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1953-07-30 第16回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 佐瀬 昌三君 理事 田嶋 好文君    理事 吉田  安君 理事 古屋 貞雄君    理事 花村 四郎君       押谷 富三君    林  信雄君       高橋 禎一君    中村三之丞君       猪俣 浩三君    木下  郁君       佐竹 晴記君    木村 武雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         法務事務官         (保護局長)  斎藤 三郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月二十九日  委員押谷富三辞任につき、その補欠として麻  生太賀吉君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員麻生太賀吉辞任につき、その補欠として  押谷富三君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑法等の一部を改正する法律案内閣提出第九  〇号)  判事補職権特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇九号)(参議院  送付)  人権擁護に関する件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。――御質疑がございませんければ、これにて、本案に対する質疑は終結いたします。  お諮りいたします。本案に対する討論はこれを省略し、ただちに採決を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、討論はこれを省略し、ただちに採決いたします。判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  4. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて本案は、原案通り可決されました。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 次に、刑法等の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれをもつて終結いたします。  この際本案に対する修正案が提出されておりますので、趣旨説明を求めます。佐瀬昌三君。
  6. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたしたいと存じます。  その内容は、  刑法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  第一条中第二十五条ノ二第一項前段の改正規定を削る。  附則中第二項を削り、第三項を第二項とする。以上であります。  簡単に、その修正理由説明をいたしたいと思います。現在、犯罪者予防更生法による保護観察制度については、幾多の欠陥が認められるので、この現状のもとに執行猶予者保護観察を新たに改正案のごとく広汎に実施することは適当なことと思われないので、今回は、再度の執行猶予の場合にだけ、保護観察を付することとし、初度目の執行猶予保護観察を付することは、今後保護観察機構整備充実された時期において実施することが適当な措置であり、ことに執行猶予者は、少年あるいは仮出獄者とはその取扱い上区別するのが、この制度本来の目的達成のために必要であると考えますので、政府はこれらの諸点を考慮し、すみやかに執行猶予者保護観察に関する独立の法律国会に提出し、これが有効適切な実施をはかることが妥当であると考えるのであります。初度目の執行猶予者保護観察に付することは、その趣旨においてはけつこうなことであると考えますが、今回は、この改正を一応以上の理由のもとに削除するのがよいと思われ、いずれ保護観察機構整備充実を見た上、この点を新たに附加することが、よりよいと考えるのであります。  以上が本修正案を提出いたしました理由であります。何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。
  7. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。本修正案について御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ修正案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。  お諮りいたします。この際原案並びに修正案はこれを討論に付すべきでございますが、討論はこれを省略し、ただちに採決いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。討論はこれを省略し、ただちに採決を行います。まず本案に対する修正案につき採決いたします。本修正案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  9. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて修正案は可決されました。  次にただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  10. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて修正部分を除く原案は可決されました。従いまして刑法等の一部を改正する法律案は修正議決されました。  この際本案に対する附帯決議案が提出されておりますので、その趣旨説明を聴取いたします。猪俣浩三君。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 本案には附帯決議案を付したいと存じます。その案文を先に申し上げまして、次に理由説明いたします。    附帯決議   政府は、保護観察制度の完璧を期するため、予算その他これに必要な諸般の措置を講ずるとともに、初度目の執行猶予についても、保護観察に付することができる等適切な法案を準備し、速やかに、国会提案すべきである。   右決議する。 趣旨は、簡単に申し上げますが、短期自由刑の功罪につきましては、実際、官においても学者におきましても、多大の疑問を持つのみならず、執行猶予制度相当の成績をあげることは世界的の大勢であります。しかしながら何らの裏づけのない執行猶予制度というものは、これはある程度国家の怠慢というてもしかるべき事情が発生いたすのでありまして、いたずらなる放漫的態度は、かえつて法の威信を害するのみならず、犯人更生をはかる意味においても適当な措置でないのでありまするので、これまたいわゆる執行猶予に何らかの裏づけをするということは、世界的な学者の学説であるのみならず、大勢でもあります。そこで執行猶予制度を拡大するとともに、保護観察制度を樹立する、これはわが国におきましてもすでにあることでありまするけれども、成人に対しまする保護観察制度なるものは、画期的なる制度でありまするがゆえに、これは万遺漏なきよう、政府におかれましても十二分にこの制度の研究をなされ、すみやかに保護観察制度の完璧なる立法をなされまして、それとともにまた初度目の執行猶予者についても考慮する、かようなことが適当ではないかと存じまして、この附帯決議の案を提案した次第であります。皆さんの御賛成をいただきたいと存じます。
  12. 小林錡

    小林委員長 本附帯決議案について御発言はありませんか。――別に御発言がなければお諮りいたします。ただいま提案通り附帯決議を付するに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  13. 小林錡

    小林委員長 起立総員、よつてただいま提案通り附帯決議を付するに決しました。  お諮りいたします。ただいま議決されました二法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めさようとりはからいます。     〔委員長退席佐瀬委員長代理着席〕     ―――――――――――――
  15. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長代理 これより人権擁護に関する件及び法務行政に関する件について調査を行います。本件について発言の通告がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  16. 岡田春夫

    岡田(春)委員 前の委員会法務大臣調査をお願いいたした件でありますが、労農党北海道中央本部書記長である札幌市会議員山田長吉君が、先般検事公訴の取下げによつて公訴の棄却が行われたのでありますが、この点については、去年の四月七日に山田長吉君に対して白鳥事件に関連する脅迫容疑があるとして逮捕状が出されまして、その後三十数日間にわたつて不当にも勾留が続けられ起訴が行われて、その後公判に付されたのでございます。ところが突如先日起訴の行われたこの事件に対して検事側公訴の取下げを行つたというような、最近あまり類例を見ない例が出ているのでございますが、われわれから見た限りにおいては、当初から今度のこの事件については犯罪容疑が全然ないということでわれわれは主張いたして参りましたし、本人自身もその事実のないことを主張いたしておつたのであります。しかも先ほど申しました通り本人札幌市会議員であるがために、名誉の毀損をされましたごときわめて重大であるだけに、今度の公訴の取下げについては重大な問題として大臣の御調査の結果を御報告願いたいと思うのであります。あとの点につきましては御報告がありましてから、それに関連してお伺いいたしたいと思います。
  17. 犬養健

    犬養国務大臣 岡田委員にお答え申し上げます。ただいまの点は、結論から申し上げます。これは検察庁の非常な失態でありました。このような失態を出したことに対しては、国民の名において深くおわびをしなければならないと思います。一通り経過を申し上げたいと思います。  山田長吉氏を起訴するに至つた経緯は、昭和二十六年十二月二十七日、札幌市役所において発生した氏名不詳者十名にかかわる建造物侵入退去事件について、被疑者を検挙した札幌市の警察本部警備課長白鳥一雄処置を不当だとして、同じ年の十二月下旬ごろから翌年すなわち昭和二十七年の正月の中旬ごろまでの間、白島課長に対して郵便はがきで百通を越える脅迫状が来たわけであります。その件について二十七年の四月七日に札幌市の警察本部において山田長吉氏ほか三名を脅迫罪被疑者として逮捕した。右山田長吉氏に対しては筆跡鑑定しました結果、犯罪の嫌疑が十分であると認めまして、同月二十八日札幌地方裁判所公訴を提起した、これが経過でございます。なおつけ加えて申しますならば御承知のように山田長吉氏は五月一日保釈を許可されておるのであります。  次に公訴を取消すに至つた経緯を申し上げたいと思うのであります。公訴提起当時の鑑定によれば、脅迫はがき筆跡被告人山田長吉氏の筆跡同一性が認められ、さらに当時の捜査段階において判明した状況証拠を総合して山田氏を犯人として推定するに足る相当理由があつたと当局で思い込んだわけでございますが、その後の捜査によつて、他に真犯人と認められる者が発見されましたので、本年の七月九日公訴取消し手続とつたわけであります。こういうわけで、手取り早く言えば、近来たいへん珍しい失態だと思います。私の在任中にかかる失態が生じたということに対して責任感じておりまして、ここにおります人権擁護局長からも徹底的に調べるよう命じてございます。なお札幌において相当地位を持つておる方でございます。この方に対してお気の毒さんというようなことでは私は済まないと思います。これに対しては刑事補償法賠償をいたしたいと思つております。また国家賠償法によつてどなたか私をお訴えくださいまして、私が訴えは正しいと申し上げて、国家として弁償する方法も開けてございます。いかようにも御処置を願いたいと思います。私今後こういうことがあつてはならないと思つて、爾来いろいろ考えておるのでありますが、捜査に当つて極力先入主を持たないでやる、それから筆跡鑑定にいたしましても、できるだけ予算をとつて科学捜査機械を取入れる。それをやつておるとこういう間違いが起らないと思います。しかし機械がいくら上等でも先入主がある心の持主では機械を生かして使うことができません。私は札幌管内のみならず全国にあらためてこの実態を通知して、かかることを繰返さざるよう厳重に全国検察庁に戒告したいと思うのであります。さよう御承知願います。
  18. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ただいま大臣からかような例はきわめて珍しいというお話があつたのでございますが、私もさように考えます。かような例は最近の問題としてあまり私も聞いておらない例であろうと考えますだけに、かような問題によつて無実の人々に対して人権蹂躙をするような結果になるだけに、こういう点については厳に大臣から地方各機関に対しても訓令を出していただくことを強く要望いたす次第であります。  それから今度の公訴を取下げるに至りましたこの事件については、たしか私は報告事件でなかつたかと思うのであります。と申しますことは、当時私北海道におりまして、この事件の起りました当時、再三検事正にも会いました。そのときこの事件は重大であるだけに、簡単に自分の一存では行かないという意味のことを再三言つているのであります。そうなると、単にこの事件については担当検事責任だけではなくて、検事一体の原則から言つても、また報告事件の性格から言つても、検事総長責任としても、これまた問題であろうと思うのでありますが、その点まず報告事件であつたのかどうか。そしてまた担当検事はだれであつたか、こういう点についてもお伺いをしておきたいと思います。
  19. 犬養健

    犬養国務大臣 相当大きな失態でございますから、あくまでも全部にわたつて調べたいと思うのであります。ただ、今お尋ねの点はつまびらかになつておりません。しかし決して責任を回避するものではありません。徹底的に調べて御報告申し上げたいと思います。
  20. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まだそこまでお調べでないようでありますが、担当検事の名前はおわかりになつておりませんか。
  21. 岡原昌男

    岡原政府委員 ちよつとそこまで調査が届いておりませんです。
  22. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると現地に対して調査をされたのでありますか、こちらだけで御調査になつたのでありますか。担当検事がわからないというようなことでは、あるいは現地に対して調査をされたのではないような感じ受けるのであります。
  23. 岡原昌男

    岡原政府委員 大体今大臣からもお話がございました通り、詳細な点はお尋ねによりましてさらに資料を現地からとるはずでございますが、大体この種の事件の今までのやり来りといたしまして、報告が来ております。その報告を要約いたしましたのをただいま大臣から御説明になりましたわけでございまして、さらにいろいろ御希望の点がありましたら、それにつけ加えまして私の方から現地にさらに詳細に照会をしたいと思います。
  24. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではその報告に基いてもけつこうでございますが、基礎なつたところの証拠物件ですが、これはどういうものであつたか。そして何種類であつたか、そういう点をお伺いしたいと思います。これは報告事項の中にあるはずであります。
  25. 岡原昌男

    岡原政府委員 それは何通とかそういうこまかいところまでは出ておりませんので、ただ筆跡鑑定の結果起訴したという程度の報告になつております。ですからそういう点は全部照会いたしたいと思います。
  26. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは私の方でわかつている限りでは、先ほど大臣お話通りに、数百通の脅迫容疑となりましたはがきの中で、たつた三通が山田長吉君が書いたものであるという断定のもとに、そのはがき三通が今度の脅迫容疑基礎の唯一の材料であつて、当時私も北海道におりまして知つておるのでありますが、勾留中に本人山田長吉君が、絶対にこれは自分のものでない。しかもざつくばらんな話、比較的民主的な左翼政党の場合においては、被告人はあまりいろんなこ     とを言わないようでありますが、今度の事件に関しては、山田長吉君は、これは絶対に事実と違う、その証拠自分筆跡を書いてやると言つて、たしか八種類かにわたつて自分筆跡を書いて見せている。にもかかわらず札幌市警において、あるいはまた地検にまわされましてからも、その筆跡を対比した上で、しかも容疑が濃厚であるとして起訴をしている。その当時の状況から見て、どうしてもわれわれ、それから本人はもちろんのこと、これが起訴になるべき理由はなかつたようにわれわれは断定いたしておつたのであります。それにもかかわらずこのような起訴をしたということは何らかの政治的な意図、何らか故意の意図があつたのではないかと考えざるを得ないのであります。その証拠に四月の七日に本人を逮捕いたしましたときに、本人の自宅を捜索いたしました。そのときに直接の脅迫容疑と関連のない労農党中央委員会決定書、これは印刷物であります。あるいは労農党北海道地方本部所属党員の名簿であります。これは本人が書いたものではないのであります。こういう書類を一緒に押収いたしている事実があるのであります。その当時私はこの点について極力抗議をいたしまして、一部分押収書類から削除もさせたのでありますが、なおかつその中には山田長吉君が他人からもらいました名刺を入れた箱がありますが、こういうものは押収をされたまま残つております。こういう点を考えてみると、脅迫という被疑事件とは直接関係のない、何か政治的な意図を持つているものとしかわれわれには考えられないので、その当時から問題にいたしておりましたし、現在もこの公訴が取下げになりました場合において、なおさらその感を深くするのであります。こういう点についてもやはり大臣がこの問題を調べられる場合において、単に公訴の取下げの前後の関係だけをお調べになるのではなくて、そういう政治的な意図に基いて不当に捜索を行つたという点についても、徹底的に調査を願いたいと思います。  こういう例は単に山田長吉君の例ばかりでなく、最近こういう例がひんぴんとして行われつつございます。単なる被疑事件を持込んで、それを通じていろんな書類押収するというような例も起つております現在でありますので、今度の事件を通じてこのような悪例を残さないためにも、徹底的にお調べを願いたいと思うのであります。こういう点でもし御存じの点がございましたならば、お答えを願いたいと思います。
  27. 犬養健

    犬養国務大臣 岡田さんからごらんになると、報告が疎漏のまま捨ててあるようなお感じをお受けになると思います。これもざつくばらんに申しますと、私ども一同刑事訴訟法で朝から晩までそつちへとりかかつておりますので、きようあすにもし幸いに御可決願つて、ひまになりますれば、相当丁重にこの問題は現地に問い合せができると思います。問い合せができ次第きわめて率直なる報告をいたしたいと思います。
  28. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほど大臣の御答弁によりますと、明らかに今度はこの事件については失敗であつたというお話でございますが、どのような原因に基いて失敗であつたかによつては、検事の身分上の問題についても問題が起つて来ると私は思うのであります。もしこの事件について検察庁法の二十三条によると、検察官適格審査会規定もありますし、こういう点を通じて糾明する必要も出て来るのではないかと思うのでありますが、検事のこういうような失態についての扱い方について大臣はいかにお考えになりますか。
  29. 犬養健

    犬養国務大臣 これは人の処分のことでございますから、私自身責任において今率直に結論を申し上げにくいのでありまして、十分調べまして刑事局からも問い合せると同時に、人権擁護局はさつそく調査を開始いたすと思います。その結果判明した結果によつて世間疑惑が解けるような措置をしたい、こう考えております。
  30. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは先ほど大臣が言われたように、あの公訴は取下げてしまつた、申訳ないということだけでは済まないと思う。片方の検事の方は、誤りを犯しても、間違いましたと言つて平然としておれるが、一方それによつて被害受け被疑者本人は約三十日に近い間勾留されている。市会議員地位並びに労農党本部書記長の名誉を著しくされている。こういうような事実にもかかわらず検事の場合にはただ誤りでございましたということだけで問題が解決するということでは、今後人権を擁護する場合において問題はきわめて重大であると思います。そういう意味においてもこの点については厳重に御調査願つて検察官としての適格の問題についてまで触れていただいて、御調査願いたいと思うのであります。この点は要望いたしておきます。  それから先ほどの大臣の御答弁にもございましたが、刑事補償受けることは当然法の規定によつて受け得ることになつております。これは刑事補償法の二十五条でございますが、これによりますと一日二百円以上四百円以内という刑事補償の対象になつております。そうしますると、大体このような不当な事件がしかもただいま申し上げたような地位を毀損するがごとき事実が十分に起つておりますだけに、四百円をもつてその刑事補償をし得るというようなことは、われわれにはとうてい考えられないわけでございまして、当然刑事補償以外に、すなわち国家賠償の問題についてもわれわれは要求せざるを得ないのであります。本人自身も当然それを要求すると思いますが、これについてもし要求がございました場合に、大臣は善処されるお考えがあるかどうか、こういう点についてはつきり御明言をいただいておきたいと思います。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 常識から言いまして一日二百円から四百円というのは、御当人の災害からいうと、安いように思います。国家刑事補償をして、これは誤りであつたという意思表示相当重大な意味を持つと思いますが、だからそれでお済ましなさいなどということを私は申しません。大体国家補償法ですか、法務大臣を相手にお訴えになることになりますが、これは自分責任ですから、喜んで、というのも妙でありますが、お受けをして、りつぱに賠償できる道があれば、私も賠償さしてあげたい気持なり考えでおります。さよう御承知願います。
  32. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今大臣のお答えですと、国家補償法という御答弁ですが、これは国家賠償法だと思います。国家賠償法の適用をわれわれが要求した場合には、当然大臣としてはこれに対して適宜な処置をとつて本人に対しては大臣賠償上の責に任ずる、こういうお考えがあるとわれわれ解釈してよろしゆうございますか。
  33. 犬養健

    犬養国務大臣 解釈の通りでございます。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 関連いたしまして、私は要望だけしておきます。今の白鳥事件ですが、先般北海道から部厚な書類が私のところへ届きまして、この白鳥事件というものは今迷宮入りになつておるけれども、それに関連いたしまして検察庁及び警察の活動について非常な疑惑があるという投書が私のところへ参つた。私今日実はそれを持つて参りませんので、次会にいたしますが、それはまるで初めから捜査方向違つてつて共産党系一本でその方にばかり全力を入れておる、それは間違つておるということで再三忠告して、みずから進んでいろいろな事実をあげて他に容疑者があるということを申し出た人物があつた。その男の申し出た容疑者というのは遂に自殺をいたしました。そういう方向にどういうわけであるか調べを進めない。その人間は警察と非常に特殊な関係のある人物です。そこでみずから検察庁に名乗つて出て調べられた男から私のところへ、そのいきさつを詳細に書いて、これを明らかにしてもらいたいというて手紙が来ております。その男は原因と申しますが、原因情報といえば北海道の新聞には大々的に報道された事件であります。それらのことについても御調査をしていただきたい。機会がありますればその点についてお尋ねしたいと存じますから、今岡田君の質問に対する報告を求められるとともに、原因情報といつてくだされば、北海道検察庁にはぴんと来るはずであります、原田情報についての詳細なる事情の報告をお聞取り願いたい。これを点検して行きますと相当捜査上の欠陥が出て来ると存じますので、それをお願い申し上げておきます。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今猪俣委員からお話のありましたように、白鳥事件自体も非常に政治的な意図を持つておるものとしてわれわれは考えておるのです。原田君なる人より出された情報というものが、私も当時の前後の事情を知つておりますが、何ゆえか検察庁において握りつぶされておるのであります。しかも握りつぶされたために、その方向によつて捜査が全然行われないで、白鳥事件というものが左翼陣営弾圧のために利用され捜査されているという印象がきわめて深いのであります。先ほど申し上げた山田長吉君の場合にいたしましても、前の委員会で申し上げた通りに、何か札幌の市会において警察当局についての予算審議の問題で徹底的にこれを追究したその意趣返しにこれをやるというような形であります。これは当時の新聞においても発表されておりますし、当初からこの白鳥事件は政治的な意図をもつて行われておる印象がきわめて強いのでございまして、その点を究明する意味においても原田情報を中心とする白鳥事件捜査についても、厳重にひとつ調査を願いたいと思うのであります。先ほど私の調査をお願いした件並びに白鳥事件関係は、この国会中に報告のできるように至急おとりはからい願いたい、かように善処方をお願い申し上げて私の質問を終ります。
  36. 小林錡

    小林委員長 木村武雄君。
  37. 木村武雄

    ○木村(武)委員 福永官房長官にお尋ねいたします。数日来官房長官の出席を求めております。特に昨日は出席を要求して、お尋ねいたしましてから三時間有余官房長官の居所きわめて不明だつたのであります。君子である以上は出処進退を明らかにしておかなければなりませんが、君子でありますかどうか。また本日は十一時に御出席されるというお話でありましたが、お待ち申し上げますこと五十五分であります。吉田内閣以来、議会軽視の傾向がきわめて顕著である。これは私どももどうしても国民にかわつてぬぐつておきたいと考えておりますが、出席されなかつた理由が議会軽視に原因がありますかどうか承つておきたいと思います。そうでなかつたならば、そうでないという点をまずお伺いしておきたいと思います。
  38. 福永健司

    ○福永政府委員 当委員会から私に出席するようにとの御要求をいただきまして、遅れましたことはまことに遺憾に存ずる次第でございます。私は実はきわめて雑用の多い立場でございますので、あちこち引きまわされておりまして、昨日も決して行方不明等にいたしておつたわけではございませんが、あちこち東奔西走いたしておりますので、行き違いまして申訳ありません。本日も、しかと十一時には出席いたす所存であつたのでありますが、参議院議院運営委員会から出席を求められ、現在の国会の審議状況とからみまして、会期延長その他いろいろの人事問題等について、簡単に済むと予定して参りましたところ、相当長時間にわたつて向うで御質問等を受けました。その方も実は全部済んだわけではないのでありますが、一時おひまをいただいてこちらに参つたような次第であります。こちらに参ります途中に、本日の記者会見をまだしておりませんでしたので、クラブの方へちよつと寄りまして、その方での用事も済まして参りました。いずれにしても決して国会を軽視しているような次第ではございません。現実に出席が遅れたという点はまことに申訳ない次第でございます。決して国会軽視のゆえにさようなことをやつたのではない、やむを得ざる事情でありましたことを何とぞ御了承いただきたいと思います。
  39. 木村武雄

    ○木村(武)委員 福永官房長官は吉田内閣のスポークスマンで、日常新聞記者に接触しておいでになりますが、あなたの発表されたことが正確に新聞記事に載つておりますかどうか、まずお尋ね申し上げておきます。
  40. 福永健司

    ○福永政府委員 新聞の報道は、同じことを申しました場合におきまして、も、各社、各記者諸君の受取り方がいろいろである場合が往々にしてございます。実は私も内閣のスポークスマンとしているくのことを申しましても、同じことを言つたのがいろいろに伝わつている事態をしばしば経験いたしておる次第でございます。きわめて明々白々のことでございますと、大体において同じように伝わることも多いのでございますが、そうでないように伝わる、言葉のニュアンス等が私の申したのと違うように伝わる場合もないではございません。この事実は私も多分に認識いたしております。
  41. 木村武雄

    ○木村(武)委員 そうでなく伝わつた記事がありましたならば、ここで提示してもらいたいと思います。
  42. 福永健司

    ○福永政府委員 ときたまそういうことを経験はいたしておりますが、ちよつと今ここで何日のどの記事がということは正確に記憶いたしておりませんので、御容赦願います。
  43. 木村武雄

    ○木村(武)委員 正確に伝わらないがために訂正された事件がありましたならば、承りたいと思います。
  44. 福永健司

    ○福永政府委員 これは違うなと思うことがときどきございますが、私は性分として一々違うということで抗議を明したり、そのことについて訂正を求めたりということは、いまだ正式にそういう手続をとつたことはございません。
  45. 花村四郎

    ○花村委員 新聞記者に発表をなさることは、官房長官として毎日行事の一りとしてやつておるように承つておりますが、それはそうでしようか。
  46. 福永健司

    ○福永政府委員 政府の正式の考え方でありますとか、いろいろの事情の表明等は、おおむね毎日数回にわたりまして、定時の会見等をいたしまして、その際にできるだけ記者諸君に話すようにいたしております。その他に、定時会見でない場合に人が参られて、ひよいと聞かれたりするようなことがないでもございません。でございますが、政治上のこと等につきましては、原則として会見のときに話すことを定例といたしております。その他の場合におきましては、正式に政府考え方なり、私どもの考え方なりを公式に申すような事情でないことが通例でございます。
  47. 花村四郎

    ○花村委員 ただいまお聞きをすれば、一日に数回政府の意見を発表されるということでありますが、その意見を発表したその精神が、新聞記者の方に受取れないというようなことでありますならば、それは日々政府が発表するという精神に反することに相なるように思いますが、そういう政府意図するところを発表したにもかかわらず、その意図が相手にそのまま受取り得なかつたというようなことが、しよつちゆうありとするならば、それを是正するにはどういう方法を講じておられるか、あるいは是正せずにそのままほうつておかれるのか、その辺を詳細に承りたいと思います。
  48. 福永健司

    ○福永政府委員 花村先生のただいまのしよつちゆうというお言葉でございますが、私の先ほどの木村先生に対するお答えの仕方が、言葉が不備でそういうようにお聞取りいただいたのかと思いますが、間違いがしよつちゆうという――私自身はそうとは思つておりませんが、たまに間違いがあるという意味でございます。そういうふうに御了承いただきたいと存じます。そこで非常に重大なこと等で誤りがあるというような場合におきましては、次の会見の場合、あるいはその他の場合におきまして、ああいう趣旨ではなかつたということをできるだけすみやかに申しております。私の場合におきまして、文書等の形式で抗議を申し込んだり、訂正を求めたりというようなことは今まではいたしたことはございませんですが、その問題の性質によりましては、いろいろ違つたように伝えられることがありましても、そのままにいたしておきますこともございますが、そのままにしておいたのではまずいというようなことを考えますときには、できるだけすみやかに次の会見等におきましてその事態を明らかにする努力をいたしております。ところが往々にしてそういたしましても、前のは間違いだつたというような記事が出ているのはあまり見受けた記憶はございません。
  49. 花村四郎

    ○花村委員 そういたしますと、今まで間違え伝えられたということは、きわめて少いというお話ですから、その少いうちで重大なる事項で訂正を申し込まれて、しかもその訂正がどういう形で片づけられたかという例を二、三お示し願えばけつこうだと思います。いかなる重大な事項で、その発表を相手が取違えて、それを是正をする申込みをして、どういう形でそれが是正されて行つたかという、その特段なる二、三の例をお示し願えばけつこうだと思います。
  50. 福永健司

    ○福永政府委員 先刻も申しましたように、何日のどういう問題でというように、正確に記憶はいたしておりませんが、たとえば選挙直後に自由党は政権に対するどういうふうな考え方を持つておるかということにつきましてのこと等でも、若干政府考えておりますことと違うようなことが伝わつたときに、否定をいたすような表明を私いたしまして、そういうことがその通りにそれからあとの記事に出たようなことがございます。なお、これは政治の問題と直接とまでは行かないのでございますが、自分自身の一身に関するようなことで、何か伝わつたようなときには、従来の場合におきましては、私は何も申さないで、ずつと過して来ておるような次第であります。
  51. 花村四郎

    ○花村委員 吉田内閣の諸公は、とかく新聞記事が誤りであるということを何かの場合には言われる。吉田首相にしても、あるいは緒方副総理にしても、木村保安長官にしても、大体重要な事項になると、とかく新聞記事の誤りであることを主張して、そうして自分責任をのがれんとするというようなふうに、一般の人は解釈しておるのであります。これはまことに遺憾であります。私どもはすべてがそうだとは申しませんけれども、しかしそういう事例が幾つも重なつているようでありますから、従つて新聞に発表する場合において、誤り伝えられないように、すべてをスムーズにやつて行くというような意味において、内閣として何か申合せとか、あるいは新聞記者の方にあらかじめ注意を与えておくとか、あるいは新聞記者間においてそういう誤りのなきように何らかの打合せをしておくとかいうような、政府として何か新聞記事対策に関する方途でも講じておられたことがあるかどうか、ありとすればその内容をひとつおつしやつていただきたい。
  52. 福永健司

    ○福永政府委員 ただいまの御質問の点、なかなか微妙なところだ思うのでございますが、政府といたしましては、政府考えておりますことがそのまま伝わることは非常に望ましいのでございますが、一方新聞は新聞の報道の自由からいたしまして、私どもがたとい申しましても、それに対して、事実は事実として報道するのでございましようが、若干の批判等の加わる場合等もございまして、先ほど申しましたように、同じことを聞いても、それを聞いた新聞記者によりまして、若干ニュアンスの違つたように伝えられることもあるわけでございます。ただいまお尋ねの点、正確に伝わるためにどういうような対策をとつているかということでございますが、政府といたしまして、一言一句違つては困るというような場合の発表等におきましては、あらかじめ文書を用意いたしまして、この文書によりまして記事を書いてもらうというようなこともございますが、これはきわめてまれでございます。おおむね口頭で話をいたしております。のみならず私どもは積極的に記者各位に申し上げようと思つていることで申し上げることはむしろ少いのでございまして、いろいろ聞き出されまして、いわば相当暗示みたいなことで質問等を受けまして答えるようなことも非常に多いのでございます。そういうような場合におきましては、誤解を生じないように答えなければならないのでございますが、ままそういうような場合におきまして、そのときの答え方にもよるのでございましようが、若干違つたふうに伝えられるようなことになることもないとは申せない次第でございます。いずれにいたしましても、事実が事実の通りに報道されるということは公共の立場からしてもぜひそうでなければならないと思いますので、政府といたしましてはそういう点には今後も重々留意をして行かなければならいなと存ずる次第でございます。
  53. 木村武雄

    ○木村(武)委員 内閣のスポークスマンの報道が正確に新聞紙上に伝えられないということであつたならば一大事である。しかも間違つて報道されたことが何ら訂正されない、訂正しないというのが私の大体の性格である、こういうことをおつしやるのであつたならば一大事だ、こう私は感ずるのであります。何となれば、国民の大半は大体日常の新聞によつて政治の方向を知る。それから行政のあり方を探知しておのれの生活の去就を決定するのであります。その方向を示し、去就を決定する新聞記事が正確に報道されなかつたり、しかも間違つて報道されたものが取消されなかつたというならば、間違いが間違いを生んで来る。それが生活自体に影響するところが私は甚大だと考えるのであります。そこでお尋ね申し上げたいのでありまするが、もしもそういうことが今後あつたといたしましたならば、官房長官は在来の性格はおやめになつて、そうして間違つた報道は訂正されるように、そうして国民をして去就に迷わしめないようにされることが非常によかろう、こういうように考えます。ただ今までの御答弁によりまして、大体記事は正確に報道されておると判断してよろしい、私はこういうふうに思うのでありまするが、浦和で川上長蔵市議が自殺されましたときの新聞記事が出ておりまするが、私はこの新聞記事をながめまして、人間福永がにじみ出ておつて、一種の親しみを感じたのであります。人間はそうあらねばならない、こういう気持になつたのでありまするが、記事はともかくといたしましても、写真には間違いないと思います。左の手はハンカチを持つてしみじみと泣いておられましたこの写真記事は正確に報道されておると思いまするが、間違いありませんか。
  54. 福永健司

    ○福永政府委員 あの当時のことにつきましていろいろの記事もございましたが、私はああいう問題の性質上、記事等を見ますと一層胸に迫るものがございまして、おのずから見なかつたものもあるのでございますが、木村先生のお話の、写真の入つておりました記事は、私も写真は確かに見ましたのでございますが、それは間違いなく私の写真でございます。
  55. 木村武雄

    ○木村(武)委員 念のためにそのときの記事を読みます。毎日新聞の六月一日の記事であります。途中省略いたします。「一人の人を死なせて、私としてはもう官房長官、代議士さえもやめたい……」涙声でこう話しておいでになります。私はこの記事を読みましたときに、実はあなたに面識はありませんでしたけれども、親しみを感じたのであります。さらに「この事件を徹底的に追究したいと思い吉田総理らに話した。違反の責任からではない。」こういうことも出ております。それから読売新聞の五月三十一日の記事でありますが、「自殺という悲劇を生んだことは」という質問に対しまして、「「けさ早速地元の同志から連絡があつて事情をきいたし、またわきからきいたのだが、私の違反については警察から非常に珍しい調べ方をされたそうだ」この珍しいという言葉にグッと力を入れて、長官の顔はフンマンやる方ないという風に歪んだ。」これは新聞記者のものの見方であります。「無事帰れた者にきいても過酷を極めた取調べだつたらしい。何故こちらを目の敵にするのか判らぬが、白状しなきや帰さぬといわれたそうだ、メチヤクチヤだね。私と志を同じくし選挙のため働いてくれた同志たちのためにもこのままではすませぬ気持だ」「政治家としての道義的な責任について」こういう問いに対しまして、「先ほど緒方副総理に連絡し、このさいヒラ代議士にもどして進退を明かにさしてくれとお頼みしたが、事情を調べたうえでも遅くはないと慰められた。いずれ首相にも報告善処するつもりだ」こういう大体の記事の内容でありまするけれども、私であつたならばああいうような事件ができて、そうして自分のために運動してくれた人の中から自殺者が出た場合に、ああいうような気持を起すことは当然である。それから翻つて尋常一様の調べ方ではない、こう思うことも当然であると思いまするが、私はそのときの心境は非常に正しいりつぱな心境である。私こういうように感じておりまするが、あの当時の心境はこの通りでありましたかどうか、お聞き申し上げておきます。
  56. 福永健司

    ○福永政府委員 ただいま木村先生のお読みになりました記事で、私の言葉として伝わつておりますところも、私も記憶では私の申したことがそのままでないところも若干あるように思います。  だが、それはともかくといたしまして、先生のお尋ねの、あの当時の心境はそうであつたかということでございますが、私はあの警察で川上君が自殺をするに至つたという知らせを受けましたときに、まつたく驚きました次第でございまして自分が選挙をやつて、しかも一生懸命やつてくれた人の中から、死骸になつて警察から帰つて来るというようなことが起つたことは、自分としてほんとうに胸迫る思いでございました。なまじ選挙をやつて、こんなことで人に迷惑をかけたというようなことから、あの当時の心境としてはまつたくいろいろのことを考えさせられた次第でございます。ただあの新聞社が写真をとりましたあの直後に遺族等にも会いまして、弔慰の意を表したり、いろいろ話もしたのですが、遺族からは死んだ川上君のいろいろなことを話されまして、福永個人としてはいろいろの感情にかられるであろうが、選挙民に選ばれた人間としては、一生懸命に国のため、地方のために働いてもらいたい、これが死んだ者の気持をくみとつてつてくれることだとも申されました。従いましてそういうこともいろいろ考えたのでございます。まつたくああいうような事態が起つたというようなことにつきまして胸迫る思いでございます。自分の単なる個人的の気持が許されるならばというようなところから、新聞に伝わりましたような気持も現われ出たと思う次第でございます。その心境は私の当時のほんとうの心境であつた次第であります。
  57. 木村武雄

    ○木村(武)委員 あの当時の心境としてはもつともだと思います。拷問の結果白状された、その結果自殺をした、これは徹底的に同志にかわつて追究しなければならないという気持は私はもつともだと思います。それから官房長官たる地位もやめる、場合によつたら平議員にもなつて霊を慰めてみたい、こういう気持になられたことももつともだと思います。それから辞意を漏らされて緒方官房長官にこれをやめさせられた、引きとめられたため翻意したという気持も私もつともだと思いますが、あなたは自分個人においてこの問題を徹底的に追究されましたかどうか。そうしてこの法務委員会の席上におきましては、法務大臣人権蹂躙の事実なし、拷問の事実なしということを答弁せられておりますが、あなたはその御答弁に対しまして納得されましたかどうか、お聞き申しておきます。
  58. 福永健司

    ○福永政府委員 私の同志がああいうようなことになりましたことについてぐつと胸迫るものがございまして、私は拷問があつたとかどうとかいうことは、私みずから申したことはないのでございますが、少くとも調べ受けた者が死骸になつて警察から帰つて来るというようなことは、そういうことは絶対今後あつてはならぬという強い気持でございます。ここで率直に申しますと、官房長官というような立場にありまする者がそういうことをいろいろ言うということはいかがかと思います。自分の立場を利用してどうこういうがごとくとられるということははなはだ不本意でございますので、私といたしましては、そういうことのためにはむしろ一介の国民ないし特別の官職についてないという立場の方がいいのではないか。また同時に自分のためにそういう立場になつた人に対して、何として霊を慰めていいかというような気持からも、そういうようなことを考えたことがあつた次第でございます。そこで自分として死はんだ者に対しましても、その遺族に対しましても、あとう限り徹底的にその事態を明らかにするということ、これは必要であると思つてつたのでございます。冷静に考えてみますと、むしろこういうことは客観的に第三者的の立場の人によつて明らかにされることの方がより妥当なので、自分がいろいろ言うことは自分の立場を有利にするためにそういうことを言うがごとく受取られたのではというようなことを考えまして、爾来実は、木村先生が徹底的に調べたかというお話でございますが、私自身といたしましては、ある程度の話を聞いたままで、そのままじつといたして参つたというのが真相でございます。
  59. 木村武雄

    ○木村(武)委員 川上長蔵君が自殺する前に便所に行つて首つりをされた。しかし死に至らなかつた。それを承知の上でそのまま警察が留置しておる。そして三日目に自殺された。こういうような話が同じ容疑者の中から伝わつておりまするが、そのことはお調べになりましたかどうか。こういう事実がかりにあつたといたしますれば、原因を探索してみなければわかりませんけれども、私は重大なことだというふうに感じますが、あなたはそういう事実を御承知ですか。
  60. 福永健司

    ○福永政府委員 本人が刃物で自殺しましたその前に、ひもを用いてある種の行動があつたとか、そのひもの跡が首にあつたということを当時私はちらつと聞いたわけであります。そういうことを聞きますと、ますますもつて胸に迫るものがあつたのでございますが、そういうことを私自身がいろいろ申し立てることはどうかと思いまして、私自身でいろいろ言うことは差控えたまま今日に至つております。
  61. 木村武雄

    ○木村(武)委員 人が死ぬということは非常に重大な問題であります。しかもその原因人権蹂躙に基くというようなことであつたならば、民主政治の日本の現状にとつてもゆゆしき国家的の問題である。そうですから自殺する前にそういうような首つりの事件もあつた、そうしてなおかつ自殺をした、こういうような二つの原因からたずねまして、あるいは拷問の結果あるいは人権蹂躙の結果自殺したのであるというようなことが出ないとも限りません。そういうようなことをお調べにたるのが内閣の立場ではないか。一福永、一官房長官の地位の問題ではない。日本の民主主義が確立されるためにはすばらしい犠牲が払われ、そのすばらしい犠牲を払つて確立いたしましたこの民主政治というものは、私たちは場合によつたならば死を賭しても守らねばならない。そうした重大な問題と二福永氏個人の問題を交換すべき問題ではない。特にあなたは、人権蹂躙の事実があつた場合においては、身をもつてもその事実を探索して、日本の民主政治を守る立場に立つておられるのではないか。それを公私混淆されまして、聞いてはおつたけれどもなおかつ探索するに至らなかつたというようなことであつたならば、民主政治を守る大番頭たる資格はないではないか、こういうように私は判断するのでありますが、聞いておるならばなぜ徹底的にお調べにならないか。それから警察当局をしてあるいは上層部をして徹底的になぜお調べにならなかつたのか。この問題だけは、一福永派の選挙違反の問題ではないのであります。人権蹂躙の結果自殺になつたのであるか、しからざるものであるかということは徹底的に調べる必要がある。個人にとらわれる必要は毛頭ないのであります。あなたはそういうことを承知しておいでになりながら、個人にとらわれてお調べにならなかつたということは重大な失態だと考えておりますが、あなたのお気持はどうでありますか。
  62. 福永健司

    ○福永政府委員 私の聞きましたことは、そういうことではなかつたかというような意味で聞いたのでございます。そういうことを聞きまして、いろいろのことを考えてみたのでございます。ただいま御指摘のごとく、今の日本において人権蹂躙というようなことがあつてはならない。現在の私の立場においては、個人的の立場でなくて、そういうことがあるような事態に対して断固対処しなければならぬという今の木村先生のお話でございましたが、実は私も当時相当錯綜した気持で、しかもあの当時これは私自体が見たわけではないので、十分の確信もなかつたわけでございます。私ないし私の関係の者がいろいろ言いますことが、自分の立場を弁護するような誤解を受けてはと思いましたし、なお事は重大なことでございますから、私といたしましては、あの当時、客観的に第三者的の立場でお調べになるように新聞その他の報道等によつてつておりましたので、そういうことが進捗すればおのずから明らかになるであろうという期待を持つていた次第であります。ただいま木村先生の御指摘のごとく、私自身がもつと積極的であるべきだつたということは、私もいろいろ考え、また若干の者とも相談いたしました結果、私どもの立場の者はむしろ静観して、客観的に、そのことが明らかにされることがいいと考えておつた次第でございます。あれから大分時日を経過いたしたのでございますが、実は問題の性質上客観的にいろいろ明らかにされることがいいので、私どもの立場の者が言うことはいかがかという心境に現在でもいるわけでございます。しかし木村先生のおつしやいますこともまた私どもとしては、もとより考えなければならぬ次第でございます。いずれにいたしましても、ずつと経過を見て、私のとりました態度があれでよかつたかどうかということは、私自身も十分に確信がない次第でございます。
  63. 木村武雄

    ○木村(武)委員 川上長蔵君の死は発表されておりますけれども、死に至らしめた原因というものはいまだ究明されていない。先ほど申し上げましたように、その前に縊死する意思をもつて便所に行つてやつた痕跡すらも残つている。その二つの事実に顧みまして、あるいは人権蹂躙の結果川上長蔵氏は自殺したかもしれないという結論が出て来るのであります。福永官房長官は個人福永と、官房長官たる福永という地位をごつちやにしておる。あなたは民主主義を守らなければならない大番頭である。その大番頭たる地位に立つている以上は、民主政治のためにはもつと勇敢でなければならない。それを個人福永の選挙違反事件と混淆されていることは、私は民主政治を守る吉田内閣の大番頭たる資格はないのではないか、こういう結論が出ることをおそれるのであります。でありますから爾今注意されまして、公私混淆をされないように、民主政治を守る点にあなたはもつと勇敢にやつてもらいたい。  それからあなたの選挙違反に関連いたしまして、与野町長が辞職をされましたことは御承知と思います。与野町長の辞職でありますが、私はああいう立場に立つて与野町長が辞職をされたことは当然だと考えておりますが、その辞職の声明書が出ております。その声明書を参考のために読んで見ると、「声明書要旨、町政明朗化のためにあえて町長を辞任することにした。先般来内閣官房長官福永代議士の選挙に関し、私の不徳から公職選挙法違反の容疑受け、町民各位に御心配をかけ、まことに申訳ない。事件はすでに司直の審理中に属し、近く公正なる判定を見ることではあるが、最近町内一部にきびしい批判があり、不明朗な空気が濃化していることは、私の本意とするところではなく、この際道義的責任をとつて空気刷新のため辞意を決したものである。」こういう声明書を出しておりますが、この心境はあなたにとりましてどういうように響きますか、お伺いします。
  64. 福永健司

    ○福永政府委員 前与野町長は私と最も懇意な人間の一人でございます。自分は潔白を確信しておるということを本人は申しておりましたが、いずれにしましてもそういうことの容疑者なつたということで、職にとどまつていることを欲しないということは、本人も私のところへ来て申しました次第でございます。その声明書は私拝見しておりません。選挙区へほとんど行つておりませんので見ておらないのでございますが、当時これは私の関係ではございませんが、ほかのごく近隣のところにも、容疑者になつていた同じような町村長の立場で、そのまま現職にとどまつている人等もありまして、どちらにすべきかということでいろいろ本人に対しまして進言する人もあつたようでありますが、前与野町長であります中村君は、いろいろ考えた結果やめるということに決したわけでございます。いろいろ取調べ等が進んでははきりしてから身を処するよう、方途をきめてもいいのじやないかという意見も実はあつたわけでございます。本人の心違つきましてはいろいろ見方はございます。私にも相談がありました。実は私選挙のころの事態をあまり詳しく承知しておりませんものですから、結局本人の意見に従うことにしました。本人がこうするということに私は従うべきだという心境であつたわけでございまして、いずれにいたしましてもそういうような公職を辞するというような事態が生じましたことは、私にしても非常に遺憾に存じている次第でございます。
  65. 木村武雄

    ○木村(武)委員 私がお尋ねいたしましたのは、与野町長が町政明朗化のために辞職をされた。それはあなたの御判断で、見上げた精神であるか、見下げた精神であるか、それをお聞きしておるのでありまして、人の批評を聞いているのではないのです。まことに見上げた精神であるとお考えなつたならば、見上げた精神である。今どき辞職することはけしからぬ、見下げた精神であるとお考えならばそれでもよろしい、どちらでもけつこうです。
  66. 福永健司

    ○福永政府委員 本人がみずから潔白であるということをかたく信じていると言つておるのであります。そういう建前からすると、やめることはいかがかとも思われるのでありますが、一面におきましてそういうような容疑受けた立場で町政をやつて行くことはどうかという心境よりいたしまして彼みずからがそういう身を決したものと思います。このことにつきましては私は日ごろの親友の一人といたしまして、私はその親友のやりましたことがまずいこととは思つておりません。親友がそういうふうになつたということにつきましては私自身もたいへん本人には気の毒に存じております。本人のとりました態度につきましては、私どもはこのとりました態度を守る心境であらねばならぬと考えている次第であります。
  67. 木村武雄

    ○木村(武)委員 さらに六月三十日に浦和で市民大会を主催いたしました団体は、市内の労組、婦人団体外十団体が主催いたしまして、福永官房長官に対する辞職勧告決議というものが行われたのであります。大体私の承知いたしております範囲内から申し上げますと、選挙違反というものは選挙を争う者にとりましてはつきものであると由してよろしい。そういうような選挙違反ができましたときには、世の同情がその候補に非常に加わるのである。それが福永官房長官に対しまして同情でなくかえつて市民大会で辞職勧告の決議なるものが提出されている。これはあまり類例のないことである、私はこういうように感ずるのであります。その市民大会の決議を官房長官が受取りましたときに、その代表者に対しまして浦和市民大会の決議によつて自分は辞職すべきものではない、こういうことを言われたのでありますが、なるほど浦和の市民大会の決議によつて官房長官は辞職すべきものではないのであります。しかし自分の居住地であります浦和市におきましてこういうような市民大会が行われた。浦和の市政から見ましたならばこれは当然やめてもらわなければならないという結論が出たかもしれません。そういうような浦和の市政を騒がしたという点に対しまして、浦和の市民を騒がしたという点に対しましてあなたはどういう感情をお持ちになつておりますか。これをお聞きしておきます。
  68. 福永健司

    ○福永政府委員 市民大会という名のもとに集まりがございまして、その決議文を私のところにお持ちになりました。私代表者の方にお目にかかつてそれを受領いたしまして、そのときに申し上げたのでございますが、この決議文には一切の公職から退くべしと、こういうことでございました。浦和市民十数万の中で一部の方が確かにお集まりになつて、名前は市民大会ということでございましたが、私は浦和の住民ではございませんが、ごくそれに近い所におりまして、特に縁由の深い土地の人から、こういう決議文を受領するということ、またそういう市民大会等があるというような、今木村先生のお言葉をもつてするならば市民をお騒がせしたということは、これは遺憾に存じている次第でございますが、一切の公職から退くべしというようなことは非常に重大なことでございまして、先ほどの木村先生のお話にもあるごとく、これは簡単に個人的な感情によつて処理すべき問題でないと私は考えておつた次第でございます。あのころから非常にたくさんの手紙等も参りまして、一生懸命にやることがお前の責任だぞ、というような手紙をあちこちの人からたくさん受取つております。最近も何人かの方が見えて一生懸命やれと言つて私に激励文をくださつた。そういう逆の例もあるわけでございます。私といたしましてはお騒がせいたしましたことにつきましては非常に申訳ないと存じますが、まあ千何百名かというお話でございます、そういう方がお集まりになりまして決議文を持つて来られたからといつて、これで一切の公職から退くというようなこと、これはよほど考慮を要することだと現在でも考えている次第でございます。議員たるの立場、また官房長官にあるというようなこと、こういうことから辞職とか何とかいうことにつきましてはよほど慎重でなければならないと考えている次第でございます。なおいろいろ御質問になりました騒がせましたことにつきましては、前にも申し上げました通り私といたしましてはまことに遺憾にたえないと存じている次第であります。
  69. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長代理 なお御注意申し上げますが、本件は人権蹂躙並びに法務行政に関する調査の件でありますから、なるべくその線に沿つて質疑を続行願います。
  70. 木村武雄

    ○木村(武)委員 その線に沿うて質疑をしているつもりであります。
  71. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長代理 ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  72. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長代理 速記を始めて……。  これをもつて暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた〕      ――――◇―――――