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1953-08-06 第16回国会 衆議院 法務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月六日(木曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君    理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    高橋 禎一君       中村三之丞君    猪俣 浩三君       細迫 兼光君    木下  郁君       岡田 春夫君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (矯正局長)  中尾 文策君  委員外出席者         検 事 総 長 佐藤 藤佐君         法務事務官         (東京拘置所長         小菅刑務所長) 川上  悍君         検     事         (民事局第一課         長)      新谷 正夫君         最高裁判所事務         総長      五鬼上堅磐君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 八月六日  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(吉  田安君外三名提出衆法第八二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  閉会審査に関する件  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(吉  田安君外三名提出衆法第八二号)  法務行政に関する件  法廷秩序維持に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会といたしましては、  一、裁判所司法行政に関する件  二、法務及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件  四、法廷秩序維持に関する件  五、接収不動産に関する件  六、交通輸送犯罪に関する件  七、駐留軍及び国連軍裁判管轄権に関する件  八、戦犯服役者に関する件 について、閉会中もなお審査を継続するため、その旨議長に申し出たいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  なお議長に申し出るための文書作成提出手続等旭つきましては委員長に御一任願いたいと存じますから、さよう御了承願います。  なおこれらの閉会審査事件が付託になりましたならば、これらの事件審査のため、各地に委員を派遣してその実情を調査することといたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  派遣委員の人選、派遣地及び派遣日時決定議長提出すべき委員派遣承認申請書作成並びに提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  6. 小林錡

    小林委員長 この際お諮りいたします。本日の日程に関して最高裁判所側より出席説明したいとの要求があります。国会法第七十二條第二項の規定により、これを承認するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  法廷秩序に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますからこれを許します。押谷富三君。
  8. 押谷富三

    押谷委員 まず検事総長お尋ねをいたしたいと存じます。  問題は先月の二十九日、大阪地方裁判所法廷において、いわゆる吹田事件審理公判が開かれた際に、法廷において被告の一人が朝鮮休戦協定成立に対する演説をぶちまして、そのあと、この休戦協定成立は、吹田事件で闘つておるわれわれの勝利であるから一同拍手をしてもらいたいとか、あるいは北鮮勇士のために黙祷をささげたいとかいつて起立を命じたのでありますが、これに対して立会いの検察官は、さようなことは禁止すべきものである、法廷秩序維持のためにさしとめてもらいたいという要求をしたのに対して、裁判長は禁止すべきでないという異例の発言をせられたのであつて、その結果彼らは演説をぶつた、その後において黙祷をささげるとか拍手をするとかいう事態があつたのでありますが、このことは法廷秩序を維持し、法廷審理に対する指揮をいたしまする裁判官態度としては、相当批判さるべきものであると考えるのであります。その間の事情を明らかにいたしたいと存じますが、この問題について最高検察庁においてはお調べなつたものと思いますから、御報告願いたいと存じます。
  9. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいま押谷委員から申されましたことにつきまして、数目前大阪地方検察庁検事正並びに立会い検事が参りまして、いさい公判経過報告を受けたのであります。なおその際にテープレコーダーを持つて参りましたので、それを目下私の方で複写いたしております。そのときの話はいさい聞いたのでありまするが、なお正確を期するために、昨日電報要旨だけの報告を求めましたところが、今朝かような報告電報がありましたので、この報告文の一部を申し上げて御報告を補いたいと思います。  吹田事件というのは、御承知のように昨年の六月二十四日吹田中心として発生した騒擾罪でございまして、検挙は約二百名検挙いたしまして、そのうち百十名の起訴人員なつております。いずれも騒擾罪で、首魁率先助勢者また一部のおもだつた附和雷同者でございます。公判は昨年の九月十一日第一回の公判を開かれまして、その後昨日の公判まで三十回公判を開かれておるのであります。その間に、この騒擾事件は百十各の被告が全部統一公判をされておるのでありまするが、その公判中に被告人らが一斉に拍手をしまたは黙祷をした事例は、これまで四回あつたということであります。その第一回は、最初の第一回の公判において被告人らが全世界の平和の戦士のために一分間の黙祷をささげようということで、全員起立して黙祷行つた。次は第十一回公判において、被告人タニモトユキオが提唱いたしまして、世界の平和の指導者大スターリンの死をいたんで黙祷をささげたいという申出をして、全員拍手裡黙祷をささげたということであります。第三回は第二十四回公判でございます。これは同じように被告人タニモトユキオより、最近アメリカ帝国主義者の手によつて断頭台上の露と消えたローゼンベルグ夫妻に対して黙祷をささげようという申立てをして、全員起立して黙祷行つたということであります。第四回目の拍手黙祷の例は、ただいま押谷委員から申されました去る七月二十九日第二十九回公判において姜順玉という北鮮系被告人が長々と述べておりますが、その要旨は、朝鮮停戦協定成立したのは祖国人民共和国軍勝利である、同時にソ同盟中心とする中共義勇軍中心とする全世界平和愛好勢力勝利である、この勝利の喜びの意を拍手でもつて現わすと同時に、勝利のために戦つて倒れた先輩烈士に感謝の黙祷をささげたい、こういう申入れをしたのであります。そこで立会いの検察官から裁判所異議を申し立て、ただいまの被告人らの申入れには反対であるという申出をしたのであります。ところが裁判長裁判所としては禁止いたしませんという明言をされたのでありまして、そこで被告人全員、と申しましても、分離公判請求している首魁の一人である三歸被告だけは立たなかつたそうでありますが、三歸被告以外の全員が起立いたしまして黙祷をささげて、最後拍手をした、こういう経過なつております。検察庁からの報告によりますると、かように前後四回の事例があるが、最初の一回から三回までの分はいずれも突然のことで、立会いの検察官から特に異議を申し立てろひまがなかつたというので、別に異議は申し立てておりません。ところが第四回目の最後の七月二十九日の第二十九回公判におきましては、ただいま申し上げましたように、被告の方から黙祷をささげ拍手をする、その理由について長々と演説をされたのであります。立会いの検察官からはつきりとそれには反対であるという異議を申し立てたところが、裁判長裁判所として禁止しないという意思表示をされて、そうして被告人らの申入れ通りのことが行われたということであります。公判経過はさような次第であります。
  10. 押谷富三

    押谷委員 当日における拍手あるいは黙祷、その前における拍手黙祷経過はただいま承つたのでありますが、二十九日の公判廷における拍手黙祷の直後におきまして、ほかの被告が立ち上つて裁判長に、北九州水害和歌山奈良水害について発言をいたしたいという申入れがあつたときに、検事はさような水害裁判審理にあるいは事案内容関係がないから発言は許すべきでないという異議申立てがあつたにかかわらず、裁判長水害事案関係があるかないかは聞いてみなければわからぬというのでこれを許され、そうして長々と吉田内閣攻撃演説をこの法廷でぶつたのでありますが、さような事案につきまして最高検においてはお調べに相なつておりますか。
  11. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 その点につきましては書面の報告はございませんが、数目前検事正並びに立会いの検事が上京されまして公判経過報告されましたときに、ただいま押谷委員の述べられましたその通りの事実を報告されましたことを承知いたしております。
  12. 押谷富三

    押谷委員 北九州並び和歌山水害関係について、清水と称する被告発言をいたしたのでありますが、その発言内容は、私たち九州和歌山襲つた水害が、政府が一方的に再軍備予算を組み、かつアメリカのMSAを国民に押しつけるため再軍備予算を強行しているということが大きな原因である、こういうように思つております。このことにつきまして日本人である限り、日本人の血が通つておる限り、裁判官であろうと、検察官であろうと、国民を救うために、和歌山九州の人々を救うためには、いかなる政党政派の別なくこの人たちをもちろん救うべきであると思います。こういうような演説をやつて、そうして政府は再軍備予算及び国民を収奪するための軍事予算を組むために治山治水政策を放棄して、全住民をいかに苦しめているかということは、和歌山の知事が四百四十億の金を政府に対して要求しているにかかわらず、政府はこれに対して二億円の金しか出さなかつたというようなことを長々と述べて政府攻撃をいたしておるのでありますが、この演説内容最高検ではお調べに相なつておりますか。
  13. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 先ほど申し上げましたテープレコーダーからとつた速記の写しがここにありまするので、もし御必要とあればその前後の関係を朗読いたしますが、内容はただいま押谷委員の申されました通りまつたく相違いたしておりません。その通りの事実があつたと思います。
  14. 押谷富三

    押谷委員 適当な機会に本委員会におきましてもテープレコーダーを聞きたいと思つておりますから、内容朗読等は省略されてけつこうでありますが、この点について最高裁の五鬼上事務総長お尋ねをいたしたいと思います。  この大阪地方裁判所における吹田事件審理途上において、検察官裁判官とが相当深刻に対立をいたしておるようでありまして、ただいま検事総長より御説明に相なりましたごとき事態が二十九日にも行われ、その以前にも数度にわたつて行われているということは御調査に相なつておりますか。御調査の結果が検事総長の御報告通りであるかどうかを伺いたいと思います。
  15. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 この吹田事件に関しましての被告人及び公判回数等に関しては、ただいま佐藤検事総長から述べられた通りでありまして大体その通りでありますが、この二十九日に起りました被告人黙祷の問題につきましては、まだ私の方としてはただ新聞紙上で拝見した程度なのでありまして、ただいまここで検事総長報告を聞くのが耳新しいような次第でございます。もとより私の方としてもその報告を求めておりますが、まだ現地裁判所の方から詳細な報告が参つておりませんので、何とも申し上げかねると思いますが、実はこの法廷秩序維持に関しましては、最高裁判所としても非常に関心を持つておりまして、いろいろこういう公判事件またはその他の事件に対しましても、法廷秩序維持の問題旭関しましては、常に各裁判所からその報告を聴取し、また会同等におきましてもいろいろ問題を討議いたしておるのでありますが、何分事裁判の問題と司法行政との問題の非常にデリケートな問題もありまして、迅速に、連び得ない点もあるような次第であります。
  16. 押谷富三

    押谷委員 事務総長新聞ごらんなつたようでありますが、新聞記事によりますと、この問題が起つた直後において、当該裁判官被告らが黙祷をしたり、拍手を送るということは、一つの宗教的な信念に基いてやつておるのであつて、あたかもクリスチャンが讃美歌を歌うようなものであるから、さしとめるべきではないという趣旨声明をしておられるのでありますが、ごらんに相なつたと思いますが、ごらんになりましたか。
  17. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 私が新聞記事と申しましたのは、実は今押谷委員の仰せられましたことは、まだ拝見いたしていないのでありまして、実は私昨日まで旅行しておりまして、旅行元新聞を拝見した程度であります。
  18. 押谷富三

    押谷委員 新聞にはそういう声明が出ておりました。また昨日の夕刊にもこのさしとめなかつたことについての裁判官意見の開陳がきのうの第三十回公判冒頭においてあつたことが出ておりますが、これも御承知に相なつておると思いますが、こういうような考え方について私はお伺いをしたいと思うのであります。裁判審理関係がなく、あるいは事案内容関係のない宗教的な信念からやることならばさしとめることができないとして、讃美歌を歌う者は歌わす、こういうような考え方でありますと、仏教徒は三部経を上げたいと言うかもしれません。踊る宗教は一踊りやろうと言うかもしれません。かようなことをことごとく許すのが正しいという考え方になりますと、法廷秩序維持あるいは審理促進のために、審理の公正を期するためにいろいろの指揮をせられる、その指揮が非常に乱れると思うのでありますが、こういう考え方について事務総長はどうお考えになつておりますか。
  19. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 ただいまの押谷委員の御発言ごもつともな御発言でありまして、大体事件自体関係のない今のような宗教的な信念の問題というようなことを当該公判廷において被告が述べるということは、これは全般的に考えて適当でないとわれわれも考えておるのでありますが、しかしこの二十九日の事件に関しましては、私どもとしましては相当これを重要相してはおりますが、しかしまだ正式の報告及び調査等もいたしておりませんで、何とも確答いたしかねると思いますが、最高裁判所といたしましても、これについては明日裁判官会議を開いて、この事件に対する処置等についても協議いたしたいと考えておる次第であります。
  20. 押谷富三

    押谷委員 まだ御調査が十分遂げられておらなぬ、その上に明日裁判官会議においてそのような問題についての意見をお出しになるようでありますから、この際お伺いすることは、多少無理かもわかりませんけれども先ほどお尋ねをいたしました公判廷において被告北九州水害あるいは和歌やま県、奈良県の水害、こういうような不時に起つた大天災に対して発言を求めた場合に、昨年の夏の吹田事件とこの水害とは何の関係もないことはだれでもわかることでありますが、そういうような内容でありますから、検察官がさようなことを長々述べさせることはいけないというさしとめの要求をしたのに対して、関係があるかないかは聞いてみなければわからぬじやないか、という言葉で自由に言わした。その彼らの演説あとにおいて裁判官が言われた言葉は――その演説最後言葉は、日本国民を救うという立場に立つていただきまして、地方自治体の予算なんかにつきましても、私たちを救う立場にあるものの一つ裁判所といたしまして援助をしていただきたいと思います。というようなこういう言葉をもつて水害に対する発言終つたのでありますが、その言葉を言わすか言わさぬかについては検察官対立して、関係がないから言わせてはいけない、関係があるかないかは聞いてから判断する、と言われた裁判官のその最後言葉は、希望として聞いておきます、こういうことによつて結論をつけられたのです。しからば関係のないようなこういう事柄を長く言わせて、それを裁判官希望として聞いておきますということで全部の発言を認めて、全部発言を許容したがごときこの言葉をもつて終りを告げているということは、私は重大な問題だと思うのでありますが、この点についてこういう事実がかりにあつたとするならばという前提でもけつこうでありますから、五鬼上事務総長の御意見伺いたい。
  21. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 私水害の今の被告発言についてはまつたく初耳でありまして、何ともここで申し上げることはできませんが、ただいま押谷委員の御発言のようなことであるとするならば、あるいは必ずしも当を得ていないのじやないか、というように私としては考えます。しかしこれも実際の調査をしてみなければわからないと思います。
  22. 押谷富三

    押谷委員 この問題は、二十九回の公判は大体訴訟審理を進めるにあたつて三木被告外二名の被告人らの審理分離をしてくれという内容公判であつたのでありますが、この公判に至るまでには相当裁判官検察官との間においては対立があつたようであります。特にこの公判廷における速記調べてみますと、初めから裁判長検察官との間においては非常に対立をいたしまして、事ごと異議を述べる、これをけるというような問答の応酬が行われているのでありますが、検事総長にお伺いをいたしたいのは、当日の立会検事におかれて初めから、この黙祷のときからさらに水害発言から次にまた分離の問題についても、非常に強硬な態度検察官裁判官に対して異議を述べるという態度に出ておられるのでありますが、公開された公判廷において記録をとりながらこういう対立的な事態をはつきりしたのには何か意図があつたのではないかと考えられるのでありますが、この点について何かお聞きになつておりましたならばお漏らしを願いたいと思います。
  23. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいまの被告人等演説、それから黙祷拍手、さらに水害に関する演説等はこれはまつたく予期しないことが公判冒頭で起きたのでありまして、その予期しない事柄が起きたのに即応して立会いの検察官公判進行関係がないから禁止してもらいたいという反対意思を表示したのでありまして、私どもといたしましては、この公判経過を見ますと検察官反対意思表示をすることは当然である。ただ裁判長がそれをいれるかいれないかということは、法廷秩序維持に関しまた裁判所の権威を保持するために努力しなければならぬ専権裁判長は持つているのでありますから、裁判長の方でどうも検察官意見には同意しない、被告意見に同意したいという結果になつておりますけれども、これは裁判長専権でありましてやむを得ないことと思つております。ただ立会いの検察官が、この経過を見ましても、あとテープレコーダをお聞きになればわかりますが、割合に平静に感情にとらわれずに公判進行について尽力していることがよくわかるのでありまして、検察官としては終始公平な裁判が円満に進行できるようにということを念願していろいろな措置に出たことと思うのであります。この記録を見ましても、最後三木被告――これは首魁でありますが、三木被告外三名の被告が大分前から、どうも百十名のこの大勢被告と一緒ではなかなか自分の思うことも十分に言えない、真実を述べて、真実に合うような裁判をしていただきたいから私たちだけは分離してもらいたいということをたびたび申し出ているのでありますが、裁判長はその申出を今まで聞いておらない。さらにこの公判あとでまた三木被告の方からそういう申入れがあつたので、今度は検察官の方としても、被告人が自由な立場において真実を吐露して真実に合するような裁判をしてもらいたい、こういう趣旨分離公判請求しているのであるから、この大勢被告分離して並行的に進行したらどうかということで、分離公判請求検察官の方からも申し出ているのでありますが、この点につきましても裁判長はどうもにわかに同意しかねるような態度をもつて、いずれこの次にに決定いたしますというふうな裁決をされているのであります。ところが第三十回の昨日の公判におきましては冒頭において、被告人等拍手及び黙祷を許したことについてと題して、長々とその心境を語られ、また自分公判進行せしむるについての基本的な態度と申しますか裁判長の固い信念を吐露されているのであります。非常にこれは長いのでありますが、その終りに、なお三木被告らの分離問題については納得いたしかねる点があるからというので、分離するともしないともまだ決定はいたしておりません。かような次第でいかにも検察官裁判長の言いなりにならないで、事ごと異議を申し立てる、あるいは反対意思表示をしているので、皆さん方におかれましては何か検察官裁判所意見対立でもあつたような推察をなさるかもしれませんが、決してそういうわけではないのでありまして、裁判がすべての被告について公正に進行できるようにという念願からいろいろな点で裁判長意見の違う点があつたにすぎないものだと考えております。
  24. 押谷富三

    押谷委員 今検事総長裁判官検察官意見対立があつたことを否定せられているようでありますが、意見対立はあつていいものだと思います。正しい意見対立はあるべきだと思うのでありますが、この吹田事件についての分離関係内容をなす裁判官考え方や、あるいは審理模様等については、この委員会で申し上げることはあるいは適当でないかもわかりません。他の委員会において適当な機会にもちろん糾明さるべきであると思いますが、しかしここで明らかにしておきたいと思いますことは、この公判法廷において、裁判官検察官との間に分離問題で言葉やりとりがありましたが、そのやりとりの中にこういうことがあるのです。弁護士被告人は、三帰被告外の者はどうも転向しているらしいので、考え方が全然違う、自分の気持を言おうとすると、こういう雰囲気では言いにくいから分離をして、自由な立場で自由なことが言い得るようにしてもらいたいたいというのが分離請求理由であり、防禦の方法も他の被告と違つておるから分離してもらいたいという訴訟法の許された手続において請求をしているようでありますが、これがすでに二回、三回と重なり、弁護士からも請求をされ、検察官からも請求されているにかかわらず、さらに裁判官がこれに対して決定を与えない。いつまでも決定を与えないでほうつて置くという態度は許さるべきでないと思います。さらになぜ決定をしないか、なぜ分離をしないかという裁判官言葉の中に、もしも分離をして調べると、三臨外二、五名の被告の供述は他の全体の被告に不利益になるから分離はしないのである、こういうような言葉がどこかに現われていると思うのでありますが、この問答検事総長承知でありますか。
  25. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいま押谷委員の申されました問答があつたように報告を受けております。しかしその点につきまして、昨日の公判廷裁判長はこういう釈明をされております。その中の一部分ですが、裁判長言葉として、なお三歸被告人について、同被告人の言うことを聞いて先入観を抱くから発言させないというようなことは申していない。三臨被告人がそのように受取つたとすればそれは誤解である。三歸被告人分離して先に審理するとすれば、その事実を――その事実というのは犯罪事実ということでありますが、犯罪事実を否認している被告について不利であり、分離法廷で、他の被告人のいない席で、三歸被告人のような立場にある者から発言を聞くことは違法ではないが、妥当でないという意味で申したのである、こういうふうなことを言つております。
  26. 押谷富三

    押谷委員 今検事総長の御説明にありましたように、分離をしないというのは、分離をして調べるならば、他の大勢被告から転向した三歸被告の供述が不利益であるというような一つの予断をもつて裁判にかかつておると思うのでありますが、およそ裁判官は神様のような気持で至公至平、きわめて厳粛な態度法廷審理に当らなければならぬにかかわらず、この被告をこういう調べ方をするならば他の被告に不利益な供述が出るであろうというようなことを予断をして、その後の訴訟手続を進めるという行き方につきましては感服しないと思います。自由な立場において被告人に供述をせしむる。それが利益であろうが不利益であろうが、出たところでそれを証拠に採用せられることは自由でありますが、しかしあらかじめ不利益になるであろうから、こういうところでは調べないとか、あるいは分離をしないとかいうような考え方は、訴訟法に、いわゆる防禦の方法が違つた場合において、分離をしてそれぞれの防禦を自由にさそう、攻撃を自由にさそうという、この分離の制度に反するものであると私は考えるのでありますが、この点について、これはまだお調べなつておらぬと思いまするけれども、今検事総長が御報告せられたような内容であるならば、分離に対する処置としてとられている裁判官態度は、はたして妥当なものであるとお考えになるかどうか、五鬼上事務総長お尋ねをいたしたいと思います。
  27. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 公判手続分離するかどうかということは、まつたく訴訟手続の問題でございまして、ここで私からとやかく申し上げることはございません。ただ先ほど来の押谷委員の御発言のうちにも、私あるいは聞き間違いかわからぬが、何か分離すれば裁判長が予断を抱くというような態度でおられるというようにも受取れる発言がございましたが、もしさような事実があれば、訴訟手続検事の方で裁判長を忌避するとか、いろいろ訴訟手続上許されておるもので争つて行くべきでありまして、おそらくわれわれとしては、裁判所は先ほど押谷委員も仰せられたように厳正公正な立場において審理をやつておると信じておるのであります。しかしながら当委員会においてもいろいろ問題になりました事件でございますから、私の方としても慎重な報告を求め、また考えてもみたいと思います。
  28. 押谷富三

    押谷委員 私が発言中に、裁判官が予断を抱いてという言葉がありますが、その予断という言葉は、今事務総長の言われた言葉と大分違うのでありまして、分離をして調べるならば、その調べる三歸被告らの供述は他の被告らの不利益であるということを建前にして、出て来る結果は不利益であるから分離をしないんだ、こういうことを裁判官が言つておるのです。そこで分離して調べたならば不利益な結果が出るということを確定して、そういうことをほとんど既定の事実として分離の関題に当つておられる。裁判官は、分離をした結果三輪被告らの供述を予断しておられる。これがいけないというのが私の発言でありますから、そういうように誤解のないようにお聞取りを願つておきたいと思います。この公判廷でかつてこういうことがあつたのですが、事は小さなものでありますから、あまり問題なしに今日に過されておるのでありますが、かような大勢被告法廷でいろいろあばれておりますから、法廷におきましては法廷警備員を派遣いたしまして、法廷秩序を守り、安全にスムーズに事件進行されるように警備をいたしておるのでありますが、その法廷におりました警備員の中に、元特審局に勤めておつたという人が警備員になつてそこにおつたのでありますが、これをどうして知りましたか、被告の中で知つておる者がおつて裁判長、あすこにおる警備員員は、あれは特審局におつたことのある前歴を持つている。特審局におつた前歴のある警備員がここにおることはきわめて不穏当であるからあれを出してもらいたいという要求をした。裁判長はよろしいというので、その警備員をその場から立ち去らしめたのであります。これは何でもないような事柄でありまするけれども、人にはいろいろ前歴があるものです、過去の履歴はあるものです。現在の職務に何か欠陥があつて、現在の仕事の上に重大な落度でもあつたならばその仕事から排除されるのはやむを得ませんけれども、過去における履歴の一つに特審局におつたという事実があつただけで、被告言葉を聞いて警備員をその席から、その職務から排除せしめるような態度は、私は非常に行き過ぎだと思うのでありますが、この点について検事総長の御意見を伺つてみたいと思います。
  29. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいま押谷委員の申されましたその通りの事実があつたことを報告は受けております。裁判長がどういう気持でその警備員の警備の職から排除したかということは知るよしもないのでありまして、おそらく被告人の方からの申出で、被告人があれを排除しろといつたのに排除しないと、また法廷がごたごたするからというような妥協的な態度から排除されたものではないかというふうに想像はいたされまするけれども、はたしてどういう気持から裁判長が排除されたのか、その点がわかりませんので、私としては意見を述べる二とは差控えたいと思います。
  30. 押谷富三

    押谷委員 いま一つ。事の当否に対する判断を伺うのではなくて、こういう事実があつたかないかということだけを伺いたいと思いますることは、やはりこの公判廷において、この吹田事件被告人審理にあたつて、たしか被告を連れて来る間かどこかで、警察官が被告に対して暴行を働いたというような申出裁判官になされ、その法廷事件審理の際に、暴行警察官の取調べ裁判官がやつたということを聞いているのでありますが、そういうことはございますか。
  31. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいま仰せのような事実もあつたということは口頭で報告は受けております。
  32. 押谷富三

    押谷委員 最後に、この吹田事件公判にあたりましては、今日まで三十回の回を重ねているのでありますが、人定尋問のその前には、いつも被告らが革命歌を歌つている、こういう事実がございますか。
  33. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 その点につきましても、仰せの通り、第一回公判以来第三十回公判に至るまで毎回の公判において、被告人らは入廷及び退廷に際して、平和の歌、アカハタの歌、朝鮮人民遊撃隊の歌等を大声でしかも裁判長の面前において合唱しておる。裁判長はこれに対して何らの措置に出なかつたという報告は受けております。
  34. 押谷富三

    押谷委員 今日までの公判のその都度、入廷、退廷に際して革命歌を合唱いたしておるということは今報告を受けた通りでありますが、かような革命歌の合唱等が、御報告によると、裁判長の面前においてやられているようでありますが、そういうことは、法廷秩序を維持し、訴訟指揮をいたされる裁判長の職務権限の範囲内に属するものだと思います。かようなことは、全国各地で、この種の事件においては行われているのでありますが、五鬼上事務総長より、その点に対しての御意見、つまり、法廷秩序維持に対する裁判官指揮権等の関係についての御意見伺いたいと思うのであります。
  35. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 この吹田事件の革命歌、平和の歌等の問題は、ただいま私どもが受けている報告においては、裁判の開廷前と閉廷後において行われたという報告を受けております。従つて裁判長の面前でさような行為があつたということは私どもの方ではまだ報告を受けておりません。一応これは後ほど確かめてみたいと思います。ただ問題は、法廷秩序維持に関する法律が成立いたしたのでありますが、何といつて裁判長指揮権というものは、法廷の開廷後から終了するまで、大体その範囲の限界にあるというように解釈いたしておるものでありますからして、従つて被告が拘置所から裁判所へ来る途上、列をつくつて平和の歌を歌つたりしたような事件は他にもございますございますが、これは、暴行等の行為のない限り、もしくは非常に喧騒にわたらない限りは、ちよつと取調べの方法が多数の人に対してはないのではないかと考えております。しかしあまりに騒擾をするというような場合には、庁舎管理権というような問題からいろいろ考えて、これを制止する方法は常に考える必要はあります。
  36. 押谷富三

    押谷委員 なおこの裁判官の問題についていろいろ聞きたいこともございますが、この職務の範囲に属する場合もありますから、これは当委員会においてお尋ねをすることの当否を考えて、別の機会にいたしまして、日本は私の質問はこれで終ります。
  37. 田嶋好文

    ○田嶋委員 これはあとでもよろしいのですが、関連して一点だけお聞きいたします。押谷君の質問に関連して申し上げますことは、実は御承知のように、法廷秩序維持法は不肖私が主査となつて国会を通過し、成立した法案でございます。この法案の成立にあたつて問題になりましたことは、今までの裁判所法には、裁判官法廷において被告を取締ることのできる法規の限界があるのです。ところが、今日までそれが適用された事例がない。その適用された事例のない今日、また屋上屋をかけるような裁判所秩序維持法をつくるということ芳ばしくないじやないかというのが反対の第一原因であつたのでございます。これは御知の通りでございます。ところがその反対原因に対しては、この運営は非常にむずかしいのでありまして、いま少しく運営の簡単な、しかも実績をあげることのできる法律が必要だという裁判所側の御説明が当時ありまして、そうして成立いたしましたのが法廷秩序維持法でございますが、その前に出ました原案場の法案の名前は、御存じのように裁判官侮辱制裁法といういかめしい名前の法案でありました。それを法廷秩序維持に関する法律とかえるごとによりまして、非常に問題になつた法案でありましたが、共産党議員を除いて社会党の左までを含めて、全会一致で衆参両院を通過いたしました。国会におきましては、こうしたものに対しては異例な取扱いをした法案でございまして、その国会の当時の意思から申しますと、法廷秩序を維持しなければならない。維持するためには裁判官に相当な権限を与えなければならぬというのは、われわれと思想を異にしておる権力闘争をやろうとする政党以外の国会議員のひとしく認めた法案でございます。この意思というものは、ぜひ私は裁判所のみでなくして全国民に尊重してもらいたいと思うのでございますが、この意思に沿わないところの裁判が、しかも法律が成立した今日運営せられているということになりますと、これはわれわれ議員立法としてつくつた国会として見のがすことができないことなのです。この法律の実施にあたつて裁判所としてはいかなる覚悟を持つてお臨みになつておりますか。従来の法律と同じようにこれは適用しなくてもいいんだ、できれば飾りものにしておこう、秩序裁判官のみの考えによつてやればいい、この法律の発動は最小限にとどめることは必要でございましようが、これは飾りものにしておごうというような軽いお気持でいるのでございましようか。問題になつた法律だけに承つておきたいと思います。
  38. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 この法廷秩序維持に関する法律が、前国会において成立したことは今田嶋さんのお説の通りであります。私どもはこの法案の成立に対して非常に熱望しておつたのでありますが、何を申しましてもあの法廷秩序維持に関する法律というのは、要するに法廷内における秩序維持を主としたものでありまして、先ほど来押谷委員の御質問に答えましたように、途中において平和の歌を歌うというような者に対しては、ちよつと適用しがたい点があるのでありまして、この発動ができないのであります。なおこの法律については、成立裁判所としては極力その徹底をはかりまして、立案の趣旨及び国会の審議の状決等を一切印刷物にしまして、各ブロックことに会同を開き、またその後においても数回会同を開いてこの法律の適用を誤らないようにいたしております。その後件数はちよつと私今資料を持ちませんからわかりませんが、ところどころにおいて適用されて効果を発揮しております。また適用しなくても、この法律の存在によつて普通の事件は非常に審理がスムーズに行つております。しかし何を申してもかような多数の、百人以上の被告に対して発動するというのは、事実上非常な困難があるということをここに申し上げておきます。
  39. 田嶋好文

    ○田嶋委員 そこで今多少内容がわかりましたが、ひとつ法務委員会に、法廷秩序維持法の成立以来どういうように運営して来たかということを、委員会もとじることでありますから、資料として各委員に御配付願うことを希望いたしておきます。  それからもう一つ、この裁判官法廷秩序維持に対して能力がないというような場合、この裁判官は一体どういう実際上の取扱いをしておりましようか。これは相当重大なことだと思います。能力のない裁判官裁判をして、しかもその裁判裁判の本旨に乗らないで、今日裁判の遅滞の原因をつくつておるそれが裁判が遅れる、裁判が遅れるという世間の非難になる。しかも派生的にまたこれが輿論の反撃を食うということになりますと、裁判自体、司法権自体に対する一つの信用の失墜ということになる。法廷秩序を維持する能力を持つ裁判官か、能力を持たない裁判官かということはきわめて大切なことのように私は考えます。法規を解釈してうまく適用する裁判官、法律をよく知つた裁判官というよりも、ある程度行政的手腕能力を持つた裁判官、すなわち行政面、政治面に対するさばきというようなものも法廷秩序を維持する上に必要になつて来て、裁判官の要素も非常にかわつて来るの荷ないか。そうなるとわれわれとしても考えをかえなくてはならぬのではないかとも考えられますので、法廷秩序維持に対する能力というか資格が欠如しておるような裁判官に対する処置をどういうようにとられておるか、これをひとつ伺いたい。なければわれわれ国会としてもこれは考えなければならぬと思うのです。
  40. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 法廷秩序を維持する裁判官の能力という問題でありますが、これは見る人によつて違うと思います。私どもが今まで見て来たところでは、ただいまの裁判官の中に法廷秩序を維持する能力がないとまで言われる人はないように思つておりますが、しかしさようなことがあつてはこれは非常に重大なことでありまして、ただいまの田嶋委員の御発言は私どもほんとうに肝に銘じておる次第でありまして、今後ともさような面には努力いたしたいと思つております。
  41. 細迫兼光

    細迫委員 ただいま取上げられておりますところのこの種事件についての裁判長の処置に対しては、私は具体的な事実を知りませんから、結論的な私の判断を申上げることは差控えますが、いろいろと質疑応答の中に察せられます事実から想像しますれば、この種事件におきましてとかく被告希望を阻止することによつて、かえつて大きな法廷秩序が乱れるというようなことが起りがちである。そういうことを適当に考慮して、結局において円満に、しかも秩序ある法廷進行をはかろう、こういうふうに裁判長が考えてなされた処置ではないかと想像できるのでありますが、事の根源は、保釈というような問題に関連しておると思うのです。すなわち黙祷をささげるとかなんとかいうようなことは、保釈せられておりますれば法廷外ででもやりましようし、必ずしも法廷でやらなければならぬという必要がそこには生じて来ないわけでありまして、長期にわたる勾留ということとどうしても関連して考えなければならぬ問題だと思うのであります。おそらくは保釈の請求もしばしばなされおると思うのでありますが、これに対して検察官は同意を与えない意見を述べておられると思うのであります。そこで検事総長お尋ねいたしたいのは、保釈の請求に同意しない理由はどこにあるのか。また勾留の更新がしばしば行われておるはずでありますが、その更新についての御意見なり、そしてまたそれがどういう具体的な理由に基くものであるかをお伺いいたしたいと思うのであります。
  42. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 吹田事件によつて起訴せられました被告人は百十名でありますが、そのうち今なお勾留が続けられておるのは大名でありまして、百四名はすでに保釈になつております。この事件は御承知のように冒頭から、裁判所の方では保釈の態度をとつておられましたので、ほかの事件に比較しますと勾留されておる被告はごくわずかであります。この六名の被告がなお保釈を許すのが相当でないという検察側の気持は、かような大勢騒擾事件であつて一つまり共同被告人大勢である。そうして被告人はまたほかの枚方事件等にも関係しておるのでありまして、事件の性質、またその被告人のその事件において果した役割、他の事件に関する関係というものを考えまして、保釈すれば証拠隠滅のおそれがあるというふうに見て保釈に反対しておるのであります。
  43. 小林錡

    小林委員長 お諮りいたします。検察庁側でとつた本事件テープレコーダー速記録があります。これを本委員会会議録にとどめ、調査の参考にいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。それでは今からテープレコーダーを聴取いたします。     〔録音聴取〕
  45. 木下郁

    ○木下委員 今この録音を聞きまして、黙祷を捧げて、それからいろいろ水害の問題なんかも述べましたが、五鬼上さんもそれから検事総長さんもお聞きになつたのですが、法廷自体がそれほど混乱したと思いません。私はそういうふうに受取つた。これはこれは検事総長は御記憶があると思いますが、三・一五事件のときも冒頭に、佐野學が音頭をとつて、渡邊政之輔のために黙篤したことがある。そのときに宮城裁判長から、被告たちは無神論である、かつ唯物的な世界観の上に立つておるのだが、そういう人たち黙祷をするのかねと軽く言われて、被告たちが非常にマイナスをとつておる、そういう事例もありまするが、今の録音をお聞きになつて、五鬼上氏もそれから検事総長も、法廷秩序が非常に混乱されたというお感じを持ちましたかどうか、その点を一応承つておきたいと思います。
  46. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 私も録音を聞きまして、具体的にあの公判拍手黙祷によつて非常に混乱に陥つたというふうには思えないのでありまするが、裁判長が、黙祷拍手が人間性の発露として自然にやることであるならば、それば禁じないという、そういうふうに一般的にいわゆる許すということは、やはり法廷秩序維持のために遺憾なことではないかという見解を持つております。
  47. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 実は現に係属してい事件に関することでありますから、私の今録音を聞いての感想という御質問でございましたが、別段あれによつて事件が非常に混乱に陥つて審理できないという事態に陥つたとは考えておりません。
  48. 木下郁

    ○木下委員 私は今聞きまして、これはどうも国民の常識からこれを判断して、いわゆる意識があまり高くない連中が、飛び上りの連中がえてしてああいう目の先の闘争的なことをやるものだ。また二、三年前には法廷占拠ということが全国の裁判所においてやられました。それがそういうことを繰返して来れば、国民はそういうことをする連中をほんとうの気違い扱いにするようになるのであります。私はそう考えます。さような意味で人おのおのものの判断は違いますが、私自身としては今録音を聞いた範囲等においては、被告たちがああいうことをしておることは、やがては痛烈なる国民的な批判を受けるということでマイナスになるとしか考えておりません。かような議論をここで一々する必要もありませんが、法廷秩序を乱したかどうかということが具体的問題になるのであります。さような点については十分事実のお調べ希望いたして質疑を終ります。
  49. 小林錡

    小林委員長 次に法務行政に関する件中小菅刑務所のいわゆる汚職事件について調査を進めます。発言の通告がありますからこれを許します。岡田春夫君。
  50. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 大臣は病気だそうですから、大臣の点については留保しておきます。  まずこの前この委員会において調査要求をいたしておいたのでありますが、小菅の刑務所において一大汚職事件が起つているということをわれわれ聞いておりますので、その内容等について詳細な御報告を願いたいということを言つてあるのであります。その内容等われわれ聞いておる限りでは、光一本が百五十円から二百円、マッチの軸が一本十円、こういう値段で拘置所丙で取引をされ、被告の持つている新品の洋服が、光三個か四個で物交されて、看守あるいはその他の諸君にそういう形で行つているというようなうわさも聞いておるのであります。問題は刑務所の中でありますだけに、外界との関係がわれわれとしては全然わかりませんので、それだけにこのような事件が起るということは司法の問題としてもきわめてこれは重大であります。この際これは徹底的に糾明することが必要であろうとわれわれは考えて、この調査要求したわけでございます。このように一部の看守の諸君あるいは一部の被告の諸君心おいてこのような事件が起きている反面において、このような悪質な看守その他の刑務所の官吏がおるためにかえつてまじめな被告が不当な待遇を受けて、人権蹂躪も行われているのではないかということをわれわれ聞いておりますし、また考えられる点もあるわけでございますので、この点についても一緒に伺つておきたいと思います。
  51. 中尾文策

    ○中尾政府委員 実はこの事件につきましては、つい最近逮捕状が元看守四石に対しまして出まして、目下検察庁の方でなお取調べ中でございますので、今申されましたようなそういう具体的なこと一々につきましては、まだはつきりつかめるところまで至つておりません。これはもうしばらく時をかしていただきまして、取調べが進展いたしまして、なお裁判にかけられるようになれば、はつきり申し上げられると思います。  それで現在まで判明いたしましたところを申し上げますと、発覚の端緒はこれは実は二つございまして、一つの径路は、これは拘置所自身で発見いたしたのでありまして、これはどうも収容者の中にタバコを持つておる者があるというのがだんだんわかつて参りましたので、これをだんだん追究しておりますと、職員からもらつたということがわかりまして、すぐその職員は処分いたしまして、検察庁の方にそれを告発したのであります。それが端緒になりまして拘置所でだんだんと調べまして数件出ております。これは全部事件を検察の方に移しております。なお検察庁自身で調べられたところによりますと、ある事件で家宅捜索をされましたところが、そこから手紙が出て来た。その手紙に、先日新聞に書いてございましたように、相当数の票の買収ができると書いてあつたそうであります。そういうことが端緒になりまして取調べが進んで来た、こういうわけであります。実は目下のところ、先ほど申し上げましたように、まだ序の口でございまして、全貌がはつきりしたというところに至つておりません。  それで被疑事実を申し上げますると、この名前を一々申し上げましても実績があるかどうか存じませんが、鈴木敏夫という元看守でありますが、これは罪名は加重収賄ということになつております。これはことしの四月二日に在監者から頼まれまして、そうして自宅の方と連絡のために手紙を持つて参りまして、タバコを差入れることを頼まれました。そうして現金一万三千円もらいまして、その一部分でタバコを差入れております。それから市川洋という者がやはり同じ罪名でございますが、これは昨年の十二月からことしの一月ごろまで三回タバコの差入れを頼まれ、現金合計一万三千円、そうしてその一部分でタバコを差入れております。それからもう一つは、二月から三月、ころまでの間に九回にわたりまして同じような趣旨でもつて、為替で一万三千二百円を受取りまして、その一部分でタバコの差入れをいたしております。それから中田というやはり元職員でございますが、同じ罪名で、これは本年の五月に在監者から麻薬の差入れの依頼等現金一万円を受けまして若干の麻薬の差入れをいたしております。それから濃野と申しまするのは、やはり同じような罪名でございまするが、これはことしの四月から、やはり在監者から三回にわつて麻薬の差入れ依頼等、現金一万五千円、これだけのものを受けまして、そうして若干の麻薬の差入れをいたしております。  こういうようなわけでございますが、これ以上またはつきりいたしましたことはあとでまた適当の機会に御報告申し上げます。
  52. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ただいま矯正局長から御報告があつたのでありますが、今の話だけで現在局として御調査なつているすべてでございますか、われわれの聞いている限りでも、これらの問題だけではなくて、その他まだまだ広汎な問題があるように聞いておるわけでございますが、それだけしかお調べなつておらないのか、そんな程度調査で今度の問題をごまかしてしまうというような、そういう結果になるようなことであつては私はまことに遺憾であると思いますが、その程度しか御調査なつておらないのかどうか、こういう点についてお話を願いたいと思います。  それからもう一つ、ただいま糸口でありますので云々というお話がありましたので、おそらくその程度の問題としてしまいにしてしまうのではないだろうと私は考えるのでありますが、糸口としてというお話であるならば、大まかな問題としてももちろんけつこうであります、詳細については今のところおわかりにならないと思うのでありますが、そういう点について今後の問題としてはどのような形であなたの方の局内においても調査をされるか。そうしてまたもしさしつかえなければ、検察庁の方においてはどのような点まで進行しているか、こういう点についてもあなたが御存じであるならばお話を願いたいと思います。
  53. 中尾文策

    ○中尾政府委員 この問題は私たちにとりましてももちろん非常に大事な問題でありまして、決してこれをうやむやにしようというようなことは考えておりません。拘置所長も非常な決心をもちまして徹底的な粛正に乗り出しているわけでありまして、検察庁の方に対しましても、これはどこまでもすつかり洗つてもらいたいということを頼んでおりまして、現にそれに対して私たちは協力いたしておるわけであります。それで私たちの方の矯正局としてどういう調べをするかということになりますが、これはもう事件検察庁の方に移りました以上は――何か新たな事実が出て参りますと検察庁の方に連絡いたしますが、私たちの方で手を出しますと、かえつて調べに際しましてじやまになるというような場合がありますので、私どもの方では積極的に――取調べということについての協力はするが、われわれの取調べは差控えているというわけであります。ただわれわれの方で収容者の関係から大分事実が出ておりますので、われわれの方といたしましてはその収容者の自白というようなことから、今のような相当の具体性を持つたタバコ何本とかいうようなことは出ております。それでこういう材料はみな検察庁の方に出してあるわけなのです。  なお今後の見通しでありますが、これにつきましては、一部ではあるいはこれが現職者にも波及するのではないかというおそれもございますが、われわれのただいままで知つております範囲内では、現職者に波及するとしましてもタバコを一ぺんくらい連絡したとかいうような程度のものではないか、こういうように考えておりますが、もちろんわれわれの方でそういうことについてほおつておるわけではありませんので、わかりましたならばどんどんこれはしかるべき筋の方へ連絡いたしたいと思つております。
  54. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今現職者の中でも何かタバコをやつておるような場合があるかもしれない、こういうお話でございますが、タバコをやつておるようなことが一回ぐらいあつたかもしれない、これは見のがしてもいいのじやないかというような意味にもとれるような御答弁でございますが、しかしこの問題については、やはり一回であろうとも、そういう事実があつたならば、これは当然事件として重大であります。私が再三先ほどから申し上げておるのは、拘置所の中であるだけにわれわれは知らない、それだけにたとえば一回であつても、これは一回だけしかわからないのであつて、実際には二回、三回やつておるかもしれない、あるいはまたただの一回であつても、そういうことをやつたとするならば、きわめて重大であると私は思う。そういう意味合いにおいて、これは徹底的にやつていただかなければならぬ、この点が一つ。  第二の点は、今の御返答を聞いておりますと、すでに新聞に出ている四人の職員の名前、これだけを今矯正局長報告されておりますが、おそらくこれ以外にまだ問題があるはずです。必要があれば私の方から出してもいいと思いますが、そういう点については、なぜか矯正局長報告をされないようでありますので、こういう点についてもお話願いたいと思う。  第三の点は、今の御報告を聞いておると、何か平看守の者だけを今度の事件を通じてたたき上げて、平看守だけで終らしてしまうというような印象が非常に強い。ところが一部に伝えられておるところによると、このような不正事件というのは、単なる平看守だけではなくて、刑務所あるいは拘置所内部における幹部にもこういう事件で、もつと悪質なる件があるということが盛んに伝えられておる。しかも新聞にこういうふうに書いてある。あなたもお読みになつただろうと思いますが、新聞には幹部級になるともつと手口が大がかりで、所内の作業所の製品を持ち出して売つたり、炊事用の米三百俵を横流ししたり、それを手伝つた囚人に対して釈放後に多額の謝礼を出している、こういうことまで書いてあります。そうして医務室に帳簿外の麻薬が多量にあつたり、こうように幹部級においても不正事実がある、こういうようなことまで書いておるのに、今の平看守のしかも事件の処理がきまつてしまつたものをここに報告をして、そうしてそのままあとはお茶を濁すというようなことは、これは国会を軽視しておると私は言わざるを得ない。そのほかの問題についてもあなたの方でお調べなつておれば、もつと具体的に御報告を願いたいと思う。そしてまた幹部級の問題についても、あなたの方でそういう点をお調べなつたことがあるかないか、こういう点についても御報告を願いたいと思います。
  55. 中尾文策

    ○中尾政府委員 ただいまのタバコの一本くらいの小さいことでうやむやにしてしまうのではないかというようなお話でございますが、そういうことは決してございません。いやしくもその件柄の性質をよく調べてみまして、問題にすべきものは必ず全部問題にしまして、そうしてえぐれるだけは全部えぐれるようにしたいと思います。これは信用していただけませんければやむを得ませんが、私たちの誠意をひとつ信じていただきたいと思います。  それから全部の名前をあげないということでございますが、私たちの方で検察庁に名前を出したのはございます。しかしその名前の者に対してまだ正式に検察庁で逮捕状を出していないとか、あるいは新聞に発表になつていないというような場合に、ここでそういう名前を発表いたしますことについては多少躊躇を減じますので、まあその名前を発表いたしておりませんが、まだそのほかに私たちの方で検察庁に出しておりますものは三人ばかりございます。つまり、多分間違いなかろうということで出しておるものが三件あります。しかし単なる疑いであるとか、疑いがはつきりしない者については、どうもこういう席上でそこまで全部申し上げるということは、人権の問題もありますので、差控えたいと思います。なお、平看守だけをいじめて幹部についてはもみ消すのじやないかというお話でありますが、これも実にわれわれの志と違つていることでございまして、この点は拘置所長も一生懸命になつ調べまして、現在のところではまだそこまでは出ておりません。決して私たちはそういう点につきまして責任を回避しようとか、やみに葬つてしまおうというような意思はございません。始終厳重に調査をしておるつもりでございますから、どうかその点は御了承願いたいと思います。この刑務官というものは非常に懲罰事件が多いのです。いろいろ逃走事故があつたりなんかして多いのでございますが、私たちの役所というのは、責任問題については非常に厳格な伝統がございます。上の役人も決してその責任をのがれておりません。私も刑務所長をやつておつた経験がありますが、刑務所長をやつておりますと、手続書というものを始終書かされるのであります。そういうわけでありますので、今回のこの事件で全部きれいにするつもりでございますから、どうか一つ御了承願いたいと思います。
  56. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今、あと三名ばかりの名前はわかつているが言えないということです。名前についてはそれはいいです。しかし事件の大体の概略ぐらいは、ここで御報告になれないという話はないはずであります。われわれの調査に対する報告としては、そういう点についても言えないということでは、国会の審議は尽されないと思う。事件の概要だけでも明らかにしていただきたいと思うのであります。
  57. 中尾文策

    ○中尾政府委員 もちろんその程度のことは申し上げてさしつかえないと思いますが、その三名と申しますのは全部首にされましたが、一名は技官であります。これはことしの二月に罷免しておりますが、被告人から家庭訪問を頼まれまして、それを六回やつております。もつともこれは検察庁の取調べではなくて、私どもの拘置所当局の収容者からの自白でありまして、本人は必ずしもこれは肯定しておりませんから、私たちの方の一方的な取調べでありますが、それによりますと家庭訪問を六回やつて、金を二万八千円受取りまして、そしてタバコを光五十箱、ピ―ス二十箱を入れてやつております。そして背広を一着、それからメリヤスのズボン下一枚、ズボン二枚、セ―タ―一枚、チヨッキ一枚――これは収容者三名ばかりの相手がありまして、それを総括して申し上げておるのでありますが、チヨッキ二枚、革手袋一組を受領いたしまして、そのかわりに光を五箱ピースを五箱入れてやつております。それからもう一人は看守でありますが、これは被告から頼まれまして、タバコの光を約十個と石けん七個、練歯みがき三個を入れてやりまして、そして十円切手四十枚、ズボン下一枚をもらつております。それからもう一人はやはり看守でありますが、これはタバコを十七本渡しまして代償はとつておりません。それからもう一件は、タバコを四本渡しまして代償をとつていないというこの三人であります。
  58. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはあとで拘置所長にもお伺いをしたいと思うのですが、その前に中尾さん大分急いでおられるようだから、あなたの関係を先にやりましよう。それで、今までもこういうような事故が、先はどのあなたの御答弁によると、頻発しているようなお話もあつたのでありますが、何か刑務官というものは再三こういうことが起りがちで云々というようにたしか私は聞いた。これは速記録をあと調べてもいいんだが、こういう事件が私も実は最近起つておるように聞いておる。ことしの春なんかもやはり首を切られた者がいるということを聞いておるし、その前にもそういう事件を聞いておるのでありますが、最近小菅の問題としてこういうことが頻発しておるかどうか、こういう点について御報告を願いたい。
  59. 中尾文策

    ○中尾政府委員 ただいまの私の発言、もし今おつしやいましたような、刑務所というものはしよつちゆうこういうことがあるんだというふうに御解釈されますと、私の申し上げようが悪かつたのでございまして、刑務所は逃走がございますとか、中で収容者がけんかをしたとかいうことにつきまして、始終――始終と申しますといけませんが、そういうことがあるたびに決して黙過されない、そのために手続害を書いたり何かする場合が相当あるということを申し上げたわけでありまして、こういういわゆる汚職事件というものが頻発しておるとは申してないのであります。しかしこれは比較上の問題でありまして、絶無とは申しませんが、しかし刑務所に限つてこういうことはしよつちゆうあるということはございません。なお東京拘置所におきましても、こういう事件が頻発しておるということはございません。
  60. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今看守の側の話があつたのですが、これをもらつた方の側といいましようか、被告の側、中に収監されておる人、こういう人たちを取調べるに当つて、相当こういう不正事件を知つている者を摘発し、実際これに関係しなくて知つておる者なんかを実際に取調べて、こういう実情を明らかにされておるのかどうか。こういう不正事件を知つておるというような者に対して、ことさらに調査をしないでごまかしておるような事実があるのじやないか。  もう二点ほど、時間の関係もありますので簡単に言いますが、第二の点は、すでに四名の看守が起訴になつておりますが、この四名の看守の諸君は小菅の拘置所の方に入れるとするならば、これはもともと顔を知つておる連中ばかりであるだけに、この諸君はまた同じようなことを起す可能性は当然あるわけです。今度は立場をかえて、被告立場でやる、この可能性が出て来るわけです。そしてこういう容疑者について、一体今どこに収監をしておるのか、こういう点おわかりになつたならばお答えを願いたい。
  61. 中尾文策

    ○中尾政府委員 取調べの方法でございますが、これはいやしくも人権に関係があると思われるような収容者につきましては、十分取調べをしておると思います。なお今度逮捕されました看守をどこに入れておるかということでございますが、これはただいまのところは警視庁の留置場が代用監獄ということになつておりますので、東京拘置所に入れないでそこに入れております。
  62. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 たとえばその場合、それでは不正事件を知つておるという被告があつた場合、そういう者の申出のあつたときには、当然あなた方はその人を今まで調べていなくても、今後においてそういう事情を聴取する意味において調べるおつもりがあるかどうか、この点をはつきりお伺いをしておきたいと思います。この点については拘置所長にも一緒にお答えを願いたい。
  63. 中尾文策

    ○中尾政府委員 もちろんそういう点は看過できませんので取調べるつもりであります。
  64. 川上悍

    ○川上説明員 ただいまお話の点、私は前歴を申し上げるとあれですが、前には検事をやつておりまして、私は犯罪ということは大きらいでありまして、これは徹底的に検挙しなければならぬという考えを持つておるのであります。今度の事故の発生をお話すればわかると思いますが、これは昨年のメーデーの被告、その他練馬の印藤巡査殺し、その他の関係で約三百人ああいう種類の人が入つたのであります。そのために職員も非常に手不足になるし、また施設も非常に十分でないというような点と、それに意思の弱い職員とか、またはかつて被告などと前の刑務所で知合いであつたというような人がおどかされたり、あるいは意思が弱いから、言われるといやと言えないで、そういう事故を起しておつたのでありますが、結局その一番のがんとして出て来たのが例の死刑囚の逃走であります。私はあの事件はまことに申訳ないというので、この前の委員会で御説明申し上げたわけなんでありますが、何としても東京拘置所をほんとうに粛正し建て直さなければならぬという方針を立てまして、そこで先ほど局長から申し上げました技官を手始めに徹底的に調べ検察庁の方へ告発したのであります。贈賄したと思われる収容者も告発しております。その関係などでそういう事件を知つておるという者を調べたところが、順次事件が出て来たのであります。それでただいま局長から申しました技官のほかに看守六名が出て来た。現段階におきましてはその程度出ておりますが、将来の見通しとしては、金をもらつたりしたのはもうないのじやないかという見通しです。しかし少しでも端緒がありますれば、私の方でも調べて、検察庁と協力して検察庁にも徹底的に調べてもらうという決心でやつております。それでありますから、ただいま御質問のように、そういう事件を知つておる者があるとするならば進んで聞いて、もし事件があるならばそれを糾明したいと考えております。
  65. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今、進んで開いても明らかにしたい。それからもう一つは徹底的にこの際粛正したい、こういう拘置所長のお話ですが、しかしあなたは徹底的に調査をしたいというお話であるにもかかわらず、ほかの職務の兼務か何かの関係で拘置所にはおられないことが多い、こういう話をわれわれ聞いておるのであります。それで徹底的にやるとかなんとかいうお話ですが、一体それはどういうことでおやりになるのか、こういう点についてお伺いいたしたいと思うのであります。  それからもう一つは、たしかあなたは巣鴨の刑務所の所長と兼務じやなかつたかと思うのですが、そうじやありませんか。――違いますか。そうでないとするならば、けつこうでありますが、あなたあまりおられなくて、あなたの職務をほかの者がやつておる、こういう話を実は相当聞いておるのであります。ほかの者にやらしているならば、いかなる法的根拠に立つてやらしておるか、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。
  66. 川上悍

    ○川上説明員 私昨年四月から十二月二十五日まで巣鴨刑務所を兼務しておりましたわけでありますから、昨年中はほとんど巣鴨の方へ行つて、東京拘置所の方にはおれませんでしたので、総務部長、管理部長にそれぞれ所管事項について所長代理としてやつております。ところが十二月二十六日から小菅に行つておりますので、用事がありますれば外に出ますけれども、これは私の全責任においてやつております。
  67. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 拘置所内のいろいろな規則その他は、監獄法並びに監獄法に基く施行規則に基いて当然これは守られて行かなければならないと思うのでありますが、この点はあらためて聞くのもおかしいですけれども、当然そのことだろうと思いますが、この点はいかがでありますか。
  68. 川上悍

    ○川上説明員 その通りであります。
  69. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、監獄法並びに監獄法施行規則を、拘置所としては、あるいは刑務所としては当然守らなければならないにもかかわらず、守られておらない事実がたくさん出ておるじやありませんか。時間もありませんから具体的に申し上げますが、たとえば規則の八十九條、九十條には、拘置所はたとえば上衣、作業衣、敷布、机、たんつぼというようなものまで完備しなければならないにもかかわらず、これは必要があれば具体的に例をあげてもいいのでありますが、われわれの聞いておる限り、事実において敷布、おぜん、机、たんつぼなんか入つておりません。こういう点でも施行規則に違反している事実があがつている。  それから所長との面接というものは、監獄法施行規則に「典獄ハ毎週一回以上面接日ヲ定メ監獄ノ処置又ハ一身ノ事情二付キ申立ヲ為サンコトヲ請フ在監者二面接ス可シ」と明文化されております。にもかかわらず、あなた自身は毎週一ぺん収監者に対して面接日を定めて面接に当つたことはないじやありませんか。これも具体的な例をあげろというならばあげてもけつこうであります。ある相当有名な人が、あなたに会うことに対して要求をしてから四十日目に会つた。しかも四十日目に会つたというのは最近初めての事実だと言われておる。それ以外の諸君は、所長いわゆる典獄に対して面接を求めても許されない。面接を求めた場合には、その代人としてほとんど管理部長が当つているじやありませんか。こういう点についてあなたはどういうようにお考えになりますか。
  70. 中尾文策

    ○中尾政府委員 これは刑務所長よりむしろ私の方から答弁申し上げた方がいいと思います。  まず第一点の給養のシーツを入れるとかいうような問題でございます。この点は確かに今おつしやいますように全国的に施行規則通りに入つておりません。これは現実でございますが、何分予算が足りませんので――もつとも予算が足らないということで逃げるわけじやありませんが、特に衣料費につきましては非常に不足をいたしまして、やつと最近今年一ぱいの予算で着がえができるようになるというふうな状況でありまして、規則に書いてございますような品物を全部そろえて支給することはなかなか予算上できなかつたわけでありますが、しかしだんだん努力いたしまして、その方は充実いたしておるつもりであります。  それから面接の点でございますが、これは具体的にその刑務所長がどういうふうに扱つておりますか、典獄みずからいつも会うということはなかなか事実上困難でありまして、どうしても仕事の都合上やりくりがつかない場合には、代理者で事の性質によりては会つてもいいということがございますので、従つてあまり仕事が多いとか、あるいは事柄程度によつては、それぞれの管理者に会わしておるというような場合があるわけであります。
  71. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今の答弁はきわめて一般的な抽象的な答弁をされたのですが、私は具体的な問題について聞いておる。特に私がことさらここに例をあげておるのは、面接日をことさらこの規則の中に規定したことは、拘置所は外界からとざされておつて、自由というものは失われておる。従つてその中で不平が起つた場合には、直接の担当者である看守とかその上の看守長とか、その程度の直接接触しておる人たちから被告あるいは被疑者がいじめられたような場合に、こういうことを救済する意味においても、典獄に対して直接にそれを訴えるべき道を開いたものとして私は重要な規定であると思う。その意味においてこそこれは典獄はという明文が出ているのです。それからまたこのほかにたしか百五十九條であつたかと思いますが、拘置所内において処罰をする場合においては、拘置所内における処罰というものは外界からとざされているからきわめて重要な問題であるだけに、典獄自身が申し渡すごとになつている。明文上の規定はことさら典獄はということに書いているのであつて、そういう点でこれはきわめて重要な規定なんです。しかもこれはあなた自身が答弁するのは不十分なんです。どうしてかと言えば、現実の問題として私は質問しているのでありますが、東京拘置所の方に専任になつてからほとんどお会いになつていないはずなんです。所長はお会いになつているならば、最近一箇月に何回くらいお会いになつているか。お会いになつ被告は何人くらいあるかということを、これは面接目には帳簿に残つているはずでありますから、あとで具体的にお出し願いたいと思うのでありますが、きようおられるから、あなた自身御答弁願いたいと思います。
  72. 川上悍

    ○川上説明員 所長面会につきましては、去年はほとんどしませんでした。ことしになつては、大体今出ているのは三件か四件面会が来ております。これはもう来週に会うごとになつております。近ごろ会つたのは二人会つたのです。これは所長面会ですが、先ほど局長のお話もありました通り、これは今少いですけれども、ある闘争方針によつて所長面会、所長面会でこれが次々に出て来たならば、所長一人では面会し切れない。一週間かかつても面会し切れない。その時が大体三時間か四時間、所長がほとんど毎日つるし上げられているような状態で、これでは刑務行政というものは私はできないと考えております。でありますから、ある事柄の性質によつては、代理者にどういう事柄について面接をするのであるかということを聞かせて、あるいは教育課長で済むことは教育課長に会わせることもあります。それから管理部長が適当だと思うときは管理部長に代理として会わせることもありますし、また訴訟手続の問題などは、私が会うよりも、庶務課長が会つた方がよほど適当だというので、そういうふうな方法をとつておるわけであります。
  73. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間がありませんから、一括してお聞きをして参りますが、まず第一点は、今後においてもそういう所長に対する面会の要求があつた場合には、たとえばそれが手続の問題で、こちらの課長にまかした方がいいと思う場合でも、規定の精神からいうならば、当然あなた自身がやはり会つて、その問題はついてはこの課長がいいと思うから、だからこの人に会いなさいと言つて被唐人をまわすのがありまえなんであつて、あなた自身がほかにまわしてしまうということであつては、これは規定に反していると言わざるを得ない。しかもそういう申入れがあるならばできるだけ会いたいというお話でございますので、こういう点についてはぜひ会うようにひとつやつていただきたいと思います。  それから第二の点であります。これは松本三益氏の事件のときでありますが、こういう事実があがつている。監獄法の施行規則の第四條に、皆さん御承知のように、司法大臣に対する請願の権限が収監者に対しては与えられている。この国会に対する請願書の写しを松本三益氏に対して差入れをやつたところが、この差入れを許さないでさしとめておいて、今回保釈になつたときに初めて不許可の書類として一括して渡している。その書類も私は預かつてつております。第四條の国会の請願の問題については、これは憲法に明らかにされている国民の請願の権利からこれを受継いで施行規則に出ているのですが、その写しを受取らせないというようなことでは、これは明らかに不当な拘束をやつていると言わざるを得ません。  第三の点は、通信がきわめて制限をされている。しかも受渡しは場合によると十六日もかかつているというような例がある。証拠書類がここにあります。手紙が投函されてから十六日もかかつている。しかもこれは外国から出した手紙ではない。これは金子武治という被告人が東京の芝新橋の文工会館内の日本国民救援会に対して送つた手紙が十六日もかかつている。こういう事実が証拠として出ている。拘置所における文書の問題についての準則については規定が出ております。それはあなたも御承知だろうと思いますが、百三十六條であります。こういうような事実が一つ一つつているのに、あなた自身は厳正にこれをやつているというようなお話ですが、私は必ずしもそういうことを信ずることはできない。  それから第四の点は、拘置所における懲罰の言い渡しについては、規則の百五十九條で典獄自身が言い渡さなければならないことになつている。この点については典獄自身が申し渡さないで、ほかの人にやらしているというような例がたくさんあがつておりますが、これはどういうようにお考えになつておるか。この四点を一括してお伺いしたい。
  74. 川上悍

    ○川上説明員 ただいまの第一点の、所長の面接をできるだけやらせる、これは御趣旨に沿うてやりたいと思います。  第二点の、文書、通信の問題は、検閲にひつかかつて、なかなかむずかしい問題でありますが、大臣上願の問題は、これをさしとめるということは私どもの方はやつておりません。どんどん出してくれと言つております。国会に対する出願は、これは普通の文書ですから、文書差入れを許も規定がありますが、その規定にのつとつてつておるのであります。これは大臣の上願とは別の問題であります。  それから手紙が遅れるということは、私どももいろいろ苦情を聞いて、知つております。それで係の者を督促してできるだけ早くやるように、これは抗議権の行使に非常に関係を持ちますので、督促してやつておりますが、一日に相当数の書信が出ているわけであります。それで検閲するのに人数が足りないというような現状から、遅れるのは申訳ないと思いますが(今後できるだけ早くやるように督促してやりたいと考えます。  それから懲罰の言い渡しでありますが、施行規則を見ましても、典獄みずからなすべしと書いてあるのは一つだけであります。百六十七條に「刑期ノ終了二因リ釈放セラル可キ受刑者ハ釈放前三日以内独居拘禁二付シ典獄自ラ釈放後ノ心得二付キ論告ヲ為ス可シ」と書いてあつて典獄みずからなすのはこれだけであります。ほかの條文には典獄みずからやれとは書いてない、典獄の責任においてやればいいという見解をとつております。これは法律解釈上の問題で、どちらが正しいか、百六十七條にみずからなすべしと書いてある点と比較して、法律上の見解の問題であります。そういう見解で懲罰をやるからといつて、私が知らないということにはならないと思う。私が責任者ですから知つております。どのくらいの懲罰にするかということまで私はすべて関与してやつております。言い渡しを事実上は管理部長に代行せしめるということであります。
  75. 小林錡

    小林委員長 簡単に……。
  76. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この問題だけ言つておきます。
  77. 小林錡

    小林委員長 大分時間もたちましたし、会期もおしいまいだし……。
  78. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは重要ですからいろいろ私も聞きたいのでありますが、委員長から時間の制限も受けておるので、あなたの御答弁には不満足であります、というのは管理部長だけにやらしているのではなくて保安課長、場合によつては管区長までに話している実例がある。そればかりではありません、時間がありませんので次に言いますが、疑獄事件を隠蔽するためにあなた自身がさつきの規定通り文書の検閲をやつております。文書の検閲で疑獄事件に関連があるために、疑獄事件を拡大させないという意味も含んでおるのではないかと思うが、そういう疑獄事件に関連する部面については全部抹殺をしている、ごらん通りだ。しかもこれは推定できろ、さつき中尾局長の言つた技官というのは小川とここに書いてある、小川という技官の問題がここに詳細に出ている。しかも小川という技官の内容については重要なところは全部削つてある、しかも想像のできる点はサントリー・ウィスキーの角びん四合入り三本、ポートワイン一本、その他すし箱三箱というようなものがこれによると拘置所の中に入つたらしい、小川に渡し、そしてそのあとはまつ黒になつて消えている、こういう実例があがつている。そればかりではない、こういうのがあがつているじやありませんか。これも受取つておる。この手紙を見てごらんなさい、だれか疑獄事件関係のあるところは全部抹殺をして内部でごまかしているという事案が歴然とここに見えている。私はこの点については大体想定ができる、この問題の書面はたしか池上の四号という者であつたと思いますが、こう書いてある、抹殺されていない部分だせ言つてみましよう、これについてこれ以上書きますと検閲などでとめたりするおそれがありますゆえに十分に触れることができませんがといつてそのあとまつ黒になつている、これはもう疑獄事件関係のあることを拘置所内部でごまかしているということを明らかにして、いる、そればかりじやありません、文書の検閲において必要でない部面を明らかにこういうように抹殺している証拠がある、証拠は野方署の三番というこれは黙秘番号でありますが、この被告からこのような手紙が出されておる、これが消されている、消されているがその上から読めろ、何と書いてあるかというと、所長は面会を申入れてもなかなか会つてくれないと書いてある、消してあるけれども読める。所長に対して面会を申入れても会つてくれないということに対してまで文書の検閲をして抹殺をする、削除をするということならば明らかに所長の権限を越えている、被告が人権を蹂躪しているということを明らかに暴露しているじやないか、こういう事実もあがつているのに――しかも先ほどまで中尾さんは調べるだけは調べてと言つている、それは私も信じますが、こういう事実を調べたらどうですか。こういう事実を通じていろいろな疑獄事件があるのを外界に対してこれを伝えようとすると、こういう形でまつ黒に消されて出されておらない、しかも拘置所の内部というものはほかのだれにも知られておらないから、被告はこういう不正の摘発を出そうとしても、さつき言つたように所長は会つてくれない、会えと言えばそういう不正事件についてはいつでも会いますと言つているが、所長自身は知らないにしても、その所の所長のもとにおいて係の者が自分関係がある、所内に関係のあるものであるからまつ黒に消して、そしてごまかしているとしかわれわれには考えられない。こういう点についてどうであるか。  それから最後一つ、こういう事実を外界に通信したという理由だけをもつて拘置所の中で処罰を受けている者まである、こういう事実まであがつている。内部の不正事実をことさら隠蔽するために文書の制限などが行われているがために、自分たちの不正事件を隠蔽するために文書の制限までやつてこういうごまかしをやつているということは明らかとなつて、いるじやありませんか。こういう事実は徹底的に調べてもらわなければならないし、拘置所長は明らかに知つているはずだ、こういう事実を知つているならば明らかにしてもらいたいと思います。
  79. 中尾文策

    ○中尾政府委員 ただいまの二点のうち信書の問題でございますが、この点につきましては実は現在われわれも非常に問題を持つているわけであります。従来の建前から申しますると、その信書の内容というものは刑務所の管理上不適当である場合にはそれに対して適当に抹殺削除できる、そういう見解をとつて来ております。そういうことにつきまして非常に現場から疑問がありまして、現にここにおられます拘置所長もそういうふうなことについてどうも法律的な根拠ははつきりしないからもつとはつきりしてもらわなければ困るということをしばしば言われて来ております。私たちもその点につきまして非常に問題がありますので、この点につきましては目下検討中でございます。近々その結論を出しましてどつちかにはつきりいたしたいと思いますが、従いましてその結果としまして具体的判断の当、不当は別といたしまして、そういうようなべたべたに黒くなるような場合ができるわけでありますが、しかしこれは法務省当局、私たちの方ですつかり検討いたしまして、ただいま申し上げました結論を出すつもりでございますから御了承を願いたい。
  80. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そんな抽象的なことじやない。小川技官のことがはつきりして出ている、こういうものを外に読めないようにしている。小川技官という名前が書いてありますよ。その相手は吉野功という名前です。吉野功は一萬田さんの甥、自由党の参与だそうです。
  81. 中尾文策

    ○中尾政府委員 そういう問題も承知しておりまするので、これはそういうことについて考えるつもりであります。  なおそういう手紙を出したことによつて処罰したというお話でございますが、この点も……。
  82. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あります。これは池上四号。
  83. 田嶋好文

    ○田嶋委員 問題はその内容あと調べたか調べぬかの問題、これには岡田君の言うのはもつともであつて、あなたたち調べずに黙つてふたをしたか、今川上所長が言うようにみずから進んであげたかあげないか、こういうことなので………。
  84. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 調べるか調べないかの問題だ。それは調べたか調べないかということも確かに問題ですが、もう一つは疑獄事件関係する部分をことさらに抹殺している証拠歴然たるものかあるわけだ。しかもこういう事実を外へ知らせるべき方法が与えられておらない、拘置所長に対して面会を求めても面会してくれない。今までの実例として、そうすると結局外へこういうものを連絡しなければならないが、拘置所に関連あるものは抹殺して出すということになれば、不正事件はやみからやみへ葬られてしまうじやないか、こういう点を局長の方は、それは上の方にいるから、そういう事実もあるかもしれませんとのんびり構えているかもしれませんが、この事件を徹底的にお調べになると言つたならばこういうことについてもなぜ徹底的にお調べにならないか。調べない限りは不正事件の徹底的摘発というものはできないでしよう。こういう点にも関連しているからその点を言つている。田嶋君も了解してくれると思うが三……。
  85. 田嶋好文

    ○田嶋委員 ですから今言つている。
  86. 川上悍

    ○川上説明員 その信書り検閲の問題は、結局昭和二十六年九月十七日刑政長官通牒、この通牒によつてわれわれは処理しているのであります。その通牒の第三に、「信書の内容が施設の管理運営上発信を適当としないものについては、その長の意見により、被告人意思の如何にかかわらずその部分を抹消することができる。」この通牒によつてたちはやつている、それでただいまのように小川も――名前が出たからいいが、小川技官など何も隠蔽する意思は全然ない、あれば検察庁に告発しないです。むしろそれを告発したということは、私が何も隠蔽する意思のないことが証明できると思います。  それから第二点のそういう文書を出そうとしたことによつて、それに処罰をしたという事件はないのであります。池上四番、私もこれは知つておりますが、これはそうじやないのです。こつそり文書を手渡したのです。どこで手渡したかは知りません。公判廷で渡したのかあるいはどこで渡したか知りませんが、密書です。いわば正当な手続を経ないで人に渡した、その文書を救援会の方から松本被告の方へ送つて来た、それを池上四番が書いて松本に送つて来た。文書を検閲したところがそういつた相当強硬な文書でした。その文書が強硬であろうが内容が穏当であろうがそんなことはかまわない、密書を出したということについて処罰をやつたのであります。文書を正当なルートによつて出そうとしたことを処罰したことはありません。はつきり申し上げておきます。
  87. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ではこれで終りますが、問題は重要です。あなたはそういう意味で抹殺をしたというなら、この内容全部を抹殺しても、書き取つてあるか何か御存じですね。この点についてあとでまた必要があればわれわれは矯正局長の方で調査をしてもらわなければならないと思いますが、はたして検閲の場合には妥当な抹殺をしておるものかどうかという問題に関連して来るわけです。特にさつきも申し上げたように宇佐美静治という人には、われわれの判断できる証拠は、所長に対して面会を求めてもなかなか会つてくれないということで抹殺をしておる。これは証拠が残つておる。中尾さんにお見せしてもいいです。こういうことまで抹殺をしておるならば、疑獄事件内容等については当然抹殺することぐらいは、われわれの常識から考えても考らられる、しかも小川技官の内容については、これは疑獄事件内容である。こういう点について通信連絡の方法がいけなかつたのでこれについては処罰したというのであるが、たとえばこの点を一歩あなたの言う通りに認めたとしても、こういう疑獄事件について一々抹殺した場合において、その事実を抹殺して事件を隠蔽するというようなことがあつた場合に、この抹殺したものに対する責任は一体どうする。こういう点について明らかにしてもらわなければならない。これは行政上の問題として中尾さん、重要な問題ですよ。こういう点を明確にしておいてもらいたいと思う。先ほどたまたま小川という技官の名前が出たけれども、これの場合にも私は何の事件であるということは大体わかる。米俵の事件です。これについての手紙が米俵の関係の部分だけ全部抹殺してある。だからその前後の関係で全部判読ができる。米俵の事実についてもこういうことでごまかしをしている。こういう点についてはごまかしをいているという点を私は断じて黙過できない。この点を伺つておきます。  それから最後に、きようは大臣にぜひこれは伺つておきたいと思つたのですが、大臣がおりませんから三浦政務次官にお伺いします。このような不正事件が次々に起つて、しかも先ほど矯正局長の話によると、事件はまだ糸口に入つたにすぎないというようなことであつた。
  88. 小林錡

    小林委員長 岡田君、簡単に願います。あなたには要求以上です。
  89. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 まだ今後の事件としては相当大きなどろ沼のような事件なつて来る。そういう場合にこれはただ直接事件を起した看守その他ばかりではなくして、これの責任を負つている責任者に対してもこれに対しては責任をとつてもらわなければならないと私は思う。この点について法務省の当局としてはこういうものの責任者に対してどのような措置を講じられようとしておるのか、こういう点についても明らかにしておきたいと思います。委員長が時間の制限をしますからこれで終ります。
  90. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 関係方面において、特に検察庁において十分に取調べをしておる事件でありますから、その取調べによつて明らかになれば、その結果において当然官吏服務規律や何かの法律によつて適当にこの処置はできるだろうと思うのです。ただそういう単なる想像の段階においてはもちろんできないのです。問題が確実になつた場合においてはそれ相当の適当な処置ができるかと思います。
  91. 小林錡

    小林委員長 午後二時半より開会することとして、これにて休憩いたします。     午後一時三十七分休憩      ――――◇―――――     午後四時四分開議
  92. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告があります。これを許します。田嶋好文君。
  93. 田嶋好文

    ○田嶋委員 私は日本が独立いたしまして以来の外国人の日本への帰化についてお聞きをいたしたいと思つております。特にその帰化の中でも日本に多数の居住者を持ち、またいい面にも悪い面にもいろいろ問題になつております朝鮮人の帰化問題は、日本の国家の政策的な問題といたしましても、また日韓親善の増進による東洋の平和回復の問題にいたしましても、相当大きな響きを持つ問題ではないかと考えますとき、特に朝鮮人の帰化問題を重視してお聞きをいたしたいと思うのでありますが、その前にまず日本の独立後外国人の帰化問題はどのような状態になつておりましようか。たとえばこういうようにお答え願つてけつこうであります。白人の関係、黒人の関係、黒人といつてはおかしいですが、色の黒い方、それから今の世の中でいわゆる黄色人種と言つております人種的な関係、それがむずかしければ国別でもけつこうであります。この点をお尋ねいたします。
  94. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 外国人の帰化の状況について申し上げますが、昭和二十年においては一人もないのであります。昭和二十一年には、中国関係の者が二名申請がありまして、許可が二名になつております。二十二年には中国関係の籍のない者でありまして、申請が一人でこれが許可になつております。二十三年にはドイツ人でありまして、一名の申請で一名の許可になつております。二十四年もやはりドイツ人でありまして、一名の申請で一名許可になつております。二十五年には中国関係の者でありまして、四名の申請四四名の許可になつております。二十六年には中国関係が十四名、アメリカが大名、フイリツピンが一名、イタリアが一名、合計二十二名の申請で二十二名の許可になつております。二十七年には一月一日から四月二十七日までが八名の申請で八名の許可になつております。同じく二十七年の平和條約発効の日から十二月末までにちようど千六十五名の申請で許可になつたのが二百八十二名、不許可が二百十九名、調査中が五百六十四名になつております。本年の一月から六月までの申請が千二百三十五名、前の繰越分を入れて千七百九十九名で、うち許可になつたものが四百五十二名、不許可が二百七名、未済のもの、すなわち調査中のものが千百四十名になつております。
  95. 田嶋好文

    ○田嶋委員 この帰化というのはどういう方針によつて帰化を許され、また帰化を許さないというふうにしておられますか。
  96. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 大体におきまして五年以上日本に住所を有しておる者で二十歳以上の者、素行の善良な者、独立の生計または技能を有しておるところの生活能力のある者、日本の国籍を取得することによつて前の国籍を失う者、それから破壊活動をしない者というような條件のもとにやつておるようであります。
  97. 田嶋好文

    ○田嶋委員 そのうちで朝鮮人の帰化についてはどういう申請があつて、どういうような許可をし、またはどういうように不許可になつておりますか。数字で御説明願いたい。
  98. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 朝鮮関係は、昭和二十七年八月二十八日から同年十二月末日までに申請数が九百八十、許可が二百三十三、不許可が二百七、調査中か五百四十。二十八年一月一日から同年六月末までに申請数が千百九十一、許可が四百十七、不許可が百十八、現在調査中が千百十六となつております。
  99. 田嶋好文

    ○田嶋委員 そこで先ほど申し上げましたように、朝鮮人の帰化問題というのは、かつて朝鮮が日本の領土であつたというような関係から、日本にたくさん朝鮮人がおりまして、これがいいことにも悪いことにも問題になるということを考えますときに、相当これは他の国人の帰化よりも政策的にまた政治的に頭を使つてやらなければならぬ、こういうように私は考えております。この帰化がうまく行きますれば朝鮮人と日本人の親善関係、東洋の平和ということにも非常ないい影響を及ぼしますし、この取扱いがまずいことになりますと日韓の感情の悪化によるところの東洋の平和への障害になるというような問題も起るわけでございまして、今日朝鮮人を中心として騒擾事件等が起きますときに、私たちは非常にこれを関心事といたしておるわけでございますが、この取扱いはいかような御方針によつてお取扱いなさつておるのでしようか。
  100. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 朝鮮人の問題についてはただいま田嶋さんのおつしやる通りでありますが、今までは日本人であつた者がこの敗戦後においては外国人になつて、それを今度は長年日本人としておつた関係もあり、帰化を許すというようなことも必要になると思うのでありますが、しかしこの問題につきましてはさらに慎重な態度をもつて臨まなければならないことは当然であります。いわゆる朝鮮人対策といたしましても、あるいは出入国あるいは外交、治安、文化、厚生の面における施策とも密接な関係があるのでありまして、関係各省とも十分に連絡をとつて日本人としての受入れに対しましても、十分に慎重に考えて適切な処置を講じなければならないと思つております。
  101. 田嶋好文

    ○田嶋委員 これは重大な問題でございますので、ぜひとも慎重におやりを願いたいと思うのでございますが、特に今発表された数字を見ますと、相当未処理の件数が多いようでございますが、これはどうしてはかばかしく行かないのでございましようか。帰化等の問題に対しましては、私は相当迅速に的確に物事を処理して行かなければならぬと思いますが、このできない欠陥を率直にひとつお答えを願いたい。
  102. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 この帰化あるいはその他の国籍に関する国家の事務を御承知通り昭和二十三年の一月、内務省が解体と同時に、当時の司法省に引継いだのでありますが、当時そういう事務がほとんどなかつた状態でありまして、事務引継ぎにおきましても、定員とか予算の引継ぎはなかつたのであります。その後現在まで法務当局を通じこの定員は一名も増加なく、予算においてもわずかに昨年度以来法務省の旅費百八万円が計上されたのみでありまして、従つて前述のようなたくさんの申請が出ましてもその調査処理等におきましても非常な手不足であり、あるいは事務が渋滞いたしたのであります。そのためにいろいろ調査等も遅れておるのでありまして、迅速にこれらの事務を処理しまた調査等においても非常な手数がかかりまするから、そういうような点におきましても現在の予算ではもちろん十分でないことは申し上げるまでもないのであります。ただ財政の現状からいろいろ支障があるのでありますが、事務担当者としては認められた予算の範囲内でやむを得ず処理しておるというような状況であります。しかしながら、ただいまの御意見通り、一時も早くこれらの問題を処理しなければなりませんし、また件数も非常に多いのと、これらの素行であるとか生計状況であるとか、あるいは居住の状況等、あらゆる角度から慎重に調査するということになりますれば、相当の予算を必要とすることは申し上げるまでもないのでありまして、今後の問題におきましても予算の折衝等におきまして、関係の省と極力交渉いたしましてできるだけ予算措置を講じて、これらの対策をすみやかにするように努力いたしたいと思うのであります。
  103. 田嶋好文

    ○田嶋委員 予算の問題が非常に支障を来しておるということでございますが、一体今どのくらいの予算でこの仕事をしておるのでございますか。
  104. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 そういうような問題につきましては、現在の予算としては一文もないようであります。ただ法務局の旅費として百八万円が計上されておるのでありまして、これによつて事務を処理しておるという状況であります。
  105. 田嶋好文

    ○田嶋委員 予算が一文もないといいますと、この担当官もないということになり、担当官もないということになりますと片手間の仕事ということになつてしまうのでありますが、これは一体どういうことになつていますか。
  106. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 今の事務処理については、他の課の者あるいは他の事務をとつておる者をさいて、便宜この仕事をやらしておるのであつて、独立してこれらの仕事をやつておる職員というものはないそうであります。
  107. 田嶋好文

    ○田嶋委員 それではとてもこの重大な仕事ができるわけがないのであります。朝鮮人の帰化というのは、先ほど申し上げましたように非常に重大な問題だと思うのです。ぜひひとつこれは専任官が置けるくらいの予算をおとりくださいまして、内部の予算も十分おとりくださいまして、この仕事が迅速に運ぶように、特にきようは大臣からその言質を得たいと思つたのですが、お見えでないので政務次官に強くこれを要望いたしておきます。もちろん委員長におかれましても、これは重大なことでありますので、委員会もその点そうした面の予算を十分とられるように、努力してほしいと思うのであります。
  108. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 ただいまの質問の御趣旨はまことにごもつともでありまして、これからできるだけそういう方面に努力したいと思つております。
  109. 木下郁

    ○木下委員 朝鮮人の問題が今問題になつているようでありますが、私は直接朝鮮人から相談を受けている事件があつて、事情が非常に気の毒であります。これは戦争中に大阪におつて、大阪で二人の子供ができた。上が十二才、下が十一才であります。それで戦争のひどい間に朝鮮の方へ帰して、親はこつちにおつた。それで終戦後にその子供をこつちへ連れて来て、それは不法入国ということで帰らなければならぬ子供である。ところがそこはいろいろなとりはからいがあつたらしいのでありまして、不法に入国した者であるけれども、親のところにおつてもいいということで、この八月の半ばごろまでの期限になつておるのです。それが親子であるということも、顔も似ているらしいのですが、近所隣りの人も知つている者がたくさんある。そういうのを親子一緒にする。これがうそを言うて、若い者をごつちへ呼び寄せるとかなんとかいうのとは一切事情は違うというふうに私は考えておる。そういうのをもう少しほんとうに実情に沿うように救済する方法ができておりますか、そういう方は一向不案内なんですが、ちよつと承りたいと思います。
  110. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 ただいまのような問題は、出入国管理令の問題になつております。もちろん本省の問題でございますが、法務省として十分に入国管理局でそれを調査して、送り返すのが妥当であるか、こちらに置いた方が妥当であるかということを調査の上で、こちらに置いた方がよろしいという場合には置いてもよろしいのですが、そういう場合には十分調査するように申請すればよろしいと思います。
  111. 木下郁

    ○木下委員 今のは金姓玉の子供の金姓植男、日本人的な名前をつけてある。いずれ私も当該官庁に行つて頼むつもりでありますが、なるべく親切に、実情に沿うようにひとつ十分気を配つていただきたいと思います。ただ朝鮮人が終戦後偏狭だとかなんとかいうことで、朝鮮人の世話をすること自身を、ものごとを単純に割切る人たちの中ではすぐ問題にするようですが、そういう態度はとらない方がいいと思つておるわけであります。そういう点について十分御配慮をいただきたいと思います。
  112. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 ただいまの問題は、書類が出ましてから、十分慎重に調査するようにいたします。
  113. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 ただいまの問題に関連して当局に一つ要望しておきたいので執ります。最近その問題について出入国管理局の措置に対していろいろ世間の批判を聞いております。一体出入国管理局でさような問題をこれまでどういうふうに措置されて来たか、扱いの件数及び在留を認めたものあるいは拒否したもの等に関する統計的な資料を提出していただいて、それに対する責任者の説明をこの国会において聞きたいと考えますから、委員長においてしかるべくおとりはからいをお願いいたします。
  114. 小林錡

    小林委員長 局長に来てもらいましようか。  それから私からも要望したいんですが、先ほど田嶋委員からお話があつた帰化の問題ですが、今までの日本の愛国心というのが非常に偏狭な愛国心であつて、外国人の帰化をさせることを非常に偏狭に処しておつたのではないかという節が非常にあるのでありますが、さように非常に日本を愛して日本人なつて行こうというようなものは、相当調べた結果、よければどんどん帰化さしていいと思う。田嶋君の言われたように、相当な予算をとつて、あまり偏狭な立場をとらぬで、国際的に大いに発展するような何か手続をとられるようにお願いいたしたいと思います。
  115. 田嶋好文

    ○田嶋委員 ついでに私法務行政についてお尋ねをいたしたいのですが、実は今の帰化の問題でもやはり予算がなくて担当官も置けないというようなことが言われたのであります。そのために重大な問題が非常に支障を来しておるわけでありまして、これから推察いたしまして、私は地方法務局の実情を少上聞いてみたいと思うのでございます。  地方法務局で取扱つている仕事は何と何か、これは私知つているのでございますが、特に関係当局からお聞き願つた形の方がいいと思まいすから、まずお聞きいたします。
  116. 新谷正夫

    ○新谷説明員 私からお答えいたします。地方法務局におきましては、御承知通り、登記所を主体といたしまして直接民衆に非常に利害関係の多い仕事をやつているわけであります。事務の内容を申し上げますと、登記を初めといたしまして、市町村で取扱つております戸籍事務の監督、それから供託の事務、土地台帳、家屋台帳に関する事務、国籍に関する事務、人権擁護に関する事務、訟務に関する事務、このような事務を取扱つております。
  117. 田嶋好文

    ○田嶋委員 そうすると地方法務局というものはたいへん権限が拡大されて、仕事も非常にふえたように私考えますが、ふえた割合に人の関係はあまりふえてないのじやないか。またこれは特に調査したのでございますが、地方法務局の中で、ところによつてはまだ電話すら引いてない、電話を申し込んでも、電話を引いてくれぬというような役所がたくさんあるように聞いておりますが、一体そういうような役所があるのでしようか。
  118. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 ただいま質問の問題は、われわれ国民と最も関係の深い登記事務を取扱う登記所でありますが、現在登記所の数は千七百九十箇所ありますが、その中で電話を架設されておりますところは約八百箇所でありまして、全体の約四割五分に相当するのであります。他はいまだ電話もないという状況であります。
  119. 田嶋好文

    ○田嶋委員 いわゆる登記所に、電話のない登記所が五割以上もあるということになると、これはたいへんな役所が世の中にあるわけなんですが、登記所というのは電話は必要でないのですか。それとも電話は必要だが、まつたく冷遇されている、予算がこの方面にまわらないで、仕事ができない、こういうような形なのか、これはどういうことになつておりますか。
  120. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 御承知通り登記所は不動産の登記、商業登記等の事務のほかに、土地・台帳及び家屋台帳に関する事務を取扱つており、一般国民にとりましてはもちろん、固定資産との関係上市町村ともきわめて密接な関係にあることは申し上げるまでもないのであります。従いまして、外部からの各種の連絡はもとより、登記所の事務の処理上におきましても、電話は直接欠くべからざるものでありまして、全部の登記所に電話を架設しなければならないのでありますが、ただ現在の予算上非常に支障を来しておるのでありまして、法務省におきましてもその計画のもとに極力準備を進めているような状況であります。本年の予算で大蔵省に要求いたしました当時の状況を申し上げますと、先ほど申し上げまするように登記所の数が千七百九十で、右のうち電話のあるところは六百二十六となつておりますから、その残りの一千百六十四箇所の登記所については速急に電話を架設する必要があるのでありますが、財政の問題もありますので、その半数、すなわち五百八十二箇所についてとりあえず予算要求いたしまして、残りの半分については次年度に架設する計画を立てたのであります。しかし大蔵省における査定の結果三年計画で実施することになりまして、今年度においては三百八十八箇所分の予算百六十六万八千円が一応認められた次第であります。しかるにこの予算削減によりまして、現在計上されている予算案の額は百二十二万円になりまして、約二百五十箇所分のみが架設される見込みとなつております。
  121. 田嶋好文

    ○田嶋委員 登記所というのは裁判所の出張所というような形で前からあつたわけですが、前から電話がなかつたのですか、新設の電話が引けなくなつたのですか、この関係はどうでしよ
  122. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 登記所には前から電話がなかつたのであります。
  123. 田嶋好文

    ○田嶋委員 それは今聞くのが初めてですが、登記所には前から電話がなかつたということになると、冷遇されていることになるので、相当私たちは考えらくちやならぬ問題だと思います。奥は役所ばかりをきれいにせよ、役所をりつぱに建てろということに対しては、これは私たちも考えなくちやならぬ点があるのですが、聞くところによると、役所の仕事をするのに、屋根裏まれはバラックの中で仕事をして、書類の保管すら完全にできないというような役所があるように聞くのです。私たちは家をきれいにせよ、堂々たる建物を建てよということを言うのじやないが、大事な書類を保管し、国民の権利義務に重大な影響を及ぼす登記の事務をとるところですから、少くともそうしたものの紛失のおそれがない、そしてそれを丁重にやる、同時に大衆を相手にするのですから親切にやる、むしろこうした面は非常に考えてもらわなくちやならぬと思うが、電話一本もない、しかもバラックの建物の中で仕事をしているということになると、その仕事をする人自体の気持にもとかくすさみを起しまして、親切味を失い、責任感を失い、また責任感から生れるところの貴重な機利義務を取扱う仕事にも精神的な弛緩を来して、あまりいい結果が生れないじやないか、こういうことが考えられると私は思うのです。この点に対して、中央の役所をきれいにし、中央の役所に費用をとることも大切でしようけれども、私はその手足の末端機構の整備ということ、今申したような意味で地方の役所により大くの権威を持たし、役所としての自覚を持たすために、中央以上に考えてもらわなければならぬ、こう私は考えるのです。とかく役所に対する非難というものは、大臣に対する非難とか、政務次官に対する非難とか、次官に対する非難とかいうものは少く、要するに末端の役人の非難が上の人の非難になつて生れておるわけでありますかり、末端の仕事も非常に私は大切だと思います。ところがどうもやり方を見ますと、末端はどうでもいい、上の方たけ整備をするというきらいがある。符に私は重ねて申し上げますが、登記所の仕事は大衆を相手にする仕事でございます。私は大衆を相手にする仕事か国の政治の上において一番大切ではないかと思う。民主主義になつて国の政治が多くなると、私たちはやはり大衆を相手の仕事が大切だと思います。そして国会もその意見を尊重してやらなければいかぬと思つておりますときに、その方面に対して役所の幹部が頭を使つていないということは非常に遺憾でございますが、これをどういうふうに処理して行くつもりでありますか。
  124. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 登記所の建物が非常に除外されているという傾向があつたことは事実だと思います。しかし性質から申しまするならば、ただいま御意見通り国民の権利義務に重大な影響を及ぼす、また万が一これらの登記関係の書類が災難にあうようなことがあるならば、その及ぼす影響は取返しがつかないことになることもこれまた申し上げるまでもないことであります。その意味におきまして、もつと親切に、またその書類の保管等におきましても絶対安全な方法で保管をし、同時にまたこの取扱い等においても、直接国民と接触するのでありますから、親切丁寧にいたしまして信頼を受けるような事務の取扱いをしなければならないというようなことも当然であります。しかるにただいまの御意見通り非常に除外されたような面もあり、バラックで雨漏りがあつたり、あるいは執務に支障を来すような登記所もあるように考えられる、こういうことは非常に遺憾な点でありまして、そういうような建物の修理あるいは事務の取扱いあるいは人員等につきましても十分に注意いたしまして、この問題の解決のためにできるだけ努力して、御心配の点を一日も早く解消するようにいたしたいと考えております。
  125. 田嶋好文

    ○田嶋委員 これは結局、私は政務次官でなくやはり大臣から承つておきたいことであるのですが、予算をとる場合に、大蔵省に対してほんとうに末端機構の実情というようなものを訴えていないのじやないでしようか。そうだとすると、本委員会に大蔵省の役人を呼んでこの実情を訴えてみなければならぬぐらいの気持がするのですが、一体それはどうなつているのですか。大蔵省には実情を話しているのでしようか、話していないでこういうことになつているのでしようか。
  126. 新谷正夫

    ○新谷説明員 私どもといたしましても、もちろんただいま仰せの通り、各登記所の実情もできるだけつぶさに調査もいたしておると同時に、大蔵省の営繕関係の担当官におきましても各出先機関の実情を調査に参ります。その機会にもできるだけ私の方から同時に派遣いたしまして、登記所の実情を詳細に説明いたしますし、また本省におきます予算折衝の際にも、私どもも直接大蔵省に個々の経費についての実情を詳細に述べて、資料を提出いたしまして、現在の登記所の窮状の打開のために努力いたしておる状態であります。
  127. 田嶋好文

    ○田嶋委員 私はこれで終りますが、今後の政務次官の御善処をお願いいたします。
  128. 小林錡

    小林委員長 私からも登記所のことで御希望を申し上げたいと思いますが、私のいなかの方に登記所があつて、雨が降るとかさをさしてやらなければ書面も開けない。それから図面など広げる机もないということで、この間お頼みはしたのですけれども、しかし登記所なんというものは、大体地方のものに寄付をさしてつくつておるようですが、貧乏なところになると、とてもこんなことはできない。従つて今田嶋さんの言われたように重要な不動産の得喪などはことごとく登記によるほかないのですから、相当重要なものであるにかかわらず、軽視されて非常に困つておる。雨が漏つてかさをささなければ仕事ができぬというようなところが相当にあるようです。金のある寄付のできるようなところはしかたがありませんけれども、これはやはり国家の設備ですからできるだけのことはしなければならぬ。(「大蔵省を呼ぼうじやないか」と呼ぶ者あり)必要があれば大蔵省を呼んで、委員会としても激励した方がいいと思うのですが、政務次官もお力添えを願いたいと思います。
  129. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連して政務次官に希望を申し上げたいと思いますが、今までも考えておつたのでありますけれども法務省の予算を組むときに当委員会み内示なり相談なりができないものであろうか。実はほかの党は知りませんが、私どもの党から出ておる予算委員なんというものは、大部分は司法行政なんというものには全然興味もなければ、知識もない八が多いのですそれで今いろいろ各委員から意見があつたが、地方法務局なんていろいろなことをやつているけれども、――たとえば人権擁護なんていつたつて、ぼくらの同僚がみんな擁護委員をやつてお乙わけだが、まつたく何の予算もなくて、何もできやせぬ。あんなことではしようないと思うのだが、法務省でも何か予算をとることを考えないといかぬのじやないか。それにはやはり委員会とある程度相談をして――あの住民登録法の時分は、ぼくらが大蔵省ヘ乗り込んで、まつたく強引にとつた予算なんですが、法務省ではてんでだめなんです。それだから、多少委員会に相談をして、――これはお互いの相談程度でもいいかしらんと思いますが、そうして予算をおとりになるようになさつた方かいいんじやないかと思うのです。これはあなたの胸に入れておいて、大臣とも相談してください。法務省の予算かどうなつて出るか、われわれはつんぼさじきなんで、予算費目を一つ一つつて研究すれば出て来るかもしれぬか、まだ法務省から予算関係について説明を聞いたことは一ぺんもないわけである。だからそれについては当法務委員会予算関係について密接な関係を保てるように、あなたの次官のときからそういうふうに進めてください。
  130. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 ただいまの御趣旨は、非常にごもつとものことかと存じます。なるべく御趣旨に沿うように善処いたします。     ―――――――――――――
  131. 小林錡

    小林委員長 接収不動産に関する借地借家人臨時処理法案を議題といたします。提出者よりその趣旨説明を聴取いたします。花村四郎君。
  132. 花村四郎

    ○花村委員 ただいま議題となりました接収不動産に関する借地借家臨時処理法案について提案理由の御説明を申し上げます。  御承知のように終戦直後旧連合国占領軍の進駐をみるや、ただちに不動産の接収を開始したのであります。この不動産接収は戦後の非常処置であつたのにかかわらず、日本国政府は土地工作物使用令のほかは特別の法律を設けませんでした。これがため民法における賃貸借の規定や、借地借家法等では、接収解除後の不動産に関する権利者間の紛争は処理し得られないのであります。すでに平和條約発効後駐留軍に対する不動産の提供につきましては、行政協定に基く土地使用等の法律による不動産の提供が根拠法となつておるわけであります。従いまして戦災地との対比からも接収地に対する権利の調整のため、何らかの臨時特例法による解決が必要であるというのが内容からみた本案の提出理由であります。  考えまするに占領軍の接収の跡始末は、政府みずからなすべきものであります。しかるに特別調達庁、法務省、大蔵省、東京都庁等の間に議が合わず、特別調達庁の立案いたしました連合国軍使用不動産に存した賃借権等保護法案も、次官会議におきまして成案を得なかつた由を聞きましたので、接収不動産関係者の損害を見るに忍びず、やむを得ず衆議院法務委員会において立案に着手するに至つたものであります。爾来本法案は第十三国会、第十四国会、第十五国会において継続審議となり今日に及んだものでありますが、接収不動産の問題の解決方法としては、国家補償、賃貸借期間の進行停止等が考えられますが、いずれも政府裁判所等により早急に実現される可能性が少いのでありまして、解決方法としましては、戦後最も国民に親しまれている罹災地に関する法律に準じて行うことであります。よつて接収不動産の処理を原則的に罹災都市借地借家臨時処理法の規定により解決する方法をとることにいたしました。しかしながら接収地域と罹災地域とは戦争を原因とする被害では同様ではありますが、終戦直後の住宅事情と、接収解除後の建物事情とでは相当の差異がありますので、罹災都市借家臨時処理法のおもな規定を接収地域に準用するにとどめました。  次にこの法案の内容について申し上げますと、第一に、接収当時借地をしていたものは、解除後敷地の優先借受けができるごと、接収当時借家していたものは、解除後建物の優先借受けができることになつております。  第二に接収当時の土地や建物の所有者は、解除後自己使用する場合や、すでに権原により自己または第三者が使用している場合には、接収当時の賃借人の優先借受けを拒否することができます。  第三に、その他の規定の多くは、互いに利害の相反する賃借人と所有者との権利を調整した規定であります。すなわち賃借人の承諾の擬制や、優先借受権の存続期間や、土地使用の義務や催告による賃借権の消滅などは、いれもその両者調節の規定であります。  第四に、接収とは何ぞやの問題がありますのでその定義を掲げ、かつ、この法律の目的を條文の冒頭に掲げました。  最後に、強制疎開地にして後に接収せられた地域について申し上げます。この点は意見のわかれるところでありまして、まずこの地域にある不動産については建物の賃借人にその敷地の優先借受権を与え、ひいて疎開地外の純粋接収地にもこの敷地の優先借受権を与えております。これに対し、その敷地の所有権の新取得者がかりに善意の第三者である場合には、国家補償を伴わないと憲法違反のおそれがあるとの意見がありました。また強制疎開地において賃借権は補償を受けて消滅しているとの意見もありました。これらの点は結局公共の福祉の解釈に関する問題になりますので、この趣旨を本案の内容に取り入れてあります。  以上提案理由の御説明を申し上げました。何とぞ慎重御審議の上御可決あらんことをお願い申し上げます。
  133. 小林錡

    小林委員長 これにて提案の趣旨説明終りました。質疑は本日は留保しておきます。
  134. 田嶋好文

    ○田嶋委員 委員長、きようはこの辺で一応打切つて、今の鹿地事件の問題もありますから、ひとつ懇談会をお開き願いたいと思います。
  135. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめ、明日午前十時半から会議を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十四分散会