいのですか。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 もし川崎君が日本の外務省の組織を御承知であるならば、あるいはアメリカの軍の組織を御研究なさいますれば、一体日本の駐米大使と日本に駐在する駐留軍の司令官の間にそんな交渉が、政府なり外務省なりを飛び抜けてやれるものであるかどうかということは、すぐおわかりになると思います。これは全然うそであります。
  111. 川崎秀二

    ○川崎委員 今申し上げたことは、新木駐米大使並びにクラーク極東軍司令官との間にやられたということは、私はあるいは言葉を飛ばして申し上げたかしらぬが、そういうような人々も関連をしておるということであります。従つてもちろんワシントンにおるところの新木大使と、こちらに来ておる者との間に話合いが行われたということは、それはおかしいかもしれぬけれども、そういうような人々がすでにこれらの問題について関連をしておつて、検討が行われておるという公表をされておる。それをどう思いますか。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 たとえばクラーク大将でありますが、クラーク大将が、もし私の知らないような非常な下僚の者と話せばともかくも、私なり、あるいは総理大臣なり、あるいはもつと——かりに外務省でも次官とか局長とか、そういう程度の種類の人と話合いをしたということは全然ありません。
  113. 川崎秀二

    ○川崎委員 全然話合いがないのにかかわらず、アメリカの下院の本会議は、一昨々日であるか一億一千五百万ドルの対日援助軍事費というものを可決しているじやないか。話合いもしないのに、こういうことが進んで行くと思いますか。これは常識的に考えてもわかる。われわれはこれをしも事務的研究だというなら、日米両国間に交渉があつて、それが一つの形になつて現われ、下院本会議の可決になつて現われ、議事録として、そうしてすでに折衝が開始をされたという以上、岡崎外務大臣の言うことがもしほんとうであるとすれば、アメリカは一万的にMSAを押しつけて来ておるということになるじやないか。どういうことでありますか。われわれは昨年以来の経過を見て、これを予備折衝であると信ぜざるを得ない。本式の交渉であるかどうかは知らぬ。しかし相当深い話合いが進められておらなければ、こういうことはないと私は思う。今日は世界が縮まり、交通機関も整備され、テレビ、ラジオあらゆる機関を利用して、今日世界にニユースは流れておる。ニユースならかまいませんぞ。ちやんと下院外交委員会の議事録の中に、予備交渉を行つて自衛力を強化するために、われわれはこれを出すのだ、それが日本軍備の前提であるということを言つておるのであります。こういうことがちやんといわれておるのにかかわらず、ここの東京における国会だけでこれを否定する、そういうことではわれわれは納得ができないのでありまして、アメリカの海外政策、特に植民地政策におけるところの巧妙なやり方あるいはその他については、いろいろ批判の問題はあるだろうけれども、言論の自由、報道の自由、これはアメリカの方を私は信用しなければならぬ。元来ならば、日本の外務大臣の言うことを信用してあげたいのだけれども、しかしそうは行かないと思う。下院本会議においてこの予算案というものが可決をされ、そうしてそれまでに予備折衝があつたというこのところが下院外交委員会における議事録に発表されておつて、われわれはあなたの言い分だけを信用するわけには行かぬのでありましてこれはどちらがほんとうであるか、私はぜひともお伺いをしたい。
  114. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 とにかくMSAを受けるか受けないかというような折衝は、まだどこでもいたしておりません。これは確かであります。ただ、しかし、もし川崎君の御質問が、何かやつておるのに隠しておるじやないかということであるならば、われわれは隠すつもりはありません。従いまして折衝が始まりますれば、十分これは報告いたすつもりでおります。     〔「だれかと何かやつたんだろう」と呼ぶ者あり〕
  115. 川崎秀二

    ○川崎委員 いや、だれかと何かやつておるどころではない。下院外交委員会の議事録というものは、本年の三月から六月まで実に二十七回にわたり相互安全保障法(MSA)延長案の聴聞会を開いたが、というふうに書いてあつて、対日援助に対する議事録は千三百ページに及ぶもので、ダレス国務長官、スタツセン相互安全保障本部長官を初め、政府関係官の発言、下院議員との質疑応答が集録されておる。その内容は第一に、両国間に予備折衝が進んでおるということが一つMSA適用前に日米相互援助協定の締結の必要なことが述べられており、かつ日本自衛力が向上すれば米軍は漸次撤退するとかいろいろなことが全面にわたつて言われておるのであります。私が特に今あなたに言つておるのは、予備折衝が行われたことがないというあなたの答弁に対して言つておるのです。どつちかを信用しなければならぬ。あなたの答弁を信用するわけには行かぬと私は思う。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 信用するしないは、これは川崎君の御自由でありますが、ほんとうにないのです。それでたとえばMSAの法案を送つてもらうとかあるいはMSAに関係する各国との協定のすでにできたものを届けてもらうとか、いろいろな説明書があるのですが、そういうものを送つてもらうとか、こういうことをもし予備折衝とするならば、それはそういう資料をもらうことはあります。資料をもらつておることはあります。しかしMSA日本で受けるか受けないかということについての交渉は、予備も本折衝も全然やつておらないということであります。
  117. 川崎秀二

    ○川崎委員 今少しあいまいなことを言われましたが、そういうことは予備折衝である。向うからいろいろな資料をもらつて、それからまた多少これらについての検討をして話合いをしておるということまで認めていいですか。こういうことがあればこれは明らかに予備折衝です。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 MSA日本が受けるか受けないかという問題については、予備的にも本式にも何にもやつておりません。
  119. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうならばこちらが受入れるということを大体話合いの基礎として進めておるからこそ、向うは一億一千五百万ドルというものを計上したのだと私は思う。もしこれがどうしても今事務的研究の段階だ、両方会つているけれども具体的な話合いはない。それならば私はこんな予算を可決をすることはないと思う。これはもうここにおられる予算委員の諸君は、そういうふうに印象されると私は思うのであつて、私は昨年の行政協定の際、日本はこの行政協定を国会にかけなかつた。ところがアメリカでは行政協定の本文を見なければ予算を通過させるわけには行かぬ、日本相互防衛分担金、あの分担金の六百五十億を可決するわけには行かぬ、アメリカの上院外交委員会委員長コナリー氏はそういう発言をして、上院外交委員会はこれを認めて、遂に行政協定の締結までは可決がなかつたことの記憶をしております。今度は攻守ところをかえておる。このMSAに盛られたところの経費というものは、一億一千五百万ドル、わが国防衛問題に関して重大なる関係がある。昭和二十八年度予算とも重大なる関係がある。われわれは当時は少数党であつたから、涙をのんであなた方のやつたことを看過せざるを得なかつた、今日は野党は多数党である。もしこのことが事実であり、あなたは事務研究だと言つておる、向うは予備折衝だと言つておる、予算と重大なる関係があることでありますから、われわれはこれ以上この審議をすることはできないと言つたらどうする。重大な問題である。事務研究なのか、折衝を行つたのかどうかはつきりしてもらいたい。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 何べんも繰返すようですが、MSAを受けるかどうかについて、本式にも予備的にも交渉をいたしたことはまだありません。
  121. 川崎秀二

    ○川崎委員 予備折衝を行つておらないということでは、どうしても私は満足が行かないのであります。何らかの交渉をしておるということを岡崎外務大臣が言わなければ、私はこれではいそうでございますかと満足できない。本会議でないから、次の質問者までしばらく質問を留保してもいい。どうなのです。どうせ化けの皮が現われる。折衝したと言つたらどうです。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 もし予備折衝をしたとしても、私は何ら言つて悪いことはないと思う。してないからないと言うよりほかない。うそをつく必要はない、何も隠す必要はないわけでありますから、あれば言います。ないから言わないのです。     〔(黙つていて文書を送つて来ることはないじやないか」「休憇々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  123. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  124. 川崎秀二

    ○川崎委員 とにかくアメリカにおいては予備折衝がある。そして、今度MSAを受ける場合において——あなたもそのことは言つておるが、相互安全保障を受ける前に協定を結ばなければならぬ。その検討さえも行われおるのですよ。MSAの何らかの話合いがなければこのことは進みますか。アメリカがアメリカの国民から税金をとつて、一億一千五百万ドルを計上しておる。日本がもしこれを何も話合いがないというならば、どうせ次の国会でこの協定をかけなければならぬけれども、そのときに拒否したらどういうことになる。重大な問題が起るのです。現に一九五二年の何月であつたか、インドネシアにおいては外務大臣が国民に断りなしに秘密協定を結んでおつた。秘密協定であるか何か知らぬが、このMSAについて協定を進めておつたということの事実がわかつて、国会で大問題になり、アーマード・スバルジヨとかいう外務大臣は遂に国会の多数によつて罷免されたという事実がある。あなたはそれだけの問題でもなしに、内灘問題もあれば、選挙違反とかいろいろな問題もあるから、いずれ長い命でないかもしれませんけれども、私はなるべく好意を持つて話をしておるのだが、これはどちらがほんとうかそれを聞かしてもらいたい。
  125. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今申した通り交渉しておるならば言つたつてちつとも差支えないものです。またこれについていずれ改進党にも御了解を得なければならぬことも将来あるかもしれない。しかし今はないのです。今は先ほども申した通り、まだいろいろ関連事項があるので、それをただいま検討しておりまして、まだ交渉はいたしておらない。だから何も隠すことはないのですから御了承願います。     〔「議事進行について」と呼ぶ者あり〕
  126. 尾崎末吉

    尾崎委員長 川崎君、発言しますか。
  127. 川崎秀二

    ○川崎委員 議事進行の発言があるのに、何も私をせかさなくてもいいでしよう。質問は山ほどあるからゆつくりやります。
  128. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 議事進行に関して発言いたします。ただいまの外務大臣の御答弁は、川崎委員の質問に対してまことに誠意を欠くものであると思うのであります。というのは、すでにアメリカにおきまして公式に議事録となつておるものに対して、そういう事実がないというのであるならば、外務省としてはその見解を明らかにしなければならぬ。そうするならば、われわれは納得ができる。しかしながらただ単にそういう事実はないといつてこれを逃げるわけに行かないのであります。従いまして外務省としての公式のアメリカの議事録に対する態度が明瞭にせられるまで、しばらく休憩をしていただきたい。しからざればわれわれの納得の行く御答弁を願いたい。休憩動議を提出いたします。
  129. 尾崎末吉

    尾崎委員長 岡崎外務大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。岡崎外務大臣。     〔「動議が未決じやないか」と呼ぶ者あり〕
  130. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちよつとお待ちを願います。——ただいま岡崎外務大臣より発言を求められております。その発言を聞きました後に櫻内君の動議についてお諮りいたしたいと思います。発言を許します。岡崎外務大臣。
  131. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまの川崎君の御疑念も私はよく考えてみてなるほどもつともだと思いますが、こちらとしては今申した通りまだ交渉は予備的にもいたしておらないのです。そこで、それがはたしてアメリカ側の正式発表であるかどうか私知りませんが、いずれにしましても諸君の御納得の行くようにアメリカ側に十分確かめ、必要なる措置をとることにいたします。
  132. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ただいまの外務大臣の御答弁を信用いたしまして、この際動議は撤回をいたします。
  133. 川崎秀二

    ○川崎委員 本人はあまり信用しないのです。(笑声)なぜかといえば、ニユースとか解説ならば私はあまり言いませんよ。とにかくまあ続けましよう。  次に総理大臣にお伺いいたしますが、一昨日の外務委員会であつたか、岡崎外相はMSAを受入れる用意がある、それは条件が整えばというお片づけでありましたが、そういうことになると、当然にわが国防衛計画というものと非常な関連を持つことになります。MSAというものは一年ではない、もつと続くということになれば長期防衛計画というものが必要だと思いますが、この点に関して吉田総理大臣見解をお伺いしたいと思います。
  134. 吉田茂

    吉田国務大臣 MSAについての交渉はないのでありますから、従つて本体がわからないから、本体のわからないものを母体として日本防衛計画を立てることはできません。ゆえに私は日本防衛計画を今日何ら変更する必要を認めない、これははつきり申し上げます。
  135. 川崎秀二

    ○川崎委員 保安庁は元来一年間の防衛費を検討するにあたりましても、必然に次の年の計画も検討し、参酌しなければならぬと思う。なぜならば保安隊装備や施設というものは、一年限りで流動するものは少い。施設や武器にしても相当の年月をもつて生産され、入手され、保存されて行くものと考える。従つて木村保安庁長官はまずこの一、二年の警備計画をどう考えておるか。当然今年だけでなく来年のことも考えなければならぬ。そういうものがありましたら御発表を願いたい。
  136. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいま私の考えでは、保安隊は増員いたさないつもりであります。ただいかにしてこれを強化するかという問題について日夜苦慮いたしております。それは隊員の必要とする訓練の強化、装備充実改善をもつてこれに充てたい、こう考えております。それで新しい計画というものは具体的にはまだ立てておりません。
  137. 川崎秀二

    ○川崎委員 木村保安庁長官に伺いますが、このMSAというものは、具体化して来るとやはり何といつて日本自衛力の増強であつて、アメリカ軍の増強でないことは事実であります。保安隊を増強しなければならぬということになつて行くと思いますが、どうでしようか。
  138. 木村篤太郎

    木村国務大臣 MSAの問題については、私は何ら関知しておりません。ただ私の考えを率直に申し上げますれば、将来、独立国家となつた以上は、みずからの手においてみずからを守るべき体制は整えるべきであろうと考えております。但し、現在の段階においては日本の財政力が許しません。従いまして日本の財政が許し、また国民精神力と申しましようか、国民気持が盛り上つたときに初めて考えらるべき問題とこう考えておる次第であります。
  139. 川崎秀二

    ○川崎委員 将来は当然わが国防衛自分自身の力でやらなければならぬ、こう申されますが、私もそうだろうと思います。よほどの戦乱が起りますれば別でありますが、平素の体形としては自分の国の力で自分を守らなければならぬというお考えには賛成であります。そういうことが理想であるとするならば当然次の年次のことを考えます長期の計画というものがなければならぬ。あなたは財政が許さないからそういうことはできないと言われるが、しからば来年のこと、その次のことを考えずに、一年ぽつきりでことしはことし、来年は財政が許さなければもう何にもやらぬ、こういうことですか。
  140. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま申し上げました通り、現在の情勢におきましてはさような大きな貯蓄を持つことはできませんから、それで隊員は増員いたしません。現在の十一万。ただこれを増強する上において、訓練と装備の拡充強化をもつてこれに充てたい、こう考えて、この方針のもとに今進めておる次第であります。
  141. 川崎秀二

    ○川崎委員 先般新聞紙上に出た保安庁の内局の試案なるものは、これは国会の答弁でもそうですが、木村長官が、将来国内外の情勢を考慮して立案を命じたものという話です。すなわち、先日の須磨彌吉郎君に対する木村長官の答弁によると、将来国内外の治安状況及びわが国警備力の強化を行うことを想定しておるというのでありますが、木村長官は、このMSA問題を発展すれば、長期防衛計画は当然必要と思わないか。私は、わが国自衛体制強化のため、当然計上されるこのMSAの経費なるものは、逐年年次計画をもつて日本自衛体制を強化すべきことが前提となると思うのであります。こういう情勢になつて来れば、木村長官としてはこの点考慮に入れて防衛体制を整備して行かなければならぬと考えますが、この点について長官はどうお考えでしようか。
  142. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。今申し上げました通りMSAについては、私は何ら関知いたしておりませんが、MSAを受入れるということになつて、はたしてその条件がどうなるか、これは疑問であります。万一このMSA日本国民が受入れるということになり、国会でも審議され、あるいはこれを可決されるようなことになりましたら、この方針に基いてわれわれは十分にやらなければならぬ、こう考えております。
  143. 川崎秀二

    ○川崎委員 木村保安庁長官のただいままでの答弁は、先般の反響に驚いて、非常に用心してものを申されておるが、私は木村さんに、ぜひとも正直にお話を願いたいと思うのであります。去る六月九日、福岡の板付飛行場における会見では、陸軍二十万五千、航空部隊千五百三十機、ジエツト機四百六十機という内容を伝えて天下を震駭したことは、これはもう御承知の通りである。しかるにその後事態の波紋に驚いて、あわてて訂正をしてみたり、あるいは再び、男なら新聞記者諸君、対決しようじやないかと言つてみたり、さらにまた吉田総理大臣にたしなめられて調子を合わすということで、あなたの男の節義が立ちますか。私は一体政治家として、どれがほんとうだかわけがわからぬ。私は今日まで、いや今日も、政治家としてならいざ知らず、個人としての木村篤太郎氏に対しては絶大な敬意を払つておる。人格高潔、風貌もまた端正であります。(笑声)われわれは常にあなたに傾倒をしておるものでありますが、その一面、いいところは何か、うそを言わないところだろうと思つたのです。ところがうそを何べんも言つて、今はもう天下に、あなたが腹の底では再軍備論者だということは明らかであります。いつかこの閣議で、広川弘弾氏の手記か何かによると、からすをさぎというか、とんびというか、言いまくるのは非常に骨が折れる、再軍備しておるのにしてないと言うのは、君、骨が折れるねと言つて冷汗をかいたということが文芸春秋か何かに載つておりますが、過去のことは言わない。今度MSAの問題が表面化して、吉田自衛力漸増方式というものが限界に来たという感じを受取つたときに、板付飛行場の声明は、いよいよあなたがほんとうのことを言つたのだと思つた。ところがあなたは、今度参議院議員に当選されて無所属である。自由党の陣笠でない。従つてこれから先、あなたは岡崎君と違つて、自由党の中で政治力を——吐いたつて大したことはないけれども、とにかくもつと性根をすえて、正しいことを言つたらどうです。あなたはほんとうは再軍備論者です。そうして今のこの自衛力漸増方式はいけないと思つていると、正直に一ぺんぐらい言つたらどうです。そうすると歴史はかわる。言つてごらんなさい。
  144. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私も男としてうそはつきません。断じてつきません。そこで新聞に数字を発表されたようなことは、私は申したことはありません。これは男として明らかに申し上げます。いかなることがあつても、私は言つたことがない。ただ先刻須磨君に対してお答えしたように、将来日本治安情勢の変化によつて治安力を増加する場合にいかように増加すべきものであるかという一応の検討をすることにしておかなければならぬ。しかしこれをほんとうに調査するについては、あるいは経済審議庁、大蔵省あるいは通産省その他各省との関連があるから、これらの省とよく連絡をとつてやらなければきまらないものである。ただ将来のことをおもんぱかつて自分見当をつけるために研究させたものである。従つて木村個人の一試案であるのだから、その内容については申し述べることはできぬ、これが真相であります。しこうしてその際において、私はあの新聞に出たような数字は一切言つておりません。木村も男であります。決してうそはつきません。どうぞ御安心ください。
  145. 川崎秀二

    ○川崎委員 正眼に構えて言われましたけれども、事実はもう天下が知つておるように、あなたの板付飛行場におけるところの発言はきわめて重大であつて、これは新聞記者が一人で伝えたのではない。全部の新聞記者が伝えておるのだから間違いはないと思うけれども、やはり内閣のいすの方が大事だと思うので見のがしておきます。もしこの自衛計画がないとするならば——長期計画を立てないとするならば、内閣がその日暮しにわが国自衛力を進めておるように私には感ぜられるのであります。そうするとそういうプランのないものから、昨年の防衛費のように四百五十億という繰越しが生れて来る。こういうことでは、この金は不要じやないですか。不要と見てよろしゆうございますか。
  146. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。これはすべて計画をして、十分の使用をすべきでありますが、何分保安隊において使いまするいろいろの器具といいましようか、あるいは車にいたしましても、新しい想定をしてつくるだけのものがありません。そこらにありまするものをそのまま買いとるというわけに参りません。これを試作をし、研究をさせて、そうして万遺憾のないものを使いたいと思つて、われわれは頭をしぼつておるのであります。どうぞその点を十分川崎君において御勘考を願いたい。われわれはそんじよそこらにあるものを、やたらに買い入れるということはありません。国家の費用でありまするから十分に研究して、あるいは試作させ、あるいは十分の時間を費して研究をさせておるのであります。そうしてそれに基いて、すべて注文をいたしております。施設にいたしましても、みなさようなとりはからいをいたしております。従つて時日が遅れるのはいたし方ありません。かような次第で、注文をいたしましてもこれを現実に入手することは時期的にずれるものでありますから、契約しても完了いたさず、また実際において施設は注文してもでき上らぬものもありますから、従つて金がずれて来るというような状態であるのであります。これをやたらに使えといえば幾らでも使い道はありますが、私はさようなことはさせません。
  147. 川崎秀二

    ○川崎委員 るると保安隊の内情のプランについての苦しいところを陳述あつたわけであります。そのことは了承いたしますけれども、そのことと、つまり昨年千八百六十億であつた予算が計上されて、そのうち四百五十億も残つておる。われわれは千八百六十億の予算が千七百五十億で、百億ほど余つたということならこれは了承いたしますよ。ところが四百五十億も——半分も余つておる。そんなことで防衛計画というものを信用できますか。常識としても考えてもらいたいと思う。子供でもわかる。十円やつて九円まで使つて一円残つた。われわれはその子供に対して、ああそうかと話してあとの一円をやつてもいい。半分余しておいて、四百五十億円もこれが不要でないとは言えない。われわれはどうしてもこの四百五十億のうち、百億ないし百五十億は本年の予算から削つてもいいと思つている。本年の予算ではない、繰越費から転用してもいいと思つておるが、どうでしよう。
  148. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点につきましては、十分に政府委員から後刻説明させます。私の気持といたしましてはこれは削らるべきものではない、どうしても必要欠くべからざるものであると考えております。
  149. 川崎秀二

    ○川崎委員 説明を聞いてもよろしゆうございますが、総理大臣に対する質問でありますからさらに続けます。  吉田内閣総理大臣は先般の参議院本会議において、左派社会党の松本治一郎氏の質問に対して、千四百億ぐらいで軍事費だと言えば世界の物笑いになると言われた。これで二度目です。去年の国会であつたかにも聞きました。この程度の費用で軍事費だと言えば世界の物笑いになる、これはどこを根拠にしておるか伺いたい。
  150. 吉田茂

    吉田国務大臣 各国の軍事費と比較しての話であります。
  151. 川崎秀二

    ○川崎委員 各国の軍事費と参照してのことであると言うので、私はここで申し上げたいと思う。本年の防衛費は千四百億でありますが、昨年度の繰越し費用を入れるときには、二〇%に達しておるということは明らかであります。総理大臣よく聞いてもらいたい。世界各国の予算防衛費との関係は、なるほどこれはアメリカは問題にならぬ。横綱と子供みたいなものですから問題にならぬが、アメリカでは八百三億ドルのうち四百六十億ドルで、その比率は五八%、イギリスは十三億七千万ポンドのうち国防費は四億二百四十万ポンドで三二・五%ということになつております。これに比すれば物笑いになるかもしれませんが、日本の今日の国防力からして、これらの国々と同じような軍備を持つということはだれしも考えることはない。しかしもう少しわれわれは、いわゆる一流の国家の上から二流国家に至つて考えてみるならば、フランスの三兆四千九百八十億フランのうち、一兆二千四百六十億フランということは三六・二%に当つております。その半分以上日本が使つておる。しかもこのフラン貨と円貨の比率を考えるときに、すでにその半額に達しておることは明らかであつて、これはもはや軍備の水準に近づきつつあるということだけは間違いがない。いわんやイタリアの二兆一千三百二十億リラのうち四千六百億リラ、これは二一・六%になつておる。ちようどこのイタリアが同じではないか。二一・六%は、国民所得にしてもまた予算の規模にしても、リラの価値にしても、従つて軍事費内容についても、日本とほぼ同様である。しかるにイタリアが四十五万の陸海空軍を持つておるということはMSAがあるからだ、MSAを除いた分は、もはやイタリアと同一の水準にあるといつてよく、日本保安隊装備がイタリアに劣つておるということは、MSA援助が行われていないというだけの相違であつて、これはもう費用の上から当然軍隊といわなければならぬのである。もつとわれわれは材料を出す。オーストラリアは九億二千七百万ポンドに対する一億四十九万ポンドで、これは日本貨にして一億四千万円、今年の予算の繰越し費用を入れないものと同じである。そうすると、これは物笑いになるというのは一体どこに根拠があるのか。
  152. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は物笑いと考える。あなたが物笑いと考えないならば、意見が相違するということになる。
  153. 川崎秀二

    ○川崎委員 意見ではない、根拠を聞いている。根拠を言いなさい。
  154. 吉田茂

    吉田国務大臣 根拠は日本予算の数字の上からごらんなさい。よくわかるだろう。
  155. 川崎秀二

    ○川崎委員 外国と比較するから、外国の事例を私は述べておるのだ。怒つたつてしようがない。事実です。どつちの勝ちであるか、どうですか。数字的根拠なくして世界の物笑いになるというならどういうことか。今の答弁では私は何のことかわからぬ。それならもう一歩進めて言う。それからあなたはこれは日本国内治安警察力について補強するものだといつている。一体世界のどこで二〇%以上の警察力や警備力を使つている国があるか、それがあるならお教え願いたい。
  156. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはね……。
  157. 川崎秀二

    ○川崎委員 教えてください。
  158. 吉田茂

    吉田国務大臣 あした数字を持つて来てあげるから、よくごらんに入れます。
  159. 川崎秀二

    ○川崎委員 何たる暴言ですか。今やつている予算委員会における野党代表の質問の——私は年は若いけれども、代表質問をやらせてもらつている。そうして今ここで対決しているのに、あした数字を持つて来て—————というのは失敬じやないか。どういうことだ。
  160. 吉田茂

    吉田国務大臣 後ほど調べて数字をごらんに入れるというのにどこが悪い。
  161. 川崎秀二

    ○川崎委員 私もあるいは語気が強い関係で怒られた点があるかもしれない。しかし私は数字を述べて、これは世界に比して物笑いになるとおつしやるから、物笑いになる基礎を教えてくれと言つておる。あしたにする、あした持つて来て——————、そんなことはわれわれは聞くわけには行かないです。
  162. 尾崎末吉

    尾崎委員長 吉田総理大臣、ただいまの御質問に御答弁がありますか。
  163. 吉田茂

    吉田国務大臣 数字の基礎についてはきようではわかりませんから、正確を期するために調べた上でお答えする、どこが悪いかと言いたい。
  164. 尾崎末吉

    尾崎委員長 川崎君に申し上げますが、正確を期するために明日数字を持つて来ると言われるのですが、御了解を願えますか。
  165. 川崎秀二

    ○川崎委員 —————ということは取消しますか。
  166. 尾崎末吉

    尾崎委員長 吉田総理大臣————という言葉をお取消しになりますか。
  167. 吉田茂

    吉田国務大臣 取消します。
  168. 川崎秀二

    ○川崎委員 吉田総理大臣、あなたは実際物笑いになるとか、何とかいうことを言われない方がいいと思うのだ。もう世界の各国は、やはり正直にみんな軍隊軍隊警察隊とか、保安隊とかいつてごまかす問題ではないと思うのです。現にモナコあたりでは十二人でも兵隊。ここにリヒテンシユタイン王国の写真がある。五十人でも軍隊、私も少しはドイツ語がわかる。クリーゲル、兵隊だ。五十でもちやんと軍隊だといつているのに、十二万五千人も持つていて、国民予算の二一%も使つていて軍隊でないというのもおかしいけれども、しかし物笑いになるということだけは今後取消してもらいたいと思うのであります。  元来MSA援助は当然自衛力の強化を目標にしておるのであります。現にアメリカ下院において行われた論議のおもなものをとつてみますと、MSA援助は当然日本自衛力の強化を目標としている。自衛態勢が確立すればアメリカ軍は漸次撤退する。日本防衛の責任を米国が永久に負担しない。アメリカ陸軍の日本駐屯を永続するよりも、MSA援助の方が五倍ないし十倍経済的である。日本防衛は米国が負担するか、日本自身が負担するか以外に道はない。大体これがアメリカ外交委員会において行われておる論議の中心点であります。もつともナツシユ国防次官補が証言したところによると、国防総省が日本に勧告しているのは、日本自衛態勢ということだけである。日本が自国の島々を守るのに必要と思われる程度の兵力ができることを米国は希望しているのである。この程度軍隊のことを警察隊と呼んでも、保安隊と名づけてもやましいことはない。これは吉田総理大臣をかばつて非常に心づかいのある、アメリカの心づかいで、あなたは感謝しなければならぬと思う——もつともこの三年間泣きついて来たのですから、たまには向うも情にほだされるものと考えるのです。しかし下院議員とダレス長官初め多くの当局者の問答は全面にわたつて日本防衛軍、こういう言葉を使つている。それから再軍備の促進という文字が使われておつて、もう私はごまかし切れぬ段階に来たのではないかと感ずるのでありますが、一体一昨年以来の日本の再軍備論に対する国会の論議と、各党の立場ほど奇妙なものはない。万国の与党はあらゆる軍事情勢からして、すべて軍備充実ということについて国民には非常に悪いけれども、やらなければならぬ立場にある、西ドイツでも、あるいはイタリアでもそうです。正直に国民に伝えている。反対党の野党は再軍備反対、ドイツの社会民主党は自主的な再軍備でなければ絶対反対だと言つている。筋が通つております。しかし日本では逆だ、ばか正直の改進党は毎年選挙が起ると、再軍備を説いて二度も総選挙を闘つて国民に訴えている。しかし敗れている。これは確認する。ドイツの社会民主党は反対であるけれども、これは当然である。野党たるものは大衆生活の水準からして反対するのは当然だが、一番けしからぬのは、万国は例のないのは、軍備をしておつて軍備をしないという与党と政府だ。与党の諸君はもう軍備をしているということをちやんと知つている。軍備論者が多い。ところがおやじが軍備でないと言うから、しかたがない。おやじに怒られるというので、しかたがなくやつているだけのことである。どうかこういうような情勢で推移していることを国民が十分に知るとともに、吉田総理大臣も真に政治家ならば、もはや今日の朝日新聞の一般輿論の調査でも明らかなように、防衛軍ならば賛成という声は青年層にも支持者があるといわれている。私は積極的な再軍備論者ではないが、しかし自衛軍を持つことは当然だと思うのであつて、これらについて総理大臣は今日どういうお考えでいるのか、ごうも変化がないということだけでは、国民は納得できないが、正直な話を聞かせていただきたいと思うのであります。
  169. 吉田茂

    吉田国務大臣 従来の私の方針と何らかわつておることはないということを再言いたします。
  170. 川崎秀二

    ○川崎委員 防衛問題はそのくらいにいたしまして、次に経済政策の基本問題についてお伺いをいたしたいと思います。これもぜひ総理大臣からお答えを願いたいと思うのであります。  吉田総理大臣は今回の施政方針演説におきまして、経済問題を相当に列挙されて、方針を述べられております。今までの施政方針演説は単に行政事務報告にすぎず、今回もまた雄渾な経綸を聞かれなかつたのは同様でありますが、経済問題を多く取上げられたところは、吉田内閣といえども、今日の国民の関心事が経済生活の確保にあることを承知されておつて、あのように経済問題を取上げられたものと、私は善意に解釈をいたしまして、敬意を表する次第であります。  そこで、自由党の経済政策が自由経済主義であるということは、何人も承知であります。われわれもまた資本の集積を認め、また企業の原則的自由を認めるに上において差異はありませんが、今日の経済機構の上において、自由放任の経済方式がいつまでもやつて行けるものでないということは、あらゆる面に現われておるのであります。総理大臣はしばしばその談話において、貿易振興が第一である、こう言われております。今回の施政方針の演説においても、これを強調され、「わが国物価のコスト高が国際市場進出の一大支障なるに顧み、基礎産業の合理化を極力促進し、コストの引下げによる国際競争力の培養をはかる考えであります。」こう述べられております。そしてしばしば、それにはまず石炭のコストの引下げを行わなければならぬと言われておるのでありますが、私の考えるところによるならば、コストを引下げようとしても、石炭界だけでこれは片づく問題ではない。どうしても経済全般にわたつて政策全般にわたつてその骨組みとなり骨格となる一つのプランを持たなければ解決ができない。しかもそれは長期の計画化ということが必要であると私は思うのであります。今日世界のいずれの国も、自由競争を建前にしている国家でも、長期の計画経済を樹立して政治の運行に誤りなからしめておるのであります。このために経済の計画化によつて恐慌を克服したり、あるいは突発的な経済異変を押えることができるのである。しかるに政府の今日までのやり方はまつたく場当り主義であり、これは野党各派が一致して政府に対してその政策の転換を要望いたしておるのであります。朝鮮事変が休戦になり、特需が休止すると、町には不安の色が漂つておる。これは自由党の今までの自由放任経済では、とうてい今後の経済の見通しが立たぬというのでいわれておるのでありまして、いやがおうでも長期の経済計画というものは必要だと考えておるのでありますが、吉田総理大臣はいかにお考えでありますか。大蔵大臣からも御答弁をいたしていただきたいと思うのであります。
  171. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 日本の経済につきましては、先刻も申し上げました通り、私どもは現在野放しの自由がよいとは毛頭考えておりません。自由経済の最もよい長所である個人の創意、くふうを生かすことはもちろんでありまするが、しかし今日の世界経済のもとにおいては、長期的な視野でいろいろな計画を持つことがきわめて必要であると存じております。ただ川崎さんも御承知のように、現在の日本におきましては、各種のいろいろ困難な事情等があり、またいろいろな盛り込まなければならぬこと等がありまして、的確な長期計画を立て得るかどうかということになると、これは相当問題があろうと存じます。けれども、個々のものについて見ますれば、たとえば電源について計画を立てる、あるいは鉄鋼について計画を立てる、あるいは石炭について計画を立てる、造船について計画を立てる、こういうふうなことになりますると、これは比較的実行の面に移し得るような計画が立ちまするので、その面で進んでおりまするとともに、やはりこれを総合しました一つ計画のもとにはものを考えております。従いまして私どもは、野放図的な自由、こういつた考え方は毛頭持つておりません。但し、しからば計画経済に移すのかと、こう仰せになりますと、計画的にものを持つて行く必要はあるが、計画経済に移すということは、ひいて自由経済のいわゆる個人の創意、くふう、努力等をむだにするような点もありまするので、この点はよく緩急よろしきを得て持つて参りたいと考えておる次第であります、ごく総括で申しまするとそうでありまするが、一口に申しますれば、私どもが常に申します国際収支の均衡、こういうものを目標として日本経済を自立に持つて参りまするように、あらゆる施策をそこえ集中して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  172. 川崎秀二

    ○川崎委員 総理大臣に、経済の基本政策でありますから答弁願いたい。
  173. 吉田茂

    吉田国務大臣 大蔵大臣の説明をもつて御満足を願いたい。
  174. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちよつと御報告いたします。委員の皆さんにちよつと御報告申し上げておきますが、内田農林大臣は、先般の胆嚢炎が再発をいたしまして、その結果辞任をされたそうでありまして、後任が六時にきまるそうでありますから、御報告を申し上げておきます。御質問の方は、その点を御了承願つておきます。
  175. 川崎秀二

    ○川崎委員 今御答弁がありましたが、これはぜひ活眼を開いて、従来の自由放任主義から一歩大きく転換してもらいたいと思うのであります。計画経済と言うと社会主義陣営、特に和田さんあたりの専売のように思われるかもしれませんが、これは間違いであります。わが党は、年来これを主張して参つておりまするし、第一このごろは、資本主義のチャンピオンの経団連というものからも、あなたや自由党に対してしきりに陳情があります。今度の大蔵大臣や経審長官の施政方針演説をうつかり読んでおりますると、基本経済政策に関する意見、こういう経団連の意見の焼き直しのように感ぜられるのであります。ところが自由党は、やはりどういうものでありますか、長期計画とか計画ということをきらうせいでありますか、そのところだけは落してある。長期計画という言葉だけを落して、あと輸出振興第一主義であるとか、あるいは防衛生産であるとか、ことごとくこれらを取上げて来られておるのは、やはり一つの意地があるかと思いますけれども、この点ひとつぜひ御訂正を願いたい。国民一般も、また社会主義であれ、あるいは資本主義であれ、どうやら従来の自由放任経済ではまかない切れぬということを知つて来たようであります。経済自立の達成のためには、何としても産業、貿易、財政、金融、労働、税制等諸般の政策を総合的に確立いたしまして、政策相互の間に統一性と一貫性を持たせる長期計画が伴わなければならないと思うのであります。あえてこれはアメリカのフエア・デイールというものを例に引かないでも、最近のフランスのモネー・プランであるとか、あるいはイギリスの総合計画経済の中にある例のピヴアーリツジのプランなどもそうであります。また今のバトラー蔵相も、産業憲章以来完全にこれを堅持しているのであります。北ヨーロツパでもそうであるし、南アメリカのような自由主義経済の根の相当深いところでも最近は政策がかなり転換をされて来て、ことに電源開発あるいは産業道路の開発筆を裏づけにした長期計画が進んでおるようであります。日本だけがこれに波長が合わないということでは、財政計画も立たなければ、また防衛計画も立たない、日本は落伍者になるのであつて、これらの点について留意をされて進められたいと思うのでありますが、この点に対する御感想をいま一歩つつ込んでお話を願いたいと思うのであります。
  176. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 過日もちようど本会議で、今日においてはすべての施策を日本経済の自立に向つて集中する、こういうことを申し上げてございまするが、そのことはただいま申し上げましたように、これは各種のいわゆる経済にある程度計画を伴わなければなりませんので、その包括的な経済計画というものは今のところ容易ではござりませんが、お示しになつたような各種の産業につきましての計画は十分進め得まするので、さような計画の、あるものは五箇年計画、あるものは十箇年計画で進めておることは、これは川崎さんもよく御存じのことと思います。なおしかし御趣意の点もありますので、できるだけすみやかに総合的な長期の計画に持つて参りたい、かように考えております。繰返して申し上げまするが、私ども計画経済を行うという考え方は持つておりませんので、物の計画を立てては参りまするが、これを行うのにはやはり自由主義の持つておる個人の創意、くふう、努力を生かして参りたい、かように考えておる次第であります。
  177. 川崎秀二

    ○川崎委員 これは経済審議庁長官にもお聞きしたい。特にその方が重点だと思うので、お伺いしたいと思うのであります。
  178. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。内容につきましては、今大蔵大臣が申し上げた通りでございますが、ただ私といたしましては——計画という言葉が非常にいろいろな意味にとられますが、今まで言われておる計画経済というものは、ちようどレールを敷きまして、機関車でひつぱつて行く。そうして乗つている者は機関車がひつぱつて行くところ以上にはどこへも避けられない。こういうのが私は計画経済の極端なものだと思うのです。ただいまの自由主義経済としましては、およそわれわれは大阪へ行く、福岡へ行くという方向をきめまして、大阪なり福岡へいつごろ到着するであろうかということを予定しまして、しかしあとはみな各個々別々に計画を立てまして、そうして各業者に自主的にやつていただく、こういうような考えで、ある計画を持ち、また計画を援護しつつある次第であります。
  179. 川崎秀二

    ○川崎委員 大蔵大臣の答弁の中に、すでに計画を持つておる官庁もあると言われたが、あります。たとえば農林省は食糧増産十箇年計画などというものの厖大なる計画を持つておる。しかしこれには資金の裏づけが伴う。それがないのが今日の吉田内閣政策である。農林省はどうも毛色のかわつた人が多い点でこういうものが出て来るのかもしれぬけれども、これが全般的にわたつて行かなければいけないということをわれわれは申し上げておるので、特に御注意を申し上げたいと思うのでありますが、こういうものを達成するためにも、現在の経済審議庁はもう少し総合政策の官庁として強化しなければならぬ。今までのやり方ではいけないと思うのでありますが、この点について何か総合政策の官庁として強化されるお考えはありませんか、吉田総理大臣いかがでありますか。聞いておられたのですか。
  180. 吉田茂

    吉田国務大臣 主管大臣からお答えをいたします。
  181. 川崎秀二

    ○川崎委員 これは主管大臣に聞いているのではない。主管大臣は、向うはなりたいのです。ところが、大蔵大臣に聞かなければそんなことは知らないと言う。あなたはどう思うか、こう聞いておる。
  182. 吉田茂

    吉田国務大臣 主管大臣の考え通りであります。
  183. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま、いわゆる食糧増産十箇年計画についてこれの予算の裏づけがないじやないかというお話がございましたが、これは実は一応計画を立てますときに、初年度幾ら、次年度幾ら、三年度幾らという計画は立つておりまして、このことは吉田総理の施政方針の演説中にも、食糧増産計画の多角的年次的計画ということがありまして、またその次に、これに必要な予算云々ということが、この前のときにございますので、一応の目安はつくつておる次第であります。なおもつとも財政の都合でその予定計画通り参らぬ年もあることは、これはあらかじめ御了承願わなければなりませんが、計画としては一応立てておる次第であります。  さらに今の経済審議庁の機構を拡大すべしというお話につきましては、これは機構を拡大せずとも、人間の能力によつて十分やり得るという点もありますので、私どもはあまり予算をふやさないで、大いに能力を上げてもらう、こういうことを心から期待している次第であります。
  184. 川崎秀二

    ○川崎委員 まともに答弁しなさい。私は何も機構拡大をしろとか、あるいは人員をふやせと言つたのではない。総合政策の官庁としての権利を与えるか、そういう権限を与えるかということを言つている。そういうことで整備をして行くということは賛成かどうか。
  185. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは大蔵大臣が一国務大臣として申し上げますれば、まことに賛成でございます。
  186. 川崎秀二

    ○川崎委員 ちよつと貿易問題の質問に入るにあたりまして伺いたいのは、外貨の保有高について五月末の調査は完了しておりましようか。
  187. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 四月末はございまして、大体ドルに換算いたしまして十億六千万ドルほどあるかと存じております。しかし五月末はあるいはまだできておらぬかとも考えますが、できておりますれば、資料として提出することにいたします。
  188. 川崎秀二

    ○川崎委員 政府は首相の施政方針演説におきましても「日本再建の基礎が経済の自立にあることを信じ、内、自給度の向上にあらゆる施策を行うとともに、外は正常なる貿易の振興に最善の努力を傾けんとするものであります。」冒頭にこう言つておられます。従つていわゆる正常貿易の発展と転出振興第一主義をとるものと思うのであります。日本経済の今日までの状態は、朝鮮動乱と切離しては考えられません。この三箇年の間日本の経済は膨脹したままになつて来ている。何もかも入れますと年間約八億数千万ドルに上る特需があつたのでありまして、これだけの外貨がいわば内需的な意味で入つて来たということが特に重く見られなければならぬと思うのであります。だからこれを一言で言えば、日本経済の膨脹と景気を支えていたものは特需であると言える。動乱ブームによつて支えられ、辛うじて国際収支の均衡をとつて来たものと言えるのであります。従つて朝鮮に平和が来た今日、この特需の存在をもととしてでき上つていた日本経済の均衡状態は一体どうなるであろうか。今日までの膨脹は勢い収縮せざるを得ないではないかというのが、われわれの憂えておるところの問題であります。従つて長期経済計画と並行して、勢い貿易の伸張、輸出にたよらざるを得ないと思うが、先般来の質疑応答では、積極的な具体策が講ぜられておらない、これははなはだ遺憾であります。多くの論者が指摘しておる。本会議でも言つておる。参議院の本会議でも言つておる。これはみなひつくり返して見ましたが、これらはドイツや英国のように思い切つた貿易政策を採用する意思はないか、こういうことで皆一致しておるように思います。私はこの際具体的に申し上げて、予算の一部を組みかえてでも輸出振興のための免税措置、たとえばメーカーや貿易業者に対してそれぞれ輸出総所得から何パーセントかを、またそれぞれ輸出利益金から控除したものを課税標準にする、こういうような一つの案を考えられる必要があると思うのでありますが、貿易振興策についての具体的な意見をこの際御吐露願いたいと思うのであります。
  189. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 川崎さん、ちようどさつきの数字がありましたから申し上げます。さつき申しました三月末の数字が十億六千万ドルでございます。五月末九億九千七百万ドル。その内訳は、ドル地域が八億二千四百万ドル、ポンド地域が一億ドル、オープン・アカウント地域が七千二百万ドル、こういうのであります。
  190. 川崎秀二

    ○川崎委員 ポンドは幾らでしたか。
  191. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ポンドはドルに換算いたしました。ポンド地域が一億ドル。  お尋ねの貿易の点でございまするが、私どもも現在の段階において、日本の貿易を伸張さすことが最も重要なる国策であると存じております。従いまして、この輸出貿易の振興には、よく言われます通り、あるいは経済外交の強化とか、各国との交渉その他のことを進めて参りますことはもちろんでありますし、また日本の品物が出やすいように、日本の各種の商品に国際競争力を持たすようないろいろな措置をとつておることももちろんでございますが、しかし今御指摘になりましたような免税措置その他の問題であります。川崎さんも御承知のように、アジアにおける日本の位置は、ヨーロツパにおける西ドイツとかイタリアとは多少事情の違うところもございまして、そのままここに適用しにくいということは、これは川崎さんがよく御承知かと思うのであります。私どもは商社の強化につきましては、すでに各種の免税措置をとつております。なお輸出と輸入とにある程度リンクする制度をとりまして輸出奨励の方法もとつておりますが、しかし今お話になつたようなことが西ドイツで行われておる。あるいは製造業者が輸出した場合に、輸出品の製造業者に何パーセントかの免税であるとか、あるいは輸出取扱い業者に何パーセントかの免税であるとか、こういうような措置等につきましては、他に影響するところもありますので、実は私ども過日来検討いたしておる次第であります。すでに実行したものでは、貿易商社の強化策は、先般の議会でも皆さんが大分御要望になりましたので、これは全部取入れましてその措置をとりました。しかし今御指摘の点についても対外的支障がなければ、そういうような方向に持つて参りたいと存じておりますが、さつきもちよつと申し上げましたように、ヨーロツパにおける西ドイツあるいはイタリアの事情と、アジアにおける日本事情とには、よほど国際的に置かれている地位が違うと思うのでありまして、一気にそこに持つて行きにくい事情もあることを、あらかじめ、御了承願つておきたいと思うのであります。
  192. 川崎秀二

    ○川崎委員 将来検討するということでありますから、これは一応了承いたしておきます。  次に中国貿易の問題について。これは今貿易政策の基本についてお伺いし、また具体的な政策について伺いましたが、中国貿易の問題について特に岡野通産相にお伺いいたしたいのであります。通産相はしばしばこのことを強調されております。大阪御出身であるゆえかとも思いますけれども、非常にこの点を強調されていることは、従来の政府態度もかわつて来たようで、はなはだけつこうであります。そこで政府はさらに百尺竿頭一歩を進めてみる気はないか。イギリス、ドイツの先例にならいまして、機構を敷備いたしまして、機械類とか繊維品、あるいは水産物のごとき、民生の必需品を貿易の対象として画策されんことを期待いたしておるのであります。元来政治は政治、商売は商売でありまして、現にイギリス等では中国に対して相当の取引をしておる。西欧諸国からいろいろな商品が入つて来ておるのであります。しかもそれは日本から輸出することを許されぬ商品が中国になだれ込んでおる。同じ商品でありながら、日本から輸出すれば、戦略物資であり、英国から輸出すれば中国の戦力増強にならぬということは、私は了解に苦しむのであります。農業用の二馬力や三馬力の発動機が戦略物資だなどというばかげたことはないのでありまして、英国の対中国輸出品の三五%が医療品で、残りの大部分が機械、鋼材等の建設資材であることを思つても、私は相当日本が反省してみる必要はないかと思うのであります。この点につきまして岡崎国務大臣の御見解を伺うとともに、総理大臣にこの中国貿易局に対して将来何らかの手を打つことはないかということをお伺いしておきたいと思うのであります。
  193. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。これはいつも申し上げておりますように、国連協力ということは日本の義務でありまして、その範囲内においてできるだけ中共貿易を振興して行きたいと考えます。またお説のようにいろいろ制限措置もあります。制限措置を今われわれとして極力範囲を狭めまして、向うへ輸出できる品物をふやしたいと考えております。ただ問題といたしましては、私がいつも申し上げることでございますが、中国の内部事情——これは向うである程度産業に対する見解がございまして、戦前に中国と貿易をしておつた当時の品物が向うへ入るということは、今のところでは考えられないということと、それからまた向うでほしがるものが今のように制限されておりますから、そのほしがるものだけ抜き出せるようにいろいろ考えまして、われわれはその努力をいたしておる次第であります。ただ問題といたしまして、昔は約八億ドルくらいあつたというお話でございますが、そんな大きなことは求められないということは、われわれが考えねばならないことだと思います。
  194. 吉田茂

    吉田国務大臣 イデオロギーのために中共貿易を阻害する、そんな考えはございません。
  195. 川崎秀二

    ○川崎委員 中国貿易の問題については、最近の世界日本を見ている目について、われわれは深く反省してみなければならぬと思うのであります。たとえばアメリカの下院で行われておるいわゆる防衛隊の論議に関連をして、共和党のチヤーチという議員が、日本経済力保安隊維持の負担を全面的ににない得る日は一体いつの日かという質問をしたに対して、ナツシユ国防次官補というのがこういう答えをして、中共貿易との関係に非常に深い関心を寄せております。それは専門家ではないから年数はわからない。日本自衛力日本自体でまかなえるのはいつのことかわからない。しかし日本の経済問題の解決策は生産品のはけ口にある。中共以外の日本製品の市場をわれわれが見出すならば、日本保安隊を楽に維持し得る国家収入を築く能力を持つと言つたのに加えまして、日本に来ました、例の一時大統領候補になつたスタツセン長官は、日本の対中共禁輸は厳重で、他の国よりも米国、カナダの禁輸政策に近い。民需品についてはそれほど厳格でない。結局は綿糸、麻袋、肥料などを中共の米、大豆、植物油、鉄鉱石と交換するのは利点があるとしている。米国はこれに同意し得ないが、この主張の基礎となる経済的事実を認めなければならない、こういうような証言をしておる。やはり中国貿易と日本が断絶をされておるということは不自然だということをアメリカが認めておるのでありますから、われわれとしては何とかアメリカとも交渉しつつ打開をはかつて行かなければならぬと思うのであります。こういう問題につきまして、岡野通産相はいかなる見解を持つておられますか、お伺いをいたし、かつまた岡崎外相からもお伺いいたしたいと思うのであります。
  196. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはすでに御承知でもございましようが、こういうことを討議いたしまする委員会がございまして、約十三箇国がココムという名前でやつております。そこでお互いに協議し合つて制限実施の案をはかつております。われわれはその点において今後大いに努力して、中共に対する輸出をこの上とも進展させたい、こう考えておる次第であります。
  197. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私も演説で申しました通り、イデオロギーの相違が貿易を阻害するという理由にはならない、こう思つております。但し国連決議にもありまするから、ただいま一定の制限はいたしております。ところでその制限が、ある国はあまり厳重でなかつたり、あるいはある国は非常に厳重にしておつたりするために、正規の手続なくしても密輸貿易等でいろいろな品物が送られる傾きがあるのでありますから、この点は列国とも歩調を一にする必要がある、こう考えております。
  198. 川崎秀二

    ○川崎委員 時間がもう十四、五分しかないのでありまして、残念でありますが、行政機構の整備あるいは行政整理に触れたいと思いますが、これらは全部割愛をいたしまして、それでは行政費の節約について特に首相の答弁を求めるものであります。これはあなたの割合にすきなものであります。  首相は行政費の節約については個人としては非常に熱心のように平素から感じております。ところがあなたのひきいる官庁はどうかというと、行政費の節約どころか、何とかして各官庁の物件費をふやそう、あるいは出張旅費、あるいは超過勤務手当の獲得が盛んでありまして、これが抑制にはほとんど手がつけられないような状態であります。年度末になると、予算の使い残りということで、各官庁とも隊伍を整えて近県の温泉旅行に行く。これはよく新聞が書くことであります。年中行事だ。ところが最近では、超過勤務手当などは最初からどこの課にはどれだけと予算を見積るのはいいのでありますが、余つても断じて残さない。ころんでもただでは起きない。そこで初めから課長以下車座で、だれに幾らと頭から割当てるというような風潮がありまして、超過勤務の事後支給ではなくて、事前の共同謀議さえ行われているという状態です。これを使われる国民はたまつたものではありません。それだけではないのです。こういう風湖が起つて来たことは、ひとり課長以下を責めることはできない。なぜならば、大臣、次官の心がけからして悪い。私は論より証拠を見せてあげていいと思います。名前だけはあずかつておきますが、あなたの内閣の大臣の中で、国へ帰郷するのに県下の所管事項を視察するという名目で帰つた者がいる。(「その通り」)何々事情視察、郷里の基地の問題がやかましいというので、新任あいさつをかねて帰省した政務次官もいるのです。名前をあげてもよろしいけれども、事務次官で盛んに次期参議院選挙を目ざして旅行する者がおります。これはみんな出張で、出張旅費をもらつている。もらつておらない非常に裕福な大臣もいるらしい。自分のだけはもらわないが、随員のはもらつている。こういうことで一体行政費節約ということができますか。これは重大な問題でありまして、どうか吉田総理大臣はこの点お考えを願いたい。もとより行政費の節約ということを言えば、もつと洗つて行きますと、たとえば予算書の中に、法制局のごときは六十一人に一台の自動車を持つておる。百何十万円という自動車を今年また買うというのです。今まで持つておらないかというと、持つておる。毎年々々一台の外車を買うという、これはいかぬ。そういうようなことをして、行政費を濫費しているということはきわめて重大な問題であります。しかしこれは隗より始めろで、国会もまたこの一部の非難のあるように、自粛自戒しなければ問題だと思う。滞在費の二千円つり上げなどということは、——————————————————私は大いに検討する必要があると思う。(拍手)改進党の今度の案の中ではこの点は十分に検討するつもりであります。——————しかし国会、中央官庁、これらが、まず自粛自戒しなければどうなります。今非常に問題になつておりますのは地方財政の放漫であります。地方財政でいろいろな陳情が行われる。各地の市長あるいは県会議員がいろいろな問題で陳情に来ます。しかしその陳情というのは、みんな旅費をとつて来ておるのです。この地方の陳情政治というものを一掃しなければならぬが、それはやはり隗より始めなければならない。国会、政府というものが自粛しなければならぬと思いますから、これらの問題については、吉田総理大臣は真剣にお考えになつて、どうか行政費の節約について具体的な案を立ててもらいたいと思います。これらについて、吉田総理大臣はいかにお考えでありますか、御答弁を賜わりたいと思うのであります。
  199. 吉田茂

    吉田国務大臣 御趣意はまことに御同感であります。従来行政整理として人員を減すことばかり考えておつたのでありますが、その結果は十分に目的を達することができない。結局行政の簡素化の方から考えて行かなければならぬ。この考えで、その観点からして今行政整理案をつくつております。  もう一つ予算の使い方でありますが、予算の使い方が放漫に流れるということは、私も同じ感じを持つております。ついては、予算の使い方について監視する機関を設けたいと考えて、今そのことについて検討中であります。
  200. 川崎秀二

    ○川崎委員 行政費の節約については御同意を得たものと思います。  最後にお伺いいたしたい点は、内田農林大臣はいかなることでありますか、胆嚢炎ということでありますが、予算委員会が始まる直前におやめになつたのは、何か政治的な理由があるかとも思いますが、それでは私は特に大蔵大臣にお伺いをいたしておきましよう。米価の問題であります。これはおそらく今度の予算案のうちで政治的な問題に発展するものと私は考えておるのであります。米価の予算価格の問題は、昨年米価審議会が政府に生産者価格八千五百円という勧告をなしたのに、これを無視して、依然として七千五百円で予算を組んでおります。今日食糧増産の遂行のためには、農産物価格を、拡大生産費を償うために補償しなければならぬということは、これはもう一般の声でありまして、いわんや終戦以来吉田内閣の低米価、重税政策によつて犠牲をしいられて来た農村の生活を保護するためにも、日本産業の基幹たる農業の悠久なる発展をはかるためにも、農産物価格政策と米価の二重価格制は、財源の許す限りこれを実施しなければならないと思うのであります。これについて、政府は今日ただいまの段階でどういうふうにお考えであるか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  201. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 いわゆる米の二重価格制度につきましては、国民経済に広汎な影響を持つものでございますので、慎重に検討いたしたいと考えております。すなわち、二重価格制度は、技術的に見てある程度統制乏前提としなければならない、これは全般的な物価統制撤廃の方向に逆行いたしますし、さらに統制に伴いまして、中央、地方を通じて人件費、事務費等やむを得ざる経費の支払いを余儀なくされるものと考えるのであります。それから二重米価制度は、現状においても少からざる財政負担を伴うものでございますが、将来にわたつて財政に対する圧迫が過重するものであろうということが一応予想されるのでございます。さらに最近のエンゲル係数の主食の係数も下りつつありますので、米価の値上りを生計費に吸収する可能性がないとも申されません。ただこの問題が国民経済に非常に広汎な影響を持つておりますところから、さらに慎重検討いたしたいと存じている次第でございます。
  202. 川崎秀二

    ○川崎委員 今二重米価をとらなかつた論拠についてきわめて明快に話された。その反対論としては私は非常にけつこうだと思う。しかしそれでは今度は納まらぬ。大体二重米価に対しては、昨年来輿論や識者の強く支持するところでありますが、最近反対論がにわかに広まつて来ている。これはどういうわけかというと、大蔵官僚の早手まわしの策謀があり、やむを得ず論説委員等に連絡をとつて、今まで二重米価制度をやれと言つてつたやつをひつくり返そうというような運動もあるし、今あなたが述べられたような面でも反対議論もありますが、私は財源問題は行政費の節約、防衛費の繰越しで十分つくと思う。これは他の産業や国民生活全体に影響を及ぼす、従つて補給金制度の再現であるということもこれは有力なる反対意見でありますから、それらについての私ども考え方を述べておかなければならぬ。これはいずれ最後は討論しますけれども、その前に一応述べておかなければならぬのであります。他の産業では生産者が生産物の価格をきめるのであります。農民は不当に低米価を押しつけられて来ておつて、今の農民所得は、昭和二十一年ごろの国民所得に対して二八%、二九%というような数字が出たころとはかわつている。長年にわたる低米価と重税政策のために、今日では一七%、一八%という低い水準でがまんをしているのが今日の農村の状況である。私はこの意味から言つても、今日の米価が生産費を償わない価格であるということは天下の通説であると思うのでありまして、農民だけに犠牲をしいるのでなく、あらゆる産業、あらゆる国民が耐乏生活を甘受するというならば、これはまた別であるけれども、政治的発言力の強いところにのみ迎合して、米価だけをそのままにしておくという政治の欺瞞こそ追究しなければならぬと考えるのであります。あなたは今最後には考慮すると言われた。それからもう一つの反対論に、昨年から物価が横ばいに来ているという論があるが、これは一昨年までのあまりに低い米価を忘れた議論です。どうかその意味で、統制経済のできない今日では、二重米価は社会福祉政策としても断行してもらいたいと希望するものであります。  最後に、念のために聞いておきますけれども、昨日の日本経済新聞を見ると、二十二日院内大臣室で行われた緒方副総理、福永官房長官、佐藤、益谷、池田の自由党三役、及び小澤国会対策委員長政府、与党連絡会では、二十八年度予算に対する態度を協議した際も、麦価改訂問題とからみ、米価の二重価格制度が論議されたが、結局採用しないことになつたと報ぜられておる。これは一新聞の報ずるところでありますし、吉田内閣のことでありますから、新聞の記事には責任を持たぬ、こういうことでありましようけれども、その決定にあなたはあずかつておらぬ。米価の決定にあたつて、内田農林大臣と大蔵大臣のあなたはあずかつておらぬということはどういうわけであるか。協議にあずからぬということはあなたに対する重大な侮辱じやないか、そう思いませんか。
  203. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 公式な協議であれば、私ももちろんあずかるべきものと存じます。ただこれらの方々が一応の何というか、試案、相談をされたもの、こういうふうに見ておるのでありまして、どういうようなふうに相談をしたかということについても、まだ何ら話を受けておりません。
  204. 川崎秀二

    ○川崎委員 質問を終りますが、池田政調会長のロボツトにならないようにお願いをいたします。米価の二重価格制度は、御承知のごとく今回の予算における重要な政治問題であります。ただいまの御答弁で、政府においては深甚な考慮をしておるようでありますから、私はこれをもつて質問を終りますが、改進党としては、本問題に関し重大なる関心を持つておることを念のためにはつきりと申し上げて、総理大臣を中心とする総括質問を終るものでございます。(拍手)
  205. 尾崎末吉

  206. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はまず吉田首相に対して数個の質問をいたしたいと思います。安保条約の前文によりますと、日本の安全を守るために、アメリカ軍が暫定的に日本に駐留をする、しかしこれはあくまでも暫定的であるからして、日本漸増的に自衛力を増強する責任があるということを言われておる。この漸増的に自衛力を増して行くという責任を、どういうふうに果しておるか。われわれはもちろん安全保障条約には反対でございますけれども、このできた条約に対して、吉田内閣がどういうふうに具体的に義務を果しておるかということを、まず伺いたいと思うのであります。
  207. 吉田茂

    吉田国務大臣 漸増という意味合いは、米国政府としては、長く米国軍隊日本に駐留せしめる意思はなく、またせしめたくない。また日本としても同様な考えを持つておるのであります。ゆえに日本の国防あるいは防衛力の漸増によつて、遂に米国軍の駐留を必要とはしないという程度まで漸増する。その漸増計画については、米国との間においては何ら話はないのであります。漸増という考え方で、日本国力充実とともに漸増して行く、そうして遂に米国が駐留軍を引揚げるという域に達するようにいたしたい、こういう考えであります。
  208. 武藤運十郎

    ○武藤委員 何も話合いがないと申しますけれども、安保条約の前文には、明らかに「自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こういうふうに書いてございます。これができましてからすでに二箇年になる。何にもしないということは、はなはだおかしいと思うのですけれども、その辺はどういうふうになるのでありましようか、もう一度重ねて伺いたいと思うのであります。
  209. 吉田茂

    吉田国務大臣 漸増という意味合いは、何も軍艦を持つとか、兵隊を増すとかいうものでなくて、装備の点とか、あるいはまた実質とか、先ほど木村国務大臣からお話したように、訓練によるとかいうように、実質において漸増に努めておるのであります。しかしながら、しからば漸増した結果、米国軍が何年たつたらば引揚げるかということは、話合いはついておりません。
  210. 武藤運十郎

    ○武藤委員 わかりました。そうしますと、今総理お答えによりますと、漸増というのは何も数を増すということじやないのであつて装備の点だとか、あるいは訓練の点だとかいうことを充実して行くことが、漸増であるというふうなお話でございます。それでは何を訓練し、何を強化して行くのか、装備を強くして行くんだということは、保安隊のことを言うのだろうと思いますが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  211. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。但し申し添えますが、終局は米国軍の駐留を必要としないという事態を招来せしめるのが目的なのであります。
  212. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、この安保条約の前文に書いてあります文句を、もう一度先の方から念のため読んでみますと、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」「直接及び間接の侵略に対する」とこういうふうにうたつてある。この安保条約の条文に該当するものは、すなわち保安隊であるということになるのでありますか。
  213. 吉田茂

    吉田国務大臣 主として保安隊であります。
  214. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、今まで保安隊国内治安、つまり間接侵略、大規模な騒擾、そういうようなものだけに用いるのであつて外敵侵略、いわゆる直接侵略に備えるものではないということを、繰返し繰返し首相も木村保安庁長官も言われておるのでありますけれども、今のお話はそうではなくて、この自衛力漸増に該当するものは保安隊である、それは直接、間接の侵略に対する自国の防衛のためである、こういうことになるのであります。今まで繰返された言明と、本日の首相のお言葉とはたいへん違うようでありますが、その点をはつきりしてもらいたいと思うのであります。
  215. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私から申し上げましよう。
  216. 武藤運十郎

    ○武藤委員 木村長官に聞いているのではない。
  217. 尾崎末吉

    尾崎委員長 保安庁長官、しばらくお待ちください。
  218. 吉田茂

    吉田国務大臣 保安庁長官からお答えいたします。
  219. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。自衛力漸増は、先刻申し上げました通り、いわゆる物心両面における総合国力をさすものと、われわれは考えております。保安隊の増強もまた自衛力漸増の一方面であると、われわれは解釈しております。そこで安保条約の前文に、直接、間接侵略に対しての自衛力漸増を期待するということが明白にうたわれておる。これはアメリカ側におけるいわゆる期待であります。この直接、間接侵略に対する防衛力の増強をアメリカで期待するのは、これはもつともであろうと思います。しかしこの期待に沿うて日本が直接やれるかと申しますれば、いわゆる直接侵略に対する防衛ということになりますと、なかなか容易なことではありません。そこでやはりわれわれの現在の考え方としては、やむを得ずアメリカ駐留軍の手によつて直接侵略に備える、そうして間接侵略に対しては保安隊をもつてこれに当る、すなわち両々相まつて日本防衛のよろしきを得たい、こう考えておる次第であります。従つてアメリカ側では期待されておりまするが、日本の現段階においてはただちに直接侵略に対する戦力を持つことは、日本国力で許すことができない。ただ私一個の考えといたしましては、いついつまでもアメリカにたよつているということは、これは日本国民感情といたしましても許すことができませんので、一日も早く日本国力を回復いたしまして、みずからの手によつてみずからの国を守る、すなわち直接侵略に対してもこれを守り得る事態の一日もすみやかならんことを期待する次第であります。
  220. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どうも私の尊敬する木村先輩の話でありますけれども、三百のようなりくつを並べておられます。そういうのではなくて、これは期待をするとか希望をするとかいう言葉が使われておりますけれども、一応安保条約というのは双務契約である、そういうような意味から申しまして、これは両方ともが同じ立場において了解いたした文句だろうと思うのであります。そうしますると、今吉田首相が言われましたように、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うことを期待するという言葉は、両者の了解の上でできたものだと私は考える。そうしますとこの保安隊というものも、物心両者と言われまするが、木村さんのよく言われる自衛力の根幹をなすものであるということになるのではないかと思うのでありまするが、もう一度木村さんから伺いたい。ことにアメリカ軍が外敵侵略に対するものを受持ち、日本保安隊国内治安を受持つと言われますけれども、それならばいつまでそういう形が続くのであるか、いつ保安隊というものが外敵侵略に対して対抗するようなものに質的に飛躍するのであるか、その時期を伺いたい。
  221. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。保安隊の性格は、保安庁法第四条に明記されております通り、どこまでもわが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するために特別の必要がある場合に行動する部隊となつております。これが保安隊の性格であります。主として国内の平和と治安を維持することを任務としておるのであります。ただこれが一たび外敵の侵入と申しましようか——私は戦争なんというものは起り得ないことを希望し、また近くはそんなことは起らないものと考えておりますが、不幸にして集団暴徒などの侵入して来た場合においては、もとよりアメリカ駐留軍もそれに当るのが当然でありまするが、こういう場合においては、いわゆる間接侵略と直接侵略とは、おそらく同時に起るものであろうと私は思います。すなわちその場合には国内の平和が乱されることは当然でありますから、保安隊もこういう場合に出動することはあり得ることとは考えております。しかし建前といたしましては、今申し上げました通り、どこまでも保安庁法第四条の趣旨に沿つて、われわれはこれを考えておる次第であります。しこうしてただいまの段階におきましては、今申し上げた通り保安隊の増員は今計画はしておりませんが、訓練の強化、装備編制の改善充実によりまして、国内平和治安の全きを期したい、こう考えておる次第であります。     〔「時期を聞いておるのだ」と呼ぶ者あり〕
  222. 尾崎末吉

    尾崎委員長 質問は質問者から願います。
  223. 木村篤太郎

    木村国務大臣 憲法改正の時期なんということは考えておりません。直接侵略に対してどういう計画を立てておるかということは、私らは今そういう計画は立てておりません。
  224. 武藤運十郎

    ○武藤委員 はつきり答弁になりませんが、とにかく念を押しておきますけれども、首相も木村保安庁長官も、要するに今の保安隊というものが安保条約前文の自衛力漸増というものに、全部であるか一部であるかは別といたしまして、該当するという点においては御異議はございませんか。首相それから保安庁長官の御意見を聞きたい。
  225. 木村篤太郎

    木村国務大臣 先ほども申しました通り保安隊自衛力の一部をなすものには相違ありません。
  226. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その次に首相に行政協定について伺いたい。行政協定は、われわれはもちろんこれに反対しており、全面的な廃棄を主張しておるのでありますけれども、今行政協定で一番問題になつているのは、先ほど川崎君から指摘されました刑事裁判権の問題が一つ、もう一つは、軍事基地の問題であろうと思うのであります。そこで北大西洋条約協定がアメリカの上院の批准を経る見込みというものは当分ないと私は思うのでありますが、吉田首相はどんなふうに考えておられますか。
  227. 吉田茂

    吉田国務大臣 所管大臣からお答えいたさせます。
  228. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは先ほども申しました通り、すでにアメリカの上院の外交委員会では、全会一致で可決をしております。従いまして今年の夏のアメリカの国会の本会議を通過するものと強く期待しております。
  229. 武藤運十郎

    ○武藤委員 先ほども川崎君が指摘されましたように、これはもう一年を経過しておるのだから、ただたなからぼたもちが落ちて来るような考え方で待つておるという態度は、はなはだけしからぬと私は思うのであります。これについて交渉を開始する意思があるかどうか、伺いたいと思います。
  230. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはすでに改訂の申入れをいたしまして、先方もそれを受けると言つておるのであります。但し内容によりますと、私の方ではNATO協定そのものを取入れたいのでありますが、アメリカの政府としましては、上院で今までずつと問題があつたものでありますから、これを可決したあとでなければ、おそらくNATO協定と同様のものを採用するということは、行政府としてはできないことだと思います。しかるに一方国会の方では今年の夏に終る本会議で、これが批准される見込みが相当あるのでありますから、われわれとしてはその批准を待つておるわけであります。
  231. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は、この行政協定の第十七条というのは批准を待つておるという形ではないのであつて、条文そのものの形は一年以内に批准があればそれによる、一年を経過すれば批准を待つというのではなくて、これについて当然改訂をして行くという文句であろうと思う。われわれはこの刑事裁判権を属人主義にすることについては非常に反対をしておつた、外務省も非常に反対だということをいわれておる。外務省情報文化局で出されました行政協定の解説というのを見ますと、「この行政協定が発効してから一年を経過しても北大西洋条約協定が効力を発生していない場合には、米国は本条2ないし4に規定する刑事裁判権の方式を、日本国希望する場合、再考慮することを約束した。従つてこの協定で定めている刑事裁判権の方式は短かければ数箇月、長くても一年たてば日本の要請に基く合衆国の再考慮により日本希望する方向に改訂されるわけである。」こういうふうに解説をしておるわけです。そうしますと、やはり待つておるという形ではなくて、一年たてばさつそくこれはやり直すことができるのだという見通しを立てておつたのではないかと思うのでありますが、これを書かれて行政協定を結ばれたときの形と、今の外務大臣のお答えとはたいへん違うようでありますが、いかがなものでありますか。
  232. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは行政協定締結の交渉の際にも、われわれの方では今のNATO協定方式案を提出したのであります。それに対しましてアメリカ側としては、趣旨としてはけつこうであるけれども、上院が批准をしてないものを今入れるということは、とうていできないというので現状のような協定になつたわけであります。そこで現状のような協定というものは、要するにイギリスやフランス等でやつておるものと同様なものでありますが、このNATOの批准については、日本のみならず、イギリスやフランス、その他のヨーロツパの国々も待つておるわけであります。りくつとしては、一年たてば改訂の申入れをし、先方は協議に応ずるということは、これは書いてある通りであります。協議がいつ成立するかは別問題でありますが、しかし協議の内容としては、われわれは多少の刑事裁判権の改訂でなくして、根本的なNATO方式によりたいと考えております。ただいま協議をいたしますれば、NATO方式を入れることは、アメリカとしては今上院にかかつている際にはとうていできないわけでありますから、そこに至らない範囲の中途半端の交渉にしかならないわけであります。事実上はもうNATOの批准ができそうになつておるのでありますから、これを待つというのが私は常識的だろうと思います。もし批准の見込みが立たなくなれば、これは新しくまた交渉しなければなりませんけれども、ただいまのところは批准を待つのが常識的なやり方だ、こう考えております。
  233. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その問題は満足ではございませんが、次に移りまして、基地の問題でありますが、今度の安保行政協定は、基地について無制限、無期限、非常に異例なものであろうと思う。基地の数も非常に多い。われわれはもちろんそんなものは一つもいらないと思いますが、政府考え方では、一体日本の安全を守るためには、どのくらいの基地を必要とすると考えておるのか。これからもどんどん新しい基地の要求があり、それに政府が応じて行くつもりなのか、その点を伺いたいと思います。
  234. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはわれわれの方では施設及び区域と言つておりますが、これは日本に駐留するアメリカ軍隊の構成によつてまた違います。たとえば地上の兵力が多い場合、あるいは空中の兵力が多い場合、あるいは海軍の多い場合というので、おのおの違いますけれども、大体におきましては、われわれは必要最小限度の施設等は提供するつもりでおります。今のところはつきりこうだと限定はできませんけれども、大体今までに提供したもので大きなものは、もう終了しておると考えております。
  235. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もうこの辺でいいかげんに断るという気にはなりませんか。
  236. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今申しました通り、大体大きなものは一応でき上つた考えております。今後はその編成に応じまして、いらない部分は返還されるし、いる部分は追加されることがありましようが、これは大体ごく小規模の移動で済むであろうと考えております。
  237. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこでこの基地の問題について新たな要求が、もうあまりないと言われますけれども、内灘の問題もまだあれほどごたごたしておりますし、妙義、浅間の問題も残つておる。これからまた新しく問題が起つて来るであろうと思う。そういう新しい基地をきめる場合には、地方議会の議決を得るとか、地元住民の同意を得るとか、あるいは制限列挙主義によるとかいうことを考えてはおりませんか。
  238. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府としては、この施設及び区域を最小限度必要なものを提供することは、条約上の義務であると心得ております。従いまして、その範囲においては、どうしても提供する必要があるのでありますが、これにつきましては、今後とも地元の意向等もよく聴取しまして、できるだけ摩擦等のないように善処をいたすつもりでありますが、それ以上のことはただいま考えておりません。
  239. 武藤運十郎

    ○武藤委員 吉田総理に重ねて伺いたいのですが、先ほど川崎君からも質問がございましたが、首相は先般参議院におきまして、わが党の松本治一郎氏の質問に対しまして、千四百億くらいの保安隊軍隊ではないのであつて、これを軍隊と言えば物笑いだということを言われて、今非常に議論があつたのでございますが、私はただこれは茶飲話ではないと思う。千四百億という数字を中心としまして物笑いになるかならないかということが問題になつた。だからこれはただ単に、あした資料を持つて来て出しますということでなくて、総理大臣から、あした資料を持つて来て、同時に答弁をされるということを確かめておきたいと思うのでありますが、いかがでありましようか。
  240. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろん資料を出しつぱなしにはいたさないつもりであります。しかし日本防衛費が千四百億、アメリカのごときは十八兆——正確なる数字の記憶はありませんが、明日数字をもつて説明をする。その場合に、自然、出しつぱなしではありません、説明をいたすことになると思います。
  241. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこでこの際お話の伺えることを伺つておきたいのですが、それならば、千四百億ぐらいでは世界の物笑いになるというのでありますけれども、どれぐらいあれば世界の物笑いにならない軍隊と言えるのでありましようか。金額を示してもらいたい。
  242. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま申した通り、アメリカでありましたか、十八兆という数字を出しておるのであつて、それに比べれば千四百億というのはあまりに小さい数字と言わざるを得ないと私は思います。大きな数字と言われれば、それも御意見であるが、私は千四百億は十八兆に比べれば小さな数字である。もし千四百億をもつて軍備ができるというなら、物笑いになるというのであります。
  243. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それはアメリカはアメリカ、日本日本でありまして、日本予算規模から申しまして、多いとか少いとかいうことは言わるべきものだと思う。その意味から言つて、一体物笑いにならないという、吉田首相考えておられる日本軍備というものは何億ぐらいであるかということを私は聞いておる。
  244. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはアメリカと比較して考うべきものであり、また日本予算の何パーセントでもつて問題になるべきものではないのであります。たとえば軍艦が何ぞうとか、飛行機が何機とかいう数字をあげて考えてみれば、千四百億では、軍艦一そうつくつてもそのぐらいはいるのであります。でありますから、私は物笑いになると思うのであります。
  245. 武藤運十郎

    ○武藤委員 大体吉田首相は、この間富士山麓で行われました大演習をごらんになつたでしようか。とにかく参加人員が七千五百人、車両が千三百台、重砲、高射砲三十門以上というようなものでありまして、同じように昔富士山のすそ野で行われました旧陸軍の師団対抗演習である。りつぱな攻防戦である。こういうものをごらんになるとよかつたと思うのでありますけれども、ごらんになつたでしようか。
  246. 吉田茂

    吉田国務大臣 見ません。
  247. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それではいずれ報告もあるでしようし、ニユース映画でもごらんになるといいと思うのですが、大体保安隊が通過しますと、沿道の住民は皆兵隊と言つている。兵隊さんが通る。兵隊さん、お茶をおあがりなさいと言つている。あんな兵隊をつくつても何の役にも立たぬと言う。保安隊に賛成している人も反対している人も、とにかく兵隊さんと言うことにはかわりがない。吉田さんに役票した四国の選挙民だつて、あれを見たら、兵隊さんと言うだろうと私は思う。こういうような、はつきり軍隊といわれているものを、なお吉田さんはこれは軍隊でないというふうに、いつまで言つて行かれようとするのでありましようか。
  248. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはいわゆる軍備を持たないという話で、兵隊というのは俗称であるから、ただちにこれが兵備なりということは私は言えないと思う。
  249. 武藤運十郎

    ○武藤委員 この大演習には米軍も見に来たそうでありますし、台湾の蒋介石のむすこの蒋維国というのですか、少将が来たそうでありますけれども、いかにこれがほんとうの演習であるかということを証明するものでありますが、台湾から日本政府が招聘したのでありましようか。
  250. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。報告によりますると、蒋維国は参観したそうでありますが、決して招聘したわけでもありません。これは私が聞き及ぶところによりますると、アメリカから帰国の途次か何かで寄つてみたということであります。はつきり申し上げておきますが、招聘したわけでも何でもありません。
  251. 武藤運十郎

    ○武藤委員 木村保安庁長官に伺いますが、ああいうふうな演習を、突如大規模にやつたのは、どういう意味でしようか。これから毎年定期にやるつもりか、それともMSAか何かに関係した示威運動みたいなものでありますか、伺いたいと思います。
  252. 木村篤太郎

    木村国務大臣 MSAとは全然関係ありません。この演習を施行した理由は、つまり保安隊が持つておりまする装備編制、この運営をいかにできるか、また訓練がどの程度にまで及んでおるかということを、実際に試験するために施行したわけであります。
  253. 武藤運十郎

    ○武藤委員 吉田総理に伺いたいのですけれども、かねがね保安隊外敵防衛のためではない、海外に派遣はしない、内乱、騒擾鎮圧のためだというふうに言つておられますが、それならば、あの富士山麓で行われましたような、ああいう大規模な方法によつて鎮圧をしなければならないような暴動なり、騒擾なりが起る組織なり治安状態なりが、日本に今あるのでありましようか。ひとつ具体的に伺いたいと思う。
  254. 木村篤太郎

    木村国務大臣 具体的にどういう反乱が起り、大擾乱が起るかという御質問でありますが、それは、われわれは今ただちに起るとは思つておりません。しかし、われわれといたしましては、いろいろなことを考え保安隊の運営ということをしなければならぬだろうと思います。各国の例を見ましても、不意に大きな反乱、騒擾が起り、またいわゆる集団暴徒の侵入ということもあるのでありますから、わが国の平和と治安を維持するということが、われわれといたしましては、一番急務だろうと考えております。その観点からいろいろなことを考えて、それに万遺憾のなきように、ふだんから準備しておきたいと思つてこういうことをやつておる次第であります。
  255. 武藤運十郎

    ○武藤委員 じようだんじやない。そんなのんきなことを言つて日本の財政というものは非常に乏しい、その中から二千億も金を出して、役に立つか立たないかわからぬものを、そういう必要があるかないかわからぬものを、われわれは予算をそんなにかける必要はあるまいと思う。何かそこに具体的に、今日起らなくても、近い将来に起るという具体的な治安状態なり組織なりがあるから、そういう立場でやつておるのじやないか。もしそれがないということならば、これは外敵を相手にして戦うためだ、軍隊だということにならざるを得ないと思いますけれども、その点をもう一度伺いたい。
  256. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。いろいろな情報もわれわれは入手してやつておるのでありまするが、今武藤君の仰せられますように、そういうことをやらなくてもいいじやないか。これはふだんからやつておかないと、どろなわ式に行かないのであります。不意に起つた場合にどうするか、われわれといたしましては、内地の平和、秩序を推持することが、第一の急務であろうと思います。これがくずれまするとき、ほかの施策は何も行われません。そういうことを考えますと、われわれといたしましては、いかなる場合においても、こういう準備をすることが何よりも急務であろうと考えております。どろぼうをつかまえてすぐその場でやるというわけには行かないのであります。だから、ふだんからそういうことをしておくことが、国家のために最も適当、妥当なることとわれわれは考えております。
  257. 武藤運十郎

    ○武藤委員 たいへん頼もしいのでありまして、そういうことであれば、この間木村さんが九州に行かれまして、こういう計画があるということを発表されたこともうなずけると私は思うのであります。九州でいろいろ新聞に発表しておりますところの、日本防衛計画というものを——名前は何でもいい、防衛計画でも、警備計画でもいいですし、それが五年でも七年でもいい、ひとつこの点もこの際ぜひ明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  258. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点については、先ほども申し上げました通り、私といたしましては、将来の国内治安情勢の変化に伴つて、どう警備力を増強すべきかということについて、私は常に考えておるのであります。ただ、これらの計画を立てるにつきましては、ただ保安庁だけではいかぬのであります。ことに経済審議庁あるいは大蔵省、通産省、運輸省、あらゆる部面の人たちと総合して計画を立てなくちやいかぬのであります。そこで私は、この段階に至る前に、木村個人の一つ見当をつけておく必要がある、そこで事務局に対して、試案を作成させたのであります。これが、不完全なものでありまするが、一応できましたので、私はこれに基いて、将来あるいはできるかもしれぬと考えておりまするが、かようなものは今の段階においては、きわめて不完全な一試案にすぎないのであります。その際に随行の記者諸君にも言つた。これは試案であるから公表できない、諸君にも見せることはできないと言つて、私は公表しなかつたのであります。従つてこれは庁内の庁議の確定したわけでもありませんから、これは発表することは差控えたい、こう言つたのであります。
  259. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はそれでいいと思う。別にほかの関係省と協議をしないものであつても、保安庁独自の立場において案をつくるということはあたりまえだ。あれだけの大きな組織を持つておるからあたりまえ。ぼくはあんなものはいらないと思いますが、ある以上は千億、二千億の予算を使つておるのであるから、計画を立てるのは当然であつて、なければ怠慢だと思う。試案でもいい。この案ができておることは間違いないのであつて、緒方氏もあるということを言われておる。吉田さんにも一部提出されたそうでありますけれども、ここで吉田さんに伺いますが、吉田首相の手元に、木村さんから試案が六月四、五日ころ、あるいは五、六日ころに出ておりますかどうか、総理に伺いたいと思います。
  260. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは私の手元に達しましたが、しかしこれは私の主管事項でもなければ、関係省もあるものでありますから、私は見ずに、そのまま官房長官か何かに下げて、関係庁と相談したらよかろう、研究させたらよかろうと言つたようなわけであります。
  261. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、一応お受取りになつたけれども、まあ関係庁でよく調べろということでお渡しになつたわけですか。そこで木村さんに伺いますが、木村さんは飛行機で帰つて来られて、新聞によりますと、そんなことは言つた覚えはない、男なら対決するということを言つておられまして、いよいよ内閣記者団の立会いのもとで、随行した記者団と対決した結果、ああいう防衛五箇年計画という表題の言葉は使わなかつた、しかし内容はあの通りであるというふうに言われたそうでありますが、それは事実でありますかどうか、伺いたいと思います。
  262. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。防衛五箇年計画なるものを策定したということはありません。また防衛五箇年計画なるものを発表した事実はないのでありまして、新聞記者諸君に対して言つたのは、自分はいわゆる警備計画を立てておるが、それは公表することができない、これであります。そこで東京に帰つて来まして、新聞記者諸君との対決では、防衛五箇年計画なるものは諸君に発表した事実はない、新聞記者諸君とは話したことはあるが、これは、ある新聞に私の問答が出ております、その問答の一部は事実であるから、私は事実である、こう言つたのであります。何も防衛五箇年計画を策定したとか、あるいはこれを公表したということは、私は断じてない、こう申したのであります。
  263. 武藤運十郎

    ○武藤委員 内容というのは、陸海空の兵力二十万程度、艦船十数万トン、航空機千数百機、うちジエツト機を含む。服務年限二年を三年にするというようなことが明らかに各紙に出ております。これは木村さんが、私の腹としてはこういうものだということを、今言われたことに該当するのだろうと私は思う。私はここで木村さんが、防衛五箇年計画として発表したのだろうということを追究するのじやないのであります。木村個人でもよろしい、保安庁長官個人でもよろしいが、その木村氏の考えておられた案というものをこの際——別にそれが政府案だというのじやありません。新聞に発表した程度のものは出してもらいたい。新聞記者に言うことがどうして国会で言えないのか、非常に国会をばかにしているものだと私は思う。ぜひその程度のものは出してもらいたい。
  264. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その数字はどこから出たかわかりません。私は男としてはつきり申し上げます。さような数字を断じて申しません。その数字はどこから出たか私は知りたいのであります。私は申しません。
  265. 武藤運十郎

    ○武藤委員 これは六月九日の読売にもありますし、六月十日の朝日にも載つておる。いずれもこの数字があります。この数字を前提として、あなたは新聞に出ておる内容はあの通りだということを言われて、さらに二十万にするのには徴募制によるほかはあるまいということをつけ加えられたそうだ。一体その徴募制というのはどういうことであるか伺いたいと思う。
  266. 木村篤太郎

    木村国務大臣 徴募制云々は、これは志願制にすると限度があるのであります。そこで現在のあらゆる角度から考えて、十二、三万ならば志願制によつて行けるのであります。それ以上二十万もいるようなことであれば、徴募制にせざるを得ない。そういうことはわれわれは考えていないという意味であります。あの記事なんかも、まつたく私はどうしてああいう記事になつたか知りませんが、ふしぎに思つておるのであります。私の趣旨はそういうものであります。
  267. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで、木村個人の案でも何でもいいと思うのでありますが、今触れられたのですが、志願制にするならば、二十万はちよつとむずかしい。これは憲法を改正して徴兵制にしなければなるまいと思うという片鱗を示されたのでありますけれども、この年次計画については、どういうお考えでございましたか、伺いたいと思うのであります。これは別に学者が研究する案と違いますから、現実の政権を持つておる政府の木村さんのお考えであるのでありますから、一年でできるはずはない。これが何年で予算との関係でやつて行くのだというその年次計画について、どのくらいのことをお考えになつてつたか。ひとつぼつぼつ聞かしてもらいたい。
  268. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は重ねて申し上げますが、この案は一試案にすぎないので、まだ保安庁の庁議としても確定したわけではありません。私は当の責任者でありますから、考えは持つておりますが、この機会において述べることは差控えましよう。いずれまた機会がありますし、十分これは申し上げたいと思います。
  269. 武藤運十郎

    ○武藤委員 絶好の機会じやないか。発表しなければならぬ義務がある機会じやないですか。それではいつ発表するのだ。どうして言えないのだ。もう一度伺いますが、保安庁の中に制度調査委員会というものがあるそうでありますが、これはいつできましたものですか。
  270. 木村篤太郎

    木村国務大臣 できたのは昨年の八月だそうであります。しかしこの制度調査委員会というのは、まつたく部内の職員をもつてつておるものでありまして、外部のもとは全然関係がないのであります。
  271. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そんなことを聞いているのじやない。ぼくの質問に答えればいいのであつて、よけいなことを言わないでもいい。
  272. 木村篤太郎

    木村国務大臣 どういうことを言えばいいのですか。
  273. 武藤運十郎

    ○武藤委員 外部の人が入つていますかということは聞いていない。いつできましたかということを聞いたのであつて、外部の人が入つていないということを言うのは、あなたは思い過ぎをしているからよけいなことを言つておる。聞いただけのことを答えなさいというのです。
  274. 木村篤太郎

    木村国務大臣 よろしい。それでは言つただけのことを言いましよう。
  275. 武藤運十郎

    ○武藤委員 これは初め防衛委員会という名前をつけておつたそうでありますが、そうでありましようか。かえたとすればいつかえましたか。
  276. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さようなことはありません。
  277. 武藤運十郎

    ○武藤委員 構成メンバーは、委員長が増原次長で、委員は官房長、保安局長、その他の幹部、第一幕僚長、第二幕僚長などであるそうでありますが、そうでありますか。
  278. 木村篤太郎

    木村国務大臣 委員は増原次長と第一幕僚長、第二幕僚長の三名であります。
  279. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで、この制度調査委員会というのは、保安庁の中に一室をとりまして、制度調査委員会という看板を堂々とかけて、二十人からの事務局員を持つてつてつておるそうですが、これは何をしておるのですか。このする仕事を聞きたい。
  280. 木村篤太郎

    木村国務大臣 看板をかけておることは事実であるそうです。職員はそんな数ではありません。もつと少いのです。それから研究の内容は、世界各国の治安機構、軍隊等の制度組織及び運営の要領等についての資料を収集して、これを検討して、保安庁の制度及び運営上の参考にすることであります。第二は国の内外に生じた内乱及び大規模の騒擾について、その事例を収集してよくこれを検討し、警備の基本計画の策定の参考にすることであります。
  281. 武藤運十郎

    ○武藤委員 大体その仕事の内容は、今言われたのでありますけれども外国軍隊やそのほかのいろいろな事項について資料を収集し、あるいは研究をすると言われるのでありますが、これも木村さんが九州へ行つて新聞に発表されたことでありますけれども、この仕事というのは、第一に、予想される内乱や、これに付随して起り得る干渉などの規模、様相などの想定、研究。第二に、これに対して最小限度の実力をもつていかに対処するかということの警備計画わが国から見てどの程度予算防衛力の漸増に振り向けられるか。第四が、何年くらいで完成できるか。しなければならないか。こういうようなことも研究されるのではないでしようか。
  282. 木村篤太郎

    木村国務大臣 研究内容としてそういうことも研究しております。
  283. 武藤運十郎

    ○武藤委員 この間の、木村さんが、でき上つて総理の手元へ持つてつたという案は、これはここで仕上げたものであるかどうか伺いたい。
  284. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。これはここでやつたのではありません。
  285. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どこでやつたのでしようか。
  286. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一部局でやらせたのであります。制度調査委員会ではありません。
  287. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どこの部局でやらせましたか。
  288. 木村篤太郎

    木村国務大臣 保安局の一部の人にやらせたのであります。
  289. 武藤運十郎

    ○武藤委員 保安局長が来ておるようでありますから、保安局長を出してください。  保安局長に伺います。あなたのところで木村さんの持つてつた試案をつくられたそうですが、どういう内容であるか説明をしてください。
  290. 山田誠

    ○山田説明員 お答えいたします。私は木村長官の命を受けて、その案の立案に参加いたしました。その内容はただいま……。
  291. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どうして言えないのだ。正式な予算制度の中へ入つて、月給をもらつてつて言えないということはないじやないか。じようだんじやない。言わしてください、どうして言えない。言えないことはないじやないか。どちらでもよい。木村さんでもよい。二人でもよい。
  292. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まだ庁議で確定したものでありません。庁議で決定いたしますれば正式な案でありますから、これは堂々と公表いたしますが、一試案にすぎない。
  293. 武藤運十郎

    ○武藤委員 確定しないものをどうして新聞記者に発表しているのだ。出しているじやないか。
  294. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申し上げます。試案の内容はごうも発表しておりません。
  295. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どうしてそれが言えない。どうして発表ができないのか。
  296. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは今申した通りであります。
  297. 武藤運十郎

    ○武藤委員 案がすでに保安庁ででき上りまして——保安局というのは公の局だ。これは保安庁規定している局である。この局で案ができまして、責任長官の木村保安庁長官のところに出て、それが最高の責任者である吉田首相のところへ行つている。そういう案がどうして国会で発表できないのか。発表できないとすればその理由を言つてもらいたい。私は別に政府案として要求しているのじやない。政府案でなくてもよいのだ。政府案でなくてもよいからその理由を述べてもらいたい。
  298. 木村篤太郎

    木村国務大臣 重ねて申し上げます。これは一試案にすぎないのであります。しかもこれは庁内の協議にも出ていないのであります。私は保安局の一部局員について、自分の心づもりで、まず案を立ててみたまえというので立てさしたのであります。これは何ら決定案ではございません。
  299. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでよろしい。それでよろしいから内容を示してもらいたい。(「必要がないじやないか」と呼ぶ者あり)必要がある。——それではここで緒方副総理に伺いたいのでありまするが。その計画案というものは保安庁では確かにできておるようであります。できておるようでありまするが、ほかに大蔵省なり運輸省なり経審庁なりで、どれかほかの立場から警備計画の案を立てておるところがありますかどうか。あるのは保安庁だけでありますか。この点を緒方副総理に伺いたい。
  300. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私の知つている範囲におきましては、ほかのところで警備計画案を立てておるところはないと考えます。
  301. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、できているものはこれだけであつて、これは吉田さんの手元へすでに出ておるのでありますから、私ども考えでは、今は木村さん試案だ試案だと言つて逃げておられますけれども、いつこれが政府案として閣議に出されるかわからないというところまで来ておるのだと思います。私はぜひ出してもらいたいと思うのでありまするが、これはどうでありましよう、委員長に御相談でありますが、委員長から何とか木村長官にうまく話をしてもらつて出してもらうという方法はないでしようか。
  302. 尾崎末吉

    尾崎委員長 木村長官に伺いますが、ただいま武藤君から御希望がありますが、その御意思がありますか、どうですか。
  303. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申し上げます。先刻申し上げました通り、こういう計画を立てるのには、まずもつて関係省でありまする経済審議庁あるいは大蔵省、通産省、運輸省その他とでほんとうにこの計画を立てるべきであるのであります。その計画を立てる自分の心構えとして一応の何はひとつ立ててみたいという試案であります。かような試案は私は今公表すべき時期ではない、こう考えます。いずれこれは決定いたしますると皆さんの御批判をお願いいたしたいと思います。
  304. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでは吉田総理に伺いたいのでありますけれども、もし木村氏の……(「総理はいないじやないか」と呼ぶ者あり)いないのですか、それではあすにいたしましよう。——それではこうしましよう。この問題は非常に重大な問題であります。あくまでもこれははつきりしたいと思います。場合によりましたら随行された新聞記者も四社か五社ございまして、人の名前もわかつております。それをここに証人として出してもらう、そうしてはつきりしてもらいたい。こういう手続をとりたいと思います。首相も出ておりませんから、この問題は留保しておきます。  私はそれでは今度は岡崎外相に伺いたい。この間岡崎さんは、本会議の議場におきまして安平鹿一君の質問に対して、内灘のごたごたしたのは、接収反対は、あれは外部からの扇動である、新聞に出ておつた、写真まであるということを言われまして、これは勝負がついていない。それでひとつ伺いたいのでありますが、外部からの扇動を具体的に示してもらいたい。どういう扇動があつたか。個人であるか、政党であるか、だれか、どの政党か、ひとつはつきりしてもらいたい。
  305. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外部からの扇動という言葉が悪ければ言い直しますが、要するに私が申しておることは、地元の人ばかりでなくして、外部からも人がたくさん入り込んでおる。そういうことを言おうとしたのであります。たとえば私の承知しておるところでは、京都の方からも来ておる。あるいはほかの方面からも人が大勢来て、旗を立てたりしていろいろやつておる。そのことを申そうとしたのであります。
  306. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それはたいへん違うのであつて日本語で言えば、扇動と、旗を立つて外部から来るというのとはたいへん違う。だから扇動という言葉を使われたら、それが悪かつたらと言われておりますが、そういうなまやさしいことでは困るのであつて、扇動という言葉を使われたのは間違いがない。日本語で扇動と申しますのは、本人の意思がないのに、外から無理やりにけしかけてやらせたということであります。その日本語でいう扇動について、だれがそういうことをやつたか。外部から来た人がやつたか、どの政党がやつたか、はつきりしてもらいたい。
  307. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の申すのは、要するに地元の人たち以外に外部の人がたくさん来て、それで一層混乱がひどくなつた、こういう意味のことを申したのであります。
  308. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう一つおつかけて聞きますが、新聞に出ておつたというのは、どの新聞に出ておつたか、写真はどの写真であつたか、これを聞いておきたい。
  309. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ここに今持つておりませんから、はつきりしたことは言えませんが、大体東京の新聞には出ておつたと思います。
  310. 武藤運十郎

    ○武藤委員 何が出ておつたか、扇動しておるところが出ておつたのか、旗を立て、外部から入つてつたのが出ておつたのか、何が出ておつたのか。
  311. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 たとえば地元でないと思われるような旗を立てた人たちの集まつておる群れがあり、またその他にも、記事を見ましても、そういう趣旨の記事があつたということであります。
  312. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それではそういうふうにひとつ会議で訂正してもらいますか。これは本会議で申したのでありますから、もしそういうふうに釈明されるということになれば、この問題はここで私は質問を打切りたい。どうでしようか。
  313. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いずれそれは議長等の意向もありましようから、その上で善処いたします。
  314. 武藤運十郎

    ○武藤委員 内灘の問題でもう少し伺いたいのでありますけれども、大体政府の方では、内灘の強制接収をするということを、六月二日の閣議できめまして、十二日の閣議でこれを再確認をしまして、十五日からは必ずこれを使用する、やむを得ない。補償金は三億六千万円ですか、三億何千万円かを出します。こういうふうに新聞に発表しておつた。強制接収ということは、申すまでもなくこれは私有地に関することだと私は思う。そんな簡単に六月二日や十二日にきめて、それを十五日から一体どういう方法で強制接収をするということを考えておつたのか。かりに土地等の使用等に関する特別措置法によつても、土地収用法を準用しなければならぬ。そうなりますれば、緊急使用によつても三十日以上かかる。それにもかかわらず、十五日から強制収用をするというようなことを言われたのは、これは住民を恐喝するようなものであると私は思うのでありますけれども、どういう根拠から、どういう計算から言われたのであるか伺いたい。
  315. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 十五日から試射を開始するということを言つておりますが、十五日から強制収用するということは言つておりません。現に民有地は、約十町歩程度と聞いておりますが、これはただいま使用しておりません。いまなお円満に解決するように交渉中であります。
  316. 武藤運十郎

    ○武藤委員 民有地につきましては、強制収用する場合におきましても、県の収用委員会の裁決を経なければならない。それから土地細目の公示とか、当事者の協議とか、いろいろなことを経なければならぬのでありまするが、第一に一番重要な県収用委員会の裁決を経なければならぬけれども、全県反対をしておられます場合におきまして、ことにこの内灘の場合におきまして、県収用委員会の裁決を得られる見込みがあるかどうか伺いたい。
  317. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは私にはわかりません。
  318. 武藤運十郎

    ○武藤委員 わからないのに、強制収用をする、強制収用をすると言うのは、一方でげんこつを振り上げておどかしておきながら、一方で金を出すからということで、非常に住民をおどかしたり、懐柔をしたりするというふうなやり方であると思うのでありますけれども、こういう方法で今後とも新しい基地についておやりになるつもりであるかどうか、伺いたいと思う。
  319. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府は、たびたび申しておりますように、強制的な使用はでき得るだけ極力避ける、こういう方針で行つておりまして、現に内灘につきましても、この民有地については、ただいま申した通り使用をいたしておりません。円満に話合いがつくことを希望し、かつこれを期待してやつておる最中であります。従つて、ほかの問題につきましても、強制的に使うということは極力避ける方針であります。
  320. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで、基地について出される見舞金というものがあるようでありますけれども、見舞金というのは、どういう性質のものでありますか、伺いたいと思います。
  321. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは普通、たとえば九十九里というようなところで漁業をやつておりますときに、一部が演習等でできない場合には、それを計算して、漁業の補償を出します。しかし内灘村のごときは、そのほとんど大部分といつていい畑地であるとか、あるいは海の方であるとかというところが使用できなくなるのでありますから、それに対しては、その土地の事情を考慮しまして、特別のはからいをすることがあり得るわけでありますが、これは閣議等でも、でき得るだけ前例にしないという建前をとつて来ております。
  322. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そういう補償につきましては、補償要綱というものが何か閣議了解事項とかいうのであるようでありますけれども、この補償要綱の内容を見ますと、実に大部なものである。ちようど法律のようにできておりますが、こういう大部のもので何パーセント、何十パーセントまでこまかく借上料、あるいは損失補償、そういうものをきめておる。どの条項によつて見舞金というものは出すのでありますか。
  323. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは補償でなくて、見舞金でありまして、内灘のような特別の場合に出すのであります。
  324. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、私はよけい出すのはちつともかまいません、けつこうでありますが、反対が強かつたり要求が強かつたりしますと、出すことになる。黙つておる者は、正直者がばかを見るので、いつまでももらえないということになる筋合いのものでありましようか。標準をどこに置くのか、こんなにこまかく補償要綱をきめておるのに、見舞金というものだけは全然野放しで、かつてほうだいの裁定が行われるということであるようでありますけれども、何も標準というものはないのでありましようか。見舞金を出す標準をひとつ承りたい。
  325. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは先ほど申したように補償とは性格を異にいたします。そこで、それは実情に応じて、必要があれば、やるのでありますが、政府としても、見舞金というような種類のものは、できるだけ出したくない考えでありまして、ただ内灘のごとく、ほとんど生計のよつて立つ大部分を奪われるというような事情にあります場合に、特に考慮してこういうものを出すということになる。これも最小限度であり、またできるだけほかには範囲を拡張したくない考えであります。
  326. 武藤運十郎

    ○武藤委員 例をあげて言いますと、内灘の場合は五千五百万円、千百戸ばかりございますから、一戸当りが五万円、人口は五千七百五十人で、一人当り約九千円ということになると思う。ところが九十九里の場合には、多分九千万円だつたと思う。そこで五千戸でありますから、一戸当り千八百円、人口二万八千人として一人当り三百円、三十分の一ばかりでありますけれども、この内灘の場合と九十九里の場合の違いの三十分の一というのは、どういうところで標準が違うのでありましようか。
  327. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 九十九里は、漁業が全然できないというわけではないのでありまして、漁業を原則としてやつておるのであつて、ただ演習上支障がある場合は、漁業をやれないということになります。従つてそういう事情になりますと、特別調達庁から実地の調査をし、かつ水産庁等から実地の調査をして数字を出すわけであります。
  328. 武藤運十郎

    ○武藤委員 納得できませんが、この見舞というのは一ぺんぽつきりでありましようか、毎期、年度ごとに出すものでありましようか。
  329. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 毎年出すつもりはございません。
  330. 武藤運十郎

    ○武藤委員 いろいろ重要な問題がございますが、総理もおりませんし、時間の関係もありますから、あしたに留保いたします。もちろん時間の範囲内であります。  私は緊急なものが二つございますから、簡単に質問をしたいと思います。  第一には綱紀粛正の問題である。この内閣は、成立以来盛んに綱紀粛正ということを吉田総理大臣初め唱えておる。これは私どもは賛成だ。賛成であるが、これをはつきり実行するために、実行する形を見せてもらいたい。私の見るところでは、外国産のこんにやく粉の輸入に関連をいたしまして、通産省、あるいは大阪通商局に汚職の嫌疑があると疑うべき確かな事実がございます。その点について、首相はおられませんが、行政管理庁長官がおりますか。——これがはつきりしましたら、あくまでもこれを徹底的に処置をするというお考えであるかどうか、まず第一に伺いたい。
  331. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 税関の関係につきましては、大蔵省の所管でありますが、さような事実があれば、厳重に処断いたします。
  332. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 まことに恐縮でありますが、ただいま事務当局と何も打合せておりませんので、後刻調べてお答え申し上げます。
  333. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでは通産大臣に伺いますが、外産こんにやく粉の輸入というものは、二十七年十一月四日、農林、通産両省の申合せによりまして、二十七年度以降二十八年三月までは輸入を許可しないという方針であつたことは、間違いありませんか。
  334. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 こんにやく粉の輸入につきましては、昨年の十一月、通産省と農林省の協議の結果、本年の三月末までは輸入を認めないということにきめております。
  335. 武藤運十郎

    ○武藤委員 しかるにいろいろな名目によりまして、たくさんの外国産こんにやく粉が輸入されておる。これはどういう方法で、何ゆえに輸入をされたものか、説明をしてもらいたい。
  336. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私も昨日このことを聞いたのでありますが、調査の今までの段階におきましては、神戸にトライドタロウという名前で約三十トン入つております。これは通産省といたしましては、通関しておりません。そのままに押えて、輸入の経緯などについて今研究中でございます。
  337. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どうして入つたか、たくさん入つたのはどういう方法で入つたかということを聞きたい。
  338. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 どういうふうにして入つたかということを、今研究しておるのでございまして、わかりませんから、お答えできないわけであります。
  339. 武藤運十郎

    ○武藤委員 たくさん入つておるのは……。
  340. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 まだほかに入つております。それを申し上げますれば、四日市などに到着しましたものであります。これは、薬品でモニユーフエンという名前で、二軒の商社に対して外貨を与えておるようであります。ところがその外貨は、ほかのいわゆる草根木皮の日本の漢方薬の原料になるというので、たくさん書いてありましたが、その与えた外貨は、ほかのものは買わないで、このモニユーフエンというものを、これはよく調査がついておりませんが、数十トン輸入しておるらしいのであります。これも今研究中でございます。
  341. 武藤運十郎

    ○武藤委員 研究中だといわれますが、ほかの外貨をこれに流用をして、アタツチド・シートというものを書きかえて偽造しておる。何らかの方法が行われておることは間違いない。それが省内で行われましたか、あるいは業者がやつたものか、そういう点については、お調べはまだございませんか。
  342. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これは、私が聞いております範囲におきましては、省内であるか、業者であるかよくわかりませんが、どうもあとの方は輸入業者が作意したもの、初めの方はどうして入つたのかわかりませんが、今、調査中でございます。
  343. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そういうふうなことになりますと、これは文書偽造で告訴するなり、あるいは外国為替管理法違反、関税法違反として告発をするという建前をとらなければならないと思うのでございますけれども、そういうふうな方法をとる御意向があるかどうか、伺いたいと思います。
  344. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 調べました結果、文書偽造であるとか、あるいは詐欺行為に触れるような事実があれば、何とか処置するつもりであります。
  345. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もちろん断固として業者を処分するのはけつこうですが、通産省当局といたしましては、こんにやく粉の輸入はしないということをきめておきながら、少し名前をかえて輸入を申請して来る。それを専門の立場にある者がうつかりして知らなかつたということは、非常に重大な過失だと思う。こういう意味におきまして、その責任をとられなければならないと思うのですが、それについて、業者だけを処分するというような考えではなくして、通産省自身はどういうふうに考えておるか伺いたい。
  346. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 先ほど申し上げました通り、よく事実を調べまして、法に触れることがあるならば、省の内外を問わず、私は適当な処置をとるつもりであります。
  347. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、いつまでに調べができて、適当な処置をとられるのか、その大体を伺つておきたいと思います。
  348. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 とにかく事重大でございまして、違法のことを違法処分にするには、相当慎重にしなければなりません。できるだけ早くと申しますが、至急に調査を進めて、事実を明らかになりましたら、さつそく処置をとりたいと思つております。
  349. 武藤運十郎

    ○武藤委員 同時に希望しておきますが、外貨の割当につきましても、非常に不明朗なものがあり、疑うべきものがあると思うのですが、これもあわせて至急御調査願いたいと思います。  それから調査が片づきますまでは、輸入は許可しないという方針をとつてもらえますかどうか、伺いたいと思います。
  350. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 むろんこんにやくにつきましては、そういたします。
  351. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで今度は問題をかえまして、もう一つ伺いたいのですが、これは厚生大臣に伺いたい。今全国の癩患者は、癩予防法の改正案に非常に反対いたしまして、ハンストをやつておる、あるいは作業拒否をやつておる、これは事非常に重大だと思う。これについて、一体厚生省当局はどういう対策を持つておるか。すでに全園におきましていろいろ問題が起つておると同時に、村山全生園に全園の代表者が集まつて協議をしておる状態でありますが、適当な処置をとりませんと、非常に重大な不祥事が起るかもわからない。これに対する対策をひとつ伺いたいと思います。
  352. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 癩患者の方々が、癩予防法に対して、政府が何らかの改正案を本国会に提出するという予想のもとに、ただいま仰せのような動きがありますることは事実であります。ただいま熊本の菊池恵楓園、それから多摩の全生園、あるいは武藤さんのところでよく御承知だと思いますが栗生の楽泉園、これらにつきましては、実は政府も憂慮いたしておりますが、何分にも癩患者のことでありますから、何とか手を尽して、そういうことのないように、政府の意図も、従来係員を派遣して周知していただき、ハンスト等のことのないように実は努力いたしておる次第であります。なお今後とも、作業拒否に対しましては、これは癩患者の日常に関係がございまするので、職員等が非常勤務をいたしますとか、あるいは将来、場合によりましては、職員を雇い入れるとか、あるいはハンストの重症者に対しましては、重症舎に入れまして手当をするとか、万全を期しております。なお同時に御心配になつております癩予防法改正案等に対しましては、ただいま政府におきましては考慮中でありますから、政府の意図するところをよく了解していただきまして、善処いたしたいと思つておる次第であります。
  353. 武藤運十郎

    ○武藤委員 癩予防法の改正につきましては、すでに厚生省案が前国会に出ましたけれども、解散によつて流れてしまつた。その原案はあるわけであります。その原案が、再びあのままで国会に出るのではたいへんだということで反対をしておる。今伺いますと、まだ成案は得ておらないというお話でございますが、そうでありまするならば、この前出された案は一応廃案にしまして、新しい角度に立つて、患者の要求も十分にくみ入れたところの案をお出しになるつもりであるかどうか、あるいはまた前の案通りのものをお出しになるつもりであるのか、また本国会に出さないつもりであるのは、出すつもりであるのか、こういう点を厚生大臣から伺いたいと思います。
  354. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 前国会に政府の案を出しまして、廃案になつたのでありますが、当時は、大体委員会等において御了承になつたのであります。但しその後、前国会に出しました案につきましても、検討を要しまする点もございます。たとえば、この癩患者は特殊の状況に、社会環境の中にありますから、秘密の保持が非常に大事でありますので、それらの点については、たとえば都道府県知事に入所、退所について報告いたすようなことについては、これは考慮をいたし、秘密の保持をはかることが適当ではないか、あるいはまたその他所長の処分権でありますが、これらについても、できれば仰せのような趣旨で善処いたしたい、なおまたこの所内の厚生の問題、あるいは福祉の問題、これらの問題につきましては、できるだけ善処いたしたいと思い、考慮中であります。従つて本国会に提案いたすかどうかは、これは委員会等の意向もございますし、よく各委員の意向を勘案いたしまして善処いたしたいと考えております。
  355. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、すでに御存じでありましようが、癩患者の希望しておりますのは、患者並びにその家族の強制検診の問題、強制入所はあくまでも納得勧奨で行い、非人間的な強制収容はしない、それから患者を犯罪人扱いにせず、逃走罪、無断外出に対する罰則、人権侵害である患者の登録制、園長の懲戒検束権、苛酷なこういうふうな予防法、それから秘密保持に関した問題に等つきまして、患者はもう少し患者の人権を考えてもらいたいということを言つておるようでございますが、ただいま私が申し上げましたことは、患者の要求でもございます。これについて、厚生省がもし今国会に案を出されるとするならば、御考慮がいただけるというふうに解釈をしてよろしいのでありましようか。
  356. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいま御指摘になりました点は、主として患者の方々からの希望であり、またいろいろ問題になつております点でございますが、ただいま仰せ通り、それを全部入れますかどうか、ただいま検討中であります。但し強制検診等につきましては、これはもう早期検診をいたしまして、そうして癩患者は、御承知の通り癩の特殊性から、どういたしましても隔離ということが伴うものであります。これは学説等もいろいろありますが、そういうことを申し上げる時間がありませんから、ただ隔離をいたす、従つて入所をしていただく、それに対しまして、まずもつて患者に対しては検診をして行かなければならない。検診を自発的に受けていただけばいいのでありますが、どうしても検診を受けていただけない場合におきましては、いわゆる公共の福祉と社会予防上の見地から、予防隔離を受けていただかなければならない。但しその際におきましても、秘密保持ということのお話がありましたが、夜間検診をやるとか、あるいはまたこれが町とか村の話題になりませんような処置をとつて行く、これは、法律は御承知でありましようから御説明申し上げませんが、強制検診と申しますけれども、これは言葉が当らぬと思うのでありまして、これは十分考慮をいたしてやりたい。但し検診をどうしても受けないという際において、法制上根拠がありませんと、癩の特質上、あるいは予防上、あるいは公共の福祉に反することになるのでありますから、最小限度のことはいたしたい。なおまた所長の職務について、徴戒、検束のお話がありましたが、検束というような意味を、従来の考え方で、たとえば監禁をいたしますとかいうふうなことは、これはできるだけよしたい、かように考えております。その他仰せのことにつきましては、十分考慮をいたしますが、但しただいま仰せなつ通りのことを、政府がかわつて出すということにつきましては、まだ審議中でありますが、御趣旨の点は十分了承しておきたいと思います。
  357. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで最後に伺いたいのでありまするが、今厚生大臣から数回にわたつて述べられたことは、私は非常に感謝にたえないと思う。そこで癩患者が全国十箇所の園から、療養所から代表者がみな村山に集まつております。そして地元の園で行われておる就業拒否や、あるいはハンストについて、非常な心配をしておられる。これは、どうしても早いところ何とか名目をつけて、やめさせなければならぬと私は思うのであります。それについて、ただ漫然と善処したいというお言葉ではなくて、この際大臣が村山の全生園に行かれまして、今この国会で私に答えられましたような趣旨のことをお答えになれば、これで私は一応この問題は収まると思うのであります。全部の解決ではありませんが、収まると思う。そうしませんと、この癩患者が厚生大臣の部屋に陳情に来るというような不祥事も起らないとも限らぬ。そういうことになりましては、やはりあまり感心しないことでございますから、これはこの際厚生大臣がお出ましになつて、諄々とお話をくださるということが一番いいと思うのでございますが、ひとつ見解を承りたいと思う。
  358. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいまお話がございましたが、主として癩患者の各地からの申入れは、癩予防法に関して、癩患者の諸君が考えておられることを直接大臣、あるいは政府に申したいというお話でありますが、癩患者の諸君の希望のところは、大体あるいは委員を通じ、あるいは陳情書を通じ、承知いたしております。従つてその承知いたしておりまする点について、できるだけのことを考慮いたして行きたいと思つて研究中でありますので、癩患者の諸君が直接面会を求めるという趣旨は、ただいたずらに会うということでなくして、癩患者の諸君の意図を伝えたいということでありますので、その意図は、ただいま先生の仰せによつても大体承知いたしておるのであります。従つてただいま国会開会中でありますから、重大なる国務を持つておりますので、今参りますことはどうかと思いますが、しかもハンストとかなんとかいうことは、これは一日もおろそかにできることではありませんから、どうか諸先生方の御助力も借りて、できるだけ政府の意図をお伝えくだすつて、こういうようなことが、早く収まるようにいたしたい。  なおまた私といたしましては、直接参ることができませんので、衆議院が済みましても参議院がありますから、できるならば、私のかわりにだれか行つてもらおうかとも考えておりますが、諸先生の御援助もいただきたいと思つております。
  359. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、どうしても大臣がおさしつかえがあれば、次官でも局長さんでも私はいいのではないかと思う。とにかくほんとうにまじめに、やつかい者扱いをしないで、この問題を扱つていただきたい、まじめな問題だと私は思う。どうかそういう意味におきまして、迫つておる問題ですから、私はあす村山に行くつもりでございますけれども、どなたか行かれるようでしたら、御一緒に参りたいと思います。どなたでもけつこうであります。ひとつ大臣に約束をしていただきたい。大臣が行かれなければ、これは課長さんではしようがないと思うから、局長さんから上の人を一人やつていただきたいと思うのですが、この際、ここでひとつ大臣から御約束をいただきたいと思います。そうして私の質問を終りたいと思う。
  360. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 できるだけさようにとりはからいたいと考えております。なお申し添えておきますが、癩患者については、決して軽率に考えておりません。まじめに考えております。
  361. 尾崎末吉

    尾崎委員長 福田昌子君より関連質問のお申出があります。一問に限るということでありますから、これを許します。福田昌子君。
  362. 福田昌子

    福田(昌)委員 癩患者の意見であるだけに、軽率には考えていないという御答弁でございましたが、当局とされては、当然だと思うのであります。しかし現実は、はなはだこれを軽率に取扱つておられるという感じがするのでございます。患者自体が村山の全生園に集まりつつあるということも、看過できない点でありますし、これは伝染病としての予防上はもちろんのこと、また患者自体の治療上におきましても、傍観できない点であると思います。従いまして、私どもといたしましては、今日この事件を重大と考えまして、厚生大臣、またはその当局の次官ないしは予防局長あたりが、さつそく村山の全生園にも出かけまして、当局の趣旨を伝え、癩患者の意見を尊重するということにおいて話合いをつけていただくという御答弁があるかと思つておりましたが、今なおないということは、私どもとしてはきわめて遺憾に存じます。従いましてこのことは要望といたしまして、一両日の間に厚生省当局が積極的に癩患者にお会いいただきまして、厚生省御自体の意思をお伝えいただき、また癩患者の意思を尊重して対策をとつていただきたいと思います。もちろん患者の申しておりまする趣旨には、全面的に厚生当局として納得できない点もございましよう。しかし患者の申しておりまする秘密の保持、人権の尊重という点におきましては、厚生大臣の御答弁にもありましたように、十分患者の意思を尊重して御配慮いただけると思うのであります。また癩予防法におきましても、明治年間につくられました癩予防法を今日そのまま捨ておくということは、これは当を得たものでないことは申し上げるまでもございません。三月国会、解散国会で流れましたが、新しい癩予防法というものを御勘案であろうと存じますが、私どもといたしましては、早急にこの癩予防法の改正案を出していただきたいと思います。その中におきまして、ことにこの前の解散国会で流れましたらい予防法におきましては、秘密の保持とか、その他癩患者の人権の尊重というような点は多少欠けておりましたが、そういう点はただいま大臣の御答弁にもよりますように、修正していただけると思いますが、さらにお願いいたしたいことは、療養所に入つておりまする患者に在所の義務がございます。この在所の義務を怠つた者に対して罰金五千円を科するというような規定がございますが、生活保護法を受けて入つておるような大部分の患者に、たとい五千円科したところが、支払う能力がないことは申し上げるまでもないことであります。そういうようなできない条文を初めからつくるということは、これはもう法を守り得ないそもそもの理由になります。こういうようなむだな条文をおつくりにならないで、これにかわる措置をとつていただきたいということを要望し、あわせし質問いたします。
  363. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいまの御要望は拝承いたしました。なお善処いたします。ただ申し添えておきたいと思いますが、癩予防法が明治四十年のものであるから内容が非常に云々というお話であります。これはいささかどうであろうかと思います。癩そのものの医学的なものは、明治四十年からそうかわつておりません。でありますから、その後の所内の福祉の問題でありますとか、先ほど来武藤先生の仰せられたような点については十分考慮いたすのでございます。この点誤解のないようにお願いいたします。
  364. 尾崎末吉

    尾崎委員長 本日はこの程度にいたしまして次会は明二十三日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会