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藤田義光君 ただいま
議題となりました
国土総合開発の
促進に関する
決議案につきまして
趣旨弁明を行いたいと思います。
まず
決議案文の朗読をいたします。
国土総合開発の
促進に関する
決議案
政府は、現下内外の困難なる諸
情勢下において
国土総合開発が
日本再建の基本たるにかんがみ、これを強事力に
促進する体勢を整備するに必要なる
措置を講ずべし。
右決議する。
〔
拍手〕
日本は、
昭和二十年、敗戦によりまして、御存じのごとく領土の約五〇彩を喪失いたしております。一方、人口、は累年増加いたしまして、昨年末現在におきまして、終戦時の二〇%の人口増加を来しておるという
現状であります。一方、
政府の提唱する貿易はほとんど振興されず、現在輸出総額はわずかに十二億ドルであります。輸入二十億ドルに対しまして、八億ドル、約三千億円というマイナスを生じておるのであります。この国家予算の約三〇%に相当する輸入の超過は、御存じのごとく特需によ
つてまかなわれておるというさんたんたる状態であります。
国土開発に関しまして、
政府が従来計画を具体化しました歴史をたど
つてみますると、
昭和十五年九月、第二次近衛
内閣におきまして、国土計画設定要綱が発表されておるのであります。終戦後、
昭和二十一年の第一次
吉田内閣の際におきまして、国土計画
審議会が発足いたしたのであります。
昭和二十五年六月、この国土計画
審議会を母体にいたしまして、御存じのごとく国記総合開発法が公布実施されたのでございます。この法律に基きまして、翌々十二月、特定
地域十九箇所の設定を見ものであります。この開発法によりまして、
国民待望の
国土総合開発はようやく軌道に乗つたやに了解いたしてお
つたのでございまするが、昨年三月は電力開発
促進法の公布を見まして、せつかく
国土総合開発の重要なる一要素として考えられておりました電力開発が分離いたしましたがために、いわゆる十九箇所の国土開発指定地区に対する
国民の関心は薄らいで参
つたのでございます。電力開発と
国土総合開発がまつたく主客を転倒したのが
現状でありまして、本年度よりようやく北上川に対しまして三十三億の
政府予算が計上されたのでありまするが、
国民の待望する敗戦国
再建の軸心たる国土の総合開発の前途はまことに寥々たるものがあるのでありまして、私は、今簡単に海外の実情を皆様方に訴えまして、この際この国土の開発に対する皆様方の御協力を得たいと思うのであります。
御存じのごとく、米英におきましは、前人未踏の大事業といわれまする、いわゆるTVAのごとき事業が着々と具体化いたしております。ソ連のドン、ヴオルが総合開発も御存じのごとくであります。特にわれわれがここで注目すべきは、新政権を獲得してからわずかに四年になんなんとする中共の大国土開発計画、すなわち自然改造
運動の成功であります。中国の三大河といわれまする揚子江、黄河、准河の治水工事は、実にパナマ運河を十箇所設置するというような大規模なもの下ありまして、たとえば揚子江の荊江ダムのごとき、このダム一箇所ですら琵琶湖に相当する広さのものを今や竣工せんとしているのであります。また、植林にいたしましても、満州興安嶺の砂防林から、安東より揚子江にわたる沿海防風林、一名毛沢東長城といわれるこれらの植林計画は、敗戦国たる
日本のも
つて範とすべき非常な成績をあげつつあるのでありまして、政権担当以来すでに五箇年を
経過いたしました
吉田内閣の施政と比較いたしまして、私たちは、ここで深刻に反省するとともに、
国土総合開発の徹底的な再
検討を要請するものであります。かくのごとき遅々たる貧弱なる
国土総合開発計画の
現状にかんがみまして、
諸君御立法のごとく、積雪寒冷地帯、特殊土壌地帯、砂丘地帯、傾斜地帯あるいは離島振興等に関する特別法がつくられておりますが、私たちは、かくのごとき当面糊塗的な小手先ざいくによりましては、敗戦国の国土開発は絶対不可能であると確信するものであります。(
拍手)
従いまして、この際私は、まず第一に、全国の地質
調査を徹底的に断行すべきであるということを提唱したいのであります。現在TVAと同様な大規模な工事を具体化しておりますイギリスにおきましては、今から二十年前の一九三三年から二十年の長きにわたり、大規模な地質
調査を断行したことは、われわれの記憶に新しいところであります。ソ連の五箇年計画が、累次にわたり、すべて徹底せる地質
調査の後に断行されたことも、
諸君よく御存じのことであります。
日本におきましては、いまだ国土のわずか四〇%が地質
調査を
終つたにすぎないというさんたんたる
現状でありまして、
政府はすべからく年間五億、十年計画、五十億の予算を計上いたしまして、地質
調査の徹底的な断行をこの際
促進すべきであると思うのであります。
第二番目には、官庁機構の再
検討であります。御存じのごとく、本年度より予算を獲得いたしました北上川総合開発に関しましては、所轄官庁が不明瞭なるがために、現在これらの総合開発に関する管轄官庁としましては、経済
審議庁、建設省、農林省、大蔵省、運輸省等の数箇所の官庁がその権限を持
つておりまして、総合開発の
促進を著しく阻害している
現状でありまして、私は、
国土総合開発の具体化の第一要諦としては、まず強力簡素な統一所轄官庁をこの際即時設置すべきであるということを提唱いたしたいのでございます。
以上申しました
趣旨によりまして、今回の西
日本あるいは和歌山
水害によ
つて三千億、国家予算の三〇%を一朝にして失うという、かくのごとき不祥事を累年繰返さざるために、また、この
災害対策として二十二の特別
法案をつくるという、世界の議会史に前例のないような醜態を演ずることなきよう、この際国土開発
促進に関しまして、
諸君の力により、
全会一致の決議を賜わりますよう切にお願いいたしまして、はなはだ簡単でありますが、
趣旨弁明にかえた次第でございます。(
拍手)