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1953-07-30 第16回国会 衆議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十日(木曜日)  議事日程第三十一号     午後一時開議  第一 一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案益谷秀次君外二十三名提出)  第二 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第六 信用保証協会法案内閣提出)  第七 戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議案山下春江君外二十四名提出) ●本日の会議に付した事件  特定中小企業の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(本院提出参議院回付)  公職選挙法の一部を改正する法律案(本院提出参議院回付)  憲法第五十九条第三項及び国会法第八十四条第一項の規定により公職選挙法の一部を改正する法律案につき両院協議会を求めるの動議今村忠助提出)  両院協議会協議委員選挙  参議院から予備審査のため送付された山田節男君外五名提出昭和二十八年六月及び七月の大水害による公立教育施設災害復旧事業についての国の費用負担及び補助に関する特別措置法案水害地緊急対策特別委員会に付託するの件(議長発議)  日程第一 一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案益谷秀次君外二十三名提出)  日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  憲法第五十九条第二項に基いて再議決のため刑事訴訟法の一部を改正する法律案の本院議決案議題とせられたいとの動議今村忠助提出)  刑事訴訟法の一部を改正する法律案、本院議決案  日程第二 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 信用保証協会法案内閣提出)    午後四時五十五分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 参議院から、本院提出特定中小歪業の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案議題なすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。」  特定中小企業の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案参議院回付案議題といたします。     —————————————
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 本案参議院修正に同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて参議院修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  7. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) なお、参議院から、本院提出公職選挙法の一部を改正する法律案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案議題なすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  公職選挙法の一部を改正する法律案参議院回付案議題といたします。     —————————————
  9. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 本案参議院修正に同意の諸君起立を求めます。     〔起立者なし〕
  10. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立者がありません。よつて参議院修正に同意せざることに決しました。      ————◇—————
  11. 今村忠助

    今村忠助君 憲法第五十九条第三項及び国会法第八十四条第一項の規定により、公職選挙法の一部を改正する法律案について両院協議会を求められんことを望みます。
  12. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両院協議会を求めることに決しました。      ————◇—————
  14. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより両院協議会協議書員選挙を行います。     —————————————
  15. 今村忠助

    今村忠助君 両院協議会協議委員選挙は、その手続を省略して、議長においてただちに指名されんことを望みます。
  16. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて協議委員議長において指名するに決しました。  ただちに指名いたします。   公職選挙法の一部を改正する法律案   両院協議会協議委員    田嶋 好文君  鍛冶 良作君    押谷 富三君  高橋 禎一君    高瀬  傳君  森 三樹二君    島上善五郎君  三輪 壽壯君    加藤 鐐造君  松永  東君  ただいま指名いたしました協議委員諸君は、すみやかに議長応接室に御参集の上、議長、副議長おのおの一名を互選せられんことを望みます。      ————◇—————
  18. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。参議院から、予備審査のため、山田節男君外五名提出昭和二十八年六月及び七月の大水害による公立教育施設災害復旧事業についての国の費用負担及び補助に関する特別措置法案が送付されました。本案水害地緊急対策特別委員会に付託いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。      ————◇—————
  20. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第一、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。人事委員長川島正次郎君。     〔川島正次郎登壇
  21. 川島正次郎

    川島正次郎君 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、人事委員会審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、益谷秀次君外二十三名の提出にかかるものであります。改正の要点は二点であります。  現行教職員俸給は、一般職員俸給表を使つております。ただ、人事院細則におきまして、大学教職員と、高等学校中学校小学校教職員との給与内容を違えておる、いわゆる二本建であります。今回、この改正案におきましては、教職員特殊性にかんがみまして、一般公務員俸給表からこれを分離いたしまして、大学教職員高等学校教職員中小学校教職員の三表に直しまして、いわゆる三本建といたしたのであります。従いまして、大学教職員高等学校教職員中小学校教職員との給与の間においては若干の差異を生ずることに相なつたのであります。  改正の第二点は、大学並びに高等学校中小学校を通じまして、各教職員最高俸を相当大幅に引上げまして、現在の給与令によりますと、中小学校高等学校教諭校長最高給は三万一千九百円でありますのを、これを改正いたしまして、中小学校におきましては、教諭は三万五千九百円、校長は三万八千八百円、また高等学校におきましては、教諭は三万八千八百円、校長は四万三千三百円に、大学におきましては、四万六千三百円の現行俸を五万一千二百円に引上げることに相なります。教職員の優遇の実を実現しようというのでございます。  本案は、去る二十四月より審議に入りまして、提案者を代表いたしまして赤城宗徳君より提案理由説明がありました。  質疑に対しましては、主として赤城君がこれに応答をいたしました。その質疑のうち、きわめて重要なる点二、三を御報告申し上げます。  その第一点は、すでに人事院において勧告を出しておるのであるが、その人事院勧告と今回の改正案との相違点はどこにあるかというのであります。これに対しまして、赤城宗徳君より、人事院勧告と違う点は、高等学校給与中小学校給与との差異であつて高等学校においては四級から九級まで、大学においては四級から十級まで、中小学校に比較してそれぞれ一号ずつ高くしたのであつて、平均約六百円の差があるとの御答弁がありました。  また、同一学歴同一勤続年数の者の俸給は同じだということが給与基本原則と思うがどうかという質問に対しては、今回の改正案におきましても、中小学校高等学校ともに、初任給は同じ学歴ならば同一であります。ただ、途中において一号ずつ差を設けることに相なつておるのであります。しかも、この改正案を実行いたしましても、高等学校教職員は若干有利になるのでありますけれども、中小学校教職員は一点も不利益になる点はないのでありまして、特にこの点については赤城君が強調している点でございます。  しからば、なぜ職域差を認めるかということに対しまして、たとえば高等学校におきましては、高等普通教育のほか専門的教育を施すとの附加的条項がありまして、また資格免許においても差があるのでありまして、教職員負担能力等におきまして、両者の間において専門的の重荷が加わるのであります。しかも、現在の統計によりますと、小学校におきましては、教員五人について一人ずつ校長ができる、中学校においては、教員七名について一人、高等学校においては、二十九名に対して一人しか校長ができないという現況を見ても、両者の間に差を設けるのは当然だという御答弁であります。  かかる給与差を設けることは、中小学校等義務教育を軽視する結果になると思うがどうかという質問に対しまして、文部大臣より、給与差をつけても中小学校を軽んずることにはならないという御答弁がありました。  また、本案施行に要する予算措置いかんという質疑に対しては、本案施行に要する経費は、国、地方を合せまして、二十九年一月以降三箇月分といたしまして、総計およそ二億円程度であります。昭和二十八年度予算における三派共同修正中におきまして、教職員給与三本建並びに学歴等の換算上の不均衡を是正するための所要額三億六千万円に含まれておるのでございまして、これを充当するとの答弁がありました。  なお、本案学校教職員につきましてきわめて重大な法案であることにかんがみまして、小学校中学校高等学校並びに大学校の各代表者委員会に招きまして、意見の聴取をいたしました。また、人事委員会文部委員会との合同審査をいたしました。  かくいたしまして、昨二十九日質疑を打切り、ただちに討論に入りました。日本社会党加賀田進君から反対、自由党の田中好君から賛成日本社会党受田新吉君から反対の、それぞれ意見の御開陳がありました。続いて採決の結果、起立多数をもつて原案通り可決した次第でございます。  以上経過を御報告申し上げます。(拍手
  22. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。櫻井奎夫君。     〔櫻井奎夫君登壇
  23. 櫻井奎夫

    櫻井奎夫君 私は、ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして、反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)  人事院は、国家公務員法規定に基きまして、官公吏全体にわたる給与準則案を長い年月にわたつて検討して参りましたが、その結果ようやくにしてその成案を得、去る七月十八日、政府及び国会に対しまして、べース改訂と結びつけて勧告を発したことは、諸君御承知の通りであります。この人事院勧告の態度につきましては、本院における予算通過の直後に故意にその時期をずらした点はきわめて事重大であり、人事院本来の使命を忘却した政府との妥協的行為として、われわれは強くその責任を追求するものであります。(拍手)  しかしながら、この新給与ベース並びにこれと密接不離の関係の上に作成されております給与準則については、公務員生活改善給与体系上の観点よりいたしまして、政府並びに国会において慎重に取扱い、すみやかに公務員の窮迫した生活現状を根本的に改善しなければならないのであります。しかるに、政府は、ベース改訂緊急性を無視して、公務員生活の窮迫をよそに、人事院勧告さえも踏みにじつて顧みないことは、まつたく横暴きわまるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  しかるところ、今回突如として、自由、改進、分自三派共同提案による一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案なるものが提出されたのであります。われわれは、まず、この法律提出時期に関しましてきわめて不当なるものと考えるものであります。すなわち、人事院勧告審議と、これによる政府法律案提出を促進して、このうちにおいて、全官公吏給与体系と関連いたしまして当然審議さるべき時期にありながら、これを無視し、別個教職員のみの級別俸給表をまつたく他の職種と切り離して別個提出した点、また本法案実施期日が明二十九年一月一日となつており、実施までに十分の時日を有しながら、まつたくずさんなる資料の提出によつて、慎重なる討議を経ることもなく、暴力的にその成立が急がれた点より見て、明らかに教員給与是正の美名に隠れて、ためにせんとする政治的謀略であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  かかる不明朗な提出方法からも予想されるごとく、本法案はきわめて重大なる誤謬と不合理を内蔵し、わが国教育の将来にゆゆしき禍根を内蔵しているものであります。すなわち、本法案の骨子ば、ただいま委員長説明通り現行給与法第六条第二項第二号中に、別表第六といたしまして、教育職員級別俸給表を加え、さらにこれを三分して、大学等教育職員級別俸給表高等学校等教育職員級別俸給表中学校小学校等教育職員級別俸給表三本建といたしております。附則第二項において、本俸給表へ切りかえの際に、高等学校においては四級から九級まで、大学においては四級から十級までの者のみを直近上位号俸に切りかえ、一号俸をこれにかぶせんとするものであります。  私は、本法案の持つ矛盾及び不合理を、次の六点より指摘せんとするものであります。  まず、第一点といたしまして、小学校並びに中学校にある同資格者への不合理であります。本法案実施あかつきは、高等学校自体においても適用除外者を生ずるのでありまして、このことは公務員に対する公平の原則を踏みにじつておると思うものであります。さらに、重大なることは、同一学歴同一勤年、同一給与根本原則を抹殺せんとしておることであります。すなわち、現在中学校小学校の中には、新学制実施に伴いまして、高等学校教員とまつたく同一資格者が多数高等学校より転任をして来ておりまして、これら新学制充実のために率先しまして、日本教育のために、中学校小学校教育に挺身したこれらの人々を、職域の差のために差別待遇をするということは、明らかに不当なる処理と言わざるを得ないのであります。(拍手)  第二点といたしましては、教育基本方針への逆行であります。すなわち、小学校中学校高等学校を通じ、教員資格新制大学卒業をもつてする現在の教員養成方針、すなわち教員資格条件を、高等学校までも含め、義務教育課程を高めようとする、文化国家確立の基本的な教育水準向上の方向にこの法案はまつたく逆行して、過表の教育体系に引きもどさんとする、きわめて復古的な法律案であります。  第三点といたしまして、職域差不当性であります。本法案の基礎となつている現行給与法第四条におきましては、「各職員の受ける俸給は、その職務複雑、困難及び責任の度に基き、且つ、勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤務条件を考慮したものでなければならい。」と規定しておるのであります。これらの条件から見ましても、高等学校の学科の複雑さと、幼少の児童を手をとつて教え導く困難と責任とのいずれが大であるかは、判別することができないのであります。個々の条件を総合すれば、教育の本質上も、また実情から見ましても、高低の差は認めるべきでないことは現在の常識であります。人事院においても、この点から、教育職員同一学歴同一勤年、同一給与原則を立てているのであります。しかるに、本法案においては、あえて職域差を無理につけんとする意図は、まさに非常識、不見識もはなはだしいと言わねばなりません。(拍手)  第四点といたしましては、本法案実施されたあかつきにおける具体的影響についてであります。以上のような矛盾、不合理は、特に顕著に、国立学校の中に付属高等学校付属中学校付属小学校付属幼稚園同一職場に包含する教育大学等において、また盲学校聾学校特殊学校等のごとく、各校種を含む学校において、学校種別による差別待遇学校運営上の困難となつて現われることは、火を見るより明らかであります。さらに、地方公立学校においては、現状においてさえ教員確保に困難を感じております中学校において、その教師志望者の減少と、在職同一資格者不満等から、教員確保にますます困難の度を加え、義務教育完遂の重大な障害となることも必至であります。  第五点といたしまして、高校教員給与陥没をこの法案は救つていないのであります。本法案の出発の重大要因は、何といつても、高校教員の中に給与陥没者が多数を占めている点にあつたと思われるのであります。しかるに、この原因は、初任給前歴計算恩給法にあることは明白な事実であつて高校教員給与陥没救済は、学歴差による初任給改訂前歴計算改訂恩給法改正によつて初めて行い得るものであります。これは、小学校中学校高等学校を通じて同一の立場、すなわち同一学歴同一勤年、同一給与原則から解決すべきであり、またこれによつて解決し得るものであります。しかるに、本法案においては、この原因を正しく把握しない結果、校種別差異を無理につけたために、給与の不合理は何ら解決されずそのまま残り、しかもさらに大きな不合理さえも生んでいるのであります。  最後に、この法律附則第五項は、地方財政上の困難を理由に、切りかえ直前の級号を現給より低く押えられ、切りかえを行つても、かえつて給与切下げとなる危険性さえも含んでいるのであります。  以上述べました諸点よりいたしまて、本法案首尾一貫性を欠き、まつたく支離滅裂かつ不完全なものであり、教育上きわめて重大な影響を持つ給与についての法案として、まつたく不備なものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)かかる無謀な法案通過成立によつてわが国義務教育は軽視される結果となり、教育社会の混乱と紛糾を惹起し、全国六十万教職員の不安と、教育政策への不信はもとより、千五百万児童生徒の不幸と全父兄不信を招くことは、まさに国会の権威の失墜とともに、わが国の一大不幸と言うべきであります。  かかる見地に立ちまして、わが党は本法案に対しまして絶対に反対を表明するものであります。(拍手
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 舘林三喜男君。     〔舘林三喜男登壇
  25. 舘林三喜男

    舘林三喜男君 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律、すなわち給与法の一部を改正する法律案に関する委員長報告に対し、私は改進党を代表いたしまして賛成の意を表するものであります。  本法律案は、教育職員について、いわゆる三本建給与体系を新たに打立てんとするものであります。すなわち、給与法において、これまで一般俸給表により教育職員俸給が決定せられていたのを改め、税務職員警察職員などと同じく、新たに別個特別俸給表を設け、これにより教育職員俸給を律せんとするものであり、さらに、この教育職員特別俸給表を、大学高等学校及び中小学校の三表に細分し、おのおのその特色に応じ公正妥当なる俸給を決定せんとする、純然たる三本建給与体系をつくらんとするものであります。  わが国は、終戦後の昭和二十二年四月、従来の学制を根本的に変更する六・三・三制度を採用いたしました。新制度目的とするところは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和をこいねがい求める人間を育て上げることを期するとともに、普遍的にして個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底せしむるにあることは、教育基本法に明示するところであります。かような重要な目的を遂行する責任を帯びている教育職員は、その責任を果すため、実質上勤務時間に限定さるることなく、広く深く知識技能を研鑚し、経験を積み重ね、絶えず子弟、父兄有志等に接する必要があるなど、他の一般公務員と著しく異なる生活環境に置かれているのでありますから、当然他の一般公務員と異なる給与体系を持つことを必要とするのであります。現に、給与法においても、人事院教育職員に対する俸給表適用について研究し、俸給表その他これに関する事項について必要と認める勧告国会及び内閣提出すべきことを命じ、教育職員が他の一般公務員と異なる取扱いがなさるべきことを明かにしているのであります。人事院が、この給与法の命ずるところを受け、人事院細則において、教育職員につき別個級別資格基準表等を定めておりますのは、かかる趣旨によるものではありますが、最近に至るまで、法律上の措置をとる前提たるべき勧告については何らこれを行わなかつたのは、明らかに人事院の怠慢と言わざるを得ないのであります。(拍手人事院が以上の趣旨にのつとる勧告提出いたしましたのは、すでに本年度予算が衆議院を通過いたしました翌日の去る七月十八日でありましたから、この勧告検討実施はさらに他日にまたねばならない実情にあります。  ただいま議題となつております改正法律案は、その間の空白を埋め、もつて教育職員の要望にこたえんとする、まことに適切なる措置であると存ずるのであります。いわゆる六・三・三制度のもとにおける教育系列は、特殊教育及び幼稚園のほかは、教育を受くる者の心身発達の度に応じて、初等普通教育を施す小学校に始まり、中等普通教育及び専門教育を施す高等学校を経て、学術の中心として深く専門の学芸を教授研究することを目的とする大学に至る系列となつています。しこうして、この四つの学校のいずれかに勤務する教育職員は、おのおの教育基本法掲ぐる理想目的とを実現すべき重要なる国家的、社会的使命を持つているのでありまして、その職務に軽重、上下の差別を付することは絶対に許されません。すべてが文字通りいわゆる天職であります。従つて種別を異にする学校勤務することのみのゆえをもつて教育職員俸給差別を設けることは決して妥当でないのであります。しかしながら、これと同時に、種別を異にするそれぞれ、の学校においては、教育を受くる者の心身発達の度に応じて、教育を行う者の職務複雑性困難性において著しい区別の存することもまた否定し得ないところであります。教育を受くる者が、児童生徒、学生と年齢的に段階が進むにつれ、肉体の上からも、精神の点からも、知能の面からも、次第に発達をとげ、これに応じ教科内容学問水準が高くなり、専門化することは当然でありますから、これが訓育啓発に当る教育職員も、それぞれの段階に応じ、より高い教養、より高い識見、より高い能力を必要とするのであります。すなわち、高等学校教育職員中小学校職員よりも、さらに大学教育職員が、高等学校中小学校職員よりも、その職責の遂行途上における複雑性困難性が漸増することは疑いをいれざるところであります。かような学校種別による職務内容相違こそ、教育職員勤労の報酬たる俸給に当然差を付すべき最も重要なる因子であると存ずるのであります。このことは、現行給与法第四条において、俸給職務複雑困難等の度に基き考慮せらるべきことを規定せるところと、まつたく軌を一にするものであります。また、現行教育職員免許法が、学校種別に応じ、免許状の種類、資格要件を詳細に分類区別しておるのも、また同一理由に基くものであります。ただいま議題となつております改正法案が、教育職員のための特別俸給表を、大学高等学校及び中小学校別個の三つの表に細分し、しこうしてその内容につきそれぞれ異なる取扱いをいたしましたのは、まつたく職務複雑性困難性相違に立脚せる、まことに妥当なる措置と言うべきであります。  なお、現在教育職員につき三本建給与体系を採用している事例は、イギリス、アメリカ、フランス、西ドイツ、イタリア等、いわゆる自由主義諸国家はもとよりのこと、いわゆるソ連邦、中華人民共和国、東独、ポーランド等、共産主義諸国にもひとしく認められるところであり、三本建教育職員給与体系として世界に共通せる常識であると言うことができると存ずるのであります。しかも、今日、わが国には、本法律案のごとき三本建反対し、小学より大学に至るすべてを一個の俸給表によつて律せんとする一本建の主張がないではありません。その理論的基礎をなすものは、いわゆる生活給の主張であります。終戦後の混乱のさ中、急激なるインフレーシヨンに悩まされた当時、わが国給与政策が多分にこの生活給理論を取入れたことは、けだし当然のことであり、今日においても、扶養手当、勤務地手当等の諸制度にこの理論の反映を見ることができるのでありますが、給与水準が次第に高まるに伴いまして、職域相違職務内容相違勤労の質と量などを広く参酌することが必要であり、これこそ、より合理的なものと言うべきであります。また、一本建を主張する論者は、一方において単一なる俸給表実施を要求しながら、他方において、学校段階が高まるに伴い、研究費、研修費につきましては差別を設くべしと唱えているのでありますが、かような主張は、職域の異なるに伴い、名目はいかんともあれ、給与に差等を付するの必要性を承認せるものでありまして、一本建の主張を自己否定するものと断ぜざるを得ないのであります。本改正案は、以上のような生活給理論一辺倒に陥らず、最も具体的、合理的なる職務給、職務給の理念に立脚するものでありまして、まつたく実情に即したる改正と称すべきであります。  最後に、いわゆる陥没是正の問題について一言いたします。従来、教育職員学歴、民間経験、兵役等の期間の換算がはなはだしく当を欠いていましたため、同一種別同一職域学校において、旧制大学、新制大学等の学歴を有する者が他に比し低い給与を受け、いわゆる陥没の状態にあることは、まことに遺憾であります。本法律案は、高等学校に関する限り、陥没是正の役目をもあわせて幾分なりとも果しているのでありますが、全般的に見て、いまだ十分なる解決を見ないのであります。よつて政府並びに人事院は、すみやかに是正のための方策を実行し、教育職員相互の間に給与上の不合理なからしむるよう善処されることを望むものであります。  以上申し述べまして、私は、わが改進党の年来の主張であつた三本建の実現を目的とする本法律案を、最も適切なるものとして賛成の意を表する次第であります。
  26. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 受田新吉君。     〔受田新吉登壇
  27. 受田新吉

    受田新吉君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程せられておりまする一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして反対討論を試みようとするものであります。(拍手)  もともと教育基本法によつて設置されましたるところの学校教職員は、民主日本教育を担当するという重責をにない、かつ国民全体の奉仕者としての使命を全うすべき立場にある人々でありまして、その身分の尊重と、その待遇の適正は、文化国家の名において特に力を注がなければならないのであります。(拍手)しかるがゆえに、一般職職員給与に関する法律の第十条にも、特に教育職員の待遇のために特別俸給表を設定して、国会並びに政府に同時に勧告をすることを人事院に命じているのであります。今回、人事院は、多年の研究の結果、七月十八日をもつて国会並びに政府に対してベースアツプ及び給与準則勧告をいたしました。この勧告国会において何ら審議することなく、その道程におきまして、突如として去る二十四日、自由党、改進党及び自由党の三派の方々が、共同提案によりまして、いわゆる教員三本建法案なるこの改正案をお出しになつたのであります。  この改正案内容は、前弁士の申されたところで明らかでありまするように、特に教員俸給表大学高等学校及び中小学校の三段階にわけまして、高等学校において特に新制大学を卒業した後に三年目のところから一号俸添加措置をとるという、いわゆる高等学校中小学校より分離優遇する原案なのでございます。この法案は、真摯に提案者提案理由を開くときに、従来高等学校教員は著しく待遇が陥没しておつた、これを救済する責任があるというお言葉もあつたのであります。私も、高等学校教職員が、その大多数が長いこと給与の切りかえ等における不備から冷遇されていた現実をはつきり認めます。ことに、昭和二十三年の給与切りかえにあたりまして、生活給を基幹とする切りかえにより、前歴計算学歴差による初任給の設定等、並びに恩給法の加算率等において、著しく民間経歴等の多い高等教職員及び学歴の高い高等教職員が冷遇の悲運に際会したことは、これは認めるのであります。ところが、昭和二十五年の末に至りまして、政府は、学校教職員の級別格付基準を設定いたしまして、前歴計算その他に特に優遇する措置を命じまして、学校教職員の不均衡是正の第一歩を踏み出しましたけれども、この級別推定表によるといえども前歴計算がわずかに五割とされていた結果、いまだ完全救済の域に達しなかつたのであります。現に、高等教職員の約七割の人々は、多くは民間経歴者であり、軍隊経験者である、あるいは最高学府を出た人々が九〇%を越える等において、この待遇陥没の実態をわれらは明らかに認めます。ところが、高校教職員のみならず、中学校にも、また一部小学校にも、この学歴差前歴計算において、恩給法の取扱いを受けることにおいて、これらの人々はこれまた相当数に上るのでありまして、これらを含んで高校教員の七〇%を中心とする教職員の待遇改善、陥没是正という問題につきましては、強力に政府に要請し、人事院にも人事院細則の設定を要求して参つたのであります。しかるに、政府は、荏苒今日までこれに対する何らの措置を講せす、著しく高校教員を中心とする陥没を促進する形において今日に参つたのであります。  われわれは、この高校教員を中心とする待遇の陥没について、救済案といたしまして、新制大学を卒業したる者を基準としたるものは、よし高校または中小学校に勤めようと、同一学歴同一勤務年数を持つ限り、待遇は同一であるという基本線を守り、同時に、学歴差を実勤務年数の一“五倍、前歴計算を八割に計算をいたしまして、恩給法改正により、恩給法上の加算率高校三百分の一、中小校百五十分の一の是正をはからんと試みたのであります。ところが、この重大な陥没是正を何ら措置することなくして、陥没が現実に大きな開きを持つたままで、保守三派の方々は、ここに高等学校教職員に関してのみ一号の添加措置という法案を出したのであります。これでは、陥没は絶対に救われておりません。陥没差があるままで一号差を添加するということになつた結果であります。  皆さん、この法案をお出しになつた保守三派の方々に一言申し上げたいのは、文部省は、従来教職員給与は高校、中小校を通じて一本であるべきという基本線をとり、これを守つて参り、人事院もその線に沿つて文部省との協議書を作成しておるのであります。しかるに、最近、ことに昨年の秋ごろから、自由党の方々の圧力があつたかどうかは知らないけれども、突如として三本建案なるものが提出されまして、ここに、政府提出でなく、議員提出の形でこの法案が出されたということに、われわれは疑念をはさまざるを得ないのであります。皆さん、人事院勧告給与準則によるならば、教職員俸給表を三本にしておりますけれども、実質的には、同一学歴同一勤務年数の者に対しては同一待遇の原則が確立されております。この確立されている人事院勧告案を無視して——高校職員に対しての一号添加措置人事院勧告を無視するものであり、人事院の権威を失墜するものであるとして、私たちは提案者の皆様に一言なかるべからざるものがあるのであります。(拍手)  ことに、皆様方になまなましい記憶があると思いまするが、かかる謀略的な法案は、とかくその終末が悲劇に終ることは歴史の示すところであります。昨年教育委員会の設置を市町村に強行せしめた現実はいかなる事態でありましようか。今や、全国教育署員会協議会はあげてこの三本建法案に猛反対をし、昨月国会並びに政府に対して三本建絶対反対の決議文を押しつけておるのでありませんか。教員給与を実質的に実行する、地方公務員てあるところの地方教員に対する給与条例を出す都道府県の教育委員会が、国の法律の命令であるにかかわらず、これに準ずべき地方都道府県の教育委員会がこの法の施行をしなかつたらどういたしますか。都道府県教育委員会は、あげて三本建反対し、高校、中小校の一本化を強力に要請し、ことにこの法案実施するならば、高校職員のみ優遇されて、中小校等の交流人事に支障を来し、あるいは盲聾、養護学校等の特殊学校における高等部、中等部及び小学部の教員配置の上に、学校運営の上に異常な支障が起ると言い、また国立学校大学の付属高校、中校、小校の職員配置の上に同一資格を持つ人々が待遇差を受けるという事態が起るということに対して、徹底的に反対を続けておるでありませんか。(拍手)  皆様、われわれは、さらにこの機会において御注意申し上げたいことは、今回のこの法案提出に伴う予算措置であります。自由党、改進党は、その修正予算案において五十億の平衡交付金の増加を規定し、その中に三億六千万円の高校三本建給与費というものを計上されております。ところが、委員会においてこの予算内容質問したところ、参議院予算委員会においても同様でありますが、提案の方々は、その説明をされる方々によつて、あるいはこの三億六千万円は陥没を是正するものであつて、高校のみならず中校の該当者もこれを救うのであると言い、あるいは、これは今度の法律に基く一号添加措置によるところの昇級措置に要する費用の二億二千万円であると言い、人々によつてその考えが違い、たま聞くところによれば、改進党は、当初人事院勧告の線であると思うたが、そしてそれによつて陥没を救うために三億六千万円を出したのであると思うたが、高校教員だけ別途上にさせるという差別待遇法案であるとは知らなかつたという声さえも聞いております。(拍手)こういうふうにして、三億六千万円の予算内容においても、提案者の解釈はまちまちであり、その算定基礎がどこに置かれておるか、何ら信念を持たざるような、かかる法案を、国会終末を控えて突如として提案し、強引に通過をはかろうとするこの謀略に対しては、われわれは断じて承服できないのであります。(拍手)  願わくは、提案三党の各位は、高校教員を中心とするあの大きな陥没を救うための徹底的な法制化、徹底的な予算化をはかつて教職員がその職に安んじて祖国日本教育再建をはかることができるように、もつと高い角度から、この法案の撤回をなさることを要求し、新しい立場における陥没是正の法案提出されることを要求いたしまして、反対討論を終る次第であります。(拍手
  28. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 山口好一君。     〔山口好一君登壇
  29. 山口好一

    ○山口好一君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつております一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対し、賛成の意を表明するものでございます。以下、その理由を申し上げます。  賛成理由の第一点は、本案教育職員に対しての全面的な優遇の道を講じておることであります。教育の重要性についてはいまさらに喋々を要しないところであり、従つてまた、教職員諸君に対する待遇の改善も、その職務特殊性にかんがみ、すみやかにこれを実現せねばならないのであります。この意味において、文部省は、さきに昭和二十五年九月、教育職員の特殊的地位を考慮いたし、一般公務員に比して優遇せらるべき理由を明らかにするとともに、その実現方を要望したのでありまして、その要望は、人事院において、逐次人事院細則にも取上げて参つたのでありますが、いまだ十分なものではなかつたのであります。しかるに、今日のこの法案におき雷しては、大学教職員について四級より十級まで、すなわち現行の七級から十三級までのものは、この法案による切りかえと同時に、全面的に一号俸だけ高くなるのであります。特に大学院が設置せられておる大学の教授の待遇は、従来よりも三号俸だけ号俸の幅が伸びまして、現在のベースにおいて最高五万一千二百円の待遇を受けることになるのであります。また、高等学校等の教育職員については、校長の待遇が、従来九級、すなわち現行の十二級どまりでありましたものが、本法案によりまして十一級の四号、すなわち現行の十四級という、現行ベースにおいて四万三千三百円の待遇を受けることになるのであります。また四級から九級、すなわち現行の六級より十二級までの大部分の教職員の方は、この法案による切りかえと同時に、それぞれ一律に従来よりも一号俸だけ高い待遇を受けることになるのであります。次に、中小学校等教育職員についても、校長の待遇は、従来九級、すなわち現行の十二級にとどまつておつたのでありますが、本法案においては、十級、すなわち現行の十三級まで伸びておりまして、教諭号俸の幅も従来よりも三号有利に伸張せられたのであります。これすなわり、本法案教職員のために全面的に優遇の道を講じておるというゆえんでございます。  さらに、本法案賛成する第二の点は、従来高等学校等の教育職員給与は、あの二千九百円ベース切りかえ当時の特殊なる理由から、中小学校等職員給与に比して著しく不利となつておつたのでありますが、それが、本法案においては、十分とは言えないまでも、明らかに是正されておることであります。従来、高等学校職員は、その学歴等において、中小学校等職員のそれに比して、むしろ同等以上であるにもかかわらず、同一年齢の給うについてこれを見ますれば、前者の給与がかえつて後者の給与よりも平均的に劣つておるのでありまして、この事実は、給与公平の原則から見ましても、社会通念から申しましても、はなはだ不合理かつ不当なことと申さなければならないのであります。しかるに、現行給与法学校種別によつてなつた待遇を許さず、同一学歴においては、その初任給も、昇給、昇格の速度も同一であります結果、二千九百円ベース当時の切りかえ処置の粗漏に端を発したこの高等学校職員給与陥没は、このままに過すならば永久に是正することができなかつたのであります。今回の人事院勧告によるところの給与準則によりましても、現行給与法の待遇原則を変更しない限り、これが是正を行うことはきわめて困難のことと確信いたします。しかるに、本法案におきましては、四級から九級までの職員を一号俸だけ高めるというこの処置によりまして、この矛盾を是正し、永年の懸案解決に一歩を進めたのでありまして、まことに妥当の処置と言わねばなりません。これ、われわれが全幅の賛意を表するゆえんであります。  次に、本案賛成する理由の第三点は、本案が、教育職員勤務特殊性にかんがみまして、いわゆる三本建特別俸給表を設定したことであります。そもそも、現行給与法第十条第三項におきましては、教育職員及びその他特別の勤務に従事する職員給与に関し、人事院は、特にこれを研究し、その結論を国会及び内閣勧告しなければならぬ旨を規定しておりますが、このことは、教育職員勤務の態様がきわめて特殊的であつて、これに一般公務員同様に一般俸給表適用する現行制度にかなりの無理のあることを物語つておるのであります。しかるに、人事院は、その無理を無理と知りつつ、この規定の制定後すでに数年を経過いたしましたにかかわらず、何ら教育職員のための特別俸給表の処置を講ずることがなかつたのであります。本法案は、この点にも留意いたし、これが改正に着手して、従来の一般俸給表適用の不当なる処置を廃し、ここに三本建教育職員特別俸給表を制定したのであります。しかしながら、社会党の諸君の言われるごとく、この点に関しては反対論があります。あるいは教育の本質論から申して、教育に種類、差等がないということを論拠にいたしまして、この三本建反対をするのでありますけれども、教育の本質と教育に従事する者に対する待遇制度とは、厳にこれを区別しなければならないと存ずるのであります。このことは、すでに学校職員の免許法が学校の種類によりまして教員資格要件に差等を付しておることによりましても明らかであると思うのであります。従いまして、学校の種類に応じて三本建にしましたことは、現実に即応し、給与応能の原則にかなう、まことに時宜に適したものと言わなければなりません。もとより、この法案も十全完備のものとは申しませんが、従来、一般俸給表適用を不当と知りつつ、しかも高専学校職員の数年来の不利不遇を認識しながら、何らこれに対して適切なる処置を講ずることなく、在荷白に送つていたのに比しまして、はるかにまさるものと確信する次第であります。ゆえに、本法案反対する者は、いまだ真に今日の教育職員の立場を理解せず、いたずらに教育の本質論にのみとらわれて、現実の状態を見ざる、反対のための反対と申さねばなりません。  私は、以上三点の理由をあげ、本案に賛意を表するものでありますが、なお最後に、特殊学校職員などはその免許料が高等学校中小学校などの区別なく一本となつておる実情にかんがみまして、この法律適用に際しては、これを有利に取扱い、高等学校等の俸給表適用するように希望意見を付しまして、私の賛成討論を終る次第であります。(拍手
  30. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成起立
  31. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  32. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件を議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  33. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。委員長報告を求めます。外務委員長上塚司君。     〔上塚司君登壇
  35. 上塚司

    ○上塚司君 ただいま議題となりました、日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件について、外務委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  本条約は、去る七月四日から三十日に至る前後八回にわたり外務委員会を開き、さらに外務・大蔵・通商産業連合審査会を附き、慎重に鼎談を重ねました。  政府当局の説明によりますれば、日米両国間の通商航海関係は、明治四十四年に締結された旧日米通商航海条約が昭和十五年一月に失効いたしまして以来、十二年間無条約の状態にありましたが、サンフランシスコ平和条約の発効後は、同条約第十二条の規定によつて律せられております。しかしながら、この規定は、暫定的な性質のものであるばかりでなく、わが国にとつて十分な待遇保障を規定しているとは申されません。従つて政府は、まずアメリカとの間に、平等互恵の立場に立ち、かつ包括的な待遇保障を含む新条約を締結するため、一昨年末から在京アメリカ政府代表との間で非公式な折衝を始めました。元来、この日米友好通商条約は、わが国が戦後初めて締結する通商条約であり、将来各国との問に締結せらるべき条約の模範となるばかりでなく、その性質上両国民のほとんどすべての接触部面を規律するものであり、ことに戦後の新しい型の通商航海条約は、相互の国民、会社等が相手国内で戦前に比して一層安定した保障のもとに各般の活動を行うことができるように、詳細な技術的事項を規定する傾向を示しておりますので、慎重を期して交渉を進めましたところ、ようやく本年二月下旬に至り、わが国の主張を十分に取入れた条約案の妥結を見るに至りましたので、四月二日に外務大臣と駐日アメリカ大使との間に署名調印せられたものであります。白米両国間の通商航海関係は、この条約によつて初めて安定した基礎の上に置かれることとなり、両国間の友好関係並びに両国民の間の一層緊密なる経済的及び文化的関係を促進するところが大きいものと認められるとのことでありました。  なお、政府側の報告によりますれば、米国上院はすでにこの条約の承認を了した趣であり、その際、米国政府は、この条約八条第二項に掲げられた自由職業の中で、米国各州の法律により米国人に対してのみ許可しているものについては、これを引続き米国人のみに許すことを可能ならしめたき旨の附帯決議を行つた由であります。ついては、米国政府が、この条約の批准に際し、右附帯決議の趣旨に沿う留保を付すべき意向を正式に申出で来つた場合は、わが方においてもこれに対応する留保の措置をとり、もつて日米両国間にこの点に関する不均衡の発生する余地のないようにする所存であるとの政府の意向を裏切されました。  この条約は、本文二十五条並びに条約の不可分の一部をなす十五項目の議定書等からなつているもので、その内容の詳細については委員会会議録に譲ることといたしまして、そのうち最も注目すべき諸点をあげますれば、第一、入国、居住及び滞在の条件規定し、いわゆる条約商人及び条約投資家の入国滞在を保障しておること。第二、社会保障制度に関する内国民待遇を規定しておること。この規定は旧条約になかつた新しい規定であります。第三、営利活動に関する内国民待遇の原則規定していること。但し、通貨準備の保護のために必要な制限を行い得る例外規定が設けられ、また発行済みの株式の取得については、わが国の経済の現状に即応し、条約発効後三箇年の暫定的な例外的な規定が設けられました。第四、公益事業を行う企業もしくは造船、運送、眼行業務もしくは土地その他の天然資源の開発を行う企業は、営利活動に関する内国民待遇から除外しておること。但し、これら制限業極についても、その制限実施の際、既得のものについてはそれを既得権として認めること。第五、為替管理に関する規定を設け、対外送金に関する内国民待遇及び最恵国待遇の原則を掲げ、為替管理を行い得るのは通貨準備の合理的水準を維持するために必要な場合に限る旨を規定していること。第六、関税事項に関する最恵国待遇を定め、かつ輸出入の禁止、制限について、その無差別適用を保障したこと。第七、船舶海運及び航海に関する基本的な待遇保障を定め、両締約国の領域間の通商及び航海の自由の原則を掲げたこと。第八、この条約の実施に関する事項について、一方の申入れあらば、両国間に協議の余地を与えられおること。第九、この条約の有効期間を十箇年としたこと等であります。  続いて、委員と外務大臣及び政府委員との間に最も活発なる質疑応答が行われ、さらに、有力経済団体の代表者並びに学識者九名を参考人として招致し、忌憚なき意見の聴取を行いましたが、これらの詳細につきましては委員会議録によつて御承知願います。  かくて、質疑を終了し、討論に入り、日本社会党左派を代表して穗積七郎君、日本社会党右派を代表して中村高一君、並びに小会派の諸君の同意を得て共産党川上貫一君から、それぞれ反対の意向が表明され、自由党を代表して佐々木盛雄君、改進党を代表して喜多壯一郎君、並びに自由党分党派を代表して池田正之輔君から、それぞれ賛成の意向が述べられ、続いて採決の結果、多数をもつて本案件に承認を与うべきものと議決いたされました。  右御報告いたします。(拍手
  36. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより討論に入ります。帆足計君。     〔帆足計君登壇
  37. 帆足計

    ○帆足計君 私は、ここに、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました日米通商航海条約に対し、日本経済の自主自立の観点と国家百年の大計より考えまして、これが承認に反対の意を表明するものでございます。(拍手)  反対の第一の理由といたしましては、本条約の調印に至る経過が不明朗にして、かつ民主的でないということでございます。政府の本条約についての最終審議とその調印は、今春四月二日のことでありまして、時あたかも国会は解散され、いわば選挙管理内閣のもとに行われたのでございます。しかも、当時政情は当然与党に不利であり、祖国の自主的独立への自覚は油然として高まりつつあつたのでございます。かかる情勢を前にいたしまして、日米両国の保守政府は、日本国民の輿論の圧力と盛り上る政治的自覚を恐れ、おそらく、なれ合い協議のもとに急遽調印の運びに至つたものと推察されるのであります。(拍手)かくのごときは、吉田内閣のアメリカ追随一辺倒秘密外交の一端を示すものでありまして、外交は常に国民の前に公にされ、国民大衆の輿論の上に立たねばならぬと信ずるわが党としては、断固として排撃するものでございます。(拍手)  第二に、今日、祖国日本は世界の大いなる潮流の中に立たされております。その中において、自主自立の道を進みますることは、非常なる国民の自覚と結束を必要とすべき課題でありまするけれども、今日、日本に対するアメリカ政府並びに外国資本の圧力が駸々乎として浸透し、また講和条約、安保協定、無数の軍事基地、MSA協定等々と相まつて、国をあげて外国の隷属下に置かれんとしつつあるこの国際情勢を背景といたしまして、日本産業がその独立と自主性を確保いたしまするためには、細心の配慮と、慎重なる、厳重なる警戒を必要とすることは言をまたぬところと思うのでございます。特に本条約が、アメリカの従属国ともいうべき——アメリカ・コロンビア条約に範をとつて締結されたということにつきましては、特にその感を深くせざるを得ないのでございます。(拍手)  第三には、政府は、今日の世界経済の運行を国際自由競争の尊重の原則のもとに考慮したと申しておるのでありまするけれども、申すまでもなく、われわれは、今日敗戦のあとを受けまして弱体化せる日本経済とアメリカの厖大なる経済力との開きという客観的現実の問題を無視することはできないのでございます。言うところの国際経済上の自由とは、病人と健康者、おとなと子供とを同一条件のもとに競争せしめることであつてはならないのでありまして、今日、日米経済協力という課題をいとも安易に口にする紳士諸君の方がおられるようでありまするけれども、鉄鍋産業一つを例にとつてみましても、彼は年産一億二千万トン、われは年産わずかに四百八十万トン、あたかもマンモスとしやもの取組みのごとき奇妙なる風体でありまして、しかも、その日本の鉄鋼産業の原料を遠く万里のかなた、ニユーヨークのかなたから運ばれているというがごとき盾矛せる日本経済の今日の構造が、はたして自由の原則に基いたものであり、健全なるものであると言い得るでございましようか。アメリカ政府が、もし自由なる国際経済の原則を認めることをあえて強調せられるとするならば、むしろ、かくのごとき不自然なる形態を是正し、日本経済の健全なる発展のために、中国市場並びに東南アジア市場における進路を一段と拡大し、かつ、自由なる世界通商をわが国にさらに広く認むべきことを要求すべきものではないでありましようか。(拍手)  第四に、政府はアメリカより外資を導入するために、本条約において、極力資本の自由なる導入の道を開いたと申すのでありまするが、われわれは、あらゆる形の資本導入を無条件に歓迎するものではありません。われわれの必要とするところの資本は、日本経済の健全なる再建と、国民生活の福祉の向上に寄与すべき建設的資本を要望するのであり、日本経済の自立に必要なるところの資材、原料、技術、特殊機械等の輸入を望むものでございます。不健全な、または支配的な、または悪質な外資の侵入並びにその導入につきましては、その国内支配の跳梁跋扈に対しては、あくまでも断固としてこれを排撃せねばならぬと思うのでございます。(拍手)  以上、各般の観点に立ちまして、今次の日米通商航海条約をしさいに検討いたしまするときに、今日、日米両国の置かれたる政治的、経済的または軍事戦略的諸条件よりこれを見ますると、本条約は、本質的に、わが国民経済の自立にとりて憂慮すべき多くの難点を内包し、かかる危惧に対しては、広く、国民大衆の輿論の声はもとより、労働界、産業経済界の内部よりも、すでに幾多の批判と警告が発せられておりますることは、新聞、雑誌その他において同僚各位の御承知のところであろうと思うのでございます。なかんずく、今次の通商航海条約を機として、不良外資の国内跳梁の端は公然と開かれ、さらに、外資の生みし円資金は、少数の制限業種を除きまして、あるいは鉄鋼業に、あるいは機械工業に、あるいは証券業に、あるいはホテル業に、あるいは不動産売買業を初め各種の民間企業にこれが浸透し、ほしいままに株式を取得し、不当に企業を支配し、あるいは投機におもむく等の憂いを禁ずることはできないのでございます。また、この問題につきましては、三箇年間の株式取得についての猶予期間がありまするけれども、われわれは三箇年の猶予期間をもつて安んずることはできないのでございます。あるいはまた、外国銀行等に対しましては、占領下の既得権益の承認をしいられ、あるいはまた、日本国内においては、公共利益のために国民の財産権には制限があり、また軍事基地等のためには、しばしば不当なる収奪さえ行われておるにもかかわらず、ひとりアメリカ人所有の資産に対しては、過度の保護規定が挿入されている等々の不合理は、至るところに見られるのでありまして、とうていわれらの容認し得ざるところを含むものでございます。  かくのごとき諸条件のもとにおきまして、あるいはまた日本資本がアメリカ資本と合作し、あるいはそのとらの威をかり、あるいはまた外国資本の名目をかりて、不当なる暴威をふるうおそれなしとしないと、諸君よ、断言し得るものでありましようか。世上、資本は常に臆病であり、しかるがゆえに、資本に対しては礼をもつてこれを遇せねばならないと称されるのでありますけれども、それは資本の一面の性格を物語るにすぎず、資本の本質そのものは、臆病どころか、きわめて狡猾にして獰猛なる性格を持つものであることは、すでに各位も十分御承知であろうと思うのであります。(拍手)従いまして、外国より導入されましたところの外資の暴威に対しては、日本民族産業の自立自由を守るために、厳に公正合理の観点よりこれを規正し、その害毒を防止すべき準備を用意することが、独立国民としての当然の措置と思うのでございます。  以上申し述べましたところによりまして、本条約に対するわが党の反対の要件は以上の到記に尽きるのみでなく、今日国際的にも国内的にも、自由とは自由党の諸君の言われるごとき弱肉強食の自由を意味すべきものであつてはならないのであります。今日、自由とは、万人が、そしてあらゆる国々が、相互にその固有の権利たる自主独立の権能を尊重し、経済的には自存自立の権利を侵されることなく、平和と自由を相ともに楽しむこと、これこそが二十世紀における自由の真義であるとわが党は思うのでございます。(拍手)  諸君よ、蒸気機関と内燃機の発達に触発されたところの十八、九世紀においては、人類は世界の存在と個性の尊厳を発見いたしました。しかしながら、二十世紀においえば、われわれは、原子科学と超音航空機の時代に到達し、今や個人とともに社会の福祉を、国家とともに平和並びに国際的正義の原則を発見するに至つたのであります。(拍手)もとより、われらは、今日偏狭なるナシヨナリズムの立場に立つものではございません。しかしながら、同時に、現在の国際主義とは、民族の独立と自尊心と、その経済的自主自立の精神を無視したものであつてはならないのでございます。(拍手諸君よ、われらは、ソ連であれ、アメリカであれ、いずれの国の隷属下につくことにも甘んずるものでなく、独立自主自尊こそは、敗戦日本国民のよつてつて立つべき気概でなくてはならぬことを諸君に言いたいのであります。  諸君よ、日本社会党は、かくのごとき見地に立つて、断固としてかくのごとき買弁的なる日米通商航海条約の承認に反対し、あわせて今後その運用面におきまして、日本国民の政治的自覚と国民運動の圧力によりまして、本条約の不当なる実施を粉砕し、広くこれを国民各位に訴えますために、ここに本法案反対趣旨を弁明し、われらの意のあるところを開陳した次第でございます。(拍手)以上をもつて、われらの反対趣旨といたす次第でございます。(拍手
  38. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 佐々木盛雄君。     〔佐々木盛雄君登壇
  39. 佐々木盛雄

    ○佐々木盛雄君 ただいま議題となりました日米友好通商航海条約の批准について承認を与える件に対しまして、私は、自由党を代表いたしまして、承認を与えることに賛成の意思表示を行わんとするものであります。  日米両国間の通商関係は、日米戦争発生の直前、すなわち昭和十五年一月に廃棄されましてから今日まで、実に十三年間の久しきにわたつて無条約の状態に置かれていたのであります。ただ、平和条約の効力発生後におきましては、同条約第十二条の規定によりまして、連合国が日本に対して内国民待遇または最恵国待遇を与えるならば、日本もまた当該連合国に対してその限度の内国民待遇または最恵国待遇を与える義務を負つているのであります。しかしながら、日本といたしましては、連合国に対して何ら積極的な待遇保障を要求し縛る権利を持たず、また日本人の渡航、滞在、居住等についても何らの保障も与えられていなかつたのであります。  しかるところ、今回締結されました日米友好通商航海条約は、日米両国が完全なる平等互恵の立場に立ち、日米相互の国民が、戦前に比しはるかに安定した保障のもとにおいて、経済的、文化的その他各般の活動を自由に行うことができるようにとりきめられたものでありまして、一年有半に及ぶ外交交渉が遂に結実して、ここに本条約の締結を見るに至りましたことは、日米経済関係の緊密化と両国友好親善関係の増進に寄与するところきわめて甚大なるものがあるのでありまして、まことに同慶にたえない次第であります。  そもそも、日本の当面せる焦眉の問題は、内においては経済自立の基盤を強化するとともに、外に対しては列国との通商経済関係を緊密化し、もつて国民生活の安定と向上をはかることにあることは、いまさら申し上げるまでもないところであります。しこうして、これがためには、可能なる限りの外資の導入により、日本産業の近代化と設備の合理化を断行し、もつて海外輸出品の国際競争力を高め、貿易の伸展をはかることが刻下の急務であると言わなければなりません。これがために、本条約におきましては、日本産業の発達に寄与する優良なる外資の導入に対しては十分なる保護と保障を与えているのであります。  しかしながら、一方、日本経済の健全なる発達にいささかにても悪影響をもたらすおそれのある不必要なる外資に対しましては、極力その流入を制限することにいたしているのであります。すなわち、日本にとつて好ましき外資の導入については十分なる保護を与えるとともに、他方、好ましからざる外資に対しましては種々なる制限規定を設けているのでありまして、決して一部反対論者の宣伝するごとく、外資活動を一方的に放任することによつて日本経済を外国資本の支配下に置くがごとき不安は、本条約のどこにも発見し得られないのであります。  さらにまた、その事業活動の分野におきましても、外国人の支配を受けることが好ましくない事業、たとえば公益事業、運送業、銀行業並びに天然資源開発事業等につきましては、われわれは、外国人の参加を禁止し、または制限できることになつておるのであります。また、株式の取得につきましては、今日の弱体なる日本の経済力が十分回復するまでは、外国人による好ましからざる支配を受けることがないようにするために、本条約の効力発生後向う三年間は、外国人による旧株の取得を制限することができることになつているのであります。  かくのごとく、対内的な面におきましては、日本の経済自立の基盤強化に必要な保障とその予防措置を十分講じているとともに、対外的な面におきましては、本条約は、米国内における日本人に対する待遇保障を数多く設定いたしておるのであります。  すなわち、その第一は、日本商社の米国内における活動の前提となる日本人の入国並びに滞在についての保障であります。アメリカにおきましては昨年宋新移民法が制定せられまして、アメリカと通商条約を締結した相手国の国民に対しましては、その入国を条約上保障するとともに、無期限の滞在を認めておるのであります。従いまして、本条約発効のあかつきにおきましては、従来無条約の国民として日本人が受けておりました不利なる取扱いは一切取除かれ、日本人の米国への入国、滞在及び活動等の自由が完全に保障されることに相なるわけであります。さらにまた、この入国、滞在の保障と相まつて日本商社の米国内における支店の活動及び現地法人設立による企業の経営が保障されるとともに、出訴権、課税の取扱い、財産の取得、処分及び保護並びに社会保障の適用等につきましても、アメリカ人と同様の内国民待遇が保障されておることは申すまでもありません。今日わが国の対外貿易や通商関係における最大の障害は、無条約のために日本商社や銀行等の海外駐在員の渡航、特に現地駐在が居住者としての安定した資格を得られず、ために子会社の運営に支障を来しておりますることや、あるいは本格的な支店、出張所の設置ができないために、業務上非常な困難を感じておること等でありまするが、本条約の締結によつて日本人のアメリカ進出の前面に横たわつておりました巨大なる障壁が完全に解消するに至りましたことは、まことに喜ばしき限りと言わなければなりません。(拍手)  さらに、第二に、特に強調すべき重要なる待遇保障といたしましては、日本は、目下関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガツトヘの加入手続を促進いたしておりますることは、諸君御承知の通りでありまするが、本条約におきましては、日本がガツトへの加入を承認される以前におきましても、アメリカ政府は、日本の輸出入品に対してはガツトの関税率を適用する用意がある旨を明らかにいたしておるのでありまして、これは日米両国の緊密なる友好関係の反映といたしまして、本条約のもたらす最も大きな利点の一つであると確信をいたすわけであります。また、関税率以外の通商貿易関係におきましても、為替問題につきましては、国際通貨基金の加盟国として、同基金の規約の趣旨を尊重しつつ、わが国経済の必要に即した管理、制限を行うことが認められており、また輸出入品の制限、取締りに関しましては、実質的にガツト加盟国間で現に行われておりまする規制に準じて、日本の経済事情に即した統制管理を行うことができることになつておるわけであります。  以上は本条約が持つ利点を簡単に指摘いたしたにすぎないのでありますが、このほかに、本条約は、海運その他通商上の基本的な事項に関する待遇を相互に保障することにより、日米国交の恒久的基礎を築くとともに、日本独立後において初めて締結を見ました日米間の本条約が動機となりまして、現に交渉進行中のイタリア、カナダ、スペインとの友好通商航海条約を初め、イギリス、インド、パキスタン、東南アジア諸国等との条約締結の促進に画期的な拍車を加えるものと、かたく信ずるものであります。  ただ、この際特に一点つけ加えておきたいことがあります。伝え聞くところによりますれば、米国政府は、本条約を批准するに際しまして、条約第八条第二項に掲げられました自由職業中、アメリカの各州においてアメリカ人に対してのみ就業を許可しているものにつきましては、これを条約発効後も引続きアメリカ人のみに許すことを可能ならしめるための留保をなす意向を有するやの趣でありますが、もしアメリカ政府よりそのような留保を行う意向を正式に申し出て参りました場合におきましては、わが政府におきましても、これに対応して、相互的の措置をとる権利をわが国のために留保する手続をとられるよう、強く政府に要望いたしておく次第であります。  以上申し述べました通り、本条約はあくまでも日米平等互恵の相互主義の鉄則の上に組み立てられたものでありまして、もしかりに、本条約の締結によつて日本がアメリカの経済的隷属下に置かれるとの理由から本条約に反対する者ありといたしますならば、それらの人々こそ、日米対等の立場において日本経済の自立を達成せんとする民族的自主性を失つた他力本願的劣等感の上に立つものと言わなければなりません。(拍手)また、本条約は、現在進行中のMSA協定とは、法律的にもまた実際的にも何らの関連性なきものでありまして、われわれは、かくのごとき牽強附会の反対論が、意識的にあるいは無意識的に、一部の、ためにせんとする反米運動の陰謀に根ざすものである点をここに特に強く指摘いたしまして、議員各位の良識に訴え、本条約の批准にすみやかなる承認を与えられんことを希望いたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手
  40. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 戸叶里子君。     〔戸叶里子君登壇
  41. 戸叶里子

    ○戸叶里子君 私は、ただいま上程されました日米友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件について、日本社会党を代表して反対するものであります。(拍手)以下、その理由を述べるものであります。  政府の言うところによれば、この条約は、日本とアメリカとが対等の地位において通商航海を促進するために、広汎な内国民待遇及び最恵国待遇を規定していると言われ、これこそ日本にとつて最も望ましい条約であることを、幾たびか委員会において述べております。なるほど、この条約そのものを読むならば、一、二の欠陥はあつても、全般として見て、条約上技術的に一応納得の行くようにはできております。しかし、私どもがここに注意しなくてはならないことは、条約そのものをとつて見るだけでなく、今日の国際情勢とにらみ合せ、かつ日本の現在の立場をよく見詰めた上で、なおかつこの条約が真に日本にとつて将来に悔いなきものであるかどうかを十分検討してみなくてはなりません。(拍手)すなわち、形式にのみとらわれず、実質的な面から見て、はたして日本経済に寄与し得るものであるかどうかを確かめる必要があります。(拍手)  この観点に立つて考えてみたときに、この条約ば、アメリカの自由企業、自由経済の政策を推し進めんとする意図が含まれていることは看過できないことであります。従つて政府の言うように、この条約が戦後日本において最初の通商航海条約であり、この内容をモデルとして、今後他の諸国とも一日も早く通商航海条約を締結したいとの意図を述べられても、他の国々との間に、日米間の今回の条約と同じ内容を持つたものが締結されるということは、とうてい望めないことであります。(拍手)すなわち、米国の経済と日本の経済を同じ考えで律することは、原則論だけでは律し得られないことは御承知の通りであります。この巨大資本を持つ米国に対すると同じ内容を持つた条約を、日本が東南アジア諸国と結ぶことができるというように考え得る政府の安易な考え方に対して、一体正気のさたであろうかと驚きの眼をみはるのは、私ばかりではないでありましよう。(拍手)私どもは、むしろ、日本に最も関係の深い、そしてまた国内事情も米国より似通つている東南アジアとの通商航海条約の締結を優先的にやらない政府の怠慢を遺憾とするものであります。(拍手)  さて、この条約の中で問題となる点のおもなものをあげてみるならば、まだ安定していない弱体日本経済に最も影響のある外資導入の問題であります。私どもは決して外資の導入そのものに反対するものではありません。しかし、これを受入れるにあたつての態勢を整えることが大切でありまして、外資導入によつて一部の人々の利益のみ擁護せられるようなことなく、あくまでも国民大衆のよりよき生活を意図したものでなくてはなりません。(拍手)ところが、今回の条約によつて、外資導入により日本の企業が多分にアメリカによつて将来掌握されることなしと、確信をもつて断言できるところが見られない点であります。すなわち、ガス、電気及び水道等の公益事業、通信事業、運送事業等の公共企業に属するものには、当該企業を営むことができる限度を定める権利を留保するとなつておりますが、これをはつきり規制するような国内法がまだできてないという手抜かりがあり、また、このような制限企業外の企業の中にも、当然制限企業の中に加えられるべきと思われるような鉄鋼業、武器製造業、石油業、鉱山業が自由企業になつているという危険が残されているのであります。(拍手)しかも、これらの自由企業に投資した場合に、その株券の取得にあたつては、旧株さえも三年後には自由になるというのであつて、この三年と規定したところにいかなる根拠があるか、了解に苦しむものであります。(拍手)仄聞するところによると、この点に関して、大蔵省と外務省との間に容易に意見の一致を見ることができなかつたと伝えられているもの、無理からぬことだと思うのであります。政府は、一体、この三年間に日本経済も十分に安定し、資産の再評価もできるという確固たる信念を持たれておるのであるかどうか、まことに疑わしいものがあると思うのであります。(拍手)もちろん、問題の起きた場合には、二十四条によつて、各締約国は「好意的考慮を払い、且つ、その申入れに関する協議のため適当な機会を与えなければならない。」と書いてありますが、今のようなアメリカに対して軟弱な日本政府のもとに、どうして日本の主張を十分に述べられるものを期待できるでありましようか。(拍手)  次に、問題になるのは、御承知のように、アメリカには幾多の州がわかれており、各州がそれぞれの異なつ法律を持つております。ところが、日本は、日本国全体としての法律であります。いかに平等互恵条約としても、この点で平等ならざることが生ずるのでありまして、先ごろ、米議会上院で、この日米通商航海条約に、留保条項として、一部米国の州法にのつとつて自由職業従事の禁止をきめたようでありますが、これによると、米国の州によつては、日本人が弁護士、医師、教師などの職業に従事できないことになつておるのであります。もちろん、日本としては、これに対応して同趣旨の留保条項を付すよう考えておるようでありますが、このような問題はこれからまだ起らないとは、だれも保証できないのであつて、もつとよく右のような食い違いのないよう準備した上で、あとからあとから留保条項を出すような醜態を演じないように、十分な検討を行つてからでよいにもかかわらず、急いでおる政府並びに自由党の態度に対して、何という無計画なやり方であろうと非難せざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、銀行業についてでありますが、当然制限業種であるべき領金及び信託業務が、既得権の尊重という建前から、在日米四銀行、ナシヨナル・シテイ、チエーズ・ナシヨナル、ハンク・オブ・アメリカ、アメリカン・エキス・フレスに許しておることであります。このようにアメリカの銀行の在日支店に許しておりながら、日本の場合においては、加州に、二十八年の二月から三月にかけて、東京銀行及び住友銀行の二支店が設立されておりますが、これは現地法人として、すなわちアメリカの法人としての銀行になつておるのでありまして、アメリカ占領中より持つている既得権の尊重という名のもとに、その立場は決して平等ではありません。(拍手)  また、貿易を振興させるためには、関税の障壁が取除かれなくてはなりません。最近、西欧諸国が、援助より貿易へといつて、アメリカの関税障壁を非難しておりますが、これは、わが国においても、まぐろのカン詰等で問題になつた点でありますし、アメリカが、自国保護のために、他国に対してのみ関税障壁を取除かせようとするのは、あまりにも利己的と言わざるを得ないのでありまして、(拍手)むしろ、円満なる貿易を望むならば、率先して自国の関税障壁を取除くよう、このような条約を通じてその誠意を示すべきであるにもかかわらず、(拍手)条文の中にその誠実を示されていない理由は、日本政府がこの点を主張する勇気を持たれなかつたのか、あるいはまたアメリカ側の望まなかつたところであるか、いずれにしても、この条約を通して円滑なる通商を望むわが国にとつては、この面から見ても有年とは言えないのであります。(拍手)  以上のような点を考えてみても、相互平等とは言うものの、はたして実質的に平等であるかどうかということは、再考慮を必要とする画が多々あるのであります。しかるに、委員会において、ただ早く通すことにのみ狂奔する自由党の人たちが、この条約を不平等と考えるのはみずから自立経済達成のための民族の誇りを持たないからだと言つているのは、それこそ強国に追従する事大主義者と言わざるを得ません。(拍手)また、それのみならず、私たちは、日本に起きている重大な問題と関連して、この条約を総合的に考えてみなくてはなりません。すなわち、相互安全保障法によつて日本にどんな形かでアメリカより援助が与えられようとしております。まだその内容がはつきりしないという政府の言をそのまま信じるといたしましても、想像できることは、完成された武器と、日本へ軍需資材が与えられ、日本に軍需産業の発展をはからんとする意図は多分に見られるのであります。これによつて、東南アジア地域におけるかつてのポイント・フオア、今ではMSAに包含された未開発地開発を名とする原料入手、経済技術協力が促進されるでありましよう。このとき、日米通商航海条約等によつてアメリカの資本が日本に流れ込んで、日本の重要基礎的平和産業までも、そのゆたかな資本力によつてコントロールされる危険性が多分にあると考えるのであります。(拍手)こう考えて来ますと、この条約が早まつて批准されたため、かえつてMSAに連なる武器として利用されそうになることをおそれるものであると述べられた参考人の一人、国際法学者の安井郁氏の意見は、まつたく傾聴に値するものであります。(拍手)以上のごとく、私は、この条約をもつと審議し、将来悔いのないような、りつぱな条約をつくるためには、会期末のわずかな時間をもつてこれを強引に押し通そうとする政府並びに自由党の態度に反省を促すものであります。(拍手)  この条約締結に至るまでに、政府昭和二十六年十二月より予備交渉を始め、講和発効と同時に正式交渉に入り、本年四月一日、しかも選挙管理内閣で調印するという——アメリカとは長期にわたつて交渉しながら、調印にあたつては、どさくさのうちになし、しかも国会では十分な審議を尽さず、不明な点がそのまま残されております。なるほど、アメリカにいる一部の日本の商社の人々にとつては、この条約の一日も批准の早いことが望ましいことを私どもは知つております。しかし、今までもアメリカの好意で滞在できたとするならば、マツカラン法によつて日本人の滞在がやかましくなつたといつて戦々きようきようとする前に、政府は、在日米人に何ら制限を加えないごとく、いましばらくの間米国にいる日本の条約商人に対して大目で見てくれるような外交折衝、個別的なとりきめがなぜ行われないのでありましようか。(拍手)いかに好意的に解釈しようとしても、私は、日本政府のアメリカに対して勇気のない卑屈外交を、ここにも認めざるを得ないのであります。(拍手)  私は、この際、政府並びに自由党の皆さんが、この重大な、しかも今後日本と値の国との通商航海条約の基礎ともなるべき日米友好通商航海条約を、あらゆる角度から審議し、十分に納得の行くよう再考慮されることを希望して反対するものであります。(拍手
  42. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 岡田勢一君。     〔岡田勢一君登壇
  43. 岡田勢一

    ○岡田勢一君 私は、改進党を代表して、日米友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件につきまして、若干の希望意見を付して賛成の意を表明せんとするものであります。  われわれ日本国民は、新しい平和憲法を奉じて、すみやかに日本経済の自立をはかるとともに、旧交戦各国との間において完全なる国交の回復を実現し、自由にして平等の基礎の上に立つて、世界平和の確立と、人類の福祉増進に対して貢献せねばならないのであります。今回締結された日米友好通商航海条約は、かつて日本との交戦各国のうち、この種条約締結の嚆矢をなすものでありますが、われわれ日本国民としては、大戦後の新しい国際道義の上に立つて、平等互恵の精神に基き、相互の福利増進のため、アメリカ以外の各国との間におきましても、すみやかなる友好通商航海条約の締結を要望し来つたことは、周知の通りであります。しかるところ、今日において、なおいまだ対日平和条約に対する批准をも得ておらない数箇国が実益するという現状は、まことにわれわれの遺憾とするところでありまして、過去五箇年間引続き国政を担当して来られた吉田内閣に対しては、特にこの機会に注意を喚起いたしたいと思うのであります。(拍手)  本条約は、その有効期間は一応十箇年と決定されておるのでありますが、実は、将来永久的に両国国民のために緊密なる友好関係を持続すべきことをその精神としているのでありまして、かくのごとき公明なる精神に基く本条約の締結は、かねてわれわれの要望するところであり、欣快とするところであります。しかしながら、われわれは、一面において、日本みずからの内容を認識して、現在及び将来の国際情勢に刮目して、かかる公明なる条約の精神が——両国国民のために将来永久にかわらざる円満なる履行に対しての熱意と努力を自覚することが、より必要であることを痛感するものであります。(拍手)  すなわち、その第一は、われわれ日本国民は、有史以来の一大悲劇である大戦突入と、これに引続く敗戦によつて、国際的地位並びに国民経済の内容はともにきわめて弱体化し、国民生活はまことに困難なる現状にあるということであります。さらに、私は、現在日本とアメリカとの両国の間には、その国力と国民経済その他においても著しい差異のあることを重視すべきであると思うのであります。本条約の各条項は、平等互恵の公正なる文章に終始されておりますことは、私たちの満足するところであります。しかしながら、これが実行は、いずれも人によつて行われるものであります。しかも、日本人とアメリカ人との間には、その歴史と伝統、国民性、習慣等におきまして、前述の通り相当の開きがあることは、おおうべくもありません。外資の導入、株式の取得、企業の経営、土地の所有、金融、為替あるいは船舶、海運等、各般におたる広汎なる本条約の実施に際しましては、あるいは両国国民の間に利害が相反する場合、あるいはまた彼我の経済力の強弱等によりまして、万一にも不当な圧力が加えられ、あるいはまた加えられたとする誤解等がもし生じたといたしますならば、これは両国民のために好ましからざる事態を残すのであることは申すまでもありません。私たちは、かかる事態を未然に防止いたしますためにも、歳府は、本条約の実施に際しまして、その運用と取扱いに常に慎重なる配慮を傾倒せられまして、これを当局の各末端に至るまで徹底せしめられんことを、第一の要望といたすものであります。(拍手)  次に、本条約が、条文の精神を生かして、公明にかつ円満に施行せられんために、本条約第二十四条第一項の規定を応用して、本条約の施行細目について、相なるべくは本条約の効力発生以前にアメリカ側に提案をしまして、本条約の施行上の細目協定を策定せられんことを希望するものであります。  第三には、現在の国際情勢はきわめて複雑であり、その前途は容易に予断を許さないものがあるのであります。かかる今日の情勢は、将来において何らかの変化があるべきことは予想せざるを得ないと思うのであります。われわれは、今後においてあるいは生ずることあるべきそれらの変化に応じて、本条約が両国国民のためにますますその効果を発揮せしめるために、適宜必要かつ有効なる措置を講ずることは当然であると信ずるものであります。ゆえに、将来国際的政治情勢及び両国の経済的及び文化的あらゆる変化のために必要と認めた場合においては、政府は、本条約の一部改正あるいは増補について相手国に提案し、努力をせらるべきことを、第三の希望としてあげるのでございます。(拍手)  私は、これらの希望意見を付しまして、本条約の批准に対して承認を与えることに賛成の意を表明する次第であります。(拍手
  44. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 池田正之輔君。     〔池田正之輔君登壇
  45. 池田正之輔

    ○池田正之輔君 私は、自由党分党派を代表して、政府に重大なる警告を発しながら、遺憾ながらこの条約に賛成の意を表するものであります。  本条約の締結を通じてとられた吉田内閣の外交運営の非民主性を、まず私どもは冒頭に指摘しなければなりません。本条約の対象をなす通商航海事項は、国家の産業経済に及ぼす影響のはなはだ大なる点にかんがみまして、広く国民の意見を聞くべきであつたのであります。しかるに、吉田内閣は、本条約の交渉の過程において、国会への中間報告を怠り、さらに国会意見を聞く機会さえもつくらなかつたのであります。また、吉田内閣は、その過程において、すなわち三月十四日、衆議院において不信任の決議を受けたのであります。国民の多数によつて不信任を受けた、いわば選挙管理内閣であるこの吉田内閣が、かくのごとき重要な条約の調印をなしたということは、その政治的責任を解せざるものと断ぜざるを得ないのみならず、政治道徳上許すべからざる非民主的行為であると言わざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、本条約の内容について、いささか所見を申し述べるならば、本条約の内容を検討するに、まず第一に、本条約とガツトとの関係については、日本側に対し最恵国待遇を認めようとするこの日本側の権利について、最も直接的に、あるいは明確に保障規定を設けるべきであつたにもかかわらず、これを怠つておる点、さらに第二は、外国人の日本の旧株式取得の制限を調印後三年間に限定したことは、資産再評価の実施問題などとあわせて考えるとき、はなはだ慎重を欠くものと言わざるを得ないのであります。しかも、本条約の付属議定書においては、条約発効に伴つて、当然三年後には立法措置をとらなければならないのであります。かくのごとく、今からこれを約束しておるがごときことは、明らかに一種の拘束でありまして、条約としてはきわめて妥当を欠くものと言わざるを得ません。  さらに、第三の点においては、進駐軍の占領中の既得権の保護について、本質上、その保護の期間及び態様等についてでありますが、これは条約の一般的な取扱いとは別個に、特別に取扱うべき性質のものであつたということであります。  以上申し述べたごとく、本条約は、その内容において幾多の欠陥を有するものであることは、明瞭であります。しかしながら、本条約を拒否した場合の日米通商関係並びに今後の国際的に及ぼす影響を考慮いたしまして、この際政府は、今後の措置において十分政治的な責任を感じ、善処せられるよう強くここに警告を発して、遺憾ながら賛成の意を表するものであります。(拍手
  46. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本件は委員長報告通り承認するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成起立
  47. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて本件は委員長報告通り承認するに決しました。      ————◇—————
  48. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。ただいま参議院から、内閣提出刑事訴訟法の一部を改正する法律案が回付せられました。この際議事日程に追加して右回付案議題なすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案参議院回付案議題といたします。     —————————————
  50. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案参議院修正に同意の諸君起立を求めます。     〔起立者なし〕
  51. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立者がありません。よつて参議院修正に同意せざることに決しました。      ————◇—————
  52. 今村忠助

    今村忠助君 憲法第五十九条第二項に基いて再議決のため、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の本院議決案議題とせられんことを望みます。
  53. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて刑事訴訟法の一部を改正する法律案の本院議決案議題といたします。  ただちに採決いたします。本案はさきに本院において議決通り可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成起立
  55. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立者、出席議員の三分の二以上の多数と認めます。よつて本案はさきの議決通り可決せられました。(拍手)      ————◇—————
  56. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第二、法人税法の一部を改正する法律案日程第三、所得税法の一部を改正する法律案日程第四、租税特別措置法の一部を改正する法律案日程第五、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案日程第六、信用保証協会法案、右五案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員長千葉三郎君。     〔千葉三郎君登壇
  57. 千葉三郎

    ○千葉三郎君 ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案外四法律案につきまして、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  法人税について、法人の清算所得に対し、新たに法人税を課税するとともに、益金に算入しない配当等の計算方法を改め、また外国で納付した法人税に相当する税を控除する等の措置を講じようというのであります。  本案につきましては、審議の結果、昨二十九日質疑を打切り、ただちに討論を省略して採決に入りましたところ、起立多数をもつて原案の通り可決いたしました。  次に、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  今次税制の改正の一環として、所得税について基礎控除、扶養控除、給与所得控除の限度額、生命保険料控除の限度額及び退職所得の控除限度額の引上げ、医療費控除、勤労学生控除及び青色申告者の専従者控除の範囲の拡張並びに低額所得者に対する税率の引下げ、富裕税の廃止に伴う最高税率の引上げを行い、有価証券の譲渡による所得を非課税とし、また山林所得、譲渡所得及び一時所得について租税負担の軽減と課税の簡素化をはかるとともに、確定申告書の提出期限及び第三期の納期限を半月繰下げ、その他賞与に対する源泉徴収税額の算出率表を設ける等、源泉徴収事務の簡素化をはかることとしようというのであります。本法律案の主要部分は、現在実施せられおりまする昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律の減税措置を平年度化したのにほかなりません。  本法律案は、去る六月二十三日政府委員より提案理由説明を聴取して、爾来慎重に審議いたしました結果、昨二十九日質疑を打切りましたところ、改進党の内藤委員より修正案が提出されました。修正案の趣旨は、四十六条の三の規定、すなわち企業組合等に対する規定を緩和しようというのであります。  次いで、原案及び修正案を一括して討論に入りましたところ、改進党を代表して本名委員は、賛成の旨を述べて、附帯決議を提出されました。次に、日本社会党を代表して佐藤委員は反対の旨、自由党を代表して苫米地委員は賛成の旨、日本社会党を代表して春日委員は反対の旨、それぞれ討論せられました。  次いで、採決に入りましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも起立多数をもつて可決せられ、よつて本案修正議決いたしました。なお、本名委員提出の附帯決議についても起立多数をもつて議決いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  資本の蓄積に資するため、預金の利子等の源泉選択課税の税率を引下げ、同族会社に対する積立金についての非課税限度を引上げるとともに、輸出貿易の振興に資する等のため、新たに輸出損失準備金制度を創設し、海外支店設置費の特別償却の制度を設け、食糧の増産に資するため、開墾した土地から生ずる米麦等の農産物の所得に対する所得税を免除し、協同組合の経営の合理化に資する協同事業用機械等の特別償却の制度を設けるほか、山林所得に対する課税の簡素化をはかるため、概算経費控除の制度を設けることとする等であります。  本法律案につきましては、慎重に審議の結果、昨二十九日質疑を打切りましたが、本案に関しましてま、内藤委員より三つの修正動議提出されました。  修正案の内容を簡単に申し上げますると、第一の修正案は、三党共同提案予算修正による措置の一部であります。すなわち、預貯金の利子課税の一〇%の源泉一本、分離課税の特例、第二は、輸出振興のための減税措置、以上の二点であります。  第二の修正案は、新たな干拓等による採塩に対し所得税の免税の特例、また農業協同組合等の所得中積み立てた部分に対する法人税の非課税の特例、第三は、土地改良事業により、水稲の裏作より生ずる所得に対する所得税の免除の特例、第四は、宗教法人の継承不動産の登録税の免除、第五は、中小企業等が国有の機械器具を交換したい場合の譲渡所得税等の非課税等の特例、以上の五点であります。  最後に、第三の修正動議は、航空機の通行税を一年間一割に下引げることであります。  次いで、原案及び修正案を一括して討論に入りましたところ、自由党の淺香委員より附帯決議が提出されました。次いで採決に入り、まず内藤委員提出の三つの修正案について採決いたしましたところ、第一及び第三の修正案は起立多数、第二の修正案は起立総員をもつてそれぞれ可決いたしました。次に修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、起立多数をもらて可決せられ、よつて本案修正議決されました。なお、淺香委員提出の附帯決議ににつきましても起立総員をもつて議決いたしました。  次に、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律昭和二十八年七月三十一日限り効力を失うので、八月一日以降においても効力を持たせることといたし、あわせて同法による退職手当の支給額、勤続期間の計算等について、所要の改正を加えようとするものであります。  本案に関しましては、大平委員より修正案が提出されました。修正案の趣旨は、第一に、主として国鉄等公共企業体の特殊性を考慮いたしまして、長期勤続者に対する退職手当支給率の逓減は勤続三十六年以上から始めること、最高率の退職手当の支給を公共企業体の経営上の必要による強制退職の場合にも認めること、現在在職しておる職員の過失の動続期間の計算につきまして、政令によつて特別の計算方法をとることができるようにいたすとともに、第二に、旧陸海軍人であつて引続き現在まで在職しておる職員退職手当につきまして、旧陸海軍人としての在職期間を通算することに改めたことであります。  本案につきましては、審議の結果、二十九日質疑を打切り、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して佐藤委員は、附帯決議を付して賛成の旨討論せられました。  次いで採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも起立総員をもつて可決せられ、よつて本案修正議決いたしました。なお、佐藤委員提出の附帯決議につきましても起立総員をもつて決定いたしました。  最後に、信用保証協会法について申し上げます。  この法案は、中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるにつきまして、その貸付金等の債務を保証することを主たる業務とする信用保証協会の制度を確立して、もつて中小企業者等に対する金融の円滑化をはかろうとするものであります。  この法案は、慎重審議の後、昨二十九日質疑を打切り、討論に入りましたところ日本社会党を代表して春日委員より、信用保証協会に対しては、今後さらに中央及び地方自治体の財政援助等が行われ、協会の機能が強化せられるよう、政府は格別の措置を講ずるよう善処せられたいとの附帯決議を付して、原案に賛成の旨述べられました。  次いで採決いたしましたところ、起立総員をもつて本案は附帯決議を付して原案の通り可決いたしました。  以上御報告を申し上げます。(拍手)     〔「定足数がない」「休憩々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  58. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 討論の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。     〔「定足数が足りない」「休憩々々」「採決々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  59. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) この際暫時休憩いたします。     午後七時四十一分休憩      ————◇—————     〔休憩の後は会議を開くに至らなかつた〕