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1953-05-28 第16回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十八日(木曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 山本 勝市君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    稻葉  修君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    中曽根康弘君       中村三之丞君    古井 喜實君       青野 武一君    伊藤 好道君       福田 昌子君    武藤運十郎君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       平野 力三君    吉川 兼光君       北 れい吉君    世耕 弘一君       黒田 寿男君    福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         農 林 大 臣 内田 信也君         通商産業大臣  岡野 清豪君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         人事院総裁   淺井  清君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         国税庁長官   平田敬一郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  予算委員会(第二回)  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1  号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第1  号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機  第1号)     ―――――――――――――
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二案を一括議題といたして質疑を継続いたします。今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 現下日本の重大な経済不況打開の方途としての貿易が、物価引下げにその重点を置くという昨日の御答弁であります。そこでしからばさような物価引下げのための合理化がもたらすところの労働者への圧力というものは、今後相当な多難を予想されるのであつて、ここに私は現内閣が今後の労働行政に関して重大な責任を持たなければならぬと存ずるのであります。そこで新しい小坂労働大臣に対して、私は、まず憲法基本的人権労働三法に関する御見解並びに特にその中の労働基準法について現下日本情勢下において、あなたの御見解をいろいろの場合に聞くのであるが、この際まず私はお伺いをいたしておきたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。現下の困難な国際情勢の中に処して、日本産業振興して、国内における自給度農業といわず、工業といわず高めまして、一方において貿易振興して行くという立場から、でき得る限り工業といわず、農業といわず生産コスト引下げをいたすということは、これは日本国際社会に立つて参ります以上、当然必要なことでございますけれども、一方において合理化に伴いまして、勤労者の一時的な整理というような面が出て来るのではないかというお話につきましては、私はやはりそういうようなことはあるいは一時的にはあるのではないかというふうにも思うのであります。しかしながら、こうした生産コスト引下げによりまして国際貿易を伸張いたしますことは、他面において雇用機会増大を来すということになると考えておりまして、この間におきまする失業等については、できるだけ安定局その他の機能を動員いたしまして、職業のあつせんと補導等役所といたしまして全力を尽す考えでございます。前半お尋ね基本的人権関係しまするところの労働三法に対する考え方というものは、根本的には私は今澄さんと同様であろうと思つております。特にお尋ね労働基準法に対しましては、これは日本の国情に適するように改正したらどうかというようないろいろな御意見も私どもの耳に入るのでございますが、労働省といたしましては諸般情勢を慎重に考慮いたし、加うるに国際条約の関連もございますから、この間に対処して慎重な研究を続けて参りたい、こう存じております。
  5. 今澄勇

    今澄委員 重ねてお尋ねいたしますが、労働大臣の今の答弁で、この国会においては労働基準法についての改正等の御意思はないのかどうか。意思がなければ意思がないというように答弁を願いたいのであつて、私は本国会において労働基準法に関して、労働省改正見解はないというふうに、今の答弁を解釈いたして異議はありませんか。なおもう一つ、わが日本憲法が定めておる基本的人権と、労働三法に対する見解は、今私と同じであるという御答弁でありましたが、具体的にはあなたはいかに基本的人権労働三法についてお考えなつておるかということを、ここでもう一ぺん申し述べていただきたいと思います。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。労働基準法に関しましては、ただいま御答弁申し上げました通り、私ども諸種意見伺いまして、国際的な水準をも考慮しながら、慎重に検討して参りたいと考えておりますので、今国会すなわち特別国会におきましては、労働基準法改正というような法案を特に御提出申し上げるという考えは持つておりません。  なお労働三法に関しまして基本的人権と関連してどうであるかということでございますが、申すまでもなく団結権団体交渉権罷業権というものは、それぞれ憲法によつて保障されておるものでございますが、一方において公共福祉というもののわくがはめられておると考えるのであります。申すまでもなく国を維持し、国民生活をお互いに維持して行くという観点からいたしますと、一部の者の利己主義と申しますか、団体利己主義というものが、あまり行き過ぎますと、そのしわがまた別の方に寄つて来ることになると思いますから、そうした全体を見渡した公共福祉というわく内において、この三つの権利は主張されるべきであると考えております。
  7. 今澄勇

    今澄委員 先ほどの御答弁のありました失業対策でありますが、この六月の暫定予算も、まことに失業対策については熱意がございません。これは暫定的な予算であるからやむを得ないとしても、次の本予算の編成にあたりまして、労働大臣失業対策については具体的にはどの程度予算を希望し、どの程度方法をもつて現下失業対策、特に日雇い労務者等の問題についてはいかなる対策を持つておられるか。先ほどは抽象的な御答弁でありましたけれども、具体的に御答弁願えれば仕合せであります。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 失業の問題に関しまして、私も就任早々で明確な資料を持ち合せておりませんけれども、ただいままで私の知り得ましたところによれば、総理府統計局調査によりますと、六十一万人という数が出ているのであります。これは一週間にわたりまして就労意思を持ちながら、しかも就労活動をしながら、まつたく職業にありつけなかつたというものを取上げている数字でございます。これは全体の労働人口から申しますと一・五%程度であるのであります。御承知のごとく三%以下ということは、これは非常にべらぼうに少い数字であるので、これは日本産業構造からいたしまして、労働人口が、家族労働によつて吸収し得る特徴を持つているのではないか。その結果がこう出ているのではないかと考えておりますけれども労働省といたしましては、こういう日本特徴から考えまして、できるだけ雇用機会増大をあつせんする、職安活動を活発化して雇用のあつせんをするようにしたいというふうに考えております。  なお日雇いの問題でございますが、御承知のようにこの暫定予算は、一日の就労者十五万五千八百四十五人ということにいたしておりまして、この日給が二百四十九円ということになり、大体二十日就労ということにいたしておるのでございますが、今後におきましては、この一箇月の就労日数をさらに増大せしめたい、こういうふうに考えて、大蔵当局とも折衝したいと考えております。
  9. 今澄勇

    今澄委員 私ども日雇い労務者予算については、できれば組みかえを要求して、就労日数の増加をはかる決心でありますが、一応この問題はこの程度にいたします。  なお先般の国会で遂に流れました石炭並びに電気に関するスト制限法でありますが、新しい労働大臣はこのスト制限法についていかなる見解を持ち、今国会において再びかようなストライキに関する制限の法律を提出する意思があるかどうか、これらの点について御見解を承りたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えいたします。電気事業及び石炭鉱業におきまする争議行為方法に関しましては、公共福祉を擁護する見地から、法的規制を加える必要があることにつきましては、前内閣と同様の考えを持つております。しかしそのために必要な措置につきましては、関係の各方面情勢を慎重に研究いたしまして、善処いたしたいと考えております。
  11. 今澄勇

    今澄委員 重ねてお尋ねをいたしますが、今のような抽象的な御答弁では――基本的な問題はあとで御質問申し上げるとして、今国会には提案なさる御意思があるか。御提案なさいませんか。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は今筋道を申し上げておるのでございまして、前内閣におきまして、スト規制に関する法案が出ましたのは、申し上げるまでもなく、非常に公共的な性質を持つておる炭鉱の中における保安要員引揚げ、あるいは電源において働くところの人たち電源ストライキという問題が、公共福祉見地から見まして、著しく不当であるということであります。しかもこの保安要員引揚げに関しましては、鉱山保安法においてこれが禁止をせられておるということが支配的な見解でありますし、また電気事業に関しましては、労務の不提供の範囲を越えて、スイッチを切るという労務を新たに附加すそということは違法てあり、不当であるということが、最高裁の判例等においても示されておるのでありますから、これらについては、一般良識といたしましては、これは不当であるということであろうと思うのであります。にもかかわらず、御承知のような、国家産業を危殆に陥れるようなストライキが発生するという現状があるということについては、これを法的に規制する必要があろうというのが、前内閣当時の見解であつたかと思うのであります。私はそうした根本的な筋道はかわつていない、こう申し上げたいと思うのであります。しかしながら労働情勢あるいは諸種のその他の政治情勢等も、私といたしましては慎重に勘案いたしまして、その間において最善の道を選びたい、こう思つておるのでございます。
  13. 今澄勇

    今澄委員 労働基準法については、今国会において政府改正意思なしという明確な答弁をいただいて、われわれ巷間いろいろ伝えられておる問題について、一応の安心をいたしておるわけであります。スト規制法については、私どもは、最初労働大臣が答えた憲法基本的人権労働三法の趣旨にかんがみるならば、労働者に与えた争議権が、ここに公共福祉の名において制限せられるとは申しながら、この電気石炭等の場合においては、これはあくまでも労働者の持つておる権利としてはこれを尊重し、労働組合の自発的な良識社会情勢の上から、これらのスト権について十分批判検討労働組合みずから加えて、国家経済のために善処するという行き方が、日本に残された労働力を、日本経済再建の上に最も大きく活用する道であるという見解を持つておるのであります。かような見解現下労働情勢から見るならば、新内閣は元の内閣と違いまして、これらのスト規制法については、いま少しく見解を改めて、それらの問題検討のために、今国会には提出を見合せるという御答弁であつたと私は了解をしてよろしゆうございますか。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そのような御了解は、私といたしましては、少しく困るのでございます。私としましては、諸般情勢検討し、その間に善処して参りたいということを申し上げておるのでございまして、そこまでお考えなつていただくと少し行き過ぎると思うのでございます。なお今澄さんのこの問題に対する御見解は、あらゆる機会において拝聴させていただきたい、とう思うのでございます。
  15. 今澄勇

    今澄委員 このスト規制法について目下労働省おいていろいろ検討せられておるということは、大臣答弁答弁として、私どもはよく承知をいたしておるのであります。先般提案されたスト規制法の中には、仲裁制度の規定がなかつたのでございますが、これらのスト規制法の中に、承るところによれば、強制仲裁制度研究しておるというような情報をわれわれは承つておりますが、これらに対する労働大臣としての御見解をひとつ承つておきたいと思います。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えいたします。労働省といたしましては、あらゆる場合を検討いたしております。しかしただいま仰せのような強制仲裁制度というものは、この仲裁制度そのものにつきまして、御承知のように現在中労委にも仲裁制度そのものがあるのでありますが、これは労使双方において非常に好まないような傾向にあるのでございます。従いましてそうしたような傾向と申しますか、その仲裁制度そのものに対するところの一般考えと申しますか、そういうようなものもあるということも、役所において十分一方において考えて行かなければならないと考えております。あらゆる場合を検討して、その問の最善をとろうということで、目下研究をいたしておる次第でございます。
  17. 今澄勇

    今澄委員 私は労働大臣答弁を承つて労働基準法並びにスト規制法に対する労働省見解について大分わかつて参りましたが、時間が制限されておりますので、どうか労働大臣は、日本労働力国家産業への自発的な協力は、かような労働者に対する弾圧と取締りとによるところの強制的な態度ではなくて、いかにして労働者自発計意思に基いて、国家産業に貢献をして来るかというような、国全体を考えた正しい労働政策をひとつ行われたい、かように私は考えております。歴代の吉田内閣労働政策は、まことにこれらの弾圧強制にのみ連続しておるものでありますが、労働大臣就任以来日が浅いのでありますけれども、今後の日本労働運動に対する見通しと、かようなわれわれの正しい労働政策というものをいかにして取入れ、どのようにして運営してくれるかという点についての見解を承つて、私の質問を終ります。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 労働問題と申しますと、終戦以来とかく労働争議の現象をさしておつたような感じがいたすのでありますが、私も今澄君の仰せのごとく、勤労する意思というものがいかに国家において大切なものであるか、その意思を効果的に盛り上げて行くことが、日本の将来のためにいかに必要であるかということについては、十分思いをいたして参りたいと思います。しかし一方におきまして、もう少し国家的な国民の構成の面から見まして、今の所得というものの分類を見ましても、経済審議庁の本年一月の調査によりましても、勤労所得というものは四五%になつております。個人業種所得というものは四三%でございまして、その中で農林所得というものが、これは実際の労働所得でありますが、個人所得なつておるので、これを足してみますと、大体六五%程度国民所得の中の勤労所得ではないかと思います。そこでそうしたような国民所得の中における労働賃金の割合というものをやはり各国の例とも比較いたして、その中において日本労働賃金というものは、日本の全体の産業構造から見て、どこまで伸び得る素地を持つておるものか、伸びるとすれば、どういう方向に伸びて行けばよいかということも、私、就任以来日が浅いのでございまして、とかく大きいことは申し上げられないのでございますが、十分に研究して参りたい、このように思つております。
  19. 尾崎末吉

    尾崎委員長 総理あと三十秒ほどで参りますから、その聞ちよつとお待ちを願います。――それでは総理が見えるまで、一間だけ庄司一郎君に許します。庄司一郎君。
  20. 庄司一郎

    庄司委員 農林大臣に対して一間だけのお許しが出ましたので、簡単に伺いを立ててみたいと思います。それは土地改良の問題でございますが、大きく言えばわが国食米増産の対策の問題でございます。年々数百万トンの食糧を海外に依存しなければならないただいまみじめな豊葦原瑞穂国なつてしまいましたが、年間約二千億円近い食糧輸入費は払わなければならない現下のわが日本、どうしても国内において食糧増産対策を急いでやつて行かなければならぬことは言うまでもないことでございまして、御承知通りであります。食糧増産のためには、もとよりいろいろな施策が大切であるか、基本的な問題としては、やはり土地改良の問題である。その土地あるいは耕地、水田の災害を未然に除去して、水書あるいは災害のない安全なる山畑にすることが、基本的なものであることはこれまた御承知通りであります。さきに政府不成立に終りましん昭和二十八年度予算の中の食糧対策費が約五百億円、そのうち土地改良費が二百億円と計上されており、ただいま農林大臣内閣を通してこの国会に要請されておる暫定予算の中にも、若干の土地改良費が要請されておるようでございますが、二十八年度の来るべき本格予算の中には、どの程度予算を御要求になり、またわが国全体において、町歩数関係等において、どのくらいの土地改良を施策されんと御計画であるか、あるいは五箇年計画等の御計画もあるやに承つておりますが、さしあたり昭和二十八年度においてはどの程度土地改良を施行され、それに必要なる予算措置をどの程度御要話なされて満足されるものであるか、かような意味のことをお伺い申し上げたいのであります。なかんずく積雪寒冷地帯におけるところの、いわゆる単作地帯等においては――古くすでに裏作、二毛作をやつておられる気候風土の安全なる関東関西地方に比し、いわゆる単作地帯と相なつておりますこの積雪寒冷地帯におけるところの土地改良は、予算説明書の中にあるように、屋外の工事、特にセメント工事等は十二月以降来春の四月までは不可能でございますので、相当なる予算を計上し、工事を急がねばならぬ状態にあると思うのであります。かつて農林大臣は宮城県の知事あるいは東北六県の行政協議会の会長として、十数年前にすでに土地改良、暗渠排水、客土その他の計画をされ、その実施先駆者であられたあなたは、相当の熱意を持つて予算措置を講ぜられ、土地改良に関する御成案を持たれておるものであると本員は考えておるのでありますが、この一点に対する政治的、事務的の御答弁をお願い申し上げたいと思います。お約束の総理がお見えになりましたので、この一点で終りたいと思います。
  21. 内田信也

    内田国務大臣 ただいまの庄司委員からの御質問に対してお答え申し上げます。  第一の御質問は、二十八年度の土地改良費はどのくらい要求するつもりかというお話でございますが、もとより圧司さんのお話通り食糧増産の中核をなす土地改良費でございますからして、なるべく多額にいただきたいことはやまやまでございますが、他の方面との関係もありますからして、その限りなく要求もできませんので、私は、ただいままだその時期でもありませんからはつきり申し上げることはできませんが、不成立予算に比べて下らないように要求したいと存じております。  それから寒冷地帯に対しての土地改良について特別の考慮を払わないかというお話でございます。これも庄司さんお述べの通り、私も寒冷地帯地方官として在任いたしまして、よく寒冷地帯の状況に体験いたしておりますかりして、今度六月分の暫定予算として計上してあるものは、北海道を除く全日を通じて十二分の一というのが平均でございますが、これを十分の一として要求しておりますから、平均の十二分の一よりか少しよけいになつておりますからして、それを調合いたしまして、寒冷地帯に対してはその平均率よりも多額実施予算を当てはめるつもりになつておりますから御了解願います。
  22. 尾崎末吉

  23. 和田博雄

    和田委員 昨日の私の質問に続きまして、総理の分につきましてお尋ねしたいと思います。  総理大臣は、先般の記者団会見の場合におきましても、貿易振興の点を非常に強調されたのでございます。それと同時に、貿易振興ということについては、特に東南アジアの問題を取上げて繰返しお述べになつたのでございます。吉田内閣は、成立以来貿易振興は、外資の導入とともに口癖のように言つておられるのでありまして、ことに貿易振興の点になつて来ると、東南アジアを脚に重要視されまして、そうしているくの発言を今までされて来たのであります。もちろん日本貿易を伸ばして行きます上において、東南アジア日本にとつて市場として非常に重要さを持つことは私も同感でございます。しかし今東南アジア貿易振興考えて行きまするとき代、それはただ経済的にだけ問題を考えるわけには行かないのであつて貿易外交の問題とは不可分の関係にあるのではないかと思うのであります。たとえば賠償の問題、あるいは未調印国平和条約を結んで行くということ、こういう外交が先行しない限りは、政府が期待されるように貿易は伸びて行かないのではないかというのが、今の実情ではないかと思うのであります。その点につきまして、総理は、繰返し貿易振興東南アジア開発を述べられておるのでありますが、その前提条件になる賠償の問題であるとか、あるいは未調印国との調印の問題、条約を結んで行くという形については、どういうことを一体お考えなつており、またどういう手段でこれを促進して行かれようとしておるのであるか、その点をはつきりとしていただきたいと考える次第であります。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。東南アジア貿易は、御意見通り賠償問題と相関連しております。また賠償は、日本政府あるいは日本国として、昭和条約にも明記してあります通り、これは何とかして払つて、相互の間の感情をよくする。そうして貿易振興するためにも、戦争による賠償はその相手国の十分なる満足が行かないまでも、払うという精神、もしくは相手方の損害に対してこれを認めるということにやぶさかでないという誠意だけは示さなければならない。この問題はどうしても剛決しなければならぬ。解決すれば、それが漸次貿易その他に影響を及ぼして、貿易の促進ということにも役立つであろうと思いますので、賠償の問題は、また貿易の問題と同時に考えておるのであります。これに対しては従来しばしばフイリピン、インドネシアその他の国にも人を派遣して、そうして彼我の実情をお互いに努めて話をして行くというふうに進めております。また相手国も、ことにフィリピン等は御承知のように、日本の実情をよく了解してくれておると考えられるのであります。ただ相手国国内事情もあつて、交渉はいまだ具体的に進捗するような、しないような状態にありますが、とにかくある程度進捗いたしております。またこの賠償問題によつて、あるいは役務賠償によつて相手国の損害を賠償するとともに、さらにその国の発展、開発を助けるというようなことになれば、やがてそれが日本の市場になり得る、こう考えて、政府としてはこの一年来真剣に取組んでおるつもりであります。
  25. 和田博雄

    和田委員 賠償の問題と取組んで、賠償することによつて相手国の経済発展に資すると同時に、日本の国の経済発展にそれがなつて行く、こういう意味での賠償問題での接近の仕方は、これは私も同感であります。ただ私ども承知しておるところによりますと、その点については、二、三本質的な点でまだ十分了解ができていないように思うのであります。しかしその了解のできない点、たとえば賠償問題なんかについても、単に役務の賠償だけではなくて、ある程度の建設的な施設も出して行き、あるいは現金の賠償の問題が起つて来ているから、こういつたような点についているくほぐして行く。また今総理のおつしやいましたように、賠償問題の解決が、同時に日本の経済の発展になるという考え方を進めて行くと、相手国においてもやはりいろいろの経済上の一つの再建計画をもつて、経済を運営しておるのが、今の実情ではないかと思うのであります。そうしますと、日本の側におきましても、そういう賠償問題を解決すると同時に、その解決の仕方の中に、やはり日本の経済発展に資して行くために、何かこちら側として国全体としての計画をそこからも持つて来なければならないというように、われわれとしては考えるのであります。ところが総理大臣はどうもそういう一つの計画性、長期計画、あるいは計画というものを、非常におきらいになつておるようでありまして、いつも計画というものはばかげたものだというようなことをときどき発言になるのであります。しかし総理はこの間の談話において、貿易振興しますためにも、コストを下げなければならぬ、ことに石炭のコストを下げなければならぬ、日本物価は国際物価に比して高いのだ、これを是正して行く必要があるのだということを、しきりに言われておるのであります。しかしそういうものを実行しようといたしますならば、石炭だけをとらえて合理化を進めて行き、コストを下げようとしましても、このことだけではほとんど実行は不可能でもあるし、また効果もない。どうしても政策の全体にわたつて、その骨組みとなる一つの計画を持つて行かなければならないのが、今の実情ではないかと思うのであります。吉田内閣の立場、総理の立場が自由競争、自由企業であることは、これはもちろんでありますが、しかしそういう建前をとつておるそれぞれの国においても、政治の面においては、どこかでそういう大きな計画を持つて、たとえばその計画予算の面に裏づけにしてきちんとするなり、あるいはどこかの大きな役所でその計画性を持つたものを、実際政治の上において実行しておるのが、実情であります。イギリスでもアメリカでもその他の資本主義国でも、みなそういうふうにやつておると私は思うのであります。あのイギリスの資本主義の代表であるバトラー蔵相といえども、やはり自由競争を主にしてはおるが、しかし国全体としての一つの大きな骨組みといいますか、計画といいますか、そういうものを持つて、そうして相互の経済部門の間の矛盾のないやり方をして行こうと努力しておるのが、私は現実だろうと思います。ところが吉田内閣においても、経済審議庁において、しばしば長期計画なりあるいは経済の見通しなりを立てておる。ことに今度は計画を相当やつておるようであります。一体これはどういう目的でやつておるのであるか。単なる事実の報告なのか、あるいは机の上の作業であるのか。吉田内閣としては、こういう一つの計画性を持つた作業というものを、政治の面に、あるいはその政策の面に、どう取入れて行こうとしておるのか。貿易振興をはかろうとすればするだけ、今の段階ではもうそういうことをやらない限りは、なかなか貿易振興もできないのであつて、ただ業者にまかしておいて、政府は自由競争をそのまま標捜しておるという形ではいけない段階になつておると思います。やはり総理とされては、長期計画というものを何も毛ぎらいされることなしに――やはり今の経済のやり方というものは人間の叡知をもつて、今まで自由競争においていろいろな弊害が起つて来ておつたものを、それを克服して、大きな恐慌が起つたりすることのないように、人間の知恵をもつて、少くとも経済を調整して行くという努力は、どこでもやつておるのであります。日本だけがそういうことを総理大臣が毛ぎらいされて――何か長期計画というと、すぐに共産主義や、あるいは社会主義に通ずるようなものだと思つて、毛ぎらいされることは、私はどうかと思うのです。経済自体は、やはりいろいろな要素を克服して行かなければならぬ面がたくさんあるのでありまして、ちようど家を建てるのに、大工がやはります一つの青写真をつくらなければならぬのと同じことなのでありますから、そういう点で、私はもう少し自由党内閣とされても、そういうものを取入れてやつて行かなければならぬと思うのであります。もとより私たちは立場が基本的に違いまして、計画をもとにした一つの経済の運営をはかつて行こうとする立場でありますが、少くとも自由党の立場に立つてみても、今の現実のこの日本の経済の窮乏を打開して行くためには、やはりそこに一つの大きな計画あるいは見通しを持つたものをもつてつて行きませんと、だんだんと日本の経済が悪くなつて来て、結局国民の生活が非常に下つて、みんなが困つて来ることになるだろうと思うのであります。その点について、総理大臣は今までいろいろと長期計画について発言されておつたわけでありますが、総理考えておられるこれならという長期計画は、一体どういうものであるか、この際はつきりとしていただいた方がいいいだろうと思うのであります。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。私は計画を毛ぎらいするとか、あるいは長期計画を毛ぎらいするとか、あるいは無理に反対するというほど、さほどに毛ぎらいをいたしておるのではありませんが、結局程度の問題だろうと思います。ただ長期計画のみにたよつて、机上の計画を墨守するという弊害が、往々にして役人にあつて計画万能の考え方をするのであります。のみならず、この立てた計画を発表して、そうして国民を迷わすといつたら語弊があるかもしれませんが、この計画といえども、ときに事態の変更によつてかえなければならぬのにもかかわらず、その計画した者とすれば、ことごとくこれを隻付せらるるように過信せらるような場合もあるので、私は計画を尊重しないわけではないのでありますが、これを万能の役人同様に考えないという程度のものであります。むろん予算を提出すれば、その年の予算計画というものが自然立つのであり、その計画が、来年度、再来年にわたる長期の計画予算の中には継続費として計上せられたものでありますから、無計画がいいというほど極端な非計画論者ではないのであります。その点は御了解を願いたいと思います。
  27. 和田博雄

    和田委員 もちろん計画は一つの大きな骨格であつて、日々かわつて行くいろいろな国内情勢あるいは国際情勢によつて、具体的にもつとそれを接近さして行くということは必要でありますので、私が言つておるのもただ単なるそういう静態的な机の上に計画を言つておるのではないのであります。それをもとにしてうまく運営して行くのが政治でありまして、そういう意味で本格的な計画というものをやつぱりお認めになつておるようでありますから、その点は一応これでおきますが、ただ次にお伺いしたのは、総理指名の前に、実は貿易に関しまして、東南アジアの開発は外務省ですか、貿易振興は通産省ということで所管をおきめになつたわけであります。しかし私は貿易振興、それから東南アジアの開発というものをそういうように二つの問題として切り離して、別々の官庁でそれをやつて行くということは、どうも納得が行きかねるのであります。東南アジアの開発も、貿易振興も、むしろ一つに結びついていた問題として取扱つて行くのが、正しい態度ではないかと思うのであります。各役所の間の一つのセクシヨナリズムから東南アジアの開発は外務省、貿易振興は通産省ということであつては、私は政府としてはこういう態度をとることは間違つておるのではないかと思うのであります。ここに総理貿易振興ということに非常に熱心であられる。ことに今までの吉田内閣の表看板は、この前の流産予算におきましても、東南アジアの開発貿易振興、特に貿易振興をその前提としての経済外交ということであつたようであります。その点についてはどうもかけ声だけで、それほど具体的なものがなかつたのをわれわれ非常に遺憾に思つておつたのでありますが、今度の場合でも、少くとも別々に所管をわけて、そうして別々の委員会をつくつてつて行くということは、私はむだだと思うのであります。この前の国会において吉田首相は私の質問に対して、貿易振興のためにはやはり政府全体をあげた一つの機関をつくる、その点については再考したいということを現に御答弁なつておられるのであります。それから今言つたように外務省と通産省にわけて、そうして依然として長い歴史を持つておる外務省あるいは通産省、もとの商工省関係貿易に関する一つのセクト的なものが現われたのじやないかと疑われるような、そういう方策をとられることは、この際私はもう一ぺん再考をして、もつと貿易振興に対しては真剣に取組んでもらいたいと思うのでありますが、その点についての所見をお聞きしたい。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、委員会を二つの省にわけたということはこれは意味があつてわけたのではなくして、とかく役人は予算はとるが、しかしながらとつてしまつたら――和田君も役人として御経験があると考えますが、予算をとつてしまうと、予算の実行はまことにおろそかで、予算をとるまでは熱心でありますが、とつた予算実施することにおいては、多少どうも気がゆるむというようなことがあります。あまり一省にいろいろな問題を集中しますと、自然問題の実行、実施について、あるいは研究等においておろそかになるのが各省の弊であります。さなきだに通産省は相当仕事が多いのであります。各般にわたつておるので、何でもかんでも通産省に持つて行くということになりますと、実効が上りにくい。それできめただけの話で、その間には互いに共通したような委員もあります。ただ専門が違いますから、ことごとく同じでありませんが、省をわけたのも、主管省、つまり管理をわけたというような程度のものと御承知を願いたいと思います。貿易振興東南アジアの開発とは、先ほど申した通。相関連しておるものでありますから截然と豆腐を切つたようなわけで、その間に何らの連絡を持たせないというつもりではないので、連絡はさせますが、主管省をきめた、管理をきめた、管理を別にしたという程度に御承知を願いたいと思います。
  29. 和田博雄

    和田委員 私は予算をとつてあとでそれがどう実行されるかということが非常に重要だと思います。ただ予算をとるということは一つの政策を実行することであります。どういう政策をどういう方法で実行するかということの問題でありますので、そういう同じような問題を各省別にわけてやつて行くことが決して能率を上げるゆえんであるとも思いませんし、かえつて相かわらずばらばらの行政をやることになるのだろうと思います。しかしその点は意見の相違ですから一応やめます、が私はこの貿易振興の問題を政府がほんとうに取上げるのならば、やはり政府の全力をこれに傾倒するという形を少くとも打出してもらわなければ、これはとうていなまやさしい問題でないだけにその効果を疑うのであります。  それからもう一つお聞きしたいことは、先般岡野通産大臣は、中共貿易は今後非常に拡大しなければならないということをおつしやつておるのであります。吉田総理は、依然として中共との貿易はさして期待できないと、こう言つております。しかし国際情勢を見てみますと、やはり平和への傾向が強くなつて来れば来るだけ、共産圏との貿易というものは、いやおうなしにこれは進行して行くとは考えておるのであります。ジュネーヴのあの東西貿易に関するソ連と西欧との会議の結果を見ても、またそれに対する世論を見ましても、そういう傾向は、東西貿易が開けて行くということは、どうしても否定することのできないような状態ではないかと私は考えます。中国の貿易についても同様でございまして、やはり日本が自立して行くのには、中国の貿易は何としても無視することはできない。そうして日本としては過重評価ではなしに、非常に重要に考えなければならぬ問題だと思うのであります。ところが岡野さんは非常に拡大しろと言つておる。総理大臣はこれはあまり期待できないと言つておる。どうも同じ内閣の中で、総理と片方の責任大臣とが非常に違つておる。しかも今後起つて来る問題としてのMSAに対する政府の態度はまだ未定ということでありますが、まだ未定ということであれば、現状を基礎にして議論をするよりほかはしようがないのでありますが、今後中国の貿易を実際拡大して行こうとしますならば、MSAを受けたのでは、これはなかなかで言いことになつてしまうのであります。しかし日本国内の事情は、今手持ちの外貨はポンドにおいてはわずか三千万ポンドしかないようでありますが、だんだんたこの足を食いつぶすように食いつぶして行つて、手持ちの外貨がなくなつて来れば、日本の経済は、今の貿易情勢である限りは、おそらく規模が非常に縮少してしまつて国民の生活はその面から非常に苦しくなつて来る、失業者もふえて来る、労働者階級の生活はますます苦しくなつて来る、農民も苦しくなつて来る、国全体の経済力が落ちるわけでありますから、それは全部が、ことに勤労階級が非常な打撃を受けると思うのであります。これは政治のあり方が悪い。言いかえると、経済政策がまつたく誤つた結果、そういう結果になつて来るのであります。そうして一方においては、中国との貿易は、岡崎外相を初め熱心でない。今のような状態で行けば、これを拡大するということはなかなか困難であります。国民要求は非常に強くなつて来る、これは必至であります。そこへMSAというものによつて――そうなつて来れば日本はこれにすがりついて、そうして日本は今までは単に防衛生産といつて、それにすがりついておつたのでは、今度は別にもつともつと大規模にアメリカと機構的にも今以上に結びついてしまつて日本の経済を立て直して行く、それによつて日本を何とか立て直して行こうという方向に、もしも行くとしますならば、中共との貿易は、これは今でさえきゆうくつであるのが、ますますMSAの性質きゆうくつになつて来ると思うのであります。この総理大臣の発言と、通産大臣の発言との間には、私は非常に矛盾があると思うのであります。しかもその矛盾がある問題は、日本の今後の経済政策を実行して行く上におきましても、あるいはその他の外交を推進して行く上におきましても、非常に重要な関係にある問題でございます。この点について一体総理大臣はどういうようにお考えになり、かつその問題をどう解決して行こうとされておるのか、その点についての方針を、あるいはまだ構想の程度かもしれませんが、それをお聞きしたいと思うのであります。
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申し上げます。岡野通産大臣がどういう考えから、あるいはどういう場合にどういう説明をされたか私は知らないのでありまして、これにはお答えの限りでないのです。しかし私自身として私の感ずるだけのことを申せば、支那貿易は、従来においても、戦前においても大したことはなかつたと思います。支那、中国プロパーとの貿易においては、貿易は多くの場合、その国における投資関係とか事業関係から来るのでありまして、かつて支那貿易が相当日本全体の貿易において重要なる部分を占めておつたということは、満州、及び北支那があつたからであるので、今日満州を失い、投資を失つた日本として、支那貿易にどれだけの重要性が生ずるか、私は、日本が支那において事業をし、あるいはまた投資をしておるのでなければ、そう多くを期待ができないのは当然であるのではないかと思う。イギリスにしても、かつては非常な投資をいたしておつて数字は覚えませんが、数億ポンドの投資をいたしておつた結果、支那貿易が繁栄いたしたわけでありますが、最近においては非常に縮小しておるかと思います。ゆえに投資関係がない国と、ことに政情等についてはなはだ――これは実情は知りませんが、内乱が始まつたとか、治安が保たれておるとか、あるいは一層支那の経済が進んだという新しい現象があればとにかく、今日までわれわれの承知いたしておる現在の支那において、その貿易に非常に期待を置くということは、これは日本のみならず、各国ともに多く期待しておらないのが現状ではないかと思います。将来は別であります。支那が治安が治まつて、そして支那の情勢が回復をして、各国が争つてつてみたいに支那と交渉を持つということは、今日の日本としては比較は当然できませんにしても、現状の支那と日本との間の貿易に、日本が非常な重要性を認めるということはできないのではないか、私は主として現実を土台として考えてみて、支那貿易の発展することは希望いたすことでありますけれども、現実発展が予期できない状態にあるのではないかと思います。しこうしてMSAとの間におきましては、この間申した通り新聞以外の事実を承知いたしておりませんから、これについての考え方をお答えする段階になつておりません。いずれ正確なる情報を得てからお答えいたします。
  31. 和田博雄

    和田委員 投資関係のないところに貿易は起らないというは、これは総理が初めて言われたことでありますが、昔の日本の満州との間は、確かに植民地ということに満州が実際上なつている関係に当時あつたのであります。しかし直接投資関係が昔のような形でなくても、その国自身の資本が蓄積されて、そうして経済建設が進んで行つて国民の生活がだんだん向上してくれば、やはりそこには大きな購買力が出て来るのてあります。なおその経済を発展さすためにはお互いに貿易をして行く関係があることは、そういう必要が起ることは当然で走ります。なるほど昔のような投資関係はない。日本は戦争に負けたがゆえに、昔のような地位にはないわけでありますから、直接のそういう軍需産業を基礎にした投資関係はございません。しかしながら中国がその建設計画が進んで、そうして国民の生活も上つて来ている。大体安定して来ているという事実は、ことに農業方面については、これはどうも否定することはできないのじやないかと思うのであります。事実は総理がお考えにはつているよりもよほど進んでいると考える方がむしろ正確ではないかと思うのであります。そうしますると、たとい投資関係がなくても、ここに新しい投資を要求して来ることもございましようし、自然貿易というものは、これは今後はどんどんふえて来る、現在でも今のような制限がない限り、もつと私はふえる可能性はたくさんあると思うのであります。従いまして、総理のあの満州を含んでの投資論は、これはもう一ぺんよくお考えくださらないと、相当ぼくは間違つているじやないかと思う。中国との貿易を、ただ昔の投資の関係だけでもつて議論されると、まつたく間違つた結論しか出ないのであります。この点よく中国の実情をお聞きになつて、そうして中国貿易というものについては、いま少しく日本としてできるだけの真剣な懸度で取り組んでいただきたいと思います。政府において、ととに外務省あるいは通産省において、今の状態でも、多少やり方さえかえれば、もつと希望がわいて来るというのが実情だろうと思うのであります。総理大臣はお忙しいでありましようが、そういう点についてはもつとほんとのことカ計る下僚によく意見を聞いて、この点については十分な対策を立てていただきたいと思うのであります。日本の経済は、今や非常に地盤がゆらいで来るように苦しくなつて来ておると私は思います。ことにこの上なおかつ今の軍事基地の経済、いいわゆる軍事と結んだ経済が多くを占めて、日本経済の要素の中で、それが非常に多くを占めて来るようになればなるほど、これは日本の将来にとつてわれわれは非常な心配をせざるを得ないと思うのであります。その意味におきまして、総理大臣もこの貿易、ことに経済の問題については、私は従来通りのこの考え方でなしに、いま少しく考え方をかえてやつていただかかなければならぬのではないかと思うのであります。  その他まだいろいろお聞きしたいこともございまするが、もう時間が大分経過いたしましたので、私の質問をこれで終ります。
  32. 尾崎末吉

    尾崎委員長 福田昌子君から関連質問の申出があります。申合せの時間が過ぎておりますので、一言だけ簡単にお許しします。福田昌子君。
  33. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間が過ぎて恐縮でありますけれども、一言だけ伺わせていただきたいと存じます。今首相の東南アジアにおきまする開発計画貿易計画に対しまして、首班指名前に閣僚にそういう御意向をお漏らしいただいたということは、これは日本の将来にとつても非常にけつこうであり、私ども喜ばしいことと思つて承りましたが、今和田先生との応答を伺つておりますと、別にこれという確たる御計画があつてそういう御発言をなすつたのでもないように承りました、詳しいことをお聞きいたしたいのでありますが、時間がございませんので、ただ一、二点だけ伺わせていただきたいのは、この首相の、とりわけ首班指名前の御発言いただいたようなことは、それはちようど時期的に見ましても、アメリカのMSAに関します対日援助のいろいろな方策が問題になつおりましたときでもあり、日本にも伝わつておりましたときでもございますので、首相のその東南アジア開発のお考えというのは、このMSAと何か御関係があるのかどうかということを、一言承らせていただきたいと思います。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと御質問が聞き取れませんでしたが、東南アジア計画とMSAと関係があるかということでございますか。これは全然ただいまのところ関係はありません。日本独自の考えからして東南アジアの開発を希望いたしておるので、主として日本側のわれわれの立場からして、あるいはまた東南アジアとの現在の関係及び将来の関係からして、その関係を進めたいという考えから、東南アジア問題について研究をさしておるわけであります。
  35. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今澄勇君。
  36. 今澄勇

    今澄委員 私は、今いろいろと貿易について御質疑がありまして、日本貿易計画についての総理の基本的な考えはわかりましたが、具体的な政策が明確でないのは、経済審議庁内閣の諮問機関であつて計画全般を取扱う、かような計画を立てる官庁が、非常にその権限が縮小されているということに根本原因がありはしないか、もし日本貿易を伸張せしめんとするならば、かような計画官庁のいわゆる拡大ではなくて、その機能の強化、これが諮問仏関から決定機関への格上げ、さらに閣議における大きな発言力等々の施策をお考えなつてはおりませんか、お伺いを申し上げます。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。経済審議庁の職責等については、何ら従来とかわつておりません。またこれは単に諮問機関ではないのであります。行政官庁の一つであり、計画を立てる、立案する官庁としてただいまやつております。
  38. 今澄勇

    今澄委員 日本の現在の経済苦難の乗切り策が、一は輸出貿易の進展であり、しかして吉田内閣においては一は特需がその大きな救急薬となつておるのであります。そこで私は総理にお伺いしたいのは、特需においてはあと二箇年見当というような意向でありますが、私いこの際特需を日本側が一砧取扱う受注の調整機関でもつくつてやらないと、この特需が産業に及ぼす混乱は大きなものである、こういう自発的な受注機関をつくるか、それとも将来政府は特需によつてできた軍需産業には、日本の自衛軍を創設して、それの兵器の生産に当らしめるというような計画でもなければ、将来の日本産業に大きな混乱が起ると思いますが、総理はこれらの特需受発注の調整機関をおつくりになる意思はないか、さらにはこれらの特需産業に対し、将来日本の兵器発注によつて産業の維持をされるおつもりであるか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 従来も進駐軍あるいはその他の発注、受注態勢でありますか、そういうものが一応あるのであります。また現にこれに対して各省、主として通産省と思いますが、日本側から、こういう会社、こういう会社はこれだけの能力があり、あるいはこれだけの設備を持つておるという報告を種々いたして、その選択はむろん進駐軍でありますが、日本側としては注文を出すのに便利なような準備なり、あるいはまた資料なりというものを提供いたしておつて、名前はつけておりませんが、一種の注文を受入れる態勢はつつております。
  40. 今澄勇

    今澄委員 もう一点の、これらの特需が兵器産業の規模を拡大しておるが、将来これらの産業について、政府が兵器の発注をしてこれを維持して行くようなおつもりがあるかどうかという点についても、ひとつ御答弁をお願いいたします。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつとお尋ねしますが、御質問の趣意は、将来の注文に対する日本として受入れの態勢をつくれというお話でありますか。
  42. 今澄勇

    今澄委員 もう一度申し上げますが、この特需によつて特需産業というものができれば、それは兵器生産をするのであるから、アメリカからのいわゆる特需がなくなると、これらの産業日本経済混乱の中心になるわけであります。かような際に、これの切抜け策として、日本の保安隊なりあるいは日本政府が、これらの産業に兵器の生産を発注をして、そのときの混乱をお切抜けになるかどうかという質問であります。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 かねてからこういう話があつたのであります。たとえばライト・アーマメントは日本で製作をし、ヘヴイ・アーマメントはアメリカでもつてつくるというようにできないものだろうか。それから日本において兵器産業という問題が起つて来、これに対して今どういうふうな計画で実現ができるかということを研究いたしておりますけれども、これは将来のことである。日本としてすでに保安隊を持つておる以上、その兵器はアメリカから借りているということだけでは済まされない、日本自身でもつてつくるというところまで行くべきであり、行かなければならぬと思いますから、さてそういう場合にどういうふうな計画を進めたらいいかという研究をさしております。またそういう場合において、さらに進んでアメリカ軍のライト・アーマメントの注文も受けるようなことができればけつこうであるというような考えから、アメリカの考えを聞くということはいたしております。
  44. 今澄勇

    今澄委員 時間の関係で、私は輸出について一点だけお聞きいたします。今和田さんにいろいろ御答弁がありましたが、歴代の通産大臣の任命の仕方においても、時に文部大臣の兼任がありましたり、あるいは大蔵大臣の兼任がありましたりということで、この通産行政、特に輸出については政府が全力をあげておらなかつたのであります。私はこの際具体的には、西ドイツがとつておりますような輸出の助成補給金であるとか、あるいは輸出のものについては税金を免除するとか、国の政治の中で大きく輸出奨励の俗を総理みずから打出して行くということでなければ、日本の輸出は振興しないと思いますが、これについて何か総理にお考えはございませんか。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 輸出奨励のために免税をするとか、あるいは助成金を出すとかいうようなことは、政府としては考えてはおります。同時に「言申し上げておきますが、財政の緊縮をはかるために、一切の助成金は一応打切るということにして、助成金政策はなるべく避けたいと考えております。そこであとはどうするかということになれば、結局外国との間に経済条約を進めるとか、あるいはまた外国との合同事業を進めるとか、あるいはさつき話が出ましたように、東南アジヤにおける関係を善化するとかいうようなことによつて、市場を確得するとともに、安い工業原料を確保するということに努めたいと考えております。
  46. 今澄勇

    今澄委員 そこで昨日来、あるいはこの国会開会以来問題になつておるMSAのことでありますが、向うからまだはつきり言うて来ておらないMSAについてのこれまでの内閣総理はじめ皆さんの御答弁は、私はなるほど無理もないと思います。しかし総理伺いたいのは、日本政府は、向うから呼びかけられなければそれに対して何も考えることができないのかどうか。日本政府はまず第一点としては、MSAを受けることを希望しておるのか、MSA援助を受けることはいやなのか。とにかくMSAを受けるのか受けないのかという態度ぐらいはわかつておらなければならぬと思うので、一体MSAは受けるか受けないのかというこの問題についての御答弁と、もう一つは、もしMSA援助を受けるとすれば、これには経済援助、軍事援助、技術援助の三つがありますが、日本の現在の情勢からはどの形がいいとお考えなつておるのであるか。この二つは、一国の総理としてかような国際情勢のもとではお考えなつておるものと思いますので、この点についてぜひひとつ御答弁を煩わしたいと思います。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 きのうもこの点についてはお答えをいたしておりましたが、MSAの内容は、新聞の電報などについては承知いたしましたが、はたしてそれが真を伝えておるものであるか、あるいはまた米国政府としてどういう考えを持つか、具体的に政府として正確なる話を受取つたときに考えるという以上にお答えができない、そういたしませんと、無責任なお答えになるのみならず、また相手国政府に災いをかけるというような場合も考えられますから、実態を承知いたした上でお答えをいたします。
  48. 今澄勇

    今澄委員 もう一点は、日本貿易問題とともに非常に重大なのはわが国の漁業であります。これは外交の折衝が重大なフアクターを持つ現下国際情勢のもとにおいて、東支那海から締め出された日本の漁船、中共の拿捕、朝鮮海域李承晩ライン並びに国連軍作戦水域内における漁撈の困難、かくて日本の漁業というものは今やその漁場を失つて、まさに日本漁業は壊滅せんというような状態にありますが、かような国際情勢と漁業の問題について、総理はどのような救済対策並びにこれが諸外国との外交折衝をなされておるか、御答弁を願いたいと存じます。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、日本の漁業が東支那海から排斥せられたといいますか、漁業ができないとか、あるいは朝鮮海域において漁業ができないという事実はないのであります。たぢこれに対して相手国が力をもつてその出漁を妨げる、従つてこれに対して抗議をし、もしくは自衛の方法をとつております。
  50. 今澄勇

    今澄委員 現に抗議をし、自衛の方法をとつておると言われますけれども、現実に拿捕は続いておるのであり、しかも李承晩ラインにおきましては、これは断じて漁撈まかりならぬという向うの態度であつて、こちら側がそれらに対する自衛の処置についてもいまだ確たる方途ができなくて、日本の漁業が危殆に瀕していることは事実でありますから、いま少しく具体的にして正確な御答弁を、もう一度恐縮ですが、お願いいたしたいと思います。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 重ねて同じことを繰返すようでありますが、朝鮮に対しては抗議を続けております。また東支那海における日本の漁船の保護については、現に海上保安庁でありますとか、その他に対して監視船を増すことにいたしております。
  52. 今澄勇

    今澄委員 このことに関する限りは、政府としては無為無策であるという以外に私は言い方はないと思います。  さらに引続いて、それではこれらの漁船の問題、その他引揚げ財産の問題等々を残しておる日韓会談は中絶をいたしておりますが、この日韓会談に対するお見通しと、これらの諸問題解決についての総理の御見解伺います。
  53. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日韓会談はただいま現に続けております。そうしてこの方針としては、双方で今までのようにあまり理論にこだわらず、実際的に解決しようという了解のもとに、漁業の問題も話をしておりますし、財産権等の問題についても話を実際的にいたしております。まだ最終的なところまでは来ておりませんけれども、過去二週間余りかなり進展をいたしております。漁業問題ももちろんその中に含まれております。
  54. 今澄勇

    今澄委員 それでは最後に、私は今次総選挙を顧みて総理に御質問を申し上げたいのでありますが、今回の総選挙において選挙違反はまことにおびただしいものがあります。特に参議院においては、新聞紙の報道、われわれの調査によつてもその大半に選挙違反の事実がある。これらの日本の民主主義の根底である選挙についての大きな違反について、総理はどのような対策をお考えなつておるか。なお現に閣僚の皆さんの中にも選挙違反の事実ある者がおられますが、これらの選挙違反の防止について政府考え伺いたい。なお参議院における官僚機構を利用した官僚諸君の選挙違反、並びにその組織を利用した選挙費用の徴収、それらの事実というものは、国民に大きな疑惑と今後の日本民主政治の上に重大な影響を及ぼすものであるが、この際総理はいかなるお考えを持つておられますか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 選挙違反の数の多いことはまことに残念に思います。今その実態について、実情はどうなつておるのか、報告その他を徴しております。いずれその実態がわかつた上で、適当な処置をいたします。
  56. 今澄勇

    今澄委員 私は総理大臣に敬意を表して、一つ一つ不満ながら質問を続けておるのでありますが、私の質問は、官僚機構を利用して大きくその選挙資金を集めたような今日の参議院における一部当選者の皆さんのようなものは、国民に大きな民主政治の将来に対する不安を与えるものであるが、これに対する対策なり政府としての御見解総理に承つておるのであつて、これについて総理の、官僚の立候補については制限をしようと思うとか、あるいこういうふうな事態はこういうところに原因があるとかというような御見解伺いたいと思うのであります。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 いろいろな話もあり、また報告も受けておりますので、これは当局において実情を調べさしております。その実態をつかんだ上でもつて善処いたすので、先ほど申した通りであります。
  58. 今澄勇

    今澄委員 しからば、総理は先般も小選挙区制にする方がいいということで、地方自治庁その他関係者に直接命令を出されたようでありますが、これらの選挙制度並びにこのような問題についての御見解を承りたいと思います。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 小選挙区制のみならず、その他の選挙制度に関する制度について何が一番いいかということを調べさせることを命じたことがありますが、選挙以前であります。政党としては引続きこの問題については十分研究をいたして、選挙制度がいいか悪いかによつて民主政治が確立し、またすることのできないことになるのでありますから、大事なことと考え調査を命じております。
  60. 今澄勇

    今澄委員 さらにこの四月における選挙資金の官僚機構を通じての問題のみならず、外貨の割当に関する通産省の汚職、輸入食糧に関する農林省の汚職など、特に最近の摘発された実情というものは、官吏の綱紀の弛緩が目に余るものがあります。総理は選挙の問題についてもまだ研究中であると言われますが、これらの現実に数々の事跡を残しております官吏の綱紀粛正、並びに日本の重大な予算の使途に関してのかかるいろいろな不在というものについては、どのような方策をもつてこれを食いとめ、国民の期待に沿われんとするか、御見解伺いたいと思います。
  61. 吉田茂

    吉田国務大臣 御指摘の点については特に地方自治庁が主管となつて、地方の予算の使い方――地方のみではありませんけれども政府予算の使い方などをやる。これはすでに相当の実績をあげております。その始末について政府考えておりますが、同時に大蔵省においても、予算が有効適切に使われておるかどうかということの事実を確かめるために、新たなる機関を起そうかと考えて、今その方向に研究いたしております。
  62. 今澄勇

    今澄委員 今の官吏の汚職その他のいろいろな綱紀肅正の面について、政府としては何らお考えはありませんか。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 綱紀粛正については、しばしば申します通り、もし綱紀、官紀を乱し、もしくは不正行為があつた場合には厳重に取締る考えで、これは絶えず申しておることであります。
  64. 今澄勇

    今澄委員 私はこの予算の審議にあたつて、かような重大なる切盛りをする日本の官僚関係の汚職その他の綱紀粛正について、何らなすところのない政府の現状はまことに遺憾でありますが、これは見解の相違であります。  そこで、もう一つ現下国内の一番大きな問題になつております燃料政策であります。一いろいろ伝えられおります四日市の燃料廠の払下げは、日本の古い国有財産の払下げとして大きく問題を投じておりますが、今日においても解決しおりません。いろいろ政党関係からも申入れがあるようでありますが、この四日市の燃料廠の払下げについては、どのような対策をとつておられるか。大きくいえば日本のこれら造兵廠等の民間産業への払下げに関する基本的な総理のお考え、あるいは具体的な四日市に対するお考えを承つておきたいと思います。
  65. 吉田茂

    吉田国務大臣 御指摘のような旧造兵廠といいますか、兵器を製造しておつた所の払下げについては、従来いろいろ問題が――問題というよりもうわさが起りましたから、一切の払下げは停止すると言つて停止しております。しからば将来どうするか、これは先ほどお話したような兵器産業をどうするかとか、あるいはまたかりに払下げを申し出た事業家があるとかいう場合には、その事業の計画性に従つて考えはするけれども、一応すべての払下げ問題は打切ると言つて、昨年でありますか、打切つておるはずであります。
  66. 今澄勇

    今澄委員 総理の御答弁をいろいろ承つておりますと、将来の日本産業に関するこれらの問題については、はつきりした計画がないようであります。最後に私は一点だけ、これは昨日も申し上げましたが、日本の裁判所において、イランの石油の国有化が妥当であるというような判決がございました。東南アジアの各国は、この東洋の独立国である日本が、イギリスの、申さば筋の通らない要求について、いかような態度を見せるかということを期待してながめておりましたが、日本の司法裁判が毅然たる裁断をしたことに大きく期待をしておるであろうと思います。今日民族独立の旗じるしを掲げて、おのおの独立せんとしておる東南、中東の後進諸国との貿易を進展せしめるために、彼らに信頼感を与える上においても、かようなイランの石油等のごときは、日本において大きく受入れる、さらにこれは彼らが申しておりますタンカー百万トンというような大きな物々交換によつて日本に入るという情勢にあるが、かような東南アの独立国の日本に対する信頼、並びに日本経済に大きく寄与する中東、東南アとの物々交換のやり方について、総理の御見解をお伺いして私の質問を終ります。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 イランの問題は、今日世界的問題となり、あるいは裁判の問題となり、紛糾を重ねております。日本としては、お話のような点も考えられますが、その紛糾の間に介入することは、日本の立場としてよろしくないと考えるのであります。またイランとイラニアン会社との間の契約がどうであつたか、それも私は存じておらないのでありますが、日本の裁判所がいかに解決するか、むろんわれわれは裁判に干渉する考えはありませんが、どういう判決が下るか、その結果によつて考えてみたいと思います。
  68. 尾崎末吉

    尾崎委員長 古井喜實君。
  69. 古井喜實

    ○古井委員 私は政局安定に対する御所信について総理にお伺いいたしたいと思います。品が下手でありますのでお気にさわることがあると存じますが、どうぞごかんべんをお願いいたします。ばかやろうだけはおつしやらないようにお願いいたします。  先般のあの不幸な解散によりまして、国政は少くとも四箇月停頓いたしました。混乱をいたしました。無計画な、無方針な政治が四箇月以上続きました。この四箇月は一年の三分の一とは申せ、年度のしまい、年度の初めの四箇月でありまして、この一年に対する非常に大きな影響を持つたと思います。今の脆弱な日本の経済その他の状況から見まして、まことに痛手は大きかつたと思つております。政府の事業が行えないのみならず地方自治体の仕事も行えません。また国家財政に依存するところの多い今日の国民経済も、多大の打撃を受けてしまつた実情であります。この不幸な解散に対して、国民はほんとうに納得をいたしたでありましようか、その意味を理解してくれたでありましようか。この意味のわからない不幸な解散を行つたものは吉田政府であつた、これは申すまでもないことであります。これについては、売られたけんかだから買わぬわけには行かぬということもございましよう、それで意地は通りましようけれども国民は結果においてたいへん迷惑をこうむつた次第であります。私はこの不信任案の問題につきましても、あの時期、あの経緯から起つた不信任案に対して一票を投ずるについて悩み切つた一人であります。あの時期のあの不信任案についてはいろいろ反省すべき点も私はあつたかと思います。しかしさらに翻つてなぜあのような不信任案が起つたかということも考えてみなければならぬと思うのであります。絶対多数党の上にいわゆるあぐらをかいた自由党であり、また多数を頼んだ、言葉は悪いでありましようけれども、長い間の驕慢な態度、また国民の食うや食わずの生活に対するほんとに思いやりのない過去数年間の政治に対しても反省を加うべきものがあると私は信ずるのであります。今日政局は安定しておるのではありません。安定を要望しておる輿論と解散に対する議員の恐怖心だけでは、この安定に対する十分な保証とはならないのであります。私はこれについて考えます一つのことは、われわれ野党における国家の公党としての自覚が必要なことでありましよう。党利よりも国家国民を重しとするこの態度が必要でございましよう。しかしそれにも増して重要なことは、政府与党の謙虚な、形だけ、上べだけでない心からの謙虚な態度が一つ、それからまた国民大衆の生活を思い、安定をこいねがうほんとうに、誠意と情愛のこもつたいわゆる進歩的な政策、これが与えられなければならぬと私は思います。この態度とこの政策、これはまさに政府の御責任であると思います。事は言うはやすく、行うのは実にむずかしいと思います。しかしこれがくずれましたならば今の政局はたちまちにして破局に陥ると思います。この辺につきまして総理はどのような御所信をお持ちになるか、まずこれをこの機会にお伺いいたしたいと思います。
  70. 吉田茂

    吉田国務大臣 解散に対する意味合いはしばく私が説明いたしましたが、それに対して国民ぱ十分納得が行つてくれたものと私は確信いたします。また従来のわが党の態度は、はなはだ驕慢であるというお話でありますが、わが党として、ことに私としては過半数をとつたからといつてお話のような態度がないように努めて注意をいたしておるのであります。また特に驕慢な態度というようなことは自由党としては、少くとも私の承知いたしておるところではいたしておらないと、私は確信いたします。
  71. 古井喜實

    ○古井委員 さようにいたしますと、従来のごとき態度を継続されるという意味でございましようか、さらに一段の反省と努力をされるお気持はないという意味でございましようか。くどいようでありますけれども、いま一応御答弁をお願いいたします。
  72. 吉田茂

    吉田国務大臣 従来の態度通りというような考えは毛頭持つておりません。もし今後といえども驕慢な態度があるとか、よろしくない態度であるとか、あるいは国民了解できないような非民主主義的な態度があるならば、これは野党におかれて大いに攻撃していただきたいと思います。またわが党としては謙虚な態度はあくまでも持する考えでございます。
  73. 古井喜實

    ○古井委員 吉田総理はわれわれ改進党の五大政策というものに対して、いかなる御見解をお持ちになりますか。先般の新聞記者との会談の記事によりますれば、異論のあろうはずはないという意味のお話をなさつたように拝見しました。その通りにお考えなつておりますか、なおまた改進党の掲げておる五大政策なるものを十分御承知の上でその通りにおつしやり、またそうお考えになるか、この点をお伺いいたします。
  74. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は五大政策なるものの説明を十分聞いておりませんが、私の承知いたしたところでは、話合いのつかない、つまり受入れることができない政策ではないのではないか。これは政調会等においてただいま検討いたしております。私の一見いたしたところの感じでは、相いれざるごときものではないと、私は確信いたしております。
  75. 古井喜實

    ○古井委員 少し政策がかつて来るかもしれませんが、貿易の不振の大きな原因の一つはコストの高いことだと言われております。しかしコストの高いことは、生産部面よりも行政部面が特にはなはだしいと思つております。今日の複雑機構、厖大な行政人員、国民七人に対して一人の公務員を背負わなければならぬといわれているこの厖大な行政人員と行政経費、これに対して何べんか機構改革等のことをお企てになつたように承知いたしておりまするけれども、遂に竜頭蛇尾あるいはいつか立ち消えになつたように存じております。行政費の思い切つた節減という問題については、どうお考えになりますか。今回の暫定予算には、その点についての御熱意が何らうかがわれぬよう思います。われわれの党は前回のあの本予算の審議において、当時の事情としては四百二十八億の行政費の節減を主張いたしました。これはあらゆる角度から検討を要すべき問題でございましようが、行政費の節減という問題について、いかなるお考え、御熱意をお持ちになるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  76. 吉田茂

    吉田国務大臣 行政費の縮減ということは、私として、また政府として極力いたしたいと忌つております。従来の経験によりますと、人員を減らすだけでは結局もとの木阿彌になるので、行政機構を縮小することまで考えなければ、ほんとのの経済縮減あるいは行政整理ができないと思いますので、新内閣になりましてから行政機構をどう改め、いかにして行政費の節減ができるかといのことを新たに研究いたしております。また行政費の節減によつて減税に持つて行く、従つてお話生産コストの最も高い重要な部分を占めておる税関係等についても、十分の節約をいたしたいという考えをもつて研究を進めさしております。
  77. 古井喜實

    ○古井委員 先ほど和田さんの御質問の際に長期計画経済の問題について総理のお考え伺いました。実行の伴わぬ無理な計画を立ててもしようがない、あるいは計画を立てたために無理にこれを強行することになつてもおもしろくない、いわゆる計画万能主義は排斥するという意味だというお話でありました。しかし万能主義は排斥するといたしまして、一年ごとの計画しか立てないというお考えでございましようか。経済界等も要望いたしておりましようし、各方面ともとにかく一年だけに限らぬ、さらに長めの計画が立てたいものだという要望があると思うのであります。むろんこれにつきましては、今日日本は一人歩きのできない経済、立場でございますから、改変を要することもむろん起りましよう。これは当然のことであります。しかし目標はなければならぬ、目標を立てることを排斥する理由はないと思います。この点につきまして、もう一度御迷惑でございましようがお答え願います。
  78. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。が、私は、先ほどはつきり申した通り計画はきらいだとか、あるいは好ましからざるものと考えておるのではなくして、私は計画経済とか、何年計画とかいうようなことをすると、いたずらに国民を迷わすようなことがあるから、計画万能は困る。しかしながら無計画がいいというのではない。またお話のように、一年以上の計画は立てないというようなことは申したことはありません。むろん政府の、あるいは国家の命は長いのでありますから、一年限りずつで切つて行くというようことは申したことはないのであります。ただ、長期にわたる計画国民に押しつけるようなことがあるのはいけない、いわゆる計画万能はいけないという程度でこれは五十歩百歩の議論にすぎないと思うのであります。今日までやつておつた政府計画といえども、必ずしも一年限りのものはいたしておりません。長期計画その他の計画等にいたしましても、国の産業の奨励等にいたしましても、決して一年際りを目標として考えておるのではなくして、日本貿易の上から、あるいは日本産業政策の上から行政その他を考えさしておるのでありまして、決して短期、一年だけそのときとくだけの計画を区切つてやるということは、申したことは一度もないのであります。
  79. 古井喜實

    ○古井委員 今までのことをことさら非難するとか攻撃するとかいう意味は少しも持つておりません。但し、公平、冷静に見まして、いかにも場当り主義、出たとこ勝負のきらいがあるというのは国民多数の見方であります。この点についてさらに一段の反省を加えていただきますれば、たいへんけつこうかと思つております。  次に私は、先ほどすでに今澄さんからお触れになりましたからくどく申しませんけれども、私も現在の綱紀め紊乱についてはまことに憂えておる一人であります。刑に触れるものだけでも連日新聞をにぎわす状況であります。刑に触れないものに至つては、ほとんどこれは推して知るべし、驚くべきことだろうと思います。のみならず、今日勤労の状況がどういう実情であるかということは知らない者はないはずであります。私は、こういう状況をほうつておくこと、一体役人は悪いことをするものだということ、りつぱな者があればこれは珍しいというふうな、こういう現状に対して、一通りのことでなしに、思い切つた対策を講ぜられる必要があると思うのであります。これはその場のやりとりという意味でなしに、ほんとうに真剣に考えられる必要があると思つております。特にお伺いする点があればお伺いいたしますし、ありませんければ特に御答弁は求めません。
  80. 吉田茂

    吉田国務大臣 御趣意はごもつともでありますが、ただ私から一言申したいのですが、役人の多くが悪いと考えるのは、これは酷であると思います。必ずしもそうではないと思います。われわれの知つている役人の中に――むしろ役人の多くは非常な薄給のもとに相当よく働いております。よその国は存じませんが、日本の役人については、お話のような批評は少し酷であると私は考えます。特に私から抗議を申し立てます。
  81. 古井喜實

    ○古井委員 私は役人が悪いと言つているのではありません、ただ役人の威信が地を払つている、世間ではそう見ているということを残念に思うのであります。それくらいに世間では言つているのだから、ここに、世間全体が信頼をするように相当つつ込んだ思い切つた努力をなさつてほしい。言い訳がましいことばかりおつしやらずにお考えを願いたいという意味にほかならぬのであります。総理に対する質問はこれで終ります。
  82. 尾崎末吉

    尾崎委員長 山本勝市君。
  83. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 時間が限られておりますので、二、三の質問をいたしますが、要点を明瞭に簡単にお答えを願いたいのであります。  第一は、二十八年度の予算不成立に終つた責任がどこにあるかという問題に関してであります。五月二十六日の朝、内閣記者団に対する初の会見において総理が述べておられるところによりますと、何よりもまず予算を早く通すようにして財界の安定をはかりたい、事業計画が立つようにしたいということを申しておられますが、この言葉から考えますと、現在におい七、総理は、この二十八年度の予算不成立に終つたということが、いかに日本の財界に大きな打撃を与えたかということを痛感しておられるに相違ないと思うのであります。私どももまた同感であります。ところが、日本経済に重大な打撃を与えたこの二十八年度の予算不成立に終つた原因と申しますか、責任というものに関して、実は、政府の重要なる方面から、不信任案を野党が提出したために予算が流れたのだということを盛んに放送されたのであります。その具体的なことは時間の関係でここで申しませんか、それは至るところで放送されたのであります。国民の中にもそうかと思い込んでいる方があるように思うのであります。しかしながら、私ども考えから申しますと、御承知のごとく一月の二十九日に予算案が衆議院に提出され、三月の一日に予算委員会を通過し、翌日の二日には本会議でこれが議決されて参議院にまわされたのであります。従つて、参議院におきましては、約十四日間ばかりは審議を続けたのであります。ことに、一月二十九日に衆議院に予算案が提出されておるのでありますから、参議院の予算関係の方々は、すでにその当時から二十八年度の予算に関して大体の考え研究されて、まとめておられるに相違ありません。そのようにいたしまして、三月の十四日に解散をいたされたのでありますが、言うまでもなく、憲法第六十九条は、解散に関しまして、不信任案が通過した場合、十日以内に解散をするか、総辞職すをるかということになつておることは申し上げるまでもありません。そこで私の考えから申しますと、参議院においてすでに十四日間審議されておる。一月二十九日から約一箇月間というものは、参議院の方々も二十八年度の予算の資料は得られておる。そうしてもしここで不信任案が通過いたしましてから十日間の期間があるといたしますと、参議院の審議期間は二十四日ばかりになります。言うまでもなく参議院における予算議をぎりぎり結着まで延ばしましたところで、一箇月たちますと自動的に予算は成立してしまうのであります。わずかそこに一週間足らずの期間が足りないことになりまするけれども、しかし私は、もし政府がこの二十八年度の予算不成立ということが日本の経済界にいかに大きな打撃を与えるかということを当時において痛感されておつたといたしまして、参議院の緑風会に対して、この予算不成立に終れば、日本の経済に大いなる打撃を与えるのだ、どうかここで十日間の猶予期間の間に予算を通過するように努力してもらいたいということを懇請いたされたとしたら、当時の緑風会の情勢から見ましても、必ず予算は通過しておつたに相違ないと思うのであります。私は一月二十九日の衆議院に対する予算案の提出、その後一箇月、加うるに参議院における十四日間の審議を考えますと、十日を待たずして五日閥でも緑風会はこの予算案に賛成をしておつたに相違ない、こういうふうに考えるのであります。政府は緑風会に対して、この予算不成立日本経済に対する打撃の重大さを考えて、どうかここ十日間にこの予算案が通過するようにお願いできないものかという交渉をされたのかどうか、これが私の聞きたいところであります。されたといたしましても緑風会はその猶予期間の十日の間にこの予算案を通過させないという態度であつた、それがはつきりしたというのでありますれば、私は予算案の通過しなかつた最大の責任は、よかれあしかれ緑風会が負うべきものと思うのであります。しかし今日においてこそこの予算案の不成立の重大な影響をお考えなつておりますけれども、その当時はそこまでひどい影響を与えるとはお考えにならないで、十日間の憲法上認められた期間を待たずして不信任案通過と同時にと申しますか、即座に解散を断行されたのであるか、この点ほんとうのところを伺いたいのであります。
  84. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えを申し上げますその点はしばしば論議れ、しばしば説明をし、政府としてはできるだけの理解あるいは了解に努めたつもりであります。国会においてもまたそうでありますが、政府としては解散による予算不成立のために、国として国民としてまことに迷惑千万な結果に陥るということは始終考慮いたしたのであります。しかしながら解散のために生ずる結果は、予算不成立のみではないのであります。その他重要な法案また同じであります。その解散によつて通過ができなかつたというために国民予算以外においても迷惑を受けるのでありますから、政府としては解散をいたす前に十分考慮いたしたのでありますが、しかし私としては、また政府としては不信任案が出た場合に、それに対して政府が態度をはつきりするということが憲法要求するところであり、また民主政治の精神であり、国民がこれをいかに批判するか、批判して、そしてその批判を与えられた正当な国会が一日も早く成立することに努めることが政府の義務なりと私は確信して、すべての障害をしばらくおいて解散に出たのであります。この点はしばしば私が説明申し上げ通りであります。
  85. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 総理の心持はよくわかりました。つまり日本経済に対する打撃というものを考えたけれども、しかし不信任案が通過して、そこに期間を置くということがまたいろいろな弊害を持つということで解散を断行されたという御意向と考えますが、そうしますと、官房長官福永君初め新聞で堂堂と、不成立に終つた予算案の各種の費目、たとえば荒川の改修費その他の費目まであげて、これが流れたのは一にこの不信任案を提出した野党の責任であると言つておるが、そういう考え総理自身は持つておられないのでありますか。
  86. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと質問の要点をつかみ得なかつたのですが、何とか川の(笑声)補修ができなかつたのは解散の結果である、こういうお話なんですか。
  87. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 いや、不信任案を提出した側にこの予算案が成立しなかつた責任があるんだということを天下に放送しておるのです。
  88. 吉田茂

    吉田国務大臣 だれがですか。
  89. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 官房長官の福永君が言つております。これは政府考えか、あるいは単に官房長官一人の考えか。(「官房長官に代弁させたのだろう」と呼ぶ者あり)お答えがなければ……。
  90. 吉田茂

    吉田国務大臣 官房長官から後刻お答え申し上げます。
  91. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 お答えがなければ第二の質問をいたします。それは先般わが党の中村君からも質問をされたので、私はなるべく重複しないように簡単にお伺いいたしますが、それはいわゆる戦犯の処置に関する問題であります。中村君が申されたようなこまかなことは省略いたしますが、実は先般巣鴨の戦犯の代表の方々と会いましていろいろ陶きますと、講和条約が発効する前においては毎月六十人、八十人ないし百二十人以上の仮釈放者があつたにかかわらず、講和条約発効と同時にそれはなくなつてしまつた。その後いろいろ交渉してアメリカ関係だげはわずかに――前とは比較にならぬほどわずかでありますが、仮釈放が行われておる。他の国々の関係はまつたく行われていないということを申したあとで、こういうことを訴えておる。われわれはこのようにして、講和条約が発効してもなお出る見込みがない、たびたび当局から来て言われた予想もことごとくはずれておる、しかたがない、おらなければならぬのならばせめて、自分たちの家族が月月五千円ぐらいの収入のあるように骨折つてほしい。それももしできないのなら、この獄中で五千円か六千円の収入があるような内職を世話してほしい。ただいまは所長のお世話で二千円ばかりの内職をして家族に送つておるが、生活に困つたために、いろいろ家庭上のトラブルが起つておる。こういうことを訴えておるのでありますが、戦犯は内地、外地を加えても千名そこくでありましよう。月五千円といたしますと、一箇年に六千万円もあれば片のつく問題でありますが、私は、もしこの戦犯の釈放に関して、なかなか見通しがつかぬということでありましたら、わずかの費用でありますから、戦犯者の家族が生活に困るということによつて巣鴨の刑務所の中で動揺を来すことのないような処置を、簡単にとれるのではないかと思う。これは直接には法務大臣の責任でありましようけれども、しかし対外関係もありますし、総理自身が決断さえされれば解決できるのではないか、御意向を伺いたいのであります。まず総理の御意向を伺いまして、あとでまた法務大臣の御意見伺います。
  92. 吉田茂

    吉田国務大臣 所管大臣から申し上げます。
  93. 犬養健

    犬養国務大臣 山本さんにお答えいたします。事柄が少しこまかくなりますので、ごめんをこうむつて、私からお答え申し上げます。巣鴨の中に入つている人たちが、御自身の釈放問題ももとよりでありますが、お目にかかつてみて感じますのは、留守宅の生活問題が非常に心の重圧になつている、ごもつとも千万で、いろいろ考えまして、そとの工場に監督官がついて通うということも考えた時期もございます。しかしこれは非常に国際的に誤解を招きやすいおそれがございますので、ただいまでは、今御指摘のように、巣鴨の中に工場をつくりまして、もうすでに機械設備などやつております。そこで働いてもらつて、働いて得た収入を留守宅に送るということを主にして、それをもつと拡張したいと考えております。今お話のように、ただいまの収入程度では、まだ留守宅に対して安心感を中の人が持たれませんから、どうやつたらもつと多くの金を留守宅に送れるかということを至急具体的に実現させたいと思つて、努力いたしておりますから、さよう御承知願います。
  94. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 時間が参りましたので、他の大臣の方方にはまたあと質問することにいたします。私の質問はこれで打切ります。
  95. 尾崎末吉

    尾崎委員長 黒田寿男君。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は時間がきわめて制限されておりますので、MSA援助に関して骨格的な問題点についてだけ総理大臣に御質問申し上げたいと思います。総理大臣はこの問題につきましては新聞などでいろいろ報誉れておるけれども政府としてはまだ何ら具体的に取扱つていない、こういうふうに他の議員に対し、現に先ほども今澄委員に対しても、お答えになりまして、答弁を避けておいでになりますが、これは私は非常に遺憾に思います。内閣総理大臣外交関係につきましては国会に報告しなければならぬという憲法上の建前になつておりますので、その意味で私はひとつ総理大臣に報告を求めてみたいと思います。最近新木駐米大使から、米国政府の対日MSA援助につきまして、政府に対し正式な報告書が到達しておると新聞は報じております。それは事実であるかどうか。事実でありますれば、国会への報告義務に基いて、ここで報告していただきたいと私は思うのであります。この報告書を見ておれば、アメリカがMSA援助について現在どう考えているかというくらいのことはわかつているはずであります。しからば委員の質問に対しましても、少くとも骨格的な問題点につきましては、日本政府見解を表明できるはずであると私は思う。どうか答えていただきたいと思う。しかし内容について御質問申し上げます前に、まず第一に報告を求めたいと思います。新木大使の報告の内容をここで御報告願いたいと思います。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はその報告は見ておりません。またお話のようにかりに来ておつたとして、ただちに議会に報告せよとおつしやつても、報告のできないものもあるかもしれません。これはあらかじめ申し上げておきます。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 総理大臣はこのような直大な報告をまだ見ていないとお答えなつた。私は非常にその御答弁に疑義を持つだけでなく、驚くものであります。念のために、岡崎外務大臣が御出席になつておるようでありますから、このような報告が来ているかどうか、この点について御説明願いたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 在米大使館からMSA等に関する報告は随時来ております。黒田君の言われるのはそのどれに当るかはわかりませんが、しかし現在私の承知するところでは、その報告なるものは、米国の新聞に発表されたものを取集めて報告しておる段階でありまして、それ以上のことはありません。
  100. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は報告が来ておれば、その報告を明らかにしていただきたい、こう申し上げておるのであります。単なる報道機関の報道紙に発表したものを問題としているのではございません。日本政府の代表者である大使が日本国政府に対して正式に報告しておるものを問題としておるのでありますから、その材料がどういうもわでありましようとも、少くとも私は重大な報告であると考えます。それについて大体の御報告を願いたいと思います。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いずれ書面をもつて報告申し上げます。いろいろ多岐にわたつておりますので。
  102. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは私はこういう問答を繰返しておいてもむだでありますから、私の方からこういう報告ではなかつたかということについて御質問申上げてみたいと思います。新木大使の報告として、これは東京都下の大新聞に全部出ておりましたので、私は大体間違いないと考えますが、その報告によりまして明らかになりましたことは、第一には、米国が来る七月からの新年度におけるMSA軍事援助を受ける国の中に日本をも加えているということ。第二には、米国の対日MSA援助は、日本国内治安及び適当な国防を確保するために、装備及び訓練をする必要があるという趣旨に基きまして、極東向け軍事援助の中から日本に対し割当てる。そして米国議会で日本に関する説明がなされましたのは、軍事援助の項に関してなされたのでありますから、当然これは軍事援助と解釈しなければなりません。すなわちMSA援助は、軍事援助が中心であることが明らかにされている、私は新木大使の報告でこう判断してよろしいと思う。第三は日本がかつて満州、中国から得ておりました大きな生産資源を失うこと、すなわち中国市場を喪失するということを前提として、これを補うために、南アジア及び東南アジアとの通商及び資源開発等の方法を通じまして、経済関係の緊密化をはかるということ、こういうことが明らかになつております一なお私はもつといろいろと他のことがあるかもわからないと思いまして報告を求めたのでありますけれども、少くとも私が今申し上げましたこういう点については、新木大使から米国の政府の意向がこうであるというように報告されておると思いますが、どうでありますか。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 米国大使館からの報告には、そういう種類のものもむろんあります。しかしながらお断りをしておきますが、米国の政府から日本の大使にそういうことを正式に申し入れたものは一つもありません。これらはすべて新聞報道等を集めたものでありまして、その点は特に断つてあります。
  104. 黒田寿男

    ○黒田委員 新聞報道といえば、何かあまり重要なものでないというように私どもが解釈するかのごとくお考えなつて、新聞報道、新聞報道と外務大臣は言つておいでになる。しかし新木大使の報告の内容は、単に新聞報道だけではございません。アメリカにおいて、アメリカの重要な当路者が、アメリカ議会でMSAの問題について報告し、あるいは説明したもの、あるいは国会に出された書類の内容等がこの報告に含まれておると私は思うのでありまして、いわゆる新聞である、雑誌であるから、そんなものからとつた材料は大したものではないというような民主主義軽視の思想が現われるようなことを言われては困ります。私はただいまの報告は、アメリカ国会の中における、アメリカ政府の言動に基く報告であると認めてよろしいと思いますが、この点いかがでしようか。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の申しているのは、アメリカの政府から、日本の代表者に対して話のあつた報告ではないということでありまして、つまりアメリカ大使館が、たとえばだれそれが国会で報告したということを新聞に報ぜられておれば、それも載せておることは当然であります。しかしながらこれも国会に直接行つてとれる部分は少いのでありまして、多くは新聞等の報道に基いたものを集めて来ておる、こういうふうに考えます。
  106. 尾崎末吉

    尾崎委員長 黒田君に申しますが、時間が経過しておりますからもう一問にお願い(たします。
  107. 黒田寿男

    ○黒田委員 これから本論になるのでありますが、多少の時間の猶予を願いたいと思います。
  108. 尾崎末吉

    尾崎委員長 他の会派の諸君とのつり合いがございますので、この一問に願います。
  109. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はもう少し質問いたします。他の委員も制限外の時間を得られておるのでありますから、私だけに制限されることはない。
  110. 尾崎末吉

    尾崎委員長 もうすでに経過いたしております。
  111. 黒田寿男

    ○黒田委員 それは私の責任ではありません。
  112. 尾崎末吉

    尾崎委員長 あなたの持時間は大体経過しております。
  113. 黒田寿男

    ○黒田委員 大体アメリカの政府が、対日MSA援助についてただいま私が申しましたような見解を持つておる、少くともこれだけの御認識は日本政府もお持ちになつておると思います。そういうことさえわからないというのでは、これは政府たる価値も、外務当局たる価値もないのでありますから、その認識は私は持つておいでになると思います。政府がどうおつしやつても私はそう考える。政府を尊敬する意味において、私はそう理解いたします。そこで他面にこのMSA援助を受けますためには、御承知のように相互安全保障法というものがあるのでありまして、その相互安全保障法からすれば、どんな援助を米国が他の国に与えるといたしましても、その援助を与えることが、米国自身の安全の強化になるというように、米国大統領が判断しない限りは、どんな国に対しましても援助を与えないという趣旨になつておりますし、また米国が一方の当事国となりまして、相手の国、それが一つでありましようとも、多数でありましようとも、そういう国と協定ないし条約を結びましたときに、その相手の国が軍事的義務を履行するという立場に米国に対して立つ、こういう関係にあることが必要である。それから自国の防力を増大するために必要な一切の措置をとる、こういうことが援助の条件として定められておりまして、これも外務大臣あるいは総理大臣にはあまりにもよくわかりになつておるところであると思う。そこで新木大使からは、先ほど申し上げましたような報告が来ておると私どもは思つておりますし、その上にこういうアメリカの大方針がきまつておるのでありますから、そういうときにMSA援助を受けるということになつて来ると、これはどうなるのでありませうか。日米安全保障条約ではわが国は米国に対しまして、何ら軍事的義務を負担しておりません。そこで相互安全保障法に基いて援助を受けますためには、この相互安全保障法に右のような規定があります限りは、わが国は米国に対し何らかの軍事的義務を参果すことを内容とするような新しい相互援助協定を締結しなければならないのである、私はそう考えますが、どうでありましようか。  時間がありませんから、一問一答を避けまして、もうすこし申し上げてみたい。そのような協定を新たにしなければ、すなわち軍事的義務を果すような内容を持つ相互援助協定を、日本はアメリカに対して締結しなければ、MSAの援助を受けられないのじやないか。もしそういうようになるといたしますれば、それはわが国が戦力を持つことを前提とするものでありますから、現在の日本では私どもはそれはできないと思いますが、どうであるか。それとも軍事的義務を負担する協定を新たに締結することなしに、たとえば現在の安全保障条約はそういう義務を負担しておりませんが、ただ安全保障条約というものがあるだけで、その他に別に軍事的義務を負担するような条約を締結しなくても、なおかつ援助を受けられるような方法があると思うか、どうか。そうなつて来れば私はその援助は軍事以外の援助でなければならないと思いますけれども、それはアメリカの目的ではない、これくらいのことはだれでもわかつておる、そういうものでないというのは国民をだますものです。私はそう思う。日米安全保障条約では、わが国は米国に対する軍事的義務を負担しておりませんから、それを負担するようなものにするというのが、私はアメリカのMSA援助の目的ではないかと思う。そうして日本もアメリカの安全を強化するという役割を果させられるということになる。これがMSA援助の、米国の目的でなければなりません。単なる経済援助を受け得られるというようなことは、私は今ごろそんなことをいうのは子供だましにもならないと思いますが、政府はまだそういうようにお考えなつておいでになるかどうか。  時間がありません。もう一点だけ質問しておきたいと思いますが、軍事的援助の義務を負担するような条件で、MSA援助を受ける以外に方法がないということがわかつたときには、総理は断固としてこういうものを拒否するだけの御意思があるかどうか、まずこれだけのことを承つておきます。
  114. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほどから繰返して申しておりますように、まだアメリカの代表者とワシントンでも話しておりません。こちらでも話しておりません。従つて、正確に直接先方の意向を何も聞いておらないのであります。それを今いろいろ臆測してこうだああだと言つても、私は大した益はないと思います。要するに、日本としては当然憲法なり法律なりの範囲内においていろいろのことをいたすのでありまして、そういう点については総理もしばしば言われておりまする通りに、何ら御疑念はないと思います。
  115. 黒田寿男

    ○黒田委員 最後に総理大臣に一言だけ。そうしますと、現在のわが国憲法に抵触するような援助を受けない、大体岡崎外務大臣はそのように申されたようでありますが、総理大臣もそのようにお考えなつておりますかどうか、念のために一言だけ総理大臣から承つておきたいと思います。
  116. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは当然であります。
  117. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは最後に締めくくりの言葉を言わしていただきたい。従来政府国民に何も知らせないでおいて、いつの間にか重大な条約を締結してしまう。たとえば日米安全保障条約もそうでありましたし、行政協定の場合もそうであつた。私は、今後は総理を初め外務大臣もこのような重大な問題については、かつて日米安全保障条約及び行政協定の締結の場合における国会軽視の態度を再び繰返されないように、特に御注意申し上げます。私の質問は残念ながらこれで終了いたします。
  118. 尾崎末吉

    尾崎委員長 午後は二時より再開いたします。暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十四分開議
  119. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を続行いたします。古井實君。
  120. 古井喜實

    ○古井委員 私は地方財政の問題について、塚田新国務大臣と大蔵大臣質問いたします。前回の国会において、当時の自治庁所管の本多国務大臣は、二十七年度の地方財政において一体赤字が生ずる心配はないかどうかという問題に対して、赤字は生じない、こういうことを繰返しておつしやつておつたのであります。私は当時政府の地方財政に対する財源措置の状況から見れば、必ず赤字を生ずる、こう思つておつたのであります。赤字を生じはしませんか、これは必ず事実として現われて来る。何ぼあなた方がごまかされても数字が出ますよ。間違いありませんかということを何べんか念を押したのであります。ところが赤字は生じないだけの処置は講じてあるということを何べんもおつしやつておつたのであります。ところが私は二十七年度において再び厖大な赤字が生じておると思つております。この実情はまずどうか、二十七年度において支払いの繰延べ、あるいは二十八年度の歳入の繰上げ充用、これは二十七年度の財政が支払いがつかないために繰延べあるいは繰上げをやるのでありますから、これははつきりした赤字であります。この支払い繰延べ、繰上げ充用が一体どのくらいになつておるというお見込みでおいでになるか。なおまたそういう形をとらないで、事業繰越しの形をとつておるものが相当多いと思うのであります。これも実際は赤字であります。これをも含めればどのくらいの赤字になるか。この実情についてどういうふうにごらんになつておるか。まずこの実情からお伺いしたいと思います。
  121. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 二十七年に赤字が生じないであろうという見通しを本多国務大臣がお述べになつておつたという話でありますが、今日になりまして二十七年度の状態がほぼ想像できる程度まで来ております。その想像の基礎に立つて申し上げますと、何がしかは赤字が生じておるように考えられます。もちろんまだ今出納整理期間中でありますので、正確な数字は報告を受けておりませんので申し上げられないのでありますが、地方が一応報告をして来ております数字によりますと、五百六十億というような非常に大きな数字が出ておるのでありますけれども、そのようにはおそらくないであろう。そのようにはないであろうと想像いたします理由は、実は二十六年度におきましても、地方からの報告では当初は五百億というような数字が参つておつたのでありますが、二十六年度の結果は、その後自治団体などの御協力によりまして、実際には六、七十億程度の繰上げ充用で済んでおつたように思うのであります。従つて二十七年度においても、百六十億というような数字ではないであろうと考えられますけれども、やはり七、八十億からあるいは百億近いそういう数字のものがあるのではないか、そういうふうに考えておるわけであります。従つてそれだけの繰上げ充用がある裏には、当然想像されますことは、仕事などをすべきものをしないで延ばしておつたものも相当あると考えられるのでありますが、残念ながらこの数字はただいま申し上げられるような何も資料もありませんので、まことに恐縮でありますが、その程度に御了解願いたいと思います。
  122. 古井喜實

    ○古井委員 二十六年度の実績が約六十億の赤字であるということでありますが、多分その赤字とおつしやるのは、ほんとうの狭い意味の赤字で、つまり支払いができないで繰延べにしたとか、次年度の歳入でもつて支払いをしたという一そういうぎりぎりの赤字だと思います。事業繰越しを歳入歳出とも次年度に送つてしまつたという決算上に現われない赤字を加えれば、二十六年度は百五十億を下つていないと私は思つております。そうすればかりに今七十億ないし百億というのが狭い意味の赤字だというならば、二百億以上の実際の赤字が生ずるのじやないかと思う。もしそれが不正確であつて、もつと上であるならばもつと大きな赤字になると思います。いずれにしてもおそらく二百億を越す赤字ではないかと私は推察するのでありますけれども、これに対してどうなさろうというのであろか。これはよく税制の根本的改革をするのだとか、財政をどうするとかいう根本問題をおつしやいますけれども、それはとにかくとして、きようが乗り切れないのであります。そういう悠長な話をしておつて、きようを解決しないわけには行かぬのであります。そうして今のこの目の前の赤字に対してどういうふうに解決をされようというのであるか。今回の六月暫定予算にはこれに対する措置として明らかでありませんけれども、百六十億の短期債と、三十億の長期債があるようであります。これはどういう意味かよくわかりませんけれども、あるいはそういう考慮かしらんとも思います。しかしこれは要するに借金であります。借金であつて、一時のつなぎであります。財政に対する措置ということに私はならないと思う。結局一時延ばしになると思う。のみならずこれがまた赤字をカバーしているかどうかも問題だと思いますし、百六十億と三十億というものは何を一体対象にしてお考えなつたものか、赤字を対象にしてお考えなつておるものかどうか、あるいは別個の財政需要を対象にしてお考えなつておるかどうかということ、それからこの赤字に対して、一体七月予算あるいは本予算で、いつどうなさるか、あるいはほつておいて見殺しになさる気か、はつきりしたところをひとつお伺いしたいと思います。
  123. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 地方債の窮乏につめましては私もまつたく同感なのでありまして、何とかしてこれを措置しなくちやいけない、救済しなくちやいけない、こういうように強く考えているわけであります。御指摘のようにこの措置はもう時期的にあまりずるずるに延ばしておれないということも考えているわけであります。従つてこれを見殺しにするという考えは毛頭ないのでありまして、できるだけの早い機会措置したいと考えいるはわけであります。そこで六月暫定予算に出ました三十億の長期債及び百六十億の短期債はどこから出たのかということでありますが、これは六月までの収入支出の見積りを立てまして、そうしてその不足の部分を一部分長期債に持つて行き、足りない部分を短期債でそうして六月までの状態においては収支つじつまの合うようにという、一応の見通しを立てたところから出した数字でございます。七月におきましては平衡交付金をさらにぜひとも計上したいということを考えております。従つて七月は平衡交付金を含めて、また少くとも七月までの地方財政の収支において、何とかやつてつていただける程度措置は必ずしたいし、するつもりでおります。なお一年を通じてのものは、これは予算を編成いたします際に、十分各般の事情を考慮しまして、今までの赤字を何とかしのいでいけるように措置をしなければならないと考えております。ただ一言最後につけ加えさしていただきたいのは、赤字は赤字でありましても、その全部を国が背任を負つてめんどうを見るか、まためんどうを見る形を平衡交付金というもので出すか、特殊の個有の財源を与えるという形で見るかいろいろあると思うのでありますが、この辺になお若干検討を要するものがあると思うのであります。少くとも国がめんどうを見なければならないという性質上、そういう原因から出ている赤字は、これは何とか国の責任において措置したい、こういうように考えておるわけであります。
  124. 古井喜實

    ○古井委員 今の四月以降の不足分に対して、百六十億と三十億を考えたが、その不足という中には前年度の赤字を解決する、こういう意味で前年度の赤字も含めた意味のことでありますか。そうでありますならば、前年度の赤字というものを見込みをつけておいでにならなければならない。さもなければ計数が出ないわけであります。どうこれを見積りをつけておいでになるか。それをひとつお伺いしたい。  もう一つ、国で責任を持つべき部分は国で責任を負うべきである、地方で責任を負うべき部分もあるのだ、こういうことでありました。そこでそれはどういう意味をおつしやつておるのか、いつものこれは逃げ言葉なんであります。地方で当然にやるべき自主的財源の相当大きな部分も、平衡交付金という大蔵省に握られてしまつておる財源に依存しておるのであります。仕事の性質で地方で持つべきものの財源を地方で持つておるのではないのであります。地方で持つてもいいような性質の仕事に対する財源も平衡交付金というひもつきで地方はまかなつておる。それでありますから、地方で責任を負うべき部分であるとか、国で責任を負うべき部分であるとかいうことは、まことに実はあいまいしごくなる考え方なんであります。そういう考え方でいつも自治体の財政が国庫財政のために困難な状況に追い込まれておるのであります。これは塚田新大臣も重重御承知であろうと思います。そこで今のような意味に何か御異論があるなら、あとの点についてお伺いしましようし、なければそれでもけつこうであります。先の点とあわせてお伺いします。
  125. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 ただいま申し上げました三十億、百六十億の算出の基礎になつておりますものは、御指摘のように、繰上げ充用の上から来る分は含まれておらぬのであります。ただ繰上げ充用から来る約七十億から百億くらいのものは、地方自治団体が市中銀行その他からの融資を受けて大体まかなつて来ておるのが実例でありまして、そういう意味におきまして、この直の数字は今度の暫定予算に考慮しないでも、別にかわつた事態が出て来ないという意味において、何とか収支はつじつまがとれるのではないか、こういうように考えております。それから地方団体の赤字を国は全部責任をとるべきじやないという考え方は、少し言葉が足りませんでしたので、誤解を起したかと思うのでありますが、俗に地方が金が足りないから、そういうことを言われたからといつて、それを全部国が責任をとるというような考え方は、自治団体という建前からもこれはとるべきでない。やはり財源が乏しいときには、自治団体自体も歳出の面にいろいろと考慮していただいて、自治団体でまかなつていただける面も当然あるべきだから、そういう面は国がめんどうを見ないのであります。こういうふう申し上げておりましたので、ご解になりませんようにお願いいたします。
  126. 古井喜實

    ○古井委員 そこでただいまの御答弁で、二十八年度の歳入を繰上げ充用した等の部分については措置がしてない、これは残つた問題であるというふうに伺いました。自然これについてはただいま七十億ないし百億ある、これについては今後措置をされる問題として残つているように、ただいまのお話では伺つたのであります。そうであれば七月の暫定予算は、結局一時の、つまり次の年度の歳入を食つてしまうのでありますから、次年度はそれだけ穴が明くのであります。次年度はそれを埋めなけば、またこれが歳入の欠陥になることは申すまでもないと思います。つまり埋めなければならぬわけでありますから、これをいつどうお埋めになろうというのか。少しくどいようですけれども、そのたびそのたびに、埋めるのだ埋めるのだということで、次々とあと送りになつて行くというのが今までの例でございますので、これは八月分以降の本予算で必ず解決されるものか、あるいは七月分でも若干解決されようというのか、つまり見殺しにされぬとおつしやる以上は、いつ解決されるのかということをお伺いしておきたいのであります。  それから多分あとの点は、地方の方でも節約すべき経費もあるのじやないか、冗費もあるのじやないかとおつしやつている意味だろうと思います。まことにごもつともであります。と思いますけれども、今日地方財政が赤字を生じているのはわずかな濫費の結果起つているのだと私は思いません。大きく、税財政制度の欠陥があるから起つているのだと私は思つております。そこでちよつとしたことでは解決つかぬと思うのであります。特に今のような平衡交付金制度、いかようにでも国庫財政の都合で総額のわくを上げでも下げでもできるような平衡交付金にたよつている地方自治団体というものは実に哀れなものだと思うのであります。根本はそこにあると私は思つております。この数年間の状況を見て参りますと、地方財政はほとんど危機に来ている。地方財政は今までにない困難きわまる状態になつて来ていると思うのであります。経費の節約もさることながらもつと根本の問題があつて、これを解決しなければどうにもならぬと思つております。これは意見でありますから、お伺いする点があればお伺いいたしますが、さきの点だけは少くともここでもう一応御迷惑でしようけれども伺いいたしたい。
  127. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 今までに繰上げ充用になつておりますような赤字というものは、御指摘のように、私も地方財政自体が持つている本質的な欠陥から出て来ていると思います。従つてこれを今これだけ足りないからこれだけ国から出してやるのだという形で解決しても、それはだめなのでありまして、やはり問題を本質的に考え直して、将来もそういうものが生じな)ように解決しなければならない、そういうように実は考えております。従つて今何とか市中銀行などでしのいで来ていただいているのでありますから、これは本質的に問題を考え機会に解決することにいたして、今年の七月の暫定予算、もしくは七月の終りまでにはできるのじやないかと考えられます二十八年度の予算では、そういうものについては一応これは十分な考慮はできないのじやないか、こういうようにまあ考えております。しかし二十九年度の予算の場合には、当然御指摘になりましたように、地方の税制財政全般の再考慮を必要とすると考えておりますし、またそのように地方制度調査会にお願いして、適切なる意見を出していただくようにとり運んでおりますから、その機会に根本的な解決をいたしまして、そうしてそれとあわせて今までに生じたそういうものをどういうぐあいに将来の財政上長く解決するか、あるいはその機会に一時的に解決するか、そういうようなことを考えて、そうして御希望に応ずるようにしたいと考えております。
  128. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの最後の御答弁で、二十七年度の赤字の問題は、二十八年度、今年度では考えないのだ、こういうことなのですが、これは遺憾ながらそういうお考えならば、私は簡単にその上態度に賛成できません。二十七年度で生じた赤字というものを解決しないのだ、こういうお考えならば、それも伺つておきます。伺つておきますけれども、これは間違つていると思います。よくひとつ御再考される必要があると思います。二十九年度以降に対して根本的な財政税制の検討をした上の対策ということは、それもけつこうです。それはけつこうですけれども、現に生じた赤字欠陥に対しては、今年度は考えないのだとおつしやるのでは事がめんどうであります。それでもけつこうです。事はめんどうであります。これだけはひとつ御承知つておきたいと思います。何か伺える点があれば伺いますが、意見だけ申し上げます。
  129. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 全然二十八年度中は考えないのだというようにお聞きになつたかもしれませんが、これは少くとも生きておる地方団体が、何とかやつて行けるようには考えざるを得ませんし、それで中央で考えるか、地方で御自身に考えていただくか、あるいは少し来年二十九年度に繰上げ充用がよけいになつて持ち越して行くか、何らかの形でこれは考えられることになるのでありまして、ただ考えなければならない問題が本質的なところから出ているから、その解決は二十九年度の根本解決の際に考える。こういうふうに申し上げたつもりなのであります。
  130. 古井喜實

    ○古井委員 ちよつとくどくてやめたいのですけれども、これは二十七年度に生じた赤字なんです。要するにこの始末の問題なんです。そこで幾らか考えるかも知らぬようなにおいも出されるのでありますけれども、要するに考えない。考えないなら考えないでもいいんです。お考えにならぬでもいいんです。いいんですが、考えるのか考えないのか、どつちでもいい、はつきり言つてください。
  131. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 まあ考えるということになるのでございましような。考えないではとても地方財政が全然運行がつかなくなるから。ただその考えるというのが、中央の手で考えるか、地方と中央と両方でもつて考えるかということになるのじやないかと思いますが、あるいは御質問の趣旨を私が十分つかんでおらぬので答弁がヒントをはずれているのかもしれませんが……。
  132. 古井喜實

    ○古井委員 これはいずれ七月分暫定予算、八月以降の予算が出ることでありましようから、拝見した上でのことにいたしまして、一応この関係質問はやめます。  緒方副総理質問がありますが、おいでにならぬようですからお見えになつたときに保留しておきます。
  133. 尾崎末吉

    尾崎委員長 了承しました。中村三之丞君。
  134. 中村三之丞

    中村(三)委員 六月の暫定予算の審議がだんだん進んで来たのでありますが、暫定予算というものは一会計年度の中の一定期間であることは申すまでもありません。一定期間ということは、大体われわれの政治的判断において二箇月ないし長くて三箇月、そうしてすみやかに本予算を編成して、この暫定予算を吸収して行くのが賢明な方策ではあるまいか。またこれが国民要求に沿うゆえんではないか、こういうふうに思うのであります。大蔵大臣の御答弁を煩わしたいのであります。
  135. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お尋ねの点はまことにごもつともでございまして、私どもも本予算をできるだけすみやかに出したいと考えておりますが、まだ組閣後日の浅いことで、計数等も、その後の情勢等もかわつておりまして改めなければならぬ点もございますので、本予算は大体月半ばには出し得るかと存じております。それに向つて今全力を尽してやつておる次第でございます。
  136. 中村三之丞

    中村(三)委員 われわれは、この六月の暫定予算の審議を終りますと、何か二週間以上自然休会になるということを聞いておりますが、非常にもつたいない。これは何としても政府が怠慢じやないか、という言葉を私は使つてよろしいど思う。十分ひとつ御勉強を願いたいと思う。  それから私たちがいただいております予算書を見ますと、今回の分は昭和二十八年度一般会計暫定予算補正とい、うことになつている。このいわゆる補正暫定予算なるものは財政法第三十条によつたものか、補正でありますから二十九条によつたものであるか、これをお答え願いたいのであります。
  137. 河野一之

    河野(一)政府委員 暫定予算というものは幾つもあるべきものではないのであります。四、五月分につきまして、財政法第三十条の暫定予算を出しておるわけであります。これを期間を延長いたしますとともに、六月分として新たに追加する関係上、補正という言葉を使つておるのでございまして、これが成立いたしますれば一体となつ暫定予算になるわけであります。昭和二十三年の暫定予算も何月も組んだことがありますが、これは従来の例から最初の方が暫定予算で、あとでつけ加わつて一体となるという意味で補正という言葉を使つたのであります。
  138. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は補正ということを、四、五月の暫定予算に対する追加予算というふうに解釈するのでございますが、暫定予算の形式、提出の方法、手続というものは一定しておらぬのである。それでありますから、暫定予算の提出の方法、組み方はいろいろあるようであります。そこで六月分は四月、五月の追加予算である、それが合体して六月に入つて予算に吸収されて行く。そのときには暫定予算は将来の効力を失するのでございましよう。その吸収されて行くコースを説明してもらいたい。
  139. 河野一之

    河野(一)政府委員 暫定予算の補正ということにつきまして、法律論はいろいろあると思います。財政法二十九条に、予算作成後生じた必要に基いて追加予算を出す、あるいは修正を加えるというのは、あわせて本予算の場合には補正という言葉を使つておるわけであります。これはあくまでも本予算がありまして、それに対して新たなる経費を追加する、あるいはそれを直すということでありまして、暫定予算そのものは一定の期間の予算でございまして本予算ではないのでございますから、財政法第二十九条における厳格な意味の追加ではないのでございます。従つてこの暫定予算に関する限り、二十九条の適用があるかどうか法律上の議論はございますが、少くともそういう追加ではな)ことだけは確かでございます。しかし性質上は、中村さんのおつしやるように、追加に非常に近いものでございまして、つま町四、五月分に対して六月分を合せる。合せた結果は一体となるという意味におきまして、本予算に対する補正とまつたく同川様でございます。しかし厳格なる法律論としては違うと思いますが、従来の例はこれを補正として扱つておる。これが成立いたしました場合において一は、一個の暫定予算なつて、その後に本予算ができますればこれは全部あわせて吸収される、こういうことに相なるわけであります。
  140. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は、補正という文字がありますから財政法二十九条を思い出した。この補正という文字が、今おつしやるように、追加を意味するならば、追加予算というものは時には放漫に流れて、予算を膨脹する機会があるのであります。この点私は疑いがありますから一応お聞きいたしたのであります。そうしますと、今までお出しになつた四、五、六の暫定予算は、いわゆる新規要求をのけた標準予算の月別である、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  141. 河野一之

    河野(一)政府委員 大体そういうことであろうと思います。ちよつとお断り申し上げておくのでありますが、補正という言葉は財政法にどこにもないのであります。旧憲法時代におまきしては追加という言葉はございましたが、財政法におきましては追加のほかに予算を減額して修正する、あるいはその他文句を直すということもございますが、減額することを修正といつております。両方あわせて補正という専門用語を使つておるわけでありまして、財政法には補正という言葉はないのであります。
  142. 中村三之丞

    中村(三)委員 補正というのは、追加と修正両方あわせて補正というのじやないのでありますか。
  143. 河野一之

    河野(一)政府委員 旧憲法時代におきましては、予算は追加するばかりでなしに、減額する場合におきましても、これを予算十一減額をいたしませんで、実行上減額させるというやり方でやつて来たことは、中村さんよく御存じだろうと思います。財政法におきましては、追加の場合もございます。あるいは修正の場合もございます。あるいは追加と修正と両方あわせた場合もあるのであります。従いましてこのすべての場合をあわせまして、本予算に対して後に年度内に出される予算をすべて――追加であろうと修正であろうと、あるいは両方合体したものであろうと、補正という言葉で統一して、第一号、第二号というように出しておるのであります。
  144. 中村三之丞

    中村(三)委員 私のお聞きしたいのは、この補正という言葉は単なる形容詞なんですか。財政法による補正じやないのですか。この補正の意味をはつきりしてもらいたいのであります。
  145. 河野一之

    河野(一)政府委員 補正の意味は先ほど申し上げた通りでありまして、もちろん暫定予算につきましては別に第三十条以外何らの規定はないのでありまして、これは精神的なもので、もちろん予算である以上他の予算に関する条文を参照いたしまして、その趣旨に沿つて考えるべきものだと思います。従つて補正という言葉も、財政法にはございませんが、両方あわせた意味の補正という言葉でありまして、ことに六月分の暫定予算におきましても、四、五月分で経費の異動を生じたものについて減額をいたしておるものもあるのであります。必ずしも追加ではないのであります。
  146. 中村三之丞

    中村(三)委員 そうしますと、さきに私が申しましたように、大体月別に、いわゆる十二分してその中に手入れもしたものがある、こういうふうになつているのではないかと思うのですが、私の言う月別予算である、こう解釈してよろしいのですか。
  147. 河野一之

    河野(一)政府委員 お言葉の趣旨はよくわかりましたが、大体さようでございます。但し編成要領で申し上げましたように、十二分の一ということではなしに、時期的に調節を考えてやつている月別予算だ、こういうふうに御了解願います。
  148. 中村三之丞

    中村(三)委員 そこで暫定予算がつくられ、いよいよ本格的予算が近くわれわれの手元に届いて来る、そうして解散に伴う予算の跡始末ができて来るということになるのでございましよう。そういたしますと、私のここに伺つておきたいことは、今日の予算の背景をなすところの現在の日本の経済界の状態であります。この経済界の状態の見通しがはつきりする、また本予算の編成をしきりに要求しておるということもここに関係するのでございますから、私は今日の日本の経済、現在の景気、不景気の見通しについて、政府のお考を伺つておく必要があると思うのであります。私の見るところにろるますと、何と申しましても日本の今日の経済は、いい悪いは別として、現実的に朝鮮戦争に伴ういわゆる日本の受けております特需でございましよう。この朝鮮戦争による特需なるものは一種の戦争景気であります。従つて朝鮮戦争の推移いかんが、この日本の戦争景気に非常な関係があるのでございますから、まず外務大臣からこの朝鮮戦争休戦の見通しを伺いたいのであります。この朝鮮戦争が始まりますときに、ある人は三箇月で終る、ある人は長期の困難な戦争になる、区々批判が行われましたが、今日まで継続いたしておるのであります。ゆえに日本の経済、現下の量気、不景気に影響するこの朝鮮戦争の休戦の見通しについてお伺いをいたしておくことが、予算の審議の判断の上にも必要であると思うのであります。外務大臣よりお答えを願いたいと存じます。
  149. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この朝鮮の問題につきましては、二つ問題がありまして、一つは休戦であります。もう一つは休戦後の朝鮮の事態をどういうふうに収拾するかといういわゆる政治的の会談と申しますか、その取扱いの問題であります。いろいろは理由まちまちで、いろいろな人がいろいろの理由を言つて、これはできそうだとか、できそうもないとか言うわけでありますが、これは私の勘だけで申ので、あとで間違うかもしれませんが、ただいまのととろ休戦は成立しそうに私は思つております。但しその後の事態の収拾は、これは非常にむずかしいのであろう、これがただいま持つておる結論であります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  150. 中村三之丞

    中村(三)委員 そうするとその時期は、大体どういうふうなお見通しでございますか。これが日本の経済に影響があるのです。
  151. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 時期に至りましては、これは非常にむずかしいのでありまして、つまり休戦の話合いが大体成立したいというときにと、実際にいろいろな手続が全部終りますときとは、大分ずれがあるだろうと思います。またそこで今度は命令を出して、ほんとうに終るという場合も非常にずれがありましようが、もし私の勘が当りますれば、大体の見通しがついて、新聞等は休戦の会談が成立したというような報道があるのは、まずそう長いことではなくて、二、三週間と言いたいところでありますが、そうも行きますまいが、かなり近いのではないかと思つております。
  152. 中村三之丞

    中村(三)委員 経済はそういつたような大きな動きに対する心理的影響というものが大きい。現に朝鮮休戦会談ということが伝えられると、株界も商品界も影響を受けておるのです。そこで問題はこの特需でありますが、私たちのお伺いしたいのは、特需の金額は、おつしやつてもけつこうでありますが、この特需の内容でございます。かつて終戦処理費というものが日本経済に非常な影響を持つておつた。特需というものが、物の買入れがどれだけあつて、それから日本人が相当使われておると思いますから、この駐留軍使われておる日本人が受けるところの収入、駐留軍が幾らおるか、私どもはお聞きする必要もありませんが、そあらの人たち日本国内に落す金、こういうようなものを区別して私はひとつ数字をお示し願い。この数字が朝鮮休戦と同時にどういうふうに動いて行くか、ことに物の購買がどう動いて行くかということをひとつここにお示し願いたいのでございます。
  153. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 特需について申しますと、特需というものが昭和二十一年の実例で見ますと、大体三億二千万ドル見当であります。三億二千万ドルのうち、約二億ドル近いものが物品の購買であります。いわゆる物の注文、こちらからいろイー出す、そういうものであります。約一億二千万ドルほどのものが今の役務その他の提供であります。それで大体三億二千万ドルです。そのほかを入れますと大体九億ドール近くになつておりますが、そのほかのものは、たとえば朝鮮戦線から帰つて来て日本で使つておる、こういうようないろいろな各種の消費があります。そういうものとかいろいろなものでありまして、特需というべきもの、特にいわゆる各種の物資での購買という特需は大体一億九千万ドル、二億ドル見当、こういうふうに御了承願うとよろしいと存じます。
  154. 中村三之丞

    中村(三)委員 そこて美くといたしましては、この大蔵大臣の示された一億ドルという物品関係がどういうように動くかということが日本現下の景気、不景気に影響を及ばして来るだろうと思います。おそらくこういうことを勘案して大蔵大臣予算の編成に着手しておられることだろうと私は考えるのであります。  そこでもう一つ進んでお伺いいたしたいことは、この通貨問題に関する国民の関心であります。よく世間では、悪擦不景気になるて、通貨切下げ説といろいろなものが行われておるようであります。日本は国際通貨協定に加入をした。ない金を負担して出資している。まずお伺いいたしたいことは、これらによつていわゆる世界銀行というものが、われわれが出資している割にどれだけ日本に援助をしてくれるのか、金を出してくれるのかということです。私はこのブレトン・ウツズの通貨協定などはアメリカの世界的なドル制覇の目的にすぎないと思つておりますが、しかしともかくそれにお入りになつたのである。それならばそれに伴つて日本も利益をもらわなければならぬ。すなわち日本の重要産業に投資をしてもらわなければならぬと思うのでありますが、これに対する見通しを承つておきたい。
  155. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 世界銀行に対しましては、ただいまのところ電源開発について一箇年に四千万ドル、三箇年一億二千万ドルの話を進めておるのであります。大体日本に対してどの程度かという最後の決定をまだ見ておらぬようでありますが、相当好意的に考えてくれており、また近く新聞等でごらんになつたかと思いますが、さきごろいわゆる火力発電等に対する分について、輸出入銀行がやろうとしておるのを、これは世界銀行がやつていいんだというようなことを言つたということが、これは新聞の電報でありますが、そういうこともいわれているくらいでございまして、相当私どもはこれに期待を寄せているものであります。
  156. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は今手元に数字は持つておりませんが、一体金を貸す人というものはなかなか渋いものであり、辛いものである。ゆえに私はこの通貨協定に日本がなけなしの金と出資をした割に、どれだけの利益があるか疑うのであります。しかしこれはできればけつこうなことでありますから、十分御努力願いたい。この通貨協定の結果、日本の三百六円がここでくぎづけになつておるのであります。この経緯をお示しを願いたいと思います。
  157. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 経緯は私もよく存じませんが、日本といたしましては、一ドル三百六十円の為替レートを堅持いたしますことは、海外に対する信用上も絶対に必要であると考えております。
  158. 中村三之丞

    中村(三)委員 この三百六十円を堅持するというのは、いかなる政府でも今日のところこれをはつきりせられるということは必要でありまして、ともかくここからいろいろなうわさが起つて来るのであります。小さいことですが、この結果貨幣法の改正とかいうようなことが行われるのでありましようが、この点は十分政府は決心を持つてこの意思を声明し、実際行われないと、とかく財界の指標が動いて来て、財界の人心不安を起さしめることになるのでありますから、この点は私は十分慎重に御声明あらんことを希望いたしておきます。  次に税金の問題について、この間から残つております点を、ひとつ大蔵大臣なり国税庁長官に伺つておきたいと思います。私の見るところは、今日の税金のとり方は割当だという、すなわち国会においてきまつた何千億円という税金が、国税庁から地方の国税局に何百億円と割当てられる、国税局は何百という税務署に割当てている、税務署はまた署員に何百万円を割当てるというようなここが、どうもまだ行われておるんじやないかと私は思うのであります。現に数年前滋賀県のあるところで、映画館も野球のグランドもないいなかの町に、入場税が何十万円割当てられたという事実があるのである。こういうことが行われておるのではないかと私は思うのであります。従つて税務署員は中小商工業者に対して、去年の五割増しだ、三割増しだということを要求いたすのであります。これが今日の税金の問題、ことに中小商工業者の恨みの的になつておるようであります。総理大臣は税金を減らすと言われて、けつこうでありますが、税法上の減税を繰返すよりも、むしろこういつたような徴税方針を土台から改めて行く、こういうことが必要ではあるまいか。またこれがために院これは私個人意見で相済みませんが、何としても徴税の上における人民の立場をもつとよくする。それはシヤウプ勧告案にもうたわれているようであるといわれておりますが、たとえばイギリスにあるところのコツシヨナー・システムといつたような、選挙による――イギリスは選挙がないように記憶いたしますが、昔の所得調査員、これは一例であります。これをもつと進歩した、人民によつて選挙せられた税金委員というものを設け、これが更正決定に参加するというような、いわゆる人民の徴税上における参加を認める、こういつた方法でもとらなければ、今までのようなことをやつておりますならば、税法上の減税をいくらやつても、しかたがないとは申しませんが、効果はないのじやないか。現に一千億円の減税をなさるということになりましても、そのしわが中小商工業者へ及んで来るおそれがあると私は見ておるのであります。政府当局の御答弁を煩したいと思います。
  159. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 過日中村さんからそういうお話もございましたので、私は国税庁長官についてよく文書等で調べてもみました。これは私は率直に申しますが、最近国税庁長官が印刷物で各税務署に出しておりますものは、きわめて懇切丁寧に扱うように詳細意を尽してございます。そうして割当等の事実のことは全然許しておりません。ただ私が自分個人で耳にしているところでは、どうも税務署の署員が向うへ行つてそういうことでやらそうというような考え方があつて、その人がかつてに口にしているように思うのであります。しかしそういうことはいずれにしても監督上の問題でありますから、十分これを監督し、特に納税につきましては何としても、中村さんが前から言つておられた納得して納税するということでなければ、納税の効果はあがりませんので、今後ともさようなことについては十分の配意をいたしたいと存じております。なお私の補足に、とようど国税庁長官も参つておりますからさらに申し上げることにいたします。
  160. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 この間保留された質問の御答弁もあわせて御答弁願います。
  161. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいま大臣からお一答えになりました通りでございますが、補足して御説明申し上げておきたいと思うのであります。何かまだ割当をやつて、るのじやないか、こういう点は一時よりも減りましたが、最近でも、なおこの国会におきましても、ときどき御非難を承つていることでございます。てございますが、御承知通り、少しく申し上げますと、終戦直後にインフレーシヨンによりまして徴税が非常に危機になつた時代、このときにやむを得ざる便法といたしまして、実は税務署に努力の目標を示したのでございます。事実でございますからはつきり申し上げますが、それによりまして努力するようにということでございました。それはその当時としましては、いろいろな弊害がございましたか、一応目的を達したと思つているのでございますが、しかしむしろ逆効果と申しますが、弊害が多い。こういうことを続けていたのではとうてい円滑な納税ということは不可能だということになりましたので、たしか昭和二十五年度かにそういうことを全部やめまして、その後におきましてはそのような予算方法は採用いたしておりません。従いまして先般も主税局長からも申し上げたかと思いますが、中央の方針としまして割当てるというようなことは、毛頭考えてもおりませんし、またやるというつもりもございませんし、またやつてもいない。ただ御指摘の通り、また先ほど申し上げました通り、遺憾なから納税者にそのような印象を今なお与えているこの事実は、私どもも率直に申し上げまして認めておるのでございます。認めた上でこれをどうして直すか、これは率直に反省しまして、適正を期したいということで努めておるわけでございます。  少し詳しい話になりますが、個人所得税は理想から申しますと、納税者の帳簿につきまして所得をよく調べまして、それによつて納税者の申告して参る場合もありますし、また税務署も帳簿を調べて必要な決定をする、これが本来のあるべき姿でございます。できる限りそのような方向に、実は努力いたしておりまして、実額調査と称するものも最近は相当ふえております。ただ遺憾ながら一方におきましては、納税者が帳面がない、あるいはありましても完全なものが少い。こういうのが、ことに中小の納税者になりますと、相当多数であるということもこれは事実でございます。そこでそのような人々についてどういう方法所得を計算しているかということでございますが、それは結局やはり納税者につきまして、まず売上げでございますが、これをいろいろな方法で、帳面がございません場合は推定によつて調査する。調査する際におきまして、帳面によつて調べのつきました納税者との比較権衝という、権衡調査――中村さんもよく御承知と思いますが、このような方法を用いまして、売上げ金をできるだけ的確に調べまして、それに対しまして帳面のあります納税者につきまして調べました業種別の所得の標準率というものを適用いたしまして、所得を出して行く。これは税法もそのことを認めておる方法でございますが、いわば広い意味の推定調査をせざるを得ない、こういう実情でございます。  その際におきまして、御指摘のように、前年度に比べてどうなつているだろうかということも、これはもちろん私どもとしましては参考にせざるを得ない、またした方がいい結果を生ずる。ただ問題はその際におきまして、よく調べもしないで、前年度からの比較増減だけでけりをつけているというような場合がありはしないか、これは私どもも率直に申し上げまして、一番戒心すべきところであり、直すべきところである。私どもことしにおきましても――これはたびたび繰返してもいいことでございますので、ことしの所得税の決定にあたりまして、ことにこの方面だけの通達も実は出しまして、一律に出さないように、あくまでも個人の納税者の実態をよく調べまして、個別的に妥当な結果を生むようにという趣旨のことを、特にそれだけの通達を出しまして、善処するようにいたしたのでございますが、何しろその辺のところになりますと、多数の納税者のことでございますので、末端の税務官更になりますと、よく説明し得ない場合に御指摘のようなことを使つておるということがなきにしもあらずであります。これは大臣から先ほどお話がありましたように、そういうことがありますれば、これはいけないことであると思いまして、直して行かなければならぬというふうに考えておる次第でございます。  さらに恒久的な方法といたしましては、これは結局やはりめんどうでも納税者に記帳してもらうということでなければ、所得税の円満な解決はできにくいのであります。わが国の場合におきましては、小所得者が多くてなかなかむずかしい問題でございますが、しかし私は長い目で見ますと、ある程度記帳ということは普及し得るのではないかということを考えまして、ことしから特に例の青色申告の記帳事項を徹底的に簡素化いたしまして――省令でできることになつておりますので、先般実行に移しまして、本年は途中でございますが、十五日限の新たに青色申告所得の受付を認めまして、極力推進をはかりたい。今までは複式簿記の方法によつて記載することを命じておりました関係上、中小の納税者の場合はなかなか記帳はしにくい、こういう非難がございましたので、今回は思い切りまして、小売業とかサービス業のような面に対しましては、現金の出納帳簿を中心にしました単式簿記の線まで認めるということで、簡素化をはかることにいたしまして、目下実行に移して普及に努めておるところでございますが、いろいろな方法を講じまして、御指摘のような御非難を受けることがないように、適切な効果を生むように私どもは今後さらに一層の勉強をして行きたいと思つておる次第でございます。
  162. 中村三之丞

    中村(三)委員 この問題はまた質疑乞いたす機会もあると思いますが、大田や国税庁長官は上級におられる。しかし下はあなた方の意向が徹底しておりぬ。今推定云々と言われましたが、また帳面をつけても信用しない。このついてどうお考えてあるか具体的に示していただきたい。
  163. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほどから声明というお言葉を伺つておりますが、私は通産省を代表して、そして日本政府の意向ここにありというわけであの声明を出したわけではないので、ただ記者団会見におきまして話したことが大きく伝わつたわけであります。しかし私の真意はあの通りでございますから、声明とかわらぬことにはなりますけれども、何か声明といいますと閣議の了解でも得て、そしてはつきりしてこれを通産大臣が声明したことに用えますが、もしそうでございますならばそうではないということ私申し上げておきます。  それから見本市の問題でございますが、これは業者の方からそういうことを開いております。もしそういうことがありまして、業者がこれを出そうとかいうようなことがありましたならば、これは外務省の問題にひつかかりますけれども、ただ渡航の問題が相当むずかしくなります。そこで、これは外務大臣の方の問題の一つでございますけれども、われわれといたしましては、もうこれが役に立つならば、これはむろん賛成して外務大臣にお願いしたい、こう考えております。
  164. 中村三之丞

    中村(三)委員 新聞は真実を報道いたします。ですから国民はあの声明をみな信じて喜んでいる。これをきようはまたばかに弱いようにおつしやいますね。総理大臣かだれかにおしかられになつたのかどうか知りませんが、ちと弱い。  そこで外務大臣伺いますが、中共へ行く旅券のことはどうなさるのでございますか。
  165. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、この間の引揚げの代表を出したときには旅券は出しております。こういうとはなはだ露骨のようでありますが、国の利益になる場合は別問題でございます。
  166. 中村三之丞

    中村(三)委員 破壊的人物をお出しになるのは、それはどうか知りませんが、今通産大臣がおつしやるように見本市に行く、商品の売買に行くという経済的平和使節と申しますか、こういうものには私はお出しになつてもいいのじやないかと思いますが、どういうふうにお考えなつておりますか。
  167. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろの考慮がいるのでありまして、第一にはもちろん国交がないということでございますが、この旅券と申すものは、日本政府が相手の国の政府に対して、旅券に記載してある者が旅行ずるからよろしく頼む、便宜をはかつてくれ、こういうものが旅券でありますが、国交がないと、それの頼みようが実はないのであります。しかし必ずしも絶対にないというわけではありません。またその他にも、ただいま引揚げ中でもありますし、いろいろの問題をここで申し上げるのもいかがかと思いますけれども、旅券を出すことを困難と感ずるような理由も相当あるのであります。私としてはいまだ何でも出す、特別なものでなければ出してさしつかえないというような考えは持つておりません。むしろ逆でありまして、原則としては出せないものである。特殊のものならば出す。その程度にしか申し上げられません。
  168. 中村三之丞

    中村(三)委員 中国側から民間通商代表を日本に送つて、とどめたいというような申込みがあつた場合はどうなさいますか。
  169. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常の困難な問題であります。われわれの考えているような府普通の民主主義国家の組織違いまして、いわゆる全体主義的組織のもとにおいては、たとえば教育にしましても、芸術にしましても、ある一定の主義のもとに、一つにされておるのであります。それでなければ非常な非難をこうむり、攻撃をされる例がしばしばあります。学問においてもそうであります。そういう形になつて来ますと、通商代表と称する者が、単に通商だけをやるのか、それともその国の主義を何らかの方法で宣伝し、もしくは促進する目的を持たされた者であるかということは、非常な考慮を要することでありまして、むろんただいまはそんな話もありませんけれども、一概にいいとか悪いとか申し上げることは差控えたいと思います。
  170. 中村三之丞

    中村(三)委員 それが実業家出身の岡野通産大臣と、外務省出身の外務大臣とが違うのであります。おそらく岡野さんは思想は思想だ、商売は商売だ、この太い線で行こうという腹であると思う。私はさすがに岡野さんは、昨日おつしやつたようなことは実業家出身であると思う。私はそういうふうにやつてもらいたいと思う。岡崎さんのようにそう狭くお考えなつては、日本貿易は発展しないと思うのであります。そこで岡野通産大臣にもう一ぺんお伺いいたしますが、岡野さんは銀行家出身である。最近ある商事会社が一つの取引をやつて来た。ところが銀行が信用状に対して冷淡であつたために、なかなか困難になつた。あなたが昨日のような声明をお出しになり、そうして銀行出身であるならばば、こういう中日貿易の金融問題、銀行間の問題などに、あなたの御勢力と御経験をもつて解決をする。こういう点に乗り出して行くということをひとつおやりになれば、あなたの声名は実に上ると思うのですが、それは別といたしましてこういう問題にあなたが御努力なさることが、あれだけ大みえを切られたことになるのですが、ひとつこういつたLCの問題などに対しては、あなたはどういうふうにお考えなんですか。銀行が妨害をしているのです。その妨害の後に何があるか、志にここでは申しません。何かあるのでありましよう。中日貿易を促進しようとなさるならば、具体的にこういう問題の解決に乗り出さなければならないのではないか。紙の上の声明は、私どもはごめんこうむらなければならぬ。どうでありますか、ひとつお答えを願いたい。
  171. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。銀行家であるためにかえつて逆の方の効果が出て参ります。と申しますのは、御承知のように政府の銀行は別といたしまして――政府はもつといろいろでしようが、銀行は少くとも預金着の預金をお預かりしてこれを完全に保管するのがまず第一の大事な役目であります。そういたしますと、貸出しをしますときには、これをぜひ回収しなければならぬ、また不確実のものには、貸せられないという意味におきまして、銀行家が貸出しに非常に神経過敏になることも事実でございます。しびし国策の立場から申しますならば、やはり今仰せのごとく、もし銀行さえ信用状を出してくれれば、せつかく取引が円満にできたにかかわらず、ただ金融の面だけでそれができないということは、私は輸出貿易の上に非常に残念なことに思う。でありますから、今後日分は過去の知識、経験を土台にいたしまして、できるだけ銀行の立場も考えてやる。同時に国際貿易を進展する方向にいろいろ腐心してみたいと思います。ただしかし実際のケースに当つておりませんので、おいおいそういうことはできて来ると思いますが、そのときそれ私は善処いたしたいと思います。
  172. 中村三之丞

    中村(三)委員 現に出、またおいおい出て来るのです。そういう問題に阿野通商大臣が努力せらるべきであると思う。ちよつと申し上げておきますか、銀行が預金であることはわかつておりますが、このごろの銀行は紛飾預金とか、両建勘定とかむちやくちやなことをやつております、この点だけを私は岡野さんに申し上げておきます。  私の質問はこれで終ります。
  173. 尾崎末吉

    尾崎委員長 横路節雄君。
  174. 横路節雄

    ○横路委員 最初に大蔵大臣お尋ねをいたしますが、七月分の暫定予算と八月以降の本予算については、来月のいつごろまでにお出しになるのか。その点についてまず第一番にお伺いいたしたい。
  175. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 本予算は、大体来月の半ばに出したいと存じております。七月分は、どうしてもやむを得ませんければ、そのときにと存じておりますが、もう少し先になるかと思います。いずれにいたしましても、本予算を組みまして、その本予算との調整をごりつつ七月分をつくる必要がございついてどうお考えてあるか具体的に示していただきたい。
  176. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほどから声明というお言葉を伺つておりますが、私は通産省を代表して、そして日本政府の意向ここにありというわけであの声明を出したわけではないので、ただ記者団会見におきまして話したことが大きく伝わつたわけであります。しかし私の真意はあの通りでございますから、声明とかわらぬことにはなりますけれども、何か声明といいますと閣議の了解でも得て、そしてはつきりしてこれを通産大臣が声明したことに用えますが、もしそうでございますならばそうではないということ私申し上げておきます。  それから見本市の問題でございますが、これは業者の方からそういうことを開いております。もしそういうことがありまして、業者がこれを出そうとかいうようなことがありましたならば、これは外務省の問題にひつかかりますけれども、ただ渡航の問題が相当むずかしくなります。そこで、これは外務大臣の方の問題の一つでございますけれども、われわれといたしましては、もうこれが役に立つならば、これはむろん賛成して外務大臣にお願いしたい、こう考えております。
  177. 中村三之丞

    中村(三)委員 新聞は真実を報道いたします。ですから国民はあの声明をみな信じて喜んでいる。これをきようはまたばかに弱いようにおつしやいますね。総理大臣かだれかにおしかられになつたのかどうか知りませんが、ちと弱い。  そこで外務大臣伺いますが、中共へ行く旅券のことはどうなさるのでございますか。
  178. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、この間の引揚げの代表を出したときには旅券は出しております。こういうとはなはだ露骨のようでありますが、国の利益になる場合は別問題でございます。
  179. 中村三之丞

    中村(三)委員 破壊的人物をお出しになるのは、それはどうか知りませんが、今通産大臣がおつしやるように見本市に行く、商品の売買に行くという経済的平和使節と申しますか、こういうものには私はお出しになつてもいいのじやないかと思いますが、どういうふうにお考えなつておりますか。
  180. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろの考慮がいるのでありまして、第一にはもちろん国交がないということでございますが、この旅券と申すものは、日本政府が相手の国の政府に対して、旅券に記載してある者が旅行ずるからよろしく頼む、便宜をはかつてくれ、こういうものが旅券でありますが、国交がないと、それの頼みようが実はないのであります。しかし必ずしも絶対にないというわけではありません。またその他にも、ただいま引揚げ中でもありますし、いろいろの問題をここで申し上げるのもいかがかと思いますけれども、旅券を出すことを困難と感ずるような理由も相当あるのであります。私としてはいまだ何でも出す、特別なものでなければ出してさしつかえないというような考えは持つておりません。むしろ逆でありまして、原則としては出せないものである。特殊のものならば出す。その程度にしか申し上げられません。
  181. 中村三之丞

    中村(三)委員 中国側から民間通商代表を日本に送つて、とどめたいというような申込みがあつた場合はどうなさいますか。
  182. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常の困難な問題であります。われわれの考えているような府普通の民主主義国家の組織違いまして、いわゆる全体主義的組織のもとにおいては、たとえば教育にしましても、芸術にしましても、ある一定の主義のもとに、一つにされておるのであります。それでなければ非常な非難をこうむり、攻撃をされる例がしばしばあります。学問においてもそうであります。そういう形になつて来ますと、通商代表と称する者が、単に通商だけをやるのか、それともその国の主義を何らかの方法で宣伝し、もしくは促進する目的を持たされた者であるかということは、非常な考慮を要することでありまして、むろんただいまはそんな話もありませんけれども、一概にいいとか悪いとか申し上げることは差控えたいと思います。
  183. 中村三之丞

    中村(三)委員 それが実業家出身の岡野通産大臣と、外務省出身の外務大臣とが違うのであります。おそらく岡野さんは思想は思想だ、商売は商売だ、この太い線で行こうという腹であると思う。私はさすがに岡野さんは、昨日おつしやつたようなことは実業家出身であると思う。私はそういうふうにやつてもらいたいと思う。岡崎さんのようにそう狭くお考えなつては、日本貿易は発展しないと思うのであります。そこで岡野通産大臣にもう一ぺんお伺いいたしますが、岡野さんは銀行家出身である。最近ある商事会社が一つの取引をやつて来た。ところが銀行が信用状に対して冷淡であつたために、なかなか困難になつた。あなたが昨日のような声明をお出しになり、そうして銀行出身であるならばば、こういう中日貿易の金融問題、銀行間の問題などに、あなたの御勢力と御経験をもつて解決をする。こういう点に乗り出して行くということをひとつおやりになれば、あなたの声名は実に上ると思うのですが、それは別といたしましてこういう問題にあなたが御努力なさることが、あれだけ大みえを切られたことになるのですが、ひとつこういつたLCの問題などに対しては、あなたはどういうふうにお考えなんですか。銀行が妨害をしているのです。その妨害の後に何があるか、志にここでは申しません。何かあるのでありましよう。中日貿易を促進しようとなさるならば、具体的にこういう問題の解決に乗り出さなければならないのではないか。紙の上の声明は、私どもはごめんこうむらなければならぬ。どうでありますか、ひとつお答えを願いたい。
  184. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。銀行家であるためにかえつて逆の方の効果が出て参ります。と申しますのは、御承知のように政府の銀行は別といたしまして――政府はもつといろいろでしようが、銀行は少くとも預金着の預金をお預かりしてこれを完全に保管するのがまず第一の大事な役目であります。そういたしますと、貸出しをしますときには、これをぜひ回収しなければならぬ、また不確実のものには、貸せられないという意味におきまして、銀行家が貸出しに非常に神経過敏になることも事実でございます。しびし国策の立場から申しますならば、やはり今仰せのごとく、もし銀行さえ信用状を出してくれれば、せつかく取引が円満にできたにかかわらず、ただ金融の面だけでそれができないということは、私は輸出貿易の上に非常に残念なことに思う。でありますから、今後日分は過去の知識、経験を土台にいたしまして、できるだけ銀行の立場も考えてやる。同時に国際貿易を進展する方向にいろいろ腐心してみたいと思います。ただしかし実際のケースに当つておりませんので、おいおいそういうことはできて来ると思いますが、そのときそれ私は善処いたしたいと思います。
  185. 中村三之丞

    中村(三)委員 現に出、またおいおい出て来るのです。そういう問題に阿野通商大臣が努力せらるべきであると思う。ちよつと申し上げておきますか、銀行が預金であることはわかつておりますが、このごろの銀行は紛飾預金とか、両建勘定とかむちやくちやなことをやつております、この点だけを私は岡野さんに申し上げておきます。  私の質問はこれで終ります。
  186. 尾崎末吉

    尾崎委員長 横路節雄君。
  187. 横路節雄

    ○横路委員 最初に大蔵大臣お尋ねをいたしますが、七月分の暫定予算と八月以降の本予算については、来月のいつごろまでにお出しになるのか。その点についてまず第一番にお伺いいたしたい。
  188. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 本予算は、大体来月の半ばに出したいと存じております。七月分は、どうしてもやむを得ませんければ、そのときにと存じておりますが、もう少し先になるかと思います。いずれにいたしましても、本予算を組みまして、その本予算との調整をごりつつ七月分をつくる必要がございますので、七月分の方が提出が遅れますことを御了承願つておきます。
  189. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると八月以降の本予算が、大体今のお話では、六月の十五日くらいまでに出せる、従つて七月分の暫定予算は、名前は暫定予算だけれども八月以降の本予算とにらみ合せてそれぞれ組まれるということになりますと、七月分の暫定予算の中に組まれております新規事業といいますか、そういう点についても、組まれると思うのでありますが、大体東北、北陸、北海道等の寒冷積雪地は時期等の問題もありますので、当然七月の暫定予算には、新規事業の分が相当大幅に計上されなければならないと思うのでありますが、その点はどういうお見通しでありますか。お伺いいたします。
  190. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御承知のように、お出ししてある六月分にも、継続費の分については時期的な関係がありますので、見ております。しかし七月分につきましては、もう少ししんしやくして組まなければならないと考えておりますが1言葉が悪いかもしれませんが、情勢に応じてひとつ御相談申し上げたい、かように考えております。
  191. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣に重ねてお尋ねしたいのですが、六月の十五日に八月以降の本予算が出されるとすれば、昨年の十一月二十五日でございましたか、昭和二十七年度の補正予算を出したようなことは、昭和二十八年度の予算では私はないと思うのですが、この点の見解はどうでございましようか。私は今度は、六月十五日に八月以降の本予算を出すのでありますから、従つて二十七年度に出したような補正予算を出すということはないものと考えるのですが、その点はどうでございましようか。
  192. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 本予算が八月分からの――ちよつと言葉が何ですが、四、五月分を入れての一箇年を通じて本予算でございます。なお仰せのように、ただいまのところ補正予算を出すという考えは持つておりません。
  193. 横路節雄

    ○横路委員 私は淺井人事院総裁お尋ねをしたいのですが、ただいま大蔵大臣の御答弁によりまして、本年は補正予算は組まない、従つて六月十五日に二十八年度の本予算を当然四月から組むということで、そういうことになりますと、これは国家公務員に対するところの給与ベースの勧告についてでございますが、当然人事院として、私は勧告する意思がおありだろうと思うのです。その点がまず第一点。それから改訂するとするならば、一体その勧告する時期はいつなのか、この点についてまず第一番目にお尋ねをいたしたいと思います。
  194. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えをいたします。御承知のごとく公務員法の規定によりますれば、人事院といたしましては、毎年一回現行の給与が適当であるかどうかを報告しなければならぬことに相なつておるのでございます。この前の報告は、昨年の八月一日に行つておりまするので、それまでには報告をいたさなければならぬと考えております。その報告をいたしまする際に、もし現行の給与を引上げる必要がありといたしまするならば、あわせて勧告をしなければならないということになると思うのでございまして、人事院といたしましては、ただいま勧告の必要があるかどうかということ鋭意調査中でございます。
  195. 横路節雄

    ○横路委員 昨年は八月一日で勧告をしているわけですが、五月にさかのぼつて、ぜひその勧告に従つてつてもらうようにというように人事院としてはしているわけです。私が今人事院総裁お尋ねをしている点は、昨年のように、大体補正予算が十一月ごろ国会に提出されるだろう、こういうような見通しのもとに八月一日に勧告をすれば、適当なときに政府並びに国会はやるだろうということであるならば、それでもさしつかえないかもしれませんが、今年のように、今大蔵大臣お話をしたように、現に六月の十五日に本予算国会に提出したならば、あとはこの年間においては、補正予算は出さないという。そうであるならば、当然私は人事院といたしましては、国家公務員に対して、いわゆる国家公務員法にようで罷業権がないこの諸君に対しては、六月十五日に政府国会予算を提出する前に、少くとも今調査中であるというのであれば、鋭意急いで、六月の十日前後には人事院としては政府並びに国会に勸告するのでなければ、私どもととしは十分審議もできないし、人事院に一体国家公務員についての給与ベース改訂について誠意があるかどうかということは、はなはだ私は疑わしいと思うのでございます。これは、今年こういうように国会の解散によつて、前年の予算の編成とは違うて来たのでございますし、お話によりますと、大体民間の給与べース等についても人事院としては資料も全部整つて、鋭意検討中だということもございますので、この点重ねてひとつお尋ねいたします。
  196. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。お示しの点まことにごもつともに存じますが、人事院といたしましては、国家公務員の利益を保護する立場にあることは申すまでもないことでございますが、また同時に、給与の引上げは国民全体に大きな負担を来すものでございますから、われわれといたしましては、納税者の納得するだけの資料を整えなければ勧告いたすことはできないように思つております。御趣旨に従い、せいそれ早く勧告できるように努力をいたしたいと思います。
  197. 横路節雄

    ○横路委員 重ねて人事院総裁お尋ねいたしますが、今国会の会期は御承知のように七月三十一日までなのです。まさか人事院といたしましては、昨年は八月一日に勧告したのだから、まあ七月三十一日ごろ出せば、昨年の例に従つて一応責任はとれるだろうということは、私はことしはことしの実情によつて考えなつていないと思う。その点やはり今の浅井総裁のお話は、人事院としては国家公務員の生活についていろいろと責任をつて見なければならぬが、しかしこれについては、国家予算にも相当負担をかけるので、それらとにらみ合せてしなければならぬ、こういうのですが、とにかくこれは政府においても、今大蔵大臣お話のように、六月の十五日には必ず国会に提出するということで、おそらくただいま本予算については検討中だと思う。しかもこの問題については、淺井総裁も御存じの通り、昨年あなたの方で一万三千五百十五円ベースで勧告したのに、政府はこれに従わない。再び吉田内閣が組閣されたので、あなたの方としてまた今度勧告しても、大体自分の方の勧告には政府は従わないのではなかろうか、そういうふうに何と申しますか、毎年毎年の例だから、どうもしようがないというようにお考えになられてはなはだ困る。今年は今年の問題として、ぜひひとつ六月十日前後にはやつていただきたい。これはやはり浅井総裁の決意を促す以外に道がないと思うので、この点もうひとつお尋ねいたします。
  198. 淺井清

    ○淺井政府委員 お言葉ありがたくちようだいいたすのでございますが、ただいまお示しのような御趣旨でございますならば、われわれ決して苦労いらないのでございます。われわれが苦労をいたしております点は、納税者をも納得せしめる権威ある勧告をいたしたいと思いまして、鋭意調査中でございますから、どうぞその点をよろしく御了承を願いたいと存じます。
  199. 横路節雄

    ○横路委員 今の点に関連してですが、給与ベース改訂のときに、あわせて昨年の十二月二十二日ですか、衆議院の本会議において、地域給のいわゆる人事院勧告について国会で修正いたしましたが、あの修正を、人事院としては実情に即して今回の給与ベース改訂の中で、さらに地域給についても勧告する用意があるかどうか、その点もあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  200. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。地域給の問題は、率直に申せば実に困つたことに相なつたと思つておるのでございます。御承知のごとく、地域給をつけなければならない所が、だんだんふえて参りまして、またこれに対する要求も、全国にわたつて非常に強く相なつておるのであります。そこで人事院といたしましては、むしろこの地域給というものは、将来廃止をしなければならぬというような考え方の方にただいま向いておるのでございます。ただいかにしてこれを廃止いたしまするか、簡単に落してしまうわけには参りませんので、たとえばこれを漸次本俸に繰入れつつ、級地の差別をなくして行くとかなんとか、その辺は国会の御意思も尊重して処理して行きたいと思つております。  さてこの国会でさらに地域給の改訂の勧告をいたしますかどうかということは、まだ実はぎまつておらないのでございまして、あるいはできないかもしれないと存じております。それはただいま申す根本方針とよくにらみ合せて処理しなければならぬ問題だと思つております。
  201. 横路節雄

    ○横路委員 淺井総裁にお尋ねいたしますが、六月分の暫定予算の中に期末手当が組まれているわけです。この期末手当につきましては、この暫定予算の中には〇・五箇月分入つておるわけです。しかし昨年人事院としては、あなたが今お話通り国民全体を納得させる資料のもとに、あなたの方で確信をもつて政府に勧告した国家公務員の給与ベースは一万三千五百十五円ベースであつたわけであります。ところが、あなたは国民全体が納得すると自信を持つて勧告したのだけれども政府は従わなかつた。私は総体的な給与ベースの勧告については、資料その他で遅れておることは一応わかるにしても、しかし一月から六月までの赤字補填という意味におけるこの期末手当については、吉田内閣が組閣されてから今まであなたは人事院総裁として、六月分の期末手当についてはこういうようにしてもらいたい、こういう点について、官房長官にお話をなさつたのかどうか。さらにまたあなたは、人事院総裁として、この〇・五箇月の期末手当については、昨年の給与ベースの勧告とあわせて、一体これが妥当だと思つているかどうか。もしもあなた御自身も妥当でないと思つているのであるならば、一体どういうものが現在の国家公務員の生活状態からいつて妥当なのか、この点お尋ねいたします。
  202. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。期末手当のことでございますが、一月からの人事院の勧告通りに給与が上つてないと申すことから、ただちに期末手当の増額ということは出て来ないだろうと思つております。公務員の生活の赤字はよく存じておりますが、実はただいまの夏期と年末とを合せましての一・五の手当と申すものは、昨年の人事院の勧告によるものでございまして、この通りに実現されておるのでございます。その基礎といたしますところは、民間のそのような手当がちようど一・五であつたことに基礎を置いておるのでございます。従いまして、国家公務員も一・五でよかろうということで昨年の勧告をいたしたわけでございますが、今年民間の給与調査がまだ終つておりません。はたして民間でその種の給与が一・五であるか、あるいはそれ以上上まわつておるかということは、ただいま調査中でございますから、はつきり申すことはできないのでございます。
  203. 横路節雄

    ○横路委員 浅井総裁にお尋ねしますが、民間の給与に関して、大体期末手当、年末手当等が一・五であるから妥当だと思つて勧告した、この点については一応私もわかりますが、しかし現実には、その内容はただ一月半が妥当だというのでなしに、その裏づけになる月の給与ベースというものが基礎にならなければならないわけであります。そこでただ単に一・五箇月が妥当だから、この期末手当については、あなたとしてはまつたく何らの意思表示ができないということになるならば、昨年の国会におきましては、あなたの方で一万三千五百十五円ベースで勧告したが、実際には一万二千八百円だつた。しかもそういう意味で赤字が累積しているからというので、十二月の補正予算国会においては、国会でいろいろ論議した結果、政府においても、御承知のようにあの当時の情勢で〇・二五出しているわけでおります。こういうことは、明らかに一・五が妥当かどうかというのでなしに、その基礎になる給与ベースが妥当かどうかということになる。従つて私は先ほど期末手当について、人事院としては、そういう点について何らか意思表示をしたかどうかという点をお聞きしているわけでありますが、その点もう一度お答え願いたいと思います。
  204. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。給与ベースを人事院の勧告通り上げ足りないからということでございますが、それはその通りであります。従いまして人事院は、この次の勧告において、その点は十分考慮するつもりでございます。同時に期末手当におきましても、民間給与調査の結果出て参るのでございますから、そのときにあわせて、もしこれを引上げる必要があるならば、勧告したいと考えております。  それから私と官房長官との間に、この点について何か交渉があつたかとのお尋ねでございますが、これは人事院と内閣、あるいは大蔵省との間におきましては、何か交渉はあつたと思うのでございます。
  205. 横路節雄

    ○横路委員 淺井総裁に今の点をもう一度お尋ねしますが、そうしますと、今のお話で民間の給与ベースとの振合い等で給与ベースの勧告をした場合に、実際に調べた結果そうであるならば、なお実情に即しては、期末手当もその中に入れて勧告をする用意がある、そういうようにお話になりましたが、それでよろしゆうございますか。
  206. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えをいたします。それは民間の給与設査の結果出て来たところによるものと思います。
  207. 横路節雄

    ○横路委員 私官房長官にお尋ねしますが、昨年の十二月二十四日、さきに衆議院の本会議で通過いたしました国家公務員のいわゆる一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、これが参議院の人事委員会で修正になりまして、それから参議院の本会議を通過いたしまして、参議院で修正したものがまわつて参りまして、それをさにら衆議院の本会議で承認になつておるわけです。その内容は官房長官御存じだろうと思うのでございますが、それは政府が提案いたしました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の一部をさらに修正したわけです。その修正の内容はここに記録がございますが、「別表第一から別表第六までの改正規定中別表第一から別表第五までの各表の末尾にそれぞれ次の備考を加える。というので、その備考の内容は「本表は、暫定的のものであつて、なるべく速やかに合理的改訂を加えるものとする。こういうようになつておるわけです。これの意味は、実際にはその当時参議院の人事委員会としては、いわゆる一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、すなわち今の一万二千八百円ベースについては三月三十一日までであることと、こういうように明確にうたいたかつたのであるけれども、それではあまり拘束するのではないだろうかというので、いろいろ討議の結果すみやかに合理的改訂をすること、こういうようになつておるわけです。これは政府としても、この国会においてこの修正案が可決されておるわけでおりますから、従つて私は、四月から政府の今日まで実施しておる一万二千八百円ベースについては、人事院の勧告をまたないでも、この国会の修正によつて政府は当然給与ベースについては改訂をしなければならぬ、国会の決議を尊重するという意味からいつてこういうように考えておつたわけです。従つてどもは、それが四月、五月の暫定予算というかつこうで1六月も暫定予算なつたわけでありますけれども、この点について官房長官は、先ほど私が淺井人事院総裁お尋ねしました期末手当については、今回の六月の暫定予算の中に入つておる〇・五というものについて、これはあくまでも絶対に変更しない、こういうようにお考えなつておるのか。それとも生活実態に即して、この期末手当の〇・五についてはこれは考えなければならないとお思いになつておるのか。
  208. 福永健司

    ○福永政府委員 ただいまお尋ねの点長がいるが、わずか千百六十五億七千四百九十九万円で、十一億足らずの金しかしに積んでいない。この点について、私は義務教育費国庫負担法によつて、文部大臣は四月、五月、六月分の暫定予算を組まれたと思うのですが、実際の支出額の二分の一という、この法の建前でおやりになつたかどうか、ひとつ文部大臣からお答えを願いたい。
  209. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お答えを申し上げます。四月分、五月分の実際の支出額につきましては、ただいま集計中でありまして、まだ判明はいたしておりません。六月分もそうでございますが、その四月、五月の算定の基準を申し上げますと、昨年の五月一日現在の義務教育費関係の教員の人数に対しまして、大体一年間にこれくらい増加するであろうという想定をいたしまして、その人数を基礎にして算出した金額を計上したのであります。後日実際の支出額が明瞭になりますれば、今度の配分の際に、それを逐次調整して行く。結局に事きまして実際の支出額の二分の一を国庫において負担する。これは現行法においてすでに規定しておる、いわば法律上の義務に属する支出でありますから、これは今後調整して、実際の支出額の二分の一に達するようにいたす、かようなつもりでおります。
  210. 横路節雄

    ○横路委員 文部大臣に私お尋ねいたしますが、今の文部大臣お答えは、二十八年度の本予算に非常に関係があるわけです。今大臣は、実際の支出額の二分の一を義務教育費国庫負担として計上すると言われている。しかも文部大臣は、おそらくこの予算委員会で初めてきよう、私の質問答弁なさつた。大臣としての初めての御答弁で、非常に重要なんです。そこで実際の支出額ということになりますと、私はここで、文部大臣に今の点間違いがないか――私は文部大臣がおつしやつたのですから、かえるお気持はないと思うのですが、これは昨年自治庁では大蔵省と交渉して、それで自治庁は大蔵省にいじめられていじめられてと言うと、大臣の前でたいへん弊があるかもしれませんが、とうとく地方の教職員は、昨年の十月末で三百四十八円高い、今日はそれが給与ベースが上りましたから、平均八百円高い。年間約一万円高い。五十三万の定員ということになると、五十三億だけは大蔵当局考えているのと、いわゆる実際の支出額とは違うのです。この点文部大臣承知をなさつて、今のように義務教育費国庫負担法によつて、明確に実際の支出額の二分の一を六月分に組んだのだ、そういうことであるならば、私はそれ以上お聞きいたしませんが、その点は非常に二十八年度の本予算等について大事な点ですから、もう一ぺんひとつ明確にしていただきたい。
  211. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 重ねてお答えを申し上げまするが、概算としては、ただいま仰せになりました通り、実績の二分の一、これを目安にして予算を計上しておるのであります。
  212. 横路節雄

    ○横路委員 次は大蔵大臣お尋ねいたします。今の点ですが、これは地方財政の中で義務教育費の占める部分は非常に大きいわけですが、今文部大臣は、義務教育費国庫負担法によるところの実際の支出額の二分の一ということで答弁されておりますが、その通りに、二十八年度の本予算の義務教育費国庫負担金について、大蔵大臣はおやりになるのかどうか、この際お尋ねいたします。
  213. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 実際の支出額を見、法律の趣旨に従つてやるのが当然であろうと考えております。
  214. 横路節雄

    ○横路委員 次に自治庁長官にお尋ねいたしたいのですが、今の大蔵大臣、文部大臣の御答弁は、義務教育費国庫負担金は実際の支出額の二分の一ということです。これに対して長官も御存じの通り、流れました前の三月の予算のときに、千百五十五億組んだのですが、不交付団体並びに減額すべき団体として二百五十四億を見込んで、それを削つたわけです。削つて九百一億をやつたのですが、今度は、今大蔵大臣からもお話がありますように、実際の支出額の二分の一を計上するということになりました。義務教育費国庫負担法の建前では不交付団体にも当然やることになつておるわけです。これは法の建前から言えば、やることになつておる。こうなると、平衡交付金を算定する場合に、本来から言えば、平衡交付金であるならば、不交付団体にやらなくてもいいものが、義務教育費国庫負担法によつて、二百五十四億の半額としても、約百三十億そちらに行くということになれば、それだけ不交付団体外の都道府県に対して、地方財政のしわ寄せになるのではないかと思うのですが、その点はどういうふうにお考えなつておるか、その点をお尋ねいたします。
  215. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 そういうような結果が起りませんように、実額の二分の一だけが国から行くように、平衡交付金を計算するようにいたしております。
  216. 横路節雄

    ○横路委員 どうも今のお話はどうにでも解釈できるような御答弁でありまして、もう一ぺんひとつ、よく大臣自身も、われわれも納得できるように御答弁いただきたい。今の話は、不交付団体に百三十億よけいに行くわけですが、大蔵大臣が、百三十億だけ不交付団体に行つたけれども、まあまあしかたがない、百三十億だけ平衡交付金で見てやるわ、こ言えばいいのです。しかしおそらく大蔵大臣主計局長から、そんなばかなことはないと言つて、百三十億の中から何十億か削られるにきまつておると思う。そこでそういうことになれば、不交付団体外のところは結局困る。その点について、一体自治庁長官としてはどうなさるのかと聞いておるのです。
  217. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御質問の趣旨を取違えておりましたので、重ねて申し上げます。結局不交付団体に義務教育費の半額を国庫負担をすることになつて、よけいに行つてしまうということは実際困ることなんでありまして、その面は、政令で頭を押えることができるというあの規定によりまして、できるだけこれを調整をして行きたい。またその他のいろいろな方法によりましても、そういうむだな金が必要のないところへ行くようにならないように、いろいろな措置をするつもりであります。そしているくなそれらの措置を講じまして、どのみちどのような措置を講じましても、とにかく不交付団体に行くもののために、その他のところにしわ寄せが起るというよう五ことは、絶対にないようにする覚悟でございます。
  218. 横路節雄

    ○横路委員 重ねて自治庁長官にお尋ねしますが、これは当然今二十八年度の本予算ついても、いろいろ大蔵当局と折衝しているときでございましようが、やはり一番問題なのは、不交付団体の分を除いても、実際の支出額ということが問題なんです。これはどうして問題だかといえば、自治庁として一番困つていることは、昨年実際には差引いて渡していないのに、大蔵当局から差引けといつて平衡交付金を減額してよこしたわけです。しかし今度は法の建前で実際の支出額ということになるのですから、その点は当然平衡交付金においても、その分だけは見なければならぬ。文部当局においては現に半額国庫負担で見ているのですから、当然それにつり合うように、地方財政平衡交付金でもそれを見なければならぬ。その点については自治庁長官としては一体どういう決意でおやりになるのか。文部当局は実際の支出額の半分といつておる。片方はいやそうじやない、初めから差引いてしまうというが、その点自治庁長官としてはどうなさるのか。その点をお尋ねいたします。
  219. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御意見通りでありますので、実額が半分になるように、平衡交付金の算定の際に十分考慮いたしたい、こういうように考えております。
  220. 横路節雄

    ○横路委員 それでは自治庁長官にお尋ねしますが、そうすると、三月の国会で流れましたが、いわゆる二十八年度予算として切め組まれたものの義務教育費国庫負担金と、それから地方財政平衡交付金を入れました総額は千七百二十億であつたわけです。おそらく千七百二十億というようなものを大体基礎にして、四月、五月の暫定予算、六月の暫定予算も組まれているのではないかと思うのですが、そうすると今の長官のお話から、当然千七百二十億という、両方合せた地方財政に対する交付金は、負担金を入れて大幅に増額されなければならぬのだが、その点は来月の半ばに出て来る本予算の中では、自治庁長官としてはどうなさるのか、その点をひとつお尋ねしておきたい。
  221. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 平衡交付金の総額を算定いたします場合に、いろいろ計算をいたしました結果、増額を必要とするということになりますならば、おそらく増額せざるを得ないでありましようし、あるいはまた検討の結果、増額をせぬでその目的が達せられるということになつて、増額が起らないかもしれない、こういうふうに考えております。
  222. 横路節雄

    ○横路委員 自治庁長官に重ねてお尋ねしますが、今全国の知事会並びに市町村長会等におきましては、都道府県の赤字は大体三百五十億、市町村の分は大体百五十億、大体五百億の赤字である、こういう見当なんです。そこで先ほど古井委員からも、大体二百億くらいの赤字じやないかというお話で、長官からも答弁がありましたが、千七百二十億のほかに五百億の赤字について見るということになると、二千二百二十億になるわけですが、この中には当然昨年の暮れの国家公務員に対する〇・二五分として、三月十四日解散直前に、地方公務員に対して約四十億――三十億の資金運用部資金と十億の交付公債というような形で来ておるのですが、それは向井前大蔵大臣等から、これは当然政府が責任をもつてやらなければならぬと言つておる。この点については、資金運用部資金を短期融資してやるというのではなしに、これは当然平衡交付金で見なければならぬ。こういう点は今度の本予算の中で見ようとしておるのかどうか。この点についてお尋ねしておきます。
  223. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 先ほど古井委員に対してお答えいたしましたように、古井委員は約二百億とお述べになり、私は百億前後でないかというように申し上げたその不足額というものは、必ずしも平衡交付金でこれのしりをぬぐうという生貰うものではないのであります。これらの不足額は、地方財政の今のあり方、地方税制の今のあり方、その他いろいろな事情から出おりますので、この解決は地方制度全般を検討いたします際に解決することにいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  224. 横路節雄

    ○横路委員 長官に重ねてお尋ねしますが、地方財政が赤字になつておる一番大きいものは、これは昨年二十七年度の当初予算並びに二十七年度の補正予算のときに、約百五十万の地方公務員については、政府は公務員と国家公務員とを実際に比較しないで、ただ地方公務員を一方的に調査をして、高いと称して、差引いて平衡交付金を渡したところに、地方財政が非常に困窮を来しておる理由があるのです。この点は自治庁長官はあと主計局長にお聞きになつても明らかであると思う。この点が非常に地方財政にしわ寄せになつて、この分だけで約百五十億近くのものがしわ寄せになつておる。こういう点については、ぜもひとつ衆望をになつて自治庁長官になられたのだから、地方財政のためにやつていただきたいのです。この給与の過少の見積りの点が解消されなければ、地方の要求を満たすわけにいかぬ、この点について今自治庁長官から、いやこれは平衡交付金で見ないで他の方法でもといつても、これは明らかに平衡交付金を、差引いて渡した額なんですから、この点については、やはり自治庁長官としては、二十八年度予算の中に組まなければならぬと思うのです。この点はどうでございましよう。
  225. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御指摘のように、現在生じておる不足額の中には、給与の上から来るものも含まれておるかもしれません。しかし今までに生じましたものは、これを二十八年度の平衡交付金でしりをぬぐうという形であるよりは、むしろ地方制度全般の改革を考えます際に、地方の教職員の給与のあり方というようなものもあわせて考えまして、その上で今度は赤字が生じないようにという形の税財政制度を確立いたしまして、そうしてその制度の中で、過去に生じましたものが自然と無理のない形で吸収されて行くように、こういうように考える方が適切ではないかと考えます。
  226. 横路節雄

    ○横路委員 最後に文部大臣お尋ねいたしたいのですが、もうこれで三箇月義務教育費国庫負担法によつて義務教育費国庫負担金が計上されて来たわけですが、先般の国会で、大臣も新聞でごらんの通り、義務教育学校職員法案という名前で出ましたが、実際の政府のねらいは義務教育費全額国庫負黒なんだというように外部には宣伝されながら、義務教育学校職員法案という名前で出て、当時自治庁長官の地方財政との間に非常に問題が多かつたわけです。しかし六月の暫定予算も義務教育費国庫負担法で組んでおりますので、新任の文部大臣としては、ああいう地方財政を混乱に陥れてわからなくするような義務教育学校職員法案はお出しにならないだろうと私は思うのでございますが、この点についてひとつ文部大臣考えを承つておきたいと思います。
  227. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お答えを申し上げます。この問題は非常に重要な問題でもあり、また前議会におきまして相当に論議された問題であろうと存じまするので、私どもといたしましては法案の全部にわたりまして、慎重に再検討をいたしました上で善処いたしたいと存じます。
  228. 尾崎末吉

    尾崎委員長 武藤運十郎君より関連質問の申出があります。これを許します。武藤運十郎君。
  229. 武藤運十郎

    ○武藤委員 岡崎外相にちよつとお尋ねをいたします。新聞を見ますと、先日の特別委員会で妙義、浅間地区の演習地の問題について、岡崎外相からお答えがあつたようでございます。それによりますと、もう妙義、浅間地区の演習地といいますか、山岳学校といいますか、施設については、日本政府承知をしてしまつたような印象を受けることが一つ。もう一つは、アメリカ軍の方から日本に言つて来れば、もうそれは必ずイエスと言わなければならない。ただその場合に多少の条件をお情でつけることができる。またそれをつけることは非常な手柄になるような印象を受けるのでありまするけれども、妙義、浅間地区の演習地の問題はどの程度まで進んでおりまするか。話の進んでおる程度伺いたいと思うのであります。
  230. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側の要求する施設については、何でもこれを認めるという性質のものではないのはもちろんでありますが、われわれは安全保障条約を締結して、日本の安全をアメリカの駐留軍に託しておるのでありまするから、駐留軍の能率をあげ、紀律を固くし、しかもいざというときに役に立つようにするためには演習もしなければなりませんし、平生の訓練もいたさなければなりません。そのために必要と認めるものはこれは提供しなければ、何のためにアメリカ軍を日本国内に置いているか、意味をなさなくなつてしまうのであります。従いまして、必要なものは最小限度これを提供するのは政府の方針であります。妙義、浅間地区につきましては、この間の委員会でも述べましたけれども、もしこれを使うという場合のアメリカ側の心構え、政局のいろいろの処置、これを説明したのでありまして、まだ決定まいたしておりません。
  231. 武藤運十郎

    ○武藤委員 新しい施設につきましては、日美合同委員会で協議をいたしましてきめることになつておるのだと思いますが、この問題は日米合同委員会で討議をされましたかどうか。また何回協議されたのか。それからまた確定はいたしておらないというお答えでありますが、大体内諾を与えておるというような形ではないのであるか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  232. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は合同委員会に加わつておりませんから、何回くらいどういうふうに話したかということは、
  233. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この演習場等はすべてアメリカ側の必要と同時に日本国内の事情にもよることでありますから、絶対にこれでなければならないというものは実はないのであります。かりにこれでなければならないとしましても、その一部が提供できない場合には、十分でなくても提供できる部分でがまんするほかしかたがないのであります。従いまして今のお話のような場合でも、これとこれとなければどうすることもできないというものは、その場合でもまたほかの場合でもないとお考えなつてさしつかえない。但しできるだけこの間において便宜をはかろうというのが政府考えでありますけれども、同時に住民の気持かとその他いろいろな問題がありますので、できないものはできないでしかたがないと考えます。
  234. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで私は、ロック・クライングですか、山獄演習をするのは、何も妙義、浅間に限らないと思うのでありますが、どこかもつと観光にさしつかえないで、あるいは住民にさしつかえのない所、そういう所に変更することを考え、またはアメリカ側に申出をしたことがあるかどうか、これからしようとする意思があるかどうか。そういう点をお伺いしたいと思う。
  235. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私も専門家でありませんから、今おつしやつたここでなければならないかあるいはほかに幾らでもあるのか、これは実は自信をもつてお答えすることはできません。しかしながら先ほど申しましたように、約二年前から、つまり朝鮮事変以来いろいろ実戦の経験も得た結果、日本においてもこういう点を訓練しなければものの役に立たない場合があるという結論を得まして、それ以来国内の各地をずつと調べて専門家が探しておつたわけであります。その結論がただいま出たようなわけでありますから、これは私は専門家の意見として尊重すべきものだと思つております。しかし自分で判断するだけの能力は残念ながらないのであります。
  236. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで妙義、浅間の問題と関連してもう少し基本的なものを伺いたいと思うのでありますが、大体安保条約を見ますと、その前文におきまして、日本には今軍隊がない、ないから暫定的な措置として、アメリカ軍が日本に駐屯をしてその防衛を引受ける、しかし日本は漸進的に防衛力をつくる、強化する責任を負うというような規定があると思うのであります。そこでよく政府の言われている防衛力の漸増ということが、保安隊の強化と拡充というようなことになつて現われておりまして、七万五千から十一万というようにだんだんふえて来て、また内容も強化されて来ていると思います。そういうふうに保安隊が増強され、自衛力がいわゆる漸増されて来ますというと、アメリカ軍の方は減らなければならない。また基地その他の施設も当然に減少するのがあたりまえであろうと思います。ところか今度の妙義、浅まの問題にいたしましてもそうでありますが、新しいくこういうものがふえて来ている。この点はどういうふうに御解釈をなされ、どういうふうにお考えなつているのか。防衛力を漸増する、つまり保安隊を増強して行く、それからアメリカ軍の基地も増強して行くということになりますと、外相の言われる安保条約にいうものも無視される形になつて、日本が結局アメリカ軍の基地化するというおそれが、先ほど申しましたようにあるのではないかと思うのでありますが、その点の外相の御見解を承りたいと思うのであります。
  237. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 元来保安隊とアメリカの駐留軍とは、職分が異なつているのは御承知通りであります。しかしそれは別としまして、日美合同委員会で独立以来約一年の間にいろいろ協議それは別としまして、日米合同委員会決定しました施設区域等は、ふえている部分よりはむしろ減少している部分の方が多いのでありまして、その一々の問題は、そのそれぞれのときに発表しておりますから、御承知の部分もあるかもしれませんが、決して全体としてふえておるわけではないのでありまして、むしろだんだんに減る傾向にあると思いますが、それと同時に近代的な戦争の兵器等の関係もありまして、古いものはいらなくなり、新しいものはいるというような事態も起るわけであります。一にこれは日本の防衛に必要な範囲の最小限度のものを提供する、こういうことになつております。
  238. 武藤運十郎

    ○武藤委員 減つたのが何であるか、ふえたのが何であるか、私は詳細に承つておらないので、伺いたいと思うのでありますが、ふえるのは基本的な軍事的な施設でありまして、減るのは住宅を返すといようなものではないかと思うのであります。むしろふえておるのは、やはり軍事的な基本的の施設がふえておるのではないかと思いますが、おわかりになつておりましたら承りたいと思うのであります。
  239. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 詳細に一々ここで私の記憶では申し上げられませんが、住宅等はもちろん非常に返されております。しかしその他にも不必要なものは返しております。ただたとえば、飛行機の発達が最近非常に急速でありまして、滑走路が従来のものでは、とても速力の速い飛行機では足りなくなるということで、新しく滑走路を延ばすということはありまけすれども、全体として決してこういうものがふえておるというわけには参らぬと思います。
  240. 武藤運十郎

    ○武藤委員 妙義、浅間地区の基地の問題につきましては、先ほど来申しましたように非常な反対があるようでありますから、どうか岡崎外相におかれましても、住民の反対を聞かれまして、できますならば、もう少し強腰になつて、これにノーと答えてもらいたいということをお願いいたしまして、私は岡崎外相に対する質問は終ります。  最後に一点農林大臣伺いたいと思うのであります。これは全然別のことでございますが、政府の肥料行政と申しますか、肥料対策と言いますか、この概略を伺いたいと思います。言いかえまするならば、一体政府の政策というものは、輸出工業に重点、中心を置きましてやるのであるか、あるいは農民に安い肥料を与えるという農民本位の立場で行こうというのか、その点について基本的なものを伺いたいと思うのであります。
  241. 内田信也

    内田国務大臣 武藤さんのお尋ねお答えいたします。御承知通り輸出は近ごろはいつも赤字になつておるのでございますが、この輸出の数量を製造いたさなければ、生産量が非常に城りまして、かえつて農民に供給する単価が高くなりますので、やむを得ずこの赤字輸出をやつておる次第でありますが、これを農民に負担させるということは、いかにも遺憾でありますので、御承知通り肥料対策委員会で目下この対策研究中で、来月に入つたらば、近々のうちにその結論が出て来るというので、私らそれを待つておる次第であります。すなわち輸出と内地と両方をあわせ勘案して、肥料対策の万全を期したいと思つておるのであります。
  242. 武藤運十郎

    ○武藤委員 輸出が赤字であるという話でありますけれども、一体赤字であるか赤字でないかというその経理というものは、これは権威のある調べ方というものは外部からはできない。赤字であるとは肥料工業家だけがそう言つておるのでありまして、農民の方から申しますと、どうも外国に六百円前後で売れる硫安が、農民にそれで売れないはずはない。それを九百円前後で農民に売り渡すというのは、農民の犠牲において資本家がもうけておるのじやないかというような見方が、非常に農民の間に強いと思うのでありますけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えでございますか。肥料資本家の、赤字である、赤字であると言うことを、政府は無条件に信用して、今農林大臣お答えになりましたような御見解でおりますのか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  243. 内田信也

    内田国務大臣 輸出すなわち主として硫安でありますけれども、これがただいま武藤委員の仰せ通り、農民に販売するのが高くて、海外に輸出する単価が安いということは事実であります。それは両方を一緒に製造しておるのでございますから、そこにこれは農民用だ、これは輸出用だという生産コストの限界がないのでございまして、お答えにはなはだ困るのでございますけれども、しかし今日の輸出価格というものは、いつまでもそう続くものとは私は思わないのでございます。それは今日世界の肥料市場が非常に安くなつて、この間も台湾で、今商談中でありますが、非常に安い。これはどつちかと言えば私の商売に近い方でありますが、運賃が非常に暴落をしておりまして、トン十ドルも下つておりますから、それで特に今日輸出の値段が非常に安く、農民に売るのが高いということは事実でございます。これはまことに日本農民に対して私は痛切に遺憾に感じておるのでございますから、この輸出値段がいかにも農民に背負われておるように感ずることは、私も遺憾でございますから、ただいま申し上げた通り、肥料対策委員会の答申を待つて、何とかして農民にごの価格の差の負担をかけないようにいたしたいと苦慮しておる次第でございます。
  244. 武藤運十郎

    ○武藤委員 時間がございませんから、いずれまたあらためて肥料問題については伺います。これで私の質問は打切ります。
  245. 尾崎末吉

    尾崎委員長 小平忠君。
  246. 小平忠

    ○小平(忠)委員 まず大蔵大臣お尋ねをいたします。過日の四月、五月暫定予算の特別委員会の席上におきまして、大蔵大臣は七月も暫定予算を出すということを明らかにされたのでありますが、それはまつたく大蔵大臣の実際の現在の考え方なのか、その点と、さらに今日七日の暫定予算を出すということを言明できるならば、なぜ六月だけの暫定予算を出したかというその理由について承りたいのであります。
  247. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 小平さんも御承知のごとく暫定予算というものは、もうできるだけ短期間にとどめたいと存じますので、六月の分を出した次第でございまするが、その後の状況等から見まして、もう私ども予算が一日も早く通ることを希望して、この本予算を来月半ばごろまでにはぜひ出したいと思つておりますけれども、過日来お話があつて、それでは審議期日の関係上通らぬではないか、そういう見通しもありますので、そこでさらにあらためて、それでは本予算編成の方針とからみ合せたもので、ひとつ七月分をつくつて参りたい、どなたか御指摘になりましたように、いつも骨格予算、骨格予算ばかりでは困るじやないか、こういうお話等もございますので、それではまず本予算をつくりまして、その本予算編成に基いて七月分をお出しいたしたい、実はこういう考え方で、別に切り離しておる次第でございます。
  248. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、七月の暫定予算はいつごろ国会に提出される見通しでございましようか。
  249. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 それは審議の状況によることでございますが、御審議を願う期間をとりまして、お出しいたしたいと考えておる次第でございます。
  250. 小平忠

    ○小平(忠)委員 次に大蔵大臣にお伺いしたいことは、二十八年度予算の流産によりまして、これは各党が指摘いたしておりますように、二十八年度の特に公共事業なり食糧増産といつたような面におきまする支障というものは、実に大だろうと思うのであります。一昨日の大臣の六月暫定予算の説明の際にも、暫定は御承知のように国家の経営費たる人件費など、とりあえずそういう予算を計上することが建前であるが、しかし東北、北海道、北陸地帯の積雪寒冷地帯におきまする公共事業なり、あるいは食糧増産、あるいは文教施設等につきましては、二十七年度予算の六分の一を計上したと説明をされた。この点は政府当局も非常に御配慮されておりますことについてはわかるわけであります。しかしその後河野主計局長から詳しく説明を承つたところによりますと、また予算書の内容を見ましても、継続事業のみで新規は入つていない。これはきわめて重要なる問題でありまして、大蔵大臣はこの予算の流産によつて、一体二十八年度は当初計画されました公共事業なり食糧増産等のこういつた関連において、一体どのくらいの支障があるのかという点の見通し、さらに六月の暫定予算にとりあえず継続事業については六分の一を計上したが、新規事業については六月分の予算には計上は絶対にできないのか、できないならばどういう理由で計上しなかつたか、こういう点について承りたいのであります。
  251. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 六月分の予算につきましては、先ほど御説明申し上げましたように継続費だけで、積雪寒冷地帯等の分は、時期的な関係もありますので盛りましたが、その他は一切いわゆる骨格予算なのであります。七月分につきましてどうするかといいますると、七月分につきましても、そういうものを盛り込みますことはもちろんでございますが、しかしこれは本予算を出したあとでお出しするのでございまして、本予算に基いて出すのでありますから、六月と若干形がかわつたものを出すことになろうかと考えておりますけれども、しかしもともと七月分にいたしましても暫定予算でございますから、そのものはやはり骨格予算に少し色がついたくらいのものになるということは、御了承願わぬといかぬと存じております。ただ、ちようどお手元へそれぞれ配付申し上げましたように、金融上とり得る措置等につきましては、あとう限りのことをいたしておりますので、もちろんお話のごとくに、相当本予算が今日まで遅れておるために、各方面に悪影響のありますることは私ども十分これを認めて、この点ははなはだ不本意に存じておる次第でございますけれども、それでは一体どの程度でどのくらいかということは、過日申し上げましたように、金額の点でこれをつかんで申し上げるほどのまだ調査ができておりません。ただ、ただいま申し上げます通り、来月の半ばごろまでには本予算を出すから、その本予算に基いて、その編成方針で、七月分につきましても骨格予算ではあるが、若干なりとも色をつけ得るかと考えております。また金融措置等については、これは相当とり得ると信じておるのであります。
  252. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの大蔵大臣の御説明を承りますと、大体御答弁の要旨はわかるのでありますが、しかしこの六月の暫定予算国会を通過いたしましたならば、ただちに本予算の編成――もう現在着手されておると思います。従つてきわめて重要な段階でありますので、具体的な例をあげて、ぜひ大蔵大臣にお聞き願いますと同時に、私はこの機会に北海道開発庁長官である戸塚建設大臣にお伺いいたしたいのであります。と申しますのは、国家的な見地から、国の方針として、国の眠れる資源を開発しなければならぬという見地から、北海道の総合開発事業を推進しているわけであります。ところが今回本予算の流産によつて、その北海道の実情としましては、公共事業あるいは食糧増産関係の着工ができず立ち遅れている。むしろ本年一箇年は、新規事業などはほとんど手をつけられないのじやないかといつて心配いたしておる現状であります。こういう現状でありますので、戸塚大臣にまずお伺いいたしたいのでありますが、戸塚さんはかつて北海道の長官もやつておりましたし、北海道のことについてはきわめて詳しいのであります。また今回新たに大臣就任されたのではなくて、いわゆる第四次吉田内閣から継続されているわけであります。そういう見地に立つて主管大臣、いわゆる長官とされまして、この本予算が流産になつたという見地から、本年度の北海道開発事業を、実際どのように推進されるか、基本的なお考えをまず承りたいのであります。
  253. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私は北海道の開発という言葉が、実はあまり気に入らないのであります。北海道を開くというよりは、むしろ日本のために北海道の資源を掘り出す、そういう意味で北海道にいろいろの総合的な計画をしておるというふうに実は考えておるのであります。ただいまお話にもございましたが、私かつて北海道の長官であつたとき、一応北海道の総合計画というものを立てたこともございます。当時とただいまとでは非常に事情もかわつておりますので、一概に当時のことを言うつもりはございませんが、御承知のように、北海道の総合開発の計画は、二十七年度から五箇年間を第一次とし、これで北海道総合開発の基盤となるというか、日本の経済復興なり、その他人口の問題等もありますが、そういうものの基盤となる計画を大体実行して行きたい。その最初の計画が終りましたならば、今度第二には産業各般の開発に重点を置いて行くというのが、ただいまの計画のようであります。私も大体その方針で進んで参りたいと思いますし、なお今後もう少し研究を加えて参りたい、こういうふうに考えております。  ただいまお尋ねの、予算が暫定になつたために、ことにことしの事業としては非常に齟齬するところがあるのじやないかということでございましたが、あの暫定予算は、前年度の踏襲でありますので、金額も二十八年度の当初の予算案として考えたものと大分開きがありますけれども、ことに新規の仕事もできないというようなことで、遺憾な点もありますが、多少寒冷地というような意味も考え暫定予算を組んであります。なお実施の上には特に注意をいたしてやつておるつもりでございます。七月の暫定予算のことを言われましたが、これはただいま大蔵大臣からもお話がありましたように、私も六月までのものと七月とはよほど性格的にも違つていいじやないかというふうに考えておりますので、そういう点については、もちろん政府の方針がま、だ決定的ではありませんけれども、特に北海道のごときについては、特別の考慮を加えて行く必要がある、かように考えて大蔵省ともよく折衝いたしたい、こういうふうに存じております。
  254. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま大臣のおつしやるように、北海道の開発は単に北海道の未開発地域を開発するというようなことでなくて、日本の自立経済、国民生活の安定という見地から大きな役割を持つておるので、そういう見地からやりたいという大臣の御答弁、きわめて私は同感であります。そういう見地に立ちますならば、北海道の事情というものをよく御存じである大臣が再び留任されまして、そして六月予算の編成にもおそらく関与されたと思うのであります。しかるにこの六月予算には、継続事業費の六分の一が入つておるが、新規事業が入つていない。ただいまの大蔵省の説明によりましてもわかりますように、七月も暫定予算で行く。そうしますと、本予算は八月からであります。八月からになりますと、実際に予算の事業費が令達になりまして、そうして始めますのはかれこれ九月になる。九月といいますとそろそう霜がおりて来て、十月にはもう凍る時期になつて作業は全然できなくなる。この説明には十二月までに屋外作業ができるような方針でやつておるとおつしやいますけれども、しかし東北からだんだん北海道参りますれば、もう十月の末から十一月になりますると順調に工事が進まないのですから、現実に仕事はできなくなるという心配をしておるのであります。そういうことを考えてみますると、この六月の暫定予算は、四月、五月で組めなければ――四月、五月は御承知のように国会が解散になりまして、参議院の緊急集会を求めて承認を求めた予算だという事情もわかりますが、しからば六月の暫定予算には組んでもらうというところまで参らないと、当初第四次吉田内閣において計画された公共事業なりあるいは食糧増産というような見地に立つた計画は、思うように行かないと思います。こういう点について、主管大臣としての北海道開発庁長官は、六月はもう大体組んでいるのだからこれでやむを得ないのだ、あとは七月の暫定予算でひとつ新規事業は考えて行こうというようなお考えですか。それとも今の御説明によりますと、私はもつと積極的に大蔵当局とも折衝願えるのじやなかろうかと思うのでありますが、再び承りたいのであります。
  255. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。六月の暫定予算については、なるほど小平委員のお考えになるのはごもつともに存じますが、何分審議期間等の関係もあつて、特別にあれ以上に考えることはやはり困難であつたことを御了承願いたいのであります。私は先ほども申し上げましたように、同じ予算でも、その実行の上では相当北海道の事情を考慮に加えてやつておるつもます。なおふうに申し上げたのでありりだという七月については、あるいは私の申し上げたことがまだお気に召さなかつたかもしれませんが、私は特殊の事情のところにあつては十分に考慮しなければならぬということは、かたく考えてはおるのでありますが、まだ今どれほどにということを申し上げる段階に達しておりません。十分御趣意のほどは尊重いたしたいと思います。
  256. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、最後に大蔵大臣にただいまの問題について重ねて所信を承りたいのでありますが、先ほどそういうような実情から若干かわつた形で七月の暫定予算を組みたい、こうおつしやられたのであります。私が非常に憂えますことは、公共事業なりあるいは食糧増産あるいは文教施設等、特に東北、北海道、北陸の積雪寒冷地帯におきましては、一日も早くこの事業費をつけて着工できるようにしてやることが政府の親切な考えでなかろうかと思うのでありまして、そういうような見地から、七月は若干かわつた形で出したいというお考えの意図は、七月の暫定予算については、公共事業なりあるいは食糧増産費等の面について、新規事業も計上して行きたいというお考えであるのでしようか、承りたいのであります。
  257. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 暫定予算の性質上、新規事業を入れるということをここで申し上げるわけにも参りませんが、しかしよく事情をしんしやくいたしまして、でき得るだけの措置はとりたいと考えておる次第でございます。
  258. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はそうなりますときわめて重要なる結果がもたらされるだろうと思います。これは単に野党だからひとつ与党たる自由党に食い下るというような意味でなくして、実際問題として、これはもう積雪寒冷地帯において八月から本予算はやるんだといつても実際はできないということであります。第五次吉田内閣としては、自立経済なり国民生活の最も根幹をなす食糧問題の解決というような見地から行きますと、この公共事業費でありますとか、食糧増産対策費はきわめて重要な点であります。それを実際に本年度はできないんだというような方法をとつて、目に見えて明らかにわかつておる問題を、主管大臣としましてこれは言明するわけにに参らぬと言われるが、しからばこれは暫定予算でできないならば経続事業といえども入れてはいかぬと思います。それを六月は、やはりそういう実情を加味いたしまして、六月の暫定予算に継続事業費の分については二十七年度のいわゆる実績予算の六分の一を計上した。これは異例であります。そういう異例をやつておられるのでありますれば、私はこれはもつと積極的に考えていただきたいと思うのであります。おそらくこれは与党たる自由党の議員の人もあるいは野党も一致した意見だと思うのであります。重ねてこの問題について承りたいのであります。
  259. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 よく御趣意は承りましたから、七月の暫定予算の編成の際にできるだけ御趣意を取入れることにいたしたいと思います。
  260. 小平忠

    ○小平(忠)委員 次にいろいろ関連する問題もありますけれども、時間の都合もありますから、いずれ本予算の際に承ることにいたしまして、次に農林大臣に承りたいと思います。農林大臣はわれわれの先輩でもあり、特に森行政についてもよく御理解あられると思うのであります。今回新たに農林大臣就任されまして、わが国の農林行政というものは、まず食糧問題を取上げてみましても、きわめて重大な段階にあると思うのであります。そういう見地からまず国民生活の安定ということを品によくいたしますが、その国民生活の安定の根幹は何であるか、やはり食糧問題の解決であります。その食糧問題の解決を具体的に掘り下げては、日本政府から赦免に関する勧告をいたしましたに対して、フランス国からは好意をもつて対処するという回答まで来ているということが、犬養法務大臣の演説の中にもあるのでありますが、しかし今回のイギリスの戴冠式というイギリス国民にとつては一代に何度もないような慶事にあたつて日本政府は何らの手も打たなかつたというふうに私は聞いているのであります。もちろん聞くところによりますと、イギリスの松本大使に非公式に尋ねてみたところが、そういうことをしてもだめだということであつたから、だめなものをやつてもしかたがないからやらなかつたというのでありますが、しかし昨年の七月十匹日のフランスのお祝いの日には勧告をいたしたのであります。それをどうしてイギリスの戴冠式に対して赦免の勧告と申しますか、お願いをしなかつたのかということが、私には了解しがたいのであります。特別委員会における岡崎外務大臣のわが党の中村委員の質問に対する答弁では、そういう恩赦というがごときことは、ほかから勧められてやるべきことではなくて、自発的にやるべきことだといつたような意味の答弁があつたように伺つておりますけれども、何らの手を打たなかつたのではない。松本大使に非公式に尋ねたというのでありますけれども、どの程度のことを交渉されたのか、まずそれを承りたいのであります。
  261. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話のように、講和発効後この問題が十分に進展していないのは事実でありまして、私も非常に残念に思つております。しかし忘れているというようなことは決してありません。これはいろいろの機会にいろいろの方法で促進するものでありまして、何かの問題があると、これにひつかけると言つては語弊がありますが、この機会に戦犯の方も話してみようじやないかというようなことは、常にやつておるのであります。ただ国によりまして、たとえば日本のようにおめでたいときがありますと、大赦とか特赦をやる国と、それからそういうときにはやらない国とあるのであります。また国によりましては、今ちよつとおつしやつたように、日本側から要求されてやつたという形をとりたくないという考えの国とあるのであります。要求はいたしますし、交渉もいたしますけれども、そのことを公にすることを好まない、従つてわれわれもその点は黙つている、そうして結果においては、相手側が自発的にやつたような結果になることが、かえつて問題を促進するゆえんであるというような国もあるのであります。これははなはだ微妙な点なありますので、いろいろ気を使つておりますけれども、たとえばイギリスの場合におきましても、だめだからそれじやしかたがないと言つておるのじや決してないのでありまして、松本大使ももちろんでありますが、東京におきましてもこの大使に対していろいろの機会に、いろいろの方法で話しておりまして、現に今度の戴冠式を控えましても、この話はいたしております。フランスの場合に、確かにいい返事が来たのは事実でありますけれども、その後内閣の変動がありましたり、また外務省と大統領の事務所との間の話の行き違い等がありましておそくなつたようであります。しかしそれにしましても、最近御承知のように再び内閣が変動しておりますので、予期のように早く行くかどうかはわかりませんが、ただいまのところは非常に好転しております。またオランダにおきましても、委員会がこの大使館の中につくられるようなことも聞いておりまして、最近数箇月の間は決して今までのように停頓状態にはなくして、いい方にかなり進んでおると私は考えております。しかしもちろん、こういう問題でありますから、それに安心するわけには行きません。あらゆる機会をとらえて今後とも努力するつもりでありますが、その方法は今申した通り公にどんどんやつてさしつかえない場合と、そうでねくして先方の自発的な措置を待つような形にする場合とありまで、全部その交渉の内容等を申し上げすのることは差控えたいと思いますが、誠心誠意また非常な努力をもつて、東京でもまた在外の各地でもやつておることは、これは事実であります。
  262. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 時間がございませんので、私は質問というよりも、外務大臣にお願いをしておきたいのです。忘れておられるはずはありません。しかし私ども自身としてやはり思い出すのはときどきで、忘れるときが多い、ことにお忙しい身体ですから、やはり絶えずそのことに関心を持つておらないということは、その受刑者本人かあるいはその親族の方以外には、申訳ないことでありますけれどもあり得ることだと思います。ことにフランスのごときは昨年の十二月に法務大臣から好意をもつて対処するという返事が来ているのです。ですからこちらが熱心にお願いをすれば、私はもう少し効果が上るのではないかと思う。先般新聞を見ますと、フイリピンにおきましても、在郷軍人団の代表が、これまでの敵味方の感情を離れておみやげを持つて来て、今年のフイリピンの国祭日、またクリスマスには釈放のために努力をすると言つて、モンテンルパを訪問してくれたという記事がありました。こういうふうに考えますと、外国がむずかしいむずかしいいと申しますけれども、こちらが熱心に執拗にお願いをすれば、私はもつと解決の道があるのではないかということを考えますから、どうか今後とも忘れないためにどなたか特別の係でも置いて、そうして絶えず毎日のように実はお願いしてほしい。これをお願い申し上げておきます。  それからもう一つ外務大臣にお伺いしておきたいのでありますが、この講和条約におきまして、われわれの国は樺太の南半分、満州及び関東州の権益を失うことになりましたが、これはもちろんロシヤに対して戦争中に与えた損害に対する賠償の意味でないことは、われわれもはつきりいたしますが、賠償のためにそれをわれわれが放棄したのでないといたしますと、何のためにこれを放棄せざるを得なかつたのか。もちろん形式的にはポツダム宣言を受諾いたしましたときに、ポツダム宣言に日本が四つの島に限られると書いておるから、それで講和条約においてもこれが基礎になつてそうならざるを得なかつたということは、御説明をいただかなくてもわかつております。ただ問題は、われわれが戦争をして与えた損害に対する賠償でなくて、いかなる理由によつてそれを放棄せざる得なかつたか。私の時間の関係上私の考えを申し上げて、一言でお考えを承ることにいたしますが、やはりポツダム宣言は、ヤルタ協定の因縁でそういうことになつたと思うのです。そうしますとヤルタ協定には、外務大臣承知通り一九〇四年に日本の背信的攻撃によつて侵略されたところのロシヤの権益は、次の方法をもつて回復させるということで外蒙古の問題、それから南樺太並びにそれに付属したいろいろな島の返還、それから東支鉄道、南満鉄道は中華民国とロシヤとの共同経営にするとか、あるいは大連をロシヤの軍港とするとかいうようなことを書いておりますが、私がここで問題にいたしますのは、一九〇四年の日本の背信的攻撃というのは、言うまでもなく日露戦争をさしているのに相違ありません。われわれの今回戦いは別といたしまして、われわれの祖父が戦つた日露戦争というものを、日本の背信的な侵略攻撃による侵略という考えの上に、そういう理由によつてこれらの島々あるいは満州、関東州における権益を放棄するということは、これはわれわれの父祖に対するわれわれの責任観が相済まぬ。いくさは負けた、無暴な戦いをやつた。賠償でとられるというのなら仕方がありません。しかしわれわれの祖先が、どろぼう戦争をしたのだから返すのだという理由を承認して、これを返すということは、何としてもはつきりしておかないとわれわれの務めは済まないと思う。私は吉田総理がサンフランシスコにおいて、あの講和条約を欣然として受諾されたという心持もわかります。アメリカの寛大な態度もわかります。またわれわれの無謀のいくさをやつたことも今の世界の情勢で、この軍需生産が幾らか引延ばされて来るということになりますと、その軍需生産力が、貿易輸出品の生産方面に各国ともまわされて来るということが予想されます。そうなりますと、なお一層輸出競争というものははげしくなることは火を見るよりも明らかであります。世界の輸出競争がますますはげしくなるときに、日本の輸出を伸長させるというために三百六十円という、要するに高過ぎる公定価格というものを固定させて、絶対に動かさずにおいて、不自然な実力以上の公定価格を維持して、しかも輸出輸入のバランスをとろうというような努力は、結局労多くして効果はないんですから、金融界その他に対する影響は大きいんですから、御答弁は求めませんけれども、決して為替レートを動かすということはタブーではない、公定価格を動かすには、常にいろいろな障害が起るのでありますけれども、しかし高過ぎる公定価格は結局下げる、安過ぎる公定価格は結局上げるというところに行かないと安定しないということを私は考えておるので、これも御考慮願いたい。  それから次に私は農林大臣にお伺いします。これも結論だけ伺いますが、この五十年、六十年ぶりといわれます凍霜害によつて日本の全国の農民が非常に苦しい目に陥つて、この救済策を毎日のごとく国会政府に陳情に来ておることは御承知通りでございますが、昨日でありましたか、農林委員会において決議されましたところの凍霜害に対する決議、五億数千万円の金を国家が出すというこの決議に従つて政府は臨まれるのか、それとも臨まれないのか、これは私どもの党といたしましては、この六月分の暫定予算に対して賛成するか反対するかという一つの大きなポイントにもなつておりますので、この農林委員会の決議に従つて処置されるのかされないのかということを、簡単でけつこうでありますから、結論だけ承りたいと思います。
  263. 内田信也

    内田国務大臣 昨月委員長を通じてお断りしておきました通り、私昨年来胆嚢をわずらいまして三月も休んでおつたのでありますが、その胆嚢が一昨日頭をもたげましたので、昨日と一昨日の二日間休んで静養いたしまして、本日登院いたしたのでございまして、昨日の農林委員会における決議というものを実は存じておりませんのですが、どういう決議でございますか、それを承つた上で御返事いたします。
  264. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 大臣が御存じなければ、政府委員がたくさん来ておりますから、その決議の内容はすぐわかります。
  265. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今の御質問お答えはいらぬということでございますが、しかし私どもは、為替のレートの問題は、万一誤解があるといけませんから、この点をはつきり申し上げておきたいと思います。私どもは現行為替レート、一ドル三百六十円をかえる意思は毛頭持つておりません、このことをはつきり申し上げておきます。これは対外信用もございますので、この点特に申し上げておく次第でおります。  凍霜害のことにつきましては、目下検討中でございまして、昨日申し上げました通り二、三日中に結論を得る、今、非常に急いでおりますから、明日中にも御返事でがきるかと考えておる次第であります。
  266. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、むしろしてもらわなかつた方がよかつたと思う。私が求めたのではないのです。大蔵大臣として答弁するということになれば、そういう答弁をされるほかはないということはわかります。わかりますけれども、しかしこれは真剣勝負であります。ほんとうに日本貿易振興させよう、あるいは日本の国際収支に健全な均衡をとろうということでありますならば、問題はもつと真剣な問題であります。ですから、これはむしろ答弁をされなかつた方がよろしい。研究してもらえばよろしい、研究しますという返事をしてもらえば無難ではなかつたかと思う。それを絶対にやりませんというようなことでやられては、私の方でも黙つて引き下るわけには行かなくなる。それは研究しますということで御答弁を変更していただけませんか。(笑声)
  267. 小笠原三九郎

    ○小笠国務大臣 いろいろなことを研究することは当然でございまするが、為替問題だけにつきましては、対外信用もありまして、研究すると言うと誤解を招くおそれがありますから、さような御返事はちよつとここで遠慮させていただきたいと思います。
  268. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 返事を求めてないのにわざわざ出て来て、そういうことを言われるから問題が起つて来るのです。(笑声)私が返事を求めたのなら、それはそういう御答弁をするほかはないでしよう。そのことを考えたから私は答弁要求しなかつた。それをわざわざうそかほんとうかわかりません、それがほんとうの小笠原さんの本意であるかどうかはわかりませんが、かつての戦前における議会の速記録など読んで深い理解を持つておられるということに尊敬をしておつたのでありますが、いらざる答弁だと思います。  なおただいまの凍霜害の対策についての決議、これについては今大蔵大臣のおつしやつた通り農林大臣はなお研究中ということでございますか。
  269. 内田信也

    内田国務大臣 今、部内の局長より聞きますと、そういう決議があつたそうでございますが、私もその趣旨については、決議になる前から各派においてそういう御意思があることを承つておりますので、この線に久つて大蔵当局とも一々巨細に検討を進めて、なるべくその線に近づけたいと思つて努力しております。これ以上答弁するとまたよけいな答弁になるといけませんからこれでやめます。
  270. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 最後に建設大臣にお伺いいたします。それは、利根川の堤防を広げる堰堤の問題であります。私の具体的に伺つておりますのは、埼玉県の北埼玉の利根川の堤防の問題であります。これはもうこのまま置けばいつ何どき決壊するかわからない。技術者としては責任を持てないと言つておる。ところがその土地を買収される買収価格の問題にひつかかつて、問題は解決しないで、そのまま未着手でおるのであります。そこの住民の方々としては、ほんとうはこのまま買収されたくないけれども、しかし、堤防決壊について責任を持てない、のみならずいつ何どき決壊するかわからないと言われるから、それではたいへんだというので買収には応じたものの、その買収価格が自分たちの要求と開きがあるというので、結局そのまま放置されておる。私の承知するところでは、中川の買収価格ははつきりしております。その買収価格をその当時の物価と今日の物価と比較しまして、その物価指数を乗じた額を要求しておるのであつて、決して無理な要求をしておるとは考えられない。おそらく大蔵省の方で文句があるのか、建設省に故障があるのか知りませんが、ただ買収価格が、かつて買収された価格と要するに同じ価格で買収してくれという要求がいれられないで、いつ何どき決壊するかわからない所を、そのまま放置されておるということは、重大な問題である。単に埼玉県だけの問題ではなしに、万一これがこの夏にでも決壊するというようなことがありましたならば、その損害は東京都にまで及ぶのであります。私は建設大臣が至急にこれを調査されて、そうしてわずかの買収価格の問題のために、大きな災害のものがそのまま放置されることのないようにお願い申したいのでありますが、建設大臣の決意を伺いたいのであります。
  271. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの事件は本年度からかかる予定になつていると思います。何か安い価格で申入れをしているというお話でありましたが、私の知つている限りではまだ調査程度を越えておらぬ、決してそう無理な価格でやろうとは考えておりません。最も合理的に、よく地元の理解を得て、円満に解決させていただきたい、少しでも早く予算の成立を待つて着手いたしたい、かように考えている次第であります。
  272. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 どうも答弁がお役人式の答弁で――今年の気候は凍霜害もありましたけれども、また大洪水もあるかもしれぬという気象が現われておる。そういう場合にあの利根川がいつ何どき決壊するかわからぬというのに、そういうことにひつかかつて一日でも放つておくことは重大な問題だ、もうあすからでも至急に調査を命じて、そうして不当の要求でなければ、わずかのことにひつかからないで、ただちに善処してもらいたい。このことをお願い申しまして、私の質問を打切ります。
  273. 尾崎末吉

    尾崎委員長 明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十四分散会