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1953-07-22 第16回国会 衆議院 本会議 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十二日(水曜日)  議事日程 第二十五号     午後一時開議  第一 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 恩給法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案内閣提出)  第六 元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案内閣提出)  第七 中小企業金融公庫法案内閣提出)  第八 開拓融資保証法案内閣提出参議院送付)  第九 農産物価格安定法案足立篤郎君外二十三名提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  日程第一 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 恩給法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案内閣提出)  日程第六 元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案内閣提出)  日程第七 中小企業金融公庫法案内閣提出)  日程第八 開拓融資保証法案内閣提出参議院送付)  日程第九 農産物価格安定法案足立篤郎君外二十三名提出)     午後一時二十四分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第一、行政機関職員定員法の一部を改正する法律栗日程第二、行政管理庁設置法の一節を改正する法律案日程第三、総理府設置法の一部を改正する法律案日程第四、恩給法の一部を改正する法律案日程第五、昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案日程第六、元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案、右六案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長稻村順三君。     〔稻村順三君登壇
  4. 稻村順三

    稻村順三君 ただいま議題になりました恩給関係等の六法律案につき、内閣委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  恩給法の一部を改正する法律案は、昭和二十一年勅令第六十八号により廃止制限された旧軍人等に対する恩給を新たなる基準のもとに復活支給することをおもなる目的として、現行法に所要の改正を加えようとするものでありまして、さにき第十五国会において審議未了なつたものでありますが、すでに軍人恩給復活として、とかくの論議のあつたところでございます。政府説明によれば、本法案は、さきに設けられた恩給法特例審議会建議趣旨を尊重しつつ、かつ国家財政の現状及び国民感情をも考慮の上、可能な範囲遺族重傷病者及び老齢者援護を重点に、旧軍人にも恩給を給するものでありますが、これに伴つて一般公務員に対する現行恩給制度をも若干改正しようとするものであるとのことであります。本法では、いわゆる軍人恩給に関する規定は主として附則にあつて、ここに定められていない事項については、一般公務員同様に、本則規定適用する建前になつております。  そこで、本則のおもなる内容を申し上げますと、第一に、在職年に対する各種加算並びに加給制度廃止することであります。第二に、公務傷病者に対する恩給におきましては、特殊公務普通公務区別廃止するとともに、従来増加恩給対象であつた第七項症を傷病年金対象であつた款症と一緒にして、新たに一時金たる傷病賜金制度を設けることであります。第三は、普通恩給におけるいわゆる若年停止並びに多額所得停止規定改正し、前者において現在かりも年齢を五才引上げようとするものであります。第四は、公務傷病者に対する増加恩給及び傷病賜金支給基準に関するものであります。すなわち、退職当時の俸給年額により数箇の区分を設け、その区分ことに傷病程度により定めた定額を給することになつておりますが、増加恩給では、程度の高い傷病者及び少額俸給者が多少割よい支給を受けるようになつていると思われます。第五は、公務傷病に特殊と普通の区別がなくなつたの伴つて、従来やはり特殊及び普通の二つにわけていました公務扶助料を一本にしていることであります。  以上の本則における規定は、一般公務員にも旧軍人軍属にも原則として適用されることになつておりますが、附則経過規定に、一般公務員に関する加算加給及び若年停止本法施行後六箇月間除外することを認めている等めことがあります上に、特に旧軍人関係に関する附則第九条以下の規定等がありますので、両者の間に種々なる相違点も見出されます。  そこで、旧軍人関係について申し上げますと、第一に、各種恩給金額の算定にあたり、在職年数とともに恩給計算基礎となつている俸給額が、一般公務員と比べて若干下まわつてはおりますが、別の仮定俸給表により、旧軍人位階制そのままに、旧大将以下二等兵に至る十七階級にわけられています。第二に、在職年数計算にあたつては、軍人恩給廃止制限前すでに恩給を給せられていた者と、しからざる者との間に差等を設け、前者に対しては加算を認めております。そこで、前者の実在職年恩給年限に達しない場合でも受給権を認めております。但し、その場合、一定の割合をもつて減額支給することとしています。これに反して、後者には、原則として引続き七年以上の実在職年に達しない限り、恩給上の基礎在職年として認めないこととしています。第三に、一時恩給または一時扶助料は、一般公務員では実在職三年以上となつていますが、軍人関係では引続く実在職年が七年以上となつています。そして、今回あらためて兵たる旧軍人またはその遺族に対しても、同一条件のもとにこれを給することといたしております。第四に、旧勅令第六十八号によつて現に増加恩給を受けている第六項症以上の者または傷病賜金を給されているそれ以下の傷病者に対しては、今後は、一般公務員と同様に、改正後の恩給法規定によつて増加恩給または傷病賜金を給し、増加恩給には普通恩給を併給することとし、また軽度の傷病である傷病賜金一目症または第二日症に該当する下士官以下の旧軍人に対しては、その傷害程度に応ずる傷病賜金を給することといたしております。第五に、連合国最高司令官により抑留または逮捕され有罪となつた者及びその遺族に対しても、恩給を受ける権利または資格を与えることとしておりますが、ただ、現に拘禁中の者については、その支給を停止することになつています。第六に、未帰還者に対しましては、一定条件のもとに恩給を給し、留守家族の請求に応じてこれを支給することにしております。  次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法本法との関係でありますが、受給者の選択によつて、どれか適用を受けることにしています。  この法律施行の日は本年八月一日となつていますが、旧軍人関係年金恩給については、実質的に本年四月から支給されたと同様な取扱いをすることになつております。  かくして、本改正法が施行されたあかつきには、これに要する総額の九六%が戦死者遺族に給せらるべき公務扶助料となつております。また、これを受給人員について申しますれば、年金恩給受給者の総数は約百九十三万人でありまして、その七八%が公務扶助料受給者であります。  本法案は、去る六月三十日本委員会に付託され、七月三日政府説明を聞いて以来、昨日まで審議に十九日間を要しましたが、担当大臣出席等関係で、本法案に関する会議は、六回でありました。その間、七月十三日には厚生委員会並びに海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会との連合審査会、同十四日には両委員会との連合公聴会を開き、審査に慎重を期したのであります。しかして、委員会における質疑はすこぶる多岐にわたりましたが、旧軍人恩給復活可否遺族傷痍者援護恩給復活によるべきか社会保障制度によるべきか、旧軍人既得権として恩給権があるかないか、恩給復活は再軍備のための下工作ではないか、一般公務員恩給との均衡、加算及び加給制度廃止、七項症並びに款症、戦犯に対する恩給等々の諸問題、総動員法によつて徴用された者の死傷病者に対する保障をいかにするか等々が主たるものでありました。しかし、ここで一々述べる余裕がありませんので、詳細は会議録によつて承知を願いたいと存じます。  次に、昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案総理府設置法の一部を改正する法律案及び元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案については、その要旨及び審議経過はすべて会議録によつて承知を願うこととして、省略させていただきます。  しかして、昨日改進党の高瀬委員より、恩給法の一部を改正する法律案に対し、改進党並びに両自由党の三派共同修正案として「一、仮定俸給について、兵長以下の俸給兵長同額とすること。二、第七項症、第一款症ないし第四款症を設け、第七項症に増加恩給、第一款症ないし第四款症傷病年金を給することとし、これは昭和二十九年四月一日より適用すること。三、増加恩給または傷病年金事由発生後婚姻せる妻に扶養家族加給支給すること。四、恩給受給権発生後、父母祖父母が婚姻せる場合、同一戸籍内にある場合に限り、恩給権を喪失せざることとする。」との修正案、並びにこれが修正に伴い前述の二法律案に対する修正案提出され、これら修正案について質疑を行い、討論に入りましたところ、日本社会党上林委員より、敗戦の責任は旧軍人のみに負わすべきではないが、戦争犠牲もまたひとり旧軍人のみに限られるものでない実情にかんがみ、旧軍人等恩給既得権であるとすれば、戦争犠牲をこうむつた全国民国家から補償を受ける権利がある。それゆえに、かような援護は、軍人であると一般国民であるとに限らず、もつぱら社会保障によるべきである、それを、本法が、旧軍人恩給復活、特に職業軍人優遇を本旨としているために、旧軍人階級差遺族傷病者にまで及んでいる。これまさに遺族傷病者援護に便乗して、旧軍人の特権を認める政治的陰謀である、そのことは、軍人優遇によつて職業軍人のきげんを伺つて軍備せんとするものである、わが党は、戦死者遺家族及び傷病者援護にはむしろ戦争犠牲者に対する補償法を制定すべきものとして、その法案を用意しておるものであるとして、恩給法の一部を改正する法律案及びその修正案並び総理府設置法の一部を改正する法律案については反対、その他の二法案については賛成意見が述べられ、自由党高橋委員、改進党の赤澤委員及び自由党濱地委員より、四法案については修正案及び修正を除く原案についてそれぞれ賛成意見が述べられ、また日本社会党鈴木委員より、わが党は国家財政ともにらみ合せ、文武官を通じて合理的な年金制度を考えておるものであつて、そのために、遺族戦傷病者年金法ともいうべき法案を準備しつつあるのである、その意味において、本案は決して満足すべきものではないが、戦争犠牲者を慰める意味において、会議録に載せられた詳細なる条件を付して賛成する旨述べられ、その他の三法案とともに条件付賛成したのでありますが、詳細は会議録によつて承知を願います。  そこで採決したところ、総理府設置法の一部を改正する法律案については多数をもつて原案通りに議決し、恩給法の一部を改正する法律案修正案通り同じく多数をもつて修正議決昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案及び元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案については全会一致をもつて修正案通り修正議決いたしました。  なお、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案行政管理庁設置法の一部を改正する法律案について審査のの経過並びに結果を御報告申し上げます。  前者は、その趣旨が、昭和二十八年度における各行政機関の必要やむを得ざる増員を認めるとともに、事務処理合理化能率化による欠員、整理等に伴う定員縮減員を行うにあるのであります。増員のおもなるものは、現に郵政省在職電気通信業務に従事する賃金要員に対する定員法適用による四千七百八十五人、旧軍人等恩給復活のために五百九十人、入国管理事務増加による入国警備官等五百二十七人及び私設保税地域出願増加による税関特派職員二百人等であり、減員のおもなるものは、国立病院地方移譲による三百四十二人、賠償指定解除国有財産管理事務の減少による二百人及び水産業基礎調査員制度廃止による百十八人等であります。数字上では総定員六十九万四千三百四十七人となり、四千七百六十六人増したことになつておりますが、賃金要員に対する定員法適用及び都道府県職員との移しかえ等により、実質は二百三十二人の減員にしかすぎないのであります。なお、本法案は八月一日から施行することになつておりますが、大蔵、農林、通商産業の三省のごときものは、一定期日を限り経過的に新定員に附加して認めることとし、また海上保安庁は海上公害局法施行の前日までの間は運輸省の外局として、また引揚援護庁昭和二十九年三月三十一日までの間は厚生省の外局としていずれも存続するので、それらに対する経過措置規定するとともに、実人員整理を円滑に実施するための措置として、本年十一月三十日までの四箇月間を限り、新定員を越える員数を定員のほかに置くことができることにいたしております。  次に、行政管理庁設置法の一部を改正する法律案は、行政監察の効果を確保するために、行政管理庁長官の権限を強化せんとするものであります。第一は、行政管理庁長官が各行政機関業務を各行政機関の協力のもとに実地調査することができるとしたこと。第二、各行政機関監察に関連して行う公共企業体業務及び国の委任または補助にかかる業務調査について、当該行政機関と協力して、書面によりまたは実地調査することができることを明らかにしたこと。第三は、勧告に基いてとつた措置について当該行政機関の長から報告を求めることができるとしたこと。第四は、内閣総理大臣に対し関係行政機関の長に所管事項改善を指示するよう意行を具申することができるとしたこと。第五は、監察の結果、綱紀維持のため必要があると認めたときは、すみやかにこれを関係行政機関の長に連絡し、適宜の措置が講ぜられるよう意見を述べることができるとしたことであります。  両法律案は、六月二十九日、七月三日それぞれ本委員会に付託され、政府説明を聞き、行政整理によつて気象台癩療養所の手薄を生じ、激変に対処し得なかつたことや、あるいは郵政省職員定員法に適応することの可否等々について質疑が行われ、昨日討論に入り、日本社会党島上委員より反対、改進党高瀬委員及び自由党大村委員より賛成日本社会党中村委員より希望を付して賛成意見が述べられ、採決の結果、いずれも多数をもつて原案通り可決いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより討論に入ります。神近市子君。     〔神近市子登壇
  6. 神近市子

    神近市子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま委員長報告が行われました昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案並びに元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案賛成し、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案行政管理庁設置法の一部を改正する法律案総理府設置法の一部を改正する法律案恩給法の一部を改正する法律案並び自由党、改進党、自由党の三派による最後法案修正案反対いたします。特に後者の三法案は、これを再軍備のための前提であるとする見地から、日本社会党はこれに強硬に反対いたすのでございます。  右恩給法の一部を改正する法律案及びその修正案にかえて、よりよく国民の意思を代表し、傷痍軍人遺家族その他の戦争犠牲者の利益を擁護するよう、左記の要項による戦争犠牲者補償法案並びに国民年金法案を近日国会提出する予定であります。  そもそも昭和二十年十一月二十四日遅合最国高司令官恩給及び恵与に関する覚書によつてとられましたところの処置は、高級職業軍人とその家族に対してはやむを得なかつたとはいえ、応召戦傷病者一般遺家族にまでこれを及ぼしたことは残酷きわまるものであつたと言えます。戦争に対しては何らの責任なく、一片の紙片によつて召集され、長い年月を困難をきわめ戦地に彷徨させられ、最後には生れもつかぬ不具となり、あるいは不治の病気になり、しかも終戦後は生計の資料を得るために不自由な身を市井にさらさなくてはならない人々、あるいは、つえとも柱とも頼む愛する夫、父親、子供のかわりに、一片の冷やかな白骨を返された家族人々、これらの人々のためには、少くもドイツ政府がとり得た処置程度処置政府によつてとらるべきであつたと思います。(拍手)しかるに、政府占領軍指令に対し一切の批判的立場において発言することができなくて、七年の長きにわたつてこれらの人々は窮乏の中に無念の涙をのんで占領の終了するのを待つていたのでございます。(拍手講和条約発効によつて、ようやくこれらの戦争犠牲者に救援の手が差延べられ得ることになり、国民は一日も早く戦後の理念によつて新しい合理的な処置がとられることを期待しているのでございます。しかるに、政府のこれに対する処置は、国民の期待に反し、まつたく異なる動機によつて案出され、旧職業軍人及びその家族に厚く、一般応召軍人遺家族に薄いのであります。(拍手)この点に日本社会党は最も大きな反対理由を発見しているのでありまして、かかる欺瞞的な、前時代的な意図による処置を一蹴し、真に合理的で、時代の要望でもある社会保障制度の一環として、老齢軍人傷痍者遺家族の十二分の擁護を必要とし、これを主張するものであります。(拍手)  第一に、本法案基礎観念が、最近ようやく国民の面前に打出されて参りました再軍備の伏線に乗るものであるということは、歴然たるものがあります。(拍手)何となれば、本法案企画者である緒方副総理は、前議会の委員会及び本会議におきまして、この非難に対して、ためにする者のデマであると再三反駁しながら、そのすぐあとでは、旧軍人の要請によつて動かされたということを告白されているのであります。そして、その道義的見地としては、軍人潜在的権利であること並びに文官恩給退職時の俸給に準拠するゆえんをあげられているのでありますが、この見地がいかに不合理で、ゆがめられたものであり、この法案が再軍備を計画している人々のためにする法案であるかということは、次の根拠によつて明らかであります。  まず、潜在する権利という表現が現実を最先とされるべき国会において通用するということに、私は驚きを押えることはできないのであります。(拍手)過去に関する限り、政治現実によつて処理さるべきであります。憲法は国民の人権に潜在する平和にして幸福なる生活保障しているのでありますが、これは、民主主義の真理に基礎を置く日本において、まだ実現され得ない将来の希望を表示しているのであります。これに反しまして、軍人恩給は、過去の戦争の跡始末であります。もう、一旦打切つた法制に定むるところの権利をこんなに安易に復活せしめることができるならば、占領当時に他の指令によつて失われた権利をしも、復活要求が行われた場合には、それを復活せしめるのでありましようか。(拍手)皇族、貴族の身分制度、農民のための地主の土地解放、あるいは公娼廃止ですら、失われた既得権はあるのであります。前時代的な立場において言わしめれば、これらの権利喪失者にも既得権は潜在するのであります。でありますから、喪失された権利に対しては、合目改革された日本立場において、時代に適した方法によつて戦争犠牲者を保護する方法が立案されるべきであつたのであります。(拍手)  副総理はまた、軍人たち社会保障による援護を好まず、在来の恩給法による給与希望したと言われていますが、これは、旧軍人たち立場では、給与額が高まるのですから、あり得ることでありますが、恩給社会保障の差は、前者が旧帝国政府支給せんとする約束であり、一般国民があずかり知らぬ給与であるのに対して、社会保障による給与は、国民に直接につながりまして、他日国民の一人々々が同じ境遇に落ちた場合にこれにあずかることを得るという点で、はるかに国民的制度と言えるのであります。(拍手)ここには、不特定の国民の出資によつて援助されるという恩恵に対する責任感がなく、国民相互連帯性によつて支持されるという民主主義のはるかに楽しい恩恵と、何人も国民であれば権利としてこれを大いばりで享受することができるという特性があるのであります。文官恩給制度さや寄せも、この観点から徐々にこの制度に改革されて行くべきでありまして、今日公務員待遇改善方法が制限されているとはいえ、帝国政府時代に比べて大幅にその生活権改善され得るという事態は、社会保障制度にこれを移行させ得ないものではないということが考えられるのであります。  階級制による軍人恩給復活の一つの理論的支柱である、一般応召者に比べて経済能力喪失が多大であるという観念も、事実に反するものであります。今日の老齢軍人は、過去においては少くも快適な生活のできる給料を与えられ、戦争中は国民の怨嗟の的となるくらいにゆたかな生活が許されていたのであります。子供高等教育を授け、女子は十分な婚資をもつて上流社会と縁組ができたのであります。これらが今日老親を扶養する立場にあるのは、応召した兵士家族傷病の夫や父を扶養する場合とは比較のできない容易さがあるのであります。これらの観点からいたしましても、足一本、手一本の傷痍は、同じように足一本、手一本の傷痍と見らるべきで、大将、中将の手足と一兵士手足と軽重を付すべき理由は発見できないのであります。(拍手)  日本社会党は、これらの観点からいたしまして、この職業軍人恩給復活観念を一擲し、戦地内地を問わず、戦争犠牲者たる旧軍人軍属国家総動員法による動員者、学徒、女子挺身隊、船員、満州義勇軍等々の遺家族及び傷痍者動員中の結核発病者並びにその死亡者者等々に対して、国家補償見地から年金制度を実施せんとするものであります。  この年金制度は、一元化された体系を持つ総合的社会保障制度確立までの暫定的処置として行いまして、普通恩給普通扶助料、一時扶助料等受給予定者は別に国民年金法を制定し、老齢年金遺児年金母子年金としてその生活保障せんとするものであります。階級差仮定俸給を撤廃し、高額所得者支給を停止し、年額所得三十万円を越えるものには支給を停止します。公務死範囲を拡大します。遺族年金家族加給年額五千円といたします。支給額年額九万六千円を標準基礎所得とし、その三〇%を支給いたします。父母祖父母の再婚の場合にもこれを支給いたします。なお、傷害年金につきましては、この年金範囲の拡大、第四款症までは年金支給いたします。特別項症は、第一項症の金額にその十分の五以内の金額を加えたものといたします。第六項症以上家族加給は、遺族年金による家族同額支給いたします。その項款症別支給額は次のようにいたします。増加恩給十三万七千百三十六円に対しまして、わが党においては十四万円をこれに支給いたします。第二項症の十一万五千六百三十六円に対して十二万円、第三項症におきましては九万六千六百三十六円に対し十万円、第四項症におきましては六万五千六百三十六円に対して八万円、第五項症におきましては四万四千六百三十六円に対して六万円、第六項症におきましては三万八千六百三十六円に対して四万円、第七項症に対しましては、この政府案においては一時金八万五千円とあるのでございますが、これも年金にいたしまして年額二万円でございます。第一款症は一万八千円、第二款症は一万六千円、第三款症は一万四千円、第一目症より第四日症までは一律に一時金二万円を支給する方針でございます。そのほかに、この年金生活保護法の扶助料よりは差引かないことにするのでございます。  日本社会党が過去の戦争犠牲者に対する補償について企画している内容方策は右の通りでございます。前時代的な、帝国政府的な職業軍人中心の観点を捨て、時代の要望にこたえ、新時代的な立法によつて、窮乏にさらされている多数同胞の可及的ゆたかな援護をせんとすることを希望いたし、本恩給法の一部改正法律案並びに右修正案反対する次第であります。(拍手
  7. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 高橋等君。     〔高橋等君登壇
  8. 高橋等

    ○高橋等君 私は、自由党を代表いたしまして、恩給法一部改正に対し、修正案及び修正案を除く政府原案賛成討論を試みるものであります。  顧みますれば、昭和二十七年、第十三国会におきまして戦傷病者戦没者遺族等援護法を制定し、終戦以来久しきにわたつて顧みられなかつた遺族傷痍者に対する補償の一端を暫定的に措置いたしましたが、当時われわれは、将来恩給制度を確立して、その処遇を改善することを要望し、政府もこれを確約いたしたのであります。本日この懸案が本会議議題となりましたことは、まことに感慨深きを覚えるものであります。  本法は、昭和二十一年いわゆる六八勅令によりまして停止または圧縮せられました軍人、軍属、戦傷病者及びその遺族に対します恩給復活せんとするものであります。世上、軍人恩給法と称せられ、また、ただいま論じられましたように、一部の人々本法をもつていわゆる旧職業軍人を優遇するものと非難し、国民を欺瞞せんといたしておりますが、当らざるもはなはだしいものと言かねばなりません。(拍手本法施行に要しまする経費四百五十億円のうち、実に九三%以上が遺族、つ傷痍者に対しますものであります。本法遺族傷痍者恩給法と称すべきものであります。戦争責任はひとり旧軍人のみに転嫁すべきものではありません。この機会に旧軍人に対します恩給復活せしめますことも、当然の措置と申さねばなりません。社会党在派の人々は、本法の制定は軍備再開の一環であると申されますが、遺族傷痍者等の補償国家が当然なすべきものでありまして、他の目的を持つことは、これらの人々を侮辱し、英霊を冒涜するものと申さねばなりません。われわれも政府も十分この点を了承しておるのであります。社会党は、恩給にかえるに社会保障で行けと主張せられておる。しからば、社会保障でこれらの人々に保護を与えるのはよいが、恩給でやれば再軍備関係があるということは、どういうわけでありましよう。御説明を承りたいと思うのであります。(拍手)全国八百万遺族を初め傷痍者、旧軍人人々が求めておりますものは、社会保障ではなく恩給制度の確立であります。恩給制度が現存する以上、多数の民意を尊重いたしまして、政府恩給制度により補償の実施を企図いたしましたことは、これこそ民主的措置と申すべきものであります。(拍手)  本法案の策定にあたりましては、政府恩給特例審議会の答申を尊重いたしまして、戦争犠牲者に対しまするこまかい数々の配意がなされておりますこと、及び現下財政上許される最大限の措置をなしておりますことに対しまして敬意を表するものであります。しかし、下級者に対しまする給与は厚くするを適当と考えられますので、これを兵長の線まで引上げる修正は妥当なる措置であります。六八勅令により停止、圧縮せられました恩給は、このたびの措置によりましてそれぞれ復活いたしたのでありますが、ひとり従来の七項症及び各款症については何らの措置がなされておりません。戦争におもむきまして完全なからだを傷つけられ、不自由な生活を送つておるこれらの戦傷病者に対しまして、それぞれ増加恩給傷病年金支給することは当然と申さねばなりません。その他、二点に対しまする修正もきわめて当を得たものでありまして、修正四点に対し賛意を表するものであります  雇用人及び嘱託の有給軍属や、国家総動員法に基き徴用せられた船員、学徒等の遺族傷痍者につきましては、戦傷病者戦没者遺族等援護法によつて措置され、本法と相まつて戦争犠牲者補償がなされることは当然でありますが、特に、従来援護法の対象となつ人々本法に漏れた者につきましては、一入残らず援護法において補償せられることを期待いたします。また、援護法制定以来すでに一年以上を経過いたしておりますが、いまだに年金、弔慰金の支払いがなされておらない者が多数あることは遺憾にたえません。本法の実施にあたりましては、十分受入れ態勢を整えるとともに、英断をもつて手続を簡易化し、多数の案件を迅速に処理せられることを強く政府に要望いたします。  本法による受給者人々の中には、その給与文官恩給と均衡がとれておらないこと、及び戦地加算及び通算が考慮せられておらないことにつき不満足の点が多いことと存じます。しかし、本年度四百五十億円は、いわゆる九箇月予算でありまして、来年度は約六百億円となります。援護法施行のための五十億、弔慰公債の元利払いを合算いたしますと、遺家族戦傷病者を中心とした来年度予算は実に八百億円に達するのであります。この種の補償に関しましては、金額は多いほどよく、範囲は広いほどよい。日本人であります以上は、これに反対する者はおらないはずであります。しかし、国家の財政には限度があり、国の存立を危うくしては補償も何もないのであります。このたびの措置は現下財政の許す最大のものでありまして、遺家族戦傷病者軍人の方々も十分なる理解を与えることと信じて疑わないところであります。  以上をもつて賛成討論といたします。(拍手
  9. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 高瀬傳君。     〔高瀬傳君登壇
  10. 高瀬傳

    ○高瀬傳君 ただいま上程されました恩給法の一部を改正する法律案に対する自由両党並びに改進党の三派共同修正案に対し、改進党を代表して賛成の意を表するものであります。(拍手)  そもそも軍人に関する恩給は、昭和二十年十一月二十四日総司令部覚書によるわが政府勅令第六十八号、すなわち恩給法の特例に関する件によつて廃止または制限せられたるものが、今日まで未解決のまま持ち越されたものでありまして、政府は、昨年四月二十八日講和条約発効とともに、内外の事情を考慮して、昭和二十八年三月三十一日までその恩給権復活を延期したものであることは、諸君御承知通りであります。その間、政府は、旧軍人恩給問題を調査審議するため恩給法特例審議会を設置し、同審議会は、十一月二十二日、内閣総理大臣に対し、旧軍人、軍属及びその遺族等の恩給に関する建議を行つたのであります。恩給法特例審議会は、その答申中に、恩給復活を認め、左のごとき答申を行つたのであります。すなわち、国家公務員中、特に軍人にあつては、厳格な服務紀律に縛られ、転職の自由なく、しかも在職中の給与は単に生活を維持する程度のものにとどまり、永年公務に従事して老朽となり、また公務に基因して、あるいは傷病にかかり、あるいは死亡し、かくして経済的能力を失つても、在職中の給与はこれを十分に補うものとは言い得ない、よつて国家は、使用者としての立場から、かかる能力の喪失に対して十分補うべきであり、恩給制度の本旨は実にここにあると思われる、よつて審議会は、恩給制度の本旨にかんがみ、旧軍人軍属及び遺族生活の現状を察し、これらの者に対し、すみやかに相当の恩給支給すべきものと認めた、というのであります。政府は、主としてこの答申の趣旨に基き、前十五国会において恩給法の一部を改正する法律案提出いたしたのでありますが、吉田内閣の解散により審議未了と相なりましたことは、まことに遺憾の至りにたえません。  そもそも国家が官公吏に対し恩給を与えることを法律によつて規定しておる以上、これまでの分については、一応恩給権を認むるのは当然であり、この点、文官たると武官たると、本質的には差別はないのであります。現に文官の恩給がそのまま存置しておる以上、武官の恩給のみを認めないわけには行かないのであります。しかも、恩給受給の軍人の大部分は、戦争遂行の上にさしたる指導力を持たなかつた下級浮校、下士官、応召兵たちであり、いわゆる将軍連や中堅幹部などは総数の一割にも当らぬ少数でありまして、いわゆる恩給軍人は、ごく一部を除いては、戦争責任の稀薄な、むしろ国家の命令によつて機械のごとく動かされた気の毒な人々と言つても、それほど誤りではあるまいと思うのであります。しかも、彼らは、その在職中において給与の一部から恩給積立金を法規に従い国庫に納入しておつたのであります。すなわち、国家が当然の義務である恩給すら満足に支給し得ざる状態において、完全なる社会保障制度などあり得ないと確信するものであります。  軍人恩給が軍国主義の復活や再軍備に直結するとなすがごときは、まつたく思い過ぎであると、かたく信ずるものであります。(拍手)しかしながら、恩給給与のいかんは国家財政に大きな影響を及ぼし、給せらるべき恩給の内容は国家の経済力に左右されるものと言わなければなりません。従つて、今回のごとく、軍の解体によつて一時に多量の退職者を出し、恩給の対象となるものが多量に達したる今日、敗戦後の脆弱な国家財政をもつてしては、軍人恩給廃止制限前の恩給の内容に相当の制限を加えたものであるべきことは当然のことであります。従つて、われわれは、今回提示せられたる四百五十億の予算の範囲内において、でき得る限りの調整を行い、三派の隔意なき意見の交換により、相互互譲の精神により成立したものが今回の改正案であります。  その第一点は、一、二等兵、上等兵の支給額政府原案兵長同額とする。その第二点は、第七項症、第一款症ないし第四款症を設け、第七項症に増加恩給款症傷病年金支給する。但し、款症には扶養家族加給は給せず、しかも実施は二十九年四月一日とする。その第三点は、増加恩給または傷病年金事由発生後結婚した妻に扶養家族加給支給する。その第四点は、恩給受給原因発生後、父母祖父母が結婚した場合、同一戸籍内にある場合に限り恩給権を喪失せざることとする等でありまして、特にわが改進党といたしましては、第一、第二の点は強く主張して参つたところでありました。これらの点が一応実現いたしましたることは、まことに遺族傷病者等の受給権者にとりまして幸いと言わなければなりません。ただ、われわれの最も熱望いたしましたる通算、加算の問題が、国家財政上多額の経費を伴うとともに、その調査の正確を期しがたきとの理由により、原案通りとなりましたことは、はなはだ遺憾の至りでありますが、将来、政府におかれましては、すみやかに事務的にこれらの統計の整備、資料の収集を命じ、その結果に基き検討を行い、国の財政状態を勘案して、一日も早くこれらの問題の解決に努力せられんことを切望する次第であります。  なお、われわれは、戦犯にして処刑された者を公務死とせよという主張を持つておりましたが、これは、将来戦犯の釈放との問題に関連し、政府としても適当な処置をとられる立場になかつたことはこれを了といたしまするが、本日白山丸によつてモンテインルパより十七柱の戦犯処刑者の英霊が帰つて参りました。これを迎えた実際の状態を山下引揚委員長から拝聴いたしまして、われわれ国民感情が、いかにこれらの戦犯にして処刑されたる者を公務死と認めても、これに反対する者はない、この事実をまのあたり見まして、(拍手)この点がすみやかなる近い将来に実現せんことを熱望してやまないのであります。(拍手)  なお、現下の国情にかんがみ、文官恩給との関係をも慎重に考慮し、将来社会政策的意味をも加味し、真に民主日本にふさわしき、新しき合理的恩給制度の確立のため、政府の一段の努力を要望するものであります。なお、将来、この恩給法には幾多改善を要する点ありと認められるをもつて、これらの点に関しては、今後国会を通じてこれが改善のため善処せんとするものであります。  これを要するに、わが改進党は、今回の恩給法審議にあたり、遺族傷病者老齢軍人等の救済を主眼として、政府にその善処方を要望して参りましたが、これらの点につき、今回の修正案を通じ、その実現に一歩を進めたことは、まことに欣快にたえざるところであります。(拍手)  以上をもちまして三派共同提案になる修正案に賛意を表するものであります。(拍手
  11. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 堤ツルヨ君。     〔堤ツルヨ君登壇
  12. 堤ツルヨ

    ○堤ツルヨ君 ただいま議題となつております恩給法の一部を改正する法律案に対しまして、条件付賛成討論を行うものでございます。  わが日本社会党は、恩給制度そのものの根本的改革を考慮しつつあり、国家財政ともにらみ合せ、文官並びに旧軍人を通じて、一層合理的な年金法とする所存であります。このたびも、できますならば、年金法を提出するつもりであつたのでございますが、あまりに全面的かつ根本的修正でありますので、技術的また時間的に、代案を出すことは今期中は不可能に近く、修正案提出を一応次会に譲り、わが党の方針を明らかにしまして、今回は自由党以下保守三派の修正案にやむなく賛成しておくことにいたしました。(拍手)  わが党の恩給制度に対する考え方は、従来の恩給法理に対する考え方と、社会保障制度に対する考え方とを総合いたしまして、そのときどきの国家財政とにらみ合せて、合理的に運営しようとするものであります。国の経済事情が許すならば、恩給制度社会保障制度の二本建で行くべきだと思うのでありますが、貧弱な現下の日本経済は、とうていこれを許しません。できるだけ保護を広く、かつまた下に厚く、下の範囲を拡大して、社会保障的な考え方に重きを置くべきであります。一部には、社会保障を受けるのは心外だ、われわれはかつて恩給権を主張するのだという声もありますが、文官の場合はわずかに二十五万でありまして、どうにか恩給権理論と歩調を合せることができますが、今回のように、旧軍人傷痍軍人遺家族、その他戦争犠牲者ということになりますと、その数一千万になんなんとし、今回の政府原案あるいは保守三派の修正案程度では、少しも恩給権理論に合わないのでありまして、ただ言葉の争いにほかなりません。しかも、その予算総額は六百億という少からざるものであります。これだけの大金を使うのなら、もつとより以上に国民の生存権を考えつつ、能率的に使うべきであると存じます。(拍手)  そこで、わが党は、次のごとき構想を持つていることを明らかにし、原案並びに修正案反対というのではなく、いな、むしろ、もつとよいものにしたいという考えから、条件付賛成をいたすものであります。  以下、わが党がはなはだ不満とし、なおかつ、かくあらねばならぬという数点を指摘して、その主張を明らかにしておきたいと存じます。  第一に、政府みずからが前国会以来五大法案の一つだと称する本法は、再軍備に連なる軍人恩給復活であるという考えを払拭することはできません。政府は、MSAの援助により、いわゆる木村試案といわれる警備五箇年計画なるものをもつて保安隊をますます充実強化し、かつての軍国日本を再び実現せんとし、国民の一部にも旧軍国日本へのノスタルジアを持つ者さえある。また、保安隊が、ラヂオを通して、国民の前で自分のことを軍人々々と指摘している今日、まさに憲法をめぐつて重大危機に直面しておりますが、これの伏線として将来に備える意図が明らかに見えており、逆コース、反動吉田内閣の性格を露骨に物語つております。(拍手)安隊の処遇については何らこれと関連はないと政府は答えておりますが、保安隊が正真正銘の軍隊に晴れて返り咲いたときには、本法への横すべりは疑う余地もありません。戦傷病者、戦没者遺族等を国が償わなければならないという国民感情を利用して、また戦争犠牲者を償うという美名のもとに、再び指揮棒をとらんとする、かつて職業軍人に応えなければならぬ政府の欺瞞策であることは否定できますまい。(拍手)その証拠に……(「反対しろ」と呼び、その他発言する者多し)まあ黙つて聞きなさい。(笑声)——その証拠に、過ぐる本年四月、衆書院の選挙の際、われわれでなければ恩給法改正並びに遺族援護はやつてくれる者がない、社会主義政党は遺族老齢軍人を顧みない、恩給法に対して反対してじやまをすると宣伝これ努めた保守政党の方々のあさはかなふるまいを思い起しましても、思い半ばに過ぎるものがあります。(拍手)ここに、わが党は、軍人恩給復活には断固として反対するが、国のための戦争犠牲者である戦傷病者、戦没者遺族老齢軍人に対しましては、国が完全な保障をしなければならないということを明白にいたします。  しこうして、第二に問題となりますのは、軍隊のない今日、旧軍隊の十七級をそのまま生かして、階級による支給差別をつけておる点であります。もちろん、保守三派の修正案は、下を兵長まで切り上げて、やや下に厚くとの志を生かしてはおりますが、それにしても十四階級は現存することになります。何がために十七階級を法の文面にうたつたかと政府にただしますと、支給額基準を定めるために持ち出したと答えております。基準をきめるためにどうしても必要ならば、算定の際これを使つたとしても、別の記号でも考慮すべきが当然でありますのに、国民に納得の行かぬ旧十七階級を正々堂々と打出して、何ら政治的考慮を払おうとしない政府の態度は、まさしく再軍備への伏線なりという証拠を如実に物語つております。(拍手)語るに落ちるとはこのことでございます。それなればこそ、馬が座敷に上つてあぐらをかいたたぐいだと世間で悪評されるのでありまして、特に不要な疑惑をさえ招く原因ともなつております。  しかしながら、わが党は、第三に本法ととつ組んで真剣に考慮いたしますのは、老齢軍人並びに普通扶助料受給者、すなちち軍人遺族に対しては、社会保障見地に立つて、これが生活保障しなければならないということでございます。かつて軍人として国のために働いた人々が、当時薄給に甘んじ、今は苦しい敗戦下に、経済上の獲得能力を喪失して、生活苦に追い込まれている状態を国家が見捨てるというがごときは、もつてのほかであります。当然これは保障の対象として考えられなければなりません。また、旧軍人遺家族扶助料を停止されて参りました占領中の事情は、国民ひとしく同情にたえ得ないところでありまして、これが生活保障も、老齢軍人同様、国がなすべきことは必然であります。  さらに第四に、戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては十分な国家の償いがなされなければならないことは、前々国会以来わが党が力説して来たところで、御承知通りであります。防衛とか、自衛とか、祖国再建とかという言葉を国民の前にしいる前に、政府みずからこれら戦争犠牲者への血もあり涙もある償いをすべきで、われわれは、若年の旧軍人や、高額所得者や、旧階級による高級者への高額支給を避けて、これらの金を真の犠牲者に重点的に償うべきであると主張するところに、原案修正案との思想の違いがあります。(拍手)従つて、わが党は、社会保障制度の確立されるまで、老齢軍人戦争犠牲者に、暫定的措置として特別臨時立法をもつて臨むべきであり、軍人恩給復活をうまくこれにからませて、国民の目をごまかさんとする政府や保守三派の行き方に対して、徹底的にその主張の異なることを明らかにいたします。が、しかし、公聴会にも反映されたことく、一日も支給の早からんことを望む一千万受給者の背に腹はかえられぬ立場や心情を考えて、このたびは一時同調することにいたしましたが、断じて欺瞞法案に眩惑されているのではないことを御承知願いたいのであります。  以下、具体的にわが党の案を示しておきたいと思います。  普通恩給については、若年停止を五十五才とし、これに半額支給、六十才よりは全額として、厚生年金支給年齢と同様にします。しかも、老齢の年齢を高くすれば、逆に高級軍人のみが対象となるおそれがあることも考えなければなりません。文官の恩給はもちろんこれに準じて改正されるべきであります。  次に、高額所得者は三十万円として、これより以上の収入のある方々は支給を停止します。旧軍人でも、戦後方向転換をして社会的に優位にあり、年間収入三十万円以上もある方は、やむにやまれぬ犠牲者にその金をまわすべきであるとの考えであります。(拍手)  次に、仮定俸給額は十七階級を撤廃しなければなりません。所得額によつて、わが日本社会党は次の五階級といたします。社会情勢にマツチさせるべきであるとの主張を持つておるからであります。すなわち、大将以下少佐までは少佐に引きおろす、二等兵以上兵長までは兵長に切り上げて、最高を二十万円とし、最低を七万円として、支給率はこれの三分の一とするのでございます。また、左派社会党のごとく、普通恩給をフラツト制にとの主張もありますが、一般国民に対する養老年金制度の確立さえない今日、これは適当でないとの考えを持つものでございます。  次に、軍人遺族の援助料は、普通恩給の場合と同じく五階級とし、普通恩給の二分の一を支給しますが、家族加給は一人につき月額四百円、やはり年三十万円以上の高額所得者に対しては支給を停止して、普通恩給の場合と同様に扱うことにいたします。  次に、一時恩給を認めないという政府の考え方は、百五十万の受給資格者を失格せしめる原因となり、大きな本改正案の欠陥であり、また筋が通らないとして、各党から委員会においてその非を論難されて参りました。書類が不備であるとか、とうてい調査不可能などと逃げを打つておりますが、実は本法改正を五百七十七億というわくの中にはめようという意思以外に何ものもなく、もとの応召軍人を中心とする一兵卒への誠意の丁片のかけらさえもないという処置となつております。(拍手)かつて戦時中、将校商売、下士勝手、兵隊ばかりが国のため、という歌が戦場や兵営で歌われましたが、その精神が依然として政府本法改正の中に今日なお歴然とうかがえて、はなはだ遺憾であります。かてて加えて、在職年通算の問題で、七年以上継続していないとの理由で、二度三度応召のうき目にあつて北に南に転戦させられた人々を顧みないという行き方は、いかがなものでございましよう。上官の命令一下、たまのもとに命をさらした、かつての忠義な兵隊を除外することは、常識さえも疑われるのでございまして、おそらくこれら英霊は浮ばれますまい。遺族も涙をのんで泣寝入りであります。お互いにわが身に置きかえてみれば、事理はおのずから明らかであり、どうしても国家経済が許さないというのならば、将来に問題を残して、次期年度には、恩給からはずして別わくとしてでも、しかるべき処遇を打立てなければならないことを強調いたします。  次に、戦死者公務扶助料であります。普通公務特殊公務区別をなくしたことは当然として、またここにも階級差のあることを認めぬわけには行きません。復員局の陸海軍戦死者推計報告によりますと、百六十七万余の戦没者のうち百五十二万が元上等兵、兵長、伍長、軍曹、曹長などの下士官、兵であります。ゆえに、これらの平均をとつて標準を定め、戦死者を手厚くとの精神を盛らんとするものであります。一片の赤紙による応召の戦没者の大多数の平均の上位ならば国民感情とも合致するものであるとわが党は信じます。  次に、傷痍軍人増加恩給についても、厳として階級差を撤廃し、症状別によることを原則とします。一個の人間が、かたわになるほどのけがをしたとき、金持ちだから、上層階級だから、そめ傷は値が高いということが、民主主義のもとに許されましようか。(拍手)貧富、階層の別なく、一つの生命は同じ法のもとで平等に扱われ、保障されております。しかるに、旧軍人階級差傷痍軍人にまで強制して、将官の傷ならば高く償うが、元一兵卒の傷ならば、同じ傷でも十七階級にわけて安く償うておけばよいという政府の行き方には納得できません。旧態依然たる階級意識を捨てて、その差を撤廃し、普通恩給を合せて、せめてものねぎらいの対象にすることにしなければなりますまい。  さらに、七項症以下四款症までが、三派の修正によりましてその対象となつたことは御同慶にたえませんが、同時に、これらの方々には年金として支給し、また一目から四目までは年金として差上げるべきものと存ずるのでございます。十五億ないし十九億の国家予算をさらにプラスして、若年者や高額所得者よりも、むしろ傷痍軍人全部を対象とすることにしなければなりますまい。白衣の傷痍軍人が橋のたもとにギターをかなでて募金をし、街頭に物こいをする、これらの目をおおわしめる社会問題を幾多投げかけておる傷痍軍人生活実態は知り過ぎるほど知る吉田内閣が、見て見ぬふりをして、法のわく外にこの人々を捨て去らんとする精神は、容赦できません。飛行機や、戦車や軍艦、鉄砲のたまなどと同様、戦争の元手に人の子や父をさんざん使つて、かたわにし、戦争に負けたから、もうお前たちはしかたがないと言わんばかりに、こわれた兵器同様、社会の片すみに泣寝入りせよというのは、どうしてもふに落ちません。保安隊に愛国と挺身を訓練しつつあるという吉田政府の再軍備方針との矛盾は、何と割切つたらよいのか。わが党が第一目以下第四日までに年間二万円の一時金をもつてこれを償えという主張は、ここに根拠があるのでございます。(拍手)  最後に、国家総動員法の対象を含め、船員、国民義勇隊及び当時の国家総動員法等に基いて徴用され、昨年度の援護法の対象になつた方々を全部これの適用者としなければならないことも、特につけ加えておきたいと存じます。戦争犯罪人の死刑にされた人々、獄死された人々につきましては、改進党から御所論がございましたから省略いたしたいと存じます。  最後に、政府に申し上げておきたいのは、全国からわれわれ代議士の手元に集まつて参りますところの戦傷病者、戦没者遺家族の不満の声は、その数を数、えることができません。当然公務死として、またこれに準ずるものとして、国家の償い並びに補償を受けなければ英霊が浮ばれない、仏が浮ばれないというところの遺族の声、現に大臣に質問をいたしましても、大臣は、現在援護庁において十万の夫裁定のものがある、その未裁定のものはほとんど査定困難で、難事中の難事だと答えておるのでございます。援護庁まで書類の届きましたものはまだましな方で、市町村長の手元で、また県の世話課で、とうていこれは対象にならないといつて捨て去られたものなどを考えますときに、二、三十万は苦情を申し、国を恨んでおる遺族戦傷病者のあることを忘れてはなりません。(拍手)もし政府に誠意があるものならば、本法につけ加えるに苦情処理機関の設置をもつてして、これらの英霊にこたえ、遺族補償をなすべきが誠意ある国家としてのあり方であると存ずるのであります。(拍手)  以上をもつて私の討論は終りますが、詳細な資料は議長の手元に提出いたしますので、速記録にとどめられんことを特に申し上げておきたいのでございます。  以下残りの五法案に対しましては、さらに賛成の意をつけ加えまして私の討論を終ります。(拍手
  13. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 濱地文平君。     〔濱地文平君登壇
  14. 濱地文平

    ○濱地文平君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする恩給法改正に対する三派修正案について賛意を表したいと存じます。具体的な問題につきましては、各討論がすでに行われておりますので、私はここにこれを省略いたじまして、概論を申し述べて本案に賛成をいたしたいと存ずるのであります。  遺家族援護法が、恩給復活までの暫定措置として、きわめて不得要領のまま立法されていた関係上、その不都合を是正する意味において、今回本法が制定されたることは、当然のこととして賛成をいたすものであります。従つて、今回の恩給法改正遺家族援護補償に至大の関連を有することは申すまでもございません。遺家族援護法の不徹底が、全国数百万の遺家族に非常な不平不満をもたらしておることは、天下周知の事実でありまして、親心のない吉田内閣の失政の現われと申すべきであります。(拍手)よつて、今回の恩給法は、これらの点をできるだけ是正して、戦争犠牲者に報いなければならないことは申すまでもありません。しかるに、今回政府提出いたしました改正案が、場当りで、きわめて不徹底なものでありました関係上、われわれはこれに修正を加えたのであります。  つらつら考えまするに、およそ吉田自由党内閣くらい、自主性に乏しくて、社会政策をてんとして顧みざる内閣は、前代未聞であります。(拍手)自己の提出した予算案があれだけ大幅に修正され、提出法案が次々と根こそぎに修正されても、さらに責任を顧みざるのみか、各閣僚間に一貫した思想統一はみじんもない。数々の食言をあえてしながら、責任の一切をほおかぶりしておる厚顔無恥は、憲政の冒涜であり、民主政治の怨敵として、断じて許さるべきことではありません。(拍手)  本恩給法については、社会党諸君の反対意見も傾聴すべきものがありますが、しかし、われわれは、恩給そのものの根本理念はあくまでも、国家公共に多年貢献した者に対し、老齢後生活権を獲得せしむるというのが本旨と存じますので、再軍備への前提とか、あるいは戦争責任者に恩恵を与えるというような趣旨でないことは御了承願いたいのであります。  本修正は、委員長報告通り一応了承いたしますが、政府は、遺家族が一箇年わずかに二万五千円ぐらいで生活ができるかどうか、また五万円の弔慰国債が、やみ市場で三万三千円内外で取引されているという現状を、一体御承知かどうか。一片の親心があらば、その運営におきましても、自主的に考慮されんことを強く要望するものであります。なおまた、本法成立後は、恩給担保金融の方途等もあわせて御考慮を願いたいと存じます。  最後に、私は、政府戦争途中において神奈川県小田原市に疎開した恩給局を、今日なおそのまま放任しておるがごとき無責任さをすみやかに清算して、これを東京に移転し、事務処理上迅速を期せられ、もつて受給者に遅滞なく善処されんことを強く要望して、本法修正に対し賛意を表するものであります。(拍手
  15. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。  まず日程第一ないし第四の四案を一括して採決いたします。日程第一ないし第三の委員長報告は可決でありまして、日程第四の委員長報告修正であります。四案を委員長報告通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  16. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて四案とも委員長報告通り決しました。(拍手)  次に、日程第五及び第六の両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正であります。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告通り決しました。(拍手)      ————◇—————
  18. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第七、中小企業金融公庫法案議題といたします。委員長報告を求めます。通商産業委員長大西禎夫君。     〔大西禎夫君登壇
  19. 大西禎夫

    ○大西禎夫君 ただいま議題となりました中小企業金融公庫法案について、通商産業委員会における審議経過並びに結果を概要御報告申し上げます。  わが国経済の自立体制を確立するためには、その基盤となす中小企業の振興をはかることが目下の喫緊事でありますが、このためには、その必要な設備資金及び長期運転資金を積極的に導入することが刻下の急務であることは、言をまたないところであります。しかるに、かかる資金は、長期かつある程度低利であることを必要とする関係上、一般金融機関の融通にまつことは困難であり、従つて国家資金により調達する必要があるのであります。ここにおいて、中小企業者に対する長期金融の特別な恒久的政府機関として中小企業金融公庫を設立しようとするものであります。以上が本法案を提案した理由であります。  次に、本法案の要点の概略を申し上げますと、第一に、資本は全額政府出資とし、これは一般会計からの百億円と、産業投資特別会計からの法定出資金との合計額であります。第二に、業務は中小企業者に対する設備資金及び長期運転資金の貸付を行うのでありますが、その業務の一部を金融機関に委託することができるものとしております。また貸付限度は一企業者当り貸付累計一千万円以下、貸付金利は年一割、償還期限は一年以上最長五年、すえ置き期間は一年以内を予定し、これら貸付に関する業務方法及び業務委託の基準業務方法書に記載することとしております。第三に、公庫役員については、総裁及び監事は政府任命とし、理事の任命についても主務大臣の認可を要するものとしております。なお公庫は、政府から資金の借入れをなし得るものとし、今後の追加出資とともに貸付の財源となし得ることといたしております。以上が本法律案の要旨であります。  本案は、六月十八日本委員会に付託せられ、六月二十三日政府より提案理由を聴取したのであります。七月四日質疑に入り、十五日、十七日、十八日の三日間にわたり行われ、十七日には大蔵、農林両委員会との連合審査をいたしたのであります。質疑の内容については会議録を御参照願います。  引続き十八日質疑を終了後、改進党長谷川四郎君より、本公庫出資金のち、一般会計よりの百億円を百三十億円に増額すべしとの趣旨の提案がなまれたのであります。  続いて、討論を省略し、長谷川四郎君提出修正案につき採決したところ、総員賛成をもつて可決したのであります。次に修正部分を除く原案について採決しましたところ、全会一致をもつて可決した次第であります。なお、自由党小平久雄君より、本案につき附帯決議を付すべき旨の提案があり、全員賛成の上、附帯決議を付することに決した次第であります。  右御報告申し上げます。(拍手
  20. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 討論の通告がおります。これを許します。吉川久街君。     〔吉川久衛君登壇
  21. 吉川久衛

    ○吉川久衛君 ただいま議題と相なりました中小企業金融公庫法案に対し、各党各派を代表して賛成の意を表したいと思います。  御承知のごとく、わが国の産業構造は、欧米諸国に比較して中小企業の比率の高いことが重要な特質となつており、従いまして、今後のわが国の経済自立達成のためには中小企業の健全な発達をはかりますことの必要なことは、いまさら強調するまでもないことと存じます。しかしながら、中小企業は、他の大企業に比して経済的基礎が脆弱で上ります関係上、資金、特に長期資金の不足に苦しみ、この資金不足が逆にその経済的基礎を弱化させるという悪循環に悩まされておる実情にあります。ただいま議題になつております中小企業金融公庫法案は、かかる中小企業対し長期資金の融通をはかり、もつてこれらの行う事業の振興に資せんとするものでありまして、真に時宜に適た対策と確信するのであります。  由来、中小企業は、通産省所管のまのが特に多いのでありますが、その他農林、運輸、厚生等の所管に属するまのもたくさんございます。特に農林嘱業におきましては、これに直接関係する中小企業は、業種においてもきわめて広汎であり、事業所においても非常に多数に上つているのであります。たとえば、農業に関係ある業種としては農産物の加工工業、食品工業、林業に関係あるものとしては製材業、漁業に関係あるものとしては水産加工業、製氷冷凍業等、また農林漁業の生産資材を製造する各種工業等、最も代表的な例でありますが、これらはいずれも中小企業の中では高いウエイトを占めるものであつて、その従事する人口も多数に上つておるのであります。  従来の中小企業に対する融資実績を見ますと、的確には判定しがたいのでありますが、商工組合中央金庫の実績では、全体の三割以上にも達しているのであります。のみならず、これらの業種は、たとえば農産物加工工業、すなわち澱粉製造業、搾油業のごときは、国の重要政策である農産物価格安定措置と至大な関連を持つものでありますし、製粉、精麦等の産業は、食糧政策、ひいては国民の食生活に影響するところ多大のものがあります。製材業は森林政策と密着する等、いずれも国民生活並びに国民経済再建上重要な地位を占むるものであることは異論のないところであろうと存じます。また、運輸省所管に属するものといたしましては運輸業、厚生省所管には医薬品製造業等の、国民生活に不可欠な重要部門が少からずあるのであります。これら各省所管の中小企業の業種が、ひとしく本法案恩恵に浴し、それぞれ健全なる発展をはかるべきことは、もとより当然のことであります。かかる意味において、本法案に対し心から賛意を表するものであります。  しかるに、ただいまの御報告にもありましたことく、通産委員会において付せられましたる附帯決議中、第一項にあります貸付対象については、「通産省所管の業種にウエイトを置き、」という点は何らの理由がないばかりでなく同じ中小企業でありながら、役所の管轄を異にするというだけで差別待遇を受けることに相なり、国民は法の前に平等であるべきとする憲法の精神にもとるものであると存じます。前述のごとく、各省所管の中小企業はいずれも国民経済上重要部門でありますので、すべからく通産省所管の業種とまつたく対等かつ公平に保護助成され、処遇さるべきが至当であると存じます。  以上の理由によりまして、この附帯決議から「通産省所管の業種にウエイトを置き、」とい字句を削除することを条件として賛成いたしたいと思います。(拍手
  22. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案の委員長報告修正であります。本案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第八、開拓融資保証法案日程第九、農産物価格安定法案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。農林委員会理事足立篤郎君。     〔足立篤郎登壇
  25. 足立篤郎

    足立篤郎君 ただいま議題となりました、内閣提出参議院送付開拓融資保証法案並びに不肖足立篤郎外二十三名提出農産物価格安定法案につきまして、農林委員会における審議経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。  まず開拓融資保証法案につきまして申し上げます。  現在開拓農家総戸数は約十五万戸に達し、これら開拓農民が耕作する農地の総面積は三十万町歩に上るのでありまして、わが国の食糧自給度の向上に重要な役割を果していることは御承知通りであります。これら開拓農民に対しまして、政府昭和二十三年以降、開拓者資金融通法に基きまして、長期低利の資金を直接融通いたし、開拓政策の推進に努めて参りました。さらに昭和二十五年度よりは、開拓者、都道府県及び政府がそれぞれ一定金額を醵出して借入れの担保とする開拓信用基金制度を創設いたし、これによつて開拓者が農林中央金庫から肥料資金その他の短期営農資金の融通を受け、この両制度によりまして長短両資金の融通の円滑化を期して来たのでありますが、近来開拓農民の短期営農資金に対する需要はますます増加している状況にかんがみ、今般この開拓信用基金制度に法的根拠を与え、もつてこれが整備、確立を期するため、本法案提出となつたのであります。  次に本法案の要旨をごく簡単に申し上げますと、開拓者の団体を構成員とする開拓融資保証協会を中央及び各都道府県に設立いたし、保証財源の管理、債務保証業務の運営等を明確かつ適切にいたしますとともに、政府及び都道府県の出資によるこの制度への助成の方途を明らかにする等、本制度に対する育成強化の措置を講ずることとし、もつて開拓地における農業生産力の発展と農業経営の確立とを促進しようとするものであります。  本法案は、去る六月二十五日予備付託となり、七月一日提案理由説明を聴取いたしました。次いで七月十三日本付託となり、続いて昨二十一日質疑を行いましたところ、改進党金子委員から、開拓農民は劣悪な立地条件のもとにあり、その経済的基盤も脆弱であるから、融資の利子は極力低廉とすべきであるとの御発言があり、これに対し政府側より御趣旨に沿う旨の答弁がございました。  質疑を終局、討論を省略して採決を行いましたところ、全会一致をもつて原案通り可決いたした次第でございます。  次に、農産物価格安定法案について申し上げます。御承知のごどく、農業生産力は近時著しく増大して参り、これに伴い農高物に対する統制は漸次緩和せられ、平以外の農産物は今や統制を撤廃せらるるに至りました。しかしながら、これら農産物の生産者はいずれも零細農民であります上に、農産物の特質として、出まわり期が一定時に集中いたしまして、需要の変化に即応した調節をすることが非常に困難な実情にあケますので、価格は常に相当の変動を示し、正常な価格水準がら低落する傾向も見られ、零細な生産農家に深刻な影響を与えまして、今後における生産減退のおそれのあることはもちろん、ひいては農産物の需要者及び関連産業にも悪影響を及ぼすものと考えられるのであります。かかる実情にかんがみまして、麦類につきましては、統制廃止とともに、食糧管理法の規定に基き、生産者からの申入れに応じて無制限に買い入れることといたし、強カな価格支持の方策を講じて参りました。また澱粉につきましても、昨二十七年度から一行政措置により一定数量の買上げを行い、いも類の価格安定に対する間接的支持を行うことといたしました。しかしながら、かような行政措置による臨時的対策をもつてしては十分にその目的を達することができませんので、米麦以外の重要な農産物につきまして価曲格安定の制度を確立することの必要を痛感いたしここに、本法案提出する次第であります。  次に、本法案の内容につきまして草案点を申上げ等と、第一、生切干、菜種、澱粉を対象として、生産者団体の自主的販売の調整を促進するとともに、国自身もまた必要に応じこれらの買入れを行い、農産物価格の安定をはかること、第二は、政府の買入れ数量については、生産者団体の意見を聞き、需給事情を勘案して、価格保持に必要とする買上げ数量を決定する。また必要に応じ価格の低落を防止するため、生産者団体に対し必要な勧告を行い、資金のあつせんを行うこ乏といたしました。第三は、政府の買入れ価格につきましては、農業パリテイ指数に基いて算定される価格に需給事情を織り込み、これに生産費その他の経済事情を参酌して定め、また加工品については、加工に要する経費等を加算するのであります。なお、この価格の決定については生産者団体に諮り、またその意見を尊重することといたしております。第四は、政府買入れのこれら農一産物の売渡しについては、市価に悪影響を及ぼさないように留意いたし、特定の場合以外は、原則として政府の買れ基準価格を下らないように、時価で売り渡すこととした等でございます。  本法案は、七月十七日農林委員会付託と相なり、同日提案者を代表して私から提案理由説明をいたしました。次いで昨二十一日質疑を行いましたところ、社会党芳賀委員から、大豆のごとき油脂並びに蛋白資源として重要な農産物は本法案の対象にすべきであるとの御意見があり、これに対し、提案者並びに政府側から、根本的考え方は同意見であるから、その必要の生じた場合は御趣旨に沿うよう善処する旨の答弁が、ございました。  質疑を終局、討論に移りましたところ、改進党金子委員から、附帯決議を付して賛成したい旨の御発言がございました。続いて採決を行いましたところ、全会一致をもつて原案通り可決いたしました。次に、附帯決議についても全会一致をもちまして可決した次第であります。附帯決議の内容につきましては速記録に譲りたいと思いますので、御参照を願います。  右御報告申し上げます。(拍手
  26. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  27. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告通り可決いたしました。本日はこれにて散会いたします。     午後三時九分散会