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1953-07-17 第16回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十七日(金曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 猪俣 浩三君 理事 井伊 誠一君    理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    星島 二郎君       鈴木 幹雄君    高橋 禎一君       古屋 貞雄君    細迫 兼光君       木下  郁君    佐竹 晴記君       木村 武雄君    岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検    事         (矯正局長)  中尾 文策君         法務事務官         (保護局長)  齋藤 三郎君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月十七日  委員寺島隆太郎君辞任につき、その補欠として  木村文男君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十六日  駐留軍軍人軍属不法行為に基く被害者に国家  賠償金支払請願宮原幸三郎紹介)(第四  二三七号)  駐留軍による接収土地建物解除に伴う元借地借  家人に権利復帰に関する請願三木武夫君紹  介)(第四三一四号)  札幌地方裁判所室蘭支部甲号支部に昇格の請  願(南條徳男紹介)(第四四二一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑法等の一部を改正する法律案内閣提出第九  〇号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。前会に引続き質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 この刑法等の一部改正法律案の第一条、あとはこれは何項になるのですか、指摘するのに非常に骨が折れるのですが、その点ちよつと項を指摘願いたい。第一条「刑法の一部を次のように改正する。  第二十五条第二号中」云々が一項なのか、これはどういうふうになるのでありますか、ちよつとその番号を……。
  4. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 刑法等の一部を改正する法律は、目次にございますように、刑法改正刑事訴訟法改正犯罪者予防更生法改正更生緊急保護法改正、この四つにわかれておりまして、最後に附則がついております。その第一条が刑法関係改正でございまして、二十五条の二号を改正するのが第一項、二十五条ノニが第二項、こういうようになると考えております。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういたしますと第一条の四項ということになりますか、「第二十六条の次に次の二条を加える。  第二十六条ノニ 左二記載シタル場合二於テハ刑執行猶予言渡取消スコトヲ得  一 猶予ノ期間内更二罪ヲ犯シ罰金処セラレタルトキ」そうするとこの二十六条ノニの一号は罰金に処せられると執行猶予取消しの資格が出て来るということでありますか。罰金ということは罰金であつて執行猶予取消しということは少し苛酷ではないかと思われますが、この点についての苛酷にあらざることの御説明を願いたい。
  6. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 この条項は御指摘通りでございまして、執行猶予期間内に罰金に処せられたから全部を取消すということでは苛酷に当る場合があるというふうに存ぜられまして、「取消スコトヲ得」ということで取消すことが相当なときに取消す、こういう趣旨でございます。なおこの条項は現在の刑法にも同趣旨法律があるわけでございます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 第二号に「第二十五条ノニノ保護観察二付セラレタル者遵守ス可キ事項遵守セザリシトキ」こうあるのであります。そこで保護観察ということについて非常に疑問がある。今回の刑法等の一部を改正する法案は、非常に巧妙にできておつて執行猶予を相当拡張せられた。これはわれわれ非常に賛意を表するものであります。こころがこういう甘いものを出しておいてさてそれだけ食べるのかと思うと、保護観察というようなものがちやんと控えておる。これはまあお役所の非常に頭のいいところを示しておるのでありまして、ただで物をなかなか食べさせないのであります。そこでどう。この執行猶予を緩和するということと保護観察ということが取引のような条文になつておる。われわれはこの保護観察ということに対して、非常に疑惑があるのでありまして、これは戦前の治安維持法その他におきましての保護観察というような頭が出て来る。少年法等におきましては教育指導ということが中心でありまするがゆえに、これまた意義があると思うのでありますが、これを成人の一般の犯罪者に及ぼすということになりますと、これは特大な意味がそこに出て来るのであります。執行猶予を受けながら実はあまり執行猶予じやないような、ひもつきのものをつくつておくということは、これはどうもさつぱりしない制度であります。そこで執行猶予に付するだけの情状があるから裁判官が執行猶予に付するのであろうが、それがひもつきにならなければならぬということは観念上の矛盾があると思う。これが第一点であります。執行猶予にしてもいいという判定があるのに、しかもそれには観察しなければならぬということは観念上の一つ矛盾じやないかと思いますが、この執行猶予制度というものと、観察制度というものが矛盾なく理解でき得るものなりやいなや、これが第一点。  それから第二点といたしましてはこの「保護観察付テハ別法律以テ之ヲ定ム」とありますが、保護観察方法条件そういうような具体的なものをお示し願いたいと思うのであります。  なお第三点は法律議論になりますが、この二十六条ノニ改正案の二号は、「第二十五条ノニノ保護観察二付セラレタル者遵守ス可キ事項遵守セザリシトキ」、そうするとこれは刑の帆行猶予言渡しを取消す条件になり出す。この「保護観察二付セラレタル咽遵守ス可キ事項」なるものは、刑罰規定にあるのであるが、一体どういう性格を持つものでありますか。こういう遵守すべき事項を守らないと、ただちにそれが執行猶予を取消すという一つ効果を発生する、そうすると一体川守すべき事項というのはいかなる性格を持つものであるか、これらの点について御説明願いたいと思うのでありす。
  8. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 執行猶予保護観察とが矛盾するのではないかということについて、いろいろと御意見を伺ましたが、この法案を考まえした趣旨を申し上げますと、大体犯罪を犯した人のうち、まつたく偶発的な犯罪であつて、将来再犯を予想されないというふうな種類のものもあろうと存じます。それにつきましてはこの法案でも無条件執行猶予でよろしい、保護観察をつけない場合を考えておりまして、結局保護観察裁判所が必要ありと思われる場合に第一回の保護観察はつける、こういうふうにいたしてございます。もう一つ種類としては、まつたく反社会性が濃厚でありまして、どうしても一定矯正施設――刑務所なり少年院等矯正施設収容しなければならぬ、こういうような種類のものもあると存じます。もう一つ種類を私ども対象として考えておるのでございまして、本人自身はそれほど反社会性はない、しかし生活上の能力がないとか、家族の関係等でそのままに置けばまた再犯のおそれがある、しかし刑務所に入れる必要はない。本人性格からいえば刑務所に必ず入れなければならぬというものではないというような部類が相当数あるのでございます。その一つの例としては、野放しの執行猶予といいますか、何も保護も与えられない、指導も与えられない、ずるずるべつたりにまたつまらない再犯を犯してしまう。そういう人が現在起訴されますと、やはり刑務所に投じて実刑を言い渡さなければならない建前になつておりまして、そういう関係執行猶予中に再犯を犯して刑務所に入つておる人が現在相当数見受けられるのでございます。こういう人に対して適切な指導と適切な保護を加えまして、そして常習犯者との接触をさせないで、本人を正道に立ち向わせるということをいたしたいというのがこの法条の根本的な考え方でございます。従いまして、執行猶予保護観察というものが相矛盾することはなくして、場合によつて、必要な場合には両方を結びつけまして、そしてこの刑事政策目的を達したい、こういう趣旨でございます。この保護観察の実態はどういうものか、目的なり方法はどういうものかということにつきましては、御指摘のように「二十六条ノニに」よりまして、保護観察に付せられたる者が遵守すべき事項を遵守しないときは、場合によつて執行猶予取消し事由といたしておりますので、さような重要なことでございますから、法律をもつてその内容等を定める必要があると存じております。従つて「一十五条ノニ」の第二項におきまして、「保護観察付テハ別法律以テ之ヲ定ム」と書いてございまするが、これを平たく簡単に申しますと、犯罪者予防更正法という法律で、現在仮出獄中の者、仮退院中の者、家庭裁判所から保護処分として保護観察に付せられたる人の保護観察をいたしております。その保護観察に関する法律を、この刑法等の一部を改正する法律案の一部として改正をいたしまして、今回の刑法改正によつて裁判所から保護観察に付された者を、犯罪者予防更生法によつて保護観察するのだ、その目的なり方法なりについても犯罪者予防更正法規定をしているところによつてやる、こういうふうにいたしたのでございます。その関係規定等は御承知通りでございまして、この遵守事項につきましても、犯罪者予防更正法の三十四条の第二項におきまして、善良なる普通の市民として守らなけばれならないような事項を四項目揚げでございます。第一号は、「一定住居に居住し、正業に従事すること。」第二号といたしまして「善行を保持すること。」第三号といたしまして「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。」第四号といたしまして「住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」こういうようなことを遵守事項といたしまして、その保護観察の方針といいますか、それを法律上明らかにいたしております。  なおさらにこの法律の三十五条と三十六条におきまして、保護観察内容としてどういうことを行うのだということを明記いたしております。結局保護観察には積極面消極面とございます。消極面本人犯罪を犯してから善良なる社会人に復帰するための必要な事項でありまして、そのために観察をする側において本人と適当の接触を保つている、そして適当な指示を与えるというような指導監督面でございます。もう一つ積極面は、本人社会人に更生するために必要な教養訓練方法を助けること、あるいは病気等の場合には医者にかけさせるとか、あるいは刑務所を出たが行くところがないというような場合に宿舎を与えるとか、あるいは就職をあつせんするとかいうような積極面規定いたしておりまして、これらによつて保護観察を行うのでございます。この保護観察ということが昭和二十四年の七月から行われておりまして、文字が従来の思想犯保護観察と同じために、いろいろと御心配をおかけいたしているかと存じまするが、この観察を行う者は、責任者といたしましては各都道府県にございまする保護観察所の長が保護観察を行うことに相なりまするが、実際的に申し上げますると、民間の篤志家保護司法務大臣が委嘱をいたしまして、この保護司にそれぞれのケースを担当してもらつておるのでございます。この保護司は沿革的に申し上げますと、三十年前の少年法のできたときからある少年保護司昭和二十四年の司法保護事業ができてからの保護司、そういう人たち保護司法によりまして、新たに選考し直されて委嘱されておるのでございます。法律上の定員は五万二千五百名でございまして、全国を七百ぐらいの保護区にわけまして、数十名の保護司保護区に配置されまして、その保護区の事件を担当する、こういうことになつております。この保護司性格社会奉仕者でございまして、俸給は差上げない、ただ実際に要する費用は全部または一部を国が支払う、こういうことに相なつております。この法案につきましても、現在の保護司成人につきましては仮出獄中の、一ぺん刑務所に入つた人保護だけをいたしておられますので、労多くして非常に困難を伴う、どうせ自分達本人改善更生をはかるならば、刑務所に入れないで済むものならば、できるだけ入れないで、自分たちの手にまわしてもらえば非常に効果をあげることができる、こういう趣旨から保護司の間からそのような制度をとつてほしいという熱望がございまして、昨年十一月日比谷の公会堂で全国保護司の大会がございました際もかような決議がなされまして、法務大臣にもさような決議の上申が参りまして、それがこの法案一つの基礎になつておるわけでございます。  なお「二十六条ノニ」の遵守事項というものがいかなる性格のものかということにつきまして、学問的のことは私どもよく存じておりませんが、この遵守事項は、裁判所保護観察に付するということを判決と同時に言い渡すことに相なつております。これは刑事訴訟法改正に関連いたして参りまするが、判決を言い渡すと同時に執行猶予の言い渡しをし、同時に保護観察に付するということを言われる。そうすればこの「二一十五条ノニ」の規定によつて保護観察に付された者は、犯罪者予防更生法の三十四条の規定するところによつて、この遵守項事というものが科せられる、こういうことに相なると存じます。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうも刑法等の一部改正法律案というものはあまりにメカニズム的な構成で、巧妙といえば実に巧妙ですが、どうも何かはつきりしない案だと思うのであります。第一条の二項ですが、保護観察については別に法律をもつてこれを定むるとしておいて、そして結局犯罪者予防更生法がすつかり適用される、こういう書き方。そして犯罪者予防更生法は一旦刑罰に付せられた者の仮釈法をされた場合なんですが、それと執行猶予をされた者と同じようにする、こういうところに観念上も実際上も非常に疑問が起つて来るのであります。そうすると同じ保護司が、監獄から出て来た者もまた執行猶予になつた者も、同じように保護観察することになつて、第三者から見ると、あの男も監獄から出て来たのかこ誤解を受けるようなこともなきにしもあらずで、私は保護観察について別に法律をもつてこれを定めていない以上は、もしどうしても執行猶予人たち保護観察制度を必要とするならば、これはその観点から立てて、犯罪者予防更生法をこのまま適用するというような簡易な道を選ばずに、これはその条件を国会に提出されて、別な法律としておつくりになるくらいの用意が必要なのじやないか、そうしないと観念上からも私たち疑惑が伴うのであります。執行猶予を与えてあるが、やはりこれは入監しなければならぬ者と同じように処遇する、そこに執行猶予にはなつたがどうもさつぱりしない、重い鎖が足についていて、いつもひつぱられておるというような感じを与えるのであつて執行猶予恩典恩典にならぬ、場合によつてはかえつてそのために困る者ができて来るのじやないか、監獄から出た者と同じように、同じ人間がまわつて歩く、同じように出頭を命じられる、そうするとそこにいろいろな意味において問題が起つて来るんじやないか、ことに執行猶予を受けられるのは選挙違反事件なんかも相当多いのでありますが、それらの人たちがみなそのような仮釈放した者と同じように処遇されていて、それで市民生活が円満にできるだろうかということも考えられまして、この保護観察については、別に法律でこれを定めるとなさつた以上は、別の法律を何ならつくつていただきたい。犯罪者予防更生法を、そのまま字句を二、三字入れただけで適用するということは観念上もすでにそこに誤りがある、実際また運用面からも非常に故障ができるというふうに考えるのでありますが、その点についてはいかがお考えになりますか。
  10. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 保護観察を受けて保護司保護監督、援護を受けるということが、かえつて本人が何らか刑事上の処分を受けておるのじやないかというふうなことで、社会的におもしろくないことがあり得るということは十分考えております。それなるがゆえに保護司という仕事をしておられる方方は表札等にもそういうものは書かないし、また不用意にその対象者の家を訪問しないで、人に気づかれぬように、また自分がだれを保護しておるとか、あるいはその結果非常に成功した場合であつても、この人は自分保護したことがあるんだということは絶対口外しないという、ほんとうに縁の下の力持ちとなつて、人に知られないように努めてやらなければいけないということを保護司自身深く考えられておるのでありまして、さような点に十分注意をしておられる次第であります。私どもといたしましても同様に御注意を願つておるような状況でございます。また現在仮出獄中の人も相当いたしておりますが、同時に家庭裁判所から少年院等にまわさないで、社会において教育すべきだという意味合いで保護観察にまわされている人も、やはり保護司が担当してなさつていらつしやるのでございます。保護司の中にはいろいろな方々がおりますが、法曹界の方もおられますし、教育界の方もおられます。宗教界の方もおられます。それぞれその村において信望があり、時間的な余裕もあり、また社会事業的なこういつた仕事に熱意を持つておられ方を選考委員会にかけて、そのあと法務大臣が依嘱をする、こういうふうなことにいたしまして、でき得る限り適当な人を選ぶように十分注意をいたしておる次第でございます。     ―――――――――――――
  11. 小林錡

    小林委員長 この際先日留保されました姫路少年刑務所における事件に関し古屋委員質疑に対する答弁を聴取することといたします。犬養法務大臣
  12. 犬養健

    犬養国務大臣 先日古屋委員より去る七月十二日姫路少年刑務所において騒擾事件が起つたその原因とか状況とかについて詳しく報告をするようにというお話でございまして、さつそく何回か往復をいたしました結果大体事の全貌がわかりましたので、ここで御報告をいたし、今後どうしたらいいかということもあわせて申し上げておきたいと思います。  七月十二日、当日は免業日で日曜でございました。午前八時ごろ朝食にあたりまして配食のことから、かねて対立的感情のあつた第三工場受刑者と第四工場受刑者との間に口論を始めました。これが事の発端であります。どうしてそういうことになつたかということをさらに詳しく問い合せてみましたところが、第四工場に配つたみそしるおけのふたに第三工場とあるのをチヨークで消して第四工場というふうにしたわけであります。この第四工場収容人たちというのは、大体平素からほかの工場よりも凶暴性があるというふうに言われておつた連中でありまして、従つてひがみがほかの棟よりも強いといつていいのではないか、そこで食いものまで差別待遇にするかというふうに騒ぎ出したのが発端でございました。これに対して第三工場に入つております金進培という者が騒ぎ出して、第四工場の者に対して非常なはげしい罵倒をした、そこで両方非常に感情が激しまして、双方で多数の者が房のとびらを破つて廊下に飛び出して乱闘となつて、とうとうそれが屋外にまで出て騒ぎが大きくなり、これをとりしずめようとした職員に対しても群衆心理になりまして反抗の態度をとるに至つた、こういうわけでございます。当局としての措置はどういうことをいたしたかと申しますと、当時勤務中の職員三十三名がこれの制止に努めますと同時に非常招集行つたのでありますが、その間第三工場収容者である、前に申し上げました初めに非常にののしつた本人である金進培というのが、これはからだが危険だというふうに感じたのでありましよう、所内保安本部に逃げて参りました。これを第四工場側が追つかけて殺到して来た、ますますそこで事態の収拾が困難だということになりましたので、係官が威嚇射撃をやつた。この威嚇射撃が適当であつたかどうかということも、実は今なお念を入れて調べている次第であります。またこのころ一部収容者は第四工場からはさみその他の凶器になるものを持ち出して、今度は職員に反抗しまして、職員の間に約本名の負傷者が出ました。ことに外口警備隊長は全身数同所に切傷を受けまして日赤病院に入つておりますが、お医者の診断によりますと、治療四十日を要するというようなことになつております。大分騒ぎが大きかつたように思います。刑務所図はほかからの応援方、その他関係官川にすぐ連絡いたしますとともに、極力参加受刑者を説得しまして、午後一時三十分ごろにはようやくおのおのの舎房内に全員引揚げさせたわけであります。そこで翌日のことになるのでありますが、そこでは舎房が何しろ破壊されましたので、所内秩序維持ということもこれは大事だと考えまして、第四工場受刑者をほかに移す計画を立てて、翌日の午前八時ごろまず不良分子と思われる三十六名を呼び出したところが、当局の意図が那辺にあるかを察しまして、途中から一斉に舎房に逃げ帰り、折から階上において勤務中の五名の者の自由を拘束しまして、階段に夜具などでバリケードをつくりまして、階上にこもつて気勢を上げるに至りましたので、やむなく強硬検束を開始することといたしまして、武装職員を先頭に階上に飛び込んだが、受刑君側の方も非常に反抗しますために、威嚇射撃行つてようやくこれを制圧し、一人ずつ舎房外に呼び出して手錠を施して、午前九時ごろ鎮静せしむるに至つたというわけでございます。そこで当局としましては、同じ日に合計口九十五名を神戸、大阪、加古川、京都等の各刑務所に分散移送し、それでようやく平静に帰したというのが事件の経過でございます。負傷者は、受刑者側に十名ありまして、そのうちの一八は威嚇射撃のときに流弾が大腿部に川中したものであつて、ほかは軽傷であつた。職員側は、今申し上げたように、警備隊長が全治約四十日の負傷をしましたが他は軽傷であります。大腿部に当るような威嚇射撃というのは私よく意味がわかりませんので、この点も相当厳重に今調べておる次第でございます。従つて、場合によつては所長に対しても応分の処置をする覚悟をいたしております。  それから、原因については先ほど概略申し上げましたが、元来第三工場と第四工場受刑者たちの間に感情的な対立があつた、そこへほかから扇動したというような気味もあつたようでございます。また、受刑者の中にいわゆるボスというような立場をとつておる者もいたようであります。また先ほど申し上げましたように、当日は日曜日で免業日でありましたので、出勤職員数が初め少かつた、これが事件が大きくなつた原因一つであつたろうと思います。それからもう一つ見のがしてはならないことは、そのころは御承知のように雨天続きでありまして、この刑務所は半分新築しておりまして、廊下ができておらない。棟から棟へ続く廊下ができておりませんので、雨天の続いた場合には講堂のようなところへ連れて行つてレクリエーシヨンをするというようなことがついなかつた。従つて年少者ばかりの受刑者の間では、何となく気分が陰欝でいらいらしておつたように思われます。こういう年少者の、ことに孤独な立場にいる人に対する心持が足りなかつたのじやないか、こう私は現在認定をいたしておるわけでございます。もう一つは、この意味も今調べておるのでありますが、平素職員態度に対する不平があつた、これはよほど私どもは考えなければならぬと思うのであります。非常に感受性の強い年齢の受刑者だということに対して心持が足りなかつたのじやないか、こういうふうに考えております。それから、この事件は外部から何か扇動関係があつたかどうか、それも一応調べましたが、それはありません。ただ、騒ぎの最中に一時、裏の山から北鮮系の朝鮮人がしつかりやれというようなことを言つたようでありますが、受刑者の方はこれを黙殺したといつてよろしいかと思います。なお、御参考までにここに写真がございますので、各委員にごらんを願いたいと思います。  それから結論としましては、威嚇射撃というものがはたしてだれがその立場にいてもやむを得なかつたことであろうかということを現在なお調べております。平生不平を抱かしたという原因がどこにあるかということも調べております。それも判明次第さらに御報告いたしたいと存じます。当局としましては、感受性の強い少年に対してはたして十分の処置がふだんとられていたかどうか、なお責任感を持つて調査いたしたいと思つております。
  13. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 詳しい御報告を大臣から承りまして大体私どもは納得が参つたのであります。第三工場と第四工場との間のひがみから来る争いだというようなことでございましたが、給食の点では、少年ですから相当食欲が進んでいると思うが、これに、毎日の勤務、要するに働く時間に耐えられるような食事を普通与えておつたかどうか。あるいは、刑務所内においては減食するというような懲罰方式があるかどうか、さようなことがあるいはふだん行われておつたのかどうか。そういう点において、むしろ大臣の御報告よりももつと深い食生活に対する不満というものが日常あつたかどうかというような点は、どんなふうになつておりましようか。
  14. 中尾文策

    ○中尾政府委員 私からお答え申し上げます。片方の工場の方には大体懲罰明けの者とか、それから行状、成績のよくなかつたような者が比較的たくさん集められているというような関係からいたしまして、――それほどまでに感情対立がひどかつたのだということは実はあとでわかつたわけでありますが、そういうことのために、片方の比較的成績がいいと思われておつた工場の方から多少挑発されるような気味があつたというようなわけであります。  なお食事の点でございますが、少年につきましては、からだの関係も考えまして、普通の成人受刑者よりは一段階多くたくさん給与をいたしております。なおまた副食物のことにつきましても、やはり成人より単価が高く給与してあるわけでありまして、ただいまのところでは決して十分とは申せませんが、一般の受刑者を標準にいたしますならば、少年はそう不足はしていないのじやないかというふうに考えるわけでございます。なお、減食というようなことにつきましては、現在規定は残つておりますがやつておりません。なお、そういう若い者につきましてももちろん現在のところは減食ということはやつておりません。なおまた、今回の場合食事のことについて不平があつたというようには別に考えられないのでありまして、たまたまそのときに、自分のところに配り方が少いではないかというようなことを言い出す者が出まして、それで騒ぎのきつかけをつくつたというようなことじやないかと考えております。
  15. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうすると、減食の制度は罰としてあるけれども、現在行われていないということですね。それからもう一つ伺いますが、刑務所内の規定で、第三工場と第四工場というように、合流をしないで、ずつと区わけをしているのでしようか。それとも、つとめて合流させ、各受刑者の融和をはかるというようなことをお考えになつていなかつたのかどうか。たとえば、最初から第三工場に働く者はずつと第三工場に働かせ、第四工場に働く者はずつと第四工場に働かせ、そうして結局両者の間の団体的感情というようなものを考慮して受刑者指導をしておつたのかどうか、その点はいかがでございましよう。
  16. 中尾文策

    ○中尾政府委員 ただいまの御質問の、工場受刑者を出しまする関係でございますが、これは、職業を訓練するというような関係がございますので、大体その職業につきまするまではいろいろの角度から慎重に研究いたしますが、やはりこの者にはこの職業がいいのではないかということで一旦その職務につきますると、原則といたしましては、やはりその職業を身につけるまでそこで働かせるということにいたしておりまして、特別の事情がない限りはそうあちらの工場にやつたり、こちらの工場にやつたりするということはないわけでございます。たまたまこの場合に、そこの工場にすべての者が集まつたということになつたのでございます。なお実は、この姫路の刑務所には、二十歳から二十三歳までの青年の者を集めて、今やつてみているわけでありますが、これは初めて試みた方法なんでございます。そのために、あそこでは、まだそういう若い時代でありますので、なるべく教化の効果を多くするために、あまりやつかいな、非常に不良がかつたような者は、とりあえずどこかよそにまわした方がいいだろうということで、そういう計画もあつたわけでございます。また、今大臣からおつしやいましたように、あそこは建築中でございますから、もう少し舎房をつくりませんと十分入りませんので、多少過剰のようになつておりました。そういうような関係からいたしまして、約百人ぐらいの者を、よその刑務所に送るという計画ができておつたわけです。そのときに、姫路の刑務所としては、職業訓練がむずかしいと思われる者は、よそに移そうという計画をやつていたわけでありますが、それが実現しないうちに、こういうことになつたという事情もあるわけであります。
  17. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 若い者、二十歳から二十三歳ぐらいの者が、集団して一つの建物に収容されておつた。特にこういう若い者の伸び行く思想的関係、並びに肉体的関係などを考慮して、何か精神的な指導をしておるというような、特別にほかの刑務所よりかわつたよう指導の仕方をしておつたのかどうか。また今後さような指導をする必要があるかどうか。その点はいかがでありましようか。
  18. 中尾文策

    ○中尾政府委員 青年の者につきまして、どういうところに特色があつて、こういうところに力を入れて行つたらよいかということは、実はまだそうはつきりしたきめ手というものは、わかつておりませんが、少くともそういう精神的な教化の面におきましては、特に姫路の刑務所は、数年来外部の宗教家と非常によく連絡をとつておりまして、いろいろな宗派の宗教家の人たちが、篤志家としてしよつちゆう定期に刑務所に来られて、いろいろ個人的な指導をやつてもらうというようなこともやつておるわけであります。なおまた、少年刑務所時代につくつておりますところの教室が少しございますので、そこに入れまして、普通の成人教育的なことに力を入れたいというふうに考えておりましたが、最近そういう点につきまして、少し職員の意気込みが衰えたと申しますか、やるにはやつておりましたが、つい熱の入れ方が足りなかつたのではないかというふうに考えられまして、純然たる少年刑務所時代にあつたそれだけの緊張というものが、少しゆるんでおつたのではないかというように考えられます。この点はたいへん残念に思つております。
  19. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 これは希望でありますが、われわれ社会人といたしましても、終戦後における青年の人生観というものが、非常にかわつて参りました。確たる人生観を持ち得るには、非常に困難な事情に置かれているし、社会環境が、生活において非常に苦しめられておる。そういう不幸な環境の方が多くこういうところに入つておると思う。ですから、どうか精神的方面に相当力を入れて御指導願いたい。かように希望を申し上げておきます。  なおこれはほかの質問でございますが、法務大臣報告によりますと、この日は日曜で、非常に手薄であつたというような御報告がございました。休日でない普通の勤務日であれば、このくらいの暴動では、ただいまの刑務所の人員において、かような問題も起らずに、十分食いとめられるような状況勤務ぶりであるかどうか。この点はいかでしようか。なお新聞を拝見しますと、姫路の市警から武装警官が来て、これを応援しておる、あるいは消防署員もかけつけたというようなことが新聞に出ておりますので、かような大きな問題で、外部から応援を得なければ鎮圧ができないような状態のものであれば、今後刑務所としては相当これに対する対策を講じていただかなければならぬ。さような点はいかがでありましようか。
  20. 中尾文策

    ○中尾政府委員 これはどうも結果論でありますので、私ども申し上げることが正しいかどうか、確信がございませんが、平素職員が全部出勤いたしますと、約百人でありますが、その百人の職員がおりますと、あの程度のことにはならないで済ますことができたと考えます。しかしその食事を配りましたときには、やはり看守が一人しかついて行つておりませんので、その場合に、いきなりああいうふうにあらしのように突発的にあばれられますと、そのこと自体をその場ですぐ処理してしまうということは、やはりむずかしいのではなかろうかと思います。そういうことになりますと、そういう場合を一々想定いたしまして、あらゆる場合に十分な職員を、あらゆる現場につけておくということは、不可能でございますが、そういうことが起らないように、平素いろいろほかの面で注意をいたしております。不幸にして舎房を破つて、ああいう多数の者が飛び出すという場合にも、私たちの方で今持つておりまする警備力で、何とか処理できるのではないかと思うのであります。もつとも、たつた一つのところでそれを処理するということは、無理でございまして、私たちは現在各所に特別警備隊というものをつくつておりまして、その特別警備隊が各ブロックで協力することになつております。現に、ちようど姫路の場合にも、約二百名の武装特別警備隊というものが、各刑務所から招集されて参つております。そういうもので夜を守つて通したわけでございます。なお、今外部から警察官が来ておるというお話でございましたが、その警察官には、外の方を警備してもらうということにいたしまして、中の方は私ども職員が当つた。ある場合には、決して一箇所だけで十分とは申せませんが、各ブロックで力を合せてやるということになりますと、大体今の程度でやつて行けるのではないかと思つております。
  21. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま法務大臣からも、綱紀の弛緩の点をお認めになつたように思うのですけれども、この点は十分やかましく言つていただいて、再びかようなことが起らないように、御注意を願いたいことが一つ。それから、ただいま報告がありましたような原因でありまするならば、特に責任者をどうこうという問題は起きませんが、今の発砲の問題は、大臣のお言葉で、相当調査をいたしまして、その結果相当な処置をとられるということは当然だと思いますが、これを契機に、弛緩しております刑務所内の問題、受刑者に対する看守あたりの精神的な面などについて、十分に御注意を願いたいと思います。これは特に国内治安の大きな問題であると思うのです。受刑者が暴動を起すというようなことは、この付近に住んでおります住民としては、非常な不安であります。かような点を十分御考察の上に、万全の措置を講ぜられんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  22. 犬養健

    犬養国務大臣 発砲のことで、私けさ局長と説明を始めたのですが、その間に一応の報告が来ているそうでありますから、御報告をいたさせます。それからこの際、私どもの心構えを申し上げたいと思いますが、この事件報告を読んでの私の感じを率直に申し上げますと、少年刑務所というものは、いくら不良少年でも、看守も子供がありますから、どこかかわいげがあつて心持が割に行き届くのではないか。おとなの方は、少しつらいことがあつても、感受性の強い年代を過ぎていますから、どうせ世の中はこんなものだというふうに思つて、終ることもある。ちようどはんぱで、あまりかわいげもなし、そうかといつて、腹の中は非常にさびしく、感受性が強い。その点を係官が見のがしていたのじやないかと私は認定いたしております。今後は事故のなかつた刑務所が成績がいいのでなく、精神的にそういうことを配慮しないことも罰点の一つであるというふうにいたして行きたいと私は思つております。
  23. 中尾文策

    ○中尾政府委員 この発砲のことにつきまして、多少その後判明いたした点がありますので、その程度を御報告申し上げたいと思います。  最初に発砲いたしましたときは、今大臣が申されましたように、保安事務所にたくさん殺到して参りましたときに威嚇発砲したのであります。これはなぜかと申しますと、保安事務所はその当時ほんの数人しか職員がおりませんでしたので、そこに向つて殺到されました場合に、ただ逃げ込んで参りました金という者を何とかしたいというだけかもしれませんが、しかしああいう群衆心理の場合に、保安事務所をこわされてしまうとか、あるいはそこを占領されてしまいますと外に出られるという危険が起るわけでありまして、刑務所当局としては最小限度に守らなければならないわけであります。そういうふうにえらい勢いでえらいものを持つて殺到して参りましたので、どかぬかどかぬか、あつちに行け、あつちに行けということでいろいろ合図をいたしましたけれども、なかなか聞きそうにもなかつたので、空に向つて発砲したのであります。ところが、そのときに中の一人が、これは凶器を持つておつたそうでありますが、そんなことをやつたつて当るものかと言つて、凶器をもつてその発砲した職員に食つてかかつたそうであります。それでどうもしかたがないというので、下の方を撃つたそうですが、それがどこかがすつておるそうであります。そのときに傷をつけた者ははつきりしております。前日はそういう状態であります。それで一日目のときに、初めに三十何名の中心指導的人物をすぐそこでつかまえてよそへ移してしまおうとしたところが、察知されて逃げられた。そうしてみんなに、さあたいへんだ、おれたちはどこかに送られてしまうのだということを大きな声で知らしたわけでございます。ああいう場合に、よその刑務所に送られてしまうということを、受刑者は非常にきらうのです。というのは、つまりああいうところで暴動をやつたためによそに送られたということになると、烙印が押されることになりまして、事故を起したからよそへ送られて来たのだということになりますと、どうしても不利を見るというふうに考えがちでございます。そういうわけで、さあ送られたらたいへんだから、みんなどうかしろとおそらく言つたのだろうと思います。そのために下にあつた金だらいをこわしたり、あるいはそこに絵なんかがあつたそうですが、そういうものにインキをつけたり、ものを投げたり、ガラスなんかをこわしたりして、そして二階に上つて、二階に上れないように階段にふとんを積んでおいた。それをひつぱり出すことを断行しようということになつたのですが、そのときに絶対にピストルを撃つてはいけないということで、まず特別警備隊を出したのでありますが、そこに行きますと、二階におるものですから、上からいろいろなものを投げたり突き落されたりして上れない。やむを得ず引返して参りまして、やむを得ないから何とかしてくれというわけで、鉄かぶとをかぶつて、ふとんを持ち、ピストルを持つて、これは決死隊と申しましたが、おそらくそれだけの覚悟だつたと思いますが、上つて行つたわけであります。そのときには、中の舎房に三人の職員勤務しておりましたが、そういう連中は人質に二階に一緒に連れて行かれておつた。そこでどうしてもそこを突破して行かなければならぬというわけで、ピストルを持つてつて行つたわけですが、そのときに、上の方へだんだんに上つて行きますと、上からいろいろなものを投げつけたりして食つてかかつたそうであります。それで上つて行きながらピストルを撃つたわけであります。そうしますとその一発が大腿部に当りまして、そこで倒れました。そのとき悲鳴をあげたそうですが、そこでひるんだ、ひるんだからそのすきに職員が上に飛び上つた、こういうような状況であつたということが一応わかつたのであります。これは大臣も申しますように非常に大事な点なのでありまして、私たちもその点につきましては、なお詳細にその状況を調査しておるわけでありますが、中間的にその点を御報告申し上げておきます。
  24. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今大臣の報告を伺つたのでありますが、報告を伺つておると、何か今度の事件が、感情的な対立があつて、お天気が悪かつたので若い者の気分が欝積しておつたというようなところから起つた偶発的な事件であるかのごとき印象を受けたのであります。先ほどからいろいろお話を伺つたところによると、たとえば職員に対して不快感を持つておつた、実際上感情対立があつた、職員との間に相剋という形が出て来たということであるが、むしろ根本の問題は、そういう偶発的な問題よりも、少年刑務所の中における待遇上の問題ではないか。特に刑務所におけるこういう問題は、大臣も十分御承知通り、たいてい食糧の問題で起つて来るのです。これはたまたま食糧の問題で差別待遇があつたとかなんとかいうような偶然の問題ではなくて、もつと根本の問題にからまるものがあるのではないか。ただいまは中間の御報告であつたようでありますが、むしろ待遇上の問題を根本的に大臣として調査願いたい。先ほどの局長のお話を聞いておると、やむを得なく発砲しかのごとき言葉ばかりであつて、これはその衝におられる局長としては、やむを得なかつたと言わなければならない立場だろうと思うのだけれども、しかしそういうことでは問題の根本的な解決にはならないと私は思います。やはりこの際大臣がそういう根本の問題から、特に待遇上の問題についてお調べを願うことが、今後の根本的な対策であろうと思います。その点希望を申し上げて終りたいと思います。
  25. 小林錡

    小林委員長 本件について他に御発言はありませんか。――御発言がなければ、引続きさきに逮捕されました日共幹部の松本三益氏に関し、緊急に発言したいとの申出がありますので、これを許します。細迫兼光君。
  26. 細迫兼光

    細迫委員 団規法違反被告事件で拘禁されております松本三益氏について毒殺の疑いがあるという問題が、きのうのこの委員会においても、また新聞にも、きのうの東京地方裁判所における公判の模様として出ておるのでありますが、この点につきまして大臣に質疑いたしたいと思うのであります。重要な質疑の続行中でありますから、簡単にいたしておきますが、その伝えられる内容は、松本三益君が食事をしておつて、魚がお菜に出て来たが、そのしつぽの方を少し食べただけで、何だか変だからというので食べることをやめ、ハトロン紙に包んで外に出しておいた。ところがハトロン紙の破れ目にすずめが首をつつ込んで死んでおつた、自分も下痢をした、こういう内容のものでありまして、そうして刑務所当局に調査を頼んでも取上げてくれない、裁判長に要求しても調査しようとしない。これは法務大臣の所管事項だと言つて、裁判長もいわば逃げておる、こういうような内容である。私らも初めて聞く問題でありますから、大臣においても初めて聞かれた問題だろうと思うのでありますが、こういう疑いがあるだけでも、これはゆゆしき問題であるのでありまして、何か御調査に着手しておられますならば、その内容なり結果なりの御報告が得たい、それが第一点。なお御調査に着手しておられなければ、これは小菅の拘置所だろうと思うのでありますが、さつそくに調査なさつて報告が願いたい、かように存ずる次第でありますが、御答弁をお伺いしたい。
  27. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。事柄はきわめて重大でございますので、さつそく調査を始めております。私の率直な感じで申し上げますと、まさか毒を入れるということはない、と言い切つては無責任でございますが、その点も調べております。どうもそれではぴんと来ないのでありますが、御承知のように青魚、さばとか、ああいうものの古いものをあまり気を使わずに買つて、これはひどい下痢がよくあります。それですずめが死ぬかどうか、私は今のところ知識がないのでありますが、とにかくそういう点を少し私心配しておるので、十分調べまして、らちが明かなければ、もつと別の方法で徹底的に調べたいと思つております。当局もかなりこれには神経質になつておりまして、徹底的に調べると申しておりますから、この次の委員会くらいにはとりあえず御報告ができると思います。  先ほど岡田さんの御質疑は私もごもつともだと思いますが、私はこの事務当局報告というものの読み方をきめておる。やはり行と行との間を読みませんと、大臣としては行き届かないので、そういう点を十分今考えて読んでいる次第であります。
  28. 小林錡

    小林委員長 本件についてはこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  29. 小林錡

    小林委員長 刑法等の一部を改正する法律案について質疑を続けます。猪俣浩三君。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣がちようどおいででありますからお伺いいたします。実は執行猶予裁判所でつけて、なおそのほかに保護観察に付するというような制度が今度の刑法等の一部改正法律案に出ております。この執行猶予になつた者保護観察をつけるということについては、これは犯罪者予防更生法の一部をそのまま字句を挿入して適用するようなことをせずに、これは観念が違うのであるから、執行猶予についてどうしても保護観察をつけなければならぬ場合には、いろいろの条件、あるいはそれはいかなる制度のもとに何人が監視するか、その他の条件、そういうものを特別な立法をする必要があるのじやないかということを、今政府委員にお尋ねしたところでありますが、その御答弁がまだないのであります。ちようど、これは大臣にお尋ねした方が適当だという同僚の注意によりまして、犬養大臣から御意思を承りたいと思うのであります。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 その制度の精神は、政府委員からしばしば申し上げておると思います。私も就任して日が浅いのでありますが、ああいう中へ入れておいたら、その人の持つている天分がよくなるとか、伸びるとかいうことには必ずしもならない場合が多いようでありまして、ここにおります齋藤局長が非常に献身的な気持でこの制度を確立してくれたのであります。その問題について、今の御質疑の中心点でありまする新しい立法をするかどうか、これは率直に申し上げまして、その問題は気がついておりませんでした。これは昼飯のときによく話をし合いまして私の考えを立てたいと思つておりますから、またいずれ私の考え方を申し上げます。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣は御用がありましたら、どうぞお引取りを願います。  私は、この執行猶予保護観察を付することと、少年あるいは仮釈放者に保護観察をつけるということとは、観念上違いがあるのではないか、要するに執行猶予制度なるものは、監獄において服役させなくとも、一般の市民生活を送らせることによつて、その反社会性を矯正しよう。すなわちそれには自由ということが中心であります。されば、それを法律恩典なりとして感謝して、彼らの反社会性が消えて行く、ここにねらいがあるのでありまするから、執行猶予をつけておきながら、これに何らかの看視をするということには私は矛盾があると思います。執行猶予をつけるならば、それは監獄行政に服せしめず、一般の市民生活を享楽させながら改過遷善されようという深い深い法のたくらみがあると考える。それにけちな干渉がましいことをやつて、そうしてその人の自尊心を傷つけ、社会から何らかの色目で見られるような生活をしなければならぬというようなことならば、執行猶予制度の根幹に横たわりまする深い深い法のたくらみというものがこわされるおそれがあると思うのであります。それでありまするがゆえに私が先ほど観念矛盾があるのじやないかと言うたのは、そういう基本理念からであります。そうしてその観念に相違がありまするがゆえに、ただいま政府委員の御説明になりましたような仮釈放の者と同じような保護観察に付するというようなことが出て来るのであります。私はこれでは執行猶予の根本的精神を破壊することになり、百害あつて一利がないというふうに考えるのであります。ことにこの遵守事項なるもの、これは犯罪者予防更生法に書いてあります。これは少年あるいはは仮釈放者――仮釈放者というのは、監獄行政によつて陶冶すべきことを適当なりとして入獄した者でありますが、その後のかれの行状、態度によりまして、裁判なしに、いわゆる監獄行政を適当なりとした判事の判断なしに、保護更生委員会においての処置としてその家庭にもどらせるのであります。これは委員会としても当然責任があることだろうと考えられる。しかもこれは監獄生活を送らなければならぬ人種でありまするから、これに一定の制限を付するということも、これは理解ができるのであります。監獄におるよりも外に出しておくのでありまして、元来は監獄におらなければならぬ人なのであります。それでありますがゆえに、そこにいろいろ条件が出て来るということも考えられるが、一般の成人執行猶予をつけられた者に対しまして、この犯罪者予防更生法規定しております遵守事項というものは、これははなはだどうもぎこちないことが起るのではないか。一定住居に居住する。正業に従事するということはよろしゆうございますが、善行を保持する、犯罪性のある者または素行不良の者と交際しない。これは少年ででもある者ならば、悪い者と一緒になるなというものも、ある程度これは訓示になりましよう。しかし一般の社会生活行つておる者に、犯罪性のある者または素行不良の者と交際しないことと言つても、一体どういうような人間が犯罪性のある人間であるか、犯罪性のあるとということは、一般の人にはどういうふうに考えられるか。素行不良と申しましても、どういうのを素行不良というのか、こういう普通の人がちよと判断できないようなことを、しかも誤つて犯罪性のある者や素行不良の者と交際したということになると、執行猶予は取消されるということになる。これではどうも自由なる市民生活を享楽することはできません。住居を転じ、または長期の旅行をするときは、あらかじめ保護観察を行うものの許可を求める。これも商人その他活発に活動しなければならない人にとりましては、これは非常に煩雑なことである。しかもこれを怠ると執行猶予を取消される。これは執行猶予を取消される場合は、犯罪を犯して、罰金に処せられたとか、禁錮以上の刑が発覚したとかいう刑罰条件の予定した場合において取消される、あるいは刑罰に処せられたということで取消されるのであります。そこで先ほどの質問になりますが、この遵守事項というものは、刑罰法規違反と同じような性格を持つておる。禁錮以上の刑に処せられた、罰金に処せられたのが取消し原因になる、それと同じように、この条項に違反すると、取消し原因になる。犯罪性のある者と交際した、素行不良の者と交際したというと、これが一種の処罰条件、一種の刑罰条件みたいになつてしまう。犯罪を犯して罰金に処せられたと同じ効力を発生してしまつて執行猶予は取消されるということに相なるのでありまして、遵守事項というものが非常に重大な働きをしておるというふうに考えられる。執行猶予になりましても、なおまたこういう刑罰条項のようなものがあつて、それを守らなければまた逆もどりするというようなことは、全体といたしまして執行猶予制度の根幹と背馳する理念である。自由なる社会生活を営むことによつて、反社会性を消滅せしめようという、深い法のたくらみが、またく裏切られることになる。私はその意味において保護観察制度というものを心配するのでありますが、どうしてもつくらなければならぬならば、先ほど言いましたように別な見地に立ちましたる独立の立法をすべきものであるというふうに私は考えるのでありますが政府委員は独立の立法をしなくてもよいと考えられておるかどうか。法務大臣は後刻よく考えるとおつしやつたが、あなたとしては法務大臣に独立の法律をつくることをお勧すめする気があるかないかということを承りたい。
  33. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 別個の法律保護観察と同じような内容なり、方法なりを明確にするということにつきましては、責任のあることでありますから、大臣にも十分御意見を伺つた上で申し上げたいと思います。  ただ仰せの通りに従来執行猶予の言い渡しをしたということだけで犯罪者の改善を促すという非常に大きなたくらみというお言葉をお使いになりましたが、そういう影響と申しますか、効果を持つているという点は確かにそうだろうと存じます。ただ統計等で見ましても罪種によりまして取消しの率等が非常に違つてつております。昭和二十五年度の統計で申しますと、窃盗等は二八%が取消しになつている。それから特別法犯などは一考というようなことで、やはり窃盗とか、そういう経済犯といいますか、財物犯と申しますか、そういうようなものについてはやはり職業をあつせんしてやる、そういうことをしてやらないでただ執行猶予に付した場合には、脱落者が相当な割合出て来るということも考えられるのではないか。すなわち従来の執行猶予に非常に深いたくらみがあつたということはその通りだと考えますが、それだけでまかなえないような事案も出て来るというように考えまして、そういう場合にこの法案が動いて行くべきではないか、こういうことを考えております。また遵守事項内容等についてきゆうくつではないかという点も確かに御指摘のような傾きがあるのではないかと存じております。さような関係をも考えまして、この案には遵守事項違反による取消しというものにつきましては、他の罰金とか、体刑とかいうような有罪判決による取消しの場合と違つた慎重な手続をとり、また十分本人からの言い分もその決定に反映するような方法を考えている次第でありまして、この保護観察内容につきましては、前回来いろいろとお話のありました点も考えまして、従来の警察監視とかそういうような傾向があつてはならないということを従来とも考えて参りましたが、いろいろと御注意を伺いまして、今後とも保護観察というものが社会的に恵まれない人に犯罪生活から浮び上るために、まつたくの社会奉仕の意味で手助けをするという意味合いで、多数の保護司がやつておられる。それを十分にその方向に働いていただくようにしていただく、この法案が実施された場合にはそういうことでやつて行きたい、かように考えております。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 実は仮釈放の問題ですが、予算乏しく委員の数が少く事務が非常に渋滞いたしまして、仮釈放等に付さるべきものがなかなかもつて許されない、長い間とめ置かれるものが相当あると聞きまして一度当法務委員会で問題になりました。多少予算が増加し、委員の数がふえたかと存じますが、いままた一般の執行猶予になつた者までこの保護観察に付するということになりますと、これはなかなかもつてこの保護司は激務になると考えられます。しかも一定の報酬も出ず、名誉的な地位として働く、その志や壮なるものがありますが、実際面としては、さような制度でほんとうに法の所期するような効果をあげることができるかどうか。一体これが通つてこの法律にふさわしい予算措置が講ぜられているのであるかどうか、私は相当保護司なり委員なりがふえなければならぬと考えますが、どの程度増加し、どの程度の予算が組まれているのか、その御説明を願いたい。
  35. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 地方委員会委員が仮出獄の決定をいたしておりまして、これにつきましては事案と事件数等も考えまして増員をはかつた箇所もございます。現在では大体支障なく行つておるものと思います。この執行猶予に対する保護観察という制度が施行された場合に地方委員会は中間監督機関としては関係を持つて監督をいたさなければなりませんが、実際の保護観察は、観察所の所長並びにその部下でありまする保護観察官及び民間協力者である保護司という方々が担当する、こういうことに相なります。さような関係で、本年度の予算におきましては、観察官を刑務所職員から繰りまわしといいますか、向うを減らしてこちらをふやすというような形で九十三名増員をいたしております。なお保護観察に要する補導上の必要な費用として約一千万円程度ふえておるような事案でございまして、現在家庭裁判所から保護観察にまわつて来た少年及び仮出獄中の者、仮退院中の者を合せまして七万人くらいを全国観察所が保護司の協力を得て観察をしております。この制度が実施されると、どのくらいふえるかというようなこともいろいろ計算をいたしまして、九十三名観察官をふやす。保護司の方は現在五万二千五百という法律の定員がございまして、人選その他に慎重を期している関係もございまして、四万四、五千の実数でありますので、まだ定員まで参つておりませんので、しばらく様子を見たい、こういうことでございまして、大体一年間にどのくらいふえるかという数字も考えてさような措置をしたわけであります。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま一点。そうすると、相当保護司の人数なんかを増加なさるという計画のようであります。そこでここでなお御留意願いたいことは、大した報酬もなしに働く人でありますので、りつぱな人を得ますならば、これは非常にめでたいことでありますが、人数でもふえて来ると玉とかわらとがごつちやになります。要するに地方的なボスが多く任命されるようなことに相なりますと、非常な弊害を来す。ことに人の弱点を握つているようなことに相なりますがゆえに、これはその人を得ざればたいへんな個人の社会生活を脅かすことになります。私どもは、こういう保護観察を加味した執行猶予制度は、構想としてある程度りつぱに見えるが、実際行われ場合における弊害をよく考えなければ、ただ簡単に賛成するわけには行かない。どうしても人数をふやなければならぬ、ふやすとそこにいかものが入つて来る。いかものが入つて来ると、人の自分に関するものをつかさどるのでありますから、これは生殺与奪の権を握つているものと申さなければなりません。それが選挙の場合、あらゆる場合において悪用せられますとたいへんなことに相なる。そういうことに対するいかなる御考慮をお払いになつておるか、承りたいと思います。
  37. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 保護司が非常な働きをする、しかもその人選がよろしきを得なければ、非常な弊害を恐れる、まことに御指摘通りでございます。十分注意をいたしたいと存じております。この選考にあたりましては、各県の代表官庁、在野法曹代表、またそういつた各方面の権威者の代表がお入りになりまして、十一名ないし十三名の選考委員会法律によりまして設けられておりまして、その御意見を伺つた上で法務大臣が委嘱するという手続をとり、さらにそれでもあまり適当でないというような方があつた場合にその入れかえをはかるという意味合いもございまして、任期を一応二年といたしまして、よい方はずつと続けてやつていただく、現に少年法施行以来三十年やつておられる方もございますから、もし不適任だというような場合には、あまり問題なく円滑に交代もできるというようなことも考えていたしておりますが、御指摘通りでありまして、この点につきましては十分に注意をいたしたい、かように考えております。
  38. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この保護観察は、盗癖のある者、もしくは狂暴性のある者等に対しては悪くないように考えますが、選挙違反で執行猶予になつた者のごときは、やはりあなたは必要とお思いになりますか。
  39. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 統計の示します通りでございまして、そういう場合は、あまり必要ない場合が大部分であろう、かように存じております。
  40. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 選挙違反をやつた者を、先ほど猪俣君も指摘されたように、「一定住居に居住し、正業に従事すること。善行を保持すること。犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」そうして第三十五条によると、「保護観察に付されている者に対し、前第第二項に規定する事項を導守させるため、必要且つ適切と認められる指示を与えること。その他本人社会の順良な一員となるように必要な措置を採ること。」とあるのであります。選挙違反を犯した者を、私は決していいものとは申しませんが、選挙違反でせつかく執行猶予になつておる者に、こういうものを適用されたらたいへんだと思うが、あなた方はたいへんでないとお思いですかどうですか。
  41. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 そういう場合は、必要でないてとをやつたことに相なるだろうと思つております。
  42. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この法律を見ますと、今まで全然なかつたのだが、二十五条の二として、「前条第一項ノ場合二於テハ猶予ノ期間中保護観察二付スルコトヲ得」となつておる。いわゆる初犯の執行猶予でも保護観察に対することができるようになつておる。その次は、「前条第二項ノ場合二於テハ猶予ノ期間中保護観察二付ス」これで法律保護観察に付さなければならぬ。あなたが今言つた不必要であつても付さなければならぬことになつておる。これはいかがですか、たいへんなことだと思うか……、
  43. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 その点も、私どもこういうふうに考えておるのであります。選挙違反によつて罰金執行猶予になつた人がまた何か罰金になるといつた場合には、無条件執行猶予が可能である。現行法によりましても、罰金執行猶予中に罰金に処せられるという場合は、刑法二十五条第一号で、執行猶予の要件といたしましては「前二禁錮以上ノ刑二処セラレタルコトナキ者」第二号に、禁錮以上の刑に処せられた場合には、七年以上無事故であるということが書いてございまして、罰金刑の場合には、何回でも執行猶予が可能であるというふうに考えておりますから、さような場合は救済できる、こういうふうに考えております。
  44. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 初犯で執行猶予になる。あなた方は選挙違反の場合はいらぬとおつしやるが、初犯でも「観察二付スルコトヲ得」となつて、これは裁判所はどういう決定をするかしれませんが、おそらくこういうものができたら、たいてい保護観察に付するだろうと思う。これは初犯の場合でもそうです。そうしてその次で執行猶予なつたら、これは法律上付さなければならぬ。だからすべて執行猶予になつた者は付されることになつておる。あなた方は必要でないと言われても、法律で付すということになつておるから、裁判所はいやでも付さなければならぬということになる。この点はたいへんだ、こう言うのであります。
  45. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 懲役禁錮の場合でございますれば、これは第一回目の執行猶予ということにもなり得るのでございます。従いまして裁判所が必要なければつけなくてもよろしい、こういうことに相なります。その点は裁判所の必要がないという場合は、前に禁錮以上の刑に処せられていないから、今度体刑に処するけれども、第一項によつてやられる場合でございまして、第二項の働きます場合は、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、執行猶予中の者が一年以下の体刑になつたという場合でございまして、その場合は一項で参りますと、裁判所が必要によつてつける、必要がなければつけない、こういうことになると思います。
  46. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 二項の場合は付すとなつておるでしよう。それからもう一つ伺いたいのは、第二十六条の二ですが、取消しの場合は、この第一項、「猶予ノ期間内更二罪ヲ犯シ罰金処セラレタルトキ」こうなつておりますが、裁判のときには、これは裁判所の自由認定できめるのだろうと思いますが、いかがです。
  47. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 二十六条の二によりまして罰金の刑に処せられたために前の処分が取消されるという場合には、検察庁の検事の請求によつて裁判所がこれを取消す。こういうことになつております。
  48. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうするとこの二十六条の二の二号、三号もやはりこれは検事が請求して、そこで裁判によつて取消されるのですか、どういうことになるのですか。
  49. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 いずれの場合も執行猶予取消しは、検察庁の検察官の請求によつて決定をもつて裁判所が取消す、こういうことに相なつております。また今回の遵守事項違反だけは保護観察所長の申出に基いて検察官が請求する、その手続は通常の場合と違つて慎重にいたす、こういう仕組みになつております。
  50. 小林錡

    小林委員長 本件の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半から再開いたします。  しばらく休憩いたします。     午後零時四十三分休憩     ―――――――――――――     午後二時三分開議      ――――◇―――――
  51. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  刑法等の一部を改正する法律案を議題といたし、引続き質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。古屋貞雄君
  52. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 お尋ねしたいのは、刑法の一部を改正する理由、ことに執行猶予に関する範囲を拡張いたします主たる目的はどこにありますか。
  53. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答えを申し上げます。犯罪をした人の改善、更生をはかる上におきましては実刑を執行するということは、よほど慎重に考えなければならないものではないか、一応試験的な措置をいたしまして、その上でどうしても実刑を執行する必要があるという場合に、初めて刑罰処置を考えることが適切ではないかという考え方で、この改正案を考えた次第であります。
  54. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 もう一つお尋ねしたいのは、改正の中に特に保護観察制度が新設されることになつておりますが、この保護観察制度を新設することの理由をお尋ねいたしたい。
  55. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 現在の執行猶予の成績といいますか、結果といいますか、そういうものを見て参りますと、終戦後執行猶予の事案が非常にふえて参りましたが、同時に執行猶予再犯による取消しというものが非常にふえて参つております。しかもその内容を見ますと、財産犯、ことに窃盗などにおいて相当な割合の取消しが出ておりまして、これらの事案については、適切な指導保護を加えて、執行猶予中に再び犯罪を犯さないようなことを期したいという意味で、この保護観察ということを考えておる次第でございます。
  56. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 再犯を犯さないようにということのために、保護観察制度が新設されるという御答弁でございましたが、私ども保護観察制度内容そのものについてよく承知しておりませんけれども、むしろ保護観察をいたすために、執行猶予恩典に浴したかつての被告が、他の委員からも御質問がありましたが、何か重しをかけられて、後から引かれておるようなぐあいになつてさつぱりしない。この点は精神的な問題なんですが、もつと具体的な問題として、旅行をするにも許可を受けなければならない。あるいは保護観察を受けているのだというようなことが現実にわかるために、むしろ職業を得る場合、あるいは職業を得ておりましてもさようなことを原因にやめなければならないというような弊害が非常にあるように、われわれ過去の事実に徴して非常に懸念するわけであります。特に私ども承りたいのは窃盗犯が終戦後は非常にふえている。犯罪の中で最も。パーセンテージの多いのは窃盗犯である。これはいわゆる貧すれば鈍するということで、生活をするためにやむなく心ならずも犯罪を犯すというような方が多いのでありまして、一方においては社会制度をかえて社会政策を実行して完全雇用というような面に持つて参りますならば、こういうような犯罪も減つて参りましようが、ただここで私どもが懸念いたしますのは、生活に苦しめられてそのために窃盗を行う、犯罪を行う、さようなパーセンテージが多い現在の状況におかれまして、保護観察制度においてむしろいろいろと干渉をされて、あるいは執行猶予中の者であると、うようなことが世間に周知されましてそれがために雇う方でも雇わない、あるいは雇われておつても警戒する、いわゆる職業を求める場合、あるいは経済生活をする場合に非常に制約を受けるという弊害を相当考慮され研究されて、この御提案をなされていると思うのでありますが、この弊害に対する御調査がどのくらいの程度までされているのか。現実にそういうような弊害について御考慮されておつたのかどうか。この点を承りたいと考えております。  というのはかつてどももそうだつたのですが、思想犯になりまして――甲思想犯、乙思想犯とありまして――思想犯となると警察がこれを監視する、われわれが当時友人のところをおとずれる、あるいは銀行に用があつて行くと刑事がついて来るということで、そのためにどのくらいわれわれの生活上に制約を受けたかということは、われわれの方はみずからもつて非常に体験した一員であります。たとえばうちの女房や子供がしるこ屋に行くと刑事がつけて行く、こういうことは今ではございませんが、当時はこれはほとんど――下手をするとわれわれの泊つた宿屋の同じ部屋に寝なければ承知しないということがあつた。当時われわれは悪人かといえばそうではない、われわれはりつぱな国民であつた。かようなことから考えましてこの保護観察制度がただいま御説のように再犯を予防するためだ、再び犯罪を犯さないためにせつかく執行猶予にした、その被告人を真人間にするためだというならば、あらゆる保護観察制度の実態、そり弊害を十分に御研究の上でかようなものを新設される、かようなことになつたと思いますが、その具体的に調査された弊害に対する御考慮の程度がどの程度であるか、この点を承りたい。
  57. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 保護観察制度は、昭和二十四年七月犯罪者予防更生法が施行されてから四年あまりたつております。対象者は、もちろん成人執行猶予者は今回の法律案で初めてのものでありますが、従来家庭裁判所から犯罪をした少年が保護観察にまわります。これが現在一番保護観察対象として多うございます。次は仮出獄中の者であります。その次が仮退院、少年院から条件付で出て来る少年であります。その次が第四種類として、現行法の十八歳未満で執行猶予の言い渡しを受けた少年、この四種類について保護観察をいたしております。その保護観察のことにつきましてただいま古屋委員が仰せられましたように、もしこれが犯罪予防のためだと言いながら、警察監視的な、何か査察的な、そういつたことで犯罪を予防するということに行きますれば、非常な弊害を生ずることも考えられます。しかし現在はそういう考えではなくして、むしろ警察とは反対に、犯罪者犯罪をする原因をなくそうということに重点を置いて立案をいたしております。従いまして、少年の場合には家庭の環境の調整とか、あるいは本人の学校の関係であるとか、教育的なものに重点を置きます。成人の仮出獄者等におきましては、就職問題をできるだけ早くあつせんしてやる、こういうようなことに重点を置いていたしております。犯罪をなくするとはいいながら、犯罪をしないように監督するということではなくして、むしろ内外の諸条件をよくして犯罪をする原因をなくそう、こういうことに重点を置いていたしております。今回の改正は、今日まで全国の民間の篤志家が、保護司としてそういつた意味での犯罪予防に尽力されて来られまして、どうしても刑務所へ入れると非常にやりにくい。それよりも刑務所へ入れる前に自分たちの手元にまわしてもらえば、現在入つている相当数の人たち自分たちのをころで改心させることができるのじやないかというような熾烈な要望がありまして、提案をいたしたような次第であります。
  58. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 少年犯罪家庭裁判所からまわつて参りますような方たちには、まことに私は必要だと思うのであります。思想も固まつていないし、思慮が浅薄だし、それに青年としての感激性がある。世間の実生活に対する経験が少いので、こういう方たちに対しては、お説のような保観護察をいたしまして、指導善導することが非常に役立つと思うのでありますが、さような関係から、青年でしかもいろいろの環境のもとに置かれておりまする人々、特に執行猶予になりまするような方たちは初犯の方が多い。犯罪の動機にも非常に同情すべき点がある、しかも反省はしておる、反社会的な性格がない、こういうことになるのでしようが、一応こういうように執行猶予をもつて刑の執行を猶予いたしまして、その経過によつて犯罪を犯さなかつたと同じような考慮をするというような恩典でありまするならば、やはりただいまお説のような職業の指導は補導所により、その他の機関にまかせてさつぱりいたしまして、かような人々に対する重荷を加えることが、加えないことよりもどの程度効力があるか、この点は実際に今まで仮出獄をやられておりますし、それから少年の方たち指導をやつておりますので、特に仮出獄をした者に対する保護観察をした結果、かようにいい成績が上つておるというような具体的な何か例がございましたらひとつお聞かせ願いたいと思います。
  59. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答えを申し上げます。これは保護観察の成績だけでなくて、社会的な秩序が安定して来たとか、経済生活が漸次安定して来たということによるところも多いかと思いますけれども、統計の示すところによりますと、仮出獄の人に対して保護観察をつけるようになりましてからの取消し率、これは厳格に申しますと正確とは言えませんが、現在わかつておる程度で申しますと、その年間の仮出獄になつた人と、その年間に仮出獄を取消された人の率が、昭和二十四年は八・六一%、二十五年が七・八六%、二十六年が七・〇五%、二十七年が二・六一%、こういう数に相なつておりまして、いろいろな条件があるから、必ずしも保護観察の成績を示すものだとは申し上げることはできませんが、私どもは若干これに寄与しているんじやないか、かように考えております。
  60. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま具体的な御説明がありまして、よくわかりましたが、仮出獄の方たちは、実は実役に服さなければならない、それが仮出獄をしておるということで、特に執行猶予関係よりも、相当制約を受けた者の結果を御報告になつてよくわかりました。ただ私どもおそれるのは、一度刑務所にひつぱられまして、有罪判決を受けますると、大体ひねくれます。ことに現在のような社会情勢でありまするならば、働こうとしても働くことができない。働いても、家に家族が多いために生活ができなく、やむにやまれず自分犯罪を犯したが執行猶予なつた。執行猶予になりながらさらにいろいろの制約を受けておるというようなことでは、精神的に卑下する、ひねくれるようなことになると思うが、何か御考慮は当然ございましようが、そういうような保護観察を受けることによる精神的な弊害等についても、特に具体的に御調査を願つたようなことがあれば、お聞かせ願つたらけつこうだと思います。
  61. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 事柄が事柄でございますから、私その仕事に関連いたしまして見聞いたしたことを断片的に申し上げてみますと、今の保護司は、制度の示すように社会奉仕者として、ての自覚を持つておやりになつておりまして、現在ではほとんど手銭手弁当でおやりになつておるというような状況でございますが、非常に御熱心にやつていらつしやいまして、そうして職業の補導につきましても、まず対象者接触する最初の機会が一番大事であるということで、その接触の仕方に非常に注意をなすつていらつしやいます。それから就職につきましても、いついろな事例を積み重ねて研究をしておられまして、私伺つたことを一つ申し上げますと、刑務所から仮出獄中の八を就職させるのに、出て来てすぐに肌につけるということでは長続きがしはい。やはり社会に出れば職業安定所院行つて頼まなきやならぬということをよく言い聞かせて、一週間も十日も職業安定所に通わせる。そうすると朝から数時間待つおつてもなかなか職がない。自分はこう希望するけれども、そんなことはとても今できない、非常に困つてしまつて、先生しかたがないから、何でも私はやりますというときに、初めて職業をあつせんすると、非常に長続きします、というような点まで研究していらつしやる。そうして態度も、単に監視するというようなことでなく、むしろ自分から本人の兄弟親戚のようになつてつてやるというようなことでやつておられまして、現に退所者のために身元を保証して就職させて、そしてその退所者が不都合を働いて民事訴訟を起されて、十万円かの損害賠償を支払うべしという一審判決を受けたという例もございます。やり方によりましては御指摘のようにかえつて就職をじやまにするということもございまするが、現在はそういうここのないように、その反対に、自分たつの熱心で職場を開拓してやるというつもりでやつておられます。またそういうふうに御指導をしております。
  62. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今のことはちよつと了解しかねるのですが、精神的に受ける制約と申しましようか、それがかえつて本人をひねくれさして、ためにまた再犯を起すというような弊害が生れるという点についての御考慮を願つたか願わぬかという点なんであります。その点はいかがでしよう。
  63. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 私は司法保護司が非常な犠牲になつて献身的にやつておられる事実をよく見ておるのでありまして、ことに実はひねくれるというような御心配があるのでありますが、仮出獄や何かした方々は何となく冷たい目で見られる、あるいは社会の人から相手にされないというようなひがみを持つているという傾向があるのでありますが、むしろそういう人に対して司法保護司が親身になり、親兄弟のようなあたたかい気持になつて、すべての相談相手になつてやるということで、ひがみをなくし、ほんとうに何でも心から打解けて相談するというような気分になるのでありまして、むしろ私はただいまの御心配じやなく、反対に、非常に親しみを持つて司法保護司に相談をする、そのためにその人が社会に対するひがみをなくし、ほんとうに心から感謝の気持を持つて世の中に出るというような傾向が非常に多いのじやなかろうかというふうに実は考えておるのであります。そういう意味において、私は現在のこの司法保護司に対する待遇が非常に悪い、これは制度が悪いので、むしろ司法保護司に対する待遇なりあるいは司法保護司の機構に対して、そういうような、気の毒な、社会から受入れられない方々を親身になつて世話し得るような措置を講ずることが、一層この制度をよくするのみならず、ほんとうの司法保護目的を達するというふうに考えておるのであります。私はこの点につきましては、幾分司法保護司の方と特別な接触もあるのみならず、実は私の家内などもそういうような職に当つているので、常にそのように考えているわけであります。
  64. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今の御答弁の点は私も同感であります。前科者の場合にはそういうものはよく当てはまるのです。ところが前科者にならないように執行猶了の判決を与え、執行猶予判決をいただいたので、これで自分一定の期間まじめに働きさえすれば、ほとんど有罪の判決を受けたのがなくなつてしまつて、はれそれするのだというような気持で反省させる方が効力がある、こう私どもは思つている。それにもう一つ重ねてつけ加けた一つの重荷を負わせるというところに、精神的なひがみが出て来るのじやないか。ただいまの御答弁によりますと、前科者になつたという焼印を押された方たちにはこれは非常にけつこうだと思う。ところが前科者でなくなるようにさつぱりさしたらどうか、こういうふうに考えるわけです。そこでこれは昼前から猪俣委員からも御質問がございましたが、一方において執行猶予判決の言い渡しをするだけの事情のある軽い者については、むしろ特に制限されるような、重荷を背負わせるような保護観察制度はやめてしまつて、さつぱりした方がいいのではないか。従つて再犯を起させない、あるいは今申したようにさつぱりした気持で仕事に励み、世の中の善良な国民としての生活に努力する、そうすることによつて再犯を防げるのではないかという、このわれわれの希望を考えると、ただいま御説明のあつたよう保護観察制度をこしらえて、さらにこれを保護観察に付した方が再犯を防ぐことができるというところに問題があるわけであります。そこで私どもの考えでは、むしろ従来のように、はつきり重荷を負わせない、判決に感激をして、真人間になつてもらう、こういうようにすべきであて、――くどいようでございますけれども、これは何かしら重荷を負わされておるような、一つの義務を負つておることは事実であります。旅行する者は許可を受けなければならぬとか、あるいは悪い社会の、たとえば常習賭博をするとか、あるいは窃盗の常習であるとか、あるいは前科者とはつき合いをしてはしかぬというようなやかもしい規定がこれにはあるらしい。そういう者とおつき合いすることはいけないのはもちろんでありますが、社会生活をしておる間にはそういう人々にもやはり助けられる場合もあり、相協力して仕事をしなければならぬことも出て来るでしようから、その点にまず疑念を持つわけです。一方において執行猶予恩典に浴し、一方においては保護観察制度によつて保護されるということになりますと、観念的に矛盾を来しておるのではないかという考えをおそらく委員の方たちはお持ちになると思う。それでこの点に関して、観念的に矛盾じやないのだ、これははつきりしておるのだと納得の行く説明ができれば委員も納得するのだろうと思うのですが、その点の明確な御答弁はないのですか。
  65. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 私にはさような自信はございませんが、ほんとうに私の考えているところを申し上げて御推察をいただきたいと思います。先日来御意見もございましたように、保護観察本人の重荷になるようなことでこの制度を運用したのでは成績が上らない、また私ども保護観察を担当する側の部局の者といたしましては、本人が納得をしないものを保護観察に付せられることは、保護観察をする側としては、御迷惑というのは言い過ぎかもしれませんが迷惑である、こういうふうに考えております。本人も納得し、関係者も納得して、ほんとうにこれで本人も真人間になるのだということで保護観察に付せられ、そして保護観察をする人は罪人を監視するという態度ではなくて、ほんとうに奉仕者としての同胞愛といいますか、人間の命を惜しみ、これらと手をつないでひとつ真人間にしてやるというあたたかい気持でやるということで行きたい、現在保護司はさような精神で動いておられますし、さような運用につきましては、今後最高裁判所といろいろと打合せをして、さような方向でこの制度を動かして行きたい、これは精神的のものでございますから、保護観察をつけて形の上で綱をつけてひつぱるということでは全然目的は達せられない、ほんとうに本人がそのつもりで、この機会にひとつ自分もこの人を信頼してやつて行こう、こういうことで行かなければ、この制度は健全な発達を遂げないのではないか、かように存じております。今後この法案が実施されたあかつきにはさような線で進めて行きたい、かように存じております。
  66. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 御趣旨はよくわかるのでございます。御答弁の中に奉仕者として働いていただくということがありました。まことにりつぱな方もわれわれ見受けます。ところが中にはなかなかそうでない方もよくいるのです。その点と、それからこれはただいま政務次官が御答弁になつたように、予算をとられてりつぱな方をお選びにならぬと、今までのように奉仕者で押し通して行くということでは私はほんとうに成果は上らない、かように考えておる。そこでその点については、結局これは私どもと政府の方との考え方が根本から違つているので、いくら御説明を求めても結論は出ないと思いますから、この点はこのくらいで打切りますが、特に従来なかつたのに、今回は保護観察制度の新設をされまして、従来の執行猶予判決をする場合に、初犯の方でも裁判所の認定によれば保護観察制度に付するという一つ判決の言い渡しができるようなことになるのです。この点を特にこういうぐあいにつけ加えなければならなかつたということは、おそらく再犯が多いということにあるのでありましようが、再犯ということは、単に保護観察制度をつけることによつて防げるのか、それともほかに社会的な原因が幾つもまだあるのかどうか、この点について私ども懸念を持つております。それで窃盗犯の再犯が多いということは、現在のような社会関係そのものに原因があるのではないか。そちらを直さずに一番最後の何と申しましようか、どぶさらいのようなことをやつております法務省が、非常に懸念されてこういうように附加されても、はたして所期の目的を達するか達さないか、こ点のを私ども非常で懸念するのですが、従来の執行猶予の言い渡しをいたしましたさつぱりした気持の中に、あえて今回これをつけ加えた特別な理由がどこにあるかを承りたいと思います。
  67. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 従来の執行猶予制度はそれとして効果のあるものであると存じます。ただある種類の人にとつては、やはり国家が監視的なものではなくして本人の親身になつて世話する、指導するというものがあれば、それで全部再犯がなくなるということは毛頭考えておりませんが、再犯が幾らかでも少くなるのではないか、またそういうふうにすべきではないか、もちろんそれと同時に犯罪の基盤になる社会条件の改善といいますか、そういうことにも十分努力をいたさなければなりませんが、私ども犯罪関係をする仕事をしておる者としては、やはりその面からも努力すべきではないか、その方法としてやはり正しい意味保護観察というものをやつて行くことがいいのではないか、ことに新しく範囲を広められたものについては、そういう必要が特に感ぜられるのではないか、こういう趣旨で案を立てた次第であります。
  68. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 二十五条の次に新たに一条が加わつて、二段階になるのですね。従来のような執行猶予判決をいたします場合には、裁判官の認定によつて保護観察に付する場合とそうでない場合とあります。一たび執行猶予判決を受けて、さらにここに規定してある「一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケ情状特二憫諒ス可キモノアルトキ亦前項二同ジ」というのは、この場合は必ず保護観察せねばならぬ、この二段階になるわけですね。前の方の分については、ただいま御説明のような従来の実績にかんがみてつけべき場合がやはり出て来るからつけておくということになるのでしようか。そういうことのように承りますが、どうもこの点が私ども何だかなしくずしによつて段階をつけて執行猶予判決が行われるような気持がするのですが、前の方はどういう意味でございましよう、基本がきまつておるのでしようか。前段と後段、これははつきりしている。ですから従来のような執行猶予判決を受くべき資格のある者が二つに区別されておる。この基準はどんなところに置かれるか。もちろんこれを認定するのは裁判官でございましよう。犯罪の動機の情状関係においてかようにわけるべきものである、こうお考えになつてこういうようになつているのでしようか。その点伺いたいと思います。
  69. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 これは裁判所が認定をされる事案々々によつて適切に、保護観察をつける必要のない者にはつけない、こういうことになると思いますが、考えられますのは本人性格が弱くて生活条件が悪く、犯罪の影響下にあるというようなものについては、やはり適当な指導と適切な保護を加えたい、そして独立して正業について行けるということが必要でありましようし、やはり本人の主観的条件、客観的境遇というものをにらみ合せて、このままではやはり再犯の危険が多いというようなものについて裁判所保護観察に付するという決定をされるものと存じます。統計で申し上げますと、昭和二十三、四、五年を平均いたしまして三箇年間に確定判決で刑の執行猶予になりました人の数が六万八千人ということに相なつております。それに対応しまして昭和二十三、四、五の三年間に、執行猶予を取消された人の数がだんだんふえて参つております。二十三年は五千人、二十四年は九千人、二十五年は一万人という数になつておりますが、平均いたしますと八千五百三十三人というような数になつておりまして、この程度のものにはやはり保護観察をつけるという決定が必要ではないか、現にその期間中に失敗をして再犯を犯して取消された、こういう事例からそういつた必要もある、かように考えます。
  70. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま御発表になつたような統計、これはやはり生活がだんだん苦しくなつて来るという社会情勢から原因が多く来ておるのではないかと思うのですが、ただここで御答弁のような趣旨保護観察制度であれば、特にここに規定されて、せつかく執行猶予判決を受けた者にいろいろの制約を加えて善導するということよりも、はつきりとこれはなくしてしまつて、別のいろいろの機関によつてあるいは就職のあつせんをし、あるいはいろいろの世話をしてやる、かようにした方がむしろはつきりして効果が上るんじやないか、私どもは、かように考えております。それからなお保護観察制度内容を拝見しますと、あれはたしか保護委員会によつていろいろのことが運営されているらしいのです。かようななまぬるいことよりも、いわゆる刑余者あるいは一度有罪の判決を受けた者、こういうようなものに対する特別の機関においてあつせんするという方がむしろはつきりして効果が上るんじやないか、かようにも考えられるのですが、さような点を考慮されて、その結論から本件のような提案をなされたのか、その点いかがでしよう。
  71. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 刑務所を出て社会生活をしておる人に対しましては、貧困ならば生活保護法が適用になり、就職口がなければ職業安定法が適用になりまして、それぞれ生活及び就職についての保護が国から加えられることになつておりますが、現実問題としてそれではそういう人たちが仮釈放なり執行猶予なりあるいは満期になつて刑務所から出て来たときにすぐにそういつた措置がとられるかどうかと申しますれば、やはり対象者はその日から困つてしまうわけですから、そこにそういつた人の手引きといいますか親がわりといいますか、そういう人があつて、そしてその人たちにあるいは出る前から連絡をとつてあらかじめ措置をしておく、突然出た場合には、あらかじめそういう機関と十分連絡をとつて保護してもらうという意味から、やはり一般の社会人よりも非常に条件の悪い人に対して特殊な保護をする人が必要ではないか。そしてそれが正しい意味ので保護観察をやつて行くということが望ましいことではないか、こういう意味合いで現在保護観察なり保護司制度をとつておる次第でございます。
  72. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 特に二十六条の二になりますと、ただいまの「保護観察二付セラレタル者遵守ス可キ事項遵守セザリシトキ」という取消し原因になつているのです。この決定権は、どこで決定するのでございましようか。これにあたるような事項を遵守しなかつたという決定をするところ、それから決定すると同時にどういうような手続でこれが取消されるのか、その順序をお教えいただきたい。
  73. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 この場合は従来になかつた手続でございまして、従来は有罪の判決があつて初めて取消されるというのでございますが、この場合は有罪の判決前に取消す、こういうことに相なつております。その手続は本人保護観察を担当しておつた保護観察所の長が、検察官に書面で申出をしまして、そしてそれを検察官が審査いたしまして、そして是なりとした場合に裁判所に請求をする、裁判所はそれに対して従来の有罪判決による取消しと違いまして、特に慎重なる手続をもつてやる。本人の請求があれば、口頭弁論を開き、そして弁護人をつけて、法廷で取調べて裁判所が決定する、こういう手続に相なつております。
  74. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御説明によると、主任の保護司から検事に上申されて検事から観察所長に要求する、そうすると決定権はもちろん裁判所でやるのですが、その要求に応じて本人のそれに対する弁明とか何とかいうことも口頭弁論を開いてやるということになるのでしようか、この点をひとつ……。
  75. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 観察所が十分事案を調査しまして検察官に請求し、また検察官がそれを審査しまして裁判所に請求をし、裁判所がそれによつて審理をする、その場合本人の請求があれば口頭弁論を開いて、そして弁護人もつけて、いろいろ審理をしてそして決定する、こういう手続にいたしております。
  76. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その点は刑事訴訟法改正の方に関係があるんですね。
  77. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 もちろんそうであります。
  78. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それから特に私がお尋ねしたいのは、手続は、一応口頭弁論を開いてやることになりまするけれども、検察官がいろいろ要求をする材料を提供するのは観察所長でしようか。
  79. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 それは観察所の長が一番事案を知つておりますから、観察所から事例を出して、そしてそれを検事が検討して裁判所に出す、こういうことに相なると思います。
  80. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 この点が私どもにまことに――例の「別二法律以テ之ヲ定ム」という規定は、犯罪者予防更生法ということになるのでありましようが、犯罪者予防更生法内容を検討いたしますると、非常に複雑なのでございます。これに違反するような事項といたしましては非常に複雑になつて参りますが、たとえば旅行に行きますときに旅行の許可を受けなければならぬというようなことがまず一つある。もう一つ、鍛冶委員からも御質問がありましたが、好ましからざる人々とつき合う、こういうようなものの認定、これはまことに複雑で、一歩誤ると非常に重大な結果になるし、非常に複雑なのですが、かような問題は保護観察なら保護観察規定を別にこしらえることにして、そして簡単明瞭なものでやるということがむしろ目的を達するように思いますが、その点どうですか。
  81. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お説ごもつともと存じますが、結局別につくりましても現在の犯罪者予防更生法との関係――非常に長期に旅行する場合に許可を受ける、のですが、これを全然なくして旅行してもよいということになると、保護観察をする人が、一体本人はどこに行つたか全然わからないということになりますし、文字に書きますとたいへんぎこちなくなりますので、結局本人をよくするために親心をもつてやるのだという制度趣旨からいいまして、単なる形式的な手違い等から絶対そういつた取消しというようなことは考えられないというのが今日までの実際でございますし、保護観察をやつておる人はまつたく本人をよくしてあげたい、こういう気持でやつておるのでございまして、文字の上からは、なるほど御指摘になられますと、われわれも何とも申し上げようもないような話でございますが、実際の運用の上において適正にあたたかく運用して行きたい、また今日も仮出獄なり家庭裁判所からまわる者については同様のことをいたしておりまして、その方針で行きたい、かように存じておりまして、運用の点において御注意のありましたところは十分承りまして、今後も十分注意いたして参りたい、かように思つております。
  82. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 最後にこの法律がかりに通過いたしまして施行されたといたしましても、法務当局のお考えになつているような予算の裏づけが、大体見通しがつくのかどうか。私どもは今御説明のような御趣旨の実現をするには、相当な予算がいるのではないか。相当な予算が盛られて、従来のような奉仕者であるというような関係で特に活発に働いていただくためには、相当の費用がいるのじやないかと思いますが、この点については御方針があり見通しがあつてつているのかどうか、この点お伺いします。
  83. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 実はこの考え方は、一昨年すでに法制審議会から答申がございましたのですが、昨年度は新規事業は非常な圧縮といいますかそういう方針で制定されましたために、予算の見通しがつかないために提案を控えた次第であります。今年度は幸いにして観察官が九十三名増員され、しかも一定の割合に応じて、事件がふえれば大蔵省としては増員を認めよう、こういう約束のもとに九十三名増員を認められました。現在その職員の採用にかかつておりまして、採用の上は実務的な研修を三箇月ほどいたしまして、その上観察所に配属いたしたいと存じております。その他本年度はこの制度の実施ということも考慮しまして、補導費において一千万円ほど増額をいたして、予算を出しておるような次第であります。
  84. 小林錡

    小林委員長 吉田安君。
  85. 吉田安

    ○吉田(安)委員 大分ごの問題については、いろいろ各委員からつつ込んだお尋ねがあつたのでありまして、重複するかもしれませんが、私は今度のこの刑法の一部改正で、再度の執行猶予に付せられるようになつた、このことは非常に喜びます。刑事訴訟法の一部改正で、非常に遺憾に思つております再度の執行の面についてかように思いやりの深い改正ができますことは、心から当局に敬意を表します。ただ二、三お尋ねいたしたいことは、一年以下の懲役、禁錮の場合は、再度の執行猶予を認められますが、罰金については、これが除かれておる。その点がいささか割り切れないのであります。率直な御答弁を承りたい。
  86. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 私から申し上げるまでもなく現在罰金執行猶予中の人は重なつても、二度目も三度目も現行法で、罰金につきましては執行猶予ができるということに相なつております。ただ不均衡を生じておりまするのは、体刑の執行猶予を受けている人が、体刑の執行猶予中に罰金に科せられた場合に執行猶予にならないという点は御指摘通りでございます。この点につきまして、いろいろ考慮いたしたわけでございまするが、一つはこの制度を考えましたのは、執行猶予制度自体がそうかもしれませんが、刑務所に入れて、ことに初犯の人を刑務所に入れるということが、一面においては、職業犯罪者接触をするというふうな点、また社会から非常に異端者のように見られて、その後の社会生活が困難になるというような点から、執行猶予制度が考えられたのではないか。罰金昭和二十二年でございますか、それまではなかつたというような点もございますし、ことにこの制度このままの案で罰金を入れますると、体刑の執行猶予中に、さらに二度目の罰金執行猶予になるという場合に、この案のままで行きますと保護観察がつく。そうするとその後体刑について、体刑の判決の方が執行猶予の期間が切れたというような場合でも、保護観察中に犯した罪だから、やはり再度の執行猶予ができない。この入れないときの執行猶予だけならば、何べんでもできるということになりますと、さような点に、かえつて気の毒といいますか、不利益な点も生ずるのではないか、といつて、あらためてそれを書きわけるということになりますと、ちよつと非常に複雑といいますか、書き切れないのではないかという点から、さつきくだくだしく申し上げましたが、要するに罰金と体刑と執行猶予の態様も違うというような点、それから罰金については、現在罰金だけの執行猶予については何べんでもできるという点から、一応この案では見送つて、今後の推移に応じて考えてみたいというつもりで進んでおります。
  87. 吉田安

    ○吉田(安)委員 御説のような御意見も出ることだと存じます。保護観察に付している間は、執行猶予はできないということになつておりますが、そういう建前から行けば、今おつしやたような御議論の一端も出て来ることと存じます。しかしそれについては、私どもはさらにお尋ねをしたいと思うておるのでございまして、そのときに譲ります。ただ私はこれは科刑の権衡上、こういう場合には、ことに軽微な罰金刑の犯罪を犯したという場合には、かように懲役、禁錮という体刑を前提といたしましても、そのときはやはり執行猶予をそれにも与えてやるということが、均衡を保つたことなりはしないか、かように考えられるのであります。そう考えますと、やはり保護観察に付さない場合に、罰金、たとえば軽微の罰金でありますが、そういう場合には再度の恩典に付してやることがいいことではないか、かように考えます。しかし、それはいろいろりくつの相違になりまするから、この点はこの程度にいたしますが、いずれにしも、やはり罰金にもさような場合に付することが必要だということを申し上げておきたいと思います。保護観察中の者には、再度の執行猶予を許さないことになつておりまするが、元来保護観察に付する必要がある者は一体どういう着であるか、かように申しますと、おそらく法の精神も、その本人性格であるとか、習い性であるとか、あるいは四囲の環境といつたようなことで、刑務所に入れることが適当であるか、あるいは入れないがいいか、言いかえますならば、刑務所の悪風に感染するというおそれのある性格の者が結果保護観察に入れるという性質のものではないか、また観察に付するという法の精神もそこにありはしないか、かように考えられるであります。この法案になつて見ますると、さような者は再度の猶予を許されず、必ず刑務所に入れるということになりますが、私どもから考えますと、かえつてそういう性格の者、そういう環境の者こそ、再度執行猶予を許して再教育をすることでなくてはならない、かように考えるのであります。この点についての御所見を承りたいと思います。
  88. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 第一回目の保護観察をどういうふうにつけるか、また立法側の意思としてどういうものを考えているかという点でございますが、立案に当りました者といたしまして申し上げますが、やはり保護観察をつけなければ再犯のおそれがあるということが結局けじめになるのではないか、保護観察をつけなくても再犯のおそれのない者につきましては、保護観察をつける必要は毛頭ないのでございまして、さような者につけることはかえつて運用が上手でないということになるのではないか。もちろん再犯といいましても、いろいろな本人の内的な条件もございましようし、置かれている環境、その他の外的条件もございましよう。そういう点について、裁判所は十分調査、審理をいたしまして、このままでは、この制度がなければ再犯のおそれがあるから実刑を言い渡さなければならなかつたのだが、適当な保護観察が行われれば、再犯のおそれはまずなかろうということで、保護観察をつけるというふうに行かれたい、こういうふうに私どもは考えております。
  89. 吉田安

    ○吉田(安)委員 どうも御答弁の要旨を聞いておりますると、保護観察ということを絶対の建前のようにお考えになつて、それから出発しておられるような気がするのであります。私ども保護観察が一体どれだけの効果をあげるか、あげぬかがまず疑問である。またこの原案の内容程度では、いわば五里霧中です。一体、日本のこのごろの制度は、あまりに制度が多過ぎやせぬか。何でもかでもちよつとまずいところがあると、すぐに立案をして、それによつてやる。それには費用がいる、予算がかさんで行く、こういう結果を招来しているのが現在の状態である私は思うのであります。御説のようなことになりましても、私は、これは考え方がむしろ反対であつて、そういう場合の点を推して行くと、それ応報的な考えに陥るような感じを持つものであります。さらに保護観察中の者の猶予を許されないということになりますると、保護観察に当る者の任務ですが、これはさいぜんからも大分問題になつているようでありますが、非常に重要なことになつて来ると思います。どこまでも観察の任に当る人は、責任を持つて保護善導し、再び罪を犯さないように努力する義務があるということは当然でありまするが、人間でありますから、ことに今、われわれが想像する保護観察の程度では、はなはだそれが満足に行くかどうかを心配するのであります。保護観察中にまた悪いことをして起して起訴されたという場合に、その責任をどこまでも本人だけに転嫁する。責任を本人だけに負担させるというようなことに陥るきらいを考えぬでもないのであります。こういう点についての御所見を伺つておきたいと思います。
  90. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 仰せの通りでありまして、保護観察に付せられた場合にいろいろな意味本人が利益と不利益とを受けるわけでありまして、もしそれが再犯で起訴されるような場合には非常な不利益を受けますので、その点については保護観察に当る者としては負荷された責務といいものを自覚して、さような不当なことのないように、ほんとうに責任を持つてやらなければいかぬというふうに考えます。
  91. 吉田安

    ○吉田(安)委員 そういう場合には責任を持つてやらなければならないというふうにお考えになることは当然でありますが、一体これを実行した場合保護観察の方では受入れ態勢は完全にできておりますが、その点を伺いたい。
  92. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 現益の予算なりその他の面では、決して十分ではございませんが、しかしわれわれといたしましては、予算上の不足もあり何かいたしましても、それを乗り越えて、その責任を果して行きたい。こういうふうに存じております。現在五百五十九名でありますかの保観観察官が観察所におります。そのほか全国に四万四、五千の保護司がおられます。そうして各市町村に一人以上配置されまして、そしてこの保護司本人接触する第一線になつております。その人々は、その村なり町なりに相当年数住んでおられる。相当の地位も衆望も持ち、また時間的余裕も持ち、経済的な余裕も持ち、しかも熱意を持つておるという人を選んでありまして、その人々はいながらにして本人の過去のこともわかるし、現在のこともわかるということをねらつて、その人々に第一線の接触をお願いしておるような次第であります。現在七万人くらいの対象者保護観察下にあります。その数について今ちよつと資料を持つておりませんが、一番多いのは家庭裁判所からまわつて来る少年であります。その他仮出獄中の者、仮退院中の者そういう者を合せまして現在七万あまりの対象者を、四万四、五千の保護司、五百数十名の観察官が担当しております。この制度が実施されましたあかつきに、対象者がどのくらいふえるかということは、これはやつてみなければわからないことでありますが、想像いたしまして、大体過去三年間の執行猶予中に再犯を犯して取消された人の数八千数百人その程度の者は保護観察にまわるのではないか。それから前科のない初犯の人及び前科があつても五年を経過したという人の数が毎年刑務所に入つて来る新受刑者の中で四万一千人か二千人ぐらいございまして、これも腰だめでありますが、その約三割程度が、刑務所に入らないで保護観察に、この制度によつてまわされるのではないかこういうふうに考えまして、八千人と四万一千か二千の三割でありますから一万二千、その数合せて約二万人程度が一年間にこの制度保護観察にまわつて来る人ではないか、こういうとをこえ考えまして本年度は九十三名の保護観察官の増員と、それから保護司五万二千のうち現在発令してない人が一万足らずでありますので、そういう人の充員等によつて今年度はまかなつて行きたい、またこの人々が一生懸命やつて行くならば担当できるのではないか、かように考えております。
  93. 吉田安

    ○吉田(安)委員 これは聞き違いかもしれませんが観察官が五百五十九名と保護司が四万四、五千人とおつしやつたようであります。こういう人たちの資格はどういうふうになつておりますか。私不幸にしてこういうことはわからないのですが。
  94. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 保護観察官は公務員法の観察職ということで一般の行政官と申しますか、一般職の家国公務員であります。従来の少年審判所時代から審判所の保護司とか、観察官というようなことをやつて来ている人もありますし、昭和二十四年以来学校方面とか、いろいろ関係ある方面からこちらに転身をされた方もありますが、現在五百五十九名という数になつております。保護司保護司法によりまして各府県に選考会を設けまして、これに関係ある各職能代表というような方にお願いして選考委員になつていただきまして、そこにかけましてそこで通つた人たち法務大臣が委嘱する、こういうことにになつております。その資格はやはり非常勤の無給公務員ということに人事院できめておりまして、そういう扱いになつております。従つて保護観察等の最中に負傷したとか死亡したとかいう場合には、国家公務員災害補償法の適用を受ける、こういうことに相なつております。
  95. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 さつきの吉田さんの御意見の中で受入れ態勢がなつておるかということがあつたのでありますが、大体人員等については今局長からお話した通りであります。しかしながら正直に申し上げて実際の面においては、ほんとうに受入れて保護観察の職務を全うするようなことには非常に心配するものであります。何となれば現在の保護司に対する待遇、やり方においては予算面から見ましても――しかもそういうような保護観察に付せられた人々に対しまして、ほんとうにあたたかい気持を持つて奉仕的に一切世話するという立場に立つて仕事をする場合において、それらの人に対する待遇なり、あるいはその人たちがほんとうに職務を遂行するための現在の国家の待遇なり、やり方に対しては足らないことは当然でありまして、ただ人員だけ、態勢だけはいいのでありますが、実際の仕事の面においては非常に心配な点が多いのであります。この制度を活用し、この制度をしてほんとうに目的を達するためには国家予算なり、あるいはそういう制度を充実するための予算的裏づけに対しましては、どうしても今後考えなければならないことでありまして、こういう点に対しましてもでき得る限り努力しなければならないものだと思つております。同時に私は、この制度保護される者に対して決して負担を重くするとか、あるいは刑罰とかいうようなものであつてはならないと思いますし、ことにまた観察官なり、あるいは司法保護司仕事が警察や検事というような方々と全然違つてむしろ心から相談相手になり、心からこれらの人々に対しあたたかい気持で接し、同時にこれらの人々がすべてたよつて親身になつて相談にあずかるような、ほんとうに心から信頼される方々でなければならないのでありまして、この法の運用については、一方においては予算的の問題、一方においては司法保護司や何かの人格、その人を得なければもちろんいけないのであります。そういう点におきまして、りつぱな観察官なり、りつぱな司法保護司を選ぶことが、まず根本の必要な問題だろうと思うのであります。そういうような点に対しましても、今後の選考に当つても、十分――今までも、もちろんそういうりつぱな適当な人を選んでおるようでありますが、今後の選考方法等においても、保護司なり観察官は、ややともすると社会から遠ざけられ、社会から受入れられないような人がほんとうに信頼して、何事でも打明けて相談されるような人格的な人でなければならないように考えておるのでありまして、この選考等につきましても、そういうような人を選ぶことに努力し、受入れ態勢に対しても十分慎重にし、りつぱにやらなければならぬというように、私は考えておるのであります。
  96. 吉田安

    ○吉田(安)委員 政務次官から私が言いたいと思うたところを尋ねる前に拝聴いたしまして、まことに幸いだと存じます。私はこの保護観察について、そう大きな期待を持ちません。はたしてどれだけの成果が上るか、また今言つたような点で、相当に意見が違つておるところもあるのでありますが、政務次官の言われたように、一ぺん罪を犯して執行猶予になつてつても、これが社会でどういうふうに取扱われるか、これは日本の国民性か何か知りませんけれども、非常につまはじきをする傾きがある。これがいかぬのである。そうなると、本人自身はすぐにひがんで来るし、一般社会の者は、それに冷たい目をもつて待遇をするというようなこにとなるのであります。ならぬでも、本人自身はそと思う。だからこれをどうかしてとりのけることが必要ではないかということは常々考えられることなのであります。そういう場合に、保護観察制度がほんとうにその人を得てうまく運用ができますると、今言つたような一端をとりのけることができはしないかと思います。これができることだけでも、私はこの観察制度は、非常にいいことじやないかと思うのであります。それでこの法案が通過するかせぬかは別といたしまして、通過でもしますれば、そういう点に十分重きを置かれる必要がありはしないか、かように思うのであります。  さらにもう一点お尋ねいたしたいことは、この法案によりますと、保護観察中の期間と執行猶予期間と同じようになつておるように思われます。しかしここに問題は、執行猶予の期間中でも保護観察の運用がよろしきを得ますれば、保護観察の必要がなくなるような効果を上げ得ると思う。たとえば、三年が一年半なり、二箇年たつた場合にはもういい。こういう効果が上りはせぬかと思う。またそう上つてほしいものだと思います。そうすると、もう保護観察も必要なくなつて来るんじやないか、こういうことにもなり得るのであります。だからそうなれば、その余つた期間だけは必要ないと思うが、そのときには保護観察に付せられた問題はどうなりますか、やはり三年という期間は置くのですか、その点まだ私よくわかつておりませんので、お示し願いたい。
  97. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 形の上では御指摘のように、執行猶予期間と同一でございます。ただ保護観察ということは、きまりきつたことを型通り、すべての事件に同一にやるというのじやございませんで、いろいろな環境、いろいろな生活等にある人を、犯罪をしないで済む人に引上げて来るという仕事でございまして、その方法も時により、人により、いろいろ違つて来るのでございまして、御指摘のようにいらなくなつた場合には解除するということも、やつていいことでございまして、今後の問題として十分研究いたしたいと思いますが、この案では、一応期間は同一にして、実際上の運用において、必要がなくなれば事実上停止をするということでやつて行こうという考えでございます。現に、仮出獄中に再犯を犯して刑務所に入つたという場合でも、仮出獄を取消さない事例がございます。現在、地方委員会が仮出獄取消しの許可なり、取消しをいたしておるのでございますが、全国の経過から見て、ことに長い刑期、五年とか十年とかの刑期の者が仮出獄になつて、ごく軽微な形式的な犯罪で、しかも仮出獄中の犯罪だからというので実刑を食つて、三箇月、六箇月入つて、しかもこれが本人にとつて取消すのは気の毒であるから取消さないという事例がございます。その場合には仮出獄保護観察中の人が刑務所に入つておるという結果になりますが、これは事実上停止をするということで済ましておりまして、保護とか、観察とか申しますが、これは言葉はさようでございますが、本人にとつて必要なめんどうなり、指導なり、保護を与えるということでございまして、形式的なきまりきつたことを何でもやるというものではございませんので、その点、その時、その場所によつて、一人々々違つた方法でやるんだということでございますから、やる方は犯罪者予防更正法にいろいろなことが書いてございますが、これは一応の目標を例として掲げておるのでございます。そのうち必要なことをやるという意味でありますから、事実上の問題としてそれを解決したい、こういう考え方であります。
  98. 吉田安

    ○吉田(安)委員 今の点は大事なことであつて、これを実施することになりますれば、さような点は慎重に御注意を願いたいと思いますが、最後にお尋ねいたしたいことは、先ほども申しましたように、あまりに保留が多過ぎる。多いのも社会の実情に合うためにはけつこうです。しかし、こういう制度をつくると、やはり先ほどから質疑応答がありましたように、予算という面から考えねばならない。この問題でも、相当に予算を食うことだと存じます。しからば予算を食わないで、何かはかにまだいい方法はないかというようなことも、一応考える必要はありはせぬかと思います。それでこの参考資料にも出ておるのでありますが、以前からわれわれ耳にもし、そうして考えたことでもありますが、例の刑の宣告猶予、これができれば、こういう気の毒な人たちに対する非常に大事な制度である。できればりつぱな法律であると思います。これは制度で認められても、予算も何もいつたものじやない、こういうことは、私は考えていただきたい。そうして、この執行猶予を広く拡張するということまで来られたならば、なぜ法務当局はこの問題もお取上げにならなかつたか、お取上げになつても時間が間に合わなかつたか、きのうの質疑にもあるように、間に合わぬからしかたがないじや困るのですが、私はこういうことも大事なことじやないかと思いますが、どういうお考えですか。
  99. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 仰せの通り犯罪をした人の改善更正をはかる、刑事政策のほんとうの目的を達成するためには、宣告猶予という制度は非常に望ましい制度でありまして、今度の法案はそこに至る一つの道程であるというふうに私どもは考えておりまして、今後法案の研究なり実際のやり方等についても向上をはかり、また諸般の準備をして、そしてできるだけ早く宣告猶予制度も取人れたいと思つております。さような意味合いで、決して等閑に付して時間が間に合わなかつたからという意味ではございませんで、この制度を当時の法務総裁が法制審議会に諮問されまして、その答申案でも、一応この執行猶予保護観察をつけるという制度に行くべきであろうという答申でございましたが、それに付加して宣告猶予制度は現行の刑事法制のも  とでただちにこれを採用することは種々の難点を伴うが、本人改善更生をはかるにきわめて有効適切であると考えられるので、これを将来採用することについて十分研究を重ねること、こういう記付がございました。私どもまつたく同感でございまして、ほんとうにこの制度を早く実現いたしたい。その一つの橋頭堡という意味で、いろいろな意味で不十分な点もございまするが、一応これで発足して、そして将来理想の姿にできるだけ早く近づけて行きたい、こういうふうなつもりでおるのでございます。
  100. 吉田安

    ○吉田(安)委員 宣言猶予の前提としてこの刑法の一部改正案が出たと御答弁がありましたが、まあそうであつたかもしれません。私は実は法務大臣に直接もう少しお尋ねをいたしたいと思いますので、いずれ次の機会に譲ることにいたします。
  101. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 私は、この司法制度法律の運用について、個人的な、罪を犯かしたとかあるいは保護観察に付された者だけを対象にいろいろ論議され、いろいろ考えられておるように思うのでありますが、しかし私はむしろこの制度の運用は、観察に付された者ばかりでなく、家族全般の相談相手なり、あるいはいろいろのお世話をするということで、初めて目的が達せられるのであろう、またそこまで行かなければならないし、またそういうことによつて初めてこの制度の運用ができるのではないかというふうに考えておるのでございまして、それらの点についても今後十分に検討してみたいと思うわけであります。また同時に先ほどからの御意見の通り保護観察せられ、非常に迷惑する場合もあるかもしれませんし、あるいは必要のない方ももちろんあるだろうと思いますか、そういうような点はやはりこの司法保護りつばな方々が当つておりますれば、運用上においてはそういう方々に負担を重くしたり迷惑をかけなくてもりつぱにやつて行けるだろう、またかく活用しなければいかぬと思うのでありまして、そういうような運用の面においても、とくと関係の方と御相談をして御期待に沿うように善処したいと思います。
  102. 小林錡

    小林委員長 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめておきます。  明日は午前十時三十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十四分散会