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1953-05-29 第16回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十九日(金曜日)  議事日程 第六号     午後一時開議  第一 日本銀行政策委員会委員任命につき同意の件     ————————————— ●本日の会議に付した事件  在日華僑送還並びに在中ソ胞引揚げに関する緊急質問柳田秀一提出)  凍霜害対策に関する緊急質問平野力三提出)  選挙違反取締状況に関する緊急質問世耕弘一提出)  出光興産によるイラン石油輸入に関する緊急質問大橋忠一提出)  日程第一 日本銀行政策委員会委員任命につき同意の件  米価審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第1号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機第1号)  日本放送協会経営委員会委員任命につき同意の件     午後六時五十一分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、柳田秀一提出在日華僑送還並びに在中ソ胞引揚げに関する緊急質問をこの際許可されんことを望みます。
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  在日華僑送還並びに在中ソ胞引揚げに関する緊急質問を許可いたします。柳田秀一君。     〔柳田秀一登壇
  6. 柳田秀一

    柳田秀一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、現在問題になつております在日中国人の送還問題、あわせてソ連抑留邦人引揚げについて、いささか、政府、特に岡崎外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。(拍手)  今次中国からの同胞帰国に関しましては、中国紅十字会の好意により、今日まですでに約一万五千名近くの帰国者を迎える運びと相なりました。ただその日の来るのを一日千秋の思いで待ち焦がれておりました留守家族の方々の喜びはもとより、われわれ同胞といたしましても、真に御同慶にたえぬところであります。しかしながら、その反面、在日中国人の送還問題はいまだに解決を見るに至つておりません。この問題は、ただに中国人の問題ばかりでなく、その成行きいかんによつては、今後の邦人帰国に関連して重大な影響があり、多大の不安を留守家族に投げかけておると同時に、また国際問題として、さらに人道的の立場から、政府誠意ある善処を求めんとする声は、国民のひとしく抱くところであると信ずるのであります。(拍手)  現在、大陸へ帰国希望しておる在日中国人の総数は約一千名であります。すでに東京華僑総会手続を完了しておる者は五百六十名、目下手続中の者を含めて七百名近くの者が日本政府乗船許可を待つておる状態であります。外務省は、当初、在日中国人帰還反対しないと言明しており、その意図するところだけはわれわれも了承するのでありますが、たまたま台湾政府帰還船安全保障を求めたところ、往航には乗客貨物を乗せないという条件をつけられたことから問題が派生しているのであります。そもそも台湾政権安全保障を求めたそのこと自体が、国際公法上も疑義があると思うのでありますが、(拍手)それは他の機会に譲ることといたしまして、真に政府在日華僑や留学生を送還する意思があるならば、またこのことはひいては邦人帰国にも当然響いて来ることでありますから、何ゆえ三月に第一次船が出発した当初から、もつと誠意と熱意をもつて解決に当られなかつたか、はなはだ了解に苦しむのであります。(拍手AFP電によりましても、二十二日現在では、台北政府外交部は、本件に関し日本政府からまだ正式交渉を受けていない旨言明しております。政府は、第一次船以来三箇月にもなんなんとする今日まで、何ゆえ台湾政府に正式に交渉して、解決への努力を、中国側から催促を受けるまでもなく、前もつて払われなかつたか、まずもつてお伺いをいたします。  大体、私の仄聞するところでは、外務省は、台湾政府に正式に話合うよりか、こつそり、ほおかむりをして、最終帰還船に乗船せしめるというような、はなはだ姑息な、甘い考え方で進んで来られたのが、その間の消息であつたようであります。こういうような、引揚げという人道的な問題に、外務省態度に何ら気魄が感じられないのは、はなはだ遺憾であります。(拍手)ところが、五月十九日、中国紅十字会から、日本人帰国者を輸送するため、中国へ来る第四次船に在日華僑が乗船できるかどうかお知らせ願いたい、第四次船の来航月日、到着港はその上で通知する旨の来電新聞が報じて、これが表面化し、国内問題となり、国際問題となつて、ようやく最近台北芳澤大使に訓令を発しておる始末であり、ここにも、その都度外交の本領を遺憾なく発揮しておられるのであります。事態をここまで紛糾せしめましたのは、明らかに政府の怠慢の結果であり、政府責任であると思うのであります。  もとより、本問題は、例の交戦国間の中立国を介しての引揚げ交換船のごときものとは性質を異にしております。日本人帰国問題とは別個な問題でありますけれども、しかしながら、すでに北京会談での一応の了解事項でもあり、また四月には、きわめて穏やかな催促状が来ております。さらに、中国側物心両面から誠意好意をわれわれに示して同胞帰還せしめておる事実に対しましても、われわれは感謝するところであり、中国紅十字会からの来電趣旨はよくわかるのでありまして、しかも中国人送還の費用は一切中国で負担するとさえ申し出ておるのであります。われわれといたしましては、人道的な立場からも、国際儀礼の上からも、今後の日中両国の友好の上からも、中国に報いるのはむしろ当然と思うのであります。(拍手)  第二にお尋ねいたしまするが、本件が問題になつてからも、黙認の形で了解が得られるものと期待しておられるようでありまするが、今日までの交渉の経過と今後の見通しを、政府責任をもつて、きわめて明快にお示し願いたいのであります。  さらに第三には、不幸にして台湾政府了解が得られなかつた場合は、一体いかなる対策をお持ちになつておられるか、この点も明らかにしていただきたいのであります。もちろん、帰還船以外の船をチャーターする道もないではありませんが、なるべくならば中国側希望する往船を利用するのが、最も常識的であり、かつ合理的であると考えるのであります。  第四に、台湾籍民中国本土帰還は困難の旨、昨日の外務委員会において倭島局長が答弁しておりますが、この問題は、昨年の十三国会で、出入国管理令及び外国人登録法に関連して、岡崎外務大臣が、国籍をどこかの国籍に強制してとらせるようなことは一切いたしません、自由にいたしますと答弁しておられるのであります。また、このことは、国際法から見ましても常識であると思うのでありまして、たとい台湾生れであつても、本人自由意思により中国本土帰国希望する場合、何ゆえ日本政府がそれに干渉せられるか、この点も明らかにしていただきたいのであります。  第五に、花岡鉱山等で殉難いたしました遺骨送還の問題も、これは初めから問題になつておりまして、むしろ丁重に、人を派して、そうして送り届けるのが礼儀であると思うのでありまするが、しかも、華僑側からは再三要望しておるにかかわりませず、いまだに実現いたしませんのは何ゆえでありますか。まさか遺骨乗客とも、あるいは遺骨を非人道的に貨物ともお考えになつているということは、おそらくありますまい。しからば、台湾政府の言うところの条件には何ら抵触しないはずでありまするが、いまだに実現しませんのはどういう理由か、これもお示し願いたいのであります。  以上、私は、質問と同時に、最初外務省意向に基きまして店を畳み、家を売りなどして、東京、大阪に集結し、ただいちずに帰国船を待機し、あるいはその日の生活にも非常に困つておりまする中国人のためにも、またこの問題に関連して、万が一にも邦人帰国に支障を来すようなことのないためにも、一段と外務省の奮起を要望し、政府責任において早急に解決できるよう期待する次第であります。  なお、この機会に承つておきまするが、ソ連抑留邦人引揚げに関して、最近の新聞は明るい見通しを報じておるのでありまするが、一、二お尋ねをいたしておきます。  ソ連になお抑留されておりますところの邦人の人数で、その後政府で判明した数は幾らになつておりますか、まず承ります。  なお、かつてのナホトカからの引揚げは、当時連合国相互の処理として、ソ連からマツカーサー司令官に身柄を引渡すというような形で取扱われたと承知しております。ところが、今度ソ連から引揚げが行われるとするならば、現に中国との間に行われておりまするような形式によるのか、それとも政府みずからの責任においておやりになるのか、その辺のところをお示し願いたいのであります。いずれ相手の出方を見た上でとお答えになると私は思いますけれども、常識的に考えても、おそらくソ連として吉田政権相手としての引揚げは期待できないのではないかと憂えるのであります。  さらにお尋ねいたしますが、この引揚げは、本人留守家族にとりましては、まことに死活の問題であります。先般も東京全国留守家族の代表が集まりまして、政府善処方を要望しておるのであります。この際、残留邦人の数あるいは死亡者に関しても、なお残された問題も多々あろうと思うのでありまして、政府においては、ソ連民間使節を派遣されて、積極的にソ連抑留者引揚げに協力され、また働きかける意思があるかどうか。これはきわめて私は重要なことと思うのであります。また望ましいと思うのでありまするが、そういう意思があるかどうか、承りたいのであります。  こういう点に関しましては、なるほど政府面子もありましよう。しかしながら、どうか人道的の立場に立ちまして、面子だとか形式論にとらわれることなく、きわめて率直に、きわめて謙虚なる態度お答えを願いたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  7. 岡崎勝男

    医務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  今のお話のように、この引揚げにつきましては、事の善悪は別としまして、国民政府中国の港を封鎖しておる建前をとつております。従いまして、引揚船に対し思わぬ故障の起ることを防ぐために、あらかじめ中国国民政府に対して安全を保障してもらう措置とつたのでありますが、そのときに、いわゆるノー・カーゴ、ノー・パッセンジャーという条件をつけられたのであります。しかしながら、政府としては、国内におりまする中国人をその希望に従つて送り返すことについては、何ら反対はないのでありまして、できるだけその希望に沿いたい意向でありまして、初めからそのつもりで努力をいたしております。ただ外務省としましては、国民政府を無視して、こつそりと送り出すという方法はとりたくないのでありまして、当初より正式に当地及び台湾交渉いたしまして、その了解を得るように努めておるのであります。ただいまのところ、いろいろ困難な事情はありますけれども、このことは邦人帰還にも直接関連のあることでありますから、国民政府としても何らかの理解を必ず与えてくれるものと信じております。  なお台湾籍民につきましては、国民政府が非常に反対しておるのは事実であります。われわれは、台湾籍民といえども、その希望に基いて海外に出ることについては別に反対いたすものではないのでありまするが、ただ国民政府が、この特殊の引揚船によつて台湾籍民を中共に送り返すことについて特に反対をいたしておるのであります。この事情はやはり考慮しなければならないと考えております。他の方法ならば、従来も、台湾籍民といえども日本から海外には自由に出ておるのであります。  なお遺骨の問題につきましては、別途善処するつもりでおります。  さらにソ連引揚げの問題につきましては、終戦以来、手紙その他の方法によりまして、とにかく、いつか、ある時期にソ連の地域内で生存しておつたと判断される者は一万九千八百五十二人であります。しかし、その後長く消息がとだえておりまして、昨年からまた再び往復はがき等で、ウラジオ経由で、生存のわかつて来ておる者がありまするが、これは、ただいまのところ、総計して約千四百名であります。その間に、ずいぶんソ連地区からあるいは満州方面へ移動した者もありましようと想像されまするし、また中には、不幸にして死亡された人もあるかもしれないのでありまして、この一万九千名余りの人と、ただいま最近のはがき等で判明しました千四百名との間に、まだどれだけのわからない者があるかは、実は判明しておらないのであります。しかしながら、こういう人たち帰還ということが実現し得るものでありますれば、政府としては、時に家族及び本人考えを察しまして、むずかしい条件等はもちろん言うつもりはないのでありまして、たとい、ただいまの引揚げ方法のように、ある種の人民管理方式のようなものを日本国民に押しつけようとされましても、それで帰還ができるといたしますれば、われわれ十分に考慮しまして、とにかく帰還を促進するという方に全力を傾けるつもりでおります。(拍手)      ————◇—————
  8. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、平野力三提出、凍霜害対策に関する緊急質問をこの際許可されんことを望みます。
  9. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。凍霜害対策に関する緊急質問を許可いたします。平野力三君。     〔平野力三登壇
  11. 平野力三

    平野力三君 私は、ただいま議題となりました凍霜害対策に関しまして、日本社会党を代表いたしまして、政府に対し質問をいたさんとするものであります。  今回の凍霜害作物に及ぼしました被害は、過去六十年来その前例を見ざるところの重大なる被害でありまして、実に被害全国三十八府県に及び、桑、茶、麦類、ばれいしよ及びりんご、なし等果樹はもちろん、菜種蔬菜類全般に及びまして、数十品目の作物被害を与えたのであります。ために、被害地農民は生計の根本をくつがえされまして、真に罹災農民言葉をもつて呼ぱれつつある現状は、まことに悲しむべき現状であると思うのであります(拍手政府は、はたしてこの事実につきまして、いかなる認識を持ち、いかなる対策を立てつつありやということが、私が当議場を通じまして緊急質問をせんとする理由であります。  私ども調査によりまするならば、桑園におきまして七万六千町歩、茶一万五千町歩、麦十六万七千町歩、ばれいしよ二万一千町歩菜種一万八千町歩果樹一万一千町歩蔬菜九千町歩の約四十万町歩に及びまして、その被害は優に百億になんなんといたしておるのであります。私どもの実際の経験によりますならば、かような統計に現われました数字よりも、実際の被害はなお二倍・三倍に及ぶことを考えまするときに、真に無残なりといわなければならないと思うのであります。(拍手)特に農作物は、工業生産品のごとく機械を回転すればできるものではありません。多くは一年一回の作物でありまして、収穫皆無となりまするならば、農民生活はいかに悲惨であるかということは、あえて私がここに述べるまでもございません。政府は、真にこれらの問題について、心から救済策考えておるかどうかと、私は問うのであります。(拍手)そこで、私は、左の数点をここに申し上げまして、政府の所信をただすものであります。  第一点は、以上私が申し述べましたところのこの被害実情に対して、特に農林大臣、また大蔵大臣は、いかなる感想を持つておるか、当議場を通じて所見を述べられたいのであります。  次いで、緊急対策として政府所見を問いたいと思うことは、現在政府がなし得るところの最も緊急にして可能なるものは、予備費より政府あとう限りの金額を出すことであります。この問題につきましては、すでに私どもは、五月二十二日、自由党、改進党、両社会党鳩山自由党労農党の六党が協議をいたしまして、六億の予備費を、ただちに政府緊急閣議を開いて支出することを要求いたしたのでありまするが、幸い、この点におきましては、本日の予算委員会におきまして、小笠原大蔵大臣から、その趣意に沿う旨の答弁があつたのでありまするが、特に今日この議場を通じまして、全農民の前にその具体的数字を明らかにせられんことを私は要求するのであります。(拍手)同時に、重ねて内田農林大臣に伺いますることは、大蔵大臣の支出いたしましたところのその金額に対して、具体的にいかなる対策をもつて農民に対する救済をなさるかということを、この議場を通じて明らかにされんことを要求するものであります。  第三に申し上げたいと思うことは、農業災害共済金即時概算払い政府は行う意思はないか。現在の農業災害共済金は、これは町村において被害を集めまして、郡が集計し、県が集計して国に持つて参りまして、国が調査して支払いまするにおきましては、相当の時間を要するのでありまして、これでは農業共済趣旨は徹底しません。すみやかに農林大臣はこの農業共済金即時概算払いを断行するということを、ここに御言明を願いたいと思うのでありまするが、いかがでありましようか。(拍手)  第四点としてお伺いいたしますことは、営農資金の即時貸出しを政府は断行いたすべきであると信じます。現在の金融状況におきましては、営農資金の貸出しは非常に困難であります。しかし、過般オホーツク海に起りましたところの津波、カムチャッカ半島において起りました地震については、政府漁業災害に対して十三億の融資特別措置を講じたのであります。このことを考えますならば、今回の大なるところの被害に対しまして、農業災害融資特別措置法をすみやかに提出せられ、政府は凍害、霜害に対する復旧に関する資金融通に対して、損失補償等利子補給を断行せられたいと思うのでありまするが、いかがでありましよう。(拍手)  第五点は、被害農家所得税軽減と免除であります。これは説明を省略いたしまするが、当然この演壇から、農林大臣大蔵大臣言明を要求いたします。  第六点は、被害町村特別平衡交付金の増加であります。これも説明を省略いたしますが、当然この議場におきまして、私は政府言明を要求いたすものであります。  以上は私の大体の質問でありまするが、ここに最後に一点政府に要求いたしたいと思うところの根本問題は、農業災害補償法根本改正政府は断行する意思はないか。すなわち、工場が火災にあいまするならば、火災保険救済の道はあります。船は沈むならば、海上保険救済の道はあります。飛行機が墜落をいたしますならば、人命はいたし方ないが、飛行機会社飛行機そのものを買うところの保険はあります。しかるに、農民へのみ、一たび災害にあいまするならば、涙金をもつてあきらめなければならぬということは、いかにも農民のために残念であると私は絶叫するものであります、(拍手政府はすみやかに農業災害補償法根本改正を断行することを、ここに言明せられんことを要求いたすものであります。最後に一言付言して政府認識を深めたいと思うことは、内田農相は、昨日の予算委員会におきまして、わが党の小平忠君に答えられて、現在の食糧問題解決のために約三百万トンの輸入食糧を仰いでおるということを言われました。そのために消費いたしまするところの外貨は優に四億ドルであります。しかして、この四億ドルの外貨獲得の上において、一番中心をなしますものは生糸であります。その生糸の原料は繭であり、繭をつくるものは蚕である。その蚕の最も必要といたしますものは桑であります。この桑が今日全滅をいたしました現状において、少くとも政府は、この災害対策というものは、単に農村問題にあらずして、国民全体の問題であるという認識を深めなければならぬと思うのであります。(拍手)  以上、私の緊急質問に対しまして、あえてここに政府の真剣なるところの答弁を要求いたしまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣内田信也登壇
  12. 内田信也

    国務大臣内田信也君) 平野君の御熱心なる御質問に対してお答え申し上げます。  今回の凍霜害につきましては、農林省のただいままでの調査では約九十一億円と相なつておりまして、平野君のお言葉と大体似ている数字が出ているのであります。この内訳を一々申し上げましても非常に煩雑でございますから、私は省略いたしますが、平野さんは百億に近いと言う、私の方は九十一億ですから、大体は違いないのであります。  それで、これに対しましては、各党各派の御協議によつて作成相なつたところの措置に対して、大蔵省とも十分相談をいたしまして、先ほど、ようやく、ここに五億八千九百四十万円という数字が的確に出て来たのでございます。この内容を一々申し上げればいいのでございますけれども、もはや——すぐ出ることでございますし、ここで申し上げても同じことだと思いますから省略申し上げます。(「それが国会答弁か」と呼び、その他発言するもの多し)それでは、そう御熱心ならば、ここで申し上げます。樹勢回復肥料代補助が一億三千八百万円、病虫害防除費補助が一億四千六十万円、稚蚕共同飼育施設費補助が四千万円、技術特別措置費が八百万円、災害融資利子補給補助が五千八百万円、試験研究調査費が一千九百八十万円、農林漁業金融公庫出資が一億八千五百万円、こうなつてつて、合計が五億八千九百四十万円と相なつております。(「お前何者だ」「無礼千万」と呼び、その他発言する者多し)それで、たいへん時間をお急ぎだから私は申し上げたのであります。  そこで、次の御質問共済金概算払いということにつきましては、蚕糸及び麦につきまして特別臨時措置法案が議員提案されまして、本日参議院の農林委員会で可決されましたから、遺憾のないように措置いたします。  次にオホーツク災害の例を御引用になりましたが、営農資金融通に対しましては、平野さんのお言葉通り利子補給及び損失補償の制度を実施する予定でございます。  それから税の軽減等につきましては、大蔵大臣よりお答え申し上げます。  農業災害補償法根本的改正という御意見でございました。これは政府提案でも農業災害補償法案提出されておりますから、その際に詳しく御意見も伺い、私の意見も申し述べるつもりでございますが、やはりこれは重大なる問題でございますから、特に私はこの災害補償法改正提出した次第でございます。     〔「取消しを命じなさい」「再質問」と呼び、その他発言する者多し〕     〔国務大臣小笠原九郎登壇
  13. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答え申し上げます。  凍霜害対策につきましては、各党御要請の趣旨にのつとり、速効肥料に対する補助あるいは融資利子補給補助病虫害防除費補助等中心として五億八千余万円を支出する予定でありまして、早急に計数整理の上、本日中に閣議決定をいたしたい所存であります。(拍手)  なお災害共済金概算払いにつきましては、現在提出中の法律改正案が通過しましたときは、これが実現を見られることと存じます。  営農資金に対する融資は、あとう限りすみやかに実行いたす所存であります。  被害農家所得税につきましては、実情十分調査の上、万全を期する所存であります。(拍手
  14. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 平野力三君より再質問をいたしたいとのことであります。簡単に願います。平野力三君。     〔平野力三登壇
  15. 平野力三

    平野力三君 私は、本日は再質問をあえてするつもりではありませんでしたが、ただいまの農林大臣の御答弁については、私が本日この演壇に立ちました趣意から、再質問をいたさないわけには参りません。(「その通り」)このことは、満場の議員諸君の御賛成を得られることと思います。何となれば、私がこの議場において質問をいたしておりますることは、政府に対して最も正確なる数字を要求するために質問をいたしておるのであります。しかるに、農林大臣は、新聞に出るであろうからと言つて、この席上において答弁しない。私は、いやしくも国務大臣答弁といたしまして、かかる議会を軽視し、また質問者に対してまつたく敬意を払われないところの答弁に対しては、断じて承服ができません。(拍手)  しかも、私は今回の被害を百億と推定すると申したのでありますが、農林大臣は九十一億と申されました。しからば、その九十一億の内容について、私が桑からお茶から果樹蔬菜について、るる申し上げたのでありますから、もし私の数字に対して誤りがあるというならば、農林大臣自身がその費目をあげられてここに明示せられることが、これが議会の答弁でありましよう。(拍手)九十一億と百億と違つたからというて、ただ平野さんのおつしやることは私の数字ではというような程度においては、私は了承するものではありません。(拍手)私は、国民を代表し、真剣なる立場において、凍霜害被害者に対して農林大臣説明を要求したのでありまして、どうぞもう一回、農林大臣は前言を取消され、真摯なる御答弁をせられんことを、ここに私は要求いたします。(拍手)     〔国務大臣内田信也登壇
  16. 内田信也

    国務大臣内田信也君) お答えと同時に釈明申し上げます。  私は、時間も大分過ぎておりますし、まだ多くの質問もありますからして、ただいまこの五億八千九百四十万円という的確なる数字がきまつたばかりで、これから発表するところであつたのでありますから、つい私は、(発言する者多し)静かにお聞きください。——つい私は、皆様に時間をつぶさせないようにという、つまらぬ老婆心からして、私は——ということを言つたのでありますが、(発言する者多く、議場騒然)それが不穏当ならば、ここにつつしんで取消します。私は取消します。(「陳謝しろ」と呼び、その他発言する者多し)取消して、その数字を明らかにいたします。  災害の深さにつきましては、農林省の調査によりますれば、農作物の推定被害総計額は九十一億円でありまして、これを各作物ごとについて申し上げますれば、桑が繭換算で五十億円、茶が九億円、ばれいしよが四億円、蔬菜が四億円、果樹が十二億円、麦類が十一億円、菜種が一億円でありまして、それをさらに主たる農作物について減収見込量を申し上げますれば、桑が繭換算二百八十七万貫、茶が三百十万貫、ばれいしよが八百五十四万貫、果樹が一億九千万貫と相なるのでございます。以上数字の内容を申し上げました。(拍手
  17. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち……。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕     〔平野力三登壇
  18. 平野力三

    平野力三君 私は、時間の関係上、座席より発言を要求したのでありまするが、その座席の発言さえ許されませんので、登壇してあえて発言をするのであります。  農林大臣は、私の質問に対しまして、陳謝するという言葉を申されました。しかし、先ほどの御答弁は、何ら陳謝ではなくして、それは顧みて他を言う、ただ冗々漫々たる言葉を費しただけであります。私は不満であります。本問題は、この演壇で叫ぶのみならず、満場の議員各位が、農村においては、あの群がる陳情の前に真に真剣に立ち上つておるところの人々であります。(拍手)この重大なる問題に対して、予算の審議は急ぐかもしれませんけれども、一分や二分の答弁が何でありましよう。もし全農民に対して真剣な態度農林大臣にありますならば、いま少し丁寧なる、農民の納得するところの答弁があつて私はしかるべきだと思います。(拍手)私は、議会の慣例により許されまするところの最後の第三回まで登壇をいたしまして、あえて凍霜害対策に対する私の熱情を傾けて、農林大臣に三たび答弁を要求する。(拍手)     〔国務大臣内田信也登壇
  19. 内田信也

    国務大臣内田信也君) 先ほど、私は、私の用語のうちに不穏当の辞がありましたならば取消しますということを、はつきりと申し上げました。(拍手)      ————◇—————
  20. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、世耕弘一提出選挙違反取締状況に関する緊急質問をこの際許可されんことを望みます。
  21. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  選挙違反取締状況に関する緊急質問を許可いたします。世耕弘一君。     〔世耕弘一登壇
  23. 世耕弘一

    世耕弘一君 私は、選挙違反取締状況に関する緊急質問を簡単に申し上げて、関係大臣の御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  このたびの衆議院の選挙並びに参議院選挙後における議員の当選者で、逮捕並びに検挙されたものが数十名に及ぶと報道されております。これが事実であるかどうか、法務大臣から御答弁を願いたいと思うのであります。もし事実とするならば、その党派別並びに検挙の理由を発表してもらいたいと思うのであります。いやしくも一国の国会議員が、逮捕並びに勾留、投獄されるというようなことは、重大な問題であり、各方面に重大な影響を及ぼすものであります。はたして検察当局が深い確信を持つてこの挙に出たものであるかどうか。この意味において、その内容を詳しく御説明願いたいのであります。現に新聞の報道するところによりますると、検事の行き過ぎがあつて、地方によつては、弁護士会その他からその越権行為が弾劾されておる事実が上つておるのであります。これがすなわち人権と大きな関係を持つのでありますから、あえてお尋ねするのであります。もしこのまま、確信のない軽挙妄動の結果、この事件を発生せしめたとするならば、その越権行為をした係官は重大な責任を負わさるべきであると、私はかように考える。要するに責任を追究されるべきだと思うのでありす。この意味において、すなわち今日人権の問題が重要視されるのであります。すなわち、この軽挙なるところの検挙並びに留置等によりまして、はなはだしく人権を阻害し、また名誉並びに信用を失墜しておるのであります。元来、人権の問題は民間同士においては起らないのであります。多くの場合、官憲の越権の行為から人権蹂躪の問題が頻発するのであります。特に選挙の場合におけるところのこの人権問題が、多くの場合に明朗な選挙をぱ冒涜するものであるということを重く考えるがゆえに、特にこの機会質問をするわけであります。  特に、今回の選挙に臨みまして、元大臣あるいは現大臣が、逮捕あるいは連座してその責任を問われ、またその邸宅を捜査されておるという事実が発表されておるのであります。たとえば、元内務大臣の山崎氏(笑声)、現官房長官の福永氏(笑声)、並びに現外務大臣の岡崎氏(拍手)、さらに選挙違反に関係を持つ、自由党の幹事長であられる佐藤氏(拍手、発言する者あり)、かくのごとく相当厳重な取調べを行われておるということは周知の事実であります。私は、かくのごとき大官、高官を逮捕並びに家宅捜査あるいは取調べを行うのについては、検察当局は相当慎重な態度でしておるものと確信する。もし、しかりとするなれば、この処置をいかにするかということが重大な国民の関心となつて来るのであります。  ある意味から申しまするならば、吉田内閣はきわめて公平である。(笑声)野党といわず、あるいは与党といわず、閣僚といわず、いやしくも法に触れる者は厳重な取調べと処置をするということが、公平に見たときに考えられるのでありますが、また一面から考えてみまするなれば、わが党の政府においてかくのごときことがある以上、よほどひどい違反事件を出しておるのだというふうにも想像できる。(拍手)かようなことは、吉田内閣自体の信用を獲得する上において、この際国民の納得の行くように御説明申し上げる方がいいのではないかと私は思うのであります。ことに、佐藤幹事長の直接関係する事件といたしまして、選挙妨害の事件が告訴されております。この問題についても、世間とかくのうわさがあります。私のところには相当多数の資料が集まつておるのであります。(笑声)しかしながら、私は、今この機会において、さような事件を取上げようとするのではございません。ただ、申し上げたいことは、人権と他人の名誉を尊重する意味において、特に選挙をめぐつてのいかがわしい不評を一刻も早く冷静に判断せしむるように、国民に予備知識を与える意味において、特に質問をここに展開しておる次第であります。  次に申し上げたいことは、悪質なるところの犯罪、買収犯以上に世間から批判されておるところの、国家権力あるいは公務員たる地位を利用して、権力と圧力を利用して、買収以上の悪質な脱法的選挙運動をなしておる形跡が多分にあることが、検察当局から指摘されておるのであります。この点に対して、政府は今後いかなる公正なる態度をとるか、これはまことに緊急重大なる問題である、私はかように考える。本来、選挙の本質から申しまするなれば、明朗選挙を主体としなくてはなりません。しかるに、権力あるいは特殊の地位を利用して、もつて国民の公正に行使するところの選挙権を奪取するような行き方では、日本に明朗な政治が出現しないものと私は断言してはばからないと思うのであります。この意味において、政府はいかなる処置をとろうとするか、この点について、さらにお尋ねしておきたいのであります。  元来——元来、政治家の本来の使命は、道徳的立場から政治の根本を樹立すべきであると、私はかように考える。公明選挙のゆえんも、すなわちここから出発して来なくちやならぬと思うのであります。もしそれ、この理論が是認されるとするなれば、選挙違反を起した大臣あるいは長官をことさらに新内閣の閣僚に選ぶということは、少し道理に反しているではないか、私はかように考える。この点に関しましては、国民がある一つの疑惑を持つておるのであります。私は、党派的な色めがねの、偏狭な気持で言うのではありません。現に、東京におけるところの大新聞は、筆をそろえてこの点を論難しておるのであります。われわれは、耳をおおうて、かくのごときごとを黙過することは、かえつて議会の信用を失うことであると思いまするから、特に私はこの点を申し上げるのであります。ことに、国内におけるところの国民の信頼を失うことは、やがて国際間におけるところの信用を失墜するものであるということを憂えるからであります。  私は、吉田首相は純正高潔な総理であると尊敬しておるものであります。また、おそらく御本人も、自他ともに許しておられるであろうと思います。もしさようであるとするなれば、今日の閣僚の人選にあたつて、はたして妥当なるところの人選をなさつたかどうかということを総理にお聞きしておきたい。中には、はなはだ失礼な言葉であるかもしらぬけれども、相当くたびれた大臣もおいでになるように私は見かける。(笑声、拍手)かようなことは——かようなことは、第五次吉田内閣の新鮮味を増すものではないと、私はかように考えるのであります。自由党の諸君の中には、大臣を何どきでも引受けられるような多士済々なるところの人たちがおると考える。(発言する者多し)私は、この意味において、われわれの信頼すべき吉田内閣の使命のために、特別な御所見があれば承つておきたい。どうぞ、この点に関しまして、法務大臣並びに総理大臣から、わが議会の品位と、同時に日本の議会の将来のために、熱心なる御説明を賜わらんことをお願いして、私の質問を終らせていただきます。(拍手)     〔国務大臣犬養健君登壇
  24. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) 世耕さんにお答え申し上げます。  ただいま、選挙取締りの、いわゆる行き過ぎの有無についての御注意なり、御叱正なり、つつしんで承りました。このたびの総選挙に際しましては、選挙に臨む前に、私どもは、検察庁及び国警の各地方職員に対しまして、いわゆる検挙件数の多きを誇つてはいけない、重点主義と申しますか、公明選挙を逆もどりさせるような大きい選挙違反に対しては厳正に取締らなければならないけれども、軽微なもの、あるいは形式的なものは、できるだけ早く、そうして簡潔に処理を終るように注意をいたしたのでありますが、多くの官吏のうちには、あるいは行き過ぎの者もあろうかと思いまして、その具体的事実をつかみましたならば、容赦なく厳重に事実をただして、再びそういうことを繰返すことのないように注意をいたしたいと考えておる次第でございます。  先ほど数字の御質問がございましたが、まず今度の総選挙の違反事件で検挙をいたしました人員は大体一万八千名くらいございまして、昨年の十月の総選挙に検挙いたしました人員の大体三分の一強に当るのでございます。  それから、各党派別の候補者がどんなふうにつかまつておるかという御質問でありますが、自由党は当選者が二十一名、落選候補者が十名、分党せられた自由党の当選者が一名、落選候補者が七名、改進党は当選せられた人が七名、落選候補者が入名、社会党の右派の当選の方が三名、落選候補者が二名、諸会派の落選候補者が一名、無所属の落選候補者が一名でございまして、当選の候補者が計三十二名、落選候補者が計三十五名でございます。  それから次に、先ほど御指摘がありましたように、弁護士連合会の方から大分抗議がありました。幸いに、弁護士連合会とは総選挙後時々連絡をとつておりまして、先日も、行き過ぎの件数が全国に判明しただけで四件あるということで御注意を受けた次第でありまして、なお具体的なことをできるだけ詳細にひとつ話していただきたいということを申し入れてあるのでございます。その中には、率直に申し上げまして、現在判明しております一件については、明らかに私どもの官吏の行き過ぎがあることを認めておりまして、厳に戒告をいたしております。  それから、現大臣や政府の大官や自由党の幹事長の家宅捜索をしたのはどういうわけかという御質問でございましたが、岡崎外相の宅も、佐藤幹事長の宅も、家宅捜索をしたことはございません。福永官房長官の宅には、たまたま選挙違反の疑いを受けた人が同居しておりまして、その同居の部屋だけ捜索したことはございますが、福永君の宅を捜索したことはございません。  それから官吏の違反事件でございます。この点は、私はきわめて重大な、悪質なものだと思つております。つい先ごろまで現職にいた官吏が、退職して、元の先ごろまでの部下を利用し、あるいは官庁に関係のある会社などを利用したというような選挙違反事件は、最も悪質なものといたしまして、あくまでも容赦せずに糾明いたしておる次第でございます。      ————◇—————
  25. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、大橋忠一提出、出光興産によるイラン石油輸入に関する緊急質問をこの際許可されんことを望みます。
  26. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  出光興産によるイラン石油輸入に関する緊急質問を許可いたします。大橋忠一君。     〔大橋忠一登壇
  28. 大橋忠一

    大橋忠一君 最近出光興産が、イランより、その持船日章丸を使用いたしまして、一万五千トンの石油を輸入いたしましたことは、わが国の業界を刺激すると同時に、世界的にも波紋を投げました。これは、これがために安いイランの石油が日本に入つて参りまして、そうして日本の石油の値段が下るということと、さらに、この問題が近東の火薬庫と見られておるイラン問題の核心に触れておるからであります。  世界の石油値段は、強大な国際カルテルによつてきめられておつて、彼らはこれによつて莫大な利益を得ておりまするが、イラン石油の輸入は、少くともわが国に関する限り、彼らの横暴にブレーキをかけ、石油値段を低下せしめ、わが国消費者を益し、わが国にとり大切なるドル貨の節約に資すること大であります。また、イラン油の輸入が、これをきつかけとしてできることになりますれば、今日まで英国側の事実上のブロツケードで極端に行き詰まつておりまするイランの経済を助け、その国情を安定させる結果となりましよう。  しかして、一昨二十七日、東京地方裁判所の判決によりまして、出光興産の買つた石油はイラン国の所有物であつて、アングロ・イラニアンがとやかく言うべきものではないと判定されました。出光の行動は法律的に正当なることが立証せられたので、将来は、日本に関する限り、出光興産といわず、だれでも、堂々とイラン石油を輸入し得る法律的な道が開けたと言い得ると思います。この判決は、ハーグの国際司法裁判所の判決に準拠したものであり、イタリアにおいても同様の判決がすでに下されたものであります。これは、イラン国の主権を尊重する限り、当然の判決であります。アングロ・イラニアン側は、上訴して最後まで争うと言つておるとのことでありますが、その結果はおそらく同じことでありましよう。  しかるに、新聞によりますると、政府は、今後新たにイラン石油輸入のためにはドル貨の割当をしないこと、すなわちイラン石油の事実上の輸入禁止を決意しておるように出ておりますが、右ははたして事実でありましようか、政府当局にお伺いいたします。これは英国側の報復をおそれるためかと思いまするが、法律的に見て正当と判決された出光の行動に対して、正義を愛する英国が報復を加うるなどということは考えられないことであります。また、われわれが今英国側の一喝に縮み上つて、イラン石油を差別して、その輸入を禁止するなどということになつては、これはわが国に対するイラン及びイランに同情しておる諸国を失望せしめ、わが国の貿易上大事なお得意をみすみす失う結果となるのであります。  私は、政府が百万ドルを出光に割当てた当時、はたして政府イラン石油輸入の計画のことを知つておつたかどうか、その点をお伺いしたいと思うのであります。世間では、政府の大官が背後にあつてやらせたといううわさが伝わつておる。はなはだしきに至つては、政治資金が過般の選挙の際出光から出ているといううわさまで飛んでおるのであります。こういうようなことはあり得べからざることではあると思うのでありまするが、この際私は、この点につき、はつきり御答弁を願いたいと思うのであります。  第二次世界大戦後、アジアにおける最も顕著なる現象は、西ヨーロッパのコロニアリズムが決定的に過去のものとなりつつあることであります。この大勢をつくつた国は、インド、パキスタンに独立を与えた英国であります。英国が、時代の流れに順応して、その大きな植民地を放棄した、その賢明にして弾力性のある判断は、人類史上に光彩を放つと言つてもいいのであります。そうして、これは、いまなお頑固にも、古くさいコロニアリズムの夢を捨てることのできないフランスなどに比べて、さすがに英国は偉いと思われるのでありまするが、その英国、しかも偉大なる政治家チャーチル氏によつて率いられている英国政府が、何がゆえに近東の火薬庫とも言われる油田地帯のイラン問題を、今日のごとき不安定なままにほうつておくのでありまするか、私は理解ができないのであります。  長年心血を注いで開拓した石油権益を失うことは、英国として耐えがたいところでしよう。しかし、イランが、長年政治的、経済的にイランの死命を制して来たアングロ・イラニアン会社の権益を接収するに至つたのも、近代ナシヨナリズムに目ざめて来た国家として無理からぬことであります。英国が、もしインド、パキスタンに示したと同様の理解と同情をイランに示すならば、これが合理的解決はできぬはずはない。また英国は、この解決によつて、石油利権で失う以上の利益を他の方面で縛ることができると思われる。あるいは英国としては、この際イランを徹底的に困らせておいて、ころ合いを見はからつて、きれいに解決する腹かとも思われまするが、このままいつまでもほうつておいては、イランは経済的混乱の結果、鉄のカーテンのかなたに吸い込まれるか、あるいは日本がかりに今後英国の圧迫等により油の輸入を中止するとしても、英国の力の及ばない他の国がどんどんイラン油を買い始め、英国はあぶはちとらずに終り、イラン側の全勝に終る可能性がないではないのであります。英国としては、イラン問題につき、この辺でいま一度考え直すべき潮どきではないかと思うのであります。よつて、今後英国側がわが方に何か言つて参りました場合、進んでイラン問題の再考慮を求むることが適当ではないか。政府には、はたしてさような腹があるかないか、この点をお伺いしたいと思うのであります。なお、今まで本件につき英国の方から何か言つて来たのでありまするか、何と言つて来たのでありまするか、その点をお伺いいたします。  私は、日英親善は、現在の日本にとり、政治的にも経済的にも最も重要なことであると思います。日英は、経済的に競争するよりも協力すべきであり、また、お互いの利益のため協力することができると信じております。皇太子様が、エリザベス女王の戴冠式に参列するため、久しきにわたつて滞英しておられるのもこのためであります。しかし、日英親善をはかることは、日本が正理をまげて屈服することではないと思います。私は、政府に対し、日英親善を破ることなく、かつイラン油の輸入を禁止することによつてイラン並びにその同情国家を失望させないように善処されんことを要望いたしまして、この質問を終りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  29. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  過日の裁判におきまして、結果が出て参りましたが、これは元来アングロ・イラニアン会社と出光興産との間の民事訴訟でありまして、日章丸で輸入した石油についての処分禁止を求めたものに対する判決であります。その裁判の結果と、イランの石油を今後輸入するかどうするかという貿易政策とは、これはまつたく別問題であります。そこで、われわれとしましても、イランの石油が安いのでありますれば、これを輸入できるのはけつこうとは思いまするし、また日本とイランとの親善関係に努めなければならぬことも当然でありますが、同時に、こういう紛争のもととなつておりまする問題につきましては、われわれとしては、やはり日本の貿易全体との調和をはからなければならないわけでありまして、そのために、イギリスのみならず、その他の第三国との間の摩擦を起すことは、できるだけ避けたいと考えておるのであります。そこで、今イランの石油問題についての解決につき御意見がありましたがこのイギリスとイランとの間の紛争につきましては、アメリカも現にその解決努力しておるのでありまして、私としては、しばらくその結果を待つのが適当であろうと考えております。いずれそのうちに解決するものと思うのであります。  また、このイラン石油購入にあたつてのドル貨の割当につきましては、政府としては、事前にこれをせんさくする立場になかつたのでありまして、また事実どこから買うかということは知らなかつたのであります。      ————◇—————
  30. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第一につきお諮りいたします。内閣から、日本銀行政策委員会委員に宮島清次郎君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔(「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて同意するに決しました。      ————◇—————
  32. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) なおお諮りいたします。内閣から、米価審議会委員に衆議院議員足立篤郎君、同植木庚子郎君、同綱島正興君、同今井耕君、同足鹿覺君、同川俣清音君を任命するため議決を得たいとの申出がありました。右申出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。      ————◇—————
  34. 今村忠助

    今村忠助君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)、昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第1号)、昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機第1号)、右三件を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  35. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)、昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第1号)、昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機第1号)、右三件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員長尾崎末吉君。     〔尾崎末吉君登壇
  37. 尾崎末吉

    ○尾崎末吉君 ただいま議題となりました昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)、特別会計暫定予算補正(特第1号)及び政府関係機関暫定予算補正(機第1号)に関する委員会の審査の経過並びに結果を簡単に御報告いたします。  本三案は、いずれも去る二十五日予算委員会に付託されまして、本日その審査を終了いたしました。この暫定予算は、御承知のように六月分の暫定予算であります。これを既定の四、五月分暫定予算に追加するということになりますので、予算補正第一号という名称がつけられております。さきの四、五月分予算は、衆議院解散のため、参議院の緊急集会における議決のみで成立いたした、いわば変則的なものでありましたが、この六月分の予算は、その成立に成規の要件を備えねばならないこともちろんであります。しかしながら、内容的には四、五月分暫定予算とあまり異なつておらず、新規計画に伴う経費、政策的経費などは原則として計上しない、いわば事務的予算ないしは骨格予算であります。すなわち、歳出入とも二十七年度の本予算ないしは補正予算とほぼ同一のベースに立ち、歳入については六月中の収入見込額、歳出については原則として月割計算の一箇月分が計上されております。  このような消極的性格は、暫定予算という性質上、ある程度やむを得ないものと言えましようが、委員会での審査においては、数人の委員から、たとい暫定予算であるにせよ、不況に悩む経済がますます財政に対する依存度を高めているこの際、もう少し融通性のある予算を組むべきではないかという意見が述べられました。政府は、これに対して、この暫定予算は、何分にも組閣早々、時期的に制約されてつくつたものであり、また暫定予算である以上、積極的な施策を織り込めない点は御了承を願うよりほかない、但し、七月分の暫定予算においては、許される範囲内で善処するつもりだという答弁がありました。もちろん、この暫定予算におきましても、地方財政平衡交付金や、積雪寒冷地帯での事業費その他については、単なる月割計算以上の配慮が払われていることは事実であります。また問題の凍霜害対策費のごときものも前の暫定予算に組まれておりました予備費の中から支出することに決定したとのことであります。しかしながら、何といたしましても、全体としての総合された財政施策は、来るべき本予算に織り込むよりほかはないのであります。従いまして、委員会でも、本予算の内容いかんということに関して幾多の質疑が行われましたが、政府の御答弁によりましても、まだ本予算の内容を明示し得る段階には至つていないようであります。  さて、一般会計の歳入は六百四十三億円余、歳出は九百二十七億円余でありまして、これを四、五月分暫定予算に加えますと、歳入一千七百八十八億円余、歳出二千三百四十四億円余となり、差引五百五十五億円余り歳出超過となつております。但し、この歳出超過、歳入不足は、時期的関係から予算面に歳入として計上し得る金額が不足していることを示すだけでありまして、実際には、この期間中、国庫余裕金の使用及び大蔵省証券の発行等で十分操作がつくわけであります。  歳出の九百二十七億円という金額は、月割一箇月分としてはかなり大きなものでありまして、四、五月分一千四百十七億円の半分よりも二百億円以上も多くなつております。このように多くなつているのは、公務員の期末手当支給のための経費を約百二十五億円計上していることと、平衡交付金をかなり大幅にふやしているためであります。  期末手当に関しましては、委員より、公務員の給与ベースが前の人事院勧告の線にも達しない低いものであるから、〇・五箇月分の手当を一箇月分にすべきであるという意見が出ましたが「政府としては、財政上の理由から、その増額は困難である旨の答弁がありました。  平衡交付金に関しましては、昨年度中の地方財政の赤字を埋めるためにも、本年度内には相当の増額を必要とするのではないかという質疑がありましたが、政府側は、地方財政が赤字を生ずる原因はいろいろあり、これを交付金の増額だけで処理すべきかどうかは考慮を要する、終局的には、この問題は根本的な地方財政制度の改革によつて解決すべきものと思われるとの答弁でありました。  他の経費の中では、積雪寒冷地帯における公共事業費その他の経費の計上に関しまして、季節的な配慮のなされていることが注目すべき点であると思われます。  以上が一般会計の概要であります。  特別会計、政府関係機関予算の内容については省略させていただきます。  質疑は本日午前中をもつて終了し、午後討論採決を行いました。  討論に先だちまして、社会党の両派より、本三案の編成がえを求めるの動議提出され、その趣旨弁明が行われましたが、これは追つて議場においても行われるものと思われますので、その報告は省略させていただきます。  採決の結果、社会党両派提出動議は少数をもつて否決され、政府提出の原案が多数をもつて可決されました。  以上御報告いたします。(拍手
  38. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二件に対しては、八百板正君外十四名から、三件の編成替を求めるの動議提出されております。この際その趣旨弁明を許します。横路節雄君。     〔横路節雄君登壇
  39. 横路節雄

    ○横路節雄君 私は、日本社会党両派を代表いたしまして、昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)、昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第1号)及び昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機第1号)については、政府は撤回し、これをすみやかに組みかえ、再提出すべしとの動議提出し、その趣旨弁明を試みんとするものであります。(拍手)  本動議を貫く基本方針は、昭和二十八年度予算案が成立しないままに、第十五特別国会で衆議院が解散されたため、四月からの新会計年度は暫定予算によつて発足し、これがため各般の行政に支障や渋滞を来し、長期の財政計画はもちろん、各種の事業計画の実施が危ぶまれ、さらに国民生活にも重大な脅威を与えている現状からして、われわれ日本社会党両派は、ここに政府提出の予算三案に対し、まず第一に国民生活を安定ざせ、その生活に脅威となる諸点をすみやかに除去するため緊急対策の費用を計上し、さらに長期の事業計画上、今にして行わなければ、その施策が遂には実行できず、国策上支障を来す重要なる諸点について組みかえをなしたのであります。  従つて、組みかえ要綱の第一点といたしましては、国家公務員、地方公務員の夏季手当を一箇月支給することとし、これがために百三十二億円増額計上することであります。昨日の予算委員会におきましても、吉田総理は、みずから出席されまして、綱紀粛正に関する質問に答えて、わが国の国家公務員並びに地方公務員は薄給に甘んじてよく精励されていると申されているのでありまして、政府みずからが政府職員は薄給であることを認められているのであります。しかし、政府職員は、吉田総理が言うように決して薄給に甘んじているのでなくして、大いに不満を持ち、憤激を感じているのでございます。(拍手)われわれは、吉田内閣が、政府職員に対する待遇改善についてはまつたく法律を無視され、国家公務員、地方公務員の生活権についてはまつたく顧みないという態度を指摘いたしたいのでございます。  昭和二十三年十二月、第二次吉田内閣の手で国家公務員法は改正され、国家公務員の団結権並びに争議権を剥奪し、それにかわるものとして人事院を設け、常に国家公務員の生活の実態調査をなさしめ、政府並びに国会に対して、人事院に給与ベース改訂について勧告をなさしめ、政府はそれに基いて実施するようにいたして以来、今日までただの一回も、この人事院の勧告通り実施したことはないのであります。(拍手)ことに、昨年八月一日付をもつて、一万三千五百十五円べースを五月に遡及して支給するよう勧告があつたにもかかわらず、政府は一万二千八百円べースを十一月から支給するようにし、日本社会党両派並びに改進党の野党三派の共同修正案たる一万三千五百十五円ベース、十一月から実施までも、自由党反対によつてこれを否決したのでありますが、さすがに自由党も寝ざめが悪かつたと見えて、給与ベース改訂を含む昭和二十七年度補正予算通過にあたつては、わざわざ附帯決議をつけ、公務員の給与ベースをすみやかに改善することとの条項を入れ、遂に〇・二五箇月分の追加実施をせざるを得ないはめになつたことは、御承知の通りでございます。さらにまた、十二月二十四日、参議院の人事委員会においては、「本給与ベース実施の法律案に対し、すみやかに合理的改訂を行うことをなすとの一部修正をいたし、参議院の本会議を通過して衆議院に回付せられ、本修正案は、本議場におきまして、自由党の諸君の全面的な賛成のもとに、この修正案が成立いたしているのでございます。これらの経過を見ましても、政府みずからが四月一日から給与ベースの改訂を行うことは当然の責任であるにもかかわらず、暫定予算であるという建前においてこれが実現を見ないことは、はなはだ遺憾にたえないのであむます。  かかる現状からいたしまして、今回われわれ日本社会党両派が、本予算に計上されている期末手当〇・五箇月分一を増額修正し、期末手当を一箇月分とすることは、当然というよりは、むしろ過少に過ぎると言わなければならないと思うのでございます。(拍手)半年間の公務員の生活実態から見て、赤字が累積していることは当然でありまして、この薄給にあえぎながら行政の第一線に立つて努力している国家公務員、地方公務員の生活を守つてあげることは、われわれの当然の任務と言わなければならないのでございます。(拍手)この点、今までの経緯等から見ましても、政府与党たる自由党は、何よりもまず期末手当一箇月分については双手をあげて賛成していただきたいと思うのでございます。  第二の点につきましては、凍霜害対策として、特別国家補償及び助成費として十億円を新たに計上すること、租税の減免措置といたしまして五億円減税を行うことといたしたのでございます。この点につきましては、先ほど農林大臣から、この凍霜害被害は九十一億になるというお話があつたのでございます。大体、政府ははなはだ怠慢でございまして、今春の凍霜害については、すでに六月の暫定予算を出す前にその用意をしなければならないのに、この六月の暫定予算に関する日本社会党両派の修正案に、遂に政府はあわてふためいて、先ほど御答弁のように、五億八千九百万円の措置をいたしたことは、九十一億から見ましても、当然過少に過ぎるものでございまして、この点、われわれといたしましては、この広汎なる被害の実況から、この点の組みかえの要求をいたすものであります。  第三に、中共引揚者等の援護費を含む援護資金を五億円増額することでございます。本年三月末より中共の引揚者が続々と帰られ、終戦後十年近い歳月を経て故国に帰られ、肉親の者と会うことができた喜びは、察するに余りがあるのであります。今回の引揚げの成果は、まことに国民外交のたまものでありまして、中共と正常な外交を結ぶに至らない吉田内閣の弱体をもつてしては、とうていこの成果は上らないのでございます。(拍手)すでに帰られた一万五千の人々は、それぞれ生活の道を求められておりますが、何しろ一時資金一万円、帰郷旅費千円ないし三千円、帰郷雑費一千円の少額をもつてしては、自立の道をたどることは不可能でありまして、従つて、この際、中共引揚者の援護資金を含めて援護資金を五億円増額し、これを生業資金に充て、あるいは住宅問題の解決に当つてこそ、引揚者の援護の目的が達成されるのでございます。  第四は、国民健康保険の国庫負担を五億円増額計上することでありますが、国民健康保険制度は社会保障制度の根幹をなすのでありまして、昭和十三年施行以来幾多の困難に耐えて、戦前はほとんど全国に普及したのでありますが、戦後経済的混乱の影響を受け、現在では戦前の二分の一まで減少し、今やまつたくの危機に瀕しているのでございます。それならばこそ、昨年十二月十七日の昭和二十七年度補正予算の中において、われわれ日本社会党両派は、改進党の協力を得て、療養給付費に対する二割の国庫負担をすべきであるとの結論により、予算の修正案を提出いたしましたが、これまた政府与党たる自由党反対にあい、遂にこれが実現を見なかつたのであります。しかし、遂に政府も輿論に抗しかねて、先般の国会においては療養給付費の一割五分を国庫負担にせざるを得ないような状態になりましたが、われわれ日本社会党両派といたしましては、暫定予算とはいえ、民生安定施策の実施であり、社会保障の確立の基盤をなすこの国民健康保険に五億円を増額計上することによつて、療養給付費二割の実現をはからんとするものでございます。  第五の点といたしましては、失業対策費を四億円増額計上いたしまして、日雇い労務者の夏期手当に充当することであります。今日、わが国におきましては、職業安定所に登録している日雇い労務者は約三十万人でございまして、これが給与は、地方において一日平均百八十円ないし二百六十円、東京、大阪等の大都市においては二百六十円ないし三百三十円であり、しかも、これが就労日数は、地方において、平均一箇月のうち、わずかに十六日ないし十七日、東京、大阪等において、わずかに二十三日ないし二十四日であります。これによつて月平均の賃金を見るならば、地方では三千円ないし四千円であり、東京、大阪等、完全に就労した場合においても、なお五千五百円ないし七千円であつて、私は、この実態を通して見ても、いかに吉田内閣が労働対策に欠如しているか明らかであると思うのでございます。(拍子)どう見ましても、吉田内閣の労働対策は、労働者の生活を窮乏に陥れて、遂に生活に困つた労働大衆をいかにして取締るかという取締費には十分金をかけているようであります。われわれは、ここに、日雇い労働者の生活を守るために、五日分に相当する夏期手当を支給するために、四億円の増額計上をいたしたのでございます。  第六は、母子福祉資金貸付の経費を三億円計上することであります。ききに成立を見ました母子福祉資金の貸付等に関する法律に基いて、四月一日から本法律は施行されているのでありますが、全国の未亡人百七十万、母子家庭七十六万は、これが資金の貸付を一日千秋の思いで待つているのでございますが、しかし、年度の四分の一を過ぎている今日、なお一銭も計上されていない現状でございます。生業資金五万円を目当に、その生活の立上りを考え、また育英資金に期待をかけている母子家庭等を考えました場合に、この組みかえを要求することはあたりまえであると思うのでございます。  第七点といたしましては、積雪単作地帯における公共事業の費用を五億円増額計上することでございます。北陸東北北海道等の積雪単作地帯は、その寒冷度、積雪度によりまして、公共事業は大体十一月中旬までに完成しなければ、その重要資材たるコンクリート、土管等はその用をなさないのであります。本暫定予算の中には、おおむね公共事業が十二月までに完成を目途といたしまして、昭和二十七年度の事業費の六分の一を計上したにとどまり、新規事業についてはまつたく計上されておりません。このため、都道府県、市町村等においては、公共事業を相当手控えている現状であつて、従つて昭和二十八年度本予算がかりに予定通り七月三十一日に成立いたしたとしましても、その予算の執行は九月の初旬になることは明らかであり、当然北陸、東北、北海道等においては霜柱が立ち、すでに降雪を見て、実際には事業に着手できない状態でございます。ことに港湾漁港等の事業は、予算執行の九月初旬等になれば、もはや北辺の海は荒れて、作業はまつたくできないのでございまして、かかる観点からも、ぜひ最小限度のものといたしまして、積雪寒冷地帯における公共事業等に五億円増額計上することにいたしたのでございます。  第八の点といたしましては、以上の財源として、六月分の保安庁経費三十三億円を削除し、他に国庫余裕金及び大蔵省証券の発行によることにいたしたのでございます。今日の保安隊は、まさにわが国のふところに火薬庫を抱いているような、命取りになることは明らかでございまして、この保安隊こそ、まさにわが国の平和と独立を脅かすようになることは明らかでございます。従つて、われわれ日本社会党両派は、再軍備に反対し、国民生活安定こそわが国の平和であるとの観点に立つて、保安庁の経費を削除いたしたのでございます。(拍手)  以上の予算の組みかえによつて、真に働く大衆が生きがいのある生活が保障され、また応急対策として一日もゆるがせにできない施策を実行し、ともすれば社会の片すみに追いやられんとしている人々に自立の道を与え、国の施策の長期の事業計画に支障のないようにとの立場からこれを提案いたしたのでありまして、この点、国民生活に脅威を与え、長期の事業計画を実施不可能ならしめる政府原案に対して反対し、われわれ日本社会党両派の組みかえ案を、あえて与党たる自由党の諸君並びに吉田内閣に、強く国民の名において要求いたし、日本社会党両派の組みかえ要求趣旨の弁明を終る次第でございます。(拍手
  40. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより討論に入ります。植木庚子郎君。     〔植木庚子郎君登壇
  41. 植木庚子郎

    ○植木庚子郎君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題と相なつておりまする暫定予算補正三案に対しまして、政府原案に賛成し、社会党両派から提出にかかりますところの組みかえ動議に対しまして、反対意見を表明せんとするものであります。  本案は、この六月中の国政運用のために必要なる最小限度の骨格的予算を計上してありますことは、もうすでに御承知の通りであります。すなわち、年間予算が成立いたしますまでのつなぎ予算でございます。去る三月の議会解散によりまして、本予算が不成立に相なりましたことは、まことに残念でございますが、政府は目下鋭意年間予算の編成を急いでおりますことは当然のことであります。われわれはその一日も早き提出を望むことはもちろんでありますが、政府答弁によりますと、その年間予算を提出いたしまする時期は六月の半ばころになろうということでございます。国政の運営は、一日もこれをむなしゆうすることはできません。よつて、この際政府が財政法の規定に基きまして暫定予算を提出せられました措置は、まずもつてこれを了承しなければならぬと考えるのであります。  しかも、その内容とするところは、過日本院におきまして同意を与えましたところの、あの四、五月分の暫定予算とおおむね同様でございます。ただ例外的に、季節的見地から、東北、北海道あるいは北陸のごとき方面における公共事業費、あるいは文教の施設費、住宅の施設費、こういつたものにつきましては、特別なる考慮が加えてございます。積雪寒冷地帯でない地域におきましても、その工事の性質上、冬の期間におきましては施工困難なるもの、たとえば港湾の工事でありますとか、漁港の工事、治山の工事、砂防工事等についてもまた同様なる配慮が加えてあるのでございます。食糧増産対策の経費のうちの、いわゆる病虫害の防除の費用でありますとか、あるいは種苗改善の費用のごときについても、同様考慮が加えてございます。その意のあるところを多とせざるを得ないのでありますが、国民の期待するところから考えますると、なお遠いところもあると言わなければなりません。しかしながら、暫定予冥である性質上、その本質にかんがみまして、われわれはこの程度をもつてこの際妥当と認めざるを得ないのでございます。  次に、本予算案におきましては、原則として、従来まだ国会の議決を経ておらないような新しい政策的経費はまつたくこれを計上いたしておりません。ただ、この場合、一種の季節的経費とでも申したらよいかもしれませんが、国家公務員の期末手当の計上がいたしてございます。また、地方公務員につきましても同様なる配慮がいたしてあるのでございます。この期末手当の問題につきましては、〇・五箇月分の所要計上額に対しまして、これを一箇月にすべしという議論もございます。しかしながら、これは経営的に大きなる財源を要する問題でございまして、財政全体との関係、あるいは人事院勧告との関係等をも考慮いたしまして、十二分に検討を加える必要があると存じます。よつて、われわれといたしましては、大蔵大臣のとくと考慮いたしますと言われる答弁希望を寄せて、この原案に賛成いたしたいと存ずるのであります。  また地方財政につきましては、最近の実績にかんがみまして、その難局打開のために、あとう限りの措置がしてございます。あるいはまた、予算不成立に伴いますところの経済界の難局に処するためにも、財政投融資の方面におきまして、あとう張りの措置を講じてある。その事績を認めざるを得ないのであります。  ただ、この際一言いたしておきたいと思いますことは、凍霜害に対する対策の問題でございますが、これは、わが党を初めとして各派の意見も一致し、政府も本日はその予算的措置を御決定に相なるとのことであります。しかしながら、最初の構想のときから考えますれば、すでに一箇月有余を経過しておるのであります。こいねがわくは、関係各庁を督励いたされまして、所要の手続を一日も早く完了し、不幸なる罹災農民のために十全なる措置を講ぜられんことを希望してやまないものであります。  最後に、社会党両派提出の編成がえを求める動議につきましては、その内容におきましては、一、二考慮を加えてよろしい案件もあろうかと考えまするが、この予算の対象たる六月が、もはや目前に迫つておる今日、とうてい組みかえのごときはできるものではございません。従いまして、かかる動議に対しましては賛成することができないのであります。  以上をもつて私の討論といたします。(拍手
  42. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 八百板正君。     〔八百板正君登壇
  43. 八百板正

    ○八百板正君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程された昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)、昭和二十八年度特別会計暫定予算補正(特第1号)及び昭和二十八年度政府関係機関暫定予算補正(機第1号)、すなわち、昭和二十八年六月分暫定予算について、日本社会党両派の提出した組みかえの動議に賛成し、同時に政府提出の六月分暫定予算に対し反対する旨の討論を行うものであります。(拍手)  六月暫定予算は、吉田自由党内閣の政策を織り込まないものだと重ね重ね言われております。重ね重ね言われておりまするが、これは参議院の緊急集会できめた四、五月予算とは事情が違うものでありまするから、やはり一応の二十八年度予算全体の展望の上に六月予算は組まれなければならなかつたと思うのであります。ましてや、また七月も暫定予算で行くというのであれば、こんなことをしていては、日本の政治と経済が足踏みをして、政治の空白を多くするだけであります。わが国が繁栄するための後々の素地になるようなプラスの面は何もありませんから、これでは貴重な国民の税金を四月、五月、六月、七月と食いつぶす。四月、五月、六月、七月と春休みをやり、八月、九月とまた夏休みというのでは、これでは日本の半年は寝て暮すというとになつてしまうのであります。(拍手)こうして、問題は万事あとにずらして、後日にしわ寄せをするのでありまするが、しかも、それであとの半年もまた不安定に次ぐ不安定吉田内閣というわけでありまするから、国民にとつてはまことに迷惑な次第であります。これは、ことごとく、去る総選挙め結果は吉田内閣を信任せずと国民の答えが出たのに、かわりがないからといつて国民の声を無視して、便便内閣の座につき、無理に政権にかじりついている結果にほかならないのであつて、この救済は吉田内閣の退陣以外に道のないことは、満天下周知の事実であります。(拍手)  さて、暫定予算は、そういうなすべきことをなさず、あとまわしにする予算となつておりますが、これに対し、社会党提出の組みかえは、最少限急場しのぎの凍霜害対策費を初め、緊急支出分を予算に組み込んでいる点、その地、わが党の同僚議員横路君の組みかえ要求説明によつて明らかにされた通り、機宜を得たるものとして賛成すべきものと考えるのであります。  さて、六月暫定予算は、政策は織り込まないというのでありまするが、ほんとうにそうなら、自由党の、日本をうしろにもどすような好ましからざる政策が入らないで、単なる国政運用上の固有の行政事務の経費として、ある意味ではプレーン・ソーダのようなもので、変な味つけがないだけ、かえつてけつこうだということが申せるのであります。ところが、そうではなくて、先に述べたような急場の必要な金は出してはおりませんが、一方出さぬでもよい金は出しておるのであります。すなわち、第四次吉田内閣が不信任を受けた大きな要因となつたところの、やみの軍備、保安隊の経費を強引に組み上げている点などは、決して無性絡な予算とは申しがたいのであります。この金は三十三億円でありまするが、これは三月末で二百六十億円も余つておるのでありまして、金が多くて使い切れずにおるのに、これに三十三億円も追銭を出す。こんな金は単なる捨金ではない。毒になる金であります。日本を滅ぼすことになる危険が目に見えておる。賛成することができないのであります。両派社会党の組みかえ要求が、この分の削減に——削除に財源を求めたということは当然と申すべきであります。(拍手)  政府は、やるべきことをやらず、やらぬでもよいことを、あるいは権限のないことを、かつてにやつて来たのであります。またやろうとしておる。独断外交で、日米通商条約を、国会の留守を見て、あき巣ねらいのようにとりきめて、(拍手)今また、日本の運命を取返しのつかないはめに追い込む、あぶないMSAの軍事援助も、これこそ毎日の新聞に出ておるのでありまするが知らぬ、存ぜぬ、何とも申せぬというようなことを言つて国民国会に対してうそをつきながら、陰ではその援助を受ける準備をしているのであります。保安隊、やみの軍隊は、まさにその母体となり、軍事援助受入れの基礎工事として予算がためられているのであります。  また、この予算は、政策を織り込まない純然たる技術的見地から編成したと言いながら、公共事業費、わけても建設関係の分については、一箇月分をはるかに上まわる、公共事業費二箇月分、営繕費三箇月分を計上いたしたのであります。増額けつこうであります。しかし、他の費用は組んでおらない。ねらいは別であります。公共事業の名に便乗し、土建屋のふところを肥やす金は抜け目なく組んでおるのであります。こういうところをうまくつかんで、ちやんと政治献金の受取証を出すことは手落ちなくやつたと他から疑われてもしかたがない。(拍手自由党予算の特色をのぞかせたことは、さすがと申さざるを得ないところであります。こういう特色は、無色だといいながら、見のがすことのできない、このたびの予算の性格の一面であります。  また一方、暫定予算は何度も出れば出るほど、あとから出る本予算の中には、がまんしていた政策がせつかちに盛られまするから、あせりが現われて参りまして、一ぺんに政党政策の悪い要素が強く出る危険があるのであります。ちようど潜在期の長いはしかのように、急に出て、一ぺんに悪くなる危険がある。これまた、今は目に見えませんが、閑却できない悪い点であろうと存じます。  さらに大蔵大臣は、今回の予算審議を通じまして、財政と金融を一体のものとして、その有機的関係を持たせると述べられておるのでありまするが、六月分暫定予算に計上せられた財政投資は、一般会計三十億円、資金運用部資金九十一億円、見返り資金六十億円、合計総額百八十一億円でありまするが、これは四、五月分の月割よりも増加を示しておるということであります。その他、いずれにいたしましても、これらは、財政の肩がわりとして金融への依存度を増大し、日銀貸出しの増加となるものであります。暫定予算が不景気をもたらすという面に対しては、財政の金融依存により、これが財界に緩和の条件をつくる結果に期待されていることも事実でありまするが、しかし、現に不渡り手形の発生が戦後の最高記録を示し、これがほとんど中小企業であることでもよくわかるように、財政の金融へのしわ寄せは、融資対象の選別厳選化、重点融資と相なりまして、中小企業には、そのおこぼれも及ばないということになるのは、わかり切つたことであります。この点、池田冷酷財政と何ら選ぶところはないのであります。  また、四月、五月、六月と通算しますると、三箇月分の予算は合計額二千三百四十四億五千六百万円でありまするが、これは二十八年度の不成立予算と比べて割合を見ますると二割四分強となつております。すなわち四分の一であります。政策的な支出を抜き取つた予算でありながら、前回の政策を織り込んだ予算と同額の割合になつておるということ、このふくれ方は、季節的要素を見ても、なお見のがすことのできないところでありまして、濫費の要素を多分に持つものと思われるのであります。  以上要約いたしますると、すなわち財政支出の面では、再軍備の促進と、さらには土建屋に対する親切が盛られ、財政投融資の面から、大産業、基礎産業の資金繰りのみを楽にするやり方が目立ち、地方、賃金のすえ置き、実質賃金の低下を通じて労働者農民の犠牲がしいられ、大資本家を中心とする資本蓄積は着々と用意せられ、無性絡のごとく見せかけて、実は資本家擁護の性格を巧みに織り込んだものであります。しかも、この資本蓄積は、日本の再軍備、アメリカ隷属の財政経済を通じ、他国の戦争参加のための資本蓄積となるものである。言葉をかえれば、戦争してもうける人の立場にだけ立つて国民生活を守ることを忘れた政策の現われであり、(拍手)きわめて危険なる内容を包蔵し、かつその素地をつちかうものとして反対しなければならないものであります。  以上、組みかえ賛成、政府反対立場を明らかにするものであります。(拍手
  44. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 小平忠君。     〔小平忠登壇
  45. 小平忠

    小平忠君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつております六月暫定予算三案に対し、両社会党共同提案の組みかえ動議に賛成し、政府提出の原案に反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)  去る三月十四日、野党四派より不信任案を突きつけられました吉田内閣は、二十八年度国家予算に対し何らの具体的措置も講ぜず、無謀きわまる解散を断行いたしましたため、四、五月の暫定予算はもちろん、六月も、さらに七月も暫定予算によらなければならないという、この政治的空白状態を招来せしめ、そのために国民生活はきわめて不安に陥り、経済自立の方策はまつたく停頓するに立ち至つたのであります。これはまさに吉田内閣の責任でありまして、われわれ断じて許し得ぬ問題であります。(拍手)  ただいま議題となつておりまする六月分の暫定予算について、その内容を検討してみますれば、政府は、現下経済情勢のきわめて窮迫せることを知りながら、これに応ずべき何らの施策をも示していないのであります。たとえば、公共事業費や食糧増産費などに対する新規事業費はまつたく計上されておりません。継続事業費にのみ限られておりますが、東北、北海道、北陸などの積雪単作寒冷地帯における公共事業などは、おそくも今六月の暫定予管に計上されなければ、時期的に実施不可能になつて来る現状であります。さらに、政府の本予算編成がきわめて怠慢でありまして、六月の暫定予算はわれわれは了承でき得ますが、さらに七月についても暫定予算によらなけれげならないというこのことは、まつたく言語道断と言うべきでありまして、かかる政治的空白をつくつた責任はきわめて重大であります。  しかしながら、われわれは、この政治的空白を傍観視するわけには参らないのであります。中央、地方を通ずる税制の根本的改革、米価の二重価格制の実施、社会保障費の増額、大幅なる中小企業対策の実施、財政投融資の計画化などの基本方針は、本予算編成の場合に実現する覚悟でありますが、当面の問題として緊急に必要である次の諸点につきましては、すみやかに組みかえを断行すべきであります。すなわち、国家公務員、地方公務員の期末手当一箇月分百三十二億円、凍霜害対策として租税減免措置を含めて十五億円、中共引揚者などの援護費を含む援護資金の増額五億円、国民健康保険の国庫負担の増額五億円、失業対策費の増額を行い、日雇い労務者の夏季手当四億円、母子福祉資金貸付の経費三億円、さらに積雪寒冷地帯におきまする公共事業費などの増額五億円、これを最小必要限予算化して当面の事態を収拾することはきわめて当然の措置と言わなければならないのであります。(拍手)以上が、われわれの暫定予算に対する組みかえ案の大綱であります。  去る三月十四日、不信任案が可決されたときに、憲法第六十九条によりまして、総辞職を選ぶも解散を選ぶも、あと十日間の余裕期間があるから、政府は、各般の善後措置を講ずるとともに、衆議院の予算先議権を尊重いたしまして、ただちに暫定予算を編成して衆議院に提案し、右十日間の期間中にその成立を期すべきであつたのであります。しかるに、政府は、それを十分知りながら、昭和二十八年度本予算で議論百出した防衛費を四、五月暫定予算に月割で計上しております。この事実は、衆議院を無視し、国民の真の声を聞かず、防衛費の国庫支出を解散のどさくさまぎれに通そうとした自由党国会軽視の好適例であり、わが国会史上に一大汚点を残すものであります。(拍手)  また、不平等条約の締結によつて防衛費の半額を負担することになつたわが国は、自由党の秘密屈辱外交によつて、選挙中、通商航海条約を締結し、国会の審議を無視し、今また苛酷なる条件でのMSA援助を受けようとしております。MSA援助を受けて日本の経済自立を行うと称し、小笠原大蔵大臣は、特需二年間保証で経済自立を行うと称しております。しかし、経済自立は国民生活安定のために行うものであるが、特需あるいはMSAの援助が、勤労大衆にとつてどれだけの利益になるだろうか。勤労大衆には何らの利益にならないのであります。吉田内閣は、かようなことによつて実際的な再軍備を推進するよりも、この六月分の暫定予算において、緊急にぜひ必要な、低米価、低賃金に悩む農民、勤労者への安定施策を速急にとるべきであり、また中小企業者に対しても緊急に融資、減税の措置を講ずべきであります。これらの点で、第五次吉田内閣にはまつたく何らの抱負も経綸もなく、まさに無為無策に堕していると申し上げても過言でないのであります。われわれは、以上の政治的、経済的理由において、本暫定予算に対しましては遺憾ながら賛成するわけには参りません。従つて、私は、日本社会党を代表し、ただいま提出されました両社会党の組みかえ動議に賛成の意を表明いたしまして討論を終ります。(拍手
  46. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終結いたしました。  これより採決に入ります。まず、八百板正君外十四名提出昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二件の編成替を求めるの動議を採決いたします。八百板正君外十四名提出動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  47. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立少数。よつて八百板正君外十四名提出動議は否決されました。  次に、昭和二十八年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二件を一括して採決いたします。三件の委員長の報告はいずれも可決であります。三件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  48. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて三件とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  49. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) この際お諮りいたしたいことがあります。内閣から、日本放送協会経営委員会委員に矢野一郎君及び福田虎亀君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて同意するに決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後九時五分散会