○堤ツルヨ君 ただいま
議題とな
つております
恩給法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
条件付賛成討論を行うものでございます。
わが
日本社会党は、
恩給制度そのものの根本的改革を考慮しつつあり、
国家財政ともにらみ合せ、文官並びに旧
軍人を通じて、一層合理的な
年金法とする所存であります。このたびも、できますならば、
年金法を
提出するつもりであ
つたのでございますが、あまりに全面的かつ根本的
修正でありますので、技術的また時間的に、代案を出すことは今期中は不可能に近く、
修正案の
提出を一応次会に譲り、わが党の方針を明らかにしまして、今回は
自由党以下保守三派の
修正案にやむなく
賛成しておくことにいたしました。(
拍手)
わが党の
恩給制度に対する考え方は、従来の
恩給法理に対する考え方と、
社会保障制度に対する考え方とを総合いたしまして、そのときどきの
国家財政とにらみ合せて、合理的に運営しようとするものであります。国の経済事情が許すならば、
恩給制度、
社会保障制度の二本建で行くべきだと思うのでありますが、貧弱な現下の
日本経済は、とうていこれを許しません。できるだけ保護を広く、かつまた下に厚く、下の
範囲を拡大して、
社会保障的な考え方に重きを置くべきであります。一部には、
社会保障を受けるのは心外だ、われわれはか
つての
恩給権を主張するのだという声もありますが、文官の場合はわずかに二十五万でありまして、どうにか
恩給権理論と歩調を合せることができますが、今回のように、旧
軍人、
傷痍軍人、
遺家族、その他
戦争犠牲者ということになりますと、その数一千万になんなんとし、今回の
政府原案あるいは保守三派の
修正案程度では、少しも
恩給権理論に合わないのでありまして、ただ言葉の争いにほかなりません。しかも、その予算総額は六百億という少からざるものであります。これだけの大金を使うのなら、もつとより以上に
国民の生存権を考えつつ、能率的に使うべきであると存じます。(
拍手)
そこで、わが党は、次のごとき構想を持
つていることを明らかにし、
原案並びに
修正案に
反対というのではなく、いな、むしろ、もつとよいものにしたいという考えから、
条件付賛成をいたすものであります。
以下、わが党がはなはだ不満とし、なおかつ、かくあらねばならぬという数点を指摘して、その主張を明らかにしておきたいと存じます。
第一に、
政府みずからが前
国会以来五大
法案の一つだと称する
本法は、再
軍備に連なる
軍人恩給の
復活であるという考えを払拭することはできません。
政府は、MSAの援助により、いわゆる木村試案といわれる警備五箇年計画なるものをも
つて保安隊をますます充実強化し、か
つての軍国
日本を再び実現せんとし、
国民の一部にも旧軍国
日本へのノスタルジアを持つ者さえある。また、保安隊が、ラヂオを通して、
国民の前で自分のことを
軍人々々と指摘している今日、まさに憲法をめぐ
つて重大危機に直面しておりますが、これの伏線として将来に備える意図が明らかに見えており、逆コース、反動吉田内閣の性格を露骨に物語
つております。(
拍手)安隊の処遇については何らこれと関連はないと
政府は答えておりますが、保安隊が正真正銘の軍隊に晴れて返り咲いたときには、
本法への横すべりは疑う余地もありません。
戦傷病者、戦没者
遺族等を国が償わなければならないという
国民感情を利用して、また
戦争犠牲者を償うという美名のもとに、再び指揮棒をとらんとする、か
つての
職業軍人に応えなければならぬ
政府の欺瞞策であることは否定できますまい。(
拍手)その証拠に……(「
反対しろ」と呼び、その他発言する者多し)まあ黙
つて聞きなさい。(笑声)——その証拠に、過ぐる本年四月、衆書院の選挙の際、われわれでなければ
恩給法の
改正並びに
遺族援護はや
つてくれる者がない、社会主義政党は
遺族や
老齢軍人を顧みない、
恩給法に対して
反対してじやまをすると宣伝これ努めた保守政党の方々のあさはかなふるまいを思い起しましても、思い半ばに過ぎるものがあります。(
拍手)ここに、わが党は、
軍人恩給の
復活には断固として
反対するが、国のための
戦争犠牲者である
戦傷病者、戦没者
遺族、
老齢軍人に対しましては、国が完全な
保障をしなければならないということを明白にいたします。
しこうして、第二に問題となりますのは、軍隊のない今日、旧軍隊の十七級をそのまま生かして、階級による
支給差別をつけておる点であります。もちろん、保守三派の
修正案は、下を
兵長まで切り上げて、やや下に厚くとの志を生かしてはおりますが、それにしても十四階級は現存することになります。何がために十七階級を法の文面にうたつたかと
政府にただしますと、
支給額の
基準を定めるために持ち出したと答えております。
基準をきめるためにどうしても必要ならば、算定の際これを使つたとしても、別の記号でも考慮すべきが当然でありますのに、
国民に納得の行かぬ旧十七階級を正々堂々と打出して、何ら
政治的考慮を払おうとしない
政府の態度は、まさしく再
軍備への伏線なりという証拠を如実に物語
つております。(
拍手)語るに落ちるとはこのことでございます。それなればこそ、馬が座敷に上
つてあぐらをかいたたぐいだと世間で悪評されるのでありまして、特に不要な疑惑をさえ招く原因ともな
つております。
しかしながら、わが党は、第三に
本法ととつ組んで真剣に考慮いたしますのは、
老齢軍人並びに
普通扶助料受給者、すなちち
軍人遺族に対しては、
社会保障の
見地に立
つて、これが
生活を
保障しなければならないということでございます。か
つては
軍人として国のために働いた
人々が、当時薄給に甘んじ、今は苦しい敗戦下に、経済上の獲得能力を喪失して、
生活苦に追い込まれている状態を
国家が見捨てるというがごときは、も
つてのほかであります。当然これは
保障の対象として考えられなければなりません。また、旧
軍人の
遺家族が
扶助料を停止されて参りました
占領中の事情は、
国民ひとしく同情にたえ得ないところでありまして、これが
生活保障も、
老齢軍人同様、国がなすべきことは必然であります。
さらに第四に、
戦傷病者、戦没者
遺族等に対しましては十分な
国家の償いがなされなければならないことは、前々
国会以来わが党が力説して来たところで、御
承知の
通りであります。防衛とか、自衛とか、祖国再建とかという言葉を
国民の前にしいる前に、
政府みずからこれら
戦争犠牲者への血もあり涙もある償いをすべきで、われわれは、若年の旧
軍人や、
高額所得者や、旧階級による高級者への高額
支給を避けて、これらの金を真の
犠牲者に重点的に償うべきであると主張するところに、
原案や
修正案との思想の違いがあります。(
拍手)従
つて、わが党は、
社会保障制度の確立されるまで、
老齢軍人、
戦争犠牲者に、暫定的
措置として特別臨時立法をも
つて臨むべきであり、
軍人恩給の
復活をうまくこれにからませて、
国民の目をごまかさんとする
政府や保守三派の行き方に対して、徹底的にその主張の異なることを明らかにいたします。が、しかし、公聴会にも反映されたことく、一日も
支給の早からんことを望む一千万
受給者の背に腹はかえられぬ
立場や心情を考えて、このたびは一時同調することにいたしましたが、断じて欺瞞
法案に眩惑されているのではないことを御
承知願いたいのであります。
以下、具体的にわが党の案を示しておきたいと思います。
普通恩給については、
若年停止を五十五才とし、これに半額
支給、六十才よりは全額として、厚生
年金の
支給年齢と同様にします。しかも、老齢の年齢を高くすれば、逆に高級
軍人のみが対象となるおそれがあることも考えなければなりません。文官の
恩給はもちろんこれに準じて
改正されるべきであります。
次に、
高額所得者は三十万円として、これより以上の収入のある方々は
支給を停止します。旧
軍人でも、戦後方向転換をして社会的に優位にあり、年間収入三十万円以上もある方は、やむにやまれぬ
犠牲者にその金をまわすべきであるとの考えであります。(
拍手)
次に、
仮定俸給額は十七階級を撤廃しなければなりません。所得額によ
つて、わが
日本社会党は次の五階級といたします。社会情勢にマツチさせるべきであるとの主張を持
つておるからであります。すなわち、
大将以下少佐までは少佐に引きおろす、二等兵以上
兵長までは
兵長に切り上げて、最高を二十万円とし、最低を七万円として、
支給率はこれの三分の一とするのでございます。また、左派社会党のごとく、
普通恩給をフラツト制にとの主張もありますが、
一般国民に対する養老
年金制度の確立さえない今日、これは適当でないとの考えを持つものでございます。
次に、
軍人遺族の援助料は、
普通恩給の場合と同じく五階級とし、
普通恩給の二分の一を
支給しますが、
家族加給は一人につき月額四百円、やはり年三十万円以上の
高額所得者に対しては
支給を停止して、
普通恩給の場合と同様に扱うことにいたします。
次に、一時
恩給を認めないという
政府の考え方は、百五十万の受給資格者を失格せしめる原因となり、大きな本
改正案の欠陥であり、また筋が通らないとして、各党から
委員会においてその非を論難されて参りました。書類が不備であるとか、とうてい
調査不可能などと逃げを打
つておりますが、実は
本法の
改正を五百七十七億というわくの中にはめようという意思以外に何ものもなく、もとの
応召軍人を中心とする一兵卒への誠意の丁片のかけらさえもないという
処置とな
つております。(
拍手)か
つて戦時中、将校商売、下士勝手、兵隊ばかりが国のため、という歌が戦場や兵営で歌われましたが、その精神が依然として
政府の
本法改正の中に今日なお歴然とうかがえて、はなはだ遺憾であります。かてて加えて、
在職年通算の問題で、七年以上継続していないとの
理由で、二度三度
応召のうき目にあ
つて北に南に転戦させられた
人々を顧みないという行き方は、いかがなものでございましよう。上官の命令一下、たまのもとに命をさらした、か
つての忠義な兵隊を除外することは、常識さえも疑われるのでございまして、おそらくこれら英霊は浮ばれますまい。
遺族も涙をのんで泣寝入りであります。お互いにわが身に置きかえてみれば、事理はおのずから明らかであり、どうしても
国家経済が許さないというのならば、将来に問題を残して、次期年度には、
恩給からはずして別わくとしてでも、しかるべき処遇を打立てなければならないことを強調いたします。
次に、
戦死者の
公務扶助料であります。
普通公務と
特殊公務の
区別をなくしたことは当然として、またここにも
階級差のあることを認めぬわけには行きません。復員局の陸海軍
戦死者推計
報告によりますと、百六十七万余の戦没者のうち百五十二万が元上等兵、
兵長、伍長、軍曹、曹長などの下士官、兵であります。ゆえに、これらの平均をと
つて標準を定め、
戦死者を手厚くとの精神を盛らんとするものであります。
一片の赤紙による
応召の戦没者の大多数の平均の上位ならば
国民感情とも合致するものであるとわが党は信じます。
次に、
傷痍軍人の
増加恩給についても、厳として
階級差を撤廃し、症状別によることを
原則とします。一個の人間が、かたわになるほどのけがをしたとき、金持ちだから、上層階級だから、そめ傷は値が高いということが、
民主主義のもとに許されましようか。(
拍手)貧富、階層の別なく、一つの生命は同じ法のもとで平等に扱われ、
保障されております。しかるに、旧
軍人の
階級差を
傷痍軍人にまで強制して、将官の傷ならば高く償うが、元一兵卒の傷ならば、同じ傷でも十七階級にわけて安く償うておけばよいという
政府の行き方には納得できません。旧態依然たる階級意識を捨てて、その差を撤廃し、
普通恩給を合せて、せめてものねぎらいの対象にすることにしなければなりますまい。
さらに、七項症以下四
款症までが、三派の
修正によりましてその対象と
なつたことは御同慶にたえませんが、同時に、これらの方々には
年金として
支給し、また一目から四目までは
年金として差上げるべきものと存ずるのでございます。十五億ないし十九億の
国家予算をさらにプラスして、若年者や
高額所得者よりも、むしろ
傷痍軍人全部を対象とすることにしなければなりますまい。白衣の
傷痍軍人が橋のたもとにギターをかなでて募金をし、街頭に物こいをする、これらの目をおおわしめる社会問題を幾多投げかけておる
傷痍軍人の
生活実態は知り過ぎるほど知る吉田内閣が、見て見ぬふりをして、法のわく外にこの
人々を捨て去らんとする精神は、容赦できません。飛行機や、戦車や軍艦、鉄砲のたまなどと同様、
戦争の元手に人の子や父をさんざん使
つて、かたわにし、
戦争に負けたから、もうお前たちはしかたがないと言わんばかりに、こわれた兵器同様、社会の片すみに泣寝入りせよというのは、どうしてもふに落ちません。保安隊に愛国と挺身を訓練しつつあるという吉田
政府の再
軍備方針との矛盾は、何と割切つたらよいのか。わが党が第一目以下第四日までに年間二万円の一時金をも
つてこれを償えという主張は、ここに根拠があるのでございます。(
拍手)
最後に、
国家総動員法の対象を含め、船員、
国民義勇隊及び当時の
国家総動員法等に基いて徴用され、昨年度の
援護法の対象に
なつた方々を全部これの
適用者としなければならないことも、特につけ加えておきたいと存じます。
戦争犯罪人の死刑にされた
人々、獄死された
人々につきましては、改進党から御所論がございましたから省略いたしたいと存じます。
最後に、
政府に申し上げておきたいのは、全国からわれわれ代議士の手元に集ま
つて参りますところの
戦傷病者、戦没者
遺家族の不満の声は、その数を数、えることができません。当然
公務死として、またこれに準ずるものとして、
国家の償い並びに
補償を受けなければ英霊が浮ばれない、仏が浮ばれないというところの
遺族の声、現に大臣に質問をいたしましても、大臣は、現在
援護庁において十万の夫裁定のものがある、その未裁定のものはほとんど査定困難で、難事中の難事だと答えておるのでございます。
援護庁まで書類の届きましたものはまだましな方で、市町村長の手元で、また県の世話課で、とうていこれは対象にならないとい
つて捨て去られたものなどを考えますときに、二、三十万は苦情を申し、国を恨んでおる
遺族、
戦傷病者のあることを忘れてはなりません。(
拍手)もし
政府に誠意があるものならば、
本法につけ加えるに苦情処理機関の設置をも
つてして、これらの英霊にこたえ、
遺族の
補償をなすべきが誠意ある
国家としてのあり方であると存ずるのであります。(
拍手)
以上をも
つて私の
討論は終りますが、詳細な資料は
議長の手元に
提出いたしますので、速記録にとどめられんことを特に申し上げておきたいのでございます。
以下残りの五
法案に対しましては、さらに
賛成の意をつけ加えまして私の
討論を終ります。(
拍手)