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1953-07-22 第16回国会 衆議院 法務委員会地方行政委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十二日(水曜日)     午前十時五十分開議  出席委員   法務委員会    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 吉田  安君 理事 井伊 誠一君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    中村三之丞君       細迫 兼光君    木下  郁君       木村 武雄君    岡田 春夫君   地方行政委員会    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 灘尾 弘吉君    理事 床次 徳二君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       生田 宏一君    河原田稼吉君       熊谷 憲一君    佐藤 親弘君       吉田 重延君    橋本 清吉君       藤田 義光君    北山 愛郎君       滝井 義高君    横路 節雄君       大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         法務委員会専門         員       村  教三君         地方行政委員会         専門員     有松  昇君         地方行政委員会         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四六号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより法務委員会地方行政委員会連合審査会を開会いたします。  不肖私が議案の付託を受けている法務委員会委員長であります関係から、先例によりまして本連合審査会委員長の職務を行います。  それではただいまより刑事訴訟法の一部を改正する法律案について審査を行います。まず政府より提案理由説明を聴取いたします。犬養法務大臣
  3. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま議題に上ぼりました刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、御説明いたします。  まず、立案の趣旨について、申し上げます。現行刑事訴訟法は、実施以来四年半を経過いたしました。この法律は、御承知通り、旧刑事訴訟法に対し根本的な改正を加えたものであり、しかも、制定当時の特殊な事情から、比較的短時日の間に立案せられ、かつ、実施せられたものでありましたため、当初は相当の混乱も見られたのでありますが、四年半にわたる朝野法曹の努力により、今日ではその運用もほぼ軌道に乗つて参つたと申すことができると思うのであります。しかしながら、他面、時の経過とともに、当初から法律自体に内在していた問題のうち、運用によつては解決することのできない点が次第に明瞭となつて参りますとともに、社会情勢の変化に伴い、当初予想しなかつたような問題も現われて参りまして、これを改正すべしとする意見がようやく各方面に高くなつて参りました。  しかし、刑事訴訟法は、刑事手続基本法でありますので、その改正には慎重な考慮を払わなければなりません。そこで、政府は、一昨年法制審議会に対し、刑事訴訟法運用実情にかんがみ早急に改正を加えるべき点の有無について諮問いたし、各方面の有識者をもつて構成される同審議会の慎重な審議に基く答申を待つて改正案を作成することといたしました。同審議会は、現行法の基本的な諸規定についての検討はとりわけ慎重を要するというので、これを後日に譲り、現行法の基本的な性格を維持しながら、運用現実に障害のある点を、さしあたり除去するのに必要な改正を行うという根本方針のもとに、今日まで三回にわたつて答申をいたして参つたのであります。  そこで政府といたしましては、答申のありました部分について逐次改正案を作成し、これを国会に提出したのでありますが、国会の解散その他の事情により、今日まで成立を見なかつたのであります。そこで、今回、従来の案に最近の答申に基く改正を加え、ここにあらためて御審議を煩わすことといたした次第であります。  改正内容は、六十数箇条の多岐にわたつておりますが、その多くは、現行法規定の部分的な修正にとどまるのでありまして、基本的な制度自体改正を加えるものはなく、また各改正規定の間に特に一貫した関連はないのであります。  次に、改正案内容について、申し上げます。第一は、被疑者及び被告人に対する身体の拘束に関する規定改正であります。現行法は、起訴前の勾留期間を一応十日以内とし、やむを得ない事由のある場合に限り、裁判官裁量により最大限十日の延長を認めているのでありますが、終戦以来現在までの犯罪の動向について考えますと、事件の規模はいよいよ大きくかつ複雑となつて参り、捜査機関がいかに努力いたしましても、現行法の認める勾留期間をもつてしては、起訴起訴決定するため必要な資料を集めることすら至難な場合が少くないのであります。そこで、これに対処するため、特別の事情のある場合に限つて、厳重な要件の制約のもとに、さらに五日だけ延長し得ることといたしたのであります。  起訴後の勾留期間につきましても、現行法はその更新原則として一回に限つておりますため、起訴から上訴を経て判決の確定に至るまでの勾留期間原則として三箇月に限られる結果となり、いろいろ支障を来しているのであります。そこで、このような実情を考慮し、本案においては、禁錮以上の実刑の宣告があつた後の勾留期間更新は、これを形式的に制限せず、裁判所裁量にゆだねることといたしました。  次に、いわゆる権利保釈につきましては、その除外事由が狭きに失し、訴訟進行支障を来たしておりますばかりでなく、世の一部に非難の声も聞かれるのであります。よつて、今回この除外事由を一部拡張することといたしたのであります。その一は、従来除外事由として被告人死刑又は無期の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯した場合をあげていたのをいわゆる重罪、すなわち短期一年以上の刑にあたる罪を犯した場合にまで拡張したこと、その二は、被告人が多衆共同して罪を犯した場合及び保釈されるといわゆるお礼まわりなどをして脅迫がましい態度をとる危険が多分にある場合を加えたことであります。なお、このお礼まわりにつきましては、これを保釈取消事由にも加えることといたしました。  さらに、いわゆる勾留理由開示手続が、実際においてはほとんど例外なくと申してもよいくらい濫用され、その適正な運用を妨げられている実情にかんがみ、これを匡正するために、関係人意見陳述は、書面によつて行うべきことといたしましたが、これは、もちろん裁判所が適当と認める場合に、口頭の陳述を許すことを禁ずるものではありません。  第二は、犯罪捜査に関する検察官司法警察職員との関係に関する規定改正であります。これは、二点にわかれ、その一は、検察官のいわゆる一般的指示権の及ぶ範囲を明確にした点であり、その二は、司法警察員逮捕状請求につき、原則としてこれを検察官同意にかからしめた点であります。前の点は、現行法公訴実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定める場合にのみ、一般的指示をなし得ることとしているため、捜査自体の適正を期するためには一般的指示をなし得ないものでないかとの疑いを持つ向きもあり、解釈上明確を欠いているのであります。しかし、捜査が適正に行われて初めて公訴実行が可能になるのでありますから、検察官一般的指示は、捜査の適正をはかるためにも行われなければならないと存ずるのであります。そこで、この点の明確を期したのであります。あとの点は、最近逮捕状濫用非難が高く、有力な法曹の間にも本案のような規定の創設を希望する声が高いので、これを改正案に取り入れたのであります。  第三は、被告人公判廷において有罪である旨を自認した場合には、簡易な公判手続による審理を進めることができることとした点であります。公判において審理を受ける被告事件の約八割までが、犯罪事実について争わない場合であるという実情にかんがみ、この簡易公判手続により審理促進事件重点的処理を期することといたしたのであります。元来英米法では、被告人公判廷有罪答弁をした場合には、それのみでただちに被告人有罪とすることができることとなつておりますが、かような制度は、我が国の憲法上その採用に疑義のある向きもありますので、本案では有罪答弁があつても、なお従来通り補強証拠を要することとしつつ、その証拠能力に関する制限を多少緩和し、かつ証拠調べについてもその方法裁判所の適当と認めるところによることといたしたのであります。さらに、漸進的にこれを実施する意味におきまして、この手続は、さしあたり、いわゆる重罪以外の比較的軽い罪の事件につき当事者の意見を聞いて行うべきものとするとともに、裁判所は、一旦簡易公判手続による旨の決定をした後でも、この手続によることが相当でないと認めるときは、いつでもその決定を取消し、通常手続により審判をすることができることといたしました。  第四は、控訴審における事実の取調の範囲を拡張いたした点であります。御承知のごとく、現行法は、旧法のような覆審の制度を廃し、控訴審を第一審の判決の当否を批判するいわゆる事後審とし、第一審判決後に生じた新たな事実は控訴審においてはこれを考慮することができない建前をとつているのであります。しかしながら、運用の実際は、規定不備もあつて、必ずしもこの建前通りではなく、裁判所によつてその取扱いが区々になつているのみならず、少くとも刑の量定に関する事実については、この建前を緩和すべきであるという意見が各方面に強いのであります。よつて、この要望にこたえるべく、第一審判決後の被害の弁償その他の情状に関する事実については控訴審においてもこれを考慮することができることとするとともに、第一審の当時から存在しながらやむを得ない事由によつて公判審理の過程において法廷に顕出されなかつた事実も、控訴趣意書に記載して控訴申立理由を裏づける資料とすることを認め、裁判所調査義務範囲を拡張することといたしたのであります。  以上でおもな改正点説明を終りますが、なお、現行法不備を補うため改正案に取入れました点として、捜査機関のいわゆる供述拒否権告知について、運用実情にかんがみ、その内容修正を加えたこと、勾留中の被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、監獄官吏による引致を著しく困難にした場合に、被告人出頭なくしてその期日公判手続を行うことができることといたしたこと、訴訟促進の要請にこたえるため、死刑以外の判決に対しては、書面によつて上訴権の抛棄をすることができるものとしたこと、起訴状謄本の送達不能の場合には、その法律関係を明確にするため、公訴棄却の裁判によつて訴訟を終結すべきものとしたこと、さらに略式手続に関する規定を一部改正して、その適正迅速な進行をはかつたことなどがあるのであります。  何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて提案理由説明は終りました。質疑を行います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。横路節雄君。
  5. 横路節雄

    横路委員 斎藤国警長官にちよつとお尋ねしたいのですが、ただいま法務大臣から御説明がありましたうち、第百九十九条の第二項の次に、次の二項を加えるという、逮捕状請求に関する件なのですが、私たちの手元に法務省刑事局から、刑事訴訟法の一部を改正する法律案逐条説明書の中に、こういうふうに書いてある。現行法では司法警察員は法文上直接裁判官に対して逮捕状請求することができることとなつているが、実際の運用についてはあらかじめ検察官連絡し、その了解を得て逮捕状請求している地方と、そうでない地方とがあつて区々にわかれている。こういうように説明書に書いてある。そこで私の国警長官お尋ねしたいのは、実際にただいま司法警察員が、いわゆる逮捕状請求する場合に、こういうふうに地区によつてはあらかじめ検察官連絡了解を得て逮捕状請求している地方と、そうでない地方とあつてまちまちなのか、刑事局の発表によると、どうもまちまちであるから、今度は統一しよう、その統一はいわゆる検察官連絡了解というのを同意というふうに統一しようじやないかというふうに、説明書きを見るとなつておりますので、ただいまの現状はどうなつておるのか、その点をひとつお尋ねいたします。
  6. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 令状請求いたしますときには、原則として事前検事に相談をした上でやるというのが通常の例になつております。ただ重要犯罪につきましては、検事連絡することなく令状請求するということは全然ないと思うのでありますが、しかしごく軽微な犯罪等につきましては、検事の力に連絡をすることなしに令状請求しているというところもあるだろうと思うのであります。そういう意味では区々になつていることはその通りであります。あるところによりましては、ほとんど一切検事判こをとつてその上にやるというところもありますし、ただいま申しますように、将来捜査上、検事さんに起訴の場合にさらに十分調べてもらう必要があるというような重要なものにつきましては、令状検事事前連絡をとるが、そうでないものは連絡なしにやる、そういうふうに区々になつていることは事実であります。
  7. 横路節雄

    横路委員 重ねて国警長官お尋ねいたしますが、ただいまお話事前連絡了解を得て逮捕状請求する点について何か一般的な原則については国警長官として各地方警察に対してそういう指示を与えているのか、それともそれぞれの管区本部でそれぞれ別に国警本部との連絡なしに、一般的原則は与えられていないけれども、それぞれの地方に応じたのを管区本部でやつているものか、もしも一般的原則というものがあればお話願いたいし、なければないでよろしいが、その点の実情をもう少し具体的にお話願いたいと思います。
  8. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 犯罪捜査につきましては、司法警察職員検事と十分協力しなければならないという原則から来ているのでありまして、一般的に令状をとる際には検事連絡しなければならぬ、そういう訓令は私の方からも出しておりませんし、管区本部でも出していないと思います。一般検事との協力という点からそれぞれ適切な方法をとつているというのが現状であります。
  9. 横路節雄

    横路委員 国警長官に重ねてお尋ねいたしますが、第百九十九条の第二項の点につきましては、こちらに出された法務省刑事局あたり説明書を見ても今日は逮捕状濫用されている、そういう非難が実に多いので、その非難にこたえて改正したのだというお話なんですが、国警長官としてはこの点実際に今日逮捕状濫用されているというようにお考えになられるかどうか、また法務省刑事局でそういうように逮捕状司法警察員濫用しているのだと言うことがもしも国警側からすれば誤解だとするならば、なぜそういう誤解が生まれたのか、そういう点についてもお話を願いたい。
  10. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 逮捕状濫用されておるという意味には私は二つ意味があるだろうと思います。と申しますのは、故意に悪意をもつて逮捕令状濫用する、これはほんとうの濫用であります。やはり数多い中でありまするから、そういつた不心得の者が絶無とは申しませんが、そう数が多いとは思いません。ところがもう一つは、不用意のうちといいますか、あるいは検挙に熱心なるあまり、任意捜査でも上がるべきものを、むしろ任意捜査でやるべきものを逮捕して、そうしてどちらかといえば自白の手段に使う。無意識ではありますが、そういつた面濫用という点も、私は絶無とは申し得ないと思います。これらにつきましては、十分今後も警察は慎重に考えなければならぬ点がある、かように考えておるのであります。要は、そういつたような、ただいま申しました二つの型の令状濫用というものを、どうすれば防止するのに一番適当な方法があるかということをよく研究をした上で、われわれ真剣にこれと取り組まなければならぬということは十分痛感をいたしております。
  11. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今の国警長官お話は、運用については相当今よりも注意をしてやらなければならぬということですが、そこで、国警側として何かこの運用について、特段こういうようにしたらいいだろうというような点についてお考えがあれば述べていただきたい。それは先ほど私からお話いたしました百九十九条の修正というのは、どうも法務省刑事局の見解によれば、あらかじめ検察官連絡し、その了解を得て逮捕状請求している地方はよさそうだというふうに言外にとれるのです。全然何もやつてないところはよくない、だから何とか了解ぐらいは得ておいたらどうだろうか、何もやらないのはうまくないのじやないかということが、この説明書からは言外意味としてとれるのです。そういう点、先ほど国警長官からもお話があつたのですが、今何かそういう点について考慮したいというお話でしたが、こういう点について考慮され、いわゆる修正でなしに、運用の面についてうまく行くのだ、そのためには運用の面について、こういう点を考慮したいという点があれば、その点をひとつお聞かせいただきたい。
  12. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は、事前検事意見を聞いて、よく研究して、それから令状をとるということは、一つ方法としていい方法だ、かように考えますが、しかし今日の実情から、法務省説明しておられますように、区区になつておることは現実でありますが、しからば事前連絡しておる、あるいは検事の判までとつておるというところと、そうでなくて、この連絡を必ずしもそれほど緊密にやつておらぬというところと、どちらに令状濫用が多いかという実証的な問題でありますが、私は検事と密接に連絡しているというところの方が、令状濫用が少いという事実は認められないと思うのであります。実際問題といたしまして、これは法務省もそう自認されると思いますが、国家地方警察の面におけるよりも、自治体警察の面における方が、事前検事の判をとるとか、あるいはほとんど検事さんの指示のままに動くという方が、私は現実は多いと思つておるのでありますが、昭和二十六年十月に人権擁護局警察と一緒になつて調べましたものによりましても、判事令状請求して拒否せられました事実は、自警国警を通じて〇・五%でありますが、自警国警別にわけますと、国警の分が〇・四%、自警の方が〇・六%となつておるのであります。従つて、ただ事前連絡をするということ、あるいは事前同意を得るということだけでは、令状濫用の防止はできない。むしろそれぞれの組織の監督者が、いかに十分に監督をするか、日ごろの警察官の、そういつた悪意をもつて濫用するという者の監督教養ということが、まず第一でなければならないと思うのであります。そういつた面からいたしまして、私どもの考えといたしましては、ただいま令状請求のできるのは司法警察員でありまして、――巡査部長以上はほとんど司法警察員になつておりますが、その司法警察員の中で、令状請求し得る者の階級をさらに上の方の者に限ることができるというようにしていただいて、そして警部補あるいは警部以上でなければ令状請求できないというようにいたし、そしてこの監督をさらに強化して、それからまた判事さんが令状を出される際に、警察が持つて参りました疎明資料を十分よく見ていただいて、令状を発付すべきかどうかということを考え令状を渡していただくということにすれば、今までよりも、もつと令状請求というものは慎重になるであろう、かように考えます。事前検事連絡し、そして研究し合う機会を持つということは望ましいことで、これは悪いこととは存じませんが、検事同意がなければ令状請求ができない、あるいはそれが非常に困難になるということでありますると、これはかえつて将来に大きな弊害を逆に残すであろうという感じをいたしておるのであります。
  13. 横路節雄

    横路委員 法務大臣お尋ねをいたしますが、今の百九十九条の点にからんでですが、警察法の第一条に、明らかに警察犯罪捜査被疑者逮捕を責務とするとうたつてあるわけです。この点につきまして、やはり今日この警察法によりまして、明らかに国家公安委員会あるいはそれぞれの自治体警察においては、それぞれの公安委員会のもとに警察があつて、政治的には独立をしているわけです。ところが実際に警察当局は直接法務大臣監督下にありますし、百九十九条第二項によつて逮捕状請求検察官同意を得なければならぬということになると、これはどうも政治的に濫用される危険が多くなりはしないだろうかというのが、私はやはり百九十九条の逮捕状同意を求める件の一番大きな問題だろうと思う。この点についてせつかく警察法の第一条でこういうようにうたつてあるにもかかわらず、この第一条を根本的に否定といいますかそうい、う立場に立つ修正をなされたのは、今国警長官から逮捕状濫用というのはいわゆる検察官連絡して了解を得て逮捕状をやつたからといつて、それが必ずしもうまく行つているものでもない、こういう実例のお話でございますが、法務大臣としてはただいま御説明もございましたけれども、この警察法第一条との関連において実際に濫用されておるのかどうかという点と、それから検察官同意を得るということによつて多分に政党的に濫用される危険がないかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  14. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。これは内容をごく率直に委細を尽して申し上げてみたいと思います。ただいま横路さんのお話のように、司法警察官が何といつて捜査の第一次的責任者であります。この地位はいかなる場合もくつがえしては、新刑事訴訟法の精神を没却するものであると思うのであります。しかし横路さん特に御承知通り一つ犯罪がそこに生じますと、同時に公訴遂行、つまりいずれは検察官の手に移つて参りまして、起訴にするにせよ不起訴にするにせよ、そこにいわゆる公訴実行ということが同時に生まれて来るわけでございます。そこで平たく言えばリレー・レースみたいなものでありまして、第二走者は第一走者走りぶりに干渉はしないけれども、バトンを受取つたあとのときにいい競走ができるようにはしてもらいたいというその願望は、当然検察官が持つてよろしいものであろうと思うのであります。そこで公訴遂行をまつたからしむる範囲において、捜査を適正にしてもらいたいという検察側の意思の反映がそこにあるということは、私はかまわないことでもあり、当然のことでもあろうと思うのであります。そこで逮捕状請求司法警察職員裁判官にする場合に濫用の事実があつたかどうか、数多い警察官の数から見れば、私は少い方だろうと思うのでありますが、これを受ける人民の立場から言うと、一つあれば十あつたように感じる。そこが民主生活として大事なところだと思うのであります。御承知のように、私は法務大臣でありますと同時に国警担当の大臣でありまして、この点はしごく当然のことでありますが、双方の立場、そうして人権擁護という立場から、公正冷静にこの問題を処理しなければならぬと思つて、実は非常に責任を感じているのであります。御参考までに申し上げるのでありますが、おとといでありましたか、きのうでありましたか、裁判所からここに来てもらいまして、法務委員会で証人に立つてもらつたわけであります。つまり逮捕状請求を受ける側の都合だけからいいますと、警察官逮捕状請求内容よりは今のところ――将来は警察官もずつと教養が上つて伸びることと思いますが、今のところ検察官逮捕状請求の場合の方がずつと法律的に整つているということはいなめないということを言つたわけであります。しかしこれから私の申し上げる重点になるのでありますが、さればといつて捜査の第一次的責任である司法警察職員の地位を、それのみの理由で侵害するということはよくないと思うのであります。たびたび法務委員会で申し上げたのでありますが、法制審議会関係などで同意という字にかたまつて、ここで審議をお願いしておるのでありますが、法務大臣逮捕状請求の場合に検察官同意を必要とするというその同意が、世界一いい言葉と思うかという御質問がかりに横路さんからありましたならば、私は世界一いいとは思つていない、ではどういう内容を盛ればいいかと申しますと、もう一つ裁判所側の事情を申し上げたいと思います。裁判官逮捕状請求を受けた場合に、それが適法であるか否かという判断は商売だからすぐできないと困るのでありまして、できるのであります。それが妥当性を帯びておるかどうか、言いかえればこれは違法だがこのくらいのことは逮捕しなくてもいいじやないか、あるいはこれは違法であるが、今一体逮捕するのに適当な時期かどうかという妥当性の判断が裁判官に可能かどうかという問題になりますと、これは学会にいろいろ意見がわかれているのだそうでありまして、妥当性を疑う意見が相当ある。それから昨日裁判所の方からいろいろ意見を聞きますと、捜査に一緒に着手したわけじやないのだから、厳密に聞かれるとそこに多少問題があるような御返答であるのでございます。従つて逮捕状請求を受ける裁判官立場になりますと、公訴官である検察官――とにかくいろいろな角度からちの逮捕状請求内容について意見の反映がある方が、ずつと職務が遂行できるという結論になるわけでありまして、その意味でこの百九十九条二の改正を御審議つておるわけであります。従つて逮捕状請求司法警察官がする場合は、その同じ事件について何らかの検察官意見の反映が警察側にもあり、しかして請求を受けた裁判官側にもあればよりよい。これが結論でありまして、その内容同意という文字が一番いいかというのは、それを提出いたす法務省としては一番いいと思つております。
  15. 横路節雄

    横路委員 同意という日本語について法務大臣から丁寧にお話がございましたが、持つている意味からすると、なかなか同意ということにはならないのじやないかと思うのです。もつと簡略にすれば通告なんということだつて同意とは同じ言葉ではないかもしれませんが、今の法務大臣から行けば、通告というようなことでも、あるいはそのあと説明されているあらかじめ了解、こういうことでもいいのじやないかと思うのでございます。  なお私もう一つお尋ねしてあつた点は、いわゆる警察法の第一条との関連と、それからもう一つ国警側においても今日まで逮捕状濫用が決してなかつたとは私は言わない。ただ私が申し上げたいのは、いわゆるこういうように改正をした場合に、政党的な弾圧といいますか、検挙といいますか、そういう点でかえつて濫用されるおそれはないだろうか、この点について先ほどお尋ねしてあつたのです。
  16. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。一番肝腎なことをはずしてたいへん失礼いたしました。これは私の就任以来、今の検察庁で私の知つている範囲ではそういうことはないと思います。しかしそれは場合によつてはあるものとして、法務大臣がよく心得るということが肝腎だと思うのでございます。従つてこれは、ところによつて警察にもそういうことがあるでありましよう。政治的なことがあつたのじやないかというような忠告を私はよく受けますけれども、大体調べてみると警察でもそれほどのことはなかつた場合が多いのであります。しかし今までにないから将来もないと断言するのは、私は法務大臣として不遜であると思います。そういう意味から申しましても、逮捕状請求に関しましては、裁判官にはいろいろの角度から意思の反映があつた方が、政治の弊害が及ばない、こういうふうに私は考えているのでございます。今お話のありました通知とか連絡でも、これは字句の内容でございますが、ただその点は通知されて事件内容がつまびらかでないということでは困るのと、それから私が特にただいまも強調いたしました、裁判官検察官としての逮捕状請求についての意見の反映がなくてはならぬ。それがあつた方が、今横路さんが特に御心配の政治の弊害が及ぶということも、お互いにチエツクし、バランスを得ることでうまく行くのじやないか、こういうふうに考えているのでございます。
  17. 横路節雄

    横路委員 いろいろお尋ねしたい点もございますが、あとにたくさん質問者もあるようですから、第百九十三条の第一項の後段を次のように改めるという点につきましては、やはり百九十九条第二項に新たに加えました二項との関連において先ほどお尋ねすればよかつたのですが、大体同じような意味ですから、この点についてはあとの方に譲ることにいたします。  法務大臣お尋ねいたしたい点は、二百八条の二の点、いわゆる今日までの勾留期間について、さらにこれを五日延長するという点については、実際に数多く被疑者として勾留されている人々の実情等から考えてみましても、これには具体的な内容は盛つておりますけれども、しかしさらにこれを特殊な事情においても五日延ばすということについては、これこそいたずらに勾留期間を延長するというような憂いがあると思うのですが、この点については私としては賛成は絶対しないのですけれども、わざわざこれより五日延ばさなければならない理由を端的に御説明していただきたい。
  18. 犬養健

    犬養国務大臣 これも御心配はごもつともであります。よく私も聞くのでありまして、十日と十日で二十日、その間に相当精を出せば十分行けるのに、調べもしないでほつといたというようなお話を聞くので、私もその点非常に責任を感じております。検察側からいえば、その間傍証とか共犯の方を調べていたのだということでありますが、とにかく人を勾留することでありますから、これはほんとうに最小限度にしなければならぬ。ほんとうにその気持で司法行政に従事しなければならぬと思うのであります。それではなぜまた五日ふやすか、こういうことでございます。これはごく端的に申し上げまして、非常に大きな、同時多発的といいますか、全国的といいますか、大勢――四、五人も大勢という中に入るといえばそれまででありますが、そうでなく多衆、数十人というような大きい騒擾事件の取調べなどには、東京にあつてその関係者が長崎にある、北海道にも実はあるというような、そういうのではとても間に合わない、こういうことでございます。事例をいえば、非常に大がかりな公安事件的な騒擾事件、それから全国的な詐欺事件というようなものしか頭に置いてないのでありまして、これを濫用されてはたまつたものでないということは、私は横路さんと全然同感でありますから、これは何かの形で、大臣通牒とか検事総長の訓令とかでしぼるつもりでございますが、それでもどうも心配だというお話ならば、国会の意思でもつてわくをはめてくだされば、そのわくの抑制の中に喜んで私は入りたいと思うのであります。
  19. 横路節雄

    横路委員 今のお話で、私は大臣の誠意はわかるのですが、非常に心配な点がさらに出て来たと思うのです。それは思想的な意味における、よく法務大臣が言われる同時多発的に起るといいますか、かりに国内における治安上、時の政府が、自分の維持している政権に対して反対するというような運動が、全国的に広がつて来たという場合に、この二百八条の二を濫用して、さらに五日の延長をするというようなことが起きる可能性があるのじやないかと私は思います。これは実際に検察当局の方でまじめにやつてもらえば何でもないものであります。実際には大体十日くらいぶち込んで置いて、全然調べないで、相当精神的に参つてから初めてやる、あるいは初め一日か二日やつてあとは十五日間くらい。ぶつとばして置く。これは枚挙にいとまがないくらい多い例なのであります。  それからいま一つは、今のお話で、法務大臣の思想的な問題にからんだ同時多発的に起つて来るような問題に関して、全国的にこの問題を悪用するというような憂いが多分にあると思うのですが、その点はどうですか。
  20. 犬養健

    犬養国務大臣 勾留期間について、調べもしないでぶち込んだというような問題は、実は私検事をしたことはないので、ここにいる実務家から詳しく申し上げたいと思うのですが、概論的なことをお答えいたしますならば、私の承知している範囲では、なかなか今の検察庁は、一政党とか一思想というものに動かされるようななまやさしいものではありません。御承知のように、選挙違反でも与党自由党が一番多くあがつているというようなことを見ても、これは党員として私はいささか面目を失するのでありますが、私は面目を失することを喜んでいるくらいなのでありまして、そういう意味からいつても、一つの政治に動かされるというような、なまやさしいものではないと思います。しかしある場合どう用意するか、これは必要なのでありまして、従つてあなた方委員の決議される附帯決議でも何でも、わくを厳重にしてくだされば、私は喜んでその抑制に従いたいと思つているのであります。
  21. 横路節雄

    横路委員 これで私はやめますが、もう一つだけ、今の大臣のお話では、今日選挙違反の件について、与党側に多くて、大臣は党員としてはやはり遺憾であるとお思いになつているようでありますが、この点私はやはりこれらの百九十九条の二項がこういうように改正なつたら、これはなかなか与党の方には手が行かぬですよ。ですから今日国家公安委員会、それから市町村の自治体警察がそれぞれの公安委員会のもとに認められておる警察法の存する限りにおいては、この百九十九条の第二項は修正しないで置いた方がいいと思う。今日国家公安委員会なり、それぞれ自治体の公安委員会は、政党的には中立です、この点は明らかなんです。そういう点の運用は、かえつて今の方がいいのではないか。今の方がいいから、大臣は一党員としてやはり多くの党員の諸君に、何かちよつとつらい思いをなさることがあると思う。これがこういう修正なつたら、私は逆な方向に行くのではないかということを憂えているのですが、その点はどうですか。
  22. 犬養健

    犬養国務大臣 それは横路さんの立場からおつしやる気持はわかるのでありますが、その前にお断りしておきますが、法務大臣は選挙違反の一つ一つのケースには干渉できないことになつておりますし、私もその点は十分気をつけておるわけであります。これはお調べ願えれば相当御満足行くと思うのであります。私の申し上げますのは、裁判官自体が捜査を一生懸命やつているわけではないのであつて、突然逮捕状請求を受ける。これは日本の場合とアメリカの場合と大分そこの趣きが違つておりまして、従つて裁判官の願望からも、公訴官たる検察官は、この事件についてどう考えているという意思の反映を実は求めております。また公訴官としても、いずれは自分のところに来て起訴か不起訴かをきめる、同じ事件のつながりなのです、連鎖なのでありますから、それについて第一次的捜査責任者である警察官の地位を損ねるということなしに意思を反映するという程度のことは、大体私は輿論としてきまつているのであつて、残る問題は、一体そういうことに同意という字がきつ過ぎるのではないか、弱過ぎるのではないか、こういう問題が目下の大問題になつているのではないか、こう心得るのであります。なお御質問があればお答えいたします。
  23. 横路節雄

    横路委員 ほかの方の質問もありますから、私は一応これで打切ります。
  24. 小林錡

    小林委員長 藤田義光君。
  25. 藤田義光

    ○藤田委員 今回の刑事訴訟法改正にあたりまして偶然法務大臣が国家警察を担当されているという状態でございますので、私はまず第一にこの改正案を立案するにあたりまして、国家警察の十分なる了解があつたかどうかをお聞きしたいと思います。  次に国家警察に対しまして、完全な了解がかりにあつたと仮定いたしまして、警察の重要な一翼を担当いたしております自治警察につきましては、いかなる連絡了解を得られたかということをお伺いしたいと思います。
  26. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題も表向きは出ておりませんけれども、本法案を審議するについて重要なフアクターとなつておりまして、さればこそ御質問があることと存じます。ただいま提案理由で述べましたように、法制審議会のたび重なる議を経たのでございますが、法制審議会審議の経過においては、私は必ずしも法務省警察とがそれで両方満足だというところまでは行つてなかつたと思います。またその状態には過去から積み重ねられた伝統とか、いろいろな事情の積み重なりがあるということを率直に私は申し上げるのであります。従つて法制審議会で議決されました逮捕状請求の場合の「同意」という字や、一般的指示、準則をつくるという問題については、法制審議会の結論のままで国会審議をお願いして、そうして国警とも、自治警の方の関係職員とも連絡なしということでは、これは法務大臣としても国警長官としても任を尽したということにはならないような、実は事情になつていたのでございます。従つて本法案の御審議国会にお願いする前に、国警長官としてはしばしばざつくばらんに胸襟を開きまして話合いまして、百九十三条及び百九十九条について私のねらい並びに斎藤君のねらいもほんとうに聞き合いまして、そうしてこれを法務省の側の調整の材料にしまして、大体藤田さんもお察知になつているんじやないかと思うのでありますが、了解点に達しているわけでございます。また国警長官からも機会があるごとに、この問題は公安委員などの方にも伝えておられたようでありますし、私のところに見えた公安委員の方々には私はこういう性質でありますから、歯にきぬを着せずに、率直に見通しその他を伝えているのでございます。何分長年のいろいろな食い違いがあるのを私が責任を背負つているようなわけで、十分に行つていない点は私の徳も足りないし、才も足りないのでありますが、できるだけ努力しまして、大体今ではほぼ了解点に達して本日の本委員会に臨んでいる、こういうふうに私は承知しておるのでございます。
  27. 藤田義光

    ○藤田委員 終戦後各方面に民主化が実施されたのでありますが、警察の民主化もようやく軌道に乗つております。まだ完璧ではございませんが、この際におきまして今回の刑事訴訟法というものが警察の前途に非常に重大な影響を持つておるのであります。ただいま犬養法務大臣の御答弁ではございましたが、はたして民主化されつつある警察が今回の改正案了解を与えたかどうか。委細はわれわれの委員会で詳細ただしたいと思いますが、本日は連合審査でありますので、私はこの際簡単に斎藤国警長官の御意見を伺つておきます。
  28. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま大臣から御説明がありましたような次第で、大臣の御説明非常に意味慎重な御説明でありました。国会の御審議によつて大体適当なころに御決定をいただいたらと、こういうふうに思つております。
  29. 藤田義光

    ○藤田委員 斎藤国警長官犬養大臣のもとの事務総長でありまして、この点からいたしまして、大臣の前で明答をいただくということは政治的にいかがかと存じますので、あまり詳細本席では質問することを御遠慮いたします。ただ今回の改正案を通覧いたしまして、私は公判における有罪、自白の審理促進、これは被告にとり有利な改正であると率直に認めます。また控訴審における事実審理範囲を拡張したことも従来の制度の弊害を是正いたしておりまして、これは改善であると率直に認めまするが、そのほかの諸点に関しましては非常に被疑者に不利である、これは一般常識になりつつあるのでありまして、この点に関しまして二、三簡単にお伺いしたいと思うのであります。  まず第一点は、改正案の八十四条に勾留理由の開示を被告として要求できるのであります。これは憲法に保障された基本的人権でありまするが、これに対しまして重大な制約が加わつた、書面による提出というような重大な制限が加えられたのでございまして、これは特殊な犯罪等に関する思惑からかかる改正を計画されましたならば、法廷等の秩序維持によりまして当然運用できるわけであります。わざわざ憲法に規定されました国民の権利を侵害する危険のあるかかる改正をするということは、行き過ぎではないか、かように考えております。この点まず第一にお伺いしておきたいと思います。
  30. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。この点の御心配もごもつともだと思いますが、ちよつとその前にごめんこうむつて今度の改正案をいじりますときの心構えを申し上げたいと思います。御承知のように、大陸法的な刑事訴訟法、それに突然占領という事実から英米法的なものが入つて来まして、非常に中には日本の裁判にあるいは刑事訴訟法などにいい影響もおみやげとして与えたのでありますが、中途半端な混濁したものも残して行つたといつて過言でないと思うのであります。では根本的な改正はいつするのか。これは刑事手続基本法でございますから、非常に慎重にしなければならない。今おほめにあずかりました控訴審事後審的なものを続審的あるいは覆審的な要素をまぜたというのも、これは英米法か大陸法かというような潔癖な考えから言うと、中途半端なのでありますが、実際上はあれで相当よくなるのではないか。そういう根本的な解決は、これは数年かかりますので、その間ほつておけない雨漏りとか戸締りの悪いところを直すという技術的な修正が今度の修正でございます。先日法務委員会において、この修正案には思想がないというおしかりを受けたのでありますが、まさにその通りなのでありまして、思想はないのでありまして、これはほんとうの早急の修繕をやつているわけであります。修繕の中で藤田さんが御指摘になりましたように、控訴審の事実調べの拡張、その他二、三点は確かに人権擁護する方であるが、あと人権を拘束する方か拘束しない方か、二つ一つの返事をしろというお話ならば、これは拘束しているのであります。この拘束がやむを得ない点であるかどうかということについて厳正な委員会の御批判を仰いでいるわけでございます。それが一番目立つのは勾留理由開示について関係人意見陳述書面にした、法廷秩序に関する法律があるので、それでやつたらどうか、実は私も初めそう思つたのであります。ところが他日、一ぺん聞いていただきたいのでありますが、特殊なる公判のありさまを蓄音機に入れたものがあるのでありますが、これはほとんど公判の裁判法廷とは言えないのでありまして、法廷秩序の法律なんというものはとてもあの現状では適用できないようなところまで沸騰しているのでありまして、その現実に処して、観念論からはおかしいのでありますが、現実に処して書面でもつて関係人陳述をすることにしたのであります。但し提案理由説明で申し上げましたように、もちろん裁判所が必要と認める場合は関係人の口頭陳述を許すというのでありますから、これはいわゆる騒擾事件的なものの関係者の陳述書面になり、普通の場合は裁判長の自発的な認定でもつて、あなたこれはどうだと言つて口頭でいろいろ聞くことに私はなると思つております。法律の文面には出ておりませんが、運用はそうなるべきものと思い、またなると思つているのであります。
  31. 藤田義光

    ○藤田委員 私のことを申し述べて恐縮でございますが、法務大臣も戦争中この犯罪の問題に経験を持つておられて、十分御承知と思いまするが、ただいまの御答弁で騒擾罪に大体適用するとおつしやつていまするが、勾留期間の五日間延長と同様に、これは善良と申しまするか、軽微なる犯罪、その他どんどん自白もして行くよう犯人容疑者にも、今度の改正法が悪用されるということは必至であります。現に相当知性の高い選挙違反容疑者等に関しましては、すべて現在の二十三日勾留ということを唯一の武器にしまして取調官が相当濫用しておる事実は枚挙にいとまないのであります。おそらく過般の選挙における自殺事件も、こういう法律の悪用によつてああいう悲惨な結果をもたらしたのではないかと私は想像しております。それで騒擾罪だけに適用するということが立案者の本旨ならば、私たちはこの法律をさように改正すべきであると考えておりますが、この点は意見の相違になりますから、本席上で申し述べることは省略いたします。  今回の改正に関しましては、法務委員会で思想がないという質問があつたそうでございまするが、私は非常に大きな思想が流れていると思うのであります。それは昔の刑事訴訟法に対する郷愁であります。御存じのごとく現在の警察法第一条、検察庁法第四条によれば、公判公訴の提起維持と捜査という三本建になつておりまして、司法警察職員捜査の全権をになつてまた責任を負い、公訴の提起維持に関しましては検事がその責任を負う、こういうような截然たるいわゆる訴訟当事者主義による運営がなされておるのでありまして、今回の改正を通覧いたしますると、どうも刑事訴訟の基盤は非常に新しい時代に即応するようにかえられていながら、実際の改正案は昔の刑事訴訟法的なにおいが強いのであります。かつて内務省の傘下に警察官がありまして、補助司法職員をやつておりました検察官が絶対権限を持つておりました。しかし内務大臣から知事に至る強力な内務官僚の基盤があつて、検察庁の行き過ぎを是正しておつたのであります。チエツク・バンランスの原則は昔の機構においては円滑に運営されたのでありまするが、今日におきましては御存じのごとく警察は微力であります。民主化されております。従いまして検察官一般指示権を与える捜査逮捕状の発行に対しまして同意を得るということは、非常に現在の刑事訴訟の当事者主義の原則からしてちぐはぐではないか、かような感じを抱くのでありますが、この点に関しまして法務大臣の御意見を伺つておきます。
  32. 犬養健

    犬養国務大臣 お話の点ごもつともな点も私あると思うのでありますが、結局これは刑事訴訟法に対する郷愁というのでなく、突然まじつて来た英米法的な考え方についての国情に沿わない是正というのが一番率直なものではないか。藤田さんのお言葉でおほめにあずかりました控訴審の事実取調べの範囲拡張も、これは法律学的体系からいうとおかしいのでありますが、実際はその方が被告人も助かる、こういうふうに現実の必要をとらえたものでございまして、もし検察庁の一部において、これによつてだんだん地歩を固めて、旧刑事訴訟法的なものへもどそうということがありましたならば、これはゆゆしき心得違いだと思うのでございます。それからもう一つただいましばしば御指摘になります一般的指示は、御承知の団藤博士、この方は刑事訴訟法の大家でありますが、百九十三条の改正は根本的には反対なんでありますが、改正案の条文に見るがごとく、捜査の適正のために、その他公訴遂行を全からしむるために一般的指示をする、こういうその他が入つて捜査の適正を期するという検察側の願望が公訴遂行を全からしむるそのわくの範囲の中であるならば、別に自分は異存を言う筋合いでもない、こう申しておられるのでありまして、決して捜査の第一次的責任者である司法警察官を昔のように指示勧告して快を叫びたい、こういう気持は毛頭ございません。これはあつては心得違いだと思つているのでございます。従つて刑事訴訟法にあこがれて改正をしたという思想は、少くもこの改正案に従事した本省の者にはないのでございます。この点は御了解を願いたいと思います。
  33. 藤田義光

    ○藤田委員 在野法曹界がこの法案の重要部分について賛意を表しているやに拝聴いたしまするが、われわれは国民代表として、今の法務大臣の御答弁はどうも納得が行かぬ。たとえば百九十三条の一項の後段の改正におきましては「捜査を適正にし、」という表現をわざわざ使つております。改正せざる以前の現行法におきましては、捜査が適正でなかつたやの印象を受けるのであります。先ほどの法務大臣横路君に対する御答弁の中にも、警察職員の教養が高くなつて来たならば、順次濫用はなくなるというような言葉があつたのでありまして、検察官が優秀であつて警察官が劣等であるというような印象を持つ法務大臣答弁ではないかと、私は先ほどの御答弁から解釈したのであります。現在の警察は行政警察権を持ちません。戦争中の警察と全然違います。司法警察、犯人の逮捕その他が中心の職務になつておりまして、この際におきまして行政警察権が順次ほかの官庁に委譲された今日におきまして、もし司法警察職員としての警察官の上に検察官という権力官庁ができましたならば、検察フアツシヨ化の危険を痛感するのであります。この点はわれわれが今日この法案を審議いたしまして、後世に悔いを残さぬために真剣に考うべきではないかと思うのでありまして、百九十三条に捜査を適正にするという表現をわざわざ使うようなことにも、せつかく民主化されつつある警察官に対する誤解が相当あるのじやないか、かように考えるのでありまするが、この点はいかがお考えでございますかお伺いしたいのであります。
  34. 犬養健

    犬養国務大臣 これは私の言葉が足りないための御質問だと思つて恐縮いたしております。実はそうではないのでありまして、検事の方にも数多くの中にはずいぶんどろくさいのもおりまして、一番下をとればどつちもどつちだと私は思うのであります。だから警察官はだめだ、検事はえらいとは私は思つておりません。実はなぜそういうことになつたかと申しますと、まず改正条項の意味を申し上げますと、これはしばしば野党からおしかりを受けましたスト規制法の提出の原因とよく似ていまして、従来の解釈があいまいであつたから、政府考えている解釈を明確にする解釈規定だ。従来といえども捜査を適正にし、公訴実行を全からしめるというのは一連のレールに乗つた問題だ、こう私どもの方は解釈していたのでありますが、一部にはそうでない。捜査は絶対に警察権の世界だ。公訴の維持、そこで乗りかえ電車みたいに、急に検事側の問題になると考えていた。これではきゆうくつであるし、リレーの第二走者みたいなものでありますから、第一走者の歩みぶりが適正であつてもらいたい。するとあとが非常にやりよい。こういう範囲にすぎないのでありまして、警察官教養云々は、私の言葉が非常に足りなかつたのでありますが、一般的指示はその意味教養があつてもなくても必要である。検事教養も今より高まり、それから警察官教養も今より高まれば、一般的指示を具体的にすることは、へびのからがなくなるように、いらなくなるのではないか、こういう意味で申し上げたのであります。
  35. 藤田義光

    ○藤田委員 終戦後確立されました新しい刑事当事者主義を破壊してまで、この法律によつて一般指示権や逮捕状に対する検察官同意を得るというような規定を設けなくても、現に警視庁等におきましては、逮捕状請求犯罪捜査にあたりましては、地方検察庁と随時緊密な連携をとつております。私はここに法の妙味があると思うのです。法律運用によつて解決されておる問題を、根本原則を破壊するという誤解まで冒しながら法律改正をやるところに、何かそこに危険な思想が流れているのではないか。かように考えるのでございまして、この点に関しましては法務大臣の御答弁からすれば、私は何も法律改正する必要はないのではないかと思う。教養の改善によつて現に行われておる相談づくの運営によつて十分に所期の目的を達成されるのではないかと思うのございます。この点に関する御意見と、勾留理由の開示の書面の問題と、勾留期限の五日間延長の問題、これは運用によつて非常な危険な結果を招きますし、こういう問題は法律にうたう必要はない。現在すでに最高裁判所以下事件が山積しております。もしここで再び百九十九条の改正をいたしまして、逐一逮捕状に関して検事同意を求むるというような繁文縟礼を加えましたならば必ずや被告、被疑者に不利な取調べの渋滞ということが、さらに深刻になつて来るということは、これはおそらく関係者の一致した常識ではないかと私は考えおりますが、特にわれわれ裁判官訴追委員会の資料によれば、最高裁判所における、ある判事の事務の渋滞のごときは、法務大臣御存じであるかどうか知りませんが、目に余るものがあるのでありまして、こういう点に関しましても、いま少しく関係者の反省を求め、法律改正以前に検察官判事、あるいは警察官教養改善なり、取調べの実際の運用のくふう、改善を実施さるべきではないかと考えておるのでありますが、いかがお考えでございますか。
  36. 犬養健

    犬養国務大臣 裁判所の事務の停頓は困つたものでありまして、これは別の問題としてただいま法制審議会に諮問いたしている次第でございます。  それから逮捕状請求の場合の同意なのでありますが、国警長官答弁を聞いておりましても、ある方法ならば逮捕状請求を受けた裁判官警察官意見の反映があつても、それが検事の下に警察がいるとか、警察検事監督下にあるべきだというような思想のもとにつくられないなら、大体その意味はわかるというようなことを婉曲に言つておつたようでありますから、その辺が常識なのではないかと思います。  一般的指示も準則というものなので、個々の事件に直接指揮監督するとか、干渉するとかいうことは絶対ないのでありまして――これは法務委員会が済みますまでに、その点について私は覚書を朗読いたしたいと思いますが、個々の事件を直接の目的として一般的指示をすることはないのだという意味を、ちやんと責任をもつて読み上げたいと思つている次第であります。  それから勾留理由の開示でありますが、一番はげしい法廷闘争の戦術、これは一ぺんレコードを聞いていただきたいのでありますが、すごいものなので、法廷維持に関する法律くらいで済むならだれも心配しないという騒ぎなのであります。御指摘のように、大体特殊の例で一般的のものが迷惑を受けるという御心配が、この刑訴の改正には随所にあると思います。法律作成の技術からいうとそこを安心するようにだめを押して列挙主義にすればいいのですが、あなたもずいぶん委員会で改正などの委員になられて御承知と思いますが、列挙主義というものは事務的に言うとなかなかむずかしいのであります。これは私の方からお願いするのは妙なことでありますが、国会の御意思がもしもそこにありますならば、厳重な国会の意思発表によつて特殊な騒擾事件、つまり法廷を戦場のように心得ているような大騒ぎの事件に限るようにしぼつていただいて、私の方は少しもさしつかえないのであります。
  37. 藤田義光

    ○藤田委員 法務大臣の御答弁によりまして大体全般的に原案に固執されるという意向もないようでありますので、私の質問の意義も大体終つたように理解いたす次第であります。  それで実は法務大臣にその人を得れば私の質問した大半の問題は杞憂に属するのでありますが、犬養法務大臣がいつまでも在任されるとは思いません。従いまして先ほど横路委員の質問にもありましたように、この改正法案の運用は特例が一般化する危険を多分に蔵しております。私のことで恐縮でありますが、昭和十四年から十九年まで内務省に出入りしておりました新聞記者といたしまして、私はかつての幾多の法令が悪用された多数の事実を知つておりますので、その事実がこの改正案によつて再現されることが必至だというような感じがいたします。幸いにして数年後にそういう事態が起きないという保証ができない限りは、今日の国会議員としてはこれをにわかに全面的に賛成するということは非常に危険であります。  話がもどりまして恐縮でありますが、先ほど国警長官の御答弁がありましたが、自治警察に対しましては、何か国警長官の方から御連絡がありましたかどうですか。あるいは法務大臣として自治警察にこの改正案につきましては十分な了解がついておりますかどうか、これを最後にお伺いしておきたいと思うのであります。
  38. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自治警察とは絶えず緊密な連絡をとつております。この法案の提案される前に、提案された後におきましても時々緊密な連絡をとつておりますことを申し上げます。
  39. 小林錡

    小林委員長 門司亮君。
  40. 門司亮

    ○門司委員 一番先に聞いておきたいと思いますことは、この説明書によりますと、現在の百九十三条の改正は、従来あつたいわゆる捜査権と検察庁の持つております権限との間を明確にするということのために、これがなされているというように説明書に書かれているのであります。今までそれならば一体明確でなかつた点はどういう点であつたかということが大臣の説明書には明確に書かれていないのであります。この点は一体どういうことにわれわれは解釈すればいいかということであります。今までの大臣の答弁を聞いておりますと、ただ単にそれが明確でなかつたというだけであつて、どこがどういうふうに明確でなかつたかということはちよつとも書いてない。従つてこの辺をまず最初にお聞きしておきたいと思います。
  41. 犬養健

    犬養国務大臣 これも飾つてお答えしても、問題が解決しませんので、ごく率直に申し上げたいと思うのであります。昨年、これは私の就任前でございますが、破防法の通過しましたあとで、やはり一般的指示の問題が起つたのでありまして、その際に検察側警察側に意見の疎隔があつたことは、門司さん御承知通りであります。これはきわめて遺憾なことでありまして、私も法案の問題と同時に、こういう問題を今後円満にしようというのが全力をあげてやつて来たことでございます。その際たまたま一部の考え方として、捜査とそして公訴の維持と――先ほど申し上げた卑近な例で恐縮ですが、乗りかえ電車のように、全然そこで切りかわるというような解釈もあつたようでありまして、それではどうもまずいのじやないか、もちろん捜査の第一次的責任者司法警察官であつて、この新刑訴によつて保障された地位を何人もかえてはならぬのでありますが、公訴の維持でなく、公訴実行を全からしむるためには、一連のレールの上に乗つている最初のスタートである捜査の適正ということについて、第二次的な捜査の引継ぎを受ける検察官の意思の反映があつていいのじやないか、こういう意味で今度そこを明確にいたしたわけでございます。しかし旧刑訴のように、言葉を巧みに利用して、捜査範囲にまで乗り込むのだという思想は全然ございませんから、もしそうだという疑いがありましたら、率直に御叱正を願いたいと思うのであります。
  42. 門司亮

    ○門司委員 私がそういう前段の質問をいたしましたのは、現行刑事訴訟法のできますときに、当時の政府責任者でありました――あのときは木内検察官と言つておりましたが、検務長官と言つておりましたが、木内氏のこの法案の説明の中に、この百九十三条の規定を設けるにあたつて検察官指示権の事項に対してこういうように説明をされております。警察地方分権が行われて、そうして警察が民主化されるに従つて司法警察官としての職務をいろいろ規定したことになつておるが、司法警察官検察官の補佐であつたものを、第一次の捜査責任の主体を司法警察職員として、責任の所在を認めたことが第一点になつております。これは今大臣のお話なつ通りであります。その次の理由としてあげられておりますものが、公訴実行するために必要な犯罪捜査の重要な事項に関する基準を定める一般的指示権と、こう書いてあります。その次には、これに協力を求めるため、一般の必要な検察官の行う捜査の補助をさせるために指揮権を与えたというように、この検察官指示権と指揮権というものが、大体ここには明確化されておりまして、さらにそれを具体化しますることのために、一般的指示権とは、犯罪捜査の重要な事項に関する準則、すなわち職務の規範である。こう当時の説明者は申されておるのであります。さらにその次に、一般の指揮権とは、広く一般犯罪捜査の計画、方針を立て、これに協力を求める。その次には、検察官がみずから特定の犯罪捜査をしている場合に、直接その指揮のもとに捜査の補助をさせる場合の指揮権である。  現行の刑事訴訟法ができますときには、おのおのの責任分担というものは、こういうように明確に説明がされております。従つて私は、この法律のできまするときに、こういうように明確に説明がされてできておりますものが、今の大臣の答弁だけでこれを拡大して、捜査権にまで検察権が及ぶようなことをしなければならないということはないと考えておる。そのときの木内政府委員説明で私は足りておると考えておるが、この木内政府委員の今申し上げました説明、これは私が速記録から拾つて参りましたもので、多少用語は違うかもしれませんが、大体これと同一の趣旨だと思いますが、この説明と今の大臣の説明との間に、私どもは納得の行かないものがある。なぜ納得の行かないものが出て来るかと申し上げますると、先ほど大臣の答弁にはいろいろな問題がありまして、たとえば言葉をかえて言いまするならば、大きな騒擾事件その他国家的犯罪のようなことがあるいは考えられた場合に、ということが言外に含まれておつたのでありますが、私どもが心配しておるのは、もちろんそういうものがあるかもしれませんけれども、今日の現状から考えてみまして、やはり捜査権はどこまでも第一線の司法警察官がこれを持ち、さらに公訴関係いたしましては検事がこれを持つて、それを判事が裁いて行くという、この三つの権限だけはやはり明確にしておいた方がいいのではないか。特例があるからといつて、これが一般法にこういうふうに書かれて参りますと、この権限は必ず拡張されて参りまして、そうしてしまいにはこれが検事いわゆる予断の捜査といいますか、検事があらかじめ事件を断定して、それを捜査しようとしたところに、今日まで検察官の行き過ぎの多くの実例があると考える。従つてこの法律で、その検事の予断の捜査がどの程度防げるかということが、非常に大きな疑問になるのでございますが、こういうことはないでございまししようか。
  43. 犬養健

    犬養国務大臣 おそらく私の説明が悪いのでありましようが、大分お話が食い違つておるので、率直に申し上げてみたいと思います。百九十三条は解釈の拡大ではございません。と申しますのは、これは私がかつてにきめたり、法務省がかつてにそう言つておるのではないのでありまして、刑事訴訟法の専門の学者が、先ほど申し上げましたように、捜査を適正にし、公訴実行を全からしむるためでは、門司さんの御心配のようになるが、今度の法務省の条文のように、捜査を適正にし、その他公訴実行を全からしむるためにならば、あとで引受ける公訴遂行を全からしむる意味において捜査する、こういうふうにやつていただけば、あとの引受手はやりいい。こういう意味ならば、あながち反対する筋でない。これは学者の意見であります。条文そのものに反対しておる人でも、そう言つているようなわけでありまして、これはあながち私の独断ではないと思うのでございます。  もう一つ、例は悪いかもしれませんが、言葉じりを取上げないでくださいますならば、私の最近扱つた違う例でひとつ申し上げてみたいと思うのであります。スト規制法でございますが、これは罰をどうするかという罰則の第二段階では、法務省範囲になるのであります。ところで私の方ではその関係から、労働省に対して、スト規制法には相当注文をつけて、御承知のように、最後の罰則はとつてしまつたのでありますが、それは第二次的関係者の立場から、第一次的絶対責任者に準則として注文づけたということに言えると思うのであります。従つてスト規制法の各条文に一々口を入れたら、これは労働省の主管省たる地位をはずかしめることになるのでありますが、結局罰を与えるのは法務省範囲であるから、その立場から、スト規制法に、こういうふうに扱つてもらいたいという意思の反映をするのは、労働省の権利に少しも関係がない。ほぼこういう関係において、いずれ起訴するとか不起訴にするとかいうことが法務省の方に来るの、その立場から見て、準則という形、すなわち直接個々の事件にいろいろな口を入れるのでなくて、準則による一般的指示という形で、第二次的関係者が第一次的責任者に注文をつけるということは一向さしつかえないじやないか、それも悪用してはいけませんが、第二次的な関係者であるという謙虚な気持でやつている分には少しもさしさわりはない、私はこういうふうに考えているのであります。
  44. 門司亮

    ○門司委員 私がその点を聞きましたのは――大臣は第二次的の責任を負うものがそういうことを言うことは関係はないというお話でありますが、事実はまつたくそれと相反していると思う。私がなぜそういうことを言うかといいますと、先ほども申し上げましたように、いわゆる検察官の予断あるいは偏見というものは非常に大きな問題でありまして、この問題は私ども軽々に取扱うわけには行かないのであります。従つて私はここで話を長くするわけには参りませんから大臣によく覚えておいていただきたいと思いますことは、昭和十年から十一年、十二年にわたつて行われた神奈川県のいわゆる三崎の拷問事件、さらに松田の拷問事件、これは有名な拷問事件であります。従つて結果的に言うならば当時の社会思想上において、三崎の当時の警察署長でありました宮川君は一年半かあるいは二年の懲役を食つております。その部下は司法警察官から一刑事に至るまで罷免されて懲役に行つております。この事件のごときは明らかに検事の偏見であります。いわゆる三崎の火災をこれは集団放火であるという断定のもとに捜査を進めておつたということは行き過ぎております。松田も同じであります。松田におきましては警察官には一切そういうものは出なかつたのでありますが、被疑者としてひつぱつて参りました町長以下の村の有力者というもののことごとくは、二年ないし三年の長い間留置所につながれております。そしてその場合には社会的のいろいろな悲劇が起り、私どもがここで申し上げるのも申し上げにくいような事態がたくさん起つておる。これはいずれも検事の偏見であつたと思う。いわゆる検察官が間違つて警察官をしてそこまでやらしたのじやないか。私は今の大臣のお話は非常に危険なように考えております。従つて質問をするのであります。私は検事の持つております――木内さんがこの刑事訴訟法のできますときに説明されたその説明範囲内でも、指示しあるいは指揮をするというような文字については、私は相当の疑義を持つておつたのでありまして、当時もこの問題は釈然としていなかつたのでありますが、今またさらにこれが拡大解釈されて、今の大臣のお考えの第一線の責任警察官が持つが、その次のことをする、いわゆる公訴をするためにさらにそれを裏づけするような検察官のこれに対する権限を強めて行くという大臣の言葉と、事実はまつたく相反するものができると思う。現行警察法のもとにおきまするなら、自治警察であり、国家警察と申しましても、その自治体全体の住民がこれを監視し監督しておりますので、捜査の面に対しましても、取調べの面に対しましても私はそう行過ぎはないと思う。大臣はこの点についてそういうことが絶対にないという保証がこの際できるかどうかということを私はここではつきり聞いておきたいと思います。
  45. 犬養健

    犬養国務大臣 法務委員会ではたびたび申し上げておつたので、まだ門司さんの御了解を得なかつたのだと思うのでありますが、今のお示しになりました例は旧刑訴の例であります。検事が全部指揮する、新刑事訴訟法においてはそういうことは許されておりません。一般的指示の問題でございますが、これは抜打ち的に出すものではないのであります。一般的指示を準則によつて、こういう種類のものはこうしてもらいたい、門司さんの事件はこうしようとか、中井さんの事件はこうしようとかいうのではないのでありまして、こういう大きなわくの中の事件はこうしてもらいたい、こういう指示もこれは警察側と緊密な連絡をとつて、こういうことを出すがよろしいか、しかしあなたの方でそれをやつてくれれば出さないでも済む、平たく言えばそういう折衝をやるので、いきなり電報みたいにぱつと出すわけではないのであります。十分事前警察側の了解をそこで得るように努力してそれから出すことになつておりますから、いきなり君臨するというような型には決してならないわけであります。その点はどうか御了解を願いたいと思います。
  46. 門司亮

    ○門司委員 大臣の答弁でありますが、その点は了解せよというお話でありますが、私どもその点の了解がなかなかできないのでありまして、それは検察官は御承知通り刑訟の百九十四条におきまして訴追の権限を持つております。検察官の指揮命令に従わなかつたものについては、公安委員会に対して懲戒または罷免の訴追をする権限を持つております。この権限を持つております検察官が、一つの問題に対して捜査を依頼し、あるいはみずから行つております捜査についても同様でありますが、一つ事件を調べ捜査しようとするときに、これに今大臣のお話のように、検察官がそのままの姿で一体事実上の問題としてスムーズに行けるかどうかということがわれわれの疑問の一つの大きな点であります。この点について大臣が絶対そういうことがないという保証ができるかどうか。
  47. 犬養健

    犬養国務大臣 この点は門司さんの御心配もごもつともだと思います。実は国警長官ともほとんど毎日のように相談をやつているわけでありまして、私の了解している範囲では、警察側は一般的指示そのものを非常に嫌悪するとかやり方を恐れているというのではないのでありまして、一般的指示の名に隠れて捜査以前に一々さしでがましいことに指示しやしないか、これを心配しておるのであります。その心配はごもつともなのでありますから、私は法務委員会の最後の日以前に――そういうことはないのだ、第一に個々の事件を直接の目的として一般的指示の型において干渉がましいことはするのではない。第二には一般的指示をする前にあらかじめ警察側と緊密な連絡をとつて抜打ち的なことはしない。また国会の御要請があれば一般指示内容国会に私が報告してもよろしい、こういうように考えておりまして、前の二項は公式に私が覚書的に責任を持つて速記録に残すつもりであります。その写しは警察側に届けるように斎藤長官に話をしているようなわけでございます。
  48. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つその次に聞いておきたいと思いますが、私は先ほど申し上げましたように、検察官の職務の執行に対して予断と偏見が犯罪捜査の中に加わつて来るということになりますと、先ほど申し上げましたような、非常に大きな危険が出て来るわけであります。従つてこれには予防の措置としてかかる事件のあつたときは検察官がみずから責任を負う、ここに私は予防が法律的に認められなければならないと考えておりますが、これが一つも認められておらない、私はここに一つ法律の欠陥がありはしないかと思う。その点に対する大臣の御答弁を願いたい。
  49. 犬養健

    犬養国務大臣 これは本刑事訴訟法には出ておりませんが、検察官適格審査会とか、検察官のやり方を審議する検察審査会とかは、なかなか口うるさいところなのでありまして、そういうところで十分チエツクできると思うのでございます。
  50. 門司亮

    ○門司委員 私どもの心配いたしますのは、今の大臣の御答弁のように、これがチエツクする場所があるというようにお答えでございますが、私はこれらの条項についてはおのおの事件が行われてからでは実際の問題として間に合わぬのであります。ことに私はこの条文がこういうように非常に大臣が大きく解釈したのではないと考えておられたり、またそういうふうに御答弁されておりますが、第一項に加えるということについては一般的な準則を定めるとか、あるいはこの場合の指示権は捜査を適正にするというように書いてありますので、この字句の解釈というものは非常にむずかしいのでありまして、一体どの程度の適正化ということはおそらく大臣は答弁できないと思う。従つてこれを運用いたします場合にはこれの解釈はどこまでも拡張はできる。私はもし大臣がこの条項をこのままで、今の答弁でもけつこうだと言わるるならば、この捜査を適正にするという文字の解釈をどの辺までが適正であるかひとつ例をあげて御説明が願いたい。
  51. 犬養健

    犬養国務大臣 これはどうも門司さんのお聞き違いであると思うのでありますが、「捜査を適正にし、その他」というのは、なぜ一般的指示を準則の形によつてしなければならないかという説明でありまして、直接の条文の目的格ではない、この点よく御承知願いたいと思います。
  52. 門司亮

    ○門司委員 その点でありますが、私がそういうことを申し上げましたのは、先ほども申し上げましたように、現行法のこの刑事訴訟法ができまするときに、大体一般的指示権というのは、犯罪捜査の重要な事項に関する準則、すなわち職務の規範であるということが説明されておるのでありまして、これが示されておれば私は現在こういう改正の必要はないのじやないか、この改正をどうしてもここでしなければならないところに問題がひそんでおるのではないかというように考えてお聞きしておるのであります。先ほど大臣が申しましたように、一般的指示権とは犯罪捜査の重要な事項に関する準則、すなわち職務の規範であるという条文の解釈がこの前この法律が出ますときに当局から説明がなされておりまして、従つて私は、これがそのままここに当てはまるとすれば、この新しい条文は必要ないのじやないかというように考えて質問申し上げたのでありますが、やはり大臣はどうしてもこれを明確にしなければならないと言われるなら、私は今の大臣の答弁だけでは承服ができないのでありまして、もう少し詳しく御説明を願つておきたいと思います。ここには準則を定めるというようなことを書いてありまするし、それからこの刑事訴訟法ができますときの当時の説明者も、やはり、重要な事項に関する準則、すなわち職務の規範であるということで解釈をしておりますので、何ら私は現行刑事訴訟法をこういうふうに改めなくてもこれで十分だと考えておるのであります。その点に関する大臣の所見をもう少し聞かせていただきたいと思います。
  53. 犬養健

    犬養国務大臣 たびたび申し上げますように、「捜査を適正にし」そこで句点を打つて公訴実行を全からしめると書けば門司さんの重々御心配になるような事態になると思いますが、多くの学者が申しますように、捜査を適正にしその他公訴実行を全からしめる、もつと平たく言えば、たとえば捜査を適正にしてもらうなどすべて公訴実行を全からしめると、こうわくに入れれば弊害がないのでありまして、これが団藤教授の解釈であります。私どももそういう意味において、もつとはつきりした日本語を使つて悪いかいいかといえば、私ははつきりした方がいい、もつといい日本語を使うべきだ、こういう意味なのであります。  それから先ほど検察官が悪いことをしてしまつてあとの祭だというお話がありました。その御心配もごもつともでありますが、一般的指示とは、あらかじめ国警側にこういうものを出したいと思うが君の側はどうだと相談するのでありますから、そのときにそれが門司さんの御心配のような理不尽のものならばけるし、また問答が行われておるときには地方行政委員会にも反映して来るというわけでありまして、実際にはむちやができないのであります。それからかりにむちやをしてしまつたとすると、今度は検察審査会にかかるのでありまして、事前と事後にそれぞれこわい刑罰がありますから、私はそこでりつぱにチエツクできると思います。またそういうことでチエツクされていたら、検査官というものの名誉がそこなわれまして、全体的にたいへんな損になるのでありますから、そこは検察官も自粛をして行かなければならない、こういうことになると思うのであります。
  54. 門司亮

    ○門司委員 最後に――最後といいますか、この百九十三条に関する質問としては最後にひとつ聞いておきたいと思いますことは、この条文の挿入によつて、大臣は、検察官の職務の権限が強化されたとお考えになるかどうかということであります。
  55. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。権限は強化されない、されておらぬと思います。ただ、職務がよりよい日本語によつて明確になつていると思つております。
  56. 門司亮

    ○門司委員 大臣の今の御答弁のように、もしこれが強化されておらないということでありますれば、この問題は非常に重大であります。ことに警察捜査あるいは警察の職務というものを、検察官側の一つの指揮あるいは指示というような事項で一本の線を出させ、さらに捜査に対しては、警察みずからの捜査の権限に基く執行がある、従つてこれが二元化されるおそれが出て来るのであります。そこで私は国警長官にお聞きしておきたいと思いますることは、今大臣よりは、検察官の権限が強化されるものではないという御答弁があつたのでありまするが、警察側から見てこれが強化されるものであるかどうかということ、これをひとつ国警長官よりお答え願いたいと思います。
  57. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの点は、御承知のように、警察側が最も関心を深く持つている点の一つでございます。そこで問題は百九十三条の解釈の問題でありますが、大臣がたびたび申しておられまするように、委員会の審議の終る前にはつきりしたこれの解釈を述べたいとおつしやつておられますが、私どもも、これが合憲的にはつきり解釈が保証されるということであれば現在の文句でもさしつかえなかろう、かように考えておるのであります。解釈の点で一番大事な点は公訴を全うするという中に――捜査を適正にするということも公訴を全うする上で必要な部分がありまするから、従つてこの文句の入ることは私の方は異存がございませんが、解釈上非常に対立しておりまするのは、公訴を全うする必要上ということで、警察の行う個々の捜査について検事が一々、この事件は待つた、これは中止だ、これについては事前検事了解がなければ任意捜査も着手してはいけないというようなことが、一般準則としてもし出されるというのであれば、これは第一項の精神を逸脱している。今門司委員も心配されまするように、もしそういうようなことが一般準則として――なるほど一般的の準則には違いないが、しかしこれが今御指摘になりました警察官の行う職務規範というようなものではなくして、個々の事件の処理にあたつて、一々検事の自由意思が働かなければ、司法警察職員捜査を進められないというようなことを一般準則にもし出されるということであれば、警察責任者である公安委員会あるいは警察長が、いかに指揮監督をしようと思いましても、この検事指示の方が優先をいたしまして、これによつて警察職員が訴追もされるのでありまするから、この限度においては警察監督権、指揮権というものを喪失するわけでありまして、さような事態になるようなそういう解釈がもし成り立つということであればきわめてこれは危険である。破防法の施行の際におきまして、最も意見が対立をいたしました理由はそこにあるのでありますが、これは公訴を全うするという文字の中に、捜査という事柄には一指も触れてはいけないということで対立したのではありません。公訴を全うするためには、もちろん捜査も適正でなければなりませんが、しかしそれは一般的準則として示されるものに限るのであつて、個々の事件について捜査着手前に検事の承認を得る、あるいは事件があれば必ず事前に報告する、あるいは検事指示がなければ捜査ができないということを、ある種の犯罪について指示一般的な形で出しておけばできるのだという解釈であるならば、ただいまおつしやいましたように検察と警察との間の関係というものを将来まつたく変更いたしまして、事件の処理にあたつて検事考えによつて捜査官がその通り動かなければならない。それでそういうようなものを内容に盛つてはいけないということであります。この点が解釈上明確にされますならば私どもは異存はありません。しかしこの点がまだ不明確である。ただいまのようなおそれがあるという解釈でありますならば、私は検事に今までなかつたまことに大きな権限を与える結果となるだろうと思います。
  58. 門司亮

    ○門司委員 あまり長くなりますので、あとの質問者もありますから、この点については今斎藤国警長官答弁を求めましたところによつて、私どもの考え方では、この条文の挿入は明らかに検察官の権限の拡大強化である、そうしてさらにいわゆる警察捜査権の二元化になつて警察捜査にはかなり精神的にも実際的にも支障のある問題が起る。さらに民主警察建前を破壊するものであると私は考える。従つてその次に聞いておきたいと思います。ことは、今問題になつておりまする百九十九条の問題であります。いろいろ先ほど横路君あるいは藤田君の質問に対して大臣がお答えになつておるようでありますが、百九十三条によつてこれが現行法の拡大強化になつて検察官が非常に権限が強くなつて捜査権にくちばしを入れて来るという一つの裏づけが百九十九条に私は現われて来ると思う。それは逮捕状検察官同意を得るということになつて参りますと、やはり逮捕捜査というものはほとんど密接不可分の関係を持つておりますので、勢い検察官意見がかなり強く加わる危険性がありはしないかということが実は考えられるのであります。従つて百九十三条の改正と百九十九条の改正は、私は密接不可分の関係を持つておるものであつて、別々にこれを解釈すべきものではないというような考え方を持つのでありますが、これはまつたく関係がないように大臣はお考えになつておるのか、この点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  59. 犬養健

    犬養国務大臣 これは直接関係ないのでありまして、しばしば法務委員会で述べた通りであります。百九十九条の関係は、警察官検察官関係もございます。先ほど申し上げましたように、逮捕状請求を受ける裁判官立場からいいましても、検察官の何らかの意思の反映があることをいやがつていないのみならず、望んでいるのであります。ただ同意という字がよいか悪いか、もつとすつきりした字にした方がよいかどうかという問題は、大臣が言うのは変なんでありますが、虚心坦懐に考えて行きたいと思つております。それから百九十三条は原則的にいえば、門司さんの御心配は私はもつともだと思うのであります。それを解消するにはどういうことかといいますと、これもあまり率直過ぎた話で礼を失するかもしれませんが、国警長官は、大臣のような考え方ならばいい、しかしそれが全部に行き渡つているかどうかという問題か目下の段階でありまして、従つて私は国警側の心配ももつともと思いますので、あとの半分は、私が今字を直しているので、全部あれではありませんが、こういうものを法務委員会で読もうと考えております。これは門司さんの御安心を得るために申し上げておきたいと思うのであります。それは部内のすべてに了解を得て、こういうガリ版までしてあるのであります。「一、検察官刑事訴訟法第百九十三条第一項の規定により、警察官または警察吏員たる司法警察職員に対し一般的指示をするには、司法警察職員に自主的な捜査の権限を保有せしめた刑事訴訟法建前にかんがみ、不当にこれを侵すことのないよう留意すること、」こういう方針を指令するのであります。それから第二には、これが門司さんの御心配の点に触れるのでありますが、また斎藤長官が今心配して答弁をしておつた内容に触れるのでありますが、「一般的指示は具体的な事件捜査を直接の目的として指揮することはできないこと、」こういうふうにはつきり言おうと思つております。破防法の問題は私の就任前でありますが、いろいろないきさつのあつたことは、とうに御承知通りであります。私の考え方は、破防法というものは特殊の事情による例外的措置で――破防法の場合は捜査のときに検事と会議しなければならぬ。これは特別の例外的措置でありまして、破防法の検察官警察官関係が既成的事実になつたから、お前も破防法で承知しているじやないかということを将来検察官側の議論の根拠にしないこと、これははつきり申し上げ得るのであります。
  60. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思いますことは、今の大臣のお話で大臣がそう指示されるというのでありますが、実際それが運用ができるかどうかということについては、私どもも従来までのいろいろな観点から、権力を持つ者は往々にして権力を濫用するのでありますから、決して大臣の気持がそのまま運用されるということは、私どもは考えておりません。従つて大臣の御指示もさることながら、やはり法律の上ではそういうことのないように、この条文は何らかの修正を加えるか、あるいはこれを削除して、現行で――先ほどからいろいろ議論がありまするように、たとえば判事が拒否いたしました検束のごときも、わずかに捜査の五%程度であるということになつて参りますと、捜査に対しまする逮捕状請求というものは、大体そう間違いはなかつたのじやないかと考えられる。その上に検事にこれを一応相談をするというような建前をとられることは、裁判所はこれを拒否しない、あるいはそういうことを話しておるということでありますが、これはやはり裁判をする者と公訴をする者との事件の取扱いの関係において、裁判所といつてもやはりできるだけ間違いのないようなことをするのがいいというようなものの考え方から来る安易な考え方だと思う。従つて私どもの考え方から行きますると、先ほどから申し上げましたように、この百九十三条の意義を強からしめることのために、やはり百九十九条の改正を行われて、捜査内容というものはすべて検事が知り得る機会を与えるということになると私は思う。何も私は秘密で捜査をせよとは申し上げませんが、しかし警察側も独自の立場捜査しておりますものが、一応検事がその内容を知り得ることはいなめない事実だと思います。そういたしますと、そこに検事が持つております――先ほど大臣は絶対にそれを防止するとは言われましたが、検察官捜査に対する権限が拡張され、拡大されて、使用されて来るということになれば、勢い捜査権にそれが入つて来るということは私は当然だと思う。そうである以上は、これを拒否するわけには行かぬので、従つてここに捜査の二元化が行われることのために、第一線で働きまする警察捜査権というものがある程度鈍りはしないか、いわゆる捜査権が二元化して警察はこれを考え、あるいはこれを検事に報告したことのために、検事がかりに逮捕状請求に対してくちばしを入れるというようなことがありますれば、そこに警察官検察官側の考え方の相違が出て来て、そうして第一線の警察官捜査が鈍ることがありはしないか、こう考えるのでありますが、この点について国警長官は一体どういうふうにお考えになりますか、この機会にお聞かせを願いたいと思います。
  61. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私どもといたしましては、警察と検察の間柄というものは、現在の刑事訴訟法に定めてありまする基本原則を破ることは、捜査の適正を期するという面からも、あるいは人権の保障という点からも危険である、かように考えておるのであります。従いまして警察と検察はそれぞれ協力し、連絡をよくして参らなければなりません。言葉は適当であるかどうかは存じませんが、それぞれの自主性を十分堅持しながら、法律上の自主性を持たしてもらいながら協力をして行く。検事がこうだと言われても、警察の見るところで、それはいけないと思えば、警察の指揮権をもつて措置して行けるという態勢をくずすことがあるならば、私はこれは危険だというふうに考えております。
  62. 門司亮

    ○門司委員 今斎藤国警長官の御答弁通り、大臣はお聞きになつたと思いますが、私どもはそういうことを相当懸念をして見ておるのでありますが、大臣はそういうことは絶対にないというふうにお考えになりますか。それとも警察官逮捕状の申請に対して同意を求める場合には、この検察庁側の意見というものは絶対に出てはいかぬというように指示でもされるのか、あるいは法律の上でそういうことが明文化されるのか。単に法律だけにこういう字句を入れられるものではないだろうと思いますが、その点を明確にしていただきたいと思います。
  63. 犬養健

    犬養国務大臣 御心配ごもつともでありますが、逮捕状請求警察側の意見を入れちやいかぬとか、そういうこつけい千万なことは、毛頭いたす気はありません。御承知のように、逮捕状請求を受ける裁判官の身になつてみれば、一緒にかけまわつて捜査したのではないので、ある程度迷惑なことがあるのであつて、その点は公訴官たる君たちはどう思うかというような意思の反映があつた方がいいということは、裁判官もしばしば言つておるのでありまして、意思の反映があるということを重点にしております。そのために一体同意という字はいいか悪いか、これは今後研究の余地があると思うのであります。それから捜査の二元化ということも考えておりません。検察庁法には、検察官捜査できるようになつておりますが、たびたび申し上げますように、何といつて捜査の第一義的といいますか、第一次的といいますか、主たる責任者は警察官にきまつておるじやないか。その地位をかえるということになると、それは言葉は違いますが、新刑訴を旧刑訴にするということなんです。そんな大それたことをしてはたいへんだと思うのであります。それから百九十三条と百九十九条をしめし合せて、同時にのろしをあげて改正をやるというようなことはないのでありまして、百九十三条は、私は率直に言うと、今の原文は非常に悪い。こんな原文でよく法務省承知したものだ、そんなことをするから身から出たさびで、今非常に困つておるのじやないかと、たいへんに悪口を言つたのでありますが、これは御承知のように、占領治下でありまして、占領当局がどうしてもこれを入れなければならぬ、これでなければいかぬというので、私からいうとこれに問題は残つておる。もつとよい日本語として、だれでもわかるようにする、こういうわけでございます。百九十九条の方は、これは斎藤君に少し申しにくいのでありますが、在野法曹か何かで、ことに民事くずれについて、逮捕状の濫発があるということも、私のところに盛んに謄写版で刷つて陳情があるのであります。これもやはり民意の反映でありまして、これは何とか考えなければならぬ。しかしそれに乗じて失地回復のようなつもりで刑訴法的なところに自然持つて行くということになりますと、これは検察庁が悪い、こう考えるのであります。そこで良識にかなつた処置をしたいというわけでありまして、百九十三条の政正と百九十九条の改正は、今申し上げたように全然原因が違うということを御了承願いたいと思います。
  64. 小林錡

    小林委員長 橋本清吉君。関連した点のみにお願いいたします。
  65. 橋本清吉

    ○橋本(清)委員 いろいろお話を伺つておりましたが、私はごく簡単に二、三点お尋ねいたします。法務大臣捜査官としての適性を何に置かれますか。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 あまり抽象的なので、私のようなしろうとにはちよつと申しかねますが、少し専門家として丁寧にお聞きくださるならば、十分私の知つている限りのことを申し上げたいと思います。
  67. 橋本清吉

    ○橋本(清)委員 いかなる素質を持つた者を捜査官として最も理想的のものと考えていらつしやいますか。
  68. 犬養健

    犬養国務大臣 どういう意味かよく私にはわかりませんが、捜査官というものは、善良な人民を守る意味で、やむを得ざる捜査任務に従事しているというような、十分良識のある人を一番望んでおります。法律的にどういうのがどうなるということは、私はしろうとでわかりません。これは専門家からお答えさせたいと思います。
  69. 橋本清吉

    ○橋本(清)委員 検察官警察官捜査上の地位をいかにお考えになりますか。
  70. 小林錡

    小林委員長 ちよつと橋本君に申し上げますが、ただいまの質問に関連してということですから、臨時に発言を許したのですが、そういうふうに根本的の質問から始めるなら、もう少しあとにしていただかないと、ほかに申出がたくさんありますから……。
  71. 橋本清吉

    ○橋本(清)委員 それではごく簡単にしてやめます。  私今お話を伺つておりまして、要点を申し上げますと、百九十三条は、今法務大臣が仰せになりましたように、文字をかえるということだけである、文字をきれいにするというだけにすぎない。百九十九条は、どういたしましても、現実に実際に働いております警察官の活動に、非常な影響があるものであるというように現実はなつておると存じます。それでただ条文の文字をかえるだけならば、おやめになつたらいいじやないか、かように考えます。また最後にこれをお出しになるときに、法務大臣が注釈をつけてお出しになると言われますけれども、注釈をつけるような自信のないものは、いつそおやめになつた方がいいのではないかと思います。簡単に御意見を伺つておきます。
  72. 犬養健

    犬養国務大臣 条文をかえる意思は毛頭ございません。それから覚書をつけるのは自信がないためではなくて、かわいい斎藤国警長官以下の心配を、私の心根として、念のために責任を持つて、そういう心配がありませんようにというわけでありまして、自信があるためだと御承知願いたいと思います。
  73. 橋本清吉

    ○橋本(清)委員 そういうことを、いつもお出しになるとぎにおつけになるということは、非常に影響のある問題でありますから、はつきりしない注釈つきのものをお出しになることはおやめ願いたい、私はかように考えております。ほかの質問者があるようでありますから、これで質問をやめます。
  74. 犬養健

    犬養国務大臣 念のために橋本委員に申し上げますが、この問題はただりくつばかりでなく、円満に各委員との間に、どうすれば検察官公訴官等と警察官の間が円満に行つて、よい刑事訴訟法改正ができるか、毎日よりより相談しておりまして、決して自信がないとか何とか、そういう情ない状態ではないのでありまして、ほぼ皆さんの了解点に達しております。従つて国警側も大体そのお話には非公式に毎日乗つておるのでありまして、私はりくつの上ではこれでいいと思いながらも、毎日一緒の飯を食つている国警側が心配すれば、わが心配として一緒に心配する。そういう意味で蛇足とは思つても、心配がないようにというので覚書を出そう、こういうのでありまして、自信はまさに満々ということを御了承願いたいと思います。
  75. 小林錡

    小林委員長 床次徳二君。
  76. 床次徳二

    ○床次委員 百九十九条に関連いたしまして、一言御質問申し上げたいと思います。ただいまもお話がありましたが、警察官検察官もそれぞれ自主性をもつて活動することが一番望ましいのであります。過般政府がこの改正案を提案いたしました際には、同時に警察法改正法案を提案せられたのであります。あるいは警察法改正に伴つて、特に百九十九条の改正があるかのように聞いておつたのでありますが、政府はこの点いかようにお考えになつておりますか。やはり関連性があつて百九十九条を考えておられるかどうかを承りたいのであります。なおこの点に関しましては、警察官の自主性を尊重しながら、百九十九条を運用するのでありますが、政府考えておりますところは、中央集権的な警察官の自主性を考えながら、百九十九条を考えておるようにも思われるのでありますが、この点いかがでありますか、御意見を伺いたいと思います。
  77. 犬養健

    犬養国務大臣 私もいろいろ国会の各委員を務めまして、床次さんと同じ法経験があるのでありまして、一つの律案の改正政府が出せば、意図が那辺にあるか、これをお疑いくださることが、やはり国民の代表としての任務の一つだと思つております。それは十分に私どもの方もくみとらなければならぬと思うのであります。今申し上げましたように、百九十三条というのは、今の法律の文章が悪いという考えを私は持つているのであります。何か舌足らずであるから、よけいな疑いが起つて、これを国警側に迷惑のかからないような文章で、しかも本来の捜査権を尊重しながら控訴官としての十分な調和をはかる文句にしたい、こう申したにすぎないのでありまして、その気持が出ていないということは、ひとつ率直に専門家として御指示を願いたいと思います。百九十九条はたびたび申し上げたような事情でありまして、これは事実としてどうも斎藤長官には気の毒なんでありますが、特に民事くずれなどにおいて逮捕状の濫発の声があります。在野法曹からもしばしば具体的な例をあげて私のところへも届けて参ります。さりとてそれを土台として旧刑訴的な検察官警察官に君臨するというようなことがあつてはならないという意味におきまして、この前の国会ではこの「同意」という字を法務次官、国警長官、私と三人で実はきめたのでありますが、そのときには警察法改正せられて警察組織が強化するということを前提としてかえましたので、今度は警察法改正をお願いしておりませんから、この「同意」という字が強過ぎるという国警側の率直な意見の開陳がありまして、私もりくつは別としてその気持はわかりますので、それでいろいろ苦慮したのですが、法制審議会も「同意」ということで議決されましたので、そのまま国会に臨んでしまつたわけでありますが、しばしば申し上げますように、この「同意」という字が世の中で一番適当な字と思つておりません。従つて私が申し上げますように、逮捕状請求警察官から裁判官になされる場合に、検察側考え方、意見警察側にも、ことに裁判官側にも反映したい、これが重点なんであります。従つてそのことを中心として「同意」という字がよいか悪いか、ひとつ十分に御叱正を願いたいと思つております。
  78. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま法務大臣からお話がありましたが、政府考えておりまする警察制度の前提には、過般政府が提案いたしましたような中央集権的な警察というものを頭に描いて、警察官の活動を見ているように思うのでありますが、まだ私どもには現行の自治体警察―民主的な自主性を持たしたところ警察というものををもつともつと発展せしめて、そうして警察活動を行わせる余地があるように思うのでありまして、この考え方に対して斎藤国警長官も同様でありまするが、法務大臣もかなりに中央集権的に警察制度というものを予想しておられるのではないかというふうな感じがいたすので、それで特に伺つたのでありますが、政府は大体警察制度そのものを、やはり過般提案せられましたような改正法案の趣旨において、将来改めて行くというお考えをいまだに持つておられるかどうか、この機会に明らかにしておいていただきたいと思います。
  79. 犬養健

    犬養国務大臣 これも率直にお答えいたします。百九十九条は警察の中央集権化ということとはまつたく別個に考えております。もしもそういうような御懸念を生じさせておるとすれば、私どもの態度が悪いのではないか、こう考えております。それから警察法改正そのものでありますが、これはお互いずいぶん長い開議論をしたものであります。率直に申し上げまして、ただいまの現状においてはいろいろの事情はお察しくださると思いますが、私どもの党の考え方以外の考え方も十分虚心坦懐に再検討する必要があるのではないか、また失礼な言い方ではありますが、この前の国会で前後一箇月にわたつてお互いに議論をいたしましたが、あの議論の経過において、あるいは私ども以外の諸党派の方々も、そういう政府の言う意味ならそんなに心配はしないという点もあろうかと思うのでありまして、従つてそれを縮めて申し上げますならば、十分虚心坦懐に警察法をつくりたいという違う考え方も、もう一度白紙にもどつて先入主なく考えたい、参考にしたい、これが私どもの今の気持でございます。従つてこれはほつて置くという気持はないのでございまして、でき得る限りこの次の通常国会に提出して、また御審議を願いたいと思つておるのであります。
  80. 小林錡

    小林委員長 滝井義高君。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 今の委員の方から主たる点は御質問がありましたので、不審に思う二、三の点について御質問いたしたいと思いますが、百九十三条並びに百九十九条に関連をして、検察官捜査を適正にするために一般的な指示権がある、それに加えるに今度は逮捕請求があつた場合には検察官同意が必要である、こういうものが百九十三条と百九十九条だと考えます。さいぜん大臣の答弁では、要約すればこれは今までの規定の解釈を明確にしたものであつて、何ら検察官の権限の強化にはならないというのが大臣の答弁であつたと思われるのであります。従つて今までの法律をうまく運営すれば、改正をしなくてもこれはできる範囲のものであると考えられるのでございますが、この点大臣はどうお考えになりますか。
  82. 犬養健

    犬養国務大臣 これもお話のお心持よくわかります。今度の改正案のどの条文がよいとか、どの条文が悪いとかということを超越した根本問題であるかと思うのでございます。新刑訴施行せられて以来、御承知のように、四年半たつたのでありますが、どうも運用がうまく行かない点が、ございまして――これはやはり私は突然注入せられた英米法的な考え方、扱い方が日本の国情で咀嚼し切れない部分があるのではないか、その咀嚼し切れない、ことに特殊のケースをつかまえて、それを防止するに急のあまり一般の人は迷惑する、これが滝井さんなんかの党の立場考え方でありまして、これはどの党でもそう考えるべきものだと思うのであります、結局私は刑事訴訟法の御審議の山というのは、やむを得ないというのが真にやむを得ないのか、やむを得てもそのために失う人権の侵害の方が大きいのではないか、いやそれはより少いんだというような議論が一番真剣な問題になるのではないかと思うのでありますが、どうも運用でどうにもこうにもうまく行かない、大分がまんしたが四年有半で大体見きわめがついたので、それも法務省の独断でやつてはいけないから、各界の知識を集めた法制審議会でやつていただいて三回の答申がありまして、これをここに集めたものがこの改正案内容であります。十分お教えを願いたいと思うのであります。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 過去の運営が今までの条文ではどうにも行かない、従つて具体的に法制審議会等の意見を聞いて、運営の是正をやるためにこういうものを出した、こういう了解をしてさしつかえないですね。しからばこういう過去の運営のまかずかつたことを是正するために、過去の法文の精神をそのまま受継いでやつて行こうという運営を主体とした改正というものが、だんだん私は制度になる可能性ができて来ると思うのでございます。従つてその点について国家警察斎藤さんにお尋ねいたしたいのですが、もし運営を主体としてこの法文は改正せられたものであるならば、これは制度となる可能性が十分出て来る。具体的にどういう制度となつて警察に現われて来るかというと、警察検察官に付属するような、いわゆる検察官の補助機関としての役割しか演じないような状態が出て来る可能性が十分この法文の中から読みとられると感ずるが、長官はいかがですか。
  84. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの点は警察関係をいたしまする百九十三条と百九十九条の点であると思いますが、これが現在提案されておるままの型で通過をいたしましたり、百九十三条につきましも個々の事件についてまで検事が指揮できるような内容を持つた一般指示がなされるという解釈であつたりいたしますれば、お説の通りだと思います。ことに一般的指示につきましては個々の事件について指示をするようなことを目的としては出さないということになりましても、結果がそうなつては相ならぬのであります。さような結果になるような一般的指示はここでいう一般的指示でないということが明確になりませんと、公訴の維持を全うするという理由でありましても、結果がさようなことになりますならば相ならぬと思います。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 結果がそういう状態になれば、私もおそらくまつたく下請機関になると思います。ここで大臣にお尋ねいたしたいのですが、一般的な準則を定めるということになつておる。現在警察には公安委員会がある。公安委員会においても犯罪捜査のためには一般的な準則みたようなものを持つておるはずでございます。従つてその警察の主体であるところ公安委員会が自分の所管に属する警察のために犯罪捜査一般的な規範というようなものを持つておる。ところがここにまた別に検察庁の方から犯罪捜査に関する、個別的な具体的なものでなくて一般規範というものが出て来ると、この間その下におるところ警察官というものはどつちの規範に従つていいのかという迷いが生じて来るのでありますが、この間の調整というものは大体どういうぐあいにやられるのか。
  86. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。これは実際上の扱いをやつております者から申し上げた方が、なおいいお答えができると思います
  87. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 その点お答えいたしますが、法律的には検事の規範の方が勝つたことになつております。と申しますのは、百九十三条の末項の方に、その指示あるいは指揮に従わなければならないという明文がございまして、条文の順序がそういうふうになつているところから当然そうなるわけでございます。なおその裏打ちとして御承知のように、百九十四条に、それに従わなければ訴追を受けるという裏打ちがあるのであります。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 今の御説明のように、検事指示権の方が強いのであります。従つてここに公安委員会の言うことよりか検察官の言うことが強くなつて来るという可能性が出て来るならば、具体的に第一線で捜査に当るところ警察官というものは、運営をするためにつくつた法律のために、知らず知らずの間にいつの間にかその習慣がついて、これが制度として検察官の隷属機関となり、自己の独立しての責任というものが次第に稀薄になつて来ることは、十分可能性の問題として現在見通しのつく問題でございます。大臣はこの点の防止についてどういうぐあいにやられるつもりであるか。
  89. 犬養健

    犬養国務大臣 これは御心配ごもつともと思います。私はこの間自分で聞いてなかつたのですが、田中警視総監が証人に呼ばれて、りくつを抜きにしていろいろ書いてあつたことは知つていることなので興味はなかつたが、ただ私そうかなと思つたのは、こうやると警官が検事の方が上官だと思うのが心配だ、これは私当つていると思うのです。ほんとうにそういうことがないようにしたいと思つておりますが、一般的指示の弊害を防ぐためには、やはり先ほど申し上げましたように、実施面におきましては事前警察側に相談するわけです。こういうものを出すが君の方はどうだ、それでこれを速記録に残して法務委員会で申し上げたいと思うのですが、一般的指示原則を幸いに御可決願いまして、それを使う前に警察官がそういうふうに自分でやつてもらうという時期を置いておきたい、こういうように考えたのでございます。それから一般的指示を出す場合もあらかじめ綿密な連絡をとりまして、いわゆる抜打ち的に出すということのないようにする。それははつきり覚書として警察側に届けたいと思つておりますし、また速記録に残したいと思つております。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 今の御説明はさいぜん来何回もお聞きいたした問題でありますが、結局私はこの法の改正というものは、現在警察官の方で非常に行き過ぎがある、逮捕状濫用がある、これをある程度抑制しなければならぬ、そのためには既存の法律では運用その他の面に支障があるので、これの解釈規定をもつと明確にして行きたい。そのために今度は一方に出て来たのは、検察官というものが警察官に強い指示権を持つておるがために、ここに検察フアツシヨが起る可能性があるという問題が今度は出て来ておるわけでございます。警察官の行き過ぎ是正のために今度は検察フアツシヨという危惧が出て来たということなんでございます。そうしますと、われわれとしてどつちを抹殺すべきかということになれば、現在自治体警察というものがある現実においては、われわれの抑制しやすいのは警察の行き過ぎを是正するということが抑制しやすいのであつて、検察フアツシヨの方はわれわれの手に負えないのであります。従つて今の大臣の答弁あるいは公安委員会との関係から考えてみまして、これはむしろこういうことをかえることによつて検察フアツシヨの可能性がある。ないならば、さつき藤田君が触れられましたが、警察という権力の上にいま一つの検察庁という権力がのつかる、ということは、一プラス一という形になつて権力が現われて来ない。私医者だから言いますが、ちようど薬の作用と同じです。アスピリンとベナセチンという薬を加えても一プラス一にはならない。この薬事作用というものは相乗積が出て来る。権力もまさにそうだと思う。相乗積の形で出て来るところに危惧がある。現在警察自体は行き過ぎであるということはすぐにわれわれは是正できます。ところが相乗積の形で出た検察フアツシヨの行き過ぎを是正することは非常にむずかしいということは、すでに戦争中においても大臣みずから経験しておる通りなのであります。従つて私はこの二つの解釈は納得できない。これは結論を申し上げました。  それから今一歩を譲つて、そういうことができたにしても、現在非常に司法事務というものは渋滞しておる。ところがこの法律において勾留期間を五日も延ばし、同時に検察官一般的な捜査指示権さえも与え、場合によつては既存の法律でみずから出て行つて捜査をすることができる。捜査することができれば今の検察官の数ではとうてい現在の司法事務を円滑に遂行することはできない。今までよりか権限がふえて来る形が具体的に出て来る。そうすると当然検察官の人数をふやさなければなりません。そういう点について大臣の所見を伺います。
  91. 犬養健

    犬養国務大臣 先ほど申しましたように、時の政府改正案を出したときにいろいろ御心配を願うことは当然であつて政府はそれを変にとつてはならぬと思います。滝井さんのお話は透徹しておつて、伺つておると聞きほれるのでありますが、何も片方を抹殺しなくてもいいと思うのであります。警察側も検察側も人民を困らせる場合があつて、一番下を見ればどつちもどつちであります。だから片方を抹殺する、白か黒かというのは私はどうかと思います。もう一つ一般的指示でありますが、現行法では一般的指示は与えられでおります。すでに微罪の除外例、書式例、それから問題になりました破防法などは改正しなくても出しておるわけであります。そういうふうにごたごたが起りながら力で押して出すというやり方ではいけないので、今度委員会で責任をもつて朗読し、国警側にも覚書を渡したいというのは、一般的指示だからよくよくの場合なのでありまして、ただ御承知法律家になりますと絶無とは言えない。何かある場合のリザーヴ、その場合に濫用することはいけないのでありますから、一般的指示を出すというときに事前連絡して抜打ちしないる国警側がこれは困るということならば、そこで議論になる。十分チエツクできると思います。裁判所は今停滞しておるということは御承知通りであります。今法制審議会でこの形態をどう解決するかという諮問をしておりまして、目下なかなかこれも盛んな議論を私ども聞いておるようなわけでございます。従つて私はこう思うのです。警察も検察も権力を濫用すれば、危険なことは両方同じだ。だから両方チエツク・アンド・バランスで、片方だけで独断的にできないような仕組みにし、両者がその間を十分に話し合うくせをつける、こういうふうにしたいというのが私の考え方でございます。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 大体わかりましたが、どうも一般的な準則というようなものを前もつて公安委員会なりあるいは警察なりに了解を得るということになりますと、これは非常に普遍的なものになつてしまうわけで、やはり具体的な犯罪捜査その他の問題になると、そういう準則なら今の公安委員会のもとにある規範と同じようなものになつて、私は大して役に立たないものじやないかと思うのです。最前大臣はこれはリレーだとおつしやいました。前の走者がすぐ次の走者に渡して行く。そのためには当然訴追官としての次の走者というものは前の走者の状態を幾分知らなければならぬ。これはその通りだと思う。ところが私はこれはそのにじの赤の色が桃色に移行して行く、こういう形じやないと思う。なぜならばまず第一前提として、逮捕状をもらう場合に、その同意が与えられなければならぬということは、これは移行の形が、すでにその第一前提において非常に規制をされる可能性が出て来るわけでございます。従つてその規制をする形が一般的な準則というぼやけたものでいたしておるというだけでは、これは同意を与える場合には非常に検事にしても困るところが出て来る。どうしても検事は、一般的な準則にもよろうが、やはり当然具体的な個別的な犯罪が出て来たならば、自分の検察官としての、ランナーとしての能力を最大限に発揮するためには、やはり同意を与えるときに何らかの形が出て来なければ、次のランナーというものはうまく走れないわけなのであります。だからにじの赤から桃色に融和変化して行くような、そういう自然的な形でなくして、不自然な形が出て来るわけです。これは大臣が何と言おうと、そう断定せざるを得ない。だから一般的な準則を出して了解を得るからいいと言うけれども、なおわれわれが心配しなければならぬことは、にじのきれいな色のようにその融和変化の状態が自然であればいいが、次のランナーが第一前提において同意というものをもつて融和変化しないところに問題があるのです。これは答弁を求めても水かけ論になるので、一応意見を述べて、これで終ります。
  93. 犬養健

    犬養国務大臣 これは水かけ論になりませんから申し上げますが、御心配ごもつともです。第二走者が緑のシヤツを着ているので、第一走者は赤ときまつておるのに、同意を得られないから、自分も緑のものを着る、これはいかぬと思います。そういう意味同意という形が一番適当かどうか、これは厳正な御批判を仰ぎたい。結局捜査を適正にしていただけませんと、調べ直しとかいろいろなことがあつて、結局これは被疑者が迷惑するのでありますから、そこをすらすら行くようにという意味だけなのであります。従つて逮捕状請求の場合も、この事件について警察官はこういう考えを持つておる、公訴官、君の方はどういう考えだという、公訴官としての意思の反映が逮捕状請求を受けた裁判官に反映し、あわせてその意思の内容警察側にも伝わる、この作用を一番大事に思つておる。それで同意という字が一番いいかどうかという点について、虚心坦懐滝井さんの御意見を伺いたいと思うのです。
  94. 小林錡

    小林委員長 本会議が始まつているので議長から早く入るようにということです。済みませんが、できるだけ簡単に。加藤精三君。
  95. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 委員長からも御要求がありますので、非常に簡単に申し上げますので、非常に簡単にお答えを願いたいのであります。  地方行政委員会の行政の面からの感じでございまして恐縮ですが、自治警察は、先ほど国家警察長官が言われましたように、国警以上によく検事当局に打合せて逮捕状請求をしているということでございますが、この点につきまして、私は固有事務または委任事務にかかわるところ捜査の事務を、地方行政事務として自治体は非常に円満に運営しているというふうに考えておるものであります。その点につきまして警察法全体の改正がございますものなら別でございますけれども、そうでない際に、自治体警察並びに市町村公安委員会の権限にも響くところの百九十三条、百九十九条の両規定改正は、その必要がない。また改正いたしましたらこの警察制度全体の創設の意義を失わせるものじやないか、こういう前提に立つて私はお尋ねするものでございます。大体文章論になつて恐縮ですけれども、百九十三条の一般的指示内容規定でございますが、重要な事項に限定するという表現と、必要な事項に関しては、言うてみれば、必要な限りはどんな準則も定めることができるというような規定の仕方でございますが、これらはどうも単なる意義の明確化とは言いがたいものがひそんでいるのではないかというふうに考えます。この点は意義の明確化ということにつきまして、ある場合には法務大臣の通達または国会の速記録等によつて明らかにして、そうしてこの両者の関係を処理して行きたいということを言われる法務大臣とせられましては、これらはむしろ法律改正しないで、たびたびお使いになりまするところの通達とか、あるいは国会の論議の速記録にとどめておいて、そうして運営して行くという方法でお考えになつて、この意義の明確化を実現していただけば、それでいいのじやないかというふうに考えます。それでなおこれらに関しましてどうも私の気になりまするところを具体的に申し上げますれば、この警察法改正はどこまでも憲法の精神に従つてこの警察法というものができた、また同時に地方自治を推進する観点からこの自治警察というものができたということになるのでありまして、その点については疑いのないところでございます。なお自治法の関係から申しますと、この自治法そのものが憲法の文字と同じように地方自治の本旨に基いてということを、この制度創設の根本規定にいたしておりまするし、そうしてそれに基いてこの地方公共団体が団体の長のほかに執行機関として委員または委員会を置くとございまして、その委員会の中に御承知のごとく市町村公安委員会というものが法定されているわけでございます。そうして憲法によりますと、その九十二条に「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」となつておりまして、本旨に基かないで法律で定めることはできない。単に法律でこれを定めるというのとは違うのであります。そうしてさきに申しましたような地方自治法の規定がされているわけでございます。そういたしますと、これは自治警察の運営管理を全般的にいたしております市町村公安委員会の権限に相当な制肘を加えることになりますし、警察法自身の改正で行わなければならない。地方自治の本旨にかんがみてつくつた地方自治法、それに渕源するところ警察法という形で進んで参るものでございますから、この自治権の範囲の限定は、厳にこれを狭義に解釈すべきであるという解釈を持つております。そういうことに関連して考えますと、警察法改正はそういう点を特に重視しまして、公安維持上必要な場合には、内閣総理大臣は市町村公安委員会指示をすることができる、そうしてそのときには特に慎重な規定を置きまして、国家公安委員会意見を聞いた上でなければ指示ができないとまでしてあります。もちろんこの自治警察というものは、主として警察の固有事務という立場において考えているものだろうと思うのでありますが、この刑事訴訟法その他の法律の委任による委任事務の範囲もある。その範囲におきましても何らこれが執行を自治警察でやつていかぬということはないのでありまして、そういう点におきまして自治権の範囲に制肘をいたします場合におきましては、地方自治法または警察法によりまして、憲法の規定を受けまして、地方自治の本旨に合するごとく規定しなければならないのではないか。そういう面から見ましても、現在警察制度の根本的改正をやる場合以外に、百九十三条並びに百九十九条の改正をするのは、ちよつと時期が早いのではないかということを考えておりますので、その点についての御意見を伺いたい。
  96. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。この点の御心配のお心持もよくわかるのであります。ちよつと別個のことになるかもしれませんが、加藤さん御心配の点は、警察法改正にあたつては十分心にとめてやられなければならぬ金科玉条だと考えております。但しこの御心配の百九十三条の文章をかえましたのは、御承知のように、もともと現行法でも一般的指示はあるのであります。またすでにそれに基いて一般的指示をしているのであります。公訴遂行ということの解釈の仕方というものは、これは刑事訴訟法の根本問題でありますので、もつとよい日本語にかえて行く、改むるにはばかることなかれというのが、私どもの気持であります。実際上警察法改正と同時にやつた方がよいかどうか、これは法制審議会審議に携わつた学識経験者から、私個人的に聞いてみたのでありますが、解釈を明らかにすることはいい。しかし明らかにしたことに乗じて、検察官の力を不当に、警察官の頭の上にかぶせることにしてはならない。解釈の明確化ということは早い方がよいのではないか。そういうお考えが多かつたのです。従つてそういう他意のない措置なのでありますが、今瀧井さんも御心配になつたように、副次作用がおそろしい、それは十分速記録なりあるいは国会の附帯決議なりをもつてしぼつていただく、また私の方もしぼりたいと思います。また百九十九条でも警察官が理解力が低いから、検事の手元に持つて来い、こういう態度ではいけないのでありまして、捜査あと起訴、不起訴の仕事をする公訴官たる検察官の方でも、その逮捕状要求の同じ事件内容をよく知つて、これは私の方はこう思うというので、意思の反映をさせようというのにすぎないのでありまして、もし旧刑事訴訟法の中における検察官の地位を目立たないようにだんだんと回復するといような考えがあつては、まことに不心得なことであります。それは言葉で言うだけでなく、びしびしと措置もし、また法文にそういう危険な点があれば容赦なく御指摘を願いたいと思います。
  97. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 ただいま実質的な変化は何もないのだと言われますが、現行百九十三条の規定には、一般的指示内容規定を重要な事項に限定するとあるので、片方は必要な事項については一般的指示をすることができると書いてある。この内容一つもかわらないのだということは、はたして常識のある人が言えることかどうか。私はそれをまず第一に考えます。  第二番目にはたして内容が全然かわらないならば、大臣がたびたび言われますように、これを国会の速記録にとどめるとか、あるいは通達その他でいいのではないか。結局これは大臣のたとえられる言葉を引用すれば、第一走者の走り方が悪いとか、態度が悪いとか、いろいろなこと第二走者に言わせることになるのです。これが重要な事項について限定的に指示の準則を定めることができるというようなことになりますれば、これはどうしてもバトンの渡し方とかその他控訴の完遂に必要な事項だけに限ることになります。そうした面は地方自治法で解釈して、固有事務と委任事務ということになれば委任事務の範疇の問題ということになります。それならばいいのですが、それ以上に出るおそれが十分にあることはだびたび申し上げた通りであります。また出ようとするからこそ内容規定の限定的な書きぶりを、必要な範囲一般的指示は十分にできることに規定してあるわであります。その点は率直に御当局も考えていただきたいのですけれど、致命的な問題は、この捜査の適正ということの判断はだれがするか、今度の改正案でこの判断をすることについて、市町村公安委員会、または司法警察員その他自治警察関係者が実情に合するごとく、この地方自治の本旨に基いて、みずからの行政あるいは委任事務におきましても、できるだけ広い範囲の行政を、人民みずからやる、国民みずからやる。それからまた同時に、地方分権的なある程度の独立性を持たせるということを規定しましたところによつて、これを判断すべきでありまして、これを検察官が判断して、しかもそれに従わないときにはもうひどい目にあわせるというようなことは、京都の豚箱事件以来ずつと継続した問題の再燃を起すおそれがある。こうしたことにつきましてこの警察法改正と同時に改正することが必要要件だと考えておりますが、どうも私の考えところと大臣のお考えになつているところと若干食い違いがあり、なお私の説を十分に申し上げればこの捜査の適正ということの認定権を全然検察当局にまかせるとお考えになるようにとれます国警長官の御意見は、自治警察を憲法に基く地方制度として立てた建前からいえば、若干譲歩し過ぎたのではないかという気持もしますので、その点これ以上申し上げませんから、できるだけわかるように率直にお答えしていただきたいと思います。
  98. 犬養健

    犬養国務大臣 十分御心配の点は私もわかつているのであります。こうやつて立つたりしているので何か固苦しくなるのでありまして、十分わかつております。  第一に、たくさんお尋ねがありましたので、落したら御注意を願いたいと思いますが、必要な事項とか重要な事項とかいう文句で、これも御心配だと思うのでありますが、法務省が書くということは慎重に扱いまして、小野清一郎博士に法制審議会の席上で選んでいただいたようなわけでありまして、決して他意はないのであります。  それから「捜査を適正にし」ということは、適正はだれが認定するかという御質問でありますが、先ほどちよつと申し上げましたように、百九十三条における「捜査を適正にし」という字はあの文章の目的格ではないのでありまして、平たく言えば枕詞で、つまり公訴実行を全からしめるため―たとえば捜査の適正もこの中に入りますが―というような意味の枕詞でありまして、その認定の標準はいらない、こう思うのであります。  それから字句の改正がされたから一段と強化したというふうに考え検察官もないとは限りません。またちよいちよい検察側から私そういう御注意を受けるのです。そこで今申し上げましたように、一般的指示―これはめつたにいたすものではありませんが、かりに出そうと思つた場合は、出す前にあらかじめ検察側と緊密な連絡をしてそつちの御意見も伺つて、抜打的には出さないように、ここで第一チエツクをして、とんでもないことを言つたら加藤さんなんかにも筒抜けに話が来ると思うのであります。で国会でも問題になるというようなわけで、実際そこに私は制約があると思うのであります。  それからリレー・レースの話がたくさん出て恐縮でありますが、第二走者が第一走者ところに行つてあそこが悪い、ここが悪いと言うのもいかがかと思うのでありまして、一般的指示というのは、きようは雨が降つたあとだから曲り角に気をつけてくれとか、きようは外国の偉いお客さんが来ているから短いパンツをはかないように、という程度の指示でありまして、個々の書き方に関係はないわけでありますから、どうかそのように御了承願いたいと思います。
  99. 大石ヨシエ

    ○大石委員 もう本会議が始まつておりますので、すこぶる簡単に大臣に質問したいと思います。  今回の政府提案になつております刑事訴訟法は民主主義的なものと大臣はおぼしめすのでありますか。それとも時代に逆行するものであるか、この点をお伺いしたい。
  100. 犬養健

    犬養国務大臣 これはこういうふうにお答え申し上げたいと思います。大体われわれ司法行政あずかつているものはできるだけ人を拘束したり捕えたりする範囲を狭めなければならぬ。ではこの改正はどうかといいますと、控訴審の事実を丁寧に拡大して示す。これは人民にいいことなんです。そのほか二つばかりありますが、あとは大体まあ国民を拘束することをちよつと強化する文章が多いのであります。従つてこれが民主主義かどうかという御質問にはお答えしにくいことになりますけれども、確かに一般国民は従来よりも拘束の部分が多い。ただそれが人権擁護一般社会の公共の福祉との調和においてやむを得ないかどうか。これはことに社会党側の委員と私、政府の者との真剣なここでの探究の問題だと思うのであります。なるほど控訴審の事実取調べの拡大その他二、三以外は、みな一般の国民の何といいますか、迷惑という言葉がいいか悪いか知りませんが、とにかく迷惑の部分がふえることばかり書いてある、ほんとうに恐縮だと思います。しかしこうこういう理由で真にやむを得ないとこつちは思つておりますが、国会においては、真にやむを得ないのかどうか厳正な御批判を仰ぎたい、こういう態度に出ているわけであります。
  101. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私は本会議が開催されておりますので、すこぶる簡単に左の二点をお尋ねしたいと思います。  今回の法律改正案中第百九十三条それから百九十九条は、私は警察官の志気にも非常に悪影響がある。それからこの点私は斎藤さんにお尋ねしたいと思うのでございますが、斎藤さんもここに出て非常に大臣の前で遠慮していらつしやると思うのであります。私は遠慮はいらぬと思う。自分の意見を率直に私たちに聞かしていただきませんと、私たちはわかりません。こういうようなことは時代に逆行するものであつて、そうして日本はますます逆コースにならんとしているときに、またこうした悪法案が――私はこれを称して悪法案と言います。こうした逆コースに行く法案が出ては、またこれは検察フアツシヨになると私は思う。こういうふうなことになりますと、私はさつき大臣がわが党には選挙違反がたくさん出て非常に遺憾に思う、こうおつしやいました。
  102. 犬養健

    犬養国務大臣 遺憾に思わない……。
  103. 大石ヨシエ

    ○大石委員 いや、遺憾に思うとおつしやいました。私はここで聞いておつた。それは警察から検察庁に送られて、それが雲霞のように流されてしまつて、しまいにぽかされて行く、それほど検察官というものは権力を持つている。さつき門司さんがおつしやいました通り、権力の濫用をわれわれは非常に心配しております。この点には地方行政委員会の全部の人々はおそらくこれに対して反対するものである。それは何の意味で反対するか、いわゆる逆コースであるから反対するということをどうぞ御承知を願いたい。私は本会議がございませんでしたらもつと自分の意見を大臣に申し上げて、そうして斎藤さんの意見も率直にお聞きしたい。けれども本会議がありますからこの点にとどめておきますが、この点をもう一度私はお聞きしたいと思います。
  104. 犬養健

    犬養国務大臣 たびたび申し上げますように、検察官の力というものがフルに、しかも独行、独走的に動くというのでは大石さんの御心配の通りでありますが、従つて警察官に対する一般指示も、警察官裁判官に要求する逮捕状請求も、意思を反映するということが重点であります。従つていばるとか君臨するとかいうような副次的作用が出るならば、出ないように法案自体を締めて行かなくてはならぬ、こういう考え方でございます。この点は十分御心配の点もよくわかつておりますから、今後の大臣の通牒、検事総長の訓令等でへ検事が旧刑訴に憧れを持ち直すというようなことが絶対にないように気をつけたいと存じております。
  105. 大石ヨシエ

    ○大石委員 もう一つお尋ねいたします。しからば犬養大臣にお尋ねしたいと思いますが、この法律案の今回の改正は旧刑事訴訟法自体に逆行するものと思つてさしつかえございませんね。私はさように思つております。
  106. 犬養健

    犬養国務大臣 それはちよつと困るのでありまして、逆行でないために苦心をしているのであります。その苦心と、することとそぐわないのではないかという点がありましたら、率直にお教え願いたいと思いますが、根本的に旧刑事訴訟法に逆行するものと心得て文句ないかというお尋ねは、それは文句があるのでありまして、至らずといえども旧刑事訴訟法にもどらないような苦心はいたしているのであります。その点はひとつ了解いただきたいと思います。
  107. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私はそういうふうに解釈しておりますから、どうぞ御承知おき願いたいと思います。本会議がございませんでしたらもつと大臣に詳しく質問したいと思いますが、この辺で失礼いたします。
  108. 小林錡

    小林委員長 他に御質疑はありませんか。――御質疑がなければこれをもつて連合審査会の議事は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十一分散会