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1953-07-23 第16回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十三日(木曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君    理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    星島 二郎君       牧野 寛索君    鈴木 幹雄君       高橋 禎一君    中村三之丞君       細迫 兼光君    木下  郁君       佐竹 晴記君    木村 武雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法制局参事官         (第二部長)  野木 新一君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      岸  盛一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月二十三日  理事猪俣浩三君の補欠として古屋貞雄君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事互選  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四六号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事猪俣浩三君より理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、許可するに決します。  猪俣君の理事辞任に伴う補欠選任につきましては、委員長において御指名いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。理事古屋貞雄君を御指名いたします。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 質疑に入ります前に、これは刑訴法との関連もありますので、ぜひひとつ大臣にお聞きを願つて、すみやかに御調査を願いたい事件があるのであります。これは中央の新聞には出ておりませんけれども地方北海道で重大な問題になつておる事件でなんですが、われわれ労農党北海道地方本部書記長札幌市会議員をやつております山田長吉という人が、去年白鳥事件脅迫容疑関連があるということで、身柄が逮捕になつております。相当長期にわたつて留置並びに勾留をされておりましたが、その後釈放になつて、現在は釈放中であります。ところが一昨日、検事刑事訴訟法三百三十九条の二号によつて公訴を取下げております。こういう事例はきわめて異例な事例で、しかも新聞紙上を通じてみますと、担当検事でありました天野次席検事が、唯一の証拠物であつたところのはがきが、筆蹟鑑定の結果、同人のものではなかつたということを棄却の理由として、決定したということが、実は新聞紙上に出ておるのであります。この事件の起りました当時、私はこの事件を聞きまして、北海道に帰りまして、去年でありますが、いろいろ事情を調べたのであります。この当時においては、検事正並びに次席検事も、この筆蹟等にかんがみても、明らかに容疑が濃厚であるというようなことを言つておりましたし、そういう事情があつたからこそ、検事としても起訴の請求をして起訴になつているわけです。起訴になつてから、証拠物が違うということで――しかもたつた一つ証拠物であるはがき、その当時から証拠物件にしてもはがき一枚だということで、われわれも非常に重大視した問題であつたわけですが、今になつてからこれは違うのだということで、異例にも検事自身公訴を取下げたというような事例は、いまだわれわれは聞いたことがない。これは考えようによつては、政治的な問題にしてもきわめて重大な問題であるとわれわれは考えるの募ります。  この聞の事情ちよつと簡単に申し上げますが、市会議員の織責上、山田長吉君が札幌市警の問題について、かねてから市会において発言をして、いろいろな要求をいたしております。この市会における活動に対して札幌市警当局意趣返しをやつたのであるということが、当時から新聞に盛んに取上げられておつたことがあります。それだけに市警当局がこういう問題を取上げて意趣返しをやつて、しかも検事かこれに基いて起訴をしたということになつて参りますと、刑事訴訟の問題に関連いたしまして、政治的に利用されていると言われてもしかたがないというような場合も出て来ると思うのであります。私たちはこういう意味においても、今度公訴取消し行つたここが異例なものであるだけに、重大な過失によるものであるか、あるいは悪意によつてこのような起訴が行われたものか、このような点からいつても判断に苦しんでおりますし、今後の公判並びに捜査機関の厳正を期す意味においてきわめて重大な問題でありますので、これは至急お調べを願いたいと思います。われわれはそのお報告によりましては検事を糾弾するための方法をまた考えなければならないと思いますので、この点につきましてもひとつ速急に御調査の上御報告を願いたいと思います。
  6. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまのを話は初めて伺つたのでありますが、さつそく厳重な調査をいたします。ただ御了解を得ておきたいのは公訴取消しというのはときどぎあることでございまして、その点は御趣旨と少し違うのでありますが、伺つておりますと遺憾な異例なできごとにはまさに相違ございません。さつそくこれは責任をもつて調べてまた御報告いたしたいと思います。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは質疑に入ります。昨日私の質問したことで、憲法との関係について二、三お尋ねをいたしたわけであります。きようはそれにあまり触れて参りますと時間もかかりますので、具体的な問題を中心に伺つて参りたいと思います。  きのうの大臣の御答弁によりますと、今度の改正は部分的な修繕だ、本建築は別にやるんだというようなお話でございましたが、それに関連して岡原さんから本建築についての具体的なお話があつたわけであります。そのお話を伺つておりますと、捜査段階におけるいわゆる本建築の問題については、岡原さんは具体的な御答弁がなかは、わけでありますが、私たち考え方によりますと、今度の改正は主として捜査段階におけるところの改正であつて、それ以外の点においては実はあまり触れておらない。全然触れておらないとは私申し上げませんけれども、あまり触れておらない。そこで捜査段階における今回の改正以外に本格的な改正、いわゆる本建築ですが、こういう点があるとするならば、どういう点があるのか。こういう点について岡原さんからついでにお答えを願いたい。
  8. 岡原昌男

    岡原政府委員 この問題はかなり複雑な問題であろうと思いますが、捜査機関の権限をどの程度にするか、それから捜査機関の相互の関係にどういう法律的な根拠を与えるかといつたような問題が中心になろうかと思います。御承知通りこの捜査機関が各地方に分権的にわかれております際にはそれの統一的な問題が出て参ります。御承知のアメリカにおきましても、いわゆるインターステート犯罪、各州間の犯罪、あるいは連邦全体に関連する重大犯罪というようなものは、御承知通りFBIという特殊な組織がごごいまして、FBIにおいて統轄的な捜査をいたしております。このFBIというのは、大体大学を出て特殊な訓練を長いこといたして、非常に法律的な素養の高いというような人のみをもつて構成しておるのでございまして、さような大きな犯罪、あるいは特殊な犯罪、これは場合によりましては政治的な、と言つてはちよつと語弊がございますが、政治的な影響のあるような事件等についてもタッチしておるようでございます。そういうふうな全国統一的な犯罪についていかにするかというような問題については、現在の建前では必ずしも解決いたしておりません。そういうような点について問題が残つておるわけでありますが、これは御承知通り刑事訴訟法改正問題等もございますし、今この段階において取上げるのもどうかと思いまして、とりあえずはこの前申し上げた通り改正の目標を立てておる、かように御了承願いたいと思います。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは二、三日前の大臣の御答弁にあつたように私は記憶いたしておりますが、今度の改正を通じて私の考え方をまず先に申し上げますが、運用現実に障害のある点の改正というものは、捜査段階におけるところの改正が主として行われておるわけです。反面において被疑者あるいは被告人に対する態度地位については、むしろこれは拘束するような改正が随所に行われているような感じがいたします。具体的な例を申し上げてみますと、たとえば被疑者地位を現在よりも改悪するというようなことについては、ただ八十九条の権利保釈制限、あるいはまた九十六条の保釈または勾留取消しの問題、あるいは八十四条における勾留理由陳述及び意見陳述、それから二百八十六条における、出頭しない場合の公判手続の問題、一々例をあげて参りますとたくさんあるのでありますが、こういう点から参りましても現在のいわゆる現行法よりも、今度の改正案によると被告地位がきわめて不利になつて来ておる。ところが反面において捜査段階における改正が主であるために、捜査機関については非常に合理的になつておるので、こういう点を両方見て参りますと、いわゆる新刑事訴訟法原則一つであります当事者主義と言いましようか、当事者訴訟主義と言いましようか、こういう原則現実においてくずれつつある端緒が私は見えると思う。こういう点では抜本的な改正と言えないにしても、もう何か修繕の域を越えて、本建築の柱の一本くらい、下の方にはのこぎりを入れているという感じを実は受けるのであります。そうすると犬養さんは本建築ではないと御言明になりましたけれども、すでに本建築にとりかかつているのではないか。新刑訴法の本質に触れつつあるのではないかと思いますので、こういう点についてひとつ御意見を伺つておきたいと思います。
  10. 犬養健

    犬養国務大臣 これはりくつで申せば、お話通りこのたびの刑事訴訟法改正控訴審審における事実取調べの範囲を拡張した点、その他一、二の点を除きますと、被告または被疑者身柄を束縛する傾向の処置が多いことは確かでございますが、これは真にやむを得ない、しかも法務省が都合よく、やむを得ないと主観的に言つておるばかりでなく、法制審議会において在野法曹、あるいは学者などもまじつていただいて伺つた意見が、この程度社会通念上やむを得ないだろう、もつと固苦しく言えば、人権の尊重と公共の福祉との調和においてやむを得ないだろう、こういう考え方でやつたわけでありまして、それを運用ちよつと不便だからといつて、一年や二年でかえるということは軽率のそしりを免れませんが、すでに五年近くたつたことで、いよいよもつて裁判所あるいは検察庁の、これはまことに不便である、かえつて法本来の目的を逸脱するという点だけを、しかも法制審議会にかけた上、ここに意見の一致を見た部分だけ提出して御審議を受けているようなわけであります。決してむやみやたらに取締り当局の便利なだけという観点からやつたものではないことを、ひとつ御了承願いたいと思います。
  11. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣の今の御答弁によりますと、法制審議会でも相談をしているし、そういう点で当然やむを得ざるものとして運用上の改正を行うのだ、こういう話でありますが、しかし現行法運用においてもとかくの問題があるといわれている。特にこれは被疑者並びに被告人にとつて運用現行法の規定をぜひとも厳格にやつてもらいたいという点について相当いろいろな問題が出ているにもかかわらず、この点には触れないで、ことさら捜査機関の問題だけを取上げて行くという点が、今度の改正趣旨について私は何だか変な感じが実はするわけであります。昨日も問題になつたのでありますが、三十九条の三項の弁護士接見を事実上禁止しているというような問題につきましても、これは法的に当然認められているものが実際に認められておらない。こういう点については特に法文上明確にすることが私は必要ではないかと思うのです。重要な問題ですから具体的な事実をもう一つ、二つ関連して申し上げておきますが、昨日も接見禁止検事がやつたという一例を申し上げましたが、これは水戸裁判所の管轄において、自由党橋本登美三郎候補選挙違反容疑事件であります。これについてもことしの六月初めに水戸の関谷という弁護士が、橋本候補選挙違反容疑関連する被疑者に対して接見を禁止されたという事実があるのであります。これが問題になりまして、水戸の地区における弁護士会臨時総会を開いて糾弾をするというところにまで及んでいるような重大な事態があるのであります。こういう点を考えましても、少くともこの問題は政府としても今度の改正法案の中に入れるべきであつたと私は思うのです。こういう点がなぜか取上げられないでいるという点は、運用上から見ましても私はきわめて遺憾だと思う。その他たとえば地方警察等においては、接見の問題については弁護士といえども禁止するのが原則であるかのごとき考え方を持つている警察署が実は相当あります。これは一々例をあげてもけつこうなんですが、あまり時間をかけてはいけませんので控えますが、こういうような誤解も生じておるだけにこの点はことさら厳密にいたしませんと、重大な問題になると思う。こういう点をなぜ改正案の中にお取入れにならぬか。ことにこれは法制審議会で取上げられたかどうか知りませんが、弁護士会としては一致してこの問題についての要求があつたはずであります。私の調べている限りにおいては、犬養さんではなくてこの前の前の大橋さんが法務総裁のころには、現行刑訴法改正するための問題点を各界に照会をいたしているのでありますが、この中には接見禁止の問題について政府側から諮問しておるのであります。必要があればここで申し上げてもいいのですが、おととしの春にそういう諮問まで出しておる。ところが実際の改正案にはこういう点を、故意か何かわからないけれども、出しておらないという点はきわめて私は遺憾だと思います。最近この委員会においても改正の問題についてのいろいろな取扱いを論議しておりますときに、自由党の諸君まで含めて、この点についてはひとつ厳密に規定すべきではないかという意見も出ておりますので、この点についての大臣の御意見を伺いたいと思います。
  12. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題は私もよく承知しております。昨日田嶋委員に、東京近傍のある県で起つた事件と申し上げれば大体おわかりでしようがと申しましたのは水戸事件なんであります。弁護士会で決議をして私のところに届ける前に、私偶然弁護士連合会に行きましてその話を聞いて、容易ならぬ問題だと思いまして即日総長から当該地責任者に対して通知してもらつたわけであります。そのほかにだんだん出て参りますので、今度は総長から一般的な訓示として出すものを準備しておるのであります。そこでおととしの春、当時の総裁から諮問事項として三十九条の三項を出したことは事実であります。その結果当時としては、確かに問題はあるけれども、今すぐこれを改正案に入れるということはもう少し研究してからにしようということになつたんだそうであります。私の考えとしては、法文自体にもいろいろ御批判を仰がなければなりませんが、結局どのケースに何分許すということは運用であつて、私の知つておる限りでは、例外的な非常識な人がそういうことをやつておるのであつて一般的訓示をもう少し手きびしく出したいと思つております。水戸その他私の知つておるところで四、五件あります。きのうの田嶋委員お話だと、大分これは伝染しておるというふうに伺いましたが、これは容易でないことだと存じておりまして、私の考え岡田委員意見が違うかもしれませんが、相当厳格な訓示をして徹底させたいと思つております。
  13. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の御意見伺つておりますと、条文それ自体改正をやらないで、訓示を通じて趣旨を徹底させたいというようでありますが、私は訓示程度では解決がつかないと思います。なぜならばただいま大臣の御答弁になりました水戸事件にいたしましても、接見を事実上禁止いたしましたのは田辺という次席検事であります。しかも次席検事会同においてこの問題が再三言われ、二、三日前からの答弁でも再三言つておられるが、それにもかかわらず次席検事がこういう態度をとつておるということは、訓示程度では解決できないことは明らかであります。むしろ条文上の改正を行つて明確に規定することが私は必要だと思うのであります。そういう点について大臣の御意見を伺いたい。
  14. 犬養健

    犬養国務大臣 これは今度の問題としてでなく条文改正ということをひとつ真剣に考えてみましよう。再検討してみたいと思います。次席検事会同の有様を率直に申し上げますと、いろいろなことを一かたまりに言いますので、多少ぼやける点がありますが、特に三十九条の三項について近ごろ濫用のおそれがあるという訓示を別個に独立したもので出すということは相当きき目がある、今までの体験から言つてもそう考えるのであります。次席会同のときには、一日いろいろなことを朝から晩まで言いますから、それでぼんやりするということはよくないことなのでありますが、そういう意味でなく、独立した訓示を出せばもつと効果がある。しかしそれでこの法文の再検討を逃げるというわけではないのでありまして、あわせてお話を両点とも考えてみたい、こういうふうに思つております。
  15. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま岡田さんからのお話でありますが、ちようど六月の十二日に次席検事会同がありまして、今ごたごたが起きましたのはたしかその前の月じやなかつたかと思いますが……。
  16. 岡田春夫

    岡田(春)委員 六月の初めです。
  17. 岡原昌男

    岡原政府委員 それでその問題はちようど水戸に一件とそれから鳥取に一件と、二つ問題が出ました……。
  18. 岡田春夫

    岡田(春)委員 新潟にもあつた
  19. 岡原昌男

    岡原政府委員 弁護士連合会からそのお知らせを受けまして、それを正式の議題として六月十二日の午後私が主宰した会議に出ました。検事総長からも特にその点のお話があつたわけであります。そのあとの問題としてはまだ私承つておりませんけれども、その六月十二日の会同に基きまして各次席検事がもどつてからは、今のところまだ私聞いておりません。さような次第でありますので御了承願います。
  20. 岡田春夫

    岡田(春)委員 六月以降に起つていないと言われますが、きのう申し上げた千葉県の例なんかはごく最近の問題でございます。ですから単なる訓示程度では私は解決がつかないと思うのですが、この点はこればかりを言つてつてもしようがないので、問題を発展させて参りまして、あとでまた必要があれば触れて参りたいと思います。
  21. 小林錡

    小林委員長 ちよつと私関連して質問いたしたいと思います。今の弁護人接見のことについて伺いたいのですが、刑事訴訟法の第三十九条の第三項に「捜査のため必要があるときは、公訴提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者防禦準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。」これが非常に今検事局で悪用されておるのであります。日時及び場所をきめることができるというものですから、私も実際の経験があるのですが、今会わせるわけに行かぬ、来週の金曜日に私が警察に出て行つて調べるから、その以後にしてもらいたいというようなことを言われたことがあります。一週間も先です。だからもし十日勾留期間があるというときには、接見弁護人にも許さないでおいて、最後に九日かあるいは十日の日に許せばよい、あるいは二十日の場合になれば、最後の二十日でもよろしいというように日時制限されますと、結局は弁護人を選ぶという趣旨に合わぬようになるのです。また場所をわざわざ遠くの方の警察に入れて、弁護人が容易に行つて会えぬようなところへ持つて行つたりしたようなこともあります。この日時場所指定というのは一体どういう範囲でおやりになるのですか。弁護人が非常に多いときにはまたそれはお困りになるときもあると思いますけれども、これが悪用されますと、この条文効果が生きぬことになりまして、結局条文をかえなければならぬようなことになると思います。
  22. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま御指摘のようにいろいろなごたごたがございまして、私どもも実は恐縮しておるような次第であります。この三十九条の接見、交通の制限につきましては、もとよりその法律建前からいたしまして、一応原則というものが第一項に書いてございます。ただ限度というものが、やはり捜査段階における被疑者の立場というところからおのずから制限を受ける、こういうことが第三項に出て参つたわけでございます。従つて第三項の公訴提起前に限り日時場所あるいは時間の指定をすることができるというのは、そういう意味から読むべきでありまして、この三十九条の第三項の但書において、「その指定は、被疑者防禦準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。」これがよく趣旨を徹底して読まなければいかぬ条文だと私も考えております。そこで具体的に、それではどの事件にどこで何分だれ弁護士面会を許すか、その指定をするか、この問題につきましてはかなり事件ごとに違つて来るのでございまして、たとえばある種の事件によりましては、一時間以上もゆつくりと話を聞かなければ事件の内容がわからない。従つてせつかく弁護人になつて弁護権を行使することができないという場合もございましようし、あるいは弁護士さんの都合で、十分あるいはときには五分会つて大体のことをあれすればわかるというふうな場合もあり得るわけでございます。そういうような点につきまして具体的な意見で相当違つて参りますので、私どもとして、たとえば何分以上何分以下ということはもちろん申し上げることができません。これは結局個々の具体的の事件でかわつて来るわけでございますが、ただ一番検察庁の方で困つた例を申し上げますと、弁護人がたくさんつかれる場合に、たとえば五人なら五人つきます場合に、ある弁護人最初面会に行かれて、そのあとで、私も弁護人になることになつたからというとこれも許さなければならない。次にまた、またというので、五人もございますと、毎日一人ずつあれしましても、それで五日とられる。これは割合にいなかの、留置されている場所検察庁との間が非常に短かい場合にはわりに簡単に都合がつくわけでありますが、東京のように、東京拘置所とこちらというふうな関係になりますと、たとえば京京拘置所では午前、午後と二回にわけて出廷をして来るわけであります。その連れて来るのは、午前がつぶれますと午後だけということになるというふうなことで、この指定を、たとえば最初弁護人につかれたときに一回、それから大体の捜査の見通しがついて、最終的に起訴、不起訴を決するというふうな段階になりましたときに一回というふうに、東京最小限度二回は許すという方針のもとに考えているようでございます。ただこれは一応こういうふうなことを考えているというだけで、具体的な事情として、たとえば突発的に何か事情が出て来た。家族などの関係でどうしてもこういうことが必要だというふうなことがございますれば、この弁護上ぜひ必要な限度においては許すべきものであろう。その点について次席検事会同においてもいろいろ問題の提起がございまして、ちよつと申し上げにくいのでございますが、逆に弁護権濫用にわたるがごとき、たとえば次々と弁護人をつけて全部面会をしに行くという戦術をとつたことがございますそうですが、そういう非常に極端な場合をおもんぱかつて、本来の弁護権制限することはもちろんいかぬことでございますので、私どもといたしましては、事件ごとに応じ、決して弁護権を不当に制限することがあつてはならない点に重点を置いて、実は先般の次席検事会同の際にも、協議事項にわざわざこのことを取上げたわけでございます。検事総長からもこの会同の席上指示がございまして、私どももその点を強く主張いたしました。なお検事会同が今月の上旬に開かれました際にもこの話をいたしまして、検事長でございますから心構えの問題としてお話いたしたものでございますが、こういう問題についても、監督官においては具体的事件の何か話があつたら、その実情等について十分究明して監督権を発動していただきたい、かようなことを申したような次第でございまして、今後もこの点については十分注意いたしたいと考えます。
  23. 小林錡

    小林委員長 ただいま伺いますと、面会最小限度初めとしまいと二回だけを大体原則としている、こういうふうに東京検事局ではさまつていると伺つてよろしようございますか。
  24. 岡原昌男

    岡原政府委員 最小限度二回ということを考えているようであります。と申しますのは、この捜査段階においていろいろ突発的な事情で新たな証拠が出て来た。これについて本人に打合せをしなければいかぬという場合には、これまた特別の事情が発生したわけでございます。とにかく最初弁護届を出されるために会つて、大体事件内容はどの程度であるか、どういう事件であるかということを打合せるときと、それから最後に大体の見通しをつけて起訴、不起訴のどちらかになりそうな段階において一回、こういうふうなことは最小限度というふうに言つておられましたが、そうそうような運用方針になつております。  なおそれらの点につきましては、それぞれ弁護士会と事実上連絡をいたしまして、弁護士会の首脳部の方々とも大体打合せをいたしまして――これは各地ともさようでございますが、水戸の場合も、実は書面によつてあの指定をするということについて打合せができましたのが、それがちよつとした行き違いでごたごたが生じたということであつたわけでございます。ですから現地の弁護士会と大体話合いがついた上でこういう運用方針をきめる。さようなことにこの前の次席検事会同でも問題を起さぬようにやるという趣旨でやつたわけでございます。
  25. 田嶋好文

    田嶋委員 実は今委員長が尋ねておる問題は、きのうちよつとお聞きしたのですが、中途半端なものがありますので、お尋ねします。なぜそれを聞くかと言いますと、刑事訴訟法が施行されて、私たちの経験としては、一年かそこらはこの法律が非常に権威ある法律として守られておる。接見も自由であり、そうした制限も付さなかつたというのが常識のように考えます。その後騒擾事件、要するに左翼活動の事件がふえて参りまして、それらに対してやはり万やむを得ないというような事情のもとにそうした接見の禁止だとかいろいろな制限だとかを青春せられるようになつた。実はわれわれ法務委員会でも共産党、左翼活動に対しては、ある程度寛大な目をもつて法の運営を見守つて来たわけであります。ところでわれわれが寛大な目をもつて見守つて来た気持がわからなかつたのかどうかわかりませんが、その運営が左翼活動に関係した事件、集団的事件、非合法的事件から逸脱しまして正常な事件にまで――今東京検事局が前後二回ときめたように適用されるのが当然であるという観念で進んで来ておるのじやないか。とすればわれわれは今後のことを考えるときに、これはぜひともここに何らかの制約を設けておかないことには、国会でこの問題についてこのままそうですがといつて見のがして行くわけにはどうしても行かないのであります。できればここで一年間守つてくださつて――一年間とがつちり日にちはきまつていないのですが、それくらいは守られておつて、しかも支障のなかつた問題が、急に具体的に、そうした集団的事件、非合法的事件に対する寛大な取扱いに味をしめて、一般の事件にまで及んで来る。この現象はどうも納得しがたい。法の改正をもとの正常な考えに返す必要があるんじやないかというのがわれわれの考えなんです。それで具体的事件をとらえて昨日来御質問をされておるわけなんですが、この考えが一体妥当であるか妥当でないか。これを聞いておきたい。
  26. 岡原昌男

    岡原政府委員 捜査段階におきます弁護権の行使の問題につきましては、いろいろ運用上も従来問題がございまして、最初の一年間はあまり問題がなかつたと、というのはお互いに両方ともよくわからなかつたために問題なしに来たようなわけでございます。今お話のございました通り、確かにそのきつかけは一部の人がこれを濫用したから発生したということは、それは大いにあると私も存じます、そこでさような一部の特殊な濫用をしたことを根に持つてといいますか、それを理由にして他の一般の人にまで及ぼすのはもちろん行き過ぎでございます。さようなことからたやすくこれを追究する、あるいは制限を強化することは、これはいけないことだと私も考えております。そこで三十九条三項を改正したらどうかというお気持もごもつともと思うのでございますが、ただ現行法の三十九条三項もかなり御苦労してつくつたものと見えまして、但書が非常によく生きていると言いますか、文学としては非常によくできていると思います。この精神がそのままに動く限りにおいては、三十九条三項というのはそれでいいのではないだろうか。結局はこれは運用の問題として私どもは十分に下部にこの思想を注入する義務を感じております。具体的な事件はいろいろお数え願いまして、その都度実は私どももそれぞれの措置をとつております。これはほんとうに即日といつていいくらいすぐ全部筋を通して現地を調査いたしております。そういうことがたび重なりますと、おのずからよくなつて行くと私は考えておりますけれども、先ほど大臣から申されました通り、あらためてこの点だけの通牒等は最高検で用意をいたしております。さような次第でございまして、いましばらく御猶予を願いたいと存ずるのでございます。
  27. 田嶋好文

    田嶋委員 とにかく委員長が今質問されておりますように、事はもう具体的になつてつて、あなたたちの通牒、話合いをもつてしては処理できない段階に来ていることは認めなければならぬと思う。通牒なり話合いなりで済むならば、われわれは別にこれをやかましく言わないわけでございまして、まことに岡原局長にして権威のない話でございますが、次席会同がおありになつた直後に――具体的に私がやつている事件をあげてもいいのですが、半ば公に行われているのですからどうにもならないという段階ではないか。そこで私は、どうにもならぬという段階で、特殊の犯罪等を目当てにして、刑事訴訟法改正を出されましたのが、期間五日間の延長、権利保釈制限ということになつたと思うのです。こうした面でやむを得ないということで権利保釈制限をし、期間の五日間の延長をするならば、またある程度被告に有利な点で、特殊な事情制限してもいいのであつて、そしてこの法であなたたちがいろいろ苦労して、一々調査して、さしずしてやるということはとうていできることではないのです。そういうことについては煩を省く意味からしても、私は特殊なしぼり方をしてもいいのではないか、これはぜひ改正の必要があるのではないかと考えているのであります。
  28. 岡原昌男

    岡原政府委員 だんだんと具体的な事案を承りますと、まさしくいろいろわれわれも考えなければいかぬということは言い得るだろうと思います。ただかようになりました事情が、先ほど申し上げました通り、一部の人たち濫用に基因するということは、これはお認めを願えると思うのでございます。  それからもう一つは、これはちよつと速記を中止していただきたいと思います。
  29. 小林錡

    小林委員長 それではちよつと速記を中止してください。     〔速記中止〕
  30. 小林錡

    小林委員長 速記を始めて。
  31. 田嶋好文

    田嶋委員 今のお話はそれはほんとうのことを言つたと思います。私はそれを聞きたかつた。私たちの言いたいこともそうです。一部の悪徳弁護士のために、弁護士の正しい権利が侵害されるということは困ります。それは悪徳弁護士が罪証の隠滅をするということが、おそらく根本であろうと思います。それは私たちにもわかります。しかしそれが正当な権利を狭めて行くことにはならないと思うのです。実はそうそうような罪証隠滅に対しては、法があつて、悪徳弁護士は検挙して処罰することができるのです。それがあるからお聞きしたいと思つたのです。
  32. 岡原昌男

    岡原政府委員 ですから、それがあるから全部に押し進めて行くということではないのです。それは速記に残つておりませんが……。そこで私どもはそれを全部押し進めるというつもりはないけれども、一部には、そうそうふうなことからそういう考え方が出たのじやないかと思うので、その点御了承願いたい、こういう意味で申し上げたわけであります。
  33. 岡田春夫

    岡田(春)委員 つもりとかつもりでないとかいうのは、主観的な問題であつて、具体的にあなたの方で、二回に制限したということは、それはつもりどころでなく、具体的に出ているという証拠ではないでしようか。しかも三十九条の三項で「捜査のため必要があるとき、」はということを書いてあるのは、これは原則ではないはずです。弁護人には接見をさせるということが建前なんであつて、「必要があるときは」というのは、これは一つのそれに関する制限の条項だと思うのです。それを何か原則であるかのごとく二回に制限するというようなことになると、原則であるかのごときことになつてしまう。しかも先ほど濫用するとかなんとかいうことを盛んに言われますが、たとえば濫用の例として、田嶋君の前に委員長が質問されたときにも言われたが、何だか非常にたくさんの弁護士が次々に選任されて、被疑者に会つたというような例があると言つておりますが、これは刑訴法の三十五条で数の制限はやれるのではないか。こういう事例はおそらくないと私は思う。もしそういう点があるとすれば、この三十五条を生かさなかつたのであつて、何かことさらに限定的に二回にきめてしまうというような規則を出すということ自体が、私は誤りだと思う。そういうことは、いわゆるつもりとかつもりでないとかの問題でなくて、それを事実制度化している問題だと思う。しかもあなたの方の話を聞いていると、何か被告人あるいは被疑者の問題については、こういう点は極力認めないようにしているが、勾留理由の開示の問題とか、捜査期間の問題については極力押し進めて行き、こういう問題については認めないようにしようとするような態度自体が私は問題だと思う。
  34. 岡原昌男

    岡原政府委員 御承知通り刑事訴訟法の三十五条のこの数の制限でございますが、これは裁判官の許可によりましていくらでもふえることでございます。なおただ今二回に限るという規則を出したと言うが、これは規則ではないのでございまして、弁護士会と大体打合せをいたしまして、こういう運用方針で行きたいがという了承を得た線でございます。これは要するに別に法律的に拘束するわけではありませんが、その弁護士会に所属の弁護士さんは、大体そうそう方針で面会に行くということについて、弁護士会が了承した、こういうことで運用しておるのでございます。これは規則ではもちろんございません。そういう運用の方針について弁護士会と打合せをしたいということでございます。
  35. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この問題は条文運用の問題ですが、どうも岡原さんの解釈はわれわれの解釈とたいへん違うのではないかと思うので、ひとつ解釈をつき合せてみたいと思うのです。「捜査のため必要があるときは、」ということは、これはどういう意味ですか。
  36. 岡原昌男

    岡原政府委員 捜査のため必要があるときというのは、抽象的に申し上げますと、捜査官が捜査をいたしておりまして、その捜査のじやまになるような時刻においてはちよつと困る、こういう趣旨であろうと思います。
  37. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、捜査の秘密を保持する必要というようなことは、この「捜査のため必要があるときは」ということに入らないということは明らかですね。
  38. 岡原昌男

    岡原政府委員 その捜査の秘密を保持するというのは、どの程度かということは、百九十六条におきまして訓示規定のようなものがございますが、それと関連において、あるいはそういう場合も、捜査の必要上というふうなことが考えられる場合もあるのではないだろうか、かように考えます。
  39. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それは明らかにあなたの間違いです。捜査の秘密というものはどういうことかというと、捜査をしつつあるということが部外にわかることがいけないということであります。この場合の弁護人被疑者との間は、これは部外じやないので、弁護人被疑者は一体となつて捜査段階においても、被疑者自身の権利を擁護しなければならぬ。だから本来弁護士弁護権というものを正しく保護するとすれば、毎朝検事局へ出頭して尋問を受けて、そして夕方留置場へ帰つて来る。そうすれば弁護士は必ず留置場へ行つて、きようは君どういうことを聞かれたか、こう言つて聞いて、そしてそれではあしたこういうことを聞かれるかもしれない、その場合には、君は自分自身の正しい権利を保護するために、こういうふうに答弁すべきものだ。こう言つて弁護士は、捜査のあらゆる段階、あらゆる場合において、常に被疑者の顧問的な立場においてやつて行く。これが弁護士というものの存在理由であり、また弁護士とその被疑者との接見というものを、訴訟法が保障する理由じやないか、こういうふうに私は考える。これについてはどういうふうにお考えですか。
  40. 岡原昌男

    岡原政府委員 百九十六条に、「検察官、検察事務官及び司法警察職員並びに弁護人その他職務上捜査関係のある者は、被疑者その他の者の名誉を害しないように注意し、且つ、捜査の妨げとならないように注意しなければならない。」というふうな規定がございまして、この名誉のあれを重んずるということと同時に、その妨げになるようなことがあつてはならないというふうな趣旨からいたしまして、やはりおのずからなる限度があるのではないかというふうな考え方でございます。
  41. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうするとその点は、弁護人面会するということが、時間的に、たとえば被疑者を問いただすというようなことの妨害になるということになれば、これはもちろん制限ができます。それ以上に、被告人あるいは被疑者が、検事からいかなることを尋問されているかということについては、弁護人にも知らせないというような意味弁護人との交通を禁止するということは、この捜査のため必要ありという限界を越えているということだけは確かだろうと思いますが、どうですか。
  42. 岡原昌男

    岡原政府委員 どの程度まで行けば、それが妨害になるだろうかという問題にも関連して来ると思います。これは具体的な場合で考えてみなければいかぬことになるかと思いますが、とにかく内容的に面会の際にとりかわされることが妨害になるような内容であつてはいかぬといつたような趣旨が三十九条三項に盛られているわけです。
  43. 大橋武夫

    大橋(武)委員 妨害でも二つ意味がありまして、被告人権利を正しく守る。それが検事捜査しようという意図から見ると、あるいは妨害になる場合があるかもしれない。しかしながらそれが正しいことであり、正しく権利を守るためになされることならば、これはあなたのいわゆる妨害の中に入らぬだろう。証拠を隠滅するとか、捜査行為を妨害する、そういうように不当になされる場合において初めて妨害となるだろうと思う。そういう意味で正しい権利保護の行為を制限するということは、この「捜査のため必要があるときは」の中には入らない、そういうものを制限する趣旨ではない、むろんこういうふうに考えておられるだろうと思います。  そこで私がさつき例として申し上げました、毎日検事廷から帰つて来たら、弁護人が行つて、きようは検事さんからどういう調べがありましたかと聞く。それに対して弁護人法律家としての正しいアドヴアイスをする、また翌日もする。毎日それをするということは、捜査のため必要ありとして制限することができるかどうか。これについての具体的なお答えを承りたいと思います。
  44. 岡原昌男

    岡原政府委員 そういう場合でございますと、それは、理論的には、いいということにならざるを得ないと私も考えます。
  45. 田嶋好文

    田嶋委員 岡原さんを責める意味で申し上げるのでないからお許しを願いたいんですが、実は今大橋さんが言つたように、今のあなたのお答えのようなのと反対の現象がある。というのは接見禁止をし、弁護人となるべく会わさないようにというような事件は、これは留置場にすわつたままで、調べを受けずにいる被告人で、むしろ毎日調べられているような被告人は反対に会わして、接見禁止なんかしていない。実際接見禁止をして、会わせないという人は、会つてもいい状態に置かれている事件が多いわけです。十日間も留置場に入れて、ほつたらかして、証拠固めをしている捜査段階にある事件が多いわけです。捜査してしまつて、調書をとり始めた事件は、会わしている。具体的な事件になると反対になつております。ここらあたり実情に照して、私は責めるわけではないので、実際と反する事態がここに起ると今後困るので、特にその注意をいたしておきます。
  46. 岡原昌男

    岡原政府委員 ごもつともでございまして、たとえばほつぽらかしてちつとも調べをしないということが全然ないとは私は申し上げません。そういう場合われわれの方の一応の弁解といたしましては、その間傍証を調べている、こういうことになるわけでございますが、これもざつくばらんに申し上げますと、さようでない場合もあることを私も認めます。さようなことがあつてはいかぬ。しかもその間弁護士にちつとも会わせないというふうなことは、私は法律の精神に反すると思います。そこでそういうふうな点につきましては、先ほど大臣からもお話のありました通り、十分下部にさような、精神を伝えたいと思います。
  47. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今の問題に関連してですが、どうも検察官は捜査弁護人が行きますと、敵側だという感じを持つておる。現に私ども驚いたいのは、検察官の許可を得なければ、被疑者と直接会うことを拒否しているところが多い。必要があり、権利があつても、そんなばかなことがあるのであります。私は忙がしいのに二、三度行つたら、一応電話で連絡しなければ会わせないというところが実際あるんです。  そこで私承りたいことは、捜査ということは真実を発見することではないでしようか。弁護人はむしろ協力して真実を発見するということが使命である。妨害することは使命でない。妨害した者には制裁がある。それでやつていただく。そういう意味において法律が認めておりながら私ども弁護人接見をいやがる検事の行為、これは検事にすでに先入観がある。司法警察官から送つて来たものはそういうこととのみ込んで、そこに無実の問題ができ、人権蹂躙の問題ができて来る。もう少しおおらかな気持で、今大橋委員から御質問したように、いかなる場合でも努めて便宜をはかるくらいの、弁護士面会させるくらいの心構えがほしい。弁護人は真実を発見するための協力者であるかどうかということは、どうですか。そういうことが前提になれば、問題は解決するだろうと思う。
  48. 岡原昌男

    岡原政府委員 理論としてはそれを認めます。
  49. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今の理論でなく、実際に妨害するようなことがあつたから、その問題はこういう具体的な事実があるから、面会禁止をさせる、こういうような処理をとつてもらわなければならぬ、ことに私が非常に心配するのは、被疑者という者はいつもふるえている。検察庁から起訴されるまでの間は味方になるものは弁護人よりほかにない。それでは人権の尊重というものは完全に行われないと思う。そこに拷問事件、無実の罪がありますから、その点は理論でなく、現実に、もし妨害した事実があれば、こういう事実があると指摘して、だから君には会わせないというならけつこうだと思う。こういう態度をお願いしたいと思う。
  50. 岡原昌男

    岡原政府委員 ごもつともでございます。真実発見のために、弁護人が協力するという職責は、私もその通り考えております。従いましてそれに反するような場合は、先ほどもちよつと申し上げました通り、非常に特殊な場合だけでありまして、さような場合をとつてつてほかに及ぼして行くということは、これはできないと私も考えます。御趣旨の点は十分了承して、善処いたします。
  51. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今理論的に弁護権の尊重をお認めいただいたことはけつこうであります。そうなりますと、先ほど東京地検で、入つたときと出る前と二度しか会わせないというような一般的なとりきめをされておられるそうでありますが、そういうものはこの際再検討していただくべきものと思いますが、いかがでありますか。
  52. 岡原昌男

    岡原政府委員 それは十分委員会お話も承りまして、弁護士会と打合せのようなことになつておりますので、一応弁護士会としてはもちろん御異存ないことでもございましようが、これは実は単に東京ばかりでございませんで、全国的に同じような行き方にいたしております。と申しますのは、一定の書式がございまして、その書式で何時から三十分なら三十分と記入する欄がございます。これを拘置的にやる、弁護士さんにも渡すということで今やつておりますので、そういうことについての打合せ等も続けていたしたい、かように考えております。
  53. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はいつか聞こうと思つていたが、岡田君の質問が非常に肯繁に当つていると思う。  大臣にお聞きしたいと思う。現在の刑事訴訟法のもとで行きますと、検察官と弁護士とは対等の地位に立つべきものとわれわれは考える。ところが一万は権力を持つておるものであるし、一方は持たないもので、非常な懸隔があるにもかかわらず、その上特殊の権限を振りまわしてやられることはたくさんある。われわれはこれらの点は今の問題と同じように、かような改正をやられるときに特に出していただくべきものと思うが、それらの点に触れられなかつたことはまことに遺憾だと思います。  そこで大きな問題は、検事のいつも使われる手は、証拠保全に名をかりて、未決勾留者を宣誓せしめて証言をとる。そうして出て来て、それに反したことを言うとただちに偽証罪でひつぱつて行かれる。ああいう被告同士をそういうことでやられるのでもわれわれはふしぎだと思うているのに、今度は第三者を連れて来てそれをやられておる。そうして出て来てうそを言つた承知せぬぞと言う、こういうやり方は私ははなはだどうも不法きわまるものと心得るが、大臣はどうお考えでしようか。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 その点は私も全然同感でございます。それから三十九条の三項の問題でございますが、事実一部には証拠隠滅をはかつて、そのために検察側が懲りたという例もあります。しかし、特殊な例に懲りて一般の問題を不当にゆがめるというようなことがあつてはならないと思います。従来どういうふうにやつていたかといいますと、岡田委員に御説明いただきましたように、水戸事件のように非常識なものはその日のうちに検事総長から注意を与えております。ところがそのほかにもちよちよい出て来ましたので、六月十二日の次席会同で特にこの問題を取上げて、刑事局長から御説明をして、気をつけてもらいたいと言つたのでありますが、その後も田嶋委員に伺うとまだ跡を絶たぬということなので、昨日は、今度は総長の一般にあてた訓示を出そうということになつております。しかし岡田委員より、どうもそれだけではうまく行きそうもないという御意見でありますので、どうやつたら一番ききめがあるか真剣に研究してみます。具体的には、各地の弁護士会と検察側とで接見問題の準則といいますか、基準をきめておるのであります。そういうことを熱心にやつて行きたい、こういうふうに思つております。
  55. 小林錡

    小林委員長 この際ちよつと申し上げます。昨二十二日開会いたしました連合審査会の結果に基きまして、地方行政委員会より本案に関する意見の申出があります。その内容はお手元に配付してある通りでございますが、この取扱いにつきましては後刻御協議を願いたいと思います。  質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  56. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大分皆さんから質疑があつたようですが、これは大臣ぜひお聞きを願いたいと思うのです。この問題はこれほど問題になつているけれども、この問題は超党派的に問題になつている点である。従つて、今度の改正においてもこの点は実は入れるべきであつたと私は思う。弁護士会においても、連合会でいろいろ打合せしたとか、あるいは法制審議会等云々の話もありますが、これは一番大きな問題として出て来ているのであります。しかも先ほどから証拠隠滅の問題とかなんとかいう点も出て来ておりますが、三十九条の三項というのは、これはもう弁護士の章を見ましても、弁護及びその補佐に関する条項なのであつて、この三十九条の趣旨というのは、先ほどから論議の出ているように。被疑者あるいは弁護人の防衛の問題として、防禦の問題としてこれを扱うべきであるのが建前であると思う。かりに証拠隠滅の問題なんかが出て来るとするならば、それはほかの条章において適当な制限を加えるべきなんであつて、たとえば十四章の証拠保全ですか、こちらの方でこれは取扱うべき問題なんである。むしろここではやはり弁護士接見をやるという原則において、明文上これは正確に扱うようにしなければなりませんし、またそれに基いて疑問が出て来ている。今言つたような実情が出て来ているならば、それに必要な改正を行うのは私は当然だと思う。こういう今までの論議等を見られて、大臣としても、まさか政府改正案にこの点が出ておらなかつたから修正されるのは困るというような点は、必ずしもこだわつておらないと思いますが、委員間においてこれは今度の改正案を修正する場合の扱い方として当然出て来ると思います。そういう場合において、政府としてはこれを特別にこだわらないようにやつていただきたいと思うのであります。よくなることならばどんどんよくして行つた方が私はいいと思う。そういう意味で、最後的にこの問題を一応まとめる意味であなたの御答弁を聞いて進めたいと思います。
  57. 犬養健

    犬養国務大臣 ごくあからさまに申し上げますが、昨日岡田さんが御指摘になりました権利保釈の問題の文章よりは、この文章そのものにまあまり欠点を感じていないので、あの方は岡田さんの発言なるほどと実は思つたのであります。しかし、三十九条三項の運用がいかにもひんぴんとして誤られておるということでございますならば、これは相当重大でございますから、私の方は、相当厳重な訓令、各地弁護士会等との緊密な連絡ということをさらに一両日のうちに断行して行きたいと思いますが、条文の方もよく研究してみましよう。しかし私は、率直に申して、三十九条の三項の本文そのものが非常な欠陥があるというように感じておりません。しかし、言い出したからはあとへ引かないという態度は一貫してとつておりませんから、その点だけは御了承願いたいと思います。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 では、次の問題に移つて行きます。まず第一はお伺いしたいのは、これは岡原さんに解釈の問題として特にお伺いしたいのですが、第百五十七条の二項に、「証人尋問の日時及び場所は、あらかじめ、前項の規定により尋問に立ち会うことができる者にこれを通知しなければならない。但し、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示したときは、この限りでない。」となつているが、この「明示したとき」ということの「明示」というのは、どういうように具体的な実務として行われているか、この点をお伺いしたいと思う。
  59. 岡原昌男

    岡原政府委員 これはむしろ裁判所の問題でございますから、裁判所の方からお聞き願いたいと思います。
  60. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 ただいまのお尋ねの法文の解釈ですが、つまり、被告人というものは証人尋問の立会権を持つております。憲法で保障せられている証人審問権といわれるこの権利は、被告人自身がこれを放棄するときは、必ずしもこれを行使させる必要がないというのが憲法上の定められている解釋であります。この「明示」というのは、証人審問権を証人みずからが放棄する意思を裁判所に申し述べる、そういうことでございます。
  61. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも御答弁が十分でないようでありますが、その点は私はわかるのです。憲法三十七条に、「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、」とあつて、この「充分に」に対比する言葉だと思う。しかし、「明示」と言つている限りは、単に立ち会う必要がないという場合よりももつと強い意味が入つていると思うのです。「明示」と書いてあるのですが、具体的にこれはどういう方法がとられているか、実務上の問題としてひとつお答えを願いたいのであります。
  62. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 これが問題になりますのは、法廷外で証人調べをするときにこういう問題が起るわけであります。その場合に、被告人自身が、自分はその場所へ行つてこの証人審問権を行使する権利を放棄する、自分は立ち会わないということを、具体的な場合にはつきり裁判所に書面なりあるいは口頭で申し述べる、そういう場合の規定でございます。
  63. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、ここの規定は、法廷外の規定だけではないでしよう。一般的な規定でしよう。実務においては実際にそういう場合が往々多いにしても、これは一般的な規定としては必要がないというのは当らない。これは一般的な規定と理解すべきだと私は思うのです。
  64. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 それはむろんこの規定は証人尋問についての一般的規定であります。ところが公判手続については、また公判廷における被告人の尋問権というものは確保されておるのでありまして、これは一般的な規定でありますけれども、これの意味公判廷におけるよりも、むしろ公判廷外における方が重要であります。しかしこれはむろん一般的なものであることは間違いありません。
  65. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一応あなたが一般的な規定であるということは、書類によつて明らかにしている……。
  66. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 書類または口頭でもいいわけです。その意思が明確にされておつたとしたら……。
  67. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一応それでいいことにしましよう。これはあと関連して来ます。そのときに伺つてみたい。  そこで今度は岡原さんあるいは大臣に伺いたいのでありますが、改正案の二百八十六条の二の場合であります。いわゆる正当な理由なくして出頭を拒否した場合における公判手続の問題です。「正当な理由がなく出頭を拒否し、監獄官吏による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。」という点が出て来るのでありますが、そこでお伺いしたいのは、これはどういう意味でこの規定を改正案として設けられたか、この点からまず伺つて参りたいと思います。
  68. 岡原昌男

    岡原政府委員 これが問題になりました直接の原因と申しますのは、いわゆる多衆が暴力行為に出ました各地の事件に共通した事象でございますが、勾留中の被告人が、きようは公判期日であるというその朝になりまして、きようの公判廷には出頭しないということから騒ぎを始めるわけでございます。その際にあるいは看守に対して暴行し、あるいは一斉に戸をたたいたり、わめき出したり、あるいは中にはまつ裸になつて監房の中にさかさになるというふうな者が出て参りまして、結局それにてこずつている間に、午前も午後も済んでしまうというような一種の戦術をとつたことがございます。それが各地において頻発いたしましたので、さようなものまで公判廷に是が非でも連れて来なければ公判ができないということでは困りますので、その手当を考えたわけでございます。
  69. 岡田春夫

    岡田(春)委員 各地に頻発をしたというが、私の調べている限りではメーデー事件の問題だと思うのです。それ以外に各地にたくさん起つているという、初めから出頭しなかつたような場合が実際問題としてありますか。
  70. 岡原昌男

    岡原政府委員 大阪の吹田事件においても枚方事件においても、監房の中で非常に騒ぎを起しまして、紛擾を起したということを聞いております。
  71. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし例としてあげれば、これは大臣もよくお聞き願いたいのですが、常識から考えて、長く拘置されておつた者が、裁判をするのにその日の裁判をいやだというようなことは考えられないと思うのです。早く裁判をしてもらつて、いわゆる娑婆へ出してもらいたいというのは、中へ拘束されている者だれでもの気持でありましよう。そこでことさらこういう問題が起きたのは、まず第一に考えられることは、特殊な例か何か事情がなければならないということだと思うのです。ところがその特殊な事情か何か例がなければならないという場合において、今度この改正案の基礎になつた材料というのは、ごく少数の事例なのであります。私の知つている限りにおいても、メーデー事件と吹田事件とそれから岡原さんは言われなかつたけれども、たしか名古屋にも一件くらいあつた程度であつて、それ以外は実はないのであります。ないのが実情なのでありますが、それにもかかわらずこういう規定をことさら投げなければならないという点に、非常に私は問題があるように感ずるのです。特にこの場合も関連して申し上げますが、メーデー事件の場合においてもこういう実情なのであります。これは岡原さんもよく御存じだろうと思いますが、二百六十何人の被告を八つの部にわけて、各部において同時に公判の手続をやつている。同一被疑事件に対してそれぞれ判事がかわつて来るわけです。そうすると裁判長によつて、ここはこういう判決を下す、こつちはこういう判決を下すというので、同一事犯についての判決が違うというような場合から考えてみても、この取扱い自体に問題があつたのであつて、そういうやり方自体が実は問題だ。しかも同時に八部にわけて公判を開くということになれば、弁護人つて八つの部にわけなければならない。そうすると弁護人としても実際上まわり切れないという意味において、これは問題になつて来たのであります。ですからこれはむしろ拘束されている被告なり被疑者の問題ではなくて、裁判所の取扱い自体に実は問題があつた。何よりも証拠に、そのあとにおいてそういう審理方式を変更している。そして一括併合審理でやつているわけです。そういう点から見てもこれは改正すべきものではなくて、むしろ裁判所のやり方について考え方を改めて行かなければならない問題であつたわけであります。そういうのをことさらに例として取上げて、条文上の改正を行うということは、きわめて私は不当だと思う。そういう点について大臣の御意見を伺つておきたいと思います。
  72. 犬養健

    犬養国務大臣 岡田さんの言われるような事情も内在しておつたでありましよう。この問題は私ども相当冷静に、今まであげられた過去に起つた例について見て来たのでありますが、結局こういうことになつているのじやないでしようか。裁判所の審理方式に反対し、裁判を否認するのだという態度に出ている事件が二、三あつたのではないでしようか。これは一緒に行くのをどうしても妨害しているというのは、普通の人には当てはまらないのでありまして、特殊の事件である裁判否認どいう形でやられちやこつちもかなわない。裁判の神聖の名において、こういう意味でここに御審議願つておるのだと思います。
  73. 岡田春夫

    岡田(春)委員 特殊な例ということを大臣お認めになつたのですが、そういう事例があつたとして、それを一般的な規定である刑事訴訟法改正案の中に、特殊な例だけを理由として規定するということは、私は当を得ないと思うのです。この点いかがでしよう。
  74. 犬養健

    犬養国務大臣 これはそのときの被告人の気分その他で起つた問題ならば、単純な意味における特殊な事例でありましようが、裁判を否認する、裁判の審理方式というものに反対なんだ、こういうことになつて来ると、特殊な例すなわちその底を流れる一般的な一つの裁判に対する思想の現われということになつて来るのであつて、ここに改正をお願いしているわけであります。しかもこの条文を見ますと、普通の人には当てはまらないように書いてある。普通の一般人には問題にはならない、こういうふうに考えます。
  75. 岡田春夫

    岡田(春)委員 つまり裁判を否認するという場合と、審理方式に反対するという場合とは、やはり根本的に違うと思うのです。さつき申し上げたように、裁判官が審理方式について適当でない方法をとつたときにおいて、被告がその審理方式について反対するのは当然理由があると思う。しかし否認するという場合は別ですけれども、こういうことについてことさらに明文上の規定を設けますと、こういう審理方式についても被告は不利な立場に追い込まれる面が出て来る。しかも拘置所の内部の事情というものは国民はだれも知らないわけです。どういう扱いをしているかわからないわけです。しかもこの条文だけによると、何か監獄官吏による引致を著しく困難にしたときとか、正当の理由なくしてというような、どうにでも主観的な解釈のできるような条文をもつて、これを律しようとするのは、私はきわめて不当だと思うのであります。あとで憲法上の関係についても、ひとつお伺いしておきたいと思うのですが、憲法上の点からも疑義が出て来ると私は思うのです。そういう意味でも、こういう点の改正行つたというのは、私は納得ができかねるわけです。拘置所の事情なんかについても、大臣はあまり詳細にお調べになつておらないのではないかという感じがするのであります。拘置所が、いろいろな点で非常に待遇が悪い。中にいる被告人が、それに対して反対する。そうすると監獄官吏がこれに対して、引致できないというような理由で、欠席のままで公判の手続をやるということになつて参りすと、私はきわめて不当であり、憲法上にも疑義が出て来ると思うのです。その点いかがでございますか。
  76. 犬養健

    犬養国務大臣 この点はまた別問題でありまして、私は岡田さんの意のあるところに同意なんです。先日も例の姫路の問題が起りましたが、これは待遇その他の点で不当ならば、私は厳重な処置をいたそうと覚悟しておるわけであります。そういう問題、並びに、当日の裁判の方式が気に食わない、そうでないならば、いつまでもすなおに行つて裁判をけたいのだというような問題は、また別問題であります。ただ、これはまた御意見の相違になるかもしれませんが、あの場合、審理方式についての不服従のほかに、どうも裁判というものは否認しているのだというような思想が、あつたように思われますので、そういう裁判の根本な否認によつてあばれるというようなことになりますと、どうも放任しておけないのではないか。しかしお話のように、単純に、分割して審理するのは困るといつておるのに、これに対して暴力を行使していたならば、これは刑務所側の不当な権力の行使だというふうに思います。その点の区別は、良識をもつてやりたいし、またふらちな例があれば、どんどんおつしやつていただきたいと思います。私はそれを決してなおざりにしておく気持はないということを申し上げておきます。
  77. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは別問題ではなくて、条文から当然関連して来る問題です。拘置所の内部の事情というものは、われわれ知らないわけです。たとえばこの間の松本三益氏の問題にいたしましても、大臣から見せていただいた書類を見ると、第三者があの事情を調べたのではなくて、拘置所の中の官吏がそれを調べている。そうすると、拘置所の内部の事情というものをわれわれわからないままに、その事件の当事者の関係だけが、証明をし合つたり何かしなければならないという関係で、必ずしも公正な調査になつて来ないと思うのです。特に監獄官吏が連れて来るのに著しく困難だというような判断は、監獄官吏がすることになつているのですが、現在拘置所の実情なんかを見ると、大臣御存じでしようが、たとえば拘置所の中にいる人たちの一日の副食物費は、十七円五十銭です。こういう程度でやつて行かなければならないという状態で、ほとんど問題にならない。しかも拘置所の中では、われわれから言うならばリンチとも考えられるような、いろいろな処罰が行われております。たとえば鉄砲手錠といつて、鉄砲をかつぐような形に手をまわして手錠をはめる、あるいはうしろ手錠といつて、両手をうしろにまわして手錠をはめる。こういうようなことは、いかに拘置所の中にいるとは言いながら、処罰の規定としては、人権蹂躙もはなはだしいと思います。こういうようなことが拘置所の中で一方的に行われておつて、こういうようにいじめられているときに、きようは公判だ、出て来いと言われた場合、何だと言つて、拘置されている者が反抗的な気分になつて来るのも、無理はないと思います。その場合、何だと言つて出て来ないときに、監獄官吏がかつてに主観的な判断をして、引致を困難ならしめたという報告をかつてにつくつて――しかも第三者がそうであつたかどうかを判断すべき証拠が、事実において出て来ない。そういう実情にあるときに、出て来ませんでしたと言つて公判の手続をとることになると、私は憲法上の規定から言つても、きわめて問題が出て来ると思うのです。何かこれは特殊な例であるからやむを得ないというような扱い方にすると、そういう特殊な人々に対しては、憲法に規定された基本的人権の保障は全然しなくてもいいのだということにもなつて参りまして、特殊な事件であるからかまわないとは言えないと思うのであります。そういう実情等を考慮すると、この点についての改正はきわめて不十分であると思いますが、この点いかがでございますか。
  78. 犬養健

    犬養国務大臣 あなたのおつしやる趣旨も実によくわかります。食費の安いことも事実でございましよう。また、問い合せたら、ふだんから気に食わない者を、引致を著しく困難にしたやつですと言つて、うそをつく場合も絶無とは言えません。それはまた人権擁護局から調べたり、国会で厳重にお調べになつたり、私が戒告したり、いろいろ手があるのであります。また被告人といえども、神様でないから、虫の居どころが悪いときに、きようは公判に出たくないと言つて、最初数分間ごねることもあり得ることなのであります。この規定の予想するところは、そういうことでないので、どうしてもきよう出かけないのだと言つて、先ほどのお話のように、裸になつて大の字になつたり、猛烈にあばれてしまうというのは困るのでありまして、これはどうしても特別の処置が必要だと思うのであります。大してそうでもないのに、これに当てはめるというようなことは、たいへんなことであります。刑務所に対しても十分取締らなければならないと思います。どうもそういう大臣の取締りだけでは心配だというので、あなたはほかの箇条についても御不満のようでありますが、それはこういう国の最高機関である国会で、監視の目を光らせる。また法務省の人権擁護局も、この間も浦和の選挙違反事件で、独立して行つて、大分いろいろなことを調べてくれました。あそこでも十分活動ができますし、ほかの方で濫用を防いで行く、補つて行くことができるのであつて、どうもこの箇条の根本否定論にはなりにくいのではないかと思うのでありますが、なおまた御意見を伺わせていただきたいと思います。
  79. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしこれはいくら訓示をしてみても――実際去年の末に請願としても出してありますから、大臣の方でもお調べになつているだろうと思いますが、実際に病気で動けない者が、仮病扱いにされて、病気じやないのだ。たとえば腸結核と梅毒が相当進行して、歩くこともできないというのを、これは仮病だと言つてつて、正式の病人になつていない。ここで監獄官吏による引致を著しく困難にしたときという場合に、これを証明するのは、仮病であるかどうかの証拠は、監獄のお医者さん、典医というのですか、拘置所医員というのですか、この人たちがこれは病気じやありませんということになれば、被告の方は自分は病気なんだと言つても、別段それに対して対抗し得べき何らのあれが与えられていません。問題は訓示とかそういう問題ではなくて、特に第三者が批判し得べき状態――いわゆる一般社会の中における事件としては、これに対抗し得べきいろいろな要件というものはあり得るけれども、拘置所内の事件である場合には、こういうような条章を入れることによつて、当然一方的に押しつけられるということになつて来ると私は思うのであります。先ほどもちよつとお伺いしておりました刑事訴訟法の百五十七条によりますと、これは憲法三十七条にも、刑事被告人は証人に対して十分に反対審問をし得る権利がはつきり与えられている。ところが被告人が出て来ないというときにその日がたまたま証人の喚問の日である。しかも出て来ないといつている場合には、おそらく百五十七条に規定しているような、きようは出て来るか来ないかということを明示した形で被告人自体に問い合せている場合とは考えられないと思う。ただ一般的に、出て来ないから証人についての反対の審問をすることはできない、そうすれば、完全に被告人に与えられている反対審問権というものがこういう形で奪われてしまうと思う。そうするとこの条章は運用によつて違憲の疑いが非常に出て来る。その例として私は申し上げているわけですが、この条文改正というものは、今申し上げたような実例から見ても私は不当だと思うので、こういう改正はやるべきでないと思います。この点についてはいかがかという点を伺いたい。
  80. 犬養健

    犬養国務大臣 そういう岡田さんの御心配のような点については、個々の処置があると思います。なるほど刑務所のお医者だけでは信用できないという場合も絶無でないと思います。そういう場合には、第三者のお医者さんに遅滞なく来てもらうというような処置、私はすぐとりたいと思つております。たとえばこの間のすずめの事件でも、私は刑務所の医者だけではなく第三者の法医学医にゆだねたいと言つているくらいなんでありまして、そういう点で裁疑者及び被告人の人権というものはできるだけ擁護して行きたい。私の在任中にそういうことに失敗したという足跡をす残ということは、私の生涯の汚点にもなりますので、誠意をもつてやりたいと思つておりますが、さりとて、ここが意見の違いになるのだとも思いますが、御指摘のようなメーデー事件、名古屋事件、枚方事件、吹田事件のような、大あばれにあばれてどうにもしようがないということに対しては、裁判の尊厳からいつても何か処置しなければならない。結局これは法律運用ということになるのではないか。その運用については、いろいろ実際上のふらちな点はできるだけ言つていただきたい。おつしやつていただいた問題については、すべて誠意をもつて処置して行きたい、こういうふうに考えているのでございます。
  81. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点も取上げて行けば限りがないのですが、次に移つて行きたいと思いますけれども、メーデー事件その他の事件で大あばれにあばれたということは、この基礎にはならないと私は思うのです。それ自体はむしろ拘置所内の問題であつて、それを法文上の解釈の理由にするということは、私はこの逐条解釈からいつても筋が通らないと思う。しかもそういう形で被告人あるいは被疑者に対する地位というものをきわめて不利な地位に追い込んでいるような改正は、これはわれわれは支持するわけには行かないと考えているのであります。  またあとあまり時間をかけるといけませんので、次に勾留理由の開示の点について、きのうも大分意見があつたのですが、伺つて参りたいと思います。まず第一に憲法三十四条の解釈を願いたいと思うのですが、三十四条の後段の、「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」こういうふうに明文上うたつてありますが、特にこれについては前後の関係についてひとつ申し上げておきたいと思うのですが、要求があればその理由はただちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないということ、これが勾留理由の開示について大分問題になつておるわけです。まず憲法の御解釈から始めていただきたい。
  82. 野木新一

    ○野木政府委員 この点はたしか新刑事訴訟法が制定されたときの国会でも問題になつたところだと記憶しておりますが、三十四条後段の解釈につきましては、文字通り「何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」というのでありまして、要求があれば、拘禁した理由を本人及び弁護人の出席する公開の法廷で示すという義務を課せられておるわけであります。とにかく拘禁の理由を示す、これが最小限度の憲法の要請でありまして、これを受けて刑事訴訟法では勾留理由開示の手続が設けられ、さらに憲法の要求につけ加えまして意見の開陳という規定もできておるものと了解するわけであります。なお別に、三十四条後段の趣旨をくんでと申しましようか、英米法なんかでもそういう例があるという趣旨をも参酌いたしまして、人身保護法という規定がさらに設けられておるということもすでに御存じのことと存じますが、つけ加えておきます。
  83. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この趣旨は、国民はどんな人でも理由がなければ拘禁されないのだということが原則であつて、もし拘禁されておるような人の要求があれば、その理由はその人自体に納得されるようなものでなければならないという意味だと思うのですが、その点はいかがでございましよう。
  84. 野木新一

    ○野木政府委員 この三十四条後段の趣旨は、要するに昔封建制時代等においては行政官その他の権力が国民を拘束いたしまして、何のために拘置されておるか、またどこに拘束されておるかわからないという事態があつて、非常に人権を蹂躙するのがはなはだしかつたのでありまして、それに対して国民の方からいろいろ闘争した結果こういうような規定が出て来たという歴史的な背景があるものだと存ずる次第であります。従つて日本国憲法の要求しておるところも、国民が別に何らの理由もなくて拘禁され、しかもいつどこにどういうわけで拘禁されておるかわからないというような事態があつてはならないので、少くとも本人とかその他利害関係者が、どういう理由で本人が拘禁されておるかという要求があつたならば、万人還視の公開の法廷でその理由を述べなければならぬ。そしてその理由が不当なものであつたならば、不当監禁ということで告発するとか、あるいは刑事訴訟法でいえばすみやかに勾留取消しを求めるとかそれぞれの処置がそれぞれの法規にあるわけであります。少くとも最小限その理由を万人還視の公開の法廷で示さなければならないという点を保障しておる可のとわれわれは存じる次第であります。
  85. 岡田春夫

    岡田(春)委員 最小限度の憲法の要請として理由を開示しなければならないということになれば、これについて意見陳述するということは、これに関連する事項として当然出て来ることであろうと思いますが、この点はいかがですか。
  86. 野木新一

    ○野木政府委員 憲法は一種のわくを規定したものでありまするから、憲法自体の要請として示せば一応そこで憲法自体の要請は達し得たものであると存ずる次第であります。それ以外に意見を述べる機会を与えるとか、あるいはほかの救済手段を与えるとか、どういうような救済手段を与えるかということは別個の立法上の措置でありまして、この救済手段が全然なければ全体として憲法の趣旨を全うするという点に欠ける点があるといたしますならば、ほかの点にそれぞれの措置があれば、意見を述べる機会を与えるということだけが絶対に要請されている趣旨だとは必ずしも考えられないところであります。
  87. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私も最低限度において理由が開示されなければならないという憲法の趣旨において考えてみると、当然そういう開示された理由について、その理由が国民にわからないような理由であつたのではしようがないのであつて、少くともその憲法の趣旨というものは、その対象になる人に対してわかるものでなくちやいけないと思うのです。そのためにはたとえば裁判長といえども、これは人間でありますから実際の例になつて参りますと、開示をしたという場合に、その開示の理由について、開示を受けている被疑者あるいは被告人ですか、本人がわからないけれども、何だか開示されたらそれで終るのだというような形式的なもので過されるものではなくて、憲法の趣旨というものは、あくまでも国民どいうものは理由がなくて拘禁されるということはないのだ。しかしその理由というものはこうなんだということかわかるようなものでなければならない。何か形式的に意見陳述をするということが憲法の要請ではなくて、むしろやはり意見陳述をし得るということは、その理由が納得し得るためには必要であろうと私は考える。この憲法の趣旨から行けばそういうことまで含まれて来ると思うのですが、こういう点についてはいかがでございましよう。
  88. 野木新一

    ○野木政府委員 先ほども申し上げましたように、憲法は一つのわくを規定した部分もありますので、意見を述べる機会を与えた方が一方としては妥当であると存ぜられますが、かりに意見を述べる機会を与えられるというような立法の考え方をした場合にそれがただちに違憲であると言えるか言えないか――ただちに違憲であるとは言えないのではないかと存ずる次第であります。
  89. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それできのうも大分この問題について岸さんの管弁をいただいたのですが、これは大臣もお聞きを願いたいのです。勾留理由の開示公判の法廷が混乱をしているという場合には、これはきのうまでのいろいろの御答弁を伺うと何か被告が意識的に混乱をさしておる、それが困るんだということばかりが問題になつておるわけであります。ところが裁判長の訴訟指揮権の問題から見ましても、法廷秩序維持法の問題から見ましても、これについて指揮をし得る権根というものは、実はたくさん与えられておるわけであります。これ以上被疑者に対してその自由を奪うような規定を今度は出そうとしておるわけであります。従つてこうなつて参りますと、現行刑事訴訟法原則というものは著しくゆがめられて来ていると思う。ただいま法制局からの答弁もありましたけれども、憲法上の趣旨としては、少くともその理由がその本人に対してわかるようなものでなければならないのにかかわらず、裁判長自身がその理由を開示する場合にきわめて抽象的である場合が非常に多いのであります。そういう点がそもそも根本の原因であると私は考えているのです。それに対して何らの措置が行われないで、今度のような改正を行うということは、被疑者に対して著しく不当な地位を押しつけるものであり、憲法上の趣旨にも反すると私は思うのであります。こういう点について犬養国務大臣からまず伺いたい。
  90. 犬養健

    犬養国務大臣 昨日どなたかの委員から御質問がありまして、法廷の実情についてお答えをしたのでありますが、それだけがただいま御質問のように勾留理由開示を必要とする根拠にしてはおらないのであります。今法制局からお話のありましたように、勾留理由を開示するということは、勾留理由を元々のように公にしないで、やみからやみに葬ることを許さない、これが憲法三十四条後段で予期するところなのでありまして、それ以上のことは予期していないというのが大体の定説なのであります。もつと詳しく申し上げれば、團藤教授などのように、その場合意見陳述というものが憲法に予期されているところであるという学者もありますが、そのほかには東大の宮澤教授でありますとか、兼子教授、成蹊大学の高柳学長、あるいは一橋大学の田上教授、それから元東大教授で刑事訴訟法の大家といわれておる小野清一郎博士などは、みな憲法はそこまで予期していないという議論なのであります。大体多くの人は憲法はそこまで規定していないという議論であります。さりとて勾留理由開示について意見を言いたい向きもあろうから、それは何かの形で言つてもらおうじやないか、但し――これからは、この間岡田さんがお聞取りくださつた今の答弁内容になるのでありますが、蓄音機のレコードで実情を聞いても、われわれはとても法廷秩序に関する法律をもつてしても、いかんともすべからず、一種の戦争の場所みたいになつておりまして、これではどうも法廷の秩序というものが有名無実になるから何かの措置をしたい。さりとて被告人弁護人及び関係者にも理由開示について何かの意思表示をさせるということはよいことであるが、ただ書面でやつてもらおうというのが本条文改正理由なのであります。その点は十分中庸をとつたつもりでありまして、御異論のある気持はわかります、しかし法律というものはやはり時代の反映なのでありまして、実情がどうしてもそれにそぐわないということならば、立法上何らかの措置をしなければならないのはやむを得ない、こういう立場でもつて改正を試みたわけでございます。  なおつけ加えて申し上げまするが、もちろん裁判所が適当と認める場合、必要と認める場合は、口頭の陳述を禁止しているものではございません。この点をよく御了解願いたいと思います。
  91. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の大臣の御答弁を聞くと、レコードで聞く云々というお話がありますけれども意見陳述というものは、規則の八十五条で十分間にきめられております。最近は意見陳述それ自体は十分以内で全部やつているのです。従つて意見陳述において混乱があつたというような実例はないはずであります。もしそういう実例がおありになるならば、ひとつレコードでも何でもお話願いたいと思うのですが、今しきりに岡原さん手を振つておられるから、そうでないならば、ひとつ具体的に例示していただきたいと思います。
  92. 岡原昌男

    岡原政府委員 実際の公判廷の開示の法廷の模様を聞きますと、次々と弁護人が控えておりまして一人十分ということに通常なつておりますが、十分でいくら制止してもやめぬ、従つて次の弁護士さんが今度自分の意見陳述するというので待つておるわけでございまして、その権利を奪うわけに行きませんので、制止しながらも次々とだらだらと話が続くという状況が、大体二、三十分、四、五十分はまだいいところでありまして、一人一時間以上も続く。いくら裁判長が途中で制止いたしましても、それが続くというような状況が多いのでございます。その上次の人がちやんと十分しやべる権利を持つておりますから、その権利を奪うわけに行きませんので、十分済んだからこれでいいと言つて退席するわけに行かないわけであります。それが本件のおもな理由でございます。
  93. 岡田春夫

    岡田(春)委員 岡原さんの言つている説明は、これは二、三年前の話だろうと思うのです。規則の出ないころの話を言つているのであつて、最近の実情はそんなことはないはずなんです。意見陳述について、ストツプ・ウオツチを持つて来て、裁判長が十分たつたからやめろと言つた実例があるのです。それほどまで厳格にやつているような例もあるのに、それを越えて三十分も四十分もやつているということは、これは意見陳述ではないのです。岡原さんの言つているのは意見陳述でなくて開示に対する質問なのであります。ですからそこのところをあなたは混同しているのです。意見陳述を十分以上やつているのではないのであります。おそらくレコードをかけられたらわかると思いますが、レコードだつて喧騒になつたとかなんとかいうところは意見陳述ではないはずです。それでちようど岸さんも見えておりますし、事実の問題は事実として明らかにして行かないと、それはそうでなかつた、こつちはこうであろうと言つて押問答しておつても、根本の改正の問題には――これはことさらなる理由を設けて政府改正されるということになると、大臣としてもおそらく本意でないと思いますから、これは明らかにしておいていただきたいと思います。
  94. 岡原昌男

    岡原政府委員 具体的に意見陳述であるか質疑であるかという点は、実際の公判をお聞き願えると一番よくわかるのでありますが、(「私も聞いているから言つているのだ」と呼ぶ者あり)大体彼らのいわゆる人生観、社会観から始まりまして、結局この事件との関係に及ぶということだろうと思うのですが、その事件の本来の勾留そのものの理由その他には全然触れずに、自分の社会観を述べるということで一時間なり二時間しやべる、こういうようなことでございます。
  95. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大分具体的な岡原さんのお話ですから、それではこういう点を伺いましよう。私の聞いている開示公判の場合には、裁判長の開示する場合は、たいてい六十条の二号、三号、これだけで終りです。これは大臣もぜひ聞いていただきたいのですが、長い間勾留されている者が開示公判があつた、その理由は何だと聞いた場合に、六十条の二号において「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」三号において「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」この六十条の二号、三号の該当しますからと言うだけで終りなのであります。これで一体理由を開示するということになるかどうか。こんなことでは勾留されている者は理由としてわからないのです。そういうところに実は根本の原因があるということを大臣は御存じにならなくてはいけないと思う。こういう実例であるという点岡原さんどうですか。こういう実例以外にないはずです。
  96. 岡原昌男

    岡原政府委員 これはちようど裁判所から岸さんがお見えになつておりますので、そちらの方から御説明願つた方がいいかと存じます。
  97. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 ただいまお話がございましたけれども、規則で意見陳述の時間を十分に限つているにもかかわらず、あの規則が守られているというケースはごくまれで、ほとんどないと思います。現に事件を扱つている裁判官たち意見を聞きましても、意見陳述が時間的に十分に限られた後は、質問に名をかりての意見陳述という形で、この規定が守られないという実情なのであります。それから、この勾留理由の開示にあたつて、その法律条文だけを述べているというお話でありますが、そういう例はないと思います。
  98. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ないですか。断定できますか。
  99. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 そういう例はほとんどありません。つまり罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と六十条で規定している、その犯罪の嫌疑をまず告げて、その犯罪の嫌疑を認めるについてどういう論拠があるか、その論拠の標目をあげております。それから逃亡のおそれとか、罪証の隠滅について、裁判官が心証を抱いた理由を告げております。その理由の告げ方が不十分だというので、当事者と裁判官との間で非常に押問答が繰返されるわけであります。ところが勾留理由開示でどの程度の裁判官の心証を告げるかというと、これは法律の制度の問題になりますが、もちろん判決ではありませんし、裁判でもしないわけで、ことに捜査段階で、裁判官が事件の内容にわたつて、判決手続におけるような審理をした結果を告げるものでもないのでありまして、判決においてすら証拠は証拠の標目をあげれば足りるというふうに法律上規定されておるのであります。判決手続の場合に比べれば、それははなはだ簡単な理由になることは、これは法律の制度上やむを得ないことだろうと思いますが、その点について当事者との間にいろいろなとりかわしがあつて、つまり裁判官との間に押問答という光景が見られておるのであります。この点は昨日も申しましたが、勾留理由開示手続というのは、勾留の当否を争うので、弁論手続でもなく、裁判手続でもないのであつて、その点に誤解があるのではないかと思います。これは法律に三百五十四条というものがあります。これは条文の位置が離れているので、ちよつとわかりにくい規定でありますが、三百五十四条の規定を見ましても、この勾留理由開示手続というものは、決して勾留の当否について当事者が弁論する手続じやないということがはつきりいたすのであります。開示の手続があつた場合には、その開示の請求をして者は、勾留に関して上訴の申立てをすることができるというのが三百五十四条の規定であります。その規定から見ますと、勾留理由開示で裁判官の示した勾留理由、それが納得が行かないというときには、勾留そのものを争うという手続で行くべきだというのが、法律建前であるわけであります。そのほかに八十七条とか九十一条で、勾留取消し変更の手続というものが規定されて、勾留の当否を争う手続は、別に法律上の制度として認められておるのであります。それからまたそのほかに、人身保護法の制度というものがあるのであります。勾留理由開示の手続は裁判手続でもなければ、弁論手続でもない。先ほど法制局から説明がありましたが、どういう理由で、どういう見解でこの被拘禁者が勾留されるに至つたかということを、公の法廷で明らかにする、それがこの制度の眼目であるので、その点を十分御了解願いたいと思います。
  100. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは問題が重大です。あなたも判事の立場として、まさかそのときだけの話を言つておられるとは思わないのですが、私も実は相当開示公判の場合の実情を見ているのです。そういう場合に、六十条の二号、三号をくるめて具体的に、相当な理由というその相当に値するようなことを言つている例を、あまり私は聞いたことがない。それなのにあなたは、そういうことはほとんどないというようなお話ですと――これは速記録にも載つておりますので、問題は重大だと思います。そういう点で、現実にこうじやありませんか。弁護人の方で二号、三号の具体的な理由を問いたいと言つた場合に、一般の開示公判の場合には、どこでも裁判長は、理由理由は言えないと言つて、それで打切つているじやありませんか。そういうような事例があるのに、あなたの方は証拠物やそういうものの存在を示して、相当の理由言つているというようなことを言われるが、これは現在残念なことに、開示公判の場合に、――ここの委員諸君は弁護士の方も多いけれども、開示公判に携わつておられる方は比較的少いわけです。私以外の方で、こういう実情について、もしお話いただけばけつこうなのですが、あまりお話願えない点が私は残念なんでありますけれども、実情はそうなんです。それなのに、今ことさらに相当の理由言つているなどというようにお話になつているとするならば、あなたは判事としての立場もおありになるので、公正なことを言つておられると思つて、私はあまり言わなかつたのですが、事実をもつと明らかに言つていただきたいと思う。
  101. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 ただいまお話がありましたが、相当であるかどうかについての価値判断の問題が、裁判官と請求者との間で違うわけです。どの程度の相当性を開示しなければならぬか。これは裁判官の心証を告げることになると思います。裁判官の心証と申しましても、先ほど申しましたように、判決手続における心証があるはずはないわけです。これは捜査段階における心証を告げればいいわけです。しかも公判期日前には捜査記録を公にすることができないという規定があるのです。捜査の内容を全部その開示手続でさらけ出すことはできない。そういう制度、制約のもとにおいて、裁判官が勾留理由を告げておる、その点を十分御了解願いたいと思うのであります。理由理由は言えないなどというそういう言葉は、おそらく裁判官と請求者との間のいろいろなやりとりのときに出た言葉で、初めからこの六十条の一項二号、三号の、その理由理由は言えない、そういう開示の公判手続はやつていない、さように私は思います。
  102. 岡田春夫

    岡田(春)委員 実情はどうかということを、二人きりでああでもない、こうでもないといつても、これはいつまでたつても切りがないと思いますが、大臣は開示公判をごらんになつたことがありますか。ありませんですか。
  103. 犬養健

    犬養国務大臣 私はまだありません。
  104. 岡田春夫

    岡田(春)委員 開示公判をごらんになつておらなければ、大臣はどれを一体信用するかわからないでしよう。おそらく実情は、先ほど岸さんはああいつたけれども、そうじやないのです。六十条の二号、三号……。
  105. 小林錡

    小林委員長 開示の公判でずいぶす妨害されたレコードがあるそうです。一ぺん聞くといい。そうするとすぐわかるということですが、聞きましようか。
  106. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それを今私の審議の最中にやるのもいいです。しかしそのあとでまた続けますよ。やつていただいてけつこうです。
  107. 小林錡

    小林委員長 質問を続けてください。
  108. 犬養健

    犬養国務大臣 今岸説明員とあなたのやりとりの信憑性という意味からお尋ねなのでありましようけれども、私は開示公判に立ち会つたことはありません。しかし問題は重大でありますかり、実情を、ぜひ行つていろいろ納得するようにしたいものだというときに、このレコードの問題が起つてちようどそのじきあとで、吐くに法制審議会がありまして、私が会長を勤めておりますが、そこでひとつ聞こう、ではいい折だからぜひ聞きたいものだというので聞いたのでありますが、私の感じでは実に驚きました。法廷秩序に関する法律なんかでとてもやれるものではない、こういうふうに感じたのが、私の実感でございます。
  109. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは岸さんに続いて進めます。今までの御答弁を伺つていると、少くともその理由は六十条の二号、三号であると開示をしたような場合ならば、その前文に書いてある「相当な理由」ということにはならないと思いますが、その点はいかがですか。
  110. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 勾留理由は六十条の二号、三号だけの理由だという勾留理由の開示では不十分で、それは一項の前文の、罪を犯した犯罪の嫌疑についての相当の理由を告げなければなりません。  それからちよつとつけ加えたいのは、実際やつた裁判官などの感想を聞きますと、これは裁判官によつて個人差はあります。非常に強い人、それからその反対の人と、いろいろ個人差がありますから、そのうちのたまたま一つの例にぶつかつて、それを一般化することはできないと思うのです。
  111. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですから今お話のレコードをかけるのも、個人差がありますから、それだからといつて一般化することはできないと思うのです。私は、レコードをたくさん持つて来て、それで判断してくれというのならわかるけれども最後にはすぐ、レコードがあるから聞かせましようかというように――岡原さんは言われなかつたかもしれないけれども、しかしそういうことで例にされると困る。少くとも今の問題点はそうではなくして、六十条の二号、三号を開示しただけでは、私は「相当な」ということには該当しないと思うのです。この点だけはどうしても明らかにしておきたいと思いますが、これだけでは「相当な」ということにはならないと思うのですが、この点を念を押しておきたい。
  112. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 これは先ほども申しましたように、六十条の二号、三号だけでは、法律要求しておる理由の開示にはなりません。
  113. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それで具体的な例として、政府側ではレコードをお出しになるそうですから、私の方でも政府に対して正式に要求します。一番最近の例で私は要求したいと思いますが、この間行われた被疑者松本三盆君の開示公判の場合の記録があるはずです。この記録をひとつ正式にお出しを願いたいと思いますが、大臣、いかがでございましようか。
  114. 犬養健

    犬養国務大臣 できるだけ御納得の行くように、そういう材料を集めます。私は勾留理由というものは、できるだけ被告に丁寧に開示すべきものだと常識上思います。ただこれは、被告人がそれで納得したかどうかということが重点でないのであつて、やみからやみに処理されるようなことなく、勾留理由を公の場所で言うということが憲法の要求しておる点であつて、納得、不納得は別の手続で被告人がやるので、この点はどうしても私は固持しておるのであります。この点はひとつ御了解願いたいと思います。
  115. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それで、もう一つ明らかになつて参りました点は、先ほど岸さんの言つたように、意見陳述でごてごてするということよりも、理由について弁護人から、その理由はどうだということに関連して、どうだこうだという問題が出て来るのだと、さつき岸さんはお話しになりましたね。その答弁を見ても明らかなように、これは理由についての質問なんであります。意見陳述ではないのであります。ですから岡原さんの答弁とは違うのであります。意見陳述の点で混乱をするのではなくて、今も岸さんの言われたように、ごたごたしておるというのは、主としてその開示理由について、その理由はどうなんだという点が問題になるのであつて、その点が中心なんです。そこでこれは岸さんにまず伺いたいと思うのですが、意見陳述といつておる場合には、今言つたような開示理由についての質問は、意見陳述の中に当然含まないと私は解釈しますが、その点はいかがですか。
  116. 小林錡

    小林委員長 判事が理由の開示をしたときに、その判事の開示をした理由を質問するということは、意見陳述の中に入るかどうかという意味ですか。
  117. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一度言い直しましよう。さつきから言つておるように、これは委員長からもぜひ御質問を願いたいと思うのですが、裁判長が一般的には、われわれの聞いておる幾多の例、それから見ておる例を申し上げましても、たいてい開示の理由を、六十条の二号、三号だといつて、それつきりにしてしまうのです。それではわからぬじやないか、もつと具体的に言えということを弁護人から申し立てるわけです。申し立てるというのは意見陳述ではなくて具体的に相当な理由、六十条の二号にある「相当な」という点を質問するわけです。それが問題になつて来る根本なんです。その裁判長が六十条二号、三号というような抽象的な開示をするためにそれに関連しての質問というのは当然意見陳述と切り離してこれはやるべきものであるとわれわれは考えるし、この改正趣旨も、意見陳述はその質問まで含むのではないと私は解すべきだと思う。それが改正案趣旨だと思う。それを何か先ほどの岸さんの答弁を聞いているとあいまいな点も相当あるように考えられるので、そういう質問それ自体は決して意見陳述の中に入らない、法的規定からいつて入らないと解釈すべきだという原則的なことを私は伺いたいというのです。
  118. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 単純なる質問、これはむろん意見陳述には入りません。私が先ほど申しましたのは質問に名をかりての意見陳述、これは全国的な現象として、意見陳述は十分間に制限されておるけれども、質問については何らの制約もないのだから大いに質問する、そういう質問に時間をかけるという現象が全国の裁判所勾留理由開示の手続に現われた現象なのであります。質問に名をかりた意見陳述というものが非常に多い、そういうことを申し上げたのであります。  それから相当性の問題でありますが、これも結局は前々から問題になつております捜査手続に裁判官がどの程度介入するかということと関係しておる、この現行の捜査手続のもとでは、御承知のようなごく限られた範囲しか裁判官は介入できない、介入を許さない建前にあります。その程度の知識によつて令状を出すというのがこの刑訴の建前なんです。そこが根本問題で、そういう根本的な制約があるほかに勾留理由開示手続の段階、これは第一回公判手続上期日前の場合が多い、その場合に捜査記録に現われている証拠を公にすることは法律が禁じておる、そういうわけで裁判官がその記録を読んで得た心証の程度をただ説明する、それがこの現行制度のもとで許される開示の範囲である、そう言わざるを得ないわけであります。それでは足りないといつてそれ以上できないところまでさらに質問がなされて、そして押問答が繰返される、これが現状である、そういうことを申しておるのです。
  119. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですからこれは大臣の方に伺いたいと思うのですが、開示した場合に弁護人の方でそれだけではわからない、それはどういうわけなんだと言つて質問をする、これまでを意見陳述だとして意見陳述をしかも書面でさせるということになりますと、この前も猪俣君からも質問があつたように、開示をしておるときに書面で書かなければならないというような、そういう実際上できないようなことが出て来ることになると思うのです。ですからこれはやはり書面でやるということは実際問題として、実務として困難でできないのです。しかも今岸さんが言われたのは裁判長の言つていることはあくまでも正しいことであつて、私の言つたように六十条の二号と三号にしか言わないのだというような事例について言つておられるのではないわけです。そういうような場合になりますと、それだけではわからないからどうしたのだと聞くと、それからは意見陳述になるからというので書面でやれというようなことになれば、実質的において憲法で規定されている開示公判というものについての八開の法廷でやるという趣旨が、実際には完全に使われないことになつてしまつて、憲法に反するような結果になつてしまうと思うのです。大臣としてもこれをはつきりしておいていただかないと、実際問題として開示公判をやる意味をなさなくなつてしまうと私は思うのです。こういう点について御意目を伺いたいと思うのです。
  120. 犬養健

    犬養国務大臣 岡田委員の意のあるところはよくわかりますが、これは御意見と相違することになると思うのでありますが、勾留理由の開示をする公判勾留理由を多衆の前へ、社会の前へこういうわけで日本国民の一人を勾留するのだ、今どこに勾留しているのだということをやみからやみでなくそこで言う、憲法三十四条後段の規定しているところはそこで終りであります。あと意見陳述というのは憲法の予定以外のはからいなのであります。そこがちよつと御意見との違いじやないかと思ふ。それは違憲ではないと私思います。但し勾留理由を公の前で言うのでありますから、そまつに言うがいいか、丁寧に言うがいいかと言えば、やはり丁寧に言う必要があるのでありますが、一方において実情から言いまして、それに対する質疑という形でまた人世観などが始まる、これはただちよつと困る。これがざつくばらんな飾らない話なのであります。
  121. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう事実が起つて来れば裁判長の職務執権でやればいい。そういうことをやつちやいかぬということを執権でやればいい。しかもそれで言うことを聞かなければ裁判所の秩序維持法で、しかも権限まで持つている立場にありながら、それをやらないでそういう通弊があるあるということでは、これはちよつと話として受取れないことになるわけです。そういう場合があつたならば裁判長の職務執権でやつたらいいじやないか。
  122. 犬養健

    犬養国務大臣 これはたびたび申し上げますように勾留理由開示ということの場面、これは大勢の前でこういうわけでこの人を勾留する、これを読んで終りです。あと法律上のはからいであります。はからいがあだになつて質問に名をかりていろいろまるで戦場みたいなことになり、私の関知するところ、レコードを聞いたところでは法廷秩序に関する法律などではいかんともすべからずと思つているのであります。それは勾留理由開示の裁判の本体と別な問題でありまして便宜をはからつている問題になる。従つてそれはどうにもこうにも秩序に反するということならば書面でやろう、しかし裁判長の必要と認めた場合は口頭陳述も禁ずるところでない、こういうふうに両方に粋をきかしたつもりであるのであります。なお岡田さんの意見を伺いたいと思います。
  123. 岡田春夫

    岡田(春)委員 少し話を発展させます。先ほど開示公判の場合に、これは昨日だつたと思いますが、岸さんの話では刑事訴訟規則によると、今度は閉廷してから意見を述べさせる、書見を出させるというように答弁されたと私は考えております。一つのケースがある、閉廷して書面で意見を出させる場合と、それから口頭で言わせる場合と二つの場合を規則の中に出したいと考えているということを言われたそうじやありませんか。
  124. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 この点ちよつと説明のしかたが不十分だつたかもしれませんが、そういう趣旨でありません。現行法では裁判官が理由を開示したあと意見陳述が済まなければ開示手続は終らないという建前になつております。現行法の規定では、意見陳述がこの法律上の権利として規定されておるだけであります、ところがこの意見陳述というのは先ほど来問題になつておりますように、必ずしも憲法上の要件ではない、その点が問題になつております。要件ではない。そこで法律上の権利としての意見陳述ということはこの際やめてそのかわりに裁判官の理由の開示が済んだならば、その開示された理由に対して請求者が意見書を裁判所に差出す、そこは法律改正……。
  125. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ちよつと聞えない、もう一回言つてください。
  126. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 今度改正されますと、裁判官の理由開示が終りますとそれで開示手続というものは終ることになります。これが本来の開示手続です。その手続が終つて、裁判官が示した理由に対して意見書を請求者が提出する、それが法律建前になるわけです。それだけではなくて、今度規則で考えておりますのは、法律の方はそのように改正されるとしましても、規則の方でさらに裁判所が相当と認めるときには、あるいは必要と認めるときには裁判官が理由を開示したあとで、すぐその場で口頭で意見陳述をさせることができるというふうにその辺は従来通りの規定を置く、さういう意味で二本建になるわけです。ですから法律の規定が安られて普通に行けば、だれでも口頭で意見をすぐ開示後に述べる機会を持つ、その点については前とかわらないわけです。そういう意味であります。
  127. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは開示をすればそれで終り、場合によるとそれで閉廷をして、意見陳述を書面でさせる場合と、やらせない場合が出て来るわけですね。
  128. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 書面による意見陳述をやらせない場合は絶対ないのです。
  129. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですから閉廷をしてしまつて、そのあと書面による陳述はやらせるわけですか。
  130. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 やらせるわけです。それがこの法律の規定になるわけなんです。
  131. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは八十三条の勾留理由の開示は公開の法廷でやる、そうして開示についての意見陳述は公開の法廷ではないところでやらせる、こういうことになるわけですか。
  132. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 これはそういうことになります。開示手続というのは、意見陳述が開示手続の本質的なものじやないという考え方からすれば、それはそういうふうになります。
  133. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは八十四条のつまり書面で意見を述べることができるということを規定する必要はないじやないですか。
  134. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 それは理論上はまさにその通りなんです。意見陳述権を削除しても問題ないわけです。現に法制審議会では相当有力にそういう意見も出たくらいなんです。しかしそういう改革はあまりにも急激だ、そういう意味でこの書面という一つの妥協的な、折衷的な措置がとられているわけです。
  135. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今御答弁通り、それでは実質的に意見陳述をしない場合と同様ではありませんか。今あなたの答弁によると、実質的にはそう言われたのではありませんか。
  136. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 実質的には書面による意見陳述、つまり意見書の提出というものが、今度の改正法律の規定で権利として認められることになるのですから、その点が違うわけです。
  137. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし閉廷してしまつたあと意見陳述権利として認めてみてもしようがないじやありませんか、実際にそういう書面で出すというのは勾留取消しの請求もできるわけです。これは理論として聞いていただきたいのですが、そういう場合に閉廷になつてしまつてから意見陳述をするというぐらいならば、だれもこんなあれを使いませんよ。勾留取消しの請求をやりますよ。あるいは書面による勾留に対する抗告をやります。それをやるのであつて、それならばこれをとつてしまつた方がいいのではないですか。
  138. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 この意見陳述ということについての法律的性質、これを純粋に理論的に考えて行きますならば、まさにお説の通りなんです。ところがそれはあまり急激な変化だというので……。
  139. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや実質的にかわりがないじやありませんか。
  140. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 しかし意見書の提出というものは権利として認められておる、その意見書の内容いかんによつては、裁判所に対して勾留取消しの請求をしている場合に対して認められる場合もあり得るわけです。そういう場合には裁判所はそれに対して許すかどうかの決定をしなければならぬ、そういうことになります。
  141. 岡田春夫

    岡田(春)委員 刑事訴訟法というのは法律全体が訴訟手続なのです。訴訟手続の中で八十四条で、今も岸さんの言われた通りに、現行法の場合には意見陳述するというのは手続の中に入るわけです。ところが改正法案によると、書面で、意見陳述する場合には手続の中に入つて来ないわけです。そうするとこれはこの前から言われたように本建築に関する部分になつて来るわけです。手続自体の廃止をここでやつていることを明らかにしているわけです。ですから決してこれは修繕ではないのであります。本質的な改善なのです。そうじやありませんか。
  142. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 現行法の口頭による意見陳述の制度のもとにおきましても意見陳述がなされた、その陳述された意見というものは何ら裁判所に対して法律上の効果を持つものではありませんで、その点については口頭によろうが書面によろうが、やはり法律効果においては実質上はかわりない、こういうことになります。
  143. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし開示公判意味はどういうところにあるか、開示公判をもう一度明らかにしていただきたいのですが、現行法における開示公判意見陳述ということは開示公判の中の手続の一部なのです。そうすると開示公判で、法律的にはないにしても意見陳述をやつた場合にそれを裁判長が耳をふさいで聞かないわけはありませんでしよう。聞いているのでしよう。そうすれば今度の場合には、公開の法廷ではなくて手続が済んでしまつて、公開の法廷であつたにしても手続ではないという場合になつて来ると、これは手続としての場合と手続じやなくなつた場合とはやはり本質的な差があるということは明らかになつているのではありませんか。
  144. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 意見陳述が公開の法廷における手続の一部になるかどうかという問題については、改正前と改正後ではかわつて来ます。しかし現行法における意見陳述も、それ自体としては何ら裁判所に対する法律上の効果を持つものではないのです。その点は書面でも同じ、口頭をもつて公開の法廷でやりますと裁判長は耳でそれを聞く、書面になりますとその書面を読む、それは同じことなのです。のみならず今度この規則で規定するというのは、裁判所が必要と認めるときは従来通り公開の法廷で意見陳述もしてもらう、そういうことを考えております。
  145. 岡田春夫

    岡田(春)委員 手続の一部である限りには法律的な効果はあるのです。手続じやないということなら、これは明らかに法律的な効果がないということじやありませんか。何らかの法律的な効果が手続の中にあることになるのじやありませんか。大臣、いかがですか、これは判事さんの立場にある岸さんと押問答している問題じやないのです。
  146. 小林錡

    小林委員長 つまり開示手続というのは、政府意見では勾留の原因を開示すればいいので、意見を聞くということは元来不必要なことを現行法がつけておる……。
  147. 岡田春夫

    岡田(春)委員 現行法ではつけておつても手続には違いない。
  148. 小林錡

    小林委員長 とつてもこれは憲法違反ではない。だから結局議論の問題になる。
  149. 岡田春夫

    岡田(春)委員 現行法自体が手続なんでしよう、これは委員長認めますね。手続であるものを手続ではないといつている場合に、本質的な改廃ではありませんか。
  150. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点につきましては前回勾留理由開示手続の意味を申し上げたのでございますが、きようさらにその点について岸説明員からもお話のあつた通りでございまして、もともとこの勾留理由開示というのは本人たちが知らぬうちに理由もなしに勾留されておるということでは困るので、それを明らかな法廷で、みんなの目に触れるような場所でその理由を告げるというのがこの制度の根幹でございます。従つてたびたび申し上げますように本人がこれを納得するかどうかということは別問題なのが一つ、それからもう一つは、この意見陳述する機会を与えるということは、憲法上の要請ではない。これはもう確定した議論と私は考えております。ただそれを今度は訴訟法で――現在は丁寧に口頭でこれを許すというような形になつております。現在におきましても、この口頭で意見陳述した場合に、裁判所がそれを聞いてどうしなければならぬという法律的な効果はないわけであります。まあこれは逆に申しますと、少し平易な言葉で、聞きつぱなしでもよろしいということになるわけであります。今度手続がかわりまして、その意見陳述を書面で出すということになりましても、その点はまつたく同じであります。読みつぱなしでよろしいということになる。もつともこれは、私が最初に申し上げました通り、さような際に、なるほどその意見理由があるという場合には、裁判所がまたそれを考えて、勾留取消しとかいうようなことになる場合はあり得るわけです。それは法律的にぜひそうしなければならぬとか、それが法律的な効果であるということにはならぬわけでございます。
  151. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし岡原さんの当初の答弁を聞くと、本人が納得するかしないかは別問題だということは、重大な問題だと思う。先ほど法制局からも言われたように、憲法は最低限度の保障をしているのであつて、納得しようがしまいが、そんなことはかつてだということならば、そういう形を通じて勾留理由開示の公判というものの必要がなくなる。あとは形式的には残つても、これは最低を保障する。このあとまだあなたには供述拒否権の点についてもちよつと聞きたいことがあるのですが、大体憲法は、自然法の立法に立つて権利を与えられているわけですね。憲法の精神というものは、そういう建前でつくられている。拘禁されている理由が国民にわからなくてもいいんだ、納得するかしないかは別問題だという意味であなたがお話なつたとするならば、これは重大な問題ですよ。憲法違反の容疑歴然たる問題になつて来ますよ。
  152. 岡原昌男

    岡原政府委員 どうも私の説明が足りないせいか意味が通じないのでありますが、最初から申し上げました通り、納得するかしないかというのは、その勾留理由がもつともだ、いわゆる心証形成について自分も同意であるということを納得する必要はない。ただその勾留理由が那辺にあるか、裁判所がどう考えているかということについては、一応耳に入つたということを明らかにする必要がある。納得という言葉を分析いたしますと、そういうわけであります。
  153. 細迫兼光

    細迫委員 その点に関連してちよつと。逐条説明書の六ページを見ますと、裁判所が口頭による意見陳述を許すであろうということを書いて、まあいいじやないかという理由をつけておられるように思うのですけれども、この口頭による意見陳述を許すであらうということは、別に規定として現われてはいないようですが、ただこれは言い訳のために説明をつけた感があるのですが、この点の所見を伺いたい。
  154. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは裁判所のルールで、これと同じ文句を出してもらうつもりで、裁判所と打合せ済みであります。
  155. 細迫兼光

    細迫委員 同じことだというような御意見ですが、この勾留理由の開示が公開の法廷で行われるというところに意義があると思うのです。だから、意見陳述も、公開の法廷でということをのけて考えればそれは同じかもしれませんが、公開の法廷でということは、請求者の意見の当、不当、が傍聴人その他公に聞いてもらえるというところに意味があるのであつて、これが書面で後に裁判所の裁判官室で読まれるというだけでは、国民に請求者の意見の当、不当を判断してもらうという機会が全然失われるということはあると思う。これはやはり従来持つておる権利の剥奪だと思うのです。
  156. 岡原昌男

    岡原政府委員 従来認めておる権利の剥奪だという真正面からの御議論であれば、その意味においてはまさしくさようでございます。ただ御承知通り、憲法の要請するところはそこまで行つていない。公開の法廷というのは、みんなの目に触れ得る場所において理由が告げられればいいという程度は憲法が保障しておりますけれども、それから先は保障の限りでないから、これは必ずしも必要はない。かような考え方でございます。
  157. 細迫兼光

    細迫委員 それからあとは議論になりますから、これでやめます。
  158. 大橋武夫

    大橋(武)委員 関連して。この開示手続の問題で、大分議論になつておりますから、お確かめだけしておきたいと思います。お説の通り憲法においては、開示期日の手続に、意見陳述が当然含まなければならぬとは読めない。従つて実際において従来の開示期日の手続のうちから、意見陳述の部分だけを切り離して、これは書面手続にする、こういうのが改正趣旨だろうと思うのですが、そういうことをお考えつきになりました理由というものは、本来意見陳述を開示期日の手続の中に含ましめることが手続上よくない、という意味ではないと思うのです。おそらく今細迫君からも述べられましたごとく、人権保護の上から言つて、できれば開示期日の手続の中に意見陳述をも含ましめる方が適当であろうとは思う。しかしながらこれが濫用される場合においては、いたずらに法廷戦術の具に供せられる。この点からいつて、例外的にそういうものを制限する。制限するとすればどうするか。全然意見陳述というものを認めないというわけにも行かないから、そこで開示期日の手続のうちからはこれを除くけれども、別に新しく書面による意見の開陳という権利を認めよう。これがこの改正の骨子ではないかと思うわけです。はたしてそうであるといたしますならば、特に書面で意見陳述させる必要がある、こういうふうに政府世びに裁判所でお認めになつておられる場合は、いはゆる法廷闘争の具としてこの意見陳述権が濫用された場合に限るのではなかろうか。これが手続として本来の趣旨で用いられる場合においては、むしろいろいろな点からこれは残しておくことが適当であろう、そういうふうにお考えになつておられるのじやないかと思うのですが、その点を特にお確かめしておきたいと存じます。
  159. 岸盛一

    ○岸最高裁判所説明員 ただいまの御趣旨通りであります。今度の改正と、それから先ほど来申しております規則をきめることによつてその御趣旨通りになる、そういうふうに考えておるわけであります。
  160. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと、修正されようという御趣旨を端的に表現しますと、従来通り開示期日の手続として意見陳述させることにしておく。しかしながらこれが法廷闘争の具として濫用される場合においては、特に裁判所が裁判によつてこれ以上の意見陳述は許さない、不必要と認める、あとはもし出したければ書面で、こういう命令をするということによつても御希望の点は解決されるのではなかろうかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  161. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点につきましては私どもが当初申し上げました通り、大体今までの勾留理由開示手続の実績を見ますと、おおむね濫用される方が原則になつておりまして、本来のわれわれが考えたような手続というのはむしろ例外というふうなことになつておりますので、そのただいまの御議論の、ちようど反対の場合をわれわれ予想して立案したわけであります。
  162. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それならば当初から濫用されるのが原則だという考えで、訴訟法をつくられるときにもそれをお考えになるべきであつたわけなんです。今改正の場合において、改正された後においてどういうふうにこれが運用されるか、将来のことについて今ここでお見込みを承つたところで、はたしてそうなるかどうかわからない。従つて将来、これがだんだんに弁護人その他関係者に熟知されて適正な運用ができるとすれば、やはり今申し上げましたように、原則的には口頭の陳述を認める。しかしこれが濫用されたと認められる場合においては、口頭の陳述制限して書面による意見の提出にかえしめる、こういうことに考えて行くのが正しい考え方ではないか。もしそれだけでたとい将来濫用されるのが原則になれば、その書面の陳述原則的に行われることによつて、一向支障なく解決される。しかし書面陳述だけにしてしまうということになると、正しく運用しようという熱意を失わしめるわけです。だからその辺の考え方としては、もう少し御再考の余地があるのではなかろうかと思います。
  163. 岡原昌男

    岡原政府委員 大体今までの実績をずつと見て参りまして、それで今後の運用がどうなるかということを予想して参りますと、たとえば口頭で述べることを原則として、裁判長がその場の究気で制限して書面に限るとした場合に、原則的に書面で、場合によつては口頭でというものとは、相当に違つて来ると思います。と申しますのは、その正面の与えられた権利としての原則がどちらであるかによりまして、いわゆる裁判長に食い下り方が違つて来るわけであります。正面としての権利がはつきり出ている場合には、その権利をなぜ拘束するかという点で食い下つて参ります。それからもし逆の場合には、書面でやることが原則であるということで裁判長の方がはねやすい。今までの八十三、四条のこの制度の実績を見まして、それは必ずさようになると私は確信いたしております。
  164. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の岡原さんの答弁を聞いていると、ますます原則と違つて来ることが明らかになる。それからいただいま大橋君の御質問を承つてつた場合でも、裁判長の開示した理由がきわめて抽象的であつた場合にはどうするかということについて、何らの保障がこの条文上出て来ないわけです。この点がまた重要になつて来るわけであります。この理由を開示した場合に、その開示が非常に簡単であつた場合、先ほどの意見等を聞いていると、それに対する質問等も実質上において封鎖されるということになつて来たら、開示公判というものの意味をなさないことになつてしまう。この点についての政府側の今までの御答弁は必ずしも十分ではなくて、それは依然として、開示は十分やつておりますというような程度で、ごまかされておると思うのです。
  165. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点はまだお尋ねがございませんので、私、正面切つてお答えいたしておりませんが、なるほど御質問の点はごもつともでございます。私どもはこう考えております。たとえば裁判官が勾留理由を開示した、告げた。非常にはつきりした点から申しますと、たとえば声が低くて聞き取れない。裁判長、今のは何ですか、これはあたりまえのことであります。それからだんだん程度が高くなりまして、犯罪の読上げ方が非常に抽象的で、何が何やらさつぱりわからぬ。それじや犯罪の内容が私にはわかりません、一体どういうことですか、これも当然だろうと思います。それから証拠隠滅の内容等につきましても、これは先ほど申しました心証形成の問題でございますけれども、どの程度まで心証がとれたかという根拠については、これは具体的にはなかなか困難な問題がございます。そういう場合に一切触れないで、たとえば二号あるいは三号、さような場合には、今のは何のことでありますかと聞くのは、当然のことだと思います。ただ私の申し上げたいのは、質問に名をかりて意見陳述する、これがかなり多い。この点をどういうふうに制限するかというのが、今回の問題の起きたゆえんでございます。先ほどもちよつと社会観、人生観と申しましたが、裁判長に質問と言つて、社会観、人生観からずつと始まりまして、質問はいつまでたつても出て来ないというふうな実情を押える必要があるのではなかろうか。これが今回の立案の一つ理由でございます。
  166. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすれば開示の理由についての質問、本来の質問は、当然許されるべきであると解釈してもよろしゆうございますか。
  167. 岡原昌男

    岡原政府委員 その通りでございます。
  168. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは次に――まだまだあるのです、不十分なのです。でも私一人でいつまでやつていてもいけないから、いよいよ問題を供述拒否権の問題に入つて行きたいと思うのです。岡原さんに伺う前に、法制局の方が来ておられますから法制局の方から伺つて行きましよう。憲法の三十八条、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」、これは当然、供述を強要されないという意味において国民の権利であると私は解釈いたしておりますが、いかがでございますか。
  169. 野木新一

    ○野木政府委員 この規定によつて、国民としては自己に不利益な供述を強要されないという保障を与えられておるものと存じます。
  170. 岡田春夫

    岡田(春)委員 当然保障が与えられておるとするならば、不利な供述をやらなくてもいいという意味権利だろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  171. 野木新一

    ○野木政府委員 不利な供述が強要された場合に――強要によつて不利な供述をするということは拒否できる、そういうふうなことであります。
  172. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは第三章の国民の権利及び義務の中に入つておるのであつて、当然強要されないという権利を持つておるのだと思うのです。ところが岡原さんは、何日前かちよつと日にちは忘れましたが、黙秘権は権利ではない、供述を強要されないという自由である、その自由というのは被告地位である、こういうふうに解釈された。そうすると大分これは問題になつて来るわけであります。この強要されないという自由というのは、権利ではないのでありますか。
  173. 岡原昌男

    岡原政府委員 法制局の方でも権利とはお答えいたしてないようでございます。憲法三十八条一項から来る照り返しの一つ地位というふうに御了解を願いたいと思います。
  174. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私があなたに伺つたの刑事訴訟法の問題を伺つたのではなく、憲法における強要されないということについての問題を伺つたのであります。ですから、これは先ほども答弁しなかつたがというように言われましたけれども、そういう意味における権利ではないのですか、法制局にもう一度伺います。
  175. 野木新一

    ○野木政府委員 何人も自己に不利益な供述を強要されないという意味でありまして、ある意味では、権利という言葉を使えば言えると思います。
  176. 岡田春夫

    岡田(春)委員 法制局というのは、法律を正しく守つてもらわなくちやいけないと思うので、政府委員の言葉に幻惑されて、ある意味の云々というようなことを言われるのは、私ははなはだ迷惑でございます。明らかに権利なら権利言つてもらいたいのです。ある意味においては権利言つて権利には違いない。はつきりしておいていただきたい、速記録に残るのですから。
  177. 野木新一

    ○野木政府委員 この規定によつて、何人も自己に不利益な供述を強要されない権利を保障されておるのでございます。
  178. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは岡原さんにあらためて問う必要はありませんが、強要されないという自由、これは明らかに権利であります。これを権利でなくて、被告の何らかの地位であるというようなことを言うのは、違憲ではないにしても、合憲的でないということを、あなた自身は認めざるを得ないのじやありませんか。
  179. 岡原昌男

    岡原政府委員 いわゆる権利という言葉の用い方でございますが、憲法第三十八条の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」ということからいたしまして、強要されないという一つ地位が出て来るわけでございまして、その地位権利という言葉で表現し得る場合もございます。その意味においては権利と申してもちつともさしつかえないが、但し、これはまつこうから出て来る権利ではなくて、この裏にひそむ権利である、かように御了承願いたいと思います。いわゆる照り返しと申しますか、条文の裏にひそむ一つ地位である、それを権利と申すことは、権利意味を広義に用いる場合はちつともさしつかえないと思います。
  180. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それこそへりくつというものです。私はそう言わざるを得ない。あなたはこの言葉を、ここまで言うのもどうかと思うが、プリヴイリツジという意味に使つておるのだ、権利ではないということははつきりしているじやないですか。しかもこういう場合には、原則としては権利ではあるが、こういう形にも使えるというような解釈の仕方、憲法をどうにでも解釈できるというなら、適用する場合に憲法をどういうようにでも解釈して適用していいわけです。こういう点でこの基本的な考え方をはつきりしておかないと、あとで出て来る供述拒否権の問題についても、重大な問題が出て来るわけです。
  181. 岡原昌男

    岡原政府委員 プリヴイリツジあるいはフリーダムという言葉と、その正式の意味権利のライトという言葉とは、私よく知りませんが、ニュアンスにおいて大分違つておるのでございますが、フリーダムと言えばやわらかいニュアンスを持つた言葉にいたしましても、自由権と言えばこれも一つの自由権であるわけでございます。そういうような意味におきまして、それよりやや程度の高いプリヴイリツジを、俗に特権と訳しておりますが、特権というものも権利だという一つの見方が立つとすれば、それも権利でございます。
  182. 岡田春夫

    岡田(春)委員 逐条解釈を見ると、何か住居氏名が不利益ではないものという事項に入るかのごとき逐条解釈をしているのです。ところが実情においては、住居氏名というものは必ずしも不利益でないものとは言い得ないわけであります。こういう点で逐条解釈のこの解釈自体にも、非常に問題があると思うわけです。この逐条解釈の印象から言うと、今度不利益云々ということを一項入れることによつて住居氏名を言わせようという意味において、そういうねらいがあつて改正をしようとしているようにわれわれには考えられるわけです。そういう点においては、私は実際は権利の侵害になつて来ると考えます。この点は具体的な実例は相当この前から出ておりますから、私言いません。これは憲法に規定された問題として重大な問題でありますから、特に大臣からお答えを願いたい。
  183. 犬養健

    犬養国務大臣 住居、氏名の問題が逐条説明に出ておりますが、この逐条説明では大まかであり過ぎたということは率直に言えると思います。たとえばこの間大橋委員の御質問に対して当局が責任を持つて答弁いたしましたが、あのケースなどは、生年月日、氏名などを言うことによつて不利に陥るという場合があり得る、従つて住居、氏名を言うことが何ら利益、不利益に関係がないごときこの文章は、原則的なことをうたつておるのであつて、例外はあるという意味で、不満であつたと思うのであります。要するに、これをなぜ改正したかと言いますと、憲法三十八条の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という憲法に規定されておるものそのままを入れた方が、すなおな解釈が国民に起るだろう、こういう意味で入れたのでありまして、住居、氏名の問題についての逐条説明は、費い足りないところがあるということを私は率直に申し上げます。
  184. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、特殊の場合には、不利益になる場合もあり得るのだというお話ですが、一般的に住居、氏名を言うことによつて捜査の端緒を開くことになりませんか。そうすれば捜査の端緒を開いたということにおいては、被疑者の立場から言えば、一般的に住居、氏名を言うということは不利益な問題であると言わざるを得ないのであつて大臣の言われたようにこれは例外的のものではないと思いますが、いかがでしようか。
  185. 犬養健

    犬養国務大臣 この点は、猪俣委員や岩田委員考え方と私ども考え方とが少し違うのであります。住居、氏名を言うことがただちにどの場合でも不利益なことに当るという解釈はしていないのであります。ちよつとその点は意見の相違になるかと思います。
  186. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは不利益なことではないということに一応仮定いたしましよう。不利益でないとするならば、住居、氏名を言うことはことさら犯罪捜査のために必要ではないことになりませんか。実際そうじやありませんか。住居、氏名を言うことが自分にとつて不利益ではないというなら……。
  187. 小林錡

    小林委員長 いや不利益の場合もあるというのですよ。
  188. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや不利益の場合は私らの言つておることです。不利益でない場合もあると言われるから、その立場に立つて私はお伺いしておるのです。もし不利益でないとするならば、利益であつたとする場合と、利益、不利益に関係がないという場合と、二つあると思います。もしそうであつたとするならば、ことさら犯罪捜査のために住居、氏名を言わなければならないという必要の直接的な関係は出て来ないのじやないですか。
  189. 犬養健

    犬養国務大臣 法律的には専門家がいますが、私の常識から言つて、氏名不詳というようなケースがたくさんふえるということは、いかにも法廷としても非常識であり、捜査としても非常識だ、だから利益、不利益に関係がないならばそれは言つてさしつかえないことだ、これは私の常識であります。
  190. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点は法律的にも保障されておると思います。勾留されておる人が保釈される場合には、これは権利保釈の問題にも関係して参りますが、住所不定という場合でも制限住居を指定してあれば、保釈中にいろいろな書面が行く、それでことさらに不都合感じない。あるいは逃亡するおそれもないという場合には住居がわからなくてもよいのです。これは刑訴法第九十三条に制限住居の問題があります。そうするとことさら住居を言わなくとも、釈放しても、犯罪捜査の上において別段不都合を生じないわけです。そうすれば別段捜査上においても不都合を生ぜず、勾留して犯罪を取調べる上におきましても別段の不都合を生じないとするならば、ことさらこういう条文改正をする必要は何もないということになるのじやありませんか。
  191. 岡原昌男

    岡原政府委員 ここに申します不利益というのは、刑事責任を負うような、つまり犯罪事実の内容に触れるどいうふうなことを中心考えられておるのであります。憲法第三十八条の条文をごらんいただきますとわかりますように、これは拷問その他による自白を防止する措置を考えておる規定でありまして、まず第一項で自白を強要しない、それから続きまして証拠力についての制限、補強証拠についての制限というようなことが相伴つて虚偽の自白を防ぐというのが、三十八条の趣旨でございます。その趣旨から出ますのは、おのずからやはり一定の幅といいますか、ある意味限度がございまして、ただいま大臣が言われたように、常識的にはそういう名前まで言わないことは思わしくない。これは確かにその通りでございます。従つてどもといたしましてはいわゆる理念として、あるいは道義感としてそうありたいということは、もちろんこの立案の際には考えておりますけれども、それをすぐただちに法律に盛つたかどうかという点になりますと、今逆に氏名、年齢住所等は言わなければならない義務が出て来るのかという逆の御質問で参つたのでございますが、そういうこことは今回の場合は触れていない。つまり供述を強要するという点はない。そういう自由と申しますか、特権と申しますか、そういう点を保障した。こういうことに御理解願いたいのでございます。
  192. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし実際の問題は当然悪用される危険が非常にある。この前岡原さんはこういう実例をあげておる。たとえばあなたは供述を拒むことはできるのですということを、さきに捜査機関言つておいて、これに対してあとで取調べを開始したところが、あなたは言う必要はないと言つておきながら聞くのはおかしいじやないかというような悪弊が出て来た。こう言われたが、これはきわめて特殊な例です。そうじやなくて一般には現在の取調べの状態を見ると、あなたも十分御承知のように、実際には司法警察員あるいは職員が言いたくなかつたら言わなければいいじやないか、こういうわけでむしろ脅迫の材料として供述の拒否権というものが使われておる。特にその場合こういう実例をあなたは御存じないわけではないと思う。御存じないというなら私の方で幾つも例をあげてもよいと思いますが、そういう場合にことさらに不利益な供述は強要されないのだぞというふうに、いかにも脅迫の言葉をそのまま法律条文に直したような表現でそういう文章を書くというのは、なおさら悪用の原因をつくることになる。悪用されないという保障は、この条文のどこにありますか。
  193. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点今後の運用の見通しでございますが、どうも私さようには全然考えておりません。と申しますのは不利益な供述を強要されないということを告げることによりまして、憲法の条文通りのその一つ地位が自分にもあるのだなということが、被疑者の方にもわかるということが一つのねらい。それからもう一つのねらいは、捜査官において心を新たにして取調べの態度をきめて行くという、二つのねらいが同時に達せられると思いますので、そういうふうな濫用の弊にはおそらく陥るまいと私は見通しております。
  194. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは岡原さん実情をあまり詳しく御存じないのだと思う。私も現行法のもとにおいて、議員の立場において調べられたことがある。その場合にでも、初めからあなたは供述する必要がなければする必要はありませんよというような取調べをする人はだれもおりません。取調べ終つて、いよいよ調書を書く段になつてから、調書の一番上に書いてある供述を拒むことができるという文章を読んで、その前にいろいろなことを話しておいて、それから書くのが、たいていこれは常識ですよ。あなたはその常識を信じないというならば人間でないかもしれませんが、実際に議員でさえそういう形でやられておるのに、一般人の場合に、特に窃盗犯の容疑とかいうような場合に、特に不利益な供述を強要されないんだぞというように改めこことは、何らかの意図があつて改正としか私は考えられない。現在の条文のもとにおいて、供述を拒否することができるという条文であつても、不利なことはしやべらなくてもよいのですよというように言えないことはないはずだ。そうなれば、なおさら不利益な供述を強要することはありませんということのように改正する必要はないと思いますが、改正しなければならない理由は一体どこにありますか。
  195. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは何度も申し上げておるのを繰返すわけでありますが、この「供述を拒むことができる旨」というような文句を使つておりますので、全然何にもしやべらなくてもよいということを最初告げるわけであります。そのあとですぐ聞くというのは、調べ官においても心理的な矛盾を感ずる。それはともかくといたしまして、中にはもう何にもしやべらなくてもよい、しやべらぬ方がよい、あるいはしやべるのは間違つてつたといつたような行き過ぎの者すら出まして、本人が利益、不利益のいかんを問わず、何もしやべらない、結局傍証のみで事が処断されたというような点を救わんがための規定でございまして、別に他意はございません。
  196. 岡田春夫

    岡田(春)委員 他意がなければ、あらためてこれを改正する必要はないと思う。それこそ大臣が再三言われるように、訓示なり訓令を出してそういうことぐらいできるはずで、こういう条文上の改正をことさらする必要はないと私は思います。現行法においても、それこそそういう指示なり指令を出して十分やり得るはずだと思いますが、大臣いかかでございますか。
  197. 犬養健

    犬養国務大臣 これはただいま政府委員からも触れましたが、一方にはしやべらない方がいいんだという行き過ぎがあると同時に、大学を出た法学生などを試験で採用して司法修習生として養成するときに、刑事訴訟法なんかでどういう点に一番強い印象があるかを聞いてみますと、検事として、非常にまじめに奉仕するつもりで出発してみようと思うけれども、しやべらなくてもいいんだと言うから、それで検事として被疑者にものを尋ねることが一番重大な精神的な矛盾を感ずるという者が非常に多数あるのでありまして、これはいわゆるすれつからしでないだけに真実の声だと思うのであります。従つてこの文章をそのままにして逆用をするというのには少し不適当な次第なんでありまして、それじやめちやくちやにかえてもよいかというとそれはとんでもないことでありますから、憲法三十八条の文意をそのまま入れるのが一番すんなりしておるだろうと思う。あなたのおつしやるような副次的な悪影響というものもないとは言えません。なかながあると思いますから、その方を岡田委員の御希望の大臣の厳格な通牒とか、検事総長の訓令で行く、こういうことでいかがでございましようか。
  198. 岡田春夫

    岡田(春)委員 本末顛倒もはなはだしいというやつですよ。それこそさか立ちして日本中歩けというやつです。なるほど原則原則として出して、それを訓示として出すということが建前でなければならぬ。しかも逆用されるということを十分お認めになつておられるならば、なおさらそういう改正をやられる必要はないと思う。そういう意味で、この点は特に私は御考慮を願わなければならぬと思います。またこの場合に、こういう実例を私申し上げておきます。やはり私の党の関係でこういう問題に関連して勾留されているという人の場合に、名前がわからないから差入れを許さないと言つている例がある。差入れの問題は、はつきり八十一条に差入れはもう禁止事項には入らないのだと書いてある。しかし今度はますますこれを逆用します。お前は名前を言わないから、差入れも許さないのだ、当然これは出て来るのは明らかです。今までだつて住所不詳の者には差入れを許さないと言つている警察はたくさんあるのです。こういう逆用の例が目に見えている、現行法でもそういう悪例が出ているのに、こういうような改正をすることによつてそれを合法化させようとするようなこと、しかも大臣自身がお認めになつてつて、しかもそれを逆用によつてやらせるというようなことは、悪いことをやつていればいいようにしろというような、これは大臣答弁としては非常に私は納得のできない答弁であると思います。
  199. 犬養健

    犬養国務大臣 私の申し上げるのは、この条項のみならず、すべての法文改正の御審議をお願いし、幸いに可決をお願いできた場合は、どんな法文でもやはり悪用のおそれがある部分については、良心的に率直に認めて行こう、こういう趣旨でありまして、悪いと知りながら、一ぺん出してひつ込めにくくなつたから逆用でごまかそうという意味ではないのでございます。この点はひとつ御了承願いたいと思います。
  200. 細迫兼光

    細迫委員 今の点ですが、悪用の危険が実に顕著ではないかと思うのです。というのは、不利益なことは強要せられない、これは不利益でないことは強要してもいいというような反面解釈が出て来るわけでありまして、どうも私は氏名、住所などを言わないと、すぐ鉄挙が飛んで来るような光景が目の前に見えるようですが、そういう危険がきわめて顕著であるということをお認めになりませんか。
  201. 岡原昌男

    岡原政府委員 それはさようにはならないのでございまして、憲法第三十八条におきましても、単に不利益な供述は強要されないとあるので、利益の供述は強要されてもよいか、憲法自身でもそういう疑問が、もしそういう御議論ならば起り得るのでありまして、私どもはそういうふうには考えておりません。と申しますのは、この強要せられたる自白の証拠力について憲法では三十八条の第二項にございますし、刑事訴訟法では三百十九条にその制限規定がございまして、さような自白は証拠にならないということを初めからうたつてあるのでございますから、利益の点は強要してもいいということは、いずれにしても出て来ないわけでございます
  202. 細迫兼光

    細迫委員 そのお考えは非常に甘い考えだと思いますが、これは見解の相違として別なことに移りましよう。逐条説明書では年齢、住所、氏名というようなものが不利益、利益に関係ない一事例としてあげてあるようでございますが、これがこのまま法律になるとすれば、もつと具体的に解釈をきめておく必要があると思いますから、だんだん小さくなつて恐縮でありますが、次のことをお答え願いたいと思うのであります。住所、氏名もときによつては不利益な場合がある、その人の履歴などはいかがでありましようか。
  203. 岡原昌男

    岡原政府委員 それももちろん不利益になる場合があります。
  204. 細迫兼光

    細迫委員 それでは交友関係などは……。
  205. 岡原昌男

    岡原政府委員 もちろんそういうのもあり得るわけでございます。
  206. 細迫兼光

    細迫委員 前科の有無などは……。
  207. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは当然でございます。
  208. 細迫兼光

    細迫委員 犯罪ありと疑われたその日の行動は……。
  209. 岡原昌男

    岡原政府委員 これはその当該犯罪に直接する問題でありますから、当然入つて参ります。
  210. 細迫兼光

    細迫委員 逐条説明書の二十二ページの最後の方を見ますと、被疑者被告人との間に告知内容について別異な取扱いをしてもさしつかえないというようなことがありますが、被疑者被告人との間に取扱いを別異にしてもよいという法的根拠がどうも理解できないのですが……。
  211. 岡原昌男

    岡原政府委員 これはどなたかに二度ほどお答えした問題でございますが、被疑者起訴せられまして公判に移りますと、いわゆる立場が完全なる当事者の立場に移つて参るわけでございます。捜査段階におきましては、それが完全なる当事者というよりは、いわゆる当事者主義原則というものからはずれて参りまして、捜査ということから来るいろいろな制約を受けて来るわけでございます。その半面といたしまして、捜査官の方においてある程度の権限が認められておる、こういうふうになつて来るものと存じます。これは具体的に申しますと、たとえば弁護権範囲とかいうふうなことにも出て参るわけでございまして、その地位の相違が結局公判段階においては当事者として完全に対立しておりますので、そちらには完全な権利としていわゆる黙秘権という程度までそれを認めておる。しかるに当事者の色彩のきわめて薄い捜査段階においては、本来この事実を、どの程度までこんな事実があるかという犯罪事実を確定して、捜査権とのにらみ合せにおいて、当然それが制限を受けて、ただいまのような違いが出て来る、かように御了解願いたいと思います。
  212. 細迫兼光

    細迫委員 どうも理解も納得もできませんけれども、これ以上は議論になります場から、やめておきます。
  213. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今の供述拒否の点、この点について現行の解釈を伺いたいのですが、「前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、供述を拒むことができる旨を告げなければならない。」この条文の解釈として、取調官か被疑者に対して告げる言葉の内容は、一字一句ここに掲げてある通りに言わなければいけない、こういう意味に法務省としては御解釈なすつておられますか。あるいはその意味現実に生きておれば多少字句の表現は違つてつても適法である、こういうふうにお考えですか。
  214. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは大体後段の方でございます。というのは分離的には何々できる旨ということでその趣旨が生きておればよろしい、かように解釈しております。
  215. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると今度改正されようという「自己に不利益な供述を強要されることがない旨」をかりに取調官が被疑者に対して告げた場合に、それが改正前の現行法のもとにおいて適法ですか、どうですか。
  216. 岡原昌男

    岡原政府委員 それはちよつと違つて来るのではないかと思います。
  217. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうするとどの点で違つて参りますか。
  218. 岡原昌男

    岡原政府委員 現行法の「あらかじめ、供述を拒むことができる旨」というのは、平たく申しますと、何でもかんでもしやべらなくてもよろしいというふうな意味に――これは少し正確ではありませんが、そうなると思います。  それから百九十八条の方は、自分の不利益になるようなことは、別に無理に言わされるものではないということになつて来ると思います。従つて若干違う面が出て来る、かように考えております。
  219. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これは言葉のニュアンスとして違うという意味ですか。それとも法的に内容が違うという意味ですか。
  220. 岡原昌男

    岡原政府委員 法的に内容が違つて来るわけでございます。
  221. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それはちよつとおかしいんじやないでしようか。そうなると、自己に利益のあることは言わなければならない。つまり自己の不利益に関係ないことは言わなければならないのだ、こういう意味をもこの新しい修正案においては含んでおる。不利益なことは言わないでもいい。しかし不利益に関係ないことは言わなければならないのだ。こういうことをも含めて改正法律においては適法なんだ。こういうふうになつて来ると思うのですが、それは改正の御趣旨と多少違うのじやないでしようか。
  222. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほどは憲法三十八条の関係で申し上げたので、こつちの関係で申し上げませんでしたが、憲法三十八条と今度の改正とはちようどうらはらでございまして、憲法三十八条について言い得ることは、同時にこの百九十八条の二項の点についても言い得ることでございます。こまかく申しますと、憲法三十八条のもともと考えておつた趣旨は、先ほどから申し上げました虚偽の自白あるいは強要による自白、その他拷問といつたようなものを禁止しようという趣旨から出て参つて、その裏打ちとして、もしそういうことがあれば、あるいはその疑いがあれば、証拠としてこれをとるわけに行かない。さらにこの自白を強要することをもう一つ担保するために、第三項において補強証拠というものを必要とするというふうな、三段構えに書いてあるわけでございます。その規定がそのまま――そのままいうと不正確でございますが、刑事訴訟法に移つて参りまして、たとえば不当に長く拘禁された場合においての証拠は、これはとれないとか、先ほど申しました三百五十九条の規定でございますが、証拠力をそういうふうに制限いたすと同時に、第一項の関係はこれを百九十八条の方に移す、こういつたこととは別だと思います。そこでそのねらいというのは、無理に自白をさして、それを証拠にとるということを防ぐという点が、憲法から流れて来た精神であろうと存じます。従つてたとえば今おつしやるような有利な点は供述を強要してもいいのかということになりますと、それはやはりだめなのでございます。これは憲法の三十八条の第二項から来る考え方でございます。従つてただ百九十八条の第二項の今回の改正というものは、憲法第三十八条の第一項の流れをそのまま受継いで来るようなことになるだろうと思います。
  223. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しかしある事項を陳述することが、自己の有利か不利かということは、これは、一面的には言えないのであつて、御承知のように犯罪事実、またそれに対する刑の量定ということになりますと、多方面から関係して来る。だから一つの事柄を述べることが、犯罪事実を承認するという意味においては、非常に不利益なことになるかもしれない。同時にしかし他の証拠によつて犯罪事実が認定された場合に、刑の量定を受けるということになりますと、不利益なことをすらすらと言つた。はなはだこれは正直でよろしいという意味で、利益になる場合もあるかもしれない。だから利益か不利益かということは、客観的にきまるのじやないのです。これはまた当事者の主観においてきまつたことが客観的に適用するものでもない。だから利益か不利益かということで、事実を陳述すべき内容を二通りにはつきりわけるということは、現実にはどちらともつかない。あるいは利益にもなるが、多面不利益にもなるという事柄も多いので、そういう点によつてこの陳述拒否の内容に境をつけるということは、非常にあいまいになると思う。むしろ私は御趣旨のように、自己の不利益になる事柄を陳述を強要されない、こういうことは、利益であろうが不利益であろうが陳述を強要されないのだ、こういうこととおそらく法的には意味は同じじやないか、こう思うのです。それでむしろ利益か不利益かなんというようなことを言うものですから、やれ年齢は利益か不利益かどいうことになる。年齢でも利益になる場合もあれば不利益になる場合もある。未成年者の場合においては、自分の正しい年齢を言うことが、少年法によつて軽い刑を受けるとか、あるいは刑事責任能力を否認されるということで利益の場合もある。しかし同時に年齢をはつきり言うことによつて、自己が具体的に何の何がしで、あるいは前科がどうしてというようなことで、不利益に言る場合もある。これをあまりはつきりすることは意味がないので、むしろ現行法のもとにおける、言いたくなければ言わなくてもよろしい。お前は言つてはまずいと思い、自分の損だと思えば言わなくてもいいのだということと、現実には同じになるのではないですか。なるほど文字の上においては違つた表現でありますが、そう考えて行くと、法的内容としては同じじやないか。現行法のもとにおいても、捜査官は、憲法の条章にこうあるのだ。従つてこの点を考えて、不利益だと思うことは答えなくてもいいのだ、こう言つて聞かせたところで、一向違法ではないというふうにも考えられるのです。あらためてもう一度その点をはつきり伺いたい。
  224. 岡原昌男

    岡原政府委員 この不利益な供述を強要されないという点の、不利益の判断をだれがやるか。これはもちろん調ベられる本人がやるわけでございますが、その際にはたしてそれが不利益であるか利益であるかという判断がなかなかつかぬ場合があるのじやないかということも、ごもつともでございます。しかしそれは被告人なり被疑者のその当時の考え方として、自分はその方が利益だと思うかあるいは不利益だと思うかということが、判断の基準になるというのが、これが一応のお答えになるわけでございます。ただそれが非常に困難な場合があるじやないかということは、確かに御質問の通りでございまして、それは憲法の条文それ自身のはらんでいる問題なのでございます。憲法第三十八条にもこの通りの文言が使つてございまして、その判断は、なかなか困難な問題を含んだままになつておるのであります。従つて、その三十八条を受継いで来ました今回の条文につきましても、なるほど御指摘のような問題が出て参りまして、この点につきましては具体的な例を考えますと、われわれもほんとうにそれが本人のためになるかどうか、客観的にそれが確定できるかどうかということは、結局裁判が終つてみなければわからないというような場合には、むずかしい問題が出て来るだろうと私も考えます。ただ一応憲法に保障したところ、それから今回の改正法の予想したところは、その段階において、本人が一応考えたところということで判断することになろうかと存じます。
  225. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、そういう本人にもわからないような基準、また立法者たるあなたにもどつちかよくわからないようなそういう基準でもつて陳述すべきことかしなくてもいいことかをわけるということはまずいので、やはり憲法の保障した、自己の不利益になる事柄は陳述しなくてもよろしいという権利を保障するためには、本人の意思に従つて、一切の事項について陳述してもいいし、陳述しなくてもいいのだという、完全なる自由を認めた現行のやり方というものが、これがほんとうに権利を保障する正しい方法じやないか。もしこれを制限して、利益なことは言わなければならぬのだ、あるいは利益なことは進んで言つてもらいたいということになりますと、これは憲法の三十八条の保障をややともすればそこなうようなおそれがありはしないか。また、そこなうおそれがないということをもしはつきり具体的に説明できるなら、説明していただきたいと思うのです。しかし今言われたように、あなた御自身にも利益か不利益かわからない場合があつたり、本人にも利益か不利益かわからない場合があるという、そういうことでは、憲法三十八条の保障というものは不十分だと思いますから、もつとしつかりした根拠をもつて御説明を願いたい。
  226. 岡原昌男

    岡原政府委員 私自身にその点がわからないと申し上げたのではなくて、判断がなかなかむずかしい場合が具体的には起り得るだろう。それは私が判断するのではなくて、調べられる本人のことを申し上げたのでございます。  それから憲法三十八条におきまして、不利益な供述を強要されることがない、この強要されることがないという点が重点なのであります。つまり犯罪事実等を無理に言わされるものではない。この無理にという点に問題がというか、中心があるのでございまして、さような精神を百九十八条二項でそのまま受けて来た。その受ける際に、これはその当時の立法者の意思として、それを憲法のわくから少し上に参りまして、供述を拒むことができる旨、何でもかんでも何も言わなくてもいいというその旨を告げるというふうなことになつてつたのでございますが、これは憲法三十八条の予定した限界を越えておる。なるほど今度の改正をいたしますと、あらかじめ供述を何でも拒むことができるという線からは若干今御指示のように後退すると申しますか、ずれると申しますか、その面が出て参ると私は考えるのでございますが、趣旨はさように御理解願いたいのでございます。
  227. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ちよつと伺いますが、それじや憲法の趣旨から言うと、利益のことは言わなければならないというような解釈は出て来ますか。
  228. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほどから申し上げました通り、それは何も触れてない問題でございまして出て参らないわけであります。
  229. 岡田春夫

    岡田(春)委員 憲法の趣旨というのは、さつきから再三法制局の人も言つているように最低を保障しておるのであつて、不利益なことでも言わなくてもいいということなんです。利益なことであつても言わなくてもいいのですよ。これは強制されないという自由権の問題ですよ。ですからあなたの言つているように、現行法による供述を拒むことができるというのは、憲法の精神より少し上まわつた形で趣旨ができているのであつてということ自体が、あなたの解釈自体が誤りですよ。
  230. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点は決して誤つておらないと私は確信いたしております。
  231. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじや伺いますが、憲法についての解釈をもう一度はつきりお伺いしておきます。
  232. 岡原昌男

    岡原政府委員 憲法第三十八条は、文条の体裁からわかります通り、もともと国民の権利義務の中に入つておりまして、刑事裁判における被告人のあるいは被疑者の立場を擁護した規定でございます。どういう面から擁護しておるかと申しますと、不利益な供述を強要されない、あるいは手取り早く言いますと、自白を強要されない、あるいは無理に拷問等をされて調べられるようなことはない、取調官においてはそういうことをしてはいかぬ、そういう趣旨を持つて参りまして、それが具体的にどう出て来るかと申しますと、さようなことがあつた後の調べというものは証拠にならない。要するにそういう裏打ちをした上に、さらに自白というものがただ一つの証拠の場合には、補強証拠が別になければ有罪の判決にならないという二段構えになつておるわけでございます。それが先ほども申しました通り刑事訴訟法にそのまま考え方としては移つて来ておるということでございまして、それ以上の何ものでもないと私は考えております。
  233. 岡田春夫

    岡田(春)委員 さつきの岡原さんの答弁によつても、三百十一条の場合には憲法の三十八条そのままを受けているというように答弁されております。ところが供述拒否権の場合においては、今度の改正は三百十一条と百九十八条との間に差異があるわけですが、この差異は一体どういうところに出て来るのです。
  234. 岡原昌男

    岡原政府委員 これも細迫さんにお答え申し上げた通り公判段階におきましては完全なる当事者主義が採用されております。従つて当事者としての権利はこれを完全に認めておくという趣旨がここに現われて来たわけであります。
  235. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじや権利は、百九十八条の場合には、国民の権利というものがある程度拘束されると解釈してもいいわけですか。
  236. 岡原昌男

    岡原政府委員 それはさようなことにはならぬと思います。
  237. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしどういうわけでそうなりますか。完全黙秘が三百十一条には認められておりながら、百九十八条の場合には完全黙秘は認められないというかのごとき答弁をしておられるとするならば、それは国民の基本的な権利である、その権利を侵害していることになるのじやありませんか。
  238. 岡原昌男

    岡原政府委員 訴訟法の講義のようになつて少く恐縮でありますが、三百十一条の公判段階におきます告知の内容と申しますのは、要するに三百十一条におきましては被告人地位が完全な当事者の立場をとつておりますから、これに対して自由なる程度を高めておつて、それで対等な地位にぶつけたわけでございます。ところが現在の百九十八条の第二項におきましては捜査段階における地位でございますから、例の公共福祉の問題にも関連して来るわけでありますが、捜査権の実行というものと当事者の地位というものはどういうふうにバランスがとれるかという問題をこれに規定したわけであります。いずれもその基くところは憲法第三十八条から流れて来ると思いますが、その流れが捜査段階においては低く、公判段階においては高く認められている。しかもその高いのは地位としてそういう権利があるかないかという問題よりは、そういうことができるんだという自由の内容をつけるということで三十八条が具現化しているわけであります。
  239. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そのバランスという形で国民の権利を公共の福祉という一つの事項によつて制限することになつておるじやないか。
  240. 岡原昌男

    岡原政府委員 バランスということは私はこういう意味で使つたのでございます。それは御承知通り捜査段階におきまして、たとえば被疑者地位というものが相当制限せられております。たとえば勾留する場合におきましても、あるいは弁護人接見の場合におきましても、いろいろ公判の場合と違つて来るわけでございます。それが要するに、本人が一応起訴されたかされないか。つまり完全な当事者の地位を得たか得ないかというその違いで出て来るわけでございます。もともと捜査権というものは公共の福祉という立場から、と言つては少し話が大きくなるでございましようが、とにかく公権力の一つの表現の方法といたしまして、犯罪の鎮圧というふうな面からこれが動いて来るのでございまして、その動きに伴う若干の制限はこれはやむを得ない。そういう意味では当事者主義とそうでない一つの流れが出て来る、かように申し上げたのでございます。
  241. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その考え方から行くと、現行法でも別段の支障はないではありませんか。
  242. 岡原昌男

    岡原政府委員 別段の支障というと……。
  243. 岡田春夫

    岡田(春)委員 供述を拒むことができるということでは、別段の支障はその趣旨からいつてないでしよう。
  244. 岡原昌男

    岡原政府委員 それは憲法第三十八条において予想せられました一つ被疑者被告人地位というものは、必ずしも憲法に盛つてあるわけではございません。詳細の点はこれを訟法に譲つたわけでございます。そこでその訴訟法の内容というものを考え、論じているわけでございますが、その憲法の予定したというのは単に不利益な供述を強要されないということ、それから拷問その他のあれは証拠にとつてはいかぬということと、それから補強証拠がなければ有罪にできないということが予定された三点でございます。それから流れて来ていろいろな訴訟段階においてそれが訴訟法上いろいろな形で現われて来る、こういうことでございますから、特に矛盾するとか矛盾しないとかいう問題ではないと存じます。
  245. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それじやちよつと角度をかえて伺つてみたいと思う。公判段階においては終始沈黙し、または個個の質問に対して陳述を拒むことができる旨を告知する。公判段階において裁判官がそういう告知をすることと、憲法三十八条第一項とはどういう関係になつておると御解釈になりますか。
  246. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほど申し上げました三十八条第一項から流れた精神の具規化である、かように解釈しております。
  247. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうなりますと、公判段階においては、すべての質問に対して陳述を拒むことができる旨を告げるということが、憲法三十八条の黙秘権を保護する上からいつても望ましい。また現行法においてはそういう見地であるばかりではなく、法務当局としては、将来にわたつてもそういう告知の仕方をされることが、この基本的権利の擁護の上からいつて望ましいとお考えになつておると思うのですが、この点はいかがですか。
  248. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点は詳しい、微細な点はあるいは間違うかとも思いますが、私どもは百九十八条の一つ地位と、それから三百十一条の一つ地位というものは、ひとしく憲法三十八条から流れた精神にのつとつたものではあるけれども、そのそれぞれの段階における地位に応じて訴訟法上区別してある、かように理解しております。
  249. 大橋武夫

    大橋(武)委員 趣旨はわかりましたが、現在はほとんど区別してないわけですね。それを区別しようというお考えらしいですが、公判段階においては、すべての供述を拒否することができる旨を告知することが、憲法三十八条の黙秘権を保護する上からいつて必要だ、こういうふうにお考えになつておるにもかかわらず、捜査段階においてのみ、何ゆえに憲法の条文と同じように自己に不利益な陳述を拒むことができると告知しなければならないとお考えになるのか。なるほど捜査段階公判段階において告知の内容を違わせようとするお考えもよくわかつております。何ゆえに違わせることが――公判段階においては従来通りの告知をすることが三十八条の権利を全くするゆえんであり、そうして捜査段階においては、何ゆえに改正することが三十八条の権利をよりよく保護するゆえんであるか、こういう理由をはつきりお示しいただきたいと思います。
  250. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは先ほど当事者主義といつて簡単に片づけましたので実はたいへん恐縮でございますが、この公判段階におきましては、一応両方の言い分を聞いて裁判所が判断するという大きな建前がございます。その際に本人が言うか言わないかということについて完全な当事者の地位にございますので、原告官がある事実を主張する、これに対して被告の方でこれを言わぬでも、ある程度の事実は証拠調べもできますし、事実の判断もでき得るわけでございます。捜査段階というのは、これは御承知通りまだ何も――何もというと、あれでございますが、事実の確定をいたしかねる段階にございますので、従つて捜査権というものが認められておる。捜査権というのは、ある事実を確定して、これを公判に付するか付さないか、起訴するか起訴しないかということを見当をつける段階でございますから、その段階においては、その捜査権に伴う、あるいは捜査権から来るところの一つの逆の被疑者地位の制約というものが出て来るわけでございます。それが告知の内容においてさような違いが出て来る、かように理解いたしております。
  251. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると公判段階においては被告人は、より広汎に保護される必要がある。捜査段階においてはこの保護は制限されてよろしい、また制限されるべきものである。こういうようなお考えのようにちよつと承れたのですが、どうですか。
  252. 岡原昌男

    岡原政府委員 三十八条の基本の権利というのはちつとも動いておりません。それでそれから流れた考えといたしまして、二つの方向が出て来た、その二つの方向も、捜査段階におけるものはこの程度、それから公判段階においてはもう少し先の程度、こういうようになるわけでございます。
  253. 大橋武夫

    大橋(武)委員 捜査段階におきましては、とにかく被疑者捜査官だけの問題であつて、第三者もおらないわけです。それでどちらかというと、公判期日における場合においては、この被告人は身体を拘束さえしてはならないというふうに、当事者としての被告人地位というものは、公判期日の法廷においては、非常に保護されておる。ところが捜査の場合においては、それだけの保護がない。この保護がないということは、憲法三十八条の権利被疑者がみずから行使することについてそれだけ不利な立場にあるということがいえるわけであつて、それだけ不利な立場にあるところの被疑者に対する取調べについて、この三十八条の権利を保護するためには、さらに一段と手厚く保護してやらなければならぬどいうのがわれわれの常識なんですけれどもちよつとどうも常識が違うのじやないかと思うのです。そこをひとり……。
  254. 岡原昌男

    岡原政府委員 それはまつた考え方が私どもと反対でございます。捜査段階における捜査官の立場というものは、被疑者に対して尋問権を持つております。その尋問権ということから来る一つの結果といたしまして――尋問権と申しますか、取調権と申しますか、それから来る一つの結果として、不利益な供述を強要されない、あるいは現行法で申しますと、百九十八条第二項の「あらかじめ、供述を拒むことができる」という程度において、現在それが逆に行くと保護せられる。ところが公判段階に参りますと、三百十一条にございますが、文言が大分違つております。「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」求めるという形になつて、供述させるのじやなくして、供述を求めることができる、いわゆる尋問の態度ではないのでございます。そこで、つまり当事者としての被告人地位と、それから捜査段階における被疑者地位、これが根本的に違つて来るところでございます。
  255. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これは刑事局長の御説明でちよつと納得できないのですが、私どもはむしろ裁判所においては、公判において、被告人に対する尋問の権利があると思います。ところがあなたの場合は、その場合には尋問権はないのだ、求めることができるというのは、結局尋問することができるという権利を裁判長が持つておるじやないですか。ところが捜査官の場合においては、あくまでも被疑者の任意の供述を聞くというのが主になつておるわけなんであつて、任意の供述を聞くという以上は、利益であろうが、不利益であろうが、言いたくないことはどこまでも言わないでいいのだということが建前になつて。初めて任意の供述、任意の出頭というこの制度が考えられる、だから任意の供述を録取するということが取調べの方式であるといたしまするならば、この被疑者地位においては、利益であろうが、不利益であろうが、いかなることについても、終始沈黙することもできれば、また個々の質問に対して陳述を拒むこともできるのは当然なことであつて、もしそれを被疑者にはつきり知らせるということが、その個人の三十八条の権利を守る上からいつて必要であるということならば、第三者の立会いもなし、ことに弁護人の立会いもない手続において、捜査官が尋問する場合においては、むしろ終始沈黙し、個々の質問に対し陳述を拒むことができるばかりでなく、任意に退廷することもできるのだ、こういうことまで、むしろ捜査手続において、公判よりもより多く告知上の責任を認めることこそ必要ではないかと思うのです、その点はどうですか。
  256. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点先ほども申し上げました通りつたく反対に私ども考えております。公判段階において被告人に対して尋問の権利があるというのは今の訴訟法では認めておらないところでございます。従いまして、単に言いたければ言えるという程度の規定があるだけでございまして、これが捜査段階におきまして、捜査権を捜査官に与えたという点から来ます一つ効果と申しますか、それからもう一つはそういうような犯罪が起きた場合にそれを調べてこれを裁判所に送るという建前から言いまして、これはその地位が今みたいにこれ以上保護するか議論があろうかと存じますけれども現行法建前はさようになつていないのでございます。従つてども現行法建前に立ちまして、捜査段階においては被疑者に対しても三十八条から流れる一つの保護は一応百九十八条の程度でよろしい、それから公判段階においては三百十一条、かようなことになると理解しておるわけであり季す。
  257. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると今度の改正の御趣旨は今までの百九十八条の告知義務ではあまり被疑者を保護し過ぎる、捜査上さしつかえがあるから、これを憲法の最低限度の保障の線まで引下げようというのがこの趣旨ですか。
  258. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほども細迫さんからですか、お尋ねがございましたときにお答えいたしました通り、告知の内容というものが違つて来るということでございまして、いわゆる権利とか自由とかいう点については今回は触れていないわけでございます。
  259. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ですからその告知の内容を減らす、告知の内容をかえることによつて刑事訴訟法の保障が広くなるのであるかあるいは狭くなるのであるか、それとも全然かわらないのであるかそれを伺いたい。
  260. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは告知内容がかわるだけと私どもは理解したおります。
  261. 大橋武夫

    大橋(武)委員 告知内容がかわるだけということは結局三十八条の自由権を保障するための方法がかわつただけであつて、その三十八条の自由権そのものはかわりない、こういう意味だろうと思うのですが、それは私はあたりまえだと思うのです。三十八条の内容というものは憲法を改正しない限りはかわるべきものではない。この三十八条の権利を守るべき方法としての、この告知義務というものは、これをかえることによつて、一体より多く保護するためにより手厚くなるのであるか、あるいは手薄くなるのであるか。わかるということになれば、いくらか厚くなるか薄くなるかの違いはあるだろうと思う。またあるからこそ、かえるこういう案が出て来るのだろうと思います。手厚くしようとするのですか、それとも今までは少し手厚過ぎるから適当な限度までこれを減らそう、こういう意味ですか。
  262. 岡原昌男

    岡原政府委員 これはたびたび申しますように、ねらいが違つておる、ちようどダブる面とダプらない面とが出て来ておる、こういうふうに御理解が願えれば幸いだと思います。もう少し詳しく思し上げますと、今回は不利益な供述を強要されないという面が出て参ります。今までのは供述を拒むという面でそれが告知されて参ります。供述を拒むということになつて参りますと、一切合財拒む、従つて有利な点についてもこれを拒むということになつて来るわけであります。今度は不利益な供述を強要されないということになると、不利益なというところに一つ問題がございますし、強要というような点にもう一つ問題がございます。従つてちよつと違う面を言つたのであります。従つてダブる面がありダブらない面があるわけでございます。
  263. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私の伺つているのはそんな文章の問題ではないのです。強要を拒むとか強要されないとかそんなことはわかつています。もししいて文章でわかりやすく質問するとすれば、大体現行法の供述を拒むことができろというのの頭に、自己に不利益な供述を拒むことができる、ともしこれをかえた場合には、被疑者はそれによつて保護される程度が厚くなるのか、手薄くなるのか、その点をまずお伺いいたします。
  264. 岡原昌男

    岡原政府委員 でございますからただいま申し上げました通り、手厚くなる面と手薄くなる面とある、かようになるわけでございます。
  265. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それではどういう点が手厚くなるのですか。
  266. 岡原昌男

    岡原政府委員 これはこの前実例を申し上げました通り、供述を拒むことができるということを告げることによりまして、一切合財供述を拒むということになりまして、その結果不利益な起訴を受けたというふうな事例の面においては、今回は保護されて来る。それから逆に何でもかんでもしやべらなくてもいいという点が、今度は不利益な点は供述を強要されない、強要されないという点で今度はその方の保護が手厚くなつて来る、かようになるわけでございます。
  267. 大橋武夫

    大橋(武)委員 あなたは手厚くなつて来るところを言つておられますが、それでは手薄になるところはどういうところですか。
  268. 岡原昌男

    岡原政府委員 手薄になる面と申しますと、供述を拒むことができる、何でもかんでも拒むことができるという面と、それから今度は不利益な供述を強要されないという面が観念的に違つて参ります。それでその何でもかんでも供述をしなけくともいいという面からいうと、不利益な供述を強要されないというだけにととどまるわけでございます。それ以上何も言つておりませんから、その面ではその違いが出て参るわけでございます。
  269. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この問題は二つの点があると思います。一つは今までは供述を拒むことができるということになつておる。それが今度は供述を強要されない、こういうことに改められる。それからもう一つの点は、供述というものに自己に不利益なという限定がくつついた、この点が二点あると思うのです。そうして拒むことができるというのを強要されないということに改められたことは、一体被疑者をより多く保護することになるかどうか、それから自己に不利益なというこの形容詞がついたということが、これで当事者の保護が一体手厚くなるか手薄くなるか、この二点を伺いたい。
  270. 岡原昌男

    岡原政府委員 強要されないという面から申しますと、それは手厚くなつて来たわけでございます。それから不利益な供述をということは、単なる不利益なという点だけで事が考えられておるのではなくて、それを強要されないということと関連を持たしておりますので、若干面が違うということは、御了解願つた上での議論でございますか……。
  271. 岡田春夫

    岡田(春)委員 議事進行……。今のような答弁を聞いておるならわれわれは審議できません。特に私は具体的な事例を持つている。こういうことがある。先ほど委員長もお聞きのように、接見禁止について岡原政府委員から、日本弁護士会の方と打合せをして、大体二回しかやらないということについて了承を得ているというような答弁もありました。ところがその後私の方でこの事実について調べましたところが、そうでないということが明らかになつて来た。たとえば私の方で調べたところはこうです。岡原政府委員刑事訴訟法三十九条の接見禁止接見の規定について、初めと終りに、二回を最少限として、その他特別の必要がある場合には会わせるということに制限することに弁護士会と打合せして了承済みであると言うが、そういう事実があるかどうかということを弁護士会の方に聞いたところが、弁護士会の連合会の事務総長の佐藤利雄という人に聞くと、かような話は全然なく、むしろ接見制限していることについて反対の要請を出している。また茨城弁護士会の問題についてもこれは文句を言つているくらいである、こういうような事実が明らかになつている。それにもかかわらず、先ほどの岡原政府委員答弁によると、こういうことが相談で話合い済みだということだが、現在の状態では、特に今のような答弁等を聞いていると、政府答弁についてわれわれは信用できない。こういう状態では審議は続行できないから私はきようはやめます。あとあなたにまだ質問はたくさんありますが私はやめます。こういう点をもつと明らかに親切にやつてもらわない限りにおいては、この審議を進行させることは私はできません。だからこういう問題はもつとはつきりと、もしそういう事実があるとするならば、何日にだれとどういう相談をしてどうしたという点を明らかにしてもらつてからでなければ私は審議はできません。     〔「君がかつてに放棄するならそれもいいだろう」と呼ぶ者あり〕
  272. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいまの接見禁止に関する点でございますが、これは先ほど申し上げました通り東京の取扱いでございまして、私は、東京の三弁護士会東京地検との間に打合せができた、かように聞いております。これは全国ではありません。
  273. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そのときに私は聞いている。東京弁護士会の植田八郎という副会長にも私は電話をかけて調べているが、全然そういう事実を知らない、連合会からも聞いたことはないと言つておる。そういう事実からいつても、この問題だけではありませんが、さつきの答弁の模様を見るときわめて誠意を欠いている。あんな答弁なんぞでは審議はできない。この接見禁止の問題は単なる一例であつて、先ほどの大橋君に対する答弁等を聞いていても、あんなことでは審議の続行はできません。委員長がこれについて具体的な措置を講ぜられるなら別でありますが、私は現在の段階においては審議しても無意味であると思う。だから議事進行について審議すべきであると思う。
  274. 小林錡

    小林委員長 前から申し上げているように、大体きようで質疑を打切るつもりですから、あなたが権利を放棄されるならばしかたがありません。
  275. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや権利の放棄じやありません。委員会の運営について言つているのです。
  276. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 実は、今私どもが聞いても、あんな答弁では納得が行かないのです。それではこういうことを承りましよう。被疑者として調べを受ける場合に黙秘する権利というものはないでしようか。
  277. 岡原昌男

    岡原政府委員 それは最初に申し上げました通り、いわゆる権利という概念ではなくして、そういうふうなことが自由にできるというふうな地位と私どもは解釈いたします。
  278. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そてがわれわれと岡原政府委員と根本から違つている。私どもは、憲法の三十八条並びに十一条によつて自由権がある、権利である、国民の権利義務、従つてはつきり権利だと主張する。
  279. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは学問上はいわゆる厳密な意味権利じやないといわれておりますけれども、先ほど岡田さんにお答えいたしました通り、自由あるいは特権という意味において権利だということになりますと、ただいまのお言葉のように権利であると解していいわけでございます。
  280. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 岡原政府委員はいつでも地位地位だということ言われますが、地位ということはどういうことですか。私ども地位ではなくして、権利であるからそういうことができるのじやないかと思う。権利が前提であつて地位はただ単に地位ということで、地位の半面でそれを保障するものが権利だと私は思いますが、それはどうでございましよう。
  281. 岡原昌男

    岡原政府委員 そういう意味ではその通りでございます。
  282. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それから、ただいま大橋委員答弁がございましたが、私はむしろその答弁が、被疑者権利が狭められるのだ、自由が多少制限されるのだという御答弁なら、賛成するしないは別として筋が通ると思うのです。ところがどうも一方においては消極的だし、一方においては積極的だと言つておられますけれども、結局私どもが一番恐れるのは、基本的人権が尊重されなければならないのにかかわらず、現行法よりも狭められるような改正をするのではないかということです。そういう改正をするのか、それとも現行法と違わないようなものになるのか、また現行法よりもさらに権利を広めるのかという質問を大橋委員からしておるわけですが、それに対する明確な答弁がないので、その点がわからない、この審議を続けてもつまらない、こういうことに結論がなつて来る。従いましてこれは、政府委員の方でよく意見をおまとめになりまして、明快な御答弁が出るということの御準備を願つたらいかがかと思います。
  283. 岡田春夫

    岡田(春)委員 委員長、先ほどのような事実と相反することが出て来ている。これは委員長がこの委員会を運営する上においても重大であります。委員長として、私に対して、そういうことで発言を放棄するのかというようなことを言うよりも、委員会の運営について、そういう事実にあらざることを正式に速記録に載せて報告していることについて委員長が放置しているというようなことでは、私は、決して委員長の運営が手ぎわがいいものとは考えられない。それからまた今の点についても、観念を統一して正式に政府の方から答弁してもらわない限りにおいては、審議は続行できません。そういう意味において、これは決して権利を放棄するとかいう問題ではありません。田嶋君はさつき、君がかつてに放棄するのだと言つていたが、国会の権威にかけてもそういうことはできない。そういう点を委員長としては正式に政府に聞くのがほんとうである。そういう議事進行について私は質問しているのです。
  284. 田嶋好文

    田嶋委員 岡田君の今の発言、もつともだという点はぼくも認める。非常にいいと思うのです。ところが岡田君の発言された事実と相違するという点は、岡田君のこれ以上議事を進行する必要がなくなつたという重大な発言とは、ちよつと軽重を考えてみると軽いような気がします。事実と違つているかどうかということは取調べをしないとわからないことだから、要するに岡田自体が、自分の方の資料によるとこうなつている、政府答弁と食い違うから、政府によく調べてもらつて明日でも答弁してもらいたいということで済む問題じやないかと思うのです。従つて政府も、誠意を持つて弁護士会にそういう事実があつたのかなかつたのかということをお取調べの上、明日お答えを願うことにいたしまして、そうしてこの場合は、われわれ委員会は君の発言に対しては十分な敬意を表して、たつた一人の君に対して何時間もの時間を与えて十分審議さしているわけですから、ひとつ委員長においてそういうふうにおとりはからいを願いたいと思います。
  285. 犬養健

    犬養国務大臣 ちよつと私から岡田さんの質問に対してお答えいたします。接見禁止の問題が、弁護士連合会、あるいは東京弁護士会と了解ができているということが事実と違うというお話については、これは責任を持つて調べます。もし答弁が虚偽であつたらこれは重大な責任でありまして、私からあらためてそのことについて意思を発表したいと思います。ですから、それは責任を持ちますから、それはそれで別にして、岡田さん、ひとつ質問だけはやつてください。
  286. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、いくら大臣の要請であつても、また、田嶋君は前の委員長であつても現在は委員長ではないのだから、委員長自身が現在この委員会の運営をどうするかという方針を出してくれなければ困ります。田嶋君と討論する場所ではありません。(「討論してはいない。」と呼ぶ者あり)君自身がぼくに話をするようなことを言うからぼくは言つているのです。
  287. 小林錡

    小林委員長 岡田君に申し上げますが、その事実が一体どつちがほんとうかは、田嶋君の言うように、今あなたの方で調べられたこととこちらの主張することが違うのですから、これは調べてもらつて確かなことを回答してもらうことにしたいと思います。ですから、きようはその問題はそれに譲つておいて、ほかの質問を進めてください。ほかの人はたいがい一時間ぐらいですが、あなたにはきよう二時間半時間を与えているのですから……。
  288. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 議事進行について。今の問題は、さような事実を調べて、その事実があつても、それをもつて日本中の弁護士の問題、接見問題の御答弁にはならぬと私は思うのです。私どもは、そういう事例に今までも何回もあつている。いなかへ参りますと検事に紹介をしていただかなければならぬ。私はけんかをしておると間に合わぬから出張しても帰つておりますが、全国的にそういうことが行われておる。検察庁が特令か訓令を出しておるか知らぬが、いやしくも現行法において弁護人はいつどこでも接見ができるのを、そういうふうに無理に制限されて、それでけうこうでございますと三弁護士会は承認しても、全国弁護士会は承認しない。岡田君の言つたように、連合会が反対しておるということこれはおそらく大きな問題だろうと思うのです。そういう点においてあまりここで事実を取上げて明らかにして、これが速記に載りますと大きな問題になりはしないか、私はそういう点を憂えます。
  289. 小林錡

    小林委員長 これはけさあなたが御出席にならぬ間に実は相当問題になりまして、私からも質問をし、相当つつ込んだ質問があつた。そして政府は誠意を持つてこれから対処するということになつておりますから、そういう点については、あとでまたいろいろ皆さんとも協議しまして善処して参りたいと思つております。
  290. 犬養健

    犬養国務大臣 古屋さんにこの際お答え申し上げます。あなたの御不在のときに私この点答弁したのであります。事の起りは、総選挙を済ませまして、総選挙でしばらくごぶさたしたので弁護士連合会に私ごあいさつに行つたのです。そのときに水戸で三分間しか会わせなかつたという事実がありまして、いずれ君のところへ正式に手紙を出すけれども、まあ聞いてくれという話で、私は驚いたわけです。帰つてすぐ法務次官を招致しまして、これは一体どういうことなんだと話したところ、これは二人とも完全に非常識だということに議が一致しまして、ただちに検事総長を通じて水戸検事正に相当手きびしい注意を与えた。ところがその後鳥取にも出て来た。それで六月十二日の全国次席検事会同において、特にこの問題を重要な問題として取上げまして、これは実に困るじやないか、もつと常識的にやれ、こういうことになつたわけでありましで、それからまたあとで、田嶋君から言うと依然として方々にあるというので、これは水戸とか鳥取とか個別的にやるだけでなくて、検事総長から全国に対して一般的な訓示としようということになつたわけであります。そのほかになおかゆいところに手を届かした方がいいというので、各検察庁で土地の弁護士会と十分にその点は連絡協議してくれ、というのは、もともと個々の場合違いますから、できるだけ常識的にするのには土地の弁護士会と協議することが一番実際的であろう、こういうことになつたわけなのであります。東京弁護士会と大体二回会わせればいいという了解ができたというのは真実であるかどうかということは、これは別の問題になつて来たわけです。一連の関係はありますけれども、私の根本方針は今申し上げたようなわけであります。別の問題として、こういう突発的に起つた答弁の真実であるかどうかという問題は、さつそく調べましてここで良心をもつて報告いたしたいと思うのであります。ですから、きようはもう質疑打切りだというお気持も一応かんしやく玉としてはわかりますけれども、(笑声)そこはまあ元のところへ治めてきげんよくひとつ質問をしていただきたい。これは私のお願いであります。
  291. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 お気持はよくわかります。
  292. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いやまだ私は信用しないからだめだ。
  293. 犬養健

    犬養国務大臣 なおこれは古屋さんのみならず岡田さんももちろん含めまして申し上げますが、答弁はできるだけ率直に、論理のもてあそびにならないように――質問者もなかなか雄弁家が出られて、架空な論理の方へ巻き込まれるおそれもあるのでありますが、できるだけ……。
  294. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことを言うのなら私は了承しないよ。
  295. 犬養健

    犬養国務大臣 いや、あなたのことではない、なかなか頭のいい法学者的な議論があつて、つい論理が架空また架空というふういことになるおそれがありますから、これは私の方も論理のもてあそびにならぬように、少し事態が悪くなつても率直な答弁を申し上げて、あと修正するなり削除するなりはもう国会の最高権威の意思にまかせる、こういうような裸の態度で行きたいと思います。どうぞ御了承願います。
  296. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣自身はさつきからきはめて率直だと私は思うのです。持に今架空の云々というお話だが、さすがに文学者の大臣であるだけに、きわめて文学的な表現を使われて言われたけれども大臣の下にいる政府委員の諸君がそういうような架空なことを言つておるのであつて大臣の話を聞いていると、お前らの方が架空なことを言うから政府委員の方も架空なことを言うのだと言わんばかりの話に聞えるが、そうではない、政府委員の方でもつと大臣のように率直に話をすれば問題は解決する。そういう意味で私は受取りたいと思うのですが、これは下僚である岡原政府委員にも十分注意を与えていただきたいと思います。
  297. 小林錡

    小林委員長 委員長から岡原政府委員に一言申し上げますが、どうかひとつ率直に誠意を持つて答弁してください。あなたは誠意を持つて答弁しておられのだろうが、よく岡田君の納得の行くように御答弁願います。
  298. 岡原昌男

    岡原政府委員 承知いたしました。私実はある意味においては論理に巻き込まれたということを率直に反省しております。従いまして法律の先々の議論みたいなものを申し上げることはやめます。  ただいま御指摘の三十九条の運用についての東京弁護士会との関係でありますが、その調査の結果がただいまわかりましたので御報告いたします。この話の起りは、先ほど申しました全国次席検事会同の際に、各地の次席検事が全部集まりまして各地の実情を詳しく説明し合つたわけであります。その際に東京はたしか田中次席検事が出ておられたと思いますが、東京の実情についていろいろ御説明がございました。それから問題のあつた水戸とか鳥取のみならず、ほかの各検察庁にも数箇所実情を説明してもらいました。それでその点は次席検事が直接その際東京弁護士会と完全に了解をつけたものと私聞いておつてさように覚えておりましたが、今確かめましたところ、さようではなくて、各弁護士が委任層に来たりなんかする際面会を申し込んで来たときに、各弁護士に説明をする資料として一定の方針を立ててあるそうであります。それが今確かめましたところ三回ということでございます。それは委任届のときと、勾留後間もないときと、それから釈放の少し前と、事件が済んだあとということの方針で弁護士さんに話をしなさいということを検事正から各検事言つてあるそうであります。弁護士さんにお伝えする際にいろいろ間違いが起きるということは、これは率直に認めるわけであります。それから私がそれを弁護士全体と了解がついておつたと早合点いたしましたのは、実はその当時各地の次席検事からお話がありまして、私どもの方では弁護士会とその点の協議ができて円満に行つていますよ、というふうなことを言われたところが各地方ございましたので、おそらく私それとこれとをごつちやに記憶しておるのではないかと思いまして、その点はつつしんでおわび申し上げます。
  299. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の点については私は必ずしも了解したものではありません。しかしこれは審議関係もあるので、きようは一応その程度にしておきます。
  300. 小林錡

    小林委員長 ありがとう。(笑声)     〔「むしろ感謝したいのはこつちだよ」と呼ぶ者あり〕
  301. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それで続行しますが、前委員長ひとつ静粛に願います。  第八十九条の七号、権利保釈の問題については、これはまだどなたも質問されていないので一応申し上げておきたいと思いますが、住居か氏名かというのを、住居、氏名に直した場合です。これは私もざつくばらんにひとつお尋ねしましよう。住居か氏名かというこの現行法のままでどうして弊害が起るか、私は別段弊害が起るとは考えられないわけです。特に住居の場合においては、制限住居という指定もあるわけですから、そうなると、住居がわからなくても、別段の支障はないと私は思う。こういう点についてお答えを願いたい。
  302. 岡原昌男

    岡原政府委員 現在の八十九条には、御承知通り被告人の氏名及び住居の両方ともわからないときというのは、いわゆる権利保釈の除外規定になつております。実際問題として完全に何も供述しないという場合においては、たとえば被告第何号といつたようなこと、あるいは車体の特徴これこれの男、何才ぐらいの男ということで、事件が係属して参るわけであります。このような場合に、保釈になつて参るのでございますが、その保釈の条件として、刑事訴訟法第九十三条で一定の住居を制限することになります。その制限というのは、法定住居ではなくて、要するに、本人の住所をこの場所指定するわけでございますが、それが、本人が言わないために、どうしてもわからないという場合が最も多いわけでございます。それを今度は何とか手当をしようという趣旨なのでございます。
  303. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると住居の場合だけですか。
  304. 岡原昌男

    岡原政府委員 それから氏名の場合でございますが、たとえば住居がわかりましても、氏名がわからないという場合が考えられます。その際にたとえば何町何番地というまではわかるけれども、それから先、何の太郎兵衛かわからないということになりますと、たとえば公判期日の呼出しの際にも、たちまち困つて来ることになると思いますので、さような場合には権利保釈の除外になる、こういうわけであります。
  305. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし常識として、これは権利保釈の除外の問題ですから、すでに勾留されておる場合には、少くとも住所だけわかつて名前がわからないで勾留されている事実がありますか。実際の問題として私はないと思うのです。
  306. 岡原昌男

    岡原政府委員 そういう意味では、確かに住居がわかつて氏名がわからぬという場合は割合に少いだろうと私も思います。ただ実際問題として、氏名を意地になつて言わない場合がかなりございます。そういう場合の手当を考えておるわけでございます。
  307. 岡田春夫

    岡田(春)委員 たとえば意地になつて言わなくとも、これはさつきも話の出たように、氏名を言うことが不利益になる場が出て来るわけですね。意地になつても言わないというその表現自体に何か強制力を感ずるわけです。それでやはり実際問題として、当然不利益な場合における意地になつて言わないという場合の供述を拒否する権利は、さつき申し上げたように、百九十八条であるのですから、それで言わなくても、なおかつ勾留を解除するための、権利保釈するための除外事由にはならないと私は思うのです。
  308. 岡原昌男

    岡原政府委員 もしも本人が、意地になつても言わない、しかしほかの事情で氏名がわかつた。たとえばいろいろな証人を集めて調べたらあの男はこういう男だということがわかれば、もちろんこれに入つて参。ません。ですから、そういう御心配はないわけです。
  309. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、何かの事情でわかつている場合には、その対象にならない、こういうわけですね。そうすると、初め逮捕するときにも何かの事情でわかつているから逮捕できるのだと思うのです。わからないで逮捕するという事実はないわけじやありませんか。
  310. 岡原昌男

    岡原政府委員 たとえば現行犯のように、犯罪をそこでやつているという場合には、だれか知らぬけれども、すぐつかまえるという場合が起きるわけです。
  311. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、現行犯の場合だけに限る、こういうわけですか。
  312. 岡原昌男

    岡原政府委員 氏名不詳で手配をしてつかまるというような場合も、理論的に考え得るのじやないかと思いますが、現行犯の場合が一番多いと思います。
  313. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし実際に氏名不詳の場合でも、現実勾留しつつ、別段の支障がないのです。しかも住居がわかつてつて、氏名の不詳という場合に、権利保釈の対象にしても、今まで別段の不便がなかつたと私は思う。もしそういうような不便があるとするならば、そういう事実もお伺いいたしたいし、それからこれにまだ氏名の問題だけに触れておりますが、住居の場合についても、私は先ほどの御説明だけでは納得ができないのです。権利保釈の場合には当然保証人が出て来るわけですから、そうなつて来ると、制限佐居の九十三条の三項ですか、これで、ここに、手紙なら手紙を寄越してもらえばいい、そうして公判のときには何日に出て来いという通知がそこに行くわけです。そうすると、別段住居がわからなくても権利保釈から除外する必要はないと思う。むしろ私はこういうことによつて、先ほどから申し上げているように、黙秘権を実際上解いて行こうとする魂胆がこういうところにも現われている。そこを私は言いたいのです。
  314. 岡原昌男

    岡原政府委員 実はこれは黙秘権と直接に関連させて考えたわけではありませんけれども、結果的にはそういうことも言い得るかと思います。それから制限住居の場合は、いわゆる制限住居とは申しますが、大体は、本人かあるいは知人か、だれかの宅を指定するわけでございます。本人がいわゆる風来坊であるというような住居不定の場合、住居が判明しないという場合で、そういう者はたとえば知人宅に行きましても、自分の本来の住所がないから、よくふうふうしがちだという点が、今度の改正でございます。
  315. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の言つているのが不十分なのかもしれませんけれども、もう一度具体的に言うと、たとえば現行犯の場合、ここで器物破壊をやつた現行犯の逮捕という場合には、氏名だけではなくて、住所も一緒にわからないと思うのですよ。そうすると、権利保釈の場合においては、氏名住所が両方ともわからない場合には、現行法では権利保釈の対象にならないわけです。しかし、現行犯の場合において、氏名だけわからないという場合は、ほとんどあり得ないと思うのです。そういう事例から見て、あなたの御答弁ではちよつと不十分だと私は思うのです。
  316. 岡原昌男

    岡原政府委員 現行犯の場合、おそらく氏名も住居もわからない場合が多いだろうと私どもも存じます。ただ氏名はお互い呼び合つているのでこれはわかつておる。ところが、長いことおつき合いしないので、現在どこに住んでいるかわからない。たとえば、よく強盗なんかが道で出会いまして、これから入ろうというようなことで協議をしまして入る場合がございます。そうすると、刑務所で知合いになつて、あれはだれだつたということは、これはわかりますけれども、それから先、現在どこに住んでいるかということはどこからもわからないという場合が、かなりございます。さような者に対しましては、現在は何らの手当がないわけでございます。
  317. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、こういう場合もあるわけですね。氏名はわかつておる。しかし住所不定であるということは、よく一般の事件であるわけですね。そうすると、住所不定の場合には、勾留されて永久に権利保釈の対象にはならないということになつて来るのじやないのですか。
  318. 岡原昌男

    岡原政府委員 永久にと申しますと、少し語弊がありますが……。
  319. 岡田春夫

    岡田(春)委員 法的にはね。
  320. 岡原昌男

    岡原政府委員 住所不定の者に対しては、もどる場所がはつきりしていない。ですから、たとえばどこか一定の住所に制限したところが、本人はもともと不定な男だから、保釈のときは、なるほど、はいはいそこに行きますと言つても、またどこかに行つてしまうという可能性がかなり強いわけであります。それが自分の家があれば、家族もおる、そういうようなことで逃げないということもあろうと思います。
  321. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、その場合も、権利保釈の場合には、保証人なり、そういうものがつくわけでしよう。そうすれば、そこにもどらないで、かつてに行つちまうということになつてくれば、それは単にその人自体の問題ではなくて、保証人の問題になつて来るのであつて、そこの点が、そういうような説明では筋が通らないと思うのです。
  322. 岡原昌男

    岡原政府委員 概括的に住居不定の場合、あるいは氏名がわからぬ場合を全般的に規定いたしましたので、ただいまのような御疑問、具体的の場合にいろいろ起るのは私も認めます。たださような場合には、第四号、第六号の関係で申し上げました通り、次の条文の裁量保釈がございますので、実際には住居不定であるということの場合でも、保証人がしつかりしておる、それでおそらく逃げまいという場合には、次の条文で裁量保釈ができる、かように考えております。
  323. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしこれは裁量保釈でやるということでは、この条文上に明文化するということの趣旨と裁量保釈の問題とには、非常に問題があるのです。しかしこれは――。私も大分肉体的限界に近づいて来たから、だんだんテンポを進めて参ります。     〔「明日にしようじやないか。」と呼ぶ者あり〕
  324. 岡田春夫

    岡田(春)委員 では大臣も大分お疲れのようですから、きようはこの程度にしておきます。
  325. 小林錡

    小林委員長 では、次会は明二十四日午前九時三十分から開会いたします。  本日はこの程度で散会いたします。     午後六時十三分散会