○横路節雄君 私は、
日本社会党両派を代表いたしまして、
昭和二十八年度
一般会計暫定予算補正(第1号)、
昭和二十八年度
特別会計暫定予算補正(特第1号)及び
昭和二十八年度
政府関係機関暫定予算補正(機第1号)については、
政府は撤回し、これをすみやかに組みかえ、再
提出すべしとの
動議を
提出し、その
趣旨弁明を試みんとするものであります。(
拍手)
本
動議を貫く基本方針は、
昭和二十八年度予算案が成立しないままに、第十五特別
国会で衆議院が解散されたため、四月からの新会計年度は暫定予算によ
つて発足し、これがため各般の行政に支障や渋滞を来し、長期の財政計画はもちろん、各種の事業計画の実施が危ぶまれ、さらに
国民生活にも重大な脅威を与えている
現状からして、われわれ
日本社会党両派は、ここに
政府提出の予算三案に対し、まず第一に
国民生活を安定ざせ、その
生活に脅威となる諸点をすみやかに除去するため
緊急対策の費用を計上し、さらに長期の事業計画上、今にして行わなければ、その施策が遂には実行できず、国策上支障を来す重要なる諸点について組みかえをなしたのであります。
従
つて、組みかえ要綱の第一点といたしましては、国家公務員、地方公務員の夏季手当を一箇月支給することとし、これがために百三十二億円増額計上することであります。昨日の
予算委員会におきましても、吉田総理は、みずから出席されまして、綱紀粛正に関する
質問に答えて、わが国の国家公務員並びに地方公務員は薄給に甘んじてよく精励されていると申されているのでありまして、
政府みずからが
政府職員は薄給であることを認められているのであります。しかし、
政府職員は、吉田総理が言うように決して薄給に甘んじているのでなくして、大いに不満を持ち、憤激を感じているのでございます。(
拍手)われわれは、吉田内閣が、
政府職員に対する待遇改善についてはまつたく法律を無視され、国家公務員、地方公務員の
生活権についてはまつたく顧みないという
態度を指摘いたしたいのでございます。
昭和二十三年十二月、第二次吉田内閣の手で国家公務員法は
改正され、国家公務員の団結権並びに争議権を剥奪し、それにかわるものとして人事院を設け、常に国家公務員の
生活の実態
調査をなさしめ、
政府並びに
国会に対して、人事院に給与ベース改訂について勧告をなさしめ、
政府はそれに基いて実施するようにいたして以来、今日までただの一回も、この人事院の勧告
通り実施したことはないのであります。(
拍手)ことに、昨年八月一日付をも
つて、一万三千五百十五円べースを五月に遡及して支給するよう勧告があつたにもかかわらず、
政府は一万二千八百円べースを十一月から支給するようにし、
日本社会党両派並びに改進党の野党三派の共同修正案たる一万三千五百十五円ベース、十一月から実施までも、
自由党の
反対によ
つてこれを否決したのでありますが、さすがに
自由党も寝ざめが悪かつたと見えて、給与ベース改訂を含む
昭和二十七年度補正予算通過にあた
つては、わざわざ附帯決議をつけ、公務員の給与ベースをすみやかに改善することとの条項を入れ、遂に〇・二五箇月分の追加実施をせざるを得ないはめに
なつたことは、御承知の
通りでございます。さらにまた、十二月二十四日、参議院の人事委員会においては、「本給与ベース実施の法律案に対し、すみやかに合理的改訂を行うことをなすとの一部修正をいたし、参議院の本
会議を通過して衆議院に回付せられ、本修正案は、本
議場におきまして、
自由党の諸君の全面的な賛成のもとに、この修正案が成立いたしているのでございます。これらの経過を見ましても、
政府みずからが四月一日から給与ベースの改訂を行うことは当然の
責任であるにもかかわらず、暫定予算であるという建前においてこれが実現を見ないことは、はなはだ遺憾にたえないのであむます。
かかる
現状からいたしまして、今回われわれ
日本社会党両派が、本予算に計上されている期末手当〇・五箇月分一を増額修正し、期末手当を一箇月分とすることは、当然というよりは、むしろ過少に過ぎると言わなければならないと思うのでございます。(
拍手)半年間の公務員の
生活実態から見て、赤字が累積していることは当然でありまして、この薄給にあえぎながら行政の第一線に立
つて努力している国家公務員、地方公務員の
生活を守
つてあげることは、われわれの当然の任務と言わなければならないのでございます。(
拍手)この点、今までの経緯等から見ましても、
政府与党たる
自由党は、何よりもまず期末手当一箇月分については双手をあげて賛成していただきたいと思うのでございます。
第二の点につきましては、凍
霜害対策として、特別国家補償及び助成費として十億円を新たに計上すること、租税の減免
措置といたしまして五億円減税を行うことといたしたのでございます。この点につきましては、先ほど
農林大臣から、この凍
霜害の
被害は九十一億になるというお話があつたのでございます。大体、
政府ははなはだ怠慢でございまして、今春の凍
霜害については、すでに六月の暫定予算を出す前にその用意をしなければならないのに、この六月の暫定予算に関する
日本社会党両派の修正案に、遂に
政府はあわてふためいて、先ほど御
答弁のように、五億八千九百万円の
措置をいたしたことは、九十一億から見ましても、当然過少に過ぎるものでございまして、この点、われわれといたしましては、この広汎なる
被害の実況から、この点の組みかえの要求をいたすものであります。
第三に、中共引揚者等の援護費を含む援護
資金を五億円増額することでございます。本年三月末より中共の引揚者が続々と帰られ、終戦後十年近い歳月を経て故国に帰られ、肉親の者と会うことができた喜びは、察するに余りがあるのであります。今回の
引揚げの成果は、まことに
国民外交のたまものでありまして、中共と正常な
外交を結ぶに至らない吉田内閣の弱体をも
つてしては、とうていこの成果は上らないのでございます。(
拍手)すでに帰られた一万五千の人々は、それぞれ
生活の道を求められておりますが、何しろ一時
資金一万円、帰郷旅費千円ないし三千円、帰郷雑費一千円の少額をも
つてしては、自立の道をたどることは不可能でありまして、従
つて、この際、中共引揚者の援護
資金を含めて援護
資金を五億円増額し、これを生業
資金に充て、あるいは住宅問題の
解決に当
つてこそ、引揚者の援護の目的が達成されるのでございます。
第四は、
国民健康
保険の国庫負担を五億円増額計上することでありますが、
国民健康
保険制度は社会保障制度の根幹をなすのでありまして、
昭和十三年施行以来幾多の困難に耐えて、戦前はほとんど
全国に普及したのでありますが、戦後経済的混乱の影響を受け、現在では戦前の二分の一まで減少し、今やまつたくの危機に瀕しているのでございます。それならばこそ、昨年十二月十七日の
昭和二十七年度補正予算の中において、われわれ
日本社会党両派は、改進党の協力を得て、療養給付費に対する二割の国庫負担をすべきであるとの結論により、予算の修正案を
提出いたしましたが、これまた
政府与党たる
自由党の
反対にあい、遂にこれが実現を見なかつたのであります。しかし、遂に
政府も輿論に抗しかねて、先般の
国会においては療養給付費の一割五分を国庫負担にせざるを得ないような状態になりましたが、われわれ
日本社会党両派といたしましては、暫定予算とはいえ、民生安定施策の実施であり、社会保障の確立の基盤をなすこの
国民健康
保険に五億円を増額計上することによ
つて、療養給付費二割の実現をはからんとするものでございます。
第五の点といたしましては、失業
対策費を四億円増額計上いたしまして、日雇い労務者の夏期手当に充当することであります。今日、わが国におきましては、職業安定所に登録している日雇い労務者は約三十万人でございまして、これが給与は、地方において一日平均百八十円ないし二百六十円、
東京、大阪等の大都市においては二百六十円ないし三百三十円であり、しかも、これが就労日数は、地方において、平均一箇月のうち、わずかに十六日ないし十七日、
東京、大阪等において、わずかに二十三日ないし二十四日であります。これによ
つて月平均の賃金を見るならば、地方では三千円ないし四千円であり、
東京、大阪等、完全に就労した場合においても、なお五千五百円ないし七千円であ
つて、私は、この実態を通して見ても、いかに吉田内閣が労働
対策に欠如しているか明らかであると思うのでございます。(拍子)どう見ましても、吉田内閣の労働
対策は、労働者の
生活を窮乏に陥れて、遂に
生活に困つた労働大衆をいかにして取締るかという取締費には十分金をかけているようであります。われわれは、ここに、日雇い労働者の
生活を守るために、五日分に相当する夏期手当を支給するために、四億円の増額計上をいたしたのでございます。
第六は、母子福祉
資金貸付の経費を三億円計上することであります。ききに成立を見ました母子福祉
資金の貸付等に関する法律に基いて、四月一日から本法律は施行されているのでありますが、
全国の未亡人百七十万、母子家庭七十六万は、これが
資金の貸付を一日千秋の思いで待
つているのでございますが、しかし、年度の四分の一を過ぎている今日、なお一銭も計上されていない
現状でございます。生業
資金五万円を目当に、その
生活の立上りを
考え、また育英
資金に期待をかけている母子家庭等を
考えました場合に、この組みかえを要求することはあたりまえであると思うのでございます。
第七点といたしましては、積雪単作地帯における公共事業の費用を五億円増額計上することでございます。北陸東北北海道等の積雪単作地帯は、その寒冷度、積雪度によりまして、公共事業は大体十一月中旬までに完成しなければ、その重要資材たるコンクリート、土管等はその用をなさないのであります。本暫定予算の中には、おおむね公共事業が十二月までに完成を目途といたしまして、
昭和二十七年度の事業費の六分の一を計上したにとどまり、新規事業についてはまつたく計上されておりません。このため、都道府県、市
町村等においては、公共事業を相当手控えている
現状であ
つて、従
つて、
昭和二十八年度本予算がかりに
予定通り七月三十一日に成立いたしたとしましても、その予算の執行は九月の初旬になることは明らかであり、当然北陸、東北、北海道等においては霜柱が立ち、すでに降雪を見て、実際には事業に着手できない状態でございます。ことに港湾漁港等の事業は、予算執行の九月初旬等になれば、もはや北辺の海は荒れて、作業はまつたくできないのでございまして、かかる観点からも、ぜひ最小限度のものといたしまして、積雪寒冷地帯における公共事業等に五億円増額計上することにいたしたのでございます。
第八の点といたしましては、以上の財源として、六月分の保安庁経費三十三億円を削除し、他に国庫余裕金及び大蔵省証券の発行によることにいたしたのでございます。今日の保安隊は、まさにわが国のふところに火薬庫を抱いているような、命取りになることは明らかでございまして、この保安隊こそ、まさにわが国の平和と独立を脅かすようになることは明らかでございます。従
つて、われわれ
日本社会党両派は、再軍備に
反対し、
国民の
生活安定こそわが国の平和であるとの観点に立
つて、保安庁の経費を削除いたしたのでございます。(
拍手)
以上の予算の組みかえによ
つて、真に働く大衆が生きがいのある
生活が保障され、また応急
対策として一日もゆるがせにできない施策を実行し、ともすれば社会の片すみに追いやられんとしている人々に自立の道を与え、国の施策の長期の事業計画に支障のないようにとの
立場からこれを提案いたしたのでありまして、この点、
国民生活に脅威を与え、長期の事業計画を実施不可能ならしめる
政府原案に対して
反対し、われわれ
日本社会党両派の組みかえ案を、あえて与党たる
自由党の諸君並びに吉田内閣に、強く
国民の名において要求いたし、
日本社会党両派の組みかえ要求
趣旨の弁明を終る次第でございます。(
拍手)